以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
まず、本発明に係る無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法、およびコンピュータ読取可能な形式で記述されたプログラムの基本的な構成について説明する。
本発明に係る無線通信装置は、互いにビーコン信号を通信する複数の無線通信装置を含む無線通信システムに用いられ、かつ、前記ビーコン信号の送信および受信の少なくとも一方を行うように構成され、無線通信を行う無線通信部と、前記ビーコン信号を間欠的に通信するために、前記無線通信部の動作タイミングを制御する通信制御部と、を備える無線通信装置であって、前記ビーコン信号として、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の送信を行うように構成され、前記通信制御部は、前記第1ビーコン信号を、予め設定されているタイミングパターンP1で送信させるとともに、前記第2ビーコン信号を、前記タイミングパターンP1より短い時間である待機時間Qが経過した後に、当該待機時間Qよりも短い時間である遅延時間Rが経過すると同時に送信させるように、前記無線通信部の動作を制御するように構成されている。
前記無線通信装置においては、時間間隔を規定するタイミングパルスを周期的に発生するクロック部をさらに備え、前記第1ビーコン信号および前記第2ビーコン信号は、前記他の無線通信装置との間で、前記クロック部の動作を互いに同期させる制御に用いられる構成であることが好ましい。
前記構成の無線通信装置においては、前記第1ビーコン信号および前記第2ビーコン信号の受信を行うように構成され、前記通信制御部は、前記第1ビーコン信号の受信を、予め設定されているタイミングパターンP2で試行させるとともに、前記第2ビーコン信号の受信を、前記タイミングパターンP2より短い時間である待機時間Qが経過した後に、当該待機時間Qよりも短い時間である遅延時間Rの経過に合わせて試行させるように、前記無線通信部の動作を制御する構成であることが好ましい。
前記構成の無線通信装置においては、前記通信制御部は、前記タイミングパターンP1またはP2を、送受信の毎回のタイミングが一定の周期である周期パターン、または、送受信の毎回のタイミングが一定の周期ではないランダムパターンとして設定している構成であればよい。
前記構成の無線通信装置においては、前記待機時間Qは、予め所定の長さとして設定される設定値であり、前記遅延時間Rは、長さが変化可能なランダム値である構成であればよい。
前記構成の無線通信装置においては、前記第2ビーコン信号は、前記遅延時間Rの長さを示す情報を含む構成であればよい。
前記構成の無線通信装置においては、前記タイミングパターンP1およびP2が周期パターンであるときに、前記通信制御部は、前記他の無線通信装置から前記第1ビーコン信号が送信される周期の整数倍の周期で、当該第1ビーコン信号の受信を試行させるとともに、当該第1ビーコン信号の受信が成功しない場合のみ、前記第2ビーコン信号を受信させるように、前記無線通信部の動作を制御する構成であればよい。
前記構成の無線通信装置においては、前記通信制御部は、前記無線通信部による前記第1ビーコン信号および前記第2ビーコン信号の受信の試行を、予め設定された受信試行上限時間内で行わせるように、前記無線通信部の動作を制御するとともに、前記受信試行上限時間は、前記第1ビーコン信号の受信を試行する場合と前記第2ビーコン信号の受信を試行する場合とで、それぞれ異なっている構成であればよい。
本発明に係る無線通信システムは、前記構成の無線通信装置を通信端末として含むものであればよいが、前記無線通信装置のうち、前記第1ビーコン信号および前記第2ビーコン信号を送信する前記無線通信装置が、データ収集を行う親無線端末であり、前記第1ビーコン信号および前記第2ビーコン信号を受信する前記無線通信装置が、前記親無線端末へ送信するためのデータを取得する子無線端末であると好ましい。
また、前記無線通信システムにおいては、前記親無線端末から送信される前記第1ビーコン信号および前記第2ビーコン信号を受信するとともに、前記子無線端末へ前記第1ビーコン信号および前記第2ビーコン信号を送信する前記無線通信装置が、前記親無線端末および前記子無線端末の間の通信を中継する中継無線端末であればよい。
また、前記無線通信システムにおいては、前記子無線端末は、流体の流量を計測する流量計から前記流量データを取得する流量取得部をさらに備え、前記親無線端末は、前記子無線端末から前記流量データを受信して収集する流量収集部をさらに備えている構成であってもよい。
また、本発明に係る無線通信方法は、ビーコン信号を間欠的に送信する無線通信装置を親無線端末として備え、前記ビーコン信号を間欠的に受信する無線通信装置を子無線端末として備えている、無線通信システムに用いられる無線通信方法であって、前記親無線端末から、第1ビーコン信号を、予め設定されているタイミングパターンP1で送信するステップと、前記子無線端末において、前記第1ビーコン信号の受信を、予め設定されているタイミングパターンP2で試行するステップと、前記親無線端末から、前記第2ビーコン信号を、前記タイミングパターンP1より短い時間である待機時間Qが経過した後に、当該待機時間Qよりも短い時間である遅延時間Rが経過すると同時に送信するステップと、前記子無線端末において、前記第2ビーコン信号の受信を、前記タイミングパターンP2より短い時間である待機時間Qが経過した後に、当該待機時間Qよりも短い時間である遅延時間Rの経過に合わせて試行するステップと、を含む方法である。
また、本発明に係る無線通信方法を実行させるプログラムは、ビーコン信号を送信する無線通信装置を親無線端末として備え、前記ビーコン信号を受信する無線通信装置を子無線端末として備えている、無線通信システムにおいて、前記ビーコン信号の送受信処理を前記無線通信装置が備えるコンピュータ上で実行するように、コンピュータ読取可能な形式で記述されたプログラムであって、前記ビーコン信号として、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号が間欠的に送受信されるように、前記無線通信装置が構成され、前記無線通信装置が前記親無線端末である場合には、前記第1ビーコン信号を、予め設定されているタイミングパターンP1で送信するステップと、前記第2ビーコン信号を、前記タイミングパターンP1より短い時間である待機時間Qが経過した後に、当該待機時間Qよりも短い時間である遅延時間Rが経過すると同時に送信するステップと、を前記コンピュータに実行させ、前記無線通信装置が前記子無線端末である場合には、前記第1ビーコン信号の受信を、予め設定されているタイミングパターンP2で試行するステップと、前記第2ビーコン信号の受信を、前記タイミングパターンP2より短い時間である待機時間Qが経過した後に、当該待機時間Qよりも短い時間である遅延時間Rの経過に合わせて試行するステップと、を前記コンピュータに実行させる構成である。
以下、前記構成の無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法、およびプログラムについて、具体的な実施の形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る無線通信システムは、本発明に係る無線通信装置として、親無線端末、中継無線端末、および子無線端末を含む近距離無線通信ネットワークとなっている。以下、本実施の形態に係る無線通信システムおよび無線通信装置について、図面を参照して具体的に説明する。
[無線通信システムの構成]
図1に示すように、本実施の形態に係る無線通信システムは、無線通信装置として、親無線端末101、中継無線端末111,121,131および子無線端末102〜104,112〜114,122〜124を含んでいる。なお、図1では、説明の便宜上、親無線端末を1台、中継無線端末を3台、子無線端末を9台図示しているが、無線通信システムの構成はこれに限定されるものではなく、これら無線通信装置は、図示されている台数を超えて含まれてもよいし、図示されている台数未満であってもよい。
親無線端末101および中継無線端末111,121,131は、後述するように、ビーコン信号を送信する側の無線通信装置(便宜上、ビーコン送信側無線通信装置と称する。)である。また、子無線端末102〜104,112〜114,122〜124は、後述するように、ビーコン信号を受信する側の無線通信装置(便宜上、ビーコン受信側無線通信装置と称する。)である。さらに、中継無線端末111,121,131もビーコン受信側無線通信装置である。したがって、中継無線端末111,121,131は、ビーコン信号を送受信できる無線通信装置である。
親無線端末101は、子無線端末102〜104および中継無線端末111それぞれに対してビーコン信号を送信可能であるとともに、子無線端末102〜104および中継無線端末111との間で、それぞれ無線によるデータ通信が可能となっている。したがって、図1においては、これら無線通信装置の間を、双方向の点線の矢印で結んでいる。親無線端末101、子無線端末102〜104および中継無線端末111は、無線通信システムの第一階層のネットワークを構成している。
また中継無線端末111は、子無線端末112〜114および中継無線端末121それぞれに対して、ビーコン信号を送信可能であるとともに、子無線端末112〜114および中継無線端末121との間でそれぞれデータ通信が可能となっている。それゆえ、中継無線端末111は、親無線端末101から見れば広義の「子無線端末」となるが、子無線端末112〜114および中継無線端末121から見れば広義の「親無線端末」となるので、中継無線端末111、子無線端末112〜114および中継無線端末121は、無線通信システムの第二階層のネットワークを構成している。
同様に、中継無線端末121は、子無線端末122〜124および中継無線端末131に対してビーコン信号を送信可能であるとともに、子無線端末122〜124および中継無線端末131との間でそれぞれデータ通信が可能となっている。それゆえ、中継無線端末121は、中継無線端末111から見れば広義の「子無線端末」となるが、子無線端末122〜124および中継無線端末131から見れば広義の「親無線端末」となるので、中継無線端末121、子無線端末122〜124および中継無線端末131は、無線通信システムの第三階層のネットワークを構成している。
