本発明は、片手で握り中心軸方向に往復移動させることができる棒状ハンドルの先端部に円筒形状で且つ放射状のブラシヘッドを同心状に装備した円筒型歯ブラシに関する。
近年、歯ブラシの一種として、片手で握り中心軸方向に往復移動させることができる棒状ハンドルの先端部に円筒形状のブラシヘッドを同心状に取付けた円筒型歯ブラシが特許文献1、2により提示され、市場でも注目を集めている。ここにおける円筒形状のブラシヘッドは、歯ブラシのブラシ部を形成する糸材(通常はナイロン糸)の束から製造された放射状の丸ブラシ素子を中心軸方向に重ねて形成されている。
個々の丸ブラシ素子は、糸材の束を周囲に開いて中心部を環状に溶着し、溶着部の内側を打ち抜いて糸束から分離することにより連続的に製造される。このため、その形状は、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に、貫通孔周囲の溶着部である環状ディスク部の周囲に、その周囲へ多数本の糸材が放射状に延出して形成された放射状羽根部を有する、中心軸方向の厚みが極端に薄い丸ブラシ形状となっている。
この円筒型歯ブラシは、ブラシハンドルの周方向において方向性がなく、老人や子供でも非常に扱いやすいという特徴がある。また、口腔内における歯茎のマッサージや舌苔の除去にも非常に適する。更に、上下の奥歯を同時にブラッシングすることもできる。しかしながら、この歯ブラシは、これらの利点の一方で、ブラシヘッドにおける植毛密度、とりわけハンドルの中心軸方向における植毛密度が大きく、このため使用感がよくないばかりか、歯肉を傷つけるおそれがあるという本質的欠点を有している。
この欠点を解消するために、特許文献1により提示された円筒型歯ブラシでは、丸ブラシ素子とワッシャが交互に配列されている。また、特許文献2により提示された円筒型歯ブラシでは、個々の丸ブラシ素子における環状ディスク部に環状突起(ボス部)が一体的に形成されている。いずれの円筒型歯ブラシにおいても、ワッシャや環状突起(ボス部)の介在により、丸ブラシ素子の配列ピッチが広がり、ハンドル軸方向における植毛密度が小さくなることから、使用感、安全性が向上している。
しかしながら、いずれの円筒型歯ブラシにおいても、隣接する丸ブラシ素子の放射状羽根部間に隙間ができるため、放射状羽根部が軸方向に倒れやすく、比較的短い使用期間でブラッシングによる歯垢除去効果やマッサージ効果が低下する問題がある。また、ハンドル軸方向における植毛密度が低下した分、マッサージ効果は低下する。
先行技術文献
特許第3646118号公報
特許第4000355号公報
本発明の目的は、口腔内のブラッシング効果を低下させることなく歯肉部に対するマッサージ効果を向上させることができる円筒型歯ブラシを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の円筒型歯ブラシは、片手で握り中心軸方向に往復移動させることができる棒状ハンドルと、棒状ハンドの先端部に同心状に取付けられた円筒形状のブラシヘッドとを備えている。そして前記ブラシヘッドは、歯ブラシの毛の材料からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から多数本の糸材が放射状に延出した硬質丸ブラシ素子と、歯ブラシの毛の材料より柔らかい軟質樹脂からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から周囲へ複数の面状突起が突出した軟質丸ブラシ素子とが、ハンドル軸方向において混在したハイブリッド構造を採用している。
本発明の円筒型歯ブラシにおいては、円筒形状のブラシヘッドが、軸方向において混在する2種類の丸ブラシ素子の組合せによるハイブリッド構造とされている。第1の丸ブラシ素子は、歯ブラシの毛の材料からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から多数本の糸材が放射状に延出した硬質丸ブラシ素子であり、基本的に従来から使用されているもので、歯垢除去のためのブラッシング及びマッサージを担当する。第2の丸ブラシ素子は、歯ブラシの毛の材料より柔らかい軟質樹脂からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から周囲へ複数の面状突起が突出した軟質丸ブラシ素子であり、主に歯肉に対するマッサージを担当する。
硬質丸ブラシ素子の間に軟質丸ブラシ素子が介在することにより、硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部の軸方向における植毛密度が低下し、使用感、安全性が向上する。硬質丸ブラシ素子の放射状羽根部の間に、軟質丸ブラシ素子の環状ディスク部から周囲へ突出した面状突起群が介在するので、環状羽根部の軸方向における倒れが抑制されることにより、長期間安定したブラッシング能力が発揮される。軟質丸ブラシ素子の面状突起群により、歯肉部に対して優れたマッサージ効果が発揮される。軟質ブラシ素子の面状突起群も硬質ブラシ素子の放射状羽根部によって支持され、軸方向の倒れが阻止されるため、マッサージ効果が一層高くなる。硬質丸ブラシ素子と軟質丸ブラシ素子は、お互いに助けあって機能を高め合うのである。
硬質丸ブラシ素子は、特許文献1、2に記載されているものと基本的に同じであり、通常はナイロン糸から製造される。軟質丸ブラシ素子によって軸方向の植毛密度が調整されるので、ワッシャや一体ボス部は不要である。糸径は使用感、ブラッシング能力の点から通常の平歯ブラシ用の糸より細い0.09〜0.13mmが適当である。素子外径は、ブラシヘッドがハンドル軸方向で外径が一定のストレート形状の場合、口腔内における操作性等の点から12〜16mmが適当であり、より具体的には大人用としては15mm前後、子供用としては13mm前後が理想的である。硬質丸ブラシ素子の環状ディスク部の厚みは約0.5mmである。環状ディスク部を厚くするならば、硬質丸ブラシ素子を重ね合わせればよい。
軟質丸ブラシ素子は軟質樹脂を一体成形することにより製造することができる。樹脂の種類としては、歯間楊枝等に使用されるSEBS樹脂等が硬さなどの点からも適当であるが、食品衛生法で使用しても安全とされ、なおかつブラシ機能を発揮できる硬さをもつゴム系樹脂を含む軟質樹脂であれば、種類を問わず使用可能である。成型時に抗菌物質を混ぜ込むことにより、ブラシヘッドに抗菌機能を付与することができる。
軟質丸ブラシ素子の形状としては、環状ディスク部の全周から複数の舌片状の面状突起が周囲へ放射状に突出した花弁型が好ましい。面状突起の個数はマッサージ効果の点から2〜20が好ましい。軟質丸ブラシ素子の外径は、硬質丸ブラシ素子の径の0.6〜1倍が好ましく、0.7〜0.95倍が特に好ましい。軟質丸ブラシ素子の外径が硬質ブラシ素子の外径より大きくなると、硬質丸ブラシ素子の毛先が口腔内に接触しにくくなり、歯ブラシの本来機能であるブラッシング性能が低下する。軟質丸ブラシ素子の外径が硬質丸ブラシ素子の外径より極端に小さくなると、逆に軟質丸ブラシ素子の面状突起が口腔内に当たりにくくなり、マッサージ性能が低下する。ブラッシング中は硬質ブラシ素子の毛先が歯や歯茎等にあたって変形するので、軟質ブラシ素子の外径は硬質ブラシ素子の外径より若干小さい程度が、マッサージ性能を最大限発揮させる上で好適なのである。
軟質丸ブラシ素子における環状ディスク部の厚みは、自身の強度確保、植毛密度調整等の観点から1〜2mmが適当である。面状突起の厚みは自身の強度確保、ブラッシング性などの点から0.5〜1mmが適当である。
硬質丸ブラシ素子と軟質丸ブラシ素子のハンドル軸方向における配列形態としては、所定枚数の硬質丸ブラシ素子に1枚の割合で軟質丸ブラシ素子を規則的に配置するのが機能上、好ましい。具体的には、硬質丸ブラシ素子1〜3枚に対して軟質丸ブラシ素子1枚の割合が理想的である。そして、素子列の両端部には硬質丸ブラシ素子を配置するのが、デザイン的にも、また硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部の軸方向の広がりを抑える点からも好ましい。
ブラシヘッドを支える棒状ハンドルについては、ブラシヘッドに周方向の方向性がないので、丸棒のような周方向の方向性がないものを使用できるが、ブラシヘッドもハンドルも丸棒状であると、テーブル面などの平坦面上に置いたときに転がりやすい。そのため三角柱のような角柱状のものが望ましいが、後述する異形鍔を設けるならば、そのような制約は取り除かれる。
