本発明は、照射された光によって情報が記録又は再生される光記録媒体、当該光記録媒体の製造方法、当該光記録媒体に情報を記録又は再生する光情報装置、及び当該光記録媒体から情報を再生する情報再生方法に関し、特に、3層以上の情報記録面を備える光記録媒体の層間隔の構造に関するものである。
高密度及び大容量の光情報記録媒体として市販されているものでDVDやBD(Blu−rayディスク)と呼ばれる光ディスクがある。このような光ディスクは画像、音楽及びコンピュータデータを記録する記録媒体として、最近急速に普及しつつある。また、記録容量をさらに増すために、特許文献1及び特許文献2に示すような複数の記録層を有する光ディスクも提案されている。
図14は、従来の光記録媒体及び光ヘッド装置の構成を示す図である。光記録媒体401は、光記録媒体401の表面401zに最も近い第1情報記録面401aと、光記録媒体401の表面401zに二番目に近い第2情報記録面401bと、光記録媒体401の表面401zに三番目に近い第3情報記録面401cと、光記録媒体401の表面401zから最も遠い第4情報記録面401dとを含む。
光源1から出射された発散性のビーム70は、コリメートレンズ53を透過し、偏光ビームスプリッタ52に入射する。偏光ビームスプリッタ52に入射したビーム70は、偏光ビームスプリッタ52を透過し、4分の1波長板54を透過して円偏光に変換される。その後、ビーム70は、対物レンズ56で収束ビームに変換され、光記録媒体401の透明基板を透過し、光記録媒体401内部に形成された第1情報記録面401a、第2情報記録面401b、第3情報記録面401c及び第4情報記録面401dのいずれかの上に集光される。
対物レンズ56は、第1情報記録面401aと第4情報記録面401dとの中間の深さ位置で球面収差が0になる様に設計されている。球面収差補正部93は、コリメートレンズ53の位置を光軸方向に移動させる。これにより、第1〜第4情報記録面401a〜401dに集光する場合に発生する球面収差は除去される。
アパーチャ55は、対物レンズ56の開口を制限し、対物レンズ56の開口数NAを0.85としている。第4情報記録面401dで反射されたビーム70は、対物レンズ56及び4分の1波長板54を透過して往路とは90度異なる直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ52で反射される。偏光ビームスプリッタ52で反射されたビーム70は、集光レンズ59を透過して収束光に変換され、シリンドリカルレンズ57を経て、光検出器320に入射する。ビーム70には、シリンドリカルレンズ57を透過する際、非点収差が付与される。
光検出器320は、図示しない4つの受光部を有し、それぞれの受光部は、受光した光量に応じた電流信号を出力する。これら電流信号に基づいて、非点収差法によるフォーカス誤差(以下FEとする)信号、プッシュプル法によるトラッキング誤差(以下TEとする)信号、及び光記録媒体401に記録された情報(以下RFとする)信号が生成される。FE信号及びTE信号は、所望のレベルに増幅されるとともに、位相補償が行われた後、アクチュエータ91及び92に供給されて、フォーカス制御及びトラッキング制御が行われる。
ここで、仮に、光記録媒体401の表面401zと第1情報記録面401aとの間の厚みt1、第1情報記録面401aと第2情報記録面401bとの間の厚みt2、第2情報記録面401bと第3情報記録面401cとの間の厚みt3、及び第3情報記録面401cと第4情報記録面401dとの間の厚みt4が全て同じ長さである場合には以下の様な問題が発生する。
例えば、第4情報記録面401dに情報を記録又は再生するために、第4情報記録面401dにビーム70を集光したとき、ビーム70の一部は、第3情報記録面401cで反射する。第3情報記録面401cから第4情報記録面401dまでの距離と、第3情報記録面401cから第2情報記録面401bまでの距離とは同じである。そのため、第3情報記録面401cで反射したビーム70の一部は、第2情報記録面401bの裏側に結像し、第2情報記録面401bの裏側からの反射光は、再び第3情報記録面401cで反射する。その結果、第3情報記録面401c、第2情報記録面401bの裏側及び第3情報記録面401cで反射した反射光が、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に混入してしまう。
さらに、第2情報記録面401bから第4情報記録面401dまでの距離と、第2情報記録面401bから光記録媒体401の表面401zまでの距離とも同じである。そのため、第2情報記録面401bで反射したビーム70の一部は、光記録媒体401の表面401zの裏側に結像し、表面401zの裏側からの反射光は、再び第2情報記録面401bで反射する。その結果、第2情報記録面401b、表面401zの裏側及び第2情報記録面401bで反射した反射光が、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に混入してしまう。
この様に、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に、他面の裏側に結像した反射光が重なって混入し、情報の記録又は再生に支障をきたすという問題がある。他面の裏側に結像した反射光が混入した光は干渉性が高く、受光素子上で干渉による明暗分布を形成する。さらに、この明暗分布は、光ディスク面内の中間層の微少な厚みばらつきによる他面反射光の位相差変化に応じて変動するため、サーボ信号及び再生信号の品質を著しく低下させてしまう。以後、本明細書では、上記の問題を裏焦点課題と呼ぶ。
裏焦点課題を解決するために、特許文献1には、各情報記録面の間の層間距離を光記録媒体401の表面401zから順番に徐々に長くなる様に設定し、本来読み出すべき第4情報記録面401dにビーム70を集光させたときに、同時に、ビーム70の一部が第2情報記録面401bの裏側及び表面401zの裏側に結像しないようにする方法が開示されている。ここで、厚みt1〜t4はそれぞれ±10μmの製造ばらつきを有している。厚みt1〜t4は、各々がばらついた場合にも異なる距離になる様に設定する必要がある。そのため、厚みt1〜t4の距離の差は例えば20μmに設定される。この場合、厚みt1〜t4は、それぞれ40μm、60μm、80μm及び100μmとなり、第1情報記録面401aから第4情報記録面401dまでの総層間厚みt(=t2+t3+t4)は240μmである。
また、表面401zから第1情報記録面401aまでのカバー層の厚みと、第4情報記録面401dから第1情報記録面401aまでの厚みとが等しい場合、第4情報記録面401dで反射した光は表面401zで焦点を結び、表面401zで反射する。表面401zを反射した光は、再び第4情報記録面401dで反射した後に光検出器320へ導かれる。このような表面401zの裏側で結像する光束は、他の情報記録面の裏側で結像する光束のようなピット又はマークに関する情報を有していない。しかしながら、情報記録面の数が多い場合、情報記録面から戻ってくる光の光量は少なくなり、相対的に表面401zの反射率は高くなる。そのため、表面401zの裏側で反射した光束と、記録又は再生の対象となる情報記録面を反射した光束との干渉は、他の情報記録面の裏側で反射した光束と同じように発生し、サーボ信号及び再生信号の品質を著しく低下させるおそれがある。
このような課題を考慮し、特許文献2では、光ディスクの情報記録層(情報記録面)の間隔を提案している。この特許文献2では、下記の構造を開示している。
光記録媒体は、4つの情報記録面を有し、光記録媒体の表面に近い側から第1情報記録面〜第4情報記録面としている。表面から第1情報記録面までの距離は47μm以下である。第1情報記録面から第4情報記録面までの各情報記録面間の中間層の厚みは、11〜15μmと、16〜21μmと、22μm以上との組み合わせからなる。表面から第4情報記録面までの距離は100μmである。表面から第1情報記録面までの距離は47μm以下であり、さらに表面から第4情報記録面までの距離は100μmである。
光ディスクシステムでは、表面から入射し、情報記録面において反射した光が検出されるので、光が通過する表面から情報記録面までの透明材料の屈折率も、サーボ信号及び再生信号の品質に影響を与える。しかしながら、特許文献1及び特許文献2において示されたディスク構造には、屈折率についての考察及び記述がないため、透明材料の屈折率によるサーボ信号及び再生信号の品質への影響が一切検討されていない。
特開2001−155380号公報
特開2008−117513号公報
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる光記録媒体の製造方法、光記録媒体、光情報装置及び情報再生方法を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る光記録媒体の製造方法は、(N−1)個(Nは4以上の自然数)の情報記録面を有する光記録媒体の製造方法であって、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する前記光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNは、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換され、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とし(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、下記の(1)式に示す関数f(n)と、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
f(n)=−1.088n3+6.1027n2−12.042n+9.1007・・・(1)
ただし、上記の(1)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(1)式に示す関数f(n)と、厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
本発明によれば、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFが1μm以上とされるので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
本発明の実施の形態に係る光記録媒体及び光ヘッド装置の概略構成を示す図である。
本発明の実施の形態に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第4情報記録面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面及び第2情報記録面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第2情報記録面及び表面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面、第1情報記録面及び第2情報記録面からの反射光を示す図である。
層間厚みの差とFS信号振幅との関係を示す図である。
各情報記録面の反射率がほぼ等しい光記録媒体における層間厚みとジッターとの関係を示す図である。
本発明の実施の形態の変形例に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
実際の屈折率における形状的な厚みを、標準の屈折率における厚みに換算する係数の屈折率依存性を示す説明図である。
標準の屈折率における厚みを、実際の屈折率における形状的な厚みに変換する係数の屈折率依存性を示す説明図である。
球面収差に基づいて、実際の屈折率における形状的な厚みを、標準の屈折率における厚みに換算する係数の屈折率依存性を示す説明図である。
本発明の実施の形態に係る光情報装置の概略構成を示す図である。
従来の光記録媒体及び光ヘッド装置の構成を示す図である。
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
以下、図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態に係る光記録媒体について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体及び光ヘッド装置の概略構成を示す図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体の層構成を示す図である。光ヘッド装置201は、波長λが405nmの青色のレーザ光を光記録媒体40に照射し、光記録媒体40に記録された信号を再生する。なお、図1に示す光ヘッド装置201の構成及び動作は、図14に示す光ヘッド装置の構成及び動作とほぼ同じであるので、詳細な説明は省略する。
光記録媒体40には一例として4つの情報記録面が形成されている。図2に示すように、光記録媒体40は、光記録媒体40の表面から近い側から順に、第1情報記録面40a、第2情報記録面40b、第3情報記録面40c及び第4情報記録面40dを有する。
光記録媒体40は、さらに、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45を有している。カバー層42の厚みt1は、表面40zから第1情報記録面40aまでの間の基材の厚みを表し、第1中間層43の厚みt2は、第1情報記録面40aから第2情報記録面40bまでの間の基材の厚みを表し、第2中間層44の厚みt3は、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cまでの間の基材の厚みを表し、第3中間層45の厚みt4は、第3情報記録面40cから第4情報記録面40dまでの間の基材の厚みを表している。
また、距離d1(≒t1)は、表面40zから第1情報記録面40aまでの間の距離を表し、距離d2(≒t1+t2)は、表面40zから第2情報記録面40bまでの間の距離を表し、距離d3(≒t1+t2+t3)は、表面40zから第3情報記録面40cまでの間の距離を表し、距離d4(≒t1+t2+t3+t4)は、表面40zから第4情報記録面40dまでの間の距離を表している。
ここで、情報記録面が4面である場合の課題について説明する。まず、一つ目の課題として、多面反射光による干渉について図3〜図7を用いて説明する。
図3は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第4情報記録面40dからの反射光を示す図であり、図4は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第3情報記録面40c及び第2情報記録面40bからの反射光を示す図であり、図5は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第2情報記録面40b及び表面40zからの反射光を示す図であり、図6は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第3情報記録面40c、第1情報記録面40a及び第2情報記録面40bからの反射光を示す図である。
図3のように、情報を再生又は記録するために第4情報記録面40dに集光された光束は、情報記録層(情報記録面)の半透過性により、以下の複数の光ビームに分岐される。
すなわち、情報を再生又は記録するために第4情報記録面40dに集光する光束は、図3に示すビーム70と、図4に示すビーム71(情報記録面の裏焦点光)と、図5に示すビーム72(表面の裏焦点光)と、図6に示すビーム73とに分岐される。
図3のように、ビーム70は、第4情報記録面40dで反射し、表面40zから出射するビームである。図4のように、ビーム71は、第3情報記録面40cで反射し、第2情報記録面40bの裏側で焦点を結んで反射し、再び第3情報記録面40cで反射し、表面40zから出射するビームである。図5のように、ビーム72は、第2情報記録面40bで反射し、表面40zの裏側で焦点を結んで反射し、再び第2情報記録面40bで反射し、表面40zから出射するビームである。図6のように、ビーム73は、表面40z及び情報記録面の裏側で焦点は結ばないが、第3情報記録面40c、第1情報記録面40aの裏側及び第2情報記録面40bの順で反射し、表面40zから出射するビームである。
まず、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45の屈折率がすべて同じ場合について考察する。各層で共通の屈折率をnoとする。
例えば、第4情報記録面40dと第3情報記録面40cとの間の距離(厚みt4)と、第3情報記録面40cと第2情報記録面40bとの間の距離(厚みt3)とが等しい場合、ビーム70とビーム71とは、表面40zを出射する際に同じ光路を通る。そのため、ビーム70とビーム71とは、同じ光束径で光検出器320に入射する。同様に、第4情報記録面40dと第2情報記録面40bとの間の距離(厚みt4+厚みt3)と、第2情報記録面40bと表面40zとの間の距離(厚みt2+厚みt1)とが等しい場合、ビーム70とビーム72とは、表面40zを出射する際に同じ光路を通る。そのため、ビーム70とビーム72とは、同じ光束径で光検出器320に入射する。また、第2情報記録面40bと第1情報記録面40aとの間の距離(厚みt2)と、第4情報記録面40dと第3情報記録面40cとの間の距離(厚みt4)とが等しい場合、ビーム70とビーム73とは、表面40zを出射する際に同じ光路を通る。そのため、ビーム70とビーム73とは、同じ光束径で光検出器320に入射する。
ここで、ビーム70に対して多面反射光であるビーム71〜73の光強度は小さい。しかしながら、干渉のコントラストは、光強度ではなく光の振幅光強度比に依存し、光の振幅は、光強度の平方根の大きさになるので、多少光強度に差があっても、干渉のコントラストは大きくなる。ビーム70〜73が等しい光束径で光検出器320に入射した場合、各ビームの干渉による影響は大きくなる。また、光検出器320での受光量は、微少な情報記録面間の厚みの変化によって大きく変動し、安定して信号を検出することが困難となる。
図7は、層間厚みの差とFS信号振幅との関係を示す図である。なお、図7では、ビーム70と、ビーム71、ビーム72又はビーム73との光強度比を100:1とし、かつカバー層42及び第1中間層43の屈折率がいずれも約1.60(1.57)であって等しい場合の層間厚みの差に対するFS信号(光強度の総和)振幅を示している。図7において、横軸は層間厚みの差を示し、縦軸はFS信号振幅を示している。FS信号振幅は、他の情報記録面からの反射がないと仮定してビーム70のみを光検出器320で受光したときのDC光量によって規格化した値である。また、本実施の形態において層間とは、光記録媒体と情報記録面との間、及び隣接する情報記録面の間を表している。図7のように、層間厚みの差が約1μm未満になるとFS信号が急激に変動することがわかる。
なお、図5のビーム72と同様に、カバー層42の厚みt1と、第1中間層43〜第3中間層45の厚みの総和(t2+t3+t4)との差が1μm以下になってもFS信号の変動などの問題が生じる。
二つ目の課題として、隣接する情報記録面間の層間距離が小さすぎると、隣接する情報記録面からのクロストークの影響を受ける。そのため、層間距離は、所定値以上必要となる。そこで、層間厚みについて検討し、最小となる層間厚みを決定する。
図8は、各情報記録面の反射率がほぼ等しい光記録媒体における層間厚みとジッターとの関係を示す図である。中間層の屈折率は約1.60である。図8において、横軸は層間厚みを示し、縦軸はジッター値を示している。層間厚みが薄くなるに従ってジッターは劣化する。ジッターの増大が始まる点は約10μmとなっており、層間厚みが約10μm以下の場合、急激なジッターの劣化が起こる。従って、層間厚みの最小値は10μmが最適である。
図2を用いて、本発明の実施の形態に係る光記録媒体40の構成について説明する。本実施の形態では、製造上の厚みバラツキを考慮した上で、他の情報記録面又はディスク表面からの反射光の悪影響を解決するために、以下の条件(1)〜(3)が確保できるように4層ディスク(光記録媒体40)の構造を設定する。
