キシロース代謝およびエタノール産生の経路の略図を示す。
MODlinker−Spec−GapRpiのプラスミドマップを示す。
それぞれRPI過剰発現があるB9、B11、I株と、親株ZW801−4とを示す:mRM3−X10(A)中の増殖。
それぞれRPI過剰発現があるB9、B11、I株と、親株ZW801−4とを示す:54時間目のキシロース消費およびリブロース生成(B)。
それぞれRPI過剰発現があるB9、B11、I株と、親株ZW801−4とを示す:mRM3−G10中の増殖(C)。
追加的なキシロースイソメラーゼ(I(cm1−5、8、9))がある7つのI株形質転換体、ならびにI株(I−1、2)およびZW801(801−1、2)対照を示す:mRM3−X10中の増殖(A)。
追加的なキシロースイソメラーゼ(I(cm1−5、8、9))がある7つのI株形質転換体、ならびにI株(I−1、2)およびZW801(801−1、2)対照を示す:mRM3−G10中の増殖(B)。
追加的なキシロースイソメラーゼ(I(cm1、9))がある2つのI株形質転換体、ならびにI株、およびZW801−4対照について、pH制御条件下におけるmRM3−X10中の増殖を示す。
B11対照(B11−1、2)と共に、追加的なキシロースイソメラーゼ(B11(cm1〜10))がある10個のB11株形質転換体について、mRM3−X10中の増殖を示す(A)。
B11対照(B11−1、2)と共に、追加的なキシロースイソメラーゼ(B11(cm1〜10))がある10個のB11株形質転換体について、B9対照(B9−1、2)と共に追加的なキシロースイソメラーゼ(B9(cm1〜10))がある10個のB9株形質転換体を示す(B)。
野性型Z.モビリス(Z.mobilis)ZM4株pnpがコードするポリヌクレオチドホスホリラーゼ(配列番号2)と、I株の修正pnp遺伝子によってコードされる融合タンパク質(配列番号9)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。
pZX21(A)、pZX52(B)のプラスミドマップを示す。
pZX6(C)のプラスミドマップを示す。
mRM3−G10内で増殖させたZW1−X109(A)、ZW1−X210(B)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−G10内で増殖させた対照ZW1(C)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−X10内で増殖させたZW1−109(A)、ZW1−210(B)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−X10内で増殖させた対照ZW1(C)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
pPNP−I(A)、pPNP−IN(B)のプラスミドマップを示す。
pPNP−C(C)、pPNP−M(D)のプラスミドマップを示す。
mRM3−G10中で増殖させた、ZW1−X109−PNPi(A)、ZW1−X109−PNPc(B)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−G10中で増殖させた、ZW1−X109−PNPm(C)、ZW1−X109−PNPin(D)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−G10中で増殖させた、対照ZW1−X109(E)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−X10中で増殖させた、ZW1−X109−PNPi(A)、ZW1−X109−PNPc(B)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−X10中で増殖させた、ZW1−X109−PNPm(C)、ZW1−X109−PNPin(D)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−X10中で増殖させた、対照ZW1−X109(E)の培養について、増殖、グルコース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−X10内で増殖させたZW801−PNPi(A)、ZW801−PNPc(B)の培養について、増殖、キシロース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
mRM3−X10内で増殖させた対照ZW801(C)の培養について、増殖、キシロース消費、およびエタノール生成のグラフを示す。
以下の配列は、37C.F.R.1.821−1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含有する特許出願の要件−配列の規則」)に準拠し、世界知的所有権機関(WIPO)基準ST.25(2009)、ならびにEPOおよびPCTの配列表の要件(規則5.2および49.5(a−bis)、ならびに実施細則の第208節および付録C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに使用される記号および形式は、37C.F.R.§1.822に示される規則に従う。
配列番号1は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ZM4株からのpnpコード領域のヌクレオチド配列である。
配列番号2は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ZM4株からのpnpがコードするポリヌクレオチドホスホリラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号3は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)NCIMB 11163株からのpnpコード領域のヌクレオチド配列である。
配列番号4は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)NCIMB11163株からのpnpがコードするポリヌクレオチドホスホリラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号5は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ATCC 10988株からのpnpコード領域のヌクレオチド配列である。
配列番号6は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ATCC 10988株からのpnpがコードするポリヌクレオチドホスホリラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号7は、ザイモモナス・モビリス亜種ポマセアエ(Zymomonas mobilis pomaceae)ATCC 29192株からのpnpコード領域のヌクレオチド配列である。
配列番号8は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ATCC 29192株からのpnpがコードするポリヌクレオチドホスホリラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号9は、709個の天然N末端アミノ酸および14個の追加的なC末端アミノ酸を有する、I株の修飾pnpがコードする融合タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号10は、695個の天然N末端アミノ酸および2個の追加的なC末端アミノ酸を有する、修飾pnpがコードする融合タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号11は、368個の天然N末端アミノ酸および10個の追加的なC末端アミノ酸を有する、修飾pnpがコードする融合タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号12は、32個の天然N末端アミノ酸および17個の追加的なC末端アミノ酸を有する、修飾pnpがコードする融合タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号13は、Z.モビリス(Z.mobilis)RPIタンパク質のコード領域のヌクレオチド配列である。
配列番号14は、Z.モビリス(Z.mobilis)RPIタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号15は、大腸菌(E.coli)RPIタンパク質のコード領域のヌクレオチド配列である。
配列番号16は、大腸菌(E.coli)RPIタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号17は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)中の発現のためにコドン最適化された、アクチノプラネス・ミズーリエンシス(Actinoplanes missouriensis)キシロースイソメラーゼのコード領域のヌクレオチド配列である。
配列番号18は、アクチノプラネス・ミズーリエンシス(Actinoplanes missouriensis)キシロースイソメラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号19は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)リブロース−リン酸3−エピメラーゼのコード領域のヌクレオチド配列である。
配列番号20は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)リブロース−リン酸3−エピメラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号21は、PgapS (801gapとも称される)変異プロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号22は、固有NcoIおよびNotI部位間に位置する、プラスミドpZB188aadA/Gap/Zymo RPI/EcoliSL中にあるRPI発現カセットのヌクレオチド配列である。
配列番号23および24は、プライマーPPI−FおよびPPI−R−SbfIである。
配列番号25は、プラスミドpZX21のヌクレオチド配列である。
配列番号26は、GFO−L断片のヌクレオチド配列である。
配列番号27は、gforコード配列のヌクレオチド配列である。
配列番号28は、GFO−R断片のヌクレオチド配列である。
配列番号29は、304bpのZ.モビリス(Z.mobilis)Super GAPプロモーター、1,185bpのA.ミズーリエンシス(A.missouriensis)xylAコード配列、および166bpの大腸菌(E.coli)araD 3’UTRを含有し、5’XbaI部位がある、1,661bpのキメラxylA遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号30は、191bpのPeno、1,455bpの大腸菌(E.coli)xylBコード配列、および314bpの大腸菌(E.coli)xylB 3’UTRを含有する、1,960bpのキメラxylB遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号31は、lox部位と境を接する、1,014bpのaadAマーカー(スペクチノマイシン耐性;Spec−R)のヌクレオチド配列である。
配列番号32は、シャトルベクターpZX52のヌクレオチド配列である。
配列番号33は、LDH−L断片のヌクレオチド配列である。
配列番号34は、LDH−R断片のヌクレオチド配列である。
配列番号35は、ldhAコード配列のヌクレオチド配列である。
配列番号36は、Z.モビリス(Z.mobilis)GAPプロモーター(PgapT)の304bpのT変異、954bpの大腸菌(E.coli)Talコード領域、1,992bpの大腸菌(E.coli)Tktコード領域、および68bpの大腸菌(E.coli)Tkt 3’UTRを含有する、3,339bpのPgapT−Tal−Tktオペロンのヌクレオチド配列である。
配列番号37は、PgapTプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号38は、191bpのPeno、471bpのZ.モビリス(Z.mobilis)Rpiコード配列、663bpのZ.モビリス(Z.mobilis)Rpeコード配列、および35bpの大腸菌(E.coli)xylA 3’UTRを含有する、1,443bpのPeno−Rpi−Rpeオペロンのヌクレオチド配列である。
配列番号39は、DCOシャトルベクターpZX6のヌクレオチド配列である。
配列番号40は、PNP−L断片のヌクレオチド配列である。
配列番号41は、PNP−R断片のヌクレオチド配列である。
配列番号42〜54は、PCRプライマーである。
配列番号55は、DCO自殺ベクターpPNP−Iのヌクレオチド配列である。
配列番号56は、pnp遺伝子に組み込むための上流フランキング配列のヌクレオチド配列である。
配列番号57は、pnp遺伝子に組み込むための下流フランキング配列のヌクレオチド配列である。
配列番号58は、DCO自殺ベクターpPNP−INのヌクレオチド配列である。
配列番号59は、PNP−U断片のヌクレオチド配列である。
配列番号60は、PNP−D断片のヌクレオチド配列である。
配列番号61は、DCO自殺ベクターpPNP−Cのヌクレオチド配列である。
配列番号62は、DCO自殺ベクターpPNP−Mのヌクレオチド配列である。
配列番号63は、PNPm−L断片のヌクレオチド配列である。
配列番号64は、PNPm−R断片のヌクレオチド配列である。
配列番号65は、開始コドンがATGに変異している、Z.モビリス(Z.mobilis)RPIタンパク質からのコード領域のヌクレオチド配列である。
本明細書で開示されるのは、キシロース利用細菌細胞であり、具体的には内在性pnp遺伝子の遺伝子修飾(pnp修飾)を有する、ザイモモナス属(Zymomonas)またはザイモバクター属(Zymobacter)細胞である。さらに細胞は、遺伝子修飾されて、この遺伝子修飾のない細胞との比較で、リボース−5−リン酸イソメラーゼ(RPI)活性の発現増大を有する。さらに細胞は、pnp改質不在下では、キシロースイソメラーゼ活性が制限されない。これらの特性がある細胞は、糖化バイオマスをはじめとするキシロースを含有する培地中での増殖のために所望される改善されたキシロース利用を有して、エタノール生産増大につながる。エタノールは、化石燃料の置き換えにおいて使用される、重要な化合物であり、糖化バイオマスは、発酵によるエタノール生産のための豊富に入手できる再生可能な炭素源を提供する。
特許請求の範囲および明細書の解釈のために、以下の定義を使用してもよい。
本明細書の用法では、「含んでなる(comprises))」、「含んでなる(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、または「含有する(containing)」という用語、またはそれらのあらゆるその他の変化形は、非排他的包含をカバーすることが意図される。例えば要素の一覧を含んでなる組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもこれらの構成要件のみに限定されず、明示的に列挙されない、またはこのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に固有のその他の要素を含んでもよい。さらに特に断りのない限り、「または(or)」は排他的またはでなく包括的またはを指す。例えば条件AまたはBは、以下のいずれかによって満たされる:Aが真で(または存在し)Bが偽であり(または存在せず)、Aが偽で(または存在せず)Bが真であり(または存在する)、AおよびBの双方が真である(または存在する)。
さらに本発明の構成要件または構成要素に先立つ不定冠詞「a」および「an」は、構成要件または構成要素の事例数(すなわち発生率)に関して非制限的であることが意図される。したがって「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含むものと解釈すべきであり、構成要件または構成要素の単数語形は、数が単数であることを明らかに意味する場合を除いて、複数もまた含む。
「発明」または「本発明」という用語は、本明細書の用法では非限定的用語であり、特定の発明のいずれかの単一の実施形態を指すことは意図されず、本明細書および特許請求の範囲に記載される全ての可能な実施形態を包含する。
本明細書の用法では、本発明で用いられる成分または反応物質の量を修飾する「約」という用語は、例えば実際の濃縮物または調製溶液の作成で使用される、典型的な測定および液体取り扱い手順を通じて;これらの手順における不注意による誤りを通じて;組成物作成または方法実施で用いられる成分の、製造、供給元または純度の差異などを通じて、生じ得る数量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の最初の混合物から生じる組成物の異なる平衡条件のために、異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されるか否かを問わず、特許請求の範囲には量の同等物が含まれる。一実施形態では、「約」という用語は、報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内を意味する。
「炭素基質」または「発酵性炭素基質」という用語は、本発明の宿主生物によって代謝される能力のある炭素源、特に単糖類、オリゴ糖類、および多糖類からなる群から選択される炭素源を指す。
「遺伝子」は、コード配列に先行する(5’非コード配列)および後続の(3’非コード配列)制御配列が任意選択的に含まれてもよい、特異的タンパク質または機能的RNA分子を発現する、核酸断片を指す。「天然遺伝子」または「野性型遺伝子」とは、それ自体の制御配列と共に天然に見られる遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」とは、自然界では一緒に見られない調節およびコード配列を含んでなる、天然遺伝子でないあらゆる遺伝子を指す。したがってキメラ遺伝子は、異なる起源に由来する制御配列およびコード配列、または同一起源に由来するが、天然に見られるのと異なる様式で配列される制御配列およびコード配列を含んでなってもよい。「内在性遺伝子」とは、生物のゲノム中のその自然な位置にある天然遺伝子を指す。「外来」遺伝子とは、常態では宿主生物に見られないが、遺伝子移入によって宿主生物に導入された遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然生物中に挿入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を含んでなり得る。「遺伝子座」は、遺伝子を含有するゲノム領域である。
