JPH11511651A - 遺伝子治療に特に適した改良型レトロウイルスベクター - Google Patents

遺伝子治療に特に適した改良型レトロウイルスベクター

Info

Publication number
JPH11511651A
JPH11511651A JP8533963A JP53396396A JPH11511651A JP H11511651 A JPH11511651 A JP H11511651A JP 8533963 A JP8533963 A JP 8533963A JP 53396396 A JP53396396 A JP 53396396A JP H11511651 A JPH11511651 A JP H11511651A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
cells
vector
virus
vector according
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8533963A
Other languages
English (en)
Inventor
フォーゲルス、ロナルド
ヨゼフス ベルナルドゥス ボーセン、ヨハネス
エス、ヘルムス ヘンドリクス ジェラルドゥス ファン
ボーセヘム、フィクトル ウィレム ファン
ファレリオ、ドメニコ
Original Assignee
イントロヘーネ ベスローテン フェンノートシャップ
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by イントロヘーネ ベスローテン フェンノートシャップ filed Critical イントロヘーネ ベスローテン フェンノートシャップ
Publication of JPH11511651A publication Critical patent/JPH11511651A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/85Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for animal cells
    • C12N15/86Viral vectors
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N7/00Viruses; Bacteriophages; Compositions thereof; Preparation or purification thereof
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K48/00Medicinal preparations containing genetic material which is inserted into cells of the living body to treat genetic diseases; Gene therapy
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2740/00Reverse transcribing RNA viruses
    • C12N2740/00011Details
    • C12N2740/10011Retroviridae
    • C12N2740/13011Gammaretrovirus, e.g. murine leukeamia virus
    • C12N2740/13023Virus like particles [VLP]
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2740/00Reverse transcribing RNA viruses
    • C12N2740/00011Details
    • C12N2740/10011Retroviridae
    • C12N2740/13011Gammaretrovirus, e.g. murine leukeamia virus
    • C12N2740/13041Use of virus, viral particle or viral elements as a vector
    • C12N2740/13043Use of virus, viral particle or viral elements as a vector viral genome or elements thereof as genetic vector
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2840/00Vectors comprising a special translation-regulating system
    • C12N2840/20Vectors comprising a special translation-regulating system translation of more than one cistron
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2840/00Vectors comprising a special translation-regulating system
    • C12N2840/20Vectors comprising a special translation-regulating system translation of more than one cistron
    • C12N2840/203Vectors comprising a special translation-regulating system translation of more than one cistron having an IRES

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 本発明は分子生物学、とくに好ましくは組換えDNA技術、とくにはレトロウイルスベクターに係る組換えDNA技術に関する。レトロウイルスは、いわゆる遺伝子治療法において、目的遺伝子材料をある細胞に移すために適したビヒクルである。しかしながら、従来に記載されたレトロウイルスベクターは理想的ではない。前記ベクターは組換えを起こしてヘルパー(病原性)ウイルスを生じうるし、免疫応答などを招くウイルス性のタンパク質材料を発現しうる。これらおよびそのほかの欠点は本発明のベクター、細胞、キットおよび方法により、レトロウイルス由来の、エンハンサーを含む、転写制御にかかわる配列からなるベクターであって、該ベクターはさらに少なくとも1つの目的遺伝子の挿入部位およびパッケージングシグナルからなり、該ベクターは不必要なレトロウイルス配列をもたずウイルスタンパク質の少なくとも一部をコードするオープンリディングフレームをもたない、エンハンサーは未分化細胞において活性なエンハンサーであることを特徴とするベクターを提供することによって克服される。

