しかしながら、上述した従来の装置では、まだ以下の課題が残されていた。
即ち、上記特許文献1に記載されている装置は、ロータに設けられた誘電体歯パターンの表面に現れる電荷を、プラスとマイナスとに交互に入れ換えることで、ロータを回転させている。そのため、ロータを一時的に回転させるステッピング動作でしか回転させることができなかった。そのため、ディスクを連続的且つ滑らかに回転させることが難しかった。
また、ロータが一時的に停止する度に、誘電体歯パターンと電極パターンとが接触するので、両者に損傷の可能性があると共に摩耗し易いものであった。そのため、振動や騒音が発生し易く、耐久性を低下させてしまうものであった。更には、接触により塵埃等が発生する可能性もあり、該ロータを搭載する機器、例えば、情報記録再生装置内の清浄度を一定に保つことができない恐れがあった。
また、誘電体を利用しているので、電極パターンへの電圧印加の切替を速くした場合には、電荷の切替が追いつかず、回転が不規則になってしまう可能性もあった。
また、特許文献2に記載の装置は、一般的なモータとは異なり、ディスク自体がロータを兼ねているものである。そのため、専用のディスクしか使用できず、使い難いものであった。
また、通常ディスクは、決められた規格にしたがって作られているものであり、厚みが薄く、高い剛性を有していない。そのため、ディスクをロータの如く使用する本装置においては、ディスクが撓んで変形する恐れがあった。よって、ディスクと回転駆動用電極板とのギャップを、面内で均一に保つことができなかった。
その結果、ディスクの回転中に、該ディスクと回転駆動用電極板とが接触する可能性があった。また、ディスク上には、該ディスクに情報を記録再生するためのヘッド部がフライングヘッド技術によって浮上した状態で配置されているが、このヘッド部に対してもディスクが干渉する恐れがあった。そのため、ディスク内に記録されている各種データに悪影響を与えたり、接触によって各構成品に悪影響を与えたりする恐れがあり、信頼性に劣るものであった。
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、接触による損傷や摩耗を防止しながら、ロータ板を介して記録媒体を連続的且つ滑らかに回転させることができ、低振動化、低騒音化及び耐久性を向上して、信頼性を向上することができるスピンドルモータ及び該スピンドルモータを有する情報記録再生装置を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明のスピンドルモータは、各種の情報を記録可能な円板状の記録媒体を、回転軸回りに回転駆動するスピンドルモータであって、前記回転軸に沿って配されたシャフトと、該シャフトの基端側を支持すると共に、前記回転軸に垂直な面内に沿って配されたステータ板と、前記シャフトに対して一定の隙間を空けた状態で挿着され、前記回転軸回りに回転可能であると共に、前記記録媒体を保持する保持部を外周面に有する回転体と、前記隙間に供給された導電性の流体を有し、前記回転体が回転する際のスラスト方向の力及びラジアル方向の力を支持する流体動圧軸受部と、前記ステータ板に対向する対向面を有し、前記回転体の基端側に固定されて共に回転するロータ板と、該ロータ板の対向面に設けられ、前記回転軸を中心とする円周方向に所定角度毎に複数配されたロータ電極部と、前記ステータ板の表面に設けられ、前記回転軸を中心とする円周方向に前記所定角度よりも狭い角度毎に複数配されたステータ電極部と、該複数のステータ電極部のうち、選択されたステータ電極部に対して所定の時間だけ駆動電圧を印加して、静電力により前記ロータ板を一定方向に回転させる電圧印加手段とを備え、前記複数のロータ電極部が、少なくとも前記ロータ板及び前記流体を介して接地されていることを特徴とするものである。
この発明に係るスピンドルモータにおいては、まず、ステータ板に基端側が支持されたシャフトに対して、回転体が一定の隙間を空けた状態で挿着されており、回転軸回りに回転可能な状態となっている。この際、シャフトと回転体との隙間には、導電性の流体、例えば、オイル等が供給されている。また、回転体の基端側に固定されたロータ板は、対向面がステータ板の表面に対向した状態となっている。これにより、ロータ電極部とステータ電極部とが、同様に互いに対向した状態となっている。
また、ロータ板の対向面には、回転軸を中心とする円周方向に向けて所定角度毎(例えば、30度毎)に複数のロータ電極部が設けられている。また、ステータ板の表面には、回転軸を中心とする円周方向に向けて上記所定角度よりも狭い角度毎(例えば、20度毎)に複数のステータ電極部が設けられている。これら両電極部の位置関係の違いにより、隣り合うロータ電極部の間には、必ずステータ電極部が位置している状態となっている。
ここで、電圧印加手段により、複数のステータ電極部のうち、選択したステータ電極部に所定の時間だけ駆動電圧を印加する。具体的には、ロータ電極部よりも回転方向(一定方向)側に位置するステータ電極部に駆動電圧を印加する。この際、複数のロータ電極部は、少なくともロータ電極部及び導電性の流体を介して予め接地されているので、印加されたステータ電極部とロータ電極部とに、それぞれプラスの電圧とマイナスの電圧とを印加したことになる。これにより、両電極部の表面には、それぞれプラス及びマイナスの電荷が誘起されると共にこれらが互いに引き合う静電力(静電吸引力)が発生する。
そして、この静電力の水平方向成分により、ロータ電極部は印加されたステータ電極部に向かって徐々に移動する。そして、ロータ電極部が印加されたステータ電極部に完全に対向した位置まで移動したと同時に、電圧印加手段はこの最初のステータ電極部への印加を停止すると共に、移動し始めたロータ電極部よりも回転方向(一定方向)側に位置する次のステータ電極部に駆動電圧を所定の時間だけ印加する。これにより、上述した動作が繰り返されロータ電極部がまた移動する。
