JP3765464B2 - 微生物キャリア体、微生物数測定装置及び微生物数測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結合基が設けられ、誘電泳動力が作用するとこの結合基に結合した微生物を一体にして集めることができる微生物キャリア体、及びこの微生物キャリア体を用いて溶液中の微生物数を測定する微生物数測定装置、及び微生物数測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶液中の微生物数を測定する方法として特開平57−50652号公報に記載されたもの等の多数の技術が知られている。しかし、従来の技術による微生物数の測定方法は、試料液に専用の薬剤、例えば酵素や色素を投入して生化学反応を起こさせ、その反応経過または結果を蛍光や発光によって測定するものであり、測定感度は比較的高いが微生物分野及び生化学分野に関する専門知識が必要であったり、また専用で高価な大型の測定装置が必要となり、さらには専任者による作業が必要となる等、とても一般的かつ簡易に微生物数を測定することができるものではなかった。
【0003】
そこで、特開平59−91900号公報に記載されたものをはじめとする、物理的手段のみを使い、薬剤を一切用いないで、小型で、試料系に組み込んでの自動測定が可能な、簡易な微生物数検出装置が提案されたが、微生物数が10の8乗cells/ml(1ml中に微生物数が1億個)以上にならないと検出できないためその応用範囲に著しい制限が加えられていた。このように、従来の技術による微生物数測定装置で測定感度を上げるためには、何らかの薬剤の使用や、専用の測定装置,専門知識を持った専任者による操作が必要であった。また薬剤を使用しない簡易型の装置では、専任者を必要とせず測定が可能になるが、微生物数が非常に多くないと測定が難しく、低感度の測定器しか得られないし、微生物を移動させて局部的に濃度を上げて感度を向上させたくても簡易でメンテナンスフリーな手段がないという問題があった。
【0004】
本発明者らは、このため特開平11−127846号公報において、測定試料中の微生物に誘電泳動力を作用させ、電界が集中した個所に微生物を集めて濃度測定するという新しい測定方法を提案した。この測定方法によれば、薬剤や特別な装置などは必要でなく、簡易で高感度な測定ができ、メンテナンスフリーの微生物測定が可能になった。
【0005】
しかし、微生物を測定する環境は、微生物が生息していくためのミネラル分や有機物等を含有していることが多く、これらは微生物が生息している液中の導電率を押し上げ、この液を測定試料として微生物数を測定しようとすると導電率が高くて誘電泳動によって微生物濃度を上げられないという問題があった。さらに、微生物には低誘電率のものが多く、これらは溶液の導電率が低くても本来的に誘電泳動力が弱く、同様に濃度を上げられないという問題があった。このうち測定試料の導電率が高い場合は、導電率を下げるために透析や希釈等を行うことで誘電泳動が可能になるが、微生物自体が低誘電率の場合には誘電泳動力を大きくする手段がなく、微生物を移動させて濃度を上げることができないため、誘電泳動による微生物数の測定を困難ならしめていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこでこれらの問題を解決するため、本発明は、低誘電率の微生物であっても、誘電泳動によって簡易で高感度な測定ができる微生物数キャリア体を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は薬剤や特別な装置を必要とすることなく、低誘電率の微生物であっても、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、低誘電率の微生物であっても、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーの微生物数測定方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の微生物キャリア体は、測定対象の微生物が有す誘電率より高誘電率の材質で構成され、表面に前記微生物と特異的に結合できる結合基が設けられた微生物キャリア体であって、誘電泳動力が作用すると前記結合基に結合した微生物が一体となって泳動されることを特徴とする。
【0010】
これにより、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、低誘電率の微生物であっても、誘電泳動によって簡易で高感度な測定ができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載された発明は、誘電泳動を利用した微生物数の測定に利用する微生物キャリア体であって、測定対象の微生物が有する誘電率より高い誘電率を有し、かつ前記微生物の表面導電率より低い表面導電率を有するコアと、前記コアの表面に修飾されている、前記微生物と特異的に結合できる結合基とを備えることを特徴とする微生物キャリア体であり、請求項2に記載された発明は、誘電泳動を利用した微生物数の測定に利用する微生物キャリア体であって、測定対象の微生物が有する誘電率より高誘電率の材質で構成されるコアと、前記コアをコーティングしている、前記微生物の導電率より低い導電率のポリマーと、前記ポリマーの表面に修飾されている、前記微生物と特異的に結合できる結合基とを備えることを特徴とする微生物キャリア体であるから、誘電泳動力の作用を受けにくい低誘電率の微生物であっても、微生物キャリア体でみかけの誘電率を上げ、これを微生物キャリア体とともに誘電泳動力によって電界集中部に集めることができる。また、1つの微生物キャリア体には1個から数個の微生物が微生物濃度に比例して結合するため、微生物濃度が高ければ両者の結合体の表面導電率が変化し、微生物数を表面導電率を利用して測定できる。
