本発明は、関節機構に関し、主としてロボット用マニピュレータに用いられる関節機構及び関節装置に関するものである。
近年、少子高齢化に伴い労働力の不足、また高齢化が予想されており、それらを補う産業用、家庭用のロボットが期待されている。特に、複雑な作業をこなすためには、種々の物品を把持できる把持機構や任意の姿勢を取り得る関節機構が必須であり、重要である。また、これら把持機構は、手の不自由な人のための義手への適用も種々検討されている。
このような事情を考慮して、物品の把持を行うための指機構が、従来いくつか提案されている。図21は、ウォームとウォームホイールを用いた指の把持機構を義手として用いる例である(例えば、特許文献1を参照)。
モータ91の先端に設けられたウォーム92によってウォームホイール93が回転し、これにより把持指としてのリンク94、95が回動し、例えば握る方向への把持動作が行われる。リンク95が開く方向の力を受けた場合であっても、ウォームホイール93はウォーム92に係合することによって逆転しない。このため物品を強く握り続けることができる。
また、図22は多数のモータを用いて自由度を上げた把持機構の指の例である。(例えば、特許文献2を参照)この把持機構では、4個のモータ96〜99を用いることで4自由度を得ている。
特表平9−510128号公報
特開平11−156778号公報
しかしながら、従来の把持機構には下記のような問題があった。例えば、図21に示す把持機構では、自由度が1しかないため、種々の形状のものを把持することは困難である。例えば平板状の物には、指としてのリンク95が馴染まないため、適切な摩擦力を与えて把持することができない。換言すれば、この関節機構では、指としてのリンク95が任意の姿勢を取ることができない。
一方、図22に示す把持機構は、把持に十分な自由度を持つが、モータの数が多くコストアップになっている。すなわち、この関節機構では、任意の姿勢をとることができるが、それに応じて駆動源が増えてしまう。
本発明の目的は、前記の問題を解決することである。そして、本発明の目的は、任意の姿勢を取り得る関節機構を簡単な構成で実現することである。
本発明の一局面に従う関節機構は、第1のリンクと、前記第1のリンクに回動可能に連結された第2のリンクと、前記第2のリンクに回動可能に連結された第3のリンクと、前記第2のリンクに支持された連結部材と、前記連結部材によって互いに連結され、軸回りに回転可能でかつ軸方向に移動可能な第1及び第2のウォームと、前記第1のウォームに噛み合い、前記第2のリンクに対して前記第1のリンクを回動させる第1のウォームホイールと、前記第2のウォームに噛み合い、前記第2のリンクに対して前記第3のリンクを回動させる第2のウォームホイールと、を備え、前記第1のリンクと前記第2のリンクの成す角を角度Aとし、前記第2のリンクと前記第3のリンクのなす角を角度Bとし、角度Aの変化量をdAとし、角度Bの変化量をdBとしたときに、前記両ウォームの回転によってdA×dB≧0となり、前記第1及び第2のウォームの軸方向移動によってdA×dB≦0となる。
(a)〜(c)は本発明の実施形態1による関節機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態1による関節機構において、第1のリンクを固定した状態でシャフトを回転した場合の動きを説明するための図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態1による関節機構において、把持対象の物品が位置ずれしていた場合の動きを説明するための図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態1による関節機構において、小さな物品を把持する場合の動きを説明するための図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態2による関節機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態3による関節機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態4による関節機構の構成を示す図である。
(a),(b)は本発明の実施形態5による関節機構に設けられるブレーキ機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態5による関節機構の構成を示す図である。
(a),(b)は本発明の実施形態6による関節機構に設けられるクラッチ機構及び第3のリンクを示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態6による関節機構の構成を示す図である。
本発明の実施形態7による把持装置を示す図である。
本発明の実施形態7の別の形態による把持装置を示す図である。
本発明の実施形態8による関節機構の構成を示す図である。
(a)は本発明の実施形態9による関節機構の構成を示す図であり、(b)は固定手段を示す図である。
本発明の実施形態9の別の形態による関節機構の構成を示す図である。
(a)は本発明の実施形態10による関節機構の構成を示す図であり、(b)はトルクリミッタを示す図である。
本発明の実施形態10の別の形態によるトルクリミッタを示す図である。
(a),(b)は本発明の実施形態11による関節機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態12による関節機構の構成を示す図である。
従来の関節機構を示す図である。
従来の関節機構を示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1〜図4は、本発明による関節機構の一実施形態を示す構成図である。本実施形態による関節機構は、物品の把持が可能な把持機構として構成されるものであり、この把持機構は、図1(a)に示すように、把持指としての第1のリンク1と、把持指としての第2のリンク2と、把持指としての第3のリンク3とを有する。第1のリンク1と第2のリンク2は、回動ピン5で互いに回動可能に連結され、第2のリンク2と第3のリンク3は、回動ピン6で互いに回動可能に連結されている。第1のリンク1は、回動ピン4aを介して掌部材4に連結できるように構成されている。回動ピン5及び6は、何れも第2のリンク2に固定されている。回動ピン5と回動ピン6は第2のリンク2の長さ方向両端部に配置されており、これらは互いに平行になっている。そして、第1のリンク1の先端部に第2のリンク2の基端部が回動ピン5介して連結され、第2のリンク2の先端部に第3のリンク3の基端部が回動ピン6を介して連結されている。
把持機構は、2つのウォームホイール7,8を有する。ウォームホイール7,8は、各々回動ピン5,6に嵌められている。ウォームホイール7は回動ピン5に対し回動自在であり、またウォームホイール8は回動ピン6に対して回動自在である。ウォームホイール7は第1のリンク1の一端部に固定され、またウォームホイール8は第3のリンク3の一端部に固定されている。したがって、第1のリンク1はウォームホイール7と一体的に回転可能であり、また第3のリンク3はウォームホイール8と一体的に回転可能となっている。なお、ウォームホール7は第1のリンク1に一体的に形成されていてもよく、ウォームホイール8は第3のリンク3に一体的に形成されていてもよい。
ウォームホイール7にはウォームで9が噛み合い、またウォームホイール8にはウォーム10が噛み合っている。ウォーム9とウォーム10は、互いに間隔をおいて連結部材の一例としてのシャフト11に剛に固定されており、両ウォーム9,10はシャフト11を介して相互に接続されている。ウォーム9はいわゆる右ねじであり、ウォーム10はいわゆる左ねじである。したがって、これらウォーム9,10は、互いに逆向きの螺旋を有している。
また、ウォームホイール7及びウォーム9のモジュールと、ウォームホイール8及びウォーム10のモジュールとは同じであり、またそれらの対応する歯数、径も同じである。
両ウォーム9,10間のシャフト11の中間部には、フランジ11aが設けられている。また、シャフト11の中間部にはギヤ12が剛に結合されている。シャフト11は、第2のリンク2に形成された一対の支持壁18,19に支持されていて、第2のリンク2の長手方向に沿うように配置されている。この支持壁18,19にはそれぞれ貫通孔が設けられていて、シャフト11は、支持壁18,19間にフランジ11aが位置するように貫通孔に挿通された状態で保持されている。したがって、シャフト11は、軸回りに回転可能であって、かつ軸方向である並進方向に移動可能となっている。
各支持壁18,19とフランジ11aとの間には、各々ばね16、17が残留圧縮復元力を保持した状態で介装されている。フランジ11a、ばね16,17及び支持壁18,19によって、ウォーム9、10のセンタリング手段20が構成されている。
第2のリンク2には駆動源としてのモータ13が搭載されている。モータ13の駆動軸の先端にはギヤ14が設けられている。モータ13は、シャフト11に対してウォームホイール7,8側に配置され、ウォームホイール7,8間のスペースに配置されている。つまり、このスペースを利用してモータ13が設置されているため、スペースを有効利用でき、把持機構をより小型に構成することが可能となる。このギヤ14と前記シャフト11に設けられたギヤ12との間にギヤ15が介在しており、モータ13の駆動力は、ギヤ14、ギヤ15及びギヤ12を介してシャフト11に伝達される。ギヤ15は、その軸まわりの回転のみが許容されているが、ギヤ12は、シャフト11の並進移動に対してもギヤ15と係合状態を維持できるよう、軸方向に長く形成されている。
以上のように構成された把持機構について、以下その動作を説明する。
まず、第1のリンク1、第2のリンク2、第3のリンク3が、初期状態として図1(a)の状態にあったとする。この状態でモータ13を駆動すると、ギヤ14、ギヤ15及びギヤ12が回転し、例えば図示のF方向にシャフト11が回転する。このとき、ギヤ12とウォーム9,10はシャフト11に剛に結合されているため、両ウォーム9,10は何れもF方向に回転する。
第2のリンク2に視点を固定して見ると、ウォーム9の回転により、ウォームホイール7は図1(b)のV方向に回転を始め、ウォームホイール7に結合された第1のリンク1をV方向に回転させる。同様に、ウォーム10の回転により、第3のリンク3を図1(b)のW方向に回転させる。シャフト11がある回転角度だけ回転した場合において、第1のリンク1と第2のリンク2がなす角を角度Aとし、同様に第2のリンクと第3のリンクがなす角を角度Bとする。そして、更にシャフト11を回転させ、角度A及びBがそれぞれ約90度となった状態を図1(c)に示す。
この一連の動作においては、シャフト11の回転による角度A及びBの変化量dA及びdBはいずれも増加する。一方、シャフト11を逆方向に回転すれば、変化量dA及びdBはいずれも減少する。即ち、dA×dB≧0の関係が成立する。なお、この一連の動作においては、左右両側での伝達トルクがバランスしている限り、シャフト11は軸方向に移動することなく、軸回りに回転する。
ここで、ウォーム9,10がウォームホイール7,8を回転させるトルクに一時的にアンバランスが生じると、ばね16,17が伸長又は収縮してシャフト11が軸方向に移動するが、定常的にはセンタリング手段20により、シャフト11は中立位置へ戻り、第1のリンク1及び第3のリンク3の位置は安定する。
次に、図2(a)〜(c)に、掌部材4を静止系として見た場合の第1〜第3のリンク1〜3の動きを示す。図2(b)において、紙面下方を重力方向とすると、重力は、第2のリンク2を反時計方向に回動させるように作用する。これにより、シャフト11は、第2のリンク2に対してQ方向に並進し、それにより角度Aが増加するとともに角度Bが減少する。センタリング手段20はこの重力の作用を打ち消し、姿勢を維持する働きをしている。また、その他振動等の外乱に対しても同様の作用が有る。
図3(a)〜(c)は、把持対象としての物品が存在する場合の動作状態を示している。図3(a)は図1(b)と同じ状態であり、ほぼ角度A=角度Bである。今、例えば図3(b)に示すように第1のリンク1側に近い物体81を把持する場合には、まず第1のリンク1が物体81に押されるため、角度Aを減少させる方向に第1のリンク1が回動ピン5まわりの回転を始める。これにより、ウォームホイール7及びウォーム9を介して並進力がシャフト11に伝えられ、センタリング手段20のばね17の力に抗してシャフト11がP方向に移動する。これによりウォーム10及びウォームホイール8を介して第3のリンク3に回転駆動力が伝達され、第3のリンク3は角度Bが増加する方向に回転する。そして、第1のリンク1と第3のリンク3に作用するトルクのアンバランスが解消するまでシャフト11が移動する。このように、両トルクのアンバランスが存在する場合であってもウォーム9,10が軸方向に並進することによってそれを解消し、把持対象である物品81に自動的に馴染ませることができる。この動作において、シャフト11の並進によるA、Bの変化量はdA≦0、dB≧0である。即ち、シャフト11の並進による角度A及びBの変化量dA及びdBについて、dA×dB≦0の関係が成立する。
また、図3(c)に示すように、第3のリンク3に近寄った物品82に対してはシャフト11で結合されたウォーム9,10がQ方向に並進し、上記同様にバランスして把持が行われる。この動作において、シャフト11の並進による角度A及びBの変化量はdA≧0であり、かつdB≦0である。即ち、シャフト11の並進による角度A及びBの変化量dA及びdBについて、dA×dB≦0の関係が成立する。
ギヤ12は、軸方向に長く形成されているので、図3(b)、図3(c)のようにシャフト11が軸方向に並進移動しても、ギヤ15と係合状態を維持できる。
図4(a)〜(c)は更に小さい物品83,84を把持する場合の例であり、やはり物品83,84の位置ずれをシャフト11の並進によって第1のリンク1及び第3のリンク3を対応させることで把持が可能となる。
以上のように、本実施の形態1によれば、把持する物品のサイズ等はウォーム9,10を含むシャフト11の回転で対応し、物品の位置ずれに対してはシャフト11の並進で対応することができる。これにより、種々の物品や状態に対応できる把持機構を提供することができる。
