JPWO2007119873A1 - 走査型電子顕微鏡 - Google Patents

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Abstract

セミインレンズ型の対物レンズを備えた電子顕微鏡の対物レンズの磁界発生効率を改善し、対物レンズの励磁コイルの消費電力を低減する。さらに、絶縁物試料の帯電中和を行い、安定な測長を可能にする。そのために本発明による電子顕微鏡では、光軸上の磁界強度を増加させるために、磁極ギャップ近傍に対物レンズ(3)とは独立した磁性体円盤(18)を該円盤の中心軸と光軸を一致させて配置することとしている。この磁性体円盤は、対物レンズ(3)との磁気抵抗を大きくするために対物レンズ(3)とは空間(円盤(18)と下磁極(16)との間の空間)を設けて配置する。

Description

本発明は電子顕微鏡に関し、特に、例えばセミインレンズ型の対物レンズの構成を有する電子顕微鏡の改良に関するものである。さらに、電子顕微鏡において絶縁物試料を観察する際に問題となる帯電の抑制技術に関するもので、特に走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、電子線照射によって電荷が蓄積しやすいレチクル上に構成されたパターンを安定して測長する技術に関するものである。
電子顕微鏡の高分解能化、つまり電子光学系の収差を低減し、試料上に電子線を収束させたときのスポット径を小さくする手段の1つとして、対物レンズの主面を試料に近づけて短焦点化することが効果的である。この場合、試料を対物レンズの上下の磁極間に置き、対物レンズの作る磁界中に試料を配置するインレンズ型の構成もしくは、試料は対物レンズの上下磁極の下側に配置するが、積極的に磁界を試料に漏洩させるセミインレンズ型の構成をとることができる。
インレンズ型では試料を上下磁極のギャップに配置するため対物レンズの磁界を効率よく利用できる反面、試料台(ステージ)の機構が制限されるため大きな試料は観察できない。
セミインレンズ型では試料上方に位置する対物レンズの磁極のギャップから対物レンズの中心軸上に漏洩する磁界を用いるため、実効的に利用可能な磁界強度に対して対物レンズを励磁するエネルギーの効率が悪くなる。つまり、高分解能化のために対物レンズと試料との距離である作動距離(WD:Working Distance)を小さくしたり、収束させる電子線のエネルギーを大きくしたりすると、大きな電力を消費することになる。消費電力が大きくなると、対物レンズを励磁するコイルの発熱も大きくなるため、場合によっては対物レンズの冷却装置が必要になってくる。その一方で、セミインレンズ型は対物レンズの下方に空間が確保できるため、ステージや電子光学系として必要な電極の配置などが制約を受けにくい。また、大きな試料も取り扱えるため、半導体ウェーハなどの検査装置には普及している構成である。
特開平10−106466号公報(以下特許文献1とする)には、電子光学系から試料側に漏洩する磁界を抑制するために、対物レンズの下部磁極片を、磁気シールドで覆い、対物レンズの磁場が、試料側に漏洩しないように構成されている磁界形対物レンズが説明されている。
特開2006−54094号公報(特許文献2とする)には、セミインレンズ型の対物レンズと試料との間に、所定の大きさの開口を持つ平板電極を配置し、当該電極に所定の電圧を印加することで、絶縁物試料の電位勾配を低減し、画像のS/Nやコントラストを安定化させる技術が説明されている。
しかしながら、セミインレンズ型の対物レンズを用い、かつWDを小さくすると、強い磁界が試料面上に作用するため、電子線を試料に入射させたときに発生する二次電子や反射電子などの二次的な電子は試料と対物レンズ間で強い収束作用を受けるという欠点がある。磁界の影響を受けた電子は対物レンズの中心軸である光軸の周りに半径1mm程度の範囲で螺旋状に上昇し、対物レンズの磁極を通過して磁界強度が低下し始めると、電子の磁界による拘束力は減少して、試料からの出射時のエネルギー(速度)と角度に応じて軌道は発散し始めることになる。そこで、二次電子のように出射時のエネルギーが小さい電子は、二次的な電子(二次電子及び反射電子を含む)を対物レンズより上方で検出するTTL(Through The Lens)方式において、いわゆるE×Bフィルタなどで軌道を変化させて高効率に電子検出器で捕獲するという方法がある。しかし、この方法ではエネルギーの小さい電子を捕獲することができる反面、エネルギーの大きい反射電子はE×Bフィルタで軌道を変化させにくく、対物レンズ上方で磁界強度が低下すると発散がより強く起こって大きな角度で広がるため、検出器での収量は著しく減少してしまう。
ところで、電子顕微鏡のアプリケーションとしては、異なった試料表面の情報を有する二次電子と反射電子を区別して画像化することも重要である。そこで、反射電子を検出するために、発散した反射電子を衝突させて二次電子を発生させる複数の変換電極を対物レンズ近傍に配置することも行なわれている。
しかし、反射電子は広い角度分布をもって発散するため、変換電極に衝突する反射電子は限られた出射角度のものであり、反射電子の二次電子への変換効率の低さや変換電極から発生した二次電子を検出器に到達させる制御の難しさから実効的な検出効率は高くない。
そこで、より検出効率を高くする方法として、対物レンズと試料との間にMCP(Micro Channel Plate)や半導体検出器など薄型の電子検出器を配置して反射電子を直接検出することもできる。ところが、前記したようにWDが小さい場合には試料から発生する電子は磁界の存在により収束作用を受けて対物レンズ側に上昇し、試料に照射する一次電子線のために電子検出器中心に設けた直径数mmの穴を通過する確率が高くなるため、却って検出効率は低下していた。
このように、試料上の磁界は検出効率に大きな影響を与えるだけでなく、磁気情報を有する試料を観察する場合にも、磁化に変化を与える意味でのダメージ(磁気記録情報が消去されてしまう等)も問題となる。試料上に強い磁界が作用しない対物レンズとしては、特許文献1に説明されているような、アウトレンズ型の磁界レンズが、そして磁界の発生が無い対物レンズとしては電界を用いた静電レンズがある。静電レンズではレンズ自体に高電圧を印加する必要があり、実現性と性能の観点からは磁界レンズが有利である。しかし、アウトレンズでは実用的でないほどWDを小さくしなければ、セミインレンズと同等の分解能を得ることは難しく、特に低加速電圧では性能差が顕著になる。
また、電子顕微鏡における観察試料は多岐にわたるが、その中で絶縁物試料の観察では荷電粒子線照射に伴う帯電の影響により、試料表面電位が荷電粒子線照射領域内で不均一となることで生じる電位勾配により荷電粒子線の軌道が偏向される(ビームドリフト)、また帯電の影響により二次電子放出量が変化して試料本来の構造が観察できない、といった障害が発生する。特に測長SEMに代表される走査型電子顕微鏡を用いて、レチクルなどの電子線照射によって電荷が蓄積しやすい試料上のパターンを高精度で測長するのは困難である。
特許文献2に説明されているような走査型電子顕微鏡では、二次電子放出率が1以上となるように一次電子線の入射エネルギーを設定して試料表面を正帯電の状態にし、試料表面と対物レンズの間に配置した帯電抑制用の平板電極および試料台の形状によって表面電位分布を制御して、レチクル等の測長を可能にしている。
