JPWO2009063969A1 - Rna製造方法及びプロモーター - Google Patents

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Abstract

ロドビュルム属(Rhodovulum)に属する微生物を用いるRNAの製造方法であって、(1)前記RNAを転写可能なDNAを含む発現ベクターで前記微生物を形質転換する工程、(2)得られた形質転換体を培養する工程、及び(3)菌体外に生成されたRNAを回収する工程を含む、RNAの製造方法、並びに、新規プロモーターを開示する。

Description

本発明は、RNA製造方法及び新規プロモーターに関する。
RNAは自身の配列に依存して様々な機能を発揮することが知られている。例として、ある物質に対して特異的結合能を有する抗体様の機能を有するRNAアプタマー、酵素として働くRNAであるリボザイム、高等生物の内因性因子と共役して特定の遺伝子発現を抑えるRNAiシステムで働くノンコーディングRNAなどが挙げられる。これら機能的RNAは実際に医療、工学の分野において幅広く利用されつつあり、機能的RNAの大量合成は急務と考えられる。
現在のところ、これら機能的RNAの人工的な合成は専ら化学合成もしくは試験管内転写によりなされている。
一方、海洋性光合成細菌であるロドビュルム属に属する微生物が、増殖と共にフロックと呼ばれる菌の凝集体を形成し、その際同時に菌体外に核酸(DNA、RNA)を生成し、フロックの形成に利用していることが知られている。例えば、非特許文献1には、ロドビュルム属に属する微生物(Rhodovulum sp.PS88株)が、核酸分泌をフロック形成に利用していることが開示されている。また、非特許文献2には、ロドビュルム スルフィドフィラム(Rhodovulum sulfidophilum)の菌体外分泌核酸の配列を決定したところ、RNAに関しては、各種tRNA(全長)、並びに16S及び23S rRNA(断片)であり、これらのRNAは、修飾や分解せずに菌体内に存在するものと同様のものであることが開示されている。しかしながら、分泌が確認されたのは前記宿主由来のtRNA及びrRNAのみであって、任意のRNA、例えば、外来性RNA(前記宿主が通常保持しない遺伝子の転写産物)が分泌されるか否かは不明であった。
ところで、外来性RNAの分泌に関連して、本発明者は、以前、大腸菌を用いる外来性RNAのインビボ発現を試みたことがあった。具体的には、キイロショウジョウバエ(Drosophila)のイニシエーターメチオニンtRNAを大腸菌で発現させようと意図した実験を行ったが、インビボ発現ができないことが判明した。私信ではあるが、イニシエーターtRNAの世界的権威であるマサチューセッツ工科大学(MIT)のUttam RajBhandary教授も我々と同様に大腸菌では真核生物のイニシエーターtRNAは発現できないということをコメントしており、本発明者が知る限り、文献的にもそれに成功した報告を目にしたことはない。
本発明者が実施した実験の概略は、以下のとおりである。まず、市販のプラスミドベクターpGEM−3Z(プロメガ製)[インビボでイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)依存的にlac Zを発現することができるプラスミド]を出発材料として、lac ZのSD(Shine-Dalgarno)配列とイニシエーションコドンATGを欠失させたプラスミドベクター(以下、pDELTと称する)を作成した。このプラスミドベクターは、IPTGで発現誘導したRNAがリボソームと相互作用できないため、ノンコーディング(non-coding)RNAを発現させるのに適したベクターである。このベクターにショウジョウバエのイニシエーターメチオニンtRNA遺伝子を導入し、外来性RNAの大腸菌でのインビボ発現を試みたが、まず、このtRNA遺伝子を導入したプラスミド(を持つコロニー)が得られなかった。比較のために、別の市販のプラスミドベクターpGEM−2(lac Zを持たないため、DNA配列を導入しても、導入した配列がインビボでは転写されない)を用いたところ、容易に、このtRNA遺伝子をクローニングすることができた。これらの結果は、ベクターpGEM−3Z由来のベクターpDELTの場合、IPTG依存とはいうものの、リーキーな転写が起こる可能性があり、わずかでも転写されると何か大腸菌に不具合が起こるものと思われる。その他にも、tRNA断片等、どのような方法を用いても、ベクターpDELTにクローニングできない配列があることを確認している。なお、これらの断片の場合でも、逆方向(すなわち、マイナス鎖が転写される方向)のクローンは取得可能であった。
本発明者が過去に実施した上記実験あるいは本分野の世界的権威の上記コメントによれば、宿主と異なる外来性RNAの場合、どのようなRNAでも簡単にクローニングと発現ができるわけではないことを示している。
「アプライド・マイクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー(Applied Microbiology and Biotechnology)」,(独国),1998年,第50巻,p.682-691 「ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry)」,(日本国),2006年,第139巻,第4号,p. 805-811
現在用いられている前記の各RNA合成方法は、産業的応用における大量合成を考えた際、化学合成におけるRNA合成では最大鎖長は30塩基程度と短く、また化学合成及び試験管内転写においてもリボヌクレアーゼフリー(RNase free)の環境が必要とされ、合成の簡便さにおいて適していないと考えられる。またRNAを合成する際、これらの方法はコストの面において極めて高価であることから、RNAの大量合成には適していないという問題点が考えられる。
従って、本発明の課題は、従来技術のこれらの欠点を解消し、大量合成に適した、簡易で安価なRNA製造方法を提供することにある。