ハンドルの手で握られる部分より先端側には、鍔部を設けるのが好ましく、なかでも特に、複数の凸部が周囲へ突出した多角形を含む非円形の異形鍔がより好ましい。鍔部があると、ブラシヘッドから流れてくる唾液などが遮られ、手に付着しにくくなって、衛生的であるが、それだけでなく、円筒型歯ブラシをテーブル面などの平坦面上に置いたときにブラシヘッドがその平坦面に接触せず、この点からも衛生的である。そして、その鍔部として、前述した非円形の異形鍔を設ければ、ハンドルが丸棒のような転がりやすい形状の場合も、テーブル面などの平坦面上に置いても転がらず、安定性がよくなると同時に、ハンドル形状のデザイン上の自由度が増す。
ハンドルの材質は、他の一般の歯ブラシと同様にPP(ポリプロピレン)或いはPET(ポリエチレンテレフタレート)などである。
鍔部を有するハンドル形状は、ブラシヘッドの構造に関係なく、有効である。すなわち、硬質丸ブラシ素子の間に軟質丸ブラシ素子を有しないブラシヘッド、硬質丸ブラシ素子の間に軟質丸ブラシ素子以外のスペーサが介在するブラシヘッドなどにも、この鍔部付きのハンドル形状は有効である。
ブラシヘッドの形状の基本は、前述したハンドル軸方向で外径が一定のストレート形状であるが、ハンドル軸方向で外径が変化する非ストレート形状とすることも可能である。より具体的には、硬質丸ブラシ素子の外径が軟質丸ブラシ素子の外径と同等かそれ以上であるので、ブラシヘッドの形状は硬質丸ブラシ素子の外径により決定される。すなわち、ブラシヘッドの外径がハンドル軸方向の先端部から後端部へかけて変化するように、外径が段階的に変化する硬質丸ブラシ素子がハンドル軸方向に配列されることにより、非ストレート形状のブラシヘッドは構成される。
非ストレート形状としては、ハンドル軸方向の両端部から中央部にかけて外径が漸増する樽型、反対にハンドル軸方向の両端部から中央部にかけて外径が漸増する鼓型、ハンドル軸方向の先端部から後端部にかけて外径が漸増する円錐台形状などを挙げることができる。このなかでは樽型のブラシヘッドが特に好ましく、ストレート形状のブラシヘッドよりも、むしろ好ましい。
樽型のブラシヘッドの場合、ブラシヘッドの先端部が細くなっているので、口腔内の奥に入りやすく、奥歯をブラッシングしやすい。ハンドル軸方向で外周面が外周側へ凸の形状に湾曲し、前歯のカーブに沿うので、前歯の裏側をブラッシングしやすい。ブラシヘッドの大径部では、基本的に、軟質丸ブラシ素子の外径に対する硬質丸ブラシ素子の外径の径差が大きくなる。その結果、大径部では硬質丸ブラシ素子の放射状羽根部が、軟質丸ブラシ素子の外周よりも周囲へ長くより突出する。硬質丸ブラシ素子の放射状羽根部が長く突出するヘッド大径部では、歯と歯の隙間に毛先が入りやすくなる。また毛先が曲がりやすくなり、舌苔を除去する場合や歯茎に対する触感が向上する。
その一方で、硬質丸ブラシ素子の放射状羽根部が長く突出するヘッド大径部では、毛先が曲がりやすく、触感が向上する反面、ブラッシング効果が低下する。ブラシヘッドの軸方向でブラッシング効果を均一化するためには、ヘッド大径部に配置される硬質丸ブラシ素子の糸材径を、ヘッド小径部に配置される硬質丸ブラシ素子の糸材径より太くするのが有効である。すなわち、ブラシヘッドの太さ、これを決定する硬質丸ブラシ素子の外径に応じて、硬質丸ブラシ素子を構成する糸材の径を変化させるのである。
ブラシヘッドを非ストレート形状としたときのこれらの効果は、もっぱら硬質丸ブラシ素子の外径が変化することによるので、ブラシヘッドにおける軟質丸ブラシ素子の形状やその有無に関係なく得られ、更に言えば、硬質丸ブラシ素子間に介在するスペーサ類の形状や有無に関係なく得られる。したがって、硬質丸ブラシ素子間に軟質丸ブラシ素子を有さないブラシヘッドや硬質丸ブラシ素子間に他のスペーサ類を有するブラシヘッド、硬質丸ブラシ素子間に何らのスペーサ類も有しないブラシヘッドに対しても、このブラシヘッドの非ストレート形状は有効である。
本発明の円筒型歯ブラシは、ハンドル先端部に取付けられる円筒状のブラシヘッドが、硬質丸ブラシ素子と軟質丸ブラシ素子がハンドル軸方向で混在したハイブリッド構造であるため、ハンドル軸方向における植毛密度が適切で、使用感、ブラッシング性能に優れるだけでなく、マッサージ性能に優れ、諸性能の全てを高い次元で満足させることが可能な、非常に高機能、高品質な歯ブラシである。また、硬質丸ブラシ素子のみが並んだブラシヘッドと比べて乾燥しやすく、衛生的でもある。
本発明の第1実施形態を示す円筒型歯ブラシの斜視図である。
同円筒型歯ブラシの別の斜視図で、ハンドルを分解した状態を示す。
同円筒型歯ブラシの縦断側面である。
同円筒型歯ブラシの主要部であるブラシヘッドの拡大斜視図である。
同ブラシヘッドの側面図である。
同ブラシヘッドの縦断側面図である。
同ブラシヘッドの横断平面図で、図6中のA−A線矢示図である。
同ブラシヘッドの横断平面図で、図6中のB−B線矢示図である。
同円筒型歯ブラシに設けた鍔部の機能を示す斜視図である。
本発明の第2実施形態を示す円筒型歯ブラシの斜視図である。
同円筒型歯ブラシの主要部であるブラシヘッドの拡大斜視図である。
同ブラシヘッドの側面図である。
同ブラシヘッドの縦断側面図である。
同ブラシヘッドの横断平面図で、図13中のC−C線矢示図である。
同ブラシヘッドの横断平面図で、図13中のD−D線矢示図である。
本発明の第3実施形態を示す円筒型歯ブラシのブラシヘッドの拡大斜視図である。
本発明の第4実施形態を示す円筒型歯ブラシのブラシヘッドの拡大斜視図である。
本発明の更に別の実施形態を示す円筒型歯ブラシの先端部分の縦断側面図である。
本発明の更に別の実施形態を説明するための軸部材の側面図である。
ブラシヘッドに使用される軟質丸ブラシ素子の他の形状例を示す正面図である。
発明を実施するための形態
以下に本発明の実施形態を説明する。
第1実施形態の円筒型歯ブラシは、図1〜図3に示すように、片手で握り中心軸方向に往復操作する丸棒状のハンドル10と、ハンドル10の先端部に取付けられた円筒状のブラシヘッド20とからなる。ハンドル10は、手で握る本体部10Aと、その先端側に取り外し可能に取付けられるヘッド保持部10Bとからなる。
ハンドル10の本体部10Aは、基本的に、握りやすい太さの円柱形状であるが、握りやすさをより向上させるために、先端部を除く部分が、周方向に90度間隔で4面を面取りした異形の断面8角形とされている。本体部10Aの先端面からは、ヘッド保持部10Bとの連結のために、ねじ棒11が先端側へ突出している。
ハンドル10のヘッド保持部10Bは、ブラシヘッド20を保持する等径丸棒状の小径軸部12を先端部に有している。ブラシヘッド20を保持するために、小径軸部12の先端側は大径のかしめ部13であり、後端側は大径のストッパー14である。ヘッド保持部10Bの後端部は、後方に向かって漸次拡径する円錐形状であり、後端の最大径部には更に大形の鍔部15が設けられている。そして、ヘッド保持部10Bの後端面には、本体部10Aの先端面に設けられたねじ棒11がねじ込まれるねじ穴16が設けられており、このねじ込みにより、本体部10Aとヘッド保持部10Bが連結されて、ハンドル10は完成する。
完成したハンドル10は、手で握る部分より先端側(長さ方向中央部よりや先端側)に鍔部15を有するものとなる。鍔部15は、ここでは、外周側へ円弧状に突出した6個の突出部が周方向に60度間隔で並んだ6弁の花弁形であり、その外径は約19mmである。ちなみに、ハンドル10の鍔部15を除く部分の最大外径は、ここでは約14mmである。
ハンドル10の材質は、ここでは本体部10A、ヘッド保持部10Bともに、PP(ポリプロピレン)或いはPET(ポリエチレンテレフタレート)である。
ブラシヘッド20は、図4〜図8に示すように、硬質丸ブラシ素子20Aと軟質丸ブラシ素子20Bとを中心軸方向に所定パターンで配列したハイブリッド構造になっている。硬質丸ブラシ素子20Aは、特許文献1、2に記載の円筒型歯ブラシに使用されている丸ブラシ素子と基本的に同じであり、ハンドル10の小径軸部12が貫通する円形の貫通孔21を中心部に有すると共に、その周囲に溶着部である環状ディスク部22を有し、その更に外周側に、環状ディスク部22の外周面から周囲へ多数本の糸材が放射状に突出した環状の放射状羽根部23を有している。
硬質丸ブラシ素子20Aの材質は歯ブラシの毛に通常使用されるナイロンであり、より具体的には、例えば直径が0.09mmのナイロン糸を約800本束ねた糸束を周囲へ均等に開き、中心部を環状に溶着し溶着部の内側を円形に打ち抜いて糸束から分離することにより製造されている。硬質丸ブラシ素子20Aの外径は12〜16mm(子供用で12〜14mm、大人用で14〜16mm)、環状ディスク部22の外径は約7mm、厚みは約0.5mm、羽根部23における糸材の本数は約800本である。幼児用の場合は、硬質丸ブラシ素子20Aの外径は10mm前後が適当である。
