JP3964508B2 - 超音波探触子及び超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波を利用して被検体内の診断部位について超音波画像を得る超音波診断技術において、使用周波数帯域を広くして超音波診断の効率を向上することができる超音波探触子及びその超音波探触子を用いた超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の超音波探触子は、超音波を打ち出すと共にその反射波を受信する振動子と、この振動子の電極に接続されたケーブルと、上記振動子の前面側に被覆され被検体の生体組織との間の音響インピーダンスのマッチングをとる音響整合層とを備えて成っていた。そして、上記音響整合層は、例えば1層又は2層のシート状に形成されており、上記振動子から発生される超音波の特定の周波数に対して効率的に超音波を診断部位に送受波できるように、音響インピーダンスのマッチングの条件が決められていた。
【0003】
具体的には、2層のシート状音響整合層として、振動子の中心周波数が2.5MHzで音響インピーダンスが28MRaylの場合、第一音響整合層としては音響インピーダンスが8MRayl程度で膜厚を上記中心周波数に対して1/4波長の厚さに形成し、第二音響整合層としては音響インピーダンスが2MRayl程度で膜厚を同様に1/4波長の厚さに形成することが、“ TRANSACTION ON SONICS AND ULTRASONICS ”VOL.SU−13,NO.1(MARCH,1966)の第20〜30頁に掲載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の超音波探触子においては、音響整合層が振動子の中心周波数に対して1/4波長の厚さで1層又は2層のシート状に形成されていたので、特定の周波数に対してのみ効率的に超音波が送受波されるように音響整合層の条件が決められていた。したがって、従来の超音波探触子は、図19に示すように、使用周波数帯域に対して信号強度分布が狭いものであった。このことから、超音波の効率的に通過できる周波数帯域が限られ、中心周波数から外れた周波数帯域では殆ど通過できないため、超音波探触子としての使用可能な周波数が制限されていた。よって、同一の超音波診断装置で患者の病理診断等を行う場合に、広い視野の断層像を観察する場合には低周波数用の超音波探触子を用い、また分解能の良い断層像を観察する場合には高周波数用の超音波探触子を用い、さらにドップラ計測による血流像を観察する場合には別の周波数の超音波探触子を用いるというように、それぞれの超音波探触子を付け換えて使用しなければならなかった。したがって、超音波診断の効率が悪いと共に、それらの超音波探触子を多種、多数用意しておかなければならなかった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、使用周波数帯域を広くして超音波診断の効率を向上することができる超音波探触子及びその超音波探触子を用いた超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による超音波探触子は、超音波を打ち出すと共にその反射波を受信する振動子と、この振動子の電極に接続されたケーブルと、上記振動子の前面側に被覆され被検体の生体組織との間の音響インピーダンスのマッチングをとる音響整合層と、この音響整合層の前面側に設けられ上記振動子から前面側に打ち出される超音波ビームを集束させる音響レンズとを有して成る超音波探触子において、上記音響整合層は、音響インピーダンスが上記振動子のそれと同等か或いはそれよりも低い第一の音響整合材を用いて振動子側の断面積が大きく形成されると共に被検体側の断面積が小さく形成され且つ振動子側から被検体側に向う一断面が指数関数状又は三角関数状に形成された多数の先細柱状体を、超音波の波長よりも短い間隔でマトリクス状に配列し、これら多数の先細柱状体間の隙間に音響インピーダンスが被検体の生体組織のそれと同等か或いはそれよりも高い第二の音響整合材を充満させて固化して所定の厚さの平板状に仕上げ、音響インピーダンスが厚さ方向に連続的に変化する構造に形成したものである。
【0008】
さらに、上記第一の音響整合材は、金属、半導体、セラミックス或いは樹脂に、金属又は酸化物を混入した複合材であって音響インピーダンスの値が10〜30MRaylのものであり、第二の音響整合材は、各種の樹脂、又は樹脂中に金属或いは酸化物を混入した複合材であって音響インピーダンスの値が1.5〜3MRaylのものである。
【0009】
さらにまた、上記第一の音響整合材で形成された多数の先細柱状体は、円錐状或いは角錐状又は母線が指数関数若しくは三角関数で表される錐状に形成されたもの、又は断面が鋸歯状或いは指数関数状若しくは三角関数状に形成された多数の板状のものを超音波の波長よりも短い間隔で切断して形成されたものである。
