JPWO2011004517A1 - 標的核酸の検出方法、及び大腸癌の検査方法 - Google Patents

標的核酸の検出方法、及び大腸癌の検査方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、糞便から直接回収した核酸から標的核酸を検出する場合に、信頼性の高い検出結果を簡便に得るための方法、及び当該方法を利用した疾患、特に大腸癌の検査方法を提供する。本発明の動物由来の標的核酸の検出方法は、(a)一定量の糞便を採取する工程と、(b)前記工程(a)において採取された糞便から核酸を回収し、一定容量の核酸溶液を調製する工程と、(c)前記工程(b)において調製された核酸溶液から一定容量の溶液を分取し、この分取された溶液中の標的核酸を検出する工程とを有することを特徴とする。

Description

本発明は、糞便中に含まれる動物由来の核酸を高精度に検出するための方法、及び該検出方法を利用した大腸癌の検査方法に関する。
本願は、2009年7月6日に日本国に出願された特願2009−159848号に基づき優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
遺伝子解析は、近年の遺伝子操作技術や遺伝子組換え技術等の進歩に伴い、医療、学術研究、産業等の多くの分野において広く応用されている。例えば、糞便、唾液や血液等の体液、口腔粘膜や子宮粘膜等の粘膜や粘液等の生体試料中に含まれるRNAやDNAを回収し、各試料間の核酸の特徴を比較することによって、癌や、細菌(バクテリア)・ウィルス・寄生虫等による感染症等の疾患を診断することが行われている。
遺伝子解析は、通常、試料中に、解析対象である標的遺伝子と相同的な塩基配列を有する核酸(標的遺伝子由来核酸)が存在するか否かを検出することにより行われるが、臨床検査における検体等のように、検体が微量である場合や試料中の核酸濃度が非常に薄い場合には、試料中の標的遺伝子由来核酸を増幅して解析を行うことが多い。このような核酸の増幅には、PCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)法が最も一般的に用いられている。例えば、遺伝病、疾病感受性、癌等の診断において、異常細胞特異的なmRNA等の標的核酸をPCR増幅して検出する方法が、広く用いられている。
結腸直腸癌は、日本では死亡原因の第1位、米国では癌による死亡原因の第2位である。米国では結腸直腸癌が毎年約130万人に発見されており、約5万人が死亡し、死亡原因の第3位となっている。このため、癌対策が急務である。
大部分の直腸結腸癌は、はじめは小さな良性腺腫から、悪性腫瘍へと数十年かけてゆっくりと進行するため、早期に発見されれば外科的処置が有効であり、完治可能となる。例えば良性腺腫であれば、開腹手術よりも低侵襲である内視鏡的切除も可能である。また、悪性腫瘍であっても、早期であれば内視鏡的切除が可能であり、さらには進行癌でも外科的処置が多くの場合有効である。この緩やかな進行のために、予防及び介入の機会が多くある。したがって、結腸直腸腺腫・腫瘍は、早期の検出・除去によって罹患率と死亡率を大幅に下げることが可能である。
しかしながら、現在行われている腺腫・癌の検出方法、例えば、結腸・直腸腺腫・腫瘍のスクリーニング検査法(便潜血検査、注腸X線造影検査、S状結腸内視鏡検査、全大腸内視鏡検査等)には様々な問題が存在している。
例えば便潜血検査は、便中に含まれる血液を検査し、流血している腺腫・腫瘍を間接的に検出するものである。しかし、早期腺腫・腫瘍の場合には偽陰性となりやすいため、感度は十分とはいえない。また、腺腫・腫瘍以外の原因による腸管出血(痔など)があった場合に偽陽性となってしまうため、特異度が高いとはいえない。
注腸造影検査は、下剤で前処置を十分行った後、肛門からバリウムと空気を注入し、X線写真をとるものである。この検査方法では、癌の正確な位置や大きさ、腸の狭さの程度等がわかるため、形の大きな進行癌は検出できる一方、形の小さな早期癌や平らな扁平癌は検出しにくいという欠点がある。
S状結腸内視鏡検査、全大腸内視鏡検査は、下剤で前処置を十分行った後、ビデオスコープで腸内観察する方法である、この検査方法のための前処置には、2〜3リットルの下剤を服用することが必要であるため、被検者に辛い負担となる。さらに、検査中、穿孔が発生する場合があり、そのため本方法はスクリーニング検査として不適とされている。
このように、上記のような現在の検査法は、腺腫・癌の検診方法として必要十分な性能を満たしているとは言えない。そこで、侵襲度が低く、感度・特異度の高い検査方法が望まれている。
近年、糞便中の癌遺伝子を増幅し、解析することによって大腸癌を検出する方法が開示されている。例えば、特許文献1及び非特許文献1には、癌細胞由来の核酸に多く観察される非アポトーシス性DNAを検出することによって大腸癌を検査する方法、特に、Alu反復領域・アルフォイド反復領域や、p53等の癌関連遺伝子の断片長の差異に基づいて大腸癌を検査する方法が開示されている。
このように、糞便中の癌細胞由来の核酸等の核酸を解析するためには、糞便から高品質の核酸を回収することが重要である。例えば、糞便中には、消化残留物やバクテリアが大量に含まれているため、核酸は非常に分解されやすいという問題がある。また、糞便から回収された核酸に、糞便中の夾雑物が持ち込まれることにより、解析精度が損なわれるという問題もある。このため、より信頼性の高い核酸解析結果を得るために、糞便から、分解等を防止しつつ精製度の高い核酸を回収するための方法の開発がなされている。
例えば特許文献2には、糞便をゲル氷点未満の温度まで冷却することによって便の構造を安定化させ、この状態の糞便からの細胞を分離し、そこから抽出したDNAを解析する方法が開示されている。その他、糞便試料からRNAを回収する方法として、非特許文献2には、糞便試料からタンパク質等の夾雑物を除去した後、フェノールとカオトロピック塩を用いてRNAを抽出し、抽出されたRNAをさらにシリカ含有固形支持体に吸着させることにより回収する方法が開示されている。
また、糞便から細胞を分離回収せずに、糞便から直接核酸を回収する方法もある。例えば特許文献3には、糞便中の癌遺伝子を解析するための、糞便サンプルの調整方法が開示されている。これは、糞便サンプルを、糞便質量1に対して、少なくとも5の溶媒比でホモジナイズした後、DNAを、細菌のDNAを含めて回収する方法である。また、特許文献4には、採取された糞便をRNA分解酵素阻害剤の存在下で均質化し、調製された懸濁物から直接RNAを抽出し、癌遺伝子であるCOX2(cyclooxygenase−2)遺伝子の転写産物を検出する方法が開示されている。
さらに、糞便中には、胆汁酸やその塩等の、PCR(Polymerase Chain Reaction)等の核酸増幅反応に対して阻害作用を有する物質が含まれている(例えば、非特許文献3参照。)。例えば、大人の平均的な排泄糞便量は、約200〜400g/日とされるが、健常人ではその糞便中に200〜650mg/日の胆汁酸が排泄されるという報告がある。すなわち、便1gあたりに換算した場合、健常人で約0.5mg〜3.25mg、患者でその10倍の胆汁酸が含まれることになる。一方で、胆汁酸塩によるPCRの阻害効果は、50μg/mL程度の濃度で生じるとの報告もある。したがって、糞便から核酸を抽出し、それをPCR等で増幅する場合は、増幅効率を向上させるために、胆汁酸塩等の核酸増幅反応阻害物質のキャリーオーバーを防止することが望ましい。
特表2005−514073号公報 特表平11−511982号公報 特表2002−539765号公報 日本国特許第4134047号公報
ボイントン(Boynton)、外3名、2003年、クリニカル・ケミストリー(Clinical Chemistry )、第49巻第7号、第1058〜1065ページ。 アレクサンダー(Alexander)、外1名、1998年、ダイジェスティブ・ディシーシズ・アンド・サイエンシズ(Digestive Diseases and Sciences)、第43巻第12号、第2652〜2658ページ。 ウィルソン(Wilson IG)、アプライド・アンド・エンバイロメンタル・マイクロバイオロジー(APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY)、1997年、第63巻、第3741〜3751ページ。
特許文献2記載の方法においては、糞便試料を冷却しながら細胞を分離している。この分離操作を冷却せずに行うと、糞便試料の変質等により正しい検出結果を得ることができなくなってしまうためであり、糞便試料の変質を効果的に防止するためには、採便直後に冷却することが重要である。しかしながら、検診等のように家庭において採便が行われる場合には、採取後速やかに糞便試料を冷却することは非常に困難であり、現実的ではない。
また、特許文献2記載の方法や非特許文献2記載の方法において行われているように、糞便から夾雑物を除去し、標的となる遺伝子を持つ細胞を分離し、そこから核酸を回収する方法には、細胞を分離する工程が煩雑であり、検査のコストアップにつながるという問題に加えて、細胞を分離する工程後に回収される核酸は、収量が低く、工程による収量の損失が大きいという問題もある。このため、糞便から核酸を回収する場合には、ヒト由来細胞と細菌由来細胞を区別せず、混在した状態で回収するほうが望ましい。
特許文献3及び4に記載されている方法では、糞便から細胞を分離する工程なしに核酸を回収している。しかしながら、糞便から直接核酸を回収した場合には、細胞を分離した後に回収する方法に比べて、回収後の核酸に糞便中の夾雑物が大量に持ち込まれてしまうにもかかわらず、これらの方法では、胆汁酸や胆汁酸塩等の核酸増幅反応阻害物質のキャリーオーバーについては、一切考慮されておらず、核酸解析結果の信頼性が十分ではないという問題がある。