一方、軟質丸ブラシ素子20Bは、硬質丸ブラシ素子20Aより柔らかい材質からなり、ここでは歯間楊枝等に使用されるSEBS樹脂の一体成形品である。軟質丸ブラシ素子20Bの形状は、ハンドル10の小径軸部12が貫通する円形の貫通孔24を中心部に有すると共に、その周囲に環状ディスク部25を有し、更にその外周側に、環状ディスク部25の外面周から放射状に突出した複数の舌片状の面状突起26を有している。複数の面状突起26は、ここでは12枚が周方向に等間隔で配列されており、全体として軟質丸ブラシ素子20Bは12弁の花弁状に形成されている。
軟質丸ブラシ素子20Bの外径は、硬質丸ブラシ素子20Aの外径より若干小さい12〜13mm(子供用、大人用ともに12〜13mm)とされている。比率で言えば、軟質丸ブラシ素子20Bの外径は硬質丸ブラシ素子20Aの外径の0.6〜1倍が好ましく、0.7〜0.95倍が特に好ましい。環状ディスク部25の直径は、硬質丸ブラシ素子20Aにおける環状ディスク部22の直径と同じであり、厚みは環状ディスク部22より厚い約1.4mmmmである。突起26の厚みは、適性な弾力性を得るために、環状ディスク部25の厚みより薄い0.7mmとされている。
そして、第1実施形態の円筒型歯ブラシでは、2枚重ねた硬質丸ブラシ素子20Aと1枚の軟質丸ブラシ素子20Bとを軸方向に交互に重ね、両端に軟質丸ブラシ素子20Bを配置することにより、ブラシヘッド20が構成されており、より詳しくは、ハンドル10の先端部に形成された小径軸部12の溶融によるかしめ部13とストッパー14との間に、前記硬質丸ブラシ素子20A及び前記軟質丸ブラシ素子20Bが外嵌され、軸方向に加圧された状態で固定されることにより、ブラシヘッド20は構成されハンドル10の先端部に取付けられている。
ここにおける硬質丸ブラシ素子20Aの枚数は2×9〜10枚、軟質ブラシ素子20Bの枚数は10〜11枚であり、ブラシヘッドの全長は18〜20mmである。
このように構成された第1実施形態の円筒型歯ブラシの使用方法及び機能について説明する。
円筒型歯ブラシのハンドル10を握り、ブラシヘッド20を口腔内に差し込んで、ハンドル10を軸方向に動かすことにより、歯磨きを行う。また、歯茎をマッサージする。更には舌の表面をブラッシングして舌苔を除去する。ブラシヘッド20は、2枚の硬質丸ブラシ素子20Aと1枚の軟質丸ブラシ素子20Bとが交互に配列されたハイブリッド構造になっており、硬質丸ブラシ素子20Aのみが植毛密度を支配するので、ワッシャや一体ボス部を用いていないにもかかわらず、軸方向における植毛密度が下がり、使用感が上ると共に、歯茎を傷つける危険も少ない。
これに加えて、ブラッシング中は硬質丸ブラシ素子20Aにおける放射状羽根部23の毛先が倒れるため、軟質丸ブラシ素子20Bの外径が硬質丸ブラシ素子20Aの外径より小さくても、ブラシヘッド20に組み込まれた軟質丸ブラシ素子20Bの面状突起26により歯茎が効果的にマッサージされる。このため、マッサージ性能が上がる。
また、硬質丸ブラシ素子20Aにおける放射状羽根部23の間に軟質丸ブラシ素子20Bの面状突起26が介在するので、放射状羽根部23の倒れ変形が抑制され、ブラシヘッド20が長持ちする。軟質丸ブラシ素子20Bの面状突起26も又、隣接する硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23に支持されるので、倒れが阻止され、高いマッサージ効果を長期間安定に発揮する。
ハンドル10に鍔部15があるので、歯磨き中に唾液などよる手の汚れがなく、衛生的であるだけでなく、図9に示すように、テーブル面などの上に円筒型歯ブラシを置いたとき、鍔部15によりハンドル10が傾くので、ブラシヘッド20が載置面から浮き上がり、テーブル面などに接触しないので、この点からも、鍔部15は衛生に寄与する。
更に、ハンドル10の鍔部15は、花弁形という非円形であるので、ハンドル10が全体として丸棒状であるにもかかわらず、載置面上で転がる危険がなく、テーブルの上などから不用意に落下するおそれがない。この点からも、鍔部15は衛生に寄与する。ハンドル10が鍔部15を有することの効果は、ハイブリッド構造のブラシヘッド20以外のブラシヘッドをもつ円筒型歯ブラシ全般に有効である。
また、ハンドル10の先端部であるブラシ保持部10Bが本体部10Aから取り外し可能であるので、ブラシ保持部10Bの付け替えによりブラシヘッド20の交換効果が可能であり、経済的、機能的である。
更に又、ブラシヘッド20の両端に軟質丸ブラシ素子20Bが配置されている。これにより先端側の硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23が先端側へ倒れて開くのが抑制される。また、後端側の硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23が後端側へ倒れて開くのが抑制される。更に意匠面でも特徴的なブラシヘッド20となる。
第2実施形態の円筒型歯ブラシは、図10〜図15に示すように、第1実施形態の円筒型歯ブラシとはブラシヘッド20が相違している。ブラシヘッド20以外の構造は、第1実施形態の円筒型歯ブラシと実質同一である。
第2実施形態の円筒型歯ブラシにおけるブラシヘッド20は、その外径が軸方向で変化する非ストレート形状であり、より詳しくは、軸方向の両端部から中央部にかけて外径が漸次増加し、外周面が軸方向で外側へ凸の形状に湾曲した、いわゆる樽型である。
ここで、注意すべきは、軟質丸ブラシ素子20Bの外径は一定であり、ここでは13mmであるということである。これに対し、硬質丸ブラシ素子20Aの外径のみが軸方向の両端部から中央部にかけて漸増しており、先端部で14mm、中央部で19mm、後端部で17mmというように変化している。更に具体的に説明すれば、硬質丸ブラシ素子20Aの環状ディスク部22と軟質丸ブラシ素子20Bの環状ディスク部25の外径は同じ7mm、軟質丸ブラシ素子20Bの外径も一定で13mmであり、硬質丸ブラシ素子20Aにおける放射状羽根分23の長さのみが変化することにより、硬質丸ブラシ素子20A、ひいてはブラシヘッド20の外径が変化している。
硬質丸ブラシ素子20の外径差は、最小径の硬質丸ブラシ素子20Aの外径に対する最大径の硬質丸ブラシ素子20Aの外径に対する比率で言えば、1.2〜1.5が適当である。この比率が小さいと、ストレート形状のブラシヘッド20との機能的な差異が明確でなく、大きすぎる場合は、ブラシヘッド20の形状が円筒形状から離れて円盤状に近づき、ブラシヘッド20としての本来機能が低下する。
そして、このブラシヘッド20では更に、両端部に配置される比較的小径の硬質丸ブラシ素子20Aでの糸径が0.12mm(又は0.09mm)、中央部に配置される比較的大径の硬質丸ブラシ素子20Aでの糸径が0.14mm(又は0.12mm)というように、ヘッド大径部での硬質丸ブラシ素子20Aの糸径が、ヘッド小径部での硬質丸ブラシ素子20Aの糸径より大きくされている。
第2実施形態の円筒型歯ブラシによれば、第1実施形態の円筒型歯ブラシで得られる効果(硬質丸ブラシ素子20Aと軟質丸ブラシ素子20Bとが混在するハイブリッド構造による効果等)に加えて、以下の新たな効果が得られる。
ブラシヘッド20が樽型で、先端部が細くなっているので、口腔内の奥に入りやすく、奥歯をブラッシングしやすい。外周面が前歯のカーブに沿うので、前歯の裏側をブラッシングしやすい。軸方向中間部の大径部で部分的に硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23が長く突出する。このため、ヘッドの軸方向中間部に形成された大径部では、毛先が長く、歯と歯の隙間に毛先が入りやすい。また長い毛先が曲がりやすく、舌苔を除去する場合や歯茎に対する触感が向上する。
その一方で、硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23が長いヘッド大径部では、毛先が曲がりやすく、触感が向上する反面、ブラッシング効果が低下する。しかるに、第2実施形態の円筒型歯ブラシでは、大径部に配置される硬質丸ブラシ素子20Aの糸材径を、小径部に配置される硬質丸ブラシ素子20Aの糸材径より太くしているので、軸方向でブラッシング効果が均一化される。また、また、ブラシヘッド20の軸方向における触感も均一化される。
