JPWO2009001555A1 - I型インターフェロンの発現調節剤 - Google Patents
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Abstract
I型インターフェロンの発現誘導を制御することのできる発現調節剤を提供すること。配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及び/又は配列番号1に示されるアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を促進又は抑制する活性を有するタンパク質からなる、I型インターフェロンの発現調節剤。本発明は、I−IFNの産生を促進又は抑制することのできる発現調節剤を提供することができ、当該調節剤は感染症治療薬あるいは炎症治療薬として利用することができる。
Description
本発明は、I型インターフェロン遺伝子の発現を促進し又は抑制することのできるタンパク質からなるI型インターフェロンの発現調節剤、I型インターフェロン遺伝子の発現を抑制することのできるタンパク質とこれをコードする核酸、該核酸を含むベクターが導入された形質転換体、ならびにI型インターフェロン遺伝子の発現を促進し又は抑制することのできるタンパク質からなるI型インターフェロンの発現調節剤を有効成分とする感染症治療薬又は炎症治療薬に関する。
ウイルスやバクテリア等の外来病原体に対する自然免疫応答は、細胞発現型認識レセプター(PRR)が外来病原体に含まれる特定の構造パターンを認識することに始まり、レセプターからのシグナルが、細胞内シグナル伝達経路を経て、炎症誘発性サイトカインやβ(I型)インターフェロン(以下、I−IFNと表す)の誘導と共に、樹状細胞(DC)の成熟を導くことが知られている。特に、ウイルス感染後のI−IFNの発現制御機構は、微生物病原体に対する自然免疫応答の中核をなしており、多くの研究者の関心を引き寄せている。
これまでの研究の結果、ウイルス感染に関するPRRとその免疫応答は、概ね図1に示されるような機構によって調節されていることが判明してきている。ウイルス由来の二重鎖RNA(dsRNA)等がToll−like receptor(TLR)によって認識されると、そのシグナルはTLRの細胞質ドメインを介してアダプター分子(TICAM1、TICAM−2、MyD88など)に伝えられる。特に、TLR3やTLR4からTICAM−1に伝えられたシグナルは、NAP1/IKKε/TBK1の複合体を介して転写因子IRF3を活性化し、活性化TRF3が核に移行してI−IFN遺伝子の転写を誘導する。
このTLR3やTLR4からのシグナルによるI−IFN遺伝子の転写誘導とは別に、細胞内に存在するdsRNAを認識してI−IFN遺伝子の転写を誘導する機構が存在することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。その様なシグナル伝達に関与する細胞内PRRとして、RIG−Iタンパク質が同定されている(例えば、非特許文献2参照)。RIG−Iタンパク質は、カスパーゼ(Capase)と結合するドメイン(CARD)様モジュールを2個有するDExD/Hbox型RNAヘリカーゼであることが分かっている。
RIG−Iタンパク質は、抗ウイルス応答に必須のタンパク質であると考えられており、RIG−Iタンパク質を介したI−IFNの発現誘導に至るシグナル伝達に関与する分子は、ウイルス等の感染に対する自然免疫応答の制御に利用することができると期待される。
これまでのところ、RIG−Iタンパク質に対するアダプタータンパク質としては、IPS−1と呼ばれるタンパク質(特許文献1)や、TRIM25と呼ばれるタンパク質(非特許文献3)の単離が報告されている。
J.Exp.Med.、2004年、第199巻、第1641−1650頁 Nat.Immunol.、2004年、第5巻、第730−737頁 Nature、2007年、第446巻、第916−921頁 特開2007−54042号公報
J.Exp.Med.、2004年、第199巻、第1641−1650頁 Nat.Immunol.、2004年、第5巻、第730−737頁 Nature、2007年、第446巻、第916−921頁
本発明は、RIG−Iを介したI−IFNの発現誘導に至るシグナル伝達に関与するシグナル伝達分子と、それをコードするDNAを特定し、これらを用いたI−IFNの発現調節剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、酵母two−hybrid法を用いて、RIG−Iタンパク質に作用する因子を探索した結果、ESTデータベースに登録されてDNAにコードされている、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質が、RIG−Iタンパク質と結合してI−IFNのプロモーターによる転写を促進する活性を有していること、さらに当該タンパク質のN末端部分に存在するドメイン構造を失わせると、当該タンパク質は逆にI−IFNのプロモーターによる転写を抑制する活性を示すことをそれぞれ見いだし、下記の各発明を完成した。
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及び/又は配列番号1に示されるアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を促進又は抑制する活性を有するタンパク質からなるI型インターフェロンの発現調節剤。
(2)RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を促進させる活性を有するタンパク質からなる、請求項1に記載の発現調節剤。
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端から21番目〜62番目の何れかのアミノ酸残基までが欠失したアミノ酸配列、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列の21番目〜62番目の領域において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を抑制する活性を有するタンパク質。
(4)(3)に記載のタンパク質をコードする核酸。
(5)配列番号4に示される塩基配列からなる、(4)に記載の核酸。
(6)(4)又は(5)に記載の核酸を含む組換えベクター。
(7)(6)に記載の組換えベクターが導入されてなる形質転換細胞。
(8)(2)に記載の発現調節剤を含む感染症治療薬。
(9)(3)に記載のタンパク質からなるI型インターフェロンの発現抑制剤。
(10)(9)に記載の発現抑制剤を有効成分とする炎症治療薬。
本発明は、I−IFNの産生を促進又は抑制することのできるI−IFNの発現調節剤を提供する。係るI−IFNの発現調節剤は、感染症治療剤あるいは炎症治療薬として利用することができる。