すなわち、本実施形態1では、物品を把持する前の段階においてシャフト11が回転すると、両ウォームホイール7,8が互いに逆回転して第1及び第3リンク1,3の広がり方が変化する。すなわち角度A及び角度Bが共に大きくなるか、共に小さくなるため、dA×dB≧0となる。このため、把持対象の物品の大きさに応じてシャフト11が回転することにより、物品を把持できるように第1及び第3リンク1,3の角度を調整することができ、その調整された状態で物品を把持することができる。一方、把持対象の物品が第1及び第3リンク1,3に対して位置ずれしている場合等、物品から第1及び第3リンク1,3が受ける力がアンバランスになった場合には、ウォームホイール7,8を介してウォーム9,10が受けるトルクが互いにアンバランスになるため、シャフト11は、両ウォーム9,10のトルク差に応じた分だけ軸方向に変位することとなる。このとき、第1及び第3リンク1,3が物品から受けるトルクがバランスしてトルク差が解消されるように、両ウォームホイール7,8がそれぞれ同じ方向に回転するか、または付加トルクの大きなウォームホイール7,8は回転せずにもう一方のウォームホイール8,7のみが回転する。すなわち、ウォーム9,10の軸方向移動時にdA×dB≦0となる。このとき、ウォームホイール7,8に反力を取って、シャフト11が軸方向に移動している。これにより、物品に対して把持機構が位置ずれしている場合であっても、うまく把持することができる。このように、把持対象の大きさに応じてシャフト11を回転させることにより、種々の大きさの物に対応でき、しかも形状や位置関係に応じてシャフト11が軸方向に移動することで受けるトルクのアンバランスにも対応できる。したがって、多数のモータを用いなくても、簡単な構成でありながら把持に必要な自由度を有し、しかも物の形状にならって把持できる把持機構を実現することができる。
また本実施形態1では、連結部材を、一体的に形成されたシャフト11によって構成したので、簡単な構成で必要な把持力が得られる構成を実現することができる。
また本実施形態1では、2つのウォーム9,10が互いに逆向きの螺旋になっているので、シャフト11の回転によって両リンク1,3を互いに逆向きに回動させる構成を簡単な構成で実現することができる。
また本実施形態1では、シャフト11を中立位置に復元させるセンタリング手段20が設けられているので、物品を把持していないときに、第1及び第3リンク1,3の向きを安定させることができる。しかもセンタリング手段20がばね16,17の弾性力によって復元させる構成なので、簡単な構成でシャフト11を所定位置に復元させることができる。
なお、本実施の形態では把持動作のアプローチ時のリンク間の形状を維持するためにセンタリング手段20を設けているが、物品へのアプローチにおいて精度があまり高いものを要求しないのであれば、センタリング手段20を省略することも可能である。この場合にはコストダウンが図られる。
また、本実施形態ではギヤ12がシャフト11に固定されているが、シャフト11に対するギヤ12の移動を許容し、シャフト11に対する回転のみを規制するように、シャフト11に対するギヤ12の結合をキー結合としてもよい。こうすれば、ギヤ12の小型化が図れてスペースファクタが改善され、またギヤ歯面における摺動摩耗を防止することができる。また、摩擦力の発生する領域がシャフト11まわりに限定され、シャフト11の並進移動がより容易になる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図面を参照しながら説明する。
図5(a)〜(c)は、本発明の実施の形態2における関節機構を示す構成図である。本実施の形態は、実施の形態1のウォームホイール7及びウォーム9をウォームホイール27及びウォーム29に変更したものであり、その他はセンタリング手段20の構成を含め同じである。
ウォームホイール27、ウォーム29は、ウォームホイール8、ウォーム10に対し、径は同じであるが、モジュールが半分に設定されている。このため、ウォームホイール27はウォーム8に対して歯数が2倍になり、ウォームギヤとしての減速比が2倍の大きさになっている。
そのため、シャフト11の回転により、第1のリンク1と第2のリンク2との間に生じるトルクは、第2のリンク2と第3のリンク3との間に生ずるトルクの2倍になっている。これは、一般に構造体に負荷をかけた場合に先端側よりも根元側のモーメントが大きくなる状態に対応するものである。
以下、実施の形態2の動作について説明する。センタリング手段20の動作等、概略は実施の形態1と同一であるため省略し、相違点のみを述べる。
シャフト11の回転に対し、根元側のウォームギヤでは前述のように減速比が2倍になっているため、掌部材4に近い側のモーメント対応力が大きくなる。そのため、把持の負荷能力が増大する。このとき、図5(b)に示すように、シャフト11の回転に伴う角度Aが、角度Bより小さくなってアンバランスとなるが、シャフト11の並進によりバランスを回復することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、発生トルクの違いに容易に対応でき、構造に適した適正なモーメントに対応する関節機構を容易に実現できる。
なお、本実施の形態において、減速比の変更をモジュールを変更することによって行ったが、ウォームホイールの直径を変えることによって減速比を変更するようにしてもよい。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図面を参照しながら説明する。
図6(a)〜(c)は、本発明の実施の形態3における関節機構を示す構成図である。本実施の形態3は、実施の形態1のセンタリング手段に変えて、抵抗手段が設けられている。そして、本実施形態3ではフランジのないシャフト31が用いられている。その他は実施の形態1と同じである。
抵抗手段は、第2のリンク2に固定されたスリーブ32と、粘性物質33とを有する。スリーブ32にシャフト31が挿通されている。そして、粘性物質33は、スリーブ32とシャフト31の間に介装されている。粘性物質33の粘度としては、シャフト31が自重で10mm/s程度以下の速度で移動する程度の粘度が望ましい。材質としては、好ましくはゲル状の物質や高粘性のオイル状物質が好ましい。
粘性物質33は、シャフト31とスリーブ32間の相対速度に応じた抵抗力を発生する物質である。従って、急激な相対速度に対しては、シャフト31の動きが妨げられる。
本実施の形態の動作については、実施の形態1との相違点のみを述べる。
粘性物質33の効果によって、シャフト31は自重や重力変化等に対してゆっくりと軸方向に変位する。そして、把持のためのアプローチの際にはシャフト31は大きく変化しないため、第1及び第3リンク1,3が急激に回動するのを抑制でき、安定な動作が実現する。
図6(b)、(c)に示すように、第1の実施形態と同様に位置ずれした物品81、82を把持するような際には、粘性物質33は、第1のリンク1及び第3のリンク3の接触状態に伴って、シャフト31のP方向又はQ方向へのゆっくりした変位を許容する。しかも、本実施形態では、ばねの変形に抗する力を発生させる必要もない。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、図面を参照しながら説明する。
図7(a)〜(c)は、本発明の実施の形態4における関節機構を示す構成図である。本実施の形態4では、実施の形態1のセンタリング手段に変えて、抵抗手段が設けられているが、この抵抗手段が実施形態3と異なっている。本実施形態4でもフランジのないシャフト41が用いられている。その他は実施の形態1と同じである。
抵抗手段は、回動ピン5,6とウォームホイール47,48の間に封入された粘性物質42によって構成されている。粘性物質42としては、実施の形態3の粘性物質33と同様の物質が利用できる。
粘性物質42は、回動ピン5とウォームホイール47との間の相対速度に応じた抵抗力を発生するとともに、回動ピン6とウォームホイール48の間の相対速度に応じた抵抗力を発生する。従って、第1のリンク1及び第3のリンク3が急激に回動するのを防止することができる。
本実施の形態4の動作については図7(b)、(c)のごとく実施の形態3とほぼ同じであり、また効果についても実施の形態3とほぼ同じである。
なお、本実施の形態4では、粘性物質42を回動ピン5,6とウォームホイール47,48との間に入れて速度抵抗を付与する構造としたが、第2のリンク2とウォームホイール47,48との間に粘性物質を介在させる構成としてもよい。
また、実施の形態3、4では、粘性物質による速度抵抗構造を採用したが、粘性物質に代えて、摩擦体による速度抵抗構造にしてもよい。この速度抵抗構造としては、例えばリング状の樹脂部材により構成することができる。この場合でも前記同様の効果が得られる。
更に、速度抵抗と標準形態への復原力が要求される場合には、速度抵抗構造に加えて実施の形態1で用いたセンタリング手段20を併用してもよい。
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、図面を参照しながら説明する。
図8(a)、(b)、図9(a)〜(c)は、本発明の実施の形態5における関節機構を示す構成図である。
図8(a)は、制動機構としてのブレーキ機構50を示している。ブレーキ機構50は、ソレノイドを有するものであり、磁性材料からなる磁極52と、その先端に設けられたゴム等の弾性体によって構成されたパッド51と、磁性材料で構成された有底筒状のヨーク54と、ヨーク54内部に配置された輪状のコイル53と、磁極52におけるパッド51とは反対側の端部に設けられ、ヨーク54との間に存在するばね55とを備えている。
図8(a)は無通電状態を示しており、この状態ではばね55が自由長に伸びている。一方、図8(b)は通電状態を示し、この状態では、コイル53で発生した磁束がヨーク54によって導かれていて、磁力によって磁極52がばね55の弾性力に抗して吸引されている。
図9(a)は、ブレーキ機構50が設けられた関節機構の全体を示している。本実施の形態5は、ブレーキ機構50を除いて実施の形態1と同様の構成である。ブレーキ機構50が第3のリンク3に搭載されており、通常は通電状態となっている。図中の符号58、59は回動ピンであって、第3のリンク3側にある回動ピン59に摩擦板57が剛に固定されている。即ち、摩擦板57は第2のリンク2に固定されている。
摩擦板57には、パッド51が対向する円弧面に沿って粗な摩擦面が形成されている。ブレーキ機構50が無通電状態となると、磁極52がブレーキ機構50から図8(a)のように飛び出す。これにより、パッド51が摩擦板57の粗な摩擦面に接触し、大きな摩擦力が発生する。
第2のリンク2には、角度センサ71,72が搭載されている。角度センサ71は、第2のリンク2に対する第1のリンク1の角度Aを測定し、角度センサ72は、第2のリンク2に対する第3のリンク3の角度Bを測定する。角度センサ71,72は、図外の制御部と信号の授受が可能に接続されている。この制御部は、角度センサ71,72から出力された信号に基づいて、ブレーキ機構50及びモータ13を制御する。
その他の構造は、実施の形態1と同じである。
以上のように構成された関節機構について、以下その動作を説明する。
図9(a)〜(b)に至る状態は、ブレーキ機構50に通電されているためパッド51は摩擦板57に接触していない。そのため、実施の形態1と同じく第1のリンク1及び第3のリンク3は回動する。そして、図9(b)に示すように、第3のリンク3が所定の角度まで回動すると、角度センサ72の出力が所定の値になるので、その時点でブレーキ機構50を無通電にすると、磁極52を吸引していた磁場が消失する。これに伴って磁極52は、ばね55によってブレーキ機構50から突出し、パッド51が摩擦板57と接触する。そのため、第3のリンク3は第2のリンク2に対して固定される。
この状態で更にシャフト11を回転させると、第3のリンク3は第2のリンク2に対して固定されているから、第3のリンク3は図9(b)の状態に維持される。これに対し、第1のリンク1は回動可能であるから、角度Aが増加する方向に回動する。この時、ウォームホイール8は回転していないため、ウォーム10の回転により、シャフト11は回転しながらセンタリング手段20のばね力に抗して図示Q方向に並進移動する。そして、角度センサ71の出力を見て、図9(c)の状態でモータ13を止めると、第1〜第3のリンク1〜3の相対角度は保持される。
以上、本実施の形態に述べたように、ブレーキ機構50により、第3のリンク3と第2のリンク2の間の相対回転がないように固定することで、関節機構の所望の形態の静止形態を得ることができる。そして、種々の物品把持に際し、予め適した静止形態に調整した上で物品を把持することができるようになる。また実質的に、モータ1個で2自由度の形態をとることが可能となる。
なお、本実施の形態5においてはブレーキ機構50を第3のリンク3に配置して第2のリンク2との間の運動を止めたが、これに限られるものではない。すなわち、ブレーキ機構50を第1のリンク1に搭載するとともに、回動ピン58に摩擦板57を配置し、予め角度Aを固定してから角度Bを調整するようにしてもよい。あるいは両方にブレーキ機構50を搭載してもよい。いずれも場合でも静止した把持形態の形成が可能である。
また、摩擦板57の形状やブレーキ機構50の構成は前記構成に限定されるものではない。リンク間の相対移動を固定するためのものであればよく、種々変更が可能である。ブレーキ機構50をソレノイドとして例示したのは、一般的にアクチュエータとしては小型に形成できるからである。また、摩擦で固定するのが耐久性の点から困難な場合には、機械的に固定する構成であってもよい。例えば、多数のピン穴を回動方向に形成しておいて、その中から選択されたピン穴にピンを挿入することで固定するようにしてもよい。ただしこの場合には離散値的な固定形式となる。
また、角度A,Bを検出する手段として角度センサ71,72を用いたが、例えば外部のカメラによる画像計測によって角度A,Bを検出する構成でも差し支えない。
このように、本実施の形態によれば、限られたモータから多数の関節に駆動力を分配し、それら関節に適切なブレーキ機構を配置し、望ましい位置で固定することで、限られたモータによって実質的に自由度に変化を持たせることができる。
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について、図面を参照しながら説明する。
図10(a)、(b)、図11(a)〜(c)は、本発明の実施の形態6における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
