JPWO2008078588A1 - 関節軟骨の変性を治療又は予防するための医薬及び方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、変形性関節症等における関節軟骨のアポトーシスを効果的に抑制しうる医薬及び方法を提供することを目的とする。即ち本発明は、関節軟骨のアポトーシスを抑制するための医薬であって、破骨細胞形成抑制因子を有効成分とすることを特徴とする医薬、及び、関節軟骨のアポトーシスを抑制するための方法であって、破骨細胞形成抑制因子を被検体に投与することを特徴とする方法に関する。
Description
本発明は、変形性関節症等における関節軟骨のアポトーシスを抑制するための医薬及び方法に関する。
変形性関節症(Osteoarthritis:OA)は、例えば、加齢とともに関節軟骨が変性し、関節の炎症及び疼痛を惹起する疾患であり、特に高齢者のQOLを低下させている主要な要因の一つである。その患者数は全国に1000万人を超えることが明らかになっており、また関節形成術以外に根治的な治療法は確立されていない。現在一般的に行われているOAの保存的治療法としては、消炎鎮痛剤の内服・外用、ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射などが挙げられるが、いずれも対症療法であり、特に進行例では無効であることも多い。そのため、より効果的なOAの保存的治療法の開発が期待されているのが現状である。
また、前記疾患は、メカニカルストレスの蓄積により軟骨の変性と反応性の骨硬化・骨棘形成が進行する病態であるが、その分子レベルの背景に関しては殆ど解明されていない。この要因のひとつとして、遺伝子改変技術が最も進んでいるマウスにおいて適当なOA誘発モデルが存在しなかったことが挙げられる。そこで、近年、OAの病態解明及び治療法の確立を目的として、関節不安定性負荷によるマウスOAモデルの確立が亀倉らによって報告された(非特許文献1参照)。このモデルの組織学的解析によって、OAの発症・進行過程は、1)関節軟骨の変性、2)病的肥大軟骨細胞の出現、3)骨硬化と骨棘の形成、の3段階に大きく分類されることが明らかとなった。なお、それぞれの段階には独立した分子背景があるものと考えられているが、その詳細については未だ解明されていないのが現状である。
また、前記疾患は、メカニカルストレスの蓄積により軟骨の変性と反応性の骨硬化・骨棘形成が進行する病態であるが、その分子レベルの背景に関しては殆ど解明されていない。この要因のひとつとして、遺伝子改変技術が最も進んでいるマウスにおいて適当なOA誘発モデルが存在しなかったことが挙げられる。そこで、近年、OAの病態解明及び治療法の確立を目的として、関節不安定性負荷によるマウスOAモデルの確立が亀倉らによって報告された(非特許文献1参照)。このモデルの組織学的解析によって、OAの発症・進行過程は、1)関節軟骨の変性、2)病的肥大軟骨細胞の出現、3)骨硬化と骨棘の形成、の3段階に大きく分類されることが明らかとなった。なお、それぞれの段階には独立した分子背景があるものと考えられているが、その詳細については未だ解明されていないのが現状である。
また、破骨細胞形成抑制因子(Osteoclastogenesis Inhibitory Factor:OCIF)は、オステオプロテジェリン(Osteoprotegerin:OPG)とも呼ばれ(従って、本明細書中、破骨細胞形成抑制因子を「OCIF/OPG」と称することがある)、破骨細胞形成促進因子RANKLのデコイ(おとり)レセプターとして広く知られており、RANKLと結合することによって破骨細胞分化を強力に阻害することから、骨粗鬆症などの病的な骨量低下に対して効果が期待されているタンパク質である(非特許文献2及び非特許文献3参照)。また、前記破骨細胞形成抑制因子は、アジュバント関節炎マウス等に全身投与することにより、間接的に軟骨の保護効果を奏することが報告されている(非特許文献4参照)。ここで、軟骨下骨は、関節軟骨を裏打ちし、軟骨細胞を力学的に支持するのみならず、血液供給などを介して軟骨細胞の代謝に寄与している部位であるが、前記破骨細胞形成抑制因子を全身投与された各関節炎マウスでは、関節の炎症によって惹起されるこの軟骨下骨における異常な骨吸収が前記破骨細胞形成抑制因子の作用によって抑制されることにより、間接的に関節軟骨が保護されたものと考えられていた。しかしながら、変形性関節症の症状においては、通常炎症は惹起されないため、この知見は破骨細胞形成抑制因子が実際の変形性関節症における軟骨変性を改善することを示唆するものではない。
また、ラットの変形性関節症モデル(Sodium iodoacetateの関節内注射或いは前十字靭帯切断により作製)における膝関節軟骨細胞にTRAIL発現が亢進すること、及びin vitroにおいてTRAILが軟骨細胞のアポトーシスを誘導することが報告されている(非特許文献5参照)。
しかしながら、このような関節軟骨のアポトーシスを効果的に抑制することができ、変形性関節症等における関節軟骨の変性を効果的に治療又は予防可能な医薬及び方法については、未だ開発がなされておらず、そのため、このような優れた医薬及び方法の提供が望まれているのが現状である。
Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41
Yasudaら(1998)Proc Natl Acad Sci USA95,3597−602
Mizunoら(1998)Biochem Biophys Res Commun 247,610−5
Campagnuoloら(2002)Arthritis Rheum 46,1926−36
Arthritis Rheum. 2004 Feb;50(2):534−42
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、変形性関節症等における関節軟骨のアポトーシスを効果的に抑制しうる医薬及び方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、前記破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)を関節内に直接投与することにより、関節内の軟骨細胞のアポトーシスを直接的、かつ効果的に抑制することができ、したがって、変形性関節症における関節軟骨の変性を効果的に治療又は予防することができるという知見である。
前記したような軟骨下骨を介した間接的な軟骨細胞の保護(例えば、前記非特許文献4参照)とは異なり、前記破骨細胞形成抑制因子を関節内に直接投与することによれば、変形性関節症等における軟骨細胞のアポトーシスを直接的、かつ効果的に抑制することができ、そのため、変形性関節症等における関節軟骨の変性を効果的に治療又は予防することができることは、従来全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシス抑制剤であって、破骨細胞形成抑制因子を有効成分とすることを特徴とするアポトーシス抑制剤である。
<2> 破骨細胞形成抑制因子が被検体の関節内に投与される、前記<1>に記載のアポトーシス抑制剤である。
<3> 変形性関節症を治療又は予防するための医薬である、前記<1>又は<2>に記載のアポトーシス抑制剤である。
<4> 関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシスを抑制する方法であって、破骨細胞形成抑制因子を被検体に投与することを特徴とする方法である。
<5> 破骨細胞形成抑制因子が被検体の関節内に投与される、前記<4>に記載の方法である。
