JPWO2010095600A1 - ペントースからのホモ乳酸発酵 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ペントースを基質としてホモ乳酸発酵し得る乳酸菌を提供する。この乳酸菌は、ペントース資化性であり、そしてホスホケトラーゼ経路が遮断されかつペントースリン酸経路が作動されている。本発明はまた、このような乳酸菌を用いてペントースから乳酸を製造する方法を提供する。本発明はさらに、このような乳酸菌を作製する方法も提供する。

Description

本発明は、乳酸菌による乳酸発酵、特にペントースからのホモ乳酸発酵に関する。
リグノセルロースは、安価かつ豊富に存在する非食用資源であり、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの3つの主要構成成分を含む。リグニンは、直接燃焼により燃料として用いられているが、他の2つの構成成分セルロースおよびヘミセルロースからの乳酸生産が期待されている。セルロースは、乳酸菌にとって資化が可能なグルコースから構成されているが、ヘミセルロースは、多くの乳酸菌にとって資化が不可能なキシロースおよびアラビノースなどのペントースを主要構成成分とする。このため、ペントースからの乳酸生産技術の開発が求められている。
これまでに、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)(非特許文献1)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(非特許文献2)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)(非特許文献3)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)(非特許文献4)などのいくつかの乳酸菌が、キシロースまたはアラビノースの一方あるいは両方を資化することが可能であることが報告されている。しかしながら、これらの乳酸菌は、例外なく、乳酸と同時にほぼ等モルの酢酸を生産する。これは、「ヘテロ乳酸発酵」と呼ばれる。
図1は、キシロースおよびアラビノース資化の経路を示すスキームである。図1に示すように、乳酸菌において、キシロースまたはアラビノースが一連の細胞内代謝酵素によってキシルロース5-リン酸(X5P)へと変換される。ヘテロ乳酸発酵では、X5Pがさらにホスホケトラーゼの作用で等モルのグリセルアルデヒド3-リン酸(GAP)およびアセチルリン酸(Acetyl-P)に解裂し、最終的にGAPおよびAcetyl-Pがそれぞれ乳酸および酢酸へと変換される(非特許文献5)。この経路は、ホスホケトラーゼ経路(PK経路)と呼ばれる。他方、ペントース資化による乳酸発酵経路には、ペントースリン酸経路(PP経路)も知られ、この経路では、X5PからGAPおよびフルクトース6-リン酸(F6P)が生じ、最終的に乳酸のみが生じる。これは、「ホモ乳酸発酵」と呼ばれる。
ラクトコックス・ラクティス(Lactococcus lactis)IO-1は、PK経路に加えてPP経路を有しており、等モル以上の乳酸を生産することが知られているが、完全なホモ乳酸発酵には至っていない(非特許文献5)。現在、ペントースからのホモ乳酸発酵が可能な乳酸菌に関しては報告がない。
ラクトバチルス・ペントーサスにおいて、PK経路で作用する酵素であるホスホケトラーゼの遺伝子の欠損によって、ペントースからの増殖能を失うことが報告されている(非特許文献6)。しかし、PP経路の導入に関しての報告はない。
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本発明は、ペントースからのホモ乳酸発酵を可能にする乳酸菌を提供することを目的とする。
本発明は、ペントースを基質としてホモ乳酸発酵し得る乳酸菌を提供する。この乳酸菌は、ペントース資化性であり、そしてホスホケトラーゼ経路が遮断されかつペントースリン酸経路が作動されている。
本発明はまた、乳酸の製造方法を提供し、この方法は、上記乳酸菌をペントースに作用させる工程を含む。
本発明はさらに、ペントースを基質としてホモ乳酸発酵し得る乳酸菌を作製する方法を提供する。この方法は、
ペントース資化性の乳酸菌を提供する工程;および
該乳酸菌のホスホケトラーゼをコードする遺伝子を欠損させてホスホケトラーゼ経路を遮断する工程
を含む。
1つの実施態様では、上記乳酸菌に、トランスケトラーゼをコードする遺伝子およびトランスアルドラーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つを導入してペントースリン酸経路を作動させる工程をさらに含む。
本発明によれば、ペントースからのホモ乳酸発酵が可能な乳酸菌が提供される。このような乳酸菌によって、基質としてペントースを用いて効果的に乳酸を製造できる。
