本発明は、光ディスク等の情報記録媒体に対して光学的に情報の記録および/または再生を行う光学ヘッド、および、そのような光学ヘッドを備えた光ディスク装置に関する。
近年、オーディオやビデオなどの音響・映像データが放送され、または配信されて光ディスクに記録される機会が増えている。記録すべきデータ量の増大に伴って、より高記録密度で大容量の光ディスクが要望されている。
光ディスクの記録密度を高めるためには記録および再生に用いる光スポットのサイズを小さくする必要がある。そこで、開口数(NA:Numerical Aperture)の大きい対物レンズが用いられるようになってきている。
しかし、開口数が大きくなると対物レンズと光ディスクの情報記録層との距離が短くなるため、光ディスクが反りなどにより傾いている場合に発生するコマ収差の影響が無視できなくなる。コマ収差の影響により、正しく記録再生を行うことができなくなるためである。
従来の光ディスク用光学ヘッドの中には、光ディスクと対物レンズの光軸との相対的な傾き(以下「チルト」と呼ぶ。)を検出する機能を備えたものがある。検出したチルトに基づいて光軸が光ディスクの情報記録層に対して垂直になるように補正することにより、コマ収差の発生を抑制できる。
図15は、特許文献1に記載された従来の光学ヘッドおよびチルト検出機構の構成を模式的に示したものである。図15の光学ヘッドは、光源101、ビームスプリッタ103、対物レンズ104、検出光学系106、受光部107およびチルト検出部108を備えている。チルト検出部108は、信号演算部109、増幅アンプ110および差動アンプ111を含む。
光源101から出射された光軸102を有する光はビームスプリッタ103を透過し対物レンズ104により光ディスクの情報記録層に集光される。光ディスク105において反射した光は、対物レンズ104を透過した後、ビームスプリッタ103において反射し、検出光学系106へ導かれる。検出光学系106を透過した光は、受光部107へ入射する。
図16は受光部107の受光領域と受光領域に入射する光束とを示す。受光部107は、受光領域107a〜107fを含み、受光領域107a〜107fに光ディスク105から得られた光束112が照射される。
図16に示すように、光束112は受光領域107a〜107fによって6分割されて検出される。光束112の左右の円弧で囲まれた2つの領域は、光ディスク105の情報トラックの溝で回折された回折光の0次成分と±1次成分が重なった領域を表している。また、図中に記した矢印は光ディスク105の情報トラックの方向を表している。
受光領域107a〜107fからそれぞれ得られる信号は信号演算部109に入力される。信号演算部109は入力された各信号を利用して、以下の演算に基づいて差信号P01およびP02を生成する。ここで、受光領域107a〜107fから得られる信号はそれぞれの参照符号で表している。
P01=107a−107b
P02=(107c+107e)−(107d+107f)
チルト検出部108において、差信号P02は増幅アンプ110でk0倍された後、差動アンプ111により差信号P01から差し引かれ、チルト検出信号TL0として出力される。すなわち、チルト検出信号TL0は、
TL0=P01−k0×P02
で表される。定数k0は、対物レンズ104の光軸と光学ヘッドの光軸102の位置ずれによって生じる差信号P01のオフセットを、差信号P02に生じたオフセットで補正するように決定される。したがって、チルト検出信号TL0は対物レンズ104の位置ずれによる影響を受けにくい信号といえる。
光学ヘッドの光軸102に対し、光ディスク105が半径方向に傾くと、すなわちいわゆるラジアルチルトが発生すると、その影響は差信号P01の位相とP02の位相のずれとして現れる。これは、光ディスク105の透明基板をレーザ光が通過する際にコマ収差が発生するためである。コマ収差は、情報トラックからの回折光の0次成分と±1次成分が重なった部分の波面を主に変形させる。コマ収差の発生によって、差信号P01およびP02は情報トラックによってそれぞれ異なる変調を受け、差信号P01の位相とP02の位相がずれてしまう。