さらに中継無線端末131は、図示されない複数の子無線端末および中継無線端末、あるいは複数の子無線端末に対してビーコン信号を送信可能であるとともに、これら無線通信装置との間でそれぞれデータ通信が可能となっている。それゆえ、中継無線端末131と図示されない子無線端末および中継無線端末とは、無線通信システムの第四階層のネットワークを構成しているとともに、図示されない中継無線端末を広義の「親無線端末」として第五階層の以降のネットワークが形成可能である。なお、第四階層のネットワークに中継無線端末が含まれていなければ、図1に示す無線通信システムは、第一〜第四階層のネットワークのみで構成されていることになる。
親無線端末101および中継無線端末111,121,131は、これらを広義の「親無線端末」とする広義の「子無線端末」(同一階層を構成するネットワークに属する無線通信装置)に対してビーコン信号を間欠的に送信することで、当該広義の「子無線端末」のクロック部を広義の「親無線端末」のクロック部に同期させることができる。また、広義の各「子無線端末」は、広義の「親無線端末」がビーコン信号を送信するタイミングに合わせて、当該ビーコン信号の間欠受信が行われ、当該ビーコン信号を受信するタイミングで、発呼通信を行うことができる。
親無線端末101,中継無線端末111,121,131および子無線端末102〜104,112〜114,122〜124は、本実施の形態では、それぞれ近距離無線通信ネットワークの親局、中継局および子局であり、これら局は、さらにパーソナルコンピュータ、プリンタ、スキャナ、サーバ等の情報端末等に接続されている。
[無線通信装置の構成]
次に、前述した各無線通信装置は、本実施の形態に係る無線通信装置であるが、これらについて、ビーコン信号の送受信に関係する構成を中心に、図2および図3を参照して具体的に説明する。
前記のとおり、親無線端末101、中継無線端末111,121,131は広義の「親無線端末」に相当するが、これら広義の「親無線端末」は、図2に示すように、ビーコン信号を広義の「子無線端末」に送信する機能を有する無線通信装置30Aである。以下、この無線通信装置30Aを、ビーコン送信側無線通信装置30Aと称する。
図2に示すように、ビーコン送信側無線通信装置30Aは、無線通信に関する要部構成として、無線通信部31、ビーコンタイミング制御部32、スロット制御部33、およびクロック部34を備えている。無線通信部31は、アンテナ311、送受信部312、ビーコン生成部313、ポーリング通信部314、および子機発呼通信部315から構成されている。なお、図示しないが、ビーコン送信側無線通信装置30Aは、近距離無線通信ネットワークの親局(基地局)として機能するためのさまざまな構成を備えている。
無線通信部31は広義の「子無線端末」との間で無線通信を行うものであり、特に、ビーコン信号を送信するように構成されている。まず、無線通信部31を構成するアンテナ311は、所定の帯域の電波を送受信できるものであれば特に限定されず、近距離無線通信ネットワークにおいては、典型的には、IEEE802.15.4等の規格で定められている帯域の電波を送受信可能な公知のアンテナが用いられる。
送受信部312は、アンテナ311から空中へ電波を送信したり、空中を伝わってきた電波を受信したりするために、データ信号を所定の帯域の信号に変調したり、所定の帯域の信号をデータ信号に復調したりする高周波回路(RF)である。その具体的な構成は特に限定されず、近距離無線通信ネットワークにおいては、当該分野で公知のRF回路が用いられる。
ビーコン生成部313は、ビーコン信号を生成して送受信部312に出力するものであり、後述するように、ビーコンタイミング制御部32により、ビーコン信号の生成および出力のタイミングが制御される。ビーコン生成部313の具体的な構成は特に限定されず、ビーコン信号を生成可能な公知の無線通信回路が用いられる。なお、後述するように、本発明では、ビーコン信号は1種類のみではなく、2種類生成される。
ポーリング通信部314は、広義の「子無線端末」との間でポーリング通信を行うために、ポーリング信号を生成して送受信部312に出力し、また広義の「子無線端末」から受信した信号を送受信部312から取得するものである。その具体的な構成は特に限定されず、ポーリング通信の分野で公知の無線通信回路が用いられる。
子機発呼通信部315は、広義の「子無線端末」に対する子機発呼信号を生成して送受信部312に出力し、また子機発呼信号を受信した広義の「親無線端末」から送信された接続許可信号を送受信部312から取得するものである。その具体的な構成は特に限定されず、子機発呼通信の分野で公知の無線通信回路が用いられる。
無線通信部31は、前述した各機能ユニット(functional unit)以外の構成を備えていてもよい。また、前記機能ユニットは、それぞれ単独の回路として構成されてもよいが、単一の回路基板または集積回路にまとめられてもよい。
ビーコンタイミング制御部32は、ビーコン生成部313によるビーコン信号の生成および送受信部312へのビーコン信号の出力のタイミングを制御する。したがって、ビーコンタイミング制御部32によって、ビーコン送信側無線通信装置30Aからのビーコン信号の送信タイミングが制御される。なお、ビーコンタイミング制御部32は、常時動作してもよいが、本実施の形態では、スロット制御部33の制御により、ビーコン信号を送信するタイミングに合わせて起動する構成となっている。
スロット制御部33は、無線通信部31において送受信されるデータフレームに割り当てられるタイムスロットの生成と、そのタイミング制御とを行うとともに、無線通信部31およびビーコンタイミング制御部32の動作制御も行う。また、図2から明らかなように、スロット制御部33は、ビーコンタイミング制御部32の動作を制御することで、間接的にビーコン生成部313の動作も制御していることになる。
ビーコンタイミング制御部32およびスロット制御部33は、ビーコン送信側無線通信装置30Aが備える演算部としてのCPU(図示せず)が、記憶部(図示せず)に格納されるプログラムにしたがって動作することにより実現される機能構成であるが、これに限定されず、公知のスイッチング素子、減算器、比較器等による論理回路等として構成されてもよい。
なお、ビーコンタイミング制御部32の動作はスロット制御部33の制御に連係していることから、ビーコンタイミング制御部32およびスロット制御部33は、まとめて「通信制御部」を構成していることになる。したがって、ビーコンタイミング制御部32およびスロット制御部33は、統合された単一の機能ユニットとしての「通信制御部」を構成してもよい。また、「通信制御部」の構成は、ビーコンタイミング制御部32およびスロット制御部33の組合せに限定されず、ビーコン送信側無線通信装置30Aの具体的な構成に合わせて他の機能構成を含んでもよい。
クロック部34は、時間間隔を規定するタイミングパルスを周期的に発生する。スロット制御部33は、このタイミングパルスに合わせて動作する。また、説明の便宜上、矢印を示さないが、図2に示す要部構成においては、無線通信部31を構成する各機能ユニットもクロック部34のタイミングパルスに合わせて動作する。クロック部34としては、公知のクロック発振回路が用いられる。
次に、子無線端末102〜104,112〜114,122〜124および中継無線端末111,121,131は広義の「子無線端末」に相当するが、これら広義の「子無線端末」は、図3に示すように、広義の「親無線端末」からビーコン信号を受信する機能を有する無線通信装置40Aである。以下、この無線通信装置40Aを、ビーコン受信側無線通信装置40Aと称する。
図3に示すように、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、無線通信に関する要部構成として、無線通信部41、ビーコンタイミング制御部42、スロット制御部43、クロック部44、および時間同期部45を備えている。無線通信部41は、アンテナ411、送受信部412、ビーコン受信確認部413、ポーリング通信部414、および子機発呼通信部415から構成されている。なお、図示しないが、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、近距離無線通信ネットワークの子局として機能するためのさまざまな構成を備えている。
無線通信部41は広義の「親無線端末」との間で無線通信を行うものであり、特に、ビーコン信号を受信するように構成されている。無線通信部41の構成は、基本的には無線通信部31の構成と同様であり、図3に示す要部構成においては、無線通信部31が備えるビーコン生成部313がビーコン受信確認部413に置き換わっている。
ビーコン受信確認部413は、広義の「親無線端末」から送信されたビーコン信号をアンテナ411および送受信部412を介して受信しているか否かを確認するものである。より具体的には、アンテナ411および送受信部412によるビーコン信号の受信を試行し、ビーコン信号の受信に成功したことを確認すれば、受信したビーコン信号を時間同期部45へ出力する。ビーコン受信確認部413の具体的な構成は特に限定されず、送受信部412から出力される受信信号の中からビーコン信号を選別して確認する、公知の無線通信回路が用いられる。
ビーコン受信確認部413は、常時、ビーコン信号の受信を試行してもよいが、本実施の形態では、消費電力を低減する観点から、広義の「親無線端末」からビーコン信号が送信されるタイミングに合わせて受信の試行を行うように構成されている。したがって、ビーコン受信確認部413は、ビーコンタイミング制御部42によって、ビーコン信号の受信を試行する動作のタイミングが制御される。
ここで、図1に示す中継無線端末111,121,131は、広義の「親無線端末」であるとともに広義の「子無線端末」であることから、当該中継無線端末111,121,131は、無線通信部31(あるいは無線通信部41)がビーコン生成部313およびビーコン受信確認部413を両方備えている構成となる。この場合、ビーコン生成部313およびビーコン受信確認部413は、それぞれ単独の無線通信回路であってもよいが、単一の無線通信回路としてまとめられてもよい。このように、ビーコン生成部313およびビーコン受信確認部413が単一の機能ユニットとして構成されていれば、当該機能ユニットは「ビーコン通信部」として機能することになる。
時間同期部45は、ビーコン受信確認部413から入力されるビーコン信号に基づいて、クロック部44が発生するタイミングパルスを補正する。前述のとおり、ビーコン信号は広義の「親無線端末」すなわちビーコン送信側無線通信装置30Aから送信されるので、広義の「子無線端末」に相当するビーコン受信側無線通信装置40Aのクロック部44は、ビーコン送信側無線通信装置30Aのクロック部34と同期することになる。
