JPWO2009154251A1 - 熱可塑性エラストマー組成物及びその成形品 - Google Patents

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Abstract

(a)スチレン系ブロック共重合体と、(b)α−メチルスチレン由来の構成単位を60質量%以上含有する重合体ブロックAおよび共役ジエン由来の構成単位を主体とする重合体ブロックBを有するα−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物と、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤とからなる熱可塑性エラストマー組成物であって、(a)スチレン系ブロック共重合体と(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物との質量比〔(a)/(b)〕が50/50〜97/3であり、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤の含有量が、(a)スチレン系ブロック共重合体と(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物との合計100質量部に対して、1〜300質量部である熱可塑性エラストマー組成物及びその成形品である。

Description

本発明は、スチレン系ブロック共重合体の特長を損ねることなく耐摩耗性と耐熱性を改善した熱可塑性エラストマー組成物及びその成形品に関する。
スチレン系ブロック共重合体は、1965年に米シェル・ケミカル社(現クレイトンポリマー社)により上市された熱可塑性エラストマーであり、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)等が知られている。これらは安価で、柔軟性、ゴム弾性、軽量性、グリップ性、衝撃緩衝性、低温特性、耐水性、リサイクル性、成形性等の特長を持つことから、例えば、靴底、粘・接着材、アスファルト改質材、樹脂改質材等の幅広い用途に用いられている。
これらスチレン系ブロック共重合体は、加熱により成形加工が容易にできる反面、高温下では力学強度が低下する課題がある他、摩擦を繰り返し受けると材料が摩耗し易いという課題がある。具体的には、靴底やアスファルトの用途で摩耗性の改善が、粘・接着材の用途で接着面のズレや剥がれの改善が求められている。
かかる課題を改善するため、これまでにも多数の提案がなされてきた。例えば、特許文献1では、繊維補強材とアラミド粒子を添加する方法、特許文献2では、アクリル変性されたオルガノポリシロキサンを添加する方法等が提案されている。しかしながら、これらの方法によっては、改善効果が十分とは言えず、効果が得られてもスチレン系ブロック共重合体の特長を損ねるものなど、依然満足できるものがないのが現状である。さらにこれらの方法では、材料表面に摺動性を与えることで耐摩耗性が得られているが、材料が持つグリップ性が失われるという問題がある。
また、特許文献3では、軟化点100℃以上の水素化C9系石油樹脂を添加する方法が提案されているが、耐熱性の改善効果が依然十分ではない上、硬質の石油樹脂が添加されるため材料が持つ柔軟性が損なわれる問題がある。
特表平6−510317号公報 特開2006−199930号公報 特開2002−037975号公報
本発明の目的は、スチレン系ブロック共重合体の特長を損ねることなく耐摩耗性と耐熱性を改善した熱可塑性エラストマー組成物及びその成形品を提供することにある。
本発明者らは、(a)スチレン系ブロック共重合体に、その改質材として(b)特定のα−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物と、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤とを特定割合で配合することにより上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)(a)スチレン系ブロック共重合体と、(b)α−メチルスチレン由来の構成単位を60質量%以上含有する重合体ブロックAおよび共役ジエン由来の構成単位を主体とする重合体ブロックBを有するα−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物と、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤とからなる熱可塑性エラストマー組成物であって、(a)スチレン系ブロック共重合体と(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物との質量比〔(a)/(b)〕が50/50〜97/3であり、非芳香族系ゴム用軟化剤(c)の含有量が、(a)スチレン系ブロック共重合体と(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物との合計100質量部に対して、1〜300質量部である熱可塑性エラストマー組成物、及び
(2)上記(1)からなる成形品である。
本発明によれば、スチレン系ブロック共重合体の特長を損ねることなく耐摩耗性と耐熱性を改善した熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。
かかる熱可塑性エラストマー組成物を主成分として生産される靴底や数十%添加して製造されるアスファルトにおいて、耐摩耗性に優れるため、すなわちそれらの使用寿命を延ばすことができるため、環境負荷が低減できる。また、かかる熱可塑性エラストマーをベースポリマーとして製造される粘・接着材においては、耐熱性、すなわち高温での引張り強度が上がり耐熱クリープが向上するため、安価で高性能な製品を提供することができる。
〔(a)スチレン系ブロック共重合体〕
