JPWO2010125722A1 - 人工コラーゲンを用いた軟骨培養用基材及び該基材を用いた軟骨再生治療方法 - Google Patents

人工コラーゲンを用いた軟骨培養用基材及び該基材を用いた軟骨再生治療方法 Download PDF

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Abstract

本発明の課題は、安全性が高く、そして軟骨細胞の増殖促進効果を有する軟骨培養用基材及び軟骨再生治療方法を提供することである。詳しくは、人工コラーゲン、特に人工コラーゲン水溶液を含む軟骨培養用基材が、軟骨細胞の増殖促進効果を有することを見出し、さらに該基材を軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入することによる軟骨再生効果を見出し、本発明を完成した。

Description

本発明は、人工コラーゲンを用いた軟骨培養用基材及び該基材を用いた軟骨再生治療方法に関する。
なお、本出願は、参照によりここに援用されるところの、日本国特許出願の特願2009-112217からの優先権を請求する。
コラーゲンは、繊維状タンパク質であり、皮膚や骨の主成分として哺乳類では全タンパク質の約30%(W/W)を占めると言われている。
また、一般的なコラーゲン分子は、3本のコラーゲンポリペプチド鎖が三重らせん構造と呼ばれるロープ状の超らせん構造をとる。加えて、コラーゲンには、プロリン(Pro)、グリシン(Gly)及びヒドロキシプロリン(Hyp)が特に多く含まれ、両アミノ酸残基とも安定な3重らせん構造の形成に重要である。
生体由来のコラーゲンの作製方法及び利用方法では、例えば、ブタ又はウシの皮膚組織をそのままあるいは凍結乾燥した後、火傷などによる皮膚の損傷部位に移植する方法、酵素処理などによって細胞成分を除去して用いる方法、酸性溶液や酵素処理によって可溶化したコラーゲンを、所望の形態に再構成して用いる方法がある。
一方、ウシの海綿状脳症の原因物質がプリオンと呼ばれる伝染性タンパク質であり、この伝染性タンパク質がヒトのクロイツフェルド・ヤコブ病伝染の原因の一つと言われている。プリオンは、タンパク質であり、通常の滅菌、殺菌方法では失活し難く、しかも種を越えて感染することが指摘されている。
また、生体由来のコラーゲンには、ウイルスが混入している可能性も否定できない。
一般に、医療用具や医薬品、化粧品ではウシやブタ由来のコラーゲンを原料として用いることが多い。そのため、通常の滅菌、殺菌方法では除去できないプリオンなどの病原体の感染の危険性が常に存在している。
さらに、生体由来のコラーゲンは、移植対象の患者に対して異種タンパク質であるので、免疫拒絶反応の問題もあった。
一方、軟骨欠損部の治療では、荷重のかからない部位の軟骨組織を採取して患部に再移植するモザイクプラスティーと呼ばれる手法が中心であった。しかし、自家組織の使用は患者への負担が大きく、その採取量にも限界がある。
また、コラーゲンを使用した軟骨培養用基材及びその製法が報告されている(特許文献1)。しかし、本特許文献で使用されるコラーゲンは、生体由来である。
さらに、軟骨の再構築のためのコラーゲンIおよびコラーゲンIIを含有する再吸収可能細胞外マトリックスが報告されている(特許文献2)。しかし、本特許文献は、上記文献と同様に、生体由来のコラーゲンを使用している。
人工コラーゲンについて報告されている(特許文献3及び4)。しかし、特許文献3では、人工コラーゲンの軟骨細胞の足場としての利用及び軟骨細胞の増殖促進効果については開示がない。
また、特許文献4では、人工コラーゲン、特に人工コラーゲン水溶液の軟骨細胞の増殖促進効果については開示がない。
特開2004−194944 特開2003―180815 特開2003−321500 特開2005−58499
本発明の課題は、上記要望にこたえるべく、安全性が高く、そして軟骨細胞の増殖促進効果を有する軟骨培養用基材及び該基材を用いて軟骨再生治療方法を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成するために種々研究を重ねた結果、人工コラーゲン、特に人工コラーゲン水溶液を含む軟骨培養用基材が、上記要望を充足することを見出し、本発明を完成した。
つまり、本発明は、以下の通りである。
1.人工コラーゲンを含む軟骨培養用基材。
2.前記人工コラーゲンを含む軟骨培養用基材であって、該人工コラーゲンが濃度0.001〜6.00%(W/V)の溶液である前項1に記載の軟骨培養用基材。
3.前記人工コラーゲンが、濃度0.001〜6.00%(W/V)の水溶液である前項2に記載の軟骨培養用基材。
4.前記人工コラーゲンが、以下(1)〜(3)で表されるペプチドユニットで構成されているポリペプチドである前項1〜3のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
(1)[-(OC-(CH2)m-CO)p-(Pro-Y-Gly)n-]a
(2)[-(OC-(CH2)m-CO)q-(Z)r-]b
(3)[-HN-R-NH-]c
(式中、mは1〜18の整数、p及びqは同一又は異なって0又は1、YはProまたはHypを表し、nは1〜20の整数を表す。Zは1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖を表し、rは1〜20の整数を表し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。aとbの割合はa/b=100/0〜30/70(モル比)であり、p=1及びq=0であるときc=a、p=0及びq=1であるときc=bであり、p=1及びq=1であるときc=a+bであり、p=0及びq=0であるときc=0である。)
5. mが2〜12の整数、nが2〜15の整数、Zが、Gly, Sar, Ser, Glu, Asp, Lys, His, Ala,Val、Leu、Arg、Pro、Tyr、Ileから選択された少なくとも一種のアミノ酸残基又はペプチド残基で構成されているペプチド鎖、rが1〜10の整数、RがC2-12アルキレン基である前項4に記載の軟骨培養用基材。
6.さらにヒアルロン酸ナトリウムを含む前項1〜5のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
7.さらにRGDペプチドを含む前項1〜6のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
8.前記軟骨培養用基材が軟骨細胞の足場材料である前項1〜7のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
9.前記軟骨培養用基材が軟骨細胞の分化・増殖材である前項1〜7のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
10.ヒアルロン酸ナトリウム及び人工コラーゲンを含む関節機能改善剤。
11.前記人工コラーゲンが、濃度0.001〜6.00%(W/V)の水溶液である前項10に記載の関節機能改善剤。
12.前記人工コラーゲンが、以下(1)〜(3)で表されるペプチドユニットで構成されているポリペプチドである前項10又は11に記載の関節機能改善剤。
(1)[-(OC-(CH2)m-CO)p-(Pro-Y-Gly)n-]a
(2)[-(OC-(CH2)m-CO)q-(Z)r-]b
(3)[-HN-R-NH-]c
(式中、mは1〜18の整数、p及びqは同一又は異なって0又は1、YはProまたはHypを表し、nは1〜20の整数を表す。Zは1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖を表し、rは1〜20の整数を表し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。aとbの割合はa/b=100/0〜30/70(モル比)であり、p=1及びq=0であるときc=a、p=0及びq=1であるときc=bであり、p=1及びq=1であるときc=a+bであり、p=0及びq=0であるときc=0である。)