なお、これまで、RNAを菌体外で生成させることを目的としてインビボで発現させる系は、本発明者が知る限り、全く知られておらず、その発想自体全くないものであった。また、先述のとおり、非特許文献2には、自然現象として、宿主由来のRNAが菌体外に分泌されることが開示されているが、任意のRNA、特に外来性RNAが分泌されるか否かは不明であり、本発明以前には、RNAの菌体外生産系に利用するとの発想も全くなかった。
前記課題は、本発明による、ロドビュルム属(Rhodovulum)に属する微生物を用いるRNAの製造方法であって、
(1)前記RNAを転写可能なDNAを含む発現ベクターで前記微生物を形質転換する工程、
(2)得られた形質転換体を培養する工程、及び
(3)菌体外に生成されたRNAを回収する工程
を含む、RNAの製造方法により解決することができる。
本発明の製造方法の好ましい態様によれば、前記微生物が、ロドビュルム スルフィドフィラム(Rhodovulum sulfidophilum)である。
また、本発明は、
(A)配列番号9で表される塩基配列又はその部分配列を含み、且つ、ロドビュルム属(Rhodovulum)に属する微生物においてプロモーター活性を示すDNA、
(B)配列番号9で表される塩基配列又はその部分配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換、又は付加された塩基配列を含み、且つ、前記微生物においてプロモーター活性を示すDNA、及び
(C)配列番号9で表される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることのできる塩基配列を含み、且つ、前記微生物においてプロモーター活性を示すDNA
からなる群から選択されるDNA;
前記DNAを含む、発現ベクター;
前記発現ベクターを含む、形質転換体
に関する。
本発明によれば、増殖と共に菌体外に大量に核酸を生成する海洋性光合成細菌(特にロドビュルム スルフィドフィラム)を宿主とし、この光合成細菌に、目的RNA(例えば、前記宿主が通常持たない異種生物のRNAまたは生物界に見いだされていない人工RNA)配列と同様のDNA配列を組み込んだベクタープラスミドを導入して形質転換して、得られた形質転換体を用いることにより導入した任意のDNAの配列に応じて、様々なRNAを生産することができる。例えば、化学合成法では合成できなかった長鎖のRNAを生産することもできるし、あるいは、異種生物のRNA又は人工RNAを生産することもできる。
また、本発明によれば、形質転換体を培養することによりRNAを培養液中に合成することができるため、化学合成や試験管内転写によりRNAを合成するよりも簡易で、安価な人工RNAの生産方法として工業的に有利に利用することができる。例えば、化学合成法と比較すると、1/10以上の低コストで製造可能である。
本発明で使用する海洋性光合成細菌(特にロドビュルム スルフィドフィラム)は有害性がなく、その点でも優れている。
更に、本発明の新規プロモーターは、公知プロモーターと比較して、極めて高い転写活性を示し、本発明のRNA製造方法にも好適に用いることができる。
実施例1で使用したベクタープラスミドpPS100の構造を模式的に示す概念図である。 実施例1において、合成されたβ−ガラクトシダーゼ遺伝子のmRNAが菌体外に存在するか否かの確認を行った電気泳動の結果を示す図面である。 実施例2で使用したベクタープラスミドpCF−P5A3の構造を模式的に示す概念図である。 実施例2において、ベクタープラスミドに組み込んだインサート配列(プラスミドの配列も含む)の塩基配列及び構造を示す説明図である。 実施例2において、合成されたストレプトアビジンRNAアプタマーが菌体外に存在するか否かの確認を行った電気泳動の結果を示す図面である。 rrnプロモーターの塩基配列(配列番号9)および配列中の特徴的構造を示す説明図である。 実施例4で使用したベクタープラスミドpR2の構造と、前記プラスミドに組み込んだrrnプロモーターの塩基配列を示す説明図である。 pufプロモーターおよびrrnプロモーターによるβ−ガラクトシダーゼ活性を比較した結果を示すグラフである。 実施例5で使用したベクタープラスミドpCF−P5A3tのインサート配列を示す説明図である。 実施例5で使用したベクタープラスミドpRSAのインサート配列を示す説明図である。
本発明の製造方法は、
(1)製造対象RNAを転写可能なDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転換する工程、
(2)得られた形質転換体を培養する工程、及び
(3)菌体外に生成されたRNAを回収する工程
を含む。
本発明では、宿主として、増殖と共に菌体外に大量に核酸を生成する海洋性光合成細菌であるロドビュルム属(Rhodovulum)に属する微生物、好ましくはロドビュルム スルフィドフィラム(Ando, T. et al, J. Biochem. Vol. 139(4), 805-811, 2006)を使用する。ロドビュルム スルフィドフィラムは、増殖と共にフロックと呼ばれる菌の凝集体を形成し、その際同時に菌体外に核酸(DNA、RNA)を生成し、フロックの形成に利用している。この菌体外に生成されたRNAは修飾や分解せずに前記宿主の菌体内に存在するものと同様のものであるため、ベクタープラスミドにコードされている配列から転写されるRNAも同様にそのまま菌体外に生成される。
本発明の製造方法により製造することのできるRNAとしては、宿主に対する外来性RNA、すなわち、製造に使用する宿主に由来する天然RNAでない限り、特に限定されるものではなく、宿主以外の生物由来の天然RNA、あるいは、人工RNAを製造することができ、特に、機能性RNAが好ましい。より具体的には、RNAとして、mRNA、tRNA、rRNA、RNAアプタマー、酵素として働くRNAであるリボザイム、高等生物の内因性因子と共役して特定の遺伝子発現を抑えるRNAiシステムで働くノンコーディングRNA、siRNAに属するRNAを製造することができ、特にRNAアプタマー(例えば、50〜200nt)、リボザイム、siRNA(例えば、15〜25nt)であることが好ましい。RNAの長さも、特に限定されるものではないが、通常、15nt以上であれば製造可能であり、好ましくは100nt以上である。また、長さの上限は、通常、3000nt以下であれば製造可能であり、好ましくは200nt以下である。本発明の製造方法によれば、高次構造の有無にかかわらず、外来性RNAを製造することができるが、より好ましくは高次構造を持つものである。なお、本明細書において「機能性RNA」とは、構造的機能性RNA、すなわち、天然RNA又は人工RNAを問わず、そのRNA自体の三次構造等により機能を発揮することのできるRNAを意味し、例えば、tRNA、rRNA、RNAアプタマー、リボザイム、RNAiシステムで働くノンコーディングRNA、siRNAに属するRNAを挙げることができる。機能性RNAと相対する概念としては、ポリペプチドをコードする配列情報として機能するmRNAが挙げられる。
