JPWO2008084319A1 - 新規核酸 - Google Patents

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Abstract

本発明により新規な配列を有するマイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸が提供される。本発明の核酸は、マイクロRNAの発現または変異の検出、細胞の分離、標的配列を有する遺伝子の発現抑制、マイクロRNAの機能の促進または抑制させる物質のスクリーニング、肥満細胞の異常に起因する疾患、間葉系幹細胞の増殖または分化の異常に起因する疾患、癌及び細胞の増殖異常や組織の過形成等が原因となっている疾患の診断や治療に有用である。

Description

本発明は、新規核酸、ならびに、該核酸を発現または抑制させる方法、該核酸を含有する診断薬または治療薬に関する。
核酸の1種であるマイクロRNA(miRNA)は、蛋白質に翻訳されない約22ヌクレオチドの小さな非コード一本鎖RNAであり、ヒトを含む生物に多数存在することが確認されている(非特許文献1、2)。
マイクロRNAは、単一又はクラスター化されたマイクロRNA前駆体に転写される遺伝子から生成される。すなわち、まず、遺伝子から一次転写産物であるprimary−microRNA(pri−miRNA)が転写され、次いで、pri−miRNAから成熟型マイクロRNAへの段階的プロセシングにおいて、pri−miRNAから特徴的なヘアピン構造を有する約70塩基のprecursor−microRNA(pre−miRNA)が生成される。さらに、Dicer介在によるプロセシングによりpre−miRNAから成熟型マイクロRNAが生成される(非特許文献3)。
成熟型マイクロRNAは、標的となるmRNAに相補的に結合してmRNAの翻訳を抑制する、あるいはmRNAを分解することにより、遺伝子発現の転写後制御に関与していると考えられている。2006年5月現在、マイクロRNAのデータベースmiRBase(http://microrna.sanger.ac.uk/)には、ヒトで455種、全生物種で3685種のマイクロRNAが登録されている。ヒトを含む哺乳類で発現するマイクロRNAの中で、その生理的機能に関してわかっているものは、血球系分化に関与するmiR−181(非特許文献4)やインシュリン分泌に関与するmiR−375(非特許文献5)など一部のみであり、多くはその生理的活性が未解明である。ただし、線虫やショウジョウバエを用いた研究からマイクロRNAが生物の発生、分化に様々な重要な役割を果たしていることが明らかとなってきており、ヒト疾患との関係においても特に癌との関係を示唆する報告が出てきている(非特許文献6)。
マイクロRNAを同定する方法には、細胞から低分子RNAをクローニングする方法や、ゲノム配列情報からバイオインフォマティクスを用いる方法などがある。miRBaseにマイクロRNAとして登録されるためには、発現に関する情報と生合成及び構造に関する情報の両方が必要であり、ゲノム配列情報からの構造の予測だけではマイクロRNAとして認められていない(非特許文献7)。
肥満細胞は各種刺激により活性化され、脱顆粒を起こし、数多くの炎症性メディエーターを遊離、産生することが知られている(非特許文献8〜10)。例えば肥満細胞に抗原が認識されると、脱顆粒によりヒスタミンやトリプターゼが速やかに放出されると共に、プロスタグランジンD2(PGD2)、ロイコトリエン(LT)、血小板活性化因子(PAF)などのケミカルメディエーター、およびマクロファージ炎症性蛋白質(MIP)−1α等の各種のケモカインや顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)等の各種サイトカインが新たに合成され、放出されることが知られている。また、これまで好酸球が作ると考えられていた細胞障害性蛋白質である主要塩基性蛋白質(major basic protein)に関しても、ヒトの場合は肥満細胞が多量につくることが最近明らかになっている(非特許文献11)。
このように、肥満細胞は種々のアレルギー疾患の病態形成において主要な役割を演じていると考えられることから、肥満細胞の機能を制御することにより、アレルギー疾患の治療が可能であると考えられる。
しかしながら、げっ歯類肥満細胞とヒト肥満細胞では、薬剤への反応性が異なることが知られている(非特許文献9)。具体的には、炎症性メディエーター遊離抑制薬として使用されているクロモグリク酸ナトリウムは、ラット腹腔肥満細胞においてはIgE依存性の炎症性メディエーター遊離を顕著に抑制するが、ヒト肥満細胞に対する作用は強いものではない(非特許文献12)。塩酸アゼラスチンは、高濃度においてはヒト培養肥満細胞からのヒスタミン、PGD2、LTの遊離、GM−CSFおよびMIP−1αの産生を抑制するが、いずれの活性も強いものではない。また、抗サイトカイン薬として使用されているトシル酸スプラタストは、ラット肥満細胞に対しては炎症性メディエーター遊離抑制作用を示すが、ヒト肥満細胞に対する作用はない(非特許文献12)。
また、ヒト肥満細胞とマウス肥満細胞で発現する遺伝子について比較された結果、各種刺激により発現する遺伝子が必ずしも一致しないことが知られている(非特許文献13)。
マイクロRNAについては、マウス骨髄由来肥満細胞で発現するマイクロRNAは報告されているが(非特許文献14)、マイクロRNAと肥満細胞の機能との関係は知られていない。ヒト肥満細胞で発現するマイクロRNAについては報告されておらず、上記のようなヒトとマウス間の種差を考慮すると、マウス肥満細胞のマイクロRNAの発現情報をもとに、ヒト肥満細胞のマイクロRNAの発現情報を予測することは困難である。
間葉系幹細胞は、哺乳類の骨髄、脂肪組織、臍帯血等に存在し、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞等に分化する多能性の幹細胞として知られている。間葉系幹細胞は、その分化多能性の故に、骨、軟骨、腱、筋肉、脂肪、歯周組織など、多くの組織の再生医療のための移植材料として注目されている(非特許文献15)。
間葉系幹細胞は、薬剤やサイトカイン等の添加によりin vitroで特定の細胞へ分化させることができる。例えば、脂肪細胞へは1−メチル−3−イソブチルキサンチン、デキサメタゾン、インスリンおよびインドメタシンを作用させることにより、骨芽細胞へはデキサメタゾン、β−グリセロールフォスフェイト、およびアスコルビン酸を作用させることにより誘導できる(非特許文献16)。しかし、これらの分化の過程における分子的なメカニズムに関しての詳細は不明である。遺伝子ノックアウトマウスや分化段階での遺伝子発現解析の結果から、脂肪細胞へはPPARγおよびC/EBPファミリーが、骨芽細胞分化時にはCbfa1/Runx2およびOsterixなどの遺伝子発現が関与していることが知られている(非特許文献17)が、これらの遺伝子群のみで間葉系幹細胞からの分化メカニズムを説明することはできず、人為的に分化及び増殖を制御するには至っていない。また、間葉系幹細胞の分化及び増殖に作用するマイクロRNAは知られていない。
マイクロRNAは様々な遺伝子の発現制御に関与することから、マイクロRNAの異常はヒトの種々の疾患に関与していることが予想される。特に癌においては研究が進展しており、多くの癌においてマイクロRNAの発現が正常組織と異なっていること、マイクロRNAの発現プロファイル解析により癌の分類が可能であることなどが報告されている(非特許文献18)。また、これまでに見出されたヒトのマイクロRNAの約半数が、ヒト癌で知られている染色体異常あるいは染色体の脆弱部位に存在することも知られている(非特許文献19)。今までに報告されている癌とマイクロRNAの関係の例としては、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)で欠失が見られる染色体13q14にmiR−15a/miR−16クラスターが含まれ、その欠失がB−CLLの原因の一つになっていると予測されていること(非特許文献20)、肺癌ではマイクロRNAの一つであるLet−7の発現が低下しており、その標的の一つが癌原遺伝子として知られるRasであること(非特許文献21、22)などがある。多くのマイクロRNAは癌細胞で発現が低下しているが、逆に癌で遺伝子増幅や過剰発現が見られるマイクロRNAもある。例えば、悪性リンパ腫で遺伝子増幅が見られる領域には6種のマイクロRNAからなるクラスター(miR−17−92)が存在し、このmiRNAクラスター遺伝子をヒトB細胞リンパ腫のモデルマウスに強制発現させるとリンパ腫の発生が促進されることが報告されている(非特許文献23)。また以前から蛋白質をコードしない、ホジキンリンパ腫で過剰発現する癌遺伝子候補とされていたBICと呼ばれる遺伝子は、miR−155をコードしていることも明らかとなっている(非特許文献24)。
このように癌とマイクロRNAの関係は近年多数報告されているが、その殆どは癌細胞での発現異常を示すものであり、マイクロRNAの機能を示した研究は、Let−7を肺癌細胞株に強制発現させることで癌細胞株の増殖を阻害したという報告(非特許文献25)など、わずかしかない。体外からマイクロRNAあるいはその前駆体、あるいはそのアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与してマイクロRNAの発現を増大あるいは減少させることで、動物モデルで癌の増殖を抑制させたという報告は現在のところ存在しない。
Science,294,853−858(2001) Cell,113,673−676(2003) Nature Reviews Genetics,5,522−531(2004) Science,303,83−86(2004) Nature,432,226−230(2004) Nature Reviews Cancer,6,259−269(2006) RNA,9,277−279(2003) 黒沢元博編,「肥満細胞の臨床」,先端医学社,p142(2001); 黒沢元博編,「肥満細胞の臨床」,先端医学社,p559(2001); Crit.Rev.Immunol.,22,115−140(2002) Blood,98,1127−1134(2001) Clin.Exp.Allergy,28,1228−1236(1998) Blood,100,3861−3868(2002) Genome Biology,6,R71(2005) 「遺伝子医学」、2000年、4巻、p.58−61 Science,284,143−147(1999) 「実験医学」、2002年、20巻、p.2459−2464 Nature,435,839−843(2005) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,101,2999−3004(2004) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,15524−15529(2002) Cancer Research,64,3753−3756(2004) Cell,120,635−647(2005) Nature,435,823−833(2005) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102,3627−3632(2005) Cancer Research,64,3753−3756(2004)
ヒトの種々の臓器で発現しているマイクロRNAを同定し、その機能を解析し、疾患との関係を解明することにより、新しい治療薬及び診断薬が開発されることが期待される。
肥満細胞で作用しているマイクロRNAを見出すことは、肥満細胞の分化や脱顆粒、炎症性メディエーター産生、サイトカイン産生、ケモカイン産生等の機能解明につながり、肥満細胞の単離・培養・分化制御・脱顆粒制御・炎症性メディエーター産生制御・サイトカイン産生制御・ケモカイン産生制御法の開発およびそれらを利用した新しいアレルギー疾患等の治療法につながると期待できる。
また、間葉系幹細胞で作用しているマイクロRNAを見出すことは、間葉系幹細胞における分化及び増殖の機能解明につながり、間葉系幹細胞から特定の細胞への分化制御法の開発および分化制御を利用した新しい治療法につながると期待できる。
さらに、癌細胞の増殖または抑制を引き起こすマイクロRNAを見出すことは、発癌のメカニズムの理解に役立つのみならず、ヒトの癌の診断薬や治療薬の開発、さらにはそれらを利用した癌の新しい診断法や治療法につながることが期待される。さらに癌以外の疾患に関しても、動脈硬化、慢性関節リウマチ、前立腺肥大症、経皮的経血管的冠動脈形成術後の血管再狭窄、肺線維症、糸球体腎炎、自己免疫疾患など細胞の異常増殖、組織の過形成等が原因となっている疾患の診断薬・治療薬やそれらを利用した診断法・治療法の開発に貢献することが期待される。
本発明の目的は、マイクロRNA群を取得し、肥満細胞の単離・培養・分化制御・脱顆粒制御・炎症性メディエーター産生制御・サイトカイン産生制御・ケモカイン産生制御、及びアレルギー疾患の診断・治療、間葉系幹細胞の分化及び増殖の制御、癌細胞の分化や増殖の制御、癌等の疾患の診断・治療に有用な核酸及び、それらの利用法を提供することにある。
本発明は以下の(1)〜(64)に関する。
(1)配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなる核酸。
(2)配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸。
(3)配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸。
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の核酸を含む核酸。
(5)配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列からなる核酸。
(6)配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸。
(7)配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸。
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸。
(9)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸を発現するベクター。
(11)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸を用いることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸の発現または変異を検出する方法。
(12)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸を用いることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質のスクリーニング方法。
(13)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸を用いることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸を発現する細胞を分離する方法。
(14)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸を用いることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制する方法。
(15)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(16)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(17)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
(18)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制する物質を有効成分として含有する、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(19)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制させることを指標とする、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
(20)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の核酸またはベクターを導入した細胞。
(21)配列番号が1、2、3、8、14、20、22、25、32または36のいずれかである、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤。
(22)配列番号が1337、1338、1339、1352、1363、1371、1373、1377、1386または1390のいずれかである、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤。
(23)(21)または(22)に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒抑制剤。
(24)(21)または(22)に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤。
(25)(21)または(22)に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤。
(26)(21)または(22)に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤のスクリーニング方法。
(27)(21)または(22)に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤。
(28)(21)または(22)に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤のスクリーニング方法。
(29)配列番号が1、8、21または36のいずれかである、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(30)配列番号が1337、1352、1372または1390のいずれかである、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(31)(29)または(30)に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(32)(29)または(30)に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(33)(29)または(30)に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(34)(29)または(30)に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
(35)(29)または(30)に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(36)(29)または(30)に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
(37)配列番号が1である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤。
(38)配列番号が1337である、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤。
(39)(37)または(38)に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖抑制剤。
(40)配列番号が8、21または36のいずれかである、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖抑制剤。
(41)配列番号が1352、1372または1390のいずれかである、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖抑制剤。
