JPWO2007119437A1 - 反応装置 - Google Patents
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Abstract
この反応装置は、固体電解質層と、固体電解質層の一側面に形成され一側面が燃料ガスに接触する第1電極層と、固体電解質層の他側面に形成され他側面が酸化性ガスに接触する第2電極層とが積層されてなる単セルの1つ、及び、単セルと少なくとも燃料ガスの流路を形成する流路形成部材とが交互に積層されてなる積層体、の何れかを含んで構成され、単セルの発電反応により発電する第1構造体を複数備える。これらの第1構造体は、互いに隣り合うもの同士が外部空間を挟んで離れるように固定部材により固定配置される。ここで、互いに隣り合う第1構造体により挟まれる外部空間の体積を含んだ反応装置の総体積は、1mm3以上、1×105mm3以下である。これにより、反応装置を急速に起動でき且つ反応装置の出力を精緻に制御できる超小型の反応装置が提供され得る。
Description
本発明は、マイクロ(携帯機器用小型)燃料電池等の反応装置に関する。
近年、携帯機器の多機能化に伴い電力消費量が高まり、その結果バッテリーの持続時間が急速に短くなっている。バッテリーの種類として、1次電池、2次電池があるが、持続時間はいずれもユーザーの要求を満たすものではない。そこで、未だ製品化されていないものの、エネルギー密度が高く持続時間が長いという点で、マイクロ燃料電池に対する期待が高まっている。
マイクロ燃料電池の形態としては、放熱・作動温度の観点から、一般に高分子電解質型燃料電池(PEFC)が主流で開発されてきており、形状としては、基盤内に流路溝を設けたもの(特許文献1を参照)や積層型(特許文献2を参照)が知られている。
他方、従来から開発が進められてきた比較的大型なサイズの燃料電池として、固体酸化物型燃料電池(SOFC)がある(特許文献3を参照)。従来の燃料電池は、高出力を得るため反応部を集約して均熱性が優れるように設計することが一般的であった(特許文献4、5を参照)。
特開2005−166453号公報
特開2004−146080号公報
特開2005−166439号公報
特開2005−285495号公報
特許3419238号
マイクロ燃料電池の形態としては、放熱・作動温度の観点から、一般に高分子電解質型燃料電池(PEFC)が主流で開発されてきており、形状としては、基盤内に流路溝を設けたもの(特許文献1を参照)や積層型(特許文献2を参照)が知られている。
他方、従来から開発が進められてきた比較的大型なサイズの燃料電池として、固体酸化物型燃料電池(SOFC)がある(特許文献3を参照)。従来の燃料電池は、高出力を得るため反応部を集約して均熱性が優れるように設計することが一般的であった(特許文献4、5を参照)。
高分子電解質型燃料電池は、反応器における温度が低温であるため反応効率が悪い。固体酸化物型燃料電池は、反応器が高温であるため反応効率は高いが、シールが難しい、高温のためクラックが生じやすい(反応器内を均一に加熱しないと割れてしまう。)といった問題により設計に制限がある。
携帯機器をターゲットに置いた場合、反応器の起動・停止が迅速に行われなければならない。携帯機器は瞬時に使用できる環境が必要なため、作動温度まで加熱する起動時間は短くする必要がある。
携帯機器をターゲットに置いた場合、反応器の起動・停止が迅速に行われなければならない。携帯機器は瞬時に使用できる環境が必要なため、作動温度まで加熱する起動時間は短くする必要がある。
本発明の目的は、起動・停止を迅速かつ効率的に行えるマイクロ燃料電池等の反応装置を提供すること、特に、作動温度が高い固体酸化物型燃料電池へ適用できる反応器を提供することにある。
本発明に係る第1の反応装置は、発熱部を二つ以上有し、少なくとも二つの前記発熱部が離間していることを特徴としている。これによれば、発熱部(発電部)を複数に分けて配置することにより、多段階に電力を発生させることが可能となり、これにより速やかに電力を提供可能となった。この結果、例えば、低電流でもよいから速やかに電圧を供給できる燃料電池を提供することが容易となる。加えて、発熱部を小型とすることができるから発熱部に対する加熱・保温も容易である。この結果、起動時間の短縮に有利となる。
なお、単セルが連続的に積層されてなる反応器であって、2つの単セルが断熱層を挟持して積層される場合は本発明に含まれる。断熱層は内部に(真空)空間を有してもよく、断熱層自身が肉厚のジルコニア・ガラスなどのセラミックスであってもよい。積層方向(Z方向)に対し空間を用いてアイソレートするほかに、平面方向(X,Y方向)に空間や断熱材を用いてアイソレートすることが考えられる。
上記本発明に係る第1の反応装置においては、前記発熱部の一つまたは全部が燃料電池の反応を行う部位であることが好適である。
また、上記本発明に係る第1の反応装置においては、前記燃料電池の反応を行う部位が固体電解質、及び電極から構成されることが好適である。この場合、離間している部分(即ち、実質的に反応を行う部位)が固体電解質、電極からなる。なお、支持部(連結部)が離隔していなくともよい。
上記本発明に係る第1の反応装置においては、前記発熱部の一つが燃料ガスの改質を行う部位であることが好ましく、また、前記二つの発熱部が並列回路であることが好ましい。
上記本発明に係る第1の反応装置においては、前記二つの発熱部が空間によって離間されていることが好適である。これによれば、空間内に不活性ガスを充填させる、あるいは真空とすることで二つの発熱部が断熱され得る。
本発明に係る第2の反応装置は、上記第1の反応装置において、前記発熱部について入力する流路と出力する流路を有しており、第一の発熱部から出力する流路を流れる流体によって第二の発熱部を加熱することを特徴としている。
これによれば、一方の発電部から発生した熱を他方の発電部に供給することで、発電部始動時における昇温速度を高めるとともに、排熱利用によりエネルギー変換効率を高めることができる。また、この構成を備えることで、電力の要求量に応じて、発熱部の稼働率を変えることが容易となる。これは、例えば、自動車のエンジンにおいて必要に応じて動作する気筒数を変えるのと同じ考え方に基づくものである。また、ハイブリッド車のように加速時のみフルに動作し、走行時はエンジンの一部を停止するような運転や、停車時にアイドリングストップするような運転も可能となる。
また、発熱部を離間させることにより、反応器の一部がクラックの発生等により動作しなくなった場合において、以下効果も期待できる。
(1)電源全体の機能保全が見込まれる。
即ち、反応器が大きな単一パーツで出来ていた場合には、動作しなくなった時点で反応装置全体に致命的な問題を引き起こすが、反応装置が独立した小型デバイスの集合体であれば、機能不全に陥ったユニットを切り離すことで、全体への影響を最小限にとどめることができる。
(2)予備回路による機能修復が見込まれる。
即ち、小型デバイスを多数搭載している反応装置であれば、例えば、反応器が100ユニットあった場合、5ユニットぐらいを予備として(機能させずに)保持していることで、あるユニットが機能不全に陥った場合に当該ユニットの機能代替を担わせ、機能低下を防ぐことができる。
(3)クラックの波及予防が見込まれる。
即ち、同一基板上に複数小型デバイスを有する構造の場合においては、そのうちの一つの小型デバイスにクラックが発生した場合、動作−非動作モードを繰り返すことでクラックが拡大し、悪影響が同一基板上の他デバイスに波及する可能性が大きい。一方、小型デバイスを離隔した状態で複数備える構造の場合においては、それぞれの構造が物理的に繋がっていないため、上記のようなクラック拡大を防ぐ事ができる。
このように本発明によれば、上記(1)〜(3)の効果により、小型携帯機器など過酷な使用環境で反応器の一部が故障したとしても機能停止を回避でき、また機能低下を最小限にとどめることができる。そして、これにより従来の単一な燃料電池構造に比べ、飛躍的に信頼性を向上することが可能となる。
上記本発明に係る第2の反応装置においては、前記第二の発熱部から出力する流路を流れる流体によって前記第一の発熱部を加熱することが好適である。これにより、第一、第二の発熱部が相互に熱の補填をすることができる。
上記本発明に係る第2の反応装置においては、前記第一の発熱部および前記第二の発熱部が燃料電池の反応を行う部位であって、前記第一の発熱部と前記第二の発熱部との間に燃料ガスの改質を行う部位を配置することが好ましい。反応部に挟まれた部位は反応装置(電気化学装置)内において高温部として形成し易いため、上記構成のように該部位に改質部を設けることで、改質部の加熱・保温が容易となる。
本発明に係る第3の反応装置は、第一の反応器と第二の反応器とを備えており、前記第一の反応器と前記第二の反応器とが連結部を介して一体化されている反応装置であって、
前記第一の反応器および前記第二の反応器が、それぞれ、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質および第二のガスと接触する第二の電極を備えており、前記第一の電極が前記固体電解質からみて表面側に設けられており、前記反応装置内に前記第二のガスの流路が形成されており、前記連結部以外の部位について、少なくとも二つの反応器が物理的に離間していることを特徴としている。
これによれば、流路が形成されている層(単ユニット)が、連結部を除き、物理的に離隔される。
上記本発明に係る第3の反応装置においては、前記第一の反応器および前記第二の反応器が電気的に接続されていることが好適である。
上記本発明に係る第3の反応装置においては、前記第一の反応器および前記第二の反応器が一端で固定されていることが好適である。これによれば、接続部が一端のみとなる。
上記本発明に係る第3の反応装置においては、少なくとも前記第一の反応器および前記第二の反応器が、金属シートからなる容器で被われており、前記容器内に前記第一のガスの流路が形成されていることが好適である。これによれば、第一のガスが容器内を流れつつ、第一の電極と接触することになる。
携帯機器に内蔵される場合、断熱性が高くなければならない。そのため、燃料電池は真空容器内に収納される可能性が高い。したがって、真空空間とは別に第一のガスが流れる空間が必要となる。上記構成は、係る観点に基づく。容器は、金属シートである必然性はなく、耐熱性のある容器であればよい。また、容器の代わりとして、ガラス部材やセラミックス部材等により反応器の表面の一部又は全部に第一のガスが流れる密閉空間を設けてもよい。
上記本発明に係る第1乃至第3の何れか一つの反応装置においては、実質的にセラミックスから形成されていることが好適である。
本発明に係る第4の反応装置においては、複数(N個)の反応器を備える反応装置であって、各反応器に流入するガスの量又は流入開始時間を変化させることで、多段階に電力を取り出すことを特徴としている。
係る分野では、微小な電流でもよいので迅速に電圧を取り出したいという要求がある。上記構成によれば、図1に示すように電力を生み出すことができる。
本発明に係る第4の反応装置においては、少なくとも一つの前記反応器の流路長が他の反応器と異なることが好ましい。或いは、少なくとも一つの前記反応器の容積が他の反応器と異なることが好ましい。或いは、少なくとも一つの前記反応器の反応面積が他の反応器と異なることが好ましい。ここで、前記反応面積とは電極とガスの接触面積を指す。
本発明に係る第4の反応装置においては、一つの前記反応器に対する加熱量又は加熱時間が他の前記反応器と異なることが好適である。これによれば、作動温度に達するまでの加熱タイミングを変えることで、複数個(N個)の反応器を別々に作動させる。これは、自動車のエンジンにおいて出力に応じて動作する気筒数を変えるのと同じ考え方に基づく。
また、本発明に係る第4の反応装置においては、出力に応じて流量を調節するマニホールドを備えることが好適である。
ところで、本発明に係る反応装置においては、反応器から排出されるガスが通過するマニホールドに連結する流路の一部が燃料カートリッジに接続されていることが好適である。これによれば、反応によって生じる生成水を燃料カートリッジに収容することで携帯機器内が湿潤されるのを避けることができ、あわせて流路内に生成水が溜まることで排気効率が低下するのを避けることができるからである。この場合、燃料カートリッジはシリカゲルや吸水性ポリマー等の吸着剤を備えることが好適である。これによれば、吸着剤に生成水を吸収させることで燃料カートリッジ内に確実に収容できるからである。
以下、本発明の特徴(ポイント)について付言する。反応器をセラミックスで構成することにより、小型で高強度を有する反応器が提供できる。具体的には、
1.体積効果により強度が向上した。
2.個体が小さいため相対的に収縮量が小さくなり割れにくい。
なお、「体積効果により強度が向上する」とは、具体的には以下のことを指す。即ち、セラミックスの強度は内在する欠陥サイズに依存し、大きな欠陥があれば強度は小さく、欠陥がなければ強度は大きくなる。加えて、同じ素材、同じ製法のセラミックスであれば、同じ分布確率をとって欠陥が存在することになる。この場合、体積が小さくなればサイズの大きな欠陥が存在する確率が小さくなるためその結果強度が高くなる確率が大きくなる。
また、小型であるためクラックが発生しにくい。そのため、反応器(単セル)の一部を分散して配置することが可能である。ここにおいて、反応部を集約した方が良いという考えからの発想の転換がある。
また、単セルを分散しつつ、各単セルの形状(流路長など)に変化を持たせることで、より迅速かつ効率的な運転が可能である。これにより、起動・停止に優れつつ、高出力なマイクロ燃料電池が作製可能となる。
加えて、各発熱部から生じる排熱を利用することで起動時間を短縮することができる。
また、本発明に係る反応装置は、固体電解質層と、前記固体電解質層の一側面に形成され一側面が燃料ガスに接触する第1電極層と、前記固体電解質層の他側面に形成され他側面が酸化性ガスに接触する第2電極層とが積層されてなる単セルの1つ、及び、前記単セルと少なくとも前記燃料ガスの流路を形成する流路形成部材とが交互に積層されてなる積層体、の何れかを含んで構成され、前記単セルの発電反応により発電する複数の第1構造体と、互いに隣り合う前記第1構造体が外部空間を挟んで離れるように前記複数の第1構造体を固定配置する固定部材と、を備え、前記隣り合う第1構造体により挟まれる前記外部空間の体積を含んだ前記反応装置の総体積が、1mm3以上、1×105mm3以下であるように構成される。
即ち、上記各第1構造体は、固体酸化物型燃料電池(以下、「SOFC」とも称呼する。)の単セルの1つ、或いは、単セルと流路形成部材(所謂、インターコネクタ)との積層体(スタック)の何れかを含んで構成される、発電反応を行う構造体である。
近年、パソコン、携帯電話機等の携帯用電子機器用のバッテリーとして利用される超小型の燃料電池の1種として、SOFCが開発されてきている。このSOFCを備えた反応装置を携帯用電子機器に適用するためには、反応装置が急速に起動すること、及び、反応装置の出力を精緻に制御することが要求される。
一般に、SOFCは、ヒータにより600℃(好ましくは、800℃)以上(以下、「作動温度」と称呼する。)に加熱された状態で使用される。従って、上記複数の第1構造体も作動温度に加熱された状態で使用される。よって、この反応装置を急速に起動するためには、出来るだけ速やかに上記複数の第1構造体の温度を作動温度まで上昇させる必要がある。
ここで、上記複数の第1構造体が一体的に配置されて1つの比較的大きい構造体(以下、「一体構造体」と称呼する。)が形成されている場合を考える。この場合、この一体構造体全体の熱容量が大きいから一体構造体全体の昇温速度が小さくなり、ヒータの加熱により一体構造体全体の温度が作動温度に達するまでに比較的長い時間を要する。即ち、反応装置の急速起動が困難となる。
加えて、この一体構造体全体が比較的大きいため、一体構造体全体を均一に加熱することが困難である。このため、一体構造体全体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、一体構造体全体の内部において局所的に大きな温度差が生じ得る。この結果、一体構造体全体の内部において大きい熱応力が発生して割れ等が発生する可能性がある。
これに対し、上記構成のように、互いに隣り合う第1構造体が外部空間を挟んで離れるように複数の第1構造体が固定部材により固定配置されると、各第1構造体の熱容量が小さくなる。これにより、各第1構造体の昇温速度が大きくなり、この結果、ヒータの加熱により各第1構造体の温度が比較的早期に作動温度に達し得る。即ち、上記一体構造体が形成される場合に比して、反応装置の急速起動が容易となる。