「遺伝子コンストラクト」という用語は、1つまたは複数の特定タンパク質または機能性RNA分子の発現をコードする、核酸断片を指す。遺伝子コンストラクト中では、遺伝子は天然、キメラ、または外来性であってもよい。典型的に遺伝子コンストラクトは、「コード配列」を含んでなる。「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。
「プロモーター」または「開始制御領域」という用語は、コード配列または機能性RNAの発現を制御できるDNA配列を指す。一般にコード配列は、プロモーター配列の3’に位置する。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来してもよく、または自然界に見られる異なるプロモーターに由来する異なる要素から構成されてもよく、または合成DNAセグメントを含んでなってさえよい。当業者は、異なる組織または細胞タイプ中で、または異なる発達段階で、または異なる環境条件に答えて、異なるプロモーターが遺伝子発現を指示してもよいことを理解する。ほとんどの場合にほとんどの細胞型中で遺伝子が発現されるようにするプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と称される。
「遺伝子修飾」という用語は、それらが表現型の変化を生じるかどうかに関わりなく、あらゆる修飾、変異、塩基欠失、塩基付加、コドン修飾、遺伝子過剰発現、遺伝子抑制、プロモーター修飾または置換、遺伝子付加(単一またはマルチコピーのいずれか)、アンチセンス発現または抑制、あるいは宿主細胞または細菌系統の遺伝要素に対するあらゆるその他の変化を非包括的に指す。
「組換え細菌宿主細胞」という用語は、少なくとも1つの非相同遺伝子または遺伝子コンストラクトまたは核酸断片を含んでなる細菌細胞を指す。
「発現」という用語は、本明細書の用法では、遺伝子に由来する、コード(mRNA)または機能性RNAの転写と安定した蓄積を指す。発現はまた、mRNAのタンパク質への翻訳を指してもよい。「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質の発現を抑制する能力のあるアンチセンスRNA転写物の生成を指す。「過剰発現」は、標準または非形質転換生物中の生成レベルを超える、遺伝子組換え生物中における遺伝子産物の生成を指す。「コサプレッション」は、同一または実質的に同様の外来性または内在性遺伝子の発現を抑制する能力のある、センスRNA転写物または断片の生成を指す(米国特許第5,231,020号明細書)。「形質転換」という用語は、本明細書の用法では、遺伝的に安定した遺伝形質がもたらされる、宿主生物への核酸断片の移入を指す。移入核酸は、宿主細胞中で維持されるプラスミドの形態であってもよく、またはいくつかの移入核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよい。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「遺伝子導入」または「組換え」または「形質転換」生物と称される。
「プラスミド」および「ベクター」という用語は、本明細書の用法では、細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を保有することが多く、通常は環状二本鎖DNA分子の形態である染色体外要素を指す。このような要素は、あらゆる起源に由来する一本または二本鎖DNAまたはRNAの、直鎖または環の、自己複製配列、ゲノム一体化配列、ファージまたはヌクレオチド配列であってもよく、その中でいくつかのヌクレオチド配列は連結または組換えされて、適切な3’非翻訳配列と共に、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片とDNA配列とを細胞に導入できる、独自の構造になる。
「作動的に結合する」という用語は、一方の機能が他方の機能によって影響される、単一核酸断片上の核酸配列のつながりを指す。例えばプロモーターは、コード配列の発現に影響できる場合、そのコード配列と作動的に結合する(すなわちコード配列は、プロモーターの転写調節下にある)。コード配列は、センスまたはアンチセンスオリエンテーションで、制御配列に作動的に結合し得る。
「選択可能なマーカー」という用語は、通常はマーカー遺伝子の効果、すなわち抗生物質耐性に基づいて選択できる、抗生物質または耐薬品性遺伝子である識別因子を意味し、効果は、対象核酸の遺伝形質を追跡し、および/または対象核酸を引き継いだ細胞または生物を同定するために使用される。
本明細書の用法では、「コドン縮重」とは、コードされるタンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさないヌクレオチド配列の多様性を可能にする、遺伝子コードの性質を指す。当業者は、所定のアミノ酸を特定するヌクレオチドコドン使用における、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」について良く知っている。したがって宿主細胞中の改善された発現のために遺伝子を合成する場合、そのコドン使用頻度が、宿主細胞の好むコドン使用頻度に近くなるように遺伝子をデザインすることが望ましい。
様々な宿主の形質転換のための、遺伝子または核酸分子のコード領域に言及する「コドン最適化」という用語は、DNAによってコードされるタンパク質を変更することなく、宿主生物の典型的なコドン使用頻度を反映する、遺伝子または核酸分子コード領域のコドンの変更を指す。
「リグノセルロース系」という用語は、リグニンとセルロースの双方を含んでなる組成物を指す。リグノセルロース系物質はまた、ヘミセルロースを含んでなってもよい。
「セルロース系」という用語は、セルロースと、ヘミセルロースを含む追加的な成分とを含んでなる、組成物を指す。
「糖化」という用語は、多糖類からの発酵性糖類生成を指す。
「前処理バイオマス」という用語は、糖化に先だって、物理的、化学的および/または熱的に前処理されて、バイオマス中の多糖類へのアクセスしやすさが増大されている、バイオマスを意味する。
「バイオマス」は、セルロースを含んでなり、任意選択的に、ヘミセルロース、リグニン、デンプン、オリゴ糖類および/または単糖類をさらに含んでなる材料をはじめとする、あらゆるセルロース系またはリグノセルロース系材料を指す。バイオマスはまた、タンパク質および/または脂質などの追加的な成分を含んでなってもよい。バイオマスは単一起源に由来してもよく、またはバイオマスは2種以上の原料に由来する混合物を含んでなり得る;例えばバイオマスは、トウモロコシ穂軸とトウモロコシ茎葉の混合物、または草と葉の混合物を含んでなることもあり得る。バイオマスとしては、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固形廃棄物、産業固形廃棄物、製紙業汚泥、庭ごみ、木材および林業廃棄物が挙げられるが、これに限定されるものではない。バイオマスの例としては、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ苞葉などの作物残渣、トウモロコシ茎葉、牧草、麦藁、大麦藁、乾草、稲藁、スイッチグラス、古紙、サトウキビバガス、ソルガム、大豆、穀物製粉から得られる成分、樹木、枝、根、葉、木片、おがくず、灌木および低木、野菜、果実、花卉、および家畜糞尿が挙げられるが、これに限定されるものではない。
「バイオマス加水分解物」は、バイオマスの糖化から得られる生成物を指す。バイオマスはまた、糖化に先だって前処理または予備加工されてもよい。
「キシロース代謝経路」または「キシロース利用経路」という用語は、フルクトース−6−リン酸および/またはグリセルアルデヒド−6−リン酸を経由してキシロースを代謝する一連の酵素(遺伝子によってコードされる)を指し、1)キシロースのキシルロースへの変換を触媒するキシロースイソメラーゼ;2)キシルロースをリン酸化してキシルロース−5−リン酸を形成するキシルロキナーゼ;3)トランスケトラーゼ;および4)トランスアルドラーゼを含む。
「キシロースイソメラーゼ」という用語は、D−キシロースとD−キシルロースの相互変換を触媒する酵素を指す。キシロースイソメラーゼ(XI)は、EC 5.3.1.5に分類される酵素群に属する。
「E値」という用語は、バイオインフォマティクス技術分野で公知のように、一致が偶発する確率を提供する「期待値」である。これは、配列一致の統計的有意性を提供する。E値が低いほど、ヒットはより有意性が高い。
「リボース−5−リン酸イソメラーゼ」または「RPI」という用語は、リブロース−5−リン酸とリボース−5−リン酸の相互変換を触媒する酵素を指す。リボース−5−リン酸イソメラーゼは、EC 5.3.1.6に分類される酵素群に属する。
「リブロース−リン酸3−エピメラーゼ」または「RPE」という用語は、D−リブロース5−リン酸とD−キシルロース−5−リン酸の相互変換を触媒して、EC 5.1.3.1に分類される酵素を指す。
「Z.モビリス(Z.mobilis)RPI−A」という用語は、当該技術分野でRPI−AとラベルされるZ.モビリス(Z.mobilis)RPIを指す。しかしZ.モビリス(Z.mobilis)RPIタンパク質は、大腸菌(E.coli)RPI−Aタンパク質(20%)よりも大腸菌(E.coli)RPI−Bタンパク質(36%)に近い配列同一性を有し、参照によって本明細書に援用する、国際公開第2012/006061号パンフレットとして公開された、同一譲受人同時係属米国特許出願公開第13/161734号明細書に記載されるRPIのさらなる分析は、Z.モビリス(Z.mobilis)RPIをRPI−B群に位置づける。しかし本明細書では、その公に知られている名称に添って、Z.モビリス(Z.mobilis)RPIをRPI−Aと称する。
「pnp遺伝子」という用語は、ポリリボヌクレオチドヌクレオチジルトランスフェラーゼとも称される、ポリヌクレオチドホスホリラーゼをコードする遺伝子を指す。この酵素は二官能性であり、リン酸化的(phosphorylitic)3’から5’へのエキソリボヌクレアーゼ活性および3’末端オリゴヌクレオチドポリメラーゼ活性がある。これはmRNAプロセッシングおよび分解に関与して、EC 2.7.7.8に分類される。
「天然アミノ酸」という用語は、内在性遺伝子によってコードされるペプチド配列位置で発生するアミノ酸を指す。
「非天然アミノ酸」という用語は、内在性遺伝子によってコードされない位置にあるアミノ酸を指す。
「N末端アミノ酸配列」という用語は、ポリペプチドのN末端に開始するアミノ酸配列を指す。第1のN末端アミノ酸は、「1」と数えられる。
「異種」という用語は、天然では対象位置に見られないことを意味する。例えば異種遺伝子は、天然では宿主生物中に見られないが、遺伝子移入によって宿主生物に導入された遺伝子を指す。例えばキメラ遺伝子中に存在する異種核酸分子は、天然で互いに結合しないコード領域とプロモーター部分を有する核酸分子などの、天然ではキメラ遺伝子のその他の部分に結合して見られない核酸分子である。
本明細書の用法では、「単離核酸分子」は、合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基を任意選択的に含有する、一本または二本鎖のRNAまたはDNAのポリマーである。DNAポリマーの形態の単離核酸分子は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つまたは複数の部分を含んでなってもよい。
核酸断片は、温度および溶液イオン強度の適切な条件下で、核酸断片の一本鎖形態が、その他の核酸断片とアニールし得る場合に、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA分子などの別の核酸断片と「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.およびManiatis,T.Molecular Cloning:ALaboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory:ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)、特にその中の第11章および表11.1(その内容全体を参照によって本明細書に援用する)で例示される。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ストリンジェンシー条件を調節して、(遠縁の生物からの相同的な配列などの)中程度に類似した断片から、(近縁関係にある生物からの機能酵素を複製する遺伝子などの)類似性の高い断片までをスクリーニングし得る。ハイブリダイゼーション後の洗浄が、ストリンジェンシー条件を決定する。好ましい一組の条件では、6×SSC、0.5%SDSを室温で15分間に始まり、次に2×SSC、0.5%SDSを45℃で30分間を繰り返し、次に0.2×SSC、0.5%SDSを50℃で30分間を2回繰り返す一連の洗浄が使用される。より望ましいストリンジェントな条件の組は、より高い温度を使用し、洗浄は、最後の0.2×SSC、0.5%SDS中の2回の30分間の洗浄温度が60℃に増大されたことを除いて、上と同じである。別の好ましい高度にストリンジェントな条件の組は、0.1×SSC、0.1%SDSで65℃の2回の最後の洗浄を使用する。追加的なストリンジェントな条件の組としては、例えば0.1×SSC、0.1%SDSで65℃のハイブリダイゼーションと、2×SSC、0.1%SDSとそれに続く0.1×SSC、0.1%SDSでの洗浄が挙げられる。
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的配列を含有することを要するが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー次第で、塩基間のミスマッチが可能である。核酸をハイブリダイズするための適切なストリンジェンシーは、当該技術分野で周知の変数である核酸の長さと相補性の程度に左右される。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きいほど、これらの配列を有する核酸がハイブリダイズするためのTm値は、より大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的安定性(より高いTmに相当する)は、RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNAの順で低下する。100ヌクレオチド長を超えるハイブリッドでは、Tmを計算する方程式が導かれている(Sambrookら,前出,9.50−9.51を参照されたい)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションでは、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrookら,前出,11.7−11.8を参照されたい)。一実施形態では、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。好ましくは、ハイブリダイズ可能な核酸の最小長さは、少なくとも約15ヌクレオチドであり;より好ましくは、少なくとも約20ヌクレオチドであり;最も好ましくは、長さは少なくとも約30ヌクレオチドである。さらに当業者は、プローブ長などの要素次第で、必要に応じて温度および洗浄液塩濃度を調節してもよいことを認識する。
「相補的」という用語は、互いにハイブリダイズできるヌクレオチド塩基間の関係性を記述するために使用される。例えばDNAに関しては、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。
「%同一性」と言う用語は、当該技術分野で公知のように、配列を比較して判定される2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の関係である。当該技術分野では「同一性」はまた、場合によっては、このような一連の配列間の一致によって測定される、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」および「類似性」は、1.)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.編)Oxford University:NY(1988);2.)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.編)Academic:NY(1993);3.)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編)Humania:NJ(1994);4.)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.編)Academic(1987);および5.)Sequence Analysis Primer(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)Stockton:NY(1991)に記載されるものをはじめとするが、これに限定されるものではない公知の方法によって、容易に計算され得る。