(42)(37)または(38)に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤。
(43)(37)〜(42)のいずれか1項に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤。
(44)(37)〜(42)のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤。
(45)(37)〜(42)のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤のスクリーニング方法。
(46)(37)〜(42)のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤。
(47)(37)〜(42)のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤のスクリーニング方法。
(48)配列番号が1、3、8、20、21、22、32または36のいずれかである、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(49)配列番号が1337、1339、1352、1371、1372、1373、1386または1390のいずれかである、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(50)(48)または(49)に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(51)(48)または(49)に記載の核酸と、該核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(52)(48)または(49)に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(53)(48)または(49)に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
(54)(48)または(49)に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
(55)(48)または(49)に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
(56)細胞の増殖異常に起因する疾患が癌、動脈硬化、慢性関節リウマチ、前立腺肥大症、経皮的経血管的冠動脈形成術後の血管再狭窄、肺線維症、糸球体腎炎および自己免疫疾患からなる群から選ばれる疾患である(48)〜(55)のいずれか1項に記載の診断薬、治療薬またはスクリーニング方法。
(57)配列番号が1、3、8、20、21、22、32または36のいずれかである、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤。
(58)配列番号が1337、1339、1352、1371、1372、1373、1386または1390のいずれかである、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤。
(59)(57)または(58)に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖促進剤。
(60)(57)または(58)に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤。
(61)(57)または(58)に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤。
(62)(57)または(58)に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤のスクリーニング方法。
(63)(57)または(58)に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤。
(64)(57)または(58)に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤のスクリーニング方法。
本発明により、新規核酸、該核酸を発現するベクター、該核酸の発現及び変異を検出する方法、該核酸を制御する物質のスクリーニング方法、該核酸を発現する細胞の分離方法、該核酸の標的遺伝子の発現制御方法、該核酸もしくは該核酸を制御する物質を有効成分として含有する診断薬または医薬、該核酸の標的遺伝子の発現制御物質を含有する診断薬または医薬、並びに肥満細胞または間葉系幹細胞等の異常に起因する疾患や癌等の疾患の診断薬または治療薬、細胞の分化や増殖の制御剤などを提供することができる。
KHK_miR_1194の配列番号1580で表される塩基配列の2次構造を示す。
本発明における核酸としては、以下の核酸があげられる。該核酸は、マイクロRNAまたはその誘導体、マイクロRNA前駆体またはその誘導体、および二本鎖核酸(以下、本発明の核酸ともいう)であることが好ましい。
(1)配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなる核酸。
(2)配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸。
(3)配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸。
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の核酸を含む核酸。
(5)配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列からなる核酸。
(6)配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸。
(7)配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸。
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸。
(9)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸。
本発明においてマイクロRNAとは、細胞に由来する一本鎖RNAであり、かつ、該配列を含む周辺ゲノム配列がヘアピン構造を形成し得る配列を有しており、ヘアピンのいずれか片鎖から切り出され得るRNAをいう。マイクロRNAの長さとしては、15〜28塩基が好ましく、16〜28塩基がより好ましく、16〜26塩基がさらに好ましく、16〜24塩基が特に好ましい。マイクロRNAは、その標的となるmRNAに相補的に結合してmRNAの分解あるいは翻訳を抑制し、遺伝子発現の転写後制御を行う。本発明のマイクロRNAとしては、配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなる核酸、配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸をあげることができる。また、配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸をあげることができる。また本発明のマイクロRNAとして、これらの核酸を含む核酸をあげることができる。
本発明においてマイクロRNA前駆体とは、マイクロRNAを含む約50〜約200塩基長、好ましくは約70〜約100塩基長の核酸であり、かつ、ヘアピン構造を形成し得る核酸である。マイクロRNAは、マイクロRNA前駆体からDicerと呼ばれる蛋白質によるプロセシングを経て生成される。本発明のマイクロRNA前駆体としては、配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列からなる核酸、配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸、配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸があげられる。なおマイクロRNA前駆体は、マイクロRNAの配列を含んでおり、該マイクロRNAがマイクロRNA前駆体からプロセシングを経て生成されれば、前駆体としての機能を有するため、配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列と80%以上の相同性を有している核酸であれば、マイクロRNA前駆体としての機能を有するものと考えられる。
表1−1〜1−40に、マイクロRNAとして具体的に挙げられる配列番号1〜1336で表される塩基配列と、その前駆体として挙げられるマイクロRNA前駆体の塩基配列の関係を示す。
[表1−1]
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[表1−2]
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[表1−3]
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[表1−4]
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[表1−40]
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また本発明の核酸として、上記にあげられた核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸、上記にあげられた核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸をあげることができる。
本発明において、配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸とは、BLAST〔J.Mol.Biol.,215,403(1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology,183,63(1990)〕等の解析ソフトを用いて計算したときに、配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなる核酸と少なくとも90%以上、好ましくは91%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは94%以上、最も好ましくは95%以上である核酸であることを意味する。また本発明において、配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸とは、BLAST〔J.Mol.Biol.,215,403(1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology,183,63(1990)〕等の解析ソフトを用いて計算したときに、配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列からなる核酸と少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上である核酸であることを意味する。
本発明において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸としては、例えば配列番号1〜2851のいずれかで表される塩基配列を有する核酸またはその一部の断片をプローブとして、20xSSC 7.5mL、1M NaHPO(pH7.2)0.6mL、10%SDS 21mL、50xDenhardt’s solution 0.6mL、10mg/mL sonicated salmon sperm DNA 0.3mLから成るHybridization bufferに、γ−32P−ATPで標識したプローブRNAを加え、50℃で一晩反応させた後、50℃で10分間、5xSSC/5%SDS液で洗浄し、更に50℃で10分間、1xSSC/1%SDS液で洗浄し、その後メンブレンを取り出し、X線フィルムに感光させることにより同定できる核酸をあげることができる。
本発明において、核酸とはヌクレオチドおよび該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子が重合した分子であればいかなるものでもよく、例えば、リボヌクレオチドの重合体であるRNA、デオキシリボヌクレオチドの重合体であるDNA、RNAおよびDNAが混合した重合体、および、ヌクレオチド類似体を含むヌクレオチド重合体をあげることができ、さらに、核酸誘導体を含むヌクレオチド重合体であってもよく、一本鎖核酸または二本鎖核酸であってもよい。マイクロRNAまたはその誘導体、マイクロRNA前駆体またはその誘導体も本発明の核酸に含まれる。
本発明において、ヌクレオチド類似体とは、RNAまたはDNAと比較して、ヌクレアーゼ耐性の向上または、安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーをあげるため、あるいは細胞透過性をあげるため、あるいは可視化させるために、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、RNAまたはDNAに修飾を施した分子であればいかなる分子でもよく、天然に存在する分子でも非天然の分子でもよく、例えば、糖部修飾ヌクレオチド類似体やリン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体等があげられる。
糖部修飾ヌクレオチド類似体とは、ヌクレオチドの糖の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学構造物質を付加あるいは置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、2’−O−メチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−O−プロピルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−メトキシエトキシリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−O−メトキシエチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−O−[2−(グアニジウム)エチル]リボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−O−フルオロリボースで置換されたヌクレオチド類似体、糖部に架橋構造を導入することにより2つの環状構造を有する架橋構造型人工核酸(Bridged Nucleic Acid)(BNA)、より具体的には、2’位の酸素原子と4’位の炭素原子がメチレンを介して架橋したロックト人工核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)、およびエチレン架橋構造型人工核酸(Ethylene bridged nucleic acid)(ENA)[Nucleic Acid Research,32,e175(2004)]があげられ、さらにペプチド核酸(PNA)[Acc.Chem.Res.,32,624(1999)]、オキシペプチド核酸(OPNA)[J.Am.Chem.Soc.,123,4653(2001)]、およびペプチドリボ核酸(PRNA)[J.Am.Chem.Soc.,122,6900(2000)]等をあげることができる。
リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体とは、ヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学物質を付加あるいは置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、ホスフォロチオエート結合に置換されたヌクレオチド類似体、N3’−P5’ホスフォアミデート結合に置換されたヌクレオチド類似体等をあげることができる[細胞工学,16,1463−1473(1997)、RNAi法とアンチセンス法,講談社(2005)]。
本発明において核酸誘導体とは、核酸に比べ、ヌクレアーゼ耐性を向上させるため、安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーをあげるため、細胞透過性をあげるため、あるいは可視化させるために、該核酸に別の化学物質を付加した分子であればいかなる分子でもよく、例えば、5’−ポリアミン付加誘導体、コレステロール付加誘導体、ステロイド付加誘導体、胆汁酸付加誘導体、ビタミン付加誘導体、Cy5付加誘導体、Cy3付加誘導体、6−FAM付加誘導体、およびビオチン付加誘導体等をあげることができる。
別の核酸の誘導体として、例えば、糖の修飾体としては、2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、2’−O−メチルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、2’−O−メトキシエチルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、2’−O−[2−(グアニジウム)エチル]リボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、2’−O−フルオロリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等をあげることができ、リン酸基の修飾体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体等をあげることができる[細胞工学,16,1463−1473(1997)、RNAi法とアンチセンス法,講談社(2005)]。
本発明において、マイクロRNA誘導体とは、当該マイクロRNAと同等の機能を有するリボヌクレオチド以外の分子を含む重合体であればいかなるものでもよく、例えば、デオキシリボヌクレオチドの重合体であるDNA、RNAおよびDNAが混合した重合体、および、ヌクレオチド類似体を含むヌクレオチド重合体をあげることができ、さらに、核酸誘導体を含むヌクレオチド重合体であってもよく、一本鎖核酸または二本鎖核酸であってもよい。
マイクロRNA前駆体の誘導体とは、当該マイクロRNA前駆体と同等の機能を有するリボヌクレオチド以外の分子を含む重合体であればいかなるものでもよく、例えば、デオキシリボヌクレオチドの重合体であるDNA、RNAおよびDNAが混合した重合体、および、ヌクレオチド類似体を含むヌクレオチド重合体をあげることができ、さらに、核酸誘導体を含むヌクレオチド重合体であってもよく、一本鎖核酸または二本鎖核酸であってもよい。
本発明の核酸を製造する方法としては、特に限定されず、公知の化学合成法を用いる方法、あるいは、酵素的転写法等にて製造することができる。公知の化学合成法を用いる方法として、ホスホロアミダイト法、ホスフォロチオエート法、ホスホトリエステル法、CEM法[Nucleic Acid Research,35,3287(2007)]等をあげることができ、例えば、ABI3900ハイスループット核酸合成機(アプライドバイオシステムズ社製)により合成することができる。酵素的転写法としては、目的の塩基配列を有したプラスミドまたはDNAを鋳型として典型的なファージRNAポリメラーゼ、例えば、T7、T3、またはSP6RNAポリメラーゼを用いた転写法をあげることができる。
本発明の核酸を用いて、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸の発現を検出する方法としては、検体中の核酸を検出できる方法であればいかなる方法でもよく、例えば、(1)ノーザンハイブリダイゼーション、(2)ドットブロットハイブリダイゼーション、(3)in situハイブリダイゼーション、(4)定量的PCR、(5)デファレンシャル・ハイブリダイゼーション、(6)マイクロアレイ、(7)リボヌクレアーゼ保護アッセイ等の方法があげられる。
