JPWO2007094495A1 - 新規な抗がんカテプシン製剤およびそれを用いたがん併用療法抗がん剤 - Google Patents

新規な抗がんカテプシン製剤およびそれを用いたがん併用療法抗がん剤 Download PDF

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Abstract

この発明の抗がんカテプシン製剤は、カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントを有効成分として含有する。この発明の抗がんカテプシン製剤は、正常細胞に対しては悪影響を及ぼすことなく、がん細胞のみの成長を阻止ならびに転移を防止すると共に、がん細胞のアポトーシスを誘導することができる。また、他の抗がん剤と併用することにより、従来の抗がん剤が感受性を示さなかったがんに対しても、その感受性を増強することができ、その感受性増強作用によりがんに対する治療効果を著しく高めることができる。さらに、抗がん剤の感受性が増強されることにより、その抗がん剤自体の用量を減少することができることになり、その抗がん剤による副作用などを著しく低減することができる。【選択図】なし

Description

この発明は、新規な抗がんカテプシン製剤およびそれを用いたがん併用療法に関し、更に詳細には、カテプシンEおよび/またはその活性フラグメントを有効成分として含む抗がんカテプシン製剤およびそれと抗がん剤とをさらに有効成分として含有する新規抗がんカテプシン製剤、それと抗がん剤とを併用することによって抗がん剤の感受性を増強することができる新規な抗がん剤、つまり抗がんカテプシン製剤、抗がん剤の感受性増強方法および該抗がん剤を用いたがんの治療方法に関するものである。
これまで、がんを治療するために数多くの抗がん剤が開発されてきた。しかしながら、これらの薬剤は、がん細胞ばかりではなく、正常細胞に対しても攻撃をして損傷・殺傷してしまうという大きな欠点を有している。これまで、正常細胞に対しては作用せず、がん細胞だけを攻撃する抗がん作用物質が研究されているが、これらの物質はいずれも研究室レベルで作用が見られたとしても、実際には効果がなく、実用化されているものはない。
また、これらの薬剤の多くは、単独では十分な効果を得られない場合が多く、いくつかの抗がん剤を併用する併用療法が試みられてきた。しかしながら、十分な抗がん作用効果が得られていない場合も多いのが現状である。
作用機序の異なる複数の抗がん剤を組み合わせて併用する併用療法の他に、それ自体は抗がん作用を有しない薬剤との併用療法も提案されているが、かかる併用療法も十分な抗がん作用効果を奏していない。
さらに、抗がん剤と種々の化合物との併用療法も提案されている(例えば、特許文献1、2,3参照)。しかしながら、かかる併用療法も十分な抗がん効果を得られていない場合が多いと言わざるをえない。
いずれの併用療法においても、抗がん剤の感受性を増強できれば、がん治療の効果を改善することができることから、種々の併用療法が要望されている。
なお、本明細書において、「がん」または「腫瘍」などの関連する用語は、特に厳密に区別して使用しているのではなく、互換可能な意味で使用されていて、例えば、「がん」という用語を用いたときには、特に定めない限りもしくは文脈から明白である場合を除いて、「腫瘍」などの関連する用語をも意味して使用されているものと理解すべきである。したがって、反対に、「腫瘍」という用語を使用している場合には、特に定めない限りもしくは文脈から明白である場合を除いて、「がん」などの関連する用語をも意味して使用されているものと理解すべきである。
カテプシンは、アスパラギン酸プロテアーゼであって、高等動物から微生物に至るまで幅広く分布し、細胞内外のタンパク質代謝やプロセッシングなどの重要な生体機能を担っている。かかる高等動物のアスパラギン酸プロテアーゼの1つとして、細胞内エンドソーム/リソソーム系にカテプシンDやカテプシンEが存在している。アスパラギン酸プロテアーゼは、細胞内外のタンパク質代謝やプロセッシングに関与することから、その活性レベルの変化は血圧異常や胃かいよう、発がんなどのさまざまな病態につながると考えられてきた。
これらカテプシンのうち、カテプシンEは、胃、腸管などの消化管上皮、リンパ系組織、泌尿器系組織、血液系細胞および皮膚に限定的に分布している細胞内アスパラギン酸プロテアーゼである。特に胃はすべての組織の中でカテプシンE含量が最も高く、カテプシンD含量よりも多くなっている。カテプシンEの細胞内局在もカテプシンDのそれとは明らかに異なり、組織・細胞特異性がある。赤血球や破骨細胞、近位尿細胞などでは、細胞膜に、ミクログリアやマクロファージでは、エンドソーム/リソソームシステムに、その他の多くの末梢組織では、小胞体やゴルジ体に存在する。これまでの研究から、カテプシンEは、赤血球を除くほとんどの細胞で、エンドソーム/リソソームシステムに局在するときにのみ成熟型構造としてプロテアーゼ活性を発現することが明らかにされている。また、ミクログリアやマクロファージなどの免疫系細胞では、インターフェロンγやリポ多糖など、何らかの刺激が細胞に加わって活性化されたとき、カテプシンEはmRNAレベルでもタンパク質レベルでも著しい増大を示し、その多くを活性型酵素として細胞外へ分泌することから、これらの細胞機能との密接な関係や細胞外での機能に注目が集まっている。
また、カテプシンEは、若齢ラットの脳神経細胞にはほとんど検出されないが、老齢ラットではリポフスチンやAPP(アミロイド前駆体タンパク質)のC末端フラグメントを蓄積した神経細胞中に明らかにその存在を確認することができる。また、前脳虚血やカイニン酸を投与したラットの脳では、これらの刺激に対して脆弱な部位に存在する変性を受けた神経細胞とこれらの刺激に呼応して、集積した活性化ミクログリアにカテプシンEの著しい発現増大が認められる。これらの結果は、カテプシンEがニューロン死の実行過程において重要な役割を果たしていることを示唆している。
さらに、カテプシンEは、免疫系細胞中に優先的に発現し、また活性化食細胞によって分泌されるプロテアーゼであることが知られているが、このタンパク質の生体内における生理学的機能については未だ不明な点が多い。本発明者の研究により、カテプシンEは、がん細胞表面から腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を可溶性分子として切断遊離し、それによって、種々のがん細胞を特異的にアポトーシスに誘導し、がんの成長阻止ならびに転移抑制を誘導すること、かかる現象は正常細胞には一切起こさないという、他のカテプシン群には全く見られない新規の抗がん作用を有していることが判明した。
アポトーシスは、免疫応答において形質転換細胞やウイルス感染細胞の生体外排除に重要な役割を果たしており、腫瘍の退縮の主要な決定因子である。腫瘍細胞のアポトーシスの機構については余り解明されていないけれども、腫瘍細胞の増殖抑制ならびにアポトーシス誘導は、がん患者の良好な予後を予測する上できわめて重要である。これまで蓄積された証拠によると、腫瘍細胞のアポトーシスは、例えば、TNF-a、FasL(CD95LまたはApo1Lとも呼ばれる)、TRAIL(またはApo2Lとも呼ばれる)などのTNFファミリー分子によって制御されていることが示唆されている(参考文献1)。これらのサイトカインは、すべてII型膜貫通タンパク質であり、細胞表面上の固有のレセプターと結合することによって、標的細胞にアポトーシスのシグナル伝達を誘導することができる。これらのファミリーメンバーは、アポトーシスを誘導するためにホモ三量体を形成し、これが標的細胞表面に形成された固有のレセプターの三量体に結合することによってアポトーシスが誘導される。しかしながら、これらのファミリーメンバーのうちで、TRAILだけが、正常細胞には影響を及ぼすことなく、種々のがん細胞のみをアポトーシスに誘導することから、このTRAILの抗がん剤としての有用性に強い関心が持たれている(参考文献2,3)。また、最近の研究で、腫瘍部位に浸潤する様々なエフェクター細胞、例えば、顆粒球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、Bリンパ球、Tリンパ球などは、腫瘍細胞に対する抗腫瘍免疫応答として必須の役割を担っていることが示されている。これらの細胞のうち、マクロファージは、いくつかの機構によって、例えば、食細胞による腫瘍細胞の殺滅、抗原のプロセシングやT4リンパ球への提示、TNF-a、IL-1、IL-6、IL-8等の非特異的宿主防御において重要な役割をもつ種々のサイトカインの分泌増加などによって、がんに対する宿主防御機構において最も重要な役割を果たしていると考えられている(参考文献4,5,6)。したがって、腫瘍に対する抗がん効果は、TRAILを介するがん細胞特異的アポトーシス誘導機構と腫瘍浸潤マクロファージによるがん細胞傷害機構の少なくとも2つの機構によって誘導されるものと考えられる。
これまでの多くの研究から、がんに関与するプロテアーゼの多く(例えば、リソソーム性カテプシンB、LおよびD、MMP-1やMMP-9などのマトリックスメタロプロテアーゼなど)は、腫瘍の増殖成長、侵入、あるいは転移に対して促進効果を有していること(参考文献7,8)、これらのプロテアーゼ活性を阻害すると腫瘍の増殖が抑制されること(参考文献7)、等々が明らかにされ、がんにおけるプロテアーゼは、生体にとっては悪玉として働いていると考えられてきた。したがって、がんの増殖成長や転移を抑制する機能をもつ善玉プロテアーゼについてはほとんど知られていない。
カテプシンEは、前述したように、抗原提示細胞やリンパ球などの免疫系の細胞に限定的に発現し(参考文献9,10,11)、食細胞ではFN-gやLPSなどによる活性化刺激によって発現量が増大し、活性型分子として細胞外に多量に分泌される(参考文献12)。カテプシンEは、他のカテプシン酵素と違って、細胞特異的な局在様式やプロセシング機構を有するなど、ユニークな性質を有している(参考文献13)。しかしながら、これらの所見とこのタンパク質の生理学的機能との関連性はあまり理解されていない。最近、カテプシンEは、MHC クラス II 分子による外因性抗原提示機構において、外因性抗原のプロセシングにおいて重要な役割を果たしていることが示された(参考文献10,14,15,16)。さらに、カテプシンEノックアウト(CatE-/-)マウスは、無菌条件下で飼育しても何の変化を起こさないが、通常の条件下で飼育したときにアトピー性皮膚炎様皮膚症状を呈すること(参考文献17)、また細菌感染に対する感受性を増大すること(参考文献18)が明らかにされている。さらに最近では、本発明者らは、カテプシンE欠乏が主要なリソソーム膜糖タンパク質(例えばLAMP-1やLAMP-2など)のリソソーム内蓄積を誘導し、その結果、マクロファージ内のリソソーム性pHを上昇させ、細胞の構造ならびに機能に障害を引き起こすことを明らかにした(参考文献18)。これらの知見に基づいて、本発明者らは、カテプシンEが免疫応答に深く関与し、生体恒常性の維持に強く貢献していることを明らかにしている。最近、様々なガンにおける遺伝子またはタンパク質の発現プロファイリングの解析結果から、発ガン機構におけるカテプシンEの役割については文献上では不明であるが、本酵素のがんにおけるバイオマーカーとしての有用性が示唆されている(参考文献20,21,22)。
