JPWO2007122819A1 - 液体を媒体とする反応のための装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、固液反応又はその前処理に使用する試薬を供給する試薬貯留部(10)と、検体を供給する検体導入部(20)と、前記固液反応又はその前処理のために準備される溶液を調製又は貯留するとともに当該溶液の溶媒を留去して前記溶液を濃縮又は乾固可能な濃縮部(40)と、前記固液反応を実施する反応部(70)と、前記各部を前記固液反応を実施可能に連絡する流路系(60)と、前記固液反応のための液体又はガスを前記流路系において流通させる流体駆動部(200)と、を備えることで、迅速な生化学反応を実現可能な生化学反応デバイスを提供する。

Description

本発明は、液体を媒体とする反応を行うための装置に関する。
医療分野においては、患者から採取した血液や尿などの検体を分析することによって得られる各種化合物の有無や濃度等についての情報を指標として、疾患や症状の重症度等を診断することが行われてきている。また、近年は、国民の健康増進や医療経済等の観点から、個人の遺伝子情報に基づく個別化医療の促進が要望されるようになってきている。すなわち、遺伝子多型解析、染色体解析、さらには発現プロファイリング解析やプロテオーム解析によって、疾患、体質、薬剤感受性及び治療予後等を診断し、こうした診断結果を利用した個人毎の適切な治療が要望されるようになってきている。個別化医療によれば、薬剤の過剰投与が低減され、患者への副作用の低減が実現されて国民の健康が増進され、結果として医療費の削減につながる。また、個人の体質等の診断が可能となることで予防医療を促進することができる。
診断の基礎となる遺伝子情報のような個人の生化学的情報を取得するには、PCR、核酸ハイブリダイゼーション、抗原抗体反応等の手法が用いられる。例えば、DNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーションは、一般に、検体からのDNAの抽出、蛍光試薬の導入、DNAマイクロアレイ上でのハイブリダイゼーション及び洗浄等の操作が必要となる(DNAマイクロアレイ実戦マニュアル、羊土社、2000年11月発行)。このため、これらの各種の生化学的情報は、熟練した技術者が手作業や複数の大型装置を駆使して行うのが通常であった。また、このような分析には、通常3日間程度を要していた。
一方、近年、基板等の微細加工技術や表面処理技術が発展した結果、基板などの固相体上において液体を送液し、分離し、混合し、反応させたりすることができる、μTAS、ラボオンチップ、マイクロ化学チップなどの各種反応デバイスの開発が行われるようになってきている。
個別化医療の実現のためには、各種の生化学的情報を大規模医療施設に限らず分散的に存在する診療所などの中小規模医療施設などの医療現場において取得できることが重要である。しかしながら、上記のように結果がでるまで数日を要するような分析を個別の医療現場で実施することは不可能である。また、装置が大型であることや専門技術者の配置の困難性の観点からも個別医療現場で分析を実施することが困難である。さらに、現状において、上記生化学的情報を迅速かつ簡易に医療現場において取得できる装置は存在しない。
そこで、本発明は、各種生化学的情報を迅速に取得することのできる装置を提供することを一つの目的とする。さらに、本発明は、各種生化学的情報を取得するためのコンパクトな装置を提供することを他の一つの目的とする。
発明の概要
本発明者らは、生化学的情報を迅速に取得するという課題を解決するのにあたり、装置をコンパクト化する点、個別化医療が一個人の検体について多種類の項目について情報を取得する必要がある点、こうした多種類の項目について同時的に分析を行う必要がある点に着目し、こうした反応の少なくとも1ステップとして固液反応などの液体を媒体とする反応を採用することとした。そして、反応工程に微小量でかつ高濃度に被験成分を含む反応液を供給することによって、反応の拡散律速を抑制又は解消して、反応を予想を超えて迅速化できることを見出して、反応全体の迅速化と装置のコンパクト化を実現できることを見出し、本発明を完成した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
本発明によれば、液体を媒体とする反応のための反応装置であって、前記反応又はその前処理に使用する試薬を貯留する試薬貯留部と、検体を導入する検体導入部と、前記反応又はその前処理のために準備される溶液を調製又は貯留するとともに当該溶液の溶媒を留去して前記溶液を濃縮又は乾固可能な濃縮部と、前記反応を実施する反応部と、前記各部を前記反応を実施可能に連絡する流路系と、前記反応のための液体又はガスを前記流路系を介して流通させる流体駆動部と、を備える、反応装置が提供される。これらの各部及び流路系は固相体において備えられていることが好ましい。また、これらの反応装置では、前記反応は固液反応であることが好ましく、核酸、タンパク質などの生体分子に関する固液反応であることが好ましい。
本反応装置においては、前記濃縮部内の溶液を前記濃縮部内で乾固するものであってもよいし、さらに、前記溶液の濃縮又は乾固は、前記濃縮部内の吸引又は加熱を伴っていてもよい。また、本反応装置は、前記濃縮部は、前記濃縮部における前記溶液の流通方向を長手方向とし、前記溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とし、前記短手方向は、溶液の供給部位の幅及び前記溶液の排出部位の幅の4倍以下の幅とすることができる。
本反応装置は、また、前記濃縮部の所定の一部に前記濃縮部内の溶液を濃縮又は乾固可能とすることもできる。この態様においては、前記溶液の乾固部位若しくは濃縮部位は、前記反応装置における反応後段側への連絡部近傍とすることもできる。さらに、前記溶液の乾固部位又は濃縮部位は、前記試薬貯留部からの試薬貯留部位とすることができる。前記濃縮部は、前記濃縮部における前記溶液の流通方向を長手方向とし、前記溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とし、前記短手方向は、溶液の供給部位の幅及び前記溶液の排出部位の幅の倍以下の幅とすることができる。さらにまた、前記濃縮部内に残留する前記溶液の濃縮部位を前記濃縮部外から視認可能としてもよい。
本反応装置は、前記濃縮部内に露出され前記反応液に対する撥液性を有して前記濃縮部内のガスを排出可能な通気性材料と、前記濃縮部内のガスが前記通気性材料を介して吸引されるとき前記溶媒を前記通気性材料を介して前記濃縮部外に留去する通気部とを備えることができる。この態様においては、前記濃縮部は、前記濃縮部に供給される前記反応液が接触する重力方向下方面の少なくとも一部に前記通気性材料を備えることができるし、前記濃縮部は、前記重力方向下方面のほぼ全面に前記通気性材料を備えていてもよい。また、前記濃縮部内に露出される前記通気性材料の全面から前記濃縮部内のガスを吸引可能に前記通気部を備えていてもよいし、前記濃縮部内に露出される前記通気性材料の一部から前記濃縮部内のガスを吸引可能に前記通気部を備えていてもよい。
さらに、本反応装置は、前記濃縮部内に露出され前記反応液に対する撥液性を有して前記濃縮部内のガスを排出可能な通気性材料を、前記濃縮部の重力方向下面のほぼ全面に有し、前記濃縮部内のガスが前記通気性材料を介して吸引されるとき前記溶媒を前記通気性材料を介して前記濃縮部外に留去する通気部を備え、前記通気性材料の所定の一部に前記濃縮部内の溶液を濃縮又は乾固可能であり、前記所定の一部が前記試薬貯留部からの試薬貯留部位とすることもできる。さらに、前記濃縮部は、前記濃縮部における前記溶液の流通方向を長手方向とし、前記溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とし、前記短手方向は、溶液の供給部位の幅及び前記溶液の排出部位の幅の4倍以下の幅であり、前記濃縮部内の前記溶液の濃縮部位を前記濃縮部外から視認可能とすることができる。
本反応装置は、また、前記濃縮部内において差圧を形成して前記溶液を混合可能とすることができる。また、この態様においては、前記差圧を前記濃縮部内において露出され前記反応液に対する撥液性を有して前記濃縮部内のガスを排出可能な通気性材料を介して前記濃縮部内のガスの吸引によって形成することができる。
本反応装置は、さらに、前記反応又はその前処理のために準備される溶液中の被験成分を精製する精製部を備えることができる。また、この態様においては、前記精製部はモノリスカラムを備え、前記モノリスカラムは前記被験成分を吸着後、溶出液として水を用いて前記被験成分を脱着可能するものであってもよい。さらに、前記精製部により精製された被験成分を含有する溶出液を前記濃縮部で濃縮又は乾固可能とすることができる。また、前記被験成分は核酸としてもよいし、前記モノリスカラムに対して前記溶液又は前記試薬を加圧又は減圧状態で導入するようにしてもよい。
また、本反応装置は、前記反応部は、前記反応部における前記溶液の流通方向を長手方向とし、前記溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とし、前記短手方向は、溶液の供給部位の幅及び前記溶液の排出部位の幅の4倍以下の幅とすることができる。この態様においては、前記被験成分は核酸であり、前記反応部における反応は、核酸ハイブリダイゼーション反応とすることができる。さらに、前記核酸ハイブリダイゼーションは、アレイCGHとすることができる。前記反応部における前記被験成分である核酸の濃度を0.3μg/μl以上としてもよい。
アレイCGHを実施する反応装置の一例の概略を示す図である。 反応装置の濃縮部の一例の概要を示す図であり、上段に平面図を示し、下段に断面図を示す。 反応装置の固液反応部の一例を示す図であり、上段に平面図を示し、下段に断面図とその作製工程を示す。 本反応装置を用いたアレイCGHのフローの一例を示す図である。 実施例1及び比較例によるアレイCGHによる蛍光シグナル比log2(Cy3/Cy5)の比較結果を示す図である。 実施例1で得られたスキャン画像を示す図である。
