本発明は広角撮影が可能な光学系に関し、特に、単一視点(single viewpoint)を有する光学系に関する。
近年、常時装着型のデバイスによる「ウェアラブル・コンピューティング」という考え方が提唱されている。中でも常時装着・常時撮影を前提としたカメラ(以下「ウェアラブルカメラ」と表記)は、装着者の体験をあるがままに記録することができ、様々な応用が考えられる。
このようなウェアラブルカメラに必要な特性の一つとして、人間の視野に匹敵する広い画角がある。このような広い画角を得るための光学系として、従来、魚眼レンズまたは凸面鏡を用いた光学系が用いられている。その中でも特に凸面鏡として放物面鏡または双曲面鏡を用いた光学系は単一視点を有する、すなわち反射光がある一点に収束する、という特性を有する。例えば特許文献1にはこのような単一視点を有する全方位視覚センサの構成が開示されている。特許文献1にて開示されている構成によると、図1に示すように二葉双曲面のうちの一方の双曲面201の焦点202に向かう光205は他方の双曲面203の焦点204に向かって反射される。したがって、二葉双曲面のうちの一方の双曲面201の形状を有する鏡を設け、他方の双曲面203の焦点204にレンズを配置することで光学系を構成することにより、単一視点を保つ像が得られる。なお、レンズが複数枚の組レンズである場合には、それらのレンズ群の前側主点(front principal point)の位置を他方の双曲面203の焦点204の位置に合わせることで同様の効果が得られる。
単一視点を有することの利点として、撮影された画像の射影特性が一般のカメラと等しい、という点がある。これによって撮影された画像に一般的な画像幾何に基づく画像処理が適用可能となる、あるいは撮影された画像を一般の透視投影画像(perspective projection image)に歪みなく変換することが可能となる、などの効果が得られる。
特許第2939087号公報
特開2007−264402号公報
一方で、ウェアラブルカメラの光学系においては小型であることも重要な特性の一つである。特許文献1に記載の光学系は凸面鏡として双曲面鏡を用いているが、その幾何学的特性上、鏡とレンズとの間の距離は双曲面の曲率に依存する。鏡とレンズとの間の距離を短くするためには双曲面の曲率を大きくする必要があるが、曲率が大きくなると被写界深度を深くとらないと画像がぼけてしまう。絞りを絞り込むことでぼけを低減することは可能であるが、その代償として画像が暗くなってしまう。
これに対し、小型化の実現方法として例えば複数回反射によって光路を折り曲げることで、鏡とレンズとの間の実質的な距離を短くする光学系があり、特許文献2においてそのような全方位光学系の構成が開示されている。
しかし、特許文献2に記載の構成では高さ方向には光路を折り曲げているが、鏡の半径方向での光路は変わらない。このため、小型化できるのは高さ方向だけである。半径方向にも光路を折り曲げるための新たな鏡を導入することにより、鏡の半径方向の大きさの改善は可能であるが、新たな鏡を導入するためには光学系の設計が困難になるだけではなく、鏡の枚数が増えるほどそれらを誤差なく配置するのは難しくなり、実用上問題となる。
また、一般的に人間の視野角は水平方向にはおよそ200度前後と言われる。このため、そのような水平視野を得るために凸面鏡を用いる場合、図2Aに示すように凸面鏡301を全周にわたって利用する代わりに、図2Bに示すようにその一部311のみを利用すれば十分である。しかし、レンズ群13の光軸(optical axis)16の向きが凸面鏡301の軸305の向きと同じである場合、図2Bに示すようにレンズ群13の画角内で凸面鏡が写らない無駄な撮像領域312が発生してしまう。これは特許文献2に記載の構成のように複数回反射を行う系においても同様に問題となる。
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は広角撮影が可能で単一視点を有し、かつ、撮影した画像に無駄な領域が生じない小型の光学系を提供することを目的とする。
本発明のある局面に係る光学系は、中央に開口部を有し、回転対称な放物凸面の一部の形状を有する主鏡と、前記主鏡によって反射する光をさらに反射する、回転対称な放物凹面の一部の形状を有する再反射鏡と、前記再反射鏡によって反射する光を結像させる少なくとも1枚のレンズと、前記少なくとも1枚のレンズを保持する鏡筒とを備え、前記少なくとも1枚のレンズの前側主点の位置が前記再反射鏡の焦点位置と一致し、前記少なくとも1枚のレンズの光軸が前記放物凸面および前記放物凹面の回転軸に対して傾いている。
この構成によれば、図3Aのようにレンズ群13(少なくとも1枚のレンズ)の光軸16が放物凸面および放物凹面の回転軸と一致していた場合にはレンズ群13の画角内で無駄な撮像領域312が存在するのが、レンズ群13の光軸16を傾けて配置することで図3Bのようにレンズ群13の画角いっぱいに再反射鏡12(に映る主鏡11の像)をとらえることができる(撮像することができる)。図3Cおよび図3Dはそれぞれ図3Aおよび図3Bで表される光学系によって得られる画像を模式的に示したものであるが、図3Cに比べて図3Dの方が明らかに再反射鏡12の像が写らない無駄な領域が少ない。なお、図3Dは模式図であり、実際の画像を上下方向に引き伸ばしたような図となっているが、実際には、半円に近い画像が得られる。また、半円中央部のハッチングを施した部分は、主鏡の開口部の画像である。
このように、主鏡11および再反射鏡12は、それぞれ回転対称な放物凸面および放物凹面の一部の形状を有する。このため、放物凸面および放物凹面の全部の形状を有する従来の光学系に比べて鏡の半径方向のサイズを小さくすることができる。よって、広角撮影が可能で単一視点を有し、かつ、撮影した画像に無駄な領域が生じない小型の光学系を提供することができる。
また、前記少なくとも1枚のレンズは、2枚以上のレンズを含むレンズ群であり、前記レンズ群によって、ズームレンズを構成するとしてもよい。
好ましくは、上述の光学系は、さらに、前記鏡筒を前記レンズ群の光軸方向に沿って前後に移動させるための構造を有する移動部を備え、前記移動部は、前記レンズ群のズーム倍率変更によって生じる前側主点の位置の変動を相殺し、前記レンズ群の前側主点の位置を前記再反射鏡の焦点位置に一致させる位置に前記鏡筒を移動させるための構造を有する。
この構成によれば、レンズのズームによって拡大像を得た際にも前側主点位置を固定することができ、単一視点を有する利点をズーム時にも得ることができる。
また、前記レンズ群は、ズーム倍率の変更によって前側主点が移動しない構成を有していてもよい。
この構成によっても、レンズのズームによって拡大像を得た際にも前側主点位置を固定することができ、単一視点を有する利点をズーム時にも得ることができる。