本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及び/又は配列番号1に示されるアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、RIG−Iタンパク質の存在下でI−IFNのプロモーターによる転写を促進又は抑制する活性を有するタンパク質からなるI−IFNの発現調節剤に関する。以下、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をRNF135と表すことにする。
RNF135は、全432個のアミノ酸からなるタンパク質であり、後の実施例に示すように、酵母two hybrid法によって検出された既知のEST(Expression sequence tag、NM_032322)にコードされ、RIG−Iタンパク質の存在下でI−IFNのプロモーターによる転写を促進する活性を有するタンパク質である。
RNF135のN末端部分の21番目〜62番目のアミノ酸残基には、ユビキチンリガーゼ活性を示すことが知られているRINGドメイン(Lorickら、1999年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第28巻、第96号、第11364−11369頁)と呼ばれるドメイン構造が含まれている。驚くべきことに、RNF135のN末端部分にあるRINGドメイン構造あるいはユビキチンリガーゼ活性を失ったタンパク質は、RNF135とは逆に、RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を抑制する活性を示すことが、本発明者らによって確認された。すなわち、本発明は、RNF135のN末端から21番目〜62番目の何れかのアミノ酸残基までが欠失したアミノ酸配列、RNF135のアミノ酸配列の21番目〜62番目の領域において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を抑制する活性を示すタンパク質も提供する。以下、この様なRIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を抑制する活性を示す本発明のタンパク質を、RNF135−DN(DNはDominant Negativeの略である)と表すこととする。
本発明にいうRIG−Iタンパク質とは、非特許文献2に記載されている細胞内PRRの一種のタンパク質であり、そのアミノ酸配列としては配列番号5に示すものが知られている。なお、SNIPS等の影響によって配列番号5で示されるアミノ酸配列と一部がわずかに異なるアミノ酸配列からなるRIG−Iタンパク質もあり得るが、その様な配列番号5で示されるアミノ酸配列とは一部異なるアミノ酸配列からなるRIG−Iタンパク質であっても、細胞内PRRとしてI−IFNの発現誘導に関与しているタンパク質であれば、本発明にいうRIG−Iタンパク質として理解される。
また、I−IFNのプロモーターとは、ヒトの細胞、特にリンパ球や繊維芽細胞の染色体上でI−IFNの発現を調節しているプロモーターであり、その塩基配列はFugitaらの論文(Cell、1985年、第41巻、第2号、第489−496頁)において報告されている。ただし、前記図1に示されるような発現制御機構の中でI−IFNの発現誘導を調節しているプロモーターであれば、前記Fugitaらの論文において報告されている塩基配列の一部が異なっていてもよい。なお、I−IFNのプロモーターは既にクローニングされ、例えば市販ベクターPicaGene Basic Vector(東洋インキ社)の様に、適当なベクターに組み換えられて利用されている。
本発明で使用されるタンパク質は、I−IFNのプロモーターによる転写を制御する活性を有する。本発明における「I−IFNのプロモーターによる転写を制御する活性」とは、当該プロモーターの下流に位置する遺伝子、特にI−IFNの当該プロモーターによって誘導される転写を促進させる、あるいは抑制する活性をいう。
本発明で使用されるタンパク質のI−IFNのプロモーターによる転写を制御する活性の測定は、I−IFNを発現する細胞、例えばHeLa細胞を、前記のRIG−Iタンパク質を発現することのできる発現ベクターと本発明のタンパク質を発現することのできるベクターによって形質転換し、RIG−Iタンパク質と本発明のタンパク質を形質転換細胞内で発現させ、I−IFNの産生をI−IFNをコードするmRNA量の測定あるいはI−IFNの活性を測定することで確認することができる。また、プロモーターを含むI−IFN遺伝子を組み込んだI−IFN発現ベクターで形質転換させた細胞を、RIG−Iタンパク質を発現することのできる発現ベクターと本発明のタンパク質を発現することのできるベクターによってさらに形質転換し、RIG−Iタンパク質と本発明のタンパク質を形質転換細胞内で発現させてもよい。また、I−IFNのプロモーターの下流に適当なマーカー遺伝子を組み込み、このマーカー遺伝子の発現を指標にして、本発明で使用されるタンパク質の活性を測定することもできる。
なお、RIG−Iタンパク質と結合してI−IFNのプロモーターによる転写を制御する活性を有する限り、RNF135のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加したアミノ酸配列からなるタンパク質の使用も、本発明の一態様である。本発明におけるアミノ酸配列の置換、欠失、及び/又は付加に関する「1若しくは数個」とは、1〜数十アミノ酸以内、好ましくは1〜70個、より好ましくは1〜50個、更に好ましくは1〜30個、特に好ましくは1〜15個のアミノ酸残基の変化を意味する。アミノ酸配列の同一性(%)で表せば、配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列として表すことができる。
タンパク質のアミノ酸配列は、アミノ酸残基の電荷、大きさ、疎水性等の物理化学的性質について、保存性の高い変異が許容され得ることが、経験的に認められている。例えば、アミノ酸残基の置換については、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、Glyとアラニン(Ala)またはバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、Thrとセリン(Ser)またはAla、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)等が挙げられる。また、上述の保存性を超えた場合でも、なおそのタンパク質の本質的な機能を失わない変異が存在し得ることも当業者において経験されるところである。従って、配列番号1に記載されたアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加したアミノ酸配列からなるタンパク質であっても、RIG−Iタンパク質と結合してI−IFNのプロモーターによる転写を制御する活性を有する場合もあり、これらの使用は本発明の一態様として理解される。