【0012】
請求項3に記載された発明は、前記微生物の代表寸法と同程度もしくは数倍程度までの代表寸法を有することを特徴とする請求項1又は2記載の微生物キャリア体であるから、結合する微生物の個数で結合体の表面導電率を変化させることができ、微生物数を表面導電率で測定できる。
【0013】
請求項4に記載された発明は、前記結合基が、前記微生物の官能基に特異的に化学結合することができ、前記コア表面に修飾されている化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物キャリア体であるから、誘電泳動力の作用を受けにくい低誘電率の微生物であっても、微生物キャリア体とともに誘電泳動力により安定して電界集中部に集めることができる。
【0014】
請求項5に記載された発明は、前記化合物が、前記微生物のタンパク質に含まれるアミノ酸残基に特異的に結合する化合物であることを特徴とする請求項4記載の微生物キャリア体であるから、誘電泳動力の作用を受けにくい低誘電率の微生物であっても、アミノ酸残基により生死いずれの微生物に対しても特異的に結合し、微生物キャリア体とともに誘電泳動力により安定して電界集中部に集めることができる。
【0015】
請求項6に記載された発明は、前記結合基が、抗原である前記微生物のエピトープに対して特異的に結合するパラトープを有する抗体であり、前記コア表面に修飾されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物キャリア体であるから、誘電泳動力の作用を受けにくい低誘電率の微生物であっても、抗原抗体反応で速やかに微生物キャリア体に特異的に結合させ、特定の微生物を微生物キャリア体とともに誘電泳動力により電界集中部に集めることができる。
【0016】
請求項7に記載された発明は、内部に複数の電極を備え、かつ微生物含有の液体を導入するとともに、請求項1〜6のいずれかに記載の微生物キャリア体を導入することができるセルと、前記セル内に誘電泳動力を発生させるための交流電圧を前記電極のうちの何れかの電極間に印加する電源回路と、前記電極のうちの何れかの電極間の抵抗特性を測定する測定部と、前記電源回路と前記測定部とを制御するための制御手段と、前記測定部の測定結果を演算して微生物数を算出する演算手段とを備えたことを特徴とする微生物数測定装置であるから、微生物数の少ない試料においても微生物を電極付近に集中させた後に、電極間抵抗特性によって微生物数を測定することができるため、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができる。
【0017】
請求項8に記載された発明は、前記測定部が、前記電極間の電圧、電流、及び電圧と電流との位相差を測定して前記電極間の抵抗を算出することを特徴とする請求項7記載の微生物数測定装置であるから、微生物数の少ない試料においても微生物を電極付近に集中させた後に、測定部により電極間の電流と位相差と、電圧を測定することによって微生物数を測定することができるため、簡易で高感度な測定ができる。
【0018】
請求項9に記載された発明は、複数の電極を備えたセル内に微生物含有の液体と請求項1〜6のいずれかに記載の微生物キャリア体を導入し、前記複数の電極のうち何れかの電極間に交流電圧を印加して前記セル内に誘電泳動力を発生させ、電界集中部に前記微生物キャリア体と結合した微生物を集めて、前記電極間の抵抗特性の変化を測定して微生物数を算出することを特徴とする微生物数測定方法であるから、微生物数の少ない試料においても微生物を電極付近に集中させた後に電気的な手段によって微生物数を測定することができるため、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図7、(数1)〜(数5)を用いて説明する。
【0020】
(実施の形態)
本発明の一実施の形態である微生物数測定装置について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態における微生物数測定装置の全体構成図、図2は本発明の実施の形態における電極の説明図、図3は本発明の実施の形態における電極の断面と電極間の電界の状態を説明するための図、図4は微生物数と測定時間と電極間の抵抗Rの関係を説明するためのグラフ、図5(a)は電極間の静電容量の計算方法を説明するための図、図5(b)は電流と電圧の間の位相差を示す図、図6は電極間の静電容量の計算方法を説明するためのもう一つの図、図7は微生物キャリア体の分子構造を表す模式図である。
【0021】
