JPWO2007049522A1 - 変形形状保持繊維 - Google Patents

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Abstract

ポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤を用いて、塑性変形可能であり、かつ塑性変形した形状を保持可能な変形形状保持繊維を調製する。前記板状無機充填剤は、へき開性を有する鱗片状無機充填剤(例えば、タルクやマイカなど)であってもよい。前記板状無機充填剤の平均粒径は1〜500μm程度であり、かつアスペクト比は10〜1000程度である。前記ポリ乳酸系樹脂と板状無機充填剤との割合(重量比)は、前者/後者=50/50〜95/5程度である。さらに、前記変形形状保持繊維は、鞘部がポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成された芯鞘型複合繊維であってもよい。変形形状保持繊維は、延伸されていてもよい。このような変形形状保持繊維は、対象物を結束又は固定するための紐に用いるのに適している。

Description

本発明は、容易に折り曲げたり捩ったりすることができ、かつ折り曲げたり捩ったりした後、当初(折り曲げたり捩ったりする前)の形状に戻らない性質、すなわち塑性変形が可能で、かつ変形後の形状保持性を有し、さらに非石油系の合成樹脂からなる繊維に関する。特に、塑性変形可能で変形後の形状保持性に優れており、かつ焼却処理できない従来の金属製の針金あるいは鋼線の代替に適した繊維に関する。
金属製の針金や鋼線は、塑性変形性に優れ、かつ変形後の形状保持性にも優れるため、結束帯、綴じ紐、金網などの用途で広く使用されている。
例えば、苗木や樹木に藁を巻き付け固定したり、あるいは苗木や樹木を添え木に固定する目的や電気コードを纏める目的などで、針金をプラスチック製テープで被覆して帯状とした結束帯が一般に用いられている。しかしながら、このように金属製の結束帯は、焼却処分ができず、また錆びの発生や人体に突き刺さる危険性などの問題があった。この問題に対し、捩ったときに塑性変形可能な有機繊維からなる結束帯が提案されている。
例えば、特許第3582854号公報(特許文献1)においては、ポリエチレンを特定条件下で延伸することによって、変形時にポリエチレンの結晶転移を発現することにより、塑性変形性を付与している。しかし、塑性変形性および形状保持性が十分ではなく、また石油系樹脂を使用しているため環境保全の点から好ましくない。
これに対して、特開平10−264961号公報(特許文献2)では、生分解性ポリエステル樹脂100重量部に対し、充填剤50〜300重量部を含有してなる芯材を、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を主材とするテープ部材で被覆した生分解性結束紐が提案されている。しかし、この生分解性結束紐では、充填剤として、実質的に球状又は立方体状の充填剤が使用されているため、塑性変形性および形状保持性が不十分である。さらに、この文献では、樹脂中での方向性の発現を否定し、真球のセラミックバルーンやガラスバルーンが好ましいと記載されている。
特開2003−73531号公報(特許文献3)では、ポリ乳酸等の生分解性樹脂に充填剤および可塑剤を配合してシート状やテープ状の形状にした結束材が提案されている。この文献でも、充填剤として、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、二酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子などの無機粉体や、コーンスターチなどの有機粉体など、球状又は立方体状の充填剤が使用されている。従って、可塑剤を配合することにより柔軟性は改善されるものの、結束材の塑性変形性および形状保持性の点で不十分である。
特許第3582854号公報(請求項1) 特開平10−264961号公報(請求項1、段落[0007]〜[0011]) 特開2003−73531号公報(請求項1〜4、段落[0022])
本発明の目的は、針金や鋼線のように金属成分で構成することなく、実用上十分な塑性変形性及び変形形状保持性を有する変形形状保持繊維及びその製造方法並びにこの繊維で構成された結束又は固定紐を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、環境保全に優れ、かつ塑性変形性及び変形形状保持性を有する変形形状保持繊維及びその製造方法並びにこの繊維で構成された結束又は固定紐を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討の結果、ポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で繊維を構成することにより、針金や鋼線などの金属成分で構成することなく、実用上十分な塑性変形性及び変形形状保持性を発現できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の変形形状保持繊維は、塑性変形可能であり、かつ塑性変形した形状を保持可能な繊維であって、ポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成されている。前記板状無機充填剤は、へき開性を有する鱗片状無機充填剤(例えば、タルクやマイカなど)であってもよい。前記板状無機充填剤の平均粒径は1〜500μm程度であり、かつアスペクト比は10〜1000程度である。前記ポリ乳酸系樹脂と板状無機充填剤との割合(重量比)は、前者/後者=50/50〜95/5程度である。本発明の変形形状保持繊維は、通常、実質的に可塑剤を含んでいない。さらに、本発明の変形形状保持繊維は、鞘部がポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成された芯鞘型複合繊維[特に、鞘部がポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成され、かつ両者の割合(重量比)が、前者/後者=50/50〜95/5であるとともに、芯部がポリ乳酸系樹脂で構成された芯鞘型複合繊維]であってもよい。本発明の変形形状保持繊維は、延伸されていてもよい。さらに、本発明の変形形状保持繊維は、2000〜4000dtex程度の繊度を有するモノフィラメントで構成されていてもよい。