前記したRNF135−DNは、RNF135のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加したアミノ酸配列からなるタンパク質であって、RIG−Iタンパク質と結合してI−IFNのプロモーターによる転写を制御する活性、具体的にはRIG−Iタンパク質と結合してI−IFNのプロモーターによる転写を抑制する活性を有するタンパク質の例である。また、RNF135−DNにおいて、RIG−Iタンパク質と結合してI−IFNのプロモーターによる転写を抑制する活性を有する限り、RNF135−DNのアミノ酸配列において、上記のような意味において、さらに1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されていてもよい。
本発明で使用されるタンパク質は、そのN末端及び/又はC末端に、本発明のタンパク質以外の機能性タンパク質又はポリペプチドを付加させた、いわゆる融合タンパク質として製造し、又利用してもよい。この様な融合タンパク質も、本発明の一態様である。
かかる融合タンパク質は、機能性タンパク質が示す機能が付加される点で、本発明で使用されるタンパク質を単独で製造し、あるいは使用する場合に比べて、高められた有用性を有する。機能性タンパク質の例としては、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、プロテインA、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼその他の、融合蛋白質の製造に汎用されるタンパク質を挙げることができる。また、核移行シグナル配列などの機能性ポリペプチドを付加させることにより、細胞内でRNF135を効率的に核内に移行させ、I−IFNのプロモーターによるI−IFNの転写をより効果的に促進させることができる。また、FLAGタグ、ヒスチジンタグ又はキチン結合配列のように、組み換えタンパク質の製造、特に組み換えタンパク質の精製を容易にする機能性ポリペプチドを利用すれば、本発明のタンパク質の製造をより有利に行うことができる。
さらに、本発明で使用されるタンパク質には、必要に応じて、蛍光物質や放射性物質等の適当な標識化合物を付加したり、種々の化学修飾物質やポリエチレングリコール等の高分子を結合させたりすることが可能であり、あるいは本発明で使用されるタンパク質を不溶性担体へ結合させたりすることも可能である。こうしたタンパク質を対象とした化学的修飾法は当業者に広く知られており、本発明で使用されるタンパク質の機能を損なわない限り、どの様に修飾し、利用してもよい。
本発明は、RNF135−DNをコードする核酸を提供する。核酸はRNA又はDNAを含み、その形態としてはmRNA、cDNA、ゲノムDNAの他、化学合成DNAなどが含まれるが、特に制限はない。また本発明の核酸は1本鎖であっても、それに相補的な配列を有する核酸やRNAと結合して2重鎖、3重鎖を形成していても良い。また、当該核酸は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)等の酵素や放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質等で標識されていてもよい。
本発明の好ましい核酸はDNAであり、RNF136のN末端の2〜69番目までのアミノ酸が欠失したタンパク質(RNF135−DN)をコードするDNAの塩基配列の例が、配列番号4に示される塩基配列である。また、配列番号4に示される塩基配列と相補する塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ本発明のタンパク質をコードする核酸も本発明の核酸に含まれる。本発明におけるストリンジェントな条件とは、塩濃度1.5Mを含む65℃の緩衝液中で配列番号4に相補的な塩基配列からなる核酸にハイブリダイズし、50℃の2×SSC溶液(0.1%[w/v]SDSを含む)でDNAを洗浄する条件(1×SSCは0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウムである)でハイブリダイズが維持される条件を言う。また、塩基配列の同一性(%)で示せば、配列番号4の塩基配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸であればよい。
配列番号4に示される塩基配列からなる核酸は、RNF135のアミノ酸配列(配列番号1)をコードするDNA、具体的には配列番号2に示される塩基配列からなるDNAを基に、PCRその他の一般的な遺伝子工学的手法によって調製することができる。また配列番号4に示される塩基配列からなる核酸は、当該塩基配列情報を基に、ホスホアミダイト法などの化学合成的手法により、あるは市販のDNAシンセサイザー等を用いて製造することもできる。
また、配列番号2に示される塩基配列は、配列番号2に示される塩基配列を基に、ヒトゲノムのcDNAに対して一般的なハイブリダイゼーション等の遺伝子工学的手法を用いてクローニングすることができる。本発明の核酸をcDNAライブラリーから得る例としては、ヒトゲノムcDNAライブラリーに対して、配列番号2に示された塩基配列又はそれらに相補する塩基配列からなるDNAをプローブとしたハイブリダイゼーションによるスクリーニング、又は本発明のタンパク質に対する特異抗体を用いたイムノスクリーニング法を行い、目的の核酸を有するクローンを増幅させ、そこから制限酵素等を用いて切り出す方法がある。
ハイブリダイゼーション法によるスクリーニングは、配列番号2に示された塩基配列又はそれらに相補する塩基配列からなる核酸を32P等でラベルしてプローブとし、任意のcDNAライブラリーに対して、公知の方法(例えば、Maniatis T.等,MolecularCloning,a Laboratory Manual,Cold Spring harbor Laboratory,New York,1982年)に従って行うことができる。また、イムノスクリーニング法で用いる抗体は、前記した本発明のタンパク質に対する特異抗体を使用して行うことができる。
配列番号2に示される塩基配列からなる核酸は、ゲノムDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリーを鋳型とするPCR(Polymerase Chain Reaction)によっても得る事ができる。例えば、配列番号2示される塩基配列情報を基にPCRプライマーを設計、合成し、cDNAライブラリーに対して公知の方法(例えばMichael A.I.等,PCR Protocols,a Guide to Methods and Applications,Academic Press、1990年参照)に従ってPCR反応を行うことで、配列番号2に示される塩基配列からなる核酸を得る事ができる。上記の方法で使用するcDNAライブラリーとしては、好ましくはヒト肺由来のcDNAライブラリーであれば、いかなるものも使用可能である。また配列番号2に示される塩基配列からなる核酸は、本明細書に開示された塩基配列情報を基に、ホスホアミダイト法などの化学合成的手法により、あるは市販のDNAシンセサイザー等を用いて製造することもできる。
