本発明は、重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法に関する。
近年の世界的な石油事情として製品の軽質化傾向がある。ガソリン、灯油及び軽油等のいわゆる軽質油(軽質炭化水素油)は、石油の常圧蒸留や減圧蒸留等の蒸留によって得られる他、いわゆる重質油(重質炭化水素油)を分解することによっても得られる。この重質油から軽質油を得る方法は、触媒を用いて重質油を分解する接触分解法、水素気流中で触媒を用いて水素を添加しながら重質油を分解する水素化分解法、及び、触媒を用いることなく重質油を熱分解する熱分解法等がある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
ところで、上記接触分解法や水素化分解法では、触媒が必要である上、重質油の接触分解に伴って触媒が不活性となるため、触媒の再生処理が必要である。さらに、水素化分解法では、温度500℃以上及び圧力30〜100気圧の厳しい生成条件が必要である。一方、熱分解法でも温度400℃〜500℃及び圧力2〜30気圧の厳しい生成条件が必要である。
特開平07−011259号公報
特開平09−183983号公報
本発明は、上記事情に鑑みて為された発明であり、触媒を用いることなく即ち触媒の再生処理を必要とすることなく、背景技術よりも緩やかな生成条件で水素を添加しながら重質な原料油を分解することによって原料油よりも軽質な生成油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る、重質な原料油からより軽質な生成油を生成する重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法は、アルカリイオン水を原料油中に乳化することによって乳濁液を生成し、加熱した熱媒体の表面へこの乳濁液の液滴を滴下するものである。
このような重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法では、背景技術よりも緩やかな生成条件で重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
実施形態に係る重質油軽質化装置の構成を示す図である。
実施形態に係る重質油軽質化装置における加熱部の他の構成を示す図である。
実施形態に係る重質油軽質化装置における生成槽部及び加熱部の他の構成を示す図である。
本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける生成温度の時間経過を示す図である。
本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける燃料使用量の時間経過を示す図である。
本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける生成油量の時間経過を示す図である。
本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、実施形態に係る重質油軽質化装置の構成を示す図である。概略図である図1に示すように、重質油軽質化装置1Aは、アルカリイオン水Aを原料油O1中に乳化することによって乳濁液Eを生成し、加熱した熱媒体O2の表面Sへこの乳濁液Eの液滴Dを滴下することによって、重質な原料油O1からより軽質な生成油O3を生成する装置である。重質油軽質化装置1Aは、例えば、乳濁液生成部10と、生成槽部20と、加熱部30と、生成油処理部40とを備えて構成される。
乳濁液生成部10は、アルカリイオン水Aを重質な原料油O1中に乳化することによって乳濁液(エマルジョン)Eを生成する装置である。乳濁液生成部10は、生成した乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面Sへ滴下されるように、生成槽部20に連通されている。乳濁液Eは、アルカリイオン水Aの微細粒子が原料油O1中に分散する油中水滴型である。
このような乳濁液生成部10は、例えば、水槽11と、原料油槽12と、配管13、14と、ポンプ15、16と、撹拌機(ミキサ)17とを備えて構成される。水槽11は、アルカリイオン水Aを貯留する容器である。水槽11は、水槽11から撹拌機17へアルカリイオン水Aを流出することができるように、配管13によって撹拌機17と接続されている。配管13には、ポンプ15が配設されており、ポンプ15は、流量を調整しながらアルカリイオン水Aを水槽11から撹拌機17へ流出する。原料油槽12は、原料油O1を貯留する容器である。原料油槽12は、原料油槽12から撹拌機17へ原料油O1を流出することができるように、配管14によって撹拌機17と接続されている。配管14には、ポンプ16が配設されており、ポンプ16は、流量を調整しながら原料油O1を原料油槽12から撹拌機17へ流出する。撹拌機17は、流入されたアルカリイオン水Aと原料油O1とを撹拌する装置である。この撹拌によってアルカリイオン水Aが原料油O1中に乳化され、油中水滴型の乳濁液Eが撹拌機17内に生成される。撹拌機17は、乳濁液Eの液滴Dを形成して生成槽部20へ滴下する滴下口部171を備えている。
生成槽部20は、熱媒体O2を貯留すると共に、乳濁液生成部10で生成された乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面Sへ滴下されるように乳濁液Eの液滴Dが導入される容器である。後述するように、乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面Sへ滴下されることによって生成油O3が生成される。生成槽部20は、この生成油O3が生成油処理部40へ流出されるように、生成油処理部40に連通されている。生成槽部20は、例えば、比較的大きな内容積であって、底21及び蓋22を有する円筒形状の金属製の容器であり、蓋22には、導入口部24及び導出口部25が開口されている。導入口部24は、乳濁液生成部10で生成された乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面Sへ滴下されるように乳濁液Eの液滴Dを導入するための開口部であり、乳濁液生成部10における撹拌機17の滴下口部171に接続されている。導出口部25は、原料油O1よりも軽質な生成油O3を導出するための開口部である。
加熱部30は、生成槽部20を加熱する装置である。生成槽部20が加熱されることによって熱媒体O2が加熱される。加熱部30は、例えば、一方端部にバーナ32が配設され、このバーナ32で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが流通される加熱ガス流路部31を備える。加熱部30は、バーナ32で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが加熱ガス流路部31を流れることによって生成槽部20の底21を加熱する。これによって燃焼ガスの熱が生成槽部20を介して熱媒体O2に熱伝導し、熱媒体O2が加熱され、そして、対流する。バーナ32の燃料油は、例えば安価なC重油等の重質油燃料等が使用される。
生成油処理部40は、生成槽部20で生成された生成油O3が収集され、貯留される容器である。生成油処理部40は、導入口部41及び大気開口部42を備えている。導入口部41は、生成槽部20で生成された生成油O3を導入するための開口部であり、生成槽部20における導出口部25に接続されている。大気開口部42は、大気が自由に流出入する開口部であり、大気に開放されている。この結果、生成油処理部40に連通している生成槽部20も大気に開放された状態となり、生成槽部20内は、略大気圧となる。生成油処理部40は、例えば、気体の生成油O3を液体に凝縮するコンデンサと、コンデンサで凝縮した液体の生成油O3を貯留する貯留槽とを備える。そして、この貯留槽が大気に開放されている。また例えば、生成油処理部40は、生成油O3を分留する分留塔と、分留塔で分留した気体の油を液体に凝縮するコンデンサと、コンデンサで凝縮した液体の油を貯留する貯留槽とを備える。そして、この貯留槽が大気に開放されている。コンデンサでは、気体の油を液体に凝縮するため、生成油処理部40に連通する生成槽部20内では圧力変動が生じるが、その圧力変動は、±約1/100程度である。従って、この場合でも生成槽部20内は、略大気圧である。
このような構成の重質油軽質化装置1Aでは、まず、水槽11にアルカリイオン水Aが投入されて貯留され、原料油槽12に重質な原料油O1が投入されて貯留され、生成槽部20に熱媒体O2がその液表面Sを形成する量に投入されて貯留される。
アルカリイオン水Aは、カルシウムイオン(Ca2+)を含むアルカリイオン水であり、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の水溶液や、水とカルシウム(Ca)とを混合することによって生成されたカルシウムの水溶液である。カルシウムイオンを含むアルカリイオン水Aは、水素を活性化して後述の水蒸気爆発によって水分子が酸素原子と水素原子とに容易に分解されるように、酸化還元電位が−850mV以下に調製され、そして、この酸化還元電位の調製及び後述のキャビテーションによって生じた活性水素を比較的安定にして後述の水素添加反応が効率よく行われるように、pHが12以上に調製される。このように、アルカリイオン水Aは、カルシウムイオンを含み、また、酸化還元電位が−850mV以下でpHが12以上に調製されているので、効果的に重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
原料油槽12の原料油O1は、撹拌機17の撹拌によって油中水滴型の乳濁液Eが生成可能であって液滴Dに形成可能であれば、どのような重質油でもよく、例えば、原油、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、熱分解残油、コールタール、A重油、B重油及びC重油等である。これらの重質油は、単独で原料油O1として用いられてもよいし、これらの重質油の2種以上の混合物、あるいはこれらの重質油に軽質油が一部混合されたものも原料油O1として用いられてもよい。