図1において、1はセル、2は基板上の電極、3は泳動電源回路、4は測定部、5は演算部、6は制御手段、7は試料系配管、8は電磁弁、9は表示手段である。また、図2において、10は電極2の基板、11は薄膜電極、12は薄膜電極11に挟まれた微小なギャップである。また、図3において13は薄膜電極11間に印加される電圧によって生じる電気力線である。図5(a)において14は薄膜電極11の一方の極、15は薄膜電極11の他方の極、16は微生物や微生物キャリア体を電気力線13中に置いたとき、想定されるCR並列等価回路を構成する静電容量、図5(b)において17は同じくキャリア体を電気力線13中に置いたときCR等価回路を構成する抵抗である。18は時間軸、19は電圧と電流の大きさを表す軸、20は電流の変化を表す曲線、21は電圧の変化を表す曲線である。また、図7において22は測定対象の微生物が有している誘電率より高誘電率の材質で構成されるキャリア体のコアであって、本実施の形態においてはチタン酸バリウムの粒子、23はこのコア22をコーティングしているポリスチレン等のポリマー、24はポリマー23もしくはコア22表面に修飾され、微生物と特異的に結合するための化合物や抗体等の結合基である。コア22とポリマー23と結合基24は全体として微生物キャリア体(以下、キャリア体と記す)を構成する。なお、後述するようにコア22自体をポリマー粒子で高誘電率の微細粒子を分散させたもの(コーティングするポリマー23がないもの)とするのも適当である。また、このキャリア体は、測定対象である微生物までの代表寸法と同程度もしくは数倍程度までの代表寸法をもたせるのがよい。この結合基24としては化合物によって化学結合する基が代表的で、中でもタンパク質に含まれるアミノ酸残基と結合するカルボキシル基等が有力であるが、このほかにも微生物のエピトープに対して特異的に結合する抗体であるパラトープも適当である。アミノ酸残基の場合、生死いずれの微生物に対しても安定して特異的に結合し、キャリア体と一体に誘電泳動力により電界集中部に集めることができるし、抗原抗体反応による場合、特定の微生物を速やかにキャリア体に結合させ、キャリア体とともに電界集中部に集めることができる。
【0022】
ここで微生物の誘電泳動現象について説明する。高周波の交流電圧の印加によって発生する交流電界の作用で、セル1内の微生物はその誘電的な性質によって最も電場が強くかつ不均一な部分、すなわち電界集中部に泳動される。一方、微生物に作用する誘電泳動力の大きさは、一般的に微生物の誘電率と微生物周辺溶液の誘電率との差が大きいほど大きくなるにような関係がある。したがって、微生物周辺溶液の誘電率が微生物の誘電率より小さいことを考慮すると、誘電率の大きい微生物ほど作用する誘電泳動力は大きくなる。上述した通り、本発明では溶液の導電率が比較的高くなったときでも、キャリア体により誘電率を高くした結合体を泳動させることができる。本実施の形態では電極2のギャップ12付近の構成が電界集中部にあたり、中でも最も電界が集中するのはギャップ12である。従ってギャップ12部分にもっとも強く微生物が泳動される。図2に示すギャップ12は平行な電極に挟まれた部分であり、電極の伸びる方向すなわち、電極2の断面を描いた図3の紙面に垂直な方向については電界の分布は均一である。しかしながら、基板面に垂直な方向では図3に示すような電界の分布が生じ、電極のエッジ同志を結んだ長さ方向の面がもっとも電界が集中することになる。ギャップ12付近に浮遊する微生物は電極2間に生じるこのような電界作用によってギャップ12に引き寄せられ、電気力線に沿って整列する。この時、ギャップ12付近の微生物の移動状態は、試料液体中に存在する微生物数とギャップ12の間隔に依存するが、十分に微生物数が多い時にはギャップ12が微生物から構成される鎖によって架橋されるほどになる。この際、当初からギャップ12付近に浮遊していた微生物は直ちにギャップ12部分へ移動するし、ギャップ12から離れたところに浮遊していた微生物は距離に応じて所定時間経過後にギャップ12部に至るため、一定時間後にギャップ12付近の所定領域に集まっている微生物の数はセル1内の微生物数に比例する。これは当然のことながら測定試料の液に存在する微生物数に比例するものである。
【0023】
このように、測定対象微生物の誘電率が十分大きい場合には、誘電泳動力により測定電極位置まで微生物を速やかに移動させることができるが、微生物の誘電率が小さい、もしくは周辺溶液の誘電率が大きい場合には微生物の誘電率と周辺溶液の誘電率との差が小さくなることで誘電泳動力も小さくなり、微生物に対する十分な作用力が得られない。そこで本発明では、微生物を高誘電率であるキャリア体に複数個結合することにより高誘電率の結合体とすることで、十分な作用力を受けることができるようになる。これにより、微生物をキャリア体との結合体として測定電極位置まで速やかに移動させることができるし、比較的導電率の高い溶液中の微生物まで濃度測定が可能になる。
【0024】
本実施の形態においては、図7に示すように、キャリア体はコア22、ポリマー23、結合基24の3つの要素を備えている。コア22はチタン酸バリウム粒子が適当で、高誘電率の電気的特性を有する。また、微生物数の算出方法の詳細については後述するが、電極の電気特性の変化により微生物数を算出することから、感度を上げるためキャリア体と一体となって電界集中部に集められる微生物によって電極間の抵抗特性の変化を大きくする必要があり、コーティングするポリマー23は、微生物よりも導電率の低いポリスチレン等にするのが適当である。そして、キャリア体と微生物が一体となった状態で高誘電率であることは当然必要であるが、結合する微生物の個数で表面導電率が変化する必要があるため、キャリア体の大きさは微生物と同程度もしくは数倍程度までの代表寸法であることが望ましい。また、本実施の形態ではチタン酸バリウム粒子にポリマーコーティングしたものをキャリア体としているが、チタン酸バリウムの微細粒子を分散させたポリスチレン粒子をコア22とし、コーティングしない実施の形態も、電気的特性は異なるものの、本来の目的である高誘電率、低表面導電率を満たすため、キャリア体のコア22として用いることができる。