13.mが2〜12の整数、nが2〜15の整数、Zが、Gly, Sar, Ser, Glu, Asp, Lys, His, Ala,Val、Leu、Arg、Pro、Tyr、Ileから選択された少なくとも一種のアミノ酸残基又はペプチド残基で構成されているペプチド鎖、rが1〜10の整数、RがC2-12アルキレン基である前項12に記載の関節機能改善剤。
14.軟骨再生治療のために患者の軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入することを特徴とする前項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材の使用。
15.軟骨再生促進治療のために軟骨移植後患者の該軟骨移植部位の周辺に関節内注入することを特徴とする前項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材の使用。
16.関節機能保護治療のために関節障害の患者の軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入することを特徴とする前項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材の使用。
17.前記関節障害が、以下から選ばれる前項16に記載の軟骨培養用基材の使用。
(1)変形性関節症による関節障害
(2)外傷による関節障害
(3)スポーツによる関節障害
(4)関節リウマチによる関節障害
(5)全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病による関節障害
18.前項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材を患者の軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入することによる軟骨再生治療方法。
19.前項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材を軟骨移植後患者の該軟骨移植部位の周辺に関節内注入することによる軟骨再生促進治療法。
20.前項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材を関節障害の患者の軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入することによる関節機能保護治療法。
21.前記関節障害が、以下から選ばれる前項20に記載の関節機能保護治療法。
(1) 変形性関節症による関節障害
(2) 外傷による関節障害
(3) スポーツによる関節障害
(4) 関節リウマチによる関節障害
(5)全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病による関節障害
本発明では、安全性が高くそして軟骨細胞の増殖促進効果を有する軟骨培養用基材及び該基材を使用した軟骨再生治療方法を提供することができる。
人工コラーゲン及びウシtype2コラーゲンのトルイジンブルー染色標本図 人工コラーゲンのトルイジンブルー染色標本図 プロテオグリカン量の測定結果 DNA量の測定結果 プロテオグリカン量とDNA量比の結果 aggrecanの遺伝子発現量の測定結果 type 2 collagenの遺伝子発現量の測定結果 sox9の遺伝子発現量の測定結果 人工コラーゲン水溶液の添加による軟骨細胞のプロテオグリカン産生能の測定結果 人工コラーゲン水溶液の添加による軟骨細胞のtype2コラーゲンmRNA量の測定結果(縦軸は、type2コラーゲンmRNA量を示す) 人工コラーゲン水溶液の添加による軟骨細胞のアグリカンmRNA量の測定結果(縦軸は、アグリカンmRNA量を示す) 各群の膝関節の画像及びmodified ICRS scoreによる結果 各群の膝関節をサフラニ-ン-O染色(Rosenburg, J Bone Joint Surg, 53A:69-82, 1971)した画像及びサフラニン-O 染色面積率の結果 各群の膝関節をtype2コラーゲン抗体免疫染色した画像及びtype2コラーゲン抗体免疫染色面積率の結果 器官培養後の軟骨片の画像(左上図:サフラニン-O染色図、左下図:拡大図、右下図:蛍光標識した拡大図)
以下、本発明を詳細に説明する。
(人工コラーゲン)
本発明の人工コラーゲンは、生体由来のコラーゲンではないことを意味する。例えば、以下のようなポリペプチドを本発明の人工コラーゲンとする。
本発明の人工コラーゲンであるポリペプチドは、下記式(1)〜(3)で表されるペプチドユニットで構成されている。
(1)[-(OC-(CH2)m-CO)p-(Pro-Y-Gly)n-]a
(2)[-(OC-(CH2)m-CO)q-(Z)r-]b
(3)[-HN-R-NH-]c
式中、mは1〜18の整数、p及びqは同一又は異なって0又は1、YはPro(プロリン)またはHyp(ヒドロキシプロリン)を表し、nは1〜20の整数を表す。Zは1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖を表し、rは1〜20の整数を表し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。aとbの割合はa/b=100/0〜30/70(モル比)であり、p=1及びq=0であるときc=a、p=0及びq=1であるときc=bであり、p=1及びq=1であるときc=a+bであり、p=0及びq=0であるときc=0である。
より詳しくは、前記式(1)〜(3)のユニットで構成されたポリペプチドにおいて、通常、mは2〜12の整数、nは2〜15の整数であり、Zは、Gly(グリシン), Sar(サルコシン), Ser(セリン), Glu(グルタミン酸), Asp(アスパラギン酸), Lys(リジン), His(ヒスチジン), Ala(アラニン),Val(バリン)、Leu(ロイシン)、Arg(アルギニン)、Pro(プロリン)、Tyr(チロシン)、Ile(イソロイシン)から選択された少なくとも一種のアミノ酸残基又はペプチド残基で構成されているペプチド鎖である。また、前記式において、通常、rは1〜10の整数、RはC2-12アルキレン基である。
また、本発明のポリペプチドは、下記の繰り返し単位(i)、(ii)又は(iii)で構成されていてもよい。
(i)ペプチドユニット[-(Pro-Y-Gly)n-]a(式中、Y及びnは、前記に同じ)と、ペプチドユニット[-(Z)r-]b(式中、Z及びrは、前記に同じ)とを、a/b=100/0〜40/60(モル比)の割合で含む繰り返し単位で構成されたポリペプチド
(ii)ペプチドユニット[-(OC-(CH2)m-CO)-(Pro-Y-Gly)n-]a(式中、m、n及びYは、前記に同じ)と、ユニット[-HN-R-NH-]c(式中、Rは前記に同じ)とを、実質的にa/c=1/1(モル比)の割合で含む繰り返し単位で構成されたポリペプチド
(iii)ペプチドユニット[-(OC-(CH2)m-CO)-(Pro-Y-Gly)n-]a(式中、m、n及びYは、前記に同じ)と、ペプチドユニット[-(OC-(CH2)m-CO)-(Z)r-]b(式中、m、r及びZは、前記に同じ)と、ユニット[-HN-R-NH-]c(式中、Rは前記に同じ)とを、a/b=100/0〜40/60(モル比)の割合、なおかつ、実質的に(a+b)/c=1/1(モル比)の割合で含む繰り返し単位で構成されたポリペプチド。