【0012】
上記超音波探触子の関連発明としての超音波診断装置は、超音波を打ち出すと共にその反射波を受信する振動子と、この振動子の電極に接続されたケーブルと、上記振動子の前面側に被覆され被検体の生体組織との間の音響インピーダンスのマッチングをとる音響整合層と、この音響整合層の前面側に設けられ上記振動子から前面側に打ち出される超音波ビームを集束させる音響レンズとを有して成る超音波探触子と、この超音波探触子内の振動子を駆動して超音波を発生させると共に反射波を受波する超音波送受波部と、この超音波送受波部からの受波信号を入力して画像化処理を行う画像構成部と、この画像構成部からのデータを一時的に記憶すると共に任意の表示が可能なように変換を行う画像メモリ部と、この画像メモリ部からの画像データを取り込んで画像表示を行う画像表示部と、特定の周波数帯域で上記超音波探触子から超音波を送受波させる周波数選択器と、を有する超音波診断装置において、上記超音波探触子として請求項1記載の超音波探触子を用いたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による超音波探触子の実施の形態を示す分解斜視図である。この超音波探触子は、超音波を利用して被検体内の診断部位について超音波画像を得る超音波診断技術において上記診断部位に向けて実際に超音波を送受信するもので、図1に示すように、振動子1と、ケーブル2a,2bと、音響整合層3とを有して成る。
【0014】
上記振動子1は、超音波を打ち出すと共にその反射波を受信するもので、電気エネルギーと超音波エネルギーとの変換を行うPZT(ジルコンチタン酸鉛系磁器)等の圧電材料から成る。この振動子1は、短冊状に形成された多数の振動子素子を1列状に配列したもので、各振動子素子の上下両面には該振動子素子を駆動するための電極4a,4bが設けられている。
【0015】
上記振動子1の電極4a,4bには、ケーブル2a,2bが接続されている。このケーブル2a,2bは、図示外の超音波送受信部から送波信号を供給すると共に、受信した反射エコー信号を取り込むもので、ケーブル2aがグランド線に対応し、ケーブル2bが信号線に対応している。なお、上記信号線側のケーブル2bには、上記振動子1の各振動子素子に接続される導線5,5,…が設けられている。
【0016】
上記振動子1の前面側には、音響整合層3が被覆されている。この音響整合層3は、振動子1と被検体の生体組織との間の音響インピーダンスのマッチングをとるもので、被検体の生体組織の音響インピーダンスに対して振動子1の音響インピーダンスが桁外れに大きいことから、両者の中間的な値の音響インピーダンスとされると共に、その厚さが超音波の波長の1/4になるように形成されている。
【0017】
なお、上記振動子1の裏面側には、音響減衰層6が設けられている。この音響減衰層6は、上記振動子1の裏面側から打ち出される超音波が再び該振動子1に戻ってこないようにするもので、超音波の減衰の大きい材料を使用して超音波を減衰させ振動子1の前面側への音響的影響をなくすようになっている。また、上記音響整合層3の前面側には、音響レンズ7が設けられている。この音響レンズ7は、上記振動子1から前面側に打ち出される超音波ビームを集束させるものである。
【0018】
ここで、本発明においては、上記音響整合層3は、その音響インピーダンスが上記振動子1側から被検体側(音響レンズ7側)に向けて厚さ方向に連続的に変化する構造に形成されている。すなわち、図1に示すように、上記音響整合層3の構造は、音響インピーダンスが振動子1のそれと同等か或いはそれよりも低い第一の音響整合材と、音響インピーダンスが被検体の生体組織のそれと同等か或いはそれよりも高い第二の音響整合材とを用い、上記第一の音響整合材で振動子1側の断面積が大きく且つ被検体側の断面積が小さく形成された多数の先細柱状体8,8,…を超音波の波長よりも短い間隔でマトリクス状に配列し、このマトリクス状に配列された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を第二の音響整合材9で充満させたものとされている。
【0019】
そして、上記先細柱状体8,8,…を形成する第一の音響整合材は、金属、半導体、セラミックス或いは樹脂に、金属又は酸化物を混入した複合材であって音響インピーダンスの値が10〜30MRaylのものであり、第二の音響整合材9は、各種の樹脂、又は樹脂中に金属或いは酸化物を混入した複合材であって音響インピーダンスの値が1.5〜3MRaylのものとされている。これは、上記振動子1の音響インピーダンスは20〜30MRaylと考えられ、被検体の生体組織の音響インピーダンスが1.5MRayl程度と考えられるから、それらに近づけようとするためである。
【0020】