本発明の核酸を用いて、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸の変異を検出する方法としては、検体中の核酸の塩基配列の変異を検出できる方法であれば、いかなる方法でもよく、例えば、非変異型塩基配列を有する核酸と変異型塩基配列を有する核酸とのハイブリダイズにより形成されるヘテロ二本鎖を検出する方法や、あるいは、検体由来の塩基配列を直接配列決定して変異の有無を検出する方法等をあげることができる。
本発明の核酸を用いて、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸を発現する細胞を分離する方法としては、種々の細胞の混合物より、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸を発現する細胞を分離できる方法であればいかなる方法でもよく、例えば、本発明の核酸の塩基配列と相補的な配列を有する核酸に蛍光標識したプローブを細胞に導入し、該プローブとハイブリダイゼーションさせ、標識プローブとハイブリダイゼーションした細胞のみを、ソーティング機能を有したフローサイトメーターで分離する方法等をあげることができる。
本発明の核酸を発現するベクターとは、細胞内もしくは試験管内で転写されることにより本発明の核酸が生合成されるように設計されたベクターをいい、細胞内もしくは試験管内で本発明の核酸を転写することができるプロモーターを有していればいかなるベクターでもよい。具体的には、pcDNA6.2−GW/miR(Invitrogen社製)、pSilencer4.1−CMV(Ambion社製)、pSINsi−hH1 DNA(タカラバイオ社製)、pSINsi−hU6 DNA(タカラバイオ社製)、pENTR/U6(Invitrogen社製)等をあげることができる。
本発明のマイクロRNAなどの核酸の標的塩基配列を有する遺伝子(以下、標的遺伝子という)の発現を抑制する方法としては、本発明のマイクロRNAなどの核酸を用いて、標的塩基配列を有するmRNAの発現を抑制する活性を利用して、標的遺伝子の発現を抑制する方法であれば、いかなる方法でもよい。なお、ここで、発現を抑制するとは、mRNAの翻訳を抑制する場合、およびmRNAを切断あるいは分解することによって、結果としてmRNAから翻訳される蛋白質の量を減少させる場合も含む。
標的塩基配列とは、本発明のマイクロRNAなどの核酸によって認識される数塩基からなる核酸の塩基配列をいう。該塩基配列を有するmRNAの翻訳は本発明のマイクロRNAなどの核酸により抑制される。マイクロRNAの5’末端側2〜8番目の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するmRNAは、該マイクロRNAによって翻訳が抑制される[Current Biology,15,R458−R460(2005)]ので、本発明のマイクロRNAなどの核酸の5’末端側2〜8番目と相補的な塩基配列を該マイクロRNAなどの核酸の標的塩基配列としてあげることができる。例えば、マイクロRNAの5’末端側2−8番目の塩基配列に対して相補的な標的配列を用意し、ヒトmRNAの3’UTR塩基配列群に対して、完全一致配列を含有するmRNAを、文字列探索などの方法で選抜することで決定することができる。ヒトmRNAの3’UTR塩基配列群は、「UCSC Human Genome Browser Gateway(http://genome.ucsc.edu/cgi−bin/hgGateway)」より取得できるゲノム配列および遺伝子位置情報を用いて作製することができる。配列番号1〜1336で表されるマイクロRNAの標的塩基配列を有した遺伝子の具体的な例としては、米国国立バイオテクノロジー情報センターNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のEntreGeneデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez/)で使われている名前(Official SymbolとGene ID)で表記された表2−1〜2−35に記載の遺伝子をあげることができる。遺伝子名は、EntreGeneデータベースの2006年3月時点での名前を使用した。
[表2−1]
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[表2−2]
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[表2−3]
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[表2−4]
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[表2−8]
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[表2−13]
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[表2−14]
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[表2−15]
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[表2−17]
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[表2−18]
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[表2−20]
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[表2−23]
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[表2−24]
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[表2−25]
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[表2−26]
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[表2−27]
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[表2−28]
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[表2−29]
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[表2−30]
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[表2−31]
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[表2−32]
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[表2−33]
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[表2−34]
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[表2−35]
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本発明の核酸を用いた、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質をスクリーニングする方法としては、本発明の核酸を用いて、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質をスクリーニングする方法であれば、いかなる方法でもよい。例えば、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸を発現するベクターを細胞に導入し、それらの標的遺伝子の発現を抑制する物質、もしくはそれらの標的遺伝子の発現を促進する物質をスクリーニングする方法があげられる。
標的遺伝子の発現を抑制する物質としては、標的遺伝子のmRNAの発現を抑制する物質であればいかなる物質であってもよいが、核酸が好ましく、標的遺伝子に対するsiRNAがさらに好ましい。標的遺伝子の発現を促進する物質としては、標的遺伝子のmRNAの発現を促進する物質であればいかなる物質であってもよいが、核酸が好ましく、標的遺伝子の発現を抑制するマイクロRNAに対するsiRNAがさらに好ましい。
本発明の核酸またはベクターを導入した細胞とは、本発明の核酸またはベクターを体外において導入した細胞であればいかなる細胞であってもよい。具体的には、肥満細胞および肥満細胞の前駆細胞、または、間葉系幹細胞および間葉系幹細胞が分化してできた細胞、例えば皮膚、肺、小腸、鼻、扁桃、眼瞼結膜、血管壁、骨髄等の組織に存在する細胞、または、骨髄、脂肪組織、臍帯血、子宮内膜、真皮、骨格筋、骨膜、歯小嚢、歯根膜、歯髄、および歯胚等の組織に存在する細胞であり、例えば、骨芽細胞、脂肪細胞、および筋肉細胞等をあげることができる。
本発明において肥満細胞とは、各種刺激により活性化され、脱顆粒を起こし、数多くの炎症性メディエーターを遊離、産生する細胞で、種々のアレルギー疾患の病態形成にも関与する細胞をいう。
本発明において間葉系幹細胞とは、骨髄、脂肪組織、臍帯血、子宮内膜、真皮、骨格筋、骨膜、歯小嚢、歯根膜、歯髄、および歯胚等の間葉系組織に存在し、少なくとも骨芽細胞、脂肪細胞、および筋肉細胞等の間葉系細胞への分化能を有する細胞をいう。
本発明の核酸を有効成分とする医薬は、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断または治療に用いることができる。肥満細胞の異常としては、脱顆粒の異常があげられるため、本発明の核酸は、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤として用いることもできる。また、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質や、本発明のマイクロRNAなどの核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質もまた、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断または治療に用いることができる。これらの物質は肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤として用いることもできる。
肥満細胞の異常に起因する疾患としては、具体的には、アトピー性皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、及びアレルギー疾患等をあげることができる。
本発明の核酸を有効成分とする医薬は、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断または治療に用いることができる。また、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質や、本発明のマイクロRNAなどの核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質もまた、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断または治療に用いることができる。
間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患としては、具体的には、癌、骨形成不全症、軟骨形成不全症、糖尿病等をあげることができる。
本発明の核酸を有効成分とする医薬は、細胞の増殖などの異常や、組織の過形成等が原因となっている疾患の診断または治療に用いることができる。また本発明の核酸は、細胞の増殖抑制剤もしくは増殖促進剤として用いることもできる。また、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体などの核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質や、本発明のマイクロRNAなどの核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質もまた、細胞の増殖などの異常や、組織の過形成等が原因となっている疾患の診断または治療に用いることができる。これらの物質は細胞の増殖抑制剤もしくは増殖促進剤として用いることもできる。ここで細胞の増殖の異常とは、生体内における通常の増殖速度ではない速度で細胞が増殖している状態をいう。
細胞の増殖異常や組織の過形成等が原因となっている疾患としては、具体的には、癌、動脈硬化、慢性関節リウマチ、前立腺肥大症、経皮的経血管的冠動脈形成術後の血管再狭窄、肺線維症、糸球体腎炎、自己免疫疾患等をあげることができる。
以下、本発明の核酸がマイクロRNAやマイクロRNA前駆体である場合を例として、本発明を詳細に説明する。
1.肥満細胞で発現するマイクロRNAおよびマイクロRNA前駆体の同定
(1−1)肥満細胞の取得、培養
ヒト肥満細胞は、安全かつ効率的に取得される方法であれば特に限定されないが、例えば、ヒトの肺、皮膚、胎児肝臓などから公知の方法[J.Immunol.Methods,169,153(1994);J.Immunol.,138,861(1987);J.Allergy Clin.Immunol.,107,322(2001);J.Immunol.Methods.,240,101(2000)]により調製することができる。また、公知の方法[J.Immunol.,157,343,(1996);Blood,91,187(1998);J.Allergy Clin.Immunol.,106,141(2000);Blood,97,1016(2001);Blood,98,1127(2001);Blood,100,3861(2002);Blood,97,2045(2001)]に従って、ヒトの臍帯血、末梢血、骨髄、肺あるいは皮膚から調製した単核球を、幹細胞因子(以下、SCFともいう)の存在下で培養し、肥満細胞に分化させることにより、調製することができる。
また、ヒト肥満細胞から樹立した細胞株を用いることもできる。ヒト肥満細胞株としては、ヒト肥満細胞の性質をよく保持していることが知られているLAD2[Leuk.Res.,27,671(2003);Leuk.Res.,27,677(2003)]等があげられる。
(1−2)低分子RNAと配列情報の取得
上記の各種方法で取得した肥満細胞から全RNAを抽出し、該RNAを用いて肥満細胞で発現するマイクロRNAを含有する低分子RNAを以下のようにして取得することができる。
低分子RNAの取得法としては、具体的には、Genes & Development,15,188−200(2000)に記載の方法に準じて、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動による低分子RNAの分離及び切り出し、5’末端脱リン酸化、3’−アダプターライゲーション、リン酸化、5’−アダプターライゲーション、逆転写、PCR増幅、コンカテマー化、ベクターへのライゲーションを順次経て、低分子RNAをクローニングし、そのクローンの塩基配列を決定する方法等があげられる。あるいは、例えば、Science,294,858−862(2001)に記載の方法に準じて、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動による低分子RNAの分離及び切り出し、5’−アデニル化3’−アダプターライゲーション、5’−アダプターライゲーション、逆転写、PCR増幅、コンカテマー化、ベクターへのライゲーションを順次経て、低分子RNAをクローニングし、そのクローンの塩基配列を決定する方法等があげられる。
あるいは、Nucleic Acids Research,34,1765−1771(2006)に記載の方法により、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動による低分子RNAの分離及び切り出し、5’末端脱リン酸化、3’−アダプターライゲーション、リン酸化、5’−アダプターライゲーション、逆転写、PCR増幅、マイクロビーズベクターへのライゲーションを順次経て、低分子RNAをクローニングし、そのマイクロビーズの塩基配列を読み取ることで塩基配列を決定することにより低分子RNAを取得することもできる。
また、small RNA Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて低分子RNAを取得することもできる。
(1−3)マイクロRNAの同定
取得した低分子RNA配列がマイクロRNAであるかは、RNA,9,277−279(2003)に記載の基準に従うか否かで判定できる。例えば、上記方法で取得して塩基配列を決定した低分子RNAの場合、以下のようにしておこなうことができる。
すなわち、取得した低分子RNA塩基配列に対応するDNA配列を5’末端側および3’末端側にそれぞれ50nt程度伸ばした周辺ゲノム配列情報を取得し、そのゲノム配列から転写されることが予測されるRNAの2次構造を予測する。その結果、ヘアピン構造を有し、且つ該低分子RNAの塩基配列がヘアピン構造の片鎖に位置する場合、該低分子RNAはマイクロRNAであると判定できる。ゲノム配列は一般に公開されており、例えば、UCSC Genome Bioinformatics(http://genome.ucsc.edu/)から入手可能である。また、2次構造予測も様々なプログラムが公開されており、例えば、RNAfold[Nucleic Acids Research,31,3429−3431(2003)]やMfold[Nucleic Acids Research,31,3406−3415(2003)]等を用いることができる。また、既存のマイクロRNA配列はmiRBase(http://microrna.sanger.ac.uk/)というデータベースに登録されており、ここに記載の配列と同一か否かで、既存のマイクロRNAと同一か否かを判定することができる。
このようにして同定した、肥満細胞で発現するマイクロRNAとして、例えば、配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列を有する核酸をあげることができる。
また、同定したマイクロRNAに対応するゲノム配列と、他の生物のゲノム配列とを比較し、配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列を有する核酸を、その生物におけるマイクロRNAとして同定することができる。
(1−4)マイクロRNA前駆体の同定
上記(1−3)で同定したマイクロRNAの塩基配列をもとに、マイクロRNAをコードする配列を含む配列をマイクロRNA前駆体をコードする配列として同定することができる。本発明の肥満細胞で発現するマイクロRNA前駆体としては、例えば、配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列を有する核酸等をあげることができる。
更に、同定したマイクロRNA前駆体に対応するゲノム配列と、他生物のゲノム配列とを比較し、配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の同一性を有する塩基配列を有する核酸を、その生物におけるマイクロRNA前駆体として同定することができる。
2.核酸の合成
上記1.のようにして一旦、肥満細胞で発現するマイクロRNAおよびマイクロRNA前駆体が同定された後は、その塩基配列に基づいてリボヌクレオチドの重合体であるRNAだけでなく、デオキシリボヌクレオチドの重合体であるDNAも合成することができる。例えば、上記1.で同定したRNAの塩基配列をもとに、DNAの塩基配列を決定することができる。RNAの塩基配列に対応するDNAの塩基配列は、RNAの配列に含まれるU(ウラシル)をT(チミン)に読み替えることで一義的に決定できる。また、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドが混合した重合体や、ヌクレオチド類似体を含む重合体も同様にして合成することができる。