本発明は、液体を媒体とする反応のための反応装置及び反応方法に関する。本発明の反応装置は、前記反応又はその前処理に使用する試薬を貯留する試薬貯留部と、検体を導入する検体導入部と、前記反応又はその前処理のために準備される溶液を調製又は貯留するとともに当該溶液の溶媒を留去して前記溶液を濃縮又は乾固可能な濃縮部と、前記反応を実施する反応部と、前記各部を前記固液反応を実施可能に連絡する流路系と、前記反応のための液体又はガスを前記流路系を介してする流通させる流体駆動部と、を備えることができる。本発明の反応装置によれば、液体を媒体とする反応のための溶液が濃縮又は乾固可能である。このため、反応を実施できる程度の液体が乾固物又は濃縮物に供給されることで、被験成分を高濃度に含む反応用の溶液を調製することができる。この結果、被験成分濃度が高濃度の状態で反応が可能となる。被験成分が高濃度であることで、反応の拡散律速を抑制又は回避して、反応を迅速に行うことができ、生化学的情報を迅速に取得することができる。
また、本反応装置によれば、乾固物又は濃縮物に反応等に必要な液体を供給すれば反応を実施できるため、反応のための液量を抑制することができる。この結果、反応を一層迅速化することができるとともに反応部をコンパクトに実施することができる。
濃縮部は、反応の前処理のために準備される溶液を調製又は貯留するためにも備えることができる。これらの溶液(前処理液)が濃縮又は乾固されていることで、次工程に必要な液体が供給されることで、被験成分を高濃度に含む前処理用の溶液を調製することができる。このため、各種の前処理工程を被験成分が高濃度でかつ液量が抑制された状態で実施することができ、この結果、目的とする液体を媒体とする反応に至る各種前処理も迅速かつコンパクトに実施することができる。
以下、本発明の実施形態である、反応装置及び反応方法について、適宜図面を参照しながら説明する。図1〜図4は、血液からDNAを抽出して固液反応であるアレイCGHを実施するための反応装置に関し、図1は、本発明の反応装置の一例の概略を示す図である、図2は、本発明の反応装置の濃縮部の一例の概要を示す図であり、図3は、本発明の反応装置の反応部の一例を示す図であり、図4は、本反応装置を用いた反応工程のフローの一例を示す図である。なお、これらの図面に示す反応装置及びその一部は、いずれも本発明を説明するための例示であって、本発明を限定するものではない。
本反応装置は、液体を媒体とする反応を実施するための装置である。液体を媒体とする反応としては、特に限定しない。液−液反応、気−液反応、固−液反応等の界面における反応も本反応装置における「液体を媒体とする反応」に含まれる。本反応装置2は、固液反応を実施するものであることが好ましい。固液反応は、拡散律速であり、一般に相当な長時間を要する。本発明における「反応」としては、合成や分解等の一般的な化学反応や電気化学反応のほか、水素結合、疎水結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力等の各種分子間相互作用の発現あるいは変化を包含している。例えば、固液反応として実施可能な反応としては、抗原抗体反応;各種酵素反応;特定遺伝子やSNPsの検出、アレイCGH、発現プロファイリングなどの核酸ハイブリダイゼーション;PCR;DNAなど核酸合成反応等が挙げられる。
反応装置は、液体を媒体とする反応を実施するための装置である、反応を実施するのにあたり他の反応を実施することができる。例えば、反応に適した溶液を調製するための、溶解、希釈、濃縮、混合、分離、抽出、洗浄、吸着、脱離、乾燥、加熱、冷却、各種電子線等の照射、超音波処理及び電気的処理などの要素を含む前処理反応が挙げられる。例えば、生体由来の検体と予め準備されたプローブとの核酸ハイブリダイゼーションを実施するためには、検体からのDNAの分離・精製、断片化、標識が前処理として必要である。
なお、反応の媒体となる液体は、特に限定しない。水のほか、各種有機溶媒、これらの混合液を包含する。これらの液体には、緩衝液等のように塩などの媒体の一部としての溶質を含むこともできる。本発明の反応装置において、抗原抗体反応、酵素反応及び核酸ハイブリダイゼーション並びに細胞に関する反応を実施する場合、液体は、水を含む水性の液体であることが多い。
これらの反応に関わる成分(反応成分)としては、化合物のほか、細胞を含むことができる。化合物としては、DNA、RNA、DNA/RNAキメラ又はこれらの誘導体を含む核酸、タンパク質、糖類などを含むことができる。核酸やタンパク質等は、予め蛍光色素などにより標識されたものであってもよい。また、タンパク質としては、酵素、抗体、抗原、リガンド及びレセプター並びにペプチド等が挙げられる。なお、反応成分が細胞の場合には、細胞と細胞との間における相互作用の発現及び変化や細胞培養や細胞破壊(あるいはそれに伴う抽出)、細胞分離なども反応に包含される。なお、ここでいう細胞には、微生物(細菌、カビ、ウイルス等)、動植物細胞及び組織も包含される。
反応装置2に適用する検体としては、こうした反応成分を被験成分として含有することができる。ヒト、ヒト以外の動物などから採取した全血、血清、尿、糞便、唾液、喀痰など生体由来試料;細胞胞培養物;ウィルス、細菌、カビ、酵母、植物、動物などの試料;微生物などが混入または含有する可能性のある試料、その他核酸、タンパク質などの含有されている可能性のあるあらゆる試料が挙げられる。
なお、検体中に含まれる被験成分の精製程度や加工程度は特に限定しない。すなわち、検体としては、生体由来の未精製試料であってもよいし、適宜分離精製されたもの、あるいは検出等のために標識等された被験成分を含有するものであってもよい。
なお、以下の説明においては、反応装置2を固液反応を実施するものとして説明する。反応装置2は、試薬貯留部10と、検体導入部20と、濃縮部40と、反応装置2で最終的に目的とする液体媒体反応として固液反応を実施する固液反応部50と、前記各部を前記反応を実施可能に連絡する流路系60と、流路系60に液体又はガスを流通させるための流体駆動部80とを、備えることができる。また、検体の精製程度や反応に必要な溶液によっては、検体の精製や前処理後の精製等のために精製部30を備えることができる。
本反応装置2は、上記各部の少なくとも一部を固相体100に備えていることが好ましい。固相体100は、立方体や直方体あるいは不定形状の三次元形状体とすることもできるが、流路系60をおおよそ同一平面に配すること等を考慮すると、平板状体とすることが好ましい。固相体100は、図2等に示すように2層以上の積層体とすることができる。こうすることで、試薬貯留部10、濃縮部30、固液反応部50等のためのチェンバーや流路系60を容易に構築することができる。
このような固相体100は、特に限定しないで、1種又は2種以上の材料を組み合わせて用いることができる。例えば、ガラス、シリコン、セラミックス、ガラスセラミックスのほか、PMMA、PDMSなどのプラスチックや金属等を用いることができる。また、流路系60の構成材料は、液体の液性を考慮して選択することができる。例えば、疎水性、親水性など、液体に対する撥液性を考慮して構成材料を選択してもよい。
固相体100に流路系60や各部のための凹部又は貫通孔を形成するには、例えば、マイクロマシンやMEMS(micro Electro Mechanical System)の製作技術を適用することができる。各種のエッチング技術、リソグラフィ技術、接合技術、成膜技術、レーザ等による精密微細加工技術、超音波技術等を適宜組み合わせて用いることができる。また、マイクロ塑性加工技術、マイクロ射出成形技術、マイクロ光造形技術などのマイクロ成形技術を用いることもできる。なお、用いる成形・加工技術に応じて、固相体100を適宜選択すればよい。また、各部や流路系60を固相体100を積層して形成する場合には、流路系60を貫通孔等としてパターニングした固相体100と他の平板状の固相体100とを、熱圧着や超音波接合等の適切な手法で接着又は接合すればよい。接着には、このほか両面粘着又は両面接着テープを用いることもできる。
反応装置2は、制御部200を含めて全体として卓上サイズであることが好ましく、制御部以外の部分は、一般的なスライドガラス(76.2mm×25.4mm)程度であることが好ましい。また、例えば、固液反応部50は、100μl以下の容積であることが好ましく、より好ましくは60μl以下である。
(試薬貯留部)
本発明の反応装置2は、試薬貯留部10を備えることができる。試薬貯留部10は、予め各種試薬を貯留することができ、固液反応又はその前処理に試薬を供給可能に準備しておくことができる。試薬貯留部10は、用いる試薬の種類に応じて適数個設けることができる。試薬貯留部10は、適当な容量のチェンバー12と当該チェンバーから流路系60に連絡する開口14を備えることができる。
試薬貯留部10は、予め所定量の、例えば、一回の反応に用いる試薬量が充填されており、反応毎に交換可能なカートリッジ形態とすることもできる。好ましくは、反応装置2は、一回の反応に用いる複数の試薬を予め充填した試薬貯留部10を複数個がカセット化され交換可能な試薬カートリッジ16として試薬貯留部10を備える。こうしたカートリッジ形態によれば、必要量の試薬を簡易に確実に準備しておくことができる。こうした試薬カートリッジ16は、反応装置2を構成する固相体100の一部を構成するように交換可能に装着されることが好ましい。
また、試薬貯留部10は、開閉可能な試薬導入口を有して試薬を注入可能な繰り返し使用可能な形態としてもよい。試薬貯留部10の容量は特に限定しないが、必要量の試薬を貯留することができる所定の容量とすることで反応コストを低減することができるとともに反応装置2のコンパクト化することができる。
試薬貯留部10に貯留する試薬としては、反応装置2によって実施しようとする固液反応によって異なるが、例えば、酵素、その基質、核酸プローブ、拡散プライマー、抗原、抗体、標識試薬、各種試薬類(呈色試薬、反応試薬など)が挙げられる。また、試薬としては、後述するように、精製部30のモノリスカラム32に供給する吸着液、洗浄液及び溶出液も含まれる。
(検体導入部)
検体導入部20は、検体を反応装置2に導入するための部位であって、反応装置2に負荷する検体の量及び検体とともに供給される試薬があるときには当該試薬との総量に応じた容量を備えることができる。検体導入部20の形態は、特に限定しないが、適当な容量のチェンバー22と当該チェンバーから流路系60に連絡する開口24を備えることができる。検体導入部20も、試薬貯留部10と同様に、反応毎に交換可能なカートリッジ形態としてもよいし、開閉可能な検体導入口を有するなどして繰り返し使用可能な形態としてもよい。さらに、開閉可能な検体導入口を有して繰り返し使用可能なカートリッジ形態としてもよい。図1に示す反応装置2では、検体導入部20は、検体導入口を有した検体カートリッジ26となっている。なお、検体導入部20を複数個備えていてもよい。
(精製部)