熱媒体O2は、後述するように、その表面Sに滴下された乳濁液Eの液滴Dに熱を伝導する媒体であり、加熱部30で所定の温度に加熱された場合に液状であれば、どのような油(炭化水素油)でもよく、本実施形態では、約250〜400℃に加熱されるので、例えば重油等の重質油が用いられる。
次に、加熱部30が稼働され、加熱部30によって生成槽部20が加熱され、生成槽部20の熱媒体O2が加熱される。これによって熱媒体O2は、約250〜400℃に加熱される。また、熱媒体O2が加熱されることによって、本実施形態では重質油が熱媒体O2に用いられているので熱媒体O2の一部が気化し、生成槽部20の内部が、この気化した熱媒体O2を含むと共に、生成槽部20に貯留されている熱媒体O2の温度に応じた温度のガス雰囲気となる。
次に、ポンプ15及びポンプ16がそれぞれ稼働され、水槽11からアルカリイオン水Aが撹拌機17へ流出されると共に、原料油槽12から原料油O1が撹拌機17へ流出される。そして、撹拌機17が稼働され、流入したアルカリイオン水Aと原料油O1とが撹拌され、油中水滴型の乳濁液Eが生成される。乳濁液E中に分散しているアルカリイオン水Aの微細粒子における粒径は、通常、10μm以下であるが、好ましくは3〜5μmである。この水の粒径が3μmより小さい場合は、キャビテーションの発生が不充分となるため好ましくなく、また、この水の粒径が5μmより大きい場合もキャビテーションの発生が不充分となるため好ましくない。
撹拌機17で生成された乳濁液Eは、滴状とされ、液滴Dで導入口部24から生成槽部20の熱媒体O2の表面Sへ向けて滴下される。滴下された液滴Dは、熱媒体O2と反応し、原料油O1よりも軽質な生成油O3が生成される。
この滴下された液滴Dが重質な原料油O1からより軽質な生成油O3を生成する過程を発明者は、次のように推察している。導入口部24から導入された乳濁液Eの液滴Dは、生成槽部20内のガスから熱を受けることによって加熱される。これによって乳濁液Eの原料油O1が加熱され、原料油O1を介して微細粒子のアルカリイオン水Aも加熱される。乳濁液Eの液滴Dは、降下に従ってこの加熱により液滴Dが分離して細かくなると共に、微細粒子のアルカリイオン水Aが先に沸点に達して気化し、この気化したアルカリイオン水Aが膨張しようとするが、周囲の油膜の張力によってその膨張が妨げられ、エネルギーが蓄積される。乳濁液Eの液滴Dは、さらに降下して熱媒体O2の表面に達すると、一気に加熱される。気化しているアルカリイオン水Aがこれによって一気に膨張し、この膨張によって生じる圧力が周囲の油膜における張力の限界を超え、水蒸気爆発による微爆発が生じる。この際に、液滴Dの原料油O1は、飛散してその表面積が一気に数千倍(例えば約5000倍)に拡大され、加熱が促進される。また、この微爆発によって熱媒体O2にキャビテーションが生じる。このキャビテーションによって、微爆発が生じた熱媒体O2の微小部分において温度が約10000℃になると共にキャビテーションの圧力波が約350気圧になる。これによって原料油O1にクラッキングが生じ、アルカリイオン水の水分子が酸素原子と水素原子とに分解される。そして、水分子の分解によって生じた化学的に活性な水素原子がクラッキングによって生じた、開裂した炭素原子の結合手に結合し、原料油O1に水素が添加される。さらに、水分子の分解によって生じた化学的に活性な酸素原子がクラッキングによって生じた、開裂した炭素原子の結合手に結合し、原料油O1に酸素も添加される。これによって重質な原料油O1よりも軽質な生成油O3が生成される。さらに、この生成油O3には酸素も原料油O1より多く含有される。このように発明者は、滴下された液滴Dが重質な原料油O1からより軽質な生成油O3を生成する過程を推察している。
このため、乳濁液Eにおける、原料油O1の重量に対するアルカリイオン水における水の重量の割合(=(水の重量/(原料油O1の重量)×100)は、原料油O1における水素含有量と、生成すべき軽質油における水素含有量との差に応じて決定され、比重の大きい原料油O1ほど水分量が大きくなり、好ましくは5〜30重量%である。重質な原料油O1を軽質化する点において、この水の割合が5重量%より小さい場合は、水素原子が不足するため好ましくなく、また、この水の割合が30重量%より大きい場合は、水分量が過剰となるため好ましくない。このような割合の乳濁液Eが撹拌機17で生成されるように、ポンプ15でその流量が調節されて、水槽11からアルカリイオン水Aが撹拌機17へ流出されると共に、ポンプ16でその流量が調節されて、原料油槽12から原料油O1が撹拌機17へ流出される。
そして、この生成された軽質な生成油O3は、導出口部25より導出され、導出口部25に設けられた生成油処理部40に収集され、貯留される。
このように、この重質油軽質化装置1Aによって重質な原料油O1からより軽質な生成油O3が得られる。そして、本発明の一実施形態に係る重質油軽質化装置1Aでは、熱媒体O2の温度が約250〜400℃であり、背景技術よりも生成条件が緩和されている。このため、生成槽部20には、背景技術よりも耐熱性の低い材料が採用可能である。さらに、上述の重質油軽質化装置1Aでは、生成槽部20が大気に開放されており、背景技術よりも生成条件がさらに緩和されている。このため、生成槽部20は、背景技術よりも強度が低くてもよく、生成槽部20には、背景技術よりも簡単な構造が採用可能である。また、上述の重質油軽質化装置1Aでは、接触分解法や水素化分解法のような触媒を用いる必要がないので、触媒の再生処理が必要とされない。
なお、熱媒体O2は、油、本実施形態では特に重質油であるので、原料油O1のクラッキングと共に、熱媒体O2の油もその一部にクラッキングが生じ、水素が添加される。このため、熱媒体O2の油もその一部が軽質化し、生成槽部20から生成油処理部40へ流れ、徐々に消費されてゆく。このため、重質油軽質化装置1Aの稼働に従って、熱媒体O2は、水素添加反応が良好に行われるように、適宜、補給される必要がある。
図2は、実施形態に係る重質油軽質化装置における加熱部の他の構成を示す図である。
なお、上述の実施形態では、生成槽部20内の熱媒体O2が加熱されるように重油質軽質化装置1Aが構成されたが、さらに生成槽部20内のガスも加熱されるように重油質軽質化装置が構成されてもよい。このような構成の重油質軽質化装置1Bは、図1に示す重質油軽質化装置1Aの加熱部30の代わりに、概略図である図2に示す加熱部50を備える。この加熱部50は、例えば、一方端部にバーナ52が配設され、このバーナ52で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが流通される加熱ガス流路部51を備える。加熱ガス流路部51は、生成槽部20の底21に沿って略水平に延びる底面加熱部511と、底面加熱部511と連通し生成槽部20の側壁23に沿って略垂直上方に延びる側面加熱部512とを備えて構成される。側面加熱部512は、底面加熱部511に連通しながら略直角に上方に屈曲している。重質油軽質化装置1Bにおける乳濁液生成部10、生成槽部20及び生成油処理部40は、上述と同様であるので、その説明を省略する。このような構成の加熱部50は、バーナ52で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが底面加熱部511を流れることによって生成槽部20の底21を加熱する。これによって燃焼ガスの熱が生成槽部20を介して熱媒体O2に熱伝導し、熱媒体O2が加熱される。そして、加熱部50は、燃焼ガスが底面加熱部511から側面加熱部512を流れることによって生成槽部20の側壁23を加熱する。これよって燃焼ガスの熱が生成槽部20を介して生成槽部20内のガスに熱伝導し、加熱部50は、さらに生成槽部20内のガスも加熱することができる。
図3は、実施形態に係る重質油軽質化装置における生成槽部及び加熱部の他の構成を示す図である。そして、上述の実施形態において、図1に示す重質油軽質化装置1Aにおける加熱部30及び生成槽部20の代わりに、概略図である図3に示すように、加熱部70及びこの加熱部70の加熱によって熱媒体O2が循環する生成槽部60を用いて重質油軽質化装置1Cを構成してもよい。図3において、生成槽部60は、熱媒体O2が上下に循環可能な閉ループ状に構成された容器である。加熱部70は、例えば、一方端部にバーナ72が配設され、このバーナ72で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが流通される加熱ガス流路部71を備える。加熱ガス流路部71は、生成槽部60の閉ループ下部61における熱媒体O2を加熱する下部加熱部711と、下部加熱部711と連通し、下部加熱部711で加熱されて生成槽部60の閉ループ側部62を上昇する熱媒体O2を加熱する側部加熱部712とを備えて構成される。
より具体的には、生成槽部60は、その下部に比較的大きな内容積を有する下部貯溜部111を備えている。この下部貯溜部111は、閉ループの下側部を構成するものであり、上記閉ループ下部61に相当する。
図3に示すように、下部貯溜部111には、その上面部における一端側(図3の左側)から上方に延びる第1側部112と、上面部における他端側(図3の右側)から上方に延びる第2側部113とが設けられている。第1側部112は、それぞれ細管からなる多数の伝熱管114aによって構成された伝熱管部114と、この伝熱管部114の上端部に設けられた合流部115とを備えている。
上記伝熱管部114は、その下端部が下部貯溜部111の上面部に接続されており、各伝熱管114aが上下に延びる姿勢に設置されている。各伝熱管114a内は、下部貯溜部111の上面に形成された連通孔を通して下部貯溜部111内と連通されている。上記合流部115は、全伝熱管114aに跨るように設けられるもので、各伝熱管114aの上端部から流出した熱媒体O2がこの合流部115で合流するようになっている。伝熱管部114と合流部115とにより、上記閉ループ側部62が構成されている。即ち、伝熱管部114及び合流部115は、閉ループの一方の側部となっている。
