本発明は、力制御が容易で、動作効率に優れた柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットに関する。
近年、医療用ロボット、家庭用サービスロボット、工場内での作業支援ロボット等、人と近い領域で動作するロボットへの期待が高まっている。このようなロボットでは、産業用ロボットとは異なり、人と接触した時の安全性確保が重要となる。接触時における衝撃を和らげるためには、接触点に作用する力を小さくする必要があることから、関節におけるトルクを制御し、ロボットアーム側から見て柔軟な関節とすることが必要となる。しかし、関節を駆動するアクチュエータを用いた力(トルク)制御では、応答周波数を無限に高めることはできず、ロボットアームが人に衝突する場合のように高周波数領域の力が作用する場合には対応することができない。通常、関節駆動にはモータと減速機の組み合わせが用いられており、ロボットアーム側から見た慣性は、モータ本来の慣性を減速比の自乗倍したものとなる。そのため、力制御が有効に作用しない状態では、極めて大きな力が接触点に作用することになるので、力制御のみに頼っていては十分な安全性を確保することができないことになる。
このような課題に対して、Series elastic actuators(SEA)と呼ばれる弾性体を介して、アクチュエータと負荷を接続する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記SEAは、アクチュエータによる制御ができない高周波数領域の力も弾性体の柔軟性により抑制されるので、常にアーム側から見て柔軟な関節が実現できる柔軟アクチュエータであり、より高い安全性が確保されるようになる。一方で、SEAでは弾性体を介して負荷と接続しているので、制御可能な周波数帯域は従来より低下することになる。このような欠点を補うために、高周波数用のアクチュエータを追加で備えるDistributed macro−mini actuation(DM2)という方式(例えば、非特許文献1参照)、又は、弾性体の剛性を可変とするVariable Stiffness Transmission(VST)という方式(例えば、非特許文献2参照)なども提案されている。
米国特許5650704号公報
IEEE Robotics & Automation Magazine,Volume 11,Issue 2の12〜21ページ
IEEE Robotics & Automation Magazine,Volume 11,Issue 2の22〜33ページ
前記SEA、DM2、VST等の柔軟アクチュエータでは、弾性体を介してロボットアームとモータを接続することで、モータ側の慣性の影響を、ロボットアーム側からの入力に対して大幅に低減することを目指している。このことを逆に考えると、ロボットアーム側から入力されたエネルギーは、ダイレクトにモータ側には伝わらない構成ということになり、電気的にエネルギーの回生を行うのは困難ということになる。人と近い領域で動作するロボットでは、人との協調作業又は物を下ろす動作等、柔軟アクチュエータの外部から仕事が為される機会も多くなる。しかし、従来のエネルギーの回生を行えない柔軟アクチュエータでは、柔軟アクチュエータの外部から仕事が為される状態でも、アクチュエータ側はエネルギーを消費することになり、動作全体における効率が大きく悪化するという課題を有することになる。
従って、本発明の目的は、かかる点に鑑み、力制御が容易で、動作効率に優れた柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対して直線的に往復移動可能に保持される直動部材と、
前記直動部材の移動方向と略垂直な方向に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材に固定されかつ前記変位部材との距離に応じて弾性エネルギーを蓄えたり放出したりする弾性機構と、
前記変位部材との間の距離が2以上の連結機構により調整可能に前記変位部材と接続された変速部材と、
前記直動部材に突出して設けられ、前記弾性機構のエネルギーの放出により発生した力により前記変速部材に押圧される突起部材と、
前記連結機構の前記距離の調整動作を制御することで、前記変位部材と前記変速部材との相対位置及び相対角度を変化させる制御装置を備えることを特徴とする直動動作可能な柔軟アクチュエータを提供する。
本発明の第2態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対して回転自由に保持される回転部材と、
前記回転部材の回転軸方向と略同方向に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材に固定され前記変位部材との距離に応じて弾性エネルギーを蓄えたり放出したりする弾性機構と、
前記変位部材との間の距離が3以上の連結機構により調整可能に前記変位部材と接続された変速部材と、
前記回転部材の回転中心からずれた位置に突出して設けられ、前記弾性機構のエネルギーの放出により発生した力により前記変速部材に押圧される突起部材と、
前記連結機構の前記距離の調整動作を制御することで、前記変位部材と前記変速部材との相対位置及び相対角度を変化させる制御装置とを備えることを特徴とする揺動及び回転動作可能な柔軟アクチュエータを提供する。
本発明の第9態様によれば、第1〜8のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを提供する。
よって、本発明によれば、動作効率の優れた柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを得ることができる。すなわち、本発明によれば、直動部材には、弾性機構のエネルギーの放出により発生した力が変速部材の傾きの大きさに応じて変速された状態で出力されるので、力制御が変速部材の傾きの大きさの制御で容易に行えるようになるとともに、高周波数領域の力が作用する場合にも、弾性機構の弾性により発生力が抑制される柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットが得られることになる。また、直動部材の変位は弾性機構の変位と連動しているので、アクチュエータの外部から仕事が為される場合にアクチュエータに入力されるエネルギーは、弾性機構において蓄積されることになるので、動作効率の向上も図れるようになる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1Aは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの概略を示す斜視図であり、
図1Bは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの概略を示す、図1AのX−X線断面図であり、
図1Cは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの概略を示す、図1BのY−Y線断面図であり、
図1Dは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの駆動時の概略を示す、図1AのX−X線断面図であり、
図1Eは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの概略を示す、図1BのA−A線断面図であり、
図2Aは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータの概略を示す断面図であり、
図2Bは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータの概略を示す上面図であり、
図2Cは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータの概略を示す、図2AのA−A線断面図であり、
図2Dは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータの駆動時の概略を示す断面図であり、
図2Eは、本発明の第2実施形態の変形例として、回転アクチュエータの異なる構成例における概略を示す断面図であり、
図2Fは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータにおいて、図2Aの変速板付近の拡大図であり、
図3Aは、本発明の第3実施形態による回転アクチュエータの概略を示す断面図であり、
図3Bは、本発明の第3実施形態による回転アクチュエータの概略を示す、図3AのA−A線断面図であり、
図3Cは、本発明の第3実施形態による回転アクチュエータの駆動時の概略を示す断面図であり、
図4は、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す斜視図であり、
図5Aは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す正面図であり、
図5Bは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す正面図であり、
図6は、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す斜視図であり、
図7Aは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す側面図であり、
図7Bは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す側面図である。
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対して直線的に往復移動可能に保持される直動部材と、
前記直動部材の移動方向と略垂直な方向に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材に固定されかつ前記変位部材との距離に応じて弾性エネルギーを蓄えたり放出したりする弾性機構と、
前記変位部材との間の距離が2以上の連結機構により調整可能に前記変位部材と接続された変速部材と、
前記直動部材に突出して設けられ、前記弾性機構のエネルギーの放出により発生した力により前記変速部材に押圧される突起部材と、
前記連結機構の前記距離の調整動作を制御することで、前記変位部材と前記変速部材との相対位置及び相対角度を変化させる制御装置を備えることを特徴とする直動動作可能な柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、直動部材には弾性機構の発生力が変速部材の傾きの大きさに応じて変速された状態で出力されるので、力制御が変速部材の傾きの大きさの制御で容易に行えるようになるとともに、高周波数領域の力が作用する場合にも弾性機構の弾性により発生力が抑制される柔軟アクチュエータが得られることになる。また、直動部材の変位は弾性機構の変位と連動しているので、柔軟アクチュエータの外部から仕事が為される場合にアクチュエータに入力されるエネルギーは、弾性機構において蓄積されることになるので、動作効率の向上も図れるようになる。従って、動作効率の優れた柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第2態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対して回転自由に保持される回転部材と、
前記回転部材の回転軸方向と略同方向に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材に固定され前記変位部材との距離に応じて弾性エネルギーを蓄えたり放出したりする弾性機構と、
前記変位部材との間の距離が3以上の連結機構により調整可能に前記変位部材と接続された変速部材と、
前記回転部材の回転中心からずれた位置に突出して設けられ、前記弾性機構のエネルギーの放出により発生した力により前記変速部材に押圧される突起部材と、