本発明には、ポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤を用いて紡糸する前記変形形状保持繊維の製造方法も含まれる。この製造方法においては、紡糸後に延伸してもよい。
また、本発明には、前記変形形状保持繊維で構成された紐であって、対象物を結束又は固定するための紐も含まれる。
さらに本発明には、前記変形形状保持繊維の使用であって、対象物を結束又は固定するための紐としての使用も含まれる。
本発明では、ポリ乳酸系樹脂と板状無機充填剤とを組み合わせているため、金属成分で構成することなく、実用上十分な塑性変形性及び変形形状保持性を有する変形形状保持繊維が得られる。また、非石油系の合成樹脂を主成分とするため、環境保全に優れている。特に、針金や鋼線の代替となるだけでなく、金属成分で構成されていないため、焼却処理が可能である。
発明の詳細な説明
次に本発明について詳細に説明する。本発明の変形形状保持繊維は、塑性変形可能であり、かつ塑性変形した形状を保持可能な繊維であって、ポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成されている。
ポリ乳酸系樹脂は、乳酸を主要な構成単位として含んでいればよく、構成単位としての乳酸の割合は、例えば、全構成単位のうち、例えば、50モル%以上、好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%程度であってもよい。他の構成単位としては、乳酸と共重合可能な単量体、例えば、脂肪族オキシカルボン酸(例えば、グリコール酸、オキシプロピオン酸、オキシ酪酸、オキシ吉草酸、リンゴ酸などの脂肪族C2−6オキシカルボン酸、好ましくは脂肪族C2−4オキシカルボン酸など)などが挙げられる。ポリ乳酸系樹脂としては、入手容易性などの点から、通常、乳酸のホモポリエステルであるポリ乳酸が使用される。
ポリ乳酸系樹脂は、添加する積層凝集体である板状無機充填剤との関係で、特に優れた塑性変形性と変形形状保持性とを有する。その原因に関しては必ずしも明確ではないが、板状無機充填剤との適度な接着性、さらにポリ乳酸系樹脂の樹脂としての硬さなどが影響しているものと考えられる。すなわち、マイカなどの板状無機充填剤と、繊維を構成するポリ乳酸系樹脂との接着力や、繊維を曲げた場合に、マイカなどの板状無機充填剤のへき開により曲部内側と外側でずれを生じ、かつこのずれが外力除去後においても元に復元しないことにより変形が保持されるものと予想される。
さらに、ポリ乳酸系樹脂は、燃焼熱が低いこと、植物由来の樹脂であり、コンポスタブルである(熱により容易に加水分解される)ことから、環境保全の点において優れた樹脂である。また、アルカリ水溶液で容易に加水分解するため、板状無機充填剤を選定することにより、土壌中でポリ乳酸系樹脂の加水分解を促進させることができる。さらに、ポリ乳酸系樹脂の原料である乳酸は、非石油原料であるとうもろこしやイモ類などの澱粉を醗酵して得られる。
乳酸は光学活性体であり、L体とD体が含まれるが、L体の方がより多く存在する。さらに、結晶性の高いポリ乳酸系樹脂を得るためには、L体の純度の高い乳酸を用いてポリ乳酸系樹脂を合成するのが好ましい。すなわち、ポリ乳酸系樹脂のうち、例えば、ポリ乳酸としては、L体を主体とし、結晶性を高めるために、D体の割合を15モル%以下(例えば、0〜15モル%、好ましくは0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%程度)に調整したポリ乳酸であるのが好ましい。一方、L体とD体が、L体/D体=50/50前後(例えば、40/60〜60/40、特に45/55〜55/45程度)のポリ乳酸も、ステレオコンプレックスを形成し、耐熱性に優れた繊維が得られる点においては好ましい。D体の割合が多すぎると、ポリ乳酸系樹脂の結晶性が低下し、繊維が脆くなるため、変形形状保持繊維に必要な性能が得られなくなる場合がある。ポリ乳酸系樹脂のD体の量は、例えばガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度(MFR、210℃、2.16kgf(≒21N))は、例えば、1〜50g/10分、好ましくは2〜40g/10分、さらに好ましくは3〜30g/10分程度である。特に、モノフィラメントの場合には、1〜15g/10分、マルチフィラメントの場合には、20〜30g/10分程度のポリ乳酸が好適に用いられる。なお、ここでいう溶融粘度とは、板状無機充填剤などの添加物を添加する前の樹脂単独の粘度を意味する。ポリ乳酸の相対粘度および溶融粘度が前述の範囲にない場合には、本発明の繊維を成形する際の溶融紡糸性が低下し、十分な性能が得られない場合がある。
