本発明は、生体などの被検体に当接させて超音波を送信及び受信することにより、被検体の診断情報を得るために使用される超音波探触子に関する。
超音波診断装置は超音波を人や動物などの生体の被検体に照射し、被検体内で反射されるエコー信号を検出して生体内組織の断層像などをモニタに表示し、被検体の診断に必要な情報を提供するものである。この超音波診断装置には被検体内への超音波の送信と、被検体内からのエコー信号の受信とを行うための超音波探触子が使用される。
図9はこの種の従来の超音波探触子の構成例を示した断面図である。図9において、超音波探触子30は不図示の被検体との間で超音波を送受信するべく、一定方向(図9においては紙面と直交する方向)に配列された複数の圧電素子11と、この圧電素子11の被検体側(図9の上方)の表面(以下、被検体側の表面を前面と称する)に設けられた1層以上(図示したものは2層)の音響マッチング層12(12a、12b)と、この音響マッチング層12の前面に設けられた音響レンズ13と、圧電素子11の被検体側とは反対側(図9の下方)の表面(以下、被検体側とは反対側の表面を背面と称する)に設けられた信号用電気端子15と、この信号用電気端子15の背面に設けられた背面負荷材14と、第1の音響マッチング層12aと第2の音響マッチング層12bとの間に装着された接地用電気端子16とを備えている。
圧電素子11はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系などの圧電セラミックス、単結晶、これらの材料と高分子材料とを複合した複合圧電体、あるいはPVDF(二フッカポリビニル)などに代表される高分子材料の圧電体などによって形成される。この圧電素子11の前面及び背面にはそれぞれ電極が形成され、これらの電極と圧電素子11との間で電気信号の送受信が行われる。すなわち、圧電素子11は電圧を超音波に変換して被検体内に送信し、また、被検体内で反射したエコーを受信して電気信号に変換する。
音響マッチング層12は超音波を効率よく被検体に送信し、かつ、被検体から受信するために設けられ、より具体的には、圧電素子11の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づける役割を果たしている。図示の例では、音響マッチング層12として第1の音響マッチング層12aと第2の音響マッチング層12bとが積み重ねられている。このうち、第1の音響マッチング層12aとしては導電部材であるグラファイトが用いられ、その前面から絶縁性フィルムに金属膜を披着した電気端子16が取り出されている。更に電気端子16の前面に第2の音響マッチング層12bが設けられている。この構成は、圧電素子11が外部からの機械的な衝撃などによって割れたとしても、絶縁性フィルムは割れにくいため、電気的な導通が確保できるので信頼性が高いという特徴を有している(例えば、下記の特許文献1参照)。
一方、第1の音響マッチング層12aとして、グラファイトよりも音響インピーダンスの大きい材料を用いることによって、広帯域化するという構成も知られている(例えば、下記の特許文献2参照)。
また、第1の音響マッチング層12aとして、絶縁性部材の一部に貫通孔を設け、この貫通孔に導電性部材を嵌装し、その前面に設けた電気端子とその背面にある圧電素子11の電極とを接続する構成も知られている(例えば、下記の特許文献3参照)。
音響レンズ13は診断画像の分解能を高めるために超音波ビームを絞る役割を果たすものである。この音響レンズ13はオプション要素であり、必要に応じて設けられる。背面負荷材14は圧電素子11を保持するように結合され、さらに不要な超音波を減衰させる役割を果たすものである。
特開平7−123497号公報
特開2003−125494号公報
実開平7−37107号公報
電子走査型の超音波診断装置は、圧電素子を複数の群にして個々の圧電素子群に一定の遅延時間を与えて駆動し、各圧電素子群から被検体内への超音波の送信と、被検体内からのエコー信号の受信とを行う。このように遅延時間を与えることによって超音波ビームが収束あるいは拡散され、広い視野幅あるいは高分解能の超音波画像を得ることができる。
複数の圧電素子群に一定の遅延時間を与えて超音波画像を得るシステムは、一般的なシステムとして既に知られている。超音波探触子として、このような高分解能の超音波画像を得るために重要なことの1つに広帯域化がある。また、高い性能が求められる一方で、超音波探触子は医師あるいは検査技師が操作するとともに、被検体に直接あるいは間接的に接触させて診断画像を得るものであることから、超音波探触子には操作性を良好にするためにスリムな形状も求められる。また、超音波探触子はその操作中あるいはそれ以外のときに、不可抗力で落下させられたり、打撃が与えられたりして壊れることも時々あり、それに対して信頼性の高いものが求められる。
超音波探触子を広帯域化するための1つの方策として、特許文献2に示すように、圧電素子の前面に設ける音響マッチング層を3層以上にする構成が挙げられる。しかしながら、この構成においては、圧電素子側の第1の音響マッチング層に半導体であるシリコンを使用しているため、この第1の音響マッチング層側の圧電素子の電極から取り出す電気端子は、圧電素子に形成された電極の端部の一部から取り出すしかなく、この構成では機械的な衝撃によって圧電素子及び電極が割れた場合、割れた時点で断線が発生して機能が低下することになる。
一方、特許文献1に示す構成は、第1の音響マッチング層に導体であるグラファイトを使用し、その前面に絶縁性フィルムの一主面に金属膜を披着させた電気端子を設けているため、信頼性は高くなるが、第1の音響マッチング層に使用する導体材料は音響インピーダンスが小さく、また、音響マッチング層は2層までしか積層できないため、広帯域化が困難であった。近年、超音波探触子はより広帯域化される傾向にあり、基本周波数に対して2次あるいは3次の高調波成分を利用するか、あるいは複数の周波数で使用して高分解能の超音波画像を得て診断する場合が多くなってきていることから、広帯域化することがますます重要になってきている。
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、その目的は、高分解能の診断画像を得ることができるとともに、信頼性の高い超音波探触子を提供することにある。また本発明の他の目的は、操作性の良好な超音波探触子を提供することにある。
本発明は、厚さ方向の両面に電極が形成された圧電素子と、前記圧電素子の一方の電極形成面に積層された音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
前記音響マッチング層は、少なくとも導電性部材を含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有していることを特徴とする。
この構成により、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記音響マッチング層は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料、若しくは絶縁性部材又は半導電性部材を含む複数の素材と、導電性部材を含む複数の素材との複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有していることを特徴とする。
この構成により、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、所定の厚さを有し、厚さ方向の両面に電極が形成され、互いに厚さ方向と直交する方向に配置された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の電極形成面にそれぞれ積層された複数の音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
前記音響マッチング層は、前記圧電素子に順に積層された第1及び第2の音響マッチング層を含み、
前記第1の音響マッチング層は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有していることを特徴とする。
この構成により、音響マッチング層の多層化により、音響インピーダンスを所望の値にすることが容易になるため、高分解能の診断画像を得ることができ、また、第1の音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記圧電素子に隣接する前記音響マッチング層を構成する前記複合材料は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とが、あらかじめ定めた領域に配置されていることを特徴とする。
この構成により、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との体積率を任意に設定することが可能になり、音響インピーダンスの決定が容易になる。
また、本発明は、前記圧電素子に隣接する前記音響マッチング層の外表面部に積層された電気端子を備え、
前記電気端子は、絶縁性フィルムの一主面に導電性膜が披着され、かつ前記絶縁性フィルムの一主面が前記音響マッチング層に対向するように積層され、前記導電性膜が、前記音響マッチング層を構成する前記導電性部材を介して、前記圧電素子に形成された一方の前記電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成により、機械的な衝撃などによって圧電素子及び一方の電極が割れたとしても絶縁性のフィルムは割れ難いため、断線して故障することが極めて少なくなって操作性の良好な超音波探触子が提供される。
また、本発明は、所定の厚さを有し、厚さ方向の両面に電極が形成され、互いに厚さ方向と直交する方向に配置された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の電極形成面にそれぞれ積層された複数の音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
nを3以上の整数として、前記音響マッチング層は、前記圧電素子に順に積層される第1〜第nの音響マッチング層を含み、かつ第1の音響マッチング層と第2の音響マッチング層との間に電気端子が挿着され、
少なくとも前記第1の音響マッチング層は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有し、
前記電気端子は、絶縁性フィルムの一主面に導電性膜が披着され、かつ前記絶縁性フィルムの一主面が前記音響マッチング層に対向するように積層され、前記導電性膜が、前記第1の音響マッチング層を構成する前記導電性部材を介して、前記圧電素子に形成された一方の前記電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成により、音響マッチング層が多層化されるとともに、音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、高分解能の診断画像を得ることができ、また、第1の音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性が高められ、さらに、絶縁性のフィルムは割れにくいため、断線して故障することが極めて少なくなって操作性も良好な超音波探触子が提供される。
また、本発明は、所定の厚さを有し、厚さ方向の両面に電極が形成され、互いに厚さ方向と直交する方向に配置された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の電極形成面にそれぞれ積層された複数の音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
nを3以上の整数として、前記音響マッチング層は、前記圧電素子に順に積層される第1〜第nの音響マッチング層を含み、かつ第2の音響マッチング層と第3の音響マッチング層との間に電気端子が挿着され、
少なくとも前記第1及び第2の音響マッチング層は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有し、
前記電気端子は、絶縁性フィルムの一主面に導電性膜が披着され、かつ前記絶縁性フィルムの一主面が前記音響マッチング層に対向するように積層され、前記導電性膜が、前記第1の音響マッチング層を構成する前記導電性部材及び前記第2の音響マッチング層を構成する前記導電性部材を介して、前記圧電素子に形成された一方の前記電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成により、音響マッチング層が多層化されるとともに、音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、高分解能の診断画像を得ることができ、また、第1及び第2の音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性が高められ、さらに、機械的な衝撃などによっても割れにくい絶縁性のフィルムを使用しているため、操作性の良好な超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記第1の音響マッチング層を構成する前記複合材料は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とが、あらかじめ定めた領域に配置されていることを特徴とする。
この構成により、第1の音響マッチング層を構成する複合材料における絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との体積率を任意に設定することが可能になり、音響インピーダンスの決定が容易になる。
また、本発明は、前記第2の音響マッチング層を構成する前記複合材料は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とが、あらかじめ定めた領域に配置されていることを特徴とする。
この構成により、第2の音響マッチング層を構成する複合材料における絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との体積率を任意に設定することが可能になり、音響インピーダンスの決定が容易になる。
また、本発明は、前記圧電素子の厚さ方向をZ方向、このZ方向と直交する方向をX方向、これらZ方向及びX方向と直交する方向をY方向として、
前記音響マッチング層を構成する前記複合材料は、
前記導電性部材がZ方向のみにつながりがあって、X、Y方向につながりがなく、前記絶縁性部材又は半導電性部材がX、Y、Zの3方向につながりがある連結構造か、
又は、前記導電性部材がY及びZの2方向につながりがあり、前記絶縁性部材又は半導電性部材がY及びZの2方向につながりがある連結構造か、
又は、前記導電性部材がX、Y、Zの3方向につながりがあり、前記絶縁性部材又は半導電性部材がZ方向のみにつながりがあって、X、Y方向につながりがない連結構造か、いずれか1つの連結構造を有していることを特徴とする。
この構成により、音響マッチング層を構成する複合材料における絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との体積率の設定が容易になり、また、一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に導電性部材が貫通する部位を形成することが容易になる。
また、本発明は、所定の厚さを有し、厚さ方向の両面に電極が形成された圧電素子と、前記圧電素子の一方の電極形成面に積層された音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
前記音響マッチング層は、少なくとも導電性部材を含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有し、かつ厚さ方向に導電性部材は連続的に体積比率が傾斜した、若しくは段階的に体積比率を変えた構成にしていることを特徴とする。
この構成により、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記音響マッチング層の前記複数の素材の複合材料は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む材料で構成されていることを特徴とする。
この構成により、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、かつ多層化できるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記複合材料の前記導電性部材が、金属、金属と高分子材料の複合体、グラファイトの炭化物のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする。
この構成により、音響インピーダンスをも加味しての材料選択が可能となる。
また、本発明は、前記複合材料の絶縁性部材又は半導電性部材が、ガラス、セラミックス、水晶、有機高分子と金属の複合体、シリコンの単結晶若しくは多結晶のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする。
この構成により、音響インピーダンスの決定が容易となる。
本発明によれば、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層が、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料で構成されているため、音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、導電性部材が圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有していることから、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
本発明に係る超音波探触子の第1の実施の形態の構成を示す断面図
図1Aに示す超音波探触子を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図
本発明に係る超音波探触子の第2の実施の形態の構成を示す断面図
図2Aに示す超音波探触子を構成する第1の音響マッチング層の構成例を示す斜視図
図2Bに示す第1の音響マッチング層の絶縁性部材又は導電性部材の体積比率と音響インピーダンスとの関係を示した線図
図2Aに示す超音波探触子を構成する第1の音響マッチング層の構成例を示す斜視図
図2Aに示す超音波探触子を構成する第1の音響マッチング層の構成例を示す斜視図
本発明に係る超音波探触子の第3の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図
図3Aに示した超音波探触子の断面図
図3A及び図3Bに示した超音波探触子を構成する要素の具体的な構成例を示す斜視図
図3A及び図3Bに示した超音波探触子を構成する要素の具体的な構成例を示す斜視図
本発明に係る超音波探触子の第4の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図
図4Aに示した超音波探触子の断面図
本発明に係る超音波探触子の第5の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図
図5Aに示した超音波探触子の断面図
本発明に係る超音波探触子の第6の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した断面図
図6Aに示す超音波探触子を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図
本発明に係る超音波探触子の第7の実施の形態を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図
本発明に係る超音波探触子の第7の実施の形態を構成する音響マッチング層の他の構成例を示す断面図
本発明に係る超音波探触子の第8の実施の形態を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図
従来の超音波探触子の構成例を示した断面図
以下、本発明を図面に示す好適な実施の形態に基づいて詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1Aは本発明に係る超音波探触子の第1の実施の形態の構成を示す断面図であり、図1Bは図1Aに示す超音波探触子を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図である。
図1Aにおいて、超音波探触子10Aは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に積み重ねられた音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
超音波探触子10Aの構成要素のうち、圧電素子1はPZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどで代表される高分子材料の圧電体などによって形成される。圧電素子1の前面には接地電極5が形成され、圧電素子1の背面には信号用電極6が形成されている。接地電極5及び信号用電極6は、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成される。
また、圧電素子1に形成されている信号用電極6と背面負荷材3との間に、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの導電性膜7bが披着された信号用電気端子7が挿着されている。この場合、圧電素子1に形成されている信号用電極6に信号用電気端子7の導電性膜7bが接触し、かつ信号用電気端子7の絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電素子1側に向けられる。一方、圧電素子1に形成されている接地電極5の前面には、少なくとも導電性部材を含む複合材料で構成される音響マッチング層2と、導電性を有する、例えば銅などの金属の薄膜などの接地用電気端子9とが順次積み重ねられている。この場合、音響マッチング層2の複合材料の導電性部材に接地用電気端子9が接触し、必要に応じて、接地用電気端子9の前面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4が装着される。なお、導電性膜7b、接地用電気端子9は電気的に導電性を有する材料であれば何でも良く金属に限定するものではない。また、接地用電気端子9は、信号用電気端子7の構成のように高分子材料によって構成される絶縁性フィルムの一主面に導電性膜が披着され、この導電性膜が音響マッチング層2側になるように積層してもよい。
上記のように構成された超音波探触子10Aの動作について以下に説明する。
圧電素子1に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の接地電極5は音響マッチング層2の複合材料の導電性部材と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
導電性部材を含む複合材料で構成されている音響マッチング層2としては、その音響インピーダンスが圧電素子1と音響レンズ4側に位置する不図示の被検体の各音響インピーダンスの間になるような材料が選ばれる。この音響マッチング層2の導電性部材を含む複合材の構成例を図1Bに示す。図1Bにおいては、被検体に向けて超音波を放射する方向をZ方向、これと直交する2つの方向をそれぞれX方向、Y方向としている。
図1Bに示した音響マッチング層2は、導電性部材20と、他の部材として例えば絶縁性部材又は半導電性部材21とがX方向に交互に配置されたもので、このうち複数の導電性部材20はY及びZの2方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21も同じようにY及びZの2方向につながりがある構造体になっている。ここで、複数の導電性部材20は圧電素子1の前面に形成された接地電極5と、接地用電気端子9とにそれぞれ接触して、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9とを電気的に接続する機能を有している。なお、導電性部材20を、その端部をそれぞれZ方向に向けた状態でY方向に列状に配置するとともに、X方向に複数列配置し、その周囲を絶縁性部材又は半導電性部材21で取り囲んだもので、このうち導電性部材20はZ方向のみの1方向につながりがあり、X、Y方向のつながりはないものにしてもよい。また絶縁性部材又は半導電性部材21はX、Y、Zの3方向につながりがある構造体、又は、複数の絶縁性部材又は半導電性部材21を、その端部をそれぞれZ方向に向けた状態でY方向に列状に配置するとともに、X方向に複数列配置し、その周囲を導電性部材20で取り囲んだもので、このうち導電性部材20はX、Y、Zの3方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21は、Z方向のみの1方向につながりがある構造体としても同様の効果を有する。また、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の複合体としたがこの他導電部材同士で材料が異なる複合体でも同様の効果を有する。
上述したように、図1Aに示した音響マッチング層2の音響インピーダンスは圧電素子1の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスの間の値を有していることが必要である。例えば圧電素子1として音響インピーダンスが約30メガレールスの値を有するPZT-5Hの圧電セラミックスを用い、音響インピーダンスが約1.6メガレールスの値を有する生体のような被検体を対象とした場合には、音響マッチング層2は1層としているので6〜8メガレールス前後の値の材料を用いることになる。
そこで、例えば、図1Aに示した超音波探触子10Aを用いて説明するが、音響マッチング層2として絶縁性部材又は半導電性部材を用い、圧電素子1の接地電極5の端部に対応する部位を切り欠いて音響マッチング層のない部分(図示せず)を作り、その部分から電気端子(図示せず)を取り出す構成も考えられる。しかし、このような構成にすると、性能的には周波数の広帯域化が可能になる反面、音響マッチング層の無い部分においても圧電素子1が振動して超音波を発生するため、被検体に送信する超音波が乱れて超音波画像が劣化する。また、接地電極5から取り出す電気端子は1箇所であるため、診断操作中に超音波探触子を落下させたり、あるいは超音波探触子に打撃など機械的な衝撃を加えたりしたことにより、圧電素子1が割れたとき、接地電極5も同じように割れて電気的な断線が発生するなどにより、故障するおそれもある。
図1Aに示した第1の実施の形態は、これらの問題を解決し、しかも周波数の広帯域化が可能な構成を実現したものである。すなわち、圧電素子1の接地電極5が、音響マッチング層2の複数の導電性部材20を介して、接地用電気端子9と電気的に接続される構成にしているため、圧電素子1の全面にて均一で所望の超音波の送信、受信をすることができるとともに、機械的な衝撃などによって圧電素子1及び接地電極5が割れたとしても、音響マッチング層2の複数個の導電性部材20で接続されているため、断線して故障することは極めて少なくなる。
ここでは、音響マッチング層2の絶縁性部材又は半導電性部材21として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミドなどで代表されるような高分子材料、ガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。また、音響マッチング層2の導電性部材20として、グラファイト、銅などの金属を充填したグラファイト、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属材料や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、カーボンなどを用いる。なお、導電性部材20あるいは絶縁性部材又は半導電性部材21は、前述した材料に限定されるものではなく、前述した材料と同程度の音響インピーダンスを有するものであれば他の材料であってもよい。導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の複合材料の音響インピーダンスはそれぞれの体積比率によって決まる。
例えば、音響マッチング層2に必要な音響インピーダンスとして7メガレールスの値にしようとした場合には、導電性部材20として約10メガレールスの値を有する銅を充填したグラファイトと絶縁性部材21として約3メガレールスの値を有するエポキシ樹脂を用いた複合材にしてそれぞれの部材の体積比率を選択すればよい。つまり音響インピーダンスはエポキシ樹脂の体積比率が高い場合は音響インピーダンスが3メガレールスに近くなり、銅を充填したグラファイトの体積比率が高い場合は音響インピーダンスが10メガレールスに近くなり、必要とする7メガレールスにすることは容易に選択できる。
なお、ここで導電性部材20と、絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料の構成を説明したが、この組み合わせの複合材料の構成以外に、例えば絶縁性部材又は半導電性部材21に導電性部材を用いて導電性部材の複合材料にした構成でも良く、つまり少なくとも導電性部材20を有し、圧電素子1の電極面と電気的な接続ができる機能と音響インピーダンスを可変できる機能を備えた複合材料であれば上記構成に限定されるものではないことは明らかである。
なお、ここでは音響マッチング層2は1層のタイプについて説明したが、この他2層以上の音響マッチング層を備える構成とした場合においても、それぞれの音響マッチング層に本複合材を設けても、また一部の層に設けた構成にしても同様の効果が得られる。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、少なくとも導電性部材を含む複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスにすることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