前記連結機構の前記距離の調整動作を制御することで、前記変位部材と前記変速部材との相対位置及び相対角度を変化させる制御装置を備えることを特徴とする揺動及び回転動作可能な柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、回転部材には、弾性機構の発生力が変速部材の傾きの大きさに応じて変速された状態で出力されるので、トルク制御が変速部材の傾きの大きさの制御で容易に行えるようになるとともに、高周波数領域の力が作用する場合にも弾性機構の弾性により発生力が抑制される柔軟アクチュエータが得られることになる。また、回転部材の回転は弾性機構の変位と連動しているので、柔軟アクチュエータの外部から仕事が為される場合にアクチュエータに入力されるエネルギーは、弾性機構において蓄積されることになるので、動作効率の向上も図れるようになる。従って、動作効率の優れた柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第3態様によれば、前記連結機構が、円周状に等間隔で配置されていることを特徴とする第2の態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、回転部材の角度による制御性のばらつきが最も少なくなり、より制御性に優れた柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第4態様によれば、前記突起部材と前記変速部材の接触点が、前記連結機構と前記変速部材との接触点若しくは連結部における回転中心を含み、前記変位部材の変位方向への高さを持つ楕円柱の側面と略同一面上にあることを特徴とする第2〜3のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、突起部材と変速部材の接触点を中心に、回転部材の半径方向へ変速部材を傾かせるために必要な連結機構の仕事量が小さくすることができる。従って、動作効率のより高い柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第5態様によれば、前記突起部材と前記変速部材の接触点が、前記連結機構と前記変速部材との接触点若しくは連結部における回転中心を含む平面と略同一面上にあることを特徴とする第1〜4のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、突起部材と変速部材の接触点を中心に、突起部材の移動方向へ変速部材を傾かせるために必要な連結機構の仕事量が小さくすることができる。従って、動作効率のより高い柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第6態様によれば、前記弾性機構がラム形シリンダ若しくはピストン両側の圧力室間で流体移動が可能な片ロッドシリンダであることを特徴とする第1〜5のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、変位部材との距離が変化することによる弾性機構の発生力変化が小さくなるので、より力制御が容易な柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第7態様によれば、前記連結機構が、前記変位部材より前記変位部材の変位方向と略平行に、前記変位部材と前記変速部材との間の距離を調整可能であり、前記変速部材に対して前記弾性機構の発生力により押圧される機構であることを特徴とする第1〜6のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、連結機構の保持は一自由度の動きのみを考慮すれば良くなるので、高剛性な保持が容易になる。従って、制御性に悪影響を及ぼす不必要な動きが減少するので、力制御のより容易な柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第8態様によれば、前記連結機構が、前記変位部材と前記変速部材のそれぞれと回転自在に連結されるとともに、両接続点間の距離が可変調整できる機構であることを特徴とする第1〜6のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、連結機構が変速部材に対して伸張方向の力だけでなく収縮方向の力も発生することができるようになるので、連結機構の伸縮を用いた変速部材の位置及び角度の制御が容易になる。従って、より力制御の容易な柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第9態様によれば、第1〜8のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを提供する。
このような構成によれば、前記第1〜8のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを構成することができて、前記柔軟アクチュエータの作用効果を奏することができる関節駆動ユニットを得ることができる。
以下、本発明の種々の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明にかかる第1実施形態の柔軟アクチュエータの一例としての直動アクチュエータ1の概要を示した斜視図であり、図1Bは図1AのX−X線の断面図、図1Cは図1BのY−Y線の断面図をそれぞれ示している。また、図1Eには図1BにおけるA−A線の断面図を示している。図1A〜図1Cにおける、上下方向沿いに長尺な直方体箱形状のフレーム12aはベース部材の一例である。フレーム12aの上面の内側には、前記上下方向とは直交する横方向沿いに延びるように一対の互いに平行なガイドレール13a、13bが固定されている。板状の直動部材11は、ガイドレール13a、13bに、図1Bの横方向に往復移動自由(左右方向に移動自由)となるように接続されている。直線的なガイドレール13a、13bは、直動部材11の上面の一対の互いに平行なガイド溝部11g,11gに摺動自在にはめ込まれて、前記横方向沿いに直線的に往復移動可能に案内されている。フレーム12aの上部の前後側面には、直動部材11が出入り自在な貫通口12pが形成されている。また、直動部材11には、その下面に、幅方向中心に対して対称となる位置に、下向きに延びた突起部材の一例としての棒状突起14a、14bの上端が固定されており、棒状突起14a、14bの下端の半球面部が、変速部材の一例である四角形板状(例えば正方形)の変速板15aの上面に対して転がり接触するようになっている。変速板15aは、上下方向と交差する方向に板面が配置され、直動部材11の移動方向と直交する幅方向において、中央部15pが両端部15qに対してくぼんだ形状の段付き形状をしており、中央部15pの上面に対して棒状突起14a、14bの下端の半球面部が転がり接触するようにしている。後述するように、変速板15aの中央部15pの上面と両端部15qの下面は同一平面上(略同一平面上)に位置するように形成されている。この変速板15aは、揺動板又は揺動部材の一例としても機能するものである。
なお、直動部材11の中央には、直動部材11の移動方向沿いに細長い貫通口11pが形成されており、下記の支持棒16により、直動部材11の移動が邪魔されないようにしている。
フレーム12aの上面の内面中央には、支持棒16の上端が固定されており、フレーム12aの上面から支持棒16が下向きに延びて配置され、直動部材11の中央の貫通口11pを貫通している。この支持棒16の中間部の外周面には、外筒26aが、図1Bの上下方向の移動のみが自由となるように保持されている。この外筒26aに対して、変速板15aが、図1Bの紙面垂直軸回りの回転が自由となるように軸により保持されている。
一方で、フレーム12aの底面には、弾性機構の一例であるガスシリンダ17が上下方向沿いに固定されている。ガスシリンダ17は、内部に高圧ガスを蓄え、ラム形のピストン18を図1Bの上下方向に移動可能なように保持する構造となっている。ピストン18に対しては、ピストン18の断面積と高圧ガスの圧力の積に相当する力(以後、「発生力」と称する。)が、図1Bの上方向に加わるようになっている。また、ピストン18の先端には、直動部材11の移動方向と略垂直な方向に変位可能な変位部材の一例である四角形状(例えば長方形)の板状部材19aが上下方向と交差する方向にその板面が配置されるように接続されている。板状部材19aには、10個のボールねじナット20a〜20jが2列になって固定されている。具体的には、ボールねじナット20a〜20e、ボールねじナット20f〜20jのそれぞれが等間隔で1列をなし、それぞれの列は板状部材19aの中心線に対して線対称の位置に配置されている。ボールねじナット20a〜20jは、それぞれ連結機構の一例である10個のボールねじ機構21a〜21jと連結されている。ところで、図1Bには、ボールねじナット20a〜20e及びボールねじ機構21a〜21eのみが示されている。図1Bでは、ボールねじナット20f〜20j及びボールねじ機構21f〜21jは、それぞれ、ボールねじナット20a〜20e及びボールねじ機構21a〜21eと向かい合う位置にある要素を表している。また、ボールねじ機構21a〜21jは、それぞれ、モータ22a〜22jと、上下方向沿いに配置されたねじ軸23a〜23jと、上下方向沿いに配置された保持部材24a〜24jとより構成されている。そして、モータ22a〜22jは保持部材24a〜24jにそれぞれ固定されるとともに、モータ22a〜22jの回転軸はねじ軸23a〜23jの下端とそれぞれ連結されている。また、ねじ軸23a〜23jは、保持部材24a〜24jに軸受け部などを介して回転自由にそれぞれ保持される。また、ボールねじナット20a〜20jにそれぞれねじ込まれて貫通している。よって、このような構成によれば、モータ22a〜22jの回転軸が正逆回転することで、モータ22a〜22jの回転軸に連結されたねじ軸23a〜23jがそれぞれ正逆回転する。すると、ねじ軸23a〜23jがねじ込まれたボールねじナット20a〜20jの位置がねじ軸23a〜23j上を、それぞれ、ねじ軸23a〜23jの軸方向沿いに(言い換えれば、前記下方向沿いに)往復移動することになる。ねじ軸23a〜23jの上端の半球面部は、変速板15aの両端部15qの下面と転がり接触するようになっている。
制御装置の一例としての制御コンピュータ101がモータ22a〜22jにそれぞれ接続されている。制御コンピュータ101によりモータ22a〜22jの駆動がそれぞれ制御されることで、板状部材19aと変速板15aとの相対位置及び相対角度が変化するようになる。
さらに、保持部材24a〜24jは、フレーム12aに上下方向沿いに固定されたガイドレール25a〜25jに、図1Bの上下方向沿いに移動自由となるように接続されている。このようにすることで、ボールねじ機構21a〜21jの伸縮方向(言い換えれば、ボールねじナット20a〜20jの上下方向沿いの移動方向における板状部材19aと、変速板15aとの距離を調整可能(長短可能)な方向)以外の自由度に関して、高剛性に保持することが可能になる。
次に、制御コンピュータ101の制御の下で行われる、この直動アクチュエータ1の作用を説明する。
直動アクチュエータ1の直動部材11に作用する力は、ガスシリンダ17の発生力と変速板15aの傾きの大きさによって決定される。すなわち、ガスシリンダ17が発生する力(発生力)が図1Bの上方向に向かって作用するとき、その力は、ピストン18、板状部材19a、ボールねじナット20a〜20j、ボールねじ機構21a〜21jのねじ軸23a〜23j、変速板15aと伝わる。その結果、変速板15aを棒状突起14a、14bに向けて押圧することになる。このとき、図1Bのように変速板15aが水平状態(上下方向と直交する方向沿いの状態)にある場合には、ガスシリンダ17の発生力は、棒状突起14a、14b、直動部材11、ガイドレール13a、13bを経てフレーム12aに伝わり、釣り合うことになる。一方、図1Dのように変速板15aが前記水平状態から傾いている傾斜状態(図1Dでは、変速板15aの左端が下方にかつ右端が上方になるように右上方向に傾斜した状態)になった場合には、変速板15aと棒状突起14a、14bの接触点において横方向(図1Dでは左方向)への力が働くことになる。変速板15aに作用する右方向への力については、支持棒16によって支えられることになるが、直動部材11に作用する左方向への力については、そのまま出力されることになる。摺動等による損失を無視した静的な場合だと、この左方向への力は、ガスシリンダ17の発生力と、変速板15aの水平状態からの角度変化に対する正接との積で表される。このことから、制御コンピュータ101が出力したい力に対応した傾き角度に、変速板15aがなるように、モータ22a〜22jを駆動させることで、直動アクチュエータ1の力制御が可能となる。
また、制御コンピュータ101の制御が及ばない高周波数帯域の外乱に対しても、ガスシリンダ17の弾性によって柔軟性が保たれるので、直動アクチュエータ1は接触に対して安全な柔軟アクチュエータとなる。
ところで、ガスシリンダ17の発生力は、ピストン18の断面積と高圧ガスの圧力の積で表され、高圧ガスの圧力はピストン18がシリンダ17に挿入される量により変化するものの、シリンダ17の内径をピストン18の直径より大きくすることで、その変化量は小さくすることができる。すなわち、この第1実施形態のようなガスシリンダ17は、ピストン18の変位に対する発生力の変化を小さくすることができる。さらに、ピストン18に貫通穴を設けてピストン18の両側の圧力室間の圧力差を無くした片ロッドシリンダ18のようにこの第1実施形態のガスシリンダ17と同等の効果が得られる弾性機構も、ピストン18の変位に対する発生力の変化を小さくすることができる点で望ましい。
また、図1Dにおいて、直動部材11が左方向に移動するような状況に直動アクチュエータ1がある場合、直動アクチュエータ1は、柔軟アクチュエータの外部に対して仕事を行っていることになる。すなわち、制御コンピュータ101がモータ22a〜22jの駆動を静止させている場合、直動部材11が左方向に移動するに従って、ガイドレール25a〜25jに沿って保持部材24a〜24jがフレーム12aに対して図1Dの上方向に移動する。すると、保持部材24a〜24jに支持されたボールねじ機構21a〜21jのねじ軸23a〜23jと連結されたボールねじナット20a〜20jを介して、板状部材19aは図1Dの上方向に移動することになる。このとき、ガスシリンダ17が失うポテンシャルエネルギーによって、直動アクチュエータ1は、直動アクチュエータ1の外部に対して仕事を行うことになる。
逆に、直動部材11が右方向に移動するような状況に直動アクチュエータ1がある場合、直動アクチュエータ1は、直動アクチュエータ1の外部から仕事をされることになる。すなわち、制御コンピュータ101がモータ22a〜22jの駆動を静止させている場合、直動部材11が右方向に移動するに従って、ガイドレール25a〜25jに沿って保持部材24a〜24jがフレーム12aに対して図1Dの下方向に移動する。すると、保持部材24a〜24jに支持されたボールねじ機構21a〜21jのねじ軸23a〜23jと連結されたボールねじナット20a〜20jを介して、板状部材19aは図1Dの下方向に移動することになる。このとき、直動アクチュエータ1の外部が直動アクチュエータ1にした仕事により、ガスシリンダ17にポテンシャルエネルギーが蓄えられることになる。
このように、直動アクチュエータ1は、直動アクチュエータ1の外部に対して仕事をするだけでなく、直動アクチュエータ1の外部からの仕事により直動アクチュエータ1の内部にエネルギーを蓄える回生動作が行えることになる。よって、回生の行えないアクチュエータに比べて、前記第1実施形態の直動アクチュエータ1は、動作効率の向上を図ることができるようになる。
