本発明は、無線通信装置および送信方法に関する。
近年、セルラ移動体通信システムにおいては、情報のマルチメディア化に伴い、音声データのみならず、静止画像、動画像等の大容量データを伝送することが一般化しつつある。大容量データの伝送を実現するために、高周波の無線帯域を利用して高伝送レートを実現する技術に関して盛んに検討がなされている。
しかし、高周波の無線帯域を利用した場合、近距離では高伝送レートを期待できる一方、遠距離になるに従い伝送距離による減衰が大きくなる。よって、高周波の無線帯域を利用した移動体通信システムを実際に運用する場合は、各基地局のカバーエリアが小さくなり、このため、より多くの基地局を設置する必要が生じる。基地局の設置には相応のコストがかかるため、基地局数の増加を抑制しつつ、高周波の無線帯域を利用した通信サービスを実現するための技術が強く求められている。
このような要求に対し、移動局と基地局との間に中継局を設置し、移動局と基地局との間の通信を、中継局を介して行う中継技術が検討されている。このような中継技術の一つに、移動局が中継局となって、他の移動局の信号を中継送信するものがある(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、移動局が、他の移動局から中継要求信号を受信した場合、他の移動局と基地局との間の中継送信を行う。
特開2005−341300号公報
しかしながら、上記従来技術では、他の移動局からの中継要求信号を受信しても、移動局が自局の通信処理を行っており、使用可能な通信リソースを自局の信号に使用している場合、すなわち、自局の通信処理と並行して中継信号を中継送信するだけの能力がない場合には、中継信号を中継送信することができない。一方、中継送信中に自局の通信処理が発生した場合についても、自局の通信処理を行うことができるように考慮する必要がある。
本発明の目的は、自局の通信処理および他の移動局の中継処理が同時刻に発生する場合でも、双方の通信を切断することなく同時に行うことができる無線通信装置および送信方法を提供することである。
本発明の無線通信装置は、自装置の第1信号の発呼または着呼を検出する第1検出手段と、他の無線通信装置の第2信号の中継要求を検出する第2検出手段と、前記第2信号の中継送信中に前記発呼または前記着呼が検出された場合、または、前記第1信号の送信中に前記中継要求が検出された場合、前記第1信号および前記第2信号の双方を同時に送信する送信手段と、を具備する構成を採る。
本発明によれば、自局の通信処理および他の移動局の中継処理が同時刻に発生する場合でも、双方の通信を切断することなく同時に行うことができる。
本発明の実施の形態1に係る移動体通信システムを示す図
本発明の実施の形態1に係る移動局の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態1に係る通信レート決定例(中継要求が発生する場合)
本発明の実施の形態1に係る通信レート決定例(自局の発着呼要求が発生する場合)
本発明の実施の形態2に係るCQIテーブルを示す図
本発明の実施の形態2に係る移動局の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態2に係るハンドオーバを示す図
本発明の実施の形態3に係る移動局の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態3に係る中継確率算出例を示す図(算出方法1)
本発明の実施の形態3に係る中継確率算出例を示す図(算出方法2)
本発明の実施の形態3に係る中継確率算出例を示す図(算出方法3)
その他の中継確率算出例を示す図(従来例)
本発明のその他の中継確率算出例を示す図(例1)
本発明のその他の中継確率算出例を示す図(例2)
本発明のその他の中継確率算出例を示す図(例3)
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態における移動体通信システムは、図1に示すように、基地局(BS)のセルの範囲内に位置する移動局(MS2)が、基地局と基地局のセルの範囲外に位置する他の移動局(MS1)との間で通信される信号を中継送信する移動体通信システムとする。
(実施の形態1)
本実施の形態では、MS2が、MS2(自局)の通信処理とMS1(他の移動局)の中継処理とが同時刻に発生する場合、MS2に割り当てられた通信リソースのうち一部の通信リソースを使用してMS2の信号を送信するとともに、通信リソースのうち一部の通信リソース以外の通信リソースを使用して中継信号を送信する。
本実施の形態に係る中継送信を行う移動局100の構成を図2に示す。MS1およびMS2は図2に示す構成を採る。
移動局100において、無線受信部102は、アンテナ101を介して受信した信号に対して、ダウンコンバート、A/D変換等の受信処理を行う。そして、無線受信部102は、受信信号が自局宛ての信号である場合はその信号を復調部103に出力し、受信信号が他の移動局からの中継信号または基地局からの中継信号である場合はその中継信号を中継信号復調部107に出力する。
復調部103は、無線受信部102から入力される自局宛ての信号に対して復調処理を行う。そして、復調部103は、復調後の信号を受信信号処理部104に出力する。
受信信号処理部104は、復調部103から入力される復調後の信号に対してデータチャネルの情報を抽出する受信信号処理を行う。そして、受信信号処理部104は、受信信号処理後のデータを上位レイヤ処理部105に出力する。
上位レイヤ処理部105は、受信信号処理部104から入力される受信信号処理後のデータを用いて、音声信号処理、画像処理、マルチメディア信号処理等の上位レイヤにおける処理を行う。そして、上位レイヤ処理部105は、上位レイヤ処理後の信号を発着呼要求検出部106および送信信号処理部112に出力する。
発着呼要求検出部106は、上位レイヤ処理部105から入力される信号から、自局の信号の発呼または着呼の要求があることを示す発着呼要求を検出する。そして、発着呼要求検出部106は、発着呼要求が検出された場合、発着呼要求が検出されたことを示す信号を通信レート決定部109に出力する。
中継信号復調部107は、無線受信部102から入力される中継信号に対して復調処理を行う。そして、中継信号復調部107は、復調後の中継信号を中継要求検出部108および中継信号処理部110に出力する。
中継要求検出部108は、中継信号復調部107から入力される復調後の中継信号から、MS1がMS2に対して基地局への中継を要求することを示す中継要求信号を検出する。そして、中継要求検出部108は、中継要求信号が検出された場合、中継要求信号が検出されたことを示す信号を通信レート決定部109に出力する。
通信レート決定部109は、発着呼要求検出部106から発着呼要求が検出されたことを示す信号が入力された場合、または、中継要求検出部108から中継要求信号が検出されたことを示す信号が入力された場合、自局の信号および中継信号に対する通信レートをそれぞれ決定する。通信レート決定部109は、自局に割り当てられた通信リソースのうち、一部の通信リソースを使用して自局の信号を送信するように通信レートを決定するとともに、自局に割り当てられた通信リソースのうち、自局の信号に使用する通信リソース以外の通信リソースを使用して中継信号を送信するように通信レートを決定する。そして、通信レート決定部109は、自局の信号の通信レートを送信信号処理部112に出力し、中継信号の通信レートを中継送信信号処理部111に出力する。通信レート決定部109における通信レート決定処理の詳細については後述する。
中継信号処理部110は、中継信号復調部107から入力される復調後の中継信号に対して、中継送信のための制御チャネルの付加およびデータチャネルの加工を施す中継信号処理を行う。そして、中継信号処理部110は、中継信号処理後の中継信号を中継送信信号処理部111に出力する。
中継送信信号処理部111は、通信レート決定部109から入力される通信レートに従って、中継信号処理部110から入力される中継信号を、中継送信先の基地局向けまたは移動局向けの信号フォーマットに形成する送信信号処理を行う。そして、中継送信信号処理部111は、送信処理後の中継信号を無線送信部114に出力する。
送信信号処理部112は、通信レート決定部109から入力される通信レートに従って、上位レイヤ処理部105から入力される信号を、送信先の基地局向けのデータチャネルの情報に形成し、制御チャネルを付加する送信信号処理を行う。そして、送信信号処理部112は、送信信号処理後の信号を変調部113に出力する。
