JP2010142188A - 工程精度保証方法及び工程精度保証用キット - Google Patents

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Abstract

【課題】2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料からRNAを抽出し、逆転写反応の後に核酸増幅反応により、標的遺伝子由来のRNAを検出する方法における、各工程の精度を十分に保証し得る方法の提供。
【解決手段】2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料からRNAを抽出する抽出工程、抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応を行ってcDNAを得る逆転写工程、及び、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行う増幅工程に対して、標的遺伝子とは異なる生物種の細胞を含む細胞溶液を抽出工程標準陽性試料とし、標的遺伝子由来RNA及び/又は標準遺伝子由来RNAを含むRNA含有試料を逆転写工程標準陽性試料とし、的遺伝子及び/又は標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料を増幅工程標準陽性試料とし、工程ごとに異なる標準陽性試料を用いることを特徴とする工程精度保証方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料からRNAを抽出し、逆転写反応の後に核酸増幅反応により、標的遺伝子由来のRNAを検出する方法における、各工程の精度を保証する方法、及び該方法に用いられるキットに関する。
遺伝子解析は、近年の遺伝子操作技術や遺伝子組換え技術等の進歩に伴い、医療、学術研究、産業等の多くの分野において広く応用されている。例えば、糞便、唾液や血液等の体液、口腔粘膜や子宮粘膜等の粘膜や粘液等の生体試料中に含まれるRNAやDNAを回収し、各試料間の核酸の特徴を比較することによって、癌や、細菌(バクテリア)・ウィルス・寄生虫等による感染症等の疾患を診断することが行われている。
遺伝子解析は、通常、試料中に、解析対象である標的遺伝子と相同的な塩基配列を有する核酸(標的遺伝子由来核酸)が存在するか否かを検出することにより行われるが、臨床検査における検体等のように、検体が微量である場合や試料中の核酸濃度が非常に薄い場合には、試料中の標的遺伝子由来核酸を増幅して解析を行うことが多い。このような核酸の増幅には、PCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)法が最も一般的に用いられている。例えば、遺伝病、疾病感受性、癌等の診断において、異常細胞特異的なmRNA等の標的核酸をPCR増幅して検出する方法が、広く用いられている。
一般的に、遺伝子解析を行う場合には、まず、生体試料等の生物学的試料から核酸を抽出する工程、その後、得られた核酸を鋳型として標的遺伝子由来核酸を増幅する工程、増幅された核酸を検出する工程などの各工程を行なう。試料から抽出する核酸がRNAである場合には、さらに、得られたRNAから逆転写反応によりcDNAを合成する工程を要する場合が多い。このように、遺伝子解析は多くの工程があり、信頼できる解析結果を得るためには、これらの各工程の精度管理が重要となる。各工程が正確に行なわれている保証が無ければ、結果の信頼性が著しく低下してしまう。そこで、一連の工程の精度が十分であり、よって解析結果が信頼できる、という保証を行なうため、RNAの抽出、増幅、検出等の各工程を行うことができる外部標準試料を用いることが、一般的に行われている。
ヒト組織をサンプルとして、癌等の疾患の遺伝子解析を行なう場合、標的遺伝子はヒトの遺伝子である場合が多い。そのため、核酸解析の工程を保証する際の外部標準試料として、ヒト由来の培養細胞の細胞溶液が、一般的に用いられている。培養細胞の細胞溶液をそのまま用いることによって、核酸の抽出から最後の解析までの一連の工程の保証を、一種類の外部標準試料のみで行なうことができる。
その他、核酸解析の工程の保証を行う方法として、例えば、(1)サンプル中に存在しない塩基配列からなる人工的に作成したRNAを、解析対象であるサンプルにスパイクRNAとして混入させた試料に対して、標識反応やハイブリダイゼーションを同時に行い、スパイクRNAから検出されるシグナル強度等に基づきノーマライズすることにより、各工程を保証する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、マイクロアレイで解析を行う際の、RNAの増幅や標識反応、アレイ上での結合(ハイブリダイゼーション)反応、及びシグナル取込み等の一連の過程において現れる様々なばらつきや誤差を、補正によって取り除く、あるいは、結果を保証することにより信頼性の高いデータを取得することができる。
国際公開第03/100422号パンフレット
外部標準試料として、標的遺伝子を発現している培養細胞の細胞溶液を用いることにより、核酸の抽出、増幅、検出の一連の解析工程を、1種の外部標準試料のみを用いて保証することができる、すなわち、一気通貫した外部標準試料を用いて保証することが可能と考えられる。しかしながら、一気通貫した外部標準試料を用いた場合には、複数の工程の中のどの工程に問題があるのかを判断することができず、解析工程を効率よく改善することが困難であるという問題がある。さらに、前工程のバラツキを拾い、蓄積してしまうため、各工程の精度を十分に保証し得る外部標準試料を設定することは非常に困難であり、実質的に不可能である。
また、多くの生体試料には、該生体試料が採取された対象である動物以外にも、細菌やウィルスといった様々な生物及び該生物由来のRNAも含まれている。このため、例えば、ヒトから採取された生体試料から、生物種ごとに分離することなくRNAを回収した場合には、ヒト由来のRNAと、細菌やウィルスのようなヒト以外の生物種由来のRNAとが混合された状態で回収される。特に、糞便や唾液、喀痰、口腔粘膜、子宮粘膜等には細菌が多く存在するため、これらの生体試料から回収された核酸には、圧倒的に細菌由来の成分が多く含まれており、ヒト由来の生体関連物質は非常に少量である場合が多い。
このように、解析対象である生物学的試料が、便等のように、圧倒的に細菌が多く含まれており、ヒト由来の細胞が非常に少量である生体試料である場合には、標的遺伝子がヒトの遺伝子であるからといって、ヒト由来培養細胞の細胞溶液を外部標準試料として用いたとしても、その工程の精度を保証する信頼に足る結果を得ることは困難である。ヒト由来の細胞のみからなる細胞溶液は、大量の細菌の中にわずかにヒト由来の細胞が混在している解析対象である生体試料の大多数の特徴を反映していないためである。
その他、培養細胞は増殖させるのに時間がかかる上に、取り扱いに十分注意が必要である、という問題もある。継代培養を進めることにより、形質が変化してしまう場合があるためである。調製した細胞溶液の保存を行なう場合にも、十分に取り扱いを注意する必要があり、労力がかかる。
一方、上記(1)の方法では、解析対象である生物学的試料から抽出されたRNAに、人工的に作成したRNAを外部から直接混合することによって、RNAの増幅や標識反応、ハイブリダイゼーション反応、およびシグナル取込み等の工程を保証することができるが、生物学的試料からRNAを抽出する工程の保証までは言及されていない。また、生物学的試料から抽出されたRNAには、増幅反応等の阻害物質が含まれている場合が多いため、各反応が上手くいかなかった場合に、工程に問題があるのか、それとも生物学的試料から抽出されたRNAに問題があるのかが、明確に判断することができない、という問題もある。また、標的サンプルに外部コントロールを混入させることにより、サンプルへのコンタミネーションの機会が増える、添加できる鋳型RNAの容量に制限がかかる等の不具合も生じる。
また、工程精度を十分に保証するためには、用いる標準陽性試料は、同一性状のもの(すなわち、同一ロットのもの)を多数ストックすることが可能なものを用いることが好ましい。このように、大量に作成した同一ロットの標準陽性試料を用いることにより、検査毎のばらつきを確認でき、より正確に工程の精度を保証することができるためである。このためには、用いる標準陽性試料としては、大量調製を簡便に行うことができ、かつ、長期間安定して保存することが可能なものであることが好ましい。
本発明は、2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料からRNAを抽出し、逆転写反応の後に核酸増幅反応により、標的遺伝子由来のRNAを検出する方法における、各工程の精度を十分に保証し得る方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料からRNAを抽出する抽出工程、抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応を行ってcDNAを得る逆転写工程、及び、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行う増幅工程に対して、工程ごとに異なる標準陽性試料を用いることにより、各工程の精度を正確に保証し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料から、RNAを抽出する抽出工程と、抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを得る逆転写工程と、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行う増幅工程と、増幅された核酸を検出する検出工程と、を含む標的遺伝子由来RNAの検出方法における工程精度を保証する方法であって、前記標的遺伝子は疾患のマーカー遺伝子であり、前記標的遺伝子以外の遺伝子であって、前記生物学的試料に当該遺伝子由来のRNAが含まれている遺伝子を標準遺伝子とし、下記工程(a)及び/又は(b)と、下記工程(c)とを有することを特徴とする工程精度保証方法;(a)標的遺伝子とは異なる生物種の細胞を含む細胞溶液を抽出工程標準陽性試料とし、所定量の抽出工程標準陽性試料からRNAを抽出してRNA溶液を調製し、当該RNA溶液中のRNAの、濃度、精製度、及び分解度からなる群より選択される1以上を測定し、得られた測定値に基づき、前記抽出工程の精度を保証する工程;(b)標的遺伝子由来RNA及び/又は標準遺伝子由来RNAを含むRNA含有試料を逆転写工程標準陽性試料とし、所定量の逆転写工程標準陽性試料中のRNAを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを得、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の、増幅量又は増幅効率に基づき、前記逆転写工程及び前記増幅工程の精度を保証する工程;(c)標的遺伝子及び/又は標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料を増幅工程標準陽性試料とし、所定量の増幅工程標準陽性試料中のDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の、増幅量又は増幅効率に基づき、前記増幅工程の精度を保証する工程、