時間同期部45は、ビーコン受信側無線通信装置40Aが備える演算部としてのCPU(図示せず)が、記憶部(図示せず)に格納されるプログラムにしたがって動作することにより実現される機能構成であるが、これに限定されず、公知のスイッチング素子、減算器、比較器等による論理回路等として構成されてもよい。
なお、無線通信部41のうちビーコン受信確認部413以外の構成は、前述した無線通信部31の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、ビーコンタイミング制御部42、スロット制御部43、およびクロック部44の構成も、前述したビーコンタイミング制御部32、スロット制御部33、およびクロック部34の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、中継無線端末111,121,131は、前述したように、ビーコン生成部313およびビーコン受信確認部413を両方備えているか、これらがまとまった「ビーコン通信部」を備えていればよいが、また、クロック部34またはクロック部44のタイミングパルスを補正する時間同期部45は必ず備えていることになる。
[無線通信システムおよび無線通信装置の動作]
次に、本実施の形態に係る無線通信システムと、これを構成する無線通信装置30Aおよび40Aの動作について、図4(a),(b)および図5(a)〜(c)を参照して具体的に説明する。
本実施の形態では、無線通信装置30Aおよび40Aは、無線通信部31または41に、ビーコン通信部(ビーコン生成部313またはビーコン受信確認部413)と、ポーリング通信部314または414と、子機発呼通信部315または415を含んでいるので、以下、ビーコン通信、ポーリング通信、および子機発呼通信の順で、無線通信の動作を具体的に説明する。
まず、ビーコン通信について説明する。本実施の形態においては、無線通信装置30Aおよび40Aのいずれにおいても、無線通信部31または41から第1ビーコン信号および第2ビーコン信号という2種類のビーコン信号をそれぞれ異なるチャネルで送受信するように構成されている。これらビーコン信号の送受信により、無線通信装置30Aおよび40Aの間でそれぞれのクロック部34および44の同期が取られる。なお、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号は同じチャネルで送受信されてもよい。
前記2種類のビーコン信号のうち、第1ビーコン信号は主たるビーコン信号であり、ビーコン送信側無線通信装置30Aから例えば第1チャネルで間欠的に送信される。ビーコン受信側無線通信装置40Aにおいては、基本的に、この第1ビーコン信号について間欠的な受信が常に試みられる。
一方、第2ビーコン信号は、副たるビーコン信号であり、ビーコン送信側無線通信装置30Aから、例えば第1チャネルとは異なる第2チャネルで間欠的に送信される。ビーコン受信側無線通信装置40Aにおいては、第1ビーコン信号の受信が成功しなかった場合に対応すべく、この第2ビーコン信号についても間欠的に受信が試みられる。なお、第2ビーコン信号の受信は、常に試みられてもよいし、第1ビーコン信号の受信が成功しなかった場合のみに試みられてもよい。
ここで、ビーコン送信側無線通信装置30Aにおいては、ビーコンタイミング制御部32は、主たる第1ビーコン信号を周期的に送信するために、無線通信部31(より具体的には、ビーコン生成部313)を周期的に動作させる「第1通信動作制御」を行う。さらに、副たる第2ビーコン信号については、ランダムに送信するか、または、第1ビーコン信号の送信の周期から遅らせて送信するために、無線通信部31(ビーコン生成部313)を第1通信動作制御の動作タイミングから時間的にずらせて動作させる「第2通信動作制御」を行う。
また、ビーコン受信側無線通信装置40Aにおいては、ビーコンタイミング制御部42は、第1ビーコン信号を受信するために、当該第1ビーコン信号の周期的な送信に合わせて、無線通信部41(より具体的には、ビーコン受信確認部413)を周期的に動作させる「第1通信動作制御」を行う。さらに、第2ビーコン信号の受信においては、無線通信部41(ビーコン受信確認部413)の第1通信動作制御の動作タイミングから時間的にずらせて動作させる「第2通信動作制御」を行う。また、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の間欠的な受信に対応して、当該ビーコン信号を送信してきたビーコン送信側無線通信装置30Aに対して、所定のタイミングで端末発呼通信を行うことができる。
前述した無線通信装置30Aおよび40Aの基本的な動作について、図1に示す親無線端末101および中継無線端末111,121,131の間でビーコン信号が送受信される例を挙げて、より具体的に説明する。
図4(a)に示すように、親無線端末101および中継無線端末111,121,131においては、例えば1フレームが4つのタイムスロットを有する構成となっている。これらタイムスロットには、上位用スロットおよび下位用スロットの2種類のスロットが交互に設定されている。上位用スロットは、上位の無線通信装置との間で通信を行うスロットであり、下位用スロットは、下位の無線通信装置との間で通信を行うためのスロットである。なお、親無線端末101は最上位の無線通信装置であるので、上位用スロットは設定されておらず、該当するタイムスロットは未使用となっている。これらタイムスロットは、スロット制御部33またはスロット制御部43により生成され、タイミングが制御される。
第一階層に属する親無線端末101においては、下位用スロットで通信を行う無線通信装置は、同一の階層に属する中継無線端末111および子無線端末102〜104である(図1参照)。それゆえ、親無線端末101の下位用スロットには、中継無線端末111の上位用スロットが同期しているとともに、図4(a)には図示しないが、子無線端末102〜104の上位用スロットも同期している。
また、中継無線端末111は第一階層における広義の「子無線端末」であるとともに、第二階層における広義の「親無線端末」である。したがって、中継無線端末111の下位用スロットで通信を行う無線通信装置は、中継無線端末121および子無線端末112〜114である(図1参照)。それゆえ、中継無線端末111の下位用スロットには、中継無線端末121の上位用スロットが同期しているとともに、図示されない子無線端末112〜114の上位用スロットが同期している。
なお、中継無線端末121および中継無線端末131についても同様に下位用スロットおよび上位用スロットが同期しているので、その説明は省略する。
上位用スロットおよび下位用スロットはいずれも、図4(b)に示すように、ビーコンスロット、子機発呼スロット、およびポーリングスロットから構成されている。これらスロットもスロット制御部33またはスロット制御部43により生成され、タイミングが制御される。
図4(b)に示す構成では、1つの上位用スロットまたは下位用スロットのスロット長は例えば2秒(2s)であり、ビーコンスロットのスロット長は例えば100ミリ秒(100ms)であり、子機発呼スロットのスロット長は例えば900ミリ秒(900ms)であり、ポーリングスロットのスロット長は例えば1,000ミリ秒(1,000ms)である。第1ビーコン信号および第2ビーコン信号は、下位用スロットのビーコンスロットから送信され、上位用スロットのビーコンスロットで受信される。
ビーコンスロットにおける第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の送信(および受信)は、前述した第1通信動作制御および第2通信動作制御に従う。つまり、第1ビーコン信号は、ビーコンスロットの先頭で送信されるため、下位用スロットの先頭になるタイミングで周期的に送信されることになる(第1通信動作制御)。一方、第2ビーコン信号は、ビーコンスロットのスロット長である100ミリ秒の間で、例えば、ランダムなタイミングで送信される。ここで、下位用スロットにおけるビーコン信号の送信は1回のみであるので、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号は交互に送信される。それゆえ、第2ビーコン信号は、第1ビーコン信号の送信タイミングから時間的にずらされた状態で送信されることになる(第2通信動作制御)。
第1ビーコン信号および第2ビーコン信号が送信されるタイミングを、より具体的に説明する。図4(a)に示すように、例えば、第一階層の親無線端末101が下位用スロットで第1ビーコン信号を送信すると、第二階層の中継無線端末111は、その上位用スロットで第1ビーコン信号を受信する。当該中継無線端末111においては、時間同期部45により、自身のクロック部44を、親無線端末101が備えるクロック部34に同期させ、スロット制御部43は、タイムスロットのタイミングを補正する。
次に、第二階層の中継無線端末111は、次の下位用スロットで第1ビーコン信号を送信すると、第三階層の中継無線端末121は、その上位用スロットで第1ビーコン信号を受信し、クロック部44の同期とタイミングの補正とを行う。また、中継無線端末121は、さらに下位(第四階層)の中継無線端末131に対して、第1ビーコン信号の送信を行う。
ここで、第二階層の中継無線端末111において、第1ビーコン信号の受信に失敗した場合には、親無線端末101は、次の下位用スロットにおいて第2ビーコン信号を送信する。この第2ビーコン信号は、ビーコンスロットの期間内でランダムなタイミングで送信されるので、中継無線端末111は、対応する上位用スロットのビーコンスロットの期間内で、ランダムなタイミングに合わせて第2ビーコン信号を受信する。このような第2ビーコン信号の送受信は、中継無線端末111および121の間、あるいは、中継無線端末121および131の間でも行われる。
次に、ポーリング通信について説明する。親無線端末101は、ポーリング通信部314により、下位用スロットのポーリングスロットの先頭でポーリング信号の送信を開始する。中継無線端末111および子無線端末102〜104は、親無線端末101から送信されたポーリング信号を受信できるように、ポーリング通信部414により、上位用スロットのポーリングスロットの先頭で、ポーリング信号が送信されるタイミングに合わせて間欠的に受信を試行する。ポーリング通信部414は、ポーリング信号が送信されていなと判断した場合には即座に受信を中止する。ポーリング信号を受信した中継無線端末111は、下位用スロットのポーリングスロットの先頭でポーリング信号の送信を開始する。同様に、中継無線端末121,131も同様にしてポーリング通信を行う。