また、複数の第1構造体が固定部材を介して連結されている。従って、固定部材を介して第1構造体間で熱交換が可能である。即ち、互いに隣り合う第1構造体間で温度差が生じている場合、温度の高い方から低い方へと熱が移動し得る。この作用によっても、各第1構造体の温度がそれぞれ安定して早期に作動温度に達し得、この結果、反応装置のより急速な起動が容易となる。
加えて、各第1構造体が比較的小さくなるため、各第1構造体を均一に加熱することが容易となる。このため、各第1構造体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、各第1構造体の内部において局所的に大きな温度差が生じ難い。この結果、各第1構造体の内部において大きい熱応力が発生して割れ等が発生する事態の発生を抑制できる。
更に、複数の第1構造体が電気的に並列に接続されている場合、複数の第1構造体のうち発電に寄与するもの(即ち、起動するもの)の個数を制御することで、反応装置の出力電流を段階的に制御できる。即ち、反応装置の出力を精緻に制御することができる。
以上より、前記外部空間の体積を含んだ反応装置の総体積が1mm3以上、1×105mm3以下である超小型の上記構成を有する反応装置によれば、反応装置を急速に起動すること、及び、反応装置の出力を精緻に制御することができる。
上記構成を有する反応装置においては、前記複数の第1構造体は、前記燃料ガスと接触する前記第1電極層の一側面の表面積、及び/又は、前記酸化性ガスと接触する前記第2電極層の他側面の表面積(以下、「反応面積」とも総称する。)が異なるように構成されてもよい。
SOFCを備えた第1構造体の上記発電反応は、発熱反応である。この発電反応は、上記反応面積が大きいほどより活発となる。従って、上記反応面積が大きいほど第1構造体の昇温速度が大きくなって早期に作動温度に達し得る。
以上のことから、上記構成のように、複数の第1構造体間で反応面積を異ならせることで、複数の第1構造体間で作動温度に達する時期を異ならせることができる。この結果、作動温度に達したものから順に第1構造体を起動していくことで、反応装置の出力を早期且つ段階的に取り出すことが可能となる。
同様に、上記構成を有する反応装置においては、前記複数の第1構造体は、熱容量が異なるように構成されてもよい。これによっても、複数の第1構造体間で作動温度に達する時期を異ならせることができる。この結果、上述した複数の第1構造体間で反応面積を異ならせる場合と同じ作用効果が得られる。
特に、複数の第1構造体が、熱容量が最も小さいものから最も大きいものまで順に並ぶように配置されると、(温度が最も高い)熱容量が最も小さいものから(温度が最も低い)熱容量が最も大きいものへ向けて順に熱の移動が発生し得る。この結果、熱容量が最も大きいものの昇温速度を効果的に大きくすることができ、反応装置の出力をより早期且つ段階的に取り出すことができる。
ところで、上記反応装置の発電反応に使用される燃料ガス(例えば、水素ガス等)は、通常、所定の燃料(例えば、液体エタノール等)から燃料ガスを生成する燃料改質器を利用して供給される。このような燃料改質器を含んで構成される1つ又は複数の第2構造体が上記反応装置に使用される場合、前記固定部材が、前記1つ又は複数の第2構造体を、前記複数の第1構造体の何れに対しても外部空間を挟んで離れるように、又は、前記複数の第1構造体の一部(1つ又は複数)と一体的に、固定配置するように構成されることが好適である。
一般に、燃料改質器も300℃程度まで昇温された状態で使用される。従って、この場合、上記反応装置を使用するためには、燃料改質器を含んだ第2構造体もヒータにより加熱する必要がある。
ここで、上記構成によれば、第2構造体と複数の第1構造体とが固定部材を介して連結されているから、固定部材を介して第2構造体と第1構造体間で熱交換が可能となる。従って、第1構造体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、例えば、第2構造体の温度が第2構造体と隣り合う第1構造体の温度よりも高い場合、第2構造体からこの第1構造体へと熱が移動し得る。この作用により、第2構造体と隣り合う第1構造体の昇温速度が大きくなり得る。このことは、反応装置のより急速な起動を達成することに繋がる。
加えて、第2構造体内の燃料改質器による燃料ガス生成反応は、吸熱反応である。一方、第1構造体の上記発電反応は、上述のごとく、発熱反応である。ここで、第1構造体の温度が作動温度で安定している状態では、第2構造体には、第1構造体の活発な発熱反応により発生した熱が固定部材を介して伝達され得る。この結果、この状態では、第2構造体を加熱するためのヒータの作動を停止しても上記燃料ガス生成反応を持続することが可能となる。
この場合において、1つの第2構造体が上記反応装置に使用される場合であって複数の第1構造体の熱容量が異なる場合、前記固定部材は、前記1つの第2構造体を、前記複数の第1構造体のうち最も熱容量の小さいものと外部空間を挟んで隣り合うように、又は、前記複数の第1構造体のうち最も熱容量の小さいものと一体的に、固定配置することが好適である。
これによれば、第2構造体の温度が第2構造体と隣り合う最も熱容量の小さい第1構造体の温度よりも高い場合、第2構造体からこの第1構造体へと熱が移動し得る。この作用により、最も熱容量の小さい第1構造体の昇温速度が大きくなり得る。これにより、反応装置の出力をより早期に取り出すことができる。
本発明に係る第1の反応装置は、発熱部を二つ以上有し、少なくとも二つの前記発熱部が離間していることを特徴としている。これによれば、発熱部(発電部)を複数に分けて配置することにより、多段階に電力を発生させることが可能となり、これにより速やかに電力を提供可能となった。この結果、例えば、低電流でもよいから速やかに電圧を供給できる燃料電池を提供することが容易となる。加えて、発熱部を小型とすることができるから発熱部に対する加熱・保温も容易である。この結果、起動時間の短縮に有利となる。
なお、単セルが連続的に積層されてなる反応器であって、2つの単セルが断熱層を挟持して積層される場合は本発明に含まれる。断熱層は内部に(真空)空間を有してもよく、断熱層自身が肉厚のジルコニア・ガラスなどのセラミックスであってもよい。積層方向(Z方向)に対し空間を用いてアイソレートするほかに、平面方向(X,Y方向)に空間や断熱材を用いてアイソレートすることが考えられる。
上記本発明に係る第1の反応装置においては、前記発熱部の一つまたは全部が燃料電池の反応を行う部位であることが好適である。
また、上記本発明に係る第1の反応装置においては、前記燃料電池の反応を行う部位が固体電解質、及び電極から構成されることが好適である。この場合、離間している部分(即ち、実質的に反応を行う部位)が固体電解質、電極からなる。なお、支持部(連結部)が離隔していなくともよい。
上記本発明に係る第1の反応装置においては、前記発熱部の一つが燃料ガスの改質を行う部位であることが好ましく、また、前記二つの発熱部が並列回路であることが好ましい。
上記本発明に係る第1の反応装置においては、前記二つの発熱部が空間によって離間されていることが好適である。これによれば、空間内に不活性ガスを充填させる、あるいは真空とすることで二つの発熱部が断熱され得る。
本発明に係る第2の反応装置は、上記第1の反応装置において、前記発熱部について入力する流路と出力する流路を有しており、第一の発熱部から出力する流路を流れる流体によって第二の発熱部を加熱することを特徴としている。
これによれば、一方の発電部から発生した熱を他方の発電部に供給することで、発電部始動時における昇温速度を高めるとともに、排熱利用によりエネルギー変換効率を高めることができる。また、この構成を備えることで、電力の要求量に応じて、発熱部の稼働率を変えることが容易となる。これは、例えば、自動車のエンジンにおいて必要に応じて動作する気筒数を変えるのと同じ考え方に基づくものである。また、ハイブリッド車のように加速時のみフルに動作し、走行時はエンジンの一部を停止するような運転や、停車時にアイドリングストップするような運転も可能となる。
また、発熱部を離間させることにより、反応器の一部がクラックの発生等により動作しなくなった場合において、以下効果も期待できる。
(1)電源全体の機能保全が見込まれる。
即ち、反応器が大きな単一パーツで出来ていた場合には、動作しなくなった時点で反応装置全体に致命的な問題を引き起こすが、反応装置が独立した小型デバイスの集合体であれば、機能不全に陥ったユニットを切り離すことで、全体への影響を最小限にとどめることができる。
(2)予備回路による機能修復が見込まれる。
即ち、小型デバイスを多数搭載している反応装置であれば、例えば、反応器が100ユニットあった場合、5ユニットぐらいを予備として(機能させずに)保持していることで、あるユニットが機能不全に陥った場合に当該ユニットの機能代替を担わせ、機能低下を防ぐことができる。
(3)クラックの波及予防が見込まれる。
即ち、同一基板上に複数小型デバイスを有する構造の場合においては、そのうちの一つの小型デバイスにクラックが発生した場合、動作−非動作モードを繰り返すことでクラックが拡大し、悪影響が同一基板上の他デバイスに波及する可能性が大きい。一方、小型デバイスを離隔した状態で複数備える構造の場合においては、それぞれの構造が物理的に繋がっていないため、上記のようなクラック拡大を防ぐ事ができる。
このように本発明によれば、上記(1)〜(3)の効果により、小型携帯機器など過酷な使用環境で反応器の一部が故障したとしても機能停止を回避でき、また機能低下を最小限にとどめることができる。そして、これにより従来の単一な燃料電池構造に比べ、飛躍的に信頼性を向上することが可能となる。
上記本発明に係る第2の反応装置においては、前記第二の発熱部から出力する流路を流れる流体によって前記第一の発熱部を加熱することが好適である。これにより、第一、第二の発熱部が相互に熱の補填をすることができる。
上記本発明に係る第2の反応装置においては、前記第一の発熱部および前記第二の発熱部が燃料電池の反応を行う部位であって、前記第一の発熱部と前記第二の発熱部との間に燃料ガスの改質を行う部位を配置することが好ましい。反応部に挟まれた部位は反応装置(電気化学装置)内において高温部として形成し易いため、上記構成のように該部位に改質部を設けることで、改質部の加熱・保温が容易となる。
本発明に係る第3の反応装置は、第一の反応器と第二の反応器とを備えており、前記第一の反応器と前記第二の反応器とが連結部を介して一体化されている反応装置であって、
前記第一の反応器および前記第二の反応器が、それぞれ、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質および第二のガスと接触する第二の電極を備えており、前記第一の電極が前記固体電解質からみて表面側に設けられており、前記反応装置内に前記第二のガスの流路が形成されており、前記連結部以外の部位について、少なくとも二つの反応器が物理的に離間していることを特徴としている。
これによれば、流路が形成されている層(単ユニット)が、連結部を除き、物理的に離隔される。
上記本発明に係る第3の反応装置においては、前記第一の反応器および前記第二の反応器が電気的に接続されていることが好適である。
上記本発明に係る第3の反応装置においては、前記第一の反応器および前記第二の反応器が一端で固定されていることが好適である。これによれば、接続部が一端のみとなる。
上記本発明に係る第3の反応装置においては、少なくとも前記第一の反応器および前記第二の反応器が、金属シートからなる容器で被われており、前記容器内に前記第一のガスの流路が形成されていることが好適である。これによれば、第一のガスが容器内を流れつつ、第一の電極と接触することになる。
携帯機器に内蔵される場合、断熱性が高くなければならない。そのため、燃料電池は真空容器内に収納される可能性が高い。したがって、真空空間とは別に第一のガスが流れる空間が必要となる。上記構成は、係る観点に基づく。容器は、金属シートである必然性はなく、耐熱性のある容器であればよい。また、容器の代わりとして、ガラス部材やセラミックス部材等により反応器の表面の一部又は全部に第一のガスが流れる密閉空間を設けてもよい。
上記本発明に係る第1乃至第3の何れか一つの反応装置においては、実質的にセラミックスから形成されていることが好適である。
本発明に係る第4の反応装置においては、複数(N個)の反応器を備える反応装置であって、各反応器に流入するガスの量又は流入開始時間を変化させることで、多段階に電力を取り出すことを特徴としている。
係る分野では、微小な電流でもよいので迅速に電圧を取り出したいという要求がある。上記構成によれば、図1に示すように電力を生み出すことができる。
本発明に係る第4の反応装置においては、少なくとも一つの前記反応器の流路長が他の反応器と異なることが好ましい。或いは、少なくとも一つの前記反応器の容積が他の反応器と異なることが好ましい。或いは、少なくとも一つの前記反応器の反応面積が他の反応器と異なることが好ましい。ここで、前記反応面積とは電極とガスの接触面積を指す。
本発明に係る第4の反応装置においては、一つの前記反応器に対する加熱量又は加熱時間が他の前記反応器と異なることが好適である。これによれば、作動温度に達するまでの加熱タイミングを変えることで、複数個(N個)の反応器を別々に作動させる。これは、自動車のエンジンにおいて出力に応じて動作する気筒数を変えるのと同じ考え方に基づく。
また、本発明に係る第4の反応装置においては、出力に応じて流量を調節するマニホールドを備えることが好適である。
ところで、本発明に係る反応装置においては、反応器から排出されるガスが通過するマニホールドに連結する流路の一部が燃料カートリッジに接続されていることが好適である。これによれば、反応によって生じる生成水を燃料カートリッジに収容することで携帯機器内が湿潤されるのを避けることができ、あわせて流路内に生成水が溜まることで排気効率が低下するのを避けることができるからである。この場合、燃料カートリッジはシリカゲルや吸水性ポリマー等の吸着剤を備えることが好適である。これによれば、吸着剤に生成水を吸収させることで燃料カートリッジ内に確実に収容できるからである。
以下、本発明の特徴(ポイント)について付言する。反応器をセラミックスで構成することにより、小型で高強度を有する反応器が提供できる。具体的には、
1.体積効果により強度が向上した。
2.個体が小さいため相対的に収縮量が小さくなり割れにくい。
なお、「体積効果により強度が向上する」とは、具体的には以下のことを指す。即ち、セラミックスの強度は内在する欠陥サイズに依存し、大きな欠陥があれば強度は小さく、欠陥がなければ強度は大きくなる。加えて、同じ素材、同じ製法のセラミックスであれば、同じ分布確率をとって欠陥が存在することになる。この場合、体積が小さくなればサイズの大きな欠陥が存在する確率が小さくなるためその結果強度が高くなる確率が大きくなる。
また、小型であるためクラックが発生しにくい。そのため、反応器(単セル)の一部を分散して配置することが可能である。ここにおいて、反応部を集約した方が良いという考えからの発想の転換がある。
また、単セルを分散しつつ、各単セルの形状(流路長など)に変化を持たせることで、より迅速かつ効率的な運転が可能である。これにより、起動・停止に優れつつ、高出力なマイクロ燃料電池が作製可能となる。
加えて、各発熱部から生じる排熱を利用することで起動時間を短縮することができる。
また、本発明に係る反応装置は、固体電解質層と、前記固体電解質層の一側面に形成され一側面が燃料ガスに接触する第1電極層と、前記固体電解質層の他側面に形成され他側面が酸化性ガスに接触する第2電極層とが積層されてなる単セルの1つ、及び、前記単セルと少なくとも前記燃料ガスの流路を形成する流路形成部材とが交互に積層されてなる積層体、の何れかを含んで構成され、前記単セルの発電反応により発電する複数の第1構造体と、互いに隣り合う前記第1構造体が外部空間を挟んで離れるように前記複数の第1構造体を固定配置する固定部材と、を備え、前記隣り合う第1構造体により挟まれる前記外部空間の体積を含んだ前記反応装置の総体積が、1mm3以上、1×105mm3以下であるように構成される。
即ち、上記各第1構造体は、固体酸化物型燃料電池(以下、「SOFC」とも称呼する。)の単セルの1つ、或いは、単セルと流路形成部材(所謂、インターコネクタ)との積層体(スタック)の何れかを含んで構成される、発電反応を行う構造体である。
近年、パソコン、携帯電話機等の携帯用電子機器用のバッテリーとして利用される超小型の燃料電池の1種として、SOFCが開発されてきている。このSOFCを備えた反応装置を携帯用電子機器に適用するためには、反応装置が急速に起動すること、及び、反応装置の出力を精緻に制御することが要求される。