変調部113は、送信信号処理部112から入力される信号を変調する。そして、変調部113は、変調後の信号を無線送信部114に出力する。
無線送信部114は、中継送信信号処理部111から入力される中継信号および変調部113から入力される自局の信号に対しD/A変換、増幅およびアップコンバート等の送信処理を行ってアンテナ101から送信する。
次に、通信レート決定部109における通信レート決定処理の詳細について説明する。
まず、MS2(移動局100)が自局の通信処理を行っている途中に、MS1(他の移動局)からの中継要求が発生した場合について説明する。
図3に示すように、MS2では、自局の信号の通信(MS2通信)の途中に、中継要求検出部108がMS1からの中継要求信号(MS1中継要求)を検出する。そこで、通信レート決定部109は、自局の信号の通信(MS2通信)で使用していた周波数リソース(31)の一部(32)を引き続き自局の信号の通信に使用するとともに、自局の信号の通信に使用する周波数リソース(32)以外の残りの周波数リソース(33)をMS1の中継信号の通信(MS1中継)に使用するように通信レートを決定する。ここでは、図3に示すように、通信レート決定部109は、自局の信号の通信で使用していた周波数リソース(31)の半分ずつ(32,33)をそれぞれ自局の信号およびMS1の中継信号に使用するような通信レート(ハーフレート)を決定する。
これにより、MS2では、使用可能な周波数リソース(31)を自局の信号の通信にすべて使用している途中にMS1の中継要求が発生した場合でも、周波数リソース(31)の半分ずつ(32,33)を自局の信号および中継信号がそれぞれ使用できるため、自局の信号の通信とMS1の中継信号の中継送信とを同時に実施することができる。つまり、MS2では、自局の信号の通信を中断することなく引き続き自局の信号の通信を行うことができ、かつ、MS1の中継信号の中継を拒否することなく新たにMS1の中継信号の中継送信を行うことができる。
次いで、MS2(移動局100)がMS1(他の移動局)の中継処理を行っている途中に、自局の発着呼要求が発生した場合について説明する。
図4に示すように、MS2では、MS1の中継信号の通信(MS1中継)の途中に、発着呼要求検出部106が自局の信号の発着呼要求(MS2発着呼)を検出する。そこで、通信レート決定部109は、MS1の中継信号の通信(MS1中継)で使用していた周波数リソース(41)の一部(42)を引き続きMS1の中継信号の通信に使用するとともに、MS1の中継信号の通信に使用する周波数リソース(42)以外の残りの周波数リソース(43)を自局の信号の通信(MS2通信)に使用するように通信レートを決定する。ここでは、図3と同様、図4に示すように、通信レート決定部109は、自局の信号およびMS1の中継信号の通信レートをそれぞれハーフレートに決定する。
これにより、MS2では、使用可能な周波数リソース(41)をMS1の中継信号の中継送信にすべて使用している途中に自局の発着呼要求が発生した場合でも、周波数リソース(41)の半分ずつ(42,43)を自局の信号および中継信号がそれぞれ使用できるため、自局の信号の通信とMS1の中継信号の中継送信とを同時に実施することができる。つまり、MS2では、MS1の中継信号の中継送信を中断することなく引き続き中継送信を行うことができ、かつ、自局の信号の通信を拒否することなく新たに自局の信号の通信を行うことができる。
このように、本実施の形態によれば、自局の通信処理と他の移動局の中継信号の中継処理とが同時刻に発生する場合、使用可能な周波数リソースを自局の通信処理と中継信号の中継処理とで分割多重して使用する。これより、周波数リソースの一部の周波数リソースを一方の通信が使用し、残りの周波数リソースを他方の通信が使用するため、自局の信号の通信と中継信号の通信とを同時に行うことができる。よって本実施の形態によれば、自局の通信処理および他の移動局の中継処理が同時刻に発生する場合でも、双方の通信を切断することなく同時に行うことができる。
なお、本実施の形態では、自局の信号および中継信号が、使用可能な周波数リソースをそれぞれ半分ずつ使用する場合について説明した。しかし、本発明では、自局の信号および中継信号は使用可能な周波数リソースを半分ずつ使用しなくてもよい。例えば、自局の通信が高速データ通信であり、中継通信が音声通信である場合、自局の信号の通信により多くの周波数リソースを使用してもよい。これにより、中継通信される音声通信の品質を一定に保ったままで、高速データ通信に対して最大限の周波数リソースを割り当てることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、MS2(自局)の通信処理とMS1(他の移動局)の中継処理とが同時刻に発生する場合、MS1の中継処理を他の中継局(図示せず)へハンドオーバさせる。
基地局と各移動局との間において、各移動局は、基地局から送信されるパイロット信号を用いて基地局と自局との間の回線品質を測定する。そして、各移動局は、回線品質に基づいて、回線品質情報であるCQI(Channel Quality Indicator)を生成し、基地局にフィードバックする。基地局では、各移動局からフィードバックされるCQIに基づいて、各移動局宛てのデータの変調方式を決定する。
例えば、図5に示すように、各移動局は、回線品質に基づいてCQI番号0〜4のCQIを生成する。つまり、各移動局では、回線品質が5段階のレベルに分けられる。ここでは、CQI番号が大きいほど、回線品質がより良いとする。一方、基地局は、各移動局からフィードバックされるCQIに基づいて各移動局宛てのデータの変調方式をそれぞれ設定する。つまり、CQI番号が大きいほど、変調多値数がより大きい変調方式で変調したデータをそのCQIをフィードバックした移動局に対し送信する。
また、回線品質が劣悪である場合、つまり、図5に示すCQI番号が0である場合、基地局は変調方式を設定せず(変調方式:‘None’)、その移動局との通信をMS2から他の中継局にハンドオーバさせる。このように、基地局では、移動局からのCQIに基づいて、中継局間でのハンドオーバが必要か否かを判断する。
そこで、本実施の形態では、MS2の通信処理とMS1の中継処理とが同時刻に発生する場合、MS2がMS1から受信されるCQIを最低レベルのCQI(CQI番号0)に更新することにより、基地局にMS1を自局から他の中継局にハンドオーバさせる。
図6に本実施の形態に係る中継送信を行う移動局200の構成を示す。なお、図6において、図2に示した構成部と同一の構成部には同一符号を付し説明を省略する。
ハンドオーバ指示部201は、他の中継局へのハンドオーバを行うか否かを制御する。具体的には、ハンドオーバ指示部201は、発着呼要求検出部106から発着呼要求が検出されたことを示す信号が入力された場合、または、中継要求検出部108から中継要求信号が検出されたことを示す信号が入力された場合、他の中継局へのハンドオーバを行う指示を示す信号をCQI更新部202に出力する。
CQI更新部202は、ハンドオーバ指示部201からハンドオーバを行う指示を示す信号が入力される場合、他の移動局の中継信号に含まれるCQIを最も低いレベルのCQIに更新する。具体的には、CQI更新部202は、他の移動局の中継信号に含まれるCQIを、図5に示す‘None’に更新する。
次に、CQI更新部202におけるCQI更新処理の詳細について説明する。
ここでは、図6に示す構成を採るMS2がMS1の中継処理を行っている途中に、自局の発着呼要求が発生した場合について説明する。また、MS2では、MS1からのCQI番号が2(変調方式:QPSK)であるものとする。
図7に示すように、MS2では、MS1の中継信号の通信(MS1中継)の途中に、発着呼要求検出部106が自局の信号の発着呼要求(MS2発着呼)を検出する。そして、ハンドオーバ指示部201は、ハンドオーバを行う指示を示す信号をCQI更新部202に出力する。
そこで、CQI更新部202は、CQI番号を2(変調方式:QPSK)から0(変調方式:‘None’)に更新する。よって、MS2は、MS1からのCQIが良好な回線品質を示すものであるか否かにかかわらず、MS1からのCQIを最低レベルのCQIに見せかけて基地局に中継送信する。