【0025】
本実施の形態の結合基24は、コア22もしくはポリマー23の表面に修飾されているカルボキシル基であり、微生物のタンパク質のアミノ酸残基として末端に存在するアミノ基と能動的に結合する。このほか微生物の官能基に特異的に化学結合するのであれば、他の化合物からなる結合基24でもかまわない。このように結合基24がキャリア体表面に多数修飾されているから、結果的に一つのキャリア体と複数個の微生物とで一つの結合体を形成することになる。生きた微生物も死んだ微生物も双方タンパク質から構成されているから、微生物の生死に係わらず全微生物数を測定できるものである。
【0026】
さらに、結合基24として抗原抗体反応を利用したものを用いてもキャリア体と微生物との結合は可能である。一般的に抗原と抗体の結合はいわゆる鍵と鍵穴の関係とみることができる。抗原となる微生物のタンパク質は炭素、酸素、水素、窒素、硫黄等からなるアミノ酸が多数結合した巨大な高分子であり、アミノ酸の配列の仕方によって特徴的な三次元的な高次構造をなす。この高次構造がタンパク質の機能と密接に関係しており、機能が異なるタンパク質では必ず一部の構造が互いに異なっており、エピトープと呼ばれる抗原決定基の一つとなっている。このような多種多様なタンパク質の中で、ほとんどの微生物がもつタンパク質もあれば特定の微生物しか持たないタンパク質もある。一方、抗体は、抗原の特定タンパク質の特徴的な高次構造とうまく嵌合するような構造となっており、先に説明したエピトープと特異的に結合するパラトープと呼ばれる抗原結合部位を有している。したがって、官能基の結合位置がわずかに異なるだけの非常に類似したタンパク質が同時に存在していても、特定のエピトープと結合するパラトープを有す抗体が修飾されているのであれば高い特異性をもって特定タンパク質だけと結合を生じる。すなわち、抗体を結合基24としてキャリア体表面に修飾しておけば抗原である微生物との特異的な結合体を速やかに得ることができるし、それがある特定の微生物とのみ選択的結合をする抗体であれば特定微生物とキャリア体との結合体を得ることができる。これによって特定微生物数を測定することが可能となる。
【0027】
更に抗原抗体反応の発展的手法の一例として、EIA(エンザイムイムノアッセイ)などの免疫学的測定や組織染色の分野で広く利用されているビオチン−アビジン複合体の極めて高い特異的結合性を利用することもできる。ビオチンはそれ自身に化学修飾を施すことによりタンパク質の各種の官能基に結合させることが可能であるため、事前に抗原である微生物にビオチンを修飾しておくことができ、かつアビジンが結合基24として表面に修飾してあるキャリア体を用いることで、結果として二段階の結合過程を経て微生物とキャリア体との結合体を得ることができるものである。
【0028】
ここで、本発明において検出対象としている微生物について説明する。本発明でいう微生物とは一般に細菌、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、ウイルス、として分類されているいわゆる微生物学の対象となっている生物のほかに、原生動物や原虫のうちの小型のもの、生物体の幼生、分離または培養した動植物細胞、精子、血球、核酸、タンパク質等も含む広い意味での生体または生体由来の微粒子である。また本発明では、測定対象として液体中の微生物を想定している。
【0029】
次に本実施の形態である微生物数測定装置の電極について説明する。図1ないし図2に示すように、誘電泳動によって試料液体中の微生物を所定位置に移動させるために、電極2上の薄膜電極11が微小なギャップ12を介して対向して設けられている。本実施の形態において薄膜電極11は2つの極14,15からなり、図1および2に示すように櫛歯状の薄膜電極11が互いに入れ子になるように配置されている。それぞれの電極はスパッタリングや蒸着やメッキ等の方法によって基板10上に密着して形成された導電体からなり、基板10上で薄膜電極11が密着している部分と基板表面がむき出しになっている部分の境界である端線によって囲まれている。2つの極14,15によって薄膜電極11の端線間に構成されるギャップ12は、本実施の形態においてはすべて同じ間隔である。誘電泳動のための電圧印加によってこのギャップ12付近の電界がもっとも強くなるため、ギャップ12が本実施の形態における電界集中部になる。したがって、微生物はもっとも電界が集中するこのギャップ12付近に向かって泳動される。実施の形態における薄膜電極11の膜厚は約5nmである。5nmという膜厚は後述するギャップ12の間隔100μmに比較しても、また検出対象である微生物と比較しても大変小さいので薄膜電極11は事実上厚みの無視できる2次元的な広がりのみをもつ電極と考えることができる。そこで、本実施の形態では基板10上で電極の密着している部分と基板がむき出しになっている部分の境界を端線と表現している。この時、電極2における電界集中部であるギャップ12付近の電界分布は図3に示すようなものとなる。この薄膜電極11の膜厚は約5nmと薄いために図3に示すように二つの薄膜電極11の端線に挟まれた部分にもっとも電界が集中する。薄膜電極11は極端に抵抗が高くない限りどのような材料から構成されてもよいが、液体中での使用、特に本実施の形態のように水中で使用されることを想定すると、なるべくイオン化傾向が低い金属が望ましい。誘電泳動時には電極2間に強い電界が生じるため、印加する周波数と水中の電解質濃度によっては電気分解が生じることがある。電気分解が生じるとイオン化傾向の大きな金属から構成された電極では、電極の溶解が生じ電極形状の崩れや極端な場合には電極の破断等が生じてしまう。従って、本実施の形態では電極の主材料として白金を使用している。