図10(a)、(b)は本実施の形態6における第3のリンク3及びその搭載部品を示しており、(b)は側面図、(a)は平面図である。符号61は電磁石で構成された断続機構としてのクラッチ機構を示している。クラッチ機構61は、第3のリンク3に固定されていて、回動ピン6を嵌め込み可能となっている。ウォームホイール67,68は実施の形態1のウォームホイール7,8と同一の形状を有するが、磁性材料で形成される点でウォームホイール7,8と異なっている。またウォームホイール68は、第3のリンク3には固定されていない点で実施形態1と異なる。角度センサ71,72は実施の形態5と同じものである。
クラッチ機構61は、ウォームホイール68と第3のリンク3の結合状態を切り替えることによって、モータ13と第3のリンク3との間の駆動力の伝達経路を断接する。本実施形態では、クラッチ機構61は、磁気的吸引力による摩擦力によって駆動力の伝達経路を接続する。図10(a)において、クラッチ機構61が無通電であると、ウォームホイール68は第3のリンク3とは分離しており、駆動力は伝達されない。言い換えるとウォームホイール68は第3のリンク3に対して空転が可能である。一方、クラッチ機構61に通電すると、ウォームホイール68はクラッチ機構61に吸着されて、第3のリンク3と一体化した回転が可能となる。
また、第3のリンク3と第2のリンク2の間は実施の形態4などで記載したように粘性結合されている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
以上のように構成された関節機構について、以下その動作を説明する。
図11(a)〜(b)に至る状態は、クラッチ機構61に通電されているため、ウォームホイール68は第3のリンク3と一体化している。そのため、第1のリンク1、第3のリンク3は、実施の形態1と同じように、シャフト11の回転に伴って回動する。図11(b)において、角度センサ72の出力が所定の値になった時点でクラッチ機構61を無通電にすると、ウォームホイール68は第3のリンク3から分離し、空転が可能となる。
この状態で更にシャフト11を回転させると、第3のリンク3は第2のリンク2に対して粘性結合しており、ウォームホイール68は空転が可能であるため、第3のリンク3は動かず、ウォームホイール68のみがW方向に空転する。そのため、第3のリンク3は図11(b)の状態を維持する。一方、第1のリンク1はシャフト11の回転に伴って回動可能であるから、角度Aが増加する方向に回転する。そして例えば角度センサ71の出力を見て、図11(c)の状態でモータ13を止め、再びクラッチ機構61に通電すると、第1〜第3のリンク1〜3の相対角度は、その状態で保持される。
以上、本実施の形態6では、クラッチ機構61によって第3のリンク3と第2のリンク2の間の相対回転を制止させることが可能となっており、実施の形態5と同様、関節機構の所望の形態の静止形態をえることができる。そして、種々の物品把持に際し、予め適した静止形態に調整した上で物品を把持することができるようになる。
なお、実施の形態5と同様、クラッチ機構を第1のリンク1に搭載するようにしてもよく、あるいは第1のリンク1と第3のリンク3の双方に搭載してもよい。
また、本実施形態6では、ウォームホイール68と第3のリンク3を結合する機構として電磁石によるクラッチ機構61を用いたが、これに限定されるものではなく、請求の範囲の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
このように、本実施の形態6によれば、実施の形態5と同様、限られたモータから多数の関節に駆動力を分配し、それら関節に適切なクラッチ機構を配置し、望ましい位置で固定することで、限られたモータによって実質的に自由度に変化を持たせることができる。
実施形態1〜6は、何れも関節機構が把持機構として構成された例について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、物品の把持をするためのリンク機構ではなく、それ以外の用途を有する関節機構としてもよい。
(実施の形態7)
以上、実施の形態1〜6に示す関節機構を関節装置の一態様としての把持装置の把持指として適用することにより、低コストでしかも多数の物品の把持に適応できる把持装置を容易に実現することが可能である。例えば、図12は1つの関節機構を備えた把持装置の一例を示しており、図13は、複数の関節機構を備えた把持装置の一例を示している。
図12に示す把持装置は、掌対向による1本指の把持装置である。関節機構101は、実施の形態1として説明した把持機構として構成された関節機構である。関節機構101の第1のリンク1は、回動ピン73aによって掌部材73に結合されている。そして、関節機構101は、支持体としての掌部材73に支持されている。掌部材73は、手首部材74に結合されている。関節機構101は、掌部材73に内蔵のモータ(図示省略)により、掌部材73の回動ピン73a回りに回動される。そして、モータ13の駆動によってシャフト11が回転するとともに軸方向に変位して、これによってリンク1,3が物品85に沿い、把持が実現する。なお、第1のリンク1を掌部材73にピン結合する構成に代え、第1のリンク1と掌部材73とを一体的に構成してもよい。この構成では、この一体的に構成されたリンクが第1のリンクとして機能し、この第1のリンクが、支持体として機能する手首部材74に支持される構成となる。
図13に示す把持装置は2本指の把持装置である。関節機構102,103はそれぞれ、実施の形態1として説明した把持機構として構成された関節機構である。関節機構102の第1のリンク1は、回動ピン75aによって掌部材75に結合され、また関節機構103の第1のリンク1は、回動ピン75bによって掌部材75に結合されている。掌部材75は、手首部材76に結合されているが、これらが一体的に構成されていてもよい。掌部材75と手首部材76は支持体として機能する。関節機構102,103の回動ピン75a,75b回りの回動は、掌部材75内蔵のモータによって行われる。そして、1本指の把持装置同様に、関節機構102,103内でのシャフト11,11の回転及び軸方向移動によってリンク1,3が物品85に沿い、把持が実現する。
なお、一方の関節機構102の第1のリンク1と掌部材75とを一体的に構成してもよい。この構成では、この一体的に構成された折れ曲がり形状のリンクが第1のリンクとして機能し、この第1のリンクが、支持体として機能する手首部材76に支持されるとともに、この第1のリンクに、もう一方の関節機構103の第1のリンク1が連結されることになる。また、他方の関節機構103の第1のリンク1と掌部材75とが一体的に構成されていてもよい。
また、両関節機構102,103の第1リンク1,1と掌部材75とが一体的に構成されていてもよい。この構成では、この一体的に構成されたものが第1のリンクとして機能し、この第1のリンクが、支持体として機能する手首部材76に支持される構成となる。すなわち、この構成では、2つの関節機構102,103に対して第1のリンクが共用化された構成となる。
前記掌部材75に、関節機構と同様の機構を搭載してもよい。また、関節機構としては実施の形態2〜6のいずれも利用可能である。また、関節機構を更に並列状態に配置した把持装置も構成できる。この場合には、把持力を増加させることができる。更に、これら把持装置を用いたロボット等も実現可能である。
(実施の形態8)
以下、本発明の実施の形態8について、図面を参照しながら説明する。
図14は、本発明の実施の形態8における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
本実施形態8では、シャフト11に設けられるギヤ212がウォーム9の外側に配置されている。すなわち、前記実施形態1では、シャフト11の端部に配置された一対のウォーム9,10の間にギヤ12が位置しているが、本実施形態8では、一方のウォーム9がシャフト11の中間部に配置されるとともに、このウォーム9の外側にギヤ212が配置されている。これに伴い、第1のリンク1のウォームホイール7も第2のリンク2の端部から少し中央寄りのところに配置されている。このため、本実施形態8では、前記実施形態1に比べ、ウォームホイール7,8間の間隔を狭くすることができ、第1のリンク1と第3のリンク3との間隔を狭くすることができる。
(実施の形態9)
以下、本発明の実施の形態9について、図面を参照しながら説明する。
図15(a)(b)は、本発明の実施の形態9における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
本実施形態9は、ウォーム309がシャフト311に対して回転可能に設けられるとともにこのウォーム309をシャフト311に固定する固定手段を有する。もう一方のウォーム10は実施形態1と同様にシャフト311に固定されている。以下、具体的に説明する。
ウォーム309には、シャフト311が挿通可能な挿通孔309bが設けられており、この挿通孔309bにシャフト311が挿入される構成である。このため、ウォーム309が後述のキー320によって固定されない状態では、ウォーム309はシャフト311に対して軸回りに相対的に回転可能である。
固定手段は、ウォーム309の挿通孔309bに設けられたキー溝であるウォーム側溝部309aと、シャフト311に設けられたキー溝であるシャフト側溝部311aと、これら溝部309a,311aに挿入される固定部材としてのキー320とを有する。
ウォーム側溝部309aは、挿通孔309bの周方向に間隔をおいて複数設けられている。図例は、4つのウォーム側溝部309aが等間隔に設けられた例である。一方、シャフト側溝部311aは、シャフト311のウォーム309側の端部における外周面に1つ設けられている。
キー320は、ウォーム側溝部309aとシャフト側溝部311aとによって形成される空間に挿入可能である。そして、キー320がこの空間内に配置されることにより、ウォーム309はシャフト311の軸回りに回転不能となる。つまり、ウォーム309とシャフト311の相対角度が固定される。
第1のリンク1を第2のリンク2に組み付ける際には、ウォーム309をシャフト311に対して回転可能にしておけば、このウォーム309に噛み合う第1のリンク1を回動ピン5回りに自由に回動させることができる。このため、第3のリンク3との関係で第1のリンク1の開き角度Aを微調整することができる。そして、所定の角度に最も近くなるようにウォーム側溝部309aとシャフト側溝部311aとを合わせてキー320を挿入すれば、ウォーム309を固定することができる。図中、破線で示す1a、1bは、選択されるウォーム側溝部309aが変更されることで、第1のリンク1の初期位置が変化することを表している。この初期位置での第1のリンク1の開き角度Aの変化量は、ウォーム309のピッチ、ウォームホイール7の歯数、ウォーム側溝部309aの間隔によって決まる。したがって、ウォーム側溝部309aの数は適宜設定すればよい。
本実施形態9では、ウォーム309をシャフト311に組み付ける際に、ウォーム309をシャフト311に対して所定の向きになるようにセットして、第1のリンク1及び第3のリンク3の開き角度を調整した上で、ウォーム309を固定することができる。
なお、固定手段としては、キーとキー溝とからなる構成に限られるものではない。例えば、ウォームをシャフトに回転可能に設けるとともに、接着剤でウォームをシャフトに固定するようにしてもよい。あるいは、図16に示すように、ウォーム309に半径方向に貫通するようにねじ孔309cを形成しておき、固定部材としてのねじ321を螺合することによってウォーム309をシャフト311に固定してもよい。
(実施の形態10)
以下、本発明の実施の形態10について、図面を参照しながら説明する。
図17(a)(b)は、本発明の実施の形態10における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
本実施形態10は、回転トルクに対してギヤ等を保護するためのトルクリミッタ420が設けられる形態である。トルクリミッタ420は、モータ13とシャフト11との間の駆動力伝達系統に設けられている。トルクリミッタ420は、第1ギヤ415aと、第2ギヤ415bと、これらギヤ415a,415bを互いに押し付け合う方向に付勢するばね431と、このばね431の反力を取るためのフランジ430a,430bとを有する。フランジ430a,430bは両ギヤ415a,415bを貫通するシャフト430に設けられるものである。
第1ギヤ415aはモータ13の駆動軸に設けられたギヤ14と噛み合い、第2ギヤ415bはシャフト11に設けられたギヤ12と噛み合っている。第1ギヤ415aと第2ギヤ415bとは同軸上に配置されている。
第1ギヤ415aと第2ギヤ415bは、圧縮状態のばね431とともに一対のフランジ430a,430b間に配置され、ばね431の弾性力によって互いに押し付けられている。両ギヤ間には摩擦が生じており、この静止摩擦によって伝達されるトルクは、ギヤ等を損傷しない程度に設定されている。そして、最大静止摩擦を超えるトルクが発生すると、第1ギヤ415aと第2ギヤ415bとの間で滑りが生じ、相対回転する。
モータ13の出力軸に一体のギヤ14が第1ギヤ415aと噛み合い、この第1ギヤ415aと第2ギヤ415bとは摩擦によってトルクを伝達する。このトルクはシャフト11に設けられたギヤ12に伝達される。そして、何らかの異常により、シャフト11の回転が停止した場合、大きなトルクがモータ13からシャフト11への伝達系に作用することになるが、ギヤ等を破損しない程度の限界トルク以下で第1ギヤ415aと第2ギヤ415bとの間で滑りが生ずるため、ギヤ等の破損を防止することができる。
なお、トルクリミッタ420はギヤ415a,415b間のトルク伝達を遮断する構成に限られない。例えば、図18に示すように、シャフト411に設けられていてもよい。すなわち、シャフト411は、ギヤ12が設けられる第1シャフト部411aと、ウォーム9が設けられる第2シャフト部411bとに分割され、これらシャフト部411a,411bに跨るように連結部433が設けられる。連結部433とシャフト部411a,411bとの間の摩擦によりトルク伝達がなされる一方、限界トルク以上のトルクが負荷されたされた場合には連結部433とシャフト部411a,411bとの間に滑りが生ずる。
