JPWO2008088008A1 - 消化管機能異常症予防及び/又は治療剤 - Google Patents

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Abstract

本発明者らは鋭意検討した結果、in vitro試験および過敏性腸症候群患者を用いた試験において、プロピオン酸菌発酵物が消化管機能異常症に対する予防/治療効果を有することを見出し、本発明を完成させた。具体的には、in vitro試験において、遠位部大腸特異的に、腸の収縮力を変動させず、かつ腸の収縮頻度を高める作用を有することを見出し、さらに過敏性腸症候群患者の排便状況、全般的な腹部状態、健康関連QOLの改善効果を見出した。また、プロピオン酸菌発酵物は大量に摂取することも可能である。よって、プロピオン酸菌発酵物は、安全に消化管機能異常症に対する予防/治療する効果を期待できる。

Description

本発明は、消化管機能異常症の予防及び/又は治療剤、消化管機能異常症予防及び/又は治療用食品、およびこれらを製造するためのプロピオン酸菌発酵物の使用に関する。
消化管機能異常症(Functional Gastrointestinal disorders: FGIDs)とは、器質的疾患(大腸癌、潰瘍性大腸炎、Crohn病、アメーバ赤痢など)を有さない消化管疾患の一群である。消化管の運動や知覚といった機能の異常が原因となり、罹患部位によって腹痛や嘔気、嘔吐、腹部膨満感、下痢や便秘のような排便異常など様々な症状をきたす。
食道疾患6、胃十二指腸疾患3、腸疾患5、腹痛2、胆道2、直腸・肛門3、小児領域4の合計25疾患がFGIDsに含まれ、そのうちで、例えば便秘を主症状とするものは、小児領域を除くと(便秘型の)過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome: IBS)と、機能性便秘症(Functional constipation: FC)の2疾患である。
FGIDsは生命予後には影響を与えないものの、QOL (quality of life)の低下や医療費の増加を招いており、社会への悪影響が大きい。
この数十年の間に器質的疾患の研究は飛躍的に進み、悪性腫瘍でさえ不治の病とは呼ばれなくなってきた。一方で、消化管の機能異常に関する研究は未だ発展途上と言え、ストレス社会と呼ばれる21世紀には更にFGIDsの罹患率が上がると予想されており、FGIDsの病態解明や新たな治療法の開発は今後の大きな課題である。
FGIDsに含まれる過敏性腸症候群(IBS)は下部消化管の機能異常によって起こり、その病態生理は大腸を中心とする腸管の運動異常であることが分かっている。その症状は、腹痛や腹部不快感(排便によって軽快することを特徴とする)、便通の異常(下痢、便秘、下痢・便秘の混合)、便性の異常(粘液の混入、硬さの異常)、腹部膨満感などが観察される。下痢型では腸管通過時間の短縮、便秘型では腸管通過時間の延長が認められる。部位や収縮性は異なるものの、いずれも腸管運動亢進状態が認められている。健常者とIBS患者を比較すると、ストレス、食事などの刺激やコリン作動性薬剤に対する異常反応がみられると言われている。また、直腸や回盲部の拡張刺激に対する知覚閾値の低下があるとも言われている(非特許文献1)。
便秘症状を改善するものとしては、便を水分で膨張させて便性を改善するとともに便意を生じさせるもの(増量性下剤)や、直接腸の運動、特に腸の収縮力を亢進させるもの(刺激性下剤)等が従来から知られている。刺激性下剤は、強力な排便作用を有するが、連用により耐性を生じるため、長期の服用には適さない。また、IBSの治療方法としては、抗コリン薬によって腸の異常な痙攣を鎮める方法、食物繊維等によって便の水分調整作用およびゲル化作用によって内容物の移動を補助する方法、抗不安剤によってストレス症状を軽減する方法等が知られている。しかし、抗コリン薬製剤は劇薬に指定されているものが少なくない(トランコロン等)。また、ゲル化作用による水分を調節するポリカルボフィルカルシウム製剤も、急性腹部疾患、高カルシウム血症、腎不全、腎結石患者等には禁忌であり、安全性の高い消化管機能異常症の新規予防または治療剤の開発が期待されている。
プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)による発酵物はプロピオン酸菌発酵物として知られており、各種ビフィズス菌に対する増殖、炎症性腸疾患の改善等に有効であることが報告されている(特許文献1)。また、プロピオン酸菌発酵物の成分の1つである1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)についても、ビフィズス菌増殖促進作用(特許文献2)、代謝性骨疾患の予防治療作用(特許文献3)、牛乳不耐症の牛乳摂取時にみられる腹部不快症状の軽減作用(特許文献4)を有することが見出されている。
国際公開第2005/099725号パンフレット 特開平8−98677号公報 国際公開第01/28547号パンフレット 国際公開第03/016544号パンフレット 井村裕夫ら監修、「最新内科学大系 プログレス8 消化管疾患」、中山書店発行、pp.51、1997年
本発明の課題は、安全性の高い消化管機能異常症予防及び/又は治療剤を提供する事である。
本発明者らは鋭意検討した結果、in vitro試験および過敏性腸症候群患者を用いた試験において、プロピオン酸菌発酵物が消化管機能異常症に対する予防/治療効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
具体的には、in vitro試験において、遠位部大腸特異的に、腸の収縮力を変動させず、かつ腸の収縮頻度を高める作用を有することを見出し、さらに過敏性腸症候群患者の排便状況、全般的な腹部状態、健康関連QOLの改善効果を見出した。また、プロピオン酸菌発酵物は大量に摂取することも可能である。よって、プロピオン酸菌発酵物には、安全に消化管機能異常症に対する予防/治療する効果を期待できる。
すなわち、本発明は、
[1] プロピオン酸菌発酵物及び/またはその処理物を有効成分として含有する消化管機能異常症予防及び/又は治療剤、
[2] プロピオン酸菌が、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属に属する菌である前記[1]に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤、
[3] プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属に属する菌が、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)である前記[2]に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤、