上記材料の具体例を挙げると、第一の音響整合材としては、アルミニウム(17MRayl),錫(24MRayl),鉛(22MRayl),マグネシウム(10MRayl),シリコン(20MRayl),ガラス(13MRayl),水晶(15MRayl),複合材でエポキシ樹脂にタングステンを混入したもの(10MRayl)等がある。また、第二の音響整合材9としては、エポキシ,ポリウレタン,ポリスチレン,ポリエチレン,ポリ塩化ビフェニールなどのプラスチック類やゴム類がある。
【0021】
図2は上記音響整合層3の構造の第一の具体例を示す説明図である。この例は、第一の音響整合材で形成された多数の先細柱状体8,8,…を円錐状に形成し、これを超音波の波長よりも短い間隔で図2(a)に示すようにマトリクス状に配列し、このマトリクス状に配列された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を第二の音響整合材9で充満させたものである。図2(b)に示すように、多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を第二の音響整合材9で充満させることにより、音響整合層3の音響インピーダンスを、図1に示す振動子1側から被検体側(音響レンズ7側)に向けて厚さ方向に連続的に変化させることができる。
【0022】
図3は上記音響整合層3の構造の第二の具体例を示す説明図である。この例は、第一の音響整合材で形成された多数の先細柱状体8,8,…を角錐状に形成し、これを超音波の波長よりも短い間隔で図3(a)に示すようにマトリクス状に配列し、このマトリクス状に配列された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を第二の音響整合材9で充満させたものである。他は、図2と同様である。
【0023】
図4は上記音響整合層3の構造の第三の具体例を示す説明図である。この例は、第一の音響整合材で形成された多数の先細柱状体8,8,…を母線が指数関数で表される錐状に形成し、これを超音波の波長よりも短い間隔で図4(a)に示すようにマトリクス状に配列し、このマトリクス状に配列された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を第二の音響整合材9で充満させたものである。他は、図2と同様である。
【0024】
図5は上記音響整合層3の構造の第四の具体例を示す説明図である。この例は、第一の音響整合材で形成された多数の先細柱状体8,8,…を母線が三角関数で表される錐状に形成し、これを超音波の波長よりも短い間隔で図5(a)に示すようにマトリクス状に配列し、このマトリクス状に配列された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を第二の音響整合材9で充満させたものである。他は、図2と同様である。
【0025】
図6は上記音響整合層3の構造の第五の具体例を示す説明図である。この例は、第一の音響整合材で形成された多数の先細柱状体8,8,…を、図6(a)に示すように断面が鋸歯状に形成された多数の板状の部材10,10,…を図6(b)に示すように超音波の波長よりも短い間隔で切断して溝11,11,…を入れマトリクス状に配列し、このマトリクス状に配列された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を第二の音響整合材9で充満させたものである。他は、図2と同様である。
【0026】
図7は上記音響整合層3の構造の第六の具体例を示す説明図である。この例は、第一の音響整合材で形成された多数の先細柱状体8,8,…を、図7(a)に示すように断面が指数関数状に形成された多数の板状の部材12,12,…を図7(b)に示すように超音波の波長よりも短い間隔で切断して溝11,11,…を入れマトリクス状に配列し、このマトリクス状に配列された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を第二の音響整合材9で充満させたものである。他は、図2と同様である。
【0027】
図8は上記音響整合層3の構造の第七の具体例を示す説明図である。この例は、第一の音響整合材で形成された多数の先細柱状体8,8,…を、図8(a)に示すように断面が三角関数状に形成された多数の板状の部材13,13,…を図8(b)に示すように超音波の波長よりも短い間隔で切断して溝11,11,…を入れマトリクス状に配列し、このマトリクス状に配列された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を第二の音響整合材9で充満させたものである。他は、図2と同様である。
【0028】