一方、第2側部113は、例えば円筒状に形成されている。この第2側部113と上記合流部115とには、下部貯溜部111から上方に離間したところに配置された上部貯溜部117が架け渡されている。そして、下部貯溜部111と第1側部112と第2側部113と上部貯溜部117とで囲まれた空間が、紙面奥行き方向に貫通した貫通空間となっている。上部貯溜部117は、第1側部112から第2側部113に向かって僅かに降下する傾斜配置の例えば円筒状に形成されている。この上部貯溜部117は、閉ループの上側部となっている。
上記合流部115と第2側部113とは、上部貯溜部117を通して連通されている。この第2側部113は、下部貯溜部111の上面部に形成された連通孔を通して下部貯溜部111と連通されている。このように、生成槽部60の内部は、下部貯溜部111と第1側部112と第2側部113と上部貯溜部117とが連通する閉ループ状に構成されていて、熱媒体O2が生成槽部60内を上下に循環可能となっている。即ち、生成槽部60内部が全体として熱対流の循環路となる閉回路となっている。本形態において、上部貯溜部117と第2側部113とにより、還流部が構成されている。即ち、第1側部112から流出した熱媒体O2が上部貯溜部117と第2側部113を通って下部貯溜部111へ向かうようになっている。生成槽部60は、この形態で下部貯溜部111、第1側部112、第2側部113及び上部貯溜部117が一体的に構成されたものとなっていて、これら下部貯溜部111、第1側部112、第2側部113及び上部貯溜部117の全体に熱媒体O2が貯溜されている。
そして、加熱部70には、生成槽部60の熱媒体O2を加熱する燃焼ガスを流通させる加熱ガス流路部71が設けられている。この加熱ガス流路部71は、下部加熱部711と、側部加熱部712と、両加熱部711、712を連通する連通部713とを備えている。
上記下部加熱部711は、下部貯溜部111内の熱媒体O2を加熱するためのものであり、生成槽部60の外部に配設された外側加熱部715と、生成槽部60の内部に配設された内側加熱部716とを備えている。外側加熱部715は、端部にバーナ72が配設され、略水平に延びる導入部715aと、この導入部715aの下流端に連通し、生成槽部60の底面611に沿って略水平に延びる底面加熱部715bと、底面加熱部715bの下流端に連通し、下部貯溜部111の側壁612に沿って上方に延びる連絡部715cとからなる。外側加熱部715は、その外壁が耐火性の断熱材によって構成されており、この外側加熱部715内を流れる燃焼ガスの熱が外部に漏れないようになっている。
上記バーナ72の燃焼により、燃焼ガスが発生し、この燃焼ガスは、導入部715a、底面加熱部715b及び連絡部715cをこの順に流れる。このとき底面加熱部715bでは、燃焼ガスの熱が生成槽部60の底面611を介して下部貯溜部111内の熱媒体O2に伝わる。言い換えると、生成槽部60の底面611は、燃焼ガスの熱を熱媒体O2に伝える伝熱面となっている。
上記内側加熱部716は、下部貯溜部111内に配置されるものであり、複数のU字管716aによって構成されている。各U字管716aは、両端部が上下に配置されるように下部貯溜部111の一方(図3に左側)の側壁612に固定されるとともに、この側壁612から対向する側壁613に向かって水平に延びるように配設されている。そして、U字管716aの湾曲部は、対向側壁613の近傍に配置されている。このように湾曲部が側壁613から離間した状態に配設されることにより、U字管716aが熱膨張してもそれに伴ってU字管716aに熱応力が作用するのを抑制できるようになっている。
U字管716aの下側の一端部は、側壁612に形成された連通孔を通して上記連絡部715cと連通されている。一方、U字管716aの上側の一端部は、側壁612に形成された連通孔を通して上記連通部713と連通されている。この連通部713は、下端部で上記U字管716aに連通されるともに、生成槽部60の外側に配設されている。そして、連通部713は、その上端部において上記側部加熱部712の下端部に連通されている。連通部713は、断熱材によって被覆されている。
上記側部加熱部712は、上記第1側部112の熱媒体O2を加熱するためのものであり、伝熱管部114を取り囲むように配設され、第1側部112の下端部から第1側部112に沿って上方に延びる例えば円筒状の部材によって構成されている。そして、側部加熱部712の下端部で上記連通部713と連通されている。即ち、側部加熱部712内において、伝熱管114aの外側を上方に向かって流れる燃焼ガスによって伝熱管部114内の熱媒体O2が加熱されるようになっている。
生成槽部60には、貯留された熱媒体O2の液表面Sを検出するための図略の液面検出計(例えば液面センサ)が設けられている。この液面検出計は、例えば第2側部113の上端部に配設されており、生成槽部60内の熱媒体O2量が、第2側部113の上側で熱媒体O2の液表面Sが形成されるように、かつ、正常な循環が生じる範囲内になるように、加熱部70の加熱量及び図略の投入口部から投入される熱媒体O2の投入量を制御するために設けられる。
また、生成槽部60には、この生成槽部60内に停留する成分を排出するための排出管路118が設けられている。この排出管路118は、下部貯溜部111における下端部に設けられ、容器底部に停留する熱媒体O2(本実施形態では油分)を排出するのに使用される。
上記第1側部112の上端部には、上記生成油処理部40が設けられ、上記第2側部113の上端部には、上記乳濁液生成部10が設けられている。そして、この乳濁液生成部10は、生成槽部60の第2側部113を下降する熱媒体O2の表面Sに乳濁液Eの液滴Dが滴下されるように、配設されている。これら重質油軽質化装置1Cにおける乳濁液生成部10及び生成油処理部40は、上述と同様であるので、その説明を省略する。
このような構成の重質油軽質化装置1Cでは、乳濁液Eの液滴Dが第2側部113を下降する熱媒体O2の表面Sに滴下されると原料油O1から生成油O3が生成される。
より具体的には、重質油軽質化装置1Cでは、まず、水槽11にアルカリイオン水Aが投入されて貯留され、原料油槽12に重質な原料油O1が投入されて貯留され、生成槽部20に熱媒体O2がその液表面Sを形成する量に投入されて貯留される。次に、加熱部70が稼働され、バーナ72を燃焼させて発生する例えば700〜800℃程度の燃焼ガスによって生成槽部60内が加熱される。即ち、バーナ72の燃焼ガスは、導入部715aを流れた後、底面加熱部715bで生成槽部底面611を加熱し、連絡部715cを通して内側加熱部716に流入する。この内側加熱部716において、燃焼ガスは下部貯溜部111内の熱媒体O2を加熱し、連通部713を通して側部加熱部712に流入する。この側部加熱部712において、燃焼ガスは、第1側部112内の熱媒体O2を加熱して排出される。一方、生成槽部60内部では、燃焼ガスによって下部貯溜部111で加熱された熱媒体O2は、上昇して伝熱管部114の各伝熱管114aに流入する。この熱媒体O2は、伝熱管114a内で一部が沸騰する程度に加熱される。このため、伝熱管114a内では気液混合のマクロな平均密度が低い流体となって強烈な上昇流が生じる。これにより、生成槽部60内では、熱媒体O2が下部貯溜部111、第1側部112、上部貯溜部117及び第2側部113をこの順に循環する高速な循環流が生ずる。このため、第2側部113では、熱媒体O2が高速に下降しているため、第2側部113における熱媒体O2の表面Sでは、すり鉢状の渦が生じている。乳濁液生成部20で生成された乳濁液Eの液滴Dがこの渦が生じている表面Sに滴下されると、液滴Dは、この渦に引き込まれて第2側部113を熱媒体O2と共に降下しながら熱媒体O2から熱が伝導され、一気に加熱される。これにより液滴Dは、第2側部113を下降する間に微爆発を起こし、キャビテーションが生じる。また、極一部の液滴Dが下部貯留部111を横流する間に微爆発を起こすこともある。このキャビテーションによって原料油O1は、より軽質な生成油O3となる。この生成油O3は、熱媒体O2と共に第1側部112へ流れ、熱媒体O2から第1側部112の上側へ分離し、第1側部112の上端部から生成油処理部40へ導入される。そして、このような構成の重質油軽質化装置1Cでは、上述のように加熱部70によって生成槽部60内で効率的に自然対流が生じさせられ、熱媒体O2の加熱効率が向上され得る。
次に、一実験例について説明する。表1は、重質油軽質化の実験結果を示す表である。表2は、原料油の分留分析結果を示す表である。表3は、生成油の分留分析結果を示す表である。表4は、原料油における密度、引火点及び硫黄分の分析結果を示す表である。表5は、生成油における密度、引火点及び硫黄分の分析結果を示す表である。
まず、カルシウムイオンを含み、酸化還元電位が−850mV以下でpHが12以上に調製されたアルカリイオン水11.00kg(表1)が水槽11に投入され貯留される。
また、表1に示すように、C重油32.00kg、A重油4.63kg及び灯油20.02kgの混合油である原料油O1が原料油槽12に投入され貯留される。この原料油O1の分析を株式会社石油検定社(日本国兵庫県神戸市中央区元町通2丁目9番1号)に依頼したところ、表2及び表4の結果を得た。表2に示すように、5%留出から95%留出までその温度が113.7℃〜413.3℃まで順次に上昇しており、表4に示すように、密度が15℃で0.9648であり、引火点が77.0℃であることから、原料油O1は、重質油であることが確認される。そして、硫黄も2.28重量%含まれている。
