JP2023521783A - Rt-pcrを用いたウイルス感染の迅速な検出 - Google Patents
Rt-pcrを用いたウイルス感染の迅速な検出 Download PDFInfo
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Abstract
核酸の調製、保存、増幅および/または検出のワンステップ試薬として用いることができる、1種の非イオン性界面活性剤を含有する溶解緩衝液が提供される。本発明の溶解緩衝液の様々な実施形態は、細胞の溶解、核酸の保存、核酸の増幅、核酸の精製、核酸の検出、および/または核酸の分析のための他の手順に適合するかまたは有用な他の物質を含有する。細胞の迅速な溶解および得られた細胞溶解物のRT-PCRにおける直接使用のためのものを含む、溶解緩衝液に基づく方法およびキットも提供される。
Description
電子的な提出により本出願と共に提供される配列表は明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本開示は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて生物学的サンプルからウイルスRNAを検出するための改善された方法に関する。
ウイルスRNAを検出するためのいくつかの代表的なRT-PCR法では、RNaseを不活性化してRNAを安定化させるために、高度な変性条件下で刺激の強い化学物質を含む溶解緩衝液中で生物学的サンプルを溶解し、続いてカラム精製により、後続のRT-PCRを妨げる可能性があるこれらの化学物質を溶解緩衝液から除去することでRNAを分離する必要がある。例えば、標準的なTRIzol RNA調製キットに含まれる溶解緩衝液には、通常、ポリメラーゼ等のタンパク質を分解または変性させ、その後のPCR反応を阻害するチオシアン酸グアニジニウム、フェノールおよび/またはクロロホルム等の成分が含有されている。
これらの方法のいくつかの欠点は、工程が複数であること、感度が不足していること、時間がかかること、コストがかかること、および結果を得るための試薬が必要であることにある。
この技術的課題に対する解決策が、特許請求の範囲で特徴付けられる実施形態によって提供される。
本願は、細胞および/またはウイルスの溶解および核酸の分析に適した組成物を提供する。
いくつかの実施形態において、本願によれば、1種の非イオン性界面活性剤を含有する溶解緩衝液が提供される。本発明の溶解緩衝液の様々な実施形態は、細胞および/またはウイルスの溶解、核酸の保存、核酸の増幅、核酸の精製、核酸の検出、および/または核酸の分析のための他の手順に適合するかまたは有用である他の物質を含有する。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、核酸の調製、保存、増幅および/または検出のワンステップ試薬と考えることができる。
上記組成物に基づく方法およびキットも提供され、これには細胞の迅速な溶解および得られた細胞溶解物のRT-PCRにおける直接使用のためのものが包含される。
いくつかの実施形態において、本願によれば、本発明の溶解緩衝液を用いて、少なくとも1つの細胞および/または少なくとも1つのウイルスを溶解する方法が提供される。溶解方法は、一般に、細胞またはウイルスを溶解させるのに十分な時間、少なくとも1つの細胞または少なくとも1つのウイルスを本発明の溶解緩衝液と接触させることを含む。様々な実施形態において、溶解物を用いる前に一定期間溶解物を保存する等の、任意の追加の工程が溶解する方法に含まれる。同様に、他の例示的な追加の工程は、細胞溶解物中の1種以上の核酸を増幅すること、および/または該核酸を検出することを含み得る。
驚くべきことに、本発明の単一の緩衝液が細胞およびウイルスの両方の溶解に適しており、核酸の増幅および検出をもたらす反応の従属構成要素(sub-component)として存在し得ることが見出された。例えば、本発明の緩衝液は、ウイルスに感染したヒト細胞または動物細胞等の細胞を溶解するのに好適であり得る。得られた溶解物は、核酸の増幅、検出および定量につながるその後の反応においてテンプレートとして直接用いることができる。別の実施形態において、本願によれば、1種以上の核酸を増幅する方法が提供される。一つの態様において、この方法は、生物学的サンプルと本発明の溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、および溶解物中の核酸を増幅することを含む。様々な実施形態において、核酸の増幅は、qPCR、RT-PCRまたはRT-qPCR等のPCR法による。特定の実施形態において、同時に行われている他の増幅反応に対して、または標準増幅曲線に対して、増幅される核酸の量の正規化を可能にするコントロール反応等の、1種以上のコントロール反応が含まれる。
本願によれば、キットも提供される。一般に、キットは本発明の溶解緩衝液を含む。キットは、細胞またはウイルスの溶解、核酸または溶解物の保存に用いることができるか、核酸の増幅、または核酸の検出もしくは定量化中に存在することできる、1種以上の物質、材料、試薬等をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、細胞またはウイルスを溶解するため、核酸を増幅するため、および/または核酸を検出および/または定量するために必要な材料、試薬等の一部またはすべてがキットに含まれる。
サンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、および溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅することを含む、1種以上の核酸を増幅する方法における溶解緩衝液およびキットの使用も提供される。
サンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、RNAウイルス検出の場合には、溶解物中のRNAを逆転写してcDNAを得ること、およびRNAウイルスに由来するプライマーセットを用いて溶解物中のRNAウイルスから少なくとも1種の核酸を増幅することを含む、RNAウイルスまたはDNAウイルスを検出するための方法における溶解緩衝液およびキットの使用も提供される。
一つの態様において、本発明は、少なくとも1つのサンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、RNAウイルス検出の場合には、溶解物中のRNAを逆転写してcDNAを得ること、およびRNAウイルスまたはDNAウイルスの核酸配列に由来するプライマーセットを用いて溶解物中のRNAウイルスまたはDNAウイルスから少なくとも1種の核酸を増幅することを含む、RNAウイルスまたはDNAウイルスを検出する方法に関する。
特定の実施形態において、溶解緩衝液は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含有する。
特定の実施形態において、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、親水性ポリエチレンオキシド鎖および芳香族炭化水素の親油性基または疎水性基を有する。
特定の実施形態において、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤はTriton X-100である。
特定の実施形態において、溶解緩衝液は、非イオン性界面活性剤を約0.05%~約20%の量で含有する。
特定の実施形態において、塩はリン酸二ナトリウムである。
特定の実施形態において、溶解緩衝液は、以下:Tris-HCl、ジチオスレイトール(DTT)、RNase不含有水、RNase阻害剤およびそれらの混合物の1種以上をさらに含有する。
特定の実施形態において、溶解緩衝液のpHは約7.5~約8.5である。
特定の実施形態において、RNAウイルスはコロナウイルスである。
特定の実施形態において、コロナウイルスはSARS CoV-2である。
特定の実施形態において、コロナウイルスはSARS CoV-2の変異体である。
特定の実施形態において、プライマーセットは、E遺伝子、N遺伝子およびRdRP遺伝子からなる群から選択されるウイルスRNA遺伝子に対するものである。
特定の実施形態において、プライマーセットはE遺伝子に対するものであり、かつ配列番号8および/または配列番号9、またはその相補体を含むか、またはそれからなる。
特定の実施形態において、プライマーセットはRdRP遺伝子に対するものであり、かつ配列番号11および/または配列番号12、またはその相補体を含むか、またはそれからなる。
特定の実施形態において、この方法は、RNA抽出工程を含まない。
特定の実施形態において、溶解物は逆転写に直接用いられる。
特定の実施形態において、サンプルは生物学的サンプルである。
特定の実施形態において、生物学的サンプルはスワブを用いてて収集される。
特定の実施形態において、生物学的サンプルは鼻スワブである。
特定の実施形態において、少なくとも1つのサンプルは少なくとも1つのヒト細胞を含有する。
特定の実施形態において、サンプルを100μlの溶解緩衝液に配置される。
特定の実施形態において、この方法は、溶解緩衝液とサンプルとの混合物を室温で5分間インキュベートして溶解物を生成することをさらに含む。
特定の実施形態において、この方法は、溶解物を遠心分離し、上清を収集することをさらに含む。
特定の実施形態において、溶解物は室温で2分間、12,000rpmで遠心分離される。
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つのサンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、および溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅することを含み、溶解緩衝液が少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含む、1種以上の核酸を増幅する方法に関する。
特定の実施形態において、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、親水性ポリエチレンオキシド鎖および芳香族炭化水素の親油性基または疎水性基を有する。
特定の実施形態において、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤はTriton X-100である。
特定の実施形態において、溶解緩衝液は、非イオン性界面活性剤を約0.05%~約20%の量で含有する。
特定の実施形態において、塩はリン酸二ナトリウムである。
特定の実施形態において、溶解緩衝液は、以下:Tris-HCl、ジチオスレイトール(DTT)、RNase不含有水、RNase阻害剤およびそれらの混合物の1種以上をさらに含有する。
特定の実施形態において、少なくとも1つのサンプルは生物学的サンプルである。
特定の実施形態において、生物学的サンプルはスワブを用いて収集される。
特定の実施形態において、生物学的サンプルは鼻スワブである。
特定の実施形態において、サンプルは少なくとも1つのヒト細胞を含有する。
特定の実施形態において、サンプルは100μlの溶解緩衝液に配置される。
特定の実施形態において、この方法は、溶解緩衝液とサンプルとの混合物を室温で5分間インキュベートして溶解物を生成することをさらに含む。
特定の実施形態において、この方法は、溶解物を遠心分離し、上清を収集することをさらに含む。
特定の実施形態において、溶解物は室温で2分間、12,000rpmで遠心分離される。
特定の実施形態において、溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅することは、PCR、qPCR、RT-PCRまたはRT-qPCRによって行われる。
