JPWO2010044271A1 - 固定床気液混相反応器及びそれを用いた気液混相反応法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、気液混相反応を行う固定床反応器において、マイクロチャンネルで構成された配管構造を有し、0.0001cm2〜0.008cm2の断面積を有する、単独又は並列な2カ所以上の固定床を有し、当該固定床のほかに、気相分配部、固定床に対する気相導入部、液相分配部、固定床に対する液相導入部、充填物導入部、及び流体合流部を有することを特徴とする充填物構造を有する固定床反応器、上記固定床反応器を使用して、気液混相反応を行う気液混相反応方法、及び、反応の開始及び停止を還元雰囲気にて行う過酸化水素製造方法であり、マイクロチャンネルを用いて、安定、かつ定常的に、気液混相反応を行うことを可能とする新しい固定床気液混相反応器を提供する。

Description

本発明は、気液混相反応を行う固定床反応器、及び気液混相反応方法に関するものであり、更に詳しくは、従来の反応器に比べて、マイクロチャンネルで構成された配管構造を有する固定床反応器であって、気液導入部の構造を改善することにより、気相から液相への物質移動の効率を10〜100倍高効率化することができる固定床気液混相反応器及びそれを用いた気液混相反応法に関するものである。本発明は、例えば、水素及び酸素の混合気体を用いて、安全、かつ定常的に、省エネルギー並びに低環境負荷による直接反応プロセスで、過酸化水素を高効率で製造することを可能とする、固定床気液混相反応器とその気液混相反応法に関する新技術・新製品を提供するものである。
近年、断面積が0.01cm前後、更には、それ以下の微小な細管で構成されたマイクロチャンネルを用いた、連続反応プロセスの開発が精力的に進められている。本技術の特徴は、当該マイクロチャンネルの高い比表面積を活かして、除熱を効率化することで、反応制御性を大幅に向上させること、そして、物質移動の効率化により、反応の効率を向上することにある。
連続反応プロセスにおいて、その反応制御性を、大幅に向上させることができる例として、気相のフッ素を用いた、直接フッ素化反応や、水素及び酸素の反応を、マイクロチャンネルを用いて、効率よく制御した例などが知られている(非特許文献1)。
マイクロチャンネルより構成されるマイクロリアクター内での反応について、マイクロチャンネル内における界面積の増大が物質移動を促進し、反応効率を向上すること、及び反応器の比表面積の増大により温度制御が容易となり、従来技術による反応器では達成できない反応条件や反応選択率を達成できる点に特徴があるとされる。そのため、先行技術では、マイクロリアクター、マクロチャンネルの形状、大きさなどに関する提案がほとんどであり、これらの反応器における、より最適な反応条件や触媒使用環境についての開示は、ほとんどない。
触媒を用いたマイクロリアクターによる製造法として、例えば、オレフィン化合物と過酸化水素からエポキシ化することを特徴とするエポキシ化合物の製造方法が提案されている(特許文献1)。この文献においても、使用される酸化触媒としては、特に限定されず、公知の酸化触媒を用いることができるとされており、更に、オレフィン化合物と、過酸化水素の混合物をマイクロリアクターに供給する際の送液方法についても、特に限定されず、公知の方法を採用できるとされている。しかし、例えば実施例中に開示されている触媒粒径は1ミクロン以下であり、マイクロリアクター中においてかなりの圧力損失を生じることが予想される。反応の安定な運転の観点からは送液方法に特殊な配慮が必要であることは明らかである。
触媒を用いたマイクロリアクターによる製造法として、例えば、アルデヒド化合物又はニトロ化合物を接触水素化することにより穏和な条件で水素化を行う方法が提案されている(特許文献2)。この文献では、マイクロリアクター内で用いられる水素化触媒として、パラジウム触媒、ニッケル触媒、白金触媒、ルテニウム触媒などが挙げられ、水素化触媒については、その平均粒子径が、通常、0.1〜100μm程度、特に1〜50μm程度が好適であるとされ、(触媒の平均粒子径)/(流路の直径)を0.1程度以下、特に0.07以下とすることが好ましいとされているが、水素の流通量に関する開示がなく、反応の効率の観点から水素利用の有効性が問題である。
アルカン又はアラルカンを含有する炭化水素含有流体と酸素源を、内部に触媒が存在するマイクロチャンネルに流して、該炭化水素含有流体と酸素源を該マイクロチャンネル内で温度範囲300〜1000℃で反応させることにより、水と少なくとも一種のアルケン及び/又はアラルケンを生成する技術も提案されている。(特許文献3)。この文献においても、使用する触媒活性物質は、特に制限されず、従来の有効な任意の酸化的脱水素触媒を含むことができるとされ、特に反応効率を高めるための触媒の使用環境に関する開示はない。また、本技術は気相反応を目的反応としており、気液混相反応に対してそのまま適用できるか否かは明らかでない。
次に、水素及び酸素の反応については、過酸化水素の製造プロセスへの応用が期待されている。従来、過酸化水素は、アントラキノン法と呼ばれる製造プロセスにより、製造されている。しかし、この製造プロセスでは、プロセス運転中に、アントラキノンが逐次的に分解し、これが、製品である過酸化水素に混入して不純物が生じるなどの問題点が指摘されており、そのような、不純物を生じない、水素及び酸素による直接反応プロセスへの代替が、長年にわたり検討されている。
現在、商業的に使用される過酸化水素の製造法であるアントラキノン法に、マイクロリアクター技術を適用した例として、例えば、水素化工程を採用することで、従来のアントラキノン法の水素化リアクターよりも高い生産性を与えることが開示されている(特許文献4)。この文献においても、水素化マイクロリアクター中で使用される触媒は、マイクロチャンネル内で適合する如何なるサイズ及び幾何学的形状をもっていてもよいとされ、水素化触媒、また、代替としてマイクロリアクターチャンネル中に充填された、或いは導入された在来の触媒基材担体媒体上に、沈着、分散又は被覆してもよいとされている。本文献においても、特に反応効率を高めるための触媒の使用環境に関する開示はない。また、本技術はアントラキノン法のもつ根本的な問題である、アントラキノンの逐次分解ならびに製品である過酸化水素への混入を解決するものではない。
水素及び酸素を用いた、直接反応プロセスによる過酸化水素の製造では、水素及び酸素のほか、過酸化水素を安定に回収するための微量の安定剤を含有した水溶液、及びパラジウムや金などの貴金属を主成分とした触媒からなる反応系がこれまでに検討されてきた。具体的には、触媒上で、水に溶存した水素及び酸素が反応して、過酸化水素を生成する(非特許文献2)。
当該直接反応プロセスを、産業的に実現していく際には、安全性及び生産性の観点から、幾つかの課題がある。まず、水素及び酸素は、きわめて広い範囲で、爆発性混合気を形成するため、従来技術では、水素分圧を4%以下に絞った条件で、運転する必要があった。また、過酸化水素は、水中に溶存した水素及び酸素の反応により生成するため、おのおのの成分の溶存効率を向上させる必要があった。
このような直接反応プロセスの課題を解決するためには、マイクロチャンネルを用いた、連続プロセス技術が有効であると考えられる。例えば、本発明者らは、シリコン上に、マイクロチャンネルを加工することで、マイクロリアクターを構成し、当該マイクロリアクターのマイクロチャンネル中に、担持パラジウム触媒を充填したマイクロリアクターを構築した。
当該マイクロリアクターは、水素及び酸素の混合気体から、過酸化水素を製造するに際し、水素含有率が、20%〜50%という爆発性条件下にもかかわらず、安全かつ定常的に、過酸化水素を製造する上で有効であった。また、気相から液相への物質移動を定量評価したところ、従来の反応器に比して、物質移動は、10〜100倍高効率であることがわかった。
当該マイクロリアクターにより、爆発性組成の水素及び酸素の混合気体を、安全に取り扱えた理由は、マイクロチャンネルの使用により、爆発の伝播を防いだこと、及び物質移動の高効率化は、マイクロチャンネル中に充填した粒径が小さい触媒により、気液の接触界面が増大したことによると考えられる。
一方、得られた過酸化水素の濃度は、0.2重量パーセントと、低い値にとどまったが、それは、ガス流れの可視化実験から、マイクロリアクター内への気液導入に問題があることによることがわかった(非特許文献3)。
一方、Vanden Busscheらは、マイクロチャンネルに基づいた、過酸化水素の製造法について、電気分解により、水素及び酸素を製造したうえで、過酸化水素を製造する方法について開示している(特許文献5−8)。しかしながら、この文献では、反応器の詳細が不明なうえ、過酸化水素濃度も不明である。
また、Tonkovichらは、マイクロチャンネルに基づいた、過酸化水素の製造法について、反応器の構造を詳細に開示している(特許文献9)。しかしながら、この文献には、詳細な反応条件の開示がなく、反応器の性能については、一切不明である。
更に、Lawalらは、内径775μmのSUS管に、担持パラジウム触媒を充填した反応器を提案しており、最高で、1.1wt%の過酸化水素を合成している(特許文献10)。しかしながら、この反応器では、安定な気液の混相流を形成するために、大過剰の水素及び酸素を流通させており、未反応ガスのリサイクルにおいて、問題がある。
ところで、マイクロチャンネルを用いた連続反応器の開発において、高度の反応制御性を確保しながら、必要とされる生産量を確保するためには、例えば、マイクロチャンネルを数列ないし10数列に並列化することが不可欠である。この場合、見込み通りに生産性を確保するためには、マイクロチャンネルごとの反応条件を均一にそろえる必要がある。