本発明は、糞便中の解析対象である標的核酸を検出する方法であって、煩雑な細胞分離操作を要することなく、糞便から直接核酸を回収した場合であっても、信頼性の高い検出結果を簡便に得ることができる方法、及び当該方法を利用した疾患、特に大腸癌の検査方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、糞便から直接回収した核酸を核酸検出反応に用いる方法において、糞便量当たり所定の核酸溶液量となるように糞便から核酸を回収し、この回収された核酸溶液のうちの所定容量を核酸検出反応に用いることにより、糞便から回収された核酸を定量し、一定量の核酸を核酸検出反応に用いた場合よりも、信頼性の高い検出結果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 糞便試料から糞便を排泄した動物由来の標的核酸を検出する方法であって、(a)一定量の糞便を採取する工程と、(b)前記工程(a)において採取された糞便から核酸を回収し、一定容量の核酸溶液を調製する工程と、(c)前記工程(b)において調製された核酸溶液から一定容量の溶液を分取し、この分取された溶液中の標的核酸を検出する工程と、を有することを特徴とする動物由来の標的核酸の検出方法、
(2) 前記工程(a)が下記工程(a’)であり、前記工程(c)において検出された標的核酸の量を、前記工程(a)において採取された糞便量に基づいて補正することを特徴とする前記(1)記載の動物由来の標的核酸の検出方法;(a’)糞便を採取し、糞便量を測定する工程、
(3) 前記補正が、前記工程(c)において検出された標的核酸の量を、前記工程(a’)において採取された糞便量で除することによりなされることを特徴とする前記(2)記載の動物由来の標的核酸の検出方法、
(4) 前記工程(a)が下記工程(a’)であり、前記工程(b)が下記工程(b’−1)であることを特徴とする前記(1)記載の動物由来の標的核酸の検出方法;(a’)糞便を採取し、糞便量を測定する工程、(b’−1)前記工程(a’)において採取された糞便から核酸を回収し、前記工程(a’)において採取された糞便量に比例した容量の核酸溶液を調製する工程、
(5) 前記工程(b’−1)が下記工程(b’−2)であることを特徴とする前記(4)記載の動物由来の標的核酸の検出方法;(b’−2)前記工程(a’)において採取された糞便又はその固形成分に、前記工程(a’)において採取された糞便量に比例した容量の抽出用溶液を混合し、当該抽出用溶液に抽出した核酸を回収し、前記工程(a’)において採取された糞便量に比例した容量の核酸溶液を調製する工程、
(6) 前記工程(a)が下記工程(a’)であり、前記工程(b)が下記工程(b”)であることを特徴とする請求項1記載の動物由来の標的核酸の検出方法;(a’)糞便を採取し、糞便量を測定する工程、(b”)前記工程(a’)において採取された糞便又はその固形成分に、前記工程(a’)において採取された糞便量に比例した容量の抽出用溶液を混合して核酸を抽出した後、当該抽出用溶液から一定容量の溶液を分取し、この分取された溶液中の核酸を回収し、一定容量の核酸溶液を調製する工程、
(7) 糞便量が、重量、体積、固形成分体積、及び吸光度からなる群より選択される1以上の測定値により規定されることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法、
(8) 前記標的核酸がRNAであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法、
(9) 前記標的核酸がヒト由来の核酸であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法、
(10) 前記標的核酸が消化器系疾患のマーカー遺伝子由来の核酸であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法、
(11) 前記標的核酸が癌のマーカー遺伝子由来の核酸であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法、
(12) 前記標的核酸が大腸癌のマーカー遺伝子由来の核酸であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法、
(13) 前記(1)〜(8)のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法を用いて、疾患の罹患の有無を検査する方法であり、前記標的核酸を前記疾患のマーカー遺伝子由来の核酸とし、前記(1)〜(8)のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法により検出された当該標的核酸の量から、予め設定された閾値に基づき、糞便が採取された動物が前記疾患に罹患しているか否かを判定することを特徴とする疾患の検査方法、
(14) 大腸癌の罹患の有無を、糞便中の大腸癌のマーカー遺伝子由来の核酸を検出することにより検査する方法であって、前記標的核酸を、大腸癌患者において発現量が増大する大腸癌マーカー遺伝子由来の核酸とし、前記(1)〜(8)のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法を行って検出された標的核酸の量が、予め設定された閾値以上である場合に、当該糞便が採取されたヒトは大腸癌に罹患していると判定し、前記閾値未満である場合に、大腸癌に罹患していないと判定することを特徴とする大腸癌の検査方法、
(15) 前記標的核酸が、COX2(cyclooxygenase−2)遺伝子由来核酸であることを特徴とする前記(14)記載の大腸癌の検査方法、
を提供するものである。
本発明の動物由来の標的核酸の検出方法により、夾雑物の多い糞便から直接回収した核酸を核酸検出反応に用いる場合であっても、従来になく信頼性の高い検出結果を得ることができる。また、糞便から回収した核酸の定量工程及び濃度調整工程が省略されるため、標的核酸の検出にかかる労力及びコストが削減される上に、コンタミネーション等のリスクも低減される。
一定量の糞便を採取可能な採便容器の一態様を示した図である。 一定量の糞便を採取可能な採便容器の一態様を示した図である。 一定量の糞便を採取可能な採便容器の一態様を示した図である。 一定量の糞便を採取可能な採便容器の一態様を示した図である。 一定量の糞便を採取可能な採便容器の一態様を示した図である。 実施例1において、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を示したグラフである。 実施例1において、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を示したグラフである。 ペレットの高さと固形成分体積との相関を示したグラフである。 実施例2において、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を示したグラフである。 実施例2において、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を示したグラフである。 実施例3において、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を示したグラフである。 実施例3において、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を示したグラフである。 実施例3において、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を示したグラフである。 実施例3において、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を示したグラフである。 実施例3において、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を示したグラフである。
一般的に、核酸解析において用いられる各種反応の反応系には、一定量の核酸が含まれるように調製される。これは、反応系に適当量の核酸が存在しない場合には、十分な検出感度が担保されないと考えられているためであり、反応系にどの程度の量の核酸を添加するかは、経験的に決定されている。また、比較的近似した複数の検体を解析する場合には、各反応系に用いる核酸量を一定量に揃えておくことにより、各検体間の結果を比較検討しやすくなる。
従来法では、糞便から回収した核酸を用いる場合にも、その他の生体試料から回収された核酸と同様に、回収された核酸から一定量の核酸を核酸解析の反応系に用いていた。具体的には、例えば、特定の遺伝子の発現産物(mRNA)を標的核酸とした場合に、糞便中の標的核酸を検出するためには、まず、糞便からRNAを抽出して定量した後、得られたRNAを適宜希釈して一定濃度のRNA溶液を調製し、このRNA溶液を用いて逆転写反応を行った後、得られたcDNAを鋳型としてPCR等の核酸増幅反応を行うことにより標的核酸を検出していた。
これに対して本発明の標的核酸の検出方法は、糞便から回収された核酸を、逆転写反応や核酸増幅反応等の核酸検出反応に用いる際に、一定量の核酸を用いるのではなく、回収に供された糞便量を基準とし、予め設定された一定量の糞便から回収された核酸を用いることを特徴とする。回収に供された糞便量を基準とすることにより、実際に回収された核酸量を基準とした場合よりも信頼性の高い検出結果が得られる理由は明らかではないが、核酸検出反応の反応系に持ち込まれる糞便由来の阻害物質の量を適当量に抑制することができるためではないかと推察される。