特定の実施形態において、溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅することは、ワンステップRT-qPCRによって行われる。
特定の実施形態において、この方法は、RNA抽出工程を含まない。
特定の実施形態において、溶解物は増幅に直接用いられる。
特定の実施形態において、少なくとも1種の核酸はRNAウイルスに由来する。
さらなる態様において、本発明は、対象から得られた生物学的サンプルから溶解物を得ること、溶解物中のRNAを逆転写してcDNAを得ること、およびcDNAをSARS CoV-2ゲノムのヌクレオチド配列またはSARS CoV-2の変異体のゲノムに由来するプライマーセットを用いたPCRアッセイすることを含むSARS CoV-2またはSARS CoV-2の変異体に感染した対象を同定する方法に関する。
特定の実施形態において、溶解物は、生物学的サンプルと少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含有する溶解緩衝液とを接触させることによって得られる。
特定の実施形態において、この方法は、RNA抽出工程を含まない。
特定の実施形態において、溶解物は逆転写に直接用いられる。
さらなる態様において、本発明は、サンプルと溶解緩衝液と接触させて溶解物を生成すること、溶解物中のRNAを逆転写してcDNAを得ること、およびcDNAを標的核酸に対するプライマーセットを用いてPCRアッセイすることを含む、標的核酸を増幅、同定、検出および/または分析する方法に関する。
特定の実施形態において、溶解物は、サンプルと少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含有する溶解緩衝液とを接触させることによって得られる。
特定の実施形態において、この方法は、RNA抽出工程を含まない。
特定の実施形態において、溶解物は逆転写に直接用いられる。
さらなる態様において、本発明は、溶解緩衝液を含むキットに関し、溶解緩衝液は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含有する。
特定の実施形態において、キットは、標的核酸の増幅のための少なくとも1種の試薬をさらに含む。
特定の実施形態において、キットは、標的核酸の増幅のための少なくとも1種のプライマーおよび/または少なくとも1種のプローブを含む。
特定の実施形態において、キットは、ワンステップRT-qPCRを用いたRNA検出用のキットである。
特定の実施形態において、キットは、少なくとも1種の逆転写酵素、少なくとも1種のDNAポリメラーゼ、RNase阻害剤、ヌクレオチド、プライマー、プローブ、標識の1種以上、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
特定の実施形態において、標的核酸はRNAウイルスに由来する。
特定の実施形態において、RNAウイルスはコロナウイルスである。
特定の実施形態において、RNAウイルスはSARS CoV-2である。
特定の実施形態において、キットは、配列番号8および/または配列番号9、またはその相補体、ならびに配列番号11および/または配列番号12、またはその相補体から選択されるプライマーセットを含む。
さらなる態様において、本発明は、1~5%のTriton X-100と、以下の成分:5~20%のグリセロール、0.5~4mMのDTT、10~50mMのNa2HPO4、および10~50mMのTris-HClの1種以上を含有する溶解緩衝液に関する。
特定の実施形態において、溶解緩衝液は、約3%のTriton X-100と、以下の成分:約10%のグリセロール、約2mMのDTT、約25mMのNa2HPO4、および約25mMのTris-HClの1種以上を含有する。
特定の実施形態において、溶解緩衝液のpHは約7.5~約8.0である。
特定の実施形態において、溶解緩衝液はRNase不含有水をさらに含有する。
特定の実施形態において、RNase不含有水を約1:15~1:1(溶解緩衝液:RNase不含有水)の量で含有する。
特定の実施形態において、溶解緩衝液はRNAse阻害剤をさらに含有する。
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つのサンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、および溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅することを含む、1種以上の核酸を増幅する方法における、本発明の溶解緩衝液の使用に関する。
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つのサンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、溶解物中でRNAを逆転写してcDNAを得ること、およびRNAウイルスの核酸配列に由来するプライマーセットを用いて溶解物中のRNAウイルスから少なくとも1種の核酸を増幅することを含む、RNAウイルスを検出する方法における、本発明の溶解緩衝液の使用に関する。
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な手数料の支払いに応じて、特許庁により提供される。
本開示の性質、目的および利点をさらに理解するために、以下の詳細な説明を参照し、同様の参照番号が同様の要素を示す以下の図面と併せて読まなければならない。
一つの態様において、本開示は、標的核酸を増幅、同定、検出、定量化および/または分析する方法であって、例えば、
(a)任意に細胞を含有しないか、または1種以上の細胞、例えば上皮細胞を含有するサンプルを得ること、
(b)上記サンプルと本発明の溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、
(c)任意に上記溶解物を凍結すること、
(d)任意に上記溶解物を解凍して、任意に該溶解物を遠心分離すること、
(e)遠心分離が必要な場合には、上清を回収して、反応チューブやマイクロタイタープレート等の新しい反応容器に移すこと、
(f)任意に上記上清を凍結すること、
(g)任意に上記上清を解凍すること、および
(h)任意の適切な手段によって標的核酸を増幅、同定、検出および/または分析すること
を含む方法を提供する
(a)任意に細胞を含有しないか、または1種以上の細胞、例えば上皮細胞を含有するサンプルを得ること、
(b)上記サンプルと本発明の溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、
(c)任意に上記溶解物を凍結すること、
(d)任意に上記溶解物を解凍して、任意に該溶解物を遠心分離すること、
(e)遠心分離が必要な場合には、上清を回収して、反応チューブやマイクロタイタープレート等の新しい反応容器に移すこと、
(f)任意に上記上清を凍結すること、
(g)任意に上記上清を解凍すること、および
(h)任意の適切な手段によって標的核酸を増幅、同定、検出および/または分析すること
を含む方法を提供する
いくつかの実施形態において、標的核酸の増幅、同定、検出および/または分析は、例えばPCR、qPCR、RT-PCR、RT-qPCR等のPCR技術を用いて行われる。PCRの方法はよく知られており、本発明の方法においては任意の適切な方法を用いることができる。
一つの態様において、標的核酸を増幅、同定、検出、定量化および/または分析することは、例えば、
(1)qPCRプレート中で、PCR MasterMix、例えばqPCR MasterMixを、対象からの少なくとも1つのウイルスおよび/または1つ以上の細胞、例えば上皮細胞を溶解することによって得られた溶解物に添加すること、
(2)qPCR プレートを透明なqPCRホイルで密封すること、
(3)qPCRプレートを遠心分離すること、
(4)qPCR等のPCRを行うこと、および
(5)データを分析すること
を含む。
(1)qPCRプレート中で、PCR MasterMix、例えばqPCR MasterMixを、対象からの少なくとも1つのウイルスおよび/または1つ以上の細胞、例えば上皮細胞を溶解することによって得られた溶解物に添加すること、
(2)qPCR プレートを透明なqPCRホイルで密封すること、
(3)qPCRプレートを遠心分離すること、
(4)qPCR等のPCRを行うこと、および
(5)データを分析すること
を含む。
一つの態様において、任意の適切なPCR MasterMixを用いることができる。qPCR MasterMix製剤を含むいくつかの市販のPCR MasterMix製剤が入手可能であり、本発明において用いることができる。あるいは、PCR MasterMixは、DNAポリメラーゼ、ヌクレオチドおよびマグネシウム等のPCR反応に必要な成分と、任意に逆転写酵素およびRNase阻害剤とを混合することによって作成することができる。いくつかの実施形態において、PCR MasterMixおよび溶解物は、5:1の比率(PCR MasterMix:溶解物)で添加される。
一つの態様において、qPCRは、LightCycler(登録商標)480 QPCRリーダー(Roche製)を用いたワンステップRT-PCRである。しかしながら、本発明の方法では、任意の適切なPCR機を用いることができる。
一つの態様において、データは、LightCycler(登録商標)480ソフトウェアを用いてデータを分析される。しかしながら、PCRデータを分析するために、任意の適切なソフトウェアを用いることができる。
一つの態様において、本明細書に記載のアッセイは、約20コピー以下、約10コピー以下、約5コピー以下、約4コピー以下、約3コピー以下、または約2コピー以下のサンプル内の標的核酸を検出するのに十分な感度を有する。
本明細書で用いられる「界面活性剤」の意味は、当業者によって容易に認識される最も広い定義である。すなわち、界面活性剤は、液体の表面張力を低下させ、かつ/または2つの液体間の界面張力を低下させる湿潤剤である。水中で正電荷も負電荷も有しないが、水に溶解する界面活性剤は「非イオン性界面活性剤」である。2種以上の非イオン性界面活性剤の組み合わせは、「非イオン性界面活性剤」という用語に包含される。
一つの態様において、本発明は、溶解緩衝液を特徴とする。驚くべきことに、本発明の溶解緩衝液は、細胞およびウイルスの溶解に適しており、逆転写PCR(RT-PCR)および定量的PCR(qPCR)等のPCR法による核酸の増幅のための反応混合物の成分として含有され得る。