一般に、SOFCは、ヒータにより600℃(好ましくは、800℃)以上(以下、「作動温度」と称呼する。)に加熱された状態で使用される。従って、上記複数の第1構造体も作動温度に加熱された状態で使用される。よって、この反応装置を急速に起動するためには、出来るだけ速やかに上記複数の第1構造体の温度を作動温度まで上昇させる必要がある。
ここで、上記複数の第1構造体が一体的に配置されて1つの比較的大きい構造体(以下、「一体構造体」と称呼する。)が形成されている場合を考える。この場合、この一体構造体全体の熱容量が大きいから一体構造体全体の昇温速度が小さくなり、ヒータの加熱により一体構造体全体の温度が作動温度に達するまでに比較的長い時間を要する。即ち、反応装置の急速起動が困難となる。
加えて、この一体構造体全体が比較的大きいため、一体構造体全体を均一に加熱することが困難である。このため、一体構造体全体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、一体構造体全体の内部において局所的に大きな温度差が生じ得る。この結果、一体構造体全体の内部において大きい熱応力が発生して割れ等が発生する可能性がある。
これに対し、上記構成のように、互いに隣り合う第1構造体が外部空間を挟んで離れるように複数の第1構造体が固定部材により固定配置されると、各第1構造体の熱容量が小さくなる。これにより、各第1構造体の昇温速度が大きくなり、この結果、ヒータの加熱により各第1構造体の温度が比較的早期に作動温度に達し得る。即ち、上記一体構造体が形成される場合に比して、反応装置の急速起動が容易となる。
また、複数の第1構造体が固定部材を介して連結されている。従って、固定部材を介して第1構造体間で熱交換が可能である。即ち、互いに隣り合う第1構造体間で温度差が生じている場合、温度の高い方から低い方へと熱が移動し得る。この作用によっても、各第1構造体の温度がそれぞれ安定して早期に作動温度に達し得、この結果、反応装置のより急速な起動が容易となる。
加えて、各第1構造体が比較的小さくなるため、各第1構造体を均一に加熱することが容易となる。このため、各第1構造体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、各第1構造体の内部において局所的に大きな温度差が生じ難い。この結果、各第1構造体の内部において大きい熱応力が発生して割れ等が発生する事態の発生を抑制できる。
更に、複数の第1構造体が電気的に並列に接続されている場合、複数の第1構造体のうち発電に寄与するもの(即ち、起動するもの)の個数を制御することで、反応装置の出力電流を段階的に制御できる。即ち、反応装置の出力を精緻に制御することができる。
以上より、前記外部空間の体積を含んだ反応装置の総体積が1mm3以上、1×105mm3以下である超小型の上記構成を有する反応装置によれば、反応装置を急速に起動すること、及び、反応装置の出力を精緻に制御することができる。
上記構成を有する反応装置においては、前記複数の第1構造体は、前記燃料ガスと接触する前記第1電極層の一側面の表面積、及び/又は、前記酸化性ガスと接触する前記第2電極層の他側面の表面積(以下、「反応面積」とも総称する。)が異なるように構成されてもよい。
SOFCを備えた第1構造体の上記発電反応は、発熱反応である。この発電反応は、上記反応面積が大きいほどより活発となる。従って、上記反応面積が大きいほど第1構造体の昇温速度が大きくなって早期に作動温度に達し得る。
以上のことから、上記構成のように、複数の第1構造体間で反応面積を異ならせることで、複数の第1構造体間で作動温度に達する時期を異ならせることができる。この結果、作動温度に達したものから順に第1構造体を起動していくことで、反応装置の出力を早期且つ段階的に取り出すことが可能となる。
同様に、上記構成を有する反応装置においては、前記複数の第1構造体は、熱容量が異なるように構成されてもよい。これによっても、複数の第1構造体間で作動温度に達する時期を異ならせることができる。この結果、上述した複数の第1構造体間で反応面積を異ならせる場合と同じ作用効果が得られる。
特に、複数の第1構造体が、熱容量が最も小さいものから最も大きいものまで順に並ぶように配置されると、(温度が最も高い)熱容量が最も小さいものから(温度が最も低い)熱容量が最も大きいものへ向けて順に熱の移動が発生し得る。この結果、熱容量が最も大きいものの昇温速度を効果的に大きくすることができ、反応装置の出力をより早期且つ段階的に取り出すことができる。
ところで、上記反応装置の発電反応に使用される燃料ガス(例えば、水素ガス等)は、通常、所定の燃料(例えば、液体エタノール等)から燃料ガスを生成する燃料改質器を利用して供給される。このような燃料改質器を含んで構成される1つ又は複数の第2構造体が上記反応装置に使用される場合、前記固定部材が、前記1つ又は複数の第2構造体を、前記複数の第1構造体の何れに対しても外部空間を挟んで離れるように、又は、前記複数の第1構造体の一部(1つ又は複数)と一体的に、固定配置するように構成されることが好適である。
一般に、燃料改質器も300℃程度まで昇温された状態で使用される。従って、この場合、上記反応装置を使用するためには、燃料改質器を含んだ第2構造体もヒータにより加熱する必要がある。
ここで、上記構成によれば、第2構造体と複数の第1構造体とが固定部材を介して連結されているから、固定部材を介して第2構造体と第1構造体間で熱交換が可能となる。従って、第1構造体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、例えば、第2構造体の温度が第2構造体と隣り合う第1構造体の温度よりも高い場合、第2構造体からこの第1構造体へと熱が移動し得る。この作用により、第2構造体と隣り合う第1構造体の昇温速度が大きくなり得る。このことは、反応装置のより急速な起動を達成することに繋がる。
加えて、第2構造体内の燃料改質器による燃料ガス生成反応は、吸熱反応である。一方、第1構造体の上記発電反応は、上述のごとく、発熱反応である。ここで、第1構造体の温度が作動温度で安定している状態では、第2構造体には、第1構造体の活発な発熱反応により発生した熱が固定部材を介して伝達され得る。この結果、この状態では、第2構造体を加熱するためのヒータの作動を停止しても上記燃料ガス生成反応を持続することが可能となる。
この場合において、1つの第2構造体が上記反応装置に使用される場合であって複数の第1構造体の熱容量が異なる場合、前記固定部材は、前記1つの第2構造体を、前記複数の第1構造体のうち最も熱容量の小さいものと外部空間を挟んで隣り合うように、又は、前記複数の第1構造体のうち最も熱容量の小さいものと一体的に、固定配置することが好適である。
これによれば、第2構造体の温度が第2構造体と隣り合う最も熱容量の小さい第1構造体の温度よりも高い場合、第2構造体からこの第1構造体へと熱が移動し得る。この作用により、最も熱容量の小さい第1構造体の昇温速度が大きくなり得る。これにより、反応装置の出力をより早期に取り出すことができる。
図1は、本発明に係る第4の反応装置において出力し得る電力のパターンを示したグラフである。
図2は、本発明に係る第1の反応装置において基板上に反応器が配置された様子を示した模式図である。
図3は、本発明に係る第2の反応装置の第1、第2反応部において、一方から出力する流路を流れる流体によって他方が加熱されることを示した模式図である。
図4は、図3において第1反応部と第2反応部との間に燃料ガスの改質を行う部位が配置された場合を示した模式図である。
図5は、本発明に係る第2の反応装置の反応器をある切断面にて切断したものの斜視図である。
図6は、図5に示した1−1線に沿った平面にて切断した断面図である。
図7は、本発明に係る第3の反応装置に係る電気化学デバイスを示す分解斜視図である。
図8は、本発明に係る第3の反応装置に係る電気化学デバイスの縦断面図である。
図9は、本発明に係る第3の反応装置に係る外部電極の形成方法を示した図である。
図10は、本発明に係る第3の反応装置に係る外部電極の形成方法を示した図である。
図11は、本発明に係る第3の反応装置のスタックを示した斜視図である。
図12は、本発明に係る第3の反応装置であって「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型スタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図13は、本発明に係る第3の反応装置であって「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図14は、本発明に係る第3の反応装置であって「両持ち穴明きスタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図15は、本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(集電部材配設前)を示した斜視図である。
図16は、本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(集電部材配設後)を示した斜視図である。
図17は、本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(集電部材配設前)を示した斜視図である。
図18は、本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(集電部材配設後)を示した斜視図である。
図19は、本発明に係る第3の反応装置であって「しゃもじ型スタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図20は、本発明に係る第3の反応装置であって「中心位置でのスタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図21は、本発明に係る第3の反応装置であって「両持ちスタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図22は、本発明に係る第3の反応装置であって「平面マトリクス構造」を有するものを示した斜視図である。
図23は、本発明に係る第3の反応装置であって「平面列構造」を有するものを示した斜視図である。
図2は、本発明に係る第1の反応装置において基板上に反応器が配置された様子を示した模式図である。
図3は、本発明に係る第2の反応装置の第1、第2反応部において、一方から出力する流路を流れる流体によって他方が加熱されることを示した模式図である。
図4は、図3において第1反応部と第2反応部との間に燃料ガスの改質を行う部位が配置された場合を示した模式図である。
図5は、本発明に係る第2の反応装置の反応器をある切断面にて切断したものの斜視図である。
図6は、図5に示した1−1線に沿った平面にて切断した断面図である。
図7は、本発明に係る第3の反応装置に係る電気化学デバイスを示す分解斜視図である。
図8は、本発明に係る第3の反応装置に係る電気化学デバイスの縦断面図である。
図9は、本発明に係る第3の反応装置に係る外部電極の形成方法を示した図である。
図10は、本発明に係る第3の反応装置に係る外部電極の形成方法を示した図である。
図11は、本発明に係る第3の反応装置のスタックを示した斜視図である。
図12は、本発明に係る第3の反応装置であって「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型スタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図13は、本発明に係る第3の反応装置であって「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図14は、本発明に係る第3の反応装置であって「両持ち穴明きスタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図15は、本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(集電部材配設前)を示した斜視図である。
図16は、本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(集電部材配設後)を示した斜視図である。
図17は、本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(集電部材配設前)を示した斜視図である。
図18は、本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(集電部材配設後)を示した斜視図である。
図19は、本発明に係る第3の反応装置であって「しゃもじ型スタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図20は、本発明に係る第3の反応装置であって「中心位置でのスタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図21は、本発明に係る第3の反応装置であって「両持ちスタック構造」を有するものを示した斜視図である。
図22は、本発明に係る第3の反応装置であって「平面マトリクス構造」を有するものを示した斜視図である。
図23は、本発明に係る第3の反応装置であって「平面列構造」を有するものを示した斜視図である。
以下、図面を参照しながら本発明に係る反応装置の各実施形態について説明する。本発明で想定しているマイクロ反応装置の装置寸法は下記のとおりである。
反応装置の総体積:1mm3〜1×105mm3
流路径:10μm〜1mm
固体電解質膜厚:0.3〜50μm
電極膜厚:0.3〜30μm
なお、流路形状に特に制限はなく円形でも矩形でもよい。また、流路径は一律な必要はなく、反応器の反応状態、流入するガスの流入状態により変化させてもよい。さらに、流路は反応器内で、ストレート形態でもジグザグ形態でもよく、一経路だけでなく複数経路であってもよい。また、本発明が提供する反応装置のコンセプトに適合する限りにおいては、上記に示す寸法範囲外であっても本発明に含まれるものとする。また、以下に示す第1〜第4の反応装置は例示であって本発明はこれらに限定されるものではない。さらに第1〜第4の反応装置の各コンセプトは本発明に係る他の反応装置のコンセプトに自由に適用することができるものとする。
(本発明に係る第1の反応装置)
本発明に係る第1の反応装置に用いられる反応器は、二つの反応器(発熱部)を内部空間を有するように積層したものでもよく、また、図2に示すように、二つの反応器(発熱部)を基板上に離間するようにそれぞれ配置したものでもよい。
反応器及びその作製方法に特に制限はないが、例えば積層型やハニカム構造型が小型化できる面で適しており、これらは射出成形法、プレス成形法、積層法、押出し法又は鋳込み法により作製される。
以下、積層法による反応器及び流路の作り方の手順について簡単に説明する。
1.底板となる第1のセラミックグリーンシート、天板となる第2のセラミックグリーンシート、側面(流路)を形成する第3のセラミックグリーンシートを各種用意する。
2.側面(流路)を形成するため、第2のシートをパンチで打ち抜く。
3.天板となる第2のセラミックグリーンシートについて、電極を所定位置にスクリーン印刷にて塗布する。
4.第1〜3のセラミックグリーンシートを積層し・所定温度で焼成する。
なお、流路を形成した後、流路内にスラリーを流し込み固化させることで、電極、触媒、細孔等を形成してもよい。
反応器における基板の材料としては、ジルコニア或いはアルミナ等の通常のセラミック、或いは、窒化珪素或いは炭化珪素等の高耐熱衝撃性セラミックであればよく、また、比較的低い温度で反応させる反応器においては、ガラス基板や金属板であってもよい。また、固体電解質を兼ねる場合には、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアであってよい。そして、この場合に組み合わせる集電板(インターコネクター)としては、例えば、ニッケル、インコネル、ニクロムなどのニッケル基合金、ステンレスなどの鉄基合金等の金属や、ランタンクロマイトなどの導電性セラミックスが使用され得る。
また、反応器における電極(アノード、カソード)の材料としては、カソードについては、例えば、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物が使用でき、この場合、ランタンマンガナイト又はランタンコバルタイトであることが好ましく、ランタンマンガナイトが一層好ましい。ランタンコバルタイト及びランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト(ランタンマンガナイトの場合)、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。また、パラジウム、白金、ルテニウム、白金−ジルコニアサーメット、パラジウム−ジルコニアサーメット、ルテニウム−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、パラジウム−酸化セリウムサーメット、ルテニウム−酸化セリウムサーメットであってもよい。
