JP2005117993A - カテプシンeの腫瘍マーカーとしての用途およびカテプシンeならびにカテプシンdの腫瘍血管新生阻害療法のターゲットとしての用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 この発明の方法は、カテプシンEを扁平上皮ガンなどの腫瘍に対する腫瘍マーカーとして使用することからなっている。すなわち、血清中のカテプシンEを測定することによって、腫瘍細胞の発育増殖・転移能(悪性度)を判別することができる。
また、カテプシンDまたはカテプシンEはタンパク質または遺伝子として腫瘍細胞に導入される。この導入によって、カテプシンDのアンジオスタチン産生能ならびにカテプシンEのエンドスタチン産生能の亢進を誘導し、腫瘍細胞の発育増殖・転移を抑制することができる。
【選択図】 なし
Description
factor)の潜在型から活性型への変換を阻害することを明らかにし、二重のメカニズムで血管新生を抑制することを報告した(非特許文献6)。
DeClerck, Y.A., et al.:Eur.Cancer, 30A, 2170\2180, 1994 Siafaca, K.:FutureOncology, 1,185-199,1995 O'Reilly, M.S., et al.:Cell, 79,315-328,1994 Dong, Z., et al.:Cell,88, 801-810,1997 Gately, S/, et al.:Pro.Natl. Acid. Sci. USA 94,10868-10872,1997 Morikawa, W., et al.:J.Biol. Chem., 275(49), 38912-38920,2000 O'Reilly, M.S., et al.:Cell, 88, 277-285,1997 Felbor, U., et al.:EMBOJ., 19(6), 1187-1194,2000 R.J.A. von Moorselaar,et al.:Mol. Cell. Endocrinology,197,239-250, 2002 Yamamoto, K.:Proteases:New Perspectives (V.Turk, ed.), pp.59-71, Birkhauser Verlag, Basel,1999 Yasuda, Y., et al.:Eur.J. Biochem.,266,383-391,1999
また、この発明の別の目的は、カテプシンDまたはカテプシンEを腫瘍細胞に導入することからなる細胞導入法を提供するとともに、新たな腫瘍血管新生阻害療法を提供することである。
更に、カテプシンDまたはカテプシンEの産生能の差異によって腫瘍細胞の発育増殖・転移能、つまり悪性度ならびに予後を判別する方法を提供することを目的としている。
また、この発明の別の形態として、この発明は、カテプシンDまたはカテプシンEを腫瘍細胞に導入することからなる細胞導入法を提供する。この発明の形態における好ましい態様としては、カテプシンDまたはカテプシンEをタンパク質または遺伝子として腫瘍細胞に導入する方法が提供される。さらに、カテプシンDまたはカテプシンEを腫瘍組織・細胞に導入することによって新たな腫瘍血管新生阻害療法が提供される。
また、この発明によれば、カテプシンDおよびカテプシンEは、タンパク質としてまたはその遺伝子の形態で腫瘍組織・細胞に導入することができる。
5週齢ヌードマウスの背部皮下に各種ヒト前立腺癌細胞を1.5×107個の細胞数でリン酸緩衝溶液に懸濁し26ゲージ針にて移植し、経時的に腫瘍の発育増殖能を調べた。DU‐145およびLNCaPにおいては生着せず、またPPC−1、DU−145、PC−3、ALVA−41、ALVA−101ならびにLNCaP(ヒト前立腺癌細胞株)およびMCF−7(ヒト乳癌細胞株)においては生着し、カテプシンD量とアンジオスタチン産生能に逆比例した腫瘍増殖が認められた(図2)。
この結果から、カテプシンD分泌量の低い癌細胞ほど発育増殖能は高いことが判明した。
まず、カテプシンEを特異的に計測できる合成基質MOCAc−Gly−Ser−Pro−Ala−Phe−Phe−Arg−Leu−Ala−Lys(Dnp)−D−Arg−NH2を使用して、各種癌細胞の培養上清中のカテプシンE量を算出した。次に、エンドスタチン産生能をみるために、コラーゲンXVIIIのCOOH末端のNC1領域(0.5μg)と各種癌細胞培養上清(10μg)をpH6、37℃の条件にて12時間処理した。その際に、NC1よりエンドスタチンに変換した量比にてエンドスタチン産生能を算出した。血管内皮細胞の管腔形成阻害能をみるために、1×104個のヒト儕帯大静脈血管内皮細胞(HUVEC)をマトリゲル上に播種するとともに、NC1(20ng)と癌細胞培養上清(1μg)をpH6の条件にて添加し、37℃、5%CO2にて24時間培養した。24時間後の血管内皮細胞の管腔形成量をコントロールと比較して算出した。