<6> 変形性関節症を治療又は予防するための方法である、前記<4>又は<5>に記載の方法である。
<1> 関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシス抑制剤であって、破骨細胞形成抑制因子を有効成分とすることを特徴とするアポトーシス抑制剤である。
<2> 破骨細胞形成抑制因子が被検体の関節内に投与される、前記<1>に記載のアポトーシス抑制剤である。
<3> 変形性関節症を治療又は予防するための医薬である、前記<1>又は<2>に記載のアポトーシス抑制剤である。
<4> 関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシスを抑制する方法であって、破骨細胞形成抑制因子を被検体に投与することを特徴とする方法である。
<5> 破骨細胞形成抑制因子が被検体の関節内に投与される、前記<4>に記載の方法である。
<6> 変形性関節症を治療又は予防するための方法である、前記<4>又は<5>に記載の方法である。
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、変形性関節症等における関節軟骨のアポトーシスを効果的に抑制しうる医薬及び方法を提供することができる。
(アポトーシス抑制剤)
本発明のアポトーシス抑制剤は、関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシスを抑制するためのアポトーシス抑制剤であり、破骨細胞形成抑制因子を有効成分として含み、更に必要に応じて適宜その他の成分を含んでいる。なお、前記アポトーシス抑制剤の好ましい態様は、変形性関節症における関節軟骨の変性を治療又は予防するための医薬であり、その好ましい投与態様は、被検体の関節内への直接投与である。
本発明のアポトーシス抑制剤は、関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシスを抑制するためのアポトーシス抑制剤であり、破骨細胞形成抑制因子を有効成分として含み、更に必要に応じて適宜その他の成分を含んでいる。なお、前記アポトーシス抑制剤の好ましい態様は、変形性関節症における関節軟骨の変性を治療又は予防するための医薬であり、その好ましい投与態様は、被検体の関節内への直接投与である。
<破骨細胞形成抑制因子>
本発明において、前記破骨細胞形成抑制因子としては、OCIF/OPGそのものの他、その類縁体若しくはその変異体、又はそれらの修飾体を挙げることができる。
本発明において、前記破骨細胞形成抑制因子としては、OCIF/OPGそのものの他、その類縁体若しくはその変異体、又はそれらの修飾体を挙げることができる。
前記OCIF/OPGは、当初、破骨細胞形成抑制活性を指標として単離されたものであり、破骨細胞の分化/成熟を抑制する活性を有するタンパク質である(国際公開第96/26217号及び米国特許第6,855,808号)。具体的には、OCIF/OPGは、下記の(a)〜(d)に記載の物理化学的性質を有し、且つ、破骨細胞の分化及び/又は成熟抑制活性を有するタンパク質を意味する(国際公開第96/26217号及び米国特許第6,855,808号)。
(a) 分子量(SDS−PAGEによる):約60kD(還元条件下)、約60kD及び約120kD(非還元条件下)。
(b) 親和性:陽イオン交換体及びヘパリンに親和性を有する。
(c) 熱安定性:70℃、10分間又は56℃、30分間の加熱処理により、破骨細胞の分化・成熟抑制活性が低下し、90℃、10分間の加熱処理により破骨細胞の分化・成熟抑制活性が失われる。
(d) 内部アミノ酸配列:配列番号1〜3記載のアミノ酸配列を内部アミノ酸配列として有する。
なお、配列番号1〜3記載のアミノ酸配列において、Xaaは任意のアミノ酸を取りうるが、好ましくは、配列番号1において1位のXaaはThrであり、配列番号2において1位のXaaはArgであり、5位のXaaはSerであり、13位のXaaはLeuであり、配列番号3において1位のXaaはThrである。
ここで、本件実施例(後述)においては、OCIF/OPGが、関節軟骨のアポトーシスを直接抑制することが見出された。従って、本発明におけるOCIF/OPGは、関節軟骨のアポトーシスを直接抑制する活性を有するものである。
上記(a)の物理化学的性質から判るように、OCIF/OPGは、一量体と二量体の形態をとりうる(国際公開第96/26217号及び米国特許第6,855,808号)。OCIF/OPGを発現する細胞(例えば、天然にはヒト胎児肺線維芽細胞IMR−90(ATCC寄託−受託番号CCL186))を含む培養液等には、当該一量体と二量体とが通常混在する。そこで、通常の分離方法によりいずれか一方の形態のOCIF/OPGを精製し、本発明において使用してもよい。
ヒトOCIF/OPGは、シグナルペプチドを含む前駆体(cDNA:配列番号4及びアミノ酸配列:配列番号5)として合成され、シグナルペプチドが切断され、成熟型タンパク質(配列番号5に示すアミノ酸配列において、シグナルペプチド(第1番目〜第21番目のアミノ酸配列)を除くアミノ酸配列)となる。本発明において、OCIF/OPGは、上述のヒト由来のシグナルペプチドを含む前駆体及び成熟型タンパク質のいずれをも含むが、成熟型タンパク質が好ましい。
(a) 分子量(SDS−PAGEによる):約60kD(還元条件下)、約60kD及び約120kD(非還元条件下)。
(b) 親和性:陽イオン交換体及びヘパリンに親和性を有する。
(c) 熱安定性:70℃、10分間又は56℃、30分間の加熱処理により、破骨細胞の分化・成熟抑制活性が低下し、90℃、10分間の加熱処理により破骨細胞の分化・成熟抑制活性が失われる。
(d) 内部アミノ酸配列:配列番号1〜3記載のアミノ酸配列を内部アミノ酸配列として有する。
なお、配列番号1〜3記載のアミノ酸配列において、Xaaは任意のアミノ酸を取りうるが、好ましくは、配列番号1において1位のXaaはThrであり、配列番号2において1位のXaaはArgであり、5位のXaaはSerであり、13位のXaaはLeuであり、配列番号3において1位のXaaはThrである。
ここで、本件実施例(後述)においては、OCIF/OPGが、関節軟骨のアポトーシスを直接抑制することが見出された。従って、本発明におけるOCIF/OPGは、関節軟骨のアポトーシスを直接抑制する活性を有するものである。
上記(a)の物理化学的性質から判るように、OCIF/OPGは、一量体と二量体の形態をとりうる(国際公開第96/26217号及び米国特許第6,855,808号)。OCIF/OPGを発現する細胞(例えば、天然にはヒト胎児肺線維芽細胞IMR−90(ATCC寄託−受託番号CCL186))を含む培養液等には、当該一量体と二量体とが通常混在する。そこで、通常の分離方法によりいずれか一方の形態のOCIF/OPGを精製し、本発明において使用してもよい。
ヒトOCIF/OPGは、シグナルペプチドを含む前駆体(cDNA:配列番号4及びアミノ酸配列:配列番号5)として合成され、シグナルペプチドが切断され、成熟型タンパク質(配列番号5に示すアミノ酸配列において、シグナルペプチド(第1番目〜第21番目のアミノ酸配列)を除くアミノ酸配列)となる。本発明において、OCIF/OPGは、上述のヒト由来のシグナルペプチドを含む前駆体及び成熟型タンパク質のいずれをも含むが、成熟型タンパク質が好ましい。