同一性を判定する好ましい方法は、試験される配列間に最良の整合を与えるようにデザインされる。同一性および類似性を判定する方法は、一般に入手できるコンピュータプログラムで体系化されている。配列アラインメントおよび%同一性の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクス演算スイート(DNASTAR Inc.,Madison,WI)のMegAlign(商標)プログラムを使用して実施してもよい。配列の多重アラインメントは、(HigginsおよびSharp,CABIOS.5:151−153(1989);Higgins,D.G.ら,Comput.Appl.Biosci.,8:189−191(1992))によって記載され、LASERGENEバイオインフォマティクス演算スイート(DNASTAR Inc.)のMegAlign(商標)v8.0プログラムにある、Clustal Vと標識されたアラインメント法に相当する「アラインメントのClustal V法」をはじめとする、アルゴリズムのいくつかの変種を包含する、「アラインメントのClustal法」を使用して実施される。複数のアラインメントでは、デフォルト値は、GAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に相当する。Clustal法を使用したペアワイズアラインメントおよびタンパク質配列の%同一性の計算のデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5、およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸では、これらのパラメータは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4、およびDIAGONALS SAVED=4である。Clustal Vプログラムを使用した配列のアラインメント後、同プログラムの「配列距離」表を見ることで、「%同一性」を得ることが可能である。さらに「アラインメントのClustal W法」が利用でき、Clustal Wと標識されるアラインメント法に相当する(HigginsおよびSharp,CABIOS.5:151−153(1989);Higgins,D.Gら.,Comput.Appl.Biosci.8:189−191(1992))によって記載され、LASERGENEバイオインフォマティクス演算スイート(DNASTAR Inc.)のMegAlign v8.0プログラムにある。多重アラインメントのデフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergen Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUB)。Clustal Wプログラムを使用した配列のアラインメント後、同プログラムの「配列距離」表を見ることで、「%同一性」を得ることが可能である。
その他の種からの同一または同様の機能または活性を有するポリペプチドを同定する上で、多くのレベルの配列同一性が有用であることを当業者は良く理解している。%同一性の有用な例としては、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%が挙げられ得るが、これに限定されるものではなく、または25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%などの25%〜100%の任意の整数百分率が、本発明を説明する上で有用なこともある。適切な核酸断片は、上の相同性を有するだけでなく、典型的に少なくとも50個のアミノ酸、好ましくは少なくとも100個のアミノ酸、およびより好ましくは少なくとも150個のアミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
「配列分析ソフトウェア」という用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析に有用なあらゆるコンピュータアルゴリズム、またはソフトウェアプログラムを指す。「配列分析ソフトウェア」は市販されることもあり、または独立して開発されることもある。典型的な配列分析ソフトウェアとしては、1.)プログラムのGCGスイート(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,WI);2.)BLASTP,BLASTN,BLASTX(Altschulら,J.Mol.Biol.,215:403−410(1990));3.)DNASTAR(DNASTAR,Inc.Madison,WI);4.)Sequencher(Gene Codes Corporation,Ann Arbor,MI);および5.)Smith−Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111−20.Editor(s):Suhai,Sandor.Plenum:New York,NY)が挙げられるが、これに限定されるものではない。本出願の文脈内では、特に断りのない限り、分析のために配列分析ソフトウェアが使用される場合、分析結果は、言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくものと理解される。本明細書での用法では、「デフォルト値」とは、ソフトウェアを初期化した際に、初めからロードされる値またはパラメータのあらゆる組を意味する。
本明細書で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当該技術分野で周知であり、Sambrook,J.and Russell,D.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2001);およびSilhavy,T.J.,Bennan,M.L.and Enquist,L.W.,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1984);およびAusubel,F.M.et.al.,Short Protocols in Molecular Biology,5thEd.Current Protocols,John Wiley and Sons,Inc.,N.Y.,2002に記載される。
本発明は、キシロース含有培地中で発酵させると改善されたキシロース利用を有する、キシロース利用細菌、特にザイモモナス属(Zymomonas)またはザイモバクター属(Zymobacter)の改変細胞に関する。典型的にバイオマスの前処理および糖化によって生成されるバイオマス加水分解産物を含む培地における、生体触媒発酵によるエタノール生産改善の難しい課題は、キシロースの最適な利用を得ることである。キシロースは、加水分解リグノセルロース系バイオマス中の主要な五炭糖の1つであり、もう1つはアラビノースである。出願人らは、リボース−5−リン酸イソメラーゼの発現増大と組み合わされた、非制限的キシロースイソメラーゼ活性の存在下における、内在性pnp遺伝子の改質が、キシロース利用細胞中におけるキシロース利用の効率増大をもたらし、したがってキシロース含有培地中で発酵させた場合に、より高いエタノール収量をもたらすことを発見した。
内在性pnp遺伝子修飾
本発明は、修飾内在性pnp遺伝子を有する、改変キシロース利用ザイモモナス属(Zymomonas)またはザイモバクター属(Zymobacter)細胞を対象とする。内在性pnp遺伝子のコード領域は、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ活性があるタンパク質をコードする。コードされたタンパク質は、ポリリボヌクレオチドヌクレオチジルトランスフェラーゼとも称される。内在性pnp遺伝子のコード領域中の修飾は、下述するようにさらに改変された改変ザイモモナス属(Zymomonas)の細胞中で、キシロース利用を改善することが、本明細書で分かった。
ポリヌクレオチドホスホリラーゼまたはポリリボヌクレオチドヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性があるタンパク質をコードすると同定されたザイモモナス属(Zymomonas)またはザイモバクター属(Zymobacter)のあらゆる遺伝子が、本明細書に記載されるような修飾のための標的内在性pnp遺伝子を提供してもよい。ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ZM4株のpnpコード領域は、配列番号1の配列を有する。ザイモモナス属(Zymomonas)のその他の株からの既知の内在性pnpコード領域は、配列番号1と、99%(Z.モビリス(Z.mobilis)NCIMB 11163;配列番号3)、98%(Z.モビリス(Z.mobilis)ATCC 10988;配列番号5)、および83%(Z.モビリス亜種ポマセアエ(Z.mobilis pomaceae)ATCC 29192;配列番号7)の同一性がある配列を有する。これらの配列のいずれかを、またはこれらの配列のいずれか1つと少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%の同一性があり、ポリヌクレオチドホスホリラーゼまたはポリリボヌクレオチドヌクレオチジルトランスフェラーゼをコードすると同定された任意の配列を、下述するような修飾のための標的として使用してもよい。BLAST分析または当業者に良く知られているその他の配列比較分析を使用して、追加的な標的内在性pnp遺伝子配列を同定してもよい。
本細胞中では、pnpコード領域が修飾されて3’末端コード領域が短縮され、天然にコードされたタンパク質との比較で、C末端トランケート型タンパク質発現がもたらされる。ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)の天然にコードされたポリヌクレオチドホスホリラーゼは、配列番号2、4、6、8のいずれかの約748個のアミノ酸のタンパク質であり、またはこれらの配列のいずれか1つと少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%同一性があって、ポリヌクレオチドホスホリラーゼまたはポリリボヌクレオチドヌクレオチジルトランスフェラーゼと同定された、あらゆる配列のタンパク質である。一実施形態では、修飾pnpコード領域から発現されたトランケート型タンパク質は、ポリヌクレオチドホスホリラーゼをコードする内在性遺伝子によってコードされる天然N末端アミノ酸である、N末端アミノ酸配列の少なくとも約350個のアミノ酸を保持する。トランケート型タンパク質は、少なくとも約350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550。560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、または710個の天然N末端アミノ酸を保持する。
一実施形態では、内在性pnpコード領域に対する遺伝子修飾は、融合タンパク質が生じるように、トランケート型天然コード領域に隣接してその枠内に、非天然アミノ酸のコード配列を付加する。例えば在性遺伝子によってコードされない、追加的な約1〜約20個のアミノ酸のコード領域を、トランケート型天然コード領域に隣接してその枠内に付加し、C末端に最高約20個の非天然アミノ酸を有する融合タンパク質を生成してもよい。次にC末端トランケート型タンパク質は、融合タンパク質の一部となる。様々な実施形態において、C末端に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上の非天然アミノ酸があってもよい。ポリヌクレオチドホスホリラーゼをコードする内在性遺伝子の遺伝子修飾に起因してもよい融合タンパク質のいくつかの非制限的例としては、1)709個の天然N末端アミノ酸を保持して14個の追加的なC末端アミノ酸を含む(配列番号9);2)695個の天然N末端アミノ酸を保持して2個の追加的なC末端アミノ酸を含む(配列番号10);3)368個の天然N末端アミノ酸を保持して10個の追加的なC末端アミノ酸を含む(配列番号11);および4)32個の天然N末端アミノ酸を保持して17個の追加的なC末端アミノ酸を含む(配列番号12)タンパク質が挙げられる。
内在性pnpコード領域は、当業者に知られている任意の方法によって、上述したように修飾されてもよい。典型的にコード領域は、pnpコード領域部分であり周囲の隣接ゲノムDNAを含んでもよい、組換え標的化DNA配列によって標的とされる。組換え標的化DNA配列は、相同的組換えによって、それらと境を接するDNA配列の内在性pnp遺伝子への挿入を誘導する。一実施形態では、境を接するDNA配列は、相同的組換えによる組み込みに続いて、上述したような天然pnpコード領域内の位置にある読み枠内にあるようデザインされた、最高約20個のアミノ酸のコード配列を含む。代案としては、相同的組換えを使用して、上述したようなC末端トランケーションがあるタンパク質を生じるようにデザインされたコード領域で、天然pnpコード領域全体を置き換えてもよい。さらに、置換コード領域は、上述したようなタンパク質のC末端に追加的な非天然アミノ酸をコードして、融合タンパク質の生成をもたらしてもよい。
改変キシロース利用ザイモモナス属(Zymomonas)またはザイモバクター属(Zymobacter)
キシロース代謝経路を含有するザイモモナス属(Zymomonas)またはザイモバクター属(Zymobacter)細胞中で、内在性pnp遺伝子を修飾して、エタノールの生産のためのキシロース利用能力を与える。ザイモバクター・パルマエ(Zymobacter palmae)は、ザイモモナス属(Zymomonas)について下述されるように、Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼおよびエノラーゼプロモーターを使用して、キシロース利用のための遺伝子を発現させることにより、キシロース利用のために改変されたエタノール産生細菌である(Yanase et al.Applied and Environmental Microbiology(2007)73:2592−2599)。
Z.モビリス(Z.mobilis)などのザイモモナス属(Zymomonas)株が、キシロースをエタノールに発酵するために改変されている。米国特許第5,514,583号明細書、米国特許第5,712,133号明細書、米国特許第6,566,107号明細書、国際公開第95/28476号パンフレット、Feldmann et al.((1992)Appl Microbiol Biotechnol 38:354−361)、およびZhang et al.((1995)Science 267:240−243)に記載されるように、キシロース代謝に関与する4種の酵素の発現のために、典型的に4つの遺伝子がZ.モビリス(Z.mobilis)に導入され、キシロース代謝経路(図1の太字)が形成される。これらとしては、キシロースのキシルロースへの変換を触媒するキシロースイソメラーゼと、キシルロースをリン酸化してキシルロース−5−リン酸を形成するキシルロキナーゼとをコードする、遺伝子が挙げられる。ペントースリン酸経路の2つの酵素であるトランスケトラーゼとトランスアルドラーゼもさらに発現され、これらはキシルロース−5−リン酸を中間体に変換し、それはペントース代謝を解糖エントナー・ドウドロフ(Entner−Douderoff)経路に連結して、キシロースのエタノールへの代謝を可能にする(図1を参照されたい)。これらの酵素をコードするDNA配列は、腸内細菌、およびある種の酵母や真菌などのキシロースを代謝できる多数の微生物のいずれかから得られてもよい。コード領域起源としては、キサントモナス属(Xanthomonas)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エシェリキア属(Escherichia)、ロドバクター(Rhodobacter)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、アセトバクター属(Acetobacter)、グルコノバクター(Gluconobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、サルモネラ属(Salmonella)、シュードモナス属(Pseudomonads)、およびザイモモナス属(Zymomonas)が挙げられる。大腸菌(E.coli)のコード領域が、典型的に使用される。
内在性遺伝子は、キシロース発酵経路の一部を提供してもよく、またはキシロース代謝に有用な酵素活性があるタンパク質を提供する、任意の公知の遺伝子操作技術によって改変されてもよい。例えば、内在性トランスケトラーゼは、キシロース利用経路の作成において、その他の導入された酵素活性を補足してもよい。
天然基質でないキシロースのようなその他の糖類を利用するようにさらに改変されたザイモモナス属(Zymomonas)またはザイモバクター属(Zymobacter)株もまた、検討中のプロセスで使用してもよい。例は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第5843760号明細書に記載される、アラビノース利用について改変されたZ.モビリス(Z.mobilis)株である。株をその他の追加的な方法で修飾して、キシロース利用およびエタノール産生を改善してもよい。
RPIの発現増大
リボース−5−リン酸イソメラーゼ(RPI)活性発現増大のために、本細胞をさらに改変する。RPIは、リブロース−5−リン酸とリボース−5−リン酸の相互変換を触媒する(図1を参照されたい)。RPIの発現増大は、参照によって本明細書に援用する、国際公開第2012/006061号パンフレットとして公開された、同一譲受人同時係属米国特許出願公開第13/161734号明細書で開示され、リブロースの生成低下に付随するキシロース利用の効率増大を与える、RPIの発現増大が開示されている。
RPIの発現増大は、国際公開第2012006061号パンフレットとして公開された、米国特許出願第13/161734号明細書で開示されるように、ザイモモナス属(Zymomonas)中においてリボース−5−リン酸イソメラーゼ活性があるあらゆるタンパク質またはポリペプチドを使用して、達成してもよい。リボース−5−リン酸イソメラーゼ活性を有するポリペプチドは、EC 5.3.1.6のEC分類を有する。RPI−AおよびRPI−Bと称される、2群のリボース−5−リン酸イソメラーゼ酵素がある。RPI−B酵素は、糖リン酸イソメラーゼのRpiB/LacA/LacBファミリーに属する。大腸菌(E.coli)は、双方の種類のRPIタンパク質を有する。Z.モビリス(Z.mobilis)は、RPI−Aとアノテートされた単一RPIタンパク質を有する。しかしZ.モビリス(Z.mobilis)RPIタンパク質は、大腸菌(E.coli)RPI−Aタンパク質(20%)よりも大腸菌(E.coli)RPI−Bタンパク質(36%)に近い配列同一性を有する。国際公開第2012/006061号パンフレットとして公開された、米国特許出願第13/161734号明細書で開示されるRPIのさらなる分析は、Z.モビリス(Z.mobilis)をRPI−B群に分類する。
本細胞中で使用してもよいRPIタンパク質の配列は、Z.モビリス(Z.mobilis)および大腸菌(E.coli)RPIタンパク質(それぞれ配列番号14および16;それぞれコード領域配列番号13および15)によって例示されるように、非常に多様である。本微生物で使用してもよいRPIタンパク質は、バイオインフォマティクス解析を使用して同定してもよい。プロファイル隠れマルコフモデルに基づく構造/官能基バイオインフォマティクス解析を使用した同定(HMMERソフトウェアパッケージのhmmsearchアルゴリズム;Janelia Farm Research Campus,Ashburn,VAを使用する)、活性部位残基同定、および追加的なアミノ酸同定スクリーニングは、国際公開第2012/006061号パンフレットとして公開された、米国特許出願第13/161734号明細書の実施例8に記載される。