[4] プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)が、Propionibacterium freudenreichii ET-3 (FERM BP-8115) である前記[3]に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤、
[5] プロピオン酸菌発酵物が、プロピオン酸菌乳清発酵物である、前記[1]から[4]のいずれか1項に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤。
[6] 消化管機能異常症が過敏性腸症候群または機能性便秘症からなる群のうち1つあるいは複数の組み合わせである、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤、
[7] 前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤を含有してなる消化管機能異常症予防及び/又は治療用食品、
[8] 前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤製造のための、プロピオン酸菌発酵物の使用、
[9] 前記[7]に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療用食品製造のための、プロピオン酸菌発酵物の使用、
[10] プロピオン酸菌発酵物及び/またはその処理物を投与することを特徴とする、消化管機能異常症の予防及び/又は治療方法、
からなる。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤は、安全に消化管機能異常症、とりわけ過敏性腸症候群、痙攣性便秘または機能性便秘症を予防及び/又は治療をすることができる。
プロピオン酸菌乳清発酵物の腸管平滑筋に対する作用を測定する際の代表的なチャートを示す。実施例1にて、遠位部大腸にプロピオン酸菌乳清発酵物を添加した時に観察される測定チャートの一例である。 排便状況に関するアンケートである。実施例4にて使用した。 全般的な腹部状態に関するアンケートである。実施例4にて使用した。 実施例4のSF-36アンケートの結果を示す。各領域のスコアーについて、上段にアクティブ摂取前後の比較を、下段にプラセボ摂取前後の比較(スコアーに改善がみられた:Improve(斜線)、変化がみられなかった:No change(□)、増悪がみられた:Worsen(黒四角))を例数の割合で示した。 実施例4のSF-36アンケートの結果を示す。摂取前後で各領域のスコアーの変化(Change of score)を求め、プラセボ(□)とアクティブ(黒四角)ごとに摂取前後で差を評価した。*:p<0.05(Student's t-test)
以下、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施態様に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更できるものである。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤の有効成分であるプロピオン酸菌発酵物は、国際公開第03/016544号パンフレット等に記載の公知の製造法に準じて製造することができる。本明細書において、「プロピオン酸菌発酵物」は、プロピオン酸菌による発酵によって得られた培養物自体をいう。本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤には、プロピオン酸菌発酵物及びその処理物、例えば、前記培養物(プロピオン酸菌発酵物)をろ過・遠心分離もしくは膜分離等で除菌して得られた培養濾液や培養上清液、前記培養濾液・培養上清液やプロピオン酸菌発酵物等をエバポレーター等により濃縮した濃縮物、ペースト化物、希釈物又は(凍結、加熱、減圧など)乾燥物、あるいはこれらを殺菌処理又は滅菌処理したものが含まれる。本発明において、処理物の作成においては、ろ過、遠心分離、膜分離等の除菌処理、沈殿、濃縮、ペースト化、希釈、乾燥、殺菌、滅菌などの前述の処理工程の1つ又は複数を組み合わせて用いることができる。
プロピオン酸菌発酵物の製造に使用される培地は、通常微生物が増殖しうる栄養源を含有する。栄養源として、ホエイ、カゼイン、脱脂粉乳、ホエイタンパク濃縮物(WPC)、ホエイタンパク分離物(WPI)、酵母エキス、大豆エキス、トリプチケース等のペプトン、ブドウ糖、乳糖等の糖類、乳清ミネラル等のミネラル類など、またはこれらを多く含有する食品を添加することができる。あるいはこれらの酵素処理物を添加してもよい。とりわけ、ホエイまたはこれの酵素分解物を使用するのが好ましいが、この例に制限されるものではない。本発明において、ホエイ、WPCまたはWPI等、ホエイに由来するものを栄養源に用いたプロピオン酸菌発酵物を、以降、プロピオン酸菌乳清発酵物という。
前記栄養源を酵素分解する場合に用いる酵素として、プロテアーゼまたはペプチダーゼのうち1つあるいは複数の組み合わせを挙げることができる。使用するプロテアーゼまたはペプチダーゼは特に限定されないが、例えば、食品グレードプロテアーゼは、エンド型プロテアーゼ、エキソ型プロテアーゼ、エキソ型ペプチダーゼ/エンド型プロテアーゼ複合酵素、プロテアーゼ/ペプチダーゼ複合酵素を含む。エンド型プロテアーゼは、例えば、キモシン(EC 3.4.23.4、Maxiren、modified yeast Kluyveromyces lactis 由来、GIST-BROCADES N.V.)、AlcalaseR (Bacillus licheniformis 由来、ノボ社)、エスペラーゼ(B. lentus 由来、ノボ社)、NeutraseR (B. subtilis由来、ノボ社)、プロタメックス(バクテリア由来、ノボ社)、PTN6.0S(ブタ膵臓トリプシン、ノボ社)など、エキソ型ペプチダーゼ/エンド型プロテアーゼ複合酵素としては、例えばフレーバーザイム(Aspergillus oryzae 由来、ノボ社)などが挙げあげられる。他に、エンド型プロテアーゼとして、例えば、トリプシン(CAS No.9002-07-7、EC 3.4.21.4、ウシ膵臓由来、Product No.T8802、SIGMA)、ペプシン(CAS No.9001-75-6、EC 3.4.4.1、ブタ胃粘膜由来、SIGMA)、キモトリプシン(ノボ社、ベーリンガー社)、プロテアーゼN「アマノ」G(Bacillus subtilis 由来;天野エンザイム)、ビオプラーゼ(Bacillus subtilis 由来;ナガセ産業)、パパインW−40 (天野エンザイム)、エキソ型プロテアーゼとして、膵カルボキシペプチダーゼ、小腸刷子縁のアミノペプチダーゼなどが挙げられる。また、プロテアーゼ/ペプチダーゼ複合酵素としては、例えばプロテアーゼA「アマノ」G(Aspergillus oryzae 由来;天野エンザイム)、ウマミザイムG(ペプチダーゼ及びプロテアーゼ、Aspergillus oryzae由来;天野エンザイム)を用いることができる。酵素の由来は上記の記載に限定されず、動物、植物、微生物のいずれに由来するものであってもよいが、Aspergillus oryzae 由来のものが好適である。これらの酵素は商品名・由来・製造元など限定的なものを意味しない。本発明の実施において、酵素は1種もしくは2種以上を組み合わせてもよい。好適な例として、プロテアーゼA「アマノ」G(Aspergillus oryzae由来;天野エンザイム)を挙げることができるが、この例に限定されない。また、前述の酵素を組み合わせて用いる場合には、それぞれの酵素反応は、同時でもよく、別々に行ってもよい。