本発明で用いる発現ベクターとしては、形質転換して得られる形質転換体中で、製造対象RNAを転写することのできる発現ベクターである限り、特に限定されるものではなく、例えば、目的RNA配列を転写させるために光合成細菌由来のプロモーター配列(例えば、pufプロモーター配列など)を組込み、この配列に続いて目的RNAの配列を組み込んだベクタープラスミドを挙げることができる。
例えば、まず、目的RNAと同様の配列をもつDNA断片、すなわち、目的RNAを転写可能な配列を有するDNA断片を調製する。続いて、このDNA断片と、プロモーター配列を含んだベクタープラスミドDNAを制限酵素により切断し得られるベクターDNA断片とを、DNAリガーゼにより結合させ、目的RNAが転写される組換えDNAを形成することができる。
また、本発明で用いるベクタープラスミドDNA断片としては、光合成細菌由来のpufプロモーターが含まれているpPS001又はpPS100(Masuda, S. et al., J. Bacteriol., Vol. 182, No 10, 2778-2786, 2000)を制限酵素で切断処理した断片などを用いることができる。これらのベクタープラスミド以外にも、pufプロモーター若しくは本発明で用いる宿主に対応したプロモーターを含むものであれば、使用することが可能である。
本発明の製造方法で用いるプロモーターとして、本発明のDNAを使用することができる。本発明のDNAは、
(A)配列番号9で表される塩基配列又はその部分配列を含み(好ましくは、配列番号9で表される塩基配列又はその部分配列からなり)、且つ、ロドビュルム属に属する微生物においてプロモーター活性を示すDNA;
(B)配列番号9で表される塩基配列又はその部分配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換、又は付加された塩基配列を含み、且つ、前記微生物においてプロモーター活性を示すDNA;及び
(C)配列番号9で表される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることのできる塩基配列を含み、且つ、前記微生物においてプロモーター活性を示すDNA
からなる群から選択することができる。
或るDNAがロドビュルム属に属する微生物(好ましくはロドビュルム スルフィドフィラム)においてプロモーター活性を示すか否かは、本技術分野において通常使用されているプロモーター活性の評価方法に基づいて判定することができる。例えば、後述の実施例4に具体的に示すように、判定対象であるDNAの制御下にレポーター遺伝子(例えば、β−ガラクトシダーゼ遺伝子)を配置した発現ベクターを構築し、この発現ベクターで宿主を形質転換した後、得られた形質転換体におけるレポータータンパク質(例えば、β−ガラクトシダーゼ)の量又は活性を測定することにより、プロモーター活性の有無及び程度を判断することができる。
配列番号9で表される塩基配列(図6参照)は、ロドビュルム スルフィドフィラムの16SrRNA遺伝子の上流配列であり、ロドビュルム属に属する微生物においてプロモーター活性を示す。図6に示す塩基配列(すなわち、配列番号9で表される塩基配列)において、太字で示す塩基A(配列番号9における276番の塩基)は、転写開始点であり、二重下線で示す「TTGCGG」(同240〜245番)及び「TAGACA」(同263〜268番)は、それぞれ、転写開始点の5’上流領域に存在する−35部位及び−10部位である。また、下線及び斜体で示す配列(3箇所;同120〜135番、206〜219番、225〜239番)は、FIS結合部位である。
本発明のDNAには、配列番号9で表される塩基配列からなるDNAだけでなく、ロドビュルム属に属する微生物においてプロモーター活性を示す限り、配列番号9で表される塩基配列の部分配列や、配列番号9で表される塩基配列又はその部分配列の類似配列、更には、それら(すなわち、配列番号9で表される塩基配列若しくはその部分配列、又はそれらの類似配列)を含む配列が含まれる。
なお、これらの類似配列には、例えば、配列番号9で表される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることのできる塩基配列も含まれる。本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、一般的なハイブリダイゼーション反応後、低塩濃度かつ高温条件下(60〜68℃程度)で洗浄した状態を意味し、具体的には、一般的なハイブリダイゼーション反応を、(Tm値−25℃)〜(Tm値−20℃)の温度で行い、その後、0.1% SDSを含む0.1×SSC[15mmol/L NaCl、1.5mmol/L クエン酸ナトリウム(pH7.0)]溶液中において、68℃の条件下で15分間の洗浄を2回行った状態を意味する。これにより、約80〜100%のホモロジーを有する塩基配列がハイブリダイズすることができる。
プロモーター領域において、そのプロモーター活性に重要な領域は当業者に周知であり、例えば、−35部位、−10部位、FIS結合部位(特に−35部位付近のFIS結合部位)、転写開始点を挙げることができる。これらの重要領域を除いた領域において、1又は複数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜2個)の塩基の欠失、置換、及び/又は付加を行ったり、あるいは、末端に別の塩基配列を連結しても、プロモーター活性に大きな影響を与えない可能性が高い。従って、このような操作により得られた類似配列は、本発明の実施に充分なプロモーター活性を示す限り、本発明のDNAに含まれる。また、前記の各重要領域であっても、塩基の欠失、置換、及び/又は付加を行ってもプロモーター活性を示す場合があり、このような類似配列も、プロモーター活性を示す限り、本発明のDNAに含まれる。