そして、液表面Sが形成される嵩高で、例えば生成槽部20の約1/3の深さで、熱媒体O2が生成槽部20に投入されて貯留される。次に、熱媒体O2が加熱部30で約250〜400℃になるように加熱された。この場合における生成槽部20の内部におけるガス(気化した熱媒体O2を含む)の温度は、約280〜450℃であった。そして、アルカリイオン水と原料油O1から乳濁液Eが生成されるようにポンプ15、16の流量が調整され、撹拌機17で乳濁液Eが生成された。この生成された乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面へ滴下され、これによって生成油64.24kg(表1)が得られた。この際に、生成槽部20の底には、残渣0.68kg(表1)が残り、気化損失として大気開放している部分から流出した水蒸気、原料油O1及び生成油O3等の物質は、2.73kg(表1)であった。
このように生成した生成油O3の分析を上記株式会社石油検定社に依頼したところ、表3及び表5の結果を得た。表3に示すように、5%留出から95%留出までその温度が順次に上昇しているが157.5℃〜261.0℃までであり、表5に示すように、密度が15℃で0.7926であり、引火点が32.5℃であることから、生成油O3は、軽質油、特に灯油であることが確認される。さらに硫黄も0.06重量%に減少していることが確認される。
次に、一比較例について説明する。比較は、図1に示す重質油軽質化装置1Aを用いて原料油O1から生成油O3を生成する場合と、図1に示す重質油軽質化装置1Aの構成から乳濁液生成部10を取り除いた装置を用いて背景技術に係る熱分解法によって原料油O1から生成油O3を生成する場合とで行った。各場合の原料油O1は、同一成分である。
図4は、本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける生成温度の時間経過を示す図である。図5は、本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける燃料使用量の時間経過を示す図である。図6は、本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける生成油量の時間経過を示す図である。図4乃至図6の横軸は、生成開始からの経過時間を表す。図4の縦軸は、℃単位で表す生成槽部20内の温度(炉内温度)を表し、図5の縦軸は、リットル/10分の単位で表す単位時間当たりの燃料使用量(10分間当たりの燃料使用量)を表し、図6の縦軸は、リットル/10分の単位で表す単位時間当たりの生成油量(10分間当たりの生成油量)を表す。図4及び図5の◆は、本発明に係る重質油軽質化方法における生成温度を示し、図4及び図5の■は、背景技術に係る熱分解法における生成温度を示す。図6における一対の棒グラフのうち白抜きの棒グラフ(紙面左側)が本発明に係る重質油軽質化方法における生成油量を示し、斜め線の模様を付した棒グラフ(紙面右側)が背景技術に係る熱分解法における生成油量を示す。
図4から分かるように、生成開始から60分経過するまでの間において、背景技術に係る熱分解法では、生成槽部20内の温度は、524℃から539℃までの間であり、その平均温度が533℃である。一方、本発明に係る重質油軽質化方法では、生成槽部20内の温度は、339℃から356℃までの間であり、その平均温度が347℃である。このように生成温度に関し、本発明に係る重質油軽質化方法の場合が背景技術に係る熱分解法の場合よりも低温であり、生成条件が緩やかである。平均温度で比較すると186℃も低温である。
この結果、図5から分かるように、背景技術に係る熱分解法では、生成開始から60分経過するまでの間において、10分間当たりの燃料使用量は、1リットル/10分から1.2リットル/10分までの間であり、その平均燃料使用量が1.05リットル/10分である。そして、1時間の燃料使用量は、6.3リットルであった。一方、本発明に係る重質油軽質化方法では、生成開始から60分経過するまでの間において、10分間当たりの燃料使用量は、0.4リットル/10分から0.9リットル/10分までの間であり、その平均燃料使用量が0.7リットル/10分である。そして、1時間の燃料使用量は、4.2リットルであった。このように燃料使用量は、本発明に係る重質油軽質化方法の場合が背景技術に係る熱分解法の場合より少ない。平均燃料使用量で単位時間当たりの燃料使用量を比較すると0.35リットル/10分も少なく、そして、1時間の燃料使用量で比較すると、2.1リットルも少ない。
その一方で、図6から分かるように、背景技術に係る熱分解法では、生成開始から60分経過するまでの間において、10分間当たりの生成油O3の生成量は、0.37リットル/10分から0.41リットル/10分までの間である。そして、1時間の生成量は、2.3リットルであった。一方、本発明に係る重質油軽質化方法では、生成開始から60分経過するまでの間において、10分間当たりの生成油O3の生成量は、0.82リットル/10分から0.86リットル/10分までの間である。そして、1時間の生成量は、5.1リットルであった。このように本発明に係る重質油軽質化方法は、背景技術に係る熱分解法に較べて、少ない燃料使用量で多くの生成油O3を得ることができ、エネルギー効率がよい。背景技術に係る熱分解法では、1リットルの生成油O3を得るために約2.74リットルの燃料が必要であるが、本発明に係る重質油軽質化方法では、1リットルの生成油O3を得るためには約0.824リットルの燃料でよい。
このように本発明に係る重質油軽質化装置1では、接触分解法や水素化分解法のような触媒を用いる必要がないので触媒の再生処理を必要とすることがなく、また、背景技術よりも比較的緩やかな生成条件で重質な原料油O1からより軽質な生成油O3を得ることができる。そして、生成油O3を得るためのエネルギー効率がよい。
さらに、本発明に係る重質油軽質化装置1は、原料油O1に硫黄が含まれている場合に、水分子の分解によって生じた水素原子が原料油O1中の硫黄と反応して硫化水素(H2S)となって、脱硫もすることができる。
本明細書は、上記のように様々な発明を開示しているが、そのうち主な発明を以下に纏める。
本発明の一態様に係る、重質な原料油からより軽質な生成油を生成する重質油軽質化装置は、酸化還元電位が−850mV以下であってpHが12以上であるアルカリイオン水を前記原料油中に乳化することによって乳濁液を生成する乳濁液生成部と、熱媒体を貯留すると共に、前記乳濁液の液滴が前記熱媒体の表面へ滴下されるように前記乳濁液の液滴が導入される生成槽部と、前記生成槽部を加熱する加熱部とを備えることを特徴とする。そして、本発明の他の一態様に係る、重質な原料油からより軽質な生成油を生成する重質油軽質化方法は、酸化還元電位が−850mV以下であってpHが12以下であるアルカリイオン水を前記原料油中に乳化することによって乳濁液を生成する工程と、加熱された熱媒体の表面へ前記乳濁液の液滴を滴下する工程とを備えることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、比較的緩やかな生成条件で、重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。また、接触分解法や水素化分解法のような触媒を用いる必要がないので、触媒の再生処理を必要とすることがない。
また、上述の重質油軽質化装置において、前記生成槽部は、大気に開放されていることを特徴とする。上述の重質油軽質化方法において、大気に開放されている状態で、加熱された熱媒体の表面へ前記乳濁液の液滴を滴下する工程が行われることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、さらに緩やかな生成条件で、重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
そして、これら上述の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法において、前記乳濁液中に乳化している前記アルカリイオン水の粒径は、3〜5μmであることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、効果的に重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
また、これら上述の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法において、前記乳濁液中における、原料油の重量に対する前記アルカリイオン水における水の重量の割合は、5〜30重量%であることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、効果的に重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
さらに、これら上述の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法において、前記アルカリイオン水は、カルシウムイオンを含むことを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、効果的に重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
そして、これら上述の重質油軽質化装置において、前記生成槽部の内部は、前記熱媒体が上下に循環可能な閉ループ状に構成され、前記加熱部は、前記生成槽部の閉ループ下部における前記熱媒体を加熱する下部加熱部と、前記下部加熱部で加熱されて前記生成槽部の閉ループ側部を上昇する前記熱媒体を加熱する側部加熱部とを備える、高温のガスが流通される加熱ガス流路部を備えることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置によれば、生成槽部内で効率的に自然対流が生じさせられ、熱媒体の加熱効率が向上され得る。
本願発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本願発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
