JPWO2008108344A1 - Lcat欠損症の遺伝子治療用細胞並びに遺伝子治療用細胞組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明の課題は、外来遺伝子としてのLCATコードヌクレオチドを効率よく標的細胞で発現させることができる、患者に投与される遺伝子治療用細胞を産生するためのLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクター、及び当該レトロウイルスベクターを産生するのに用いられるプラスミドを提供することにある。その解決手段としての本発明の複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドは、レトロウイルス由来の5’側のLTR配列と3’側のLTR配列の間に、外来遺伝子としてLCATコードヌクレオチド配列が挿入され、かつ、前記LCATコードヌクレオチド配列の5’側にコザックのコンセンサス配列及び前記レトロウイルスのパッケージングシグナル配列が連結されていることを特徴とする。
Description
本発明は、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症の遺伝子治療用細胞を産生するのに用いられるLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクター、前記レトロウイルスベクターの産生に使用するプラスミド、及び前記レトロウイルスベクターを接種することでLCATコードヌクレオチドが遺伝子導入された脂肪細胞を含むLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞、及び前記遺伝子治療用細胞と液状担体とを含むLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞組成物に関する。
遺伝子治療に際して、目的の外来遺伝子を標的細胞に導入する方法として、ウイルスベクターを用いる方法がある。ウイルスベクターを遺伝子治療に使用する方法は、ウイルスベクターを直接体内に導入する方法(in vivo遺伝子治療法)と、患者より標的細胞となる組織若しくは細胞を取り出し、ウイルスベクターにより外来遺伝子を標的細胞に導入した後、当該標的細胞を患者に戻す方法(ex vivo遺伝子治療法)とに大別される。
ウイルスベクターのうち、レトロウイルスを使用する方法は、目的の外来遺伝子が標的細胞の染色体に導入されることから、長期間にわたって、目的の外来遺伝子を安定的に発現させることができ、しかも標的細胞の分裂後も目的の外来遺伝子が確実に伝搬されるという特徴があることから、ex vivo遺伝子治療のための方法として用いられることが多い。
ex vivo遺伝子治療用のレトロウイルスベクターは、例えば、マウス由来のレトロウイルスを基にベクター骨格が構成されているが、マウス由来のレトロウイルスの外膜タンパク質はecotoropicであることから、このままではヒトの標的細胞に接種しても目的の外来遺伝子を当該細胞に導入することができない。そのため、外膜タンパク質の発現遺伝子をヒトにも感染する遺伝子に代替されていることが多い。最も多用されているのは、amphotropicな外膜タンパク質の発現遺伝子としてのampho遺伝子である。
amphotropicな外膜タンパク質をもつレトロウイルスベクターは、当該外膜タンパク質が脆弱であるため、遠心分離操作等による濃縮を行うことができないという特殊性がある。また、プロデューサー細胞から産生されたレトロウイルスベクターのうち、有効に目的の外来遺伝子をヒトの標的細胞に導入できるベクターとそうでないベクターの分離を行なうことは困難であることから、遺伝子治療用細胞の調製には両方のベクターが混在したベクター含有液を用いることになる。このため、amphotropicな外膜タンパク質をもつ遺伝子治療用レトロウイルスベクターの治療能力は、ウイルスベクタータイターに大きく依存することになる。従って、高タイターのレトロウイルスベクターを産生可能な構造をもつプラスミドの構築とウイルス産生能力の高いプロデューサー細胞の選択が重要となる。
効率的なタンパク質の発現、翻訳を導く方法としては、例えば特表2004−5168303において、プラスミドに最適なコザック配列を含有させることが提案されている。
また、特表平11−511651では、遺伝子治療に用いるレトロウイルスベクターにおいて、効率のよい転写と翻訳を可能にするために、コザック配列を目的の外来遺伝子の開始コドン(ATG)付近に導入することが提案されている。
また、特表平11−511651では、遺伝子治療に用いるレトロウイルスベクターにおいて、効率のよい転写と翻訳を可能にするために、コザック配列を目的の外来遺伝子の開始コドン(ATG)付近に導入することが提案されている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外来遺伝子としてのLCATコードヌクレオチドを効率よく標的細胞で発現させることができる、患者に投与される遺伝子治療用細胞を構築、製造するためのLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクター、及び当該レトロウイルスベクターを産生するのに用いられるプラスミドを提供することにある。
本発明の複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドは、レトロウイルス由来の5’側のLTR配列と3’側のLTR配列の間に、外来遺伝子としてLCATコードヌクレオチド配列が挿入され、かつ、前記LCATコードヌクレオチド配列の5’側にコザックのコンセンサス配列及び前記レトロウイルスのパッケージングシグナル配列が連結されていることを特徴とする。
前記コザックのコンセンサス配列は、LCATの1番目のアミノ酸(Met)をコードするコドン(ATG)の直前に連結されていることが好ましく、LCATコードヌクレオチド配列の3’側に、終止コドンとして、「TGA」が連結されていることが好ましい。また、前記コザックのコンセンサス配列は、「CCACC」又は「GCACC」であることが好ましい。
本発明の複製欠損性レトロウイルスベクターは、遺伝子として、レトロウイルス由来のLTR配列を1組有し、5’側のLTR配列と3’側のLTR配列の間に、前記レトロウイルスのパッケージングシグナル配列、コザックのコンセンサス配列、LCATコードヌクレオチド配列及び終止コドンを、5’側からこの順序で有していることを特徴とする。前記コザックのコンセンサス配列は、「CCACC」又は「GCACC」であって、前記LCATコードヌクレオチド配列における開始コドンの直前に連結されていることが好ましい。
本発明の複製欠損性レトロウイルスベクターの産生方法は、上記本発明のプラスミドを、gag遺伝子、pol遺伝子、及びampho遺伝子を少なくとも含むレトロウイルスの構造遺伝子を発現させることができるパッケージング細胞にトランスフェクトすることで調製したプロデューサー細胞をインキュベートする工程を含むことを特徴とする。
本発明のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞は、上記本発明のプラスミドを、gag遺伝子、pol遺伝子、及びampho遺伝子を少なくとも含むレトロウイルスの構造遺伝子を発現させることができるパッケージング細胞にトランスフェクトすることで調製したプロデューサー細胞をインキュベートすることにより得られるLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターを接種することでLCATコードヌクレオチドが遺伝子導入された脂肪細胞を含むことを特徴とする。