その結果、ロータ板及び回転体を、回転軸回りに静電力を利用しながら回転させることができる。また、回転体には、保持部を介して記録媒体が保持されているので、該記録媒体を回転させることができる。
一方、回転体及びロータ板が回転し始めると、該回転体とシャフトとの間に供給されている流体の圧力が高まる。これにより回転体は、シャフトから離れると共にステータ板から浮上する。つまり、回転体は、回転に伴って発生するスラスト方向の力とラジアル方向の力とが流体動圧軸受部によって支持される。よって、回転体及びロータ板は、回転軸回りを滑らかに回転する。特に、玉軸受のように機械的な軸受とは異なり、オイル等の流体を利用した軸受であるので、振動を抑えた状態で滑らかに回転させることができる。そのため、騒音の発生も抑えることができる。
特に、本発明に係るスピンドルモータは、従来の誘電体歯パターンを利用してステッピング動作でしか回転させることができなかった装置とは異なり、選択したステータ電極部に電圧を次々と印加することで、予め接地されたロータ電極部を連続的且つ滑らかに回転させることができる。即ち、両電極部同士を一旦接触させて停止させることがない。よって、記録媒体を均一な速度で連続的且つ安定して回転させることができる。
また、両電極部を一旦接触させることがないので、両電極部の損傷や摩耗を防止できる。従って、低振動化及び低損音化を図ることができると共に、耐久性を向上することができる。また、接触による塵埃等の発生を防止することもできるので、ロータ板の周囲の清浄度を一定のレベルに保つことができ、記録媒体に悪影響を与えることがない。
また、従来の誘電体歯パターンのように、電圧を印加する毎に電荷が入れ変わることがないので、ロータ電極部は、印加されたステータ電極部に瞬時に応答して移動を始める。このことからも、高い追従性を確保でき、安定した滑らかな回転を実現できる。
更には、ロータ板を介して記録媒体を回転させるので、従来のものとは異なり、記録媒体が撓んで変形する恐れがない。そのため、他の構成品に接触して悪影響を及ぼすことがない。従って、信頼性を向上することができる。
上述したように、本発明のスピンドルモータによれば、接触による損傷や摩耗を防止しながら、ロータ板を介して記録媒体を連続的且つ滑らかに回転させることができ、低振動化、低騒音化及び耐久性を向上して、信頼性を向上することができる。
また、本発明のスピンドルモータは、上記本発明のスピンドルモータにおいて、前記複数のステータ電極部が、前記ロータ電極部の1つと前記ステータ電極部の1つとが完全に対向した位置関係になった時に、少なくとも隣接するロータ電極部の前記一定方向側近傍に、他のステータ電極部が位置するように設けられていることを特徴とするものである。
この発明に係るスピンドルモータにおいては、ロータ電極部の1つとステータ電極部の1つとが完全に対向した位置関係になった時に、少なくとも隣接するロータ電極部の前記一定方向側近傍に他のステータ電極部が常に位置している。つまり、ロータ電極部を他のステータ電極部に向けて静電力により移動させる際に、両電極部が既に近づいた状態となっている。特に静電力の大きさは、両電極部間の距離に反比例するので、ロータ電極部を他のステータ電極部に向けて、より速い速度で速やかに移動させることができる。従って、記録媒体をより安定した状態で回転させることができる。
また、本発明のスピンドルモータは、上記本発明のスピンドルモータにおいて、前記複数のステータ電極部が、それぞれ周方向に向かう幅が前記複数のロータ電極部のそれぞれの幅よりも狭く形成されていると共に、それぞれが近接した状態で隣り合うように配置され、前記電圧印加手段が、前記複数のステータ電極のうち、前記複数のロータ電極部の略中心から、少なくとも該ロータ電極部の幅の1/2分だけ前記一定方向に向かった範囲内に位置するステータ電極部に対して、前記駆動電圧を印加することを特徴とするものである。
この発明に係るスピンドルモータにおいては、各ステータ電極部の周方向に向かう幅が、ロータ電極部の周方向に向かう幅よりも狭く形成されている。例えば、ロータ電極部の幅よりも1/3程度の幅で形成されている。そして、この幅の小さいステータ電極は、それぞれ近接した状態で隣り合うようにして配置されている。即ち、複数のステータ電極部は、回転軸を中心とする円周方向に、例えば、3〜4度の角度毎に複数配されている。これにより、複数のロータ電極部がどこに位置していても、各ロータ電極部に対向した状態で必ず3個程度のステータ電極部が位置している状態となっている。
そして、電圧印加手段は、これら複数のステータ電極のうち、ロータ電極部の略中心から、少なくとも該ロータ電極部の幅の1/2分だけ一定方向(回転方向)に向かった範囲内に位置するステータ電極に対して駆動電圧を印加する。つまり、ロータ電極部に近接し、且つ、該ロータ電極部の移動に寄与するステータ電極部のみに集中して駆動電圧を印加する。特に静電力の大きさは、両電極部間の距離に反比例するので、ロータ電極部をより強い静電力で引っ張ることができ、より速い速度で速やかに移動させることができる。従って、記録媒体をより安定した状態で回転させることができる。
なお、電圧印加手段は、上述した位置関係を維持するように、ロータ電極部の移動に伴ってステータ電極部への印加を順次変化させている。また、ステータ電極部の幅をできるだけ狭くし、且つ、ステータ電極部の数を極力増やしているので、静電力の変動幅を小さくすることができる。よって、上述した効果をさらに高めることができる。
また、本発明のスピンドルモータは、上記本発明のいずれかのスピンドルモータにおいて、前記ロータ板の対向面又は前記ステータ板の表面の少なくともいずれか一方には、前記ロータ電極部又は前記ステータ電極部を覆うように保護膜が設けられていることを特徴とするものである。