しかしながら、特許文献2記載の技術はレチクル観察において有効な手法であるものの、帯電の影響を完全に除去することは困難である。特にAEI(After Etch Inspection)、ADI(After Development Inspection)といった表面にレジストが塗布されたレチクル試料のような、入射電子線のエネルギーに依存した帯電変化が大きい試料に対しては、安定した測長再現性が得られない場合がある。測長精度の向上のためには、帯電の更なる抑制が必要である。
本発明は、上述のような技術的背景に鑑みてなされたものであり、セミインレンズ型の対物レンズを備えた電子顕微鏡の対物レンズの磁界発生効率を改善し、対物レンズの励磁コイルの消費電力を低減するものである。さらに、荷電粒子線照射による絶縁物試料の帯電を抑制することで、絶縁物試料を高分解能で精度、再現性良く観察可能な電子顕微鏡を提供するものである。
セミインレンズ型では積極的に磁界を試料上に漏洩させて、レンズ主面を試料に近づけるために、対物レンズは試料側に開いた磁極ギャップ(上磁極15と下磁極16の間のギャップ)をもつのが通常である。しかし、試料に照射する一次電子線を収束させるための磁界は、最も強度が強くなる磁極ギャップから漏洩した磁界であり、対物レンズ中心軸に一致した光軸上に分布したものであるため、磁極ギャップにおける磁界に比べて強度は小さくなる。
よって、上記課題を解決するために、本発明による電子顕微鏡では、光軸上の磁界強度を増加させるために、磁極ギャップ近傍に対物レンズとは独立した磁性体円盤を該円盤の中心軸と光軸を一致させて配置することとしている。
この磁性体円盤は対物レンズとの磁気抵抗を大きくするために対物レンズとは空間(円盤18と下磁極16との間の空間)を設けて配置する。このようにすると、磁極からの漏洩磁界を磁性体円盤に導くことができ、磁性体円盤がない場合に空間に無駄な磁界を形成するよりも効率よく光軸上の磁界強度を上げることができる。なお、形状を円盤とするのは、軸対称な対物レンズの磁界を非対称性なく利用するためである。
磁性体円盤を対物レンズに対して空間を設けて設置するのは、必要以上に強い磁界を導いて磁気飽和を起こすことを避ける必要性と、本来は磁性体円盤がないセミインレンズ型の対物レンズとして最適に設計されている特性を大きく変化させることなく、光軸上の磁界強度を向上させるのに都合がよいためである。特に、対物レンズから独立させて空間で減衰した磁界を磁性体円盤内に取り込むため、円盤の厚みを薄くしても磁気飽和がなく、円盤の試料側の面から磁界が漏洩しないため、試料上への漏洩磁界を遮蔽する効果が非常に大きくなる。
ここで、磁性体円盤による漏洩磁界の遮蔽効果によって、試料上における試料法線方向成分の磁界Bz、試料水平方向成分の磁界Brのピーク強度は減少するが、光軸近傍ではBrの強度が増加する。光軸近傍でのBrの強度増加により、試料から放出された電子(二次電子、反射電子)は磁界を遮蔽しない場合と比較してより多く試料方向に戻る効果が得られる。
現状の測長SEMを用いたレチクルの測長では、二次電子の発生効率を1以上にして、試料表面を正帯電の状態にして像観察を行う。したがって、磁性体円盤による磁界遮蔽の効果によって、試料から放出された電子の試料への戻り量が増加することにより、正帯電部の帯電を抑制することができる。放出電子の戻り量および試料上への戻り位置の調整は、磁性体円盤に具備された電子線通過穴径を変更して試料上の磁界強度分布を変化させることにより可能であり、試料や入射エネルギーの変化に対して帯電が最も抑制される条件に設定することが可能である。
本発明によれば、磁極ギャップ近傍に対物レンズとは独立した磁性体円盤を該円盤の中心軸と光軸を一致させて配置しているので、例えばセミインレンズ型の対物レンズを備えた電子顕微鏡の対物レンズの磁界発生効率を改善することができ、これによって対物レンズの励磁コイルの消費電力を低減することができる。加えて、電子顕微鏡を用いた絶縁物観察において、磁性体円盤による磁界遮蔽の効果によって帯電を抑制することができ、絶縁物試料を高分解能で精度、再現性良く観察可能な電子顕微鏡の提供が可能となる。
図1は、本発明の第1の実施形態による走査型電子顕微鏡(SEM)の該略図である。図2は、磁性体円盤の挿抜機構の構成例を示す図である。図3は、第1の実施形態における光軸上の磁界強度向上を説明するためのグラフである。図4Aは反射電子の軌道とTTL方式で変換電極を用いて反射電子を検出する従来の構成例を示す図であり、図4Bは反射電子の軌道とTTL方式でアニュラー型の検出器を用いて反射電子を検出する従来の構成例を示す図である。図5Aは反射電子の軌道と対物レンズと試料間に配置したアニュラー型の検出器を用いて反射電子を検出する従来の構成例を示す図であり、図5Bは本発明の第2の実施形態による、反射電子の軌道と、対物レンズと試料間に配置したアニュラー型の検出器を用いて反射電子を検出する方法を説明するための図である。図6は、第2の実施形態における試料面上の磁界強度の低減効果を説明するためのグラフである。図7は、磁性体円盤の自動挿抜機能を示すブロック図である。図8は、本発明の第3の実施形態による、二次電子と反射電子の軌道と、TTL方式を用いて反射電子を検出する方法を説明するための図である。図9は、本発明の第4の実施形態による構成を示す図である。図10は、本発明の第5の実施形態による構成を示す図である。図11は、磁気遮蔽作用による帯電抑制の概念を示す図である。図12は、磁性体円盤有無での試料上磁界分布変化を示す図である。図13は、磁性体円盤の穴径変化に伴う、Br/Bz、放出電子の着点位置、戻り量の変化を示す図である。図14は、磁性体円盤の交換機構の構成例を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明による実施形態について説明する。本発明による実施形態では、セミインレンズ型の対物レンズを備えた電子顕微鏡の対物レンズの磁界発生効率を改善し、対物レンズの励磁コイルの消費電力を低減する(第1の課題)。また、本発明による実施形態では、対物レンズを用いた電子顕微鏡の試料から発生する二次的な電子(二次電子及び反射電子を含む)の検出効率を向上させる(第2の課題)とともに、試料に対物レンズから漏洩する磁界強度を低減することにより、磁界によって本来の特性が損なわれることが危惧される試料の観察を行うことが可能な電子顕微鏡を提供する(第3の課題)。さらに、電子顕微鏡を用いた絶縁物観察において、磁界を遮蔽して磁界強度分布を変化させることで得られる帯電抑制の効果によって、絶縁物試料を高分解能で精度、再現性良く観察可能な電子顕微鏡を提供する(第4の課題)。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る走査型電子顕微鏡(SEM)の該略図を示す図である。本実施形態では、半導体ウェーハなどの大型試料を対象とし、ウェーハ上の配線などの測長や検査を行う、一次電子線のエネルギーも数100eVから数keVの低加速電子ための構成を用いている。ただし、同様の構成を用いる電子顕微鏡であれば加速電圧が大きくても適用が可能であることは言うまでもない。
本実施形態の電子顕微鏡は真空容器1、試料室2および対物レンズ3で構成され、これらの内部は真空ポンプ4によって高真空から超高真空のレベルに真空排気された環境である。
図1において、電子顕微鏡は、真空容器1中には電子源5と電子源5から一次電子線6を放出させ、該電子線を拡大、縮小する一群の静電レンズおよび磁界レンズからなるレンズ群7と、電子線を試料8上で走査するための磁界型もしくは静電型の偏向器9と、試料8から発生した二次的な電子の軌道10を変化させるためのE×Bフィルタ11および該二次的な電子を増倍し、SEM像を形成するのに十分な電気信号を得るための電子検出器12から成るTTL方式の検出系、その他にも電子線の軌道や形状を補正するための手段を備えている。