溶解緩衝液は、細胞膜およびウイルス膜等の膜を破壊することができる少なくとも1種の界面活性剤を含有する。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、親水性ポリエチレンオキシド鎖および芳香族炭化水素の親油性または疎水性基を有する。適切な非イオン性界面活性剤としては、限定されないが、Triton X-100、Igepal CA-630(Nonidet P-40)、Conco NI、Dowfax 9N、Igepal CO、Makon、Neutronyx 600’s、Nonipol NO、Plytergent B、Renex 600’s、Solar NO、Sterox、Serfonic N、T-DET-N、Tergitol NP、Triton N、BIGCHAP(N,N-ビス-(3-D-グルコンアミドプロピル)コールアミド)またはデオキシ-BIGCHAP(N,N-ビス(3-グルコンアミドプロピル)デオキシコールアミド);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルα-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;ジギトニン;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルα-D-マルトシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチルβ-D-グルコピラノシド;N-ヘプチルβ-D-チオグルコピラノシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;1-モノオレオイル-rac-グリセロール;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノニルα-D-グルコピラノシド;n-ノニルβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチルα-D-グルコピラノシド;n-オクチルβ-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオガラクトピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;ポリオキシエチレンエステル(8-ステアリン酸ポリオキシエチレンエステル(Myrj 45)、40-ステアリン酸ポリオキシエチレンエステル(Myrj 52)、50-ステアリン酸ポリオキシエチレンエステル(Myrj 53)、100-ステアリン酸ポリオキシエチレンエステル(Myrj 59)等))、ポリオキシエチレンエーテル(1つ以上のエチル基、メチル基、ペンチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、ヘプチル基、トリデシル基、イソヘキサデシル基、およびこれらの組み合わせ等);ポリオキシエチレンソルビタンエステル(1つ以上のモノラウレート基、モノオレエート基、モノパルミテート基、モノステアレート基、トリオレエート基およびトリステアレート基、ならびにそれらの組み合わせを含むもの等であり、限定されないが、「Tween」シリーズの界面活性剤);ソルビタンエステル(1つ以上のモノラウレート基、モノオレエート基、モノパルミテート基、モノステアレート基、セスキオレエート基、トリオレエート基、トリステアレート基、およびそれらの組み合わせを含むもの等);Tergitol;n-テトラデシルβ-D-マルトシド;限定されないが、Triton X-100(t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)およびその誘導体、Triton X-114、Triton X-405、Triton X-101、Triton N-42、Triton N-57、トリトン N-60、トリトン X-15、トリトン X-35、トリトン X-45、トリトン X-102、トリトン X-155、トリトン X-165、トリトン X-207、トリトン X-305、トリトン X-705-70およびトリトン B-1956を含むTritonシリーズの界面活性剤;ノニルフェニルポリエチレングリコール(Nonidet P-40;NP-40、Igepal CA630);Surfynol 104、Surfynol 420、Surfynol 440、Surfynol 465、Surfynol 485、Surfynol 504、Surfynol PSAシリーズ、Surfynol SEシリーズ、Dynol 604、Surfynol DFシリーズ、Surfynol CTシリーズおよびSurfynol EPシリーズ、例えばSurfynol 104シリーズ(104、104A、104BC、104DPM、104E、104H、104NP、104PA、104PG50、104S)、およびSurfynol 2502を含む、Air ProductsシリーズのSurfynol界面活性剤;Tyloxapol;n-ウンデシルβ-D-グルコピラノシド、および任意の非イオン性オクチルフェノールエトキシレート界面活性剤が挙げられる。さらなる非限定的な例としては、限定されないが、DOWFAX 63N10、DOWFAX 63N13、DOWFAX 63N30、DOWFAX63N40、DOWFAX 81N13、DOWFAX 81N15、DOWFAX 92N20、DOWFAX 100N15、DOWFAX EM-51、DOWFAX 20A42、DOWFAX 20A64、DOWFAX 20A612、DOWFAX 20B102、DOWFAX DF-101、DOWFAX DF-111、DOWFAX-DF112、DOWFAX DF-113、DOWFAX DF-114、DOWFAX DF-117、DOWFAX WP-310、DOWFAX 50C15、DOWFAX DF-121、DOWFAX DF-122、DOWFAX DF-133、DOWFAX DF-141、DOWFAX DF-142およびDOWFAX DF-161を含む、NシリーズおよびDPシリーズの界面活性剤等のDow Chemicals社のDowfaxシリーズの非イオン性界面活性剤が挙げられる。さらなる他の非限定的な例としては、限定されないが、10R5、17R2、17R4、25R2、25R4、31R1、F108シリーズ、F127シリーズ、F38シリーズ、F68シリーズ、F77シリーズ、F87シリーズ、F88シリーズ、F98シリーズ、L10、L101、L121、L31、L34、L43、L44シリーズ、L61、L62シリーズ、L64、L81、L92、N-3、P103、P104、P105、P123、P65、P84、P85およびF127を含む、BASF社のPluronicシリーズの界面活性剤が挙げられる。
任意の適切な量の界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を溶解緩衝液に含有させることができる。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、Triton X-100等の非イオン性界面活性剤を、約0.05%~約20%の量で含有する。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、約0.05%~約15%、約0.05%~約10%、約0.05%~約7%、約0.05%~約5%、約0.05%~約5%、約0.05~約4%、約0.05%~約3%、約0.05%~約2%、約0.05%~約1%、または約0.05%~約0.5%含有する。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、約0.1%~約15%、約0.1%~約10%、約0.1%~約7%、約0.1%~約5%、約0.1%~約5%、約0.1~約4%、約0.1%~約3%、約0.1%~約2%、または約0.1%~約1%含有する。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、約0.5%~約15%、約0.5%~約10%、約0.5%~約7%、約0.5%~約5%、約0.5%~約10%、約0.5~約4%、約0.5%~約3%、または約0.5%~約2%が丹生する。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、Triton X-100等の非イオン性界面活性剤を、約1%~約15%、約1%~約10%、約1%~約7%、約1%~約5%、約1%~約4%、約1%~約3%、または約1%~約2%含有する。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、Triton X-100等の非イオン性界面活性剤を、約2%~約15%、約2%~約10%、約2%~約7%、約2%~約5%、約2%~約4%、または約2%~約3%含有する。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、Triton X-100等の非イオン性界面活性剤を、約3%~約15%、約3%~約10%、約3%~約7%、約3%~約5%、または約3%~約4%を含有する。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、Triton X-100等の非イオン性界面活性剤を、約0.05%、約0.1%、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、または約15%含有する。
溶解緩衝液は、1種以上の他の成分を含有してもよく、それらの成分は、本明細書に開示される例示的な成分によって限定されず、溶解緩衝液は、典型的には、水等の溶媒、グリセロール等の有機溶媒、またはそれらの両方を含有する。用いられる溶媒は可能な限り純粋であることが好ましいが、任意の純度の溶媒を用いることができる。したがって、溶解緩衝液に水が含有される場合、該水は蒸留水、再蒸留水、脱イオン水、滅菌水、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。水または任意の他の溶媒または水と任意の他の溶媒の組み合わせである溶媒は、その使用前に、限定されないが、ヌクレアーゼ(例えば、RNase、DNase)活性等の、1種以上の化学的活性または生物学的活性が低減されるか、または失われるように処理されてもよい。例えば、水または任意の他の溶媒、または水と任意の他の溶媒との組み合わせは、RNase不含有であり得る。同様に、溶解緩衝液は、組成物を滅菌するか、または1種以上の望ましくない化学的活性または生化学的活性(例えば、RNase、DNase等)を低減させるか、または失わせるために、滅菌技術または化学薬品または生物学的製剤等で処理することができる。例えば、溶解緩衝液はRNase阻害剤を含有し得る。
本発明の溶解緩衝液はまた、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、亜鉛塩、コバルト塩、またはこれらの塩の2種以上の組み合わせ等の1つ以上の塩を含有してもよい。具体的な塩の例としては、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化マンガンおよび塩化カリウムが挙げられる。塩は、限定されないが、細胞またはウイルスの溶解を補助するために、界面活性剤の曇り点および泡レベルを緩和するため、ならびに核酸の増幅に関与する試薬の機能を改善するためを含み、任意の適切な量および任意の理由で添加することができる。
本発明の溶解緩衝液はまた、限定されないが、Tris-HCl等の、核酸増幅に含めるのに適した1種以上の緩衝液を含有してもよい。
本発明の溶解緩衝液はまた、1種以上の還元剤を含有してもよい。還元剤は、結合(ジスルフィド結合等)を切断するのに役立ち、RNAの二次構造を緩め、転写の逆転写酵素(RT)酵素開始を促進する。ジチオスレイトール(DTT)等の任意の適切な還元剤を溶解緩衝液に含有させることができる。
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の溶解緩衝液は、感染細胞(上皮細胞等)およびウイルスの両方の溶解におそらく必要である。RT-PCR等の後続のPCR反応を妨げない限り、任意の適切な溶解緩衝液を用いることができる。
溶解緩衝液のpHは、任意の適切なpHであり得る。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液のpHは、約6.5~約8.5、または約7.0~約8.5である。例えば、溶解緩衝液のpHは、約7.5~約8.5まで、または約7.5~約8.0までであり得る。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液のpHは、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、または約8.5である。
本発明の溶解緩衝液は、濃縮ストック溶液として提供され得る。例えば、濃縮原液は、100×原液、50×原液、20×原液、10×原液、5×原液、または2×原液として処方することができる。