なお、上記Rで表される直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基は、ポリペプチドの物理的および生物学的性質を損なわない範囲であればよく、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレンなどのC1-18アルキレン基が例示できる。前記アルキレン基Rは、直鎖状のメチレン鎖(CH2)s(sは1〜18の整数を表す)であってもよい。好ましいRは、C2-12アルキレン基(さらに好ましくはC2-10アルキレン基,特にC2-6アルキレン基)である。
なお、これらの人工コラーゲンの詳細及び製造方法は、特開2003-321500に記載されている。
加えて、好ましくは、本発明の人工コラーゲンは、株式会社PHGより販売されている人工コラーゲン{INCI名:Poly(Tripeptide-6)、CAS.No:60961-94-6:http://www.phg.co.jp/research/collagen.html}を使用することが好ましい。
本発明で使用する人工コラーゲンの形状は、厚さ1〜20mmとすることが望まれる。何れもこの範囲内であることは、軟骨細胞の増殖性において、また、強度、取扱いの利便性等において好適な範囲である。
さらに、乳酸−カプロラクトン共重合体のスポンジ体と複合化、例えば、貼り合わせたり、重ねたりした構成としてもよい。

加えて、本発明で使用する人工コラーゲンスポンジをハイドロキシアパタイトやセラミックスなどと組み合わせることで、骨軟骨欠損部の修復に使用できる。
(人工コラーゲンを含む軟骨培養用基材)
本発明の軟骨培養用基材は、少なくとも上記人工コラーゲンを含む。また、人工コラーゲンは、溶液、特に水溶液の形態、好ましくは0.001%〜6.0%(W/V)、より好ましくは0.01%〜5.0%(W/V)、より好ましく0.05%〜3.0%(W/V)、最も好ましくは0.10%〜2.0%(W/V)の水溶液にすることが好ましい。
また、粘稠度の高い{5%(W/V)以上の高濃度の人工コラーゲン}基材を作製するときには、人工コラーゲン粉末を軟骨細胞を含む溶液中に添加することが好ましい。
なお、人工コラーゲン水溶液とは、人工コラーゲンを水又は生理食塩水に溶解又は一部溶解した溶液を意味する。
さらに、本発明の軟骨培養用基材は、追加の活性成分、担体若しくはキャリア、又は添加剤などを含んでいてもよい。
前記活性成分としては、殺菌剤、消毒剤、抗炎症剤、消炎・鎮痛剤、鎮痒剤、抗潰瘍剤、抗アレルギー剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生物質、皮膚軟化剤、褥瘡・皮膚治療剤、ビタミン剤、漢方薬等が例示できる。さらに、ヒアルロン酸ナトリウム、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板分化増殖因子(PDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、グリア誘導神経栄養因子(GDNF)、神経栄養因子(NF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等の増殖因子、骨形成タンパク質(BMP)や転写因子等のその他のサイトカイン、ホルモン、Mg、Ca及びCO等の無機塩、クエン酸及びリン脂質等の有機物、抗がん剤等の薬剤等を挙げることができる。
担体又はキャリアとしては、生体材料の剤形(固形剤、半固形剤、液剤など)に応じて、生理学的に許容される種々の担体やキャリアが使用できる。例えば、固形剤の担体としては、結合剤、賦形剤、崩壊剤などが例示できる。
加えて、液剤の形態では、担体として、例えば、水、アルコール(エタノールなど)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、油脂(トウモロコシ油、オリーブ油など)などが挙げられる。
(軟骨培養用基材の用途)
本発明の軟骨培養用基材の用途は、軟骨細胞のための足場材料、軟骨細胞の分化・増殖材、軟骨再生材、軟骨再生促進材、関節機能保護剤として使用することができる。
例えば、本発明の軟骨培養用基材は、軟骨(細胞)培養の好適な足場として、生体外および生体内における軟骨組織の構築を可能にする。すなわち、播種した軟骨細胞が、軟骨培養用基材を足場として、組織再生が進む。
また、例えば、本発明の軟骨培養用基材を軟組織欠損部に移植すれば、移植された箇所で軟骨組織の再生(分化・増殖)が促進される。
加えて、例えば、本発明の軟骨培養用基材を軟骨移植後患者の該軟骨移植部位の周辺に注入すれば、該移植した軟骨の再生が促進される(移植した軟骨細胞のプロテオグリカン産生を高めることができる)。
さらに、例えば、本発明の軟骨培養用基材を関節障害の患者の軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入すれば、該軟骨欠損部位又は該軟骨障害部位の関節機能を保護することができる。なお、関節障害とは、変形性関節症による関節障害、外傷による関節障害、スポーツによる関節障害、関節リウマチによる関節障害、SLE(Systemic Lupus Erythematosus:全身性エリテマトーデス)などの膠原病による関節障害等が挙げられるが特に限定されない。
なお、軟骨欠損部位とは、硝子軟骨や線維軟骨で構成され関節腔に面している構成体が表面から深部まで大きく損傷を受けた場合を意味する。また、軟骨障害部位とは、硝子軟骨や線維軟骨で構成され関節腔に面している構成体が表面からわずかでも損傷を受けた場合を意味する。
また、本発明の軟骨培養用基材の用途である足場材料およびインプラントの形態及び形状は、特に限定されず、スポンジ、メッシュ、不繊布状成形物、ディスク状、フィルム状、棒状、粒子状、及びペースト状等、任意の形態及び形状を用いることができる。こうした形態や形状は、足場材料やインプラントの使用目的に応じて適宜選択すればよい。
(軟骨培養用基材を用いた軟骨再生治療方法、軟骨再生促進治療方法及び関節機能保護治療法)
本発明の軟骨培養用基材の投与方法としては、以下の方法が例示される。
−1 軟骨欠損部及び骨軟骨欠損部に直接移植するのではなく、関節に注射する場合には、好適には以下の投与方法を使用する。
1cm3 の溶液当たり0.1mg〜300mgの人工コラーゲンを含む軟骨培養用基材を関節に投与する。特に、該人工コラーゲンを軟骨が欠損している関節内周辺に投与する。さらに、1cm3の溶液当たり1x105〜1x107個の軟骨細胞を該軟骨培養用基材に含んでも良い。
−2 関節を開いて移植する場合及び関節鏡視下にカートリッジタイプの注射器を用いて移植する場合(軟骨欠損部及び骨軟骨欠損部に直接移植する)には、好適には以下の投与方法を使用する。
1cm3の軟骨欠損部及び/又は骨軟骨欠損部に対して0.1mg〜1000mgの人工コラーゲンを投与する。さらに、1cm3の軟骨欠損部又は骨軟骨欠損部当たり1x106〜3x108個の軟骨細胞も投与しても良い。
なお、軟骨移植後の患者には、人工コラーゲンを該軟骨移植した周辺に投与する。
加えて、関節障害の患者には、人工コラーゲンを軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に投与する。
また、人工コラーゲン濃度を変えることで、粘稠度を変化させることができる。
例えば、人工コラーゲンの粘度を変えれば、高粘度、中等度の粘度及び低粘度の軟骨培養用基材を製造することができる。そして、様々な粘度特性を有する軟骨培養用基材を軟骨欠損部又は骨軟骨欠損部に投与できる。
様々な粘度特性を有する軟骨培養用基材を軟骨欠損部又は骨軟骨欠損部に投与する例を以下の表1に示す。骨軟骨欠損部に対しては基部にハイドロキシアパタイトやセラミックの顆粒やブロックを敷いた上に移植することができる。
(軟骨細胞)