(2) 前記生物学的試料が、哺乳生物のRNAよりも微生物のRNAを多く含む生物学的試料であることを特徴とする前記(1)記載の工程精度保証方法、
(3) 前記抽出工程標準陽性試料が、細菌の細胞溶液であることを特徴とする前記(2)記載の工程精度保証方法、
(4) 前記逆転写工程標準陽性試料が、2以上の生物種のRNAを含むことを特徴とする前記(1〜3)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(5) さらに、(b’)鋳型となるRNAを含まない逆転写反応溶液中で逆転写反応を行った後、当該逆転写反応溶液を添加した増幅反応溶液中で増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の有無に基づき、前記逆転写工程及び前記増幅工程の精度を保証する工程と、を有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(6) さらに、(c’)鋳型となるDNAを含まない増幅反応溶液中で増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の有無に基づき、前記増幅工程の精度を保証する工程と、を有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(7) さらに、下記工程(d)及び/又は(e)を有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載の工程精度保証方法;(d)前記抽出工程において、前記生物学的試料から抽出された標的RNA溶液中のRNAの、濃度、精製度、及び分解度からなる群より選択される1以上を測定し、得られた測定値に基づき、当該生物学的試料の精度を保証する工程;(e)前記逆転写工程において得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率に基づき、前記生物学的試料の精度を保証する工程、
(8) 前記工程(a)において、前記RNA溶液中のRNAの濃度が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断し、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記抽出工程の精度が保証されていると判断することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(9) 前記工程(a)において、RNAの精製度の測定が、前記RNA溶液の、260nmにおける吸光度を230nmにおける吸光度で除した値(260/230nm吸光度比)、及び/又は260nmにおける吸光度を280nmにおける吸光度で除した値(260/280nm吸光度比)を測定するものであり、前記260/230nm吸光度比又は260/280nm吸光度比が、予め設定された数値範囲から外れている場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(10) 前記260/230nm吸光度比又は260/280nm吸光度比が、1.0〜2.5の範囲から外れている場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする前記(9)記載の工程精度保証方法、
(11) 前記工程(a)において、RNAの分解度の測定が、前記RNA溶液中のRNAの、23SリボソーマルRNAのフラグメント量を16SリボソーマルRNAのフラグメント量で除した値(23S rRNA/16S rRNA比)を測定するものであり、
前記23S rRNA/16S rRNA比が、予め設定された数値範囲から外れている場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする前記(2)〜(10)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(12) 前記23S rRNA/16S rRNA比が、1.6〜2.5の範囲から外れている場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする前記(11)記載の工程精度保証方法、
(13) 前記工程(b)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、前記逆転写工程及び/又は前記増幅工程の精度が保証されていないと判断し、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記逆転写工程及び前記増幅工程の精度が保証されていると判断することを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(14) 前記工程(c)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、前記増幅工程の精度が保証されていないと判断し、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記増幅工程の精度が保証されていると判断することを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(15) 前記工程(b)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも小さく、かつ、前記工程(c)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記逆転写工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(16) 前記工程(c)が、(c”)標的遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料を段階的に希釈し、調製された各濃度の希釈液中のDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率に基づき、前記増幅工程の精度の保証と、前記生物学的試料中の標的遺伝子由来RNAの定量とを行う工程、であることを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(17) 前記生物学的試料が糞便であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか記載の工程精度保証方法、
(18) 標的遺伝子由来RNAの検出方法における工程精度を保証するためのキットであって、前記標的遺伝子由来RNAの検出方法は、2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料から、RNAを抽出する抽出工程と、抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを得る逆転写工程と、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行う増幅工程と、増幅された核酸を検出する検出工程とを含み、前記標的遺伝子は疾患のマーカー遺伝子であり、前記標的遺伝子以外の遺伝子であって、生物学的試料に当該遺伝子由来のRNAが含まれている遺伝子が標準遺伝子であり、前記標的遺伝子及び/又は前記標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料と、前記標的遺伝子とは異なる生物種の細胞を含む細胞溶液並びに/又は標的遺伝子由来RNA及び/若しくは標準遺伝子由来RNAを含むRNA含有試料と、を含むことを特徴とする工程精度保証用キット、
(19) 前記標的遺伝子が哺乳生物の遺伝子であり、前記細胞溶液が細菌の細胞溶液であることを特徴とする前記(18)記載の工程精度保証用キット、
を、提供するものである。
本発明の工程精度保証方法は、標準陽性試料により保証する範囲を分割し、工程ごとに標準陽性試料を用いる方法である。つまり、各工程に適した標準陽性試料をおくため、本発明の工程精度保証方法を用いることにより、簡便に各工程の精度管理を行うことができることに加えて、前の工程のバラツキを蓄積することなく、各工程の精度のみを純粋に評価することができる。
本発明に供される生物学的試料は、2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料である。生物から採取された試料(生体試料)であってもよく、培養細胞等から調製された試料であってもよい。本発明に供される生物学的試料としては、臨床検体等の生体試料であることが好ましい。生体試料が採取される生物は、特に限定されるものではないが、真核生物であることが好ましく、動物であることがより好ましく、哺乳類であることがさらに好ましく、ヒトであることが特に好ましい。該生体試料として、例えば、糞便、唾液や血液等の体液、喀痰、口腔粘膜や子宮粘膜等の粘膜や粘液等がある。特に、哺乳生物から採取された生体試料であって、該生体試料を採取された生物以外の種類の生物のRNA、例えば原核生物やウィルス等の微生物のRNAを比較的多く含む生体試料であることが好ましく、真正細菌等の原核生物のRNAをより多く含む生体試料であることが特に好ましい。このような細菌等の微生物を多く含む哺乳生物から採取された生体試料として、例えば、糞便、唾液、喀痰、口腔粘膜、子宮粘膜等がある。本発明に供される生物学的試料としては、糞便であることが特に好ましい。
また、本発明において、「遺伝子由来RNA」とは、遺伝子のゲノムDNAの全長又は一部分から転写されたRNAを意味し、該遺伝子のmRNAであってもよく、該mRNAの一部分(フラグメント)であってもよい。
本発明において、標的遺伝子とは、疾患のマーカー遺伝子であって、解析対象となる遺伝子である。疾患のマーカー遺伝子は、解析対象である生物学的試料中における、当該遺伝子の発現の有無やその発現量の多寡を解析することにより、被験者が当該疾患に罹患しているか否かを判断することが可能な遺伝子であれば、特に限定されるものではなく、疾患の種類等を考慮して、適宜決定することができる。疾患のマーカー遺伝子は、特定の疾患に罹患している場合に、特異的に発現する遺伝子や、塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアント(アイソフォーム)等の変異が生ずる遺伝子等が挙げられる。
本発明における標的遺伝子としては、腺腫又はがんのマーカー遺伝子であることが好ましい。腺腫やがんといった疾患では、遺伝子の変異が主な発症原因の1つであると考えられており、遺伝子解析によるマーカー遺伝子の検出が、臨床検査においても行われている。例えば、本発明における標的遺伝子として、COX−2(Cyclooxygenase −2)、MMP7(matrix metallopeptidase7)、SNAIL等の、腺腫マーカー又はがんマーカーとして公知の遺伝子を用いることができる。
その他、本発明における標的遺伝子としては、感染症等のマーカー遺伝子であることも好ましい。感染症のマーカー遺伝子としては、感染症の原因微生物の遺伝子等が挙げられる。