Description

【発明の詳細な説明】 遺伝子治療に特に適した改良型 レトロウイルスベクター 本発明は、遺伝子治療の方法に特に有用な改良型レトロウイルスベクターに関 する。さらに本発明は、適当なパッケージング細胞系と組み合わせた該ベクター 、該組み合わせを用いて産生することができるウイルス様粒子、並びに該ウイル ス様粒子を用いて目的の遺伝情報を細胞に提供する方法に関する。 レトロウイルスにもとづくベクターは、哺乳類細胞において、外来遺伝子の安 定な組込み遺伝子転移を行なうのに極めて好適な手段である。特に遺伝子治療の 分野において、それらの使用はかなりの注目を集めている。レトロウイルスにも とづくベクターは、生体外遺伝子転移法と生体内遺伝子転移法の両方に使用され ており、培養内もしくは実験動物及びヒトの生体内で、外来遺伝子の長期発現を もたらす能力を持つことが示された。 (安全な)遺伝子治療のためのレトロウイルスベクター系は、2つの構成単位 、すなわち、形質導入しようとする遺伝情報とウイルスゲノムのパッケージング 及び組込みに必要な要素の全てとをシスに(in cis)保持する組換えレトロウイ ルスベクター と、gag、 pol及びenv遺伝子によってコードされるウイルスタンパ ク質を提供するレトロウイルスパッケージング細胞とからなる。生存可能なウイ ルス粒子を産生するには、これらのポリペプチドがトランスに(in trans)位置 する必要があるが、 これらだけでは、パッケージング細胞は感染性ウイルス粒子を放出することがで きない。したがって、組換えベクターで形質導入されたパッケージング細胞は、 前記ベクターに含まれる遺伝情報を保持する組換えレトロウイルスを生成するだ ろう。次に、これらのウイルスを用いて細胞を形質導入すれば、その細胞内で、 組換え物質は天然のレトロウイルス生活環に従って組込まれるだろう。本発明は 、その一側面として、これまでに記述されたベクターに比べて改善された特徴を 持つ組換えベクターに関する。 非病原性レトロウイルスに基づき、動物における長期発現を可能にする性質を 持つ組換えウイルスの好ましい設計は、既に記述されている(Valerioら,1989; 国際特許出願WO9307281)。これらの構築物では、目的遺伝子がウイルスのロン グターミナルリピート(long terminal repeat(LTR))の制御下にある。好まし いLTRでは、レトロウイルスエンハンサーが、胚性癌(EC)細胞などの未分化細 胞中で活性なエンハンサーに置換されている。その一例は、未分化EC細胞で増殖 するように選択されたポリオーマウイルス突然変異体(PyF101)のエンハンサー である。これは、そのエンハンサーに、原始的な細胞中の異種プロモーターの活 性を許容するような突然変異をもたらす。エンハンサーがPyF101エンハンサーで 置換されたモロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)系LTRは、ΔMo+PyF101と呼 ばれている。ΔMo+PyF101-LTRを保持する複製コンピテントウイルスは、疾患を 生じることなく、新生マウスにウイルス血症を引き起こすことができるので、Δ Mo+PyF101保持ベクターの特性は、モロニ ーマウス白血病ウイルス、脊髄増殖性肉腫ウイルス又はハーヴェーマウス肉腫ウ イルス(Davisら,1985)のような、一般的に使用されている疾患誘発性ウイル スのウイルス骨格に基づくベクターよりも優れている。 ΔMo+PyF101系レトロウイルスベクターを用いた研究により、本発明者らは、 これらのベクターが、マウス、ヒト以外の霊長類及びヒトの一次造血幹細胞に遺 伝子を導入する能力を持つとの結論を得た。このような修飾幹細胞を移植すると 、形質導入された遺伝子の持続的な発現が、分析した全ての造血細胞系に観測さ れ、遺伝子転移に関連する毒性は何も認められなかった(Einerhandら,1991;V an Beusechemら,1990,1992,1993,1994及び1995)。これらの結果に基づき、 アデノシンデアミナーゼが遺伝的に欠損している3人の患者の造血幹細胞を治療 することを目的とする、ヒトにおける世界初の臨床的遺伝子治療試験が、正常型 ヒトアデノシンデアミナーゼ遺伝子の正しいバージョンを保持する前記のレトロ ウイルスベクターを用いて行われた(Hoogerbruggeら,1995)。 前記のベクターは好ましい特徴を数多く持つが、それでもなお、遺伝子治療製 品としてのその総合的な有用性は、元の設計のいくつかの制約から、制限される だろう。 それらの欠点を明らかにし、それらの欠点を改善することが、本発明の一側面 である。組換えベクターのそれら欠点を次に挙げる: 1)組換えウイルスの効率のよいパッケージングに寄与せず、形質導入すべき遺 伝子に利用できる領域を制限 し、しかも、産生細胞の生成中にヘルパーウイルスの産生を引き起こしうる組換 え事象の危険性を増大させる、不必要なレトロウイルス配列の存在。 2)望ましくない免疫応答を引き起こす先端欠失型ウイルスタンパク質の翻訳を もたらす可能性があり、しかも、相同なgag配列を保持するパッケージング細胞 においてヘルパーウイルスが生成する可能性を増大させるであろう、gagオープ ンリーディングフレームの存在。 3)空間を制限し、遺伝子発現及び/又はメッセンジャーの安定性に悪影響を及 ぼしうる、目的遺伝子の不必要な非コーディング配列の存在。 4)インビトロ及びインビボ発現は、組込み部位による影響をも受ける(例えば Einerhandら,1993)ので、変化しやすい。特異的境界要素(specific boundary elements)(Chungら,1993)や遺伝子座制御領域(Locus Control Regions) (Grosveldら,1987;Greavesら,1989/WO 9101329)など、部位独立的発現を制 御しうる要素の包含が提案されているが、それらは転位の原因であることが示さ れている(例えばNovakら,1990)。 5)ウイルス構築物内に含まれる配列が、望ましくない潜在性スプライス部位と して機能し、異常型RNA分子のパッケージングと発現をもたらすことがある(例 えばMcIvorら,1987; Sorrentinoら,1993)。 6)好ましいベクター構成において、目的遺伝子がウイルスLTRの転写制御下に あるとすると、2つ以上の遺伝子の発現は、ビシストロン(bicistronic)メッ セ ンジャーによって、もしくは融合タンパク質の形態でしか、達成することができ ない。現在使用されているシストロン間配列はウイルス由来であり(Pelletier and Sonenberg,1988; Jangら,1988)、それらは一般に大きくて多数の二次構 造を含有し、それが、それらを本発明の合成シストロン間配列よりも好ましくな いものにしている。 1)と2)に述べた問題は、先行技術において、LN系列と名づけられたベク ター(Miller及びRosman,1989)で解決されているが、このLN系ベクターが利 用できるようになってから公表されたレトロウイルスに関する研究は数多くある にもかかわらず、本発明者らが知る限り、それらが、ΔMo+PyF101またはその他 のエンハンサー置換LTRと共に、構築物に使用されることはなかった。 本発明は、前記の欠点を改善する基本ベクターとその誘導体を開示する。 すなわち本発明は、その一側面として、レトロウイルス由来の、エンハンサー を含む、転写制御にかかわる配列からなるベクターであって、該ベクターはさら に少なくとも1つの目的遺伝子の挿入部位およびパッケージングシグナルからな り、該ベクターは不必要なレトロウイルス配列をもたず、ウイルスタンパク質の 少なくとも一部をコードするオープンリーディングフレームをもたない、少なく とも1つのエンハンサーが未分化細胞において活性なエンハンサーであることを 特徴とするベクターを提供する。 本発明のベクターは、前記のいわゆるLNベクターの利点をすべて持つばかり でなく、物質を未分化細胞中に 機能的に転移させるために使用することができ、かつ、その機能が分化その他の 過程で常に維持されるという、さらなる利点をも持つ。本発明エンハンサーを含 む修飾LTRは、有意な病原性を持つウイルスを生じさせる能力をもたないことが 好ましい。ΔMo+PyF101エンハンサーはそのようなエンハンサーの良い例であり 、本発明の好ましい態様である。ただし当業者は、本発明の開示に基づき、同様 に好適な他のエンハンサーを設計することができるだろう。本発明のベクターを 設計するにあたって、当業者は、必要に応じて本発明の概念を修正することがで きるだろう。したがって、本願の定義が広義に解釈されるべきであることは明ら かだろう。例えば、遺伝子は、細胞中に形質導入される任意のDNA様物質と解さ れる。したがって、非コーディング領域やcDNAもこの定義に含まれる。同様の定 義には、同様の範囲を与えられるべきである。当業者は、今や、上に挙げた問題 又は欠点に関わる研究をすることもできる。なぜなら、本発明によってそれらが 明らかになったからには、ほとんどの場合、その解決は自明だからである。例え ば、ウイルス配列が潜在性スプライス部位を含有しうるという点に問題があるこ とが明らかになったのだから、当業者は、そのような部位についてウイルス配列 を調べ、それを削除したり、突然変異させたりすることができる。このことは、 当然、目的遺伝子の非翻訳部分についてもあてはまる。当業者は、今や、そのよ うな翻訳されない不必要な配列を同定し、目的遺伝子からそれらを除去すること ができるのである。 3で割り切れるいくつかの塩基を持つ短いシストロン 間リンカー塩基対を提供することによって得られる利点は、当業者には明白であ る。 請求の範囲と本明細書に定義する本発明のベクターのその他の特徴は、単独で 、もしくは組み合わせることによって、明らかに先行技術より有利な結果をもた らす。それらのうち、本明細書に明示しないものは、当業者には明らかなもので ある。 当然ながら、本発明の最終的な目的は、(特に遺伝子治療との関連で)一定の 細胞亜集団に補助的な遺伝物質を提供する安全で実施可能な系を提供することに ある。 本発明ベクターを効率よく転移させるためには、通常、それらをウイルス様感 染性粒子に入れて提示する必要がある。そのような粒子を提供するには、当然、 パッケージングシグナルがそのベクター上に存在する必要がある。そのようなパ ッケージングシグナルは、機能的なもの(すなわちパッケージング物質に作用す るもの)であるなら何でもよい。パッケージング物質は、通常、そのベクターを 取り込ませる細胞によって提供されるだろう。該パッケージング物質は、当然、 本発明ベクターのパッケージングに関して機能的でなければならない。最も論理 的で最も好ましい組み合わせは、レトロウイルスパッケージングシグナルと、パ ッケージングに必要なレトロウイルスタンパク質を構成的に産生する細胞(いわ ゆるパッケージング細胞系)の組み合わせである。これら二成分の考えうる数多 くの組み合わせは(部分のキット)、当然、本発明の一部である。 積極的(positive mode)遺伝子治療と消極的(negative mode)遺伝子治療は 共に、本発明のベクターを用い て実現することができる。本願において積極的遺伝子治療とは、例えば血友病を 治療するために、第VIII因子をコードする遺伝子を造血細胞に提供するなど、あ る細胞群の欠損症であってその細胞の少なくともいくつかにその欠損症を除去す ることができる遺伝子を提供することによって治療しうる欠損症のことをいうも のとする。本願でいう消極的遺伝子治療としては、その部分集合から得られる少 なくともいくつかの細胞に遺伝物質を導入することによる、ある個体内の細胞の 部分集合の機能的な除去が挙げられる。腫瘍細胞用の自殺遺伝子がその例である 。 特定の実施態様の説明 一側面として、本発明は、いくつかの共通する基本的特徴を持ち、パッケージ ング細胞にトランスフェクションすれば、感染性の組換えウイルス粒子を効率よ く産生するために使用できる、数種類のレトロウイルスベクターに関する。以下 、本発明ベクターの基本的態様を説明すると共に、本発明に包含されるいくつか の好ましいレトロウイルスベクターに特有な特徴を、それらの応用例と共に記述 する。 本レトロウイルスベクターは、パッケージングシグナルの一部を含む5′LTR、 好ましくはモロニーマウス肉腫ウイルス由来のもの(MoMSV塩基1から541まで; 番号付けはVan Beverenら,1985に従う)を含有する。パッケージングシグナル の残りの部分は、好ましくは、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV塩基566か ら1038まで)に由来し、そのgagコーディングドメインの開始コドン は終止コドンに突然変異していることが好ましい(Miller及びRosman,1989)。 このLTRと点突然変異を持つ延長されたパッケージングシグナルとは、全体とし て、標的細胞におけるウイルスタンパク質の産生を伴うことなく、組換えウイル スの効率のよいパッケージングを保証する。また、MoMSV LTRと、PA317やPG13の ようなパッケージング細胞で一般的に使用されるパッケージング構築物(MoMLV LTR)の5′部分との間の配列相同性が減少していることは、構築物間での組換 えの可能性を減じ、したがって、ヘルパーウイルス生成の可能性を減じることに なる。5′LTRの下流にあるスプライス・ドナー部位は、目的遺伝子のすぐ上流に あるスプライス・アクセプター部位と共同して、スプライシングが起こる場合に は、目的遺伝子の翻訳を増大させる。レトロウイルスベクターの組換えの可能性 をさらに減じるため、ベクターは、前記のパッケージング細胞系で使用されるen v構築物の3′末端と重複する部分を含有しない。このような構築物もまた好ま しい実施態様である。 好ましい特徴をすべて持つそのベクター(図1に示す)は、5′及び3′LTR 、gagコーディング領域内に達するパッケージングシグナル、及び1つ又はそれ 以上の目的遺伝子を挿入するためのポリクローニング部位を含有するので、本発 明のレトロウイルスベクターが満たすべき基本的必要条件を満たす。 もう1つの好ましい実施態様として、パッケージング機能が失われないように gagコーディング配列(の一部)を削除することにより、前記の基本的レトロウ イルスベクターを改変する。そのようなベクターは、複製コンピ テントレトロウイルスをもたらし得るパッケージング細胞内での組換え事象の確 率を、さらに減少させる。したがってこれは、レトロウイルスベクターの総合的 な安全性を向上させる。 本発明は、より効率のよい転写と翻訳を可能にするため、この基本的レトロウ イルスベクターのさらなる改良をも開示する。第1に、共通コザック(Kozak) 配列を目的遺伝子のATG付近に導入することにより、その遺伝子の翻訳を改善す る。第2に、3′LTR中のウイルスエンハンサーを、F9胚性癌細胞での活性につ いて特に選択されたエンハンサーであって(Linneyら,1984)、造血幹細胞と初 期造血先祖細胞でのプロモーター不活化に対する感受性が、野生型MoMLVエンハ ンサーより低いことが知られている(Valerioら,1989; Van Beusechemら,1990 )突然変異型ポリオーマウイルスエンハンサーで置換する。野生型MoMLVエンハ ンサーを前記ポリオーマエンハンサーで置換することによって生じるもう1つの 利点は、その結果生じるΔMo+PyF101 LTRが、マウス白血病ウイルスを非病原性 ウイルスにするということである(Davisら,1985)。一回複製すると、3′LTR のU3領域に含まれるこの変異が5′LTRにも転移するので、この変異はプロウイ ルス配列の両LTR中に存在することになる。 その結果、アンホトロピックパッケージング細胞系の感染後に、ΔMo+PyF101 LTRに含まれるパッケージング構築物との配列相同性は、wtMoLVエンハンサーを 持つLTRに比べて少なくなる。 標的細胞での発現を向上させるためのさらなる改良に は、次に挙げるものがある: −遺伝子座制御配列(LCR)(例えばT細胞における制御された高発現のためのC D2 LCR)の挿入(実施例5を参照のこと)。 −(好ましくはジシストロン転写単位内の第2遺伝子としての)選択可能マーカ ーの挿入。選択遺伝子には、インビトロでの効率の良い選択を可能にするネオマ イシンr遺伝子、ヒグロマイシンr遺伝子、蛍光タンパク質をコードする遺伝子又 は生物学的に不活性な膜貫通分子をコードする遺伝子がある。また、多剤耐性( Multi Drug Resistance;MDR-1、実施例2及び3を参照のこと)、UDP-グルクロ ノシルトランスフェラーゼ、チミジル酸シンセターゼ、小管多重特異性有機アニ オン運搬体(canalicular Multispecific Organic Anion Transporter)、γ−グ ルタミルシステインシンセターゼなどのヒト遺伝子及びそれら遺伝子の生物学的 に活性な突然変異体(ただしこれらに限らない)などといった、インビボでの転 移遺伝子(transgene)の選択をも可能にする選択マーカーも含めることができ る。 −標的細胞中に組込まれたプロウイルスの発現に影響を及ぼすことができる追加 の(調節)配列、例えば境界要素及び/又は(組識特異的)プロモーター又はエ ンハンサー。 本発明で記述するレトロウイルスベクターの好ましい(又はさらなる)特徴に は、次に挙げるものがある: −最大限のRNA安定性と翻訳に必要な5′及び3′非翻訳配列を全く、もしくは 最低限にしか含まない目的遺 伝子。 −2つのコーディング領域が、第2遺伝子の開始コドン上でのリボソーム複合体 の効率のよい再開始を可能にする短い非コーディングリンカーで分離されている 、ジシストロン転写単位。