本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を合成する方法としては、特に限定されず、公知の化学合成法を用いる方法、あるいは、酵素的転写法等にて製造することができる。公知の化学合成法を用いる方法として、ホスホロアミダイト法、ホスフォロチオエート法、ホスホトリエステル法、CEM法[Nucleic Acid Research,35,3287(2007)]等をあげることができ、例えば、ABI3900ハイスループット核酸合成機(アプライドバイオシステムズ社製)により合成することができる。酵素的転写法としては、目的の塩基配列を有したプラスミドまたはDNAを鋳型として典型的なファージRNAポリメラーゼ、例えば、T7、T3、またはSP6 RNAポリメラーゼを用いた転写法をあげることができる。
3.マイクロRNAおよび該マイクロRNA前駆体の機能を検出する方法
マイクロRNAは、ヘアピン構造を有するマイクロRNA前駆体が、細胞質内でRNaseIII endonucleaseの一種であるDicerと呼ばれる蛋白質によるプロセシングを経て生成され、標的塩基配列を有するmRNAの翻訳を抑制する。従って、当該機能を有しているか否かで得られた核酸がマイクロRNAであるか否かを検出することができる。
例えば、RNAがRNaseIII endonucleaseによりプロセシングされるか否かでマイクロRNA前駆体としての機能を有するかを測定することができる。具体的には、機能を検出したいRNAをRNaseIII endonucleaseと反応させ、反応産物を電気泳動した際、マイクロRNA前駆体としての機能を有していれば、プロセシングを受けた20−25塩基長程度のバンドが検出されることを利用して、該機能を有するかを測定することができる。RNaseIII endonucleaseは、マイクロRNA前駆体をプロセシングする活性を有するものであれば特に限定されないが、Dicer蛋白質を用いることが好ましい。具体的には、si−RNAse IIITM(タカラバイオ社製)、Cold Shock−DICER(タカラバイオ社製)、Recombinant Dicer Enzyme(Stratagene社製)、BLOCK−iT Dicer RNAi Transfection Kit(Invitrogen社製)、X−treme GENE siRNA Dicer Kit(ロシュ・アプライド・サイエンス社製)などを用いることができ、添付された説明書の反応条件に従うことで測定できる。
マイクロRNAの機能を検出する方法としては、標的塩基配列を有するmRNAの翻訳を抑制するか否かで該機能を有するかを測定する方法をあげることができる。
マイクロRNAは、その標的塩基配列を3’末端側untranslated region(3’UTR)に含むmRNAの翻訳を抑制することが知られている[Current Biology,15,R458−R460(2005)]。そこで、測定しようとするRNAに対する標的塩基配列を、適当なレポーター遺伝子発現ベクターの3’UTRに挿入したDNAを作製して、発現ベクターに適合した宿主細胞に導入し、その細胞に該RNAを発現させた時に、レポーター遺伝子の発現を測定することで、マイクロRNAの機能を有しているか否かを検出することができる。
レポーター遺伝子発現ベクターは、レポーター遺伝子の上流にプロモーターを有しており、宿主細胞においてレポーター遺伝子が発現できるものであればいかなるものでもよい。レポーター遺伝子としては、あらゆるレポーター遺伝子を使用することが可能であるが、例えば、ホタル・ルシフェラーゼ遺伝子、ウミシイタケ・ルシフェラーゼ遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、β−グルクロニダーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、β−ラクタマーゼ遺伝子、エクオリン遺伝子、グリーン・フルオレッセント・プロテイン遺伝子およびDsRed蛍光遺伝子などが利用できる。こうした性質を有するレポーター遺伝子発現ベクターとして、例えば、psiCHECK−1(Promega社製)、psiCHECK−2(Promega社製)、pGL3−Control(Promega社製)、pGL4(Promega社製)、pRNAi−GL(タカラバイオ社製)、pCMV−DsRed−Express(CLONTECH社製)等をあげることができる。またRNAは、後述の6.に記載した方法で発現させることができる。
マイクロRNAの機能は、具体的には以下のようにして検出することができる。まず宿主細胞をマルチウェルプレート等に培養し、標的塩基配列を有したレポーター遺伝子発現ベクターとRNAを発現させる。その後、レポーター活性を測定し、該RNAを発現させない場合と比較して、該RNAを発現させた場合にレポーター活性が低下することを検出することで、マイクロRNAの機能を検出することができる。
4.本発明の核酸を用いたマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の発現を検出する方法
以下に、本発明の核酸を用いて、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の発現を検出する方法について説明する。
マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の発現を検出する方法としては、例えば、(1)ノーザンハイブリダイゼーション、(2)ドットブロットハイブリダイゼーション、(3)in situハイブリダイゼーション、(4)定量的PCR、(5)デファレンシャル・ハイブリダイゼーション、(6)マイクロアレイ、(7)リボヌクレアーゼ保護アッセイ等の方法があげられる。
ノーザンブロット法とは、検体由来RNAをゲル電気泳動で分離後、ナイロンフィルター等の支持体に転写し、本発明の核酸の塩基配列をもとに適宜標識をしたプローブを作製し、ハイブリダイゼーションおよび洗浄をおこなうことで、本発明の核酸に特異的に結合したバンドを検出する方法であり、具体的には、例えば、Science 294,853−858(2001)に記載の方法等に従って行うことができる。
標識プローブは、例えば、ニック・トランスレーション、ランダム・プライミングまたは5’末端のリン酸化等の方法により放射性同位体、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光基、化学発光基等を、本発明の核酸の塩基配列と相補的な配列を有するDNAやRNA、あるいはLNA等に取り込ませることで調製できる。標識プローブの結合量はマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の発現量を反映することから、結合した標識プローブの量を定量することでマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の発現量を定量することができる。電気泳動、メンブレンへの移行、プローブの調製、ハイブリダイゼーション、核酸の検出については、モレキュラー・クローニング第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY,USA(2001)に記載の方法により行うことができる。
ドットブロットハイブリダイゼーションは、組織や細胞から抽出した核酸をメンブラン上に点状にスポットして固定し、プローブとハイブリダイゼーションを行い、プローブと特異的にハイブリダイズする核酸を検出する方法である。プローブとしてはノーザンハイブリダイゼーションと同様のものを用いることができる。核酸の調製、スポット、ハイブリダイゼーション、検出については、モレキュラー・クローニング第3版に記載の方法により行なうことができる。
in situハイブリダイゼーションは、生体から取得した組織のパラフィンまたはクリオスタット切片、あるいは固定化した細胞を検体として用い、標識したプローブとハイブリダイゼーションならびに洗浄の工程を行い、顕微鏡観察により、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の組織や細胞内での分布や局在を調べる方法である[Methods in Enzymology,254,419(1995)]。プローブとしてはノーザンハイブリダイゼーションと同様のものを用いることができる。具体的には、Nature Method 3,27(2006)に記載の方法に従って、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等を検出することができる。
定量的PCRでは、検体由来RNAから、逆転写用プライマーと逆転写酵素を用いて合成したcDNA(以後、該cDNAを検体由来cDNAともいう)を測定に用いる。cDNA合成に供する逆転写用プライマーとして、ランダムプライマーあるいは特異的RTプライマー等を用いることができる。特異的RTプライマーとは、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等、およびその周辺ゲノム配列に対応する塩基配列に相補する配列を有するプライマーをいう。
例えば、検体由来cDNAを合成後、これを鋳型とし、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体およびその周辺ゲノム配列に対応する塩基配列、あるいは逆転写用プライマーに対応する塩基配列から設計した鋳型特異的なプライマーを用いてPCRを行い、cDNAの断片を増幅させ、ある一定量に達するまでのサイクル数から検体由来RNAに含まれるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体の量を検出する。鋳型特異的なプライマーとしては、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体およびその周辺ゲノム配列に対応する適当な領域を選択し、その領域の塩基配列の5’端20〜40塩基の配列からなるDNAまたはLNA、および3’端20〜40塩基と相補的な配列からなるDNAまたはLNAの組を用いることができる。具体的には、Nucleic Acids Research,32,e43(2004)に記載の方法等に準じて行うことができる。
または、cDNA合成に供する逆転写用プライマーとして、ステム・ループ構造を有した特異的RTプライマーを用いることもできる。具体的には、Nucleic Acid Research,33,e179(2005)に記載の方法に従い、あるいは、TaqMan MicroRNA Assays(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行うことができる。
別の検体由来cDNA合成法として、検体由来RNAに対してpolyAポリメラーゼによりpolyA配列を付加し、オリゴdT配列を含む塩基配列を逆転写用プライマーとして用いることにより、逆転写反応を行うこともできる。具体的には、miScript System(キアゲン社製)やQuantiMir RT Kit(System Biosciences社製)を用いて行うことができる。
また、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を少なくとも1つ以上含む塩基配列に対応するDNAあるいはLNAを固定化させたフィルターあるいはスライドガラスやシリコンなどの基盤に対して、検体由来cDNAをハイブリダイゼーションし、洗浄を行うことにより、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の量の変動を検出することができる。このようなハイブリダイゼーションに基づく方法には、ディファレンシャルハイブリダイゼーション[Trends Genet.,7,314(1991)]やマイクロアレイ[Genome Res.,6,639(1996)]を用いる方法があげられる。いずれの方法もフィルターあるいは基盤上にU6 RNAに対応する塩基配列などの内部対照を固定化することで、対照検体と標的検体の間でのマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の量の違いを正確に検出することができる。また対照検体と標的検体由来のRNAをもとにそれぞれ異なる標識のdNTP(dATP、dGTP、dCTP、dTTPの混合物)を用いて標識cDNA合成を行い、1枚のフィルターあるいは1枚の基盤に2つの標識cDNAを同時にハイブリダイズさせることで、正確なマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の定量を行うことができる。更に、対照検体および/または標的検体由来のRNAを直接標識してハイブリダイズさせることで、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の定量を行うこともできる。例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,101,9740−9744(2004)やNucleic Acid Research,32,e188(2004)等に記載のマイクロアレイを用いてマイクロRNA等を検出することができる。具体的には、mirVana miRNA Bioarray(Ambion社製)を用いてマイクロRNA等を検出または定量することができる。
リボヌクレアーゼ保護アッセイでは、まず本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体あるいはその周辺ゲノム配列に対応する塩基配列の3’端にT7プロモーター、SP6プロモーターなどのプロモーター配列を結合し、標識したNTP(ATP、GTP、CTP、UTPの混合物)およびRNAポリメラーゼを用いたイン・ビトロの転写系により、標識したアンチセンスRNAを合成する。該標識アンチセンスRNAを、検体由来RNAと結合させて、RNA−RNAハイブリッドを形成させた後、1本鎖RNAのみを分解するリボヌクレアーゼAで消化する。該消化物をゲル電気泳動し、RNA−RNAハイブリッドを形成することにより消化から保護されたRNA断片を、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体として検出または定量する。具体的には、mirVana miRNA Detection Kit(Ambion社製)を用いてマイクロRNA等を検出または定量することができる。
5.本発明の核酸を用いてマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の変異を検出する方法
以下に本発明の核酸を用いて、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の変異を検出する方法について説明する。
マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の変異を検出する方法として、正常型のマイクロRNAと変異型のマイクロRNA、および正常型のマイクロRNA前駆体と変異型のマイクロRNA前駆体とのハイブリダイズにより形成されるヘテロ二本鎖を検出する方法を用いることができる。
ヘテロ二本鎖を検出する方法としては、(1)ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるヘテロ二本鎖検出法[Trends genet.,7,5(1991)]、(2)一本鎖コンフォメーション多型解析法[Genomics,16,325−332(1993)]、(3)ミスマッチの化学的切断法(CCM,chemical cleavage of mismatches)[Human Genetics(1996),Tom Strachan and Andrew P.Read,BIOS Scientific Publishers Limited]、(4)ミスマッチの酵素的切断法[Nature Genetics,9,103−104(1996)]、(5)変性ゲル電気泳動法[Mutat.Res.,288,103−112(1993)]等の方法があげられる。
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によるヘテロ二本鎖検出法は、例えば、以下のようにして行う。まず、検体由来DNAあるいは検体由来cDNAをテンプレートに対し、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の塩基配列を含むゲノムの塩基配列を基に設計したプライマーにより、200bpよりも小さい断片として増幅する。ヘテロ二本鎖が形成された場合は、変異を持たないホモ二本鎖よりも移動度が遅く、それらは余分なバンドとして検出することができる。特製のゲル(Hydro−link,MDEなど)を用いたほうが分離度はよい。200bpよりも示さい断片の検索ならば、挿入、欠失、ほとんどの1塩基置換を検出することができる。ヘテロ二本鎖解析は、次に述べる一本鎖コンフォメーション解析と組み合わせた1枚のゲルで行うことが望ましい。
一本鎖コンフォメーション多型解析(SSCP解析;single strand conformation polymorphism analysis)では、検体由来DNAあるいは検体由来cDNAをテンプレートにして、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の塩基配列を含むゲノムの塩基配列に基づき設計したプライマーを用いて、200bpよりも小さい断片として増幅したDNAを、変性後に、未変性ポリアクリルアミドゲル中で泳動する。DNA増幅を行う際にプライマーを同位体あるいは蛍光色素で標識するか、または未標識の増幅産物を銀染色することにより、増幅したDNAをバンドとして検出することができる。野生型のパターンとの相違を明らかにするために、コントロールの検体も同時に泳動すると、変異を持った断片を移動度の違いから検出できる。
ミスマッチ化学的切断法(CCM法)では、検体由来DNAあるいは検体由来cDNAをテンプレートに、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の塩基配列を含むゲノムの塩基配列に基づき設計したプライマーで増幅したDNA断片を、本発明の核酸に同位体あるいは蛍光標識をとり込ませた標識核酸とハイブリダイズさせ、四酸化オスミウムで処理することでミスマッチしている場所のDNAの一方の鎖を切断させ変異を検出することができる。CCMは最も感度の高い検出法の1つであり、キロベースの長さの検体にも適応できる。
上記、四酸化オスミウムの代わりにT4ファージリゾルベースとエンドヌクレアーゼVIIのような細胞内でミスマッチの修復に関与する酵素とRNaseAと組み合わせることで、酵素的にミスマッチを切断することもできる。
変性ゲル電気泳動法(denaturing gradient gel electrophoresis:DGGE法)では、検体由来DNAあるいは検体由来cDNAをテンプレートに、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の塩基配列を含むゲノムの塩基配列に基づき設計したプライマーで増幅したDNA断片を化学的変性剤の濃度勾配や温度勾配を有するゲルを用いて電気泳動する。増幅したDNA断片はゲル内を二本鎖に変性する位置まで移動し、変性後は移動しなくなる。変異がある場合とない場合では増幅したDNAのゲル内での移動が異なることから、変異の存在を検出できる。検出感度を上げるにはそれぞれのプライマーにポリ(G:C)端末を付けるとよい。
また、検体由来DNAあるいは検体由来cDNAの塩基配列を直接的に決定し、解析することにより、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の変異を検出することもできる。
6.本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を発現させる方法
本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸は、該核酸をコードする発現ベクターを用いることにより発現させることができる。