本発明において、標準遺伝子とは、標的遺伝子以外の遺伝子であって、解析対象である生物学的試料に、当該遺伝子由来のRNAが含まれている遺伝子であれば、特に限定されるものではなく、用いる生物学的試料の種類、標的遺伝子がマーカーとして機能する疾患の種類等を考慮して、適宜決定することができる。標準遺伝子は、標的遺伝子と同一種類の生物の遺伝子であってもよく、異なる種類の生物の遺伝子であってもよい。
例えば、生物学的試料がヒトから採取された糞便であり、標的遺伝子がヒトの遺伝子である場合のように、生物学的試料中に比較的少量しか含まれていない生物の遺伝子を標的遺伝子とする場合には、標準遺伝子としては、当該標的遺伝子と同じ生物種の遺伝子であることが好ましい。当該標的遺伝子と同じ生物種の遺伝子を標準遺伝子とすることにより、標的遺伝子の生物由来の核酸が、解析に用いた生物学的試料中に存在していたことを確認することができるためである。
一方、生物学的試料が採取された生物の感染症への罹患の有無を判断するために、標的遺伝子を感染症の原因微生物の遺伝子とする場合には、当該生物学的試料が採取された生物の遺伝子を標準遺伝子とすることが好ましい。
本発明においては、標準遺伝子として、ハウスキーピング遺伝子を用いることが好ましい。ハウスキーピング遺伝子由来RNAは、一般的に、特定の疾患に対する罹患の有無に関わらず、同一生物種の細胞中にほぼ同程度の量存在しているためである。該ハウスキーピング遺伝子としては、例えば、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH:glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)、18S リボソームRNA、28S リボソームRNA、βアクチン、β2ミクログロブリン、ヒポキサンチンホスホリボシル・トランスフェラーゼ1、リボソーム蛋白質ラージP0、ペプチジルプロピル・イソメラーゼA(シクロスポリンA)、チトクロームC、ホスホグリセレート・キナーゼ1、β−グルクロニダーゼ、TATAボックス結合因子、トランスフェリン受容体、HLA−A0201重鎖、リボソームタンパク質L19、αチューブリン、βチューブリン、γチューブリン、ATPシンセターゼ、翻訳伸長因子1ガンマ(EEF1G:eukaryotic translation elongation factor 1 gamma)、コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体(SDHA:succinate dehydrogenase complex)、アミノレブリン酸シンターゼ1(ALAS:aminolevulinic acid synthase 1)、ADP−リボシル化因子6(ADP−ribosylation factor 6)、エンドヌクレアーゼG(ENDOG:endonuclease G)、及びペルオキシソーム形成因子(PEX:peroxisomal biogenesis factor)等が挙げられる。
なお、本発明において、「遺伝子由来核酸」とは、遺伝子由来RNAから逆転写反応により合成されるcDNA、当該cDNAから増幅される核酸であって、当該遺伝子由来RNAの全部又は一部と相同的又は相補的な塩基配列を有するDNA又はRNAを意味する。
本発明の工程精度保証方法は、2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料から、RNAを抽出する抽出工程と、抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応(RT:Reverse transcription)を行い、cDNAを得る逆転写工程と、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行う増幅工程と、増幅された核酸を検出する検出工程と、を含む標的遺伝子由来RNAの検出方法における工程精度を保証する方法である。
工程精度の保証対象である、RNAの抽出工程、逆転写工程、核酸増幅反応を行う増幅工程、及び増幅された核酸の検出工程は、特に限定されるものではなく、当該技術分野において公知のいずれの方法を用いて行ってもよい。
例えば、生物学的試料からのRNAの抽出・精製方法としては、ISOGEN等の酸性フェノールグアニジン−クロロホルム法や、Boom法等が挙げられ、これらの方法を組み合わせて用いることもできる。その他、市販されている精製キット等を利用することもできる。
また、抽出工程により、生物学的試料からRNAを抽出してRNA溶液を調製した後、得られたRNA溶液中のRNAの全量又は一部に対して、逆転写反応を行う方法も、通常用いられる逆転写酵素等の試薬を用いて、一般的に行われる反応条件において行うことができる。なお、抽出工程により得られたRNA溶液をノーマライズ(予め定められた所定の濃度に調整する)した後に、逆転写反応を行ってもよい。ノーマライズする濃度は、後の増幅工程・検出工程の方法等を考慮して、適宜決定することができる。
増幅工程において、逆転写工程により得られたcDNAを鋳型として行う増幅方法としては、一般的にDNAを鋳型として、特定の塩基配列を有する核酸を増幅する方法であれば、特に限定されるものではなく、当該技術分野において公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、PCR、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)、ICAN(Isothermal and Chimeric primer−initiated Amplification of Nucleic acids)であってもよく、NASBA(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)やTRC(Transcription Reverse−transcription Concerted reaction)等のように、cDNAと共にRNAが増幅される反応であってもよい。
検出工程において、増幅された核酸を検出する方法としては、一般的にDNAやRNAを検出し得る方法であれば、特に限定されるものではなく、定性的な検出方法であってもよく、定量的な検出方法であってもよい。このような検出方法として、例えば、電気泳動法、ハイブリダイゼーション法、免疫凝集法、ELISA法、吸光度測定法、一分子蛍光分析法、蛍光偏光解析法等がある。試料中に微量に存在する核酸を容易に検出し定量することが可能であるため、定量的核酸増幅法、ELISA法、一分子蛍光分析法や、蛍光偏光解析法を用いて測定することが好ましい。例えば、リアルタイムPCRやリアルタイムNASBA等を行うことにより、増幅工程と増幅産物の検出工程とを同時に行うことができる。
本発明の工程精度保証方法は、下記工程(a)及び/又は(b)と、下記工程(c)とを有することを特徴とする。
(a)標的遺伝子とは異なる生物種の細胞を含む細胞溶液を抽出工程標準陽性試料とし、当該抽出工程標準陽性試料からRNAを抽出してRNA溶液を調製し、当該RNA溶液中のRNAの、濃度、精製度、及び分解度からなる群より選択される1以上を測定し、得られた測定値に基づき、前記抽出工程の精度を保証する工程。
(b)標的遺伝子由来RNA及び/又は標準遺伝子由来RNAを含むRNA含有試料を逆転写工程標準陽性試料とし、当該逆転写工程標準陽性試料中のRNAを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを得、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の、増幅量又は増幅効率に基づき、前記逆転写工程及び前記増幅工程の精度を保証する工程。
(c)標的遺伝子及び/又は標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料を増幅工程標準陽性試料とし、当該増幅工程標準陽性試料中のDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の、増幅量又は増幅効率に基づき、前記増幅工程の精度を保証する工程。
本発明の工程精度保証方法は、工程(a)及び(c)のみを有する方法であってもよく、工程(b)及び(c)のみを有する方法であってもよく、工程(a)、(b)及び(c)をいずれも有する方法であってもよい。より確度の高い保証を行うことができるため、工程(a)、(b)及び(c)をいずれも有する方法であることが好ましい。
本発明及び本願明細書において、「工程の精度が保証されている」とは、当該工程の操作が適確であり、操作上の不具合等が生じていないことを意味する。逆に、「工程の精度が保証されていない」とは、用いた試薬の劣化、器具や装置の故障、人為的な操作ミス等により、不具合が生じており、当該工程の操作が適切に行われなかったことを意味する。
本発明の工程精度保証方法は、前述の標的遺伝子由来RNAの検出方法の各工程の精度を保証するものであるから、工程(a)〜(c)における、RNAの抽出方法、逆転写反応、及び核酸増幅反応は、各工程の標準陽性試料を用いる以外は、当該検出方法の各工程における方法と同じ操作を行う。
・工程(a)
工程(a)においては、抽出工程標準陽性試料として、標的遺伝子とは異なる生物種の細胞を含む細胞溶液を用いる。当該抽出工程標準陽性試料としては、細胞を含む溶液であればよく、哺乳細胞等の多細胞生物の細胞溶液であってもよく、細菌等の微生物の細胞溶液であってもよい。
従来は、全工程に対して一の標準陽性試料を用いていたため、標的遺伝子と同種の生物の細胞溶液を、標準試料として用いていた。つまり、標的遺伝子が哺乳生物の疾患マーカー遺伝子であった場合には、哺乳生物由来の培養細胞株の細胞溶液を、標的遺伝子が感染症の原因微生物の遺伝子であった場合には、当該原因微生物の培養溶液を、それぞれ用いていた。しかしながら、前述したように、哺乳細胞の細胞溶液は、調製に手間と労力がかかる上に、取扱いにも注意を要する。また、病原性の微生物の培養溶液を標準試料とすることは、安全上好ましくない。これに対して、本発明の工程精度保証方法においては、各工程に対して別個に標準陽性試料を設定するため、生物学的試料からのRNAの抽出工程に対して標準陽性試料として機能し得る細胞溶液であれば、当該細胞溶液から抽出されたRNAが、標的遺伝子由来RNAを含んでおらず、以降の工程の標準試料としては不適当なものであっても、抽出工程標準陽性試料として用いることができる。
本発明の抽出工程標準陽性試料としては、哺乳細胞よりも取り扱い性や保存性が良好であり、調製に要するコストも比較的廉価で済むことから、細菌の細胞溶液(培養液)であることが好ましい。このような細菌の培養液としては、例えば、非病原性の大腸菌や大腸菌群、バクテロイデス属、ユウバクテリウム属等のグラム陰性菌や、バチルス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、スタフィロコッカス属、ビフィドバクテリウム属、リューコノストック属等のグラム陽性菌の培養液を用いることができる。