前記栄養源を酵素によって分解する場合は、原料とする栄養源を水又は温湯に分散、溶解し、酵素を添加して行う。酵素分解開始時のpH、酵素分解時間、酵素反応温度は本発明品が得られるのであれば特に限定しないが、あえて挙げるなら、酵素分解開始時のpHは3.0〜7.5、好ましくは4.5〜7.0より好ましくは6.0〜7.0で行うことができる。酵素分解時間は0.5〜300時間、好ましくは1〜20時間で、さらに好ましくは1〜5時間とするのがよい。酵素反応温度は20〜57℃、好ましくは30〜52℃、さらに好ましくは40〜52℃で行うことができる。
プロピオン酸菌発酵物を製造するための培地を作成するに当たって好適な例として、ホエイ粉(10w/w%)及びプロテアーゼアマノA「アマノ」G(0.07w/w%、天野エンザイム社製)を水に溶解し、47℃(pH6.6)で2時間酵素分解を行い、その後、85℃、10分間加熱することにより酵素を失活させ、次に、ビール酵母エキス(0.10w/w%、アサヒビール社製)及び硫酸アンモニウム(0.27w/w%)を添加し、pHを6.7に調整後、121℃で7分間滅菌する方法を挙げることができるが、この例に限定されない。
プロピオン酸菌発酵物の製造に使用されるプロピオン酸菌としては、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、プロピオニシモナス(Propionicimonas)属、プロピオニフェラックス(Propioniferax)属、プロピオニミクロビウム(Propionimicrobium)属、プロピオニビブリオ(Propionivibrio)属等があり、特に制限されないが、プロピオニバクテリウム属に属する菌が好ましい。プロピオニバクテリウム属の菌としては、例えば、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)、プロピオニバクテリウム・トエニー(Propionibacterium thoenii)、プロピオニバクテリウム・アシディプロピオニシ(Propionibacterium acidipropionici)、プロピオニバクテリウム・ジェンセニー(Propionibacterium jensenii)等のチーズ用の菌、プロピオニバクテリウム・アビダム(Propionibacterium avidum)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、プロピオニバクテリウム・リンホフィラム(Propionibacterium lymphophilum)、プロピオニバクテリウム・グラニュロサム(Propionibacterium granulosam)、プロピオニバクテリウム・アラビノサム(Propionibacterium arabinosum)、プロピオニバクテリウム・シクロヘキサニカム(Propionibacterium cyclohexanicum)、Propionibacterium innocuum、Propionibacterium intermediu、Propionibacterium pentosaceum、Propionibacterium peterssonii、 Propionibacterium propionicum、Propionibacterium zeae、等が挙げられ、これらのうちで、Propionibacterium freudenreichii(以降、P. freudenreichiiともいう)が好ましく、より好ましくはPropionibacterium freudenreichii IFO 12424又はPropionibacterium freudenreichii ATCC 6207、特にPropionibacterium freudenreichii ET-3(FERM BP-8115)が好ましい。
本発明者らは、Propionibacterium freudenreichii ET-3株を独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した。以下に、寄託を特定する内容を記載する。
(1)寄託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
(2)連絡先:〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番1 中央第6
(3)受託番号:FERM BP-8115
(4)識別のための表示: ET-3
(5)原寄託日:平成13年8月9日
(6)ブタペスト条約に基づく寄託への移管日:平成14年7月11日
上記Propionibacterium freudenreichii ET-3は、エメンタールチーズより分離された。グラム陽性短桿菌であり、硝酸還元能は陰性、インドール生産能は陰性、硫化水素生産能は陰性、ラクトース発酵能は陽性を示す。さらに、DHNAの生産能も有する。
また、菌株名にATCCと記載された菌株はAmerican Type Culture Collectionから入手した基準株を示し、菌株名にIFOと記載された菌株は財団法人発酵研究所から入手した基準株を示す。
次いで、このプロピオン酸菌を前記培地によって培養する。培養方法は公知の嫌気的または好気的培養法を用いることができるが、液体培地による嫌気的または好気的培養法を用いるのが好ましい。発酵開始時のpH、発酵時間、発酵温度は本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤が得られるのであれば特に限定しないが、発酵開始時のpHは3.0〜7.5、好ましくは5.0〜7.5、より好ましくはpH5.5〜7.0で行うことができる。発酵時間は0.5〜200時間、好ましくは50〜100時間、より好ましくは60〜99時間で、発酵温度は20〜50℃、好ましくは25〜45℃、より好ましくは30〜40℃で行うことができる。こうして得られた培養液は、培養後直ちに使用してもよいが、培養液を冷却(3〜20℃、好ましくは約10℃)し、2〜4週間程度保存してから使用するのが望ましい。好適な例として、pH6.8に調製後に121℃で7分間滅菌した培地にP.freudenreichii ET-3(FERM BP-8115株)の賦活培養液を0.01〜2.5%接種し、窒素雰囲気下、32〜37℃で72〜99時間嫌気培養し、この培養液をプロピオン酸菌発酵物として得る方法を挙げることができるが、この例に限定されない。