また、トルクリミッタは摩擦を利用した構成に限られるものではない。例えば、第1ギヤ415aにおける第2ギヤ415bとの対向面を鋸歯状に形成するとともに、第2ギヤ415bにおける第1ギヤ415aとの対向面を鋸歯状に形成し、互いに噛み合う構造とする。そして、鋸歯の山を越えるポテンシャルをリミットとするようにしてもよい。この態様でも、トルクリミッタは、摩擦を利用した形態と同様、トルクの増加に対して非線形的な作用となる。
(実施の形態11)
以下、本発明の実施の形態11について、図面を参照しながら説明する。
図19(a)(b)は、本発明の実施の形態11における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
本実施形態11は、ロボットハンドの指機構の開閉関節として機能する関節機構である。この関節機構の第1のリンクは、冠指に相当する指機構101であり、第3のリンクは、示指に相当する指機構103であり、第2のリンクは、掌に相当する掌機構102である。掌機構102は、第1の掌部102aと第2の掌部102bと、これらを連結する揺動アーム85及びギヤ86とを有する。第1の掌部102aと第2の掌部102bとは連結角度が可変となっている。第1の掌部102aには、中指に相当する指機構104aが設けられ、第2の掌部102bには、拇指に相当する指機構104bが設けられている。
モータ113及び支持壁118,119は、掌機構102の第1の掌部102aに固定されている。支持壁間には、ばね116,117が配設されるとともに、これらばね116,117間にシャフト111のフランジ111aが設けられている。フランジ111a、ばね116,117及び支持壁118,119によって、ウォーム109、110のセンタリング手段が構成されている。
シャフト111にはギヤ112が設けられており、このギヤ112は、ギヤ115を介して、モータ113のギヤ114と駆動力を伝達可能に連結されている。指機構101はウォームギヤ107と一体的に回動し、指機構103はウォームギヤ108と一体的に回動する。したがって、指機構101と指機構103は、モータ113の駆動によって何れも開き角度を変えることができる。そして、指機構101,103は把持物品の形状等に倣ってそれぞれ開き角度を変えることができる。
また、第1の掌部102aには回動ピン6を支持するピン支持部102cが設けられており、このピン支持部102cには、指機構101を握り方向に回動可能に支持するための回動ピン120が支持されている。指機構103,104a,104bについても同様に握り方向に回動可能となっている。
(実施の形態12)
以下、本発明の実施の形態12について、図面を参照しながら説明する。
図20(a)〜(c)は、本発明の実施の形態12における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
実施形態1〜6、8〜10は、把持機構として構成された関節機構について、示したが、本実施形態12では、関節機構は物を把持するための機構ではなく、任意の姿勢を取り得るように2つの関節を有する関節機構である。例えばこの関節機構は、ロボットの脚関節として機能するものであり、第3のリンク3はロボットの足に相当する。第1のリンク1は例えば太ももに相当するリンクであり、このリンク1は、ロボットの胴部に相当する部材4とピン4aによってピン結合されている。第2のリンク2は、例えば下腿に相当する。
この関節機構は、モータ13の駆動により、第2のリンク2に対する第1のリンク1の角度及び第3のリンク3の角度が相対的に変化する。このとき、第3のリンク3が床面に接触した状態であれば、第3のリンク3が動くのではなく第2のリンク2が回動ピン6回りに回動することになる。一方、第1のリンク1は、胴部材4から受ける力によって第2のリンク2に対する回動角度が決まる。つまり、実施形態1で説明したように、第1のリンク1が受ける外力と第3のリンク3が受ける外力とが同じ大きさであれば、シャフト11が軸方向に移動することなく第1及び第3のリンク1,3が回転するので、第2のリンク2に対する第1のリンク1の回動角度と第2のリンク2に対する第3のリンク3の回動角度とが同じになる(図20(b))。一方、第1のリンク1が受ける外力と第3のリンク3の受ける外力とが異なる大きさであれば、それに応じてシャフト11が軸方向に変位して両者の回動角度が異なるものとなる。図20(c)は第3のリンク3が受ける力の方が第1のリンク1が受ける力よりも大きい場合を例示している。
なお、本実施形態12では、第1のリンク1及び第3のリンク3が受ける力の大きさに応じて両リンク1,3の回動角度の関係が決まってしまう。したがって、この関節機構に、実施の形態5で示した制動機構や実施の形態6で示したクラッチ機構を設ければ、リンク1,3の回動角度を積極的に制御することが可能となり、リンク1,3の角度を所望の角度に調整することが可能となり、関節機構が任意の姿勢を容易に取ることができるようになる。
[実施の形態の概要]
ここで、本実施の形態の概要について、以下に説明する。
(1) 以上説明したように、本実施形態では、第1及び第3のリンクが外力を受けていない場合に両ウォームが同じ方向に回転すると、両ウォームホイールが互いに逆回転して第1及び第3のリンクの広がり方が変化する。すなわち第1のリンクと第2のリンクの成す角度A、第2のリンクと第3のリンクの成す角度Bが共に大きくなるか、共に小さくなるため、dA×dB≧0となる。このため、第1及び第2のウォームの回転に応じて第1及び第3のリンクの角度を調整することができる。一方、第1のリンクが受ける外力と第3のリンクが受ける外力とがアンバランスになった場合には、ウォームホイールを介して受ける両ウォームのトルクが互いにアンバランスになるため、両ウォームは、両ウォームホイールのトルク差に応じた分だけ軸方向に変位することとなる。このとき第1及び第3のリンクが受けるトルクがバランスするように、両ウォームが一体的に軸方向に変位する。これに伴い、両ウォームホイールがそれぞれ同じ方向に回転するか、または付加トルクの大きなウォームホイールが回転することなくもう一方のウォームホイールのみが回転する。すなわち、ウォームの軸方向移動時にdA×dB≦0となる。このように、本実施形態では、第1及び第3のリンクの開き角度を、両ウォームの回転量に応じた開き角にすることができ、しかも連結部材が軸方向に移動可能に構成されていることにより、第2のリンクに対する第1のリンク又は第3のリンクの角度を変えることができる。したがって、任意の姿勢を取り得る関節機構を簡単な構成で実現することができる。
(2) 前記連結部材は、一体的に形成されたシャフトによって構成されているのが好ましい。
(3) 前記第1のウォームと前記第2のウォームは、相互に逆向きの螺旋を有するのが好ましい。この態様では、連結部材の回転によって第1及び第3のリンクを互いに逆向きに回動させる構成を簡単な構成で実現することができる。
(4) 前記第2のリンクにモータが固定され、このモータによって前記連結部材が回転するのが好ましい。
(5) 前記連結部材を軸方向の所定位置に復元するセンタリング手段が設けられているのが好ましい。この態様では、第1及び第3のリンクが外力を受けていないときに、第1及び第3のリンクの向きを安定させることができる。
(6) この態様において、前記センタリング手段には弾性部材が含まれており、この弾性部材の弾性力によって前記連結部材を所定位置に復元するのが好ましい。この態様では、簡単な構成で連結部材を所定位置に復元させることができる。
(7) 前記第1のリンクが支持体に連結可能に構成される場合には、前記第1のウォーム及びウォームホイールの減速比が、前記第2のウォーム及びウォームホイールの減速比よりも高いのが好ましい。支持体に連結される根元側リンクとなる第1のリンクでは、ウォーム及びウォームホイールに生ずるトルクが大きくなるが、この態様では、根元側のウォームギヤの減速比をもう一方のウォーム及びウォームホイールの減速比よりも高くしているので、トルクの違いに対応し易くなる。
(8) 前記第2のリンクに対する前記連結部材の軸方向相対移動速度に応じた抵抗を発生する抵抗手段が設けられていてもよい。この態様では、第2のリンクの向きに応じた重力変化の発生や連結部材の自重等によって連結部材が軸方向に移動しようとする際に、連結部材が急激に移動するのを抑制することができる。このため、把持のためのアプローチの際に安定した動作を得ることができる。
(9) 前記第2のリンクに対する前記第1及び第2のウォームホイールの相対回転速度に応じた抵抗を発生する抵抗手段が設けられていてもよい。この態様では、第1及び第3のリンクが急激に回動するのを抑制することができる。
(10)前記抵抗手段は、相対移動が行われる両者の間に介在する粘性物質を有するのが好ましい。
(11)前記第2のリンクに対する前記第1のリンクの角度変化を阻止する制動機構、及び前記第2のリンクに対する前記第3のリンクの角度変化を阻止する制動機構の少なくとも一方が設けられていてもよい。この態様では、第2のリンクと第1又は第3のリンクとの間の角度変化が生じないように維持できるので、物を把持する動作等の所定の動作の前に第1及び第3の少なくとも一方のリンクの向きを予め決めることが可能となる。したがって、所定の動作に際してその直前に最適な形態に調整することができる。
(12)この態様において、前記制動機構を有するリンク間の相対角度を検出する角度センサを有し、前記角度センサの出力に基づいて前記制動機構を動作させるのが好ましい。この態様では、リンクの角度を精度良く制御することができる。
(13)前記第1のリンクに対する前記第1のウォームホイールの接続状態を切り換える断続機構、及び前記第3のリンクに対する前記第2のウォームホイールの接続状態を切り替える断続機構の少なくとも一方が設けられていてもよい。この態様では、第2のリンクと第1及び第3のリンクとの間の角度変化が生じないように維持できるので、物を把持する動作等の所定の動作の前に第1及び第3の少なくとも一方のリンクの向きを予め決めることが可能となる。したがって、所定の動作に際してその直前に最適な形態に調整することができる。
(14)前記モータと前記第1のリンクとの間の駆動力伝達経路、及び前記モータと前記第3のリンクとの間の駆動力伝達経路の少なくとも何れか一方の伝達径路に駆動力の断続機構が設けられていてもよい。
(15)そして、前記断続機構を有する第1又は第3のリンクと前記第2のリンクとの相対角度を検出する角度センサを有し、前記角度センサの出力に基づいて前記断続機構を動作させるようにしてもよい。
(16)前記モータと前記連結部材との間には、モータトルクを伝達する複数のギヤと、過大なトルクの伝達を遮断するトルクリミッタとが設けられていてもよい。この態様では、モータから連結部材へ駆動力を伝達するためのギヤの損傷を防止することができる。
(17)関節機構は、物を把持可能な把持機構として構成されていてもよい。この態様では、第1及び第3のリンクが把持対象の物から力を受けていない場合に両ウォームが同じ方向に回転すると、両ウォームホイールが互いに逆回転して第1及び第3のリンクの広がり方が変化する。すなわち角度A及び角度Bが共に大きくなるか、共に小さくなるため、dA×dB≧0となる。このため、把持対象の物の大きさに応じて連結部材が回転することにより、物を把持できるように第1及び第3のリンクの角度を調整することができ、その調整された状態で物を把持することができる。一方、把持対象の物が第1及び第3のリンクに対して位置ずれしている場合等、その物から第1又は第3のリンクが受ける力がアンバランスになった場合には、ウォームホイールを介して受ける両ウォームのトルクが互いにアンバランスになるため、両ウォームは、両ウォームホイールのトルク差に応じた分だけ軸方向に変位することとなる。このとき第1及び第3のリンクが物から受けるトルクがバランスするように、両ウォームが一体的に軸方向に変位する。これに伴い、両ウォームホイールがそれぞれ同じ方向に回転するか、または付加トルクの大きなウォームホイールが回転することなくもう一方のウォームホイールのみが回転する。すなわち、ウォームの軸方向移動時にdA×dB≦0となる。これにより、物が位置ずれしている場合であっても、うまく把持することができる。このように、本発明では、把持対象の大きさに応じて連結部材を回転させることにより、種々の大きさの物に対応でき、しかも物品の形状や位置関係に応じて連結部材が軸方向に移動することで受けるトルクのアンバランスにも対応できる。したがって、多数のモータを用いなくても、簡単な構成でありながら把持に必要な自由度を有し、しかも物の形状にならって把持できる把持機構を実現することができる。
(18)前記第1及び第2のウォームの少なくとも一方が前記シャフトに回転可能に設けられるとともに、前記回転可能なウォームを前記シャフトに対して所定の角度で固定するための固定手段が設けられていてもよい。この態様では、第1及び第2のウォームをシャフトに組み付ける際に、ウォームをシャフトに対して所定の向きになるように容易に組み付けることができる。
(19)本実施形態は、単一の機構駆動源と、3個以上の複数の部材を有し、前記複数の部材が複数の関節で接続され、前記機構駆動源から前記複数の部材に対し駆動力を分配して伝達する伝達系と、前記複数の関節のうちの少なくとも1つの間接の運動を制動する制動機構とを有する関節機構である。この実施形態では、単一の機構駆動源によって複数の部材を駆動するので、構造が簡単であり、かつ把持に必要な自由度を持たせることができる。また制動機構の動作によって自由度に変化を持たせることができる。
(20)この関節機構において、前記複数の部材間の相対角度を検出する角度センサを有し、前記角度センサの出力に基づく信号により、前記制動機構を動作させるのが好ましい。
(21)本実施形態は、単一の機構駆動源と、3個以上の複数の部材を有し、前記複数の部材が複数の関節で接続され、前記機構駆動源から前記複数の部材に対し駆動力を分配して伝達する伝達系と、前記伝達系における前記駆動力の断接を切り替える断続機構とを有する関節機構である。本実施形態では、単一の機構駆動源によって複数の部材を駆動するので、構造が簡単であり、かつ把持に必要な自由度を持たせることができる。また断続機構の動作によって自由度に変化を持たせることができる。
(22)この関節機構において、前記複数の部材間の相対角度を検出する角度センサを有し、前記角度センサの出力に基づく信号により、前記断続機構を動作させるのが好ましい。
(23)本実施形態は、前記関節機構と、この関節機構を支持する支持体とを備えた関節装置である。
以上説明したように、本発明によれば、任意の姿勢を取り得る関節機構を簡単な構成で実現することができる。
本発明に係る関節機構は、ロボット用マニピュレータに用いられるハンドの指における把持機構、ロボットの関節機構として利用可能である。