反応装置2は、1又は2以上の精製部30を備えることができる。精製部30は、検体中の被験成分の分離又は精製や反応のための前処理液の被験成分の分離又は精製等のために備えることができる。精製部30は、単なるフィルターやカラムとすることができるが、好ましくは、モノリスカラム32を用いる。モノリスカラム32は、相互に接続されて連通するマクロ孔を有する構造体から形成されている。モノリスカラム32は、圧力損失が低く通液性が良好であるため、夾雑成分が多く粘度が高くなる傾向がある生体由来の検体に好ましい。
モノリスカラム32としては、上記マクロ孔を有する無機質材料構造体又は無機有機ハイブリッド構造体を用いることができる。モノリスカラム32は、マクロ孔内部にさらにミクロ孔も有することがきる。モノリスカラム32を構成する無機質材料は、特に限定しないが、シリカやガラス材料を用いることができる。モノリスカラム32のマクロ孔表面は、適宜、オクタデシル成分などの表面処理やイオン交換性の樹脂などで表面処理することができる。
モノリスカラム32は、それ自体カラムとして利用可能な形態を採ることができ、その形態は特に限定されない。例えば、ディスク状体として、単独で又は複数個積層して用いることができる。このようなモノリスカラム32は、多数個のセラミックス等の無機質粒子を結合して所定形状の無機質構造体に成形したものを用いてもよいし、ゾル−ゲル法を用いて焼成を経て多孔質化したセラミックス等の無機質構造体を用いてもよい。このようなモノリスカラム32の作製方法は、特開2002−350412、特開2003−75420、特開及び特開2005−224167、特開2006−223960、特開2006−340649等に記載されている。
こうしたモノリスカラム32を、反応装置2の精製部30として組み込む場合には、モノリスカラム32の連続するマクロ孔の貫通方向と流路とが同方向となるようにするのが好ましい。また、モノリスカラム32における液体の流路方向を制限する観点から、モノリスカラム32をOリング内に嵌め込むようにしてモノリスカラムの側面からの液体の流出を抑制可能な程度のOリング内面の密着させることが好ましい。こうしてOリング内にはめ込んだモノリスカラム32は、固相体100の流路系60の一部のキャビティに収容される。収容時には、Oリングの外周面とキャビティの内壁との間がOリング自体あるいは他の部材によってシールされることが好ましい。
Oリングの材質としては、二トリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、」ブチルゴム、ウレタンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、フッ素樹脂などを用いることができる。
また、モノリスカラム32を熱収縮チューブにより圧締めして、固相体100のチェンバーに収容してもよい。このとき、精製部30のチャンバー内壁と熱収縮チューブの外周面とをシールしておくことが好ましい。熱収縮チューブとしては、アクリル樹脂、ポリエレフィン樹脂、フッ素樹脂、シリコーンゴム、ポリ塩化ビニル等を用いることができる。
モノリスカラム32を精製部30に備える場合、検体又は反応装置2で調製する含む溶液中の被験成分に吸着液を用いてモノリスカラム32に吸着後、洗浄液を用いて被験成分以外の夾雑物を排出させ、その後、溶出液を用いて被験成分をモノリスカラム32から溶出させることができる。モノリスカラム32は、以下の(1)〜(6)の点において、反応装置2における反応の迅速化及び装置のコンパクト化等に大きく貢献することができる。
(1)低圧力損失であり通液性が良好であることから、本来的に又濃縮によって粘度が高くなる傾向にある検体等を容易に通過させることができる。溶液を低粘度化しなくてもよい点において装置のコンパクト化に貢献している。
(2)相互に接続されて連通するマクロ孔を有するため、モノリスカラム32を加圧又は吸引することで液体をモノリスカラム32に送液したりモノリスカラム32から液体を排出させたりすることができる。このため、こうした加圧又は吸引により、カラム32内における液体移動を促進して、各種の試薬や溶液のカラム32への送液、カラム32からの排出を迅速に行うことができる
(3)加圧や吸引によって液体を供給及び除去できてモノリスカラム32において固液分離が容易である点において、自動化に寄与している。
(4)モノリスカラム32に被験成分を保持させた状態で洗浄液等の液体を吸引することで被験成分をモノリスカラム32中に濃縮又は乾固することが可能である。このため、溶出液において被験成分を高濃度化することができる。
(5)塩類が全く含まれていないか又はその後の濃縮又は乾固に差し支えない量にまで塩類量が抑制された溶出液でモノリスカラム32に保持させた被験成分を溶出させることで、当該溶出液を高度に濃縮又は乾固することができる。したがって、反応装置2を通じて溶液の液量を効果的に抑制でき、かつ高濃度化を容易に達成できる。
(6)溶出用液を次工程で用いる試薬や媒体とすることで、溶出液をそのまま次工程に供給することができ、工程を簡略化し迅速化することができる。
モノリスカラム32を反応装置2に用いることは、カラム溶出液の液量の抑制に有効である。したがって、モノリスカラム32の反応装置2への使用により、溶出液量を抑制しつつ被験成分を容易に精製することができ、溶出液中の被験成分の濃度を他のカラムや精製手段を用いた場合に比較して高濃度化することができる。反応装置2では、こうして液量が抑制され高濃度に被験成分を含有する溶出液を、さらに濃縮又は乾固することで、検体からの被験成分の抽出や固液反応のための前処理を行うことによって増加する溶出液の液量の全部又は一部を容易にキャンセルすることができる。この結果、後段の工程に対しても、当該工程の液の使用量を抑制でき、結果として高濃度及び小液量を容易に維持でき、反応の迅速化及び装置のコンパクト化を実現できる。
以上のことから、反応装置2を用いて行う1又は2以上の前処理反応の後でモノリスカラム32を用いた精製(溶出液の調製)と当該溶出液の濃縮又は乾固が可能に精製部30と後述する濃縮部40とを備えることで、各種前処理反応によって得られる被験成分を含む溶液の最終液量を極めて効果的に抑制し、これにより後段において使用する液量を抑制するとともに後段の反応を迅速化することができる。また、各種工程を実施する各部をコンパクト化することができる。さらに、最終的に固液反応に供給される溶液の液量の抑制と被験成分の高濃度化とを実現して、固液反応時間の短縮及び迅速化と同時に装置全体のコンパクト化に大きく貢献することができる。
特に、モノリスカラム32は被験成分が核酸であるとき、例えば、以下の方法により、無機塩類が含まれないかあるいはその後の濃縮又は乾固に不都合がない程度に無機塩類濃度が抑制された溶出液を得ることができる。一つは、核酸の吸着液としてグアニジン塩酸塩やグアニジンチオシアン酸などのカオトロピック塩溶液を吸着液として用いて、モノリスカラム32に核酸を吸着させ、その後、エタノールなどのアルコールを含有する水溶液でモノリスカラム32を洗浄し、水などの無機塩類濃度が抑制された溶出液(好ましくは水)で溶出する。吸着液や洗浄液には、適宜酢酸カリウムなどのカリウム塩を含むことができる(特開2005−224167)。また、他の一つは、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどのアンチカオトロピック塩の溶液を吸着液とし、エタノールなどのアルコールを含有する水溶液を洗浄液とし、トリス−塩酸緩衝液、リン酸緩衝液及び水など無機塩類濃度が抑制された溶液を溶出液(好ましくは水)とする(特開2006−340649)。
核酸をモノリスカラム32で精製する場合、好ましくは、硫酸アンモニウム等のアンチカオトロピック塩水溶液を吸着液とし、80%エタノール水溶液を洗浄液とし、蒸留水等の水を溶出液とする。これらの各種液を用いることで、モノリスカラム32からの核酸の溶出液中から塩類を効果的に排除できる。なお、こうした吸着液及び洗浄液をモノリスカラム32に供給し、その後、十分に吸引してモノリスカラム32からこれらの液を除去することが好ましい。一方、溶出液をモノリスカラム32に供給した後は、モノリスカラム32内において溶出液をしばらく滞留させた後、溶出液を排出するようにすることが好ましい。こうすることで、被験成分の回収率を向上させ、溶出液を高濃度化することができる。
モノリスカラム32を用いた精製では、モノリスカラム32における圧力損失を抑制することが好ましい。圧力損失が増大すると、精製部30のみならず反応装置2の全体で液体の移動が困難となり、実質的に固液反応を行うことが困難になる。モノリスカラムにおける圧力損失を効果的に低減するには、反応装置に組み入れる前にあらかじめ真空ポンプ等を用いてカラム内の脱泡処理をしておくと良い。モノリスカラムにおける圧力損失は、5kgf/cm2以下となるようにすることが好ましい。圧力損失が当該数値を超えると、液の漏洩頻度が高くなり、使用が困難となるからである。より好ましくは、2kgf/cm2以下である。
精製部30は、検体中から被験成分を精製分離するのに適用することができるし、被験成分を反応に適した状態に加工する前処理反応後において前処理反応生成物を精製するのに用いることができる。反応装置2においては、こうした精製部30は、検体導入部20の後段に備えることができる。また、後述する濃縮部40の前段に備えることができる。
(濃縮部)
反応装置2は、反応又はその前処理のために準備される溶液を調製又は貯留するとともに当該溶液の溶媒を留去して前記溶液を濃縮又は乾固可能な1又は2以上の濃縮部40を備えることができる。図2に示すように、濃縮部40は、反応ための必要な容量を備えるチェンバー42と試薬や前段からの溶液を受け入れるための注入口44aと半溶液を排出するための排出口44bとを備えている。チェンバー42の大きさは特に限定しないで、前処理反応等に必要な容量に設定することができる。
濃縮部40は、チェンバー42内の溶液の溶媒を留去して溶液を濃縮又は乾固可能に形成されている。溶液を濃縮するか乾固するかは必要に応じて適宜設定すればよい。溶液中に含まれる可能性のある無機塩類の種類や濃度によって決定してもよいし、また、後段の使用する試薬との関係で決定してもよい。
濃縮部40によれば、濃縮部40に貯留される溶液の液量又は濃縮部40での反応溶液の液量がたとえ増加しても、その場において濃縮又は乾固可能であるので、濃縮部40内の溶液の全量又は一部をキャンセルして、液量を抑制しかつ被験成分を高濃度に維持することができる。また、濃縮部40は、既に説明したように、精製部30からの溶出液が直接流入されるよう精製部30の直後の後段に備えられていることが好ましい。こうすることで、精製部30における精製によってたとえ液量が増えたとしても、得られた溶出液の全量又はその一部を容易にキャンセルできる。