例えば、約10w/w%のホエイ水溶液をプロテアーゼA「アマノ」Gにて分解し(40〜52℃、pH6.0〜7.0で1〜5時間)、ビール酵母エキスおよび硫酸アンモニウムを添加した作成した培地に上記Propionibacterium freudenreichii ET-3の賦活培養液を0.01〜2.5%接種し、窒素雰囲気下、32〜37℃で72〜99時間嫌気培養してプロピオン酸菌乳清発酵物を製造した場合、Propionibacterium freudenreichii ET-3の菌濃度は約0.5〜50×cfu/mL、DHNA含量は約5〜500μg/mL、固形分は約5〜15w/w%となる。
さらに、本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤は上記プロピオン酸菌発酵物またはその処理物をそのまま、あるいは溶媒で希釈した可溶画分または不溶画分として得ることもできる。溶媒としては、水や通常用いられる溶媒、例えば、アルコール類、炭化水素類、有機酸、有機塩基、無機酸、無機塩基、超臨界流体等を単独あるいは複数を組み合わせて用いることができる。
このようにして得られた消化管機能異常症予防及び/又は治療剤は、そのまま使用することも可能であり、また、必要に応じて、この溶液を公知の方法により濃縮または希釈した溶液として使用することもできる。さらには、この濃縮液を公知の方法により乾燥物として使用することもできる。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤は、消化管機能異常症の予防および/又は治療に有効な組成物として有用である。ラットの腸管平滑筋を用いたマグヌス法、及びIBS患者を対象とした臨床試験において確認されている。
過敏性腸症候群(IBS)は下部消化管の機能異常によって起こり、その病態生理は大腸を中心とする腸管の運動異常であることが分かっている。その症状は、腹痛や腹部不快感(排便によって軽快することを特徴とする)、便通の異常(下痢、便秘、下痢・便秘の混合)、便性の異常(粘液の混入、硬さの異常)、腹部膨満感などが観察される。下痢型では腸管通過時間の短縮、便秘型では腸管通過時間の延長が認められる。部位や収縮性は異なるものの、いずれも腸管運動異常状態が認められている。健常者とIBS患者と比較すると、ストレス、食事などの刺激やコリン作動性薬剤に対する異常反応がみられると言われている。また、直腸や回盲部の拡張刺激に対する知覚閾値の低下があるとも言われている(井村裕夫ら監修、「最新内科学大系 プログレス8 消化管疾患」、中山書店発行、pp.51、1997年)。
大腸は、内容物からの水分・電解質の吸収、腸内細菌の維持、排便等の機能を担う臓器である。これらの機能を維持するためには、小腸からの内容物を適切な速度で推進することが重要となっている。例えば、IBSにおいて上部結腸の蠕動亢進が起こると、内容物からの水分等吸収が不十分となり、その結果下痢の症状を呈する。また、腸運動が不規則になると、内容物の推進に支障をきたし、便秘症状が現れる。
機能性便秘には以下の3種類などが存在する。
1.習慣性便秘(直腸性便秘):朝、排便する時間がなく外出する人など、便意を我慢し続けたため便意を感じる機能(直腸の感受性)が低下していることが原因で起きる便秘。
2.弛緩性便秘:中年以降の女性に多く、大腸の運動が鈍っていることが原因で起きる便秘。腸内容物の通過が遅れるため、水分の吸収が増加する。
3.痙攣性便秘:ストレスが原因で大腸が痙攣を起こし、痙攣部が狭窄するため、便が大腸をスムーズに通過できず、水分吸収が過剰となり、兎糞状の固い便になる便秘。
習慣性便秘や弛緩性便秘に適した便秘薬には、便を水分で膨張させて便性を改善するとともに便意を生じさせるもの(増量性下剤:食物繊維製剤、塩類下剤、糖類下剤等)や、直接腸の運動、特に腸の収縮力を亢進させるもの(刺激性下剤:ダイオウ、センノシド、ピコスルファートナトリウム等)等が従来から知られている。刺激性下剤は、強力な排便作用を有するが、連用により耐性を生じるため、長期の服用には適さない。また、痙攣性便秘はストレスを発散することが効果的で、この場合は前記の便秘薬を服用しても、出口の便が固くなっているので、腹痛に苦しむだけということも、しばしば起こる。
過敏性腸症候群便秘型では器質的異常はなく、ストレスなどにより異常に高い反応を示すため、結腸全般にわたる緊張の上昇と蠕動の減少が認められ、痙攣性便秘が起きる(水谷雅俊、中山沃、大腸の運動性と排便機能および便秘の病態生理、臨床生理学シリーズ6 腸 (朝倉均他編)、pp180-184、南江堂、東京、1990)。したがって、常に大腸蠕動運動を正常に保つことが便秘解消には重要と考えられる。
従来知られる過敏性腸症候群(便秘型、下痢型)の治療方法としては、抗コリン薬(ロートエキス、臭化メペンゾラート等)によって腸の異常な痙攣を鎮めるもの、食物繊維(ポリカルボフィルカルシウム等)等によって便の水分調整作用およびゲル化作用によって内容物の移動を補助するもの等が知られている。また、過敏性腸症候群治療薬として使用されているマレイン酸トリメブチンは、消化管平滑筋に直接作用し、消化管運動亢進状態では抑制的に、低下状態では亢進的に働いて消化管運動を調節する。
一方、本発明のプロピオン酸菌発酵物は、後述のin vitro試験にて遠位部大腸の収縮力を増強することなく、収縮頻度を増加させることが明らかになっている。さらに、後述の過敏性腸症候群便秘型患者を用いた試験においても、本発明のプロピオン酸菌発酵物は、患者の症状(排便状況、全般的な腹部状態)および健康関連QOLを向上させる効果を示した。したがって、痙攣性便秘を含む便秘型過敏性腸症候群に適した素材といえる。
過敏性腸症候群は、下痢の症状を呈する障害の中で最も頻度が多く、夏場に腹部を冷やしたり、清涼飲料水を飲み過ぎたり、心配事やストレスが重なったりする事等が原因となって起こる。特に現代のようなストレス社会では、多くの人が苦しんでいる病気である。その機序としては水・電解質の分泌亢進、腸管からの水分の吸収障害、腸管運動の異常等が考えられ、栄養の消化吸収は保たれているため体重が変わらないのが特徴である。腸管運動の異常としては腸管運動の亢進によって起こる場合と、低下によって起こる場合とがある。
小腸に関しては、小腸内容物の通過遅延によって小腸内に細菌が増殖し胆汁酸の脱抱合を惹起するため、脂肪や水の吸収障害が起こり下痢となる場合がある。
一方、大腸に関しては、棟方らは、内視鏡的逆行性大腸挿管方法を開発し、その方法によって2本のテフロン(登録商標)TMチューブを上行結腸とS字結腸との2カ所に挿入しマクロチップを入れて大腸内圧曲線を導出して大腸の運動を観察している(棟方昭博、川上澄ほか、回腸部チューブ留置法の考案と応用、Gastroenterol Endsc、 21、448-457 (1979))。過敏性腸症候群下痢型の患者では安静時において近位側の上行結腸に対し、遠位側のS字結腸の方が内圧は低く、腸管の圧勾配は肛門側に向かって低くなっているため、腸内容物が直腸以降に押し出されやすくなっている。この現象は、抗コリン薬であるプロスチグミンを投与しても改善されない(川上澄、過敏性腸症候群 自律神経の基礎と臨床(後藤由夫他編)、pp. 276-303,医薬ジャーナル社、大阪・東京、1982)。したがって、過敏性腸症候群下痢型の治療または予防の場合S字結腸の内圧を高める方が効果的と考えられる。