本発明の発現ベクターは、本発明のDNAを含み、且つ、発現対象遺伝子をそのプロモーター活性の制御下に配置することができる、あるいは、配置している限り、特に限定されるものではない。また、該プロモーター領域を発現対象遺伝子の前に複数連結しても良いし、該プロモーター領域及び発現対象遺伝子配列を連結した配列を複数連結しても良い。また、該プロモーター領域及び発現対象遺伝子配列を連結した配列の間に翻訳調節領域を連結することもできる。本発明の発現ベクターは、本発明のDNA、すなわち、プロモーター配列に加えて、所望により、例えば、薬剤耐性遺伝子、接合に必要なMobサイト、ターミネーター配列などを含むことができる。
構築されたベクタープラスミドで宿主を形質転換させる方法については、公知の形質転換方法、例えば、接合伝達法(Simon, B. et al, Bio/Technology., Vol. 1, 37-45, 1983)、塩化カルシウム法(Mandel,M. et al, J.Mol. Biol., Vol. 53, 159-162, 1970)等を用いることができる。ロドビュルム スルフィドフィラムへの組換えDNAの導入は、主に、接合伝達により行うことができる。
形質転換に用いる宿主の培養、あるいは、得られた形質転換体の培養は、それ自体、公知の方法により実施することができる。ロドビュルム スルフィドフィラムの場合、例えば、表1に示すMYS(2%NaCl含)培地(表1に示すSL8の組成は表2に示す)を用いることができる。また、用いたベクターDNA断片が、各種の抗生物質耐性遺伝子をコードしているものであれば、培地中に、相当する抗生物質を適量加えることで、組換えDNAをより安定的に保持することができる。
得られた形質転換体を培養することにより、培養液中に目的RNAが生成される。培養液中の目的RNAは、公知方法により回収し、必要に応じて更に精製することもできる。例えば、形質転換体を含む培養液を遠心分離することにより、菌体と培養液とを分離することができる。培養液中の核酸は、例えば、エタノール沈殿法により回収することができる。得られた核酸は、所望により、タンパク質除去処理(例えば、フェノール/クロロホルム抽出)、DNA除去処理(例えば、DNアーゼ処理)等を実施することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:β−ガラクトシダーゼ遺伝子のmRNAの菌体外での検出》
本実施例では、以下に示す手順に従って、大腸菌由来β−ガラクトシダーゼ遺伝子を含むプラスミドでロドビュルム スルフィドフィラムを形質転換し、その形質転換体の菌体外において、β−ガラクトシダーゼ遺伝子のmRNAが検出されることを確認した。
(1)ロドビュルム スルフィドフィラムの形質転換
光合成細菌由来のpufプロモーター制御下におかれたβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ;mRNAの塩基長=3075nt)が組み込まれているベクタープラスミドpPS100(Masuda, S. et al., J. Bacteriol., Vol. 182, No 10, 2778-2786, 2000)をエレクトロポレーション法[1.8kV;E. coli Pulser(BIO RAD社製)]により大腸菌S17−1(Simon, R. et al., Bio/Technology Vol. 1, 37-45, 1983)に導入した。ベクタープラスミドpPS100の構造を図1に示す。図1において、Tetはテトラサイクリン耐性遺伝子であり、Sm、Spはストレプトマイシン耐性遺伝子及びスペクチノマイシン耐性遺伝子である。
得られた大腸菌S17−1の形質転換体(1.0×1010細胞/mL)と、ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(1.0×1010細胞/mL)とを、1:5の割合で混合し、LBプレートにスポットして30℃、暗条件下に16時間インキュベートした。得られた形質転換体については、ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pPS100)と命名した。
(2)菌体外におけるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子のmRNAの確認
前記(1)で得られた形質転換体[ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pPS100)]を、MYS(2%NaCl含)液体培地(表1、表2)に20μg/mLストレプトマイシンを添加して調製した培地50mLに接種し、30℃、嫌気明条件で2日間培養した後、菌体を遠心回収し、培養液と菌体を分離した。この培養液をフィルター滅菌(MILLIPORE MILLEXTMGP0.22μm)後、エタノール沈殿し、菌体外核酸を回収した。
得られた菌体外核酸から、RNA精製キット[RNeasy kit(QIAGEN社)]を用いて菌体外RNAの調製を行った。得られた菌体外RNA溶液について、DNアーゼI処理[0.02ユニット/μL DNアーゼI、40mmol/L Tris−HCl(pH8.0)、10mmol/L MgSO、1mmol/L CaCl]を37℃で1時間行い、更に、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿によりRNAを調製した。