したがって、濃縮部40を備えることで、反応装置2においては被験成分について高濃度で各種前処理反応や目的とする反応を実施できる。本発明者らによれば、前処理反応工程として実施されるゲノムDNAの断片化反応においては、通常の酵素濃度(1U/μl)では、反応時間が約120分であるところ、酵素濃度を10倍とすることで1分に短縮できることがわかっている。また、本発明者らによれば、断片化したDNAの標識工程についても、酵素濃度を10倍とすることで、従来約120分間であった標識時間を約20分間程度に短縮するできることがわかっている。このように、試薬及び被験成分の高濃度化は、目的とする反応以外の各種の液体を媒体とする反応の迅速化に寄与することができる。
濃縮部40は、加熱により溶媒を蒸発させ、適宜蒸発した溶媒をチェンバー42から排気するように形成することができる。チェンバー42内を加熱する手段は、特に限定しないで、ペルチェ素子など公知の加熱手段を採用できる。また、チェンバー42に空気などのガスを供給し排気したり、チェンバー42内のガスを吸引するようにして乾燥してもよく、これらに加熱手段による加熱を付加してもよい。こうしたチェンバー42内へのガスの供給や吸引は、別途説明する流体駆動部80を用いればよい。
図2に示すように、濃縮部40は、チェンバー42内に露出され溶液に対する撥液性を有してチェンバー42内のガスを排出可能な通気性材料46を備え、チェンバー42内のガスを通気性材料46を介して吸引可能な通気部48を備えることができる。通気部48からチェンバー42内のガスを吸引することで、チェンバー42内の溶媒を留去することができる。こうすることで迅速な溶液の濃縮又は乾固が可能になる。この場合においても、適宜チェンバー42内を加熱することが好ましい。また、通気部48からチェンバー42内を吸引することで、チェンバー42内において溶液の位置制御を容易に行うことができる。
通気性材料46は、濃縮部40に供給される溶液が接触する重力方向下面に配置されていることが好ましい。こうした部位に通気性材料46が配置されていることで、通気部48を介して溶液を攪拌、混合等することが容易であり、また、通気部48によって通気性材料46上における溶液の位置制御が容易であるため、結果として濃縮部40における溶液の位置制御が可能となる。
また、通気性材料46は、溶液が接触する重力方向下面の一部に備えられていてもよいし、その全体に備えられていてもよい。全体に通気性材料46を備える場合には、重力方向下面全体の任意の部位で溶液の位置制御が可能である。また、一部に備えられている場合には、当該部位にて確実に溶液を固定することができる。
通気部48は、例えば、通気性材料46から流体駆動系80に連絡されて通気性材料46からチェンバー42内を吸引可能に形成されていればよい。したがって、通気性材料46の一部又は全部を介してチェンバー42内部と連通していればよい。通気性材料46の一部からチェンバー42内を吸引可能とする場合には、当該一部においてのみ連通していてもよいし、吸引部位を移動させることができるように、通気部48が通気性材料46に沿って移動可能に形成されていてもよい。
通気性材料46をチェンバー42内の重力方向下面の全面に有し、かつ通気部48が通気性材料46の全面からチェンバー42内のガスを吸引可能である場合には、チェンバー42内の溶液中の溶媒を効果的に蒸発させることができ、迅速な濃縮又は乾固が可能である。また、チェンバー42内において気泡が発生した場合にも、容易に除去することができる。
通気性材料46が、ガスを双方向に流通可能である場合には、通気部48は、通気性材料46を介してチェンバー42内にガスを供給することができる。こうしたガス供給形態によれば、注入口44a及び排出口44b等の限定された流路系60を介したガス供給でないため、効果的に溶媒を留去できる場合もある。
図2に示すように、濃縮部40は、チェンバー42内の所定の一部において溶液を濃縮又は乾固可能であってもよい。予め設定した一部で溶液を濃縮又は乾固するようにすれば、後段で使用する試薬を試薬貯留部10から供給する部位又は到達が容易な部位等で濃縮することができ、濃縮後の被験成分を少量の試薬で確実に溶解させることができる。また、溶液の濃縮又は乾固部位は、前記濃縮部の反応後段側への排出口44b、すなわち、連絡部近傍としてもよい。こうすることで、試薬に溶解後直ちに後段に溶液を移動させる場合には、少量の溶液であってもロスなく後段に移動させることができる。
このような濃縮部40のチェンバー42の形態は特に限定しないが、例えば、図2に示すように、濃縮部40における溶液の流通方向を長手方向とし、溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とする細長い形状とすることができる。こうした形態を取ることで、溶液の流通方向が長手方向であるために、例えば、このチェンバー42の注入口44aを開放し排出口44bを閉じた状態で、重力方向下面の全体からチェンバー42内を吸引し、または長手方向後段側の端部の通気性材料46をチェンバー42内を吸引することで、溶媒が留去されるに伴い濃縮された溶液は、チェンバー42内の後段側端部に集中される。このときチェンバー42が細長い形状であると、後段側端部に集中した濃縮液は、チェンバー42内を外部から視認可能の場合、排出口44bを基点として注入口44a側に伸びるバー状として視認できる。すなわち、こうした構成によれば、濃縮液自体が濃縮程度の効果的なインジケーターとして機能することができる。この結果、濃縮液量を容易に目視又はCCD等の検出手段により検出することができ、目的の濃縮程度又は乾固を検出したら、濃縮動作を停止するなどの制御や調節が可能となる。濃縮部40は、好ましくは、長楕円形状か長方形形状である。
なお、濃縮部40を濃縮のインジケーターとして機能させる場合には、インジケーターとしての視認性を向上させるために、上記のような所定の細長い長楕円形状や長方形形状とするときには、容量等の関係で前処理反応等をその濃縮部40で行うことが適当でない場合がある。そのような場合には、濃縮部40は濃縮のためにのみ機能させて、当該濃縮部40で濃縮又は乾固させたものに次工程で使用する試薬を供給して、後段の反応部70に送液するようにすることができる。
このような細長い形状のチェンバー42の短手方向の幅は、注入口44a及び排出口44bの幅の4倍以下であることが好ましい。4倍以下であると、注入口及び排出口のそれぞれの近傍から通気性材料、或いはバルブ開閉を介してのチェンバー内を吸引等した攪拌又は混合について、短手壁面近傍の溶液へも効果的に実施することができる。より好ましくは、2倍以下であり、さらに好ましくは1倍以下である。
濃縮部40における通気性材料46及び通気部48は、チェンバー42内の溶液を攪拌又は混合する混合部としても用いることができる。すなわち、濃縮部40がこうしたチェンバー42を備える場合、注入口44a及び排出口44bのそれぞれの近傍から通気性材料46を介してチェンバー42内を吸引するなどして、交互に又は断続的に差圧を形成することで、チェンバー42内の溶液を攪拌又は混合することができる。この結果、濃縮部40における各種反応を効果的に実施することができる。特に、高濃度の被験成分を少量の試薬で反応させる場合に有効である。さらに、チェンバー42内におけるこうした差圧形成は、濃縮部40における濃縮又は乾固を促進することができる。この場合には、差圧形成してチャンバー42内の溶液を攪拌等に都合のよい吸引部位に適数個の通気部48を設けて当該部位の通気性材料46からチェンバー42内を吸引可能とするか、あるいは適切な吸引部位に1又は2以上の通気部48を移動可能に設けるなどすればよい。
なお、こうした差圧形成は、必ずしも通気性材料46及び通気部48を介したものに限定されない。濃縮部40に付随して設けられたバルブの開閉と流体駆動部80の動作によっても形成することができる。
濃縮部40は、このように反応ラインにおいて容易に溶液を濃縮又は乾固することができる。このため、各前処理反応及び固液反応を迅速化できるとともに装置をコンパクト化することができる。さらに、濃縮部40で各種反応を実施することができると同時に溶液の濃縮又は乾固を実施することができる点、すなわち、2つの工程を一つの要素において実施することができる点で工程の迅速化と装置のコンパクト化を実現することができる。これに加えて、濃縮部40は、溶液の攪拌や混合が可能なときには、反応装置2において、貯留した溶液の濃縮又は乾固、反応及び混合を実施することができる多用途(反応と混合、濃縮と混合、濃縮と反応と混合)の装置要素として機能できる。したがって、溶液の攪拌や混同可能な濃縮部40を備えることで反応の迅速化を一層容易に実現でき、かつ反応装置2の一層のコンパクト化を実現できる。
濃縮部40は、必ずしも濃縮を目的として反応装置2に備えられていなくてもよく、チェンバー42内の溶液を攪拌又は混合するためにのみ利用する混合部としてのみ反応装置2に備えられていてもよい。
以上のことから、濃縮部40は以下の形態を備えることが好ましい。すなわち、濃縮部40は、チェンバー42内に露出され、溶液に対する撥液性を有してチェンバー42内のガスを排出可能な通気性材料46を、チェンバー4内の重力方向下面のほぼ全面に有し、チェンバー42内のガスを通気性材料46を介して吸引可能な通気部48を備え、通気性材料46の所定の一部に溶液を濃縮又は乾固可能であり、当該所定の一部が試薬貯留部10からの試薬貯留部位でとすることができる。さらに、この濃縮部40は、例えば、濃縮部40における溶液の流通方向を長手方向とし、溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とする細長い形状とし、短手方向の幅は、注入口44a及び排出口44bの幅の4倍以下とすることができる。
なお、通気性材料46は、チェンバー42内で接触する溶液に対して撥液性を備えることで、通気部48における液密性を高めることができる。通気性材料46は、溶液が水性であるなど極性が高い場合には、チェンバー42内に露出される表層側には疎水性を備え、液体が有機溶媒であるなど極性が低い場合には、そのような表層側には親水性を備えることができる。したがって、溶液が水性の場合には、親水性材料の表層に疎水性材料をコートしたものなど、表層側において適切な撥液性を備えていれば足りる。また、通気性材料46は、チェンバー42内のガスを排出可能であればよいが、好ましくは、双方向にガスを流通可能である。さらに、空気や窒素などの不活性ガスに対して良好な排気能又は流通能を備えていればよい。好ましくは空気に対する良好な排気能又は流通能を備えている。