また、アノードについては、ニッケル−ジルコニアサーメット、白金、白金−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、ルテニウム、ルテニウム−ジルコニアサーメット等が好ましい。
以上、本発明に係る第1の反応装置は、発熱部を二つ以上有していて、少なくとも二つの発熱部が離間している。そして、発熱部の一つまたは全部が燃料電池の反応を行う部位である。この燃料電池の反応を行う部位は、固体電解質、及び電極から構成されている。
ここで、発熱部の一つは、燃料ガスの改質を行う部位である。また、二つの発熱部が並列回路である。加えて、二つの発熱部が空間によって離間されている。
(本発明に係る第2の反応装置)
次に、本発明に係る第2の反応装置について説明する。図3に示すように、この反応装置では、第1、第2反応部(発熱部)について入力する流路と出力する流路がそれぞれ設けられている。第1反応部から出力する流路を流れる流体によって第2反応部が加熱される。同様に、第2反応部から出力する流路を流れる流体によって第1反応部が加熱される。この場合、反応器に入出力するガス流入口および流出口は複数設けてもよい(他の反応装置においても同様である。)。
更には、図4に示すように、第1反応部および第2反応部が燃料電池の反応を行う部位であり、第1反応部と第2反応部との間に燃料ガスの改質を行う部位が配置されてもよい。これにより、高温となり得る反応部に改質部が挟まれるため、改質部の加熱・保温が容易となる。
以下、本発明に係る第2の反応装置に関する流路形成の手法について説明する。図5は本発明に係る第2の反応装置の反応器の一つである、反応器RT1をある切断面にて切断したものの斜視図、図6は反応器RT1を図5に示した1−1線に沿った平面にて切断した断面図である。この反応器RT1は、流路形成体10と多孔質体20とを備えている。なお、多孔質体20は流路内に必ずしも存在する必要はなく、また流路内の一部分にのみ存在していてもよい。
流路形成体10は、下壁部11、中間壁部12及び上壁部13からなっている。流路形成体10は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸方向に沿った辺を有する直方体であり、内部に流路(空間)R1及び流路(空間)R2を備えている。
下壁部11は、X軸、Y軸及びZ軸方向に沿った辺を有する平板体である。
中間壁部12は、第一支持部12−1と第二支持部12−2とを備えている。第一支持部12−1及び第二支持部12−2のそれぞれは、X軸、Y軸及びZ軸方向に沿った辺を有する直方体であり、互いに同形である。第一支持部12−1及び第二支持部12−2のそれぞれの長手方向はY軸方向に沿っている。
中間壁部12は、図6に示したように、実際には3枚の板体12a,12b,12cからなっている。これらの板体12a,12b,12cは焼成により一体化されている。板体12a及び板体12cは、互いに同形の板体であって、流路R1に相当する部分が打ち抜かれている。板体12bは、流路R1及び流路R2に相当する部分が打ち抜かれた板体である。換言すると、中間壁部12は、内部に流路R2に相当する空洞を有さない第一支持部12−1と、内部に流路R2に相当する空洞を有する第二支持部12−2と、からなっている。
上壁部13は、X軸、Y軸及びZ軸方向に沿った辺を有する板体である。
下壁部11、中間壁部12及び上壁部13は、各部に対応した形状を有するセラミックの平板体(セラミックグリーンシート)を順に積層した後、それらを焼成することにより、固着一体化されている。この結果、流路R1及び流路R2を備える流路形成体10が形成される。
流路R1は、下壁部11の上面、中間壁部12に形成された空間の側壁面及び上壁部13の下面により画定される。流路R1の長手軸方向(流線方向)はY軸に沿っている。流路R2は、中間壁部12の板体12aの上面、板体12bに形成された空間の側壁面及び板体12cの下面により画定される。流路R2の長手軸方向(流線方向)もY軸に沿っている。
流路形成体10(即ち、下壁部11、中間壁部12及び上壁部13)は、ジルコニア或いはアルミナ等の通常のセラミック、或いは、窒化珪素或いは炭化珪素等の高耐熱衝撃性セラミックからなっている。本発明に係る第2の反応装置においては、反応器RT1のような反応器を二つ以上離隔して配置することにより実現できる。特に、請求項9に係る反応装置においては、流路R2を利用して改質器に反応器から生じる排熱を送ってもよい。
(本発明に係る第3の反応装置)
次に、本発明に係る第3の反応装置について説明する。一般に、いわゆる円筒型の固体酸化物形燃料電池では、単電池間の無駄なスペースが多いので、単位体積あたりの発電効率が低く、発電量の増大に構造的な限界がある。一方、平板型燃料電池の場合には、上下方向に多数の平板型単電池を積み重ね、隣接する単電池間をセパレータ(隔離板)で隔離する。そして、隣接する単電池とセパレータとの間の空間に燃料や酸化性ガスを流通させる。しかし、このガスの温度は例えば800〜1000℃と高温であり、このためにはマニホ−ルド部分の温度もある程度高温となる。この状態でマニホールドによって多数のガス流路を、酸化性ガスと燃料ガスとが接触しないようにシールすることは難しい。実際の組み立て工程では、多数の平板型単電池を積み重ねて上下方向へと加圧することが必要であるが、このような工程は熟練を必要とし、生産性が低い。
このため、単位体積あたりの効率が高く、酸化性ガスと燃料ガスとの間のシールに必要な構造を簡略化できるような反応装置の提供が望まれていた。
本発明に係る第3の反応装置によれば、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質膜および第二のガスと接触する第二の電極を備える電気化学素子(反応部あるいは発熱部)を一対準備し、一体化し電気化学デバイス(反応器)とした。この際、第一の電極を電気化学デバイスの表面に露出させ、電気化学デバイス内に第二のガスの流路を形成した。このように、電気化学デバイスを基本的に板状に成形できるので、単位体積あたりの効率を向上させることができる。しかも、デバイス内に第二のガス流路を設け、この流路を流れるガスに第二の電極を接触させるのと共に、デバイス表面側に第一の電極を設けた。従って、デバイス内部に第二のガスを流し、デバイス間の空間に第一のガスを流すことができ、第二のガスと第一のガスとをデバイスそれ自体によってシールすることができる。従って、ガスシールを実施するための構造を非常に簡略化できるので、多数のデバイスを容易にスタックすることができ、製造コストと歩留りとを著しく向上させることができるので、産業上の利用価値は大きい。
本発明に係る第3の反応装置においては、第一の電気化学素子と第二の電気化学素子とが一体化されている。この一体化の方法は特に限定されず、以下の方法が考えられる。
(1) 第一および第二の電気化学素子を接着あるいは接合する。
(2) 第一および第二の電気化学素子に所定の圧力を加えることによって、ガス漏れが生じない程度に圧着する。
(3) 第一および第二の電気化学素子並びに連結部を積層した後、焼成一体化する。
接合材としては以下を例示できる。 第一の電気化学素子と第二の電気化学素子が互いに接合される部分を構成するセラミックス材料と同一材料のスラリー
第一の電気化学素子と第二の電気化学素子が互いに接合される部分を構成するセラミックス材料とほぼ同等の熱膨張係数を持つセラミックス材料のスラリーあるいはガラス材料。
本発明に係る第3の反応装置では、デバイスは板状であるが、平板状には限らず、湾曲した板や円弧状の板でもよい。本発明に係る第3の反応装置では第一および第二の電気化学素子が、それぞれ、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質膜および第二のガスと接触する第二の電極を備えている。そして、第一の電極が電気化学デバイスの表面側に設けられており、電気化学デバイス内に第二のガスの流路が形成されている。
ここで、第一の電極、第二の電極は、アノードまたはカソードから選択する。これらのうち一方がアノードである場合には、他方はカソードである。これと同様に、第一のガス、第二のガスは、酸化性ガス、還元性ガスから選択する。
酸化性ガスは、酸素イオンを固体電解質膜へと供給可能なガスであれば特に限定されないが、空気、希釈空気、酸素、希釈酸素が挙げられる。還元性ガスとしては、H2、CO,CH4とこれらの混合ガスを例示できる。
本発明に係る第3の反応装置が対象とする電気化学セルは、電気化学反応を生じさせるためのセル一般を意味している。本発明によれば、マイクロ反応装置の他、比較的大型な反応装置についても応用可能であり、例えば、電気化学セルは、酸素ポンプ、高温水蒸気電解セルとして使用できる。高温水蒸気電解セルは、水素の製造装置に使用でき、また水蒸気の除去装置に使用できる。また、電気化学セルを、NOx、SOxの分解セルとして使用できる。この分解セルは、自動車、発電装置からの排ガスの浄化装置として使用できる。この場合には、固体電解質膜を通して排ガス中の酸素を除去するのと共に、NOxを電解してN2とO2−とに分解し、この分解によって生成した酸素をも除去できる。また、このプロセスと共に、排ガス中の水蒸気が電解されて水素と酸素とを生じ、この水素がNOxをN2へと還元する。また、好適な実施形態では、電気化学セルが、固体酸化物形燃料電池である。
固体電解質の材質は特に限定されず、あらゆる酸素イオン伝導体を利用できる。例えば、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアであってよく、NOx分解セルの場合には、酸化セリウムも好ましい。また、固体酸化物形燃料電池の場合に、作動温度を低下させる目的において、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアに酸化セリウムを添加したものも好ましい。
カソードの材質は、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物であることが好ましく、ランタンマンガナイト又はランタンコバルタイトであることが更に好ましく、ランタンマンガナイトが一層好ましい。ランタンコバルタイト及びランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト(ランタンマンガナイトの場合)、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。また、パラジウム、白金、ルテニウム、白金−ジルコニアサーメット、パラジウム−ジルコニアサーメット、ルテニウム−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、パラジウム−酸化セリウムサーメット、ルテニウム−酸化セリウムサーメットであってもよい。
アノードの材質としては、ニッケル−ジルコニアサーメット、白金、白金−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、ルテニウム、ルテニウム−ジルコニアサーメット等が好ましい。
隣接する電気化学デバイス間は、例えば集電板によって電気的に接続できる。集電板の材質は、例えば、ニッケル、インコネル、ニクロムなどのニッケル基合金、ステンレスなどの鉄基合金等の金属や、ランタンクロマイトなどの導電性セラミックスがある。そして、電気化学デバイスが複数ある場合は、当該電気化学デバイスは連結部により接続される。
各電気化学素子の形態は特に限定されない。電気化学素子は、アノード、カソードおよび固体電解質層の3層からなっていてよい。あるいは、電気化学素子は、アノード、カソードおよび固体電解質層以外に、例えば多孔質体層を有していて良い。
好適な実施形態においては、電気化学デバイス内部で第二のガスの流路を曲折させる。これによって素子内でのガス流路を長くし、利用効率を高めることができる。
また、好適な実施形態においては、第二のガスをガス流路内へと流入させるための流入孔を電気化学デバイスに設ける。また、好適な実施形態においては、第二のガスをガス流路からデバイス外部へと流すための流出孔を電気化学デバイスに設ける。
また、好適な実施形態においては、ガス流入、排出制御のためのガスマニホールドを電気化学デバイス内部に設ける。これによって、電気化学デバイスの外部にガスマニホールドを設ける必要がなくなり、組み立てが容易となり、システムの安定性が高まる。しかし、ガスマニホールドをデバイス内部に設ける必要は必ずしもなく、後述のようにデバイスの外部に外部マニホールドを設けることもできる。
また、好適な実施形態においては、電気化学デバイスが実質的にセラミクッスから形成されている。これによって、デバイスの安定性が高くなり、多数回の熱サイクルに対する電気化学装置全体の安定性が高くなる。
また、好適な実施形態においては、電気化学デバイスが一対の主面と側面とを備えており、側面から集電する集電部材を備えている。このように、いわゆる平板型SOFCにおいて、素子の側面側から集電する機構は知られていない。さらに、マイクロ反応器においては、携帯機器に搭載されるため断熱性に優れた構造が必要となる。そのため、電気化学デバイスは耐熱性のある容器に覆われており、その容器内を空気ガスあるいは燃料ガスが流れる構造が好適である。これにより、耐熱性のある容器の外周を更に真空や不活性ガスで覆うことができ、反応装置として優れた断熱性を達成することができるからである。
図7は、本発明に係る第3の反応装置に係る(外部電極の無い)電気化学デバイス1001を示す分解斜視図であり、図8は、本発明に係る第3の反応装置に係る電気化学デバイス2011の縦断面図である。電気化学デバイス(1001,2011)は、一対の電気化学素子(1031及び1032,2002及び2003)および流路形成部(1011,2001)からなっている。各電気化学素子は、デバイス主面に露出する第一の電極(1004,2016,2026)、固体電解質(1003,1025,2015,2025)および第二のガス流路(1014,2013)に面する第二の電極(1002,1024,2014,2024)からなっている。これに多孔質板を基材として更に加えることもできる。一対の電気化学素子(1031及び1032,2002及び2003)の間に流路形成部(1011,2001)をはさみ、適当な方法で一体化する。これによって、平板形状の電気化学デバイス(1001,2011)が得られる。
各素子(1031,1032,2002,2003)の下部にはマニホールド部(1007,1023,2018)を設け、マニホールド部(1007,1023,2018)にガス流入口(1006,1021)、ガス流出口(1005,1022,2017,2027)を設ける。ガス流入口(1006,1021)から流入した第二のガスは、曲折した第二のガス流路(1014,2013)内を矢印(1012,1013)のように流れ、ガス流出口(1005,1022,2017,2027)から排出される。第一のガスは、デバイス(1001,2011)の外側空間を流れる。
好ましくは、デバイスの内側流路に燃料を流し、外側に大気などの酸化性ガスを流す。これによって、よりコストの高い燃料を効率的に使用することができる。
次いで、電気化学デバイスのアセンブリ方法について例示する。図9、図10に示すように、電気化学デバイス(3010,3023,3026)の側面上に、絶縁板(3001,3002,3004)と、第一の電極と導電する導電板(3003,3021)と、第二の電極と導電する電極板(3004,3022)とを貼り合わせることによって、側面からの集電を可能とする。
そして、図11に示すように、絶縁性材料からなるマニホールド部(4013,4022など)を、隣接するデバイス(4001,4002,4003など)の間に設置し、適切な方法で固定し、一体化する。このとき、マニホールド部(4013など)のガス流入口(4014など)と、電気化学デバイス(4001,4002,4003など)のガス流入口との位置合わせおよび寸法合わせを行う。絶縁板(3001,3002,3004)は、緻密体であり外側の第一のガスと電気化学デバイス(4001,4002,4003など)内の第二のガスとの気密性を保つ役割もある。なお、絶縁板、導電板及び電極板は貼り合わせてもよいが、電気化学デバイスが小型の場合は、ディップ、スプレー又はスクリーン印刷等の方法で塗布してもよい。