これにより、基地局では、基地局とMS1との間の回線品質が実際にはCQI番号が2と良好であるにもかかわらず、その回線品質を劣悪と判断する。そして、基地局は、図7に示すように、基地局とMS1との間の中継局を介する通信(MS1中継)を、MS2を中継局として行うことを止め、MS2から他の中継局へハンドオーバさせる。よって、MS1は、MS2以外の中継局を介して基地局と通信を行う。よって、MS2では、MS1の中継信号を中継送信する必要がなくなるため、使用可能な周波数リソースすべてを自局の信号(MS2通信)に対して使用することができる。
このように、本実施の形態によれば、他の移動局の中継信号の中継処理中に、自局の信号の発着呼要求が検出された場合、中継信号のCQIを最低レベルに更新することで中継信号を他の中継局へハンドオーバさせるため、使用可能な周波数リソースすべてを自局の信号に対して使用することができる。よって本実施の形態によれば、自局の通信処理および他の移動局の中継処理が同時刻に発生する場合でも、双方の通信を切断することなく同時に行うことができる。
さらに、本実施の形態によれば、他の移動局のCQIを最低レベルに更新して中継送信するため、基地局に対してハンドオーバを要求する制御信号を基地局へ別途送信することなくハンドオーバを実施することができる。よって、基地局の構成を従来の構成から何ら変更することなく本発明を実施することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、MS2(自局)の充電池の充電容量に基づいて、MS1(他の移動局)の中継処理を行う場合について説明する。
MS2では、充電池の充電容量が一定レベルより大きい場合に限り、MS1の中継信号を中継送信することがある。例えば、各移動局は、MS1の中継処理による充電容量の損失がMS2(自局)の通信処理に影響を与えない場合に限り、MS1の中継処理を行う。そのため、移動体通信システムにおいて、充電池の充電容量が一定レベルより大きいMS2が存在しない場合、MS1の中継処理が全く行われないため、MS1が全く通信できない状態が発生する。
そこで、本実施の形態では、MS2(自局)がMS1(他の移動局)の中継信号を中継送信するか否かを、MS2の充電池の充電容量に基づいて決定する。
図8に本実施の形態に係る中継送信を行う移動局300の構成を示す。なお、図8において、図2に示した構成部と同一の構成部には同一符号を付し説明を省略する。
電源供給検出部301は、自局と電源装置(例えば、AC電源)とが接続されているか否か、すなわち、自局に電源が供給されているか否かを検出する。そして、電源供給検出部301は、自局と電源装置とが接続されているか否かを示す信号を中継決定部304に出力する。
充電完了率検出部302は、充電池の充電容量を示す充電完了率を検出する。具体的には、充電完了率検出部302は、最大充電容量を100%としたときの現在の充電容量の割合を充電完了率として検出する。そして、充電完了率検出部302は、検出された充電完了率を中継確率算出部303に出力する。
中継確率算出部303は、充電完了率検出部302から入力される充電完了率に基づいて、他の移動局の中継信号の送信確率である中継確率を算出する。具体的には、中継確率算出部303は、充電完了率が高いほど(充電容量が大きいほど)、より高い中継確率を算出する。そして、中継確率算出部303は、算出された中継確率を中継決定部304に出力する。中継確率算出部303における中継確率算出方法の詳細については後述する。
中継決定部304は、電源供給検出部301から入力される、自局が電源装置に接続されているか否かを示す信号、および、中継確率算出部303から入力される中継確率に基づいて、他の移動局の中継信号を中継送信するか否かを決定する。具体的には、中継決定部304は、自局が電源装置に接続されている場合に、中継確率に基づいて、他の移動局の中継信号を中継送信するか否かを決定する。すなわち、自局が電源装置に接続されている場合、かつ、中継決定部304において発生させた0〜1の範囲の乱数が中継確率以下の場合、中継決定部304は、他の移動局の中継信号を中継送信することを決定する。一方、自局と電源装置とが接続されていない場合、または、中継決定部304において発生させた0〜1の範囲の乱数が中継確率より大きい場合、中継決定部304は、他の移動局の中継信号を中継送信しないことを決定する。そして、中継決定部304は、他の移動局の中継信号を中継送信するか否かを示す信号を中継送信信号処理部111に出力する。
中継送信信号処理部111は、中継決定部304から他の移動局の中継信号を中継送信することを示す信号が入力された場合、実施の形態1と同様にして、中継信号処理部110から入力される中継信号に対して送信信号処理を行う。一方、中継送信信号処理部111は、中継決定部304から他の移動局の中継信号を中継送信しないことを示す信号が入力された場合、送信信号処理を行わない。
次に、中継確率算出部303における中継確率算出方法の詳細について説明する。
(算出方法1:図9A)
本算出方法では、中継確率算出部303は、充電完了率に比例した中継確率を算出する。例えば、図9Aに示すように、中継確率算出部303は、充電完了率が50%のとき、中継確率を50%とし、充電完了率が100%のとき、中継確率を100%とする。すなわち、図9Aでは、中継確率算出部303は、充電完了率と同一の値の中継確率を算出する。
そして、中継決定部304は、中継確率算出部303が算出した充電完了率に基づいて、他の移動局の中継信号を中継送信するか否かを決定する。図9Aに示すように、いずれの充電完了率においても、MS2においてMS1の中継信号を中継送信する可能性がある。換言すると、MS2では、MS1の中継信号を中継送信しない(中継確率:0%)ことがなくなる。つまり、MS2では、充電池の充電容量がどれだけ小さい場合でも、中継確率が低くなるもののMS1の中継信号を中継送信する可能性を残す。これにより、MS2において、MS1の中継信号が中継送信される可能性が高くなる。
このように、本算出方法によれば、充電完了率が高いほど、より高い中継確率で中継信号が中継送信される。これにより、いずれの充電完了率においても他の移動局の中継信号が中継送信される可能性があるため、移動局が他の移動局の中継信号を中継する確率を高くすることができる。よって、本算出方法によれば、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができる。また、本算出方法は、充電完了率に定数を乗算するという簡単な回路構成により実施することができる。
(算出方法2:図9B)
充電池の充電容量(充電完了率)が所定の充電容量より大きければ、移動局が中継処理することによる充電容量の損失はシステムに影響を与えない。つまり、所定の充電容量より大きい場合、移動局は、自局の通信処理に影響を及ぼすことなく、他の移動局の中継信号を中継送信することが可能となる。
そこで、本算出方法では、中継確率算出部303は、充電完了率が所定の充電完了率以下の場合、算出方法1と同様にして、充電完了率に比例した中継確率を算出し、充電完了率が所定の充電完了率より大きい場合、中継確率を最大にする。
ここでは、例えば、所定の充電完了率が20%である場合について説明する。図9Bに示すように、中継確率算出部303は、検出された充電完了率が20%以下の場合、算出方法1と同様、充電完了率に比例した中継確率を算出する。具体的には、中継確率算出部303は、充電完了率が10%のとき、中継確率を50%とし、充電完了率が20%のとき、中継確率を100%とする。一方、図9Bに示すように、中継確率算出部303は、検出された充電完了率が20%より大きい場合、中継確率を最大の100%とする。
つまり、MS2は、充電完了率が高く、MS2(自局)の通信処理に影響を与えることなくMS1(他の移動局)の中継処理を行える場合には、MS1の中継処理を確実に行う。これにより、MS2では、BSと直接通信できないMS1がMS2を介して通信できる可能性がさらに高くなる。一方、MS2は、充電完了率が低く、MS1(他の移動局)の中継処理がMS2(自局)の通信処理に影響を与える可能性がある場合には、充電池を充電しつつ、充電完了率に基づいた確率でMS1の中継処理を行う。これにより、充電完了率が低い場合でも、算出方法1と同様、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができる。
このように、本算出方法によれば、充電完了率が所定の充電完了率より大きい場合、中継確率を最大にする。これにより、充電完了率が所定の充電完了率より大きい場合、移動局は、他の移動局の中継信号を確実に中継送信することができる。また、充電完了率が所定の充電完了率以下の場合でも、移動局は、他の移動局の中継信号を充電完了率に基づく確率で中継送信する。よって、算出方法1と同様、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができ、かつ、他の移動局の中継信号が中継送信される可能性を高くすることができる。