キシロースおよびアラビノース資化の経路を示すスキームである。 ホスホケトラーゼ1遺伝子(ラクトバチルス・プランタルムxpk1)の破壊用プラスミド(pGh9-Δxpk1)またはトランスケトラーゼ遺伝子(ラクトコックス・ラクティスIL 1403由来tkt)との置換用プラスミド(pGh9-xpk1::tkt)の模式図である。 ΔldhL1株およびΔldhL1-xpk1::tkt株によるアラビノースからの発酵実験における(a)培養液のOD600、(b)アラビノースおよび有機酸の濃度、および(c)乳酸および酢酸の濃度を示すグラフである。 (a)キシロース資化用プラスミドpCU-PXylABおよび(b)ホスホケトラーゼ2遺伝子(ラクトバチルス・プランタルムxpk2)の破壊用プラスミドpGh9-Δxpk2の模式図である。 ΔldhL1/pCU-PXylAB株、ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株、およびΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株によるキシロースからの発酵実験における(a)培養液のOD6000、(b)キシロースおよび有機酸の濃度、および(c)乳酸および酢酸の濃度を示すグラフである。
本発明によれば、ペントース資化性の乳酸菌において、PK経路を遮断しかつPP経路を作動させることで、ペントースからのホモ乳酸発酵を可能とした。本明細書においては、本発明の乳酸菌を、ペントース資化性ホモ乳酸発酵乳酸菌ともいう。
用語「ペントース」とは、乳酸菌の代謝に用いられる任意のペントース(五炭糖)であり得、好ましくは、アラビノースおよびキシロースが挙げられる。
本発明においては、ペントース資化性である乳酸菌が用いられる。ペントース資化性の菌とは、アラビノースまたはキシロースの少なくとも一方を基質として利用し、資化する菌であり得、乳酸を発酵し得る。アラビノースまたはキシロースの少なくとも一方を資化し得る菌としては、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)などの乳酸菌が挙げられる。
ペントース資化性である乳酸菌の提供のために、元来アラビノース資化性の菌にキシロース資化能を付与する、あるいはその逆、ならびにグルコースなどのヘキソース(六炭糖)を資化し得る菌にアラビノース資化能および/またはキシロース資化能を付与してもよい。
キシロースは、図1に示されるように、2つの酵素、キシロースイソメラーゼ(xylAによってコードされる)によってキシルロースに変換され、続いてキシルロースキナーゼ(xylBによってコードされる)によってキシルロース5-リン酸(X5P)に変換される。したがって、キシロース資化能の付与は、付与される乳酸菌の保有する遺伝子に依存して、xylAまたはxylBの少なくとも一方、好ましくは両方の導入によって行われ得る。
アラビノースは、図1に示されるように、アラビノースイソメラーゼ(araAによってコードされる)によってリブロースに変換され、続いてリブロキナーゼ(araBによってコードされる)によってリブロース5-リン酸に変換され、最後にリブロース5-リン酸4-エピメラーゼ(araDによってコードされる)によってキシルロース5-リン酸(X5P)に変換される。したがって、アラビノース資化能の付与は、付与される乳酸菌の保有する遺伝子に依存して、araA、araB、およびaraDの少なくとも1つ、好ましくは全部を導入することによって行われ得る。
本発明においては、乳酸菌のPK経路が遮断される。この遮断によって、ペントース資化による酢酸の生産が抑制され得る。PK経路の遮断のために、ホスホケトラーゼの作用を抑制することが好ましい。そのために、ホスホケトラーゼをコードする遺伝子が欠損され得る。ホスホケトラーゼをコードする遺伝子の発現は、用いられる乳酸菌およびその培養条件(例えば、基質となる糖の種類、pH、温度、酸素の状態など)などに依存し得る。適用される培養条件において通常発現され得る乳酸菌のホスホケトラーゼの遺伝子を欠損することが好ましい。例えば、ラクトバチルス・プランタルム(特にNCIMB 8826株)の場合、ホスホケトラーゼをコードする遺伝子には、xpk1およびxpk2の2種類の遺伝子がある。この菌株の場合、アラビノースを資化する場合、xpk1を欠損していればPK経路は遮断され得るが、キシロースを資化する場合は、xpk1およびxpk2の両方を欠損させることにより、PK経路が首尾よく遮断され得る。
遺伝子の欠損とは、その酵素が正常に作用しない限りであれば、染色体上のその遺伝子の少なくとも一部が欠損していればよい。遺伝子の欠損は、例えば、遺伝子破壊によってもたらされ得る。このような遺伝子破壊とは、対象の遺伝子領域の配列が改変または欠失されて、その遺伝子の正常な発現が妨害または不能となり、その結果、正常な発現が抑制され、酵素が正常に作用しなくなる任意の方法であり得る。遺伝子領域の配列の改変としては、他の塩基配列との置換、部分配列の欠失、他の塩基配列の挿入による該領域の分断などが挙げられる。遺伝子の欠損は、当業者が通常用いる方法によって行われ得る。