差信号P01とk0×P02の差として求められるチルト検出信号TL0もラジアルチルトによって位相のずれを生じるため、光スポットが情報トラック中心をトレースしているときのチルト検出信号TL0のレベルを検出するとラジアルチルトの検出が可能となる。
ここで、情報が記録された情報トラックと記録されていない情報トラックの反射率が異なる、いわゆる振幅変調型(例えば相変化型)の光ディスクにおいては、記録された情報トラックと記録されていない情報トラックの境界(以下「記録境界」と呼ぶ。)で、特に光ディスクヘの集光状態のずれ(以下「デフォーカス」と呼ぶ。)によって光束の中央部の光強度分布の対称性が大きく変化するため、チルト検出信号にオフセットが生じてチルト検出誤差が発生する。
そこで光ディスク用光学ヘッドとして、記録境界でのチルト検出信号のオフセットを低減する機能を備えたものが開発されている。図17は、特許文献2に記載された従来の光学ヘッドの受光部107’の受光領域と、受光領域に入射する光束とを示す。特許文献2の光学ヘッドの構成要素は、受光部107’を除いて図15に示す光学ヘッドと同一である。よって、以下では受光部107’を説明する。
図17には、受光部107’に入射する光束112’と、各々の領域に入射した光束の光量を検出するため分割された受光領域117a〜117fとが示されている。光束112’は受光領域117a〜117fによって6分割されて受光されて受光され、信号演算部109(図15)にて2つの差信号P01とP02として演算される。差信号P01とP02は、
P01=117a−117b
P02=(117c+117e)−(117d+117f)
で表され、信号TL0は、
TL0=P01−k0×P02
となる(k0は定数)。
図17において、光束112の中央部の特に光強度分布の対称性変化が大きい領域(回折光の0次成分のみの領域)には遮光部113が配置されている。これにより、差信号P01’とP02’の記録境界での対称性変化の影響を低減できる。
なお、各受光領域の大きさや形状を最適化することで、対物レンズの移動に伴うオフセットと、記録境界で発生するオフセットを補正係数k0で同時に補正し、さらに検出誤差を低減できることが知られている。
特開2003−45058号公報
特開2005−141893号公報
しかしながら、前述した従来の光ヘッドの構成では、対物レンズの移動に伴って発生する差信号P01とP02のオフセットの挙動が異なり、補正係数を一意に決定した場合に、オフセットを完全に補正することができないという問題が生じていた。このような問題は、例えば光源である半導体レーザの遠視野パターン(Far Field Pattern;FFP)の強度分布の不均一性、光学ヘッド光学系の局所的な汚れによって発生する。
図18は、FFPの強度分布が不均一である場合の差信号P01とP02の挙動の例を示す。−100から100までの目盛りが記述されている横軸は対物レンズの半径方向の位置を示す。負(−)の符号がディスク内周方向、正(+)の符号がディスク外周方向を表している。また左側の縦軸は差信号P01とP02の信号レベルを示しており、右側の縦軸はチルト検出信号TL0のチルト検出誤差を示している。
FFPの強度分布が不均一であると、例えば差信号P01が対物レンズの位置に対してほぼ線形に変化するのに対し、差信号P02が対物レンズの位置の正負(内周方向と外周方向)で異なる傾きとなる場合がある。このような場合、補正係数k0を設計値であるk0=2.0とすると、対物レンズ位置外周側でチルト検出信号TL0が大きなオフセットを持ち、チルト検出誤差が発生する。