糞便から核酸を回収する際に、回収された核酸へ持ち込まれる糞便由来の阻害物質量は、核酸回収操作に供された糞便の量や状態、回収操作に依存し、実際に回収された核酸量とはほとんど相関しない。そもそも、糞便はヘテロジニアス、つまり、多種多様な成分が不均一に存在しているため、同一人から採取した糞便であっても、採取する部位によって、回収される核酸量が変動し易い。これに対して、回収する条件が同じである場合には、一定量の糞便から回収された核酸へ持ち込まれる阻害物質量は、回収された核酸量が多い場合と少ない場合とにおいて、あまり大きな違いはなく、その存在量の範囲は個体差の範囲に収まる。
つまり、糞便から回収された核酸量が十分であった場合には、その後の核酸検出反応に用いられる核酸量は、回収された核酸のうちのごく一部で済むため、反応系へ持ち込まれる阻害物質量も、ごく少量で済む。逆に、回収された核酸量が少量であった場合には、回収された核酸の大部分が核酸検出反応に用いられることになるため、過剰量の阻害物質が反応系へ持ち込まれてしまう。この結果、反応系へ添加した核酸量は等量であるにもかかわらず、反応系に持ち込まれた阻害物質量が異なるために、糞便から十分量の核酸が回収された場合には標的核酸が検出されたにも関わらず、少量の核酸が回収された場合には標的核酸が検出されない(すなわち、擬陰性)、という結果が生じてしまう。
本発明の動物由来の標的核酸の検出方法においては、核酸検出反応に用いられる核酸量を、予め設定された一定の量の糞便から回収された核酸量とすることにより、反応系へ持ち込まれる阻害物質量を適当な量に抑制することができる。さらに、多数の検体を処理する場合にも、各糞便から同じ条件で核酸を回収し、予め設定した一定量の糞便から回収された量に相当する核酸量を、続く核酸検出反応に用いることにより、反応系に持ち込まれた阻害物質による影響を、個体差程度に抑えることができる。
なお、本発明及び本願明細書において、阻害物質とは、核酸解析において汎用されている核酸増幅反応に対して阻害的に作用する物質を意味する。具体的には、胆汁酸、胆汁酸塩等が挙げられる。また、本発明において、核酸増幅反応とは、PCR等のようなDNAポリメラーゼによる核酸伸長を伴う増幅反応を意味する。
また、糞便には腸内常在菌等のバクテリアが大量に含まれており、糞便から回収された核酸の大部分は、バクテリア由来の核酸である。つまり、糞便から回収された核酸量(重量又は濃度)は、その糞便を排泄した動物由来の核酸の存在を反映しているものではなく、これらを基準とすることは、バクテリア由来の核酸を基準とすることになるため、かえって検出結果にノイズを与えることになる。本発明の標的核酸の検出方法は、回収された核酸量を基準としないことにより、従来法よりも核酸検出反応により得られた検出結果のノイズを低減させることができる。
特に、本発明は、大腸癌患者又はその疑いのある者(大腸癌罹患の有無の判別が要される被検者を含む)から採取された糞便に対して行われることが好ましい。大腸癌患者と健常人では胆汁酸の総量は変らないという報告もなされているものの(Mudd DG, et al.、An international journal of gastroenterology and hepatology、第21巻、第587〜590ページ。)、実際に核酸増幅反応等の効率の比較を行なってみると(例えば、後記実施例4等参照。)、健常人に比べて大腸癌患者では、こうした阻害が多く見られ、通常の組織を用いた検査方法と同様に回収された核酸量を基準とした場合には、癌の検出感度・特異度に悪影響を及ぼすことがわかってきたためである。
具体的には、本発明の動物由来の標的核酸の検出方法(以下、「本発明の検出方法」ということがある。)は、糞便試料から動物由来の標的核酸を検出する方法であって、下記工程(a)〜(c)を有することを特徴とする。
(a) 一定量の糞便を採取する工程と、
(b) 前記工程(a)において採取された糞便から核酸を回収し、一定容量の核酸溶液を調製する工程と、
(c) 前記工程(b)において調製された核酸溶液から一定容量の溶液を分取し、この分取された溶液中の標的核酸を検出する工程。
以下、工程ごとに説明する。
まず、工程(a)として、予め設定された一定量の糞便を採取する。採取する糞便の量は、特に限定されるものではないが、例えば、重量として10mg〜1gであることが好ましい。糞便量があまりに多くなってしまうと、採取作業に手間がかかり、採便容器も大きくなってしまうため、取り扱い性等が低下するおそれがある。逆に糞便量があまりに少量である場合には、糞便中に含まれる大腸剥離細胞等の哺乳細胞数が少なくなりすぎるため、必要な核酸量を回収できず、目的の核酸解析の精度が低下するおそれがある。また、前述したように、糞便はヘテロジニアスであるため、哺乳細胞の局在の影響を避けるために、採糞時には、糞便の広範囲から採取することが好ましい。
なお、本発明の検出方法に供される糞便は、動物のものであれば特に限定されるものではないが、哺乳動物由来のものであることが好ましく、ヒト由来のものであることがより好ましい。例えば、定期健診や診断等のために採取されたヒトの糞便であることが好ましいが、家畜や野生動物等の糞便であってもよい。また、採取後一定期間保存されたものであってもよいが、採取直後のものであることが好ましい。さらに、採取された糞便は、排泄直後のものであることが好ましいが、排泄後時間を経たものであってもよい。
工程(a)において、糞便量は、各検体間で比較可能な測定値により規定される量であれば特に限定されるものではなく、例えば、糞便の重量であってもよく、体積(容量)であってもよく、固形成分体積であってもよい。糞便の重量や体積は、常法により測定することができる。また、固形成分体積は、例えば、遠心分離処理やフィルター濾過等の処理等の公知の固液分離処理により、糞便から液体成分を除去した後の残渣(固形成分)の体積を常法により測定することができる。
また、糞便量は、検体間で比較可能であればよく、物理的に厳密な量である必要はない。例えば、糞便をそのまま、又は適当な溶媒を添加して懸濁液として、遠心分離処理を行い、ペレット(沈殿した固形成分)の高さを、各糞便の固形成分体積の測定値としてもよい。その他、糞便を適当な溶媒に投入して得られた懸濁液又はその上清の吸光度を、各糞便の固形成分体積の測定値としてもよい。これは、溶液中に固形成分が多いほど、吸光度が大きくなることを利用している。
糞便の採取方法は特に限定されるものではなく、最終的に所定量の糞便が採取可能ないずれの方法を用いてもよい。例えば、所定の体積量の糞便が回収可能な採便棒を含む公知の採便容器を用いることができる。糞便を採取する採便容器に、予め、抽出用溶液を添加しておくことにより、糞便採取後速やかに核酸抽出工程を行うことができる。その他、採取した糞便は、工程(b)を行うまで、適当な保存用溶液中に懸濁させた状態で保存していてもよい。例えば、採便容器に予め適当な保存用溶液を添加しておき、この採便容器に採取した糞便を投入することにより、採便容器内で糞便を保存することができ、また、核酸抽出・解析工程を行う場所まで輸送することもできる。
図1は、所定量(体積)の糞便が回収可能な採便棒と一体化した採便容器の一態様を示した図である。先端が尖っている採便棒13と一体化した蓋12と、容器本体11とを有する採便容器である。採便棒13には、糞便Eを一定量採取し得る穴13aが空いている。また、採便棒13上をスライドすることにより穴13aの蓋となり得る可動蓋13bも付いている。図1Aのように、まず、採便棒13を、可動蓋13bを穴13aよりも蓋12側に寄せて、穴13aが完全に開口している状態とした後に、糞便Eに押し付ける。すると、図1Bに示すように、穴13aに糞便Eが充填される。この状態で、可動蓋13bをスライドさせて穴13aに蓋をすることにより、穴13aの容量の糞便を正確に採取することができる(図1C)。その後、可動蓋13bを元の位置に戻して穴13aが完全に開口している状態とした後に(図1D)、蓋12を容器本体11に収納する(図1E)。容器本体11に、予め適当な保存用溶液Sを添加しておいた場合には、蓋12の収納により採取された糞便は保存用溶液Sに浸漬される結果、次の工程(b)まで安定して保存することが可能になる。このような採便容器は、家庭でも安全に取り扱うことが出来る。
次に、工程(b)として、工程(a)において採取された糞便から核酸を回収し、一定容量の核酸溶液を調製する。本発明においては、糞便を、細胞や夾雑物等の分離操作を行うことなく、糞便に含まれている全ての生物種の核酸、主に当該糞便を排泄した動物由来の核酸と腸内常在菌等のバクテリア由来の核酸とを同時に糞便から抽出し回収する。ここで、糞便に含まれている核酸としては、動物由来の核酸とバクテリア由来の核酸に加えて、当該動物が摂取した食物由来の核酸等が挙げられる。
工程(b)においては、糞便から回収した核酸を、最終的に予め設定された一定量の核酸溶液として調製すればよく、糞便からの核酸の回収方法は、特に限定されるものではなく、当該技術分野において公知の方法の中から適宜選択して用いることができる。糞便から回収する核酸は、DNAであってもよく、RNAであってもよく、DNAとRNAの両方であってもよい。本発明においては、特にRNAを回収することが好ましい。
例えば、糞便又はその固形成分に、抽出用溶液を添加することにより、糞便由来の固形成分(以下、単に「固形成分」ということがある。)中のタンパク質を変性させ、この固形成分中の哺乳細胞や腸内常在菌等の細胞から核酸を溶出させた後、この溶出させた核酸を回収することにより、糞便由来の固形成分から核酸を回収することができる。