本発明のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞組成物は、上記本発明のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞と、液状担体とを含むことを特徴とする。
また、本発明は、外来遺伝子が1以上のコピー数で導入され、かつ、導入から少なくとも12ヶ月以内に肉眼所見においてがん化が認められない遺伝子治療用細胞を産生するために脂肪細胞を使用する方法に関する。
尚、本明細書において、「脂肪細胞(adipocytes)」とは、球形で脂肪を蓄えた成熟脂肪細胞(matureadipocytes)や成熟前の脂肪を蓄えていない前脂肪細胞(pre−fat cell)の他、脂肪細胞に分化する能力を有する脂肪組織由来間葉系幹細胞(preadipocytes)などを意味する。成熟脂肪細胞に蓄えられた脂肪はoil red 0染色によって確認することができ、成熟脂肪細胞は一般的にインスリンに応答してレプチンを分泌する。
また、本明細書において、「LCATコードヌクレオチド」といえば、プラスミドの場合、LCATをコードするDNAをいい、レトロウイルスベクターの場合、RNAをいい、遺伝子治療用細胞においてはDNAをいう。
本発明の複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドを用いれば、LCATコードヌクレオチドを保持する高タイターのレトロウイルスベクターを産生することができ、さらに、治療有効性が高いLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞及び遺伝子治療用細胞組成物を提供することができる。
〔LCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミド〕
本発明のLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドは、レトロウイルス由来の5’側のLTR配列と3’側のLTR配列の間に、外来遺伝子としてLCATコードヌクレオチド配列が挿入され、かつ、前記LCATコードヌクレオチド配列の5’側にコザックのコンセンサス配列及び前記レトロウイルスのパッケージングシグナル配列が連結されていることを特徴とする。
本発明のLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドは、レトロウイルス由来の5’側のLTR配列と3’側のLTR配列の間に、外来遺伝子としてLCATコードヌクレオチド配列が挿入され、かつ、前記LCATコードヌクレオチド配列の5’側にコザックのコンセンサス配列及び前記レトロウイルスのパッケージングシグナル配列が連結されていることを特徴とする。
複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドは、gag遺伝子、pol遺伝子、及びampho遺伝子を少なくとも含むレトロウイルスの構造遺伝子の全部又は一部を削除することによって、レトロウイルスの複製及び増殖を不能にしたプラスミドである。削除されたレトロウイルスの構造遺伝子に代えて、遺伝子治療の目的となるタンパク質をコードする外来遺伝子のヌクレオチド(cDNA)が挿入される。
複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドの作製に用いられるレトロウイルスは、特に限定されず、例えば、HIVウイルス、SIVウイルス、FIVウイルス、Mo−MLVウイルスなどを用いることができる。パッケージング細胞やパッケージングベクターと組合わせて、組換えウイルス粒子の産生キットとして開発や市販されているものを使用してもよい。
図1は、本発明の複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドにおいて、挿入された外来遺伝子(LCAT遺伝子)近傍の配列の概略を示しており、具体的には、5’側のLTR配列と3’側のLTR配列との間の配列を示す概略図である。
5’側のLTR配列及び3’側のLTR配列は、いずれもレトロウイルス由来のLTR(ロングターミナルリピート)配列であり、LTR配列で挟まれている領域のヌクレオチドをレトロウイルス粒子中に取り込むために必要とされる。5’側のLTR配列には、LCAT遺伝子の転写や翻訳に必要なプロモーター、組み込みに必要なatt部位、polyA配列が含まれている。
5’側のLTR配列及び3’側のLTR配列は、いずれもレトロウイルス由来のLTR(ロングターミナルリピート)配列であり、LTR配列で挟まれている領域のヌクレオチドをレトロウイルス粒子中に取り込むために必要とされる。5’側のLTR配列には、LCAT遺伝子の転写や翻訳に必要なプロモーター、組み込みに必要なatt部位、polyA配列が含まれている。
LCAT遺伝子としては、例えば、配列番号1に示すようなヒトの正常のレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(NP000220、遺伝子accession number:bc014781)のメチオニン(Met)からグルタミン酸(Glu)までの440個のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(cDNA配列)からなるものが挙げられるが、LCAT遺伝子は、このヌクレオチド配列に対して、1又は2以上のヌクレオチドが置換、欠失、または付加されたヌクレオチド配列からなるものであってもよいし、このヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るヌクレオチド配列からなるものであってもよい。
LCATコードヌクレオチド配列の開始コドンの5’側には、コザックのコンセンサス配列が連結されている(図1中、「Kozak」)。LCATコードヌクレオチド配列における開始コドン(ATG)とコザックのコンセンサス配列の間には、プラスミドの機能に対して影響を及ぼさないヌクレオチド配列が介在していてもよいが、コザックのコンセンサス配列の直後に開始コドンが連結されていることが好ましい。また、コザックのコンセンサス配列は、「CCACC」又は「GCACC」であることが好ましい。一方、LCATコードヌクレオチド配列の3’側には、終止コドンが連結されている。終止コドンは、天然型のLCAT遺伝子の終止コドンである「TAA」であってもよいが、好ましくは「TGA」又は「TCG」、より好ましくは「TGA」である。LCATコードヌクレオチド配列の3’側は、グルタミン酸のコード配列である「GAA」であることから、天然型の終止コドンが連結された場合、「GAATAA」という配列となり、この部分がポリAシグナル配列のような作用をして、転写終結を起こしやすくしてしまうことがある。従って、終止コドンを「TGA」又は「TCG」に変更することで、LCAT遺伝子が本来有していたポリAシグナルの類似配列による影響を取り除くことが可能となり、高タイターのレトロウイルスベクターの産生を期待でき、ひいては、レトロウイルスベクターの産生量を増大できる傾向にある。