この非コーディングリンカーは様々な長さを持ちうる が、ATG配列や、RNA内に強固な二次構造を形成させる配列を含まない。翻訳効率 を最大にするには、シストロン間の長さが3の倍数であって、第1遺伝子の終止 コドンと第2遺伝子の開始コドンのオープンリーディングフレームが一致するこ とが好ましい。レトロウイルスベクターpLecの構築 レトロウイルスベクターpLXSN(Miller及びRosman,1989)をNheIで消化し、 ウイルス配列を含有するその挿入物を、NheIによる消化後にpSFG-tpa(R.Mulli gan及びI.Riviere,Whitehead Institute for Biomedical Research,マサチュ ーセッツ州ケンブリッジ)から得たベクター骨格pUC19に連結した。得られた構 築物(pLXSN19と命名)をBamHI消化し、その末端をクレノウ酵素で充填した。そ の酵素を除去した後、そのDNAをNheIで消化し、次いで、5′LTRと延長されたパ ッケージングシグナルとを含有する1452bpのNheI/BamHI断片を単離した。3′LT Rを含有する98bp断片を、NheIとStuIによる消化後に、ベクターpLNSX(Miller及 びRosman,1989)から単離した。これらの断片を、pUC19骨格を含有するpSFG-tp a由来のNheI断片に連結することにより、ウイルス構築物pLec(図1)を得た。pLec の3′LTR中のウイルスエンハンサーの改変 pLecをNheIで消化し、ウイルス配列を含有するその断片を、pSK/ZipΔMo+PyF1 01のNheI部位に連結することにより、pLecΔMoを得た(図2)。このベクターは その3′LTR中に変異を持ち、その変異は、1回複製後に、それら変異の5′LTRへ の転換をもたらす(Valerioら,1989)。pSK/ZipΔMo+PyF101は、pZipΔMo+PyF1 01(N-)のClaI-EcoRI断片を、pBluescriptベクター(M.Einerh and,TNO,Rad iobiological Institute)にサブクローニングすることによって作製された。pZ ipΔMo+PyF101(N-)は、pMLV-C/R/BΔMo+PyF101(Linneyら,1984)のClaI/Kpn I断片をpZipSV(X)1(Cepkoら,1984)のKpnI/EcoRI断片と組み合わせること によって作製された3′LTRを含有する低コピーベクター(pBR322系)である。第 1の断片は、エンハンサー配列が突然変異型(F101)ポリオーマウイルスエンハ ンサーに置換されているU3領域とR領域の一部とを含有し、第2の断片は、3 ′LTRのU5領域とR領域の残りとを含有する。ベクター配列中のテトラサイク リンr遺伝子中のNheI部位を破壊した後、唯一のNheI部位を用いることにより、 野生型エンハンサーを持つ組換えベクターを前記突然変異型を含有するものに交 換することができる(Valerioら,1989)。 実施例1:自殺遺伝子治療用のモノシストロン及びビシ ストロンのレトロウイルスベクター 固形腫瘍の治療に関して将来有望な方法は、インビボのその腫瘍細胞に自殺遺 伝子を導入することである。単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV- tk)遺伝子やシトシンデアミナーゼ遺伝子のような自殺遺伝子は、非毒性プロド ラッグを毒性薬物に変換することがで きるタンパク質をコードする。例えば、プロドラッグガンシクロビルは真核細胞 に対して毒性を持たないが、HSV-tk遺伝子によって(モノ)リン酸化されると、 細胞酵素によってヌクレオチド類縁体に変換される。この類縁体が複製しつつあ る細胞のDNA中に取り込まれると、鎖成長終結と細胞死が起こる。この系の抗腫 瘍治療としての魅力は、プロドラッグ処置によって死につつある形質導入細胞が 、その近傍にある非形質導入細胞の死を誘発しうること(「傍観者効果(bystan der effect)」;Moolten,1986)がわかったために明らかになった。効果的な 抗腫瘍反応を樹立するには、インビボの腫瘍細胞への自殺遺伝子の転移後に、少 数の腫瘍細胞がその自殺遺伝子を発現させるだけでよいことを、いくつかのグル ープがラットの腫瘍モデルを用いて示している(Moolten,1994に概説されてい る)。腫瘍細胞の効率の良い形質導入は、レトロウイルス産生細胞を腫瘍に直接 注射することによって、インビボで達成できる(Culverら,1992)。 本発明で概説するレトロウイルスベクターの応用例として、本発明者らは、ベ クターpIGTkと、ラットモデルの悪性脳腫瘍の自殺遺伝子治療におけるその使用 について記述する。pIGTk の構築 レトロウイルスベクターpLecをXhoIで消化し、クレノウで平滑化した後、BamH Iで消化した。ウシ腸ホスファターゼ(CIAP)を用いて脱リン酸化した後、この 断片を、pAdTK(Bram Bout,IntroGene; 欧州特許出願94202322.7)からHindIII による消化、クレノウによる平滑化及び BamHIによる消化によって得た単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ遺伝 子(HSV-1tk)のコーディング領域を含有する断片に連結した。得られたウイル スベクターをpLTkと命名した。 pLTkをBsiWIで直鎖化し、EcoRIで部分消化し、CIAPで脱リン酸化した。次に、 tk遺伝子の5′部分を、プライマーTKkozUp:5′-CGGAATTCGCCGCCACCATGGCTTCGT ACCCCGGCCATCAG-3′とTkDo-1:5′-CGGCTCGGGTACGTAGACGATATCG-3′とを用いて ベクターTNFUS69(Schwartzら,1991)中のtk遺伝子の5′部分を増幅した後、E coRIとBsiWIで消化することによって得たEcoRI/BsiWI pcr断片として、再導入し た。得られたレトロウイルス構築物をpLTKkozと命名した(図3)。このクロー ニング法を用いて、HSV-1 tk遺伝子のコーディング配列とその開始コドン付近に 最適化したコザック配列だけを含有するレトロウイルスベクターを作製した。挿 入した遺伝子の5′側のNcoI部位と3′側のBamHI、AvrII、HindIII及びClaI部 位は、このベクター中の挿入物を交換するのに有用なクローニング部位である( 図4a)。 pLTKkozのNheI断片をpSK/ZipΔMo+(PyF101)の唯一のNheI部位に導入するこ とにより、構築物pIGTkを作製した(図4b)。 レトロウイルスベクターpIGTkを、ネオマイシンr遺伝子を含有する発現構築物 (ΔMo+PyF101LTR-Neo,M.Einerhand,未公表)と共に、アンホトロピックパッ ケージング細胞系PA317(ATTC番号CRL9078)に同時トランスフェクションし、G4 18耐性クローンを単離した。これらのうち1つは、HSV-1 tk遺伝子をチミジンキ ナーゼ欠損 Rat-2細胞に転移させることができる約1×105個/mlの感染性ウイルス粒子 を産生した。このウイルス産生細胞(IG-RV-TKと命名)は、ラットの実験的脳腫 瘍を治療する目的で行なった前臨床試験に成功裏に使用されている(Vincentら ,1996)。この研究では、344匹のフィッシャーラットの左前脳部に、定位装 置を用いて、4×104個の9Lラット神経膠肉腫脳腫瘍細胞を接種した。3日 後、増殖しつつある腫瘍に、5×106個のIG-RV-TK産生細胞、5×106個の対 照細胞(PA317非産生細胞、IL-2レトロウイルス産生細胞又はLacZレトロウイル ス産生細胞)、IG-RV-TK細胞の上清又はPBSを一回接種した。9L腫瘍細胞接種 の8日後に、毎日2回で10日間のガンシクロビル15mg/kgの腹腔内処置 を開始した。図5は、ガンシクロビルと組み合わせてIG-RV-TK産生細胞で処置し たラットの生存期間の延長を明確に示している(Vincentら, 1996)。 tk/ガンシクロビル系は、白血病の治療にも大いに有効でありうる。現在のと ころ、白血病の治療を受ける患者は、血縁(非血縁)のMHCが十分適合したドナ ーから得たBM移植物を用いる同種骨髄移植(BMT)を受けることが多い。その ような移植物中のT細胞の存在は、その治療の成功を決定する重要な因子である ことがわかっている。また、同種BMTを受けた患者では、いわゆる対白血病性移 植片(graft-versus-leukemia;GVL)反応により、白血病再発の可能性が減少す ることも立証されている(Antin,1993)。しかし、これらの患者は、生命をあ やうくする重度の対宿主性移植片病(GVHD)にかかることも多い。残念ながら、 患者におけるGVL反応とGVH D反応を分離することはできないようである。したがって、患者は移植物中の同 種T細胞から明らかに利益を得るのではあるが、この治療はGVHDの発生によって 著しく損なわれる。この問題に対する解決策は、BMTに先立ってドナーから(同 種)末梢血液リンパ球を単離し、それらにインビトロで自殺遺伝子を形質導入し 、それら細胞をT細胞枯渇BM移植物と共に使用することであろう(Tiberghien ら,1994)。GVHDが発生した場合は、ガンシクロビルで患者を処置すれば、活性 化した(形質導入された)T細胞が選択的に殺され、GVHDが排除されると予想さ れる。この方法を用いれば、患者はGVL反応の利益をも受けることができ、白血 病の再発率が減少するだろう。 この方法の成功に必要な条件は、ガンシクロビルを用いることによって生体内 でそれらを根絶することができるように、患者に注入される事実上全てのT細胞 が自殺遺伝子を安定に発現させるということである。ヒト末梢血リンパ球にイン ビトロでレトロウイルスベクターを形質導入する効率が100%に達することは ないだろう。したがって、レトロウイルスベクターには選択マーカーを組込む必 要がある。第2遺伝子(多くの場合、選択遺伝子)の発現を駆動する内部プロモ ーターを保持するレトロウイルス構築物を使った過去の実験では、そのレトロウ イルス中の2つのプロモーター間の干渉が、しばしば、一方のプロモーターの( 望ましくない)遮断をもたらすことが認められている(Emerman及びTemin,1984 ,1986)。したがって、本発明に記述する構築物では、両方の遺伝子を、1つの (ウイルス)プロモーターによっ て駆動される1つのジシストロン(dicistron)内に置く。遺伝子を、リボソー ム走査に依存する短いシストロン間リンカーか、リボソームの内部結合を誘発す る特別な配列で分離すれば、ジシストロンmRNAは、第2遺伝子の効率のよい翻訳 を可能にする。リボソーム走査モデル(Kozak,1987a,1989)によれば、小リボ ソームサブユニットは、キャップmRNAの5′末端に結合し、ATG配列の存在をス キャンする。翻訳の開始はうまく行けば最初のATGで起こり(Kozak,1987b)、 終止コドンに出会うと翻訳複合体が解離する。第2コーディング領域の翻訳も可 能である。それはおそらく、小サブユニット(又は延長複合体のもう1つの因子 )がmRNAに沿って走査し続け、ATGを認識すると、翻訳を再開することができる からであろう。異なるシストロン間リンカー配列を用いた実験により、配列その ものが長さより重要であることが示されている(Kozak,1987a;Levineら,1991 )。レトロウイルス感染後にジシストロン中の2つの遺伝子を発現させるために ピコルナウイルス由来の内部リボソーム結合部位(IRES)を使用することは、W .Andersonが特許出願WO9303143に記述している。しかし、これらのウイルス配 列は比較的大きく、パッケージング能とその構築物及びそのRNA産物の安定性に 影響を及ぼしうる強固な二次構造を持つ。 好ましいジシストロンmRNAの一例として、本発明者らはここに、構築物pLTk+N eoΔMoを記述する。この構築物では、tk遺伝子とneor遺伝子が36ヌクレオチド リンカーで分離されている。tk遺伝子又はneor遺伝子は共に、他の遺伝子で置き 換えることができる。一般に、好まし いシストロン間リンカーは、(1)第1遺伝子の終止コドンと読み枠を合わせて挿 入された第2遺伝子開始コドンを持ち(すなわち、その長さは3の倍数である) 、(2)ATG配列を含んではならず、(3)9bpないし200bpの長さを持つ ことができ、(4)そのRNA中に強固な二次構造を形成する配列を含有してはなら ない。次いで、2つの遺伝子をそれらのシストロン間配列と共に、レトロウイル ス構築物に導入することができる。pLTk+Neo ΔMoの構築 HSV-tk遺伝子をEcoRIとBamHIを用いてpLTKkozから切り出し、pUC119にサブク ローニングした。ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子のプロモーターを含有 するEcoRI/HincII断片(Singer-Samら,1984;Michelsonら,1983)にEcoRIリン カーを付け、それをEcoRI部位に導入することにより、pPGK-Tkを作製した。neor 遺伝子の翻訳を最適化し、neor遺伝子の始めの部分にNcoIを導入するため、プラ イマー5′-CCCTGCAGCGCCACCATGGGATCGGCCATTGAACAAGATGG-3′(フォワード)と5 ′-GCCAGTCCCTTCCCGCTTC-3′(リバース)を用いたpMC1neopA(Thomas及びCapec chi,1987)に対するpcr反応によって、ATGコドン周辺の配列を共通コザック配 列(Kozak,1987)に変えた。その280bpのpcr断片をPstIで消化し、pBlues cript KS+ベクター(ストラタジーン(Stratagene)製)にサブクローニングした 。次に、ClaIによる消化とそれに続く脱リン酸化及びPstI部分消化の後、neor遺 伝子の3′部分を含有するpLNCX(Miller及びRosman,1989)のPstI/AsuII断片 を、このベクターに導入した。その修飾neor遺伝子をBamHI/SalI断片として単離 し、pPGK-TK 中の対応する部位にクローニングすることにより、pPTk+Neo/IFを得た。最後に 、B型肝炎ウイルス(HBV)由来のポリアデニル化(poly Adenglation)シグナ ルを含有するpAMG-1 (Valerioら,1985)の平滑化EcoRI/BamHI断片を、平滑化 したHindIII部位に導入することにより、pPTk+NeopA/IFを作製した。この構築物 では、tk遺伝子の終止コドンが、neor遺伝子の開始コドンと同じ読み枠に位置す る。前記pcr反応において、PstI部位のすぐ3′側のCを欠く、異なるフォワー ドプライマーを使用することにより、第2のTk-Neoジシストロンを作製した。こ のジシストロンでは、2つのコーディング領域が36ヌクレオチドではなく35 ヌクレオチドリンカーで隔てられている(pPTK-NeopA/OF;図6)。 pPTk+NeopA/IFのTk+NeoジシストロンをEcoRI及びSalI消化によって切り出し、 EcoRI(部分)及びXhoI消化後のpLecベクターに連結した。NheI断片をpZipΔMo+ PyF101(N-)の対応する部位にサブクローニングした後、pLTk+NeoΔMoが完成し た。ビシストロン中の第2遺伝子の効率の良い翻訳 単一のTKコーディング領域(pPTkpA)又はneorコーディング領域(pPNeopA; 図6)のいずれかを保持する2つのモノシストロン(対照)構築物を作製した。 第1の構築物は、pPTk+NeopA/IFをBamHIとSalIで消化し、クレノウ酵素で平滑化 し、再連結することによって作製した。第2の構築物は、NcoIによる部分消化と 、tk遺伝子を欠くベクター断片の再連結によって得た。ビシストロン構築物中の 両コーディング領域の翻訳効率を調べるために、Chen及びOkayama(1987)に記 述されているCaPO4共沈 法を用いて、プラスミドDNA(16μg)をpCMVLuc(L.Fortunati及びM.Scarp a,未公表)4μgと同時にトランスフェクションした。各DNA/CaPO4混合物に等 量のルシフェラーゼ発現構築物を加えることにより、トランスフェクション効率 の相違を補正することができる。トランスフェクションの2日後に、細胞をトリ プシン処理し、その半分を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。細胞の残り半 分の一部を、異なる希釈率(1/100と1/500)で6cm培養皿に接種し て、tk(HAT補足培地)又はneor(培地+1mg/ml G418硫酸塩)活性について選択 し、残りの細胞を合わせて、neor活性について選択した(HAT補足培地で選択し たpPTkpAによるトランスフェクションを除く)。表1はHAT又はG418含有培地中 での選択とルシフェラーゼ活性に関する補正後に得られた相対的コロニー数を示 している。これらの結果から、ビシストロン構築物中のtk活性が同等であるのに 対して、第1遺伝子と第2遺伝子の読み枠が互いに一致していない場合には、第 2遺伝子(neor)の翻訳効率が悪くなることが明らかである。 構築物pPTk+NeopA/IF、pPTk-NeopA/OF又はpPNeopAを含有するG418選択プール と、HAT選択プールpPTkpAは、プロドラッグであるガンシクロビルに対する細胞 の感受性を試験するために使用することができる。これを試験するため、5μM ガンシクロビル(GCV)を含む72cm2フラスコに、細胞を低密度(1×104 細胞)で接種した。増殖するコロニーを記録した。これは、トランスフェクショ ンされた細胞のプール中に存在するtk-細胞を表わす。