JPWO2009037804A1 - 微粒子測定装置および微粒子測定方法 - Google Patents

微粒子測定装置および微粒子測定方法 Download PDF

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Abstract

異なる導電率を有する試料液において、導電率低減の前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度を有する微粒子測定装置および微粒子測定方法を提供する。微粒子測定装置は、微粒子含有の液体を導入するセル1と、前記セル1内部に浸漬する少なくとも一対の電極と、前記一対の電極間に、前記微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加する泳動電源部4と、前記セル内の微粒子を測定する測定部5と、前記測定部が測定した結果を演算し、液体中の微粒子濃度を算出する制御演算部6とを備える。

Description

本発明は、誘電泳動を用いて試料液中の微粒子数を測定するための微粒子測定装置および微粒子測定方法に関する。更に詳しくは、溶液導電率の影響を前処理なしに回避し、高感度、高精度に測定する微粒子測定装置および微粒子測定方法に関する。
昨今、食中毒や感染症などの原因となり、人体に何らかの害を及ぼす可能性がある微生物を、迅速、簡便、高感度に定量測定するニーズは特に高い。食品の製造工程や微生物検査施設を備えない診療所などにおいて、その場で微生物検査を実施することで、食中毒や感染症などの防止、予防が可能になるためである。
また、いわゆるバイオセンサにおいて、抗体など、測定対象に特異的に結合する物質を標識したポリスチレンなどの人工微粒子を用いて、検体中の生化学的物質を定量測定する際に、検体中の微粒子数あるいはその結合状態を定量測定する必要がある。このように、昨今、液体中に含まれる微粒子を迅速、簡便、定量的に測定する要求は高い。
ここで、本願における微粒子の定義について説明する。本願で言う微粒子とは、ポリスチレンやそれらに何らかのコーティングを施した粒子、カーボンナノチューブ、金コロイドなどの金属粒子、細菌、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、ウイルス、として分類されているいわゆる微生物、原生動物や原虫のうちの小型のもの、生物体の幼生、動植物細胞、精子、血球、核酸、蛋白質等も含む広い意味での生体または生体由来の微粒子である。この他にも、本願で言う微粒子とは、誘電泳動可能な大きさのあらゆる粒子を意味する。本願では特に、微生物の測定を想定している。
従来、微生物の検査法として最も一般的に用いられるのは培養法である。培養法は、培地上に微生物検体を塗抹し、微生物が生育条件下で培養を行い、形成される培地上のコロニー数を計数することで微生物数を定量する方法である。
しかし、コロニー形成までに通常1〜2日、微生物種によっては数週間を要するため、迅速な検査を実施できない問題があった。また、濃縮や希釈、培地への塗抹などが必要なため、専門家による操作が必要であり、簡便な検査が実施できない、あるいは操作上のバラツキによる精度低下の問題があった。
これら従来の問題を解決するため、本発明者は他の発明者らと共に、迅速、簡便、高感度な微生物数測定法として、誘電泳動とインピーダンス計測を組み合わせたDEPIM(Dielectrophoretic Impedance Measurement Method)法を提案した(例えば、特許文献1を参照)。
DEPIM法は、微生物を誘電泳動力によってマイクロ電極に捕集し、同時にマイクロ電極のインピーダンス変化を測定することによって試料液中の微生物数を定量測定する方法である。以下、その測定原理について概説する。
微生物は一般に、イオンリッチで誘電率および導電率の高い細胞質および細胞壁が、比較的誘電率および導電率の低い細胞膜に囲まれた構造を有し、誘電体粒子とみなすことができる。DEPIM法では、電界中で分極した誘電体粒子に一定方向に働く力である誘電泳動力を利用し、誘電体粒子である微生物をマイクロ電極のギャップ間に捕集する。
誘電体粒子に働く誘電泳動力FDEPは、以下の(数1)で与えられることが公知である(例えば、非特許文献1を参照)。以下、誘電体粒子が、微生物である場合を例として説明する。
Figure 2009037804
ここで、a:球形近似したときの微生物の半径、ε0:真空の誘電率、εm:試料液の比誘電率、E:電界強度であり、▽は演算子で勾配(gradient)を表す。この場合、▽E2は、電界E2の勾配なので、その位置でどれだけE2が傾斜を持っているか、つまり電界Eが空間的にどれだけ急に変化をするかを意味する。また、Kはクラウジウス・モソッティ数と呼ばれ、(数2)で表され、Re[K]>0は正の誘電泳動を表し、微生物は電界勾配と同方向、つまり、電界集中部に向かって泳動される。Re[K]<0は負の誘電泳動を表し、電解集中部から遠ざかる方向、すなわち弱電界部に向かって泳動される。
Figure 2009037804
ここで、εb *およびεm *はそれぞれ、微生物および溶液の複素誘電率を表し、一般に複素誘電率εr *は(数3)で表される。
Figure 2009037804
ここで、εr:微生物あるいは試料液の比誘電率、σ:微生物あるいは試料液の導電率、ω:印加電界の角周波数を表す。
(数1)(数2)(数3)から、誘電泳動力は、微生物の半径、クラウジウス・モソッティ数の実部(以下、Re[K]と表す)および電界強度に依存することが分かる。また、Re[K]は、試料液および微生物の複素誘電率、電界周波数に依存して変化することが分かる。
そのため、DEPIM法では、これらのパラメータを適切に選択し、微生物に働く誘電泳動力を十分大きくし、微生物を電極ギャップに確実に捕集する必要がある。また、DEPIM法では、上記誘電泳動による電極への微生物捕集と同時に、電気的計測を行い、試料液中の微生物数を定量測定することを特徴としている。
微生物は、前述した構造を有するため、電気的には固有のインピーダンスを持った微粒子と考えることができる。そのため、誘電泳動によりマイクロ電極のギャップ間に捕集される微生物数が増加すると、その捕集数に応じて電極間のインピーダンスが変化する。
従って、電極間インピーダンス時間変化の傾きは、単位時間当たりに電極ギャップ間に捕集される微生物数に応じた値となり、傾きの大きさは試料液中の微生物濃度に対応する。よって、電極間インピーダンス時間変化の傾きを測定することで、試料液中の微生物濃度、言い換えれば微生物数を測定することが可能となる。
更に、DEPIM法では、誘電泳動を開始直後のインピーダンス時間変化の傾きから微生物数を定量することで、短時間での微生物測定を実現している。以上、DEPIM法の測定原理について概説したが、詳しくは非特許文献2を参照されたい。
ところで、本願で測定に用いる試料液は、血液や唾液など、何らかの方法によって採取した微生物を、水を主成分とする低導電率の液体で懸濁したものを想定しているが、微生物を採取する際、微生物だけでなく周辺に含まれるイオンも同時に採取されると考えられる。この場合、試料液の誘電率は水とほぼ同じ値になり、結局、微生物に働く誘電泳動力は試料液のイオン濃度、言い換えれば、導電率に依存することになる。
一般に、試料液導電率が高くなるほど誘電泳動力は小さくなる。そのため、従来のDEPIM法で上記のような試料液の測定を想定した場合、試料液導電率の高い試料では、微生物に働く誘電泳動力が低下しマイクロ電極に捕集される微生物数が少なくなる結果、測定感度が低下するという問題があった。更に、試料液導電率によって微生物に働く誘電泳動力が異なるため、異なる導電率の試料液を測定したときの測定結果バラツキが大きいという問題があった。
誘電泳動を利用した微生物等の測定に際し、上記問題を解決するための手段として、測定前にイオン交換等により試料液導電率を低減する技術が公知である。この技術は、分析前に試料液をイオン交換カラムで処理を行い、試料液導電率を低減した後、誘電泳動により試料液中の微生物を分析する方法である(例えば、特許文献2を参照)。
また、担体粒子上での生物学的特異的凝集反応により、生物学的特異的反応性物質の存在を検出又は測定する方法が知られている。これは、塩の共存下に交流電圧を該反応系に印加することにより、従来よりも迅速且つ簡便に、しかも高感度で生物学的特異的反応性物質の存在を検出又は測定する方法である(例えば、特許文献3参照)。
また、微生物の活性を測定する場合に、ほぼリアルタイムの迅速測定を行い、微生物活性を簡便且つ定量的に検出する微生物活性測定装置及びそのとき使用する微生物活性の測定方法が知られている。この方法は、微生物種類と試料液の導電率を入力し、活性を測定する最適な電圧(振幅と周波数)を表1のテーブルから選択するものである(例えば、特許文献4参照)。
Figure 2009037804
特開2000−125846号公報 特表平11−501210号公報 特開平7−083928号公報 特開2003−000224号公報 Hywel Morgan、他:「AC Electrokinetics:colloids and nanoparticles」、RESERCH STUDIES PRESS LTD.2003年出版、pp.15〜63 J.Suehiro, R.Yatsunami, R.Hamada, M,Hara,J.Phys. D: Appl. Phys. 32(1999)2814-2820
しかしながら、特許文献1には、平板電極間に周波数1MHzでピーク電圧100Vの正弦波交流電圧を印加する例が記載され、この時印加する交流の周波数は誘電泳動が生じる周波数範囲であれば任意に選ぶことが可能とされているが、周波数選択により溶液導電率の影響を回避することに関する示唆はない。
また、特許文献2に記載の技術によれば、誘電泳動による分析を行う前にイオン交換という前処理が必要であるため、微生物測定の簡便性が損なわれるし、測定全体にかかる時間も長くなるという問題があった。さらに、イオン交換処理後の試料液導電率は、イオン交換処理前の試料液導電率に依存するため、試料毎の導電率バラツキによって、DEPIM法など、誘電泳動を用いた微生物測定の結果にバラツキを生じるという問題を解決できない。
また、特許文献3には、交流電圧の周波数範囲が記載されているが、パールチェーンと誘電泳動は異なる現象であり、10mM(約1000μS/cm)の塩濃度では誘電泳動が発生しない。すなわち、10mMのNaCl溶液の導電率は約1000μS/cmであり、この程度の高い溶液導電率条件下では、「正の誘電泳動」で電極に微生物をトラップすることは困難である。
また、特許文献4の微生物活性測定装置は、微生物種類と試料液の導電率を入力し、活性を測定する最適な電圧(振幅と周波数)をテーブルから選択するものであり、活性状態によって誘電泳動力に差が生じる周波数を選択するものである。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高溶液導電率を有する試料液においても、導電率低減の前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で測定することが可能な微粒子測定装置および微粒子測定方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、微粒子のなかでも特に、細菌を誘電泳動する際に、溶液導電率の影響を回避可能な周波数領域があることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき達成されたものである。
本発明に係る微粒子測定装置は、微粒子含有の液体を導入するセルと、前記セル内部に浸漬する少なくとも一対の電極と、前記一対の電極間に、前記微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加する泳動電源部と、前記セル内の微粒子を測定する測定部と、前記測定部が測定した結果を演算し、液体中の微粒子濃度を算出する制御演算部と、を備える。
この構成によれば、一対の電極間に微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、高溶液導電率を有する試料液においても、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記制御演算部が、溶液導電率をパラメータとした場合に、前記微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる交流電圧の周波数を格納する周波数テーブルを有する。
この構成によれば、周波数テーブルを参照することにより、微粒子を効率良く捕集するための周波数を高速に選択することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記泳動電源部が、前記一対の電極間に500KHz〜3MHzの周波数の交流電圧を印加するものである。
この構成によれば、一対の電極間に500KHz〜3MHzの周波数の交流電圧を印加するので、微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となり、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記測定部が、前記一対の電極間のインピーダンスを測定し、前記制御演算部が、前記一対の電極間のインピーダンスの時間変化を演算し、前記セル内の微粒子数を算出するものである。
この構成によれば、電極間のインピーダンスの時間変化から、微粒子数を算出することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記微粒子が、前記誘電泳動力によって、前記一対の電極のギャップ間に正の誘電泳動で捕集されるものである。
この構成によれば、一対の電極のギャップ間に誘電泳動力で微粒子を捕集するので、迅速、簡便かつ高感度に微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記制御演算部が、前記一対の電極間のキャパシタンスの時間変化から、前記試料液中の微粒子の数を算出するものである。
この構成によれば、キャパシタンスの時間変化から、試料液中の微粒子の数を測定するので、迅速、簡便かつ高感度に微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記試料液の導電率が、0〜150μS/cmの範囲であるものである。
この構成によれば、最も測定頻度が高い口腔内サンプルに対して、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置において、前記泳動電源部は、前記誘電泳動力が、前記溶液導電率が最も低い場合における最大誘電泳動力の約50%以上となる周波数の交流電圧を印加するものである。
この構成によれば、必要十分な感度および精度を確保することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記溶液導電率を測定する溶液導電率測定部を備えるものである。
この構成によれば、溶液導電率に応じて簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、少なくとも一対の溶液導電率測定のための電極を備え、前記溶液導電率測定のための電極間のインピーダンスを測定することにより前記溶液導電率を測定するものである。
この構成によれば、溶液導電率に応じて簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記一対の電極が、誘電泳動および溶液導電率測定を行うためのものである。
この構成によれば、同じ電極で誘電泳動を行うとともに溶液導電率測定を行うので、微粒子測定装置を簡素化することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、溶液導電率測定のための電圧と、誘電泳動のための電圧が異なるものである。
この構成によれば、溶液導電率測定のための電圧と誘電泳動のための電圧が異なるので、それぞれに最適な電圧を選択することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、溶液導電率測定のための電圧が、誘電泳動のための電圧よりも低いものである。
この構成によれば、溶液導電率測定のための電圧が誘電泳動のための電圧よりも低いので、誘電泳動の影響を受けずに溶液導電率を正確に測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は誘電泳動を行った初期インピーダンス値から前記溶液導電率を算出するものである。
この構成によれば、誘電泳動を行った初期インピーダンス値から溶液導電率を算出するので、溶液導電率を迅速に測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記制御演算部が、前記溶液導電率に応じて、測定結果を補正するものである。
この構成によれば、溶液導電率の影響を回避し、あるいはその影響を定量的に補正することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記制御演算部が、前記溶液導電率に対応した検出下限値を格納する検出下限値テーブルを有する。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記溶液導電率に対応した前記検出下限値を、外部に通知する通知手段を備える。
この構成によれば、溶液導電率が検出下限値より小さい場合に、ユーザは、感度および精度が低下したことを把握することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、微粒子含有の液体を導入するセルと、前記セル内部に浸漬する少なくとも一対の電極と、前記一対の電極間に、約500KHz〜10MHzの範囲の周波数の交流電圧を印加する泳動電源部と、前記セル内の微粒子を測定する測定演算部と、を備える。
この構成によれば、一対の電極間に約500KHz〜10MHzの範囲の周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、微粒子含有の試料液に浸漬した一対の電極間に交流電界を印加し、誘電泳動力により前記微粒子を所定位置に配置し、前記試料液中における微粒子濃度を測定する微粒子測定方法であって、溶液導電率が変化しても前記誘電泳動力が所定の値以上となるように、前記交流電界の周波数を設定するステップを有するものである。
この構成によれば、一対の電極間に溶液導電率が変化しても誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、高溶液導電率を有する試料液においても、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記溶液導電率をパラメータとして前記交流電界の周波数を変化させた場合に、前記誘電泳動力が、前記溶液導電率が最も低い場合における最大誘電泳動力の約50%以上となるように、前記交流電界の周波数を設定するステップを有するものである。
この構成によれば、微粒子に必要十分な誘電泳動力を作用させることができ、簡便かつ必要十分な感度および精度で測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記溶液導電率を測定するステップと、前記溶液導電率が変化しても前記誘電泳動力が所定の値以上となるように、前記交流電界の周波数を選択するステップとを有するものである。
この構成によれば、溶液導電率毎に、適した交流電圧の周波数を選択できるので、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、測定した前記溶液導電率で、前記試料液中における前記微粒子濃度を補正するステップを有するものである。