コザックのコンセンサス配列の5’側に、さらに連結されているパッケージングシグナル配列(ψ)は、ウイルスゲノムRNAがウイルス粒子中に包み込まれるときに必要な配列である。パッケージングシグナル(ψ)配列はLTR配列に含まれている場合もある。
5’側のLTR配列とパッケージングシグナル配列との間、パッケージングシグナル配列とコザックのコンセンサス配列との間、LCATコードヌクレオチド配列の3’側に連結された終止コドンと3’側のLTR配列との間には、プラスミドの機能に対して影響を及ぼさないヌクレオチド配列が介在していてもよいし、介在していなくてもよい。
介在していてもよいヌクレオチド配列としては、LCATコードヌクレオチドの転写や翻訳、レトロウイルスの産生効率といったプラスミドの機能に影響を及ぼさない選択マーカー遺伝子配列が挙げられる。ルシフェラーゼ遺伝子やGFP遺伝子などのレポーター遺伝子として機能する遺伝子配列が介在していてもよい。また、プラスミド作製にあたり、コザックのコンセンサス配列とLCATコードヌクレオチド配列の組合わせをクローニング部位に連結させるための、制限酵素の認識部位を含むリンカー配列が含まれていてもよい。
介在していてもよいヌクレオチド配列としては、LCATコードヌクレオチドの転写や翻訳、レトロウイルスの産生効率といったプラスミドの機能に影響を及ぼさない選択マーカー遺伝子配列が挙げられる。ルシフェラーゼ遺伝子やGFP遺伝子などのレポーター遺伝子として機能する遺伝子配列が介在していてもよい。また、プラスミド作製にあたり、コザックのコンセンサス配列とLCATコードヌクレオチド配列の組合わせをクローニング部位に連結させるための、制限酵素の認識部位を含むリンカー配列が含まれていてもよい。
本発明の複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドの作製に際しては、例えば、タカラバイオ株式会社から提供されている組換えウイルス粒子の産生キットに含まれる組換えレトロウイルスベクタープラスミドであるpDON−AIベクターを使用してもよい。この場合、pDON−AIベクターのマルチクローニングサイトに、コザックのコンセンサス配列とLCATコードヌクレオチド配列の組合わせに終止コドンを連結させた断片、例えば、配列番号2に示すようなヌクレオチド配列を挿入すればよい(pDON−AIベクターはパッケージングシグナル配列を5’側のLTR配列と5’側のマルチクローニングサイトの間に有する)。
〔レトロウイルスベクター産生細胞(プロデューサー細胞)〕
本発明のLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターの産生細胞は、空のレトロウイルス様粒子を産生できるパッケージング細胞に、上記本発明のプラスミドをトランスフェクトすることで調製することができる。
空のレトロウイルス様粒子を産生できるパッケージング細胞とは、外膜タンパク質をコードするampho遺伝子、内部コア構造タンパク質をコードするgag遺伝子、プロテアーゼや逆転写酵素などの特定酵素をコードするpol遺伝子を少なくとも含むレトロウイルスの構造遺伝子が染色体に組み込まれていて、レトロウイルス粒子の形成に必要なタンパク質を供給することができるが、LTR配列は組み込まれていないものである。
パッケージング細胞を調製するための細胞(ヘルパー細胞)としては、特に限定されないが、amphotropicであることが好ましく、具体的には、NIH3T3細胞、293細胞、293T細胞など、すでにパッケージング細胞株として樹立されたものが挙げられる。このような細胞に、産生させようとするレトロウイルスのgag遺伝子、pol遺伝子、及びampho遺伝子を少なくとも含む構造遺伝子を有するパッケージングプラスミドを用いてトランスフェクトすることにより、パッケージング細胞を調製することができる。
本発明のLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターの産生細胞は、空のレトロウイルス様粒子を産生できるパッケージング細胞に、上記本発明のプラスミドをトランスフェクトすることで調製することができる。
空のレトロウイルス様粒子を産生できるパッケージング細胞とは、外膜タンパク質をコードするampho遺伝子、内部コア構造タンパク質をコードするgag遺伝子、プロテアーゼや逆転写酵素などの特定酵素をコードするpol遺伝子を少なくとも含むレトロウイルスの構造遺伝子が染色体に組み込まれていて、レトロウイルス粒子の形成に必要なタンパク質を供給することができるが、LTR配列は組み込まれていないものである。
パッケージング細胞を調製するための細胞(ヘルパー細胞)としては、特に限定されないが、amphotropicであることが好ましく、具体的には、NIH3T3細胞、293細胞、293T細胞など、すでにパッケージング細胞株として樹立されたものが挙げられる。このような細胞に、産生させようとするレトロウイルスのgag遺伝子、pol遺伝子、及びampho遺伝子を少なくとも含む構造遺伝子を有するパッケージングプラスミドを用いてトランスフェクトすることにより、パッケージング細胞を調製することができる。
空のレトロウイルス様粒子を産生できるパッケージング細胞に、上記本発明のプラスミドをトランスフェクトした後、溶液を限界希釈して、各ウェルに細胞が1個となる割合まで限界希釈し、最もレトロウイルス産生能力の高いウェルをプロデューサー細胞として選択する。さらに、この培養上清を用いたときの遺伝子導入効率が高いウェルを選ぶことが好ましい。産生されるレトロウイルスベクターには、LCATコードヌクレオチドを保持するものと保持していないものが混在し、さらにLCATコードヌクレオチドを保持するものであっても、外膜タンパク質の状態等により、標的細胞への遺伝子導入効率が一様でないからである。
尚、プロデューサー細胞の調製方法は、以上のような、パッケージング細胞を調製した後、上記本発明のプラスミドをトランスフェクトする方法に限定されず、パッケージング細胞を製造するためのパッケージングベクターと、本発明のプラスミドを、ヘルパー細胞にコトランスフェクトする方法であってもよい。
〔LCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクター及びその製造方法〕
本発明のLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターは、標的細胞に外来遺伝子としてのLCAT遺伝子を導入するためのレトロウイルス粒子であって、少なくともLCATコードヌクレオチド配列が1つ以上、発現可能な状態で含まれているものである。具体的には、遺伝子として、レトロウイルス由来のLTR配列を1組有し、5’側のLTR配列と3’側のLTR配列の間に、前記レトロウイルスのパッケージングシグナル配列、コザックのコンセンサス配列、LCATコードヌクレオチド配列及び終止コドンを、5’側からこの順序で有している。
本発明のLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターは、標的細胞に外来遺伝子としてのLCAT遺伝子を導入するためのレトロウイルス粒子であって、少なくともLCATコードヌクレオチド配列が1つ以上、発現可能な状態で含まれているものである。具体的には、遺伝子として、レトロウイルス由来のLTR配列を1組有し、5’側のLTR配列と3’側のLTR配列の間に、前記レトロウイルスのパッケージングシグナル配列、コザックのコンセンサス配列、LCATコードヌクレオチド配列及び終止コドンを、5’側からこの順序で有している。