試料室2内には、試料8を保持および移動させるための二軸以上のステージ13が搭載されている。
対物レンズ3は、本発明が最も効果的に作用するセミインレンズ型の磁界レンズである。対物レンズ3の内部には磁界の励磁用コイル14を備える。セミインレンズは上磁極15と下磁極16のギャップ17から空間に漏洩する磁界を積極的に試料8に作用させて、高い分解能を実現できる形態であるが、実際に一次電子線に作用する磁界は該ギャップ17から光軸上に漏洩してきたものであるため、励磁コイル14の電力の利用効率が低い。このため、磁性体円盤18を対物レンズ3と試料8の間に配置して、試料8への漏洩磁界を効率よく遮蔽するようにしている。また、磁性体円盤18は挿抜機構48によって挿抜可能となっており、取りたい信号の種類や試料の種類等によって円盤18を使用したり、しなかったりすることができる。
なお、図1に説明されるように、セミインレンズ型対物レンズのレンズギャップの下部に、磁性体円盤18を配置可能に構成することによって、セミインレンズ型の対物レンズによってもたらされる高分解能を享受しつつ、試料に対する磁場漏洩を抑制することが可能となる。図1に図示するように、電子線の通過開口を持つ磁性体円盤を配置すると、磁性体円盤は実質的に、対物レンズ3の磁路の一部を形成することになる。これによって、上磁極15の光軸側先端と、磁性体円盤18の光軸側先端との間のレンズギャップから漏洩する磁場が、電子線に対するレンズ作用を持ち、そのレンズ主面(最大磁束密度を示す個所)は、上磁極15と磁性体円盤18との間のほぼ中心に形成される。
このような構成によれば、アウトレンズ下に磁性体を配置する場合と比較して、レンズ主面を試料側に近づけることができるため、実効的なレンズ主面と試料間の距離の増加を最小限に抑えることができる。単に磁場漏洩を抑制するというだけではなく、磁性体円盤に、磁路の一部としての働きを持たせることで、レンズ主面を試料に近接させつつ、試料に対する磁場の漏洩を抑制することが可能になる。
図2は、磁性体円盤18の挿抜機構の構成例を説明するための図である。図2Aは試料室2側面から磁性体円盤18を前後に移動して挿抜する機構であり、図2Bは試料室2上面から磁性体円盤18を、回転軸45を中心として回転させることで挿抜を行なう機構である。
図2Aにおいて、磁性体円盤18は、支持棒41によって保持され、真空封じ用のベローズ42とフランジ43を介してリニアアクチュエータ44に接続されている。リニアアクチュエーター44は、電源や移動距離測定器を含む挿抜制御装置49によって支持棒41の所定距離の駆動を行う。
また、図2Bにおいて、磁性体円盤18は回転軸45に接続された支持棒41にて保持され、真空封じ用のフランジ46を介してモーター47に接続されている。モーター47は挿抜制御装置49によって所定角度の回転を行なう。
これら2つの挿抜機構は、いずれも対物レンズ3の中心軸と磁性体円盤18の中心軸が一致する挿入位置と該対物レンズ3領域外の退避位置との間で磁性体円盤18を移動させるものである。
なお、対物レンズの上磁極15近辺にはアニュラー型の電子検出器19を配置してある。
図3は、磁性体円盤18を対物レンズ3と試料8との間に配置した場合の効果を説明するための図である。図3は磁界の励磁を一定値として、中心穴径を変化させたときの光軸上での磁界強度最大値の変化である。なお、図中、磁性体円盤18がないときの磁界強度の最大値を100%とした。中心穴径が小さく、外径が大きい方が磁界強度は増加し、この例では電力を1/3以下に低減可能である。また、本実施形態の磁極のギャップの外径は25mmであるため、該磁性体円盤18は下磁極の内径(ギャップの外径)よりも大きくして、下磁極とオーバーラップする形状とするのが効率的である。
図2を用いて説明したように磁性体円盤18は挿抜可能なため、対物レンズ3外に円盤18を抜けばセミインレンズの特性を最大限に生かした高分解能観察が行え、挿入すれば若干の分解能低下はあるが、依然として高分解能で低消費電力での観察が可能である。なお、本実施形態において、対物レンズのWD=3mm、該磁性体円盤18と試料8との距離が1.5mmのときの分解能(一次電子線の試料上でのスポット径)劣化は1.7nmが2.3nmになる程度となることが確認されている。
<第2の実施形態>
第2の実施形態については図5B及び図6を用いて説明するが、理解を容易にするために前提となる技術についてまず説明することとする。
図4は、一般的なTTL方式の検出系の例を示す図である。ただし、図4では、説明に必要な部分しか図示していないことに注意されたい。
図4Aに示されるように、電子顕微鏡の高分解能化のためにはWDを数mmとする必要があるため、E×Bフィルタ11や電子検出器12を上磁極15の上方に配置するのが一般的である。また、試料から出射するエネルギーの小さい二次電子はE×Bフィルタ11を用いて検出器12に効率よく導くことができる。
しかし、エネルギーの大きい反射電子は、上磁極15と試料8との間の磁界が強い領域では磁界にトラップされ、螺旋状に上昇する状態20となる。そして、反射電子は、上磁極15の上方で磁界が弱くなる領域では磁界による束縛を逃れ、試料8から出射したときの角度と速度に応じて、破線で示した一群の軌道21のように発散する。このため、E×Bフィルタ11に入射するものは試料8から高角度に出射した反射電子の中でも比較的エネルギーの低いものに限られる。
これらの反射電子は、上方変換電極23によって図中の実線で示した二次電子22に変換され、E×Bフィルタ11の作用により検出器12で検出される。また、発散した軌道をもつ反射電子を二次電子24や25に変換するためには、下方変換電極26を用いたりするが、この下方変換電極26に衝突する反射電子の範囲も限定されることや、変換効率や変換した二次電子の取り込み効率が十分とはいえない。
また、図4BのようにTTL方式の検出器としてアニュラー型検出器27を用いた場合でも、上記と同じ理由により、検出器に入射する反射電子は、そのエネルギーと出射角度が限られたものとなる。このため、検出できる電子がもつ試料の表面情報の多様さが十分とはいえない。また、中心に一次電子線が通過するための穴があるため、軌道が発散せずに上昇する二次電子の検出効率が低下する。
また、図5Aに示されるように、アニュラー型検出器28を対物レンズ3と試料8の間に配置することも考えられる。このような構成を採ることにより、反射電子取り込みの立体角を大きくでき、検出効率を向上することができる。つまり、WDが大きく、一次電子を収束するための磁界強度が小さい場合や、磁界が試料側にあまり漏れないアウトレンズ型の対物レンズの場合には、反射電子が磁界に束縛されにくく、試料から出射しても広い角度に発散するため、電子検出器28の中心穴を抜ける確率が小さくなるので、二次電子の検出効率は非常に高くなる。
しかしながら、図5Aのような構成を採ったとしても、セミインレンズ型では試料近傍での磁界強度は大きく、高分解能化のためにWDを小さくすると磁界強度は増す。このため、反射電子も磁場で光軸周辺に束縛、収束される軌道29となり、電子検出器28の中心穴を抜けやすくなって、二次電子の検出効率は低下する。
そこで、二次電子の検出効率の向上のため、磁性体円盤を用いて試料から出射した反射電子が収束しない程度に、試料近傍の磁界強度を弱めることが考えられる。
図5Bは、第2の実施形態の構成を示す図であって、図4及び図5AのTTL検出系によって生じる欠点を解決するための構成を示す図である。つまり、図5Bは、磁性体円盤18を用いて試料から出射した反射電子が収束しない程度に試料近傍の磁界強度を弱めるための構成を説明するための図である。