本発明の変形形状保持繊維は、樹脂成分として、ポリ乳酸系樹脂単独で構成されていてもよく、ポリ乳酸系樹脂に加えてポリ乳酸系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。繊維に含まれるポリ乳酸系樹脂の割合は、繊維の構造や、用途によって適宜設定できるが、環境保全、変形形状保持性などの点からは、例えば、樹脂成分全体に対して30重量%以上(例えば、30〜100重量%程度)であり、好ましくは50重量%以上(例えば、50〜100重量%程度)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、70〜100重量%程度)である。またポリ乳酸系樹脂の割合は、樹脂成分全体に対して60〜95重量%程度であってもよい。
他の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、ビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレートブロック単位と、ポリ(メタ)アクリル酸C2−10アルキルエステル(例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなど)ブロック単位とで構成されたトリブロック共重合体など)、ポリ乳酸系樹脂以外のポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートなどの脂肪族ポリエステル及びその共重合体;ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリリンゴ酸、グリコール酸−乳酸共重合体、ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体などのポリラクチド類;ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトンなどのポリラクトン類など)、ポリアミド系樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66などの脂肪族ポリアミドなど)、セルロース系樹脂(例えば、酢酸セルロースなど)、ポリアルキレングリコール系樹脂(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)などが挙げられる。これら他の樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これら他の樹脂のうち、特に廃棄時の燃焼熱が比較的小さく、NOx、SOx、ダイオキシンなどの有害ガスを発生しない点から、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル系ブロック共重合体、ポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル系樹脂などが好ましい。さらに、生分解性の点からは、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル系樹脂などが好ましく、繊維の割れを抑制し、可撓性を向上させる点からは、ポリエチレンやアクリル系ブロック共重合体(特に、ポリメチルメタクリレートブロック単位とポリ(メタ)アクリル酸C2−10アルキルエステルブロック単位とで構成されたトリブロック共重合体)などが好ましい。
本発明では、前記ポリ乳酸系樹脂に板状無機充填剤を配合することにより、繊維の塑性変形性及び変形形状保持性を向上できる。板状無機充填剤(特に、積層凝集体で構成された板状無機充填剤)を含むことにより、塑性変形性及び変形形状保持性の向上の機構は明確ではないが、繊維が変形するときに、積層凝集している板状無機充填剤が容易にへき開し、層間剥離を伴う滑り変形を生じ、その滑り変形は容易には元に戻らないため、優れた塑性変形性と変形形状保持性とを有するものと推定される。特に、塑性変形後は、へき開した板状無機充填剤の層間の摩擦力、板状無機充填剤とマトリックス樹脂との摩擦力が適度にバランスし、優れた変形形状保持性を有しているものと推定される。また、本発明において、繊維は延伸されているのが好ましいが、延伸により、板状無機充填剤は繊維の長さ方向に向きが揃うこととなり、それにより変形形状保持性が大きく向上する。
板状無機充填剤は、天然及び合成のいずれの化合物であってもよいが、積層凝集体で構成された板状無機充填剤(層状無機充填剤)、すなわち、へき開性を有する鱗片状無機充填剤であるのが好ましい。このような板状無機充填剤としては、例えば、スメクタイト群粘土鉱物(例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト群粘土鉱物(例えば、バーミキュライトなど)、カオリン型鉱物(例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイトなど)、フィロケイ酸塩[例えば、マーガライト(真珠雲母)、セリサイト(絹雲母)、マスコバイト(白雲母)、フロゴパイト(金雲母)などの天然マイカ(雲母)、フッ素金雲母、Na四珪素雲母、K四珪素雲母、Naテニオライト、Liテニオライトなどの合成マイカ、タルク、パイロフィライトなど]、ジャモン石群鉱物(例えば、アンチゴライトなど)、緑泥石群鉱物(例えば、クロライト、クックアイト、ナンタイトなど)などが例示できる。これらの板状無機充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの板状無機充填剤のうち、マイカやタルクなどのフィロケイ酸塩、モンモリロナイトなどのスメクタイト群粘土鉱物、カオリナイトなどのカオリン型鉱物などが汎用される。