図19は補正係数k0を、2.0、1.8、1.6と変化させた時のチルト検出信号TL0に基づくチルト検出誤差を表している。実際の光学ヘッドでは、図19を利用して対物レンズの可動範囲(例えば±100μm)におけるチルト検出信号TL0のチルト検出誤差(すなわちオフセット)が最小となるような補正係数k0が決定される。図19に示す例では、補正係数k0は1.8に決定される。
しかしながら、補正係数k0を1.8としてもチルト検出誤差は十分低減されているとはいえない。特にFFPの強度分布の不均一の程度が大きい場合には、この方法では十分にチルト検出誤差を低減することができない。またデフォーカスや球面収差などの影響によって検出誤差がさらに大きくなる可能性に鑑みると、チルト検出誤差はできるだけ小さくすることが望ましい。
さらに、振幅変調型の光ディスク用光学ヘッドのチルト検出においては、補正係数k0は記録境界のオフセットも同時に補正するように決定される。従って、前述の方法で設計値と異なる補正係数を設定してしまうと、記録境界でのオフセットも十分に低減できず、さらにチルト検出誤差を発生させる要因となる。
本発明の目的は、チルト検出誤差を低減して高精度なチルト検出を可能とすることである。
本発明による光学ヘッドは、光源と、前記光源から放射された光ビームを光ディスクに集光する対物レンズと、前記光ディスクで反射された光ビームを受光面の複数領域において分割して受光し、各領域で受光した光の強度に基づいて複数の受光信号を出力する受光部と、各受光信号に基づいて前記対物レンズと前記光ディスクとの相対的な傾きを検出するチルト検出部とを有している。前記チルト検出部は、前記複数領域のうち、前記光ディスクの半径方向に対応した、光軸と交わる仮想的な基準線に関して対称に配置された第1複数領域からの受光信号に基づいて第1プッシュプル信号PP1を生成し、前記基準線に関して対称に配置された、前記第1複数領域とは異なる第2複数領域からの受光信号に基づいて第2プッシュプル信号PP2を生成し、かつ、前記対物レンズの前記光ディスク半径方向の位置に応じて係数kを変化させ、TLT=PP1−k×PP2によってチルト検出信号TLTを生成する。
前記受光面の複数領域は、前記受光面が、前記光ディスクの半径方向に対応する第1方向および前記トラック方向に対応する第2方向に沿って分割されていてもよい。
前記チルト検出部は、所定の位置を基準とした前記対物レンズの前記光ディスクの半径方向の変位量を検出し、検出した前記変位量に応じて前記係数kを変化させる変位検出部を備えていてもよい。
前記チルト検出部は、前記第1プッシュプル信号PP1および前記第2プッシュプル信号PP2を生成する信号演算部をさらに備えていてもよく、前記信号演算部は、前記第1複数領域および前記第2複数領域とは異なる、前記基準線に関して対称に配置された第3複数領域からの受光信号に基づいて第3プッシュプル信号PP3をさらに生成し、前記変位検出部は、生成された前記第3プッシュプル信号PP3に基づいて前記変位量を検出してもよい。
前記チルト検出部は、前記第1プッシュプル信号PP1および前記第2プッシュプル信号PP2を生成する信号演算部をさらに備えていてもよく、前記第1複数領域および前記第2複数領域の少なくとも一方は、前記光ディスクにおいて反射された光ビームのうちの0次光のみを受光する、前記基準線に関して対称に配置された第3複数領域を含んでおり、前記信号演算部は、前記第3複数領域からの受光信号に基づいて第3プッシュプル信号PP3をさらに生成し、前記変位検出部は、生成された前記第3プッシュプル信号PP3に基づいて前記変位量を検出してもよい。
前記光学ヘッドは前記対物レンズを駆動するための可動部を有するアクチュエータをさらに備えていてもよく、前記変位検出部は、前記可動部の変位量に基づいて前記対物レンズの変位量を検出してもよい。
前記光ディスクは、情報が記録された記録トラックと情報が記録されていない未記録トラックとで反射率が異なっていてもよく、前記第1複数領域および前記第2複数領域は、前記光ディスクにおいて反射された光ビームのうちの0次光の一部を受光しなくてもよい。