【0030】
基板10は、薄膜電極11を保持でき、かつ絶縁性の高いものであればどのような材料から構成されてもよいが、誘電率は低いほう(低誘電率基板)が望ましい。なぜ誘電率の低い基板がより望ましいのかというと、薄膜電極11間の電界は図3には詳細に記載していないが基板内部にも分布するからである。基板内部の電界と基板外部に広がる電界すなわち誘電泳動のための電界との強度の比率は誘電率の比によって決まる。本実施の形態では平滑性が高く、また、微細加工が行いやすく誘電率も比較的低いことから、低誘電率基板としてホウ珪酸ガラス基板を使用している。本実施の形態において、基板10上への薄膜電極11の作成は一般的なフォトリソグラフィーを用いた方法で行っている。本実施の形態におけるギャップ12の間隔は100μmに設定されているが、ギャップ12の間隔は測定対象となる微生物の大きさ等の影響を受けるため必要に応じて調節される。例えば、酵母や単離細胞のような大きなものでは広く、リケッチアのように小さなものについては狭くする必要がある。また、ギャップ12の間隔は、広いほど大量の微生物を濃縮することができ、測定のダイナミックレンジも広くなるが、測定までの時間が長く必要になり、誘電泳動のために必要な電力も大きくなる。逆にギャップ12を狭くすると、電力と測定のために必要となる時間は少なくなるが、測定のダイナミックレンジは狭くなってしまうものである。以上のような理由から本実施の形態においては、ギャップ12の間隔を100μmとしているが、この値は検出対象とする微生物に合わせて0.2〜300μmの範囲で適宜調節されることが望ましい。
【0031】
泳動電源回路3は誘電泳動を起こすための交流電流を電極2間に供給するものである。本実施の形態では、後述するように、誘電泳動を起こすための交流電流を一旦遮断し、電極間のインピーダンス変化の測定を行っている。電極2を複数設けてそのうちの2つを測定用の電極とするのでもよい。この泳動電源回路3は電磁弁8等と共に制御手段6によって制御される。制御手段6は、図示しないマイクロプロセッサと、予め設定されたプログラムを保存するためのメモリ、タイマー、さらに測定部4との間の信号線等から構成され、前記プログラムにしたがって電磁弁8の開閉を行い、泳動電源回路3を制御して、電極2へ特定の周波数と電圧をもった交流電圧を印加する。さらに制御手段6は測定部4と演算部5と信号の送受信を行ない適宜制御を行うことで測定動作全般の流れを管理する。
【0032】
実施の形態において測定部4は、電極2間のインピーダンスを調べるための交流電圧(以下、測定のための電圧という)を印加する回路、この印加によって電極2にかかる電圧と、このとき流れる電流と、この電圧と電流の位相の差を測定するための回路、演算部5や制御手段6との間の信号を伝える信号線等から構成される。これにより、誘電泳動によって微生物が移動し、電界集中部近傍に濃縮されて電極2のインピーダンスの変化を生じ、これを測定する。電極2間にかかる電圧と、この測定部4で測定された電流、及び電圧と電流の位相の差を示すデータは演算部5に渡され、後述する手順によって演算が行われる。本実施の形態では、測定部4は制御手段6によって制御されており、予め設定されたプログラムに従って一連の測定動作が連携して円滑に進められる。演算部5は、図示しないマイクロプロセッサ、メモリ等から構成され、詳細は後述するが、測定部4にて測定された結果から電極2のインピーダンスを解析し、電極2間の抵抗成分を演算する。そして必要に応じて演算結果をメモリ14に格納したり、予め保存されているデータを読み出して比較を行なう等して、最終的に測定試料に含まれている微生物数を算出する。なお、このマイクロプロセッサは制御手段6と演算部5とで共用することができる。また、演算部5も測定部4と同様に制御手段6によって制御される。
【0033】
表示手段9は算出された微生物数を試料1mLあたりの微生物数としてデジタル表示する。表示手段9の表示が実施の形態における微生物数測定装置の最終出力となる。本実施の形態では使用者は測定された微生物数を試料1mLあたりの微生物数として直接知ることができるが、表示手段9としては例えば多いまたは少ない、といった概数であるとか、目的に応じてほかの表示方法であってもよい。さらに、試料中の微生物数を調べて殺菌装置を制御するとか、温度などの培養条件を制御するなど、使用者が直接微生物数を知る必要がなく、装置の制御を行うために微生物数を把握すればよい場合には、表示手段9を設ける必要はない。
【0034】