これらの板状無機充填剤は、通常、乾式法や湿式法と言われる粉砕方法で粉砕され、積層凝集している板状無機物を剥がすと同時に細化して得られる。板状無機充填剤は、後述するように、ある程度の厚み及び大きさを有する積層凝集体であるのが好ましい。本発明では、前記板状無機充填剤の中でも、マイカ(特に天然マイカ)、タルクが特に好ましい。マイカ及びタルクは、比較的安価に入手できるだけでなく、アスペクト比も大きく、へき開性も高いため、変形形状保持性に優れている。なお、タルクには、繊維状タルク及び薄片状タルクがあるが、本発明に使用されるタルクは薄片状タルクである。
これらの板状無機充填剤(特にマイカ及びタルク)は、容易にへき開する鱗片状の結晶構造を有することが特徴であるが、この特徴が本発明の繊維の塑性変形性および変形形状保持性を発現することに特に適している。すなわち、変形する際に、繊維中のマイカやタルクがへき開して変形することにより、より小さい力で塑性変形することができ、さらに変形後に、マイカやタルクの層間の摩擦、マイカやタルクの粉砕時に薄くへき開し、樹脂中に分散しているマイカやタルクの柔軟性、マイカやタルクと樹脂との界面接着性が適度にバランスするため、変形形状保持性も高くなると推定される。マイカを添加すると、得られる繊維は、天然マイカの場合には薄い黄色乃至黄土色、合成マイカの場合には白色に着色する。一方、タルクの場合には、添加すると、得られる繊維は白色若しくはそれに近い色となるため、用途に応じて使い分けるのが好ましい。さらに、マイカとタルクとを併用して調整してもよい。
板状無機充填剤の平均粒径は、例えば、1〜500μm、好ましくは2〜300μm、さらに好ましくは5〜200μm(特に10〜150μm)程度である。平均粒径が小さすぎると、平均アスペクト比も小さくなり、繊維の変形形状保持性が小さくなる傾向がある。一方、平均粒径が大きすぎると、繊維表面が荒れて滑らかでなくなるだけでなく、フィブリル化しやすくなり易い。なお、本発明における平均粒径は、レーザー回析法を用いて求めた値である。
板状無機充填剤の平均アスペクト比(板状物の平均直径を平均厚さで割った値)は、例えば、10〜1,000、好ましくは15〜900、さらに好ましくは20〜800程度である。平均アスペクト比がこの範囲にあると、本発明の目的効果である塑性変形性および変形形状保持性が有効に発現する。なお、天然マイカのアスペクト比は通常20〜100程度であるが、合成マイカ(Na四珪素雲母など)は、水に分散するとアスペクト比が500〜1,000程度にもなる。アスペクト比が高いほど性能は高くなるものの、合成マイカは天然マイカよりも高価であるため、用途が限定されることがある。積層凝集体で構成された板状無機充填剤の表面は、特に表面処理を必要としないが、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、慣用の表面処理を施しても構わない。
ポリ乳酸系樹脂(他の樹脂を含む場合は、樹脂成分の合計量)と板状無機充填剤との割合(重量比)は、前者/後者=50/50〜95/5、好ましくは60/40〜90/10、さらに好ましくは65/35〜85/15程度である。板状無機充填剤の割合が少なすぎると、塑性変形を起こしにくく、塑性変形時にボイドの発生を伴う白化や亀裂を生じる場合があるばかりでなく、変形後に十分な形状保持性が得られない(すなわち、変形前の形状に戻ろうとする)場合がある。また、板状無機充填剤の割合が多すぎると、繊維が脆くなり、変形時に繊維が切断に至ることがあるばかりでなく、溶融粘度が高くなるため、製糸時の溶融紡糸性が低下する場合がある。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、板状無機充填剤に加えて、他の無機充填剤を配合してもよい。他の無機充填剤としては、例えば、粒状無機充填剤(例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、硫酸バリウムなど)、繊維状無機充填剤(例えば、ガラス繊維、炭素繊維など)、無機顔料(例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラックなど)などを含んでいてもよい。これら他の無機充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。他の無機充填剤の割合は、例えば、繊維全体に対しては、例えば、0〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%程度である。特に、繊維の滑りを防ぐために、繊維表面に粒状無機充填剤を存在させてもよい。
また、本発明の繊維は、本発明繊維の性能を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、着色剤(顔料、染料など)、難燃剤、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、耐候剤など)、帯電防止剤、結晶核剤、芳香剤、消臭剤、防虫剤、防かび剤、抗菌剤、可塑剤、潤滑剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、繊維全体に亘って存在させてもよく、繊維表面に存在させてもよい。慣用の添加剤の割合も、例えば、繊維全体に対しては、例えば、0〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%程度である。
特に、本発明では、変形形状保持性を高めるために、実質的に可塑剤を含まないのが好ましい。可塑剤の割合は、例えば、繊維全体に対して、5重量%以下(例えば、0〜5重量%)、好ましくは0.001〜3重量%、さらに好ましくは0.005〜1重量%(特に0.01〜0.5重量%)程度である。