次に、子機発呼通信について説明する。例えば、第一階層の子無線端末102〜104において発呼が生じ、データを親無線端末101に送信したい場合には、子機発呼通信部415により、下位用スロットの子機発呼スロットの先頭で子機発呼信号の送信を開始する。親無線端末101は、子無線端末102〜104から子機発呼信号を受信できるように、子機発呼通信部315により、下位用スロットの子機発呼スロットの先頭で、送信された子機発呼信号が送信されるタイミングに合わせて間欠的に受信を試行する。子機発呼通信部315は、子機発呼信号が送信されていないと判断した場合には即座に受信を中止する。
また、例えば、第二階層の子無線端末112〜114において発呼が生じた場合には、中継無線端末111に対して前記と同様の子機発呼通信が行われる。さらに中継無線端末111は、子機発呼通信部315により、子無線端末112〜114より受信した子機発呼信号を、上位用スロットの子機発呼スロットの先頭で親無線端末101に送信する。同様に、第三階層の子無線端末122〜124、あるいは第四階層以降の子無線端末において発呼が生じた場合には、中継無線端末111,121,131を介して親無線端末101にデータが送信される。
前述したビーコン通信、前記ポーリング通信および子機発呼通信に用いられる信号の構成について説明すると、まず、ビーコン信号は、図5(a)に示すように、当該ビーコン信号より先に冗長ビット信号が存在し、また当該ビーコン信号の後にCRC信号が存在する構成となっている。冗長ビット信号は“1010・・・・・”の繰り返しからなる信号であり、CRC信号は、巡回冗長検査(Cyclic Redundancy Check)信号である。また、ビーコン信号は、ビット同期信号、フレーム同期信号、制御信号および上位(送信元)の識別符号から構成されている。ビット同期信号は“1010・・・・・”の繰り返しからなる信号であり、フレーム同期信号はデータの先頭を見つけるための信号であり、制御信号はクロック部44の同期を取るための信号である。なお、識別符号を以下IDと称する。また、ビット同期信号およびフレーム同期信号はプリアンブルである。
また、ポーリング信号および子機発呼信号は、図5(b)に示すように、繰り返しヘッダー、ビット同期信号、フレーム同期信号、およびデータから構成されている。当該データには、制御信号および上位または下位(送信元または送信先)のID等も含まれている。前記繰り返しヘッダーは、図5(c)に示すように、ビット同期信号、フレーム同期信号、および簡易IDを1組の構成要素とし、当該構成要素を複数回繰り返してなる構成である。簡易IDは、標準IDを簡略化して短縮したものである。例えば、標準IDは48ビットであり、簡易IDは、標準IDの下1バイトを取った8ビットである。
前記繰り返しヘッダーは、広義の「親無線端末」と「子無線端末」との間でキャリア検出を適切に実行するために用いられる。
すなわち、子無線端末102〜104,112〜114,122〜124にとって、第1ビーコン信号の受信は、送信された全ての第1ビーコン信号を受信するのではなく、複数回に1回ごとの受信となる。第1ビーコン信号の受信は、クロック部44の同期のためであるので、それほど頻繁に受信を行う必要はない。例えば、第1ビーコン信号の送信周期を8秒として、第1ビーコン信号が100回送信される毎に当該第1ビーコン信号を受信した場合、800秒毎の受信となる(この点については後述する)。これに対して、例えばポーリング信号の受信は、リアルタイム性を考慮した場合、間欠的な受信の周期をできるだけ短くすることが好ましい。それゆえ、上位用スロット毎のタイミングである4秒周期でポーリング信号を受信する。
ここで、子無線端末102〜104,112〜114,122〜124の電源は、AC電源ではなく電池が用いられる場合もある。この場合、これらの電力消費を抑えることが重要となる。この場合、4秒周期の受信においてキャリア検出動作を行い、キャリアがないときには即座に受信を中断することが好ましい。しかしながら、親無線端末101または上位の中継無線端末111,121,113との間で、クロック部34およびクロック部44の間に誤差が生じていると、キャリア検出動作を行ったタイミングがポーリング信号の送信タイミングとずれている場合がある。このようなタイミングのずれは、キャリア検出ができないという事態を招き、通信を失敗させることにつながる。繰り返しヘッダーは、このような事態を回避することが目的で用いられる。
クロック部44を同期させるためにビーコン信号を受信する周期は、前記のとおり、例えば800秒であるが、繰り返しヘッダーの長さは、この800秒における最大クロック誤差(後述)より長く設定される。そして、クロック誤差がない状態においては、繰り返しヘッダーの真ん中でキャリア検出するように受信タイミングが設定されている。このように設定することで、最大クロック誤差が発生しても、繰り返しヘッダーのいずれかにおいてキャリア検出を行うことができる。それゆえ、簡易IDにより概略的に受信すべき信号かどうかを判断することが可能となる。
なお、親無線端末101および中継無線端末111,121,131の電源としては、一般にAC電源が用いられるため、消費電力を気にする必要はないが、前記と同様に、繰り返しヘッダーにおいてキャリア検出を行うように構成されていると好ましい。
[ビーコン信号の送受信によるクロック部の同期]
次に、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の送受信によるクロック部44の同期について、図6(a),(b)、図7および図8を参照して具体的に説明する。
ビーコン送信側無線通信装置30A、例えば親無線端末101は、図6(a)に示すように、T1秒毎に第1ビーコン信号および第2ビーコン信号を交互に送信する。この時間T1を「ビーコン送信間隔時間」と称する。第1ビーコン信号は、ビーコン送信間隔時間の2倍、すなわち2×T1秒毎のタイミングで即座に送信される。
一方、第2ビーコン信号は、直前の第1ビーコン信号が送信されたタイミングからT1秒経過後のタイミングを基点として、さらにランダムな時間であるT3秒経過してから送信される。つまり、第2ビーコン信号は、ビーコン送信間隔時間からさらにT3秒遅延してから送信されるので、この時間T3を「ランダム遅延時間」と称する。ランダム遅延時間には最大値(上限値)T2秒が設定されているので、この時間T2を「最大遅延時間」と称する。
ビーコン送信間隔時間T1、最大遅延時間T2、およびランダム遅延時間T3の長さを比較すると、T3<T2<T1となる。一例として、T1=4秒、T2=100ミリ秒、T3=10ミリ秒×n(ただしnは0〜9のいずれか整数でランダムに選ばれる)を挙げることができる。また第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の送信時間(ビーコン信号の長さ)は10ミリ秒以下に設定されている。
ビーコン受信側無線通信装置40A、例えば、第1階層の中継無線端末111および子無線端末102〜104は、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号を受信する。ビーコン受信側無線通信装置40Aは、当初は、どのようなタイミングで第1ビーコン信号および第2ビーコン信号が送信されるか明らかではないため、ビーコン信号の受信動作を、ビーコン送信間隔時間T1秒以上にわたって継続する。なお、ビーコン信号を受信するために無線通信部41に受信動作を行わせることを「ビーコン信号の受信の試行」と称する。受信の試行をT1秒以上継続すれば、第1ビーコン信号または第2ビーコン信号は必ず受信される。
なお、T1秒以上にわたって受信動作を継続すれば、第一階層以外のビーコン送信側無線通信装置30Aである中継無線端末121または131からビーコン信号を受信する場合もあり得る。ビーコン受信側無線通信装置40Aが複数のビーコン信号を受信した場合には、ビーコン信号のレベルが所定レベル以上であって、かつ、中継段数の最も少ない無線通信装置30Aのビーコン信号を選択して、クロック部44の同期に用いる。例えば、図1に示す無線通信システムの構成では、中継無線端末131、中継無線端末121、中継無線端末111、および親無線端末101の順で中継段数が少なくなる(親無線端末101は中継段数0でありもっとも中継段数が少ない)。
ところで、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、第1ビーコン信号を受信できない場合には、第2ビーコン信号を可能な限り受信することが求められる。ここで第2ビーコン信号はランダムな送信タイミングで送信されるため、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、第2ビーコン信号の受信の試行に要する時間(受信待受け時間)を、少し長めに設定しておくことが好ましい。ただし、受信待受け時間を延長すると電力消費が大きくなる。そこで、ビーコン送信側無線通信装置30Aおよびビーコン受信側無線通信装置40Aの間では、第2ビーコン信号を送信するランダム遅延時間T3の生成パターンを共有してもよい。
例えば前述したように、ランダム遅延時間T3=10ミリ秒×n(ただしnは0〜9のいずれか整数でランダムに選ばれる)である場合について説明すると、第2ビーコン信号の送信タイミングにおける前記「n」の値を、ビーコン送信側無線通信装置30Aおよびビーコン受信側無線通信装置40Aの間で共有しておく。例えば、特定の親無線端末101のビーコン生成部313は、第2ビーコン信号の毎回の送信タイミングにおいて、nが3,7,1,5,8,2,0,9,4の順で変化するように、nの変化データを設定しておく。
上記の例では、1回目の送信タイミングではn=3であるので、ランダム遅延時間T3=30ミリ秒となり、2回目の送信タイミングではn=7であるので、ランダム遅延時間T3=70ミリ秒となり、3回目の送信タイミングではn=1であるので、ランダム遅延時間T3=10ミリ秒である(以降省略)。
前記nの変化データは、親無線端末101と同一の階層に属する広義の「子無線端末」(子無線端末102〜104および中継無線端末111)が備えるビーコン受信確認部413においても共有している。それゆえ、ビーコン受信側無線通信装置40Aにおいては、送信される第2ビーコン信号のランダム遅延時間T3の長さを予測することができ、それゆえ、受信待受け時間を可能な限り短く設定することができるので、消費電力を抑えることが可能となる。
なお、無線通信システムにおいては、前記nの変化データは、ビーコン送信側無線通信装置30Aそれぞれで異ならせるように設定しておけばよい。また、ランダム遅延時間T3の代わりに、ビーコン送信側無線通信装置30Aに予め設定された時間を待機してから第2ビーコン信号を送信するように構成してもよい。予め設定された時間の例としては、端末番号に関連した値等が挙げられる。