また、S字結腸の管内圧に関する研究では下痢において運動機能の減少が関与していると考えられている(メルクマニュアル第17版 日本語版、第03節 消化器疾患 機能性腸障害 過敏性腸症候群(IBS)、http://merckmanual.banyu.co.jp/cgi-bin/disphtml.cgi?url=03/s032.html(2008年1月15日)、万有製薬株式会社ホームページ)。低下したS字結腸の管内圧を増加させるための方法の1つとして、S字結腸の収縮頻度を高めることが有効である可能性がある。本発明のプロピオン酸菌発酵物は遠位結腸に対し収縮頻度を増加させる作用を持っている。このことは、機能低下したS字結腸に対し運動亢進作用を奏し、内圧を増加させることにより、近位結腸に対し逆行性に圧を増加させ圧勾配を改善する作用のあることを示している。したがって、本発明のプロピオン酸菌発酵物は下痢型の過敏性腸疾症候群に対しても有効であると考えられる。
つまり、必ずしも腸の運動亢進を抑制することばかりが下痢の抑制にはつながらず、適度な圧勾配の維持も重要な因子となる可能性がある。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤は、後述のin vitro試験にて遠位部大腸の腸管平滑筋の収縮力を増強することなく、その収縮頻度を増加させた。収縮頻度の増加作用はプロピオン酸菌を接種する前の培地では観察されず、プロピオン酸菌での発酵が重要であることが見出されている。一方、近位部大腸および中位部大腸でも同様試験を行ったが、腸管平滑筋の収縮力、収縮頻度のいずれに対しても影響を与えなかった。このことから本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤には、近位部大腸および中位部大腸では十分に大腸内容物の水分吸収を保持しながら肛門へと移動させ、遠位部大腸から内容物を排出させ、少しでも近位部大腸および中位部大腸より内圧を高める作用があることが期待される。つまり、下痢型の過敏性腸症候群にも有用な素材と考えられる。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤は消化管機能異常症の予防及び/又は治療に有効な組成物として消化管機能異常症、とりわけ過敏性腸症候群(便秘型、下痢型、混合型)、痙攣性便秘、機能性便秘症等への応用が可能である。また、少ない工程で効率よく消化管機能異常症予防及び/又は治療剤を調製することが可能である。すなわち、飲食品、医薬品への添加が可能で安全性にすぐれた消化管機能異常症予防及び/又は治療剤を簡便に提供できる利点がある。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤の医薬品または飲食品への配合量は形態、剤型、症状、体重、用途などによって異なるため、特に限定されないが、あえて挙げるなら、プロピオン酸菌発酵物の乾燥重量に換算して0.001〜100 %(w/w)の含量で配合することができ、好ましくは0.01〜100%(w/w)、さらに好ましくは0.1〜100%(w/w)の含量で配合することができる。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤の医薬品または飲食品の一日当たりの摂取量は年齢、症状、体重、用途などによって異なるため、特に限定されないが、あえて挙げるならプロピオン酸菌発酵物の乾燥重量に換算して0.1〜10000mg/kg体重を摂取することができ、好ましくは1〜400mg/kg体重、さらに好ましくは5〜40mg/kg体重を摂取することができる。
また、従来知られる消化管機能異常症予防及び/又は治療効果を有する医薬品や食品と併用して用いてもよい。具体的には、抗コリン薬、食物繊維含有食品等を挙げることができるが、これらの例に限定されない。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤は医薬品又は飲食品いずれの形態でも利用することができる。例えば、医薬品として直接投与することにより、又は特定保健用食品等の特別用途食品、栄養機能食品やサプリメントとして直接摂取することにより各種の炎症の治療及び/又は予防することが期待される。また、液状、ペースト状、固形、粉末等の形態を問わず、各種食品(牛乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、栄養食品、冷凍食品、加工食品その他の市販食品等)に添加し、これを摂取してもよい。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤を含有する食品には、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を主成分として使用することができる。タンパク質としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α―カゼイン、β―カゼイン、κ−カゼイン、β―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これらの分解物;バター、乳清ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分などが挙げられる。カゼインホスホペプチド、アルギニン、リジン等のペプチドやアミノ酸を含んでいてもよい。糖質としては、例えば、糖類、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、エリソルビン酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができ、合成品及び/又はこれらを多く含む食品を用いてもよい。食品の形態としては、固体でも液体でもかまわない。またゲル状などであってもよい。
本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤を医薬品又はサプリメントとして使用する場合には、種々の形態で投与することができる。その形態として、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与を挙げることができる。これらの各種製剤は、常法に従って主剤に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。また、適当量のカルシウムを含んでいてもよい。さらに適当量のビタミン、ミネラル、有機酸、糖類、アミノ酸、ペプチド類などを添加してもよい。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[実施例1](プロピオン酸菌乳清発酵物の調製)