前記OCIF/OPG類縁体とは、OCIF/OPGをコードする塩基配列と相補的な塩基配列から成るDNAとハイブリダイズするDNAによりコードされ、且つ関節軟骨のアポトーシスを抑制するタンパク質を意味し、その中でも、更に活性物質として用いられる場合、関節軟骨の変性改善作用を有するものが本発明の医薬の活性物質として使用される。OCIF/OPG類縁体は、例えば、動物細胞、体液又は組織由来のcDNAライブラリーを鋳型として、ヒトOCIF/OPGのcDNA(配列番号4)と相補的な塩基配列から成るDNAをプローブとし、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされる、関節軟骨のアポトーシス抑制活性を有するタンパク質である。ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成される条件をいう。このようなストリンジェントな条件は、当業者には周知であり、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非制限的例としては、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーション後、50〜65℃の0.2×SSC、0.1%SDSで1回以上洗浄するものが挙げられる。
具体的なOCIF/OPG類縁体としては、例えば、国際公開第96/26217号及び米国特許第6,855,808号に開示のOCIF2(cDNA:配列番号6及びアミノ酸配列:配列番号7)、OCIF3(cDNA:配列番号8及びアミノ酸配列:配列番号9)、OCIF4(cDNA:配列番号10及びアミノ酸配列:配列番号11)、及びOCIF5(cDNA:配列番号12及びアミノ酸配列:配列番号13)が挙げられる。なお、OCIF2〜5におけるシグナルペプチドのアミノ酸配列及び成熟型タンパク質のアミノ酸配列は、以下の表1に示す通りである。
具体的なOCIF/OPG類縁体としては、例えば、国際公開第96/26217号及び米国特許第6,855,808号に開示のOCIF2(cDNA:配列番号6及びアミノ酸配列:配列番号7)、OCIF3(cDNA:配列番号8及びアミノ酸配列:配列番号9)、OCIF4(cDNA:配列番号10及びアミノ酸配列:配列番号11)、及びOCIF5(cDNA:配列番号12及びアミノ酸配列:配列番号13)が挙げられる。なお、OCIF2〜5におけるシグナルペプチドのアミノ酸配列及び成熟型タンパク質のアミノ酸配列は、以下の表1に示す通りである。
また、前記OCIF/OPG変異体とは、上述のOCIF/OPG又はOCIF/OPG類縁体において、1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ関節軟骨のアポトーシス抑制活性を有するタンパク質を意味し、その中で、更に関節軟骨の変性改善作用を有するものが本発明の医薬の活性物質として使用される。OCIF/OPG変異体において、上記複数のアミノ酸は、数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個)であってもよい。なお、ヒトOCIF/OPG(配列番号5記載のアミノ酸配列)においては、C末端から204アミノ酸までを欠失させたC末端欠失変異体においても、破骨細胞分化及び/又は成熟抑制活性が確認されており、生物活性は主にN末端側のドメインによるものと考えられている(国際公開第96/26217号、米国特許第6,855,808号及びYamaguchi K.ら,The Journal of Biological Chemistry(1998),Vol.273,No.9,pp.5117−5123)。このようなC末端欠失変異体も、本発明における関節軟骨のアポトーシス抑制目的において使用することが考えられる。
OCIF/OPG変異体の好適な態様としては、ヒトOCIF/OPG(配列番号5記載のアミノ酸配列)において数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、且つ関節軟骨のアポトーシス抑制活性、並びに関節軟骨変性改善作用を有するタンパク質、及びヒトOCIF/OPG(配列番号5記載のアミノ酸配列)において第22番目のGluをN末端とし、第197番目〜第400番目のいずれかのアミノ酸をC末端とするタンパク質であって、関節軟骨のアポトーシス抑制活性並びに関節軟骨変性の改善作用を有するタンパク質が挙げられる。
更に、OCIF/OPG変異体には、上述のOCIF/OPG又はOCIF/OPG類縁体をコードするヌクレオチド配列と、少なくとも約60〜65%、好ましくは約70〜75%、更に好ましくは約80〜85%、特に好ましくは約90〜95%以上同一であるヌクレオチド配列によりコードされ、且つ関節軟骨のアポトーシス抑制活性並びに関節軟骨変性改善作用を有するタンパク質が含まれる。
OCIF/OPG変異体の好適な態様としては、ヒトOCIF/OPG(配列番号5記載のアミノ酸配列)において数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、且つ関節軟骨のアポトーシス抑制活性、並びに関節軟骨変性改善作用を有するタンパク質、及びヒトOCIF/OPG(配列番号5記載のアミノ酸配列)において第22番目のGluをN末端とし、第197番目〜第400番目のいずれかのアミノ酸をC末端とするタンパク質であって、関節軟骨のアポトーシス抑制活性並びに関節軟骨変性の改善作用を有するタンパク質が挙げられる。
更に、OCIF/OPG変異体には、上述のOCIF/OPG又はOCIF/OPG類縁体をコードするヌクレオチド配列と、少なくとも約60〜65%、好ましくは約70〜75%、更に好ましくは約80〜85%、特に好ましくは約90〜95%以上同一であるヌクレオチド配列によりコードされ、且つ関節軟骨のアポトーシス抑制活性並びに関節軟骨変性改善作用を有するタンパク質が含まれる。
前記OCIF/OPG修飾体とは、例えば、上述したOCIF/OPG、その類縁体又は変異体のペプチドや糖鎖の酵素的又は化学的修飾体、或いはポリマー等の高分子化合物や多糖類の修飾体を意味する。OCIF/OPG修飾体としては、例えばタンパク質の翻訳後修飾(例えば、糖の付加、プロテインキナーゼによるリン酸化やホスファターゼによる脱リン酸化)、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコール共ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、PolyPEG(copolymer of poly(ethyleneglycol)allylmethylether and maleamic acid sodium salt)、ヘパリン、デキストラン硫酸等)等による化学修飾等の修飾がなされたOCIF/OPG、その類縁体又は変異体が挙げられる。更に、例えば、OCIF/OPG、その類縁体又は変異体とFc(IgG等の免疫グロブリン由来のFc領域)やアルブミン等のペプチドやタンパク質との融合タンパク質;OCIF/OPG、その類縁体又は変異体と多糖類(ヘパリン、デキストラン硫酸等)との複合体;及びOCIF/OPG、その類縁体又は変異体とPolyPEGとの複合体も、OCIF/OPG修飾体に含まれる。
具体的には、OCIF/OPG、その類縁体又は変異体のポリエチレングリコールによる修飾体は、例えば、国際公開第97/23614号に記載の方法により製造できる。また、OCIF/OPG、その類縁体又は変異体の多糖類による修飾体において、多糖類としてはデキストラン硫酸、特にデキストラン硫酸ナトリウム5(DS5)が好ましく、このような修飾体は、例えば、特開2003−160601号や米国特許出願公開第2003−0045456号に記載の方法により製造できる。更に、OCIF/OPG、その類縁体又は変異体のPolyPEGによる修飾体は、例えば、特開2005−206569号や米国特許出願公開第2006−0062754号に記載の方法により製造できる。