抽出用溶液を添加する前に、採取された糞便にその他の溶液、例えば、適当な保存用溶液を添加して懸濁液としていた場合には、当該懸濁液から固形成分を回収し、この回収した固形成分に抽出用溶液を添加する。懸濁液からの固形成分の回収は、遠心分離処理やフィルター濾過等の処理等の公知の固液分離処理により行うことができる。なお、回収された固形成分を、適当なバッファーにより洗浄した後に、抽出用溶液を添加してもよい。
抽出用溶液としては、固形成分中のタンパク質を変性させ、この固形分中の哺乳細胞や腸内常在菌等の細胞から、核酸を抽出用溶液中に溶出させることが可能な溶液であれば、特に限定されるものではなく、当該技術分野において用いられているいずれの溶液を用いてもよい。例えば、カオトロピック塩、有機溶媒、界面活性剤等の、通常タンパク質の変性剤として用いられている化合物を有効成分として適当な溶媒に添加した溶液を、抽出用溶液として用いることができる。なお、これらの有効成分は2種類以上を組み合わせたものであってもよい。
抽出用溶液の有効成分となり得るカオトロピック塩としては、例えば、塩酸グアニジン、グアニジンイソチオシアネート、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、及びトリクロロ酢酸ナトリウム等がある。抽出用溶液の有効成分となり得る界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。該非イオン性界面活性剤として、例えば、Tween80、CHAPS(3−[3−コラミドプロピルジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、Triton X−100、Tween20等がある。カオトロピック塩や界面活性剤の濃度は、固形成分から核酸を溶出可能な濃度であれば、特に限定されるものではなく、糞便量(固形成分量)と抽出用溶液との混合比や、回収された核酸の検出方法等を考慮して、適宜決定することができる。
抽出用溶液の有効成分となり得る有機溶媒としては、フェノールであることが好ましい。フェノールは中性であってもよく、酸性であってもよい。酸性のフェノールを用いた場合には、DNAよりもRNAを選択的に水層に抽出することができる。
これらの有効成分を添加して抽出用溶液を調製する溶媒としては、例えば、リン酸バッファーやトリスバッファー等を用いることができる。高圧蒸気滅菌等により、DNaseを失活させた薬剤であることが好ましく、さらにプロテイナーゼK等のタンパク質分解酵素を含有させた薬剤であることがより好ましい。一方、RNAを回収する場合には、該溶出用薬剤として、例えば、クエン酸バッファー等を用いることができるが、RNAは非常に分解されやすい物質であるため、チオシアン酸グアニジンや塩酸グアニジン等のRNase阻害剤を含有したバッファーを用いることが好ましい。
糞便又はその固形成分に添加される抽出用溶液の量は、特に限定されるものではなく、工程(a)において採取された糞便量、抽出用溶液の種類等を考慮して、適宜決定することができる。
糞便又はその固形成分と抽出用溶液とは、速やかに混合することが好ましい。なお、糞便等と抽出用溶液を混合する方法は、物理的手法により混合する方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、予め抽出用溶液を入れておいた密閉可能な容器に、採取された糞便等を投入して密閉した後、該容器を上下に転倒させることにより、混合してもよく、該容器をボルテックス等の振とう機にかけることにより混合してもよい。
固形成分から抽出用溶液に溶出された核酸を回収し、この回収された核酸を予め設定された一定容量の核酸溶液調製用溶媒に溶解させることにより、核酸溶液を調製する。核酸溶液調製用溶媒として用いられる溶媒は、通常、精製された核酸の溶液を調製するために用いられる溶媒の中から、その後の検出方法を考慮して適宜決定することができる。このような溶媒として、例えば、精製水等が挙げられる。
抽出用溶液に溶出させた核酸の回収は、例えば、エタノール沈殿法や塩化セシウム超遠心法等の公知の手法で行うことができる。このようにして回収した核酸に、水等の適当な溶媒を適宜添加することにより、一定容量の核酸溶液を調製することができる。
また、抽出用溶液に溶出させた核酸を無機支持体に吸着させた後、この吸着させた核酸を、一定容量の溶媒を用いて無機支持体から溶出させることにより、一定容量の核酸溶液を調製することができる。核酸を吸着させる無機支持体は、核酸を吸着することができる公知の無機支持体を用いることができる。また、該無機支持体の形状も特に限定されるものではなく、粒子状であってもよく、膜状であってもよい。該無機支持体として、例えば、シリカゲル、シリカ質オキシド、ガラス、珪藻土等のシリカ含有粒子(ビーズ)や、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ニトロセルロース等の多孔質膜等がある。吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる溶媒は、回収する核酸の種類やその後の核酸解析方法等を考慮して、これらの公知の無機支持体から核酸を溶出するために通常用いられている溶媒を適宜用いることができる。該溶出用溶媒として、特に精製水であることが好ましい。なお、核酸を吸着させた無機支持体は、核酸を溶出させる前に、適当な洗浄バッファーを用いて洗浄することが好ましい。
核酸を回収する前に、核酸が溶出された抽出用溶液から、変性させたタンパク質を除去してもよい。核酸を回収する前に、予め変性させたタンパク質を除去することにより、回収される核酸の品質を向上させることができる。抽出用溶液からのタンパク質の除去は、公知の手法で行うことができる。例えば、遠心分離により、変性タンパク質を沈殿させて上清のみを回収することにより、変性タンパク質を除去することができる。また、クロロホルムを添加し、ボルテックス等により充分に攪拌混合させた後に遠心分離を行い、変性タンパク質を沈殿させて上清のみを回収することにより、単に遠心分離を行う場合よりも、より完全に変性タンパク質を除去することができる。
なお、工程(b)は、核酸抽出キット等の市販のキットを用いて行うこともできる。市販の核酸抽出キットでは、一般的に、所定量の糞便から、所定量の抽出用溶液を用いて核酸を抽出し、所定量の核酸溶液として核酸を回収する方法が採用されているためである。
さらに、工程(c)として、工程(b)において調製された核酸溶液から一定容量の溶液を分取し、この分取された溶液中の標的核酸を検出する。つまり、この分取された一定容量の溶液を、逆転写反応や核酸増幅反応等の核酸検出反応に用いる。このように、工程(c)において調製された核酸溶液の濃度にかかわらず、予め設定された容量の核酸溶液を核酸検出反応に用いることにより、過剰量の糞便由来の阻害物質が、核酸検出反応の反応系に持ち込まれることを防止することができる。さらに、従来法のように、UV測定等により核酸溶液の濃度を測定した後、一定濃度に希釈釈する工程を要しないため、検出操作にかかる時間と手間を減らし、それに伴うコンタミネーションや核酸の分解のリスクを下げることができる。
例えば健康診断では、通常、被検者が糞便を目分量で採取するため、定められた一定量の糞便を採取することは困難な場合も多い。このように採取される糞便量にばらつきがある場合であっても、最終的に検出された標的核酸量を、糞便量に基づいて補正することにより、本発明の効果を得ることができる。これは、本発明の効果が、核酸検出反応へ供される核酸溶液を一定量の糞便量から回収された核酸とすることにより、核酸検出反応へ核酸とともに持ち込まれる糞便由来の阻害物質量を一定量の糞便量から持ち込まれる量に揃えることによって得られる効果であると推察されるためである。
具体的には、まず、工程(a’)として、適当量の糞便を採取し、この糞便量を測定する。糞便量の測定は、工程(a)と同様に、各検体間で比較可能な測定値により規定される量であれば特に限定されるものではない。中でも、糞便の重量、体積(容量)、固形成分体積、及び吸光度からなる群より選択される1種以上を測定することが好ましい。
その後、採取された糞便を用いて、工程(b)及び(c)を行った後、検出された標的核酸の量を、回収された糞便量で除することにより、採取された糞便量のばらつきによる測定結果のばらつきを補正することができ、予め一定量の糞便を回収した場合と同様に、阻害物質による影響が低減された信頼性の高い検出結果が得られる。
その他、採取される糞便量にばらつきがある場合に、抽出用溶液に溶出させた核酸を回収し、核酸溶液を調製する際に、採取された糞便量に比例した容量となるように核酸溶液を調製することによっても、採取された糞便量のばらつきを補正することができる。ここで、「糞便量に比例した容量」とは、単位糞便量当たりから回収された核酸が、一定の容量の核酸溶液に調製されることを意味する。例えば、採取された3検体の糞便量が、それぞれ1g、1.5g、2gとばらついていた場合であって、糞便量が1gであった検体から回収された核酸を100μLの核酸溶液に調製した場合には、糞便量が1.5gであった検体から回収された核酸を150μL(1.5×100μL)の核酸溶液に調製し、糞便量が1.5gであった検体から回収された核酸を200μL(2×100μL)の核酸溶液に調製する。
さらに、採取された糞便又はその固形成分に添加する抽出用溶液の液量を、採取された糞便量に比例した容量となるようにした後、抽出用溶液に溶出させた核酸を回収し、核酸溶液を調製する際に、採取された糞便量に比例した容量となるように核酸溶液を調製することにより、採取された糞便量のばらつきに依存した核酸へ持ち込まれる阻害物質量のばらつきをより効果的に低減することができる。