また、上述の光学系は、さらに、前記鏡筒を支持し、前記レンズ群の光軸の向きを二軸方向に回転させることのできるジンバル機構を備え、前記ジンバル機構の各方向の回転軸が前記再反射鏡の焦点位置を通るとしてもよい。
この構成によれば、レンズ群が首振り動作をする際の回転中心をレンズ群の前側主点の位置と一致させることができ、首振り動作によっても単一視点を保持し続けることができる。
本発明によると、広角撮影が可能で単一視点を有し、かつ、撮影した画像に無駄な領域が生じない小型の光学系を提供することができる。
図1は、双曲面鏡を用いた反射鏡が単一視点を保持することを示す図である。
図2Aは、従来の光学系における鏡の大きさを示す模式図である。
図2Bは、前方視野を確保するために必要な鏡の大きさを示す模式図である。
図3Aは、光軸を傾けない場合の有効撮像領域について示す図である。
図3Bは、光軸を傾けることで有効撮像領域が増えることを示す図である。
図3Cは、図3Aで表される光学系によって得られる画像を模式的に示す図である。
図3Dは、図3Bで表される光学系によって得られる画像を模式的に示す図である。
図4は、実施の形態1に係る光学系の構成を模式的に示す図である。
図5は、放物凸面鏡を用いた反射鏡が単一視点を保持することを示す図である。
図6は、放物凸面鏡と放物凹面鏡とを用いた反射鏡が単一視点を保持することを示す図である。
図7は、実施の形態1に係る光学系による光線の反射を示す図である。
図8は、実施の形態2に係る光学系の構成を模式的に示す図である。
図9Aは、保持部材の構成を模式的に示す図である。
図9Bは、保持部材の構成を模式的に示す図である。
図10は、実施の形態3に係る光学系の構成を模式的に示す図である。
図11は、図10に示す光学系を用いて駐車場を撮像した画像を示す図である。
図12Aは、ある副鏡の配置において撮像される画像を模式的に示す図である。
図12Bは、他の副鏡の配置において撮像される画像を模式的に示す図である。
図13は、無限遠からの光線が二つの放物面鏡に反射する際の投影点の位置関係を模式的に示す図である。
図14は、近接物体からの光線が二つの放物面鏡に反射する際の投影点の位置関係を模式的に示す図である。
図15は、ズーム倍率と鏡筒の移動量との関係を示すデータテーブルの一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る光学系について説明する。
図4は実施の形態1に係る光学系10の構成を模式的に示す図である。図4(a)、図4(b)および図4(c)は、光学系10の正面図、右側面図および上面図をそれぞれ示している。
光学系10は、主鏡11、再反射鏡12、レンズ群13、鏡筒(lens barrel)14、および台座15から構成される。レンズ群13の光軸16が再反射鏡12の回転軸17に対して傾くよう、鏡筒14は台座15に据え付けられる。なお、再反射鏡12の回転軸17と主鏡11の回転軸とは平行であるのが望ましい。ここでは、両回転軸が一致する場合を図示している。
主鏡11は空間からの光線を再反射鏡12に向かって反射する。主鏡11は中央に開口部を有し、回転対称な凸面の一部から構成される。回転対称な面として、例えば式(1)で規定されるような二次曲面がある。
cは曲面の曲率(curvature)、kは円錐定数(conic constant)、rは二次曲面の中心軸からの距離である。例えば円錐定数kをk=−1とすると放物面が、k<−1とすると双曲面が得られる。上述した主鏡11の回転軸とは、上記回転対称な凸面の回転軸のことである。
再反射鏡12は主鏡11からの反射光をレンズ群13に向かって反射する。主鏡11と同様に回転対称な凹面の一部から構成される。この回転対称な凹面も、上記式(1)で規定される。上述した再反射鏡12の回転軸とは、上記回転対称な凹面の回転軸のことである。
レンズ群13はプラスチックまたはガラスによって構成され、再反射鏡12から反射される光線を集光する。なお、図4においては見易さのためにレンズ群13を1つのレンズとして図示しているが、本発明の実施の形態としてレンズ枚数は1枚に制限されるものではなく、2枚以上であっても良い。
鏡筒14はレンズ群13を構成する各レンズの位置関係をある特定の条件に保ったまま保持する。
台座15は主鏡11、再反射鏡12、および鏡筒14の位置関係をある特定の条件に保ったまま保持する。
ここで、再反射鏡12によって反射される光がその焦点位置で一点に収束するための条件について説明する。
一般に、二次曲面による反射鏡で単一視点を実現するためには、双曲面鏡を用いる方法と放物面鏡を用いる方法とがある。このうち双曲面鏡を用いる方法は特許文献1にて開示されている。
もう一方の放物面鏡を用いる方法では、図5に示すように、放物凸面鏡501の焦点502に向かって進む光線503Aが放物凸面鏡501によって反射されることで、放物面の回転軸504に対して平行な光線503B(以下「平行光」と表記)となる、という性質を利用する。このような平行光503Bを結像させるためのレンズとしてテレセントリックレンズ(特に物体側テレセントリックレンズ)505を用いることで、平行光を集光することができる。
しかし、テレセントリックレンズ505は一般に開口の小さい“暗い”レンズであることが多く、レンズ全体が大型になりやすいため、光学系全体の小型化には不向きであるという欠点がある。
これに対して、テレセントリックレンズ505を用いない結像の方法として、図6に示すように、放物凸面鏡601と放物凹面鏡602とを組み合わせる方法がある。放物凹面鏡602は平行光603Bを放物凹面鏡602の焦点605で一点に収束させる性質がある。放物凹面鏡602による反射光603Cはもはや平行光ではないので、テレセントリックレンズ505ではない通常のレンズで集光することができる。つまり、放物凸面鏡601の焦点604に向かう光線603Aは放物凸面鏡601に反射して平行光603Bとなり、今度は放物凹面鏡602の焦点605に向かって反射される。放物凹面鏡602の焦点605に通常のレンズを配置することで、放物凹面鏡602による反射光603Cを集光することができる。レンズが複数枚のレンズ群の場合には、レンズ群の前側主点を放物凹面鏡602の焦点605の位置に一致するようにレンズ群を配置することで、単レンズの時と同様に扱うことができる。このように、放物凸面鏡601で反射され、放物凹面鏡602に向かう光は平行光603Bとなるため、放物凸面鏡601と放物凹面鏡602との間の距離を変更することができる。
これらの性質を元に、実施の形態1に係る光学系による光線の反射の様子を示したのが図7である。ただし、ここでは主鏡11を構成する曲面は放物凸面の一部とし、再反射鏡12を構成する曲面は放物凹面の一部とする。主鏡11の焦点71に向かう光線72Aが主鏡11によって反射されて平行光72Bとなり、再反射鏡12に入射する。さらに平行光72Bは再反射鏡12によってその焦点に向かって反射され、レンズ群13によって集光される。なお、主鏡11の焦点71とレンズ群13の前側主点とが一致するような位置にレンズ群13が配置されている。