しかしながら、これらのカテプシンが、扁平上皮がんなどの腫瘍マーカーとして使用できることは報告されているが(特許文献4)。カテプシンEそれ自体が抗がん作用を有していることも、また抗がん剤の感受性を増強するという知見もこれまで一切報告はなく知られていなかった。
WO01/008698号公報 特表2003−530297号公報 特開2004−26811号公報 特開2005−117993号公報
したがって、本発明者らは、カテプシンEの特異的な作用を鋭意研究した結果、カテプシンE自体が抗がん効果を示すと共に、抗がん剤と併用することによって、抗がん剤の感受性を増強することができることを見出して、この発明を完成するに至った。
したがって、この発明は、その主な態様として、カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントを有効成分として含有する抗がんカテプシン製剤を提供することを目的としている。
また、この発明は、その別の態様として、上記有効成分に加えて、抗がん剤をさらに含有していることにより、該抗がん剤の作用効果を増強することができる抗がんカテプシン製剤を提供することを目的とする。
また、この発明は、カテプシンEならびに/もしくはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントと抗がん剤とを含有する抗がんカテプシンE製剤を使用して、該抗がん剤の感受性を増強する抗がん剤の感受性増強方法を提供することを目的とする。
さらに、この発明は、上記抗がんカテプシン製剤を使用してがんの治療を実施することからなるがん治療方法を提供することを目的とする。
その上、この発明は、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーメンバーにより形成されていることからなるTNFホモ三量体を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、この発明は、カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントを有効成分として含有する抗がんカテプシン製剤を提供する。
また、この発明は、上記有効成分に加えて、抗がん剤をさらに含有することにより、該抗がん剤の作用効果を増強することができる抗がんカテプシン製剤を提供する。さらに、この発明は、抗がん剤を含有する抗がんカテプシン製剤を使用して、抗がん剤の感受性を増強する抗がん剤の感受性増強方法を提供する。
さらに、この発明は、上記抗がんカテプシン製剤を使用してがんの治療を実施することからなるがん治療方法を提供する。
さらにまた、この発明は、TNF-α、FasL(CD95LまたはApo1L)、TRAIL(またはApo2L)などの腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーメンバーにより形成されているTNFホモ三量体を提供する。
なお、本明細書において、単に「抗がんカテプシン製剤」という用語を使用する場合は、通常、説明を簡単にするために、カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントを有効成分として含有する抗がんカテプシン製剤と、この有効成分の他に、抗がん剤を併用した抗がんカテプシン製剤の両者を含む意味で使用するものとする。他方、どちらか一方の用語を使用して説明をしている場合でも、文脈上矛盾がなければ、その用語はその一方についての説明に限定されるものではなく、他方にも同様に適用して説明していると理解すべきである。さらに、抗がん剤を併用した抗がんカテプシン製剤の場合には、該抗がん剤が同一製剤中に配合されている抗がんカテプシン製剤と、該抗がん剤が同一製剤中に配合されてなく、カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントを有効成分として含有する抗がんカテプシン製剤と別々に併用して使用される場合も包含している意味として使用されていると理解すべきである。
各種カテプシンのヒト前立腺がん ALVA-41 細胞の生存に対する効果を示す図。 腫瘍細胞におけるカテプシンE誘導アポトーシスの特徴を示す図。 ALVA-41細胞におけるカテプシンE誘導アポトーシスの媒介としての TRAILの同定についての説明図。 各種ヒト前立腺がん細胞株に対するカテプシンE誘導アポトーシスへの感受性についての説明図。 カテプシンE注射のヌードマウスにおけるALVA-41細胞によって形成された腫瘍成長に対する効果についての説明図。 内在カテプシンEレベルと、腫瘍中のマウスB16メラノーマ細胞の成長低下ならびに転移との直接的関連性についての説明図。 図6−1の続き マウスカテプシンEトランスジーンのプラスミド構築のための模式図。 マウスカテプシンEを過剰発現させたHEK293細胞の細胞抽出液のイムノブロット解析データを示す図。 カテプシンEを過剰発現させたトランスジェニックマウス(CatE+/+マウス)と対照としての野生型(Wt)マウスの各種臓器におけるカテプシンEmRNAの発現量を示す図。 カテプシンEならびにエトポシドのヒト白血病細胞の生存に及ぼす影響を調べた結果を示す説明図。 カテプシンEとエトポシドの同時投与の場合とエトポシド前処理の場合とのヒト白血病細胞の生存に及ぼす影響を調べた結果を示す説明図。 カテプシンEとエトポシドとの併用投与とエトポシド単独投与によるヒト白血病細胞U937細胞の生存に対する効果を示す説明図。
以下の明細書においても、特定のがんやがん細胞などの特定の対象について説明をするが、かかる説明は、この発明をかかる特定の対象に限定する意図でなされるものでは一切なく、この発明の内容を具体的に説明するために例示的に記載しているものと理解されるべきである。つまり、下記の説明では、例えば、前立腺がんや前立腺がん細胞について記載するが、前立腺がんや前立腺がん細胞以外についても同様に適用できるものと理解されるべきである。
まず、各種カテプシン酵素のヒト前立腺がんALVA-41細胞の細胞生存ならびにアポトーシスに対する効果について記載する。
ヒト前立腺がん細胞ALVA-41をカテプシンB、D、E、Lとそれぞれ20時間中性pHでインビトロ培養して、各プロテアーゼのがん細胞に対する細胞毒性について調べた。カテプシンBとDとは濃度依存的に生存細胞の数を増加したが(図1A)、このことは、これらのカテプシンが腫瘍細胞の増進、侵入ならびに転移を促進するという以前の結果と一致している(参考文献7)。カテプシンLはこれらの細胞に対して、低濃度(10μg/ml)では生存細胞数を増加するのに対して、高濃度(50-100μg/ml)では生存細胞数を減少させた。以前の知見で、プロカテプシンLの過剰発現と分泌はヒトメラノーマ細胞の腫瘍発生を増加することが報告されているが(参考文献24,25)、アンチセンスcDNAによる内在性カテプシンLの欠損はグリオーマ細胞、メラノーマ細胞、オステオザルコーマ細胞の悪性形質を抑制している(参考文献25,26)。このことはこのタンパク質が腫瘍成長と転移に関与していることを示唆している。これらに対して、カテプシンEは生存細胞数を用量依存的に減少させた。形態学的には、カテプシンBまたはDで処理した細胞は成長相にある細胞形態を示しているのに対し、カテプシンEで処理した細胞は、細胞膜の嚢胞化、細胞質の縮小、アポトーシス小体の形成など、アポトーシスの形態学的特徴を示した(図1B)。カテプシンL(100μg/ml)で処理した細胞は、細胞や核の膨化や崩壊など、ネクローシス様の形態学的変化が認められた。さらに、カテプシンEとカテプシンLによって誘導される細胞死パターンの違いを確認するために、アネキシンV染色(アポトーシスの初期過程を検出)とTUNELアッセイ(アポトーシスの後期過程を検出)によってかかるプロテアーゼで処理した細胞を分析した。その結果、カテプシンE(50μg/ml)で処理した細胞はアネキシンVとTUNEL試薬による染色に対して陽性であったのに対して、カテプシンL(100μg/ml)で処理した細胞は両者による染色には陰性であった(図1C)。これらの結果から、カテプシンEはALVA-41細胞に対してアポトーシスを誘導するのに対して、カテプシンLはネクローシスによる細胞死を誘導していることが判明した。カテプシンEによるがん細胞の細胞死がアポトーシスであるということは、カスパース3、6、7のインヒビターであるDEVD-fmlkや、カスパース1、3、4、7のインヒビターであるz-VAD-fmlkによって阻害されることからも確認された。
カテプシンEのがん細胞に対する細胞毒性は、アスパラギン酸プロテアーゼインヒビターであるペプスタチンAをALVA-41細胞の培地に添加することによって阻止された(図1C)。さらに、活性部位の2個のアスパラギン酸残基をアラニンで置換した不活性カテプシンE変異体(D98A/D283A)は、ヒト胚性腎(HEK)293T細胞の生存に対して効果を示さなかったのに対して、対応する野生型組換えタンパク質は、天然のカテプシンEと同様に、HEK293T細胞(図2B)やALVA-41細胞に対して濃度依存的にアポトーシスを誘導した。これらの結果は、カテプシンEによるアポトーシス誘導能がその触媒活性に完全に依存していることを示している。次に、カテプシンEによるアポト−シス誘導ががん細胞に対する直接的または間接的作用によるものかどうかを調べために、カテプシンEで処理したALVA-41細胞の培養上清を、新たに調製したALVA-41細胞の培地にペプスタチンAの存在もしくは非存在下で添加した。その結果、がん細胞は、ペプスタチンAの存在または非存在にかかわらず、添加したカテプシンE処理培養上清によって用量依存的にアポトーシスに誘導された(図2C)。このことは、カテプシンE誘導性アポトーシスがカテプシンEのプロテアーゼ作用によって腫瘍細胞表面から放出された何らかの分子によって誘導されていることを示している。このことをさらに検証するために、カテプシンE処理細胞培養上清をDEAEーSephacelクロマトグラフィーで分画した。その結果、カテプシンE活性の80%以上が0.3M NaClで溶出した分画中に検出された(参考文献27.28)が、ほとんどのアポトーシス誘導活性は、カテプシンE活性がほとんど検出できなかった0.1M NaClで溶出した分画に検出された。
次に、カテプシンE媒介腫瘍細胞のアポトーシスに関与する媒体としてのTRAILの同定について記載する。
前述したように、腫瘍細胞のアポトーシスについての機構はあまり理解されていないけれども、最近の研究で、腫瘍細胞のアポトーシスはTNFファミリーメンバー、例えばTNFーα、FasL、TRAILなどのリガンドタイプのサイトカイン分子によって制御されていることが示唆されている(参考文献1)。そこで、カテプシンE処理によりALVA-41細胞から遊離したTNFファミリーメンバーを、各リガンドに対する特異的な抗体を用いたELISAアッセイによって検定した。カテプシンE処理した細胞培養上清中には、TNF-αとFasLはほとんど検出されないのに対して、TRAILは明らかに遊離していることが判明した(図3C)。TRAILは、他のTNFファミリーメンバー同様に、その細胞外カルボキシル末端領域が三量化することによって、標的細胞表面上にあるレセプターに結合し、アポト−シスシグナルを伝えることができることが知られている(参考文献29―32)。そこで、抗TRAIL抗体を用いたイムノブロット解析によって、カテプシンE処理ALVA-41細胞培養上清中に含まれる可溶性TRAIL分子の分子型を解析した。その結果、63kDaと65kDaの2本の強い免疫反応性バンドと、48kDaに相当するマイナーなバンドがカテプシンE処理細胞の培養上清中に検出された(図3B)。カテプシンE処理前の細胞抽出液中には、分子量17、24、30ならびに48kDaの免疫反応性バンドが検出され、カテプシンE処理後の細胞抽出液中には、17kDaと24kDaの免疫反応性バンドが消失していた。TRAILのアミノ酸配列に基づいて計算されたTRAILの細胞外部分の分子量は21kDaであることから(参考文献33)、カテプシンE処理細胞の培地中に検出された 63 kDaと65kDaのタンパク質ならびに48kDaのタンパク質は、それぞれ可溶性TRAILの三量体ならびにニ量体に相当すると考えられる。また、ELISAによるデータと一致して、カテプシンEで処理したALVA-41細胞の培養上清中には、TNF-αもFasLの可溶性三量体は産生されていないことが確認された。