続いて、測定試料の液の導入からセル1内の微生物の濃縮、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明する。初期状態では試料系配管7とセル1を遮断するための電磁弁8は開放状態にあり、測定試料の液はセル1内を自由に通過している。ここでいう測定試料の液というのは測定対象である微生物を含む溶液にキャリア体を混合したものである。所定のタイミングで、予めプログラムによって設定された測定動作に入ると制御手段6は電磁弁8を閉状態にし、セル1を試料系配管7から遮断し、セル1内のみの閉鎖系を構成する。その後、制御手段6は、セル1内の液体の流動が収まると予想される予め設定された所定時間が経過すると、測定部4に測定開始の信号を送って測定を開始させる。測定開始の指令を受けた測定部4は、測定のための電圧として直ちに電極2間に周波数100kHz、電圧1Vの正弦波交流電圧を印加し、その時の電圧、電流、および電圧と電流の位相の差を測定する。ここで、印加される測定のための交流周波数、電圧は、後述するようにあらかじめ濃度が明らかな微生物を含有した試料による較正時に最適なものを選択すればよく、100kHz、1Vといった本実施の形態で例示している値にとらわれる必要はない。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。
【0035】
測定結果は演算部5に送られる。演算部5は得られた測定結果から、電極2間のインピーダンス、電極2間に存在する微生物やキャリア体、溶液等を抵抗と静電容量からなるCR並列等価回路であるとみなしたときの抵抗値を算出する。詳細は以下で説明するが、インピーダンスは印加電圧と電流の除算で、また抵抗値Rはそれぞれインピーダンスと電圧と電流の位相の差を角周波数の角度差で表現した値(以下、位相角という)を用いて計算されるリアクタンスと抵抗値を、CR並列等価回路の合成インピーダンスをあらわす式に代入し、連立方程式を解くことによってCと共に算出することができる。
【0036】
以下、インピーダンスをZ、静電容量をC、リアクタンスをx、抵抗値をrとして、図5、図6と(数1)〜(数5)の式を用いて詳細に説明する。(数1)はCR並列等価回路の合成インピーダンスを表す式、(数2)はCR並列等価回路のレジスタンス表す式、(数3)はCR並列等価回路のリアクタンスを表す式、(数4)はCR並列等価回路の抵抗値を表す式、(数5)はCR並列等価回路の静電容量値を表す式である。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
【数4】
【0041】
【数5】
【0042】
薄膜電極11の極14,15の間には微生物を含んだ水が存在しており、誘電泳動によってキャリア体とともに微生物が電極間のギャップに移動する前には、水を電極間誘電体として構成される静電容量C16と水による抵抗R17が並列に2つの極14と15間を結んでいると考えられる。また、誘電泳動によって結合体として微生物が移動した後も、後述するように、静電容量C16と抵抗R17の絶対値は変化しても等価回路の接続形態は変わらないと考えることができる。このようなCR並列回路に交流電圧を印加すると、回路に流れる電流21と印加した電圧20の間に図5(b)に示すような位相の差が現れる。
【0043】
図5(b)は電流と電圧の間の位相差を示す図である。位相差を印加した電圧の周波数を角周波数ωであらわしたときの角度差θを用いて複素平面上に極座標表示すると、電圧、電流、位相角の間には図6に示す関係がある。インピーダンスZは測定される印加電圧と電流の除算で得られ、図6に示されたベクトルの絶対値に相当する。この時、インピーダンスZはZ=r+jx(jは虚数単位)の形で表現することができ、抵抗値rはr=Zsinθとして図5(a)に示されたCR並列回路の合成インピーダンスの抵抗成分、リアクタンスxはx=Zcosθとして同回路の容量成分の逆数に関連付けられる。一方図5(a)のCR等価回路の合成インピーダンスは(数1)で表現され、(数1)の式をZ=r+jxの関係から抵抗値rとリアクタンスxに分解して(数2)と(数3)を得る。(数2)と(数3)を連立させて変形すると(数4)と(数5)を得る。(数4)と(数5)に測定のための電圧値、その時の電流値、電圧と電流の位相角の測定値から演算したr、x、ωを代入することにより抵抗R17と静電容量C16を知ることができる。
【0044】
演算部5は図示しないマイクロプロセッサによって一連の演算を一瞬のうちに終了する。演算部5は算出された抵抗Rの値を初期値としてメモリに格納し、初期値の測定が終了したことを信号を送って制御手段6に伝える。なお、予め測定値に対応した演算を行っておき、これをテーブルにしてメモリしておけば演算を測定の都度行うのではなく、テーブルを参照するだけで微生物に換算することもできる。すなわち、予め設定された時間に誘電泳動による微生物の濃縮を行なった後に測定を行い、測定のための電圧値、その時の電流値、電圧と電流の位相差を測定した後、この3つの値でメモリ上のテーブルを参照すればそこに予め演算された微生物数がメモリされているというものである。このような構成にすれば演算部5を設けることなく、迅速測定が可能でさらに簡易な構造の微生物数測定装置とすることができる。
【0045】
