本発明は、レーザなどの光源から出射される光ビームを利用して、光学的に光ディスクに情報を記録する、または、光ディスクから情報を再生する光ディスク装置に関し、さらに、光ディスク装置において、光ディスクの現在アドレスから目標アドレスまで光ビームの収束点を移動させる検索処理方法に関する。
従来の光ディスク装置における粗検索時の誤差低減方法の一例としては、現在アドレスと目標アドレスとから検索トラック本数を算出し、この検索トラック本数が粗検索が必要となる所定トラック本数以上の場合、検索トラック本数とトラックピッチとから得られる移動距離だけ、トラバースモータ(ステッピングモータ)などの移動手段を用いて光ヘッドを移動させる。このときトラックピッチばらつきにより発生する移動距離の誤差を低減するために、前回の粗検索における光ビーム収束点の到達位置と目標位置との差分トラック数に基づいて、次回の粗検索における光ビーム収束点の到達位置が目標位置に近づくように、検索トラック本数から移動距離への変換を補正する(特開2002−329335号公報参照)。なお、粗検索とは、現在アドレスと目標アドレスとから算出される検索トラック本数に基づいて、比較的低精度で光ビーム収束点を目標位置まで移動させることをいう。
しかしながら、上記従来の光ディスク装置では、例えば2つのレンズが設けられている光ヘッド(2レンズ構成の光ヘッド)のように、トラバース軸からタンジェンシャル方向(光ディスクの接線方向)にずれた位置に配置されたレンズを備えている光ヘッドが用いられている場合、アドレスから算出した検索トラック本数とトラックピッチとから得られる移動距離だけ粗検索(トラバース移動)を行うと、実際のレンズ位置は算出した本数とは異なる本数移動してしまう。なお、トラバース軸の正確な定義は後述のとおりであるが、具体的な表現を用いて簡単に説明すると、ここでいうトラバース軸とは、トラバースモータなどによって光ヘッドが移動する方向と平行であって、かつ、光ディスクの中心(光ディスクが装着されるディスクモータの中心に相当)を通る、仮想的な軸のことである。また、ここでいうレンズとは、光ディスクの所定の位置に光ビームを収束させる収束レンズのことである。光ヘッドに設けられたレンズがこのトラバース軸に沿って(トラバース軸上を)動く限りにおいては、レンズは光ディスクの半径に沿って動いていることになるので、現在アドレスと目標アドレスが判れば、トラックピッチは一定であるとして、目標アドレスまでの半径距離、トラック本数を算定することができる。しかし、レンズの軌道がこのトラバース軸からずれている場合、上記算定は成立せず、実際のトラック本数に対して誤差が生じる。この誤差はトラックピッチばらつき吸収のための補正を行う程度では吸収できず、その結果、再検索が発生し、目標アドレスへの密検索に時間がかかり、検索時間が増大してしまうという問題を有していた。なお、密検索とは、トラッキング制御の動作を行うことによって、光ビーム収束点を目標位置に移動させることをいう。
本発明は、上記従来の問題点を鑑みてなされたものであり、トラバース軸からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されたレンズを含む光ヘッドが用いられている場合であっても、粗検索時に発生する検索トラック本数の誤差を低減することによって、検索時間を増大させることなく高精度の検索を可能とする光ディスク装置および検索処理方法を提供することを目的とするものである。
本発明の光ディスク装置は、光ビームを光ディスクに照射することによって、前記光ディスクに対して情報の記録および再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置であって、トラバース軸からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されたレンズを含み、前記レンズによって前記光ビームを前記光ディスクに収束させる光ヘッドと、前記光ディスクのトラックを横切る方向に前記光ヘッドを移動させる第2の移動手段と、前記光ディスクの第1のアドレスから第2のアドレスに到達するまでに横断されるトラックの本数を検索本数として算出するトラック本数算出手段と、前記光ビームの収束点を、前記光ディスクの前記第1のアドレスから前記第2のアドレスに移動させる検索制御手段と、前記レンズの前記トラバース軸からのずれ量に応じて前記検索本数を補正する検索本数補正手段と、を備えている。
なお、本明細書において、「トラバース軸」とは、第2の移動手段による光ヘッドの移動方向と平行であり、かつ、光ディスク装置に装着された光ディスクの中心を通る、仮想的な軸のことである。また、レンズがトラバース軸からタンジェンシャル方向にずれているとは、すなわちレンズの中心がトラバース軸上に位置していないということである。
本発明の検索処理方法は、トラバース軸からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されたレンズを含み、前記レンズによって光ビームを光ディスクに収束させる光ヘッドを備えた光ディスク装置における検索処理方法であって、前記光ディスクの第1のアドレスから第2のアドレスに到達するまでに横断されるトラックの本数を検索本数として算出するトラック本数算出ステップと、前記レンズの前記トラバース軸からのずれ量に応じて前記検索本数を補正して、補正検索本数を得る検索本数補正ステップと、前記補正検索本数を用いて、前記光ビームの収束点を、前記光ディスクの前記第1のアドレスから前記第2のアドレスに移動させる検索制御ステップと、を含む。
本発明の光ディスク装置は、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じてアドレスから算出した検索本数を補正できるので、粗検索時に発生する誤差本数を低減させることができる。これにより、検索時間を増大させることなく、高精度の検索性能を備えた光ディスク装置を提供することができる。また、同様の理由から、本発明の検索処理方法によれば、検索時間を増大させることなく高精度の検索が可能となる。
図1は、本発明の実施の形態1である光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図2は、レンズがトラバース軸からずれていない光ヘッドを用いた場合の一般的な検索処理を示すフローチャートである。
図3は、本発明の実施の形態1におけるレンズとトラバース軸との位置関係を示す図である。
図4は、本発明の実施の形態1の光ディスク装置における検索本数補正処理を示すフローチャートである。
図5は、本発明の実施の形態2である光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態の光ディスク装置は、光ディスク101を所定の回転数で回転させるためのディスクモータ102、光ディスク101からの情報を再生あるいは光ディスク101に情報を記録するための光ヘッド103および光ヘッド103全体を光ディスク101のトラック方向に対して垂直な方向に移動させるためのトラバースモータ(第2の移動手段)104を備える。なお、トラバースモータ104としては、一般的にステッピングモータが用いられる。光ヘッド103は、半導体レーザなどの光源、カップリングレンズ、球面収差補正レンズ、偏光ビームスプリッタ、偏光板、収束レンズ、集光レンズ、分割ミラー、フォトディテクタなどで構成されているが、ここでは各構成要素の具体的な説明および図面を省略する。なお、以下、単に「レンズ」という場合は、光ディスクに光ビームを収束させる機能を備えたレンズ、すなわち収束レンズのことを指す。