さらに、この可溶性TRAILが、カテプシンE処理ALVA-41細胞培養上清のもつアポトーシス誘導活性をどの程度担っているかを調べるために、DEAEーSephacelクロマトグラフィーによって得られた同培養上清の0.1MNaCl分画のアポトーシス誘導能が抗TRAIL抗体によってどの程度消失するかを調べた。その結果、この分画のアポトーシス誘導効果は抗TRAIL抗体処理によってほとんど失われることがわかった(図3C)。このことから、カテプシンEによって仲介される腫瘍細胞アポトーシス活性はその細胞表面から放出されたTRAIL三量体に依存していることが明らかとなった。
つぎに、種々のヒト前立腺がん細胞株のカテプシンE媒介TRAIL依存アポトーシスに対する感受性について説明する。
カテプシンEによるTRAIL依存性アポトーシスに対する感受性について、種々のヒト前立腺がん細胞株を用いて調べた結果、カテプシンEは正常なヒト前立腺上皮(PrE)細胞の生存ならびに形態に対してほとんど影響しなかったが、がん細胞に対しては、程度の差はあるものの、すべてに対してアポトーシスを誘導した(図4A)。カテプシンE誘導性アポトーシスに対する感受性は次のような順序で増加した:PPC-1<DU145<=ALVA-101<ALVA-41<PC-3。このうち、PC-3細胞の生存に対するカテプシンEの効果はPPC-1細胞の生存に対する効果の約20倍であった。
TRAILは、作用する種々の明確なレセプターによってアポトーシスを促進または阻害することが示されている(参考文献29)。ヒトでは、TRAILに対する少なくとも5種類のレセプターが同定されている。そのうち、TRAIL−R1(DR4)とTRAIL−R2(DR5)はアポトーシスシグナルを伝達できるデス(死)レセプターである(参考文献29)。残りの3種類のレセプターであるTRAIL−R3(DcR1)とTRAIL−R4(DcR2)ならびに可溶性レセプターであるオステオプロテグリン(OPG)は、過剰発現したときにTRAIL誘導アポトーシスを阻害するデコイ(decoy)レセプターとして同定されている(参考文献29)。TRAIL誘導アポトーシスに対する細胞の感受性がデスレセプターとデコイレセプターの相対的発現レベルに依存している可能性があることから、種々のヒト前立腺がん細胞株ならびにPrE細胞におけるTRAILとこれらのレセプターの細胞表面発現量を細胞表面ビオチン化法、ならびにそれぞれに対応する特異抗体を用いたイムノブロット解析によって解析した。全ての前立腺がん細胞株とPrE細胞は、TRAILばかりでなく、膜レセプター(2種類のデスレセプターDR4とDR5、ならびに2種類のデコイレセプターDcR1とDcR2)も同様な発現量を示した。したがって、TRAILならびに膜レセプターの発現は、カテプシンEによるTRAIL依存性アポトーシスに対するがん細胞間の感受性の差異には直接関係がないことが明らかとなった(図4B)。他方、デスドメインを持たず、破骨細胞形成阻害を示す可溶性デコイレセプターOPG(参考文献34、35)の量は、PrE細胞ならびにPPC-1細胞の培養上清中で、被験した他の細胞株のそれに比べて著しく増加した。がん細胞由来OPGがホルモン耐性前立腺がん細胞に対する重要な生存因子であり、内在性OPGレベルとTRAILによる前立腺がん細胞のアポトーシス誘導能と間に負の相関があることを考慮すると、PrE細胞ならびにPPC-1細胞では、OPG発現量の増加がこれらの細胞にカテプシンEによるTRAIL依存性アポトーシスに対して抵抗性を付与しているものと考えられる。カテプシンE処理によって放出される可溶性TRAIL三量体の量もまた、がん細胞株によって異なっており(図4C)、PrE<PC-3<PPC-1<ALVA-101<=DU145<ALVA-41細胞の順で増大する。種々の前立腺がん細胞株でのTRAILの発現量に有意な差異が認められないことから、可溶性TRAILの産生量の違いは、カテプシンEによるがん細胞表面でのTRAIL切断効率の相違によるものと考えることができる。したがって、OPGの発現量増大もしくは細胞表面でのカテプシンEによるTRAIL切断効率の低下、またはその両方で、前立腺がん細胞株におけるカテプシンE誘導性アポトーシスに対する感受性の低さを部分的に説明することできる。しかしながら、カテプシンE誘導性アポトーシスに対するPC-3細胞のより高い感受性は、これら2つの機構のいずれでも説明することはできず、このプロセスに対する感受性の別の決定因子の存在、例えばFLIP、IAP類、Bcl-xL、Bcl-2などの抗アポトーシスタンパク質の発現量の相違などといった機構の存在を示唆している。
次に、カテプシンE投与によるヒト前立腺がん細胞を持つヌードマウスにおける腫瘍成長および転移の抑制について説明する。
がん細胞の培養系で観察されたカテプシンEの抗がん活性が、ヒト前立腺がん細胞を皮下移植したヌードマウスを用いたインビボ研究によっても検証できるかどうかを調べた。ヌードマウスの皮下にALVA-41細胞を移植し、腫瘍の容積が約100mm3になったときに、形成した腫瘍の中心部に精製カテプシンE(200μg/kg)を毎日1回の割合で16日間注射した。対照として、カテプシンEの代わりに生理食塩水を注射した。生理食塩水を投与した腫瘍は、最初は比較的ゆっくりと成長した後、指数関数的に増大した(図5A)。一方、カテプシンEで処理した腫瘍の成長は、対照群に比べて著しく抑制された。カテプシンEの腫瘍退縮効果は、投与量に依存しており、1日当たりの用量が200μg/kgで著明であり、50μg/kgではその効果は減少し、30μg/kgもしくはそれ以下では腫瘍抑制効果はほとんど見られなかった。腫瘍容積がほぼ 400 mm3 に達した時点でカテプシンEを400μg/kgの濃度で1日1回投与した。10日間投与した後、腫瘍を摘出しその重量を測定したところ、カテプシンE投与群では、対照群に比べて、腫瘍重量は有意に低かった(図5B)。それぞれの群の腫瘍をTUNEL染色してアポト−シスを起こしたがん細胞の数を比べたところ、カテプシンE処理群では、多数のアポトーシス細胞が観察されるのに対し、対照群ではアポトーシス細胞はほとんど検出されなかった(図5C)。このことは、外部から投与したカテプシンEがインビボの個体レベルにおいても、がん細胞をアポトーシスに誘導できることを示している。カテプシンEによるがん細胞のTRAIL依存性アポトーシスは、投与回数を増やしたり、投与量を増やすことによって増強することができることから、カテプシンE投与方法を改良することで腫瘍の退縮により大きな効果を期待することができる。また、カテプシンE投与による正常組織や細胞に対する毒性効果は何ら認められなかった。
以下に内在性カテプシンE発現レベルと腫瘍成長抑制効果との関係について説明する。
リンパ球、ナチュラルキラー細胞、単球、樹状細胞などの腫瘍浸潤エフェクター細胞は、腫瘍進行または転移のTRAIL依存性抑制に重要な役割を果たしていることが知られている(参考文献36、39)。カテプシンEがリンパ球、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリアなどの免疫系細胞に優先的に発現することから(参考文献9.10、40)、これらの細胞中のカテプシンEは腫瘍細胞に対する生体防御機構に寄与していると考えられる。したがって、この発明において、異なるカテプシンE発現レベルを示す3タイプの同系マウス(CatE-/-マウス、カテプシンEを過剰発現しているトランスジェニックマウス(CatETg)ならびにそれらの野生型同腹子マウス(Wt)を用いて、カテプシンEの腫瘍成長、転移ならびに個体死へのカテプシンE発現量の影響を評価した。各遺伝子型のマウスに同系由来のマウスメラノーマB16細胞を皮下に注射し、得られた腫瘍の大きさを21日目まで観察した。各動物群における腫瘍の成長は8日目までは比較的緩やかであったが、その後徐々に増加した。接種後10日から15日間は、CatE-/-マウスにおける腫瘍成長は、CatETgマウスとWtマウスにおける腫瘍成長に比べて有意に高かったけれども、接種後19日を経過すると、CatE-/-マウスとWtマウスとの間の有意差は見られなくなった(図6A)。しかし、CatETgマウスにおける腫瘍成長は全実験期間にわたって、他の2つの同系マウス群よりも有意に強く抑制された。21日間の接種最終日でのCatETgマウスにおける腫瘍重量は、CatE-/-マウスとWtマウスに比べて、それぞれ3分の1と5分の1であった。また、B16メラノーマ細胞を接種したマウスの死亡率を56日間で比較すると、CatE-/-マウスの死亡率は最も高く、ついでWtマウス、CatETgはもっとも死亡率が低かった(CatE-/-マウスの生存率が20%であるのに対して、野生種の生存率は60%、またCatETgマウスの生存率は80%)(図6B)。これらの結果は、腫瘍増殖とカテプシンE発現量の間には逆の相関があることを示している。
CatETgマウスの死亡率低下が腫瘍細胞のアポトーシスの亢進と排除によるものであるかどうかを調べるために、各遺伝子型のマウスにおける腫瘍のアポトーシス細胞の発現度合いを比較した。接種後23日目に各動物群から採取した腫瘍をTUNELアッセイしたところ、CatETgマウスにおいてアポトーシス細胞が著しく増加していることが分かった。これに対して、CatE-/-マウスとWtマウスでは、同時点でのアポトーシス細胞はわずかであった(図6C)。ここで注目すべきことは、用いたメラノーマB16細胞はTRAIL 依存性アポトーシスに抵抗性であることである(参考文献39.42)。したがって、CatETgマウスで観察されたがん細胞のアポトーシスは、TRAILを介する機構とは別の機構によって誘導されていると考えられた。形態学的観察から、メラノーマB16細胞を接種したすべてのマウス群の腫瘍部位には、多数のリンパ球やマクロファージなどのエフェクター細胞が浸潤していた。しかしながら、F4/80抗原ならびにMHCクラスII 分子に対する抗体を用いた免疫染色の結果、マクロファージの数と活性化度合いは、CatETgマウスの腫瘍においてもっとも高く、ついでWtマウスで高く、CatE-/-マウスの腫瘍ではいずれもきわめて低いことが分かった(図6D)。これらのデータは、がん患者からの胸膜滲出液中のマクロファージ数と悪性度の間に逆比例の関連性があるとする以前の結果と一致している(参考文献43、44)。マクロファージやリンパ球は、TRAIL依存性アポトーシス誘導効果のほかに、活性酸素種や反応性窒素中間体、ならびにIFNーα、IFNーγ、IL-1、IL-12などのエフェクター分子の産生を介して細胞障害性を発揮することが知られている(参考文献45)。さらに、活性化マクロファージは、抗体依存性および非依存性機構を介して腫瘍細胞を効果的に障害することも分かってきている(参考文献46.47)。したがって、CatETgマウスにおけるTRAIL抵抗性B16細胞のアポトーシスと同時に発生する腫瘍成長抑制ならびにこれらの動物の死亡率低下は、腫瘍浸潤エフェクター細胞、なかでも活性化マクロファージによる細胞毒性によって発現していると思われる。