さらに、直動アクチュエータ1の駆動力は変速板15aの傾きの大きさにより制御されるので、ガスシリンダ17のポテンシャルエネルギーを短時間に放出することで、大きな出力を得ることもできる。ガスシリンダ17のポテンシャルエネルギーを補充する場合には、制御コンピュータ101によりボールねじ機構21a〜21jを動作させ、板状部材19aを押し下げてやればよい。直動アクチュエータ1の出力に要求されるピークパワーと平均パワーに大きな差がある場合には、短時間に放出したポテンシャルエネルギーの補充は時間をかけて行えばよいことになるので、モータ22a〜22jに要求されるパワーはピークパワーに比べて小さくて良いことになる。また、板状部材19aの押し下げを複数のボールねじ機構21a〜21jが制御コンピュータ101の制御の下に協力して行うことで、さらに、モータ22a〜22jの1つあたりに要求されるパワーを下げることができる。
次に、直動アクチュエータ1の駆動力を変化させる場合について説明する。この第1実施形態ではボールねじ機構として、参照符号21a〜21jで示す10個のボールねじ機構を用いている。変速板15aは、長さが不変の棒状突起14a、14bに押圧されていることから、支持棒16に対して上下位置と角度の2自由度の動きを行うことになる。そのため、最小限必要となるボールねじ機構は2個ということになる。しかし、図1Cのように、棒状突起14a、14bと同じ位置、すなわち、支持棒16に対して左右方向の位置にねじ軸23b、23gがあるような場合には、ガスシリンダ17の発生力を、前記ねじ軸23b、23gを有するボールねじ機構21b、21gで支えることができる。このため、他のボールねじ機構はガスシリンダ17の発生力による影響を受けずに、ボールねじ機構21b、21gによってのみ、変速板15aの角度を変化させることが可能になり、直動アクチュエータ1の駆動力を容易に変化させることができる。
また、変速板15aの角度変化のみを行う場合には、ボールねじ機構21b、21gは変位しなくて良いので、変速板15aを保持さえできればよいことになる。ボールねじ機構を冗長的に配置することは、このような状態が、より多くの地点で得られることになるので、望ましい。
また、この第1実施形態では、変速板15aを、その中央部15pがその両端部15qに対してくぼんだ形状の段付き形状とし、棒状突起14a、14bが接触する面(中央部15pの上面)と、ねじ軸23a〜23jが接触する面(両端部15qの下面)が同一平面上(略同一平面上)となるようにしている。これに対して、段を持たない変速板の場合、例えば、図1Bの状態から変速板15aの傾きの大きさを変化させた場合に、変速板15aと棒状突起14a、14bとの接触点と変速板15aとねじ軸23b、23gとの接触点との上下方向距離が変速板の厚みの影響により変化することになる。このため、その分、板状部材19aを下降させる必要が生じ、傾きの大きさを変化させるのにポテンシャルエネルギー増加分のエネルギーが必要となってしまう。従って、変速板15aを第1実施形態のように段付き形状として、変速板15aと棒状突起14a、14bとの接触点と変速板15aとねじ軸23b、23gとの接触点が同一平面(略同一平面上)上に位置することは、変速板15aの厚みによる影響を排除することができるので、望ましい。
なお、この第1実施形態では、連結機構の一例としてボールねじ機構21a〜21jを用いているが、連結機構の構成としてはこれに限るものではなく、同様の作用を実現するものであれば、あらゆる公知技術の組み合わせが利用可能である。
さらに、第1実施形態における直動アクチュエータ1を用いた関節駆動ユニットの構成例を図4に示す。直動アクチュエータ1の直動部材11には、C字形状の側面を有する出力伝達部材51が連結されるとともに、出力伝達部材51上にはラック52が固定されている。一方、フレーム12dの上方に配置された腕54aの下端にはピニオン53が固定されており、ラック52とかみ合っている。また、腕54aの下端とフレーム12dの上端は軸55を介して回転自在に連結されている。
このような構成とすることで、図5Aの状態から直動アクチュエータ1を動作させ、直動部材11を右方向に移動させると、ラック52及びピニオン53を介して腕54aがフレーム12dに対して軸55回りに時計回りに回転動作を行うようになり、図5Bの状態となる。同様に、直動部材11を左方向に移動させることで、フレーム12dに対して腕54aを逆方向へ(すなわち、軸55回りに反時計回りに)回転させることも可能となる。
よって、このような構成とすることで、直動アクチュエータ1の有する動作効率に優れ、柔軟であるという特徴をそのまま引き継ぐ関節駆動ユニットが得られ、特に家庭用途に適したロボットアームにおける関節駆動ユニットを実現することができる。
なお、関節駆動ユニットの構成方法としては、ラック・アンド・ピニオン機構を用いたものに限るものではなく、同様の作用を実現するものであれば、あらゆる公知技術の組み合わせが利用可能である。
(第2実施形態)
図2Aは、本発明にかかる第2実施形態の柔軟アクチュエータの一例としての回転アクチュエータ2aの概略を示した断面図である。また図2Bには回転アクチュエータ2aの上面図を示し、図2Cには図2AにおけるA−A線の断面図を示している。図2Fは、図2Aの変速板15b付近の拡大図である。なお、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。この第2実施形態の柔軟アクチュエータでは、座標軸のZ軸は上下方向の上向きと定義している。X軸はZ軸と直交する方向沿いでかつベース部材の一例である直方体箱形状のフレーム12bの1つの側面を厚さ方向に貫通する方向と定義している。また、Y軸はZ軸及びX軸とそれぞれ直交する方向沿いでかつ直方体箱形状のフレーム12bの前記側面に直交して隣接する側面を厚さ方向に貫通する方向と定義している。
この第2実施形態では、第1実施形態における変速板15aに相当するものとして、変速部材の一例である円板状の変速板15bを用いて回転運動を出力している。変速板15bは、X軸方向に突出した軸部を備えたリング状部材33に対してX軸回りの回転が自由となるように軸受けなどを介して保持されている。同時に、リング状部材33は、フレーム12aの上面の内面中央に下向きに固定されたスプライン軸である支持棒16に対してZ軸方向(支持棒16の軸方向)の往復移動のみが自由となるように保持されておりかつY軸方向に突出した軸部を備えた外筒26bに対して、Y軸回りの回転が自由となるように軸受けなどを介して保持されている。さらに、支持棒16に対しては、回転部材の一例である傘歯車31がZ軸回りに軸受けなどを介して回転自由となるように保持されている。また、傘歯車31の下面には、突起部材の一例としての1本の棒状突起14cが回転中心より離れた位置に下向きに延びて設けられており、下端の半球面部が変速板15bの円形中央部15rの上面に対して転がり接触するようになっている。また、変速板15bの円形中央部15r周りの円環状の外周部15sの下面には、ねじ軸23a〜23jの上端の半球面部が転がり接触するようになっている。先の第1実施形態と同様な理由で、変速板15bの円形中央部15rの上面と円環状の外周部15sの下面は同一平面上(略同一平面上)に位置するように形成されている。
なお、変速板15bは、揺動板又は揺動部材の一例としても機能するものである。
傘歯車31の回転出力は、ベース部材の一例であるフレーム12bの上面の開口部12qに形成された一対の軸受け部12rに対して軸受け部などを介して回転自由に保持された傘歯車付きの回転軸(傘歯車31が固定された回転軸)32を介して、Y軸回りの正逆回転出力として回転アクチュエータ2aの外部に取り出さるようになっている。なお、傘歯車付きの回転軸32の傘歯車32aは回転軸32に固定されかつ傘歯車31とかみ合っており、傘歯車31の正逆回転により傘歯車32aが回転軸32と共に正逆回転するようにしている。
次に、制御コンピュータ101の制御の下で行われる、この回転アクチュエータ2aの作用を説明する。
回転アクチュエータ2aの傘歯車31に作用する力は、ガスシリンダ17の発生力の大きさと変速板15bの傾きの大きさによって決定される。すなわち、ガスシリンダ17が発生する力(発生力)が図2Aの上方向に向かって作用するとき、その力(発生力)は、ピストン18、円板状の板状部材19b、板状部材19bの中心に対して回転対称となる位置(具体的には板状部材19bの中心周りの同一円周上の90度毎の位置に)に固定されたボールねじナット20a〜20d、ボールねじナット20a〜20dに対応して配置されたボールねじ機構21a〜21dのねじ軸23a〜23d、変速板15bと伝わり、変速板15bを棒状突起14cに押圧することになる。このとき、図2Aのように変速板15bが水平状態にある場合には、ガスシリンダ17の発生力は棒状突起14c、傘歯車31、支持棒16を経てフレーム12bに伝わり、釣り合うことになる。一方、図2Dのように変速板15bが水平状態から傾いた傾斜状態(一例として、斜め左下がりの傾斜状態)となっている場合には、変速板15bから棒状突起14cへの力の伝達時に変速板15bと棒状突起14cの接触点において円周方向への力、すなわち、傘歯車31へのZ軸回りの時計回りのトルクが働くことになる。反作用として変速板15bに作用するZ軸回りの反時計回りのトルクについては、支持棒16によって支えられることになる。また、図2Dとは逆方向に傾いた傾斜状態(斜め右下がりの傾斜状態)の場合には、傘歯車31にはZ軸回りの反時計回りのトルクが作用することになり、反作用として変速板15bに作用するZ軸回りの時計回りのトルクについては、支持棒16によって支えられることになる。摺動等による損失を無視した静的な場合においては、図2Dにおいて傘歯車31に作用する時計回りのトルクは、ガスシリンダ17の発生力と、変速板15bの水平状態から傾斜状態への角度変化に対する正接との積で表される。ただし、ここでいう角度変化とは、変速板15bと棒状突起14cとの接触点から傘歯車31の回転軸への垂線回りの角度変化のことである。このことから、制御コンピュータ101が出力したい力の大きさに対応した傾きの大きさ(傾き角度)に変速板15bがなるように、モータ22a〜22dを駆動させることで、回転アクチュエータ2aの力制御が可能となる。
また、制御コンピュータ101の制御が及ばない高周波数帯域の外乱に対しても、ガスシリンダ17の弾性によって柔軟性が保たれるので、回転アクチュエータ2aは接触に対して安全な柔軟アクチュエータとなる。
図2Dにおいて、傘歯車31がZ軸回りの時計回りに回転するような状況に回転アクチュエータ2aがある場合、回転アクチュエータ2aは、回転アクチュエータ2aの外部に対して仕事を行っていることになる。すなわち、制御コンピュータ101がモータ22a〜22dの駆動を静止させている場合、傘歯車31がZ軸回りの時計回りに回転するに従って、板状部材19bは図2Dの上方向に移動することになる。このとき、ガスシリンダ17が失うポテンシャルエネルギーによって、回転アクチュエータ2aは、回転アクチュエータ2aの外部に対して仕事を行うことになる。
逆に、傘歯車31がZ軸回りの反時計回りに回転するような状況に回転アクチュエータ2aがある場合、回転アクチュエータ2aは、回転アクチュエータ2aの外部から仕事をされることになる。すなわち、制御コンピュータ101がモータ22a〜22dの駆動を静止させている場合、傘歯車31がZ軸回りの反時計回りに回転するに従って、板状部材19bは図2Dの下方向に移動することになり、回転アクチュエータ2aの外部が回転アクチュエータ2aにした仕事により、ガスシリンダ17にポテンシャルエネルギーが蓄えられることになる。
このように、回転アクチュエータ2aは、回転アクチュエータ2aの外部に対して仕事をするだけでなく、回転アクチュエータ2aの外部からの仕事により回転アクチュエータ2aの内部にエネルギーを蓄える回生動作が行えることになる。よって、回生の行えないアクチュエータに比べて、前記第2実施形態の回転アクチュエータ2aは、動作効率の向上を図ることができるようになる。
さらに、回転アクチュエータ2aの駆動力は変速板15bの傾きの大きさにより制御されるので、ガスシリンダ17のポテンシャルエネルギーを短時間に放出することで、大きな出力を得ることもできる。ガスシリンダ17のポテンシャルエネルギーを補充する場合には、制御コンピュータ101によりボールねじ機構21a〜21dを動作させ、板状部材19bを押し下げてやればよい。回転アクチュエータ2aの出力に要求されるピークパワーと平均パワーに大きな差がある場合には、短時間に放出したポテンシャルエネルギーの補充は時間をかけて行えばよいことになるので、モータ22a〜22dに要求されるパワーはピークパワーに比べて小さくて良いことになる。また、板状部材19bの押し下げを複数のボールねじ機構21a〜21dが制御コンピュータ101の制御の下に協力して行うことで、さらに、モータ22a〜22dの1つあたりに要求されるパワーを下げることができる。
次に、回転アクチュエータ2aの駆動トルクを変化させる場合について説明する。この第2実施形態では、ボールねじ機構として、参照符号21a〜21dで示す4個のボールねじ機構を用いている。変速板15bは、長さが不変の棒状突起14cに押圧されていることから、支持棒16に対してZ軸方向の変位とX軸回りの回転とY軸回りの回転の3自由度の動きを行うことになる。そのため、最小限必要となるボールねじ機構は3個ということになる。しかし、図2Dのように棒状突起14cと同じY方向位置にねじ軸23b、23dがあるような場合には、ガスシリンダ17の発生力をボールねじ機構21b、21dで支えることができる。このため、ボールねじ機構21a、21cはガスシリンダ17の発生力による影響を受けずに、ボールねじ機構21b、21dによってのみ、変速板15bの角度をX軸回りに変化させることが可能になり、回転アクチュエータ2aの駆動トルクを容易に変化させることができる。また、変速板15bの角度変化のみを行う場合には、ボールねじ機構21b、21dは変位しなくて良い。このため、変速板15bを保持さえできればよいことになる。ボールねじ機構を円周状に冗長的に配置することは、このような状態が、より多くの地点で得られることになるので、望ましい。さらに、ボールねじ機構を円周状に等間隔に配置することは、このような状態が傘歯車31の回転角によるばらつき無く周期的に分布することになる。このため、目標とする各ボールねじ機構の伸縮量(言い換えれば、ボールねじナット20a〜20jの上下方向沿いの移動方向における板状部材19aと変速板15aとの距離の調整量)を計算するのが容易になり、特定のボールねじ機構に負担がかかることもなくなることから、全体の制御性向上につながるので望ましい。