条件(1):カバー層42の厚みt1と、第1中間層43〜第3中間層45の厚みt2〜t4の総和(t2+t3+t4)との差は、1μm以上確保する。すなわち、厚みt1,t2,t3,t4は、|t1−(t2+t3+t4)|≧1μmを満たす。
条件(2):厚みt1,t2,t3,t4のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であること。
条件(3):カバー層42の厚みt1と第1中間層43の厚みt2との和(t1+t2)と、第2中間層44の厚みt3と第3中間層45の厚みt4との和(t3+t4)との差は、1μm以上確保する。すなわち、厚みt1,t2,t3,t4は、|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μmを満たす。
他にも層間厚みの組み合わせがいくつかあるが、カバー層の厚みt1を第1中間層43〜第3中間層45の厚みt2〜t4の総和(t2+t3+t4)に近い値にする場合には考慮不要なので省略する。
図9は、本発明の実施の形態の変形例に係る光記録媒体の層構成を示す図である。図9に示す光記録媒体30は、3つの情報記録面を有している。図9に示すように、光記録媒体30は、光記録媒体30の表面30zに近い側から順に、第1情報記録面30a、第2情報記録面30b及び第3情報記録面30cを有する。光記録媒体30は、さらに、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34を有している。
カバー層32の厚みt1は、表面30zから第1情報記録面30aまでの間の基材の厚みを表し、第1中間層33の厚みt2は、第1情報記録面30aから第2情報記録面30bまでの間の基材の厚みを表し、第2中間層34の厚みt3は、第2情報記録面30bから第3情報記録面30cまでの間の基材の厚みを表している。
また、距離d1(≒t1)は、表面30zから第1情報記録面30aまでの間の距離を表し、距離d2(≒t1+t2)は、表面30zから第2情報記録面30bまでの間の距離を表し、距離d3(≒t1+t2+t3)は、表面30zから第3情報記録面30cまでの間の距離を表している。
上記の説明では4層ディスクの構造についての具体例を示しているが、図9のような3層ディスクであれば、以下の条件(1)及び(2)が確保できるように3層ディスク(光記録媒体30)の構造を設定する。
条件(1):カバー層32の厚みt1と、第1中間層33及び第2中間層34の厚みt2,t3の総和(t2+t3)との差は、1μm以上確保する。すなわち、光記録媒体30は、|t1−(t2+t3)|≧1μmを満たす。
条件(2):厚みt1,t2,t3のうちの任意の2値の互いの差は、いずれも1μm以上である。
さらに、(N−1)層ディスク(Nは4以上の自然数)について考えると、上記の条件は、一般的に、カバー層の厚みをt1及び第1中間層〜第N中間層の厚みをt2〜tNとしたとき、厚みtiから厚みtjまでの和と、厚みtkから厚みtmまでの和との差を1μm以上必ず設けるということになる。ただし、i、j、k及びmは、任意の自然数であり、i≦j<k≦m≦Nを満たす。なお、カバー層厚みとは、光記録媒体の表面から、当該表面に最も近い情報記録面までの距離である。これは、光記録媒体の表面から、当該表面に二番目に近い情報記録面までの距離をd2とし、光記録媒体の表面から、当該表面に三番目に近い情報記録面までの距離をd3とし、光記録媒体の表面から、当該表面に4番目に近い情報記録面までの距離をd4とすることと同じ意味である。
そしてまた、二つ目の課題に対応して、すべての中間層厚は、それぞれ10μm以上とする。
ここまでは、カバー層及び各中間層の屈折率が標準値と同じであり、カバー層及び各中間層の屈折率が全て同じ値であるとして考えてきたが、ここからは、カバー層及び各中間層の屈折率が標準値と異なる場合、又はカバー層及び各中間層の屈折率が層ごとに異なる場合について考える。
一つ目の課題の裏焦点課題が起こるのは、光検出器320上において、信号光と、他の情報記録面からの反射光との大きさ及び形状が似ているためである。屈折率が約1.60である時に、信号光の焦点位置と他の情報記録面からの反射光の焦点位置との差が、光記録媒体側において光軸方向に1μmより小さい場合、裏焦点を避けることが可能である。また、二つ目の課題の隣接する情報記録面によるクロストークが起こるのは、屈折率が約1.60である時に、信号光のデフォーカス量が隣接トラック上において10μmよりも小さい場合である。
いずれにしても、デフォーカス量が重要である。また、デフォーカス量は、信号光が焦点を結んでいる位置での他の情報記録面からの反射光の大きさ又は他の情報記録面からの反射光の虚像の大きさである。他の情報記録面からの反射光又は他の情報記録面からの反射光の虚像の半径をRDとする。半径の大きさがRDである他の情報記録面からの反射光が光検出器320上に射影されるので、この反射光の大きさに、干渉及びクロストークの大きさが依存する。この反射光の大きさは、層間厚みによる光の広がり量とも言える。屈折率が1.60と異なる場合に、裏焦点及びクロストークを回避するためには、デフォーカス量、すなわち、他の情報記録面からの反射光の大きさ又は他の情報記録面からの反射光の虚像の大きさがそれぞれ同等となる条件を考えればよいことに発明者らは気づいた。これは、層間厚みによる光の広がり量を基準として層間厚みを換算するともいえる。
光検出器の大きさは一定であるため、当該光検出器に入射する光の密度は、光の半径が大きくなるほど低下する。光の密度が低下すると、クロストークも低下する。したがって、クロストークの大きさは、反射光の大きさに依存することになる。
標準的な屈折率noとは異なる屈折率nrを有するとともに、形状的な厚みtrを有する層におけるデフォーカス(他の情報記録面からの反射光の大きさ又は他の情報記録面からの反射光の虚像の大きさ)が、標準的な屈折率noを有するとともに、形状的な厚みtoを有する層におけるデフォーカスと同じになる条件は、下記の(2)式及び(3)式で表される。
NA=nr・sin(θr)=no・sin(θo)・・・(2)
RD=tr・tan(θr)=to・tan(θo)・・・(3)
ここで、NAは、光記録媒体へ対物レンズ56によって光を絞り込むときの開口数である。例えば、NA=0.85等が用いられる。θr及びθoは、それぞれ屈折率nr及び屈折率noの物質中での光の収束角度である。RDは、他の情報記録面からの反射光又は他の情報記録面からの反射光の虚像の半径である。また、sin及びtanはそれぞれ正弦関数及び正接関数である。また、標準的な屈折率noは、例えば1.60であり、より好ましくは1.57である。
上記の(2)式より、収束角度θrは、下記の(4)式で表され、収束角度θoは、下記の(5)式で表される。
θr=arcsin(NA/nr)・・・(4)
θo=arcsin(NA/no)・・・(5)
ここで、arcsinは、逆正弦関数(inverse sine)である。
上記の(3)式より、厚みtoは、下記の(6)式で表され、厚みtrは、下記の(7)式で表される。
to=tr・tan(θr)/tan(θo)・・・(6)
tr=to・tan(θo)/tan(θr)・・・(7)
屈折率nrの層の形状的な厚みがtrの時に、屈折率noの層のいくらの厚みに相当するかを導出するためには(6)式を用いて、厚みtoを計算すればよい。
また、屈折率nrの層の形状的な厚みtrをいくらにすれば、屈折率noの層のいくらの厚みtoと同等の厚みになるかは、(7)式を用いて、厚みtrを計算すればよい。
(6)式の係数部分、つまり、tan(θr)/tan(θo)を屈折率nrの関数f(nr)として図10に示す。また、(7)式の係数部分、つまり、tan(θo)/tan(θr)は、関数f(nr)の逆数1/f(nr)である。tan(θo)/tan(θr)を屈折率nrの関数f(nr)の逆数1/f(nr)として図11に示す。
図10は、実際の屈折率における形状的な厚みを、標準の屈折率における厚みに換算する係数の屈折率依存性を示す説明図であり、図11は、標準の屈折率における厚みを、実際の屈折率における形状的な厚みに変換する係数の屈折率依存性を示す説明図である。
関数f(nr)及び関数f(nr)の逆数1/f(nr)は、いずれも滑らかな曲線であるので多項式によって表すことができる。発明者らは、3次式を用いれば0.1%程度の精度の近似多項式を得ることができることを見いだした。すなわち、関数f(nr)は、下記の(8)式に示す3次式で表され、関数f(nr)の逆数1/f(nr)は、下記の(9)式に示す3次式で表される。
f(n)=−1.088n3+6.1027n2−12.042n+9.1007・・・(8)
1/f(n)=0.1045n3−0.6096n2+2.0192n−1.0979・・・(9)
なお、式を簡単にするため、上記の(8)式及び(9)式では、屈折率“nr”を“n”と略して表記している。
図10に示すように、6点で表現されている関数f(nr)を近似しようとすると、通常5次式で近似することになる。しかしながら、次数が上がるほど、関数f(nr)が振動したり、計算が複雑になる。一方、次数が下がるほど、関数f(nr)の精度が低下してしまう。
本発明は、ディスクの厚み精度が0.1μm程度であることが必要十分条件であり、これ以上精度を高くしても意味がない。そのため、発明者らは、0.1μm程度の厚み精度を満たすためには3次式が必要十分条件であることを新たに認識し、上記の(8)式及び(9)式を導出した。
すなわち、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(8)式に示す関数f(n)と、厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。ただし、上記の(8)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
また、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNを、厚みt1,t2,・・・,tNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす厚みtr1,tr2,・・・,trNに変換することによって算出される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(9)式に示す関数f(n)の逆数と、厚みt1,t2,・・・,tNとの積によって算出される。ただし、上記の(9)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
一例として、上記の4層ディスク(光記録媒体40)のカバー層の厚みt1と、第1中間層の厚みt2〜第3中間層の厚みt4の和との関係の具体例を挙げる。各層の屈折率がすべて標準的な屈折率no、つまり1.60であり、カバー層の厚みt1が54μmであり、第1中間層の厚みt2が10μmであり、第2中間層の厚みt3が21μmであり、第3中間層の厚みt4が19μmである場合について考える。第1中間層の厚みt2から第3中間層の厚みt4の和は、50μmとなる。この場合、カバー層の厚みt1と、第1中間層の厚みt2から第3中間層の厚みt4の和との差は、4μmもあり、1μm以上を確保できている。
しかし、もしカバー層の屈折率nrが1.70である場合、カバー層の形状的な厚みtr1が同じ54μmであっても事情が異なる。屈折率nrである層の厚みtr1を、標準値の屈折率noである層の厚みt1に換算するには、(4)式及び(6)式、あるいは、図10から、厚みtr1に0.921を乗じればよいことがわかる。よって、屈折率noである層の厚みt1は、t1=0.921×tr1=49.7μmとなり、第1中間層の厚みt2から第3中間層の厚みt4までの和の50μmよりも小さくなってしまうことがわかる。
逆に、カバー層の厚みtr1と、第1中間層の厚みt2から第3中間層の厚みt4までの和との差を1μm以上確保し、かつ、カバー層の厚みtr1が51μm以上となるようにするためには、(5)式及び(7)式、あるいは、図11から、屈折率noである層の厚みt1に1.086を乗じればよいことがわかる。つまり、屈折率nrである層の厚みtr1は、tr1=51×1.086≒55.4μmとなる。これによって、屈折率nrが1.70である時は形状的なカバー層の厚みtr1を55.4μm以上にする必要があることがわかる。なお、上記の例は、一例であり、本願発明は、この値にとらわれるものではない。また、屈折率が図10又は図11に記載していない数値である場合、係数は、(8)式又は(9)式に屈折率を代入して算出すればよい。
なお、カバー層及び中間層の厚みは別の観点からも特定の条件を満たす必要がある。フォーカスジャンプの安定性を得るためには、カバー層及び中間層の厚みは標準的な値から一定の範囲にあることが望ましい。フォーカスジャンプとは、ある情報記録面から他の情報記録面へと焦点位置を変える動作である。フォーカスジャンプをする際に、行き先の情報記録面でのフォーカスエラー信号を安定して得るためには、フォーカスジャンプに先立ってコリメートレンズ53を動かすなどして行き先の情報記録面でのフォーカスエラー信号を良質にしておくことが望ましい。そのためには、情報記録面間の球面収差の差が一定範囲にあることが望ましい。
屈折率が異なれば、厚みが同じであっても球面収差の量が変わる、従って、中間層の厚みのねらい値又は許容範囲も、球面収差量が一定範囲に入るように設定することが望ましい。
また、再度裏焦点の観点に話を戻す。所定の層(カバー層又は中間層)の屈折率がnr(min)≦nr≦nr(max)である場合には、屈折率nrである層の厚みtrは、θr(min)=arcsin(NA/nr(min))及びθr(max)=arcsin(NA/nr(max))とした上で、同様にto=tr・tan(θr)/tan(θo)を用いて、中間層の厚み範囲を決定することもできる。
また、本発明の実施の形態における光記録媒体は、書き換え型、追記型及び再生専用型のいずれかのタイプに限定されるものではなく、各タイプの光記録媒体に適応することが可能である。
再度の説明となるが、先に述べた裏焦点による信号の乱れ及び信号品質劣化は、光検出器上において、信号光と、他の情報記録面からの反射光とが同じ大きさ、又は、同じ形状になったときに起こる。光検出器上において、信号光と、他の情報記録面からの反射光とが同じ大きさ、又は、同じ形状になるのは、見かけ上、別の言い方をすれば、反射光の虚像も含めて、焦点位置が同じになる場合である。信号光と、他の情報記録面からの反射光とは、光ディスクの透明基材中における光路が一部異なっている。光路が異なることによって生じるデフォーカス量が等しいときに、信号光の焦点位置と、他の情報記録面からの反射光の焦点位置とが同じに見える。基材厚みによるデフォーカス量が等しいと判断できるのは、収束光の広がり、すなわち収束光の半径が、信号光と、他の情報記録面からの反射光とで等しいときである。
従って、屈折率nrの形状的な厚みtrによって、裏焦点を回避できるか否かを判断するには、基材厚みによる光スポットの広がり半径Rを基に計算すればよい。ここで、形状的な厚みとは、材料の物質的な厚みを示し、物理的な厚みとも呼ぶことができる。
また、中間層厚が薄くなった場合に生じる層間干渉も、隣接層上スポット形状(半径R)が十分大きければ回避できる。そのため、やはり、屈折率nrの形状的な厚みtrによって、層間干渉を回避できるか否かを判断するにも、基材厚みによる光スポットの広がり半径Rを基に計算すればよい。
カバー層又は中間層の厚みをtとし、光スポットの開口数をNA(NA=0.85)とし、基材中の光の収束角度をθとすると、NA=n・sin(θ)であるので、θ=arcsin(NA/n)となる。ここで、arcsinは逆正弦関数である。また、光スポットの広がり半径Rは、R=t・tan(θ)によって計算できる。
標準的な屈折率をnoとし、標準的な屈折率noを有する層の厚みをtoとし、当該層の基材中の収束角度をθoとする。なお、標準的な屈折率noは、例えば1.60である。また、実際の光ディスクの透明基材の厚み部分を構成する層(対象層)を添え字“r”で表し、対象層の屈折率をnrとし、形状的な層厚をtrとし、基材中の収束角度をθrとする。このとき、収束角度θo及びθrは、θo=arcsin(NA/no)及びθr=arcsin(NA/nr)である。
また、光スポットの広がり半径Rは、R=tr・tan(θr)=to・tan(θo)であるので、標準的な屈折率noを有する層の厚みtoは、to=tr・(tan(θr)/tan(θo))=tr・f(nr)となる。
関数f(nr)は、形状上の層の厚みtrが、標準的な屈折率noを有する層ではいくらの厚みtoに相当するかを導くための係数であり、先に図10に示したとおりの関数である。
例えば、4層の情報記録面を持つ4層ディスクについて考える。4層ディスク(光記録媒体40)は、ディスクの表面(光が入射する面)40z側から順に、第1情報記録面40a、第2情報記録面40b、第3情報記録面40c及び第4情報記録面40dを有する。また、4層ディスクは、光の入射する表面40zから第1情報記録面40aまでの間に存在するカバー層42と、第1情報記録面40aから第2情報記録面40bまでの間に存在する第1中間層43と、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cまでの間に存在する第2中間層44と、第3情報記録面40cから第4情報記録面40dまでの間に存在する第3中間層45とを有する。
カバー層42の形状的な厚みをtr1とし、カバー層42の実際の屈折率をnr1とする。第1中間層43の形状的な厚みをtr2とし、第1中間層43の実際の屈折率をnr2とする。第2中間層44の形状的な厚みをtr3とし、第2中間層44の実際の屈折率をnr3とする。第3中間層45の形状的な厚みをtr4とし、第3中間層45の実際の屈折率をnr4とする。
デフォーカス量を基準として、カバー層42及び第1〜第3中間層43〜45の厚みtr1,tr2,tr3,tr4を、標準的な屈折率noを有するカバー層42及び第1〜第3中間層43〜45の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換すると、t1=tr1×f(nr1)、t2=tr2×f(nr2)、t3=tr3×f(nr3)、及びt4=tr4×f(nr4)となる。
通常、カバー層は、中間層より厚い。そのため、裏焦点を避けるためには、4層ディスクは、|t1−(t2+t3+t4)|≧1μm、|t2−t3|≧1μm、|t3−t4|≧1μm、及び|t2−t4|≧1μm、を全て満たさなければならない。
また、層間干渉を避けるためには、4層ディスクは、t2≧10μm、t3≧10μm、及びt4≧10μmもすべて満たさなければならない。すなわち、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45の厚みt1,t2,t3,t4は、それぞれ10μm以上である。
このように、光記録媒体40は、光が入射する光記録媒体40の表面40zに最も近い第1情報記録面40aと、表面40zに二番目に近い第2情報記録面40bと、表面40zに三番目に近い第3情報記録面40cと、表面40zに四番目に近い第4情報記録面40dと、所定の屈折率noとは異なる屈折率nr1を有し、表面40zから第1情報記録面40aまでの間に存在するカバー層42と、屈折率noとは異なる屈折率nr2を有し、第1情報記録面40aから第2情報記録面40bまでの間に存在する第1中間層43と、屈折率noとは異なる屈折率nr3を有し、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cまでの間に存在する第2中間層44と、屈折率noとは異なる屈折率nr4を有し、第3情報記録面40cから第4情報記録面40dまでの間に存在する第3中間層45とを具備する。
そして、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換される。
また、屈折率nrα及び厚みtrα(1≦α≦4(αは自然数))を有する層において発生するデフォーカス量と、屈折率no及び厚みtα(1≦α≦4(αは自然数))を有する層において発生するデフォーカス量とは等しい。