さらに、死亡細胞数とそれらを含む腫瘍部周囲の壊死領域は、CatETgマウス<Wtマウス<CatE-/-マウスの順で著明に増大している(図6E)。これは、壊死領域における血管分布と反比例しており、循環系による死細胞の排除と炎症性細胞の腫瘍部位への浸潤が、CatETgマウスでもっとも高く、ついでWtマウス、CatE-/-マウスではもっとも低いことを示している。さらに、腫瘍中心部ならびにその近辺に見られる血管内皮細胞の構造は、CatETgマウスとWtマウスに比べて、CatE-/-マウスにおいて著しく損なわれていた(図6Eの下段パネル)。このようなCatE-/-マウスの血管系の不全は、赤血球などの血管内容物の血管外漏出を促進すると考えられる。また、腫瘍浸潤マクロファージが無血管領域内に新たな血管を誘導したり、一旦形成された血管系のリモデリングに重要な役割を果たしていることを考えると、この発明によるデータは、カテプシンEが腫瘍浸潤マクロファージの活性化を通じて、腫瘍部位における血管系をコントロールしていることを示唆している。
さらに、内在性カテプシンE発現レベルはがん細胞の転移度に影響を及ぼしていることが判明した。メラノーマB16細胞を各遺伝子型のマウス群に静脈注射をして、肺への転移したがん細胞のコロニーの数を22日後に測定した結果、CatE-/-マウスにおけるかかるコロニーの数は、WtマウスとCatETgマウスに比べてそれぞれ約2倍と8倍であった(図6F)。このことはカテプシンE欠損ががん細胞の肺転移を促進したことを示している。したがって、これらのデータは、内在性カテプシンEががん細胞の転移を抑制していることを示唆している。
ここでTRAILについて簡単に説明すると、TRAILの細胞外COOH末端部分は、他のTNFファミリーと同様に、細胞表面から切断遊離される。このようにして遊離された可溶性TRAILは、ホモ三量体を形成して、種々のがん細胞をアポトーシスに誘導する(参考文献2,3)。しかし、可溶性TRAILによるアポトーシスは正常細胞ではほとんど起こらない。TRAILのこの注目すべき性質は、ヒトのがん治療における新たな治療剤としての有用性を示唆している。事実、組換え型可溶性TRAILやTRAIL受容体に対するアゴニスト(作用型抗体を含む)は、新たな抗癌剤として米国では第1相臨床試験が行われている。したがって、種々の細胞株の細胞表面から可溶性TRAILの発生に関与するプロテアーゼを特定することは極めて重要である。今日では、TNF−αとFasLが、可溶形のTNF−α変換酵素(TACE)(参考文献47,48)やMMP−7(参考文献49,50,51)によってそれぞれ放出されることは示されている。しかしながら、TRAIL切断に関与するタンパク質分解酵素を特定するには至っていない。これまでの知見では、全長組換TRAILを発現しているSf9細胞のTRAILの細胞表面での発現は、ロイペプチンやE−64などのシステインプロテアーゼインヒビターによって増強されるが、メタロプロテアーゼによっては増強されないこと、また、その細胞抽出液からの20kDaの可溶性TRAILの遊離はかかるシステインプロテアーゼインヒビターによって阻止されることから、細胞システインプロテアーゼがTRAIL放出に関与している可能性が示唆されている(参考文献52)。しかしながら、インビトロでの実験条件で得られたこれらの知見が、実際に生体内で可溶性TRAILの産生を行う生理学的なタンバク質分解事象を表しているかどうか不明である。
この発明において、本発明者らは、カテプシンEが、ヒト前立腺がん細胞の表面でTRAILを切断した後、可溶性三量体分子の生成し、正常なPrE細胞に対しては一切影響を及ぼすことなく、がん細胞にのみアポトーシスを誘導する責任酵素であることを初めて明らかにした。カテプシンEは全てのヒト前立腺がん細胞から可溶性TRAILを遊離するけれども、アポトーシスの誘導効率にはがん細胞株間で差異が認められた。PPC-1やDU145などのいくつかの細胞株は、正常なPrE細胞と同様に、カテプシンE誘導性アポトーシスに比較的抵抗性があるのに対して、PC-3やALVA-41などのその他の細胞株は高い感受性を示した。細胞表面でのTRAIL、DR4、DR5、DcR1またはDcR2の発現レベルはこれらの細胞株の間では実質的には差がないことから、これらの分子の発現量の相違はカテプシンE誘導性アポトーシスにおけるがん細胞間の感受性の差違には関係していないことを示唆している。むしろ、可溶性デコイレセプターOPG産生の増加は、PrE細胞やPPC-1細胞に対してカテプシンE誘導性アポトーシスに対する抵抗性を付与している一因といえる。さらに、ALVA-41細胞のカテプシンEに対する高い感受性は、これらの細胞表面から放出される可溶性TRAILの量が比較的多いことから説明できる。しかしながら、PC-3細胞のカテプシンEに対する高感受性は、OPGや可溶性TRAILの量のみでは説明できず、抗アポトーシスタンパク質、例えばFLIP、IAP類、Bcl-x、Bcl-2などの発現がPC-3細胞では他の細胞株に比べて少ないことからなど、他の要因があると思われる。
また、インビトロで観察されたカテプシンEによる腫瘍細胞における成長阻止とアポトーシスの誘導実験の結果は、ヒトがん細胞を移植したマウスを用いた個体レベルの研究結果とよく一致していることが判明した。ヒト前立腺がん細胞を移植したヌードマウスにカテプシンEを毎日投与すると、正常組織や細胞には組織学的な影響をまったく及ぼすことなく、腫瘍細胞の成長阻止とアポトーシスが誘導された。これらの結果は、腫瘍細胞を接種したマウスの生存を著しく延命した知見と一致している。大部分の腫瘍細胞のアポトーシスはカテプシンE投与の最終日に観察されていることから、カテプシンEをより頻繁に投与するか、またはカテプシンEの投与量を多くすることで、腫瘍の退縮をより短期間に効果的に誘導することができるものと考えられる。また、活性化T細胞(参考文献39、53)、B細胞(参考文献54)、ナチュラルキラー細胞(参考文献55)、樹状細胞(参考文献39)、単球(参考文献37)などの腫瘍エフェクター細胞がTRAILを産生することを考えると、活性化食細胞から分泌されたカテプシンEが、腫瘍細胞ばかりではなく、これらの免疫系細胞からも可溶性TRAILを産生することで腫瘍細胞のアポトーシスや腫瘍の退縮を誘導することができるものと推定される。
また、カテプシンEはTRAILとは独立した機構を介して腫瘍殺傷活性を発揮することも判明した。非常に多くの腫瘍細胞はTRAIL依存性アポトーシスに感受性があるけれども、ある種の腫瘍細胞株はTRAIL依存性アポトーシスに対してむしろ抵抗性を有している。マウスB16メラノーマ細胞はTRAIL依存性アポトーシスに対して抵抗性を有している(参考文献38,41)。本発明で得られた知見では、B16メラノーマ細胞を皮下移植したCatETgマウスでは、腫瘍浸潤エフェクター細胞、特に活性化マクロファージが数においても活性化度においても、同系のCatE-/-マウスやWtマウスのそれらと比べて顕著であった。腫瘍部位に浸潤する活性化マクロファージは、がん細胞と直接接触したり、サイトカインなどの液性因子を介して間接的に相互作用して、がん細胞を攻撃排除する能力を有していることを考慮すると(参考文献36)、腫瘍浸潤性活性化マクロファージが、他の免疫系細胞とともに、TRAIL依存性アポトーシス機構とは別の機構で腫瘍細胞をアポトーシスに誘導することができるものと考えられる。この点に関して、腫瘍浸潤性活性化マクロファージの存在の程度とがん患者の良好な予後とが密接に関連していると報告されている(参考文献36)。マクロファージのIFN−γやLPSによる活性化は、カテプシンEのmRNAとタンパク質レベルでの発現増大ならびにカテプシンE分泌の増加をもたらすことが示されている(参考文献12)。他方、カテプシンE欠乏はマクロファージの機能不全をもたらすことが示されている(参考文献19)。これらの知見は、カテプシンEが活性化マクロファージの機能に密接に関係していることを示している。したがって、B16メラノーマ細胞を移植したCatE-/-マウスの皮下腫瘍では、浸潤性マクロファージの数においても、また、これらの細胞の活性状態(MHCクラスII分子の発現によって反映されるような)においても、CatETgマウスやWtマウスに比べて、明らかに低下しているというこの所見は、マクロファージにおけるカテプシンEの発現レベルが腫瘍成長の抑制と個体死の抑制に強く関係していることを示している。したがって、カテプシンEは、腫瘍浸潤性活性化マクロファージのもつ細胞障害活性を介してB16メラノーマ細胞の増殖成長を抑制していると考えられる。
ここで注目すべきことは、腫瘍中の腫瘍浸潤性マクロファージには、2つの相対する競合する作用、つまり、腫瘍退縮と腫瘍促進の結果があることである。例えば、低濃度の腫瘍性浸潤マクロファージは細胞融解効果を有するのに対して、高濃度の腫瘍性浸潤マクロファージは腫瘍成長促進効果を有する(参考文献56,57)。マクロファージの多岐に亘る機能(例えば、亢進した貪食能、Tリンパ球や好中球の誘引と活性化、自然免疫や獲得免疫の活性化など)を通じての有用な抗がん効果(参考文献58)に対して、マクロファージはいくつかの機構(例えば、腫瘍細胞の移動や侵入の促進、細胞外マトリックスの分解や改変の亢進、血管新生の促進など)を通じて腫瘍の成長と転移を促進すると考えられる(参考文献59)。これらの競合する機能は、マクロファージが産生する多種のサイトカインと活性酸素種の質的量的な多様性から生じていると考えられる。この発明において、本発明者らは、CatETgマウスが、同系のCatE-/-マウスやWtマウスに比べて、マウスB16メラノーマ細胞の皮下成長と肺転移を著明に抑制し、死亡率を減少していること、CatETgマウスの腫瘍ではアポトーシス性壊死の明白な領域があることを初めて明らかにした。このように、内因性カテプシンEの発現レベルがB16メラノーマ細胞のがんの成長阻止や転移抑制、ならびに腫瘍浸潤性マクロファージの増加や活性化と正の相関をしていることは、カテプシンEがマクロファージの細胞毒性、アポトーシス誘導能、ならびに腫瘍微小血管系の変性を介して腫瘍細胞を排除できることを示唆している。したがって、カテプシンEは少なくとも2つの異なる機構、つまりTRAIL依存性アポトーシス機構ならびに腫瘍浸潤性マクロファージ誘導性細胞毒性機構によってがん細胞を破壊すると考えられる。カテプシンB、L、DやMMP類などの多くのプロテアーゼのタンパク質分解活性は、腫瘍成長の促進に良好な微小環境をつくるが、腫瘍成長阻止や転移阻害を誘導するようなプロテアーゼについてはほとんど知られていない。この点で、カテプシンEは抗がん作用をもつ有用なプロテアーゼの1例を示すものである。