この構成によれば、測定した溶液導電率で試料液中における微粒子濃度を補正することにより、溶液導電率が変動した場合でも必要十分な感度および精度を維持することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記一対の電極のギャップ間に、前記誘電泳動力で前記微粒子を捕集するステップを有するものである。
この構成によれば、一対の電極のギャップ間に誘電泳動力で微粒子を捕集するので、迅速、簡便かつ高感度に微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記一対の電極間のインピーダンスを測定するステップを有するものである。
この構成によれば、電極間のインピーダンスの時間変化から、微粒子濃度を算出することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記一対の電極間のキャパシタンスを測定するステップと、前記キャパシタンスの時間変化から、前記試料液中の微粒子濃度を測定するステップとを有するものである。
この構成によれば、キャパシタンスの時間変化から試料液中の微粒子濃度を測定するので、迅速、簡便かつ高感度に微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記試料液の導電率が、0〜150μS/cmの範囲である。
この構成によれば、最も測定頻度が高い口腔内サンプルに対して、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、微粒子含有の試料液に浸漬した一対の電極間に交流電界を印加し、誘電泳動力により前記微粒子を所定位置に配置し、前記試料液中における微粒子濃度を測定する微粒子測定方法であって、前記交流電界の周波数が、約500KHz〜10MHzの範囲である。
この構成によれば、一対の電極間に約500KHz〜10MHzの範囲の周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
本発明によれば、一対の電極間に微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
本発明の第1の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(1) 本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置の電極チップを説明するための概略図 本発明の実施形態において測定電極11a,11b間に印加される電圧によって生じる電気力線15を示す図 電極11a、11bの対向するエッジ部に微粒子14が電気力線に沿ってトラップされる説明図 本発明の第1の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(2) 本発明の第1の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(3) 誘電泳動用交流電圧の周波数をパラメータとした場合に、溶液導電率(μS/cm)とRe[K]の関係を示すグラフ 誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフ(1) 本発明の第1の実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャート 本発明の第2の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図 本発明の第2の実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャート 電極30,31間の等価回路、および等価回路に流れる電流26と電圧27間の位相関係を示す図 複素平面上に極座標表示された電圧、電流、位相角の関係を示す図 溶液導電率を0〜200μS/cm付近まで変化させた場合の誘電泳動力FDEPおよびキャパシタンス傾きの変化を示すグラフ 誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフ(2) 平板電極11a,11b間の静電容量Cの時間変化の傾きを計算するためのグラフ 本発明の第3の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図 本発明の第3の実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャート 異なる導電率の試料液のコンダクタンスを測定した結果を示す図 本発明の第4の実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャート 本発明の第5の実施形態において試料液中の微粒子濃度に対する測定応答を表すグラフ 本発明の実施例1において大腸菌濃度と規格化したキャパシタンス傾きをそれぞれ対数変換した値を示すグラフ 本発明の実施例1において周波数が800KHzの場合の測定結果を示すグラフ 本発明の実施例1において表4の導電率補正テーブルを用いて補正した結果を示すグラフ 本発明の実施例2において培養細菌濃度と規格化したキャパシタンス傾きをそれぞれ対数変換した値を示すグラフ
符号の説明
1 セル
2 試料液
3 電極チップ
4 泳動電源部
5 測定部
6 制御演算部
6a メモリ
7 導電率入力手段
9 表示手段
10 基盤
11a,11b、20,21 電極
13 ギャップ
14 微粒子
15 電気力線
17 攪拌手段
21 光源
22 受光部
26 電流
27 電圧
30,31 電極
32 キャパシタンス
33 抵抗
101 導電率測定手段
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態の微生物測定装置について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の微生物測定装置の構成図、図2は、本実施形態の微生物測定装置の電極チップを表す概略図である。
図1において、1は測定対象の微生物が含まれる試料液2を保持するセル、3は誘電泳動で微生物を捕集する電極対を含む電極チップ、4は泳動電源部、5は誘電泳動によってトラップされた微生物によって生じた光学的あるいは電気的な変化を測定する測定部、6は微生物測定装置全体の制御や測定結果の解析演算や入出力処理などを行う制御演算部、7は試料液2の導電率を入力するための導電率入力手段である。
図2において、10は基板、11a、11bは基板10上に形成され一対の極をなす電極、13は電極11aと11bとの電極間ギャップである。基板10には、金属などの導電性材料によって電極11a、11bのパターンが形成される。好ましい材料の一例としては、金、銀、銅、アルミニウム、白金など、十分な導電性を有することが望ましく、本実施の形態では銀を使用している。
図3は、測定電極11a,11b間に印加される電圧によって生じる電気力線15を示す。本実施の形態では測定電極11a,11b間のギャップ13付近の構成が電界集中部にあたり、中でも最も電界が集中するのはギャップ13である。従ってギャップ13部分にもっとも強く微生物が泳動される。
電極11a、11bはその幅に対して十分に薄い薄膜であることが望ましく、例えば100μmの幅に対して厚さ1000Å程度である。これにより、厚さ方向で見たエッジ部分に不平等電界が形成され、微生物を効率的に誘電泳動することが可能となる。
電極11a、11bのパターニングを行う方法は、選択した材料で所望のパターンを形成できれば良い。例えば、金属薄膜をスパッタあるいは蒸着、めっきなどにより形成し、フォトリソグラフィー、レーザー加工などによってパターンを形成する方法、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの、直接パターンを形成する方法など、電極を形成するために用いられる一般的なプロセスが選択可能である。生産性やコストなどを勘案して最も適切なプロセスを選択すればよい。本実施の形態では、スパッタによって銀の薄膜を形成し、フォトリソグラフィーによってパターンを形成している。
電極11a、11bはそれぞれ泳動電源部4に接続されており、泳動電源部4は電極11a、11b間に特定周波数の交流電圧を印加する。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。後述するが、泳動電源部4が印加する周波数は、制御演算部6によって適切に決定される。
電極チップ3が試料液2中に浸漬され、電極11a、11bが試料液2に接した状態で、電極11a、11b間に交流電圧が印加されると、試料液2中に含まれる微生物が、電極11aと11bに挟まれたギャップ13に、誘電泳動力によって捕捉される。
微生物に正の誘電泳動力が働く場合は図4(a)のように電界集中部であるギャップ13の領域中、電極11a、11bの対向するエッジ部に、微生物14が電気力線に沿って微生物がパールチェーンと呼ばれる数珠状にトラップされる。
一方、微生物14に負の誘電泳動が働く場合は、図4(b)のように、電界集中部から遠ざかる方向、すなわち弱電界部であるギャップ13の領域中、電極11a、11bの対向する中心部分にかけてトラップされる。
測定部5は、このようにしてギャップ13にトラップされた微生物によるインピーダンス変化を測定する。具体的には、図5に示すように、泳動電源部4と電極チップ3の間に、測定部5を電極11a、11b間のインピーダンスを測定する回路を構成する。
この場合、測定部5は電極11a、11b間に流れる電流値と、泳動電源部4が印加した電圧と電流の位相差を測定するための回路等から構成される。測定部5は、誘電泳動によって微生物が移動し電界集中部近傍に濃縮されることに起因する電極11a、11b間の電流および位相差の変化を測定する。
測定部5で測定した電流値と位相差は、制御演算部6に渡される。制御演算部6は、これら電流、位相差、および、泳動電源部4が印加している電圧および周波数の情報から、電極11a、11b間のインピーダンス値を計算する。
電圧印加前、電極11a、11b間の試料液2のみで満たされた領域が、誘電泳動によるトラップによって誘電率の異なる微生物で置き換えられることで、電極11a、11b間のインピーダンスはトラップされた微生物数に応じて変化する。
従って、ある時間におけるインピーダンス値と、電圧印加直後の初期インピーダンス値との差分、言い換えれば変化分から、ギャップ13にトラップされた微生物数を推定することが可能である。そして、トラップされた微生物数は試料液中に含まれる微生物濃度に依存するものであるから、試料液中の微生物数を測定することが可能になる。
測定部5はまた、図6に示すように、光学的測定手段によっても実現可能である。この場合、光源21と受光部22の光路内にギャップ13が含まれるような位置関係にセル1を配置する。ギャップ13にトラップされた微生物数によって、受光部21に入射する光量が変化することを利用して、ギャップ13にトラップされた微生物数を推定することができる。
あるいは、受光部22の情報を制御演算部6に渡して画像化し、制御演算部6が粒子判定アルゴリズムなどを用いて直接粒子数を計数してもよいし、視野面積に対する微粒子面積を求めることで微粒子数に換算してもよい。このようにして得られたギャップ13にトラップされた微生物数は試料液中に含まれる微生物濃度に依存するものであるから、試料液中の微生物数を測定することが可能になる。
以上のように微生物をギャップ13にトラップするためには、微生物に働く粘性力や重力、ブラウン運動など、誘電泳動以外の全ての外力に対して十分大きな誘電泳動力を誘起する必要がある。これが不十分であれば、測定部5が測定できる微生物数が減少するため、測定感度および精度が著しく低下し、測定部5が測定可能な信号の大きさを下回ると微生物の測定が出来なくなる。
従って、本実施の形態では、微生物をギャップ13にトラップするために十分な誘電泳動力が働くような周波数を、制御演算部6が適切に決定し、泳動電源部4が決定した周波数の電圧を印加する。これにより、測定部5が十分に検出可能な信号を取り出すことが出来るため、微生物濃度の測定が高精度かつ高感度に行える。
制御演算部6は、図示しないCPUや、一連の動作を規定するプログラムや各種データが格納されたメモリ6aなどの回路から構成され、一連の測定動作を制御する。導電率入力手段7は、試料液の導電率を、測定前に入力できるようになっている。例えば、テンキーで数値入力する方法や、「0〜50μS/cm」、「50〜100μS/cm」など複数の導電率範囲に対応したスイッチを押下するなどの方法で実現できる。
メモリ6aは、導電率入力手段7から与えられた試料液の導電率の値から、泳動電源部4が印加する電圧の適切な周波数を選択するための周波数選択テーブルを有する。周波数選択テーブルには、試料液2の導電率毎に、微生物に十分な誘電泳動力が働く最適な周波数と印加電圧値がテーブル化されている。
ここで、メモリ6aに格納されている周波数選択テーブルについて詳説する。表2に示すように、周波数選択テーブルは少なくとも、試料液の導電率、印加する交流電圧の振幅、最適周波数が互いに関連付けられて格納されている。試料液の導電率は特定の数値であってもよいし、ある範囲を設定してテーブルを作成してもよい。制御演算部6は、与えられた導電率に該当する交流電圧の振幅と最適周波数を選択する。尚、導電率300μS/cm〜に対応する周波数の“E”は、エラーであることを示しており、あまりにも導電率が高い場合には測定が出来ないことを表している。
Figure 2009037804
次に、最適周波数について説明する。(数1)において、誘電泳動力FDEPは、クラウジウス・モソッティ数Kの実部、すなわちRe[K]に比例する。そして、Re[K]は、(数2)および(数3)から明らかなように、試料液2の導電率に依存する。試料液2の導電率が変化した場合、Re[K]すなわち誘電泳動力がどのように変化するかを示したものが図7である。
図7においては、誘電泳動に用いる電界、言い換えれば印加電圧の周波数をパラメータに、試料液2の導電率の関数として示している。Re[K]は、誘電泳動力FDEPに対応しており、その正負は誘電泳動力が引力として作用するか、あるいは斥力として作用するかにそれぞれ対応する。
図7(a)に示すように、たとえば、誘電泳動用交流電圧の周波数が(1)10KHzの場合は、溶液導電率3μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
一方、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzの場合は、溶液導電率30μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
なお、図7(b)は、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzおよび(3)800KHzの場合に、溶液導電率を1μS/cm〜1000μS/cmまで変化させた場合の誘電泳動力FDEPの変化を示す。周波数が(2)100KHzの場合、約20μS/cm以上でRe[K]<0となるが、800KHzでは導電率上昇に対する誘電泳動力の低下が抑えられ、約250μS/cmまでRe[K]>0となり引力によりギャップ13のエッジ部にトラップすることができる。
このことは、試料液の導電率上昇に対して最も誘電泳動力の低下が小さくなる最適な周波数が存在することを示している。この最適周波数を決定するには、次のような実験を行って決定するのがよい。すなわち、同じ微粒子濃度で、導電率を変えた複数の試料液を用意し、それぞれの試料液に対して印加電圧の周波数を変えながら測定を行う。その結果、測定応答が最も大きくなった周波数が、それぞれの試料液導電率に対する最適周波数となる。表2に示した最適周波数は、このようにして決定する。
しかしながら、あまりにも周波数が高いと測定回路の実現が困難となり、あまりにも周波数が低いとジュール熱による対流や、極端な場合、電気分解による気泡発生が測定に悪影響をもたらす。このため、最適周波数は、誘電泳動にとって最適とはいえないが、微粒子測定を行うのに十分な誘電泳動を働かせることの出来る、許容範囲の周波数が存在する。
図8は、溶液導電率(μS/cm)をパラメータとした場合における、誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフである。試料液の導電率100μS/cmにおいて、正の誘電泳動を利用して微粒子の測定を行う場合、測定応答を得られる十分な誘電泳動力がRe[K]>0.4であったとすると、最適周波数は約700KHz〜4MHzとなる。この場合、高周波による測定回路の複雑化を避けるために、下限の周波数である700KHzを最適周波数として採用することも可能である。
また、測定する必要がある試料液導電率の範囲内で、ある特定の一つの周波数で十分に誘電泳動力が得られることがある。その場合は、表3に示すような周波数選択テーブルになる。
Figure 2009037804
例えば、測定する必要のある試料液導電率の範囲が0〜100μS/cmであった場合、周波数800KHzであれば、全ての導電率領域に対してRe[K]>0.4となり、単一の周波数で所望の試料液導電率の範囲で測定を行うことができるため、回路構成が簡易となり好都合である。この場合、試料液導電率が100μS/cmを超えた場合には、周波数選択テーブルに示されるよう、エラーに該当するデータが書き込まれている。
図9は、本実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、試料の導入からセル1内の微生物の濃縮、測定、結果提示にいたるまでの一連の流れを説明する。まず、初期状態では、セル1に測定対象の微生物が含有された試料液を投入する(ステップS11)。
次に、導電率入力手段7によって、投入した試料液の導電率を入力する。入力された導電率は、制御演算部6に渡される(ステップS12)。
試料液の導電率を渡された制御演算部6は、メモリ6aに備わる最適周波数テーブルを参照し、電極に印加すべき電圧振幅値および周波数を選択する(ステップS13)。この時の電圧振幅値(以下、「誘電泳動のための電圧」と呼ぶ)は、微生物をギャップ13にトラップするために十分な値を選択すればよく、本実施の形態では10Vp−pとしている。
また、表2および表3では、誘電泳動のための電圧は導電率に対して一定の値としているが、それぞれの導電率で最適な値を選択することができる。例えば、導電率が高い場合は、あまりに電圧が高すぎるとジュール熱が発生し、誘電泳動による微生物トラップに影響が出るため、導電率が高くなるに従い、誘電泳動のための電圧を低くする、などとする。
次いで、制御演算部6は、メモリ上に保存された、入力された導電率に対応する周波数がエラーコード(E)であるか判断する(ステップS14)。エラーコード(E)であった場合には、ステップS16に進み、制御演算部6は、入力された導電率が測定範囲外であることを表示手段9に表示するよう指示し、測定を終了する(ステップS22)。
ステップS14において、選択した周波数がエラーコード(E)でなかった場合、制御演算部6は泳動電源部4に対し、最適周波数テーブルで選択した電圧振幅および周波数にて、電極11a、11b間に電圧を印加させる(ステップS15)。
電極11a、11b間に所定の電圧が印加されると、測定部5は直ちに電圧印加直後の初期状態のデータとして、電極11a、11b間のインピーダンスを測定し、測定結果は制御演算部6に渡され、メモリ6aに初期のインピーダンス値として保存する(ステップS17)。
ここでは、インピーダンス測定を例として記載するが、測定部5が光学的な手段を用いてギャップ13の状態を測定するのであれば、電圧を印加しなくても初期状態が測定できるので、ステップS17はステップS15の前に行うことも可能である。
次に、制御演算部6は、図示しない時計手段によって所定の時間が経過するまで待つ。この時、泳動電源部4は電圧印加を保持したままである(ステップS18)。
所定の時間が経過すると、制御演算部6は所定の測定回数が満了したかを判断し(ステップS19)、満了していなければステップS17に戻る。ステップS17に戻り、制御演算部6は測定部5に命じ、電極11a、11b間のインピーダンスを測定し、その結果をメモリ6aに所定時間経過後の結果として保存する。