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、主成分として(a)スチレン系ブロック共重合体を含有する。本発明における(a)スチレン系ブロック共重合体は、少なくとも主としてスチレン由来の構造単位からなる重合体ブロックと、共役ジエン由来の構造単位からなる重合体ブロックを有するブロック共重合体である。主としてスチレン由来の構造単位からなる重合体ブロックは、スチレン由来の構造単位を90質量%以上含み、95質量%以上含むことが好ましく、スチレン由来の構造単位のみからなることがさらに好ましい。主としてスチレン由来の構造単位からなる重合体ブロックには、スチレン以外のスチレン系モノマー由来の構造単位を含んでいても差し支えない。スチレン以外のスチレン系モノマーとしては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。一方、共役ジエン由来の構造単位からなる重合体ブロックにおける共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、ブタジエン、イソプレンが好ましい。上記のモノマー、共役ジエンは、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)スチレン系ブロック共重合体のオレフィン性二重結合は、水素添加されていないものが好ましいが、共役ジエン由来の構造単位の炭素−炭素二重結合のうち10モル%以下が水素添加されていてもよい。
(a)スチレン系ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、クレイトンポリマー社製の「クレイトンD」(商品名)、旭化成ケミカルズ株式会社製の「タフプレン」(商品名)と「アサプレンT」(商品名)、JSR株式会社製の「JSR TR」(商品名)と「JSR SIS」(商品名)、日本ゼオン社製の「クインタック」(商品名)等が挙げられる。
これらの中でも、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)と比較して耐摩耗性や力学物性に優れるスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)は靴底など耐摩耗性の要求される用途に用いられることが多いため、(a)スチレン系ブロック共重合体がスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)である場合に、耐摩耗性の向上という本発明の効果が特に有効に発揮される。
(a)スチレン系ブロック共重合体の分子量に特に制限はないが、10,000〜1,000,000の範囲にあることが好ましく、10,000〜500,000の範囲にあることがより好ましく、20,000〜400,000の範囲にあることがさらに好ましい。分子量が10,000以上であると熱可塑性エラストマー組成物の引張強度が優れ、一方、1,000,000以下であると成形性に優れる。なお、本明細書でいう分子量とは、特に断らない限りゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定法(標準物質:ポリスチレン)によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を指す。
〔(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物〕
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記(a)スチレン系ブロック共重合体の改質材として(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物を含有する。
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物は、α−メチルスチレン由来の構成単位を60質量%以上含有する重合体ブロックAと、共役ジエン由来の構成単位を主体とする重合体ブロックBとから構成される。
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物としては、熱劣化性、UV劣化性等を改善する観点から、水素添加物であることが好ましい。水素添加の割合は、特に限定されるものではないが、少なくとも重合体ブロックBの共役ジエン単位に基づく炭素−炭素不飽和二重結合における水素添加の割合が50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物の分子量に特に制限はないが、好ましくは10,000〜1,000,000、より好ましくは20,000〜500,000、さらに好ましくは30,000〜300,000の範囲である。分子量が10,000未満であると、耐摩耗性や耐熱性が低下することがあり、一方、1,000,000を超えると、スチレン系ブロック共重合体との混和が困難になり、耐摩耗性や耐熱性の改善効果が得られないことがある上、配合量によっては成形が困難になることもある。
また、分子量分布〔重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)〕は、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.0〜1.5、さらに好ましくは1.0〜1.2の範囲である。分子量分布が3.0を超えると耐摩耗性や耐熱性が低下することがある。なお、本明細書でいう数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定法(標準物質:ポリスチレン)によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量を指す。
重合体ブロックAにおけるα−メチルスチレンの含有量は、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性および耐摩耗性の観点から特に重要であり、その含有量は60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上で、特に好ましくは100質量%である。
重合体ブロックAに含有可能なα−メチルスチレン以外の単量体としては、一般的にアニオン重合可能な単量体であれば限定はないが、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレン、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの単量体に由来する構成単位の1種又は2種以上を含有していてもよい。これらα−メチルスチレン以外の他の不飽和単量体に由来する構成単位としては、得られる熱可塑性エラストマー組成物の力学的特性の観点から、重合体ブロックAに対する割合として少量、望ましくは10質量%以下の範囲で含まれるのが好ましい。重合体ブロックAがα−メチルスチレン単位以外の他の構造単位を含有する場合の形態は、ランダム、ブロック、テーパード状のいずれでもよい。