本発明における使用のための軟骨細胞は、関節軟骨、骨膜および軟骨膜から単離される同種異系または自家細胞、ならびに骨髄からの間葉(間質)幹細胞を包含する細胞供給源から得られ得る。同種異系細胞は免疫応答および感染性合併症に関する潜在的能力を保有するので、自家細胞から、特に自家の関節軟骨から軟骨細胞を単離することが好ましい。細胞を収集するための技法は既知であり、酵素的消化または外部成長培養が含まれる。次に、収集細胞は、身体への再導入前に細胞培養で増やされる。概して、軟骨組織の最適な再生を提供するためには、少なくとも1cm3の溶液当たり106細胞、好ましくは少なくとも107細胞が軟骨培養用基材中に含浸される。
(プロテオグリカン)
プロテオグリカン(proteoglycan)は、糖側鎖としてGAG(グリコサミノグリカン)を有するタンパク質であり、古くはムコ多糖と呼ばれてきた。骨、軟骨、皮膚などの結合組織に豊富に存在しており、細胞内や細胞膜に存在が認められている。
(アグリカン)
アグリカン(aggrecan)は、軟骨組織に含まれるプロテオグリカンの大部分を構成している大型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンであり、軟骨に多量に存在し、多いときには組織乾燥重量当たり50%(W/W)を占める。
(type2コラーゲン)
type 2 コラーゲン(タイプ2コラーゲン)は、軟骨乾燥重量当たり約50%(W/W)を占める主要構成成分である。すなわち、このmRNA発現が高いということは、軟骨細胞の細胞外基質産出が促進されていると言える。
(SOX9)
SOX9は、HMC(high-mobility-group)ドメインを有するDNA結合型転写因子であり、間葉系細胞凝集及び軟骨細胞分化に必須と言われている。
(RGD)
RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸:配列番号1)配列は、いくつかの重要な細胞外マトリックスタンパク質中に見出され、そして細胞表面受容体のインテグリンファミリーのメンバーへの接着リガンドとして働く。典型的なRGD配列は、Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro(GRGDSP:配列番号2)である。環状RGDもまた、細胞接着モチーフとして使用可能である。典型的な配列はArg−Gly−Asp−(D−Phe)−Val(RGDFV:配列番号3)である。RGD修飾表面は、膜上にそのままで(in situ)細胞単層の形成を導く。
すなわち、本発明の軟骨培養用基材は、上記いずれかのRGDペプチドを含むことにより、軟骨細胞との接着能力を高め、軟骨細胞の増殖能力を高めることができると考えられる。
(関節機能改善剤)
現在、変形性関節症、スポーツ障害後の変形性関節症、関節リウマチ、などの疾患に軟骨保護作用のあるヒアルロン酸製剤を関節内に注射することで有効な治療効果が得られている。
例えば、日本では関節機能改善剤であるヒアルロン酸ナトリウム関節内注射液であるスベニール(登録商標)(製造販売元:中外製薬株式会社)、アルツ(登録商標)(製造販売元:生化学工業株式会社)が変形性関節症と関節リウマチの治療目的に販売されている。また、海外での例は以下の表2の通りである。
上記関節機能改善剤の用法・用量は、以下の通りである。
変形性膝関節症:通常、成人1回2.5ml(ヒアルロン酸ナトリウム25mgを含む)を1週間毎に連続5回膝関節腔内に投与する。その後、症状の維持を目的とする場合は、2〜4週間隔で投与する。
肩関節周囲炎:通常、成人1回2.5ml(ヒアルロン酸ナトリウム25mgを含む)を1週間毎に連続5回肩関節(肩関節腔、肩峰下滑液包又は上腕二頭筋長頭腱腱鞘)内に投与する。
慢性関節リウマチにおける膝関節痛:通常、成人1回2.5ml(ヒアルロン酸ナトリウム25mgを含む)を1週間毎に連続5回膝関節腔内に投与する。
本発明の人工コラーゲン水溶液には軟骨修復効果がある。関節の体積の小さい指関節から、体積の大きい膝関節や股関節など全身の関節軟骨の修復を行うために、濃度を0.1mg/ml〜300mg/mlで変えて投与を行うことが好ましい。
また、人工コラーゲン水溶液をヒアルロン酸などと混合することで、軟骨保護効果や軟骨修復効果を増強できる。ここで記載している軟骨には、硝子軟骨と半月板(膝関節)、関節唇(股関節)などの線維軟骨を含む。すなわち、本発明の人工コラーゲンをヒアルロン酸又は上記の関節機能改善剤に添加した関節機能改善剤を関節内に投与することで、下記実施例の結果から明らかなように、軟骨保護効果を有しかつ軟骨修復を促進させる効果があると考えられる。
また、1cm3 の溶液当たり0.1mg〜300mgの人工コラーゲンを含む軟骨培養用基材を上記関節機能改善剤2.5mlに添加することで本発明の関節機能改善剤を製造することができる。
本発明の軟骨培養用基材又関節機能改善剤を医療用途に用いる場合には、殺菌又は滅菌して用いることが好ましい。殺菌、滅菌方法としては、種々の殺菌・滅菌方法、例えば、湿熱蒸気滅菌、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、薬剤殺菌、紫外線殺菌などが例示できる。これらの方法のうち、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌は、滅菌効率と材料に与える影響が少なく好ましい。
本発明の軟骨培養用基材又関節機能改善剤は、種々の被検体(被験体)の組織(例えば、表皮組織及び真皮組織など)へ適用できる。被検体(患者)は、ヒトに限らず、非ヒト動物(例えば、サル、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどの非ヒト動物)であってもよい。
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって何等の制約をも受けるものでないことはいうまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも更には上記した発明の実施の形態における記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱し得ない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが理解されるべきである。
(人工コラーゲンを含む軟骨培養用足場の効果確認)
本発明の人工コラーゲンを含む軟骨(細胞)培養用足場の効果を確認した。詳細は、以下の通りである。
(人工コラーゲン)
本発明の人工コラーゲンは、株式会社PHGより販売されている人工コラーゲン{INCI名:Poly(Tripeptide-6)、CAS.No:60961-94-6:http://www.phg.co.jp/research/collagen.html}を使用した。
(軟骨細胞の作製)
New Zealand white rabbit(雄性、8-9週)5匹の肩関節、膝関節を摘出し、メスで軟骨層のみを削って採取した。滅菌PBS溶液で洗浄後、Dulbecco's Modified Eagle's medium (DMEM)25ml + gentamycin (25μg/ml)に0.4%(W/V)となるように pronaseを添加して、37℃で2時間インキュベーションした。その溶液に0.025% (W/V)となるようにcollagenaseを添加して37℃でovernightインキュベーションした。得られた溶液を洗浄して軟骨細胞を回収後、直径90 mmのシャーレに1〜2×106cells/dish の軟骨細胞を播き3日一度液替えをした。Confluent になった時点で一回のみ系代培養を行った。培養液の組成は以下の通りである。
(培養液の組成)
Dulbecco's Modified Eagle's medium nutrient mixture F-12 HAM(SIGMA)+10% FETAL BOVINE SERUM{FBS (Hyclone)}+20 μg/ml ascorbic acid(SIGMA)
なお、以下の実験では1回系代培養した軟骨細胞を用いて行った。