本発明によれば、重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法を提供することができる。
本発明は、重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法に関する。
近年の世界的な石油事情として製品の軽質化傾向がある。ガソリン、灯油及び軽油等のいわゆる軽質油(軽質炭化水素油)は、石油の常圧蒸留や減圧蒸留等の蒸留によって得られる他、いわゆる重質油(重質炭化水素油)を分解することによっても得られる。この重質油から軽質油を得る方法は、触媒を用いて重質油を分解する接触分解法、水素気流中で触媒を用いて水素を添加しながら重質油を分解する水素化分解法、及び、触媒を用いることなく重質油を熱分解する熱分解法等がある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
ところで、上記接触分解法や水素化分解法では、触媒が必要である上、重質油の接触分解に伴って触媒が不活性となるため、触媒の再生処理が必要である。さらに、水素化分解法では、温度500℃以上及び圧力30〜100気圧の厳しい生成条件が必要である。一方、熱分解法でも温度400℃〜500℃及び圧力2〜30気圧の厳しい生成条件が必要である。
特開平07−011259号公報
特開平09−183983号公報
本発明は、上記事情に鑑みて為された発明であり、触媒を用いることなく即ち触媒の再生処理を必要とすることなく、背景技術よりも緩やかな生成条件で水素を添加しながら重質な原料油を分解することによって原料油よりも軽質な生成油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る、重質な原料油からより軽質な生成油を生成する重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法は、アルカリイオン水を原料油中に乳化することによって乳濁液を生成し、加熱した熱媒体の表面へこの乳濁液の液滴を滴下するものである。
このような重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法では、背景技術よりも緩やかな生成条件で重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、実施形態に係る重質油軽質化装置の構成を示す図である。概略図である図1に示すように、重質油軽質化装置1Aは、アルカリイオン水Aを原料油O1中に乳化することによって乳濁液Eを生成し、加熱した熱媒体O2の表面Sへこの乳濁液Eの液滴Dを滴下することによって、重質な原料油O1からより軽質な生成油O3を生成する装置である。重質油軽質化装置1Aは、例えば、乳濁液生成部10と、生成槽部20と、加熱部30と、生成油処理部40とを備えて構成される。
乳濁液生成部10は、アルカリイオン水Aを重質な原料油O1中に乳化することによって乳濁液(エマルジョン)Eを生成する装置である。乳濁液生成部10は、生成した乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面Sへ滴下されるように、生成槽部20に連通されている。乳濁液Eは、アルカリイオン水Aの微細粒子が原料油O1中に分散する油中水滴型である。
このような乳濁液生成部10は、例えば、水槽11と、原料油槽12と、配管13、14と、ポンプ15、16と、撹拌機(ミキサ)17とを備えて構成される。水槽11は、アルカリイオン水Aを貯留する容器である。水槽11は、水槽11から撹拌機17へアルカリイオン水Aを流出することができるように、配管13によって撹拌機17と接続されている。配管13には、ポンプ15が配設されており、ポンプ15は、流量を調整しながらアルカリイオン水Aを水槽11から撹拌機17へ流出する。原料油槽12は、原料油O1を貯留する容器である。原料油槽12は、原料油槽12から撹拌機17へ原料油O1を流出することができるように、配管14によって撹拌機17と接続されている。配管14には、ポンプ16が配設されており、ポンプ16は、流量を調整しながら原料油O1を原料油槽12から撹拌機17へ流出する。撹拌機17は、流入されたアルカリイオン水Aと原料油O1とを撹拌する装置である。この撹拌によってアルカリイオン水Aが原料油O1中に乳化され、油中水滴型の乳濁液Eが撹拌機17内に生成される。撹拌機17は、乳濁液Eの液滴Dを形成して生成槽部20へ滴下する滴下口部171を備えている。
生成槽部20は、熱媒体O2を貯留すると共に、乳濁液生成部10で生成された乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面Sへ滴下されるように乳濁液Eの液滴Dが導入される容器である。後述するように、乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面Sへ滴下されることによって生成油O3が生成される。生成槽部20は、この生成油O3が生成油処理部40へ流出されるように、生成油処理部40に連通されている。生成槽部20は、例えば、比較的大きな内容積であって、底21及び蓋22を有する円筒形状の金属製の容器であり、蓋22には、導入口部24及び導出口部25が開口されている。導入口部24は、乳濁液生成部10で生成された乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面Sへ滴下されるように乳濁液Eの液滴Dを導入するための開口部であり、乳濁液生成部10における撹拌機17の滴下口部171に接続されている。導出口部25は、原料油O1よりも軽質な生成油O3を導出するための開口部である。
加熱部30は、生成槽部20を加熱する装置である。生成槽部20が加熱されることによって熱媒体O2が加熱される。加熱部30は、例えば、一方端部にバーナ32が配設され、このバーナ32で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが流通される加熱ガス流路部31を備える。加熱部30は、バーナ32で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが加熱ガス流路部31を流れることによって生成槽部20の底21を加熱する。これによって燃焼ガスの熱が生成槽部20を介して熱媒体O2に熱伝導し、熱媒体O2が加熱され、そして、対流する。バーナ32の燃料油は、例えば安価なC重油等の重質油燃料等が使用される。
生成油処理部40は、生成槽部20で生成された生成油O3が収集され、貯留される容器である。生成油処理部40は、導入口部41及び大気開口部42を備えている。導入口部41は、生成槽部20で生成された生成油O3を導入するための開口部であり、生成槽部20における導出口部25に接続されている。大気開口部42は、大気が自由に流出入する開口部であり、大気に開放されている。この結果、生成油処理部40に連通している生成槽部20も大気に開放された状態となり、生成槽部20内は、略大気圧となる。生成油処理部40は、例えば、気体の生成油O3を液体に凝縮するコンデンサと、コンデンサで凝縮した液体の生成油O3を貯留する貯留槽とを備える。そして、この貯留槽が大気に開放されている。また例えば、生成油処理部40は、生成油O3を分留する分留塔と、分留塔で分留した気体の油を液体に凝縮するコンデンサと、コンデンサで凝縮した液体の油を貯留する貯留槽とを備える。そして、この貯留槽が大気に開放されている。コンデンサでは、気体の油を液体に凝縮するため、生成油処理部40に連通する生成槽部20内では圧力変動が生じるが、その圧力変動は、±約1/100程度である。従って、この場合でも生成槽部20内は、略大気圧である。
このような構成の重質油軽質化装置1Aでは、まず、水槽11にアルカリイオン水Aが投入されて貯留され、原料油槽12に重質な原料油O1が投入されて貯留され、生成槽部20に熱媒体O2がその液表面Sを形成する量に投入されて貯留される。
アルカリイオン水Aは、カルシウムイオン(Ca2+)を含むアルカリイオン水であり、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の水溶液や、水とカルシウム(Ca)とを混合することによって生成されたカルシウムの水溶液である。カルシウムイオンを含むアルカリイオン水Aは、水素を活性化して後述の水蒸気爆発によって水分子が酸素原子と水素原子とに容易に分解されるように、酸化還元電位が−850mV以下に調製され、そして、この酸化還元電位の調製及び後述のキャビテーションによって生じた活性水素を比較的安定にして後述の水素添加反応が効率よく行われるように、pHが12以上に調製される。このように、アルカリイオン水Aは、カルシウムイオンを含み、また、酸化還元電位が−850mV以下でpHが12以上に調製されているので、効果的に重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
原料油槽12の原料油O1は、撹拌機17の撹拌によって油中水滴型の乳濁液Eが生成可能であって液滴Dに形成可能であれば、どのような重質油でもよく、例えば、原油、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、熱分解残油、コールタール、A重油、B重油及びC重油等である。これらの重質油は、単独で原料油O1として用いられてもよいし、これらの重質油の2種以上の混合物、あるいはこれらの重質油に軽質油が一部混合されたものも原料油O1として用いられてもよい。
熱媒体O2は、後述するように、その表面Sに滴下された乳濁液Eの液滴Dに熱を伝導する媒体であり、加熱部30で所定の温度に加熱された場合に液状であれば、どのような油(炭化水素油)でもよく、本実施形態では、約250〜400℃に加熱されるので、例えば重油等の重質油が用いられる。