所定の測定回数が満了した場合、制御演算部6は泳動電源部4に電圧印加を止めるよう指示する(ステップS20)。
電圧印加を停止後、制御演算部6は、メモリ6aに保存された、電極11a、11b間インピーダンスの経時変化データから、試料液2中の微粒子濃度を算出し、表示手段9に結果を表示させ(ステップS21)、一連の測定動作を終了する(ステップS22)。
微生物濃度の算出は、メモリ6aに予め保存された、検量線から求めることができる。この検量線は、微生物濃度が明らかな校正用試料を、本実施の形態で説明した微生物測定装置の測定系を用いて予め測定し、その時の微生物数とインピーダンス変化の相関関係からばらつきを回帰分析して得られる曲線をあらわす関数を使用する。
この変換式を制御演算部6のメモリ6aに記憶させ、微生物濃度が未知の試料を測定する場合には、所定時間内におけるインピーダンス変化の値を代入することにより、セル1内の微生物濃度を算出できる。なお、換算テーブルを用いる場合は、変換式による演算結果を予めメモリさせている。
以上、本実施の形態によれば、試料液の導電率に応じて、最適な印加電界周波数を選択することにより、測定を行うために十分な誘電泳動力を微生物に働かせることができるため、試料液の導電率が上昇しても、前処理無く、微生物の測定を行うことができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の実施の形態の微生物測定装置について、図面を用いて説明する。図10は、本実施形態の微生物測定装置の構成図である。
図10において、1は測定対象の微生物が含まれる試料液2を保持するセル、3は誘電泳動で微生物を捕集する電極対を含む電極チップ、4は泳動電源部、5は電極間インピーダンスを測定する測定部、6は微生物測定装置全体の制御やインピーダンス算出などの演算行う制御演算部である。
図2に示したように、10は基板、11a、11bは基板10上に形成され一対の極をなす電極である。基板10には、金属などの導電性材料によって電極11a、11bのパターンが形成される。電極11a、11bはその幅に対して十分に薄い薄膜であることが望ましく、例えば100μmの幅に対して厚さ1000Å程度である。これにより、厚さ方向で見たエッジ部分に不平等電界が形成され、微生物を効率的に誘電泳動することが可能となる。本実施の形態では、基板10は、セル1とは分離した形態となっているが、基板10をセル1の壁面の一部として一体にしてもよい。
また、電極11a、11bの平面パターンは、そのギャップ13間に誘電泳動により微生物を捕集し、捕集した微生物によるインピーダンス変化を効率よく測定可能な形状でパターニングされる。具体的には、例えば、図2に示したような、電極11a、11bの対向部分が互いに入れ子状になった、いわゆる櫛歯形状が最も好ましい形状の一つである。
微生物を効率よく捕集するためには、ギャップ13部の面積を広くし、微生物が電極に捕集される確率を高くする必要がある。ただし、ギャップ13間の距離を長くすると、電極11a、11b間に同じ電圧を印加したときの電界強度が低下し、誘電泳動力が弱まる結果、微生物を効率的に捕集できなくなる。このため、ギャップ13間距離は、例えば1〜100μm程度に狭くすることが望ましい。
微生物を効率的に捕集するためには、電極11a、11bが対向する対向部の長さ方向に電極パターンを伸ばすのが効果的であり、例えば20〜1000mm程度が望ましい。このとき、電極平面パターンを櫛歯形状にすることにより、対向部を実質的に長くすることができるし、電極パターンを微少領域に集積化が可能なため、電極チップ3を小型化することができるメリットがある。
以上は電極の設計を行う際の一例であって、ギャップ13間の距離、対向部の長さ、電極の厚さやパターンは、電極11a、11b間に印加する電圧、微生物の大きさに合わせて最適な組み合わせを選択することが望ましい。
電極チップ3は、微生物が含まれた試料液2を保持したセル1内に浸漬され、泳動電源部4および測定部5に電気的に接続される。セル1には、マグネチックスターラなどの攪拌手段17を設けることができる。
試料液2をセル1内で攪拌することにより、試料液2内での微生物濃度を均一にすることができ、かつ、多くの微生物を電極11a、11bのギャップ13間に導くことができるため、より効率的に微生物をギャップ13間に捕集でき、測定時間の短縮や測定感度の向上が可能である。
また、セル1を、電極チップ3上にスペーサと蓋などを設けて作成した微小チャンバーとした場合は、攪拌手段17は微小チャンバーを含む循環流路を持つ閉流路として実現することも可能である。ペリスタポンプなどによって試料液を微小チャンバー内の電極チップ3上に循環することによって、前記マグネチックスターラによる攪拌と同様な効果を得ることが可能である。
泳動電源部4は、誘電泳動を行うための交流電圧を、電極11a、11b間に印加する。これにより電極11a、11b間に誘起された不平等電界によって、微生物を誘電泳動し電極11a、11b間のギャップ13に捕集する。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。
測定部5は、電極11a、11b間のインピーダンスを算出するために必要な測定を行う。測定部5は、具体的には、電極11a、11b間に流れる電流値と、泳動電源部4が印加した電圧と電流の位相差を測定するための回路等から構成される。測定部5は、誘電泳動によって微生物が移動し電界集中部近傍に濃縮されることに起因する電極11a、11b間の電流および位相差の変化を測定する。測定部5で測定した電流値と位相差は、制御演算部6に渡される。
制御演算部6は、図示しないマイクロプロセッサと、予め設定されたプログラムやデータテーブルなどを保存するためのメモリ、タイマー等から構成され、前記プログラムおよびデータテーブルに従い泳動電源部4を制御する。泳動電源部4は、制御演算部6の制御に従って、電極11a、11b間に特定の周波数と電圧をもった交流電圧を印加する。
さらに制御演算部6は、測定部5と信号の送受信を行ない、測定部5が測定した電流値と位相差のデータを受け取る。制御演算部6は、これら電圧、電流、位相差、周波数のデータから、電極11a、11b間のインピーダンスを算出し、結果を逐次メモリに格納する。
制御演算部6は、これら一連の測定動作を、予め設定されたプログラムに従って一定の時間間隔毎に行い、定められた時間が経過すると、泳動電源部4を制御し、電極11a、11b間への電圧印加を停止して、測定動作を終了する。
次に、制御演算部6は、メモリに格納されたインピーダンス測定結果から、インピーダンス時間変化の傾きを算出する。メモリ中のデータテーブルには、与えられた電圧や周波数、微生物種など毎に、検量線データが格納されている。制御演算部6は、算出したインピーダンス時間変化の傾きと検量線を比較することで、試料液中に含まれる微生物濃度を算出し、メモリへの結果格納、あるいはLCDなどの表示手段9に結果表示を行うなどする。
本実施の形態では、測定結果を微生物濃度で表すこととしているが、予め試料液の容量が規定されている場合は、微生物数に換算して結果表示しても良い。また、使用者は測定された微生物数を試料1mlあたりの微生物数として直接知ることができるが、表示手段9には、たとえば多いまたは少ないであるとか、目的に応じてほかの表示方法で結果表示を行っても良い。
さらに、試料中の微生物数を調べて殺菌装置を制御するとか、温度などの培養条件を制御するなど、使用者が直接微生物数を知る必要が無く、本微粒子測定装置を含む任意の装置の制御を行うために微生物数が明らかであれば良いような場合には、表示手段は特に設ける必要がないのは言うまでもない。
図3に示したように、測定電極11a,11b間に印加される電圧によって電気力線15が生じる。本実施の形態では測定電極11a,11b間のギャップ13付近の構成が電界集中部にあたり、中でも最も電界が集中するのはギャップ13である。従ってギャップ13部分にもっとも強く微生物が泳動される。
図2に示したように、ギャップ13は平行な測定電極11a,11bに挟まれた部分であり、電極の伸びる方向すなわち、測定電極11a,11bの断面を描いた図3の紙面に垂直な方向については電界の分布は均一である。しかしながら、基板10面に垂直な方向(紙面に平行な方向)では、図3に示すような電界の分布が生じ、電極の端線同志を結んだ面がもっとも電界が集中することになる。
ギャップ13付近に浮遊する微生物は、測定電極11a,11b間に生じるこのような電界作用によってギャップ13に引き寄せられ、電気力線15に沿って整列する。この時、ギャップ13付近の微生物の移動状態は、試料液体中に存在する微生物数とギャップ13の間隔に依存するが、十分に微生物数が多い時にはギャップ13が微生物から構成される鎖によって架橋されるほどになる。
この際、当初からギャップ13付近に浮遊していた微生物は直ちにギャップ13部分へ移動するし、ギャップ13から離れたところに浮遊していた微生物は距離に応じて所定時間経過後にギャップ13部に至るため、一定時間後にギャップ13付近の所定領域に集まっている微生物の数は測定セル1内の微生物数にも比例する。これは当然のことながら試料液に存在する微生物数に比例するものである。
図11は、本実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、試料の導入からセル1内の微生物の濃縮、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明するが、実施の形態1と同様な部分の説明は省略する。
ステップS15で電圧を印加後、測定部5は電極11a,11b間に流れる電流を測定し、測定結果を制御演算部6に送る。後述するが、制御演算部6は、印加電圧と測定した電流から、平板電極11a,11b間のインピーダンス、平板電極11a,11b間に想定される等価回路を後述する抵抗Rと静電容量CからなるCRの並列回路であるとみなしたときの静電容量Cを算出する(ステップS31)。
インピーダンスは印加電圧と電流の除算で算出することができる。また静電容量Cは、リアクタンスとレジスタンスの値を、想定されるCR並列回路の合成インピーダンスをあらわす式に代入し、連立方程式を解くことによって、抵抗Rと共に算出することができる。リアクタンスとレジスタンスの値は、それぞれインピーダンスと電圧と電流の位相差を角周波数の角度差で表現した値(以下、位相角という)を用いて計算される。
以下、インピーダンスをZ、静電容量をC、リアクタンスをx、レジスタンスをrとして、図12、図13と(数4)〜(数8)の式を用いて詳細に説明する。
Figure 2009037804
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Figure 2009037804
Figure 2009037804
Figure 2009037804
(数4)はCR並列等価回路の合成インピーダンスZを表す式、(数5)はCR並列等価回路のレジスタンスr表す式、(数6)はCR並列等価回路のリアクタンスxを表す式、(数7)はCR並列等価回路の抵抗Rを表す式、(数8)はCR並列等価回路の静電容量Cを表す式である。
図12(a)は、電極30,31間の電気的状態を等価回路で示したものである。電極30,31の間には微生物を含んだ水が存在している。誘電泳動によって微生物が電極間のギャップに移動する前には、水を電極間誘電体として構成される静電容量C32と水による電気伝導抵抗R33とが、並列に電極30と電極31間を結んでいると考えられる。
また、誘電泳動によって微生物が移動した後も、後述するように、微生物体が誘電体微粒子としてふるまうために、静電容量C32と抵抗R33の絶対値は変化しても等価回路の接続形態は変わらないと考えることができる。以下この等価回路をCR並列回路と呼ぶ。
このようなCR並列回路に交流電圧を印加すると、図12(b)に示すように、回路に流れる電流26と印加した電圧27の間に位相差が現れることが一般に知られている。リアクタンス成分xを角周波数ωの関数とすると、レジスタンス成分rとの合成インピーダンスZは、図13に示すよう、レジスタンス成分rと位相角θを持つベクトルとして表現できる。
インピーダンスZは、測定される印加電圧と電流の除算で得られ、図13に示されたベクトルの絶対値に相当する。この時、インピーダンスZはZ=r+jx(jは虚数単位)の形で表現することができる。レジスタンスrはr=Zsinθとして図12(a)に示されたCR並列回路の合成インピーダンスの抵抗性成分、リアクタンスxはx=Zcosθとして同回路の容量性成分の逆数に関連付けられる。
一方、図12(a)のCR等価回路の合成インピーダンスは(数4)で表現され、(数4)をZ=r+jxの関係からレジスタンスrとリアクタンスxに分解して(数5)と(数6)を得る。(数5)と(数6)を連立させて変形すると(数7)と(数8)を得る。(数7)及び(数8)に測定のための電圧値、その時の電流値、電圧と電流の位相角の測定値から演算したr、x、ωを代入することにより、抵抗R33と静電容量C32を知ることができる。
このように説明すると大変煩雑であるが、制御演算部6は図示しないマイクロプロセッサを備えており、一連の演算は一瞬のうちに終了する。
制御演算部6は、算出された静電容量Cの値を初期値としてメモリに格納し(ステップS32)、ステップS18にて、次のインピーダンス測定タイミングが来るまで時間待ちする。以下、泳動電源部4と測定部5、制御演算部6は必要に応じて適宜信号のやり取りを行い、予め設定されたプログラムにしたがった円滑な動作を行う。
なお、予め測定値に対応した演算を行っておき、これをテーブルにしてメモリに記憶させておけば、演算を測定の都度行うのではなく、テーブルを参照するだけで、測定値を微粒子数に換算することもできる。すなわち、予め設定された時間誘電泳動による微生物の濃縮を行った後に測定を行い、測定のための電圧値、その時の電流値、電圧と電流の位相差を測定した後、この3つの値でメモリ上のテーブルを参照すれば、そこに予め演算された微生物数が書き込まれている。このような構成にすれば制御演算部6を設けることなく、迅速測定が可能でさらに簡易な構造の微生物測定装置とすることができる。
誘電泳動用交流電圧の周波数をパラメータとした場合に、溶液導電率(μS/cm)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係は、図7に示したようになる。Re[K]は、誘電泳動力FDEPに対応しており、その正負は誘電泳動力が引力として作用するか、あるいは斥力として作用するかにそれぞれ対応する。
図7(a)に示したように、たとえば、誘電泳動用交流電圧の周波数が(1)10KHzの場合は、溶液導電率3μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
一方、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzの場合は、溶液導電率30μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
なお、図7(b)は、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzおよび(3)800KHzの場合に、溶液導電率を1μS/cm〜1000μS/cmまで変化させた場合の誘電泳動力FDEPの変化を示す。
また、図14は、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzおよび(3)800KHzの場合に、溶液導電率を0〜200μS/cm付近まで変化させた場合の誘電泳動力FDEPおよびキャパシタンス傾きの変化を示す。
また、図15は、溶液導電率(μS/cm)をパラメータとした場合における、誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフである。従来の微粒子数測定方法では、誘電泳動用交流電圧の周波数を矢印Aに示す100KHz付近としていたため、例えば、溶液導電率が(5)30μS/cmの場合は、Re[K]が0付近となり、正の誘電泳動力FDEPを十分に働かせることが
できなかった。
本実施形態では、誘電泳動用交流電圧の周波数を矢印Bに示す1MHz付近としたため、溶液導電率が(1)1μS/cm〜(5)30μS/cmに変動しても、Re[K]が0.7付近で一定となり、誘電泳動力FDEPを十分に働かせることができる。
また、溶液導電率が変動しても微粒子に十分な誘電泳動を働かせることができ、かつ泳動電源部4を比較的簡易に構成できる周波数範囲として、約500KHz〜10MHzが好ましい。誘電泳動力FDEPが、その最大値FDEP(MAX)の約50%以上となる範囲の周波数を選択すると、より確実な測定が行えるため、より好ましい。
ここでの誘電泳動力FDEPの最大値FDEP(MAX)とは、最も導電率が低い場合に最もRe[K]が大きくなる条件での誘電泳動力を示している。例えば、図15において、最も低い導電率1μS/cmでは、周波数約300KHzの場合にRe[K]≒0.7となり、最も大きくなる。
従って、測定を行うために十分な誘電泳動力を働かせるためには、Re[K]>0.35程度にすれば良い。例えば、試料液の導電率が500μS/cmの場合、周波数約10MHzでRe[K]≒0.35となり、十分に測定が可能である。言い換えれば、周波数10MHzで誘電泳動を行えば、導電率500μS/cmまでの試料液が、前処理無しに正確な測定が出来ることを示している。
例えば、誘電泳動用交流電圧の周波数を約500KHz〜10MHzの範囲とすることにより、溶液導電率が約0〜100μS/cmの範囲で変動しても微粒子に十分な正の誘電泳動力FDEPを働かせることができる。
なお、あまりに周波数が低いと平板電極11a,11b間で望ましくない電気分解が発生するため、下限の周波数は700KHz程度が望ましい。また逆にあまりに周波数が高いと電源回路が複雑になる。従って、高周波での測定回路実現性を勘案すれば、上限の周波数を下げ、4MHzとすることが望ましい。よって、最も好まし周波数の範囲は、700KHz〜4MHzである。また、泳動のための電圧は本実施の形態では10Vとしているが、試料の導電率が大きい場合には、望ましくない電気分解が発生することがない程度のより低い電圧を選択することができる。
このように予め設定された時間毎に、制御演算部6と測定部5は連携して泳動と測定を繰り返し、測定部5は算出された静電容量Cを都度メモリに格納する(ステップS32)。このように誘電泳動による微粒子のギャップ13付近への移動と平板電極11a,11bのインピーダンス測定を繰り返すことによって、平板電極11a,11b間の静電容量Cの時間変化を調べることができる。
誘電泳動のための交流電圧印加開始後、予めプログラムされた所定の回数の平板電極11a,11bのインピーダンス測定を行い、測定回数が満了したことを検出すると(ステップS19:Yes)、制御演算部6は、メモリに格納されている複数の時点における静電容量Cの演算結果から、図16に示すようにその時までの平板電極11a,11b間の静電容量Cの時間変化の傾きを計算し(ステップS33)、後述する変換式に従って試料液中の微生物数を算出し、表示手段9に結果を表示させ(ステップS21)、一連の測定動作を終了する(ステップS22)。
静電容量の時間変化の傾きを測定すれば、微生物数を算出することができる理由を説明する。微生物は、イオンリッチで比較的電気伝導率が大きな細胞壁と、リン脂質からなるとともに、電気伝導率の小さな細胞膜に囲まれており、微小な誘電体粒子とみなすことができる。そして、誘電体微粒子としてみた微生物の誘電率は一般的な液体と比較して、さらに液体としては高い誘電率を持つ水と比較しても大きな値を持っている。
したがって、誘電泳動によってギャップに移動する微粒子の数が増えるに連れて、ギャップ付近の見かけの誘電率は上昇していく。電極の条件を固定した状態で、その間の媒体の誘電率を変化させると静電容量Cが変化するのは周知の事実である。