また、第1の実施の形態では、図1Bに示す導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とが、Z方向に対して均一な幅で形成される場合について説明したが、絶縁性部材又は半導電性部材21がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状に、又は段階的に変化するようにして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化、あるいは段階的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第1の実施の形態では、図1Bに示す導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第1の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、音響マッチング層2を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、音響マッチング層2のZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第1の実施の形態においては、音響マッチング層2として、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の少なくとも一方が2種類以上の材料で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1つの材種の連結構造に限定されるものではない。
また、第1の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第2の実施の形態>
図2Aは本発明に係る超音波探触子の第2の実施の形態の構成を示す断面図であり、図2B、図2D、図2Eはそれぞれ図2Aに示す超音波探触子を構成する第1の音響マッチング層の構成例を示す斜視図であり、図2Cは図2Bに示す第1の音響マッチング層の絶縁性部材又は導電性部材として用いたシリコン単結晶の体積比率と音響インピーダンスとの関係を示した線図である。
図2Aにおいて、超音波探触子10Bは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に積み重ねられた2層の音響マッチング層2(2a、2b)と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b)の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
超音波探触子10Bの構成要素のうち、圧電素子1はPZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどで代表される高分子材料の圧電体などによって形成される。圧電素子1の前面には接地電極5が形成され、圧電素子1の背面には信号用電極6が形成されている。接地電極5及び信号用電極6は、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成される。
また、圧電素子1に形成されている信号用電極6と背面負荷材3との間に、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの導電性膜7bが披着された信号用電気端子7が挿着されている。この場合、圧電素子1に形成されている信号用電極6に信号用電気端子7の導電性膜7bが接触し、かつ信号用電気端子7の絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電素子1側に向けられる。一方、圧電素子1に形成されている接地電極5の前面には、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との複合材料で構成される第1の音響マッチング層2aと、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム9aの一主面に銅などの導電性膜(厚みは特性に影響が小さいように5マイクロメートル以下が好ましい)9bが披着された接地用電気端子9と、エポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料で構成される第2の音響マッチング層2bとが順次積み重ねられている。この場合、第1の音響マッチング層2aの複合材料の導電性部材に接地用電気端子9の導電性膜9bが接触し、接地用電気端子9の絶縁性フィルム9aに第2の音響マッチング層2bが接触するように、絶縁性フィルム9aの一主面が第1の音響マッチング層2a側に向けられる。第2の音響マッチング層2bは絶縁性部材であっても、あるいは導電性部材であってもよい。そして、必要に応じて、第2の音響マッチング層2bの前面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4が装着される。なお、導電性膜7b、9bは電気的に導電性を有する材料であれば何でも良く金属に限定するものではない。
上記のように構成された超音波探触子10Bの動作について以下に説明する。
圧電素子1に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の接地電極5は第1の音響マッチング層2aの複合材料の導電性部材と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との複合材料(以下、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料と称する)で構成されている第1の音響マッチング層2aとしては、その音響インピーダンスが圧電素子1と第2の音響マッチング層2bの各音響インピーダンスの中間になるような材料が選ばれる。この第1の音響マッチング層2aの導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材とのそれぞれの連結構造の構成例を図2B、図2D及び図2Eに示す。図2B、図2D及び図2Eにおいては、被検体に向けて超音波を放射する方向をZ方向、これと直交する2つの方向をそれぞれX方向、Y方向としている。
図2Bに示した第1の音響マッチング層2a−1は、それぞれ短冊状に形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とがX方向に交互に配置されたもので、このうち導電性部材20はY及びZの2方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21も同じようにY及びZの2方向につながりがある構造体になっており、以下の説明ではこの連結構造を2−2型連結構造と呼ぶこととする。ここで、複数の導電性部材20は圧電素子1の前面に形成された接地電極5と、接地用電気端子9の絶縁性フィルム9aの一主面に披着された導電性膜9bとにそれぞれ接触して、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する機能を有している。
図2Dに示した第1の音響マッチング層2a−2は、それぞれ円柱状に形成された複数の導電性部材20を、その端部をそれぞれZ方向に向けた状態でY方向に列状に配置するとともに、X方向に複数列配置し、その周囲を絶縁性部材又は半導電性部材21で取り囲んだもので、このうち導電性部材20はZ方向のみの1方向につながりがあり、X、Y方向のつながりはない。また絶縁性部材又は半導電性部材21はX、Y、Zの3方向につながりがある構造体となっており、この連結構造を1−3型連結構造と呼ぶこととする。ここで、複数の導電性部材20は圧電素子1の前面に形成された接地電極5と、接地用電気端子9の絶縁性フィルム9aの一主面に披着された導電性膜9bとにそれぞれ接触して、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する機能を有している。
図2Eに示した第1の音響マッチング層2a−3は、それぞれ四角柱状に形成された複数の絶縁性部材又は半導電性部材21を、その端部をそれぞれZ方向に向けた状態でY方向に列状に配置するとともに、X方向に複数列配置し、その周囲を導電性部材20で取り囲んだもので、このうち導電性部材20はX、Y、Zの3方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21は、Z方向のみの1方向につながりがある構造体となっており、この連結構造を3−1型連結構造と呼ぶこととする。ここで、導電性部材20は圧電素子1の前面に形成された接地電極5と接地用電気端子9の絶縁性フィルム9aの一主面に披着された導電性膜9bとにそれぞれ接触して、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する機能を有している。
前述したように、図2Aに示した第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは圧電素子1の音響インピーダンスと第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスの間の値を有していることが必要である。例えば圧電素子1として音響インピーダンスが約30メガレールスの値を有するPZT-5Hの圧電セラミックスを用い、音響インピーダンスが約1.6メガレールスの値を有する生体のような被検体を対象とした場合には、第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスは3メガレールス前後の値の材料を用いることになる。したがって、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは少なくとも3から30メガレールスの間の値を有する材料が必要になる。
一般的に、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは5から20メガレールスの間の値にすることが望ましく、また、その値が大きくなるほど周波数特性の帯域が広くなる傾向にある。したがって、第1の音響マッチング層2aとして10から20メガレールスの範囲の材料を用いることが好適である。音響インピーダンスが10〜20メガレールスの値を有する材料としては、例えばガラス、結晶化ガラス、金属タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶などがある。しかしながら、これらの材料はいずれも電気的には絶縁性部材又は半導電性部材である。
そこで、例えば、図2Aに示した超音波探触子10Bを用いて説明するが、第1の音響マッチング層2aとして絶縁性部材又は半導電性部材を用い、圧電素子1の接地電極5の端部に対応する部位を切り欠いて音響マッチング層のない部分(図示せず)を作り、その部分から電気端子(図示せず)を取り出す構成も考えられる。しかし、このような構成にすると、性能的には周波数の広帯域化が可能になる反面、音響マッチング層の無い部分においても圧電素子1が振動して超音波を発生するため、被検体に送信する超音波が乱れて超音波画像が劣化する。また、接地電極5から取り出す電気端子は1箇所であるため、診断操作中に超音波探触子を落下させたり、あるいは超音波探触子に打撃など機械的な衝撃を加えたりしたことにより、圧電素子1が割れたとき、接地電極5も同じように割れて電気的な断線が発生するなどにより、故障するおそれがある。
図2Aに示した第2の実施の形態は、これらの問題を解決し、しかも周波数の広帯域化が可能な構成を実現したものである。すなわち、圧電素子1の接地電極5が、第1の音響マッチング層2aの複数の導電性部材20を介して、接地用電気端子9の金属膜9bと電気的に接続される構成にしているため、圧電素子1の全面にて均一で所望の超音波の送信、受信をすることができるとともに、機械的な衝撃などによって圧電素子1及び接地電極5が割れたとしても、第1の音響マッチング層2aの複数個の導電性部材20で接続されているため、断線して故障することが極めて少なくなる。
ここでは、第1の音響マッチング層2a−1、2a−2、2a−3の絶縁性部材又は半導電性部材21として、前述したガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。また、第1の音響マッチング層2a−1、2a−2、2a−3の導電性部材20として、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属材料や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、グラファイト、カーボンなどを用いる。なお、導電性部材20あるいは絶縁性部材又は半導電性部材21は、前述した材料に限定されるものではなく、前述した材料と同程度の音響インピーダンスを有するものであれば他の材料であってもよい。導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料の音響インピーダンスはそれぞれの体積比率によって決まる。
なお、ここで導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料の構成を説明したが、この他、前記組み合わせの複合材料の構成以外、例えば絶縁性部材又は半導電性部材21に導電性部材を用いて導電性部材の複合材料にした構成でも良く、つまり少なくとも導電性部材20を有し、圧電素子1の電極面と電気的な接続ができる機能と音響インピーダンスを可変できる機能を備えた複合材料であれば上記構成に限定されるものではないことは明らかである。
導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料は、連結構造が1−3型、2−2型、3−1型においては、2種類のそれぞれの材料が有する音響インピーダンスの間の値になり、しかも、それらの体積比率を変えることによって、所望の音響インピーダンスの材料を得ることができる。
また、1−3型、2−2型、3−1型の連結構造を有する導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料を第1の音響マッチング層2aとして機能させるためには、複合材料が一体として超音波を伝搬させるように、導電性部材20の幅及びその配列間隔を決定する。また、導電性部材20の体積比率が小さい場合には、その幅及び配列間隔を考慮する必要はなく、導電性部材20は電気的な接続機能を主にしてその材料を選択すればよい。
また、音響マッチング層としての機能、すなわち導電性能を必要としないで音響インピーダンスのみを所望の値に整合させることを目的として図2B、図2D、図2Eに示した連結構造を用る場合には、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材という材料の選択をする必要はなく、絶縁性部材どうしの連結構造、あるいはエポキシ樹脂のような絶縁性部材とシリコンのような半導電性部材との連結構造であってもよい。
次に、図2Bに示す2−2型連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−1の製造方法の一例を以下に説明する。絶縁性部材又は半導電性部材21としてシリコン単結晶を用いる。このシリコン単結晶は図2BのZ方向が平坦になっているものとする。その平坦面に対してレーザ照射、化学的なエッチング、あるいはダイシングマシーンなどによる機械加工などにより、任意の間隔で図2BのY方向に導電性部材20を装填するための溝を形成する。次に、溝の中に銀などの粉体を混入した導電性のエポキシ樹脂などの導電性接着剤を充填して硬化させる。この導電性接着剤はシリコン単結晶に比べて音響インピーダンスがより小さい材料である。次に、第1の音響マッチング層2aとしてZ方向に、ほぼ4分の1波長の厚みにスライス加工して形成する。この場合、シリコン単結晶に近い音響インピーダンスの第1の音響マッチング層2aを要望するのであれば、導電性部材20の導電性接着剤の体積比率を小さくすればよく、また小さい音響インピーダンスの値を必要とするのであれば体積比率を大きくすればよい。
例えば、導電性部材20を形成するための導電性接着剤としてエコーボンド56C(エマーソンアンドカミング社)を用い、絶縁性部材又は半導電性部材21としてシリコン単結晶を用いた場合、それぞれの音響インピーダンスは約6.5メガレールス、19.7メガレールスである。そこでシリコン単結晶をダイシングマシーンにより任意の間隔と溝幅で分割し、その溝の部分にエコーボンド56Cを充填して作成した材料の音響インピーダンス(密度×音速)を測定すると、シリコン単結晶の体積比率が63.5%の場合は15.3メガレールスとなり、また、シリコン単結晶の体積比率が43%の場合は12.7メガレールスとなった。
図2Cは上述した2つの材料に対する測定結果に基づいて作成したシリコン単結晶の体積比率と音響インピーダンスとの関係を示した線図である。この線図から明らかなように、導電性部材20を形成するための導電性接着剤としてエコーボンド56Cを用い、シリコン単結晶の体積比率を0パーセント(導電性接着剤のみ)から100パーセント(シリコン単結晶のみ)の範囲で変化させた場合、導電性接着剤とシリコン単結晶の複合材料の音響インピーダンスは約6.5メガレールスからシリコン単結晶の音響インピーダンス19.7メガレールスまでほぼ直線的に変化することが分かる。また、発明者はこの体積比率と音響インピーダンスとに相関があることを確認することができた。
次に、図2Bに示す2−2型連結構造における第1の音響マッチング層2a−1の他の製造方法について説明する。絶縁性部材又は半導電性部材21としての板状のシリコン単結晶と、導電性部材20としての板状のグラファイトや金属とを、図2BのX方向に交互に積層して接着するか、あるいは絶縁性部材又は半導電性部材21としての板状のシリコン単結晶の一主面にそれぞれ金属をスパッタリング、めっき、あるいは印刷などの方法で薄い膜を形成したものを、図2BのX方向に順次に積層して接着した後、図2BのZ方向の厚みが得られるようにスライス加工する。この製造方法によれば大量生産することも可能である。
次に、図2Dに示す1−3型連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−2の製造方法の一例を説明する。絶縁性部材又は半導電性部材21として図2DのZ方向に厚みを有するシリコン単結晶を用意する。そして、このシリコン単結晶にレーザ照射、化学的なエッチングあるいは機械加工などにより任意の間隔で複数個の導電性部材20を設けるための穴を設ける。次に、その穴に、銀などの粉体を混入した導電性のエポキシ樹脂などの導電性接着剤を充填し硬化させる。その後、第1の音響マッチング層としてほぼ4分の1波長の厚みに加工して形成する。シリコン単結晶に近い音響インピーダンスの第1の音響マッチング層を要望するのであれば、導電性部材21の導電性接着剤の体積比率を少なくすればよく、またもっと小さい音響インピーダンスの値を必要とするのであれば導電性部材21の導電性接着剤の体積比率を大きくすればよい。
ちなみに、単結晶シリコンの音響インピーダンスは19.7メガレールスで、また導電性接着剤としてエコーボンド56C(エマーソンアンドカミング社)の音響インピーダンスは約6.5メガレールスであり、それぞれの体積比率を調整することにより図2Bの構造と同様に、音響インピーダンスを6.5メガレールスから19.7メガレールスの範囲の値にすることができる。
次に、図2Eに示す3−1型連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−3の製造方法の一例を以下に説明する。絶縁性部材又は半導電性部材21としてシリコン単結晶を用意する。そして、このシリコン単結晶にレーザ照射、化学的なエッチングあるいはダイシングマシーンによる機械加工などにより任意の間隔でX、Yの両方向に複数個の溝を設けて角柱を形成し、その後、導電性接着剤などの導電性部材20を複数の溝に充填し硬化させる。その後、第1の音響マッチング層として、ほぼ4分の1波長の厚みに加工して形成する。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスにすることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
なお、第2の実施の形態では、図2Dに示す1−3型連結構造の導電性部材20として円柱の形状を有するものを用いたが、このほか角柱あるいは球など他の形状を有するものを用いても同様の効果が得られる。また、Z方向に対してコーンのような円錐状の形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、図2Bに示す2−2型連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とが、Z方向に対して均一な幅で形成される場合について説明したが、絶縁性部材又は半導電性部材21がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、図2Bに示す2−2型、図2Dに示す1−3型及び図2Eに示す3−1型の各連結構造の導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、第1の音響マッチング層2aを介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、第1の音響マッチング層2aのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態においては、第1の音響マッチング層2aとして、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の少なくとも一方が2種類以上の材料で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1つの材種の連結構造に限定されるものではない。
また、第2の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図3Aは本発明に係る超音波探触子の第3の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図であり、図3Bは、図3Aに示した超音波探触子を、その図中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、Y−Z平面で切断した断面をX方向から見た断面図であり、図3C、3Dはそれぞれ図3A及び図3Bに示した超音波探触子を構成する要素の具体的な構成例を示す斜視図である。
図3A及び図3Bに示した超音波探触子10Cは、図3A中に示したX、Y、Zのうち、X方向に配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側となるZ方向前面に設けられた2層の音響マッチング層2(2a、2b)と、必要に応じて圧電素子1の背面に設けられる背面負荷材3と、同じく必要に応じて複数の音響マッチング層2(2a、2b)上に共通に設けられる音響レンズ4と、圧電素子1と背面負荷材3との間に挿着された複数の信号用電気端子7と、第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bとの間に挿着された接地用電気端子9とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
以下、説明の都合上、図3A及び図3Bに示した超音波探触子10Cの製造方法について説明する。
複数の圧電素子1を形成するために、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどで代表される高分子材料の圧電体などで構成され、所定の厚さを有する板材、すなわち圧電板材を準備する。この圧電板材の一主面、すなわちZ方向の前面には接地電極5を、その背面には信号用電極6を、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成する。
また、所定の厚さを有する板状の背面負荷材(背面負荷材を備えない超音波探触子ではこれに代わる部材)3と、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成され、複数の第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と、エポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料で構成された複数の第2の音響マッチング層2bを形成するための板材と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの導電性膜7bが披着され、全体がリボン状に形成された複数の信号用電気端子7と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フイルム9aの一主面に銅などの導電性膜(厚みは音響特性に対する影響が少ないように5マイクロメートル以下が好ましい)9bが披着された接地用電気端子9とを準備する。なお、第2の音響マッチング層2bを形成するために用いるエポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料は絶縁性部材であるが、この代わりに導電性部材を用いてもよい。なお、導電性膜7b、9bは電気的に導電性を有する材料であれば何でも良く金属に限定するものではない。
そこで、図3Aに示したように、背面負荷材3の前面に、複数の信号用電気端子7をX方向に所定の間隔で載置し、その上に圧電素子1を形成するための圧電板材を重ね合わせ、さらに、圧電板材の前面に第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と、接地用電気端子9と、第2の音響マッチング層2bを形成するための板材とを順次に重ね合わせて、これらを一体的に固着する。この場合、背面負荷材3と圧電板材との間に装着される複数の信号用電気端子7は、それぞれ絶縁性フィルム7aの一主面に披着されている導電性膜7bが圧電板材に形成された信号用電極6に接触し、絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電板材側(図面の上方)に向けられる。また、第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と第2の音響マッチング層2bを形成するための板材との間に挿着される接地用電気端子9は、絶縁性フイルム9aの一主面に形成された導電性膜9bが第1の音響マッチング層2aに接触するように、絶縁性フイルム9aの一主面が第1の音響マッチング層2a側に向けられる。
以上のようにして、背面負荷材3、複数の信号用電気端子7、圧電素子1を形成するための圧電板材、第1の音響マッチング層2aを形成するための板材、接地用電気端子9及び第2の音響マッチング層2bを形成するための板材を一体的に固着した後、スライシングマシーンなどによって第2の音響マッチング層2bの前面から背面負荷材3の前面部まで掘り下げた複数の溝、すなわち第2の音響マッチング層2b、接地用電気端子9、第1の音響マッチング層2a、圧電板材、信号用電気端子7及び背面負荷材3の一部を1ユニットとして、複数の圧電素子ユニットに分割する分割溝を形成する。この場合、X方向に所定の間隔で配置された信号用電気端子7の中間部に分割溝を形成する。これによって、圧電素子ユニットが並列に配置された圧電素子列が形成される。次に、音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴムなどのような材料(図示せず)を各分割溝に充填し、さらに、必要に応じて第2の音響マッチング層2bの上面にシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4を装着する。背面負荷材を備えない超音波探触子においては、この段階で背面負荷材3に代わる部材を除去する。
なお、ここでは第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bとの間に、絶縁性フイルム9aに導電性膜9bを披着させた接地用電気端子9を挿着し、接地用電気端子9の導電性膜9bと第1の音響マッチング層2aの導電性部材とを接触させることによって、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続するものについて説明したが、このほか、第2の音響マッチング層2bとして導電性部材を用い、この第2の音響マッチング層2bの前面に導電性膜9bを披着させた接地用電気端子9を装着し、第1の音響マッチング層2a及び第2の音響マッチング層2bを介して、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続するようにしても同様の動作をさせることができる。
上記のように構成された超音波探触子10Cの動作について以下に説明する。
圧電素子1の背面に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の前面に形成された接地電極5は、第1の音響マッチング層2aの複合材料の導電性部材と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
この場合、詳細を後述する第1の音響マッチング層2aの導電性部材は、圧電素子1に形成された接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する形状であればよく、特定の形状に限定するものではない。また、第1の音響マッチング層2aの導電性部材は、1つの圧電素子1に対して2箇所以上で、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとが電気的に接続されるような構成が望ましく、導電性部材20の数が多いほど接地電極5が圧電素子1と共に割れても、信号電送経路が断線して故障する頻度は少なくなり、信頼性の高いものとなる。また、第1の音響マッチング層2aの絶縁性部材又は半導電性部材は音響インピーダンスを選択することが主たる目的となる。そのため、第3の実施の形態のように2層の音響マッチング層を備えた場合、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは、圧電素子1の音響インピーダンスと第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスとの間の値を有していることが必要で、例えば、5メガレールスから15メガレールスの範囲の値が選ばれる。このような範囲の音響インピーダンスが得られる材料を導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材とを複合した材料とすればよい。