本発明で使用されるタンパク質をコードする核酸であるDNAは、適当な発現ベクターに組み込むことができ、かかるベクターは前記した本発明で使用されるタンパク質の組換え的生産に利用される。あるいは、本発明で使用されるタンパク質をコードする核酸は、遺伝子治療用ベクターに組み換えて生体内で発現させることを特徴とする遺伝子治療にも利用することができる。この様なタンパク質の生産用の組み換えベクターや、遺伝子治療用ベクターも本発明に含まれる。
本発明で使用されるタンパク質をコードする核酸を有する組換えベクターは、環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよい。かかる組換えベクターは、本発明で使用されるタンパク質をコードする核酸に加え、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列とは、エンハンサー配列、プロモーター配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等のことである。
遺伝子組み換えに際しては、適当な合成DNAアダプターを用いて翻訳開始コドンや翻訳終止コドンを本発明で使用されるタンパク質をコードする核酸に付加したり、あるいは塩基配列内に適当な制限酵素切断配列を新たに発生させたりあるいは消失させたりすることも可能である。これらは当業者が通常行う作業の範囲内であり、当業者は本発明で使用されるタンパク質をコードする核酸を基に任意かつ容易に加工することができる。
また本発明で使用されるタンパク質をコードする核酸を保持するベクターは、使用する宿主に応じた適当なベクターを選択して使用すればよく、プラスミドの他にバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルス等の種々のウイルスを用いることも可能であるが、遺伝子治療用に開発されたウイルスベクターの利用が特に好ましい。
利用可能な市販の発現ベクターとしては、pcDM8(フナコシ社製)、pcDNAI(フナコシ社製)、pcDNAI/AmP(Invitrogen社製)、EGFP-C1(Clontech社製)、pREP4(Invitrogen社製)、pGBT−9(Clontech社製)、等を例示することができる。本発明で使用されるタンパク質の発現は、該タンパク質をコードする遺伝子固有のプロモーター配列の制御下に発現させることができる。あるいは、本発明で使用されるタンパク質をコードする塩基配列の上流に別の適当な発現プロモーターを連結して使用することもできる。その様な発現プロモーターは、宿主及び発現の目的に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主が大腸菌である場合にはT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーターなどが、宿主が酵母である場合にはPHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が、宿主が動物細胞である場合にはSV40由来プロモーター、レトロウィルスプロモーター、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等を挙げることができる。本発明で使用されるタンパク質をコードする核酸、好ましくはDNAを上記に例示されたプロモーターに連結する、あるいは発現ベクターに組み込む等の操作は、J.Sambrookら(Molecular Cloning,a Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York),1989年、参照)を初めとする、種々の遺伝子組み換え操作を詳細に解説した実験操作マニュアル書の指示に基づいて行うことができる。
本発明で使用されるタンパク質は、例えばFmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)やtBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の、有機化学的合成方法、あるいは市販されている適当なペプチド合成機を用いて製造することもできるが、遺伝子組換え技術によって、前記の核酸、特に発現ベクターに組み込まれたDNAを原核生物もしくは真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた好適な発現系に導入することによって製造することが好ましい。
宿主細胞の例としては、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、バチラス(Bacillus)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アースロバクター(Arthrobacter)属細菌、エルウニア(Erwinia)属細菌、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属細菌、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌、ストレプトミセス(Streptomyces)属微生物、ザイモモナス(Zymomonas)属微生物、サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母等の微生物、カイコなどの昆虫細胞、HEK293細胞、MEF細胞、Vero細胞、Hela細胞、CHO細胞、WI38細胞、BHK細胞、COS−7細胞、MDCK細胞、C127細胞、HKG細胞、ヒト腎細胞株等の動物細胞を挙げることができる。
宿主細胞に発現ベクターを導入する方法としては、前記のSambrookらを初めとする実験操作マニュアル書に記載されている方法、例えば、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法等により行うことができる。Sf9やSf21等の昆虫細胞の利用については、バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman and Company)、New York、1992年)やBio/Technology、1988年、第6巻、第47頁等に記載されている。
本発明で使用されるタンパク質は、前記の発現ベクターを上記の宿主細胞内で発現させ、宿主細胞或いは培地から目的とするタンパク質を回収し、精製することによって得ることができる。タンパク質を精製する方法としては、蛋白質の精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー等、通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要によりHPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えば良い。