この発明に係るスピンドルモータにおいては、ロータ電極部又はステータ電極部の少なくともいずれか一方を覆うように保護膜が設けられているので、回転中に何らかの原因によりロータ板に外力が加わったとしても、保護膜が介在しているので直接ロータ電極部とステータ電極部とが接触することがない。よって、両電極部の機械的な損傷を防止することができると共に、放電による損傷を防止することができる。従って、品質を向上することができると共に、耐久性をさらに高めることができる。
また、本発明のスピンドルモータは、上記本発明のスピンドルモータにおいて、前記保護膜上には、潤滑膜が塗布されていることを特徴とするものである。
この発明に係るスピンドルモータにおいては、保護膜上にさらに潤滑膜が塗布されているので、上述したように回転中に何らかの原因によりロータ板に外力が加わり、ロータ板若しくはステータ板と潤滑膜とが接触、或いは、潤滑膜同士が接触したとしても、接触時の摩擦力を低減することができる。そのため、回転速度の低下を極力抑えることができる。また、接触時の抵抗を極力抑えることができるので、省電力化を図ることができる。
また、回転駆動時においてロータ板が滑り易いので、起動特性を向上することができる。この点からも、省電力化を図ることができる。
また、本発明のスピンドルモータは、上記本発明のいずれかスピンドルモータにおいて、前記ロータ板の対向面又は前記ステータ板の表面の少なくともいずれか一方には、前記ロータ電極部又は前記ステータ電極部を覆うように、固体潤滑膜が設けられていることを特徴とするものである。
この発明に係るスピンドルモータにおいては、ロータ電極部又はステータ電極部の少なくともいずれか一方を覆うように、保護膜と潤滑膜との両方の機能を兼ね備えた固体潤滑膜が設けられている。よって、回転中に何らかの原因によりロータ板に外力が加わったとしても、固体潤滑膜が介在されているので、直接ロータ電極部とステータ電極部とが接触することがない。そのため、両電極部の機械的な損傷を防止することができると共に、放電による損傷を防止することができる。従って、品質を向上することができると共に、耐久性をさらに高めることができる。
更には、接触時の摩擦力を低減することができ、回転速度の低下を極力抑えることができる。また、接触時の抵抗を極力抑えることができるので、省電力化を図ることができる。加えて、回転駆動時においてロータ板が滑り易いので、起動特性を向上することができる。この点からも、省電力化を図ることができる。
また、本発明のスピンドルモータは、上記本発明のいずれかのスピンドルモータにおいて、前記シャフトと前記回転体との間には、前記ロータ板と前記ステータ板との間を少なくとも規定値だけ離間させる位置決め部が設けられていることを特徴とするものである。
この発明に係るスピンドルモータにおいては、シャフトと回転体との間に位置決め部が設けられので、ロータ板とステータ板との間の隙間を、少なくとも規定値分だけ確実に空けることができる。そのため、両電極部が接触することがなく、より安定した回転性を得ることができる。また、停止中であってもロータ板とステータ板とが接触しないので、起動特性を高めることができる。そのため、起動時の負荷を少なくでき、さらなる省電力化を図ることができる。
また、本発明のスピンドルモータは、上記本発明のいずれかのスピンドルモータにおいて、前記シャフトが、円柱状に形成され、前記流体動圧軸受部が、前記回転体に対向するシャフトの上面又は前記ロータ板に対向する回転体の下面の少なくともいずれか一方に形成されて前記スラスト方向の力を支持するスラスト用動圧溝と、シャフトの外周面に形成されて前記ラジアル方向の力を支持するラジアル用動圧溝とを備えていることを特徴とするものである。
この発明に係るスピンドルモータにおいては、回転体が回転し始めると、回転体とシャフトとの間に供給された流体が、スラスト用動圧溝及びラジアル用動圧溝に沿って流れ始めて徐々に圧力が高まる。すると、回転体は、まずスラスト用動圧溝によって発生した圧力によりロータ板から浮上すると共に、ラジアル用動圧溝によって発生した圧力によりシャフトから離間した状態で回転する。つまり、流体動圧軸受部は、回転時に回転体に発生するスラスト方向の力及びラジアル方向の力を支持している。その結果、回転体はシャフトの周囲を横ぶれ等がない状態で滑らかに回転する。このように、両動圧溝を設けることで、回転体及び該回転体に固定されたロータ板を、振動を抑えた状態で確実且つ安定に回転させることができる。
なお、回転体は、回転時にロータ電極部とステータ電極部との間に働く静電力も同時に受けているので、浮上する方向とは逆方向に引っ張られて回転バランスが保たれている。この点からも安定した回転を維持できる。
また、本発明のスピンドルモータは、上記本発明のスピンドルモータにおいて、前記シャフトの外周面には、所定の厚さだけ半径方向外方に延びて拡径した鍔状のフランジ部が形成され、前記流体動圧軸受部が、前記フランジ部の下面に形成されて前記スラスト方向の力を支持する第2のスラスト用動圧溝を備えていることを特徴とするものである。
この発明に係るスピンドルモータにおいては、回転体の回転に伴ってフランジ部の下面に形成された第2のスラスト用動圧溝に沿って流体が流れて圧力が高まる。すると、回転体は、第2のスラスト用動圧溝によって発生した圧力を受けてステータ板に向かう方向、即ち、浮上する方向とは逆方向に力を受けて、押し付けられた状態となる。つまり、流体動圧軸受部は、回転軸に沿って互いに逆方向に向かう2つのスラスト力を支持することができる。これにより、回転体は、この2つのスラスト力によって、浮上する力と押し付けられる力とを受けると共に、ロータ電極部とステータ電極部との間に働く静電力を受けることになる。その結果、回転体は3つの力のバランスによって、スラスト方向に対してより安定した状態で回転する。従って、回転時のさらなる低振動化及び低騒音化を図ることができると共に、流体動圧軸受部をより安定して作動させることができる。