(算出方法3:図9C)
MS2において充電池の充電完了率が低い状態(充電容量が小さい状態)でMS1(他の移動局)の中継信号を中継送信している間に、自局の通信処理が発生した場合、MS2では、充電容量が不足し、MS2(自局)の通信処理を行えない可能性がある。そのため、例えば、緊急の自局の通信処理を行えるようにするために、MS2は、MS2(自局)の通信処理のための充電容量を最低限残しておく必要がある。つまり、MS2は、充電完了率が低い(充電容量が小さい)場合でも、MS2(自局)の通信処理のための充電容量を確保しておく必要がある。
そこで、本算出方法では、中継確率算出部303は、充電完了率が採り得る範囲のうち、充電完了率がより低い範囲ほど、中継確率の変化量をより小さくする。
例えば、図9Cに示すように、中継確率算出部303は、検出された充電完了率のn乗(図9Cではn=2)を中継確率として算出する。具体的には、中継確率算出部303は、充電完了率が50%のとき、中継確率を25%とし、充電完了率が100%のとき、中継確率を100%とする。ここで、充電完了率が0%(中継確率:0%)〜50%(中継確率:25%)の範囲では中継確率の変化量が25%であるのに対し、充電完了率が50%(中継確率:25%)〜100%(中継確率:100%)の範囲では中継確率の変化量が75%となる。すなわち、充電完了率の変化量が同一でも、充電完了率がより低い範囲ほど中継確率の変化量がより小さくなり、中継確率算出部303により算出される中継確率は低い値のままとなる。
ここで、本算出方法(図9C)と算出方法1(図9A)とを比較すると、双方とも充電完了率が高くなるほど、中継確率がより高くなるものの、同一の充電完了率では、算出方法1の中継確率よりも本算出方法の中継確率の方が低くなる。つまり、本算出方法では、充電完了率がより低い場合、中継確率はより低くなる。これにより、充電完了率がより低い場合、MS2は、MS1の中継信号を中継送信する可能性があるものの、MS1の中継信号の中継処理よりもMS2(自局)の通信処理のための充電容量確保を優先することが可能となる。
このように、本算出方法によれば、充電完了率がより低い場合、他の移動局の中継信号の中継送信の中継確率をより低くする。これにより、移動局は、他の移動局の中継信号を中継送信する可能性を残しつつ、自局の通信処理のための充電容量を優先的に確保することができる。よって、本算出方法によれば、中継送信する移動局の通信処理に影響を与えることなく、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができる。また、本算出方法は、算出方法1と同様、充電完了率に定数を乗算するという簡単な回路構成により実施することができる。
以上、中継確率算出部303における中継確率算出方法1〜3について説明した。
また、MS2(自局)は、MS1(他の移動局)の中継信号の中継送信を決定した後、MS1の中継信号の中継処理中にMS2の信号の発着呼要求が検出された場合、または、MS2の信号の通信中にMS1の中継信号の中継要求が検出された場合、実施の形態1と同様にして、使用可能な周波数リソースを自局の通信処理と中継信号の中継処理とで分割多重して使用する。なお、本実施の形態では、実施の形態2(図6)と同様にして、MS2は、中継信号のCQIを最低レベルに更新することでMS1の中継信号を他の中継局へハンドオーバさせてもよい。
このようにして、本実施の形態によれば、移動局は、充電池の充電完了率に基づいて他の移動局の中継信号の中継送信を行うか否かを決定する。これにより、充電完了率がいずれの場合でも、他の移動局の中継信号が中継送信される可能性があり、他の移動局の中継信号の中継確率を高くすることができる。よって、本実施の形態によれば、中継送信する移動局の充電容量がいずれの場合でも、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができる。
また、本実施の形態では、移動局が電源装置(例えば、AC電源)に接続された場合のみ、移動局は他の移動局の中継信号を中継送信する。この場合、移動局では電源装置から一定の電力が常に供給されるため、他の移動局の中継信号の中継処理を行いつつ、充電池の充電完了に掛かる時間を短縮することができる。よって、充電池の充電完了に掛かる時間を短縮することで、自局の通信処理を行うための充電容量が残っている可能性を高くすることができる。
なお、本実施の形態では、中継送信を行う移動局を、電源装置(例えば、AC電源)に接続され、かつ、エコロジーモードの移動局に限定してもよい。ここで、エコロジーモードとは、充電完了率を100%とせず、70〜80%とし、充電池(例えば、リチウム電池)の電池寿命を長くするためのモードである。このとき、図8に示す移動局300の中継確率算出部303は、図9A〜Cに示す充電完了率100%を、エコロジーモードにおける最大充電完了率(例えば、充電完了率70%)に置き換えて中継確率を算出する。また、中継決定部304には、充電モードが、通常モード(最大充電完了率:100%)またはエコロジーモード(最大充電完了率:70〜80%)のいずれであるかを示す情報が入力される。これにより、エコロジーモードにおいても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態の移動局300の中継確率算出部303(図8)は、従来の中継決定方法と同一の平均中継確率となるように中継確率を算出してもよい。例えば、図10に示すように、従来の中継決定方法では充電完了率(充電容量)が一定レベル(図10では50%)より大きい場合に限り、中継信号が中継送信される。具体的には、図10に示すように、充電完了率が50%以下では、中継信号の中継送信は全く行われず(中継確率:0%)、充電完了率が50%より大きい場合、中継信号の中継送信は必ず行われる(中継確率:100%)。すなわち、図10に示す中継決定方法では、充電完了率0〜100%の全体に渡る中継信号の中継確率である平均中継確率は50%となる。ここで、図10の斜線部分の面積の大きさは、平均中継確率に対応する。
そこで、中継確率算出部303は、図10の斜線に示す面積と同一の大きさとなる、充電完了確率と中継確率との関係に基づいて中継確率を算出すればよい。例えば、中継確率算出部303は、図11A〜11Cに示す充電完了確率と中継確率との関係のいずれかに基づいて中継確率を算出する。ここで、図11A〜11Cの斜線部分の面積の大きさは、図10の斜線部分の面積の大きさとそれぞれ同一である。すなわち、中継確率算出部303が図11A〜11Cのいずれかに基づいて中継確率を算出した場合の平均中継確率は、図10と同一の50%となる。このように、平均中継確率が同一となるため、移動局300が図11A〜11Cのいずれかに基づいて他の移動局の中継処理を行う際に消費する電力も、図10の中継決定方法を用いる場合と同一となる。ただし、移動局300では、図11A〜11Cのいずれかに基づいて中継確率を算出することで、本実施の形態と同様、いずれの充電完了率においても他の移動局の中継信号が中継送信される可能性が残る。このように、中継処理に要する消費電力(平均中継確率)が同一の場合でも、図10に示す従来の中継決定方法では基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態があるのに対し、図11A〜11Cでは本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の各実施の形態について説明した。
なお、移動局はUE、基地局はNode Bと称されることもある。
また、上記実施の形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はソフトウェアで実現することも可能である。
また、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
2007年9月7日出願の特願2007−232960および2008年1月28日出願の特願2008−016468の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
本発明は、移動体通信システム等に適用することができる。
本発明は、無線通信装置および送信方法に関する。