次に、加熱部30が稼働され、加熱部30によって生成槽部20が加熱され、生成槽部20の熱媒体O2が加熱される。これによって熱媒体O2は、約250〜400℃に加熱される。また、熱媒体O2が加熱されることによって、本実施形態では重質油が熱媒体O2に用いられているので熱媒体O2の一部が気化し、生成槽部20の内部が、この気化した熱媒体O2を含むと共に、生成槽部20に貯留されている熱媒体O2の温度に応じた温度のガス雰囲気となる。
次に、ポンプ15及びポンプ16がそれぞれ稼働され、水槽11からアルカリイオン水Aが撹拌機17へ流出されると共に、原料油槽12から原料油O1が撹拌機17へ流出される。そして、撹拌機17が稼働され、流入したアルカリイオン水Aと原料油O1とが撹拌され、油中水滴型の乳濁液Eが生成される。乳濁液E中に分散しているアルカリイオン水Aの微細粒子における粒径は、通常、10μm以下であるが、好ましくは3〜5μmである。この水の粒径が3μmより小さい場合は、キャビテーションの発生が不充分となるため好ましくなく、また、この水の粒径が5μmより大きい場合もキャビテーションの発生が不充分となるため好ましくない。
撹拌機17で生成された乳濁液Eは、滴状とされ、液滴Dで導入口部24から生成槽部20の熱媒体O2の表面Sへ向けて滴下される。滴下された液滴Dは、熱媒体O2と反応し、原料油O1よりも軽質な生成油O3が生成される。
この滴下された液滴Dが重質な原料油O1からより軽質な生成油O3を生成する過程を発明者は、次のように推察している。導入口部24から導入された乳濁液Eの液滴Dは、生成槽部20内のガスから熱を受けることによって加熱される。これによって乳濁液Eの原料油O1が加熱され、原料油O1を介して微細粒子のアルカリイオン水Aも加熱される。乳濁液Eの液滴Dは、降下に従ってこの加熱により液滴Dが分離して細かくなると共に、微細粒子のアルカリイオン水Aが先に沸点に達して気化し、この気化したアルカリイオン水Aが膨張しようとするが、周囲の油膜の張力によってその膨張が妨げられ、エネルギーが蓄積される。乳濁液Eの液滴Dは、さらに降下して熱媒体O2の表面に達すると、一気に加熱される。気化しているアルカリイオン水Aがこれによって一気に膨張し、この膨張によって生じる圧力が周囲の油膜における張力の限界を超え、水蒸気爆発による微爆発が生じる。この際に、液滴Dの原料油O1は、飛散してその表面積が一気に数千倍(例えば約5000倍)に拡大され、加熱が促進される。また、この微爆発によって熱媒体O2にキャビテーションが生じる。このキャビテーションによって、微爆発が生じた熱媒体O2の微小部分において温度が約10000℃になると共にキャビテーションの圧力波が約350気圧になる。これによって原料油O1にクラッキングが生じ、アルカリイオン水の水分子が酸素原子と水素原子とに分解される。そして、水分子の分解によって生じた化学的に活性な水素原子がクラッキングによって生じた、開裂した炭素原子の結合手に結合し、原料油O1に水素が添加される。さらに、水分子の分解によって生じた化学的に活性な酸素原子がクラッキングによって生じた、開裂した炭素原子の結合手に結合し、原料油O1に酸素も添加される。これによって重質な原料油O1よりも軽質な生成油O3が生成される。さらに、この生成油O3には酸素も原料油O1より多く含有される。このように発明者は、滴下された液滴Dが重質な原料油O1からより軽質な生成油O3を生成する過程を推察している。
このため、乳濁液Eにおける、原料油O1の重量に対するアルカリイオン水における水の重量の割合(=(水の重量/(原料油O1の重量)×100)は、原料油O1における水素含有量と、生成すべき軽質油における水素含有量との差に応じて決定され、比重の大きい原料油O1ほど水分量が大きくなり、好ましくは5〜30重量%である。重質な原料油O1を軽質化する点において、この水の割合が5重量%より小さい場合は、水素原子が不足するため好ましくなく、また、この水の割合が30重量%より大きい場合は、水分量が過剰となるため好ましくない。このような割合の乳濁液Eが撹拌機17で生成されるように、ポンプ15でその流量が調節されて、水槽11からアルカリイオン水Aが撹拌機17へ流出されると共に、ポンプ16でその流量が調節されて、原料油槽12から原料油O1が撹拌機17へ流出される。
そして、この生成された軽質な生成油O3は、導出口部25より導出され、導出口部25に設けられた生成油処理部40に収集され、貯留される。
このように、この重質油軽質化装置1Aによって重質な原料油O1からより軽質な生成油O3が得られる。そして、本発明の一実施形態に係る重質油軽質化装置1Aでは、熱媒体O2の温度が約250〜400℃であり、背景技術よりも生成条件が緩和されている。このため、生成槽部20には、背景技術よりも耐熱性の低い材料が採用可能である。さらに、上述の重質油軽質化装置1Aでは、生成槽部20が大気に開放されており、背景技術よりも生成条件がさらに緩和されている。このため、生成槽部20は、背景技術よりも強度が低くてもよく、生成槽部20には、背景技術よりも簡単な構造が採用可能である。また、上述の重質油軽質化装置1Aでは、接触分解法や水素化分解法のような触媒を用いる必要がないので、触媒の再生処理が必要とされない。
なお、熱媒体O2は、油、本実施形態では特に重質油であるので、原料油O1のクラッキングと共に、熱媒体O2の油もその一部にクラッキングが生じ、水素が添加される。このため、熱媒体O2の油もその一部が軽質化し、生成槽部20から生成油処理部40へ流れ、徐々に消費されてゆく。このため、重質油軽質化装置1Aの稼働に従って、熱媒体O2は、水素添加反応が良好に行われるように、適宜、補給される必要がある。
図2は、実施形態に係る重質油軽質化装置における加熱部の他の構成を示す図である。
なお、上述の実施形態では、生成槽部20内の熱媒体O2が加熱されるように重油質軽質化装置1Aが構成されたが、さらに生成槽部20内のガスも加熱されるように重油質軽質化装置が構成されてもよい。このような構成の重油質軽質化装置1Bは、図1に示す重質油軽質化装置1Aの加熱部30の代わりに、概略図である図2に示す加熱部50を備える。この加熱部50は、例えば、一方端部にバーナ52が配設され、このバーナ52で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが流通される加熱ガス流路部51を備える。加熱ガス流路部51は、生成槽部20の底21に沿って略水平に延びる底面加熱部511と、底面加熱部511と連通し生成槽部20の側壁23に沿って略垂直上方に延びる側面加熱部512とを備えて構成される。側面加熱部512は、底面加熱部511に連通しながら略直角に上方に屈曲している。重質油軽質化装置1Bにおける乳濁液生成部10、生成槽部20及び生成油処理部40は、上述と同様であるので、その説明を省略する。このような構成の加熱部50は、バーナ52で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが底面加熱部511を流れることによって生成槽部20の底21を加熱する。これによって燃焼ガスの熱が生成槽部20を介して熱媒体O2に熱伝導し、熱媒体O2が加熱される。そして、加熱部50は、燃焼ガスが底面加熱部511から側面加熱部512を流れることによって生成槽部20の側壁23を加熱する。これよって燃焼ガスの熱が生成槽部20を介して生成槽部20内のガスに熱伝導し、加熱部50は、さらに生成槽部20内のガスも加熱することができる。
図3は、実施形態に係る重質油軽質化装置における生成槽部及び加熱部の他の構成を示す図である。そして、上述の実施形態において、図1に示す重質油軽質化装置1Aにおける加熱部30及び生成槽部20の代わりに、概略図である図3に示すように、加熱部70及びこの加熱部70の加熱によって熱媒体O2が循環する生成槽部60を用いて重質油軽質化装置1Cを構成してもよい。図3において、生成槽部60は、熱媒体O2が上下に循環可能な閉ループ状に構成された容器である。加熱部70は、例えば、一方端部にバーナ72が配設され、このバーナ72で燃料油を燃焼することによって生じた高温の燃焼ガスが流通される加熱ガス流路部71を備える。加熱ガス流路部71は、生成槽部60の閉ループ下部61における熱媒体O2を加熱する下部加熱部711と、下部加熱部711と連通し、下部加熱部711で加熱されて生成槽部60の閉ループ側部62を上昇する熱媒体O2を加熱する側部加熱部712とを備えて構成される。
より具体的には、生成槽部60は、その下部に比較的大きな内容積を有する下部貯溜部111を備えている。この下部貯溜部111は、閉ループの下側部を構成するものであり、上記閉ループ下部61に相当する。
図3に示すように、下部貯溜部111には、その上面部における一端側(図3の左側)から上方に延びる第1側部112と、上面部における他端側(図3の右側)から上方に延びる第2側部113とが設けられている。第1側部112は、それぞれ細管からなる多数の伝熱管114aによって構成された伝熱管部114と、この伝熱管部114の上端部に設けられた合流部115とを備えている。
上記伝熱管部114は、その下端部が下部貯溜部111の上面部に接続されており、各伝熱管114aが上下に延びる姿勢に設置されている。各伝熱管114a内は、下部貯溜部111の上面に形成された連通孔を通して下部貯溜部111内と連通されている。上記合流部115は、全伝熱管114aに跨るように設けられるもので、各伝熱管114aの上端部から流出した熱媒体O2がこの合流部115で合流するようになっている。伝熱管部114と合流部115とにより、上記閉ループ側部62が構成されている。即ち、伝熱管部114及び合流部115は、閉ループの一方の側部となっている。
一方、第2側部113は、例えば円筒状に形成されている。この第2側部113と上記合流部115とには、下部貯溜部111から上方に離間したところに配置された上部貯溜部117が架け渡されている。そして、下部貯溜部111と第1側部112と第2側部113と上部貯溜部117とで囲まれた空間が、紙面奥行き方向に貫通した貫通空間となっている。上部貯溜部117は、第1側部112から第2側部113に向かって僅かに降下する傾斜配置の例えば円筒状に形成されている。この上部貯溜部117は、閉ループの上側部となっている。