また、本発明の情報記録再生装置は、上記本発明のいずれかのスピンドルモータと、前記記録媒体に情報を記録再生する記録再生ヘッドと、該記録再生ヘッドを、前記記録媒体の表面上から浮上させた状態で支持するサスペンションと、該サスペンションの基端側を支持すると共に、該サスペンションを前記記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、前記記録再生ヘッドの作動を制御して、記録再生を行わせる制御部とを備えていることを特徴とするものである。
この発明に係る情報記録再生装置においては、スピンドルモータで記録媒体を一定方向に回転させた後、アクチュエータによりサスペンションを移動させて、記録再生ヘッドを記録媒体上の所望する位置に配置させる。この際、サスペンションは、記録再生ヘッドを、記録媒体の表面からフライングヘッド技術により浮上させた状態で支持している。その後、制御部により指示を出して、記録再生ヘッドを作動させる。これにより、記録再生ヘッドを利用して、記録媒体に対して各種情報の記録再生を行うことができる。
特に、記録媒体を連続的且つ滑らかに回転させるスピンドルモータを備えているので、情報の記録再生を正確に行うことができ、高品質化を図ることができる。また、低振動、低騒音で耐久性が向上したスピンドルモータでもあるので、この点からも高品質化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。
(第1実施形態)
以下、本発明に係るスピンドルモータ及び情報記録再生装置の第1実施形態を、図1から図10を参照して説明する。なお、図6、図9及び図10は、周方向に沿った断面を展開した状態で図示している。
本実施形態の情報記録再生装置1は、図1に示すように、スピンドルモータ2と、磁気ディスクD(以下、単にディスクDという)(円板状の記録媒体)に各種の情報を記録再生する磁気ヘッド(記録再生ヘッド)3と、該磁気ヘッドをディスクDの表面上から浮上させた状態で支持するサスペンション4と、該サスペンション4の基端側を支持すると共に、該サスペンション4をディスクDの表面に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ5と、磁気ヘッド3の作動を制御して、記録再生を行わせる制御部6と、該制御部6と磁気ヘッド3とを接続するコード部7と、これら各構成品を収容するハウジング8とを備えている。
ハウジング8は、アルミニウム等の金属材料により、上面視四角形状に形成されていると共に、内側に各構成品を収容する凹部8aが形成されている。また、このハウジング8には、凹部8aの開口を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。凹部8aの略中心には、上記スピンドルモータ2が取り付けられており、該スピンドルモータ2の後述するハブ20に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定される。
また、凹部8aの隅角部には、上記アクチュエータモータ5が取り付けられている。このアクチュエータモータ5には、軸受9を介してキャリッジ10が取り付けられており、該キャリッジ10の先端にサスペンション4が取り付けられている。そして、キャリッジ10及びサスペンション4は、アクチュエータモータ5の駆動によって共に上記XY方向に移動可能とされている。
なお、キャリッジ10及びサスペンション4は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータモータ5の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。上記光信号コントローラ7は、このアクチュエータモータ5に隣接するように、凹部8a内に取り付けられている。
磁気ヘッド3は、図示しないコイル部を有しており、記録を行う場合には、制御部からの指示を受けて記録させたい情報を磁気信号として出力して、ディスクD上に記録を行うようになっている。また、再生を行う場合には、ディスクDから出力されている磁気信号をコイル部で読み取って、制御部14に送っている。これにより、ディスクDに各種の情報を記録再生することができるようになっている。
上記スピンドルモータ2は、上記ディスクDを回転軸L回りに回転駆動するモータであって、図2に示すように、回転軸Lに沿って配されたシャフト15と、該シャフト15の基端側を支持すると共に、回転軸Lに垂直な面内(XY方向に沿った水平面内)に沿って配されたステータ板16と、シャフト15に対して一定の隙間を空けた状態で挿着され、回転軸L回りに回転可能であると共に、ディスクDを保持する段部(保持部)20aを外周面に有する回転体17と、上記隙間に供給された導電性のオイル(流体)Wを有し、回転体17が回転する際のスラスト方向の力及びラジアル方向の力を支持する流体動圧軸受部18と、ステータ板16に対向する対向面19aを有し、回転体17の基端側に固定されて共に回転するロータ板19とを備えている。
なお、本実施形態においては、ステータ板16が、図1に示すようにハウジング8の底板を兼ねているものとする。但し、この場合に限られず、ハウジング8の底板上にステータ板を取り付けても構わない。
上記シャフト15は、図2に示すように、円柱状に形成されており、ハウジング8の略中心位置でステータ板16上に立設されている。また、シャフト15の上面には、図3に示すように、外縁から中心に向かって湾曲する動圧溝(スラスト用動圧溝)15aが複数形成されている。つまり、複数の動圧溝15aは、全体で風車形状となっている。これにより、回転体17が回転したときにオイルWは、動圧溝15aに沿いながら中心に向かって流れるようになっている。即ち、この動圧溝15aは、スラスト方向の力を支持するスラスト軸受部として機能するものである。
