本発明は、レーザ光を照射することにより、情報の記録を行う情報記録媒体に関し、特に情報記録層を3層以上備えた情報記録媒体およびこの情報記録媒体に適合した情報記録装置に関する。
大容量の情報を記録する手段として、記録すべき情報によって変調された光、例えば、レーザ光を照射することにより、情報を記録することができる情報記録媒体が盛んに開発されている。このような情報記録媒体には、一箇所には一度だけ情報を記録することが可能な追記型の情報記録媒体と、何度も情報の書き換えが可能な書き換え型の情報記録媒体があり、一般に追記型光ディスクおよび書き換え型光ディスクとそれぞれ呼ばれている。
光ディスクの記録容量を高めるためには、情報記録層の多層化が有効である。DVDやBDでは既に情報記録層を2つ備えた光ディスクが実現されている。
このような光ディスクは、情報を記録するための適切な記録条件、特に、光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域を各情報記録層に備えている。光ディスク装置を用いて、光ディスクに情報を記録する場合、装置の起動時または記録直前にテスト記録領域を用いて記録パワーが最適化される。例えば、特許文献1は、追記型光ディスクにおける記録パワーの決定方法を開示している。
特許文献1は、情報記録層を2つ備えた光ディスクに関する技術を開示している。しかし、3つ以上の情報記録層を備えた光ディスクに関する構造、特に、テスト記録領域の配置やその使用方法については開示されていない。
本発明はこのような従来技術の課題を解決し、3つ以上の情報記録層を備え、各情報記録層において適切な条件で情報を記録することが可能な情報記録媒体、および、このような情報記録媒体に適合した情報記録装置を提供することを目的とする。
本発明の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは3以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、i番目(iは、2≦i≦n−1を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびi+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置との半径位置差が、j番目(jは、1≦j≦i−1を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびj+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置との半径位置差よりも大きい。
本発明の他の情報記録媒体は、情報記録層を少なくとも3層有し、レーザ光の入射面から相対的に近い側に位置する、隣り合う1対の情報記録層にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域間の半径方向の間隔が、前記レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する、隣り合う1対の情報記録層にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域間の半径方向の間隔よりも大きい。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは3以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、k番目(kは、1≦k≦n−2を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびk+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差が、k番目の情報記録層のテスト記録領域およびk+2番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差よりも大きい。
ある好ましい実施形態において前記nは4であり、前記kは1である。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは4以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、k番目(k’は、1≦k’≦n−3を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびk’+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差が、k’+1番目の情報記録層のテスト記録領域およびk’+3番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差よりも大きい。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは3以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層のテスト記録領域は、1層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置し、前記1層目の情報記録層のテスト記録領域は2層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置している。
ある好ましい実施形態において、前記nは4である。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは4以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層のテスト記録領域は、2層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置し、前記2層目の情報記録層のテスト記録領域は4層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置している。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは4以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層のテスト記録領域は、1層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置し、前記1層目の情報記録層のテスト記録領域は4層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置している。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは3以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するための、互いに異なる半径位置に設けられたテスト記録領域をそれぞれ有し、前記テスト記録領域には複数の副領域が設けられており、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、i番目(iは2≦i≦nを満たす偶数)の情報記録層では、前記レーザ光が外周側から内周側に向けて走査され、前記テスト記録領域において、副領域が内周側から外周側に向けて使用され、i−1番目の情報記録層では、前記レーザ光が内周側から外周側に向けて走査され、前記テスト記録領域において、副領域が外周側から内周側に向けて使用される。
本発明情報再生装置は、上記いずれかに記載の情報記録媒体を再生する情報再生装置であって、前記情報記録媒体は、前記n層の情報記録層の少なくともいずれか1つの情報記録層にコントロール領域を有し、前記コントロール領域から前記情報記録媒体に関する情報を再生するステップ、および前記n層の情報記録層のいずれかの層に、その層のテスト記録領域を用いて調整された記録パワーで記録されたデータを再生するステップの少なくとも一方を実行する。
本発明の情報記録装置は、上記いずれかに記載の情報記録媒体を記録する情報記録装置であって、前記n層の情報記録層のいずれかの層のテスト記録領域を用いて、レーザ光の記録パワーを決定し、決定した記録パワーで前記レーザ光を照射し、前記いずれかの層にデータを記録する。
本発明の再生方法は、上記いずれかに記載の情報記録媒体を再生する再生方法であって、前記情報記録媒体は、前記n層の情報記録層の少なくともいずれか1つの情報記録層にコントロール領域を有し、前記コントロール領域から前記情報記録媒体に関する情報を再生するステップ、および前記n層の情報記録層のいずれかの層に、その層のテスト記録領域を用いて調整された記録パワーで記録されたデータを再生するステップの少なくとも一方を実行する。
本発明の記録方法は、上記いずれかに記載の情報記録媒体にデータを記録する記録方法であって、前記n層の情報記録層のいずれかの層のテスト記録領域を用いてレーザ光の記録パワーを決定するステップと、決定した記録パワーで前記レーザ光を照射し、前記いずれかの層にデータを記録するステップとを包含する。
本発明によれば、3つ以上の情報記録層を備えた光ディスクにおいて、各情報記録層にテスト記録領域が設けられている。このため、情報記録層が積層されていることによってレーザ光の照射強度や、熱的環境などが情報記録層ごとに異なっていても、記録をすべき情報記録層のテスト記録領域を用い、その情報記録層の環境下でテスト記録を行うことができる。したがって、各情報記録層に最適な記録パワーを決定することができる。
本発明による情報記録媒体の第1の実施形態の構成を示す模式的な分解斜視図である。
図1の情報記録媒体におけるテスト記録領域の配置を示す模式図である。
比較のための情報記録媒体におけるテスト記録領域の配置を示す模式図である。
(a)は図1の情報記録媒体の各情報記録層の構造を模式的に示す図であり、(b)および(c)は、それぞれ、テスト記録領域の使用方向を示す模式図である。
(a)および(b)は、第1の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
第1の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
情報記録層L2における劣化領域が情報記録層L0、L1に与える影響を説明する模式図である。
第1の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
第2の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の配置を示す模式図である。
第2の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
第2の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
第2の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
本発明による情報記録装置の実施形態を示すブロック図である。
本発明による情報記録媒体の第4の実施形態の構成例示す模式図である。
単層の情報記録媒体の構成を示す模式図である。
2層の情報記録媒体の構成を示す模式図である。
3層の情報記録媒体の構成を示す模式図である。
4層の情報記録媒体の構成を示す模式図である。
本発明による情報記録媒体の第4の実施形態の物理的構成を示す模式図である。
(a)および(b)は、それぞれ、レーザビーム光のスポットとトラックに記録されたマークとを示す模式図である。
トラック上に記録されたマーク列に光ビームを照射させている様子を示す模式図である。
OTFと最短記録マークとの関係を示すグラフである。
OTFと最短記録マークとの関係を示す別なグラフである。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による情報記録媒体の第1の実施形態を説明する。本発明による情報記録媒体は追記型または書き換え型である。
図1は、本発明による情報記録媒体の第1の実施形態の構成を示す模式的な分解斜視図である。上述したように、光学的に情報を記録し、記録した情報を光学的に再生することのできる情報記録媒体は、一般的に光ディスクと呼ばれているため、以下、情報記録媒体を光ディスクと呼ぶ。また、「情報」とは、情報記録媒体に記録される文字情報、音声情報、画像情報、プログラム、その他の種々の情報を意味する。これらの情報はデジタル化され、情報記録媒体に記録されたり、種々の情報処理装置によって処理される。一般にコンピュータで処理される「情報」を「データ」と定義するため、本願明細書において「情報」は「データ」と同義である。本願明細書では、一般的あるいは慣用的表現にしたがって、「情報」または「データ」の用語を選択的に使用する。例えば、光ディスクなどは一般的に「情報記録媒体」と呼ばれるが、情報を記録する領域は「データ領域」と呼ばれる。
図1に示すように光ディスク101は、基板110と、情報記録層L0、L1、L2と、中間層111、112と、カバー層113とを備える。基板110とカバー層113との間に情報記録層L0、L1、L2が配置されており、基板110側に情報記録層L0が、カバー層113側に情報記録層L2が配置されている。カバー層113側から記録すべき情報によって変調されたレーザ光200が照射されるので、レーザ光200の入射面となるカバー層113の表面から遠い側から情報記録層L0、L1、L2がこの順で配置される。中間層111および中間層112は、それぞれ、情報記録層L0と情報記録層L1との間、および情報記録層L1と情報記録層L2との間に設けられている。
基板110、情報記録層L0、L1、L2、中間層111、112およびカバー層113は上述した配置で積層され、互いに接合されており、積層によって構成された光ディスク101の中心にクランプ孔114が設けられている。基板110、中間層111、112およびカバー層113は、例えば、ポリカーボネート樹脂等で形成される。
情報記録層L0、L1、L2のそれぞれは、同心円状あるいは螺旋状に設けられたデータを記録するトラックが設けられている。また、情報記録層L0、L1、L2には、それぞれ、データ領域D0、D1、D2とデータ領域D0、D1、D2よりも内周側に設けられたリードイン領域R0、R1、R2とが設けられている。
データ領域D0、D1、D2は、ユーザデータを記録する領域である。光ディスク101が追記型である場合、データ領域D0、D1、D2の同一箇所に一度だけ情報を記録することができる。記録された情報を書き換えることはできない。光ディスク101が書き換え型である場合、データ領域D0、D1、D2に情報を記録し、記録された情報を他の情報で書き換えることができる。
リードイン領域R0、R1、R2のそれぞれは、少なくとも再生専用領域であるコントロール領域(PIC(Permanent Information & Control Data)領域とも呼ばれる)と情報の記録が可能なテスト記録領域(OPC(Optimum Power Control)領域とも呼ばれる)とを有する。
テスト記録領域は、データ領域に情報を記録する場合に使用されるレーザ光の記録パワーを調整するために用いられる。具体的には、記録パワーを変えながら所定の情報によって変調されたレーザ光をテスト記録領域に照射し、記録マークを形成する。その後、形成した記録マークにレーザ光を照射し、記録された情報を再生し、再生された情報の品質を評価することによって、最適な記録パワーを決定する。
リードイン領域R0のテスト記録領域は同じ情報記録層L0のデータ領域D0に情報を記録するレーザ光の記録パワーを調整するために用いられる。同様に、リードイン領域R1、R2のテスト記録領域は、それぞれ、データ領域D1、D2に情報を記録するレーザ光の記録パワーを調整するために用いられる。
コントロール領域には、ディスク情報、メディア(光ディスク)メーカが推奨するユーザデータ記録時の照射パワー等の記録パラメータ情報が記録(記憶)されている。各情報記録層L0、L1、L3へ情報を記録するための最適な記録パラメータは情報記録層ごとに異なる。本実施形態では、リードイン領域R0、R1、R2のそれぞれのコントロール領域には、同じ情報記録層のデータ領域に情報を記録するための記録パラメータ情報に加えて、他の情報記録層に情報を記録するための記録パラメータ情報が記録されている。具体的には、リードイン領域R0のコントロール領域に、情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に情報を記録するための記録パラメータ情報が記録されている。同様に、リードイン領域R1、R2のそれぞれのコントロール領域にも情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に情報を記録するための記録パラメータ情報が記録されている。
これにより、いずれか1つの情報記録層のコントロール領域からすべての情報記録層の記録パラメータ情報が得られる。このため、各情報記録層のコントロール領域にはその情報記録層についての記録パラメータ情報しか記録されていない場合に比べて、ユーザデータを記録するまでの時間を短縮することができる。また外乱等により所望の情報記録層とは異なる誤った情報記録層の再生を開始してしまった場合でも、その誤った情報記録層のコントロール領域を再生することによって、意図していた情報記録層の記録パラメータ情報を入手することができる。
ただし、コントロール領域への記録パラメータの記録方法はこれに限られない。各情報記録層のコントロール領域に、その情報記録層のデータ領域に記録を行うための記録パラメータ情報のみが記録されていてもよい。この場合、各コントロール領域に記録すべき記録パラメータ情報の容量が少なくなるため、コントロール領域を小さくすることができる。したがって、以下において説明するように、情報記録層が増え、各層のテスト記録領域の半径位置を異ならせる場合でもコントロール領域を確保し易くなる。
また、光ディスク101が追記型である場合、いずれか1つの情報記録層のコントロール領域に、その光ディスク101に含まれるすべての情報記録層のデータ領域に情報を記録するための記録パラメータ情報が記録されていてもよい。この場合、すべての情報記録層の記録パラメータ情報が記録されているコントロール領域は、光の入射面から一番遠い情報記録層に配置されていてもよい。
例えば、光ディスク101が追記型である場合である場合、情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に情報を記録するための記録パラメータ情報が情報記録層L0のリードイン領域R0に設けられたコントロール領域にのみ記録されていてもよい。
また、この場合、カバー層113のレーザ光200が入射面(ディスク101の表面)から情報記録層L0までの深さ(厚さ)が、1つの情報記録層を備えた光ディスクにおけるディスクの表面からその情報記録層までの深さと一致していてもよい。これにより、1つの情報記録層を備えた光ディスクに対して記録再生を行う光ディスク装置を用いて、光ディスク101の情報記録層L0、L1、L2の任意の情報記録層のディスク情報を入手することができ、光ディスク装置の構成を簡単にすることができる。
なお、情報記録層が光ディスクの表面から遠いほど、その情報記録層から再生した再生信号は、チルトによる信号品質の劣化が大きくなる。このため、光ディスクが複数の情報記録層を備える場合、表面から、最も基板側に位置する情報記録層(基準層)までの深さが、1つの情報記録層を備えた光ディスクにおけるディスクの表面からその情報記録層までの深さと等しいことが好ましい。この場合、最も基板側に位置する情報記録層に設けられたディスク情報の領域に対応する他の情報記録層における領域にデータ領域と同じ溝構造を設けることによって、光ディスクの半径位置に関わらず、最も基板側に位置する情報記録層までのレーザ光の透過率を同じにすることができる。したがって、最も基板側に位置する情報記録層のディスク情報を再生するための特別な検出手段を必要とせず、光ディスク装置の構成を簡単にすることができ、さらに他層の作製が容易になる。
図2は、光ディスク101の模式的断面図であって、リードイン領域R0、R1、R2における、テスト記録領域の配置を示している。図2および以下の図面において、中間層111、112は示していない。またレーザ光200は図2において上方から照射され、ディスクの外周方向は矢印で示すように右側である。
図2に示すように、情報記録層L0、L1、L2のリードイン領域R0、R1、R2に、それぞれ、テスト記録領域T0、T1、T2が位置している。テスト記録領域T0、T1、T2は、互いに異なる半径位置に配置されており、情報記録層L0、L1、L2の積層方向、つまり、レーザ光200の入射方向から見て互いに全く重なっていない。
より具体的には、光ディスク101において、最も内周側に配置された情報記録層L1のテスト記録領域T1の外周端部T1bよりも2番目に内周側に配置された情報記録層L0のテスト記録領域T0の内周端部T0aは外周側に位置しており、テスト記録領域が重ならない間隙(間隔)が設けられている。この間隙は、内周端部T0aの半径位置と外周端部T1bの半径位置との差で規定される距離を有する。また、2番目に内周側に配置された情報記録層L0のテスト記録領域T0の外周端部T0bよりも最も外周側に配置された情報記録層L2のテスト記録領域T2の内周端部T2aは外周側に位置しており、内周端部T2aと外周端部T0bとの半径位置差で規定される距離を有する間隙が設けられている。
3つの情報記録層L0、L1、L2をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2は、1層目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0より外周側に位置し、情報記録層L0のテスト記録領域T0は2層目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1より外周側に位置している。
このようなテスト記録領域T0、T1、T2の配置による効果を以下に説明する。図3に示すように、本実施形態とは異なり、テスト記録領域T0、T1、T2がそれぞれ、情報記録層L0、L1、L2において同一半径位置に配置されている場合を考える。つまり、テスト記録領域T0の内周端部T0a、テスト記録領域T1の内周端部T1aおよびテスト記録領域T2内周端部T2aの半径位置が互いに一致し、テスト記録領域T0の外周端部T0b、テスト記録領域T1の外周端部T1bおよびテスト記録領域T2の外周端部T2bの半径位置が互いに一致することにより、テスト記録領域T0、T1、T2が完全に重なっている場合を考える。この場合、例えば情報記録層L1のテスト記録領域T1が破壊されると、テスト記録領域T1におけるレーザ光の透過率が大きく低下するため、情報記録層L1よりレーザ光から遠くに位置する情報記録層L0のテスト記録領域T0にレーザ光が正しく届かなくなる。その結果、情報記録層L0のテスト記録領域T0に、テスト記録を行う光ディスク装置がアクセスすることができなくなる。
また破壊に至らないまでも情報記録層L1のテスト記録領域T1に高い照射パワーでテスト記録を行うことによって、テスト記録領域T1の透過率が変化するのであれば、テスト記録領域T1への記録の有無により情報記録層L0に到達するレーザ光の強度が変化してしまう。
テスト記録領域T2が破壊されたり、テスト記録領域T2におけるレーザ光の透過率が変化した場合には、テスト記録領域T0、T1が影響を受ける可能性がある。したがって、図3に示すテスト記録領域の配置では、情報記録層L0、L1のテスト記録領域T0、T1を用いて正しくテスト記録を行うことができないため、情報記録層L0、L1の記録パワーを正しく決定することができない可能性がある。
これに対し、図2に示す本実施形態のテスト記録領域の配置によれば、テスト記録領域T0、T1、T2の半径位置が異なっており、テスト記録領域T0、T1、T2は情報記録層の積層方向に重なっていない。このため、情報記録層L1のテスト記録領域T1が破壊されても、破壊されたテスト記録領域T1の影響を受けずに、あるいはほとんど受けずに、情報記録層L0のテスト記録領域T0にレーザ光が正しく届く。したがって、情報記録層L0のテスト記録領域T0を用いて正しくテスト記録を行うことができ、情報記録層L0の記録パワーを正しく決定することができる。同様に、情報記録層L2のテスト記録領域T2が破壊されても、情報記録層L0、L1の記録パワーを正しく決定することができる。