ほとんど全ての抗がん剤が克服できていない共通の課題はそれらの激しい副作用である。したがって、抗がん剤探索の有効な戦略は、正常細胞に対しては一切細胞毒性を発揮することなく、標的の腫瘍細胞だけをアポトーシスに誘導することを目標とすることである。これまでの知見では、カテプシンEまたは内在性カテプシンEの発現を増加できる薬剤の投与が抗がん療法にとって有望な治療戦略となりうることを示唆している。したがって、カテプシンEを基本とした抗がん療法は、カテプシンEを単独で投与または他の療法と併用して、ヒトがんの処置を現場で行うことができることである。
したがって、この発明は、その主な態様として、抗がんカテプシン製剤を提供することである。この抗がんカテプシン製剤は、カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントを有効成分として含有するカテプシン製剤と、上記有効成分に加えて、抗がん剤を有効成分としてさらに包含するカテプシン製剤とからなっている。また、後者のカテプシン製剤は、上記したように、上記成分と抗がん剤が同一製剤中に配合されている形態の製剤と、上記成分と抗がん剤がそれぞれ別個に配合されていて併用して投与する形態の製剤とを含むものとからなっている。
この発明に係る抗がんカテプシン製剤は、カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントを有効成分として含有することを特徴としている。
この発明のカテプシンEは、配列表の配列番号1に示す塩基配列およびアミノ酸配列を有している。またこの発明に係るカテプシンEのその活性部位は、98番目と283番目のアスパラギン酸を含む領域である。この発明において、カテプシンEの活性部位からなる活性フラグメントとは、98番目と283番目のアスパラギン酸を含む領域からなる活性フラグメントを意味している。また、カテプシンEの活性部位を含む活性フラグメントとは、98番目と283番目のアスパラギン酸を含む領域を部分として含む領域からなる活性フラグメントを意味している。
なお、本明細書において「カテプシンE」と単に記載した場合でも、用語「カテプシンE」は、文脈から明らかに別の意味に解釈される場合や特段の定めがある場合を除いて、上記活性フラグメントをも包含した意味で使用していると理解すべきである。
この発明において、カテプシンEは、特にその表面にTRAILを有する非常に多くの種類の腫瘍細胞に対して、そのTRAILを活性化させて、腫瘍細胞の成長ならびに転移を阻止すると共に、アポトーシスを誘導する作用を有している。しかも、驚いたことには、カテプシンEは、腫瘍細胞以外の正常細胞に対してはまったく影響を及ぼすことなく、腫瘍細胞だけを攻撃することが分かった。したがって、カテプシンEを有効成分とするこの発明のカテプシン製剤は、極めて有効な抗がん剤として期待することができる。
上記に説明したように、非常に多くの種類の腫瘍細胞がTRAIL誘導アポトーシスに感受性があるけれども、さらに、カテプシンEはまたTRAILを介するアポトーシス機構とは独立した機構を介して腫瘍阻止活性を発揮することも可能である。つまり、この発明のカテプシンEは、TRAIL依存性アポトーシスに対してむしろ抵抗性を有している腫瘍細胞株、例えばB16メラノーマ細胞などの細胞に対しても、腫瘍阻止活性を発揮することができる。
この発明に係る抗がんカテプシン製剤は、他の抗がん剤と併用する、いわゆる併用療法に使用することができる。かかる併用療法に使用できる抗がん剤としては、カテプシンEと併用した場合にその効果が増強または補完されるものまたはカテプシンEの作用を増強または補完するものであれば、いずれも使用することができ、抗がん剤の適用範囲も特に限定されるものではない。また、この発明の抗がんカテプシン製剤を他の抗がん剤と併用投与する場合、抗がん剤を単独で投与する場合よりも少ない用量で治療効果を達成することが期待できる。したがって、併用投与する抗がん剤の毒性による副作用を回避または最小限に押さえることができると期待される。
なお、本明細書において、単に「抗がんカテプシン製剤」という用語を使用する場合でも、文脈から別の意味に解釈すべき場合または特段の定めがない場合を除いて、カテプシンEを単独で使用する抗がんカテプシン製剤ばかりではなく、他の抗がん剤と併用して投与する抗がんカテプシン製剤をも意味して使用されていると理解すべきである。
また、この発明における併用療法には、同一製剤中にカテプシンEと抗がん剤とが同時に有効成分として含まれている場合の他に、抗がん剤とカテプシンEとを別々に投与し、相互にその作用を補完または増強する場合もまたこの発明の範囲に包含されるものと理解さるべきである。
本発明の抗がんカテプシン製剤と併用できる抗がん剤としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、微小管阻害剤などの細胞障害性抗がん剤または分子標的治療薬などが挙げられる。
抗がん剤のうち、アルキル化剤としては、例えば、シクロフォスファミド、イフォスファミド、メルファラン、メクロルエタミン、クロラムブシル等のニトロジェンマスタード類、ブスルファン、イムプロスルファントシレート等のスルホン酸アルキル類、チオテパ等のエチレンイミン類、ヘキサメチルメラミン等のメチルメラミン類、カルムスチン、セムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン等のニトロウレア類、ダカルバシン等のトリアゼン類などが挙げられる。
代謝拮抗剤としては、例えば、メトトレキサート等の葉酸類似化合物、5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール、UFT、ドキシフルリジン(5’−DFUR)、カルモフール、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、シタラビンオクフォスフェート、エノシタビン等のピリミジン類似化合物、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオグアニン、ペントスタチン等のプリン類似化合物などが挙げられる。
抗がん性抗生物質としては、例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、アクラルビシン、ストレプトゾシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、エピルビシン、ネオカルジノスタチン、ジノスタチンスチマレマー、イダルビシン等が挙げられる。植物アルカロイド系の抗がん剤としては、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン等のビンカアルカロイド類、エトポシド、テニポシド類のエピポドフィロトキシン類、パクリタキセル、ドセタキセル等のタキソール類、ビノレルビン、ビンデシン、イリノテカン、ソブゾキサン、エポチロン、デスオキシエポチロンなどが挙げられる。
白金配位化合物としては、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン等が挙げられる。その他、上記の分類に含まれない抗がん剤として、例えば、ミトキサントロン等のアントラセネジオン類、プロカルバジン等のメチルヒドラジン類、トレチノン等のビタミンA代謝物質、デカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、L−アスパラギナーゼなどが挙げられる。
かかる抗がん剤のうち、例えば、上記アルキル化剤、代謝拮抗剤ならびに白金錯体は、いずれもDNA合成過程である細胞周期のS期を抑制する薬剤である。これに対して、抗生物質や植物アルカロイド類のパクリタキセル、ドセタキセルなどは、微小管形成阻害作用を有しており、主に細胞分裂過程のM期を抑制する薬剤である。したがって、これらの抗がん剤は、単独でもまたは組み合わせて併用しても使用することができる。また、これらの抗がん剤を組み合わせる場合には、例えば、代謝拮抗剤と白金配位化合物、特にシスプラチン(CDDP)と5−フルオロウラシル(5-FU)とを併用するのがよい。
この発明に係る抗がんカテプシン製剤は種々のがんの治療に有効に適用することができ、かかるがんの種類としては、特定の種類に限定されないが、以下のものを例示することができる:食道、頚部、甲状腺、胃、肝臓、肺(小細胞がんを含む)、乳房、すい臓、胆のう、腎臓、大腸、直腸、結腸、膀胱、前立腺、卵巣、皮膚(扁平上皮がんを含む)などのがん;リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫などのリンパ系列の造血性腫瘍;骨髄性白血病、骨髄異形性症候群、前骨髄性白血病等などの骨髄性系列の造血性腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、シュワン腫などの中枢および末梢神経系の腫瘍;腺維肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫などの間葉系の腫瘍;黒色腫、色素性乾皮症、角質棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞がん、奇形がん腫などのその他の腫瘍等。
この発明の抗がんカテプシン製剤は、薬学的に許容される担体や添加物、例えば、希釈剤、賦形剤、安定化剤、緩衝剤、着色剤などを含有していてもよく、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなどが挙げられる。
この発明の抗がんカテプシン製剤は、経口的にまたは静脈注、筋肉注、腹腔内、経皮、直腸もしくは局所投与等の非経口的に投与することができる。経口投与する場合には、例えば、錠剤、カプセル剤、水溶液または懸濁液などの形態で投与することができる。経口投与のための固形製剤において通常使用される担体としては、例えば、ラクトース、コーンスターチ、ステアリン酸マグネシウムなどを挙げることができる。また、経口投与のための液性製剤の場合には、通常、乳化剤または懸濁化剤などを使用することができる。
この発明において、抗がん剤と組み合わせて使用するカテプシンEの投与量は、該抗がん剤の抗がん活性(細胞死誘導活性を含む)を増強する量であれば、特に制限されるものではなく、該抗がん剤の所定の投与量に従って広範囲に変動して投与することができる。実際には、カテプシンEの併用投与により、抗がん剤の感受性が増強されることにより、該抗がん剤の所定の投与量よりも少ない用量で投与することができる。通常、カテプシンEの投与1回当たりの投与量(単位投与量)は、併用する抗がん剤の種類、投与形態、がんの種類、患者の体重や状態、病態などによって変動するが、例えば、0.01 mg〜10 g/kg体重であるのがよい。一方、抗がん剤の投与量も、その種類、がんの種類、患者の体重や状態、病態などによって異なるが、例えば、1 ng/kg体重〜200 mg/kg体重(静脈内投与)もしくは0.005 mg/kg体重〜600 mg/m2体表面積(静脈内投与)、または2.5mg/kg体重〜2g/kg体重(経口投与)の範囲で使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により一切限定されるものではない。
(細胞生存の測定)
細胞生存はCell Counting Kit-8を使用して製造者マニュアルに従って測定した。その方法を簡単に記載すると、細胞(1 x 104)を容量100μlの96ウエルプレートに接種し、24時間培養した。次いで、細胞をラット胃(参考文献27,60−62)から精製した所定濃度の各種カテプシンと共に無血清Opti-MEM 培地で培養した。その後、キット試薬10μlを各ウエルに添加し、細胞を更に1時間培養した。各ウエルの吸光度を450 nmでマイクロプレートリーダーで測定した。