第3実施形態の円筒型歯ブラシは、図16に示すように、ブラシヘッド20が軸方向の先端部から後端部へかけて徐々に外径が増大する円錐台形状に形成されている。この形状も又、第2実施形態の円筒型歯ブラシと同様、硬質丸ブラシ素子20Aの外径、特に放射状羽根部23の長さの変化によって実現されており、軟質丸ブラシ素子20Bの外径は一定である。
この円筒型歯ブラシは、ブラシヘッド20が、硬質丸ブラシ素子20Aと軟質丸ブラシ素子20Bが混在したハイブリッド構造であることによる効果に加えて、先細りなので、奥歯を磨き安く、また毛先の長い後端部により優れたマッサージ効果を示す。
第4実施形態の円筒型歯ブラシは、図17に示すように、ブラシヘッド20が軸方向の中央部から両端部へかけて外径が徐々に外径が増大する鼓型に形成されている。この形状も又、第2実施形態の円筒型歯ブラシ及び第3実施形態の円筒型歯ブラシと同様、硬質丸ブラシ素子20Aの外径、特に放射状羽根部23の長さの変化によって実現されており、軟質丸ブラシ素子20Bの外径は一定である。
このような非ストレート形状のブラシヘッド20も、本発明では可能である。
第2〜4実施形態の円筒型歯ブラシでは、非ストレート形状のブラシヘッド20における軟質丸ブラシ素子20Bの外径が一定であるが、その外径を、例えば硬質丸ブラシ素子20Aの外径変化に対応させて変化させることもできる。その場合も、ブラシヘッド20の小径部より大径部の方で、硬質丸ブラシ素子20Aと軟質丸ブラシ素子20Bとの径差が大きくなるように留意することが望まれる。
いずれにしても、ブラシヘッド20が非ストレート形状であることの効果は、もっぱら硬質丸ブラシ素子20Aの外径変化によるので、軟質丸ブラシ素子20Bの形状に関係なく、またその存在に関係なく得ることができ、更には軟質丸ブラシ素子20B以外のスペーサーが存在している場合も得ることができる。すなわち、ブラシヘッド20が非ストレート形状であることの効果は、ハンドル10の鍔部15による効果と同様、ハイブリッド構造のブラシヘッド20以外のブラシヘッドをもつ円筒型歯ブラシ全般に有効ということである。
ハンドル10の先端部にブラシヘッド20を構成する方法として、第1〜4実施形態の円筒型歯ブラシでは、ハンドル10の小径軸部12に先端側から所定枚数の硬質丸ブラシ素子20A及び軟質丸ブラシ素子20Bを所定順序で嵌め込み、その後で小径軸部12の先端部を加熱軟化させてかしめ部13を形成することで、小径軸部12のかしめ部13とストッパー14間にブラシヘッド20を保持固定しているが、図18に示すように、先端部に予め大径のストッパー17が形成された軸体10Cに後端側から所定枚数の硬質丸ブラシ素子20A及び軟質丸ブラシ素子20Bを所定順序で嵌め込んだ後、その軸体10Cの後端部を、ハンドル10の先端面に設けられた挿入孔18に差し込み、溶着機で両者を固定することでも、ハンドル10の先端部にブラシヘッド20を保持固定することができる。
軸体10Cの固定法としては、図19に示すように、そのテーパー状の後端部外周面に設けた環状でくさび形の嵌合部19を使用することも可能である。
ブラシヘッド20に使用される軟質丸ブラシ素子20Bは、上記実施形態の円筒型歯ブラシでは環状ディスク部25から複数枚の舌片状の面状突起26が放射状に突出する花弁状としたが、図20に示すように、幅が広い扇形の面状突起26を周方向に等角配置したものでもよく(図20では2枚を対角位置に配置)、特にその形状を問うものではない。幅広の面状突起26を周方向に等角配置したものは、軸方向に並ぶ軟質丸ブラシ素子20Bの間で面状突起26が重ならないように、位相を違えて配置するのがよい。
符号の説明
10 ハンドル
10A 本体部
10B ヘッド保持部
15 鍔部
20 ブラシヘッド
20A 硬質丸ブラシ素子
20B 軟質丸ブラシ素子
21,24 貫通孔
22,25 環状ディスク部
23 放射状羽根部
26 面状突起
【0002】
)が一体的に形成されている。いずれの円筒型歯ブラシにおいても、ワッシャや環状突起(ボス部)の介在により、丸ブラシ素子の配列ピッチが広がり、ハンドル軸方向における植毛密度が小さくなることから、使用感、安全性が向上している。
[0006]
しかしながら、いずれの円筒型歯ブラシにおいても、隣接する丸ブラシ素子の放射状羽根部間に隙間ができるため、放射状羽根部が軸方向に倒れやすく、比較的短い使用期間でブラッシングによる歯垢除去効果やマッサージ効果が低下する問題がある。また、ハンドル軸方向における植毛密度が低下した分、マッサージ効果は低下する。
先行技術文献
[0007]
特許文献1:特許第3646118号公報
特許文献2:特許第4000355号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0008]
本発明の目的は、口腔内のブラッシング効果を低下させることなく歯肉部に対するマッサージ効果を向上させることができる円筒型歯ブラシを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009]
上記目的を達成するために、本発明の円筒型歯ブラシは、片手で握り中心軸方向に往復移動させることができる棒状ハンドルと、棒状ハンドの先端部に同心状に取付けられた円筒形状のブラシヘッドとを備えている。そして前記ブラシヘッドは、歯ブラシの毛の材料からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から多数本の糸材が放射状に延出した硬質丸ブラシ素子と、歯ブラシの毛の材料より柔らかい軟質樹脂からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から周囲へ複数の面状突起が突出した軟質丸ブラシ素子とが、ハンドル軸方向において混在したハイブリッド構造を採用している。そして更に、軟質丸ブラシ素子は、1〜3個の硬質丸ブラシ素子に1個の割合で規則的に配置されると共に、隣接する硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部のブラシヘッド軸方向の倒れが抑制されるように、環状ディスク部の全周から複数本の舌片状の面状突起が周囲へ放射状に突出した花弁型であり、且つ素子列の両端部は軟質丸ブラシ素子である。
[0010]
本発明の円筒型歯ブラシにおいては、円筒形状のブラシヘッドが、軸方向におい
【0003】
て混在する2種類の丸ブラシ素子の組合せによるハイブリッド構造とされている。第1の丸ブラシ素子は、歯ブラシの毛の材料からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から多数本の糸材が放射状に延出した硬質丸ブラシ素子であり、基本的に従来から使用されているもので、歯垢除去のためのブラッシング及びマッサージを担当する。第2の丸ブラシ素子は、歯ブラシの毛の材料より柔らかい軟質樹脂からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から周囲へ複数の面状突起が突出した軟質丸ブラシ素子であり、主に歯肉に対するマッサージを担当する。
[0011]
より詳しくは、硬質丸ブラシ素子群中に軟質丸ブラシ素子が規則的に介在することにより、硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部の軸方向における植毛密度が低下し、使用感、安全性が向上する。硬質丸ブラシ素子の放射状羽根部の間に、軟質丸ブラシ素子の環状ディスク部から周囲へ突出した面状突起群が介在するので、環状羽根部の軸方向における倒れが抑制されることにより、長期間安定したブラッシング能力が発揮される。軟質丸ブラシ素子の面状突起群により、歯肉部に対して優れたマッサージ効果が発揮される。軟質ブラシ素子の面状突起群も硬質ブラシ素子の放射状羽根部によって支持され、軸方向の倒れが阻止されるため、マッサージ効果が一層高くなる。硬質丸ブラシ素子と軟質丸ブラシ素子は、お互いに助けあって機能を高め合うのである。
[0012]
硬質丸ブラシ素子は、特許文献1、2に記載されているものと基本的に同じであり、通常はナイロン糸から製造される。軟質丸ブラシ素子によって軸方向の植毛密度が調整されるので、ワッシャや一体ボス部は不要である。糸径は使用感、ブラッシング能力の点から通常の平歯ブラシ用の糸より細い0.09〜0.13mmが適当である。素子外径は、ブラシヘッドがハンドル軸方向で外径が一定のストレート形状の場合、口腔内における操作性等の点から12〜16mmが適当であり、より具体的には大人用としては15mm前後、子供用としては13mm前後が理想的である。硬質丸ブラシ素子の環状ディスク部の厚みは約0.5mmである。環状ディスク部を厚くするならば、硬質丸ブラシ素子を重ね合わせればよい。