複製欠損性レトロウイルスとは、レトロウイルス由来のgag遺伝子、pol遺伝子、及びampho遺伝子を少なくとも含む構造遺伝子の全部又は一部が削除されていることにより、複製及び増殖が不能なレトロウイルスである。このようなレトロウイルスは、ウイルス本来の毒性がなく、保持させた外来遺伝子を、標的細胞に導入するためのベクターとしての役割を果たすことができる。
本発明のLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターは、上記プロデューサー細胞を、所定時間インキュベートすることで得られる培養上清に含まれる。
〔LCAT欠損症の遺伝子治療用細胞〕
本発明のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞は、標的細胞である脂肪細胞に、LCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターを接種することでLCATコードヌクレオチドを遺伝子導入したものである。
標的細胞となる脂肪細胞は、ex vivo遺伝子治療に用いられる細胞で、患者から採取した脂肪細胞が好ましく用いられる。
標的細胞である脂肪細胞への複製欠損性レトロウイルスベクターの接種は、脂肪細胞と、複製欠損性レトロウイルスベクターを接触させることにより行なうが、当該レトロウイルスベクターの調製の際に得られた培養上清を用いて、この培養上清と、脂肪細胞の培養液を、ポリブレン若しくは硫酸プロタミンを加えて混合し、例えば、37℃、5%CO2の条件下で2〜72時間インキュベートすることにより行なうことが好ましい。本発明の複製欠損性レトロウイルスベクターは、LCATコードヌクレオチドを発現可能な状態で保持するレトロウイルスベクターの含有割合が高く、しかも遺伝子導入効率が高いので、LCATコードヌクレオチドを保持していないレトロウイルスベクター等が混在していても、所定時間インキュベートすることで、有効量のLCATコードヌクレオチドが遺伝子導入された脂肪細胞を得ることが可能である。
本発明のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞は、標的細胞である脂肪細胞に、LCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターを接種することでLCATコードヌクレオチドを遺伝子導入したものである。
標的細胞となる脂肪細胞は、ex vivo遺伝子治療に用いられる細胞で、患者から採取した脂肪細胞が好ましく用いられる。
標的細胞である脂肪細胞への複製欠損性レトロウイルスベクターの接種は、脂肪細胞と、複製欠損性レトロウイルスベクターを接触させることにより行なうが、当該レトロウイルスベクターの調製の際に得られた培養上清を用いて、この培養上清と、脂肪細胞の培養液を、ポリブレン若しくは硫酸プロタミンを加えて混合し、例えば、37℃、5%CO2の条件下で2〜72時間インキュベートすることにより行なうことが好ましい。本発明の複製欠損性レトロウイルスベクターは、LCATコードヌクレオチドを発現可能な状態で保持するレトロウイルスベクターの含有割合が高く、しかも遺伝子導入効率が高いので、LCATコードヌクレオチドを保持していないレトロウイルスベクター等が混在していても、所定時間インキュベートすることで、有効量のLCATコードヌクレオチドが遺伝子導入された脂肪細胞を得ることが可能である。
標的細胞である脂肪細胞への複製欠損性レトロウイルスベクターの接種により、LCATコードヌクレオチドが脂肪細胞の染色体内に遺伝子導入される。LCATコードヌクレオチドが染色体内に遺伝子導入された脂肪細胞は、LCATコードヌクレオチドを転写、翻訳して、LCATを細胞外に分泌することができる。
本発明のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞、即ち、LCAT遺伝子組換え脂肪細胞は、増殖時だけでなく、分化後も、LCATコードヌクレオチドを発現することができ、長期間にわたってLCATを分泌し続けることができる。
本発明のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞、即ち、LCAT遺伝子組換え脂肪細胞は、増殖時だけでなく、分化後も、LCATコードヌクレオチドを発現することができ、長期間にわたってLCATを分泌し続けることができる。
なお、今回の本発明者らの研究によって、脂肪細胞は外来遺伝子を多コピー導入することが可能であり(外来遺伝子にもよるが少なくとも10コピーは可能)、しかも、1以上のコピー数で外来遺伝子を導入しても長期にわたってがん化しないという極めて優れた特性を有することが明らかになった。
〔遺伝子治療用細胞組成物〕
本発明のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞組成物は、上記のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞と、液状担体とを含む。この組成物は、例えば、LCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターを含む培養上清中で、脂肪細胞を所定時間インキュベートすることにより得られた遺伝子治療用細胞を液状担体に分散させることにより調製することができる。
本発明のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞組成物は、上記のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞と、液状担体とを含む。この組成物は、例えば、LCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターを含む培養上清中で、脂肪細胞を所定時間インキュベートすることにより得られた遺伝子治療用細胞を液状担体に分散させることにより調製することができる。
上記のLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターを含む培養上清には、前述のプロデューサー細胞から産生された、LCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターの他、LCATコードヌクレオチドを保持していないレトロウイルスベクターやLCATコードヌクレオチドを保持していても発現可能な状態では保持していないレトロウイルスベクターなどが含まれる。しかしながら、本発明の複製欠損性レトロウイルスベクターは、LCATコードヌクレオチドを発現可能な状態で保持するレトロウイルスベクターの含有割合が高く、しかも遺伝子導入効率が高いので、LCATコードヌクレオチドを保持していないレトロウイルスベクター等が混在していても、所定時間インキュベートすることで、有効量のLCATコードヌクレオチドが遺伝子導入された脂肪細胞を得ることが可能である。
LCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターを含む培養上清中で、脂肪細胞を所定時間インキュベートした後、ウイルス含有液を分離除去し、脂肪細胞群(本発明の遺伝子治療用細胞)を得、これを液状担体に分散させることにより、本発明の遺伝子治療用細胞組成物を調製することができる。本発明の遺伝子治療用細胞組成物には、LCATコードヌクレオチドが遺伝子導入された脂肪細胞だけでなく、遺伝子導入されていない脂肪細胞も含まれている。脂肪細胞は付着細胞であるため、双方の脂肪細胞を分離することは困難であるが、患者由来の脂肪細胞であれば、双方の脂肪細胞が含まれていてもよい。