本発明においては、乳酸菌のPP経路が作動される。PP経路の作動とは、乳酸菌へのPP経路の導入およびPP経路の促進をともに包含する。図1に示されるように、PP経路では、X5PからGAPおよびF6Pが生じ、最終的に乳酸のみが生じるまでに、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼが関与し得る。PP経路の作動のために、トランスケトラーゼをコードする遺伝子またはトランスアルドラーゼをコードする遺伝子の少なくとも一方が導入され得るが、これは、用いられる乳酸菌の種類に依存し得る。トランスケトラーゼをコードする遺伝子としては、例えば、ラクトコックス・ラクティス(特にIL 1403株)由来のtkt遺伝子(NCBI GeneID: 1115285)が挙げられる。トランスアルドラーゼをコードする遺伝子としては、例えば、大腸菌K-12株由来のtalA(NCBI GeneID: 6060135)およびtalB(NCBI GeneID: 6061856)が公知である。このPP経路を元来作動している乳酸菌(例えば、元来これらの少なくとも1種の酵素をコードする遺伝子を保有する乳酸菌)もまた本発明に利用され得る。例えば、ラクトコッカス・ラクティスIO-1株は、トランスアルドラーゼ活性およびトランスケトラーゼ活性を有している(非特許文献5)ので、本発明において、乳酸菌でのPP経路の作動のために、本株由来のこれらの酵素遺伝子が利用され得る。また、ラクトコッカス・ラクティスIO-1株のようなPP経路に加えてPK経路も有するペントース資化性乳酸菌の場合、そのPK経路を遮断することによって、ペントース資化性ホモ乳酸発酵乳酸菌の作製がなされ得る。例えば、ラクトバチルス・プランタルム(特にNCIMB 8826株)の場合、PK経路の遮断に加えてトランスケトラーゼをコードする遺伝子の導入によって、ペントースからのホモ乳酸発酵に成功している。
したがって、本発明によれば、ペントース資化性であって、PK経路が遮断されそしてPP経路が作動されている乳酸菌が提供される。乳酸菌は、生産する乳酸の分解を抑制する、または高い光学純度の乳酸を生産するなどのさらなる改良のために改変され得る。例えば、ラクトバチルス・プランタルム(特にNCIMB 8826株)は、L-乳酸デヒドロゲナーゼの作用を抑制することにより、高い光学純度でD-乳酸を生産し得る(非特許文献7)。このような改変のための酵素作用の活性化または抑制は、上に説明したことと同様に行われ得る。
本発明においては、「ホモ乳酸発酵」とは、酢酸の生産が抑制されて、主として乳酸を生産する発酵をいう。ペントース資化性ホモ乳酸発酵乳酸菌は、ペントースから主として乳酸を生産し、酢酸はほとんど生産し得ない。乳酸の生産量が、酢酸に対して、例えば、30倍以上、好ましくは40倍以上、さらに好ましくは50倍以上、よりさらに好ましくは75倍以上、なおより好ましくは95倍以上であり得る。
生産される乳酸の光学活性については、用いられる乳酸菌に依存し得る。例えば、以下の実施例に例示した高光学純度でD-乳酸を生産し得るラクトバチルス・プランタルムのL-乳酸デヒドロゲナーゼ破壊株(特にNCIMB 8826株のL-乳酸デヒドロゲナーゼ破壊株(非特許文献7))の場合、PK経路を遮断しそしてPP経路を作動させることにより、高光学純度でのD-乳酸のホモ発酵が可能になった。
本発明においては、乳酸の製造(発酵生産)は、上記ペントース資化性ホモ乳酸発酵乳酸菌をペントースに作用させることにより行われ得る。単一種のペントース(例えば、アラビノースまたはキシロース)のみとだけではなく、混合種(例えば、アラビノースとキシロースとの組み合わせ)でもよく、さらに乳酸菌が資化し得るのであればヘキソース(例えば、グルコース)との混合であってもよい。
本発明における乳酸の製造は、乳酸菌による乳酸発酵において当業者が通常用いる方法にて行われ得る。例えば、ペントースと共に上記ペントース資化性ホモ乳酸発酵乳酸菌を単に培養することにより行われ得る。培養におけるpH、温度、酸素の状態などは適宜設定し得る。
本発明においては、上に説明したように、ペントース資化性乳酸菌のPK経路を遮断すること、そして必要に応じてPP経路を作動させることにより、ペントースを基質としてホモ乳酸発酵し得る乳酸菌を作製することもできる。
発酵により生産される酸は、通常、乳酸菌の種類およびその培養条件(例えば、基質となる糖の種類、pH、温度、酸素の状態など)などに依存し得る。例えば、通性へテロ発酵菌においては、ヘキソースを基質とする場合には主として乳酸を生産するが、ペントースを基質とする場合には乳酸に加えて相当量の酢酸も生産し得る菌がある。しかし、本発明によれば、基質となるペントースまたは乳酸菌の種に関わらず、ペントースからのホモ乳酸発酵が可能になる。また、通性へテロ発酵菌に対して本発明を適用した場合、ペントースおよびヘキソースからホモ乳酸発酵することも可能になり得る。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:アラビノースからのホモ乳酸生産)