導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成した第1の音響マッチング層2aにおける導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材材料とのそれぞれの連結構造の一例を図3C、図3Dに示す。図3C、図3Dにおいて、厚さ方向であるZ方向は被検体側の方向、X方向は圧電素子1の配列方向、Y方向はX方向及びZ方向と直交する方向を示している。
図3Cにおいて、第1の音響マッチング層2a−4を構成する複数の導電性部材20は円柱状に形成されたものを、その軸芯をZ方向に揃えたもので、Z方向の1方向のみにつながりがあり、絶縁性部材又は半導電性部材21はX、Y、Zの3方向につながりがある構造体となっている。この導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料の連結構造を1−3型連結構造と呼ぶ。また、圧電素子ユニット、すなわち1個の圧電素子1に対応する1個の第1の音響マッチング層2a−4の導電性部材20は、それぞれ3行×22列にして合計66個が配設されている。この導電性部材20の数については、前述したように、圧電素子1の接地電極5との接続箇所が多くなるほど信頼性は高くなるが、導電性部材20の数については2個以上であればよく、66個に限定されるものではない。ただし、導電性部材20が第1の音響マッチング層2aとして機能するように、つまり、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の複合材料が音響的に1つの音響マッチング層として機能する形態にすることが必要である。なお、図3Cに示す第1の音響マッチング層2a−4は、圧電素子1に対応して既に分割された構成の状態を示しているが、分割される前の状態は、前述したように全体が1枚の板状のものになっている。一方、導電性部材20に音響マッチング機能を持たせる必要がないとき、つまり導電性部材20が、絶縁性部材又は半導電性部材21に対してその体積比率が著しく少ない場合は、圧電素子1の接地電極5とを接続させる機能のみを持たせるだけで同じ効果が得られる。
このように、複数の導電性部材20は、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の金属膜9bとにそれぞれ接触して、その厚さ方向であるZ方向でこれらを電気的に接続させる機能を有している。ここでは、Z方向の1方向につながりがあるものを導電性部材20とし、X、Y、Z方向の3方向につながりがあるものを絶縁性部材又は半導電性部材21としたが、これらの材料を互いに入れ替えて、絶縁性部材又は半導電性部材側がZ方向の1方向につながりがあり、導電性部材側がX、Y、Zの3方向につながりがある連結構造体、すなわち3−1型連結構造体(図示を省略)にしても同様の効果を得ることができる。
また、図3Dに示した音響マッチング層2a−5は、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21と交互に配置したもので、導電性部材20は、圧電素子1の配列方向のX方向と、厚さ方向であるZ方向の2方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21も同様に、圧電素子1の配列方向のX方向と、Z方向の2方向につながりがある構造体となっており、これらの複合材料の連結構造を2−2型連結構造と呼ぶ。したがって、複数の導電性部材20は圧電素子1の接地電極5及び接地用電気端子9の導電性部材とは厚さ方向であるZ方向で電気的な接続が可能となる。
図3Dにおいて、1個の圧電素子1に対応する1個の第1の音響マッチング層2a−5の導電性部材20は、絶縁性部材又は半導電性部材21と交互にしてY方向に11個配置されている。この導電性部材20は、前述したように、圧電素子1の接地電極5との接続箇所が多いほど信頼性は高くなるが、導電性部材20の数については2個以上であればよい。ただし、導電性部材20が第1の音響マッチング層2aとして機能するように、つまり導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料が1つの音響マッチング層として機能する形態にすることが必要である。なお、図3Dに示す第1の音響マッチング層2a−5は、圧電素子1に対応して既に分割された構成の状態を示しているが、分割される前の状態は、前述したように、全体が1枚の板状のものになっており、導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21は圧電素子1の配列方向であるX方向に連結した構成になっている。一方、導電性部材20に音響マッチング機能を持たせる必要がないとき、つまり導電性部材20が、絶縁性部材又は半導電性部材21に対してその体積比率が著しく少ない場合は、圧電素子1の接地電極5とを接続させる機能のみを持たせるだけで同じ効果が得られる。
また、図3Dでは、第1の音響マッチング層2a−5の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21は、圧電素子1の配列方向とほぼ並行に構成した2−2型の連結構造としたが、このほか、圧電素子1の配列方向と直交する方向、あるいはそれ以外の方向に配列した2−2型の連結構造にしても同様の効果が得られる。
図3C又は3Dに示すような連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−4、2a−5は、前述したように、その音響インピーダンスが圧電素子1の音響インピーダンスと第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスとの間の値を有することが必要であるが、本実施の形態のように音響マッチング層を2層タイプにした場合には、例えば圧電素子1として音響インピーダンスが約30メガレールスの値を有するPZT-5Hの圧電セラミックを用い、音響インピーダンスが約1.6メガレールスの値を有する生体のような被検体を対象とした場合には、第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスは約3メガレールスの値の材料を用いることになる。
したがって、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは少なくとも3から30メガレールスの間の値を有する材料が必要になってくる。一般的に第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは、5から20メガレールスの間の値にすることが望ましく、また、その値が大きくなるほど、周波数特性の帯域が広くなる傾向があり、広帯域の周波数特性を得るためには、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスの値を大きくする必要があり、10から20メガレールスの範囲の材料を用いる。
しかし、この範囲の値を有する材料は、例えば、ガラス、結晶化ガラス、金属タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶などがある。しかしながら、これらの材料は、いずれも電気的には絶縁物あるいは半導電性部材である。
そこで、例えば、図3Bに示した超音波探触子10Cについて説明すると、圧電素子1の接地電極5の端部に対応する部位を切り欠いて音響マッチング層のない部分(図示せず)を作り、その部分から電気端子(図示せず)を取り出す構成も考えられる。しかし、このような構成にすると、性能的には周波数の広帯域化が可能になる反面、音響マッチング層の無い部分においても圧電素子1は振動して超音波を発生するため、被検体に送信する超音波が乱れて超音波画像が劣化する。また、接地電極5から取り出す電気端子は1箇所であるため、診断操作中に超音波探触子を落下させたり、あるいは超音波探触子に打撃など機械的な衝撃を加えたりしたことにより、圧電素子1が割れたとき、接地電極5も同じように割れて電気的な断線が発生するなどにより故障するおそれがある。
第3の実施の形態は、これらの問題を解決し、しかも周波数の広帯域化が可能な構成を実現したものである。すなわち、圧電素子1の接地電極5が、第1の音響マッチング層2aの複数の導電性部材20を介して、接地用電気端子9の金属膜9bとの電気的に接続される構成にしているため、圧電素子1の全面に音響マッチング層を設ける構成にできているため、圧電素子1の全面にて均一で所望の超音波の送信、受信することができるとともに、機械的な衝撃などによって圧電素子1及び接地電極5が割れたとしても、第1の音響マッチング層2aの複数個の導電性部材で接続されているため、断線して故障することが極めて少なくなる。
一方、第1の音響マッチング層2a−3、2a−4の絶縁性部材又は半導電性部材21としては、第2の実施の形態で用いた材料であるガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。また、第1の音響マッチング層2a−3、2a−4の導電性部材20としては、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、グラファイト、カーボンなどの材料を用いる。このような導電性部材20、絶縁性部材又は半導電性部材21を用いた1−3型、2−2型、3−1型連結構造の複合材料の音響インピーダンスは、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21のそれぞれの体積比率によって決まる。例えば、導電性部材20として銀を用い、絶縁性部材としてXカット水晶を用いた場合、それぞれ材料単体の音響インピーダンスは38、15.3メガレールスである。この2種類の材料の体積比率を変えることにより、第2の実施の形態で説明した図2Cの線図と同様に、Xカット水晶の音響インピーダンス38メガレールスと銀の音響インピーダンス15.3メガレールスの間の所望の値にすることができる。
なお、導電性部材20、絶縁性部材又は半導電性部材21が上述した以外の材料であっても本発明の目的が達成できる材料であればよく、上術した材料に限定するものではない。また、第3の実施の形態においては、1種類の導体20と、1種類の絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造を有する第1の音響マッチング層2aについて説明したが、このほか、導電性部材を2種類、絶縁性部材を1種類〜3種類というように、2種類以上の材料を用いても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1種類の材料の連結構造に限定するものではない。
また、1−3型、2−2型、3−1型の連結構造を有する導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料を第1の音響マッチング層2aとして機能させるためには、複合材料が一体として超音波が伝搬するように、導電性部材20の幅及び配列間隔にする。また、導電性部材20の体積比率が少ない場合は、導電性部材20の幅及び配列間隔を考慮する必要はなく、電気的な接続機能を主にしてその材料を選択すればよい。
図3Cに示す1−3型の連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−4の製造方法としては、第2の実施の形態として図2Dに示した第1の音響マッチング層2a−2と同じような方法で製造すればよく、図3Dに示す2−2型の連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−4の製造方法としては、第2の実施の形態として図2Bに示した第1の音響マッチング層2a−1と同じような方法で製造すればよい。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材とを複合した複合材料を用いることにより、その音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、複合材料を構成する導電性部材から電気端子を取り出すことができるため、信頼性が高くかつ操作性が良好な超音波探触子を得ることができる。
なお、第3の実施の形態では、1−3型連結構造の導電性部材20として、円柱の形状を有するものを用いたが、このほか角柱あるいは球など他の形状を有するものを用いても同様の効果が得られる。また、1−3型連結構造の導電性部材20として、Z方向に対してコーンのような円錐状の形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、2−2型連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21が、Z方向に対して均一な幅で配列される場合について説明したが、これらの部材がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、1−3型、2−2型及び3−1型の各連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とがほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、第1の音響マッチング層2aの導電性部材を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成の場合について説明したが、この代わりに、第1の音響マッチング層2aのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に電気端子を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態においては、圧電素子1を1次元に複数個配列した構成について説明したが、このほか、圧電素子1を2次元に複数個配列したいわゆる2次元アレイの構成にしても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第4の実施の形態>
次に、本発明に係る超音波探触子の第4の実施の形態について説明する。図4Aは第4の実施の形態に係る超音波探触子の構成を、その一部を破断して示した斜視図であり、図4Bは、図4Aに示した超音波探触子を、その図中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、Y−Z平面で切断した断面をX方向から見た断面図である。
図4A及び図4Bに示した超音波探触子10Dは、図4A中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、X方向に配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側となるZ方向前面に積み重ねられた複数の第1の音響マッチング層2a、複数の第2の音響マッチング層2b、及び第2の音響マッチング層2b上に共通に積み重ねられた第3の音響マッチング層2cを含む音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面に設けられる背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2の前面に設けられる音響レンズ4と、圧電素子1と背面負荷材3との間に挿着された複数の信号用電気端子7と、第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bとの間に挿着された接地用電気端子9とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
以下、説明の都合上、図4A及び図4Bに示した超音波探触子10Dの製造方法について説明する。
複数の圧電素子1を形成するために、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどに代表される高分子材料の圧電体などで構成され、所定の厚さを有する板材、すなわち圧電板材を準備する。この圧電板材の一主面、すなわちZ方向の前面には接地電極5を、その背面には信号用電極6を、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成する。
また、所定の厚さを有する板状の背面負荷材(背面負荷材を備えない超音波探触子ではこれに代わる部材)3と、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成され、複数の第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と、エポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料で構成された複数の第2の音響マッチング層2bを形成するための板材と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの導電性膜7bが披着され、全体がリボン状に形成された複数の信号用電気端子7と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フイルム9aの一主面に銅などの導電性膜(厚みは音響特性に対する影響が少ないように5マイクロメートル以下が好ましい)9bが披着された接地用電気端子9とを準備する。なお、第2の音響マッチング層2bを形成するために用いるエポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料は絶縁性部材であるが、導電性部材を用いてもよい。なお、導電性膜7b、9bは電気的に導電性を有する材料であれば何でも良く金属に限定するものではない。
そこで、図4Aに示したように、背面負荷材3の前面に、複数の信号用電気端子7をX方向に所定の間隔で配置し、その上に圧電素子1を形成するための圧電板材を重ね合わせ、さらに、圧電板材の前面に第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と、接地用電気端子9と、第2の音響マッチング層2bを形成するための板材とを順次に重ね合わせて、これらを一体的に固着する。この場合、背面負荷材3と圧電板材との間に装着される複数の信号用電気端子7は、それぞれ絶縁性フィルム7aの一主面に披着されている導電性膜7bが圧電板材に形成された信号用電極6に接触し、絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電板材側(図面の上方)に向けられる。また、第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と第2の音響マッチング層2bを形成するための板材との間に挿着される接地用電気端子9は、絶縁性フイルム9aの一主面に形成された導電性膜9bが第1の音響マッチング層2aに接触するように、その一主面が第1の音響マッチング層2a側に向けられる。
以上のようにして、背面負荷材3、複数の信号用電気端子7、圧電素子1を形成するための圧電板材、第1の音響マッチング層2aを形成するための板材、接地用電気端子9及び第2の音響マッチング層2bを形成するための板材を一体的に固着した後、スライシングマシーンなどによって第2の音響マッチング層2bの前面から背面負荷材3の前面部まで掘り下げた複数の溝、すなわち第2の音響マッチング層2b、接地用電気端子9、第1の音響マッチング層2a、圧電板材、信号用電気端子7及び背面負荷材3の一部を1ユニットとして、複数の圧電素子ユニットに分割する分割溝を形成する。この場合、X方向に所定の間隔で配置された信号用電気端子7の中間部に分割溝を形成する。これによって、圧電素子ユニットが並列に配置された圧電素子列が形成される。次に、音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴムなどのような材料(図示せず)を各分割溝に充填し、さらに、第2の音響マッチング層2b及び分割溝に充填した部分の上面には、第3の音響マッチング層2cを装着する。
第3の音響マッチング層2cは、図示のように分割しないで連結した状態で装着する。この第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、及びウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。さらに、必要に応じて、第3の音響マッチング層2cの上面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4を装着する。背面負荷材を備えない超音波探触子においては、この段階で背面負荷材3に代わる部材を除去する。
なお、第3の音響マッチング層2cは、第1の音響マッチング層2a、第2の音響マッチング層2bと同じように圧電素子1と一緒に分割してもよい。また、第2の音響マッチング層2b、第3の音響マッチング層2cは絶縁性部材、導電性部材のいずれでもよい。
なお、ここでは第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bとの間に、絶縁性フイルム9aに導電性膜9bを披着させた接地用電気端子9を挿着し、接地用電気端子9の導電性膜9bと第1の音響マッチング層2aの導電性部材とを接触させることによって、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続するものについて説明したが、このほか、第2の音響マッチング層2bとして導電性部材を用い、この第2の音響マッチング層2bの前面に導電性膜9bを披着させた接地用電気端子9を装着し、第1の音響マッチング層2a及び第2の音響マッチング層2bを介して、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続するようにしても同様の動作をさせることができる。
上記のように構成された超音波探触子10Cの動作について以下に説明する。
圧電素子1の背面に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の前面に形成された接地電極5は、第1の音響マッチング層2aの複合材料の導電性部材と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
この場合、詳細を後述する第1の音響マッチング層2aの導電性部材は、圧電素子1に形成された接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する形状であればよく、特定の形状に限定するものではない。また、第1の音響マッチング層2aの導電性部材は、1つの圧電素子1に対して2箇所以上で、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとが電気的に接続されるような構成が望ましく、導電性部材20の数が多いほど接地電極5が圧電素子1と共に割れても、信号電送経路が断線して故障する頻度は少なくなり、信頼性の高いものとなる。
また、第1の音響マッチング層2aの絶縁性部材又は半導電性部材21は音響インピーダンスを整合の状態の近づけることが主たる目的となる。そのため、本実施の形態のように3層の音響マッチング層を備えた場合、第1、第2、第3の音響マッチング層2a、2b、2cの各音響インピーダンスは、それぞれの目的とする周波数特性に応じて使用する値の範囲が選択される。例えば、特開昭60−53399号公報では、第1、第2及び第3の音響マッチング層の音響インピーダンスは、それぞれ12.6から18.1、3.8から6.0、及び1.7から2.4メガレールスの範囲を、また、特開昭60−185499号公報では、それぞれ5から15、1.9から4.4、及び1.6から2メガレールスの範囲を、さらに特開2003−125494号公報には19.7、7.4、2.44メガレールスの値が示されている。したがって、3層タイプの音響マッチング層における第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは、およそ5から20メガレールスの範囲の値を有する材料が用いられる。音響マッチング層の層数が多くなるほど周波数特性の広帯域化、高感度化が可能になり、少なくとも2層の音響マッチング層のタイプより3層の音響マッチング層タイプの方が周波数の広帯域化が可能となる。
導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成した第1の音響マッチング層2aの導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とのそれぞれの連結構造の一例は、第3の実施の形態で説明した図3C、図3Dに示すような1−3型、2−2型あるいは前述した3−1型の構造のものを用いればよい。
第1の音響マッチング層2aの導電性部材20としては、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、グラファイト、カーボンなどの材料を用いる。また、第1の音響マッチング層2aの絶縁性部材又は半導電性部材21としては、ガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。
なお、導電性部材20、絶縁性部材又は半導電性部材21として上記以外の材料を用いたとしても、本願発明の目的が達成できる材料であればよい。また、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料としての音響インピーダンスは、1−3型、2−2型、3−1型連結構造を有する複合材料は、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とのそれぞれの体積比率によって決まることは、第2の実施の形態で説明したとおりである。例えば、導電性部材20として音響インピーダンスは38メガレールスの値を有する銀を用い、絶縁性部材21として音響インピーダンスは15.3メガレールスの値を有する水晶Xカット板を用いて体積比率を任意に選択することにより、第2の実施の形態を示す図2Cと同様に、複合材料の音響インピーダンスは15.3から38メガレールスの範囲で任意に所望の値を得ることができる。この範囲の音響インピーダンスは、3層音響マッチング層の第1の音響マッチング層2aに要望される値の範囲である5から20メガレールスに相当する範囲を有する体積比率が存在し、この範囲で作成した材料は、第1の音響マッチング層2aとしての機能を有していることになる。また、第4の実施の形態の第1の音響マッチング層2aのほかの機能としては、第1の音響マッチング層2aの導電性部材20が圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性部材と電気的に接続できる構成であるため、電気端子を取り出しできる構成にしている。
連結構造が1−3型、2−2型、3−1型構造においては、2種類のそれぞれの材料が有する音響インピーダンスの範囲内の値になり、それぞれの材料の体積比率を変えることによって、所望の音響インピーダンスの材料を得ることができる。また、第4の実施の形態は、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造を有する第1の音響マッチング層2aについて説明したが、このほか、2種類以上の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21材料を用いても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1種類ずつ、合計2種類の材料の連結構造に限定するものではない。
また、1−3型、2−2型、3−1型の連結構造を有する導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料を第1の音響マッチング層2aとして機能させるためには、複合材料が一体として超音波が伝搬するように、導電性部材20の幅及び配列間隔にする。また、導電性部材20の体積比率が少ない場合は、導電性部材20の幅及び配列間隔を考慮する必要はなく、電気的な接続機能を主にしてその材料を選択すればよい。
また、図4Aに示すように、第3の音響マッチング層2cを圧電素子1に対応して分割しない構造としているが、当然のことながら、分割した構成にしても同様の効果が得られるので、図4Aの構成に限定するものではない。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材とを複合した複合材料を用いることにより、その音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、複合材料を構成する導電性部材から電気端子を取り出すことができるため、信頼性が高くかつ操作性が良好な超音波探触子を得ることができる。