例えば、本発明者らが開発した過酸化水素の製造法(非特許文献3)において、マイクロチャンネルは、10列に並列化されているものの、流れの可視化解析により、各マイクロチャンネルへの気液混相流に、ばらつきがあることが見出されている。このことが、非特許文献3に開示された、過酸化水素の製造法における、生産性を損なっている理由と考えられる。
一方、北森らは、ガラス製リアクターの貼り合わせによる並列化方法を開発している(特許文献11)。しかしながら、この方法は、液相反応に限定されるうえ、並列化の度合いが大きくなると、偏流により、マイクロチャンネルごとの反応溶液の流速が異なる可能性が大きくなること、及びこのことが反応器の生産性低下をもたらしうることが問題となる。
また、Tonkovichらは、マイクロチャンネルを並列化したリアクターを開発しており、各マイクロチャンネルへ均等に流体を分配できることを示している(特許文献12)。しかしながら、このリアクターについては、単一種類の流体を流通した場合のみが開示されており、過酸化水素の製造のような、気液混相反応への適用の可否は明らかでない。
更に、Wadaらは、オゾン酸化反応を行うための16マイクロチャンネルを並列化したリアクターを開発しており、本リアクターにおいて、微細加工技術により、各マイクロチャンネル内に、ポスト型構造が集積されており、物質移動の効率化された気液混相流が形成されていることが示されている(非特許文献4)。しかしながら、このリアクターは、固体触媒反応への適用を考えると、触媒のマイクロチャンネル内への集積という観点から、課題があり、また、触媒が集積された条件で、16チャンネル間に均等な気液混相流が形成されるか否かは明らかでない。
このように、従来のマイクロチャンネルより構成されるマイクロリアクター技術では、気液混相反応の産業的な生産への対応は困難であることから、当技術分野においては、産業的な生産に対応可能で、連続反応が可能な、マイクロチャンネルを用いた連続反応器の開発が強く要請されていた。
特開2007−230908号公報 特開2006−248972号公報 PCT/US2003/016210(WO/2003/106386号公報) PCT/US2006/033851(WO/2007/027767号公報) 米国特許第6713036号明細書 米国特許第7115192号明細書 米国特許第7192562号明細書 米国特許第7195747号明細書 米国特許第7029647号明細書 米国特許公開第2006/0233695A1号公報 特開2002−292275号公報 米国特許公開第2007/0246106A1号公報
Volker Hessel,Steffen Hardt,Holger Loewe共著、"Chemical Micro Process Engineering−Fundamentals,Modelling and Reactions"、2004年、出版社;Wiley−VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim(ISBN:3−527−30741−9) Jose M. Campos−Martinほか、"Hydrogen Peroxide Synthesis: An Outlook Beyond the Anthraquinone Process"、Angewandte Chemie International Edition、45巻、6962−6984(2006年) Tomoya Inoueほか、"Microfabricated Multiphase Reactors for the Direct Synthesis of Hydrogen Peroxide from Hydrogen and Oxygen"、Industrial and Engineering Chemistry Research、46巻、1153−1160(2007年) Yasuhiro Wadaほか、"Flow Distribution and Ozonolysis in Gas−Liquid Multichannel Microreactors"、Industrial and Engineering Chemistry Research、45巻、8036−8042(2006年)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、従来のアントラキノン法のように作動溶液を使用することなく、過酸化水素を水素と酸素から直接合成する方法において、商業的な過酸化水素に近い過酸化水素濃度を得ることを課題として、産業的な生産に対応可能で、連続反応が可能な、マイクロチャンネルを用いた連続気液混相反応器及び気液混相反応法を開発することを目標として鋭意研究を重ねた。その結果、
1)固定床の断面積、気相・液相導入配管の圧力損失、液相を固定床反応器に流通した際の圧力損失、及び2列以上の固定床が並列にある場合にあっては、気相・液相の各固定床への分配部分と各固定床から出口に向かって合流する部分において所定の条件を満たすように形成した配管の太さ構造及び/又は同条件を満たすように形成した気液混相の形成を促進する充填物構造を有する反応器を構築すること、
2)マイクロチャンネルを用いて、水素と酸素から過酸化水素を直接合成する際に、反応開始操作を還元雰囲気下にて行い、次いで、水素及び酸素の共存下で過酸化水素の直接合成反応を行い、最後に還元雰囲気で反応を停止することで、著しく反応効率、具体的には水素収率が上昇すること、及び過酸化水素の濃度が上昇すること、
を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、従来の反応器に較べて、気相から液相への物質移動を10〜100倍の高効率にして気液混相反応を行うことができるマイクロチャンネルからなる固定床反応器において、気液混相反応の制御性を著しく向上するものである。
また、本発明は、従来の反応器に比べて、気相、かつ液相への物質移動を、10〜100倍の高効率にして気液混相反応を行うことができるマイクロチャンネルを有する固定床反応器を並列化し、マイクロチャンネルによって反応を行う特徴を保ちつつ、生産性を向上することを可能とする固定床気液混相反応器、及び気液混相反応方法を提供することを目的とするものである。
更に、本発明は、従来の反応器に較べて、気相から液相への物質移動を10〜100倍の高効率にして気液混相反応を行うことができるマイクロチャンネルからなる固定床反応器において、水素と酸素から過酸化水素を直接合成する際に、反応の開始ならびに反応停止を還元雰囲気下にて行うことにより、触媒寿命を著しく向上させることを目的とするものである。
本発明は、従来の反応器で得られる過酸化水素の濃度は、0.2重量パーセントの低い値にとどまっていたのに対し、例えば、マイクロチャンネルの並列化による生産性の向上により、定常的に、1重量パーセント以上の過酸化水素を得ることを可能とする固定床反応器を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、爆発組成の水素及び酸素の混合気体を、安全に取り扱うことが可能な、特定の気相導入部及び液相導入部を形成したマイクロチャンネルを具備した固定床気液混相反応器、及び気液混相反応方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、気液混相反応を行う固定床反応器において、マイクロチャンネルで構成された配管構造を有し、固定床の断面積が、0.0001cm〜0.008cmであり、当該固定床、並びに気相導入部、及び液相導入部を有し、気相流通した際の気相導入部の配管の圧力損失をΔP、液相を液相導入部を介して固定床反応器に流通した際の圧力損失をΔPとして、気液混相反応条件において、ΔP>5ΔPとなる条件を満たすように形成した配管の太さ構造及び/又は同条件を満たすように形成した気液混相の形成を促進する充填物構造を有することを特徴とする固定床反応器、である。
また、本発明は、気液混相反応を行うマイクロチャンネルで構成された配管構造を有する固定床反応器において、0.0001cm〜0.008cmの断面積を有する、並列な2カ所以上の固定床を有し、当該固定床のほかに、気相分配部、固定床に対する気相導入部、液相分配部、固定床に対する液相導入部、充填物導入部、及び流体合流部を有すること、前記気相分配部及び気相導入部の配管の圧力損失を、それぞれΔPg−d及びΔPg−iとし、前記液相分配部及び液相導入部の配管の圧力損失を、それぞれΔPl−d及びΔPl−iとし、並列化された固定床に液相を流通した際の圧力損失のうち、固定床部の圧力損失をΔPl−p、固定床の後段の流体合流部に液相を流通したときの圧力損失をΔPとして、下記1)〜4)の条件がすべて満たされること、
1)気相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.0001〜0.05の範囲であり、かつ液相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.0003〜0.3の範囲である
2)ΔPl−i>10ΔPl−d、かつΔPg−i>10ΔPg−d
3)ΔPl−p>2.5ΔP
4)ΔPg−i>5ΔPl−p
前記並列な2カ所以上の固定床において、おのおのに気液が均等に分配される充填物構造を有すること、を特徴とする固定床反応器、である。