また、この第2実施形態では、図2Fに拡大して示すように、変速板15bを、その中央部15rがその外周部15sに対してくぼんだ形状の段付き形状とし、棒状突起14cが接触する面(中央部15rの上面)と、ねじ軸23a〜23dが接触する面(外周部15sの下面)が同一平面上(略同一平面上)となるようにしている。これに対して、段を持たない変速板の場合、例えば、図2Aの状態から変速板15bの傾きの大きさを変化させた場合に、変速板15bと棒状突起14cとの接触点と変速板15bとねじ軸23b、23dとの接触点との上下方向距離が変速板の厚みの影響により変化することになる。このため、その分、板状部材19bを下降させる必要が生じ、傾きの大きさを変化させるのにポテンシャルエネルギー増加分のエネルギーが必要となってしまう。従って、変速板15bを第2実施形態のように段付き形状として、変速板15bと棒状突起14cとの接触点と変速板15bとねじ軸23b、23dとの接触点が同一平面上(略同一平面上)に位置することは、変速板15bの厚みによる影響を排除することができるので、望ましい。
一方で、図2Eに本発明の第2実施形態の変形例として示すように、変速板15bを、段の無い平板の変速板15cとし、棒状突起14cと変速板15cとの接触点が取りうる円周と、ねじ軸23a〜23dと変速板15cとの接触点が含まれる円周とが、Z軸方向に往復移動しただけの同一の円周となるように配置しても良い。すなわち、図2Eに示すように、前記突起部材の一例としての棒状突起14cと前記変速部材の一例である変速板15cの接触点が、前記連結機構の一例であるボールねじ機構と前記変速板15cとの接触点若しくは連結部における回転中心を含み、前記変位部材の一例である板状部材19bの変位方向への高さを持つ楕円柱の側面と略同一面上にあることを特徴としている。このようにすることで、例えば図2Eにおいて変速板15cをX軸回りに回転させる際に、ガスシリンダ17の発生力はボールねじ機構21cが支えることになる。このため、変速板15cの厚みによる影響はあるものの、ボールねじ機構21aが行う仕事を小さくすることが可能になる。なお、変速板15cは、揺動板又は揺動部材の一例としても機能するものである。
なお、この第2実施形態でも、連結機構としてボールねじ機構を用いているが、連結機構の構成としてはこれに限るものではなく、同様の作用を実現するものであれば、あらゆる公知技術の組み合わせが利用可能である。
さらに、第2実施形態における回転アクチュエータ2aを用いた関節駆動ユニットの構成例を図6に示す。回転アクチュエータ2aの上方に腕54bが配置され、かつ、回転アクチュエータ2aの回転軸32に腕54bが直接固定されている。
このような構成とすることで、図7Aの状態から回転アクチュエータ2aを動作させ、回転軸32を反時計回りに回転させることで腕54bが反時計回りに回転動作を行うようになり、図7Bの状態となる。同様に、回転軸32を時計回りに回転させることで、腕54bを逆方向へ(すなわち、時計回りに)回転させることも可能となる。
よって、このような構成とすることで、回転アクチュエータ2aの有する動作効率に優れ、柔軟であるという特徴をそのまま引き継ぐ関節駆動ユニットが得られ、特に家庭用途に適したロボットアームにおける関節駆動ユニットを実現することができる。
(第3実施形態)
図3Aは、本発明にかかる第3実施形態の柔軟アクチュエータの一例としての回転アクチュエータ2bの概略を示した断面図である。また、図3Bには図3AにおけるA−A線の断面図を示している。なお、前述した第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。この第3実施形態の柔軟アクチュエータでも、座標軸のZ軸は上下方向の上向きと定義している。X軸はZ軸と直交する方向沿いでかつベース部材の一例である直方体箱形状のフレーム12cの1つの側面を厚さ方向に貫通する方向と定義している。また、Y軸はZ軸及びX軸とそれぞれ直交する方向沿いでかつ直方体箱形状のフレーム12cの前記側面に直交して隣接する側面を厚さ方向に貫通する方向と定義している。
この第3実施形態では、ガスシリンダ17の発生力を、押圧では無く、連結機構の一例である4個のワイヤ機構42a〜42dによる引っ張りによって伝達している。図3Aにおいて、ガスシリンダ17は、4本の支持部材(例えば、支柱)41a〜41dによってフレーム12cの中間部に固定されている。また、フレーム12c内のガスシリンダ17の下方に配置されてピストン18の下端が固定された円板状の板状部材19dには、ガスシリンダ17の発生力が伝達される。この円板状の板状部材19dには、板状部材19dの中心回りに90度間隔にかつそれぞれの直径方向がX軸又はY軸方向沿いとなるように板状部材19dに、4個のワイヤリール43a〜43dが配置されている。4個のワイヤリール43a〜43dはそれぞれ軸受け部などを介して板状部材19dに回転自由に保持されており、それぞれのワイヤリール43a〜43dの回転角度は、制御コンピュータ101により駆動制御されるモータ44a〜44dの回転軸の正逆回転によって変化するようになっている。ワイヤリール43a〜43dには、それぞれ、ワイヤ45a〜45dの一端が連結され、球面軸受けで板状部材19dに揺動自在に保持された下側の球状部材46a〜46dをワイヤ45a〜45dがそれぞれ貫通し、ワイヤ45a〜45dの他端が、球面軸受けで円板状の変速板15dに保持された上側の球状部材47a〜47dにそれぞれ連結されている。すなわち、制御コンピュータ101の指示によりモータ44a〜44dの回転軸がそれぞれ回転すると、同時にワイヤリール43a〜43dもそれぞれ回転し、ワイヤ45a〜45dの長さ(言い換えれば、上側の球状部材47a〜47dと下側の球状部材46a〜46dとの間の長さ、すなわち、変速板15dと板状部材19dとの間の長さ)がそれぞれ変化するようになる。また、変速板15dは、ワイヤ45a〜45dを介して伝達されるガスシリンダ17の発生力によって、後述する棒状突起14cの上端の半球面部に押圧されることになる。なお、変速板15dは、揺動板又は揺動部材の一例としても機能するものである。
一方で、変速板15dは、X軸方向に突出した軸部を備えたリング状部材33に対してX軸回りの回転が自由となるように軸受けなどを介して保持されており、同時にリング状部材33は、Y軸方向に突出した軸部を備えた外筒26bに対してY軸回りの回転が自由となるように軸受けなどを介して保持されている。また、外筒26bは、フレーム12cの上面の内面中央に下向きに固定された円筒状のスプライン軸である支持棒16に対してZ軸方向(支持棒16の軸方向)の往復移動のみが自由となるように保持されている。さらに、支持棒16に対して、回転部材の一例である回転円板48に回転軸部49aの下端が固定された回転軸49が、円筒状の支持棒16の中心部及びフレーム12cの上面の貫通穴12zを回転軸部49aが貫通した状態でそれぞれZ軸回りに軸受け部などを介して回転自由となるように保持されている。また、棒状突起14cにより回転円板48に与えられる回転出力は、回転軸部49a及びその上端に固定された円板部49bを介してZ軸回りの回転出力として回転アクチュエータ2bの外部に取り出さるようになっている。なお、回転軸部49aは、フレーム12cの貫通穴12zで小径部となっており、貫通穴12zの外部には、小径部よりも直径が大きい大径部を配置している。よって、回転軸部49aが下向きに力を受けたときには、回転軸部49aの大径部がフレーム12cの貫通穴12zの周囲に当接して、力をフレーム12cで受けることができるようにしている。
次に、制御コンピュータ101の制御の下で行われる、この回転アクチュエータ2bの作用を説明する。
回転アクチュエータ2bの回転軸49に作用する力は、ガスシリンダ17の発生力の大きさと変速板15dの傾きの大きさによって決定される。すなわち、ガスシリンダ17が発生する力(発生力)が図3Aの下方向に向かって作用するとき、その力(発生力)は、ピストン18、板状部材19d、板状部材19dの中心に対して回転対称となる位置(具体的には板状部材19dの中心周りの同一円周上の90度毎の位置に)に固定されたワイヤリール43a〜43d、ワイヤ45a〜45d、上側の球状部材47a〜47d、変速板15dと伝わり、変速板15dを棒状突起14cに押圧することになる。このとき、図3Aのように変速板15dが水平状態にある場合には、ガスシリンダ17の発生力は、棒状突起14cと、回転円板48と、回転軸49とを経てフレーム12cに伝わり、釣り合うことになる。一方、図3Cのように変速板15dが水平状態から傾いた傾斜状態(一例として、斜め左下がりの傾斜状態)となっている場合には、変速板15dから棒状突起14cへの力の伝達時に変速板15dと棒状突起14cの接触点において円周方向への力、すなわち回転円板48へのZ軸回りの反時計回りのトルクが働くことになる。反作用として、変速板15dに作用するZ軸回りの時計回りのトルクについては、支持棒16によって支えられることになる。また、図3Cとは逆方向に傾いた傾斜状態(斜め右下がりの傾斜状態)の場合には、回転円板48にはZ軸回りの時計回りのトルクが作用することになり、反作用として変速板15dに作用するZ軸回りの反時計回りのトルクについては、支持棒16によって支えられることになる。摺動等による損失を無視した静的な場合においては、この時計回りのトルクは、ガスシリンダ17の発生力と、変速板15dの水平状態から傾斜状態への角度変化に対する正接との積で表される。ただし、ここでいう角度変化とは、変速板15dと棒状突起14cとの接触点から回転軸49の回転軸部49aへの垂線回りの角度変化のことである。このことから、制御コンピュータ101が出力したい力の大きさに対応した傾きの大きさ(傾き角度)に変速板15dがなるように、モータ44a〜44dを駆動させることで、回転アクチュエータ2bの力制御が可能となる。
また、制御コンピュータ101の制御が及ばない高周波数帯域の外乱に対しても、ガスシリンダ17の弾性によって柔軟性が保たれるので、回転アクチュエータ2bは接触に対して安全な柔軟アクチュエータとなる。また、第2実施形態と同様に、回転アクチュエータ2bの外部から仕事がなされる場合にはガスシリンダ17に対してエネルギーが回生されることになる。
次に、回転アクチュエータ2bの駆動トルクを変化させる場合について説明する。この第3実施形態では、ワイヤ機構として、参照符号42a〜42dで示す4個のワイヤ機構を用いているが、変速板15dは、長さが不変の棒状突起14cに押圧されていることから、支持棒16に対してZ軸方向の変位とX軸回りの回転とY軸回りの回転の3自由度の動きを行うことになる。そのため、最小限必要となるワイヤ機構は3個ということになる。しかし、図3Aのように棒状突起14cと同じX方向位置にワイヤ45a、45cがあるような場合には、ガスシリンダ17の発生力をワイヤ機構42a、42cで支えることができる。このため、ワイヤ機構42b、42dはガスシリンダ17の発生力による影響を受けずに、ワイヤ機構42a、42cのみで、変速板15dの角度をY軸回りに変化させることが可能になり、回転アクチュエータ2bの駆動トルクを容易に変化させることができる。また、変速板15dの角度変化のみを行う場合には、ワイヤ機構42a、42cは変位しなくて良いので、変速板15dを保持さえできればよいことになる。ワイヤ機構を円周状に冗長的に配置することは、このような状態が、より多くの地点で得られることになるので、望ましい。さらに、ワイヤ機構を円周状に等間隔に配置することは、このような状態が回転軸49の回転角によるばらつき無く周期的に分布することになる。このため、目標とする各ワイヤ機構の伸縮量(言い換えれば、ワイヤ機構42a〜42dの上下方向沿いの移動方向における板状部材19dと変速板15dとの距離の調整量)を計算するのが容易になり、特定のワイヤ機構に負担がかかることもなくなることから、全体の制御性向上につながるので望ましい。
また、この第3実施形態では、上側の球状部材47a〜47dの回転中心(連結部の回転中心の一例)が、変速板15dと棒状突起14cが接触する面と同一平面上(略同一平面上)に位置するように配置している。このようにすることは、変速板15dの厚みによる影響を排除することができるので、望ましい。
なお、この第3実施形態では、連結機構としてワイヤ機構を用いているが、連結機構の構成としてはこれに限るものではなく、同様の作用を実現するものであれば、あらゆる公知技術の組み合わせが利用可能である。
なお、前記弾性機構の一例としてガスシリンダ17を挙げて説明したが、これに限られるものではなく、同様な作用を奏することができるものならば、バネで構成するようにしてもよい。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明にかかる柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットは、力制御が容易で、動作効率に優れたものであり、ロボットの関節駆動用アクチュエータ等及びそれを用いた関節駆動ユニット等として有用である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