さらに、厚みt1、t2、t3、t4は、|t1−(t2+t3+t4)|≧1μm、厚みt1,t2,t3,t4のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であること、及び|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μmを満たす。
したがって、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4から変換された厚みt1,t2,t3,t4は、|t1−(t2+t3+t4)|≧1μm、厚みt1,t2,t3,t4のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であること、及び|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μmを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。
また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、屈折率nrαを有する層の厚みがtrα(1≦α≦4(αは自然数))であり、屈折率nrαを有する層の中での光の収束角度がθrα(1≦α≦4(αは自然数))であり、屈折率noを有する層の厚みがtα(1≦α≦4(αは自然数))であり、屈折率noを有する層の中での光の収束角度がθoであるときに、厚みtrαは、下記の(10)式に基づいて厚みtαに変換される。
tα=trα・(tan(θrα)/tan(θo))・・・(10)
また、屈折率noを有する層において発生する球面収差量が所定の許容範囲内となる層の厚みtαの範囲は、屈折率nrαを有する層の厚みtrαの範囲に変換され、厚みtrαは、変換後の厚みtrαの範囲内に含まれることが好ましい。
一般的に光スポットの性能は、規定されるマーシャルクライテリアの範囲内に収まる必要があり、マーシャルクライテリアの範囲を超えると信号が激しく劣化してしまう。そのため、屈折率noを有する層において発生する球面収差量が、マーシャルクライテリアの範囲である70mλ以下におさまるように、各条件の範囲が規定される。
なお、本実施の形態において、屈折率nr1,nr2,nr3,nr4は、それぞれ屈折率noと異なっているが、本発明は特にこれに限定されず、屈折率nr1,nr2,nr3,nr4は、それぞれ屈折率noと同じであってもよい。この場合、屈折率の値によらず光記録媒体の製造方法を統一することができる。
さらに、別の例として、3層の記録層を持つ3層ディスクについて考える。3層ディスク(光記録媒体30)は、ディスクの表面(光が入射する面)30z側から順に、第1情報記録面30a、第2情報記録面30b及び第3情報記録面30cを有する。また、3層ディスクは、光の入射する表面30zから第1情報記録面30aまでの間に存在するカバー層32と、第1情報記録面30aから第2情報記録面30bまでの間に存在する第1中間層33と、第2情報記録面30bから第3情報記録面30cまでの間に存在する第2中間層34とを有する。
カバー層32の形状的な厚みをtr1とし、カバー層32の実際の屈折率をnr1とする。第1中間層33の形状的な厚みをtr2とし、第1中間層33の実際の屈折率をnr2とする。第2中間層34の形状的な厚みをtr3とし、第2中間層34の実際の屈折率をnr3とする。
デフォーカス量を基準として、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の厚みtr1,tr2,tr3を、標準的な屈折率noを有するカバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換すると、t1=tr1×f(nr1)、t2=tr2×f(nr2)、及びt3=tr3×f(nr3)となる。
通常、カバー層は、中間層より厚い。そのため、裏焦点を避けるためには、3層ディスクは、|t1−(t2+t3)|≧1μm、及び|t2−t3|≧1μmを全て満たさなければならない。
また、層間干渉を避けるためには、3層ディスクは、t2≧10μm、及びt3≧10μmもすべて満たさなければならない。すなわち、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の厚みt1,t2,t3は、それぞれ10μm以上である。
このように、光記録媒体30は、光が入射する光記録媒体30の表面30zに最も近い第1情報記録面30aと、表面30zに二番目に近い第2情報記録面30bと、表面30zに三番目に近い第3情報記録面30cと、所定の屈折率noとは異なる屈折率nr1を有し、表面30zから第1情報記録面30aまでの間に存在するカバー層32と、屈折率noとは異なる屈折率nr2を有し、第1情報記録面30aから第2情報記録面30bまでの間に存在する第1中間層33と、屈折率noとは異なる屈折率nr3を有し、第2情報記録面30bから第3情報記録面30cまでの間に存在する第2中間層34とを具備する。
そして、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の形状的な厚みtr1,tr2,tr3は、屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換される。
また、屈折率nrα及び厚みtrα(1≦α≦3(αは自然数))を有する層において発生するデフォーカス量と、屈折率no及び厚みtα(1≦α≦3(αは自然数))を有する層において発生するデフォーカス量とは等しい。
さらに、厚みt1,t2,t3が、|t1−(t2+t3)|≧1μm、及び厚みt1,t2,t3のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であることを満たす。
したがって、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の形状的な厚みtr1,tr2,tr3から変換された厚みt1,t2,t3は、|t1−(t2+t3)|≧1μm、及び厚みt1,t2,t3のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であることを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。
また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、屈折率nrαを有する層の厚みがtrα(1≦α≦3(αは自然数))であり、屈折率nrαを有する層の中での光の収束角度がθrα(1≦α≦3(αは自然数))であり、屈折率noを有する層の厚みがtα(1≦α≦3(αは自然数))であり、屈折率noを有する層の中での光の収束角度がθoであるときに、厚みtrαは、下記の(11)式に基づいて厚みtαに変換される。
tα=trα・(tan(θrα)/tan(θo))・・・(11)
また、3層ディスクにおいても、屈折率noを有する層において発生する球面収差量が所定の許容範囲内となる層の厚みtαの範囲は、屈折率nrαを有する層の厚みtrαの範囲に変換され、厚みtrαは、変換後の厚みtrαの範囲内に含まれることが好ましい。
なお、表面又は各情報記録面間がさらに異なる屈折率を有する複数の材料層から構成される場合、まず、各々の材料層の厚みを標準的な屈折率ではいくらの厚みに相当するかを算出する。すなわち、形状的な厚みに上記関数値fが乗算されることにより、デフォーカス量を基準として、屈折率nrを有する材料層の実際の厚みが、標準的な屈折率noを有する材料層の厚みにそれぞれ変換される。そして、変換後の各材料層の厚みが積算される。
例えば、形状的な厚みがtr1であるカバー層が、さらに、厚みがtr11であり、屈折率がnr11である第1カバー層、厚みがtr12であり、屈折率がnr12である第2カバー層、・・・、及び、厚みがtr1Nであり、屈折率がnr1Nである第Nカバー層から成り立っている場合、デフォーカス量を基準としてカバー層の形状的な厚みを標準的な屈折率noを有するカバー層の厚みt1に変換すると、t1=Σtr1k×f(nrk)となる。ここで、Σはkについて1からNまでの積算を表す。
高い開口数(NA)の対物レンズを用いる場合、光が通る透明基材の厚みに依存して急峻に球面収差が変化する。球面収差が大きい場合、焦点制御(フォーカス制御)を行う際の指標となる焦点誤差(フォーカスエラー)信号の感度が設計と異なったり、信号振幅が減少したりするなどのフォーカスエラー信号の劣化が起こる。
従って、焦点制御が行われていない状態から焦点制御を始めようとする場合、又は、フォーカスジャンプの安定性を得る場合には、あらかじめ、焦点制御を行う層における球面収差補正を行うことが望ましい。そのためには、表面から情報記録面までの間の厚み及び中間層の厚みは、標準的な値から一定の範囲内にあることが望ましい。
なお、フォーカスジャンプとは、ある情報記録面から他の情報記録面へと焦点位置を変える動作である。標準的な値又は一定の範囲は、上記の理由から球面収差を基準として考える必要がある。従って、屈折率が標準的な値とは異なる場合、形状的な厚みは屈折率に応じて変えることになる。
そこで、多層光ディスクの層厚設計は例えば下記のようにすればよい。まず、透明基材を構成する材料の屈折率を把握する。次に、得られた屈折率に応じて、球面収差を基準として、表面から情報記録面までの間の形状的な厚み及び中間層の形状的な厚みを決める。製造上、誤差を0にすることはできないので、誤差の範囲を含めて形状的な厚みを決める。表面から情報記録面までの間の形状的な厚み及び中間層の形状的な厚みは、数値テーブル又は表を用いて決定しても良い。あるいは、球面収差は厚みと比例関係にある。そのため、表面から情報記録面までの間の形状的な厚み及び中間層の形状的な厚みは、屈折率に応じた変換係数g(nr)を波長又は開口数に応じて計算して、計算した変換係数g(nr)を用いて決定しても良い。
例えば、波長405nmの青色光が、屈折率が1.60であり、厚みが0.1mmである基材を通過して情報記録面に収束する。また、0.85の開口数を有する対物レンズは、波長405nmの青色光を無収差で収束させる。そして、基材の屈折率を換えたときに収差が最小になる基材の厚みts(nr)(mm)を求める。すると、変換係数g(nr)は、g(nr)=ts(nr)/0.1となる。
図12は、球面収差に基づいて、実際の屈折率における形状的な厚みを、標準の屈折率における厚みに換算する係数の屈折率依存性を示す説明図である。図12は、発明者らが導出した変換係数g(nr)を示している。また、変換係数g(nr)及び変換係数g(nr)の逆数(1/g(nr))は、いずれも滑らかな曲線であるので多項式によって表すことができる。発明者らは、3次式を用いれば0.1%程度の精度の近似多項式を得ることができることを見いだした。すなわち、関数g(nr)は、下記の(12)式に示す3次式で表される。
g(n)=−1.1111n3+5.8143n2−9.8808n+6.476・・・(12)
なお、式を簡単にするため、上記の(12)式では屈折率“nr”を“n”と略して表記している。
基材厚と屈折率との適切な関係については、特開2004−288371号公報及び特開2004−259439号公報にも開示されている。しかしながら、特開2004−288371号公報及び特開2004−259439号公報における基材厚と屈折率との関係は、(12)式とは異なっている。そのため、特開2004−288371号公報及び特開2004−259439号公報における基材厚と屈折率との関係は、図12に示した球面収差を一定にする基材厚と屈折率との関係を正確に表していない。本実施の形態では、近似計算を用いることなく、実際に光線を追跡することによって3次球面収差が一定になる基材厚みを屈折率に応じて求めている。その結果、本実施の形態では、基材厚と屈折率との正確な関係を明らかにすることに成功した。
カバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲は、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定される。そして、カバー層の厚み及び第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲を、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、厚みt1,t2,・・・,tNと、上記の(12)式に示す関数g(n)との積によって算出される。ただし、上記の(12)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
こうして求めた表面から情報記録面までの間の形状的な厚み及び中間層の形状的な厚みに基づいて、カバー層の形状的な厚みもわかるので、これらの厚みを、先に述べたようにデフォーカス量を基準として標準的な屈折率noを有する層の厚みにそれぞれ変換する。あるいは、実際に作製した光ディスクのカバー層及び中間層の形状的な厚みを求める。変換後の各層の厚みを用いて、先に述べた裏焦点及び層間干渉が回避できているか否かが確認され、設計範囲の可否が判断されたり、完成した光ディスクの良否が判断される。
なお、表面から情報記録面までの間の厚みは、カバー層の厚みと、中間層の厚みとの和から求めることができる。3層ディスクであれば、表面から第1情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1であり、表面から第2情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2であり、表面から第3情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2+tr3である。
4層ディスクの場合、表面から第1情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1であり、表面から第2情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2であり、表面から第3情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2+tr3であり、表面から第4情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2+tr3+tr4である。
本実施の形態の光記録媒体によれば、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止するとともに、各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、このように、屈折率に応じて光記録媒体の厚さを設計する指針を明らかにすることにより、具体的に製品を製造する指針を明確にすることができる。
このように、4つの情報記録面を有する光記録媒体40のカバー層42、第1の中間層43、第2の中間層44及び第3の中間層45の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、球面収差を基準として、屈折率nr1,nr2,nr3,nr4に応じて決定される。そして、厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換される。また、厚みt1,t2,t3,t4の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、厚みt1,t2,t3,t4と、上記の(12)式に示す関数g(n)との積によって算出される。その後、再度、厚みt1,t2,t3,t4が、上記の(8)式に示す関数f(n)と、算出された厚みtr1,tr2,tr3,tr4との積によって算出される。再度算出された厚みt1,t2,t3,t4は、下記の(13)式を満たす。
|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μm・・・(13)
また、3つの情報記録面を有する光記録媒体30のカバー層32、第1の中間層33及び第2の中間層34の形状的な厚みtr1,tr2,tr3は、球面収差を基準として、屈折率nr1,nr2,nr3に応じて決定される。そして、厚みtr1,tr2,tr3は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換される。また、厚みt1,t2,t3の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,tr3は、厚みt1,t2,t3と、上記の(12)式に示す関数g(n)との積によって算出される。その後、再度、厚みt1,t2,t3が、上記の(8)式に示す関数f(n)と、算出された厚みtr1,tr2,tr3との積によって算出される。再度算出された厚みt1,t2,t3は、下記の(14)式を満たす。
|t1−(t2+t3)|≧1μm・・・(14)
次に、フォーカスジャンプを行う光情報装置の一例について説明する。
図13は、本発明の実施の形態に係る光情報装置の概略構成を示す図である。光情報装置150は、光記録媒体40に照射するレーザ光の光スポットを、所定の情報記録面から他の情報記録面に移動させることにより、複数の情報記録面から情報を再生又は記録する。
また、光情報装置150は、複数の情報記録面のうち所定の情報記録面にレーザ光の光スポットを収束させ、所定の情報記録面から情報を再生する。そして、所定の情報記録面とは異なる他の情報記録面から情報を再生する場合、光情報装置150は、レーザ光の光スポットを所定の情報記録面から他の情報記録面に移動させ、他の情報記録面から情報を再生する。
光情報装置150は、駆動装置151、ターンテーブル152、電気回路153、クランパー154、モータ155及び光ヘッド装置201を備える。光ヘッド装置201は、図1に示す光ヘッド装置201と同一の構成であり、光記録媒体40は、図2に示す光記録媒体40と同一の構成である。
光記録媒体40は、ターンテーブル152に載置され、クランパー154により固定される。モータ155は、ターンテーブル152を回転させることにより、光記録媒体40を回転させる。駆動装置151は、光記録媒体40の所望の情報が存在するトラックまで、光ヘッド装置201を粗動する。
光ヘッド装置201は、光記録媒体に照射するレーザ光の焦点位置を、所定の情報記録面から他の情報記録面に移動させることにより、複数の情報記録面から情報を再生又は記録する。
光ヘッド装置201は、光記録媒体40との位置関係に対応して、フォーカスエラー(焦点誤差)信号及びトラッキングエラー信号を電気回路153へ送る。電気回路153は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に対応して、対物レンズ56を微動させるための信号を光ヘッド装置201へ送る。電気回路153からの信号に基づいて、光ヘッド装置201は、光記録媒体40に対してフォーカス制御及びトラッキング制御を行う。光ヘッド装置201は、光記録媒体40から情報を読み出し、光記録媒体40に情報を書き込み(記録)、又は、光記録媒体40から情報を消去する。
電気回路153は、光ヘッド装置201から得られる信号に基づいて、モータ155及び光ヘッド装置201を制御及び駆動する。また、電気回路153は、フォーカスジャンプの手順を主に制御する。すなわち、電気回路153は、焦点位置を移動させる前に、移動先の他の情報記録面において発生する球面収差を補正するように、光ヘッド装置201を制御する。なお、光ヘッド装置201における具体的な球面収差補正方法については、既に説明した通りである。
本実施の形態の光情報装置150は、上述した光記録媒体40に対して、フォーカスジャンプを行う前にコリメートレンズ53を動かすことにより、ジャンプする先の情報記録面において発生する球面収差を補正し、その後、焦点位置を移動させる。したがって、行き先の情報記録面でのフォーカスエラー信号が良質になるので、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る光記録媒体の製造方法は、(N−1)個(Nは4以上の自然数)の情報記録面を有する光記録媒体の製造方法であって、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する前記光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNは、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換され、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とし(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、下記の(15)式に示す関数f(n)と、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