(材料および方法)
宿主として、高光学純度のD-乳酸を生産するラクトバチルス・プランタルムNCIMB 8826株のL-乳酸デヒドロゲナーゼ破壊株(非特許文献7;以下、このラクトバチルス・プランタルムNCIMB 8826株のL-乳酸デヒドロゲナーゼ破壊株を単に「ΔldhL1株」ともいう)を用いた。本菌は、元来アラビノースの資化が可能である。ラクトバチルス・プランタルム細胞のΔldhL1株およびその改変株は、MRSブロス(Difco Laboratories, Detroit, MI)またはMRSブロスに25μg/mlエリスロマイシンを加えた培地で37℃にて増殖させた。固形培地とするために、1.5%(w/v)寒天を上記培地に添加した。PCRは、KOD-Plus-polymerase(東洋紡績株式会社)を用いて行った。pG+host9(非特許文献8)の遺伝子操作用に、大腸菌VE 7108(非特許文献9)を用い、これを250μg/mlのエリスロマイシンおよび10μg/mlのカナマイシンを含むルリア−ベルタニ(LB)培地で37℃にて培養した。
(プラスミドの構築)
ホスホケトラーゼ遺伝子(ホスホケトラーゼ1遺伝子:ラクトバチルス・プランタルムxpk1)の破壊用プラスミドを以下のように構築した。xpk1遺伝子の開始コドンから上流に520bpまでの領域および同遺伝子の停止コドンから下流に1000bpまでの領域のそれぞれを、オリゴヌクレオチドプライマーxpk1-up_F(配列番号1)とxpk1-up_R(配列番号2)との対およびxpk1-down_F(配列番号3)とxpk1-down_R(配列番号4)との対を用いて、ラクトバチルス・プランタルムNCIMB 8826(NCIMBより入手)から常法にて調製したゲノムからPCRによって増幅した。得られたフラグメントをSalIで消化し、そして連結した。連結されたフラグメント(1,520bp)を鋳型として用いて、同フラグメントを、オリゴヌクレオチドプライマーxpk1-up_F(配列番号1)およびxpk1-down_R(配列番号4)を用いてPCRによって増幅した。増幅されたフラグメントをXhoIおよびNotIで消化し、続いてプラスミドpG+host9(非特許文献8)のXhoI部位とNotI部位との間に挿入した。得られたプラスミドをpGh9-Δxpk1と命名した。
xpk1をラクトコックス・ラクティスIL 1403由来のトランスケトラーゼ遺伝子(tkt)と置換するためのプラスミドを以下のように構築した。tktのオープンリーディングフレームを、オリゴヌクレオチドプライマーtkt_F(配列番号5)およびtkt_R(配列番号6)を用いて、ラクトコックス・ラクティスIL 1403から常法にて調製したゲノムからPCRによって増幅した。増幅されたフラグメントをBglIIおよびSalIで消化し、続いてプラスミドpGh9-Δxpk1のBglII部位とSalI部位との間に挿入した。得られたプラスミドをpGh9-xpk1::tktと命名した。
図2は、ホスホケトラーゼ1遺伝子(ラクトバチルス・プランタルムxpk1)の破壊用プラスミド(pGh9-Δxpk1)またはトランスケトラーゼ遺伝子(ラクトコックス・ラクティスIL 1403由来tkt)との置換用プラスミド(pGh9-xpk1::tkt)の模式図である。図2中、Ts Oriは、温度感受性複製起点;Emrは、エリスロマイシン耐性遺伝子;upは、xpk1遺伝子の開始コドンから上流に520bpまでの領域;downは、xpk1遺伝子の停止コドンから下流に1000bpまでの領域;tktは、tktのオープンリーディングフレームを表す。
(ΔldhL1株のxpk1遺伝子の破壊および置換)
pGh9-Δxpk1およびpGh9-xpk1::tktを用いるΔldhL1株のxpk1遺伝子の破壊および置換を、pG+hostプラスミドをベースとする二重交叉相同組み込み(double-crossover homologous integration;非特許文献7)によって行った。得られたxpk1が破壊されたΔldhL1株およびxpk1をtktと置換したΔldhL1株をそれぞれ、ΔldhL1-Δxpk1株およびΔldhL1-xpk1::tkt株と命名した。xpk1の欠失および置換をフォワードプライマーxpk1-up_seq(配列番号7)およびリバースプライマーxpk1-down_seq(配列番号8)(これらはそれぞれ、xpk1の上流領域の282位から300位までおよび下流領域の266位から300位までにアニールする)を用いてPCRを行い、アガロースゲル電気泳動によるバンドの比較により、ならびにDNA配列決定分析によって確認した。
(アラビノースを炭素源とする増殖へのxpk1遺伝子の破壊および置換の影響)