なお、図2に示す例では、円錐状の先細柱状体8,8,…をその底部において隙間なく隣接して配列したものとしたが、本発明はこれに限らず、図9(a)に示すように、上記円錐状の先細柱状体8,8,…の底部を適宜の間隔だけ離して配列してもよい。また、図9(b)に示すように、円錐状の先細柱状体8の先端部を適宜の長さだけ切り取って断面が台形状の先細柱状体8′を形成し、この多数の先細柱状体8′,8′,…を図2(b)に示すと同様に隣接して配列してもよい。さらに、図9(c)に示すように、上記多数の先細柱状体8′,8′,…の底部を適宜の間隔だけ離して配列してもよい。これらの変形例により、音響整合層3の音響インピーダンスを、厚さ方向に連続的に変化させる状態を各種調整することができる。なお、これらの変形例は、図2に示す例に限らず、図3〜図8に示す各種の音響整合層3についても同様のことが言える。
【0029】
以上の図2〜図8に示す各種の音響整合層3によれば、その音響インピーダンスを、図1に示す振動子1側から被検体側(音響レンズ7側)に向けて厚さ方向に連続的に変化させることができる。また、その音響インピーダンスは、振動子1の値から被検体の生体組織の値まで連続的に変化させることができ、音響インピーダンスのミスマッチによる超音波の反射を少なくすることができる。したがって、図18に示すように、使用周波数帯域に対して信号強度分布を広くすることができる。このことから、超音波の効率的に通過できる周波数帯域が拡がり、中心周波数から離れた周波数帯域でも通過することができ、超音波探触子としての使用可能な周波数を拡大することができる。
【0030】
次に、上記のように構成された超音波探触子の製造方法について、図10及び図11を参照して説明する。まず、第一の音響整合材で多数の先細柱状体8,8,…を作製する(図10のステップS1)。上記第一の音響整合材は、前述のように音響インピーダンスが振動子1のそれと同等か或いはそれよりも低い材料から成る。そして、上記先細柱状体8は、図11(a)に示すように、図1に示す振動子1側の断面積が大きく且つ被検体側(音響レンズ7側)の断面積が小さく形成されると共に、超音波の波長よりも短い間隔でマトリクス状に多数配列されている。図11(a)においては、上記多数の先細柱状体8,8,…は、図4に示すと同様に母線が指数関数で表される錐状に形成されている。なお、この先細柱状体8,8,…の作製は、どのような方法によってもよく、例えばベース部材14の上面を機械加工により研削してもよい。
【0031】
次に、上記第一の音響整合材で作製された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間に第二の音響整合材9を充満させて固化する(ステップS2)。上記第二の音響整合材9は、音響インピーダンスが被検体の生体組織のそれと同等か或いはそれよりも高い材料から成る。これにより、図11(b)に示すように、第一の音響整合材で作製された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間が総て第二の音響整合材9で埋められる。
【0032】
次に、上記第一の音響整合材で作製された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を総て第二の音響整合材9で埋めたものを、所定の厚さに仕上げて音響整合層3を完成させる(ステップS3)。これにより、図11(c)に示すように、例えば図11(a)に示すベース部材14の下面を削るなどして所定の厚さに仕上げ、第一の音響整合材(8)と第二の音響整合材9との複合材から成る音響整合層3が出来上がる。
【0033】
その後、上記音響整合層3を振動子1の前面側に被覆して固定する(ステップS4)。すなわち、図1において、振動子1側に多数の先細柱状体8,8,…の底部を向けると共にその先端部を音響レンズ7側に向けて、音響整合層3を振動子1の前面側に被覆し、接着剤などを用いて接着固定する。これにより、超音波探触子の基本的な部分が製造される。
【0034】
次に、同じく超音波探触子の製造方法の他の例について、図12及び図13を参照して説明する。まず、図13(c)に示すように、振動子側の断面積が大きく且つ被検体側の断面積が小さく形成されると共に超音波の波長よりも短い間隔でマトリクス状に配列される多数の先細柱状体8,8,…を作製するための型を作製する(図12のステップA)。
【0035】
この型の作製の具体例として、放電加工を用いる方法について説明する。図13(a)に示すように、放電加工油15を注ぎ込んだ放電加工槽16内に型材17を配置し、この型材17の上面に略垂直に放電軸18を位置させ、上記型材17と放電軸18との間に放電加工油15を介して電源19から電圧を印加し、上記放電軸18に倣った所定形状の穴20を順次加工する。このとき、上記型材17を矢印Pの方向に順次移動させる。このように型材17を順次移動して、所定数の穴20,20,…がマトリクス状に明けられたら穴加工を終了する。そして、この穴加工終了後の型材17を放電加工槽16から取り出すことにより、図13(b)に示すように先細柱状体8,8,…を作製するための型21が作製される。