次いで制御手段6は泳動電源回路3を制御して電極2間に周波数1MHzでピーク電圧100Vの正弦波交流電圧(以下、泳動のための電圧)を印加する。このとき印加される交流の周波数は誘電泳動が生じる周波数範囲であれば任意に選ぶことが可能であるが、あまりに周波数が低いと電極2間で望ましくない電気分解が発生し、また逆にあまりに周波数が高いと電源回路が複雑になる。そこで、本実施の形態では十分に誘電泳動を起こすことができ、かつ泳動電源回路3も比較的簡易なものですむということで1MHzという周波数を選択している。また、泳動のための電圧は実施の形態では100Vとしているが、試料の導電率が大きい場合には、電気分解が発生することがないようにより低い電圧を選択するのが適当である。測定対象となる微生物の種類によっては、測定のための電圧と泳動のため電圧は別の電圧で異なった周波数である必要はなく、同一の周波数を用いてもよい。すなわち、任意の微生物についてそれらをもっとも効率よく泳動するために印加すべき交流の周波数ともっとも効率よく測定するために印加する交流の周波数は必ずしも同じではないが、微生物の種類によっては泳動と測定の最適周波数は同じになる。この場合には、単一周波数で泳動と測定を行うことができるために泳動電源回路3を簡素化することができる上に、泳動を行いながら連続的に測定を行うことが可能になり、より精密な結果を得ることができるようになる。
【0046】
その後、予め設定された時間毎に、制御手段6と測定部4と演算部5は連携して泳動と測定を繰り返し、演算部5は算出された抵抗Rを都度メモリに格納する。このように、誘電泳動による微生物のギャップ12付近への移動と電極2のインピーダンス測定を繰り返すことによって、電極2間の抵抗Rの時間変化を調べることができる。誘電泳動のための交流電圧印加開始後、予めプログラムされた所定回数の電極2のインピーダンス測定を行うと、演算部5はメモリに格納されている複数の時点における抵抗Rの演算結果から、図4に示すようにその時までの電極2間の抵抗Rの時間変化の変化率を計算し、後述する変換式に従って測定試料の微生物数を算出する。
【0047】
この抵抗Rの時間変化の変化率を測定すれば微生物数を算出することができるという理由を説明する。測定対象である微生物はイオンリッチで比較的導電率が大きな細胞壁と、リン脂質からなり、外側を細胞膜に囲まれており、微小な誘電体粒子となっており、キャリア体は微生物と比較して高い誘電率、低い表面導電率を有するものである。キャリア体と複数の微生物と結合した後の結合体は高誘電率、高表面導電率となる。したがって、誘電泳動によってギャップ12付近にキャリア体単体と結合体がある割合で移動してくる場合を考えると、キャリア体のみが移動してくるのに比較して、結合体の数が増えるに連れてギャップ12付近の抵抗Rは低下していく。よって、電極2間の抵抗R変化を測定すればその値はギャップ12付近に移動してきた結合体数、ひいては測定試料に存在する微生物数に相関した測定結果を得ることができる。このような抵抗Rの時間変化の一例を示したのが図4である。そして図4からも分かるように、測定初期の抵抗Rの時間変化の変化率(勾配)も抵抗Rの絶対値の時間変化と同様に、微生物数に対応して減少しているのが分かる。抵抗Rの絶対値で微生物数を算出する場合、過渡状態をすぎてから測定した方が正確であるから、どうしても時間が長くかかるが、測定初期の抵抗Rの変化率(勾配)によって微生物数を算出する場合は、比較的短時間で微生物数を算出できるという特徴がある。さて、抵抗R変化と測定試料の微生物数を関連付けるためには抵抗Rと微生物数間の変換式が必要である。この変換式は微生物数が明らかな較正用試料を、本実施の形態で説明した微生物数測定装置の測定系を用いて予め測定し、その時の微生物数と抵抗Rの間の相関関係からばらつきを回帰分析して得られる曲線をあらわす関数をもちいる。この変換式を演算部5のメモリに記憶させ、微生物数が未知の試料を測定する場合には、所定時間内における抵抗Rの変化率を代入することにより測定試料の微生物数を算出できる。なお、換算テーブルを用いるものは変換式による演算結果を予めメモリさせている。ここで実施の形態の試料としては、例えば酵母の培養液等の単一微生物系を想定しているが、混合微生物系であっても、キャリア体に修飾する結合基の特異性を利用して、特定の微生物だけをキャリア体に結合して結合体を誘電泳動することで、特定の微生物だけ集め測定することが可能である。
【0048】
以上説明したように、微生物数を算出後、予めプログラムされた所定の時間が経過すると、演算部5は測定終了の通知を制御手段6に送る。これを受け、制御手段6は電極2への通電を停止するとともに電磁弁8を開放して洗浄に入る。ギャップ12付近に集まった結合体は、電磁弁8の開放により流入する試料系配管7の液体によって洗い流され、一連の測定動作が終了する。
【0049】
さて、本実施の形態では、単一組の薄膜電極11を使用した場合について説明したが、これは、薄膜電極11が複数組用いられることを妨げるものではない。即ち電極2と同一形状を持った、即ち同一条件下で同一のインピーダンスを持った電極が複数組セル1内に設置されていてもかまわない。その場合には、それぞれの電極2のインピーダンスを独立に測定しその値を平均化するなどの統計処理を行った上で抵抗Rを算出することで、より精度の高い測定結果を得ることが可能になる。たとえば複数の電極2のうちで望ましくない不純物やごみの付着による影響で微生物数と関連しない値が測定されたとしても、測定値を平均化することでその影響を小さくすることができるし、より高度には他の電極2での測定結果を参照して異常値として切り捨てる等の処理も可能となる。このように同一形状を持った電極2を複数組用いて測定を行うことは、構造がやや複雑になることを除けば、精度向上の面からむしろ望ましいことであるといえる。