発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製可能もしくは染色体中への組込みが可能で、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の遺伝子を転写できる位置にプロモーターを含有しているプラスミド、ウィルスベクター等が好ましく用いられる。プロモーターとしては、宿主細胞中で発現できるものであれば、いかなるものでもよく、例えば、RNA polymerase II(pol II)系プロモーターやU6 RNAやH1 RNAの転写系であるRNA polymerase III(pol III)系プロモーター等をあげることができる。pol II系プロモーターとしては例えば、サイトメガロウィルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター等をあげることができる。それらを用いた発現ベクターとして、例えば、pCDNA6.2−GW/miR(Invitrogen社製)、pSilencer4.1−CMV(Ambion社製)等を例示することができる。pol III系プロモーターとしてはU6 RNAやH1 RNAあるいはtRNAのプロモーターをあげることができる。それらを用いた発現ベクターとして、例えば、pSINsi−hH1 DNA(タカラバイオ社製)、pSINsi−hU6 DNA(タカラバイオ社製)、pENTR/U6(Invitrogen社製)等をあげることができる。また試験管内でマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等を発現させる場合には、T7プロモーター、T3プロモーターもしくはSP6プロモーターを有する発現ベクターが好ましく用いられる。これらを有するベクターとして、例えばpBluescript II SK(+)(Stratagene社製)等をあげることができる。
プラスミドを用いる場合、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の塩基配列あるいは、その塩基配列を含むゲノムの塩基配列をもとに、ヘアピン部分を含むDNA断片を調製し、プラスミドのプロモーター下流に挿入して組換えプラスミドを造成した後、該プラスミドを、該プラスミドに適合した宿主細胞に導入するか、試験管内でRNAポリメラーゼやヌクレオチドなどと混合することにより、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を発現させることができる。
ウィルスベクターを用いる場合、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の塩基配列を含む遺伝子をウィルスベクター内のプロモーター下流に挿入して組換えウィルスベクターを造成し、該ベクターをパッケージング細胞に導入して組換えウィルスを生産して、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の遺伝子を発現させることもできる。
パッケージング細胞は、ウィルスのパッケジーングに必要な蛋白質をコードする遺伝子のいずれかを欠損している組換えウィルスベクターの、該欠損する蛋白質を補給できる細胞であればいずれの細胞もよく、例えばヒト腎臓由来のHEK293細胞、マウス繊維芽細胞NIH3T3由来の細胞などを用いることができる。パッケージング細胞で補給する蛋白質としては、レトロウィルスベクターの場合はマウスレトロウイルス由来のgag,pol,envなどの蛋白質が、レンチウィルスベクターの場合はHIVウィルス由来のgag,pol,env,vpr,vpu,vif,tat,rev,nefなどの蛋白質、アデノウィルスベクターの場合はアデノウィルス由来のE1A,E1Bなどの蛋白質、また、アデノ随伴ウィルスベクターの場合はRep(p5,p19,p40),Vp(Cap)などの蛋白質を用いることができる。
発現ベクターを用いる以外にも、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を、ベクターを用いずに直接細胞に導入することもできる。本手法に用いる核酸はDNAやRNA、あるいはヌクレオチド類似体の他、これらのキメラ分子、あるいは該核酸の誘導体も用いることができる。具体的には、Pre−miRTM miRNA Precursor Molecules(Ambion社製)やmiRIDIAN microRNA Mimics(GEヘルスケア社製)を用いることができる。
7.本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の発現または機能を促進或いは抑制または促進する方法
本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸は、アンチセンス技術[バイオサイエンスとインダストリー,50,322(1992)、化学,46,681(1991)、Biotechnology,9,358(1992)、Trends in Biotechnology,10,87(1992)、Trends in Biotechnology,10,152(1992)、細胞工学,16,1463(1997)]、トリプル・ヘリックス技術[Trends in Biotechnology,10,132(1992)]、リボザイム技術[Current Opinion in Chemical Biology,3,274(1999)、FEMS Microbiology Reviews,23,257(1999)、Frontiers in Bioscience,4,D497(1999)、Chemistry & Biology,6,R33(1999)、Nucleic Acids Research,26,5237(1998)、Trends In Biotechnology,16,438(1998)]、デコイDNA法[Nippon Rinsho−Japanese Journal of Clinical Medicine,56,563(1998)、Circulation Research,82,1023(1998)、Experimental Nephrology,5,429(1997)、Nippon Rinsho−Japanese Journal of Clinical Medicine,54,2583(1996)]、あるいはsiRNA(short interfering RNA)を用いて、その発現または機能を抑制することができる。
アンチセンスとは、ある標的核酸の塩基配列に相補的な塩基配列を有する核酸を塩基配列特異的にハイブリダイゼーションさせ、該標的核酸の発現または機能を抑制できるものをいう。アンチセンスに用いる核酸はDNAやRNAまたはヌクレオチド類似体の他、これらのキメラ分子、あるいは該核酸の誘導体も用いることができる。具体的には、Nature432,226(2004)等に記載の方法に従うことでアンチセンスを作製し、発現または機能を抑制することができる。具体的には、Anti−miRTM miRNA Inhibitors(Ambion社製)やmiRIDIAN microRNA Inhibitors(GEヘルスケア社製)を用いることにより本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の発現または機能を抑制することができる。
siRNAとは、ある標的核酸の塩基配列を含む短い二本鎖RNAであり、RNA干渉(RNAi)により、該標的核酸の発現または機能を抑制できるものをいう。siRNAの配列は、標的とする塩基配列から文献[Genes Dev.,13,3191(1999)]の条件に基づいて適宜設計することができる。選択した17〜30塩基、好ましくは18〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列および相補的な配列それぞれの3’端にTTを付加した配列を有する2本のRNAを核酸合成機により合成し、アニーリングすることによりsiRNAを作製できる。また、pSilencer 1.0−U6(Ambion社製)、pSUPER(OligoEngine社)等のsiRNA発現用ベクターに上記の選択した17〜30塩基、好ましくは18〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列に相当するDNAを挿入することにより、該遺伝子の発現または機能を抑制できるsiRNAを発現するベクターを作製することができる。
肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞で発現するマイクロRNAやマイクロRNA前駆体に特異的なアンチセンスまたはsiRNAを用いて、肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞で発現するマイクロRNAやマイクロRNA前駆体の発現または機能の抑制を行うことができる。すなわち、該マイクロRNAに特異的なアンチセンスまたはsiRNAを投与することにより該マイクロRNAの発現または機能を抑制し、肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞におけるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体の作用を制御することができる。
具体的な一例をあげると、配列番号が1、2、3、8、14、20、22、25、32または36のいずれかで表されるマイクロRNAもしくは配列番号が1337、1338、1339、1352、1363、1371、1373、1377、1386または1390のいずれかで表されるマイクロRNA前駆体に特異的なアンチセンスまたはsiRNAは肥満細胞の脱顆粒抑制剤として用いることができる。また、配列番号が1、8、21または36で表されるマイクロRNAもしくは配列番号が1337、1352、1372または1390のいずれかで表されるマイクロRNA前駆体に特異的なアンチセンスまたはsiRNAは間葉系幹細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤として用いることができる。さらに、配列番号が1、3、8、20、21、22、32または36のいずれかで表されるマイクロRNAもしくは配列番号が1337、1339、1352、1371、1372、1373、1386または1390のいずれかで表されるマイクロRNA前駆体に特異的なアンチセンスまたはsiRNAは細胞増殖促進剤として用いることができる。
また、肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞で発現するマイクロRNAやマイクロRNA前駆体の発現異常による患者の場合、該マイクロRNAやその前駆体に特異的なアンチセンスまたはsiRNAを患者に投与することにより、肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞の機能を制御し、上記発現異常により発症する疾患の治療をすることができる。すなわち、該マイクロRNAまたはその前駆体に特異的なアンチセンスまたはsiRNAは、肥満細胞、間葉系幹細胞の異常に起因する疾患または細胞の増殖異常に起因する疾患の治療剤として有用である。
該マイクロRNAまたはその前駆体に特異的なアンチセンスまたはsiRNAを上記治療剤として使用する場合は、アンチセンスまたはsiRNAを単独、あるいはレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、下記11.に記載した常法に従って医薬製剤とし、投与することができる。
一方、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の発現または機能を促進する物質としては、該マイクロRNAやマイクロRNA前駆体、それらと標的塩基配列が同様であるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体、およびこれらをコードする発現ベクターの他、マイクロRNA前駆体のプロセシングに関与するDicer等の因子があげられる。マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等をコードする発現ベクターは、前記6.であげられた方法により作成することができる。
肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞で発現するマイクロRNAやマイクロRNA前駆体、これらと標的塩基配列が同様であるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体、およびこれらをコードする発現ベクターを用いて、肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞で発現するマイクロRNAやマイクロRNA前駆体の発現または機能の促進を行うことができる。すなわち、これらを投与することにより該マイクロRNAの発現または機能を促進し、肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞におけるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体の作用を制御することができる。
具体的な一例をあげると、配列番号が1、2、3、8、14、20、22、25、32または36のいずれかで表されるマイクロRNAもしくは配列番号が1337、1338、1339、1352、1363、1371、1373、1377、1386または1390のいずれかで表されるマイクロRNA前駆体、これらと標的塩基配列が同様であるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体、およびこれらをコードする発現ベクターは肥満細胞の脱顆粒促進剤として用いることができる。また、配列番号が1、8、21または36のいずれかで表されるマイクロRNAもしくは配列番号が1337、1352、1372または1390のいずれかで表されるマイクロRNA前駆体、これらと標的塩基配列が同様であるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体、およびこれらをコードする発現ベクターは間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤として用いることができる。さらに、配列番号が1、3、8、20、21、22、32または36のいずれかで表されるマイクロRNAもしくは配列番号が1337、1339、1352、1371、1372、1373、1386または1390のいずれかで表されるマイクロRNA前駆体、これらと標的塩基配列が同様であるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体、およびこれらをコードする発現ベクターは細胞の増殖抑制剤として用いることができる。
肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞で発現するマイクロRNAやマイクロRNA前駆体の発現異常による患者の場合、該マイクロRNAやその前駆体、これらをコードする発現ベクター、これらと標的塩基配列が同様であるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体、およびこれらをコードする発現ベクターを患者に投与することにより、肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞の機能を制御し、上記発現異常により発症する疾患の治療をすることができる。すなわち、該マイクロRNAまたはその前駆体、これらをコードする発現ベクター、これらと標的塩基配列が同様であるマイクロRNAやマイクロRNA前駆体、およびこれらをコードする発現ベクターは、肥満細胞、間葉系幹細胞の異常に起因する疾患または細胞の増殖異常に起因する疾患の治療剤として有用である。
該マイクロRNAまたはその前駆体、およびこれらをコードする発現ベクターを上記治療剤として使用する場合は、該マイクロRNAまたはその前駆体、およびこれらをコードする発現ベクターを単独、あるいはレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクターなどの適当なベクターを用い、下記11.に記載した常法に従って医薬製剤とし、投与することができる。
8.本発明のマイクロRNA等の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する方法
本発明のマイクロRNA等の核酸の標的遺伝子の発現を抑制する方法としては、標的遺伝子の発現を抑制する方法であれば、いかなる方法でもよい。例えば、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を発現させもしくは投与し、細胞内のマイクロRNAの量を増加させることにより、標的配列を有するmRNAの発現を抑制し、標的遺伝子の発現を抑制する方法をあげることができる。なお、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を発現させるには、上記6.で記載した方法により行なうことができる。
本発明のマイクロRNA等の核酸の標的遺伝子の発現を促進する方法としては、標的遺伝子の発現を促進する方法であれば、いかなる方法でもよい。例えば、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸に対するアンチセンスやsiRNAを発現させもしくは投与することにより、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の発現または機能を抑制し、その標的遺伝子の発現を促進する方法をあげることができる。アンチセンスやsiRNAは、上記7.で記載した方法により作製することができる。
配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなるマイクロRNAの標的遺伝子としては、例えば、それぞれ前述の表2で示される遺伝子群を例示することができる。
9.本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を用いて細胞を分離する方法
生体内から取り出した各種細胞から、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を発現する細胞を分離する方法としては、該マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸を蛍光標識したプローブを細胞に導入し、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸とハイブリダイゼーションさせ、標識プローブとハイブリダイゼーションした細胞のみを、ソーティング機能を有したフローサイトメーターで分離することにより、行うことができる。
蛍光標識プローブとしては、ハイブリダイゼーションした時に特異的な蛍光を発するものであれば、いかなるものでもよく、例えば、モレキュラービーコン[Biochimica et Biophysica Acta,1479,178(1998)]やFRET[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103,263(2006)]等があげられる。
モレキュラービーコンは、一方の末端に蛍光官能基を共有結合により導入し、もう一方の末端に蛍光消光を引き起こすダブシル基等を導入した核酸で、通常の水溶液中ではヘアピン構造をとるように塩基配列が設計されている。両末端に導入した蛍光官能基と蛍光消光団は互いに隣接するためプローブ単独では蛍光が観測されないが、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸とハイブリダイゼーションすると蛍光官能基と蛍光消光団が引き離され、強い蛍光が観測できる。
FRETとは、2種以上の蛍光官能基間の分子励起エネルギー移動現象である。具体的にはエネルギー供与体を末端に導入した核酸プローブとエネルギー受容体を末端に導入した核酸プローブの2種を用意する。2つのプローブの塩基配列は、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸とハイブリダイゼーションした後に導入した2つの蛍光官能基が近接するように設計すると、プローブ単独では供与体の発光のみが観測されるが、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸とプローブがハイブリダイゼーションを引き起こすと、2つのプローブが近接するため、供与体のエネルギーが受容体に移動し、受容体に基づく発光が主として観測できる。