なお、この光学系によると、図3Dに示したような主鏡11の像をとらえることができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態1によると、図3Aのようにレンズ群13の光軸16が主鏡11および再反射鏡12の回転軸と一致していた場合にはレンズ群13の画角内で無駄な撮像領域312が存在するのが、レンズ群13の光軸16を傾けて配置することで図3Bのようにレンズ群13の画角いっぱいに再反射鏡12(に映る主鏡11の像)をとらえることができる。図3Cおよび図3Dはそれぞれ図3Aおよび図3Bで表される光学系によって得られる画像を模式的に示したものであるが、図3Cに比べて図3Dの方が明らかに再反射鏡12の像が写らない無駄な領域が少ない。なお、図3Dは模式図であり、実際の画像を上下方向に引き伸ばしたような図となっているが、実際には、半円に近い画像が得られる。また、半円中央部のハッチングを施した部分は、主鏡11の開口部の画像である。
また、主鏡11および再反射鏡12は、それぞれ回転対称な放物凸面および放物凹面の一部の形状を有する。このため、放物凸面および放物凹面の全部の形状を有する従来の光学系に比べて鏡の半径方向のサイズを小さくすることができる。よって、広角撮影が可能で単一視点を有し、かつ小型の光学系を提供することができる。
加えて、図3Aに示す従来の光学系と図3Bに示す本実施の形態の光学系とを比較すれば分かるように、レンズ群13の光軸16を傾けることで、再反射鏡12全体を写すために必要なレンズ群13の画角が小さくて済む。一般的にレンズの画角が大きくなる、即ち焦点距離が短くなるほど、周辺光量の低下などの影響が大きくなるため、画角が小さい分だけその影響を低減することができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る光学系は、レンズのズームおよび首振り動作に対しても単一視点を保持できる機構を有する。
以下、本発明の実施の形態2に係る光学系について説明する。
図8は実施の形態2に係る光学系100の構成を模式的に示す図である。図8(a)、図8(b)および図8(c)は、光学系100の正面図、右側面図および上面図をそれぞれ示している。
光学系100は、実施の形態1に係る光学系10に、さらに、保持部材20および制御部30を追加した構成を有する。保持部材20および制御部30以外の構成の機能は実施の形態1に係る光学系10と同様であるため、以下では光学系10と相違のある部分のみ説明する。
保持部材20は鏡筒14の位置および姿勢を変更可能な状態で台座15に据え付ける機能を有する。保持部材20は移動部21および2軸ジンバル22により構成される。
図9Aおよび図9Bは保持部材20の構成を模式的に示す図であり、図9Aはレンズ群13の光軸に沿った方向の保持部材20の断面図であり、図9Bは保持部材20を光軸方向から見た図である。
移動部21は鏡筒14をレンズ群13の光軸方向に沿って前後に移動させる機能を有する。具体的な構造としては例えば鏡筒14の外側に外筒とカムとを備え、鏡筒14をレンズ群13の光軸まわりに回転させることで、鏡筒14を前後に移動させる構造などを用いることができる。また、鏡筒14にまたは外筒の一方の溝を設け、他方にその溝に嵌合する突起部を設けることにより、鏡筒14を光軸方向に沿って前後に移動させるようにしても良い。
2軸ジンバル22は鏡筒14を特定の点を中心に回動可能に保持する機能を有する。2軸ジンバル22の回転中心は再反射鏡12の焦点位置に一致するように取り付けられている。つまり、2軸ジンバル22の各方向の回転軸は、再反射鏡12の焦点位置に一致し、鏡筒14がレンズ群13の光軸方向に沿って前後に移動することにより、2軸ジンバル22の各方向の回転軸が、再反射鏡12の焦点位置を通る。
制御部30は、CPU、RAM、制御プログラムを格納したROM、およびボタンなどの入力手段などによって構成される。制御部30は、光学系100の使用者の操作に従ってレンズ群13を構成する各レンズの位置関係を変化させてズームを行う。それとともに、制御部30は、鏡筒14を移動させる量を決定し、移動部21に鏡筒14を移動させる。つまり、制御部30は、レンズ群13の前側主点が常に再反射鏡12の焦点と一致するように鏡筒14を移動させる。
なお、鏡筒14の移動量は予め定められており、以下のようにして算出される。つまり、ズーム倍率の変化によるレンズ群13の前側主点位置の移動量をあらかじめ計測され、計測された前側主点位置の移動量を相殺しレンズ群13の前側主点の位置を再反射鏡12の焦点位置に一致させるためのレンズ群13の移動量が、鏡筒14の移動量として算出される。なお、移動部21のカムの溝の切り方を調節することにより、ズーム倍率と鏡筒14の移動量とを連動させることができる。
なお、図8における制御部30の位置はあくまで一例であり、実際には任意の位置に取り付け可能である。
以上説明したように、本発明の実施の形態2によると、実施の形態1に記載の効果に加えて、レンズのズームによって拡大像を得た際にも前側主点位置を固定することができ、単一視点を有する利点をズーム時にも得ることができる。
また、レンズ群13が首振り動作をする際の回転中心をレンズ群13の前側主点の位置と一致させることができ、首振り動作によっても単一視点を保持し続けることができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る光学系は、主鏡のほかに複数の副鏡を設け、主鏡と副鏡のそれぞれの反射像から距離情報を取得することがための機構を有する。
以下、本発明の実施の形態3に係る光学系について説明する。
図10は実施の形態3に係る光学系200の構成を模式的に示す図である。図10(a)、図10(b)および図10(c)は、光学系200の正面図、右側面図および上面図をそれぞれ示している。
光学系200は実施の形態1に係る光学系10に副鏡50を追加した構成である。副鏡50以外の構成の機能は実施の形態1に係る光学系10と同様であるため、以下では光学系10と相違のある部分のみ説明する。
副鏡50は空間からの光線を再反射鏡12に向かって反射する。副鏡50は式(1)で規定されるような二次曲面などの回転対称な凸面から構成される。副鏡50は1つ以上備えられ、図10においては2つの副鏡50が配置されているが、その数は本実施の形態に制限されるものではない。なお、副鏡50の回転軸は、主鏡11の回転軸と一致させるのが望ましい。
図11は、一例として、光学系200を用いて駐車場を撮影した画像を示す。図11に示すように、主鏡11および副鏡50の投影像にそれぞれ自動車、付近の建物および空が映っている。