また、同様の理由から、テスト記録領域T0、T1、T2におけるレーザ光の透過率が変化した場合でも、情報記録層L0、L1、L2のテスト記録領域T0、T1、T2にレーザ光が正しく届く。したがって、情報記録層L0、L1、L2のテスト記録領域T0、T1、T2を用いて正しくテスト記録を行うことができ、情報記録層L0、L1、L2の記録パワーを正しく決定することができる。
なお、例えば情報記録層の相変化を利用する書き換え型の光ディスクでは、アモルファス状態の記録マークと、結晶状態の記録マークとで透過率が異なることがあっても、記録パワーの決定後に記録マークを消去することにより、情報記録層の透過率を変化させないことが可能である。しかし、1回のみ記録が可能な追記型の光ディスクにおいては、情報記録層の記録膜特性が不可逆である。したがって、本実施形態のテスト記録領域の配置は、追記型の光ディスクに特に有用である。
次に、テスト記録領域T0、T1、T2の使用方向について説明する。図2において矢印で示すように、情報記録層L0、L2では、内周から外周に向かってレーザ光が情報記録層L0、L2を走査するようにトラックが構成されている。これに対し、情報記録層L1では、外周から内周に向かってレーザ光が情報記録層L1を走査するようにトラックが構成されている。例えば、トラックが螺旋形状を有する場合には、トラックの螺旋の向きが情報記録層L0、L2と情報記録層L1とで逆になっている。これにより、情報記録層L0および情報記録層L1に連続して情報の記録または再生を行う場合、情報記録層L0における最後の記録または再生をデータ領域D0の最外周位置において行った後、同じ半径位置にレーザ光を維持したまま、情報記録層L1おける最初の記録または再生をデータ領域D1の最外周位置から開始することができる。また、情報記録層L1における最後の記録または再生をデータ領域D1の最内周位置において行った後、同じ半径位置にレーザ光を維持したまま、情報記録層L2おける最初の記録または再生をデータ領域D2の最内周位置から開始することができる。したがって、次の情報記録層へ移動するたびに、レーザ光を光ディスク101の最内周位置あるいは最外周位置へジャンプさせることなく、情報の記録または再生を行うことができる。ただし、後述する要件を満たせば、各層におけるレーザ光の光スポットの進行方向はこれに限らなくとも良い。
これに対して、テスト記録領域T0、T1、T2は、好ましくは、各情報記録層におけるレーザ光の光スポットの進行方向と逆の方向に使用される。以下、テスト記録領域の使用方向について説明する。
すでに説明したように、各情報記録層に設けられたテスト記録領域は、その情報記録層のデータ領域にデータを記録する際のレーザ光の照射パワーを決定するために使用するテスト記録の領域である。例えば、照射パワーを1mWずつ増加させながらテストデータを記録し、記録後にテスト記録を行った領域を再生し、再生信号のエラーレートやジッタ等の再生指標が最良となる照射パワーを決定する。
テストデータを記録する際の照射パワーは、例えばコントロール領域を参照し、コントロール領域に記録されている推奨の照射パワー付近に決定すればよい。しかし、光ディスクのレーザ光に対する感度ばらつきや光ディスクに記録を行う光ディスク装置の光ヘッドの性能のばらつき等により、設定パワーと実際の照射パワーとの間にずれがあると推定される場合には、これらを考慮してもよい。この場合、推奨パワーの±20%程度のパワー範囲で、例えば5%づつ照射パワーを変化させながらテストデータを記録してもよい。
また再生指標が最良となる照射パワー以外の照射パワーを決定してもよい。例えば、エラーレートやジッタ等に基準値を設定し、基準値以下となる照射パワー範囲の中央付近のパワーをユーザデータを記録する際の記録パワーとして決定してもよい。この決定方法によれば、例えばユーザデータの記録中に、レーザ光を出射する光源の温度が変化し、設定パワーに対して実際の照射パワーが変動した場合でも、変動が基準値以下となる照射パワー範囲内であれば、良好な記録品質を維持することができる。また、光ディスクに反りが生じている場合でも、そりによる記録パワーの変動が基準値以下となる照射パワー範囲内であれば、良好な記録品質を保持することができる。
一方でこのような記録パワーの決定方法ではテスト記録領域での照射パワーを広い範囲で変化させる必要があり、高いパワーで記録したテスト記録領域は劣化する可能性がある。
書き換え型の光ディスクではテスト記録による劣化がない限りにおいては、同じ領域に複数回のテスト記録を行うことができる。このためテスト記録領域の使用方法について特に制限を設ける必要はない。しかし、データを1度だけ記録することができる追記型の光ディスクでは、前述したように記録パワーの決定においては複数の照射パワーでテストデータを記録することから、テスト記録領域の未記録領域をランダムに(虫食い的に)使用するよりも、端から順番に使用していく方が効率的である。書き換え型の光ディスクにおいても、繰り返し記録に対して記録性能が変化する場合には、追記型の光ディスクと同様、テスト記録領域を端から順番に使用することが望ましい。
図4(a)は光ディスク101の情報記録層L0、L1、L2のうちの任意の1つの情報記録層Ln(nは0、1、または2)を示している。前述したように、情報記録層Lnにはリードイン領域Rnが設けられており、リードイン領域Rn内にテスト記録領域Tnが設けられている。テスト記録領域T0、T1、T2にもアドレスが与えられており、各テスト記録領域は、所定数のアドレスが連続した領域であるクラスタと呼ばれる副領域を含む。図4(b)および(c)は、テスト記録領域Tnの副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・を模式的に示している。例えば、上述した1回のテスト記録によって1つの副領域が使用される。情報記録層L0、L1、L2のテスト記録領域T0、T1、T2を構成する副領域(クラスタ)の個数は互いに等しい。つまり、テスト記録領域T0、T1、T2の大きさは互いに等しい。
図2に示すように、情報記録層L0ではレーザ光が内周から外周に向けて情報記録層L0を走査する。このため、テスト記録領域T0の副領域は、図4(b)に示すように、矢印で示すレーザ光の走査方向にしたがって、アドレスが割り当てられた複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・が存在する。この場合、複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・は外周から内周に向けて使用される。つまり、未使用の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・のうち最も外周側のものから順に使用される。図4(b)では、t5、t4、t3、t2、t1の順で使用される。ただし、各副領域内では矢印で示すようにレーザ光の走査方向にしたがってテスト記録が行われる。情報記録層L2でもレーザ光が内周から外周に向けて情報記録層L2を走査する。このため、複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・は外周から内周に向けて、t5、t4、t3、t2、t1の順で使用される。
これに対し、情報記録層L1ではレーザ光が外周から内周に向けて情報記録層L1を走査する。このため、テスト記録領域T1の副領域は、図4(c)に示すように、矢印で示すレーザ光の走査方向にしたがって、アドレスが割り当てられた複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・が存在する。複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・は内周から外周に向けて使用される。つまり、未使用の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・のうち最も内周側のものから、t5、t4、t3、t2、t1の順で使用される。
このように、テスト記録領域における副領域の使用方向はレーザ光の走査方向、つまり、光スポットの進行方向と逆である。これにより、テスト記録領域のある副領域がテスト記録の際の強い照射パワーによって破壊され、光スポットのトラックへの追随が困難になった場合でも、テスト記録領域の使用方向が光スポット進行方向と逆であるため、破壊された副領域を通ることなくテスト記録を行う領域に到達することができる。例えば、前回のテスト記録によって情報記録層L0のテスト記録領域T0の副領域t5が強い照射パワーによって破壊された場合でも、次のテスト記録の際には、未記録のテスト記録領域t1、t2、t3、t4と順にアドレスを検出するが可能であり、使用されていない最も外周側の副領域t4を検出することができる。
また、図2から分かるように、上述したように各情報記録層のテスト記録領域を使用する場合、任意の隣接するテスト記録領域間では互いに遠い方からテスト記録領域を使用していくことになる。例えば、情報記録層L0のテスト記録領域T0は外周端部T0b側の副記録領域から使用され、情報記録層L1のテスト記録領域T1は内周端部T1a側の副記録領域から使用される。このため、特にテスト記録の回数が少ない間は、より他層の影響を低減して正しく記録パワーを決定することができる。
このように本実施形態の光ディスクによれば、3つ以上の情報記録層を備えた光ディスクにおいて、各情報記録層にテスト記録領域が設けられている。このため、情報記録層が積層されていることによってレーザ光の照射強度や、熱的環境などが情報記録層ごとに異なっていても、記録をすべき情報記録層のテスト記録領域を用い、その情報記録層の環境下でテスト記録を行うことができる。したがって、各情報記録層に最適な記録パワーを決定することができる。
また、各情報記録層は、積層方向において互いに重なりが生じないように、互いに異なる半径位置に配置されている。このため、他の情報記録層のテスト記録領域の記録状態の影響を受けることなく、あるいは、影響を抑制し、正しくテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。
また、各情報記録層のテスト記録領域の使用方向をその情報記録層におけるレーザ光の操作方向と逆にした場合には、テスト記録領域の一部が強い照射パワーによって破壊された場合でも、テスト記録領域の残りの領域を正しく使用することができる。また、他層の影響を低減して正しく記録パワーを決定することができる。
次に、図2を参照しながら、テスト記録領域T0、T1、T2のより好ましい配置を説明する。
一般に、情報記録層L0にレーザ光を照射する場合、レーザ光は、情報記録層L1、L2を透過する必要があり、情報記録層L1にレーザ光を照射する場合には、レーザ光が情報記録層L2を透過する必要がある。このため、情報記録層L2のレーザ光の透過率が最も高く、情報記録層L1、情報記録層L0の順で透過率が低下する。
また、情報記録層の設計の観点からは、仮に既に2つの情報記録層を有する光ディスクが開発されているならば、既存の情報記録層を情報記録層L0、L1に使用し、新たに透過率の高い情報記録層L2のみを開発するのが望ましい。
しかし、情報記録層L2には高透過率が要求されるため、設計の自由度が狭くなり、情報記録層L0、L1よりも僅かな記録条件の変化、例えば記録パワーの変動により記録特性が悪化しやすい。情報記録層L1と情報記録層L0との間においても、同様の関係が成立する。つまり、一般に透過率の高い情報記録層ほど、設計の自由度が狭くなり、僅かな記録条件の変化、例えば記録パワーの変動により記録特性が悪化しやすい。
一方、例えば、情報記録層L2にレーザ光を照射する際には、一部の光が情報記録層L2を透過して情報記録層L1で反射して再び情報記録層L2へ戻ってくる。このとき、情報記録層L1のテスト記録領域T1が破壊または劣化していれば、テスト記録領域T1の反射率が変化するため、テスト記録領域T1から情報記録層L2へ戻ってくる反射光や迷光によるレーザ光の量も変化する。このため、テスト記録領域T1とテスト記録領域T2とが近接していれば、テスト記録領域T1から情報記録層L2へ戻ってくるレーザ光の変動がノイズ成分としてテスト記録領域T1において反射するレーザ光に重畳される。その結果、テスト記録領域T2を用いて正しくテスト記録を行うことができず、情報記録層L2の記録パワーを正しく決定することができない。
本実施形態の光ディスク101では、この点考慮し、レーザ光の入射面から近い側に位置する隣り合う情報記録層のテスト記録領域の半径位置差をレーザ光の入射面から遠い側に位置する隣り合う情報記録層のテスト記録領域の半径位置差よりも大きくすることが好ましい。つまり、レーザ光200の入射面から相対的に近い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L1、L2にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T2、T1間の半径方向の間隔(T2aとT1bとの間隔)は、レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L0、L1にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T0間の半径方向の間隔(T0aとT1bとの間隔)より大きく設定することが好ましい。
具体的には、各情報記録層L0、L1、L2をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1および3番目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T1の外周端部T1bの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T2の内周端部T2aの半径位置との半径位置差(T2a−T1b)は、1番目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0および2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域L1のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T1の外周端部T1bの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T0の内周端部T0aの半径位置との半径位置差(T0a−T1b)よりも大きい。
このようなテスト記記録領域の配置によれば、隣接する情報記録層からの反射の影響がより大きい一対の情報記録層間の間隔を広くし、隣接する情報記録層からの反射の影響を低減することができる。したがって、各情報記録層のテスト記録領域において正しいテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。また、相対的に隣接する情報記録層からの反射の影響が小さい一対の情報記録層間の間隔を相対的に狭くすることによって、情報記録層間に設ける間隔を必要以上に広く設定せず、リードイン領域の面積を有効に活用することができる。また、リードイン領域を広げることなく、十分なデータ領域を確保するこができる。
なお、上述したように隣接する情報記録層におけるテスト記録領域の間隔を設定する場合において、情報記録層L0におけるテスト記録領域T0と情報記録層L1におけるテスト記録領域T1を既存の2つの情報記録層を有する光ディスクにおけるテスト記録領域の配置と一致させてもよい。この場合、既存の光ディスク装置においても比較的簡単なシーケンスの変更のみで、本実施形態の光ディスク101のテスト記録領域T0、T1においてテスト記録を行うことができる。
上述のテスト記録領域の配置は、ユーザデータを1度だけ記録する追記型の光ディスクに好適に用いられる。しかし、3層以上の光学的に記録可能な情報記録面を有する書き換え型の光ディスクにおいても、上述のテスト記録領域の配置を採用することにより、隣接する情報記録層の影響を受けることなく正しく各情報記録層の記録パワーを決定することができる。
具体的には、書き換え型の光ディスクの場合、図5(a)および(b)に示すように情報記録層L0、L1、L2のテスト記録領域T0、T1、T2を配置してもよい。
図5(a)に示す光ディスク102のテスト記録領域T0、T1、T2の配置は、図2に示す配置と同じである。ただし、書き換え型の光ディスクの場合テスト記録領域T0、T1、T2の使用方向に制限はない。書き換え型の光ディスクでは、テスト記録を行った後、記録マークを消去することにより、記録領域T0の透過率を変化させないことが可能だからである。また、書き換え型の光ディスクの場合テスト記録領域T0、T1、T2の任意の副領域にランダムにアクセスが可能である。
また、書き換え型の光ディスクの場合、図5(b)の光ディスク102’に示すようにテスト記録領域T0、T1、T2が配置されていてもよい。この形態では、情報記録層L2のテスト記録領域T2が最も内周側に配置され、情報記録層L1のテスト記録領域T1が最も外周側に配置される。情報記録層L0のテスト記録領域T0は、情報記録層L2のテスト記録領域T2よりも外周側であって、情報記録層L1のテスト記録領域T1より内周側に配置されている。
また、各情報記録層をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1および3番目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T2の外周端部T1bと外周側に配置されたテスト記録領域T1の内周端部T1aとの半径位置差(T1a−T2b)は、1番目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0および2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域L1のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T0の外周端部T0bと外周側に配置されたテスト記録領域T1の内周端部T1aとの半径位置差(T1a−T0b)よりも大きい。
また、本実施形態では、3つのテスト記録領域T0、T1、T2は互いに重ならないように、異なる半径位置に設けられていた。しかし、情報記録層L2に対する情報記録層L1の反射光の影響が小さく、情報記録層L1に対する情報記録層L2の透過光の影響が小さい場合には、図6に示す光ディスク103ように、情報記録層L0のテスト記録領域T0と情報記録層L2のテスト記録領域T2との半径位置差を図2に示すテスト記録領域の配置よりも小さくしてもよい。
図6は、テスト記録領域T0とテスト記録領域T2との半径位置差を最も小さくした場合である半径位置差をゼロにした場合のテスト記録領域の配置を示している。このため、テスト記録領域T2の内周端部T2aおよび外周端部T2bが、テスト記録領域T0の内周端部T0aおよび外周端部T0bと完全に一致し、テスト記録領域T2とテスト記録領域T0が完全に重なっている。しかし、テスト記録領域T2がテスト記録領域T0と部分的に重なっていてもよい。
つまり、レーザ光200の入射面側に近い情報記録層のテスト記録領域は、入射面から遠い側に近い情報記録層に対して近接させて配置してもよい。具体的には、3つの情報記録層L0、L1、L2をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、1番目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0および2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T1の内周端部T1aの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T0の外周端部T0bの半径位置との半径位置差が、1番目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0および3番目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T0aの内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T2の外周端部T2bの半径位置との半径位置差よりも大きくてもよい。
図7は情報記録層L2における劣化領域が情報記録層L0、情報記録層L1に与える影響を示した模式図である。情報記録層L2のテスト記録領域T2に含まれる副領域が、強い照射パワーにより破壊され、劣化領域130、131が形成されたと考える。劣化領域130と劣化領域131は同じ大きさであるが、情報記録層L1に焦点を絞ったときの情報記録層L2におけるレーザ光20のスポットに占める劣化領域130の割合に対し、情報記録層L0に焦点を絞ったときの情報記録層L2におけるレーザ光200’のスポットに占める劣化領域131の割合の方が小さい。したがって、テスト記録領域T2に含まれる副領域が破壊されることによる影響は、情報記録層L1よりも情報記録層L0の方が小さい。このため、図6で示すテスト記録領域の配置のように、情報記録層L0のテスト記録領域T0と情報記録層L2のテスト記録領域T2との半径位置差を小さくすることができる。これにより、他の情報記録層のテスト記録領域の影響を抑制し、各テスト記録領域において正しくテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。また、リードイン領域の面積を小さくし、十分なデータ領域を確保することができる。
なお図2に示す実施形態では、レーザ光200の入射面から相対的に近い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L1、L2にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T2、T1間の半径方向の間隔(T2aとT1bとの間隔)を、レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L0、L1にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T0間の半径方向の間隔(T0aとT1bとの間隔)より大きく設定していた。しかし、例えば情報記録層L0と情報記録層L1との厚さ方向の距離が、情報記録層L1と情報記録層L2との厚さ方向の距離より短い場合、例えば、図1に示すように、中間層111厚さが中間層112の厚さよりも小さい場合、情報記録層L0と情報記録層L1との間の影響が情報記録層L1と情報記録層L2との間よりも大きい事が考えられる、この場合には、図8に示す光ディスク104ように、入射面から近い側に位置する、隣り合う情報記録層L2、L1のテスト記録領域T2、T1の半径位置差を、入射面から遠い側に位置する、隣り合う情報記録層L1、L0のテスト記録領域T1、T0の半径位置差よりも小さくしてもよい。
特にリードイン領域の面積を小さくするために、レーザ光の入射面から近い側に位置する隣り合う情報記録層L2、L1のテスト記録領域T2、T1の半径位置差(間隔)を限界まで小さくしている場合、本実施形態のように、レーザ光の入射面から遠い側に位置する、隣り合う情報記録層L1、L0のテスト記録領域T1、T0の半径位置差間隔を、レーザ光の入射面から近い側に位置する、情報記録層L2、L1のテスト記録領域T2、T1の半径位置差(間隔)よりも大きくすることにより、情報記録層L1からの反射光の影響を低減して正しい記録パワーを決定することができる。
本実施形態では、光ディスク101は3つの情報記録層を備えていたが、情報記録層を4つ以上備える光ディスクにも本発明を適用できる。この場合、情報記録層L0、L1、L2を4つ以上の情報記録層のうち、レーザ光の入射面から最も遠い情報記録層をL0とし、情報記録層をL0に隣接して情報記録層をL1、L2を順に設けることが好ましい。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による情報記録媒体の第2の実施形態を説明する。本発明による情報記録媒体も追記型または書き換え型である。第2の実施形態の光ディスクは、情報記録層L3をさらに含み、4つの情報記録層を備えている点で第1の実施形態の光ディスク101と異なる。図1に示す光ディスク101において、情報記録層L2とカバー層113との間に情報記録層L3が設けられ情報記録層L3と情報記録層L2との間に新たな中間層が設けられている。