光ヘッド103の光源により発生された光ビームは、カップリングレンズによって平行光にされた後、球面収差補正レンズによって光ディスク101の基材厚の違いにより発生する球面収差が補正され、偏光ビームスプリッタによって反射され、偏光板を通過し、収束レンズによって収束されて、光ディスク101の厚さ方向にフォーカス点をもつように光ビームスポット(光ビームの収束点)が形成される。この光ビームスポットは、ディスクモータ102によって回転している光ディスク101に照射される。なお、図1中、126は、光ディスク101に収束される光ビームを示している。
光ディスク101からの反射光は、収束レンズ、偏光板、偏光ビームスプリッタ、集光レンズを通過し、分割ミラーで2方向の光ビームに分割される。2方向に分割された光ビームのうち一方は、光ヘッド103内に設けられた4分割構造のフォトディテクタを介しフォーカス制御装置(図省略)に入力され、4分割されたフォトディテクタの各領域からの出力信号のうち、対角に位置する2つの領域からの出力信号がそれぞれ加算される。加算後の2信号を減算することにより光ビームの収束点と光ディスク101との位置ずれ信号(フォーカスエラー(FE)信号)を検出し、このFE信号に基づいて、光ディスク101上に収束点が位置するようにフォーカス制御を行う。このFE信号の検出は、「非点収差法」と呼ばれている。フォーカス制御装置の構成および動作は、本実施の形態の説明と直接関係ないので説明を省略する。
一方、分割ミラーにより分割されたもう一方の光ビームは、光ヘッド103内に設けられた別の4分割構造のフォトディテクタを介し、トラッキング制御装置に入力される。トラッキング制御装置は、トラッキングエラー信号生成部(トラックずれ検出手段)105と、トラッキングエラー信号生成部105から出力された信号に応じてトラッキング制御を行うトラッキング制御部(トラッキング制御手段)とによって構成されている。トラッキング制御部は、DSP(Digital Signal Processor)120、トラッキング駆動回路111およびトラッキングアクチュエータ(図省略)とによって構成されている。トラッキングアクチュエータは、光ヘッド103に設けられており、光ビームの収束点が光ディスクのトラックを横切る方向に移動するように収束レンズを移動させることができる。本実施の形態では、トラッキングアクチュエータが第1の移動手段に相当する。
トラッキングエラー信号生成部105では、4分割されたフォトディテクタの各領域からの出力信号について、トラックに対して外周側に位置する出力信号と内周側に位置する出力信号がそれぞれ加算される。加算後の2信号を減算することにより、光ビームの収束点がトラック上を走査するように制御するためのトラックずれ信号(トラッキングエラー(TE)信号)が得られる。このTE信号は、DSP120に入力される。このTE信号の検出は、「プッシュプル法」と呼ばれている。
まず、トラッキング制御を行う必要があるとき、すなわち光ディスク装置が記録または再生モードにあるときについて説明する。DSP120に入力されたTE信号は、AD変換器106によってアナログ信号からデジタル信号に変換され、加算器、乗算器および遅延器によって構成されたデジタルフィルタである補償フィルタ107に入力される。補償フィルタ107はトラッキング制御系の位相を補償するものである。補償フィルタ107において位相を補償されたTE信号は、トラッキング制御系のループゲインを切り換えるゲイン切換回路108を介してスイッチ109に入力される。スイッチ109は、トラッキング制御系のループの開閉動作と、トラッキング制御時と検索時とでトラッキングアクチュエータの駆動信号を切り換える動作を行う。トラッキング制御時においては、実線で示された位置に設定されているので、スイッチ109を通過したTE信号は、DA変換器110によってデジタル信号からアナログ信号に変換され、トラッキング駆動回路111に入力される。
トラッキング駆動回路111は、DSP120からの出力信号を適当に電流増幅、レベル変換して、トラッキングアクチュエータを駆動する。トラッキングアクチュエータは、光ディスク101上の光ビームの収束点が所定のトラック上を走査するように駆動される。このようにして、トラッキング制御が実現される。
ゲイン切換回路108を通過したTE信号は、周波数帯域を制限し、ノイズを除去する低域通過フィルタ113にも入力される。TE信号は、低域通過フィルタ113を通過後、移送制御系の位相を補償する補償フィルタ114に入力される。低域通過フィルタ113と補償フィルタ114は、補償フィルタ107と同様に加算器、乗算器および遅延器によって構成されたデジタルフィルタである。補償フィルタ114の出力は、移送制御系のゲインを切り換えるゲイン切換回路115を通過し、トラッキング制御時と検索時とでトラバースモータ104の駆動信号を切り換えるスイッチ116に入力される。トラッキング制御時においては、実線で示された位置に設定されているので、スイッチ116を通過した信号は、DA変換器117によってデジタル信号からアナログ信号に変換され、トラバース駆動回路118に入力される。
トラバース駆動回路118は、DSP120からの出力信号を適当に電流増幅、レベル変換して、トラバースモータ104を駆動する。トラバースモータ104は、光ディスク101上の光ビームの収束点がトラック上を走査したとき、光ビームの収束点と収束レンズの中心とが一致するように、すなわち光ディスク101に収束照射された光ビームの光軸と収束レンズの光軸とが一致するように駆動される。このようにして、移送制御が実現される。
次に、本実施の形態の光ディスク装置における検索処理について説明する。
まず、トラバース軸について説明する。トラバース軸とは上記に定義した仮想的な軸のことであるが、ここでは図3を参照しながらより具体的に説明する。図3には、光ディスクが装着されるターンテーブル301(ディスクモータ102(図1参照)によって回転されるターンテーブル)と、装着された光ディスクに光ビームを照射するための光ヘッド302と、光ヘッド302を光ディスクのトラックを横切る方向に移動させるトラバースモータ(第2の移動手段)307との位置関係が示されている。光ヘッド302はトラバース主軸306およびトラバース副軸305により保持され、トラバースモータ307によりトラックに対して垂直方向(ここでは光ディスクの半径方向)に移動できるようになっている。図3に示すように、トラバース軸300とは、トラバースモータ307によって光ヘッド302が移動する方向と平行であって、かつ、光ディスク装置に装着された光ディスクの中心(ここでは、光ディスクが装着されるディスクモータ102(図1参照)の回転中心(ターンテーブル301の回転中心))を通る、仮想的な軸のことをいう。図3に示された光ヘッド302は、トラバース軸300からずれていない位置に配置されているDVD(Digital Versatile Disk)/CD(Compact Disk)レンズ303と、トラバース軸300からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されているBD(Blu-ray Disk)レンズ304とを備えた2レンズ構成の光ヘッドである。ここで、ずれ量とは、具体的にはレンズ中心間距離で例えば2.5mm〜5mmの範囲である。このずれ量の下限値は実用上実現可能な最小サイズの対物レンズ口径によって、上限値は実用上問題のないアクチュエータの最大サイズによって、それぞれ決定される。
まず、本実施の形態の光ディスク装置について、トラバース軸からずれていないレンズ、すなわちトラバース軸上に配置されているレンズ(図3に示す例ではDVD/CDレンズ303)を用いた場合の一般的な検索処理について、図1のブロック図に加え、図2のフローチャートおよび図3を参照しながら説明する。本実施の形態では、装置に装着された光ディスクがDVD−ROM(DVD-Read Only Memory)ディスク(トラックピッチ0.74μm)であり、ユーザ領域最内周から最外周にシークする(検索する)場合について具体的に説明する。