本発明の溶解緩衝液は、予め作製されてもよく、任意に使用前に希釈されてもよい。溶解緩衝液は、その後のRT-PCRを妨げない任意の適切な希釈剤で希釈することができる。いくつかの実施形態において、溶解緩衝液は、使用前に水で希釈される。他の実施形態において、溶解緩衝液は、例えば輸送/保存媒体等の媒体で希釈される。溶解緩衝液は、任意の適切な比率で希釈することができる。例えば、溶解緩衝液は、100:1、50:1、25:1、20:1、10:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:40、1:50、または1:100(溶解緩衝液:希釈液)で希釈することができる。
一つの態様において、本発明の溶解緩衝液は、1~5%のTriton X-100と、以下の成分:5~20%のグリセロール、0.5~4mMのDTT、10~50mMのNa2HPO4、および10~50mMのTris-HClの1種以上とを含有する濃縮ストックであってもよい。いくつかの実施形態において、本発明の溶解緩衝液は、約3%のTriton X-100と、以下の成分:約10%のグリセロール、約2mMのDTT、約25mMのNa2HPO4、および約25mMのTris-HClの1種以上とを含有する濃縮ストックであってもよい。濃縮ストックのpHは、約7.5~約8.0であり得、好ましくは約7.8であり得る。
濃縮ストックは、使用前にRNase不含有水等の希釈剤で希釈することができる。いくつかの実施形態において、濃縮ストックは、使用前にRNase不含有水で1:15~1:1に希釈することができる。いくつかの実施形態において、濃縮ストックは、使用前にRNase不含有水で1:6に希釈することができる。
いくつかの態様において、RNase阻害剤は、使用前に溶解緩衝液に添加される。いくつかの実施形態において、RNase阻害剤は、使用前に約1:100~約1:10000の量で溶解緩衝液に添加される。いくつかの実施形態において、RNase阻害剤は、使用前に約1:1000の量で溶解緩衝液に添加される。
方法
一つの態様において、本発明によれば、本発明の溶解緩衝液を用いて少なくとも1つの細胞またはウイルスを溶解する方法が提供される。この方法は、少なくとも1つの細胞またはウイルスと本発明の組成物とを、該細胞またはウイルスを溶解させるのに十分な時間接触させることを含む。
細胞は、任意の真核細胞であり得る。細胞は、限定されないが、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生類細胞、爬虫類細胞および昆虫細胞を含む任意の目的の細胞であり得る。例えば、細胞は、ヒト細胞、サル細胞、ラット細胞、マウス細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ブタ細胞、ウマ細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、カエル細胞、昆虫細胞等であり得る。いくつかの実施形態において、細胞は上皮細胞である。
「少なくとも1つの細胞」とは、単一の細胞だけでなく、単一のタイプの細胞も意味する。したがって、2つ以上の細胞は、同じタイプの細胞の2つ以上の細胞だけでなく、2つの異なるタイプの細胞の1つ以上の細胞を意味し得る。別段の明記がない限り、単一のタイプの細胞の集団が存在するか、2つ以上のタイプの細胞の集団が存在するかは関係ない。それにもかかわらず、本発明の方法(以下に論じるものを含む)は、記載された効果を提供する。
さらに、「少なくとも1つの細胞」および「細胞」という用語は、別段の記載がない限り、本明細書においては、単一の細胞、単一のタイプの細胞の集合、または各細胞のタイプの細胞が少なくとも1つ存在する複数のタイプの細胞の集合を定義するために互換的に用いられる。
同様に、「少なくとも1つのウイルス」および「ウイルス」という用語は、別段の記載がない限り、本明細書においては、単一のウイルス、単一のタイプのウイルスの集合、または各タイプのウイルスが少なくとも1つ存在する複数のタイプのウイルスの集合を定義するために互換的に用いられる。
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの細胞または少なくとも1つのウイルスが生物学的サンプル中に存在する。
いくつかの態様において、生物学的サンプルはスワブを用いて収集される。例えば、スワブを用いて、鼻、頬、咽頭または口等の任意の粘膜から生物学的サンプルを収集することができる。一つの態様において、スワブを用いて、目的の細胞、例えば上皮細胞が位置する任意の場所からサンプルを収集することができる。特定の実施形態において、生物学的サンプルは鼻スワブである。別の実施形態において、生物学的サンプルは、体液(鼻咽頭吸引液、痰、唾液、尿、血液等)、排泄物、洗浄液等である。
生物学的サンプルは、任意の動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに由来するものであり得る。
例えば、液体サンプルおよび表面からのスミア等の他のタイプのサンプルも、本発明の方法で用いることができる。
サンプルは、溶解前に任意の適切な手段によって保存することができる。保存方法は、サンプルの種類および保存期間によって異なり得る。例えば、生物学的サンプルは、室温(例えば、22~25℃)で保存するか、氷上に静置するか、または短期保存のために冷蔵(例えば、4℃)することができ、長期保存のために冷凍することができる。凍結生体サンプルは、-20℃、-80℃、または液体窒素等で保存することができる。
いくつかの実施形態において、生物学的サンプル等のサンプルは、任意の適切な温度で任意の適切な時間保存するために輸送媒体または保存媒体に入れられる。
任意に少なくとも1つの細胞を含有するサンプルと本発明の溶解緩衝液とを接触させる時間は変動し得、当業者によって決定され得る。いくつかの実施形態において、サンプルと本発明の溶解緩衝液とを接触させる時間は、少なくとも1つの細胞またはウイルスが溶解するのに十分な時間である。溶解反応の化学的性質により、時間が、1秒以下のように非常に短くなることが想定される。しかしながら、時間はそれほど制限される必要はない。実際、溶解緩衝液はその後の核酸の保存および/または増幅中に存在する可能性があるため、溶解時間は比較的長くなり得る。適切な時間は、1秒以下から、数分、数時間、または数日の範囲である。接触時間の例としては、限定されないが、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、1分、90秒、2分、5分、10分、20分、30分、またはそれ以上が挙げられる。
様々な実施形態において、任意の追加の工程が溶解方法に含まれる。本発明の溶解緩衝液を用いることにより、追加の工程なしで細胞またはウイルスの溶解が起こることが示された。しかしながら、溶解を促進するために、細胞および/またはウイルスを1種以上の機械的破壊手法にかけてもよい。限定されないが、ボルテックス、反復ピペッティング、反転、振とうおよび撹拌を含む任意の既知の機械的破壊手法を用いることができる。したがって、溶解は、少なくとも部分的にホモジナイズすることによって達成することができる。溶解物の最終的な用途に応じて、機械的手法が用いられる場合は、核酸に対するせん断応力を最小限に抑えるために穏やかに適用され得る。いくつかの実施形態において、溶解は、少なくとも部分的に、生物学的または生化学的物質の作用によって達成することができる。例えば、溶解は、プロテイナーゼK等のプロテイナーゼの存在下で行うことができる。
本発明の方法において、任意の適切な量の溶解緩衝液を用いることができ、サンプルに応じて変えることができる。いくつかの実施形態において、約50μl、約100μl、約200μlまたはそれ以上の量の溶解緩衝液が用いられる。いくつかの実施形態において、100μlの量の溶解緩衝液が用いられる。
溶解物を凍結することにより、細胞および/またはウイルスの溶解を改善することができる。したがって、いくつかの実施形態において、溶解物は、分析前に任意に凍結することができる。溶解物は1回または複数回凍結され得る。換言すれば、溶解物は、1回または複数回の凍結融解サイクルに供され得る。溶解物を凍結するために、任意の適切な条件を用いることができる。温度および持続時間は、サンプルのサイズおよびタイプ、ならびに溶解物の量等の様々な要因に応じて最適化できることが理解される。いくつかの実施形態において、溶解物は、分析前に-20℃以下の温度でインキュベートされる。例えば、溶解物は、限定されないが、分析前に約-20℃、約-80℃または約-120℃から選択される温度でインキュベートされ得る。いくつかの実施形態において、溶解物は分析前にドライアイス上に静置される。溶解物は、任意の適切な時間、上記のようにインキュベートすることができる。いくつかの実施形態において、溶解物は、-20℃以下の温度で少なくとも約10分間インキュベートすることができる。例えば、溶解物は、-20℃以下の温度で、約10分、約30分、約1時間もしくは約24時間、またはそれ以上インキュベートすることができる。いくつかの実施形態において、溶解物は、分析前に-80℃の温度で10分間インキュベートされる。
溶解方法のもう1つの任意の工程は、使用前に一定期間溶解物を保存することである。そのような実施形態において、溶解物は、任意の温度で保存することができる。例えば、溶解物は、比較的高温(例えば、37℃)、室温(例えば、22℃~25℃)、冷蔵庫内(例えば、4℃)、冷凍庫内(例えば、-20℃)または深冷凍庫(例えば、-80℃以下)で保存することができる。
溶解方法はまた、細胞および/またはウイルス成分を他の細胞および/またはウイルス成分から分離する1種以上の工程を含んでもよい。したがって、例えば、この方法は、溶解物を遠心分離して、溶解していない細胞および/またはウイルス、細胞および/またはウイルスの膜およびタンパク質を核酸から除去することを含み得る。好ましくはないが、例えば、1種以上の塩、有機溶媒(例えば、アルコール)の添加、または熱処理およびその後の遠心分離による、1種以上の細胞成分またはウイルス成分の他のものからの沈殿も含み得る。細胞および/またはウイルス成分を互いに分離するための他の技術は当業者に知られており、任意の適切な技術を用いることができ、それぞれが所望の結果に基づいて選択される。適切な技術の選択および実行は、十分に当業者の技術レベルの範囲内である。
溶解方法はまた、1種以上の溶解物成分の操作を含んでもよい。したがって、この方法は、溶解物からの1種以上の核酸の精製および/または溶解物からの1種以上の核酸の増幅を含み得る。溶解方法の様々な実施形態には、溶解物において用いられることが知られているあらゆる手順が含まれる。
一つの実施形態において、少なくとも1つの細胞および/または少なくとも1つのウイルスを溶解する方法は、本発明の溶解緩衝液を該少なくとも1つの細胞および/または少なくとも1つのウイルスに添加することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、溶解緩衝液と少なくとも1つの細胞および/または少なくとも1つのウイルスとの混合物を室温で5分間インキュベートすることをさらに含む。
別の実施形態において、サンプルを溶解する方法が提供され、この方法は、サンプルと本発明の溶解緩衝液とを混合することを含む。いくつかの実施形態において、サンプルは生物学的サンプルである。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、鼻スワブ等のスワブである。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、上皮細胞等の少なくとも1つの細胞および/またはコロナウイルス等の少なくとも1つのウイルスを含有する。いくつかの実施形態において、鼻スワブは、本発明の溶解緩衝液100μlに配置される。いくつかの実施形態において、この方法は、鼻スワブを絞ってサンプルを溶解緩衝液中に放出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、この方法は、溶解緩衝液と生物学的サンプルとの混合物を室温で5分間インキュベートして溶解物を生成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、この方法は、溶解物を、例えば室温で2分間、12,000rpmで遠心分離し、上清を収集することをさらに含む。