(コラーゲンでの軟骨細胞の培養)
人工コラーゲンスポンジ(10 mm x 5 mm x 7 mm)を24 wellの培養トレイの1 wellに1個ずつ貼り付けてethylene oxide gas滅菌を行った。
40μl中に5×105 cellsの細胞を含むように調整して人工コラーゲンスポンジ内に注射した。その状態で培養器に1時間放置した後に培養液を2ml追加した。
なお、培養したときの培養液の組成は以下の通りである。
(培養液の組成)
Dulbecco's Modified Eagle's medium nutrient mixture F-12 HAM(SIGMA)+20% FBS(Hyclone)+20 μg/ml ascorbic acid(SIGMA)
なお、3日に一度液替えを行った。
一方、コントロールとして、新田ゼラチン製ウシType2コラーゲン{2%(W/V)}を24 wellに2 mlずつ入れ凍結乾燥してethylene oxide gas滅菌を行った。
1ml中に5×105 cellsの細胞を含むように調整して播いた。
なお、培養したときの培養液の組成は以下の通りである。
(培養液の組成)
Dulbecco's Modified Eagle's medium nutrient mixture F-12 HAM(SIGMA)+20% FBS(Hyclone)+20 μg/ml ascorbic acid(SIGMA)
なお、3日に一度液替えを行った。
(トルイジンブルー染色標本の作成)
1週、2週、3週の期間で培養後にサンプルを回収してホルマリン固定して組織標本を作製してトルイジンブルー染色を行った。
(プロテオグリカン量、DNA量、aggrecan、type 2 collagen及びsox9の遺伝子発現量の測定)
1週、2週、3週の期間で培養後にサンプルを回収して-70℃で凍結保存し、dimethylmethlene blue(DMMB)法を用いたプロテオグリカン量の測定(詳細は下記段落に記載)、DNA assayによるDNA量の測定(詳細は下記段落に記載)を行った。
なお、採取したサンプルに60μg/mL papain digestion solution を400μL加え58℃でovernightインキュベーションした。
papain digestion solutionの組成
papain buffer 25mL+25mg/ml papain stock (60μl)+L-cysteine hydrochloride monohydrate(Wako) 21.95mg
papain buffer = 0.1M sodium acetate, 0.05M EDTA, pH 5.53 in D.W.
25mg/ml papain stock = papain(Wako) in papain buffer
さらに、aggrecan、type 2 collagen及びsox9の遺伝子発現量の測定(詳細は下記段落に記載)を行った。
(Proteoglycan量の測定方法)
上記Papain digestion したサンプルと2.12μg〜16.0μg の範囲で調整したproteoglycan standard(Bovine Nasal Septum)を75μL用いて2.88M GuHCLを 25μLずつ加えた後に16μg/mLのDMMB溶液を200μL加え遮光して30秒間振とうした。530nm、590nmにて吸光度を測定し、proteoglycan standardで作成した検量線からサンプルのproteoglycan量を定量した。
(DNA量の測定方法)
上記Papain digestion したサンプルと0.08μg〜40μgの範囲で調整したDNA standard( Calf thumus DNA)を100μL用いて1μg/mL Hoechst 33258 dye solutionを同量加えた。遮光して30秒振とうした後に蛍光(excitation 360, emission 460)を測定した。DNA standardで作成した検量線からサンプルのDNA量を定量した。
(aggrecan、type 2 collagen及びsox9の遺伝子発現量の測定方法)
人工コラーゲンスポンジとウシType 2 コラーゲンスポンジの1週、2週、3週のサンプルからRNAを抽出しcDNAを作製してaggrecan、type 2 collagen、sox9についてreal-time PCRを行った。
使用した機種はABI PRISM 7000 (Applied Biosystems)であり、使用した試薬はReal-time PCR Master Mix (TOYOBO)とPre-Developed TaqMan® Assay Reagents Eukaryotic 18S rRNA (Applied Biosystems)、TaqMan® Probe kit (Applied Biosystems)である。
使用したprimer配列と反応条件を以下に示す。
(使用したプライマー)
〈aggrecan〉
rabbit AGGR-F:5'-GATCTACCGCTGTGAGGTGATG-3'(配列番号4)
rabbit AGGR-R:5'-CCTTTCACCACGACCTCCAA-3'(配列番号5)
TaqMan® probe:5'-ACGGCCTTGAGGACAGCGAGGCTAC-3'(配列番号6)
〈type 2 collagen〉
rabbit COL2-F: 5'-CCCCCGCTCTCCAAGAGA-3'(配列番号7)
rabbit COL2-R: 5'-GCCAGGAAGACAATAAATAAATAGAACA-3'(配列番号8)
TaqMan probe: 5'-TGAACTGGGCAGACTGCAAAACAAAAGCT-3'(配列番号9)
〈sox9〉
rabbit SOX9-F: 5'-AGTACCCGCACCTGCACAA-3'(配列番号10)
rabbit SOX9-R: 5'-CGCTTCTCGCTCTCGTTCAG-3'(配列番号11)
TaqMan probe: 5'-AGCTCAGCAAGACCCTCGGGAAGC-3'(配列番号12)
<反応条件>
50℃-2min, 95℃-10min (95℃-15sec, 60℃-1min)×40 cycles
(トルイジンブルー染色標本の観察結果)
トルイジンブルー染色標本の観察結果を図1及び図2に示す。
図1により、人工コラーゲンスポンジ内では2〜3週にかけて急激な軟骨細胞の増殖が確認できた。
また、図2は、3週目の人工コラーゲンスポンジの拡大写真を示し、該写真より軟骨細胞が確認できた。
(Proteoglycan量の測定結果)
Proteoglycan量の測定結果を図3に示す。
図3により、人工コラーゲンスポンジ内で軟骨を培養したとき、Proteoglycan量は1週で39.7μg であったが、2週及び3週では90μg以上に増加していた。
一方、ウシtype 2 コラーゲン内で培養した場合には、2週、3週ではわずかしかProteoglycan量が増加しなかった。
(DNA量の測定結果)
DNA量の測定結果を図4に示す。
図4により、人工コラーゲンスポンジ内で軟骨培養すると1週で2.9μg、 2週で4.5μg、3週で7.2μg とDNA量は増加していた。
一方、ウシtype 2 コラーゲン内で培養した場合には、2週、3週を経過してもDNA量が増加しなかった。
(Proteoglycan/DNA比の測定結果)
Proteoglycan量とDNA量比を図5に示す。
図5により、人工コラーゲンスポンジ内で培養した時のproteoglycan/DNA比は13.3 μg/μgであった。すなわち、人工コラーゲンスポンジ内で培養した時のproteoglycan/DNA比は、ウシtype 2 コラーゲン内で培養したときのproteoglycan/DNA比14.7μg/μgとほぼ同等であった。