こうした通気性材料46としては、例えば、プラスチックなどの有機質材料や無機質材料に微細な孔部(貫通孔)を形成したものが挙げられる。こうした孔部は、レーザ加工等により形成することができる。孔部のサイズは特に限定されないが、1μm程度から数百μm程度の範囲で適宜選択することができる。また、こうした通気性材料46としては、多孔質有機質材料や多孔質無機質材料を用いることもできる。このような多孔質膜の平均細孔径は、0.01μm以上10μm以下であることが好ましいが、膜厚方向にガス透過性を制御しようとする場合には、平均細孔径は、0.1μm以上0.3μm以下程度であることが好ましい。
通気性材料46に用いる典型的な疎水性有機質材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリメチルペンテン及び1,3−シクロヘキサジエン系重合体等が挙げられる。
通気部48を構成する通気性材料46の材質、孔部の大きさや個数又は平均細孔径や気孔率等を必要に応じて選択することで通気部48を介した通気方向や通気量等を調節して好ましい送液制御が可能となる。
なお、通気性材料46は、濃縮部40に形成した凹部状等のチェンバー42の開口を遮断するように付与することができる。このような開口部を通気性材料46で閉鎖するのに際しては、通気性材料46の種類等に応じて、接着、粘着、溶着、熱圧着等の従来公知の技術を用いることができる。
(他の反応部)
反応装置2は、目的とする液体媒体反応又はその前処理のために準備される溶液を調製又は貯留する他の反応部70を備えることができる。すなわち、他の反応部70は、こうした溶液を調製するが、当該溶液の溶媒を留去して前記溶液を濃縮又は乾固可能でない溶液貯留部である。前後の工程の関係や容量等の関係で固液反応部50と別個にしたり、また、濃縮又は乾固する濃縮部40とは個別に前処理反応のみのための反応部を設けることが好ましい場合には、こうした他の反応部70を設けることができる。他の反応部70は、濃縮部40と同様、楕円形状か長方形形状であることが好ましい。
(固液反応部)
反応装置2は、固液反応部50を備えることができる。図3に示すように、固液反応部50は、反応ためのチェンバー52と、固液反応用の溶液中の被験成分が相互作用するキャプチャー57を備える固相56とを備えることできる。この固相は、反応装置2の各部を備えることのできる固相体100とは別個であってもよいし、同一であってもよい。好ましくは、固液反応毎に交換可能なカートリッジ形態である。また、固液反応部50には、適当な温度制御手段を備えることができる。図1において、固液反応部50は、交換可能な反応カートリッジ58の形態を備えている。
固液反応部50において用いるキャプチャー57は特に限定しないで固液反応の種類に応じて選択することができる。核酸ハイブリダイゼーションを伴う場合には、プローブ、クローン(アレイCGHの場合)等であり、PCRの場合には、プライマーであり、抗原抗体反応の場合には、抗原又は抗体等とすることができる。なお、核酸ハイブリダイゼーションの場合、静置反応のほか循環反応によっても実施することができる。
チェンバー52は、固液反応のための反応液が注入される注入口54aと排出口54bとを備えることができる。チェンバー52の形状は、固液反応の種類に応じ、またその実施形態に応じて適宜選択することができるが、好ましくは、濃縮部40と同様、固液反応部50における溶液の流通方向を長手方向とし、溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とする細長い形状とすることができる。こうした細長い形状を採ることで、固液反応用の反応液とキャプチャーを固定化した固相表面に十分に核酸させることができる。固液反応部50は、好ましくは、長楕円形状か長方形形状である。このチェンバー52は、好ましくは、その短手方向の幅が、注入口54a及び排出口54bの開口幅の4倍以下であることが好ましい。こうした幅であると、固液反応用の反応液を、キャプチャーを固定化した固相表面にチェンバー短手壁面近傍を含めて均一に注入、排出ができ、固相表面上への気泡残留を回避することができる。加えて、固液反応用の反応液を攪拌等する場合、チェンバー短手壁面近傍の溶液を含めて効果的に実施することができるからである。好ましくは、2倍以下であり、さらに好ましくは1倍以下である。
固液反応部50は、例えば、図3に示すようなカートリッジ形態を採ることができる。この反応カートリッジ58は、キャプチャー57が固定化された固相56に対して、注入口54a、排出口54bを備えて固相56表面に所定の容量のチェンバー52を形成できるカバー部材55を接着剤や粘着剤によって装着及び固定できるようになっている。このようなカートリッジ形態を採ることで、固液反応に応じた固相56及びキャプチャー57を容易に準備できる。
固液反応部50には、精製部30及び濃縮部40で前処理反応工程を経て液量が抑制され、被験成分が高濃度に維持された固液反応用の溶液が供給される。このため、固液反応を短時間で実施することができる。本発明者らによれば、静置法であっても被験成分濃度を高めることで顕著に反応時間を短縮できることがわかっている。例えば、静置法による核酸ハイブリダイゼーションおいては、被験成分である核酸濃度を通常の15倍〜40倍程度とすることで、反応時間を10分の1以下程度とすることができることがわかっている。以上のことから核酸ハイブリダイゼーションにおいては、被験成分としての核酸の濃度を0.3μg/μl以上とすることが好ましい。当該濃度は、通常のアレイCGHにおけるハイブリダイゼーション濃度の15倍以上であり、核酸ハイブリダイゼーション反応時間を10分の1以下程度に短縮することができる。
このように固液反応部50においては、被験成分濃度を高めることが固液反応の迅速化に有効であるほか、固液反応部50のコンパクト化にも寄与している。核酸濃度を例えば上記のように15倍〜40倍程度とすることは換言すれば、固液反応部50のチェンバー52の溶液を40分の1から15分の1程度にできるからである。
反応装置2は、固液反応部50を洗浄可能であることが好ましい。こうすることで、固液反応終了後の試料の検出工程直前までを自動化してヒューマンエラーを抑制して実験精度を高めることができるとともに、全体としての分析時間を短縮することができる。なお、洗浄液は、試薬貯留部10に予め貯留しておくことができる。
洗浄方法は特に限定しないが、洗浄液の流体圧力が30kPa以上であることが好ましい。この圧力以上であると、チェンバー短手壁面近傍を含んで、固相表面上を均一に洗浄液が流れるからである。非特異結合した核酸を安定的に除去できるため、高精度の結果を得ることができる。
また、固液反応部50は、洗浄液を連続的に通液したときであっても、チェンバー52の全体に洗浄液を行きわたらせることができるため、上記した細長い形状であると、洗浄を短時間で行うことができる。また、細長い形状である方が、同流量の洗浄液を供給した場合のチェンバー内の通液速度が速い。洗浄結果を左右する大きな要因は流体圧力であるが、通液速度にも多少依存する。そのため、通液速度の速い条件の方が、短時間で、かつ少量の洗浄液で洗浄を行うことができる。
また、固液反応部50はチェンバー52内を乾燥可能であることが好ましい。洗浄後の固相56上のキャプチャー57のアレイを乾燥すれば、その後、適切なアレイスキャナー等の検出装置を用いて直ちに解析が可能である。
(流路系)
流路系60は、これらの各部を連絡するとともに後述する流体駆動系により送液や乾燥、濃縮のためのガス又は試薬、各種溶液等の液体を流通可能な配管系である。流路系60は、好ましくは、上記各部を備える固相体100内に備えられている。流路系60は、既に説明したように、マイクロマシンやMEMSの製作技術、各種のエッチング技術、リソグラフィ技術、接合技術、成膜技術、レーザ等による精密微細加工技術、超音波技術等を適宜組み合わせて用いることができる。また、マイクロ塑性加工技術、マイクロ射出成形技術、マイクロ光造形技術などのマイクロ成形技術を用いて形成することができる。
(流体駆動部)
本発明の反応装置2は、流路系60を介して検体、試薬及び各部での反応液等を送液したり排気したりするための流体駆動部80を備えている。流動駆動部80は、同時に流路系60や各部内のガスを吸引したりガスを供給したりすることも行うことができる。さらに、流体駆動部80は、同時に、上記各部や流路系60に付随して備えられている各種のバルブも含んでいる。
液体の流通とガスの流通とは2以上の流体駆動部80で制御してもよいし、同一の流体駆動部80を用いて制御してもよい。こうした流体駆動系80としては、公知のマイクロバルブ、ダイヤフラムポンプのほか、撥液性の通気性材料を用いた送液機構を採用することができる。
撥液性の通気性材料を用いた送液機構は、既に説明した濃縮部における通気部と同様の構造を有することができる。濃縮部40においては、通気部48にからのチェンバー42内のガスの吸引をチェンバー42内での溶液の位置制御に用いたが、溶液の位置制御は流路系60等においては溶液の送液として実施することができる。すなわち、流路系60においても、適宜、溶液に対して撥液性を有する通気性材料を介して流路系60の一部から流路系60内のガスを吸引することで、流路系60に差圧を形成して、吸引箇所まで溶液を到達させることができる。したがって、吸引箇所を流路系60における液体の到達部位に応じて移動等させることで結果として送液することができるのである。
(制御部)
本発明の反応装置2は、上記各部における検体の精製、前処理、固液反応を実施するための試薬等の液体の流通、ガスの流通及びバルブの開閉、温度制御等を実施するための制御部200を備えることができる。このような制御部200は、反応装置2の一部であってもよいが、反応装置2に接続された外部のコンピュータとすることもできる。制御部200は、各種センサにより各部の状態を監視するとともに、予め組み込まれたプログラムにより流路系60上のバルブの開閉、流体駆動部80によるガス流通及び温度などを制御することができる。
次に、反応装置2を用いて血液からDNAを抽出してアレイCGHを実施する工程の一例について図1及び図4に基づいて説明する。以下の説明では、DNAを精製し、精製したDNAを断片化し、標識し、標識したDNAをCGHアレイに供給してアレイCGHを実施する工程について説明する。なお、試薬カートリッジ16の各試薬貯留部10には、それぞれ必要な試薬の必要量が予め充填された状態で反応装置2に装着され、固液反応部50の固相56にはアレイCGHのためのクローンDNAが予め固定化されて準備されている。また、以下の説明において、各種試薬の送液やガスの吸排は、制御部200に予め記憶されているプログラムに基づいて流体制御部80と流路系60の各部にあるバルブの開閉とを制御して実行する。