本発明によれば、1種以上の核酸を増幅する方法も提供される。一般に、この方法は、サンプルと本発明の溶解緩衝液とを接触させて上述した溶解物を生成すること、該溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅することを含む。
核酸の増幅のための多数の技術が知られており、当技術分野で広く行われており、これらの技術のいずれも本発明の方法に従って適用可能である。当業者であれば、限定されないが、特定のタイプの核酸(例えば、RNA対DNA)の増幅における速度、感度、有用性、および信頼性を含む任意の数の考慮事項に基づいて増幅方法を選択し得る。
この方法は、核酸の単離または(少なくともある程度までの)精製を含み得るが、驚くべきことに、標的核酸の増幅は、核酸を予め精製することなく達成され得ることが発見された。したがって、本発明の溶解物は、直接核酸増幅するのに適している。いくつかの実施形態において、増幅はPCR技術による。特定の実施形態において、PCR技術は、qPCRまたはRT-PCR(RT-qPCRを含む)である。
目的の核酸が1種以上のRNAがである場合、この方法は、増幅前または増幅時のcDNA合成を含んでもよい。多数のcDNA合成プロトコルが当技術分野で知られており、任意の適切なプロトコルを用いることができる。例えば、QuantabioのqScript XLT逆転写酵素を用いて、RNAテンプレートからcDNAを調製することができる。
本発明の方法は、鼻スワブ等の哺乳動物の生物学的サンプルまたは非生物学的サンプル中のウイルスRNAまたはDNAを検出するために用いるのに特に適していることが示されている。
本発明の方法は、従来のウイルスRNAまたはDNA検出アッセイよりも優れたいくつかの利点を提供する。例えば、本発明の方法は、RNA抽出工程の必要性を回避し、それによって労力を削減し、本発明の方法はより速くなる。QIAamp(登録商標)DSP Viral RNA Mini kit(Qiagen社)等のRNA抽出キットは、現在、米国疾病予防管理センター(CDC)がCOVID-19の検査のために必要としており、通常、増幅方法を妨げる可能性のあるコンポーネントから核酸を分離および精製するためのカラムが含まれている。したがって、RNA抽出工程が不要になると、カラムが不要になるため、材料の消費量も少なくなる。さらに、RNA抽出に必要な試薬は常に容易に入手できるとは限らないため、これらの試薬を用いないことでアッセイの可用性が向上する。これは、例えば、大量の検査サンプルを分析して迅速な結果を得る必要がある場合等、パンデミック時に特に重要になる可能性がある。正確かつ高感度なウイルスRNAを検出するためのハイスループットで迅速な方法の提供は、大きな利点である。
本発明の方法は、好ましくは、生物学的サンプルまたは非生物学的サンプル(例えば、鼻スワブ)を溶解緩衝液と共にインキュベートすること、溶解物を直接RT-PCR(例えば、ワンステップRT-qPCR)に用いることを含む。本発明の方法は、好ましくは、RNA抽出工程またはDNA抽出工程なしで行われる。
いくつかの実施形態において、同時に行われる他の増幅反応に対して、または標準増幅曲線に対して、増幅される核酸の量の正規化を可能にするコントロール反応(control reaction)等の、1つ以上のコントロール反応が含まれる。そのようなコントロール反応は、1つ以上の外因性核酸を反応物に転嫁すること、およびその核酸に対して増幅を行うことを含み得る。あるいは、コントロール反応は、目的の細胞または生物学的サンプルに天然に存在する核酸に存在する配列を増幅することを含み得、そのような配列は既知のコピー数および増幅効率を有する。他の実施形態において、既知の配列のコントロール反応は、目的の増幅が行われている反応容器とは別の反応容器で行われる。他の様々なコントロール反応が知られており、増幅反応に広く用いられており、これらのコントロール反応のいずれかを本発明の方法に含めて、増幅プロセスの1つ以上の工程の成功および効率を決定することができる。
いくつかの実施形態において、コントロール反応は、実施者が特定の細胞溶解物サンプル中に存在する細胞の数を評価し、したがって必要に応じて正規化することを可能にする内部コントロールである。このようにして、サンプル中の標的核酸(例えば、特定のウイルスRNAまたはDNA遺伝子)の量についての結論を得ることができる。より具体的には、2種の異なるサンプルの増幅結果を比較する場合、多くの場合、元のサンプルに含有される細胞またはウイルスの数、溶解に成功した細胞またはウイルスの数、または各サンプルから遊離した核酸の総量を、高い精度で決定することはできない。したがって、異なるサンプル中の標的核酸の総量を正確に比較することはできない。現在、ハウスキーピング遺伝子またはrRNA種は、様々な細胞または組織に由来するサンプルを標準化または正規化するためのマーカーとして用いられている。しかしながら、現在用いられている内部標準は一貫性がなく、そのため内部コントロール(internal control)に必要な精度と再現性を得ることができないと報告されている。
したがって、異なるサンプルおよび細胞タイプ間で標準化された内部コントロールは、PCRプロトコルの望ましい特徴である。特定の実施形態において、本発明は、組成物、方法およびキットの中に、所定の細胞またはウイルスの1つ以上の染色体上の固有の配列に特異的なプライマーを含めることによって、そのような内部コントロールを包含する。これらの固有のゲノム配列は、一倍体ゲノムあたり1コピー(すなわち、細胞あたり2コピー)しか存在しないため、特定の増幅手順の検量線を作成するために用いることができる。試験サンプルの増幅反応(同じ反応容器または同じ成分を含む第2の反応容器のいずれか)にプライマーを含めることにより、固有のゲノム配列の増幅曲線を得ることができる。これらの曲線は、各プライマーセットの標準曲線と比較することができ、核酸の量、したがって元のサンプル中の細胞またはウイルスの数を計算することができる。この知見により、多数の異なるサンプル中の標的核酸の量を決定し、他のサンプルと正確に比較することができる。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、本明細書に記載の溶解緩衝液を用いたRNAウイルスまたはDNAウイルスの検出に用いることができる。例えば、本発明の方法は、限定されないが、トガウイルス、コロナウイルス、レトロウイルス、ピコルナウイルス、カリシウイルス、レオウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、バイナウイルス、アレナウイルスまたはフィボウイルス等のRNAウイルスまたはDNAウイルスの検出に用いることができる。いくつかの実施形態において、RNAウイルスは、限定されないが、SARS CoVまたはSARS CoV-2等のコロナSARSウイルスまたはそれらのウイルスの変異体等のコロナウイルスである。特定の実施形態において、本発明の方法は、SARS CoV-2の検出に用いることができる。
したがって、本発明はまた、対象から得られる生物学的サンプルから溶解物を得ること、該溶解物中のRNAを逆転写してcDNAを得ること、および該cDNAをSARS CoV-2ゲノムのヌクレオチド配列に由来するプライマーセットを用いたPCRアッセイすることを含む、SARS CoV-2に感染した対象を同定するための方法に関する。
プライマー
本発明の方法においては、任意の適切なプライマーを用いることができる。適切なプライマーは、同定される目的の標的核酸に応じて、当業者によって容易に同定され得る。目的の一般的な核酸を同定するのに有用ないくつかのプライマーが市販されており、本発明の方法で用いることができる。
いくつかの実施形態において、プライマーは、SARS CoV-2ゲノムまたはSARS CoV-2変異体ゲノム等のRNAウイルスゲノムに対するものである。完全なSARS CoV-2ゲノム配列は、GenBankのアクセッション番号MN908947.3に記載されている。プライマーを含むSARS CoV検出用キットは、様々な販売業者により市販されている。このようなプライマーは、本発明の方法で用いることができると考えられる。いくつかの実施形態において、プライマーは、E遺伝子、N遺伝子またはRdRP遺伝子を対象とするものである。いくつかの実施形態において、プライマーは、E遺伝子を対象とするものであり、配列番号8および/または配列番号9、またはその相補体を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態において、プライマーは、RdRP遺伝子を対象とするものであり、配列番号11および/または配列番号12、またはその相補体を含むか、またはそれらからなる。
プローブ
本発明の方法においては、任意の適切な核酸プローブを用いることができる。適切な核酸プローブは、同定される目的の標的核酸に応じて、当業者によって容易に同定され得る。目的の一般的な核酸を同定するのに有用ないくつかのプローブが市販されており、本発明の方法で用いることができる。
いくつかの実施形態において、核酸プローブは、SARS CoV-2ゲノム、SARS CoV-2変異体のゲノム等のRNAウイルスゲノムまたはDNAウイルスゲノムに対するものである。核酸プローブを含むSARS CoVの検出用キットは、様々な販売業者により市販されている。このようなプローブは、本発明の方法で用いることができると考えられる。いくつかの実施形態において、核酸プローブは、E遺伝子、N遺伝子またはRdRP遺伝子を対象とするものである。いくつかの実施形態において、核酸プローブは、E遺伝子を対象とするものであり、配列番号7またはその相補体を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、核酸プローブは、RdRP遺伝子を対象とするものであり、配列番号10またはその相補体を含むか、またはそれからなる。
いくつかの実施形態において、プローブは、例えばフルオロフォアおよび/またはクエンチャーと共に5’末端および/または3’末端にタグ付けすることができる。タグは、HEXタグやBHQ1タグ等の任意の適切なタグであり得る。
本明細書で説明するRT-qPCRプロトコルは、CoV-2の標準的な診断用TaqManベースのRT-qPCR法に基づいている。原則として、例えば、他のウイルス遺伝子を測定することができ、異なるプライマーおよびプローブ配列、異なるマスターミックス、クエンチャー、フルオロフォア、装置等を用いることができる等、プロトコルを変更することができる。Sybrgreenベースの方法等の他のRT-qPCR方法も、本発明の方法で用いることができる。
また、キットも提供される。一般に、キットは、本発明の溶解緩衝液を含む。キットは、細胞またはウイルスの溶解、核酸または細胞溶解物の保存、または核酸の増幅等の核酸の操作または分析に用いることができる1種以上の物質、材料、試薬等をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、細胞またはウイルスを溶解し、核酸を増幅し、かつ/または核酸を精製するために必要な材料、試薬等の一部またはすべてがキットに含まれる。