加えて、隣接するデバイス(4001,4002,4003など)の各側面には、それぞれ集電部材4021が接合され、電気的に接続されている。
例えばデバイスを固体酸化物型燃料電池とし、電気化学デバイスの外側空間に酸化性ガスを流し、第二のガス流路(1014,2013)に燃料ガスを流すものとする。この場合には、電子(固体電解質(1003,1025,2015,2025)内では酸素イオンとして運搬)は、第一の電極と導電する導電板(3003,3021)から第一の電極(1004,2016,2026)、固体電解質(1003,1025,2015,2025)を通過して第二の電極(1002,1024,2014,2024)へと流れ、第二の電極(1002,1024,2014,2024)から第二の電極(1002,1024,2014,2024)と導電する電極板(3004,3022)、集電部材4021を通して、隣接する電気化学デバイスの第一の電極(1004,2016,2026)へと流れる。
第一の電極と第二の電極とが短絡するのを防止するために、絶縁板(3001,3002,3004)を電気化学デバイスの一方の末端に設けている。これによって、各電気化学デバイスの直列接続が可能となる。本例において、スタックを図面において上下方向へと積層することによって、並列接続も行うことができる。
図11に示すように、各電気化学デバイス(4001,4002,4003など)がマニホールド(4022)を介して接続されており、また電気化学デバイスは片端部のみをマニホールド(4022)により固定されている。この構造は電気化学デバイスが高温などになり、デバイス面構造にゆがみが生じた際にどこからも束縛されないため、たとえばデバイスが割れやすいセラミックスで電気化学デバイスが出来ていた場合には割れによる機能損傷を防ぐことができる。
〈出力特性の違う電気化学デバイスのくし型スタック構造〉
図12は本発明に係る第3の反応装置であって「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型スタック構造」を有するものを示している。図11の特徴を引き継ぎながら、同時に各電気化学デバイス(4031,4032,4033など)の構造がそれぞれ異なり、内装するガス流路設計も異なる構造である。ガス流路が異なるということは、例えばガスにより発電を行うような電気化学デバイスとして構成されていた場合、発電特性が異なるということになる。極端に言えば、燃料ガスを極めて効率よく燃焼し発電することが出来る長流路設計と、燃料ガスの燃焼効率は悪いが、停止状態から発電までの立ち上がり(起電)速度が極めて速い短流路を複数もつものを同一スタックの中に持つことが出来る。つまり、携帯機器において待機モードのような極低燃料消費モードと、実使用時の高出力モード対し、それぞれ最適で独立した電気化学デバイスをスタック内に有しており、それぞれにおいて効率よい運用が可能となる。なお、ここで出力特性を異ならせしめる手段には、電気化学デバイスの作動温度・発電特性が異なるように適宜、電極や電解質の材料を選択することも含まれるものとする。
この他にもこのような独立した小型の電気化学デバイスは熱容量が小さいことから温まりやすく、発電に必要な電気化学デバイスの温度まですばやく昇温することが可能であり、並列する他のデバイスが起動温度に達しないような起動直後においても部分的な迅速起動が可能となるなどの利点がある。電源の起動時の応答性は小型機器などにおいて機器が使用可能になるまでのタイムラグに直結するため、その使用者に応答性のよい使用感を提供できる。流路切り替えはマニホールド内で行うが、この限りではない。
〈出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造〉
図13は本発明に係る第3の反応装置であって「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」を有するものを示している。階段状に各電気化学デバイスの長さを設定したスタック済み電気化学デバイス(4061)では、これを逆側に備える(4062)ことで二つの独立したスタック済み電気化学デバイスをコンパクトに集約することが可能である。またこの構造はスタック長の設計により、2個に限定せず、複数個をコンパクトに集約することが出来る。これら対向する電気化学デバイスは隣接するが繋がっておらず、片方の動作による熱的影響を受けにくい構造となっている。
〈両持ち穴明きスタック構造〉
図14は本発明に係る第3の反応装置であって「両持ち穴明きスタック構造」を有するものを示している。これは、上述した「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型スタック構造」及び「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」の特徴を有しながら、単一のスタック済み電気化学デバイスとしたものが両持ち穴明きスタック構造である。これは電気化学デバイスの面に穴構造(4211)を有しており、「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」の対向構造となっている各電気化学デバイスを部分的につないだような構造となっている。
対向する流路は繋がっていない場合も、繋がっている場合もある。この構造では「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」で対向していた電気化学デバイスが物理的に連続しているため、たとえば片方の電気化学デバイスが稼動することで発熱をした場合、その熱を対向する電気化学デバイスで利用することが出来る。異なる流路と熱的な共有を実現した構造である。故に穴(4211)が空いていなくても構わないが、熱によるひずみが生じる環境では部分的に応力が逃げやすいこのような構造が有効に働き、例えば電気化学デバイスがセラミックスで出来ていた場合などに割れを防ぐことが出来るのは図11の構造と同様である。図14では穴がマニホールドと平行に配置されているが、位置、サイズともその限りではない。なお、このように電気化学デバイスの面に穴構造を有する構造は「両持ち穴明きスタック構造」に限らず、上述した他のスタック構造にも適用することができる。
〈ジクザグスタック構造〉
図15〜図18は本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(アッセンブリ方法の手順を含む。)を示している。図11と異なり、各電気化学デバイスが交互の端部でマニホールドを介して接合された構造である。この構造では、たとえばこのデバイスが他のデバイスに挟み込まれる様に配置しなければならない場合に、圧縮応力を逃がすことで、電気化学デバイスがセラミックスで出来ていた場合に生じるであろう割れを防ぐことが出来る。
図11のデバイスが電気化学デバイス面に垂直な方向から、マニホールドを圧縮された場合、応力の逃げ道が無いため容易に割れが生じてしまう。しかしながらジグザグ構造体ではそれぞれの電気化学デバイスがわずかにしなることでその応力をバネ的に逃がすことができ、破損を回避できる。マニホールドからかかる、破損に至る応力は圧縮応力に限定されない。
また、特定の周波数による振動が多い環境では、図11に示した構造あるいはジグザグスタック構造に共振振動が起こる場合があり、破損してしまうことがある。図11に示した構造とジグザグスタック構造ではそのバネ的な構造がまったく異なるため、まったく異なる共振振動特性を有しており、このような場合にそのどちらかを選択し採用することで固有振動による割れを防ぐことができる。
〈しゃもじ型スタック構造〉
図19は本発明に係る第3の反応装置であって「しゃもじ型スタック構造」を有するものを示している。図11の特徴を引き継ぎながら、マニホールド部の体積を減少させたのが、しゃもじ型スタック構造である。たとえばマニホールド部の熱膨張率が電気化学デバイスと一致し難い場合、マニホールド部が電気化学デバイスと接する面積が大きい図11に示した構造ではひずみがたまりやすく、高温動作時に割れが生じてしまう。
しゃもじ型スタック構造では電気化学デバイス(4101)とマニホールド(4106)および連結用マニホールドの連続する接面積が少ないため、このような割れを防ぐことができる。
またこの構造はマニホールド部と電気化学デバイスの発電部(しゃもじのへらの部分に相当)とが、熱的に伝導しにくい構造(高温のへら部分を細い柄を介してマニホールドが固定しているボトルネック構造)を有しているため、マニホールドと電気化学デバイスの温度差を大きく設定することができ、マニホールドを別部位に固定することでスタック済み電気化学デバイスを設置する場合、その別部位へ熱伝導による影響を軽減することができる。この連結部位は1箇所に限定せず、複数箇所で保持してもよい(つまり、しゃもじの柄の部分が複数あっても良い)。
〈中心位置でのスタック構造〉
図20は本発明に係る第3の反応装置であって「中心位置でのスタック構造」を有するものを示している。これは、図11の特徴を引き継ぎながら、より大面積の電気化学デバイスを保持する構造である。一般的な外周部を固定するスタック構造に比べ、各電気化学デバイスがほぼ浮いた状態で保持されることから図11の特徴を生かしたまま電気化学デバイスの出力を拡大することができる。
なお、このようにマニホールドの両側に電気化学デバイスを保有する構造は「中心位置でのスタック構造」に限らず、上述した他のスタック構造にも適用することができる。
〈両持ちスタック構造〉
図21は、本発明に係る第3の反応装置であって「両持ちスタック構造」を有するものを示している。これは、図13に示した「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対応スタック構造」において互いに対向する各電気化学デバイスを連結して得られる構造となっている。
〈平面マトリクス構造〉
図22は、本発明に係る第3の反応装置であって「平面マトリクス構造」を有するものを示している。これは、平板状部材4421(上記連結部に相当)の上面に、各電気化学デバイス(反応器)がマトリクス状に(縦横に)並べて配置されたものである。
〈平面列構造〉
図23は、本発明に係る第3の反応装置であって「平面列構造」を有するものを示している。これは、平板状部材4521(上記連結部に相当)の上面に、各電気化学デバイス(反応器)が複数の列状に並べて配置されたものである。
以上、本発明に係る第3の反応装置では、第一の反応器と第二の反応器とが備えられ、第一の反応器と第二の反応器とが連結部を介して一体化されている。第一の反応器および第二の反応器が、それぞれ、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質および第二のガスと接触する第二の電極を備えており、第一の電極が固体電解質からみて表面側に設けられており、反応装置内に第二のガスの流路が形成されており、連結部以外の部位について、少なくとも二つの反応器が物理的に離間している。
また、第一の反応器および第二の反応器が電気的に接続されている。加えて、第一の反応器および第二の反応器が一端で固定されている。また、少なくとも第一の反応器および第二の反応器が、金属シートからなる容器で被われていて、容器内に第一のガスの流路が形成されている。そして、この反応装置は、実質的にセラミックスから形成されている。
(本発明に係る第4の反応装置)
次に、本発明に係る第4の反応装置について説明する。この反応装置では、各反応器に流入するガスの量又は流入開始時間を変化させることで、多段階に電力を取り出すことができる。
この場合、少なくとも一つの反応器の流路長が他の反応器と異なるように構成され得る。或いは、少なくとも一つの反応器の容積が他の反応器と異なるように構成され得る。或いは、少なくとも一つの反応器の反応面積が他の反応器と異なるように構成され得る。
また、この反応装置は、1つの反応器に対する加熱量又は加熱時間が他の反応器と異なるように構成され得る。或いは、出力に応じて流量を調節するマニホールドを備えるように構成され得る。
反応装置の総体積:1mm3〜1×105mm3
流路径:10μm〜1mm
固体電解質膜厚:0.3〜50μm
電極膜厚:0.3〜30μm
なお、流路形状に特に制限はなく円形でも矩形でもよい。また、流路径は一律な必要はなく、反応器の反応状態、流入するガスの流入状態により変化させてもよい。さらに、流路は反応器内で、ストレート形態でもジグザグ形態でもよく、一経路だけでなく複数経路であってもよい。また、本発明が提供する反応装置のコンセプトに適合する限りにおいては、上記に示す寸法範囲外であっても本発明に含まれるものとする。また、以下に示す第1〜第4の反応装置は例示であって本発明はこれらに限定されるものではない。さらに第1〜第4の反応装置の各コンセプトは本発明に係る他の反応装置のコンセプトに自由に適用することができるものとする。
(本発明に係る第1の反応装置)
本発明に係る第1の反応装置に用いられる反応器は、二つの反応器(発熱部)を内部空間を有するように積層したものでもよく、また、図2に示すように、二つの反応器(発熱部)を基板上に離間するようにそれぞれ配置したものでもよい。
反応器及びその作製方法に特に制限はないが、例えば積層型やハニカム構造型が小型化できる面で適しており、これらは射出成形法、プレス成形法、積層法、押出し法又は鋳込み法により作製される。
以下、積層法による反応器及び流路の作り方の手順について簡単に説明する。
1.底板となる第1のセラミックグリーンシート、天板となる第2のセラミックグリーンシート、側面(流路)を形成する第3のセラミックグリーンシートを各種用意する。
2.側面(流路)を形成するため、第2のシートをパンチで打ち抜く。
3.天板となる第2のセラミックグリーンシートについて、電極を所定位置にスクリーン印刷にて塗布する。
4.第1〜3のセラミックグリーンシートを積層し・所定温度で焼成する。
なお、流路を形成した後、流路内にスラリーを流し込み固化させることで、電極、触媒、細孔等を形成してもよい。
反応器における基板の材料としては、ジルコニア或いはアルミナ等の通常のセラミック、或いは、窒化珪素或いは炭化珪素等の高耐熱衝撃性セラミックであればよく、また、比較的低い温度で反応させる反応器においては、ガラス基板や金属板であってもよい。また、固体電解質を兼ねる場合には、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアであってよい。そして、この場合に組み合わせる集電板(インターコネクター)としては、例えば、ニッケル、インコネル、ニクロムなどのニッケル基合金、ステンレスなどの鉄基合金等の金属や、ランタンクロマイトなどの導電性セラミックスが使用され得る。
また、反応器における電極(アノード、カソード)の材料としては、カソードについては、例えば、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物が使用でき、この場合、ランタンマンガナイト又はランタンコバルタイトであることが好ましく、ランタンマンガナイトが一層好ましい。ランタンコバルタイト及びランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト(ランタンマンガナイトの場合)、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。また、パラジウム、白金、ルテニウム、白金−ジルコニアサーメット、パラジウム−ジルコニアサーメット、ルテニウム−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、パラジウム−酸化セリウムサーメット、ルテニウム−酸化セリウムサーメットであってもよい。
また、アノードについては、ニッケル−ジルコニアサーメット、白金、白金−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、ルテニウム、ルテニウム−ジルコニアサーメット等が好ましい。
以上、本発明に係る第1の反応装置は、発熱部を二つ以上有していて、少なくとも二つの発熱部が離間している。そして、発熱部の一つまたは全部が燃料電池の反応を行う部位である。この燃料電池の反応を行う部位は、固体電解質、及び電極から構成されている。
ここで、発熱部の一つは、燃料ガスの改質を行う部位である。また、二つの発熱部が並列回路である。加えて、二つの発熱部が空間によって離間されている。
(本発明に係る第2の反応装置)
次に、本発明に係る第2の反応装置について説明する。図3に示すように、この反応装置では、第1、第2反応部(発熱部)について入力する流路と出力する流路がそれぞれ設けられている。第1反応部から出力する流路を流れる流体によって第2反応部が加熱される。同様に、第2反応部から出力する流路を流れる流体によって第1反応部が加熱される。この場合、反応器に入出力するガス流入口および流出口は複数設けてもよい(他の反応装置においても同様である。)。