液状担体としては、生理食塩水やリン酸緩衝液などを用いることができる。本発明の遺伝子治療用細胞組成物は、注射剤として用いられることが好ましい。標的細胞として取り出した脂肪細胞は、取り出した元の部位に注射によって戻すことができる。その際、本発明の遺伝子治療用細胞組成物に、コラーゲン溶液やマトリゲルなどの細胞の生着を向上させる液状物質を混合してもよい。
以上のようにして患者に投与されたLCATコードヌクレオチドが遺伝子導入された脂肪細胞は、LCAT遺伝子組換え脂肪細胞として、増殖時だけでなく、分化後も、LCATコードヌクレオチドを発現することができ、長期間にわたってLCATを分泌し続けることができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:本発明の複製欠損性レトロウイルスベクターの調製とその有用性の検討
〔ヒトLCATコードヌクレオチド修飾断片〕
ヒト肝がん細胞株であるHepG2のcDNAライブラリーから調製した配列番号1のアミノ酸配列をコードするcDNAの5’側に、コザックのコンセンサス配列を連結するか又は連結せずに、BamHI認識配列(GGATCC)を連結した。また、上記cDNAの3’側に終止コドン、場合によってBGHのPolyA配列、SalI認識配列(GTCGAC)を連結した。
〔ヒトLCATコードヌクレオチド修飾断片〕
ヒト肝がん細胞株であるHepG2のcDNAライブラリーから調製した配列番号1のアミノ酸配列をコードするcDNAの5’側に、コザックのコンセンサス配列を連結するか又は連結せずに、BamHI認識配列(GGATCC)を連結した。また、上記cDNAの3’側に終止コドン、場合によってBGHのPolyA配列、SalI認識配列(GTCGAC)を連結した。
〔脂肪細胞〕
脂肪細胞としては、CAMBREX社から購入したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(初代培養細胞、ロット番号3F0739)(以下739F細胞)を用いた。
脂肪細胞としては、CAMBREX社から購入したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(初代培養細胞、ロット番号3F0739)(以下739F細胞)を用いた。
〔プラスミド〕
図2に示す構造を有するpDON−AIベクターに適宜改変を加えて使用した。このDNAベクターのマルチクローニングサイトであるBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、調製したLCATコードヌクレオチド修飾断片を挿入した。
図2に示す構造を有するpDON−AIベクターに適宜改変を加えて使用した。このDNAベクターのマルチクローニングサイトであるBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、調製したLCATコードヌクレオチド修飾断片を挿入した。
〔培地〕
(1)脂肪細胞の増殖培地
DMEM−F12培地(シグマアルドリッチ社)に、ウシ胎児血清20%を含むものを用いた。
(2)脂肪細胞の分化培地
東洋紡社製の分化培地(cat#TMTADM250)を用いた。
(1)脂肪細胞の増殖培地
DMEM−F12培地(シグマアルドリッチ社)に、ウシ胎児血清20%を含むものを用いた。
(2)脂肪細胞の分化培地
東洋紡社製の分化培地(cat#TMTADM250)を用いた。
〔測定評価方法〕
(1)ウイルスベクタータイター
ウイルスベクター含有液から、ウイルスベクターRNAを抽出し、精製後、調製したLCATコードヌクレオチド修飾断片のヌクレオチド配列と相補性を有する下記の5’側プライマー(配列番号3)と3’側プライマー(配列番号4)を用いて、リアルタイムPCR法で、ウイルス核酸量を定量した。ウイルス核酸を含有するウイルス粒子数を単位体積あたりで表し、ウイルスベクタータイターとした。
5’側プライマー:5’−CCTGGTCAACAATGGCTACGTG−3’
3’側プライマー:5’−CCATAGGCAGCGTGCATCTC−3’
(1)ウイルスベクタータイター
ウイルスベクター含有液から、ウイルスベクターRNAを抽出し、精製後、調製したLCATコードヌクレオチド修飾断片のヌクレオチド配列と相補性を有する下記の5’側プライマー(配列番号3)と3’側プライマー(配列番号4)を用いて、リアルタイムPCR法で、ウイルス核酸量を定量した。ウイルス核酸を含有するウイルス粒子数を単位体積あたりで表し、ウイルスベクタータイターとした。
5’側プライマー:5’−CCTGGTCAACAATGGCTACGTG−3’
3’側プライマー:5’−CCATAGGCAGCGTGCATCTC−3’
(2)LCAT発現量
LCATコードヌクレオチドが遺伝子導入されたヒト脂肪細胞から、RNAを抽出し、調製したLCATコードヌクレオチド修飾断片のヌクレオチド配列と相補性を有する上記のプライマーセットを用いて、定量性リアルタイムPCR法によりLCATのmRNA量を測定した。
LCATコードヌクレオチドが遺伝子導入されたヒト脂肪細胞から、RNAを抽出し、調製したLCATコードヌクレオチド修飾断片のヌクレオチド配列と相補性を有する上記のプライマーセットを用いて、定量性リアルタイムPCR法によりLCATのmRNA量を測定した。
コントロールとして、ヒト肝臓細胞から同様にしてRNAを抽出し、上記のプライマーセットを用いて、定量性リアルタイムPCR法によりLCATのmRNA量を測定した。
ヒト肝臓細胞におけるLCATのmRNA量を1として、LCATコードヌクレオチドが遺伝子導入されたヒト脂肪細胞のLCATのmRNA量の相対比率を算出した。
ヒト肝臓細胞におけるLCATのmRNA量を1として、LCATコードヌクレオチドが遺伝子導入されたヒト脂肪細胞のLCATのmRNA量の相対比率を算出した。
〔レトロウイルス製造用プラスミドの構築〕
表1に示すような、pDON−AIベクターとLCATコードヌクレオチド修飾断片の組合せからなる、8種類のpDON−AI/hLCATプラスミド(No.1〜8)を構築した。
表1に示すような、pDON−AIベクターとLCATコードヌクレオチド修飾断片の組合せからなる、8種類のpDON−AI/hLCATプラスミド(No.1〜8)を構築した。
(1)プラスミドNo.1(比較例)
終止コドンとして、天然の終止コドン「TAA」を連結した修飾断片(以下、「天然タイプのLCAT含有断片」という)を、図2に示すpDON−AIベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に導入したもの。
(2)プラスミドNo.2(比較例)
pDON−AIベクターのSalI切断部位とXhoI切断部位の間の配列を除去することにより、G418(NEO)抗生物質耐性タンパク質発現遺伝子配列を除去したDNAベクターを使用し、このDNAベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、天然タイプのLCAT含有断片を導入したもの。
(3)プラスミドNo.3(実施例)
天然タイプのLCAT含有断片の開始コドン(ATG)の直前に、コザックのコンセンサス配列として「CCACC」を連結した修飾断片を、pDON−AIベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に導入したもの。
(4)プラスミドNo.4(実施例)