本発明の繊維は、塑性変形性と変形形状保持性とを有しているが、本発明における塑性変形性とは、繊維を室温(例えば、20〜30℃、特に25℃程度)条件下で曲げたときに、繊維が破断せずに曲げることができることを意味する。具体的には、室温条件下で、繊維を直径5mmの円となるように180°曲げた場合に繊維が切断されることなく曲げることができることを意味する。
本発明における変形形状保持性とは、繊維を室温条件下で曲げたり捻ったりして変形させたときに、室温で放置しても繊維が殆ど変形前の形状に戻らず、変形状態を保っていることを意味する。具体的には、室温条件下で長さ10cmの繊維をヘアーピンのように、その中央部で折り返し、2本の繊維を撚角度が30°となるように密に撚り合わせて5回転の撚りを付与し、その状態で5分間放置しても、5回転の撚りのうちの4回転以上の撚りが残る特性を意味する。
この塑性変形性及び変形形状保持性は、繊維の太さ(繊度)により若干異なる。繊度が大きいほうが繊維表面の変形量が大きいためである。例えば、繊度10,000デシテックスの繊維であれば、180°に鋭角的に折り曲げても、繊維に亀裂もひび割れも生じないが、同じ組成の樹脂(樹脂の種類、充填材の種類と量)でも繊度が50,000デシテックスのものであれば、180°に鋭角的に折り曲げると繊維にひび割れが生じたり、場合によっては切断される場合がある。つまり、用途によって求められる繊度は多様であるが、繊度によって充填剤の割合を調整して繊維を製造する必要があるばかりでなく、曲げ量又は捻り量を限定して製造した繊維を使用する必要もある。
本発明の繊維は、マルチフィラメント、モノフィラメントなどのいずれであってもよく、用途に応じて選択できる。一応の目安として、単糸繊度が30デシテックス以下の場合にはマルチフィラメントであるのが好ましく、30デシテックスを越える場合にはモノフィラメントであるのが好ましい。
本発明の繊維がモノフィラメントの場合、単糸繊度は、例えば、20〜80,000デシテックス、好ましくは100〜60,000デシテックス、更に好ましくは500〜50,000デシテックス(特に2,000〜40,000デシテックス)程度であってもよい。本発明の繊維がマルチフィラメントである場合、総繊度は、例えば、20〜10,000デシテックス、好ましくは30〜5,000デシテックス、更に好ましくは50〜3,000デシテックス(特に70〜2,000デシテックス)程度であってもよい。繊度が小さすぎると、繊維自身が柔軟であるため曲げや捻りによる塑性変形を加えることが困難となる場合がある。また、繊度が大きすぎると、十分な柔軟性が得られず、目的とする塑性変形性および変形形状保持性が得られない場合がある。
本発明の繊維の繊維長は、用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。具体的な繊維長は、例えば、0.1mm〜10m程度の範囲から選択でき、結束紐や固定紐として使用する場合は、好ましくは1cm〜1m(特に3〜50cm)程度である。
本発明の繊維の断面形状は、繊維の長さ方向に対して垂直な方向において、中実であっても、中空であってもよい。さらに、断面形状は、円形断面であってもよく、異形断面(例えば、楕円状、扁平状、ドッグボーン状、串刺し団子状、三〜八角形などの多角形状、T字状、Y字状、C字状断面など)であってもよい。
本発明の変形形状保持繊維は、少なくともポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成されていればよく、板状無機充填剤を含むポリ乳酸系樹脂で構成された単独繊維であってもよく、他の樹脂をブレンドした混合繊維であってもよい。さらに、複数の相構造(相分離構造)を形成する複合繊維(芯鞘型複合繊維、貼り合わせ型複合繊維など)であってもよい。これらのうち、板状無機充填剤の割合が少なくても、優れた塑性変形性及び変形形状保持性を発現できる点から、複合繊維、特に、芯鞘型繊維が好ましい。さらに、芯成分には強度などの繊維物性を必然的に低下させる無機充填剤が添加されていないため、繊維の力学的物性が向上する。
芯鞘型の複合繊維とする場合には、繊維を変形させると、繊維内部よりも表層において、より大きな変形が生じるため、板状無機充填剤を含むポリ乳酸系樹脂を鞘成分とするのが好ましい。鞘部がポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成された芯鞘型複合繊維の場合、芯部を構成する樹脂は特に限定されず、前述の他の樹脂などであってもよいが、鞘部との密着性や変形形状保持性、生分解性などの点から、ポリ乳酸系樹脂(特に鞘部と同じポリ乳酸系樹脂)を含むのが好ましい。なお、芯部にも、鞘部と異なる樹脂(例えば、種類の異なるポリ乳酸系樹脂や、ポリ乳酸系樹脂と他の樹脂との組み合わせなど)を用いて、板状無機充填剤を含有させてもよいが、板状無機充填剤の割合を減少させて、繊維の機械的特性を向上できる点からは、芯部には板状無機充填剤を含有しないのが好ましい。
芯鞘型複合繊維は、本発明の性能を損なわなければ、1島の芯鞘型(いわゆる芯鞘型)複合繊維でもよく、多島の芯鞘型(いわゆる海島型)複合繊維でもよい。さらに、その断面形状も中実、中空、異型の何れの断面形状でも構わない。
芯鞘型複合繊維において、芯部と鞘部の割合(重量比)は、芯部/鞘部=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜25/75、さらに好ましくは75/25〜40/60程度である。