ここで、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号がビーコン送信側無線通信装置30Aから送信される毎に、ビーコン受信側無線通信装置40Aで受信を試行してもよいが、例えば、第1ビーコン信号が送信される周期(2×T1)の整数倍の周期で受信を試行することが好ましい。これは前述したように、ビーコン信号の送受信はクロック部44の同期を目的としているため、受信の試行を頻繁に行う必要がないためである。
なお、以下の説明では、第1ビーコン信号が送信される周期を「ビーコン送信周期」と称し、第1ビーコン信号が受信される周期を「ビーコン受信周期」と称するとともに、ビーコン送信周期の代数をCS(秒)、ビーコン受信周期の代数をCR(秒)と設定すれば、ビーコン送信周期CS=2×T1であり、ビーコン受信周期CR=CS×N(ただしNは2以上の正の整数)であることが好ましい。もちろんCR=CS(すなわちN=1)であってもよい(つまりNは1以上の正の整数であればよい)。
ビーコン受信側無線通信装置40Aにおけるビーコン受信周期について具体的に説明する。例えば、図6(b)の「(1)ビーコン送信」に示すように、ビーコン送信側無線通信装置30Aは、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号(図中、「1」が第1ビーコン信号を、「2」が第2ビーコン信号を示す。)を、ビーコン送信間隔時間T1秒毎に交互に送信する。このとき、第1ビーコン信号はビーコン送信周期CS=2×T1秒で送信されている。一方、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、第1ビーコン信号の受信をビーコン受信周期CR=CS×Nで試行する。図6(b)の「(2)ビーコン受信」に示す例では、ビーコン送信周期CS(2×T1秒)の4倍(N=4)であるので、CR=4×(2×T1)秒の周期で、第1ビーコン信号の受信を間欠的に試行している。
そして、図6(b)の「(3)受信可否」に示すように、例えば、図中1回目の受信の試行において第1ビーコン信号の受信に成功した場合(図中「○」で表示。)には、ビーコン受信周期CR=4×CSの受信タイミングで、第1ビーコン信号の受信の試行を行う。このとき、第1ビーコン信号の受信が成功しなかった(図中「×」で表示。)場合には、直後の第2ビーコン信号の受信タイミングで、当該第2ビーコン信号を受信する。この第2ビーコン信号の受信タイミングは、図6(a)に示すように、ランダム遅延時間T3秒の遅延が生じた状態である。
ここで、ビーコン受信側無線通信装置40Aにおいては、第1ビーコン信号の受信の試行タイミング(ビーコン受信周期CR)を第1ビーコン信号の送信タイミング(ビーコン送信周期CS)に同期させるため(すなわちクロック部44の同期を取るため)には、ランダム遅延時間T3の長さが判明している必要がある。つまり、ランダム遅延時間T3の長さは明らかでなければ、ビーコン送信間隔時間T1に基づくビーコン送信周期CSおよびビーコン受信周期CRの基点を確定させることができない。そこで、ビーコン送信側無線通信装置30Aは、第2ビーコン信号の信号フォーマットの中に、ランダム遅延時間T3の長さデータを挿入した上で、当該第2ビーコン信号を送信する。
ビーコン受信側無線通信装置40Aは、第2ビーコン信号を受信すると、時間同期部45において受信した第2ビーコン信号に含まれるランダム遅延時間T3の長さデータを取得し、クロック部44のタイミングパルスをT3秒補正する。これにより、クロック部44は、ビーコン送信側無線通信装置30Aのクロック部34に同期するため、第1ビーコン信号の送信周期の基準となるビーコン送信間隔時間T1の起点を確定することができる。そして、ビーコン受信側無線通信装置40Aのビーコンタイミング制御部42は、第1ビーコン信号の送信タイミング(ビーコン送信周期CS)に合わせて、ビーコン受信確認部413においてビーコン受信周期CRで受信の試行を間欠的に行う。これによって、ビーコン受信周期で第1ビーコン信号の受信に失敗して第2ビーコン信号を受信した場合でも、改めて第1ビーコン信号を受信することができる。
ところで、状況によっては、複数の無線通信システムが互いに近接した領域または重複した領域に設置されている場合があり得るが、各無線通信システムに含まれる無線通信装置は互いに同期しているとは限らず、各無線通信システムにおいて送受信されるビーコン信号も非同期状態となる可能性がある。この状況で、各無線通信システムに含まれる親無線端末101が、互いに近傍に位置していれば、それぞれの親無線端末101から、全ての「子無線端末」に対して、ビーコン送信周期CSが互いにずれたビーコン信号が送信される可能性がある。
ただし、ビーコン送信間隔時間T1は例えば4秒であり、ビーコン信号そのものの長さ(ビーコン信号の送信時間)は例えば10ミリ秒であれば、ビーコン信号の送信におけるデューティ比は1/400となる。したがって、各無線通信システムから送信されるビーコン信号同士が非同期であっても衝突する確率は低くなる。しかしながら、各無線通信システムにおいて設定されるビーコン送信間隔時間T1には若干のクロック誤差(後述)が含まれるので、ビーコン信号の送受信が長期化するとともに、各無線通信システムにおいてビーコン送信周期にクロック誤差があるため、ビーコン送信タイミングが徐々にずれていき、結果的に、互いのビーコン送信周期CSが一致してしまうことがあり得る。
ビーコン送信周期CSがひとたび一致すると、クロック誤差により当該ビーコン送信周期が再びずれていくまでには長時間を要する。この場合、第1ビーコン信号は長時間にわたって衝突状態となるので、各無線通信システムに含まれるビーコン受信側無線通信装置40Aにおいては、第1ビーコン信号を受信できなくなる。これに対して、第2ビーコン信号は、ビーコン送信周期CSの基準となるビーコン送信間隔時間T1からランダム遅延時間T3だけ遅延して送信されるので、第2ビーコン信号の送信タイミングは常に第1ビーコン信号の送信タイミングからずれることになる。
もちろん第2ビーコン信号同士が衝突する可能性はあり得るが、ランダム遅延時間T3の長さは各無線通信システムにおいて独自に決定され、かつ、最大遅延時間T2を上限として乱数的に決定される。したがって、仮に、2つの無線通信システムにおいてランダム遅延時間T3が一致して第2ビーコン信号が1回衝突したとしても、次回の送信タイミングでランダム遅延時間T3が一致する可能性は極めて低くなる。それゆえ、第2ビーコン信号同士が衝突する確率は、基本的に低い上に、連続して衝突する確率はもっと低くなる。
その結果、複数の無線通信システムにおいて、第1ビーコン信号の送信タイミング(ビーコン送信周期CS)が一致してしまい、当該第1ビーコン信号が衝突して受信できない状態が継続したとしても、第2ビーコン信号が複数回連続して衝突する可能性はほとんど無い。それゆえ、各無線通信システムにおいては、ビーコン受信側無線通信装置40Aは第2ビーコン信号を受信することによって、クロック部44の同期を取ることができる。
前述した第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の送受信を、より包括的に説明すれば、まず、ビーコン送信側無線通信装置30Aにおいては、スロット制御部33(およびビーコンタイミング制御部32)は、第1ビーコン信号を、予め設定されている周期P1(すなわちビーコン送信周期CS=2×T1)で送信させるとともに、第2ビーコン信号を、周期P1より短い時間である待機時間Q(ビーコン送信周期CSの1/2=ビーコン送信間隔時間T1)が経過した後に、当該待機時間Qよりも短い時間である遅延時間R(ランダム遅延時間T3)が経過すると同時に送信させるように、無線通信部31の動作を制御する構成となっている。
また、ビーコン受信側無線通信装置40Aにおいては、スロット制御部43(およびビーコンタイミング制御部42)は、第1ビーコン信号の受信を周期P2(ビーコン受信周期CR)で試行させるとともに、第2ビーコン信号の受信を、周期P2より短い時間である待機時間Q(ビーコン送信間隔時間T1)が経過した後に、当該待機時間Qよりも短い時間である遅延時間R(ランダム遅延時間T3)が経過すると同時に試行させるように、無線通信部41の動作を制御する構成となっている。
ここで、周期P1=周期P2=ビーコン送信周期CSでもよいが、前述したように、周期P2=ビーコン受信周期CRである方が、ビーコン受信側無線通信装置40Aの消費電力を抑えることができるため好ましい。また、待機時間Q=ビーコン送信間隔時間T1でなくてもよく、第2ビーコン信号をランダムに送受信させるか、または、第1ビーコン信号の送受信の送信タイミング(周期P1または周期P2のタイミング)から遅らせて送受信させることができれば、ビーコン送信間隔時間T1を超えてもよいし、T1未満であってもよい。
また、遅延時間Rは、最大遅延時間T2以下となるランダム遅延時間T3であればよいが、ランダムな長さでなく所定の長さであってもよい。例えば、遅延時間Rとして、予め設定時間T31、T32、T33が設定されており、第2ビーコン信号の送受信時に、この設定時間T31〜T33が周期的に変更される構成であってもよい。この構成であれば、第1ビーコン信号の送受信の送信タイミング(周期P1または周期P2のタイミング)から遅らせて第2ビーコン信号を送受信できるだけでなく、例えば、複数の無線通信システムが近接または重複した領域に設置されている場合でも、第2ビーコン信号の連続的な衝突を回避できる。
前述したビーコン信号の送受信によるクロック部の同期方法を、ビーコン送信側無線通信装置30Aのスロット制御部33(通信制御部)と、ビーコン受信側無線通信装置40Aのスロット制御部43(通信制御部)と、による制御方法あるいは無線通信方法として見れば、図7および図8に示す制御フローを例示することができる。
まず、ビーコン送信側無線通信装置30Aにおいては、図7に示すように、電源が投入されてスロット制御部33による通信制御が開始されれば、当該スロット制御部33は、クロック部34のタイミングパルスから第1ビーコン信号の送信タイミング(ビーコン送信周期CS)に達しているか否かを判定する(ステップS101)。送信タイミングに達していなければ(ステップS101でNO)、送信タイミングに達するまで判定を繰り返す。送信タイミングに達していれば(ステップS101でYES)、ビーコンタイミング制御部32を起動させ(ステップS102)、当該ビーコンタイミング制御部32は、ビーコン生成部313に第1ビーコン信号を生成させ(ステップS103)、送受信部312およびアンテナ311を介して第1ビーコン信号を送信させる(ステップS104)。