f(n)=−1.088n3+6.1027n2−12.042n+9.1007・・・(15)
ただし、上記の(15)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(15)式に示す関数f(n)と、厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
したがって、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFが1μm以上とされるので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体の製造方法は、(N−1)個(Nは4以上の自然数)の情報記録面を有する光記録媒体の製造方法であって、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する前記光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNを、前記厚みt1,t2,・・・,tNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす前記厚みtr1,tr2,・・・,trNに変換することによって算出され、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とし(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、下記の(16)式に示す関数f(n)の逆数1/f(n)と、前記厚みt1,t2,・・・,tNとの積によって算出される。
1/f(n)=0.1045n3−0.6096n2+2.0192n−1.0979・・・(16)
ただし、上記の(16)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNを、厚みt1,t2,・・・,tNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす厚みtr1,tr2,・・・,trNに変換することによって算出される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(16)式に示す関数f(n)の逆数と、厚みt1,t2,・・・,tNとの積によって算出される。
したがって、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFが1μm以上とされるので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記カバー層及び前記第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲は、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定されることが好ましい。
この構成によれば、カバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲は、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定されるので、厚みtr1,tr2,・・・,trNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層における球面収差を抑制することができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記カバー層の厚み及び前記第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲を、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、前記厚みt1,t2,・・・,tNと、下記の(17)式に示す関数g(n)との積によって算出されることが好ましい。
g(n)=−1.1111n3+5.8143n2−9.8808n+6.476・・・(17)
ただし、上記の(17)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、カバー層の厚み及び第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲を、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値が、厚みt1,t2,・・・,tNと、上記の(17)式に示す関数g(n)との積によって算出される。
したがって、球面収差を抑制することができる厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値を容易に算出することができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記屈折率noは、1.60であることが好ましい。
この構成によれば、カバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,・・・,trNは、1.60の屈折率を有する場合の各層の厚みt1,t2,・・・,tNにそれぞれ変換することができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、それぞれ10μm以上であることが好ましい。
この構成によれば、厚みt1,t2,・・・,tNを、それぞれ10μm以上とすることにより、隣接する情報記録面からのクロストークの影響を軽減することができ、各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体は、(N−1)個(Nは4以上の自然数)の情報記録面を有する光記録媒体であって、光が入射する前記光記録媒体の表面から、前記表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、第1〜第Nの情報記録面の各情報記録面の間に存在する第1〜第(N−1)の中間層とを備え、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有する前記カバー層及び前記第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する前記光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNは、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換され、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とし(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、下記の(18)式に示す関数f(n)と、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
f(n)=−1.088n3+6.1027n2−12.042n+9.1007・・・(18)
ただし、上記の(18)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、光記録媒体は、光が入射する光記録媒体の表面から、表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、第1〜第Nの情報記録面の各情報記録面の間に存在する第1〜第(N−1)の中間層とを備える。屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(18)式に示す関数f(n)と、厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
したがって、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFが1μm以上とされるので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体は、複数の情報記録面を有する光記録媒体であって、屈折率nr1を有し、光が入射する前記光記録媒体の表面から、前記表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、屈折率nr2を有し、前記第1の情報記録面から、前記表面に二番目に近い第2の情報記録面までの間に存在する第1の中間層と、屈折率nr3を有し、前記第2の情報記録面から、前記表面に三番目に近い第3の情報記録面までの間に存在する第2の中間層と、屈折率nr4を有し、前記第3の情報記録面から、前記表面に四番目に近い第4の情報記録面までの間に存在する第3の中間層とを備え、前記カバー層、前記第1の中間層、前記第2の中間層及び前記第3の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、球面収差を基準として、前記屈折率nr1,nr2,nr3,nr4に応じて決定され、前記厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換され、前記厚みt1,t2,t3,t4の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、前記厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、前記厚みt1,t2,t3,t4と、下記の(19)式に示す関数g(n)との積によって算出され、再度、前記厚みt1,t2,t3,t4が、下記の(20)式に示す関数f(n)と、前記算出された厚みtr1,tr2,tr3,tr4との積によって算出され、再度算出された前記厚みt1,t2,t3,t4は、下記の(21)式を満たす。
g(n)=−1.1111nr3+5.8143nr2−9.8808nr+6.476・・・(19)
f(n)=−1.088nr3+6.1027nr2−12.042nr+9.1007・・・(20)
|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μm・・・(21)
ただし、上記の(19)及び(20)式において、n=nr1,nr2,nr3,nr4。
この構成によれば、光記録媒体は、屈折率nr1を有し、光が入射する光記録媒体の表面から、表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、屈折率nr2を有し、第1の情報記録面から、表面に二番目に近い第2の情報記録面までの間に存在する第1の中間層と、屈折率nr3を有し、第2の情報記録面から、表面に三番目に近い第3の情報記録面までの間に存在する第2の中間層と、屈折率nr4を有し、第3の情報記録面から、表面に四番目に近い第4の情報記録面までの間に存在する第3の中間層とを備える。そして、カバー層、第1の中間層、第2の中間層及び第3の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、球面収差を基準として、屈折率nr1,nr2,nr3,nr4に応じて決定される。また、厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換される。厚みt1,t2,t3,t4の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、厚みt1,t2,t3,t4と、上記の(19)式に示す関数g(n)との積によって算出される。その後、再度、厚みt1,t2,t3,t4が、上記の(20)式に示す関数f(n)と、算出された厚みtr1,tr2,tr3,tr4との積によって算出され、再度算出された厚みt1,t2,t3,t4は、上記の(21)式を満たす。
したがって、カバー層、第1の中間層、第2の中間層及び第3の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4から変換された厚みt1,t2,t3,t4は、|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μmを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体は、複数の情報記録面を有する光記録媒体であって、屈折率nr1を有し、光が入射する前記光記録媒体の表面から、前記表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、屈折率nr2を有し、前記第1の情報記録面から、前記表面に二番目に近い第2の情報記録面までの間に存在する第1の中間層と、屈折率nr3を有し、前記第2の情報記録面から、前記表面に三番目に近い第3の情報記録面までの間に存在する第2の中間層とを備え、前記カバー層、前記第1の中間層及び前記第2の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3は、球面収差を基準として、前記屈折率nr1,nr2,nr3に応じて決定され、前記厚みtr1,tr2,tr3は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換され、前記厚みt1,t2,t3の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、前記厚みtr1,tr2,tr3は、前記厚みt1,t2,t3と、下記の(22)式に示す関数g(n)との積によって算出され、再度、前記厚みt1,t2,t3が、下記の(23)式に示す関数f(n)と、前記算出された厚みtr1,tr2,tr3との積によって算出され、再度算出された前記厚みt1,t2,t3は、下記の(24)式を満たす。
g(n)=−1.1111nr3+5.8143nr2−9.8808nr+6.476・・・(22)
f(n)=−1.088nr3+6.1027nr2−12.042nr+9.1007・・・(23)
|t1−(t2+t3)|≧1μm・・・(24)
ただし、上記の(22)及び(23)式において、n=nr1,nr2,nr3。
この構成によれば、光記録媒体は、屈折率nr1を有し、光が入射する光記録媒体の表面から、表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、屈折率nr2を有し、第1の情報記録面から、表面に二番目に近い第2の情報記録面までの間に存在する第1の中間層と、屈折率nr3を有し、第2の情報記録面から、表面に三番目に近い第3の情報記録面までの間に存在する第2の中間層とを備える。そして、カバー層、第1の中間層及び第2の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3は、球面収差を基準として、屈折率nr1,nr2,nr3に応じて決定される。また、厚みtr1,tr2,tr3は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換される。厚みt1,t2,t3の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,tr3は、厚みt1,t2,t3と、上記の(22)式に示す関数g(n)との積によって算出される。その後、再度、厚みt1,t2,t3が、上記の(23)式に示す関数f(n)と、算出された厚みtr1,tr2,tr3との積によって算出され、再度算出された厚みt1,t2,t3は、上記の(24)式を満たす。
したがって、カバー層、第1の中間層及び第2の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3から変換された厚みt1,t2,t3は、|t1−(t2+t3)|≧1μmを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光情報装置は、上記のいずれかに記載の光記録媒体から情報を再生又は記録する光情報装置であって、前記光情報装置は、前記光記録媒体に照射するレーザ光の光スポットを、所定の情報記録面から他の情報記録面に移動させることにより、複数の情報記録面から情報を再生又は記録する。この構成によれば、光記録媒体に照射するレーザ光の光スポットが、所定の情報記録面から他の情報記録面に移動されることにより、複数の情報記録面から情報が再生又は記録される。
本発明の他の局面に係る情報再生方法は、上記のいずれかに記載の光記録媒体から情報を再生する情報再生方法であって、前記情報再生方法は、複数の情報記録面のうち所定の情報記録面にレーザ光の光スポットを収束させるステップと、前記所定の情報記録面から情報を再生するステップと、前記所定の情報記録面とは異なる他の情報記録面から情報を再生する場合、前記レーザ光の光スポットを前記所定の情報記録面から前記他の情報記録面に移動させ、前記他の情報記録面から情報を再生するステップとを含む。
この構成によれば、複数の情報記録面のうち所定の情報記録面にレーザ光の光スポットが収束され、所定の情報記録面から情報が再生される。また、所定の情報記録面とは異なる他の情報記録面から情報が再生される場合、レーザ光の光スポットが所定の情報記録面から他の情報記録面に移動され、他の情報記録面から情報が再生される。
なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。
本発明に係る多層光ディスク(光記録媒体)、光記録媒体の製造方法、光情報装置及び情報再生方法は、カバー層及び中間層の屈折率が標準値と異なる場合であっても、任意の情報記録面の再生時に他の情報記録面からの反射光の影響を最小限に抑えることにより、光ヘッド装置でのサーボ信号及び再生信号への影響を低減することができ、照射された光によって情報が記録又は再生される光記録媒体、当該光記録媒体の製造方法、当該光記録媒体に情報を記録又は再生する光情報装置、及び当該光記録媒体から情報を再生する情報再生方法に有用である。
これにより、品質の良い再生信号が得られ、大容量で、かつ、既存光記録媒体との互換性を確保しやすい光記録媒体を提供することができる。
本発明は、照射された光によって情報が記録又は再生される光記録媒体、当該光記録媒体の製造方法、当該光記録媒体に情報を記録又は再生する光情報装置、及び当該光記録媒体から情報を再生する情報再生方法に関し、特に、3層以上の情報記録面を備える光記録媒体の層間隔の構造に関するものである。
高密度及び大容量の光情報記録媒体として市販されているものでDVDやBD(Blu−rayディスク)と呼ばれる光ディスクがある。このような光ディスクは画像、音楽及びコンピュータデータを記録する記録媒体として、最近急速に普及しつつある。また、記録容量をさらに増すために、特許文献1及び特許文献2に示すような複数の記録層を有する光ディスクも提案されている。
図14は、従来の光記録媒体及び光ヘッド装置の構成を示す図である。光記録媒体401は、光記録媒体401の表面401zに最も近い第1情報記録面401aと、光記録媒体401の表面401zに二番目に近い第2情報記録面401bと、光記録媒体401の表面401zに三番目に近い第3情報記録面401cと、光記録媒体401の表面401zから最も遠い第4情報記録面401dとを含む。
光源1から出射された発散性のビーム70は、コリメートレンズ53を透過し、偏光ビームスプリッタ52に入射する。偏光ビームスプリッタ52に入射したビーム70は、偏光ビームスプリッタ52を透過し、4分の1波長板54を透過して円偏光に変換される。その後、ビーム70は、対物レンズ56で収束ビームに変換され、光記録媒体401の透明基板を透過し、光記録媒体401内部に形成された第1情報記録面401a、第2情報記録面401b、第3情報記録面401c及び第4情報記録面401dのいずれかの上に集光される。