なお、副鏡50を設置する際には最終的な投影像において無駄な領域が生じないように副鏡50を配置することが望ましい。例えば図12Aは縦横比が4:3の画像上に2つの副鏡が映るように2つの副鏡を配置したときに撮影された画像を示している。この画像には主鏡11の像11Aと副鏡50の像50Aが含まれる。副鏡50の画像中での半径をαとしたとき、画像幅が4αとなる場合が副鏡50同士が重ならない最大の大きさであることが分かる。また、180°の水平画角を得る場合を考えると、主鏡11の画像中での半径は2αで、その中心は画像の下いっぱいに位置する場合に最も無駄な領域が少ない。この時の副鏡50の中心A、Bと主鏡11の中心Oがなす角をθとすると、θは以下の式(2)で求められる。
また、この角度θは図12Bのように横長の画像においてはより大きくなり、逆に縦長の画像ではより小さくなる。この画像には主鏡11の像11Aと副鏡50の像50Aが含まれる。例えば図12Bに示すように縦横比が2:1の画像において無駄な領域が生じないように副鏡50を配置するとθ=90°となる。撮像系としてCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)のような固体撮像素子を用いる場合、画像の縦横比として4:3、3:2および16:9などが一般的であるが、これらの縦横比を用いる場合は30°≦θ≦90°であれば画像の無駄な領域が少ない。
ここで、複数の鏡の反射像から距離情報を取得する方法について説明する。ここでは各鏡は放物面鏡である。
図13に示すように2つの放物面鏡MAおよびMBが空間中に存在する場合を考える。放物面鏡MAおよびMBの曲率をそれぞれCAおよびCBとする。また、放物面鏡MAおよびMBの頂点が画像平面上に投影されたときの投影点の位置ベクトルをそれぞれOAおよびOBとする。
ここで、無限遠からの光線1201が放物面鏡MAおよびMBに入射する場合を考える。無限遠からの光線1201は平行光とみなせるので、これらの放物面鏡MAおよびMBをテレセントリックレンズで撮影する場合、画像上には放物面鏡MAおよびMBの焦点に向かう光線が反射によって画像平面上の点PAおよびPBにそれぞれ投影される。このとき、点PAおよびPBの画素値は等しく、また両者の位置関係には以下の式(3)が成り立つ。
次に、図14のように、近接した地点に物体1301があるとする。また、この物体1301の位置が、その像が無限遠からの光線1302が投影される点である点PAに投影される位置にあるとする。このとき、放物面鏡MBによってできるこの物体1301の像は、物体1301から放物面鏡MBの焦点に向かって進む光線1303が放物面鏡MBによって反射され、点PB’に投影された像である。したがって、点PAおよび点PBの画素値が同一でなくなり、点PAおよび点PBに投影された像は無限遠からの光線によるものでないこと、即ち物体1301が光学系に近接していることが分かる。この方法ではある距離を境として物体1301がそれより近いか否か、という距離情報を得ることができる。また境となる距離はPBとPB’の画像上での距離がちょうど1画素となる距離として定義される。
なお、ここでは放物面鏡を用いる場合について説明したが、その他の形状の鏡であっても、無限遠からの光線が投影される位置関係を事前に把握できれば同様にして物体1301が近接しているか否かの検知が可能である。
以上説明した放物面鏡MAおよびMBとして、主鏡11および1つの副鏡50、または2つの副鏡50を用いることができる。
また、鏡が3つ以上ある場合は、鏡の組み合わせのうち視野が共通しているすべての組について上記の対応を判断し、その結果の多数決を取るなどの方法によってより安定に距離情報を求めることができる。例えば、光学系200の主鏡11および2つの副鏡50の3つの鏡を用いることにより、安定に距離情報を求めることができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態3によると、実施の形態1に記載の効果に加えて、主鏡11と副鏡50の反射像から距離情報を求めることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の内容に限定されず、本発明の目的およびそれに付随する目的を達成するための各種形態においても実施可能であり、例えば以下であってもよい。
例えば、実施の形態1〜3において、鏡の形状を表す式として式(1)で表される二次曲面を挙げているが、以下の式(4)に挙げるようないわゆる非球面形状を用いてもよい。
なお、α、β、γ、δ、・・・はそれぞれ非球面係数である。
また、実施の形態2において、移動部21を用いる代わりに、レンズ群13の構成をズームによって前側主点の位置が変化しない構成としてもよい。このような構成のレンズ群を用いることでもレンズ群13の前側主点の位置を固定する、という効果を得ることができる。特許文献3には、ズームレンズにおいて前側主点位置を一定に保ったままフォーカスを変化させる技術が開示されている。この技術を用いることにより、ズームによって前側主点の位置を変化させない構成を作り出すことができる。
特公昭61−10047号公報
また、実施の形態2において、移動部21としてカムを用いる代わりに、鏡筒14の外側に外筒を備え、鏡筒14を前後にスライド可能な状態で保持する構成とし、ズーム倍率に対応してスライドさせる量をあらかじめ制御部30のROMに記録しておき、ズーム倍率を変更する際にそれを参照することで移動量を決定する構成としてもよい。図15は、制御部30のROMに記憶されるデータテーブルの一例を示す図である。このデータテーブルは、ズーム倍率と鏡筒14の移動量とを対応付けて記憶しており、例えば、ズーム倍率が1.2倍の場合には鏡筒14の移動量が2mmであることが示されている。
また、実施の形態3において、主鏡11と副鏡50とは別々に構成されているが、これらをあらかじめ一体として成型することにより構成してもよい。一体にすることで副鏡50の取り付けの際に生じる位置ずれがなくなり、取得する距離情報の誤差を低減することができる。
また、実施の形態1〜3はすべて光学系のみの構成を示しているが、これら実施の形態に記載されている光学系を搭載した撮像装置としても実施可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、サイズを抑えつつ広い視野を得ることができると同時に、ズームや首振り動作によっても単一視点の特性を保持した画像を得ることができる光学系として有用であり、広い視野を撮影する機器全般に適用可能である。特に機器全体のサイズを小さく保ちたい用途に好適である。
10、100、200 光学系
11 主鏡
12 再反射鏡
13 レンズ群
14 鏡筒
15 台座
16 レンズ群の光軸
17 再反射鏡の回転軸
20 保持部材
21 移動部
22 2軸ジンバル
30 制御部
50 副鏡