本発明は、関節機構に関し、主としてロボット用マニピュレータに用いられる関節機構及び関節装置に関するものである。
近年、少子高齢化に伴い労働力の不足、また高齢化が予想されており、それらを補う産業用、家庭用のロボットが期待されている。特に、複雑な作業をこなすためには、種々の物品を把持できる把持機構や任意の姿勢を取り得る関節機構が必須であり、重要である。また、これら把持機構は、手の不自由な人のための義手への適用も種々検討されている。
このような事情を考慮して、物品の把持を行うための指機構が、従来いくつか提案されている。図21は、ウォームとウォームホイールを用いた指の把持機構を義手として用いる例である(例えば、特許文献1を参照)。
モータ91の先端に設けられたウォーム92によってウォームホイール93が回転し、これにより把持指としてのリンク94、95が回動し、例えば握る方向への把持動作が行われる。リンク95が開く方向の力を受けた場合であっても、ウォームホイール93はウォーム92に係合することによって逆転しない。このため物品を強く握り続けることができる。
また、図22は多数のモータを用いて自由度を上げた把持機構の指の例である。(例えば、特許文献2を参照)この把持機構では、4個のモータ96〜99を用いることで4自由度を得ている。
特表平9−510128号公報
特開平11−156778号公報
しかしながら、従来の把持機構には下記のような問題があった。例えば、図21に示す把持機構では、自由度が1しかないため、種々の形状のものを把持することは困難である。例えば平板状の物には、指としてのリンク95が馴染まないため、適切な摩擦力を与えて把持することができない。換言すれば、この関節機構では、指としてのリンク95が任意の姿勢を取ることができない。
一方、図22に示す把持機構は、把持に十分な自由度を持つが、モータの数が多くコストアップになっている。すなわち、この関節機構では、任意の姿勢をとることができるが、それに応じて駆動源が増えてしまう。
本発明の目的は、前記の問題を解決することである。そして、本発明の目的は、任意の姿勢を取り得る関節機構を簡単な構成で実現することである。
本発明の一局面に従う関節機構は、第1のリンクと、前記第1のリンクに回動可能に連結された第2のリンクと、前記第2のリンクに回動可能に連結された第3のリンクと、前記第2のリンクに支持された連結部材と、前記連結部材によって互いに連結され、軸回りに回転可能でかつ軸方向に移動可能な第1及び第2のウォームと、前記第1のウォームに噛み合い、前記第2のリンクに対して前記第1のリンクを回動させる第1のウォームホイールと、前記第2のウォームに噛み合い、前記第2のリンクに対して前記第3のリンクを回動させる第2のウォームホイールと、を備え、前記第1のリンクと前記第2のリンクの成す角を角度Aとし、前記第2のリンクと前記第3のリンクのなす角を角度Bとし、角度Aの変化量をdAとし、角度Bの変化量をdBとしたときに、前記両ウォームの回転によってdA×dB≧0となり、前記第1及び第2のウォームの軸方向移動によってdA×dB≦0となる。
本発明によれば、任意の姿勢を取り得る関節機構を簡単な構成で実現することができる。
(a)〜(c)は本発明の実施形態1による関節機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態1による関節機構において、第1のリンクを固定した状態でシャフトを回転した場合の動きを説明するための図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態1による関節機構において、把持対象の物品が位置ずれしていた場合の動きを説明するための図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態1による関節機構において、小さな物品を把持する場合の動きを説明するための図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態2による関節機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態3による関節機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態4による関節機構の構成を示す図である。
(a),(b)は本発明の実施形態5による関節機構に設けられるブレーキ機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態5による関節機構の構成を示す図である。
(a),(b)は本発明の実施形態6による関節機構に設けられるクラッチ機構及び第3のリンクを示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態6による関節機構の構成を示す図である。
本発明の実施形態7による把持装置を示す図である。
本発明の実施形態7の別の形態による把持装置を示す図である。
本発明の実施形態8による関節機構の構成を示す図である。
(a)は本発明の実施形態9による関節機構の構成を示す図であり、(b)は固定手段を示す図である。
本発明の実施形態9の別の形態による関節機構の構成を示す図である。
(a)は本発明の実施形態10による関節機構の構成を示す図であり、(b)はトルクリミッタを示す図である。
本発明の実施形態10の別の形態によるトルクリミッタを示す図である。
(a)(b)は本発明の実施形態11による関節機構の構成を示す図である。
(a)〜(c)は本発明の実施形態12による関節機構の構成を示す図である。
従来の関節機構を示す図である。
従来の関節機構を示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1〜図4は、本発明による関節機構の一実施形態を示す構成図である。本実施形態による関節機構は、物品の把持が可能な把持機構として構成されるものであり、この把持機構は、図1(a)に示すように、把持指としての第1のリンク1と、把持指としての第2のリンク2と、把持指としての第3のリンク3とを有する。第1のリンク1と第2のリンク2は、回動ピン5で互いに回動可能に連結され、第2のリンク2と第3のリンク3は、回動ピン6で互いに回動可能に連結されている。第1のリンク1は、回動ピン4aを介して掌部材4に連結できるように構成されている。回動ピン5及び6は、何れも第2のリンク2に固定されている。回動ピン5と回動ピン6は第2のリンク2の長さ方向両端部に配置されており、これらは互いに平行になっている。そして、第1のリンク1の先端部に第2のリンク2の基端部が回動ピン5介して連結され、第2のリンク2の先端部に第3のリンク3の基端部が回動ピン6を介して連結されている。
把持機構は、2つのウォームホイール7,8を有する。ウォームホイール7,8は、各々回動ピン5,6に嵌められている。ウォームホイール7は回動ピン5に対し回動自在であり、またウォームホイール8は回動ピン6に対して回動自在である。ウォームホイール7は第1のリンク1の一端部に固定され、またウォームホイール8は第3のリンク3の一端部に固定されている。したがって、第1のリンク1はウォームホイール7と一体的に回転可能であり、また第3のリンク3はウォームホイール8と一体的に回転可能となっている。なお、ウォームホール7は第1のリンク1に一体的に形成されていてもよく、ウォームホイール8は第3のリンク3に一体的に形成されていてもよい。
ウォームホイール7にはウォームで9が噛み合い、またウォームホイール8にはウォーム10が噛み合っている。ウォーム9とウォーム10は、互いに間隔をおいて連結部材の一例としてのシャフト11に剛に固定されており、両ウォーム9,10はシャフト11を介して相互に接続されている。ウォーム9はいわゆる右ねじであり、ウォーム10はいわゆる左ねじである。したがって、これらウォーム9,10は、互いに逆向きの螺旋を有している。
また、ウォームホイール7及びウォーム9のモジュールと、ウォームホイール8及びウォーム10のモジュールとは同じであり、またそれらの対応する歯数、径も同じである。
両ウォーム9,10間のシャフト11の中間部には、フランジ11aが設けられている。また、シャフト11の中間部にはギヤ12が剛に結合されている。シャフト11は、第2のリンク2に形成された一対の支持壁18,19に支持されていて、第2のリンク2の長手方向に沿うように配置されている。この支持壁18,19にはそれぞれ貫通孔が設けられていて、シャフト11は、支持壁18,19間にフランジ11aが位置するように貫通孔に挿通された状態で保持されている。したがって、シャフト11は、軸回りに回転可能であって、かつ軸方向である並進方向に移動可能となっている。
各支持壁18,19とフランジ11aとの間には、各々ばね16、17が残留圧縮復元力を保持した状態で介装されている。フランジ11a、ばね16,17及び支持壁18,19によって、ウォーム9、10のセンタリング手段20が構成されている。
第2のリンク2には駆動源としてのモータ13が搭載されている。モータ13の駆動軸の先端にはギヤ14が設けられている。モータ13は、シャフト11に対してウォームホイール7,8側に配置され、ウォームホイール7,8間のスペースに配置されている。つまり、このスペースを利用してモータ13が設置されているため、スペースを有効利用でき、把持機構をより小型に構成することが可能となる。このギヤ14と前記シャフト11に設けられたギヤ12との間にギヤ15が介在しており、モータ13の駆動力は、ギヤ14、ギヤ15及びギヤ12を介してシャフト11に伝達される。ギヤ15は、その軸まわりの回転のみが許容されているが、ギヤ12は、シャフト11の並進移動に対してもギヤ15と係合状態を維持できるよう、軸方向に長く形成されている。
以上のように構成された把持機構について、以下その動作を説明する。
まず、第1のリンク1、第2のリンク2、第3のリンク3が、初期状態として図1(a)の状態にあったとする。この状態でモータ13を駆動すると、ギヤ14、ギヤ15及びギヤ12が回転し、例えば図示のF方向にシャフト11が回転する。このとき、ギヤ12とウォーム9,10はシャフト11に剛に結合されているため、両ウォーム9,10は何れもF方向に回転する。
第2のリンク2に視点を固定して見ると、ウォーム9の回転により、ウォームホイール7は図1(b)のV方向に回転を始め、ウォームホイール7に結合された第1のリンク1をV方向に回転させる。同様に、ウォーム10の回転により、第3のリンク3を図1(b)のW方向に回転させる。シャフト11がある回転角度だけ回転した場合において、第1のリンク1と第2のリンク2がなす角を角度Aとし、同様に第2のリンクと第3のリンクがなす角を角度Bとする。そして、更にシャフト11を回転させ、角度A及びBがそれぞれ約90度となった状態を図1(c)に示す。
この一連の動作においては、シャフト11の回転による角度A及びBの変化量dA及びdBはいずれも増加する。一方、シャフト11を逆方向に回転すれば、変化量dA及びdBはいずれも減少する。即ち、dA×dB≧0の関係が成立する。なお、この一連の動作においては、左右両側での伝達トルクがバランスしている限り、シャフト11は軸方向に移動することなく、軸回りに回転する。
ここで、ウォーム9,10がウォームホイール7,8を回転させるトルクに一時的にアンバランスが生じると、ばね16,17が伸長又は収縮してシャフト11が軸方向に移動するが、定常的にはセンタリング手段20により、シャフト11は中立位置へ戻り、第1のリンク1及び第3のリンク3の位置は安定する。
次に、図2(a)〜(c)に、掌部材4を静止系として見た場合の第1〜第3のリンク1〜3の動きを示す。図2(b)において、紙面下方を重力方向とすると、重力は、第2のリンク2を反時計方向に回動させるように作用する。これにより、シャフト11は、第2のリンク2に対してQ方向に並進し、それにより角度Aが増加するとともに角度Bが減少する。センタリング手段20はこの重力の作用を打ち消し、姿勢を維持する働きをしている。また、その他振動等の外乱に対しても同様の作用が有る。
図3(a)〜(c)は、把持対象としての物品が存在する場合の動作状態を示している。図3(a)は図1(b)と同じ状態であり、ほぼ角度A=角度Bである。今、例えば図3(b)に示すように第1のリンク1側に近い物体81を把持する場合には、まず第1のリンク1が物体81に押されるため、角度Aを減少させる方向に第1のリンク1が回動ピン5まわりの回転を始める。これにより、ウォームホイール7及びウォーム9を介して並進力がシャフト11に伝えられ、センタリング手段20のばね17の力に抗してシャフト11がP方向に移動する。これによりウォーム10及びウォームホイール8を介して第3のリンク3に回転駆動力が伝達され、第3のリンク3は角度Bが増加する方向に回転する。そして、第1のリンク1と第3のリンク3に作用するトルクのアンバランスが解消するまでシャフト11が移動する。このように、両トルクのアンバランスが存在する場合であってもウォーム9,10が軸方向に並進することによってそれを解消し、把持対象である物品81に自動的に馴染ませることができる。この動作において、シャフト11の並進によるA、Bの変化量はdA≦0、dB≧0である。即ち、シャフト11の並進による角度A及びBの変化量dA及びdBについて、dA×dB≦0の関係が成立する。
また、図3(c)に示すように、第3のリンク3に近寄った物品82に対してはシャフト11で結合されたウォーム9,10がQ方向に並進し、上記同様にバランスして把持が行われる。この動作において、シャフト11の並進による角度A及びBの変化量はdA≧0であり、かつdB≦0である。即ち、シャフト11の並進による角度A及びBの変化量dA及びdBについて、dA×dB≦0の関係が成立する。
ギヤ12は、軸方向に長く形成されているので、図3(b)、図3(c)のようにシャフト11が軸方向に並進移動しても、ギヤ15と係合状態を維持できる。
図4(a)〜(c)は更に小さい物品83,84を把持する場合の例であり、やはり物品83,84の位置ずれをシャフト11の並進によって第1のリンク1及び第3のリンク3を対応させることで把持が可能となる。
以上のように、本実施の形態1によれば、把持する物品のサイズ等はウォーム9,10を含むシャフト11の回転で対応し、物品の位置ずれに対してはシャフト11の並進で対応することができる。これにより、種々の物品や状態に対応できる把持機構を提供することができる。