例えば、キットは、本発明の溶解緩衝液を保持する容器、および同じまたは別個の容器内に、標的核酸の増幅のための少なくとも1種の試薬を含み得る。したがって、キットは、標的核酸の増幅のために、少なくとも1種のプライマー、例えば2種のプライマーを含むことができる。また、キットは、必ずしもそうである必要はないが、キット中の1種以上の他のプライマーの標的である同一の核酸(および同じ核酸中の同じ配列でさえある)であり得る、標的核酸の増幅のための少なくとも1種の他のプライマーを含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、1種以上の固有のゲノム配列を増幅するための2種以上のプライマーを含む。
本発明のキットは、本発明の溶解緩衝液をさらに含む、核酸の分析のためのキットであり得る。例えば、キットは、本発明の溶解緩衝液を含む少なくとも1つの容器をさらに含む、ワンステップRT-qPCRを用いるRNA検出用のキットであり得る。そのようなキットは、パッケージ化された組み合わせで、少なくとも1種の逆転写酵素、Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Pfx DNAポリメラーゼ、Tli DNAポリメラーゼ、Tfl DNAポリメラーゼおよびKlenow等の少なくとも1種のDNAポリメラーゼ、RNase阻害剤、ヌクレオチド(例えば、4種の一般的なデオキシヌクレオチドのいずれかまたはすべて)、プライマー、プローブ、または標識(例えば、SYBRgreen等)、またはこれらの2種以上の任意の組み合わせを含み得る。あるいは、キットは、ツーステップRT-qPCRを用いたRNA検出用キットであり得る。あるいは、キットは、qPCR等のPCR技術を用いたDNA検出用であり得る。さらに、キットは、短鎖干渉RNA(siRNA)検出用であり得る。いくつかの実施形態において、キットは、トランスフェクションまたは形質転換試薬を含む。
キットは、構成要素を単一パッケージまたは同一キット内の複数のパッケージに含めることができる。キット内に複数のパッケージが含まれる場合、各パッケージには、単一の構成要素または複数の構成要素を任意の適切な組み合わせで個別に含めることができる。本明細書で用いられる場合、単一のキット内の2つ以上のパッケージまたは容器の組み合わせは、「パッケージ化された組み合わせ」と呼ばれる。キットおよびキット内の容器は、既知の材料で製造することができる。例えば、キット自体はプラスチック素材または厚紙で作製することができる。構成要素を保持する容器は、例えば、プラスチック素材またはガラスであり得る。1つのキット内の異なる容器は、異なる材料で作製することができる。いくつかの実施形態において、キットは、その中に別のキットを含むことができる。例えば、本発明のキットは、核酸を精製するためのキットを含むことができる。
本発明のキットは、標的配列を増幅するのに有用な1種以上の成分を含んでもよい。いくつかの実施形態において、PCRを行うために必要な試薬および供給品の一部または全部がキットに含まれる。いくつかの実施形態において、qPCRを行うための試薬および供給品の一部または全部がキットに含まれる。他の実施形態において、RT-PCRを行うための試薬および供給品の一部または全部がキットに含まれる。試薬の非限定的な例は、緩衝液(例えば、Tris、HEPES等を含む緩衝液)、塩およびテンプレート依存性核酸伸長酵素(Taqポリメラーゼ等の熱安定性酵素等)、酵素の活性に適した緩衝液、およびdNTPs、dUTPおよび/またはUDG酵素等の酵素によって必要とされる追加の試薬である。供給品の非限定的な例は、反応容器(例えば、微量遠心管)である。
キットは、限定されないが、dsDNAを含む核酸を検出するための少なくとも1種の色素を含んでもよい。いくつかの実施形態において、キットは、SYBR(登録商標)Green色素(Molecular Probes、Eugene社、OR)等の、dsDNAを検出する配列非特異的色素を含む。色素は単独で容器に収容されることが好ましい。いくつかの実施形態において、色素は、濃縮原液として、例えば50×溶液として提供される。実施形態において、キットは、不活性参照色素(passive reference dye)を含む。これらの実施形態において、不活性参照色素は、別個の容器内で単独でキットに含めることができる。不活性参照色素は、濃縮ストック溶液として、例えば1mMストック溶液として提供することができる。非排他的で例示的な不活性参照色素は、ROX色素である。いくつかの実施形態において、キットは、DNA検出色素または不活性参照色素のいずれかを含む。他の実施形態において、キットは、DNA検出色素および不活性参照色素の両方を含む。
本発明は、一般に、研究および診断の両方における使用に適している。すなわち、本発明の組成物および方法は、様々な核酸または発現遺伝子を同定する目的、または他の研究目的のために用いることができる。同様に、組成物および方法は、ヒトおよび動物の多数の疾患または障害を診断するために用いることができる。さらに、組成物および方法は、異常な食品やその他の汚染された食品(例えば、1種以上の病原性生物に感染している食品)、またはサンプル中の有毒物質または毒素産生生物の存在を同定するために用いることができる。したがって、組成物および方法は、ヒトの健康および獣医学的用途、ならびに食品検査および国土安全保障用途を有する。
本発明は、特許請求の範囲を限定することを意図しない以下の実施例を参照することにより、よりよく理解され得る。
材料および方法
クラフト綿棒(カタログ番号87104**260;Tamiya社)を用いて鼻スワブを収集し、100μlの溶解緩衝液(3%のTriton X-100、10%のグリセリン、2mMのDTT、25mMのNa2HPO4、25mMのTris-HCl;pH7.8)を含む1.5ml反応チューブまたはディープウェルマイクロタイタープレートに移した。溶解緩衝液を室温で保存し、使用前にRNase不含有水(Invitrogen社、Ultrapure蒸留水 Dnase/Rnase不含有、10977-035)で1:6に希釈した。使用当日:100μlのサンプル溶解物あたり0.1μlのRNAse阻害剤(NEB、M0314L、40U/μl)。
スワブを溶解緩衝液に入れた後、スワブを圧縮してサンプルを溶解緩衝液に放出し、5分間インキュベートした。次いで、サンプルを直接用いるために氷上に静置するか、または-20℃(短期)もしくは-80℃(長期保存)で凍結した。
使用前に、サンプルを解凍し(必要な場合)、室温で2分間、12,000rpmで遠心分離した。遠心分離後、上清を新しい反応チューブまたはディープウェルマイクロタイタープレートに移した。サンプルは、リアルタイムワンステップRT-PCRに進む前に、この段階で必要に応じて凍結することができる。
リアルタイムワンステップRT-PCRアッセイでは、10μlマルチピペットまたは自動ピペッティングシステム(例えば、Cybi Well Vario、Analytik Jena)を用いて、2μl溶解物を384ウェルQPCRマイクロプレート(LightCycler(登録商標)480マルチウェルプレート384ホワイト、4バーコード No.:05217555001)に移した。100μlのマルチピペットまたはディスペンサーを用いて、8μlのPCR MasterMix(Quantabio、UltraPlex(商標)1-step ToughMix(登録商標)、No.:95166-01K)を添加した。次いで、マイクロプレートを透明なqPCRホイル(MicroAmp(商標)Optical Adhesive Film、ThermoScientific、4311971)を用いて手動またはヒートシーラーで密閉し、1500rpmで3分間遠心分離した。ワンステップRT-PCRをLC480(Roche、384ウェル)を用いて行い、データをLC480ソフトウェアで分析した。サイクル閾値(CPまたはCp)を各反応について計算し、測定された蛍光が蛍光をバックグラウンド蛍光と区別できる値に達するまでのPCR増幅中のサイクル数を表示した。
リアルタイムワンステップRT-PCRアッセイでは、10μlマルチピペットまたは自動ピペッティングシステム(例えば、Cybi Well Vario、Analytik Jena)を用いて、2μl溶解物を384ウェルQPCRマイクロプレート(LightCycler(登録商標)480マルチウェルプレート384ホワイト、4バーコード No.:05217555001)に移した。100μlのマルチピペットまたはディスペンサーを用いて、8μlのPCR MasterMix(Quantabio、UltraPlex(商標)1-step ToughMix(登録商標)、No.:95166-01K)を添加した。次いで、マイクロプレートを透明なqPCRホイル(MicroAmp(商標)Optical Adhesive Film、ThermoScientific、4311971)を用いて手動またはヒートシーラーで密閉し、1500rpmで3分間遠心分離した。ワンステップRT-PCRをLC480(Roche、384ウェル)を用いて行い、データをLC480ソフトウェアで分析した。サイクル閾値(CPまたはCp)を各反応について計算し、測定された蛍光が蛍光をバックグラウンド蛍光と区別できる値に達するまでのPCR増幅中のサイクル数を表示した。
プローブ/プライマー:
CLDN1(遺伝子ID:9076;claudin1、ヒト上皮細胞マーカー)
CLDN1_プローブ:5’_HEX-CAGGCTCTCTTCACTGGCTGGGC-BHQ1_3’(配列番号:1)
CLDN1_F1(フォワードプライマー):5’-CCAGTCAATGCCAGGTACGA-3’(配列番号:2)
CLDN1_R1(リバースプライマー):5’-GAAGGCAGAGAGAAGCAGCA-3’(配列番号:3)
RPL32(遺伝子ID:6161;リボソームタンパク質L32;ヒトハウスキーピング遺伝子)
RPL32_プローブ:5’_HEX-AATTAAGCGTAACTGGCGGAAACCC-BHQ1_3’(配列番号:4)
RPL32_F1(フォワードプライマー):5’-GCACCAGTCAGACCGATATGT-3’(配列番号:5)
RPL32_R1(リバースプライマー):5’-ACCCTGTTGTCAATGCCTCT-3’(配列番号:6)
E_gene Sarbeco(E遺伝子、SARS CoV2遺伝子)
E_gene Sarbeco_P1(プローブ):5’-Hex-ACACTAGCCATCCTTACTGCGCTTCG-BHQ-1-3’(配列番号:7)
E_gene Sarbeco_F1(フォワードプライマー):5’-ACAGGTACGTTAATAGTTAATAGCGT-3’(配列番号8)
E_gene Sarbeco_R2(リバースプライマー):5’-ATATTGCAGCAGTACGCACACA-3’(配列番号9)
RdRP_SARSr(RdRP SARS CoV2遺伝子;SARS CoV2に特異的で、SARS CoVを検出しない)
RdRP_SARSr-P2(プローブ):5’-Hex-CAGGTGGAACCTCATCAGGAGATGC-BHQ-1-3’(配列番号10)
RdRP_SARSr-F2(フォワードプライマー):5’-GTGARATGGTCATGTGTGGCGG-3’(配列番号:11)
RdRP_SARSr-R1(逆プライマー):5’-CARATTGTTAAASACACTATTAGCATA-3’(配列番号12)
CLDN1_プローブ:5’_HEX-CAGGCTCTCTTCACTGGCTGGGC-BHQ1_3’(配列番号:1)
CLDN1_F1(フォワードプライマー):5’-CCAGTCAATGCCAGGTACGA-3’(配列番号:2)
CLDN1_R1(リバースプライマー):5’-GAAGGCAGAGAGAAGCAGCA-3’(配列番号:3)
RPL32(遺伝子ID:6161;リボソームタンパク質L32;ヒトハウスキーピング遺伝子)
RPL32_プローブ:5’_HEX-AATTAAGCGTAACTGGCGGAAACCC-BHQ1_3’(配列番号:4)
RPL32_F1(フォワードプライマー):5’-GCACCAGTCAGACCGATATGT-3’(配列番号:5)
RPL32_R1(リバースプライマー):5’-ACCCTGTTGTCAATGCCTCT-3’(配列番号:6)