光ヘッド103からの出力信号はアドレス読み取り信号生成部121に入力され、アドレス読み取り回路122において光ディスク101上のアドレス(現在アドレス(第1のアドレス))が読み取られる。ステップS201において、CPU125はアドレス読み取り回路122から現在アドレスを取得する。
次に、ステップS202において、トラック本数算出部(トラック本数算出手段)123は、光ディスク101の線速度およびトラックピッチから現在アドレスおよび目標アドレス(第2のアドレス)を所定半径位置からのトラック数に変換する。一般的には、所定半径位置として半径r=0mmが用いられる。半径r=0mmを基準とする場合、本実施の形態では、ユーザ領域最内周(r=24mm)のアドレスは、24[mm]/0.74[μm]=32432本、最外周(r=58mm)のアドレスは、58[mm]/0.74[μm]=78378本というそれぞれ基準からのトラック数に換算される。
次に、ステップS203において、ステップS202で得られた現在トラック数と目標トラック数とより、現在アドレスから目標アドレスに到達するまでに横断されるトラックの本数が検索本数として算出される。ここでは、78378[本]−32432[本]=45946本が検索本数となる。
さらに、ステップS204においてシークする必要があるかを判断し、必要がある場合は、ステップS205において、CPU125がDSP120にステップS203で算出した検索本数および検索方向をシークコマンドのパラメータとして発行する。ここでは、外周方向に45946本というシークコマンドが発行されることになる。ステップS204においてシークする必要がないと判断した場合(具体的には現在トラックが目標トラックの手前1〜2本程度の場合)は、検索処理は終了となる。
なお、ここでは、レンズがトラバース軸からずれていない場合の一般的な検索処理を説明しているので、トラック本数算出部123で算出された検索本数がそのまま(図1に示されている検索本数補正部(検索本数補正手段)124を経由することなく)DSP120に発行される。
CPU125からシークコマンドを受けたDSP120は、スイッチ109、116を点線で示された位置に設定し、検索時トラッキング駆動信号生成部112において生成された信号を用いてトラッキングアクチュエータを駆動し、検索時トラバース駆動信号生成部119において生成された信号を用いてトラバースモータ104を駆動する。検索時トラッキング駆動信号生成部112は、検索時のトラッキングアクチュエータ駆動信号を生成する。隣接したトラックへの移動であるトラックジャンピング時は加減速パルスを、トラバースシーク時はシーク中のレンズ揺れを低減させる信号を用いてトラッキングアクチュエータを駆動するのが一般的である。検索時のトラッキングアクチュエータ駆動信号の具体的な生成方法に関しては、本実施の形態の説明と直接関係ないので説明を省略する。
検索時トラバース駆動信号生成部119は、検索本数、検索方向および光ディスク101のトラックピッチを用いてトラバースモータ104の駆動信号プロフィールを生成する。ここでは、外周方向に45946[本]×0.74[μm]=34mm移動するための駆動信号プロフィールが生成される。具体的な駆動信号プロフィールの生成方法に関しては、本実施の形態の説明と直接関係ないので説明を省略する。
ステップS205におけるシークコマンド終了後、再びステップS201に戻り、ステップS204においてシークする必要がないと判断されるまで、以上の処理を繰り返す。このようにして、目標アドレスへの検索が行われる。
次に、本実施の形態の光ディスク装置において、トラバース軸からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されているレンズ(図3に示す例ではBDレンズ304)を用いる場合の検索処理について、図1のブロック図に加え、図3に示したレンズ304とトラバース軸300との位置関係を示す関係図および図4のフローチャートを参照しながら、詳細に説明する。
光ヘッド302はトラバース主軸306およびトラバース副軸305により保持され、トラバースモータ307によりトラックと垂直方向に移動できるようになっている。ここで、DVD/CDレンズ303はターンテーブル301の中心を通るトラバース主軸306、トラバース副軸305と平行であるトラバース軸300上に配置されているのに対し、BDレンズ304はこのトラバース軸300からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されている。ここでは、BDレンズ304のトラバース軸300からのずれ量を3mmとし、装置に装着された光ディスク101がBD−ROMディスク(トラックピッチ0.32μm)でユーザ領域最内周から最外周にシークする場合について具体的に説明する。
光ヘッド103、302からの出力信号はアドレス読み取り信号生成部121に入力され、アドレス読み取り回路122において光ディスク101上のアドレス(現在アドレス(第1のアドレス))が読み取られる。ステップS401において、CPU125はアドレス読み取り回路122から現在アドレスを取得する。
次に、ステップS402において、トラック本数算出部123は、光ディスク101の線速度およびトラックピッチから現在アドレスおよび目標アドレス(第2のアドレス)を所定半径位置からのトラック数に変換する。このとき、BDレンズ304がトラバース軸300上を動くと仮定してトラック数への変換が行われる。一般的には、所定半径位置として半径r=0mmが用いられる。半径r=0mmを基準とする場合、本実施の形態では、ユーザ領域最内周(r=24mm)のアドレスは、24[mm]/0.32[μm]=75000本、最外周(r=58mm)のアドレスは、58[mm]/0.32[μm]=181250本というそれぞれ基準からのトラック数に換算される。
次に、ステップS403において、ステップS402で得られた現在トラック数と目標トラック数とより、現在アドレスから目標アドレスに到達するまでに横断されるトラックの本数が検索本数として算出される。本実施の形態の場合、181250[本]−75000[本]=106250本が検索本数となる。
さらに、ステップS404においてシークする必要があるかを判断し、必要がある場合は、ステップS405において、検索本数がトラバースシークが必要な本数かどうかを判断する。検索本数がトラバースシーク不要と判断される所定本数以下の場合、シークコマンドは、TE信号あるいはTE信号を2値化した信号を用いて移動本数をカウントしながら実行される。この場合、ステップS403において算出した検索本数をさらに補正する必要は無い。ここで、所定本数とは、具体的にはトラックピッチ0.32μmのBD−ROM(BD-Read Only Memory)ディスクの場合、例えば1000本であり、距離に換算すると320μmである。移動本数をカウントしながらのシークは高精度ではあるが、一般的にトラバースシークと比べて移動時間がかかるため、精度とアクセス時間との兼ね合いからこのような本数に決定されている。シークコマンドは、ステップS409において実行される。シークコマンドの基本動作に関しては、既に説明しているためここでは説明を省略する。なお、ステップS404においてさらにシークする必要がないと判断された場合(具体的には現在トラックが目標トラックの手前1〜2本程度の誤差でアクセスできた場合)は、検索処理は終了となる。
ステップS405において、検索本数がトラバースシーク必要と判断される本数である、すなわち検索本数が所定本数を超えると判断された場合は、ステップS406およびステップS407において、レンズのトラバース軸からのずれ量(本実施の形態においては3mm)に応じて検索本数を補正する。本実施の形態では、例えば、検索本数補正部124は、アドレスから算出された検索本数を、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じて多くなるように補正する。以下に、検索本数の補正について、その具体例を説明する。