天然タイプのLCAT含有断片の開始コドン(ATG)の直前に、コザックのコンセンサス配列として「CCACC」を連結し、終止コドンを「TAA」から「TGA」に変更した修飾断片を、pDON−AIベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に導入したもの。
(5)プラスミドNo.5(実施例)
プラスミド4で使用した修飾断片の3’側に、BGHのPolyA配列を連結した修飾断片を、pDON−AIベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に導入したもの。
(6)プラスミドNo.6(実施例)
pDON−AIベクターのSalI切断部位とXhoI切断部位の間の配列を除去することにより、G418(NEO)抗生物質耐性タンパク質発現遺伝子配列を除去したDNAベクターを使用し、このDNAベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、プラスミド4で使用した修飾断片を導入したもの。
(7)プラスミドNo.7(実施例)
pDON−AIベクターのSalI切断部位とXhoI切断部位の間の配列を除去することにより、G418(NEO)抗生物質耐性タンパク質発現遺伝子配列を除去したDNAベクターを使用し、このDNAベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、天然タイプのLCAT含有断片の開始コドン(ATG)の直前に、コザックのコンセンサス配列として「CCACC」を連結した修飾断片を導入したもの。
(8)プラスミドNo.8(実施例)
pDON−AIベクターのSalI切断部位とXhoI切断部位の間の配列を除去することにより、G418(NEO)抗生物質耐性タンパク質発現遺伝子配列を除去したDNAベクターを使用し、このDNAベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、プラスミド5で使用した修飾断片を導入したもの。
終止コドンとして、天然の終止コドン「TAA」を連結した修飾断片(以下、「天然タイプのLCAT含有断片」という)を、図2に示すpDON−AIベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に導入したもの。
(2)プラスミドNo.2(比較例)
pDON−AIベクターのSalI切断部位とXhoI切断部位の間の配列を除去することにより、G418(NEO)抗生物質耐性タンパク質発現遺伝子配列を除去したDNAベクターを使用し、このDNAベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、天然タイプのLCAT含有断片を導入したもの。
(3)プラスミドNo.3(実施例)
天然タイプのLCAT含有断片の開始コドン(ATG)の直前に、コザックのコンセンサス配列として「CCACC」を連結した修飾断片を、pDON−AIベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に導入したもの。
(4)プラスミドNo.4(実施例)
天然タイプのLCAT含有断片の開始コドン(ATG)の直前に、コザックのコンセンサス配列として「CCACC」を連結し、終止コドンを「TAA」から「TGA」に変更した修飾断片を、pDON−AIベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に導入したもの。
(5)プラスミドNo.5(実施例)
プラスミド4で使用した修飾断片の3’側に、BGHのPolyA配列を連結した修飾断片を、pDON−AIベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に導入したもの。
(6)プラスミドNo.6(実施例)
pDON−AIベクターのSalI切断部位とXhoI切断部位の間の配列を除去することにより、G418(NEO)抗生物質耐性タンパク質発現遺伝子配列を除去したDNAベクターを使用し、このDNAベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、プラスミド4で使用した修飾断片を導入したもの。
(7)プラスミドNo.7(実施例)
pDON−AIベクターのSalI切断部位とXhoI切断部位の間の配列を除去することにより、G418(NEO)抗生物質耐性タンパク質発現遺伝子配列を除去したDNAベクターを使用し、このDNAベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、天然タイプのLCAT含有断片の開始コドン(ATG)の直前に、コザックのコンセンサス配列として「CCACC」を連結した修飾断片を導入したもの。
(8)プラスミドNo.8(実施例)
pDON−AIベクターのSalI切断部位とXhoI切断部位の間の配列を除去することにより、G418(NEO)抗生物質耐性タンパク質発現遺伝子配列を除去したDNAベクターを使用し、このDNAベクターのBamHI切断部位とSalI切断部位との間に、プラスミド5で使用した修飾断片を導入したもの。
〔プラスミドのパッケージング細胞へのトランスフェクション及び組換えレトロウイルスベクターの生産〕
上記で構築したプラスミドNo.1〜8のそれぞれについて、遺伝子導入試薬:Calcium Phosphate Transfection Kit (invitrogen,cat#44−0052)を用い、本キットに添付の取扱説明書に従って各種プラスミド(5μg)との混合液(0.32mL)No.1〜8を調製した。
1.7×106個のパッケージング細胞(AmphoPack293細胞、BD cat#631505)を60mmディッシュに播種し、37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した後、最終濃度25μMとなるように、クロロキンを培養液中に添加し、さらに1時間培養後、上記で調製したプラスミド混合液を滴下してさらに12時間培養した。その後、新鮮な培地に交換し、さらに24時間培養した。300×g、室温で5分間遠心後の培養上清を0.45μmのフィルターでろ過し、得られたろ液をウイルスベクター含有液として、使用するまで−80℃で保存した。QIAamp Viral RNA Mini Kit(QIAGEN、cat#52904)でウイルスベクター含有液の一部からウイルスベクター含有液中のウイルスRNAを精製し、上述の方法に従って、ウイルスベクタータイターを求めた。測定結果を表1にまとめて示す。
上記で構築したプラスミドNo.1〜8のそれぞれについて、遺伝子導入試薬:Calcium Phosphate Transfection Kit (invitrogen,cat#44−0052)を用い、本キットに添付の取扱説明書に従って各種プラスミド(5μg)との混合液(0.32mL)No.1〜8を調製した。
1.7×106個のパッケージング細胞(AmphoPack293細胞、BD cat#631505)を60mmディッシュに播種し、37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した後、最終濃度25μMとなるように、クロロキンを培養液中に添加し、さらに1時間培養後、上記で調製したプラスミド混合液を滴下してさらに12時間培養した。その後、新鮮な培地に交換し、さらに24時間培養した。300×g、室温で5分間遠心後の培養上清を0.45μmのフィルターでろ過し、得られたろ液をウイルスベクター含有液として、使用するまで−80℃で保存した。QIAamp Viral RNA Mini Kit(QIAGEN、cat#52904)でウイルスベクター含有液の一部からウイルスベクター含有液中のウイルスRNAを精製し、上述の方法に従って、ウイルスベクタータイターを求めた。測定結果を表1にまとめて示す。