現在、軟骨移植にはウシtype2コラーゲンを足場として使用している。人工コラーゲンのproteoglycan/DNA比とウシtype2コラーゲンのproteoglycan/DNA比がほぼ同等であることから、人工コラーゲンスポンジも軟骨移植に使用できることがいえる。
(aggrecan、type 2 collagen及びsox9の遺伝子発現量の測定結果)
ウシType 2 collagen スポンジの1週目のreal-time PCRの値を1として相対的な数値評価で表したaggrecanの遺伝子発現量、type 2 collagenの遺伝子発現量及びsox9の遺伝子発現量をそれぞれ図6〜8に示す。
軟骨の細胞外マトリックスを構成するaggrecanとtype 2 collagenの遺伝子発現は、ウシType 2コラーゲンスポンジでは2週、3週で変化がなかったのに対して人工コラーゲンスポンジでは2週、3週で増加していた。
また、軟骨の分化に関係するsox9の遺伝子発現はウシType 2コラーゲンスポンジでは2週、3週で減少しているのに対して人工コラーゲンスポンジでは増加していた。
これにより、遺伝子発現に関する遺伝子量の測定結果からも人工コラーゲンスポンジが軟骨培養に適していることが明らかになった。
(実施例1の結果の総論)
上記実施例1の結果から以下のことが言える。
本発明の人工コラーゲンは、生体由来のコラーゲンとは異なり、抗原性がなく、ウイルスやプリオンの感染の危険性もない軟骨培養移植の足場として用いることができる。
本発明の人工コラーゲンは、生体由来ではないので、軟骨を増殖させる因子やプロテオグリカンを増殖させる因子の評価を行うための足場として使用できる。
本発明の人工コラーゲンは、RGDペプチドを含むことにより、軟骨細胞との接着能力を高め、軟骨細胞の増殖能力を高めることができると考えられる。また、本発明の人工コラーゲンは、細胞増殖促進剤を含むことにより、該促進剤の有効性を評価できる。
本発明の人工コラーゲンは、軟骨保護作用を持つヒアルロン酸と混合して、移植部に添加することで、軟骨再生を促進させることができると考えられる。
(人工コラーゲン水溶液の効果確認)
本発明の人工コラーゲンを含む水溶液の軟骨細胞に対する効果を確認した。詳細は、以下の通りである。
(人工コラーゲン)
本発明の人工コラーゲンは、株式会社PHGより販売されている人工コラーゲン{INCI名:Poly(Tripeptide-6)、CAS.No:60961-94-6:http://www.phg.co.jp/research/collagen.html}を使用した
(軟骨細胞の作製)
New Zealand white rabbit(雄性、8-9週)5匹の肩関節、膝関節を摘出し、メスで軟骨層のみを削って採取した。滅菌PBS溶液で洗浄後、DMEM 25ml + gentamycin (25μg/ml)に0.4%(W/V)となるように pronaseを添加して、37℃で2時間インキュベーションした。その溶液に0.025% (W/V)となるようにcollagenaseを添加して37℃でovernightインキュベーションした。
得られた溶液を洗浄して軟骨細胞を回収後、直径90 mmのシャーレに1〜2×106cells/dish の軟骨細胞を播き3日一度液替えをした。Confluent になった時点で一回のみ系代培養を行った。以下の実験は1回系代培養した細胞を用いて行った。
また、培養液の構成は以下の通りである。
(培養液の組成)
Dulbecco's Modified Eagle's medium nutrient mixture F-12 HAM(SIGMA)+20% FBS (Hyclone)+20 μg/ml ascorbic acid(SIGMA)を使用し、3日に一度液替えを行った。
(軟骨細胞のプロテオグリカン産生能の解析)
本発明の人工コラーゲンを含む水溶液を添加することによる軟骨細胞のプロテオグリカン産生能を測定した。詳細は、以下の通りである。
−1 軟骨細胞の播種
semi-confluentに達した軟骨細胞をtripsin-EDTA溶液処理によりdishから剥離し、培養液を加えて遠心洗浄した。その後、1.5×106 cells/wellにて6-well plateに播種し、37℃、5% CO2にて培養を行った。
−2 人工コラーゲン水溶液の添加
培養開始24時間後において、1%(W/V)人工コラーゲン水溶液を培養液で希釈して、0.10,0.20,0.30,0.40,0.50%(W/V)の人工コラーゲン水溶液にした。さらに、7日間作用させ、最後の24時間は更に10μCi/ml Na2 35SO4を添加して培養を行った。培養液は3日に1回交換した。
なお、コントロールとして0%(W/V)人工コラーゲン水溶液を使用した。
−3 回収・抽出
上記培養終了後、新しい培養液で洗浄し、protease inhibitors (0.1 M 6-aminohexanoic acid, 0.005 M benzamidine hydrochloride, 0.01 M Na2 EDTA , 0.01 M N-ethylmaleimide, 0.001M phenylmethyl sulfonyl fluoride)を加えたlysis buffer(4 M GuHCl, 0.05 M NaAC, pH 6.0)を各wellに入れ、4℃で4時間抽出を行い、4℃、15000rpmにて20分間遠心した。
−4 分離・放射活性測定
PD-10 pre-packed column(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いて、elution buffer {4M GuHCl , 0.05M Na acetate, 0.1M Na sulfate , 0.5% Triton X-10 (pH 7.5)}で溶出し、サンプルを分取した。各フラクションに、ethanolとシンチレーターを加えて混合し、液体シンチレーションカウンターで放射能含有量(cpm)を測定した。また、この際用いたサンプルのDNA量をHoechst 33258 dyeにより測定し、cpm/mg DNA値を求めた。
(軟骨細胞のtype2コラーゲンとアグリカンのmRNA量の測定)
本発明の人工コラーゲンを含む水溶液を添加することによる軟骨細胞のtype2コラーゲンmRNA量とアグリカンのmRNA量を測定した。詳細は、以下の通りである。
−1 軟骨細胞の播種
semi-confluentに達した軟骨細胞をtripsin-EDTA溶液処理によりdishから剥離し、培養液を加えて遠心洗浄した。その後3×105 cells/wellにて12-wellplateに播種し、37℃、5% CO2にて培養を開始した。
−2 人工コラーゲン水溶液の添加
培養開始24時間後において、1%(W/V)人工コラーゲン水溶液を培養液で希釈して、0.10,0.20,0.30,0.40,0.50%(W/V)の人工コラーゲン水溶液にした。そして、4、7、14、21日間培養した。
なお、コントロールとして0%(W/V)人工コラーゲン水溶液を使用した。
−3 軟骨細胞の回収・RNA抽出
上記培養終了後、軟骨細胞を回収し、RNA抽出はRNeasy(登録商標) Mini Kit (QIAGEN) を用いて行った。逆転写反応はQuantiTect(登録商標) Reverse Transcription Kit (QIAGEN) を用いて行った。より詳しくは以下の方法でReal-time PCRを行った。
<Real-time PCR>
Real-time PCRに使用した機種はABI PRISM 7000 (Applied Biosystems)であり、使用した試薬はReal-time PCR Master Mix (TOYOBO)とPre-Developed TaqMan® Assay Reagents Eukaryotic 18S rRNA (Applied Biosystems)、TaqMan® Probe kit (Applied Biosystems)であった。