本実施形態では、図5Bに示されるように、対物レンズ3と試料8の間に磁性体円盤18と電子検出器31を配置し、かつ電子検出器31の対物レンズ側の面を磁性体円盤18としている。電子検出器31はMCPや半導体検出器のように厚みが薄く、WDが小さくできる構成を用いればよい。また、磁性体円盤18は、鉄−ニッケル合金のように初透磁率の大きい高透磁率材料を用いることもできる。そして、磁界を該磁性体円盤内に誘導することにより、磁性体円盤18と試料8の間の磁界を低減している。
従って、図5Bの構成によれば、反射電子の一群の軌道32は磁界による収束作用を受けないので、反射電子は試料8からの出射時の角度を保持したまま広がり、検出器31に衝突する。よって、中心穴を抜けていた電子も捕獲できるので、反射電子の検出効率が向上する。それに加えて、TTL方式でE×Bフィルタと検出器を追加して二次電子の検出を行えば、反射電子と二次電子各々の信号を独立して得ることが可能となる。
また、セミインレンズ型の対物レンズでは、低アングルで放出される反射電子(対物レンズの電子線通過穴以外に向かう反射電子であって、対物レンズに衝突するような軌道を通過する反射電子)は、先述のように対物レンズの集束作用を受けて、対物レンズを通過する軌道を通るため、高アングルで放出される反射電子(対物レンズの電子線通過穴に向かって放出される反射電子)と低アングルで放出される反射電子の弁別検出が困難であったが、検出器31が設けられた磁性体円盤18を抜き差し可能とすることによって、高アングルの反射電子と、低アングルの反射電子を弁別して検出したい、或いは一方を選択的に検出したい場合には、図5Bに図示するように、磁性体円盤18を、対物レンズ3のレンズギャップを覆うように配置し、高分解能測定を優先したい場合は、磁性体円盤18を離脱させることで、実効的なレンズ主面を試料表面に近づけるようにすると良い。
図6は、第2の実施形態による磁界強度の低減効果を説明するための図である。なお、図6は、磁界の励磁を一次電子の試料上への収束条件とし、中心穴径を変化させたときの試料表面上の磁界強度最大値の変化を示している。Bzは試料に垂直な磁界成分、Brは試料に平行な磁界成分である。また、図6では、磁性体円盤18がないときの磁界強度の最大値を100%とした。
図6からも分かるように、中心穴径が小さければ磁界強度は低減でき、この例では実用的な中心穴径で1/20以下に低減可能である。このとき、本実施形態での磁界強度はBzで0.004T(テスラ)、Brで0.005T(テスラ)程度に小さくできる。よって、磁性体を試料とした場合でも試料上の磁界の乱れが小さいため、一次電子線のスポット形状の変化がない高分解能観察が可能であり、さらに磁化情報を有する素子や媒体を試料としてもダメージの少ない観察が可能になる。
なお、磁性体を試料としない場合には磁性体円盤18を挿入せずに高分解能観察を行い、磁性体を試料とする場合にのみ磁性体円盤18を挿入することもできる。この磁性体円盤18を挿抜するための機構は、図2に示したものと同様なので、ここでの説明は省略する。
また、試料の種類を自動的に判別する手段を具備すれば、磁性体円盤18を自動的に挿抜するようにすることもできる。図7は、試料の種類に応じて磁性体円盤を自動的に挿抜するための構成を示すブロック図である。
図7において、磁性体円盤18を自動的に挿抜する構成は、図2で示されるような挿抜機構48及び挿抜制御装置49と、SEM制御コンピューター50と、試料判別装置51と、Graphical User Interface(GUI)52とを含むものである。例えば、半導体製造工場のように多種類の試料が自動的にSEMに搬送されてくる場合には、試料の工程管理に一般的に用いられているバーコードを利用して、試料判別装置51としてバーコードリーダーを用いることで試料の種類を判別し、SEMの制御を担当するコンピューター50にて排他制御の管理や試料に適した電子光学系の設定を行なうとともに、挿抜制御装置49に動作信号を提供して挿抜機構を動作させ、磁性体円盤18の挿入を行なう。
ただし、試料判別装置51は、バーコードを用いて試料を判別するものに限定されるわけでなく、工程管理のホストコンピューターからの通信であったり、試料形状をカメラで認識したり、試料の種類に対応した特徴、例えば試料台に穴を設けてLEDやレーザー光の透過をセンシングするものであっても良い。
ここで、前述の排他制御とは、GUI52などで操作者が指定した条件、例えば特定の試料に対しては磁性体であっても磁性体円盤18の挿入は行なわないなど、の判別であって、試料判別装置51よりも上位に位置づけた条件を優先させる制御である。さらに、試料が磁性体でないと判別される場合には、磁性体円盤18を退避位置とすることも可能である。
<第3の実施形態>
図8は、第3の実施形態の構成を示す図である。第3の実施形態では、試料上での磁界強度をそれほど低減する必要が無い場合を想定している。この場合には、電子検出器を対物レンズと試料間に配置しなくても、磁性体円盤を利用することで対物レンズと試料間の磁界強度を調整して、TTL方式の検出系にて二次的な電子の検出効率向上が可能となるのである。
磁性体円盤18が無い場合には、図4Bに示したように、反射電子の軌道21は検出器27に入る前に大きく軌道が発散するため、損失が多い。また、図5Bに示したように、磁性体円盤18で磁界強度を低減しすぎると、反射電子は磁性体円盤18で阻止されるため、TTL方式では検出できないという問題もある。
しかし、図3や図6に示したように、適度な磁界を光軸上に作用させて反射電子の収束の程度を弱くすれば、対物レンズの磁極上方で軌道が発散し過ぎない状態を作ることができる。つまり、反射電子の一群の軌道を図8に示した破線33のようにすることができ、アニュラー型の電子検出器27で効率よく検出することが可能となる。
また、電子検出器の中心穴を抜けた反射電子や、元々軌道の発散が小さい二次電子群34も検出するようにE×Bフィルタ11を配置して電子検出器12に導くことで、試料8から発生する二次的な電子を高効率で検出できるようになる。
<第4の実施形態>
図9は、本発明に係る第4の実施形態の構成を示す図である。図9は磁性体円盤18と対物レンズ3の間に、試料上の電界を制御するための電界制御電極35と電圧印加手段36を備え、磁性体円盤18と電界制御電極35とは導通しており、磁性体円盤18にも電圧が印加可能である。また、対物レンズ3とは電気的に絶縁された上磁極15と試料8もしくは試料台13にも電圧を印加する手段37、38を備えている。ここで、電界制御電極35は、帯電するサンプルがあり、そのような試料が帯電しにくくする作用を有するとともに、電圧印加手段37や38で作った電界を平行にし、また、試料近傍の電界を平行電界にしてビームドリフトを防止する作用も有する。また、電圧印加手段37は、磁路に電圧を掛けて電子を加速して色収差を減らし、よって分解能を上げるためのものであり、電圧印加手段38も試料や試料台に電圧を掛けて分解能を高めるために設けられたものである。なお、二次的な電子の検出系は図8と同様のものを用いる。
この構成によって、二次的な電子を対物レンズ3の上方に加速したり、減速したりすることが可能であり、磁性体円盤18のみで二次的な電子の軌道を制御するよりも電界の作用によって、より細かい軌道の制御が可能になる。
<第5の実施形態>