また、採取された糞便又はその固形成分に添加する抽出用溶液の液量を、採取された糞便量に比例した容量となるようにした後、当該抽出用溶液から一定容量の溶液を分取し、この分取された溶液中の核酸を回収し、一定容量の核酸溶液を調製することによっても、最終的に回収された核酸溶液に持ち込まれる阻害物質量のばらつきを低減させることができる。
複数の糞便検体をこのように調製することにより、いずれの検体においても、得られた核酸溶液の一定容量に含まれる核酸及び阻害物質の量は、一定量の糞便中に含まれていた核酸及び阻害物質の量に相当する。このため、それぞれの核酸溶液から分取された一定容量の溶液を核酸検出反応に用いることにより、各反応系に持ち込まれる阻害物質量の検体間の差が、糞便中に含まれる阻害物質量の濃度の個体差程度に抑えられ、予め一定量の糞便を回収した場合と同様に、阻害物質による影響が低減された信頼性の高い検出結果が得られる。
標的核酸の検出方法は、特に限定されるものではなく、特定の核酸の検出及び解析に用いられている公知のいずれの手法を用いて行ってもよい。例えば、PCR等の核酸増幅反応を用いて増幅反応産物を解析することにより特定の塩基配列領域を検出する方法等がある。その他、RNAを回収した場合には、糞便から回収したtotal RNAを、逆転写反応によりcDNA化した後、得られたcDNAを用いて、DNAと同様にして解析に用いることができる。
なお、本発明における標的核酸とは、検出又は定量等の解析対象である核酸であり、PCR等の通常核酸の解析に用いられる手法によって解析可能な程度に明らかになっている塩基配列を有する核酸であれば、特に限定されるものではない。例えば、動物由来のDNAやmRNA等がある。標的核酸としては、mRNA等のRNAであることが好ましい。また、本発明においては、糞便を排泄する動物由来の核酸であれば特に限定されるものではないが、哺乳細胞由来の核酸であることが好ましく、ヒト由来の核酸であることがより好ましい。
例えば、適当な標的核酸を設定することにより、癌遺伝子等がコードされている塩基配列領域や、マイクロサテライトを含む塩基配列領域等の遺伝的変異の有無を検出することができ、これにより、癌の発症の有無を調べることができる。糞便試料から回収されたDNAを用いた場合には、例えば、DNA上のメチル化や、塩基の挿入、欠失、置換、重複、又は逆位等の変異を検出することができる。また、回収されたRNAを用いた場合には、例えば、RNA上の塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアント(アイソフォーム)等の変異を検出することができる。また、RNA発現量を検出することもできる。特に、mRNAの発現解析、K−ras遺伝子の変異解析、及びDNAのメチル化の解析等を行うことが好ましい。なお、これらの解析は、当該分野において公知の方法により行うことができる。また、K−ras遺伝子変異解析キット、メチル化検出キット等の市販の解析キットを用いてもよい。
本発明においては、糞便から回収される核酸であることから、大腸、小腸、胃等の消化管細胞由来の核酸を標的核酸とすることが好ましく、大腸剥離細胞由来の核酸を標的核酸とすることがより好ましい。
特に、新生物性転化(癌を含む)のマーカー遺伝子や炎症性消化器疾患のマーカー遺伝子由来の核酸を標的核酸とすることが好ましく、大腸癌のマーカー遺伝子由来の核酸を標的核酸とすることがより好ましい。なお、「遺伝子由来の核酸」とは、当該遺伝子のゲノムDNAや、mRNA等の発現産物を意味する。該新生物性転化を示すマーカーとして、例えば、COX2(cyclooxygenase−2)遺伝子、癌胎児性抗原(CEA)、シアリルTn抗原(STN)等の公知の癌マーカーや、APC遺伝子、p53遺伝子、K−ras遺伝子等の変異の有無等がある。また、p16、hMLHI、MGMT、p14、APC、E−cadherin、ESR1、SFRP2等の遺伝子のメチル化の検出も、大腸疾患の診断マーカーとして有用である(例えば、Lind et al.、「A CpG island hypermethylation profile of primary colorectal carcinomas and colon cancer cell lines」、Molecular Cancer、2004年、第3巻第28章参照。)。一方、炎症性消化器疾患を示すマーカーとして、例えば、COX2遺伝子由来核酸等がある。
このような特定の疾患のマーカー遺伝子由来の核酸を標的核酸とし、本発明の検出方法を用いて検出することによって、癌や炎症性疾患等の疾患の罹患の有無や病症の進行度等を検査することができる。例えば、糞便中の標的核酸量について、予め閾値を設定しておき、この閾値に基づき、本発明の検出方法を用いて検出された標的核酸の量から、当該疾患に罹患しているか否か等を判定することができる。この際に用いられる閾値は、例えば、当該疾患に罹患していないことが分かっている集団から採取された糞便と、当該疾患に罹患していることが分かっている集団から採取された糞便とに対して、本発明の検出方法を行って標的核酸量を求め、両集団の測定値を比較することにより、適宜設定することができる。
例えば、COX2遺伝子由来の核酸等の、大腸癌患者において発現量が増大する(発現が誘導される場合も含む)大腸癌のマーカー遺伝子由来核酸を標的核酸として、採取された糞便に対して本発明の検出方法を行い、検出された標的核酸量と予め設定された閾値を比較する。標的核酸量が当該閾値以上である場合に、当該糞便が採取されたヒトは大腸癌に罹患していると判定することができる。逆に、標的核酸量が当該閾値未満である場合に、当該糞便が採取されたヒトは大腸癌に罹患していないと判定することができる。大腸癌患者において発現量が減少するマーカー遺伝子由来核酸を標的核酸とし、検出された標的核酸量が予め設定された閾値以下である場合に大腸癌に罹患しており、当該閾値超の場合には大腸癌に罹患していないと判定することもできる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、MKN45細胞は、常法により培養したものを用いた。
[実施例1]大腸癌関連遺伝子発現解析への応用1
健常人の糞便をよく混ぜて均一化した後、糞便試料1g中にMKN45細胞が1×10個含むように調整し、混合した。MKN45細胞は胃癌由来であるが、大腸癌細胞同様、COX2遺伝子を高発現するため、今回はこの混合した糞便試料を、大腸癌患者から採取された糞便の擬似試料として用いた。
混合した糞便試料から、1サンプル当たり1cmずつ、計6サンプルを、それぞれ15mL遠心チューブ(ファルコン社製)に量りとり、次の工程まで4℃で保存した。糞便試料の採取は、図1に記載の採便ジグ(蓋12と一体化した採便棒13)であって、糞便1cmを採取し得る穴13aとその蓋となり得る可動蓋13bを備える採便棒13を用いて行った。
その後、各チューブに3mLの抽出用溶液(酸性フェノールグアニジン溶液)を加えて懸濁し、さらに12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを50μLのRNA溶液として回収した。
ナノドロップ(ナノドロップ社製)を用いて、各RNA溶液の濃度を測定し、回収された全RNA量の定量を行った。各RNA溶液のRNA濃度の測定結果を表1に示した。これらの6サンプルのRNA溶液は、一定体積の糞便から抽出したものであり、同程度の濃度になると考えられたが、サンプルによりばらつきが生じていた。
Figure 2011004517
市販の逆転写反応キット(Invitrogen社製)を用いて、回収されたRNA溶液中のRNAからcDNAを合成した。この際、逆転写反応に用いたRNA量を、(a)回収されたRNA溶液の濃度に関わらず、1μLのRNA溶液を、逆転写反応の反応溶液に添加する条件と、(b)一の逆転写反応の反応溶液に1μgのRNAが添加されるように、RNA溶液の濃度に応じて、反応溶液に添加するRNA溶液量を変えた条件との2種類の反応条件で行った。
得られたcDNAをテンプレートとしてリアルタイムPCRを行い、COX2遺伝子の発現産物(mRNA)の検出を行った。リアルタイムPCRのプライマーは、アプライドバイオシステム社製のCOX2プライマープローブMIX(カタログNo:Hs00153133_m1)を用いた。具体的には、0.2mLの96ウェルPCRプレートに、各cDNAを1μLずつ分取した。その後、各ウェルに8μLの超純水と10μLの核酸増幅試薬「TaqMan GeneExpression Master Mix」(アプライドバイオシステム社製)を添加し、さらに、1μLのCOX2プライマープローブMIX(アプライドバイオシステム社製)をそれぞれ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。該PCRプレートを、ABIリアルタイムPCR装置に設置し、95℃で10分間処理した後、95℃で1分間、56.5℃で1分間、72℃で1分間の熱サイクルを40サイクル行った後、さらに72℃で7分間処理することにより、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。
蛍光強度の計測結果を分析して、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量を算出し、図2のグラフに示した。図2Aは、逆転写反応に用いたRNA量が条件(a)の場合の結果であり、図2Bは、条件(b)の場合の結果である。この結果、条件(a)の場合のほうが、条件(b)の場合よりも、サンプル間の差が少なく、ばらつきが小さいことがわかった。そもそもこれらの6サンプルは、同一の糞便試料からRNAを回収したものであり、したがって、理論上は、各サンプルに含まれるCOX2遺伝子の発現産物量は、ほぼ等しい。つまり、これらの結果から、反応溶液中に添加するRNA量を揃えた条件(b)の方法よりも、回収されたRNAの濃度に関わらず一定容量のRNA溶液を逆転写反応に加えた条件(a)の方法、すなわち本発明の検出方法のほうが、正確性に優れた結果が得られ、遺伝子発現の検出に適していることがわかった。