また、シャフト15の外周面には、図2に示すように、直線状の溝が合流点15cで合わさったV字状の動圧溝(ラジアル用動圧溝)15bが、上下2段に隣接した状態で形成されている。この際、動圧溝15bは、回転体17が回転したときに、合流点15cが後から追いかけるような形で回転するように、V字が横向きになった状態で形成されている。これにより、回転体17が回転したときに、オイルWが動圧溝15bに沿って回転方向とは逆方向に流れるようになっている。即ち、この動圧溝15bは、ラジアル方向の力を支持するラジアル軸受部として機能するものである。なお、本実施形態では、この動圧溝15bを上下2段に形成したが、この場合に限られず、1段でも構わないし、3段以上に分けて形成しても構わない。また、2つの動圧溝15bをそれぞれ離間した状態で形成しても構わない。
上記回転体17は、カップ状に形成されたハブ20と、該ハブ20内に嵌合固定された円筒状のスリーブ21とから構成されている。つまり、回転体17は、スリーブ21とシャフト15との間に隙間を空けた状態でシャフト15に対して挿着されている。そして、シャフト15とスリーブ21との間に、オイルWが供給されて充満した状態になっている。また、ハブ20の外周面に、上記段部20aが形成されている。これにより、ディスクDをハブ20内に嵌めこんだときに、該ディスクDが段部20aに接触して保持されるようになっている。
また、スリーブ21の下面には、図4に示すように、上記シャフト15の上面と同様に、外縁から回転軸Lに向かって湾曲する動圧溝(スラスト用動圧溝)21aが複数形成されている。つまり、複数の動圧溝21aは、全体で風車形状となっている。これにより、回転体17が回転したときにオイルWは、動圧溝21aに沿いながら中心に向かって流れるようになっている。即ち、この動圧溝21aは、スラスト方向の力を支持するスラスト軸受部として機能するものである。即ち、この動圧溝21a、上記動圧溝15a、15b及びオイルWは、上述した流体動圧軸受部18を構成している。
上記ロータ板19は、図2に示すように、ディスクDと略同じサイズで円板状に形成されており、ハブ20の下部とスリーブ21の外周面とに接触した状態で固定されている。なお、ロータ板19のサイズは、上述した場合に限られず、ディスクDより大きくても構わないし、小さくても構わない。また、ロータ板19とスリーブ21との間には、図示しないシールが設けられており、シャフト15とスリーブ21との間に供給されているオイルWがロータ板19側に流入しないようになっている。
また、このロータ板19の対向面19aには、図5及び図6に示すように、回転軸Lを中心とする円周方向に所定角度θ1、即ち、30度毎に複数配された扇状のロータ電極部25が設けられている。なお、本実施形態では、ロータ板19の対向面19aに複数のロータ電極部25を接着や蒸着等により形成している。また、この複数のロータ電極部25は、ロータ板19、スリーブ21、オイルW、ステータ板16を介して予め接地された状態となっている。
また、ステータ板16には、図6及び図7に示すように、ロータ板19に対向する円領域内において、回転軸Lを中心とする円周方向に向けて、上記所定角度θ1(30度)よりも狭い角度θ2、例えば、20度毎に複数配された扇状のステータ電極部26が設けられている。なお、本実施形態では、図6に示すように、ロータ電極部25の周方向の幅W1と、ステータ電極部26の幅W2が同じサイズになるように、該ステータ電極部26を形成している。
また、上述した両電極部25、26の配置関係により、隣り合うロータ電極部25の間には、必ずステータ電極部26が位置している状態となっている。更には、ロータ電極部25の1つと、ステータ電極部26の1つとが完全に対向した位置関係になったときに、少なくとも隣接するロータ電極部25の一定方向(回転方向)側近傍に、他のステータ電極部26が常に位置するようになっている。つまり、本実施形態では、ロータ電極部25の間隔(ピッチ)は、ステータ電極部26の間隔(ピッチ)の1.5倍となっている。
また、複数のステータ電極部26は、図2に示すように、それぞれ図示しない配線を介して電圧印加部(電圧印加手段)27に電気的に接続されている。この電圧印加部27は、複数のステータ電極部26のうち、選択したステータ電極部26に対してのみ所定の時間だけ駆動電圧を印加するようになっており、この電圧印加を繰り返し行うことで、静電力を利用してロータ板19を一定方向に回転させている。これについては、後に詳細に説明する。
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する場合について以下に説明する。
まず、電圧印加部27により、複数のステータ電極部26のうち、選択したステータ電極部26に所定の時間だけ駆動電圧を印加する。具体的には、図8(a)に示すように、ロータ電極部25よりも一定方向(回転方向)側に位置するステータ電極部26(S1、S4ポジション)に駆動電圧を印加する。この際、複数のロータ電極部25は、予め全て接地されているので、印加されたステータ電極部26とロータ電極部25とに、それぞれプラスの電圧とマイナスの電圧とを印加したことになる。これにより、両電極部25、26の表面には、それぞれプラス及びマイナスの電荷が誘起されると共に、これらが互いに引き合う静電力(静電吸引力)Fが発生する。