(培地の作製)
ホエイ粉(10w/w%)及びプロテアーゼA「アマノ」G(0.07w/w%、天野エンザイム社製)を水に溶解し、47℃(pH6.6)で2時間酵素分解を行った。その後、85℃、10分間加熱することにより酵素を失活させた。次に、ビール酵母エキス(0.10w/w%、アサヒビール社製)及び硫酸アンモニウム(0.27w/w%)を添加し、pHを6.7に調整後、121℃で7分間滅菌した。
(プロピオン酸菌の培養)
作製した培地にP.freudenreichii ET-3(FERM BP-8115株)の賦活培養液を2%接種し、窒素雰囲気下、37℃で72時間嫌気培養し、プロピオン酸菌乳清発酵物(DHNA含量:0.01w/w%)として得た。尚、賦活培養液としては、上記培地と同一のものを使用した。
[実施例2](プロピオン酸菌乳清発酵物の腸管平滑筋に対する作用)
(大腸標本の作製)
6週齢のSD系雄性ラットを一週間馴化飼育の後に屠殺し、大腸を摘出した。さらに、遠位部大腸(肛門から約2〜3cm盲腸側の部分)の大腸縦走筋を約1cm採取し、これを縦層方向に3mm幅で切り出した(以降、これを大腸標本ともいう)。各大腸標本を、下記の条件でKrebs緩衝液を満たしたマグヌス管に1gの静止張力で懸垂し、ここに酸素95%、二酸化炭素5%の混合ガスを通気した。以降、15分毎にKrebs緩衝液を交換しながら、大腸標本を約1時間平衡化した。
Krebs緩衝液の組成:
NaCl 6.92g、KCl 0.35g、MgSO4・7H2O 0.29g、KH2PO4 0.16g、Glucose 2.1g、CaCl2 0.28g、NaHCO3 2.1gに蒸留水を加えて1Lとする。
マグヌス管中のKrebs緩衝液の温度:32℃
マグヌス管へのKrebs緩衝液導入量:10mL
(被検物質の調製)
実施例1で作製したプロピオン酸菌乳清発酵物をγ線照射により滅菌し、凍結乾燥した物に蒸留水を添加して、10w/v%(凍結乾燥物換算)のプロピオン酸菌乳清発酵物水溶液を調製した。また、実施例1で作製したプロピオン酸菌を接種する前の培地(以降、未発酵物ともいう)の凍結乾燥物に蒸留水を添加して、10w/v%(凍結乾燥物換算)の未発酵物水溶液を調製した。これら被検物質水溶液を以下の評価試験に用いた。また、対照としては蒸留水を用いた。
(プロピオン酸菌乳清発酵物の評価試験)
Krebs緩衝液を交換し、各マグヌス管にプロピオン酸菌乳清発酵物水溶液、未発酵物水溶液、または蒸留水をそれぞれ10、30、100μL(最終濃度で0.01, 0.03, 0.10w/v%)添加し、15分間張力の測定および筋肉の状態を観察した。張力の測定チャート上、張力1g当たり5cm移動するように調整したレコーダーで測定チャートの記録を行った。こうして得た測定チャートで筋収縮に伴う張力のピークを観察し、単位時間(分)当たりに出現するピークの回数(回)から収縮頻度(回/分)、ピークの高さ(cm)から収縮強度(g)を算出して数値化したものを評価に用いた。
(結果)
表1に大腸各部位の収縮頻度の結果および収縮強度の結果を示す。
Figure 2008088008
表中、*は大腸標本に被検物質を添加する前(被検物質水溶液添加量0μL)に対しp<0.05(paired t-test)の有意差があることを示す。+、++は、未発酵物に対しp<0.05、0.01(Student's t-test)の有意差があることを示す。
遠位部大腸の収縮頻度はプロピオン酸菌乳清発酵物の添加により用量依存的に高まった。プロピオン酸菌乳清発酵物水溶液を100μL添加したところ、収縮頻度は添加前と比較して有意(p<0.05、paired t-test)に高い値を示した。未発酵物と比較しても、プロピオン酸菌乳清発酵物水溶液を30、100μL添加したところ、p<0.05、0.01(Student's t-test)で有意に収縮頻度が増加した。一方、プロピオン酸菌を接種していない未発酵物では蒸留水や添加前に比較していずれも収縮頻度の増加作用を認めなかった。
収縮強度については、いずれの被検物質を添加しても変化を認めなかった。つまり、プロピオン酸菌乳清発酵物は収縮力増強作用も収縮力抑制作用も有しないと言える。よって、プロピオン酸菌乳清発酵物は収縮頻度増加作用を有するものの、収縮力増強作用を有しないことが分かった。
[実施例3](プロピオン酸菌乳清発酵物の各部位の腸管平滑筋に対する作用)
(大腸標本の作製)
6週齢のSD系雄性ラットを一週間馴化飼育の後に屠殺し、大腸を摘出した。さらに、近位部大腸(盲腸側から約1cm肛門側の部分)、中位部大腸(大腸の全長に対する中央部分)、遠位部大腸(肛門から2〜3cm盲腸側の部分)の大腸縦走筋を約1cmずつ採取し、これを縦層方向に2分割した(以降、これを大腸標本ともいう)。各大腸標本を、下記の条件でKrebs緩衝液を満たしたマグヌス管に1gの静止張力で懸垂し、ここに酸素95%、二酸化炭素5%の混合ガスを通気した。以降、15分毎にKrebs緩衝液を交換しながら、大腸標本を約1時間平衡化した。
Krebs緩衝液の組成:
NaCl 6.92g、KCl 0.35g、MgSO4・7H2O 0.29g、KH2PO4 0.16g、Glucose 2.1g、CaCl2 0.28g、NaHCO3 2.1gに蒸留水を加えて1Lとする。
マグヌス管中のKrebs緩衝液の温度:32℃
マグヌス管へのKrebs緩衝液導入量:10mL
(被検物質の調製)
実施例1で作製したプロピオン酸菌乳清発酵物をγ線照射により滅菌し、凍結乾燥した物に蒸留水を添加して、10w/v%(凍結乾燥物換算)のプロピオン酸菌乳清発酵物水溶液を調製した。これを被検物質水溶液として以下の評価試験に用いた。また、対照としては蒸留水を用いた。
(プロピオン酸菌乳清発酵物の評価試験)
Krebs緩衝液を交換し、各マグヌス管にプロピオン酸菌乳清発酵物水溶液または蒸留水をそれぞれ10、30、100μL(最終濃度で0.01, 0.03, 0.10w/v%)添加し、15分間張力の測定および筋肉の状態を観察した。張力の測定チャート上、張力1g当たり5cm移動するように調整したレコーダーで測定チャートの記録を行った。こうして得た測定チャートで筋収縮に伴う張力のピークを観察し、単位時間(分)当たりに出現するピークの回数(回)から収縮頻度(回/分)、ピークの高さ(cm)から収縮強度(g)を算出して数値化したものを評価に用いた。図1にプロピオン酸菌乳清発酵物を添加した時の代表的な測定チャートを示す。
(結果)
表2に大腸各部位の収縮頻度の結果および収縮強度の結果を示す。
Figure 2008088008
表中、**は大腸標本に同容量の蒸留水に対しp<0.01(Student's t-test)の有意差があることを示す。
近位部大腸、中位部大腸の収縮頻度はプロピオン酸菌乳清発酵物を添加しても変化を認めなかったのに対し、遠位部大腸の収縮頻度はプロピオン酸菌乳清発酵物の添加により用量依存的に高まった。プロピオン酸菌乳清発酵物水溶液を30μL、100μL添加したところ、収縮頻度は同容量の蒸留水と比較して有意(p<0.01、Student's t-test)に高い値を示した。