更に、本発明は、前記の固定床反応器を使用して気液混相反応を行う方法において、並列化されたおのおののマイクロチャンネル内において、気相の線速度が0.01m/s〜10m/s、及び液相の線速度が10−5m/s〜10−2m/sの条件で、固定床反応器を運転して、気液混相反応を行うことを特徴とする気液混相反応方法、である。
次に、本発明の第1の態様について詳細に説明する。
本発明は、気液混相反応を行う固定床反応器であって、マイクロチャンネルで構成された配管構造を有し、固定床の断面積が、0.0001cm〜0.008cmであり、当該固定床、並びに気相導入部、及び液相導入部を有し、気相導入部の配管の圧力損失をΔP、液相を液相導入部を介して固定床反応器に流通した際の圧力損失をΔPとして、気液混相反応条件において、ΔP>5ΔPとなる条件を満たすように形成した配管の太さ構造及び/又は同条件を満たすように形成した気液混相の形成を促進する充填物構造を有することを特徴とするものである。
また、本発明は、上記固定床反応器を使用して気液混相反応を行う気液混相反応方法にであって、気相の線速度が、0.01m/s〜10m/s、及び液相の線速度が、10−5m/s〜10−2m/sの条件で、固定床反応器を運転して、気液混相反応を行うことを特徴とするものである。
本発明は、気液混相反応を行うマイクロチャンネルを有する固定床反応器において、充填物を有する固定床、並びに気相導入部、及び液相導入部の構造を、気相を流通した際の気相導入管の圧力損失をΔP、液相を固定床反応器に流通した際の圧力損失をΔPとして、反応条件において、ΔP>5ΔPとなる条件を満たすように形成された配管の太さ構造及び/又は同条件を満たすように形成した気液混相の形成を促進する充填物構造を有する構成としたことを特徴とするものである。
本発明による固定床反応器は、気相導入部より、反応に供される気相を、また、液相導入部より、反応に供される液相を、それぞれ、固定床のマイクロチャンネル内に導入し、これらの気相及び液相を、上記充填物構造を有する固定床マイクロチャンネルにおいて接触させ、気液混相の形成と気液混相反応を行ったうえで、反応生成物を固定床に設けた吐出部の吐出口より回収する操作を行うことを可能とする構成を有するものである。当該反応器は、上記ΔP>5ΔPの要件を満たす配管を接合により製作してもよく、また、金属板、シリコン板、ガラス板といった反応条件に対して安定な素材を加工して、上記要件を満たすマイクロチャンネルを形成した一体加工型の反応器として製作してもよく、あるいは気液混相流の流動様相が変化しないかぎりにおいては、気液混相流が形成される部分と実際に反応が行われる固定床部分が独立に加工されたのちに、反応器として一体として機能してもよい
本発明では、特に、固定床の断面積が、0.008cm以下であること、固定床の周辺に位置する気相又は液相の導入部や吐出部の吐出口の断面積が更に小さくなること、を考えれば、反応器の素材として用いられる金属板、シリコン板、ガラス板などの素材の表面に、MEMS(Micro Electromechanical System、微小電気機械システム)技術を用いて、固定床、気相導入部、液相導入部及び吐出部などの溝加工を施し、溝加工を施した板を接合して、固定床、気相導入部、液相導入部及び吐出部などのマイクロチャンネルを形成することにより、該反応器を製作することができる。
この場合、MEMS技術による溝加工の手法としては、具体例には、プラズマエッチング、化学エッチング、ドリル加工を例示することができる。また、溝加工を施した板の接合の手法としては、熱融着、陽極接合(シリコンとソーダ系ガラスの接合などの場合)を例示することができる。
固定床の断面積については、反応管の比表面積を大きく保ち、反応においてマイクロチャンネルを用いる特徴を活用する観点からは、0.008cm以下であることが好ましく、更に、反応管の内部に固形分を充填する観点からは、0.0001cm以上の断面積を持つことが好ましい。更に、圧力損失を考慮すると、固定床部分の断面積については、0.0008cm〜0.008cmであることが好ましい。
固定床反応器における固定床、気相導入部及び液相導入部の配置については、気相導入部及び液相導入部を固定床反応器の固定床に対して、気相及び液相のマイクロチャンネルのより上流に近い部分に位置させることが好ましい。また、気相導入部と液相導入部は、固定床に対して1箇所に限らず、複数の箇所に設けてもよい。固定床、気相導入部、液相導入部、吐出部の配置形態、配置箇所の具体的構成については、反応の種類、その使用目的に応じて、任意に設定することができる。また、固定床、気相導入部、液相導入部及び吐出部に対応した溝の形状及び構造の具体的構成については、マイクロチャンネルとして採用される適宜の形状及び構造の範囲において、任意に設計することができる。
本発明は、気相導入部、液相導入部における圧力損失の調整により、固定床における気液混相流の形成を、効率的、かつ安定に行うことにある。このとき、気相を流通した際の気相導入配管の圧力損失をΔP、液相を固定床反応器に流通した際の圧力損失をΔPとして、反応条件において、ΔP>5ΔPとなるように配管太さ構造及び/又は充填物構造を形成することが必要とされる。
圧力損失の調整は、気相導入部並びに固定床部を、それぞれ、流通する気相並びに液相の流速によっても制御できるが、これらは、反応方法の反応条件、反応のパラメーターに関する場合のことである。固定床反応器については、これらのパラメーターを大幅に変更可能に操作することは、反応成績に影響するため、反応器自体の構成、気相導入部断面積/固定床断面積によることが好ましく、具体的には、固定床の断面積、気相導入配管の圧力損失、液相を固定反応器に流通した際の圧力損失の構成で規定される。気相導入部断面積/固定床断面積の範囲については、好ましくは0.0001〜0.05の範囲であり、更に好ましくは0.0002〜0.02である。断面積の比率が0.0001を下回る導入部は,加工が困難になる場合があり、また0.05を超える場合には,安定な気液混相流を形成するのに必要な圧力損失を確保するために導入部長さを長く設計しなければならず、マイクロリアクターのサイズを不必要に大きくする結果につながるため好ましくない。
本発明の固定床反応器の固定床には、目的とする反応に応じて、触媒を充填することができる。例えば、水素及び酸素を用いて、過酸化水素を製造することを目的とした反応器においては、貴金属微粒子が担持された触媒、好ましくは、パラジウム、金、白金の少なくとも1種類以上を含む触媒を用いることができる。
次に、本発明の反応方法について説明すると、目的とする反応によって、本反応器を用いる条件は、大きく異なるが、本反応器は、基本的に、固定床反応器であるために、液相を流通した際の圧力損失を考慮すると、10−2m/sを超える線速度による運転は好ましくない。一方、固定床を液相でぬれた状態に保持しておくためには、10−5m/s以上の線速度を有することが好ましい。同様に、気液混相反応において固定床が乾燥すること、及び気相流通時に気相導入配管にかかる圧力損失を考慮すると10m/sを超える線速度による気相流通は好ましくなく、かつ安定な気液混相流を形成する観点からは0.01m/s以上の線速度により固定床に気相を流通することが好ましい。
本発明の反応器は、気相と液相の混相反応に対して好適に用いることができるが、特に、固定床に触媒を充填した場合において、水素化反応や、酸素酸化反応などに好適に用いることができる。液相成分は、反応に依存するが、反応基質を含んでもよく、また、反応基質が固体である場合には、溶媒に、該反応基質を溶解して流通させてもよい。
特に、本発明の反応器を過酸化水素の製造に用いる場合には、気相成分は、水素及び酸素を含有するが、他の気相成分、例えば、窒素を含有してもよく、かつ液相成分の主成分は、水及び/又はメタノールであることが好ましい。水とアルコール、好適には、水とメタノールは、目的に応じて任意の割合で混合してもよく、また、水中に、過酸化水素を安定に保つための安定化剤を含むようにすることも適宜可能である。
本発明の反応器の構成について、図面に基づいて具体的に説明するために、図1に、本発明の反応器を、気液混相流の方向に対して垂直方向で、かつすべてのマイクロチャンネルが見える方向から見た図を示す。本発明の反応器は、固定床部分のC−D(チャンネル内に充填物が充填されている)、気相導入部分のA−B、及び液相導入部分のE−Fから構成され、気相流f及び液相流fは、それぞれ、B及びFから固定床部分に供給され、固定床内で気液混相流fg+lが形成される。
図1では、単一の気相導入部及び液相導入部から気相流及び液相流を固定床に供給する場合の例について示したが、本発明の反応器では、反応の種類、使用目的に応じて、上記マイクロチャンネルを有する固定床に対して、気相導入部及び液相導入部を複数箇所設けて、複数の導入部を介して、それぞれ、気相流及び液相流を固定床に導入できるように構成することが適宜可能である。
本発明において、気相導入部の配管の圧力損失は、固定床に気相のみを流通したときの気相導入部と固定床のA−D間の圧力差を、また、液相を液相導入部を介して固定床反応器に流通した際の圧力損失は、固定床に液相のみを流通したときの液相導入部と固定床E−Dの間の圧力差を、それぞれ、意味するものとして定義される。
そして、具体的には、本発明において、これらの圧力損失は、圧力計をA、D及びEに設置することによって計測できる。すなわち、固定床に液相のみを流通したときのE及びDの表示圧力の差をとることによってΔPが、また、固定床に気相のみを流通したときのA及びDの表示圧力の差をとることによってΔP’が、それぞれ、計測できる。この場合、特に、B−D間の圧力損失がΔP’に比べて著しく小さな場合には、ΔP’を近似的にA−B間の圧力損失(ΔP)と見なすことができる。また、固定床末端(D)が大気圧に解放されている場合、A及びEにおいて計測した圧力が、そのまま、それぞれ、ΔP’(近似的にΔP)、ΔPとなる。