これらの基準に適合して、本微生物で使用してもよいRPI−AおよびRPI−Bタンパク質の例は、参照によって本明細書に援用する、米国特許公開公報第20120156746A1号明細書として公開された、米国特許出願第13/161734号明細書に記載される。追加的なRPIは、当業者に周知であるように、および上述したように、文献内で、およびイオインフォマティクスデータベース内で、容易に同定されてもよい。バイオインフォマティクスを使用したタンパク質および/またはコード配列の同定は、典型的に、RPIアミノ酸配列または本明細書で提供されるようなコード配列による、公的に利用可能なデータベースのBLAST(上述)検索の手段による。同一性は、GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.1、およびGonnet 250シリーズのタンパク質重量マトリックスのデフォルトパラメータを使用して、アラインメントのClustal W法に基づく。
本細胞中では、遺伝子修飾を欠く細胞中のリボース−5−リン酸イソメラーゼ活性との比較で、リボース−5−リン酸イソメラーゼ活性を増大させる、遺伝子修飾が起きる。RPI活性の発現増大は、宿主細胞中で活性である、リボース−5−リン酸イソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードする、単離DNA分子を発現することで、得られてもよい。リボース−5−リン酸イソメラーゼ活性がある有用なタンパク質は、EC分類EC 5.3.1.6に属し、上述のリボース−5−リン酸イソメラーゼAおよびリボース−5−リン酸イソメラーゼBタンパク質を含む。
細胞中で酵素の活性を増大させる任意の方法を使用して、RPI活性を増大させてもよい。このような方法は当業者に良く知られており、コード遺伝子コピー数の増大、および/または高度発現プロモーターを含有する遺伝子による発現の増大が挙げられる。内在性RPIコード領域の発現増大、および/または導入された異種RPIコード領域の発現増大のために、本株を改変して酵素活性の増大を与えてもよい。さらに、変異、そして発現した変異遺伝子のスクリーニングによって、活性増大を有する細胞を同定することで、RPI活性を増大してもよい。
典型的に、RPIの発現増大は、キメラ遺伝子またはオペロン中で、プロモーターと作動可能に連結するRPIをコードするDNA分子による形質転換によって、達成される。使用してもよいRPIのコード配列としては、上述のRPI−AおよびRPI−Bタンパク質をコードするあらゆる配列が挙げられる。
異種コード領域を使用する場合、当業者に良く知られているように、標的宿主細胞中における最大の発現のために、配列をコドン最適化してもよい。天然開始コドンがGTGであれば、タンパク質の発現増大のために、それをATGに変化させてもよい。細菌中における遺伝子発現方法は、当該技術分野で周知である。細菌中の遺伝子の発現は、典型的に、対象コード領域と作動可能に連結するプロモーターと、転写ターミネーターとを要求する。使用してもよいプロモーターは、Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(GAPプロモーター;Pgap)、Z.モビリス(Z.mobilis)エノラーゼ遺伝子のプロモーター(ENOプロモーター;Peno)、およびアクチノプラネス・ミズーリエンシス(Actinoplanes missouriensis)キシロースイソメラーゼをコードする遺伝子のプロモーター(GIプロモーター、Pgi)など、ザイモモナス属(Zymomonas)またはザイモバクター属(Zymobacter)細胞中で発現されるプロモーターである。使用してもよい、特に高度発現されるプロモーターは、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,998,722号明細書で開示されるような、高度発現を引き起こす変異がある、Pgapプロモーターである。
RPI発現のためのキメラ遺伝子またはオペロンは、典型的にさらなる操作のために、ベクター中で構築され、またはそれに転移される。ベクターは、当該技術分野で周知である。特定のベクターは、広範な宿主細菌中で自己複製でき、接合によって転移され得る。pRK404および3つの関連ベクター:pRK437、pRK442、およびpRK442(H)の完全なアノテートされた配列が入手できる。これらの誘導体は、グラム陰性細菌における遺伝子操作の有益なツールであることが判明している(Scott et al.,Plasmid50(1):74−79(2003))。
ザイモモナス属(Zymomonas)中での発現に特に有用であるのは、参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,514,583号明細書に記載されるpZB188などの、大腸菌(E.coli)とザイモモナス属(Zymomonas)の双方で自己複製し得るベクターである。ベクターは、細胞内自律複製のためのプラスミドと、細菌ゲノムに組み込まれるコンストラクトを保有するためのプラスミドとを含んでもよい。DNA組み込みのためのプラスミドは、トランスポゾン、標的細菌ゲノムと相同的な核酸配列領域、または組み込みを支持するその他の配列を含んでもよい。追加的なタイプのベクターは、例えばEPICENTRE(登録商標)から市販される株を使用して生成された、トランスポソームであってもよい。所望の標的宿主と所望の機能に適するベクターを、どのように選択するかは良く知られている。
凍結解凍形質転換、カルシウム媒介形質転換、電気穿孔、または接合を使用するなどの周知の方法によって、RPIコード領域を含んでなるキメラ遺伝子を有するベクターを導入することで、細菌細胞を改変してもよい。本明細書に記載されるように、RPI酵素の発現を増大させることで、改善されたキシロース利用のために改変されるあらゆる細菌細胞は、株を改変するための形質転換の標的宿主細胞である。特に適切な宿主細胞は、ザイモモナス属(Zymomonas)およびザイモバクター属(Zymobacter)である。導入されたキメラ遺伝子は、安定複製型プラスミド上で細胞中に維持されて、または導入に続いてゲノムに組み込まれてもよい。
細菌細胞ゲノム中に組み込まれたRPIキメラ遺伝子またはオペロンがある株を改変するために、相同的組換え、トランスポゾン挿入、またはトランスポゾーム挿入などの当該技術分野で周知の方法を使用してもよい。相同的組換えでは、標的組み込み部位側面に位置するDNA配列は、スペクチノマイシン耐性遺伝子またはその他の選択可能なマーカー、および発現のためのRPIキメラ遺伝子と境を接して配置され、選択可能なマーカーおよびRPIキメラ遺伝子の標的ゲノム部位への挿入をもたらす。さらに、選択可能なマーカーは、対応する部位特異的リコンビナーゼ発現後、耐性遺伝子がゲノムから切除されるように、部位特異的組換え部位と境を接してもよい。
さらに、より高度に発現されるプロモーターで、内在性RPI発現遺伝子のプロモーターを置換して、細胞中のRPI活性を増大させてもよい。これは、上述したようなベクターおよび方法を使用する、相同的組換えによって達成してもよい。
キシロースイソメラーゼ活性
本細胞は、限定的でないキシロースイソメラーゼ活性レベルを有する。図1に示されるキシロース利用機能およびエタノール生成経路について、キシロースイソメラーゼ(XI)活性が律速段階でない場合、それは制限的でない。キシロースイソメラーゼ活性の増大が、キシロース利用およびエタノール生成を改善しない場合、キシロースイソメラーゼ活性は制限的でない。この状況は、1つまたは複数のその他の経路段階が制限的であることを示唆する。本明細書で分かったように、本明細書の実施例11に記載される、キシロース、NADH、MgSO4、トリエタノールアミン、およびソルビトールデヒドロゲナーゼを含むアッセイを使用して評価されたZW658細胞中のキシロースイソメラーゼ活性は、約0.25μモルの生成物/mgタンパク質/分である。本明細書の実施例3に記載されるように、このレベルのキシロースイソメラーゼ活性は、ZW658株中で制限的でない。本明細書のザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)株の構築セクションに記載されるように、ZW658株は、本明細書で使用されるZW801−4株の前駆体である。一実施形態では、非制限的XI活性は、本明細書の実施例11に記載されるアッセイを使用した、無細胞抽出物中の測定で、約0.25μモルの生成物/mgタンパク質/分を超える。非制限的XI活性は、約0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、または0.5μモルの生成物/mgタンパク質/分を超えてもよい。
XI活性が細胞中で制限的である場合、XI酵素の発現レベルを増大させることで、またはより高活性のXI酵素の発現を導入することで、細胞を改変して非制限的XI活性を有するようにしてもよい。発現レベルの増大は、XIをコードする遺伝子のコピー数を増大させ、またはより高活性のプロモーターを使用して、XI酵素を発現させるなど、当業者に知られているあらゆる方法によってもよい。
例えばXIコード領域は、非変異ロモーターとの比較で発現レベルが増大している変異プロモーターを使用して、発現させてもよい。変異高度発現プロモーターの一例は、米国特許第7,989,206号明細書で開示され、本明細書でSuperGAPプロモーター(PgapS)と称される、Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の変異プロモーターである。
複数コピーの、または変異高度発現プロモーターの発現によって、高活性を提供してもよいキシロースイソメラーゼ酵素は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,998,722号明細書に記載されるもののいずれかである。その中で開示されるように、キシロースイソメラーゼ酵素はEC 5.3.1.5に属し、(RPIについて上述された)プロファイルHMMを使用して同定されてもよく、さらに4つの触媒部位アミノ酸が、キシロースイソメラーゼに特徴的であることが分かった。
代案として、またはこれに加えて、一般に使用される大腸菌(E.coli)XI中よりも、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞中でより高い活性を有するXI酵素を発現することにより、高いXI活性を得てもよい。参照によって本明細書に援用する、同一譲受人同時係属米国特許出願公開第20110318801号明細書は、EC 5.3.1.5と同定され、I群に属するキシロースイソメラーゼ酵素が、II群に属する大腸菌(E.coli)XIよりも高い活性を有することを開示する。さらに、上述したような変異高度発現プロモーターからI群XIを発現させて、宿主細胞中で高いXI活性を得てもよい。
米国特許出願第20110318801号明細書で開示されるI群キシロースイソメラーゼは、以下の基準の少なくとも1つによって定義される、I群に属するキシロースイソメラーゼタンパク質を指す:a)それは、米国特許出願第20110318801号明細書の実施例4の分子系統学的バイオインフォマティクス解析を使用して作成される、A.ミズーリエンシス(A.missouriensis)XIを含む50%の配列一致度の閾値分類に含まれる;b)それは、実質的に、米国特許出願第20110318801号明細書の実施例4の分子系統学的解析から判定された、I群およびII群XIセットのGroupSim解析を使用して同定された、特異性決定位置(SDP)のI群のアミノ酸に適合する;および/またはc)それは、米国特許出願第20110318801号明細書の実施例4に記載されるようにして作成されたプロファイル隠れマルコフモデルを使用してクエリーした際に、1E−15以下のE値を有する。例えばアクチノプラネス・ミズーリエンシス(Actinoplanes missouriensis)からのXI(例えば配列番号18)は、I群に属すると同定され、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)細胞中で発現させると、それは同様に発現された大腸菌(E.coli)XIよりも高い活性を提供する。
キメラ遺伝子、ベクター、変換、組み込み、コドン最適化、およびXI発現は、上でRPIについて記載されるようであり、当業者によく知られている。
RPEの発現増大
一実施形態では、リブロース−リン酸3−エピメラーゼ(RPE)活性の発現増大のために、本細胞をさらに改変させる。RPEは、D−リブロース5−リン酸およびD−キシルロース−5−リン酸の相互変換を触媒して(図1を参照されたい)、EC 5.1.3.1に分類される。遺伝子修飾を欠く細胞中のRPE活性との比較で、細胞中でRPE活性を増大させる少なくとも1つの遺伝子修飾が起きる。発現増大のための修飾は、RPIについて上述したとおりであり、RPE活性があるEC 5.1.3.1に属するあらゆる酵素を使用してもよい。例えばZ.モビリス(Z.mobilis)RPE(配列番号20;コード配列配列番号19)の追加的なコピーを細胞中で発現させてもよく、またはRPEコード領域を高度発現プロモーターから発現させてもよい。
改善されたキシロース利用株の発酵
本改変キシロース利用ザイモモナス属(Zymomonas)またはザイモバクター属(Zymobacter)細胞を発酵で使用して、エタノールを生産しても良い。一例として、発明のZ.モビリス(Z.mobilis)株によるエタノールの生産が記載される。
エタノールの生産のために、RPI活性増大、非限定的XI活性、および内在性pnp遺伝子修飾を有する組換えキシロース−利用Z.モビリス(Z.mobilis)を、キシロース含有培地に接触させる。キシロースは、唯一の糖であってもよいが、典型的に、培地は、キシロースおよびグルコースを含む糖類の混合物を含有する。培地は、加工セルロース性またはリグノセルロース性バイオマスに由来する糖を含む、バイオマス加水分解産物を含有してもよい。
混合糖類濃度が、増殖を阻害するように高い場合、同一譲受人米国特許第7,629,156号明細書で開示されるように、培地は、ソルビトール、マンニトール、またはその混合物を含む。ガラクチトールまたはリビトールが、ソルビトールまたはマンニトールを置き換えてもよく、またはそれと組み合わせられてもよい。Z.モビリス(Z.mobilis)細胞は培地中で増殖して発酵が起きて、エタノールが生産される。(嫌気性、微有酸素性、または微好気性発酵などの条件を含んでもよい)発酵は、空気、酸素、またはその他のガスの補足なしに、少なくとも約24時間実施され、30時間以上実施されてもよい。最大エタノール生産に達するタイミングは、発酵条件次第で変動する。典型的に、培地中に抑制物質が存在する場合、より長い発酵時間を要する。発酵は、約4.5〜約7.5のpHで、約30℃〜約37℃の温度で実施されてもよい。
Z.モビリス(Z.mobilis)細胞は、実験室規模発酵槽内において、および商業的量のエタノールが生産されるスケールアップ発酵中でキシロースを含む混合糖類を含む培養されてもよい。エタノールの商業生産が所望される場合、多様な培養手順が適用されてもよい。例えば本Z.モビリス(Z.mobilis)細胞からの大規模生産は、バッチおよび連続培養手順の双方で生産されてもよい。古典的バッチ培養法は、培地組成物が培養開始時に設定されて、培養工程において人為的変更を受けない閉鎖系である。したがって培養工程開始時に所望の生物を培地に接種して、系に何も添加せずに、増殖または代謝活性を生じさせる。しかし典型的に、「バッチ」培養は、炭素源添加に関してバッチであり、pHおよび酸素濃度などの要素を制御する試みが頻繁になされる。バッチ系では、システムの代謝産物およびバイオマス組成は、培養を停止させる時点まで常に変化する。バッチ培養内では、細胞は、静的な遅滞期から高い対数増殖期へ、そして最後に、増殖速度が減退または停止する静止期へと減速する。処置を施さない場合、静止期にある細胞はやがて死滅する。いくつかのシステムでは、対数期にある細胞が、往々にして最終産物または中間体の生産の大半に関与する。その他のシステムでは、静止期または対数期後期の生産が得られ得る。
標準バッチ系の変法は、流加系である。流加培養工程もまた、本Z.モビリス(Z.mobilis)細胞の増殖に適し、培養の進行と共に基材が徐々に添加されることを除いては、典型的なバッチ系を構成する。流加バッチ系は、異化代謝産物抑制が細胞の代謝を阻害する傾向があって、培地中に限定量の基質を有することが望ましい場合に、有用である。流加バッチ系の実際の基質濃度の測定は困難であるので、pH、およびCO2のような排ガスの分圧などの測定可能要素の変化に基づいて推定される。バッチおよび流加培養法は一般的で、当該技術分野で周知であり、例は、参照によって本明細書に援用する、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,Crueger,Crueger,and Brock,Second Edition (1989)Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA、またはDeshpande,Mukund V.,Appl.Biochem.Biotechnol.,36,227,(1992)にある。
エタノールの商業生産はまた、連続培養で達成されてもよい。連続培養は、バイオリアクターに定められた培養液が継続的に添加される開放系であり、同時に等量の馴化培地が、加工のために取り出される。連続培養は、概して細胞が主に対数増殖期にある、一定の高い液相密度に細胞を維持する。代案としては、固定化細胞を用いて連続培養を実施してもよく、その中では炭素および栄養素が継続的に添加されて、有価生成物、副産物または老廃物が細胞集団から継続的に取り出される。細胞固定化は、当業者に知られているように、天然および/または合成材料から構成される幅広い固体支持体を使用して、実施されてもよい。
連続または半連続培養は、細胞増殖または最終産物濃度に影響を及ぼす、1つの要素またはいくつもの要素の調節を可能にする。例えば1つの方法は、炭素源または窒素レベルなどの制限的栄養物質を定率に保ち、全てのその他のパラメータを加減させる。その他の系では、培地濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、増殖に影響を及ぼすいくつかの要素を継続的に変更し得る。連続系は、定常状態増殖条件を維持するように努め、したがって培地の抜き取りに起因する細胞損失は、培養中の細胞増殖率と平衡状態になくてはならない。連続培養工程のために栄養素と増殖因子を調節する方法、ならびに産物生成率を最大化する技術は、工業微生物学の技術分野で周知であり、多様な方法が前出のBrockに詳述される。