本発明は、力制御が容易で、動作効率に優れた柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットに関する。
近年、医療用ロボット、家庭用サービスロボット、工場内での作業支援ロボット等、人と近い領域で動作するロボットへの期待が高まっている。このようなロボットでは、産業用ロボットとは異なり、人と接触した時の安全性確保が重要となる。接触時における衝撃を和らげるためには、接触点に作用する力を小さくする必要があることから、関節におけるトルクを制御し、ロボットアーム側から見て柔軟な関節とすることが必要となる。しかし、関節を駆動するアクチュエータを用いた力(トルク)制御では、応答周波数を無限に高めることはできず、ロボットアームが人に衝突する場合のように高周波数領域の力が作用する場合には対応することができない。通常、関節駆動にはモータと減速機の組み合わせが用いられており、ロボットアーム側から見た慣性は、モータ本来の慣性を減速比の自乗倍したものとなる。そのため、力制御が有効に作用しない状態では、極めて大きな力が接触点に作用することになるので、力制御のみに頼っていては十分な安全性を確保することができないことになる。
このような課題に対して、Series elastic actuators(SEA)と呼ばれる弾性体を介して、アクチュエータと負荷を接続する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記SEAは、アクチュエータによる制御ができない高周波数領域の力も弾性体の柔軟性により抑制されるので、常にアーム側から見て柔軟な関節が実現できる柔軟アクチュエータであり、より高い安全性が確保されるようになる。一方で、SEAでは弾性体を介して負荷と接続しているので、制御可能な周波数帯域は従来より低下することになる。このような欠点を補うために、高周波数用のアクチュエータを追加で備えるDistributed macro−mini actuation(DM2)という方式(例えば、非特許文献1参照)、又は、弾性体の剛性を可変とするVariable Stiffness Transmission(VST)という方式(例えば、非特許文献2参照)なども提案されている。
IEEE Robotics & Automation Magazine,Volume 11,Issue 2の12〜21ページ
IEEE Robotics & Automation Magazine,Volume 11,Issue 2の22〜33ページ
前記SEA、DM2、VST等の柔軟アクチュエータでは、弾性体を介してロボットアームとモータを接続することで、モータ側の慣性の影響を、ロボットアーム側からの入力に対して大幅に低減することを目指している。このことを逆に考えると、ロボットアーム側から入力されたエネルギーは、ダイレクトにモータ側には伝わらない構成ということになり、電気的にエネルギーの回生を行うのは困難ということになる。人と近い領域で動作するロボットでは、人との協調作業又は物を下ろす動作等、柔軟アクチュエータの外部から仕事が為される機会も多くなる。しかし、従来のエネルギーの回生を行えない柔軟アクチュエータでは、柔軟アクチュエータの外部から仕事が為される状態でも、アクチュエータ側はエネルギーを消費することになり、動作全体における効率が大きく悪化するという課題を有することになる。
従って、本発明の目的は、かかる点に鑑み、力制御が容易で、動作効率に優れた柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対して直線的に往復移動可能に保持される直動部材と、
前記直動部材の移動方向と略垂直な方向に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材に固定されかつ前記変位部材との距離に応じて弾性エネルギーを蓄えたり放出したりする弾性機構と、
前記変位部材との間の距離が2以上の連結機構により調整可能に前記変位部材と接続された変速部材と、
前記直動部材に突出して設けられ、前記弾性機構のエネルギーの放出により発生した力により前記変速部材に押圧される突起部材と、
前記連結機構の前記距離の調整動作を制御することで、前記変位部材と前記変速部材との相対位置及び相対角度を変化させる制御装置を備えることを特徴とする直動動作可能な柔軟アクチュエータを提供する。
本発明の第2態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対して回転自由に保持される回転部材と、
前記回転部材の回転軸方向と略同方向に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材に固定され前記変位部材との距離に応じて弾性エネルギーを蓄えたり放出したりする弾性機構と、
前記変位部材との間の距離が3以上の連結機構により調整可能に前記変位部材と接続された変速部材と、
前記回転部材の回転中心からずれた位置に突出して設けられ、前記弾性機構のエネルギーの放出により発生した力により前記変速部材に押圧される突起部材と、
前記連結機構の前記距離の調整動作を制御することで、前記変位部材と前記変速部材との相対位置及び相対角度を変化させる制御装置とを備えることを特徴とする揺動及び回転動作可能な柔軟アクチュエータを提供する。
本発明の第9態様によれば、第1〜8のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを提供する。
よって、本発明によれば、動作効率の優れた柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを得ることができる。すなわち、本発明によれば、直動部材には、弾性機構のエネルギーの放出により発生した力が変速部材の傾きの大きさに応じて変速された状態で出力されるので、力制御が変速部材の傾きの大きさの制御で容易に行えるようになるとともに、高周波数領域の力が作用する場合にも、弾性機構の弾性により発生力が抑制される柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットが得られることになる。また、直動部材の変位は弾性機構の変位と連動しているので、アクチュエータの外部から仕事が為される場合にアクチュエータに入力されるエネルギーは、弾性機構において蓄積されることになるので、動作効率の向上も図れるようになる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。
図1Aは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの概略を示す斜視図である。
図1Bは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの概略を示す、図1AのX−X線断面図である。
図1Cは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの概略を示す、図1BのY−Y線断面図である。
図1Dは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの駆動時の概略を示す、図1AのX−X線断面図である。
図1Eは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータの概略を示す、図1BのA−A線断面図である。
図2Aは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータの概略を示す断面図である。
図2Bは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータの概略を示す上面図である。
図2Cは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータの概略を示す、図2AのA−A線断面図である。
図2Dは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータの駆動時の概略を示す断面図である。
図2Eは、本発明の第2実施形態の変形例として、回転アクチュエータの異なる構成例における概略を示す断面図である。
図2Fは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータにおいて、図2Aの変速板付近の拡大図である。
図3Aは、本発明の第3実施形態による回転アクチュエータの概略を示す断面図である。
図3Bは、本発明の第3実施形態による回転アクチュエータの概略を示す、図3AのA−A線断面図である。
図3Cは、本発明の第3実施形態による回転アクチュエータの駆動時の概略を示す断面図である。
図4は、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す斜視図である。
図5Aは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す正面図である。
図5Bは、本発明の第1実施形態による直動アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す正面図である。
図6は、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す斜視図である。
図7Aは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す側面図である。
図7Bは、本発明の第2実施形態による回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す側面図である。
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対して直線的に往復移動可能に保持される直動部材と、
前記直動部材の移動方向と略垂直な方向に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材に固定されかつ前記変位部材との距離に応じて弾性エネルギーを蓄えたり放出したりする弾性機構と、
前記変位部材との間の距離が2以上の連結機構により調整可能に前記変位部材と接続された変速部材と、
前記直動部材に突出して設けられ、前記弾性機構のエネルギーの放出により発生した力により前記変速部材に押圧される突起部材と、
前記連結機構の前記距離の調整動作を制御することで、前記変位部材と前記変速部材との相対位置及び相対角度を変化させる制御装置を備えることを特徴とする直動動作可能な柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、直動部材には弾性機構の発生力が変速部材の傾きの大きさに応じて変速された状態で出力されるので、力制御が変速部材の傾きの大きさの制御で容易に行えるようになるとともに、高周波数領域の力が作用する場合にも弾性機構の弾性により発生力が抑制される柔軟アクチュエータが得られることになる。また、直動部材の変位は弾性機構の変位と連動しているので、柔軟アクチュエータの外部から仕事が為される場合にアクチュエータに入力されるエネルギーは、弾性機構において蓄積されることになるので、動作効率の向上も図れるようになる。従って、動作効率の優れた柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第2態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対して回転自由に保持される回転部材と、
前記回転部材の回転軸方向と略同方向に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材に固定され前記変位部材との距離に応じて弾性エネルギーを蓄えたり放出したりする弾性機構と、
前記変位部材との間の距離が3以上の連結機構により調整可能に前記変位部材と接続された変速部材と、
前記回転部材の回転中心からずれた位置に突出して設けられ、前記弾性機構のエネルギーの放出により発生した力により前記変速部材に押圧される突起部材と、