細菌は、大量培養を簡便に行うことができ、かつ、凍結保存や凍結融解処理に対しても安定である。このため、抽出工程標準陽性試料として細菌の培養液を用いた場合には、一度に大量に調製した細菌の培養液を、適当量ずつ分注して凍結保存することによって、同一ロットの抽出工程標準陽性試料を大量に準備してストックすることが可能となる。複数の検査における抽出工程において、プールされた同一ロットの抽出工程標準陽性試料を用いることにより、検査毎のばらつきを確認でき、より正確に工程の精度を保証することが可能となる。また、このようにして凍結保存された抽出工程標準陽性試料は、解凍後すぐに用いることができ、検査の度に抽出工程標準陽性試料を新たに調製する必要がない。なお、細菌の培養液を凍結保存する際は、グリセロール等の凍結保護剤を含有させた溶液の状態で保存したものであっても良く、また、細菌の培養液を遠心し、上清を捨て、沈殿として細菌を濃縮して保存したものであっても良い。
その他、生物学的試料として、糞便等の細菌を多く含む生体試料を用いる場合には、抽出工程標準陽性試料として細菌の培養液を用いることにより、解析対象である生体試料の性状に近い標準試料とすることができる。
抽出工程の操作に何ら不具合がなく、操作が適確に行われた場合には、抽出工程標準陽性試料から、量や質が十分であるRNAが抽出される。そこで、抽出工程標準陽性試料から抽出されたRNAの量や質を調べ、これらが予め設定された基準を満たす場合には、抽出工程の精度が保証されていると判断することができる。逆に、抽出されたRNAの量や質が、予め設定された基準に満たない場合には、抽出工程の精度が保証されていないと判断することができる。
具体的には、まず、所定量の抽出工程標準陽性試料からRNAを抽出してRNA溶液を調製し、当該RNA溶液中のRNAの濃度、精製度、及び分解度からなる群より選択される1以上を測定する。RNAの濃度、精製度、又は分解度のいずれか1のみの測定値に基づき工程の精度を保証してもよく、2以上の測定値の結果を組み合わせて工程の精度を保証してもよく、3種すべての測定値の結果に基づいて工程の精度を保証してもよい。
当該RNA溶液中のRNAの濃度が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、抽出工程の精度が保証されていないと判断し、予め設定された閾値よりも大きい場合には、抽出工程の精度が保証されていると判断する。この場合の判断基準となる閾値は、RNAを抽出・精製する抽出工程標準陽性試料の濃度や量、RNAの定量方法等を考慮して、適宜決定することができる。なお、RNA溶液中のRNAの濃度は、通常用いられている方法により定量することができる。例えば、260nmの紫外線吸収値や、インターカレーター等の2本鎖核酸結合物質を用いて測定される蛍光値等に基づいて、濃度を算出することができる。また、濃度を算出することによって、抽出されたRNAの総量も算出することができる。
本発明において、RNAの精製度とは、抽出・精製されたRNA中の不純物(RNA以外の物質)の割合を意味する。RNAの精製度が高いほど、該RNAの質は高い。
RNAの精製度の測定は、一般的に核酸試料の精製度(純度)を測定する場合に用いられる公知の手法の中から、適宜選択して行うことができる。本発明においては、UVを用いてRNAの吸光度を測定し、260nmにおける吸光度を230nmにおける吸光度で除した値(260/230nm吸光度比)や260nmにおける吸光度を280nmにおける吸光度で除した値(260/280nm吸光度比)を、精製度の指標とすることが好ましい。260/230nm吸光度比からRNAと塩類との濃度比がわかる。一方、260/280nm吸光度比からRNAとタンパク質等との濃度比がわかるため、これらによりRNAの精製度を知ることができる。つまり、260/230nm吸光度比又は260/280nm吸光度比が、予め設定された数値範囲から外れている場合には、抽出工程の精度が保証されていないと判断することができる。これらの吸光度比のいずれかを用いてもよく、両方を用いてもよい。
具体的には、260/230nm吸光度比が1.0未満又は2.5超である場合には、塩類の含有割合が高く、精製度が不十分であり、抽出工程の精度が保証されていないと判断することができる。逆に、260/230nm吸光度比が1.0〜2.5である場合、好ましくは1.7〜2.1である場合には、精製度が十分であり、抽出工程の精度が保証されていると判断することができる。一方、260/280nm吸光度比が1.0未満又は2.5超である場合には、タンパク質の混入等があり、精製度が不十分であると考えられ、抽出工程の精度が保証されていないと判断することができる。逆に、260/280nm吸光度比が1.0〜2.5である場合、好ましくは1.7〜2.1である場合には、精製度が十分であり、抽出工程の精度が保証されていると判断することができる。
本発明において、RNAの分解度とは、抽出・精製されたRNAが核酸分解酵素等により分解された割合を意味する。RNAの分解度が低いほど、該RNAの質は高い。
RNAの分解度の測定は、一般的に核酸の分解・断片化を測定する場合に用いられる公知の手法の中から、適宜選択して行うことができる。例えば、RNAの電気泳動によるサイズ分離測定を行うと、それぞれのサイズごとの核酸量がわかるため、RNAの分解度を測定することができる。
抽出工程標準陽性試料として、細菌の培養液を用いた場合には、細菌由来RNA、特に細菌のリボソーマルRNAである23S rRNA・16S rRNAサブユニットを指標とし、RNAの分解度を測定することが有効である。例えば、分解の起こっていないtotalRNAでは、2本のリボソーマルRNA(細菌由来の23S rRNAと16S rRNA)のはっきりとしたバンドが、およそ2:1の割合でみられる。これに対して、分解・断片化が起こっているtotalRNAでは、リボソーマルRNAの各サブユニットのバンドが拡散し、バンドが明瞭でなくなり、低分子サイズでスメア状に検出される。このため、23S rRNA/16S rRNA比が、予め設定された数値範囲から外れている場合には、抽出工程の精度が保証されていないと判断することができる。
具体的には、23SリボソーマルRNAのフラグメント量を16SリボソーマルRNAのフラグメント量で除した値(23S rRNA/16S rRNA比)が1.6〜2.5である場合、好ましくは1.8〜2.0である場合には、分解度が十分に低く、抽出工程の精度が保証されていると判断することができる。逆に、23S rRNA/16S rRNA比が1.6未満又は2.5超である場合には、分解度が高く、抽出工程の精度が保証されていないと判断することができる。
RNAの電気泳動に用いることのできるアジレントテクノロジー社の電気泳動装置「バイオアナライザ」は、分子生物学分野では広く用いられている自動キャピラリーゲル電気泳動装置の1つである(例えば、“A microfluidic system for highspeed reproducible DNA sizing and quantitation”、Electrophoresis、200年、第21巻第1号、第128〜134ページ参照。)。これは、核酸のサイズごとの定量結果が測定終了後に自動表示されるため、リボソーマルRNA比である28S rRNA/18S rRNA比(28SリボソーマルRNAのフラグメント量を18SリボソーマルRNAのフラグメント量で除した値)、23S rRNA/16S rRNA比や、その他のバンドの値がわかり、リボソーマルRNAの分解・断片化の割合から目的RNAの分解度・精製度を推測することができる。この装置のアルゴリズムの1つであるRIN(RNA Integrity Number)値は、核酸の分解度の指標の1つとして一般的に用いられている。このRIN値(範囲:1〜10)を用いた場合、RIN値が高い(=10)と分解度が少なく、RIN値が低い(=1)と分解度が高いといえる。例えば、細菌の培養液由来のRNAでは、RIN値の範囲は10〜4であれば、分解度が十分に低いと判断することができる。
工程(a)において、RNAを抽出するために供される抽出工程標準陽性試料の濃度あるいは量は、当該濃度あるいは量の抽出工程標準陽性試料から抽出した場合に、抽出されるRNAの濃度あるいは量が予め設定された閾値よりも大きいこと、抽出されるRNAの精製度が予め設定された数値範囲内であること、抽出されるRNAの分解度が予め設定された数値範囲内であることが、確認されている量であればよい。例えば、同一ロットの細菌培養液のストックを多数調製し冷凍保存した場合に、1のストックの所定量の細菌培養液からRNAを抽出し、抽出されたRNAの濃度あるいは量、精製度、分解度が十分であることが確認できた場合には、以後の検査において、当該ロットのストックから分取した同じ量の細菌培養液を、抽出工程標準陽性試料として使用することができる。
・工程(b)
工程(b)においては、逆転写工程標準陽性試料として、標的遺伝子由来RNA及び/又は標準遺伝子由来RNAを含むRNA含有試料を用いる。当該逆転写工程標準陽性試料としては、標的遺伝子由来RNAと標準遺伝子由来RNAとのいずれか一方を少なくとも含むRNA溶液であれば、いずれのRNA溶液であってもよいが、大量のRNAを、少なくとも複数回の逆転写反応に必要な量のRNAを、一度の調製により得ることができるRNA溶液であることが好ましい。同一ロットのRNA溶液を、適当量ずつに分注して多数ストックしておくことができるためである。複数の検査における逆転写工程において、プールされた同一ロットのRNA溶液を逆転写工程標準陽性試料として使用することにより、検査毎のばらつきを確認でき、より正確に工程の精度を保証することができる。
逆転写工程標準陽性試料としては、例えば、標的遺伝子由来RNAと標準遺伝子由来RNAとのいずれか一方を少なくとも含む培養細胞の細胞溶液から、常法により抽出・精製したTotal RNA溶液が挙げられる。また、標的遺伝子と標準遺伝子が異なる生物種の遺伝子同士である場合には、標的遺伝子由来RNAを含む培養細胞の細胞溶液から抽出・精製したTotal RNA溶液と、標準遺伝子由来RNAを含む培養細胞の細胞溶液から抽出・精製したTotal RNA溶液とを混合した溶液であってもよい。また、標的遺伝子由来RNAを、NASBAやTRC等のRNA増幅法により増幅し、得られた増幅産物を、そのまま逆転写工程標準陽性試料として用いてもよく、この増幅産物を、標準遺伝子のみを発現する培養細胞から抽出・精製したTotal RNAにスパイク混合させたものを、逆転写工程標準陽性試料としてもよい。その他、人工配列RNAであってもよい。なお、「人工配列RNA」とは、塩基配列を人工的に設計したRNAを意味する。
また、前述したように、生体試料は、一般的に、採取された生物以外の細菌等の生物由来のRNAを含むものであるため、逆転写工程標準陽性試料として、標的遺伝子と同種の生物のRNAと、その他の生物種のRNAとを含む試料、つまり、2以上の生物種のRNAを含む試料とすることにより、解析対象である生体試料の性状に近い標準試料とすることができ、このような逆転写工程標準陽性試料を用いることにより、逆転写工程をより正確に反映できる。例えば、生物学的試料が糞便等の哺乳細胞由来RNAと細菌由来RNAを含む試料である場合には、標的遺伝子由来RNAを含む培養細胞から調製されたRNA溶液と、細菌から調製されたRNA溶液とを、任意の割合で混合し、より実際の生物学的試料から抽出されたRNA溶液の状態に近づけたものを、逆転写工程標準陽性試料として用いることが好ましい。また、別個に調製したRNA溶液を混合したものを逆転写工程標準陽性試料として用いる場合にも、それぞれのRNA溶液を一度に大量に調製し、これらを混合して均一化したものを、適当量ずつに分注して多数ストックしておくことが好ましい。