[0013]
軟質丸ブラシ素子は軟質樹脂を一体成形することにより製造することができる。樹脂の種類としては、歯間楊枝等に使用されるSEBS樹脂等が硬さなどの点からも適
【0004】
当であるが、食品衛生法で使用しても安全とされ、なおかつブラシ機能を発揮できる硬さをもつゴム系樹脂を含む軟質樹脂であれば、種類を問わず使用可能である。成型時に抗菌物質を混ぜ込むことにより、ブラシヘッドに抗菌機能を付与することができる。
[0014]
軟質丸ブラシ素子の形状としては、マッサージ効果の点および隣接する硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部のブラシヘッド軸方向の倒れを抑制する点から、環状ディスク部の全周から複数の舌片状の面状突起が周囲へ放射状に突出した花弁型が採用される。花弁型の軟質丸ブラシ素子における面状突起の個数はマッサージ効果の点から20以下が好ましい。軟質丸ブラシ素子の外径は、硬質丸ブラシ素子の径の0.6〜1倍が好ましく、0.7〜0.95倍が特に好ましい。軟質丸ブラシ素子の外径が硬質ブラシ素子の外径より大きくなると、硬質丸ブラシ素子の毛先が口腔内に接触しにくくなり、歯ブラシの本来機能であるブラッシング性能が低下する。軟質丸ブラシ素子の外径が硬質丸ブラシ素子の外径より極端に小さくなると、逆に軟質丸ブラシ素子の面状突起が口腔内に当たりにくくなり、マッサージ性能が低下する。ブラッシング中は硬質ブラシ素子の毛先が歯や歯茎等にあたって変形するので、軟質ブラシ素子の外径は硬質ブラシ素子の外径より若干小さい程度が、マッサージ性能を最大限発揮させる上で好適なのである。
[0015]
軟質丸ブラシ素子における環状ディスク部の厚みは、自身の強度確保、植毛密度調整等の観点から1〜2mmが適当である。面状突起の厚みは自身の強度確保、ブラッシング性などの点から0.5〜1mmが適当である。
[0016]
硬質丸ブラシ素子と軟質丸ブラシ素子のハンドル軸方向における配列形態としては、所定枚数の硬質丸ブラシ素子に1枚の割合で軟質丸ブラシ素子を規則的に配置するのが機能上、好ましい。具体的には、硬質丸ブラシ素子1〜3枚に対して軟質丸ブラシ素子1枚の割合が理想的である。そして、素子列の両端部には軟質丸ブラシ素子を配置するのが、デザイン的にも、また硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部の軸方向の広がりを抑える点からも好ましい。
[0017]
ブラシヘッドを支える棒状ハンドルについては、ブラシヘッドに周方向の方向性がないので、丸棒のような周方向の方向性がないものを使用できるが、ブラシヘッドもハンドルも丸棒状であると、テーブル面などの平坦面上に置いたときに転がりやすい。そのため三角柱のような角柱状のものが望ましいが、後述する異形鍔を設けるならば
【0014】
、溶着機で両者を固定することでも、ハンドル10の先端部にブラシヘッド20を保持固定することができる。
[0063]
軸体10Cの固定法としては、図19に示すように、そのテーパー状の後端部外周面に設けた環状でくさび形の嵌合部19を使用することも可能である。
[0064]
ブラシヘッド20に使用される軟質丸ブラシ素子20Bは、上記実施形態の円筒型歯ブラシでは環状ディスク部25から複数枚の舌片状の面状突起26が放射状に突出する花弁状としたので、図20に示すように、幅が広い扇形の面状突起26を周方向に等角配置したものは除外される(図20では2枚を対角位置に配置)。幅広の面状突起26を周方向に等角配置したものは、軸方向に並ぶ軟質丸ブラシ素子20Bの間で面状突起26が重ならないように、位相を違えて配置するのがよい。
符号の説明
[0065]
10 ハンドル
10A 本体部
10B ヘッド保持部
15 鍔部
20 ブラシヘッド
20A 硬質丸ブラシ素子
20B 軟質丸ブラシ素子
21,24 貫通孔
22,25 環状ディスク部
23 放射状羽根部
26 面状突起
本発明は、片手で握り中心軸方向に往復移動させることができる棒状ハンドルの先端部に円筒形状で且つ放射状のブラシヘッドを同心状に装備した円筒型歯ブラシに関する。
近年、歯ブラシの一種として、片手で握り中心軸方向に往復移動させることができる棒状ハンドルの先端部に円筒形状のブラシヘッドを同心状に取付けた円筒型歯ブラシが特許文献1、2により提示され、市場でも注目を集めている。ここにおける円筒形状のブラシヘッドは、歯ブラシのブラシ部を形成する糸材(通常はナイロン糸)の束から製造された放射状の丸ブラシ素子を中心軸方向に重ねて形成されている。
個々の丸ブラシ素子は、糸材の束を周囲に開いて中心部を環状に溶着し、溶着部の内側を打ち抜いて糸束から分離することにより連続的に製造される。このため、その形状は、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に、貫通孔周囲の溶着部である環状ディスク部の周囲に、その周囲へ多数本の糸材が放射状に延出して形成された放射状羽根部を有する、中心軸方向の厚みが極端に薄い丸ブラシ形状となっている。
この円筒型歯ブラシは、ブラシハンドルの周方向において方向性がなく、老人や子供でも非常に扱いやすいという特徴がある。また、口腔内における歯茎のマッサージや舌苔の除去にも非常に適する。更に、上下の奥歯を同時にブラッシングすることもできる。しかしながら、この歯ブラシは、これらの利点の一方で、ブラシヘッドにおける植毛密度、とりわけハンドルの中心軸方向における植毛密度が大きく、このため使用感がよくないばかりか、歯肉を傷つけるおそれがあるという本質的欠点を有している。
この欠点を解消するために、特許文献1により提示された円筒型歯ブラシでは、丸ブラシ素子とワッシャが交互に配列されている。また、特許文献2により提示された円筒型歯ブラシでは、個々の丸ブラシ素子における環状ディスク部に環状突起(ボス部)が一体的に形成されている。いずれの円筒型歯ブラシにおいても、ワッシャや環状突起(ボス部)の介在により、丸ブラシ素子の配列ピッチが広がり、ハンドル軸方向における植毛密度が小さくなることから、使用感、安全性が向上している。
しかしながら、いずれの円筒型歯ブラシにおいても、隣接する丸ブラシ素子の放射状羽根部間に隙間ができるため、放射状羽根部が軸方向に倒れやすく、比較的短い使用期間でブラッシングによる歯垢除去効果やマッサージ効果が低下する問題がある。また、ハンドル軸方向における植毛密度が低下した分、マッサージ効果は低下する。
特許第3646118号公報
特許第4000355号公報
本発明の目的は、口腔内のブラッシング効果を低下させることなく歯肉部に対するマッサージ効果を向上させることができる円筒型歯ブラシを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の円筒型歯ブラシは、片手で握り中心軸方向に往復移動させることができる棒状ハンドルと、棒状ハンドの先端部に同心状に取付けられた円筒形状のブラシヘッドとを備えている。そして前記ブラシヘッドは、歯ブラシの毛の材料からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から多数本の糸材が放射状に延出した硬質丸ブラシ素子と、歯ブラシの毛の材料より柔らかい軟質樹脂からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から周囲へ複数の面状突起が突出した軟質丸ブラシ素子とが、ハンドル軸方向において混在したハイブリッド構造を採用している。そして更に、軟質丸ブラシ素子は、1〜3個の硬質丸ブラシ素子に1個の割合で規則的に配置されると共に、隣接する硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部のブラシヘッド軸方向の倒れが抑制されるように、環状ディスク部の全周から複数本の舌片状の面状突起が周囲へ放射状に突出した花弁型であり、且つ素子列の両端部は軟質丸ブラシ素子である。