条件(b)において、反応溶液中に添加するRNA量を揃えたにも関わらず、サンプル間のばらつきが大きくなったのは、サンプルによって添加するRNA液量が変わると、反応液に持ち込まれる阻害物質量も変化し、正確な発現量が測定できなかったためと考えられる。加えて、糞便に含まれるRNAのほとんどは細菌由来のものであるために、RNA濃度を測定して1μg分のRNA量を添加したとしても、標的であるヒト由来核酸が一定量含まれるとは限らないことも、正確な検出結果が得られ難い原因と推察される。
[実施例2]大腸癌関連遺伝子発現解析への応用2
健常人の糞便をよく混ぜて均一化した後、1サンプル当たり1gずつ、計6サンプルを量りとった。このうちの5サンプルに、MKN45細胞を、それぞれ、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10個含むように添加し、よく混合した。残る1サンプルにはMKN45細胞を添加しなかった。これらの6サンプルを、それぞれ15mL遠心チューブ(ファルコン社製)に充填した5mLの70%エタノール溶液に懸濁させた。
各サンプルの糞便由来の固形成分体積を、吸光度と沈殿した糞便のペレットの高さの2通りの測定法により測定した。具体的には、得られた懸濁液を25℃で1日静置し、その上清を波長450nmで吸光度を測定した。その後、2,000×gで10分間遠心処理を行い、沈殿した糞便のペレットの高さをスマートセンサー(オムロン)により測定した。図3は、予め、固形成分体積量既知の糞便に対して、同様にエタノール懸濁液を調製し、遠心分離処理後のペレットの高さを測定して得られた、ペレットの高さと固形成分体積との相関グラフである。この相関グラフを用いて、測定されたペレット高さから、各サンプルの予想される固形成分体積を求めた。
各サンプルからRNAを回収するために、上清を除去した後、固形成分に3mLの抽出用溶液(酸性フェノールグアニジン溶液)を加えて懸濁した。その後、実施例1と同様にして、RNAを50μLのRNA溶液として回収し、各RNA溶液の濃度を測定し、回収された全RNA量の定量を行った。
表2に、各サンプルのMKN45細胞の含有量、吸光度、予想される固形成分体積、及びRNA溶液のRNA濃度を示す。この結果、RNA濃度のサンプル間の差が大きいことが確認された。ここで、糞便に含まれるRNAのほとんどは細菌由来のものであるため、MKN45細胞の添加量は、回収されたRNA量にはほとんど影響しないと考えられる。よって、おそらく、各サンプルにおけるRNA濃度の差は、サンプル便中の細菌の存在のばらつきが反映されたものとかんがえられる。
Figure 2011004517
市販の逆転写反応キット(Invitrogen社製)を用いて、回収されたRNA溶液中のRNAからcDNAを合成した。この際、実施例1と同様に、逆転写反応に用いたRNA量を、(a)回収されたRNA溶液の濃度に関わらず、1μLのRNA溶液を、逆転写反応の反応溶液に添加する条件と、(b)一の逆転写反応の反応溶液に1μgのRNAが添加されるように、RNA溶液の濃度に応じて、反応溶液に添加するRNA溶液量を変えた条件との2種類の反応条件で行った。
その後、得られたcDNAをテンプレートとして実施例1と同様のプロトコールでリアルタイムPCRを行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量を算出し、図4のグラフに示した。図4Aは、逆転写反応に用いたRNA量が条件(a)の場合の結果であり、図4Bは、条件(b)の場合の結果である。また、図4A中の直線は、各測定値から求めた近似直線である。この結果、図4Aに示すように、RNA濃度に関わらず、1μLを逆転写反応に用い、COX2発現量を確認した条件(a)の場合、糞便に添加したMKN45細胞量が多いほど、COX2遺伝子の発現量が高くなり、相関のある結果が得られた。一方、RNA1μg分を逆転写反応に添加した条件(b)の場合、MKN45細胞添加量とCOX2遺伝子のコピー数の間に相関が見られなかった。これは、サンプルごとに逆転写反応液に添加されるRNA溶液量が異なるため、持ち込まれる阻害物質量も異なり、この結果、阻害物質による影響がサンプル間で異なっていたためと考えられる。その他、RNAを1μgとなるように添加する際、ほとんどのサンプルは2μL以上のRNA溶液を逆転写反応液に加える必要があり、このために、抽出したRNAに含まれる糞便由来の反応阻害物質がその分、多量に反応液に持ち込まれたことも、結果に悪影響を及ぼした可能性があると考えられる。
つまり、これらの結果からも、実施例1と同様に、サンプルによって、核酸検出反応へ供されるRNA溶液の液量が変わると、反応液に持ち込まれる糞便由来の阻害物質量も変化し、糞便中の遺伝子の発現量を正確に測定できず、本発明の検出方法を用いることにより、正確性に優れた結果が得られ、遺伝子発現の検出に適していることが明らかである。
[実施例3]大腸癌関連遺伝子発現解析への応用3
健常人の糞便をよく混ぜて均一化した後、1サンプル当たり約1gずつ目分量で、計6サンプルを量りとった。このうちの5サンプルに、MKN45細胞を、それぞれ、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10個含むように添加し、よく混合した。残る1サンプルにはMKN45細胞を添加しなかった。
これらの6サンプルの重量を測定した後、実施例2と同様にして、70%エタノール溶液に懸濁させた後、吸光度とペレット高さを測定し、図3の相関グラフを利用して、各サンプルの予想される固形成分体積を求めた。その後、さらに実施例2と同様にして、各サンプルからRNAを50μLのRNA溶液として回収し、各RNA溶液の濃度を測定し、回収された全RNA量の定量を行った。表3に、各サンプルのMKN45細胞の含有量、重量、吸光度、予想される固形成分体積、及びRNA溶液のRNA濃度を示す。
Figure 2011004517
市販の逆転写反応キット(Invitrogen社製)を用いて、回収されたRNA溶液中のRNAからcDNAを合成した。この際、実施例1と同様に、逆転写反応に用いたRNA量を、(a)回収されたRNA溶液の濃度に関わらず、1μLのRNA溶液を、逆転写反応の反応溶液に添加する条件と、(b)一の逆転写反応の反応溶液に1μgのRNAが添加されるように、RNA溶液の濃度に応じて、反応溶液に添加するRNA溶液量を変えた条件との2種類の反応条件で行った。
その後、得られたcDNAをテンプレートとして実施例1と同様のプロトコールでリアルタイムPCRを行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各サンプルから回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量を算出し、図5のグラフに示した。図5Aは、逆転写反応に用いたRNA量が条件(a)の場合の結果であり、図5Bは、条件(b)の場合の結果である。この結果、実施例1及び2と同様に、条件(b)の場合、MKN45細胞添加量とCOX2遺伝子のコピー数の間に相関が見られなかった。一方、条件(a)の場合には、条件(b)の場合よりも、MKN45細胞添加量とCOX2遺伝子のコピー数の間に直線性が見られたが、目分量で採取された糞便であり、糞便量にばらつきがあったため、算出されたCOX2遺伝子の発現量(コピー数)にばらつきがみられた。
そこで、リアルタイムPCRにより算出された発現量を、糞便量で補正した。図5Cは、図5Aに示す発現量を表3記載の糞便量(重量)で補正した発現量を示しており、図5Dは、図5Aに示す発現量を、表3記載の糞便量(吸光度)で補正した発現量を示しており、図5Eは、図5Aに示す発現量を、表3記載の糞便量(予想される固形分体積)で補正した発現量を示している。なお、本実施例において「糞便量で補正する」とは、発現量を各糞便量で除することを意味する。また、図5C〜E中の直線は、各測定値から求めた近似直線である。
この結果、図5C〜Eからも明らかであるように、MKN45細胞添加量とCOX2遺伝子のコピー数に、それぞれ強い相関のある結果が得られた。
これらの結果から、初期糞便量(採取された糞便量)がばらついている場合でも、逆転写反応に加えるRNA液量を一定にすることにより、阻害物質の影響を減らし、さらに得られた結果を糞便量で補正することにより、より正確な発現量が検出できることが明らかである。
[実施例4]臨床検体を用いたGAPDHの検出
5人の大腸癌患者の便20gをそれぞれ回収し、別々によくかき混ぜ、均一化した。これを0.5ccずつ小分けにし、5本の便サンプル(C1〜C5)を得た。また、5人の健常人の便も同様に0.5ccずつ小分けし、5本の便サンプル(N1〜N5)を得た。
これらのサンプルからRNAを回収した。具体的には、各サンプルに、3mLのフェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、30秒間以上ホモジナイザーで十分に混合した後、3mLのクロロホルムを添加した。さらにボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを、50μLのRNA溶液として回収した。ナノドロップ(ナノドロップ社製)を用いて、各RNA溶液の濃度を測定し、回収された全RNA量の定量を行った。