対物レンズ56は、第1情報記録面401aと第4情報記録面401dとの中間の深さ位置で球面収差が0になる様に設計されている。球面収差補正部93は、コリメートレンズ53の位置を光軸方向に移動させる。これにより、第1〜第4情報記録面401a〜401dに集光する場合に発生する球面収差は除去される。
アパーチャ55は、対物レンズ56の開口を制限し、対物レンズ56の開口数NAを0.85としている。第4情報記録面401dで反射されたビーム70は、対物レンズ56及び4分の1波長板54を透過して往路とは90度異なる直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ52で反射される。偏光ビームスプリッタ52で反射されたビーム70は、集光レンズ59を透過して収束光に変換され、シリンドリカルレンズ57を経て、光検出器320に入射する。ビーム70には、シリンドリカルレンズ57を透過する際、非点収差が付与される。
光検出器320は、図示しない4つの受光部を有し、それぞれの受光部は、受光した光量に応じた電流信号を出力する。これら電流信号に基づいて、非点収差法によるフォーカス誤差(以下FEとする)信号、プッシュプル法によるトラッキング誤差(以下TEとする)信号、及び光記録媒体401に記録された情報(以下RFとする)信号が生成される。FE信号及びTE信号は、所望のレベルに増幅されるとともに、位相補償が行われた後、アクチュエータ91及び92に供給されて、フォーカス制御及びトラッキング制御が行われる。
ここで、仮に、光記録媒体401の表面401zと第1情報記録面401aとの間の厚みt1、第1情報記録面401aと第2情報記録面401bとの間の厚みt2、第2情報記録面401bと第3情報記録面401cとの間の厚みt3、及び第3情報記録面401cと第4情報記録面401dとの間の厚みt4が全て同じ長さである場合には以下の様な問題が発生する。
例えば、第4情報記録面401dに情報を記録又は再生するために、第4情報記録面401dにビーム70を集光したとき、ビーム70の一部は、第3情報記録面401cで反射する。第3情報記録面401cから第4情報記録面401dまでの距離と、第3情報記録面401cから第2情報記録面401bまでの距離とは同じである。そのため、第3情報記録面401cで反射したビーム70の一部は、第2情報記録面401bの裏側に結像し、第2情報記録面401bの裏側からの反射光は、再び第3情報記録面401cで反射する。その結果、第3情報記録面401c、第2情報記録面401bの裏側及び第3情報記録面401cで反射した反射光が、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に混入してしまう。
さらに、第2情報記録面401bから第4情報記録面401dまでの距離と、第2情報記録面401bから光記録媒体401の表面401zまでの距離とも同じである。そのため、第2情報記録面401bで反射したビーム70の一部は、光記録媒体401の表面401zの裏側に結像し、表面401zの裏側からの反射光は、再び第2情報記録面401bで反射する。その結果、第2情報記録面401b、表面401zの裏側及び第2情報記録面401bで反射した反射光が、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に混入してしまう。
この様に、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に、他面の裏側に結像した反射光が重なって混入し、情報の記録又は再生に支障をきたすという問題がある。他面の裏側に結像した反射光が混入した光は干渉性が高く、受光素子上で干渉による明暗分布を形成する。さらに、この明暗分布は、光ディスク面内の中間層の微少な厚みばらつきによる他面反射光の位相差変化に応じて変動するため、サーボ信号及び再生信号の品質を著しく低下させてしまう。以後、本明細書では、上記の問題を裏焦点課題と呼ぶ。
裏焦点課題を解決するために、特許文献1には、各情報記録面の間の層間距離を光記録媒体401の表面401zから順番に徐々に長くなる様に設定し、本来読み出すべき第4情報記録面401dにビーム70を集光させたときに、同時に、ビーム70の一部が第2情報記録面401bの裏側及び表面401zの裏側に結像しないようにする方法が開示されている。ここで、厚みt1〜t4はそれぞれ±10μmの製造ばらつきを有している。厚みt1〜t4は、各々がばらついた場合にも異なる距離になる様に設定する必要がある。そのため、厚みt1〜t4の距離の差は例えば20μmに設定される。この場合、厚みt1〜t4は、それぞれ40μm、60μm、80μm及び100μmとなり、第1情報記録面401aから第4情報記録面401dまでの総層間厚みt(=t2+t3+t4)は240μmである。
また、表面401zから第1情報記録面401aまでのカバー層の厚みと、第4情報記録面401dから第1情報記録面401aまでの厚みとが等しい場合、第4情報記録面401dで反射した光は表面401zで焦点を結び、表面401zで反射する。表面401zを反射した光は、再び第4情報記録面401dで反射した後に光検出器320へ導かれる。このような表面401zの裏側で結像する光束は、他の情報記録面の裏側で結像する光束のようなピット又はマークに関する情報を有していない。しかしながら、情報記録面の数が多い場合、情報記録面から戻ってくる光の光量は少なくなり、相対的に表面401zの反射率は高くなる。そのため、表面401zの裏側で反射した光束と、記録又は再生の対象となる情報記録面を反射した光束との干渉は、他の情報記録面の裏側で反射した光束と同じように発生し、サーボ信号及び再生信号の品質を著しく低下させるおそれがある。
このような課題を考慮し、特許文献2では、光ディスクの情報記録層(情報記録面)の間隔を提案している。この特許文献2では、下記の構造を開示している。
光記録媒体は、4つの情報記録面を有し、光記録媒体の表面に近い側から第1情報記録面〜第4情報記録面としている。表面から第1情報記録面までの距離は47μm以下である。第1情報記録面から第4情報記録面までの各情報記録面間の中間層の厚みは、11〜15μmと、16〜21μmと、22μm以上との組み合わせからなる。表面から第4情報記録面までの距離は100μmである。表面から第1情報記録面までの距離は47μm以下であり、さらに表面から第4情報記録面までの距離は100μmである。
特開2001−155380号公報
特開2008−117513号公報
光ディスクシステムでは、表面から入射し、情報記録面において反射した光が検出されるので、光が通過する表面から情報記録面までの透明材料の屈折率も、サーボ信号及び再生信号の品質に影響を与える。しかしながら、特許文献1及び特許文献2において示されたディスク構造には、屈折率についての考察及び記述がないため、透明材料の屈折率によるサーボ信号及び再生信号の品質への影響が一切検討されていない。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる光記録媒体の製造方法、光記録媒体、光情報装置及び情報再生方法を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る光記録媒体の製造方法は、(N−1)個(Nは4以上の自然数)の情報記録面を有する光記録媒体の製造方法であって、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する前記光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNは、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換され、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とし(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、下記の(1)式に示す関数f(n)と、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
f(n)=−1.088n3+6.1027n2−12.042n+9.1007・・・(1)
ただし、上記の(1)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(1)式に示す関数f(n)と、厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
本発明によれば、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFが1μm以上とされるので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の実施の形態に係る光記録媒体及び光ヘッド装置の概略構成を示す図である。
本発明の実施の形態に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第4情報記録面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面及び第2情報記録面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第2情報記録面及び表面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面、第1情報記録面及び第2情報記録面からの反射光を示す図である。
層間厚みの差とFS信号振幅との関係を示す図である。
各情報記録面の反射率がほぼ等しい光記録媒体における層間厚みとジッターとの関係を示す図である。
本発明の実施の形態の変形例に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
実際の屈折率における形状的な厚みを、標準の屈折率における厚みに換算する係数の屈折率依存性を示す説明図である。
標準の屈折率における厚みを、実際の屈折率における形状的な厚みに変換する係数の屈折率依存性を示す説明図である。
球面収差に基づいて、実際の屈折率における形状的な厚みを、標準の屈折率における厚みに換算する係数の屈折率依存性を示す説明図である。
本発明の実施の形態に係る光情報装置の概略構成を示す図である。
従来の光記録媒体及び光ヘッド装置の構成を示す図である。
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
以下、図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態に係る光記録媒体について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体及び光ヘッド装置の概略構成を示す図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体の層構成を示す図である。光ヘッド装置201は、波長λが405nmの青色のレーザ光を光記録媒体40に照射し、光記録媒体40に記録された信号を再生する。なお、図1に示す光ヘッド装置201の構成及び動作は、図14に示す光ヘッド装置の構成及び動作とほぼ同じであるので、詳細な説明は省略する。
光記録媒体40には一例として4つの情報記録面が形成されている。図2に示すように、光記録媒体40は、光記録媒体40の表面から近い側から順に、第1情報記録面40a、第2情報記録面40b、第3情報記録面40c及び第4情報記録面40dを有する。
光記録媒体40は、さらに、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45を有している。カバー層42の厚みt1は、表面40zから第1情報記録面40aまでの間の基材の厚みを表し、第1中間層43の厚みt2は、第1情報記録面40aから第2情報記録面40bまでの間の基材の厚みを表し、第2中間層44の厚みt3は、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cまでの間の基材の厚みを表し、第3中間層45の厚みt4は、第3情報記録面40cから第4情報記録面40dまでの間の基材の厚みを表している。
また、距離d1(≒t1)は、表面40zから第1情報記録面40aまでの間の距離を表し、距離d2(≒t1+t2)は、表面40zから第2情報記録面40bまでの間の距離を表し、距離d3(≒t1+t2+t3)は、表面40zから第3情報記録面40cまでの間の距離を表し、距離d4(≒t1+t2+t3+t4)は、表面40zから第4情報記録面40dまでの間の距離を表している。
ここで、情報記録面が4面である場合の課題について説明する。まず、一つ目の課題として、多面反射光による干渉について図3〜図7を用いて説明する。
図3は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第4情報記録面40dからの反射光を示す図であり、図4は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第3情報記録面40c及び第2情報記録面40bからの反射光を示す図であり、図5は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第2情報記録面40b及び表面40zからの反射光を示す図であり、図6は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第3情報記録面40c、第1情報記録面40a及び第2情報記録面40bからの反射光を示す図である。
図3のように、情報を再生又は記録するために第4情報記録面40dに集光された光束は、情報記録層(情報記録面)の半透過性により、以下の複数の光ビームに分岐される。
すなわち、情報を再生又は記録するために第4情報記録面40dに集光する光束は、図3に示すビーム70と、図4に示すビーム71(情報記録面の裏焦点光)と、図5に示すビーム72(表面の裏焦点光)と、図6に示すビーム73とに分岐される。
図3のように、ビーム70は、第4情報記録面40dで反射し、表面40zから出射するビームである。図4のように、ビーム71は、第3情報記録面40cで反射し、第2情報記録面40bの裏側で焦点を結んで反射し、再び第3情報記録面40cで反射し、表面40zから出射するビームである。図5のように、ビーム72は、第2情報記録面40bで反射し、表面40zの裏側で焦点を結んで反射し、再び第2情報記録面40bで反射し、表面40zから出射するビームである。図6のように、ビーム73は、表面40z及び情報記録面の裏側で焦点は結ばないが、第3情報記録面40c、第1情報記録面40aの裏側及び第2情報記録面40bの順で反射し、表面40zから出射するビームである。
まず、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45の屈折率がすべて同じ場合について考察する。各層で共通の屈折率をnoとする。
例えば、第4情報記録面40dと第3情報記録面40cとの間の距離(厚みt4)と、第3情報記録面40cと第2情報記録面40bとの間の距離(厚みt3)とが等しい場合、ビーム70とビーム71とは、表面40zを出射する際に同じ光路を通る。そのため、ビーム70とビーム71とは、同じ光束径で光検出器320に入射する。同様に、第4情報記録面40dと第2情報記録面40bとの間の距離(厚みt4+厚みt3)と、第2情報記録面40bと表面40zとの間の距離(厚みt2+厚みt1)とが等しい場合、ビーム70とビーム72とは、表面40zを出射する際に同じ光路を通る。そのため、ビーム70とビーム72とは、同じ光束径で光検出器320に入射する。また、第2情報記録面40bと第1情報記録面40aとの間の距離(厚みt2)と、第4情報記録面40dと第3情報記録面40cとの間の距離(厚みt4)とが等しい場合、ビーム70とビーム73とは、表面40zを出射する際に同じ光路を通る。そのため、ビーム70とビーム73とは、同じ光束径で光検出器320に入射する。
ここで、ビーム70に対して多面反射光であるビーム71〜73の光強度は小さい。しかしながら、干渉のコントラストは、光強度ではなく光の振幅光強度比に依存し、光の振幅は、光強度の平方根の大きさになるので、多少光強度に差があっても、干渉のコントラストは大きくなる。ビーム70〜73が等しい光束径で光検出器320に入射した場合、各ビームの干渉による影響は大きくなる。また、光検出器320での受光量は、微少な情報記録面間の厚みの変化によって大きく変動し、安定して信号を検出することが困難となる。
図7は、層間厚みの差とFS信号振幅との関係を示す図である。なお、図7では、ビーム70と、ビーム71、ビーム72又はビーム73との光強度比を100:1とし、かつカバー層42及び第1中間層43の屈折率がいずれも約1.60(1.57)であって等しい場合の層間厚みの差に対するFS信号(光強度の総和)振幅を示している。図7において、横軸は層間厚みの差を示し、縦軸はFS信号振幅を示している。FS信号振幅は、他の情報記録面からの反射がないと仮定してビーム70のみを光検出器320で受光したときのDC光量によって規格化した値である。また、本実施の形態において層間とは、光記録媒体と情報記録面との間、及び隣接する情報記録面の間を表している。図7のように、層間厚みの差が約1μm未満になるとFS信号が急激に変動することがわかる。
なお、図5のビーム72と同様に、カバー層42の厚みt1と、第1中間層43〜第3中間層45の厚みの総和(t2+t3+t4)との差が1μm以下になってもFS信号の変動などの問題が生じる。
二つ目の課題として、隣接する情報記録面間の層間距離が小さすぎると、隣接する情報記録面からのクロストークの影響を受ける。そのため、層間距離は、所定値以上必要となる。そこで、層間厚みについて検討し、最小となる層間厚みを決定する。
図8は、各情報記録面の反射率がほぼ等しい光記録媒体における層間厚みとジッターとの関係を示す図である。中間層の屈折率は約1.60である。図8において、横軸は層間厚みを示し、縦軸はジッター値を示している。層間厚みが薄くなるに従ってジッターは劣化する。ジッターの増大が始まる点は約10μmとなっており、層間厚みが約10μm以下の場合、急激なジッターの劣化が起こる。従って、層間厚みの最小値は10μmが最適である。
図2を用いて、本発明の実施の形態に係る光記録媒体40の構成について説明する。本実施の形態では、製造上の厚みバラツキを考慮した上で、他の情報記録面又はディスク表面からの反射光の悪影響を解決するために、以下の条件(1)〜(3)が確保できるように4層ディスク(光記録媒体40)の構造を設定する。
条件(1):カバー層42の厚みt1と、第1中間層43〜第3中間層45の厚みt2〜t4の総和(t2+t3+t4)との差は、1μm以上確保する。すなわち、厚みt1,t2,t3,t4は、|t1−(t2+t3+t4)|≧1μmを満たす。
条件(2):厚みt1,t2,t3,t4のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であること。
条件(3):カバー層42の厚みt1と第1中間層43の厚みt2との和(t1+t2)と、第2中間層44の厚みt3と第3中間層45の厚みt4との和(t3+t4)との差は、1μm以上確保する。すなわち、厚みt1,t2,t3,t4は、|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μmを満たす。
他にも層間厚みの組み合わせがいくつかあるが、カバー層の厚みt1を第1中間層43〜第3中間層45の厚みt2〜t4の総和(t2+t3+t4)に近い値にする場合には考慮不要なので省略する。
図9は、本発明の実施の形態の変形例に係る光記録媒体の層構成を示す図である。図9に示す光記録媒体30は、3つの情報記録面を有している。図9に示すように、光記録媒体30は、光記録媒体30の表面30zに近い側から順に、第1情報記録面30a、第2情報記録面30b及び第3情報記録面30cを有する。光記録媒体30は、さらに、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34を有している。
カバー層32の厚みt1は、表面30zから第1情報記録面30aまでの間の基材の厚みを表し、第1中間層33の厚みt2は、第1情報記録面30aから第2情報記録面30bまでの間の基材の厚みを表し、第2中間層34の厚みt3は、第2情報記録面30bから第3情報記録面30cまでの間の基材の厚みを表している。