傍観者効果(すなわち、 形質導入細胞からの有毒活性の伝達による非形質導入細胞の死)を避けるために 、細胞を低密度で培養した。様々な数のtk-細胞(100〜5000)を1×1 04個のtk+細胞と混合し、もしくはtk+細胞と混合せずに、5μM GCV含有培地 中で培養することにより、培養効率を決定した。これらの実験から、pPTk+NeoPA /IFでトランスフェクション した細胞のプールは、−12%のtk-細胞を含有し、pPTK-NeopA/OFでトランスフ ェクションした細胞のプールは−45%のtk-細胞を含有することが明らかにな った。tk-細胞の出現は、tk遺伝子を不活化する組込み事象を引き起こす環状プ ラスミドDNAをトランスフェクションに用いたという事実によって、一部説明す ることができる。しかし、2つのビシストロン構築物間の相違は、シストロン間 リンカーの相違に起因するneor遺伝子翻訳の相違によってのみ説明することがで きる。前記の実験の結果から、ビシストロン中の2つのコーディング領域が互い に同じ読み枠にある状態が、読み枠が異なる状態よりも好ましいという結論が導 かれる。 シストロン間リンカー配列を持つビシストロン構築物の性能を、IRES配列を含 有するビシストロン構築物と直接比較することができるように、さらに2つのビ シストロン発現構築物を作製した。その1つpPTkpolioNeoは、ポリオウイルス由 来のIRES配列を含有し、もう1つのpPTkemcvNeoは、EMCV(脳心筋炎ウイルス) 由来のIRES配列を含有する。pPTkpolioNeoは、pP2-5′(Pelletierら,1988)由 来の750bpクレノウ処理HindIII-EcoRV断片を、XbaIで消化してからクレノ ウ処理したpPTk+NeopA/IFに連結することによって作製した。次に、得られた構 築物をBamHIで消化し、NcoIで部分消化し、クレノウ処理し、再連結することに より、pPTk+NeopA中に存在するリンカー配列のほとんどを除去した。pPTkemcvNe oは、pBS-ECAT(Jangら,1989)の582bp平滑EcoRI,MscI断片を、pBr322系pPTk+ NeopAクローンに挿入することによって作製した。得られたベクターに、IRES配 列中のHindII I部位と、neoコーディング配列の5′末端にあるNcoI部位との間の配列を、翻訳 開始部位付近の配列がNcoI部位に改変されたEMCV IRESの3′末端から得た断片に 交換して、neo遺伝子中のATGをEMCV IRES由来の開始ATG上に置くという改変を施 した。ATG上にNcoI部位を持つEMCV IRESは、pUC119中のEMCV IRESクローンの3′ 末端を、次のプライマーを使って調製したpcr断片に交換することによって作製 された:5′-CCCAGTGCCACGTTGTGAGTTGG-3′及び5′-GCGGATCCGGCCATGGTATCATCGT GTTTTTC-3′。 異なるビシストロン構築物中の両コーディング領域の翻訳効率を調べるために 、Rat-2線維芽細胞を、前記のように、pRSVLucと次に挙げるビシストロン構築物 の一つとで、同時にトランスフェクションした:pPTk+NeopA/IF、pPTk-NeopA/OF 、pPTkpolioNeo、pPTkemcvNeo、pPTkpA又はpPNeopA(図6)。トランスフェクシ ョンの48時間後に、細胞の半分を用いてルシフェラーゼ活性を測定し、残り半分 の一部を異なる希釈率でHAT又はG418含有培地に接種し、一部を合わせて、G418 選択1.4mg/ml(ビシストロン構築物及びpPNeopA)又はHAT選択(pPTkpA )に付した。3回の独立した同時トランスフェクション実験で、培養した異なる 希釈液からG418選択で形成したコロニー数を計算し、2つの方法で(すなわち、 1)各トランスフェクションで測定されたルシフェラーゼ活性を利用することに より(図6A)もしくは2)HAT選択下で生成したコロニー数を利用することによ り(図6B)トランスフェクション効率の相違について補正した。後者の場合は 、シストロン間配列の相違がtk遺伝子の翻訳に影響を与えないという仮定を設け た。図6Aと 6Bから明らかなように、どちらの場合も、ビシストロン構築物のトランスフェ クション後にneorコロニーが生成する効率に有意な相違は無い。しかし、モノ シストロン構築物pPNeopAは、ビシストロン構築物と比べて効率が約4倍高い。 合わせてG418で選択されたトランスフェクションRat-2細胞を使用すれば、ガ ンシクロビル(GCV)を補足した培地における生育後の細胞死をモニターするこ とによって、tk遺伝子の同時発現を分析することができる。この点に関して、異 なるプールから得た細胞を800細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに4 ウェルずつ接種し、0、5、10又は25μM GCVの存在下に、4日間生育した 。次に、GCV耐性の生存可能細胞の数を、MTS染色(Promega)を利用して、比色 法的に決定した。その結果を下記表2に示す。GCVを含有しないウェルの490 nmにおける吸光度を100%とする。 細胞死は、正常細胞に対して影響を及ぼすことなく患者の血液中に樹立しうる 5μM GCVで、ほぼ完全である。同様の実験構成を用いて、0.125〜1.0 μMのより低濃度のGCVを試験した。下記表3に示すように、ビシストロン転写 単位中のneor遺伝子を発現させるためにIRES配列を含有する細胞のプールは、シ ストロン間リンカーを含有するビシストロン構築物を使って作製した細胞プール と比べて、わずかに低いLC50(細胞の50%が殺されるGCV濃度)を持つ。また 、完全な細胞死は、IRES含有構築物の場合の方が、わずかに低いGCV濃度で起こ る。 HSV-tk+細胞のHSV-tk-細胞との混合は、これらの実験で使用した細胞密度では 、いわゆる「傍観者効果」の影響がないことを示した。このことは、細胞死がHS V-tkの内因的な発現によるものであって、tk-細胞への毒性物質の転移によるも のではないことを立証している(データの記載なし)。 前記の実験は、シストロン間リンカーをIRES配列の代わりにビシストロン転写 単位中に使用しても、ビシストロン中のどちらの遺伝子の機能的発現も失われな いことを立証している。合成シストロン間リンカーは、サイズが小さく、そのRN A中に強固な二次構造を形成しないので、ウイルス由来のIRES配列よりも好まし い。 実施例2:ヒト多剤耐性-1遺伝子の転移に有用なレトロ ウイルスベクター 多剤耐性は、多剤耐性(MDR1)遺伝子によってコードされる多剤運搬体(P− 糖タンパク質)の合成によってもたらされうる。MDR1遺伝子のトランスフェクシ ョンとそれに続く発現により、薬物感受性細胞に多剤耐性表現型を付与すること ができる。したがって、薬物性骨髄毒性から患者を保護する目的で、MDR1遺伝子 を造血幹細胞(HSC)に導入することは、魅力的な方法であろう。また、MDR1ベ クターを用いてもう1つの目的遺伝子(例えばグルコセレブロシダーゼ遺伝子や HIV阻害遺伝子/配列)を導入すれば、P−糖タンパク質によって細胞から効率よ く排除される細胞障害性薬物を用いるインビボでの選択も可能であろう。骨髄細 胞へのMDR1遺伝子の形質導入による骨髄抑制の回避の成功は、効率のよい遺伝子 転移系に依存する。現在のところ、レトロウイルスによる遺伝子転移が、HSCへ の効率のよい安定な遺伝子転移を可能にする唯一の技術である。 造血細胞へのヒトMDR1遺伝子の導入にとって最適なレトロウイルス構築物は、 基本的pLecΔMo構築物の特徴の他に、次の特徴をも持つ: −遺伝子発現に対する非コーディング隣接ヌクレオチド 配列の悪影響を避け、1つ又はそれ以上の追加の目的遺伝子用の領域を最大限に するために、MDR1遺伝子の完全長コーディングDNA配列のみが挿入される。 −基質特異性が変化している突然変異型(Choiら,1988)ではなく、野生型MDR1 が使用される。突然変異MDR1P−糖タンパク質は、生体内で形質導入細胞に対す る免疫原性反応を引き起こしうるからである。pIGmdr1-G の構築 MDR1遺伝子のクローニングを容易にするために、pLTKkozのNheI断片をpZIPΔM o+PyF101(N−)にサブクローニングすることにより、pLTKkoz中の高コピー数プ ラスミド骨格を低コピー数プラスミドで置換した。得られた構築物をLTK-ΔMoと 命名した。野生型ヒトMDR1 cDNA(van der Bliekら,1988)を3断片連結により LTK-ΔMoに挿入した。 断片1:LTK-ΔMoのNcoI-BamHI断片 断片2:NcoI-EcoRI MDR1断片 この1178bp断片は、Pfu DNAポリメラーゼを用いるPCRによって作製した。次に 挙げる2つのプライマーを使用した。MDR1の開始コドンをまたぐ「mdr5′(チオ )」(5′-CCTCTAGACCATGGATCTTGAAGGGGACCGCAATGGAGGA-3′);このプライマー では、ATG開始コドンの前にシトシンを置くことによって、その部位にNcoI部位 が作製されている。第2のプライマー(4728A:5′-CCAACCAGGGCCACCGTCTGCCCA- 3′)は、MDR1中のEcoRI部位の3′側に位置する。この断片を先ずEcoRIで消化 した後、NcoIで部分的に消化した。アガロースゲルから1.2kbp断片を単離 した。 断片3:EcoRI-BamHI 3′MDR1断片 この断片は、サブクローンK1から単離した。K1は、MDR1遺伝子を発現させ るもう1つのレトロウイルスベクターを作製するために前もって行なった4断片 連結から得たものであり、その連結は次のように行なった。pJ3ΩMDR1.1に挿入 された野生型MDR1は、Schinkelら,1991に記述されている。この構築物から3. 8kbp DraI-HhaI断片を単離した。この断片を、次の2つの二本鎖リンカーに 連結した:5′-リンカー(5′- ゲルから単離した)及び3′リンカー(5′- で切断し、やはりアガロースゲルから単離した)(太字配列は挿入される断片を 示す)。連結後、その生成物をBamHIで再切断し、NcoI-BamHIレトロウイルス断 片に連結した。コンピテントDH5α細胞に形質転換した後、クローンK1を単離 した。これが、正しく挿入された3′HhaI-BamHI MDR1断片を持つことは、配列分 析によって確認された。しかし、5′オリゴヌクレオチドは挿入されなかった。 したがって、K1はTGA終止コドンの直後に位置するBamHI部位を持ち、それを利 用して、EcoRI-BamHI MDR1断片を単離することができた。 3つの断片1、2及び3の連結によりpIGmdr1-Gを得て、それを用いて、MDR1 産生細胞系を作製した。IGmdr1-G レトロウイルス産生細胞系IGvp010の作製 IGmdr1-GをPA317パッケージング細胞系(American Type Culture Collection から得た:ATCC番号CRL9078)に トランスフェクションした。PA317細胞をHAT培地で選択することにより、パッケ ージング機能を保持する細胞を選択した。残存するアメトプテリンを希釈するた めに、細胞をHT培地で4日間生育させた。LipofectAMINEを試薬として用いること により、6×105個の細胞を6μgのIGmdr1-G DNAでトランスフェクションし た。翌日、細胞をトリプシン処理し、75cm2培養皿あたり1.0×106個の 細胞を接種した。翌日、70nMのビンクリスチンを加えた。ビンクリスチン含 有培地を3日毎に新しくした。トリプシン処理の2週間後に、ビンクリスチン耐 性コロニーをトリプシン処理し、集め、さらに培養した。得られた細胞系をIGvp 010と命名した。IGmdr1-G を用いた形質導入と発現の研究 a)ヘルパーウイルスの存在に関する試験 IGvp010が複製コンピテントレトロウイルス(RCR)を含まないことを検証した 。これは、ネコ(PG-4)S+L-遺伝子座アッセイにより、5×106個の細胞を、 RCRの増幅を可能にするMus dunni細胞と共に、5世代にわたって同時培養するこ とによって決定された。 b)ヒト薬物感受性A2780細胞系におけるIGmdr1-Gの発現 造血性標的細胞に使用される大量形質導入条件をシミュレートするために、IG vp010から収集した上清をP−糖タンパク質陰性ヒト卵巣腫瘍細胞系(A2780)に 対して試験した。2時間の形質導入と48時間の培養期間後に、P−糖タンパク 質の効率のよい基質である蛍光色素Rh-123を排除する能力によって、形質導入さ れた細胞の比率を正確に決定することができた。これらの条件下で、 IGvp010上清は、29.37%のRh-123dull細胞を与えた(バックグラウンド活 性を補正した値;図7)。 c)動態化(mobilised)ヒト末梢血先祖細胞(PBPC)の形質導入 ヒトインターロイキン−3の存在下に1×106/mlの細胞濃度で、CD34+選 択PBPCをIGvp010上清で96時間以上形質導入した。IGvp010上清を24時間毎に 新しくした。上清交換の度に、硫酸プロタミン(4μg/ml)を加えた。MDR1 -形質導入PBPCと疑似形質導入PBPCを、IL-3とGM-CSFの存在下にメチルセルロー ス培地1ml中5×103/mlで、2つずつ培養した。MDR1を過剰発現させる 先祖細胞のスクリーニングを、P−糖タンパク質の効率のよい基質であるビンク リスチンを用いて行なった。新たに融解したビンクリスチンを、様々な濃度で、 培養皿に加えた。全ての濃度について、2つずつ細胞を培養した。コロニー形成 単位(CFU-C)を14日後に記録した。ビンクリスチンを含む培養皿中のコロニ ー数をビンクリスチンを含まない培養皿中のコロニー数で割ることにより、MDR1 -形質導入体と疑似形質導入体を比較した。図8にその結果を示す(誤差線は得 られた最小値と最大値を示す)。20nMの用量で、疑似感染細胞の3%に対し て、IGmdr1-Gコロニーは47%が生き残った。30nMの用量では、対照群の全 てのコロニーが死滅したが、MDR1感染コロニーの9%はなお生き残った。この実 験は、IGmdr1-Gが造血細胞を効率よく感染させることを立証しているばかりでな く、IGmdr1-Gが造血前駆細胞内で挿入遺伝子を高レベルに発現させることをも明 確に立証している。 d)正常ヒト骨髄細胞の形質導入 CD34+選択正常ヒト骨髄細胞を、PBPCについて記述したように形質導入した。 形質導入後、CFU-C形成のために、様々な量のビンクリスチンの存在下に、細胞 を培養した。個々のCFU-Cを拾い上げ、それらコロニーから単離したDNAをプロウ イルス特異的PCRにかけた。7回の独立した実験により、CFU-Cの8±9%がIGmd r1-Gレトロウイルスで形質導入されていることが立証された。1つの実験から、 ビンクリスチン耐性コロニーをも分析した。この実験は、PCR+ CFU-Cの百分率が 、ビンクリスチンなしの30%から、44%(20nM)、71%(30nM) 及び100%(40nM薬物)まで増大することを示した。この実験は、細胞増 殖抑制剤の量を増大させると、形質導入された造血先祖細胞のインビトロ選択が 実際に起こることを、明確に立証している。 Sorentinoら(1993)が示した結果と一致して、我々は、我々のベクターに挿 入されたMDR1 cDNAに由来するRNAの異常なスプライシングを検出した。(自明な )改善策は、アミノ酸コーディング配列を変えることなく潜在性スプライス部位 を改変することであろう。 実施例3:AIDSの遺伝子治療/形質導入されたHSCのイン ビボ選択 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によるCD4+T細胞の感染は、AIDS発症における 最初の原因事象である。レトロウイルス科HIVの大ファミリーの構成要素は、RNA ゲノムを持ち、他のレトロウイルスと同様の生活環を持つ。このウイルスの蔓延 は、感染、逆転写、組込み、転写及びウイルスゲノムのパッケージングに依存し ている。細胞 内抗体、リボザイム、アンチセンス分子又はデコイなどのいわゆる遺伝子抗ウイ ルス剤(genetic antivirals)を用いてレトロウイルスの生活環を妨害する遺伝 子治療が開発されている(Gilboa及びSmith,1994に概説されている)。これら の分子は、主としてHIVによって感染されやすい細胞、すなわちCD4+T細胞と血 中の単球/マクロファージに送達される必要がある。HIV感染に対するこれら細 胞の保護は、このウイルスの蔓延を制限し、さらには予防することさえでき、免 疫系に対するこのウイルスの発病効果を制限することができる。理想的には、造 血幹細胞がそのような保護治療の標的である。それらは患者に保護されたT細胞 の継続的な供給源を提供するだろうからである。しかし、HSCの安定な感染は極 めて効率がよいというわけにはいかず、形質導入された細胞の移植後には、形質 導入されていない多数の内因性幹細胞が成熟細胞を産生し続けて、末梢血中に多 くの保護されていない細胞をもたらし、それらがHIVの複製を容易にするだろう 。そこで、HSC及びその子孫中で遺伝子抗ウイルス剤を発現させるように設計さ れた本明細書記載の構築物は、全て、pIGmdr1-Gレトロウイルス構築物(実施例 2参照)に基づく。この構築物では、ヒトMDR-1遺伝子が、形質導入された幹細 胞の生体内での選択を可能にする。pIGmdr1-G/HIVasTAR とpIGmdr1-G/HIVasTARgag及び類似ベクターの構築 抗HIV-1分子をHSC及びそれらの子孫に送達するために特別に設計された組換え レトロウイルスベクター構築の一例として、HIV-1の5′末端に対するアンチセ ンスRNA を生成するレトロウイルス構築物について記述する。