(検体導入工程)
検体導入工程は、検体導入部20にて実施する。検体である血液と血液をDNAの精製用の精製部30のモノリスカラム32に吸着させるためのDNA精製用の吸着用液とともに検体導入部20に導入する。なお、吸着用液は試薬貯留部10から供給されるようにしてもよい。
(DNA精製工程)
次に、検体中のDNAを精製するDNA精製工程をDNA精製用の精製部30にて実施する。血液と吸着用液との混合液を精製部30に導入及び排出させるように送液する。混合液中の被験成分であるDNAは吸着用液の作用によりモノリスカラム32に吸着される。その後、DNA精製用の洗浄用液をモノリスカラム32を通過し排出して反応ライン外に廃棄されるように送液する。さらに、DNA精製用の溶出用液をモノリスカラム32を通過して精製部40に貯留されるように送液する。精製部40に送液される溶出液は、被験成分であるDNAを含有している。
(濃縮工程1)
濃縮工程1は、図1において反応ラインにおける1つめの濃縮部40で実施する。濃縮部40の通気性材料46から通気部48を介してチャンバー42内を吸引することで精製部30から溶出されてチャンバー42に貯留された溶出液の溶媒を留去し、乾固する。濃縮工程1では、チェンバー42内を加熱することが好ましい。
(DNA断片化工程)
DNA断片化工程は、濃縮工程1を実施した濃縮部40で実施する。断片化工程は、濃縮部40にDNA断片化用溶液を貯留するように送液し、乾固物を溶解してDNAを断片化する。DNAの断片化は、濃縮部40内で所定時間インキュベートして行う。チェンバー42は酵素反応に適切な温度に加温されることが好ましい。濃縮部40では、チェンバー40内で交互又は断続的に差圧を形成して均一にこれらを混合してDNA断片化工程を実施できる。
(断片化DNAの精製工程)
断片化DNAの精製工程のうち、濃縮部40で吸着用液と混合した断片化DNA反応液を、直後にある精製部30に送液して実施する。まず、吸着用液を濃縮部40に供給しライン外へ廃棄されるように送液し、その後、精製部30に吸着用液と断片化反応液との混合液に供給するとともにライン外へ廃棄するように送液する。引き続き、洗浄用液を精製部30に供給しライン外へ廃棄するように送液し、さらに、溶出用液を精製部30に供給し、後段の濃縮部40に貯留されるように送液する。精製部40に送液される溶出液は、被験成分である断片化DNAを含有している。
(濃縮工程2)
濃縮工程2は、図1において反応ラインにおける2つめの濃縮部40で実施する。濃縮工程2は、濃縮工程1と同様、濃縮部40の通気性材料46から通気部48を介してチャンバー42内を吸引することで精製部30から溶出されてチャンバー42に貯留された溶出液の溶媒を留去し、乾固する。濃縮部40は加熱されることが好ましい。
(標識工程)
標識工程は、濃縮工程2を実施した濃縮部40で実施する。標識工程は、濃縮部40に標識用液(反応用バッファ)を貯留するように送液する。そして、チェンバー42内を加熱して反応用バッファ中でDNAが一本鎖となるように加熱して変性させ、その後速やかに冷却する。続いて、標識用酵素液(酵素、基質及びCy3標識)を濃縮部30に貯留するように送液する。その後、チェンバー42内で標識反応を適温下で実施する。濃縮部40では、チェンバー40内で交互又は断続的に差圧を形成して均一にこれらを混合して標識工程を実施することができる。
(標識DNAの精製工程)
標識DNAの精製工程は、吸着用液とともに標識反応液を反応部70に貯留するように送液し、その後、直後の精製部40を通過し、ライン外に廃棄するように送液する。引き続き、洗浄用液を精製部40を通過しライン外に廃棄するように送液し、さらに、溶出用液を精製部40を通過し、直後の濃縮部30に貯留するように送液する。精製部40に送液される溶出液は、被験成分である標識DNAを含有している。
(濃縮工程3)
濃縮工程3は、図1において反応ラインにおける3つめの濃縮部40で実施する。濃縮工程3は、濃縮工程1と同様、濃縮部40の通気性材料46から通気部48を介してチャンバー42内を吸引すること直前の精製部30から溶出されてチャンバー42に貯留された溶出液の溶媒を留去し、100分の1程度にまで濃縮する。なお、この濃縮工程3では、次工程が固液反応工程であるため、固液反応を実施するのに適当な反応液容量となるように濃縮されればよく乾固するよりも適量に濃縮することが好ましい場合がある。
(アレイCGH反応溶液調製工程)
アレイCGH反応に先だって、そのための反応溶液を調製する工程を、濃縮部40で実施する。濃縮された標識DNA溶液にアレイCGHのための必要な成分を含んだ溶液を濃縮部40に貯留されるように送液する。濃縮部40では、チェンバー40内で交互又は断続的に差圧を形成して均一に混合して反応溶液を調製することができる。
(アレイCGH反応工程)
濃縮部40で調製したアレイCGH反応溶液を固液反応部50に貯留するように送液し、その後、所定時間、所定条件下でハイブリダイゼーションを実施する。
(洗浄工程)
所定時間ハイブリダイゼーションを実施後、チェンバー52から反応溶液を排出しライン外に廃棄するとともに、洗浄用液を固液反応部50を通過するように供給する。
(乾燥工程)
洗浄用液を排出後、固液反応部50にガス(空気)を供給して固相56上のキャプチャー57のアレイを乾燥する。
その後、反応カートリッジ58を反応装置2から取り外し、適切なスキャナーにより標識に基づく蛍光を観察する。検出手段は特に限定されない。標識が付与されている場合には、付与された標識を検出できる検出手段であればよく、また、標識によらないでハイブリダイゼーション産物を電気的にあるいは化学的に検出するものであってもよい。
以上説明したように、本発明の反応装置によれば、装置内における各種処理によって付加された液体の量の全部又は一部を濃縮部によってキャンセルしつつ、後段の反応を実施することができる。この結果、装置内において多工程を実施しても、液量の増大を抑制するとともに被験成分を高濃度化でき、結果として固液反応の迅速化を達成できる。同時に、装置全体における反応の迅速化とコンパクト化も達成できる。また、コンパクトに自動化可能であるため、遺伝的情報をはじめとする生化学情報を簡易に精度よく取得することができる。
また、通気性材料と通気部とを介してチェンバー内のガスを吸引可能な濃縮部を備えることで、各種溶液の濃縮又は乾固及び反応とが可能であるため、工程の迅速化と装置のコンパクト化が容易化されるとともに、さらに濃縮部において溶液の攪拌混合を可能とすることで、一層工程の迅速化と装置のコンパクト化が容易となる。
以上、本発明の反応装置について説明したが、上記実施形態に基づけば、本発明の他の実施形態には、固液反応部までの工程を各種前処理反応工程のみを実施する前処理装置も含まれる。この前処理装置によれば、煩雑な処理を簡易にかつコンパクトに実施できる。前処理装置は、以上説明した各種形態の本発明の反応装置において固液反応部を備えていない形態で実施することができる。
また、本発明の他の実施形態は、固液反応以降の工程を実施する各部のみを備える構成とすることもできる。例えば、固液反応工程を実施する固液反応部と、固液反応後の洗浄工程を実施するための洗浄溶液貯留部と洗浄液を固液反応部に通液する流体駆動部とを備える固液反応装置としてもよい。さらに、この固液反応装置は、前記流体駆動部により固液反応部におけるアレイ等を乾燥するためのガスを流通可能になっていてもよい。さらに、本発明の他の実施形態は、固液反応後の洗浄工程及び乾燥工程を実施する各部のみを備える構成とすることもできる。
また、本発明の他の実施形態には、制御部を備えない反応装置も含まれる。制御部は、反応装置とは別に設置される形態としてもよい。
さらに、以上の説明においては、濃縮部40の多くはその濃縮物又は乾固物に対して新たな試薬を添加して反応する反応場としても機能しているが、濃縮部40のみとして機能させ、濃縮物又は乾固物についての反応部70を別途設けるようにしてもよい。特に、濃縮部40を同時に濃縮インジケーターとして使用する場合において、濃縮物又は乾固物の次段の反応は、濃縮物又は乾固物に次工程の試薬を供給し溶解後に反応部70に送液して、当該反応部70で実施するようにすることが好ましい。
本発明の反応方法によれば、精製、断片化、標識等の各種前処理によって付加された液体の量の全部又は一部を濃縮工程によりキャンセルし、後段を開始する際の液量の増加を抑制することができる。このため、最終の反応工程に至るまで多工程を要する場合であっても、液量の増大を抑制するとともに、被験成分を高濃度化して結果として目的とする最終反応の迅速化を達成できる。この結果、一般に多工程を要する遺伝的情報をはじめとする生化学情報を簡易に精度よく取得することができる。
また、本発明の他の実施形態には、最終の反応工程に至る前処理工程のみを実施する前処理方法としての実施形態も含まれる。
以上の説明では、本発明の反応装置及び反応方法を、液体を媒体とする反応を固液反応として固液反応部を備える反応装置及び固液反応工程を実施する反応方法として説明したが、本発明の反応装置及び反応方法は固液反応装置及び固液反応方法に限定するものではない。固液反応部及び固液反応工程は、目的とする反応に応じて、気−液、液−液反応などの界面反応のほか、通常の液体媒体反応を実施する反応部及び反応工程としても実施することができる。
なお、本発明の反応方法は、以下の実施形態を採ることができる。
(1)液体を媒体とする反応方法であって、
前記反応又はその前処理のために準備される溶液を調製又は貯留するとともに当該溶液の溶媒を留去して前記溶液を濃縮又は乾固可能な濃縮部を備える反応装置を用い、
前記反応又はその前処理のために準備される溶液を調製する溶液調製工程と、
前記溶液を精製して精製液を取得する精製工程と、
前記精製液を前記濃縮部で濃縮又は乾固する濃縮工程と、
を備える、方法。
(2)前記精製液は、精製カラムからの溶出液である、(1)に記載の方法。
(3)前記精製カラムは、モノリスカラムである、(2)に記載の方法。
(4)前記濃縮工程は、前記濃縮部内の所定の一部に前記精製液を濃縮又は乾固する工程である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記濃縮工程は、前記精製液を乾固する工程である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記濃縮工程は、前記濃縮部内の吸引又は加熱を伴う工程である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記濃縮工程の後で、