また、距離d1(≒t1)は、表面30zから第1情報記録面30aまでの間の距離を表し、距離d2(≒t1+t2)は、表面30zから第2情報記録面30bまでの間の距離を表し、距離d3(≒t1+t2+t3)は、表面30zから第3情報記録面30cまでの間の距離を表している。
上記の説明では4層ディスクの構造についての具体例を示しているが、図9のような3層ディスクであれば、以下の条件(1)及び(2)が確保できるように3層ディスク(光記録媒体30)の構造を設定する。
条件(1):カバー層32の厚みt1と、第1中間層33及び第2中間層34の厚みt2,t3の総和(t2+t3)との差は、1μm以上確保する。すなわち、光記録媒体30は、|t1−(t2+t3)|≧1μmを満たす。
条件(2):厚みt1,t2,t3のうちの任意の2値の互いの差は、いずれも1μm以上である。
さらに、(N−1)層ディスク(Nは4以上の自然数)について考えると、上記の条件は、一般的に、カバー層の厚みをt1及び第1中間層〜第N中間層の厚みをt2〜tNとしたとき、厚みtiから厚みtjまでの和と、厚みtkから厚みtmまでの和との差を1μm以上必ず設けるということになる。ただし、i、j、k及びmは、任意の自然数であり、i≦j<k≦m≦Nを満たす。なお、カバー層厚みとは、光記録媒体の表面から、当該表面に最も近い情報記録面までの距離である。これは、光記録媒体の表面から、当該表面に二番目に近い情報記録面までの距離をd2とし、光記録媒体の表面から、当該表面に三番目に近い情報記録面までの距離をd3とし、光記録媒体の表面から、当該表面に4番目に近い情報記録面までの距離をd4とすることと同じ意味である。
そしてまた、二つ目の課題に対応して、すべての中間層厚は、それぞれ10μm以上とする。
ここまでは、カバー層及び各中間層の屈折率が標準値と同じであり、カバー層及び各中間層の屈折率が全て同じ値であるとして考えてきたが、ここからは、カバー層及び各中間層の屈折率が標準値と異なる場合、又はカバー層及び各中間層の屈折率が層ごとに異なる場合について考える。
一つ目の課題の裏焦点課題が起こるのは、光検出器320上において、信号光と、他の情報記録面からの反射光との大きさ及び形状が似ているためである。屈折率が約1.60である時に、信号光の焦点位置と他の情報記録面からの反射光の焦点位置との差が、光記録媒体側において光軸方向に1μmより小さい場合、裏焦点を避けることが可能である。また、二つ目の課題の隣接する情報記録面によるクロストークが起こるのは、屈折率が約1.60である時に、信号光のデフォーカス量が隣接トラック上において10μmよりも小さい場合である。
いずれにしても、デフォーカス量が重要である。また、デフォーカス量は、信号光が焦点を結んでいる位置での他の情報記録面からの反射光の大きさ又は他の情報記録面からの反射光の虚像の大きさである。他の情報記録面からの反射光又は他の情報記録面からの反射光の虚像の半径をRDとする。半径の大きさがRDである他の情報記録面からの反射光が光検出器320上に射影されるので、この反射光の大きさに、干渉及びクロストークの大きさが依存する。この反射光の大きさは、層間厚みによる光の広がり量とも言える。屈折率が1.60と異なる場合に、裏焦点及びクロストークを回避するためには、デフォーカス量、すなわち、他の情報記録面からの反射光の大きさ又は他の情報記録面からの反射光の虚像の大きさがそれぞれ同等となる条件を考えればよいことに発明者らは気づいた。これは、層間厚みによる光の広がり量を基準として層間厚みを換算するともいえる。
光検出器の大きさは一定であるため、当該光検出器に入射する光の密度は、光の半径が大きくなるほど低下する。光の密度が低下すると、クロストークも低下する。したがって、クロストークの大きさは、反射光の大きさに依存することになる。
標準的な屈折率noとは異なる屈折率nrを有するとともに、形状的な厚みtrを有する層におけるデフォーカス(他の情報記録面からの反射光の大きさ又は他の情報記録面からの反射光の虚像の大きさ)が、標準的な屈折率noを有するとともに、形状的な厚みtoを有する層におけるデフォーカスと同じになる条件は、下記の(2)式及び(3)式で表される。
NA=nr・sin(θr)=no・sin(θo)・・・(2)
RD=tr・tan(θr)=to・tan(θo)・・・(3)
ここで、NAは、光記録媒体へ対物レンズ56によって光を絞り込むときの開口数である。例えば、NA=0.85等が用いられる。θr及びθoは、それぞれ屈折率nr及び屈折率noの物質中での光の収束角度である。RDは、他の情報記録面からの反射光又は他の情報記録面からの反射光の虚像の半径である。また、sin及びtanはそれぞれ正弦関数及び正接関数である。また、標準的な屈折率noは、例えば1.60であり、より好ましくは1.57である。
上記の(2)式より、収束角度θrは、下記の(4)式で表され、収束角度θoは、下記の(5)式で表される。
θr=arcsin(NA/nr)・・・(4)
θo=arcsin(NA/no)・・・(5)
ここで、arcsinは、逆正弦関数(inverse sine)である。
上記の(3)式より、厚みtoは、下記の(6)式で表され、厚みtrは、下記の(7)式で表される。
to=tr・tan(θr)/tan(θo)・・・(6)
tr=to・tan(θo)/tan(θr)・・・(7)
屈折率nrの層の形状的な厚みがtrの時に、屈折率noの層のいくらの厚みに相当するかを導出するためには(6)式を用いて、厚みtoを計算すればよい。
また、屈折率nrの層の形状的な厚みtrをいくらにすれば、屈折率noの層のいくらの厚みtoと同等の厚みになるかは、(7)式を用いて、厚みtrを計算すればよい。
(6)式の係数部分、つまり、tan(θr)/tan(θo)を屈折率nrの関数f(nr)として図10に示す。また、(7)式の係数部分、つまり、tan(θo)/tan(θr)は、関数f(nr)の逆数1/f(nr)である。tan(θo)/tan(θr)を屈折率nrの関数f(nr)の逆数1/f(nr)として図11に示す。
図10は、実際の屈折率における形状的な厚みを、標準の屈折率における厚みに換算する係数の屈折率依存性を示す説明図であり、図11は、標準の屈折率における厚みを、実際の屈折率における形状的な厚みに変換する係数の屈折率依存性を示す説明図である。
関数f(nr)及び関数f(nr)の逆数1/f(nr)は、いずれも滑らかな曲線であるので多項式によって表すことができる。発明者らは、3次式を用いれば0.1%程度の精度の近似多項式を得ることができることを見いだした。すなわち、関数f(nr)は、下記の(8)式に示す3次式で表され、関数f(nr)の逆数1/f(nr)は、下記の(9)式に示す3次式で表される。
f(n)=−1.088n3+6.1027n2−12.042n+9.1007・・・(8)
1/f(n)=0.1045n3−0.6096n2+2.0192n−1.0979・・・(9)
なお、式を簡単にするため、上記の(8)式及び(9)式では、屈折率“nr”を“n”と略して表記している。
図10に示すように、6点で表現されている関数f(nr)を近似しようとすると、通常5次式で近似することになる。しかしながら、次数が上がるほど、関数f(nr)が振動したり、計算が複雑になる。一方、次数が下がるほど、関数f(nr)の精度が低下してしまう。
本発明は、ディスクの厚み精度が0.1μm程度であることが必要十分条件であり、これ以上精度を高くしても意味がない。そのため、発明者らは、0.1μm程度の厚み精度を満たすためには3次式が必要十分条件であることを新たに認識し、上記の(8)式及び(9)式を導出した。
すなわち、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(8)式に示す関数f(n)と、厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。ただし、上記の(8)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
また、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNを、厚みt1,t2,・・・,tNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす厚みtr1,tr2,・・・,trNに変換することによって算出される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(9)式に示す関数f(n)の逆数と、厚みt1,t2,・・・,tNとの積によって算出される。ただし、上記の(9)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
一例として、上記の4層ディスク(光記録媒体40)のカバー層の厚みt1と、第1中間層の厚みt2〜第3中間層の厚みt4の和との関係の具体例を挙げる。各層の屈折率がすべて標準的な屈折率no、つまり1.60であり、カバー層の厚みt1が54μmであり、第1中間層の厚みt2が10μmであり、第2中間層の厚みt3が21μmであり、第3中間層の厚みt4が19μmである場合について考える。第1中間層の厚みt2から第3中間層の厚みt4の和は、50μmとなる。この場合、カバー層の厚みt1と、第1中間層の厚みt2から第3中間層の厚みt4の和との差は、4μmもあり、1μm以上を確保できている。
しかし、もしカバー層の屈折率nrが1.70である場合、カバー層の形状的な厚みtr1が同じ54μmであっても事情が異なる。屈折率nrである層の厚みtr1を、標準値の屈折率noである層の厚みt1に換算するには、(4)式及び(6)式、あるいは、図10から、厚みtr1に0.921を乗じればよいことがわかる。よって、屈折率noである層の厚みt1は、t1=0.921×tr1=49.7μmとなり、第1中間層の厚みt2から第3中間層の厚みt4までの和の50μmよりも小さくなってしまうことがわかる。
逆に、カバー層の厚みtr1と、第1中間層の厚みt2から第3中間層の厚みt4までの和との差を1μm以上確保し、かつ、カバー層の厚みtr1が51μm以上となるようにするためには、(5)式及び(7)式、あるいは、図11から、屈折率noである層の厚みt1に1.086を乗じればよいことがわかる。つまり、屈折率nrである層の厚みtr1は、tr1=51×1.086≒55.4μmとなる。これによって、屈折率nrが1.70である時は形状的なカバー層の厚みtr1を55.4μm以上にする必要があることがわかる。なお、上記の例は、一例であり、本願発明は、この値にとらわれるものではない。また、屈折率が図10又は図11に記載していない数値である場合、係数は、(8)式又は(9)式に屈折率を代入して算出すればよい。
なお、カバー層及び中間層の厚みは別の観点からも特定の条件を満たす必要がある。フォーカスジャンプの安定性を得るためには、カバー層及び中間層の厚みは標準的な値から一定の範囲にあることが望ましい。フォーカスジャンプとは、ある情報記録面から他の情報記録面へと焦点位置を変える動作である。フォーカスジャンプをする際に、行き先の情報記録面でのフォーカスエラー信号を安定して得るためには、フォーカスジャンプに先立ってコリメートレンズ53を動かすなどして行き先の情報記録面でのフォーカスエラー信号を良質にしておくことが望ましい。そのためには、情報記録面間の球面収差の差が一定範囲にあることが望ましい。
屈折率が異なれば、厚みが同じであっても球面収差の量が変わる、従って、中間層の厚みのねらい値又は許容範囲も、球面収差量が一定範囲に入るように設定することが望ましい。
また、再度裏焦点の観点に話を戻す。所定の層(カバー層又は中間層)の屈折率がnr(min)≦nr≦nr(max)である場合には、屈折率nrである層の厚みtrは、θr(min)=arcsin(NA/nr(min))及びθr(max)=arcsin(NA/nr(max))とした上で、同様にto=tr・tan(θr)/tan(θo)を用いて、中間層の厚み範囲を決定することもできる。
また、本発明の実施の形態における光記録媒体は、書き換え型、追記型及び再生専用型のいずれかのタイプに限定されるものではなく、各タイプの光記録媒体に適応することが可能である。
再度の説明となるが、先に述べた裏焦点による信号の乱れ及び信号品質劣化は、光検出器上において、信号光と、他の情報記録面からの反射光とが同じ大きさ、又は、同じ形状になったときに起こる。光検出器上において、信号光と、他の情報記録面からの反射光とが同じ大きさ、又は、同じ形状になるのは、見かけ上、別の言い方をすれば、反射光の虚像も含めて、焦点位置が同じになる場合である。信号光と、他の情報記録面からの反射光とは、光ディスクの透明基材中における光路が一部異なっている。光路が異なることによって生じるデフォーカス量が等しいときに、信号光の焦点位置と、他の情報記録面からの反射光の焦点位置とが同じに見える。基材厚みによるデフォーカス量が等しいと判断できるのは、収束光の広がり、すなわち収束光の半径が、信号光と、他の情報記録面からの反射光とで等しいときである。
従って、屈折率nrの形状的な厚みtrによって、裏焦点を回避できるか否かを判断するには、基材厚みによる光スポットの広がり半径Rを基に計算すればよい。ここで、形状的な厚みとは、材料の物質的な厚みを示し、物理的な厚みとも呼ぶことができる。
また、中間層厚が薄くなった場合に生じる層間干渉も、隣接層上スポット形状(半径R)が十分大きければ回避できる。そのため、やはり、屈折率nrの形状的な厚みtrによって、層間干渉を回避できるか否かを判断するにも、基材厚みによる光スポットの広がり半径Rを基に計算すればよい。
カバー層又は中間層の厚みをtとし、光スポットの開口数をNA(NA=0.85)とし、基材中の光の収束角度をθとすると、NA=n・sin(θ)であるので、θ=arcsin(NA/n)となる。ここで、arcsinは逆正弦関数である。また、光スポットの広がり半径Rは、R=t・tan(θ)によって計算できる。
標準的な屈折率をnoとし、標準的な屈折率noを有する層の厚みをtoとし、当該層の基材中の収束角度をθoとする。なお、標準的な屈折率noは、例えば1.60である。また、実際の光ディスクの透明基材の厚み部分を構成する層(対象層)を添え字“r”で表し、対象層の屈折率をnrとし、形状的な層厚をtrとし、基材中の収束角度をθrとする。このとき、収束角度θo及びθrは、θo=arcsin(NA/no)及びθr=arcsin(NA/nr)である。
また、光スポットの広がり半径Rは、R=tr・tan(θr)=to・tan(θo)であるので、標準的な屈折率noを有する層の厚みtoは、to=tr・(tan(θr)/tan(θo))=tr・f(nr)となる。
関数f(nr)は、形状上の層の厚みtrが、標準的な屈折率noを有する層ではいくらの厚みtoに相当するかを導くための係数であり、先に図10に示したとおりの関数である。
例えば、4層の情報記録面を持つ4層ディスクについて考える。4層ディスク(光記録媒体40)は、ディスクの表面(光が入射する面)40z側から順に、第1情報記録面40a、第2情報記録面40b、第3情報記録面40c及び第4情報記録面40dを有する。また、4層ディスクは、光の入射する表面40zから第1情報記録面40aまでの間に存在するカバー層42と、第1情報記録面40aから第2情報記録面40bまでの間に存在する第1中間層43と、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cまでの間に存在する第2中間層44と、第3情報記録面40cから第4情報記録面40dまでの間に存在する第3中間層45とを有する。
カバー層42の形状的な厚みをtr1とし、カバー層42の実際の屈折率をnr1とする。第1中間層43の形状的な厚みをtr2とし、第1中間層43の実際の屈折率をnr2とする。第2中間層44の形状的な厚みをtr3とし、第2中間層44の実際の屈折率をnr3とする。第3中間層45の形状的な厚みをtr4とし、第3中間層45の実際の屈折率をnr4とする。
デフォーカス量を基準として、カバー層42及び第1〜第3中間層43〜45の厚みtr1,tr2,tr3,tr4を、標準的な屈折率noを有するカバー層42及び第1〜第3中間層43〜45の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換すると、t1=tr1×f(nr1)、t2=tr2×f(nr2)、t3=tr3×f(nr3)、及びt4=tr4×f(nr4)となる。
通常、カバー層は、中間層より厚い。そのため、裏焦点を避けるためには、4層ディスクは、|t1−(t2+t3+t4)|≧1μm、|t2−t3|≧1μm、|t3−t4|≧1μm、及び|t2−t4|≧1μm、を全て満たさなければならない。
また、層間干渉を避けるためには、4層ディスクは、t2≧10μm、t3≧10μm、及びt4≧10μmもすべて満たさなければならない。すなわち、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45の厚みt1,t2,t3,t4は、それぞれ10μm以上である。
このように、光記録媒体40は、光が入射する光記録媒体40の表面40zに最も近い第1情報記録面40aと、表面40zに二番目に近い第2情報記録面40bと、表面40zに三番目に近い第3情報記録面40cと、表面40zに四番目に近い第4情報記録面40dと、所定の屈折率noとは異なる屈折率nr1を有し、表面40zから第1情報記録面40aまでの間に存在するカバー層42と、屈折率noとは異なる屈折率nr2を有し、第1情報記録面40aから第2情報記録面40bまでの間に存在する第1中間層43と、屈折率noとは異なる屈折率nr3を有し、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cまでの間に存在する第2中間層44と、屈折率noとは異なる屈折率nr4を有し、第3情報記録面40cから第4情報記録面40dまでの間に存在する第3中間層45とを具備する。
そして、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換される。
また、屈折率nrα及び厚みtrα(1≦α≦4(αは自然数))を有する層において発生するデフォーカス量と、屈折率no及び厚みtα(1≦α≦4(αは自然数))を有する層において発生するデフォーカス量とは等しい。
さらに、厚みt1、t2、t3、t4は、|t1−(t2+t3+t4)|≧1μm、厚みt1,t2,t3,t4のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であること、及び|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μmを満たす。
したがって、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4から変換された厚みt1,t2,t3,t4は、|t1−(t2+t3+t4)|≧1μm、厚みt1,t2,t3,t4のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であること、及び|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μmを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。
また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、屈折率nrαを有する層の厚みがtrα(1≦α≦4(αは自然数))であり、屈折率nrαを有する層の中での光の収束角度がθrα(1≦α≦4(αは自然数))であり、屈折率noを有する層の厚みがtα(1≦α≦4(αは自然数))であり、屈折率noを有する層の中での光の収束角度がθoであるときに、厚みtrαは、下記の(10)式に基づいて厚みtαに変換される。
tα=trα・(tan(θrα)/tan(θo))・・・(10)
また、屈折率noを有する層において発生する球面収差量が所定の許容範囲内となる層の厚みtαの範囲は、屈折率nrαを有する層の厚みtrαの範囲に変換され、厚みtrαは、変換後の厚みtrαの範囲内に含まれることが好ましい。