そこで、平板電極11a,11b間の静電容量Cの変化を通じて平板電極11a,11b間の誘電率の変化を測定すれば、その値はギャップ付近に移動してきた微生物数、ひいては試料液に存在する微粒子数に相関した測定結果を得ることができる。
このような静電容量Cの時間変化の一例を示したのが図16である。そして図16からも分かるように、測定初期の静電容量Cの時間変化の傾き(勾配)も静電容量Cの時間変化と同様に、微粒子数に対応して増加しているのが分かる。
静電容量Cの時間変化で微生物数を算出する場合、過渡状態をすぎてから測定した方が正確であるから、どうしても測定時間が長くかかる。これに対し、測定初期の静電容量の時間変化の傾き(勾配)によって微生物数を算出する場合は、比較的短時間で微生物数を算出できるという特長がある。
この場合、静電容量Cの変化と試料液の微生物数を関連付けるためには、静電容量Cと微生物数間の変換式が必要である。この変換式として、微生物数が明らかな校正用試料を、本実施の形態で説明した微生物測定装置の測定系を用いて予め測定し、その時の微生物数と静電容量Cの間の相関関係からばらつきを回帰分析して得られる曲線をあらわす関数を使用する。
この変換式を制御演算部6のメモリに記憶させ、微生物数が未知の試料を測定する場合には、所定時間内における静電容量C変化の値を代入することにより試料液の微生物数を算出できる。なお、換算テーブルを用いるものは、変換式による演算結果を予めメモリさせている。
ここで本実施の形態の試料としては、例えば酵母の培養液等の単一微生物系を想定しているが、混合微生物系であっても、微生物の種類とその構成比が大きく変化しない限り、前もって同様の変換式を算出しておいて測定することが可能である。
以上説明したように、微生物数を算出後、予めプログラムされた所定の時間が経過すると、制御演算部6は測定終了の通知を泳動電源部4に送る。これを受け、泳動電源部4は、平板電極11a,11bへの通電を停止するとともに電磁弁を開放して洗浄に入る。ギャップ付近に集まった微生物は、電磁弁の開放により流入する試料液の液体によって洗い流され、一連の動作が終了する。
本実施の形態では、単一組の薄膜電極を使用した場合の実施の形態について説明したが、これは、薄膜電極が複数組用いられることを妨げるものではない。即ち平板電極11a,11bと同一形状を持った、即ち同一条件下で同一のインピーダンスを持った電極が複数組セル1内に設置されていてもかまわない。その場合には、それぞれの電極のインピーダンスを独立に測定しその値を平均化するなどの統計処理を行った上で静電容量Cを算出することで、より精度の高い測定結果を得ることが可能になる。
たとえば複数の電極のうちで望ましくない不純物やごみの付着による影響で微生物数と関連しない値が測定されたとしても、測定値を平均化することでその影響を小さくすることができるし、より高度には、他の電極での測定結果を参照して異常値として切り捨てる等の処理も可能となる。このように同一形状を持った電極を複数組用いて測定を行うことは、構造がやや複雑になることを除けば、精度向上の面からむしろ望ましいことであるといえる。そして薄膜電極であるが故に、複数組用いる場合でも小型にすることができる。
このように本実施の形態では、誘電泳動を行う電界周波数を最適化し、電極インピーダンスの時間変化の傾きから微粒子数を算出するため、試料液の導電率上昇の影響を回避しつつ、短時間での測定を実現することができる。
(第3の実施形態:導電率測定部)
前述の実施例と重複する部分の説明は省略する。図17は、本実施の形態を示す微粒子測定装置の構成図である。セル1中の試料液2に含浸されるような位置に、導電率測定手段101が配置される。導電率測定手段101は、一般的な導電率測定装置が利用可能であり、例えば、交流導電率測定を行うための電極と電圧印加手段によって構成される。導電率測定手段101は、制御演算部6に接続され、導電率の測定結果が制御演算部6に送られる。
あるいは、電極チップ3が導電率測定のための電極を兼ねることも出来る。電極11a、11bには交流電圧を印加可能な泳動電源部4および、インピーダンスを測定するための測定部5が接続されているため、測定したインピーダンスから導電率を算出することが可能である。この場合、電極チップ3が導電率測定手段101を兼ねることになり、以下、電極チップ3が導電率測定手段101の役割を果たすものとして説明する。測定手段電極チップ3が導電率測定電極を兼ねることで、装置構成が簡略化できるメリットがある。
図18は本実施の形態にかかる微粒子測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、試料の導入からセル1内の微粒子を測定するに至るまでの一連の流れを説明する。まず、初期状態においてセル1内に、微粒子を含有した試料液2を投入する(ステップS11)。
所定のタイミングで、予めプログラムによって設定された測定動作に入ると、制御演算部6は、試料液2の導電率を測定するため、泳動電源部4に導電率を測定するための電圧(以下、導電率測定電圧と呼ぶ)を印加するよう指令する。この時、導電率測定電圧の大きさは、この後に続く微粒子を測定するための電圧(以下、微粒子測定電圧と呼ぶ)よりも小さな値であることが望ましい。
微粒子測定電圧を印加すると、微粒子が誘電泳動力によって電極11a、11b間にトラップされ、インピーダンス変化が生じ、試料液2の導電率の測定結果に誤差が生じる。よって、導電率測定電圧は微粒子が電極11a、11b間にトラップされず、かつ、十分に導電率が測定可能な電圧を印加する。本実施の形態では、1.0Vp−pの交流電圧を印加する(ステップS91)。
電極11a、11b間に導電率測定電圧が印加され、所定の安定化時間を経た後、測定部5は電極11a、11b間インピーダンスの測定を開始する。そして、所定の測定時間だけインピーダンス測定を行い、その結果は逐次制御演算部6に渡され、制御演算部6はインピーダンス測定結果から、試料液導電率を算出する。
導電率算出は、所定の測定時間内に何点か測定を行い、その平均を取る方が、測定精度が向上するため有利である。導電率算出方法は具体的には、(数7)で表される、電極11a、11b間の抵抗成分Rの逆数であるコンダクタンスを算出し、コンダクタンスと導電率の比例関係を利用して算出することが可能である。
図19に異なる導電率の試料液のコンダクタンスを測定した結果を示す。この比例関係の検量線の式を用いて、コンダクタンスから導電率を算出可能である。この検量線データは、メモリ6aに内蔵させておき、制御演算部6が算出する(ステップS92)。
以下、周波数選択(ステップS13)以降のプロセスは前述の実施例と同様であるため説明を省略する。このように、試料液の導電率を直接測定することで、正確な試料液の導電率によって周波数選択が可能になるというメリットがある。
試料液の導電率測定は、誘電泳動のための電圧を印加した直後の、微粒子がギャップ13に殆どトラップされていない状態でのインピーダンス測定結果から推定することも可能である。この場合、測定のステップは、図9に示すフローチャートで実現可能である。最初の測定(ステップ17)の測定結果からコンダクタンスを算出し、導電率を算出する。
このように、誘電泳動のための電圧で導電率を測定することで、測定のステップが省略されるため、測定時間の短縮につながるし、印加する電圧が単一のため、泳動電源部4の回路が簡略化できるという効果がある。
(第4の実施形態:導電率補正)
前述の実施例と重複する部分の説明は省略する。表2および表3に示す周波数選択テーブルにおいて、試料液導電率範囲内で、選択した周波数において、誘電泳動力が変化する場合が考えられる。
例えば、表3に示す導電率0〜300μS/cmの範囲において、800KHzでは、誘電泳動力を表すRe[K]は、最も導電率が低い5μS/cmの値と比較し、100μS/cmでは約10%の力の低下が見られる。
このため、誘電泳動によって電極11a、11b間にトラップされる微粒子数も誘電泳動力の低下と共に減少し、測定応答も低下してしまう。これをそのまま測定結果として用いると、結果の正確性を失うため、この変動を補正する必要がある。
図20は本実施の形態にかかる微粒子測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、本実施の形態の微粒子測定方法について説明する。ステップS111以外は前述の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
微粒子を誘電泳動し、その過程をインピーダンス測定などで測定し、その結果を制御演算部6が逐次メモリし、その変化を傾きの形で算出した後、試料液導電率の値から、表4に示す傾き補正テーブルに記録されている補正係数を測定結果(変化の傾き)に乗じたものを最終的な測定結果とする(ステップS111)。傾き補正テーブルはメモリ6aに内蔵されている。
Figure 2009037804
傾き補正テーブルは、次のような実験を行って決定するのがよい。同一の微粒子濃度を持つ、異なる導電率の試料液を用意し、それぞれの試料液で測定を行う。その結果、最も導電率が低く、言い換えれば誘電泳動力が最も強く、測定応答が最も大きな試料液の測定応答を基準値とする。導電率が高く、誘電泳動力が弱まり、測定応答が低くなる試料液での測定応答と、基準値との比を傾き補正値とすれば良い。
このように、試料液2の導電率によって測定結果を補正することで、測定結果の正確性が保たれる。
(第5の実施形態:導電率毎に測定限界)
前述の実施例と重複する部分の説明は省略する。表2および表3に示す周波数選択テーブルにおいて、試料液導電率範囲内で、選択した周波数において、誘電泳動力が変化する場合が考えられる。
例えば、表3に示す導電率0〜300μS/cmの場合、誘電泳動力を表すRe[K]は、最も導電率が低い5μS/cmの値と比較し、100μS/cmでは約10%の力の低下が見られる。このため、誘電泳動によって電極11a、11b間にトラップされる微粒子数も誘電泳動力の低下と共に減少し、測定応答も低下してしまう。
ここで、試料液2中に含まれる微粒子数が多い、言い換えれば微粒子濃度が高い場合は、誘電泳動力がある程度小さくなっても、電極11a、11b間にトラップされる微粒子数が測定部5のS/Nに支配される測定限界内であれば信号を取り出すことができ、誘電泳動力が低下したことに基づく補正によって正しい測定結果を得ることができる。ところが、誘電泳動力が小さく、かつ、微粒子濃度が低い場合、測定部5の測定限界を超えてしまい、信号が取り出せないため、補正によっても正しい測定結果を得ることができない。
このことは、誘電泳動力は試料液導電率によって変動するため、試料液導電率に応じて、測定装置としての測定限界微粒子濃度が異なることを示している。ここで、測定限界微粒子濃度をある固定値に設定すれば、全体としての測定可能な条件が制限され、装置としての利用範囲が著しく制限されてしまう。よって、試料液導電率の値に応じて、測定下限微粒子濃度を設定し、試料液導電率が高い場合は限られた微粒子濃度範囲ではあるが、何らかの結果提示をできるようにする。
図21は、試料液導電率を(1)5μS/cm、(2)200μS/cm、(3)300μS/cm、としたときの、試料液中の微粒子濃度に対する測定応答を表すグラフである。(4)は、測定部5のS/Nに支配される測定系の測定下限値であり、誘電泳動力でギャップ13に微粒子をトラップした結果、測定応答がこの測定下限値を超えなければ、微粒子濃度の正確な測定はできない。測定応答は、(1)の最も試料液導電率が低い場合の測定下限微粒子濃度を1として規格化して表している。
例えば、(1)の場合、測定下限微粒子濃度は10^5cells/mlである。測定応答が1以下であれば、定量数値化した結果の提示はできないが、「10^5cells/ml以下」という結果提示が可能である。このことは例えば、微粒子濃度が10^5cells/mlを境に、それ以上でどの程度の濃度か、またはそれ以下か、を調べる目的の測定では有効である。
同様に、(2)の場合、測定下限微粒子濃度は10^6cells/ml、(3)の場合、測定下限微粒子濃度は10^7cells/mlとなる。これは、表5に示す測定下限微粒子濃度テーブルとして、メモリ6aに内蔵しておき、制御演算部6が入力あるいは測定した導電率に応じて、測定下限粒子濃度を参照する。参照結果は、表示手段9などを用いて外部へ出力する。
Figure 2009037804
その測定における有効な濃度範囲が分かれば、結果の解釈を行うことが可能である。例えば、(2)の試料液導電率200μS/cmの場合において、測定結果が「10^6cells/ml以下」であったとすると、少なくともその濃度以下であることが分かり、もし、より詳細な検査が必要であれば、更に高感度な別の検査に回すなど、スクリーニングとしての機能を果たすことができる。
測定下限微粒子濃度テーブルはまた、測定が不可能な導電率範囲を含めることも出来る。表5では、500μS/cm以上が測定不可能な導電率範囲にあたる。これ以上の導電率では、測定応答を得るために十分な誘電泳動力を得ることはできず、測定が出来ない。この場合、制御演算部6は、試料液導電率が許容範囲を超えて測定できない旨、外部に通知する。この通知を行うことで、希釈やイオン交換などで導電率を許容範囲内に低減するなどの措置を取ることができる。
(標準試料として大腸菌を測定)
(1)試料液の調整
標準寒天培地(MB0010、栄研器材(株))上で37℃、16時間の好気培養を行った大腸菌K−12株(NBRC3301、製品評価技術基盤機構)をコンラージ棒で採取し、0.1M D−マニトール溶液(導電率、約5μS/cm)に懸濁したものを標準試料とし、適宜希釈して10^5〜10^8cfu/mlの懸濁濃度となるように希釈系列を作成した。
懸濁濃度は、適宜希釈した標準試料を標準寒天培地状に塗抹し、37℃、16時間の好気培養を行った結果生育したコロニー数を計数することによって規定した。標準試料に、NaCl溶液を適宜追加し、試料液導電率が5〜200μS/cmとなるように調整した。試料液導電率は、導電率計(B−173、堀場製作所(株))により測定した。
(2)測定装置
図5の測定装置を使用した。印加電圧振幅は5Vp−p、周波数は最適周波数を探るため、100KHzおよび800KHzとし、60秒間のインピーダンス測定の後、キャパシタンスの傾きを測定応答として評価した。
(3)結果
図22は、横軸に大腸菌濃度、縦軸に規格化したキャパシタンス傾きをそれぞれ対数変換した値を示す。周波数は100KHzである。導電率が5μS/cmの場合の測定下限は4.62×10^5cfu/ml、10μS/cmの場合の測定下限は1.16×10^6cfu/ml、25μS/cmの場合は2.31×10^6cfu/mlと、試料液導電率の上昇と共に測定応答が低下した。導電率が更に上昇し、50μS/cm以上になると、測定応答が全く得られなくなった。
図23は、周波数が800KHzの場合の測定結果を示す。試料液導電率100μS/cmまでで測定応答が得られており、100KHzの場合と比べ、測定可能な試料液導電率が高いため、より最適な周波数と言える。
導電率100μS/cmの場合、800KHzでは〜50μS/cmよりも測定応答値が低下しているため、これを表2の導電率補正テーブルを用いて補正した結果を図24に示す。補正を行うことにより、誘電泳動力が導電率の上昇によって低下し、測定応答が低下したデータから正確な大腸菌濃度を推定可能であることを示している。
(口腔内細菌を測定)
(1)試料の調整
様々な導電率を持つ試料液での測定実証のため、口腔内の細菌を代表例として測定評価した。口腔内の舌背上を、滅菌スワブ(Ex001、デンカ生研(株))で3回擦過し、7mlの0.1M D−マニトール溶液(導電率、約5μS/cm)に懸濁したものを試料液とした。
口腔内は、ナトリウム、カルシウムなどのイオンが豊富に含まれるだ液が存在するため、口腔内から採取し懸濁した試料液は、導電率が上昇する。総検体数98検体の試料液の平均導電率は55μS/cm、最大導電率は200μS/cmであった。
試料液中の細菌濃度は次のようにして求めた。試料液を適宜希釈し、血液寒天培地(E−MP23、栄研器材(株))上に塗抹し、37℃、48時間の嫌気培養を行い、生育したコロニーを計数した結果を希釈率から換算して試料液中の細菌濃度とした。
(2)測定装置
図5の測定装置を使用した。印加電圧振幅は10Vp−p、周波数は800KHz、20秒間のインピーダンス測定の後、キャパシタンスの傾きを測定応答とし、表4の導電率補正テーブルを用いて補正したものを最終的な測定結果として評価した。
(3)結果
図25は、横軸に培養細菌濃度、縦軸に規格化したキャパシタンス傾きをそれぞれ対数変換した値を示す。細菌濃度10^4〜10^8cells/mlの範囲において、相関係数R=0.89と非常に良好な直線性が得られている。以上の結果より、細菌濃度10^4〜10^8cells/ml、試料液導電率〜200μS/cmの範囲において、本発明の微粒子測定装置ならびに微粒子測定方法の有効性が確かめられた。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2007年9月18日出願の日本特許出願(特願2007−241345)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は、微粒子を含有した溶液の導電率の影響を前処理なしに回避し、溶液に含有された微粒子数を高感度かつ高精度に測定することができる微粒子測定装置等として有用である。
本発明は、誘電泳動を用いて試料液中の微粒子数を測定するための微粒子測定装置および微粒子測定方法に関する。更に詳しくは、溶液導電率の影響を前処理なしに回避し、高感度、高精度に測定する微粒子測定装置および微粒子測定方法に関する。
昨今、食中毒や感染症などの原因となり、人体に何らかの害を及ぼす可能性がある微生物を、迅速、簡便、高感度に定量測定するニーズは特に高い。食品の製造工程や微生物検査施設を備えない診療所などにおいて、その場で微生物検査を実施することで、食中毒や感染症などの防止、予防が可能になるためである。
また、いわゆるバイオセンサにおいて、抗体など、測定対象に特異的に結合する物質を標識したポリスチレンなどの人工微粒子を用いて、検体中の生化学的物質を定量測定する際に、検体中の微粒子数あるいはその結合状態を定量測定する必要がある。このように、昨今、液体中に含まれる微粒子を迅速、簡便、定量的に測定する要求は高い。
ここで、本願における微粒子の定義について説明する。本願で言う微粒子とは、ポリスチレンやそれらに何らかのコーティングを施した粒子、カーボンナノチューブ、金コロイドなどの金属粒子、細菌、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、ウイルス、として分類されているいわゆる微生物、原生動物や原虫のうちの小型のもの、生物体の幼生、動植物細胞、精子、血球、核酸、蛋白質等も含む広い意味での生体または生体由来の微粒子である。この他にも、本願で言う微粒子とは、誘電泳動可能な大きさのあらゆる粒子を意味する。本願では特に、微生物の測定を想定している。
従来、微生物の検査法として最も一般的に用いられるのは培養法である。培養法は、培地上に微生物検体を塗抹し、微生物が生育条件下で培養を行い、形成される培地上のコロニー数を計数することで微生物数を定量する方法である。
しかし、コロニー形成までに通常1〜2日、微生物種によっては数週間を要するため、迅速な検査を実施できない問題があった。また、濃縮や希釈、培地への塗抹などが必要なため、専門家による操作が必要であり、簡便な検査が実施できない、あるいは操作上のバラツキによる精度低下の問題があった。
これら従来の問題を解決するため、本発明者は他の発明者らと共に、迅速、簡便、高感度な微生物数測定法として、誘電泳動とインピーダンス計測を組み合わせたDEPIM(Dielectrophoretic Impedance Measurement Method)法を提案した(例えば、特許文献1を参照)。
DEPIM法は、微生物を誘電泳動力によってマイクロ電極に捕集し、同時にマイクロ電極のインピーダンス変化を測定することによって試料液中の微生物数を定量測定する方法である。以下、その測定原理について概説する。