前記濃縮部において、前記濃縮又は乾固による濃縮物又は乾固物について前記固液反応又はその前処理のために準備される溶液を調製する後段の溶液調製工程を実施する、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記液体を媒体とする反応は固液反応である、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記濃縮部は、前記濃縮部内に露出され前記反応液に対する撥液性を有して前記濃縮部内のガスを排出可能な通気性材料と、前記濃縮部内のガスを前記通気性材料を介して吸引可能な通気部とを備え、
前記通気部からのガス吸引により前記濃縮工程を実施する、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記濃縮部は、前記濃縮部内において差圧を形成して前記溶液を混合可能であり、
前記濃縮工程の後で、
前記濃縮部において、前記濃縮又は乾固による濃縮物又は乾固物について前記反応又はその前処理のために準備される溶液を、前記差圧を形成して混合しつつ調製する後段の溶液調製工程を実施する、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)前記濃縮部は、前記濃縮部内において露出され前記反応液に対する撥液性を有して前記濃縮部内のガスを排出可能な通気性材料と、前記濃縮部内のガスを前記通気性材料を介して吸引可能な通気部とを備えており、
前記後段の溶液調製工程は、前記差圧を、前記通気部からの吸引によって形成する工程である、(10)に記載の方法。
(12)前記精製工程は、水溶液である精製液を取得する工程である、(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)前記反応の被験成分は核酸である、(1)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14)前記反応は固液反応である、(1)〜(13)のいずれかに記載の方法。
本発明の反応装置及び反応方法によれば、各種疾患遺伝子、体質遺伝子などの各種遺伝子の塩基配列、変異、欠損や増幅や発現状況のほか、SNPs等に関する患者個人のデータを容易に得ることができる。さらに、この結果、薬剤感受性、副作用、疾患名、治療予後などの診断を個別の生化学的情報に基づいて行うことができるため個別化医療を促進できるとともに、予防医療を促進することができる。
本発明の反応装置及び反応方法は、各種の遺伝子検査装置及び遺伝子検査方法又はこれらの前処理装置及び前処理方法として利用できる。例えば、臨床検査・診断、医薬スクリーニング、医薬、法医学における遺伝子識別、環境分析、食品検査、法医学、醸造、漁業、畜産、農産製造、農林業等の分野における遺伝子検査を始めとする各種生化学検査装置及び検査方法又はそれらの前処理装置及び前処理方法として利用することができる。
本実施例では、図1に模式的に示す反応装置を製作してアレイCGHを適用系とした抽出、断片化、標識及びハイブリダイゼーションの各種溶液の微量化及び反応の短時間化を確認した。また、各反応工程におけるDNA回収量を評価した。
<断片化>
断片化は断片化反応とその反応液の濃縮が可能な濃縮部で行った。また、断片化は以下の工程で行った。DNA断片化後の精製はモノリスカラム(φ2mm×2.6mm)を装着した精製部で行った。
1.反応装置の所定の箇所にサンプル,試薬等をセットする。
・断片化反応サンプル(0.24μg/10μL)*DNA抽出後の状態
・断片化バッファー(0.22μL)
・断片化酵素(1.94μL)
・吸着バッファー(10.8μL)(4M硫酸アンモニウム水溶液)
・洗浄バッファー(84μL)(80%エタノール水溶液)
・溶出バッファー(5μL)(水)
2.反応サンプルを濃縮部にて乾固状態にする
3.DNA断片化用液(断片化バッファーと断片化酵素)を濃縮部に送液・混合
4.酵素反応37℃、1分
5.吸着場バッファーを酵素反応溶液と併せてモノリスカラムに通液して廃棄
6.洗浄バッファーをモノリスカラムに通液して廃棄
7.溶出バッファーをモノリスカラムに通液して濃縮部に回収
8.本来は次工程である標識工程のためにカラムからの溶出液を乾固させるが、モノリスカラムの評価のために溶出液を回収して吸光度測定を実施
9.溶出液を濃縮部にて乾固
<標識>
反応装置にて断片化し精製した溶出液を反応装置における標識に適用した。標識反応は反応液を濃縮可能な濃縮部で行った。標識後の精製にはモノリスカラム(φ2mm×4.6mm)を用いた。標識は以下の工程で行った。
1.前処理装置の所定の箇所にサンプル,試薬等をセットする。
・乾固物(断片化DNA)(0.19μg)*断片化後の乾固状態
・標識バッファー(7.07μL)
・dCTP Mixture(1.9μL)
・Cy3−dCTP(1.14μL)
・標識酵素液(1.4μL)
・吸着バッファー(57.5μL)(4M硫酸アンモニウム水溶液)
・洗浄バッファー(300μL)(80%エタノール水溶液)
・溶出バッファー(18μL)(水)
・20×Cot−1DNA(0.44μL)
・MM#1(5.6μL)
・5×yeast tRNA(0.16μL)
・20%SDS(1.6μL)
2.標識バッファーを濃縮部に送液・混合
3.熱変性95℃、5分
4.冷却4℃、10分
5.dCTP Mixture、Cy3−dCTP、標識酵素を濃縮部に送液・混合
6.酵素反応37℃、40分
7.吸着バッファーを酵素反応溶液と併せてモノリスカラムに通液して廃棄
8.洗浄バッファーをモノリスカラムに通液して廃棄
9.溶出バッファーをモノリスカラムに通液して濃縮部に回収
10.本来は次工程である反応工程のために溶出液を乾固させるが、モノリスカラム評価のために溶出液を回収して吸光度測定を実施
11.溶出液を濃縮部で乾固
12.20×Cot−1DNA、MM#1、5×yeast tRNA、20%SDSを濃縮部に送液して反応液を調整
なお、このハイブリダイゼーション溶液におけるDNA濃度は従来法である比較例の15倍であった。
<固液反応(ハイブリダイゼーション)>
図3に示す構成を有する容積8μlの固液反応チェンバーを準備した。固相には予め目的とするクローンDNAが固定化されているCGHアレイを用いた。次に、この固液反応チェンバーを、マイクロバルブ、ダイヤフラム式マイクロポンプ及び洗浄用液タンクを備える反応装置にセットした。このとき固液反応チェンバーの注入口及び排出口のそれぞれはOリングを介して反応装置のマイクロバルブに連絡されるように接合した。
*マイクロバルブ(高砂電気工業社製 LV−2−MFF)
ハイブリダイゼーション溶液を反応チャンバーに注入後、以下の条件でハイブリダイゼーションを行った。
反応時間:4時間
反応温度:42℃
反応液量:8μl
上記反応時間経過後、以下の条件で洗浄を実施した。
洗浄時間:総計7分
洗浄温度:42℃
洗浄液量:各500μl
洗浄方法:送液洗浄(各洗浄用液を固液反応チェンバーの注入口から注入し、排出口から排出するように送液)
洗浄溶液:
(1)2×SSC溶液を1分送液
(2)50℃ 50%ホルムアミド/2×SSC溶液1分送液
(3)50℃ 2×SSC/0.1%SDS溶液を2分送液
(4)PN Buffer溶液1分送液
(5)2×SSC溶液1分送液
洗浄後、マイクロポンプからエアーを1分間送風して乾燥した。その後スキャナー(Agilent Technologies社製Microarray Scanner)にて蛍光測定を行った。数値化解析ソフト(Axon 社製 Gene Pix.Pro)にて蛍光シグナル強度の数値化をした。さらに、数値化解析を行った。
次に、DNA断片化及び標識についての比較例として、細胞工学 Vol.23 No.3 2004記載の手順に従って、DNAを断片化、標識した。また精製にはそれぞれエタノール沈殿を用いた。また、こうして得られた標識DNAに、以下の反応試薬を混合してハイブリダイゼーション溶液(120μl)とした。
MM#1:84μl
Yeast tRNA:12μl
20%SDS:24μl
なお、ハイブリダイゼーションは、図3に示す構成で容積120μlの固液反応チェンバーを別途準備した。実施例と同様のCGHアレイを用いた。
ハイブリダイゼーション溶液を反応チャンバーに注入後、反応チェンバーをオーブン(ADVANTEC社製FV-320)にセットし、以下の条件でハイブリダイゼーションを行った。
反応時間:48時間
反応温度:42℃
反応液量:120μl
上記反応時間経過後、以下の条件で洗浄を実施した。
洗浄時間:総計70分
洗浄温度:室温及び50℃
洗浄液量:各250ml
洗浄方法:浸漬洗浄
洗浄溶液:
(1)室温、2×SSC溶液によるリンス洗浄
(2)50℃、50%ホルムアミド/2×SSC溶液中にて15分浸漬洗浄
(3)50℃、2×SSC/0.1%SDS溶液中にて30分浸漬洗浄
(4)室温、PN Buffer溶液中にて15分浸漬洗浄
(5)室温、2×SSC溶液中にて5分浸とう洗浄
洗浄後、アレイを遠心(1000rpm×3分)して乾燥し、その後実施例と同様にして蛍光測定〜解析を行った。
<断片化DNAの回収結果>
断片化工程に用いたゲノム量(0.24g)についての回収結果を表1に示す。表1に示すように、本実施例では、安定して0.19μg(回収率約81%)を回収でき、従来法である比較例と同等であった。以上のことから、従来法と同等レベルでのDNAの断片化及び断片化DNAの回収が可能であることがわかった。また、従来法ではDNA断片化工程に要する時間は135分であったのに対し、本実施例では9分に短縮することができた。したがって、本実施例の反応装置によれば、意図した量のDNAを回収可能であるとともに工程を顕著に短時間できることがわかった。
<標識DNAの回収結果>
標識工程に用いたDNA量(0.19μg)についての回収結果を表2に示す。表2に示すように、本実施例では、安定して2.5μg(回収率約13倍)を回収でき、従来法である比較例と同等であった。以上のことから、本実施例によれば、従来法と同等レベルでのDNA標識及び標識DNAの回収が可能であることがわかった。また、従来法では、標識工程時間が270分であったのに対し、本実施例では70分に短縮することができた。したがって、本実施例の反応装置によれば、意図した量の標識DNAを回収が可能であるとともに工程を顕著に短縮できることがわかった。
<ハイブリダイゼーション結果>