なお、第4の実施の形態では、1−3型連結構造の導電性部材20として、円柱の形状を有するものを用いたが、このほか角柱あるいは球など他の形状を有するものを用いても同様の効果が得られる。また、1−3型連結構造の導電性部材20として、Z方向に対してコーンのような円錐状の形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、2−2型連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21が、Z方向に対して均一な幅で配列される場合について説明したが、これらの部材がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、1−3型、2−2型及び3−1型の各連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とがほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。また、第4の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、第1の音響マッチング層2aの導電性部材を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成の場合について説明したが、この代わりに、第1の音響マッチング層2aのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に電気端子を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、圧電素子1を1次元に複数個配列した構成の場合について説明したが、このほか、圧電素子1を2次元に複数個配列したいわゆる2次元アレイの構成にしても同様の効果が得られる。また、第4の実施の形態では、導電性部材及び絶縁性部材若しくは半導電性部材は、2種類用いた場合について説明したが、このほか、導電性部材を2種類、絶縁性部材を1種類〜3種類というように、2種類以上の材料を用いても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図5Aは本発明に係る超音波探触子の第5の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図であり、図5Bは、図5Aに示した超音波探触子を、その図中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、Y−Z平面で切断した断面をX方向から見た断面図である。
図5A及び図5Bに示した超音波探触子10Eは、図5A中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、X方向に配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側となるZ方向の前面に積み重ねられた複数の第1の音響マッチング層2a、複数の第2の音響マッチング層2b、及び第2の音響マッチング層2b上に共通に積み重ねられた第3の音響マッチング層3cを含む音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面に設けられる背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に設けられる音響レンズ4と、圧電素子1と背面負荷材3との間に挿着された複数の信号用電気端子7と、第2の音響マッチング層2bと第3の音響マッチング層2cとの間に挿着された接地用電気端子9とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
第5の実施の形態は第4の実施の形態と比較して、圧電素子1、第1の音響マッチング層2a、第3の音響マッチング層2cの積層構造は同じであるが、基本的に違う点は、第2の音響マッチング層2bに導電性部材、又は第1の音響マッチング層2aと同じように導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を用いた点、第2の音響マッチング層2bの上面にポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フイルム9aの一主面に銅などの金属膜9bが披着された接地用電気端子9を設けた点にある。このように構成にすることにより、第1の音響マッチング層2a及び第2の音響マッチング層2bを介して、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続することができる。
第1の音響マッチング層2a及び第2の音響マッチング層2bの両方に複合材料を用いる場合には、これの音響マッチング層2a、2bの各導電性部材部が少なくとも電気的に接続されるような構成にする必要がある。また、第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bの複合材料の連結構造は必ずしも同じ構造にする必要はなく、例えば第1の音響マッチング層2aの連結構造を1−3型にして、第2の音響マッチング層2bの連結構造を2−2型にしてもよく、両音響マッチング層の導電性部材部が電気的に接続される構成にして、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とが電気的に接続されるとともに、それぞれが音響マッチング層としての音響インピーダンスの値を有するように構成すればよい。
また、第2の音響マッチング層2bとしては、グラファイトのような導電性部材を用いても、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を用いてもよい。導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を用いる場合には、例えば、導電性部材20として音響インピーダンスが38メガレールスの銀を用い、絶縁性部材21として音響インピーダンスが3メガレールスのエポキシ樹脂を用いて、体積比率を変えることにより音響インピーダンスを任意に設定することができ、例えば6メガレールス付近の値にすることが可能である。これは1−3型、2−2型、3−1型のいずれの連結構造の複合材料にも可能である。
一方、第5の実施の形態においては、第2の音響マッチング層2bの前面に装着される接地用電気端子9の基材となる絶縁性のフィルムとして、ポリイミドのような音響インピーダンスが約3メガレールスの材料を用いた場合には、この材料の音響インピーダンスが第2の音響マッチング層2bと第3の音響マッチング層2cとの間の値か、若しくはこれに近い値であるので、音響的な不整合がなくなって良好な周波数特性が得られやすい。
以上のように、圧電素子の被検体側面に設ける3層の音響マッチング層の構成において、第1及び第2の音響マッチング層にそれぞれ導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を用いることにより、第1及び第2の音響マッチング層のいずれをもその音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、第1及び第2の音響マッチング層の各導電性部材を介して、接地用電気端子9を接地電極5に電気的に接続することができるので、信頼性が高く、かつ操作性が良好な超音波探触子を得ることができる。
なお、第5の実施の形態では、それぞれ1種類の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21などの材料の連結構造を有する第1、第2の音響マッチング層2a、2bについて説明したが、このほか、2種類以上の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とを用いても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1種類の材料の連結構造に限定するものではない。
また、第5の実施の形態では、1−3型連結構造の導電性部材は円柱の形状を用いた場合について説明したが、このほか角柱あるいは球など他の形状に場合においても同様の効果が得られる。また、第5の実施の形態では、1−3型連結構造の導電性部材として円柱の形状を有するものを用いたが、このほかZ方向に対してコーンのような円錐状の形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態では、1−3型、2−2型及び3−1型の各連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とがほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bの各導電性部材20を介して、それらの前面に電気端子を設ける構成の場合について説明したが、この代わりに、第2の音響マッチング層2bのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に電気端子を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態においては、圧電素子1を1次元に複数個配列した構成について説明したが、このほか、圧電素子1を2次元に複数個配列したいわゆる2次元アレイの構成にしても同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態では、第1の音響マッチング層2aの前面に、第2の音響マッチング層2b及び第3の音響マッチング層2cを積層して、合計3層の音響マッチング層2を備えたものについて説明したが、nを3以上の整数として、音響マッチング層2が第1〜第nの音響マッチング層を含み、かつ第2の音響マッチング層と第3の音響マッチングとの間に電気端子を装着する構成としても、上述したと同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第6の実施の形態>
図6Aは本発明に係る超音波探触子の第6の実施の形態の構成を示す断面図であり、図6Bは図6Aに示す超音波探触子を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図である。
図6Aにおいて、超音波探触子10Fは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に積み重ねられた音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
超音波探触子10Fの構成要素のうち、圧電素子1はPZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどで代表される高分子材料の圧電体などによって形成される。圧電素子1の前面には接地電極5が形成され、圧電素子1の背面には信号用電極6が形成されている。接地電極5及び信号用電極6は、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成される。
また、圧電素子1に形成されている信号用電極6と背面負荷材3との間に、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの金属膜7bが披着された信号用電気端子7が挿着されている。この場合、圧電素子1に形成されている信号用電極6に信号用電気端子7の金属膜7bが接触し、かつ信号用電気端子7の絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電素子1側に向けられる。一方、圧電素子1に形成されている接地電極5の前面には、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料で構成される音響マッチング層2と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム9aの一主面に銅などの導電性膜(厚みは特性に影響が小さいように5マイクロメートル以下が好ましい)9bが披着された接地用電気端子9とが順次積み重ねられている。この場合、音響マッチング層2の複合材料の導電性部材20に接地用電気端子9の導電性膜9bが接触するように、絶縁性フィルム9aの一主面が音響マッチング層2側に向けられる。そして、必要に応じて、音響マッチング層2の前面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4が装着される。
上記のように構成された超音波探触子10Fの動作について以下に説明する。
圧電素子1に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の接地電極5は音響マッチング層2の複合材料の導電性部材20と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
図6Bにおいて、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料で構成されている音響マッチング層2としては、音響インピーダンスが圧電素子1と被検体(例えば生体)の間になるような材料が選ばれる。絶縁性部材又は半導電性部材21は厚み方向(図面では上下方向)に対して連続的に形状(体積)が変化し、図面では下方は体積が大きく上方にいくに従って体積が小さくなるような形状(例えば円錐、三角錐、四角錐など)にし、その間隙に導電性部材20を満たした構成にしている。例えば絶縁性部材又は半導電性部材21が、導電性部材20の音響インピーダンスより大きい値を有する材料の場合には、図面では下方は体積が大きいため音響インピーダンスの値が最も大きく、上方にいくに従って徐々に体積が小さくなって導電性部材20の体積が大きくなることにより音響インピーダンスが徐々に小さくなっていく。つまり音響マッチング層2は上下方向に音響インピーダンスが連続的に変化した構成となっている。図6Aのような構成で図面の下方が音響インピーダンスは大きく、上方にいくに従って小さくなる構成の場合は、当然ながら圧電素子1側は下方になり被検体側は上方になるように構成される。
このように音響マッチング層2の形状が厚み方向に連続的に可変する構成にすることにより、音響マッチング層2は、厚み方向(圧電素子1から被検体の方向)に対して音響インピーダンスが連続的に変化する特性となっており、圧電素子1の接地電極2側に位置する音響マッチング層2の部分は、音響インピーダンスが圧電素子1に近い値で大きく、そして被検体側(図面では上方)に位置する部分の音響マッチング層2の音響インピーダンスは、被検体の値に近い値となっている。このように音響インピーダンスを連続的に傾斜させる音響マッチング層2を用いることにより、周波数の広帯域化が可能となる。また、本音響マッチング層2の厚みは周波数に依存しないため、中心周波数の約2分の1波長以上の厚みであれば音響整合層としての効果を発揮でき、厚みに対して周波数特性はあまり関係しない。
音響マッチング層2の導電性部材20は圧電素子1の一方の電極と電気的な接続がなされ、もう一方の導電性部材20の面には、接地用電気端子9の導電性膜9bが接触して電気的に接続される構成となっており、接地用電気端子9から信号の取り入れ、取り出しをする。本音響マッチング層2の絶縁性部材又は半導電性部材21と、導電性部材20の連結構造としては、第2の実施の形態で説明した2−2型、1−3型、3−1型連結構造が望ましい。例えば絶縁性部材又は半導電性部材21として半導体などに使用されている音響インピーダンスが約19.7メガレールスを有するシリコンの単結晶、また導電性部材20として音響インピーダンス約6.5メガレールスを有する導電性接着剤のエコーボンド56C(エマーソンアンドカミング社)を用いると音響インピーダンスはシリコン単結晶の体積比率がほぼ100%の部分は、19.7メガレールスの音響インピーダンスであり徐々に体積比率が減少していき、導電性接着剤の体積比率が徐々に増加していくことにより音響インピーダンスは6.5メガレールスに近づいていくような特性を得ることができる。
ここでは、音響マッチング層2の絶縁性部材又は半導電性部材21として、ガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。また、音響マッチング層2の導電性部材20として、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属材料や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、グラファイト、カーボンなどを用いる。なお、導電性部材20あるいは絶縁性部材又は半導電性部材21は、前述した材料に限定されるものではなく、前述した材料と同程度の音響インピーダンスを有するものであれば他の材料であってもよい。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスを連続的に傾斜させることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
また、第6の実施の形態では、図6Bに示すように導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第6の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、音響マッチング層2を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、音響マッチング層2のZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第6の実施の形態においては、音響マッチング層2として、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の少なくとも一方が2種類以上の材料で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1つの材種の連結構造に限定されるものではない。
また、第6の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第7の実施の形態>
図7Aは本発明に係る超音波探触子を構成する音響マッチング層の第7の実施の形態の構成を示す断面図である。なお、超音波探触子の概略断面図は第6の実施の形態で説明した図6Aと同じであり音響マッチング層2の構成が違うだけなので、超音波探触子は図6Aを用いて説明し、音響マッチング層の部分は図7Aを用いて説明する。
図6Aにおいて、超音波探触子10Fは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これら構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。超音波探触子10Fの構成要素及び動作については第6の実施の形態で説明しているのでここでは割愛する。
図7Aにおいて、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料で構成されている音響マッチング層2としては、音響インピーダンスが圧電素子1と被検体(例えば生体)の間になるような材料が選ばれる。絶縁性部材又は半導電性部材21は厚み方向(図面では上下方向)に対して、例えば図面では幅を2段階に段階的に可変して形状(体積)を変化させ、下段(T1の領域)は幅が大きく、上段(T2の領域)は幅が小さくなるような形状にし、その間隙に導電性部材20を満たした構成にしている。例えば絶縁性部材又は半導電性部材21が、導電性部材20の音響インピーダンスより大きい値を有する材料の場合は、T1の領域は幅が大きいため音響インピーダンスの値が大きく、T2の領域は幅が狭くなる。それに対して、導電性部材20の幅は逆になり、それぞれの幅(体積)が広い方の部材の音響インピーダンスに近づく。T1、T2の領域の導電性部材20と、絶縁性部材又は半導電性部材21の体積比率によって音響インピーダンスを段階的に変えることができる。したがって、図7Aに示すように2段階になる構成では、2層の音響マッチング層が構成されたことになる。当然ながらT1、T2のそれぞれの厚みは4分の1波長の厚みを基本にして設定される。
図6Aのように音響マッチング層2の導電性部材20は圧電素子1の一方の電極と電気的な接続がされ、もう一方の導電性部材20の面には、接地用電気端子9の導電性膜9bが接触して電気的に接続される構成となっており、接地用電気端子9から信号の取り入れ、取り出しをする。図7Aに示した音響マッチング層2の導電性部材20と、絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造としては、第2の実施の形態で説明した2−2型、1−3型、3−1型連結構造が望ましい。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスを段階的に可変させることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
また、第7の実施の形態では、図7Aに示すように導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第7の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、音響マッチング層2を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、音響マッチング層2のZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第7の実施の形態においては、音響マッチング層2として、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の少なくとも一方が2種類以上の材料で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1つの材種の連結構造に限定されるものではない。
また、第7の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
また、第7の実施の形態を構成する音響マッチング層2の他の構成例として図7Bに示したものがある。図7Bの音響マッチング層2は図7Aに示したように2層の音響マッチング層T1、T2を構成しているが、図7Bは導電性部材20を厚みT1の領域で100%を占め、厚みT2の領域に導電性部材20と音響インピーダンスの値が違う部材、例えば絶縁性若しくは半導体部材を任意の体積比率で設ける。例えば導電性部材20としてグラファイトに銅、銀などの金属粉を充填した材料を用いて音響インピーダンスを6〜16メガレールスの値を用いて厚みT1を100%占めて第1の音響マッチング層とする、また厚みT2の領域は所望の音響インピーダンスにするように導電性部材20に溝を形成し、その溝に絶縁性部材であるエポキシ樹脂、ウレタン、シリコーンゴムなどの音響インピーダンス(1〜3メガレールス)の低い材料を充填して形成し導電性部材20と絶縁性若しくは半導体部材21の体積比率で厚みT2の音響インピーダンスにすることにより第2の音響マッチング層を構成することができる。このような構成にすることにより導電性部材20はT1、T2の厚み方向に連結しているため、図7Aの実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、図7Bでは2層の音響マッチング層で構成した場合について説明したが、この他2層以上つまり3層以上の音響マッチング層で構成することも可能であり、2層の音響マッチング層に限定するものではない。
<第8の実施の形態>
図8は本発明に係る超音波探触子の第8の実施の形態を構成する音響マッチング層の構成を示す断面図である。なお、超音波探触子の概略断面図は第2の実施の形態で説明した図2Aと同じであり第1の音響マッチング層2aの構成が違うだけなので、超音波探触子は図2Aを用いて説明し、第1の音響マッチング層の部分は図8を用いて説明する。
図2Aにおいて、超音波探触子10Bは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に積み重ねられた2層の音響マッチング層2(2a、2b)と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b)の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。超音波探触子の構成要素及び動作については第2の実施の形態で説明しているのでここでは割愛する。
導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成されている第1の音響マッチング層2aとしては、その音響インピーダンスが圧電素子1と第2の音響マッチング層2bの各音響インピーダンスの中間になるような材料が選ばれる。この第1の音響マッチング層2aとして、導電性部材と、複数の絶縁性部材又は半導電性部材との構成例を図8に示す。図8においては、被検体に向けて超音波を放射する方向をZ方向、これと直交する2つの方向をそれぞれX方向、Y方向としている。
図8に示した第1の音響マッチング層2aは、導電性部材20と、複数のここでは2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21とがX方向に順次に配置された連結構造をしており、この導電性部材20は少なくともZ方向につながりがある構造体になっている。図8の構成は、2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21の幅(体積)に対して、導電性部材20の幅(体積)は極めて狭くなった構成にしている。
この構成は2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21の体積比率(図面ではX方向の幅)を変えることにより第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスを任意に設定することを可能にし、導電性部材20は前記2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21の体積比率に比べて極めて小さい値つまり、図8のX方向の幅が極めて狭くして音響インピーダンスの可変にはほとんど寄与しないような構成にする。例えば2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21としてシリコン単結晶とエポキシ樹脂を用いてX方向の幅をそれぞれ0.1mmに、また導電性部材20としてシリコン単結晶又はエポキシ樹脂の側面に銅、銀、金などをメッキあるいはスパッタリングなどの方法により形成しての幅を0.002mmにすると、これら合計の幅に対して導電性部材20の幅の割合は約1%となり、音響インピーダンスの可変の寄与度は極めて小さくなる。したがって、前記導電性部材20としての機能は圧電素子1の電極面から電気的な接続が主となる。このような構成にすると作成が容易にしかも精度よくでき、しかも導電性部材に金属を使用する場合には、超音波探触子を作成するときの加工が困難になるという短所も解消できる。
当然のことながら導電性部材20の幅が広くなったとしても2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21と含めて3種類の部材の幅の割合を変えることで体積比率を選択することにより音響インピーダンスは任意に選択できるので導電性部材の幅を限定するものではない。
図2Aのように音響マッチング層2aの導電性部材20は圧電素子1の一方の電極と電気的な接続がされ、もう一方の導電性部材20の面には、接地用電気端子9の金属膜9bが接触して電気的に接続される構成となっており、接地用電気端子9から信号の取り入れ、取り出しをする。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と複数の絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスを任意に可変させることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
また、第8の実施の形態では、図8に示すように導電性部材20及び複数の絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、音響マッチング層2aを介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、音響マッチング層2aのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態においては、音響マッチング層2aとして、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、複数の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の連結構造若しくはそれ以外に複数種類の連結構造で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかである。
また、第8の実施の形態では、図8に示す導電性部材20と複数の絶縁性部材又は半導電性部材21とが、Z方向に対して均一な幅で形成される場合について説明したが、第6の実施の形態で示したように絶縁性部材又は半導電性部材21がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にし、導電部材はその傾斜の側面に形成しても、あるいは、第7の実施の形態で示したように絶縁性部材又は半導電性部材21の幅を段階的に変えて音響インピーダンスが変化する構成にしてその側面に導電性部材20を設けた構成にしても同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態においては、2層の音響マッチング層の第1の音響マッチング層2aとして、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、このほか3層以上の音響マッチング層として設けた場合においてそれぞれの層に設けたとしても同様の効果が得られる。
本発明に係る超音波探触子は、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性が高められて、人体などの被検体の超音波診断を行う各種医療分野に好適で、さらには材料や構造物の内部探傷を目的とした工業分野において利用が可能である。
本発明は、生体などの被検体に当接させて超音波を送信及び受信することにより、被検体の診断情報を得るために使用される超音波探触子に関する。
超音波診断装置は超音波を人や動物などの生体の被検体に照射し、被検体内で反射されるエコー信号を検出して生体内組織の断層像などをモニタに表示し、被検体の診断に必要な情報を提供するものである。この超音波診断装置には被検体内への超音波の送信と、被検体内からのエコー信号の受信とを行うための超音波探触子が使用される。
図9はこの種の従来の超音波探触子の構成例を示した断面図である。図9において、超音波探触子30は不図示の被検体との間で超音波を送受信するべく、一定方向(図9においては紙面と直交する方向)に配列された複数の圧電素子11と、この圧電素子11の被検体側(図9の上方)の表面(以下、被検体側の表面を前面と称する)に設けられた1層以上(図示したものは2層)の音響マッチング層12(12a、12b)と、この音響マッチング層12の前面に設けられた音響レンズ13と、圧電素子11の被検体側とは反対側(図9の下方)の表面(以下、被検体側とは反対側の表面を背面と称する)に設けられた信号用電気端子15と、この信号用電気端子15の背面に設けられた背面負荷材14と、第1の音響マッチング層12aと第2の音響マッチング層12bとの間に装着された接地用電気端子16とを備えている。