また、重合体ブロックAの分子量は、1,000〜50,000の範囲が好ましく、2,000〜40,000の範囲がより好ましく、3,000〜35,000の範囲がさらに好ましく、4,000〜30,000の範囲がよりさらに好ましい。重合体ブロックAの重量平均分子量が1,000以上であれば、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性の改良効果が充分に得られ、一方、重量平均分子量が50,000以下であれば、得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形性を向上させることができる。
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物における重合体ブロックAの含有量は、5〜60質量%の範囲が好ましく、10〜40質量%の範囲がより好ましく、15〜35%がさらに好ましい。重合体ブロックAの含有量が5質量%以上であれば、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、耐摩耗性が向上し、60質量%以下であれば、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、グリップ性、ゴム弾性、衝撃緩衝性を向上させることができる。
本発明に使用される(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物を構成する、もう一つの重合体ブロックBの共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの共役ジエンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐摩耗性の観点から1,3−ブタジエンやイソプレン、1,3−ブタジエンとイソプレンの混合物が好ましい。共重合する場合の結合形態は、完全交互、ランダム、テーパード、一部ブロック、またそれらの2種以上の組み合わせからなることができる。
また、重合体ブロックBは、共役ジエン以外のアニオン重合可能な単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。アニオン重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのアニオン重合可能な単量体の含有量は、通常は10質量%以下の範囲内である。
重合体ブロックBの分子量は、1,000〜500,000の範囲が好ましく、3,000〜400,000の範囲がより好ましく、5,000〜300,000の範囲がさらに好ましく、10,000〜200,000の範囲がよりさらに好ましい。重合体ブロックBの分子量が1,000以上であれば、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性の改良効果が充分に得られ、一方、分子量が500,000以下であれば、得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形性を向上させることができる。
重合体ブロックBにおける共役ジエンのミクロ構造としては特に制限されないが、例えば、ブタジエンの場合は1,2−結合及び/又は1,4−結合、イソプレンの場合は1,2−結合、3,4−結合及び/又は1,4結合を採ることができ、それらのいずれのミクロ構造であってもよい。その中でも、重合体ブロックBがブタジエンから形成されている場合は、1,2−結合の割合が重合体ブロックB中の20〜70モル%であることが柔軟性、ゴム弾性、低温特性等の観点から好ましい。一方、重合体ブロックBがイソプレンから形成されているか、ブタジエンとイソプレンから形成されている場合は、1,2−結合、及び3,4−結合の合計の割合が重合体ブロックB中の5〜70モル%であることが柔軟性、ゴム弾性、低温特性等の観点から好ましい。また、これら1,2−結合や3,4−結合は、重合体ブロックB中に偏在化していても、分散化していてもよい。
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物における重合体ブロックBの含有量は、40〜95質量%の範囲が好ましく、60〜90質量%の範囲がより好ましく、65〜85質量%がさらに好ましい。重合体ブロックBの含有量が40質量%以上であれば、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、グリップ性、ゴム弾性、衝撃緩衝性を向上させることができ、95質量%以下であれば、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、耐摩耗性が向上させることができる。
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物における重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合形式は、線状、分岐状、放射状、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。例えば、重合体ブロックAをAと、重合体ブロックBをBで表したとき、A−B−A型トリブロック共重合体、A−B−A−B型テトラブロック共重合体、A−B−A―B−A型ヘキサブロック共重合体、(A−B)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは3以上の整数を表す)等が挙げられる。中でも、耐熱性と分子量分布の狭いブロック共重合体を得やすいことと製造の容易さの観点から、A−B−A型トリブロック共重合体が好ましい。これらのブロック共重合体は、1種単独で用いてもよいし2種類以上の混合物を用いてもよい。また、これらのブロック共重合体のうち、A−B−A型トリブロック共重合体、(A−B)nX型共重合体等を製造する一つの方法として、A−B型のリビングポリマーをカップリングする方法がある。この場合、カップリング効率によっては、A−B型ジブロック共重合体が副生する場合がある。本発明のα−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物は、本発明の主旨を損ねない範囲でA−B型ジブロック共重合体を含んでいてもよい。その含有割合は通常20%未満である。
ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが2価のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、上記例示も含め、本来厳密にはA−X−Aと表記されるべき重合体ブロックは、特に単独の重合体ブロックAと区別する必要がある場合を除き、全体としてAと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはA−B−X−B−Aと表記されるべきブロック共重合体は、A−B−Aと表記され、トリブロック共重合体の一例として取り扱われる。
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物は、本発明の効果を損なわない限り、分子鎖中に、又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有することもできる。
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物の製造方法について特に制限はなく、例えば、リビングアニオン重合法を用いて製造することができる。この場合、アルキルリチウム化合物等のアニオン重合開始剤の存在下、n−ヘキサンやシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の不活性有機溶媒中で、α−メチルスチレン、共役ジエン、及びそれ以外の必要に応じて用いられるモノマーを逐次重合させて得ることができる。
リビングアニオン重合によりブロック共重合体を製造するにあたり、反応を円滑に進行させるために、分子内にアニオン種と反応する官能基(水酸基、カルボニル基等)を持たず、酸素原子、窒素原子等の複素原子を有する極性化合物を、不活性有機溶媒に共存させて用いてもよい。その際の極性化合物としては、通常のリビングアニオン重合で採用されている手法に準じて適当なものを選択することができ、ジエチルエーテル、モノグライム、ジグライム、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
またリビングアニオン重合によりブロック共重合体を製造するにあたり、必要に応じて多官能性カップリング剤を用いてもよい。多官能性カップリング剤としては、通常のリビングアニオン重合で採用されている手法に準じて適当なものを選択することができ、安息香酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸フェニル、ピバリン酸エチル、α,α'−ジクロロ−o−キシレン、α,α'−ジクロロ−m−キシレン、α,α'−ジクロロ−p−キシレン、ビス(クロロメチル)エーテル、ジブロモメタン、ジヨードメタン、フタル酸ジメチル、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、トリクロロメチルシラン、テトラクロロシラン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
またリビングアニオン重合によりブロック共重合体を製造するにあたり、必要に応じて官能性キャッピング剤を用いてブロック共重合体末端に官能基を導入してもよい。官能性キャッピング剤としては、通常のリビングアニオン重合で採用される手法に準じて適当なものを選択することができる。例えば、水酸基を導入できるキャッピング剤(エチレンオキシド等のアルキレンオキシド類等)、カルボキシル基を導入できるキャッピング剤(二酸化炭素等)、アミノ基を導入できるキャッピング剤(エチレンイミン等のイミン化合物等)、メルカプト基を導入できるキャッピング剤(二硫化炭素、硫黄原子、及びエチレンスルフィド等のアルキレンスルフィド類等)等が挙げられる。
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体の共役ジエンに由来する炭素−炭素二重結合の水素添加の方法としては特に限定されないが、例えばNi/Al系チーグラー触媒の存在下にブロック共重合体と水素とを反応させる方法等が挙げられる。
〔(c)非芳香族系ゴム用軟化剤〕
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性と加工性を改良することを目的として(c)非芳香族系ゴム用軟化剤を含有する。非芳香族系ゴム用軟化剤としては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、流動パラフィン等の鉱物油系軟化剤;落花生油、ロジン等の植物油系軟化剤;リン酸エステル、塩素化パラフィン、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、ポリブテン、低分子量ポリブタジエンやポリイソプレン又はその水素添加物等の合成軟化剤等が挙げられる。これらの中で、耐熱性や耐摩耗性の低下割合が少ない点で、鉱物油系軟化剤が好ましく、パラフィン系オイルがより好ましい。これらの非芳香族系ゴム用軟化剤は、1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
なお、鉱物油系軟化剤は、一般に芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖を含む混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%を占めるものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上を占めるものは芳香族(アロマ)系と区別している。(c)成分に用いられる鉱物油系軟化剤は上記区分でパラフィン系およびナフテン系のものである。
パラフィン系オイルは、例えば、原油を常圧蒸留することにより得られる重油留分を減圧蒸留し、さらに、水素化改質,脱ロウ処理等で精製することにより得られるものである。
パラフィン系オイルとしては、例えば、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられ、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタンもしくはヘプタコンタン等のn−パラフィン;イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、各種メチルヘキサン、3−エチルペンタン、各種ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、各種ジメチルヘキサン、各種トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサンもしくは4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン;又はこれらの飽和炭化水素の誘導体等が挙げられる。これらのパラフィンは、混合物で用いることができ、室温で液状であるものが好ましい。