ソーティング機能を有したフローサイトメーターによる細胞の分離の方式としては、水電荷方式、セルキャプチャー方式などがあげられる(フローサイトメーター自由自在、p14−23、秀潤社、1999年)。どちらの方法も細胞の蛍光測定を行い、蛍光強度を電気信号に変換することにより蛍光強度を定量し、その量に応じて細胞を分離することができる。具体的には、BD FACS Ariaセルソーター(ベクトン・ディッキンソン社製)やEPICS ALTRA HyPerSort(ベックマン・コールター社製)などを用いて蛍光を測定し、細胞を分離することができる。
10.本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質をスクリーニングする方法
本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を用いて、該マイクロRNAやその前駆体の発現または機能を促進或いは抑制させる物質をスクリーニングすることができる。例えば、本発明のマイクロRNAおよびマイクロRNA前駆体の塩基配列から、スクリーニングの標的とする塩基配列を選択して、該塩基配列を有する核酸を発現する細胞を利用して、選択したマイクロRNAまたはその前駆体の発現または機能を促進または抑制させる物質をスクリーニングすることができる。
スクリーニングに用いる、マイクロRNAおよびマイクロRNA前駆体の塩基配列を有する核酸を発現する細胞としては、肥満細胞、間葉系幹細胞または癌細胞のほか、上記6で記載したように、該塩基配列を有する核酸を発現するベクターを動物細胞や酵母などの宿主細胞に導入して得られる形質転換細胞や、該塩基配列を有する核酸をベクターを用いずに直接導入した細胞等を用いることもできる。
具体的なスクリーニング方法としては、(a)スクリーニングの標的とするマイクロRNAまたはその前駆体の発現量の変化を指標にする方法の他、マイクロRNAは標的配列を有するmRNAの翻訳を抑制するため、(b)スクリーニングの標的とするマイクロRNAまたはその前駆体の標的配列を有するmRNAの発現量の変化を指標にする方法があげることができる。
(a)スクリーニングの標的とするマイクロRNAまたはその前駆体の発現量の変化を指標にするスクリーニング方法
該塩基配列を有する核酸を発現する細胞に対し、試験物質を接触させ、選択した核酸の発現量の変化を指標に、マイクロRNAやその前駆体の発現を促進または抑制させる物質を得る。核酸の発現量は、上記4.で記載した方法により検出することができる。
(b)スクリーニングの標的とするマイクロRNAまたはその前駆体の標的配列を有するmRNAの発現量の変化を指標にするスクリーニング方法
該塩基配列を有する核酸を発現する細胞に対し、試験物質を接触させ、選択した核酸の標的配列を有するmRNA発現量の変化を指標に、マイクロRNAやその前駆体の発現または機能を促進または抑制させる物質を得る。または、本発明の塩基配列を有する一本鎖RNAに対する標的配列を、適当なレポーター遺伝子発現ベクターの3’UTRに挿入したDNAを作製して、発現ベクターに適合した宿主細胞に導入し、その細胞に試験物質を接触させ、レポーター遺伝子の発現量の変化を指標に、マイクロRNAやその前駆体の発現または機能を促進または抑制させる物質を得る。
標的配列の選択は、上記に記載した方法により行なうことができ、配列番号1〜1336でいずれかで表される塩基配列からなるマイクロRNAの標的遺伝子としては、例えば、それぞれ前述の表2で示される遺伝子群を例示することができる。
11.本発明の核酸等を含有する診断薬および治療薬
本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸、および、それらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸は、その標的遺伝子や本発明の核酸の発現を制御することにより、肥満細胞、間葉系幹細胞の異常等に起因する疾患、または細胞の増殖異常に起因する疾患の治療薬として利用することができる。また本発明の核酸は、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の定量または変異の検出により、肥満細胞、間葉系幹細胞の異常等に起因する疾患、または細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬として利用することができる。
肥満細胞の異常としては、肥満細胞の分化や脱顆粒、炎症性メディエーター産生、サイトカイン産生、ケモカイン産生等の異常が挙げられ、それに起因する疾患として、アトピー性皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性疾患等をあげることができる。間葉系幹細胞の異常としては、増殖または分化の異常等があげられ、それに起因する疾患として、癌、骨形成不全症、軟骨形成不全症、糖尿病等をあげることができる。細胞の増殖異常に起因する疾患としては、癌及び、細胞の異常増殖や組織の過形成等が原因となっている動脈硬化、慢性関節リウマチ、前立腺肥大症、経皮的経血管的冠動脈形成術後の血管再狭窄、肺線維症、糸球体腎炎、自己免疫疾患等をあげることができる。
治療薬や診断薬としての具体的な一例をあげると、配列番号が1〜1336のいずれかで表されるマイクロRNAもしくは配列番号が1337〜2851のいずれかで表されるマイクロRNA前駆体、並びにそれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸は肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬として用いることができる。また、配列番号が1、8、21または36のいずれかで表されるマイクロRNAもしくは配列番号が1337、1352、1372または1390のいずれかで表されるマイクロRNA前駆体、並びにそれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸は間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬として用いることができる。さらに、配列番号が1、3、8、20、21、22、32または36のいずれかで表されるマイクロRNAもしくは配列番号が1337、1339、1352、1371、1372、1373、1386または1390のいずれかで表されるマイクロRNA前駆体、並びにそれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸は細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬として用いることができる。
本発明の核酸を含有する診断薬は、目的の診断法に応じて、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸の定量あるいは変異の検出を行うために必要な試薬、例えば緩衝剤、塩、反応用酵素、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸と結合する標識された蛋白、および検出用発色剤等を含んでもよい。
本発明の核酸または、その塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸を有効成分として含有する医薬は、単独で投与することもできるが、通常は薬理学的に許容される1つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として投与するのが望ましい。
投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内などの非経口投与をあげることができ、望ましくは静脈内投与をあげることができる。
投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤などがあげられる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などがあげられる。
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造できる。
カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトールなどの賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤などがあげられる。
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液あるいは両者の混合物からなる担体などを用いて調製される。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて調製される。また、噴霧剤は受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ有効成分を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体などを用いて調製される。
担体として具体的には乳糖、グリセリンなどが例示される。本発明の核酸、さらには用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダーなどの製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜20mg/kgである。
また、本発明の核酸または、その塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸を有効成分として含有する治療薬は、それらの核酸を発現するベクターと核酸治療薬に用いる基剤とを調合することにより製造することもできる[Nature Genet.,8,42(1994)]。
核酸治療剤に用いる基剤としては、通常注射剤に用いる基剤であればどのようなものでもよく、蒸留水、塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムと無機塩との混合物等の塩溶液、マンニトール、ラクトース、デキストラン、グルコース等の溶液、グリシン、アルギニン等のアミノ酸溶液、有機酸溶液又は塩溶液とグルコース溶液との混合溶液等があげられる。また常法に従い、これらの基剤に浸透圧調整剤、pH調整剤、ゴマ油、ダイズ油等の植物油又はレシチンもしくは界面活性剤等の助剤を用いて、溶液、懸濁液、分散液として注射剤を調製してもよい。これらの注射剤を、粉末化、凍結乾燥等の操作により用時溶解用製剤として調製することもできる。本発明の治療剤は、治療の直前に液体の場合はそのままで、固体の場合は必要により滅菌処理をした上記の基剤に溶解して治療に使用することができる。
本発明の核酸をコードするベクターは、上記6.で作製した組換えウィルスベクターをあげることができ、より具体的には、レトロウィルスベクター及びレンチウィルスベクター等をあげることができる。
例えば、本発明の核酸をコードするベクターを、アデノウィルス・ヘキソン蛋白質に特異的なポリリジン−コンジュゲート抗体と組み合わせてコンプレックスを作製し、得られたコンプレックスをアデノウィルスベクターに結合させることにより、ウィルスベクターを調製することができる。該ウィルスベクターは安定に目的の細胞に到達し、エンドソームによる細胞内に取り込まれ、細胞内で分解され核酸を効率的に発現させることができる。
また、(−)鎖RNAウィルスであるセンダイウィルスをベースにしたウィルスベクターも開発されており(WO97/16538、WO97/16539)、当該センダイウィルスを用いて、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸を組み込んだセンダイウィルスを作製することができる。
本発明の核酸やこれをコードするベクターは、非ウィルス核酸移入法によっても移入することができる。例えば、リン酸カルシウム共沈法[Virology,52,456−467(1973);Science,209,1414−1422(1980)]、マイクロインジェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,5399−5403(1980);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,7380−7384(1980);Cell,27,223−231(1981);Nature,294,92−94(1981)]、リポソームを介した膜融合−介在移入法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413−7417(1987);Biochemistry,28,9508−9514(1989);J.Biol.Chem.,264,12126−12129(1989);Hum.Gene Ther.,3,267−275,(1992);Science,249,1285−1288(1990);Circulation,83,2007−2011(1992)]あるいは直接DNA取り込みおよび受容体−媒介DNA移入法[Science,247,1465−1468(1990);J.Biol.Chem.,266,14338−14342(1991);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,3655−3659(1991);J.Biol.Chem.,264,16985−16987(1989);BioTechniques,11,474−485(1991);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,3410−3414(1990);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,4255−4259(1991);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,4033−4037(1990);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,8850−8854(1991);Hum.Gene Ther.,3,147−154(1991)]等により移入することができる。
リポソームを介した膜融合−介在移入法は、リポソーム調製物を目的とする組織に直接投与することにより、本発明の核酸やこれをコードするベクターを当該組織の局所に取り込み、および発現させることができる[Hum.Gene Ther.,3,399(1992)]。DNAを病巣に直接ターゲッティングするには、直接DNA取り込み技術が好ましい。
受容体−媒介DNA移入は、例えば、ポリリジンを介して、蛋白質リガンドにDNA(通常、共有的に閉環したスーパーコイル化プラスミドの形態をとる)を結合することによって行う方法をあげることができる。リガンドは、目的細胞または組織の細胞表面上の対応するリガンド受容体の存在に基づいて選択する。当該リガンド−DNAコンジュゲートは、所望により、血管に直接注射することができ、受容体結合およびDNA−蛋白質コンプレックスの内在化が起こる標的組織に指向し得る。DNAの細胞内破壊を防止するために、アデノウィルスを同時感染させて、エンドソーム機能を崩壊させることもできる。
12.肥満細胞の活性化の程度を測定する方法
ある核酸が肥満細胞に対し、活性化抑制、脱顆粒抑制、炎症性メディエーター産生抑制、サイトカイン産生抑制およびケモカイン産生抑制のうちの少なくとも1つの作用を有していることは、例えば、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸、更には該マイクロRNAの標的遺伝子に対するアンチセンスやsiRNAなどを肥満細胞に導入し、IgEを添加して培養した後、抗IgE抗体の添加等によりヒト肥満細胞を活性化し、放出された(i)脱顆粒の指標となるヒスタミンやβ−ヘキソサミニダーゼ、(ii)LTC4、LTD4、LTE4、PGD2等の炎症性メディエーター、(iii)TNF−αやGM−CSF等のサイトカイン、(iv)IL−8、I−309、MIP−1α等のケモカイン等を測定し、何も導入しなかった場合と比較することにより確認できる。このように肥満細胞の活性化は脱顆粒だけでなく、TNF−αやGM−CSF等のサイトカイン産生、IL−8、I−309、MIP−1α等のケモカイン産生、LTC4、LTD4、LTE4、PGD2等の炎症メディエーター産生等を測定することによっても調べることができる[Blood,100,3861(2002)]。
また本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸、更には該マイクロRNAの標的遺伝子に対するアンチセンスやsiRNAなどがアポトーシスの誘導作用を有していることは、これらを肥満細胞に導入し、クロマチンDNAの断片化の測定やTUNEL法等による測定を行うことにより検出できる。
13.間葉系幹細胞の増殖および骨芽細胞への分化および評価方法
間葉系幹細胞は、安全かつ効率的に取得される方法であれば特に限定されないが、ヒト骨髄から取得する方法としては、例えばS.E.Haynesworth et al.Bone,13,81(1992)に記載の方法があげられる。
胸骨または腸骨において、骨髄穿刺を行う場所の皮膚を消毒し、特に骨膜下を十分に局所麻酔する。骨髄穿刺針の内筒を抜き、5,000unitsのヘパリンを入れた10ml注射器を装着して必要量、平均的には10ml〜20mlの骨髄液を吸引する。骨髄穿刺針を取り外し、10分間程度圧迫止血する。取得した骨髄液を1,000×gで遠心分離して骨髄細胞を回収した後、該骨髄細胞をリン酸緩衝液(phosphate−buffered saline)(PBS)で洗浄する。遠心分離・洗浄を2回繰り返した後、骨髄細胞を10%のウシ胎仔血清(FBS)を含むα−MEM(α−modified MEM)、DMEM(Dulbecco’s modified MEM)、IMDM(Isocove’s modified Dulbecco’s medium)等の細胞培養用培地に浮遊させることにより骨髄細胞液を得る。骨髄細胞液から間葉系幹細胞を単離する方法としては、骨髄細胞液中に混在する他の細胞、例えば血球系細胞、造血幹細胞、血管幹細胞、線維芽細胞等を除去することができる方法であれば特に限定されないが、例えばM.F.Pittenger et al.Science,284,143−147(1999)に記載の方法があげられる。骨髄細胞液を密度1.073g/mlのPercollに重層した後、1,100×gで30分間遠心分離し、界面の細胞を間葉系幹細胞として単離することができる。また、骨髄細胞液に10倍濃度のPBSを加えて9/10に希釈したPercollを同容量加えて混合した後に、20,000×gで30分間遠心分離し、密度1.075〜1.060の画分の細胞を間葉系幹細胞として単離することもできる。
また、ヒトの骨髄に由来する間葉系幹細胞は、Cambrex社、タカラバイオ社より購入することもできる。
ヒト臍帯から間葉系幹細胞を取得する方法としては、例えばStem Cells,21,105−110(2003)に記載された方法があげられる。臍帯静脈の両端にカニューレを挿入し、適当な緩衝液、例えば、EBSS(Earle’s balanced salt solution)で洗浄する。蛋白質分解酵素、例えば、0.1%コラゲナーゼを含む199培地に抗生物質を添加して血管に注入し、4〜40℃、好ましくは37℃で、1〜60分間インキュベートする。血管をEBSSで洗浄し、臍帯を軽くマッサージした後、内皮細胞および内皮下層細胞の懸濁液を回収する。該懸濁液を600×gで10分間遠心分離し、得られた細胞を、例えば、低濃度のグルコースを含むDMEM培地(DMEM−LG、Gibco)に、20mM HEPES、100units/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび10%FBSを加えた培地に懸濁する。細胞密度を、10〜10個/cmとして培養フラスコに接種し、37℃、5%COの条件下で培養する。培地を1〜7日毎に交換し、1〜3週間培養を継続することにより、間葉系幹細胞を取得することができる。