単一炭素源としてアラビノースを用いる培養によって、アラビノースによる細胞増殖を確認した。2.0%(w/v)アラビノースを含有し糖を欠損した改変MRS培地(MRSからグルコース、牛肉エキス、酢酸ナトリウムおよびTween 80を除いたもの)をこのアッセイに用い、L. plantarum細胞の増殖を培養12時間後に600nmでの光学密度(OD600)を測定することによりモニターした。
ΔldhL1株は、単一炭素源としてアラビノースを用いて効率的に増殖した(OD600 1.48)。コントロール培養(アラビノースなし)の場合、増殖は顕著に低下した(OD600 0.59 of OD600)。ラクトバチルス・プランタルム細胞は、培地成分に糖を含まない場合わずかにしか増殖しない。他方、ΔldhL1-Δxpk1株は、コントロール培養(OD600 0.45)と比較してもなお、アラビノースを用いる増殖は乏しかった(OD600 0.26)。このような増殖の低下は、xpk1遺伝子座にtktを導入することによって回復し、ΔldhL1-xpk1::tkt株では、コントロール培養(OD600 0.56)に比較して、1.73の高いOD600値を示した。
(ΔldhL1株およびΔldhL1-xpk1::tkt株を用いるアラビノースからの乳酸発酵)
全ての発酵実験を700mlの作業容量で2リットル容バイオリアクター(Able & Biott, Tokyo, Japan)で行った。この発酵槽には、加熱滅菌(121℃、15分)した液体改変MRS培地を入れた。次いで、加熱滅菌したアラビノース溶液をこの発酵槽に添加した(最終濃度50g/l)。続いて、pHを6.0に調整するために10M H2SO4をこの培地に添加し、7mlの接種物(滅菌蒸留水でOD600を10に調整済)を発酵槽に添加した。この添加前に、接種物はMRSで増殖させ、定期的(12時間)に継代培養し、増殖率を安定化させた。温度は36℃に維持し、そして攪拌速度は100rpmに維持し、そしてpHは10M NH3溶液を自動添加することによりおよそ6.0(±0.03)に維持した。接種後、培養物を定期的に採取し、そして分析に供した。
ラクトバチルス・プランタルム細胞の増殖はOD600によってモニターした。アラビノース濃度は、屈折率検出器(model RID-10A; 株式会社島津製作所)を用いて、非特許文献10に記載のように、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。L-アラビノースの分離に用いたカラムは、Shim-pack SPR-Pbカラム(株式会社島津製作所)であった。HPLCは、水を移動相として用い、流速0.6ml/分で80℃にて操作した。また、乳酸および酢酸の濃度は、非特許文献11に記載のように、HPLCによって測定した。乳酸の光学純度は、非特許文献7に記載のように、BF-5バイオセンサー(王子計測機器株式会社)を用いて測定した。乳酸の光学純度を以下のように定義した:光学純度(%)=(D-乳酸濃度−L-乳酸濃度)/(D-乳酸濃度+L-乳酸濃度)×100。
図3は、ΔldhL1株およびΔldhL1-xpk1::tkt株によるアラビノースからの発酵実験における(a)培養液のOD600、(b)アラビノースおよび有機酸の濃度、および(c)乳酸および酢酸の濃度を示すグラフである。図3の(a)は、縦軸にOD600値、横軸に発酵時間(時間)を示し、ΔldhL1株の結果を黒菱形で、ΔldhL1-xpk1::tkt株の結果を白菱形で表す。図3の(b)は、縦軸にアラビノースおよび有機酸濃度を共にg/lで、横軸に発酵時間(時間)を示し、消費されたアラビノースの濃度についてΔldhL1株の結果を黒四角、ΔldhL1-xpk1::tkt株の結果を白四角、生産された有機酸(乳酸と酢酸との合計)についてΔldhL1株の結果を黒丸、ΔldhL1-xpk1::tkt株の結果を白丸で表す。図3の(c)は、縦軸に生産された乳酸および酢酸濃度を共にg/lで示し、乳酸濃度を棒の区切りの下方に、酢酸濃度を棒の区切りの上方に表す。
驚くべきことに、ΔldhL1-xpk1::tkt株は、ΔldhL1株と比較して顕著に高い増殖、糖消費、および酸生産速度を示した(図3の(a)および(b))。ΔldhL1-xpk1::tkt株のOD600値は発酵時間とともに増加し、発酵24時間後には14.9に達したのに対し、ΔldhL1株は発酵36時間でさえもずっと低かった(図3の(a))。これらの株間では、糖消費および酸生産においても差異が見られ、ΔldhL1-xpk1::tkt株は全ての糖を発酵27時間以内に消費し、39.2g/lの有機酸を生産したのに対し、ΔldhL1株では36時間後でも発酵は続き、19.6g/lのアラビノースを消費し15.2g/lの有機酸を生産した(図3の(b))。
図3の(c)に示されるように、ΔldhL1株は、乳酸および酢酸の両方を生産した(それぞれ8.9g/lおよび6.4g/lであり、モル換算でほぼ1:1)。これに対して、ΔldhL1-xpk1::tkt株は、ほぼ優先的に乳酸を生産した(乳酸38.8g/lおよび酢酸0.4g/l)。結果として、ΔldhL1-xpk1::tkt株は、高い乳酸収率(消費アラビノース1g当たり0.82g)を生じた(ΔldhL1では消費アラビノース1g当たり0.44g)。さらに、ΔldhL1-xpk1::tkt株の培養液では、D-乳酸の光学純度が99.9%と非常に高い値を示した。