本発明の円筒型歯ブラシにおいては、円筒形状のブラシヘッドが、軸方向において混在する2種類の丸ブラシ素子の組合せによるハイブリッド構造とされている。第1の丸ブラシ素子は、歯ブラシの毛の材料からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から多数本の糸材が放射状に延出した硬質丸ブラシ素子であり、基本的に従来から使用されているもので、歯垢除去のためのブラッシング及びマッサージを担当する。第2の丸ブラシ素子は、歯ブラシの毛の材料より柔らかい軟質樹脂からなり、ハンドル先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に貫通孔の周囲の環状ディスク部から周囲へ複数の面状突起が突出した軟質丸ブラシ素子であり、主に歯肉に対するマッサージを担当する。
より詳しくは、硬質丸ブラシ素子群中に軟質丸ブラシ素子が規則的に介在することにより、硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部の軸方向における植毛密度が低下し、使用感、安全性が向上する。硬質丸ブラシ素子の放射状羽根部の間に、軟質丸ブラシ素子の環状ディスク部から周囲へ突出した面状突起群が介在するので、環状羽根部の軸方向における倒れが抑制されることにより、長期間安定したブラッシング能力が発揮される。軟質丸ブラシ素子の面状突起群により、歯肉部に対して優れたマッサージ効果が発揮される。軟質ブラシ素子の面状突起群も硬質ブラシ素子の放射状羽根部によって支持され、軸方向の倒れが阻止されるため、マッサージ効果が一層高くなる。硬質丸ブラシ素子と軟質丸ブラシ素子は、お互いに助けあって機能を高め合うのである。
硬質丸ブラシ素子は、特許文献1、2に記載されているものと基本的に同じであり、通常はナイロン糸から製造される。軟質丸ブラシ素子によって軸方向の植毛密度が調整されるので、ワッシャや一体ボス部は不要である。糸径は使用感、ブラッシング能力の点から通常の平歯ブラシ用の糸より細い0.09〜0.13mmが適当である。素子外径は、ブラシヘッドがハンドル軸方向で外径が一定のストレート形状の場合、口腔内における操作性等の点から12〜16mmが適当であり、より具体的には大人用としては15mm前後、子供用としては13mm前後が理想的である。硬質丸ブラシ素子の環状ディスク部の厚みは約0.5mmである。環状ディスク部を厚くするならば、硬質丸ブラシ素子を重ね合わせればよい。
軟質丸ブラシ素子は軟質樹脂を一体成形することにより製造することができる。樹脂の種類としては、歯間楊枝等に使用されるSEBS樹脂等が硬さなどの点からも適当であるが、食品衛生法で使用しても安全とされ、なおかつブラシ機能を発揮できる硬さをもつゴム系樹脂を含む軟質樹脂であれば、種類を問わず使用可能である。成型時に抗菌物質を混ぜ込むことにより、ブラシヘッドに抗菌機能を付与することができる。
軟質丸ブラシ素子の形状としては、マッサージ効果の点および隣接する硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部のブラシヘッド軸方向の倒れを抑制する点から、環状ディスク部の全周から複数の舌片状の面状突起が周囲へ放射状に突出した花弁型が採用される。花弁型の軟質丸ブラシ素子における面状突起の個数はマッサージ効果の点から20以下が好ましい。軟質丸ブラシ素子の外径は、硬質丸ブラシ素子の径の0.6〜1倍が好ましく、0.7〜0.95倍が特に好ましい。軟質丸ブラシ素子の外径が硬質ブラシ素子の外径より大きくなると、硬質丸ブラシ素子の毛先が口腔内に接触しにくくなり、歯ブラシの本来機能であるブラッシング性能が低下する。軟質丸ブラシ素子の外径が硬質丸ブラシ素子の外径より極端に小さくなると、逆に軟質丸ブラシ素子の面状突起が口腔内に当たりにくくなり、マッサージ性能が低下する。ブラッシング中は硬質ブラシ素子の毛先が歯や歯茎等にあたって変形するので、軟質ブラシ素子の外径は硬質ブラシ素子の外径より若干小さい程度が、マッサージ性能を最大限発揮させる上で好適なのである。
軟質丸ブラシ素子における環状ディスク部の厚みは、自身の強度確保、植毛密度調整等の観点から1〜2mmが適当である。面状突起の厚みは自身の強度確保、ブラッシング性などの点から0.5〜1mmが適当である。
硬質丸ブラシ素子と軟質丸ブラシ素子のハンドル軸方向における配列形態としては、所定枚数の硬質丸ブラシ素子に1枚の割合で軟質丸ブラシ素子を規則的に配置するのが機能上、好ましい。具体的には、硬質丸ブラシ素子1〜3枚に対して軟質丸ブラシ素子1枚の割合が理想的である。そして、素子列の両端部には軟質丸ブラシ素子を配置するのが、デザイン的にも、また硬質丸ブラシ素子における放射状羽根部の軸方向の広がりを抑える点からも好ましい。
ブラシヘッドを支える棒状ハンドルについては、ブラシヘッドに周方向の方向性がないので、丸棒のような周方向の方向性がないものを使用できるが、ブラシヘッドもハンドルも丸棒状であると、テーブル面などの平坦面上に置いたときに転がりやすい。そのため三角柱のような角柱状のものが望ましいが、後述する異形鍔を設けるならば、そのような制約は取り除かれる。
ハンドルの手で握られる部分より先端側には、鍔部を設けるのが好ましく、なかでも特に、複数の凸部が周囲へ突出した多角形を含む非円形の異形鍔がより好ましい。鍔部があると、ブラシヘッドから流れてくる唾液などが遮られ、手に付着しにくくなって、衛生的であるが、それだけでなく、円筒型歯ブラシをテーブル面などの平坦面上に置いたときにブラシヘッドがその平坦面に接触せず、この点からも衛生的である。そして、その鍔部として、前述した非円形の異形鍔を設ければ、ハンドルが丸棒のような転がりやすい形状の場合も、テーブル面などの平坦面上に置いても転がらず、安定性がよくなると同時に、ハンドル形状のデザイン上の自由度が増す。
ハンドルの材質は、他の一般の歯ブラシと同様にPP(ポリプロピレン)或いはPET(ポリエチレンテレフタレート)などである。
鍔部を有するハンドル形状は、ブラシヘッドの構造に関係なく、有効である。すなわち、硬質丸ブラシ素子の間に軟質丸ブラシ素子を有しないブラシヘッド、硬質丸ブラシ素子の間に軟質丸ブラシ素子以外のスペーサが介在するブラシヘッドなどにも、この鍔部付きのハンドル形状は有効である。
ブラシヘッドの形状の基本は、前述したハンドル軸方向で外径が一定のストレート形状であるが、ハンドル軸方向で外径が変化する非ストレート形状とすることも可能である。より具体的には、硬質丸ブラシ素子の外径が軟質丸ブラシ素子の外径と同等かそれ以上であるので、ブラシヘッドの形状は硬質丸ブラシ素子の外径により決定される。すなわち、ブラシヘッドの外径がハンドル軸方向の先端部から後端部へかけて変化するように、外径が段階的に変化する硬質丸ブラシ素子がハンドル軸方向に配列されることにより、非ストレート形状のブラシヘッドは構成される。
非ストレート形状としては、ハンドル軸方向の両端部から中央部にかけて外径が漸増する樽型、反対にハンドル軸方向の両端部から中央部にかけて外径が漸増する鼓型、ハンドル軸方向の先端部から後端部にかけて外径が漸増する円錐台形状などを挙げることができる。このなかでは樽型のブラシヘッドが特に好ましく、ストレート形状のブラシヘッドよりも、むしろ好ましい。
樽型のブラシヘッドの場合、ブラシヘッドの先端部が細くなっているので、口腔内の奥に入りやすく、奥歯をブラッシングしやすい。ハンドル軸方向で外周面が外周側へ凸の形状に湾曲し、前歯のカーブに沿うので、前歯の裏側をブラッシングしやすい。ブラシヘッドの大径部では、基本的に、軟質丸ブラシ素子の外径に対する硬質丸ブラシ素子の外径の径差が大きくなる。その結果、大径部では硬質丸ブラシ素子の放射状羽根部が、軟質丸ブラシ素子の外周よりも周囲へ長くより突出する。硬質丸ブラシ素子の放射状羽根部が長く突出するヘッド大径部では、歯と歯の隙間に毛先が入りやすくなる。また毛先が曲がりやすくなり、舌苔を除去する場合や歯茎に対する触感が向上する。
その一方で、硬質丸ブラシ素子の放射状羽根部が長く突出するヘッド大径部では、毛先が曲がりやすく、触感が向上する反面、ブラッシング効果が低下する。ブラシヘッドの軸方向でブラッシング効果を均一化するためには、ヘッド大径部に配置される硬質丸ブラシ素子の糸材径を、ヘッド小径部に配置される硬質丸ブラシ素子の糸材径より太くするのが有効である。すなわち、ブラシヘッドの太さ、これを決定する硬質丸ブラシ素子の外径に応じて、硬質丸ブラシ素子を構成する糸材の径を変化させるのである。
ブラシヘッドを非ストレート形状としたときのこれらの効果は、もっぱら硬質丸ブラシ素子の外径が変化することによるので、ブラシヘッドにおける軟質丸ブラシ素子の形状やその有無に関係なく得られ、更に言えば、硬質丸ブラシ素子間に介在するスペーサ類の形状や有無に関係なく得られる。したがって、硬質丸ブラシ素子間に軟質丸ブラシ素子を有さないブラシヘッドや硬質丸ブラシ素子間に他のスペーサ類を有するブラシヘッド、硬質丸ブラシ素子間に何らのスペーサ類も有しないブラシヘッドに対しても、このブラシヘッドの非ストレート形状は有効である。