また、本発明で使用されるタンパク質を他の機能性タンパク質やポリペプチドとの融合タンパク質として発現させた場合には、その機能性タンパク質やポリペプチドに特徴的な精製法を採用することが好ましい。融合タンパク質は、適当なプロテアーゼ(トロンビン、トリプシン等)を用いて切断し、本発明のタンパク質を回収することができる。
また、組換えDNA分子を利用して無細胞系の合成方法(前出のJ.Sambrookら)で得る方法も、遺伝子工学的に生産する方法の1つである。
この様に本発明で使用されるタンパク質は、それ単独の形態でも別種の蛋白質との融合蛋白質の形態でも調製することができるが、これらのみに制限されるものではなく、本発明で使用されるタンパク質を更に種々の形態へと変換させることも可能である。例えば、蛋白質に対する種々の化学修飾、ポリエチレングリコール等の高分子との結合、不溶性担体への結合、リポソームへの封入など、当業者に知られている多種の手法による加工が考えられる。
また、本発明で使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体等の免疫特異的な抗体を挙げることができるが、特にモノクローナル抗体が好ましい。かかる抗体は、本発明で使用されるタンパク質を抗原として用いた通常の操作により、非ヒト動物を免疫し、血清を回収して、あるいはモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を誘導して製造することができる。また、定法に従って、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)やテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質、放射性同位元素、アルカリホスファターゼやペルオキシダーゼ等の酵素タンパク質で標識してもよい。
本発明で使用されるタンパク質は、前記の通り、RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を促進し、又は抑制する活性を有する。例えばRNF135はRIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を促進し、またRNF135−DNはRIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を抑制する。従って、これらのタンパク質の何れかを生体に投与するあるいは生体内でこれらのタンパク質の遺伝子を発現させることによって、生体におけるI−IFNの発現を促進あるいは抑制することが可能である。I−IFN発現の促進は、生体に対するウイルスや微生物等による感染症の抑制を可能とすることから、RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を促進する活性を有するタンパク質は、I−IFNの発現調節剤として利用することができ、当該発現調節剤はウイルスや微生物等に対する感染症治療薬として利用することができる。
また、I−IFN発現の抑制は、過剰な炎症反応の抑制を可能とすることから、RIG−Iタンパク質の存在下でI−IFNのプロモーターによる転写を抑制する活性を有する本発明のタンパク質、例えばRNF135−DNは、I−IFNの発現調節剤として利用することができ、当該発現調節剤は抗炎症剤として利用することができる。
本発明の発現調節剤、感染症治療薬、炎症治療薬は、本発明で使用されるタンパク質単体であってもよく、また薬学的に許容される担体、例えば水、塩類溶液、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールまたはこれらの組合せや、賦形剤、特にタンパク質を有効成分とする医薬で用いられる乳化剤、防腐剤、緩衝剤などと混合した医薬組成物の形態にあってもよい。医薬組成物の形態は投与形態および治療の適用例により異なってよく、液剤(溶液、分散液、懸濁液、リポソーム製剤など)、錠剤や座剤等の固形剤などの剤型を採り得るが、好ましい剤型は注射可能な、あるいは経口投与が可能な液剤である。投与経路としては、皮下注射、静脈注射、輸液、あるいは経口投与である。なお、投与量は、患者、疾患の程度、必要とされる薬効に応じて、適宜設定すればよい。
さらに、例えばRNF135とRIG−Iタンパク質を存在させることによってI−IFNのプロモーターによる転写が促進された状況下で、この促進された転写を逆に抑制するあるいはさらに促進させる活性を有する化合物をスクリーニングすれば、そのような化合物はI−IFNの発現を促進する薬物あるいは抑制する薬物として利用し得るものと期待される。本発明は、かかるスクリーニング方法も提供する。具体的には、I−IFNを発現する細胞、例えばHeLa細胞を、RIG−Iタンパク質を発現することのできる発現ベクターと本発明で使用されるタンパク質を発現することのできるベクターによって形質転換し、RIG−Iタンパク質と本発明のタンパク質を形質転換細胞内で発現させた形質転換細胞と試験化合物とをインキュベートし、I−IFNの産生をI−IFNをコードするmRNA量の測定あるいはI−IFNの活性を測定すればよい。また、プロモーターを含むI−IFN遺伝子を組み込んだI−IFN発現ベクターで形質転換させた細胞を、RIG−Iタンパク質を発現することのできる発現ベクターと本発明のタンパク質を発現することのできるベクターによってさらに形質転換し、RIG−Iタンパク質と本発明のタンパク質を形質転換細胞内で発現させた形質転換細胞を用いてもよい。また、I−IFNのプロモーターの下流に適当なマーカー遺伝子を組み込み、このマーカー遺伝子の発現を指標にしてもよい。
[実施例]
以下、非限定的な実施例により本発明を更に詳しく説明する。
以下、非限定的な実施例により本発明を更に詳しく説明する。
(1)RNF135遺伝子のクローニング
Clontech社の酵母two−hybridシステム「Matchmaker Two−Hybrid system 3」(登録商標)に添付された製造者の指示書に従い、ヒトRIG−Iタンパク質を用いてClontech社のヒト肺ライブラリーをスクリーニングした。その結果、約2kbpのcDNA(cDNA1)が単離された。このcDNA1の塩基配列を決定したところ、cDNA1に含まれているもっとも大きなORFは、終止Pコドンを含むが、その5’末端側に開始コドン(ATG)が存在しなかった。このcDNA1の塩基配列を基に相同性検索を行い、対応するESTクローンとしてNM_032322が検索された。このESTに含まれるORFの5’末端側の塩基配列を含むcDNAを取得するために、下記の塩基配列からなるDNAプライマーを合成し、Clontech社のヒト肺ライブラリーを鋳型にしてPCRを行った。