市販の逆転写反応キット(Invitrogen社製)を用いて、回収されたRNA溶液中のRNAからcDNAを合成した。この際、逆転写反応に用いたRNA量の反応条件を、(a)回収されたRNA溶液の濃度に関わらず、0.5μL又は0.25μLのRNA溶液を、逆転写反応の反応溶液に添加する条件と、(b)一の逆転写反応の反応溶液に1μg、0.5μg、0.25μg、又は0.125μgのRNAが添加されるように、RNA溶液の濃度に応じて、反応溶液に添加するRNA溶液量を変えた条件とで、それぞれ行った。
その後、得られたcDNAをテンプレートとし、ヒトGAPDH(glyceraldehyde 3−phosphate dehydrogenase)の発現量をPCRにより測定した。具体的には、cDNAに、12.5μLの2×TaqMan PCR master mix (Applied Biosystems社製)を添加し、ヒトGAPDH検出用primer probe set(Applied Biosystems社製)をそれぞれ添加し、最終容量が25μLとなるようにPCR溶液を調製した。該PCR溶液に対して、ABI Prism 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)によるTaqMan PCR解析を行った。PCRの熱サイクルは、取り扱い説明書に従った。定量は、濃度既知のスタンダードプラスミドによる希釈系列を鋳型として得られた蛍光強度の結果に基づいて行った。
表4に、逆転写反応に用いたRNA量が条件(a)の場合の、GAPDH遺伝子の発現量の測定結果を、逆転写反応に用いたRNA溶液量ごとに示した。表4中、「RNA重量」は、逆転写反応の反応溶液に添加されたRNA重量を意味する。この結果、逆転写反応に用いたRNA溶液量が0.25〜0.5μLである場合に、全ての検体において、GAPDH遺伝子の発現量に希釈直線性が見られた。よって、少なくとも0.5μL以下のRNA溶液を添加した場合には、糞便由来の阻害物質による阻害効果が無いことがわかった。
Figure 2011004517
Figure 2011004517
一方、表5に、逆転写反応に用いたRNA量が条件(b)の場合の、GAPDH遺伝子の発現量の測定結果を、逆転写反応に用いたRNA量ごとに示した。表5中、「添加容量」は、逆転写反応の反応溶液に添加されたRNA溶液量を意味する。これらの結果に対して、逆転写反応の反応溶液に添加したRNA量が1μgの場合と0.5μgの場合、0.5μgの場合と0.25μgの場合を、それぞれ比較し、希釈直線性を検討した。
この結果、大腸癌検体(サンプルC1〜C5)においては、添加したRNA量とGAPDH遺伝子の発現量に希釈直線性を示したのは、0.25μgと0.5μgの間ではサンプルC5のみであり、0.125μgと0.25μgの間ではサンプルC5とC2のみであった。これらの結果から、逆転写反応及びその後のPCRにおいて、阻害物質の影響を受けていないといえるのは、サンプルC5とC2を、RNA添加量が0.125μgとなるように添加した場合のみであり、その他のデータは阻害物質の影響を受けており、データの信頼性に欠けることが分かった。
なお、大腸癌検体のうち、希釈直線性が比較的良好であったサンプルC2及びC5は、糞便から回収されたRNA溶液が比較的高濃度であったこと、及び表4の結果から、表5に示す大腸癌検体に希釈直線性が観察されなかったのは、添加したRNA溶液量が0.5μL以上であり多すぎたためと推察される。ここで、回収されたRNA量の差は、主に糞便中の細菌量の個体差によるため、核酸検出反応の反応系に重量を基準としてRNAを添加する場合には、糞便中の阻害物質濃度の個人差と回収RNA(細菌RNA)濃度の個人差の両方の要因を考慮に入れる必要があり、阻害物質の影響を無くすためには、希釈倍率をより高くする(核酸検出反応の反応液へ添加する量を十分に少なくする)必要があることがわかった。特に、本実施例においては、20μL容量の逆転写反溶液に、回収したRNA溶液50μLのうちの0.25μLを添加した場合には、糞便から持ち込まれる阻害物質の影響がほとんどなくなったことから、本実施例のようなスケールで糞便からRNAを回収した場合には、回収されたRNA溶液は、80倍(20μL/0.25μL)程度希釈されるように核酸検出反応へ添加されることが好ましい。
これに対して、健常人検体(サンプルN1〜N5)に対しても同様に希釈直線性を検討したところ、サンプルN2についてのみ、0.25μgと0.5μgの間で希釈直線性が見られなかったが、その他については希釈直線性が見られた。
このように、癌患者と健常人とでは、阻害物質による影響に差があり、大腸癌検体のほうが、健常人検体に比べて阻害の影響が大きいという結果となった。これは、糞便中に含まれている阻害物質の量が、大腸癌患者のほうが健常人よりも多いためではないかと推察される。特に、回収されたRNA溶液のRNA濃度が薄い検体の場合には、逆転写反応の反応溶液に添加される容量が増え、持ち込まれる阻害物質量も増大するために、その影響が顕著になった。
出発サンプルの量が同じであり、かつ同一回収法でRNAを回収した場合、回収されるRNA溶液に存在する阻害物質の濃度は、個人間の差の分だけばらつく。そのため、阻害物質の影響が出ないRNA溶液の添加量を設定する必要があるが、本発明の検出方法のように、核酸検出反応へ持ち込むRNAを、容量を基に決定することにより、このような阻害物質の影響を排除した適当な条件を容易に設定することができる。
[実施例5]臨床検体を用いたCOX2の検出
実施例4において合成されたcDNAをテンプレートとし、癌患者の糞便中に特異的に発現が見られるヒトCOX2の発現量をPCRにより測定した。具体的には、ヒトGAPDH検出用primer probe set(Applied Biosystems社製)に代えて、ヒトCOX2遺伝子の検出用primer probe set(Applied Biosystems社製)を用いた以外は、実施例4と同様にしてTaqMan PCR解析を行った。
表6に、逆転写反応に用いたRNA量が条件(a)の場合の、COX2遺伝子の発現量の測定結果を、逆転写反応に用いたRNA溶液量ごとに示した。表6中、「RNA重量」は、表4と同じである。この結果、個人差から想定される阻害の影響範囲をはずれ、阻害がない範囲で検出ができた。
一方、表7に、逆転写反応に用いたRNA量が条件(b)の場合の、COX2遺伝子の発現量の測定結果を、逆転写反応に用いたRNA量ごとに示した。表7中、「添加容量」は、表5と同じである。この結果、大腸癌検体(サンプルC1〜C5)では、RNAの添加量が0.125μgであっても阻害の影響によってシグナルの低下が見られる検体と、希釈によって(すなわち、RNA添加量が少なすぎることにより)シグナルの低下が見られる検体が混在していた。つまり、条件(b)の場合では、得られた検出結果は、条件(a)の場合よりも信頼性に劣ることが確認された。
なお、健常人検体(N1〜N5)では、そもそもCOX2の発現はほとんど見られなかったことから、重量を基準にRNAを投入したとしても、阻害物質の影響が少ないことが推測された。そのため、COX2の発現量を検出する場合には、特異度には殆ど影響しないと考えられた。
Figure 2011004517
Figure 2011004517
[実施例6]臨床検体を用いてMYBL2を検出した場合の感度・特異度
大腸癌患者29例及び健常人29例を対象とした。糞便は、採便後15mlチューブに0.5ccずつ分取し、その後、実施例5と同様にして、各糞便サンプルからRNAを、50μLのRNA溶液として回収した。ナノドロップ(ナノドロップ社製)を用いて、各RNA溶液の濃度を測定し、回収された全RNA量の定量を行った。
ReverTra Ace qPCR RT Kit(Invitrogen社製)を用いて、回収されたRNA溶液中のRNAからcDNAを合成した。この際、逆転写反応に用いたRNA量を、(a)回収されたRNA溶液の濃度に関わらず、1μLのRNA溶液を、逆転写反応の反応溶液に添加する条件と、(b)一の逆転写反応の反応溶液に1μgのRNAが添加されるように、RNA溶液の濃度に応じて、反応溶液に添加するRNA溶液量を変えた条件との2種類の反応条件で行った。
その後、得られたcDNAをテンプレートとし、ヒトMYBL2(myeloblastosis viral oncogene homolog like 2)の発現量をPCRにより測定した。具体的には、cDNAに、12.5μLの2×TaqMan PCR master mix (Applied Biosystems社製)を添加し、ヒトMYBL2検出用primer probe set(Applied Biosystems社製)をそれぞれ添加し、最終容量が25μLとなるようにPCR溶液を調製した。該PCR溶液に対して、ABI Prism 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)によるTaqMan PCR解析を行った。PCRの熱サイクルは、取り扱い説明書に従った。定量は、濃度既知のスタンダードプラスミドによる希釈系列を鋳型として得られた蛍光強度の結果に基づいて行い、50コピー以上を陽性(MYBL2の発現産物が検出された)とした。
この結果、反応溶液中に添加するRNA量を1μgに揃えた条件(b)の場合には、MYBL2の発現産物は、大腸癌29例中の10例で検出され、健常人29例中1例で検出された(感度34%、特異度97%)。これに対して、回収されたRNAの濃度に関わらず一定容量のRNA溶液を逆転写反応に加えた条件(a)の場合には、大腸癌29例中15例で検出され、健常人29例中1例が検出され、条件(b)の場合よりも大きな感度の上昇が見られた(感度52%、特異度97%)。この実施例より、糞便から細菌由来の核酸とともに回収した癌細胞由来の核酸から癌関連遺伝子を検出する場合、本発明の検出方法のように、抽出した核酸の容量を基準に解析した場合の方が、試験成績が向上することがわかった。