エタノール生産に特に適するのは、以下のような発酵計画である。軌道振盪機内で約150rpmで振盪しながら、約30℃〜約37℃において、振盪フラスコ内の半天然培地中で、本発明の所望のZ.モビリス(Z.mobilis)細胞を増殖させて、次に同様の培地を含有する10Lの種発酵槽に移す。種培養は、OD600が3〜6になるまで種発酵槽内で嫌気的に培養されて、発酵パラメータがエタノール生産のために最適化される生産発酵槽に移される。種培養タンクから生産タンクに移される典型的な種菌体積は、約2%〜約20%v/vの範囲である。典型的な発酵培地は、リン酸カリウム(1.0〜10.0g/L)、硫酸アンモニウム(0〜2.0g/L)、硫酸マグネシウム(0〜5.0g/L)などの最少培地成分と、酵母抽出物または大豆ベースの製品などの複合窒素源(0〜10g/L)とを含有する。ソルビトールまたはマンニトールが、約5mMの最終濃度で培地中に存在する。バッチ添加された最初の炭素源(50〜200g/L)の枯渇に際し、炭素源を提供する、キシロースと、グルコース(またはスクロース)などの少なくとも1つの追加的な糖とを含む混合糖類を、発酵容器に絶えず添加して、エタノールの割合と力価を最大化する。炭素源供給速度を動的に調節して、培養が、酢酸などの有毒副産物の蓄積をもたらし得る過剰なグルコースを蓄積していないことを確実にする。利用基質から生成するエタノール収量を最大化するために、最初にバッチ添加される、あるいは発酵工程において供給される、リン酸量によって、バイオマス成長を制限する。発酵は、(水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムなどの)苛性溶液と、硫酸またはリン酸のいずれかを使用して、pH5.0〜6.0に制御される。発酵槽の温度は、30℃〜35℃に制御される。起泡を最小化するために、消泡剤(シリコーンベース、有機ベースなどの任意のクラス)を必要に応じて容器に添加する。それに対する抗生物質耐性マーカーが株中にある、カナマイシンなどの抗生物質を任意選択的に使用して、汚染を最小化してもよい。
任意の上述の条件の組、およびさらに当該技術分野で周知の条件のバリエーションが、キシロース利用組換えザイモモナス属(Zymomonas)細胞によるエタノール生産のための適切な条件である。
本発明を以下の実施例でさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しながら、例証としてのみ提供されるものと理解すべきである。上の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的特性を見極め得て、その精神と範囲を逸脱することなく、本発明に様々な変更と修正を加えて、それを様々な用途と条件に適応させ得る。
一般方法
本明細書で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当該技術分野で周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)(以下「Maniatis」);およびSilhavy,T.J.,Bennan,M.L.and Enquist,L.W.,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984);およびAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,GreenePublishingAssoc.and Wiley−Interscience,Hoboken,NJによる出版(1987)に記載される。
略称の意味は、次の通り。「kb」はキロベースを意味し、「bp」は塩基対を意味し、「nt」はヌクレオチドを意味し、「hr」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「sec」は秒を意味し、「d」は日を意味し、「L」はリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「pmol」はピコモルを意味し、「Cm」はクロラムフェニコールを意味し、「Cmr」または「Cm−R」はクロラムフェニコール耐性を意味し、「Cms」はクロラムフェニコール感受性を意味し、「Specr」または「Spec−R」はスペクチノマイシン耐性を意味し、「Sps」はスペクチノマイシン感受性を意味し「XI」はキシロースイソメラーゼであり、「XK」はキシルロキナーゼであり、「TAL」はトランスアルドラーゼであり、「TKT」はトランスケトラーゼであり、「OD600」は600nmの波長で測定された光学濃度を意味し、「PCR」はポリメラーゼ連鎖反応を意味し、「kDa」はキロダルトンを意味し、「g」は重力定数を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kbp」はキロ塩基対を意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを意味し、および「GC」はガスクロマトグラフィーを意味し、「RM」は10g/Lの酵母抽出物に加えて2g/LのKH2PO4を含有する富栄養培地を意味し、「MM」は10g/Lの酵母抽出物、5g/Lのトリプトン、2.5g/Lの(NH4)2SO4、および0.2g/LのKH2PO4を含有する接合培地を意味する。
Z.モビリス(Z.mobilis)の形質転換
本質的に米国特許第5,514,583号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載されるようにして、電気穿孔を使用して、自己複製型および非複製型プラスミドDNAをZ.モビリス(Z.mobilis)に導入した。簡単に述べると、50μlの形質転換反応は、10%(v/v)グリセロール中に、約1010個の細胞/mlと、大腸菌(E.coli)SCS110から単離された約0.5〜2.0μgの非メチル化プラスミドDNAとを含有した。対照反応は同じように処理されたが、いかなるプラスミドDNAも導入されなかった。電気穿孔装置の設定は、16kv/cm、200Ω、および25μFであり、キュベットのギャップ幅は0.1cmであった。電気穿孔に続いて、MMG培地(50g/Lのグルコース、10g/Lの酵母抽出物、5g/Lのトリプトン、2.5g/Lの(NH4) 2SO4、0.2g/LのK2HPO4、および1mMのMgSO4)で希釈して、細胞を30℃で回収してから、示されるように抗生物質添加または無添加の1.5%寒天(MMG寒天プレート)を含有するMMG培地上に、形質転換反応を播種した。30℃において嫌気性チャンバー内で、コロニーが出現するまでプレートを培養した。追加的な詳細は、以下の実施例に記載される。
振盪フラスコ実験
特に断りのない限り、下述する全ての実験は、30℃において、唯一の炭素源としてグルコースまたはキシロースを含有する合成培地を使用して、振盪フラスコ(15mlの緩く栓をした円錐型試験管)内で実施した。mRM3−G10培地は、10g/Lの酵母抽出物、2g/LのKH2PO4、1g/LのMgSO4 (7H2O)、および100g/Lのグルコースを含有する。mRM3−X10培地は同一であるが、それはグルコースの代わりに100g/Lのキシロースを含有する。細胞成長は、時間の関数として、600nmにおける光学濃度変化を追跡して分光光度法でモニターした。本文および図の説明で、「OD」または「OD600」は、600nmにおける光学濃度を意味する。振盪フラスコ増殖調査中の表示される時点において、屈折率検出器を装着したAgilent 1100(Hewlett−Packard、Palo Alto、CA)を使用したHPLC分析のために、培養物の1.0mlアリコートを取り出して、発酵ブロス中に存在するグルコース、キシロース、リブロース、およびエタノールの濃度を測定した。HPLC分析に先だって、遠心分離によって細胞を取り出し、0.22μm酢酸セルロースSpin−X遠心管フィルター(Costar、カタログ番号8160)を通して上清を濾過し、小型粒子を除去した。0.6ml/分の流速、および移動相として0.01NのH2SO4を使用して、均一濃度条件下、55℃で稼働するAminex HPX−87Hカラム(Bio−Rad)上で化合物を分離した。既知濃度の標品を使用して対象ピークを定量化し、全ての結果をg/Lで表した。
ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)株の構築
野性型親株ZW1から開始する、キシロース利用組換え株ZW801−4の構築の詳細な説明は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,741,119号明細書に提供される。ZW801−4株は、ZW658株に由来するZW800株に由来し、全ての株は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,741,084号明細書に記載される。ZW658は、キシロースイソメラーゼ(xylA)、キシルロキナーゼ(xylB)、トランスアルドラーゼ(tal)、およびトランスケトラーゼ(tkt)をコードする、4つのキシロース利用遺伝子を含有する、2つのオペロン、PgapxylABおよびPgaptaltktを、逐次遺伝子転位事象を通じて、大腸菌(E.coli)遺伝子からのコード領域と共に、ZW1(ZM4株の改名;ATCC31821)のゲノムに組み込み、引き続いてキシロース含有選択培地上で適応させてX13L3株を作成し、それをZW641と改名することで構築した。キシロース含有増殖培地上におけるZW641のさらなる適応からはZW658が生じ、それはキシロース中ではるかにより良く増殖して、ブダペスト条約の下にATCCPTA−7858として寄託された。参照によって本明細書に援用する、同一譲受人米国特許第7,989,206号明細書で開示されるように、ZW658は、exylAコード領域を発現するプロモーター(Pgap)中の点変異が原因で、はるかにより高いキシロースイソメラーゼ活性を有する。本明細書で、801GAPプロモーターまたはSuper GAPプロモーターまたはPgapSのいずれかと称されるこのプロモーター(配列番号21)は、ZW641中の天然Pgap (641GAPプロモーター)との比較で、配列番号21中の位置116において「G」の代わりに「T」を有する。PgapSは、Z.モビリス(Z.mobilis)中のPgapよりも3〜4倍高い発現強度を有する。
ZW658中で、宿主媒介二重交差相同的組換えを使用して、グルコースフルクトース酸化還元酵素をコードする遺伝子を挿入的に不活性化し、スペクチノマイシン耐性を選択可能なマーカーとして、ZW800株を作り出した。loxP部位と境を接するスペクチノマイシン耐性マーカーは、Creリコンビナーゼを使用して部位特異的組換えによって除去され、ZW801−4株が作成された。
酵素分析法のためのザイモモナス属(Zymomonas)の無細胞抽出物の調製
細胞を50mlのRM+2%グルコース中で、30℃で一晩、1.0〜1.2のOD600に増殖させた。細胞を4℃において、4500rpmで10分間遠心分離して収集した。上清を廃棄して、細胞ペレットを25mlの氷冷超音波処理緩衝液(10mMトリス、pH7.6、10mMのMgCl2)で洗浄し、4500rpmで10分間の遠心分離がそれに続いた。1mMのジチオスレイトールを添加した2.0〜2.5mlの超音波処理緩衝液に、ペレットを再懸濁した。500μLのアリコートを4℃においてエッペンドルフ遠心分離機内で1分間遠心分離した。上清は大部分を廃棄し、約10〜20μLを残してペレットが乾かないようにした。細胞を凍結し、アッセイするまで約−80℃で保存した。アッセイに先だって、細胞を解凍して、1mMのジチオスレイトールを添加した、500μLの超音波処理緩衝液に再懸濁した。Branson sonifier 450を使用して、45秒間にわたり62%の負荷サイクルおよび出力制御2で、混合物を2回超音波分解し、超音波処理の合間にサンプルを約3〜5分間放冷した。4℃において14,000rpmで60分間にわたり、微量遠心管内でサンプルを遠心分離した。上清を新しい遠心管に移して、4℃で保存した。タンパク質濃度を測定するために、Pierce BCAアッセイを使用した。
実施例1
pMODlinker−Spec−GapRPiの構築
pMODLinker−Spec−GapRpi(図2)は、Z.モビリス(Z.mobilis)RPI発現カセットと、loxが側面に位置するSpec耐性カセットとを含有するトランスポゾンを作成するために使用し得るプラスミドである。Z.モビリス(Z.mobilis)RPI発現カセットは、プラスミドpZB188aadA/Gap/Zymo RPI/EcoliSLをテンプレートとして使用して、PCRによって作成された。後者のプラスミドは、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,989,206号明細書に記載される。それは、(5’から3’方向で)完全長641GAPプロモーター配列、Z.モビリス(Z.mobilis)RPI遺伝子(配列番号13)の読み取り枠全体、および大腸菌(E.coli)XylA/Bオペロンの遺伝子間領域に存在するXylAステムループ領域からなる、Z.モビリス(Z.mobilis)リボース5−リン酸イソメラーゼ(RPI)のための発現カセットを含有する。上述のRPI発現コンストラクト全体(配列番号22)は、プラスミドpZB188aadA/Gap/Zymo RPI/EcoliSLの固有のNcoIおよびNotI部位の間に位置する。
これもまた米国特許第7,989,206号明細書に記載されるpMOD−Linker−Spec中に、この発現カセットを含有するPCR生成DNA断片を挿入した。pMOD−Linker−Specは、市販されるベクターpMOD(商標)−2<MCS>トランスポゾン構築ベクター(カタログ番号MOD0602;EPICENTRE(登録商標)Biotechnologies,Madison,WI)から誘導された。元のマルチクローニング部位は、AsiSi、FseI、およびSbfIに対する固有の制限酵素認識部位によって置換した。スペクチノマイシン(Specr)耐性を与えて両端に野性型loxP部位を有するDNA断片を、AsiSIおよびFseI部位の間に挿入して、pMOD−Linker−Specを作成した。
pMOD−Linker−SpecをSbfIおよびFseIで順次消化し、3.6kbの大型ベクター断片を1%アガロースゲルから精製した。次にプライマーPPI−F(配列番号23)およびプライマーPPI−R−SbfI(配列番号24)を使用して、Z.モビリス(Z.molilis)RPIキメラ遺伝子を、その付随する641GAPプロモーターおよび大腸菌(E.coli)XylAターミネーターと共に、プラスミドpZB188aadA/Gap/Zymo RPI/EcoliSLからPCR増幅した。得られた0.96kbpのPCR産物もまた、FseIおよびSbfIで切断して、次にFseI/SbfI−消化されたpMOD−Linker−Specベクター断片に、精製DNA断片をライゲートして、図2に示されるpMODlinker−Spec−GapRpiを得た。
実施例2
ZW801−4中のRPIの過剰発現:I株の作成および特性解析
pMODlinker−Spec−GapRpiから作成されたトランスポゾン(実施例1)をZW801−4株(一般方法を参照されたい)に導入して、RPI発現を増大させた。トランスポソームへの転換後に、DNA中に無作為に組み込まれたこのプラスミド中の転位因子は、ベクター中の2つのモザイク末端(ME)に位置するDNA断片全体であり、それはZ.モビリス(Z.mobilis)RPI発現カセットとSpecr−カセットの双方を含む。トランスポソームは、EZ::TN(商標)pMOD(商標)−2<MCS>トランスポゾン構築ベクター(カタログ番号MOD0602)のためのEPICENTRE(登録商標)取扱説明書に概説される一般プロトコルを使用して、本質的に米国特許第7、989,206号明細書に記載されるようにして、生体外で作成した。得られたトランスポソームをZW801−4細胞に電気穿孔し、スペクチノマイシン(200μg/ml)を含有するMMGおよびMMX(50g/Lのグルコースの代わりに50g/Lのキシロースを添加した同一培地)寒天プレート上で、形質転換体を回収した。転位因子はDNAに無作為に挿入され、それは、組み込まれたRPI遺伝子の発現レベルを変化させる有害な遺伝子破壊事象および/または位置効果をもたらし得るので、予備実験を実施して、どの形質転換体を探究するのが最適かを判断した。このようにして、試験培地としてmRM3−X10を使用した振盪フラスコ実験(一般方法を参照されたい)で増殖させるために、mRM3−G10/Specプレートからの30個のコロニーと、mRM3−X10/Specプレートからの6個のコロニーをスクリーニングし、最大最終OD値に増殖した3つの株(B9、B11、およびI株)をさらなる特性解析のために選択した。B9およびB11株はMMG/Specプレートから回収され、I株はMMX/Specプレートから回収された。
参照によって本明細書に援用する、米国特許第20120156746A1号明細書として公開された、同一譲受人同時係属米国特許出願公開第13/161734号明細書では、RPIがZW801−4中におけるキシロース代謝の律速酵素であり、この株中でマルチコピープラスミドからRPIを発現することが、mRM3−X10を用いた振盪フラスコ実験における、より良い増殖およびより迅速なキシロース利用をもたらしたことが開示されている。追加的なRPIによって細胞はより高い最終OD値に増殖したが、対数増殖速度の変化はわずかまたは皆無であった。ZW801−4中のRPIのプラスミド過剰発現はまた、生成するリブロースの量を低下させ、これはキシロースからのエタノール生成に、より高い代謝収率をもたらした。
図3に示されるように、ZW801−4ゲノムに無作為に組み込まれたRPI発現トランスポゾンの単一コピーを有する試験株について、同様の結果が得られた。B9、B11、およびI株の種培養をZW801−4対照と共に、mRM3−X10中で増殖させ、振盪フラスコ内のmRM3−X10に、各培養について約0.1の初期OD600値で接種するのに使用した。培養物を30℃で増殖させ、OD600によって増殖について、そして一般方法に記載されるようにしてキシロース、リブロース、およびエタノールについて、経時的にアッセイした。図3Aに示されるように、RPI発現トランスポゾンを含有する3つの株は、親株ZW801−4よりもほぼ50%高いODに増殖した。図3Bに示されるように、それらはまた、対照株よりもはるかに迅速にキシロースを消費して、より少ないリブロースを産生し、54時間目には、B9、B11、およびI株では、ほぼ全てのキシロースが消失した一方で、親株ZW801−4は、約75%のキシロースのみを消費した。71時間目において、ZW801−4では、なおも約8g/Lの残留キシロースがあった。RPI発現トランスポゾンがある3つの株はまた、より多くのキシロースを消費したにもかかわらず、ZW801−4よりも少ないリブロースを産生し;72時間目における増殖培地中のリブロースの最終濃度は、他の3つの株では3.2〜3.6g/Lであったのに対して、ZW801−4では5.3g/Lであった。