Clontech社の酵母two−hybridシステム「Matchmaker Two−Hybrid system 3」(登録商標)に添付された製造者の指示書に従い、ヒトRIG−Iタンパク質を用いてClontech社のヒト肺ライブラリーをスクリーニングした。その結果、約2kbpのcDNA(cDNA1)が単離された。このcDNA1の塩基配列を決定したところ、cDNA1に含まれているもっとも大きなORFは、終止Pコドンを含むが、その5’末端側に開始コドン(ATG)が存在しなかった。このcDNA1の塩基配列を基に相同性検索を行い、対応するESTクローンとしてNM_032322が検索された。このESTに含まれるORFの5’末端側の塩基配列を含むcDNAを取得するために、下記の塩基配列からなるDNAプライマーを合成し、Clontech社のヒト肺ライブラリーを鋳型にしてPCRを行った。
フォワードプライマー1:GCCTCGAGGCCACCATGGCGGGCCTGGGCCTGGG
リバースプライマー 2:CGGCCAGGTCCTGCAGTAGC
得られた約300bpの増幅断片(cDNA2)の塩基配列を決定し、開始コドンの位置を決定した。cDNA2の開始コドンからcDNA1の終止コドンまでを含む完全長のORFを含むDNAを、下記の塩基配列からなるDNAプライマーを用い、cDNA1とcDNA2を鋳型としてPCRを行って調製した。
リバースプライマー 2:CGGCCAGGTCCTGCAGTAGC
得られた約300bpの増幅断片(cDNA2)の塩基配列を決定し、開始コドンの位置を決定した。cDNA2の開始コドンからcDNA1の終止コドンまでを含む完全長のORFを含むDNAを、下記の塩基配列からなるDNAプライマーを用い、cDNA1とcDNA2を鋳型としてPCRを行って調製した。
フォワードプライマー3:GCCTCGAGGCCACCATGGCGGGCCTGGGCCTGGG
リバースプライマー 4:GGGGATCCCACCTTTACTTGCTTTATTATCAGG
得られた約1.3kbpの増幅断片をpCR−Bluntベクター(Invitrogen社)に組み込み、塩基配列を決定して、目的とするDNA、すなわちRNF135をコードするDNAがクローニングされていることを確認した。このDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
リバースプライマー 4:GGGGATCCCACCTTTACTTGCTTTATTATCAGG
得られた約1.3kbpの増幅断片をpCR−Bluntベクター(Invitrogen社)に組み込み、塩基配列を決定して、目的とするDNA、すなわちRNF135をコードするDNAがクローニングされていることを確認した。このDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
(2)RNF135発現ベクターの作製
(1)でpCR−Bluntベクター上にクローニングされたRNF135の全長をコードするDNAを鋳型とし、下記の一組のプライマーDNAとPyrobest(Takara社)とを用いて、PCRを行った。
(1)でpCR−Bluntベクター上にクローニングされたRNF135の全長をコードするDNAを鋳型とし、下記の一組のプライマーDNAとPyrobest(Takara社)とを用いて、PCRを行った。
フォワードプライマー5:GCCTCGAGGCCACCATGGCGGGCCTGGGCCTGGG
リバースプライマー6 :GGGGATCCCACCTTTACTTGCTTTATTATCAGG
得られた約・1.2kbpの増幅断片を制限酵素XhoIとBamHIで処理した。pEF−BOS(Mizushimaら、Nucleic Acid Res.、1990年、第18巻、第17号、第5322頁)にマルチクローニングサイトを挿入し、さらに組み換えタンパク質にHAタグが付加されるようにHAタグをコードする塩基配列を付加したプラスミドを制限酵素XhoIとBamHIで開環させ、これに制限酵素XhoIとBamHIで処理した前記増幅断片を連結して、RNF135発現ベクターpHO703を作製した。この発現ベクターpHO703に組み込まれたRNF135をコードするDNAは、EF−1alphaプロモーターによってその発現が誘導される。
リバースプライマー6 :GGGGATCCCACCTTTACTTGCTTTATTATCAGG
得られた約・1.2kbpの増幅断片を制限酵素XhoIとBamHIで処理した。pEF−BOS(Mizushimaら、Nucleic Acid Res.、1990年、第18巻、第17号、第5322頁)にマルチクローニングサイトを挿入し、さらに組み換えタンパク質にHAタグが付加されるようにHAタグをコードする塩基配列を付加したプラスミドを制限酵素XhoIとBamHIで開環させ、これに制限酵素XhoIとBamHIで処理した前記増幅断片を連結して、RNF135発現ベクターpHO703を作製した。この発現ベクターpHO703に組み込まれたRNF135をコードするDNAは、EF−1alphaプロモーターによってその発現が誘導される。
(3)RNF135によるI−IFNのプロモーターによる転写の促進活性の測定
24ウェルプレートに培養したHEK293細胞(2×105細胞/ウェル)に、RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−I(Yoneyamaら、Nat.Immunol.、2004年、第5巻、第7号、第730−737頁)と、(2)で作製したRNF135発現ベクターpHO703と、I−IFNのプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結されたプラスミドであるp125luc(Fugitaら、EMBO J.、1988年、第7巻、第11号、第3397−3405頁)、さらに内部コントロールとしてphRL−TK(プロメガ社)をFuGene HD(Roch社)を用いて、リポフェクション法によって共形質転換を行った。 各プラスミドを加えて24時間培養した後の培養上清を取り除き、polyIC(50ug/ml)とDEAE−dextran を含む培地を2.5mL加えた。さらに37℃で1時間培養した後に再び培養上清を除き、polyICとDEAE−dextranを含まない培地を加え、3時間さらに培養した。その後、Lysis bufferを用いて細胞抽出液を調製し、抽出液中のルシフェラーゼ活性を測定した。この結果を図2に示す。
24ウェルプレートに培養したHEK293細胞(2×105細胞/ウェル)に、RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−I(Yoneyamaら、Nat.Immunol.、2004年、第5巻、第7号、第730−737頁)と、(2)で作製したRNF135発現ベクターpHO703と、I−IFNのプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結されたプラスミドであるp125luc(Fugitaら、EMBO J.、1988年、第7巻、第11号、第3397−3405頁)、さらに内部コントロールとしてphRL−TK(プロメガ社)をFuGene HD(Roch社)を用いて、リポフェクション法によって共形質転換を行った。 各プラスミドを加えて24時間培養した後の培養上清を取り除き、polyIC(50ug/ml)とDEAE−dextran を含む培地を2.5mL加えた。さらに37℃で1時間培養した後に再び培養上清を除き、polyICとDEAE−dextranを含まない培地を加え、3時間さらに培養した。その後、Lysis bufferを用いて細胞抽出液を調製し、抽出液中のルシフェラーゼ活性を測定した。この結果を図2に示す。