得られたRNAを、逆転写−PCR用試薬[ThermoScriptTM RT-PCR System(invitrogen社)]を用いて逆転写を行った。逆転写の際、プライマーとして、表3に示すlacZ−Rプライマー(配列番号1)を用いた。逆転写反応の前処理として、菌体外RNAとプライマーの混合液を65℃、5分間のインキュベートを行った。50℃で30分間、85℃で5分間の逆転写反応により得られたcDNAをテンプレートとし、PCRを行った。PCR反応は熱変性;94℃で1分間、アニーリング;55℃で1分間、伸長;72℃で1分間を1サイクルとして、30サイクル行った。プライマーとして、表3に示すlacZに特異的なプライマーである、lacZ−Rプライマー(配列番号1)及びlacZ−Lプライマー(配列番号2)を用いた。これらのプライマーを用いてPCRを行うことにより、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(3076bp)の第2717番〜第2888番の塩基からなる領域(172bp)が増幅可能である。
PCR後、2%アガロースゲル電気泳動により菌体外におけるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子のmRNAの有無の確認を行った。なお、対照として、形質転換前の宿主であるロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374についても、同様の操作を実施した。また、菌体内のmRNAの有無の確認を行うために、遠心回収した菌体(宿主および形質転換体)についても、RT−PCRを実施した。
結果を図2に示す。図2における各レーンは以下のとおりである。
レーン1:100bpマーカー
レーン2:宿主(ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374)の菌体外RNAのRT−PCR産物
レーン3:宿主の菌体内RNAのRT−PCR産物
レーン4:形質転換体[ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pPS100)]の菌体外RNAのRT−PCR産物
レーン5:形質転換体の菌体内RNAのRT−PCR産物
レーン6:β−ガラクトシダーゼ遺伝子のPCR産物
《実施例2:ストレプトアビジンRNAアプタマーの菌体外での検出》
本実施例では、以下に示す手順に従って、ストレプトアビジンRNAアプタマー(例えば、Srisawat C. and Engelke D. R., RNA 7, 632-641, 2001参照)を発現可能なプラスミドでロドビュルム スルフィドフィラムを形質転換し、その形質転換体の菌体外において、ストレプトアビジンRNAアプタマーが検出されることを確認した。
(1)ロドビュルム スルフィドフィラムの形質転換
ベクターpCF1010(Lee
J.K. and Kaplan S., J.B.C 270(35), 20453-20458, 1995)に、光合成細菌由来のpufプロモーター制御下におかれた5’側リボザイム配列(配列番号4における第30番〜第82番の塩基からなる配列)、ストレプトアビジンアプタマー配列(配列番号4における第89番〜第136番の塩基からなる配列)、3’側リボザイム配列(配列番号4における第143番〜第208番の塩基からなる配列)がこの順で且つ連続して組み込まれているベクタープラスミドpCF−P5A3を構築した。
ベクタープラスミドpCF−P5A3の構造を図3に、ベクタープラスミドに組み込んだインサート配列(プラスミドの配列も含む)の塩基配列(配列番号3及び配列番号4)を図4に、それぞれ示す。ベクタープラスミドに組み込んだインサート配列は、自己切断型のリポザイム配列でアプタマー配列を挟む構造をとっており、インサート配列が転写されると、RNAアプタマーが切り出される。
構築したベクタープラスミドpCF−P5A3をエレクトロポレーション法[1.8kV;E. coli Pulser(BIO RAD社製)]により大腸菌S17−1(Simon, R. et al., Bio/Technology Vol. 1, 37-45, 1983)に導入した。
得られた大腸菌S17−1の形質転換体(1.0×1010細胞/mL)と、ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(1.0×1010細胞/mL)とを、1:5の割合で混合し、LBプレートにスポットして30℃、暗条件下に16時間インキュベートした。得られた形質転換体については、ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pCF−P5A3)と命名した。
(2)菌体外におけるストレプトアビジンRNAアプタマーの確認
前記実施例1(2)に記載の手順に従って、前記(1)で得られた形質転換体[ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pCF−P5A3)]を培養し、菌体外核酸を回収し、菌体外RNAを調製した。
得られたRNAを、逆転写−PCR用試薬[ThermoScriptTM RT-PCR System(invitrogen社)]を用いて逆転写を行った。逆転写の際、プライマーとして、表4に示すApt−R−Etプライマー(配列番号6)を用いた。逆転写反応の前処理として、菌体外RNAとプライマーの混合液を65℃、5分間のインキュベートを行った。50℃で30分間、85℃で5分間の逆転写反応により得られたcDNAをテンプレートとし、PCRを行った。PCR反応は、熱変性;94℃で30秒間、アニーリング;57.5℃で30秒間、伸長;72℃で30秒間を1サイクルとして、5サイクル行った後、更に、熱変性;94℃で30秒間、アニーリング;60.9℃で30秒間、伸長;72℃で30秒間を1サイクルとして、25サイクル行った。プライマーとして、表4に示すApt−L−Aプライマー(配列番号5)及びApt−R−Etプライマー(配列番号6)を用いた。これらのプライマーを用いてPCRを行うことにより、ストレプトアビジンRNAアプタマー(図4において太字で示す配列;65bp)が増幅可能である。