(アポトーシスの測定)
アポトーシスの形態変化について細胞を位相差顕微鏡で調べた。前期と後期アポトーシスの細胞をそれぞれアネキシンV染色とTUNELアッセイによって検出した。アネキシンV染色のためには、ALVA-41細胞をカテプシンEまたはカテプシンLと4時間接触させ、遠心分離して単離し、PBSで2度洗浄し、フルオレッセンイソチオシアネート結合アネキシンVと共に室温で暗所に10分間培養した。アネキシンV染色で陽性の細胞は蛍光顕微鏡で検出した。TUNELアッセイは、培養腫瘍細胞については Apop Tag Peroxidase Apoptosis Detection Kit、異種移植片については Tumor TACS In Situ Apoptosis Detection Kitを用いて行った。
(組換えカテプシンタンパク質の調製)
その活性部位の2個のアスパラギン酸残基をアラニンで置換した組換え野生種ならびにその変異タンパク質(D98A/D283A)をHEK293T細胞で発現し、前記記載の方法で精製した(参考文献63)。
(DEAE-Sephacelクロマトグラフィーとイムノデプリーション)
ALVA-41細胞(9 x 109個)を無血清培地Opti-MEMを用いてカテプシンE(100μg/ml)と一緒に37°Cで20時間培養し、20,000 x g、4°Cで30分間遠心分離した。培養上清を濃縮し、遠心分離して、得られた上清を0.05% Brij 35を含む10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)を用いて透析した後、同一溶液で平衡にしたDAEA-Sephacelカラムに添加した。その後、カラムを0.01Mおよび0.3M NaClで段階的に溶出した。カラム分画の細胞毒性活性とカテプシンE活性は、新規調製した ALVA-41細胞と下記カテプシンE特異的基質MOCAc-Gly-Ser-Pro-Ala-Phe-Leu-Ala-Lys(Dnp)-D-Arg-NH2(参考文献64)を用いて調べた。0.1M NaCl分画からのTRAILのイムノデプリーションのために、その分画を、最初に、TRAILのマウスモノクローナル抗体またはコントロールマウスイムノグロブリンG(それぞれ1μg/mlの濃度)を用いて、次にタンパク質G-Sepharose 4 Fast Flowと共に4°Cで1晩培養した。その後、樹脂を遠心分離で除去し、得られた上清についてALVA-41細胞の生存に対する効果を評価した。
(SDS-PAGEおよびイムノブロット分析)
SDS-PAGEおよびイムノブロット分析を前記文献(参考文献63)に従って行った。SDS-PAGEによって分画されたタンパク質のニトロセルロース膜での移動と5%無脂肪乾燥ミルクでのブロッキング後に、その膜を、抗TRAIL抗体(1/300倍希釈)、抗TNF-α抗体(1/200倍希釈)、抗FasL抗体(1/500倍希釈)、抗DR4抗体(1/500倍希釈)、抗DR5抗体(1/100倍希釈)、抗DcR1抗体(1/500倍希釈)、抗DcR2抗体(1/500倍希釈)、抗オステオプロテゲリン抗体(1/150倍希釈)または抗β-アクチン抗体(1/500倍希釈)などの一次抗体と共に4°Cで一夜培養した。洗浄後、その膜をホースラディッシュパーオキシダーゼ結合ウサギ、マウスもしくはヤギイムノグロブリンG(1/4000倍希釈)抗体(二次抗体)と共に一夜4°Cで培養した。このように処理した膜を数回洗浄し、次いで免疫コンプレックスを化学発光試薬で検出した。密度測定はLAS1000アナライザーで行った。
(細胞表面のビオチン化)
細胞表面のビオチン化は次のようにして行った。〜80%コンフルエント状態で前立腺細胞をディッシュに入れて、氷冷PBSで2度洗浄し、細胞非浸透性分解可能試薬スルホ-NHS-SS-ビオチンと4°Cで30分間培養することによってビオチン標識をした。非結合ビオチンは細胞を100mMグリシンPBS溶液で6回洗浄することによってクエンチングした後、細胞を1% Triton X-100と、フェニルメチルスルホニルフルオリド、ロイペン、ペプスタチンおよびアプロチニンをそれぞれ1mg/mlずつ含んだ100mMリン酸バッファー(pH 8.0)200μlで溶菌した。細胞ライセートは、20000 x gで20分間4°Cで遠心分離し、得られた上清をストレプトアビジン−アガロースビーズ50μlと一緒に4°Cで2時間ゆっくり攪拌した。このように処理したビーズは、10 mM Tris-HCl (pH 7.5)、0.1% SDS、0.1% Triton X-100、2mM EDTA および1mM
NaN3を含む溶液で2回、さらにこの溶液に1M NaClと0.1%ナトリウムラウロイルサルコシネートを加えた溶液で2回、さらにまた5mM Tris-HCl(pH 7.0)で2回洗浄した。続いて、ビーズをSDSサンプルバッファー中で100°Cで5分間培養し、溶出したタンパク質についてSDS-PAGEおよびイムノブロット分析を行なった。
(TRAIL、FasLおよびTNF-αに対するELISA)
無血清Opti-MEM培地を用いてカテプシンE(100μg/ml)と一緒に37°Cで20時間培養して得られたALVA-41細胞(6cmディッシュ当たり1x106個)培養上清中のTRAIL、FasLおよびTNF-αの量はELISAキットを用いて測定した。この測定法を簡単に説明すると、サンプルまたは標準品100μlを対応するTNFファミリーメンバーに対するモノクローナル抗体を固定したマイクロタイタープレートに添加し、室温で2時間培養した。次に、プレートのウエルを洗浄バッファーで4回洗浄した。次に、各ウエルにビオチン結合モノクローナル抗体100 μl を添加し、室温で1時間培養した後、ウエルを完全に洗浄し、ストレプトアビジン−結合ホースラディッシュホースラディッシュパーオキシダーゼ100μlとともに、室温で30分間培養し、洗浄バッファーで4回洗浄した。安定化クロモゲン (chromoge:100μl)を各ウエルに添加し、室温で30分間暗所で培養した。反応停止溶液を添加した後、マイクロリーダーで吸光度(450nm)を測定した。
(イムノヒストケミストリー)
ホルマリン固定およびパラフィン包埋移植片についてF4/80およびMHCクラスII分子をCHEMICON IHC Select(R) Immunoperoxidase
Secondary Detection Systemを用いて調べた。スライドのパラフィンをキシレンとアルコールで除去し、3%過酸化水素で10分間処理した。リンス後、ブロッキング試薬(正常ヤギ血清)と共に培養しリンスした。続いて、スライドを一次抗体として抗F4/80抗体(1:500倍希釈)または抗MHCクラスII 抗体(1:500倍希釈)を用いて室温で10分間培養した。さらに、IHC Select(R) Biotinylated Secondary
Antibody Goat anti-Rat IgG を二次抗体として室温で10分間培養して、ストレプトアビジン−結合HRPで10分間室温で処理し、クロモゲン試薬 (3,3'-ジアミノベンジジン)と室温で10分間反応させた。このように処理したフラグメントをヘマトキシリンで逆染色し、光学顕微鏡で調べた。
(実験動物)
全ての実験動物は特定無菌施設において日本薬理学会のガイドラインに従って飼育した。全ての動物実験は、九州大学大学院歯学研究院動物実験委員会の承認のもとに行った。C57BL/6遺伝子バックグランドの野生型マウスとCatE-/-マウスは前記文献(参考文献17)に記載の通り使用した。カテプシンEを過剰発現するトランスジェニックマウスの作成のために、ヘマグルチニン(HA)で標識したマウスカテプシンEトランスジーンを構築した。全RNAはマウス脾臓からTRIsol試薬を用いて抽出し、第1鎖cDNAを逆転写酵素を用いて合成した。そのcDNAをテンプレートとして使用することによって、マウスカテプシンEをEXタグポリメラーゼによって増幅した。下記配列を有するプライマーを使用した:
5'-CGGTCTAGAGAGATCGGAGCAGAGTGAGAG-3'と
5'-GGACCCGGGTAACAGGYTTAAATGGGTATCA-3'(下線配列は制限酵素のXbaIとSmaI部位をそれぞれ表している)。増幅フラグメントはHA標識をもつpBluscript SKにサブクローニングした。続いて、マウスカテプシンE(mCE)とHAとのギャップを除去するために部位指向性突然変異を誘導した。Xbalで消化し、Klenowフラグメントで充填した後、pXhoIリンカーを両端に添加した。得られたプラスミドをXhoIで消化し、ウシアルカリホスファターゼ処理pCAGGSに結合した。この得られたプラスミドを用いてトランスジェニックマウスを作成した。ターゲットベクターのリンカーDNAフラグメントはC57BL/6Jマウスの受精卵にマイクロインジェクションした。半接合体Tgマウスを創始マウスと野生型マウスとを交配させて作製した。妊娠マウスはテールDNAを用いたPCRとサザンブロット分析法によってスクリーニングした。
(ヒトおよびマウスの異種移植片を有するマウスの腫瘍成長と転移)
一次腫瘍成長を研究するために、ALVA-41細胞(5x106個)のPBS溶液1ml を雄ヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。またマウスメラノーマB16細胞(1x106 個)を同系野生種(WT)マウス、CatE-/-マウスおよびCatETgマウスの右脇腹に同様に皮下注射した。腫瘍の大きさはキャリパーで測定し、腫瘍容量は式ab/2(式中、aおよびbはそれぞれ最大および最小中央断面寸法をそれぞれ表す)で算出した。ALVA-41細胞異質移植片の大きさが約100 mm3(注射後約12日目ごろ)に達したとき、動物を5匹ずつの2グループに分け、精製カテプシンE(1日当たり200μg/体重kg)または生理食塩水を腫瘍中心部に16日間投与した。腫瘍重量の測定と免疫組織化学的研究のために、腫瘍の大きさが約400mm3に達したときに、カテプシンE(1日当たり500μg/kg)または溶媒(ポリエチレングリコール)を腫瘍中心部に10日間投与した。転移についての研究のために、メラノーマB16細胞(PBS溶液50μl中2 x 105個)をWtマウス、CatE-/-マウスおよびCatETgマウスの尾静脈から注射した。22日後にマウスに麻酔を施し、致死量のジエチルエーテルで屠殺した後、肺を摘出した。その肺表面の転移黒色コロニー数を数えた。
(mRNA抽出およびRT−PCR)
全RNAはRNeasy Mini Kitを用いて製造者マニュアルに従って単離した。RNAの収率と品質はA260/A280での吸収とゲル電気泳動によって評価した。cDNA合成はReady-to-Go RT-PCRビーズを用いて行った。各サンプルにつき500ngを第1鎖プライマー、フォワードならびにリバースプライマー(20pmol)およびRNase/DNaseフリー水を含む 50 μl の反応混合物中で培養した。RTは45°Cで10分間および95°Cで5分間からなる加熱プログラムで行った。また、PCR反応は、下記プライマーを用いて行った。G3PDH (フォワード: 5'-TCCACCACCCTGTTGCTGTA;リバース:5'-ACCACAGTCCATGCCATCAC)、カテプシンE(フォワード:5'-GTGCCCCTCAGAAGACATCA;リバース:5'-GTATCCCAGACCCAGAATCC)。PCR生産物はそれぞれ471bpおよび498bpであった。G3PDHに対するPCRサイクル条件は、95°Cで30秒間、60°Cで30秒間、72°Cで1分間を1サイクルとして35サイクル、そして最後に72°Cで5分間であった。全てのサンプルは、エチジウムブロマイド(0.5μg/ml)を含む2.5%アガロースゲル上に分解し、紫外線照射して可視化した。検出が線状範囲にあることを確保するために、PCRは異なるサイクルで実施し、少なくとも2回繰り返した。