具体的には、OCIF/OPG、その類縁体又は変異体のポリエチレングリコールによる修飾体は、例えば、国際公開第97/23614号に記載の方法により製造できる。また、OCIF/OPG、その類縁体又は変異体の多糖類による修飾体において、多糖類としてはデキストラン硫酸、特にデキストラン硫酸ナトリウム5(DS5)が好ましく、このような修飾体は、例えば、特開2003−160601号や米国特許出願公開第2003−0045456号に記載の方法により製造できる。更に、OCIF/OPG、その類縁体又は変異体のPolyPEGによる修飾体は、例えば、特開2005−206569号や米国特許出願公開第2006−0062754号に記載の方法により製造できる。
なお、ヒト以外の動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物、並びにニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ等の鳥類)由来のOCIF/OPGも、上述の定義の範囲内にあれば、前記OCIF/OPG、その類縁体若しくは変異体、又は修飾体に含まれる。
OCIF/OPG、その類縁体若しくは変異体、又はそれらの修飾体(以下、「OCIF/OPG物質」という)は、動物の組織や体液等から、又は動物細胞の培養物等からタンパク質として抽出、精製された天然型のタンパク質として、或いは、これらOCIF/OPG物質をコードするDNA断片又は当該DNA断片を含有するベクターで動物細胞や大腸菌等の宿主を形質転換し、生産される遺伝子組換え型(以下では、ヒト遺伝子組換えタンパク質について「rh」という場合がある)タンパク質として、更にはこれらの修飾体として、取得することができる。例えば、国際公開第96/26217号(及び米国特許第6,855,808号)に開示のOCIF/OPGの製造方法に準じて、OCIF/OPG物質をOCIF/OPG物質産生細胞より単離・精製することができる。具体的には、OCIF/OPG物質産生細胞を培養し、培養液をヘパリンカラム(ヘパリン−セファロースCL−6B、ファルマシア社)に供し、2M NaClを含む10mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で溶出する。次いで、得られたヘパリン吸着性OCIF/OPG物質画分をQ・陰イオン交換カラム(HiLoad−Q/FF、ファルマシア社)に供し、その非吸着画分を集める。このようして、ヘパリン吸着性によりヘパリン親和性のOCIF/OPG物質画分を得ることができる。得られたOCIF/OPG物質活性画分をS・陽イオン交換カラム(HiLoad−S/HP、ファルマシア社)、ヘパリンカラム(ヘパリン−5PW、トーソー社)、シバクロンブルーカラム(ブルー−5PW、トーソー社)、逆相カラム(BU−300 C4、パーキンエルマー社)に供することにより、OCIF/OPG物質を単離・精製することができる。
また、このように製造されるOCIF/OPG物質の関節軟骨変性改善作用は、例えば、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、OCIF/OPG物質中、本発明の医薬の活性物質としては、好適にはOCIF/OPG又はその修飾体であり、より好適にはOCIF/OPGである。
また、このように製造されるOCIF/OPG物質の関節軟骨変性改善作用は、例えば、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、OCIF/OPG物質中、本発明の医薬の活性物質としては、好適にはOCIF/OPG又はその修飾体であり、より好適にはOCIF/OPGである。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記破骨細胞形成抑制因子の関節への注入時に、ヒアルロン酸ナトリウムを同時に投与することができる。また、前記アポトーシス抑制剤中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記破骨細胞形成抑制因子の関節への注入時に、ヒアルロン酸ナトリウムを同時に投与することができる。また、前記アポトーシス抑制剤中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<剤型>
前記アポトーシス抑制剤の医薬としての剤型には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、前記医薬は被検体の関節内に投与されることを特徴とすることから、前記関節内への直接投与が可能な、注射剤であることが好ましい。前記注射剤としては、例えば、水性注射剤、懸濁性注射剤、用時溶解用固形注射剤などが挙げられる。
前記注射剤は、例えば、前記破骨細胞形成抑制因子に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等の医薬用の添加剤を添加することにより、製造することができる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
前記アポトーシス抑制剤の医薬としての剤型には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、前記医薬は被検体の関節内に投与されることを特徴とすることから、前記関節内への直接投与が可能な、注射剤であることが好ましい。前記注射剤としては、例えば、水性注射剤、懸濁性注射剤、用時溶解用固形注射剤などが挙げられる。
前記注射剤は、例えば、前記破骨細胞形成抑制因子に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等の医薬用の添加剤を添加することにより、製造することができる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
<適用>
前記医薬は、例えば、変形性関節症における関節軟骨の変性の治療又は予防に好適である。
ここで、前記「関節軟骨」としては、特に制限はなく、全身の関節における軟骨の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、膝関節、肩関節、股関節、顎関節等の軟骨などが挙げられる。これらの中でも、前記「関節軟骨」としては、膝関節、股関節の軟骨が好ましい。
なお、前記関節軟骨の「変性」とは、前記関節軟骨が正常でない無い状態を指すものとし、その状態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記関節軟骨の磨耗、分解、破壊、消失、変形などが挙げられる。
前記医薬は、例えば、変形性関節症における関節軟骨の変性の治療又は予防に好適である。
ここで、前記「関節軟骨」としては、特に制限はなく、全身の関節における軟骨の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、膝関節、肩関節、股関節、顎関節等の軟骨などが挙げられる。これらの中でも、前記「関節軟骨」としては、膝関節、股関節の軟骨が好ましい。
なお、前記関節軟骨の「変性」とは、前記関節軟骨が正常でない無い状態を指すものとし、その状態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記関節軟骨の磨耗、分解、破壊、消失、変形などが挙げられる。
<投与>