子宮内膜から間葉系幹細胞を取得する方法としては、例えば、Am.J.Pathol.,163,2259−2269(2003)に記載の方法があげられる。外科手術により摘出されたヒト子宮内膜組織を細切し、細胞を培養可能な培地、好ましくはα−MEM、DMEM、IMDM等に1〜20%の動物由来の血清、好ましくは5〜10%のFBSを加えた培地で培養する。培地にはペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質を加えても良い。さらに、細胞の分離を良くするために、3型コラゲナーゼ等のコラーゲン分解酵素およびデオキシリボヌクレアーゼI等のDNA分解酵素を培地に添加し、20〜40℃、好ましくは37℃の条件で、10分間〜5時間、好ましくは1時間、緩やかに振盪する。個々の子宮内膜腺を顕微鏡で観察しながら分離し、適当な培養容器、例えば24−ウェル培養皿を用いて37℃、5%COの条件下で培養することにより、間葉系幹細胞を取得することができる。
歯、歯胚、歯周辺組織から間葉系幹細胞を取得する方法としては、例えばLancet,364,149−155(2004)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,13625−13630(2000)に記載の方法があげられる。ヒトの歯としては、乳歯、または切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯等の永久歯のいずれでも良い。例えば、抜歯した第三大臼歯(親知らず)の歯根の表面から歯周靭帯(periodontal ligament)を慎重に分離し、コラゲナーゼ、トリプシン、プロナーゼ、エラスターゼ、ディスパーゼ、ヒアルロニダーゼ等の蛋白分解酵素を用いて、37℃で1時間消化反応を行う。ストレイナー、メッシュ、フィルター等を用いて、組織残渣を除くことにより間葉系幹細胞を取得することができる。また、抜歯した第三大臼歯の表面をPBS等で洗浄した後、セメント質とエナメル質の結合部を切断して髄質を露出させ、歯冠および歯根から歯髄組織を慎重に分離し、上記と同様の方法で蛋白分解酵素処理した後、組織残渣を除くことにより間葉系幹細胞を取得することもできる。
また、上記以外の間葉系幹細胞の単離方法として、間葉系幹細胞に発現する表面抗原、間葉系幹細胞特異的な遺伝子のプロモーターおよびエンハンサーを持つレポーターベクターを用いて間葉系幹細胞を単離する方法があげられる。具体的には、AC133抗原を用いて幹細胞を単離する方法(US6468794)、Sox遺伝子(US2002/0135539)、Nestin遺伝子またはMusashi遺伝子(特開2002−034580)のプロモーターおよびエンハンサーを持つレポーターベクターを用いて間葉系幹細胞を単離する方法等があげられる。
また、Hoechst33342の細胞外排出能を指標にしたFACS分画法を用いてサイドポピュレーション(side population)(SP)中に幹細胞を濃縮させる方法[Journal of Experimental Medicine,183,1797−806(1996)]により幹細胞を分離することもできる。また、SH2陽性,SH4陽性,CD29陽性,CD44陽性,CD71陽性,CD90陽性,CD106陽性,CD120a陽性,CD124陽性,CD14陰性,CD34陰性,およびCD45陰性の細胞を間葉系幹細胞として、セルソーターや磁気ビーズを用いて分離する方法[Science,284,143−147(1999)]を用いることもできる。
間葉系幹細胞の培養に用いる培地としては、例えば「組織培養の技術基礎編 第三版」朝倉書店(1996)等に記載された細胞培養用培地があげられるが、ウシやヒト等の血清を1〜20%添加したα−MEM、DMEM、IMDM等の細胞培養用培地が好ましく用いられる。培養条件は、細胞が培養可能な条件であればいかなる条件でもよいが、培養温度は33〜37℃が好ましく、5〜10%のCOガスで満たしたインキュベーターで培養することが好ましい。また間葉系幹細胞は、通常の組織培養用のプラスチック製培養皿に接着させて増殖させることが好ましい。細胞が培養皿一面に増殖する頃、培地を除去して、トリプシンEDTA溶液を加えることで細胞を浮遊させる。浮遊させた細胞は、PBSまたは細胞培養用の培地で洗浄後、細胞培養用の培地で2倍から20倍に希釈して新しい培養皿に播種することで、さらに継代培養することができる。
ある核酸が間葉系幹細胞の増殖を制御しているかは、例えば、本発明のマイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸、更には該マイクロRNAの標的遺伝子に対するアンチセンスやsiRNA等を間葉系幹細胞に導入し、細胞増殖の程度を陰性対照と比較することにより確認できる。細胞増殖の程度を測定する方法は後述の14.で記載した方法により行うことができる。
間葉系幹細胞から骨芽細胞へのへの分化過程における影響を調べる方法としては、例えば以下のようにして確認する方法があげられる。具体的には、間葉系幹細胞から骨芽細胞へ分化を誘導する条件下で、本発明の核酸、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体、更には該マイクロRNAの標的遺伝子に対するアンチセンスやsiRNA等を間葉系幹細胞に導入し、培養する。骨芽細胞への分化が進むに伴い発現が上昇する遺伝子または蛋白質を解析し、陰性対照と比較する。
間葉系幹細胞から骨芽細胞へ分化誘導させる方法としては、間葉系幹細胞から骨芽細胞へ分化誘導させることができる方法であればいかなる方法でもよいが、例えば、Science,284,43−147(1999)に記載の方法があげられる。具体的には、間葉系幹細胞を培養器に播種した後、デキサメサゾン、アスコルビン酸−2リン酸、およびβ−グリセロフォスフェートを含む細胞培養用培地中で1〜4週間培養を続けることにより、間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化させることができる。
骨芽細胞への分化に伴い発現が上昇する遺伝子の定量的な解析法としては、RT−PCR(reverse transcription−polymerase chain reaction)、ノーザンブロット解析、ドットブロットハイブリダイゼーション法、DNAマイクロアレイによる解析等があげられる。
骨芽細胞への分化に伴い発現が上昇する蛋白質の定量的な解析法としては、該蛋白質に特異的に反応する抗体を用いたウェスタンブロット解析、免疫組織染色、ELISA等があげられる。
骨芽細胞への分化に伴い発現が上昇する遺伝子または蛋白質としては、I型コラーゲン、オステオカルシン、オステオネクチン、オステオポンチン、ボーンシアロプロテイン(bone sialoprotein)、Runx2(runt−related gene 2)、アルカリフォスファターゼ(ALP)等があげられる。
また、骨芽細胞への分化程度を評価する方法としては、該骨芽細胞中のALP酵素活性を利用して細胞を染色すること、あるいは、ALP酵素活性を測定する方法があげられる。該細胞染色のより具体的な方法は、骨芽細胞中のALP酵素により加水分解された基質のリン酸エステルのアルコール部分をジアゾニウム塩でカップリングし、アゾ色素で酵素活性部位に沈殿させる方法があげられる。基質としては、例えばナフトールAS−MXリン酸を、アゾ色素としては、例えばファーストバイオレット青をあげることができる。これらが含まれているキット、例えばleukocyte alkaline phosphatase(Sigma社製)等を用いてもよい。また、ALP酵素活性の測定キットとして、例えばアルカリ性ホスファB−テストワコー(和光純薬株式会社製)等を用いてもよい。
更に、骨芽細胞が産生した石灰化成分を検出することによっても骨芽細胞への分化を確認することもできる。石灰化成分を検出する方法としては、フォンコッサ(von Kossa)染色、アリザリンレッド(Alizarin Red)染色等の染色法があげられる。
フォンコッサ染色とは、硝酸銀を用いて石灰化成分であるリン酸カルシウムを検出する方法である。具体的には、パラフィン等で固定した細胞に対し1〜5%の硝酸銀水溶液を反応させ光に当て、黒く呈色したリン酸カルシウムが存在する部分を定量、例えば該呈色面積を計測することにより骨芽細胞への分化程度を評価することができる。
アリザリンレッド染色とは、アリザリン赤Sがカルシウムに対して特異的な結合を示しレーキを形成することを利用した方法である。具体的には、パラフィン等で固定した細胞に対し0.01〜5%アリザリン赤S溶液を反応させる、赤紫色〜橙赤色に呈色した部分を定量、例えば該呈色面積を計測することにより骨芽細胞への分化程度を評価することができる。
14.癌細胞や他の細胞の増殖を測定する方法
細胞増殖の測定法としては、細胞数や細胞増殖速度を反映する指標を測定できる方法であれば特に限定されない。生細胞数測定、DNA合成速度測定、総蛋白質量測定などを用いることができる。
生細胞数を評価する方法としては、細胞中のATP量を測定する方法があげられる。細胞中のATP量は培養下の細胞数と比例関係にあることが知られている(J.Immunol.Meth.,160,81−88(1993))。細胞中のATP量測定のより具体的な方法は、MTT法、XTT法などが拳げられる(J.Immunol.Meth.,65,55−63(1983))。また、ATP依存性酵素ルシフェラーゼによるルシフェリン基質の発光にてATP量を測定する方法もあげられる。細胞中のATP量の測定キットとして、例えばCell Titer−GloLuminescent Cell viability Assay(Promega社製)等を用いてもよい。
15.癌細胞や他の細胞の細胞死の程度を測定する方法
細胞死の程度を測定する方法としては、死細胞をPropium Iodide等の色素で染色する方法や、細胞死に伴い細胞外に漏出した酵素の活性を測定する方法等を用いることができる。後者については、例えば細胞外に漏出したアデニル酸キナーゼの酵素活性を測定する方法が利用できる。より具体的には、ToxiLight(R)Non−Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit(Lonza社製)等を用いてもよい。
また、細胞死の中でも特に癌との関係で重要なアポトーシス(programmed cell death)に限定してその程度を測定することもできる。細胞のアポトーシスを評価する方法としては、DNAの断片化の程度を測定する方法や、細胞膜の構成脂質の変化を測定する方法、アポトーシスに伴って誘導される細胞中のプロテアーゼであるカスパーゼ3/7活性を測定する方法があげられる。細胞中のカスパーゼ3/7活性測定のより具体的な方法は、カスパーゼ3/7活性により遊離されたルシフェリン基質を、ルシフェラーゼ酵素反応によるルシフェリン発光にて測定する方法があげられる。細胞中のカスパーゼ3/7活性の測定キットとして、例えばCaspase−Glo3/7 Assay(Promega社製)等を用いてもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
ヒト肥満細胞で発現するマイクロRNAの抽出
(1)RNA抽出
LAD2は最近樹立されたヒト肥満細胞株で、ヒト肥満細胞の性質をよく保持していることが知られている[Leuk.Res.,27,671(2003);Leuk.Res.,27,677(2003)]。そこで、LAD2からマイクロRNAの抽出をおこなった。LAD2は、National Institute of Allergy and Infectious Diseases,National Institutes of Health(Bethesda,MD 20892−1881,USA)より入手し、100ng/mlのSCFを含むStem Pro−34培地(インビトロジェン社製)で37℃の5%CO濃度のインキュベーター中で培養した。
(2)低分子RNAのクローニング
上記(1)で取得したLAD2由来total RNA 200μgを用いて、Lauらの方法[Science,294,858−862,(2001)]に従い、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動による低分子RNAの切り出し、5’−アデニル化3’−アダプターライゲーション、5’−アダプターライゲーション、逆転写、PCR増幅、コンカテマー化、pCR2.1−TOPOベクターへのライゲーションを順次進め、低分子RNAのクローニングを行なった。次に、クローニングした低分子RNAの塩基配列を決定した。なお5’−アデニル化3’−アダプターは、Integrated DNA Technologies社製のmiRNA Cloning Linkerを用いた。
また、上記方法とは別に、上記(1)で取得したLAD2由来total RNA 200μgを用いて、Minenoらの方法[Nucleic Acids Research,34,1765−1771,(2006)]に従い、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動による低分子RNAの分離及び切り出し、5’末端脱リン酸化、3’−アダプターライゲーション、リン酸化、5’−アダプターライゲーション、逆転写、PCR増幅、マイクロビーズベクターへのライゲーションを順次経て、低分子RNAをクローニングし、そのマイクロビーズの塩基配列を読み取ることでも塩基配列を決定した。
マイクロRNAの同定
実施例1で得られた低分子RNAについて、まず、既知マイクロRNAデータベースであるmiRBase(http://microrna.sanger.ac.uk/)と比較して塩基配列が一致しなかったものを選抜した。それらの塩基配列に対応するDNA配列を5’側および3’側にそれぞれ50nt程度伸ばした周辺ゲノム配列をUCSC Genome Bioinformatics(http://genome.ucsc.edu/)から取得し、そのゲノム配列から転写されることが予測されるRNAの2次構造をRNAfoldを用いて予測した。その結果、1336種がヘアピン構造の片鎖に位置する新規マイクロRNAであることが判明した。その塩基配列および、これらのマイクロRNAを含むマイクロRNA前駆体の塩基配列を表1に示す。それぞれの塩基配列を有するマイクロRNAにつき、KHK_miR_1001から2344という名前を付与した(表1)。一つのマイクロRNAが異なる位置のゲノム配列に由来するヘアピン構造を取り得る場合はその全てを記載した。
2次構造の一例として、KHK_miR_1194のヘアピン構造を図1に示す。
マイクロRNAの機能の検出
実施例2で得られたマイクロRNAについて、その前駆体がDicer蛋白質でプロセシングを受けるか否かを調べることにより、マイクロRNAとしての機能を有するか否かを調べることができる。
実施例2で得られたマイクロRNAのうち、KHK_miR_1194で示されるマイクロRNAの機能の検出は以下のようにして行うことができる。まず、配列番号1580で表される塩基配列を有する一本鎖RNAを合成し、X−treme GENE siRNA Dicer Kit(ロシュ・アプライド・サイエンス社製)に添付のDicer Enzymeと反応させる。次に、反応産物を15%ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動し、20−25塩基の大きさのバンドを検出できることでマイクロRNAとしての機能を有していることを検出できる。
マイクロRNAを強制発現したヒト肥満細胞の脱顆粒に及ぼす作用
実施例2で得られたマイクロRNAの前駆体を、ヒト肥満細胞株であるLAD2に導入して脱顆粒を誘導し、該マイクロRNA前駆体の影響を調べた。
LAD2は100ng/mLのSCFを含むStem Pro−34培地(Invitrogen社製)で培養した。
LAD2を6穴プレートに1穴あたり約5x10個になるように播種し、マイクロRNA前駆体をリポフェクション法、具体的には、Gene Silencer(Genlantis社製)を用いて、終濃度が30nMとなるよう導入した。マイクロRNA(以下、miRNAともいう)の前駆体は、KHK_miR_1001,1002,1003,1008,1014,1020,1021,1022,1025,1032,1036のPre−miRTMmiRNA Precursor MoleculesとしてAmbion社で合成されたものを用いた。これは化学合成された二本鎖の核酸分子で、それぞれ配列番号1、2、3、8、14、20、21、22、25、32、36で表される塩基配列からなる核酸が、miRNAが活性を有する要因となるRISCに類似した複合体に取り込まれて、miRNAと同様の機能を有するようにデザインされている。また、配列番号1のヒトゲノム配列に対応する配列について、配列番号1より5’側の1塩基と3’側から4塩基を欠失した配列(配列番号2852)からなる核酸を用意し、KHK_miR_1001_2のPre−miRTMmiRNA Precursor Moleculesとして、Ambion社で合成したものも用いた。陰性対照としては、Pre−miRTM miRNA Precursor Molecules−Negative Control #2(以下、miR−negacon#2と称す)(Ambion社製)を用い、同様にLAD2に導入した。リポフェクションは、製品に添付された方法に従った。
リポフェクション法によりマイクロRNA前駆体を導入した2日後に、1μg/mLのヒトミエローマIgE(コスモバイオ社製)を添加して37℃の5%CO濃度のインキュベーター中で一晩培養した。翌日、遠心分離により培地を除き、タイロード(Tyrode)緩衝液(126.1mmol/L NaCl、4.0mmol/L KCl、1.0mmol/L CaCl、0.6mmol/L MgCl、0.6mmol/L KHPO、10mM HEPES、5.6mmol/L D−グルコース、0.1%ウシ血清アルブミン、pH7.4)で洗浄した後、タイロード緩衝液を3.9mL添加して細胞を懸濁し、96ウェル・プレートに1ウェルあたり100μLずつ分注した。次いで、最終濃度10μg/mLとなるようウサギ抗ヒトIgE抗体(ダコ社製)を加え、37℃の5%CO濃度のインキュベーター中で20分間インキュベートし、脱顆粒を誘導した。遠心により上清を回収し、上清中のβ−ヘキソサミニダーゼ活性を測定することにより、脱顆粒の程度を測定した。β−ヘキソサミニダーゼ活性は、回収した上清50μLに、40mmol/Lクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解した4mmol/L p−ニトロフェニルN−アセチル−β−グルコサミニド(シグマ社製)を50μLを加え、37℃で1時間インキュベート後、0.2mol/Lグリシン(pH10.7)を100μL加えたサンプルの405nmにおける吸光度をプレートリーダー1420ARVOsx(パーキンエルマー社製)を用いることにより測定した。また、ウサギ抗ヒトIgE抗体の代わりに最終濃度1%のトリトンX−100を添加して同様の実験を行うことにより、LAD2中の全β−ヘキソサミニダーゼ活性を測定した。脱顆粒の割合を、全β−ヘキソサミニダーゼ活性に対する上清中のβ−ヘキソサミニダーゼ活性の割合(%)で算出し、それぞれについて対照区(Gene Silencerのみ)の脱顆粒の割合を1.0とした時の脱顆粒相対活性を計算した。その結果を表3に示した。
[表3]
Figure 2008084319
その結果、KHK_miR_1001,1001_2,1002,1003,1008,1014,1020,1022,1025,1032,1036導入により、IgE受容体刺激によるLAD2の脱顆粒が促進されることが明らかになった。
マイクロRNAを強制発現させた間葉系幹細胞の増殖活性、骨芽細胞分化、生細胞率
実施例2で得られたマイクロRNAの前駆体をヒト間葉系幹細胞(以下、hMSCともいう)に導入し、増殖および骨芽細胞分化に及ぼすマイクロRNA前駆体の影響を調べた。
ヒト間葉系幹細胞はCambrex社より入手し、20%ウシ胎児血清(FBS)(JRH Bioscience社製)を含むIMDM培地(Invitrogen社製)で37℃の5%CO濃度のインキュベーター中で培養した。hMSCを24穴プレートに1穴あたり約6.2x10個になるように播種し、20%FBSを含むIMDM培地で一晩培養した。1日後、マイクロRNA前駆体をリポフェクション法、具体的には、Lipofectamine2000(Invitrogen社製)を用いて、終濃度が20nMとなるようにhMSCに導入した。マイクロRNAの前駆体は、KHK_miR_1001,1001_2,1002,1003,1008,1014,1020,1021,1022,1025,1032,1036のPre−miRTMmiRNA Precursor MoleculesとしてAmbion社で合成されたものを用いた。リポフェクションは、製品に添付された方法に従った。