具体的には、所定量の逆転写工程標準陽性試料中のRNAを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを得、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の、増幅量又は増幅効率に基づき、逆転写工程及び増幅工程の精度を保証する。
一般的に、逆転写反応で成功したか否かについて、逆転写後のRNAを直接確認することは困難である。そこで、逆転写工程の結果は、増幅工程の結果と合わせて判断する。すなわち、得られたcDNAを鋳型にした増幅反応を行い、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、逆転写工程及び/又は増幅工程の精度が保証されていないと判断することができる。逆に、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記逆転写工程及び前記増幅工程の精度が保証されていると判断することができる。この場合の判断基準となる閾値は、逆転写反応において用いられた逆転写工程標準陽性試料の濃度や量、増幅反応や増幅産物の検出反応の種類等を考慮して、適宜決定することができる。
増幅量や増幅効率は、増幅工程により得られた増幅産物を、定量的又は半定量的に検出することにより、測定又は算出することができる。また、増幅工程をリアルタイムPCR等の半定量的な増幅方法を用いて行うことによっても、増幅量や増幅効率を測定することができる。
なお、抽出工程標準陽性試料と同様に、逆転写工程に供される逆転写工程標準陽性試料の量は、当該量の逆転写工程標準陽性試料に対して逆転写反応を行い、さらに得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行った場合に、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の、増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも大きいことが、確認されている量であればよい。
・工程(b’)
本発明においては、さらに下記の工程(b’)を有していてもよい。
(b’)鋳型となるRNAを含まない逆転写反応溶液中で逆転写反応を行った後、当該逆転写反応溶液を添加した増幅反応溶液中で増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の有無に基づき、逆転写工程及び前記増幅工程の精度を保証する工程。
具体的には、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸が検出された場合には、少なくとも逆転写工程と増幅工程のいずれか一方の工程に不具合があり、工程精度が保証されていないと判断される。なお、鋳型となるRNAを含まない逆転写反応溶液は、工程(b)において調製される逆転写反応溶液において、逆転写工程標準陽性試料に換えて、純水やバッファー等を添加することにより調製することができる。
・工程(c)
工程(c)においては、増幅工程標準陽性試料として、標的遺伝子及び/又は標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料を用いる。ここで、「人工配列DNA」とは、塩基配列を人工的に設計したDNAを意味する。つまり、増幅工程標準陽性試料は、標的遺伝子及び/又は標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列に、その他の塩基配列を結合させた配列からなるDNA(以下、人工配列標準DNA)の溶液であって、当該DNAの濃度が既知の溶液である。
当該人工配列標準DNAの塩基配列は、標的遺伝子の全部又は一部の塩基配列を含んでいてもよく、標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を含んでいてもよく、標的遺伝子の全部又は一部の塩基配列と標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列との両方を含んでいてもよい。その他、増幅工程標準陽性試料としては、標的遺伝子の全部又は一部の塩基配列を含む人工配列標準DNAと、標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を含む人工配列標準DNAとの混合物であってもよい。
人工配列標準DNAとしては、プラスミドDNA又は化学合成された核酸鎖であることが好ましい。例えば、pUC系のプラスミド等のプラスミドに、標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列や、標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を組み込むことにより、プラスミドDNAからなる人工配列標準DNAを作製することができる。また、100塩基対長程度の長さであれば、人工配列標準DNAは化学合成によって作製することが可能である。大腸菌等を用いた発現系を利用することにより、一度の調製により大量のプラスミドDNAを簡便に調製することが可能であるため、人工配列標準DNAがプラスミドDNAであることが好ましい。
増幅工程標準陽性試料を調製する場合には、逆転写工程標準陽性試料等と同様に、大量の人工配列標準DNAを、少なくとも複数回の増幅反応に必要な量の人工配列標準DNAを、一度の調製により製造し、適当量ずつに分注して多数の均一なストックをプールしておくことが好ましい。複数の検査における増幅工程において、プールされた同一ロットの人工配列標準DNA溶液を増幅工程標準陽性試料として使用することにより、検査毎のばらつきを確認でき、より正確に工程の精度を保証することができる。
具体的には、増幅工程標準陽性試料中のDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の、増幅量又は増幅効率に基づき、増幅工程の精度を保証する。すなわち、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、前記増幅工程の精度が保証されていないと判断し、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記増幅工程の精度が保証されていると判断する。増幅量や増幅効率の測定又は算出は、工程(b)と同様にして行うことができる。
また、工程(b)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、逆転写工程と増幅工程のどちらの工程において不具合が生じているのか判別できないが、工程(c)を組み合わせることにより、不具合が生じている工程を特定できる場合がある。つまり、工程(c)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも大きい場合には、増幅工程の精度は保証されていると判断することができるため、逆転写工程の精度が保証されていないと判断することができる。
なお、逆転写工程標準陽性試料と同様に、増幅工程に供される増幅工程標準陽性試料の量は、当該量の増幅工程標準陽性試料に対して増幅反応を行った場合に、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも大きいことが、確認されている量であればよい。
・工程(c”)
本発明においては、工程(c)は、下記の工程(c”)であってもよい。
(c”)標的遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料を段階的に希釈し、調製された各濃度の希釈液中のDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率に基づき、前記増幅工程の精度の保証と、前記生物学的試料中の標的遺伝子由来RNAの定量とを行う工程。
なお、工程(c”)における「標的遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNA」は、前述の人工配列標準DNAと同様である。
一般的に、増幅反応により増幅された核酸を定量する場合には、標準試料の希釈系列(標準試料を段階的に希釈して調製した希釈液のセット)を用いて検量線を作成し、当該検量線に基づいて増幅産物量を定量する。工程(c”)においては、工程精度を調べるための標準陽性試料として、人工配列標準DNAの希釈系列を用いることにより、当該標準陽性試料を、定量的解析用の標準試料としても同時に用いることができる。これにより、検量線作成のために別個に増幅反応を行うことなく、増幅された標的遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率を求めることができる。
・工程(c’)
本発明においては、さらに下記の工程(c’)を有していてもよい。
(c’)鋳型となるDNAを含まない増幅反応溶液中で増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の有無に基づき、前記増幅工程の精度を保証する工程。
具体的には、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸が検出された場合には、増幅工程に不具合があり、工程精度が保証されていないと判断される。なお、鋳型となるDNAを含まない逆転写反応溶液は、工程(c)において調製される増幅反応溶液において、増幅工程標準陽性試料に換えて、純水やバッファー等を添加することにより調製することができる。
図1は、本発明の工程精度保証方法の一態様を示したフローチャートである。抽出工程標準陽性試料として細菌の培養液(細菌標準サンプル)を、逆転写工程標準陽性試料として培養細胞由来Total RNAと細菌由来Total RNAとの混合溶液(培養細胞+細菌由来Total RNAサンプル)を、増幅工程標準陽性試料として標的遺伝子又は標準遺伝子の遺伝子配列を有するプラスミドDNA(プラスミドDNAサンプル)を、それぞれ用いている。なお、本発明が、これらの態様に限定されるものではないことは、言うまでもない。
細菌標準サンプルに対して抽出工程を行った場合に、RNAの濃度あるいは量、分解度、精製度が閾値以上の場合には、RNA抽出工程の精度が正常である(保証されている)と判断され、検出結果の信頼性が高いと判断される。一方、細菌標準サンプルが、RNAの濃度あるいは量、分解度、精製度が閾値未満の場合には、RNA抽出工程の精度が異常である(保証されていない)と判断され、検出結果の信頼性が低いと判断される。
培養細胞+細菌由来Total RNAサンプルに対して逆転写工程を行い、その後増幅工程を行った場合に、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量や増幅効率が閾値以上の場合には、逆転写工程の精度が正常であると判断され、検出結果の信頼性が高いと判断される。一方、標的遺伝子由来核酸等の増幅量や増幅効率が閾値未満の場合には、逆転写工程の精度が異常であると判断され、検出結果の信頼性が低いと判断される。