微生物は一般に、イオンリッチで誘電率および導電率の高い細胞質および細胞壁が、比較的誘電率および導電率の低い細胞膜に囲まれた構造を有し、誘電体粒子とみなすことができる。DEPIM法では、電界中で分極した誘電体粒子に一定方向に働く力である誘電泳動力を利用し、誘電体粒子である微生物をマイクロ電極のギャップ間に捕集する。
誘電体粒子に働く誘電泳動力FDEPは、以下の(数1)で与えられることが公知である(例えば、非特許文献1を参照)。以下、誘電体粒子が、微生物である場合を例として説明する。
Figure 2009037804
ここで、a:球形近似したときの微生物の半径、ε0:真空の誘電率、εm:試料液の比誘電率、E:電界強度であり、▽は演算子で勾配(gradient)を表す。この場合、▽E2は、電界E2の勾配なので、その位置でどれだけE2が傾斜を持っているか、つまり電界Eが空間的にどれだけ急に変化をするかを意味する。また、Kはクラウジウス・モソッティ数と呼ばれ、(数2)で表され、Re[K]>0は正の誘電泳動を表し、微生物は電界勾配と同方向、つまり、電界集中部に向かって泳動される。Re[K]<0は負の誘電泳動を表し、電解集中部から遠ざかる方向、すなわち弱電界部に向かって泳動される。
Figure 2009037804
ここで、εb *およびεm *はそれぞれ、微生物および溶液の複素誘電率を表し、一般に複素誘電率εr *は(数3)で表される。
Figure 2009037804
ここで、εr:微生物あるいは試料液の比誘電率、σ:微生物あるいは試料液の導電率、ω:印加電界の角周波数を表す。
(数1)(数2)(数3)から、誘電泳動力は、微生物の半径、クラウジウス・モソッティ数の実部(以下、Re[K]と表す)および電界強度に依存することが分かる。また、Re[K]は、試料液および微生物の複素誘電率、電界周波数に依存して変化することが分かる。
そのため、DEPIM法では、これらのパラメータを適切に選択し、微生物に働く誘電泳動力を十分大きくし、微生物を電極ギャップに確実に捕集する必要がある。また、DEPIM法では、上記誘電泳動による電極への微生物捕集と同時に、電気的計測を行い、試料液中の微生物数を定量測定することを特徴としている。
微生物は、前述した構造を有するため、電気的には固有のインピーダンスを持った微粒子と考えることができる。そのため、誘電泳動によりマイクロ電極のギャップ間に捕集される微生物数が増加すると、その捕集数に応じて電極間のインピーダンスが変化する。
従って、電極間インピーダンス時間変化の傾きは、単位時間当たりに電極ギャップ間に捕集される微生物数に応じた値となり、傾きの大きさは試料液中の微生物濃度に対応する。よって、電極間インピーダンス時間変化の傾きを測定することで、試料液中の微生物濃度、言い換えれば微生物数を測定することが可能となる。
更に、DEPIM法では、誘電泳動を開始直後のインピーダンス時間変化の傾きから微生物数を定量することで、短時間での微生物測定を実現している。以上、DEPIM法の測定原理について概説したが、詳しくは非特許文献2を参照されたい。
ところで、本願で測定に用いる試料液は、血液や唾液など、何らかの方法によって採取した微生物を、水を主成分とする低導電率の液体で懸濁したものを想定しているが、微生物を採取する際、微生物だけでなく周辺に含まれるイオンも同時に採取されると考えられる。この場合、試料液の誘電率は水とほぼ同じ値になり、結局、微生物に働く誘電泳動力は試料液のイオン濃度、言い換えれば、導電率に依存することになる。
一般に、試料液導電率が高くなるほど誘電泳動力は小さくなる。そのため、従来のDEPIM法で上記のような試料液の測定を想定した場合、試料液導電率の高い試料では、微生物に働く誘電泳動力が低下しマイクロ電極に捕集される微生物数が少なくなる結果、測定感度が低下するという問題があった。更に、試料液導電率によって微生物に働く誘電泳動力が異なるため、異なる導電率の試料液を測定したときの測定結果バラツキが大きいという問題があった。
誘電泳動を利用した微生物等の測定に際し、上記問題を解決するための手段として、測定前にイオン交換等により試料液導電率を低減する技術が公知である。この技術は、分析前に試料液をイオン交換カラムで処理を行い、試料液導電率を低減した後、誘電泳動により試料液中の微生物を分析する方法である(例えば、特許文献2を参照)。
また、担体粒子上での生物学的特異的凝集反応により、生物学的特異的反応性物質の存在を検出又は測定する方法が知られている。これは、塩の共存下に交流電圧を該反応系に印加することにより、従来よりも迅速且つ簡便に、しかも高感度で生物学的特異的反応性物質の存在を検出又は測定する方法である(例えば、特許文献3参照)。
また、微生物の活性を測定する場合に、ほぼリアルタイムの迅速測定を行い、微生物活性を簡便且つ定量的に検出する微生物活性測定装置及びそのとき使用する微生物活性の測定方法が知られている。この方法は、微生物種類と試料液の導電率を入力し、活性を測定する最適な電圧(振幅と周波数)を表1のテーブルから選択するものである(例えば、特許文献4参照)。
Figure 2009037804
特開2000−125846号公報 特表平11−501210号公報 特開平7−083928号公報 特開2003−000224号公報
Hywel Morgan、他:「AC Electrokinetics:colloids and nanoparticles」、RESERCH STUDIES PRESS LTD.2003年出版、pp.15〜63 J.Suehiro, R.Yatsunami, R.Hamada, M,Hara,J.Phys. D: Appl. Phys. 32(1999)2814-2820
しかしながら、特許文献1には、平板電極間に周波数1MHzでピーク電圧100Vの正弦波交流電圧を印加する例が記載され、この時印加する交流の周波数は誘電泳動が生じる周波数範囲であれば任意に選ぶことが可能とされているが、周波数選択により溶液導電率の影響を回避することに関する示唆はない。
また、特許文献2に記載の技術によれば、誘電泳動による分析を行う前にイオン交換という前処理が必要であるため、微生物測定の簡便性が損なわれるし、測定全体にかかる時間も長くなるという問題があった。さらに、イオン交換処理後の試料液導電率は、イオン交換処理前の試料液導電率に依存するため、試料毎の導電率バラツキによって、DEPIM法など、誘電泳動を用いた微生物測定の結果にバラツキを生じるという問題を解決できない。
また、特許文献3には、交流電圧の周波数範囲が記載されているが、パールチェーンと誘電泳動は異なる現象であり、10mM(約1000μS/cm)の塩濃度では誘電泳動が発生しない。すなわち、10mMのNaCl溶液の導電率は約1000μS/cmであり、この程度の高い溶液導電率条件下では、「正の誘電泳動」で電極に微生物をトラップすることは困難である。
また、特許文献4の微生物活性測定装置は、微生物種類と試料液の導電率を入力し、活性を測定する最適な電圧(振幅と周波数)をテーブルから選択するものであり、活性状態によって誘電泳動力に差が生じる周波数を選択するものである。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高溶液導電率を有する試料液においても、導電率低減の前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で測定することが可能な微粒子測定装置および微粒子測定方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、微粒子のなかでも特に、細菌を誘電泳動する際に、溶液導電率の影響を回避可能な周波数領域があることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき達成されたものである。
本発明に係る微粒子測定装置は、微粒子含有の液体を導入するセルと、前記セル内部に浸漬する少なくとも一対の電極と、前記一対の電極間に、前記微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加する泳動電源部と、前記セル内の微粒子を測定する測定部と、前記測定部が測定した結果を演算し、液体中の微粒子濃度を算出する制御演算部と、を備える。
この構成によれば、一対の電極間に微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、高溶液導電率を有する試料液においても、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記制御演算部が、溶液導電率をパラメータとした場合に、前記微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる交流電圧の周波数を格納する周波数テーブルを有する。
この構成によれば、周波数テーブルを参照することにより、微粒子を効率良く捕集するための周波数を高速に選択することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記泳動電源部が、前記一対の電極間に500KHz〜3MHzの周波数の交流電圧を印加するものである。
この構成によれば、一対の電極間に500KHz〜3MHzの周波数の交流電圧を印加するので、微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となり、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記測定部が、前記一対の電極間のインピーダンスを測定し、前記制御演算部が、前記一対の電極間のインピーダンスの時間変化を演算し、前記セル内の微粒子数を算出するものである。
この構成によれば、電極間のインピーダンスの時間変化から、微粒子数を算出することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記微粒子が、前記誘電泳動力によって、前記一対の電極のギャップ間に正の誘電泳動で捕集されるものである。
この構成によれば、一対の電極のギャップ間に誘電泳動力で微粒子を捕集するので、迅速、簡便かつ高感度に微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記制御演算部が、前記一対の電極間のキャパシタンスの時間変化から、前記試料液中の微粒子の数を算出するものである。
この構成によれば、キャパシタンスの時間変化から、試料液中の微粒子の数を測定するので、迅速、簡便かつ高感度に微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記試料液の導電率が、0〜150μS/cmの範囲であるものである。
この構成によれば、最も測定頻度が高い口腔内サンプルに対して、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置において、前記泳動電源部は、前記誘電泳動力が、前記溶液導電率が最も低い場合における最大誘電泳動力の約50%以上となる周波数の交流電圧を印加するものである。
この構成によれば、必要十分な感度および精度を確保することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記溶液導電率を測定する溶液導電率測定部を備えるものである。
この構成によれば、溶液導電率に応じて簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、少なくとも一対の溶液導電率測定のための電極を備え、前記溶液導電率測定のための電極間のインピーダンスを測定することにより前記溶液導電率を測定するものである。
この構成によれば、溶液導電率に応じて簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記一対の電極が、誘電泳動および溶液導電率測定を行うためのものである。
この構成によれば、同じ電極で誘電泳動を行うとともに溶液導電率測定を行うので、微粒子測定装置を簡素化することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、溶液導電率測定のための電圧と、誘電泳動のための電圧が異なるものである。
この構成によれば、溶液導電率測定のための電圧と誘電泳動のための電圧が異なるので、それぞれに最適な電圧を選択することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、溶液導電率測定のための電圧が、誘電泳動のための電圧よりも低いものである。
この構成によれば、溶液導電率測定のための電圧が誘電泳動のための電圧よりも低いので、誘電泳動の影響を受けずに溶液導電率を正確に測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は誘電泳動を行った初期インピーダンス値から前記溶液導電率を算出するものである。
この構成によれば、誘電泳動を行った初期インピーダンス値から溶液導電率を算出するので、溶液導電率を迅速に測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記制御演算部が、前記溶液導電率に応じて、測定結果を補正するものである。
この構成によれば、溶液導電率の影響を回避し、あるいはその影響を定量的に補正することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記制御演算部が、前記溶液導電率に対応した検出下限値を格納する検出下限値テーブルを有する。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、前記溶液導電率に対応した前記検出下限値を、外部に通知する通知手段を備える。
この構成によれば、溶液導電率が検出下限値より小さい場合に、ユーザは、感度および精度が低下したことを把握することができる。
また、本発明に係る微粒子測定装置は、微粒子含有の液体を導入するセルと、前記セル内部に浸漬する少なくとも一対の電極と、前記一対の電極間に、約500KHz〜10MHzの範囲の周波数の交流電圧を印加する泳動電源部と、前記セル内の微粒子を測定する測定演算部と、を備える。
この構成によれば、一対の電極間に約500KHz〜10MHzの範囲の周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、微粒子含有の試料液に浸漬した一対の電極間に交流電界を印加し、誘電泳動力により前記微粒子を所定位置に配置し、前記試料液中における微粒子濃度を測定する微粒子測定方法であって、溶液導電率が変化しても前記誘電泳動力が所定の値以上となるように、前記交流電界の周波数を設定するステップを有するものである。
この構成によれば、一対の電極間に溶液導電率が変化しても誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、高溶液導電率を有する試料液においても、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記溶液導電率をパラメータとして前記交流電界の周波数を変化させた場合に、前記誘電泳動力が、前記溶液導電率が最も低い場合における最大誘電泳動力の約50%以上となるように、前記交流電界の周波数を設定するステップを有するものである。
この構成によれば、微粒子に必要十分な誘電泳動力を作用させることができ、簡便かつ必要十分な感度および精度で測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記溶液導電率を測定するステップと、前記溶液導電率が変化しても前記誘電泳動力が所定の値以上となるように、前記交流電界の周波数を選択するステップとを有するものである。
この構成によれば、溶液導電率毎に、適した交流電圧の周波数を選択できるので、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、測定した前記溶液導電率で、前記試料液中における前記微粒子濃度を補正するステップを有するものである。
この構成によれば、測定した溶液導電率で試料液中における微粒子濃度を補正することにより、溶液導電率が変動した場合でも必要十分な感度および精度を維持することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記一対の電極のギャップ間に、前記誘電泳動力で前記微粒子を捕集するステップを有するものである。
この構成によれば、一対の電極のギャップ間に誘電泳動力で微粒子を捕集するので、迅速、簡便かつ高感度に微粒子数を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記一対の電極間のインピーダンスを測定するステップを有するものである。
この構成によれば、電極間のインピーダンスの時間変化から、微粒子濃度を算出することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記一対の電極間のキャパシタンスを測定するステップと、前記キャパシタンスの時間変化から、前記試料液中の微粒子濃度を測定するステップとを有するものである。
この構成によれば、キャパシタンスの時間変化から試料液中の微粒子濃度を測定するので、迅速、簡便かつ高感度に微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、前記試料液の導電率が、0〜150μS/cmの範囲である。
この構成によれば、最も測定頻度が高い口腔内サンプルに対して、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
また、本発明に係る微粒子測定方法は、微粒子含有の試料液に浸漬した一対の電極間に交流電界を印加し、誘電泳動力により前記微粒子を所定位置に配置し、前記試料液中における微粒子濃度を測定する微粒子測定方法であって、前記交流電界の周波数が、約500KHz〜10MHzの範囲である。
この構成によれば、一対の電極間に約500KHz〜10MHzの範囲の周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子濃度を測定することができる。
本発明によれば、一対の電極間に微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加することにより、溶液導電率の変動にかかわらず十分な誘電泳動力が作用するため、溶液導電率を低減する前処理を行うことなく、簡便かつ必要十分な感度および精度で微粒子数を測定することができる。