本実施の形態において検索本数を補正する際、まず現在トラック数および目標トラック数をレンズのトラバース軸からのずれ量に応じて補正する。具体的には、BDレンズ304はトラバース軸上から3mmずれているため、現在トラック数75000本は、
に補正される。
また、目標トラック数181250本は、
に補正される。
次に、ステップS408において、補正された現在トラック数と目標トラック数とにより、補正検索本数を算出する。ここでは、181007[本]−74411[本]=106596本となる。
次に、ステップS409において、CPU125がDSP120にステップS408で算出した補正検索本数および検索方向をシークコマンドのパラメータとして発行する。ここでは、外周方向に106596本というシークコマンドが発行されることになる。
CPU125からシークコマンドを受けたDSP120は、検索時トラバース駆動信号生成部119において検索本数、検索方向および光ディスク101のトラックピッチからトラバースモータ104の駆動信号プロフィールを生成する。ここでは、トラバースモータ104を外周方向に106596[本]×0.32[μm]≒34.11mm移動するための駆動信号プロフィールが生成される。このように光ディスク101の半径上の距離で34mm移動させることに対して、光ヘッド103(302)を34.11mm移動させたことにより、BDレンズ304としては、光ディスク101上を実質半径方向に34mm移動したことになる。
ステップS409におけるシークコマンド終了後、再びステップS401に戻り、ステップS404においてシークする必要がないと判断するまで、以上の処理を繰り返す。このようにして、目標アドレスへの検索が行われる。
以上説明したように、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じてアドレスから算出した検索本数を補正することにより、粗検索時に発生する誤差本数を低減させることができる。なお、ここでは、現在アドレスがユーザ領域最内周であり、検索の目標アドレスが最外周である場合を例に挙げて具体的な補正方法を説明したが、現在アドレスおよび目標アドレスはこれらに限定されず、現在アドレスおよび目標アドレスがこれら以外の場合であっても同様の方法で補正できる。例えば、レンズのトラバース軸からのずれ量をd
1とし、基準となる所定半径位置から現在アドレスまでのトラック数をM
1、目標アドレスまでのトラック数をM
2とし、トラックピッチをTPと表記する場合、補正検索本数は以下の式を用いて算出できる。
なお、本実施の形態においては、DVD/CDレンズがトラバース軸上、BDレンズがトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドにおいて説明したが、この配置に関しては何ら限定を受けない。ただし、DVD/CDレンズとBDレンズとを1つの光ヘッド内に配置する場合、DVD/CDに対する情報の記録再生についての制御が、レンズがトラバース軸上に配置された系について既に確立していることもある。このため、既に確立した制御方法を維持することが望ましい場合は、レンズの配置を図3に示したような位置関係とするとよい。また、例えば、1レンズ構成でレンズがトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドや、2レンズ構成で2レンズともトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドにおいても同様の効果を得ることが可能である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における光ディスク装置および検索処理方法について説明する。本実施の形態の光ディスク装置は、図1に示す実施の形態1の構成に対し、CPU内にレンズずれ量記憶部(レンズずれ量記憶手段)をさらに設け、検索本数補正部の処理を変更することによって実現できる。ここで、実施の形態1に対応する部分(同様の機能を有する構成要素)には、同一の参照符号を付してここでは説明を省略する。
以下、本実施の形態における光ディスク装置および検索処理について、図3の関係図および図4のフローチャートに加え、図5のブロック図を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態における検索処理は、補正検索本数を算出する具体的方法以外は実施の形態1の場合と同様であるので、図4に示したフローチャートを援用した説明が可能である。実施の形態1では、補正に用いられるレンズのトラバース軸からのずれ量に設計値を使用しているが、本実施の形態においては、光ヘッド103、302の組み立てばらつきにより発生する装置ごとのずれ量のばらつきを組み立て後に測定し、レンズずれ量記憶部501に記憶させておき、装置ごとのずれ量実測値d2[mm]を使用して補正するものである。具体的に、装置に装着された光ディスク101がBD−ROMディスク(トラックピッチ0.32μm)でユーザ領域最内周から最外周にシークする場合について、実施の形態1と異なる部分のみを説明する。
ステップS401〜S405においてトラバースシークが必要となる場合、ステップS406およびステップS407において、検索本数補正部502は、レンズずれ量記憶部501に格納されているずれ量d
2[mm]を使用して、現在トラック数および目標トラック数を補正する。具体的には、現在トラック数75000本は、
に補正される。
また、目標トラック数181250本は、
に補正される。
次に、ステップS408において補正された現在トラック数と目標トラック数とより、補正検索本数が算出される。本実施の形態では、N2[本]−N1[本]=N3[本]となる。
次に、ステップS409において、CPU503は、ステップS408で算出した補正検索本数および検索方向をシークコマンドのパラメータとしてDSP120に発行する。ここでは、外周方向にN3本というシークコマンドが発行されることになる。以降の処理については、実施の形態1と同様のため説明を省略する。
以上説明したように、本実施の形態の光ディスク装置および検索処理方法によれば、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じてアドレスから算出した検索本数を補正することにより、粗検索時に発生する誤差本数を低減させることができる。さらに、本実施の形態の光ディスク装置および検索処理方法では、光ヘッドの組み立てばらつきにより発生する装置ごとのずれ量のばらつきを考慮して組み立て後に測定し記憶させておき、ずれ量の設計値ではなく、装置ごとのずれ量実測値を使用して検索本数を補正するので、より高精度の粗検索性能を実現することができる。
なお、本実施の形態においては、DVD/CDレンズがトラバース軸上、BDレンズがトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドを例に挙げて説明したが、この配置に関しては何ら限定を受けない。例えば、1レンズ構成でレンズがトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドや、2レンズ構成で2レンズともトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドにおいても同様の効果を得ることが可能である。
本発明にかかる光ディスク装置および検索処理方法は、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じてアドレスから算出した検索本数を補正するので、粗検索時に発生する誤差本数が低減し、検索時間を増大させることなく高精度の検索が可能となる。このため、青色レーザを搭載したBlu−rayディスクレコーダなどとして有用である。またレコーダに限らずプレーヤーやPCドライブなどの用途にも応用できる。