次に、スロット制御部33は、第2ビーコン信号の送信タイミングに達しているか否かを判定する(ステップS105)。送信タイミングに達していなければ(ステップS105でNO)、送信タイミングに達するまで判定を繰り返す。送信タイミングに達していれば(ステップS105でYES)、ビーコンタイミング制御部32を起動させ(ステップS106)、当該ビーコンタイミング制御部32は、ビーコン生成部313に第2ビーコン信号を生成させ(ステップS107)、送受信部312およびアンテナ311を介して第2ビーコン信号を送信させる(ステップS108)。その後、第1ビーコン信号の送信タイミングの判定(ステップS101)へ戻る。ビーコン送信側無線通信装置30Aの電源が遮断されるまで、この制御は繰り返される。
また、ビーコン受信側無線通信装置40Aにおいては、図8に示すように、電源が投入されてスロット制御部43による通信制御が開始されれば、当該スロット制御部43は、クロック部44のタイミングパルスから第1ビーコン信号の受信タイミング(ビーコン受信周期CR)に達しているか否かを判定する(ステップS201)。受信タイミングに達していなければ(ステップS201でNO)、受信タイミングに達するまで判定を繰り返す。受信タイミングに達していれば(ステップS201でYES)、ビーコンタイミング制御部42を起動させ(ステップS202)、当該ビーコンタイミング制御部42は、ビーコン受信確認部413に第1ビーコン信号の受信を試行させる(ステップS203)。
その後、ビーコンタイミング制御部42は、ビーコン受信確認部413に第1ビーコン信号の受信に成功したか否かを判定させる(ステップS204)。第1ビーコン信号の受信に成功すれば(ステップS204でYES)、ビーコンタイミング制御部42は、時間同期部45にクロック部44のタイミングパルスを補正する(ステップS209)。これにより、クロック部44は、ビーコン送信側無線通信装置30Aのクロック部34に同期する。
一方、第1ビーコン信号の受信に成功していなければ(ステップS204でNO)、スロット制御部43は、クロック部44のタイミングパルスから第2ビーコン信号の受信タイミングに達しているか否かを判定する(ステップS205)。受信タイミングに達していなければ(ステップS205でNO)、受信タイミングに達するまで判定を繰り返す。受信タイミングに達していれば(ステップS205でYES)、ビーコンタイミング制御部42を起動させ(ステップS206)、当該ビーコンタイミング制御部42は、ビーコン受信確認部413に第2ビーコン信号の受信を試行させる(ステップS207)。
ビーコン受信確認部413が第2ビーコン信号の受信に成功しなければ(ステップS208でNO)、再び第1ビーコン信号の受信タイミングの判定(ステップS201)に戻る。一方、第2ビーコン信号の受信に成功すれば(ステップS208でYES)、ビーコンタイミング制御部42は、時間同期部45にクロック部44のタイミングパルスを補正する(ステップS209)。これにより、クロック部44は、ビーコン送信側無線通信装置30Aのクロック部34に同期する。その後、再び第1ビーコン信号の受信タイミングの判定(ステップS201)に戻る。ビーコン受信側無線通信装置40Aの電源が遮断されるまで、この制御は繰り返される。
なお、前記構成の無線通信方法は、ビーコン送信側無線通信装置30Aおよびビーコン受信側無線通信装置40Aを備えている無線通信システムにおいて、無線通信装置30Aおよび40Aが備える演算装置(マイクロコンピュータ等)上で実行するように、コンピュータ読取可能な形式で記述されたプログラムとして調製することができる。
このように、ビーコン受信側無線通信装置40Aが何らかの事情で第1ビーコン信号の受信に成功しなかった場合(例えば、親無線端末101の近傍に非同期の無線通信システムが存在し、たまたまビーコン送信周期が一致してしまった場合等)であっても、第2ビーコン信号を受信することができるため、ビーコン受信側無線通信装置40Aのクロック部44と、ビーコン送信側無線通信装置30Aのクロック部34とは、同期を取ることができる。また、第1ビーコン信号を適切に受信できる状態であれば、一定のビーコン送信周期CS(2×T1)で送信される第1ビーコン信号を、ビーコン受信周期CRで間欠的に受信することにより、クロック部34およびクロック部44の同期を取ることができるので、特にビーコン受信側無線通信装置40Aの起動時間を短くして電力消費を抑えることができる。すなわち、本実施の形態によれば、ビーコン信号の妨害に対して有効に対応できるとともに、電力消費を抑えることの両立を図ることができる。
[ビーコン信号の受信試行上限時間]
ここで、ビーコン受信側無線通信装置40Aにおいては、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の受信の試行に際して、クロック誤差の発生を考慮に入れて試行を開始するように構成されていることが特に好ましい。この点について、図6(c)を参照して具体的に説明する。
まず、前記クロック誤差について説明する。一般的な無線通信装置が備えるクロック部は、基準発振源として水晶振動子を用いて水晶発振信号を発振させる構成である。この水晶発振信号の周波数に生じる誤差(周波数誤差)は、温度変化等を考慮すれば最大±100ppmである。
そして、無線通信システムにおいては、ビーコン送信側無線通信装置30Aおよびビーコン受信側無線通信装置40Aのいずれも、それぞれ独自にクロック部34またはクロック部44を備えている。ここで、クロック部34における周波数誤差が最大±100ppmであり、クロック部44における周波数誤差が最大±100ppmであるとすれば、相対的な周波数誤差は、最大で±200ppmとなる。このように、クロック部34およびクロック部44の間で生じる相対的な周波数誤差を、本明細書では「クロック誤差」と称する。
前述したようにビーコン受信側無線通信装置40Aにおいて、ビーコン送信側無線通信装置30Aから送信される第1ビーコン信号の受信に成功して、クロック部44を同期させることができたとしても、次の第1ビーコン信号を受信するまでの時間で当該クロック部44とクロック部34との間に、無視し得ないクロック誤差が生じる。
例えば、前述したようにビーコン送信間隔時間T1=4秒であれば、ビーコン送信側無線通信装置30Aは、ビーコン送信周期CS=2×T1=8秒毎に第1ビーコン信号を送信し、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、ビーコン受信周期CR=4×(2×T1)=8×T1=32秒毎に第1ビーコン信号の受信を試行する(図6(b)参照)。それゆえ、ビーコン受信周期CR=32秒の間では、クロック部34およびクロック部44のクロック誤差は、最大で、±200ppm×32秒=±6.4ミリ秒となる。前記のとおり、ビーコン信号の長さ(送信時間)は10ミリ秒以下であるので、このクロック誤差は、ビーコン信号の受信に影響する。
そこで本実施の形態では、クロック誤差によるビーコン信号の受信の失敗を回避するために、ビーコン受信確認部413による受信の試行に際して、図6(c)に示すように、予め受信試行上限時間(あるいは受信タイムアウト時間)T6またはT7を設定しておく。受信試行上限時間T6は、ビーコン送信周期CS=2×T1で送信される第1ビーコン信号を受信するために設定され、受信試行上限時間T7は、ビーコン送信周期CSの後にランダム遅延時間T3経過(待機)してから送信される第2ビーコン信号を受信するために設定されている。
具体的には、図6(c)の「(1)ビーコン送信」に示すように、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号は、当該ビーコン信号に先立って冗長ビット信号が存在している(図5(a)も参照)。それゆえ、図6(c)の「(2)ビーコン受信」に示すように、受信試行上限時間T6またはT7は、この冗長ビット信号を含めたビーコン信号の長さ以上となるように設定される。なお、図6(c)の「(2)ビーコン受信」に示すように、ビーコン信号の受信動作は、ビーコン信号の長さよりも少し長い時間となる。
さらに、ビーコン信号の送信タイミングの起点PSと、受信タイミングの起点PRとは、通常であれば一致すべきであるが、クロック誤差が生じれば大きくずれることになる。例えば、図6(c)の「(2)ビーコン受信」に示すように、最大クロック誤差の代数をX(秒)と設定すれば、送信タイミングの起点PRは、受信タイミングの起点PSよりも最大でX秒前にシフトする。
つまり、最大クロック誤差Xは、ビーコン受信側無線通信装置40Aがビーコン受信周期CRに応じて変化する。ビーコン受信周期CR=CS×N(ただしNは1以上の正の整数)であるので、最大クロック誤差X=(2×T1)×N×200ppmで計算される。したがって、ビーコン受信周期CRを考慮すれば、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、受信の試行を、第1ビーコン信号の送信タイミングの起点PSよりもX秒だけ早めに開始すればよい。したがって、受信試行上限時間T6またはT7は、冗長ビット信号の長さ、ビーコン信号の長さおよび最大ロック誤差Xを加算した長さと略等しくなるように設定される。
なお、図6(c)に示す模式図は、冗長ビット信号およびビーコン信号を強調したものであり、実際の時間の長さを反映させたものではない。前述したように、ビーコン送信間隔時間T1=4秒の例であれば、ビーコン信号の長さ(送信時間)は10ミリ秒以下に設定されるが、最大クロック誤差Xは6.4ミリ秒となり得る。したがって、受信試行上限時間T6またはT7の長さの上限は、最大クロック誤差Xが、起点PSよりも先(−X)ではなく後に生じる(+X)ことも考慮して、最大クロック誤差Xの2倍とすればよい。したがって、ビーコン信号の長さをT8とすれば、受信試行上限時間T6は、(X+T4+T8)<T6<2×Xとなる。また、受信試行上限時間T7は、最大クロック誤差Xに加えて、最大遅延時間T2も考慮する必要があるので、(X+T2+T4+T8)<T7<(2×X+T2)となる。
ここで、ビーコン受信確認部413によるビーコン信号の受信の試行では、冗長ビット信号を検出できれば、それに続くビーコン信号を受信することができる。それゆえ、受信試行上限時間T6またはT7の間では、ビーコン信号の受信の試行を開始する前に、最初に冗長ビット信号の検出を試みる。図6(c)の「(1)ビーコン送信」に示すように、冗長ビット信号の長さはT4であるが、当該冗長ビット信号の構成は、前述したように“1010・・・・・”の繰り返しからなるので、冗長ビット信号の検出を試行する冗長ビット検出試行時間T5は、冗長ビット信号の長さT4を超えない範囲で、前記の繰り返しが確認できる程度の長さに設定されればよい(T5<T4)。