本発明は広角撮影が可能な光学系に関し、特に、単一視点(single viewpoint)を有する光学系に関する。
近年、常時装着型のデバイスによる「ウェアラブル・コンピューティング」という考え方が提唱されている。中でも常時装着・常時撮影を前提としたカメラ(以下「ウェアラブルカメラ」と表記)は、装着者の体験をあるがままに記録することができ、様々な応用が考えられる。
このようなウェアラブルカメラに必要な特性の一つとして、人間の視野に匹敵する広い画角がある。このような広い画角を得るための光学系として、従来、魚眼レンズまたは凸面鏡を用いた光学系が用いられている。その中でも特に凸面鏡として放物面鏡または双曲面鏡を用いた光学系は単一視点を有する、すなわち反射光がある一点に収束する、という特性を有する。例えば特許文献1にはこのような単一視点を有する全方位視覚センサの構成が開示されている。特許文献1にて開示されている構成によると、図1に示すように二葉双曲面のうちの一方の双曲面201の焦点202に向かう光205は他方の双曲面203の焦点204に向かって反射される。したがって、二葉双曲面のうちの一方の双曲面201の形状を有する鏡を設け、他方の双曲面203の焦点204にレンズを配置することで光学系を構成することにより、単一視点を保つ像が得られる。なお、レンズが複数枚の組レンズである場合には、それらのレンズ群の前側主点(front principal point)の位置を他方の双曲面203の焦点204の位置に合わせることで同様の効果が得られる。
単一視点を有することの利点として、撮影された画像の射影特性が一般のカメラと等しい、という点がある。これによって撮影された画像に一般的な画像幾何に基づく画像処理が適用可能となる、あるいは撮影された画像を一般の透視投影画像(perspective projection image)に歪みなく変換することが可能となる、などの効果が得られる。
特許第2939087号公報
特開2007−264402号公報
一方で、ウェアラブルカメラの光学系においては小型であることも重要な特性の一つである。特許文献1に記載の光学系は凸面鏡として双曲面鏡を用いているが、その幾何学的特性上、鏡とレンズとの間の距離は双曲面の曲率に依存する。鏡とレンズとの間の距離を短くするためには双曲面の曲率を大きくする必要があるが、曲率が大きくなると被写界深度を深くとらないと画像がぼけてしまう。絞りを絞り込むことでぼけを低減することは可能であるが、その代償として画像が暗くなってしまう。
これに対し、小型化の実現方法として例えば複数回反射によって光路を折り曲げることで、鏡とレンズとの間の実質的な距離を短くする光学系があり、特許文献2においてそのような全方位光学系の構成が開示されている。
しかし、特許文献2に記載の構成では高さ方向には光路を折り曲げているが、鏡の半径方向での光路は変わらない。このため、小型化できるのは高さ方向だけである。半径方向にも光路を折り曲げるための新たな鏡を導入することにより、鏡の半径方向の大きさの改善は可能であるが、新たな鏡を導入するためには光学系の設計が困難になるだけではなく、鏡の枚数が増えるほどそれらを誤差なく配置するのは難しくなり、実用上問題となる。
また、一般的に人間の視野角は水平方向にはおよそ200度前後と言われる。このため、そのような水平視野を得るために凸面鏡を用いる場合、図2Aに示すように凸面鏡301を全周にわたって利用する代わりに、図2Bに示すようにその一部311のみを利用すれば十分である。しかし、レンズ群13の光軸(optical axis)16の向きが凸面鏡301の軸305の向きと同じである場合、図2Bに示すようにレンズ群13の画角内で凸面鏡が写らない無駄な撮像領域312が発生してしまう。これは特許文献2に記載の構成のように複数回反射を行う系においても同様に問題となる。
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は広角撮影が可能で単一視点を有し、かつ、撮影した画像に無駄な領域が生じない小型の光学系を提供することを目的とする。
本発明のある局面に係る光学系は、中央に開口部を有し、回転対称な放物凸面の一部の形状を有する主鏡と、前記主鏡によって反射する光をさらに反射する、回転対称な放物凹面の一部の形状を有する再反射鏡と、前記再反射鏡によって反射する光を結像させる少なくとも1枚のレンズと、前記少なくとも1枚のレンズを保持する鏡筒とを備え、前記少なくとも1枚のレンズの前側主点の位置が前記再反射鏡の焦点位置と一致し、前記少なくとも1枚のレンズの光軸が前記放物凸面および前記放物凹面の回転軸に対して傾いている。
この構成によれば、図3Aのようにレンズ群13(少なくとも1枚のレンズ)の光軸16が放物凸面および放物凹面の回転軸と一致していた場合にはレンズ群13の画角内で無駄な撮像領域312が存在するのが、レンズ群13の光軸16を傾けて配置することで図3Bのようにレンズ群13の画角いっぱいに再反射鏡12(に映る主鏡11の像)をとらえることができる(撮像することができる)。図3Cおよび図3Dはそれぞれ図3Aおよび図3Bで表される光学系によって得られる画像を模式的に示したものであるが、図3Cに比べて図3Dの方が明らかに再反射鏡12の像が写らない無駄な領域が少ない。なお、図3Dは模式図であり、実際の画像を上下方向に引き伸ばしたような図となっているが、実際には、半円に近い画像が得られる。また、半円中央部のハッチングを施した部分は、主鏡の開口部の画像である。
このように、主鏡11および再反射鏡12は、それぞれ回転対称な放物凸面および放物凹面の一部の形状を有する。このため、放物凸面および放物凹面の全部の形状を有する従来の光学系に比べて鏡の半径方向のサイズを小さくすることができる。よって、広角撮影が可能で単一視点を有し、かつ、撮影した画像に無駄な領域が生じない小型の光学系を提供することができる。
また、前記少なくとも1枚のレンズは、2枚以上のレンズを含むレンズ群であり、前記レンズ群によって、ズームレンズを構成するとしてもよい。
好ましくは、上述の光学系は、さらに、前記鏡筒を前記レンズ群の光軸方向に沿って前後に移動させるための構造を有する移動部を備え、前記移動部は、前記レンズ群のズーム倍率変更によって生じる前側主点の位置の変動を相殺し、前記レンズ群の前側主点の位置を前記再反射鏡の焦点位置に一致させる位置に前記鏡筒を移動させるための構造を有する。
この構成によれば、レンズのズームによって拡大像を得た際にも前側主点位置を固定することができ、単一視点を有する利点をズーム時にも得ることができる。
また、前記レンズ群は、ズーム倍率の変更によって前側主点が移動しない構成を有していてもよい。
この構成によっても、レンズのズームによって拡大像を得た際にも前側主点位置を固定することができ、単一視点を有する利点をズーム時にも得ることができる。