また、プラスミドDNAサンプルに対して増幅工程を行った場合に、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量や増幅効率が閾値以上の場合には、増幅工程の精度が正常であると判断され、検出結果の信頼性が高いと判断される。一方、標的遺伝子由来核酸等の増幅量や増幅効率が閾値未満の場合には、増幅工程の精度が異常であると判断され、検出結果の信頼性が低いと判断される。
表1は、工程(a)における抽出工程の判断をまとめたものである。表中、「+」は、表中に記載の判断基準を満たしている場合を、「−」は判断基準を満たしていない場合を、それぞれ示している。細菌標準サンプル(抽出工程標準陽性試料)による抽出を行なった際に、RNA濃度が閾値以上である場合、RNA分解度が閾値以上である場合、RNA精製度が閾値以上である場合(「+」)には、RNAの抽出工程精度が正常であり、結果の信頼性が高いと判断される。一方、RNA濃度が閾値未満である場合、RNA分解度が閾値未満である場合、RNA精製度が閾値未満である場合(「−」)には、抽出工程精度が異常であり、結果の信頼性が低いと判断される。
Figure 2010142188
表2は、工程(b)及び(c)における逆転写工程と増幅工程の判断法を表にまとめたものである。表中の「+」及び「−」は、表1と同様である。培養細胞+細菌由来Total RNAサンプルからの標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量もしくは増幅効率が一定量以上になる場合、逆転写工程及び増幅工程が正常であり、結果の信頼性が高い。また、標的遺伝子由来核酸等の増幅量もしくは増幅効率が一定量以上になり、かつ、プラスミドDNAサンプルからの標的遺伝子由来核酸等の増幅量もしくは増幅効率が一定量未満になる場合、逆転写工程は正常であるが、増幅工程が不安定な異常であり、結果の信頼性が低い。
一方、培養細胞+細菌由来Total RNAサンプルからの標的遺伝子由来核酸等の増幅量もしくは増幅効率が一定量未満になり、かつ、プラスミドDNAサンプルからの標的遺伝子由来核酸等の増幅量もしくは増幅効率が一定量以上になる場合、逆転写工程は異常であるが、増幅工程が正常であり、結果の信頼性が低い。これに対して、培養細胞+細菌由来Total RNAサンプルからとプラスミドDNAサンプルからとの両方の標的遺伝子由来核酸等の増幅量もしくは増幅効率が一定量未満になる場合、少なくとも増幅工程が異常であり、逆転写工程にも異常がある可能性があり、結果の信頼性が低い。
Figure 2010142188
標的遺伝子由来RNAの検出方法における抽出工程、逆転写工程、増幅工程に対して、本発明の工程精度保証方法を行うことにより、いずれの工程の精度も保証されている、と判断された場合には、当該検出方法により得られた標的遺伝子由来RNAの検出結果は信頼できる、と判断することができる。一方、抽出工程、逆転写工程、増幅工程のうちの1の工程において、精度が保証されていない、と判断された場合には、当該検出方法により得られた標的遺伝子由来RNAの検出結果は信頼できず、擬陽性、擬陰性である可能性が高いと判断することができる。
また、検出結果が信頼できない、と判断された場合であっても、抽出工程、逆転写工程、増幅工程のうち、工程の精度が保証されていないと判断された工程から操作をやり直すことにより、検出方法全体の無駄を防止することもできる。
また、本発明の工程精度保証方法は、各工程の標準陽性試料をキットとすることにより、より簡便に行うことができる。具体的には、標的遺伝子及び/又は前記標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料と、標的遺伝子とは異なる生物種の細胞を含む細胞溶液並びに/又は標的遺伝子由来RNA及び/若しくは標準遺伝子由来RNAを含むRNA含有試料と、を含む工程精度保証用キットとすることができる。なお、前記細胞溶液を、細菌の培養液とすることにより、抽出工程標準陽性試料についても、凍結保存に対しても安定であり、同一ロットのストックを多数調製することができるため、より取扱性・安定性に優れたキットとすることができる。
培養細胞の培養物等とは異なり、生体試料は、微生物や、組織の剥離片等の様々な夾雑物を含有している不均一な試料である。このため、採取後RNA抽出工程までの間に、保存中に生体試料中の核酸が分解等により損なわれやすい。また、採取する部位により、細胞の含有量も変動しやすい。特に、糞便のように、大量の腸内細菌や消化物等の雑多な夾雑物が多く含まれているヘテロジニアスな生体試料では、もともとの糞便中には存在していた標的遺伝子由来RNAが、採取部位や採取後の保存方法等によっては、検出されない場合も多い、という問題がある。
また、核酸の検出方法において、信頼性できる検出結果を得ることができるか否かは、各工程の精度が保証されているか否かに加えて、各工程に供される試料の精度にも依存する。例えば、抽出工程標準陽性試料を用いた工程(a)においては、抽出工程の精度が保証されている、と判断された場合であっても、そもそも抽出工程に供される生物学的試料に問題がある場合には、信頼できる検出結果を得ることはできない。そこで、解析対象である生物学的試料の精度を保証することも好ましい。
ここで、生物学的試料の精度とは、当該生物学的試料中のRNAの品質や量が、当該生物学的試料を用いて標的遺伝子由来RNAを検出した場合であって、各工程の精度が保証されている場合に、信頼性の高い検査結果を得るために十分であることを意味する。すなわち、「生物学的試料の精度が保証されている」とは、当該生物学的試料中のRNAの量や質が十分であり、当該生物学的試料を用いて標的遺伝子由来RNAを用いて得られた検出結果は、信頼性が高いことを意味する。逆に、「生物学的試料の精度が保証されていない」とは、当該生物学的試料中のRNAの量や質が不十分であり、当該生物学的試料を用いて標的遺伝子由来RNAを用いて得られた検出結果は、信頼性が低いことを意味する。
具体的には、本発明においては、さらに下記の工程(d)や(e)を有することが好ましい。工程(d)のみを有していてもよく、工程(e)のみを有していてもよく、工程(d)及び(e)を有していてもよい。
(d)前記抽出工程において、前記生物学的試料から抽出された標的RNA溶液中のRNAの、濃度、精製度、及び分解度からなる群より選択される1以上を測定し、得られた測定値に基づき、当該生物学的試料の精度を保証する工程。
(e)前記逆転写工程において得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率に基づき、前記生物学的試料の精度を保証する工程。
工程(d)におけるRNAの濃度、精製度、又は分解度の測定は、工程(a)と同様にして行うことができる。標的RNA溶液中のRNAの濃度が予め設定された閾値よりも小さい場合や、260/230nm吸光度比又は260/280nm吸光度比が、予め設定された数値範囲から外れている場合、23S rRNA/16S rRNA比が、予め設定された数値範囲から外れている場合には、RNA抽出に供された生物学的試料の精度が保証されていないと判断する。逆に、標的RNA溶液中のRNAの濃度が予め設定された閾値よりも大きい場合や、260/230nm吸光度比又は260/280nm吸光度比が、予め設定された数値範囲内である場合、23S rRNA/16S rRNA比が、予め設定された数値範囲内である場合には、当該生物学的試料の精度が保証されていると判断することができる。
工程(e)における標準遺伝子由来核酸の増幅、増幅量や増幅効率の測定は、工程(c)と同様にして行うことができる。RNA中の標準遺伝子由来RNAの量が、予め定められた所定の閾値以上である場合には、RNA抽出に供された生物学的試料の精度が保証されていると判断することができる。逆に、RNA中の標準遺伝子由来RNAの量が、予め定められた所定の閾値に満たない場合には、当該生物学的試料の精度が保証されていないと判断することができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
大腸癌患者由来の糞便中には、COX−2遺伝子のmRNA等が、健常者由来の糞便中よりも多く存在していることが報告されている。これは、大腸癌患者において、COX−2遺伝子が高発現するためと考えられている。そこで、健常人の糞便に対し、COX−2遺伝子を高発現しているヒト胃癌由来細胞株MKN45細胞を6×10cells添加して混合させたものを、擬似大腸癌患者糞便とした。なお、培養細胞であるMKN45細胞は、常法により培養した。
[参考例1] 抽出工程標準陽性試料である細菌標準サンプルの作成
環境より分離された乳酸菌(Lactobacillus属)を常法により液体培地で培養した。培養後、15mLチューブ(FALCON社製)に培養液5mLずつ120本に分注し遠心後、上清を捨て、集菌し冷凍した。これらのサンプルのうち6本を、ISOGEN(日本ジーン社製)を用い、添付のプロトコールに従い、RNAの抽出を行ない、沈殿を得た。RNAの沈殿は、TE Bufferに溶解させ、RNA溶液とした。
このRNA溶液を、NanoDrop1000(Thermo Scientific)で、OD260(260nmにおける吸光度)の値から濃度を測定し、回収量を算出した。また、OD280(280nmにおける吸光度)、OD230(230nmにおける吸光度)の値も測定した。さらに、変性アガロース電気泳動を行い、23S rRNA fragment、16S rRNA fragmentをエチジウムブロマイド染色し、各fragment濃度をデンシトメーターで測定した。
その結果、表3に示すように、13.1±0.66μgのRNAを抽出できることが確認できた。表中、「260/280nm吸光度比」は、OD260値より算出された濃度から算定された量を示す。また、260/280nm吸光度比は、全て1.9以上であり、260/230nm吸光度比は、全て1.8以上であった。同時に電気泳動も行った結果、23S rRNA/16S rRNA比は、いずれも2.4以上であった。これらの値から、残りの冷凍サンプルも、RNA量・質がともに均一と判断し、これらを細菌標準サンプルとした。また、この細菌標準サンプルの閾値は、RNA抽出量で10μg(200ng/μL)、260/280nm吸光度比は1.8以上、260/230nm吸光度比は1.8以上、23S rRNA/16S rRNA比は2.0以上と設定した。
Figure 2010142188
[実施例1] 細菌標準サンプルを用いた抽出工程の精度保証1
健常人から採取した糞便を15mLチューブに0.5g分取し、3サンプルを得た。さらに、健常人の糞便にMKN45細胞を混合した擬似大腸癌患者糞便0.5gを2サンプル準備した。
また、実施例1で作成した乳酸菌冷凍サンプルを一検体用い、これを抽出工程保証の標準サンプルとした。
これらのサンプルを、ISOGENを用い、添付のプロトコールに従い、同一工程で、並列してRNAの抽出を行ない、沈殿を得た。RNAの沈殿は、TE Bufferに溶解させ、RNA溶液とした。