ビーコン受信側無線通信装置40Aが、受信試行上限時間T6またはT7において、冗長ビット信号の検出を試行する動作について、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の受信の試行とともに、具体的に説明する。
まず、ビーコン受信側無線通信装置40Aのビーコン受信確認部413においては、最大クロック誤差±Xを考慮して受信試行上限時間T6およびT7が予め設定され、かつ、冗長ビット検出試行時間T5が予め設定されている。それゆえ、ビーコンタイミング制御部42は、最大クロック誤差Xを吸収するために、第1ビーコン信号の送信タイミング(起点PS)よりX秒だけ早め(起点PR)に、ビーコン受信確認部413に冗長ビット信号の検出動作を開始させる。この検出動作は、受信試行上限時間T6秒の間に、冗長ビット検出試行時間T5の間隔で検出の試行を複数回繰り返すことにより行われる。
このように検出の試行を繰り返すことで、受信試行上限時間T6内に冗長ビット信号を必ず検出することができるので、第1ビーコン信号を適切に受信することができる。そして、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、冗長ビット信号を検出すると、受信試行上限時間T6をキャンセルして、第1ビーコン信号の受信を継続すればよい。
次に、第1ビーコン信号が受信できず、第2ビーコン信号を受信する場合について説明すると、第2ビーコン信号の冗長ビット信号もT4の長さであるので、最大クロック誤差Xを吸収するために、第1ビーコン信号の送信タイミングよりX秒だけ早めに、ビーコン受信確認部413に冗長ビット信号の検出動作を開始させる。このとき、受信試行上限時間T7が予め設定されているので、前記検出動作は、受信試行上限時間T7秒の間に、冗長ビット検出試行時間T5の間隔で検出の試行を複数回繰り返すことにより行われる。
このように検出の試行を繰り返すことにより、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、受信試行上限時間T7内に冗長ビットを必ず検出することができるので、第2ビーコン信号を適切に受信することができる。そして、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、冗長ビット信号を検出すると、受信試行上限時間T7をキャンセルして、第2ビーコン信号の受信を継続すればよい。
ここで、受信試行上限時間T6およびT7の具体的な長さの一例を挙げれば、まず、受信試行上限時間T6は、第1ビーコン信号の長さ10ミリ秒のせいぜい2倍までに設定すればよい。その理由は、本実施の形態の一例では、第1ビーコン信号は10ミリ秒程度であり、消費電流を考慮しても最大クロック誤差Xは、一般に、第1ビーコン信号の長さ10ミリ秒より小さく算出されることによる。また、受信試行上限時間T7は、110ミリ秒より少し大きな値に設定すればよい。その理由は、本実施の形態の一例では、最大遅延時間T2は最大90ミリ秒であり、最大ロック誤差Xは前記のとおり10ミリ秒程度であることによる。それゆえ、ビーコン信号の受信に際して受信試行上限時間T6およびT7を設定しても、ビーコン受信側無線通信装置40Aの消費電力に与える影響は微々たるものとなる。
なお、図6(c)に示す「(1)ビーコン送信」における冗長ビット信号およびビーコン信号の送信時間と、「(2)ビーコン受信」におけるビーコン信号の受信時間とは、ビーコン送信側無線通信装置30Aのクロック部34と、ビーコン受信側無線通信装置40Aのクロック部44との間で、クロック誤差が生じていない理想的な状態を示している。実際にクロック誤差が生じた場合には、冗長ビット信号およびビーコン信号の送信期間は、ビーコン信号の受信時間に対して、最大クロック誤差±Xの範囲内で前後にずれることになる。
このように、ビーコン受信側無線通信装置40Aは、最大クロック誤差±Xより少し長い受信試行上限時間T6の間、冗長ビット検出試行時間T5毎に、第1ビーコン信号の冗長ビット信号について検出の試行を繰り返せばよい。これによって、第1ビーコン信号同士の衝突等がない限り、当該第1ビーコン信号を適切に検出することができる。そのため、第1ビーコン信号を受信するために、ビーコン受信確認部413およびビーコンタイミング制御部42の起動時間をより短くすることができ、それゆえ、ビーコン受信側無線通信装置40Aの電力の消費を抑えることができる。
そして、第1ビーコン信号が検出できなかったときには、最大クロック誤差±Xに最大遅延時間T2を加えた時間よりも少し長い受信試行上限時間T7の間、冗長ビット検出試行時間T5毎に、第2ビーコン信号の冗長ビット信号について検出の試行を繰り返せばよい。これによって、第2ビーコン信号も適切に検出することができる。ここで、第2ビーコン信号の受信を試行する回数は、第1ビーコン信号の受信を試行する回数に比べ非常に小さい。さらに、第2ビーコン信号を受信する場合であっても、その前に冗長ビット信号の検出をT5毎に試行するため、ビーコン受信側無線通信装置40A全体の電力消費に与える第2ビーコン信号の受信の影響は微々たるものである。
以上のように、本実施の形態によれば、広義の「親無線端末」および広義の「子無線端末」のいずれにおいても標準電波時計機能を有する必要がないので、回路規模が大きくなることが回避され、それゆえコストの増大も回避できる。さらに、広義の「親無線端末」同士の通信範囲が重なり、それぞれの「親無線端末」から送信されるビーコン信号同士が衝突して干渉が発生しても、無線通信システムがダウンすることなくクロック部の同期を取ることができる。
[変形例]
本実施の形態では、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号は交互に送信されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1ビーコン信号を1回のみ送信し、かつ、第2ビーコン信号を複数回(例えば4回)送信する構成としてもよいし、第1ビーコン信号を複数回(例えば4回)送信し、かつ、第2ビーコン信号を1回のみ送信する構成であってもよい。さらに、状況に応じて第2ビーコン信号のみを送信するように構成してもよい。なお、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の送信比率は、電力消費とビーコン信号が妨害を受けたときの耐性との兼ね合いから決定されればよい。
また、本実施の形態では、ビーコン送信側無線通信装置30Aにおいて、第1ビーコン信号を、予め設定されている周期P1(ビーコン送信周期CS)で送信させ、また、ビーコン受信側無線通信装置40Aにおいて、第1ビーコン信号の受信を、予め設定されている周期P2(ビーコン受信周期CR)で試行させる構成となっている。つまり、本実施の形態では、ビーコン信号の送受信のタイミングは周期的なパターン(周期パターン)となっているが、本発明はこれに限定されず、さまざまなタイミングパターンで送受信を行うことができる。
すなわち、本発明に係る無線通信装置においては、第1ビーコン信号の送受信のタイミングパターンP1またはP2は、(1)送受信の毎回のタイミングが一定の周期である周期パターンであればよいが、(2)送受信の毎回のタイミングが一定の周期ではないランダムパターン(非周期パターン)であってもよい。このランダムパターンとしては、送受信の毎回のタイミングが異なる間隔となる完全ランダムパターン、送受信の複数回毎のタイミングが異なる間隔となる準ランダムパターン(すなわち送受信の複数回のタイミングでは一定の周期となるパターン)、あるいはこれらを組み合せたパターン等が挙げられる。さらに、前記(1)または(2)以外の他のパターンであってもよい。すなわち、本発明においては、ビーコン送信側無線通信装置およびビーコン受信側無線通信装置の間でタイミングパターンを共有していればよい。
また、前記構成においては、無線通信システムの一例として近距離無線通信ネットワークを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、モバイル通信、構内無線通信網、交通機関用無線、防災行政無線網、ガス、水道、電力等のメータ用無線検針システム等にも適用することができる。なお、無線検針システムについては、実施の形態2で具体的に説明する。
また、本発明には、次に説明する構成の無線通信装置等も含まれる。すなわち、本発明に係る無線通信装置は、ビーコン生成手段と、前記ビーコン生成手段を起動してビーコンを定期的に送信するタイミングを制御するスロット制御手段とを有し、前記スロット制御手段は予め決められたビーコン送信回数ごとのビーコン送信タイミングIIにおいてはランダム或いは予め決められた時間遅らせて前記ビーコン生成手段を起動して第2ビーコン信号を送信し、前記スロット制御手段は前記ビーコン送信タイミングII以外のビーコン送信タイミングIにおいては即座に前記ビーコン生成手段を起動して第1ビーコン信号を送信する構成とした無線通信装置である。
また、本発明に係る他の無線通信装置は、ビーコン生成手段と、前記ビーコン生成手段を起動してビーコンを定期的に送信するタイミングを制御するスロット制御手段とを有し、前記スロット制御手段は予め決められたビーコン送信回数ごとのビーコン送信タイミングIIにおいてはランダム或いは予め決められた時間遅らせて前記ビーコン生成手段を起動して第2ビーコン信号を送信し、前記スロット制御手段は前記ビーコン送信タイミングII以外のビーコン送信タイミングIにおいては即座に前記ビーコン生成手段を起動して第1ビーコン信号を送信する構成とした無線通信装置より送信される前記第1ビーコン信号或いは第2ビーコン信号を受信する無線通信装置であって、ビーコン受信手段と、前記ビーコン受信手段を起動してビーコンを定期的に受信するタイミングを制御するスロット制御手段と、を有し、前記スロット制御手段は前記ビーコン受信手段を起動して前記第1ビーコン信号を受信させ、前記第1ビーコン信号の受信状況により前記第2ビーコン信号が送信されるタイミングで前記ビーコン受信手段を起動するかどうか判断する構成とした無線通信装置である。
前記無線通信装置においては、前記ビーコン送信タイミングIと前記ビーコン送信タイミングIIが交互に起動される構成としたスロット制御手段であって、前記第1ビーコン信号と前記第2ビーコン信号を交互に出力する構成であってもよい。