圧電素子11はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系などの圧電セラミックス、単結晶、これらの材料と高分子材料とを複合した複合圧電体、あるいはPVDF(二フッカポリビニル)などに代表される高分子材料の圧電体などによって形成される。この圧電素子11の前面及び背面にはそれぞれ電極が形成され、これらの電極と圧電素子11との間で電気信号の送受信が行われる。すなわち、圧電素子11は電圧を超音波に変換して被検体内に送信し、また、被検体内で反射したエコーを受信して電気信号に変換する。
音響マッチング層12は超音波を効率よく被検体に送信し、かつ、被検体から受信するために設けられ、より具体的には、圧電素子11の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づける役割を果たしている。図示の例では、音響マッチング層12として第1の音響マッチング層12aと第2の音響マッチング層12bとが積み重ねられている。このうち、第1の音響マッチング層12aとしては導電部材であるグラファイトが用いられ、その前面から絶縁性フィルムに金属膜を披着した電気端子16が取り出されている。更に電気端子16の前面に第2の音響マッチング層12bが設けられている。この構成は、圧電素子11が外部からの機械的な衝撃などによって割れたとしても、絶縁性フィルムは割れにくいため、電気的な導通が確保できるので信頼性が高いという特徴を有している(例えば、下記の特許文献1参照)。
一方、第1の音響マッチング層12aとして、グラファイトよりも音響インピーダンスの大きい材料を用いることによって、広帯域化するという構成も知られている(例えば、下記の特許文献2参照)。
また、第1の音響マッチング層12aとして、絶縁性部材の一部に貫通孔を設け、この貫通孔に導電性部材を嵌装し、その前面に設けた電気端子とその背面にある圧電素子11の電極とを接続する構成も知られている(例えば、下記の特許文献3参照)。
音響レンズ13は診断画像の分解能を高めるために超音波ビームを絞る役割を果たすものである。この音響レンズ13はオプション要素であり、必要に応じて設けられる。背面負荷材14は圧電素子11を保持するように結合され、さらに不要な超音波を減衰させる役割を果たすものである。
特開平7−123497号公報
特開2003−125494号公報
実開平7−37107号公報
電子走査型の超音波診断装置は、圧電素子を複数の群にして個々の圧電素子群に一定の遅延時間を与えて駆動し、各圧電素子群から被検体内への超音波の送信と、被検体内からのエコー信号の受信とを行う。このように遅延時間を与えることによって超音波ビームが収束あるいは拡散され、広い視野幅あるいは高分解能の超音波画像を得ることができる。
複数の圧電素子群に一定の遅延時間を与えて超音波画像を得るシステムは、一般的なシステムとして既に知られている。超音波探触子として、このような高分解能の超音波画像を得るために重要なことの1つに広帯域化がある。また、高い性能が求められる一方で、超音波探触子は医師あるいは検査技師が操作するとともに、被検体に直接あるいは間接的に接触させて診断画像を得るものであることから、超音波探触子には操作性を良好にするためにスリムな形状も求められる。また、超音波探触子はその操作中あるいはそれ以外のときに、不可抗力で落下させられたり、打撃が与えられたりして壊れることも時々あり、それに対して信頼性の高いものが求められる。
超音波探触子を広帯域化するための1つの方策として、特許文献2に示すように、圧電素子の前面に設ける音響マッチング層を3層以上にする構成が挙げられる。しかしながら、この構成においては、圧電素子側の第1の音響マッチング層に半導体であるシリコンを使用しているため、この第1の音響マッチング層側の圧電素子の電極から取り出す電気端子は、圧電素子に形成された電極の端部の一部から取り出すしかなく、この構成では機械的な衝撃によって圧電素子及び電極が割れた場合、割れた時点で断線が発生して機能が低下することになる。
一方、特許文献1に示す構成は、第1の音響マッチング層に導体であるグラファイトを使用し、その前面に絶縁性フィルムの一主面に金属膜を披着させた電気端子を設けているため、信頼性は高くなるが、第1の音響マッチング層に使用する導体材料は音響インピーダンスが小さく、また、音響マッチング層は2層までしか積層できないため、広帯域化が困難であった。近年、超音波探触子はより広帯域化される傾向にあり、基本周波数に対して2次あるいは3次の高調波成分を利用するか、あるいは複数の周波数で使用して高分解能の超音波画像を得て診断する場合が多くなってきていることから、広帯域化することがますます重要になってきている。
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、その目的は、高分解能の診断画像を得ることができるとともに、信頼性の高い超音波探触子を提供することにある。また本発明の他の目的は、操作性の良好な超音波探触子を提供することにある。
本発明は、厚さ方向の両面に電極が形成された圧電素子と、前記圧電素子の一方の電極形成面に積層された音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
前記音響マッチング層は、少なくとも導電性部材を含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有していることを特徴とする。
この構成により、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記音響マッチング層は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料、若しくは絶縁性部材又は半導電性部材を含む複数の素材と、導電性部材を含む複数の素材との複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有していることを特徴とする。
この構成により、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、所定の厚さを有し、厚さ方向の両面に電極が形成され、互いに厚さ方向と直交する方向に配置された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の電極形成面にそれぞれ積層された複数の音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
前記音響マッチング層は、前記圧電素子に順に積層された第1及び第2の音響マッチング層を含み、
前記第1の音響マッチング層は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有していることを特徴とする。
この構成により、音響マッチング層の多層化により、音響インピーダンスを所望の値にすることが容易になるため、高分解能の診断画像を得ることができ、また、第1の音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記圧電素子に隣接する前記音響マッチング層を構成する前記複合材料は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とが、あらかじめ定めた領域に配置されていることを特徴とする。
この構成により、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との体積率を任意に設定することが可能になり、音響インピーダンスの決定が容易になる。
また、本発明は、前記圧電素子に隣接する前記音響マッチング層の外表面部に積層された電気端子を備え、
前記電気端子は、絶縁性フィルムの一主面に導電性膜が披着され、かつ前記絶縁性フィルムの一主面が前記音響マッチング層に対向するように積層され、前記導電性膜が、前記音響マッチング層を構成する前記導電性部材を介して、前記圧電素子に形成された一方の前記電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成により、機械的な衝撃などによって圧電素子及び一方の電極が割れたとしても絶縁性のフィルムは割れ難いため、断線して故障することが極めて少なくなって操作性の良好な超音波探触子が提供される。
また、本発明は、所定の厚さを有し、厚さ方向の両面に電極が形成され、互いに厚さ方向と直交する方向に配置された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の電極形成面にそれぞれ積層された複数の音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
nを3以上の整数として、前記音響マッチング層は、前記圧電素子に順に積層される第1〜第nの音響マッチング層を含み、かつ第1の音響マッチング層と第2の音響マッチング層との間に電気端子が挿着され、
少なくとも前記第1の音響マッチング層は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有し、
前記電気端子は、絶縁性フィルムの一主面に導電性膜が披着され、かつ前記絶縁性フィルムの一主面が前記音響マッチング層に対向するように積層され、前記導電性膜が、前記第1の音響マッチング層を構成する前記導電性部材を介して、前記圧電素子に形成された一方の前記電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成により、音響マッチング層が多層化されるとともに、音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、高分解能の診断画像を得ることができ、また、第1の音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性が高められ、さらに、絶縁性のフィルムは割れにくいため、断線して故障することが極めて少なくなって操作性も良好な超音波探触子が提供される。
また、本発明は、所定の厚さを有し、厚さ方向の両面に電極が形成され、互いに厚さ方向と直交する方向に配置された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の電極形成面にそれぞれ積層された複数の音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
nを3以上の整数として、前記音響マッチング層は、前記圧電素子に順に積層される第1〜第nの音響マッチング層を含み、かつ第2の音響マッチング層と第3の音響マッチング層との間に電気端子が挿着され、
少なくとも前記第1及び第2の音響マッチング層は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有し、
前記電気端子は、絶縁性フィルムの一主面に導電性膜が披着され、かつ前記絶縁性フィルムの一主面が前記音響マッチング層に対向するように積層され、前記導電性膜が、前記第1の音響マッチング層を構成する前記導電性部材及び前記第2の音響マッチング層を構成する前記導電性部材を介して、前記圧電素子に形成された一方の前記電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成により、音響マッチング層が多層化されるとともに、音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、高分解能の診断画像を得ることができ、また、第1及び第2の音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性が高められ、さらに、機械的な衝撃などによっても割れにくい絶縁性のフィルムを使用しているため、操作性の良好な超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記第1の音響マッチング層を構成する前記複合材料は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とが、あらかじめ定めた領域に配置されていることを特徴とする。
この構成により、第1の音響マッチング層を構成する複合材料における絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との体積率を任意に設定することが可能になり、音響インピーダンスの決定が容易になる。
また、本発明は、前記第2の音響マッチング層を構成する前記複合材料は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とが、あらかじめ定めた領域に配置されていることを特徴とする。
この構成により、第2の音響マッチング層を構成する複合材料における絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との体積率を任意に設定することが可能になり、音響インピーダンスの決定が容易になる。
また、本発明は、前記圧電素子の厚さ方向をZ方向、このZ方向と直交する方向をX方向、これらZ方向及びX方向と直交する方向をY方向として、
前記音響マッチング層を構成する前記複合材料は、
前記導電性部材がZ方向のみにつながりがあって、X、Y方向につながりがなく、前記絶縁性部材又は半導電性部材がX、Y、Zの3方向につながりがある連結構造か、
又は、前記導電性部材がY及びZの2方向につながりがあり、前記絶縁性部材又は半導電性部材がY及びZの2方向につながりがある連結構造か、
又は、前記導電性部材がX、Y、Zの3方向につながりがあり、前記絶縁性部材又は半導電性部材がZ方向のみにつながりがあって、X、Y方向につながりがない連結構造か、いずれか1つの連結構造を有していることを特徴とする。
この構成により、音響マッチング層を構成する複合材料における絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との体積率の設定が容易になり、また、一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に導電性部材が貫通する部位を形成することが容易になる。
また、本発明は、所定の厚さを有し、厚さ方向の両面に電極が形成された圧電素子と、前記圧電素子の一方の電極形成面に積層された音響マッチング層とを備えた超音波探触子において、
前記音響マッチング層は、少なくとも導電性部材を含む複数の素材の複合材料で構成され、かつ前記導電性部材は、前記圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有し、かつ厚さ方向に導電性部材は連続的に体積比率が傾斜した、若しくは段階的に体積比率を変えた構成にしていることを特徴とする。
この構成により、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記音響マッチング層の前記複数の素材の複合材料は、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む材料で構成されていることを特徴とする。
この構成により、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、かつ多層化できるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
また、本発明は、前記複合材料の前記導電性部材が、金属、金属と高分子材料の複合体、グラファイトの炭化物のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする。
この構成により、音響インピーダンスをも加味しての材料選択が可能となる。
また、本発明は、前記複合材料の絶縁性部材又は半導電性部材が、ガラス、セラミックス、水晶、有機高分子と金属の複合体、シリコンの単結晶若しくは多結晶のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする。
この構成により、音響インピーダンスの決定が容易となる。
本発明によれば、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層が、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材とを含む複数の素材の複合材料で構成されているため、音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、導電性部材が圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所で、それぞれ層の厚さ方向に貫通する部位を有していることから、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性の高い超音波探触子が提供される。
以下、本発明を図面に示す好適な実施の形態に基づいて詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1Aは本発明に係る超音波探触子の第1の実施の形態の構成を示す断面図であり、図1Bは図1Aに示す超音波探触子を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図である。
図1Aにおいて、超音波探触子10Aは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に積み重ねられた音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
超音波探触子10Aの構成要素のうち、圧電素子1はPZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどで代表される高分子材料の圧電体などによって形成される。圧電素子1の前面には接地電極5が形成され、圧電素子1の背面には信号用電極6が形成されている。接地電極5及び信号用電極6は、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成される。
また、圧電素子1に形成されている信号用電極6と背面負荷材3との間に、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの導電性膜7bが披着された信号用電気端子7が挿着されている。この場合、圧電素子1に形成されている信号用電極6に信号用電気端子7の導電性膜7bが接触し、かつ信号用電気端子7の絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電素子1側に向けられる。一方、圧電素子1に形成されている接地電極5の前面には、少なくとも導電性部材を含む複合材料で構成される音響マッチング層2と、導電性を有する、例えば銅などの金属の薄膜などの接地用電気端子9とが順次積み重ねられている。この場合、音響マッチング層2の複合材料の導電性部材に接地用電気端子9が接触し、必要に応じて、接地用電気端子9の前面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4が装着される。なお、導電性膜7b、接地用電気端子9は電気的に導電性を有する材料であれば何でも良く金属に限定するものではない。また、接地用電気端子9は、信号用電気端子7の構成のように高分子材料によって構成される絶縁性フィルムの一主面に導電性膜が披着され、この導電性膜が音響マッチング層2側になるように積層してもよい。
上記のように構成された超音波探触子10Aの動作について以下に説明する。
圧電素子1に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の接地電極5は音響マッチング層2の複合材料の導電性部材と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
導電性部材を含む複合材料で構成されている音響マッチング層2としては、その音響インピーダンスが圧電素子1と音響レンズ4側に位置する不図示の被検体の各音響インピーダンスの間になるような材料が選ばれる。この音響マッチング層2の導電性部材を含む複合材の構成例を図1Bに示す。図1Bにおいては、被検体に向けて超音波を放射する方向をZ方向、これと直交する2つの方向をそれぞれX方向、Y方向としている。
図1Bに示した音響マッチング層2は、導電性部材20と、他の部材として例えば絶縁性部材又は半導電性部材21とがX方向に交互に配置されたもので、このうち複数の導電性部材20はY及びZの2方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21も同じようにY及びZの2方向につながりがある構造体になっている。ここで、複数の導電性部材20は圧電素子1の前面に形成された接地電極5と、接地用電気端子9とにそれぞれ接触して、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9とを電気的に接続する機能を有している。なお、導電性部材20を、その端部をそれぞれZ方向に向けた状態でY方向に列状に配置するとともに、X方向に複数列配置し、その周囲を絶縁性部材又は半導電性部材21で取り囲んだもので、このうち導電性部材20はZ方向のみの1方向につながりがあり、X、Y方向のつながりはないものにしてもよい。また絶縁性部材又は半導電性部材21はX、Y、Zの3方向につながりがある構造体、又は、複数の絶縁性部材又は半導電性部材21を、その端部をそれぞれZ方向に向けた状態でY方向に列状に配置するとともに、X方向に複数列配置し、その周囲を導電性部材20で取り囲んだもので、このうち導電性部材20はX、Y、Zの3方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21は、Z方向のみの1方向につながりがある構造体としても同様の効果を有する。また、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の複合体としたがこの他導電部材同士で材料が異なる複合体でも同様の効果を有する。
上述したように、図1Aに示した音響マッチング層2の音響インピーダンスは圧電素子1の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスの間の値を有していることが必要である。例えば圧電素子1として音響インピーダンスが約30メガレールスの値を有するPZT-5Hの圧電セラミックスを用い、音響インピーダンスが約1.6メガレールスの値を有する生体のような被検体を対象とした場合には、音響マッチング層2は1層としているので6〜8メガレールス前後の値の材料を用いることになる。
そこで、例えば、図1Aに示した超音波探触子10Aを用いて説明するが、音響マッチング層2として絶縁性部材又は半導電性部材を用い、圧電素子1の接地電極5の端部に対応する部位を切り欠いて音響マッチング層のない部分(図示せず)を作り、その部分から電気端子(図示せず)を取り出す構成も考えられる。しかし、このような構成にすると、性能的には周波数の広帯域化が可能になる反面、音響マッチング層の無い部分においても圧電素子1が振動して超音波を発生するため、被検体に送信する超音波が乱れて超音波画像が劣化する。また、接地電極5から取り出す電気端子は1箇所であるため、診断操作中に超音波探触子を落下させたり、あるいは超音波探触子に打撃など機械的な衝撃を加えたりしたことにより、圧電素子1が割れたとき、接地電極5も同じように割れて電気的な断線が発生するなどにより、故障するおそれもある。
図1Aに示した第1の実施の形態は、これらの問題を解決し、しかも周波数の広帯域化が可能な構成を実現したものである。すなわち、圧電素子1の接地電極5が、音響マッチング層2の複数の導電性部材20を介して、接地用電気端子9と電気的に接続される構成にしているため、圧電素子1の全面にて均一で所望の超音波の送信、受信をすることができるとともに、機械的な衝撃などによって圧電素子1及び接地電極5が割れたとしても、音響マッチング層2の複数個の導電性部材20で接続されているため、断線して故障することは極めて少なくなる。
ここでは、音響マッチング層2の絶縁性部材又は半導電性部材21として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミドなどで代表されるような高分子材料、ガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。また、音響マッチング層2の導電性部材20として、グラファイト、銅などの金属を充填したグラファイト、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属材料や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、カーボンなどを用いる。なお、導電性部材20あるいは絶縁性部材又は半導電性部材21は、前述した材料に限定されるものではなく、前述した材料と同程度の音響インピーダンスを有するものであれば他の材料であってもよい。導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の複合材料の音響インピーダンスはそれぞれの体積比率によって決まる。
例えば、音響マッチング層2に必要な音響インピーダンスとして7メガレールスの値にしようとした場合には、導電性部材20として約10メガレールスの値を有する銅を充填したグラファイトと絶縁性部材21として約3メガレールスの値を有するエポキシ樹脂を用いた複合材にしてそれぞれの部材の体積比率を選択すればよい。つまり音響インピーダンスはエポキシ樹脂の体積比率が高い場合は音響インピーダンスが3メガレールスに近くなり、銅を充填したグラファイトの体積比率が高い場合は音響インピーダンスが10メガレールスに近くなり、必要とする7メガレールスにすることは容易に選択できる。
なお、ここで導電性部材20と、絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料の構成を説明したが、この組み合わせの複合材料の構成以外に、例えば絶縁性部材又は半導電性部材21に導電性部材を用いて導電性部材の複合材料にした構成でも良く、つまり少なくとも導電性部材20を有し、圧電素子1の電極面と電気的な接続ができる機能と音響インピーダンスを可変できる機能を備えた複合材料であれば上記構成に限定されるものではないことは明らかである。
なお、ここでは音響マッチング層2は1層のタイプについて説明したが、この他2層以上の音響マッチング層を備える構成とした場合においても、それぞれの音響マッチング層に本複合材を設けても、また一部の層に設けた構成にしても同様の効果が得られる。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、少なくとも導電性部材を含む複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスにすることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
また、第1の実施の形態では、図1Bに示す導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とが、Z方向に対して均一な幅で形成される場合について説明したが、絶縁性部材又は半導電性部材21がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状に、又は段階的に変化するようにして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化、あるいは段階的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第1の実施の形態では、図1Bに示す導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第1の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、音響マッチング層2を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、音響マッチング層2のZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第1の実施の形態においては、音響マッチング層2として、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の少なくとも一方が2種類以上の材料で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1つの材種の連結構造に限定されるものではない。
また、第1の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第2の実施の形態>
図2Aは本発明に係る超音波探触子の第2の実施の形態の構成を示す断面図であり、図2B、図2D、図2Eはそれぞれ図2Aに示す超音波探触子を構成する第1の音響マッチング層の構成例を示す斜視図であり、図2Cは図2Bに示す第1の音響マッチング層の絶縁性部材又は導電性部材として用いたシリコン単結晶の体積比率と音響インピーダンスとの関係を示した線図である。
図2Aにおいて、超音波探触子10Bは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に積み重ねられた2層の音響マッチング層2(2a、2b)と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b)の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
超音波探触子10Bの構成要素のうち、圧電素子1はPZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどで代表される高分子材料の圧電体などによって形成される。圧電素子1の前面には接地電極5が形成され、圧電素子1の背面には信号用電極6が形成されている。接地電極5及び信号用電極6は、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成される。