好ましい投与態様においては、前記医薬は、被検体の関節内に直接投与されることにより使用される。中でも、前記被検体としては、変形性関節症患者が好適であり、中でも、初期から進行期までの変形性膝関節症患者が特に好適である。また、前記被検体としては、炎症を伴わない変形性関節症患者であることが好ましい。前記医薬は、関節内に投与されることから、経口投与が困難な被検体への適用にも好適である。なお、前記被検体の生物種としては、前記医薬の投与対象となり得る生物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ウマ、イヌ、ブタ、サルなどが挙げられる。好適にはヒト、ウマ、又はイヌであり、より好適にはヒトである。
前記医薬の投与方法の好ましい態様は、関節内投与である。前記関節内投与の手法としては、特に制限はなく、公知の手法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記注射剤の剤型として製造した前記医薬を、目的の関節腔内に注射器等を用いて注入することにより行うことができる。
前記医薬の投与量としては、特に制限はなく、前記被検体の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1回の投与あたり、有効成分である前記破骨細胞形成抑制因子の量としては、好適には0.1〜8000μg、より好適には1〜2000μg、更に好ましくは3〜600μgである。
前記医薬の投与時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記関節軟骨の変性に対し、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。また、前記したように、変形性関節症の発症・進行過程は、1)関節軟骨の変性、2)病的肥大軟骨細胞の出現、3)骨硬化と骨棘の形成、の3段階に大きく分類されることが知られているが、前記医薬を前記変形性関節症の患者に適用する場合には、前記医薬は前記変形性関節症の初期段階、即ち、1)関節軟骨の変性段階で投与されることが好ましい。
好ましい投与態様においては、前記医薬は、被検体の関節内に直接投与されることにより使用される。中でも、前記被検体としては、変形性関節症患者が好適であり、中でも、初期から進行期までの変形性膝関節症患者が特に好適である。また、前記被検体としては、炎症を伴わない変形性関節症患者であることが好ましい。前記医薬は、関節内に投与されることから、経口投与が困難な被検体への適用にも好適である。なお、前記被検体の生物種としては、前記医薬の投与対象となり得る生物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ウマ、イヌ、ブタ、サルなどが挙げられる。好適にはヒト、ウマ、又はイヌであり、より好適にはヒトである。
前記医薬の投与方法の好ましい態様は、関節内投与である。前記関節内投与の手法としては、特に制限はなく、公知の手法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記注射剤の剤型として製造した前記医薬を、目的の関節腔内に注射器等を用いて注入することにより行うことができる。
前記医薬の投与量としては、特に制限はなく、前記被検体の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1回の投与あたり、有効成分である前記破骨細胞形成抑制因子の量としては、好適には0.1〜8000μg、より好適には1〜2000μg、更に好ましくは3〜600μgである。
前記医薬の投与時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記関節軟骨の変性に対し、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。また、前記したように、変形性関節症の発症・進行過程は、1)関節軟骨の変性、2)病的肥大軟骨細胞の出現、3)骨硬化と骨棘の形成、の3段階に大きく分類されることが知られているが、前記医薬を前記変形性関節症の患者に適用する場合には、前記医薬は前記変形性関節症の初期段階、即ち、1)関節軟骨の変性段階で投与されることが好ましい。
(方法)
本発明の方法は、変形性関節症等における関節軟骨の変性に際し、関節軟骨のアポトーシスを抑制するための方法であり、破骨細胞形成抑制因子を投与することを含み、更に必要に応じて適宜その他の工程を含む。好ましい投与態様は、被検体の関節内への直接投与である。本方法において、「関節軟骨の変性」、「破骨細胞形成抑制因子」、「被検体」、「関節内に投与」とは、前記した通りである。また、「その他の工程」としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記破骨細胞形成抑制因子の関節内投与のため、前記破骨細胞形成抑制因子を含む注射剤を製造する製造工程などが挙げられる。
本発明の方法は、変形性関節症等における関節軟骨の変性に際し、関節軟骨のアポトーシスを抑制するための方法であり、破骨細胞形成抑制因子を投与することを含み、更に必要に応じて適宜その他の工程を含む。好ましい投与態様は、被検体の関節内への直接投与である。本方法において、「関節軟骨の変性」、「破骨細胞形成抑制因子」、「被検体」、「関節内に投与」とは、前記した通りである。また、「その他の工程」としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記破骨細胞形成抑制因子の関節内投与のため、前記破骨細胞形成抑制因子を含む注射剤を製造する製造工程などが挙げられる。
[効果]
前記アポトーシス抑制剤及び方法は、その好ましい態様において破骨細胞形成抑制因子を関節内に直接投与することを特徴とするため、破骨細胞形成抑制因子を関節内の軟骨細胞に直接的、かつ効果的に作用させることができ、そのため、関節軟骨のアポトーシスを効果的に抑制し、変形性関節症に伴う関節軟骨の変性を効果的に治療又は予防することができる。
前記アポトーシス抑制剤及び方法は、その好ましい態様において破骨細胞形成抑制因子を関節内に直接投与することを特徴とするため、破骨細胞形成抑制因子を関節内の軟骨細胞に直接的、かつ効果的に作用させることができ、そのため、関節軟骨のアポトーシスを効果的に抑制し、変形性関節症に伴う関節軟骨の変性を効果的に治療又は予防することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1:関節軟骨の変性に対する破骨細胞形成抑制因子関節内投与の影響)
本実施例1では、マウスの変形性関節症(OA)モデルを用い、破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の関節内投与による関節軟骨の変性に対する治療又は予防効果を調べた。
本実施例1では、マウスの変形性関節症(OA)モデルを用い、破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の関節内投与による関節軟骨の変性に対する治療又は予防効果を調べた。
<方法>
亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41参照)に準じて、各マウス(C57BL/6;9週令、雄)の右膝関節内側側副靭帯、同内側半月板を切除することにより、変形性関節症(OA)モデルマウスを作製した。左膝関節はシャム手術側とした。マウスを破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)投与群とコントロール群とに分け(n=5)、手術翌日より、5日/週(1回/1日)、OCIF/OPG投与群にはOCIF/OPG(100ng/10μl PBS)を、コントロール群には10μl PBSのみを、右膝関節内にそれぞれ注射した。手術後4週にて屠殺し、両膝関節を採取し、固定、脱灰、脱水の後にパラフィン包埋し、薄切標本を作製して、以下の免疫組織学的評価に供した。
亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41参照)に準じて、各マウス(C57BL/6;9週令、雄)の右膝関節内側側副靭帯、同内側半月板を切除することにより、変形性関節症(OA)モデルマウスを作製した。左膝関節はシャム手術側とした。マウスを破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)投与群とコントロール群とに分け(n=5)、手術翌日より、5日/週(1回/1日)、OCIF/OPG投与群にはOCIF/OPG(100ng/10μl PBS)を、コントロール群には10μl PBSのみを、右膝関節内にそれぞれ注射した。手術後4週にて屠殺し、両膝関節を採取し、固定、脱灰、脱水の後にパラフィン包埋し、薄切標本を作製して、以下の免疫組織学的評価に供した。
[免疫組織学的評価]
作製した各群の薄切標本にサフラニンO染色を施し、Mankin Score、cartilage destruction scoreによるOA重症度評価を行った。また、Image−pro plus4.5(Media Cybernetics,Carlsbad,CA)を用い、サフラニンOで赤色に染色されたプロテオグリカンを含む関節軟骨の厚みを定量した。更に、作製した各群の薄切標本について、抗マウスOCIF/OPG抗体、抗TRAIL(TNF−Related Apoptosis−Inducing Ligand)抗体を用いて免疫染色を行った。また、TUNEL法にて各群の関節軟骨のアポトーシスを定量した。
作製した各群の薄切標本にサフラニンO染色を施し、Mankin Score、cartilage destruction scoreによるOA重症度評価を行った。また、Image−pro plus4.5(Media Cybernetics,Carlsbad,CA)を用い、サフラニンOで赤色に染色されたプロテオグリカンを含む関節軟骨の厚みを定量した。更に、作製した各群の薄切標本について、抗マウスOCIF/OPG抗体、抗TRAIL(TNF−Related Apoptosis−Inducing Ligand)抗体を用いて免疫染色を行った。また、TUNEL法にて各群の関節軟骨のアポトーシスを定量した。
[Mankin Score 評価基準]
Henry J. Mankinらの方法(Henry J. Mankinら(1971)The Journal of Bone&Joint Surgery 53(3),523−537参照)に準じ、以下の基準にて点数評価を行った。
<Tidemark>
スコア0:正常
スコア1:血管の関節軟骨深部への侵入が認められる。
<Safranin−O>
スコア0:強い染色性が認められる。
スコア1:染色性の低下(低度)が認められる。
スコア2:染色性の低下(中度)が認められる。
スコア3:染色性の低下(重度)が認められる。
スコア4:染色されない。
<Cells>
スコア0:正常
スコア1:びまん性細胞過形成が認められる。
スコア2:軟骨細胞のクローンが認められる。
スコア3:低細胞性が認められる。
<Structure>
スコア0:正常
スコア1:関節軟骨表層に不整が認められる。
スコア2:パンヌス及び関節軟骨表層に不整が認められる。
スコア3:関節軟骨中間層への亀裂が認められる。
スコア4:関節軟骨深層への亀裂が認められる。
スコア5:関節軟骨石灰化層への亀裂が認められる。
スコア6:全体的な組織崩壊が認められる。
Henry J. Mankinらの方法(Henry J. Mankinら(1971)The Journal of Bone&Joint Surgery 53(3),523−537参照)に準じ、以下の基準にて点数評価を行った。
<Tidemark>
スコア0:正常
スコア1:血管の関節軟骨深部への侵入が認められる。
<Safranin−O>
スコア0:強い染色性が認められる。
スコア1:染色性の低下(低度)が認められる。
スコア2:染色性の低下(中度)が認められる。
スコア3:染色性の低下(重度)が認められる。
スコア4:染色されない。
<Cells>
スコア0:正常
スコア1:びまん性細胞過形成が認められる。
スコア2:軟骨細胞のクローンが認められる。
スコア3:低細胞性が認められる。
<Structure>
スコア0:正常
スコア1:関節軟骨表層に不整が認められる。
スコア2:パンヌス及び関節軟骨表層に不整が認められる。
スコア3:関節軟骨中間層への亀裂が認められる。
スコア4:関節軟骨深層への亀裂が認められる。
スコア5:関節軟骨石灰化層への亀裂が認められる。
スコア6:全体的な組織崩壊が認められる。
[cartilage destruction score 評価基準]
亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41参照)に準じ、以下の基準にて点数評価を行った。
スコア0:目立った変化はなし。
スコア1:関節軟骨表層部が欠損している。
スコア2:関節軟骨欠損部位がTidemark上部に達している。
スコア3:関節軟骨欠損部位が石灰化層に達している。
スコア4:軟骨下骨が露出している。
亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41参照)に準じ、以下の基準にて点数評価を行った。
スコア0:目立った変化はなし。
スコア1:関節軟骨表層部が欠損している。
スコア2:関節軟骨欠損部位がTidemark上部に達している。
スコア3:関節軟骨欠損部位が石灰化層に達している。
スコア4:軟骨下骨が露出している。
<結果>
結果を図1〜8に示す。
サフラニンO染色標本において、コントロール(Control)群では変形性関節症の特徴的所見である関節軟骨表層の染色性低下、関節軟骨の菲薄化、軟骨細胞のクローン性増殖、細胞数の増減が明らかであった。一方、OCIF/OPG投与群ではこれらの所見が軽度であり、サフラニンO染色にて赤色に染色される関節軟骨の厚みが保たれていた(図1)。また、変形性関節症の重症度の指標であるMankin Score、cartilage destruction scoreは共に、コントロール群に比べ、OCIF/OPG投与群が有意に低い値を示した(図2、図3)。また、Image−pro plus4.5(Media Cybernetics,Carlsbad,CA)を用いサフラニンOで染色された関節軟骨の厚みを定量したところ、関節軟骨の厚みは、コントロール群に比べ、OCIF/OPG投与群が有意に大きな値を示した(図4)。
結果を図1〜8に示す。
サフラニンO染色標本において、コントロール(Control)群では変形性関節症の特徴的所見である関節軟骨表層の染色性低下、関節軟骨の菲薄化、軟骨細胞のクローン性増殖、細胞数の増減が明らかであった。一方、OCIF/OPG投与群ではこれらの所見が軽度であり、サフラニンO染色にて赤色に染色される関節軟骨の厚みが保たれていた(図1)。また、変形性関節症の重症度の指標であるMankin Score、cartilage destruction scoreは共に、コントロール群に比べ、OCIF/OPG投与群が有意に低い値を示した(図2、図3)。また、Image−pro plus4.5(Media Cybernetics,Carlsbad,CA)を用いサフラニンOで染色された関節軟骨の厚みを定量したところ、関節軟骨の厚みは、コントロール群に比べ、OCIF/OPG投与群が有意に大きな値を示した(図4)。