【0050】
このように本実施の形態の微生物キャリア体は、結合基により微生物との結合体を作り、低誘電率で測定が難しい微生物であっても測定を可能にするし、誘電泳動のための交流電圧と、測定のための電圧を交互に印加するため、誘電泳動による微生物の濃縮を行いながら、定期的に測定部4による電極2のインピーダンスを測定することができ、演算部5によって電極2間の抵抗Rの時間変化を検出することができるので、比較的短時間で、簡易な構造でありながら、測定感度が高く、また自動測定も可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供することができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の微生物キャリア体によれば、低誘電率の微生物であっても、誘電泳動によって簡易で高感度な測定を行うことができる。
【0052】
また、本発明の微生物数測定装置によれば、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、低誘電率の微生物であっても、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーにすることができる。
【0053】
さらに、本発明の微生物数測定方法は、低誘電率の微生物であっても、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における微生物数測定装置の全体構成図
【図2】本発明の実施の形態における電極の説明図
【図3】本発明の実施の形態における電極の断面と電極間の電界の状態を説明するための図
【図4】微生物数と測定時間と電極間の抵抗Rの関係を説明するためのグラフ
【図5】(a)電極間の静電容量の計算方法を説明するための図(b)電流と電圧の間の位相差を示す図
【図6】電極間の静電容量の計算方法を説明するためのもう一つの図
【図7】微生物キャリア体の分子構造を表す模式図
【符号の説明】
1 セル
2 電極
3 泳動電源回路
4 測定部
5 演算部
6 制御手段
7 試料系配管
8 電磁弁
9 表示手段
10 基板
11 薄膜電極
12 ギャップ
13 電気力線
14,15 極
16 静電容量
17 抵抗
18 時間軸
19 電圧および電流の大きさを表す軸
20 電流の変化を表す曲線
21 電圧の変化を表す曲線
22 コア
23 ポリマー
24 結合基
Claims (9)
- 誘電泳動を利用した微生物数の測定に利用する微生物キャリア体であって、
測定対象の微生物が有する誘電率より高い誘電率を有し、かつ前記微生物の表面導電率より低い表面導電率を有するコアと、
前記コアの表面に修飾されている、前記微生物と特異的に結合できる結合基とを備えることを特徴とする微生物キャリア体。 - 誘電泳動を利用した微生物数の測定に利用する微生物キャリア体であって、
測定対象の微生物が有する誘電率より高誘電率の材質で構成されるコアと、
前記コアをコーティングしている、前記微生物の導電率より低い導電率のポリマーと、
前記ポリマーの表面に修飾されている、前記微生物と特異的に結合できる結合基とを備えることを特徴とする微生物キャリア体。 - 前記微生物の代表寸法と同程度もしくは数倍程度までの代表寸法を有することを特徴とする請求項1又は2記載の微生物キャリア体。
- 前記結合基が、前記微生物の官能基に特異的に化学結合することができる化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物キャリア体。
- 前記化合物が、前記微生物のタンパク質に含まれるアミノ酸残基に特異的に結合する化合物であることを特徴とする請求項4記載の微生物キャリア体。
- 前記結合基が、抗原である前記微生物のエピトープに対して特異的に結合するパラトープを有する抗体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物キャリア体。
- 内部に複数の電極を備え、かつ微生物含有の液体を導入するとともに、請求項1〜6のいずれかに記載の微生物キャリア体を導入することができるセルと、
前記セル内に誘電泳動力を発生させるための交流電圧を前記電極のうちの何れかの電極間に印加する電源回路と、
前記電極のうちの何れかの電極間の抵抗特性を測定する測定部と、
前記電源回路と前記測定部とを制御するための制御手段と、
前記測定部の測定結果を演算して微生物数を算出する演算手段とを備えたことを特徴とする微生物数測定装置。 - 前記測定部が、前記電極間の電圧、電流、及び電圧と電流との位相差を測定して前記電極間の抵抗を算出することを特徴とする請求項7記載の微生物数測定装置。
- 複数の電極を備えたセル内に微生物含有の液体と請求項1〜6のいずれかに記載の微生物キャリア体を導入し、前記複数の電極のうち何れかの電極間に交流電圧を印加して前記セル内に誘電泳動力を発生させ、電界集中部に前記微生物キャリア体と結合した微生物を集めて、前記電極間の抵抗特性の変化を測定して微生物数を算出することを特徴とする微生物数測定方法。
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