本発明では、反応器の固定床として、マイクロチャンネル内に充填物が充填されている充填物構造を有する固定床が用いられる。固定床における充填物構造は、固定床のマイクロチャンネル内に導入された気相流fと液相流fとを混合して気液混相流の形成を促進する作用を有しており、充填物構造において、充填物は、触媒作用の他に、気液混相流の形成をより促進できる形状及び構造を有するように構成することが重要である。
具体的には、充填物の粒子の大きさ、形態、及びそれらの充填方式を任意に設計及び設定して、上記気液混相流の形成が促進されるようにすることが重要であるが、当該充填物構造の具体的構成については、反応の種類、使用する気相及び液相の種類、反応器の使用目的に応じて、任意に設計することができる。充填物としては、触媒があげられるが、その具体的種類としては、マイクロチャンネルに充填できるものであれば、反応の種類に対応した適宜の触媒を用いることができる。
本発明は、気相導入部及び液相導入部から、固定床のマイクロチャンネルに供給された気相流及び液相流を混合して当該気相流及び液相流の混相の形成を促進できる充填物構造を有すること、そして、当該充填物構造は、気液混相反応条件において、上述の△P>5△Pとなる条件を満たすように形成されていることを必須の構成要件としている。したがって、本発明の固定床反応器は、気液混相流の形成を促進しない充填物構造や、上述の△P>5△Pとなる条件を満たすように形成されていない公知の通常のマイクロチャンネルを有する固定床反応器とは、本質的に区別されるものである。
本発明において、気液混相反応条件とは、気相流及び液相流が混相を形成しない状態、あるいはこれらが十分に混合されないで混相の形成が不十分な状態で、反応が行われるのではなく、固定床に供給された気相流と液相流が充填物構造で良好に混合されることで、混相が形成され、気液混相反応が好適に遂行されるような反応条件であることを意味している。
本発明において、配管の太さ構造とは、マイクロチャンネルで構成される気相導入部及び液相導入部の配管として、△P>5△Pとなる条件を満たすように形成した特定の太さ構造、すなわち、断面積構造を意味しており、また、充填物構造とは、固定床のマイクロチャンネル内に充填された充填物として、△P>5△Pとなる条件を満たすように形成した特定の充填物構造、すなわち、充填物の充填状況を意味している。気相導入部及び液相導入部のマイクロチャンネルの断面形状並びに固定床のマイクロチャンネルの断面形状の具体的な構成は、それらの使用目的、並びにその目的を達成するのに好適な加工法に応じて任意に設計することができる。
本発明の反応器は、その配管構造を単にマイクロチャンネルで構成したものではなく、固定床の断面積が0.0001cm〜0.008cmの範囲の両端の値、又はその範囲内のいずれか一つの特定の値を有し、当該固定床、並びに気相導入部、及び液相導入部を有し、かつ、気相を流通した際の気相導入部の配管の圧力損失を△P、液相を液相導入部を介して固定床反応器に流通した際の圧力損失を△Pとして、気液混相反応条件において、△P>5△Pとなる条件を満たすように形成した配管の太さ構造及び/又は同条件を満たすように形成した気液混相の形成を促進する充填物構造を有することを必須の構成要件としている点で、公知の通常のマイクロチャンネルとは本質的な区別性を有している。
次に、本発明の第2の態様について説明する。
本発明は、気液混相反応を行う固定床反応器において、マイクロチャンネルで構成された配管構造を有し、0.0001cm〜0.008cmの断面積を有する、並列な2カ所以上の固定床を有し、当該固定床のほかに、気相分配部、固定床に対する気相導入部、液相分配部、固定床に対する液相導入部、充填物導入部、及び流体合流部を有することを特徴とするものである。本発明において、固定床は、通常、数列ないし10数列に並列化するが、並列化する固定床の列数は、2カ所、あるいはそれ以上の任意の範囲で適宜設定することができる。
本発明では、気相分配部、気相導入部の配管の圧力損失をそれぞれΔPg−d及びΔPg−i、液相分配部、液相導入部の配管の圧力損失をそれぞれΔPl−d及びΔPl−i、並列化された固定床に液相を流通した際の圧力損失を、流体合流部の圧力損失をΔPl−p、固定床の後段の流体合流部に液相を流通したときの圧力損失をΔPとして、下記1)〜4)の条件がすべて満たされること、そして、並列な2カ所以上の固定床において、おのおのに気液が均等に分配される充填物構造を有すること、を特徴とするものである。
1)気相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.0001〜0.05の範囲であり、かつ液相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.0003〜0.3の範囲である
2)ΔPl−i>10ΔPl−d、かつΔPg−i>10ΔPg−d
3)ΔPl−p>2.5ΔP
4)ΔPg−i>5ΔPl−p
また、本発明は、上記固定床反応器を使用して気液混相反応を行う気液混相反応方法であって、並列化されたおのおののマイクロチャンネル内において、気相の線速度が、0.01m/s〜10m/sの条件、及び液相の線速度が、10−5m/s〜10−2m/sの条件で、固定床反応器を運転して、気液混相反応を行うことを特徴とするものである。
本発明の固定床反応器では、気相導入部より、反応に供される気相を、固定床のマイクロチャンネル内に導入し、また、液相導入部より、反応に供される液相を、固定床のマイクロチャンネル内に導入し、更に、分岐構造により、気相及び液相を、気相分配部、固定床に対する気相導入部、液相分配部、固定床に対する液相導入部、を用いて、並列化された各マイクロチャンネルに分散させたうえで、これらの気相及び液相を、上記充填物構造を有する固定床マイクロチャンネルにおいて接触させる。
次いで、気液混相の形成と気液混相反応を行ったうえで、反応生成物を固定床に設けた吐出部の吐出口より回収する操作を行う。当該反応器は、配管を接合により製作してもよく、また、金属板、シリコン板、ガラス板といった反応条件に対して安定な素材を加工して、上記要件を満たすマイクロチャンネルを形成した一体加工型の反応器として製作してもよい。
このとき、当該固定床のほかに、気相分配部、固定床に対する気相導入部、液相分配部、固定床に対する液相導入部、充填物導入部、及び流体合流部を有すること、かつ、気相分配部、気相導入部の配管の圧力損失をそれぞれΔPg−d及びΔPg−i、液相分配部、液相導入部の配管の圧力損失をΔPl−d及びΔPl−i、並列化された固定床に液相を流通した際の圧力損失を流体合流部の圧力損失をΔPl−p、固定床の後段の流体合流部に液相を流通したときの圧力損失をΔPとして、下記1)〜4)の条件が、すべて満たされるように、配管太さ構造及び/又は充填物構造を形成すること、が必要とされる。
1)気相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.0001〜0.05の範囲であり、かつ液相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.0003〜0.3の範囲である
2)ΔPl−i>10ΔPl−d、かつΔPg−i>10ΔPg−d
3)ΔPl−p>2.5ΔP
4)ΔPg−i>5ΔPl−p
具体的には、固定床の断面積、気相導入配管の圧力損失、液相を固定反応器に流通した際の圧力損失の構成で規定される。気相導入部断面積/固定床断面積の範囲は、0.0001〜0.05の範囲であり、好ましくは0.0002〜0.02の範囲である。また、液相導入部の断面積/固定床の断面積は、0.0003〜0.3の範囲であり、好ましくは0.001〜0.1の範囲である。
次に、本発明の気液混相反応の反応方法について説明すると、目的とする反応によって、本反応器を用いる条件は、大きく異なるが、本反応器は、基本的に、固定床反応器であるために、液相を流通した際の圧力損失を考慮すると、10−2m/s以下の線速度による運転が好ましい。一方、固定床を液相でぬれた状態に保持しておくためには、10−5m/s以上の線速度を有することが好ましい。同様に、気液混相反応において固定床が乾燥すること、及び気相流通時に気相導入配管にかかる圧力損失を考慮すると10m/sを超える線速度による気相流通は好ましくなく、かつ安定な気液混相流を形成する観点からは0.01m/s以上の線速度により固定床に気相を流通することが好ましい。
本発明の固定床反応器の構成について、図面に基づいて具体的に説明するために、図2に、本発明の反応器を、気液混相流の方向に対して、垂直方向で、かつすべてのマイクロチャンネルが見える方向から見た説明図を示す。図において、Oは、流通合流部、G+Lは、気相と液相の混相流出口を表わす。
本発明の固定床反応器は、気相入口(G)、液相入口(L)、気相分配部(Gd)、液相分配部(Ld)、充填物導入部、(S−S’)及び固定床部分のCk−Dk(チャンネル内に充填物が充填されている)、気相導入部分のAk−Bk、及び液相導入部分のEk−Fkから構成される(kは1からnの自然数で、並列化されるチャンネルの数に対応する)。
ΔPg−dは、気相分配部の圧力損失、ΔPl−dは、液相分配部の圧力損失、ΔPは、液相のみを反応器に流通した際に合流部(O)において生じる圧力損失をそれぞれ表わす。また、fgkは、k番目の固定床に導入される気相流、fikは、k番目の固定床に導入される液相流、fg+i−kは、k番目の固定床中を流通する気液混相流、をそれぞれ表わす。