そして、この静電力Fの水平方向成分により、ロータ電極部25は、図8(b)に示すように、印加されたステータ電極部26(S1、S4ポジション)に向かって徐々に移動する。そして、図8(c)に示すように、ロータ電極部25が、印加されたステータ電極部26に完全に対向する位置まで移動したと同時に、電圧印加部27は、このステータ電極部26への印加を停止すると共に、移動し始めたロータ電極部25よりも一定方向(回転方向)側に位置する次のステータ電極部26(S3ポジション)に駆動電圧を印加する。これにより、上述した動作が繰り返され、ロータ電極部25がまた移動する。
その結果、ロータ板19及び回転体17を、静電力Fを利用しながら一定方向に向けて回転軸L回りに回転させることができる。また、ハブ20には、段部20aによってディスクDが保持されているので、回転体17を介してディスクDを回転させることができる。
一方、回転体17が回転し始めると、シャフト15とスリーブ21との間の隙間に供給されているオイルWが各動圧溝15a、15b、21aに沿って流れ始める。
まず、スリーブ21の下面付近のオイルWが、動圧溝21aに沿いながら回転軸Lに向かって流れ始める。これにより、回転軸Lに近い側の圧力が高まる。よって、スリーブ21がロータ板17から浮上する。また、これと同時にシャフト15の上面付近のオイルWが、動圧溝15aに沿いながら回転軸Lに向かって流れ始める。これにより、回転軸Lに近い側の圧力が高まる。よって、ハブ20がシャフト15から浮上する。
これらの結果、図6に示すように、ロータ電極部25とステータ電極部26との間が、所定距離Gだけ確実に離間した状態となる。よって、ロータ板19及び回転体17が共に安定に浮き上がった状態で回転する。
また、シャフト15の外周面付近のオイルWは、上下2段に分かれた動圧溝15bに沿いながら回転方向とは逆方向に流れ始める。そして、動圧溝15bに沿って流れたオイルWは、合流点15cで最も高い圧力となる。これにより、スリーブ21は、ラジアル方向の力が2点で支持された状態となり、シャフト15から離れた状態で回転する。よって、回転体17は、横ぶれがない状態で安定に回転することができる。
このように、流体動圧軸受部18は、回転時に発生するスラスト方向の力及びラジアル方向の力を支持する。その結果、回転体17は、シャフト15の周囲を滑らかに回転する。特に、玉軸受けのように機械的な軸受とは異なり、オイルWを利用した軸受であるので、振動を抑えた状態で滑らかに回転させることができる。そのため、騒音の発生を極力抑えることができる。
上述したように、スピンドルモータ2によってディスクDを回転させた後、図1に示すように、アクチュエータ5を作動させて、キャリッジ10を介してサスペンション4をXY方向にスキャンさせる。これにより、ディスクD上の所望する位置に磁気ヘッド3を位置させることができる。次いで、制御部6によって磁気ヘッド3を作動させる。これを受けて、磁気ヘッド3は、記録させたい情報を磁気信号として出力して、ディスクD上に記録を行ったり、ディスクから出力されている磁気信号を読み取って再生を行ったりする。その結果、磁気ヘッド3を利用して、ディスクDに各種の情報を記録再生することができる。
特に、本実施形態のスピンドルモータ2は、従来の誘電体歯パターンを利用してステッピング動作でしか回転させることができなかった装置とは異なり、選択したステータ電極部26に電圧を次々と印加することで、予め接地されたロータ電極部25を連続的且つ滑らかに回転させることができる。即ち、両電極部25、26同士を一旦接触させて停止させることがない。よって、ディスクDを均一な速度で連続的且つ安定して回転させることができる。
しかも、本実施形態では、図8(a)に示すように、ロータ電極部25の間隔(ピッチ)が、ステータ電極部26の間隔(ピッチ)の1.5倍となっているため、ロータ電極部25の1つ(R2ポジション)とステータ電極部26の1つ(S2ポジション)とが完全に対向した位置関係になった時に、少なくとも隣接するロータ電極部25(R3ポジション)の一定方向側近傍に他のステータ電極部26(S4ポジション)が常に位置している。つまり、ロータ電極部25を他のステータ電極部26に向けて静電力Fにより移動させる際に、両電極部25、26が既に近づいた状態となっている。特に静電力Fの大きさは、両電極部25、26間の距離に反比例するので、ロータ電極部25を他のステータ電極部26に向けて、より速い速度で速やかに移動させることができる。従って、ディスクDをより安定した状態で回転させることができる。
また、両電極部25、26を一旦接触させることがないので、両電極部25、26の損傷や摩耗を防止できる。従って、低振動化及び低損音化を図ることができると共に、耐久性を向上することができる。また、接触による塵埃等の発生を防止することもできるので、ロータ板19の周囲の清浄度を一定に保つことができ、ディスクDに悪影響を与えることがない。
また、従来の誘電体歯パターンのように、電圧を印加する毎に電荷が入れ変わることがないので、ロータ電極部25は、印加されたステータ電極部26に瞬時に応答して移動を始める。このことからも、高い追従性を確保でき、安定した滑らかな回転を実現できる。
更には、ロータ板19を介してディスクDを回転させるので、従来のものとは異なり、ディスクDが撓んで変形する恐れがない。そのため、他の構成品、例えば、磁気ヘッド3に接触して悪影響を及ぼすことがない。従って、信頼性を向上することができる。
上述したように、本実施形態のスピンドルモータ2によれば、接触による損傷や摩耗を防止しながら、ロータ板19を介してディスクDを連続的且つ滑らかに回転させることができ、低振動化、低騒音化及び耐久性を向上して、信頼性を向上することができる。
また、本実施形態の情報記録再生装置1によれば、ディスクDを連続的且つ滑らかに回転させるスピンドルモータ2を備えているので、情報の記録再生を正確に行うことができ、高品質化を図ることができる。また、低振動、低騒音で耐久性が向上したスピンドルモータ2でもあるので、この点からも高品質化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。