抗OCIF/OPG抗体を用いて免疫染色を行った結果、コントロール群ではOCIF/OPGは関節軟骨の深層を中心に発現し、滑膜における発現は非常に弱かった(図5、左欄)。一方、OCIF/OPG投与群では関節軟骨の表層や滑膜細胞においてOCIF/OPGの強い局在が認められた(図5、右欄)。また、抗TRAIL抗体を用いて免疫染色を行った結果、TRAILはコントロール群、OCIF/OPG投与群共に、関節軟骨全層にわたって発現が認められた(図6)。
TUNEL法によって関節軟骨細胞のアポトーシスを定量した結果、コントロール群では関節軟骨のほぼ全層にわたってTUNEL陽性細胞が分布したが、OCIF/OPG投与群ではTUNEL陽性細胞数が有意に減少していた。即ち、OCIF/OPGの関節内投与により、変形性関節症における軟骨細胞のアポトーシスが抑制されることが明らかとなった(図7、図8)。
以上の結果から、破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の関節内投与は、変形性関節症モデルマウスにおける関節軟骨の変性を効果的に抑制できることが示された。また、この効果は、前記破骨細胞形成抑制因子が関節内に投与されることにより、前記破骨細胞形成抑制因子が軟骨細胞に直接的に作用し、TRAILによる軟骨細胞のアポトーシスを抑制することに起因するものであることが示唆された。
(参考例1:関節軟骨の変性に対する破骨細胞形成抑制因子全身投与の影響)
前記実施例1における関節内投与の有用性を示すため、参考例1として、関節軟骨の変性に対する破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の全身投与の影響を調べた。
前記実施例1における関節内投与の有用性を示すため、参考例1として、関節軟骨の変性に対する破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の全身投与の影響を調べた。
<方法>
亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41参照)に準じて、各マウス(C57BL/6;9週令、雄)の右膝関節十字靭帯、同内側半月板を切除することにより、変形性関節症(OA)モデルマウスを作製した。左膝関節はシャム手術側とした。マウスを破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)投与群とコントロール群とに分け(n=5)、手術翌日より、5日/週(1回/1日)、OCIF/OPG投与群にはOCIF/OPG(200μg/100μl PBS)を、コントロール群には100μl PBSのみを、腹腔内にそれぞれ投与した。手術後2週にて屠殺し、両膝関節を採取し、固定、脱灰、脱水の後にパラフィン包埋し、薄切標本を作製して、以下の免疫組織学的評価に供した。
亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41参照)に準じて、各マウス(C57BL/6;9週令、雄)の右膝関節十字靭帯、同内側半月板を切除することにより、変形性関節症(OA)モデルマウスを作製した。左膝関節はシャム手術側とした。マウスを破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)投与群とコントロール群とに分け(n=5)、手術翌日より、5日/週(1回/1日)、OCIF/OPG投与群にはOCIF/OPG(200μg/100μl PBS)を、コントロール群には100μl PBSのみを、腹腔内にそれぞれ投与した。手術後2週にて屠殺し、両膝関節を採取し、固定、脱灰、脱水の後にパラフィン包埋し、薄切標本を作製して、以下の免疫組織学的評価に供した。
[組織学的評価]
作製した各群の薄切標本にサフラニンO染色を施し、Mankin Score、cartilage destruction scoreによるOA重症度評価を前記実施例1と同様に行った。また、各群の大腿骨のX線写真を撮影し、骨量の変化を確認した。
作製した各群の薄切標本にサフラニンO染色を施し、Mankin Score、cartilage destruction scoreによるOA重症度評価を前記実施例1と同様に行った。また、各群の大腿骨のX線写真を撮影し、骨量の変化を確認した。
<結果>
結果を図9〜12に示す。
全身投与の場合では、サフラニンO染色標本において、コントロール(Control)群、OCIF/OPG投与群共に、変形性関節症の特徴的所見である関節軟骨表層の染色性低下、関節軟骨の菲薄化、軟骨細胞のクローン性増殖、細胞数の増減が明らかであった(図9)。また、変形性関節症の重症度の指標であるMankin Score、cartilage destruction scoreでは、コントロール群、OCIF/OPG投与群間に有意差は認められなかった(図10、図11)。一方で大腿骨のX線写真では、コントロール群に比べ、OCIF/OPG投与群において大腿骨海綿骨量の増加が認められた(図12)。
結果を図9〜12に示す。
全身投与の場合では、サフラニンO染色標本において、コントロール(Control)群、OCIF/OPG投与群共に、変形性関節症の特徴的所見である関節軟骨表層の染色性低下、関節軟骨の菲薄化、軟骨細胞のクローン性増殖、細胞数の増減が明らかであった(図9)。また、変形性関節症の重症度の指標であるMankin Score、cartilage destruction scoreでは、コントロール群、OCIF/OPG投与群間に有意差は認められなかった(図10、図11)。一方で大腿骨のX線写真では、コントロール群に比べ、OCIF/OPG投与群において大腿骨海綿骨量の増加が認められた(図12)。
上記の通り、破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の全身投与は、変形性関節症モデルマウスにおける硬骨量を増加させたが、関節軟骨の変性を抑制することはできなかった。
前記実施例1及び参考例1の結果から、OCIF/OPGの関節内投与は全身投与より、関節軟骨変性の抑制作用において、優れた効果を示すことが明らかになった。
前記実施例1及び参考例1の結果から、OCIF/OPGの関節内投与は全身投与より、関節軟骨変性の抑制作用において、優れた効果を示すことが明らかになった。
(参考例2:関節軟骨の変性に対する内在性破骨細胞形成抑制因子の作用)
本参考例2では、関節軟骨の変性に対する内在性の破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の作用を調べるため、OCIF/OPG欠損マウス、及び、野生型マウスにおける関節軟骨の組織学的差異を検討した。
本参考例2では、関節軟骨の変性に対する内在性の破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の作用を調べるため、OCIF/OPG欠損マウス、及び、野生型マウスにおける関節軟骨の組織学的差異を検討した。
<方法>
まず、加齢依存的な関節軟骨の変性に対する内在性OCIF/OPGの作用を調べるため、実験動物として、若年(8週齢)及び老齢(6ヶ月齢)の、OCIF/OPGホモ欠損マウス(OCIF/OPG−/−)、OCIF/OPGヘテロ欠損マウス(OCIF/OPG+/−)、及び、同腹の野生型マウス(WT)をそれぞれ準備した。各マウスは日本クレア株式会社より入手した。各マウスの膝関節の薄切標本に、サフラニンO染色を施し、組織学的特徴を比較した。