前記第1複数領域および前記第2複数領域の各々に含まれる、前記基準線に関して対称に配置された少なくとも1組の複数領域は、離間して配置されていてもよい。
前記変位検出部は、前記チルト検出信号TLTのオフセットの変動が最小になるように、前記対物レンズの前記光ディスク半径方向の所定の変位量毎に前記係数kを変化させてもよい。
前記変位検出部は、前記光ディスクの情報記録層に対して前記光ビームの焦点位置が所定量ずれている場合において前記チルト検出信号TLTの変動が最小になるように、前記係数kを変化させてもよい。
前記変位検出部は、前記光ディスクの情報記録層に対して前記光ビームに所定の球面収差が発生している場合において前記チルト検出信号TLTの変動が最小になるように、前記係数kを変化させてもよい。
前記変位検出部は、前記変位量が取り得る値に応じて予め設定された係数kの値を複数保持しており、前記変位検出部は、検出した前記変位量に対応する係数kを選択してもよい。
前記変位検出部は、前記変位量が取り得る範囲を複数の区間に区分し、各区間に対応する係数kの値を保持しており、前記変位検出部は、検出した前記変位量が属する区間を特定し、特定した前記区間に対応する係数kに変化させてもよい。
前記変位検出部は、前記変位量が取り得る範囲を、前記対物レンズの中立位置を基準として前記光ディスクの内周側の区間と外周側の区間とに区分して、各区間に対応する係数kの値を保持してもよい。
前記変位検出部は、前記変位量が取り得る範囲を、前記対物レンズの中立位置を含む第1の区間と、前記第1の区間よりも前記光ディスクの内周側の第2の区間と、前記第1の区間よりも前記光ディスクの外周側の第3の区間とに区分して、各区間に対応する係数kの値を保持してもよい。
複数の前記係数kの値は、前記光学ヘッドの組立調整時に設定されてもよい。
前記変位検出部は、前記光ビームが照射される光ディスク毎に前記係数kを設定してもよい。
前記光学ヘッドは、前記チルト検出部から出力された前記チルト検出信号TLTに応じて、前記対物レンズと前記光ディスクとが相対的に傾くことによって生じる収差を補正するチルト補正部をさらに備えていてもよい。
前記チルト補正部は、駆動信号に基づいて前記対物レンズを少なくとも前記光ディスクの半径方向に傾けることが可能であり、前記駆動信号は、前記チルト検出信号TLTに基づいて生成されてもよい。
本発明による光ディスク装置は、上述のいずれかの光学ヘッドと、光ディスクを回転駆動するためのモータと、前記光学ヘッドおよび前記モータを制御する制御部とを備えている。
本発明によれば、光ディスクのトラック方向に対応した、光軸と交わる仮想的な基準線で分割された受光領域から第1のプッシュプル信号PP1と第2のプッシュプル信号PP2を生成し、チルト検出信号TLT=PP1−k×PP2(kは係数)を求めるにあたって係数kを対物レンズの半径方向の変位に応じて可変とする。これにより、半導体レーザのFFPの強度分布が不均一な場合でも、高精度なチルト検出が可能となる。
さらに、第1複数領域および第2複数領域を光ディスクにおいて反射された光ビームのうちの0次光の一部を受光しないように構成することにより、記録状態と未記録状態で情報トラックの反射率が異なるいわゆる振幅変調型の光ディスクの記録境界においても、高精度なチルト検出が可能となる。
実施形態1による光学ヘッド100の構成を示す図である。
受光部7で分割されて受光される光束12を示す図である。
FFPの強度分布が不均一である場合の、差信号PP1とPP2、チルト検出信号TLTの挙動を示した図である。
対物レンズの位置と差信号PP3の信号レベルとの関係を示す図である。
対物レンズ位置に応じて補正係数kの値を変更したときの、対物レンズ位置とチルト検出誤差との関係を示す図である。
光束12と受光部7の分割パターンとの関係を示す図である。
光ディスク5の情報トラックの断面を模式的に示す図である。