本発明の円筒型歯ブラシは、ハンドル先端部に取付けられる円筒状のブラシヘッドが、硬質丸ブラシ素子と軟質丸ブラシ素子がハンドル軸方向で混在したハイブリッド構造であるため、ハンドル軸方向における植毛密度が適切で、使用感、ブラッシング性能に優れるだけでなく、マッサージ性能に優れ、諸性能の全てを高い次元で満足させることが可能な、非常に高機能、高品質な歯ブラシである。また、硬質丸ブラシ素子のみが並んだブラシヘッドと比べて乾燥しやすく、衛生的でもある。
本発明の第1実施形態を示す円筒型歯ブラシの斜視図である。
同円筒型歯ブラシの別の斜視図で、ハンドルを分解した状態を示す。
同円筒型歯ブラシの縦断側面である。
同円筒型歯ブラシの主要部であるブラシヘッドの拡大斜視図である。
同ブラシヘッドの側面図である。
同ブラシヘッドの縦断側面図である。
同ブラシヘッドの横断平面図で、図6中のA−A線矢示図である。
同ブラシヘッドの横断平面図で、図6中のB−B線矢示図である。
同円筒型歯ブラシに設けた鍔部の機能を示す斜視図である。
本発明の第2実施形態を示す円筒型歯ブラシの斜視図である。
同円筒型歯ブラシの主要部であるブラシヘッドの拡大斜視図である。
同ブラシヘッドの側面図である。
同ブラシヘッドの縦断側面図である。
同ブラシヘッドの横断平面図で、図13中のC−C線矢示図である。
同ブラシヘッドの横断平面図で、図13中のD−D線矢示図である。
本発明の第3実施形態を示す円筒型歯ブラシのブラシヘッドの拡大斜視図である。
本発明の第4実施形態を示す円筒型歯ブラシのブラシヘッドの拡大斜視図である。
本発明の更に別の実施形態を示す円筒型歯ブラシの先端部分の縦断側面図である。
本発明の更に別の実施形態を説明するための軸部材の側面図である。
ブラシヘッドに使用される軟質丸ブラシ素子の他の形状例を示す正面図である。
以下に本発明の実施形態を説明する。
第1実施形態の円筒型歯ブラシは、図1〜図3に示すように、片手で握り中心軸方向に往復操作する丸棒状のハンドル10と、ハンドル10の先端部に取付けられた円筒状のブラシヘッド20とからなる。ハンドル10は、手で握る本体部10Aと、その先端側に取り外し可能に取付けられるヘッド保持部10Bとからなる。
ハンドル10の本体部10Aは、基本的に、握りやすい太さの円柱形状であるが、握りやすさをより向上させるために、先端部を除く部分が、周方向に90度間隔で4面を面取りした異形の断面8角形とされている。本体部10Aの先端面からは、ヘッド保持部10Bとの連結のために、ねじ棒11が先端側へ突出している。
ハンドル10のヘッド保持部10Bは、ブラシヘッド20を保持する等径丸棒状の小径軸部12を先端部に有している。ブラシヘッド20を保持するために、小径軸部12の先端側は大径のかしめ部13であり、後端側は大径のストッパー14である。ヘッド保持部10Bの後端部は、後方に向かって漸次拡径する円錐形状であり、後端の最大径部には更に大形の鍔部15が設けられている。そして、ヘッド保持部10Bの後端面には、本体部10Aの先端面に設けられたねじ棒11がねじ込まれるねじ穴16が設けられており、このねじ込みにより、本体部10Aとヘッド保持部10Bが連結されて、ハンドル10は完成する。
完成したハンドル10は、手で握る部分より先端側(長さ方向中央部よりや先端側)に鍔部15を有するものとなる。鍔部15は、ここでは、外周側へ円弧状に突出した6個の突出部が周方向に60度間隔で並んだ6弁の花弁形であり、その外径は約19mmである。ちなみに、ハンドル10の鍔部15を除く部分の最大外径は、ここでは約14mmである。
ハンドル10の材質は、ここでは本体部10A、ヘッド保持部10Bともに、PP(ポリプロピレン)或いはPET(ポリエチレンテレフタレート)である。
ブラシヘッド20は、図4〜図8に示すように、硬質丸ブラシ素子20Aと軟質丸ブラシ素子20Bとを中心軸方向に所定パターンで配列したハイブリッド構造になっている。硬質丸ブラシ素子20Aは、特許文献1、2に記載の円筒型歯ブラシに使用されている丸ブラシ素子と基本的に同じであり、ハンドル10の小径軸部12が貫通する円形の貫通孔21を中心部に有すると共に、その周囲に溶着部である環状ディスク部22を有し、その更に外周側に、環状ディスク部22の外周面から周囲へ多数本の糸材が放射状に突出した環状の放射状羽根部23を有している。
硬質丸ブラシ素子20Aの材質は歯ブラシの毛に通常使用されるナイロンであり、より具体的には、例えば直径が0.09mmのナイロン糸を約800本束ねた糸束を周囲へ均等に開き、中心部を環状に溶着し溶着部の内側を円形に打ち抜いて糸束から分離することにより製造されている。硬質丸ブラシ素子20Aの外径は12〜16mm(子供用で12〜14mm、大人用で14〜16mm)、環状ディスク部22の外径は約7mm、厚みは約0.5mm、羽根部23における糸材の本数は約800本である。幼児用の場合は、硬質丸ブラシ素子20Aの外径は10mm前後が適当である。
一方、軟質丸ブラシ素子20Bは、硬質丸ブラシ素子20Aより柔らかい材質からなり、ここでは歯間楊枝等に使用されるSEBS樹脂の一体成形品である。軟質丸ブラシ素子20Bの形状は、ハンドル10の小径軸部12が貫通する円形の貫通孔24を中心部に有すると共に、その周囲に環状ディスク部25を有し、更にその外周側に、環状ディスク部25の外面周から放射状に突出した複数の舌片状の面状突起26を有している。複数の面状突起26は、ここでは12枚が周方向に等間隔で配列されており、全体として軟質丸ブラシ素子20Bは12弁の花弁状に形成されている。
軟質丸ブラシ素子20Bの外径は、硬質丸ブラシ素子20Aの外径より若干小さい12〜13mm(子供用、大人用ともに12〜13mm)とされている。比率で言えば、軟質丸ブラシ素子20Bの外径は硬質丸ブラシ素子20Aの外径の0.6〜1倍が好ましく、0.7〜0.95倍が特に好ましい。環状ディスク部25の直径は、硬質丸ブラシ素子20Aにおける環状ディスク部22の直径と同じであり、厚みは環状ディスク部22より厚い約1.4mmmmである。突起26の厚みは、適性な弾力性を得るために、環状ディスク部25の厚みより薄い0.7mmとされている。
そして、第1実施形態の円筒型歯ブラシでは、2枚重ねた硬質丸ブラシ素子20Aと1枚の軟質丸ブラシ素子20Bとを軸方向に交互に重ね、両端に軟質丸ブラシ素子20Bを配置することにより、ブラシヘッド20が構成されており、より詳しくは、ハンドル10の先端部に形成された小径軸部12の溶融によるかしめ部13とストッパー14との間に、前記硬質丸ブラシ素子20A及び前記軟質丸ブラシ素子20Bが外嵌され、軸方向に加圧された状態で固定されることにより、ブラシヘッド20は構成されハンドル10の先端部に取付けられている。
ここにおける硬質丸ブラシ素子20Aの枚数は2×9〜10枚、軟質ブラシ素子20Bの枚数は10〜11枚であり、ブラシヘッドの全長は18〜20mmである。
このように構成された第1実施形態の円筒型歯ブラシの使用方法及び機能について説明する。
円筒型歯ブラシのハンドル10を握り、ブラシヘッド20を口腔内に差し込んで、ハンドル10を軸方向に動かすことにより、歯磨きを行う。また、歯茎をマッサージする。更には舌の表面をブラッシングして舌苔を除去する。ブラシヘッド20は、2枚の硬質丸ブラシ素子20Aと1枚の軟質丸ブラシ素子20Bとが交互に配列されたハイブリッド構造になっており、硬質丸ブラシ素子20Aのみが植毛密度を支配するので、ワッシャや一体ボス部を用いていないにもかかわらず、軸方向における植毛密度が下がり、使用感が上ると共に、歯茎を傷つける危険も少ない。
これに加えて、ブラッシング中は硬質丸ブラシ素子20Aにおける放射状羽根部23の毛先が倒れるため、軟質丸ブラシ素子20Bの外径が硬質丸ブラシ素子20Aの外径より小さくても、ブラシヘッド20に組み込まれた軟質丸ブラシ素子20Bの面状突起26により歯茎が効果的にマッサージされる。このため、マッサージ性能が上がる。
また、硬質丸ブラシ素子20Aにおける放射状羽根部23の間に軟質丸ブラシ素子20Bの面状突起26が介在するので、放射状羽根部23の倒れ変形が抑制され、ブラシヘッド20が長持ちする。軟質丸ブラシ素子20Bの面状突起26も又、隣接する硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23に支持されるので、倒れが阻止され、高いマッサージ効果を長期間安定に発揮する。