反応に先立ち、触媒などの充填物は、充填物導入部S−S’を介して、各マイクロチャンネルCk−Dkに導入される。反応時、気相成分は、気相入口Gから気相分配部Gdを介して、並列化されたマイクロチャンネルに分配され、液相成分については、気相流f及び液相流fは、それぞれ、B及びFから固定床部分に供給され、固定床内で、気液混相流fg+lが形成される。
図2では、並列化された各固定床マイクロチャンネルに対し、単一の気相導入部及び液相導入部から、気相流及び液相流を固定床に供給する場合の例について示したが、本発明の固定床反応器では、反応の種類、使用目的に応じて、上記マイクロチャンネルを有する固定床に対して、気相導入部及び液相導入部を複数箇所設けて、複数の導入部を介して、それぞれ、気相流及び液相流を固定床に導入できるように構成することが適宜可能である。また、図2において、触媒などの充填物を同時に充填できる構造にしているが、各マイクロチャンネルへ個別に充填できる構造にしてもよい。
図3に、k番目の気相導入部、液相導入部、固定床部分の説明図を示す。図において、Ck−Dkは、固定床部分、Ak−Bkは、気相導入部、Ek−Fkは、液相導入部分を表わし、fgkは、k番目の固定床に導入される気相流、flkは、k番目の固定床に導入される液相流、fg+l−kは、k番目の固定床中を流通する気液混相流をそれぞれ表わす。また、ΔPg−ikは、気相導入部の圧力損失、ΔPl−ikは、液相導入部の圧力損失、ΔPl−pkは、固定床に液相のみを流通したときに生じる圧力損失をそれぞれ表わす。
本発明において、気相分配部の配管の圧力損失ΔPg−dは、気相を流通したときに気相分配部Gd部において発生する圧力損失と定義でき、具体的には分岐の始点と分岐の末端(Ak)との間に生じる圧力損失と規定できる。従って本来は各分岐ごとにΔPg−dkとして定義されるものであるが、それぞれのばらつきが小さいことが明らかな場合には、(ΔPg−d)kの平均値を代表値としてΔPg−dを定義できる。また、気相導入部の圧力損失ΔPg−iは、気相導入部Ak−Bk(kは1〜nの自然数)の圧力損失と定義でき、本来は各導入部ごとにΔPg−ikとして定義されるものであるが、それぞれのばらつきが小さいことが明らかな場合には、ΔPg−ikの平均値を代表値としてΔPg−iを定義できる。同様に、液相分配部の配管の圧力損失ΔPl−dは、液相を流通したときに、液相分配部Ld部において発生する圧力損失と定義でき、具体的には分岐の始点と分岐の末端(Ek)との間に生じる圧力損失と規定できる。従って本来は各分岐ごとにΔPl−dkとして定義されるものであるが、それぞれのばらつきが小さいことが明らかな場合には、(ΔPl−d)kの平均値を代表値としてΔPl−dを定義できる。また、液相導入部の圧力損失ΔPl−iは、Ek−Fk(kは1〜nの自然数)の圧力損失と定義でき、本来は各導入部ごとにΔPl−ikとして定義されるものであるが、それぞれのばらつきが小さいことが明らかな場合には、ΔPl−ikの平均値を代表値としてΔPl−iを定義できる。
更に、固定床に液相のみを流通したときに生じる圧力損失をΔPl−p、また、液相のみを反応器に流通した際に、合流部(O)において生じる圧力損失をΔPoと定義できる。ΔPl−pは図3に示されているように、液相を固定床に流通したときにFkとDkの間に生じる圧力損失であるが、FkとCkが近接しているなど、液相流通下においてCkとFkの間に生じる圧力損失が十分小さければ、これは近似的にCkとDkの間に生じる圧力損失と見なしてよい。したがってΔPl−pもまた各固定床ごとに(ΔPl−p)kとして定義されるものであるが、各固定床ごとのばらつきが小さいことが明らかであれば(ΔPl−p)kの平均値を代表値としてΔPl−pを定義できる。また、ΔPoは本来固定床末端部Dkと合流点の間で(ΔPo)kとして定義されるものであるが、それぞれのばらつきが小さいことが明らかな場合には、(ΔPo)kの平均値を代表値としてΔPoを定義できる。
圧力計測は、リアクターの該当部分に圧力計を装着することによっても可能であるが、圧力計の装着が困難な場合にあっては、本発明の範囲内にあっては下記の式による推算が有効である。例えば、ガス導入チャンネル及び液導入チャンネルにおける圧力損失の推算には、下記Hagen−Poiseuille式の式が有効である。円形管内を流れる流体について、圧力損失は、Hagen−Poiseuille式により表すことができる。
Figure 2010044271
一方、固定床の中の流れによる圧力損失の推算については、下記Ergun式による推算が有効である。
Figure 2010044271
Figure 2010044271
なお、式(1)において、左辺は、気相又は液相導入部における単位長さ当たりの気相流通により生じる圧力損失を示し、右辺中μは気相又は液相の粘度、uは気相又は液相導入部における平均線速度を、更に、Dは管の内径を示す。管の断面の形状が円形でない場合にあっては、Dは断面積の観点から等価になるような円の内径とすることができる。一方、式(2)において、右辺は固定床に液相のみを流通した際に生じる単位長さ当たりの圧力損失を示し、右辺中、νliqは液相の線速度、ρliqは液体密度、dは充填物の直径を示す。また、式(3)で計算されるf(摩擦係数)において、εは固定床のvoid fraction、Reliqは液相流通時のレイノルズ数をそれぞれ示す。
[文献:(1)R.Byron Bird,Warren E.Stewart,Edwin N.Lightfoot共著、“Transport Phenomena Second Edition”、2002年、出版社;John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,NJ(ISBN:0−471−41077−2)、(2)H.Scott Fogler著、“Elements of Chemical Reaction Engineering,3rd Ed.”、1999年、出版社;Prentice−Hall,Inc.Upper Saddle River,NJ(ISBN:0−13−531708−8)]。
本発明では、反応器の固定床として、マイクロチャンネル内に充填物が充填されている充填物構造を有する固定床が用いられる。固定床における充填物構造は、固定床のマイクロチャンネル内に導入された気相流fと液相流fとを混合して、気液混相流の形成を促進する作用を有しており、充填物構造において、充填物は、触媒作用のほかに、気液混相流の形成をより促進できる形状及び構造を有するように構成することが重要である。
具体的には、充填物の粒子の大きさ、形態、及びそれらの充填方式を任意に設計及び設定して、上記気液混相流の形成が促進されるようにすることが重要であるが、当該充填物構造の具体的構成については、反応の種類、使用する気相及び液相の種類、反応器の使用目的に応じて、任意に設計することができる。充填物としては、触媒があげられるが、その具体的種類としては、マイクロチャンネルに充填できるものであれば、反応の種類に対応した適宜の触媒を用いることができる。
本発明は、気相導入部及び液相導入部から、固定床のマイクロチャンネルに供給された気相流及び液相流を混合して、当該気相流及び液相流の混相の形成を促進できる充填物構造を有すること、そして、当該充填物構造は、気液混相反応条件において、上述のΔPl−i>10ΔPl−d、ΔPg−i>10ΔPg−d、ΔPl−p>2.5ΔPo、かつΔPg−i>5ΔPl−pとなる条件を満たすように形成されていることを必須の構成要件としている。
したがって、本発明の固定床反応器は、気液混相流の形成を促進しない充填物構造や、上述の条件を満たすように形成されていない公知の通常のマイクロチャンネルを有する固定床反応器とは、本質的に区別されるものである。本発明において、気液混相反応条件とは、気相流及び液相流が混相を形成しない状態、あるいはこれらが十分に混合されないで混相の形成が不十分な状態で、反応が行われるのではなく、固定床に供給された気相流と液相流が充填物構造で良好に混合されることで、混相が形成され、気液混相反応が好適に遂行されるような反応条件であることを意味している。
本発明では、水素と酸素から過酸化水素を直接合成する際に、反応の開始を還元雰囲気下にて行い、次いで、水素及び酸素の共存下で過酸化水素の直接合成反応を行い、最後に還元雰囲気で反応を停止する。
本発明では、パラジウム触媒などの過酸化水素合成触媒をマイクロチャンネルに充填した後、適量の水素ガス又は水素と窒素の混合ガスをマイクロチャンネルに通気して、触媒表面及びマイクロチャンネル内を十分に還元雰囲気にしてから、酸素を導入して、反応を開始する。本操作により、著しく過酸化水素の合成収率が上昇する。
反応終了時には、酸素供給を停止して、過酸化水素の合成反応を終了した後、適量の水素ガス又は水素と窒素の混合ガスをマイクロチャンネルに通気して、触媒表面及びマイクロチャンネル内を十分に還元雰囲気にしてから、終了する。この操作により、再度反応を開始する場合の反応成績を良い状態に維持することができる。
反応の開始及び/又は停止に際し、触媒に接触させる気相組成において、体積に換算して水素を1体積パーセント以上含有することが望ましい。上限はとくに問わないが、例えば水素及び酸素を触媒上に接触させて過酸化水素を合成する場合において、定常的な反応条件における水素含量を上限値とする方法は、本発明のマイクロリアクターを用いた連続反応プロセスにおいて採用しやすい方法である。すなわち、所定の水素、及び酸素含有量を有する気相を用いて過酸化水素を製造する場合にあっては、反応開始時にあっては同量の水素を含有し、かつ酸素相当量を窒素に置き換えた条件にて気相流通を開始し、のち徐々に窒素を酸素に置換することによって反応を定常的に行う方法が挙げられる。反応停止時も同様に、定常的に反応を遂行している条件より酸素を窒素のような不活性ガスに置換し、完全に置換したのちに所定の時間を経て反応を停止する方法が挙げられる。