また、上述の光学系は、さらに、前記鏡筒を支持し、前記レンズ群の光軸の向きを二軸方向に回転させることのできるジンバル機構を備え、前記ジンバル機構の各方向の回転軸が前記再反射鏡の焦点位置を通るとしてもよい。
この構成によれば、レンズ群が首振り動作をする際の回転中心をレンズ群の前側主点の位置と一致させることができ、首振り動作によっても単一視点を保持し続けることができる。
本発明によると、広角撮影が可能で単一視点を有し、かつ、撮影した画像に無駄な領域が生じない小型の光学系を提供することができる。
図1は、双曲面鏡を用いた反射鏡が単一視点を保持することを示す図である。
図2Aは、従来の光学系における鏡の大きさを示す模式図である。
図2Bは、前方視野を確保するために必要な鏡の大きさを示す模式図である。
図3Aは、光軸を傾けない場合の有効撮像領域について示す図である。
図3Bは、光軸を傾けることで有効撮像領域が増えることを示す図である。
図3Cは、図3Aで表される光学系によって得られる画像を模式的に示す図である。
図3Dは、図3Bで表される光学系によって得られる画像を模式的に示す図である。
図4は、実施の形態1に係る光学系の構成を模式的に示す図である。
図5は、放物凸面鏡を用いた反射鏡が単一視点を保持することを示す図である。
図6は、放物凸面鏡と放物凹面鏡とを用いた反射鏡が単一視点を保持することを示す図である。
図7は、実施の形態1に係る光学系による光線の反射を示す図である。
図8は、実施の形態2に係る光学系の構成を模式的に示す図である。
図9Aは、保持部材の構成を模式的に示す図である。
図9Bは、保持部材の構成を模式的に示す図である。
図10は、実施の形態3に係る光学系の構成を模式的に示す図である。
図11は、図10に示す光学系を用いて駐車場を撮像した画像を示す図である。
図12Aは、ある副鏡の配置において撮像される画像を模式的に示す図である。
図12Bは、他の副鏡の配置において撮像される画像を模式的に示す図である。
図13は、無限遠からの光線が二つの放物面鏡に反射する際の投影点の位置関係を模式的に示す図である。
図14は、近接物体からの光線が二つの放物面鏡に反射する際の投影点の位置関係を模式的に示す図である。
図15は、ズーム倍率と鏡筒の移動量との関係を示すデータテーブルの一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る光学系について説明する。
図4は実施の形態1に係る光学系10の構成を模式的に示す図である。図4(a)、図4(b)および図4(c)は、光学系10の正面図、右側面図および上面図をそれぞれ示している。
光学系10は、主鏡11、再反射鏡12、レンズ群13、鏡筒(lens barrel)14、および台座15から構成される。レンズ群13の光軸16が再反射鏡12の回転軸17に対して傾くよう、鏡筒14は台座15に据え付けられる。なお、再反射鏡12の回転軸17と主鏡11の回転軸とは平行であるのが望ましい。ここでは、両回転軸が一致する場合を図示している。
主鏡11は空間からの光線を再反射鏡12に向かって反射する。主鏡11は中央に開口部を有し、回転対称な凸面の一部から構成される。回転対称な面として、例えば式(1)で規定されるような二次曲面がある。
cは曲面の曲率(curvature)、kは円錐定数(conic constant)、rは二次曲面の中心軸からの距離である。例えば円錐定数kをk=−1とすると放物面が、k<−1とすると双曲面が得られる。上述した主鏡11の回転軸とは、上記回転対称な凸面の回転軸のことである。
再反射鏡12は主鏡11からの反射光をレンズ群13に向かって反射する。主鏡11と同様に回転対称な凹面の一部から構成される。この回転対称な凹面も、上記式(1)で規定される。上述した再反射鏡12の回転軸とは、上記回転対称な凹面の回転軸のことである。
レンズ群13はプラスチックまたはガラスによって構成され、再反射鏡12から反射される光線を集光する。なお、図4においては見易さのためにレンズ群13を1つのレンズとして図示しているが、本発明の実施の形態としてレンズ枚数は1枚に制限されるものではなく、2枚以上であっても良い。
鏡筒14はレンズ群13を構成する各レンズの位置関係をある特定の条件に保ったまま保持する。
台座15は主鏡11、再反射鏡12、および鏡筒14の位置関係をある特定の条件に保ったまま保持する。
ここで、再反射鏡12によって反射される光がその焦点位置で一点に収束するための条件について説明する。
一般に、二次曲面による反射鏡で単一視点を実現するためには、双曲面鏡を用いる方法と放物面鏡を用いる方法とがある。このうち双曲面鏡を用いる方法は特許文献1にて開示されている。
もう一方の放物面鏡を用いる方法では、図5に示すように、放物凸面鏡501の焦点502に向かって進む光線503Aが放物凸面鏡501によって反射されることで、放物面の回転軸504に対して平行な光線503B(以下「平行光」と表記)となる、という性質を利用する。このような平行光503Bを結像させるためのレンズとしてテレセントリックレンズ(特に物体側テレセントリックレンズ)505を用いることで、平行光を集光することができる。
しかし、テレセントリックレンズ505は一般に開口の小さい“暗い”レンズであることが多く、レンズ全体が大型になりやすいため、光学系全体の小型化には不向きであるという欠点がある。
これに対して、テレセントリックレンズ505を用いない結像の方法として、図6に示すように、放物凸面鏡601と放物凹面鏡602とを組み合わせる方法がある。放物凹面鏡602は平行光603Bを放物凹面鏡602の焦点605で一点に収束させる性質がある。放物凹面鏡602による反射光603Cはもはや平行光ではないので、テレセントリックレンズ505ではない通常のレンズで集光することができる。つまり、放物凸面鏡601の焦点604に向かう光線603Aは放物凸面鏡601に反射して平行光603Bとなり、今度は放物凹面鏡602の焦点605に向かって反射される。放物凹面鏡602の焦点605に通常のレンズを配置することで、放物凹面鏡602による反射光603Cを集光することができる。レンズが複数枚のレンズ群の場合には、レンズ群の前側主点を放物凹面鏡602の焦点605の位置に一致するようにレンズ群を配置することで、単レンズの時と同様に扱うことができる。このように、放物凸面鏡601で反射され、放物凹面鏡602に向かう光は平行光603Bとなるため、放物凸面鏡601と放物凹面鏡602との間の距離を変更することができる。
これらの性質を元に、実施の形態1に係る光学系による光線の反射の様子を示したのが図7である。ただし、ここでは主鏡11を構成する曲面は放物凸面の一部とし、再反射鏡12を構成する曲面は放物凹面の一部とする。主鏡11の焦点71に向かう光線72Aが主鏡11によって反射されて平行光72Bとなり、再反射鏡12に入射する。さらに平行光72Bは再反射鏡12によってその焦点に向かって反射され、レンズ群13によって集光される。なお、主鏡11の焦点71とレンズ群13の前側主点とが一致するような位置にレンズ群13が配置されている。