その結果、若年のOCIF/OPG−/−マウスでは、OCIF/OPG+/−マウス及びWTマウスに比べ、関節軟骨層の菲薄化、軟骨下骨への血管の浸潤、骨軟骨接合部の不規則性が観察された(図13、A〜C)。また、老齢のOCIF/OPG−/−マウス及びOCIF/OPG+/−マウスでは、WTマウスに比べ、表面の線維化(E、矢尻)やプロテオグリカン欠損(F、矢印)が観察された(図13、D〜F)。加齢に従い、OCIF/OPG−/−マウスにおける軟骨変性は亢進され、これはOCIF/OPG+/−マウスにおいても同様であった。これらの結果から、加齢依存的な関節軟骨の変性を防ぐためには、十分な量のOCIF/OPG発現が必要であり、内在性OCIF/OPGが、関節軟骨変性の抑制に作用していることが示された。
まず、加齢依存的な関節軟骨の変性に対する内在性OCIF/OPGの作用を調べるため、実験動物として、若年(8週齢)及び老齢(6ヶ月齢)の、OCIF/OPGホモ欠損マウス(OCIF/OPG−/−)、OCIF/OPGヘテロ欠損マウス(OCIF/OPG+/−)、及び、同腹の野生型マウス(WT)をそれぞれ準備した。各マウスは日本クレア株式会社より入手した。各マウスの膝関節の薄切標本に、サフラニンO染色を施し、組織学的特徴を比較した。
その結果、若年のOCIF/OPG−/−マウスでは、OCIF/OPG+/−マウス及びWTマウスに比べ、関節軟骨層の菲薄化、軟骨下骨への血管の浸潤、骨軟骨接合部の不規則性が観察された(図13、A〜C)。また、老齢のOCIF/OPG−/−マウス及びOCIF/OPG+/−マウスでは、WTマウスに比べ、表面の線維化(E、矢尻)やプロテオグリカン欠損(F、矢印)が観察された(図13、D〜F)。加齢に従い、OCIF/OPG−/−マウスにおける軟骨変性は亢進され、これはOCIF/OPG+/−マウスにおいても同様であった。これらの結果から、加齢依存的な関節軟骨の変性を防ぐためには、十分な量のOCIF/OPG発現が必要であり、内在性OCIF/OPGが、関節軟骨変性の抑制に作用していることが示された。
しかしながら、OCIF/OPG−/−マウスにおいては軟骨下骨の減少も観察されたことから、上記結果からは、内在性OCIF/OPGが関節軟骨変性を抑制するにあたり、軟骨細胞の代謝に直接的に作用しているのか、或いは、RANKシグナルを介した軟骨下骨における破骨細胞性の骨吸収の抑制を通じて、間接的に作用しているのかが定かではなかった。そこで本発明者らは、若年(8〜12週齢)のOCIF/OPG+/−マウス(n=7)、及び同腹のWTマウス(n=7)を実験動物として選択し、内在性OCIF/OPGの、関節軟骨に対する直接的な作用を検討した。用いた週齢(8〜12週齢)において、関節軟骨の構造及び総骨量については、OCIF/OPG+/−マウスとWTマウスとの間で差異は見られなかった。亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41参照)に準じて、各マウスの内側側副靭帯、内側半月板を切除することにより、変形性関節症(OA)モデルマウスを作製した。各マウスを手術後4週にて屠殺し、OAを誘導した膝関節を採取し、固定、脱灰、脱水の後にパラフィン包埋し、薄切標本を作製して、以下の組織学的評価に供した。
[組織学的評価]
作製した各マウスの膝関節の薄切標本にサフラニンO染色を施し、Mankin Score、cartilage destruction scoreによるOA重症度評価、及び、関節軟骨の厚み定量を、前記実施例1と同様に行った。
作製した各マウスの膝関節の薄切標本にサフラニンO染色を施し、Mankin Score、cartilage destruction scoreによるOA重症度評価、及び、関節軟骨の厚み定量を、前記実施例1と同様に行った。
<結果>
結果を図14〜17に示す。
亀倉らの文献(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41)で報告されている通り、OAを誘導したWTマウスで内側脛骨軟骨の変性が観察された(図14、a及びc)。OCIF/OPG+/−マウスでは、WTマウスに比べ、軟骨変性の亢進が明らかであった(図14、a〜d)。また、変形性関節症の重症度の指標であるMankin Score、cartilage destruncion scoreは共に、OCIF/OPG+/−マウスで、WTマウスよりも約25%高い値を示した(図15、図16、P<0.05)。また、軟骨下骨の形態については、OCIF/OPG+/−マウスとWTマウスとの間で差異は見られなかった(図14、c及びd)のに対し、軟骨の厚みはOCIF/OPG+/−マウスにおいて有意に減少していた(図17、P<0.05)。なお、図15〜17中、各データは平均±SDで表し、「*」はOCIF/OPG+/−とWT間の差異が統計学的に有意であったことを示す(P<0.05)。
結果を図14〜17に示す。
亀倉らの文献(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632−41)で報告されている通り、OAを誘導したWTマウスで内側脛骨軟骨の変性が観察された(図14、a及びc)。OCIF/OPG+/−マウスでは、WTマウスに比べ、軟骨変性の亢進が明らかであった(図14、a〜d)。また、変形性関節症の重症度の指標であるMankin Score、cartilage destruncion scoreは共に、OCIF/OPG+/−マウスで、WTマウスよりも約25%高い値を示した(図15、図16、P<0.05)。また、軟骨下骨の形態については、OCIF/OPG+/−マウスとWTマウスとの間で差異は見られなかった(図14、c及びd)のに対し、軟骨の厚みはOCIF/OPG+/−マウスにおいて有意に減少していた(図17、P<0.05)。なお、図15〜17中、各データは平均±SDで表し、「*」はOCIF/OPG+/−とWT間の差異が統計学的に有意であったことを示す(P<0.05)。
以上の結果から、内在性破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)は、変形性関節症の進行に対する関節軟骨の維持に重要な役割を果たしていることが示された。また、このOCIF/OPGの関節軟骨に対する作用は、軟骨下骨を介した間接的な軟骨細胞の保護によるものではなく、軟骨細胞に直接的に影響を及ぼすことによるものであることが示された。
本発明の医薬及び方法は、関節軟骨の変性の治療又は予防に好適であり、中でも、変形性関節症の治療又は予防に特に好適である。
Claims (6)
- 関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシス抑制剤であって、破骨細胞形成抑制因子を有効成分とすることを特徴とするアポトーシス抑制剤。
- 破骨細胞形成抑制因子が被検体の関節内に投与される、請求項1に記載のアポトーシス抑制剤。
- 変形性関節症を治療又は予防するための医薬である、請求項1又は2に記載のアポトーシス抑制剤。
- 関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシスを抑制する方法であって、破骨細胞形成抑制因子を被検体に投与することを特徴とする方法。
- 破骨細胞形成抑制因子が被検体の関節内に投与される、請求項4に記載の方法。
- 変形性関節症を治療又は予防するための方法である、請求項4又は5に記載の方法。
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