図9は第2の実施形態の光ディスク105の模式的断面図である。図2と同様、中間層は示していない。図9に示すように、光ディスク101の構造に追加された情報記録層L3の内周側にリードイン領域R3が設けられ、リードイン領域R3内にテスト記録領域T3が存在する。
図9に示すように、情報記録層L0、L1、L2、L3のリードイン領域R0、R1、R2、R3に、それぞれ、テスト記録領域T0、T1、T2が位置している。テスト記録領域T0、T1、T2、T3は、互いに異なる半径位置に配置されており、情報記録層L0、L1、L2、L3の積層方向、つまり、レーザ光200の入射方向から見て互いに重なっていない。
より具体的には、光ディスク105において最も内周側に配置された情報記録層L3のテスト記録領域T3の外周端部T3bよりも2番目に内周側に配置された情報記録層L1のテスト記録領域T1の内周端部T1aは外周側に位置しており、テスト記録領域が重ならない間隙(間隔)が設けられている。この間隙は、内周端部T3bの半径位置と外周端部T1aの半径位置との差で規定される距離を有する。
また、2番目に内周側に配置された情報記録層L1のテスト記録領域T1の外周端部T1bよりも3番目に内周側に配置された情報記録層L0のテスト記録領域T0の内周端部T0aは外周側に位置しており、内周端部T0aと外周端部T1bとの半径位置差で規定される距離を有する間隙が設けられている。
また、3番目に内周側に配置された情報記録層L0のテスト記録領域T0の外周端部T0bよりも最も外周側に配置された情報記録層L2のテスト記録領域T2の内周端部T2aは外周側に位置しており、内周端部T2aと外周端部T0bとの半径位置差で規定される距離を有する間隙が設けられている。
4つの情報記録層L0、L1、L2、L3をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2は、1層目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0より外周側に位置し、情報記録層L0のテスト記録領域T0は2層目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1より外周側に位置している。
また、情報記録層L2のテスト記録領域T2は、情報記録層L1のテスト記録領域より外周側に位置し、情報記録層L1のテスト記録領域T1は4層目の情報記録層である情報記録層L3のテスト記録領域T3より外周側に位置している。
また、3層目の情報記録層L2のテスト記録領域T2は、情報記録層L0のテスト記録領域T0より外周側に位置し、情報記録層L0のテスト記録領域T0は情報記録層L3のテスト記録領域T3より外周側に位置している。
第1の実施形態と同様、図9に示す本実施形態のテスト記録領域の配置によれば、テスト記録領域T0、T1、T2、T3の半径位置が異なっており、テスト記録領域T0、T1、T2、T3は情報記録層の積層方向に重なっていない。このため、例えば、情報記録層L1のテスト記録領域T1が破壊されても、破壊されたテスト記録領域T1の影響を受けずに、あるいはほとんど受けずに、情報記録層L0のテスト記録領域T0にレーザ光が正しく届く。したがって、情報記録層L0のテスト記録領域T0を用いて正しくテスト記録を行うことができ、情報記録層L0の記録パワーを正しく決定することができる。同様に、情報記録層L2、L3のテスト記録領域T2、T3が破壊されても、情報記録層L0、L1、L2の記録パワーを正しく決定することができる。
また、同様の理由から、テスト記録領域T0、T1、T2、T3におけるレーザ光の透過率が変化した場合でも、情報記録層L0、L1、L2、L3のテスト記録領域T0、T1、T2、T3にレーザ光が正しく届く。したがって、情報記録層L0、L1、L2、L3のテスト記録領域T0、T1、T2、T3を用いて正しくテスト記録を行うことができ、情報記録層L0、L1、L2、L3の記録パワーを正しく決定することができる。
次に、テスト記録領域T0、T1、T2、T3の使用方向について説明する。図9において矢印で示すように、情報記録層L0、L2では、内周から外周に向かってレーザ光が情報記録層L0、L2を走査するようにトラックが構成されている。これに対し、情報記録層L1、L3では、外周から内周に向かってレーザ光が情報記録層L1、L3を走査するようにトラックが構成されている。このため第1の実施形態と同様、次の情報記録層へ移動するたびに、レーザ光を光ディスク105の最内周位置あるいは最外周位置へジャンプさせることなく、情報の記録または再生を行うことができる。
これに対して、テスト記録領域T0、T1、T2、T3は、第1の実施形態と同様、好ましくは、各情報記録層におけるレーザ光の光スポットの進行方向と逆の方向に使用される。これにより第1の実施形態で説明したように、テスト記録領域のある副領域がテスト記録の際の強い照射パワーによって破壊され、光スポットのトラックへの追随が困難になった場合でも、テスト記録領域の使用方向が光スポット進行方向と逆であれば、破壊された副領域を通ることなくテスト記録を行う領域に到達することができる。また、特にテスト記録の回数が少ない間は、より他層の影響を低減して正しく記録パワーを決定することができる。
なお、本実施形態では、光ディスク105は4つの情報記録層を備えているが、4層以上の情報記録層を備えた光ディスクにも本発明を好適に用いることができる。この場合、情報記録層の層数をn(nは3以上の整数)として、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、i番目(iは2≦i≦nを満たす偶数)の情報記録層では、前記レーザ光が外周側から内周側に向けて走査され、前記テスト記録領域において、副領域が内周側から外周側に向けて使用され、i−1番目の情報記録層では、前記レーザ光が内周側から外周側に向けて走査され、前記テスト記録領域において、副領域が外周側から内周側に向けて使用される。
このように、本実施形態の光ディスクによれば、3つ以上の情報記録層を備えた光ディスクにおいて、各情報記録層にテスト記録領域が設けられている。このため、情報記録層が積層されていることによってレーザ光の照射強度や、熱的環境などが情報記録層ごとに異なっていても、記録をすべき情報記録層のテスト記録領域を用い、その情報記録層の環境下でテスト記録を行うことができる。したがって、各情報記録層に最適な記録パワーを決定することができる。
また、各情報記録層は、積層方向において互いに重なりが生じないように、互いに異なる半径位置に配置されている。このため、他の情報記録層のテスト記録領域の記録状態の影響を受けることなく、あるいは、影響を抑制し、正しくテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。
また、各情報記録層のテスト記録領域の使用方向をその情報記録層におけるレーザ光の操作方向と逆にした場合には、テスト記録領域の一部が強い照射パワーによって破壊された場合でも、テスト記録領域の残りの領域を正しく使用することができる。また、他層の影響を低減して正しく記録パワーを決定することができる。
第1の実施形態と同様、テスト記録領域T0、T1、T2、T3には、より好ましい配置が存在する。この配置を図9を参照しながら説明する。
情報記録層L0にレーザ光を照射する場合、レーザ光は、情報記録層L1、L2、L3を透過する必要があり、情報記録層L2にレーザ光を照射する場合には、レーザ光が情報記録層L3を透過する必要がある。このため、情報記録層L3のレーザ光の透過率が最も高く、情報記録層L2、情報記録層L1、情報記録層L0の順で透過率が低下する。
また、情報記録層の設計の観点からは、仮に既に3つの情報記録層を有する光ディスクが開発されているならば、既存の情報記録層を情報記録層L0、L1、L2に使用し、新たに透過率の高い情報記録層L3のみを開発するのが望ましい。
しかし、情報記録層L3は高透過率を要求されるため、設計の自由度が狭くなり、情報記録層L0、L1、L2よりも僅かな記録条件の変化、例えば記録パワーの変動により記録特性が悪化しやすい。情報記録層L2と情報記録層L1との間および情報記録層L1と情報記録層L0との間においても、同様の関係が成立する。つまり、一般に透過率の高い情報記録層ほど、設計の自由度が狭くなり、僅かな記録条件の変化、例えば記録パワーの変動により記録特性が悪化しやすい。
一方、例えば、情報記録層L3にレーザ光を照射する際には、一部の光が情報記録層L3を透過して情報記録層L2で反射して再び情報記録層L2へ戻ってくる。このとき、情報記録層L2のテスト記録領域T2が破壊または劣化していれば、テスト記録領域T2の反射率が変化するため、テスト記録領域T2から情報記録層L3へ戻ってくる反射光や迷光によるレーザ光の量も変化する。このため、テスト記録領域T2とテスト記録領域T3とが近接していれば、テスト記録領域T2から情報記録層L3へ戻ってくるレーザ光の変動がノイズ成分としてテスト記録領域T2において反射するレーザ光に重畳される。その結果、テスト記録領域T3を用いて正しくテスト記録を行うことができず、情報記録層L3の記録パワーを正しく決定することができない。
本実施形態の光ディスク105では、この点を考慮し、レーザ光の入射面から近い側に位置する隣り合う情報記録層のテスト記録領域の半径位置差をレーザ光の入射面から遠い側に位置する隣り合う情報記録層のテスト記録領域の半径位置差よりも大きくすることが好ましい。つまり、レーザ光200の入射面から相対的に近い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L1、L2にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T2、T1間の半径方向の間隔(T2aとT1bとの間隔)は、レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L0、L1にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T0間の半径方向の間隔(T0aとT1bとの間隔)より大きく設定することが好ましい。
また、レーザ光200の入射面から相対的に近い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L2、L3にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T2、T3間の半径方向の間隔(T2aとT3bとの間隔)は、レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L0、L1にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T0間の半径方向の間隔(T0aとT1bとの間隔)、および、情報記録層L1、L2にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T2間の半径方向の間隔(T2aとT1bとの間隔)より大きいことが好ましい。
具体的には、各情報記録層L0、L1、L2をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、i番目(iは、2≦i≦3を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびi+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置との半径位置差が、j番目(jは、1≦j≦i−1を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびj+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置との半径位置差よりも大きい。
本実施形態では、光ディスク105は4つの情報記録層を備えているが、4層以上の情報記録層を備えた光ディスクにも本発明を好適に用いることができる。この場合、上記関係はnを光ディスクに含まれる情報記録層の層数であり、3以上の整数であるとして、iが2≦i≦n−1を満たす整数に対し成立する。
このようなテスト記記録領域の配置によれば、隣接する情報記録層からの反射の影響がより大きい一対の情報記録層間の間隔を広くし、隣接する情報記録層からの反射の影響を低減することができる。したがって、各情報記録層のテスト記録領域において正しいテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。また、相対的に隣接する情報記録層からの反射の影響が小さい一対の情報記録層間の間隔を相対的に狭くすることによって、情報記録層間に設ける間隔を必要以上に広く設定せず、リードイン領域の面積を有効に活用することができる。また、リードイン領域を広げることなく、十分なデータ領域を確保するこができる。
なお、上述したように隣接する情報記録層におけるテスト記録領域の間隔を設定する場合において、情報記録層L0におけるテスト記録領域T0と情報記録層L1におけるテスト記録領域T1を既存の2つの情報記録層を有する光ディスクにおけるテスト記録領域の配置と一致させてもよい。この場合、既存の光ディスク装置においても比較的簡単なシーケンスの変更のみで、本実施形態の光ディスク101のテスト記録領域T0、T1においてテスト記録を行うことができる。
本実施形態では、4つのテスト記録領域T0、T1、T2、T3は互いに重ならないように、異なる半径位置に設けられていた。しかし、図7を参照して説明したように、情報記録層L3に対する情報記録層L2の反射光の影響、情報記録層L2に対する情報記録層L3の透過光の影響、情報記録層L1に対する情報記録層L3の透過光の影響、情報記録層L0に対する情報記録層L2の透過光の影響が小さい場合には、図10に示す光ディスク106のように、情報記録層L0のテスト記録領域T0と情報記録層L2のテスト記録T2の半径位置差および、情報記録層L1のテスト記録領域T1と情報記録層L3のテスト記録領域T3の半径位置差を図9に示す配置における対応する半径位置差に比べて小さくしてもよい。
図9は、テスト記録領域T0とテスト記録領域T2との半径位置差、および、記録領域T1とテスト記録領域T3との半径位置差をゼロにした場合を示している。このため、テスト記録領域T2の内周端部T2aおよび外周端部T2bが、テスト記録領域T0の内周端部T0aおよび外周端部T0bと完全に一致し、テスト記録領域T2とテスト記録領域T0が完全に重なっている。また、テスト記録領域T3の内周端部T3aおよび外周端部T3bが、テスト記録領域T1の内周端部T1aおよび外周端部T1bと完全に一致し、テスト記録領域T3とテスト記録領域T1が完全に重なっている。しかし、テスト記録領域T2がテスト記録領域T0と部分的に重なっていてもよい。また、テスト記録領域T3がテスト記録領域T1と部分的に重なっていてもよい。
つまり、レーザ光200の入射面側に近い情報記録層のテスト記録領域は、入射面から遠い側に近い情報記録層に対して近接させて配置してもよい。具体的には、情報記録層L0、L1、L2、L3をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、k番目(kは、1≦k≦2を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびk+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差が、k番目の情報記録層のテスト記録領域およびk+2番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差よりも大きくてもよい。
また、情報記録層L1のテスト記録領域T1および情報記録層L2のテスト記録領域T2のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T1の内周端部T1aの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T2の外周端部T2bの半径位置との半径位置差が、情報記録層L1のテスト記録領域T1および情報記録層L3のテスト記録領域T3のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T3の内周端部T3aの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T1の外周端部の半径位置T1bとの半径位置差よりも大きくてもよい。
本実施形態では、光ディスク105は4つの情報記録層を備えているが、4層以上の情報記録層を備えた光ディスクにも本発明を好適に用いることができる。この場合、上記1番目の関係は、nを光ディスクに含まれる情報記録層の層数であり、3以上の整数であるとして、kが1≦k≦n−2を満たす整数に対して成立する。
また、上記2番目の関係は、k’番目(k’は、1≦k’≦n−3を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびk’+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差が、k’+1番目の情報記録層のテスト記録領域およびk’+3番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差よりも大きいと規定される。
これにより、他の情報記録層のテスト記録領域の影響を抑制し、各テスト記録領域において正しくテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。また、リードイン領域の面積を小さくし、十分なデータ領域を確保することができる。
また、情報記録層L1に対する情報記録層L3の透過光の影響が小さい場合には、図11に示す光ディスク107のように、情報記録層L1のテスト記録領域T1と情報記録層L3のテスト記録領域T3との半径位置差を小さくしてもよい。図11では、テスト記録領域T1とテスト記録領域T3との半径位置差がゼロの場合を示しているが、テスト記録領域T3がテスト記録領域T1と部分的に重なるようにテスト記録領域T3を配置してもよい。これにより、リードイン領域の面積を小さくし、十分なデータ領域を確保することができる。
また、情報記録層L0、L2に対する情報記録層L3の透過光の影響が少なく、情報記録層L3に対する情報記録層L2の反射光の影響が小さい場合には、図12に示す光ディスク108のように、情報記録層L0のテスト記録領域T0と情報記録層L3のテスト記録領域T3の半径位置差を小さくし、テスト記録領域T3とテスト記録領域T2の半径位置差を小さくしてもよい。図12では、テスト記録領域T0とテスト記録領域T3との半径位置差がゼロの場合を示しているが、テスト記録領域T3がテスト記録領域T0と部分的に重なるようにテスト記録領域T3を配置してもよい。これにより、リードイン領域の面積を小さくし、十分なデータ領域を確保することができる。
以上、第1および第2の実施形態では、情報記録層を3つおよび4つ備えた光ディスクを例示し、本発明の光ディスクを説明した。本発明の光ディスクは、これら第1および第2の実施形態に限られず、情報記録層を5つ以上備えていてもよい。
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による情報記録装置、情報再生装置、記録方法、再生方法の実施形態を説明する。図13は、本実施形態の情報記録装置300のブロック図である。情報記録装置300は、データの記録および再生を行うことが可能であり、スピンドルモータ302、光ヘッド303、光ビーム制御部304、サーボ部305、再生二値化部306、デジタル信号処理部307、記録補償部308、CPU309を備える。
光ディスク301は、第1の実施形態または第2の実施形態として説明した光ディスクである。ここでは、第1の実施形態の光ディスク101を光ディスク301として用いる。スピンドルモータ302は、光ディスク301を所定の速度で回転させ、光ヘッド303は、光ビームを光ディスク301に照射する。また、光ビームを光ディスク301に照射した反射光を電気的な信号に変換し、再生信号を出力する。光ビーム制御部304は、CPU309の指示に基づき、光ヘッド303から出力される光ビームの照射パワーを制御する。
サーボ部305は、光ヘッド303および光ヘッド303から出射する光ビームの位置制御、光ビームのフォーカスおよびトラッキング制御、スピンドルモータ302の回転制御を行う。再生二値化部306は、光ヘッド303より得られた再生信号(データ情報は和信号、ディスク情報領域やアドレスに関する情報は差信号)を増幅し、2値化処理を行うことによって、2値化信号を生成する。また内部のPLL(図示せず)により、2値化信号に同期したクロックを生成する。
デジタル信号処理部307は、2値化信号に所定の復調処理やエラー訂正処理を行う。データ記録時は記録データにエラー訂正コードを付加する処理および所定の変調処理を行い、変調データを生成する。記録補償部308は、変調データをパルス列から構成される光変調データに変換し、さらに光変調データのパルス幅等を、ディスク情報領域の再生信号や、予めCPU309に記憶されているデータを基に微妙に調整し、ピット形成に適した記録パルス信号に変換する。
CPU309は、情報記録装置300全体の制御を行う。ホストユニット310は、例えば、コンピュータ(図示せず)とアプリケーション(図示せず)やオペレーティングシステム(図示せず)で構成し、光ディスクドライブ300に対して記録や再生の要求を行う。
光ディスク301が情報記録装置300に装填されると、光ビーム制御部304およびサーボ部305により、光ヘッド303が所定の照射パワーで情報記録層L0のリードイン領域R0のコントロール領域を再生し、情報記録層L0、情報記録層L1、情報記録層L2に記録する際の照射パワー情報等の記録パラメータ情報を読み取る。
ホストユニット310からの記録要求があると、光ビーム制御部304およびサーボ部305により、光ヘッド303が所定の照射パワーで情報記録層L0のリードイン領域R0に設けられたテスト記録領域T0を再生する。CPU309はテスト記録を行う際の照射パワーを光ビーム制御部304に設定し、光ヘッド303により複数の異なる照射パワーを用いてテストデータの記録を行い、記録したテストデータを再生する。得られた再生信号のエラーレートやジッタなどに基づき、情報記録層L0のデータ領域D0に記録する際の記録パワーを決定する。
同様の動作を情報記録層L1、L2について実行する。具体的には、光ビーム制御部304およびサーボ部305により、光ヘッド303が所定の照射パワーで情報記録層L1のリードイン領域R1に設けられたテスト記録領域T1を再生する。CPU309はテスト記録を行う際の照射パワーを光ビーム制御部304に設定し、光ヘッド303により複数の異なる照射パワーを用いてテストデータの記録を行い、記録したテストデータを再生する。得られた再生信号のエラーレートやジッタなどに基づき、情報記録層L1のデータ領域D1に記録する際の記録パワーを決定する。
続いて、光ビーム制御部304およびサーボ部305により、光ヘッド303が所定の照射パワーで情報記録層L2のリードイン領域R2に設けられたテスト記録領域T2を再生する。CPU309はテスト記録を行う際の照射パワーを光ビーム制御部304に設定し、光ヘッド303により複数の異なる照射パワーを用いてテストデータの記録を行い、記録したテストデータを再生する。得られた再生信号のエラーレートやジッタなどに基づき、情報記録層L2のデータ領域D2に記録する際の記録パワーを決定する。このようにして、すべての情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に情報を記録するための記録パワーが決定される。