近年、セルラ移動体通信システムにおいては、情報のマルチメディア化に伴い、音声データのみならず、静止画像、動画像等の大容量データを伝送することが一般化しつつある。大容量データの伝送を実現するために、高周波の無線帯域を利用して高伝送レートを実現する技術に関して盛んに検討がなされている。
しかし、高周波の無線帯域を利用した場合、近距離では高伝送レートを期待できる一方、遠距離になるに従い伝送距離による減衰が大きくなる。よって、高周波の無線帯域を利用した移動体通信システムを実際に運用する場合は、各基地局のカバーエリアが小さくなり、このため、より多くの基地局を設置する必要が生じる。基地局の設置には相応のコストがかかるため、基地局数の増加を抑制しつつ、高周波の無線帯域を利用した通信サービスを実現するための技術が強く求められている。
このような要求に対し、移動局と基地局との間に中継局を設置し、移動局と基地局との間の通信を、中継局を介して行う中継技術が検討されている。このような中継技術の一つに、移動局が中継局となって、他の移動局の信号を中継送信するものがある(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、移動局が、他の移動局から中継要求信号を受信した場合、他の移動局と基地局との間の中継送信を行う。
特開2005−341300号公報
しかしながら、上記従来技術では、他の移動局からの中継要求信号を受信しても、移動局が自局の通信処理を行っており、使用可能な通信リソースを自局の信号に使用している場合、すなわち、自局の通信処理と並行して中継信号を中継送信するだけの能力がない場合には、中継信号を中継送信することができない。一方、中継送信中に自局の通信処理が発生した場合についても、自局の通信処理を行うことができるように考慮する必要がある。
本発明の目的は、自局の通信処理および他の移動局の中継処理が同時刻に発生する場合でも、双方の通信を切断することなく同時に行うことができる無線通信装置および送信方法を提供することである。
本発明の無線通信装置は、自装置の第1信号の発呼または着呼を検出する第1検出手段と、他の無線通信装置の第2信号の中継要求を検出する第2検出手段と、前記第2信号の中継送信中に前記発呼または前記着呼が検出された場合、または、前記第1信号の送信中に前記中継要求が検出された場合、前記第1信号および前記第2信号の双方を同時に送信する送信手段と、を具備する構成を採る。
本発明によれば、自局の通信処理および他の移動局の中継処理が同時刻に発生する場合でも、双方の通信を切断することなく同時に行うことができる。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態における移動体通信システムは、図1に示すように、基地局(BS)のセルの範囲内に位置する移動局(MS2)が、基地局と基地局のセルの範囲外に位置する他の移動局(MS1)との間で通信される信号を中継送信する移動体通信システムとする。
(実施の形態1)
本実施の形態では、MS2が、MS2(自局)の通信処理とMS1(他の移動局)の中継処理とが同時刻に発生する場合、MS2に割り当てられた通信リソースのうち一部の通信リソースを使用してMS2の信号を送信するとともに、通信リソースのうち一部の通信リソース以外の通信リソースを使用して中継信号を送信する。
本実施の形態に係る中継送信を行う移動局100の構成を図2に示す。MS1およびMS2は図2に示す構成を採る。
移動局100において、無線受信部102は、アンテナ101を介して受信した信号に対して、ダウンコンバート、A/D変換等の受信処理を行う。そして、無線受信部102は、受信信号が自局宛ての信号である場合はその信号を復調部103に出力し、受信信号が他の移動局からの中継信号または基地局からの中継信号である場合はその中継信号を中継信号復調部107に出力する。
復調部103は、無線受信部102から入力される自局宛ての信号に対して復調処理を行う。そして、復調部103は、復調後の信号を受信信号処理部104に出力する。
受信信号処理部104は、復調部103から入力される復調後の信号に対してデータチャネルの情報を抽出する受信信号処理を行う。そして、受信信号処理部104は、受信信号処理後のデータを上位レイヤ処理部105に出力する。
上位レイヤ処理部105は、受信信号処理部104から入力される受信信号処理後のデータを用いて、音声信号処理、画像処理、マルチメディア信号処理等の上位レイヤにおける処理を行う。そして、上位レイヤ処理部105は、上位レイヤ処理後の信号を発着呼要求検出部106および送信信号処理部112に出力する。
発着呼要求検出部106は、上位レイヤ処理部105から入力される信号から、自局の信号の発呼または着呼の要求があることを示す発着呼要求を検出する。そして、発着呼要求検出部106は、発着呼要求が検出された場合、発着呼要求が検出されたことを示す信号を通信レート決定部109に出力する。
中継信号復調部107は、無線受信部102から入力される中継信号に対して復調処理を行う。そして、中継信号復調部107は、復調後の中継信号を中継要求検出部108および中継信号処理部110に出力する。
中継要求検出部108は、中継信号復調部107から入力される復調後の中継信号から、MS1がMS2に対して基地局への中継を要求することを示す中継要求信号を検出する。そして、中継要求検出部108は、中継要求信号が検出された場合、中継要求信号が検出されたことを示す信号を通信レート決定部109に出力する。
通信レート決定部109は、発着呼要求検出部106から発着呼要求が検出されたことを示す信号が入力された場合、または、中継要求検出部108から中継要求信号が検出されたことを示す信号が入力された場合、自局の信号および中継信号に対する通信レートをそれぞれ決定する。通信レート決定部109は、自局に割り当てられた通信リソースのうち、一部の通信リソースを使用して自局の信号を送信するように通信レートを決定するとともに、自局に割り当てられた通信リソースのうち、自局の信号に使用する通信リソース以外の通信リソースを使用して中継信号を送信するように通信レートを決定する。そして、通信レート決定部109は、自局の信号の通信レートを送信信号処理部112に出力し、中継信号の通信レートを中継送信信号処理部111に出力する。通信レート決定部109における通信レート決定処理の詳細については後述する。
中継信号処理部110は、中継信号復調部107から入力される復調後の中継信号に対して、中継送信のための制御チャネルの付加およびデータチャネルの加工を施す中継信号処理を行う。そして、中継信号処理部110は、中継信号処理後の中継信号を中継送信信号処理部111に出力する。
中継送信信号処理部111は、通信レート決定部109から入力される通信レートに従って、中継信号処理部110から入力される中継信号を、中継送信先の基地局向けまたは移動局向けの信号フォーマットに形成する送信信号処理を行う。そして、中継送信信号処理部111は、送信処理後の中継信号を無線送信部114に出力する。
送信信号処理部112は、通信レート決定部109から入力される通信レートに従って、上位レイヤ処理部105から入力される信号を、送信先の基地局向けのデータチャネルの情報に形成し、制御チャネルを付加する送信信号処理を行う。そして、送信信号処理部112は、送信信号処理後の信号を変調部113に出力する。
変調部113は、送信信号処理部112から入力される信号を変調する。そして、変調部113は、変調後の信号を無線送信部114に出力する。
無線送信部114は、中継送信信号処理部111から入力される中継信号および変調部113から入力される自局の信号に対しD/A変換、増幅およびアップコンバート等の送信処理を行ってアンテナ101から送信する。
次に、通信レート決定部109における通信レート決定処理の詳細について説明する。
まず、MS2(移動局100)が自局の通信処理を行っている途中に、MS1(他の移動局)からの中継要求が発生した場合について説明する。
図3に示すように、MS2では、自局の信号の通信(MS2通信)の途中に、中継要求検出部108がMS1からの中継要求信号(MS1中継要求)を検出する。そこで、通信レート決定部109は、自局の信号の通信(MS2通信)で使用していた周波数リソース(31)の一部(32)を引き続き自局の信号の通信に使用するとともに、自局の信号の通信に使用する周波数リソース(32)以外の残りの周波数リソース(33)をMS1の中継信号の通信(MS1中継)に使用するように通信レートを決定する。ここでは、図3に示すように、通信レート決定部109は、自局の信号の通信で使用していた周波数リソース(31)の半分ずつ(32,33)をそれぞれ自局の信号およびMS1の中継信号に使用するような通信レート(ハーフレート)を決定する。