(実施例2:キシロースからのホモ乳酸生産)
宿主として、実施例1で調製したΔldhL1株、ΔldhL1-Δxpk1株、およびΔldhL1-xpk1::tkt株を用いた。ラクトバチルス・プランタルム細胞の培養条件およびPCRは実施例1と同様に行った。pG+host9(非特許文献8)およびpCU(非特許文献12)の遺伝子操作用に、大腸菌VE 7108(非特許文献9)および大腸菌Nova Blue(Novagen, Inc., Madison, WI)を用い、これらを、それぞれ250μg/mlのエリスロマイシンおよび10μg/mlのカナマイシンを含むルリア−ベルタニ(LB)培地、および250μg/mlのエリスロマイシンを含む同培地で、37℃にて培養した。
(プラスミドの構築)
キシロース資化用プラスミドを以下のように構築した。XylABオペロン(xylA遺伝子の開始コドンからxylB遺伝子の停止コドンまでから構成される)を、ラクトバチルス・ペントーサスMD 353(非特許文献13)のxylABオペロンの配列に基づいて設計したオリゴヌクレオチドプライマーxylA_F(配列番号9)およびxylB_R(配列番号10)を用いて、ラクトバチルス・ペントーサスNRIC 1069(NRICより入手)から常法にて調製したゲノムからPCRによって増幅した。増幅されたフラグメントを、次いでEcoRVおよびXhoIで消化し、引き続き発現ベクターpCU(非特許文献12)のEcoRV部位とXhoI部位との間に挿入した。得られたキシロース資化用プラスミドをpCU-PXylABと命名した。
ホスホケトラーゼ2遺伝子(ラクトバチルス・プランタルムxpk2)の破壊用プラスミドを以下のように構築した。xpk2遺伝子の開始コドンから上流に1,000bpまでの領域および同遺伝子の停止コドンから下流に1000bpまでの領域のそれぞれを、オリゴヌクレオチドプライマーxpk2-up_F(配列番号11)とxpk2-up_R(配列番号12)との対およびxpk2-down_F(配列番号13)とxpk2-down_R(配列番号14)との対を用いて、ラクトバチルス・プランタルムNCIMB 8826のゲノムからPCRによって増幅した。得られたフラグメントをBglIIで消化し、そして連結した。連結されたフラグメント(2,000bp)を鋳型として用いて、同フラグメントを、オリゴヌクレオチドプライマーxpk2-up_F(配列番号11)およびxpk2-down_R(配列番号14)を用いてPCRによって増幅した。増幅されたフラグメントをXhoIおよびSpeIで消化し、続いてプラスミドpG+host9のXhoI部位とSpeI部位との間に挿入した。得られたプラスミドをpGh9-Δxpk2と命名した。
図4は、(a)キシロース資化用プラスミドpCU-PXylABおよび(b)ホスホケトラーゼ2遺伝子(ラクトバチルス・プランタルムxpk2)の破壊用プラスミドpGh9-Δxpk2の模式図である。図4の(a)中、P-clpCUTLSは、clpCUTLSプロモーター;Tcbhは、cbh遺伝子のターミネーター;Repは、複製起点;Emrは、エリスロマイシン耐性遺伝子;xylAおよびxylBは、xylA遺伝子の開始コドンからxylB遺伝子の停止コドンまでを表す。図4の(b)中、Ts Oriは、温度感受性複製起点;Emrは、エリスロマイシン耐性遺伝子;upは、xpk2遺伝子の開始コドンから上流に1,000bpまでの領域;downは、xpk2遺伝子の停止コドンから下流に1000bpまでの領域を表す。
(キシロース資化株の生成)
プラスミドpCU-PXylABをΔldhL1株、ΔldhL1-Δxpk1株、およびΔldhL1-xpk1::tkt株に、非特許文献11に記載のようにエレクトロポレーションにて導入した。得られた形質転換体をそれぞれΔldhL1/pCU-PXylAB株、ΔldhL1-Δxpk1/pCU-PXylAB株、およびΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株と命名した。
pCU-PXylABを保有するラクトバチルス・プランタルム細胞のキシロースによる増殖を、単一炭素源としてキシロースを用いる培養によって確認した。2.0%(w/v)キシロースおよびエリスロマイシンを含有する改変MRS培地(MRSからグルコース、牛肉エキス、酢酸ナトリウムおよびTween 80を除いたもの)をこのアッセイに用い、ラクトバチルス・プランタルム細胞の増殖を培養15時間後に600nmでの光学密度(OD600)を測定することによりモニターした。コントロールとして、pCU-PXylABを保有しない細胞を、エリスロマイシンを添加しないこと以外は同条件で培養した。