[実施例7]大腸癌関連遺伝子発現解析への応用4
健常人の糞便をよく混ぜて均一化した後、糞便試料1g中にMKN45細胞が1×10個含むように調整し、混合した。この糞便試料を、シリンジで1mL、2mL、3mLの容量になるように、それぞれ4本ずつ分取した。これらの12サンプルの重量を測定したところ、1mL採取した4サンプルの重量が0.8g、0.7g、0.8g、0.8gであり、2mL採取した4サンプルの重量が1.7g、1.6g、1.7g、1.6gであり、3mL採取した4サンプルの重量が2.6g、2.5g、2.6g、2.5gであった。
各容量の4サンプルのうち、2サンプルからRNAを回収するために、糞便1g当たり6mL容量になるように抽出用溶液(酸性フェノールグアニジン溶液)を加えて懸濁した。また、各容量の残りの2サンプルは、重量に関係なく、サンプル当たり6mL容量の抽出用溶液(酸性フェノールグアニジン溶液)を加えて懸濁した。これらの懸濁液に、さらに6mLのクロロホルムを添加し、混合後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た水層から、添加した抽出用溶液の量に関わらず、それぞれ一定量(2mL)ずつ分取し、RNeasy midi kit(Qiagen社製)を用いてRNAを50μLのRNA溶液として回収した。ナノドロップ(ナノドロップ社製)を用いて、各RNA溶液中のRNA濃度を測定し、回収された全RNA量の定量を行った。
市販の逆転写反応キット(Invitrogen社製)を用いて、回収されたRNA溶液の濃度に関わらず、1μLのRNA溶液を逆転写反応の反応溶液に添加して逆転写反応を行い、回収されたRNA溶液中のRNAからcDNAを合成した。得られたcDNAをテンプレートとして実施例1と同様のプロトコールでリアルタイムPCRを行った。
この結果、サンプルから回収されたRNA1μL当たりのCOX2遺伝子の発現量(コピー数)は、回収した糞便の重量に合わせて抽出用溶液の液量を変化させた6サンプルのうち、1mL採取した2サンプルで833コピー及び786コピーであり、2mL採取した2サンプルで780コピー及び791コピーであり、3mL採取した2サンプルで770コピー及び811コピーであった。一方、糞便重量にかかわらず一定量の抽出用溶液を添加した6サンプルのうち、1mL採取した2サンプルで821コピー及び816コピーであり、2mL採取した2サンプルで1582コピー及び1640コピーであり、3mL採取した2サンプルで2445コピー及び2451コピーであった。
糞便重量にかかわらず一定量の抽出用溶液を添加した6サンプルの結果を、糞便重量で補正した。具体的には、糞便試料1mLの4サンプルの平均重量である0.8gを1として補正係数を作成し、各発現量(コピー数)を補正係数で除した。この結果、1mL採取した2サンプルで821(821/1)コピー及び816(816/1)コピーとなり、2mL採取した2サンプルで744(1582/2.125)コピー及び820(1640/2)コピーであり、3mL採取した2サンプルで752(2445/3.25)コピー及び784(2451/3.125)コピーであった。
測定されたCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を表8に示す。表中、(a)欄が回収した糞便の重量に合わせて抽出用溶液の液量を変化させた6サンプルの結果であり、(b)欄が糞便重量にかかわらず一定量の抽出用溶液を添加した6サンプルの結果である。
Figure 2011004517
これらの結果から、糞便に転嫁する抽出用溶液の量を、糞便量に比例して変化せることにより、標的核酸を検出する際のサンプル間の差が小さくなることがわかった。一方で、初期糞便(核酸回収のために採取された糞便)の重量がほぼ同一であれば、得られた標的核酸の発現量に対して、糞便重量のバラツキを補正することにより、より正確な値が得られると考えられる。
本発明の検出方法を用いることにより、糞便中の標的核酸を正確かつ簡便に検出することができるため、特に臨床検査等の分野において利用が可能である。
11…容器本体、12…蓋、13…採便棒、13a…穴、13b…可動蓋、E…糞便、S…保存用溶液。

Claims (15)

  1. 糞便試料から糞便を排泄した動物由来の標的核酸を検出する方法であって、
    (a) 一定量の糞便を採取する工程と、
    (b) 前記工程(a)において採取された糞便から核酸を回収し、一定容量の核酸溶液を調製する工程と、
    (c) 前記工程(b)において調製された核酸溶液から一定容量の溶液を分取し、この分取された溶液中の標的核酸を検出する工程と、
    を有することを特徴とする動物由来の標的核酸の検出方法。
  2. 前記工程(a)が下記工程(a’)であり、前記工程(c)において検出された標的核酸の量を、前記工程(a)において採取された糞便量に基づいて補正することを特徴とする請求項1記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
    (a’)糞便を採取し、糞便量を測定する工程。
  3. 前記補正が、前記工程(c)において検出された標的核酸の量を、前記工程(a’)において採取された糞便量で除することによりなされることを特徴とする請求項2記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
  4. 前記工程(a)が下記工程(a’)であり、前記工程(b)が下記工程(b’−1)であることを特徴とする請求項1記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
    (a’)糞便を採取し、糞便量を測定する工程。
    (b’−1)前記工程(a’)において採取された糞便から核酸を回収し、前記工程(a’)において採取された糞便量に比例した容量の核酸溶液を調製する工程。
  5. 前記工程(b’−1)が下記工程(b’−2)であることを特徴とする請求項4記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
    (b’−2)前記工程(a’)において採取された糞便又はその固形成分に、前記工程(a’)において採取された糞便量に比例した容量の抽出用溶液を混合し、当該抽出用溶液に抽出した核酸を回収し、前記工程(a’)において採取された糞便量に比例した容量の核酸溶液を調製する工程。
  6. 前記工程(a)が下記工程(a’)であり、前記工程(b)が下記工程(b”)であることを特徴とする請求項1記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
    (a’)糞便を採取し、糞便量を測定する工程。
    (b”)前記工程(a’)において採取された糞便又はその固形成分に、前記工程(a’)において採取された糞便量に比例した容量の抽出用溶液を混合して核酸を抽出した後、当該抽出用溶液から一定容量の溶液を分取し、この分取された溶液中の核酸を回収し、一定容量の核酸溶液を調製する工程。
  7. 糞便量が、重量、体積、固形成分体積、及び吸光度からなる群より選択される1以上の測定値により規定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
  8. 前記標的核酸がRNAであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
  9. 前記標的核酸がヒト由来の核酸であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
  10. 前記標的核酸が消化器系疾患のマーカー遺伝子由来の核酸であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
  11. 前記標的核酸が癌のマーカー遺伝子由来の核酸であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
  12. 前記標的核酸が大腸癌のマーカー遺伝子由来の核酸であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法。
  13. 請求項1〜8のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法を用いて、疾患の罹患の有無を検査する方法であり、
    前記標的核酸を前記疾患のマーカー遺伝子由来の核酸とし、
    請求項1〜8のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法により検出された当該標的核酸の量から、予め設定された閾値に基づき、糞便が採取された動物が前記疾患に罹患しているか否かを判定することを特徴とする疾患の検査方法。
  14. 大腸癌の罹患の有無を、糞便中の大腸癌のマーカー遺伝子由来の核酸を検出することにより検査する方法であって、
    前記標的核酸を、大腸癌患者において発現量が増大する大腸癌マーカー遺伝子由来の核酸とし、
    請求項1〜8のいずれか記載の動物由来の標的核酸の検出方法を行って検出された標的核酸の量が、予め設定された閾値以上である場合に、当該糞便が採取されたヒトは大腸癌に罹患していると判定し、前記閾値未満である場合に、大腸癌に罹患していないと判定することを特徴とする大腸癌の検査方法。
  15. 前記標的核酸が、COX2(cyclooxygenase−2)遺伝子由来核酸であることを特徴とする請求項14記載の大腸癌の検査方法。
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