その結果、図5に示すように、ヒト前立腺癌細胞から分泌されるカテプシンE量の多い細胞株ほどエンドスタチン産生能が高く、また、このエンドスタチン産生を介した血管内皮細胞の管腔形成阻害とも高い相関関係が認められた。
マトリゲルを用いてあらかじめ1×104個のヒト臍帯大静脈血管内皮細胞(HUVEC)で管腔を形成させておき(16時間、37℃、5%CO2にて培養)、それに各種ヒト前立腺癌細胞上清(10μg)とNC1(2μg)を加えて6時間処理した。管腔の破壊量を培養上清のみを添加したコントロールと比較し算出した。
その結果を図7に示すように、カテプシンEを多く含む細胞株ほど血管内皮細胞の管腔形成の阻害が強く認められた。
NC1(3.0μg)をそれぞれ精製ラットカテプシンD、精製ラットカテプシンEならびに精製ラットカテプシンLとともに種々のpHで酵素対基質比(W/W)1:20の下で、37℃で10時間処理した。次いで、反応生成物は還元条件でSDS−PAGEによって分析した。
その結果、図6Aで示すように、pH4では、NC1はカテプシンEによって完全に分解され、エンドスタチンは検出されなかった。しかし、癌形成領域pHであるpH5〜pH6では、NC1はカテプシンEによって限定的に分解され、エンドスタチンを安定的に産生した。なお、カテプシンDでもpH6でエンドスタチンが産生された。更に、pH5〜pH6で、カテプシンLもエンドスタチンを産生した。
NC1(5.0μg)をそれぞれ精製ラットカテプシンD、精製ラットカテプシンEならびに精製ラットカテプシンLとともにpH6でそれぞれの酵素対基質比(w/w)の下で、37℃で12時間処理した。次いで、反応生成物は還元条件でSDS−PAGEによって分析した。
その結果、図6Bに示すように、カテプシンEは、他の酵素に比較して、低濃度でエンドスタチンを産生した。
NC1(5.0μg)をそれぞれ精製ラットカテプシンD、精製ラットカテプシンEならびに精製ラットカテプシンLとともに酵素対基質比1:20(W/W)の下で、pH6、37℃で12時間処理した。次いで、反応生成物を還元条件でSDS−PAGEによって分析した。
その結果、図6CおよびDで示すように、カテプシンEは、他の酵素に比較して、速やかにエンドスタチンを産生し、それを長時間安定的に存在させた。
カテプシンEの発現の少ない前立腺癌細胞株(DU145細胞)に、リポフェクチン法によりヒトカテプシンE発現ベクター(pcDNA3.1−hCE)を導入した。
図10Aには、カテプシンE遺伝子を過剰発現させた癌細胞の細胞内および細胞外での酵素活性量を示した結果を示している。
マトリゲル上でのHUVECによる管腔形成に対して、カテプシンE遺伝子を過剰発現させたヒト前立腺癌細胞(DU145−hCE)の培養上清の効果を対照(DU145−MOCK:ベクターのみを発現させたもの)と比較した。
血管内皮細胞の管腔形成阻害能を比較するために、HUVECをマトリゲル上に播種するとともに、NC1(20ng)とカテプシンE遺伝子を過剰発現した癌細胞培養上清(0.2μg)をpH6の条件にて添加し、37℃、5%CO2にて24時間培養した。24時間後の血管内皮細胞の管腔形成量を対照(ベクターのみを遺伝子導入した癌細胞の培養上清を同一条件にて処理)と比較した(図10B)。図10Cは、培養上清による管腔形成阻害効果を、画像処理によって定量化したデータで示している。
これらの結果から、カテプシンEが過剰発現することによって管腔形成阻害効果が強くなっていることが明らかとなった。
カテプシンEの発現量の少ない前立腺癌細胞株(ALVA101)に、先と同様にリポフェクチン法によりヒトカテプシンE発現ベクターを遺伝子導入した。
カテプシンE遺伝子を過剰発現させた前立腺癌細胞(ALVA101−hCE)とベクターのみを導入した癌細胞(ALVA101−MOCK)をヌードマウス皮下に移植し、それぞれの発育増殖能と血管新生能の比較をした。その結果、図11Aに示すように、カテプシンE遺伝子を過剰発現させた癌細胞培養上清は、ベクターのみを導入したものに比べて、マトリゲル上での管腔形成を強く阻害した。ALVA101−hCEはALVA101−MOCKに比べてin vivoでの発育増殖能が強く抑制されるとともに(図11A)、血管新生能(血管内皮特異的マーカーである抗von Willebrand
factor抗体との反応性)も顕著に阻害されていることが分かった(図11B)。さらに、ALVA101−hCEを移植したヌードマウスの血清中のカテプシンE活性量はALVA101−MOCKを移植した場合に比べて有意に増加していた(図11B)。
ヒト前立腺癌細胞を5週齢ヌードマウス皮下に移植し、腫瘍径が1000mm3に発育増殖したところで精製したカテプシンEを腫瘍部に連日注射(1日につき200μg/kgを0.1mlのリン酸緩衝溶液に溶解)を10日間施行し、癌細胞の発育増殖に対する抑制効果を調べた。対照群ではリン酸緩衝溶液を同様にして腫瘍部に注射(0.1ml)した。また、投与終了3週間後に肺転移を観察した。
その結果、図12Aに示すように、対照群に対して、カテプシンEを投与した群では明らかに癌細胞の発育増殖が抑制されるとともに、肺転移も抑制された(図12B)。