加えて、使用したprimer配列と反応条件を以下に示す。
〈aggrecan〉
rabbit AGGR-F:5'-GATCTACCGCTGTGAGGTGATG-3'(配列番号4)
rabbit AGGR-R:5'-CCTTTCACCACGACCTCCAA-3'(配列番号5)
TaqMan® probe:5'-ACGGCCTTGAGGACAGCGAGGCTAC-3'(配列番号6)
〈type 2 collagen〉
rabbit COL2-F: 5'-CCCCCGCTCTCCAAGAGA-3'(配列番号7)
rabbit COL2-R: 5'-GCCAGGAAGACAATAAATAAATAGAACA-3'(配列番号8)
TaqMan probe: 5'-TGAACTGGGCAGACTGCAAAACAAAAGCT-3'(配列番号9)
<反応条件>
50℃-2min, 95℃-10min,(95℃-15sec, 60℃-1min)×40 cycles
(軟骨細胞のプロテオグリカン産生能の解析結果)
人工コラーゲン水溶液の添加による軟骨細胞のプロテオグリカン産生能の解析結果を図9に示す。
図9に示すように、0.10%(W/V)、0.20%(W/V)、0.30%(W/V)、0.40%(W/V)、0.50%(W/V)の人工コラーゲン水溶液の添加によりプロテオグリカンの産生は有意に亢進した。
(軟骨細胞のtype2コラーゲンmRNA量とアグリカンのmRNA量の測定結果)
人工コラーゲン水溶液の添加による軟骨細胞のtype2コラーゲンmRNA量とアグリカンmRNA量の測定結果をそれぞれ図10及び図11に示す。
図10に示すように、4日の時点では、0.10%(W/V)の人工コラーゲン水溶液を添加した群のtype2コラーゲンmRNAの発現は有意に亢進していた。また、7日及び21日の時点では、0.40%(W/V)及び0.50%(W/V)の人工コラーゲン水溶液を添加した群のmRNAの発現は低下していた。
図11に示すように、4日及び7日の時点では、各濃度の人工コラーゲン水溶液を添加した群のアグリカンmRNA量に有意な変化はなかった。21日の時点では、0.20%(W/V)、0.30%(W/V)、0.40%(W/V)及び0.50%(W/V)濃度の人工コラーゲン水溶液を添加した群のアグリカンmRNAは有意に低下していた。
なお、各時点の0%のRNA量を1とした相対評価である。
(実施例2の結果の総論)
上記実施例2の結果から以下のことが言える。
本発明の人工コラーゲン水溶液を軟骨細胞に添加することにより、軟骨細胞のDNA合成能(増殖能)及びアグリカンmRNA合成能を損なうことなく、軟骨細胞のプロテオグリカン産生能とtype2コラーゲン合成能を高めることができる。
本発明の人工コラーゲン水溶液は、生体由来のコラーゲンとは異なり、抗原性がなく、ウイルスやプリオンの感染の危険性もないことから、軟骨細胞移植の培養に用いることができる。さらに、本発明の人工コラーゲン水溶液は、ヒトの関節内へ直接投与を行うことで軟骨修復に使用することができる。さらに、本発明の人工コラーゲン水溶液は、該軟骨修復の促進効果も有する。
本発明の人工コラーゲン水溶液は、RGDペプチドを含むことにより、軟骨細胞との接着能力を高め、更に軟骨細胞のプロテオグリカンの産生能とtype2コラーゲン合成能を高めることができると考えられる。
(本発明の軟骨培養用基材を関節内投与による軟骨再生効果の確認)
本発明の人工コラーゲン水溶液を含む軟骨培養用基材を関節内投与することにより軟骨欠損部位が再生(修復)するかを確認した。詳細は、以下の通りである。
(人工コラーゲン)
本発明の人工コラーゲンは、株式会社PHGより販売されている人工コラーゲン{INCI名:Poly(Tripeptide-6)、CAS.No:60961-94-6:http://www.phg.co.jp/research/collagen.html}を使用した。
(軟骨欠損モデルの作製)
麻酔後の22週齡のニュージーランド白色家兎 (3.4-3.8kg) 9羽18膝の大腿骨膝蓋関節面にφ5mmの軟骨欠損を作製し、さらに創傷を閉じて軟骨欠損モデルを作製した(0週目)。
(軟骨欠損モデルでの人工コラーゲン水溶液の関節内投与)
前記18膝を3群に分け、1週、3週、5週目にコントロール群では生食投与し、人工コラーゲン水溶液投与群では関節内注射(0.1ml/kg)し、その後7週目に膝関節を回収した。
詳細は、以下及び表3の通りである。
control群 (N=6): 生理食塩水
0.1%(W/V)群 (N=6): 0.1%(W/V)人工コラーゲン水溶液
0.5%(W/V)群 (N=6): 0.5%(W/V)人工コラーゲン水溶液
(modified ICRS scoreによる評価方法)
以下の表4のICRS scoreは軟骨欠損に対して軟骨移植をしたときに一般的に用いられている評価方法である。本発明者は、軟骨を移植せずに薬剤を投与する場合の評価方法としてDegree of defect repairとMacroscopic appearanceの2項目を使用して合計が0〜8点の評価方法をModified ICRS scoreと定めて、本実施例3の評価方法を下記表5に示した。
(肉眼的評価)
上記回収した各群の膝関節の画像及びmodified ICRS(International Cartilage Repair Society)scoreによる結果を図12に示す。
肉眼的観察では、control群では表面に裂溝を多数認めたが、0.1%(W/V)人工コラーゲン投与群は平滑で周囲軟骨と色調が同様なものが多い傾向であった。0.5%(W/V)人工コラーゲン投与群はまばらな裂溝が多くみられた。また、0.1%(W/V)人工コラーゲン投与群は、control群との比較では、有意差があり軟骨が修復されていることを確認できた。
図12のmodified ICRSの結果から明らかなように、本発明の軟骨培養用基材である人工コラーゲン水溶液を関節内に投与することによる軟骨再生ができた。なお、Modified ICRS scoreの結果は、control群6膝のscoreの平均、0.1%(W/V)群6膝の平均、0.5%(W/V)群6膝の平均を示す。さらに、使用した統計はMann-WhitneyのU検定である。
(サフラニン-O染色評価)
上記回収した各群の膝関節をサフラニン-O染色した画像及びサフラニン-O 染色面積率の結果を図13に示す。
0.1%(W/V)人工コラーゲン投与群及び0.5%(W/V)人工コラーゲン投与群の染色面積は、コントロール群の染色面積と比較して、大きかった。特に、プロテオグリカンが多く存在していた。さらに、0.1%(W/V)人工コラーゲン投与群及び0.5%(W/V)人工コラーゲン投与群の染色面積率は、コントロール群の染色面積率と比較して、大きかった。
なお、サフラニン-Oで染色された箇所は、新たに形成した組織であり、軟骨であることを示唆している。
(type2コラーゲン染色評価)
上記回収した各群の膝関節をtype2コラーゲン抗体免疫染色した画像及びtype2コラーゲン抗体免疫染色面積率の結果を図14に示す。
0.1%(W/V)人工コラーゲン投与群及び0.5%(W/V)人工コラーゲン投与群の染色面積は、コントロール群の染色面積と比較して、大きかった。さらに、0.1%(W/V)人工コラーゲン投与群及び0.5%(W/V)人工コラーゲン投与群の染色面積率は、コントロール群の染色面積率と比較して、大きかった。
なお、type2コラーゲンは、軟骨乾燥重量の約50%(V/V)を占める主要構成成分であることから、染色された箇所では軟骨が再生されていると考えられる。
(実施例3の結果の総論)
本発明の軟骨培養用基材を患者の軟骨欠損部位の周辺に関節内投与することにより軟骨を再生することができる。
(本発明の人工コラーゲン水溶液の軟骨細胞への作用の確認)
本発明の人工コラーゲン水溶液が軟骨細胞に直接作用するどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