同じ4つの株をmRM3−G10培地中で30℃で増殖させて、OD600によって増殖について経時的にアッセイした(図3C)。キシロースで得られた結果とは対照的に、グルコース上で増殖させた場合、4つの株は全て類似した増殖速度を示し、OD600は、8時間目に約1、20時間目には5.2〜5.5に達した。この結果は、B9、B11、およびI株を用いたキシロース振盪フラスコ実験における増殖に対する、RP1過剰発現の促進作用が、炭素源依存性であることを示唆する。
実施例3
B9、B11、およびI株中における大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼの過剰発現
上述したようなグルコースおよびキシロースを用いた振盪フラスコ実験において、B9、B11、およびI株は、非常に同じ様に機能したが、引き続く実験は、I株と、組み込まれたRPI発現トランスポゾンのコピーもまた有する他の2株との違いが重要であることを明らかにした。この違いは、3つの株中におけるキシロースイソメラーゼのより高い発現が、改変キシロース経路を通じて、炭素流の速度にさらなる増大をもたらすかどうかを評価することで認められた。
キシロースイソメラーゼは、ZW641株中におけるキシロース代謝の律速酵素であったが、それは大腸菌(E.coli)XylA/Bオペロンを駆動するPgapプロモーター中の点変異によってZW658株中で克服され、それはキシロースイソメラーゼの発現増大をもたらした(一般方法の株構築を参照されたい)。米国特許第20120156746A1号明細書として公開された、同一譲受人同時係属米国特許出願公開第13/161734号明細書で開示されるように、引き続く実験は、ZW658およびZW801−4(グルコースフルクトース酸化還元酵素遺伝子不活性化を有するZW658誘導体)の双方におけるキシロース代謝の新しい律速段階が、RPIであることを確立した。
これらの観察に基づいて、B9、B11、およびI株中のRPIの発現増大によって提供されるRPI支障の除去が、キシロースイソメラーゼのより高レベルの発現を可能にして、キシロース経路を通じて炭素流の速度にさらなる増大をもたらすかどうかを判定することが興味深かった。この仮説を検証するために、我々は、プラスミドpMODlinker−Cm−801GapXylAから作成されたトランスポゾンを使用した。このプラスミドは、2つのlox部位の間に、Spec耐性カセットの代わりにCm耐性カセットを有すること以外は、米国特許第7,989,206号明細書に記載される、pMOD−Linker−Spec−801GapXylAと同一である。pMOD−Linker−Spec−801GapXylAは、Pgap、XylAコード領域、およびXylAとXylB読み取り枠間のステムループ領域を含有するZW801−4から得られた、付加されたDNA断片がある、pMOD−Linker−Specである。したがってXylAを駆動するプロモーターは、それをより高活性にするGからTへの点変異を位置116に有する801gapプロモーター(配列番号21)であり、ZW658中の大腸菌(E.coli)XylA/Bオペロンを駆動する変異プロモーターと同一である。
米国特許第7,989,206号明細書に詳述されるように、Cm耐性カセットに加えて、pMODlinker−Cm−801GapXylA(下で「801GapXylA−Cmトランスポゾン」と称される)から作成されたトランスポゾンは、801GAPプロモーター、大腸菌(E.coli)XylA読み取り枠、および停止コドンにすぐ続く安定化XylAステムループ領域からなる、上のキシロースイソメラーゼ発現カセットを含有する。801GapXylA−Cmトランスポゾンを実施例2に記載されるようにトランスポソームに変換して、I株に電気穿孔した。クロラムフェニコール(120μg/ml)を含有するMMG寒天プレート上で、形質転換体を選択した。
予備研究では、801GapXylA−Cmトランスポゾンによる形質転換反応から回収された、10個の無作為に選択されたCmrコロニーを、30℃におけるmRM3−X10中での増殖について、OD600を周期的に測定する振盪フラスコ実験で試験した。10個の株は全て、キシロース上で、親株よりも良く増殖した(初期増殖速度および最終OD値に基づく)が、その中で、I(cm1)、I(cm2)、I(cm3)、I(cm4)、I(cm5)、I(cm8)、およびI(cm9)の7つのみが、さらなる特性解析のために選択された。これらの株をより詳細に調べるために、mRM3−X10中で増殖させた種培養を使用して、振盪フラスコ実験を繰り返し、ZW801−4およびI株を対照として含めた。初期ODは全例で0.075であり、2つの対照株は二連で試験した。
先の実験と一致して、図4Aに示されるように、RPIのより高い発現レベルを有するI株は、キシロース中で、ZW801−4よりも良く増殖した。I株の複製の成長曲線は、重ねることができ、区別できないことに留意されたい。増殖培地中のリブロースの最終濃度は、56時間目に、I株では1.8および1.9g/Lであり、3.4および4.2g/LであったZW801−4よりも低かった。I株中のキシロースイソメラーゼの過剰発現は、キシロース上での増殖を大幅に改善した。801GapXylA−Cmトランスポゾンを含有する7つの株は全て、ZW801−4およびI株よりもはるかに迅速に増殖し、それらが異なるトランスポゾン挿入部位を有するという事実にもかかわらず、それらの成長曲線は実質的に同一であった。これは実際には、I(cm1)〜I(cm6)挿入部位のDNA配列決定によって確認された。トランスポゾン挿入部位は、他の4つの株では決定されなかったが、Z.モビリス(Z.mobilis)の極めて低い形質転換頻度と、使用されたEPICENTRE(登録商標)処置のために、それらもまた恐らくは異なるゲノムの位置にある。
I株中のキシロースイソメラーゼ酵素活性の発現増大はまた、対数増殖速度も増大させ、これは生体量のより迅速な蓄積と、より迅速なキシロース利用とをもたらした。801GapXylA−Cmトランスポゾンを含有する7つの株のリブロース終点値は、2.9〜3.7g/Lの範囲であった。これらの値は、ZW801−4が産生したリブロース量と同様であったが、キシロースイソメラーゼを過剰発現した株が、56時間目に培地中のキシロースを全て消費した一方で、ZW801−4は80%未満を消費したので、それらは実際には、消費糖基質ベースではより低かった。
これらの結果は、キシロースイソメラーゼが、I株中におけるキシロース代謝の律速酵素であることを明らかに示す。それらは、I株が、キシロースイソメラーゼのはるかにより高い発現レベル維持するのに十分なRPI酵素活性を有することもまた、明らかにする。染色体中の異なる位置に、801GapXylA−Cmトランスポゾンを含有する7つのI株誘導体が全て、キシロース含有培地中で同一の動態で増殖したという事実は、トランスポゾンによって引き起こされる遺伝子破壊事象および/または位置効果が、観察された表現型(すなわちキシロース中のより良い増殖)に顕著に寄与しないことを強く示唆する。この結論はまた、mRM3−G10を用いた30℃での振盪フラスコ実験において、トランスポゾンを含有する7つの株が全て、ZW801−4およびI株と全く同様に良く増殖している、図4Bに示される実験によっても支持される。
上の観察は、次のようにして、pH制御条件を使用して確認された。振盪フラスコ実験中に、増殖培地のpHは、1pH単位を超えて低下し得て、特にキシロースが唯一の炭素源である場合、これはZ.モビリス(Z.mobilis)増殖に対する阻害効果を有する。この問題を回避するために、図5に示されるpH制御バイオリアクター実験を実施した。キシロースイソメラーゼを過剰発現するI株誘導体は全て、振盪フラスコ内で同じく挙動したので、その内のI(cm1)およびI(Cm9)の2つのみをこの実験で使用した。振盪フラスコ内で、30℃において、mRM3−X10中で種培養を約0.5のODに増殖させ、バイオリアクター内の開始ODは0.035であった。バイオリアクターはmRM3−X10もまた含有し、pH対照として2NのKOHを使用して、温度およびpHは、それぞれ30℃および5.8の一定に維持された。
I株およびZW801−4の成長曲線は、pH制御条件下では非常に良く似ていたが(図5)、実験の終わり頃にI株がわずかにより良く増殖したことが明らかであった。しかし興味深いことに、どちらの株も、これらの条件下では、より多量のリブロースを産生し;ZW801−4およびI株の終点値は、それぞれ1.92および1.16g/Lであった。これらの観察は、増殖pHが5.8に維持される場合は、ZW801−4中のキシロース代謝にとって、RPIが大きな支障でないことを示唆する。これらは、ZW801−4中の天然RPI遺伝子が、このような条件下で、既存のキシロースイソメラーゼ活性レベルと、ほぼ同じペースを保つこともまた示す。それでもなお、図5に示される成長曲線から、増殖培地のpHがpH5.8で一定に保たれた場合でさえ、I株中で過剰発現されたキシロースイソメラーゼが、キシロース代謝を大幅に改善したことは明らかであった。
801GapXylA−Cmトランスポゾンはまた、I株に対して使用されたのと同じ処置を使用して、B9およびB11株に電気穿孔され、30℃におけるmRM3−X10を用いた振盪フラスコ実験で、これらの各株の10個の一次形質転換体をキシロース中での増殖について試験した(図6)。形質転換体のいくつかは、キシロース中で、親株よりも良く増殖したが、どちらの場合も、結果は、I株で得られたもの程には劇的でなかった。異なる形質転換体の間には高度の変動もあり、遺伝子破壊事象および/または挿入位置効果が、観察された表現型に寄与することが示唆された。これらの観察は、I株中のRPI発現トランスポゾンの染色体の位置に、RPIの発現レベル上昇に加えて、キシロース増殖および代謝にとって有益な、何か重大なものがあるかもしれないことを示唆した。
I株中のRPI発現トランスポゾンの挿入部位は、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノム(GenBank受入番号AE008692)のnts 543506と543507の間であることが、DNA配列決定によって判定された。挿入領域の配列決定は、トランスポゾンの組み込みが、ポリリボヌクレオチドヌクレオチジルトランスフェラーゼをコードするpnp遺伝子の読み取り枠の3’末端に、フレームシフトを引き起こしたことを示した。野性型pnp遺伝子産物と、I株について予測されたpnp遺伝子産物とのアラインメントを図7に示す。変異タンパク質が、天然タンパク質の最後の39個のアミノ酸残基を欠損しており(N末端から開始して709個のアミノ酸を保持する)、そのC末端に14個の新しいアミノ酸を有することに留意されたい(配列番号9)。この機能未知タンパク質が機能性であるのか、もしそうならば、それは、RPI過剰発現に加えて、I株表現型にどの程度寄与し得るのかは分かっていない。この答えにかかわりなく、上の結果は、pnpコード領域内において、I株中と同一位置でRPIを過剰発現することは、キシロース中におけるより良い増殖をもたらして、キシロースイソメラーゼのより高い発現レベルを可能にするのに効果的であることを示す。
実施例4
標的組み込みを使用するキシロース利用Z.モビリス(Z.mobilis)株構築のためのベクターコンストラクト
ZW1株に、キメラxylA、xylB、tal、およびtkt遺伝子を導入することによって、新しいキシロース利用Z.モビリス(Z.mobilis)株を構築した。xylB、tal、およびtktコード領域は、一般方法に記載されるZW658株と同じく、大腸菌(E.coli)遺伝子からのものである。xylAコード領域は、アクチノプラネス・ミズーリエンシス(Actinoplanes missouriensis)からのものであり(AMxylA)、それはZ.モビリス(Z.mobilis)中の大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼよりも高活性を有する酵素をコードするとして、参照によって本明細書に援用する、同一譲受人同時係属米国特許出願公開第20110318801号明細書で開示される。AMxylAのコード領域は、Z.モビリス(Z.mobilis)中での発現のためにコドン最適化された(配列番号17)。リボース−5−リン酸−イソメラーゼ(RPI)およびリブロース−リン酸3−エピメラーゼ(RPE)活性を増大させるために、Z.モビリス(Z.mobilis)rpiおよびrpe遺伝子の追加的なコピーもまた導入された。二重乗換え(DCO)変換ベクターをデザインして、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノムの標的領域に、キメラ遺伝子を特異的に組み込んだ。
標準分子組換え方法を使用して、DCO(二重乗換え)自殺組み込みベクターを構築した。Z.モビリス(Z.mobilis)中でキシロースイソメラーゼおよびキシルロースキナーゼを発現するために、10,250bpのDCO自殺ベクターpZX21(配列番号25;図8A)を構築した。このベクターは、大腸菌(E.coli)の複製起点を含有するが、Z.モビリス(Z.mobilis)複製起点を含有しないpBluescript主鎖を有し、したがってそれはZ.モビリス(Z.mobilis)中で増殖し得ず、自殺ベクターとなる。それは、組み込まれる配列の側面に位置して、グルコースフルクトース酸化還元酵素をコードする、Z.モビリス(Z.mobilis)遺伝子からのDNA配列、GFO−LおよびGFO−Rを含有する。Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNAをテンプレートとして使用して、PCRによって双方の断片を合成した。1,186bpのGFO−L断片(配列番号26)は、gforコード配列(配列番号27)の最初の654bp(nt−1〜nt−653)と、533bpの上流ゲノム配列とを含む。1,446bpのGFO−R断片(配列番号28)は、GFORコード配列の最後の480bp(nt−823〜nt−1302)と、966bpの下流ゲノム配列とを含む。GFO−LおよびGFO−R配列は、gfor位置への組み込みを誘導して、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノム中のgforコード配列の断片(nt−655〜nt−822)を置換する。参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,741,119号明細書で開示されるように、これはグルコースフルクトース酸化還元酵素の発現を妨害し、それはキシリトール生成を低下させてエタノール生成を増大させる。
GFO−LとGFO−Rの間のpZX21中の領域は、3つのキメラ遺伝子を含む。1つは304bpのZ.モビリス(Z.mobilis)SuperGAPプロモーター(PgapS;米国特許第7,989,206号明細書に記載される)、1,185bpのA.ミズーリエンシス(A.missouriensis)xylAコード配列(AMxylA)、および5’XbaI部位(ECaraD 3’UTR)がある166bpの大腸菌(E.coli)araD 3’UTRを含有する、1,661bpのキメラxylA遺伝子(配列番号29)である。AMxylAコード領域は、Z.モビリス(Z.mobilis)ZM4(配列番号17)のコドンバイアスに従って、Z.モビリス(Z.mobilis)中での発現のために最適化された。ECaraD 3’UTRは、大腸菌(E.coli)araBADオペロンからのものである。第2の遺伝子は、191bpのPeno、1,455bpの大腸菌(E.coli)xylBコード配列(ECxylB)、および314bpの大腸菌(E.coli)xylB3’UTR(ECxylB 3’UTR)を含有する1,960bpのキメラxylB遺伝子(配列番号30)である。Penoは、Pgapのほぼ28%の活性を有する、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNAからの強力な構成的プロモーターである。第3の遺伝子は、lox部位と境を接する、1,014bpのaadAマーカー(スペクチノマイシン耐性に対する;Spec−R) (配列番号31)である。マーカーは、Creリコンビナーゼを発現することで、組み込み後に除去し得る。
Z.モビリス(Z.mobilis)中でトランスアルドラーゼ、トランスケトラーゼ、リボース−5−P−イソメラーゼ、およびD−リブロース−P−3−エピメラーゼを発現するために、12,198bpのDCOシャトルベクターpZX52(配列番号32;図8B)を構築した。このベクターは、ベクターpZB188に基づく、ザイモモナス属(Zymomonas)−大腸菌(E.coli)シャトルベクター(Zhangら(1995)Science267:240−243;US5,514,583)であり、それは、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞中でベクターが自己複製できるようにする複製起点を含有する2,582bpのZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNA断片と、909bpの大腸菌(E.coli)複製起点(Ori)とを含む。それは、大腸菌(E.coli)またはZ.モビリス(Z.mobilis)形質転換体のいずれかの選択のための、911bpのクロラムフェニコール耐性マーカー(Cm−R)を有する。pZX52は、組み込まれる配列の側面に位置する、乳酸デヒドロゲナーゼをコードする、Z.モビリス(Z.mobilis)ldhA遺伝子、LDH−L(875bp;配列番号33)およびLDH−R(1,149bp;配列番号34)からのDNA配列を含有する。これらの配列は、ヌクレオチド493と494の間で、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノム中のldhAコード配列(配列番号35)への組み込みを誘導し、したがって乳酸デヒドロゲナーゼの発現を妨害する。