すなわち、本実施形態1では、物品を把持する前の段階においてシャフト11が回転すると、両ウォームホイール7,8が互いに逆回転して第1及び第3リンク1,3の広がり方が変化する。すなわち角度A及び角度Bが共に大きくなるか、共に小さくなるため、dA×dB≧0となる。このため、把持対象の物品の大きさに応じてシャフト11が回転することにより、物品を把持できるように第1及び第3リンク1,3の角度を調整することができ、その調整された状態で物品を把持することができる。一方、把持対象の物品が第1及び第3リンク1,3に対して位置ずれしている場合等、物品から第1及び第3リンク1,3が受ける力がアンバランスになった場合には、ウォームホイール7,8を介してウォーム9,10が受けるトルクが互いにアンバランスになるため、シャフト11は、両ウォーム9,10のトルク差に応じた分だけ軸方向に変位することとなる。このとき、第1及び第3リンク1,3が物品から受けるトルクがバランスしてトルク差が解消されるように、両ウォームホイール7,8がそれぞれ同じ方向に回転するか、または付加トルクの大きなウォームホイール7,8は回転せずにもう一方のウォームホイール8,7のみが回転する。すなわち、ウォーム9,10の軸方向移動時にdA×dB≦0となる。このとき、ウォームホイール7,8に反力を取って、シャフト11が軸方向に移動している。これにより、物品に対して把持機構が位置ずれしている場合であっても、うまく把持することができる。このように、把持対象の大きさに応じてシャフト11を回転させることにより、種々の大きさの物に対応でき、しかも形状や位置関係に応じてシャフト11が軸方向に移動することで受けるトルクのアンバランスにも対応できる。したがって、多数のモータを用いなくても、簡単な構成でありながら把持に必要な自由度を有し、しかも物の形状にならって把持できる把持機構を実現することができる。
また本実施形態1では、連結部材を、一体的に形成されたシャフト11によって構成したので、簡単な構成で必要な把持力が得られる構成を実現することができる。
また本実施形態1では、2つのウォーム8,10が互いに逆向きの螺旋になっているので、シャフト11の回転によって両リンク1,3を互いに逆向きに回動させる構成を簡単な構成で実現することができる。
また本実施形態1では、シャフト11を中立位置に復元させるセンタリング手段20が設けられているので、物品を把持していないときに、第1及び第3リンク1,3の向きを安定させることができる。しかもセンタリング手段20がばね16,17の弾性力によって復元させる構成なので、簡単な構成でシャフト11を所定位置に復元させることができる。
なお、本実施の形態では把持動作のアプローチ時のリンク間の形状を維持するためにセンタリング手段20を設けているが、物品へのアプローチにおいて精度があまり高いものを要求しないのであれば、センタリング手段20を省略することも可能である。この場合にはコストダウンが図られる。
また、本実施形態ではギヤ12がシャフト11に固定されているが、シャフト11に対するギヤ12の移動を許容し、シャフト11に対する回転のみを規制するように、シャフト11に対するギヤ12の結合をキー結合としてもよい。こうすれば、ギヤ12の小型化が図れてスペースファクタが改善され、またギヤ歯面における摺動摩耗を防止することができる。また、摩擦力の発生する領域がシャフト11まわりに限定され、シャフト11の並進移動がより容易になる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図面を参照しながら説明する。
図5(a)〜(c)は、本発明の実施の形態2における関節機構を示す構成図である。本実施の形態は、実施の形態1のウォームホイール7及びウォーム9をウォームホイール27及びウォーム29に変更したものであり、その他はセンタリング手段20の構成を含め同じである。
ウォームホイール27、ウォーム29は、ウォームホイール8、ウォーム10に対し、径は同じであるが、モジュールが半分に設定されている。このため、ウォームホイール27はウォーム8に対して歯数が2倍になり、ウォームギヤとしての減速比が2倍の大きさになっている。
そのため、シャフト11の回転により、第1のリンク1と第2のリンク2との間に生じるトルクは、第2のリンク2と第3のリンク3との間に生ずるトルクの2倍になっている。これは、一般に構造体に負荷をかけた場合に先端側よりも根元側のモーメントが大きくなる状態に対応するものである。
以下、実施の形態2の動作について説明する。センタリング手段20の動作等、概略は実施の形態1と同一であるため省略し、相違点のみを述べる。
シャフト11の回転に対し、根元側のウォームギヤでは前述のように減速比が2倍になっているため、掌部材4に近い側のモーメント対応力が大きくなる。そのため、把持の負荷能力が増大する。このとき、図5(b)に示すように、シャフト11の回転に伴う角度Aが、角度Bより小さくなってアンバランスとなるが、シャフト11の並進によりバランスを回復することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、発生トルクの違いに容易に対応でき、構造に適した適正なモーメントに対応する関節機構を容易に実現できる。
なお、本実施の形態において、減速比の変更をモジュールを変更することによって行ったが、ウォームホイールの直径を変えることによって減速比を変更するようにしてもよい。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図面を参照しながら説明する。
図6(a)〜(c)は、本発明の実施の形態3における関節機構を示す構成図である。本実施の形態3は、実施の形態1のセンタリング手段に変えて、抵抗手段が設けられている。そして、本実施形態3ではフランジのないシャフト31が用いられている。その他は実施の形態1と同じである。
抵抗手段は、第2のリンク2に固定されたスリーブ32と、粘性物質33とを有する。スリーブ32にシャフト31が挿通されている。そして、粘性物質33は、スリーブ32とシャフト31の間に介装されている。粘性物質33の粘度としては、シャフト31が自重で10mm/s程度以下の速度で移動する程度の粘度が望ましい。材質としては、好ましくはゲル状の物質や高粘性のオイル状物質が好ましい。
粘性物質33は、シャフト31とスリーブ32間の相対速度に応じた抵抗力を発生する物質である。従って、急激な相対速度に対しては、シャフト31の動きが妨げられる。
本実施の形態の動作については、実施の形態1との相違点のみを述べる。
粘性物質33の効果によって、シャフト31は自重や重力変化等に対してゆっくりと軸方向に変位する。そして、把持のためのアプローチの際にはシャフト31は大きく変化しないため、第1及び第3リンク1,3が急激に回動するのを抑制でき、安定な動作が実現する。
図6(b)、(c)に示すように、第1の実施形態と同様に位置ずれした物品81、82を把持するような際には、粘性物質33は、第1のリンク1及び第3のリンク3の接触状態に伴って、シャフト31のP方向又はQ方向へのゆっくりした変位を許容する。しかも、本実施形態では、ばねの変形に抗する力を発生させる必要もない。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、図面を参照しながら説明する。
図7(a)〜(c)は、本発明の実施の形態4における関節機構を示す構成図である。本実施の形態4では、実施の形態1のセンタリング手段に変えて、抵抗手段が設けられているが、この抵抗手段が実施形態3と異なっている。本実施形態4でもフランジのないシャフト41が用いられている。その他は実施の形態1と同じである。
抵抗手段は、回動ピン5,6とウォームホイール47,48の間に封入された粘性物質42によって構成されている。粘性物質42としては、実施の形態3の粘性物質33と同様の物質が利用できる。
粘性物質42は、回動ピン5とウォームホイール47との間の相対速度に応じた抵抗力を発生するとともに、回動ピン6とウォームホイール48の間の相対速度に応じた抵抗力を発生する。従って、第1のリンク1及び第3のリンク3が急激に回動するのを防止することができる。
本実施の形態4の動作については図7(b)、(c)のごとく実施の形態3とほぼ同じであり、また効果についても実施の形態3とほぼ同じである。
なお、本実施の形態4では、粘性物質42を回動ピン5,6とウォームホイール47,48との間に入れて速度抵抗を付与する構造としたが、第2のリンク2とウォームホイール47,48との間に粘性物質を介在させる構成としてもよい。
また、実施の形態3、4では、粘性物質による速度抵抗構造を採用したが、粘性物質に代えて、摩擦体による速度抵抗構造にしてもよい。この速度抵抗構造としては、例えばリング状の樹脂部材により構成することができる。この場合でも前記同様の効果が得られる。
更に、速度抵抗と標準形態への復原力が要求される場合には、速度抵抗構造に加えて実施の形態1で用いたセンタリング手段20を併用してもよい。
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、図面を参照しながら説明する。
図8(a)、(b)、図9(a)〜(c)は、本発明の実施の形態5における関節機構を示す構成図である。
図8(a)は、制動機構としてのブレーキ機構50を示している。ブレーキ機構50は、ソレノイドを有するものであり、磁性材料からなる磁極52と、その先端に設けられたゴム等の弾性体によって構成されたパッド51と、磁性材料で構成された有底筒状のヨーク54と、ヨーク54内部に配置された輪状のコイル53と、磁極52におけるパッド51とは反対側の端部に設けられ、ヨーク54との間に存在するばね55とを備えている。
図8(a)は無通電状態を示しており、この状態ではばね55が自由長に伸びている。一方、図8(b)は通電状態を示し、この状態では、コイル53で発生した磁束がヨーク54によって導かれていて、磁力によって磁極52がばね55の弾性力に抗して吸引されている。
図9(a)は、ブレーキ機構50が設けられた関節機構の全体を示している。本実施の形態5は、ブレーキ機構50を除いて実施の形態1と同様の構成である。ブレーキ機構50が第3のリンク3に搭載されており、通常は通電状態となっている。図中の符号58、59は回動ピンであって、第3のリンク3側にある回動ピン59に摩擦板57が剛に固定されている。即ち、摩擦板57は第2のリンク2に固定されている。
摩擦板57には、パッド51が対向する円弧面に沿って粗な摩擦面が形成されている。ブレーキ機構50が無通電状態となると、磁極52がブレーキ機構50から図8(a)のように飛び出す。これにより、パッド51が摩擦板57の粗な摩擦面に接触し、大きな摩擦力が発生する。
第2のリンク2には、角度センサ71,72が搭載されている。角度センサ71は、第2のリンク2に対する第1のリンク1の角度Aを測定し、角度センサ72は、第2のリンク2に対する第3のリンク3の角度Bを測定する。角度センサ71,72は、図外の制御部と信号の授受が可能に接続されている。この制御部は、角度センサ71,72から出力された信号に基づいて、ブレーキ機構50及びモータ13を制御する。
その他の構造は、実施の形態1と同じである。
以上のように構成された関節機構について、以下その動作を説明する。
図9(a)〜(b)に至る状態は、ブレーキ機構50に通電されているためパッド51は摩擦板57に接触していない。そのため、実施の形態1と同じく第1のリンク1及び第3のリンク3は回動する。そして、図9(b)に示すように、第3のリンク3が所定の角度まで回動すると、角度センサ72の出力が所定の値になるので、その時点でブレーキ機構50を無通電にすると、磁極52を吸引していた磁場が消失する。これに伴って磁極52は、ばね55によってブレーキ機構50から突出し、パッド51が摩擦板57と接触する。そのため、第3のリンク3は第2のリンク2に対して固定される。
この状態で更にシャフト11を回転させると、第3のリンク3は第2のリンク2に対して固定されているから、第3のリンク3は図9(b)の状態に維持される。これに対し、第1のリンク1は回動可能であるから、角度Aが増加する方向に回動する。この時、ウォームホイール8は回転していないため、ウォーム10の回転により、シャフト11は回転しながらセンタリング手段20のばね力に抗して図示Q方向に並進移動する。そして、角度センサ71の出力を見て、図9(c)の状態でモータ13を止めると、第1〜第3のリンク1〜3の相対角度は保持される。
以上、本実施の形態に述べたように、ブレーキ機構50により、第3のリンク3と第2のリンク2の間の相対回転がないように固定することで、関節機構の所望の形態の静止形態を得ることができる。そして、種々の物品把持に際し、予め適した静止形態に調整した上で物品を把持することができるようになる。また実質的に、モータ1個で2自由度の形態をとることが可能となる。
なお、本実施の形態5においてはブレーキ機構50を第3のリンク3に配置して第2のリンク2との間の運動を止めたが、これに限られるものではない。すなわち、ブレーキ機構50を第1のリンク1に搭載するとともに、回動ピン58に摩擦板57を配置し、予め角度Aを固定してから角度Bを調整するようにしてもよい。あるいは両方にブレーキ機構50を搭載してもよい。いずれも場合でも静止した把持形態の形成が可能である。
また、摩擦板57の形状やブレーキ機構50の構成は前記構成に限定されるものではない。リンク間の相対移動を固定するためのものであればよく、種々変更が可能である。ブレーキ機構50をソレノイドとして例示したのは、一般的にアクチュエータとしては小型に形成できるからである。また、摩擦で固定するのが耐久性の点から困難な場合には、機械的に固定する構成であってもよい。例えば、多数のピン穴を回動方向に形成しておいて、その中から選択されたピン穴にピンを挿入することで固定するようにしてもよい。ただしこの場合には離散値的な固定形式となる。
また、角度A,Bを検出する手段として角度センサ71,72を用いたが、例えば外部のカメラによる画像計測によって角度A,Bを検出する構成でも差し支えない。
このように、本実施の形態によれば、限られたモータから多数の関節に駆動力を分配し、それら関節に適切なブレーキ機構を配置し、望ましい位置で固定することで、限られたモータによって実質的に自由度に変化を持たせることができる。
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について、図面を参照しながら説明する。
図10(a)、(b)、図11(a)〜(c)は、本発明の実施の形態6における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