〔遺伝子導入脂肪細胞の製造〕
1.5×104個の739F細胞を24ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した。翌日、ウイルスベクター含有液を培地へ加え、さらに最終濃度が4μg/mLとなるようポリブレンを添加し、12時間培養後、新鮮な培地に交換し、48時間培養して、739F細胞に対するウイルスベクターの接種を行った。
1.5×104個の739F細胞を24ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した。翌日、ウイルスベクター含有液を培地へ加え、さらに最終濃度が4μg/mLとなるようポリブレンを添加し、12時間培養後、新鮮な培地に交換し、48時間培養して、739F細胞に対するウイルスベクターの接種を行った。
培養後、培地を吸引除去し、細胞をPBSで洗浄後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN、cat#74104)を用いて細胞よりRNAを抽出し、上述の方法に従って、LCATの発現量(増殖時)を測定した。
一方、培養後、培地を吸引除去し、細胞に分化培地を1mL添加し、37℃、5%CO2の条件下で14日間培養した。培地を吸引除去し、細胞をPBSで洗浄後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN,cat#74104)を用いて細胞よりRNAを抽出し、上述の方法に従って、LCATの発現量(分化後)を測定した。
増殖時及び分化後のコントロールに対する発現量比率を算出した結果を、表1に示す。
表1からわかるように、コザックのコンセンサス配列を有するプラスミドの方がLCATコードヌクレオチドを保持するレトロウイルスベクターの産生量が高く、さらには選択マーカーを有しない方が生産量が高いことがわかる。また、終止コドンは、「TAA」でも「TGA」でもよい。
増殖時及び分化後のコントロールに対する発現量比率を算出した結果を、表1に示す。
表1からわかるように、コザックのコンセンサス配列を有するプラスミドの方がLCATコードヌクレオチドを保持するレトロウイルスベクターの産生量が高く、さらには選択マーカーを有しない方が生産量が高いことがわかる。また、終止コドンは、「TAA」でも「TGA」でもよい。
実施例2:本発明の遺伝子治療用細胞の有用性の検討(その1)
C57BL6マウスから皮下脂肪組織を採取し、Differentiation(1986)31:42−49に従った天井培養法(以下同じ)によりマウス前脂肪細胞を単離培養した。マウス前脂肪細胞に対し、約1コピー/細胞となるように、実施例1のプラスミドNo.6を用いて調製したヒトLCATコードヌクレオチドを保持するレトロウイルスベクターを用いてヒトLCAT遺伝子を導入した。導入後21日目に細胞を回収し、回収した細胞を1×105個/bodyにてC57BL6由来のLCATノックアウトマウス(THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol.272,No.25,Issue of June 20,pp.15777−15781,1997)の背部の脂肪組織内に注射して投与した。細胞投与前と投与後1週間目に血液を採取し、その血清の総コレステロール値とHDL−コレステロール値をHPLC法によって測定した。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本発明の遺伝子治療用細胞を投与することで、LCATノックアウトマウスの総コレステロール値とHDL−コレステロール値が上昇したことから、本発明の遺伝子治療用細胞を用いれば、LCATノックアウトマウスの体内でヒトLCATを発現させることができることがわかった。
C57BL6マウスから皮下脂肪組織を採取し、Differentiation(1986)31:42−49に従った天井培養法(以下同じ)によりマウス前脂肪細胞を単離培養した。マウス前脂肪細胞に対し、約1コピー/細胞となるように、実施例1のプラスミドNo.6を用いて調製したヒトLCATコードヌクレオチドを保持するレトロウイルスベクターを用いてヒトLCAT遺伝子を導入した。導入後21日目に細胞を回収し、回収した細胞を1×105個/bodyにてC57BL6由来のLCATノックアウトマウス(THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol.272,No.25,Issue of June 20,pp.15777−15781,1997)の背部の脂肪組織内に注射して投与した。細胞投与前と投与後1週間目に血液を採取し、その血清の総コレステロール値とHDL−コレステロール値をHPLC法によって測定した。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本発明の遺伝子治療用細胞を投与することで、LCATノックアウトマウスの総コレステロール値とHDL−コレステロール値が上昇したことから、本発明の遺伝子治療用細胞を用いれば、LCATノックアウトマウスの体内でヒトLCATを発現させることができることがわかった。
実施例3:本発明の遺伝子治療用細胞の有用性の検討(その2)
C57BL6マウスから皮下脂肪組織を採取し、天井培養法によりマウス前脂肪細胞を単離培養した。マウス前脂肪細胞に対し、低コピー群(約1コピー/細胞)と高コピー群(約5コピー/細胞)となるように、実施例1のプラスミドNo.6を用いて調製したヒトLCATコードヌクレオチドを保持するレトロウイルスベクターを用いてヒトLCAT遺伝子を導入した。導入後28日目に細胞を回収し、回収した細胞を5×106個/bodyにて別のC57BL6マウスの背部の脂肪組織内に注射して投与した。細胞投与後2週間目に血液を採取し、その血清を抗ヒトLCAT抗体にて免疫沈降させた後、ウエスタンブロット法により、血液中のヒトLCATを検出した。結果を図3に示す。図3から明らかなように、使用した抗体はマウスLCATも認識するため、ウエスタンブロットではマウスLCATのバンドが認められるが、低コピー群でも低コピー群でも、その下側にヒトLCATのバンドが認められたことから、本発明の遺伝子治療用細胞を用いれば、マウスの体内でヒトLCATを発現させることができることがわかった。
C57BL6マウスから皮下脂肪組織を採取し、天井培養法によりマウス前脂肪細胞を単離培養した。マウス前脂肪細胞に対し、低コピー群(約1コピー/細胞)と高コピー群(約5コピー/細胞)となるように、実施例1のプラスミドNo.6を用いて調製したヒトLCATコードヌクレオチドを保持するレトロウイルスベクターを用いてヒトLCAT遺伝子を導入した。導入後28日目に細胞を回収し、回収した細胞を5×106個/bodyにて別のC57BL6マウスの背部の脂肪組織内に注射して投与した。細胞投与後2週間目に血液を採取し、その血清を抗ヒトLCAT抗体にて免疫沈降させた後、ウエスタンブロット法により、血液中のヒトLCATを検出した。結果を図3に示す。図3から明らかなように、使用した抗体はマウスLCATも認識するため、ウエスタンブロットではマウスLCATのバンドが認められるが、低コピー群でも低コピー群でも、その下側にヒトLCATのバンドが認められたことから、本発明の遺伝子治療用細胞を用いれば、マウスの体内でヒトLCATを発現させることができることがわかった。