前記連結機構の前記距離の調整動作を制御することで、前記変位部材と前記変速部材との相対位置及び相対角度を変化させる制御装置を備えることを特徴とする揺動及び回転動作可能な柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、回転部材には、弾性機構の発生力が変速部材の傾きの大きさに応じて変速された状態で出力されるので、トルク制御が変速部材の傾きの大きさの制御で容易に行えるようになるとともに、高周波数領域の力が作用する場合にも弾性機構の弾性により発生力が抑制される柔軟アクチュエータが得られることになる。また、回転部材の回転は弾性機構の変位と連動しているので、柔軟アクチュエータの外部から仕事が為される場合にアクチュエータに入力されるエネルギーは、弾性機構において蓄積されることになるので、動作効率の向上も図れるようになる。従って、動作効率の優れた柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第3態様によれば、前記連結機構が、円周状に等間隔で配置されていることを特徴とする第2の態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、回転部材の角度による制御性のばらつきが最も少なくなり、より制御性に優れた柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第4態様によれば、前記突起部材と前記変速部材の接触点が、前記連結機構と前記変速部材との接触点若しくは連結部における回転中心を含み、前記変位部材の変位方向への高さを持つ楕円柱の側面と略同一面上にあることを特徴とする第2〜3のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、突起部材と変速部材の接触点を中心に、回転部材の半径方向へ変速部材を傾かせるために必要な連結機構の仕事量が小さくすることができる。従って、動作効率のより高い柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第5態様によれば、前記突起部材と前記変速部材の接触点が、前記連結機構と前記変速部材との接触点若しくは連結部における回転中心を含む平面と略同一面上にあることを特徴とする第1〜4のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、突起部材と変速部材の接触点を中心に、突起部材の移動方向へ変速部材を傾かせるために必要な連結機構の仕事量が小さくすることができる。従って、動作効率のより高い柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第6態様によれば、前記弾性機構がラム形シリンダ若しくはピストン両側の圧力室間で流体移動が可能な片ロッドシリンダであることを特徴とする第1〜5のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、変位部材との距離が変化することによる弾性機構の発生力変化が小さくなるので、より力制御が容易な柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第7態様によれば、前記連結機構が、前記変位部材より前記変位部材の変位方向と略平行に、前記変位部材と前記変速部材との間の距離を調整可能であり、前記変速部材に対して前記弾性機構の発生力により押圧される機構であることを特徴とする第1〜6のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、連結機構の保持は一自由度の動きのみを考慮すれば良くなるので、高剛性な保持が容易になる。従って、制御性に悪影響を及ぼす不必要な動きが減少するので、力制御のより容易な柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第8態様によれば、前記連結機構が、前記変位部材と前記変速部材のそれぞれと回転自在に連結されるとともに、両接続点間の距離が可変調整できる機構であることを特徴とする第1〜6のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、連結機構が変速部材に対して伸張方向の力だけでなく収縮方向の力も発生することができるようになるので、連結機構の伸縮を用いた変速部材の位置及び角度の制御が容易になる。従って、より力制御の容易な柔軟アクチュエータを得ることができる。
本発明の第9態様によれば、第1〜8のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを提供する。
このような構成によれば、前記第1〜8のいずれか1つの態様に記載の柔軟アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを構成することができて、前記柔軟アクチュエータの作用効果を奏することができる関節駆動ユニットを得ることができる。
以下、本発明の種々の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明にかかる第1実施形態の柔軟アクチュエータの一例としての直動アクチュエータ1の概要を示した斜視図であり、図1Bは図1AのX−X線の断面図、図1Cは図1BのY−Y線の断面図をそれぞれ示している。また、図1Eには図1BにおけるA−A線の断面図を示している。図1A〜図1Cにおける、上下方向沿いに長尺な直方体箱形状のフレーム12aはベース部材の一例である。フレーム12aの上面の内側には、前記上下方向とは直交する横方向沿いに延びるように一対の互いに平行なガイドレール13a、13bが固定されている。板状の直動部材11は、ガイドレール13a、13bに、図1Bの横方向に往復移動自由(左右方向に移動自由)となるように接続されている。直線的なガイドレール13a、13bは、直動部材11の上面の一対の互いに平行なガイド溝部11g,11gに摺動自在にはめ込まれて、前記横方向沿いに直線的に往復移動可能に案内されている。フレーム12aの上部の前後側面には、直動部材11が出入り自在な貫通口12pが形成されている。また、直動部材11には、その下面に、幅方向中心に対して対称となる位置に、下向きに延びた突起部材の一例としての棒状突起14a、14bの上端が固定されており、棒状突起14a、14bの下端の半球面部が、変速部材の一例である四角形板状(例えば正方形)の変速板15aの上面に対して転がり接触するようになっている。変速板15aは、上下方向と交差する方向に板面が配置され、直動部材11の移動方向と直交する幅方向において、中央部15pが両端部15qに対してくぼんだ形状の段付き形状をしており、中央部15pの上面に対して棒状突起14a、14bの下端の半球面部が転がり接触するようにしている。後述するように、変速板15aの中央部15pの上面と両端部15qの下面は同一平面上(略同一平面上)に位置するように形成されている。この変速板15aは、揺動板又は揺動部材の一例としても機能するものである。
なお、直動部材11の中央には、直動部材11の移動方向沿いに細長い貫通口11pが形成されており、下記の支持棒16により、直動部材11の移動が邪魔されないようにしている。
フレーム12aの上面の内面中央には、支持棒16の上端が固定されており、フレーム12aの上面から支持棒16が下向きに延びて配置され、直動部材11の中央の貫通口11pを貫通している。この支持棒16の中間部の外周面には、外筒26aが、図1Bの上下方向の移動のみが自由となるように保持されている。この外筒26aに対して、変速板15aが、図1Bの紙面垂直軸回りの回転が自由となるように軸により保持されている。
一方で、フレーム12aの底面には、弾性機構の一例であるガスシリンダ17が上下方向沿いに固定されている。ガスシリンダ17は、内部に高圧ガスを蓄え、ラム形のピストン18を図1Bの上下方向に移動可能なように保持する構造となっている。ピストン18に対しては、ピストン18の断面積と高圧ガスの圧力の積に相当する力(以後、「発生力」と称する。)が、図1Bの上方向に加わるようになっている。また、ピストン18の先端には、直動部材11の移動方向と略垂直な方向に変位可能な変位部材の一例である四角形状(例えば長方形)の板状部材19aが上下方向と交差する方向にその板面が配置されるように接続されている。板状部材19aには、10個のボールねじナット20a〜20jが2列になって固定されている。具体的には、ボールねじナット20a〜20e、ボールねじナット20f〜20jのそれぞれが等間隔で1列をなし、それぞれの列は板状部材19aの中心線に対して線対称の位置に配置されている。ボールねじナット20a〜20jは、それぞれ連結機構の一例である10個のボールねじ機構21a〜21jと連結されている。ところで、図1Bには、ボールねじナット20a〜20e及びボールねじ機構21a〜21eのみが示されている。図1Bでは、ボールねじナット20f〜20j及びボールねじ機構21f〜21jは、それぞれ、ボールねじナット20a〜20e及びボールねじ機構21a〜21eと向かい合う位置にある要素を表している。また、ボールねじ機構21a〜21jは、それぞれ、モータ22a〜22jと、上下方向沿いに配置されたねじ軸23a〜23jと、上下方向沿いに配置された保持部材24a〜24jとより構成されている。そして、モータ22a〜22jは保持部材24a〜24jにそれぞれ固定されるとともに、モータ22a〜22jの回転軸はねじ軸23a〜23jの下端とそれぞれ連結されている。また、ねじ軸23a〜23jは、保持部材24a〜24jに軸受け部などを介して回転自由にそれぞれ保持される。また、ボールねじナット20a〜20jにそれぞれねじ込まれて貫通している。よって、このような構成によれば、モータ22a〜22jの回転軸が正逆回転することで、モータ22a〜22jの回転軸に連結されたねじ軸23a〜23jがそれぞれ正逆回転する。すると、ねじ軸23a〜23jがねじ込まれたボールねじナット20a〜20jの位置がねじ軸23a〜23j上を、それぞれ、ねじ軸23a〜23jの軸方向沿いに(言い換えれば、前記下方向沿いに)往復移動することになる。ねじ軸23a〜23jの上端の半球面部は、変速板15aの両端部15qの下面と転がり接触するようになっている。
制御装置の一例としての制御コンピュータ101がモータ22a〜22jにそれぞれ接続されている。制御コンピュータ101によりモータ22a〜22jの駆動がそれぞれ制御されることで、板状部材19aと変速板15aとの相対位置及び相対角度が変化するようになる。
さらに、保持部材24a〜24jは、フレーム12aに上下方向沿いに固定されたガイドレール25a〜25jに、図1Bの上下方向沿いに移動自由となるように接続されている。このようにすることで、ボールねじ機構21a〜21jの伸縮方向(言い換えれば、ボールねじナット20a〜20jの上下方向沿いの移動方向における板状部材19aと、変速板15aとの距離を調整可能(長短可能)な方向)以外の自由度に関して、高剛性に保持することが可能になる。
次に、制御コンピュータ101の制御の下で行われる、この直動アクチュエータ1の作用を説明する。
直動アクチュエータ1の直動部材11に作用する力は、ガスシリンダ17の発生力と変速板15aの傾きの大きさによって決定される。すなわち、ガスシリンダ17が発生する力(発生力)が図1Bの上方向に向かって作用するとき、その力は、ピストン18、板状部材19a、ボールねじナット20a〜20j、ボールねじ機構21a〜21jのねじ軸23a〜23j、変速板15aと伝わる。その結果、変速板15aを棒状突起14a、14bに向けて押圧することになる。このとき、図1Bのように変速板15aが水平状態(上下方向と直交する方向沿いの状態)にある場合には、ガスシリンダ17の発生力は、棒状突起14a、14b、直動部材11、ガイドレール13a、13bを経てフレーム12aに伝わり、釣り合うことになる。一方、図1Dのように変速板15aが前記水平状態から傾いている傾斜状態(図1Dでは、変速板15aの左端が下方にかつ右端が上方になるように右上方向に傾斜した状態)になった場合には、変速板15aと棒状突起14a、14bの接触点において横方向(図1Dでは左方向)への力が働くことになる。変速板15aに作用する右方向への力については、支持棒16によって支えられることになるが、直動部材11に作用する左方向への力については、そのまま出力されることになる。摺動等による損失を無視した静的な場合だと、この左方向への力は、ガスシリンダ17の発生力と、変速板15aの水平状態からの角度変化に対する正接との積で表される。このことから、制御コンピュータ101が出力したい力に対応した傾き角度に、変速板15aがなるように、モータ22a〜22jを駆動させることで、直動アクチュエータ1の力制御が可能となる。
また、制御コンピュータ101の制御が及ばない高周波数帯域の外乱に対しても、ガスシリンダ17の弾性によって柔軟性が保たれるので、直動アクチュエータ1は接触に対して安全な柔軟アクチュエータとなる。
ところで、ガスシリンダ17の発生力は、ピストン18の断面積と高圧ガスの圧力の積で表され、高圧ガスの圧力はピストン18がシリンダ17に挿入される量により変化するものの、シリンダ17の内径をピストン18の直径より大きくすることで、その変化量は小さくすることができる。すなわち、この第1実施形態のようなガスシリンダ17は、ピストン18の変位に対する発生力の変化を小さくすることができる。さらに、ピストン18に貫通穴を設けてピストン18の両側の圧力室間の圧力差を無くした片ロッドシリンダ18のようにこの第1実施形態のガスシリンダ17と同等の効果が得られる弾性機構も、ピストン18の変位に対する発生力の変化を小さくすることができる点で望ましい。
また、図1Dにおいて、直動部材11が左方向に移動するような状況に直動アクチュエータ1がある場合、直動アクチュエータ1は、柔軟アクチュエータの外部に対して仕事を行っていることになる。すなわち、制御コンピュータ101がモータ22a〜22jの駆動を静止させている場合、直動部材11が左方向に移動するに従って、ガイドレール25a〜25jに沿って保持部材24a〜24jがフレーム12aに対して図1Dの上方向に移動する。すると、保持部材24a〜24jに支持されたボールねじ機構21a〜21jのねじ軸23a〜23jと連結されたボールねじナット20a〜20jを介して、板状部材19aは図1Dの上方向に移動することになる。このとき、ガスシリンダ17が失うポテンシャルエネルギーによって、直動アクチュエータ1は、直動アクチュエータ1の外部に対して仕事を行うことになる。
逆に、直動部材11が右方向に移動するような状況に直動アクチュエータ1がある場合、直動アクチュエータ1は、直動アクチュエータ1の外部から仕事をされることになる。すなわち、制御コンピュータ101がモータ22a〜22jの駆動を静止させている場合、直動部材11が右方向に移動するに従って、ガイドレール25a〜25jに沿って保持部材24a〜24jがフレーム12aに対して図1Dの下方向に移動する。すると、保持部材24a〜24jに支持されたボールねじ機構21a〜21jのねじ軸23a〜23jと連結されたボールねじナット20a〜20jを介して、板状部材19aは図1Dの下方向に移動することになる。このとき、直動アクチュエータ1の外部が直動アクチュエータ1にした仕事により、ガスシリンダ17にポテンシャルエネルギーが蓄えられることになる。
このように、直動アクチュエータ1は、直動アクチュエータ1の外部に対して仕事をするだけでなく、直動アクチュエータ1の外部からの仕事により直動アクチュエータ1の内部にエネルギーを蓄える回生動作が行えることになる。よって、回生の行えないアクチュエータに比べて、前記第1実施形態の直動アクチュエータ1は、動作効率の向上を図ることができるようになる。