E_gene Sarbeco(E遺伝子、SARS CoV2遺伝子)
E_gene Sarbeco_P1(プローブ):5’-Hex-ACACTAGCCATCCTTACTGCGCTTCG-BHQ-1-3’(配列番号:7)
E_gene Sarbeco_F1(フォワードプライマー):5’-ACAGGTACGTTAATAGTTAATAGCGT-3’(配列番号8)
E_gene Sarbeco_R2(リバースプライマー):5’-ATATTGCAGCAGTACGCACACA-3’(配列番号9)
RdRP_SARSr(RdRP SARS CoV2遺伝子;SARS CoV2に特異的で、SARS CoVを検出しない)
RdRP_SARSr-P2(プローブ):5’-Hex-CAGGTGGAACCTCATCAGGAGATGC-BHQ-1-3’(配列番号10)
RdRP_SARSr-F2(フォワードプライマー):5’-GTGARATGGTCATGTGTGGCGG-3’(配列番号:11)
RdRP_SARSr-R1(逆プライマー):5’-CARATTGTTAAASACACTATTAGCATA-3’(配列番号12)
実施例1-上皮細胞の検出
上皮マーカーCLDN1およびヒトのハウスキーピング遺伝子RPL32のRT-qPCRを、記載されているプロトコルに従って行った。端的には、材料および方法に記載されているように、10人の健康なヒトボランティアから鼻スワブを収集して溶解した。溶解物は、凍結せずにRT-qPCRに直接用いた。コントロールサンプルには、スワブのみ(サンプルなしのスワブ)およびNTC(テンプレートコントロールなし)が含まれていた。
上皮マーカーCLDN1およびヒトのハウスキーピング遺伝子RPL32のRT-qPCRを、記載されているプロトコルに従って行った。端的には、材料および方法に記載されているように、10人の健康なヒトボランティアから鼻スワブを収集して溶解した。溶解物は、凍結せずにRT-qPCRに直接用いた。コントロールサンプルには、スワブのみ(サンプルなしのスワブ)およびNTC(テンプレートコントロールなし)が含まれていた。
CLDN1プローブおよびRPL32プローブならびにプライマーを、反応液中の各オリゴの最終濃度が333nMになるように含有させた。
PCR反応の準備:2.5μlのUltraPlex 1-step tough mix(4×)、2.5μlのプライマー/プローブミックス、2.0μlの溶解鼻サンプルアリコート、3.0μlのRNase不含有水。
PCRプロトコル:逆転写を50℃で10分間行い、続いて95℃、45サイクル:95℃で1分+60℃で30秒、またはより好ましくは95℃で15秒+60℃で1分で5分間変性させた。サイクル終了後、40℃で30秒間冷却した。
各サンプルの増幅曲線を図1に示し、図2に要約する。これらのデータから、RNA抽出工程を含めずに調製した鼻スワブサンプルから遺伝子を確実に検出できることが示された。検出レベルのばらつきは、個々のサンプリングに起因する可能性がある。
実施例2-RT-qPCRによるウイルス遺伝子検出の感度
用いられたRT-qPCRプロトコルは、TIB MOLBIOL/Roche Kitマニュアルに記載されているとおりであったが、下記の例外を含んでいた。8分間のRT工程を用いた。必要に応じてRoche社のRNA Virus Master Mixの代わりにUltraPlex(商標)1-step ToughMix(登録商標)を用いました。プロトコルを以下の表1に示す。
用いられたRT-qPCRプロトコルは、TIB MOLBIOL/Roche Kitマニュアルに記載されているとおりであったが、下記の例外を含んでいた。8分間のRT工程を用いた。必要に応じてRoche社のRNA Virus Master Mixの代わりにUltraPlex(商標)1-step ToughMix(登録商標)を用いました。プロトコルを以下の表1に示す。
ウイルスRNA抽出キット(LightMix(登録商標)Modular EAV RNA Extraction Control、TIB MOLBIOL カタログ番号58-0909-96)において一般的に用いられるウイルス陽性コントロールの検出に対するRT-qPCRの感度を試験した。これは、ウイルスのテンプレートRNAを様々な希釈率(希釈なし、1:10、1:100、1:1000)でPCRミックスに添加した典型的なRT-qPCR反応であった。溶解物は用いなかった。この遺伝子のRT-qPCRの感度を試験した。増幅曲線を図3に示し、データを以下の表2に示す。
3種のCoV-2遺伝子の検出に対するRT-qPCRの感度:E遺伝子(LightMix(登録商標)Modular SARS and Wuhan CoV E-gene、TIB MOLBIOL カタログ番号53-0776-96)、N遺伝子(LightMix(登録商標)Modular SARS and Wuhan CoV N-gene、TIB MOLBIOL カタログ番号53-0775-96)、およびRdRP遺伝子(LightMix(登録商標)Modular Wuhan CoV RdRP-gene、TIB MOLBIOL カタログ番号53-0777-96)を、EAVポジティブコントロールの検出について上述したのと同じプロトコルを用いて行った。様々な濃度の各遺伝子がPCRミックスに含まれており(2×ストック、1×ストック、1:10希釈、1:100希釈)、それぞれ試験された約1000コピー(2×)、約500コピー(1×)、約50コピー(1:10)および約5コピー(1:100)に対応していた。
E遺伝子の検出のための増幅曲線を図4に示し、データを以下の表3に示す。
N遺伝子の検出のための増幅曲線を図5に示し、データを以下の表4に示す。
SARS CoV-2の検出に特異的なRdRP遺伝子の検出のための増幅曲線を図6に示し、データを以下の表5に示す。
実施例3-鼻スワブ溶解液中のCoV-2遺伝子の検出
実施例2で試験した2つのウイルス遺伝子(E遺伝子およびRdRP遺伝子)についてのRT-qPCRを、記載されたプロトコルに従って行った。端的には、材料および方法に記載されているように、10人の健康なヒトボランティア(S1~S10)から鼻スワブを収集して溶解し、CoV-2 RNAテンプレート(TibMolBiol社)を添加(スパイク)した。溶解物は、凍結せずにRT-qPCRに直接用いた。
実施例2で試験した2つのウイルス遺伝子(E遺伝子およびRdRP遺伝子)についてのRT-qPCRを、記載されたプロトコルに従って行った。端的には、材料および方法に記載されているように、10人の健康なヒトボランティア(S1~S10)から鼻スワブを収集して溶解し、CoV-2 RNAテンプレート(TibMolBiol社)を添加(スパイク)した。溶解物は、凍結せずにRT-qPCRに直接用いた。
各サンプルS1~S10について、次の反応が行った:1)E-Gene_Sample(CoV-2 RNAテンプレートを添加せず;E遺伝子プローブ/プライマーを含む);2)E-Gene_SpikeRNA(CoV-2 RNAテンプレートを添加;E遺伝子プローブ/プライマーを含む);3)E-Gene_PosCntlRNA(CoV-2 RNAテンプレートのみ;E遺伝子プローブ/プライマーを含む);4)NTC_E-Gene(テンプレートなしのネガティブコントロール);5)RdRP-Gene(CoV-2 RNAテンプレートを添加せず、RdRPプローブ/プライマーを含む);6)RdRP-Gene_SpikeRNA(CoV-2 RNAテンプレートを添加;RdRP遺伝子プローブ/プライマーを含む);7)RdRP-Gene_PosCntlRNA(CoV-2 RNAテンプレートのみ;RdRP-Geneプローブ/プライマーを含む);および8)NTC_RdRP-Gene(テンプレートなしのネガティブコントロール)。各反応は4連で行った。
E遺伝子のプローブおよびプライマーは、以下の最終濃度で含有されていた:E_Gene Sarbeco_P1プローブ400nM、E_Gene Sarbeco_F1フォワードプライマー400nM、E_Gene Sarbeco_R2リバースプライマー200nMまたはそれ以上、好ましくはE_Gene Sarbeco_P1プローブ200nM、E_Gene Sarbeco_F1フォワードプライマー400nM、E_Gene Sarbeco_R2リバースプライマー400nM。
RdRPのプローブおよびプライマーは、以下の最終濃度で含有されていた:RdRP_SARSr-P2プローブ600nM、RdRP_SARSr-F2フォワードプライマー800nM、RdRP_SARSr-R1リバースプライマー100nMまたはそれ以上、好ましくはRdRP_SARSr-P2プローブ100nM、RdRP_SARSr-F2フォワードプライマー600nM、RdRP_SARSr-R1リバースプライマー800nM。
PCR反応の準備:2.5μlのUltraPlex 1-step tough mix(4×)、2.5μlのプライマー/プローブミックス(4×)、0.25μlのLightMixキットからのポジティブコントロールRNA、2.0μlの溶解鼻サンプルアリコート、2.75μlのRNase不含有水。サンプル1)および5)においては、ポジティブコントロールRNAを添加せず、3.0μlのRNase不含有水を添加した。
PCRプロトコル:逆転写を50℃で10分間行い、続いて95℃、45サイクル:95℃で1分+60℃で30秒、またはより好ましくは95℃で15秒+60℃で60秒で5分間変性させた。サイクル終了後、40℃で30秒間冷却した。
各サンプルの増幅曲線を図7に示し、図8に要約する。データを下記の表6に示す。
これらのデータから、RNA抽出工程を含めずに調製した鼻スワブサンプルからSARS CoV-2遺伝子を確実に検出できることが示された。CoV-2感染患者の鼻スワブに存在するウイルスRNAが、記載されている方法で測定できることを実証するために、さらなる研究が行われる。
本明細書で引用されるすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているように、参照により本明細書に組み込まれる。いかなる参考文献の引用も、出願日以前の開示のためのものであり、本開示が先行発明のおかげでそのような参考文献に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。
上記の要素のそれぞれ、または2つ以上を一緒にすると、上記のタイプとは異なる他のタイプの方法においても有用な用途が見出され得ることが理解されるであろう。さらなる分析をしなくても、上記は本開示の要旨を完全に明らかにするので、他の人は、現在の知識を適用することにより、従来技術の観点から、添付の特許請求の範囲に記載される一連の開示の一般的または特定の態様の必須の特徴を適正に構成する特徴を省略することなく、本開示を様々な用途に容易に適応させるであろう。上述した実施形態は、例示することのみを目的として示されるものであり;本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
Claims (68)
- RNAウイルスまたはDNAウイルスを検出する方法であって、
少なくとも1つのサンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、
RNAウイルス検出の場合には、前記溶解物中のRNAを逆転写してcDNAを得ること、および
前記RNAウイルスまたはDNAウイルスの核酸配列に由来するプライマーセットを用いて前記溶解物中のRNAウイルスまたはDNAウイルスから少なくとも1種の核酸を増幅すること
を含む、前記方法。 - 前記溶解緩衝液が、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含有する、請求項1に記載の方法。
- 少なくとも1種の前記非イオン性界面活性剤が、親水性のポリエチレンオキシド鎖および芳香族炭化水素の親油性基または疎水性基を有する、請求項2に記載の方法。