また、圧電素子1に形成されている信号用電極6と背面負荷材3との間に、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの導電性膜7bが披着された信号用電気端子7が挿着されている。この場合、圧電素子1に形成されている信号用電極6に信号用電気端子7の導電性膜7bが接触し、かつ信号用電気端子7の絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電素子1側に向けられる。一方、圧電素子1に形成されている接地電極5の前面には、絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との複合材料で構成される第1の音響マッチング層2aと、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム9aの一主面に銅などの導電性膜(厚みは特性に影響が小さいように5マイクロメートル以下が好ましい)9bが披着された接地用電気端子9と、エポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料で構成される第2の音響マッチング層2bとが順次積み重ねられている。この場合、第1の音響マッチング層2aの複合材料の導電性部材に接地用電気端子9の導電性膜9bが接触し、接地用電気端子9の絶縁性フィルム9aに第2の音響マッチング層2bが接触するように、絶縁性フィルム9aの一主面が第1の音響マッチング層2a側に向けられる。第2の音響マッチング層2bは絶縁性部材であっても、あるいは導電性部材であってもよい。そして、必要に応じて、第2の音響マッチング層2bの前面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4が装着される。なお、導電性膜7b、9bは電気的に導電性を有する材料であれば何でも良く金属に限定するものではない。
上記のように構成された超音波探触子10Bの動作について以下に説明する。
圧電素子1に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の接地電極5は第1の音響マッチング層2aの複合材料の導電性部材と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
絶縁性部材又は半導電性部材と、導電性部材との複合材料(以下、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料と称する)で構成されている第1の音響マッチング層2aとしては、その音響インピーダンスが圧電素子1と第2の音響マッチング層2bの各音響インピーダンスの中間になるような材料が選ばれる。この第1の音響マッチング層2aの導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材とのそれぞれの連結構造の構成例を図2B、図2D及び図2Eに示す。図2B、図2D及び図2Eにおいては、被検体に向けて超音波を放射する方向をZ方向、これと直交する2つの方向をそれぞれX方向、Y方向としている。
図2Bに示した第1の音響マッチング層2a−1は、それぞれ短冊状に形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とがX方向に交互に配置されたもので、このうち導電性部材20はY及びZの2方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21も同じようにY及びZの2方向につながりがある構造体になっており、以下の説明ではこの連結構造を2−2型連結構造と呼ぶこととする。ここで、複数の導電性部材20は圧電素子1の前面に形成された接地電極5と、接地用電気端子9の絶縁性フィルム9aの一主面に披着された導電性膜9bとにそれぞれ接触して、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する機能を有している。
図2Dに示した第1の音響マッチング層2a−2は、それぞれ円柱状に形成された複数の導電性部材20を、その端部をそれぞれZ方向に向けた状態でY方向に列状に配置するとともに、X方向に複数列配置し、その周囲を絶縁性部材又は半導電性部材21で取り囲んだもので、このうち導電性部材20はZ方向のみの1方向につながりがあり、X、Y方向のつながりはない。また絶縁性部材又は半導電性部材21はX、Y、Zの3方向につながりがある構造体となっており、この連結構造を1−3型連結構造と呼ぶこととする。ここで、複数の導電性部材20は圧電素子1の前面に形成された接地電極5と、接地用電気端子9の絶縁性フィルム9aの一主面に披着された導電性膜9bとにそれぞれ接触して、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する機能を有している。
図2Eに示した第1の音響マッチング層2a−3は、それぞれ四角柱状に形成された複数の絶縁性部材又は半導電性部材21を、その端部をそれぞれZ方向に向けた状態でY方向に列状に配置するとともに、X方向に複数列配置し、その周囲を導電性部材20で取り囲んだもので、このうち導電性部材20はX、Y、Zの3方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21は、Z方向のみの1方向につながりがある構造体となっており、この連結構造を3−1型連結構造と呼ぶこととする。ここで、導電性部材20は圧電素子1の前面に形成された接地電極5と接地用電気端子9の絶縁性フィルム9aの一主面に披着された導電性膜9bとにそれぞれ接触して、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する機能を有している。
前述したように、図2Aに示した第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは圧電素子1の音響インピーダンスと第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスの間の値を有していることが必要である。例えば圧電素子1として音響インピーダンスが約30メガレールスの値を有するPZT-5Hの圧電セラミックスを用い、音響インピーダンスが約1.6メガレールスの値を有する生体のような被検体を対象とした場合には、第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスは3メガレールス前後の値の材料を用いることになる。したがって、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは少なくとも3から30メガレールスの間の値を有する材料が必要になる。
一般的に、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは5から20メガレールスの間の値にすることが望ましく、また、その値が大きくなるほど周波数特性の帯域が広くなる傾向にある。したがって、第1の音響マッチング層2aとして10から20メガレールスの範囲の材料を用いることが好適である。音響インピーダンスが10〜20メガレールスの値を有する材料としては、例えばガラス、結晶化ガラス、金属タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶などがある。しかしながら、これらの材料はいずれも電気的には絶縁性部材又は半導電性部材である。
そこで、例えば、図2Aに示した超音波探触子10Bを用いて説明するが、第1の音響マッチング層2aとして絶縁性部材又は半導電性部材を用い、圧電素子1の接地電極5の端部に対応する部位を切り欠いて音響マッチング層のない部分(図示せず)を作り、その部分から電気端子(図示せず)を取り出す構成も考えられる。しかし、このような構成にすると、性能的には周波数の広帯域化が可能になる反面、音響マッチング層の無い部分においても圧電素子1が振動して超音波を発生するため、被検体に送信する超音波が乱れて超音波画像が劣化する。また、接地電極5から取り出す電気端子は1箇所であるため、診断操作中に超音波探触子を落下させたり、あるいは超音波探触子に打撃など機械的な衝撃を加えたりしたことにより、圧電素子1が割れたとき、接地電極5も同じように割れて電気的な断線が発生するなどにより、故障するおそれがある。
図2Aに示した第2の実施の形態は、これらの問題を解決し、しかも周波数の広帯域化が可能な構成を実現したものである。すなわち、圧電素子1の接地電極5が、第1の音響マッチング層2aの複数の導電性部材20を介して、接地用電気端子9の金属膜9bと電気的に接続される構成にしているため、圧電素子1の全面にて均一で所望の超音波の送信、受信をすることができるとともに、機械的な衝撃などによって圧電素子1及び接地電極5が割れたとしても、第1の音響マッチング層2aの複数個の導電性部材20で接続されているため、断線して故障することが極めて少なくなる。
ここでは、第1の音響マッチング層2a−1、2a−2、2a−3の絶縁性部材又は半導電性部材21として、前述したガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。また、第1の音響マッチング層2a−1、2a−2、2a−3の導電性部材20として、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属材料や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、グラファイト、カーボンなどを用いる。なお、導電性部材20あるいは絶縁性部材又は半導電性部材21は、前述した材料に限定されるものではなく、前述した材料と同程度の音響インピーダンスを有するものであれば他の材料であってもよい。導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料の音響インピーダンスはそれぞれの体積比率によって決まる。
なお、ここで導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料の構成を説明したが、この他、前記組み合わせの複合材料の構成以外、例えば絶縁性部材又は半導電性部材21に導電性部材を用いて導電性部材の複合材料にした構成でも良く、つまり少なくとも導電性部材20を有し、圧電素子1の電極面と電気的な接続ができる機能と音響インピーダンスを可変できる機能を備えた複合材料であれば上記構成に限定されるものではないことは明らかである。
導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料は、連結構造が1−3型、2−2型、3−1型においては、2種類のそれぞれの材料が有する音響インピーダンスの間の値になり、しかも、それらの体積比率を変えることによって、所望の音響インピーダンスの材料を得ることができる。
また、1−3型、2−2型、3−1型の連結構造を有する導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料を第1の音響マッチング層2aとして機能させるためには、複合材料が一体として超音波を伝搬させるように、導電性部材20の幅及びその配列間隔を決定する。また、導電性部材20の体積比率が小さい場合には、その幅及び配列間隔を考慮する必要はなく、導電性部材20は電気的な接続機能を主にしてその材料を選択すればよい。
また、音響マッチング層としての機能、すなわち導電性能を必要としないで音響インピーダンスのみを所望の値に整合させることを目的として図2B、図2D、図2Eに示した連結構造を用る場合には、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材という材料の選択をする必要はなく、絶縁性部材どうしの連結構造、あるいはエポキシ樹脂のような絶縁性部材とシリコンのような半導電性部材との連結構造であってもよい。
次に、図2Bに示す2−2型連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−1の製造方法の一例を以下に説明する。絶縁性部材又は半導電性部材21としてシリコン単結晶を用いる。このシリコン単結晶は図2BのZ方向が平坦になっているものとする。その平坦面に対してレーザ照射、化学的なエッチング、あるいはダイシングマシーンなどによる機械加工などにより、任意の間隔で図2BのY方向に導電性部材20を装填するための溝を形成する。次に、溝の中に銀などの粉体を混入した導電性のエポキシ樹脂などの導電性接着剤を充填して硬化させる。この導電性接着剤はシリコン単結晶に比べて音響インピーダンスがより小さい材料である。次に、第1の音響マッチング層2aとしてZ方向に、ほぼ4分の1波長の厚みにスライス加工して形成する。この場合、シリコン単結晶に近い音響インピーダンスの第1の音響マッチング層2aを要望するのであれば、導電性部材20の導電性接着剤の体積比率を小さくすればよく、また小さい音響インピーダンスの値を必要とするのであれば体積比率を大きくすればよい。
例えば、導電性部材20を形成するための導電性接着剤としてエコーボンド56C(エマーソンアンドカミング社)を用い、絶縁性部材又は半導電性部材21としてシリコン単結晶を用いた場合、それぞれの音響インピーダンスは約6.5メガレールス、19.7メガレールスである。そこでシリコン単結晶をダイシングマシーンにより任意の間隔と溝幅で分割し、その溝の部分にエコーボンド56Cを充填して作成した材料の音響インピーダンス(密度×音速)を測定すると、シリコン単結晶の体積比率が63.5%の場合は15.3メガレールスとなり、また、シリコン単結晶の体積比率が43%の場合は12.7メガレールスとなった。
図2Cは上述した2つの材料に対する測定結果に基づいて作成したシリコン単結晶の体積比率と音響インピーダンスとの関係を示した線図である。この線図から明らかなように、導電性部材20を形成するための導電性接着剤としてエコーボンド56Cを用い、シリコン単結晶の体積比率を0パーセント(導電性接着剤のみ)から100パーセント(シリコン単結晶のみ)の範囲で変化させた場合、導電性接着剤とシリコン単結晶の複合材料の音響インピーダンスは約6.5メガレールスからシリコン単結晶の音響インピーダンス19.7メガレールスまでほぼ直線的に変化することが分かる。また、発明者はこの体積比率と音響インピーダンスとに相関があることを確認することができた。
次に、図2Bに示す2−2型連結構造における第1の音響マッチング層2a−1の他の製造方法について説明する。絶縁性部材又は半導電性部材21としての板状のシリコン単結晶と、導電性部材20としての板状のグラファイトや金属とを、図2BのX方向に交互に積層して接着するか、あるいは絶縁性部材又は半導電性部材21としての板状のシリコン単結晶の一主面にそれぞれ金属をスパッタリング、めっき、あるいは印刷などの方法で薄い膜を形成したものを、図2BのX方向に順次に積層して接着した後、図2BのZ方向の厚みが得られるようにスライス加工する。この製造方法によれば大量生産することも可能である。
次に、図2Dに示す1−3型連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−2の製造方法の一例を説明する。絶縁性部材又は半導電性部材21として図2DのZ方向に厚みを有するシリコン単結晶を用意する。そして、このシリコン単結晶にレーザ照射、化学的なエッチングあるいは機械加工などにより任意の間隔で複数個の導電性部材20を設けるための穴を設ける。次に、その穴に、銀などの粉体を混入した導電性のエポキシ樹脂などの導電性接着剤を充填し硬化させる。その後、第1の音響マッチング層としてほぼ4分の1波長の厚みに加工して形成する。シリコン単結晶に近い音響インピーダンスの第1の音響マッチング層を要望するのであれば、導電性部材21の導電性接着剤の体積比率を少なくすればよく、またもっと小さい音響インピーダンスの値を必要とするのであれば導電性部材21の導電性接着剤の体積比率を大きくすればよい。
ちなみに、単結晶シリコンの音響インピーダンスは19.7メガレールスで、また導電性接着剤としてエコーボンド56C(エマーソンアンドカミング社)の音響インピーダンスは約6.5メガレールスであり、それぞれの体積比率を調整することにより図2Bの構造と同様に、音響インピーダンスを6.5メガレールスから19.7メガレールスの範囲の値にすることができる。
次に、図2Eに示す3−1型連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−3の製造方法の一例を以下に説明する。絶縁性部材又は半導電性部材21としてシリコン単結晶を用意する。そして、このシリコン単結晶にレーザ照射、化学的なエッチングあるいはダイシングマシーンによる機械加工などにより任意の間隔でX、Yの両方向に複数個の溝を設けて角柱を形成し、その後、導電性接着剤などの導電性部材20を複数の溝に充填し硬化させる。その後、第1の音響マッチング層として、ほぼ4分の1波長の厚みに加工して形成する。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスにすることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
なお、第2の実施の形態では、図2Dに示す1−3型連結構造の導電性部材20として円柱の形状を有するものを用いたが、このほか角柱あるいは球など他の形状を有するものを用いても同様の効果が得られる。また、Z方向に対してコーンのような円錐状の形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、図2Bに示す2−2型連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とが、Z方向に対して均一な幅で形成される場合について説明したが、絶縁性部材又は半導電性部材21がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、図2Bに示す2−2型、図2Dに示す1−3型及び図2Eに示す3−1型の各連結構造の導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、第1の音響マッチング層2aを介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、第1の音響マッチング層2aのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態においては、第1の音響マッチング層2aとして、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の少なくとも一方が2種類以上の材料で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1つの材種の連結構造に限定されるものではない。
また、第2の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図3Aは本発明に係る超音波探触子の第3の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図であり、図3Bは、図3Aに示した超音波探触子を、その図中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、Y−Z平面で切断した断面をX方向から見た断面図であり、図3C、3Dはそれぞれ図3A及び図3Bに示した超音波探触子を構成する要素の具体的な構成例を示す斜視図である。
図3A及び図3Bに示した超音波探触子10Cは、図3A中に示したX、Y、Zのうち、X方向に配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側となるZ方向前面に設けられた2層の音響マッチング層2(2a、2b)と、必要に応じて圧電素子1の背面に設けられる背面負荷材3と、同じく必要に応じて複数の音響マッチング層2(2a、2b)上に共通に設けられる音響レンズ4と、圧電素子1と背面負荷材3との間に挿着された複数の信号用電気端子7と、第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bとの間に挿着された接地用電気端子9とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
以下、説明の都合上、図3A及び図3Bに示した超音波探触子10Cの製造方法について説明する。
複数の圧電素子1を形成するために、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどで代表される高分子材料の圧電体などで構成され、所定の厚さを有する板材、すなわち圧電板材を準備する。この圧電板材の一主面、すなわちZ方向の前面には接地電極5を、その背面には信号用電極6を、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成する。
また、所定の厚さを有する板状の背面負荷材(背面負荷材を備えない超音波探触子ではこれに代わる部材)3と、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成され、複数の第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と、エポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料で構成された複数の第2の音響マッチング層2bを形成するための板材と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの導電性膜7bが披着され、全体がリボン状に形成された複数の信号用電気端子7と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フイルム9aの一主面に銅などの導電性膜(厚みは音響特性に対する影響が少ないように5マイクロメートル以下が好ましい)9bが披着された接地用電気端子9とを準備する。なお、第2の音響マッチング層2bを形成するために用いるエポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料は絶縁性部材であるが、この代わりに導電性部材を用いてもよい。なお、導電性膜7b、9bは電気的に導電性を有する材料であれば何でも良く金属に限定するものではない。
そこで、図3Aに示したように、背面負荷材3の前面に、複数の信号用電気端子7をX方向に所定の間隔で載置し、その上に圧電素子1を形成するための圧電板材を重ね合わせ、さらに、圧電板材の前面に第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と、接地用電気端子9と、第2の音響マッチング層2bを形成するための板材とを順次に重ね合わせて、これらを一体的に固着する。この場合、背面負荷材3と圧電板材との間に装着される複数の信号用電気端子7は、それぞれ絶縁性フィルム7aの一主面に披着されている導電性膜7bが圧電板材に形成された信号用電極6に接触し、絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電板材側(図面の上方)に向けられる。また、第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と第2の音響マッチング層2bを形成するための板材との間に挿着される接地用電気端子9は、絶縁性フイルム9aの一主面に形成された導電性膜9bが第1の音響マッチング層2aに接触するように、絶縁性フイルム9aの一主面が第1の音響マッチング層2a側に向けられる。
以上のようにして、背面負荷材3、複数の信号用電気端子7、圧電素子1を形成するための圧電板材、第1の音響マッチング層2aを形成するための板材、接地用電気端子9及び第2の音響マッチング層2bを形成するための板材を一体的に固着した後、スライシングマシーンなどによって第2の音響マッチング層2bの前面から背面負荷材3の前面部まで掘り下げた複数の溝、すなわち第2の音響マッチング層2b、接地用電気端子9、第1の音響マッチング層2a、圧電板材、信号用電気端子7及び背面負荷材3の一部を1ユニットとして、複数の圧電素子ユニットに分割する分割溝を形成する。この場合、X方向に所定の間隔で配置された信号用電気端子7の中間部に分割溝を形成する。これによって、圧電素子ユニットが並列に配置された圧電素子列が形成される。次に、音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴムなどのような材料(図示せず)を各分割溝に充填し、さらに、必要に応じて第2の音響マッチング層2bの上面にシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4を装着する。背面負荷材を備えない超音波探触子においては、この段階で背面負荷材3に代わる部材を除去する。
なお、ここでは第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bとの間に、絶縁性フイルム9aに導電性膜9bを披着させた接地用電気端子9を挿着し、接地用電気端子9の導電性膜9bと第1の音響マッチング層2aの導電性部材とを接触させることによって、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続するものについて説明したが、このほか、第2の音響マッチング層2bとして導電性部材を用い、この第2の音響マッチング層2bの前面に導電性膜9bを披着させた接地用電気端子9を装着し、第1の音響マッチング層2a及び第2の音響マッチング層2bを介して、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続するようにしても同様の動作をさせることができる。
上記のように構成された超音波探触子10Cの動作について以下に説明する。
圧電素子1の背面に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の前面に形成された接地電極5は、第1の音響マッチング層2aの複合材料の導電性部材と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
この場合、詳細を後述する第1の音響マッチング層2aの導電性部材は、圧電素子1に形成された接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する形状であればよく、特定の形状に限定するものではない。また、第1の音響マッチング層2aの導電性部材は、1つの圧電素子1に対して2箇所以上で、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとが電気的に接続されるような構成が望ましく、導電性部材20の数が多いほど接地電極5が圧電素子1と共に割れても、信号電送経路が断線して故障する頻度は少なくなり、信頼性の高いものとなる。また、第1の音響マッチング層2aの絶縁性部材又は半導電性部材は音響インピーダンスを選択することが主たる目的となる。そのため、第3の実施の形態のように2層の音響マッチング層を備えた場合、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは、圧電素子1の音響インピーダンスと第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスとの間の値を有していることが必要で、例えば、5メガレールスから15メガレールスの範囲の値が選ばれる。このような範囲の音響インピーダンスが得られる材料を導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材とを複合した材料とすればよい。
導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成した第1の音響マッチング層2aにおける導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材材料とのそれぞれの連結構造の一例を図3C、図3Dに示す。図3C、図3Dにおいて、厚さ方向であるZ方向は被検体側の方向、X方向は圧電素子1の配列方向、Y方向はX方向及びZ方向と直交する方向を示している。
図3Cにおいて、第1の音響マッチング層2a−4を構成する複数の導電性部材20は円柱状に形成されたものを、その軸芯をZ方向に揃えたもので、Z方向の1方向のみにつながりがあり、絶縁性部材又は半導電性部材21はX、Y、Zの3方向につながりがある構造体となっている。この導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料の連結構造を1−3型連結構造と呼ぶ。また、圧電素子ユニット、すなわち1個の圧電素子1に対応する1個の第1の音響マッチング層2a−4の導電性部材20は、それぞれ3行×22列にして合計66個が配設されている。この導電性部材20の数については、前述したように、圧電素子1の接地電極5との接続箇所が多くなるほど信頼性は高くなるが、導電性部材20の数については2個以上であればよく、66個に限定されるものではない。ただし、導電性部材20が第1の音響マッチング層2aとして機能するように、つまり、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の複合材料が音響的に1つの音響マッチング層として機能する形態にすることが必要である。なお、図3Cに示す第1の音響マッチング層2a−4は、圧電素子1に対応して既に分割された構成の状態を示しているが、分割される前の状態は、前述したように全体が1枚の板状のものになっている。一方、導電性部材20に音響マッチング機能を持たせる必要がないとき、つまり導電性部材20が、絶縁性部材又は半導電性部材21に対してその体積比率が著しく少ない場合は、圧電素子1の接地電極5とを接続させる機能のみを持たせるだけで同じ効果が得られる。