光スポットが記録済みトラックおよび未記録トラックをトレースしたときに生じる、チルト検出信号TLTの検出誤差の挙動を示す図である。
情報トラック方向の受光部7の分割パターンについての他の例を示す図である。
情報トラック方向の受光部7の分割パターンについての他の例を示す図である。
実施形態3による光学ヘッド200の構成を示す図である。
実施形態4による光ディスク装置50の構成を示す図である。
対物レンズアクチュエータ206の可動部14と固定部15の構成を示す図である。
光ディスク装置50におけるチルト検出処理の手順を示すフローチャートである。
特許文献1に記載された従来の光学ヘッドおよびチルト検出機構の構成を説明する模式図である。
受光部107の受光領域と受光領域に入射する光束とを示す図である。
特許文献2に記載された従来の光学ヘッドの受光部107’の受光領域と、受光領域に入射する光束とを示す。
FFPの強度分布が不均一である場合の差信号P01とP02の挙動の例を示す図である。
補正係数k0を、2.0、1.8、1.6と変化させた時のチルト検出信号TL0に基づくチルト検出誤差を示す図である。
符号の説明
1 光源
2 光軸
3 ビームスプリッタ
4 対物レンズ
5 光ディスク
6 検出光学系
7 受光部
8 チルト検出部
9 信号演算部
10 増幅アンプ
11 差動アンプ
20、21 変位検出部
22 センサ
24 可動部
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による光学ヘッドおよび光ディスク装置の実施形態を説明する。以下では、光学ヘッドの実施形態1から3を説明する。その後実施形態4として、実施形態1から3のいずれかの光学ヘッドを採用した光ディスク装置を説明する。
(実施形態1)
まず図1から図5を参照しながら、チルト検出信号のオフセットを低減する光学ヘッドの第1の実施形態を説明する。
図1は本実施形態による光学ヘッド100の構成を示す。光学ヘッド100は、光源1、ビームスプリッタ3、対物レンズ4、検出光学系6、受光部7およびチルト検出部8を備えている。チルト検出部8は、信号演算部9、増幅アンプ10、差動アンプ11および変位検出部20を含む。またPP1、PP2、PP3は信号演算部9で得られる3つの差信号(プッシュプル信号)であり、TLTはチルト検出部8で生成されるチルト検出信号を示す。
図1には、説明の便宜のために光ディスク5が記載されている。光ディスク5は光学ヘッド100の構成要素ではないことに留意されたい。光ディスク5は、たとえばDVDやブルーレイ・ディスク(BD)である。
光源1から出射された光軸2を有するレーザ光はビームスプリッタ3を透過し、対物レンズ4により光ディスク5の透明基板を通して情報記録層に集光される。光ディスク5で反射されたレーザ光は、再び対物レンズ4を通過し、ビームスプリッタ3で反射され、検出光学系6により受光部7に導かる。検出光学系6を透過した光は受光部7へ入射し、受光部7において複数の領域に分割されて受光される。
図2は、受光部7で分割されて受光される光束12を示している。光束12の左右の円弧で囲まれた2つの領域は、光ディスク5の情報トラックの溝で回折された回折光の0次成分と±1次成分の重なりを表している。図2中の両矢印は光ディスク5の情報トラックの方向に対応する方向を表している。
受光部7の受光面は、光ディスクの情報トラック方向に対応した方向の分割線28および光ディスクの半径方向に対応した方向の複数の分割線(たとえば分割線29)に沿って分割されている。分割線28は、光軸と交わる仮想的な基準線27に基づいて規定されており、図2の例では受光面上では基準線27と分割線28とは一致している。
受光面が分割されることにより、図2に示す受光領域7a〜7jが規定される。1組の受光領域7aおよび7bは、基準線27に関して対称に配置されている。受光領域7cおよび7d、受光領域7eおよび7f、受光領域7gおよび7h、受光領域7iおよび7jも同様である。