収縮強度については、いずれの部位の大腸においてもプロピオン酸菌乳清発酵物の添加による変化を認めなかった。つまり、プロピオン酸菌乳清発酵物は収縮力増強作用も収縮力抑制作用も有しないと言える。よって、プロピオン酸菌乳清発酵物は遠位部大腸特異的に収縮頻度増加作用を有するものの、いずれの部位においても収縮力増強作用を有しないことが分かった。
[実施例4](プロピオン酸菌乳清発酵物の過敏性腸症候群便秘型患者における有効性)
(方法)
過敏性腸症候群便秘型の患者12名(男性3名、女性9名:年齢27〜77歳)を対象に、ダブルブラインドクロスオーバー試験を実施した。無作為に選択した上記被験者中の6名に、実施例1の方法で製造したプロピオン酸菌乳清発酵物を加熱滅菌し、後に乾燥した物を0.2g/3錠含有する錠剤(アクティブ)を、4週間(28日間)にわたり1回3錠1日3回、一日当たり計9錠経口摂取させた。他の6名にはプロピオン酸菌乳清発酵物の代わりに未発酵のホエイ粉還元液凍結乾燥物を含有する錠剤(プラセボ)を4週間(28日間)にわたり1日当たり3錠経口摂取させた[前期摂取期間]。その後4週間(28日間)にわたり、被検者12名とも前記錠剤の摂取を中止した[摂取中止期間]。さらに、その後4週間(28日間)にわたり、1回3錠1日3回、一日当たり計9錠経口摂取させた。この時、前回アクティブを摂取した者はプラセボ、前回プラセボを摂取した者はアクティブを摂取した[後期摂取期間]。
(評価方法)
(1)症状に関するアンケート
錠剤摂取期間中は、症状に関するアンケートを毎日記入してもらった。図2に、各日に記入するアンケートを示す。ここでの質問項目は、排便状況に関するものである。具体的な質問事項は、排便回数、便の性状、腹痛の強さ、残便感や排便時のいきみの度合、腹部状態の良否である。便の性状は、図2記載の絵と説明にてスコアー化されたもので表した。また、腹痛の強さ(腹痛がある)、腹部膨満感の度合(腹部膨満感がある)、残便感や排便時のいきみの度合(残便感を生ずる・排便時にいきみを要する)、腹部状態の良否(今日のおなかの総合得点)は、visual analogue scaleを用いて表した。visual analogue scaleの結果は、スケールの一端にある「ない」あるいは「非常に悪い」から、被検者が記入した印までの長さを測定し、この長さをスケール全体の長さで除した値を算出して導いた。アンケート回収後、プラセボ、アクティブ別に摂取期間1〜28日まで及び15〜28日までの数値をまとめ、項目ごとに平均値、標準偏差、およびP値(プラセボ vs. アクティブ、Student's t-test)を算出した。
また、図3に示すアンケートを前期摂取期間最終日および後期摂取期間最終日に記入してもらった。ここでの質問項目は、全般的な腹部状態に関するものである。具体的な質問事項は、摂取期間前との腹部状態の比較(全般的改善度)、前回他の錠剤を摂取した時との腹部状態の比較(前期と後期との比較)である。これらの評価は図5に示すものの中から1つずつ選んでもらった。全般的改善度は「大変良くなった(著効)」、「良くなった(有効)」、「変わらなかった(不変)」、「悪くなった」、「大変悪くなった」の5段階評価からなる。アンケート回収後、プラセボ、アクティブごとに各段階の回答数を求め、さらに著効または有効の回答した者の割合を有効率(%)として算出した。統計解析は累積カイ2乗検定で行った。また、前期と後期との比較(前後比較)は「前期の方が良かった」、「変わらなかった」、「後期の方が良かった」の3段階評価からなる。アンケート回収後、プラセボ、アクティブごとに各段階の回答数を求めた。
(2)SF-36アンケート
SF-36(MOS Short-Form 36-Item Health Survey)アンケートは、健康関連QOLを測定するための、科学的な信頼性・妥当性を持つ包括的尺度として知られている。容易に入手することができ、シンプルかつ有用であり、すでに十分なデータの蓄積があるため健康状態を測定する質問紙として世界で最も普及している。具体的には、36の質問からQOLを以下の8つの領域(下位尺度)で測定し、全ての人のQOLを包括的に評価するものである。
1)身体機能[PF]
2)日常役割機能(身体)[RP]
3)身体の痛み[BP]
4)全体的健康感[GH]
5)活力[VT]
6)社会生活機能[SF]
7)日常的役割(精神)[RE]
8)心の健康[MH]
発明者らは、福原俊一、鈴鴨よしみ『SF-36v2TM日本語版マニュアル』健康医療評価研究機構, 2004の記載に準じて試験を行った。
SF-36アンケートは、前期摂取前と前期摂取最終日および後期摂取前と後期摂取最終日に記入してもらった。さらに、前記1)〜8)領域の設問を国民標準値に基づいたスコアリング(NBS: Norm-based Scoring)による得点に換算してスコアー化した。このスコアーは、8つの下位尺度得点を0から100点までの範囲で表したものを、日本国民全体の国民標準値が50点、その標準偏差が10点になるように計算し直したものである。国民標準値とは、国民の性、年齢、地域、都市規模等の分布と同じくなるようにサンプリングして行った全国調査から得られた、SF-36の平均得点をいう。
本試験では、各摂取期間前後でスコアーに改善がみられた例数、変化がみられなかった例数、増悪がみられた例数を求めた。また、各摂取期間前後の各スコアーの変化を算出し、アクティブまたはプラセボの摂取による影響を評価した。
(結果)
(1)症状に関するアンケートの結果を表3および表4に示す。
Figure 2008088008
表3に示すように、摂取期間1〜28日までと15〜28日までの各評価値の平均値(mean)、標準偏差(SD)およびP値(p value:Student's t-test)を求め、プラセボとアクティブを比較した。表3中、#はp<0.10、*はp<0.05、**はp<0.01を示す。摂取1〜28日目では残便感およびおなかの総合得点について5%の危険率でプラセボに比較してアクティブで有意な改善作用がみられた。また、排便回数では改善傾向(p<0.10:Student's t-test)が認められた。さらに、摂取15〜28日目では残便感およびおなかの総合得点でそれぞれ1%および5%の危険率でプラセボに比較してアクティブで有意な改善作用がみられた(Student's t-test)。また、排便回数および腹部膨満感では改善傾向(p<0.10:Student's t-test)が認められた。
Figure 2008088008
表4に示すように、全般的改善度ではプラセボ摂取で有効率25%、アクティブ摂取で67%であり両群間でアクティブ群の方が改善傾向を示した(p<0.10:累積χ2乗検定)。
また、アクティブ摂取の方がプラセボ摂取よりも良いと回答した例数は12例中8例で、プラセボの方が良かったと回答した例数は3例で、差がなかったと答えた例数は1例であった。また、前期後期摂取間で有意差は認められなかった。
(2)SF-36アンケートの結果を図4および図5に示す。