PCR後、12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、菌体外におけるストレプトアビジンRNAアプタマーの存在の有無の確認を行った。なお、対照として、形質転換前の宿主であるロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374、及び同種の別の株(DSM2351)についても、同様の操作を実施した。また、菌体内のRNAの有無の確認を行うために、遠心回収した菌体(宿主および形質転換体)についても、RT−PCRを実施した。
結果を図5に示す。図5において、レーンMは、100bpマーカーである。記号「in」及び「ex」は、それぞれ、菌体内及び菌体外であることを意味し、「RT」及び「−」は、それぞれ、RT−PCR及びRNAのPCRであることを意味する。
図5に示すとおり、菌体内及び菌体外のいずれも、ベクタープラスミドpCF−P5A3を含む形質転換体のみで、65bpのバンドが確認された。
《実施例3:ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374株由来rrnプロモーターの探索》
以下に示す手順に従って、ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374株由来rrnプロモーターの探索を行った。
(1)ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374のゲノムDNA調製
ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374を、MYS(2%NaCl含)液体培地(表1、表2)50mLに接種し、30℃にて定常期まで培養した後、菌体を遠心回収した。回収した菌体を2.5%NaCl溶液5mLで洗浄後、1mLずつ分注した。さらに菌体を遠心回収し、リゾチーム(10mg/mL)を含むTE溶液250μLに懸濁し、10分間室温にてインキュベートした。この溶液にSTE溶液(0.5% SDS、50mM Tris−HCl、50mM EDTA)20μLを加え、プロテイナーゼK(30μg/μL)溶液2μLを加えた後、30分間室温でインキュベートした。その後フェノール/クロロホルム抽出し、溶液100μLに5M NaCl溶液6μLを加えエタノール沈殿した。その後70%エタノールで洗浄、風乾し、RNアーゼA(0.01μg/μL)を含むTE溶液100μLを加え、37℃、一晩インキュベートしRNAを分解した。RNアーゼ処理した溶液をフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿によりゲノムDNAを回収した。
(2)インバースPCRによる16SrRNA遺伝子上流配列の増幅および塩基配列決定
上記(1)で調製したゲノムDNA5μgについて、制限酵素BssHII処理[1ユニット/μL BssHII、10mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl、50mM NaCl、1mM DTT]を50℃で一晩行い、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出し、エタノール沈殿により断片化したゲノムDNAを回収した。断片化したゲノムDNAについて、溶液150μL中でライゲーション反応[0.001μg/μL DNA、5ユニット/μL T4 DNA リガーゼ、66mM Tris−HCl、6.6mM MgCl、10mM DTT、0.1mM ATP]を16℃で一晩行った。このライゲーション溶液10μLを用いて、PCRを行った。PCR反応は、熱変性;94℃で1分間、アニーリング;47℃で1.5分間、伸長;72℃で2分間を1サイクルとして、3サイクル行い、その後、熱変性;94℃で1分間、アニーリング;57℃で1.5分間、伸長;72℃で2分間を1サイクルとして、32サイクル行った。プライマーとしてEcoRI26−8[5’-atgaattctgttaggcctgccgccagc-3’(配列番号7):下線はEcoRIサイト]及びBamHI298−317[5’-acggatccgaaggaatcttggacaatg-3’(配列番号8):下線はBamHIサイト]を用いた。このPCRにより16SrRNA遺伝子上流の塩基配列(1500bp程度)を増幅可能である。このPCR産物について、EcoRI、BamHI処理[0.6ユニット/μL EcoRI、0.5ユニット/μL BamHI、50mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM MgCl、100mM NaCl、1mM DTT]を37℃で一晩行った。このPCR産物の塩基配列決定を行うため、ベクタープラスミドpGEM−3Z(プロメガ社)のEcoRI、BamHI処理を37℃で行い、制限酵素処理したPCR産物とpGEM−3Zについてライゲーション反応を16℃で行った。このライゲーションしたプラスミドDNAをエタノール沈殿により回収し、エレクトロポレーション法[1.8kV;E. coli Pulser(BIO RAD社製)]により大腸菌JM109へベクタープラスミドを導入した。得られた形質転換体(大腸菌JM109)からプラスミドDNAをアルカリ−SDS法(Birnboin, H. C. and Doly, J., Nucleic Acids Research, vol. 7, No. 6,
1513-1523, 1979)により回収し、市販キット[Thermo Sequenase Cycle
Sequencing Kit (USB corporation)] に従い、M13プライマー (forward
or reverse) (IRD800) を用いて16SrRNA遺伝子上流の塩基配列の決定を行った。
決定した塩基配列の内、プロモーター領域の配列(配列番号9)を図6に示す。図6において、太字で示す塩基Aは、転写開始点であり、二重下線で示す「TTGCGG」及び「TAGACA」は、それぞれ、転写開始点の5’上流領域に存在する−35部位及び−10部位である。また、下線及び斜体で示す配列(3箇所)は、FIS結合部位である。