【0036】
次に、上記のように作製された型21に音響インピーダンスが振動子のそれと同等か或いはそれよりも低い第一の音響整合材を流し込んでマトリクス状に配列された多数の先細柱状体8,8,…を作製する(ステップB)。このとき、図13(b)に示すように、上記の型21の穴20,20,…に第一の音響整合材の材料22を流し込んで固化させ、その後上記の型21から引き抜くことにより、図13(c)に示すように多数の先細柱状体8,8,…が作製される。
【0037】
次に、上記第一の音響整合材で作製された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間に音響インピーダンスが被検体の生体組織のそれと同等か或いはそれよりも高い第二の音響整合材9を充満させて固化する(ステップC)。これにより、図13(d)に示すように、第一の音響整合材で作製された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間が総て第二の音響整合材9で埋められる。
【0038】
次に、上記第一の音響整合材で作製された多数の先細柱状体8,8,…間の隙間を総て第二の音響整合材9で埋めたものを、所定の厚さに仕上げて音響整合層3を完成させる(ステップD)。これにより、図13(e)に示すように、例えば図13(c)に示すベース部材14の下面を削るなどして所定の厚さに仕上げ、第一の音響整合材(8)と第二の音響整合材9との複合材から成る音響整合層3が出来上がる。
【0039】
その後、上記音響整合層3を振動子1の前面側に被覆して固定する(ステップE)。すなわち、図1において、振動子1側に多数の先細柱状体8,8,…の底部を向けると共にその先端部を音響レンズ7側に向けて、音響整合層3を振動子1の前面側に被覆し、接着剤などを用いて接着固定する。これにより、超音波探触子の基本的な部分が製造される。
【0040】
図14は、図12のステップA,Bの具体例の他の例を示す説明図である。この例は、光造形法を用いて多数の先細柱状体を作製するための型を作製するものである。すなわち、図14(a)に示すように、光硬化性レジン23を注ぎ込んだレジン槽24の内部に上下テーブル25を配置し、この上下テーブル25の上面に型材26をセットする。この状態で、上記型材26の上面に略垂直にレーザ発振器27を位置させ、対物レンズで集光しながら例えば紫外レーザ28を発振し、上記レーザ発振器27を所定の経路29で水平方向に走査して1層ごとに形状を作りながら上記上下テーブル25を順次上げて行く。これにより、多数の先細柱状体を作製するためのマスタ30が作製される。
【0041】
次に、図14(b)に示すように、上記作製されたマスタ30を流し込み容器31内に入れ、後に使用する鋳込み口32が確保できるように保持した状態で上記流し込み容器31内に耐熱材料33を流し込み、この耐熱材料33を固化させる。そして、上記耐熱材料33が固化したところで、内部に封じ込められたマスタ30を溶かすことによって、多数の先細柱状体を作製するための型が作製される。
【0042】
その後、図14(c)に示すように、上記のように作製された型34を流し込み容器31内から取り出し、この型34に形成された鋳込み口32から第一の音響整合材の材料35を流し込む。そして、この材料35が内部で固化することにより、図13(c)と同様に多数の先細柱状体8,8,…が作製される。
【0043】
図15は、図12のステップA,Bの具体例のさらに他の例を示す説明図である。この例は、光又はX線リソグラフィを用いて多数の先細柱状体を作製するための型を作製するものである。すなわち、図15(a)に示すように、光源又はX線源36からの光又はX線をマスク37のパターン38を介してレジスト39に露光し、パターニングを行う。次に、図15(b)に示すように、上記露光後のレジスト39を現像して、パターン38以外のレジスト39を除去する。
【0044】
次に、図15(c)に示すように、残留したレジスト39′が固定されている導電性基板40をベースにメッキで金属41を析出させる。そして、図15(d)に示すように、上記残留したレジスト39′を除去することにより、多数の先細柱状体を作製するための型42が作製される。その後、図15(e)に示すように、上記のように作製された型42に第一の音響整合材の材料43を流し込んで固化させ、上記の型42から引き抜くことにより、図13(c)と同様に多数の先細柱状体8,8,…が作製される。
【0045】
図16は、図12のステップA,Bの具体例のさらに他の例を示す説明図である。この例も上記と同様に、光又はX線リソグラフィを用いて多数の先細柱状体を作製するための型を作製するものである。すなわち、図16(a)に示すように、光源又はX線源36からの光又はX線をマスク37のパターン38を介してレジスト39に露光し、パターニングを行う。次に、図16(b)に示すように、上記露光後のレジスト39を現像してパターン38を形成する。次に、図16(c)に示すように、残留したレジスト39をさらにマスクにして、基板44上の酸化膜45をエッチングにより除去する。