続いて、決定された記録パワーでレーザ光を照射し、各情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2にユーザデータが記録される。このとき、情報記録層ごとに上述した手順で決定された照射パワーが用いられる。
各情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に記録されたユーザデータを再生する場合には、コントロール領域に記録されたディスク情報などを再生し、得られたディスク情報を用いて、データ領域D0、D1、D2に記録されたユーザデータを再生する。
なお本実施形態ではテスト記録領域T0、T1、T2はディスクの内周のみに設けられているが、テスト記録領域は外周にも設けられていてもよい。また、記録要求があったときに、すべての情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に記録するためのすべての記録パワーをそれぞれ決定している。しかし、CPU309が、情報記録層L0のみに記録を行うことによって要求されている情報の記録が完了すると判断した場合には、データ領域R0に記録する際の照射パワーを決定するだけでもよい。これによりユーザデータの記録を開始するまでの時間を短縮することができる。
また本実施の形態では、記録要求があったときにすべての情報記録層のデータ領域に記録するためのすべての記録パワーをそれぞれ決定しているが、CPU309の判断により、最初に記録を行う情報記録層の記録パワーを決定し、残りの情報記録層は別のタイミングで記録パワーを決定してもよい。これによりユーザデータの記録を開始するまでの時間を短縮することができる。
例えば3つの情報記録層を備える光ディスクにおいて、各層の内周および外周でテスト記録を行う場合、合計で6回のテスト記録シーケンスが実行される。このため、ユーザデータの記録開始までに多くの時間がかかる場合がある。
このため、テスト記録を行う情報記録層または層数のパターンを予め複数種類準備しておき、例えばCPU309により、2層以上の記録が必要かどうかを予測し、2層以上の記録が不要であれば情報記録層L0および情報記録層L1のテスト記録のみを行うことで、ユーザデータの記録開始までの時間を短縮することができる。
(第4の実施形態)
本発明が適用可能な記録媒体の一例として、ブルーレイディスク(BD)や他の規格の光ディスクがあるが、本実施形態では、第1および第2の実施形態の光ディスクをBDに適用した例を説明する。
<主要パラメータ>
BDには、記録膜の特性に応じて、再生専用型であるBD−ROM,追記記録型・ライトワンス型であるBD−R、書換記録型であるBD−REなどのタイプがある。本発明は、BDや他の規格の光ディスクにおけるROM(再生専用型),R(追記型・ライトワンス型)、RE(書換型)のいずれのタイプの記録媒体にも適用可能である。ブルーレイディスクの主な光学定数と物理フォーマットについては、「ブルーレイディスク読本」(オーム社出版)やブルーレイアソシエーションのホームページ(http://www.blu-raydisc.com/)に掲載されているホワイトペーパに開示されている。
BDでは、波長が略405nm(標準値405nmに対して誤差範囲の許容値を±5nmとすれば、400〜410nm)のレーザ光および開口数(NA:Numerical Aperture)が略0.85(標準値0.85に対して誤差範囲の許容値を±0.01とすれば、0.84〜0.86)の対物レンズを用いる。BDのトラックピッチは略0.32μm(標準値0.320μmに対して誤差範囲の許容値を±0.010μmとすれば、0.310〜0.330μm)であり、情報記録層が1層または2層設けられている。情報記録層の記録面がレーザ光入射側から片面1層あるいは片面2層の構成であり、BDの保護層の表面から記録面まで距離は75μm〜100μmである。
記録信号の変調方式は17PP変調を利用し、記録されるマークの最短マーク(2Tマーク:Tは基準クロックの周期(所定の変調則によってマークを記録する場合における、変調の基準周期))のマーク長は0.149μm(または0.138μm)(チャネルビット長:Tが74.50nm(または69.00nm))である。記録容量は片面単層25GB(または27GB)(より詳細には、25.025GB(または27.020GB))、または、片面2層50GB(または54GB)(より詳細には、50.050GB(または54.040GB))である。
チャネルクロック周波数は、標準速度(BD1x)の転送レートでは66MHz(チャネルビットレート66.000Mbit/s)であり、4倍速(BD4x)の転送レートでは264MHz(チャネルビットレート264.000Mbit/s)、6倍速(BD6x)の転送レートでは396MHz(チャネルビットレート396.000Mbit/s)、8倍速(BD8x)の転送レートでは528MHz(チャネルビットレート528.000Mbit/s)である。
標準線速度(基準線速度、1x)は4.917m/sec(または、4.554m/sec)である。2倍(2x)、4倍(4x)、6倍(6x)および8倍(8x)の線速度は、それぞれ、9.834m/sec、19.668m/sec、29.502m/secおよび39.336m/secである。標準線速度よりも高い線速度は一般的には、標準線速度の正の整数倍であるが、整数に限られず、正の実数倍であってもよい。また、0.5倍(0.5x)など、標準線速度よりも遅い線速度も定義し得る。
なお、上述の諸条件は既に商品化がなされている、主に1層当たり約25GB(または約27GB)の1層または2層のBDに関するものである。BDの記録容量を高めるために、1層あたりの記録容量が略32GBまたは略33.4GBである高密度なBDや、層数を3層または4層としたBDも検討されている。以下このようなBDに本発明を適用した例を説明する。
<情報記録層の多層化>
レーザ光を保護層(カバー層)の側から入射して情報が再生および/または記録される片面ディスクの構成をとる場合、情報記録層を2層以上にするためには基板と保護層との間には複数の情報記録層が設ける必要がある。このような多層ディスクの構成例を図14に示す。図14に示された光ディスクは、(n+1)層の情報記録層502を備える(nは0以上の整数)。具体的には、光ディスクには、レーザ光200が入射する側の表面から順に、カバー層501、(n+1)枚の情報記録層(Ln〜L0層)502、および基板500が積層されている。また、(n+1)枚の情報記録層502のそれぞれの間には、光学的緩衝材として働く中間層503が挿入されている。つまり、光入射面から所定の距離を隔てた最も奥側の位置(光源から最も遠い位置)に基準層(L0)を設け、基準層(L0)から光入射面側に層を増やすように情報記録層を積層(L1,L2,・・・,Ln)している。
ここで、単層ディスクと比較した場合、多層ディスクにおける光入射面から基準層L0までの距離を、単層ディスクにおける光入射面から情報記録層までの距離とほぼ同じ(例えば0.1mm程度)にしてもよい。このように層の数に関わらず最奥層(最遠層)までの距離を一定にする(すなわち、単層ディスクにおける場合とほぼ同じ距離にする)ことで、単層か多層かに関わらず基準層へのアクセスに関する互換性を保つことができる。また、層数の増加に伴うチルト影響の増加を抑えることが可能となる。チルト影響の増加を抑えることが可能になるのは、最奥層が最もチルトの影響を受けるが、最奥層までの距離を、単層ディスクとほぼ同じ距離とすることで、層数が増加しても最奥層までの距離が増加することがなくなるからである。
また、スポットの進行方向(あるいは、トラック方向、スパイラル方向とも言う)に関しては、パラレル・パスとしても、オポジット・パスとしてもよい。パラレル・パスでは、すべての情報記録層において、スポットの進行方向が同一である。つまり、スポットの進行方向は、全情報記録層にて内周から外周の方向へ、または全情報記録層にて外周から内周の方向へ進行する。
一方、オポジット・パスでは、ある情報記録層とその情報記録層に隣接する情報記録層とで、スポットの進行方向が逆になる。つまり、基準層(L0)におけるスポットの進行方向が、内周から外周へ向かう方向である場合、情報記録層L1におけるスポットの進行方向は外周から内周へ向かう方向であり、情報記録層L2では内周から外周へ向かう方向である。すなわち、スポットの進行方向は、情報記録層Lm(mは0及び偶数)では内周から外周へ向かう方向であって、情報記録層Lm+1では外周から内周へ向かう方向である。あるいは、情報記録層Lm(mは0及び偶数)では外周から内周へ向かう方向であって、情報記録層Lm+1では内周から外周へ向かう方向である。
保護層(カバー層)の厚さは、開口数NAが上がり、焦点距離が短くなるのに伴って、またチルトによるスポット歪みの影響を抑えられるよう、より薄く設定される。開口数NAは、CDでは0.45、DVDでは0.65に対して、BDでは略0.85に設定される。例えば情報記録媒体の総厚み1.2mm程度のうち、保護層の厚さを10〜200μmとしてもよい。より具体的には、1.1mm程度の基板に、単層ディスクならば0.1mm程度の透明保護層、2層ディスクならば0.075mm程度の保護層に0.025mm程度の中間層(SpacerLayer)が設けられてもよい。
<1層から4層の各構成例>
ここで、単層ディスクの構成例を図15に、2層ディスクの構成例を図16に、3層ディスクの構成例を図17に、4層ディスクの構成例を図18に示す。前述のように、光照射面から基準層L0までの距離を一定にする場合、いずれのディスクにおいても、ディスクの総厚みは略1.2mm(レーベル印刷なども含んだ場合、1.40mm以下にするのが好ましい)であり、基板500の厚さは略1.1mmである。また、光照射面から基準層L0までの距離は略0.1mmとなる。図15に示す単層ディスク(図14においてn=0の場合)においては、カバー層5011の厚さは略0.1mmである。また、図16の2層ディスク(図14においてn=1の場合)においては、カバー層5012の厚さは略0.075mmであり、中間層5302の厚さは略0.025mmである。また、図17の3層ディスク(図14においてn=2の場合)や、図18の4層ディスク(図14においてn=3の場合)においては、カバー層5014の厚さ、および/または、中間層5304の厚さをさらに薄くしてもよい。
また、このようにNAの高い対物レンズを有する光学ヘッドを用いた記録再生装置では、ディスクの光照射表面から情報記録層までの厚さによって発生する球面収差などの収差が情報記録層上に絞り込まれるレーザ光の品質に大きく影響を及ぼす。そのため、厚さによって発生する収差を補正する手段が設けられている。
収差補正手段は、光情報記録媒体の保護層表面から、情報を記録再生する情報記録層までの厚さによって発生する球面収差などの収差成分を補正するために、各情報記録層で発生する収差成分を打ち消すような収差を与える。この収差補正手段は、本来、単層構造媒体の情報記録層に対して収差が小さくなるような光学設計がなされており、2層構造の情報記録媒体の記録再生における収差も考慮されている。設計上の最小収差位置は、保護層表面から約80μmから90μm程度に設定されている。そのため、最小収差位置と異なる厚さの情報記録層に記録再生光を絞り込むときは、収差補正手段を制御し、各情報記録層にあった収差補正値を設定して補正する必要がある。
<BDの物理的構成>
図19は、本実施形態による光ディスク510の物理的構成を示す。円盤状の光ディスク510には、例えば同心円状またはスパイラル状に多数のトラック511が形成されており、各トラック512には細かく分けられた多数のセクタが形成されている。なお、後述するように、各トラック512には予め定められたサイズのブロック513を単位としてデータが記録される。
本実施形態による光ディスク510は、従来の光ディスク(例えば25GBのBD)よりも情報記録層1層あたりの記録容量が拡張されている。記録容量の拡張は、記録線密度を向上させることによって実現されており、例えば、光ディスクに記録される記録マークのマーク長をより短くすることによって実現される。ここで「記録線密度を向上させる」とは、チャネルビット長を短くすることを意味する。このチャネルビットとは、基準クロックの周期T(所定の変調則によってマークを記録する場合における、変調の基準周期T)に相当する長さをいう。なお、光ディスク510は多層化されていてもよい。ただし、以下では説明の便宜のため、1つの情報記録層にのみ言及する。また、複数の情報記録層が設けられている場合において、各情報記録層に設けられたトラックの幅が同一であるときでも、層ごとにマーク長が異なり、同一層中ではマーク長が一様であることで、層ごとに記録線密度を異ならせてもよい。
トラック512は、データの記録単位64kB(キロバイト)毎にブロック513に分けられて、順にブロックアドレス値が割り振られている。ブロック513は、所定の長さのサブブロックに分割され、3個のサブブロックで1ブロックを構成している。サブブロックは、前から順に0から2までのサブブロック番号が割り振られている。
<記録密度>
次に、記録密度について、図20(a)、(b)、図21および図22を用いて説明する。
図20(a)は25GBのBDの例を示す。BDでは、レーザ光200の波長は405nm、対物レンズ220の開口数(Numerical Aperture;NA)は0.85である。
DVD同様、BDにおいても、記録データは光ディスクのトラック512上に物理変化のマーク列520、521として、記録される。このマーク列の中で最も長さの短いものを「最短マーク」という。図では、マーク521が最短マークである。
25GB記録容量の場合、最短マーク521の物理的長さは0.149μmである。これは、DVDの約1/2.7に相当し、光学系の波長パラメータ(405nm)とNAパラメータ(0.85)を変えて、レーザの分解能を上げても、光ビームが記録マークを識別できる限界である光学的な分解能の限界に近づいている。
図21は、トラック512上に記録されたマーク列に光ビームを照射させている様子を示す。BDでは、上記光学系パラメータにより光スポット210の直径は、約0.39μm程度となる。光学系の構造は変えないで記録線密度向上させる場合、光スポット210のスポット径に対して記録マークが相対的に小さくなるため、再生の分解能は悪くなる。
例えば、図20(b)は、25GBのBDよりも高記録密度の光ディスクの例を示す。このディスクでも、レーザ200の波長は405nm、対物レンズ220の開口数(Numerical Aperture;NA)は0.85である。このディスクのマーク列524、525のうち、最短マーク525の物理的長さは0.1115μmである。図20(a)と比較すると、スポット径は同じ約0.39μmである一方、記録マークが相対的に小さくなり、かつ、マーク間隔も狭くなるため、再生の分解能は悪くなる。
光ビームで記録マークを再生した際の再生信号の振幅は記録マークが短くなるにしたがって低下し、光学的な分解能の限界でゼロとなる。この記録マークの周期の逆数を空間周波数といい、空間周波数と信号振幅の関係をOTF(Optical Transfer Function)という。信号振幅は、空間周波数が高くになるにしたがってほぼ直線的に低下する。信号振幅がゼロとなる再生の限界周波数を、OTFカットオフ(cutoff)という。
図22は、25GBの記録容量のBDにおける、OTFと最短記録マークとの関係を示すグラフである。BDの最短マークの空間周波数は、OTFカットオフに対して80%程度であり、OTFカットオフに近い。また、最短マークの再生信号の振幅も、検出可能な最大振幅の約10%程度と非常に小さくなっているこが分かる。BDの最短マークの空間周波数が、OTFカットオフに非常に近い場合、すなわち、再生振幅がほとんど出ない場合の記録容量は、BDでは、約31GBに相当する。最短マークの再生信号の周波数が、OTFカットオフ周波数付近である、または、それを超える周波数であると、レーザの分解能の限界、若しくは超えていることもあり、再生信号の再生振幅が小さくなり、SN比が急激に劣化する領域となる。
そのため、図20(b)の高記録密度光ディスクの記録線密度は、再生信号の最短マークの周波数が、OTFカットオフ周波数付近の場合(OTFカットオフ周波数以下だがOTFカットオフ周波数を大きく下回らない場合も含む)からOTFカットオフ周波数以上の場合が想定できる。
図23は、最短マーク(2T)の空間周波数がOTFカットオフ周波数よりも高く、かつ、2Tの再生信号の振幅が0であるときの、信号振幅と空間周波数との関係の一例を示したグラフである。図23において、最短マーク長の2Tの空間周波数は、OTFカットオフ周波数の1.12倍である。
<波長と開口数とマーク長との関係>
高記録密度光ディスクにおける波長と開口数とマーク長/スペース長との関係は以下の通りである。
最短マーク長をTMnm、最短スペース長をTSnmとし、(最短マーク長+最短スペース長)を”P”で表すと、Pは、(TM+TS)nmである。17変調の場合、P=2T+2T=4Tとなる。レーザ波長λ(405nm±5nm、すなわち400〜410nm)、開口数NA(0.85±0.01すなわち0.84〜0.86)、最短マーク+最短スペース長P(17変調の場合、最短長は2Tとなるため、P=2T+2T=4T)の3つのパラメータを用いた場合、以下の不等式を満たすまで基準Tが小さくなると、最短マークの空間周波数は、OTFカットオフ周波数を超える。
P ≦ λ/2NA
NA=0.85、λ=405としたときの、OTFカットオフ周波数に相当する基準Tは、以下の式によって求められる。なお、P > λ/2NAを満たす場合、最短マークの空間周波数はOTFカットオフ周波数より低い。
T = 405/(2x0.85)/4 = 59.558nm
このように、記録線密度を上げるだけでも、光学的な分解能の限界によりSN比が劣化する。よって、情報記録層の多層化によるSN比劣化は、システムマージンの観点で、許容できない場合がある。特に、上述のように、最短記録マークの周波数が、OTFカットオフ周波数を越える辺りから、SN比劣化が顕著になる。
以上、最短マークの再生信号の周波数とOTFカットオフ周波数を比較して記録線密度を説明した。さらにBDの高密度化が進んだ場合、次最短マーク(更には次々最短マーク(更には次最短マーク以上の記録マーク))の再生信号の周波数とOTFカットオフ周波数との関係から、上述したのと同様の原理に基づき、それぞれに対応した記録密度(記録線密度、記録容量)を設定することができる。
<記録密度および層数>
ここで、波長405nm、開口数0.85等のスペックを有するBDにおける1層あたりの具体的な記録容量としては、最短マークの空間周波数がOTFカットオフ周波数付近である場合、例えば、略29GB(例えば、29.0GB±0.5GB、あるいは29GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略30GB(例えば、30.0GB±0.5GB,あるいは30GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略31GB(例えば、31.0GB±0.5GB,または31GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略32GB(例えば、32.0GB±0.5GB,あるいは32GB±1GBなど)若しくはそれ以上、などを想定することが可能である。
また、最短マークの空間周波数がOTFカットオフ周波数以上における、1層あたりの記録容量としては、例えば、略32GB(例えば、32.0GB±0.5GB,あるいは32GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略33GB(例えば、33.0GB±0.5GB,あるいは33GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略33.3GB(例えば、33.3GB±0.5GB,あるいは33.3GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略33.4GB(例えば、33.4GB±0.5GB,あるいは33.4GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略34GB(例えば、34.0GB±0.5GB,あるいは34GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略35GB(例えば、35.0GB±0.5GB,あるいは35GB±1GBなど)若しくはそれ以上、などを想定することが可能である。
特に、記録密度が略33.3GBである場合、3層で約100GB(99.9GB)の記録容量が実現でき、略33.4GBとすると3層で100GB以上(100.2GB)の記録容量が実現できる。これは、25GBのBDを4層にした場合の記録容量とほぼ同じになる。例えば、記録密度を33GBとした場合、33x3=99GBで100GBとの差は1GB(1GB以下)であり、34GBとした場合、34x3=102GBで100GBとの差は2GB(2GB以下)、33.3GBとした場合、33.3x3=99.9GBで100GBとの差は0.1GB(0.1GB以下)、33.4GBとした場合、33.4x3=100.2GBで100GBとの差は0.2GB(0.2GB以下)となる。
なお、記録密度が大幅に拡張されると、先に述べたように、最短マークの再生特性の影響により、精密な再生が困難になる。そこで、記録密度の大幅な拡張を抑えつつ、かつ100GB以上を実現する記録密度としては、略33.4GBが現実的である。
ここで、光ディスクの構成を、1層あたり25GBの4層構造とするか、1層あたり33〜34GBの3層構造とするか、の選択肢が生じる。多層化には、各情報記録層における再生信号振幅の低下(SN比の劣化)や、多層迷光(隣接する情報記録層からの信号)の影響などが伴う。そのため、25GBの4層ディスクではなく、33〜34GBの3層ディスクとすることにより、そのような迷光の影響を極力抑えつつ、より少ない層数(4層ではなく3層)で、約100GBを実現することが可能となる。そのため、多層化を極力避けつつ約100GBを実現したいディスクの製造者は、33〜34GBの3層化を選択することが可能となる。一方、従来のフォーマット(記録密度25GB)のまま約100GBを実現したいディスク製造者は、25GBの4層化を選択することが可能となる。このように、異なる目的を有する製造者は、それぞれ異なる構成によって、それぞれの目的を実現することが可能となり、ディスク設計の自由度を与えることができる。
また、1層あたりの記録密度を30〜32GB程度とすると、3層ディスクでは100GBに届かないものの(90〜96GB程度)、4層ディスクでは120GB以上が実現できる。そのうち、記録密度を略32GBとすると、4層ディスクでは約128GBの記録容量が実現できる。この128という数字はコンピュータで処理するのに便利な2のべき乗(2の7乗)に整合した数値でもある。そして、3層ディスクで約100GBを実現する記録密度のものと比べると、最短マークに対する再生特性はこちらの方が厳しくない。
このことから、記録密度の拡張にあたっては、記録密度を複数種類設けることで(例えば略32GBと略33.4GBなど)、複数種類の記録密度と層数との組み合わせにより、ディスクの製造者に対して設計の自由度を与えることが可能となる。例えば、多層化の影響を抑えつつ大容量化を図りたい製造者に対しては33〜34GBの3層化による約100GBの3層ディスクを製造するという選択肢を与え、再生特性を影響を抑えつつ大容量化を図りたい製造者に対しては、30〜32GBの4層化による約120GB以上の4層ディスクを製造するという選択肢を与えることが可能となる。
いずれの構成をBDで採用する場合でも、第1の実施形態または第2の実施形態の光ディスクの構造を採用することによって、各情報記録層に最適な記録パワーを決定することができる。したがって、特に線記録密度が高められることによって、より正確に記録マークを形成することが求められる場合でも、最適な記録パワーを用いて適切な記録を行うことができる。
本発明は、種々の情報記録媒体および情報記録装置に好適に用いられ、特に3層以上の情報記録層を有する追記型あるいは書き換え型の情報記録媒体およびこれに対応する情報記録装置に好適に用いられる。