本発明は、レーザなどの光源から出射される光ビームを利用して、光学的に光ディスクに情報を記録する、または、光ディスクから情報を再生する光ディスク装置に関し、さらに、光ディスク装置において、光ディスクの現在アドレスから目標アドレスまで光ビームの収束点を移動させる検索処理方法に関する。
従来の光ディスク装置における粗検索時の誤差低減方法の一例としては、現在アドレスと目標アドレスとから検索トラック本数を算出し、この検索トラック本数が粗検索が必要となる所定トラック本数以上の場合、検索トラック本数とトラックピッチとから得られる移動距離だけ、トラバースモータ(ステッピングモータ)などの移動手段を用いて光ヘッドを移動させる。このときトラックピッチばらつきにより発生する移動距離の誤差を低減するために、前回の粗検索における光ビーム収束点の到達位置と目標位置との差分トラック数に基づいて、次回の粗検索における光ビーム収束点の到達位置が目標位置に近づくように、検索トラック本数から移動距離への変換を補正する(特開2002−329335号公報参照)。なお、粗検索とは、現在アドレスと目標アドレスとから算出される検索トラック本数に基づいて、比較的低精度で光ビーム収束点を目標位置まで移動させることをいう。
しかしながら、上記従来の光ディスク装置では、例えば2つのレンズが設けられている光ヘッド(2レンズ構成の光ヘッド)のように、トラバース軸からタンジェンシャル方向(光ディスクの接線方向)にずれた位置に配置されたレンズを備えている光ヘッドが用いられている場合、アドレスから算出した検索トラック本数とトラックピッチとから得られる移動距離だけ粗検索(トラバース移動)を行うと、実際のレンズ位置は算出した本数とは異なる本数移動してしまう。なお、トラバース軸の正確な定義は後述のとおりであるが、具体的な表現を用いて簡単に説明すると、ここでいうトラバース軸とは、トラバースモータなどによって光ヘッドが移動する方向と平行であって、かつ、光ディスクの中心(光ディスクが装着されるディスクモータの中心に相当)を通る、仮想的な軸のことである。また、ここでいうレンズとは、光ディスクの所定の位置に光ビームを収束させる収束レンズのことである。光ヘッドに設けられたレンズがこのトラバース軸に沿って(トラバース軸上を)動く限りにおいては、レンズは光ディスクの半径に沿って動いていることになるので、現在アドレスと目標アドレスが判れば、トラックピッチは一定であるとして、目標アドレスまでの半径距離、トラック本数を算定することができる。しかし、レンズの軌道がこのトラバース軸からずれている場合、上記算定は成立せず、実際のトラック本数に対して誤差が生じる。この誤差はトラックピッチばらつき吸収のための補正を行う程度では吸収できず、その結果、再検索が発生し、目標アドレスへの密検索に時間がかかり、検索時間が増大してしまうという問題を有していた。なお、密検索とは、トラッキング制御の動作を行うことによって、光ビーム収束点を目標位置に移動させることをいう。
本発明は、上記従来の問題点を鑑みてなされたものであり、トラバース軸からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されたレンズを含む光ヘッドが用いられている場合であっても、粗検索時に発生する検索トラック本数の誤差を低減することによって、検索時間を増大させることなく高精度の検索を可能とする光ディスク装置および検索処理方法を提供することを目的とするものである。
本発明の光ディスク装置は、光ビームを光ディスクに照射することによって、前記光ディスクに対して情報の記録および再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置であって、トラバース軸からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されたレンズを含み、前記レンズによって前記光ビームを前記光ディスクに収束させる光ヘッドと、前記光ディスクのトラックを横切る方向に前記光ヘッドを移動させる第2の移動手段と、前記光ディスクの第1のアドレスから第2のアドレスに到達するまでに横断されるトラックの本数を検索本数として算出するトラック本数算出手段と、前記光ビームの収束点を、前記光ディスクの前記第1のアドレスから前記第2のアドレスに移動させる検索制御手段と、前記レンズの前記トラバース軸からのずれ量に応じて前記検索本数を補正する検索本数補正手段と、を備えている。
なお、本明細書において、「トラバース軸」とは、第2の移動手段による光ヘッドの移動方向と平行であり、かつ、光ディスク装置に装着された光ディスクの中心を通る、仮想的な軸のことである。また、レンズがトラバース軸からタンジェンシャル方向にずれているとは、すなわちレンズの中心がトラバース軸上に位置していないということである。
本発明の検索処理方法は、トラバース軸からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されたレンズを含み、前記レンズによって光ビームを光ディスクに収束させる光ヘッドを備えた光ディスク装置における検索処理方法であって、前記光ディスクの第1のアドレスから第2のアドレスに到達するまでに横断されるトラックの本数を検索本数として算出するトラック本数算出ステップと、前記レンズの前記トラバース軸からのずれ量に応じて前記検索本数を補正して、補正検索本数を得る検索本数補正ステップと、前記補正検索本数を用いて、前記光ビームの収束点を、前記光ディスクの前記第1のアドレスから前記第2のアドレスに移動させる検索制御ステップと、を含む。
本発明の光ディスク装置は、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じてアドレスから算出した検索本数を補正できるので、粗検索時に発生する誤差本数を低減させることができる。これにより、検索時間を増大させることなく、高精度の検索性能を備えた光ディスク装置を提供することができる。また、同様の理由から、本発明の検索処理方法によれば、検索時間を増大させることなく高精度の検索が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態の光ディスク装置は、光ディスク101を所定の回転数で回転させるためのディスクモータ102、光ディスク101からの情報を再生あるいは光ディスク101に情報を記録するための光ヘッド103および光ヘッド103全体を光ディスク101のトラック方向に対して垂直な方向に移動させるためのトラバースモータ(第2の移動手段)104を備える。なお、トラバースモータ104としては、一般的にステッピングモータが用いられる。光ヘッド103は、半導体レーザなどの光源、カップリングレンズ、球面収差補正レンズ、偏光ビームスプリッタ、偏光板、収束レンズ、集光レンズ、分割ミラー、フォトディテクタなどで構成されているが、ここでは各構成要素の具体的な説明および図面を省略する。なお、以下、単に「レンズ」という場合は、光ディスクに光ビームを収束させる機能を備えたレンズ、すなわち収束レンズのことを指す。
光ヘッド103の光源により発生された光ビームは、カップリングレンズによって平行光にされた後、球面収差補正レンズによって光ディスク101の基材厚の違いにより発生する球面収差が補正され、偏光ビームスプリッタによって反射され、偏光板を通過し、収束レンズによって収束されて、光ディスク101の厚さ方向にフォーカス点をもつように光ビームスポット(光ビームの収束点)が形成される。この光ビームスポットは、ディスクモータ102によって回転している光ディスク101に照射される。なお、図1中、126は、光ディスク101に収束される光ビームを示している。