反応の開始、及び/又は停止に際して必要な時間はとくに問わないが、例えば水素流通量を物質量(モル)換算した際に、触媒中に含有するパラジウムの物質量(モル)量に対し大過剰であることが好ましい。また、反応の開始及び/又は停止操作の役割が触媒の活性化と連続反応操作を円滑に行うことにあることから、反応溶液については連続反応を行うのと同一の条件で供給されていることが望ましい。同様に、反応の開始から連続反応操作を経て停止に至までの一連の過程において、反応温度はできるだけ一定であることが望ましい。
パラジウム触媒は、例えば酸素及び窒素のみを含有するような酸化雰囲気に接触することにより触媒成分が溶出することが知られており、本発明はそのような触媒成分の流出を抑制することにより水素及び酸素を用いた過酸化水素合成においてパラジウムを含有する触媒の活性を維持する効果があるものと考えられる(特開平4−16501号公報)。しかしながら、従来の、マイクロチャンネルより構成されていないような固定床反応器において、触媒を還元雰囲気に接触させたのちに連続反応操作において用いられる水素及び酸素の雰囲気に接触させた場合、水素及び酸素の爆発性混合組成を経由せざるを得ないために爆発の危険性が不可避である。同様に、反応条件から反応停止条件に向けて気相組成を変化させる場合も爆発の危険性を伴う。反応の開始から連続反応操作、更に反応の停止にいたるまでマイクロチャンネルにより構成された固定床反応器を用いることを特徴とする本発明は、水素及び酸素を用いた過酸化水素合成において、従来の固定床反応器やほかの反応器を用いた技術と本質的に区別されるものである。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)マイクロチャンネルを用いて、安定、かつ定常的に、気液混相反応を行うことを可能とする、気相から液相への物質移動の高効率化などの反応成績を向上させることができる新しい固定床気液混相反応器を提供することができる。
(2)当該マイクロチャンネルが並列化されることにより生産性が強化された新しい固定床気液混相反応器を提供することができる。
(3)本発明のマイクロチャンネルからなる気液混相反応器を用いることにより、爆発組成の水素及び酸素を含有する混合気体を、流量を制御しつつ、かつ安全に取り扱うことが可能となる。
(4)マイクロチャンネル中に触媒を充填した固定床を有することで、気液の接触界面を増大させることにより、気相から液相への物質移動を、従来の反応器に比べて、高効率化することができる。
(5)従来の反応器で得られる過酸化水素の濃度は、0.2重量パーセントの低い値にとどまるが、本発明の反応器では、例えば、定常的に、1.0重量パーセント以上の過酸化水素水が得られる。
(6)従来の反応器に比べて、気相かつ液相への物質移動を、10〜100倍の高効率で行うことができる。
(7)従来技術では、水素分圧を4%以下に絞った条件で反応を行うことが限界であったが、本発明では、水素含有率が20〜50%という爆発条件下で、安全かつ定常的に、過酸化水素を製造することが可能となる。また、水素分圧を4%以下に絞った条件で反応を行う場合においても、更に、安全性を保証できる。
(8)マイクロチャンネルを用いることにより、爆発のリスクを回避でき、かつ触媒を還元雰囲気に保つことで、触媒の活性を保持することができる。
(9)反応を開始時より定常的に行うことができ、水素の過剰消費による、触媒の異常加熱及び触媒の酸化雰囲気への暴露を防ぎ、熱/触媒成分の流出による触媒劣化を抑制できる。
図1は、本発明の反応器を、気液混相流の方向に対し垂直方向で、かつすべてマイクロチャンネルが見える方向から見た図である。本発明の反応器は、固定床部分、(C−D、チャンネル内に充填物が充填されている)、気相導入部分(A−B)及び液相導入部分(E−F)からなり、気相流(f)及び液相流(f)は、それぞれ、B及びFから固定床部分に供給され、固定床内で気液混相流(fg+l)が形成される。 本発明の反応器を、気液混相流の方向に対して、垂直方向で、かつすべてのマイクロチャンネルが見える方向から見た説明図を示す。 k番目の気相導入部、液相導入部、固定床部分の説明図を示す。
次に、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、以下の実施例及び比較例は、本発明の範囲を限定するものではない。
本実施例では、固定床反応器を製作した。両面研磨した30mm×70mmのテンパックス(登録商標)ガラス板上に、気相導入部、液相導入部、固定床部、及び気液混合相の吐出部からなる反応器のマイクロチャンネルを、フッ酸による化学エッチング法による溝加工により加工した。溝の深さは20μm、幅50μmの半楕円状の形状に加工した。エッチング法により、反応器のマイクロチャンネルの溝を加工した板状に、固定床部分と液相導入部、並びに気液混相流の吐出部に対し、ドリル加工を施した。
固定床部分の形状は、幅600μm、深さ300μmとした。一方、同一サイズのテンパックスガラス板に対し、気相導入口、液相導入口、並びに気液混相流吐出口を形成するために、ドリル加工を用いて、直径1mmの貫通加工を施した。最後に、これら2枚のテンパックスガラス板を、熱融着により貼り合わせ、固定床反応器を製造した。
固定床反応器の構造について、図1を用いてより具体的に説明する。該固定床反応器は2本の気相導入管(A−B)、1本の液相導入管(E−F)、及び固定床部分(C−D)からなり、2本の気相導入管は幅50μm、深さ20μmであり、長さは短いものは10mm、長いものは25mmである。液相導入管は幅600μm、深さ50μmであり、長さは13mmである。一方、固定床部分は、幅600μm、深さ300μmであり、長さが55mmである。B1、B2(2本の気相導入管に対応して、2カ所ある)及びFの位置をCより計測するとそれぞれ11mm、9mm、5mmであった。
次に、本反応器の固定床部に、平均粒径100μmの球形の多孔質シリカ(FL−100D、富士シリシア化学株式会社製)を充填した。本反応器に対し、液相導入口より、水を毎分0.01ml、及び長い気相導入管より窒素ガスを毎分0.5mlそれぞれ流通させた。一方、短い気相導入管入り口は密閉した。このとき固定床部分において、安定した気液混相流が形成されること、かつ気相導入部への液相の入り込みがほとんどないこと、を確認することができた。このとき、A−D間の圧力差は約1気圧であり、これはほぼA−B間(気相導入管)の圧力損失に対応した。一方、水のみを毎分0.01mlシリカ充填固定床に流通した際E−D間の圧力差は、0.1気圧に満たなかった。
更に、多孔質シリカの代わりに、平均粒子径50−60μmのアルミナ担持5重量パーセントパラジウム触媒(エヌ・イーケムキャット株式会社製)を、図1のBより下流側に約40mmの長さにわたって充填し、固定床に充填し、反応溶液を毎分0.01ml、並びに水素及び酸素の混合気体(水素40%)を、標準状態換算流量で毎分5ml流通して、10気圧の加圧下で、過酸化水素の製造を検討した。反応溶液は、硫酸0.025M、リン酸0.005M、臭化ナトリウム50ppm(重量比)を含有する水溶液とした。このとき、流量の大きい酸素の導入に長い気相導入管を用いたが、このときのA−D間の圧力差が約0.6気圧であった。これはほぼA−B間(気相導入管)の圧力損失に対応した。一方、E−D間の圧力差に関しては、水のみを毎分0.01ml流通したところ0.1気圧に満たないことがわかった。反応の結果、定常的に、1.5重量パーセントの過酸化水素水が得られた。
固定床部分の形状を、幅600μm、深さ600μmとした以外は、実施例1と同様にして、反応器を製作した。該反応器について、実施例1と同様の気液混相流評価を、同一条件、すなわち、同一流量の窒素を長い気相導入管より導入し、ほか同一流量の水、同種の充填物を用いてにて行ったところ、固定床部分において、安定した気液混相流が形成されること、かつ気相導入部への液相の入り込みがほとんどないこと、を確認することができた。A−D間の圧力差は約1気圧であり、これはほぼA−B間(気相導入管)の圧力損失に対応した。一方、水のみを毎分0.01mlシリカ充填固定床に流通した際E−D間の圧力差は、0.1気圧に満たなかった。
更に、多孔質シリカの代わりに、実施例1と同様に、アルミナ担持パラジウム触媒を固定床に図1のBより下流側に約40mmの長さにわたって充填し、実施例1と同様の反応評価を行ったところ、2.0重量パーセントの過酸化水素水が得られた。
固定床部分の形状を、幅600μm、深さ900μmとした以外は、実施例1と同様にして、反応器を製作した。該反応器について、実施例1と同様の気液混相流評価を、同一条件にて行ったところ、固定床部分において、安定した気液混相流が形成されること、かつ気相導入部への液相の入り込みがほとんどないこと、を確認することができた。A−D間の圧力差は約1気圧であり、これはほぼA−B間(気相導入管)の圧力損失に対応した。一方、水のみを毎分0.01mlシリカ充填固定床に流通した際E−D間の圧力差は、0.1気圧に満たなかった。
更に、多孔質シリカの代わりに、実施例1と同様に、アルミナ担持パラジウム触媒を、固定床に図1のBより下流側に約40mmの長さにわたって充填し、実施例1と同様の反応評価を行ったところ、3.0重量パーセントの過酸化水素水が得られた。
比較例1