これにより、MS2では、使用可能な周波数リソース(31)を自局の信号の通信にすべて使用している途中にMS1の中継要求が発生した場合でも、周波数リソース(31)の半分ずつ(32,33)を自局の信号および中継信号がそれぞれ使用できるため、自局の信号の通信とMS1の中継信号の中継送信とを同時に実施することができる。つまり、MS2では、自局の信号の通信を中断することなく引き続き自局の信号の通信を行うことができ、かつ、MS1の中継信号の中継を拒否することなく新たにMS1の中継信号の中継送信を行うことができる。
次いで、MS2(移動局100)がMS1(他の移動局)の中継処理を行っている途中に、自局の発着呼要求が発生した場合について説明する。
図4に示すように、MS2では、MS1の中継信号の通信(MS1中継)の途中に、発着呼要求検出部106が自局の信号の発着呼要求(MS2発着呼)を検出する。そこで、通信レート決定部109は、MS1の中継信号の通信(MS1中継)で使用していた周波数リソース(41)の一部(42)を引き続きMS1の中継信号の通信に使用するとともに、MS1の中継信号の通信に使用する周波数リソース(42)以外の残りの周波数リソース(43)を自局の信号の通信(MS2通信)に使用するように通信レートを決定する。ここでは、図3と同様、図4に示すように、通信レート決定部109は、自局の信号およびMS1の中継信号の通信レートをそれぞれハーフレートに決定する。
これにより、MS2では、使用可能な周波数リソース(41)をMS1の中継信号の中継送信にすべて使用している途中に自局の発着呼要求が発生した場合でも、周波数リソース(41)の半分ずつ(42,43)を自局の信号および中継信号がそれぞれ使用できるため、自局の信号の通信とMS1の中継信号の中継送信とを同時に実施することができる。つまり、MS2では、MS1の中継信号の中継送信を中断することなく引き続き中継送信を行うことができ、かつ、自局の信号の通信を拒否することなく新たに自局の信号の通信を行うことができる。
このように、本実施の形態によれば、自局の通信処理と他の移動局の中継信号の中継処理とが同時刻に発生する場合、使用可能な周波数リソースを自局の通信処理と中継信号の中継処理とで分割多重して使用する。これより、周波数リソースの一部の周波数リソースを一方の通信が使用し、残りの周波数リソースを他方の通信が使用するため、自局の信号の通信と中継信号の通信とを同時に行うことができる。よって本実施の形態によれば、自局の通信処理および他の移動局の中継処理が同時刻に発生する場合でも、双方の通信を切断することなく同時に行うことができる。
なお、本実施の形態では、自局の信号および中継信号が、使用可能な周波数リソースを
それぞれ半分ずつ使用する場合について説明した。しかし、本発明では、自局の信号および中継信号は使用可能な周波数リソースを半分ずつ使用しなくてもよい。例えば、自局の通信が高速データ通信であり、中継通信が音声通信である場合、自局の信号の通信により多くの周波数リソースを使用してもよい。これにより、中継通信される音声通信の品質を一定に保ったままで、高速データ通信に対して最大限の周波数リソースを割り当てることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、MS2(自局)の通信処理とMS1(他の移動局)の中継処理とが同時刻に発生する場合、MS1の中継処理を他の中継局(図示せず)へハンドオーバさせる。
基地局と各移動局との間において、各移動局は、基地局から送信されるパイロット信号を用いて基地局と自局との間の回線品質を測定する。そして、各移動局は、回線品質に基づいて、回線品質情報であるCQI(Channel Quality Indicator)を生成し、基地局にフィードバックする。基地局では、各移動局からフィードバックされるCQIに基づいて、各移動局宛てのデータの変調方式を決定する。
例えば、図5に示すように、各移動局は、回線品質に基づいてCQI番号0〜4のCQIを生成する。つまり、各移動局では、回線品質が5段階のレベルに分けられる。ここでは、CQI番号が大きいほど、回線品質がより良いとする。一方、基地局は、各移動局からフィードバックされるCQIに基づいて各移動局宛てのデータの変調方式をそれぞれ設定する。つまり、CQI番号が大きいほど、変調多値数がより大きい変調方式で変調したデータをそのCQIをフィードバックした移動局に対し送信する。
また、回線品質が劣悪である場合、つまり、図5に示すCQI番号が0である場合、基地局は変調方式を設定せず(変調方式:‘None’)、その移動局との通信をMS2から他の中継局にハンドオーバさせる。このように、基地局では、移動局からのCQIに基づいて、中継局間でのハンドオーバが必要か否かを判断する。
そこで、本実施の形態では、MS2の通信処理とMS1の中継処理とが同時刻に発生する場合、MS2がMS1から受信されるCQIを最低レベルのCQI(CQI番号0)に更新することにより、基地局にMS1を自局から他の中継局にハンドオーバさせる。
図6に本実施の形態に係る中継送信を行う移動局200の構成を示す。なお、図6において、図2に示した構成部と同一の構成部には同一符号を付し説明を省略する。
ハンドオーバ指示部201は、他の中継局へのハンドオーバを行うか否かを制御する。具体的には、ハンドオーバ指示部201は、発着呼要求検出部106から発着呼要求が検出されたことを示す信号が入力された場合、または、中継要求検出部108から中継要求信号が検出されたことを示す信号が入力された場合、他の中継局へのハンドオーバを行う指示を示す信号をCQI更新部202に出力する。
CQI更新部202は、ハンドオーバ指示部201からハンドオーバを行う指示を示す信号が入力される場合、他の移動局の中継信号に含まれるCQIを最も低いレベルのCQIに更新する。具体的には、CQI更新部202は、他の移動局の中継信号に含まれるCQIを、図5に示す‘None’に更新する。
次に、CQI更新部202におけるCQI更新処理の詳細について説明する。
ここでは、図6に示す構成を採るMS2がMS1の中継処理を行っている途中に、自局の発着呼要求が発生した場合について説明する。また、MS2では、MS1からのCQI番号が2(変調方式:QPSK)であるものとする。
図7に示すように、MS2では、MS1の中継信号の通信(MS1中継)の途中に、発着呼要求検出部106が自局の信号の発着呼要求(MS2発着呼)を検出する。そして、ハンドオーバ指示部201は、ハンドオーバを行う指示を示す信号をCQI更新部202に出力する。
そこで、CQI更新部202は、CQI番号を2(変調方式:QPSK)から0(変調方式:‘None’)に更新する。よって、MS2は、MS1からのCQIが良好な回線品質を示すものであるか否かにかかわらず、MS1からのCQIを最低レベルのCQIに見せかけて基地局に中継送信する。
これにより、基地局では、基地局とMS1との間の回線品質が実際にはCQI番号が2と良好であるにもかかわらず、その回線品質を劣悪と判断する。そして、基地局は、図7に示すように、基地局とMS1との間の中継局を介する通信(MS1中継)を、MS2を中継局として行うことを止め、MS2から他の中継局へハンドオーバさせる。よって、MS1は、MS2以外の中継局を介して基地局と通信を行う。よって、MS2では、MS1の中継信号を中継送信する必要がなくなるため、使用可能な周波数リソースすべてを自局の信号(MS2通信)に対して使用することができる。
このように、本実施の形態によれば、他の移動局の中継信号の中継処理中に、自局の信号の発着呼要求が検出された場合、中継信号のCQIを最低レベルに更新することで中継信号を他の中継局へハンドオーバさせるため、使用可能な周波数リソースすべてを自局の信号に対して使用することができる。よって本実施の形態によれば、自局の通信処理および他の移動局の中継処理が同時刻に発生する場合でも、双方の通信を切断することなく同時に行うことができる。
さらに、本実施の形態によれば、他の移動局のCQIを最低レベルに更新して中継送信するため、基地局に対してハンドオーバを要求する制御信号を基地局へ別途送信することなくハンドオーバを実施することができる。よって、基地局の構成を従来の構成から何ら変更することなく本発明を実施することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、MS2(自局)の充電池の充電容量に基づいて、MS1(他の移動局)の中継処理を行う場合について説明する。