(統計分析)
データは平均値±SDとして表し、Student's t test によってグループ間の比較を行なった。生存データは Mann-Whitney U-test で分析し、p<0.05の値を統計学的に有意であると判断した。
以下に、図面について詳細に説明する。
まず、図1は、各種カテプシンのヒト前立腺がんALVA-41細胞の生存に対する効果を示す。図1Aは、生理食塩水ならびにカテプシンB、D、E、L(それぞれ濃度10μg/ml(左側)、50μg/ml(中央)、100μg/ml(右側))で37°C、pH 7.4で20時間処理後、生存細胞数を比色法で測定した結果を示す。図中のデータは、生理食塩水処理細胞値に対する相対値であり、4回の別々の実験の平均値±SD値で表している。*p<0.001は生理食塩水処理細胞に対する対応値である。図1Bは、各種カテプシン(濃度100μg/ml)ならびに生理食塩水で処理した細胞の顕微鏡観察の結果を示す。なお、図中の指示スケールは50μmである。図1Cは、細胞を生理食塩水およびカテプシンE(50μg/ml)ならびにカテプシンL(100μg/ml)で37 °C 、pH 7.4で20時間処理後、TUNEL
アッセイ(上段)と蛍光イソチオシアネート標識アネキシンA染色(下段)によって検出したアポトーシス像を示す。なお、図中のバーのスケールは50μmである。
図2は腫瘍細胞におけるカテプシンE誘導性アポトーシスの特徴を示している。図2AはALVA-41細胞の生存率の測定結果を示す。この実験では、ALVA-41 細胞をペプスタチンA(100μM)の存在下または非存在下で所定濃度のカテプシンEと共に37 °C 、pH
7.4で20時間培養した後、細胞生存率を測定し、非処理細胞群の値に対するパーセントで表している。データは、4回の別々の実験の平均値±SD値で表している。*p<0.001はペプスタチンA非処理細胞に対する対応値である。図2BはHEK293細胞の生存率の測定結果を示す。この実験では、HEK293 細胞を所定濃度の天然カテプシンE、野生型組換え体ならびにその活性部位変異体 (D98A/D283A) と共に37°C、pH 7.4で20時間培養した後、細胞生存率を測定し、非処理細胞群の値に対するパーセントで表した。データは、4回の別々の実験の平均値±SD値で表している。*p<0.001は変異体処理細胞に対する対応値である。図2CはカテプシンEのみで処理した細胞の生存率を示している。この実験では、細胞を所定濃度のカテプシンEのみで図2Aのように処理した後、培養上清を回収し、遠心分離し、沈殿を除去し、その1部(100 μM)を新たに調製したALVA-41細胞の培地に移した。続いて、これらの細胞をペプスタチンA(100μM)の非存在下(黒丸印)または存在下(白丸印)で37°C、pH 7.4で20時間培養した後、細胞生存率を測定し、生理食塩水処理ALVA-41細胞培養上清で処理した細胞の値に対するパーセントで表した。データは、4回の別々の実験の平均値±SD値で表している。図2Dに示す実験では、カテプシンE処理ALVA-41細胞の培養上清をDEAE-Sephacelカラムクロマトグラフィーで分画し、各画分を上記の通り処理した。各カラム分画のカテプシンE活性(上部パネル)と細胞毒性活性(下部パネル)は、新たに調製したALVA-41細胞とカテプシンE特異的基質を用いてそれぞれ決定した。所定の最終タンパク質濃度での各分画で処理した細胞生存率は、生理食塩水処理細胞に対するパーセントとして表され、4回の別々の実験の平均値±SD値で表している。カテプシンE活性は、培養上清中の全活性のパーセントとして表され、そのデータは3回の別々の実験の平均値±SD値で表している。
図3は、ALVA-41細胞におけるカテプシンE誘導性アポトーシスの誘導因子としてのTRAILの同定について説明する。図3Aは培養上清中のTNF-α,FasLおよびTRAILの量についてのELISA測定結果を示す。この実験では、ALVA-41細胞をカテプシンE(100μg/ml)または生理食塩水を用いて37°C、pH
7.4で20時間処理後、培養上清中のTNF-α,
FasL およびTRAIL の量をELISAで測定した。データは生理食塩水処理細胞の平均値の対応値に対する相対値として表し、4回の別々の実験の平均値±SD値で表している。図3Bはイムノブロット分析結果を示す。この実験では、細胞を図AのようにカテプシンE(レーン2,4)または生理食塩水(レーン1,3)で処理した後、細胞抽出物と培養上清をTNF-α,FasLおよびTRAILのそれぞれに対する特異的な抗体を用いてイムノブロット分析を行った。図3Cは、TRAIL のイムノデプリーションによるアポトーシス誘導活性に対する阻止効果を示す結果である。この実験では、抗TRAIL抗体を用いて所定の最終濃度でのカテプシンE処理細胞の培養上清のDEAE-Sephacelカラムクロマトグラフィーによって得られた0.1M NaCl分画からのTRAILを免疫沈降により除去した。対照として、コントロールマウスIgGに対する抗体を用いて同様の処理を行った。免疫沈降後の培養上清を用いてのALVA-41細胞のアポトーシスを調べた。データは生理食塩水処理細胞の生存率に対する対応値のパーセントとして表し、3回の別々の実験の平均値±SD値で表している。*p<0.001はコントロールIgG処理細胞に対する対応値である。
図4は、各種ヒト前立腺がん細胞株に対するカテプシンE誘導性アポトーシスへの感受性について説明している。
図4Aは、各種ヒト前立腺がん細胞株ならびに正常ヒト前立腺上皮(PrE)細胞をカテプシンEまたは生理食塩水で処理したときの細胞生存率を比色アッセイで測定した結果を示す。このアッセイでは、まず、被験細胞を〜80%コンフルエント状態まで培養し、続いてカテプシンE(100μg/ml)または生理食塩水と共に37 °C 、pH 7.4で20時間培養した後、細胞生存率を比色アッセイで測定した。細胞生存率は生理食塩水処理細胞に対する対応値のパーセントとして表している。データは4回の別々の実験の平均値±SD値で表している。*p<0.001は生理食塩水処理細胞に対する対応値である。図4Bはイムノブロット分析の結果を示す。この実験では、先ず細胞を細胞透過性分解可能試薬sulfo-NHS-SS-biotinでビオチン化した後、細胞融解し、細胞ライセートをストレプトアビジン・アガロースビーズと4°Cで2時間培養した。次に、ビーズを洗浄し、関連タンパク質を抗TRAIL抗体またはTRAIL膜関連レセプターに対する抗体を用いてイムノブロット分析を行った。また、細胞ライセート部分を抗β―アクチン抗体を用いて直接イムノブロット分析をした。別の方法として、各細胞株の調整培地を抗OPG抗体を用いてイムノブロット分析した。図4Cはデンシトメーターで濃度解析したときの結果を示す。この実験では、図3Aと同様にカテプシンE処理培養上清を抗TRAIL抗体を用いてイムノブロット分析した後、イムノブロットを可溶性三量化TRAILの定量のために濃度解析した。縦軸の単位は、カテプシンE処理したPrE細胞のミリメートル単位当たりのTRAIL濃度に対する相対値として定義される。データは4回の別々の実験の平均値±SD値で表している。レーン1はPrE細胞、レーン2はALVA-41細胞、レーン3はALVA-101細胞、レーン4はPPC-1細胞、レーン5はPC-3細胞、レーン6はDU145細胞。*p<0.001はカテプシンE処理PrE細胞に対する統計的に有意な値である。
図5は、カテプシンE注射のヌードマウスにおけるALVA-41細胞によって形成された腫瘍成長に対する効果について説明している。
図5Aは、ALVA-41細胞を雄ヌードマウスに皮下注射して生成した腫瘍の容積を示す。皮下注射後腫瘍容積が〜100cm3に達したとき、カテプシンE(200μg/kg/日)または生理食塩水を腫瘍中心部に16日間皮下注射した。データは各グループ当たりマウス5匹からの値の平均値±SD値であり、*p<0.005、**p<0.01および***p<0.001はカテプシンE処理マウスに対する統計的に有意な対応値である。図5Bは、腫瘍容積が〜400 cm3に達したとき、カテプシンE(400 μg/kg/日)または生理食塩水を腫瘍中心部に10日間注射した後、腫瘍重量を測定した結果を示す。データは各グループ当たりマウス3匹からの値の平均値±SD値である。図5Cは、図5Bと同様にて、カテプシンEまたは生理食塩水で処理したマウスの腫瘍をTUNELアッセイで分析した結果を示す。アッセイは、ジアミノベンジジンと反応させた後、切片を1%メチルグリーンでカウンター染色して行った。データは各グループ5匹のマウスで得られた結果を表すものであり、下段は、上段のイメージの拡大図である。図中のバーのスケールは50μmである。
図6−1および図6−2は、内在性カテプシンE発現レベルと、腫瘍中のマウスB16メラノーマ細胞の成長低下ならびに転移との直接的関連性について説明している。
図6Aは、CatE-/-マウス(n=11)、Wtマウス(n=10)およびCatETgマウス (n=10) のそれぞれに同系のマウスB16メラノーマ細胞(1 x 106個) を皮下注射して生成した腫瘍容量を測定した結果を示している。腫瘍容量は注射後所定時間に測定し、データは各グループ値の平均値±SD値である。*p<0.01および**p<0.001はWtマウスに対しての統計的に有意な対応値である。図6Bは、マウスB16メラノーマ細胞の皮下注射後の各グループのマウスの死亡率を示す。Wtマウスと、CatE-/-マウスまたはCatETgマウスとの差は統計学上有意差がある。図6Cは、各マウスグループからの摘出腫瘍に対するTUNELアッセイ分析結果を示す。アッセイは、ジアミノベンジジンとの反応後、切片を1%メチルグリーンでカウンター染色して行った。データは各グループ5匹のマウスの移植23日目の結果を表している。図中のバーのスケールは50μmである。図6Dは、移植23日目の各グループのマウスへの摘出腫瘍に対する抗F4/80抗原抗体ならびに抗MHCクラスII分子抗体で免疫組織化学的染色の結果を表している。図中、矢印は血管を示し、またバーのスケールは100μmである。図6Eは、がん細胞移植後23日目で摘出した腫瘍のパラホルムアミド固定ならびにヘマトシリンとエオシン染色の結果を示す。白色矢じり印と黒色矢じり印とは腫瘍中の血管と壊死領域をそれぞれ示す。図下段は図上段のイメージ(図中の四角部分)の拡大図を示す。CatE-/-マウスの場合、図下段には腫瘍中心部に新生血管構造が認められる。図6Fは各グループのマウスにマウスB16メラノーマ細胞を静脈注射して肺表面の黒色小結節数を示すグラフである。この実験では、各グループのマウスにマウスB16メラノーマ細胞(2 x 105個)を尾静脈注射し、22日後に屠殺して肺表面の黒色小結節数を数えた。データは各グループ値の平均値±SD値である。*p<0.01および**p<0.001は対応マウスに対する統計的に有意な値である。