その結果、RNF135をRIG−Iタンパク質と共存させたHEK293細胞の抽出液におけるルシフェラーゼ活性は、コントロール細胞におけるルシフェラーゼ活性に比べて約5倍の値を示した。
(4)RIG−Iタンパク質とRNF135の結合
前記RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−Iを用いて、リポフェクション法によって形質転換したHEK293細胞、及び前記pEF−BOS/FLAG−RIG−Iと上記(2)で作製したRNF135発現ベクターpHO703とを用いて、リポフェクション法によって共形質転換したHEK293細胞をそれぞれ調製し、10%FCSを含むD−MEM培地で24時間培養後、Lysis bufferを用いて細胞抽出液を調製し、HAに対するポリクローナル抗体(SIGMA社)を用いて免疫沈降を行った。得られた沈降サンプルをSDS−PAGEにかけた後、HAに対するポリクローナル抗体(SIGMA社)及びFLAGに対するモノクローナル抗体(SIGMA社)それぞれを用いて、RIG−Iタンパク質とRNF135を検出した。その結果を図3に示す。図中、IPは免疫沈降産物を、WCEは全細胞抽出液を示す。
前記RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−Iを用いて、リポフェクション法によって形質転換したHEK293細胞、及び前記pEF−BOS/FLAG−RIG−Iと上記(2)で作製したRNF135発現ベクターpHO703とを用いて、リポフェクション法によって共形質転換したHEK293細胞をそれぞれ調製し、10%FCSを含むD−MEM培地で24時間培養後、Lysis bufferを用いて細胞抽出液を調製し、HAに対するポリクローナル抗体(SIGMA社)を用いて免疫沈降を行った。得られた沈降サンプルをSDS−PAGEにかけた後、HAに対するポリクローナル抗体(SIGMA社)及びFLAGに対するモノクローナル抗体(SIGMA社)それぞれを用いて、RIG−Iタンパク質とRNF135を検出した。その結果を図3に示す。図中、IPは免疫沈降産物を、WCEは全細胞抽出液を示す。
図3に示されるように、RIG−Iタンパク質は、同一細胞内でRNF135を共発現させると、RNF135に含まれるHAに対するポリクローナル抗体によってRNF135と共に免疫沈降し、従ってRNF135はRIG−Iタンパク質に結合していることが確認された。
(5)RNF135の局在性
前記RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−Iと上記(2)で作製したRNF135発現ベクターpHO703とを用いて、リポフェクション法によってHeLa細胞を形質転換した。10%FCSを含むEagle−MEM培地で24時間培養後、細胞を3%ホルマリンで固定し、1×PBSで3回洗浄した後、500分の1に希釈したHAに対するポリクローナル抗体(SIGMA社)及びFLAGに対するモノクローナル抗体を加えて1時間室温で反応させた。
前記RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−Iと上記(2)で作製したRNF135発現ベクターpHO703とを用いて、リポフェクション法によってHeLa細胞を形質転換した。10%FCSを含むEagle−MEM培地で24時間培養後、細胞を3%ホルマリンで固定し、1×PBSで3回洗浄した後、500分の1に希釈したHAに対するポリクローナル抗体(SIGMA社)及びFLAGに対するモノクローナル抗体を加えて1時間室温で反応させた。
反応液を除いた後、PBSで3回洗浄し、二次抗体として、Alexa Fluor 488及び、Alexa Fluor 594抗体(Molecular Probe社)を用い、室温で30分反応させた。PBSで3回洗浄後、スライドガラスにマウントし、共焦点レーザー顕微鏡(Zwiss社)を用いて蛋白質の局在を観察した。その結果を図4に示す。図中、緑はRNF135, 赤はRIG−Iタンパク質をそれぞれ示す。
図4のマージに示されるように、緑色で示されるRNF135の局在と、赤色で示されるRIG−Iタンパク質の局在は、これらをマージさせるとほぼ一致することから、RNF135とRIG−Iタンパク質は細胞内においても同じ部位に局在していることが確認された。
(6)RNF135によるウイルス抵抗性実験の方法詳細
前記RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−Iで形質転換したHEK293細胞、上記(2)で作製したRNF135発現ベクターpHO703で形質転換したHEK293細胞、及びこれら2種類の発現ベクターで共形質転換したHEK293細胞をそれぞれ用意し、24ウェルプレートで24時間培養した後、図に示すMOIになるように水泡性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus、VSV)を加えた。形質転換から24時間後、細胞上清を除き、10分の1希釈したNeutral Redを25μL加え細胞を染色した後、写真で撮影した。その結果を図5に示す。
前記RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−Iで形質転換したHEK293細胞、上記(2)で作製したRNF135発現ベクターpHO703で形質転換したHEK293細胞、及びこれら2種類の発現ベクターで共形質転換したHEK293細胞をそれぞれ用意し、24ウェルプレートで24時間培養した後、図に示すMOIになるように水泡性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus、VSV)を加えた。形質転換から24時間後、細胞上清を除き、10分の1希釈したNeutral Redを25μL加え細胞を染色した後、写真で撮影した。その結果を図5に示す。
図5に示されるように、RNF135はRIG−Iタンパク質によるVSV感染に対する抵抗性を促進させた。
(1)RNF135−DN発現ベクターの作製
実施例1で作成したRNF135発現ベクターpHO703を鋳型とし、下記の一組のプライマーDNAとPyrobest(Takara社)とを用いて、PCRを行った。
実施例1で作成したRNF135発現ベクターpHO703を鋳型とし、下記の一組のプライマーDNAとPyrobest(Takara社)とを用いて、PCRを行った。
フォワードプライマー7:GCTCGAGGCCACCATGCCGCACCTGCGGAAGAACACGC
リバースプライマー8 :GGGGATCCCACCTTTACTTGCTTTATTATCAGG