本発明の第1の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(1) 本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置の電極チップを説明するための概略図 本発明の実施形態において測定電極11a,11b間に印加される電圧によって生じる電気力線15を示す図 (a)、(b)電極11a、11bの対向するエッジ部に微粒子14が電気力線に沿ってトラップされる説明図 本発明の第1の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(2) 本発明の第1の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(3) (a)、(b)誘電泳動用交流電圧の周波数をパラメータとした場合に、溶液導電率(μS/cm)とRe[K]の関係を示すグラフ 誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフ(1) 本発明の第1の実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャート 本発明の第2の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図 本発明の第2の実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャート (a)電極30,31間の等価回路、および(b)等価回路に流れる電流26と電圧27間の位相関係を示す図 複素平面上に極座標表示された電圧、電流、位相角の関係を示す図 溶液導電率を0〜200μS/cm付近まで変化させた場合の誘電泳動力FDEPおよびキャパシタンス傾きの変化を示すグラフ 誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフ(2) 平板電極11a,11b間の静電容量Cの時間変化の傾きを計算するためのグラフ 本発明の第3の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図 本発明の第3の実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャート 異なる導電率の試料液のコンダクタンスを測定した結果を示す図 本発明の第4の実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャート 本発明の第5の実施形態において試料液中の微粒子濃度に対する測定応答を表すグラフ 本発明の実施例1において大腸菌濃度と規格化したキャパシタンス傾きをそれぞれ対数変換した値を示すグラフ 本発明の実施例1において周波数が800KHzの場合の測定結果を示すグラフ 本発明の実施例1において表4の導電率補正テーブルを用いて補正した結果を示すグラフ 本発明の実施例2において培養細菌濃度と規格化したキャパシタンス傾きをそれぞれ対数変換した値を示すグラフ
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態の微生物測定装置について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の微生物測定装置の構成図、図2は、本実施形態の微生物測定装置の電極チップを表す概略図である。
図1において、1は測定対象の微生物が含まれる試料液2を保持するセル、3は誘電泳動で微生物を捕集する電極対を含む電極チップ、4は泳動電源部、5は誘電泳動によってトラップされた微生物によって生じた光学的あるいは電気的な変化を測定する測定部、6は微生物測定装置全体の制御や測定結果の解析演算や入出力処理などを行う制御演算部、7は試料液2の導電率を入力するための導電率入力手段である。
図2において、10は基板、11a、11bは基板10上に形成され一対の極をなす電極、13は電極11aと11bとの電極間ギャップである。基板10には、金属などの導電性材料によって電極11a、11bのパターンが形成される。好ましい材料の一例としては、金、銀、銅、アルミニウム、白金など、十分な導電性を有することが望ましく、本実施の形態では銀を使用している。
図3は、測定電極11a,11b間に印加される電圧によって生じる電気力線15を示す。本実施の形態では測定電極11a,11b間のギャップ13付近の構成が電界集中部にあたり、中でも最も電界が集中するのはギャップ13である。従ってギャップ13部分にもっとも強く微生物が泳動される。
電極11a、11bはその幅に対して十分に薄い薄膜であることが望ましく、例えば100μmの幅に対して厚さ1000Å程度である。これにより、厚さ方向で見たエッジ部分に不平等電界が形成され、微生物を効率的に誘電泳動することが可能となる。
電極11a、11bのパターニングを行う方法は、選択した材料で所望のパターンを形成できれば良い。例えば、金属薄膜をスパッタあるいは蒸着、めっきなどにより形成し、フォトリソグラフィー、レーザー加工などによってパターンを形成する方法、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの、直接パターンを形成する方法など、電極を形成するために用いられる一般的なプロセスが選択可能である。生産性やコストなどを勘案して最も適切なプロセスを選択すればよい。本実施の形態では、スパッタによって銀の薄膜を形成し、フォトリソグラフィーによってパターンを形成している。
電極11a、11bはそれぞれ泳動電源部4に接続されており、泳動電源部4は電極11a、11b間に特定周波数の交流電圧を印加する。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。後述するが、泳動電源部4が印加する周波数は、制御演算部6によって適切に決定される。
電極チップ3が試料液2中に浸漬され、電極11a、11bが試料液2に接した状態で、電極11a、11b間に交流電圧が印加されると、試料液2中に含まれる微生物が、電極11aと11bに挟まれたギャップ13に、誘電泳動力によって捕捉される。
微生物に正の誘電泳動力が働く場合は図4(a)のように電界集中部であるギャップ13の領域中、電極11a、11bの対向するエッジ部に、微生物14が電気力線に沿って微生物がパールチェーンと呼ばれる数珠状にトラップされる。
一方、微生物14に負の誘電泳動が働く場合は、図4(b)のように、電界集中部から遠ざかる方向、すなわち弱電界部であるギャップ13の領域中、電極11a、11bの対向する中心部分にかけてトラップされる。
測定部5は、このようにしてギャップ13にトラップされた微生物によるインピーダンス変化を測定する。具体的には、図5に示すように、泳動電源部4と電極チップ3の間に、測定部5を電極11a、11b間のインピーダンスを測定する回路を構成する。
この場合、測定部5は電極11a、11b間に流れる電流値と、泳動電源部4が印加した電圧と電流の位相差を測定するための回路等から構成される。測定部5は、誘電泳動によって微生物が移動し電界集中部近傍に濃縮されることに起因する電極11a、11b間の電流および位相差の変化を測定する。
測定部5で測定した電流値と位相差は、制御演算部6に渡される。制御演算部6は、これら電流、位相差、および、泳動電源部4が印加している電圧および周波数の情報から、電極11a、11b間のインピーダンス値を計算する。
電圧印加前、電極11a、11b間の試料液2のみで満たされた領域が、誘電泳動によるトラップによって誘電率の異なる微生物で置き換えられることで、電極11a、11b間のインピーダンスはトラップされた微生物数に応じて変化する。
従って、ある時間におけるインピーダンス値と、電圧印加直後の初期インピーダンス値との差分、言い換えれば変化分から、ギャップ13にトラップされた微生物数を推定することが可能である。そして、トラップされた微生物数は試料液中に含まれる微生物濃度に依存するものであるから、試料液中の微生物数を測定することが可能になる。
測定部5はまた、図6に示すように、光学的測定手段によっても実現可能である。この場合、光源21と受光部22の光路内にギャップ13が含まれるような位置関係にセル1を配置する。ギャップ13にトラップされた微生物数によって、受光部22に入射する光量が変化することを利用して、ギャップ13にトラップされた微生物数を推定することができる。
あるいは、受光部22の情報を制御演算部6に渡して画像化し、制御演算部6が粒子判定アルゴリズムなどを用いて直接粒子数を計数してもよいし、視野面積に対する微粒子面積を求めることで微粒子数に換算してもよい。このようにして得られたギャップ13にトラップされた微生物数は試料液中に含まれる微生物濃度に依存するものであるから、試料液中の微生物数を測定することが可能になる。
以上のように微生物をギャップ13にトラップするためには、微生物に働く粘性力や重力、ブラウン運動など、誘電泳動以外の全ての外力に対して十分大きな誘電泳動力を誘起する必要がある。これが不十分であれば、測定部5が測定できる微生物数が減少するため、測定感度および精度が著しく低下し、測定部5が測定可能な信号の大きさを下回ると微生物の測定が出来なくなる。
従って、本実施の形態では、微生物をギャップ13にトラップするために十分な誘電泳動力が働くような周波数を、制御演算部6が適切に決定し、泳動電源部4が決定した周波数の電圧を印加する。これにより、測定部5が十分に検出可能な信号を取り出すことが出来るため、微生物濃度の測定が高精度かつ高感度に行える。
制御演算部6は、図示しないCPUや、一連の動作を規定するプログラムや各種データが格納されたメモリ6aなどの回路から構成され、一連の測定動作を制御する。導電率入力手段7は、試料液の導電率を、測定前に入力できるようになっている。例えば、テンキーで数値入力する方法や、「0〜50μS/cm」、「50〜100μS/cm」など複数の導電率範囲に対応したスイッチを押下するなどの方法で実現できる。
メモリ6aは、導電率入力手段7から与えられた試料液の導電率の値から、泳動電源部4が印加する電圧の適切な周波数を選択するための周波数選択テーブルを有する。周波数選択テーブルには、試料液2の導電率毎に、微生物に十分な誘電泳動力が働く最適な周波数と印加電圧値がテーブル化されている。
ここで、メモリ6aに格納されている周波数選択テーブルについて詳説する。表2に示すように、周波数選択テーブルは少なくとも、試料液の導電率、印加する交流電圧の振幅、最適周波数が互いに関連付けられて格納されている。試料液の導電率は特定の数値であってもよいし、ある範囲を設定してテーブルを作成してもよい。制御演算部6は、与えられた導電率に該当する交流電圧の振幅と最適周波数を選択する。尚、導電率300μS/cm〜に対応する周波数の“E”は、エラーであることを示しており、あまりにも導電率が高い場合には測定が出来ないことを表している。
Figure 2009037804
次に、最適周波数について説明する。(数1)において、誘電泳動力FDEPは、クラウジウス・モソッティ数Kの実部、すなわちRe[K]に比例する。そして、Re[K]は、(数2)および(数3)から明らかなように、試料液2の導電率に依存する。試料液2の導電率が変化した場合、Re[K]すなわち誘電泳動力がどのように変化するかを示したものが図7である。
図7においては、誘電泳動に用いる電界、言い換えれば印加電圧の周波数をパラメータに、試料液2の導電率の関数として示している。Re[K]は、誘電泳動力FDEPに対応しており、その正負は誘電泳動力が引力として作用するか、あるいは斥力として作用するかにそれぞれ対応する。
図7(a)に示すように、たとえば、誘電泳動用交流電圧の周波数が(1)10KHzの場合は、溶液導電率3μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
一方、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzの場合は、溶液導電率30μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
なお、図7(b)は、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzおよび(3)800KHzの場合に、溶液導電率を1μS/cm〜1000μS/cmまで変化させた場合の誘電泳動力FDEPの変化を示す。周波数が(2)100KHzの場合、約20μS/cm以上でRe[K]<0となるが、800KHzでは導電率上昇に対する誘電泳動力の低下が抑えられ、約250μS/cmまでRe[K]>0となり引力によりギャップ13のエッジ部にトラップすることができる。
このことは、試料液の導電率上昇に対して最も誘電泳動力の低下が小さくなる最適な周波数が存在することを示している。この最適周波数を決定するには、次のような実験を行って決定するのがよい。すなわち、同じ微粒子濃度で、導電率を変えた複数の試料液を用意し、それぞれの試料液に対して印加電圧の周波数を変えながら測定を行う。その結果、測定応答が最も大きくなった周波数が、それぞれの試料液導電率に対する最適周波数となる。表2に示した最適周波数は、このようにして決定する。
しかしながら、あまりにも周波数が高いと測定回路の実現が困難となり、あまりにも周波数が低いとジュール熱による対流や、極端な場合、電気分解による気泡発生が測定に悪影響をもたらす。このため、最適周波数は、誘電泳動にとって最適とはいえないが、微粒子測定を行うのに十分な誘電泳動を働かせることの出来る、許容範囲の周波数が存在する。
図8は、溶液導電率(μS/cm)をパラメータとした場合における、誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフである。試料液の導電率100μS/cmにおいて、正の誘電泳動を利用して微粒子の測定を行う場合、測定応答を得られる十分な誘電泳動力がRe[K]>0.4であったとすると、最適周波数は約700KHz〜4MHzとなる。この場合、高周波による測定回路の複雑化を避けるために、下限の周波数である700KHzを最適周波数として採用することも可能である。
また、測定する必要がある試料液導電率の範囲内で、ある特定の一つの周波数で十分に誘電泳動力が得られることがある。その場合は、表3に示すような周波数選択テーブルになる。
Figure 2009037804
例えば、測定する必要のある試料液導電率の範囲が0〜100μS/cmであった場合、周波数800KHzであれば、全ての導電率領域に対してRe[K]>0.4となり、単一の周波数で所望の試料液導電率の範囲で測定を行うことができるため、回路構成が簡易となり好都合である。この場合、試料液導電率が100μS/cmを超えた場合には、周波数選択テーブルに示されるよう、エラーに該当するデータが書き込まれている。
図9は、本実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、試料の導入からセル1内の微生物の濃縮、測定、結果提示にいたるまでの一連の流れを説明する。まず、初期状態では、セル1に測定対象の微生物が含有された試料液を投入する(ステップS11)。
次に、導電率入力手段7によって、投入した試料液の導電率を入力する。入力された導電率は、制御演算部6に渡される(ステップS12)。
試料液の導電率を渡された制御演算部6は、メモリ6aに備わる最適周波数テーブルを参照し、電極に印加すべき電圧振幅値および周波数を選択する(ステップS13)。この時の電圧振幅値(以下、「誘電泳動のための電圧」と呼ぶ)は、微生物をギャップ13にトラップするために十分な値を選択すればよく、本実施の形態では10Vp−pとしている。
また、表2および表3では、誘電泳動のための電圧は導電率に対して一定の値としているが、それぞれの導電率で最適な値を選択することができる。例えば、導電率が高い場合は、あまりに電圧が高すぎるとジュール熱が発生し、誘電泳動による微生物トラップに影響が出るため、導電率が高くなるに従い、誘電泳動のための電圧を低くする、などとする。
次いで、制御演算部6は、メモリ上に保存された、入力された導電率に対応する周波数がエラーコード(E)であるか判断する(ステップS14)。エラーコード(E)であった場合には、ステップS16に進み、制御演算部6は、入力された導電率が測定範囲外であることを表示手段9に表示するよう指示し、測定を終了する(ステップS22)。
ステップS14において、選択した周波数がエラーコード(E)でなかった場合、制御演算部6は泳動電源部4に対し、最適周波数テーブルで選択した電圧振幅および周波数にて、電極11a、11b間に電圧を印加させる(ステップS15)。
電極11a、11b間に所定の電圧が印加されると、測定部5は直ちに電圧印加直後の初期状態のデータとして、電極11a、11b間のインピーダンスを測定し、測定結果は制御演算部6に渡され、メモリ6aに初期のインピーダンス値として保存する(ステップS17)。
ここでは、インピーダンス測定を例として記載するが、測定部5が光学的な手段を用いてギャップ13の状態を測定するのであれば、電圧を印加しなくても初期状態が測定できるので、ステップS17はステップS15の前に行うことも可能である。
次に、制御演算部6は、図示しない時計手段によって所定の時間が経過するまで待つ。この時、泳動電源部4は電圧印加を保持したままである(ステップS18)。
所定の時間が経過すると、制御演算部6は所定の測定回数が満了したかを判断し(ステップS19)、満了していなければステップS17に戻る。ステップS17に戻り、制御演算部6は測定部5に命じ、電極11a、11b間のインピーダンスを測定し、その結果をメモリ6aに所定時間経過後の結果として保存する。
所定の測定回数が満了した場合、制御演算部6は泳動電源部4に電圧印加を止めるよう指示する(ステップS20)。
電圧印加を停止後、制御演算部6は、メモリ6aに保存された、電極11a、11b間インピーダンスの経時変化データから、試料液2中の微粒子濃度を算出し、表示手段9に結果を表示させ(ステップS21)、一連の測定動作を終了する(ステップS22)。
微生物濃度の算出は、メモリ6aに予め保存された、検量線から求めることができる。この検量線は、微生物濃度が明らかな校正用試料を、本実施の形態で説明した微生物測定装置の測定系を用いて予め測定し、その時の微生物数とインピーダンス変化の相関関係からばらつきを回帰分析して得られる曲線をあらわす関数を使用する。
この変換式を制御演算部6のメモリ6aに記憶させ、微生物濃度が未知の試料を測定する場合には、所定時間内におけるインピーダンス変化の値を代入することにより、セル1内の微生物濃度を算出できる。なお、換算テーブルを用いる場合は、変換式による演算結果を予めメモリさせている。
以上、本実施の形態によれば、試料液の導電率に応じて、最適な印加電界周波数を選択することにより、測定を行うために十分な誘電泳動力を微生物に働かせることができるため、試料液の導電率が上昇しても、前処理無く、微生物の測定を行うことができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の実施の形態の微生物測定装置について、図面を用いて説明する。図10は、本実施形態の微生物測定装置の構成図である。
図10において、1は測定対象の微生物が含まれる試料液2を保持するセル、3は誘電泳動で微生物を捕集する電極対を含む電極チップ、4は泳動電源部、5は電極間インピーダンスを測定する測定部、6は微生物測定装置全体の制御やインピーダンス算出などの演算行う制御演算部である。
図2に示したように、10は基板、11a、11bは基板10上に形成され一対の極をなす電極である。基板10には、金属などの導電性材料によって電極11a、11bのパターンが形成される。電極11a、11bはその幅に対して十分に薄い薄膜であることが望ましく、例えば100μmの幅に対して厚さ1000Å程度である。これにより、厚さ方向で見たエッジ部分に不平等電界が形成され、微生物を効率的に誘電泳動することが可能となる。本実施の形態では、基板10は、セル1とは分離した形態となっているが、基板10をセル1の壁面の一部として一体にしてもよい。
また、電極11a、11bの平面パターンは、そのギャップ13間に誘電泳動により微生物を捕集し、捕集した微生物によるインピーダンス変化を効率よく測定可能な形状でパターニングされる。具体的には、例えば、図2に示したような、電極11a、11bの対向部分が互いに入れ子状になった、いわゆる櫛歯形状が最も好ましい形状の一つである。
微生物を効率よく捕集するためには、ギャップ13部の面積を広くし、微生物が電極に捕集される確率を高くする必要がある。ただし、ギャップ13間の距離を長くすると、電極11a、11b間に同じ電圧を印加したときの電界強度が低下し、誘電泳動力が弱まる結果、微生物を効率的に捕集できなくなる。このため、ギャップ13間距離は、例えば1〜100μm程度に狭くすることが望ましい。
微生物を効率的に捕集するためには、電極11a、11bが対向する対向部の長さ方向に電極パターンを伸ばすのが効果的であり、例えば20〜1000mm程度が望ましい。このとき、電極平面パターンを櫛歯形状にすることにより、対向部を実質的に長くすることができるし、電極パターンを微少領域に集積化が可能なため、電極チップ3を小型化することができるメリットがある。
以上は電極の設計を行う際の一例であって、ギャップ13間の距離、対向部の長さ、電極の厚さやパターンは、電極11a、11b間に印加する電圧、微生物の大きさに合わせて最適な組み合わせを選択することが望ましい。