光ディスク101からの反射光は、収束レンズ、偏光板、偏光ビームスプリッタ、集光レンズを通過し、分割ミラーで2方向の光ビームに分割される。2方向に分割された光ビームのうち一方は、光ヘッド103内に設けられた4分割構造のフォトディテクタを介しフォーカス制御装置(図省略)に入力され、4分割されたフォトディテクタの各領域からの出力信号のうち、対角に位置する2つの領域からの出力信号がそれぞれ加算される。加算後の2信号を減算することにより光ビームの収束点と光ディスク101との位置ずれ信号(フォーカスエラー(FE)信号)を検出し、このFE信号に基づいて、光ディスク101上に収束点が位置するようにフォーカス制御を行う。このFE信号の検出は、「非点収差法」と呼ばれている。フォーカス制御装置の構成および動作は、本実施の形態の説明と直接関係ないので説明を省略する。
一方、分割ミラーにより分割されたもう一方の光ビームは、光ヘッド103内に設けられた別の4分割構造のフォトディテクタを介し、トラッキング制御装置に入力される。トラッキング制御装置は、トラッキングエラー信号生成部(トラックずれ検出手段)105と、トラッキングエラー信号生成部105から出力された信号に応じてトラッキング制御を行うトラッキング制御部(トラッキング制御手段)とによって構成されている。トラッキング制御部は、DSP(Digital Signal Processor)120、トラッキング駆動回路111およびトラッキングアクチュエータ(図省略)とによって構成されている。トラッキングアクチュエータは、光ヘッド103に設けられており、光ビームの収束点が光ディスクのトラックを横切る方向に移動するように収束レンズを移動させることができる。本実施の形態では、トラッキングアクチュエータが第1の移動手段に相当する。
トラッキングエラー信号生成部105では、4分割されたフォトディテクタの各領域からの出力信号について、トラックに対して外周側に位置する出力信号と内周側に位置する出力信号がそれぞれ加算される。加算後の2信号を減算することにより、光ビームの収束点がトラック上を走査するように制御するためのトラックずれ信号(トラッキングエラー(TE)信号)が得られる。このTE信号は、DSP120に入力される。このTE信号の検出は、「プッシュプル法」と呼ばれている。
まず、トラッキング制御を行う必要があるとき、すなわち光ディスク装置が記録または再生モードにあるときについて説明する。DSP120に入力されたTE信号は、AD変換器106によってアナログ信号からデジタル信号に変換され、加算器、乗算器および遅延器によって構成されたデジタルフィルタである補償フィルタ107に入力される。補償フィルタ107はトラッキング制御系の位相を補償するものである。補償フィルタ107において位相を補償されたTE信号は、トラッキング制御系のループゲインを切り換えるゲイン切換回路108を介してスイッチ109に入力される。スイッチ109は、トラッキング制御系のループの開閉動作と、トラッキング制御時と検索時とでトラッキングアクチュエータの駆動信号を切り換える動作を行う。トラッキング制御時においては、実線で示された位置に設定されているので、スイッチ109を通過したTE信号は、DA変換器110によってデジタル信号からアナログ信号に変換され、トラッキング駆動回路111に入力される。
トラッキング駆動回路111は、DSP120からの出力信号を適当に電流増幅、レベル変換して、トラッキングアクチュエータを駆動する。トラッキングアクチュエータは、光ディスク101上の光ビームの収束点が所定のトラック上を走査するように駆動される。このようにして、トラッキング制御が実現される。
ゲイン切換回路108を通過したTE信号は、周波数帯域を制限し、ノイズを除去する低域通過フィルタ113にも入力される。TE信号は、低域通過フィルタ113を通過後、移送制御系の位相を補償する補償フィルタ114に入力される。低域通過フィルタ113と補償フィルタ114は、補償フィルタ107と同様に加算器、乗算器および遅延器によって構成されたデジタルフィルタである。補償フィルタ114の出力は、移送制御系のゲインを切り換えるゲイン切換回路115を通過し、トラッキング制御時と検索時とでトラバースモータ104の駆動信号を切り換えるスイッチ116に入力される。トラッキング制御時においては、実線で示された位置に設定されているので、スイッチ116を通過した信号は、DA変換器117によってデジタル信号からアナログ信号に変換され、トラバース駆動回路118に入力される。
トラバース駆動回路118は、DSP120からの出力信号を適当に電流増幅、レベル変換して、トラバースモータ104を駆動する。トラバースモータ104は、光ディスク101上の光ビームの収束点がトラック上を走査したとき、光ビームの収束点と収束レンズの中心とが一致するように、すなわち光ディスク101に収束照射された光ビームの光軸と収束レンズの光軸とが一致するように駆動される。このようにして、移送制御が実現される。
次に、本実施の形態の光ディスク装置における検索処理について説明する。
まず、トラバース軸について説明する。トラバース軸とは上記に定義した仮想的な軸のことであるが、ここでは図3を参照しながらより具体的に説明する。図3には、光ディスクが装着されるターンテーブル301(ディスクモータ102(図1参照)によって回転されるターンテーブル)と、装着された光ディスクに光ビームを照射するための光ヘッド302と、光ヘッド302を光ディスクのトラックを横切る方向に移動させるトラバースモータ(第2の移動手段)307との位置関係が示されている。光ヘッド302はトラバース主軸306およびトラバース副軸305により保持され、トラバースモータ307によりトラックに対して垂直方向(ここでは光ディスクの半径方向)に移動できるようになっている。図3に示すように、トラバース軸300とは、トラバースモータ307によって光ヘッド302が移動する方向と平行であって、かつ、光ディスク装置に装着された光ディスクの中心(ここでは、光ディスクが装着されるディスクモータ102(図1参照)の回転中心(ターンテーブル301の回転中心))を通る、仮想的な軸のことをいう。図3に示された光ヘッド302は、トラバース軸300からずれていない位置に配置されているDVD(Digital Versatile Disk)/CD(Compact Disk)レンズ303と、トラバース軸300からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されているBD(Blu-ray Disk)レンズ304とを備えた2レンズ構成の光ヘッドである。ここで、ずれ量とは、具体的にはレンズ中心間距離で例えば2.5mm〜5mmの範囲である。このずれ量の下限値は実用上実現可能な最小サイズの対物レンズ口径によって、上限値は実用上問題のないアクチュエータの最大サイズによって、それぞれ決定される。
まず、本実施の形態の光ディスク装置について、トラバース軸からずれていないレンズ、すなわちトラバース軸上に配置されているレンズ(図3に示す例ではDVD/CDレンズ303)を用いた場合の一般的な検索処理について、図1のブロック図に加え、図2のフローチャートおよび図3を参照しながら説明する。本実施の形態では、装置に装着された光ディスクがDVD−ROM(DVD-Read Only Memory)ディスク(トラックピッチ0.74μm)であり、ユーザ領域最内周から最外周にシークする(検索する)場合について具体的に説明する。
光ヘッド103からの出力信号はアドレス読み取り信号生成部121に入力され、アドレス読み取り回路122において光ディスク101上のアドレス(現在アドレス(第1のアドレス))が読み取られる。ステップS201において、CPU125はアドレス読み取り回路122から現在アドレスを取得する。