【0046】
そして、図16(d)に示すように、上記の基板44として例えばシリコン単結晶などを用いることにより、アルカリ水溶液による異方性エッチングが可能であり、例えば角錐状の穴46を形成して多数の先細柱状体を作製するための型47が作製される。その後、図16(e)に示すように、上記のように作製された型47に第一の音響整合材の材料43を流し込んで固化させ、上記の型47から引き抜くことにより、図13(c)と同様に多数の先細柱状体8,8,…が作製される。
【0047】
図17は前述のように構成された本発明の超音波探触子を用いた超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。すなわち、この超音波診断装置は、図17に示すように、被検体内へ超音波を送受波する超音波探触子50と、この超音波探触子50内の振動子を駆動して超音波を発生させると共に反射波を受波する超音波送受波部51と、この超音波送受波部51からの受波信号を入力して画像化処理を行う画像構成部52と、この画像構成部52からのデータを一時的に記憶すると共に任意の表示が可能なように変換を行う画像メモリ部53と、この画像メモリ部53からの画像データを取り込んで画像表示を行う画像表示部54と、上記各構成要素を制御する制御部55とを有して成る超音波診断装置において、上記超音波探触子50として図1〜図9のいずれかに記載の超音波探触子を用いると共に、上記制御部55へ各種の操作指令を入力するための操作部56の内部に特定の周波数帯域で超音波を送受波させる周波数選択器57を設けたものである。
【0048】
このように構成された超音波診断装置によれば、上記超音波探触子50として図1〜図9のいずれかに記載の超音波探触子を用いたことにより、図18に示すように使用周波数帯域に対して信号強度分布を広くすることができる。このことから、超音波の効率的に通過できる周波数帯域が拡がり、中心周波数から離れた周波数帯域でも通過することができ、超音波診断装置としての使用可能な周波数を拡大することができる。また、操作部56の内部に周波数選択器57を設けたことにより、この周波数選択器57を操作して上記超音波探触子50をどの周波数帯域で使用するかを指定することができる。このことから、従来は使用する周波数帯域の違いにより超音波探触子をいちいち付け換えていたのを、一つの超音波探触子50で広い周波数範囲についてそのまま使用することができる。したがって、超音波診断の効率を向上することができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、請求項1に係る超音波探触子によれば、超音波を打ち出すと共にその反射波を受信する振動子の前面側に被覆され被検体の生体組織との間の音響インピーダンスのマッチングをとる音響整合層を、音響インピーダンスが上記振動子のそれと同等か或いはそれよりも低い第一の音響整合材を用いて振動子側の断面積が大きく形成されると共に被検体側の断面積が小さく形成され且つ振動子側から被検体側に向う一断面が指数関数状又は三角関数状に形成された多数の先細柱状体を、超音波の波長よりも短い間隔でマトリクス状に配列し、これら多数の先細柱状体間の隙間に音響インピーダンスが被検体の生体組織のそれと同等か或いはそれよりも高い第二の音響整合材を充満させて固化して所定の厚さの平板状に仕上げ、音響インピーダンスが厚さ方向に連続的に変化する構造に形成したことにより、従来においては特定の周波数に対してのみ効率的に超音波が送受波されるように音響整合層の条件が決められていたのを、ある拡がりを有する周波数帯域に対して効率的に超音波が送受波でき、使用周波数帯域を広くすることができる。したがって、従来は専用に使用していた低周波数用、高周波数用、ドップラ用などの複数の超音波探触子の機能を1本で実現できるため、超音波探触子の付け換えを要さず、超音波診断の効率を向上することができる。また、それらの超音波探触子を多種、多数用意することなく、取り扱いを容易とすることができる。
【0051】