リポフェクション法によりマイクロRNA前駆体を導入した翌日、培地を骨芽分化誘導培地(20%FBSを含むIMDM培地中に、0.1μmol/L デキサメサゾン、50μmol/L アスコルビン酸−2リン酸(Sigma社製)、10mmol/L β−グリセロフォスフィト(Sigma社製))へ交換し、3日に一度の頻度で、骨芽分化誘導培地を交換して培養を続けた。
培養開始から2週間後に、細胞の形態を位相差顕微鏡(ニコン社製)下で観察し、更にアルカリフォスファターゼ染色を行って、骨芽細胞を検出した。具体的にはまず、細胞をリン酸緩衝液(以下、PBS(phosphate−buffered saline)ともいう)(Invitrogen社製)で1回洗浄し、固定液(10%フォルマリン/PBS)で5分間固定した。蒸留水で洗浄した後、暗所でNaphthol AS−MXリン酸(Sigma社製)とFast Violet B溶液との混合溶液(Sigma社製)と30分間反応させ、アルカリフォスファターゼ反応をおこなった。更に蒸留水で洗浄し、位相差顕微鏡下で赤く染まっている骨芽細胞を観察し、デジタルカメラ(ニコン社製)で撮影した。
その結果、KHK_miR_1008,1021,1036のPre−miRTM miRNA Precursor Moleculesを導入したhMSCは、マイクロRNA前駆体非導入hMSCと比べて、細胞数が少なく、アルカリフォスファターゼ染色された陽性細胞の数も少ないことが見出された。マイクロRNA前駆体は細胞中でマイクロRNAに変換されるので、これらの前駆体に由来するマイクロRNAは、hMSCに対して、増殖を抑制する活性および骨芽細胞への分化を抑制する活性を有することが明らかになった。また逆に、KHK_miR_1001,1001_2のPre−miRTM miRNA Precursor Moleculesを導入したhMSCは、マイクロRNA前駆体非導入hMSCと比べて、アルカリフォスファターゼ染色された陽性細胞の数が多いことが見出された。このことから、これらの前駆体に由来するマイクロRNAは、hMSCに対して、骨芽細胞への分化を促進する活性を有することが明らかになった。
また、リポフェクション法によりマイクロRNA前駆体を導入した4日後、CellTiter−GloTM Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製)を用いて生細胞率を測定した。その結果を表4に示す。表4に示したように、KHK_miR_1001導入により通常よりも生細胞率が増加したことが認められた。
[表4]
Figure 2008084319
マイクロRNAを強制発現させた大腸癌由来細胞株における生細胞率、アポトーシス活性
実施例2で得られたマイクロRNAの前駆体を大腸癌由来細胞株に導入し、生細胞率、アポトーシス活性に及ぼすマイクロRNA前駆体の影響を調べた。
DLD−1ヒト大腸癌由来細胞株(以下、DLD−1ともいう)はAmerican Type Culture Collection(ATCC)(以下、ATCCと称す)より入手した(ATCC CCL−221)。DLD−1は10%ウシ胎児血清(FBS)(JRH Biosciences社製)を含むRPMI1640培地(Invitrogen社製)で37℃の5%CO濃度のインキュベーター中で培養した。
DLD−1を96穴プレートに1穴あたり約2500細胞数になるように播種し、10%FBSを含むRPMI培地で一晩培養した。1日後、マイクロRNA前駆体をリポフェクション法、具体的には、Lipofectamine2000(Invitrogen社製)を用いて、終濃度が5nM或いは25nMとなるようDLD−1に導入した。マイクロRNAの前駆体は、KHK_miR_1001,1001_2,1002,1003,1008,1014,1020,1021,1022,1025,1032,1036のPre−miRTMmiRNA Precursor MoleculesとしてAmbion社で合成したものを用いた。また、miR−negacon#2(Ambion社製)もDLD−1に導入し、陰性対照とした。リポフェクションは、製品に添付された方法に従った。
リポフェクション法によりマイクロRNA前駆体を導入した3日後、CellTiter−GloTM Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製)を用いて生細胞率を測定した。対照区(Lipofectamine2000のみ)のDLD−1の生細胞率を1.0としてそれぞれの相対生細胞率を計算した。その結果、表5に示したように、KHK_miR_1001,1001_2,1032,1036導入により40%以上の生細胞率の減少が認められた。
[表5]
Figure 2008084319
またリポフェクション法により該マイクロRNA前駆体を導入した2日後に、Caspase−Glo 3/7 assay(Promega社製)を用いて製品に添付された方法に従いカスパーゼ3/7活性を測定した。対照区(Lipofectamine2000のみ)のDLD−1のカスパーゼ3/7活性値を1.0としてそれぞれの相対カスパーゼ3/7活性値を計算した。その結果を表6に示す。表6に示したように、KHK_miR_1001,1001_2,1036導入により50%以上のカスパーゼ3/7活性の増加が認められた。
[表6]
Figure 2008084319
マイクロRNAを強制発現させた卵巣癌由来細胞株における生細胞率
実施例2で得られたマイクロRNAの前駆体を卵巣癌由来細胞株に導入し、生細胞率に及ぼすマイクロRNA前駆体の影響を調べた。
A2780ヒト卵巣癌由来細胞株(Nature,295,116−119,(1982);Science,224,994−996,(1984);Semin.Oncol.,11,285−298(1984);以下,A2780と称す)は5%FBS(JRH Biosciences社製)を含むRPMI1640培地(Invitrogen社製)で37℃の5%CO2濃度のインキュベーター中で培養した。
A2780を96穴プレートに1穴あたり約2500細胞数になるように播種し、10%FBSを含むRPMI培地で一晩培養した。1日後、マイクロRNA前駆体をリポフェクション法、具体的には、Lipofectamine2000(Invitrogen社製)を用いて、終濃度が5nM或いは25nMとなるようA2780に導入した。マイクロRNAの前駆体は、KHK_miR_1001,1001_2,1002,1003,1008,1014,1020,1021,1022,1025,1032,1036のPre−miRTM miRNA Precursor MoleculesとしてAmbion社で合成したものを用いた。また、miR−negacon#2(Ambion社製)もA2780に導入し、陰性対照とした。
リポフェクション法により該マイクロRNA前駆体を導入した3日後、CellTiter−GloTM Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製)を用いて生細胞率を測定した。対照区(Lipofectamine2000のみ)のA2780の生細胞率を1.0としてそれぞれの相対生細胞率を計算した。その結果を表7に示す。表7に示したように、KHK_miR_1003,1008,1020,1021,1022,1032,1036導入により40%以上の生細胞率の減少が認められた。
[表7]
Figure 2008084319
本発明により、新規な配列を有する、マイクロRNAやマイクロRNA前駆体等の核酸が提供される。本発明の核酸により、マイクロRNAの発現または変異の検出、細胞の分離、標的配列遺伝子の発現抑制、マイクロRNAの機能の促進または抑制させる物質のスクリーニング、肥満細胞の異常に起因する疾患、間葉系幹細胞の増殖または分化の異常に起因する疾患、癌及び細胞の増殖異常や組織の過形成等が原因となっている疾患の診断や治療をすることができる。

Claims (64)

  1. 配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなる核酸。
  2. 配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸。
  3. 配列番号1〜1336のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸を含む核酸。
  5. 配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列からなる核酸。
  6. 配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸。
  7. 配列番号1337〜2851のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸を発現するベクター。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸を用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸の発現または変異を検出する方法。
  12. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸を用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質のスクリーニング方法。
  13. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸を用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸を発現する細胞を分離する方法。
  14. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸を用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制する方法。
  15. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  16. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  17. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
  18. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制する物質を有効成分として含有する、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  19. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制させることを指標とする、肥満細胞の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
  20. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸またはベクターを導入した細胞。
  21. 配列番号が1、2、3、8、14、20、22、25、32または36のいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤。
  22. 配列番号が1337、1338、1339、1352、1363、1371、1373、1377、1386または1390のいずれかである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤。
  23. 請求項21または22に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒抑制剤。
  24. 請求項21または22に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤。
  25. 請求項21または22に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤。
  26. 請求項21または22に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤のスクリーニング方法。
  27. 請求項21または22に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤。
  28. 請求項21または22に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、肥満細胞の脱顆粒促進剤または脱顆粒抑制剤のスクリーニング方法。
  29. 配列番号が1、8、21または36のいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  30. 配列番号が1337、1352、1372または1390のいずれかである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  31. 請求項29または30に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  32. 請求項29または30に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  33. 請求項29または30に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  34. 請求項29または30に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
  35. 請求項29または30に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  36. 請求項29または30に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、間葉系幹細胞の増殖および/または分化の異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
  37. 配列番号が1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤。
  38. 配列番号が1337である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤。
  39. 請求項37または38に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖抑制剤。
  40. 配列番号が8、21または36のいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖抑制剤。
  41. 配列番号が1352、1372または1390のいずれかである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖抑制剤。
  42. 請求項37または38に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤。
  43. 請求項37〜42のいずれか1項に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤。
  44. 請求項37〜42のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤。
  45. 請求項37〜42のいずれか1項に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤のスクリーニング方法。
  46. 請求項37〜42のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤。
  47. 請求項37〜42のいずれか1項に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、間葉系幹細胞の増殖促進剤または増殖抑制剤のスクリーニング方法。
  48. 配列番号が1、3、8、20、21、22、32または36のいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  49. 配列番号が1337、1339、1352、1371、1372、1373、1386または1390のいずれかである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  50. 請求項48または49に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  51. 請求項48または49に記載の核酸と、該核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  52. 請求項48または49に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  53. 請求項48または49に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
  54. 請求項48または49に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬。
  55. 請求項48または49に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、細胞の増殖異常に起因する疾患の診断薬または治療薬のスクリーニング方法。
  56. 細胞の増殖異常に起因する疾患が癌、動脈硬化、慢性関節リウマチ、前立腺肥大症、経皮的経血管的冠動脈形成術後の血管再狭窄、肺線維症、糸球体腎炎および自己免疫疾患からなる群から選ばれる疾患である請求項48〜55のいずれか1項に記載の診断薬、治療薬またはスクリーニング方法。
  57. 配列番号が1、3、8、20、21、22、32または36のいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤。
  58. 配列番号が1337、1339、1352、1371、1372、1373、1386または1390のいずれかである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤。
  59. 請求項57または58に記載の核酸に対して相補的な塩基配列からなる核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖促進剤。
  60. 請求項57または58に記載の核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤。
  61. 請求項57または58に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させる物質を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤。
  62. 請求項57または58に記載の核酸の発現または機能を促進或いは抑制させることを指標とする、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤のスクリーニング方法。
  63. 請求項57または58に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進する物質を有効成分として含有する、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤。
  64. 請求項57または58に記載の核酸の標的遺伝子の発現を抑制または促進させることを指標とする、細胞の増殖抑制剤または増殖促進剤のスクリーニング方法。
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