上記合流部115と第2側部113とは、上部貯溜部117を通して連通されている。この第2側部113は、下部貯溜部111の上面部に形成された連通孔を通して下部貯溜部111と連通されている。このように、生成槽部60の内部は、下部貯溜部111と第1側部112と第2側部113と上部貯溜部117とが連通する閉ループ状に構成されていて、熱媒体O2が生成槽部60内を上下に循環可能となっている。即ち、生成槽部60内部が全体として熱対流の循環路となる閉回路となっている。本形態において、上部貯溜部117と第2側部113とにより、還流部が構成されている。即ち、第1側部112から流出した熱媒体O2が上部貯溜部117と第2側部113を通って下部貯溜部111へ向かうようになっている。生成槽部60は、この形態で下部貯溜部111、第1側部112、第2側部113及び上部貯溜部117が一体的に構成されたものとなっていて、これら下部貯溜部111、第1側部112、第2側部113及び上部貯溜部117の全体に熱媒体O2が貯溜されている。
そして、加熱部70には、生成槽部60の熱媒体O2を加熱する燃焼ガスを流通させる加熱ガス流路部71が設けられている。この加熱ガス流路部71は、下部加熱部711と、側部加熱部712と、両加熱部711、712を連通する連通部713とを備えている。
上記下部加熱部711は、下部貯溜部111内の熱媒体O2を加熱するためのものであり、生成槽部60の外部に配設された外側加熱部715と、生成槽部60の内部に配設された内側加熱部716とを備えている。外側加熱部715は、端部にバーナ72が配設され、略水平に延びる導入部715aと、この導入部715aの下流端に連通し、生成槽部60の底面611に沿って略水平に延びる底面加熱部715bと、底面加熱部715bの下流端に連通し、下部貯溜部111の側壁612に沿って上方に延びる連絡部715cとからなる。外側加熱部715は、その外壁が耐火性の断熱材によって構成されており、この外側加熱部715内を流れる燃焼ガスの熱が外部に漏れないようになっている。
上記バーナ72の燃焼により、燃焼ガスが発生し、この燃焼ガスは、導入部715a、底面加熱部715b及び連絡部715cをこの順に流れる。このとき底面加熱部715bでは、燃焼ガスの熱が生成槽部60の底面611を介して下部貯溜部111内の熱媒体O2に伝わる。言い換えると、生成槽部60の底面611は、燃焼ガスの熱を熱媒体O2に伝える伝熱面となっている。
上記内側加熱部716は、下部貯溜部111内に配置されるものであり、複数のU字管716aによって構成されている。各U字管716aは、両端部が上下に配置されるように下部貯溜部111の一方(図3に左側)の側壁612に固定されるとともに、この側壁612から対向する側壁613に向かって水平に延びるように配設されている。そして、U字管716aの湾曲部は、対向側壁613の近傍に配置されている。このように湾曲部が側壁613から離間した状態に配設されることにより、U字管716aが熱膨張してもそれに伴ってU字管716aに熱応力が作用するのを抑制できるようになっている。
U字管716aの下側の一端部は、側壁612に形成された連通孔を通して上記連絡部715cと連通されている。一方、U字管716aの上側の一端部は、側壁612に形成された連通孔を通して上記連通部713と連通されている。この連通部713は、下端部で上記U字管716aに連通されるともに、生成槽部60の外側に配設されている。そして、連通部713は、その上端部において上記側部加熱部712の下端部に連通されている。連通部713は、断熱材によって被覆されている。
上記側部加熱部712は、上記第1側部112の熱媒体O2を加熱するためのものであり、伝熱管部114を取り囲むように配設され、第1側部112の下端部から第1側部112に沿って上方に延びる例えば円筒状の部材によって構成されている。そして、側部加熱部712の下端部で上記連通部713と連通されている。即ち、側部加熱部712内において、伝熱管114aの外側を上方に向かって流れる燃焼ガスによって伝熱管部114内の熱媒体O2が加熱されるようになっている。
生成槽部60には、貯留された熱媒体O2の液表面Sを検出するための図略の液面検出計(例えば液面センサ)が設けられている。この液面検出計は、例えば第2側部113の上端部に配設されており、生成槽部60内の熱媒体O2量が、第2側部113の上側で熱媒体O2の液表面Sが形成されるように、かつ、正常な循環が生じる範囲内になるように、加熱部70の加熱量及び図略の投入口部から投入される熱媒体O2の投入量を制御するために設けられる。
また、生成槽部60には、この生成槽部60内に停留する成分を排出するための排出管路118が設けられている。この排出管路118は、下部貯溜部111における下端部に設けられ、容器底部に停留する熱媒体O2(本実施形態では油分)を排出するのに使用される。
上記第1側部112の上端部には、上記生成油処理部40が設けられ、上記第2側部113の上端部には、上記乳濁液生成部10が設けられている。そして、この乳濁液生成部10は、生成槽部60の第2側部113を下降する熱媒体O2の表面Sに乳濁液Eの液滴Dが滴下されるように、配設されている。これら重質油軽質化装置1Cにおける乳濁液生成部10及び生成油処理部40は、上述と同様であるので、その説明を省略する。
このような構成の重質油軽質化装置1Cでは、乳濁液Eの液滴Dが第2側部113を下降する熱媒体O2の表面Sに滴下されると原料油O1から生成油O3が生成される。
より具体的には、重質油軽質化装置1Cでは、まず、水槽11にアルカリイオン水Aが投入されて貯留され、原料油槽12に重質な原料油O1が投入されて貯留され、生成槽部20に熱媒体O2がその液表面Sを形成する量に投入されて貯留される。次に、加熱部70が稼働され、バーナ72を燃焼させて発生する例えば700〜800℃程度の燃焼ガスによって生成槽部60内が加熱される。即ち、バーナ72の燃焼ガスは、導入部715aを流れた後、底面加熱部715bで生成槽部底面611を加熱し、連絡部715cを通して内側加熱部716に流入する。この内側加熱部716において、燃焼ガスは下部貯溜部111内の熱媒体O2を加熱し、連通部713を通して側部加熱部712に流入する。この側部加熱部712において、燃焼ガスは、第1側部112内の熱媒体O2を加熱して排出される。一方、生成槽部60内部では、燃焼ガスによって下部貯溜部111で加熱された熱媒体O2は、上昇して伝熱管部114の各伝熱管114aに流入する。この熱媒体O2は、伝熱管114a内で一部が沸騰する程度に加熱される。このため、伝熱管114a内では気液混合のマクロな平均密度が低い流体となって強烈な上昇流が生じる。これにより、生成槽部60内では、熱媒体O2が下部貯溜部111、第1側部112、上部貯溜部117及び第2側部113をこの順に循環する高速な循環流が生ずる。このため、第2側部113では、熱媒体O2が高速に下降しているため、第2側部113における熱媒体O2の表面Sでは、すり鉢状の渦が生じている。乳濁液生成部20で生成された乳濁液Eの液滴Dがこの渦が生じている表面Sに滴下されると、液滴Dは、この渦に引き込まれて第2側部113を熱媒体O2と共に降下しながら熱媒体O2から熱が伝導され、一気に加熱される。これにより液滴Dは、第2側部113を下降する間に微爆発を起こし、キャビテーションが生じる。また、極一部の液滴Dが下部貯留部111を横流する間に微爆発を起こすこともある。このキャビテーションによって原料油O1は、より軽質な生成油O3となる。この生成油O3は、熱媒体O2と共に第1側部112へ流れ、熱媒体O2から第1側部112の上側へ分離し、第1側部112の上端部から生成油処理部40へ導入される。そして、このような構成の重質油軽質化装置1Cでは、上述のように加熱部70によって生成槽部60内で効率的に自然対流が生じさせられ、熱媒体O2の加熱効率が向上され得る。
次に、一実験例について説明する。表1は、重質油軽質化の実験結果を示す表である。表2は、原料油の分留分析結果を示す表である。表3は、生成油の分留分析結果を示す表である。表4は、原料油における密度、引火点及び硫黄分の分析結果を示す表である。表5は、生成油における密度、引火点及び硫黄分の分析結果を示す表である。
まず、カルシウムイオンを含み、酸化還元電位が−850mV以下でpHが12以上に調製されたアルカリイオン水11.00kg(表1)が水槽11に投入され貯留される。
また、表1に示すように、C重油32.00kg、A重油4.63kg及び灯油20.02kgの混合油である原料油O1が原料油槽12に投入され貯留される。この原料油O1の分析を株式会社石油検定社(日本国兵庫県神戸市中央区元町通2丁目9番1号)に依頼したところ、表2及び表4の結果を得た。表2に示すように、5%留出から95%留出までその温度が113.7℃〜413.3℃まで順次に上昇しており、表4に示すように、密度が15℃で0.9648であり、引火点が77.0℃であることから、原料油O1は、重質油であることが確認される。そして、硫黄も2.28重量%含まれている。
そして、液表面Sが形成される嵩高で、例えば生成槽部20の約1/3の深さで、熱媒体O2が生成槽部20に投入されて貯留される。次に、熱媒体O2が加熱部30で約250〜400℃になるように加熱された。この場合における生成槽部20の内部におけるガス(気化した熱媒体O2を含む)の温度は、約280〜450℃であった。そして、アルカリイオン水と原料油O1から乳濁液Eが生成されるようにポンプ15、16の流量が調整され、撹拌機17で乳濁液Eが生成された。この生成された乳濁液Eの液滴Dが熱媒体O2の表面へ滴下され、これによって生成油64.24kg(表1)が得られた。この際に、生成槽部20の底には、残渣0.68kg(表1)が残り、気化損失として大気開放している部分から流出した水蒸気、原料油O1及び生成油O3等の物質は、2.73kg(表1)であった。