- 少なくとも1種の前記非イオン性界面活性剤がTriton X-100である、請求項2または3に記載の方法。
- 前記溶解緩衝液が、非イオン性界面活性剤を約0.05%~約20%の量で含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記塩がリン酸二ナトリウムである、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解緩衝液が、以下:Tris-HCl、ジチオスレイトール(DTT)、RNase不含有水、RNase阻害剤およびそれらの混合物の1種以上をさらに含有する、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解緩衝液のpHが約7.5~約8.5である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記RNAウイルスがコロナウイルスである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記コロナウイルスがSARS CoV-2である、請求項9に記載の方法。
- 前記コロナウイルスがSARS CoV-2の変異体である、請求項9に記載の方法。
- 前記プライマーセットが、E遺伝子、N遺伝子およびRdRP遺伝子からなる群から選択されるウイルスRNA遺伝子に対するものである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記プライマーセットがE遺伝子に対するものであり、かつ配列番号8および/または配列番号9、またはその相補体を含むか、またはそれからなる、請求項12に記載の方法。
- 前記プライマーセットがRdRP遺伝子に対するものであり、かつ配列番号11および/または配列番号12、またはその相補体を含むか、またはそれからなる、請求項13に記載の方法。
- RNA抽出工程を含まない、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解物が前記逆転写に直接用いられる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
- 前記生物学的サンプルがスワブを用いて収集される、請求項17に記載の方法。
- 前記生物学的サンプルが鼻スワブである、請求項17または18に記載の方法。
- 少なくとも1つの前記サンプルが少なくとも1つのヒト細胞を含有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
- 前記サンプルが100μlの前記溶解緩衝液に配置される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解緩衝液と前記サンプルとの混合物を室温で5分間インキュベートして溶解物を生成することをさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解物を遠心分離し、上清を収集することをさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解物が室温で2分間、12,000rpmで遠心分離される、請求項23に記載の方法。
- 1種以上の核酸を増幅する方法であって、
少なくとも1つのサンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、および
前記溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅すること
を含み、前記溶解緩衝液が少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含有する、前記方法。 - 少なくとも1種の前記非イオン性界面活性剤が、親水性のポリエチレンオキシド鎖および芳香族炭化水素の親油性基または疎水性基を有する、請求項25に記載の方法。
- 少なくとも1種の前記非イオン性界面活性剤がTriton X-100である、請求項25または26に記載の方法。
- 前記溶解緩衝液が、非イオン性界面活性剤を約0.05%~約20%の量で含有する、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
- 前記塩がリン酸二ナトリウムである、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解緩衝液が、以下:Tris-HCl、ジチオスレイトール(DTT)、RNase不含有水、RNase阻害剤およびそれらの混合物の1種以上をさらに含有する、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
- 少なくとも1つの前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
- 前記生物学的サンプルがスワブを用いて収集される、請求項31に記載の方法。
- 前記生物学的サンプルが鼻スワブである、請求項31または32に記載の方法。
- 前記サンプルが少なくとも1つのヒト細胞を含有する、請求項25~33のいずれか一項に記載の方法。
- 前記サンプルが100μlの前記溶解緩衝液に配置される、請求項25~34のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解緩衝液と前記サンプルとの混合物を室温で5分間インキュベートして溶解物を生成することをさらに含む、請求項25~35のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解物を遠心分離し、上清を収集することをさらに含む、請求項25~36のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解物が室温で2分間、12,000rpmで遠心分離される、請求項37に記載の方法。
- 前記溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅することが、PCR、qPCR、RT-PCRまたはRT-qPCRによって行われる、請求項25~38のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅することが、ワンステップRT-qPCRによって行われる、請求項25~39のいずれか一項に記載の方法。
- RNA抽出工程を含まない、請求項25~40のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶解物が前記増幅に直接用いられる、請求項25~41のいずれか一項に記載の方法。
- 少なくとも1種の前記核酸がRNAウイルスに由来する、請求項25~42のいずれか一項に記載の方法。
- SARS CoV-2またはSARS CoV-2の変異体に感染した対象を同定する方法であって、
対象から得られた生物学的サンプルから溶解物を得ること、
前記溶解物中のRNAを逆転写してcDNAを得ること、および
前記cDNAを前記SARS CoV-2ゲノムのヌクレオチド配列または前記SARS CoV-2の変異体のゲノムに由来するプライマーセットを用いたPCRアッセイすること
を含む、前記方法。 - 前記溶解物が、生物学的サンプルと少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含有する溶解緩衝液とを接触させることによって得られる、請求項44に記載の方法。
- RNA抽出工程を含まない、請求項44または45に記載の方法。
- 前記溶解物が前記逆転写に直接用いられる、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法。
- 標的核酸を増幅、同定、検出および/または分析する方法であって、
サンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、
前記溶解物中のRNAを逆転写してcDNAを得ること、および
前記cDNAを前記標的核酸に対するプライマーセットを用いてPCRアッセイすること
を含む、前記方法。 - 前記溶解物が、前記サンプルと少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含有する溶解緩衝液とを接触させることによって得られる、請求項48に記載の方法。
- RNA抽出工程を含まない、請求項48または49に記載の方法。
- 前記溶解物が逆転写において直接用いられる、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
- 溶解緩衝液を含むキットであって、前記溶解緩衝液が少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、グリセロール、および少なくとも1種の塩を含有する、前記キット。
- 標的核酸の増幅のための少なくとも1種の試薬をさらに含む、請求項52に記載のキット。
- 標的核酸の増幅のための少なくとも1種のプライマーおよび/または少なくとも1種のプローブを含む、請求項52または53に記載のキット。
- ワンステップRT-qPCRを用いたRNA検出用キットである、請求項52~54のいずれか一項に記載のキット。
- 少なくとも1種の逆転写酵素、少なくとも1種のDNAポリメラーゼ、RNase阻害剤、ヌクレオチド、プライマー、プローブ、標識の1種以上、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項55に記載のキット。
- 前記標的核酸がRNAウイルスに由来する、請求項52~56のいずれか一項に記載のキット。
- 前記RNAウイルスがコロナウイルスである、請求項57記載のキット。
- 前記RNAウイルスがSARS CoV-2である、請求項57または58に記載のキット。
- 配列番号8および/または配列番号9、またはその相補体、ならびに配列番号11および/または配列番号12、またはその相補体から選択されるプライマーセットを含む、請求項59に記載のキット。
- 1~5%のTriton X-100と、以下の成分:5~20%のグリセロール、0.5~4mMのDTT、10~50mMのNa2HPO4、および10~50mMのTris-HClの1種以上とを含有する、溶解緩衝液。
- 約3%のTriton X-100と、以下の成分:約10%のグリセロール、約2mMのDTT、約25mMのNa2HPO4、および約25mMのTris-HClの1種以上とを含有する、請求項61に記載の溶解緩衝液。
- 前記溶解緩衝液のpHが約7.5~約8.0である、請求項61または62に記載の溶解緩衝液。
- RNase不含有水をさらに含有する、請求項61~63のいずれか一項に記載の溶解緩衝液。
- 前記RNase不含有水を約1:15~1:1(溶解緩衝液:RNase不含有水)の量で含有する、請求項64に記載の溶解緩衝液。
- RNAse阻害剤をさらに含有する、請求項61~65のいずれか一項に記載の溶解緩衝液。
- 少なくとも1つのサンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、および
前記溶解物中の少なくとも1種の核酸を増幅すること
を含む、1種以上の核酸を増幅する方法における、請求項61~66のいずれか一項に記載の溶解緩衝液の使用。 - 少なくとも1つのサンプルと溶解緩衝液とを接触させて溶解物を生成すること、
前記溶解物中でRNAを逆転写してcDNAを得ること、および
RNAウイルスの核酸配列に由来するプライマーセットを用いて前記溶解物中のRNAウイルスから少なくとも1種の核酸を増幅すること
を含む、RNAウイルスを検出する方法における、請求項61~66のいずれか一項に記載の溶解緩衝液の使用。
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