ポリメラーゼIII依存性ア デノウイルスVA1プロモーター(Fowlkes及びShenk,1980)を使用すれば、短い 挿入配列の高発現レベルが保証される。 先ず、pIGmdr1-G由来のサブクローンを、BamHIによる消化とベクター配列の再 連結によって作製した。このクローンpIGmdrΔBamHIを、プライマー:5′-CCTGC TAGCTCTAGACCGTGCAAAA-3′と5′-AAAGCTAGCAAAAAAGCGGCCGCGGGGCTCGAACCCCGGTCG TCC-3′を用いるAd5配列の増幅によって得たアデノウイルスVA1遺伝子とプロモ ーター配列の導入に使用した。そのpcr産物のNheI消化によって、pIGmdrΔBamHI の唯一のAvrII部位又はNheI部位のどちらかへのクローニングを可能にした。そ れぞれの配向でVA1プロモーターを含むクローンを選択した。次に、pcr増幅中に VA1遺伝子に導入された唯一のNotI部位を、HIV-1配列の挿入部位として利用した 。これらは、pBRU2ベクター中のHIV-1配列(B.Klaver,AMC A′ damから得たpL AI/pBru由来のXbaI/ClaI断片)の増幅において、増幅pcrプライマー:5′ TAR 5 ′-AATCGCGGCCGCGTCTCTCTGGTTAGAC-3′を、3′TAR 5′-AATCGCGGCCGCGGTTCCCTAG CTAGCC-3′と共に用いて、+1から+57までのTARループを増幅し(pIGmdr1-G /HIV-TAR)、3′gag 5′-AATCGCGGCCGCTCTCGCACCCAT-3′と共に用いて、+1か ら+348までの5′末端からgag開始コドンまでを増幅(pIGmdr1-G/HIV-gag) することによって得られた。これらのpcr断片をNotIで消化し、pIGmdrΔBamHI/V A構築物にクローニングした。挿入したHIV配列の内部WA1プロモーターに対する 配向によって、構築物pIGmdr1-G/HIVasTAR、/HIVsT AR、pIGmdr1-G/HIVasTARgag又は/HIVsTARgagを得た(ここにsはセンス、asは アンチセンスである)。 さらに、全ての構築物は2つの配向(すなわち、VA1プロモーターがウイルスL TRと同じ方向の転写を駆動するものと、逆方向の転写を駆動するもの)で得られ た。 実施例4:ゴーシェ病の遺伝子治療と生体内標識研究用 のレトロウイルスベクター ゴーシェ病治療用のレトロウイルス構築物は、幹細胞遺伝子転移後に造血系内 で有利に機能するベクターに基づくべきである。そのため、IGGCの構築では、本 発明が開示するレトロウイルス骨格にグルコセレブロシダーゼ(GC)配列を入れ る。 さらに、インビボの遺伝子標識研究を行なうために、挿入されたグルコセレブ ロシダーゼ(GC)cDNA(後述)の長さが異なるIG-GCレトロウイルスベクターの 構築を企てた。挿入されたGC cDNAの長さの相違は、インビトロの感染及び同じ 動物又はヒトへの感染移植物の再注入後の複数のレトロウイルス間の識別を可能 にする。CD34+原始先祖細胞への遺伝子送達を最適化するために、これらのベク ターを用いて、異なるパッケージング細胞系によって産生されるウイルス間の形 質導入効率の相違を研究することができる。また、異なる形質導入法、すなわち 、異なる増殖因子とウイルス力価の役割を研究することもできる。単一ベクター 遺伝子標識研究と比較して、複数の識別できるベクターによる遺伝子標識を利用 すれば、CD34+原始先祖細胞の形質導入効率を決定する際に極めて重要なパラメ ーターの役割を迅速に評価することができる。さらに、遺伝子標識研究において 、外来タン パク質、例えばNeor(Brennerら,1993)の代わりに、hGCなどの治療用cDNAを使 用することのさらなる利点は、発現した外来タンパク質に対する望ましくない宿 主免疫反応がないということである。レトロウイルスグルコセレブロシダーゼベクターIG-GCの構築 ヒト胎盤グルコセレブロシダーゼの完全なcDNA配列(1888bp)をXhoIで完全に 消化し、アガロースゲル電気泳動によって、7549bpのpGB125骨格(Genzyme coop eration)から分離した。そのDNA断片をアガロースから電気溶出し、フェノール /クロロホルム/イソアミルアルコール抽出で精製した。 pLecプラスミド(5773bp)をXhoI消化によって直鎖化した。そのXhoI消化DNA をウシ腸ホスファターゼ(CIAP)で処理し、アガロースゲル電気泳動にかけた。 直鎖化したDNA断片を切り出し、精製した。1888bpの単離XhoI hGC cDNA断片を、 T4-DNAリガーゼを用いて、pLecの脱リン酸化5773bp XhoI DNA断片に連結した。 得られた7661bpレトロウイルスベクターをIG-GC-1と命名する(図9)。レトロ ウイルスベクターIG-GC-2を構築するために、IG-GC-1ベクターをNheIで消化した 。得られた3431bp NheIDNA断片を、T4-DNAリガーゼを用いて、pSK/ZipΔMo+PyF1 01の直鎖化脱リン酸化4375bp NheI DNA断片に連結した。得られた7806bpレトロ ウイルスDNA構築物をIG-GC-2と命名する(図10)。 IG-GC-1とIG-GC-2に加えて、IG-GC-3及びIG-GC-4と名づけた2つの変種を構築 した。これらの変種は、hGCコーディング配列の3′-非翻訳領域以外は、それぞ れIG-G C-1及びIG-GC-2と同じである。この領域から、160bp断片(nt.1728からnt.1888 まで)をPCRで削除した。IG-GC-3の構築は、図11に示すように行なった。簡単 に述べると、2つのオリゴヌクレオチド(5′-CGGGATCCTAGAGGGGAAAGTGAG-3′と いう配列を持つGCo3と、5′-CAGCCCATGTTCTACCAC-3′という配列を持つGCo4)を 合成した。GCo3はBamHI制限部位を含有する。これら2つのオリゴヌクレオチド を用い、IG-GC-2プラスミドDNAを鋳型として、420bp DNA断片を増幅した。この4 20bp PCR断片をBamHIで消化し、220bp PCR断片を単離して、それをBaHIで直鎖化 したIG-GC-1 DNAに連結した(図11)。得られたベクター(IG-GC-3と命名)は 、3′非コーディング領域の160bpを欠くヒトGC cDNAを含有する(図12 )。IG-GC-4を構築するために、IG-GC-3をNheIで消化し、3231bp DNA断片を単離 した。ヒトGC cDNA配列を含むこの断片を、NheI直鎖化脱リン酸化pSK/ZipΔMo+P yF101 4375kb DNA断片にクローニングした(図13)。得られた7606bpレトロウ イルスベクターをIG-GC-4と命名する。IG-GC-2 及びIG-GC-4組換えレトロウイルス産生細胞の作製 IG-GC-2及びIG-GC-4プラスミドDNAを、それぞれエコトロピックレトロウイル スパッケージング細胞系GP+E86(Markowitzら,1988)とΨ-CRE(Danosら,1988 )に導入した。トランスフェクションされた細胞の選択は、発現プラスミドpSV2 neo(Southern及びBerg,1982)とICG-GC-2、及びpPGKneo(R.Vogels、実施例1 参照)とIG-GC-4を、1:10の比率で同時トランスフェクションす ることによって行なった。G418耐性細胞プールGP2bとΨ4cを得た。エコトロピッ ク産生細胞のコンフルエント層を新鮮な培地中、32℃で24時間生育させるこ とにより、エコトロピックIG-GC-2及びIG-GC-4ウイルスを産生した。ウイルス含 有上清を集め、0.45μmフィルターに通し、分注し、直ちに液体窒素で凍結 した後、−80℃で保存した。 それらG418耐性エコトロピック細胞プールがヒトGCタンパク質をも発現させる かどうかを調べるために、細胞溶解物を調製し、人工GC基質(蛍光 :4-Mu-β-グ ルコシド、もしくは比色法:PNP-β-グルコシド)を用いてGC酵素活性レベルを 測定した。細胞溶解物を、トランスフェクションされていないGP+E86/Ψ-CRE細 胞、トランスフェクションされたGP+86/Ψ-CRE細胞、及びGP2b/Ψ4cウイルス上 清に感染した3T3マウス線維芽細胞から調製した。これらの測定結果は、トラン スフェクションされたエコトロピックGP+E86/Ψ-CRE細胞と、感染3T3細胞が、非 トランスフェクションパッケージング細胞に比べて、1.8〜2.0倍高いGC活 性レベルを持つことを示した(図14A)。ヒトGC特異的モノクローナル抗体8E 4(Aertsら,1985)を用いた細胞プールA、B及びC(3つの独立したIG-GC-2 トランスフェクション)のウェスタンブロットは、59kDa hGCタンパク質が、GP+ E86パッケージング細胞系内で発現することを示した(図14B)。 エコトロピックウイルスによる細胞の感染後に増大するGC酵素活性レベルが、 ヒトGCタンパク質の発現によるものであることを示すために、GP2bプールから得 たエコ トロピックウイルスを用いて、アンホトロピックPA317細胞を多重感染させた。 感染したPA317細胞の細胞溶解物を調製し、そのGC活性レベルを測定した。感染 細胞プールは非感染パッケージング細胞と比べて、約1.8〜2.0倍高いGC活 性レベルを持つことがわかった(データの記載なし)。ヒトGC特異的抗体8E4(A ertsら,1985)を用いたこれら感染PA317細胞プール(B1及びB2)の細胞溶 解物のウェスタンブロットは、IG-GC-2ベクターを保持するエコトロピックウイ ルスが、ヒトGCタンパク質をかなりのレベルで転移させることを明らかに示して いる(図15)。 同じエコトロピックIG-GC2/IG-GC4ウイルス上清を用いて、テナガザル(Gibbo n ape)白血病ウイルス(GALV)パッケージング細胞(PG13)を感染させた。生 成したPGプール中のhGC活性を上述のように測定したところ、やはり、親PG13細 胞に比べて2ないし3倍高いことがわかった(データの記載なし)。 次に、産生クローンをこれらのプールから単離した。これを達成するために、 96ウェルマイクロタイタープレートで、2回の限界希釈(<1細胞/ウェル) を行なった。これらクローンからのウイルス産生を、まず、細胞培養上清と共に 培養した後のNIH/3T3細胞(PA317由来)又はRat-2線維芽細胞(PG13由来)中のh GC活性を測定することによって試験した。最も高いhGC活性の増大を与えたクロ ーンを選択し、それらをPA2(PA3 17/IG-GC2)、PA4(PA3 17/IG-GC4)、PG2(P G13/IG-GC2)及びPG4(PG13/IG-GC4)と命名した。これらの細胞系は、ブダペス ト条約に従って、ECACCに、番号PG4−96050256、PG2−9 6050257、PA4−96050258及びPA2−96050259として寄託されている。単離したレトロウイルス産生細胞クローンの効率試験 内因性hGC発現を特徴づけるために、産生細胞から溶解物を調製した。さらに 、ウイルス力価を比較するために、PA2、PA4、PG2及びPG4ウイルス上清に感染し たゴーシェII型線維芽細胞からも、溶解物を調製した。これらタンパク質溶解物 のウェスタン分析は、産生クローンにおける内因性hGC発現とウイルス力価の間 の相関関係を示す。すなわち、内因性hGCレベルが高い産生細胞は、高い力価を 与える(図16)。 105NIH/3T3細胞(6ウェルプレート)をPA2ウイルス上清1mlと共に48時 間以上培養することにより、PA2産生細胞のウイルス力価を測定した。次に、感 染したNIH/3T3細胞を1回の限界希釈(>1細胞/ウェル)に付し、hGC活性を測 定し、コピー数決定用のゲノムDNAを単離するために、50個のクローンを拡張 した。これら50個のNIH/3T3クローンはすべてhGCを発現させた。サザン分析に より、形質導入された各NIH/3T3クローン中で、少なくとも3つの独立した組込 みが起こったことが明らかになった。これらの結果から、PA2産生細胞の力価は 少なくとも3×105機能的ウイルス粒子/mlであると結論された(図17) 。 ゴーシェI型及びII型一次線維芽細胞中の生化学的表現型が覆されうるかどう かを調べるために、これらの細胞と2つの正常ヒト一次線維芽細胞を、PA2、PA4 、PG2及びPG4産生細胞クローンのウイルス上清と共に培養した(図18)。その データは、PA2又はPG2ウイルス上清 のどちらかによる一重感染は、ゴーシェI及びII型感染細胞プール中のhGC活性 レベルを、非感染正常ヒト線維芽細胞と同等なレベルまで増大させるのに十分で あることを示している。したがって、生化学的ゴーシェ表現型の治療は、IG-GC 構築物を保持するこれら組換えウイルスを用いた感染によって達成される。また 、データは、PA4又はPG4上清のいずれかと共にゴーシェI及びII型線維芽細胞を 1回培養すれば、hGC活性レベルが正常細胞の50〜70%まで増大することを 示している。ヒトCD34+細胞の形質導入 CD34+細胞を、ゴーシェI型患者から収集した全骨髄より単離した。これらのCD 34+細胞を、24ウェルプレートに、4mg/ml硫酸プロタミン、IL-3及びpen /strepを補足したウイルス上清400ml中、105細胞の濃度で接種した。4 実行日の間、毎日、ウイルス上清を新しくした。この形質導入期間の後、液体培 養アッセイ(IL-3、IL-6、SCF、GM-CSF及びG-CSFを含有する培地)に2.5×1 04細胞を接種した。37℃/10%CO2で10日間培養した後、細胞を収集し 、計数した。この10日間後に得られた細胞数は、通常、5×105〜1×106 個であり、20〜40倍の増殖能力率を示した。細胞の10分の9をペレット化 し、PCRのために溶解した。図19は、IG-GC2/IG-GC4もしくはMDRウイルスによ る形質導入後の液体培養から得た分化したゴーシェI型細胞中のhGC活性の上昇を 示している。液体培養から得た細胞のPCRとそれに続くサザン分析は、IG-GC2/IG -GC4形質導入細胞中にプロウイルスが存在することを示している(図20)。 液体培養に加えて、コロニー形成単位(CFU)アッセイのために、CD34+細胞を 半固体メチルセルロースにも5×1103/mlの濃度で接種した。37℃/1 0%CO2に設定した培養器中で14日間の後、約100個のコロニーを拾って 、これらの原始ヒト細胞に対するウイルス上清の形質導入効率を調べた。PCRを 利用することにより、PA2又はPG2組換えウイルスで、全CFUの約40〜50%が プロウイルスを含むことを示すことができた。この細胞タイプのPA4による感染 は効率が低く、約10%感染CFUであることがわかった(データの記載なし)。 これらのデータから、IG由来のウイルスは、一次線維芽細胞とCD34+造血性ゴ ーシェ細胞中の生化学的ゴーシェ表現型を治療することができる強力な遺伝子送 達担体であると結論できる。レトロウイルスグルコセレブロシダーゼ-ジヒドロ葉酸レダクターゼ二重ベクタ ーの構築 ヒト造血幹細胞の形質導入効率が低いことは、ゴーシェ病などの疾患の遺伝子 治療の成功にとって、重大な制約となっている。この問題を回避する方法として は、治療用cDNAと優性選択可能マーカーとを保持するレトロウイルスベクターを 使用することが考えられる。そのようなレトロウイルスベクターは、形質導入さ れた細胞をインビボで選択することを可能にする。この理由から、本発明者らは 、hGC cDNAとヒトジヒドロ葉酸レダクターゼ(hDHFR)のメトトレキセート耐性c DNAとを保持するジシストロンレトロウイルス構築物を構築した。 ヒト野生型DHFRを、ヒト肝臓のmRNAから合成した一本 鎖cDNAより、Pwo酵素で増幅した。5′オリゴヌクレオチドDHFR1(5′cccaagctt cccgggctgcagcgccaccatggttggttcgctaaactg-3′)と3′オリゴヌクレオチドDHFR 2(5′ccatcgatctcgagtcattcttctcatatacttcaaa-3′)により、予想される55 0bpのDNA断片を得た。メトトレキセート耐性型のhDHFRを得るために、点突然 変異(Phe32Ser)を野生型hDHFR cDNAに導入した。すなわち、完全長hDHFR PCR 産物を鋳型とし、オリゴヌクレオチドDHFR1、所望の突然変異を保持するオリゴ ヌクレオチドDHFR4(5′-gaaatatctagattcattcctg-3′)、及びPwo酵素を用いて 、hDHFRの5′部分120bpを増幅した。もう1つのPCR反応では、DHFR2と、DH FR4の逆相補鎖であるDHFR3(5′-caggaatgaatctagatatttc-3′)を用いて、hDHF Rの3′部分430bpを増幅した。5′部分と3′部分の両方を変性し、互い にアニールさせた後、DHFR1とDHFR2で増幅することにより、550bpの完全長 hDHFRを再び組み立てた(図21)。所望の突然変異の存在を、野生型hDHFRでは 切断するが、Phe32Ser突然変異体では切断しないEcoRIによる消化で分析した。 hGCの全3′非コーディングドメインを削除するため、オリゴヌクレオチドGCo 11(5′-gatcgagggatgcagtac-3′)とオリゴヌクレオチドGCo14(5′-tgtggcgtc gccagtgaggatcctctagaagcttggg-3′)を用いる300bp hGC DNA断片の増幅に、IG- GC2プラスミドを用いた。オリゴヌクレオチドGCo14はhGCの終止コドンを含有す る。オリゴヌクレオチドGCo11の下流には、唯一のSalI部位があり、オリゴヌク レオチドGC14はHindIII部位を含有する。