このようなパラフィン系オイル として、例えば、出光興産株式会社製の「ダイアナプロセス PW−90」(商品名)、「ダイアナプロセスPW−380」(商品名)および「IPソルベント2835」(商品名)、並びに三光化学工業株式会社製の「流動パラフィン」(商品名)、三井化学株式会社製の「ルーカント HC−20」(商品名)、「ルーカント HC−40」(商品名)等が挙げられる。
パラフィン系オイルの40℃における動粘度は、好ましくは5〜10,000mm2/sec以上のもの、より好ましくは20〜5,000mm2/sec、さらに好ましくは50〜1000mm2/secである。5mm2/sec未満の場合は、耐熱性が低下する可能性が高く、混練温度が高くなると引火の危険性がある。一方10,000mm2/secを超えると成形性の改良が得られない可能性がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて他の成分を配合することができる。かかる他の成分としては、例えば、芳香族系ゴム用軟化剤、カーボンブラック、無機充填材、難燃剤、粘着付与樹脂、金属不活性化剤、滑剤、光安定剤、顔料、熱安定剤、防曇剤、帯電防止剤、分散剤、防菌剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、架橋剤、架橋助剤などを挙げることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必須成分以外の重合体を加えることもできる。熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含有することもできる。それらの樹脂やエラストマーとしては、例えば、ポリスチレン樹脂、α−メチルスチレン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂、スチレン・無水マレイン酸樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、各種ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、各種ポリプロピレン樹脂、各種ポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン樹脂、天然ゴム、合成イソプレンゴム、シス1,4−ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)や、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(ABS)、各種ニトリルゴム、各種アクリルゴム、ポリウレタンエラストマー(TPU)、ポリエステルエラストマー(TPEE)、ポリアミドエラストマー(TPAE)等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の組成割合は、以下のとおりである。(a)スチレン系ブロック共重合体と(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物との質量比〔(a)/(b)〕は、50/50〜97/3であり、好ましくは55/45〜92/8であり、より好ましくは60/40〜90/10であり、さらに好ましくは70/30〜90/10である。上記質量比〔(a)/(b)〕が50/50未満の場合、価格対費用効果が得られない可能性があり、97/3を超えると、耐摩耗性の改善効果が得られない可能性がある。(c)非芳香族系ゴム用軟化剤の含有量は、(a)スチレン系ブロック共重合体と(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体との合計100質量部に対して、1〜300質量部であり、好ましくは10〜150質量部、より好ましくは15〜100、さらに好ましくは20〜80である。この含有量が1質量部未満であれば、成形外観が悪くなる可能性があり、300質量部を超えると、耐熱性や耐摩耗性の改善効果がなくなる可能性がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、従来公知の方法に従って調製することができる。例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダー等の混練機を用いて各構成成分を溶融状態で混練することによって調製することができる。なお、混練温度は、通常100〜190℃、好ましくは120〜180℃の範囲である。
本発明者らは、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体を含有しない組成物と比べて、射出成形により成形する場合に金型から取り出しても変形しない程度に十分に固化するまでの時間が大幅に短くなるという驚くべき効果を有することを見出した。すなわち、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は射出成形における成形サイクルが短く、生産性の向上をもたらす。
〔成形品〕
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、プレス成形、カレンダー成形等の従来公知の方法を用いて、シート、フィルム、チューブ、中空成形体、型成形体、その他の各種成形品に成形することができる。また、二色成形法、インサート成形法、共押出等により他の部材(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、ABS樹脂、ポリアミド等の高分子材料、金属、木材、布等)と複合化することができる。
本発明の成形品としては、例えば、ビジネスシューズ、登山靴、ローファーズ、建材、衛材、日用品、自動車用品、家電・電子用品、工業用品、スポーツ用品、包装材、家具、雑貨等の幅広い分野の成形品が挙げられ、靴底、粘・接着材、アスファルト改質材、樹脂改質材、フロア−マット、人工皮革、ガスケット、キャスター、伸縮部材、ホース・チューブ、ローラー、プロテクター、ゴーグルストラップ、各種グリップ、足ゴム等の幅広い用途に使用できる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形体は、特に耐摩耗性に優れる。具体的には、厚さ2mmのシート状成形体として、後述の実施例に記載したJIS K 6264のテーバー摩耗試験法に準じて測定したときのテーバー摩耗量が、好ましくは200mg未満であり、より好ましくは1〜150mg、さらに好ましくは1〜120mgである。かかる条件で測定したテーバー摩耗量が前記範囲内であることにより、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、耐摩耗性に優れ、使用時における耐久性、使用材料を低減できるという省資源の観点からも優れた材料である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例において用いた測定機器および測定方法を示す。