図4には、上段にアクティブ摂取前後のスコアーの比較を、下段にプラセボ摂取前後のスコアーの比較を例数の割合で示した。アクティブ群ではプラセボ群に比較して全体的にスコアーが改善した例数が多くみられ、身体の痛みや全体的健康観では特に改善した例数が多くみられた。
また、図5には、摂取前後でのスコアーの変化(Change of score)を示した。具体的には、プラセボとアクティブごとに摂取後のスコアーから摂取前のスコアーを差し引いた値を算出し、これをスコアーの変化として評価した。全体的にアクティブ摂取でスコアーの増加を認めたが、プラセボ群では低下する項目が認められた。身体の痛み[BP]に関してはアクティブでプラセボに比較して有意(p<0.05、Student's t-test)にスコアーの増加が認められた。よって、本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤が身体的機能を改善することを示す結果となった。また、それに伴ってプラセボ摂取時に増悪傾向を示した活力[VT]および社会生活機能[SF]は、アクティブ摂取によって改善傾向を示した。よって、本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤が精神的機能を改善することを示す結果となった。これらの結果から、本発明の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤の摂取が、過敏性腸症候群の患者のQOLを、身体的機能および精神的機能の両面から改善することが分かった。
[実施例5](プロピオン酸菌乳清発酵物中のプロピオン酸ナトリウム塩、酢酸ナトリウム塩の腸管平滑筋に対する作用)
実施例1で作製し、実施例2および実施例3で試験を行ったプロピオン酸菌乳清発酵物には、プロピオン酸および酢酸が各々0.1mol/Lの濃度で含まれる。これらの有機酸が試験結果に影響するかどうか、実施例2に準じた実験系において検討を行った。
(大腸標本の作製)
7週齢のSD系雄性ラットを一週間馴化飼育の後に屠殺し、大腸を摘出した。さらに、遠位部大腸(肛門から2〜3cm盲腸側の部分)の大腸縦走筋を約1cm採取し、これを縦層方向に2分割した。(以降、これを大腸標本ともいう)。各大腸標本を、下記の条件でKrebs緩衝液を満たしたマグヌス管に1gの静止張力で懸垂し、ここに酸素95%、二酸化炭素5%の混合ガスを通気した。以降、15分毎にKrebs緩衝液を交換しながら、大腸標本を約1時間平衡化した。
Krebs緩衝液の組成:
NaCl 6.92g、KCl 0.35g、MgSO4・7H2O 0.29g、KH2PO4 0.16g、Glucose 2.1g、CaCl2 0.28g、NaHCO3 2.1gに蒸留水を加えて1Lとする。
マグヌス管中のKrebs緩衝液の温度:32℃
マグヌス管へのKrebs緩衝液導入量:10mL
(被検物質の調製)
プロピオン酸ナトリウム塩、酢酸ナトリウム塩に蒸留水を添加してプロピオン酸菌乳清発酵物中に含まれる濃度である0.1mol/Lプロピオン酸ナトリウム水溶液、0.1mol/L酢酸ナトリウム水溶液を調整した。これらを被検物質水溶液として以下の評価試験に用いた。また、対照としては蒸留水を用いた。
[プロピオン酸菌乳清発酵物の評価試験]
Krebs緩衝液を交換し、各マグヌス管に、0.1Mプロピオン酸ナトリウム水溶液、0.1M酢酸ナトリウム水溶液、または蒸留水をそれぞれ10、30、100μL添加し、15分間張力の測定および筋肉の状態を観察した。張力の測定チャート上、張力1g当たり5cm移動するように調整したレコーダーで測定チャートの記録を行った。こうして得た測定チャートで筋収縮に伴う張力のピークを観察し、単位時間(分)当たりに出現するピークの回数(回)から収縮頻度(回/分)、ピークの高さ(cm)から収縮強度(g)を算出して数値化したものを評価に用いた。こうして得られた結果について、さらに群間の比較をStudent's t-testにて有意差検定を行った。
(結果)
表5に収縮頻度の結果および収縮強度の結果を示す。
Figure 2008088008
収縮頻度については、いずれの被検物質を添加しても変化を認めなかった。つまり、プロピオン酸菌乳清発酵物中に含まれるプロピオン酸ナトリウム塩、酢酸ナトリウム塩には収縮頻度増強作用も収縮頻度抑制作用も有しないと言える。
収縮強度については、いずれの被検物質を添加しても変化を認めなかった。つまり、プロピオン酸菌乳清発酵物中に含まれるプロピオン酸ナトリウム塩、酢酸ナトリウム塩には収縮力増強作用も収縮力抑制作用も有しないと言える。
消化管機能異常症予防及び/又は治療作用を有するため、同機能を有する医薬品または飲食品として応用が可能である。

Claims (10)

  1. プロピオン酸菌発酵物及び/またはその処理物を有効成分として含有する消化管機能異常症予防及び/又は治療剤。
  2. プロピオン酸菌が、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属に属する菌である請求項1に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤。
  3. プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属に属する菌が、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)である請求項2に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤。
  4. プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)が、Propionibacterium freudenreichii ET-3 (FERM BP-8115) である請求項3に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤。
  5. プロピオン酸菌発酵物が、プロピオン酸菌乳清発酵物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤。
  6. 消化管機能異常症が過敏性腸症候群または機能性便秘症からなる群のうち1つあるいは複数の組み合わせである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤を含有してなる消化管機能異常症予防及び/又は治療用食品。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療剤製造のための、プロピオン酸菌発酵物の使用。
  9. 請求項7に記載の消化管機能異常症予防及び/又は治療用食品製造のための、プロピオン酸菌発酵物の使用。
  10. プロピオン酸菌発酵物及び/またはその処理物を投与することを特徴とする、消化管機能異常症の予防及び/又は治療方法。
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