本比較例では、気相導入部もすべてドリル加工したことを除き、実施例1と同様の手順により反応器を製作した。このとき、気相導入管は幅200μm、深さ50μmとした。
本反応器の固定床部に、平均粒径100μmの球形の多孔質シリカを充填した。本反応器に対し、液相導入口より、水を毎分0.01ml、及び窒素ガスを毎分0.5ml流通させたところ、気相導入部への液相の入り込みが顕著であり、固定床部における気液混相流を形成できなかった。このとき、A−D間の圧力差は0.1気圧に満たなかった。一方、水のみを毎分0.01mlシリカ充填固定床に流通した際E−D間の圧力差も、0.1気圧に満たなかった。
また、本反応器に、多孔質シリカの代わりに、実施例1同様にアルミナ担持パラジウム触媒を充填し、水の溶液を毎分0.01ml、並びに水素及び酸素の混合気体(水素40%)を、標準状態換算流量で毎分5ml流通して、10気圧の加圧下で、過酸化水素の製造を検討したが、安定な気液混相流が形成できなかったため、実験を中断せざるを得なかった。
本実施例では、4並列の固定床反応器を製作した。両面研磨した30mm×70mmのテンパックス(登録商標)ガラス板上に、気相導入部、液相導入部、固定床部、及び気液混合相の吐出部からなる反応器のマイクロチャンネルを、フッ酸による化学エッチング法による溝加工により加工した。
溝の深さは20μm、幅は50μmの半楕円状の形状に加工した。エッチング法により、反応器のマイクロチャンネルの溝を加工した板上に、固定床部分と液相導入部、並びに気液混相流の吐出部に対し、ドリル加工を施した。
固定床部分の形状は、幅600μm、深さ900μmとした。一方、同一サイズのテンパックス(登録商標)ガラス板に対し、気相導入口、液相導入口、並びに気液混相流吐出口を形成するために、ドリル加工を用いて、直径1mmの貫通加工を施した。最後に、テンパックス(登録商標)ガラス板を、熱融着により貼り合わせ、固定床反応器を製造した。
固定床反応器の構造について、図2及び図3を用いてより具体的に説明する。該固定床反応器において4本の固定床が並列化されており、図2においてn=4である。それぞれの固定床には2本の気相導入管(図3におけるAk−Bk)、1組の液相導入管(Ek−Fk)、及び固定床部分(Ck−Dk)からなり、2本の気相導入管は幅50μm、深さ20μmであり、長さは短いものは9mm、長いものは28mmである。液相導入管は幅50μm、深さ20μm、長さは3.5mmのチャンネルを50μm間隔にて加工しており、1固定床に対し5本のマイクロチャンネルが一組となって機能する。一方、固定床部分は、幅600μm、深さ900μmであり、長さが45mmである。図3において、B1k、B2k(2本の気相導入管に対応して、2カ所ある)及びFkの位置をCより計測するとそれぞれ4mm、3mm、0mmであった。
また、図2のGdに相当する部分は幅1mm、深さ300μmのマイクロチャンネルにより構成し、気相流通時の圧力損失が図3のAk−Bkに集中する、すなわちΔPg−i>10ΔPg−dが常に成立するようにした。また、図2のLdに相当する部分は幅600μm、深さ300μmのマイクロチャンネルにより構成し、液相流通時の圧力損失が図3のEk−Fkに集中する、すなわちΔPl−i>10ΔPl−dが常に成立するようにした。一方、図2のOの構造に関しては、すべて幅600μmとした。触媒はすべてDk(kは1〜nまでの自然数。本実施例においてn=4)まで充填されるようにし、固体が合流部分に流出しないような配慮を行いつつ、固定床出口直後の深さが300μmであるのに対し、統合された出口部分においてチャンネル深さを600μm以上として、ΔPl−p>2.5ΔPoが液相流通時に成り立つようにした。
次に、本反応器の固定床部に、平均粒径100μmの球形の多孔質シリカを充填した。本反応器に対し、液相導入口より、水を毎分0.04ml、及び窒素ガスを毎分2.0ml流通させた。なお、窒素ガスは、水素導入管(各固定床への気相導入管のうち、長い方に相当する)及び酸素導入管(各固定床への気相導入管のうち、短い方に相当する)双方より供給した。固定床部分において、安定した気液混相流が形成されること、かつ気相導入部への液相の入り込みがほとんどないこと、を確認することができた。
更に、多孔質シリカの代わりに、実施例1と同様に、平均粒子径50μmのアルミナ担持パラジウム触媒(エヌ・イーケムキャット株式会社製、パラジウム含量5重量%)が、各固定床に40mmの長さで充填されるよう図2のS−S’を介して水性スラリーとして圧入し、実施例1と同じ組成の反応溶液を毎分0.04ml、並びに水素及び酸素の混合気体(水素20%)を標準状態換算流量で毎分20ml流通して、10気圧の加圧下で、過酸化水素の製造を行った。なお、水素及び酸素の供給は別個に行うようにし、おのおのの気相は固定床部分にてはじめて混合するようにした。
その結果、図2におけるG−O間の圧力差は水素側、酸素側いずれも約0.6気圧となり、これは図3におけるAk−Bk間の圧力損失にほぼ対応した。それに対し、水のみを同量流通した際の図2におけるL−O間の圧力差は、0.1気圧に満たなかった。反応の結果、定常的に、3.5重量パーセントの過酸化水素水が得られた。
実施例4と同様の反応器について、実施例4と同様に触媒を充填し、反応溶液を毎分0.01ml、並びに水素及び酸素の混合気体(水素20%)を標準状態換算流量で毎分11.3ml流通して、10気圧の加圧下で、過酸化水素の製造を行った。
このとき、図2におけるG−O間の圧力差は水素側、酸素側いずれも約1.0気圧となり、これは図3におけるAk−Bk間の圧力損失にほぼ対応した。それに対し、水のみを同量流通した際の図2におけるL−O間の圧力差は、0.1気圧に満たなかった。反応の結果、定常的に、5.0重量パーセントの過酸化水素水が得られた。
実施例4と同様の反応器について、平均粒子径60μmのチタニア担持パラジウム触媒(自家製:チタニア粒子コバレントマテリアル株式会社製、塩化パラジウムを前駆体に用い、ヒドラジン還元により調製した。パラジウム担持量1.0重量パーセント)を、固定床に充填し、反応溶液を毎分0.04ml、並びに水素及び酸素の混合気体(水素20%)を標準状態換算流量で毎分20ml流通して、10気圧の加圧下で、過酸化水素の製造を行った。
このとき、図2におけるG−O間の圧力差は水素側、酸素側いずれも約1.0気圧となり、これは図3におけるAk−Bk間の圧力損失にほぼ対応した。それに対し、水のみを同量流通した際の図2におけるL−O間の圧力差は、0.1気圧に満たなかった。その結果、ガス導入部分の圧力損失は、0.1気圧であったのに対し、水の溶液を多孔質シリカ充填固定床に流通した際の圧力損失は、0.01気圧に満たなかった。反応の結果、定常的に、2.7重量パーセントの過酸化水素水が得られ、水素収率は15.5%であった。
本実施例では、8並列の固定床反応器を製作した。両面研磨した30mm×70mmのテンパックス(登録商標)ガラス板上に、気相導入部、液相導入部、固定床部、及び気液混合相の吐出部からなる反応器のマイクロチャンネルを、フッ酸による化学エッチング法による溝加工により加工した。
溝の深さは20μm、幅は50μmの半楕円状の形状に加工した。エッチング法により、反応器のマイクロチャンネルの溝を加工した板上に、固定床部分と液相導入部、並びに気液混相流の吐出部に対し、ドリル加工を施した。
固定床部分の形状は、幅600μm、深さ900μmとした。一方、同一サイズのテンパックス(登録商標)ガラス板に対し、気相導入口、液相導入口、並びに気液混相流吐出口を形成するために、ドリル加工を用いて、直径1mmの貫通加工を施した。最後に、これら2枚のテンパックス(登録商標)ガラス板を、熱融着により貼り合わせ、固定床反応器を製造した。反応器のデザイン用件は実施例4に準じるものとした。
実施例6にて用いたのと同様の平均粒子径60μmのチタニア担持パラジウム触媒(自家製:パラジウム担持量1.0重量パーセント)を、固定床に充填し、反応溶液を毎分0.04ml、並びに水素及び酸素の混合気体(水素20%)を標準状態換算流量で毎分40ml流通して、10気圧の加圧下で、過酸化水素の製造を行った。
このとき、図2におけるG−O間の圧力差は水素側、酸素側いずれも約1.0気圧となり、これは図3におけるAk−Bk間の圧力損失にほぼ対応した。それに対し、水のみを同量流通した際の図2におけるL−O間の圧力差は、0.1気圧に満たなかった。その結果、ガス導入部分の圧力損失は、0.1気圧であったのに対し、水の溶液を多孔質シリカ充填固定床に流通した際の圧力損失は、0.01気圧に満たなかった。反応の結果、定常的に、5.6重量パーセントの過酸化水素水が得られ、水素収率は17%であった。
実施例7の反応に引き続き、反応溶液を毎分0.02ml、並びに水素及び酸素の混合気体(水素20%)を標準状態換算流量で毎分40ml流通して、10気圧の加圧下で、過酸化水素の製造を行った。反応の結果、定常的に、10重量パーセントの過酸化水素水が得られ、水素収率は18%であった。
比較例2
気相導入管の幅を200μm、深さ50μmとした以外は実施例4と同様の反応器を製造し、実施例4と同様に、水の溶液並びに水素及び酸素の混合気体を流通させた。その結果、安定な気液混相流を形成できず、反応も遂行できなかった。本反応器は、気相導入管における圧力損失を確保できず、図2及び図3のΔPg−i>10ΔPg−d、及びΔPg−i>5ΔPl−pの条件が満たされなかった。
比較例3
液相導入管を幅600μm、深さ50μmとした以外は実施例4と同様の反応器を製造し、実施例4と同じ条件で反応評価を行った。その結果、液が均等に分配できず、やはり反応が遂行できかった。本反応器は、液相導入管における圧力損失を確保できず、図2及び図3のΔPl−i>10ΔPl−dの条件が満たされなかった。