LDH−LとLDH−Rの間のpZX52中の領域は、2つのキメラオペロンを含む。第1のものは、Z.モビリス(Z.mobilis)GAPプロモーター(PgapT)の304bpのT−変異、954bpの大腸菌(E.coli)Talコード領域(ECTal)、1,992bpの大腸菌(E.coli)Tktコード領域、および68bpの大腸菌(E.coli)Tkt 3’UTR(ECTkt 3’UTR)を含有する、3,339bpのPgapT−Tal−Tktオペロン(配列番号36)である。このオペロンは、配列番号21の位置83の「G」から「A」への変化と位置285の「T」欠損があるPgapであるPgapTプロモーター(配列番号37)以外は、天然の大腸菌(E.coli)Tal−Tktオペロンと同一である。別のキメラオペロンは、191bpのPeno、第1のコドンがATGに変化した471bpのZ.モビリス(Z.mobilis)Rpiコード配列(配列番号65)(ZMRpi)、663bpのZ.モビリス(Z.mobilis)Rpeコード配列(ZMRpe)、および35bpの大腸菌(E.coli)xylA3’UTR(ECxylA 3’UTR)を含有する、1,443bpのPeno−Rpi−Rpeオペロン(配列番号38)である。
pZX6と命名された別のDCOシャトルベクター(配列番号39;図8C)が、構築された。この12,704bpのベクターは、ポリヌクレオチドホスホリラーゼをコードするZ.モビリス(Z mobilis)pnp遺伝子からの配列で、LDH−LおよびLDH−R配列が置換された、pZX52の修飾である。1,318bpのPNP−L断片(配列番号40)が、nt−767〜nt−2,084のpnpコード配列(配列番号1)の断片である一方で、1,225bpのPNP−R断片(配列番号41)は、pnpコード配列の最後の59bp(nt−2189〜nt−2247)と、1,166bpの下流ゲノム配列とを含む。したがってpZX6は、pnpコード配列末端近くの内在性pnp遺伝子へのPgapT−Tal−TktオペロンおよびPeno−Rpi−Rpeオペロンの組み込みを誘導して、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノム中のpnpコード配列(nt−2,084〜nt−2,188)断片を置き換えることができる。
実施例5
キシロース利用Z.モビリス(Z.mobilis)株の開発
ZW1株は、2つのプラスミドによって2段階で形質転換された。150rpmで振盪しながら、mRM3−G5(1%酵母抽出物、15mMのKH2PO4、4mMのMgSO4、および50g/Lのグルコース)中で、OD600値が5に近くなるまで、種細胞を30℃で一晩培養して、ZW1のコンピテント細胞を作成した。細胞を収集して、新鮮培地に0.05のOD600値に再懸濁した。初期から中期対数期(0.5に近いOD600)と同一条件下で、細胞を培養した。細胞を収集して、氷冷水で2回、次に氷冷10%グリセロールで1回洗浄した。得られたコンピテント細胞を収集し、氷冷10%グリセロールに、OD600値が100近くになるよう再懸濁した。Z.モビリス(Z.mobilis)の形質転換には、非メチル化DNAが必要であるため、DCOプラスミドpZX21、pZX52、およびpZX6を大腸菌(E.coli)SCS110コンピテント細胞(Stratagene,La Jolla,CA)にそれぞれ形質転換した。各形質転換では、1個の形質転換細胞コロニーを10mLのLB−Amp100(100mg/Lアンピシリンを含有するLBブロス)中で一晩37℃で培養した。QIAprep Spin DNA Miniprepキット(Qiagen)を使用して、10mLの培養物からDNAを調製した。
1MM電気穿孔キュベット(VWR,West Chester,PA)内で、およそ1μgの非メチル化pZX21 DNAを50μLのZW1コンピテント細胞と混合した。BT720 Transporater Plus(BTX−Genetronics,San Diego,CA)を使用して、プラスミドDNAを2.0KVで細胞中に電気穿孔した。1mLのMMG5培地(10g/Lのグルコース、10g/Lの酵母抽出物、5g/Lのトリプトン、2.5g/Lの(NH4) 2SO4、2g/LのK2HPO4、および1mMのMgSO4)中で形質転換細胞を30℃において4時間で回収し、AnaeroPack(Mitsubishi Gas Chemical,New York,NY)を入れた嫌気ジャー内で、MMG5−Spec250プレート(250mg/Lスペクチノマイシンおよび15g/L寒天添加MMG5)上で3日間、30℃で増殖させた。
pZX21はDCO自殺ベクターであるので、生き残ったSpecRコロニーは、gfor遺伝子座に組み込まれたPgapS−AMxylA::Peno−ECxylB::Spec−R断片を有した。コロニーを新鮮MMG5−Spec250プレート上に画線塗抹して増殖させ、次にPCRを実施して、キメラ遺伝子の組み込みを検査した。第1のPCRは、順方向プライマーara285(配列番号42)と逆方向プライマーara120(配列番号43)を使用して、pZX21中でGFO−L断片によって媒介される二重交差型組換えを調べた。ara285プライマーは、ゲノム中のGFO−L断片の494bp上流であるZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノム配列の断片に一致した一方で、ara120はpZX21中のPgapSの最後の18bpとAMxylAの最初の17bpを補完した。組み込みが設計通りに起きたならば、PCRは、形質転換体からの1,903bpの断片を増幅する。第2のPCRは、順方向プライマーara46(配列番号44)と逆方向プライマーara274(配列番号45)を使用して、pZX21中でGFO−R断片によって媒介される二重交差型組換えを調べた。ara46プライマーは、pZX21中のSpecR遺伝子の末端近くの配列である一方で、ara274は、GFO−R断片の83bp下流のZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNA断片を補完する。このPCRは、成功裏の組み込みを有するコロニーからの1,864bpの断片を増幅する。どちらの検査も予測されたPCR産物を生じ、したがって正確な導入遺伝子組み込みが確認された。得られた株は、ZW1−pZX21と命名された。
第2のステップでは、ZW1−pZX21をpZX52で形質転換して、MMG5−Spec250−CM120(120mg/Lクロラムフェニコール添加MMG5−Spec250)プレート上で選択した。pZX52は、プラスミド選択のためのCmRマーカーと、マーカーのない組み込み断片(PgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpe)とを有するDCOシャトルベクターであるので、回収されたコロニーは、増殖したpZX52プラスミド中に、先にモビリス(Z.mobilis)ゲノム中に組み込まれたコンストラクトPgapS−AMxylA::Peno−ECxylB::Spec−RintheZだけでなく、組み込まれないコンストラクトPgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpeもまた含有するはずである。これらの形質転換体は、キシロース利用経路に必要な全ての遺伝子を有するはずである。導入遺伝子が全てZ.モビリス(Z.mobilis)中で機能することを示すために、キシロース中で10個の選択コロニーに48時間増殖アッセイを実施した。アッセイでは、14mLのFalconポリプロピレン丸底管内の2mLのmRM3−G5−Spec200−CM120(200mg/Lスペクチノマイシンおよび120mg/Lクロラムフェニコール添加mRM3−G5)に、選択コロニーを接種して、150rpmで振盪しながら30℃で一晩培養した。管にはきっちり栓をしたが、細胞増殖および発酵中の圧力放出のために、23G1針を使用して蓋の上部に孔を開けた。細胞を収集して、MRM3X10(100g/Lキシロース添加MRM3)で洗浄し、mRM3−X10−Spec200−CM120(200mg/Lスペクチノマイシンおよび120mg/Lクロラムフェニコールを含有するmRM3−X10)に再懸濁して、0.1の開始OD600にした。5mLの懸濁液を新しい14mLのFalconポリプロピレン丸底管に入れた。管に栓をして、上部に孔を開けた。150rpmで振盪しながら、細胞を30℃で48時間増殖させ、島津UV−1201分光光度計上でOD600を測定した。次に、1mLの培養物を10,000×gで遠心分離して、細胞を除去した。0.22μmのCostarSpin−X遠心管フィルター(Corning Inc,Corning,NY)を通して上清を濾過し、Agilent 1100 HPLCシステム(Agilent Technologies、Santa Clara,CA)上で、55℃で速度0.6mL/分の0.01NのH2SO4と共に、BioRad Aminex HPX−A7Hイオン排除カラム(BioRad,Hercules,CA)に通過させて、キシロースおよびエタノールについて分析した。結果は、10個の形質転換体が全て、エタノール生成のためのキシロース利用経路を獲得したことを示唆した。新しい株は、ZW1−pZX21−pZX52と命名され、培養物の1つをさらなる実験で使用した。
次にPgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpeコンストラクト組み込みのために、ZW1−pZX21−pZX52に3つの形質転換後手順を順次実施した。
(1)株は、キシロース上で適応させた。この手順では、5mLのmRM3−G1X9−Spec200−CM120培地(10g/Lグルコース、90g/Lキシロース、200mg/Lスペクチノマイシン、および120mg/Lクロラムフェニコール添加MRM3)に、ZW1−pZX21−pZX52を懸濁して、0.2のOD600値から開始して、30℃で3〜4倍(0.2〜2のOD600値;1代の継代)に増殖させた。次に培養を開始OD600値に希釈して、さらなる継代のために増殖させた。全部で4代の継代(約15倍の増加)を完了した。
(2)10μLの適応細胞プールを2mLのmRM3−G5−Spec200培地中において、より高温(37℃)で一晩培養することにより、プラスミドキュアリングおよびPgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpeコンストラクトの組み込みを実施した。次に10μLの培養物を2mLのmRM3−G5−Spec200培地中で希釈して、さらなる継代のために増殖させた。37℃でグルコース培地中において、全部で5代の継代を実施した。高温増殖の結果として、集団の大部分は、もはやpZP52プラスミドを保有するはずはないが、PgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpeコンストラクト(選択的マーカーを欠く)が、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノムのldhA遺伝子に組み込まれたはずである。集団の少数が、pZX52を組み込まずに保持することもある。
(3)集団は、2mLのmRM3−X10−Spec200中で、50μLの細胞プールを30℃で一晩培養して濃縮した。濃縮された集団は、MMG5−Spec250プレート上で一晩30℃で増殖させた。個々のコロニーを選択して、MMG5プレートおよびMMG5−CM120プレート上に、複製で画線塗抹した。30℃で一晩の培養後、MMG5上で増殖したがMMG5−CM120上では増殖しなかったコロニーを、さらなるPCR検査のために選択した。第1のPCRは、順方向プライマーara45(配列番号46)と逆方向プライマーara356(配列番号47)を使用して、pZX52中でLDH−L断片によって媒介される二重交差型組換えを調べた。ara45プライマーは、ゲノム中のLDH−L断片の86bp上流のZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNA断片と一致し、ara356はpZX52中のECTalコード領域断片(nt−91〜nt−112)を補完した。組み込みが設計通りに起きたならば、PCRは、コロニーからの1,383bpの断片を増幅する。第2のPCRは、順方向プライマーara354(配列番号48)と逆方向プライマーara43(配列番号49)を使用して、pZX52中でLDH−R断片によって媒介される二重交差型組換えを調べた。ara354プライマーは、pZX52中のZMRpeの3’末端近くの配列である。ara43プライマーは、LDH−R断片の122bp下流のZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNA断片を補完する。組換えが予測されたようであれば、このPCRは、コロニーからの1,468bp断片を増幅する。どちらのPCRも予測されたサイズのDNA断片を生じ、それはPgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpeコンストラクトが、検査されたコロニーの全てに、設計通りに正確に組み込まれたことを立証した。得られたコロニーは、ZW1−X109と命名された。
第2のアプローチでは、ZW1−pZX21株をpZX6DCOシャトルベクターによって形質転換し、適応が10代でなく4代の継代であったこと以外は、ZW1−X109について上述された、3つの形質転換後手順を実施した。したがってPgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpeコンストラクトは、内在性pnp遺伝子の標的とされる。ZW1−X109の構築で説明されるように、3つの形質転換後手順に先だって48時間増殖アッセイを実施して、全ての導入遺伝子が予測されたように機能することを確実にした。3つの形質転換後手順の後、組み込みはまた、PCRによっても検査した。第1のPCRは、順方向プライマーara340(配列番号50)と逆方向プライマーara356(配列番号47)を使用して、pZX6中でPNP−L断片によって媒介される二重交差型組換えを調べた。ara340プライマーは、PNP−L断片の75bp上流であるZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNAに一致する。本明細書で使用されるara356プライマーは、pZX6中のECTalの断片(nt−91〜nt−112)を補完する。PCRは、正確な組み込み事象に対して予測されたように、1,815bpの断片を形質転換体から生じた。第2のPCRは、順方向プライマーara354(配列番号48)と逆方向プライマーara339(配列番号51)を使用して、pZX6中でPNP−R断片によって媒介される二重交差型組換えを調べた。この場合、ara354プライマーは、pZX6中のZMRpeの3’末端近くの配列に一致し、ara339プライマーは、PNP−R断片配列の59bp下流のZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNA断片を補完する。このPCRは、成功裏の組み込みに期待されるサイズである、1,549bpの断片を形質転換体から増幅した。したがってPCR検査は、PgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpeコンストラクトが、検査されたコロニーの全てに正確に組み込まれたことを立証した。この新しい株は、ZW1−X210と命名された。
要約すれば、2つのキシロース利用Z.モビリス(Z.mobilis)株が、野性型ZW1から新規に再構築された。これらはどちらも、gfor遺伝子座に組み込まれたPgapS−AMxylA::Peno−ECxylB::Spec−Rコンストラクトを有した。ZW1−X109株が、ldhA遺伝子座に組み込まれたPgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpeコンストラクトを有した一方で、ZW1−X210株は、内在性pnp遺伝子に組み込まれた同一コンストラクトを有した。どちらの株も、組み込まれたPgapS−AMxylA::Peno−ECxylB::Spec−Rコンストラクト中に、1つのマーカー遺伝子を有し、それはCreリコンビナーゼの導入によって除去し得た。
実施例6
新しいキシロース利用Z.モビリス(Z.mobilis)株の特性解析
実施例5に記載される標準増殖アッセイによって、ZW1−X109およびZW1−X210株がキシロースを発酵する能力を実証した。これらの新しい株の増殖および代謝プロファイルを定量的に判定して、それらをZW1と比較するために、振盪フラスコ発酵アッセイ中でこれらの株を特性解析した。最初にそれらの基礎グルコース代謝を測定するために、MRM3G10を使用してそれらを振盪フラスコ発酵に供した。株を2mLのmRM3−G5−Spec250中、150rpmで振盪しながら、一晩30℃で増殖させた。細胞を収集してmRM3−G10で洗浄し、mRM3G10に再懸濁して、開始OD600を0.1とした。20mLの懸濁液を45mLのねじ蓋付きVWR遠心管に入れて、150rpmで振盪しながら30℃で増殖させた。発酵中のエタノール蒸発に起因する圧力増大を防止するために、蓋をしっかり閉めて、次に1回転分緩めた。時間経過中、0、10、および24時間目に、島津UV−1201分光光度計上でOD600を測定した。各時点で、1mLの培養物を10,000×gで遠心分離して、細胞を除去した。0.22μmのCostar Spin−X遠心管フィルターを通して上清を濾過し、Agilent 1100 HPLCシステム上で、55℃において0.6mL/分の速度で、0.01NのH2SO4と共に、BioRad Aminex HPX−A7Hイオン排除カラムを通過させて分析した。野性型ZW1を抗生物質なしで増殖させ、対照として分析した。図9に示される結果は、各株が、24時間以内に利用可能グルコースを迅速に枯渇して;ZW1−X109およびZW1−X210株(それぞれ図8A、8B)の双方が、ZW1(図8C)と同様にグルコースを利用したことを示す。例えば10時間の発酵後、ZW1−X109はおよそ34.8%のグルコース(102.7g/Lから66.9g/Lへの低下)を利用して、16.4g/Lのエタノール力価と、4.88のOD600値に至るバイオマス成長を維持し;ZW1−X210は、およそ32.1%のグルコース(102.7g/Lから69.7g/Lへの低下)を利用して、15.2g/Lのエタノール力価と、4.68のOD600値に至るバイオマス成長を維持し;ZW1は、およそ33.9%のグルコース(103.1g/Lから68.2/Lへの低下)を利用して、16.4g/Lのエタノール力価と、4.6のOD600値に至るバイオマス成長を維持した。したがってどちらの新しい株も、堅調な基礎グルコース代謝を有した。