鞘部におけるポリ乳酸系樹脂に対する板状無機充填剤の割合は、単独又は混合繊維でも、複合繊維(鞘部又は芯部における割合)でも、同様に前述の割合である。すなわち、鞘部がポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成された芯鞘型複合繊維の場合、鞘部におけるポリ乳酸系樹脂と板状無機充填剤との割合(重量比)も、前者/後者=50/50〜95/5、好ましくは60/40〜90/10、さらに好ましくは65/35〜85/15程度である。従って、芯鞘型複合繊維とし、鞘部にのみ板状無機充填剤を配合すると、単独又は混合繊維に比べて、板状無機充填剤の割合が少なくても同等の効果が得られる。
本発明の繊維の表面には、用途に応じて、帯電防止性、防曇性、粘着性、ガスバリア性、密着性、易接着性などの機能を有する層をコーティングにより形成してもよいし、他の樹脂で構成されたフィルムを押出ラミネート法やドライラミネート法などの公知の方法を用いてラミネートすることにより、前記機能を有する層を形成してもよい。
本発明の繊維の製造方法は、溶融紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸、湿式紡糸の何れの方法でもよいが、複数種の樹脂を用いる複合繊維(特に、芯鞘型複合繊維)とする場合など、簡便性の点から、溶融紡糸が適している。溶融紡糸の方法としては、慣用の方法を利用でき、例えば、押出機などを用いて、170℃以上の温度で溶融混練した後、例えば、180〜300℃、好ましくは190〜280℃、さらに好ましくは200〜260℃程度の紡糸口金温度で紡糸する方法などが利用できる。芯鞘型複合繊維(1島の芯鞘型複合繊維)の場合には、一方の押出機で板状無機充填剤を含むポリ乳酸系樹脂を溶融混練して鞘成分となるように紡糸頭に導き、他方の押出機で板状無機充填剤を含まない樹脂(例えば、ポリ乳酸系樹脂)を溶融混練して芯成分になるように紡糸頭に導き、同一のノズルより吐出する方法などを利用できる。例えば、複合紡糸装置を使用し、芯成分を構成するポリマーの流れ全体を、鞘成分を構成するポリマーで覆いながら、両ポリマーの複合流をノズル導入口の中心に向けて導入し、ノズルより吐出させることにより製造することができる。
紡糸ノズルより吐出された糸条(繊維)は、水槽などで冷却固化してもよい。冷却固化のための温度としては、例えば、5〜80℃、好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは15〜40℃程度である。
モノフィラメントの場合には、冷却固化された繊維を1〜50m/分程度の速度で引き取り、引き続き2〜10倍程度の延伸倍率で延伸し、そして2〜500m/分程度の速度で引き取ってもよい。
本発明では、紡糸された繊維は延伸される。延伸することにより、添加された板状無機充填剤(マイカやタルクなど)は、繊維の長さ方向と板状無機充填剤の板状面とがほぼ平行となり、満足できる塑性変形性及び変形形状保持性が得られる。単に繊維の剛性を求めるだけであれば、延伸せずに、又は延伸倍率の低い延伸を行い、そして熱処理を十分に行うことによりポリ乳酸系樹脂の結晶を球晶とするとともに結晶化を高める方法が有効であるが、この場合には得られる繊維は曲がりにくくかつ無理に曲げた場合には容易に折れるような繊維となる。本発明では、このような繊維ではなく、延伸を十分に行い、添加した板状物の面を繊維長さ方向に向け、かつポリ乳酸系樹脂の配向結晶化を起こさせ、曲がりに対して折れないような繊維構造とすることが好ましい。通常は、紡糸された繊維に、例えば、3倍以上(例えば、3〜10倍)、好ましくは3.2〜8倍、さらに好ましくは3.3〜7倍(特に3.5〜5倍)程度の延伸を行ってもよい。特に、繊維の繊度が大きくなると(例えば、2000〜80000デシテックス程度)、繊維表面の変形量が大きくなるために、延伸を十分に行い(例えば、3.5〜6倍程度)、樹脂の配向結晶性、板状無機充填剤の配向を調整するのが好ましい。延伸温度は、例えば、55〜150℃、好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは65〜100℃程度であってもよい。また、延伸は、水浴などの温浴で延伸してもよく、温浴で延伸後、熱風炉で更に延伸してもよい。さらに、延伸した繊維は、連続して設けられた別の熱風炉などで、例えば、100〜160℃、好ましくは120〜150℃程度の温度で熱固定(熱セット)してもよい。
本発明の変形形状保持繊維は、用途に応じて、モノフィラメントやマルチフィラメントなどの一次元形状で使用してもよく、織物(平織り、斜文織り、繻子織りなど)、編物(機械編み、かぎ針編み、棒針編み、アフガン編み、レース編みなど)、不織布、網又はネットなどの二次元形状で使用してもよい。
本発明の変形形状保持繊維は、塑性変形性と形状保持性とを有するため、これらの形状のうち、特に、繊維状で紐(特に、対象物を結束又は固定するための紐、例えば、電気コードの結束紐や、植木や苗木の固定紐など)として利用するのが好ましい。前記繊維は、それ自体で結束又は固定紐などとして使用することができるが、他の樹脂(例えば、塩化ビニル樹脂など)で構成されたテープ状物(テープ部材)との複合体として使用してもよい。この場合には、本発明の繊維は、テープ部材中に含まれる芯材として使用されるのが好ましい。例えば、予め作製した本発明の繊維で構成された芯材を、電線と同様にクロスヘッドダイを使用してテープ状の中間部に押出し一体化するか、あるいは2台の押出機をダイス直前で結合しておき芯材とテープ部材を同時に押出し一体化させて製造することができる。また、別に製造しておいたフィルム状のテープ部材を芯材にラミネートして製造することもできる。結束又は固定紐の形態は、目的に応じてテープ状、カットシート状、パイプ状(シームレス筒状)であってもよい。