なお、上記第1実施形態において、図9に示すように、ロータ板19の対向面19a及びステータ板16の表面に、それぞれロータ電極部25及びステータ電極部26を覆う保護膜30を設けても構わない。
こうすることで、回転中に何らかの原因によりロータ板19に外力が加わったとしても、保護膜30同士が接触するので、直接ロータ板19とステータ板16とが接触することがない。よって、両電極部25、26の機械的な損傷を防止することができると共に、放電による損傷を防止することができる。従って、品質を向上することができると共に、耐久性をさらに高めることができる。
なお、ロータ板19及びステータ板16の両方に保護膜30を設けた構成にしたが、この場合に限られず、いずれか一方にのみ保護膜30を設けても良い。
また、上述した保護膜30を設けた場合において、図10に示すように、さらに保護膜30上に潤滑膜31を塗布しても構わない。この際、図10に示すように、一方の保護膜30に潤滑膜31を塗布しても構わないし、両方の保護膜30上に潤滑膜31を塗布しても構わない。
このように潤滑膜31を塗布することで、回転中に何らかの原因によりロータ板19に外力が加わり、保護膜30と潤滑膜31とが接触したとしても、接触時の摩擦力を低減することができる。そのため、回転速度の低下を極力抑えることができる。また、接触時の抵抗を極力抑えることができるので、省電力化を図ることができる。また、回転駆動時においてロータ板19が滑り易いので、起動特性を向上することができる。この点からも、省電力化を図ることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明に係るスピンドルモータの第2実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。また、図11は、円周方向に沿った断面を展開した状態を図示している。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、ロータ電極部25の周方向に向かう幅W1と、ステータ電極部26の周方向に向かう幅W2とが同じ大きさであったのに対し、第2実施形態のステータ電極部41は、周方向に向かう幅W3がロータ電極部25の幅W1よりも狭く形成されていると共に、周方向に狭いピッチで密集した状態で配置されている点である。
即ち、本実施形態のスピンドルモータ40は、図11及び図12に示すように、各ステータ電極部41の幅W3がロータ電極部25の幅W1よりも約1/3程度の幅で形成されている。そして、この幅の小さいステータ電極部41は、それぞれ近接した状態で隣り合うようにして配置されている。即ち、複数のステータ電極部41は、回転軸Lを中心とする円周方向に、例えば、3〜4度の角度θ3毎に複数配置されている。これにより、複数のロータ電極部25がどこに位置していても、各ロータ電極部25に対向した状態で必ず3個程度のステータ電極部41が位置している状態となっている。
また、本実施形態のロータ電極部25は、ロータ板19と一体的に構成されている。即ち、導電性を有する材料でロータ板19を形成すると共に、対向面19aの所定位置を削って凹部19bを形成している。これにより、削られていない部分(突出した部分)を、ロータ電極部25として利用することができる。
また、ステータ板16の表面には、上記複数のステータ電極部41を覆うように、保護膜と潤滑膜とを兼ね備えた固体潤滑膜42が設けられている。
このように構成されたスピンドルモータ40を作動させる場合には、図12に示すように、電圧印加部27が複数のステータ電極部41のうち、ロータ電極部25の略中心から、該ロータ電極部25の幅の1/2分だけ一定方向(回転方向)に向かった範囲内(A1、A2、A3エリア)に位置するステータ電極部41に対して駆動電圧を印加する。
つまり、ロータ電極部25に近接し、且つ、ロータ電極部25の移動に寄与するステータ電極部41のみに集中して駆動電圧を印加する。特に静電力Fの大きさは、両電極部25、41間の距離に反比例するので、ロータ電極部25を、より強い静電力Fで引っ張ることができ、より速い速度で速やかに移動させることができる。
更に、周方向の幅W3が狭いステータ電極部41を近接した状態で配置しているので、全てのロータ電極部25(R1、R2、R3ポジション)を常に同時に移動させ続けることができる。従って、ディスクDをより安定した状態で回転させることができる。
なお、電圧印加部27は、上述した位置関係を維持するように、ロータ電極部25の移動に伴ってステータ電極部41への印加を順次変化させている。また、ステータ電極部41の幅W3をできるだけ狭くし、且つ、ステータ電極部41の数を増やしているので、静電力Fの変動幅を小さくすることができる。よって、上述した効果をさらに高めることができる。
また、ステータ電極部41を覆うように保護膜と潤滑膜との両方の機能を兼ね備えた固体潤滑膜42が設けられているので、回転中に何らかの原因によりロータ板19に外力が加わったとしても、ロータ板19とステータ板16とが直接接触することがない。そのため、両電極部25、41の機械的な損傷を防止することができると共に、放電による損傷を防止することができる。従って、品質を向上することができると共に、耐久性をさらに高めることができる。
また、接触時の摩擦力を低減することができ、回転速度の低下を極力抑えることができる。更に、接触時の抵抗を極力抑えることができるので、省電力化を図ることができる。加えて、回転駆動時においてロータ板19が滑り易いので、起動特性を向上することができる。この点からも、省電力化を図ることができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態において、図13に示すように、シャフト15と回転体17との間に、ロータ板19とステータ板16との間を少なくとも規定値だけ離間させる突起部(位置決め部)50を設けても構わない。この突起部50は、図13に示すように、シャフト15の上面に設けても構わないし、ハブ20の下面に設けても構わない。また、突起部50の高さとしては、ロータ板19の浮上量よりも低く形成する。