塩基配列を決定後は、プライマーrrn−2L[5’-TTGGTTGCGGCCGCTCTGGCGCTTCGATTCC-3’(配列番号10);下線部はNotIサイト]とプライマーrrn−R[5’-TTAATGCATGAATTCATTTCTACTTGGCGCCG-3’(配列番号11);下線部はEcoT22Iサイト]を用い、本菌のゲノムを鋳型としPCRにより、rrnプロモーター部位を増幅した。PCR反応は、変性反応94℃で1分間、アニーリング反応50.5℃で30秒間、伸長反応72℃で1分間を1サイクルとして10サイクル行った後、変性反応94℃で30秒間、アニーリング反応56.8℃で30秒間、伸長反応72℃で1分間を1サイクルとして20サイクル行った。
その後、ベクタープラスミドpCF1010(Lee J.K. and Kaplan S., J.B.C 270(35), 20453-20458, 1995)のNotI−EcoT22Iサイト間に、PCRにより増幅したrrnプロモーター部位をライゲーションにより組込んだ。このベクタープラスミドをpR2とした。pR2の構造図とインサートの配列(rrnプロモーターの配列:配列番号12)を、図7に示す。
《実施例4:pufプロモーターおよびrrnプロモーターによるβ−ガラクトシダーゼ活性の比較》
本実施例では、以下に示す手順に従って、大腸菌由来β−ガラクトシダーゼ遺伝子を含むプラスミドでロドビュルム スルフィドフィラムを形質転換し、その形質転換体のβ−ガラクトシダーゼ活性を測定し、各プロモーター(pufプロモーター、rrnプロモーター)の活性を比較した。現在、ロドビュルム スルフィドフィラムにおいて開示されており使用可能なプロモーターはpufプロモーター(Masuda, S. et al., J. Bacteriol., Vol. 182, No 10, 2778-2786, 2000)のみである。
(1)ロドビュルム スルフィドフィラムの形質転換
光合成細菌由来のpufプロモーター制御下におかれたβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ;mRNAの塩基長=3075nt)が組み込まれているベクタープラスミドpPS100、前記実施例3で構築した、光合成細菌由来のrrnプロモーター制御下におかれたβ−ガラクトシダーゼ遺伝子が組み込まれているベクタープラスミドpR2をエレクトロポレーション法[1.8kV;E. coli Pulser(BIO RAD社製)]により大腸菌S17−1(Simon, R. et al., Bio/Technology Vol. 1, 37-45, 1983)に導入した。
得られた大腸菌S17−1の形質転換体(1.0×1010細胞/mL)と、ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(1.0×1010細胞/mL)とを、1:5の割合で混合し、LBプレートにスポットして30℃、暗条件下に16時間インキュベートした。得られた形質転換体については、ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pPS100)及びロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pR2)と命名した。
(2)β−ガラクトシダーゼ活性の測定
前記(1)で得られた形質転換体[ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pPS100)またはロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pR2)]を、MYS(2%NaCl含)液体培地(表1、表2)に20μg/mLストレプトマイシンを添加して調製した培地50mLに接種し、30℃、対数増殖期まで培養した後、濁度(OD600)を測定した。その後菌液10μLを回収し、菌体を遠心回収した。この菌体にZバッファー(1mM MgCl、50mM 2−メルカプトエタノール、10mM KCl、60mM NaHPO、40mM NaHPO・2HO)0.64mLを加え懸濁後、リゾチーム(10mg/mL)を含むZバッファー0.16mLを加え懸濁し、37℃で5分間保温した。その後10%トリトンX−100(8μL)を加え懸濁し氷冷した。この溶液を遠心分離し、上清を2分間30℃で保温した。この溶液にo−ニトロフェニル−β−ガラクトピラノシド(4mg/mL)を含むZバッファー0.2mLを加えた。この時間を0とし、一定時間反応させた後、1M NaCO(0.4mL)を加え反応を停止した。その後この溶液のA420を測定しβ−ガラクトシダーゼの活性を次式により算出した。
β−ガラクトシダーゼ活性(Miller units)=1000×A420/(t×OD600×V)
[tは反応時間(分)、Vは菌液の量(mL)(今回は10μLなのでV=0.01)]
なお、対照として、プロモーターを含まないプラスミドpCF1010を保持したロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374についても、同様の操作を実施した。
結果を図8に示す。図において記号「pCF1010」、「pPS100」、「pR2」は、各々のプラスミドを保持したロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374であることを意味し、各々の記号の下に示した数値はβ−ガラクトシダーゼ活性値を意味する。
図8に示すとおりrrnプロモーターはpufプロモーターよりも100倍程度活性が高いことが判明した。
《実施例5:ストレプトアビジンRNAアプタマーの菌体外での検出》
本実施例では、以下に示す手順に従って、ストレプトアビジンRNAアプタマー(例えば、Srisawat C. and Engelke D. R., RNA 7, 632-641, 2001参照)を発現可能なプラスミドでロドビュルム スルフィドフィラムを形質転換し、その形質転換体の菌体外において、ストレプトアビジンRNAアプタマーが検出されることを確認した。
(1)ロドビュルム スルフィドフィラムの形質転換
ベクターpCF1010(Lee