さらに、直動アクチュエータ1の駆動力は変速板15aの傾きの大きさにより制御されるので、ガスシリンダ17のポテンシャルエネルギーを短時間に放出することで、大きな出力を得ることもできる。ガスシリンダ17のポテンシャルエネルギーを補充する場合には、制御コンピュータ101によりボールねじ機構21a〜21jを動作させ、板状部材19aを押し下げてやればよい。直動アクチュエータ1の出力に要求されるピークパワーと平均パワーに大きな差がある場合には、短時間に放出したポテンシャルエネルギーの補充は時間をかけて行えばよいことになるので、モータ22a〜22jに要求されるパワーはピークパワーに比べて小さくて良いことになる。また、板状部材19aの押し下げを複数のボールねじ機構21a〜21jが制御コンピュータ101の制御の下に協力して行うことで、さらに、モータ22a〜22jの1つあたりに要求されるパワーを下げることができる。
次に、直動アクチュエータ1の駆動力を変化させる場合について説明する。この第1実施形態ではボールねじ機構として、参照符号21a〜21jで示す10個のボールねじ機構を用いている。変速板15aは、長さが不変の棒状突起14a、14bに押圧されていることから、支持棒16に対して上下位置と角度の2自由度の動きを行うことになる。そのため、最小限必要となるボールねじ機構は2個ということになる。しかし、図1Cのように、棒状突起14a、14bと同じ位置、すなわち、支持棒16に対して左右方向の位置にねじ軸23b、23gがあるような場合には、ガスシリンダ17の発生力を、前記ねじ軸23b、23gを有するボールねじ機構21b、21gで支えることができる。このため、他のボールねじ機構はガスシリンダ17の発生力による影響を受けずに、ボールねじ機構21b、21gによってのみ、変速板15aの角度を変化させることが可能になり、直動アクチュエータ1の駆動力を容易に変化させることができる。
また、変速板15aの角度変化のみを行う場合には、ボールねじ機構21b、21gは変位しなくて良いので、変速板15aを保持さえできればよいことになる。ボールねじ機構を冗長的に配置することは、このような状態が、より多くの地点で得られることになるので、望ましい。
また、この第1実施形態では、変速板15aを、その中央部15pがその両端部15qに対してくぼんだ形状の段付き形状とし、棒状突起14a、14bが接触する面(中央部15pの上面)と、ねじ軸23a〜23jが接触する面(両端部15qの下面)が同一平面上(略同一平面上)となるようにしている。これに対して、段を持たない変速板の場合、例えば、図1Bの状態から変速板15aの傾きの大きさを変化させた場合に、変速板15aと棒状突起14a、14bとの接触点と変速板15aとねじ軸23b、23gとの接触点との上下方向距離が変速板の厚みの影響により変化することになる。このため、その分、板状部材19aを下降させる必要が生じ、傾きの大きさを変化させるのにポテンシャルエネルギー増加分のエネルギーが必要となってしまう。従って、変速板15aを第1実施形態のように段付き形状として、変速板15aと棒状突起14a、14bとの接触点と変速板15aとねじ軸23b、23gとの接触点が同一平面(略同一平面上)上に位置することは、変速板15aの厚みによる影響を排除することができるので、望ましい。
なお、この第1実施形態では、連結機構の一例としてボールねじ機構21a〜21jを用いているが、連結機構の構成としてはこれに限るものではなく、同様の作用を実現するものであれば、あらゆる公知技術の組み合わせが利用可能である。
さらに、第1実施形態における直動アクチュエータ1を用いた関節駆動ユニットの構成例を図4に示す。直動アクチュエータ1の直動部材11には、C字形状の側面を有する出力伝達部材51が連結されるとともに、出力伝達部材51上にはラック52が固定されている。一方、フレーム12dの上方に配置された腕54aの下端にはピニオン53が固定されており、ラック52とかみ合っている。また、腕54aの下端とフレーム12dの上端は軸55を介して回転自在に連結されている。
このような構成とすることで、図5Aの状態から直動アクチュエータ1を動作させ、直動部材11を右方向に移動させると、ラック52及びピニオン53を介して腕54aがフレーム12dに対して軸55回りに時計回りに回転動作を行うようになり、図5Bの状態となる。同様に、直動部材11を左方向に移動させることで、フレーム12dに対して腕54aを逆方向へ(すなわち、軸55回りに反時計回りに)回転させることも可能となる。
よって、このような構成とすることで、直動アクチュエータ1の有する動作効率に優れ、柔軟であるという特徴をそのまま引き継ぐ関節駆動ユニットが得られ、特に家庭用途に適したロボットアームにおける関節駆動ユニットを実現することができる。
なお、関節駆動ユニットの構成方法としては、ラック・アンド・ピニオン機構を用いたものに限るものではなく、同様の作用を実現するものであれば、あらゆる公知技術の組み合わせが利用可能である。
(第2実施形態)
図2Aは、本発明にかかる第2実施形態の柔軟アクチュエータの一例としての回転アクチュエータ2aの概略を示した断面図である。また図2Bには回転アクチュエータ2aの上面図を示し、図2Cには図2AにおけるA−A線の断面図を示している。図2Fは、図2Aの変速板15b付近の拡大図である。なお、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。この第2実施形態の柔軟アクチュエータでは、座標軸のZ軸は上下方向の上向きと定義している。X軸はZ軸と直交する方向沿いでかつベース部材の一例である直方体箱形状のフレーム12bの1つの側面を厚さ方向に貫通する方向と定義している。また、Y軸はZ軸及びX軸とそれぞれ直交する方向沿いでかつ直方体箱形状のフレーム12bの前記側面に直交して隣接する側面を厚さ方向に貫通する方向と定義している。
この第2実施形態では、第1実施形態における変速板15aに相当するものとして、変速部材の一例である円板状の変速板15bを用いて回転運動を出力している。変速板15bは、X軸方向に突出した軸部を備えたリング状部材33に対してX軸回りの回転が自由となるように軸受けなどを介して保持されている。同時に、リング状部材33は、フレーム12aの上面の内面中央に下向きに固定されたスプライン軸である支持棒16に対してZ軸方向(支持棒16の軸方向)の往復移動のみが自由となるように保持されておりかつY軸方向に突出した軸部を備えた外筒26bに対して、Y軸回りの回転が自由となるように軸受けなどを介して保持されている。さらに、支持棒16に対しては、回転部材の一例である傘歯車31がZ軸回りに軸受けなどを介して回転自由となるように保持されている。また、傘歯車31の下面には、突起部材の一例としての1本の棒状突起14cが回転中心より離れた位置に下向きに延びて設けられており、下端の半球面部が変速板15bの円形中央部15rの上面に対して転がり接触するようになっている。また、変速板15bの円形中央部15r周りの円環状の外周部15sの下面には、ねじ軸23a〜23jの上端の半球面部が転がり接触するようになっている。先の第1実施形態と同様な理由で、変速板15bの円形中央部15rの上面と円環状の外周部15sの下面は同一平面上(略同一平面上)に位置するように形成されている。
なお、変速板15bは、揺動板又は揺動部材の一例としても機能するものである。
傘歯車31の回転出力は、ベース部材の一例であるフレーム12bの上面の開口部12qに形成された一対の軸受け部12rに対して軸受け部などを介して回転自由に保持された傘歯車付きの回転軸(傘歯車31が固定された回転軸)32を介して、Y軸回りの正逆回転出力として回転アクチュエータ2aの外部に取り出さるようになっている。なお、傘歯車付きの回転軸32の傘歯車32aは回転軸32に固定されかつ傘歯車31とかみ合っており、傘歯車31の正逆回転により傘歯車32aが回転軸32と共に正逆回転するようにしている。
次に、制御コンピュータ101の制御の下で行われる、この回転アクチュエータ2aの作用を説明する。
回転アクチュエータ2aの傘歯車31に作用する力は、ガスシリンダ17の発生力の大きさと変速板15bの傾きの大きさによって決定される。すなわち、ガスシリンダ17が発生する力(発生力)が図2Aの上方向に向かって作用するとき、その力(発生力)は、ピストン18、円板状の板状部材19b、板状部材19bの中心に対して回転対称となる位置(具体的には板状部材19bの中心周りの同一円周上の90度毎の位置に)に固定されたボールねじナット20a〜20d、ボールねじナット20a〜20dに対応して配置されたボールねじ機構21a〜21dのねじ軸23a〜23d、変速板15bと伝わり、変速板15bを棒状突起14cに押圧することになる。このとき、図2Aのように変速板15bが水平状態にある場合には、ガスシリンダ17の発生力は棒状突起14c、傘歯車31、支持棒16を経てフレーム12bに伝わり、釣り合うことになる。一方、図2Dのように変速板15bが水平状態から傾いた傾斜状態(一例として、斜め左下がりの傾斜状態)となっている場合には、変速板15bから棒状突起14cへの力の伝達時に変速板15bと棒状突起14cの接触点において円周方向への力、すなわち、傘歯車31へのZ軸回りの時計回りのトルクが働くことになる。反作用として変速板15bに作用するZ軸回りの反時計回りのトルクについては、支持棒16によって支えられることになる。また、図2Dとは逆方向に傾いた傾斜状態(斜め右下がりの傾斜状態)の場合には、傘歯車31にはZ軸回りの反時計回りのトルクが作用することになり、反作用として変速板15bに作用するZ軸回りの時計回りのトルクについては、支持棒16によって支えられることになる。摺動等による損失を無視した静的な場合においては、図2Dにおいて傘歯車31に作用する時計回りのトルクは、ガスシリンダ17の発生力と、変速板15bの水平状態から傾斜状態への角度変化に対する正接との積で表される。ただし、ここでいう角度変化とは、変速板15bと棒状突起14cとの接触点から傘歯車31の回転軸への垂線回りの角度変化のことである。このことから、制御コンピュータ101が出力したい力の大きさに対応した傾きの大きさ(傾き角度)に変速板15bがなるように、モータ22a〜22dを駆動させることで、回転アクチュエータ2aの力制御が可能となる。
また、制御コンピュータ101の制御が及ばない高周波数帯域の外乱に対しても、ガスシリンダ17の弾性によって柔軟性が保たれるので、回転アクチュエータ2aは接触に対して安全な柔軟アクチュエータとなる。
図2Dにおいて、傘歯車31がZ軸回りの時計回りに回転するような状況に回転アクチュエータ2aがある場合、回転アクチュエータ2aは、回転アクチュエータ2aの外部に対して仕事を行っていることになる。すなわち、制御コンピュータ101がモータ22a〜22dの駆動を静止させている場合、傘歯車31がZ軸回りの時計回りに回転するに従って、板状部材19bは図2Dの上方向に移動することになる。このとき、ガスシリンダ17が失うポテンシャルエネルギーによって、回転アクチュエータ2aは、回転アクチュエータ2aの外部に対して仕事を行うことになる。
逆に、傘歯車31がZ軸回りの反時計回りに回転するような状況に回転アクチュエータ2aがある場合、回転アクチュエータ2aは、回転アクチュエータ2aの外部から仕事をされることになる。すなわち、制御コンピュータ101がモータ22a〜22dの駆動を静止させている場合、傘歯車31がZ軸回りの反時計回りに回転するに従って、板状部材19bは図2Dの下方向に移動することになり、回転アクチュエータ2aの外部が回転アクチュエータ2aにした仕事により、ガスシリンダ17にポテンシャルエネルギーが蓄えられることになる。
このように、回転アクチュエータ2aは、回転アクチュエータ2aの外部に対して仕事をするだけでなく、回転アクチュエータ2aの外部からの仕事により回転アクチュエータ2aの内部にエネルギーを蓄える回生動作が行えることになる。よって、回生の行えないアクチュエータに比べて、前記第2実施形態の回転アクチュエータ2aは、動作効率の向上を図ることができるようになる。
さらに、回転アクチュエータ2aの駆動力は変速板15bの傾きの大きさにより制御されるので、ガスシリンダ17のポテンシャルエネルギーを短時間に放出することで、大きな出力を得ることもできる。ガスシリンダ17のポテンシャルエネルギーを補充する場合には、制御コンピュータ101によりボールねじ機構21a〜21dを動作させ、板状部材19bを押し下げてやればよい。回転アクチュエータ2aの出力に要求されるピークパワーと平均パワーに大きな差がある場合には、短時間に放出したポテンシャルエネルギーの補充は時間をかけて行えばよいことになるので、モータ22a〜22dに要求されるパワーはピークパワーに比べて小さくて良いことになる。また、板状部材19bの押し下げを複数のボールねじ機構21a〜21dが制御コンピュータ101の制御の下に協力して行うことで、さらに、モータ22a〜22dの1つあたりに要求されるパワーを下げることができる。
次に、回転アクチュエータ2aの駆動トルクを変化させる場合について説明する。この第2実施形態では、ボールねじ機構として、参照符号21a〜21dで示す4個のボールねじ機構を用いている。変速板15bは、長さが不変の棒状突起14cに押圧されていることから、支持棒16に対してZ軸方向の変位とX軸回りの回転とY軸回りの回転の3自由度の動きを行うことになる。そのため、最小限必要となるボールねじ機構は3個ということになる。しかし、図2Dのように棒状突起14cと同じY方向位置にねじ軸23b、23dがあるような場合には、ガスシリンダ17の発生力をボールねじ機構21b、21dで支えることができる。このため、ボールねじ機構21a、21cはガスシリンダ17の発生力による影響を受けずに、ボールねじ機構21b、21dによってのみ、変速板15bの角度をX軸回りに変化させることが可能になり、回転アクチュエータ2aの駆動トルクを容易に変化させることができる。また、変速板15bの角度変化のみを行う場合には、ボールねじ機構21b、21dは変位しなくて良い。このため、変速板15bを保持さえできればよいことになる。ボールねじ機構を円周状に冗長的に配置することは、このような状態が、より多くの地点で得られることになるので、望ましい。さらに、ボールねじ機構を円周状に等間隔に配置することは、このような状態が傘歯車31の回転角によるばらつき無く周期的に分布することになる。このため、目標とする各ボールねじ機構の伸縮量(言い換えれば、ボールねじナット20a〜20jの上下方向沿いの移動方向における板状部材19aと変速板15aとの距離の調整量)を計算するのが容易になり、特定のボールねじ機構に負担がかかることもなくなることから、全体の制御性向上につながるので望ましい。