一般的に光スポットの性能は、規定されるマーシャルクライテリアの範囲内に収まる必要があり、マーシャルクライテリアの範囲を超えると信号が激しく劣化してしまう。そのため、屈折率noを有する層において発生する球面収差量が、マーシャルクライテリアの範囲である70mλ以下におさまるように、各条件の範囲が規定される。
なお、本実施の形態において、屈折率nr1,nr2,nr3,nr4は、それぞれ屈折率noと異なっているが、本発明は特にこれに限定されず、屈折率nr1,nr2,nr3,nr4は、それぞれ屈折率noと同じであってもよい。この場合、屈折率の値によらず光記録媒体の製造方法を統一することができる。
さらに、別の例として、3層の記録層を持つ3層ディスクについて考える。3層ディスク(光記録媒体30)は、ディスクの表面(光が入射する面)30z側から順に、第1情報記録面30a、第2情報記録面30b及び第3情報記録面30cを有する。また、3層ディスクは、光の入射する表面30zから第1情報記録面30aまでの間に存在するカバー層32と、第1情報記録面30aから第2情報記録面30bまでの間に存在する第1中間層33と、第2情報記録面30bから第3情報記録面30cまでの間に存在する第2中間層34とを有する。
カバー層32の形状的な厚みをtr1とし、カバー層32の実際の屈折率をnr1とする。第1中間層33の形状的な厚みをtr2とし、第1中間層33の実際の屈折率をnr2とする。第2中間層34の形状的な厚みをtr3とし、第2中間層34の実際の屈折率をnr3とする。
デフォーカス量を基準として、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の厚みtr1,tr2,tr3を、標準的な屈折率noを有するカバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換すると、t1=tr1×f(nr1)、t2=tr2×f(nr2)、及びt3=tr3×f(nr3)となる。
通常、カバー層は、中間層より厚い。そのため、裏焦点を避けるためには、3層ディスクは、|t1−(t2+t3)|≧1μm、及び|t2−t3|≧1μmを全て満たさなければならない。
また、層間干渉を避けるためには、3層ディスクは、t2≧10μm、及びt3≧10μmもすべて満たさなければならない。すなわち、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の厚みt1,t2,t3は、それぞれ10μm以上である。
このように、光記録媒体30は、光が入射する光記録媒体30の表面30zに最も近い第1情報記録面30aと、表面30zに二番目に近い第2情報記録面30bと、表面30zに三番目に近い第3情報記録面30cと、所定の屈折率noとは異なる屈折率nr1を有し、表面30zから第1情報記録面30aまでの間に存在するカバー層32と、屈折率noとは異なる屈折率nr2を有し、第1情報記録面30aから第2情報記録面30bまでの間に存在する第1中間層33と、屈折率noとは異なる屈折率nr3を有し、第2情報記録面30bから第3情報記録面30cまでの間に存在する第2中間層34とを具備する。
そして、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の形状的な厚みtr1,tr2,tr3は、屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換される。
また、屈折率nrα及び厚みtrα(1≦α≦3(αは自然数))を有する層において発生するデフォーカス量と、屈折率no及び厚みtα(1≦α≦3(αは自然数))を有する層において発生するデフォーカス量とは等しい。
さらに、厚みt1,t2,t3が、|t1−(t2+t3)|≧1μm、及び厚みt1,t2,t3のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であることを満たす。
したがって、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の形状的な厚みtr1,tr2,tr3から変換された厚みt1,t2,t3は、|t1−(t2+t3)|≧1μm、及び厚みt1,t2,t3のうちの任意の2値の互いの差がいずれも1μm以上であることを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。
また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、屈折率nrαを有する層の厚みがtrα(1≦α≦3(αは自然数))であり、屈折率nrαを有する層の中での光の収束角度がθrα(1≦α≦3(αは自然数))であり、屈折率noを有する層の厚みがtα(1≦α≦3(αは自然数))であり、屈折率noを有する層の中での光の収束角度がθoであるときに、厚みtrαは、下記の(11)式に基づいて厚みtαに変換される。
tα=trα・(tan(θrα)/tan(θo))・・・(11)
また、3層ディスクにおいても、屈折率noを有する層において発生する球面収差量が所定の許容範囲内となる層の厚みtαの範囲は、屈折率nrαを有する層の厚みtrαの範囲に変換され、厚みtrαは、変換後の厚みtrαの範囲内に含まれることが好ましい。
なお、表面又は各情報記録面間がさらに異なる屈折率を有する複数の材料層から構成される場合、まず、各々の材料層の厚みを標準的な屈折率ではいくらの厚みに相当するかを算出する。すなわち、形状的な厚みに上記関数値fが乗算されることにより、デフォーカス量を基準として、屈折率nrを有する材料層の実際の厚みが、標準的な屈折率noを有する材料層の厚みにそれぞれ変換される。そして、変換後の各材料層の厚みが積算される。
例えば、形状的な厚みがtr1であるカバー層が、さらに、厚みがtr11であり、屈折率がnr11である第1カバー層、厚みがtr12であり、屈折率がnr12である第2カバー層、・・・、及び、厚みがtr1Nであり、屈折率がnr1Nである第Nカバー層から成り立っている場合、デフォーカス量を基準としてカバー層の形状的な厚みを標準的な屈折率noを有するカバー層の厚みt1に変換すると、t1=Σtr1k×f(nrk)となる。ここで、Σはkについて1からNまでの積算を表す。
高い開口数(NA)の対物レンズを用いる場合、光が通る透明基材の厚みに依存して急峻に球面収差が変化する。球面収差が大きい場合、焦点制御(フォーカス制御)を行う際の指標となる焦点誤差(フォーカスエラー)信号の感度が設計と異なったり、信号振幅が減少したりするなどのフォーカスエラー信号の劣化が起こる。
従って、焦点制御が行われていない状態から焦点制御を始めようとする場合、又は、フォーカスジャンプの安定性を得る場合には、あらかじめ、焦点制御を行う層における球面収差補正を行うことが望ましい。そのためには、表面から情報記録面までの間の厚み及び中間層の厚みは、標準的な値から一定の範囲内にあることが望ましい。
なお、フォーカスジャンプとは、ある情報記録面から他の情報記録面へと焦点位置を変える動作である。標準的な値又は一定の範囲は、上記の理由から球面収差を基準として考える必要がある。従って、屈折率が標準的な値とは異なる場合、形状的な厚みは屈折率に応じて変えることになる。
そこで、多層光ディスクの層厚設計は例えば下記のようにすればよい。まず、透明基材を構成する材料の屈折率を把握する。次に、得られた屈折率に応じて、球面収差を基準として、表面から情報記録面までの間の形状的な厚み及び中間層の形状的な厚みを決める。製造上、誤差を0にすることはできないので、誤差の範囲を含めて形状的な厚みを決める。表面から情報記録面までの間の形状的な厚み及び中間層の形状的な厚みは、数値テーブル又は表を用いて決定しても良い。あるいは、球面収差は厚みと比例関係にある。そのため、表面から情報記録面までの間の形状的な厚み及び中間層の形状的な厚みは、屈折率に応じた変換係数g(nr)を波長又は開口数に応じて計算して、計算した変換係数g(nr)を用いて決定しても良い。
例えば、波長405nmの青色光が、屈折率が1.60であり、厚みが0.1mmである基材を通過して情報記録面に収束する。また、0.85の開口数を有する対物レンズは、波長405nmの青色光を無収差で収束させる。そして、基材の屈折率を換えたときに収差が最小になる基材の厚みts(nr)(mm)を求める。すると、変換係数g(nr)は、g(nr)=ts(nr)/0.1となる。
図12は、球面収差に基づいて、実際の屈折率における形状的な厚みを、標準の屈折率における厚みに換算する係数の屈折率依存性を示す説明図である。図12は、発明者らが導出した変換係数g(nr)を示している。また、変換係数g(nr)及び変換係数g(nr)の逆数(1/g(nr))は、いずれも滑らかな曲線であるので多項式によって表すことができる。発明者らは、3次式を用いれば0.1%程度の精度の近似多項式を得ることができることを見いだした。すなわち、関数g(nr)は、下記の(12)式に示す3次式で表される。
g(n)=−1.1111n3+5.8143n2−9.8808n+6.476・・・(12)
なお、式を簡単にするため、上記の(12)式では屈折率“nr”を“n”と略して表記している。
基材厚と屈折率との適切な関係については、特開2004−288371号公報及び特開2004−259439号公報にも開示されている。しかしながら、特開2004−288371号公報及び特開2004−259439号公報における基材厚と屈折率との関係は、(12)式とは異なっている。そのため、特開2004−288371号公報及び特開2004−259439号公報における基材厚と屈折率との関係は、図12に示した球面収差を一定にする基材厚と屈折率との関係を正確に表していない。本実施の形態では、近似計算を用いることなく、実際に光線を追跡することによって3次球面収差が一定になる基材厚みを屈折率に応じて求めている。その結果、本実施の形態では、基材厚と屈折率との正確な関係を明らかにすることに成功した。
カバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲は、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定される。そして、カバー層の厚み及び第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲を、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、厚みt1,t2,・・・,tNと、上記の(12)式に示す関数g(n)との積によって算出される。ただし、上記の(12)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
こうして求めた表面から情報記録面までの間の形状的な厚み及び中間層の形状的な厚みに基づいて、カバー層の形状的な厚みもわかるので、これらの厚みを、先に述べたようにデフォーカス量を基準として標準的な屈折率noを有する層の厚みにそれぞれ変換する。あるいは、実際に作製した光ディスクのカバー層及び中間層の形状的な厚みを求める。変換後の各層の厚みを用いて、先に述べた裏焦点及び層間干渉が回避できているか否かが確認され、設計範囲の可否が判断されたり、完成した光ディスクの良否が判断される。
なお、表面から情報記録面までの間の厚みは、カバー層の厚みと、中間層の厚みとの和から求めることができる。3層ディスクであれば、表面から第1情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1であり、表面から第2情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2であり、表面から第3情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2+tr3である。
4層ディスクの場合、表面から第1情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1であり、表面から第2情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2であり、表面から第3情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2+tr3であり、表面から第4情報記録面までの間の形状的な厚みはtr1+tr2+tr3+tr4である。
本実施の形態の光記録媒体によれば、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止するとともに、各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、このように、屈折率に応じて光記録媒体の厚さを設計する指針を明らかにすることにより、具体的に製品を製造する指針を明確にすることができる。
このように、4つの情報記録面を有する光記録媒体40のカバー層42、第1の中間層43、第2の中間層44及び第3の中間層45の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、球面収差を基準として、屈折率nr1,nr2,nr3,nr4に応じて決定される。そして、厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換される。また、厚みt1,t2,t3,t4の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、厚みt1,t2,t3,t4と、上記の(12)式に示す関数g(n)との積によって算出される。その後、再度、厚みt1,t2,t3,t4が、上記の(8)式に示す関数f(n)と、算出された厚みtr1,tr2,tr3,tr4との積によって算出される。再度算出された厚みt1,t2,t3,t4は、下記の(13)式を満たす。
|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μm・・・(13)
また、3つの情報記録面を有する光記録媒体30のカバー層32、第1の中間層33及び第2の中間層34の形状的な厚みtr1,tr2,tr3は、球面収差を基準として、屈折率nr1,nr2,nr3に応じて決定される。そして、厚みtr1,tr2,tr3は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換される。また、厚みt1,t2,t3の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,tr3は、厚みt1,t2,t3と、上記の(12)式に示す関数g(n)との積によって算出される。その後、再度、厚みt1,t2,t3が、上記の(8)式に示す関数f(n)と、算出された厚みtr1,tr2,tr3との積によって算出される。再度算出された厚みt1,t2,t3は、下記の(14)式を満たす。
|t1−(t2+t3)|≧1μm・・・(14)
次に、フォーカスジャンプを行う光情報装置の一例について説明する。
図13は、本発明の実施の形態に係る光情報装置の概略構成を示す図である。光情報装置150は、光記録媒体40に照射するレーザ光の光スポットを、所定の情報記録面から他の情報記録面に移動させることにより、複数の情報記録面から情報を再生又は記録する。
また、光情報装置150は、複数の情報記録面のうち所定の情報記録面にレーザ光の光スポットを収束させ、所定の情報記録面から情報を再生する。そして、所定の情報記録面とは異なる他の情報記録面から情報を再生する場合、光情報装置150は、レーザ光の光スポットを所定の情報記録面から他の情報記録面に移動させ、他の情報記録面から情報を再生する。
光情報装置150は、駆動装置151、ターンテーブル152、電気回路153、クランパー154、モータ155及び光ヘッド装置201を備える。光ヘッド装置201は、図1に示す光ヘッド装置201と同一の構成であり、光記録媒体40は、図2に示す光記録媒体40と同一の構成である。
光記録媒体40は、ターンテーブル152に載置され、クランパー154により固定される。モータ155は、ターンテーブル152を回転させることにより、光記録媒体40を回転させる。駆動装置151は、光記録媒体40の所望の情報が存在するトラックまで、光ヘッド装置201を粗動する。
光ヘッド装置201は、光記録媒体に照射するレーザ光の焦点位置を、所定の情報記録面から他の情報記録面に移動させることにより、複数の情報記録面から情報を再生又は記録する。
光ヘッド装置201は、光記録媒体40との位置関係に対応して、フォーカスエラー(焦点誤差)信号及びトラッキングエラー信号を電気回路153へ送る。電気回路153は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に対応して、対物レンズ56を微動させるための信号を光ヘッド装置201へ送る。電気回路153からの信号に基づいて、光ヘッド装置201は、光記録媒体40に対してフォーカス制御及びトラッキング制御を行う。光ヘッド装置201は、光記録媒体40から情報を読み出し、光記録媒体40に情報を書き込み(記録)、又は、光記録媒体40から情報を消去する。
電気回路153は、光ヘッド装置201から得られる信号に基づいて、モータ155及び光ヘッド装置201を制御及び駆動する。また、電気回路153は、フォーカスジャンプの手順を主に制御する。すなわち、電気回路153は、焦点位置を移動させる前に、移動先の他の情報記録面において発生する球面収差を補正するように、光ヘッド装置201を制御する。なお、光ヘッド装置201における具体的な球面収差補正方法については、既に説明した通りである。
本実施の形態の光情報装置150は、上述した光記録媒体40に対して、フォーカスジャンプを行う前にコリメートレンズ53を動かすことにより、ジャンプする先の情報記録面において発生する球面収差を補正し、その後、焦点位置を移動させる。したがって、行き先の情報記録面でのフォーカスエラー信号が良質になるので、安定してフォーカスジャンプを行うことができる。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る光記録媒体の製造方法は、(N−1)個(Nは4以上の自然数)の情報記録面を有する光記録媒体の製造方法であって、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する前記光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNは、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換され、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とし(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、下記の(15)式に示す関数f(n)と、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
f(n)=−1.088n3+6.1027n2−12.042n+9.1007・・・(15)
ただし、上記の(15)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(15)式に示す関数f(n)と、厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
したがって、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFが1μm以上とされるので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体の製造方法は、(N−1)個(Nは4以上の自然数)の情報記録面を有する光記録媒体の製造方法であって、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する前記光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNを、前記厚みt1,t2,・・・,tNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす前記厚みtr1,tr2,・・・,trNに変換することによって算出され、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とし(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、下記の(16)式に示す関数f(n)の逆数1/f(n)と、前記厚みt1,t2,・・・,tNとの積によって算出される。