ハンドル10に鍔部15があるので、歯磨き中に唾液などよる手の汚れがなく、衛生的であるだけでなく、図9に示すように、テーブル面などの上に円筒型歯ブラシを置いたとき、鍔部15によりハンドル10が傾くので、ブラシヘッド20が載置面から浮き上がり、テーブル面などに接触しないので、この点からも、鍔部15は衛生に寄与する。
更に、ハンドル10の鍔部15は、花弁形という非円形であるので、ハンドル10が全体として丸棒状であるにもかかわらず、載置面上で転がる危険がなく、テーブルの上などから不用意に落下するおそれがない。この点からも、鍔部15は衛生に寄与する。ハンドル10が鍔部15を有することの効果は、ハイブリッド構造のブラシヘッド20以外のブラシヘッドをもつ円筒型歯ブラシ全般に有効である。
また、ハンドル10の先端部であるブラシ保持部10Bが本体部10Aから取り外し可能であるので、ブラシ保持部10Bの付け替えによりブラシヘッド20の交換効果が可能であり、経済的、機能的である。
更に又、ブラシヘッド20の両端に軟質丸ブラシ素子20Bが配置されている。これにより先端側の硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23が先端側へ倒れて開くのが抑制される。また、後端側の硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23が後端側へ倒れて開くのが抑制される。更に意匠面でも特徴的なブラシヘッド20となる。
第2実施形態の円筒型歯ブラシは、図10〜図15に示すように、第1実施形態の円筒型歯ブラシとはブラシヘッド20が相違している。ブラシヘッド20以外の構造は、第1実施形態の円筒型歯ブラシと実質同一である。
第2実施形態の円筒型歯ブラシにおけるブラシヘッド20は、その外径が軸方向で変化する非ストレート形状であり、より詳しくは、軸方向の両端部から中央部にかけて外径が漸次増加し、外周面が軸方向で外側へ凸の形状に湾曲した、いわゆる樽型である。
ここで、注意すべきは、軟質丸ブラシ素子20Bの外径は一定であり、ここでは13mmであるということである。これに対し、硬質丸ブラシ素子20Aの外径のみが軸方向の両端部から中央部にかけて漸増しており、先端部で14mm、中央部で19mm、後端部で17mmというように変化している。更に具体的に説明すれば、硬質丸ブラシ素子20Aの環状ディスク部22と軟質丸ブラシ素子20Bの環状ディスク部25の外径は同じ7mm、軟質丸ブラシ素子20Bの外径も一定で13mmであり、硬質丸ブラシ素子20Aにおける放射状羽根分23の長さのみが変化することにより、硬質丸ブラシ素子20A、ひいてはブラシヘッド20の外径が変化している。
硬質丸ブラシ素子20の外径差は、最小径の硬質丸ブラシ素子20Aの外径に対する最大径の硬質丸ブラシ素子20Aの外径に対する比率で言えば、1.2〜1.5が適当である。この比率が小さいと、ストレート形状のブラシヘッド20との機能的な差異が明確でなく、大きすぎる場合は、ブラシヘッド20の形状が円筒形状から離れて円盤状に近づき、ブラシヘッド20としての本来機能が低下する。
そして、このブラシヘッド20では更に、両端部に配置される比較的小径の硬質丸ブラシ素子20Aでの糸径が0.12mm(又は0.09mm)、中央部に配置される比較的大径の硬質丸ブラシ素子20Aでの糸径が0.14mm(又は0.12mm)というように、ヘッド大径部での硬質丸ブラシ素子20Aの糸径が、ヘッド小径部での硬質丸ブラシ素子20Aの糸径より大きくされている。
第2実施形態の円筒型歯ブラシによれば、第1実施形態の円筒型歯ブラシで得られる効果(硬質丸ブラシ素子20Aと軟質丸ブラシ素子20Bとが混在するハイブリッド構造による効果等)に加えて、以下の新たな効果が得られる。
ブラシヘッド20が樽型で、先端部が細くなっているので、口腔内の奥に入りやすく、奥歯をブラッシングしやすい。外周面が前歯のカーブに沿うので、前歯の裏側をブラッシングしやすい。軸方向中間部の大径部で部分的に硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23が長く突出する。このため、ヘッドの軸方向中間部に形成された大径部では、毛先が長く、歯と歯の隙間に毛先が入りやすい。また長い毛先が曲がりやすく、舌苔を除去する場合や歯茎に対する触感が向上する。
その一方で、硬質丸ブラシ素子20Aの放射状羽根部23が長いヘッド大径部では、毛先が曲がりやすく、触感が向上する反面、ブラッシング効果が低下する。しかるに、第2実施形態の円筒型歯ブラシでは、大径部に配置される硬質丸ブラシ素子20Aの糸材径を、小径部に配置される硬質丸ブラシ素子20Aの糸材径より太くしているので、軸方向でブラッシング効果が均一化される。また、また、ブラシヘッド20の軸方向における触感も均一化される。
第3実施形態の円筒型歯ブラシは、図16に示すように、ブラシヘッド20が軸方向の先端部から後端部へかけて徐々に外径が増大する円錐台形状に形成されている。この形状も又、第2実施形態の円筒型歯ブラシと同様、硬質丸ブラシ素子20Aの外径、特に放射状羽根部23の長さの変化によって実現されており、軟質丸ブラシ素子20Bの外径は一定である。
この円筒型歯ブラシは、ブラシヘッド20が、硬質丸ブラシ素子20Aと軟質丸ブラシ素子20Bが混在したハイブリッド構造であることによる効果に加えて、先細りなので、奥歯を磨き安く、また毛先の長い後端部により優れたマッサージ効果を示す。
第4実施形態の円筒型歯ブラシは、図17に示すように、ブラシヘッド20が軸方向の中央部から両端部へかけて外径が徐々に外径が増大する鼓型に形成されている。この形状も又、第2実施形態の円筒型歯ブラシ及び第3実施形態の円筒型歯ブラシと同様、硬質丸ブラシ素子20Aの外径、特に放射状羽根部23の長さの変化によって実現されており、軟質丸ブラシ素子20Bの外径は一定である。
このような非ストレート形状のブラシヘッド20も、本発明では可能である。
第2〜4実施形態の円筒型歯ブラシでは、非ストレート形状のブラシヘッド20における軟質丸ブラシ素子20Bの外径が一定であるが、その外径を、例えば硬質丸ブラシ素子20Aの外径変化に対応させて変化させることもできる。その場合も、ブラシヘッド20の小径部より大径部の方で、硬質丸ブラシ素子20Aと軟質丸ブラシ素子20Bとの径差が大きくなるように留意することが望まれる。
いずれにしても、ブラシヘッド20が非ストレート形状であることの効果は、もっぱら硬質丸ブラシ素子20Aの外径変化によるので、軟質丸ブラシ素子20Bの形状に関係なく、またその存在に関係なく得ることができ、更には軟質丸ブラシ素子20B以外のスペーサーが存在している場合も得ることができる。すなわち、ブラシヘッド20が非ストレート形状であることの効果は、ハンドル10の鍔部15による効果と同様、ハイブリッド構造のブラシヘッド20以外のブラシヘッドをもつ円筒型歯ブラシ全般に有効ということである。
ハンドル10の先端部にブラシヘッド20を構成する方法として、第1〜4実施形態の円筒型歯ブラシでは、ハンドル10の小径軸部12に先端側から所定枚数の硬質丸ブラシ素子20A及び軟質丸ブラシ素子20Bを所定順序で嵌め込み、その後で小径軸部12の先端部を加熱軟化させてかしめ部13を形成することで、小径軸部12のかしめ部13とストッパー14間にブラシヘッド20を保持固定しているが、図18に示すように、先端部に予め大径のストッパー17が形成された軸体10Cに後端側から所定枚数の硬質丸ブラシ素子20A及び軟質丸ブラシ素子20Bを所定順序で嵌め込んだ後、その軸体10Cの後端部を、ハンドル10の先端面に設けられた挿入孔18に差し込み、溶着機で両者を固定することでも、ハンドル10の先端部にブラシヘッド20を保持固定することができる。
軸体10Cの固定法としては、図19に示すように、そのテーパー状の後端部外周面に設けた環状でくさび形の嵌合部19を使用することも可能である。
ブラシヘッド20に使用される軟質丸ブラシ素子20Bは、上記実施形態の円筒型歯ブラシでは環状ディスク部25から複数枚の舌片状の面状突起26が放射状に突出する花弁状としたので、図20に示すように、幅が広い扇形の面状突起26を周方向に等角配置したものは除外される(図20では2枚を対角位置に配置)。幅広の面状突起26を周方向に等角配置したものは、軸方向に並ぶ軟質丸ブラシ素子20Bの間で面状突起26が重ならないように、位相を違えて配置するのがよい。
10 ハンドル
10A 本体部
10B ヘッド保持部
15 鍔部
20 ブラシヘッド
20A 硬質丸ブラシ素子
20B 軟質丸ブラシ素子
21,24 貫通孔
22,25 環状ディスク部
23 放射状羽根部
26 面状突起