クローニングのために、野生型及びPhe 32Ser突然変異型hD HFR PCR断片を、HindIII(DHFR1中に存在する)とClaI(DHFR2中に存在する)で 消化した。300bp 3′-hGC PCR断片をSalIとHindIIIで消化した。これら2つのDN A断片を、3点連結反応で、SalI,ClaI消化IG-GC1構築物中に連結した(図22 )。得られた複シストロン性ベクターは、IG-GC5(野生型hDHFR)とIG-GC6(Phe 32Ser hDHFR)をコードした。これらのベクターにおいて、hGCコーディング領域 は、1つの単一mRNAからの両タンパク質の翻訳を可能にする36bpのシストロ ン間リンカーによって、hDHFRコーディング領域から分離されている。突然変異 型ポリオーマエンハンサーPyF101を3′-LTR中に含むジシストロンレトロウイル スベクターを得るために、NheI断片を単離し、それをpSK/ZipDMo+PyF101中にク ローニングした。(それぞれIG-GC7及びIG-GC8)。これらのジシストロンレトロ ウイルスベクターをレトロウイルスパッケージング細胞中にトランスフェクショ ンすることにより、標的細胞の感染時に、ピリミジンの貯えを枯渇させることに よりDNA合成を阻害する強力な細胞毒性剤メトトレキセートに対して、それらの 細胞を耐性にすることができるウイルスを産生できる。 実施例5:ヒトCD2遺伝子の遺伝子座制御領域配列の組 換えレトロウイルスベクターpLgAL(ΔMo+Py F101)への導入 この実施例では、レトロウイルスベクター構築物pLgAL(ΔMo+PyF101)(Van Beusechemら,1990)(AはアデノシンデアミナーゼをコードするヒトcDNA遺伝子 (hADA)を表わす)を用いた。これを「ベクター」ともいう。さらに、ヒトCD2 遺伝子(Langら,1988)の遺伝子座制御 領域(LCR)配列(これを「CD2-LCR」ともいう)をも用いた。CD2-LCR中には、 形質転換マウス中でCD2プロモーターと異種プロモーターに対してCD2-LCR特有の 性質をすべて発揮する、2076nt HindIII断片(nt 2-2077)が同定されている(L angら,1988、Langら,1991)。この断片内には880nt AflIII断片(nt 433-1314 )があり、それがCD2-LCRとして機能することがインビトロのヒトT細胞系で示 されている(Lakeら,1990)。ベクターに、HindIII CD2-LCR断片(「L2」とも いう)と、AflIII CD2-LCR断片(「L0.8」ともいう)をクローニングした。その ために、構築物GSE1502(D.Kiousis,MRC)からL2及びL0.8断片を単離し、それ らにクレノウポリメラーゼで平滑末端を与えた。ベクターをClaI(Mo-MuLVのnt7 675、env内)又はNheI(Mo-MuLVのnt7846、3′LTR内)で消化し、やはり平滑末 端を与えた。断片L2又はL0.8をClaI部位(得られた構築物を「CL2」又は「CL0.8 」ともいう)又はNheI部位(得られた構築物を「NL2」又は「NL0.8」ともいう) 中にクローニングした。それらを、CD2-LCRの通常の5′→3′配向(フォワード ;「F」ともいう)と、3′→5′配向(リバース;「R」ともいう)でクローニン グした。この方法で、「CL2F」、「CL2R」、「CL0.8F」、「CL0.8R」、「NL2F」 、「NL2R」、「NF0.8F」及び「NL0.8R」と呼ぶ8種類の新規レトロウイルス構築 物を作製した(図2)。 これら8種類の新しい構築物を組換えレトロウイルスにパッケージングした。 そのために、構築物のDNA 20μgを、Chen及びOkayama(1977)に記述されて いる方法を用いて、エコトロピックパッケージング細胞系GP+E -86(Markowitzら,1988)にトランスフェクションした。ウイルスタンパク質の 産生を担うDNA配列を保持するものを選択するために、トランスフェクションに 先立って、15μg/mlヒポキサンチン、250μg/mlキサンチン(xanh ine)及び25μg/mlミコフェノール酸を含む培地で、GP+E-86細胞を培養し た。機能的なhADA酵素を産生するトランスフェクタントを、4μMキシロフラノ シル-アデニン(Xyl-A)と10nMデオキシドホルマイシン(dCF)を含む培地 における選択培養によって単離した(Kaufmanら,1986)。Xyl-A/dCF-耐性トラ ンスフェクタントの培養上清を、孔径0.45μmのフィルターを通して濾過し た後、その培養上清中に存在するエコトロピック組換えレトロウイルスによるア ンホトロピックパッケージング細胞系GP+envAm12(Markowitzら,1988)の形質 導入に使用した。このアンホトロピックパッケージング細胞は、使用に先立って 、ウイルスタンパク質をコードするDNA配列の保持するものについて選択(GP+E- 86細胞について記述したように行ない、200μg/mlヒグロマイシンBを添 加した)し、レトロウイルス形質導入を促進するために、4μg/mlポリブレ ンと共に予備培養した。機能的hADA酵素を産生するGP+envAm12細胞を、Xyl-A/dC F-選択によって、上述のように単離した。個々のhADA陽性GP+envAm12クローンを 単離し、拡張した。hADA陽性GP+envAm12クローンを、組込まれた組換えレトロウ イルスの完全性と、アンホトロピック組換えレトロウイルスの産生について特徴 づける前に、まず、すべてのクローンが、組換えレトロウイルスによる個々の形 質導入に由来するものであることを 確かめた。そのために、クローンから得た染色体DNAをBglIII(これはhADA遺伝 子内で構築物を1回切断する)で消化し、サザン分析で、hADAプローブ(pAMG1( Valerioら,1985)の551nt BglIII-SstI断片)とハイブリッド形成させた。これ によって、ゲノム中の挿入部位に依存する長さを持つ3′接合断片が同定される 。全てのクローンに、組換えレトロウイルスの1つが、1つだけ挿入されている ことがわかった。同じ長さの接合断片を持つクローンを以降の分析から除いた。 それから、残りのクローンすべてを、組込まれた組換えレトロウイルス構築物の 正しい構造について、サザン分析で調べた。そのために、クローンの染色体DNA をKpnI(これは両レトロウイルスLTRを1回切断し、ベクターについては3.5k b、L2及びL0.8挿入物を持つ構築物についてはそれぞれ5.5kbと4.3kb の、de hADAプローブとハイブリッド形成する断片をもたらす)で消化した。こ の分析の結果を表2に示す。L2断片をClaI部位にクローニングした場合、分析し たすべてのクローン中の断片長は、挿入の方向にかからわず正しかった。しかし 、NheI部位へのクローニングは、得られる構築物を不安定にした。この結果は、 フォワード配向での挿入後が最も著しかった。L0.8断片の挿入は、リバース配向 でClaI部位にクローニングした後を除いて、ほとんどの場合、安定な組換えレト ロウイルス構築物をもたらした。全てのクローンが(損傷したレトロウイルス挿 入物を保持するクローンでさえ)組換えレトロウイルスをパッケージした。異な る挿入物は、産生されるウイルスの力価に有意な影響を与えなかった(表4)。 先端欠失型レトロウイルス挿入物を保持 するいくつかのクローンを、より詳細な分析にかけた。3つの独立NL2Rクローン は、すべて、hADA遺伝子の3′末端からL2R挿入物の3′末端までの領域を覆う 断片内に、2kbの欠失を持つことがわかった。分析した7つのNL2Fクローンで は、レトロウイルス挿入物が、200bpから2kbまでの様々なサイズの欠失 を持つことがわかった。その欠失は、7クローン全てにおいて、L2F断片(の一 部)を含み、それらクローンのうち2つでは、その欠失がベクター内(3′LTR中 のL2Fの5′及びhADAの3′)に達していた。5つの損傷したCL0.8クローンは、4 例で、長さの異なる欠失を持ち、1例で挿入を持っていた。これらの結果は、L2 断片が、この断片をベクターのLTRに組込むと、ベクターの安定性に悪影響を与 える配列を含むことを示している。したがって、L2断片はLTR間に置かなければ ならない。その目的にはClaI部位を使用することが好ましい。LTR中に挿入する ためのもう1つの方法として、より小さいL0.8断片を使用することもできる。 * 正確な組換えレトロウイルスの組込みがあったクローン数/分析した独立し たクローン数 **CD2−LCR挿入がないベクターを有するGP+envAm12細胞の平 均力価は1.5E3であった。N.A.は分析されていないを示す。 図面の説明 図1はpLecを構築するために用いたクローニング法の略図を示す。LTR はロングターミナルリピート、HIIIはHind III、mcsはマルチプル・ク ローニング部位、SDはスプライス・ドナー部位、SAはスプライス・アクセプ ター部位、TAGは終止コドン、波形線はマウスゲノムのフランキング配列を表 わす。 図2はpLecΔMoを構築するために用いたクローニング法の略図を示す。 XはXbaIを表わす。図1の説明参照。 図3はpLTKkozを構築するために用いたクローニング法の略図を示す。 同様に図1の説明参照。 図4aおよびbは構築物pIGTKおよびpLTTΔMoの略図を示す。同様 に図1の説明参照。 図5は組換えレトロウイルス産生細胞系列を1回投与し、そののちにGCVを 投与することにより処理した脳腫瘍をもつラットのKaplan-Meier生存曲線を示す 。腫瘍細胞の大脳内注射を0日に行ない、IG−RV−TKを腫瘍細胞注射の3 日後に注射した。1つのグループはI コントロール(n=5/グループ)はPBSを注射し -非産生細胞(― ―)、IG−RV−TK産生細胞の上清(― - ―)、およ びRV−IL2産生細胞(― - - ―)を注射した。1つのグループはIG−R V−TK産生細胞を注射したのちにGCV処理を行なわなかった(- - - - - - )。ウイルス注射の5日後、15mg/kg GCVを1日に2回10日間腹腔内投与した。IG−RV−TKで処置したラ ットはコントロールに比べ有意に長く生存した(p<0.01、logランク・ テスト(log rank test))。1匹のラットは表在性軟膜腫瘍(superficial lep tomeningeal tumour)で死亡した()。このラットは生存分析から削除してい る。 図6はシストロン間のリンカー(intercistronic linker)をテストするため に用いた構築物の略図を示す。TGAは終止コドン、EはEcoRI、SはSa lIを表わす。 図6Aは(任意の単位の)ルシフェラーゼ活性について補正した、トランスフ ェクトされたRat−2細胞のG418での選択後にえられたコロニーの平均数 を示す棒グラフである。 図6BはHAT培地中での選択後にえられたコロニー数について補正した、ト ランスフェクトされたRat−2細胞のG418での選択後にえられたコロニー の平均数を示す棒グラフである。 図7はIGmdr1−Gウイルス上清で形質導入したのちのA2780細胞に ついてのRh−123排除分析を示す。形質導入したA2780細胞(A)をmo ckに感染したコントロール(B)と比較する。 図8はIGmdr1−Gウイルス上清で形質導入したのちのCD34+末梢血 細胞のビンスリスチン生存率を示す。CD34で選択したPBPCを4日間IG mdr1−G上清を用いて(□)または用いずに(○)IL−3および4μg/ mlの硫酸プロタミンの存在下で形質導入した。上清は毎日新しいものに交換し た。形質導入 後、PBSCをインビトロのコロニー形成(GM−CFU)のために存在するビ ンクリスチンの量をふやし播種した。14日後にコロニーを計数した。生存率は 薬剤の入った培養皿中のGM−CFUの数を薬剤の入っていない培養皿中のGM −CFUの数で割って算出した。 図9はレトロウイルス構築物IG−GC−1の物理的地図を示す。SDはスプ ライス・ドナー、SAはスプライス・アクセプターを表わす。TGAはgagコ ーディング配列の突然変異した開始コドン、LTRはロングターミナルリピート を表わす。 図10はレトロウイルス構築物IG−GC−2の物理的地図を示す。SDはス プライス・ドナー、SAはスプライス・アクセプター、TAGはgagコーディン グ配列の突然変異した開始コドン、LTRはロングターミナルリピートを表わす 。 図11はヒトグルコセレブロシダーゼcDNAの3′の非翻訳領域の部分を削 除するためのPCR法を示す(詳細は本明細書参照)。 図12はレトロウイルス構築物IG−GC−3の物理的地図を示す。SDはス プライス・ドナー、SAはスプライス・アクセプター、TAGはgagコーディン グ配列の突然変異した開始コドン、LTRはロングターミナルリピートを表わす 。 図13はレトロウイルス構築物IG−GC−4の物理的地図を示す。SDはス プライス・ドナー、SAはスプライス・アクセプター、TAGはgagコーディン グ配列の突然変異した開始コドン、LTRはロングターミナルリピートを表わす 。 図14Aはパッケージング細胞系列GP+E86およびPsi−CRE中のそ れぞれのレトロウイルス構築物IG−GC−2およびIG−GC−4のトランス フェクション後および3T3細胞の感染後のグルコセレブロシダーゼ酵素活性の 上昇を示す。 図14Bは霊長類に特異的なモノクローナル抗体8E4(80mg総タンパク 質/レーン)を用いたウェスタン・ブロットを示す。A、B、Cはレトロウイル ス構築物IG−GC−2でトランスフェクションしたのちのGP+E86細胞か ら調製した細胞溶解産物を表わす。+/−はプロテアーゼインヒビターの有無を 表わす。GPはトランスフェクトしていないGP+E86細胞から調製した細胞 溶解産物を表わす。 図15は霊長類に特異的なモノクローナル抗体8E4(80mg総タンパク質 /レーン)を用いたウェスタン・ブロットを示す。B1/B2はエコトロピック GP2bウイルス(デュプリケート)を用いた反復感染(1、4、10回)後の PA317細胞から調製した細胞溶解産物を表わす。GPはポジティブコントロ ールとしてのレトロウイルス構築物IG−GC−2を用いたトランスフェクショ ン後のGP−E86細胞から調製した細胞溶解産物を表わす。PAは感染してい ないPA317細胞から調製した細胞溶解産物を表わす。Cerはポジティブコ ントロールとしての16.5mg(0.7単位)の組換えグルコセレブロシダー ゼ(ゲンザイム社(Genzyme Corp.)製)を表わす。 図16は10%アクリルアミドゲルにかけた親細胞系PA317(PA)およ び産生細胞(PA2、PA4、 PG2およびPG4)におけるhGC発現についてのウェスタン分析を示す。ポ ジティブコントロールとして約1単位のセレザイム(Gerezyme)(ゲンザイム社 製)をかけた。B)20μg総タンパク質のそれぞれに感染したゴーシェ(Gauc her)II型細胞プール(PA2、PA4、PG2およびPG4)および親細胞系 (T−II)をかけた。 図17はPA2に感染した個々の3T3細胞クローンのDNA分析を示す。単 離したDNAはEcoRI(hGC配列のまさに5′のユニークな制限部位)で 消化し、サザン・ブロットを完全なhGC配列をプローブとしてつった。それぞ れの個々の3T3クローンのゲノムDNAにおいて、3つのバンドの平均の結果 は可視的で、評価された機能力価(functional titer)は少なくとも3×105 /mlである。 図18はウイルス上清に感染したIおよびII型のゴーシェ線維芽細胞と、正常 およびゴーシェIおよびII型線維芽細胞についてのhGC活性アッセイ(PNP −β−Glu)を示す。A)は感染したゴーシェI型線維芽細胞(灰色のバー) に対する感染していない(白色のバー)および正常(黒色のバー)細胞(n=4 )を示す。B)は感染したゴーシェII型線維芽細胞(灰色のバー)に対する感染 していない(白色のバー)および正常(黒色のバー)細胞(n=4)を示す。 図19はゴーシェ骨髄(n=4)の感染したCD34+液体培養細胞の溶解産 物におけるhGC活性アッセイ(PNP−β−Glu)を示す。 図20は感染したCD34+ゴーシェ骨髄細胞におけ る組換えプロウイルスの存在を示すPCRおよびそれにつづくサザン分析を示す 。サザン・ブロットはhGC遺伝子の3′末端からの300bpのBamHI断 片をプローブとしてつった。 図21はヒトジヒドロ葉酸レダクターゼcDNAにおける点突然変異(Phe 32 Ser)の導入のための方法を示す。 図22は組換えレトロウイルスベクターIG−GC5およびIG−GC6の地 図の略図を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD ,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I S,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN, MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S D,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR,TT ,UA,UG,US,UZ,VN (72)発明者 ファン エス、ヘルムス ヘンドリクス ジェラルドゥス オランダ王国、2288 ヘーイェー リース ヴィーク、ランゲ クレイウェッヒ 151 (72)発明者 ファン ボーセヘム、フィクトル ウィレ ム オランダ王国、2288 ヘーイェー リース ヴィーク、ランゲ クレイウェッヒ 151 (72)発明者 ファレリオ、ドメニコ オランダ王国、2288 ヘーイェー リース ヴィーク、ランゲ クレイウェッヒ 151