また、請求項2に係る超音波診断装置によれば、その超音波探触子として請求項1記載の超音波探触子を用いたことにより、従来においては特定の周波数に対してのみ効率的に超音波が送受波されるように超音波探触子の音響整合層の条件が決められていたのを、ある拡がりを有する周波数帯域に対して効率的に超音波が送受波でき、使用周波数帯域を広くすることができる。例えば、図18に示すように使用周波数帯域に対して信号強度分布を広くすることができる。このことから、超音波の効率的に通過できる周波数帯域が拡がり、中心周波数から離れた周波数帯域でも通過することができ、超音波診断装置としての使用可能な周波数を拡大することができる。このことから、従来は使用する周波数帯域の違いにより超音波探触子をいちいち付け換えていたのを、一つの超音波探触子で広い周波数範囲についてそのまま使用することができる。したがって、超音波診断の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による超音波探触子の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】音響整合層の構造の第一の具体例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図3】音響整合層の構造の第二の具体例を示す説明図である。
【図4】音響整合層の構造の第三の具体例を示す説明図である。
【図5】音響整合層の構造の第四の具体例を示す説明図である。
【図6】音響整合層の構造の第五の具体例を示す説明図である。
【図7】音響整合層の構造の第六の具体例を示す説明図である。
【図8】音響整合層の構造の第七の具体例を示す説明図である。
【図9】上記音響整合層の先細柱状体の配列の変形例を示す説明図である。
【図10】 上記超音波探触子の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】図10の手順を説明するための工程説明図である。
【図12】上記超音波探触子の製造方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図13】図12の手順を説明するための工程説明図である。
【図14】図12のステップA,Bの具体例の他の例を示す説明図である。
【図15】図12のステップA,Bの具体例のさらに他の例を示す説明図である。
【図16】図12のステップA,Bの具体例のさらに他の例を示す説明図である。
【図17】前述のように構成された本発明の超音波探触子を用いた超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図18】本発明による超音波探触子の周波数−信号強度の分布特性を示すグラフである。
【図19】従来の超音波探触子の周波数−信号強度の分布特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1…振動子
2a,2b…ケーブル
3…音響整合層
4a,4b…電極
6…音響減衰層
7…音響レンズ
8…先細柱状体
9…第二の音響整合材
50…超音波探触子
51…超音波送受信部
52…画像構成部
53…画像メモリ部
54…画像表示部
55…制御部
56…操作部
Claims (2)
- 超音波を打ち出すと共にその反射波を受信する振動子と、この振動子の電極に接続されたケーブルと、上記振動子の前面側に被覆され被検体の生体組織との間の音響インピーダンスのマッチングをとる音響整合層と、この音響整合層の前面側に設けられ上記振動子から前面側に打ち出される超音波ビームを集束させる音響レンズとを有して成る超音波探触子において、
上記音響整合層は、音響インピーダンスが上記振動子のそれと同等か或いはそれよりも低い第一の音響整合材を用いて振動子側の断面積が大きく形成されると共に被検体側の断面積が小さく形成され且つ振動子側から被検体側に向う一断面が指数関数状又は三角関数状に形成された多数の先細柱状体を、超音波の波長よりも短い間隔でマトリクス状に配列し、これら多数の先細柱状体間の隙間に音響インピーダンスが被検体の生体組織のそれと同等か或いはそれよりも高い第二の音響整合材を充満させて固化して所定の厚さの平板状に仕上げ、音響インピーダンスが厚さ方向に連続的に変化する構造に形成したことを特徴とする超音波探触子。 - 超音波を打ち出すと共にその反射波を受信する振動子と、この振動子の電極に接続されたケーブルと、上記振動子の前面側に被覆され被検体の生体組織との間の音響インピーダンスのマッチングをとる音響整合層と、この音響整合層の前面側に設けられ上記振動子から前面側に打ち出される超音波ビームを集束させる音響レンズとを有して成る超音波探触子と、
この超音波探触子内の振動子を駆動して超音波を発生させると共に反射波を受波する超音波送受波部と、
この超音波送受波部からの受波信号を入力して画像化処理を行う画像構成部と、
この画像構成部からのデータを一時的に記憶すると共に任意の表示が可能なように変換を行う画像メモリ部と、
この画像メモリ部からの画像データを取り込んで画像表示を行う画像表示部と、
特定の周波数帯域で上記超音波探触子から超音波を送受波させる周波数選択器と、
を有する超音波診断装置において、
上記超音波探触子として請求項1記載の超音波探触子を用いたことを特徴とする超音波診断装置。
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