ΔldhL1/pCU-PXylAB株は、単一炭素源としてキシロースを用いて効率的に増殖した(OD600 1.95)。他方で、pCU-PXylABのないΔldhL1株の場合、増殖は顕著に低下した(OD600 0.76)。この増殖レベルは、培地成分に糖が全くない場合の増殖に匹敵する。他方で、ΔldhL1-Δxpk1/pCU-PXylAB株は、コントロール培養(OD600 0.62)と比較してもなお、キシロースを用いる増殖は乏しかった(OD600 0.33)。このような増殖の低下は、xpk1遺伝子座にtktを導入することによって回復し、ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株では、コントロール培養(OD600 0.74)に比較して、2.87の高いOD600値を示した。これらの結果から、xylABオペロンの導入によりキシロース資化能が獲得されたことが示された。また、トランスケトラーゼの導入によりアラビノース資化と同様にPP経路を利用するキシロース資化が可能になることも示唆された。
(キシロース資化株の乳酸発酵)
単一炭素源として50g/lのキシロースを用い、そしてエリスロマイシンを(最終濃度25g/lで)発酵槽に添加したこと以外は、実施例1と同様に発酵実験を行った。加熱滅菌したキシロース溶液をこの発酵槽に添加した。
ラクトバチルス・プランタルム細胞の増殖はOD600によってモニターした。キシロース濃度、ならびに乳酸および酢酸の濃度は、実施例1と同様にして測定した。乳酸の光学純度の測定および算定も実施例1と同様に行った。
図5に、ΔldhL1/pCU-PXylAB株およびΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株によるキシロースからの発酵実験の結果を、(a)培養液のOD600、(b)キシロースおよび有機酸の濃度、および(c)乳酸および酢酸の濃度にて示す。図5の(a)は、縦軸にOD600値、横軸に発酵時間(時間)を示し、ΔldhL1/pCU-PXylAB株の結果を黒三角で、ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株の結果を黒四角で表す。図5の(b)は、縦軸にキシロースおよび有機酸濃度を共にg/lで、横軸に発酵時間(時間)を示し、消費されたキシロースの濃度についてΔldhL1/pCU-PXylAB株の結果を黒三角、ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株の結果を黒四角、生産された有機酸(乳酸と酢酸との合計)についてΔldhL1/pCU-PXylAB株の結果を白三角、ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株の結果を白四角で表す。図5の(c)は、縦軸に生産された乳酸および酢酸濃度を共にg/lで示し、乳酸濃度を棒の区切りの下方に、酢酸濃度を棒の区切りの上方に表す。横軸の1にΔldhL1/pCU-PXylAB株の結果を、2にΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株の結果を示す。
ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株は、ΔldhL1/pCU-PXylABと比較して顕著に高い増殖、糖消費、および酸生産速度を示した(図5の(a)および(b))。ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylABのOD600値は発酵時間とともに増加し、発酵36時間後には18.2に達したのに対し、ΔldhL1/pCU-PXylAB株は発酵60時間でさえもずっと低かった(OD600 5.71)(図5の(a))。これらの株間では、糖消費および酸生産においても差異が見られ、ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株は全ての糖を発酵42時間以内に消費し、43.2g/lの有機酸を生産したのに対し、ΔldhL1/pCU-PXylAB株では60時間後でも発酵は続き、37.5g/lの有機酸を生産した(図5の(b))。
図5の(c)に示されるように、ΔldhL1/pCU-PXylAB株は、乳酸および酢酸の両方を生産した(それぞれ22.6g/lおよび14.9g/l)。予想外に、ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株を用いた場合でもなおも酢酸が生産され、酢酸の生産は部分的には抑制されていた。結果として、ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株は、33.7g/lの乳酸および9.6g/lの酢酸を生産していた。
(xpk2欠損株の構築およびそのキシロース資化乳酸発酵)