次に、ステップS202において、トラック本数算出部(トラック本数算出手段)123は、光ディスク101の線速度およびトラックピッチから現在アドレスおよび目標アドレス(第2のアドレス)を所定半径位置からのトラック数に変換する。一般的には、所定半径位置として半径r=0mmが用いられる。半径r=0mmを基準とする場合、本実施の形態では、ユーザ領域最内周(r=24mm)のアドレスは、24[mm]/0.74[μm]=32432本、最外周(r=58mm)のアドレスは、58[mm]/0.74[μm]=78378本というそれぞれ基準からのトラック数に換算される。
次に、ステップS203において、ステップS202で得られた現在トラック数と目標トラック数とより、現在アドレスから目標アドレスに到達するまでに横断されるトラックの本数が検索本数として算出される。ここでは、78378[本]−32432[本]=45946本が検索本数となる。
さらに、ステップS204においてシークする必要があるかを判断し、必要がある場合は、ステップS205において、CPU125がDSP120にステップS203で算出した検索本数および検索方向をシークコマンドのパラメータとして発行する。ここでは、外周方向に45946本というシークコマンドが発行されることになる。ステップS204においてシークする必要がないと判断した場合(具体的には現在トラックが目標トラックの手前1〜2本程度の場合)は、検索処理は終了となる。
なお、ここでは、レンズがトラバース軸からずれていない場合の一般的な検索処理を説明しているので、トラック本数算出部123で算出された検索本数がそのまま(図1に示されている検索本数補正部(検索本数補正手段)124を経由することなく)DSP120に発行される。
CPU125からシークコマンドを受けたDSP120は、スイッチ109、116を点線で示された位置に設定し、検索時トラッキング駆動信号生成部112において生成された信号を用いてトラッキングアクチュエータを駆動し、検索時トラバース駆動信号生成部119において生成された信号を用いてトラバースモータ104を駆動する。検索時トラッキング駆動信号生成部112は、検索時のトラッキングアクチュエータ駆動信号を生成する。隣接したトラックへの移動であるトラックジャンピング時は加減速パルスを、トラバースシーク時はシーク中のレンズ揺れを低減させる信号を用いてトラッキングアクチュエータを駆動するのが一般的である。検索時のトラッキングアクチュエータ駆動信号の具体的な生成方法に関しては、本実施の形態の説明と直接関係ないので説明を省略する。
検索時トラバース駆動信号生成部119は、検索本数、検索方向および光ディスク101のトラックピッチを用いてトラバースモータ104の駆動信号プロフィールを生成する。ここでは、外周方向に45946[本]×0.74[μm]=34mm移動するための駆動信号プロフィールが生成される。具体的な駆動信号プロフィールの生成方法に関しては、本実施の形態の説明と直接関係ないので説明を省略する。
ステップS205におけるシークコマンド終了後、再びステップS201に戻り、ステップS204においてシークする必要がないと判断されるまで、以上の処理を繰り返す。このようにして、目標アドレスへの検索が行われる。
次に、本実施の形態の光ディスク装置において、トラバース軸からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されているレンズ(図3に示す例ではBDレンズ304)を用いる場合の検索処理について、図1のブロック図に加え、図3に示したレンズ304とトラバース軸300との位置関係を示す関係図および図4のフローチャートを参照しながら、詳細に説明する。
光ヘッド302はトラバース主軸306およびトラバース副軸305により保持され、トラバースモータ307によりトラックと垂直方向に移動できるようになっている。ここで、DVD/CDレンズ303はターンテーブル301の中心を通るトラバース主軸306、トラバース副軸305と平行であるトラバース軸300上に配置されているのに対し、BDレンズ304はこのトラバース軸300からタンジェンシャル方向にずれた位置に配置されている。ここでは、BDレンズ304のトラバース軸300からのずれ量を3mmとし、装置に装着された光ディスク101がBD−ROMディスク(トラックピッチ0.32μm)でユーザ領域最内周から最外周にシークする場合について具体的に説明する。
光ヘッド103、302からの出力信号はアドレス読み取り信号生成部121に入力され、アドレス読み取り回路122において光ディスク101上のアドレス(現在アドレス(第1のアドレス))が読み取られる。ステップS401において、CPU125はアドレス読み取り回路122から現在アドレスを取得する。
次に、ステップS402において、トラック本数算出部123は、光ディスク101の線速度およびトラックピッチから現在アドレスおよび目標アドレス(第2のアドレス)を所定半径位置からのトラック数に変換する。このとき、BDレンズ304がトラバース軸300上を動くと仮定してトラック数への変換が行われる。一般的には、所定半径位置として半径r=0mmが用いられる。半径r=0mmを基準とする場合、本実施の形態では、ユーザ領域最内周(r=24mm)のアドレスは、24[mm]/0.32[μm]=75000本、最外周(r=58mm)のアドレスは、58[mm]/0.32[μm]=181250本というそれぞれ基準からのトラック数に換算される。
次に、ステップS403において、ステップS402で得られた現在トラック数と目標トラック数とより、現在アドレスから目標アドレスに到達するまでに横断されるトラックの本数が検索本数として算出される。本実施の形態の場合、181250[本]−75000[本]=106250本が検索本数となる。
さらに、ステップS404においてシークする必要があるかを判断し、必要がある場合は、ステップS405において、検索本数がトラバースシークが必要な本数かどうかを判断する。検索本数がトラバースシーク不要と判断される所定本数以下の場合、シークコマンドは、TE信号あるいはTE信号を2値化した信号を用いて移動本数をカウントしながら実行される。この場合、ステップS403において算出した検索本数をさらに補正する必要は無い。ここで、所定本数とは、具体的にはトラックピッチ0.32μmのBD−ROM(BD-Read Only Memory)ディスクの場合、例えば1000本であり、距離に換算すると320μmである。移動本数をカウントしながらのシークは高精度ではあるが、一般的にトラバースシークと比べて移動時間がかかるため、精度とアクセス時間との兼ね合いからこのような本数に決定されている。シークコマンドは、ステップS409において実行される。シークコマンドの基本動作に関しては、既に説明しているためここでは説明を省略する。なお、ステップS404においてさらにシークする必要がないと判断された場合(具体的には現在トラックが目標トラックの手前1〜2本程度の誤差でアクセスできた場合)は、検索処理は終了となる。
ステップS405において、検索本数がトラバースシーク必要と判断される本数である、すなわち検索本数が所定本数を超えると判断された場合は、ステップS406およびステップS407において、レンズのトラバース軸からのずれ量(本実施の形態においては3mm)に応じて検索本数を補正する。本実施の形態では、例えば、検索本数補正部124は、アドレスから算出された検索本数を、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じて多くなるように補正する。以下に、検索本数の補正について、その具体例を説明する。
本実施の形態において検索本数を補正する際、まず現在トラック数および目標トラック数をレンズのトラバース軸からのずれ量に応じて補正する。具体的には、BDレンズ304はトラバース軸上から3mmずれているため、現在トラック数75000本は、
に補正される。
また、目標トラック数181250本は、
に補正される。
次に、ステップS408において、補正された現在トラック数と目標トラック数とにより、補正検索本数を算出する。ここでは、181007[本]−74411[本]=106596本となる。