前立腺癌細胞(ALVA−41)をヌードマウス皮下に移植し、腫瘍が500mm3に発育増殖したところで、カテプシンE発現プラスミド(pcDNA3.1−hCE)を29ゲージ針にて腫瘍部に注入し、即座にピンセット型電極にて腫瘍部を挟み込み、電気刺激(50V/0.5 msec、8回)を加えた(in vivoエレクトロポレーション法)。同様の操作を2日後に再度行なった。その後、経時的に癌細胞の発育増殖に対する抑制効果を調べた。対照群には発現ベクターのみ(pcDNA3.1)を注入し、同様の操作を行った。
その結果、図13に示すように、対照群に対して、カテプシンE遺伝子を導入した群では、遺伝子導入最終日4日目から明らかに癌細胞の発育増殖が抑制された(P<0.05)。
カテプシンEまたはDを存在または非存在下(カテプシンEあるいはカテプシンD量として0.2μg)で血管新生因子(60−80 ngのbFGF)含有ペレットを作成した。ネンブタールで6週齢Balb/cマウスを麻酔後、実体顕微鏡下にてマイクロメスとマイクロスパーテルを使用してマウス角膜へペレットを挿入し、5日後の血管新生能を比較した。
その結果、図15に示すように、カテプシンEを含ませたペレットは血管新生を強く阻害していることが分かった。
この実施例は、腫瘍細胞だけではなく、生体側のカテプシンEが腫瘍細胞に対する生体防御にどう影響するのかを調べる目的で行なった。
野生型マウスおよびカテプシンE欠損マウスにマウスメラノーマ細胞(K−1735M2.1x107)を尾静脈から注射して移植し腫瘍細胞の肺転移能を4週間後にコロニー形成を指標にして比較した。その結果、図16に示すように、カテプシンE欠損マウスでは、野生型マウスに比べ、明らかに癌細胞の肺転移が亢進されていることが分かった。このことは、腫瘍細胞から産生されるカテプシンEのみならず、宿主のもつカテプシンEも抗腫瘍作用をもつことを示していると共に、宿主生体防御系においてカテプシンEが重要の役割を果たしていることを示している。
ヒト口腔癌患者の血清中のカテプシンEおよびカテプシンD量を特異的合成基質を用いて測定した。その結果、図17で示すように、癌患者では、正常人に比べて、有意に血清中のカテプシンE量が低下していることが分かった。また、血清中のカテプシンE量は、癌の悪性度の高い患者ほど低い傾向が見られた。これに対して、カテプシンD量は、癌患者と正常人では有意な差は認められなかった。
腫瘍組織でカテプシンEによるエンドスタチン産生、カテプシンDによるアンジオスタチン産生が誘導されるならば、腫瘍血管新生が阻害され、腫瘍の発育増殖ならびに転移が抑制されると考えられる。このことは、この発明に係るカテプシンDおよびカテプシンEは、腫瘍の悪性度や予後のマーカーとなり得るばかりでなく、血管新生阻害療法に基づく癌治療に新たな道を開くものと期待される。
また、これまでに本発明者の研究から、カテプシンEは、生体防御系において重要な役割を果たしていることが示されている。特に、カテプシンEノックアウトマウスの解析から、該動物が一定環境下でアトピー性皮膚炎を発症することから、本酵素が細胞性免疫を担う重要酵素であることが示唆されている。
Claims (9)
- カテプシンEを腫瘍マーカーとして使用することを特徴とする使用方法。
- 請求項1に記載の使用方法において、前記腫瘍マーカーが扁平上皮ガンのマーカーであることを特徴とする使用方法。
- カテプシンDまたはカテプシンEを腫瘍細胞に導入することを特徴とする細胞導入法。
- 請求項3に記載の細胞導入法において、前記カテプシンDまたはカテプシンEをタンパク質として腫瘍組織・細胞に導入することを特徴とするタンパク質投与法。
- 請求項3に記載の細胞導入法において、前記カテプシンDまたはカテプシンEを遺伝子として腫瘍細胞に導入することを特徴とする細胞導入法。
- 腫瘍細胞の発育増殖能(悪性度)をカテプシンD分子のアンジオスタチン産生能の差によって判別することを特徴とする腫瘍細胞の発育増殖能の判別方法。
- 請求項6に記載の腫瘍細胞の発育増殖能の判別方法において、前記アンジオスタチン産生能が低い場合には腫瘍細胞の発育増殖能(悪性度)が高いと判定し、また、他方、前記アンジオスタチン産生能が高い場合には腫瘍細胞の発育増殖能(悪性度)が低いと判定することを特徴とする腫瘍細胞の発育増殖(悪性度)の判別方法。
- 請求項6または7に記載の腫瘍細胞の発育増殖能の判別方法において、前記アンジオスタチン産生能をカテプシンDのN型糖鎖に含まれるシアル酸含量に逆比例することによって推定することを特徴とする腫瘍細胞の発育増殖能の判別方法。
- 請求項6に記載の腫瘍細胞の発育増殖能の判別方法において、カテプシンEによって産生されるエンドスタチン量の差によって腫瘍細胞の発育増殖能および転移能を判別することを特徴とする腫瘍細胞の発育増殖能および転移能の判別方法。
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