図10は、本発明に係る第5の実施形態の構成を示す図である。第5の実施形態では、図10に示されるように基本的には図9と同様の形態であるが、対物レンズ3と絶縁した上磁極15に電圧を印加するのではなく、磁極付近に二次的な電子の軌道を変化させて検出効率を向上させることを目的として、軌道制御電極39と電圧印加手段40を備えたものである。つまり、磁性体円盤18で二次的な電子の軌道を変化させることができるが、軌道制御電極39及び電圧印加手段40でその変化した軌道を補正(軌道を広げたり、細くしたり)することができるのである。図10の構成によっても、図9の実施形態と同様の効果が得られることはもちろんである。
<第6の実施形態>
第6の実施形態では、レチクルなどの大型の絶縁物試料を観察する場合を対象としている。本実施形態によれば、入射電子線のエネルギーに依存した帯電変化が大きいAEI(After Etch Inspection)、ADI(After Development Inspection)といったレジストが塗布されたレチクルに対して、走査型電子顕微鏡を用いた安定した測長が可能となる。装置構成としては、第4または第5の実施形態で示したもの(図9または図10で示したもの)を用いることが可能である。
ただし第6の実施形態では、磁性体円盤18の電子線通過穴の直径は、電界制御電極35の電子線通過穴径よりも大きくする。具体的には、磁性体円盤18の穴径は5mm以上とし、電界制御電極35の穴径は1mmとする。これは、後述するように磁性体円盤18の穴径を小さくしすぎると磁界遮蔽の効果が大きくなりすぎて、放出電子が照射点近傍に戻らず、帯電抑制の効果が減少してしまうことを避けるためである。
本実施形態では試料8から発生する二次電子の発生効率が1以上となるように、試料8に照射する電子線のエネルギーを設定する。試料の種類によって差はあるが、通常そのような電子線のエネルギーは1keV以下となる。このとき、試料表面は電子が不足しており、正帯電の状態となっている。
電界制御電極35を平板で凹凸のない構造とし、電界制御電極35およびステージ13に、電圧印加手段電圧36および38を用いて電圧を印加することで表面電位分布を制御して、絶縁物試料表面の電位勾配を低減させることで荷電粒子線照射時の帯電を抑制することができる。なお、電界制御電極35、ステージ13、磁性体円盤18の電位は同電位に設定する。
このとき、本実施形態に依れば、前述の電界制御電極35による帯電抑制作用に加え、磁性体円盤18の磁界遮蔽作用による帯電抑制の効果も加わり、従来の手法に比べて更なる帯電の抑制が可能となる。
図11は、磁界遮蔽作用による正帯電抑制の概念図である。本実施形態では、試料8から発生する二次電子の発生効率を1以上としているため、試料8表面には正帯電部位53が形成されている。正帯電の抑制は、試料8から放出された電子を、積極的に試料8に戻すことによって可能となる。磁性体円盤18による磁界遮蔽作用によって試料8上の磁界分布が変化する。磁界が変化することにより放出電子の軌道54も変化し、試料8から放出される電子が試料に戻りやすくなる。負電荷の放出電子が試料へ戻ることにより、試料8に形成されている正帯電部位53が抑制される。
ここで、磁界遮蔽作用により放出電子が試料8へ戻りやすくなる原理を説明する。磁性体円盤18を配置した場合、試料8上における試料法線方向成分の磁界Bzおよび試料水平方向成分の磁界Brの最大強度は、磁性体円盤18を配置しない場合に比べて図6のように減少する。しかし、戻り電子に寄与する磁界は光軸近傍のものであり、磁性体円盤18の有無での光軸近傍の磁界分布の変化を示した例が図12である。横軸R[mm]は光軸からの離軸距離で、図12A、Bの縦軸はそれぞれBz、Brである。磁性体円盤18を配置した場合、Bz強度は小さくなっている反面、光軸近傍に限ればBrは大きくなっている。Bzの強度減少によって、出射した放出電子の飛程は大きくなる。また、光軸近傍では強度の増しているBrにより、放出電子に作用するローレンツ力は、下方向(試料方向)のベクトル成分が大きくなる。したがって、放出された電子が試料方向に戻りやすくなる。
ここで、磁性体円盤18に開けられた電子線通過穴の穴径を変化させると、試料上でのBr/Bzの値が変化し、それに付随して放出電子の着点位置、戻り量も変化する。穴径変化に伴うBr/Bz、放出電子の着点位置、戻り量の変化例を図13に示す。ここで縦軸の値は、磁性体円盤18が無い場合の値を100%としている。なお、対物レンズの励磁は、一次電子が試料上へ収束する条件としている。
図13から、磁性体円盤18の穴径が小さくなると、放出電子の戻り量は増加するが、同時に着点距離も大きくなることが分かる。前述したように、磁性体円盤18の穴径を小さくしすぎると、磁界遮蔽の効果が大きくなりBzが小さくなることで放出電子が照射点近傍に戻らず、照射領域の正帯電抑制という点では効果が低減してしまう。
観察対象の試料や光学条件によって放出電子の最適な戻し量、戻し位置は異なるが、それらの調整は磁性体円盤18の穴径調整により可能であり、帯電状況に合わせて最適な穴径に設定することが重要である。なお、本実施例においては、穴径が16mm以上になると実効的な磁界遮蔽の効果が殆どなくなるので、磁性体円盤18の穴径Φiは5mm≦Φi≦16mmの範囲で変化させる。磁性体円盤18の厚さは0.5mmである。
最適な穴径選択に効果的な方法として、電子顕微鏡の試料室2内にそれぞれ穴径の異なる複数枚の磁性体円盤18を待機させておき、状況に応じて個々の磁性体円盤18を電界制御電極35と試料8間に配置できるようにすれば、多岐にわたる観察試料、光学条件に対して対応が可能となる。このとき磁性体円盤18は、対物レンズ9および試料8と平行に、かつ一次電子線が通過する穴を対物レンズ9の磁極孔の中心軸に一致させて配置される。
図14は、磁性体円盤18の交換機構55の構成例を説明するための図である。図2Bで示した円盤挿抜機構48と類似の構成であるが、磁性体円盤支持棒41が上下にも動作する。上下および回転動作が可能な該磁性体円盤支持棒41によって、試料室2内に配備された内径の異なる複数枚の磁性体円盤56の中から、所望の磁性体円盤18を取り出すことができる。取り出された磁性体円盤18は、電源や移動距離測定器を含む交換制御装置57によって所定位置に配置される。
ここで、任意の試料および光学条件に対して最適な穴径を持つ磁性体円盤18を選択する方法を述べる。そのためには、異なる像取得条件を用いて画像を取得する。異なる像取得条件とは、帯電状況が大きく変化する条件であり、帯電状況は一次電子線の走査速度や像の積算枚数などの変更によって変化させる。試料によって帯電状況が大きく変化する条件は異なるが、帯電が抑制された状態では、像取得条件を変えても像に生じる差異は小さい。しかし帯電が顕著な場合は、帯電状況の変化も大きく二次電子放出量も大きく変化するので、得られる画像の差異は大きくなる。そこで、異なる像取得条件で画像を取得し、それら2枚の画像の各画素における輝度の差分を計算する。帯電が抑制されているほど、各画素における輝度差分値の画像全体の合計値は小さくなるので、試料室2内に配備された穴径の異なる複数枚の磁性体円盤56の中から、差分合計値が最も小さくなるような磁性体円盤18を選択し、該穴径を有した磁性体円盤18を、磁性体円盤交換機構55によって所定位置に配置すれば良い。