このように突起部50を設けることで、ロータ板19とステータ板16との間の隙間Gを少なくとも規定値分だけは確実に空けることができる。そのため、両電極部25、26(41)が接触することがなく、より安定した回転性を得ることができる。また、停止中であってもロータ板19とステータ板16とが接触しないので、起動特性を高めることができる。そのため、起動時の負荷を少なくでき、さらなる省電力化を図ることができる。
また、上記各実施形態では、2つの動圧溝、即ち、シャフト15の上面に形成した動圧溝15a及びスリーブ21の下面に形成した動圧溝21aをスラスト用動圧溝としたが、動圧溝を2つ設ける必要はなく、少なくともいずれか一方の動圧溝15a(若しくは21a)を形成すれば構わない。但し、本実施形態のように両動圧溝15a、21aを同時に形成することが好ましい。
また、図14に示すように、シャフト15にフランジ部60を形成すると共に、該フランジ部60の下面に図15に示す動圧溝(第2のスラスト用動圧溝)60aを形成しても構わない。
このフランジ部60は、図14に示すように、シャフト15の外周面から所定の厚さだけ半径方向外方に延びて拡径して鍔状に形成されたものである。なお、図14においては、シャフト15の上面にフランジ部60が形成された場合を例に挙げている。但し、この場合に限られず、例えば、シャフト15の中間付近にフランジ部60を形成しても構わない。
そして、フランジ部60の下面には、図15に示すように、スリーブ21の下面に形成された動圧溝21aと同様に、外縁から回転軸Lに向かって湾曲する上記動圧溝60aが複数形成されている。つまり、複数の動圧溝60aは、全体で風車形状となっている。これにより、回転体17が回転したときに、オイルWが動圧溝60aに沿いながら中心に向かって流れるようになっている。即ち、この動圧溝60aは、スラスト方向の力を支持するスラスト軸受部として機能するようになっている。
上述したように下面に動圧溝60aが形成されたフランジ部60を有する場合には、回転体17が回転し始めると、オイルWが各動圧溝15a、15b、21a、60aに沿って流れ始め、それぞれの位置で圧力が高まりだす。この際、動圧溝15bに沿って流れたオイルWは、合流点15cで最も高い圧力となる。そのため、回転体17を構成するスリーブ21は、ラジアル方向の力が2点で支持された状態となり、シャフト15から離れた状態で回転する。これにより、回転体17は横ぶれがない状態で安定に回転することができる。
一方、動圧溝15a、21aに沿って流れたオイルWは、回転軸Lに近い側で圧力が最も高まる。そのため、回転体17及びロータ板19は、ステータ板16から浮き上がる。これと同時に、フランジ部60の下面に形成された動圧溝60aに沿って流れたオイルWは、やはり同様に回転軸Lに近い側で圧力が高まる。ところが、この動圧溝60aで発生する圧力は、固定されたシャフト15に形成されたフランジ部60の下面側に発生している。そのため、回転体17はこの圧力を受けてステータ板16に向かう方向、即ち、浮上する方向とは逆方向に力を受けて、押し付けられた状態となる。つまり、この場合の流体動圧軸受部18は、回転軸Lに沿って互いに逆方向に向かう2つのスラスト力を支持することができる。
そして、回転体17は、この2つのスラスト力によって、浮上する力と押し付けられる力とを同時に受けながら回転する。また、回転体17は、ロータ電極部25とステータ電極部26との間に働く静電力Fの影響も同時に受けるので、該静電力Fによってステータ板16側に引っ張られる。
つまり、回転体17及びロータ板19は、この3つの力のバランスによってスラスト方向に対してより安定した状態で回転する。特に、静電力Fだけでなく、スラスト力をも利用して回転体17及びロータ板19を押し付けることができるので、より回転が安定する。その結果、回転時のさらなる低振動化及び低損音化を図ることができると共に、流体動圧軸受部18をより安定して作動させることができる。
また、記録再生ヘッドの一例として、磁気ヘッドを例に挙げて説明したが、磁気ヘッドに限られるものではなく、記録再生を行うヘッドであれば、その方法に限定されるものではない。例えば、近接場光を利用して記録再生を行う近接場光ヘッドを、記録再生ヘッドとしても構わない。
なお、上述したステータ電極部26のそれぞれは、所定角度θ1よりも狭い角度毎に配置されているが、これに限定されないのは勿論のことである。図16に示すように、ステータ電極部26のそれぞれは、所定角度θ1よりも広い所定角度θ4毎に配置されていてもよい。
このように、ステータ電極部26の間隔が、ロータ電極部25の間隔よりも広い場合であっても、ロータ電極部25がステータ電極部26の静電力Fによって引っ張られて回転する。ステータ電極部26への電圧の印可を切り替えることにより、回転体17の回転が持続されることとなる。
かかる特徴によれば、ステータ電極部26のそれぞれが所定角度θ4毎に配置されることにより、図7よりもステータ電極部26の数を減らすことができ、スピンドルモータ40のコストを低減させることができる。
本発明に係るスピンドルモータによれば、接触による損傷や摩耗を防止しながら、ロータ板を介して記録媒体を連続的且つ滑らかに回転させることができ、低振動化、低騒音化及び耐久性を向上して、信頼性を向上することができる。
また、本発明に係る情報記録再生装置によれば、記録媒体を連続的且つ滑らかに回転させるスピンドルモータを備えているので、情報の記録再生を正確に行うことができ、高品質化を図ることができる。