このように生成した生成油O3の分析を上記株式会社石油検定社に依頼したところ、表3及び表5の結果を得た。表3に示すように、5%留出から95%留出までその温度が順次に上昇しているが157.5℃〜261.0℃までであり、表5に示すように、密度が15℃で0.7926であり、引火点が32.5℃であることから、生成油O3は、軽質油、特に灯油であることが確認される。さらに硫黄も0.06重量%に減少していることが確認される。
次に、一比較例について説明する。比較は、図1に示す重質油軽質化装置1Aを用いて原料油O1から生成油O3を生成する場合と、図1に示す重質油軽質化装置1Aの構成から乳濁液生成部10を取り除いた装置を用いて背景技術に係る熱分解法によって原料油O1から生成油O3を生成する場合とで行った。各場合の原料油O1は、同一成分である。
図4は、本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける生成温度の時間経過を示す図である。図5は、本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける燃料使用量の時間経過を示す図である。図6は、本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける生成油量の時間経過を示す図である。図4乃至図6の横軸は、生成開始からの経過時間を表す。図4の縦軸は、℃単位で表す生成槽部20内の温度(炉内温度)を表し、図5の縦軸は、リットル/10分の単位で表す単位時間当たりの燃料使用量(10分間当たりの燃料使用量)を表し、図6の縦軸は、リットル/10分の単位で表す単位時間当たりの生成油量(10分間当たりの生成油量)を表す。図4及び図5の◆は、本発明に係る重質油軽質化方法における生成温度を示し、図4及び図5の■は、背景技術に係る熱分解法における生成温度を示す。図6における一対の棒グラフのうち白抜きの棒グラフ(紙面左側)が本発明に係る重質油軽質化方法における生成油量を示し、斜め線の模様を付した棒グラフ(紙面右側)が背景技術に係る熱分解法における生成油量を示す。
図4から分かるように、生成開始から60分経過するまでの間において、背景技術に係る熱分解法では、生成槽部20内の温度は、524℃から539℃までの間であり、その平均温度が533℃である。一方、本発明に係る重質油軽質化方法では、生成槽部20内の温度は、339℃から356℃までの間であり、その平均温度が347℃である。このように生成温度に関し、本発明に係る重質油軽質化方法の場合が背景技術に係る熱分解法の場合よりも低温であり、生成条件が緩やかである。平均温度で比較すると186℃も低温である。
この結果、図5から分かるように、背景技術に係る熱分解法では、生成開始から60分経過するまでの間において、10分間当たりの燃料使用量は、1リットル/10分から1.2リットル/10分までの間であり、その平均燃料使用量が1.05リットル/10分である。そして、1時間の燃料使用量は、6.3リットルであった。一方、本発明に係る重質油軽質化方法では、生成開始から60分経過するまでの間において、10分間当たりの燃料使用量は、0.4リットル/10分から0.9リットル/10分までの間であり、その平均燃料使用量が0.7リットル/10分である。そして、1時間の燃料使用量は、4.2リットルであった。このように燃料使用量は、本発明に係る重質油軽質化方法の場合が背景技術に係る熱分解法の場合より少ない。平均燃料使用量で単位時間当たりの燃料使用量を比較すると0.35リットル/10分も少なく、そして、1時間の燃料使用量で比較すると、2.1リットルも少ない。
その一方で、図6から分かるように、背景技術に係る熱分解法では、生成開始から60分経過するまでの間において、10分間当たりの生成油O3の生成量は、0.37リットル/10分から0.41リットル/10分までの間である。そして、1時間の生成量は、2.3リットルであった。一方、本発明に係る重質油軽質化方法では、生成開始から60分経過するまでの間において、10分間当たりの生成油O3の生成量は、0.82リットル/10分から0.86リットル/10分までの間である。そして、1時間の生成量は、5.1リットルであった。このように本発明に係る重質油軽質化方法は、背景技術に係る熱分解法に較べて、少ない燃料使用量で多くの生成油O3を得ることができ、エネルギー効率がよい。背景技術に係る熱分解法では、1リットルの生成油O3を得るために約2.74リットルの燃料が必要であるが、本発明に係る重質油軽質化方法では、1リットルの生成油O3を得るためには約0.824リットルの燃料でよい。
このように本発明に係る重質油軽質化装置1では、接触分解法や水素化分解法のような触媒を用いる必要がないので触媒の再生処理を必要とすることがなく、また、背景技術よりも比較的緩やかな生成条件で重質な原料油O1からより軽質な生成油O3を得ることができる。そして、生成油O3を得るためのエネルギー効率がよい。
さらに、本発明に係る重質油軽質化装置1は、原料油O1に硫黄が含まれている場合に、水分子の分解によって生じた水素原子が原料油O1中の硫黄と反応して硫化水素(H2S)となって、脱硫もすることができる。
本明細書は、上記のように様々な発明を開示しているが、そのうち主な発明を以下に纏める。
本発明の一態様に係る、重質な原料油からより軽質な生成油を生成する重質油軽質化装置は、酸化還元電位が−850mV以下であってpHが12以上であるアルカリイオン水を前記原料油中に乳化することによって乳濁液を生成する乳濁液生成部と、熱媒体を貯留すると共に、前記乳濁液の液滴が前記熱媒体の表面へ滴下されるように前記乳濁液の液滴が導入される生成槽部と、前記生成槽部を加熱する加熱部とを備えることを特徴とする。そして、本発明の他の一態様に係る、重質な原料油からより軽質な生成油を生成する重質油軽質化方法は、酸化還元電位が−850mV以下であってpHが12以上であるアルカリイオン水を前記原料油中に乳化することによって乳濁液を生成する工程と、加熱された熱媒体の表面へ前記乳濁液の液滴を滴下する工程とを備えることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、比較的緩やかな生成条件で、重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。また、接触分解法や水素化分解法のような触媒を用いる必要がないので、触媒の再生処理を必要とすることがない。
また、上述の重質油軽質化装置において、前記生成槽部は、大気に開放されていることを特徴とする。上述の重質油軽質化方法において、大気に開放されている状態で、加熱された熱媒体の表面へ前記乳濁液の液滴を滴下する工程が行われることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、さらに緩やかな生成条件で、重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
そして、これら上述の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法において、前記乳濁液中に乳化している前記アルカリイオン水の粒径は、3〜5μmであることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、効果的に重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
また、これら上述の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法において、前記乳濁液中における、原料油の重量に対する前記アルカリイオン水における水の重量の割合は、5〜30重量%であることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、効果的に重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
さらに、これら上述の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法において、前記アルカリイオン水は、カルシウムイオンを含むことを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法によれば、効果的に重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる。
そして、これら上述の重質油軽質化装置において、前記生成槽部の内部は、前記熱媒体が上下に循環可能な閉ループ状に構成され、前記加熱部は、前記生成槽部の閉ループ下部における前記熱媒体を加熱する下部加熱部と、前記下部加熱部で加熱されて前記生成槽部の閉ループ側部を上昇する前記熱媒体を加熱する側部加熱部とを備える、高温のガスが流通される加熱ガス流路部を備えることを特徴とする。
このような構成の重質油軽質化装置によれば、生成槽部内で効率的に自然対流が生じさせられ、熱媒体の加熱効率が向上され得る。
本願発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本願発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
本発明によれば、重質な原料油からより軽質な生成油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法を提供することができる。
実施形態に係る重質油軽質化装置の構成を示す図である。
実施形態に係る重質油軽質化装置における加熱部の他の構成を示す図である。
実施形態に係る重質油軽質化装置における生成槽部及び加熱部の他の構成を示す図である。
本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける生成温度の時間経過を示す図である。
本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける燃料使用量の時間経過を示す図である。
本発明に係る重質油軽質化方法と背景技術に係る熱分解法とにおける生成油量の時間経過を示す図である。