各株がキシロースを利用する能力を測定するために、20mLのmRM3−X10中で振盪フラスコ発酵を実施した。OD600値と、キシロースおよびエタノール双方の濃度とを0、24、48、および72時間目に測定した。図10は、ZW1−X109(A)、ZW1−210(B)、およびZW1(C)についての結果の要約である。結果はまた、新しい株が、どちらもキシロースを発酵できることを裏付ける。72時間の発酵後、ZW1−X109は、約64.2%のキシロースを利用して(105.6g/Lから37.8g/Lへの低下)、31.5g/Lのエタノール力価と、3.51のOD600値へのバイオマス成長を維持し;ZW1−X210は、ほぼ全ての利用可能キシロースを利用して(105.6g/Lから1.6g/Lへの低下)、48.5g/Lのエタノール力価と、5.22のOD600値へのバイオマス成長を維持した。しかしZW1は、キシロース代謝経路を欠くために、mRM3−X10中で増殖し得なかった。したがって新しい株の中では、ZW1−X210は、キシロース含有単一糖培地中で、ZW1−X109よりも迅速にキシロースを発酵し得た。ZW1−X109とZW1−X210の間の大きな違いは、PgapT−ECTal−ECTkt::Peno−ZMRpi−ZMRpeコンストラクトが、ZW1−X109ではldhA遺伝子座に挿入され、ZW1−X210では内在性pnp遺伝子に挿入されたことであった。この結果は、Z.モビリス(Z.mobilis)中のpnp遺伝子の中断が、キシロース代謝に利益をもたらし得ることを示唆する。
実施例7
Z.モビリス(Z.mobilis)株中の内在性pnp遺伝子中断のためのベクターコンストラクト
内在性pnp遺伝子の中断が、キシロース代謝に有利かどうかを直接試験するために、標準分子組換え方法によって、図4に示される4つのDCO自殺ベクターを構築した。
pPNP−I(配列番号55;図11A)は、5,548bpのpUC18ベースのDCOベクターである。その主鎖は、653bpの複製起点(pUCOri)と1,144bpのアンピシリン耐性マーカー(Amp−R)とを含有して、ベクターが増殖して大腸菌(E.coli)中で選択されるようにする。pPNP−Iは、911bpのクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm−R)と、内在性pnp遺伝子へのこの遺伝子の組み込みを標的とする側面に位置する配列とを含有する。891bpの上流フランキング配列(配列番号56)は、775bpのPNPi−L配列(nt−1,345〜nt−2,119のpnpコード領域(配列番号1))、9bpの直接反転断片(DR)、19bpのME(モザイク末端)要素、および34bpのLox要素からなる、1,030bpの下流フランキング配列(配列番号57)は、19bpのME要素、9bpの直接反転断片(DR)、および916bpのPNPi−R配列からなる。PNPi−R配列は、pnpコード領域(nt−2,129〜nt−2,244)の最後の116bpと、pnpコード配列下流の800bpのDNA配列を含む。PNPi−LおよびPNPi−Rは、どちらもZ.モビリス(Z.mobilis)ZW1のゲノムDNAから増幅された。pPNP−I中では、PNPi−LおよびPNPi−R配列は、それらの配列間にあるDNA配列のZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムへの組み込みを、二重乗換え相同的組換えを通じて、pnpコード領域のnt−2,119とnt−2,129の間で誘導する。組み込みは、内在性pnp遺伝子を中断して、実施例3に記載されるI株の遺伝子型と同様であり、組み込まれた導入遺伝子は、Rpi::Spec−RでなくCm−Rである。これは、野生型pnpタンパク質生成物(748個のアミノ酸ポリヌクレオチドホスホリラーゼ;配列番号2)よりもアミノ酸が25個短い、実施例3に記載される723個のアミノ酸のトランケート型pnp融合タンパク質産物をもたらす。トランケート型タンパク質は、最初の709個のアミノ酸残基を野生型と共有するが、C末端(配列番号9)に付着する新しい14個のアミノ酸配列を有する。
pPNP−IN(図11B;配列番号58)もまた、6,471bpサイズのpUC18ベースのDCOベクターである。これは、PNPi−LをPNP−Uにより、そしてPNPi−RをPNP−Dにより置換することで、pPNP−Iから直接誘導された。PNP−U(配列番号59)は、pnpコード領域の最初の96bpと、pnpコード領域上流の1,273bpの配列とからなる、1,369bpのZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNA断片である。PNP−D(配列番号60)は、nt−97〜nt−1,347のpnpコード配列の一部を含む1,251bpのZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNA断片である。ベクターpPNP−IN中では、PNP−UおよびPNP−Dは相同的組換え断片であり、それらは、2つの9bpのDR要素間の配列のZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノムへの組み込みを、pnpコード領域のnt−96とnt−97の間で誘導する。組み込みは内在性pnp遺伝子を中断して、野生型pnpタンパク質生成物よりもアミノ酸が699個短い、わずか49個のアミノ酸残基があるトランケート型pnpタンパク質生成物(配列番号12)をもたらす。この短いタンパク質は、最初の32個のアミノ酸残基を野生型と共有して、次にC末端に付着する17個の新しいアミノ酸残基を有する。
pPNP−C(配列番号61、図11C)は、6,342bpのpBluescriptベースのベクターである。その主鎖は、大腸菌(E.coli)中での増殖および選択のための、f1(+)複製部位(f1(+)Ori)、アンピシリン耐性マーカー(Amp−R)、およびpUC複製部位(pUCOri)からなる。ベクター中では、911bpのクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm−R)は、1,318bpのPNP−L断片と1,225bpのPNP−R断片で挟まれるPNP−LおよびPNP−R断片は、Z.モビリス(Z.mobilis)ZW1ゲノムDNAから増幅され、実施例4に記載されるpZX6中のものと同一である。PNP−L断片は、nt−767〜nt−2,084のpnpコード配列の断片である一方で、PNP−R断片は、pnpコード配列の最後の56bp(nt−2189〜nt−2244)、その停止コドン、および1,166bpの下流配列を含む。したがってpPNP−Cは、Cm−Rマーカーのpnpコード領域への組み込みを、nt−2,085およびnt−2,188の間で誘導する。この組み込み部位は、pnpコード配列の3’末端に近く、pPNP−Iの標的組み込み部位の34bp上流である。トランケート型pnpコード領域は、697個のアミノ酸のタンパク質(配列番号10)を生じ、それは野生型よりもアミノ酸残基が51個短く、695アミノ酸残基を野生型と共有して、2個の新しいアミノ酸がC末端にある。
pPNP−Cと同様、pPNP−M(配列番号62;図11D)は、6,322bpのpBluescriptベースのベクターであり、それはまた、f1(+)Ori、Amp−R、およびpUC Oriからなる主鎖配列も有する。しかしpPNP−M中では、911bpのクロラムフェニコール耐性導入遺伝子(Cm−R)は、1,200bpのPNPm−L断片と1,324bpのPNPm−R断片で挟まれる。側面に位置する断片は、どちらもZ.モビリス(Z.mobilis)ZW1ゲノムDNAから増幅された。PNPm−L(配列番号63)が、pnpコード配列上流の96bpのゲノム配列、およびpnpコード配列の最初の1,104bp(nt−1〜nt−1104)を含む一方で、PNPm−R(配列番号64)は、pnpコード配列の最後の1140bp(nt−1,105〜nt−2244)、その停止コドン、および181bpの下流配列を含む。したがってpPNP−Mは、Cm−Rマーカーの内在性pnp遺伝子への組み込みを、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノムのnt−1,104とnt−1,105の間で誘導できる。組み込み部位は、pnpコード配列の中央に近く、pPNP−I組み込み部位の1,015bp上流である。これは、野生型pnpタンパク質生成物よりもアミノ酸が370個短い、トランケート型の378個のアミノ酸のpnpタンパク質生成物(配列番号11)をもたらす。トランケート型タンパク質は、最初の368個のアミノ酸残基を野生型と共有するが、C末端に付着する新しい10個のアミノ酸配列を有する。
実施例8
ZW1−X109株中の内在性pnp遺伝子の中断
内在性pnp遺伝子の中断が、Z.モビリス(Z.mobilis)中のキシロース利用に有利かどうかを判定するために、実施例5に記載されるようにして、pPNP−I、pPNP−C、pPNP−M、およびpPNP−INで、ZW1−X109を別々に形質転換した。4つのベクターは全て自殺ベクターであるので、MMG5−CM120プレート(120mg/Lクロラムフェニコールおよび15g/L寒天添加MMG5)上で、形質転換体を直接選択した。得られた株は、ZW1−X109−PNPi、ZW1−X109−PNPc、ZW1−X109−PNPm、およびZW1−X109−PNPinと命名された。各株の数個のコロニーを新鮮MMG5−CM120プレート上に画線塗抹して、増殖させた。導入遺伝子組み込みは、PCR検査によって確認した。
5個のプライマーをPCR検査で用いた。順方向プライマーara448(配列番号52)は、全てのpPNPプラスミド中でCm−Rマーカーの最初に位置する配列である。逆方向プライマーara339(配列番号51)は、pnp遺伝子下流のZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノム配列断片を補完する。それらは、組換え断片であるpPNP−I中のPNPi−R、pPNP−C中のPNP−R、pPNP−M中のPNPm−R、およびpPNP−IN中のPNP−Dによって媒介される、二重交差型組換えを調べるために使用した。組み込みが成功すれば、これらの2つのプライマーは、ZW1−X109−PNPi株からの2,393bp、ZW1−X109−PNPc株からの2,256bp、ZW1−X109−PNPm株からの3,361、およびZW1−X109−PNPin株からの4,565bpのPCR産物を増幅する。順方向プライマーara340または4R0(それぞれ配列番号50および53)および逆方向プライマーara449(配列番号54)を使用して、組換え断片であるpPNP−I中のPNPi−L、pPNP−C中のPNP−L、pPNP−M中のPNPm−L、およびpPNP−IN中のPNP−Uによって媒介される、二重交差型組換えを調べた。ara340プライマーは、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノムDNA中のPNPi−LおよびPNP−L配列の上流に位置する、pnpコード配列の断片(nt−702〜nt−724)に一致する。4R0プライマーは、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノム配列の断片であり、pnp遺伝子外部にあり、PNPm−LおよびPNP−U配列の上流にある。ara449プライマーは、pPNPプラスミド中のCm−Rマーカー末端の配列を補完する。したがって組み込みが成功した場合、ara340およびara449が、ZW1−X109−PNPi株からの2,551bpのPCR産物、およびZW1−X109−PNPc株からの2,306bpのPCR産物を増幅できる一方で、4R0およびara449は、ZW1−X109−PNPm株からの3,424bpのPCR産物、およびZW1−X109−PNPin株からの2,430bpのPCR産物を増幅できる。新鮮に増殖させ株に、InvitrogeneのPCR Supermixを使用した標準PCR反応を直接実施した。結果は、正確な組み込みを実証した。
実施例9
pnp組み込み株の特性解析
ZW1−X109−PNPi、ZW1−X109−PNPc、ZW1−X109−PNPm、およびZW1−X109−PNPin株を振盪フラスコ発酵中でさらに特性解析し、それらの増殖および代謝プロファイルを判定した。中断されていない内在性pnp遺伝子を含有する親株ZW1−X109を対照として使用した。発酵は、細胞培養の体積を20mLから10mLに減少させ、そのため45mLのVWR遠心管の代わりに、上部にパンチ穴がある14mLの蓋付きFalcon丸底管を使用したこと以外は、実施例6に記載される標準プロトコルに従った。最初の振盪フラスコ発酵は、mRM3−G10中で実施した。発酵の0、10、および24時間目に、島津UV−1201分光光度計上でOD600を測定した一方で、グルコースおよびエタノール濃度は、BioRad Aminex HPX−A7Hイオン排除カラムを使用して、Agilent 1100 HPLCシステムによって測定した。図12でグラフ表示される結果は、4つのpnp−中断株が全て、親株ZW1−X109と同様の基礎グルコース代謝を有したことを示す。例えば10時間の発酵後、ZW1−X109−PNPi(A)は、およそ37.7%のグルコース(120.8g/Lから75.3g/Lへの低下)を利用して、22.9g/Lのエタノール力価と、5.36のOD600値に至るバイオマス成長を維持し;ZW1−X109−PNPc(B)は、およそ37.7%のグルコース(120.8g/Lから75.3g/Lへの低下)を利用して、23.0g/Lのエタノール力価と、4.98のOD600値に至るバイオマス成長を維持し;ZW1−X109−PNPm(C)は、およそ39.1%のグルコース(120.8g/Lから73.6g/Lへの低下)を利用して、23.5g/Lのエタノール力価と、5.14のOD600値に至るバイオマス成長を維持し;ZW1−X109−PNPin(D)は、およそ36.8%のグルコース(120.8g/Lから76.4g/Lへの低下)を利用して、22.6g/Lのエタノール力価と、5.32のOD600値に至るバイオマス成長を維持した。親株ZW1−X109(E)は、およそ39.5%のグルコース(120.8g/Lから73.4g/Lへの低下)を利用して、24.0g/Lのエタノール力価と、5.62のOD600値に至るバイオマス成長を維持した。24時間の発酵後、全てのpnp中断株はグルコースを枯渇させて、58.1g/L近くのエタノール力価と、約7.90のOD600値に至るバイオマス成長を維持した一方で、ZW1−X109もまたグルコースを枯渇させて、57.3g/Lのエタノール力価と、7.64のOD600値に至るバイオマス成長を維持した。
次に上述したように、10mLのmRM3−X10中で振盪フラスコ発酵を実施した。0、24、48、および72時間目に、OD600値とキシロースおよびエタノール双方の濃度を測定した。図13は、結果のグラフを示す。これは、4つのpnp中断株が全て、発酵中で、親株ZW1−X109よりも良くキシロースを利用したことを示す。48時間の発酵後、ZW1−X109−PNPi(A)は、およそ95.5%のキシロース(117.9g/Lから5.3g/Lへの低下)を既に利用して、54.7g/Lのエタノール力価と、5.34に至るOD600値のバイオマス成長を維持した。さらなる24時間の発酵後、それは、1.4g/Lのみを残してキシロースをほぼ使い切り、56.0g/Lのエタノール力価と、5.62に至るOD600値のバイオマス成長を維持した。同じ72時間内に、ZW1−X109−PNPc(B)は、およそ94.2%のキシロース(117.9g/Lから6.8g/Lへの低下)を利用して、53.6g/Lのエタノール力価と、4.64のOD600値に至るバイオマス成長を維持し;ZW1−X109−PNPm(C)は、およそ83.3%のキシロース(117.9g/Lから19.7g/Lへの低下)を利用して、47.5g/Lのエタノール力価と、4.24のOD600値に至るバイオマス成長を維持し;ZW1−X109−PNPin(D)は、およそ79.8%のグルコース(117.9g/Lから23.8g/Lへの低下)を利用して、45.5g/Lのエタノール力価と、4.04のOD600値に至るバイオマス成長を維持した。親株ZW1−X109(E)は、およそ61.7%のキシロース(117.9g/Lから45.1g/Lへの低下)を利用して、34.8g/Lのエタノール力価と、3.26のOD600値に至るバイオマス成長を維持した。この結果もまた、pnpがコードするタンパク質のトランケーションがより少ない、ZW1−X109−PNPiおよびZW1−X109−PNPcなどの株が、ZW1−X109−PNPmおよびZW1−X109−PNPinなどのより大きなトランケーションがある株よりも効率的に、キシロースを利用することを示す。キシロース利用能力でこれらの株を格付けすると、最適を先頭にしてZW1−X109−PNPi、ZW1−X109−PNPc、ZW1−X109−PNPm、ZW1−X109−PNPin、最後にZW1−X109の順となる。
要約すると、本実施例は、Z.モビリス(Z.mobilis)の内在性pnp遺伝子への組み込みが、グルコース代謝に影響しないが、発酵中のキシロース利用を改善することを実証する。
実施例10(比較例)
RPI過剰発現不在下におけるZW801−4中の内在性pnp遺伝子中断
ZW1−X109中のキシロース増殖および代謝に最大の影響を及ぼす2つの自殺コンストラクト(例えばpPNP−IおよびpPNP−C、実施例7に記載される)を使用して、ZW801−4中で内在性pnp遺伝子修飾の効果をアッセイした(一般方法を参照されたい)。実施例8に記載されるように、ZW801−4をこれらの各自殺ベクターで別々に形質転換した。各コンストラクトについて2つの形質転換体を、キシロースを用いた振盪フラスコ実験において評価し、対照としてZW801−4を含めた(これもまた二連で実施した)。増殖培地は、mRM3−X10であり温度は33℃であった。既述のように、各培養サンプルをOD600、キシロース、およびエタノールについてアッセイした。本実験の結果は、図14に示される。pPNP−Iコンストラクトを用いて調製された形質転換体のみが、対照との比較でわずかな改善を示した。pPNP−I自殺コンストラクトのZW801−4染色体による二重交差相同的組換えは、I株中に存在するのと全く同じpnp遺伝子修飾をもたらすことに留意されたい。
実施例11
キシロースイソメラーゼ活性のアッセイ
30℃において、20μLの無細胞抽出物(一般方法を参照されたい)、0.256mMのNADH、50mMのキシロース、10mMのMgSO4、10mMのトリエタノールアミン、および1U/mlのSDH(ソルビトールデヒドロゲナーゼ)を含有する反応中で、ZW658中のキシロースイソメラーゼの活性(一般方法を参照されたい)を測定した。A340は、プレートリーダー上で3〜5分間読み取った。XI活性は、以下のように計算された:
1単位のXIは、30℃で毎分1μモルのD−キシルロース生成に相当する。
U(μモル/分)=勾配(dA340/分)*反応体積(μL)/6220/0.55cm(NADHP−−>NADモル数は1cmキュベット内の各Lあたり各モルあたりの6220A340)(マイクロプレート内ウェルあたり200μLの経路長=0.55cm)
比活性(μモル/分−mg)=μモル/分/タンパク質濃度(mg)
ZW658で測定された活性は、0.25+/−0.033μモルの生成物/mgタンパク質/分であった。