更には、図4に示すように、第1反応部および第2反応部が燃料電池の反応を行う部位であり、第1反応部と第2反応部との間に燃料ガスの改質を行う部位が配置されてもよい。これにより、高温となり得る反応部に改質部が挟まれるため、改質部の加熱・保温が容易となる。
以下、本発明に係る第2の反応装置に関する流路形成の手法について説明する。図5は本発明に係る第2の反応装置の反応器の一つである、反応器RT1をある切断面にて切断したものの斜視図、図6は反応器RT1を図5に示した1−1線に沿った平面にて切断した断面図である。この反応器RT1は、流路形成体10と多孔質体20とを備えている。なお、多孔質体20は流路内に必ずしも存在する必要はなく、また流路内の一部分にのみ存在していてもよい。
流路形成体10は、下壁部11、中間壁部12及び上壁部13からなっている。流路形成体10は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸方向に沿った辺を有する直方体であり、内部に流路(空間)R1及び流路(空間)R2を備えている。
下壁部11は、X軸、Y軸及びZ軸方向に沿った辺を有する平板体である。
中間壁部12は、第一支持部12−1と第二支持部12−2とを備えている。第一支持部12−1及び第二支持部12−2のそれぞれは、X軸、Y軸及びZ軸方向に沿った辺を有する直方体であり、互いに同形である。第一支持部12−1及び第二支持部12−2のそれぞれの長手方向はY軸方向に沿っている。
中間壁部12は、図6に示したように、実際には3枚の板体12a,12b,12cからなっている。これらの板体12a,12b,12cは焼成により一体化されている。板体12a及び板体12cは、互いに同形の板体であって、流路R1に相当する部分が打ち抜かれている。板体12bは、流路R1及び流路R2に相当する部分が打ち抜かれた板体である。換言すると、中間壁部12は、内部に流路R2に相当する空洞を有さない第一支持部12−1と、内部に流路R2に相当する空洞を有する第二支持部12−2と、からなっている。
上壁部13は、X軸、Y軸及びZ軸方向に沿った辺を有する板体である。
下壁部11、中間壁部12及び上壁部13は、各部に対応した形状を有するセラミックの平板体(セラミックグリーンシート)を順に積層した後、それらを焼成することにより、固着一体化されている。この結果、流路R1及び流路R2を備える流路形成体10が形成される。
流路R1は、下壁部11の上面、中間壁部12に形成された空間の側壁面及び上壁部13の下面により画定される。流路R1の長手軸方向(流線方向)はY軸に沿っている。流路R2は、中間壁部12の板体12aの上面、板体12bに形成された空間の側壁面及び板体12cの下面により画定される。流路R2の長手軸方向(流線方向)もY軸に沿っている。
流路形成体10(即ち、下壁部11、中間壁部12及び上壁部13)は、ジルコニア或いはアルミナ等の通常のセラミック、或いは、窒化珪素或いは炭化珪素等の高耐熱衝撃性セラミックからなっている。本発明に係る第2の反応装置においては、反応器RT1のような反応器を二つ以上離隔して配置することにより実現できる。特に、請求項9に係る反応装置においては、流路R2を利用して改質器に反応器から生じる排熱を送ってもよい。
(本発明に係る第3の反応装置)
次に、本発明に係る第3の反応装置について説明する。一般に、いわゆる円筒型の固体酸化物形燃料電池では、単電池間の無駄なスペースが多いので、単位体積あたりの発電効率が低く、発電量の増大に構造的な限界がある。一方、平板型燃料電池の場合には、上下方向に多数の平板型単電池を積み重ね、隣接する単電池間をセパレータ(隔離板)で隔離する。そして、隣接する単電池とセパレータとの間の空間に燃料や酸化性ガスを流通させる。しかし、このガスの温度は例えば800〜1000℃と高温であり、このためにはマニホ−ルド部分の温度もある程度高温となる。この状態でマニホールドによって多数のガス流路を、酸化性ガスと燃料ガスとが接触しないようにシールすることは難しい。実際の組み立て工程では、多数の平板型単電池を積み重ねて上下方向へと加圧することが必要であるが、このような工程は熟練を必要とし、生産性が低い。
このため、単位体積あたりの効率が高く、酸化性ガスと燃料ガスとの間のシールに必要な構造を簡略化できるような反応装置の提供が望まれていた。
本発明に係る第3の反応装置によれば、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質膜および第二のガスと接触する第二の電極を備える電気化学素子(反応部あるいは発熱部)を一対準備し、一体化し電気化学デバイス(反応器)とした。この際、第一の電極を電気化学デバイスの表面に露出させ、電気化学デバイス内に第二のガスの流路を形成した。このように、電気化学デバイスを基本的に板状に成形できるので、単位体積あたりの効率を向上させることができる。しかも、デバイス内に第二のガス流路を設け、この流路を流れるガスに第二の電極を接触させるのと共に、デバイス表面側に第一の電極を設けた。従って、デバイス内部に第二のガスを流し、デバイス間の空間に第一のガスを流すことができ、第二のガスと第一のガスとをデバイスそれ自体によってシールすることができる。従って、ガスシールを実施するための構造を非常に簡略化できるので、多数のデバイスを容易にスタックすることができ、製造コストと歩留りとを著しく向上させることができるので、産業上の利用価値は大きい。
本発明に係る第3の反応装置においては、第一の電気化学素子と第二の電気化学素子とが一体化されている。この一体化の方法は特に限定されず、以下の方法が考えられる。
(1) 第一および第二の電気化学素子を接着あるいは接合する。
(2) 第一および第二の電気化学素子に所定の圧力を加えることによって、ガス漏れが生じない程度に圧着する。
(3) 第一および第二の電気化学素子並びに連結部を積層した後、焼成一体化する。
接合材としては以下を例示できる。 第一の電気化学素子と第二の電気化学素子が互いに接合される部分を構成するセラミックス材料と同一材料のスラリー
第一の電気化学素子と第二の電気化学素子が互いに接合される部分を構成するセラミックス材料とほぼ同等の熱膨張係数を持つセラミックス材料のスラリーあるいはガラス材料。
本発明に係る第3の反応装置では、デバイスは板状であるが、平板状には限らず、湾曲した板や円弧状の板でもよい。本発明に係る第3の反応装置では第一および第二の電気化学素子が、それぞれ、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質膜および第二のガスと接触する第二の電極を備えている。そして、第一の電極が電気化学デバイスの表面側に設けられており、電気化学デバイス内に第二のガスの流路が形成されている。
ここで、第一の電極、第二の電極は、アノードまたはカソードから選択する。これらのうち一方がアノードである場合には、他方はカソードである。これと同様に、第一のガス、第二のガスは、酸化性ガス、還元性ガスから選択する。
酸化性ガスは、酸素イオンを固体電解質膜へと供給可能なガスであれば特に限定されないが、空気、希釈空気、酸素、希釈酸素が挙げられる。還元性ガスとしては、H2、CO,CH4とこれらの混合ガスを例示できる。
本発明に係る第3の反応装置が対象とする電気化学セルは、電気化学反応を生じさせるためのセル一般を意味している。本発明によれば、マイクロ反応装置の他、比較的大型な反応装置についても応用可能であり、例えば、電気化学セルは、酸素ポンプ、高温水蒸気電解セルとして使用できる。高温水蒸気電解セルは、水素の製造装置に使用でき、また水蒸気の除去装置に使用できる。また、電気化学セルを、NOx、SOxの分解セルとして使用できる。この分解セルは、自動車、発電装置からの排ガスの浄化装置として使用できる。この場合には、固体電解質膜を通して排ガス中の酸素を除去するのと共に、NOxを電解してN2とO2−とに分解し、この分解によって生成した酸素をも除去できる。また、このプロセスと共に、排ガス中の水蒸気が電解されて水素と酸素とを生じ、この水素がNOxをN2へと還元する。また、好適な実施形態では、電気化学セルが、固体酸化物形燃料電池である。
固体電解質の材質は特に限定されず、あらゆる酸素イオン伝導体を利用できる。例えば、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアであってよく、NOx分解セルの場合には、酸化セリウムも好ましい。また、固体酸化物形燃料電池の場合に、作動温度を低下させる目的において、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアに酸化セリウムを添加したものも好ましい。
カソードの材質は、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物であることが好ましく、ランタンマンガナイト又はランタンコバルタイトであることが更に好ましく、ランタンマンガナイトが一層好ましい。ランタンコバルタイト及びランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト(ランタンマンガナイトの場合)、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。また、パラジウム、白金、ルテニウム、白金−ジルコニアサーメット、パラジウム−ジルコニアサーメット、ルテニウム−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、パラジウム−酸化セリウムサーメット、ルテニウム−酸化セリウムサーメットであってもよい。
アノードの材質としては、ニッケル−ジルコニアサーメット、白金、白金−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、ルテニウム、ルテニウム−ジルコニアサーメット等が好ましい。
隣接する電気化学デバイス間は、例えば集電板によって電気的に接続できる。集電板の材質は、例えば、ニッケル、インコネル、ニクロムなどのニッケル基合金、ステンレスなどの鉄基合金等の金属や、ランタンクロマイトなどの導電性セラミックスがある。そして、電気化学デバイスが複数ある場合は、当該電気化学デバイスは連結部により接続される。
各電気化学素子の形態は特に限定されない。電気化学素子は、アノード、カソードおよび固体電解質層の3層からなっていてよい。あるいは、電気化学素子は、アノード、カソードおよび固体電解質層以外に、例えば多孔質体層を有していて良い。
好適な実施形態においては、電気化学デバイス内部で第二のガスの流路を曲折させる。これによって素子内でのガス流路を長くし、利用効率を高めることができる。
また、好適な実施形態においては、第二のガスをガス流路内へと流入させるための流入孔を電気化学デバイスに設ける。また、好適な実施形態においては、第二のガスをガス流路からデバイス外部へと流すための流出孔を電気化学デバイスに設ける。
また、好適な実施形態においては、ガス流入、排出制御のためのガスマニホールドを電気化学デバイス内部に設ける。これによって、電気化学デバイスの外部にガスマニホールドを設ける必要がなくなり、組み立てが容易となり、システムの安定性が高まる。しかし、ガスマニホールドをデバイス内部に設ける必要は必ずしもなく、後述のようにデバイスの外部に外部マニホールドを設けることもできる。
また、好適な実施形態においては、電気化学デバイスが実質的にセラミクッスから形成されている。これによって、デバイスの安定性が高くなり、多数回の熱サイクルに対する電気化学装置全体の安定性が高くなる。
また、好適な実施形態においては、電気化学デバイスが一対の主面と側面とを備えており、側面から集電する集電部材を備えている。このように、いわゆる平板型SOFCにおいて、素子の側面側から集電する機構は知られていない。さらに、マイクロ反応器においては、携帯機器に搭載されるため断熱性に優れた構造が必要となる。そのため、電気化学デバイスは耐熱性のある容器に覆われており、その容器内を空気ガスあるいは燃料ガスが流れる構造が好適である。これにより、耐熱性のある容器の外周を更に真空や不活性ガスで覆うことができ、反応装置として優れた断熱性を達成することができるからである。
図7は、本発明に係る第3の反応装置に係る(外部電極の無い)電気化学デバイス1001を示す分解斜視図であり、図8は、本発明に係る第3の反応装置に係る電気化学デバイス2011の縦断面図である。電気化学デバイス(1001,2011)は、一対の電気化学素子(1031及び1032,2002及び2003)および流路形成部(1011,2001)からなっている。各電気化学素子は、デバイス主面に露出する第一の電極(1004,2016,2026)、固体電解質(1003,1025,2015,2025)および第二のガス流路(1014,2013)に面する第二の電極(1002,1024,2014,2024)からなっている。これに多孔質板を基材として更に加えることもできる。一対の電気化学素子(1031及び1032,2002及び2003)の間に流路形成部(1011,2001)をはさみ、適当な方法で一体化する。これによって、平板形状の電気化学デバイス(1001,2011)が得られる。
各素子(1031,1032,2002,2003)の下部にはマニホールド部(1007,1023,2018)を設け、マニホールド部(1007,1023,2018)にガス流入口(1006,1021)、ガス流出口(1005,1022,2017,2027)を設ける。ガス流入口(1006,1021)から流入した第二のガスは、曲折した第二のガス流路(1014,2013)内を矢印(1012,1013)のように流れ、ガス流出口(1005,1022,2017,2027)から排出される。第一のガスは、デバイス(1001,2011)の外側空間を流れる。
好ましくは、デバイスの内側流路に燃料を流し、外側に大気などの酸化性ガスを流す。これによって、よりコストの高い燃料を効率的に使用することができる。
次いで、電気化学デバイスのアセンブリ方法について例示する。図9、図10に示すように、電気化学デバイス(3010,3023,3026)の側面上に、絶縁板(3001,3002,3004)と、第一の電極と導電する導電板(3003,3021)と、第二の電極と導電する電極板(3004,3022)とを貼り合わせることによって、側面からの集電を可能とする。
そして、図11に示すように、絶縁性材料からなるマニホールド部(4013,4022など)を、隣接するデバイス(4001,4002,4003など)の間に設置し、適切な方法で固定し、一体化する。このとき、マニホールド部(4013など)のガス流入口(4014など)と、電気化学デバイス(4001,4002,4003など)のガス流入口との位置合わせおよび寸法合わせを行う。絶縁板(3001,3002,3004)は、緻密体であり外側の第一のガスと電気化学デバイス(4001,4002,4003など)内の第二のガスとの気密性を保つ役割もある。なお、絶縁板、導電板及び電極板は貼り合わせてもよいが、電気化学デバイスが小型の場合は、ディップ、スプレー又はスクリーン印刷等の方法で塗布してもよい。
加えて、隣接するデバイス(4001,4002,4003など)の各側面には、それぞれ集電部材4021が接合され、電気的に接続されている。
例えばデバイスを固体酸化物型燃料電池とし、電気化学デバイスの外側空間に酸化性ガスを流し、第二のガス流路(1014,2013)に燃料ガスを流すものとする。この場合には、電子(固体電解質(1003,1025,2015,2025)内では酸素イオンとして運搬)は、第一の電極と導電する導電板(3003,3021)から第一の電極(1004,2016,2026)、固体電解質(1003,1025,2015,2025)を通過して第二の電極(1002,1024,2014,2024)へと流れ、第二の電極(1002,1024,2014,2024)から第二の電極(1002,1024,2014,2024)と導電する電極板(3004,3022)、集電部材4021を通して、隣接する電気化学デバイスの第一の電極(1004,2016,2026)へと流れる。
第一の電極と第二の電極とが短絡するのを防止するために、絶縁板(3001,3002,3004)を電気化学デバイスの一方の末端に設けている。これによって、各電気化学デバイスの直列接続が可能となる。本例において、スタックを図面において上下方向へと積層することによって、並列接続も行うことができる。
図11に示すように、各電気化学デバイス(4001,4002,4003など)がマニホールド(4022)を介して接続されており、また電気化学デバイスは片端部のみをマニホールド(4022)により固定されている。この構造は電気化学デバイスが高温などになり、デバイス面構造にゆがみが生じた際にどこからも束縛されないため、たとえばデバイスが割れやすいセラミックスで電気化学デバイスが出来ていた場合には割れによる機能損傷を防ぐことができる。