本発明の変形形状保持繊維は、室温において塑性変形可能であり、かつ室温条件下では変形後の形状保持性に優れた繊維であるため、金属製の針金や鋼線が使用される態様においてそっくりそのまま代替物として使用できる。例えば、電気コードの結束紐、植物の固定紐、荷札の紐、食品包装材に使用される紐、土木用品に使用される結束帯、製本に利用される綴じ紐、金網の代替となるプラスチックス網、ICタグ、ハンガー、ゼムクリップ、バネ、織編物、網、ネット、フィルター、タワシやブラシの芯線、ブラジャーのワイヤー、水引などとして利用できる。
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例、比較例における繊維の物性評価及び性能評価は以下に示す方法で行った。
[繊維物性]
JIS L1013に準じて繊度を測定した。
[塑性変形性]
室温条件下で繊維を直径5mmの円となるように180°曲げた場合の繊維の状態を観察して、以下の基準で評価した。
○:繊維が折れ曲がることなく円を描いて曲がる
×:繊維が折れ曲がるか、又は折れて切断される。
[変形形状保持性]
室温条件下で長さ10cmの繊維をヘアーピンのように折り返し、2本の繊維を撚角度が30°となるように密に撚り合わせて5回転の撚りを与え、その状態で5分間放置して、残存している撚りの回転数を数えて、以下の基準で評価した。
○:4回転以上の撚りが残存していた
×:4回転未満の撚りが残存していた。
実施例1
平均粒径80μmのマイカ(アスペクト比45、商品名:200−C、クラレトレーディング(株)製)が繊維全体に対して20重量%となるように、D体の割合が1.9%のポリ乳酸樹脂(商品名:6400D、ネイチャーワークス社製、相対粘度3.9、溶融粘度8g/10分)に配合し、押出機で溶融混練して造粒した。この造粒ペレット(A)(直径3mm、長さ5mm)を用いて、直径6.0mmの中実丸孔ノズルから220℃で紡出し、25℃の水槽で冷却後、80℃の水浴で4倍延伸し、140℃の熱風炉で熱固定して、10,000デシテックス(dtex)の円形断面モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。この繊維を、植木の支柱への固定紐として使用したところ、簡単に植木と支柱を固定することが出来、しかも長期間(4ヶ月)縛り紐は縛り状態が緩んだりあるいは解けたりすることはなかった。また、この繊維を電気コードを束ねる結束紐として使用したところ(電気コードを12本束ね、それを上記繊維で2回巻きつけ両端部を捩り合わせて縛ったところ)、2ヶ月経過した後においても縛りが解けることがなく、更に縛り状態が緩むこともなかった。
実施例2
吐出量を増加させた以外は実施例1と同様にして、15,000デシテックスの丸型断面モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。この繊維も、結束紐及び固定紐として優れていた。
実施例3
吐出量を減少させた以外は実施例1と同様にして、5,000デシテックスの丸型断面モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。この繊維も、結束紐及び固定紐として優れていた。
実施例4
実施例1において、ノズルをタテ1.5mm、ヨコ25mmの矩形ノズルにしたこと以外は、同様に紡糸、延伸、熱処理してフィルム状物を得て、そのフィルム状物を幅5mmにスリットし、厚み0.4mm、幅5mmのテープ状のモノフィラメント(繊度:25,000デシテックス)を得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。この繊維も、結束紐及び固定紐として優れていた。
実施例5
D体の割合が4.4%のポリ乳酸樹脂(商品名:4042D、ネイチャーワークス社製、相対粘度3.9、溶融粘度6g/10分)に、中央にポリアクリル酸ブチル単位を有し、その両端にポリメチルメタクリレート単位を有するトリブロック共重合体(商品名:LA2140、(株)クラレ製)を繊維全体に対して30重量%(繊維構成全物質を100重量%として)、実施例1で用いたマイカを繊維全体に対して20重量%配合し、直径3mm、長さ5mmの造粒ペレット(B)を得た。このペレットを用いたこと以外は実施例1と同様にして、10,000デシテックスのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。この繊維も結束紐及び固定紐として優れていた。
実施例6
平均粒径18μmのマイカ(アスペクト比35、商品名:400W、クラレトレーディング(株)製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マイカを繊維全体に対して20重量%含有する直径3mm、長さ5mmの造粒ペレット(C)を作製し、紡糸、延伸、熱処理を行って、10,000デシテックスのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。この繊維も、結束紐及び固定紐として優れていた。
実施例7
実施例6において、マイカの割合を繊維全体に対して30重量%にしたこと以外は、実施例6と同様にして、10,000デシテックスのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。この繊維も、結束紐及び固定紐として優れていた。
実施例8
実施例6で使用した平均粒子径18μmのマイカを、D体の割合が4.5%のポリ乳酸樹脂(商品名:5051X、ネイチャーワークス社製)に繊維全体に対して30重量%配合して造粒し、得られたペレットを用いたこと以外は実施例1と同様にして、10,000デシテックスのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。この繊維も結束紐及び固定紐として優れていた。