J.K. and Kaplan S., J.B.C 270(35), 20453-20458, 1995)に、光合成細菌由来のpufプロモーターもしくはrrnプロモーター制御下におかれた5’側リボザイム配列、ストレプトアビジンアプタマー配列、3’側リボザイム配列、pufターミネーター(Masuda, S. et al. J. Biol. Chem. 247, 10795-10801, 1999参照)がこの順で且つ連続して組み込まれているベクタープラスミドpCF−P5A3tもしくはpRSAを構築した。ベクタープラスミドpCF−P5A3tのインサート配列(配列番号3、配列番号13、配列番号14)を図9に、ベクタープラスミドpRSAのインサート配列(配列番号15、配列番号16、配列番号14)を図10にそれぞれ示す。ベクタープラスミドに組み込んだインサート配列は、自己切断型のリボザイム配列でアプタマー配列を挟む構造をとっており、インサート配列が転写されると、RNAアプタマーが切り出される。
構築したベクタープラスミドpCF−P5A3tおよびpRSAをエレクトロポレーション法[1.8kV;E. coli Pulser(BIO RAD社製)]により大腸菌S17−1(Simon, R. et al., Bio/Technology Vol. 1, 37-45, 1983)に導入した。
得られた大腸菌S17−1の形質転換体(1.0×1010細胞/mL)と、ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(1.0×1010細胞/mL)とを、1:5の割合で混合し、LBプレートにスポットして30℃、暗条件下に16時間インキュベートした。得られた形質転換体については、ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pCF−P5A3t)およびロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pRSA)と命名した。
(2)菌体外におけるストレプトアビジンRNAアプタマーの確認
前記実施例に記載の手順に従って、前記で得られた形質転換体[ロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pCF−P5A3t)およびロドビュルム スルフィドフィラムDSM1374(pRSA)]を培養し、菌体外核酸を回収し、菌体外RNAを調製した。
調製したRNAをHybondTM−Nメンブレン(GE Healthcare社製)にスポットし、ドットブロット法によりストレプトアビジンRNAアプタマーの検出を行った。プローブは市販キット(PCR DIG Probe Synthesis Kit; Roche社製)を用いて調製した。プローブ調製の際、プライマーとしてApt−R−Etプライマー(配列番号5)およびApt−L−Aプライマー(配列番号6)を用いた。調製したプローブを用いてメンブレン上にスポットしたRNAとハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション反応の前処理として、調製したプローブを95℃、5分間保温した後、氷冷して変性させた。ハイブリダイゼーションの反応は、50℃でDIG Easy Hyb(Roche社製)溶液中で16時間行った。ハイブリダイゼーション反応後、メンブレンを低ストリンジェンシーバッファー(0.1% SDS、2×SSC)中で室温5分間洗浄した。洗浄は2回行った。低ストリンジェンシーバッファーで洗浄後、高ストリンジェンシーバッファー(0.1% SDS、0.1×SSC)中で50℃にて15分間洗浄した。洗浄は2回行った。高ストリンジェンシーバッファーで洗浄後、市販キット(DIG Nucleic Acid Detection Kit; Roche社製)を用いてストレプトアビジンRNAアプタマーの検出を行った。
pufプロモーターもしくはrrnプロモーターのいずれの場合にも、菌体外におけるストレプトアビジンRNAアプタマーの存在が確認された。
菌体外へのRNA生産能を有する形質転換体を用いる、本発明のRNA製造方法は、新たに導入したDNA配列の種類に応じて様々なRNA(特に人工RNA)を簡易的に合成することができるものであり、様々な人工RNAの簡易的で大量合成に利用することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
配列表の配列番号1、2、5−8、10、11の各塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列であり、配列番号3、4、12−16の各塩基配列は、インサート配列である。

Claims (6)

  1. ロドビュルム属(Rhodovulum)に属する微生物を用いるRNAの製造方法であって、
    (1)前記RNAを転写可能なDNAを含む発現ベクターで前記微生物を形質転換する工程、
    (2)得られた形質転換体を培養する工程、及び
    (3)菌体外に生成されたRNAを回収する工程
    を含む、RNAの製造方法。
  2. 前記微生物が、ロドビュルム スルフィドフィラム(Rhodovulum sulfidophilum)である、請求項1に記載の製造方法。
  3. (A)配列番号9で表される塩基配列又はその部分配列を含み、且つ、ロドビュルム属(Rhodovulum)に属する微生物においてプロモーター活性を示すDNA;
    (B)配列番号9で表される塩基配列又はその部分配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換、又は付加された塩基配列を含み、且つ、前記微生物においてプロモーター活性を示すDNA;及び
    (C)配列番号9で表される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることのできる塩基配列を含み、且つ、前記微生物においてプロモーター活性を示すDNA
    からなる群から選択されるDNA。
  4. 請求項3に記載のDNAを含む、発現ベクター。
  5. 請求項4に記載の発現ベクターを含む、形質転換体。
  6. 前記発現ベクターとして、請求項4に記載の発現ベクターを使用する、請求項1又は2に記載の製造方法。
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