D0、D1、D2、D3 データ領域
L0、L1、L2、L3 情報記録層
R0、R1、R2、R3 リードイン領域
T0、T1、T2、T3 テスト記録領域
110 基板
111、112 中間層
113 カバー層
本発明は、レーザ光を照射することにより、情報の記録を行う情報記録媒体に関し、特に情報記録層を3層以上備えた情報記録媒体およびこの情報記録媒体に適合した情報記録装置に関する。
大容量の情報を記録する手段として、記録すべき情報によって変調された光、例えば、レーザ光を照射することにより、情報を記録することができる情報記録媒体が盛んに開発されている。このような情報記録媒体には、一箇所には一度だけ情報を記録することが可能な追記型の情報記録媒体と、何度も情報の書き換えが可能な書き換え型の情報記録媒体があり、一般に追記型光ディスクおよび書き換え型光ディスクとそれぞれ呼ばれている。
光ディスクの記録容量を高めるためには、情報記録層の多層化が有効である。DVDやBDでは既に情報記録層を2つ備えた光ディスクが実現されている。
このような光ディスクは、情報を記録するための適切な記録条件、特に、光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域を各情報記録層に備えている。光ディスク装置を用いて、光ディスクに情報を記録する場合、装置の起動時または記録直前にテスト記録領域を用いて記録パワーが最適化される。例えば、特許文献1は、追記型光ディスクにおける記録パワーの決定方法を開示している。
特許文献1は、情報記録層を2つ備えた光ディスクに関する技術を開示している。しかし、3つ以上の情報記録層を備えた光ディスクに関する構造、特に、テスト記録領域の配置やその使用方法については開示されていない。
本発明はこのような従来技術の課題を解決し、3つ以上の情報記録層を備え、各情報記録層において適切な条件で情報を記録することが可能な情報記録媒体、および、このような情報記録媒体に適合した情報記録装置を提供することを目的とする。
本発明の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは3以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、i番目(iは、2≦i≦n−1を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびi+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置との半径位置差が、j番目(jは、1≦j≦i−1を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびj+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置との半径位置差よりも大きい。
本発明の他の情報記録媒体は、情報記録層を少なくとも3層有し、レーザ光の入射面から相対的に近い側に位置する、隣り合う1対の情報記録層にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域間の半径方向の間隔が、前記レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する、隣り合う1対の情報記録層にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域間の半径方向の間隔よりも大きい。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは3以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、k番目(kは、1≦k≦n−2を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびk+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差が、k番目の情報記録層のテスト記録領域およびk+2番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差よりも大きい。
ある好ましい実施形態において前記nは4であり、前記kは1である。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは4以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、k番目(k’は、1≦k’≦n−3を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびk’+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差が、k’+1番目の情報記録層のテスト記録領域およびk’+3番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差よりも大きい。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは3以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層のテスト記録領域は、1層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置し、前記1層目の情報記録層のテスト記録領域は2層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置している。
ある好ましい実施形態において、前記nは4である。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは4以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層のテスト記録領域は、2層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置し、前記2層目の情報記録層のテスト記録領域は4層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置している。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは4以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するためのテスト記録領域をそれぞれ有し、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層のテスト記録領域は、1層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置し、前記1層目の情報記録層のテスト記録領域は4層目の情報記録層のテスト記録領域より外周側に位置している。
本発明の他の情報記録媒体は、レーザ光によりデータの記録が可能であり、互いに積層されたn層(nは3以上の整数)の情報記録層を有する情報記録媒体であって、前記n層の情報記録層は、前記レーザ光の記録パワーを決定するための、互いに異なる半径位置に設けられたテスト記録領域をそれぞれ有し、前記テスト記録領域には複数の副領域が設けられており、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、i番目(iは2≦i≦nを満たす偶数)の情報記録層では、前記レーザ光が外周側から内周側に向けて走査され、前記テスト記録領域において、副領域が内周側から外周側に向けて使用され、i−1番目の情報記録層では、前記レーザ光が内周側から外周側に向けて走査され、前記テスト記録領域において、副領域が外周側から内周側に向けて使用される。
本発明情報再生装置は、上記いずれかに記載の情報記録媒体を再生する情報再生装置であって、前記情報記録媒体は、前記n層の情報記録層の少なくともいずれか1つの情報記録層にコントロール領域を有し、前記コントロール領域から前記情報記録媒体に関する情報を再生するステップ、および前記n層の情報記録層のいずれかの層に、その層のテスト記録領域を用いて調整された記録パワーで記録されたデータを再生するステップの少なくとも一方を実行する。
本発明の情報記録装置は、上記いずれかに記載の情報記録媒体を記録する情報記録装置であって、前記n層の情報記録層のいずれかの層のテスト記録領域を用いて、レーザ光の記録パワーを決定し、決定した記録パワーで前記レーザ光を照射し、前記いずれかの層にデータを記録する。
本発明の再生方法は、上記いずれかに記載の情報記録媒体を再生する再生方法であって、前記情報記録媒体は、前記n層の情報記録層の少なくともいずれか1つの情報記録層にコントロール領域を有し、前記コントロール領域から前記情報記録媒体に関する情報を再生するステップ、および前記n層の情報記録層のいずれかの層に、その層のテスト記録領域を用いて調整された記録パワーで記録されたデータを再生するステップの少なくとも一方を実行する。
本発明の記録方法は、上記いずれかに記載の情報記録媒体にデータを記録する記録方法であって、前記n層の情報記録層のいずれかの層のテスト記録領域を用いてレーザ光の記録パワーを決定するステップと、決定した記録パワーで前記レーザ光を照射し、前記いずれかの層にデータを記録するステップとを包含する。
本発明によれば、3つ以上の情報記録層を備えた光ディスクにおいて、各情報記録層にテスト記録領域が設けられている。このため、情報記録層が積層されていることによってレーザ光の照射強度や、熱的環境などが情報記録層ごとに異なっていても、記録をすべき情報記録層のテスト記録領域を用い、その情報記録層の環境下でテスト記録を行うことができる。したがって、各情報記録層に最適な記録パワーを決定することができる。
本発明による情報記録媒体の第1の実施形態の構成を示す模式的な分解斜視図である。
図1の情報記録媒体におけるテスト記録領域の配置を示す模式図である。
比較のための情報記録媒体におけるテスト記録領域の配置を示す模式図である。
(a)は図1の情報記録媒体の各情報記録層の構造を模式的に示す図であり、(b)および(c)は、それぞれ、テスト記録領域の使用方向を示す模式図である。
(a)および(b)は、第1の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
第1の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
情報記録層L2における劣化領域が情報記録層L0、L1に与える影響を説明する模式図である。
第1の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
第2の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の配置を示す模式図である。
第2の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
第2の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
第2の実施形態の情報記録媒体におけるテスト記録領域の他の配置を示す模式図である。
本発明による情報記録装置の実施形態を示すブロック図である。
本発明による情報記録媒体の第4の実施形態の構成例示す模式図である。
単層の情報記録媒体の構成を示す模式図である。
2層の情報記録媒体の構成を示す模式図である。
3層の情報記録媒体の構成を示す模式図である。
4層の情報記録媒体の構成を示す模式図である。
本発明による情報記録媒体の第4の実施形態の物理的構成を示す模式図である。
(a)および(b)は、それぞれ、レーザビーム光のスポットとトラックに記録されたマークとを示す模式図である。
トラック上に記録されたマーク列に光ビームを照射させている様子を示す模式図である。
OTFと最短記録マークとの関係を示すグラフである。
OTFと最短記録マークとの関係を示す別なグラフである。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による情報記録媒体の第1の実施形態を説明する。本発明による情報記録媒体は追記型または書き換え型である。
図1は、本発明による情報記録媒体の第1の実施形態の構成を示す模式的な分解斜視図である。上述したように、光学的に情報を記録し、記録した情報を光学的に再生することのできる情報記録媒体は、一般的に光ディスクと呼ばれているため、以下、情報記録媒体を光ディスクと呼ぶ。また、「情報」とは、情報記録媒体に記録される文字情報、音声情報、画像情報、プログラム、その他の種々の情報を意味する。これらの情報はデジタル化され、情報記録媒体に記録されたり、種々の情報処理装置によって処理される。一般にコンピュータで処理される「情報」を「データ」と定義するため、本願明細書において「情報」は「データ」と同義である。本願明細書では、一般的あるいは慣用的表現にしたがって、「情報」または「データ」の用語を選択的に使用する。例えば、光ディスクなどは一般的に「情報記録媒体」と呼ばれるが、情報を記録する領域は「データ領域」と呼ばれる。
図1に示すように光ディスク101は、基板110と、情報記録層L0、L1、L2と、中間層111、112と、カバー層113とを備える。基板110とカバー層113との間に情報記録層L0、L1、L2が配置されており、基板110側に情報記録層L0が、カバー層113側に情報記録層L2が配置されている。カバー層113側から記録すべき情報によって変調されたレーザ光200が照射されるので、レーザ光200の入射面となるカバー層113の表面から遠い側から情報記録層L0、L1、L2がこの順で配置される。中間層111および中間層112は、それぞれ、情報記録層L0と情報記録層L1との間、および情報記録層L1と情報記録層L2との間に設けられている。
基板110、情報記録層L0、L1、L2、中間層111、112およびカバー層113は上述した配置で積層され、互いに接合されており、積層によって構成された光ディスク101の中心にクランプ孔114が設けられている。基板110、中間層111、112およびカバー層113は、例えば、ポリカーボネート樹脂等で形成される。
情報記録層L0、L1、L2のそれぞれは、同心円状あるいは螺旋状に設けられたデータを記録するトラックが設けられている。また、情報記録層L0、L1、L2には、それぞれ、データ領域D0、D1、D2とデータ領域D0、D1、D2よりも内周側に設けられたリードイン領域R0、R1、R2とが設けられている。
データ領域D0、D1、D2は、ユーザデータを記録する領域である。光ディスク101が追記型である場合、データ領域D0、D1、D2の同一箇所に一度だけ情報を記録することができる。記録された情報を書き換えることはできない。光ディスク101が書き換え型である場合、データ領域D0、D1、D2に情報を記録し、記録された情報を他の情報で書き換えることができる。
リードイン領域R0、R1、R2のそれぞれは、少なくとも再生専用領域であるコントロール領域(PIC(Permanent Information & Control Data)領域とも呼ばれる)と情報の記録が可能なテスト記録領域(OPC(Optimum Power Control)領域とも呼ばれる)とを有する。
テスト記録領域は、データ領域に情報を記録する場合に使用されるレーザ光の記録パワーを調整するために用いられる。具体的には、記録パワーを変えながら所定の情報によって変調されたレーザ光をテスト記録領域に照射し、記録マークを形成する。その後、形成した記録マークにレーザ光を照射し、記録された情報を再生し、再生された情報の品質を評価することによって、最適な記録パワーを決定する。
リードイン領域R0のテスト記録領域は同じ情報記録層L0のデータ領域D0に情報を記録するレーザ光の記録パワーを調整するために用いられる。同様に、リードイン領域R1、R2のテスト記録領域は、それぞれ、データ領域D1、D2に情報を記録するレーザ光の記録パワーを調整するために用いられる。
コントロール領域には、ディスク情報、メディア(光ディスク)メーカが推奨するユーザデータ記録時の照射パワー等の記録パラメータ情報が記録(記憶)されている。各情報記録層L0、L1、L3へ情報を記録するための最適な記録パラメータは情報記録層ごとに異なる。本実施形態では、リードイン領域R0、R1、R2のそれぞれのコントロール領域には、同じ情報記録層のデータ領域に情報を記録するための記録パラメータ情報に加えて、他の情報記録層に情報を記録するための記録パラメータ情報が記録されている。具体的には、リードイン領域R0のコントロール領域に、情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に情報を記録するための記録パラメータ情報が記録されている。同様に、リードイン領域R1、R2のそれぞれのコントロール領域にも情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に情報を記録するための記録パラメータ情報が記録されている。
これにより、いずれか1つの情報記録層のコントロール領域からすべての情報記録層の記録パラメータ情報が得られる。このため、各情報記録層のコントロール領域にはその情報記録層についての記録パラメータ情報しか記録されていない場合に比べて、ユーザデータを記録するまでの時間を短縮することができる。また外乱等により所望の情報記録層とは異なる誤った情報記録層の再生を開始してしまった場合でも、その誤った情報記録層のコントロール領域を再生することによって、意図していた情報記録層の記録パラメータ情報を入手することができる。
ただし、コントロール領域への記録パラメータの記録方法はこれに限られない。各情報記録層のコントロール領域に、その情報記録層のデータ領域に記録を行うための記録パラメータ情報のみが記録されていてもよい。この場合、各コントロール領域に記録すべき記録パラメータ情報の容量が少なくなるため、コントロール領域を小さくすることができる。したがって、以下において説明するように、情報記録層が増え、各層のテスト記録領域の半径位置を異ならせる場合でもコントロール領域を確保し易くなる。
また、光ディスク101が追記型である場合、いずれか1つの情報記録層のコントロール領域に、その光ディスク101に含まれるすべての情報記録層のデータ領域に情報を記録するための記録パラメータ情報が記録されていてもよい。この場合、すべての情報記録層の記録パラメータ情報が記録されているコントロール領域は、光の入射面から一番遠い情報記録層に配置されていてもよい。
例えば、光ディスク101が追記型である場合である場合、情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に情報を記録するための記録パラメータ情報が情報記録層L0のリードイン領域R0に設けられたコントロール領域にのみ記録されていてもよい。
また、この場合、カバー層113のレーザ光200が入射面(ディスク101の表面)から情報記録層L0までの深さ(厚さ)が、1つの情報記録層を備えた光ディスクにおけるディスクの表面からその情報記録層までの深さと一致していてもよい。これにより、1つの情報記録層を備えた光ディスクに対して記録再生を行う光ディスク装置を用いて、光ディスク101の情報記録層L0、L1、L2の任意の情報記録層のディスク情報を入手することができ、光ディスク装置の構成を簡単にすることができる。
なお、情報記録層が光ディスクの表面から遠いほど、その情報記録層から再生した再生信号は、チルトによる信号品質の劣化が大きくなる。このため、光ディスクが複数の情報記録層を備える場合、表面から、最も基板側に位置する情報記録層(基準層)までの深さが、1つの情報記録層を備えた光ディスクにおけるディスクの表面からその情報記録層までの深さと等しいことが好ましい。この場合、最も基板側に位置する情報記録層に設けられたディスク情報の領域に対応する他の情報記録層における領域にデータ領域と同じ溝構造を設けることによって、光ディスクの半径位置に関わらず、最も基板側に位置する情報記録層までのレーザ光の透過率を同じにすることができる。したがって、最も基板側に位置する情報記録層のディスク情報を再生するための特別な検出手段を必要とせず、光ディスク装置の構成を簡単にすることができ、さらに他層の作製が容易になる。
図2は、光ディスク101の模式的断面図であって、リードイン領域R0、R1、R2における、テスト記録領域の配置を示している。図2および以下の図面において、中間層111、112は示していない。またレーザ光200は図2において上方から照射され、ディスクの外周方向は矢印で示すように右側である。
図2に示すように、情報記録層L0、L1、L2のリードイン領域R0、R1、R2に、それぞれ、テスト記録領域T0、T1、T2が位置している。テスト記録領域T0、T1、T2は、互いに異なる半径位置に配置されており、情報記録層L0、L1、L2の積層方向、つまり、レーザ光200の入射方向から見て互いに全く重なっていない。
より具体的には、光ディスク101において、最も内周側に配置された情報記録層L1のテスト記録領域T1の外周端部T1bよりも2番目に内周側に配置された情報記録層L0のテスト記録領域T0の内周端部T0aは外周側に位置しており、テスト記録領域が重ならない間隙(間隔)が設けられている。この間隙は、内周端部T0aの半径位置と外周端部T1bの半径位置との差で規定される距離を有する。また、2番目に内周側に配置された情報記録層L0のテスト記録領域T0の外周端部T0bよりも最も外周側に配置された情報記録層L2のテスト記録領域T2の内周端部T2aは外周側に位置しており、内周端部T2aと外周端部T0bとの半径位置差で規定される距離を有する間隙が設けられている。
3つの情報記録層L0、L1、L2をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2は、1層目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0より外周側に位置し、情報記録層L0のテスト記録領域T0は2層目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1より外周側に位置している。
このようなテスト記録領域T0、T1、T2の配置による効果を以下に説明する。図3に示すように、本実施形態とは異なり、テスト記録領域T0、T1、T2がそれぞれ、情報記録層L0、L1、L2において同一半径位置に配置されている場合を考える。つまり、テスト記録領域T0の内周端部T0a、テスト記録領域T1の内周端部T1aおよびテスト記録領域T2内周端部T2aの半径位置が互いに一致し、テスト記録領域T0の外周端部T0b、テスト記録領域T1の外周端部T1bおよびテスト記録領域T2の外周端部T2bの半径位置が互いに一致することにより、テスト記録領域T0、T1、T2が完全に重なっている場合を考える。この場合、例えば情報記録層L1のテスト記録領域T1が破壊されると、テスト記録領域T1におけるレーザ光の透過率が大きく低下するため、情報記録層L1よりレーザ光から遠くに位置する情報記録層L0のテスト記録領域T0にレーザ光が正しく届かなくなる。その結果、情報記録層L0のテスト記録領域T0に、テスト記録を行う光ディスク装置がアクセスすることができなくなる。
また破壊に至らないまでも情報記録層L1のテスト記録領域T1に高い照射パワーでテスト記録を行うことによって、テスト記録領域T1の透過率が変化するのであれば、テスト記録領域T1への記録の有無により情報記録層L0に到達するレーザ光の強度が変化してしまう。
テスト記録領域T2が破壊されたり、テスト記録領域T2におけるレーザ光の透過率が変化した場合には、テスト記録領域T0、T1が影響を受ける可能性がある。したがって、図3に示すテスト記録領域の配置では、情報記録層L0、L1のテスト記録領域T0、T1を用いて正しくテスト記録を行うことができないため、情報記録層L0、L1の記録パワーを正しく決定することができない可能性がある。