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.レトロウイルス由来の、エンハンサーを含む、転写制御にかかわる配列から なるベクターであって、該ベクターはさらに少なくとも1つの目的遺伝子の挿入 部位およびパッケージングシグナルからなり、該ベクターは不必要なレトロウイ ルス配列をもたず、ウイルスタンパク質の少なくとも一部をコードするオープン リーディングフレームをもたない、少なくとも1つのエンハンサーが未分化細胞 において活性なエンハンサーであることを特徴とするベクター。 2.転写制御にかかわる配列がウイルスのロングターミナルリピート配列である 請求の範囲第1項記載のベクター。 3.少なくとも1つのロングターミナルリピートの起源がレトロウイルスである 請求の範囲第2項記載のベクター。 4.少なくとも1つのロングターミナルリピートがモロニーマウス白血病ウイル スに由来する請求の範囲第3項記載のベクター。 5.少なくとも1つのエンハンサーがポリオーマウイルス突然変異体PyF10 1エンハンサーである請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載のベクター 。 6.少なくとも1つの目的遺伝子の挿入部位としてポリクローニング部位からな る請求の範囲第1項乃至第5項のいずれかに記載のベクター。 7.さらに目的遺伝子の翻訳をエンハンスする部位に共通コザック配列を有する 請求の範囲第1項乃至第6項 のいずれかに記載のベクター。 8.さらに遺伝子座制御領域を有する請求の範囲第1項乃至第7項のいずれかに 記載のベクター。 9.遺伝子座制御領域がCD2LCRである請求の範囲第8項記載のベクター。 10.さらに境界要素、組織特異的プロモーターまたはエンハンサーなどのさらな る調節要素を有する請求の範囲第1項乃至第9項のいずれかに記載のベクター。 11.少なくとも1つの目的遺伝子が該遺伝子のために存在する部位に挿入されて いる請求の範囲第1項乃至第10項のいずれかに記載のベクターにもとづくベク ター。 12.目的遺伝子が選択マーカー遺伝子である請求の範囲第11項記載のベクター 。 13.選択マーカー遺伝子がネオマイシン遺伝子、DHFR遺伝子、MDRまたは ヒグロマイシン遺伝子である請求の範囲第12項記載のベクター。 14.少なくとも2つの目的遺伝子が挿入され、該遺伝子がジシストロン単位また はマルチシストロン単位に存在し、該シストロンは3で割り切れる塩基数である 長さをもつ短い非コーディングリンカーにより分離されている、請求の範囲第1 1項乃至第13項のいずれかに記載のベクター。 15.自殺遺伝子からなる請求の範囲第11項乃至第14項のいずれかに記載のベ クター。 16.単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子またはシトシンデ アミナーゼ遺伝子からなる請求の範囲第15項記載のベクター。 17.ヒト多剤耐性遺伝子もしくはグルコセレブロシダーゼ遺伝子または複製の阻 止を導くHIV配列からなる請求の範囲第11項乃至第14項のいずれかに記載 のベクター。 18.請求の範囲第1項乃至第17項のいずれかに記載のベクターおよび該ベクタ ーのためのパッケージング細胞系からなるキット。 19.パッケージング細胞系がウイルス様粒子を産生するために必要なレトロウイ ルスのタンパク質を発現する請求の範囲第18項記載のキット。 20.請求の範囲第1項乃至第19項のいずれかに記載のベクターからなるウイル ス様粒子。 21.細胞を請求の範囲第20項記載のウイスル様粒子に接触させることからなる 目的の遺伝子材料を該細胞に提供する方法。
JP8533963A 1995-05-10 1996-05-07 遺伝子治療に特に適した改良型レトロウイルスベクター Pending JPH11511651A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP95201211.0 1995-05-10
EP95201211 1995-05-10
PCT/NL1996/000195 WO1996035798A1 (en) 1995-05-10 1996-05-07 Improved retroviral vectors, especially suitable for gene therapy