ΔldhL1-xpk1::tkt株のxpk2遺伝子の破壊を、pGh9-Δxpk2を用いて実施例1と同様にして、pG+hostプラスミドをベースとする二重交叉相同組み込み(double-crossover homologous integration)によって行った。得られたΔldhL1-xpk1::tktのxpk2破壊株をΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2株と命名した。xpk2の欠失は、フォワードプライマーxpk2-up_seq(配列番号15)およびリバースプライマーxpk2-down_seq(配列番号16)(これらはそれぞれ、xpk2の上流領域の276位から300位および下流領域の268位から300位までにアニールする)を用いてPCRを行い、アガロースゲル電気泳動によるバンドの比較により、ならびにDNA配列決定分析によって確認した。
プラスミドpCU-PXylABを上記の方法に準じてΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2株に導入し、得られた株をΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株と命名した。この株を用いて、キシロースからの乳酸発酵を調べた。
図5に、ΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株によるキシロースからの発酵実験の結果も併せて示す。図5の(a)中、ΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株の結果を黒丸で表す。図5の(b)中、消費されたキシロースの濃度についてΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株の結果を黒丸で、生産された有機酸(乳酸と酢酸との合計)についてΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株の結果を白丸で表す。図5の(c)中、3にΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株の結果を示す。
xpk2の破壊によって、細胞増殖および発酵速度はわずかに減少した(図5の(a)および(b))。しかし、ΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株は、親株のΔldhL1株の形質転換体であるΔldhL1/pCU-PXylAB株に比較して高い発酵性能を示した(図5の(a)および(b))。
図5の(c)に示されるように、ΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株は、ほぼ優先的に乳酸を生産した(乳酸42.0g/lおよび酢酸1.0g/l)。結果として、ΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株は、高い乳酸収率(消費キシロース1g当たり0.89g)を生じた(ΔldhL1/pCU-PXylAB株では消費キシロース1g当たり0.53gであり、ΔldhL1-xpk1::tkt/pCU-PXylAB株では消費キシロース1g当たり0.68g)。さらに、ΔldhL1-xpk1::tkt-Δxpk2/pCU-PXylAB株の培養液では、D-乳酸の光学純度が99.9%と非常に高い値を示した。
リグノセルロースの前処理による加水分解産物は、ペントースのみならず、グルコースなどのヘキソースも含んでおり、将来的には混合糖からの効率的な乳酸発酵が期待される。また単糖のみならず、単糖が連なったオリゴ糖やポリマーからの効率的な乳酸発酵も期待される。このような状況においても、本発明によって創製されたペントースを基質としてホモ乳酸発酵し得る乳酸菌は有用であると考えられる。

Claims (4)

  1. ペントースを基質としてホモ乳酸発酵し得る乳酸菌であって、該乳酸菌が、ペントース資化性であり、そしてホスホケトラーゼ経路が遮断されかつペントースリン酸経路が作動されている、乳酸菌。
  2. 乳酸の製造方法であって、請求項1に記載の乳酸菌をペントースに作用させる工程を含む、方法。
  3. ペントースを基質としてホモ乳酸発酵し得る乳酸菌を作製する方法であって、
    ペントース資化性の乳酸菌を提供する工程;および
    該乳酸菌のホスホケトラーゼをコードする遺伝子を欠損させてホスホケトラーゼ経路を遮断する工程
    を含む、方法。
  4. 前記乳酸菌に、トランスケトラーゼをコードする遺伝子およびトランスアルドラーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つを導入してペントースリン酸経路を作動させる工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
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