比較例4
図2のOの構造に関しては、すべて幅600μm、深さ300μmとした以外は実施例4と同様の固定床反応器を製造した。本反応器に触媒を充填しようとしたが、出口の圧力損失の大きくなり、スラリーの導入が困難であり、触媒を充填できなかった。本反応器は、図2のΔPl−p>2.5ΔPoの条件を満たさなかった。
本実施例では、実施例3と同様の反応器を用い、アルミナ担持パラジウム触媒(パラジウム担持量5wt%、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を、固定床部分に36mmの長さに渡って充填した。該反応器に当初水素を毎分1.5ml、窒素を毎分3.5ml(いずれも標準状態換算)、反応溶液(実施例1と同じ組成)毎分0.01mlを供給し、1時間かけて徐々に昇圧し、10気圧まで加圧したのちに、導入ガスを窒素から酸素に切り替え、反応を行ったところ、下記の成績を得た。
Figure 2010044271
反応開始後、7時間経過した後、酸素ガスを窒素に切り替え、更に減圧することにより、反応を停止した。のち同様の操作を繰り返し下記の成績を得た。反応の停止/開始操作を挟んでも、触媒の性能が保持されていることがわかる。
Figure 2010044271
比較例5
固定床部分(図1におけるC−D)について、幅1mm、深さ900μmとした以外は実施例1と同様の固定床反応器を製造した。固定床中に実施例6と同様触媒を40mmの長さに渡って充填した。該反応器に当初水素を毎分1.0ml、窒素を毎分4.0ml(いずれも標準状態換算)とした以外は実施例6と同じ操作を行い、導入ガスを窒素から酸素に切り替えた直後に小規模な爆発が起き、マイクロチャンネルが壁面より破裂し、漏れを生じたため、反応を継続することができなかった。このことは、マイクロチャンネルを用いた反応器が、反応開始を還元雰囲気下で行い、次いで、反応雰囲気に切り替える操作を安全に行ううえで、必須であることを示している。
比較例6
本比較例では、実施例3と同様の固定床反応器を用いた。触媒も固定床部分に36mmの長さに渡って充填した。実施例6と同様の操作により還元及び反応を行ったところ、下記の成績を得た。
Figure 2010044271
反応開始後、7時間経過した後、水素ガスを窒素に切り替え、更に減圧することにより、反応を停止した。次いで、反応停止時と同様の組成のガスを用いて、すなわち窒素と酸素の混合雰囲気下にて前処理を行い、反応条件を実施例6と同様にして反応を行ったところ、下記の成績を得た。過酸化水素濃度ならびに水素収率が低下していることは、反応の停止/開始操作を酸化雰囲気下で行うことで、触媒が失活していることを示している。
Figure 2010044271
以上詳述した通り、本発明は、固定床気液混相反応器及びそれを用いた気液混相反応法に係るものであり、本発明のマイクロチャンネルからなる気液混相反応器を用いることにより、爆発組成の水素及び酸素を含有する混合気体を、流量を制御しつつ、かつ安全に取り扱うことが可能である。マイクロチャンネル中に触媒を充填した固定床を有することで、気液の接触界面を増大させることにより、気相から液相への物質移動を、従来の反応器に比べて、高効率にすることができる。従来の反応器で得られる過酸化水素の濃度は、0.2重量パーセントの低い値にとどまったが、本発明の反応器では、例えば、定常的に、1.0重量パーセント以上の過酸化水素水が得られ、従来の反応器に比べて、気相、かつ液相への物質移動を、10〜100倍の高効率で行うことができ、かつ、固定床の並列化に際し、おのおのの固定床に対し均等に気液が分配されることより、反応成績を損なうことなく生産性を向上できた。本発明は、水素含有率が20〜50%という爆発条件下で、安全、かつ定常的に、過酸化水素を製造することを可能とする、マイクロチャンネルを用いた新しい固定床気液混相反応器に関する新技術を提供するものとして有用である。
(図2の符号)
G 気相入り口
L 液相入り口
Gd 気相分配部
Ld 液相分配部
S−S’ 充填物導入部
Ck−Dk(k:1〜n) 固定床部分
Ak−Bk(k:1〜n) 気相導入部分
Ek−Fk(k:1〜n) 液相導入部分
gk k番目の固定床に導入される気相流
lk k番目の固定床に導入される液相流
g+l−k k番目の固定床中を流通する気液混相流
ΔPg−d 気相分配部の圧力損失
ΔPl−d 液相分配部の圧力損失
ΔP 液相のみを反応器に流通した際に合流部(O)において生じる圧力損失
O 流体合流部
G+L 気相と液相の混相流出口
(図3の符号)
Ck−Dk(k:1〜n) 固定床部分
Ak−Bk(k:1〜n) 気相導入部分
Ek−Fk(k:1〜n) 液相導入部分
gk k番目の固定床に導入される気相流
lk k番目の固定床に導入される液相流
g+l−k k番目の固定床中を流通する気液混相流
ΔPg−ik 気相導入部の圧力損失
ΔPl−ik 液相導入部の圧力損失
ΔPl−pk 固定床に液相のみを流通したときに生じる圧力損失

Claims (15)

  1. 気液混相反応を行う固定床反応器において、マイクロチャンネルで構成された配管構造を有し、固定床の断面積が、0.0001cm〜0.008cmであり、当該固定床、並びに気相導入部、及び液相導入部を有し、気相流通した際の気相導入部の配管の圧力損失をΔP、液相を液相導入部を介して固定床反応器に流通した際の圧力損失をΔPとして、気液混相反応条件において、ΔP>5ΔPとなる条件を満たすように形成した配管の太さ構造及び/又は同条件を満たすように形成した気液混相の形成を促進する充填物構造を有することを特徴とする固定床反応器。
  2. 気液混相反応を行うマイクロチャンネルで構成された配管構造を有する固定床反応器において、0.0001cm〜0.008cmの断面積を有する、並列な2カ所以上の固定床を有し、当該固定床のほかに、気相分配部、固定床に対する気相導入部、液相分配部、固定床に対する液相導入部、充填物導入部、及び流体合流部を有すること、前記気相分配部及び気相導入部の配管の圧力損失を、それぞれΔPg−d及びΔPg−iとし、前記液相分配部及び液相導入部の配管の圧力損失を、それぞれΔPl−d及びΔPl−iとし、並列化された固定床に液相を流通した際の圧力損失のうち、固定床部の圧力損失をΔPl−p、固定床の後段の流体合流部に液相を流通したときの圧力損失をΔPとして、下記1)〜4)の条件がすべて満たされること、
    1)気相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.0001〜0.05の範囲であり、かつ液相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.0003〜0.3の範囲である
    2)ΔPl−i>10ΔPl−d、かつΔPg−i>10ΔPg−d
    3)ΔPl−p>2.5ΔP
    4)ΔPg−i>5ΔPl−p
    前記並列な2カ所以上の固定床において、おのおのに気液が均等に分配される充填物構造を有すること、を特徴とする固定床反応器。
  3. 気相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.0002〜0.02の範囲である、請求項1又は2に記載の固定床反応器。
  4. 液相導入部の断面積/固定床の断面積が、0.001〜0.1の範囲である、請求項1又は2に記載の固定床反応器。
  5. 気相導入部の配管の断面積/液相導入部の配管の断面積が、1以下である、請求項1又は2に記載の固定床反応器。
  6. 固定床の断面積が、0.0008cm〜0.008cmである、請求項1又は2に記載の固定床反応器。
  7. 充填物が、触媒である、請求項1又は2に記載の固定床反応器。
  8. 固定床に充填した触媒が、パラジウム、金、及び/又は白金の元素を含有している、請求項1又は2に記載の固定床反応器。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の固定床反応器を使用して気液混相反応を行う方法において、単独又は並列化されたおのおののマイクロチャンネル内において、気相の線速度が0.01m/s〜10m/s、及び液相の線速度が10−5m/s〜10−2m/sの条件で、固定床反応器を運転して、気液混相反応を行うことを特徴とする気液混相反応方法。
  10. 水素と酸素から過酸化水素を直接合成する際に、反応の開始を還元雰囲気下にて行い、次いで、水素及び酸素の共存下で過酸化水素の直接合成反応を行い、最後に還元雰囲気で反応を停止する、請求項9に記載の気液混相反応。
  11. パラジウムを含有する触媒及び/又は他の金属触媒をマイクロチャンネルに充填した後、適量の水素ガス又は水素と窒素の混合ガスをマイクロチャンネルに通気して、触媒表面及びマイクロチャンネル内を十分に還元雰囲気にしてから、反応を開始する、請求項10に記載の反応方法。
  12. 反応停止時には、合成反応を完全に終了した後、適量の水素ガス又は水素と窒素の混合ガスをマイクロチャンネルに通気して、触媒表面及びマイクロチャンネル内を十分に還元雰囲気にしてから、停止する、請求項10に記載の反応方法。
  13. 気相が、酸素及び/又は水素を含有する、請求項9に記載の反応方法。
  14. 液相が、水及び/又は水酸基を含有する有機化合物を主成分とする、請求項9に記載の反応方法。
  15. 液相の主成分が、水及び/又はアルコールである、請求項119に記載の反応方法。
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