次に、ステップS409において、CPU125がDSP120にステップS408で算出した補正検索本数および検索方向をシークコマンドのパラメータとして発行する。ここでは、外周方向に106596本というシークコマンドが発行されることになる。
CPU125からシークコマンドを受けたDSP120は、検索時トラバース駆動信号生成部119において検索本数、検索方向および光ディスク101のトラックピッチからトラバースモータ104の駆動信号プロフィールを生成する。ここでは、トラバースモータ104を外周方向に106596[本]×0.32[μm]≒34.11mm移動するための駆動信号プロフィールが生成される。このように光ディスク101の半径上の距離で34mm移動させることに対して、光ヘッド103(302)を34.11mm移動させたことにより、BDレンズ304としては、光ディスク101上を実質半径方向に34mm移動したことになる。
ステップS409におけるシークコマンド終了後、再びステップS401に戻り、ステップS404においてシークする必要がないと判断するまで、以上の処理を繰り返す。このようにして、目標アドレスへの検索が行われる。
以上説明したように、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じてアドレスから算出した検索本数を補正することにより、粗検索時に発生する誤差本数を低減させることができる。なお、ここでは、現在アドレスがユーザ領域最内周であり、検索の目標アドレスが最外周である場合を例に挙げて具体的な補正方法を説明したが、現在アドレスおよび目標アドレスはこれらに限定されず、現在アドレスおよび目標アドレスがこれら以外の場合であっても同様の方法で補正できる。例えば、レンズのトラバース軸からのずれ量をd
1とし、基準となる所定半径位置から現在アドレスまでのトラック数をM
1、目標アドレスまでのトラック数をM
2とし、トラックピッチをTPと表記する場合、補正検索本数は以下の式を用いて算出できる。
なお、本実施の形態においては、DVD/CDレンズがトラバース軸上、BDレンズがトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドにおいて説明したが、この配置に関しては何ら限定を受けない。ただし、DVD/CDレンズとBDレンズとを1つの光ヘッド内に配置する場合、DVD/CDに対する情報の記録再生についての制御が、レンズがトラバース軸上に配置された系について既に確立していることもある。このため、既に確立した制御方法を維持することが望ましい場合は、レンズの配置を図3に示したような位置関係とするとよい。また、例えば、1レンズ構成でレンズがトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドや、2レンズ構成で2レンズともトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドにおいても同様の効果を得ることが可能である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における光ディスク装置および検索処理方法について説明する。本実施の形態の光ディスク装置は、図1に示す実施の形態1の構成に対し、CPU内にレンズずれ量記憶部(レンズずれ量記憶手段)をさらに設け、検索本数補正部の処理を変更することによって実現できる。ここで、実施の形態1に対応する部分(同様の機能を有する構成要素)には、同一の参照符号を付してここでは説明を省略する。
以下、本実施の形態における光ディスク装置および検索処理について、図3の関係図および図4のフローチャートに加え、図5のブロック図を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態における検索処理は、補正検索本数を算出する具体的方法以外は実施の形態1の場合と同様であるので、図4に示したフローチャートを援用した説明が可能である。実施の形態1では、補正に用いられるレンズのトラバース軸からのずれ量に設計値を使用しているが、本実施の形態においては、光ヘッド103、302の組み立てばらつきにより発生する装置ごとのずれ量のばらつきを組み立て後に測定し、レンズずれ量記憶部501に記憶させておき、装置ごとのずれ量実測値d2[mm]を使用して補正するものである。具体的に、装置に装着された光ディスク101がBD−ROMディスク(トラックピッチ0.32μm)でユーザ領域最内周から最外周にシークする場合について、実施の形態1と異なる部分のみを説明する。
ステップS401〜S405においてトラバースシークが必要となる場合、ステップS406およびステップS407において、検索本数補正部502は、レンズずれ量記憶部501に格納されているずれ量d
2[mm]を使用して、現在トラック数および目標トラック数を補正する。具体的には、現在トラック数75000本は、
に補正される。
また、目標トラック数181250本は、
に補正される。
次に、ステップS408において補正された現在トラック数と目標トラック数とより、補正検索本数が算出される。本実施の形態では、N2[本]−N1[本]=N3[本]となる。
次に、ステップS409において、CPU503は、ステップS408で算出した補正検索本数および検索方向をシークコマンドのパラメータとしてDSP120に発行する。ここでは、外周方向にN3本というシークコマンドが発行されることになる。以降の処理については、実施の形態1と同様のため説明を省略する。
以上説明したように、本実施の形態の光ディスク装置および検索処理方法によれば、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じてアドレスから算出した検索本数を補正することにより、粗検索時に発生する誤差本数を低減させることができる。さらに、本実施の形態の光ディスク装置および検索処理方法では、光ヘッドの組み立てばらつきにより発生する装置ごとのずれ量のばらつきを考慮して組み立て後に測定し記憶させておき、ずれ量の設計値ではなく、装置ごとのずれ量実測値を使用して検索本数を補正するので、より高精度の粗検索性能を実現することができる。
なお、本実施の形態においては、DVD/CDレンズがトラバース軸上、BDレンズがトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドを例に挙げて説明したが、この配置に関しては何ら限定を受けない。例えば、1レンズ構成でレンズがトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドや、2レンズ構成で2レンズともトラバース軸からずれた位置に配置されている光ヘッドにおいても同様の効果を得ることが可能である。
本発明にかかる光ディスク装置および検索処理方法は、レンズのトラバース軸からのずれ量に応じてアドレスから算出した検索本数を補正するので、粗検索時に発生する誤差本数が低減し、検索時間を増大させることなく高精度の検索が可能となる。このため、青色レーザを搭載したBlu−rayディスクレコーダなどとして有用である。またレコーダに限らずプレーヤーやPCドライブなどの用途にも応用できる。
本発明の実施の形態1である光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
レンズがトラバース軸からずれていない光ヘッドを用いた場合の一般的な検索処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態1におけるレンズとトラバース軸との位置関係を示す図である。
本発明の実施の形態1の光ディスク装置における検索本数補正処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態2である光ディスク装置の構成を示すブロック図である。