また、この第2実施形態では、図2Fに拡大して示すように、変速板15bを、その中央部15rがその外周部15sに対してくぼんだ形状の段付き形状とし、棒状突起14cが接触する面(中央部15rの上面)と、ねじ軸23a〜23dが接触する面(外周部15sの下面)が同一平面上(略同一平面上)となるようにしている。これに対して、段を持たない変速板の場合、例えば、図2Aの状態から変速板15bの傾きの大きさを変化させた場合に、変速板15bと棒状突起14cとの接触点と変速板15bとねじ軸23b、23dとの接触点との上下方向距離が変速板の厚みの影響により変化することになる。このため、その分、板状部材19bを下降させる必要が生じ、傾きの大きさを変化させるのにポテンシャルエネルギー増加分のエネルギーが必要となってしまう。従って、変速板15bを第2実施形態のように段付き形状として、変速板15bと棒状突起14cとの接触点と変速板15bとねじ軸23b、23dとの接触点が同一平面上(略同一平面上)に位置することは、変速板15bの厚みによる影響を排除することができるので、望ましい。
一方で、図2Eに本発明の第2実施形態の変形例として示すように、変速板15bを、段の無い平板の変速板15cとし、棒状突起14cと変速板15cとの接触点が取りうる円周と、ねじ軸23a〜23dと変速板15cとの接触点が含まれる円周とが、Z軸方向に往復移動しただけの同一の円周となるように配置しても良い。すなわち、図2Eに示すように、前記突起部材の一例としての棒状突起14cと前記変速部材の一例である変速板15cの接触点が、前記連結機構の一例であるボールねじ機構と前記変速板15cとの接触点若しくは連結部における回転中心を含み、前記変位部材の一例である板状部材19bの変位方向への高さを持つ楕円柱の側面と略同一面上にあることを特徴としている。このようにすることで、例えば図2Eにおいて変速板15cをX軸回りに回転させる際に、ガスシリンダ17の発生力はボールねじ機構21cが支えることになる。このため、変速板15cの厚みによる影響はあるものの、ボールねじ機構21aが行う仕事を小さくすることが可能になる。なお、変速板15cは、揺動板又は揺動部材の一例としても機能するものである。
なお、この第2実施形態でも、連結機構としてボールねじ機構を用いているが、連結機構の構成としてはこれに限るものではなく、同様の作用を実現するものであれば、あらゆる公知技術の組み合わせが利用可能である。
さらに、第2実施形態における回転アクチュエータ2aを用いた関節駆動ユニットの構成例を図6に示す。回転アクチュエータ2aの上方に腕54bが配置され、かつ、回転アクチュエータ2aの回転軸32に腕54bが直接固定されている。
このような構成とすることで、図7Aの状態から回転アクチュエータ2aを動作させ、回転軸32を反時計回りに回転させることで腕54bが反時計回りに回転動作を行うようになり、図7Bの状態となる。同様に、回転軸32を時計回りに回転させることで、腕54bを逆方向へ(すなわち、時計回りに)回転させることも可能となる。
よって、このような構成とすることで、回転アクチュエータ2aの有する動作効率に優れ、柔軟であるという特徴をそのまま引き継ぐ関節駆動ユニットが得られ、特に家庭用途に適したロボットアームにおける関節駆動ユニットを実現することができる。
(第3実施形態)
図3Aは、本発明にかかる第3実施形態の柔軟アクチュエータの一例としての回転アクチュエータ2bの概略を示した断面図である。また、図3Bには図3AにおけるA−A線の断面図を示している。なお、前述した第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。この第3実施形態の柔軟アクチュエータでも、座標軸のZ軸は上下方向の上向きと定義している。X軸はZ軸と直交する方向沿いでかつベース部材の一例である直方体箱形状のフレーム12cの1つの側面を厚さ方向に貫通する方向と定義している。また、Y軸はZ軸及びX軸とそれぞれ直交する方向沿いでかつ直方体箱形状のフレーム12cの前記側面に直交して隣接する側面を厚さ方向に貫通する方向と定義している。
この第3実施形態では、ガスシリンダ17の発生力を、押圧では無く、連結機構の一例である4個のワイヤ機構42a〜42dによる引っ張りによって伝達している。図3Aにおいて、ガスシリンダ17は、4本の支持部材(例えば、支柱)41a〜41dによってフレーム12cの中間部に固定されている。また、フレーム12c内のガスシリンダ17の下方に配置されてピストン18の下端が固定された円板状の板状部材19dには、ガスシリンダ17の発生力が伝達される。この円板状の板状部材19dには、板状部材19dの中心回りに90度間隔にかつそれぞれの直径方向がX軸又はY軸方向沿いとなるように板状部材19dに、4個のワイヤリール43a〜43dが配置されている。4個のワイヤリール43a〜43dはそれぞれ軸受け部などを介して板状部材19dに回転自由に保持されており、それぞれのワイヤリール43a〜43dの回転角度は、制御コンピュータ101により駆動制御されるモータ44a〜44dの回転軸の正逆回転によって変化するようになっている。ワイヤリール43a〜43dには、それぞれ、ワイヤ45a〜45dの一端が連結され、球面軸受けで板状部材19dに揺動自在に保持された下側の球状部材46a〜46dをワイヤ45a〜45dがそれぞれ貫通し、ワイヤ45a〜45dの他端が、球面軸受けで円板状の変速板15dに保持された上側の球状部材47a〜47dにそれぞれ連結されている。すなわち、制御コンピュータ101の指示によりモータ44a〜44dの回転軸がそれぞれ回転すると、同時にワイヤリール43a〜43dもそれぞれ回転し、ワイヤ45a〜45dの長さ(言い換えれば、上側の球状部材47a〜47dと下側の球状部材46a〜46dとの間の長さ、すなわち、変速板15dと板状部材19dとの間の長さ)がそれぞれ変化するようになる。また、変速板15dは、ワイヤ45a〜45dを介して伝達されるガスシリンダ17の発生力によって、後述する棒状突起14cの上端の半球面部に押圧されることになる。なお、変速板15dは、揺動板又は揺動部材の一例としても機能するものである。
一方で、変速板15dは、X軸方向に突出した軸部を備えたリング状部材33に対してX軸回りの回転が自由となるように軸受けなどを介して保持されており、同時にリング状部材33は、Y軸方向に突出した軸部を備えた外筒26bに対してY軸回りの回転が自由となるように軸受けなどを介して保持されている。また、外筒26bは、フレーム12cの上面の内面中央に下向きに固定された円筒状のスプライン軸である支持棒16に対してZ軸方向(支持棒16の軸方向)の往復移動のみが自由となるように保持されている。さらに、支持棒16に対して、回転部材の一例である回転円板48に回転軸部49aの下端が固定された回転軸49が、円筒状の支持棒16の中心部及びフレーム12cの上面の貫通穴12zを回転軸部49aが貫通した状態でそれぞれZ軸回りに軸受け部などを介して回転自由となるように保持されている。また、棒状突起14cにより回転円板48に与えられる回転出力は、回転軸部49a及びその上端に固定された円板部49bを介してZ軸回りの回転出力として回転アクチュエータ2bの外部に取り出さるようになっている。なお、回転軸部49aは、フレーム12cの貫通穴12zで小径部となっており、貫通穴12zの外部には、小径部よりも直径が大きい大径部を配置している。よって、回転軸部49aが下向きに力を受けたときには、回転軸部49aの大径部がフレーム12cの貫通穴12zの周囲に当接して、力をフレーム12cで受けることができるようにしている。
次に、制御コンピュータ101の制御の下で行われる、この回転アクチュエータ2bの作用を説明する。
回転アクチュエータ2bの回転軸49に作用する力は、ガスシリンダ17の発生力の大きさと変速板15dの傾きの大きさによって決定される。すなわち、ガスシリンダ17が発生する力(発生力)が図3Aの下方向に向かって作用するとき、その力(発生力)は、ピストン18、板状部材19d、板状部材19dの中心に対して回転対称となる位置(具体的には板状部材19dの中心周りの同一円周上の90度毎の位置に)に固定されたワイヤリール43a〜43d、ワイヤ45a〜45d、上側の球状部材47a〜47d、変速板15dと伝わり、変速板15dを棒状突起14cに押圧することになる。このとき、図3Aのように変速板15dが水平状態にある場合には、ガスシリンダ17の発生力は、棒状突起14cと、回転円板48と、回転軸49とを経てフレーム12cに伝わり、釣り合うことになる。一方、図3Cのように変速板15dが水平状態から傾いた傾斜状態(一例として、斜め左下がりの傾斜状態)となっている場合には、変速板15dから棒状突起14cへの力の伝達時に変速板15dと棒状突起14cの接触点において円周方向への力、すなわち回転円板48へのZ軸回りの反時計回りのトルクが働くことになる。反作用として、変速板15dに作用するZ軸回りの時計回りのトルクについては、支持棒16によって支えられることになる。また、図3Cとは逆方向に傾いた傾斜状態(斜め右下がりの傾斜状態)の場合には、回転円板48にはZ軸回りの時計回りのトルクが作用することになり、反作用として変速板15dに作用するZ軸回りの反時計回りのトルクについては、支持棒16によって支えられることになる。摺動等による損失を無視した静的な場合においては、この時計回りのトルクは、ガスシリンダ17の発生力と、変速板15dの水平状態から傾斜状態への角度変化に対する正接との積で表される。ただし、ここでいう角度変化とは、変速板15dと棒状突起14cとの接触点から回転軸49の回転軸部49aへの垂線回りの角度変化のことである。このことから、制御コンピュータ101が出力したい力の大きさに対応した傾きの大きさ(傾き角度)に変速板15dがなるように、モータ44a〜44dを駆動させることで、回転アクチュエータ2bの力制御が可能となる。
また、制御コンピュータ101の制御が及ばない高周波数帯域の外乱に対しても、ガスシリンダ17の弾性によって柔軟性が保たれるので、回転アクチュエータ2bは接触に対して安全な柔軟アクチュエータとなる。また、第2実施形態と同様に、回転アクチュエータ2bの外部から仕事がなされる場合にはガスシリンダ17に対してエネルギーが回生されることになる。
次に、回転アクチュエータ2bの駆動トルクを変化させる場合について説明する。この第3実施形態では、ワイヤ機構として、参照符号42a〜42dで示す4個のワイヤ機構を用いているが、変速板15dは、長さが不変の棒状突起14cに押圧されていることから、支持棒16に対してZ軸方向の変位とX軸回りの回転とY軸回りの回転の3自由度の動きを行うことになる。そのため、最小限必要となるワイヤ機構は3個ということになる。しかし、図3Aのように棒状突起14cと同じX方向位置にワイヤ45a、45cがあるような場合には、ガスシリンダ17の発生力をワイヤ機構42a、42cで支えることができる。このため、ワイヤ機構42b、42dはガスシリンダ17の発生力による影響を受けずに、ワイヤ機構42a、42cのみで、変速板15dの角度をY軸回りに変化させることが可能になり、回転アクチュエータ2bの駆動トルクを容易に変化させることができる。また、変速板15dの角度変化のみを行う場合には、ワイヤ機構42a、42cは変位しなくて良いので、変速板15dを保持さえできればよいことになる。ワイヤ機構を円周状に冗長的に配置することは、このような状態が、より多くの地点で得られることになるので、望ましい。さらに、ワイヤ機構を円周状に等間隔に配置することは、このような状態が回転軸49の回転角によるばらつき無く周期的に分布することになる。このため、目標とする各ワイヤ機構の伸縮量(言い換えれば、ワイヤ機構42a〜42dの上下方向沿いの移動方向における板状部材19dと変速板15dとの距離の調整量)を計算するのが容易になり、特定のワイヤ機構に負担がかかることもなくなることから、全体の制御性向上につながるので望ましい。
また、この第3実施形態では、上側の球状部材47a〜47dの回転中心(連結部の回転中心の一例)が、変速板15dと棒状突起14cが接触する面と同一平面上(略同一平面上)に位置するように配置している。このようにすることは、変速板15dの厚みによる影響を排除することができるので、望ましい。
なお、この第3実施形態では、連結機構としてワイヤ機構を用いているが、連結機構の構成としてはこれに限るものではなく、同様の作用を実現するものであれば、あらゆる公知技術の組み合わせが利用可能である。
なお、前記弾性機構の一例としてガスシリンダ17を挙げて説明したが、これに限られるものではなく、同様な作用を奏することができるものならば、バネで構成するようにしてもよい。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明にかかる柔軟アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットは、力制御が容易で、動作効率に優れたものであり、ロボットの関節駆動用アクチュエータ等及びそれを用いた関節駆動ユニット等として有用である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。