なお、この光学系によると、図3Dに示したような主鏡11の像をとらえることができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態1によると、図3Aのようにレンズ群13の光軸16が主鏡11および再反射鏡12の回転軸と一致していた場合にはレンズ群13の画角内で無駄な撮像領域312が存在するのが、レンズ群13の光軸16を傾けて配置することで図3Bのようにレンズ群13の画角いっぱいに再反射鏡12(に映る主鏡11の像)をとらえることができる。図3Cおよび図3Dはそれぞれ図3Aおよび図3Bで表される光学系によって得られる画像を模式的に示したものであるが、図3Cに比べて図3Dの方が明らかに再反射鏡12の像が写らない無駄な領域が少ない。なお、図3Dは模式図であり、実際の画像を上下方向に引き伸ばしたような図となっているが、実際には、半円に近い画像が得られる。また、半円中央部のハッチングを施した部分は、主鏡11の開口部の画像である。
また、主鏡11および再反射鏡12は、それぞれ回転対称な放物凸面および放物凹面の一部の形状を有する。このため、放物凸面および放物凹面の全部の形状を有する従来の光学系に比べて鏡の半径方向のサイズを小さくすることができる。よって、広角撮影が可能で単一視点を有し、かつ小型の光学系を提供することができる。
加えて、図3Aに示す従来の光学系と図3Bに示す本実施の形態の光学系とを比較すれば分かるように、レンズ群13の光軸16を傾けることで、再反射鏡12全体を写すために必要なレンズ群13の画角が小さくて済む。一般的にレンズの画角が大きくなる、即ち焦点距離が短くなるほど、周辺光量の低下などの影響が大きくなるため、画角が小さい分だけその影響を低減することができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る光学系は、レンズのズームおよび首振り動作に対しても単一視点を保持できる機構を有する。
以下、本発明の実施の形態2に係る光学系について説明する。
図8は実施の形態2に係る光学系100の構成を模式的に示す図である。図8(a)、図8(b)および図8(c)は、光学系100の正面図、右側面図および上面図をそれぞれ示している。
光学系100は、実施の形態1に係る光学系10に、さらに、保持部材20および制御部30を追加した構成を有する。保持部材20および制御部30以外の構成の機能は実施の形態1に係る光学系10と同様であるため、以下では光学系10と相違のある部分のみ説明する。
保持部材20は鏡筒14の位置および姿勢を変更可能な状態で台座15に据え付ける機能を有する。保持部材20は移動部21および2軸ジンバル22により構成される。
図9Aおよび図9Bは保持部材20の構成を模式的に示す図であり、図9Aはレンズ群13の光軸に沿った方向の保持部材20の断面図であり、図9Bは保持部材20を光軸方向から見た図である。
移動部21は鏡筒14をレンズ群13の光軸方向に沿って前後に移動させる機能を有する。具体的な構造としては例えば鏡筒14の外側に外筒とカムとを備え、鏡筒14をレンズ群13の光軸まわりに回転させることで、鏡筒14を前後に移動させる構造などを用いることができる。また、鏡筒14にまたは外筒の一方の溝を設け、他方にその溝に嵌合する突起部を設けることにより、鏡筒14を光軸方向に沿って前後に移動させるようにしても良い。
2軸ジンバル22は鏡筒14を特定の点を中心に回動可能に保持する機能を有する。2軸ジンバル22の回転中心は再反射鏡12の焦点位置に一致するように取り付けられている。つまり、2軸ジンバル22の各方向の回転軸は、再反射鏡12の焦点位置に一致し、鏡筒14がレンズ群13の光軸方向に沿って前後に移動することにより、2軸ジンバル22の各方向の回転軸が、再反射鏡12の焦点位置を通る。
制御部30は、CPU、RAM、制御プログラムを格納したROM、およびボタンなどの入力手段などによって構成される。制御部30は、光学系100の使用者の操作に従ってレンズ群13を構成する各レンズの位置関係を変化させてズームを行う。それとともに、制御部30は、鏡筒14を移動させる量を決定し、移動部21に鏡筒14を移動させる。つまり、制御部30は、レンズ群13の前側主点が常に再反射鏡12の焦点と一致するように鏡筒14を移動させる。
なお、鏡筒14の移動量は予め定められており、以下のようにして算出される。つまり、ズーム倍率の変化によるレンズ群13の前側主点位置の移動量をあらかじめ計測され、計測された前側主点位置の移動量を相殺しレンズ群13の前側主点の位置を再反射鏡12の焦点位置に一致させるためのレンズ群13の移動量が、鏡筒14の移動量として算出される。なお、移動部21のカムの溝の切り方を調節することにより、ズーム倍率と鏡筒14の移動量とを連動させることができる。
なお、図8における制御部30の位置はあくまで一例であり、実際には任意の位置に取り付け可能である。
以上説明したように、本発明の実施の形態2によると、実施の形態1に記載の効果に加えて、レンズのズームによって拡大像を得た際にも前側主点位置を固定することができ、単一視点を有する利点をズーム時にも得ることができる。
また、レンズ群13が首振り動作をする際の回転中心をレンズ群13の前側主点の位置と一致させることができ、首振り動作によっても単一視点を保持し続けることができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る光学系は、主鏡のほかに複数の副鏡を設け、主鏡と副鏡のそれぞれの反射像から距離情報を取得することがための機構を有する。
以下、本発明の実施の形態3に係る光学系について説明する。
図10は実施の形態3に係る光学系200の構成を模式的に示す図である。図10(a)、図10(b)および図10(c)は、光学系200の正面図、右側面図および上面図をそれぞれ示している。
光学系200は実施の形態1に係る光学系10に副鏡50を追加した構成である。副鏡50以外の構成の機能は実施の形態1に係る光学系10と同様であるため、以下では光学系10と相違のある部分のみ説明する。
副鏡50は空間からの光線を再反射鏡12に向かって反射する。副鏡50は式(1)で規定されるような二次曲面などの回転対称な凸面から構成される。副鏡50は1つ以上備えられ、図10においては2つの副鏡50が配置されているが、その数は本実施の形態に制限されるものではない。なお、副鏡50の回転軸は、主鏡11の回転軸と一致させるのが望ましい。
図11は、一例として、光学系200を用いて駐車場を撮影した画像を示す。図11に示すように、主鏡11および副鏡50の投影像にそれぞれ自動車、付近の建物および空が映っている。