また、輝度のヒストグラムを取得することで帯電が抑制される条件を見出すことも可能である。ここでは、レジストが塗布されたレチクルを例に挙げて説明する。まず、電子線の走査領域を、レジストのみが照射される範囲に設定する。これは、レジスト部は帯電が顕著であり、帯電が抑制されているかどうかの判断がしやすいためである。レジスト部のSEM像を、各々穴径の異なる磁性体円盤18を配置した状態で取得して、輝度ヒストグラムを得る。ここで、帯電が生じていないと仮定すると、レジスト部の二次電子放出率は場所によらず一様であるので、ヒストグラムは単ピークとなり形状も急峻になる。しかし、帯電が顕著な状態では、帯電の影響による二次電子放出率の変化によって、ヒストグラムに新たなピークが生じたり、ピーク形状が鈍ったりする。したがって、ヒストグラムのピーク数が少なく、ピーク形状が急峻なほど帯電が抑制されていることを示しており、画像の輝度ヒストグラムの形状を比較することで、帯電抑制に最適な穴径を有する磁性体円盤18を選択して、該磁性体円盤18を磁性体円盤交換機構55によって所定位置に配置することが可能となる。
さらに、放出電子の戻り量および戻り位置の調整は、磁性体円盤18の位置調整によっても可能である。磁性体円盤18は対物レンズ9および試料8と平行に、かつ一次電子線が通過する穴を対物レンズ9の磁極孔の中心軸に一致させて配置されるので、ここでいう位置調整とは、電界制御電極35と試料8の間における上下方向の位置調整を指す。これは上下の移動機構を有する磁性体円盤交換機構55により実現可能である。前記方法で帯電抑制に最適な穴径を有する磁性体円盤18を配置した後、さらに磁性体円盤18を磁性体円盤交換機構55により上下させながら、更に帯電が抑制される位置を見出すことができる。以上の作業により、磁性体円盤18の穴径および上下方向位置ともに帯電抑制に最適な状態に設定できる。磁性体円盤18の上下移動範囲は、電界制御電極35下面と磁性体円盤18上面が接触している状態を移動原点として、磁性体円盤18の下面が試料8表面から0.5mmになるまでの範囲とする。0.5mmとしたのは、電圧印加手段36および38が同時に動作しない場合、磁性体円盤18の下面と試料8表面の間の電界強度が大きくなり両者間で放電を起こす可能性があり、安全性を考慮したためである。なお、磁性体円盤18を下方へ移動させることは、磁性体円盤18の穴径を大きくするのと同じ作用がある。なお、輝度ヒストグラムの演算や穴径の切り替え制御等、上述の処理に必要な演算や制御は図示しない制御装置によって実行される。
また、ランディングエネルギー(試料に到達する際の電子線のエネルギー)が高い場合には、その分、対物レンズの励磁電流が大きくなり、放出電子の巻上げ半径が小さくなるため、着点距離が短くなる。よって、ランディングエネルギー、或いは対物レンズの励磁電流が高いときは、それらが低いときと比較して、円盤の穴径を小さくすることが考えられる。より具体的には、ランディングエネルギーが所定値以下の場合には、着点距離を優先して穴径を大きくし、ランディングエネルギーが所定値より大きい場合には、戻り電子量を優先して、穴径を小さくすることが考えられる。
但し、他の装置条件や試料の組成等によって、適正な穴径の大きさは変化するため、装置条件ごとに、上記所定値を予め求めておくことが望ましい。
また、装置条件や資料の組成に対して不適切な磁性体円盤を用いた場合には、正帯電が過剰に蓄積する可能性がある。この状態では、試料から放出された二次電子が試料に引き戻され、検出可能な電子量が減少するため、画像が暗くなる。この原理を利用して、画像が暗くなったこと、或いは電子の検出量が減少したことを検出して、穴径を切り換えるように制御しても良い。画像の明暗や電子検出量のモニタは、図示しない制御装置にて行い、画像の明暗の程度や、電子検出量が所定値を越えて変化する場合に、穴径を切り換えて制御しても良い。また、穴径を切り換えても画像が所定の状態にならないときは、他の画像変動要因が考えられるため、その旨のエラーメッセージを発生するようにしても良い。
更に、ランディングエネルギーの大きさに応じて、穴径を変化させるだけではなく、WDの大きさに応じて、穴径を切り換えるようにしても良い。この場合、Z移動ステージ(Zは、電子線の光軸方向)を搭載した装置の場合は、Z移動ステージの高さ情報に応じて、穴径を切り換えることが考えられる。更に、試料表面高さを測定するZセンサを搭載した装置の場合は、Zセンサによって検出される試料の高さに応じて、穴径を切り換えることが考えられる。
<まとめ>
セミインレンズ型では積極的に磁界を試料8上に漏洩させて、レンズ主面を試料に近づけるために、対物レンズ3は試料側に開いた磁極ギャップをもつのが通常である。しかし、試料に照射する一次電子線を収束させるための磁界は、最も強度が強くなる磁極ギャップから漏洩した磁界であり、対物レンズ中心軸に一致した光軸上に分布したものであるため、磁極ギャップにおける磁界に比べて強度は小さくなる。よって、第1の課題に対しては、光軸上の磁界強度を増加させるために、磁極ギャップ近傍に対物レンズ3とは独立した磁性体円盤18を該円盤の中心軸と光軸を一致させて配置することで対処している。
磁性体円盤18は対物レンズ3との磁気抵抗を大きくするために対物レンズ3とは空間を設けて配置する。このようにすると、磁極からの漏洩磁界を磁性体円盤18に導くことができ、磁性体円盤18がない場合に空間に無駄な磁界を形成するよりも効率よく光軸上の磁界強度を上げることができる。なお、形状を円盤とするのは、軸対称な対物レンズの磁界を非対称性なく利用するためである。
磁性体円盤18を対物レンズ3に対して空間を設けて設置するのは、必要以上に強い磁界を導いて磁気飽和を起こすことを避ける必要性と、本来は磁性体円盤18がないセミインレンズ型の対物レンズとして最適に設計されている特性を大きく変化させることなく、光軸上の磁界強度を向上させるのに都合がよいためである。特に、対物レンズ3から独立させて空間で減衰した磁界を磁性体円盤18内に取り込むため、円盤の厚みを薄くしても磁気飽和がなく、円盤の試料8側の面から磁界が漏洩しないため、試料上への漏洩磁界を遮蔽する効果が非常に大きくなる。これは第2および第3の課題を解決する手段ともなる。
第2の課題は、試料8から発生する二次的な電子の検出効率を向上させることである。本実施形態によれば特に反射電子の検出が容易となり、電子光学系の運転条件によっては二次電子と反射電子の分離検出も可能であり、二次電子および反射電子の特性を鑑みて各電子の種類に特化した検出器の設計が可能となるため、装置としての検出率を大きく向上させることができるようになる。
具体的には、反射電子を検出するために対物レンズ3と試料8との間に電子検出器を配置する場合、磁界で拘束されて軌道が収束して、試料8から出射した反射電子が該電子検出器の中心に設けた一次電子線通過用の穴を抜けてしまうことを防ぐために、該電子検出器と試料間の磁界強度を低減すればよい。つまり、前記した磁性体円盤を用いて対物レンズ磁極からの漏洩磁界を該磁性体円盤に導くことで、反射電子の軌道が強く収束しないレベルに磁界強度を低減することが可能である。
よって、電子検出器31を試料8に対向させて配置し、該検出器31と対物レンズ3間に磁性体円盤18を配置することで反射電子は磁界に束縛されることなく、試料から出射した速度と角度を維持したまま広がった軌道で該検出器31に入射するため、量的に損失のない検出が可能となる。また、試料8からの仰角が小さく出射した反射電子の収量が上がるため、試料表面の凹凸情報や構成物質の違いによるコントラストをより顕著に検出できるようになり、電子顕微鏡のアプリケーションとしての機能向上も可能となる。
この構成においては、電子検出器31と磁性体円盤18を別個に設けると、空間に無駄が生じてWDの縮小が困難となるため、該電子検出器31の対物レンズ側の面自体を該磁性体円盤で形成することが望ましい。このとき、電子顕微鏡の電子検出系の構成として、二次電子の検出に特化した検出器を使用したTTL方式を組み合せることで、対物レンズ3と試料8間に配置した電子検出器31の中心穴を抜けた二次電子を検出することも可能である。また、対物レンズ3と試料8間に配置する電子検出器31の検出するエネルギーの感度を二次電子が通常もつエネルギーよりも大きく、例えば100eV以上とすれば、反射電子と二次電子の分離検出も可能となる。