実施例1及び比較例によるアレイCGHによる蛍光シグナル比log(Cy3/Cy5)の比較結果を図5に示す。図5に示すように、従来法との蛍光シグナル比Log2(Cy3/Cy5)は、相関係数0.8573を示しており、データ相関のある結果が得られた。また、図6に実施例1によるスキャン画像を示す。図6に示すように、スキャニング画像ではハイブリムラ、汚れ等を認められなかった。
以上のことから、ハイブリダイゼーション時のDNA濃度を15倍にするとハイブリダイゼーションの反応時間を従来の48時間から4時間に短縮することができることがわかった。すなわち、ハイブリダイゼーション等の固液反応の迅速化には被験成分の高濃度化が極めて有効であることがわかった。また、被験成分の高濃度化は装置各部のコンパクト化にも有効であることがわかった。また、浸漬洗浄でなく送液洗浄によって、洗浄の拡散律速を解消して洗浄時間を従来の70分から7分に洗浄することができることがわかった。
本実施例では、DNA断片化工程における酵素の高濃度化による工程時間の短縮化について試験した。
<DNA断片化>
まず、以下の試薬を0.5MLマイクロチューブに入れて混合した(酵素濃度5U/μl)。
・ゲノムDNA K562(コスモバイオ、品番D1255820):1μg(1μL;1μg/μL)
・Dpn IIバッファ(Dpn IIuffer&酵素はNEW ENGLAND BioLabs INC.製):2μL
・Dpn II酵素:100U(10μL;10U/μL)
・滅菌水:7μL
次いで、ヒートブロック(ブロックインキュベーターBI−525、アステック社製)を用いて、この混合液を37℃、10分、5分、1分インキュベートし、PCR purification Kit(QIAGEN社製)にて精製した。さらに、この精製物を電気泳動(2% アガロース、1Kb
DNA Ladder)にて確認した。
比較例として、滅菌水の量を16μlとし、酵素を10U用い、インキュベート時間を2時間とする(酵素濃度0.5U/μl)以外は、上記実施例と同様にしてDNA断片化工程を実施した。
実施例では、比較例に比して酵素濃度が10倍であった。実施例では1分のインキュベートで比較例と同等にDNAを断片化することができた。以上のことから酵素濃度を高めることで極めて短時間でDNAを断片化できることがわかった。
本実施例では、DNA標識工程における酵素の高濃度化による工程時間の短縮化について試験した。
<標識>
以下の試薬を0.5MLマイクロチューブに入れて混合した。なお、2.5×Random
Primers SolutionはInvitrogen社製であった。
(BioPrime Array CGH Genomic Labeling System;品番18095−011)
・断片化DNA:0.5μg(12μL;1μg/24μL)
・2.5×buffer mix:20μL
次に、ヒートブロック(ブロックインキュベーターBI−525、アステック社製)を用いて、この混合液を99℃、5分インキュベートし、氷冷10分した。さらに、10×dCTP Nucleotide Mix5μL、Cy3−dCTP3μL、滅菌水9μl及びExo−Klenow fragment1μLを添加し混合した。なお、10×dCTP Nucleotide Mix&Exo−Klenow fragmentはInvitrogen社製であり、(BioPrime Array CGH Genomic Labeling System;品番18095−011)Cy3−dCTPはGE healthcare社製(品番PA53031であった。
この混合液をヒートブロックで37℃で、1分間、5分間、10分間、12分間、15分間及び20分間インキュベートした。反応生成物をPCR
purification kitで精製し、分光光度計にて吸光度(A260;DNA量、A530;Cy3標識量)を測定した。
比較例として、Exo−Klenow fragment10μL添加して酵素量を10倍とし、インキュベート時間を2時間とする以外は、上記実施例と同様にして標識工程を実施し、最終的なDNA量及びCy3標識量を測定した。
実施例では、比較例に比して酵素濃度が10倍であった。実施例では20分のインキュベートで比較例と同等にDNAを断片化することができた。以上のことから酵素濃度を高めることで極めて短時間でDNAを標識できることがわかった。
本出願は、2006年4月18日に米国に仮出願された米国特許出願番号60/792,620、2006年4月19日に米国に仮出願された米国特許出願番号60/792,982及び2006年9月29日に出願された日本国特許出願特願2006−269217を優先権主張の基礎としており、その内容の全てが本明細書に含まれる。

Claims (28)

  1. 液体を媒体とする反応のための反応装置であって、
    前記反応又はその前処理に使用する試薬を供給する試薬貯留部と、
    検体を供給する検体導入部と、
    前記反応又はその前処理のために準備される溶液を調製又は貯留するとともに当該溶液の溶媒を留去して前記溶液を濃縮又は乾固可能な濃縮部と、
    前記反応を実施する反応部と、
    前記各部を前記反応を実施可能に連絡する流路系と、
    前記反応のための液体又はガスを前記流路系において流通させる流体駆動部と、
    を備える、反応装置。
  2. 前記濃縮部内の溶液を前記濃縮部内で乾固する、請求項1に記載の装置。
  3. 前記溶液の濃縮又は乾固は、前記濃縮部内の吸引又は加熱を伴う、請求項1又は2に記載の装置。
  4. 前記濃縮部は、前記濃縮部における前記溶液の流通方向を長手方向とし、前記溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とし、前記短手方向は、溶液の供給部位の幅及び前記溶液の排出部位の幅の4倍以下の幅である、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
  5. 前記濃縮部の所定の一部に前記濃縮部内の溶液を濃縮又は乾固可能である、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
  6. 前記溶液の乾固部位若しくは濃縮部位は、前記濃縮部の反応後段側への連絡部近傍である、請求項5に記載の装置。
  7. 前記溶液の乾固部位又は濃縮部位は、前記試薬貯留部からの試薬貯留部位である、請求項5又は6に記載の装置。
  8. 前記濃縮部は、前記濃縮部における前記溶液の流通方向を長手方向とし、前記溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とし、前記短手方向は、溶液の供給部位の幅及び前記溶液の排出部位の幅の4倍以下の幅である、請求項7に記載の装置。
  9. 前記濃縮部内に残留する前記溶液の濃縮部位を前記濃縮部外から視認可能である、請求項5〜8のいずれかに記載の装置。
  10. 前記濃縮部は、
    前記濃縮部内に露出され前記反応液に対する撥液性を有して前記濃縮部内のガスを排出可能な通気性材料と、前記濃縮部内のガスを前記通気性材料を介して吸引可能な通気部とを備える、請求項1〜9のいずれかに記載の反応装置。
  11. 前記濃縮部は、前記濃縮部に供給される前記反応液が接触する重力方向下方面の少なくとも一部に前記通気性材料を備える、請求項10に記載の反応装置。
  12. 前記濃縮部は、前記重力方向下方面のほぼ全面に前記通気性材料を備える、請求項11に記載の装置。
  13. 前記濃縮部は、前記濃縮部内に露出される前記通気性材料の全面から前記濃縮部内のガスを吸引可能に前記通気部を備える、請求項10〜12のいずれかに記載の装置。
  14. 前記濃縮部は、前記濃縮部内に露出される前記通気性材料の一部から前記濃縮部内のガスを吸引可能に前記通気部を備える、請求項10〜12のいずれかに記載の装置。
  15. 前記濃縮部は、
    前記濃縮部内に露出され前記反応液に対する撥液性を有して前記濃縮部内のガスを排出可能な通気性材料と、前記濃縮部の重力方向下面のほぼ全面に有し、前記濃縮部内のガスを前記通気性材料を介して吸引可能な通気部とを備え、
    前記通気性材料の所定の一部に前記濃縮部内の溶液を濃縮又は乾固可能であり、
    前記所定の一部が前記試薬貯留部からの試薬貯留部位である、請求項1又は2に記載の装置。
  16. 前記濃縮部は、前記濃縮部における前記溶液の流通方向を長手方向とし、前記溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とし、前記短手方向は、溶液の供給部位の幅及び前記溶液の排出部位の幅の4倍以下の幅であり、
    前記濃縮部内の前記溶液の濃縮部位を前記濃縮部外から視認可能である、請求項15に記載の装置。
  17. 前記濃縮部内において差圧を形成して前記溶液を混合可能である、請求項1〜16のいずれかに記載の装置。
  18. 前記差圧を前記濃縮部内において露出され前記反応液に対する撥液性を有して前記濃縮部内のガスを排出可能な通気性材料を介して前記濃縮部内のガスの吸引によって形成する、請求項17に記載の装置。
  19. さらに、前記反応又はその前処理のために準備される溶液中の被験成分を精製する精製部を備える、請求項1〜18のいずれかに記載の装置。
  20. 前記精製部はモノリスカラムを備え、
    前記モノリスカラムは前記被験成分を吸着後、溶出液として水を用いて前記被験成分を溶出可能である、請求項19に記載の装置。
  21. 前記精製部により精製された被験成分を含有する溶出液を前記濃縮部で濃縮又は乾固可能である、請求項19又は20に記載の装置。
  22. 前記被験成分は核酸である、請求項19〜21のいずれかに記載の装置。
  23. 前記モノリスカラムに対して前記溶液又は前記試薬を加圧又は減圧状態で導入可能である、請求項19〜22のいずれかに記載の装置。
  24. 前記反応部は、前記反応部における前記溶液の流通方向を長手方向とし、前記溶液の流通方向にほぼ直交する方向を短手方向とし、前記短手方向は、溶液の供給部位の幅及び前記溶液の排出部位の幅の4倍以下の幅である、請求項1〜23のいずれかに記載の装置。
  25. 前記被験成分は核酸であり、前記反応部における反応は、核酸ハイブリダイゼーションである、請求項24に記載の装置。
  26. 前記核酸ハイブリダイゼーションは、アレイCGHである、請求項25に記載の装置。
  27. 前記反応部における前記被験成分である核酸の濃度が0.3μg/μl以上である、請求項25又は26に記載の装置。
  28. 前記液体を媒体とする反応は固液反応である、請求項1〜27のいずれかに記載の反応装置。
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