前記無線通信装置においては、前記ビーコン送信タイミングIIだけのタイミングで動作するスロット制御手段である構成であってもよい。
前記無線通信装置においては、前記スロット制御手段は、前記第1ビーコン信号が送信されるタイミングの整数倍の周期で前記ビーコン受信手段を起動し、前記ビーコン受信手段で前記第1ビーコン信号が受信できなかったときのみ次の第2ビーコン信号が送信されるタイミングで前記ビーコン受信手段を起動するように構成であってもよい。
前記無線通信装置においては、前記スロット制御手段は、前記第1ビーコン信号を受信するときと前記第2ビーコン信号を受信するときで前記ビーコン受信手段の受信タイムアウト時間を変更する構成であってもよい。
前記無線通信装置においては、前記構成の無線通信装置の少なくとも一部をコンピュータに実現させるためのプログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、等のハードリソースを協働させて本発明の少なくとも一部を簡単なハードウェアで実現できる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることで、プログラムの配布または更新、あるいはそのインストール作業が簡単にできる。
本発明に係る無線通信方法は、ビーコン生成手段と、前記ビーコン生成手段を起動してビーコンを定期的に送信するタイミングを制御するスロット制御手段とを有し、前記スロット制御手段は予め決められたビーコン送信回数ごとのビーコン送信タイミングIIにおいてはランダム或いは予め決められた時間遅らせて前記ビーコン生成手段を起動して第2ビーコン信号を送信し、前記スロット制御手段は前記ビーコン送信タイミングII以外のビーコン送信タイミングIにおいては即座に前記ビーコン生成手段を起動して第1ビーコン信号を送信する無線通信方法である。
本発明の無線通信装置、無線通信方法、及びプログラムを用いることにより、複数の通信システムが近傍に存在してもビーコン信号のお互いの干渉を防止し通信システムがダウンすることを防ぐことができる。
また、本発明に係る無線通信システムは、互いにビーコン信号を送受信する複数の無線通信装置を含む無線通信システムであって、前記ビーコン信号として、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の2種類が用いられ、前記第1ビーコン信号を周期的に送信するとともに、前記第2ビーコン信号を、前記第1ビーコン信号の送信タイミングから時間的にずらせて送信する、ビーコン送信側無線通信装置と、前記第1ビーコン信号の受信を、当該第1ビーコン信号の送信の周期に合わせて、周期的に試行するとともに、前記第2ビーコン信号の受信を、当該第2ビーコン信号の送信のタイミングに合わせて試行するビーコン受信側無線通信装置と、を含む構成であるということができる。
あるいは、本発明に係る無線通信装置は、互いにビーコン信号を送受信する複数の無線通信装置を含む無線通信システムに用いられ、かつ、前記ビーコン信号の送信および受信の少なくとも一方を行うように構成され、無線通信を行う無線通信部と、前記ビーコン信号を間欠的に送受信するために、前記無線通信部の動作タイミングを制御する通信制御部と、を備える無線通信装置であって、前記無線通信部は、前記ビーコン信号として、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号を送受信するよう構成され、前記通信制御部は、前記第1ビーコン信号を周期的に送受信させるために、前記無線通信部を周期的に動作させる第1通信動作制御と、前記第2ビーコン信号を、前記第1ビーコン信号の送受信タイミングから時間的にずらせて送受信させるために、前記無線通信部を、前記第1通信動作制御の動作タイミングから時間的にずらせて動作させる第2通信動作制御と、双方を行うように構成されている構成であるということができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る無線通信システムおよび無線通信装置は、ガスメータ用無線検針システムに適用されたものである。本実施の形態に係る無線通信システムおよび無線通信装置について、図9ないし図11を参照して具体的に説明する。
図9に示すように、本実施の形態に係る無線通信システムは、無線親機201、中継無線端末211,221,231、並びに、無線子機202〜204,212〜214,222〜224から構成されている。無線親機201が実施の形態1における親無線端末101に対応し、中継無線端末211,221,231が実施の形態1における中継無線端末111,121,131に対応し、無線子機202〜204,212〜214,222〜224が実施の形態1における子無線端末102〜104,112〜114,122〜124に対応する。また、無線子機202〜204,212〜214,222〜224には、それぞれガスメータ502〜504,512〜514,522〜524が接続されている。
このガスメータ用無線検針システムにおいては、無線親機201からのポーリング通信により、無線子機202〜204,212〜214,222〜224に接続されたガスメータ502〜504,512〜514,522〜524のガス検針データを、無線親機201に収集する。収集されたガス検針データは、例えば無線親機201に接続された公衆回線を利用してデータセンタに送信する。なお、中継無線端末211,221,231は、ガス検針データを中継する機能だけでもよいが、「無線子機」の機能も有してもよい。この場合、これら中継無線端末211,221,231にもガスメータが接続される。
また、無線親機201,中継無線端末211,221,231は、図10に示すビーコン送信側無線通信装置30Bに対応し、無線子機202〜204,212〜214,222〜224および中継無線端末211,221,231は、図11に示すビーコン受信側無線通信装置40Bに対応する。
ビーコン送信側無線通信装置30Bの構成は、基本的には、前記実施の形態1におけるビーコン送信側無線通信装置30Aと同様であるが、ガスメータ502〜504,512〜514,522〜524から取得されビーコン受信側無線通信装置40Bから送信されるガス検針データ(つまり、ガスの流量データ)を、送受信部312で受信して収集するための流量収集部35を備えている。また、ビーコン受信側無線通信装置40Bの構成も、基本的には、前記実施の形態1におけるビーコン送信側無線通信装置30Aと同様であるが、それぞれのガスメータ502〜504,512〜514,522〜524からガス検針データ(ガスの流量データ)を取得して送受信部412に出力する流量取得部46を備えている。
また、ビーコン送信側無線通信装置30Bおよびビーコン受信側無線通信装置40Bにおいて、ポーリング通信部314,414で行われるポーリング通信は、ガスメータ502〜504,512〜514,522〜524からのガス検針データを無線親機201に収集するために、当該無線親機201からポーリング信号を送信するための通信である。また、子機発呼通信部315,415で行われる子機発呼通信は、無線子機202〜204,212〜214,222〜224に接続されたガスメータ502〜504,512〜514,522〜524から信号を受け、無線親機201,中継無線端末211,221,231に送信するための通信である。つまり、ビーコン受信側無線通信装置40Bが備える子機発呼通信部415は、流量取得部46で得られたガス検針データを子機発呼通信として送信する。
次に、典型的な無線通信システムではなく、ガスメータ用無線検針システムに独自の課題に関して具体的に説明する。
ガスメータは10年間交換なしに電池電源で動作するよう構成され、AC電源を備える構成はほとんど存在しない。そのため、ガスメータに取り付けられる無線通信装置は、電池駆動で10年間電池交換なしに動作する必要がある。それゆえ、無線通信装置は、所定の周期で間欠的に受信動作を行い、自局あての電波が検出できなければ、すぐに受信(受信の試行)を中止し待機状態になるという間欠受信動作を行っている。また、ガスメータの検針は、頻繁に測定する必要はなく、せいぜい1日1回程度であり、それゆえ無線通信の頻度は大きくない。
そこで、通信頻度の観点から、典型的なガスメータ用無線検針システムでは、いわゆる非同期方式という方式が用いられている。非同期方式とは、送信したい情報(送信情報)が発生した時だけ、通信相手の間欠受信周期よりも長いヘッダー信号をつけて、前記送信情報を送信する方法である。通信相手は間欠受信周期よりも長いヘッダー信号を検出することができ、当該ヘッダー信号を検出すると、受信を継続してヘッダー信号に続いて送られてくる前記送信情報を受信することができる。具体的な間欠受信周期としては、電池消耗を抑えるために、通常、20秒という長めの時間が設定されている。
ここで、近年では、コスト削減を目的として、単一の無線親機で多数のガスメータの検針値を収集しようとする一対複数の無線通信システムが検討されている。さらに無線親機でデータ収集ができるガスメータの数を増やすために、中継機能を有する一対複数の無線通信システムも検討されている。このような一対複数の無線通信システムでは、当該無線通信システム全体での通信回数が多くなる。その結果、従来の非同期方式では、1回の通信あたり、間欠受信周期として20秒以上の長さのヘッダー信号を送信する必要が生じる。
そのため、従来のガスメータ用無線検針システムであれば、無線通信システム全体のトラフィックが悪化するとともに、自局宛でないヘッダー信号を受信する回数も多くなり、消費電流が増大する傾向にあった。また、無線親機および無線子機それぞれが装備するクロック部を基準とし、さらに同期合わせ信号が定期的に受信できずに時間がかかった場合、送受信タイミングの誤差が大きくなり、間欠受信のタイミングで受信している時間が長くなり消費電力が大きくなる傾向にあった。
これに対して、本実施の形態に係るガスメータ用無線検針システムは、前記実施の形態1で説明したように、回路規模が大きくなることが回避され、それゆえコストの増大も回避できるものとなっている。さらに、第1ビーコン信号同士が衝突して干渉が発生しても、第2ビーコン信号の送受信により、無線通信システムがダウンすることなくクロック部の同期を取ることができ、しかも、第1ビーコン信号および第2ビーコン信号の送受信は非常に効率的に行われるので、消費電力の増大を有効に抑制することができる。
なお、本実施の形態では、ガスメータからガス流量データ(ガス検針データ)を自動収集する構成を例示しているが、本発明はこれに限定されず、水道、電気などの流量を検針するシステムであってもよいことはいうまでもない。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。