図10(a)、(b)は本実施の形態6における第3のリンク3及びその搭載部品を示しており、(b)は側面図、(a)は平面図である。符号61は電磁石で構成された断続機構としてのクラッチ機構を示している。クラッチ機構61は、第3のリンク3に固定されていて、回動ピン6を嵌め込み可能となっている。ウォームホイール67,68は実施の形態1のウォームホイール7,8と同一の形状を有するが、磁性材料で形成される点でウォームホイール7,8と異なっている。またウォームホイール68は、第3のリンク3には固定されていない点で実施形態1と異なる。角度センサ71,72は実施の形態5と同じものである。
クラッチ機構61は、ウォームホイール68と第3のリンク3の結合状態を切り替えることによって、モータ13と第3のリンク3との間の駆動力の伝達経路を断接する。本実施形態では、クラッチ機構61は、磁気的吸引力による摩擦力によって駆動力の伝達経路を接続する。図10(a)において、クラッチ機構61が無通電であると、ウォームホイール68は第3のリンク3とは分離しており、駆動力は伝達されない。言い換えるとウォームホイール68は第3のリンク3に対して空転が可能である。一方、クラッチ機構61に通電すると、ウォームホイール68はクラッチ機構61に吸着されて、第3のリンク3と一体化した回転が可能となる。
また、第3のリンク3と第2のリンク2の間は実施の形態4などで記載したように粘性結合されている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
以上のように構成された関節機構について、以下その動作を説明する。
図11(a)〜(b)に至る状態は、クラッチ機構61に通電されているため、ウォームホイール68は第3のリンク3と一体化している。そのため、第1のリンク1、第3のリンク3は、実施の形態1と同じように、シャフト11の回転に伴って回動する。図11(b)において、角度センサ72の出力が所定の値になった時点でクラッチ機構61を無通電にすると、ウォームホイール68は第3のリンク3から分離し、空転が可能となる。
この状態で更にシャフト11を回転させると、第3のリンク3は第2のリンク2に対して粘性結合しており、ウォームホイール68は空転が可能であるため、第3のリンク3は動かず、ウォームホイール68のみがW方向に空転する。そのため、第3のリンク3は図11(b)の状態を維持する。一方、第1のリンク1はシャフト11の回転に伴って回動可能であるから、角度Aが増加する方向に回転する。そして例えば角度センサ71の出力を見て、図11(c)の状態でモータ13を止め、再びクラッチ機構61に通電すると、第1〜第3のリンク1〜3の相対角度は、その状態で保持される。
以上、本実施の形態6では、クラッチ機構61によって第3のリンク3と第2のリンク2の間の相対回転を制止させることが可能となっており、実施の形態5と同様、関節機構の所望の形態の静止形態をえることができる。そして、種々の物品把持に際し、予め適した静止形態に調整した上で物品を把持することができるようになる。
なお、実施の形態5と同様、クラッチ機構を第1のリンク1に搭載するようにしてもよく、あるいは第1のリンク1と第3のリンク3の双方に搭載してもよい。
また、本実施形態6では、ウォームホイール68と第3のリンク3を結合する機構として電磁石によるクラッチ機構61を用いたが、これに限定されるものではなく、請求の範囲の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
このように、本実施の形態6によれば、実施の形態5と同様、限られたモータから多数の関節に駆動力を分配し、それら関節に適切なクラッチ機構を配置し、望ましい位置で固定することで、限られたモータによって実質的に自由度に変化を持たせることができる。
実施形態1〜6は、何れも関節機構が把持機構として構成された例について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、物品の把持をするためのリンク機構ではなく、それ以外の用途を有する関節機構としてもよい。
(実施の形態7)
以上、実施の形態1〜6に示す関節機構を関節装置の一態様としての把持装置の把持指として適用することにより、低コストでしかも多数の物品の把持に適応できる把持装置を容易に実現することが可能である。例えば、図12は1つの関節機構を備えた把持装置の一例を示しており、図13は、複数の関節機構を備えた把持装置の一例を示している。
図12に示す把持装置は、掌対向による1本指の把持装置である。関節機構101は、実施の形態1として説明した把持機構として構成された関節機構である。関節機構101の第1のリンク1は、回動ピン73aによって掌部材73に結合されている。そして、関節機構101は、支持体としての掌部材73に支持されている。掌部材73は、手首部材74に結合されている。関節機構101は、掌部材73に内蔵のモータ(図示省略)により、掌部材73の回動ピン73a回りに回動される。そして、モータ13の駆動によってシャフト11が回転するとともに軸方向に変位して、これによってリンク1,3が物品85に沿い、把持が実現する。なお、第1のリンク1を掌部材73にピン結合する構成に代え、第1のリンク1と掌部材73とを一体的に構成してもよい。この構成では、この一体的に構成されたリンクが第1のリンクとして機能し、この第1のリンクが、支持体として機能する手首部材74に支持される構成となる。
図13に示す把持装置は2本指の把持装置である。関節機構102,103はそれぞれ、実施の形態1として説明した把持機構として構成された関節機構である。関節機構102の第1のリンク1は、回動ピン75aによって掌部材75に結合され、また関節機構103の第1のリンク1は、回動ピン75bによって掌部材75に結合されている。掌部材75は、手首部材76に結合されているが、これらが一体的に構成されていてもよい。掌部材75と手首部材76は支持体として機能する。関節機構102,103の回動ピン75a,75b回りの回動は、掌部材75内蔵のモータによって行われる。そして、1本指の把持装置同様に、関節機構102,103内でのシャフト11,11の回転及び軸方向移動によってリンク1,3が物品85に沿い、把持が実現する。
なお、一方の関節機構102の第1のリンク1と掌部材75とを一体的に構成してもよい。この構成では、この一体的に構成された折れ曲がり形状のリンクが第1のリンクとして機能し、この第1のリンクが、支持体として機能する手首部材76に支持されるとともに、この第1のリンクに、もう一方の関節機構103の第1のリンク1が連結されることになる。また、他方の関節機構103の第1のリンク1と掌部材75とが一体的に構成されていてもよい。
また、両関節機構102,103の第1リンク1,1と掌部材75とが一体的に構成されていてもよい。この構成では、この一体的に構成されたものが第1のリンクとして機能し、この第1のリンクが、支持体として機能する手首部材76に支持される構成となる。すなわち、この構成では、2つの関節機構102,103に対して第1のリンクが共用化された構成となる。
前記掌部材75に、関節機構と同様の機構を搭載してもよい。また、関節機構としては実施の形態2〜6のいずれも利用可能である。また、関節機構を更に並列状態に配置した把持装置も構成できる。この場合には、把持力を増加させることができる。更に、これら把持装置を用いたロボット等も実現可能である。
(実施の形態8)
以下、本発明の実施の形態8について、図面を参照しながら説明する。
図14は、本発明の実施の形態8における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
本実施形態8では、シャフト11に設けられるギヤ212がウォーム9の外側に配置されている。すなわち、前記実施形態1では、シャフト11の端部に配置された一対のウォーム9,10の間にギヤ12が位置しているが、本実施形態8では、一方のウォーム9がシャフト11の中間部に配置されるとともに、このウォーム9の外側にギヤ212が配置されている。これに伴い、第1のリンク1のウォームホイール7も第2のリンク2の端部から少し中央寄りのところに配置されている。このため、本実施形態8では、前記実施形態1に比べ、ウォームホイール7,8間の間隔を狭くすることができ、第1のリンク1と第3のリンク3との間隔を狭くすることができる。
(実施の形態9)
以下、本発明の実施の形態9について、図面を参照しながら説明する。
図15(a)(b)は、本発明の実施の形態9における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
本実施形態9は、ウォーム309がシャフト311に対して回転可能に設けられるとともにこのウォーム309をシャフト311に固定する固定手段を有する。もう一方のウォーム10は実施形態1と同様にシャフト311に固定されている。以下、具体的に説明する。
ウォーム309には、シャフト311が挿通可能な挿通孔309bが設けられており、この挿通孔309bにシャフト311が挿入される構成である。このため、ウォーム309が後述のキー320によって固定されない状態では、ウォーム309はシャフト311に対して軸回りに相対的に回転可能である。
固定手段は、ウォーム309の挿通孔309bに設けられたキー溝であるウォーム側溝部309aと、シャフト311に設けられたキー溝であるシャフト側溝部311aと、これら溝部309a,311aに挿入される固定部材としてのキー320とを有する。
ウォーム側溝部309aは、挿通孔309bの周方向に間隔をおいて複数設けられている。図例は、4つのウォーム側溝部309aが等間隔に設けられた例である。一方、シャフト側溝部311aは、シャフト311のウォーム309側の端部における外周面に1つ設けられている。
キー320は、ウォーム側溝部309aとシャフト側溝部311aとによって形成される空間に挿入可能である。そして、キー320がこの空間内に配置されることにより、ウォーム309はシャフト311の軸回りに回転不能となる。つまり、ウォーム309とシャフト311の相対角度が固定される。
第1のリンク1を第2のリンク2に組み付ける際には、ウォーム309をシャフト311に対して回転可能にしておけば、このウォーム309に噛み合う第1のリンク1を回動ピン5回りに自由に回動させることができる。このため、第3のリンク3との関係で第1のリンク1の開き角度Aを微調整することができる。そして、所定の角度に最も近くなるようにウォーム側溝部309aとシャフト側溝部311aとを合わせてキー320を挿入すれば、ウォーム309を固定することができる。図中、破線で示す1a、1bは、選択されるウォーム側溝部309aが変更されることで、第1のリンク1の初期位置が変化することを表している。この初期位置での第1のリンク1の開き角度Aの変化量は、ウォーム309のピッチ、ウォームホイール7の歯数、ウォーム側溝部309aの間隔によって決まる。したがって、ウォーム側溝部309aの数は適宜設定すればよい。
本実施形態9では、ウォーム309をシャフト311に組み付ける際に、ウォーム309をシャフト311に対して所定の向きになるようにセットして、第1のリンク1及び第3のリンク3の開き角度を調整した上で、ウォーム309を固定することができる。
なお、固定手段としては、キーとキー溝とからなる構成に限られるものではない。例えば、ウォームをシャフトに回転可能に設けるとともに、接着剤でウォームをシャフトに固定するようにしてもよい。あるいは、図16に示すように、ウォーム309に半径方向に貫通するようにねじ孔309cを形成しておき、固定部材としてのねじ321を螺合することによってウォーム309をシャフト311に固定してもよい。
(実施の形態10)
以下、本発明の実施の形態10について、図面を参照しながら説明する。
図17(a)(b)は、本発明の実施の形態10における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
本実施形態10は、回転トルクに対してギヤ等を保護するためのトルクリミッタ420が設けられる形態である。トルクリミッタ420は、モータ13とシャフト11との間の駆動力伝達系統に設けられている。トルクリミッタ420は、第1ギヤ415aと、第2ギヤ415bと、これらギヤ415a,415bを互いに押し付け合う方向に付勢するばね431と、このばね431の反力を取るためのフランジ430a,430bとを有する。フランジ430a,430bは両ギヤ415a,415bを貫通するシャフト430に設けられるものである。
第1ギヤ415aはモータ13の駆動軸に設けられたギヤ14と噛み合い、第2ギヤ415bはシャフト11に設けられたギヤ12と噛み合っている。第1ギヤ415aと第2ギヤ415bとは同軸上に配置されている。
第1ギヤ415aと第2ギヤ415bは、圧縮状態のばね431とともに一対のフランジ430a,430b間に配置され、ばね431の弾性力によって互いに押し付けられている。両ギヤ間には摩擦が生じており、この静止摩擦によって伝達されるトルクは、ギヤ等を損傷しない程度に設定されている。そして、最大静止摩擦を超えるトルクが発生すると、第1ギヤ415aと第2ギヤ415bとの間で滑りが生じ、相対回転する。
モータ13の出力軸に一体のギヤ14が第1ギヤ415aと噛み合い、この第1ギヤ415aと第2ギヤ415bとは摩擦によってトルクを伝達する。このトルクはシャフト11に設けられたギヤ12に伝達される。そして、何らかの異常により、シャフト11の回転が停止した場合、大きなトルクがモータ13からシャフト11への伝達系に作用することになるが、ギヤ等を破損しない程度の限界トルク以下で第1ギヤ415aと第2ギヤ415bとの間で滑りが生ずるため、ギヤ等の破損を防止することができる。
なお、トルクリミッタ420はギヤ415a,415b間のトルク伝達を遮断する構成に限られない。例えば、図18に示すように、シャフト411に設けられていてもよい。すなわち、シャフト411は、ギヤ12が設けられる第1シャフト部411aと、ウォーム9が設けられる第2シャフト部411bとに分割され、これらシャフト部411a,411bに跨るように連結部433が設けられる。連結部433とシャフト部411a,411bとの間の摩擦によりトルク伝達がなされる一方、限界トルク以上のトルクが負荷されたされた場合には連結部433とシャフト部411a,411bとの間に滑りが生ずる。