得られた約1kbpの増幅断片をpCR−Bluntベクター(Invitrogen社)に挿入した後、制限酵素XhoIとBamHIで処理して、挿入断片を切り出した。pEF−BOSにマルチクローニングサイトを挿入し、さらに組み換えタンパク質にHAタグが付加されるようにHAタグをコードする塩基配列を付加したプラスミドを制限酵素XhoIとBamHIで開環させ、これに制限酵素XhoIとBamHIで処理した前記挿入断片を連結して、RNF135−DN発現ベクターpHO701を作製した。この発現ベクターに組み込まれたRNF135−DNをコードするDNAは、EF1−alphaプロモーターによってその発現が誘導される。
リバースプライマー8 :GGGGATCCCACCTTTACTTGCTTTATTATCAGG
得られた約1kbpの増幅断片をpCR−Bluntベクター(Invitrogen社)に挿入した後、制限酵素XhoIとBamHIで処理して、挿入断片を切り出した。pEF−BOSにマルチクローニングサイトを挿入し、さらに組み換えタンパク質にHAタグが付加されるようにHAタグをコードする塩基配列を付加したプラスミドを制限酵素XhoIとBamHIで開環させ、これに制限酵素XhoIとBamHIで処理した前記挿入断片を連結して、RNF135−DN発現ベクターpHO701を作製した。この発現ベクターに組み込まれたRNF135−DNをコードするDNAは、EF1−alphaプロモーターによってその発現が誘導される。
(2)RNF135−DNによるI−IFNのプロモーターによる転写の抑制活性の測定
24ウェルプレートに培養したHEK293細胞(2×105細胞/ウェル)に、前記RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−I、MDA5発現ベクターpEF−BOS/FLAG−MDA5(Yoneyamaら、J.Immunol.、2005年、第175巻、第5号、第2851−2858頁)、TLR3発現ベクターpEF−BOS/FLAG(Oshiumiら、Nature Immunology、2003年、第4巻、第2号、第161−167頁)それぞれとI−IFNのプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結されたプラスミドであるp125lucと共に加えてリポフェクション法によって共形質転換を行った。さらに、前記のRIG−Iタンパク質発現ベクター、MDA5発現ベクター、TLR3発現ベクターそれぞれと、(1)で作製したRNF135−DN発現ベクターpHO701と、p125lucとを共に加えてリポフェクション法によって共形質転換を行った。また、RNF135−DN発現ベクターに換えてphRL−TKを用いて同様に共形質転換させたHEK293細胞を、コントロール細胞として用意した。
24ウェルプレートに培養したHEK293細胞(2×105細胞/ウェル)に、前記RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−I、MDA5発現ベクターpEF−BOS/FLAG−MDA5(Yoneyamaら、J.Immunol.、2005年、第175巻、第5号、第2851−2858頁)、TLR3発現ベクターpEF−BOS/FLAG(Oshiumiら、Nature Immunology、2003年、第4巻、第2号、第161−167頁)それぞれとI−IFNのプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結されたプラスミドであるp125lucと共に加えてリポフェクション法によって共形質転換を行った。さらに、前記のRIG−Iタンパク質発現ベクター、MDA5発現ベクター、TLR3発現ベクターそれぞれと、(1)で作製したRNF135−DN発現ベクターpHO701と、p125lucとを共に加えてリポフェクション法によって共形質転換を行った。また、RNF135−DN発現ベクターに換えてphRL−TKを用いて同様に共形質転換させたHEK293細胞を、コントロール細胞として用意した。
各プラスミドを加えて24時間培養した後、前記RIG−Iタンパク質発現ベクターpEF−BOS/FLAG−RIG−IとMDA5発現ベクターで形質転換したHEK293細胞の培養上清を取り除き、polyIC(50ug/ml)とDEAE−dextran を含む培地を2.5mL加えた。さらに37℃で1時間培養した後に再び培養上清を除き、polyICとDEAE−dextranを含まない培地を加え、3時間さらに培養した。その後、Lysis bufferを用いて細胞抽出液を調製し、抽出液中のルシフェラーゼ活性を測定した。また、TLR3発現ベクターで形質転換したHEK293細胞については、細胞上清を除いたあと、polyICを50 μg/mL含む10%FCSを含むD−MEM培地を加え、6時間後にLysis bufferを用いて細胞抽出液を調製し、抽出液中のルシフェラーゼ活性を測定した。この結果を図6a−図6cに示す。
図6a−6cに示されるように、RNF135−DNは、RIG−Iタンパク質と共存させることによって、RIG−Iタンパク質単独を発現させたときのルシフェラーゼ活性を約1/5にまで抑制することが確認された。
Claims (10)
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及び/又は配列番号1に示されるアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を促進又は抑制する活性を有するタンパク質からなるI型インターフェロンの発現調節剤。
- RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を促進させる活性を有するタンパク質からなる、請求項1に記載の発現調節剤。
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端から21番目〜62番目の何れかのアミノ酸残基までが欠失したアミノ酸配列、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列の21番目〜62番目の領域において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、RIG−Iタンパク質の存在下でI型インターフェロンのプロモーターによる転写を抑制する活性を有するタンパク質。
- 請求項3に記載のタンパク質をコードする核酸。
- 配列番号4に示される塩基配列からなる、請求項4に記載の核酸。
- 請求項4又は5に記載の核酸を含む組換えベクター。
- 請求項6に記載の組換えベクターが導入されてなる形質転換細胞。
- 請求項2に記載の発現調節剤を含む感染症治療薬。
- 請求項3に記載のタンパク質からなる、I型インターフェロンの発現抑制剤。
- 請求項9に記載の発現抑制剤を有効成分とする炎症治療薬。
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