これに対し、図2に示す本実施形態のテスト記録領域の配置によれば、テスト記録領域T0、T1、T2の半径位置が異なっており、テスト記録領域T0、T1、T2は情報記録層の積層方向に重なっていない。このため、情報記録層L1のテスト記録領域T1が破壊されても、破壊されたテスト記録領域T1の影響を受けずに、あるいはほとんど受けずに、情報記録層L0のテスト記録領域T0にレーザ光が正しく届く。したがって、情報記録層L0のテスト記録領域T0を用いて正しくテスト記録を行うことができ、情報記録層L0の記録パワーを正しく決定することができる。同様に、情報記録層L2のテスト記録領域T2が破壊されても、情報記録層L0、L1の記録パワーを正しく決定することができる。
また、同様の理由から、テスト記録領域T0、T1、T2におけるレーザ光の透過率が変化した場合でも、情報記録層L0、L1、L2のテスト記録領域T0、T1、T2にレーザ光が正しく届く。したがって、情報記録層L0、L1、L2のテスト記録領域T0、T1、T2を用いて正しくテスト記録を行うことができ、情報記録層L0、L1、L2の記録パワーを正しく決定することができる。
なお、例えば情報記録層の相変化を利用する書き換え型の光ディスクでは、アモルファス状態の記録マークと、結晶状態の記録マークとで透過率が異なることがあっても、記録パワーの決定後に記録マークを消去することにより、情報記録層の透過率を変化させないことが可能である。しかし、1回のみ記録が可能な追記型の光ディスクにおいては、情報記録層の記録膜特性が不可逆である。したがって、本実施形態のテスト記録領域の配置は、追記型の光ディスクに特に有用である。
次に、テスト記録領域T0、T1、T2の使用方向について説明する。図2において矢印で示すように、情報記録層L0、L2では、内周から外周に向かってレーザ光が情報記録層L0、L2を走査するようにトラックが構成されている。これに対し、情報記録層L1では、外周から内周に向かってレーザ光が情報記録層L1を走査するようにトラックが構成されている。例えば、トラックが螺旋形状を有する場合には、トラックの螺旋の向きが情報記録層L0、L2と情報記録層L1とで逆になっている。これにより、情報記録層L0および情報記録層L1に連続して情報の記録または再生を行う場合、情報記録層L0における最後の記録または再生をデータ領域D0の最外周位置において行った後、同じ半径位置にレーザ光を維持したまま、情報記録層L1おける最初の記録または再生をデータ領域D1の最外周位置から開始することができる。また、情報記録層L1における最後の記録または再生をデータ領域D1の最内周位置において行った後、同じ半径位置にレーザ光を維持したまま、情報記録層L2おける最初の記録または再生をデータ領域D2の最内周位置から開始することができる。したがって、次の情報記録層へ移動するたびに、レーザ光を光ディスク101の最内周位置あるいは最外周位置へジャンプさせることなく、情報の記録または再生を行うことができる。ただし、後述する要件を満たせば、各層におけるレーザ光の光スポットの進行方向はこれに限らなくとも良い。
これに対して、テスト記録領域T0、T1、T2は、好ましくは、各情報記録層におけるレーザ光の光スポットの進行方向と逆の方向に使用される。以下、テスト記録領域の使用方向について説明する。
すでに説明したように、各情報記録層に設けられたテスト記録領域は、その情報記録層のデータ領域にデータを記録する際のレーザ光の照射パワーを決定するために使用するテスト記録の領域である。例えば、照射パワーを1mWずつ増加させながらテストデータを記録し、記録後にテスト記録を行った領域を再生し、再生信号のエラーレートやジッタ等の再生指標が最良となる照射パワーを決定する。
テストデータを記録する際の照射パワーは、例えばコントロール領域を参照し、コントロール領域に記録されている推奨の照射パワー付近に決定すればよい。しかし、光ディスクのレーザ光に対する感度ばらつきや光ディスクに記録を行う光ディスク装置の光ヘッドの性能のばらつき等により、設定パワーと実際の照射パワーとの間にずれがあると推定される場合には、これらを考慮してもよい。この場合、推奨パワーの±20%程度のパワー範囲で、例えば5%づつ照射パワーを変化させながらテストデータを記録してもよい。
また再生指標が最良となる照射パワー以外の照射パワーを決定してもよい。例えば、エラーレートやジッタ等に基準値を設定し、基準値以下となる照射パワー範囲の中央付近のパワーをユーザデータを記録する際の記録パワーとして決定してもよい。この決定方法によれば、例えばユーザデータの記録中に、レーザ光を出射する光源の温度が変化し、設定パワーに対して実際の照射パワーが変動した場合でも、変動が基準値以下となる照射パワー範囲内であれば、良好な記録品質を維持することができる。また、光ディスクに反りが生じている場合でも、そりによる記録パワーの変動が基準値以下となる照射パワー範囲内であれば、良好な記録品質を保持することができる。
一方でこのような記録パワーの決定方法ではテスト記録領域での照射パワーを広い範囲で変化させる必要があり、高いパワーで記録したテスト記録領域は劣化する可能性がある。
書き換え型の光ディスクではテスト記録による劣化がない限りにおいては、同じ領域に複数回のテスト記録を行うことができる。このためテスト記録領域の使用方法について特に制限を設ける必要はない。しかし、データを1度だけ記録することができる追記型の光ディスクでは、前述したように記録パワーの決定においては複数の照射パワーでテストデータを記録することから、テスト記録領域の未記録領域をランダムに(虫食い的に)使用するよりも、端から順番に使用していく方が効率的である。書き換え型の光ディスクにおいても、繰り返し記録に対して記録性能が変化する場合には、追記型の光ディスクと同様、テスト記録領域を端から順番に使用することが望ましい。
図4(a)は光ディスク101の情報記録層L0、L1、L2のうちの任意の1つの情報記録層Ln(nは0、1、または2)を示している。前述したように、情報記録層Lnにはリードイン領域Rnが設けられており、リードイン領域Rn内にテスト記録領域Tnが設けられている。テスト記録領域T0、T1、T2にもアドレスが与えられており、各テスト記録領域は、所定数のアドレスが連続した領域であるクラスタと呼ばれる副領域を含む。図4(b)および(c)は、テスト記録領域Tnの副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・を模式的に示している。例えば、上述した1回のテスト記録によって1つの副領域が使用される。情報記録層L0、L1、L2のテスト記録領域T0、T1、T2を構成する副領域(クラスタ)の個数は互いに等しい。つまり、テスト記録領域T0、T1、T2の大きさは互いに等しい。
図2に示すように、情報記録層L0ではレーザ光が内周から外周に向けて情報記録層L0を走査する。このため、テスト記録領域T0の副領域は、図4(b)に示すように、矢印で示すレーザ光の走査方向にしたがって、アドレスが割り当てられた複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・が存在する。この場合、複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・は外周から内周に向けて使用される。つまり、未使用の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・のうち最も外周側のものから順に使用される。図4(b)では、t5、t4、t3、t2、t1の順で使用される。ただし、各副領域内では矢印で示すようにレーザ光の走査方向にしたがってテスト記録が行われる。情報記録層L2でもレーザ光が内周から外周に向けて情報記録層L2を走査する。このため、複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・は外周から内周に向けて、t5、t4、t3、t2、t1の順で使用される。
これに対し、情報記録層L1ではレーザ光が外周から内周に向けて情報記録層L1を走査する。このため、テスト記録領域T1の副領域は、図4(c)に示すように、矢印で示すレーザ光の走査方向にしたがって、アドレスが割り当てられた複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・が存在する。複数の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・は内周から外周に向けて使用される。つまり、未使用の副領域t1、t2、t3、t4、t5、・・・・のうち最も内周側のものから、t5、t4、t3、t2、t1の順で使用される。
このように、テスト記録領域における副領域の使用方向はレーザ光の走査方向、つまり、光スポットの進行方向と逆である。これにより、テスト記録領域のある副領域がテスト記録の際の強い照射パワーによって破壊され、光スポットのトラックへの追随が困難になった場合でも、テスト記録領域の使用方向が光スポット進行方向と逆であるため、破壊された副領域を通ることなくテスト記録を行う領域に到達することができる。例えば、前回のテスト記録によって情報記録層L0のテスト記録領域T0の副領域t5が強い照射パワーによって破壊された場合でも、次のテスト記録の際には、未記録のテスト記録領域t1、t2、t3、t4と順にアドレスを検出するが可能であり、使用されていない最も外周側の副領域t4を検出することができる。
また、図2から分かるように、上述したように各情報記録層のテスト記録領域を使用する場合、任意の隣接するテスト記録領域間では互いに遠い方からテスト記録領域を使用していくことになる。例えば、情報記録層L0のテスト記録領域T0は外周端部T0b側の副記録領域から使用され、情報記録層L1のテスト記録領域T1は内周端部T1a側の副記録領域から使用される。このため、特にテスト記録の回数が少ない間は、より他層の影響を低減して正しく記録パワーを決定することができる。
このように本実施形態の光ディスクによれば、3つ以上の情報記録層を備えた光ディスクにおいて、各情報記録層にテスト記録領域が設けられている。このため、情報記録層が積層されていることによってレーザ光の照射強度や、熱的環境などが情報記録層ごとに異なっていても、記録をすべき情報記録層のテスト記録領域を用い、その情報記録層の環境下でテスト記録を行うことができる。したがって、各情報記録層に最適な記録パワーを決定することができる。
また、各情報記録層は、積層方向において互いに重なりが生じないように、互いに異なる半径位置に配置されている。このため、他の情報記録層のテスト記録領域の記録状態の影響を受けることなく、あるいは、影響を抑制し、正しくテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。
また、各情報記録層のテスト記録領域の使用方向をその情報記録層におけるレーザ光の操作方向と逆にした場合には、テスト記録領域の一部が強い照射パワーによって破壊された場合でも、テスト記録領域の残りの領域を正しく使用することができる。また、他層の影響を低減して正しく記録パワーを決定することができる。
次に、図2を参照しながら、テスト記録領域T0、T1、T2のより好ましい配置を説明する。
一般に、情報記録層L0にレーザ光を照射する場合、レーザ光は、情報記録層L1、L2を透過する必要があり、情報記録層L1にレーザ光を照射する場合には、レーザ光が情報記録層L2を透過する必要がある。このため、情報記録層L2のレーザ光の透過率が最も高く、情報記録層L1、情報記録層L0の順で透過率が低下する。
また、情報記録層の設計の観点からは、仮に既に2つの情報記録層を有する光ディスクが開発されているならば、既存の情報記録層を情報記録層L0、L1に使用し、新たに透過率の高い情報記録層L2のみを開発するのが望ましい。
しかし、情報記録層L2には高透過率が要求されるため、設計の自由度が狭くなり、情報記録層L0、L1よりも僅かな記録条件の変化、例えば記録パワーの変動により記録特性が悪化しやすい。情報記録層L1と情報記録層L0との間においても、同様の関係が成立する。つまり、一般に透過率の高い情報記録層ほど、設計の自由度が狭くなり、僅かな記録条件の変化、例えば記録パワーの変動により記録特性が悪化しやすい。
一方、例えば、情報記録層L2にレーザ光を照射する際には、一部の光が情報記録層L2を透過して情報記録層L1で反射して再び情報記録層L2へ戻ってくる。このとき、情報記録層L1のテスト記録領域T1が破壊または劣化していれば、テスト記録領域T1の反射率が変化するため、テスト記録領域T1から情報記録層L2へ戻ってくる反射光や迷光によるレーザ光の量も変化する。このため、テスト記録領域T1とテスト記録領域T2とが近接していれば、テスト記録領域T1から情報記録層L2へ戻ってくるレーザ光の変動がノイズ成分としてテスト記録領域T1において反射するレーザ光に重畳される。その結果、テスト記録領域T2を用いて正しくテスト記録を行うことができず、情報記録層L2の記録パワーを正しく決定することができない。
本実施形態の光ディスク101では、この点考慮し、レーザ光の入射面から近い側に位置する隣り合う情報記録層のテスト記録領域の半径位置差をレーザ光の入射面から遠い側に位置する隣り合う情報記録層のテスト記録領域の半径位置差よりも大きくすることが好ましい。つまり、レーザ光200の入射面から相対的に近い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L1、L2にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T2、T1間の半径方向の間隔(T2aとT1bとの間隔)は、レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L0、L1にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T0間の半径方向の間隔(T0aとT1bとの間隔)より大きく設定することが好ましい。
具体的には、各情報記録層L0、L1、L2をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1および3番目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T1の外周端部T1bの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T2の内周端部T2aの半径位置との半径位置差(T2a−T1b)は、1番目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0および2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域L1のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T1の外周端部T1bの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T0の内周端部T0aの半径位置との半径位置差(T0a−T1b)よりも大きい。
このようなテスト記記録領域の配置によれば、隣接する情報記録層からの反射の影響がより大きい一対の情報記録層間の間隔を広くし、隣接する情報記録層からの反射の影響を低減することができる。したがって、各情報記録層のテスト記録領域において正しいテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。また、相対的に隣接する情報記録層からの反射の影響が小さい一対の情報記録層間の間隔を相対的に狭くすることによって、情報記録層間に設ける間隔を必要以上に広く設定せず、リードイン領域の面積を有効に活用することができる。また、リードイン領域を広げることなく、十分なデータ領域を確保するこができる。
なお、上述したように隣接する情報記録層におけるテスト記録領域の間隔を設定する場合において、情報記録層L0におけるテスト記録領域T0と情報記録層L1におけるテスト記録領域T1を既存の2つの情報記録層を有する光ディスクにおけるテスト記録領域の配置と一致させてもよい。この場合、既存の光ディスク装置においても比較的簡単なシーケンスの変更のみで、本実施形態の光ディスク101のテスト記録領域T0、T1においてテスト記録を行うことができる。
上述のテスト記録領域の配置は、ユーザデータを1度だけ記録する追記型の光ディスクに好適に用いられる。しかし、3層以上の光学的に記録可能な情報記録面を有する書き換え型の光ディスクにおいても、上述のテスト記録領域の配置を採用することにより、隣接する情報記録層の影響を受けることなく正しく各情報記録層の記録パワーを決定することができる。
具体的には、書き換え型の光ディスクの場合、図5(a)および(b)に示すように情報記録層L0、L1、L2のテスト記録領域T0、T1、T2を配置してもよい。
図5(a)に示す光ディスク102のテスト記録領域T0、T1、T2の配置は、図2に示す配置と同じである。ただし、書き換え型の光ディスクの場合テスト記録領域T0、T1、T2の使用方向に制限はない。書き換え型の光ディスクでは、テスト記録を行った後、記録マークを消去することにより、記録領域T0の透過率を変化させないことが可能だからである。また、書き換え型の光ディスクの場合テスト記録領域T0、T1、T2の任意の副領域にランダムにアクセスが可能である。
また、書き換え型の光ディスクの場合、図5(b)の光ディスク102’に示すようにテスト記録領域T0、T1、T2が配置されていてもよい。この形態では、情報記録層L2のテスト記録領域T2が最も内周側に配置され、情報記録層L1のテスト記録領域T1が最も外周側に配置される。情報記録層L0のテスト記録領域T0は、情報記録層L2のテスト記録領域T2よりも外周側であって、情報記録層L1のテスト記録領域T1より内周側に配置されている。
また、各情報記録層をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1および3番目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T2の外周端部T1bと外周側に配置されたテスト記録領域T1の内周端部T1aとの半径位置差(T1a−T2b)は、1番目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0および2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域L1のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T0の外周端部T0bと外周側に配置されたテスト記録領域T1の内周端部T1aとの半径位置差(T1a−T0b)よりも大きい。
また、本実施形態では、3つのテスト記録領域T0、T1、T2は互いに重ならないように、異なる半径位置に設けられていた。しかし、情報記録層L2に対する情報記録層L1の反射光の影響が小さく、情報記録層L1に対する情報記録層L2の透過光の影響が小さい場合には、図6に示す光ディスク103ように、情報記録層L0のテスト記録領域T0と情報記録層L2のテスト記録領域T2との半径位置差を図2に示すテスト記録領域の配置よりも小さくしてもよい。
図6は、テスト記録領域T0とテスト記録領域T2との半径位置差を最も小さくした場合である半径位置差をゼロにした場合のテスト記録領域の配置を示している。このため、テスト記録領域T2の内周端部T2aおよび外周端部T2bが、テスト記録領域T0の内周端部T0aおよび外周端部T0bと完全に一致し、テスト記録領域T2とテスト記録領域T0が完全に重なっている。しかし、テスト記録領域T2がテスト記録領域T0と部分的に重なっていてもよい。
つまり、レーザ光200の入射面側に近い情報記録層のテスト記録領域は、入射面から遠い側に近い情報記録層に対して近接させて配置してもよい。具体的には、3つの情報記録層L0、L1、L2をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、1番目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0および2番目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T1の内周端部T1aの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T0の外周端部T0bの半径位置との半径位置差が、1番目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0および3番目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T0aの内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T2の外周端部T2bの半径位置との半径位置差よりも大きくてもよい。
図7は情報記録層L2における劣化領域が情報記録層L0、情報記録層L1に与える影響を示した模式図である。情報記録層L2のテスト記録領域T2に含まれる副領域が、強い照射パワーにより破壊され、劣化領域130、131が形成されたと考える。劣化領域130と劣化領域131は同じ大きさであるが、情報記録層L1に焦点を絞ったときの情報記録層L2におけるレーザ光20のスポットに占める劣化領域130の割合に対し、情報記録層L0に焦点を絞ったときの情報記録層L2におけるレーザ光200’のスポットに占める劣化領域131の割合の方が小さい。したがって、テスト記録領域T2に含まれる副領域が破壊されることによる影響は、情報記録層L1よりも情報記録層L0の方が小さい。このため、図6で示すテスト記録領域の配置のように、情報記録層L0のテスト記録領域T0と情報記録層L2のテスト記録領域T2との半径位置差を小さくすることができる。これにより、他の情報記録層のテスト記録領域の影響を抑制し、各テスト記録領域において正しくテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。また、リードイン領域の面積を小さくし、十分なデータ領域を確保することができる。
なお図2に示す実施形態では、レーザ光200の入射面から相対的に近い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L1、L2にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T2、T1間の半径方向の間隔(T2aとT1bとの間隔)を、レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L0、L1にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T0間の半径方向の間隔(T0aとT1bとの間隔)より大きく設定していた。しかし、例えば情報記録層L0と情報記録層L1との厚さ方向の距離が、情報記録層L1と情報記録層L2との厚さ方向の距離より短い場合、例えば、図1に示すように、中間層111厚さが中間層112の厚さよりも小さい場合、情報記録層L0と情報記録層L1との間の影響が情報記録層L1と情報記録層L2との間よりも大きい事が考えられる、この場合には、図8に示す光ディスク104ように、入射面から近い側に位置する、隣り合う情報記録層L2、L1のテスト記録領域T2、T1の半径位置差を、入射面から遠い側に位置する、隣り合う情報記録層L1、L0のテスト記録領域T1、T0の半径位置差よりも小さくしてもよい。
特にリードイン領域の面積を小さくするために、レーザ光の入射面から近い側に位置する隣り合う情報記録層L2、L1のテスト記録領域T2、T1の半径位置差(間隔)を限界まで小さくしている場合、本実施形態のように、レーザ光の入射面から遠い側に位置する、隣り合う情報記録層L1、L0のテスト記録領域T1、T0の半径位置差間隔を、レーザ光の入射面から近い側に位置する、情報記録層L2、L1のテスト記録領域T2、T1の半径位置差(間隔)よりも大きくすることにより、情報記録層L1からの反射光の影響を低減して正しい記録パワーを決定することができる。