実施例9
実施例1において、マイカの代わりにタルク(平均粒径12μmの板状物、商品名:MS−P、日本タルク(株)製)を繊維全体に対して20重量%配合し、造粒ペレットを得た。引き続き実施例1と同様にして、10,000デシテックスのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。
実施例10
実施例1で用いた造粒ペレット(A)が鞘成分、ペレット(A)に使用したポリ乳酸(6400D)が芯成分となるように、2台の押出機より夫々別々に紡糸ノズル(中実丸孔、孔径0.6mm)に導き、実施例1と同様にして、8,000デシテックスの芯鞘モノフィラメント(芯部/鞘部=50/50(重量比))を得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。
実施例11
実施例1で用いた造粒ペレット(A)が芯成分、実施例5で用いた造粒ペレット(B)が鞘成分となるように、2台の押出機より夫々別々に紡糸ノズル(矩形孔、タテ1.5mm、ヨコ25mm)に導き、実施例4と同様にして、厚み0.6mm、幅5mmのテープ状の芯鞘モノフィラメント(繊度:35,000デシテックス)(芯部/鞘部=50/50(重量比))を得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。何れの性能も実用上十分であった。
比較例1
実施例1において、マイカの割合を繊維全体に対して70重量%にして、造粒を試みたが、マイカの分散性が悪い上に、粘度上昇が著しく、均一な造粒ペレットが得られなかった。
比較例2
実施例6において、マイカの割合を繊維全体に対して70重量%にして、造粒及び紡糸したが、粘度が高いために均一な繊度の紡糸原糸が得られず、延伸、熱固定されたモノフィラメントを得ることができなかった。未延伸糸は、非常に脆く、塑性変形性テストを行うと容易に折れてしまい、実用できるものではなかった。結果を表1に示す。
比較例3
実施例1において、マイカを配合しないポリ乳酸の造粒ペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、10,000デシテックスのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの繊維物性、塑性変形性、変形形状保持性を表1に示す。得られたモノフィラメントは硬く、塑性変形性、変形形状保持性の何れも不十分であった。
Figure 2007049522
実施例12
実施例1で得られたモノフィラメントを直径5mmの金属棒に15回巻き付けて抜き取った。得られたものは、適度な弾性を有し、バネとして十分に使用できるものであった。
実施例13
実施例6で造粒した直径3mm、長さ5mmのマイカ配合ペレット(C)を押出機で溶融混練し、ホール数24個、直径0.7mmの中実ノズルより250℃で吐出し、1,000m/分で引き取り、紡糸原糸を得た。得られた紡糸原糸を70℃のホットロールで3倍に延伸し、140℃のホットプレートで熱固定し、総繊度600デシテックスのマルチフィラメントを得た。このマルチフィラメントを丸編み機を用いて編地とした。得られた編地は筒状の形状を保持し、流し台の排水口の水切りに使用できるものであった。またこの編地を台所用のコンポストに投入し、3ヶ月間放置後に観察したところ、分解が進み、編地は崩壊して形態を留めていなかった。

Claims (14)

  1. 塑性変形可能であり、かつ塑性変形した形状を保持可能な繊維であって、ポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成されている変形形状保持繊維。
  2. 板状無機充填剤が、へき開性を有する鱗片状無機充填剤である請求項1記載の変形形状保持繊維。
  3. 板状無機充填剤が、タルク及びマイカからなる群から選択された少なくとも一種である請求項1記載の変形形状保持繊維。
  4. 板状無機充填剤の平均粒径が1〜500μmであり、かつアスペクト比が10〜1000である請求項1記載の変形形状保持繊維。
  5. ポリ乳酸系樹脂と板状無機充填剤との割合(重量比)が、前者/後者=50/50〜95/5である請求項1記載の変形形状保持繊維。
  6. 実質的に可塑剤を含まない請求項1記載の変形形状保持繊維。
  7. 鞘部がポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成された芯鞘型複合繊維である請求項1記載の変形形状保持繊維。
  8. 鞘部がポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤で構成され、かつ両者の割合(重量比)が、前者/後者=50/50〜95/5であるとともに、芯部がポリ乳酸系樹脂で構成された芯鞘型複合繊維である請求項1記載の変形形状保持繊維。
  9. 延伸されている請求項1記載の変形形状保持繊維。
  10. 2000〜4000dtexの繊度を有するモノフィラメントで構成されている請求項1記載の変形形状保持繊維。
  11. ポリ乳酸系樹脂及び板状無機充填剤を紡糸する請求項1記載の変形形状保持繊維の製造方法。
  12. 紡糸後に延伸する請求項11記載の製造方法。
  13. 請求項1記載の変形形状保持繊維で構成された紐であって、対象物を結束又は固定するための紐。
  14. 請求項1記載の変形形状保持繊維の使用であって、対象物を結束又は固定するための紐としての使用。
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