(1)核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)によるブロック共重合体の分子構造の解析
機器:日本電子株式会社製、核磁気共鳴装置「JNM−LA」、溶媒:重クロロホルム
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定
機器:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)、カラム:東ソー株式会社製TSKgel GMHXL、G4000HXL、及びG5000HXLを直列に連結、溶離液 : テトラヒドロフラン、流量1.0ml/分、カラム温度:40℃、検量線:標準ポリスチレンを用いて作成、検出方法:示差屈折率(RI)
(3)耐摩耗性(摩耗量)
実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を170℃でプレス成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートを用いてJIS K 6264「テーバー摩耗試験」に準じて、試験荷重1kg、試験回転数1000回におけるテーバー摩耗量を測定して、耐摩耗性の指標とした。また、摩耗輪としてH22を用いて、JIS R 6211に規定する形状のものを使用した。なお、テーバー摩耗量が少ない方が耐摩耗性に優れる。
(4)引張破断強度、伸度
実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を170℃でプレス成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートよりJIS K 6251に準拠したダンベル5号型の試験片を打ち抜いて作成し、引張試験を25℃と60℃の温度条件下で実施して25℃での引張破断強度と伸度、60℃での引張破断強度を測定し、力学強度ならびに耐熱性の指標とした。
(5)硬度
実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を170℃でプレス成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートを用いて、JIS K 6253に準拠してJIS−A硬度を測定し、柔軟性の指標とした。
(6)固化時間
実施例1〜3および比較例1〜2で得られた熱可塑性エラストマー組成物を、東芝機械製射出成形機(商品名 IS−55EPN)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、射出時間10秒、冷却時間20秒の条件で29mmΦ×12.5mm厚みの試験片を作製し、射出成形機から試験片を取り出した時間を0秒として室温下で10秒毎の試験片の硬度をJIS−A硬度で測定し、試験片がある程度の負荷に耐えうる硬度40Aに達するまでの時間を計測して固化時間とした。
参考例1(α−メチルスチレン系ブロック共重合体の水素添加物の製造)
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、α−メチルスチレン90.9g、シクロヘキサン138g、メチルシクロヘキサン15.2g、及びテトラヒドロフラン3.1gを仕込んだ。この混合液にsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)9.4mlを添加し、−10℃で3時間重合させた。重合開始3時間後のポリα−メチルスチレン(重合体ブロックA)の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、ポリスチレン換算で6,600であり、α−メチルスチレンの重合転化率は89%であった。
次いで、この反応混合液にブタジエン23gを添加し、−10℃で30分間攪拌して、ブロックb1の重合を行った後、シクロヘキサン930gを加えた。この時点でのα−メチルスチレンの重合転化率は89%であり、ポリブタジエンブロック(b1)のMw(重量平均分子量)は3,700であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は19%であった。
次に、この反応液にさらにブタジエン141.3gを加え、50℃で2時間重合反応を行った。この時点のサンプリングで得られたブロック共重合体(構造:A−b1−b2)のポリブタジエンブロック(b2)の重量平均分子量は29,800であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は60%であった。
続いて、この重合反応溶液に、ジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)12.2mlを加え、50℃にて1時間攪拌し、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレントリブロック共重合体を得た。このときのカップリング効率を、カップリング体(α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレントリブロック共重合体:A−b1−b2−X−b2−b1−A;式中Xはカップリング剤残基(−Si(CH32−)を表す)と未反応ブロック共重合体(α−メチルスチレン−ブタジエンブロック共重合体:A−b1−b2)のGPCにおけるUV吸収の面積比から算出すると94%であった。また、1H-NMR解析の結果、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレントリブロック共重合体中のα−メチルスチレン系重合体ブロック含有量は33%であり、ブタジエン重合体ブロックB全体(すなわち、ブロックb1およびブロックb2)の1,4−結合量は56%であった。