細菌標準サンプルの作成と同様にして、細菌標準サンプル由来のRNA溶液の濃度と質を測定した。回収RNA量は12.8μg(256ng/μL)、260/280nm吸光度比は1.92、260/230nm吸光度比は1.93、23S rRNA/16S rRNA比は2.4となった。これらの値は閾値をクリアしており、RNA抽出工程精度が正常であり、この同一抽出工程で処理された同一バッチのヒトサンプルを用いた場合も、RNA抽出までの結果の信頼性は高いと判断された。
[実施例2] 細菌標準サンプルを用いた抽出工程の精度保証2
健常人から採取した糞便を15mLチューブに0.5g分取し、3サンプルを得た。また、実施例1で作成した乳酸菌冷凍サンプルを一検体用い、これを抽出工程保証の標準サンプルとした。
これらのサンプルに、通常は、ISOGENを用い抽出を行なうところ、滅菌水でISOGENを10倍に希釈した1/10 ISOGENを誤って用いたことを想定して、添付のプロトコールに従い、同一工程で、並列してRNAの抽出を行ない、沈殿を得た。RNAの沈殿は、TE Bufferに溶解させ、RNA溶液とした。
実施例1のように、標準サンプル由来のRNA溶液の濃度と質を測定した。回収RNA量は1.3μg、260/280nm吸光度比は1.01、260/280nm吸光度比は0.99、23S rRNA/16S rRNA比は1.1となった。これらの値は閾値をクリアしておらず、RNA抽出工程精度が異常であり、この同一抽出工程で処理された同一バッチのヒトサンプルを用いた場合も、RNA抽出までの結果の信頼性は、低いと判断され、残りの3サンプルは、続く工程には用いなかった。
[参考例2] 増幅工程標準陽性試料であるプラスミドDNAサンプルの作成
MKN45細胞から分離・抽出したCOX-2遺伝子のcDNA増幅産物を、pCR2.1プラスミド(Invitrogen社製)に結合させて人工配列標準DNAを構築し (濃度100ng/μL)、増幅工程標準陽性試料として用いるプラスミドDNAサンプルの作成を行なった。この人工配列標準DNAを、1〜100000倍まで1/10ずつ5段階希釈して用いた。各希釈系列を1μL用いて、12.5μLの2×TaqMan PCR master mix(Applied Biosystems社製)を添加し、COX−2検出用のTaqManプライマーとプローブキット(TaqMan(登録商標) Gene Expression Assays:Applied Biosystems社製)を添加し、最終容量が25μLとなるようにPCR溶液を調製した。該PCR溶液に対して、ABI Prism 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)によるTaqMan PCR解析をTaqMan(登録商標) Gene Expression Assaysの説明に従い、Real−time PCRを行った。この際、1/100000希釈のCt値が、23.9になった。この標準サンプルの閾値は、1/100000希釈のCt値が、26未満と設定した。
また、1/100000希釈のCt値は、244000コピーと推定される。当該人工配列標準DNAは、予め設定した濃度におけるCt値が閾値の範囲内である場合に、希釈系列を用いることによって定量の基準サンプルとしても用いることができる。すなわち、Ct値が閾値の範囲内にあるとき、244000コピーを示すCt値は23.9であり、24400コピーを示すCt値は27.5、2440コピーを示すCt値は30.8、244コピーを示すCt値は34.7、24.4コピーを示すCt値は37.1、となるため、この標準人工配列DNAを用いることで、解析したいサンプルのCt値より、サンプル中のコピー数を推定することができる。
また、標準人工配列DNAのサンプルを用いた定性解析の場合には、リアルタイムRT−PCR(Reverse Transcription‐Polymerase Chain Reaction)ではなく、通常のRT−PCRにより、増幅断片の有無を電気泳動で確認し、増幅が見られた場合は、増幅工程が正常に行なわれたと判断する。
なお、今回は癌に特異的なCOX−2遺伝子を用いたが、正常検体でも見られるGAPDH遺伝子やアクチンβ遺伝子やβ2マイクログロブリン遺伝子を用いることもできる。
[参考例3] 逆転写工程標準陽性試料である標準Total RNAサンプルの作成
5×10cellsのMKN45細胞から抽出・回収され、回収量・質ともに閾値をクリアしたTotal RNAをプールし、標準Total RNAサンプルとした。標準Total RNAサンプルは、100ng/μLに調製し、4μLずつ80本に分注し、凍結した。
凍結した標準Total RNAサンプルから無作為に4本選び、逆転写反応を行なった。具体的には、抽出したRNAサンプルの一部を、リバースクリプトII(登録商標)(反応液量20μL、和光純薬)とランダムプライマーを用いて逆転写し、約20μLのcDNA溶液を得た。さらに、1μLの該cDNA溶液に、12.5μLの2×TaqMan PCR master mix(Applied Biosystems社製)を添加し、COX−2検出用のTaqManプライマーとプローブキット(TaqMan(登録商標) Gene Expression Assays:Applied Biosystems社製)を添加し、最終容量が25μLとなるようにPCR溶液を調製した。該PCR溶液に対して、ABI Prism 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)によるTaqMan PCR解析をTaqMan(登録商標) Gene Expression Assaysの説明に従い、Real−time PCRを行った。コピー数の定量は、参考例2で作成したプラスミドDNAサンプルを、同一工程で並列して増幅工程を行ない、コピー数を算出した。
結果は表4のようになり、当該標準Total RNAサンプル中のCOX−2遺伝子由来RNAのコピー数が算出された。そこで、当該標準Total RNAサンプルを用いた定量解析を行う場合に、COX−2コピー数が、124000以上で検出されることという閾値を設定した。
また、当該標準Total RNAサンプルを用いた定性解析の場合には、リアルタイムRT−PCRではなく、通常のRT−PCRにより、増幅断片の有無を電気泳動で確認し、増幅が見られた場合は、逆転写工程及び増幅工程が正常に行なわれたと判断する。
Figure 2010142188
[実施例3] 標準Total RNAサンプルを用いた逆転写工程及び増幅工程の精度保証1
実施例1において、健常人由来糞便から抽出した3RNAサンプル(健常人RNAサンプル)と、擬似大腸がん患者糞便から抽出した2RNAサンプル(擬似がん患者RNAサンプル)に対して、逆転写工程を行い、その後増幅工程を行った。具体的には、各RNAサンプルの一部をリバースクリプトIIとランダムプライマーを用いて逆転写し、約20μLのcDNA溶液を得た。この際、参考例3の標準Total RNAサンプルを用い、同一工程で、並列して逆転写工程を行ない、cDNAに変換した。さらに、鋳型を添加しない逆転写反応溶液中で反応を行い、その後増幅反応を行った。
各逆転写工程後のcDNAサンプル1μLに、12.5μLの2×TaqMan PCR master mixを添加し、COX−2検出用のTaqManプライマーとプローブキットを添加し、最終容量が25μLとなるようにPCR溶液を調製した。該PCR溶液に対して、ABI Prism 7700 Sequence Detection SystemによるTaqMan PCR解析をTaqMan(登録商標) Gene Expression Assaysの説明に従い、Real−time PCRを行った。コピー数の定量は、参考例2で作成したプラスミドDNAサンプルを、同一工程で並列して増幅工程を行ない、コピー数を算出した。算出結果を表5に示す。
Figure 2010142188
健常人RNAサンプルでは、いずれもCOX−2のコピー数は0であり、COX−2遺伝子の発現が見られなかった。一方、擬似がん患者RNAサンプルでは、コピー数が3750と4921となった。この際、標準Total RNAサンプルでは、136037コピーであり、閾値の124000以上であったため、逆転写工程及び増幅工程(PCRの工程)に問題が無いことがわかった。
さらに、同時に参考例2で作成したプラスミドDNAサンプルを用い、同一工程で、並列して増幅工程を行なったところ、1/100000希釈のCt値が24.8であり、閾値の26未満であったため、PCRの工程にも問題ないことがわかった。そのため、この解析結果は信頼できるものと判断された。
[実施例4] 標準Total RNAサンプルを用いた逆転写工程及び増幅工程の精度保証2
実施例1において、健常人由来糞便から抽出した3RNAサンプル(健常人RNAサンプル)と、擬似大腸がん患者糞便から抽出した2RNAサンプル(擬似がん患者RNAサンプル)に対して、逆転写工程を行い、その後増幅工程を行った。具体的には、各RNAサンプルの一部に対して、ランダムプライマーを用いずに、リバースクリプトIIを添加して逆転写し、約20μLのcDNA溶液を得た。この際、参考例3の標準Total RNAサンプルを用い、同一工程で、並列して逆転写工程を行ない、cDNAに変換した。さらに、鋳型を添加しない逆転写反応溶液中で反応を行い、その後増幅反応を行った。
各逆転写工程後のcDNAサンプル1μLに対して、実施例3と同様にしてReal−time PCRを行い、COX−2のコピー数を算出した。算出結果を表6に示す。
Figure 2010142188
健常人RNAサンプル、擬似がん患者RNAサンプル、及び標準Total RNAサンプルでは、いずれもCOX−2のコピー数は0であり、COX−2遺伝子の発現が見られなかった。一方、同時に参考例2で作成したプラスミドDNAサンプルを用い、同一工程で、並列して増幅工程を行なったところ、1/10000希釈のCt値が25.0であり、閾値の26未満であったため、増幅工程(PCRの工程)には問題ないことがわかった。
これらの結果から、逆転写工程の精度に問題があることが推測され、本結果の信頼性は低いことがわかった。
[実施例4] 標準Total RNAサンプルを用いた逆転写工程及び増幅工程の精度保証3
実施例1において、健常人由来糞便から抽出した3RNAサンプル(健常人RNAサンプル)と、擬似大腸がん患者糞便から抽出した2RNAサンプル(擬似がん患者RNAサンプル)に対して、逆転写工程を行い、その後増幅工程を行った。具体的には、各RNAサンプルの一部に対して、ランダムプライマーを用いずに、リバースクリプトIIを添加して逆転写し、約20μLのcDNA溶液を得た。この際、参考例3の標準Total RNAサンプルを用い、同一工程で、並列して逆転写工程を行ない、cDNAに変換した。さらに、鋳型を添加しない逆転写反応溶液中で反応を行い、その後増幅反応を行った。
各逆転写工程後のcDNAサンプル1μLに対して、実施例3と同様にしてReal−time PCRを行い、COX−2のコピー数を算出した。算出結果を表7に示す。
Figure 2010142188
健常人RNAサンプル、擬似がん患者RNAサンプル、及び標準Total RNAサンプルでは、いずれもCOX−2のコピー数は0であり、COX−2遺伝子の発現が見られなかった。一方、同時に参考例2で作成したプラスミドDNAサンプルを用い、同一工程で、並列して増幅工程を行なったところ、1/10000希釈のCt値が44.0であり、閾値の26以上であった。