実施例4:ヒトLCAT遺伝子導入マウス前脂肪細胞の移植によるマウスのがん化の検討
実施例3において本発明の遺伝子治療用細胞を投与したC57BL6マウスの一般状態を毎日観察し、体重および摂餌量を1〜2週間に1度測定した。また、週に1度、移植部位付近を触診にて腫瘤の有無を確認した。細胞投与から1年後に剖検し、各臓器の重量、血液学的検査、各臓器、組織の肉眼所見および病理組織学的検査を行った結果、ヒトLCAT遺伝子の導入コピー数にかかわらず、異常は認められなかった。従って、脂肪細胞は、外来遺伝子のコピー数で1以上であっても長期にわたってがん化しないという極めて優れた特性を有することがわかった。
実施例3において本発明の遺伝子治療用細胞を投与したC57BL6マウスの一般状態を毎日観察し、体重および摂餌量を1〜2週間に1度測定した。また、週に1度、移植部位付近を触診にて腫瘤の有無を確認した。細胞投与から1年後に剖検し、各臓器の重量、血液学的検査、各臓器、組織の肉眼所見および病理組織学的検査を行った結果、ヒトLCAT遺伝子の導入コピー数にかかわらず、異常は認められなかった。従って、脂肪細胞は、外来遺伝子のコピー数で1以上であっても長期にわたってがん化しないという極めて優れた特性を有することがわかった。
ex vivo遺伝子治療用のレトロウイルスベクターは、例えば、マウス由来のレトロウイルスを基にベクター骨格が構成されているが、マウス由来のレトロウイルスの外膜タンパク質はecotropicであることから、このままではヒトの標的細胞に接種しても目的の外来遺伝子を当該細胞に導入することができない。そのため、外膜タンパク質の発現遺伝子をヒトにも感染する遺伝子に代替されていることが多い。最も多用されているのは、amphotropicな外膜タンパク質の発現遺伝子としてのampho遺伝子である。
実施例3:本発明の遺伝子治療用細胞の有用性の検討(その2)
C57BL6マウスから皮下脂肪組織を採取し、天井培養法によりマウス前脂肪細胞を単離培養した。マウス前脂肪細胞に対し、低コピー群(約1コピー/細胞)と高コピー群(約5コピー/細胞)となるように、実施例1のプラスミドNo.6を用いて調製したヒトLCATコードヌクレオチドを保持するレトロウイルスベクターを用いてヒトLCAT遺伝子を導入した。導入後28日目に細胞を回収し、回収した細胞を5×106個/bodyにて別のC57BL6マウスの背部の脂肪組織内に注射して投与した。細胞投与後2週間目に血液を採取し、その血清を抗ヒトLCAT抗体にて免疫沈降させた後、ウエスタンブロット法により、血液中のヒトLCATを検出した。結果を図3に示す。図3から明らかなように、使用した抗体はマウスLCATも認識するため、ウエスタンブロットではマウスLCATのバンドが認められるが、低コピー群でも高コピー群でも、その下側にヒトLCATのバンドが認められたことから、本発明の遺伝子治療用細胞を用いれば、マウスの体内でヒトLCATを発現させることができることがわかった。
C57BL6マウスから皮下脂肪組織を採取し、天井培養法によりマウス前脂肪細胞を単離培養した。マウス前脂肪細胞に対し、低コピー群(約1コピー/細胞)と高コピー群(約5コピー/細胞)となるように、実施例1のプラスミドNo.6を用いて調製したヒトLCATコードヌクレオチドを保持するレトロウイルスベクターを用いてヒトLCAT遺伝子を導入した。導入後28日目に細胞を回収し、回収した細胞を5×106個/bodyにて別のC57BL6マウスの背部の脂肪組織内に注射して投与した。細胞投与後2週間目に血液を採取し、その血清を抗ヒトLCAT抗体にて免疫沈降させた後、ウエスタンブロット法により、血液中のヒトLCATを検出した。結果を図3に示す。図3から明らかなように、使用した抗体はマウスLCATも認識するため、ウエスタンブロットではマウスLCATのバンドが認められるが、低コピー群でも高コピー群でも、その下側にヒトLCATのバンドが認められたことから、本発明の遺伝子治療用細胞を用いれば、マウスの体内でヒトLCATを発現させることができることがわかった。
Claims (10)
- 複製欠損性レトロウイルスベクター産生用プラスミドであって、レトロウイルス由来の5’側のLTR配列と3’側のLTR配列の間に、外来遺伝子としてレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)をコードするヌクレオチド(以下、「LCATコードヌクレオチド」という)配列が挿入され、かつ、前記LCATコードヌクレオチド配列の5’側にコザックのコンセンサス配列及び前記レトロウイルスのパッケージングシグナル配列が連結されていることを特徴とするプラスミド。
- 前記コザックのコンセンサス配列は、LCATの1番目のアミノ酸(Met)をコードするコドン(ATG)の直前に連結されている請求項1に記載のプラスミド。
- 前記コザックのコンセンサス配列は、「CCACC」又は「GCACC」である請求項1に記載のプラスミド。
- さらに、LCATコードヌクレオチド配列の3’側に、終止コドンとして、「TGA」が連結されている請求項1に記載のプラスミド。
- 遺伝子として、レトロウイルス由来のLTR配列を1組有し、5’側のLTR配列と3’側のLTR配列の間に、前記レトロウイルスのパッケージングシグナル配列、コザックのコンセンサス配列、LCATコードヌクレオチド配列及び終止コドンを、5’側からこの順序で有していることを特徴とする複製欠損性レトロウイルスベクター。
- 前記コザックのコンセンサス配列は、「CCACC」又は「GCACC」であって、前記LCATコードヌクレオチド配列における開始コドンの直前に連結されている請求項5に記載の複製欠損性レトロウイルスベクター。
- LCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターの産生方法であって、請求項1に記載のプラスミドを、gag遺伝子、pol遺伝子、及びampho遺伝子を少なくとも含むレトロウイルスの構造遺伝子を発現させることができるパッケージング細胞にトランスフェクトすることで調製したプロデューサー細胞をインキュベートする工程を含むことを特徴とする産生方法。
- 請求項1に記載のプラスミドを、gag遺伝子、pol遺伝子、及びampho遺伝子を少なくとも含むレトロウイルスの構造遺伝子を発現させることができるパッケージング細胞にトランスフェクトすることで調製したプロデューサー細胞をインキュベートすることにより得られるLCATコードヌクレオチドを保持する複製欠損性レトロウイルスベクターを接種することでLCATコードヌクレオチドが遺伝子導入された脂肪細胞を含むことを特徴とするLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞。
- 請求項8に記載のLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞と、液状担体とを含むことを特徴とするLCAT欠損症の遺伝子治療用細胞組成物。
- 外来遺伝子が1以上のコピー数で導入され、かつ、導入から少なくとも12ヶ月以内に肉眼所見においてがん化が認められない遺伝子治療用細胞を産生するために脂肪細胞を使用することを特徴とする方法。
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