本実施形態では、光ディスク101は3つの情報記録層を備えていたが、情報記録層を4つ以上備える光ディスクにも本発明を適用できる。この場合、情報記録層L0、L1、L2を4つ以上の情報記録層のうち、レーザ光の入射面から最も遠い情報記録層をL0とし、情報記録層をL0に隣接して情報記録層をL1、L2を順に設けることが好ましい。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による情報記録媒体の第2の実施形態を説明する。本発明による情報記録媒体も追記型または書き換え型である。第2の実施形態の光ディスクは、情報記録層L3をさらに含み、4つの情報記録層を備えている点で第1の実施形態の光ディスク101と異なる。図1に示す光ディスク101において、情報記録層L2とカバー層113との間に情報記録層L3が設けられ情報記録層L3と情報記録層L2との間に新たな中間層が設けられている。
図9は第2の実施形態の光ディスク105の模式的断面図である。図2と同様、中間層は示していない。図9に示すように、光ディスク101の構造に追加された情報記録層L3の内周側にリードイン領域R3が設けられ、リードイン領域R3内にテスト記録領域T3が存在する。
図9に示すように、情報記録層L0、L1、L2、L3のリードイン領域R0、R1、R2、R3に、それぞれ、テスト記録領域T0、T1、T2が位置している。テスト記録領域T0、T1、T2、T3は、互いに異なる半径位置に配置されており、情報記録層L0、L1、L2、L3の積層方向、つまり、レーザ光200の入射方向から見て互いに重なっていない。
より具体的には、光ディスク105において最も内周側に配置された情報記録層L3のテスト記録領域T3の外周端部T3bよりも2番目に内周側に配置された情報記録層L1のテスト記録領域T1の内周端部T1aは外周側に位置しており、テスト記録領域が重ならない間隙(間隔)が設けられている。この間隙は、内周端部T3bの半径位置と外周端部T1aの半径位置との差で規定される距離を有する。
また、2番目に内周側に配置された情報記録層L1のテスト記録領域T1の外周端部T1bよりも3番目に内周側に配置された情報記録層L0のテスト記録領域T0の内周端部T0aは外周側に位置しており、内周端部T0aと外周端部T1bとの半径位置差で規定される距離を有する間隙が設けられている。
また、3番目に内周側に配置された情報記録層L0のテスト記録領域T0の外周端部T0bよりも最も外周側に配置された情報記録層L2のテスト記録領域T2の内周端部T2aは外周側に位置しており、内周端部T2aと外周端部T0bとの半径位置差で規定される距離を有する間隙が設けられている。
4つの情報記録層L0、L1、L2、L3をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、3層目の情報記録層である情報記録層L2のテスト記録領域T2は、1層目の情報記録層である情報記録層L0のテスト記録領域T0より外周側に位置し、情報記録層L0のテスト記録領域T0は2層目の情報記録層である情報記録層L1のテスト記録領域T1より外周側に位置している。
また、情報記録層L2のテスト記録領域T2は、情報記録層L1のテスト記録領域より外周側に位置し、情報記録層L1のテスト記録領域T1は4層目の情報記録層である情報記録層L3のテスト記録領域T3より外周側に位置している。
また、3層目の情報記録層L2のテスト記録領域T2は、情報記録層L0のテスト記録領域T0より外周側に位置し、情報記録層L0のテスト記録領域T0は情報記録層L3のテスト記録領域T3より外周側に位置している。
第1の実施形態と同様、図9に示す本実施形態のテスト記録領域の配置によれば、テスト記録領域T0、T1、T2、T3の半径位置が異なっており、テスト記録領域T0、T1、T2、T3は情報記録層の積層方向に重なっていない。このため、例えば、情報記録層L1のテスト記録領域T1が破壊されても、破壊されたテスト記録領域T1の影響を受けずに、あるいはほとんど受けずに、情報記録層L0のテスト記録領域T0にレーザ光が正しく届く。したがって、情報記録層L0のテスト記録領域T0を用いて正しくテスト記録を行うことができ、情報記録層L0の記録パワーを正しく決定することができる。同様に、情報記録層L2、L3のテスト記録領域T2、T3が破壊されても、情報記録層L0、L1、L2の記録パワーを正しく決定することができる。
また、同様の理由から、テスト記録領域T0、T1、T2、T3におけるレーザ光の透過率が変化した場合でも、情報記録層L0、L1、L2、L3のテスト記録領域T0、T1、T2、T3にレーザ光が正しく届く。したがって、情報記録層L0、L1、L2、L3のテスト記録領域T0、T1、T2、T3を用いて正しくテスト記録を行うことができ、情報記録層L0、L1、L2、L3の記録パワーを正しく決定することができる。
次に、テスト記録領域T0、T1、T2、T3の使用方向について説明する。図9において矢印で示すように、情報記録層L0、L2では、内周から外周に向かってレーザ光が情報記録層L0、L2を走査するようにトラックが構成されている。これに対し、情報記録層L1、L3では、外周から内周に向かってレーザ光が情報記録層L1、L3を走査するようにトラックが構成されている。このため第1の実施形態と同様、次の情報記録層へ移動するたびに、レーザ光を光ディスク105の最内周位置あるいは最外周位置へジャンプさせることなく、情報の記録または再生を行うことができる。
これに対して、テスト記録領域T0、T1、T2、T3は、第1の実施形態と同様、好ましくは、各情報記録層におけるレーザ光の光スポットの進行方向と逆の方向に使用される。これにより第1の実施形態で説明したように、テスト記録領域のある副領域がテスト記録の際の強い照射パワーによって破壊され、光スポットのトラックへの追随が困難になった場合でも、テスト記録領域の使用方向が光スポット進行方向と逆であれば、破壊された副領域を通ることなくテスト記録を行う領域に到達することができる。また、特にテスト記録の回数が少ない間は、より他層の影響を低減して正しく記録パワーを決定することができる。
なお、本実施形態では、光ディスク105は4つの情報記録層を備えているが、4層以上の情報記録層を備えた光ディスクにも本発明を好適に用いることができる。この場合、情報記録層の層数をn(nは3以上の整数)として、前記n層の情報記録層を前記レーザ光の入射面から最も遠い側から数えた場合、i番目(iは2≦i≦nを満たす偶数)の情報記録層では、前記レーザ光が外周側から内周側に向けて走査され、前記テスト記録領域において、副領域が内周側から外周側に向けて使用され、i−1番目の情報記録層では、前記レーザ光が内周側から外周側に向けて走査され、前記テスト記録領域において、副領域が外周側から内周側に向けて使用される。
このように、本実施形態の光ディスクによれば、3つ以上の情報記録層を備えた光ディスクにおいて、各情報記録層にテスト記録領域が設けられている。このため、情報記録層が積層されていることによってレーザ光の照射強度や、熱的環境などが情報記録層ごとに異なっていても、記録をすべき情報記録層のテスト記録領域を用い、その情報記録層の環境下でテスト記録を行うことができる。したがって、各情報記録層に最適な記録パワーを決定することができる。
また、各情報記録層は、積層方向において互いに重なりが生じないように、互いに異なる半径位置に配置されている。このため、他の情報記録層のテスト記録領域の記録状態の影響を受けることなく、あるいは、影響を抑制し、正しくテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。
また、各情報記録層のテスト記録領域の使用方向をその情報記録層におけるレーザ光の操作方向と逆にした場合には、テスト記録領域の一部が強い照射パワーによって破壊された場合でも、テスト記録領域の残りの領域を正しく使用することができる。また、他層の影響を低減して正しく記録パワーを決定することができる。
第1の実施形態と同様、テスト記録領域T0、T1、T2、T3には、より好ましい配置が存在する。この配置を図9を参照しながら説明する。
情報記録層L0にレーザ光を照射する場合、レーザ光は、情報記録層L1、L2、L3を透過する必要があり、情報記録層L2にレーザ光を照射する場合には、レーザ光が情報記録層L3を透過する必要がある。このため、情報記録層L3のレーザ光の透過率が最も高く、情報記録層L2、情報記録層L1、情報記録層L0の順で透過率が低下する。
また、情報記録層の設計の観点からは、仮に既に3つの情報記録層を有する光ディスクが開発されているならば、既存の情報記録層を情報記録層L0、L1、L2に使用し、新たに透過率の高い情報記録層L3のみを開発するのが望ましい。
しかし、情報記録層L3は高透過率を要求されるため、設計の自由度が狭くなり、情報記録層L0、L1、L2よりも僅かな記録条件の変化、例えば記録パワーの変動により記録特性が悪化しやすい。情報記録層L2と情報記録層L1との間および情報記録層L1と情報記録層L0との間においても、同様の関係が成立する。つまり、一般に透過率の高い情報記録層ほど、設計の自由度が狭くなり、僅かな記録条件の変化、例えば記録パワーの変動により記録特性が悪化しやすい。
一方、例えば、情報記録層L3にレーザ光を照射する際には、一部の光が情報記録層L3を透過して情報記録層L2で反射して再び情報記録層L2へ戻ってくる。このとき、情報記録層L2のテスト記録領域T2が破壊または劣化していれば、テスト記録領域T2の反射率が変化するため、テスト記録領域T2から情報記録層L3へ戻ってくる反射光や迷光によるレーザ光の量も変化する。このため、テスト記録領域T2とテスト記録領域T3とが近接していれば、テスト記録領域T2から情報記録層L3へ戻ってくるレーザ光の変動がノイズ成分としてテスト記録領域T2において反射するレーザ光に重畳される。その結果、テスト記録領域T3を用いて正しくテスト記録を行うことができず、情報記録層L3の記録パワーを正しく決定することができない。
本実施形態の光ディスク105では、この点を考慮し、レーザ光の入射面から近い側に位置する隣り合う情報記録層のテスト記録領域の半径位置差をレーザ光の入射面から遠い側に位置する隣り合う情報記録層のテスト記録領域の半径位置差よりも大きくすることが好ましい。つまり、レーザ光200の入射面から相対的に近い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L1、L2にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T2、T1間の半径方向の間隔(T2aとT1bとの間隔)は、レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L0、L1にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T0間の半径方向の間隔(T0aとT1bとの間隔)より大きく設定することが好ましい。
また、レーザ光200の入射面から相対的に近い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L2、L3にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T2、T3間の半径方向の間隔(T2aとT3bとの間隔)は、レーザ光の入射面から相対的に遠い側に位置する隣り合う1対の情報記録層L0、L1にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T0間の半径方向の間隔(T0aとT1bとの間隔)、および、情報記録層L1、L2にそれぞれ形成された1対のテスト記録領域T1、T2間の半径方向の間隔(T2aとT1bとの間隔)より大きいことが好ましい。
具体的には、各情報記録層L0、L1、L2をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、i番目(iは、2≦i≦3を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびi+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置との半径位置差が、j番目(jは、1≦j≦i−1を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびj+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置との半径位置差よりも大きい。
本実施形態では、光ディスク105は4つの情報記録層を備えているが、4層以上の情報記録層を備えた光ディスクにも本発明を好適に用いることができる。この場合、上記関係はnを光ディスクに含まれる情報記録層の層数であり、3以上の整数であるとして、iが2≦i≦n−1を満たす整数に対し成立する。
このようなテスト記記録領域の配置によれば、隣接する情報記録層からの反射の影響がより大きい一対の情報記録層間の間隔を広くし、隣接する情報記録層からの反射の影響を低減することができる。したがって、各情報記録層のテスト記録領域において正しいテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。また、相対的に隣接する情報記録層からの反射の影響が小さい一対の情報記録層間の間隔を相対的に狭くすることによって、情報記録層間に設ける間隔を必要以上に広く設定せず、リードイン領域の面積を有効に活用することができる。また、リードイン領域を広げることなく、十分なデータ領域を確保するこができる。
なお、上述したように隣接する情報記録層におけるテスト記録領域の間隔を設定する場合において、情報記録層L0におけるテスト記録領域T0と情報記録層L1におけるテスト記録領域T1を既存の2つの情報記録層を有する光ディスクにおけるテスト記録領域の配置と一致させてもよい。この場合、既存の光ディスク装置においても比較的簡単なシーケンスの変更のみで、本実施形態の光ディスク101のテスト記録領域T0、T1においてテスト記録を行うことができる。
本実施形態では、4つのテスト記録領域T0、T1、T2、T3は互いに重ならないように、異なる半径位置に設けられていた。しかし、図7を参照して説明したように、情報記録層L3に対する情報記録層L2の反射光の影響、情報記録層L2に対する情報記録層L3の透過光の影響、情報記録層L1に対する情報記録層L3の透過光の影響、情報記録層L0に対する情報記録層L2の透過光の影響が小さい場合には、図10に示す光ディスク106のように、情報記録層L0のテスト記録領域T0と情報記録層L2のテスト記録T2の半径位置差および、情報記録層L1のテスト記録領域T1と情報記録層L3のテスト記録領域T3の半径位置差を図9に示す配置における対応する半径位置差に比べて小さくしてもよい。
図9は、テスト記録領域T0とテスト記録領域T2との半径位置差、および、記録領域T1とテスト記録領域T3との半径位置差をゼロにした場合を示している。このため、テスト記録領域T2の内周端部T2aおよび外周端部T2bが、テスト記録領域T0の内周端部T0aおよび外周端部T0bと完全に一致し、テスト記録領域T2とテスト記録領域T0が完全に重なっている。また、テスト記録領域T3の内周端部T3aおよび外周端部T3bが、テスト記録領域T1の内周端部T1aおよび外周端部T1bと完全に一致し、テスト記録領域T3とテスト記録領域T1が完全に重なっている。しかし、テスト記録領域T2がテスト記録領域T0と部分的に重なっていてもよい。また、テスト記録領域T3がテスト記録領域T1と部分的に重なっていてもよい。
つまり、レーザ光200の入射面側に近い情報記録層のテスト記録領域は、入射面から遠い側に近い情報記録層に対して近接させて配置してもよい。具体的には、情報記録層L0、L1、L2、L3をレーザ光200の入射面から最も遠い側から数えた場合、k番目(kは、1≦k≦2を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびk+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差が、k番目の情報記録層のテスト記録領域およびk+2番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差よりも大きくてもよい。
また、情報記録層L1のテスト記録領域T1および情報記録層L2のテスト記録領域T2のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T1の内周端部T1aの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T2の外周端部T2bの半径位置との半径位置差が、情報記録層L1のテスト記録領域T1および情報記録層L3のテスト記録領域T3のうち、内周側に配置されたテスト記録領域T3の内周端部T3aの半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域T1の外周端部の半径位置T1bとの半径位置差よりも大きくてもよい。
本実施形態では、光ディスク105は4つの情報記録層を備えているが、4層以上の情報記録層を備えた光ディスクにも本発明を好適に用いることができる。この場合、上記1番目の関係は、nを光ディスクに含まれる情報記録層の層数であり、3以上の整数であるとして、kが1≦k≦n−2を満たす整数に対して成立する。
また、上記2番目の関係は、k’番目(k’は、1≦k’≦n−3を満たす整数)の情報記録層のテスト記録領域およびk’+1番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差が、k’+1番目の情報記録層のテスト記録領域およびk’+3番目の情報記録層のテスト記録領域のうち、内周側に配置されたテスト記録領域の内周端部の半径位置と外周側に配置されたテスト記録領域の外周端部の半径位置との半径位置差よりも大きいと規定される。
これにより、他の情報記録層のテスト記録領域の影響を抑制し、各テスト記録領域において正しくテスト記録を行うことができ、各情報記録層で使用する記録パワーを正しく決定することができる。また、リードイン領域の面積を小さくし、十分なデータ領域を確保することができる。
また、情報記録層L1に対する情報記録層L3の透過光の影響が小さい場合には、図11に示す光ディスク107のように、情報記録層L1のテスト記録領域T1と情報記録層L3のテスト記録領域T3との半径位置差を小さくしてもよい。図11では、テスト記録領域T1とテスト記録領域T3との半径位置差がゼロの場合を示しているが、テスト記録領域T3がテスト記録領域T1と部分的に重なるようにテスト記録領域T3を配置してもよい。これにより、リードイン領域の面積を小さくし、十分なデータ領域を確保することができる。
また、情報記録層L0、L2に対する情報記録層L3の透過光の影響が少なく、情報記録層L3に対する情報記録層L2の反射光の影響が小さい場合には、図12に示す光ディスク108のように、情報記録層L0のテスト記録領域T0と情報記録層L3のテスト記録領域T3の半径位置差を小さくし、テスト記録領域T3とテスト記録領域T2の半径位置差を小さくしてもよい。図12では、テスト記録領域T0とテスト記録領域T3との半径位置差がゼロの場合を示しているが、テスト記録領域T3がテスト記録領域T0と部分的に重なるようにテスト記録領域T3を配置してもよい。これにより、リードイン領域の面積を小さくし、十分なデータ領域を確保することができる。
以上、第1および第2の実施形態では、情報記録層を3つおよび4つ備えた光ディスクを例示し、本発明の光ディスクを説明した。本発明の光ディスクは、これら第1および第2の実施形態に限られず、情報記録層を5つ以上備えていてもよい。
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による情報記録装置、情報再生装置、記録方法、再生方法の実施形態を説明する。図13は、本実施形態の情報記録装置300のブロック図である。情報記録装置300は、データの記録および再生を行うことが可能であり、スピンドルモータ302、光ヘッド303、光ビーム制御部304、サーボ部305、再生二値化部306、デジタル信号処理部307、記録補償部308、CPU309を備える。
光ディスク301は、第1の実施形態または第2の実施形態として説明した光ディスクである。ここでは、第1の実施形態の光ディスク101を光ディスク301として用いる。スピンドルモータ302は、光ディスク301を所定の速度で回転させ、光ヘッド303は、光ビームを光ディスク301に照射する。また、光ビームを光ディスク301に照射した反射光を電気的な信号に変換し、再生信号を出力する。光ビーム制御部304は、CPU309の指示に基づき、光ヘッド303から出力される光ビームの照射パワーを制御する。
サーボ部305は、光ヘッド303および光ヘッド303から出射する光ビームの位置制御、光ビームのフォーカスおよびトラッキング制御、スピンドルモータ302の回転制御を行う。再生二値化部306は、光ヘッド303より得られた再生信号(データ情報は和信号、ディスク情報領域やアドレスに関する情報は差信号)を増幅し、2値化処理を行うことによって、2値化信号を生成する。また内部のPLL(図示せず)により、2値化信号に同期したクロックを生成する。
デジタル信号処理部307は、2値化信号に所定の復調処理やエラー訂正処理を行う。データ記録時は記録データにエラー訂正コードを付加する処理および所定の変調処理を行い、変調データを生成する。記録補償部308は、変調データをパルス列から構成される光変調データに変換し、さらに光変調データのパルス幅等を、ディスク情報領域の再生信号や、予めCPU309に記憶されているデータを基に微妙に調整し、ピット形成に適した記録パルス信号に変換する。
CPU309は、情報記録装置300全体の制御を行う。ホストユニット310は、例えば、コンピュータ(図示せず)とアプリケーション(図示せず)やオペレーティングシステム(図示せず)で構成し、光ディスクドライブ300に対して記録や再生の要求を行う。
光ディスク301が情報記録装置300に装填されると、光ビーム制御部304およびサーボ部305により、光ヘッド303が所定の照射パワーで情報記録層L0のリードイン領域R0のコントロール領域を再生し、情報記録層L0、情報記録層L1、情報記録層L2に記録する際の照射パワー情報等の記録パラメータ情報を読み取る。
ホストユニット310からの記録要求があると、光ビーム制御部304およびサーボ部305により、光ヘッド303が所定の照射パワーで情報記録層L0のリードイン領域R0に設けられたテスト記録領域T0を再生する。CPU309はテスト記録を行う際の照射パワーを光ビーム制御部304に設定し、光ヘッド303により複数の異なる照射パワーを用いてテストデータの記録を行い、記録したテストデータを再生する。得られた再生信号のエラーレートやジッタなどに基づき、情報記録層L0のデータ領域D0に記録する際の記録パワーを決定する。
同様の動作を情報記録層L1、L2について実行する。具体的には、光ビーム制御部304およびサーボ部305により、光ヘッド303が所定の照射パワーで情報記録層L1のリードイン領域R1に設けられたテスト記録領域T1を再生する。CPU309はテスト記録を行う際の照射パワーを光ビーム制御部304に設定し、光ヘッド303により複数の異なる照射パワーを用いてテストデータの記録を行い、記録したテストデータを再生する。得られた再生信号のエラーレートやジッタなどに基づき、情報記録層L1のデータ領域D1に記録する際の記録パワーを決定する。
続いて、光ビーム制御部304およびサーボ部305により、光ヘッド303が所定の照射パワーで情報記録層L2のリードイン領域R2に設けられたテスト記録領域T2を再生する。CPU309はテスト記録を行う際の照射パワーを光ビーム制御部304に設定し、光ヘッド303により複数の異なる照射パワーを用いてテストデータの記録を行い、記録したテストデータを再生する。得られた再生信号のエラーレートやジッタなどに基づき、情報記録層L2のデータ領域D2に記録する際の記録パワーを決定する。このようにして、すべての情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に情報を記録するための記録パワーが決定される。
続いて、決定された記録パワーでレーザ光を照射し、各情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2にユーザデータが記録される。このとき、情報記録層ごとに上述した手順で決定された照射パワーが用いられる。