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11511651A true JPH11511651A (ja) 1999-10-12

Family

ID=8220283

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8533963A Pending JPH11511651A (ja) 1995-05-10 1996-05-07 遺伝子治療に特に適した改良型レトロウイルスベクター

Country Status (5)

Country Link
EP (1) EP0835320A1 (ja)
JP (1) JPH11511651A (ja)
AU (1) AU5703796A (ja)
CA (1) CA2218808A1 (ja)
WO (1) WO1996035798A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008108344A1 (ja) * 2007-03-02 2008-09-12 Cellgentech, Inc. Lcat欠損症の遺伝子治療用細胞並びにこれを産生するのに用いられる複製欠損性レトロウイルスベクター及びプラスミド

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU741747B2 (en) 1997-05-13 2001-12-06 University Of North Carolina At Chapel Hill, The Lentivirus-based gene transfer vectors
US20030017138A1 (en) 1998-07-08 2003-01-23 Menzo Havenga Chimeric adenoviruses
US6913922B1 (en) 1999-05-18 2005-07-05 Crucell Holland B.V. Serotype of adenovirus and uses thereof
US6492169B1 (en) 1999-05-18 2002-12-10 Crucell Holland, B.V. Complementing cell lines
US20040014033A1 (en) 1999-06-30 2004-01-22 Evotec Biosystems Ag, A Corporation Of Germany Virus like particles, their preparation and their use preferably in pharmaceutical screening and functional genomics
US7476517B2 (en) 1999-06-30 2009-01-13 Evotec Ag Virus like particles, their preparation and their use preferably in pharmaceutical screening and functional genomics
ATE362990T1 (de) * 1999-06-30 2007-06-15 Evotec Ag Virusähnliche partikel, vorbereitung und verwendung in screening und funktionelle genomanwendung
DE60138403D1 (de) 2000-09-26 2009-05-28 Crucell Holland Bv Adenovirale vektoren für die übertragung von genen in zellen der skelettmuskulatur oder myoblasten
WO2005118809A2 (en) * 2004-04-29 2005-12-15 The University Of North Carolina At Chapel Hill Methods and compositions for enhancing cell adhesion properties

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4959313A (en) * 1987-06-22 1990-09-25 The Jackson Laboratory Cellular enhancer for expressing genes in undifferentiated stem cells
NL9101680A (nl) * 1991-10-04 1993-05-03 Tno Werkwijze voor het genetisch modificeren van beenmergcellen van primaten, alsmede daarbij bruikbare cellen die recombinante retrovirale vectoren produceren.
FR2699191B1 (fr) * 1992-12-16 1995-02-10 Univ Paris Curie Nouveaux vecteurs rétroviraux, lignées cellulaires les contenant, et leur utilisation dans le traitement des tumeurs.
GB9305759D0 (en) * 1993-03-19 1993-05-05 Medical Research Council And T Hiv therapy method and agents
WO1994029437A1 (en) * 1993-06-07 1994-12-22 University Of Medicine & Dentistry Of New Jersey Highly-efficient, self-inactivating, recombination-free, u3-free retroviral vectors
US5631162A (en) * 1993-06-11 1997-05-20 Massachusetts Institute Of Technology Retroviral vectors for transducing β-globin gene and β-locus control region derivatives
US5707865A (en) * 1994-12-21 1998-01-13 Kohn; Donald B. Retroviral vectors for expression in embryonic cells

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008108344A1 (ja) * 2007-03-02 2008-09-12 Cellgentech, Inc. Lcat欠損症の遺伝子治療用細胞並びにこれを産生するのに用いられる複製欠損性レトロウイルスベクター及びプラスミド
JPWO2008108344A1 (ja) * 2007-03-02 2010-06-17 セルジェンテック株式会社 Lcat欠損症の遺伝子治療用細胞並びに遺伝子治療用細胞組成物

Also Published As

Publication number Publication date
AU5703796A (en) 1996-11-29
WO1996035798A1 (en) 1996-11-14
EP0835320A1 (en) 1998-04-15
CA2218808A1 (en) 1996-11-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Vile et al. Retroviruses as vectors
US6949242B2 (en) Retroviral vector for the transfer and expression of genes for therapeutic purposes in eukaryotic cells
Boris-Lawrie et al. Recent advances in retrovirus vector technology
AU699706B2 (en) Improved vectors for gene therapy
IE913929A1 (en) Bifunctional selectable fusion genes
AU7477394A (en) Efficient gene transfer into primary lymphocytes
JPH10500287A (ja) 非交差性レトロウイルスベクター
US20020123146A1 (en) Highly productive packaging lines
Havenga et al. Retroviral stem cell gene therapy
JP2001517453A (ja) 方 法
JPH11511651A (ja) 遺伝子治療に特に適した改良型レトロウイルスベクター
US20030157718A1 (en) Expression of heterologous genes from an IRES translational cassette in retroviral vectors
AU693317B2 (en) Retroviral vectors for expression in embryonic cells
Larochelle et al. Genetic manipulation of hematopoietic stem cells
AU721326B2 (en) 10A1 retroviral packaging cells and uses thereof
Kaptein et al. Expression pattern of CD2 locus control region containing retroviral vectors in hemopoietic cells in vitro and in vivo
Bernstein et al. Genetic engineering of mouse and human stem cells
IL116216A (en) Eukaryotic cell lineages for recombinant viral retroviral RNA storage, using trans-expression vectors used to complete the trans
JP2002508976A (ja) 遺伝子療法において使用するための、免疫原性が低下したヌクレオチド発現システム
Fassati et al. Retroviral vectors
Schambach et al. Retroviral vectors for cell and gene therapy
CA2199131C (en) Retroviral vector hybrids and the use thereof for gene transfer
Bender Virus-mediated gene therapy for human beta-thalassemia and sickle cell disease
Zhang et al. MOLECULAR TARGETING OF CANCER: RETROVIRAL VECTOR-MEDIATED ANTISENSE NUCLEIC ACID THERAPY