上記で得られた重合反応溶液中に、オクチル酸ニッケル、及びトリエチルアルミニウムから形成されるチーグラー(Ziegler)系水素添加触媒を水素雰囲気下に添加し、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間の水素添加反応を行ない、α−メチルスチレン−ブタジエンブロック−α−メチルスチレントリブロック共重合体の水素添加物を得た。得られたトリブロック共重合体をGPC測定した結果、主成分はMn(数平均分子量)=78,700、Mw(重量平均分子量)=79,500、Mw/Mn=1.01であるα−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレントリブロック共重合体の水素添加物(カップリング体)であり、GPCにおけるUV(254nm)吸収の面積比から、カップリング体は94%含まれることが判明した。また、1H-NMR測定により、ブロックb1およびブロックb2から構成されるブタジエンブロックBの水素添加率は99%であった。
実施例1〜3および比較例1〜3
表1に示す配合に従い、各成分を予備混合した後、二軸押出し機を使用してシリンダー温度170℃(及びスクリュー回転数150rpm)で溶融混練した。ストランド状に押し出された熱可塑性エラストマー組成物は、ストランドカッターで切断してペレットにし、これを150mm×150mm×2mm(厚み)のスペーサーを用い、170℃の温度下で、10MPa、3分間のプレス成形をおこなって、厚さ2mmのシート状物を作製した。これを所定形状に裁断や積み重ねて試験片に加工し、上記の各種物性を評価した。結果を表1に示す。
表1に記載されている各成分は下記のとおりである。
(a)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS);JSR株式会社製 JSR TR−2003〔スチレン含有量43%、MFR4.5g/10分(190℃、2.16kg荷重)、テーバー摩耗量 200mg、分子量:100,000〕
(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体の水素添加物;参考例1に従って作製〔α−メチルスチレン含有量30質量%、MFR5.6g/10分(MFRは230℃、2.16kg荷重)、テーバー摩耗量35mg〕
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤;パラフィン系オイル、出光興産株式会社製 ダイアナプロセスPW−90(40℃動粘度95.54mm2/sec)
(d)水添スチレン系エラストマー〔スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック
共重合体(SEBS)〕;クレイトンポリマー社製 G1652(スチレン含有量30%、MFR5.0g/10分(MFRは230℃、5kg荷重)、テーバー摩耗量25mg)
(e)熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU);BASFジャパン製 エラストラン1180A(硬度80A、ポリエーテル系TPU、テーバー摩耗量3mg)
Figure 2009154251
表1より、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は比較例1〜3の熱可塑性エラストマー組成物と比べて、スチレン系ブロック共重合体の特長を維持しつつ、耐摩耗性と耐熱強度が優れていることが分かる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物及びその成形品は、スチレン系ブロック共重合体の特長を損ねることなく耐摩耗性と耐熱性を改善することができ、靴底、粘・接着材、アスファルト改質材、樹脂改質材、フロア−マット、人工皮革、ガスケット、キャスター、伸縮部材、ホース・チューブ、ローラー、プロテクター、ゴーグルストラップ、各種グリップ、足ゴム等の幅広い用途に使用できる。

Claims (7)

  1. (a)スチレン系ブロック共重合体と、(b)α−メチルスチレン由来の構成単位を60質量%以上含有する重合体ブロックAおよび共役ジエン由来の構成単位を主体とする重合体ブロックBを有するα−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物と、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤とからなる熱可塑性エラストマー組成物であって、(a)スチレン系ブロック共重合体と(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物との質量比〔(a)/(b)〕が50/50〜97/3であり、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤の含有量が、(a)スチレン系ブロック共重合体と(b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物との合計100質量部に対して、1〜300質量部である熱可塑性エラストマー組成物。
  2. (b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物が、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物である請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. (b)α−メチルスチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物の重量平均分子量が、10,000〜1,000,000である1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. (a)スチレン系ブロック共重合体が、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. (a)スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量が、10,000〜1,000,000である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. (c)非芳香族系ゴム用軟化剤が、パラフィン系オイルである請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品。
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