各情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に記録されたユーザデータを再生する場合には、コントロール領域に記録されたディスク情報などを再生し、得られたディスク情報を用いて、データ領域D0、D1、D2に記録されたユーザデータを再生する。
なお本実施形態ではテスト記録領域T0、T1、T2はディスクの内周のみに設けられているが、テスト記録領域は外周にも設けられていてもよい。また、記録要求があったときに、すべての情報記録層L0、L1、L2のデータ領域D0、D1、D2に記録するためのすべての記録パワーをそれぞれ決定している。しかし、CPU309が、情報記録層L0のみに記録を行うことによって要求されている情報の記録が完了すると判断した場合には、データ領域R0に記録する際の照射パワーを決定するだけでもよい。これによりユーザデータの記録を開始するまでの時間を短縮することができる。
また本実施の形態では、記録要求があったときにすべての情報記録層のデータ領域に記録するためのすべての記録パワーをそれぞれ決定しているが、CPU309の判断により、最初に記録を行う情報記録層の記録パワーを決定し、残りの情報記録層は別のタイミングで記録パワーを決定してもよい。これによりユーザデータの記録を開始するまでの時間を短縮することができる。
例えば3つの情報記録層を備える光ディスクにおいて、各層の内周および外周でテスト記録を行う場合、合計で6回のテスト記録シーケンスが実行される。このため、ユーザデータの記録開始までに多くの時間がかかる場合がある。
このため、テスト記録を行う情報記録層または層数のパターンを予め複数種類準備しておき、例えばCPU309により、2層以上の記録が必要かどうかを予測し、2層以上の記録が不要であれば情報記録層L0および情報記録層L1のテスト記録のみを行うことで、ユーザデータの記録開始までの時間を短縮することができる。
(第4の実施形態)
本発明が適用可能な記録媒体の一例として、ブルーレイディスク(BD)や他の規格の光ディスクがあるが、本実施形態では、第1および第2の実施形態の光ディスクをBDに適用した例を説明する。
<主要パラメータ>
BDには、記録膜の特性に応じて、再生専用型であるBD−ROM,追記記録型・ライトワンス型であるBD−R、書換記録型であるBD−REなどのタイプがある。本発明は、BDや他の規格の光ディスクにおけるROM(再生専用型),R(追記型・ライトワンス型)、RE(書換型)のいずれのタイプの記録媒体にも適用可能である。ブルーレイディスクの主な光学定数と物理フォーマットについては、「ブルーレイディスク読本」(オーム社出版)やブルーレイアソシエーションのホームページ(http://www.blu-raydisc.com/)に掲載されているホワイトペーパに開示されている。
BDでは、波長が略405nm(標準値405nmに対して誤差範囲の許容値を±5nmとすれば、400〜410nm)のレーザ光および開口数(NA:Numerical Aperture)が略0.85(標準値0.85に対して誤差範囲の許容値を±0.01とすれば、0.84〜0.86)の対物レンズを用いる。BDのトラックピッチは略0.32μm(標準値0.320μmに対して誤差範囲の許容値を±0.010μmとすれば、0.310〜0.330μm)であり、情報記録層が1層または2層設けられている。情報記録層の記録面がレーザ光入射側から片面1層あるいは片面2層の構成であり、BDの保護層の表面から記録面まで距離は75μm〜100μmである。
記録信号の変調方式は17PP変調を利用し、記録されるマークの最短マーク(2Tマーク:Tは基準クロックの周期(所定の変調則によってマークを記録する場合における、変調の基準周期))のマーク長は0.149μm(または0.138μm)(チャネルビット長:Tが74.50nm(または69.00nm))である。記録容量は片面単層25GB(または27GB)(より詳細には、25.025GB(または27.020GB))、または、片面2層50GB(または54GB)(より詳細には、50.050GB(または54.040GB))である。
チャネルクロック周波数は、標準速度(BD1x)の転送レートでは66MHz(チャネルビットレート66.000Mbit/s)であり、4倍速(BD4x)の転送レートでは264MHz(チャネルビットレート264.000Mbit/s)、6倍速(BD6x)の転送レートでは396MHz(チャネルビットレート396.000Mbit/s)、8倍速(BD8x)の転送レートでは528MHz(チャネルビットレート528.000Mbit/s)である。
標準線速度(基準線速度、1x)は4.917m/sec(または、4.554m/sec)である。2倍(2x)、4倍(4x)、6倍(6x)および8倍(8x)の線速度は、それぞれ、9.834m/sec、19.668m/sec、29.502m/secおよび39.336m/secである。標準線速度よりも高い線速度は一般的には、標準線速度の正の整数倍であるが、整数に限られず、正の実数倍であってもよい。また、0.5倍(0.5x)など、標準線速度よりも遅い線速度も定義し得る。
なお、上述の諸条件は既に商品化がなされている、主に1層当たり約25GB(または約27GB)の1層または2層のBDに関するものである。BDの記録容量を高めるために、1層あたりの記録容量が略32GBまたは略33.4GBである高密度なBDや、層数を3層または4層としたBDも検討されている。以下このようなBDに本発明を適用した例を説明する。
<情報記録層の多層化>
レーザ光を保護層(カバー層)の側から入射して情報が再生および/または記録される片面ディスクの構成をとる場合、情報記録層を2層以上にするためには基板と保護層との間には複数の情報記録層が設ける必要がある。このような多層ディスクの構成例を図14に示す。図14に示された光ディスクは、(n+1)層の情報記録層502を備える(nは0以上の整数)。具体的には、光ディスクには、レーザ光200が入射する側の表面から順に、カバー層501、(n+1)枚の情報記録層(Ln〜L0層)502、および基板500が積層されている。また、(n+1)枚の情報記録層502のそれぞれの間には、光学的緩衝材として働く中間層503が挿入されている。つまり、光入射面から所定の距離を隔てた最も奥側の位置(光源から最も遠い位置)に基準層(L0)を設け、基準層(L0)から光入射面側に層を増やすように情報記録層を積層(L1,L2,・・・,Ln)している。
ここで、単層ディスクと比較した場合、多層ディスクにおける光入射面から基準層L0までの距離を、単層ディスクにおける光入射面から情報記録層までの距離とほぼ同じ(例えば0.1mm程度)にしてもよい。このように層の数に関わらず最奥層(最遠層)までの距離を一定にする(すなわち、単層ディスクにおける場合とほぼ同じ距離にする)ことで、単層か多層かに関わらず基準層へのアクセスに関する互換性を保つことができる。また、層数の増加に伴うチルト影響の増加を抑えることが可能となる。チルト影響の増加を抑えることが可能になるのは、最奥層が最もチルトの影響を受けるが、最奥層までの距離を、単層ディスクとほぼ同じ距離とすることで、層数が増加しても最奥層までの距離が増加することがなくなるからである。
また、スポットの進行方向(あるいは、トラック方向、スパイラル方向とも言う)に関しては、パラレル・パスとしても、オポジット・パスとしてもよい。パラレル・パスでは、すべての情報記録層において、スポットの進行方向が同一である。つまり、スポットの進行方向は、全情報記録層にて内周から外周の方向へ、または全情報記録層にて外周から内周の方向へ進行する。
一方、オポジット・パスでは、ある情報記録層とその情報記録層に隣接する情報記録層とで、スポットの進行方向が逆になる。つまり、基準層(L0)におけるスポットの進行方向が、内周から外周へ向かう方向である場合、情報記録層L1におけるスポットの進行方向は外周から内周へ向かう方向であり、情報記録層L2では内周から外周へ向かう方向である。すなわち、スポットの進行方向は、情報記録層Lm(mは0及び偶数)では内周から外周へ向かう方向であって、情報記録層Lm+1では外周から内周へ向かう方向である。あるいは、情報記録層Lm(mは0及び偶数)では外周から内周へ向かう方向であって、情報記録層Lm+1では内周から外周へ向かう方向である。
保護層(カバー層)の厚さは、開口数NAが上がり、焦点距離が短くなるのに伴って、またチルトによるスポット歪みの影響を抑えられるよう、より薄く設定される。開口数NAは、CDでは0.45、DVDでは0.65に対して、BDでは略0.85に設定される。例えば情報記録媒体の総厚み1.2mm程度のうち、保護層の厚さを10〜200μmとしてもよい。より具体的には、1.1mm程度の基板に、単層ディスクならば0.1mm程度の透明保護層、2層ディスクならば0.075mm程度の保護層に0.025mm程度の中間層(SpacerLayer)が設けられてもよい。
<1層から4層の各構成例>
ここで、単層ディスクの構成例を図15に、2層ディスクの構成例を図16に、3層ディスクの構成例を図17に、4層ディスクの構成例を図18に示す。前述のように、光照射面から基準層L0までの距離を一定にする場合、いずれのディスクにおいても、ディスクの総厚みは略1.2mm(レーベル印刷なども含んだ場合、1.40mm以下にするのが好ましい)であり、基板500の厚さは略1.1mmである。また、光照射面から基準層L0までの距離は略0.1mmとなる。図15に示す単層ディスク(図14においてn=0の場合)においては、カバー層5011の厚さは略0.1mmである。また、図16の2層ディスク(図14においてn=1の場合)においては、カバー層5012の厚さは略0.075mmであり、中間層5302の厚さは略0.025mmである。また、図17の3層ディスク(図14においてn=2の場合)や、図18の4層ディスク(図14においてn=3の場合)においては、カバー層5014の厚さ、および/または、中間層5304の厚さをさらに薄くしてもよい。
また、このようにNAの高い対物レンズを有する光学ヘッドを用いた記録再生装置では、ディスクの光照射表面から情報記録層までの厚さによって発生する球面収差などの収差が情報記録層上に絞り込まれるレーザ光の品質に大きく影響を及ぼす。そのため、厚さによって発生する収差を補正する手段が設けられている。
収差補正手段は、光情報記録媒体の保護層表面から、情報を記録再生する情報記録層までの厚さによって発生する球面収差などの収差成分を補正するために、各情報記録層で発生する収差成分を打ち消すような収差を与える。この収差補正手段は、本来、単層構造媒体の情報記録層に対して収差が小さくなるような光学設計がなされており、2層構造の情報記録媒体の記録再生における収差も考慮されている。設計上の最小収差位置は、保護層表面から約80μmから90μm程度に設定されている。そのため、最小収差位置と異なる厚さの情報記録層に記録再生光を絞り込むときは、収差補正手段を制御し、各情報記録層にあった収差補正値を設定して補正する必要がある。
<BDの物理的構成>
図19は、本実施形態による光ディスク510の物理的構成を示す。円盤状の光ディスク510には、例えば同心円状またはスパイラル状に多数のトラック511が形成されており、各トラック512には細かく分けられた多数のセクタが形成されている。なお、後述するように、各トラック512には予め定められたサイズのブロック513を単位としてデータが記録される。
本実施形態による光ディスク510は、従来の光ディスク(例えば25GBのBD)よりも情報記録層1層あたりの記録容量が拡張されている。記録容量の拡張は、記録線密度を向上させることによって実現されており、例えば、光ディスクに記録される記録マークのマーク長をより短くすることによって実現される。ここで「記録線密度を向上させる」とは、チャネルビット長を短くすることを意味する。このチャネルビットとは、基準クロックの周期T(所定の変調則によってマークを記録する場合における、変調の基準周期T)に相当する長さをいう。なお、光ディスク510は多層化されていてもよい。ただし、以下では説明の便宜のため、1つの情報記録層にのみ言及する。また、複数の情報記録層が設けられている場合において、各情報記録層に設けられたトラックの幅が同一であるときでも、層ごとにマーク長が異なり、同一層中ではマーク長が一様であることで、層ごとに記録線密度を異ならせてもよい。
トラック512は、データの記録単位64kB(キロバイト)毎にブロック513に分けられて、順にブロックアドレス値が割り振られている。ブロック513は、所定の長さのサブブロックに分割され、3個のサブブロックで1ブロックを構成している。サブブロックは、前から順に0から2までのサブブロック番号が割り振られている。
<記録密度>
次に、記録密度について、図20(a)、(b)、図21および図22を用いて説明する。
図20(a)は25GBのBDの例を示す。BDでは、レーザ光200の波長は405nm、対物レンズ220の開口数(Numerical Aperture;NA)は0.85である。
DVD同様、BDにおいても、記録データは光ディスクのトラック512上に物理変化のマーク列520、521として、記録される。このマーク列の中で最も長さの短いものを「最短マーク」という。図では、マーク521が最短マークである。
25GB記録容量の場合、最短マーク521の物理的長さは0.149μmである。これは、DVDの約1/2.7に相当し、光学系の波長パラメータ(405nm)とNAパラメータ(0.85)を変えて、レーザの分解能を上げても、光ビームが記録マークを識別できる限界である光学的な分解能の限界に近づいている。
図21は、トラック512上に記録されたマーク列に光ビームを照射させている様子を示す。BDでは、上記光学系パラメータにより光スポット210の直径は、約0.39μm程度となる。光学系の構造は変えないで記録線密度向上させる場合、光スポット210のスポット径に対して記録マークが相対的に小さくなるため、再生の分解能は悪くなる。
例えば、図20(b)は、25GBのBDよりも高記録密度の光ディスクの例を示す。このディスクでも、レーザ200の波長は405nm、対物レンズ220の開口数(Numerical Aperture;NA)は0.85である。このディスクのマーク列524、525のうち、最短マーク525の物理的長さは0.1115μmである。図20(a)と比較すると、スポット径は同じ約0.39μmである一方、記録マークが相対的に小さくなり、かつ、マーク間隔も狭くなるため、再生の分解能は悪くなる。
光ビームで記録マークを再生した際の再生信号の振幅は記録マークが短くなるにしたがって低下し、光学的な分解能の限界でゼロとなる。この記録マークの周期の逆数を空間周波数といい、空間周波数と信号振幅の関係をOTF(Optical Transfer Function)という。信号振幅は、空間周波数が高くになるにしたがってほぼ直線的に低下する。信号振幅がゼロとなる再生の限界周波数を、OTFカットオフ(cutoff)という。
図22は、25GBの記録容量のBDにおける、OTFと最短記録マークとの関係を示すグラフである。BDの最短マークの空間周波数は、OTFカットオフに対して80%程度であり、OTFカットオフに近い。また、最短マークの再生信号の振幅も、検出可能な最大振幅の約10%程度と非常に小さくなっているこが分かる。BDの最短マークの空間周波数が、OTFカットオフに非常に近い場合、すなわち、再生振幅がほとんど出ない場合の記録容量は、BDでは、約31GBに相当する。最短マークの再生信号の周波数が、OTFカットオフ周波数付近である、または、それを超える周波数であると、レーザの分解能の限界、若しくは超えていることもあり、再生信号の再生振幅が小さくなり、SN比が急激に劣化する領域となる。
そのため、図20(b)の高記録密度光ディスクの記録線密度は、再生信号の最短マークの周波数が、OTFカットオフ周波数付近の場合(OTFカットオフ周波数以下だがOTFカットオフ周波数を大きく下回らない場合も含む)からOTFカットオフ周波数以上の場合が想定できる。
図23は、最短マーク(2T)の空間周波数がOTFカットオフ周波数よりも高く、かつ、2Tの再生信号の振幅が0であるときの、信号振幅と空間周波数との関係の一例を示したグラフである。図23において、最短マーク長の2Tの空間周波数は、OTFカットオフ周波数の1.12倍である。
<波長と開口数とマーク長との関係>
高記録密度光ディスクにおける波長と開口数とマーク長/スペース長との関係は以下の通りである。
最短マーク長をTMnm、最短スペース長をTSnmとし、(最短マーク長+最短スペース長)を”P”で表すと、Pは、(TM+TS)nmである。17変調の場合、P=2T+2T=4Tとなる。レーザ波長λ(405nm±5nm、すなわち400〜410nm)、開口数NA(0.85±0.01すなわち0.84〜0.86)、最短マーク+最短スペース長P(17変調の場合、最短長は2Tとなるため、P=2T+2T=4T)の3つのパラメータを用いた場合、以下の不等式を満たすまで基準Tが小さくなると、最短マークの空間周波数は、OTFカットオフ周波数を超える。
P ≦ λ/2NA
NA=0.85、λ=405としたときの、OTFカットオフ周波数に相当する基準Tは、以下の式によって求められる。なお、P > λ/2NAを満たす場合、最短マークの空間周波数はOTFカットオフ周波数より低い。
T = 405/(2x0.85)/4 = 59.558nm
このように、記録線密度を上げるだけでも、光学的な分解能の限界によりSN比が劣化する。よって、情報記録層の多層化によるSN比劣化は、システムマージンの観点で、許容できない場合がある。特に、上述のように、最短記録マークの周波数が、OTFカットオフ周波数を越える辺りから、SN比劣化が顕著になる。
以上、最短マークの再生信号の周波数とOTFカットオフ周波数を比較して記録線密度を説明した。さらにBDの高密度化が進んだ場合、次最短マーク(更には次々最短マーク(更には次最短マーク以上の記録マーク))の再生信号の周波数とOTFカットオフ周波数との関係から、上述したのと同様の原理に基づき、それぞれに対応した記録密度(記録線密度、記録容量)を設定することができる。
<記録密度および層数>
ここで、波長405nm、開口数0.85等のスペックを有するBDにおける1層あたりの具体的な記録容量としては、最短マークの空間周波数がOTFカットオフ周波数付近である場合、例えば、略29GB(例えば、29.0GB±0.5GB、あるいは29GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略30GB(例えば、30.0GB±0.5GB,あるいは30GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略31GB(例えば、31.0GB±0.5GB,または31GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略32GB(例えば、32.0GB±0.5GB,あるいは32GB±1GBなど)若しくはそれ以上、などを想定することが可能である。
また、最短マークの空間周波数がOTFカットオフ周波数以上における、1層あたりの記録容量としては、例えば、略32GB(例えば、32.0GB±0.5GB,あるいは32GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略33GB(例えば、33.0GB±0.5GB,あるいは33GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略33.3GB(例えば、33.3GB±0.5GB,あるいは33.3GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略33.4GB(例えば、33.4GB±0.5GB,あるいは33.4GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略34GB(例えば、34.0GB±0.5GB,あるいは34GB±1GBなど)若しくはそれ以上、または略35GB(例えば、35.0GB±0.5GB,あるいは35GB±1GBなど)若しくはそれ以上、などを想定することが可能である。
特に、記録密度が略33.3GBである場合、3層で約100GB(99.9GB)の記録容量が実現でき、略33.4GBとすると3層で100GB以上(100.2GB)の記録容量が実現できる。これは、25GBのBDを4層にした場合の記録容量とほぼ同じになる。例えば、記録密度を33GBとした場合、33x3=99GBで100GBとの差は1GB(1GB以下)であり、34GBとした場合、34x3=102GBで100GBとの差は2GB(2GB以下)、33.3GBとした場合、33.3x3=99.9GBで100GBとの差は0.1GB(0.1GB以下)、33.4GBとした場合、33.4x3=100.2GBで100GBとの差は0.2GB(0.2GB以下)となる。
なお、記録密度が大幅に拡張されると、先に述べたように、最短マークの再生特性の影響により、精密な再生が困難になる。そこで、記録密度の大幅な拡張を抑えつつ、かつ100GB以上を実現する記録密度としては、略33.4GBが現実的である。
ここで、光ディスクの構成を、1層あたり25GBの4層構造とするか、1層あたり33〜34GBの3層構造とするか、の選択肢が生じる。多層化には、各情報記録層における再生信号振幅の低下(SN比の劣化)や、多層迷光(隣接する情報記録層からの信号)の影響などが伴う。そのため、25GBの4層ディスクではなく、33〜34GBの3層ディスクとすることにより、そのような迷光の影響を極力抑えつつ、より少ない層数(4層ではなく3層)で、約100GBを実現することが可能となる。そのため、多層化を極力避けつつ約100GBを実現したいディスクの製造者は、33〜34GBの3層化を選択することが可能となる。一方、従来のフォーマット(記録密度25GB)のまま約100GBを実現したいディスク製造者は、25GBの4層化を選択することが可能となる。このように、異なる目的を有する製造者は、それぞれ異なる構成によって、それぞれの目的を実現することが可能となり、ディスク設計の自由度を与えることができる。
また、1層あたりの記録密度を30〜32GB程度とすると、3層ディスクでは100GBに届かないものの(90〜96GB程度)、4層ディスクでは120GB以上が実現できる。そのうち、記録密度を略32GBとすると、4層ディスクでは約128GBの記録容量が実現できる。この128という数字はコンピュータで処理するのに便利な2のべき乗(2の7乗)に整合した数値でもある。そして、3層ディスクで約100GBを実現する記録密度のものと比べると、最短マークに対する再生特性はこちらの方が厳しくない。
このことから、記録密度の拡張にあたっては、記録密度を複数種類設けることで(例えば略32GBと略33.4GBなど)、複数種類の記録密度と層数との組み合わせにより、ディスクの製造者に対して設計の自由度を与えることが可能となる。例えば、多層化の影響を抑えつつ大容量化を図りたい製造者に対しては33〜34GBの3層化による約100GBの3層ディスクを製造するという選択肢を与え、再生特性を影響を抑えつつ大容量化を図りたい製造者に対しては、30〜32GBの4層化による約120GB以上の4層ディスクを製造するという選択肢を与えることが可能となる。
いずれの構成をBDで採用する場合でも、第1の実施形態または第2の実施形態の光ディスクの構造を採用することによって、各情報記録層に最適な記録パワーを決定することができる。したがって、特に線記録密度が高められることによって、より正確に記録マークを形成することが求められる場合でも、最適な記録パワーを用いて適切な記録を行うことができる。
本発明は、種々の情報記録媒体および情報記録装置に好適に用いられ、特に3層以上の情報記録層を有する追記型あるいは書き換え型の情報記録媒体およびこれに対応する情報記録装置に好適に用いられる。
D0、D1、D2、D3 データ領域
L0、L1、L2、L3 情報記録層
R0、R1、R2、R3 リードイン領域
T0、T1、T2、T3 テスト記録領域
110 基板
111、112 中間層
113 カバー層