このように、複数の導電性部材20は、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の金属膜9bとにそれぞれ接触して、その厚さ方向であるZ方向でこれらを電気的に接続させる機能を有している。ここでは、Z方向の1方向につながりがあるものを導電性部材20とし、X、Y、Z方向の3方向につながりがあるものを絶縁性部材又は半導電性部材21としたが、これらの材料を互いに入れ替えて、絶縁性部材又は半導電性部材側がZ方向の1方向につながりがあり、導電性部材側がX、Y、Zの3方向につながりがある連結構造体、すなわち3−1型連結構造体(図示を省略)にしても同様の効果を得ることができる。
また、図3Dに示した音響マッチング層2a−5は、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21と交互に配置したもので、導電性部材20は、圧電素子1の配列方向のX方向と、厚さ方向であるZ方向の2方向につながりがあり、また絶縁性部材又は半導電性部材21も同様に、圧電素子1の配列方向のX方向と、Z方向の2方向につながりがある構造体となっており、これらの複合材料の連結構造を2−2型連結構造と呼ぶ。したがって、複数の導電性部材20は圧電素子1の接地電極5及び接地用電気端子9の導電性部材とは厚さ方向であるZ方向で電気的な接続が可能となる。
図3Dにおいて、1個の圧電素子1に対応する1個の第1の音響マッチング層2a−5の導電性部材20は、絶縁性部材又は半導電性部材21と交互にしてY方向に11個配置されている。この導電性部材20は、前述したように、圧電素子1の接地電極5との接続箇所が多いほど信頼性は高くなるが、導電性部材20の数については2個以上であればよい。ただし、導電性部材20が第1の音響マッチング層2aとして機能するように、つまり導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料が1つの音響マッチング層として機能する形態にすることが必要である。なお、図3Dに示す第1の音響マッチング層2a−5は、圧電素子1に対応して既に分割された構成の状態を示しているが、分割される前の状態は、前述したように、全体が1枚の板状のものになっており、導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21は圧電素子1の配列方向であるX方向に連結した構成になっている。一方、導電性部材20に音響マッチング機能を持たせる必要がないとき、つまり導電性部材20が、絶縁性部材又は半導電性部材21に対してその体積比率が著しく少ない場合は、圧電素子1の接地電極5とを接続させる機能のみを持たせるだけで同じ効果が得られる。
また、図3Dでは、第1の音響マッチング層2a−5の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21は、圧電素子1の配列方向とほぼ並行に構成した2−2型の連結構造としたが、このほか、圧電素子1の配列方向と直交する方向、あるいはそれ以外の方向に配列した2−2型の連結構造にしても同様の効果が得られる。
図3C又は3Dに示すような連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−4、2a−5は、前述したように、その音響インピーダンスが圧電素子1の音響インピーダンスと第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスとの間の値を有することが必要であるが、本実施の形態のように音響マッチング層を2層タイプにした場合には、例えば圧電素子1として音響インピーダンスが約30メガレールスの値を有するPZT-5Hの圧電セラミックを用い、音響インピーダンスが約1.6メガレールスの値を有する生体のような被検体を対象とした場合には、第2の音響マッチング層2bの音響インピーダンスは約3メガレールスの値の材料を用いることになる。
したがって、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは少なくとも3から30メガレールスの間の値を有する材料が必要になってくる。一般的に第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは、5から20メガレールスの間の値にすることが望ましく、また、その値が大きくなるほど、周波数特性の帯域が広くなる傾向があり、広帯域の周波数特性を得るためには、第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスの値を大きくする必要があり、10から20メガレールスの範囲の材料を用いる。
しかし、この範囲の値を有する材料は、例えば、ガラス、結晶化ガラス、金属タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶などがある。しかしながら、これらの材料は、いずれも電気的には絶縁物あるいは半導電性部材である。
そこで、例えば、図3Bに示した超音波探触子10Cについて説明すると、圧電素子1の接地電極5の端部に対応する部位を切り欠いて音響マッチング層のない部分(図示せず)を作り、その部分から電気端子(図示せず)を取り出す構成も考えられる。しかし、このような構成にすると、性能的には周波数の広帯域化が可能になる反面、音響マッチング層の無い部分においても圧電素子1は振動して超音波を発生するため、被検体に送信する超音波が乱れて超音波画像が劣化する。また、接地電極5から取り出す電気端子は1箇所であるため、診断操作中に超音波探触子を落下させたり、あるいは超音波探触子に打撃など機械的な衝撃を加えたりしたことにより、圧電素子1が割れたとき、接地電極5も同じように割れて電気的な断線が発生するなどにより故障するおそれがある。
第3の実施の形態は、これらの問題を解決し、しかも周波数の広帯域化が可能な構成を実現したものである。すなわち、圧電素子1の接地電極5が、第1の音響マッチング層2aの複数の導電性部材20を介して、接地用電気端子9の金属膜9bとの電気的に接続される構成にしているため、圧電素子1の全面に音響マッチング層を設ける構成にできているため、圧電素子1の全面にて均一で所望の超音波の送信、受信することができるとともに、機械的な衝撃などによって圧電素子1及び接地電極5が割れたとしても、第1の音響マッチング層2aの複数個の導電性部材で接続されているため、断線して故障することが極めて少なくなる。
一方、第1の音響マッチング層2a−3、2a−4の絶縁性部材又は半導電性部材21としては、第2の実施の形態で用いた材料であるガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。また、第1の音響マッチング層2a−3、2a−4の導電性部材20としては、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、グラファイト、カーボンなどの材料を用いる。このような導電性部材20、絶縁性部材又は半導電性部材21を用いた1−3型、2−2型、3−1型連結構造の複合材料の音響インピーダンスは、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21のそれぞれの体積比率によって決まる。例えば、導電性部材20として銀を用い、絶縁性部材としてXカット水晶を用いた場合、それぞれ材料単体の音響インピーダンスは38、15.3メガレールスである。この2種類の材料の体積比率を変えることにより、第2の実施の形態で説明した図2Cの線図と同様に、Xカット水晶の音響インピーダンス38メガレールスと銀の音響インピーダンス15.3メガレールスの間の所望の値にすることができる。
なお、導電性部材20、絶縁性部材又は半導電性部材21が上述した以外の材料であっても本発明の目的が達成できる材料であればよく、上術した材料に限定するものではない。また、第3の実施の形態においては、1種類の導体20と、1種類の絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造を有する第1の音響マッチング層2aについて説明したが、このほか、導電性部材を2種類、絶縁性部材を1種類〜3種類というように、2種類以上の材料を用いても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1種類の材料の連結構造に限定するものではない。
また、1−3型、2−2型、3−1型の連結構造を有する導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料を第1の音響マッチング層2aとして機能させるためには、複合材料が一体として超音波が伝搬するように、導電性部材20の幅及び配列間隔にする。また、導電性部材20の体積比率が少ない場合は、導電性部材20の幅及び配列間隔を考慮する必要はなく、電気的な接続機能を主にしてその材料を選択すればよい。
図3Cに示す1−3型の連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−4の製造方法としては、第2の実施の形態として図2Dに示した第1の音響マッチング層2a−2と同じような方法で製造すればよく、図3Dに示す2−2型の連結構造を有する第1の音響マッチング層2a−4の製造方法としては、第2の実施の形態として図2Bに示した第1の音響マッチング層2a−1と同じような方法で製造すればよい。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材とを複合した複合材料を用いることにより、その音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、複合材料を構成する導電性部材から電気端子を取り出すことができるため、信頼性が高くかつ操作性が良好な超音波探触子を得ることができる。
なお、第3の実施の形態では、1−3型連結構造の導電性部材20として、円柱の形状を有するものを用いたが、このほか角柱あるいは球など他の形状を有するものを用いても同様の効果が得られる。また、1−3型連結構造の導電性部材20として、Z方向に対してコーンのような円錐状の形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、2−2型連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21が、Z方向に対して均一な幅で配列される場合について説明したが、これらの部材がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、1−3型、2−2型及び3−1型の各連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とがほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、第1の音響マッチング層2aの導電性部材を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成の場合について説明したが、この代わりに、第1の音響マッチング層2aのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に電気端子を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態においては、圧電素子1を1次元に複数個配列した構成について説明したが、このほか、圧電素子1を2次元に複数個配列したいわゆる2次元アレイの構成にしても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第4の実施の形態>
次に、本発明に係る超音波探触子の第4の実施の形態について説明する。図4Aは第4の実施の形態に係る超音波探触子の構成を、その一部を破断して示した斜視図であり、図4Bは、図4Aに示した超音波探触子を、その図中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、Y−Z平面で切断した断面をX方向から見た断面図である。
図4A及び図4Bに示した超音波探触子10Dは、図4A中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、X方向に配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側となるZ方向前面に積み重ねられた複数の第1の音響マッチング層2a、複数の第2の音響マッチング層2b、及び第2の音響マッチング層2b上に共通に積み重ねられた第3の音響マッチング層2cを含む音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面に設けられる背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2の前面に設けられる音響レンズ4と、圧電素子1と背面負荷材3との間に挿着された複数の信号用電気端子7と、第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bとの間に挿着された接地用電気端子9とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
以下、説明の都合上、図4A及び図4Bに示した超音波探触子10Dの製造方法について説明する。
複数の圧電素子1を形成するために、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどに代表される高分子材料の圧電体などで構成され、所定の厚さを有する板材、すなわち圧電板材を準備する。この圧電板材の一主面、すなわちZ方向の前面には接地電極5を、その背面には信号用電極6を、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成する。
また、所定の厚さを有する板状の背面負荷材(背面負荷材を備えない超音波探触子ではこれに代わる部材)3と、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成され、複数の第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と、エポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料で構成された複数の第2の音響マッチング層2bを形成するための板材と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの導電性膜7bが披着され、全体がリボン状に形成された複数の信号用電気端子7と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フイルム9aの一主面に銅などの導電性膜(厚みは音響特性に対する影響が少ないように5マイクロメートル以下が好ましい)9bが披着された接地用電気端子9とを準備する。なお、第2の音響マッチング層2bを形成するために用いるエポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子材料は絶縁性部材であるが、導電性部材を用いてもよい。なお、導電性膜7b、9bは電気的に導電性を有する材料であれば何でも良く金属に限定するものではない。
そこで、図4Aに示したように、背面負荷材3の前面に、複数の信号用電気端子7をX方向に所定の間隔で配置し、その上に圧電素子1を形成するための圧電板材を重ね合わせ、さらに、圧電板材の前面に第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と、接地用電気端子9と、第2の音響マッチング層2bを形成するための板材とを順次に重ね合わせて、これらを一体的に固着する。この場合、背面負荷材3と圧電板材との間に装着される複数の信号用電気端子7は、それぞれ絶縁性フィルム7aの一主面に披着されている導電性膜7bが圧電板材に形成された信号用電極6に接触し、絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電板材側(図面の上方)に向けられる。また、第1の音響マッチング層2aを形成するための板材と第2の音響マッチング層2bを形成するための板材との間に挿着される接地用電気端子9は、絶縁性フイルム9aの一主面に形成された導電性膜9bが第1の音響マッチング層2aに接触するように、その一主面が第1の音響マッチング層2a側に向けられる。
以上のようにして、背面負荷材3、複数の信号用電気端子7、圧電素子1を形成するための圧電板材、第1の音響マッチング層2aを形成するための板材、接地用電気端子9及び第2の音響マッチング層2bを形成するための板材を一体的に固着した後、スライシングマシーンなどによって第2の音響マッチング層2bの前面から背面負荷材3の前面部まで掘り下げた複数の溝、すなわち第2の音響マッチング層2b、接地用電気端子9、第1の音響マッチング層2a、圧電板材、信号用電気端子7及び背面負荷材3の一部を1ユニットとして、複数の圧電素子ユニットに分割する分割溝を形成する。この場合、X方向に所定の間隔で配置された信号用電気端子7の中間部に分割溝を形成する。これによって、圧電素子ユニットが並列に配置された圧電素子列が形成される。次に、音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴムなどのような材料(図示せず)を各分割溝に充填し、さらに、第2の音響マッチング層2b及び分割溝に充填した部分の上面には、第3の音響マッチング層2cを装着する。
第3の音響マッチング層2cは、図示のように分割しないで連結した状態で装着する。この第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、及びウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。さらに、必要に応じて、第3の音響マッチング層2cの上面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4を装着する。背面負荷材を備えない超音波探触子においては、この段階で背面負荷材3に代わる部材を除去する。
なお、第3の音響マッチング層2cは、第1の音響マッチング層2a、第2の音響マッチング層2bと同じように圧電素子1と一緒に分割してもよい。また、第2の音響マッチング層2b、第3の音響マッチング層2cは絶縁性部材、導電性部材のいずれでもよい。
なお、ここでは第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bとの間に、絶縁性フイルム9aに導電性膜9bを披着させた接地用電気端子9を挿着し、接地用電気端子9の導電性膜9bと第1の音響マッチング層2aの導電性部材とを接触させることによって、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続するものについて説明したが、このほか、第2の音響マッチング層2bとして導電性部材を用い、この第2の音響マッチング層2bの前面に導電性膜9bを披着させた接地用電気端子9を装着し、第1の音響マッチング層2a及び第2の音響マッチング層2bを介して、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続するようにしても同様の動作をさせることができる。
上記のように構成された超音波探触子10Cの動作について以下に説明する。
圧電素子1の背面に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の前面に形成された接地電極5は、第1の音響マッチング層2aの複合材料の導電性部材と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
この場合、詳細を後述する第1の音響マッチング層2aの導電性部材は、圧電素子1に形成された接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとを電気的に接続する形状であればよく、特定の形状に限定するものではない。また、第1の音響マッチング層2aの導電性部材は、1つの圧電素子1に対して2箇所以上で、圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性膜9bとが電気的に接続されるような構成が望ましく、導電性部材20の数が多いほど接地電極5が圧電素子1と共に割れても、信号電送経路が断線して故障する頻度は少なくなり、信頼性の高いものとなる。
また、第1の音響マッチング層2aの絶縁性部材又は半導電性部材21は音響インピーダンスを整合の状態の近づけることが主たる目的となる。そのため、本実施の形態のように3層の音響マッチング層を備えた場合、第1、第2、第3の音響マッチング層2a、2b、2cの各音響インピーダンスは、それぞれの目的とする周波数特性に応じて使用する値の範囲が選択される。例えば、特開昭60−53399号公報では、第1、第2及び第3の音響マッチング層の音響インピーダンスは、それぞれ12.6から18.1、3.8から6.0、及び1.7から2.4メガレールスの範囲を、また、特開昭60−185499号公報では、それぞれ5から15、1.9から4.4、及び1.6から2メガレールスの範囲を、さらに特開2003−125494号公報には19.7、7.4、2.44メガレールスの値が示されている。したがって、3層タイプの音響マッチング層における第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスは、およそ5から20メガレールスの範囲の値を有する材料が用いられる。音響マッチング層の層数が多くなるほど周波数特性の広帯域化、高感度化が可能になり、少なくとも2層の音響マッチング層のタイプより3層の音響マッチング層タイプの方が周波数の広帯域化が可能となる。
導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成した第1の音響マッチング層2aの導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とのそれぞれの連結構造の一例は、第3の実施の形態で説明した図3C、図3Dに示すような1−3型、2−2型あるいは前述した3−1型の構造のものを用いればよい。
第1の音響マッチング層2aの導電性部材20としては、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、グラファイト、カーボンなどの材料を用いる。また、第1の音響マッチング層2aの絶縁性部材又は半導電性部材21としては、ガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。
なお、導電性部材20、絶縁性部材又は半導電性部材21として上記以外の材料を用いたとしても、本願発明の目的が達成できる材料であればよい。また、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料としての音響インピーダンスは、1−3型、2−2型、3−1型連結構造を有する複合材料は、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とのそれぞれの体積比率によって決まることは、第2の実施の形態で説明したとおりである。例えば、導電性部材20として音響インピーダンスは38メガレールスの値を有する銀を用い、絶縁性部材21として音響インピーダンスは15.3メガレールスの値を有する水晶Xカット板を用いて体積比率を任意に選択することにより、第2の実施の形態を示す図2Cと同様に、複合材料の音響インピーダンスは15.3から38メガレールスの範囲で任意に所望の値を得ることができる。この範囲の音響インピーダンスは、3層音響マッチング層の第1の音響マッチング層2aに要望される値の範囲である5から20メガレールスに相当する範囲を有する体積比率が存在し、この範囲で作成した材料は、第1の音響マッチング層2aとしての機能を有していることになる。また、第4の実施の形態の第1の音響マッチング層2aのほかの機能としては、第1の音響マッチング層2aの導電性部材20が圧電素子1の接地電極5と接地用電気端子9の導電性部材と電気的に接続できる構成であるため、電気端子を取り出しできる構成にしている。
連結構造が1−3型、2−2型、3−1型構造においては、2種類のそれぞれの材料が有する音響インピーダンスの範囲内の値になり、それぞれの材料の体積比率を変えることによって、所望の音響インピーダンスの材料を得ることができる。また、第4の実施の形態は、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造を有する第1の音響マッチング層2aについて説明したが、このほか、2種類以上の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21材料を用いても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1種類ずつ、合計2種類の材料の連結構造に限定するものではない。
また、1−3型、2−2型、3−1型の連結構造を有する導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料を第1の音響マッチング層2aとして機能させるためには、複合材料が一体として超音波が伝搬するように、導電性部材20の幅及び配列間隔にする。また、導電性部材20の体積比率が少ない場合は、導電性部材20の幅及び配列間隔を考慮する必要はなく、電気的な接続機能を主にしてその材料を選択すればよい。
また、図4Aに示すように、第3の音響マッチング層2cを圧電素子1に対応して分割しない構造としているが、当然のことながら、分割した構成にしても同様の効果が得られるので、図4Aの構成に限定するものではない。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材とを複合した複合材料を用いることにより、その音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、複合材料を構成する導電性部材から電気端子を取り出すことができるため、信頼性が高くかつ操作性が良好な超音波探触子を得ることができる。
なお、第4の実施の形態では、1−3型連結構造の導電性部材20として、円柱の形状を有するものを用いたが、このほか角柱あるいは球など他の形状を有するものを用いても同様の効果が得られる。また、1−3型連結構造の導電性部材20として、Z方向に対してコーンのような円錐状の形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、2−2型連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21が、Z方向に対して均一な幅で配列される場合について説明したが、これらの部材がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、1−3型、2−2型及び3−1型の各連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とがほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。また、第4の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、第1の音響マッチング層2aの導電性部材を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成の場合について説明したが、この代わりに、第1の音響マッチング層2aのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に電気端子を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、圧電素子1を1次元に複数個配列した構成の場合について説明したが、このほか、圧電素子1を2次元に複数個配列したいわゆる2次元アレイの構成にしても同様の効果が得られる。また、第4の実施の形態では、導電性部材及び絶縁性部材若しくは半導電性部材は、2種類用いた場合について説明したが、このほか、導電性部材を2種類、絶縁性部材を1種類〜3種類というように、2種類以上の材料を用いても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図5Aは本発明に係る超音波探触子の第5の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図であり、図5Bは、図5Aに示した超音波探触子を、その図中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、Y−Z平面で切断した断面をX方向から見た断面図である。
図5A及び図5Bに示した超音波探触子10Eは、図5A中に示した3つの方向X、Y、Zのうち、X方向に配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側となるZ方向の前面に積み重ねられた複数の第1の音響マッチング層2a、複数の第2の音響マッチング層2b、及び第2の音響マッチング層2b上に共通に積み重ねられた第3の音響マッチング層3cを含む音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面に設けられる背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に設けられる音響レンズ4と、圧電素子1と背面負荷材3との間に挿着された複数の信号用電気端子7と、第2の音響マッチング層2bと第3の音響マッチング層2cとの間に挿着された接地用電気端子9とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
第5の実施の形態は第4の実施の形態と比較して、圧電素子1、第1の音響マッチング層2a、第3の音響マッチング層2cの積層構造は同じであるが、基本的に違う点は、第2の音響マッチング層2bに導電性部材、又は第1の音響マッチング層2aと同じように導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を用いた点、第2の音響マッチング層2bの上面にポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フイルム9aの一主面に銅などの金属膜9bが披着された接地用電気端子9を設けた点にある。このように構成にすることにより、第1の音響マッチング層2a及び第2の音響マッチング層2bを介して、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とを電気的に接続することができる。