MS2では、充電池の充電容量が一定レベルより大きい場合に限り、MS1の中継信号を中継送信することがある。例えば、各移動局は、MS1の中継処理による充電容量の損失がMS2(自局)の通信処理に影響を与えない場合に限り、MS1の中継処理を行う。そのため、移動体通信システムにおいて、充電池の充電容量が一定レベルより大きいMS2が存在しない場合、MS1の中継処理が全く行われないため、MS1が全く通信できない状態が発生する。
そこで、本実施の形態では、MS2(自局)がMS1(他の移動局)の中継信号を中継送信するか否かを、MS2の充電池の充電容量に基づいて決定する。
図8に本実施の形態に係る中継送信を行う移動局300の構成を示す。なお、図8において、図2に示した構成部と同一の構成部には同一符号を付し説明を省略する。
電源供給検出部301は、自局と電源装置(例えば、AC電源)とが接続されているか否か、すなわち、自局に電源が供給されているか否かを検出する。そして、電源供給検出部301は、自局と電源装置とが接続されているか否かを示す信号を中継決定部304に出力する。
充電完了率検出部302は、充電池の充電容量を示す充電完了率を検出する。具体的には、充電完了率検出部302は、最大充電容量を100%としたときの現在の充電容量の割合を充電完了率として検出する。そして、充電完了率検出部302は、検出された充電完了率を中継確率算出部303に出力する。
中継確率算出部303は、充電完了率検出部302から入力される充電完了率に基づいて、他の移動局の中継信号の送信確率である中継確率を算出する。具体的には、中継確率算出部303は、充電完了率が高いほど(充電容量が大きいほど)、より高い中継確率を算出する。そして、中継確率算出部303は、算出された中継確率を中継決定部304に出力する。中継確率算出部303における中継確率算出方法の詳細については後述する。
中継決定部304は、電源供給検出部301から入力される、自局が電源装置に接続されているか否かを示す信号、および、中継確率算出部303から入力される中継確率に基づいて、他の移動局の中継信号を中継送信するか否かを決定する。具体的には、中継決定部304は、自局が電源装置に接続されている場合に、中継確率に基づいて、他の移動局の中継信号を中継送信するか否かを決定する。すなわち、自局が電源装置に接続されている場合、かつ、中継決定部304において発生させた0〜1の範囲の乱数が中継確率以下の場合、中継決定部304は、他の移動局の中継信号を中継送信することを決定する。一方、自局と電源装置とが接続されていない場合、または、中継決定部304において発生させた0〜1の範囲の乱数が中継確率より大きい場合、中継決定部304は、他の移動局の中継信号を中継送信しないことを決定する。そして、中継決定部304は、他の移動局の中継信号を中継送信するか否かを示す信号を中継送信信号処理部111に出力する。
中継送信信号処理部111は、中継決定部304から他の移動局の中継信号を中継送信することを示す信号が入力された場合、実施の形態1と同様にして、中継信号処理部110から入力される中継信号に対して送信信号処理を行う。一方、中継送信信号処理部111は、中継決定部304から他の移動局の中継信号を中継送信しないことを示す信号が入力された場合、送信信号処理を行わない。
次に、中継確率算出部303における中継確率算出方法の詳細について説明する。
(算出方法1:図9A)
本算出方法では、中継確率算出部303は、充電完了率に比例した中継確率を算出する。例えば、図9Aに示すように、中継確率算出部303は、充電完了率が50%のとき、中継確率を50%とし、充電完了率が100%のとき、中継確率を100%とする。すなわち、図9Aでは、中継確率算出部303は、充電完了率と同一の値の中継確率を算出する。
そして、中継決定部304は、中継確率算出部303が算出した充電完了率に基づいて、他の移動局の中継信号を中継送信するか否かを決定する。図9Aに示すように、いずれの充電完了率においても、MS2においてMS1の中継信号を中継送信する可能性がある。換言すると、MS2では、MS1の中継信号を中継送信しない(中継確率:0%)ことがなくなる。つまり、MS2では、充電池の充電容量がどれだけ小さい場合でも、中継確率が低くなるもののMS1の中継信号を中継送信する可能性を残す。これにより、MS2
において、MS1の中継信号が中継送信される可能性が高くなる。
このように、本算出方法によれば、充電完了率が高いほど、より高い中継確率で中継信号が中継送信される。これにより、いずれの充電完了率においても他の移動局の中継信号が中継送信される可能性があるため、移動局が他の移動局の中継信号を中継する確率を高くすることができる。よって、本算出方法によれば、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができる。また、本算出方法は、充電完了率に定数を乗算するという簡単な回路構成により実施することができる。
(算出方法2:図9B)
充電池の充電容量(充電完了率)が所定の充電容量より大きければ、移動局が中継処理することによる充電容量の損失はシステムに影響を与えない。つまり、所定の充電容量より大きい場合、移動局は、自局の通信処理に影響を及ぼすことなく、他の移動局の中継信号を中継送信することが可能となる。
そこで、本算出方法では、中継確率算出部303は、充電完了率が所定の充電完了率以下の場合、算出方法1と同様にして、充電完了率に比例した中継確率を算出し、充電完了率が所定の充電完了率より大きい場合、中継確率を最大にする。
ここでは、例えば、所定の充電完了率が20%である場合について説明する。図9Bに示すように、中継確率算出部303は、検出された充電完了率が20%以下の場合、算出方法1と同様、充電完了率に比例した中継確率を算出する。具体的には、中継確率算出部303は、充電完了率が10%のとき、中継確率を50%とし、充電完了率が20%のとき、中継確率を100%とする。一方、図9Bに示すように、中継確率算出部303は、検出された充電完了率が20%より大きい場合、中継確率を最大の100%とする。
つまり、MS2は、充電完了率が高く、MS2(自局)の通信処理に影響を与えることなくMS1(他の移動局)の中継処理を行える場合には、MS1の中継処理を確実に行う。これにより、MS2では、BSと直接通信できないMS1がMS2を介して通信できる可能性がさらに高くなる。一方、MS2は、充電完了率が低く、MS1(他の移動局)の中継処理がMS2(自局)の通信処理に影響を与える可能性がある場合には、充電池を充電しつつ、充電完了率に基づいた確率でMS1の中継処理を行う。これにより、充電完了率が低い場合でも、算出方法1と同様、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができる。
このように、本算出方法によれば、充電完了率が所定の充電完了率より大きい場合、中継確率を最大にする。これにより、充電完了率が所定の充電完了率より大きい場合、移動局は、他の移動局の中継信号を確実に中継送信することができる。また、充電完了率が所定の充電完了率以下の場合でも、移動局は、他の移動局の中継信号を充電完了率に基づく確率で中継送信する。よって、算出方法1と同様、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができ、かつ、他の移動局の中継信号が中継送信される可能性を高くすることができる。
(算出方法3:図9C)
MS2において充電池の充電完了率が低い状態(充電容量が小さい状態)でMS1(他の移動局)の中継信号を中継送信している間に、自局の通信処理が発生した場合、MS2では、充電容量が不足し、MS2(自局)の通信処理を行えない可能性がある。そのため、例えば、緊急の自局の通信処理を行えるようにするために、MS2は、MS2(自局)の通信処理のための充電容量を最低限残しておく必要がある。つまり、MS2は、充電完了率が低い(充電容量が小さい)場合でも、MS2(自局)の通信処理のための充電容量
を確保しておく必要がある。
そこで、本算出方法では、中継確率算出部303は、充電完了率が採り得る範囲のうち、充電完了率がより低い範囲ほど、中継確率の変化量をより小さくする。