〈出力特性の違う電気化学デバイスのくし型スタック構造〉
図12は本発明に係る第3の反応装置であって「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型スタック構造」を有するものを示している。図11の特徴を引き継ぎながら、同時に各電気化学デバイス(4031,4032,4033など)の構造がそれぞれ異なり、内装するガス流路設計も異なる構造である。ガス流路が異なるということは、例えばガスにより発電を行うような電気化学デバイスとして構成されていた場合、発電特性が異なるということになる。極端に言えば、燃料ガスを極めて効率よく燃焼し発電することが出来る長流路設計と、燃料ガスの燃焼効率は悪いが、停止状態から発電までの立ち上がり(起電)速度が極めて速い短流路を複数もつものを同一スタックの中に持つことが出来る。つまり、携帯機器において待機モードのような極低燃料消費モードと、実使用時の高出力モード対し、それぞれ最適で独立した電気化学デバイスをスタック内に有しており、それぞれにおいて効率よい運用が可能となる。なお、ここで出力特性を異ならせしめる手段には、電気化学デバイスの作動温度・発電特性が異なるように適宜、電極や電解質の材料を選択することも含まれるものとする。
この他にもこのような独立した小型の電気化学デバイスは熱容量が小さいことから温まりやすく、発電に必要な電気化学デバイスの温度まですばやく昇温することが可能であり、並列する他のデバイスが起動温度に達しないような起動直後においても部分的な迅速起動が可能となるなどの利点がある。電源の起動時の応答性は小型機器などにおいて機器が使用可能になるまでのタイムラグに直結するため、その使用者に応答性のよい使用感を提供できる。流路切り替えはマニホールド内で行うが、この限りではない。
〈出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造〉
図13は本発明に係る第3の反応装置であって「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」を有するものを示している。階段状に各電気化学デバイスの長さを設定したスタック済み電気化学デバイス(4061)では、これを逆側に備える(4062)ことで二つの独立したスタック済み電気化学デバイスをコンパクトに集約することが可能である。またこの構造はスタック長の設計により、2個に限定せず、複数個をコンパクトに集約することが出来る。これら対向する電気化学デバイスは隣接するが繋がっておらず、片方の動作による熱的影響を受けにくい構造となっている。
〈両持ち穴明きスタック構造〉
図14は本発明に係る第3の反応装置であって「両持ち穴明きスタック構造」を有するものを示している。これは、上述した「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型スタック構造」及び「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」の特徴を有しながら、単一のスタック済み電気化学デバイスとしたものが両持ち穴明きスタック構造である。これは電気化学デバイスの面に穴構造(4211)を有しており、「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」の対向構造となっている各電気化学デバイスを部分的につないだような構造となっている。
対向する流路は繋がっていない場合も、繋がっている場合もある。この構造では「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対向スタック構造」で対向していた電気化学デバイスが物理的に連続しているため、たとえば片方の電気化学デバイスが稼動することで発熱をした場合、その熱を対向する電気化学デバイスで利用することが出来る。異なる流路と熱的な共有を実現した構造である。故に穴(4211)が空いていなくても構わないが、熱によるひずみが生じる環境では部分的に応力が逃げやすいこのような構造が有効に働き、例えば電気化学デバイスがセラミックスで出来ていた場合などに割れを防ぐことが出来るのは図11の構造と同様である。図14では穴がマニホールドと平行に配置されているが、位置、サイズともその限りではない。なお、このように電気化学デバイスの面に穴構造を有する構造は「両持ち穴明きスタック構造」に限らず、上述した他のスタック構造にも適用することができる。
〈ジクザグスタック構造〉
図15〜図18は本発明に係る第3の反応装置であって「ジグザグスタック構造」を有するもの(アッセンブリ方法の手順を含む。)を示している。図11と異なり、各電気化学デバイスが交互の端部でマニホールドを介して接合された構造である。この構造では、たとえばこのデバイスが他のデバイスに挟み込まれる様に配置しなければならない場合に、圧縮応力を逃がすことで、電気化学デバイスがセラミックスで出来ていた場合に生じるであろう割れを防ぐことが出来る。
図11のデバイスが電気化学デバイス面に垂直な方向から、マニホールドを圧縮された場合、応力の逃げ道が無いため容易に割れが生じてしまう。しかしながらジグザグ構造体ではそれぞれの電気化学デバイスがわずかにしなることでその応力をバネ的に逃がすことができ、破損を回避できる。マニホールドからかかる、破損に至る応力は圧縮応力に限定されない。
また、特定の周波数による振動が多い環境では、図11に示した構造あるいはジグザグスタック構造に共振振動が起こる場合があり、破損してしまうことがある。図11に示した構造とジグザグスタック構造ではそのバネ的な構造がまったく異なるため、まったく異なる共振振動特性を有しており、このような場合にそのどちらかを選択し採用することで固有振動による割れを防ぐことができる。
〈しゃもじ型スタック構造〉
図19は本発明に係る第3の反応装置であって「しゃもじ型スタック構造」を有するものを示している。図11の特徴を引き継ぎながら、マニホールド部の体積を減少させたのが、しゃもじ型スタック構造である。たとえばマニホールド部の熱膨張率が電気化学デバイスと一致し難い場合、マニホールド部が電気化学デバイスと接する面積が大きい図11に示した構造ではひずみがたまりやすく、高温動作時に割れが生じてしまう。
しゃもじ型スタック構造では電気化学デバイス(4101)とマニホールド(4106)および連結用マニホールドの連続する接面積が少ないため、このような割れを防ぐことができる。
またこの構造はマニホールド部と電気化学デバイスの発電部(しゃもじのへらの部分に相当)とが、熱的に伝導しにくい構造(高温のへら部分を細い柄を介してマニホールドが固定しているボトルネック構造)を有しているため、マニホールドと電気化学デバイスの温度差を大きく設定することができ、マニホールドを別部位に固定することでスタック済み電気化学デバイスを設置する場合、その別部位へ熱伝導による影響を軽減することができる。この連結部位は1箇所に限定せず、複数箇所で保持してもよい(つまり、しゃもじの柄の部分が複数あっても良い)。
〈中心位置でのスタック構造〉
図20は本発明に係る第3の反応装置であって「中心位置でのスタック構造」を有するものを示している。これは、図11の特徴を引き継ぎながら、より大面積の電気化学デバイスを保持する構造である。一般的な外周部を固定するスタック構造に比べ、各電気化学デバイスがほぼ浮いた状態で保持されることから図11の特徴を生かしたまま電気化学デバイスの出力を拡大することができる。
なお、このようにマニホールドの両側に電気化学デバイスを保有する構造は「中心位置でのスタック構造」に限らず、上述した他のスタック構造にも適用することができる。
〈両持ちスタック構造〉
図21は、本発明に係る第3の反応装置であって「両持ちスタック構造」を有するものを示している。これは、図13に示した「出力特性の違う電気化学デバイスのくし型対応スタック構造」において互いに対向する各電気化学デバイスを連結して得られる構造となっている。
〈平面マトリクス構造〉
図22は、本発明に係る第3の反応装置であって「平面マトリクス構造」を有するものを示している。これは、平板状部材4421(上記連結部に相当)の上面に、各電気化学デバイス(反応器)がマトリクス状に(縦横に)並べて配置されたものである。
〈平面列構造〉
図23は、本発明に係る第3の反応装置であって「平面列構造」を有するものを示している。これは、平板状部材4521(上記連結部に相当)の上面に、各電気化学デバイス(反応器)が複数の列状に並べて配置されたものである。
以上、本発明に係る第3の反応装置では、第一の反応器と第二の反応器とが備えられ、第一の反応器と第二の反応器とが連結部を介して一体化されている。第一の反応器および第二の反応器が、それぞれ、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質および第二のガスと接触する第二の電極を備えており、第一の電極が固体電解質からみて表面側に設けられており、反応装置内に第二のガスの流路が形成されており、連結部以外の部位について、少なくとも二つの反応器が物理的に離間している。
また、第一の反応器および第二の反応器が電気的に接続されている。加えて、第一の反応器および第二の反応器が一端で固定されている。また、少なくとも第一の反応器および第二の反応器が、金属シートからなる容器で被われていて、容器内に第一のガスの流路が形成されている。そして、この反応装置は、実質的にセラミックスから形成されている。
(本発明に係る第4の反応装置)
次に、本発明に係る第4の反応装置について説明する。この反応装置では、各反応器に流入するガスの量又は流入開始時間を変化させることで、多段階に電力を取り出すことができる。
この場合、少なくとも一つの反応器の流路長が他の反応器と異なるように構成され得る。或いは、少なくとも一つの反応器の容積が他の反応器と異なるように構成され得る。或いは、少なくとも一つの反応器の反応面積が他の反応器と異なるように構成され得る。
また、この反応装置は、1つの反応器に対する加熱量又は加熱時間が他の反応器と異なるように構成され得る。或いは、出力に応じて流量を調節するマニホールドを備えるように構成され得る。
以下、本発明に係る第3の反応装置の実施例について付言する。図7〜図11を参照しつつ説明したような電気化学デバイスを作製し、発電を行った。
〈第二の電極(1002など)の作製〉
酸化ニッケル粉末と3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末とに対して、有機バインダーおよび水を添加してボールミル中で湿式混合し、混合物を乾燥し、造粒した。この造粒粉末を金型を用いてプレス成形し、電気化学素子(1031など)となるアノード基板成型体を2枚製作した。
〈流路形成部(1011など)の製作+第二の電極との接合+電解質膜製作〉
流路形成部(1011など)を第二の電極と同一の材料にてプレス成形した後、打ち抜きプレスにより流路形成部材を形成した。電気化学素子(1031など)、流路形成部(1011など)をプレスによって接合した。
3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末よりペーストを作製し、スクリーン印刷により接合した電気化学素子(1031など)の主面上に電解質膜を印刷し、乾燥炉にて乾燥させた。
成形体の上面と底面および後に主面上に形成される第一の電極(1004など)が接する側の側面に、3mol%イットリア安定化ジルコニアのスラリーを塗布し絶縁板(3001など)を形成した。成形体を1400℃で2時間焼成して、電気化学デバイスとした。〈第一の電極(1004など)および第一の電極と導電する導電板(3003など)の形成〉
ランタンマンガナイト粉末にバインダーと有機溶剤を加え、第1の電極膜ペーストを製作した。本ペーストを前記デバイスの2主面上に20μm程度スクリーン印刷することにより第一の電極を形成し、オーブンにて乾燥させた。本素子の両側面に別途製作しておいたランタンマンガナイトにて製作された厚み5mmの導電板(3003など)を導電性ぺーストにて貼り付けた。これを、1200℃で1時間焼成した。
〈スタック化〉
電気化学デバイスと厚み1mmのアルミナスピネル(MgO:Al2O3比50:50、熱膨張係数:10.5×10−6)にて製作された絶縁性のマニホールド部(4022など)を交互に配置し、電気化学デバイスとマニホールド部(4022など)のガス流入口および流出口の位置合わせを行って、互いを溶融ガラスにより接合した。隣接するデバイスの側面下部をランタンマンガナイトにて製作した厚さ5mmの集電部材(4021など)にて導電性ペーストにて接合してスタックを製作した。
〈第二の電極(1002など)の作製〉
酸化ニッケル粉末と3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末とに対して、有機バインダーおよび水を添加してボールミル中で湿式混合し、混合物を乾燥し、造粒した。この造粒粉末を金型を用いてプレス成形し、電気化学素子(1031など)となるアノード基板成型体を2枚製作した。
〈流路形成部(1011など)の製作+第二の電極との接合+電解質膜製作〉
流路形成部(1011など)を第二の電極と同一の材料にてプレス成形した後、打ち抜きプレスにより流路形成部材を形成した。電気化学素子(1031など)、流路形成部(1011など)をプレスによって接合した。
3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末よりペーストを作製し、スクリーン印刷により接合した電気化学素子(1031など)の主面上に電解質膜を印刷し、乾燥炉にて乾燥させた。
成形体の上面と底面および後に主面上に形成される第一の電極(1004など)が接する側の側面に、3mol%イットリア安定化ジルコニアのスラリーを塗布し絶縁板(3001など)を形成した。成形体を1400℃で2時間焼成して、電気化学デバイスとした。〈第一の電極(1004など)および第一の電極と導電する導電板(3003など)の形成〉
ランタンマンガナイト粉末にバインダーと有機溶剤を加え、第1の電極膜ペーストを製作した。本ペーストを前記デバイスの2主面上に20μm程度スクリーン印刷することにより第一の電極を形成し、オーブンにて乾燥させた。本素子の両側面に別途製作しておいたランタンマンガナイトにて製作された厚み5mmの導電板(3003など)を導電性ぺーストにて貼り付けた。これを、1200℃で1時間焼成した。
〈スタック化〉
電気化学デバイスと厚み1mmのアルミナスピネル(MgO:Al2O3比50:50、熱膨張係数:10.5×10−6)にて製作された絶縁性のマニホールド部(4022など)を交互に配置し、電気化学デバイスとマニホールド部(4022など)のガス流入口および流出口の位置合わせを行って、互いを溶融ガラスにより接合した。隣接するデバイスの側面下部をランタンマンガナイトにて製作した厚さ5mmの集電部材(4021など)にて導電性ペーストにて接合してスタックを製作した。
本発明は、起動・停止が迅速に行える反応器であり、そのような使用条件が要求される各種燃料電池に適用可能であり、基本的には定置用・携帯用を問わない。好適な例として、具体的には、携帯電話、ノートPC等の携帯電子機器のバッテリーや車載用バッテリーが挙げられる。
以下、本発明に係る反応装置について付言する。本発明の実施形態に係る図11〜図23に示す反応装置は、固体電解質層と、固体電解質層の一側面に形成され一側面が燃料ガスに接触する第1電極層と、固体電解質層の他側面に形成され他側面が酸化性ガスに接触する第2電極層とが積層されてなる単セルの1つ、及び、単セルと少なくとも燃料ガスの流路を形成する流路形成部材とが交互に積層されてなる積層体、の何れかを含んで構成され、単セルの発電反応により発電する複数の第1構造体(上記電気化学デバイス、上記反応器)と、
互いに隣り合う第1構造体が外部空間を挟んで離れるように複数の第1構造体を固定配置する固定部材(上記連結部、上記マニホールド部)と、
を備える。そして、隣り合う第1構造体により挟まれる外部空間の体積を含んだ反応装置の総体積が、1mm3以上、1×105mm3以下であるように構成される。
即ち、上記各第1構造体は、SOFCの単セルの1つ、或いは、単セルと流路形成部材(所謂、インターコネクタ)との積層体(スタック)の何れかを含んで構成される、発電反応を行う構造体である。
上記構成のように、互いに隣り合う第1構造体が外部空間を挟んで離れるように複数の第1構造体が固定部材により固定配置されると、各第1構造体の熱容量が小さくなる。これにより、各第1構造体の昇温速度が大きくなり、この結果、ヒータの加熱により各第1構造体の温度が比較的早期に作動温度(800℃以上)に達し得る。従って、反応装置の急速起動が容易となる。