電極チップ3は、微生物が含まれた試料液2を保持したセル1内に浸漬され、泳動電源部4および測定部5に電気的に接続される。セル1には、マグネチックスターラなどの攪拌手段17を設けることができる。
試料液2をセル1内で攪拌することにより、試料液2内での微生物濃度を均一にすることができ、かつ、多くの微生物を電極11a、11bのギャップ13間に導くことができるため、より効率的に微生物をギャップ13間に捕集でき、測定時間の短縮や測定感度の向上が可能である。
また、セル1を、電極チップ3上にスペーサと蓋などを設けて作成した微小チャンバーとした場合は、攪拌手段17は微小チャンバーを含む循環流路を持つ閉流路として実現することも可能である。ペリスタポンプなどによって試料液を微小チャンバー内の電極チップ3上に循環することによって、前記マグネチックスターラによる攪拌と同様な効果を得ることが可能である。
泳動電源部4は、誘電泳動を行うための交流電圧を、電極11a、11b間に印加する。これにより電極11a、11b間に誘起された不平等電界によって、微生物を誘電泳動し電極11a、11b間のギャップ13に捕集する。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。
測定部5は、電極11a、11b間のインピーダンスを算出するために必要な測定を行う。測定部5は、具体的には、電極11a、11b間に流れる電流値と、泳動電源部4が印加した電圧と電流の位相差を測定するための回路等から構成される。測定部5は、誘電泳動によって微生物が移動し電界集中部近傍に濃縮されることに起因する電極11a、11b間の電流および位相差の変化を測定する。測定部5で測定した電流値と位相差は、制御演算部6に渡される。
制御演算部6は、図示しないマイクロプロセッサと、予め設定されたプログラムやデータテーブルなどを保存するためのメモリ、タイマー等から構成され、前記プログラムおよびデータテーブルに従い泳動電源部4を制御する。泳動電源部4は、制御演算部6の制御に従って、電極11a、11b間に特定の周波数と電圧をもった交流電圧を印加する。
さらに制御演算部6は、測定部5と信号の送受信を行ない、測定部5が測定した電流値と位相差のデータを受け取る。制御演算部6は、これら電圧、電流、位相差、周波数のデータから、電極11a、11b間のインピーダンスを算出し、結果を逐次メモリに格納する。
制御演算部6は、これら一連の測定動作を、予め設定されたプログラムに従って一定の時間間隔毎に行い、定められた時間が経過すると、泳動電源部4を制御し、電極11a、11b間への電圧印加を停止して、測定動作を終了する。
次に、制御演算部6は、メモリに格納されたインピーダンス測定結果から、インピーダンス時間変化の傾きを算出する。メモリ中のデータテーブルには、与えられた電圧や周波数、微生物種など毎に、検量線データが格納されている。制御演算部6は、算出したインピーダンス時間変化の傾きと検量線を比較することで、試料液中に含まれる微生物濃度を算出し、メモリへの結果格納、あるいはLCDなどの表示手段9に結果表示を行うなどする。
本実施の形態では、測定結果を微生物濃度で表すこととしているが、予め試料液の容量が規定されている場合は、微生物数に換算して結果表示しても良い。また、使用者は測定された微生物数を試料1mlあたりの微生物数として直接知ることができるが、表示手段9には、たとえば多いまたは少ないであるとか、目的に応じてほかの表示方法で結果表示を行っても良い。
さらに、試料中の微生物数を調べて殺菌装置を制御するとか、温度などの培養条件を制御するなど、使用者が直接微生物数を知る必要が無く、本微粒子測定装置を含む任意の装置の制御を行うために微生物数が明らかであれば良いような場合には、表示手段は特に設ける必要がないのは言うまでもない。
図3に示したように、測定電極11a,11b間に印加される電圧によって電気力線15が生じる。本実施の形態では測定電極11a,11b間のギャップ13付近の構成が電界集中部にあたり、中でも最も電界が集中するのはギャップ13である。従ってギャップ13部分にもっとも強く微生物が泳動される。
図2に示したように、ギャップ13は平行な測定電極11a,11bに挟まれた部分であり、電極の伸びる方向すなわち、測定電極11a,11bの断面を描いた図3の紙面に垂直な方向については電界の分布は均一である。しかしながら、基板10面に垂直な方向(紙面に平行な方向)では、図3に示すような電界の分布が生じ、電極の端線同志を結んだ面がもっとも電界が集中することになる。
ギャップ13付近に浮遊する微生物は、測定電極11a,11b間に生じるこのような電界作用によってギャップ13に引き寄せられ、電気力線15に沿って整列する。この時、ギャップ13付近の微生物の移動状態は、試料液体中に存在する微生物数とギャップ13の間隔に依存するが、十分に微生物数が多い時にはギャップ13が微生物から構成される鎖によって架橋されるほどになる。
この際、当初からギャップ13付近に浮遊していた微生物は直ちにギャップ13部分へ移動するし、ギャップ13から離れたところに浮遊していた微生物は距離に応じて所定時間経過後にギャップ13部に至るため、一定時間後にギャップ13付近の所定領域に集まっている微生物の数は測定セル1内の微生物数にも比例する。これは当然のことながら試料液に存在する微生物数に比例するものである。
図11は、本実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、試料の導入からセル1内の微生物の濃縮、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明するが、実施の形態1と同様な部分の説明は省略する。
ステップS15で電圧を印加後、測定部5は電極11a,11b間に流れる電流を測定し、測定結果を制御演算部6に送る。後述するが、制御演算部6は、印加電圧と測定した電流から、平板電極11a,11b間のインピーダンス、平板電極11a,11b間に想定される等価回路を後述する抵抗Rと静電容量CからなるCRの並列回路であるとみなしたときの静電容量Cを算出する(ステップS31)。
インピーダンスは印加電圧と電流の除算で算出することができる。また静電容量Cは、リアクタンスとレジスタンスの値を、想定されるCR並列回路の合成インピーダンスをあらわす式に代入し、連立方程式を解くことによって、抵抗Rと共に算出することができる。リアクタンスとレジスタンスの値は、それぞれインピーダンスと電圧と電流の位相差を角周波数の角度差で表現した値(以下、位相角という)を用いて計算される。
以下、インピーダンスをZ、静電容量をC、リアクタンスをx、レジスタンスをrとして、図12、図13と(数4)〜(数8)の式を用いて詳細に説明する。
Figure 2009037804
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(数4)はCR並列等価回路の合成インピーダンスZを表す式、(数5)はCR並列等価回路のレジスタンスr表す式、(数6)はCR並列等価回路のリアクタンスxを表す式、(数7)はCR並列等価回路の抵抗Rを表す式、(数8)はCR並列等価回路の静電容量Cを表す式である。
図12(a)は、電極30,31間の電気的状態を等価回路で示したものである。電極30,31の間には微生物を含んだ水が存在している。誘電泳動によって微生物が電極間のギャップに移動する前には、水を電極間誘電体として構成される静電容量C32と水による電気伝導抵抗R33とが、並列に電極30と電極31間を結んでいると考えられる。
また、誘電泳動によって微生物が移動した後も、後述するように、微生物体が誘電体微粒子としてふるまうために、静電容量C32と抵抗R33の絶対値は変化しても等価回路の接続形態は変わらないと考えることができる。以下この等価回路をCR並列回路と呼ぶ。
このようなCR並列回路に交流電圧を印加すると、図12(b)に示すように、回路に流れる電流26と印加した電圧27の間に位相差が現れることが一般に知られている。リアクタンス成分xを角周波数ωの関数とすると、レジスタンス成分rとの合成インピーダンスZは、図13に示すよう、レジスタンス成分rと位相角θを持つベクトルとして表現できる。
インピーダンスZは、測定される印加電圧と電流の除算で得られ、図13に示されたベクトルの絶対値に相当する。この時、インピーダンスZはZ=r+jx(jは虚数単位)の形で表現することができる。レジスタンスrはr=Zcosθとして図12(a)に示されたCR並列回路の合成インピーダンスの抵抗性成分、リアクタンスxはx=Zsinθとして同回路の容量性成分の逆数に関連付けられる。
一方、図12(a)のCR等価回路の合成インピーダンスは(数4)で表現され、(数4)をZ=r+jxの関係からレジスタンスrとリアクタンスxに分解して(数5)と(数6)を得る。(数5)と(数6)を連立させて変形すると(数7)と(数8)を得る。(数7)及び(数8)に測定のための電圧値、その時の電流値、電圧と電流の位相角の測定値から演算したr、x、ωを代入することにより、抵抗R33と静電容量C32を知ることができる。
このように説明すると大変煩雑であるが、制御演算部6は図示しないマイクロプロセッサを備えており、一連の演算は一瞬のうちに終了する。
制御演算部6は、算出された静電容量Cの値を初期値としてメモリに格納し(ステップS32)、ステップS18にて、次のインピーダンス測定タイミングが来るまで時間待ちする。以下、泳動電源部4と測定部5、制御演算部6は必要に応じて適宜信号のやり取りを行い、予め設定されたプログラムにしたがった円滑な動作を行う。
なお、予め測定値に対応した演算を行っておき、これをテーブルにしてメモリに記憶させておけば、演算を測定の都度行うのではなく、テーブルを参照するだけで、測定値を微粒子数に換算することもできる。すなわち、予め設定された時間誘電泳動による微生物の濃縮を行った後に測定を行い、測定のための電圧値、その時の電流値、電圧と電流の位相差を測定した後、この3つの値でメモリ上のテーブルを参照すれば、そこに予め演算された微生物数が書き込まれている。このような構成にすれば制御演算部6を設けることなく、迅速測定が可能でさらに簡易な構造の微生物測定装置とすることができる。
誘電泳動用交流電圧の周波数をパラメータとした場合に、溶液導電率(μS/cm)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係は、図7に示したようになる。Re[K]は、誘電泳動力FDEPに対応しており、その正負は誘電泳動力が引力として作用するか、あるいは斥力として作用するかにそれぞれ対応する。
図7(a)に示したように、たとえば、誘電泳動用交流電圧の周波数が(1)10KHzの場合は、溶液導電率3μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
一方、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzの場合は、溶液導電率30μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
なお、図7(b)は、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzおよび(3)800KHzの場合に、溶液導電率を1μS/cm〜1000μS/cmまで変化させた場合の誘電泳動力FDEPの変化を示す。
また、図14は、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzおよび(3)800KHzの場合に、溶液導電率を0〜200μS/cm付近まで変化させた場合の誘電泳動力FDEPおよびキャパシタンス傾きの変化を示す。
また、図15は、溶液導電率(μS/cm)をパラメータとした場合における、誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフである。従来の微粒子数測定方法では、誘電泳動用交流電圧の周波数を矢印Aに示す100KHz付近としていたため、例えば、溶液導電率が(5)30μS/cmの場合は、Re[K]が0付近となり、正の誘電泳動力FDEPを十分に働かせることが
できなかった。
本実施形態では、誘電泳動用交流電圧の周波数を矢印Bに示す1MHz付近としたため、溶液導電率が(1)1μS/cm〜(5)30μS/cmに変動しても、Re[K]が0.7付近で一定となり、誘電泳動力FDEPを十分に働かせることができる。
また、溶液導電率が変動しても微粒子に十分な誘電泳動を働かせることができ、かつ泳動電源部4を比較的簡易に構成できる周波数範囲として、約500KHz〜10MHzが好ましい。誘電泳動力FDEPが、その最大値FDEP(MAX)の約50%以上となる範囲の周波数を選択すると、より確実な測定が行えるため、より好ましい。
ここでの誘電泳動力FDEPの最大値FDEP(MAX)とは、最も導電率が低い場合に最もRe[K]が大きくなる条件での誘電泳動力を示している。例えば、図15において、最も低い導電率1μS/cmでは、周波数約300KHzの場合にRe[K]≒0.7となり、最も大きくなる。
従って、測定を行うために十分な誘電泳動力を働かせるためには、Re[K]>0.35程度にすれば良い。例えば、試料液の導電率が500μS/cmの場合、周波数約10MHzでRe[K]≒0.35となり、十分に測定が可能である。言い換えれば、周波数10MHzで誘電泳動を行えば、導電率500μS/cmまでの試料液が、前処理無しに正確な測定が出来ることを示している。
例えば、誘電泳動用交流電圧の周波数を約500KHz〜10MHzの範囲とすることにより、溶液導電率が約0〜100μS/cmの範囲で変動しても微粒子に十分な正の誘電泳動力FDEPを働かせることができる。
なお、あまりに周波数が低いと平板電極11a,11b間で望ましくない電気分解が発生するため、下限の周波数は700KHz程度が望ましい。また逆にあまりに周波数が高いと電源回路が複雑になる。従って、高周波での測定回路実現性を勘案すれば、上限の周波数を下げ、4MHzとすることが望ましい。よって、最も好まし周波数の範囲は、700KHz〜4MHzである。また、泳動のための電圧は本実施の形態では10Vとしているが、試料の導電率が大きい場合には、望ましくない電気分解が発生することがない程度のより低い電圧を選択することができる。
このように予め設定された時間毎に、制御演算部6と測定部5は連携して泳動と測定を繰り返し、測定部5は算出された静電容量Cを都度メモリに格納する(ステップS32)。このように誘電泳動による微粒子のギャップ13付近への移動と平板電極11a,11bのインピーダンス測定を繰り返すことによって、平板電極11a,11b間の静電容量Cの時間変化を調べることができる。
誘電泳動のための交流電圧印加開始後、予めプログラムされた所定の回数の平板電極11a,11bのインピーダンス測定を行い、測定回数が満了したことを検出すると(ステップS19:Yes)、制御演算部6は、メモリに格納されている複数の時点における静電容量Cの演算結果から、図16に示すようにその時までの平板電極11a,11b間の静電容量Cの時間変化の傾きを計算し(ステップS33)、後述する変換式に従って試料液中の微生物数を算出し、表示手段9に結果を表示させ(ステップS21)、一連の測定動作を終了する(ステップS22)。
静電容量の時間変化の傾きを測定すれば、微生物数を算出することができる理由を説明する。微生物は、イオンリッチで比較的電気伝導率が大きな細胞壁と、リン脂質からなるとともに、電気伝導率の小さな細胞膜に囲まれており、微小な誘電体粒子とみなすことができる。そして、誘電体微粒子としてみた微生物の誘電率は一般的な液体と比較して、さらに液体としては高い誘電率を持つ水と比較しても大きな値を持っている。
したがって、誘電泳動によってギャップに移動する微粒子の数が増えるに連れて、ギャップ付近の見かけの誘電率は上昇していく。電極の条件を固定した状態で、その間の媒体の誘電率を変化させると静電容量Cが変化するのは周知の事実である。
そこで、平板電極11a,11b間の静電容量Cの変化を通じて平板電極11a,11b間の誘電率の変化を測定すれば、その値はギャップ付近に移動してきた微生物数、ひいては試料液に存在する微粒子数に相関した測定結果を得ることができる。
このような静電容量Cの時間変化の一例を示したのが図16である。そして図16からも分かるように、測定初期の静電容量Cの時間変化の傾き(勾配)も静電容量Cの時間変化と同様に、微粒子数に対応して増加しているのが分かる。
静電容量Cの時間変化で微生物数を算出する場合、過渡状態をすぎてから測定した方が正確であるから、どうしても測定時間が長くかかる。これに対し、測定初期の静電容量の時間変化の傾き(勾配)によって微生物数を算出する場合は、比較的短時間で微生物数を算出できるという特長がある。
この場合、静電容量Cの変化と試料液の微生物数を関連付けるためには、静電容量Cと微生物数間の変換式が必要である。この変換式として、微生物数が明らかな校正用試料を、本実施の形態で説明した微生物測定装置の測定系を用いて予め測定し、その時の微生物数と静電容量Cの間の相関関係からばらつきを回帰分析して得られる曲線をあらわす関数を使用する。
この変換式を制御演算部6のメモリに記憶させ、微生物数が未知の試料を測定する場合には、所定時間内における静電容量C変化の値を代入することにより試料液の微生物数を算出できる。なお、換算テーブルを用いるものは、変換式による演算結果を予めメモリさせている。
ここで本実施の形態の試料としては、例えば酵母の培養液等の単一微生物系を想定しているが、混合微生物系であっても、微生物の種類とその構成比が大きく変化しない限り、前もって同様の変換式を算出しておいて測定することが可能である。
以上説明したように、微生物数を算出後、予めプログラムされた所定の時間が経過すると、制御演算部6は測定終了の通知を泳動電源部4に送る。これを受け、泳動電源部4は、平板電極11a,11bへの通電を停止するとともに電磁弁を開放して洗浄に入る。ギャップ付近に集まった微生物は、電磁弁の開放により流入する試料液の液体によって洗い流され、一連の動作が終了する。
本実施の形態では、単一組の薄膜電極を使用した場合の実施の形態について説明したが、これは、薄膜電極が複数組用いられることを妨げるものではない。即ち平板電極11a,11bと同一形状を持った、即ち同一条件下で同一のインピーダンスを持った電極が複数組セル1内に設置されていてもかまわない。その場合には、それぞれの電極のインピーダンスを独立に測定しその値を平均化するなどの統計処理を行った上で静電容量Cを算出することで、より精度の高い測定結果を得ることが可能になる。
たとえば複数の電極のうちで望ましくない不純物やごみの付着による影響で微生物数と関連しない値が測定されたとしても、測定値を平均化することでその影響を小さくすることができるし、より高度には、他の電極での測定結果を参照して異常値として切り捨てる等の処理も可能となる。このように同一形状を持った電極を複数組用いて測定を行うことは、構造がやや複雑になることを除けば、精度向上の面からむしろ望ましいことであるといえる。そして薄膜電極であるが故に、複数組用いる場合でも小型にすることができる。
このように本実施の形態では、誘電泳動を行う電界周波数を最適化し、電極インピーダンスの時間変化の傾きから微粒子数を算出するため、試料液の導電率上昇の影響を回避しつつ、短時間での測定を実現することができる。
(第3の実施形態:導電率測定部)
前述の実施例と重複する部分の説明は省略する。図17は、本実施の形態を示す微粒子測定装置の構成図である。セル1中の試料液2に含浸されるような位置に、導電率測定手段101が配置される。導電率測定手段101は、一般的な導電率測定装置が利用可能であり、例えば、交流導電率測定を行うための電極と電圧印加手段によって構成される。導電率測定手段101は、制御演算部6に接続され、導電率の測定結果が制御演算部6に送られる。