また、トルクリミッタは摩擦を利用した構成に限られるものではない。例えば、第1ギヤ415aにおける第2ギヤ415bとの対向面を鋸歯状に形成するとともに、第2ギヤ415bにおける第1ギヤ415aとの対向面を鋸歯状に形成し、互いに噛み合う構造とする。そして、鋸歯の山を越えるポテンシャルをリミットとするようにしてもよい。この態様でも、トルクリミッタは、摩擦を利用した形態と同様、トルクの増加に対して非線形的な作用となる。
(実施の形態11)
以下、本発明の実施の形態11について、図面を参照しながら説明する。
図19(a)(b)は、本発明の実施の形態11における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
本実施形態11は、ロボットハンドの指機構の開閉関節として機能する関節機構である。この関節機構の第1のリンクは、冠指に相当する指機構101であり、第3のリンクは、示指に相当する指機構103であり、第2のリンクは、掌に相当する掌機構102である。掌機構102は、第1の掌部102aと第2の掌部102bと、これらを連結する揺動アーム85及びギヤ86とを有する。第1の掌部102aと第2の掌部102bとは連結角度が可変となっている。第1の掌部102aには、中指に相当する指機構104aが設けられ、第2の掌部102bには、拇指に相当する指機構104bが設けられている。
モータ113及び支持壁118,119は、掌機構102の第1の掌部102aに固定されている。支持壁間には、ばね116,117が配設されるとともに、これらばね116,117間にシャフト111のフランジ111aが設けられている。フランジ111a、ばね116,117及び支持壁118,119によって、ウォーム109、110のセンタリング手段が構成されている。
シャフト111にはギヤ112が設けられており、このギヤ112は、ギヤ115を介して、モータ113のギヤ114と駆動力を伝達可能に連結されている。指機構101はウォームギヤ107と一体的に回動し、指機構103はウォームギヤ108と一体的に回動する。したがって、指機構101と指機構103は、モータ113の駆動によって何れも開き角度を変えることができる。そして、指機構101,103は把持物品の形状等に倣ってそれぞれ開き角度を変えることができる。
また、第1の掌部102aには回動ピン6を支持するピン支持部102cが設けられており、このピン支持部102cには、指機構101を握り方向に回動可能に支持するための回動ピン120が支持されている。指機構103,104a,104bについても同様に握り方向に回動可能となっている。
(実施の形態12)
以下、本発明の実施の形態12について、図面を参照しながら説明する。
図20(a)〜(c)は、本発明の実施の形態12における関節機構を示す構成図である。実施の形態1と同一番号の部品は同一物を示す。
実施形態1〜6、8〜10は、把持機構として構成された関節機構について、示したが、本実施形態12では、関節機構は物を把持するための機構ではなく、任意の姿勢を取り得るように2つの関節を有する関節機構である。例えばこの関節機構は、ロボットの脚関節として機能するものであり、第3のリンク3はロボットの足に相当する。第1のリンク1は例えば太ももに相当するリンクであり、このリンク1は、ロボットの胴部に相当する部材4とピン4aによってピン結合されている。第2のリンク2は、例えば下腿に相当する。
この関節機構は、モータ13の駆動により、第2のリンク2に対する第1のリンク1の角度及び第3のリンク3の角度が相対的に変化する。このとき、第3のリンク3が床面に接触した状態であれば、第3のリンク3が動くのではなく第2のリンク2が回動ピン6回りに回動することになる。一方、第1のリンク1は、胴部材4から受ける力によって第2のリンク2に対する回動角度が決まる。つまり、実施形態1で説明したように、第1のリンク1が受ける外力と第3のリンク3が受ける外力とが同じ大きさであれば、シャフト11が軸方向に移動することなく第1及び第3のリンク1,3が回転するので、第2のリンク2に対する第1のリンク1の回動角度と第2のリンク2に対する第3のリンク3の回動角度とが同じになる(図20(b))。一方、第1のリンク1が受ける外力と第3のリンク3の受ける外力とが異なる大きさであれば、それに応じてシャフト11が軸方向に変位して両者の回動角度が異なるものとなる。図20(c)は第3のリンク3が受ける力の方が第1のリンク1が受ける力よりも大きい場合を例示している。
なお、本実施形態12では、第1のリンク1及び第3のリンク3が受ける力の大きさに応じて両リンク1,3の回動角度の関係が決まってしまう。したがって、この関節機構に、実施の形態5で示した制動機構や実施の形態6で示したクラッチ機構を設ければ、リンク1,3の回動角度を積極的に制御することが可能となり、リンク1,3の角度を所望の角度に調整することが可能となり、関節機構が任意の姿勢を容易に取ることができるようになる。
[実施の形態の概要]
ここで、本実施の形態の概要について、以下に説明する。
(1) 以上説明したように、本実施形態では、第1及び第3のリンクが外力を受けていない場合に両ウォームが同じ方向に回転すると、両ウォームホイールが互いに逆回転して第1及び第3のリンクの広がり方が変化する。すなわち第1のリンクと第2のリンクの成す角度A、第2のリンクと第3のリンクの成す角度Bが共に大きくなるか、共に小さくなるため、dA×dB≧0となる。このため、第1及び第2のウォームの回転に応じて第1及び第3のリンクの角度を調整することができる。一方、第1のリンクが受ける外力と第3のリンクが受ける外力とがアンバランスになった場合には、ウォームホイールを介して受ける両ウォームのトルクが互いにアンバランスになるため、両ウォームは、両ウォームホイールのトルク差に応じた分だけ軸方向に変位することとなる。このとき第1及び第3のリンクが受けるトルクがバランスするように、両ウォームが一体的に軸方向に変位する。これに伴い、両ウォームホイールがそれぞれ同じ方向に回転するか、または付加トルクの大きなウォームホイールが回転することなくもう一方のウォームホイールのみが回転する。すなわち、ウォームの軸方向移動時にdA×dB≦0となる。このように、本実施形態では、第1及び第3のリンクの開き角度を、両ウォームの回転量に応じた開き角にすることができ、しかも連結部材が軸方向に移動可能に構成されていることにより、第2のリンクに対する第1のリンク又は第3のリンクの角度を変えることができる。したがって、任意の姿勢を取り得る関節機構を簡単な構成で実現することができる。
(2) 前記連結部材は、一体的に形成されたシャフトによって構成されているのが好ましい。
(3) 前記第1のウォームと前記第2のウォームは、相互に逆向きの螺旋を有するのが好ましい。この態様では、連結部材の回転によって第1及び第3のリンクを互いに逆向きに回動させる構成を簡単な構成で実現することができる。
(4) 前記第2のリンクにモータが固定され、このモータによって前記連結部材が回転するのが好ましい。
(5) 前記連結部材を軸方向の所定位置に復元するセンタリング手段が設けられているのが好ましい。この態様では、第1及び第3のリンクが外力を受けていないときに、第1及び第3のリンクの向きを安定させることができる。
(6) この態様において、前記センタリング手段には弾性部材が含まれており、この弾性部材の弾性力によって前記連結部材を所定位置に復元するのが好ましい。この態様では、簡単な構成で連結部材を所定位置に復元させることができる。
(7) 前記第1のリンクが支持体に連結可能に構成される場合には、前記第1のウォーム及びウォームホイールの減速比が、前記第2のウォーム及びウォームホイールの減速比よりも高いのが好ましい。支持体に連結される根元側リンクとなる第1のリンクでは、ウォーム及びウォームホイールに生ずるトルクが大きくなるが、この態様では、根元側のウォームギヤの減速比をもう一方のウォーム及びウォームホイールの減速比よりも高くしているので、トルクの違いに対応し易くなる。
(8) 前記第2のリンクに対する前記連結部材の軸方向相対移動速度に応じた抵抗を発生する抵抗手段が設けられていてもよい。この態様では、第2のリンクの向きに応じた重力変化の発生や連結部材の自重等によって連結部材が軸方向に移動しようとする際に、連結部材が急激に移動するのを抑制することができる。このため、把持のためのアプローチの際に安定した動作を得ることができる。
(9) 前記第2のリンクに対する前記第1及び第2のウォームホイールの相対回転速度に応じた抵抗を発生する抵抗手段が設けられていてもよい。この態様では、第1及び第3のリンクが急激に回動するのを抑制することができる。
(10)前記抵抗手段は、相対移動が行われる両者の間に介在する粘性物質を有するのが好ましい。
(11)前記第2のリンクに対する前記第1のリンクの角度変化を阻止する制動機構、及び前記第2のリンクに対する前記第3のリンクの角度変化を阻止する制動機構の少なくとも一方が設けられていてもよい。この態様では、第2のリンクと第1又は第3のリンクとの間の角度変化が生じないように維持できるので、物を把持する動作等の所定の動作の前に第1及び第3の少なくとも一方のリンクの向きを予め決めることが可能となる。したがって、所定の動作に際してその直前に最適な形態に調整することができる。
(12)この態様において、前記制動機構を有するリンク間の相対角度を検出する角度センサを有し、前記角度センサの出力に基づいて前記制動機構を動作させるのが好ましい。この態様では、リンクの角度を精度良く制御することができる。
(13)前記第1のリンクに対する前記第1のウォームホイールの接続状態を切り換える断続機構、及び前記第3のリンクに対する前記第2のウォームホイールの接続状態を切り替える断続機構の少なくとも一方が設けられていてもよい。この態様では、第2のリンクと第1及び第3のリンクとの間の角度変化が生じないように維持できるので、物を把持する動作等の所定の動作の前に第1及び第3の少なくとも一方のリンクの向きを予め決めることが可能となる。したがって、所定の動作に際してその直前に最適な形態に調整することができる。
(14)前記モータと前記第1のリンクとの間の駆動力伝達経路、及び前記モータと前記第3のリンクとの間の駆動力伝達経路の少なくとも何れか一方の伝達径路に駆動力の断続機構が設けられていてもよい。
(15)そして、前記断続機構を有する第1又は第3のリンクと前記第2のリンクとの相対角度を検出する角度センサを有し、前記角度センサの出力に基づいて前記断続機構を動作させるようにしてもよい。
(16)前記モータと前記連結部材との間には、モータトルクを伝達する複数のギヤと、過大なトルクの伝達を遮断するトルクリミッタとが設けられていてもよい。この態様では、モータから連結部材へ駆動力を伝達するためのギヤの損傷を防止することができる。
(17)関節機構は、物を把持可能な把持機構として構成されていてもよい。この態様では、第1及び第3のリンクが把持対象の物から力を受けていない場合に両ウォームが同じ方向に回転すると、両ウォームホイールが互いに逆回転して第1及び第3のリンクの広がり方が変化する。すなわち角度A及び角度Bが共に大きくなるか、共に小さくなるため、dA×dB≧0となる。このため、把持対象の物の大きさに応じて連結部材が回転することにより、物を把持できるように第1及び第3のリンクの角度を調整することができ、その調整された状態で物を把持することができる。一方、把持対象の物が第1及び第3のリンクに対して位置ずれしている場合等、その物から第1又は第3のリンクが受ける力がアンバランスになった場合には、ウォームホイールを介して受ける両ウォームのトルクが互いにアンバランスになるため、両ウォームは、両ウォームホイールのトルク差に応じた分だけ軸方向に変位することとなる。このとき第1及び第3のリンクが物から受けるトルクがバランスするように、両ウォームが一体的に軸方向に変位する。これに伴い、両ウォームホイールがそれぞれ同じ方向に回転するか、または付加トルクの大きなウォームホイールが回転することなくもう一方のウォームホイールのみが回転する。すなわち、ウォームの軸方向移動時にdA×dB≦0となる。これにより、物が位置ずれしている場合であっても、うまく把持することができる。このように、本発明では、把持対象の大きさに応じて連結部材を回転させることにより、種々の大きさの物に対応でき、しかも物品の形状や位置関係に応じて連結部材が軸方向に移動することで受けるトルクのアンバランスにも対応できる。したがって、多数のモータを用いなくても、簡単な構成でありながら把持に必要な自由度を有し、しかも物の形状にならって把持できる把持機構を実現することができる。
(18)前記第1及び第2のウォームの少なくとも一方が前記シャフトに回転可能に設けられるとともに、前記回転可能なウォームを前記シャフトに対して所定の角度で固定するための固定手段が設けられていてもよい。この態様では、第1及び第2のウォームをシャフトに組み付ける際に、ウォームをシャフトに対して所定の向きになるように容易に組み付けることができる。
(19)本実施形態は、単一の機構駆動源と、3個以上の複数の部材を有し、前記複数の部材が複数の関節で接続され、前記機構駆動源から前記複数の部材に対し駆動力を分配して伝達する伝達系と、前記複数の関節のうちの少なくとも1つの間接の運動を制動する制動機構とを有する関節機構である。この実施形態では、単一の機構駆動源によって複数の部材を駆動するので、構造が簡単であり、かつ把持に必要な自由度を持たせることができる。また制動機構の動作によって自由度に変化を持たせることができる。
(20)この関節機構において、前記複数の部材間の相対角度を検出する角度センサを有し、前記角度センサの出力に基づく信号により、前記制動機構を動作させるのが好ましい。
(21)本実施形態は、単一の機構駆動源と、3個以上の複数の部材を有し、前記複数の部材が複数の関節で接続され、前記機構駆動源から前記複数の部材に対し駆動力を分配して伝達する伝達系と、前記伝達系における前記駆動力の断接を切り替える断続機構とを有する関節機構である。本実施形態では、単一の機構駆動源によって複数の部材を駆動するので、構造が簡単であり、かつ把持に必要な自由度を持たせることができる。また断続機構の動作によって自由度に変化を持たせることができる。
(22)この関節機構において、前記複数の部材間の相対角度を検出する角度センサを有し、前記角度センサの出力に基づく信号により、前記断続機構を動作させるのが好ましい。
(23)本実施形態は、前記関節機構と、この関節機構を支持する支持体とを備えた関節装置である。
本発明に係る関節機構は、ロボット用マニピュレータに用いられるハンドの指における把持機構、ロボットの関節機構として利用可能である。