図7はマウスカテプシンEトランスジーンのプラスミド構築のための模式図である。HA標識したカテプシンEをターゲットベクターpCAGGSにクローン化した。図中に記した略号は、AGプロモーターはamp, アンピシリン抵抗性遺伝子はfl(-) ori、HAはヘムアグルチニン、hCMVはヒトサイトメガロウイルス即時プロモーター、lacZはβ-ガラクトシダーゼαフラグメントβグロビンプロモーター、mCEはラットカテプシンE遺伝子、MCSは多彩なクローニング部位、oriは大腸菌プラスミドpMB1由来、P lacはlacプロモーター、pUC oriはpUC由来、SV40 oriはsimianウイルス由来を示している。
図8は、マウスカテプシンEを過剰発現させたHEK293細胞の細胞抽出液のイムノブロット解析データを示す。一次抗体として、カテプシンE(CE)およびヘムアグルチニン(HA)に対する抗体を用いた。レーン1はカテプシンEをトランスフェクトした細胞、レーン2は対照細胞を示す。
図9は、カテプシンEを過剰発現させたトランスジェニックマウス(CatE+/+マウス)と対照としての野生型(Wt)マウスの各種臓器におけるカテプシンEmRNAの発現量を示している。Mは100塩基対マーカー、G3PDHはグリシルアルデヒド3リン酸脱水素酵素を示している。レーン1から10までは、順に脳、心臓、肺、胃、膵臓、脾臓、小腸、大腸、肝臓、腎臓を示している。
図10は、ヒト白血病細胞の生存に及ぼすカテプシンEならびにエトポシドの影響を調べた結果を示している。上段のパネルは、白血病細胞U937細胞およびHL-60細胞に対してカテプシンEとエトポシドとをそれぞれ投与した場合の影響を投与濃度について検討した結果を示している。下段のパネルは、それぞれの細胞に対して、各種濃度のカテプシンEとエトポシド(10μg/ml)とを同時に投与したときの効果をカテプシンEを単独投与した場合と比べた結果を示している。これらの結果は、カテプシンEとエトポシドとを同時に投与した場合、いずれのがん細胞もその生存率を大きく低下させていることが示している。
図11は、カテプシンEとエトポシドのヒト白血病細胞の生存に及ぼす影響を、カテプシンEとエトポシドの同時投与の場合とエトポシド前処理の場合で比較して調べた結果を示す。図示したように、エトポシド(10μg/ml)単独投与の場合、エトポシドはヒト白血病細胞U937細胞に対して、40%程度しかアポトーシスを誘導していないが、各種濃度のカテプシンEを同時投与した場合とエトポシド前処理後に投与した場合では、がん細胞のアポトーシスが著しく亢進していることが判明した。
図12は、カテプシンEとエトポシドとの併用投与とエトポシド単独投与によるヒト白血病細胞U937細胞の生存に対する効果を示している。図上段はエトポシド単独投与の場合の効果を示している。図下段はエトポシド(50μg/ml)と各種濃度のカテプシンEとを併用投与した場合の効果を示している。これらの結果から、カテプシンEとエトポシドとを併用することにより、エトポシドの効果が明らかに増強されていることが判明した。
この発明に係る抗がんカテプシン製剤は、がん細胞の成長阻止とがん転移の予防に有用であると共に、がん細胞のアポトーシスを著しく誘導することができる。また、この発明の抗がんカテプシン製剤は、正常細胞に対しては悪影響を及ぼすことなく、がん細胞だけを殺傷することができることから、従来の抗がん剤の有する副作用を伴わないか、または著しく軽減することができる。さらに、この発明の抗がんカテプシン製剤を、その他の抗がん剤と併用することによって、従来の抗がん剤が感受性を示さなかったがんなどに対しても治療効果が期待できることから、特に、がん治療の分野において極めて有用である。
(参考文献1)
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(参考文献5)
(参考文献6)
(参考文献7)
(参考文献8)

Claims (19)

  1. カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントを有効成分として含有することを特徴とする抗がんカテプシン製剤。
  2. 請求項1に記載の抗がん抗がんカテプシン製剤において、前記活性部位が配列表の配列番号1に記載するアミノ酸配列の配列番号98番目と283番目のアスパラギン酸を含む領域であることを特徴とする抗がんカテプシン製剤。
  3. 請求項1または2に記載の抗がんカテプシン製剤において、抗がん剤が有効成分としてさらに含有されていることを特徴とする抗がんカテプシン製剤。
  4. 請求項3に記載の抗がんカテプシン製剤において、前記抗がん剤が抗がん剤または抗腫瘍剤であることを特徴とする記載の抗がんカテプシン製剤。
  5. 請求項3または4に記載の抗がんカテプシン製剤において、前記抗がん剤が白金配位化合物、トポイソメラーゼインヒビター、抗生物質、抗有糸分裂性アルカロイド、ジフルオロヌクレオシドであることを特徴とする記載の抗がんカテプシン製剤。
  6. 請求項3ないし5のいずれか1項に記載の抗がんカテプシン製剤において、前記抗がん剤が、食道、頚部、甲状腺、胃、肝臓、肺(小細胞がんを含む)、乳房、すい臓、胆のう、腎臓、大腸、直腸、結腸、膀胱、前立腺、卵巣、皮膚(扁平上皮がんを含む)などのがん;リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫などのリンパ系列の造血性腫瘍;骨髄性白血病、骨髄異形性症候群、前骨髄性白血病等などの骨髄性系列の造血性腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、シュワン腫などの中枢および末梢神経系の腫瘍;腺維肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫などの間葉系の腫瘍;または黒色腫、色素性乾皮症、角質棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞がん、奇形がん腫などのその他の腫瘍に適用することができることを特徴とする記載の抗がんカテプシン製剤。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントを有効成分として含有する抗がんカテプシン製剤を抗がん剤と併用することによって抗がん剤の感受性を増強することを特徴とする抗がん剤の感受性増強方法。
  8. 請求項7に記載の抗がん剤の感受性増強方法において、前記活性部位が配列表の配列番号1に記載するアミノ酸配列の配列番号98番目と283番目のアスパラギン酸を含む領域であることを特徴とする抗がん剤の感受性増強方法。
  9. 請求項7または8に記載の抗がん剤の感受性増強方法において、前記抗がん剤が、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗がん性抗生物質、微小管阻害剤などの細胞障害性抗がん剤または分子標的治療薬であることを特徴とする記載の抗がん剤の感受性増強方法。
  10. 請求項7ないし9のいずれか1項に記載の抗がん剤の感受性増強方法において、前記抗がん剤が、食道、頚部、甲状腺、胃、肝臓、肺(小細胞がんを含む)、乳房、すい臓、胆のう、腎臓、大腸、直腸、結腸、膀胱、前立腺、卵巣、皮膚(扁平上皮がんを含む)などのがん;リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫などのリンパ系列の造血性腫瘍;骨髄性白血病、骨髄異形性症候群、前骨髄性白血病等などの骨髄性系列の造血性腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、シュワン腫などの中枢および末梢神経系の腫瘍;腺維肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫などの間葉系の腫瘍;または黒色腫、色素性乾皮症、角質棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞がん、奇形がん腫などのその他の腫瘍に適用することができることを特徴とする抗がん剤の感受性増強方法。
  11. カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントをがん細胞に接触させることによって、がん細胞表面にTRAILを発現させることを特徴とするTRAILの発現方法。
  12. 請求項11に記載のTRAILの発現方法において、前記活性部位が配列表の配列番号1に記載するアミノ酸配列の配列番号98番目と283番目のアスパラギン酸を含む領域であることを特徴とするTRAILの発現方法。
  13. カテプシンEおよび/またはその活性部位からなるもしくはその活性部位を含む活性フラグメントをがん細胞に接触させてTRAILを発現させることによって、正常細胞には影響を及ぼすことなく実質的にはがん細胞だけを殺傷することを特徴とするがん細胞の殺傷方法。
  14. 請求項13に記載のがん細胞の殺傷方法において、前記活性部位が配列表の配列番号1に記載するアミノ酸配列の配列番号98番目と283番目のアスパラギン酸を含む領域であることを特徴とするがん細胞の殺傷方法。
  15. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の抗がんカテプシン製剤を用いて、がんを治療することを特徴とするがん治療方法。
  16. 請求項7ないし10のいずれか1項に記載の抗がん剤の感受性増強方法を用いて、がんを治療することを特徴とするがん治療方法。
  17. 請求項15または16に記載のがん治療方法において、前記抗がん剤が、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗がん性抗生物質、微小管阻害剤などの細胞障害性抗がん剤または分子標的治療薬であることを特徴とする記載のがん治療方法。
  18. 請求項15ないし17のいずれか1項に記載のがん治療方法において、前記抗がん剤が、食道、頚部、甲状腺、胃、肝臓、肺(小細胞がんを含む)、乳房、すい臓、胆のう、腎臓、大腸、直腸、結腸、膀胱、前立腺、卵巣、皮膚(扁平上皮がんを含む)などのがん;リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫などのリンパ系列の造血性腫瘍;骨髄性白血病、骨髄異形性症候群、前骨髄性白血病等などの骨髄性系列の造血性腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、シュワン腫などの中枢および末梢神経系の腫瘍;腺維肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫などの間葉系の腫瘍;または黒色腫、色素性乾皮症、角質棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞がん、奇形がん腫などのその他の腫瘍に適用することができることを特徴とするがん治療方法。
  19. TNF-α、FasL (CD95Lまたは Apo1L)、TRAIL(または Apo1L)などの腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーメンバーにより形成されていることを特徴とするTNFホモ三量体。
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