1/f(n)=0.1045n3−0.6096n2+2.0192n−1.0979・・・(16)
ただし、上記の(16)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNを、厚みt1,t2,・・・,tNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす厚みtr1,tr2,・・・,trNに変換することによって算出される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(16)式に示す関数f(n)の逆数と、厚みt1,t2,・・・,tNとの積によって算出される。
したがって、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFが1μm以上とされるので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記カバー層及び前記第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲は、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定されることが好ましい。
この構成によれば、カバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲は、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定されるので、厚みtr1,tr2,・・・,trNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層における球面収差を抑制することができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記カバー層の厚み及び前記第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲を、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、前記厚みt1,t2,・・・,tNと、下記の(17)式に示す関数g(n)との積によって算出されることが好ましい。
g(n)=−1.1111n3+5.8143n2−9.8808n+6.476・・・(17)
ただし、上記の(17)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、カバー層の厚み及び第1〜第(N−1)の中間層の厚みの範囲を、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値が、厚みt1,t2,・・・,tNと、上記の(17)式に示す関数g(n)との積によって算出される。
したがって、球面収差を抑制することができる厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値を容易に算出することができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記屈折率noは、1.60であることが好ましい。
この構成によれば、カバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,・・・,trNは、1.60の屈折率を有する場合の各層の厚みt1,t2,・・・,tNにそれぞれ変換することができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、それぞれ10μm以上であることが好ましい。
この構成によれば、厚みt1,t2,・・・,tNを、それぞれ10μm以上とすることにより、隣接する情報記録面からのクロストークの影響を軽減することができ、各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体は、(N−1)個(Nは4以上の自然数)の情報記録面を有する光記録媒体であって、光が入射する前記光記録媒体の表面から、前記表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、第1〜第Nの情報記録面の各情報記録面の間に存在する第1〜第(N−1)の中間層とを備え、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有する前記カバー層及び前記第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する前記光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNは、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換され、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とし(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)、前記厚みt1,t2,・・・,tNは、下記の(18)式に示す関数f(n)と、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
f(n)=−1.088n3+6.1027n2−12.042n+9.1007・・・(18)
ただし、上記の(18)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
この構成によれば、光記録媒体は、光が入射する光記録媒体の表面から、表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、第1〜第Nの情報記録面の各情報記録面の間に存在する第1〜第(N−1)の中間層とを備える。屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、厚みtr1,tr2,・・・,trNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNに変換される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みt1,t2,・・・,tNは、上記の(18)式に示す関数f(n)と、厚みtr1,tr2,・・・,trNとの積によって算出される。
したがって、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFが1μm以上とされるので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体は、複数の情報記録面を有する光記録媒体であって、屈折率nr1を有し、光が入射する前記光記録媒体の表面から、前記表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、屈折率nr2を有し、前記第1の情報記録面から、前記表面に二番目に近い第2の情報記録面までの間に存在する第1の中間層と、屈折率nr3を有し、前記第2の情報記録面から、前記表面に三番目に近い第3の情報記録面までの間に存在する第2の中間層と、屈折率nr4を有し、前記第3の情報記録面から、前記表面に四番目に近い第4の情報記録面までの間に存在する第3の中間層とを備え、前記カバー層、前記第1の中間層、前記第2の中間層及び前記第3の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、球面収差を基準として、前記屈折率nr1,nr2,nr3,nr4に応じて決定され、前記厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換され、前記厚みt1,t2,t3,t4の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、前記厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、前記厚みt1,t2,t3,t4と、下記の(19)式に示す関数g(n)との積によって算出され、再度、前記厚みt1,t2,t3,t4が、下記の(20)式に示す関数f(n)と、前記算出された厚みtr1,tr2,tr3,tr4との積によって算出され、再度算出された前記厚みt1,t2,t3,t4は、下記の(21)式を満たす。
g(n)=−1.1111n 3+5.8143n 2−9.8808n+6.476・・・(19)
f(n)=−1.088n 3+6.1027n 2−12.042n+9.1007・・・(20)
|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μm・・・(21)
ただし、上記の(19)及び(20)式において、n=nr1,nr2,nr3,nr4。
この構成によれば、光記録媒体は、屈折率nr1を有し、光が入射する光記録媒体の表面から、表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、屈折率nr2を有し、第1の情報記録面から、表面に二番目に近い第2の情報記録面までの間に存在する第1の中間層と、屈折率nr3を有し、第2の情報記録面から、表面に三番目に近い第3の情報記録面までの間に存在する第2の中間層と、屈折率nr4を有し、第3の情報記録面から、表面に四番目に近い第4の情報記録面までの間に存在する第3の中間層とを備える。そして、カバー層、第1の中間層、第2の中間層及び第3の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、球面収差を基準として、屈折率nr1,nr2,nr3,nr4に応じて決定される。また、厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3,t4にそれぞれ変換される。厚みt1,t2,t3,t4の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,tr3,tr4は、厚みt1,t2,t3,t4と、上記の(19)式に示す関数g(n)との積によって算出される。その後、再度、厚みt1,t2,t3,t4が、上記の(20)式に示す関数f(n)と、算出された厚みtr1,tr2,tr3,tr4との積によって算出され、再度算出された厚みt1,t2,t3,t4は、上記の(21)式を満たす。
したがって、カバー層、第1の中間層、第2の中間層及び第3の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3,tr4から変換された厚みt1,t2,t3,t4は、|(t1+t2)−(t3+t4)|≧1μmを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体は、複数の情報記録面を有する光記録媒体であって、屈折率nr1を有し、光が入射する前記光記録媒体の表面から、前記表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、屈折率nr2を有し、前記第1の情報記録面から、前記表面に二番目に近い第2の情報記録面までの間に存在する第1の中間層と、屈折率nr3を有し、前記第2の情報記録面から、前記表面に三番目に近い第3の情報記録面までの間に存在する第2の中間層とを備え、前記カバー層、前記第1の中間層及び前記第2の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3は、球面収差を基準として、前記屈折率nr1,nr2,nr3に応じて決定され、前記厚みtr1,tr2,tr3は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換され、前記厚みt1,t2,t3の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、前記厚みtr1,tr2,tr3は、前記厚みt1,t2,t3と、下記の(22)式に示す関数g(n)との積によって算出され、再度、前記厚みt1,t2,t3が、下記の(23)式に示す関数f(n)と、前記算出された厚みtr1,tr2,tr3との積によって算出され、再度算出された前記厚みt1,t2,t3は、下記の(24)式を満たす。
g(n)=−1.1111n 3+5.8143n 2−9.8808n+6.476・・・(22)
f(n)=−1.088n 3+6.1027n 2−12.042n+9.1007・・・(23)
|t1−(t2+t3)|≧1μm・・・(24)
ただし、上記の(22)及び(23)式において、n=nr1,nr2,nr3。
この構成によれば、光記録媒体は、屈折率nr1を有し、光が入射する光記録媒体の表面から、表面に最も近い第1の情報記録面までの間に存在するカバー層と、屈折率nr2を有し、第1の情報記録面から、表面に二番目に近い第2の情報記録面までの間に存在する第1の中間層と、屈折率nr3を有し、第2の情報記録面から、表面に三番目に近い第3の情報記録面までの間に存在する第2の中間層とを備える。そして、カバー層、第1の中間層及び第2の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3は、球面収差を基準として、屈折率nr1,nr2,nr3に応じて決定される。また、厚みtr1,tr2,tr3は、デフォーカス量を基準として、所定の屈折率noを有する場合の各層の厚みt1,t2,t3にそれぞれ変換される。厚みt1,t2,t3の範囲が、球面収差が所定の範囲内となる範囲に設定するために、厚みtr1,tr2,tr3は、厚みt1,t2,t3と、上記の(22)式に示す関数g(n)との積によって算出される。その後、再度、厚みt1,t2,t3が、上記の(23)式に示す関数f(n)と、算出された厚みtr1,tr2,tr3との積によって算出され、再度算出された厚みt1,t2,t3は、上記の(24)式を満たす。
したがって、カバー層、第1の中間層及び第2の中間層の形状的な厚みtr1,tr2,tr3から変換された厚みt1,t2,t3は、|t1−(t2+t3)|≧1μmを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で光が結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光情報装置は、上記のいずれかに記載の光記録媒体から情報を再生又は記録する光情報装置であって、前記光情報装置は、前記光記録媒体に照射するレーザ光の光スポットを、所定の情報記録面から他の情報記録面に移動させることにより、複数の情報記録面から情報を再生又は記録する。この構成によれば、光記録媒体に照射するレーザ光の光スポットが、所定の情報記録面から他の情報記録面に移動されることにより、複数の情報記録面から情報が再生又は記録される。
本発明の他の局面に係る情報再生方法は、上記のいずれかに記載の光記録媒体から情報を再生する情報再生方法であって、前記情報再生方法は、複数の情報記録面のうち所定の情報記録面にレーザ光の光スポットを収束させるステップと、前記所定の情報記録面から情報を再生するステップと、前記所定の情報記録面とは異なる他の情報記録面から情報を再生する場合、前記レーザ光の光スポットを前記所定の情報記録面から前記他の情報記録面に移動させ、前記他の情報記録面から情報を再生するステップとを含む。
この構成によれば、複数の情報記録面のうち所定の情報記録面にレーザ光の光スポットが収束され、所定の情報記録面から情報が再生される。また、所定の情報記録面とは異なる他の情報記録面から情報が再生される場合、レーザ光の光スポットが所定の情報記録面から他の情報記録面に移動され、他の情報記録面から情報が再生される。
なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。
本発明に係る多層光ディスク(光記録媒体)、光記録媒体の製造方法、光情報装置及び情報再生方法は、カバー層及び中間層の屈折率が標準値と異なる場合であっても、任意の情報記録面の再生時に他の情報記録面からの反射光の影響を最小限に抑えることにより、光ヘッド装置でのサーボ信号及び再生信号への影響を低減することができ、照射された光によって情報が記録又は再生される光記録媒体、当該光記録媒体の製造方法、当該光記録媒体に情報を記録又は再生する光情報装置、及び当該光記録媒体から情報を再生する情報再生方法に有用である。
これにより、品質の良い再生信号が得られ、大容量で、かつ、既存光記録媒体との互換性を確保しやすい光記録媒体を提供することができる。
また、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNを、厚みt1,t2,・・・,tNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす厚みtr1,tr2,・・・,trNに変換することによって算出される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、上記の(9)式に示す関数f(n)の逆数と、厚みt1,t2,・・・,tNとの積によって算出される。ただし、上記の(9)式において、n=nr1,nr2,・・・,nrN。
逆に、カバー層の厚みt1と、第1中間層の厚みt2から第3中間層の厚みt4までの和との差を1μm以上確保し、かつ、カバー層の厚みt1が51μm以上となるようにするためには、(5)式及び(7)式、あるいは、図11から、屈折率noである層の厚みt1に1.086を乗じればよいことがわかる。つまり、屈折率nrである層の厚みtr1は、tr1=51×1.086≒55.4μmとなる。これによって、屈折率nrが1.70である時は形状的なカバー層の厚みtr1を55.4μm以上にする必要があることがわかる。なお、上記の例は、一例であり、本願発明は、この値にとらわれるものではない。また、屈折率が図10又は図11に記載していない数値である場合、係数は、(8)式又は(9)式に屈折率を代入して算出すればよい。
本発明の他の局面に係る光記録媒体の製造方法は、(N−1)個(Nは4以上の自然数)の情報記録面を有する光記録媒体の製造方法であって、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する前記光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNを、前記厚みt1,t2,・・・,tNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす前記厚みtr1,tr2,・・・,trNに変換することによって算出され、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とし(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)、前記厚みtr1,tr2,・・・,trNは、下記の(16)式に示す関数f(n)の逆数1/f(n)と、前記厚みt1,t2,・・・,tNとの積によって算出される。
この構成によれば、屈折率nr1,nr2,・・・,nrNを有するカバー層及び第1〜第(N−1)の中間層の形状的な厚みを、光が入射する光記録媒体の表面側から順にそれぞれtr1、tr2、・・・、trNとしたとき、厚みtr1,tr2,・・・,trNの目標値は、所定の屈折率noを有する層の厚みt1,t2,・・・,tNを、厚みt1,t2,・・・,tNによる光ビームの広がり量と同じ広がり量を起こす厚みtr1,tr2,・・・,trNに変換することによって算出される。そして、厚みtiから厚みtjまでの和と厚みtkから厚みtmまでの和との差DFFは1μm以上とする(i、j、k及びmは、i≦j<k≦m≦Nを満たす任意の自然数)。また、厚みtr1,tr2,・・・,trNは、上記の(16)式に示す関数f(n)の逆数と、厚みt1,t2,・・・,tNとの積によって算出される。