(人工コラーゲン)
本発明の人工コラーゲンは、株式会社PHGより販売されている人工コラーゲン{INCI名:Poly(Tripeptide-6)、CAS.No:60961-94-6:http://www.phg.co.jp/research/collagen.html}を使用した。
(使用した軟骨片)
変形性膝関節症で人工膝関節手術を受けた患者から摘出した軟骨片の一部(約5x5x5mm)を軟骨片として使用した。
(軟骨片の器官培養)
Fluoresceinisothiocyanate isomer-I(FITC)標識した人工コラーゲンを0.5%(W/V)濃度になるように、10%FBS添加DMEM溶液に添加して培養液を作製した。前記軟骨片をこの培養液に浸して37℃、72時間の条件で器官培養した(参照:下記表6)。さらに、該器官培養後の軟骨片をサフラニン-0染色した。
(器官培養の結果)
上記器官培養した後の軟骨片を蛍光顕微鏡で観察した(参照:図15)。該軟骨片では軟骨細胞の周りにFITC標識が集まっており、人工コラーゲンが軟骨細胞に直接作用することを確認した。
本発明の軟骨培養用基材は、安全性が高く、そして軟骨細胞の増殖促進効果を有するので、非常に有用である。さらに、本発明の軟骨培養用基材を軟骨欠損部位の周辺に関節内投与することにより軟骨を再生することができる。

Claims (21)

  1. 人工コラーゲンを含む軟骨培養用基材。
  2. 前記人工コラーゲンを含む軟骨培養用基材であって、該人工コラーゲンが濃度0.001〜6.00%(W/V)の溶液である請求項1に記載の軟骨培養用基材。
  3. 前記人工コラーゲンが、濃度0.001〜6.00%(W/V)の水溶液である請求項2に記載の軟骨培養用基材。
  4. 前記人工コラーゲンが、以下(1)〜(3)で表されるペプチドユニットで構成されているポリペプチドである請求項1〜3のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
    (1)[-(OC-(CH2)m-CO)p-(Pro-Y-Gly)n-]a
    (2)[-(OC-(CH2)m-CO)q-(Z)r-]b
    (3)[-HN-R-NH-]c
    (式中、mは1〜18の整数、p及びqは同一又は異なって0又は1、YはProまたはHypを表し、nは1〜20の整数を表す。Zは1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖を表し、rは1〜20の整数を表し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。aとbの割合はa/b=100/0〜30/70(モル比)であり、p=1及びq=0であるときc=a、p=0及びq=1であるときc=bであり、p=1及びq=1であるときc=a+bであり、p=0及びq=0であるときc=0である。)
  5. mが2〜12の整数、nが2〜15の整数、Zが、Gly, Sar, Ser, Glu, Asp, Lys, His, Ala,Val、Leu、Arg、Pro、Tyr、Ileから選択された少なくとも一種のアミノ酸残基又はペプチド残基で構成されているペプチド鎖、rが1〜10の整数、RがC2-12アルキレン基である請求項4に記載の軟骨培養用基材。
  6. さらにヒアルロン酸ナトリウムを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
  7. さらにRGDペプチドを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
  8. 前記軟骨培養用基材が軟骨細胞の足場材料である請求項1〜7のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
  9. 前記軟骨培養用基材が軟骨細胞の分化・増殖材である請求項1〜7のいずれか1項に記載の軟骨培養用基材。
  10. ヒアルロン酸ナトリウム及び人工コラーゲンを含む関節機能改善剤。
  11. 前記人工コラーゲンが、濃度0.001〜6.00%(W/V)の水溶液である請求項10に記載の関節機能改善剤。
  12. 前記人工コラーゲンが、以下(1)〜(3)で表されるペプチドユニットで構成されているポリペプチドである請求項10又は11に記載の関節機能改善剤。
    (1)[-(OC-(CH2)m-CO)p-(Pro-Y-Gly)n-]a
    (2)[-(OC-(CH2)m-CO)q-(Z)r-]b
    (3)[-HN-R-NH-]c
    (式中、mは1〜18の整数、p及びqは同一又は異なって0又は1、YはProまたはHypを表し、nは1〜20の整数を表す。Zは1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖を表し、rは1〜20の整数を表し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。aとbの割合はa/b=100/0〜30/70(モル比)であり、p=1及びq=0であるときc=a、p=0及びq=1であるときc=bであり、p=1及びq=1であるときc=a+bであり、p=0及びq=0であるときc=0である。)
  13. mが2〜12の整数、nが2〜15の整数、Zが、Gly, Sar, Ser, Glu, Asp, Lys, His, Ala,Val、Leu、Arg、Pro、Tyr、Ileから選択された少なくとも一種のアミノ酸残基又はペプチド残基で構成されているペプチド鎖、rが1〜10の整数、RがC2-12アルキレン基である請求項12に記載の関節機能改善剤。
  14. 軟骨再生治療のために患者の軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材の使用。
  15. 軟骨再生促進治療のために軟骨移植後患者の該軟骨移植部位の周辺に関節内注入することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材の使用。
  16. 関節機能保護治療のために関節障害の患者の軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材の使用。
  17. 前記関節障害が、以下から選ばれる請求項16に記載の軟骨培養用基材の使用。
    (1)変形性関節症による関節障害
    (2)外傷による関節障害
    (3) スポーツによる関節障害
    (4) 関節リウマチによる関節障害
    (5)全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病による関節障害
  18. 請求項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材を患者の軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入することによる軟骨再生治療方法。
  19. 請求項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材を軟骨移植後患者の該軟骨移植部位の周辺に関節内注入することによる軟骨再生促進治療法。
  20. 請求項1〜9のいずれか1に記載の軟骨培養用基材を関節障害の患者の軟骨欠損部位又は軟骨障害部位の周辺に関節内注入することによる関節機能保護治療法。
  21. 前記関節障害が、以下から選ばれる請求項20に記載の関節機能保護治療法。
    (1) 変形性関節症による関節障害
    (2) 外傷による関節障害
    (3) スポーツによる関節障害
    (4) 関節リウマチによる関節障害
    (5)SLEなどの膠原病による関節障害
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