なお、副鏡50を設置する際には最終的な投影像において無駄な領域が生じないように副鏡50を配置することが望ましい。例えば図12Aは縦横比が4:3の画像上に2つの副鏡が映るように2つの副鏡を配置したときに撮影された画像を示している。この画像には主鏡11の像11Aと副鏡50の像50Aが含まれる。副鏡50の画像中での半径をαとしたとき、画像幅が4αとなる場合が副鏡50同士が重ならない最大の大きさであることが分かる。また、180°の水平画角を得る場合を考えると、主鏡11の画像中での半径は2αで、その中心は画像の下いっぱいに位置する場合に最も無駄な領域が少ない。この時の副鏡50の中心A、Bと主鏡11の中心Oがなす角をθとすると、θは以下の式(2)で求められる。
また、この角度θは図12Bのように横長の画像においてはより大きくなり、逆に縦長の画像ではより小さくなる。この画像には主鏡11の像11Aと副鏡50の像50Aが含まれる。例えば図12Bに示すように縦横比が2:1の画像において無駄な領域が生じないように副鏡50を配置するとθ=90°となる。撮像系としてCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)のような固体撮像素子を用いる場合、画像の縦横比として4:3、3:2および16:9などが一般的であるが、これらの縦横比を用いる場合は30°≦θ≦90°であれば画像の無駄な領域が少ない。
ここで、複数の鏡の反射像から距離情報を取得する方法について説明する。ここでは各鏡は放物面鏡である。
図13に示すように2つの放物面鏡MAおよびMBが空間中に存在する場合を考える。放物面鏡MAおよびMBの曲率をそれぞれCAおよびCBとする。また、放物面鏡MAおよびMBの頂点が画像平面上に投影されたときの投影点の位置ベクトルをそれぞれOAおよびOBとする。
ここで、無限遠からの光線1201が放物面鏡MAおよびMBに入射する場合を考える。無限遠からの光線1201は平行光とみなせるので、これらの放物面鏡MAおよびMBをテレセントリックレンズで撮影する場合、画像上には放物面鏡MAおよびMBの焦点に向かう光線が反射によって画像平面上の点PAおよびPBにそれぞれ投影される。このとき、点PAおよびPBの画素値は等しく、また両者の位置関係には以下の式(3)が成り立つ。
次に、図14のように、近接した地点に物体1301があるとする。また、この物体1301の位置が、その像が無限遠からの光線1302が投影される点である点PAに投影される位置にあるとする。このとき、放物面鏡MBによってできるこの物体1301の像は、物体1301から放物面鏡MBの焦点に向かって進む光線1303が放物面鏡MBによって反射され、点PB’に投影された像である。したがって、点PAおよび点PBの画素値が同一でなくなり、点PAおよび点PBに投影された像は無限遠からの光線によるものでないこと、即ち物体1301が光学系に近接していることが分かる。この方法ではある距離を境として物体1301がそれより近いか否か、という距離情報を得ることができる。また境となる距離はPBとPB’の画像上での距離がちょうど1画素となる距離として定義される。
なお、ここでは放物面鏡を用いる場合について説明したが、その他の形状の鏡であっても、無限遠からの光線が投影される位置関係を事前に把握できれば同様にして物体1301が近接しているか否かの検知が可能である。
以上説明した放物面鏡MAおよびMBとして、主鏡11および1つの副鏡50、または2つの副鏡50を用いることができる。
また、鏡が3つ以上ある場合は、鏡の組み合わせのうち視野が共通しているすべての組について上記の対応を判断し、その結果の多数決を取るなどの方法によってより安定に距離情報を求めることができる。例えば、光学系200の主鏡11および2つの副鏡50の3つの鏡を用いることにより、安定に距離情報を求めることができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態3によると、実施の形態1に記載の効果に加えて、主鏡11と副鏡50の反射像から距離情報を求めることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の内容に限定されず、本発明の目的およびそれに付随する目的を達成するための各種形態においても実施可能であり、例えば以下であってもよい。
例えば、実施の形態1〜3において、鏡の形状を表す式として式(1)で表される二次曲面を挙げているが、以下の式(4)に挙げるようないわゆる非球面形状を用いてもよい。
なお、α、β、γ、δ、・・・はそれぞれ非球面係数である。
また、実施の形態2において、移動部21を用いる代わりに、レンズ群13の構成をズームによって前側主点の位置が変化しない構成としてもよい。このような構成のレンズ群を用いることでもレンズ群13の前側主点の位置を固定する、という効果を得ることができる。特許文献3には、ズームレンズにおいて前側主点位置を一定に保ったままフォーカスを変化させる技術が開示されている。この技術を用いることにより、ズームによって前側主点の位置を変化させない構成を作り出すことができる。
特公昭61−10047号公報
また、実施の形態2において、移動部21としてカムを用いる代わりに、鏡筒14の外側に外筒を備え、鏡筒14を前後にスライド可能な状態で保持する構成とし、ズーム倍率に対応してスライドさせる量をあらかじめ制御部30のROMに記録しておき、ズーム倍率を変更する際にそれを参照することで移動量を決定する構成としてもよい。図15は、制御部30のROMに記憶されるデータテーブルの一例を示す図である。このデータテーブルは、ズーム倍率と鏡筒14の移動量とを対応付けて記憶しており、例えば、ズーム倍率が1.2倍の場合には鏡筒14の移動量が2mmであることが示されている。
また、実施の形態3において、主鏡11と副鏡50とは別々に構成されているが、これらをあらかじめ一体として成型することにより構成してもよい。一体にすることで副鏡50の取り付けの際に生じる位置ずれがなくなり、取得する距離情報の誤差を低減することができる。
また、実施の形態1〜3はすべて光学系のみの構成を示しているが、これら実施の形態に記載されている光学系を搭載した撮像装置としても実施可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、サイズを抑えつつ広い視野を得ることができると同時に、ズームや首振り動作によっても単一視点の特性を保持した画像を得ることができる光学系として有用であり、広い視野を撮影する機器全般に適用可能である。特に機器全体のサイズを小さく保ちたい用途に好適である。
10、100、200 光学系
11 主鏡
12 再反射鏡
13 レンズ群
14 鏡筒
15 台座
16 レンズ群の光軸
17 再反射鏡の回転軸
20 保持部材
21 移動部
22 2軸ジンバル
30 制御部
50 副鏡