さらに、磁性体円盤18を用いて試料8近傍の磁界強度を調整(磁界を遮蔽)することで、対物レンズ3と試料8間での反射電子の収束を弱め、対物レンズの磁極上方で磁界強度が小さくなった領域での反射電子の発散範囲を狭くして、対物レンズ3や磁極近傍の部材に衝突することによる損失をなくすことができる。よって、TTL方式でも反射電子、二次電子各々の検出に特化した検出器を用いることで高い検出効率が得られるようになる。
第3の課題は、磁界によって本来の特性が損なわれることが危惧される試料の観察を行うことが可能な電子顕微鏡を提供することである。この課題に対しては、前述したように第1の課題と第2の課題の解決手段である磁性体円盤18の磁界の遮蔽効果を用いて、試料8表面での磁界強度を低減することができる。
その効果をより具体的にいえば、磁性体円盤18は鉄−ニッケル合金などの初透磁率の大きい高透磁率材料を用いる。該円盤の中心穴の直径を小さく(電子ビームのスキャン範囲よりは大きい)すれば該磁性体円盤18と試料8間の磁界の遮蔽効果が上がると同時に、前述したように磁界の利用効率があがるために、光軸上の磁界強度のピークは増加する。
また、該磁性体円盤18の外径を大きくすれば中心穴の直径を小さくする効果と同様の効果が得られるが、試料側から対物レンズの磁極のギャップが見えなくなる程度に大きく、または対物レンズ磁路のギャップの外径を形成する磁路と空間を設けてオーバーラップするように大きくすると、その効果はより顕著になる。該円盤の厚みはWDや磁気飽和などを勘案して、例えば1mm以下でも十分な遮蔽効果が得られる。
さらに、該円盤18と試料8間の距離を大きくすれば、遮蔽効果は大きくなる。実用的な距離として1.5mm程度に選ぶと、一次電子線を試料8上に収束させる磁界の励磁条件において、該円盤がない場合に比べて、試料8表面に垂直、平行な磁界成分のいずれも1/20以下に抑えることができる。
この構成により、試料8上の磁界を低減することが可能であり、磁界によってダメージを受けやすい試料8も観察が可能となる。また、磁性体円盤18と試料8間の磁界が反射電子の軌道に影響を与えるほど大きくないため、第二の課題の解決手段によって、検出効率を最も大きくすることができる。
一方、試料上の磁界強度の低減率が1/5程度でよく、反射電子が弱い収束作用を受ける磁界強度のときは、必ずしも対物レンズ3と試料8間に電子検出器を配置する必要はなく、TTL方式において磁性体円盤を用いれば検出効率の向上が可能となる。
この場合には、対物レンズ3の形状に鑑み、磁性体円盤18の外径(例えば下磁極と重なる程度)と厚み(磁気飽和を勘案)、および中心穴の直径(電子ビームのスキャン範囲よりは大きく、二次電子の軌道を変えるために必要な磁場を作るための充分な穴の大きさの限界よりは小さくする)を適切に決めて、磁界の遮蔽効果は生かしたまま、対物レンズ3と試料8間に発生する磁界強度と分布を調整して、試料8から発生する二次的な電子の軌道を制御すればよい。また、TTL方式の検出系において、主に二次電子を検出する検出器12と、主に反射電子を検出する検出器27とを少なくとも1つずつ、試料から発生する二次的な電子の到達点に合せて配置することによって、電子のエネルギーに応じて効率よい検出が可能となる。
磁性体円盤18の形状と磁界および電子軌道の関係は、コンピュータシミュレーションによって解析が可能である。よって、磁界の強度と分布を決めれば、対物レンズ3の磁極上方の磁界強度が低下する領域で、二次的な電子のエネルギーに応じて軌道を変化させることができる。
つまり、場合によっては対物レンズ3の磁路や試料8、もしくは電子光学系を構成する電極に電圧を印加することもあるが、磁性体円盤18の形状によって二次電子のようにエネルギーの小さい電子(主に50eV以下)は対物レンズ3の磁極の上方での軌道の広がりを抑え、反射電子のようにエネルギーの高い電子(主に数100eV以上)も軌道の広がりの程度を調整することができる。
例えば、二次電子の検出器12としては磁界と電界を用いて一次電子線の軌道には影響を与えずに、数10eV程度以下の電子のみを偏向可能なE×Bフィルタ11と二次電子増倍機能を組み合せた検出器を用い、反射電子の検出器27としてはアニュラー型のMCPや半導体検出器などを光軸上に配置して、反射電子を直接入射させて検出することで検出効率を向上させることが可能である。
第4の課題は、電子顕微鏡を用いた絶縁物観察において、磁界の遮蔽による帯電の抑制によって、絶縁物試料、特に帯電が激しいレジストが塗布されたレチクル試料を高分解能で精度、再現性良く観察可能な電子顕微鏡の提供をすることである。
走査型電子顕微鏡を用いてレチクルなどの帯電する試料を測長する際には、帯電の影響による像障害が発生し、高精度な測長が不可能となる。現状のレチクル測長SEMでは、二次電子放出率が1以上となるように一次電子線の入射エネルギーを設定して試料表面を正帯電の状態にし、試料表面と対物レンズの間に配置した帯電抑制用の平板電極および試料台の形状によって表面電位分布を制御して、レチクルの測長を可能にしている。しかしながら、レジストが塗布されたレチクルなど入射ビームのエネルギーに依存した帯電変化が大きい材料では、帯電を完全に除去するには至っていなかった。
本発明は、対物レンズと電界制御電極の下方に磁性体円盤を配置し、対物レンズの発生する磁界分布を変化させ、試料から発生する放出電子を試料に戻すことで正帯電部位を中和して、帯電を更に抑制しようとするものである。磁界遮蔽することで試料表面近傍の磁界が変化し、試料上に電子が戻りやすくなる。磁性体円盤の配置によって試料上の磁界分布は、試料法線方向成分の磁界Bz、試料水平方向成分の磁界Brともにピーク強度が減少する。Bzの強度低減が特に試料水平方向に近い低角度で出射した電子の飛程を大きくし、光軸近傍では強度の増しているBrによって放出電子が試料方向に戻りやすくなる。
磁性体円盤が配置された状態では、磁性体円盤が無い場合に比べて放出電子の戻り量を最大3倍近くまで増加させることができ、正帯電の抑制効果を増大させることができる。最適な戻り量や着点は観察対象の試料などによって異なるが、これらは磁性体円盤の穴径や位置調整によって変化させることができ、帯電抑制に最適な条件を選択して像観察することが可能である。このことは、本発明の重要な特許化項目である。
なお実施例には明示していないが、試料を観察する際の加速電圧や試料高さなどが変化した場合には、一次電子線の試料への収束条件が変化する。収束条件の変化はSEMの光学倍率の変化となり、試料上での電子の照射領域の変化をもたらす。一般的なSEMにおいては、装置に内蔵されたシミュレーションなどであらかじめ計算した光学倍率を算出するためのパラメータテーブルおよび計算式と対物レンズの電流値の変化から、試料高さおよび光学倍率を算出したうえで、偏向器に与える励磁量を変化させ照射領域が一定となるような制御を行っている。
本実施形態においては、磁性体円盤の挿抜、該磁性体円盤の形状や挿入位置の変化により、磁界および電界の変化が生じる。したがって該磁性体円盤の有無、形状、位置を考慮したパラメータテーブルや計算式と対物レンズの電流値を用いて、円盤の使用条件に関わらず照射領域が一定となるような偏向器の励磁量制御が行われる事は言うまでも無い。