また、複数の第1構造体が固定部材を介して連結されているから、固定部材を介して第1構造体間で熱交換が可能である。即ち、互いに隣り合う第1構造体間で温度差が生じている場合、温度の高い方から低い方へと熱が移動し得る。この作用によっても、各第1構造体の温度がそれぞれ安定して早期に作動温度に達し得、この結果、反応装置のより急速な起動が容易となる。
加えて、各第1構造体が比較的小さくなるため、各第1構造体を均一に加熱することが容易となる。このため、各第1構造体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、各第1構造体の内部において局所的に大きな温度差が生じ難い。この結果、各第1構造体の内部において大きい熱応力が発生して割れ等が発生する事態の発生を抑制できる。
更に、複数の第1構造体が電気的に並列に接続されている場合、複数の第1構造体のうち発電に寄与するもの(即ち、起動するもの)の個数を制御することで、反応装置の出力電流を段階的に制御できる。即ち、反応装置の出力を精緻に制御することができる。
以上より、前記外部空間の体積を含んだ反応装置の総体積が1mm3以上、1×105mm3以下である超小型の図11〜図23に示す反応装置によれば、反応装置を急速に起動すること、及び、反応装置の出力を精緻に制御することができる。
なお、図11〜図23に示す反応装置では、固定部材は絶縁材料にて形成されることが好ましく、各第1構造体は、集電部材により、並列的に、或いは直列的に電気的に接続されることが好ましい。
固定部材の内部には、第1構造体内のガス流路間を接続するガス流路が形成されていても形成されていなくてもよい。固定部材の内部にこのようなガス流路が形成されている場合、ガスが有する熱がガスの流通を介して第1構造体間を移動することによっても、各第1構造体の温度がそれぞれ安定して早期に作動温度に達し得る。この結果、反応装置のより急速な起動が容易となる。また、ヒータは、複数の第1構造体の全てに対してそれぞれ設けられてもよいし、複数の第1構造体の一部にのみ設けられても良い。
本発明の実施形態に係る図11〜図23に示す反応装置では、複数の第1構造体は、燃料ガスと接触する第1電極層の一側面の表面積、及び/又は、酸化性ガスと接触する第2電極層の他側面の表面積(以下、「反応面積」とも総称する。)が異なるように構成され得る。
SOFCを備えた第1構造体の発電反応は、発熱反応である。この発電反応は、上記反応面積が大きいほどより活発となる。従って、上記反応面積が大きいほど第1構造体の昇温速度が大きくなって早期に作動温度に達し得る。
以上のことから、このように、複数の第1構造体間で反応面積を異ならせることで、複数の第1構造体間で作動温度に達する時期を異ならせることができる。この結果、作動温度に達したものから順に第1構造体を起動していくことで、反応装置の出力を早期且つ段階的に取り出すことが可能となる。
本発明の実施形態に係る図12〜図13に示す反応装置では、複数の第1構造体の大きさが異なり、従って、熱容量が異なるように構成されている。これによっても、複数の第1構造体間で作動温度に達する時期を異ならせることができる。この結果、上述した複数の第1構造体間で反応面積を異ならせる場合と同じ作用効果が得られる。
特に、図12〜図13に示すように、複数の第1構造体が、熱容量が最も小さいもの(即ち、大きさが最も小さいもの)から熱容量が最も大きいもの(即ち、大きさが最も大きいもの)まで順に並ぶように配置されると、(温度が最も高い)熱容量が最も小さいものから(温度が最も低い)熱容量が最も大きいものへ向けて順に熱の移動が発生し得る。この結果、熱容量が最も大きいものの昇温速度を効果的に大きくすることができ、反応装置の出力をより早期且つ段階的に取り出すことができる。
また、上記反応装置の発電反応に使用される燃料ガス(例えば、水素ガス等)は、通常、所定の燃料(例えば、液体エタノール等)から燃料ガスを生成する燃料改質器を利用して供給される。図11〜図23に示す反応装置では、図中に示す1つ又は複数の第1構造体がそれに代えて1つ又は複数の第2構造体であってもよい。即ち、1つ又は複数の第2構造体が、複数の第1構造体の何れに対しても外部空間を挟んで離れるように固定部材により固定配置されてもよい。或いは、1つ又は複数の第2構造体が、複数の第1構造体の一部(1つ又は複数)と一体的に、固定部材により固定配置されてもよい。
一般に、燃料改質器も300℃程度まで昇温された状態で使用される。従って、この場合、上記反応装置を使用するためには、燃料改質器を含んだ第2構造体もヒータにより加熱する必要がある。
上記構成によれば、第2構造体と複数の第1構造体とが固定部材を介して連結されているから、固定部材を介して第2構造体と第1構造体間で熱交換が可能となる。従って、第1構造体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、例えば、第2構造体の温度が第2構造体と隣り合う第1構造体の温度よりも高い場合、第2構造体からこの第1構造体へと熱が移動し得る。この作用により、第2構造体と隣り合う第1構造体の昇温速度が大きくなり得る。このことは、反応装置のより急速な起動を達成することに繋がる。
加えて、第2構造体内の燃料改質器による燃料ガス生成反応は、吸熱反応である。一方、第1構造体の上記発電反応は、上述のごとく、発熱反応である。ここで、第1構造体の温度が作動温度で安定している状態では、第2構造体には、第1構造体の活発な発熱反応により発生した熱が固定部材を介して伝達され得る。この結果、この状態では、第2構造体を加熱するためのヒータの作動を停止しても吸熱反応である上記燃料ガス生成反応を持続することもできる。
具体的には、図11〜図12に示す反応装置では、図中に示す最も大きさが小さい第1構造体(即ち、熱容量が最も小さい第1構造体)がそれに代えて1つの第2構造体であってもよい。即ち、1つの第2構造体が、最も熱容量の小さい第1構造体(図11〜図12では、2番目に小さい第1構造体)と外部空間を挟んで隣り合うように、固定部材により固定配置されてもよい。或いは、1つの第2構造体が、図11〜図12において最も熱容量の小さい第1構造体と一体的に、固定部材により固定配置されてもよい。
これによれば、第2構造体の温度が第2構造体と隣り合う最も熱容量の小さい第1構造体の温度よりも高い場合、第2構造体からこの第1構造体へと熱が移動し得る。この作用により、最も熱容量の小さい第1構造体の昇温速度が大きくなり得る。これにより、反応装置の出力をより早期に取り出すことができる。
以下、本発明に係る反応装置について付言する。本発明の実施形態に係る図11〜図23に示す反応装置は、固体電解質層と、固体電解質層の一側面に形成され一側面が燃料ガスに接触する第1電極層と、固体電解質層の他側面に形成され他側面が酸化性ガスに接触する第2電極層とが積層されてなる単セルの1つ、及び、単セルと少なくとも燃料ガスの流路を形成する流路形成部材とが交互に積層されてなる積層体、の何れかを含んで構成され、単セルの発電反応により発電する複数の第1構造体(上記電気化学デバイス、上記反応器)と、
互いに隣り合う第1構造体が外部空間を挟んで離れるように複数の第1構造体を固定配置する固定部材(上記連結部、上記マニホールド部)と、
を備える。そして、隣り合う第1構造体により挟まれる外部空間の体積を含んだ反応装置の総体積が、1mm3以上、1×105mm3以下であるように構成される。
即ち、上記各第1構造体は、SOFCの単セルの1つ、或いは、単セルと流路形成部材(所謂、インターコネクタ)との積層体(スタック)の何れかを含んで構成される、発電反応を行う構造体である。
上記構成のように、互いに隣り合う第1構造体が外部空間を挟んで離れるように複数の第1構造体が固定部材により固定配置されると、各第1構造体の熱容量が小さくなる。これにより、各第1構造体の昇温速度が大きくなり、この結果、ヒータの加熱により各第1構造体の温度が比較的早期に作動温度(800℃以上)に達し得る。従って、反応装置の急速起動が容易となる。
また、複数の第1構造体が固定部材を介して連結されているから、固定部材を介して第1構造体間で熱交換が可能である。即ち、互いに隣り合う第1構造体間で温度差が生じている場合、温度の高い方から低い方へと熱が移動し得る。この作用によっても、各第1構造体の温度がそれぞれ安定して早期に作動温度に達し得、この結果、反応装置のより急速な起動が容易となる。
加えて、各第1構造体が比較的小さくなるため、各第1構造体を均一に加熱することが容易となる。このため、各第1構造体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、各第1構造体の内部において局所的に大きな温度差が生じ難い。この結果、各第1構造体の内部において大きい熱応力が発生して割れ等が発生する事態の発生を抑制できる。
更に、複数の第1構造体が電気的に並列に接続されている場合、複数の第1構造体のうち発電に寄与するもの(即ち、起動するもの)の個数を制御することで、反応装置の出力電流を段階的に制御できる。即ち、反応装置の出力を精緻に制御することができる。
以上より、前記外部空間の体積を含んだ反応装置の総体積が1mm3以上、1×105mm3以下である超小型の図11〜図23に示す反応装置によれば、反応装置を急速に起動すること、及び、反応装置の出力を精緻に制御することができる。
なお、図11〜図23に示す反応装置では、固定部材は絶縁材料にて形成されることが好ましく、各第1構造体は、集電部材により、並列的に、或いは直列的に電気的に接続されることが好ましい。
固定部材の内部には、第1構造体内のガス流路間を接続するガス流路が形成されていても形成されていなくてもよい。固定部材の内部にこのようなガス流路が形成されている場合、ガスが有する熱がガスの流通を介して第1構造体間を移動することによっても、各第1構造体の温度がそれぞれ安定して早期に作動温度に達し得る。この結果、反応装置のより急速な起動が容易となる。また、ヒータは、複数の第1構造体の全てに対してそれぞれ設けられてもよいし、複数の第1構造体の一部にのみ設けられても良い。
本発明の実施形態に係る図11〜図23に示す反応装置では、複数の第1構造体は、燃料ガスと接触する第1電極層の一側面の表面積、及び/又は、酸化性ガスと接触する第2電極層の他側面の表面積(以下、「反応面積」とも総称する。)が異なるように構成され得る。
SOFCを備えた第1構造体の発電反応は、発熱反応である。この発電反応は、上記反応面積が大きいほどより活発となる。従って、上記反応面積が大きいほど第1構造体の昇温速度が大きくなって早期に作動温度に達し得る。
以上のことから、このように、複数の第1構造体間で反応面積を異ならせることで、複数の第1構造体間で作動温度に達する時期を異ならせることができる。この結果、作動温度に達したものから順に第1構造体を起動していくことで、反応装置の出力を早期且つ段階的に取り出すことが可能となる。
本発明の実施形態に係る図12〜図13に示す反応装置では、複数の第1構造体の大きさが異なり、従って、熱容量が異なるように構成されている。これによっても、複数の第1構造体間で作動温度に達する時期を異ならせることができる。この結果、上述した複数の第1構造体間で反応面積を異ならせる場合と同じ作用効果が得られる。
特に、図12〜図13に示すように、複数の第1構造体が、熱容量が最も小さいもの(即ち、大きさが最も小さいもの)から熱容量が最も大きいもの(即ち、大きさが最も大きいもの)まで順に並ぶように配置されると、(温度が最も高い)熱容量が最も小さいものから(温度が最も低い)熱容量が最も大きいものへ向けて順に熱の移動が発生し得る。この結果、熱容量が最も大きいものの昇温速度を効果的に大きくすることができ、反応装置の出力をより早期且つ段階的に取り出すことができる。
また、上記反応装置の発電反応に使用される燃料ガス(例えば、水素ガス等)は、通常、所定の燃料(例えば、液体エタノール等)から燃料ガスを生成する燃料改質器を利用して供給される。図11〜図23に示す反応装置では、図中に示す1つ又は複数の第1構造体がそれに代えて1つ又は複数の第2構造体であってもよい。即ち、1つ又は複数の第2構造体が、複数の第1構造体の何れに対しても外部空間を挟んで離れるように固定部材により固定配置されてもよい。或いは、1つ又は複数の第2構造体が、複数の第1構造体の一部(1つ又は複数)と一体的に、固定部材により固定配置されてもよい。
一般に、燃料改質器も300℃程度まで昇温された状態で使用される。従って、この場合、上記反応装置を使用するためには、燃料改質器を含んだ第2構造体もヒータにより加熱する必要がある。
上記構成によれば、第2構造体と複数の第1構造体とが固定部材を介して連結されているから、固定部材を介して第2構造体と第1構造体間で熱交換が可能となる。従って、第1構造体の温度が作動温度で安定するまでの過渡期において、例えば、第2構造体の温度が第2構造体と隣り合う第1構造体の温度よりも高い場合、第2構造体からこの第1構造体へと熱が移動し得る。この作用により、第2構造体と隣り合う第1構造体の昇温速度が大きくなり得る。このことは、反応装置のより急速な起動を達成することに繋がる。
加えて、第2構造体内の燃料改質器による燃料ガス生成反応は、吸熱反応である。一方、第1構造体の上記発電反応は、上述のごとく、発熱反応である。ここで、第1構造体の温度が作動温度で安定している状態では、第2構造体には、第1構造体の活発な発熱反応により発生した熱が固定部材を介して伝達され得る。この結果、この状態では、第2構造体を加熱するためのヒータの作動を停止しても吸熱反応である上記燃料ガス生成反応を持続することもできる。
具体的には、図11〜図12に示す反応装置では、図中に示す最も大きさが小さい第1構造体(即ち、熱容量が最も小さい第1構造体)がそれに代えて1つの第2構造体であってもよい。即ち、1つの第2構造体が、最も熱容量の小さい第1構造体(図11〜図12では、2番目に小さい第1構造体)と外部空間を挟んで隣り合うように、固定部材により固定配置されてもよい。或いは、1つの第2構造体が、図11〜図12において最も熱容量の小さい第1構造体と一体的に、固定部材により固定配置されてもよい。
これによれば、第2構造体の温度が第2構造体と隣り合う最も熱容量の小さい第1構造体の温度よりも高い場合、第2構造体からこの第1構造体へと熱が移動し得る。この作用により、最も熱容量の小さい第1構造体の昇温速度が大きくなり得る。これにより、反応装置の出力をより早期に取り出すことができる。
Claims (6)
- 固体電解質層と、前記固体電解質層の一側面に形成され一側面が燃料ガスに接触する第1電極層と、前記固体電解質層の他側面に形成され他側面が酸化性ガスに接触する第2電極層とが積層されてなる単セルの1つ、及び、前記単セルと少なくとも前記燃料ガスの流路を形成する流路形成部材とが交互に積層されてなる積層体、の何れかを含んで構成され、前記単セルの発電反応により発電する複数の第1構造体と、
互いに隣り合う前記第1構造体が外部空間を挟んで離れるように前記複数の第1構造体を固定配置する固定部材と、
を備えた反応装置であって、
前記隣り合う第1構造体により挟まれる前記外部空間の体積を含んだ前記反応装置の総体積が、1mm3以上、1×105mm3以下である反応装置。 - 請求の範囲1に記載の反応装置において、
前記複数の第1構造体は、前記燃料ガスと接触する前記第1電極層の一側面の表面積、及び/又は、前記酸化性ガスと接触する前記第2電極層の他側面の表面積が異なる反応装置。 - 請求の範囲1又は請求の範囲2に記載の反応装置において、
前記複数の第1構造体は、熱容量が異なる反応装置。 - 請求の範囲3に記載の反応装置において、
前記固定部材は、前記複数の第1構造体を、熱容量が最も小さいものから最も大きいものまで順に並ぶように配置した反応装置。 - 請求の範囲1又は請求の範囲2に記載の反応装置であって、
所定の燃料から前記燃料ガスを生成する燃料改質器を含んで構成される1つ又は複数の第2構造体を備え、
前記固定部材は、前記1つ又は複数の第2構造体を、前記複数の第1構造体の何れに対しても外部空間を挟んで離れるように、又は、前記複数の第1構造体の一部と一体的に、固定配置した反応装置。 - 請求の範囲3又は請求の範囲4に記載の反応装置であって、
所定の燃料から前記燃料ガスを生成する燃料改質器を含んで構成される1つの第2構造体を備え、
前記固定部材は、前記1つの第2構造体を、前記複数の第1構造体のうち最も熱容量の小さいものと外部空間を挟んで隣り合うように、又は、前記複数の第1構造体のうち最も熱容量の小さいものと一体的に、固定配置した反応装置。
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