あるいは、電極チップ3が導電率測定のための電極を兼ねることも出来る。電極11a、11bには交流電圧を印加可能な泳動電源部4および、インピーダンスを測定するための測定部5が接続されているため、測定したインピーダンスから導電率を算出することが可能である。この場合、電極チップ3が導電率測定手段101を兼ねることになり、以下、電極チップ3が導電率測定手段101の役割を果たすものとして説明する。測定手段電極チップ3が導電率測定電極を兼ねることで、装置構成が簡略化できるメリットがある。
図18は本実施の形態にかかる微粒子測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、試料の導入からセル1内の微粒子を測定するに至るまでの一連の流れを説明する。まず、初期状態においてセル1内に、微粒子を含有した試料液2を投入する(ステップS11)。
所定のタイミングで、予めプログラムによって設定された測定動作に入ると、制御演算部6は、試料液2の導電率を測定するため、泳動電源部4に導電率を測定するための電圧(以下、導電率測定電圧と呼ぶ)を印加するよう指令する。この時、導電率測定電圧の大きさは、この後に続く微粒子を測定するための電圧(以下、微粒子測定電圧と呼ぶ)よりも小さな値であることが望ましい。
微粒子測定電圧を印加すると、微粒子が誘電泳動力によって電極11a、11b間にトラップされ、インピーダンス変化が生じ、試料液2の導電率の測定結果に誤差が生じる。よって、導電率測定電圧は微粒子が電極11a、11b間にトラップされず、かつ、十分に導電率が測定可能な電圧を印加する。本実施の形態では、1.0Vp−pの交流電圧を印加する(ステップS91)。
電極11a、11b間に導電率測定電圧が印加され、所定の安定化時間を経た後、測定部5は電極11a、11b間インピーダンスの測定を開始する。そして、所定の測定時間だけインピーダンス測定を行い、その結果は逐次制御演算部6に渡され、制御演算部6はインピーダンス測定結果から、試料液導電率を算出する。
導電率算出は、所定の測定時間内に何点か測定を行い、その平均を取る方が、測定精度が向上するため有利である。導電率算出方法は具体的には、(数7)で表される、電極11a、11b間の抵抗成分Rの逆数であるコンダクタンスを算出し、コンダクタンスと導電率の比例関係を利用して算出することが可能である。
図19に異なる導電率の試料液のコンダクタンスを測定した結果を示す。この比例関係の検量線の式を用いて、コンダクタンスから導電率を算出可能である。この検量線データは、メモリ6aに内蔵させておき、制御演算部6が算出する(ステップS92)。
以下、周波数選択(ステップS13)以降のプロセスは前述の実施例と同様であるため説明を省略する。このように、試料液の導電率を直接測定することで、正確な試料液の導電率によって周波数選択が可能になるというメリットがある。
試料液の導電率測定は、誘電泳動のための電圧を印加した直後の、微粒子がギャップ13に殆どトラップされていない状態でのインピーダンス測定結果から推定することも可能である。この場合、測定のステップは、図9に示すフローチャートで実現可能である。最初の測定(ステップ17)の測定結果からコンダクタンスを算出し、導電率を算出する。
このように、誘電泳動のための電圧で導電率を測定することで、測定のステップが省略されるため、測定時間の短縮につながるし、印加する電圧が単一のため、泳動電源部4の回路が簡略化できるという効果がある。
(第4の実施形態:導電率補正)
前述の実施例と重複する部分の説明は省略する。表2および表3に示す周波数選択テーブルにおいて、試料液導電率範囲内で、選択した周波数において、誘電泳動力が変化する場合が考えられる。
例えば、表3に示す導電率0〜300μS/cmの範囲において、800KHzでは、誘電泳動力を表すRe[K]は、最も導電率が低い5μS/cmの値と比較し、100μS/cmでは約10%の力の低下が見られる。
このため、誘電泳動によって電極11a、11b間にトラップされる微粒子数も誘電泳動力の低下と共に減少し、測定応答も低下してしまう。これをそのまま測定結果として用いると、結果の正確性を失うため、この変動を補正する必要がある。
図20は本実施の形態にかかる微粒子測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、本実施の形態の微粒子測定方法について説明する。ステップS111以外は前述の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
微粒子を誘電泳動し、その過程をインピーダンス測定などで測定し、その結果を制御演算部6が逐次メモリし、その変化を傾きの形で算出した後、試料液導電率の値から、表4に示す傾き補正テーブルに記録されている補正係数を測定結果(変化の傾き)に乗じたものを最終的な測定結果とする(ステップS111)。傾き補正テーブルはメモリ6aに内蔵されている。
Figure 2009037804
傾き補正テーブルは、次のような実験を行って決定するのがよい。同一の微粒子濃度を持つ、異なる導電率の試料液を用意し、それぞれの試料液で測定を行う。その結果、最も導電率が低く、言い換えれば誘電泳動力が最も強く、測定応答が最も大きな試料液の測定応答を基準値とする。導電率が高く、誘電泳動力が弱まり、測定応答が低くなる試料液での測定応答と、基準値との比を傾き補正値とすれば良い。
このように、試料液2の導電率によって測定結果を補正することで、測定結果の正確性が保たれる。
(第5の実施形態:導電率毎に測定限界)
前述の実施例と重複する部分の説明は省略する。表2および表3に示す周波数選択テーブルにおいて、試料液導電率範囲内で、選択した周波数において、誘電泳動力が変化する場合が考えられる。
例えば、表3に示す導電率0〜300μS/cmの場合、誘電泳動力を表すRe[K]は、最も導電率が低い5μS/cmの値と比較し、100μS/cmでは約10%の力の低下が見られる。このため、誘電泳動によって電極11a、11b間にトラップされる微粒子数も誘電泳動力の低下と共に減少し、測定応答も低下してしまう。
ここで、試料液2中に含まれる微粒子数が多い、言い換えれば微粒子濃度が高い場合は、誘電泳動力がある程度小さくなっても、電極11a、11b間にトラップされる微粒子数が測定部5のS/Nに支配される測定限界内であれば信号を取り出すことができ、誘電泳動力が低下したことに基づく補正によって正しい測定結果を得ることができる。ところが、誘電泳動力が小さく、かつ、微粒子濃度が低い場合、測定部5の測定限界を超えてしまい、信号が取り出せないため、補正によっても正しい測定結果を得ることができない。
このことは、誘電泳動力は試料液導電率によって変動するため、試料液導電率に応じて、測定装置としての測定限界微粒子濃度が異なることを示している。ここで、測定限界微粒子濃度をある固定値に設定すれば、全体としての測定可能な条件が制限され、装置としての利用範囲が著しく制限されてしまう。よって、試料液導電率の値に応じて、測定下限微粒子濃度を設定し、試料液導電率が高い場合は限られた微粒子濃度範囲ではあるが、何らかの結果提示をできるようにする。
図21は、試料液導電率を(1)5μS/cm、(2)200μS/cm、(3)300μS/cm、としたときの、試料液中の微粒子濃度に対する測定応答を表すグラフである。(4)は、測定部5のS/Nに支配される測定系の測定下限値であり、誘電泳動力でギャップ13に微粒子をトラップした結果、測定応答がこの測定下限値を超えなければ、微粒子濃度の正確な測定はできない。測定応答は、(1)の最も試料液導電率が低い場合の測定下限微粒子濃度を1として規格化して表している。
例えば、(1)の場合、測定下限微粒子濃度は10^5cells/mlである。測定応答が1以下であれば、定量数値化した結果の提示はできないが、「10^5cells/ml以下」という結果提示が可能である。このことは例えば、微粒子濃度が10^5cells/mlを境に、それ以上でどの程度の濃度か、またはそれ以下か、を調べる目的の測定では有効である。
同様に、(2)の場合、測定下限微粒子濃度は10^6cells/ml、(3)の場合、測定下限微粒子濃度は10^7cells/mlとなる。これは、表5に示す測定下限微粒子濃度テーブルとして、メモリ6aに内蔵しておき、制御演算部6が入力あるいは測定した導電率に応じて、測定下限粒子濃度を参照する。参照結果は、表示手段9などを用いて外部へ出力する。
Figure 2009037804
その測定における有効な濃度範囲が分かれば、結果の解釈を行うことが可能である。例えば、(2)の試料液導電率200μS/cmの場合において、測定結果が「10^6cells/ml以下」であったとすると、少なくともその濃度以下であることが分かり、もし、より詳細な検査が必要であれば、更に高感度な別の検査に回すなど、スクリーニングとしての機能を果たすことができる。
測定下限微粒子濃度テーブルはまた、測定が不可能な導電率範囲を含めることも出来る。表5では、500μS/cm以上が測定不可能な導電率範囲にあたる。これ以上の導電率では、測定応答を得るために十分な誘電泳動力を得ることはできず、測定が出来ない。この場合、制御演算部6は、試料液導電率が許容範囲を超えて測定できない旨、外部に通知する。この通知を行うことで、希釈やイオン交換などで導電率を許容範囲内に低減するなどの措置を取ることができる。
(標準試料として大腸菌を測定)
(1)試料液の調整
標準寒天培地(MB0010、栄研器材(株))上で37℃、16時間の好気培養を行った大腸菌K−12株(NBRC3301、製品評価技術基盤機構)をコンラージ棒で採取し、0.1M D−マニトール溶液(導電率、約5μS/cm)に懸濁したものを標準試料とし、適宜希釈して10^5〜10^8cfu/mlの懸濁濃度となるように希釈系列を作成した。
懸濁濃度は、適宜希釈した標準試料を標準寒天培地状に塗抹し、37℃、16時間の好気培養を行った結果生育したコロニー数を計数することによって規定した。標準試料に、NaCl溶液を適宜追加し、試料液導電率が5〜200μS/cmとなるように調整した。試料液導電率は、導電率計(B−173、堀場製作所(株))により測定した。
(2)測定装置
図5の測定装置を使用した。印加電圧振幅は5Vp−p、周波数は最適周波数を探るため、100KHzおよび800KHzとし、60秒間のインピーダンス測定の後、キャパシタンスの傾きを測定応答として評価した。
(3)結果
図22は、横軸に大腸菌濃度、縦軸に規格化したキャパシタンス傾きをそれぞれ対数変換した値を示す。周波数は100KHzである。導電率が5μS/cmの場合の測定下限は4.62×10^5cfu/ml、10μS/cmの場合の測定下限は1.16×10^6cfu/ml、25μS/cmの場合は2.31×10^6cfu/mlと、試料液導電率の上昇と共に測定応答が低下した。導電率が更に上昇し、50μS/cm以上になると、測定応答が全く得られなくなった。
図23は、周波数が800KHzの場合の測定結果を示す。試料液導電率100μS/cmまでで測定応答が得られており、100KHzの場合と比べ、測定可能な試料液導電率が高いため、より最適な周波数と言える。
導電率100μS/cmの場合、800KHzでは〜50μS/cmよりも測定応答値が低下しているため、これを表2の導電率補正テーブルを用いて補正した結果を図24に示す。補正を行うことにより、誘電泳動力が導電率の上昇によって低下し、測定応答が低下したデータから正確な大腸菌濃度を推定可能であることを示している。
(口腔内細菌を測定)
(1)試料の調整
様々な導電率を持つ試料液での測定実証のため、口腔内の細菌を代表例として測定評価した。口腔内の舌背上を、滅菌スワブ(Ex001、デンカ生研(株))で3回擦過し、7mlの0.1M D−マニトール溶液(導電率、約5μS/cm)に懸濁したものを試料液とした。
口腔内は、ナトリウム、カルシウムなどのイオンが豊富に含まれるだ液が存在するため、口腔内から採取し懸濁した試料液は、導電率が上昇する。総検体数98検体の試料液の平均導電率は55μS/cm、最大導電率は200μS/cmであった。
試料液中の細菌濃度は次のようにして求めた。試料液を適宜希釈し、血液寒天培地(E−MP23、栄研器材(株))上に塗抹し、37℃、48時間の嫌気培養を行い、生育したコロニーを計数した結果を希釈率から換算して試料液中の細菌濃度とした。
(2)測定装置
図5の測定装置を使用した。印加電圧振幅は10Vp−p、周波数は800KHz、20秒間のインピーダンス測定の後、キャパシタンスの傾きを測定応答とし、表4の導電率補正テーブルを用いて補正したものを最終的な測定結果として評価した。
(3)結果
図25は、横軸に培養細菌濃度、縦軸に規格化したキャパシタンス傾きをそれぞれ対数変換した値を示す。細菌濃度10^4〜10^8cells/mlの範囲において、相関係数R=0.89と非常に良好な直線性が得られている。以上の結果より、細菌濃度10^4〜10^8cells/ml、試料液導電率〜200μS/cmの範囲において、本発明の微粒子測定装置ならびに微粒子測定方法の有効性が確かめられた。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2007年9月18日出願の日本特許出願(特願2007−241345)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は、微粒子を含有した溶液の導電率の影響を前処理なしに回避し、溶液に含有された微粒子数を高感度かつ高精度に測定することができる微粒子測定装置等として有用である。
1 セル
2 試料液
3 電極チップ
4 泳動電源部
5 測定部
6 制御演算部
6a メモリ
7 導電率入力手段
9 表示手段
10 基板
11a,11b、20,21 電極
13 ギャップ
14 微粒子
15 電気力線
17 攪拌手段
21 光源
22 受光部
26 電流
27 電圧
30,31 電極
32 キャパシタンス
33 抵抗
101 導電率測定手段

Claims (27)

  1. 微粒子含有の液体を導入するセルと、
    前記セル内部に浸漬する少なくとも一対の電極と、
    前記一対の電極間に、前記微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる周波数の交流電圧を印加する泳動電源部と、
    前記セル内の微粒子を測定する測定部と、
    前記測定部が測定した結果を演算し、液体中の微粒子濃度を算出する制御演算部と、
    を備える微粒子測定装置。
  2. 請求項1記載の微粒子測定装置であって、
    前記制御演算部は、溶液導電率をパラメータとした場合に、前記微粒子に対する誘電泳動力が所定の値以上となる交流電圧の周波数を格納する周波数テーブルを有する微粒子測定装置。
  3. 請求項1記載の微粒子測定装置であって、
    前記泳動電源部は、前記一対の電極間に500KHz〜10MHzの周波数の交流電圧を印加する微粒子測定装置。
  4. 請求項1記載の微粒子測定装置であって、
    前記測定部は、前記一対の電極間のインピーダンスを測定し、
    前記制御演算部は、前記一対の電極間のインピーダンスの時間変化を演算し、前記セル内の微粒子数を算出する微粒子測定装置。
  5. 請求項4記載の微粒子測定装置であって、
    前記微粒子は、前記誘電泳動力によって、前記一対の電極のギャップ間に正の誘電泳動で捕集される微粒子測定装置。
  6. 請求項4記載の微粒子測定装置であって、
    前記制御演算部は、前記一対の電極間のキャパシタンスの時間変化から、前記試料液中の微粒子の数を算出する微粒子測定装置。
  7. 請求項4記載の微粒子測定装置であって、
    前記試料液の導電率が、0〜500μS/cmの範囲である微粒子測定装置。
  8. 請求項1記載の微粒子測定装置であって、
    前記泳動電源部は、前記誘電泳動力が、溶液導電率が最も低い場合における最大誘電泳動力の約50%以上となる周波数の交流電圧を印加する微粒子測定装置。
  9. 請求項1記載の微粒子測定装置であって、
    溶液導電率を測定する溶液導電率測定部を備える微粒子測定装置。
  10. 請求項9記載の微粒子測定装置であって、
    少なくとも一対の溶液導電率測定のための電極を備え、
    前記溶液導電率測定のための電極間のインピーダンスを測定することにより前記溶液導電率を測定する微粒子測定装置。
  11. 請求項9記載の微粒子測定装置であって、
    前記一対の電極が、誘電泳動および溶液導電率測定を行うためのものである微粒子測定装置。
  12. 請求項9記載の微粒子測定装置であって、
    溶液導電率測定のための電圧と、誘電泳動のための電圧が異なる微粒子測定装置。
  13. 請求項12記載の微粒子測定装置であって、
    溶液導電率測定のための電圧が、誘電泳動のための電圧よりも低い微粒子測定装置。
  14. 請求項9記載の微粒子測定装置であって、
    前記溶液導電率を、誘電泳動を行った初期インピーダンス値から算出する微粒子測定装置。
  15. 請求項1記載の微粒子測定装置であって、
    前記制御演算部は、溶液導電率に応じて、測定結果を補正する微粒子測定装置。
  16. 請求項1記載の微粒子測定装置であって、
    前記制御演算部は、溶液導電率に対応した検出下限値を格納する検出下限値テーブルを有する微粒子測定装置。
  17. 請求項16記載の微粒子測定装置であって、
    前記溶液導電率に対応した前記検出下限値を、外部に通知する通知手段を備える微粒子測定装置。
  18. 微粒子含有の液体を導入するセルと、
    前記セル内部に浸漬する少なくとも一対の電極と、
    前記一対の電極間に、約500KHz〜10MHzの範囲の周波数の交流電圧を印加する泳動電源部と、
    前記セル内の微粒子を測定する測定演算部と、
    を備える微粒子測定装置。
  19. 微粒子含有の試料液に浸漬した一対の電極間に交流電界を印加し、誘電泳動力により前記微粒子を所定位置に配置し、前記試料液中における微粒子濃度を測定する微粒子測定方法であって、
    溶液導電率が変化しても前記誘電泳動力が所定の値以上となるように、前記交流電界の周波数を設定するステップを有する微粒子測定方法。
  20. 請求項19記載の微粒子測定方法であって、
    前記溶液導電率をパラメータとして前記交流電界の周波数を変化させた場合に、前記誘電泳動力が、前記溶液導電率が最も低い場合における最大誘電泳動力の約50%以上となるように、前記交流電界の周波数を設定するステップを有する微粒子測定方法。
  21. 請求項19記載の微粒子測定方法であって、
    前記溶液導電率を測定するステップと、
    前記溶液導電率が変化しても前記誘電泳動力が所定の値以上となるように、前記交流電界の周波数を選択するステップと、を有する微粒子測定方法。
  22. 請求項21記載の微粒子測定方法であって、
    測定した前記溶液導電率で、前記試料液中における前記微粒子濃度を補正するステップを有する微粒子測定方法。
  23. 請求項19記載の微粒子測定方法であって、
    前記一対の電極のギャップ間に、前記誘電泳動力で前記微粒子を捕集するステップを有する微粒子測定方法。
  24. 請求項23記載の微粒子測定方法であって、
    前記一対の電極間のインピーダンスを測定するステップを有する微粒子測定方法。
  25. 請求項24記載の微粒子測定方法であって、
    前記一対の電極間のキャパシタンスを測定するステップと、
    前記キャパシタンスの時間変化から、前記試料液中の微粒子濃度を測定するステップと、を有する微粒子測定方法。
  26. 請求項24記載の微粒子測定方法であって、
    前記試料液の導電率が、0〜500μS/cmの範囲である微粒子測定方法。
  27. 微粒子含有の試料液に浸漬した一対の電極間に交流電界を印加し、誘電泳動力により前記微粒子を所定位置に配置し、前記試料液中における微粒子濃度を測定する微粒子測定方法であって、
    前記交流電界の周波数が、約500KHz〜10MHzの範囲である微粒子測定方法。
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