以上のように、本実施形態によれば、低消費電力化や検出効率の向上が単純な構成で非常に安価に実現できる。また、同じ技術を用いることで磁性体試料の高分解能観察や、磁気情報を有する試料への磁界によるダメージの低減も可能である。また、二次電子と反射電子を各々独立して検出することも可能となる。加えて、絶縁物試料、特にレジストが塗布されたレチクル試料を高分解能で精度、再現性良く観察可能になる。

Claims (19)

  1. 試料に電子線を照射し、この試料上を走査させて試料からの二次電子若しくは反射電子を含む二次的な電子を検出する走査型電子顕微鏡であって、
    電子を発生させる電子源と、
    この電子源から放出される電子を用いて電子線を形成させ、この電子線を電子光学的に拡大もしくは縮小する一群のレンズと、
    前記電子線を走査する偏向器と、
    上側磁極と下側磁極とを有し、前記電子線を前記試料上に収束させる磁界型の対物レンズと、
    前記電子線が前記試料に入射したときに発生する二次的な電子を検出する検出手段であって、前記対物レンズの磁極より電子源側に配置された、第1の検出器と、
    前記対物レンズと前記試料間に配置され、中心に電子線通過穴を有する円盤状の磁性体と、
    を備えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
  2. さらに、前記試料から発散する二次的な電子を検出するための第2の検出器を備え、
    前記第2の検出器は、前記円盤状の磁性体における前記試料対向面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。
  3. さらに、前記円盤状の磁性体を挿抜可能にする円盤挿抜機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。
  4. さらに、前記試料の種類を判別する試料判別手段と、
    前記試料判別手段の判別結果に応じて、前記円盤状の磁性体の、前記対物レンズと前記試料との間への挿入及びそこからの抜き出しを制御する挿抜制御手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載の走査型電子顕微鏡。
  5. さらに、前記円盤状の磁性体を別の磁性体円盤に交換可能な円盤交換機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。
  6. さらに、請求項5記載の交換可能な磁性体円盤は、少なくとも2枚以上備えられていることを特徴とする請求項5に記載の走査型電子顕微鏡。
  7. さらに、請求項6記載の磁性体円盤は、各々内径または外径のどちらか、または両方の寸法が異なることを特徴とする請求項5に記載の走査型電子顕微鏡。
  8. 前記円盤状の磁性体の外径は、前記対物レンズを構成する下側磁極の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。
  9. さらに、前記円盤状の磁性体に電圧を印加する電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。
  10. さらに、前記対物レンズを構成する上磁極と前記第1の検出器との間に配置され、前記二次的な電子を検出する第2の検出器を備え、
    前記第2の検出器は、アニュラー形状をなし、その中心に電子線通過穴を有していることを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。
  11. さらに、前記第1の検出器と前記第2の検出器との間に配置され、前記第2の検出器の電子線通過穴を通過してきた二次的な電子を前記第1の検出器に導くための偏向器を備えることを特徴とする請求項10に記載の走査型電子顕微鏡。
  12. さらに、前記円盤状の磁性体に電圧を印加する第1の電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の走査型電子顕微鏡。
  13. さらに、前記対物レンズの上磁極に電圧を印加する第2の電圧印加手段と、
    前記試料又は試料を載置するための試料台に電圧を印加する第3の電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする請求項12に記載の走査型電子顕微鏡。
  14. さらに、前記対物レンズの上磁極の付近に配置された電極と、
    前記電極に電圧を印加する第2の電圧印加手段と、
    前記試料又は試料を載置するための試料台に電圧を印加する第3の電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする請求項12に記載の走査型電子顕微鏡。
  15. 一次電子線が通過する領域の電界または磁界、あるいはそれら両方の分布が変化したときに、一次電子線の前記試料上での前記偏向手段により決定される走査領域が変化しないように、偏向器の制御量を調整する機能を有することを特徴とする請求項14に記載の走査型電子顕微鏡。
  16. 試料に電子線を照射し、この試料上を走査させて試料からの二次電子若しくは反射電子を含む二次的な電子を検出する走査型電子顕微鏡であって、
    電子を発生させる電子源と、
    この電子源から放出される電子を用いて電子線を形成させ、この電子線を電子光学的に拡大もしくは縮小する一群のレンズと、
    前記電子線を走査する偏向器と、
    上側磁極と下側磁極とを有し、前記電子線を前記試料上に収束させる磁界型の対物レンズと、
    前記電子線が前記試料に入射したときに発生する二次的な電子を検出する検出手段であって、前記対物レンズの磁極より電子源側に配置された、第1の検出器と、
    前記対物レンズと前記試料間に配置され、中心に電子線通過穴を有する円盤状の磁性体と、
    前記対物レンズを構成する上磁極と前記第1の検出器との間に配置され、前記二次的な電子を検出する第2の検出器と、
    前記第1の検出器と前記第2の検出器との間に配置され、前記第2の検出器の電子線通過穴を通過してきた二次的な電子を前記第1の検出器に導くための偏向器と、
    を備え、
    前記第2の検出器は、アニュラー形状をなし、その中心に電子線通過穴を有していることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
  17. 電子源と、当該電子源から放出される電子線を集束する磁界型対物レンズと、試料から放出された電子を検出する検出器を備えた走査型電子顕微鏡において、
    前記対物レンズは、前記電子線を集束するための漏洩磁場を前記試料側に向かって漏洩させるように構成され、
    当該対物レンズと試料との間に、前記漏洩磁場の前記試料への到達を抑制する磁性体材料を、挿入可能に保持する移動機構を備えたことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
  18. 請求項17において、
    前記磁性体材料は、前記電子線を通過させるための開口を備えていることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
  19. 請求項18において、
    前記移動機構は、大きさの異なる前記開口を複数保持し、当該移動機構による移動によって、前記複数の開口を切り換えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
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