これらの結果から、少なくとも増幅工程の精度に問題があることが推測され、本結果の信頼性は低いことがわかった。
なお、今回は、鋳型無しの際には、増幅が見られていないが、コンタミネーションによって増幅が見られた場合、増幅工程の精度管理に問題があったと判断する。
本発明の工程精度保証方法により、検査工程精度をより適切に保証することができるため、各工程を保証し、実サンプルで得られる結果の信頼性を向上させることが可能となる。このため、本発明の工程精度保証方法は、医療診断のための臨床検査の分野において特に有用である。
本発明の工程精度保証方法の一態様を示したフローチャートである。

Claims (19)

  1. 2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料から、RNAを抽出する抽出工程と、抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを得る逆転写工程と、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行う増幅工程と、増幅された核酸を検出する検出工程と、を含む標的遺伝子由来RNAの検出方法における工程精度を保証する方法であって、
    前記標的遺伝子は疾患のマーカー遺伝子であり、
    前記標的遺伝子以外の遺伝子であって、前記生物学的試料に当該遺伝子由来のRNAが含まれている遺伝子を標準遺伝子とし、
    下記工程(a)及び/又は(b)と、下記工程(c)とを有することを特徴とする工程精度保証方法。
    (a)標的遺伝子とは異なる生物種の細胞を含む細胞溶液を抽出工程標準陽性試料とし、所定量の抽出工程標準陽性試料からRNAを抽出してRNA溶液を調製し、当該RNA溶液中のRNAの、濃度、精製度、及び分解度からなる群より選択される1以上を測定し、得られた測定値に基づき、前記抽出工程の精度を保証する工程。
    (b)標的遺伝子由来RNA及び/又は標準遺伝子由来RNAを含むRNA含有試料を逆転写工程標準陽性試料とし、所定量の逆転写工程標準陽性試料中のRNAを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを得、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の、増幅量又は増幅効率に基づき、前記逆転写工程及び前記増幅工程の精度を保証する工程。
    (c)標的遺伝子及び/又は標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料を増幅工程標準陽性試料とし、所定量の増幅工程標準陽性試料中のDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の、増幅量又は増幅効率に基づき、前記増幅工程の精度を保証する工程。
  2. 前記生物学的試料が、哺乳生物のRNAよりも微生物のRNAを多く含む生物学的試料であることを特徴とする請求項1記載の工程精度保証方法。
  3. 前記抽出工程標準陽性試料が、細菌の細胞溶液であることを特徴とする請求項2記載の工程精度保証方法。
  4. 前記逆転写工程標準陽性試料が、2以上の生物種のRNAを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の工程精度保証方法。
  5. さらに、
    (b’)鋳型となるRNAを含まない逆転写反応溶液中で逆転写反応を行った後、当該逆転写反応溶液を添加した増幅反応溶液中で増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の有無に基づき、前記逆転写工程及び前記増幅工程の精度を保証する工程と、
    を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の工程精度保証方法。
  6. さらに、
    (c’)鋳型となるDNAを含まない増幅反応溶液中で増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の有無に基づき、前記増幅工程の精度を保証する工程と、
    を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の工程精度保証方法。
  7. さらに、下記工程(d)及び/又は(e)を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の工程精度保証方法。
    (d)前記抽出工程において、前記生物学的試料から抽出された標的RNA溶液中のRNAの、濃度、精製度、及び分解度からなる群より選択される1以上を測定し、得られた測定値に基づき、当該生物学的試料の精度を保証する工程。
    (e)前記逆転写工程において得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率に基づき、前記生物学的試料の精度を保証する工程。
  8. 前記工程(a)において、前記RNA溶液中のRNAの濃度が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断し、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記抽出工程の精度が保証されていると判断することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の工程精度保証方法。
  9. 前記工程(a)において、RNAの精製度の測定が、前記RNA溶液の、260nmにおける吸光度を230nmにおける吸光度で除した値(260/230nm吸光度比)、及び/又は260nmにおける吸光度を280nmにおける吸光度で除した値(260/280nm吸光度比)を測定するものであり、
    前記260/230nm吸光度比又は260/280nm吸光度比が、予め設定された数値範囲から外れている場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の工程精度保証方法。
  10. 前記260/230nm吸光度比又は260/280nm吸光度比が、1.0〜2.5の範囲から外れている場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする請求項9記載の工程精度保証方法。
  11. 前記工程(a)において、RNAの分解度の測定が、前記RNA溶液中のRNAの、23SリボソーマルRNAのフラグメント量を16SリボソーマルRNAのフラグメント量で除した値(23S rRNA/16S rRNA比)を測定するものであり、
    前記23S rRNA/16S rRNA比が、予め設定された数値範囲から外れている場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする請求項2〜10のいずれか記載の工程精度保証方法。
  12. 前記23S rRNA/16S rRNA比が、1.6〜2.5の範囲から外れている場合には、前記抽出工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする請求項11記載の工程精度保証方法。
  13. 前記工程(b)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、前記逆転写工程及び/又は前記増幅工程の精度が保証されていないと判断し、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記逆転写工程及び前記増幅工程の精度が保証されていると判断することを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の工程精度保証方法。
  14. 前記工程(c)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも小さい場合には、前記増幅工程の精度が保証されていないと判断し、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記増幅工程の精度が保証されていると判断することを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の工程精度保証方法。
  15. 前記工程(b)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも小さく、かつ、前記工程(c)において、標的遺伝子由来核酸又は標準遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率が、予め設定された閾値よりも大きい場合には、前記逆転写工程の精度が保証されていないと判断することを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の工程精度保証方法。
  16. 前記工程(c)が、
    (c”)標的遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料を段階的に希釈し、調製された各濃度の希釈液中のDNAを鋳型として増幅反応を行い、増幅された標的遺伝子由来核酸の増幅量又は増幅効率に基づき、前記増幅工程の精度の保証と、前記生物学的試料中の標的遺伝子由来RNAの定量とを行う工程、
    であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の工程精度保証方法。
  17. 前記生物学的試料が糞便であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか記載の工程精度保証方法。
  18. 標的遺伝子由来RNAの検出方法における工程精度を保証するためのキットであって、
    前記標的遺伝子由来RNAの検出方法は、2以上の生物種のRNAを含む生物学的試料から、RNAを抽出する抽出工程と、抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを得る逆転写工程と、得られたcDNAを鋳型として増幅反応を行う増幅工程と、増幅された核酸を検出する検出工程とを含み、前記標的遺伝子は疾患のマーカー遺伝子であり、前記標的遺伝子以外の遺伝子であって、生物学的試料に当該遺伝子由来のRNAが含まれている遺伝子が標準遺伝子であり、
    前記標的遺伝子及び/又は前記標準遺伝子の全部又は一部の塩基配列を有する人工配列DNAを含むDNA含有試料と、
    前記標的遺伝子とは異なる生物種の細胞を含む細胞溶液、並びに/又は標的遺伝子由来RNA及び/若しくは標準遺伝子由来RNAを含むRNA含有試料と、
    を含むことを特徴とする工程精度保証用キット。
  19. 前記標的遺伝子が哺乳生物の遺伝子であり、前記細胞溶液が細菌の細胞溶液であることを特徴とする請求項18記載の工程精度保証用キット。
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