第1の音響マッチング層2a及び第2の音響マッチング層2bの両方に複合材料を用いる場合には、これの音響マッチング層2a、2bの各導電性部材部が少なくとも電気的に接続されるような構成にする必要がある。また、第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bの複合材料の連結構造は必ずしも同じ構造にする必要はなく、例えば第1の音響マッチング層2aの連結構造を1−3型にして、第2の音響マッチング層2bの連結構造を2−2型にしてもよく、両音響マッチング層の導電性部材部が電気的に接続される構成にして、接地用電気端子9と圧電素子1に形成された接地電極5とが電気的に接続されるとともに、それぞれが音響マッチング層としての音響インピーダンスの値を有するように構成すればよい。
また、第2の音響マッチング層2bとしては、グラファイトのような導電性部材を用いても、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を用いてもよい。導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を用いる場合には、例えば、導電性部材20として音響インピーダンスが38メガレールスの銀を用い、絶縁性部材21として音響インピーダンスが3メガレールスのエポキシ樹脂を用いて、体積比率を変えることにより音響インピーダンスを任意に設定することができ、例えば6メガレールス付近の値にすることが可能である。これは1−3型、2−2型、3−1型のいずれの連結構造の複合材料にも可能である。
一方、第5の実施の形態においては、第2の音響マッチング層2bの前面に装着される接地用電気端子9の基材となる絶縁性のフィルムとして、ポリイミドのような音響インピーダンスが約3メガレールスの材料を用いた場合には、この材料の音響インピーダンスが第2の音響マッチング層2bと第3の音響マッチング層2cとの間の値か、若しくはこれに近い値であるので、音響的な不整合がなくなって良好な周波数特性が得られやすい。
以上のように、圧電素子の被検体側面に設ける3層の音響マッチング層の構成において、第1及び第2の音響マッチング層にそれぞれ導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を用いることにより、第1及び第2の音響マッチング層のいずれをもその音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になり、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、第1及び第2の音響マッチング層の各導電性部材を介して、接地用電気端子9を接地電極5に電気的に接続することができるので、信頼性が高く、かつ操作性が良好な超音波探触子を得ることができる。
なお、第5の実施の形態では、それぞれ1種類の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21などの材料の連結構造を有する第1、第2の音響マッチング層2a、2bについて説明したが、このほか、2種類以上の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とを用いても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1種類の材料の連結構造に限定するものではない。
また、第5の実施の形態では、1−3型連結構造の導電性部材は円柱の形状を用いた場合について説明したが、このほか角柱あるいは球など他の形状に場合においても同様の効果が得られる。また、第5の実施の形態では、1−3型連結構造の導電性部材として円柱の形状を有するものを用いたが、このほかZ方向に対してコーンのような円錐状の形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にした場合においても同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態では、1−3型、2−2型及び3−1型の各連結構造の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21とがほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、第1の音響マッチング層2aと第2の音響マッチング層2bの各導電性部材20を介して、それらの前面に電気端子を設ける構成の場合について説明したが、この代わりに、第2の音響マッチング層2bのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に電気端子を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態においては、圧電素子1を1次元に複数個配列した構成について説明したが、このほか、圧電素子1を2次元に複数個配列したいわゆる2次元アレイの構成にしても同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態では、第1の音響マッチング層2aの前面に、第2の音響マッチング層2b及び第3の音響マッチング層2cを積層して、合計3層の音響マッチング層2を備えたものについて説明したが、nを3以上の整数として、音響マッチング層2が第1〜第nの音響マッチング層を含み、かつ第2の音響マッチング層と第3の音響マッチングとの間に電気端子を装着する構成としても、上述したと同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第6の実施の形態>
図6Aは本発明に係る超音波探触子の第6の実施の形態の構成を示す断面図であり、図6Bは図6Aに示す超音波探触子を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図である。
図6Aにおいて、超音波探触子10Fは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に積み重ねられた音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。
超音波探触子10Fの構成要素のうち、圧電素子1はPZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、又はこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、あるいはPVDFなどで代表される高分子材料の圧電体などによって形成される。圧電素子1の前面には接地電極5が形成され、圧電素子1の背面には信号用電極6が形成されている。接地電極5及び信号用電極6は、それぞれ金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付けなどによって形成される。
また、圧電素子1に形成されている信号用電極6と背面負荷材3との間に、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム7aの一主面に銅などの金属膜7bが披着された信号用電気端子7が挿着されている。この場合、圧電素子1に形成されている信号用電極6に信号用電気端子7の金属膜7bが接触し、かつ信号用電気端子7の絶縁性フィルム7aが背面負荷材3に接触するように、絶縁性フィルム7aの一主面が圧電素子1側に向けられる。一方、圧電素子1に形成されている接地電極5の前面には、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料で構成される音響マッチング層2と、ポリイミドなどの高分子材料によって構成される絶縁性フィルム9aの一主面に銅などの導電性膜(厚みは特性に影響が小さいように5マイクロメートル以下が好ましい)9bが披着された接地用電気端子9とが順次積み重ねられている。この場合、音響マッチング層2の複合材料の導電性部材20に接地用電気端子9の導電性膜9bが接触するように、絶縁性フィルム9aの一主面が音響マッチング層2側に向けられる。そして、必要に応じて、音響マッチング層2の前面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4が装着される。
上記のように構成された超音波探触子10Fの動作について以下に説明する。
圧電素子1に形成された信号用電極6は、信号用電気端子7を介して、また、圧電素子1の接地電極5は音響マッチング層2の複合材料の導電性部材20と接地用電気端子9とを介して、それぞれ不図示のケーブルの一端に電気的に接続され、これらのケーブルのそれぞれの他端は不図示の超音波診断装置の本体部に接続される。これによって、超音波診断装置の本体部で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加して超音波を発信し、また、受信した超音波のエコーを電気信号に変換して超音波診断装置の本体部に送信する。
図6Bにおいて、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料で構成されている音響マッチング層2としては、音響インピーダンスが圧電素子1と被検体(例えば生体)の間になるような材料が選ばれる。絶縁性部材又は半導電性部材21は厚み方向(図面では上下方向)に対して連続的に形状(体積)が変化し、図面では下方は体積が大きく上方にいくに従って体積が小さくなるような形状(例えば円錐、三角錐、四角錐など)にし、その間隙に導電性部材20を満たした構成にしている。例えば絶縁性部材又は半導電性部材21が、導電性部材20の音響インピーダンスより大きい値を有する材料の場合には、図面では下方は体積が大きいため音響インピーダンスの値が最も大きく、上方にいくに従って徐々に体積が小さくなって導電性部材20の体積が大きくなることにより音響インピーダンスが徐々に小さくなっていく。つまり音響マッチング層2は上下方向に音響インピーダンスが連続的に変化した構成となっている。図6Aのような構成で図面の下方が音響インピーダンスは大きく、上方にいくに従って小さくなる構成の場合は、当然ながら圧電素子1側は下方になり被検体側は上方になるように構成される。
このように音響マッチング層2の形状が厚み方向に連続的に可変する構成にすることにより、音響マッチング層2は、厚み方向(圧電素子1から被検体の方向)に対して音響インピーダンスが連続的に変化する特性となっており、圧電素子1の接地電極2側に位置する音響マッチング層2の部分は、音響インピーダンスが圧電素子1に近い値で大きく、そして被検体側(図面では上方)に位置する部分の音響マッチング層2の音響インピーダンスは、被検体の値に近い値となっている。このように音響インピーダンスを連続的に傾斜させる音響マッチング層2を用いることにより、周波数の広帯域化が可能となる。また、本音響マッチング層2の厚みは周波数に依存しないため、中心周波数の約2分の1波長以上の厚みであれば音響整合層としての効果を発揮でき、厚みに対して周波数特性はあまり関係しない。
音響マッチング層2の導電性部材20は圧電素子1の一方の電極と電気的な接続がなされ、もう一方の導電性部材20の面には、接地用電気端子9の導電性膜9bが接触して電気的に接続される構成となっており、接地用電気端子9から信号の取り入れ、取り出しをする。本音響マッチング層2の絶縁性部材又は半導電性部材21と、導電性部材20の連結構造としては、第2の実施の形態で説明した2−2型、1−3型、3−1型連結構造が望ましい。例えば絶縁性部材又は半導電性部材21として半導体などに使用されている音響インピーダンスが約19.7メガレールスを有するシリコンの単結晶、また導電性部材20として音響インピーダンス約6.5メガレールスを有する導電性接着剤のエコーボンド56C(エマーソンアンドカミング社)を用いると音響インピーダンスはシリコン単結晶の体積比率がほぼ100%の部分は、19.7メガレールスの音響インピーダンスであり徐々に体積比率が減少していき、導電性接着剤の体積比率が徐々に増加していくことにより音響インピーダンスは6.5メガレールスに近づいていくような特性を得ることができる。
ここでは、音響マッチング層2の絶縁性部材又は半導電性部材21として、ガラス、結晶化ガラス、タングステン粉体を高濃度で混入したエポキシ樹脂、ニオブ酸鉛セラミックス、加工性があるセラミックス(快削性セラミックス)、単結晶若しくは多結晶シリコン、水晶、チタン酸バリウムなどのセラミックスなどを用いる。また、音響マッチング層2の導電性部材20として、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケルなどの金属材料や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属若しくはカーボンの粉体をエポキシ樹脂などの高分子化合物に混入して導電性を持たせた高分子材料や、グラファイト、カーボンなどを用いる。なお、導電性部材20あるいは絶縁性部材又は半導電性部材21は、前述した材料に限定されるものではなく、前述した材料と同程度の音響インピーダンスを有するものであれば他の材料であってもよい。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスを連続的に傾斜させることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
また、第6の実施の形態では、図6Bに示すように導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第6の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、音響マッチング層2を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、音響マッチング層2のZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第6の実施の形態においては、音響マッチング層2として、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の少なくとも一方が2種類以上の材料で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1つの材種の連結構造に限定されるものではない。
また、第6の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
<第7の実施の形態>
図7Aは本発明に係る超音波探触子を構成する音響マッチング層の第7の実施の形態の構成を示す断面図である。なお、超音波探触子の概略断面図は第6の実施の形態で説明した図6Aと同じであり音響マッチング層2の構成が違うだけなので、超音波探触子は図6Aを用いて説明し、音響マッチング層の部分は図7Aを用いて説明する。
図6Aにおいて、超音波探触子10Fは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に音響マッチング層2と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これら構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。超音波探触子10Fの構成要素及び動作については第6の実施の形態で説明しているのでここでは割愛する。
図7Aにおいて、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との複合材料で構成されている音響マッチング層2としては、音響インピーダンスが圧電素子1と被検体(例えば生体)の間になるような材料が選ばれる。絶縁性部材又は半導電性部材21は厚み方向(図面では上下方向)に対して、例えば図面では幅を2段階に段階的に可変して形状(体積)を変化させ、下段(T1の領域)は幅が大きく、上段(T2の領域)は幅が小さくなるような形状にし、その間隙に導電性部材20を満たした構成にしている。例えば絶縁性部材又は半導電性部材21が、導電性部材20の音響インピーダンスより大きい値を有する材料の場合は、T1の領域は幅が大きいため音響インピーダンスの値が大きく、T2の領域は幅が狭くなる。それに対して、導電性部材20の幅は逆になり、それぞれの幅(体積)が広い方の部材の音響インピーダンスに近づく。T1、T2の領域の導電性部材20と、絶縁性部材又は半導電性部材21の体積比率によって音響インピーダンスを段階的に変えることができる。したがって、図7Aに示すように2段階になる構成では、2層の音響マッチング層が構成されたことになる。当然ながらT1、T2のそれぞれの厚みは4分の1波長の厚みを基本にして設定される。
図6Aのように音響マッチング層2の導電性部材20は圧電素子1の一方の電極と電気的な接続がされ、もう一方の導電性部材20の面には、接地用電気端子9の導電性膜9bが接触して電気的に接続される構成となっており、接地用電気端子9から信号の取り入れ、取り出しをする。図7Aに示した音響マッチング層2の導電性部材20と、絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造としては、第2の実施の形態で説明した2−2型、1−3型、3−1型連結構造が望ましい。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスを段階的に可変させることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
また、第7の実施の形態では、図7Aに示すように導電性部材20及び絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第7の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、音響マッチング層2を介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、音響マッチング層2のZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第7の実施の形態においては、音響マッチング層2として、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の少なくとも一方が2種類以上の材料で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれ1つの材種の連結構造に限定されるものではない。
また、第7の実施の形態においては、圧電素子1の前面の電極を接地電極5としてその被検体側に接地用電気端子9を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を信号用電極6として、さらに信号用電極6に信号用電気端子7を接触させているが、この代わりに、圧電素子1の前面の電極を信号用電極6としてその被検体側に信号用電気端子7を配置するとともに、圧電素子1の背面の電極を接地電極5として、さらに接地電極5に接地用電気端子9を接触させても、原理的には超音波を送受信することは可能である。
また、第7の実施の形態を構成する音響マッチング層2の他の構成例として図7Bに示したものがある。図7Bの音響マッチング層2は図7Aに示したように2層の音響マッチング層T1、T2を構成しているが、図7Bは導電性部材20を厚みT1の領域で100%を占め、厚みT2の領域に導電性部材20と音響インピーダンスの値が違う部材、例えば絶縁性若しくは半導体部材を任意の体積比率で設ける。例えば導電性部材20としてグラファイトに銅、銀などの金属粉を充填した材料を用いて音響インピーダンスを6〜16メガレールスの値を用いて厚みT1を100%占めて第1の音響マッチング層とする、また厚みT2の領域は所望の音響インピーダンスにするように導電性部材20に溝を形成し、その溝に絶縁性部材であるエポキシ樹脂、ウレタン、シリコーンゴムなどの音響インピーダンス(1〜3メガレールス)の低い材料を充填して形成し導電性部材20と絶縁性若しくは半導体部材21の体積比率で厚みT2の音響インピーダンスにすることにより第2の音響マッチング層を構成することができる。このような構成にすることにより導電性部材20はT1、T2の厚み方向に連結しているため、図7Aの実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、図7Bでは2層の音響マッチング層で構成した場合について説明したが、この他2層以上つまり3層以上の音響マッチング層で構成することも可能であり、2層の音響マッチング層に限定するものではない。
<第8の実施の形態>
図8は本発明に係る超音波探触子の第8の実施の形態を構成する音響マッチング層の構成を示す断面図である。なお、超音波探触子の概略断面図は第2の実施の形態で説明した図2Aと同じであり第1の音響マッチング層2aの構成が違うだけなので、超音波探触子は図2Aを用いて説明し、第1の音響マッチング層の部分は図8を用いて説明する。
図2Aにおいて、超音波探触子10Bは板状の圧電素子1と、この圧電素子1の前面(図面の上方)に積み重ねられた2層の音響マッチング層2(2a、2b)と、必要に応じて圧電素子1の背面(図面の下方)に装着される背面負荷材3と、同じく必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b)の前面に装着される音響レンズ4とを備えている。これらの構成要素のそれぞれの機能は、従来の超音波探触子を構成する要素が持つ機能と同様である。超音波探触子の構成要素及び動作については第2の実施の形態で説明しているのでここでは割愛する。
導電性部材と絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料で構成されている第1の音響マッチング層2aとしては、その音響インピーダンスが圧電素子1と第2の音響マッチング層2bの各音響インピーダンスの中間になるような材料が選ばれる。この第1の音響マッチング層2aとして、導電性部材と、複数の絶縁性部材又は半導電性部材との構成例を図8に示す。図8においては、被検体に向けて超音波を放射する方向をZ方向、これと直交する2つの方向をそれぞれX方向、Y方向としている。
図8に示した第1の音響マッチング層2aは、導電性部材20と、複数のここでは2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21とがX方向に順次に配置された連結構造をしており、この導電性部材20は少なくともZ方向につながりがある構造体になっている。図8の構成は、2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21の幅(体積)に対して、導電性部材20の幅(体積)は極めて狭くなった構成にしている。
この構成は2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21の体積比率(図面ではX方向の幅)を変えることにより第1の音響マッチング層2aの音響インピーダンスを任意に設定することを可能にし、導電性部材20は前記2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21の体積比率に比べて極めて小さい値つまり、図8のX方向の幅が極めて狭くして音響インピーダンスの可変にはほとんど寄与しないような構成にする。例えば2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21としてシリコン単結晶とエポキシ樹脂を用いてX方向の幅をそれぞれ0.1mmに、また導電性部材20としてシリコン単結晶又はエポキシ樹脂の側面に銅、銀、金などをメッキあるいはスパッタリングなどの方法により形成しての幅を0.002mmにすると、これら合計の幅に対して導電性部材20の幅の割合は約1%となり、音響インピーダンスの可変の寄与度は極めて小さくなる。したがって、前記導電性部材20としての機能は圧電素子1の電極面から電気的な接続が主となる。このような構成にすると作成が容易にしかも精度よくでき、しかも導電性部材に金属を使用する場合には、超音波探触子を作成するときの加工が困難になるという短所も解消できる。
当然のことながら導電性部材20の幅が広くなったとしても2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21と含めて3種類の部材の幅の割合を変えることで体積比率を選択することにより音響インピーダンスは任意に選択できるので導電性部材の幅を限定するものではない。
図2Aのように音響マッチング層2aの導電性部材20は圧電素子1の一方の電極と電気的な接続がされ、もう一方の導電性部材20の面には、接地用電気端子9の金属膜9bが接触して電気的に接続される構成となっており、接地用電気端子9から信号の取り入れ、取り出しをする。
以上のように、圧電素子の被検体側に設けられる音響マッチング層として、導電性部材と複数の絶縁性部材又は半導電性部材との複合材料を設けることにより、音響マッチング層を所望の音響インピーダンスを任意に可変させることが可能になり、これによって周波数の広帯域化ができるため、高分解能の診断画像を得ることができる。また、複合材料の音響マッチング層の導電性部材を介して、圧電素子の複数箇所に電気端子を接続することができるため、信頼性が高くかつ操作性の良好な超音波探触子を得ることができる。
また、第8の実施の形態では、図8に示すように導電性部材20及び複数の絶縁性部材又は半導電性部材21がほぼ等間隔で、これらを交互に配列した場合について説明したが、このほかランダムの間隔若しくはランダムに配列した場合においても同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態では、圧電素子1の接地電極5と電気信号を授受するために、音響マッチング層2aを介して、その前面に接地用電気端子9を設ける構成について説明したが、この代わりに、音響マッチング層2aのZ方向の両面又は片面に導電性部材をスパッタリング、めっきあるいは印刷などにより形成し、その部分に接地用電気端子9を接続する構成にしても同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態においては、音響マッチング層2aとして、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、複数の導電性部材20と絶縁性部材又は半導電性部材21の連結構造若しくはそれ以外に複数種類の連結構造で形成されていたとしても同様の効果が得られることは明らかである。
また、第8の実施の形態では、図8に示す導電性部材20と複数の絶縁性部材又は半導電性部材21とが、Z方向に対して均一な幅で形成される場合について説明したが、第6の実施の形態で示したように絶縁性部材又は半導電性部材21がZ方向に対して幅が連続的に変化するいわゆる楔のような形状にして、Z方向の厚みに対して音響インピーダンスが連続的に変化するような構成にし、導電部材はその傾斜の側面に形成しても、あるいは、第7の実施の形態で示したように絶縁性部材又は半導電性部材21の幅を段階的に変えて音響インピーダンスが変化する構成にしてその側面に導電性部材20を設けた構成にしても同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態においては、2層の音響マッチング層の第1の音響マッチング層2aとして、それぞれ1つの材種で形成された導電性部材20と2種類の絶縁性部材又は半導電性部材21との連結構造のものを用いたが、このほか3層以上の音響マッチング層として設けた場合においてそれぞれの層に設けたとしても同様の効果が得られる。
本発明に係る超音波探触子は、圧電素子の一方の電極形成面に積層される音響マッチング層の音響インピーダンスを所望の値にすることが可能になるため、周波数の広帯域化ができることによって、高分解能の診断画像を得ることができ、また、音響マッチング層を介して、圧電素子の一方の電極形成面の複数箇所に電気端子を接続することが可能になるため、信頼性が高められて、人体などの被検体の超音波診断を行う各種医療分野に好適で、さらには材料や構造物の内部探傷を目的とした工業分野において利用が可能である。
本発明に係る超音波探触子の第1の実施の形態の構成を示す断面図
図1Aに示す超音波探触子を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図
本発明に係る超音波探触子の第2の実施の形態の構成を示す断面図
図2Aに示す超音波探触子を構成する第1の音響マッチング層の構成例を示す斜視図
図2Bに示す第1の音響マッチング層の絶縁性部材又は導電性部材の体積比率と音響インピーダンスとの関係を示した線図
図2Aに示す超音波探触子を構成する第1の音響マッチング層の構成例を示す斜視図
図2Aに示す超音波探触子を構成する第1の音響マッチング層の構成例を示す斜視図
本発明に係る超音波探触子の第3の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図
図3Aに示した超音波探触子の断面図
図3A及び図3Bに示した超音波探触子を構成する要素の具体的な構成例を示す斜視図
図3A及び図3Bに示した超音波探触子を構成する要素の具体的な構成例を示す斜視図
本発明に係る超音波探触子の第4の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図
図4Aに示した超音波探触子の断面図
本発明に係る超音波探触子の第5の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した斜視図
図5Aに示した超音波探触子の断面図
本発明に係る超音波探触子の第6の実施の形態の構成を、その一部を破断して示した断面図
図6Aに示す超音波探触子を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図
本発明に係る超音波探触子の第7の実施の形態を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図
本発明に係る超音波探触子の第7の実施の形態を構成する音響マッチング層の他の構成例を示す断面図
本発明に係る超音波探触子の第8の実施の形態を構成する音響マッチング層の構成例を示す断面図
従来の超音波探触子の構成例を示した断面図