例えば、図9Cに示すように、中継確率算出部303は、検出された充電完了率のn乗(図9Cではn=2)を中継確率として算出する。具体的には、中継確率算出部303は、充電完了率が50%のとき、中継確率を25%とし、充電完了率が100%のとき、中継確率を100%とする。ここで、充電完了率が0%(中継確率:0%)〜50%(中継確率:25%)の範囲では中継確率の変化量が25%であるのに対し、充電完了率が50%(中継確率:25%)〜100%(中継確率:100%)の範囲では中継確率の変化量が75%となる。すなわち、充電完了率の変化量が同一でも、充電完了率がより低い範囲ほど中継確率の変化量がより小さくなり、中継確率算出部303により算出される中継確率は低い値のままとなる。
ここで、本算出方法(図9C)と算出方法1(図9A)とを比較すると、双方とも充電完了率が高くなるほど、中継確率がより高くなるものの、同一の充電完了率では、算出方法1の中継確率よりも本算出方法の中継確率の方が低くなる。つまり、本算出方法では、充電完了率がより低い場合、中継確率はより低くなる。これにより、充電完了率がより低い場合、MS2は、MS1の中継信号を中継送信する可能性があるものの、MS1の中継信号の中継処理よりもMS2(自局)の通信処理のための充電容量確保を優先することが可能となる。
このように、本算出方法によれば、充電完了率がより低い場合、他の移動局の中継信号の中継送信の中継確率をより低くする。これにより、移動局は、他の移動局の中継信号を中継送信する可能性を残しつつ、自局の通信処理のための充電容量を優先的に確保することができる。よって、本算出方法によれば、中継送信する移動局の通信処理に影響を与えることなく、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができる。また、本算出方法は、算出方法1と同様、充電完了率に定数を乗算するという簡単な回路構成により実施することができる。
以上、中継確率算出部303における中継確率算出方法1〜3について説明した。
また、MS2(自局)は、MS1(他の移動局)の中継信号の中継送信を決定した後、MS1の中継信号の中継処理中にMS2の信号の発着呼要求が検出された場合、または、MS2の信号の通信中にMS1の中継信号の中継要求が検出された場合、実施の形態1と同様にして、使用可能な周波数リソースを自局の通信処理と中継信号の中継処理とで分割多重して使用する。なお、本実施の形態では、実施の形態2(図6)と同様にして、MS2は、中継信号のCQIを最低レベルに更新することでMS1の中継信号を他の中継局へハンドオーバさせてもよい。
このようにして、本実施の形態によれば、移動局は、充電池の充電完了率に基づいて他の移動局の中継信号の中継送信を行うか否かを決定する。これにより、充電完了率がいずれの場合でも、他の移動局の中継信号が中継送信される可能性があり、他の移動局の中継信号の中継確率を高くすることができる。よって、本実施の形態によれば、中継送信する移動局の充電容量がいずれの場合でも、基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態を回避することができる。
また、本実施の形態では、移動局が電源装置(例えば、AC電源)に接続された場合のみ、移動局は他の移動局の中継信号を中継送信する。この場合、移動局では電源装置から
一定の電力が常に供給されるため、他の移動局の中継信号の中継処理を行いつつ、充電池の充電完了に掛かる時間を短縮することができる。よって、充電池の充電完了に掛かる時間を短縮することで、自局の通信処理を行うための充電容量が残っている可能性を高くすることができる。
なお、本実施の形態では、中継送信を行う移動局を、電源装置(例えば、AC電源)に接続され、かつ、エコロジーモードの移動局に限定してもよい。ここで、エコロジーモードとは、充電完了率を100%とせず、70〜80%とし、充電池(例えば、リチウム電池)の電池寿命を長くするためのモードである。このとき、図8に示す移動局300の中継確率算出部303は、図9A〜Cに示す充電完了率100%を、エコロジーモードにおける最大充電完了率(例えば、充電完了率70%)に置き換えて中継確率を算出する。また、中継決定部304には、充電モードが、通常モード(最大充電完了率:100%)またはエコロジーモード(最大充電完了率:70〜80%)のいずれであるかを示す情報が入力される。これにより、エコロジーモードにおいても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態の移動局300の中継確率算出部303(図8)は、従来の中継決定方法と同一の平均中継確率となるように中継確率を算出してもよい。例えば、図10に示すように、従来の中継決定方法では充電完了率(充電容量)が一定レベル(図10では50%)より大きい場合に限り、中継信号が中継送信される。具体的には、図10に示すように、充電完了率が50%以下では、中継信号の中継送信は全く行われず(中継確率:0%)、充電完了率が50%より大きい場合、中継信号の中継送信は必ず行われる(中継確率:100%)。すなわち、図10に示す中継決定方法では、充電完了率0〜100%の全体に渡る中継信号の中継確率である平均中継確率は50%となる。ここで、図10の斜線部分の面積の大きさは、平均中継確率に対応する。
そこで、中継確率算出部303は、図10の斜線に示す面積と同一の大きさとなる、充電完了確率と中継確率との関係に基づいて中継確率を算出すればよい。例えば、中継確率算出部303は、図11A〜11Cに示す充電完了確率と中継確率との関係のいずれかに基づいて中継確率を算出する。ここで、図11A〜11Cの斜線部分の面積の大きさは、図10の斜線部分の面積の大きさとそれぞれ同一である。すなわち、中継確率算出部303が図11A〜11Cのいずれかに基づいて中継確率を算出した場合の平均中継確率は、図10と同一の50%となる。このように、平均中継確率が同一となるため、移動局300が図11A〜11Cのいずれかに基づいて他の移動局の中継処理を行う際に消費する電力も、図10の中継決定方法を用いる場合と同一となる。ただし、移動局300では、図11A〜11Cのいずれかに基づいて中継確率を算出することで、本実施の形態と同様、いずれの充電完了率においても他の移動局の中継信号が中継送信される可能性が残る。このように、中継処理に要する消費電力(平均中継確率)が同一の場合でも、図10に示す従来の中継決定方法では基地局と直接通信できない移動局が全く通信できない状態があるのに対し、図11A〜11Cでは本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の各実施の形態について説明した。
なお、移動局はUE、基地局はNode Bと称されることもある。
また、上記実施の形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はソフトウェアで実現することも可能である。
また、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含
むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
2007年9月7日出願の特願2007−232960および2008年1月28日出願の特願2008−016468の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
本発明は、移動体通信システム等に適用することができる。
本発明の実施の形態1に係る移動体通信システムを示す図
本発明の実施の形態1に係る移動局の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態1に係る通信レート決定例(中継要求が発生する場合)
本発明の実施の形態1に係る通信レート決定例(自局の発着呼要求が発生する場合)
本発明の実施の形態2に係るCQIテーブルを示す図
本発明の実施の形態2に係る移動局の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態2に係るハンドオーバを示す図
本発明の実施の形態3に係る移動局の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態3に係る中継確率算出例を示す図(算出方法1)
本発明の実施の形態3に係る中継確率算出例を示す図(算出方法2)
本発明の実施の形態3に係る中継確率算出例を示す図(算出方法3)
その他の中継確率算出例を示す図(従来例)
本発明のその他の中継確率算出例を示す図(例1)
本発明のその他の中継確率算出例を示す図(例2)
本発明のその他の中継確率算出例を示す図(例3)