受光部7は、光ディスクにおいて反射された光ビームの光束12を、受光面の複数の受光領域7a〜7jにおいて分割して受光する。各受光領域7a〜7jは入射した光束12の一部を受け、受けた光をその受光量に応じた出力電気信号(受光信号)に変換して出力する。
信号演算部9は差動演算を行うことによって3つの差信号PP1、PP2、PP3を得る。差信号PP1は光束12の一部(第1の光束)を光ディスク半径方向に2分割して得られる第1のプッシュプル信号であり、各受光領域7a〜7jから得られる出力電気信号を用いて表すと、
PP1=7a−7b
によって得られる。また、差信号PP2は光束12の他の一部(第2の光束)を光ディスク半径方向に2分割して得られる第2のプッシュプル信号であり、同様に、
PP2=(7c+7e)−(7d+7f)
によって得られる。さらに、差信号PP3は光束12の一部(第3の光束)を光ディスク半径方向に2分割して得られる第3のプッシュプル信号であり、
PP3=(7g+7i)−(7h+7j)
によって得られる。
なお一般的な光学ヘッドとしては、フォーカス検出部やトラッキング検出部、読み出した情報から情報信号を検出する情報信号検出部などが必要である。しかしこれらの構成要素は本実施形態に関連しないため、ここではそれらの説明は省略し、実施形態4において説明する。
次に、図1および図2の構成によって、チルト検出部8において生成される信号TLTを説明する。
光学ヘッドの光軸2に対し、光ディスク5が半径方向に傾いた場合(ラジアルチルトが発生した場合)、光ディスク5の透明基板をレーザ光が通過する際にコマ収差が発生する。
コマ収差は、情報トラックからの回折光の0次成分と±1次成分が重なった部分の波面を主に変形させる。波面の変形の程度は、差信号P01を検出する受光領域への入射光と差信号P02を検出する受光領域への入射光との間では異なる。すなわち差信号PP1およびPP2は情報トラックによってそれぞれ異なる変調を受ける。ラジアルチルトは差信号PP1の位相とPP2の位相のずれとして現れる。
チルト検出信号TLTは、以下の式で得られる。
TLT=PP1−k×PP2
上記演算は、増幅アンプ10によって差信号PP2がk倍された信号を、差動アンプ11が差信号PP1から差し引くことによって行われる。
差信号PP1とPP2の差であるチルト検出信号TLTもラジアルチルトによって位相のずれを生じる。よって、光スポットが情報トラック中心をトレースしているときのチルト検出信号TLTのレベルを検出することによって、ラジアルチルト検出が可能となる。
差信号PP3は、回折光の0次成分のみの領域を受光するため、情報トラックによる変調を受けない。従って、差信号PP3は対物レンズ4の位置に応じて受光部7上を移動する光束12の位置に対応した信号といえる。
FFPの強度分布が不均一である場合には、従来の技術の欄において説明したように、補正係数kを一意に決定することは困難である。
本発明の特徴のひとつは、対物レンズの光ディスク半径方向の位置に応じて補正係数kを変化させて、チルト検出信号TLTのオフセットを低減することにある。上述した差信号PP3は、対物レンズの光ディスク半径方向の位置を特定するために利用される。
次に、具体的にチルト検出信号TLTのオフセットを低減する手順を説明する。
図3はFFPの強度分布が不均一である場合の、差信号PP1とPP2、チルト検出信号TLTの挙動を示す。
−100から100までの目盛りが記述されている横軸は対物レンズの半径方向の位置を示し、負(−)の符号がディスク内周方向、正(+)の符号がディスク外周方向を表している。また左側の縦軸は差信号PP1とPP2の信号レベルを示しており、右側の縦軸はチルト検出信号TLTのチルト検出誤差を示している。チルト検出信号TLTは、補正係数kを設計値であるk=2.0として算出している。
なお、横軸の目盛り0に対応する対物レンズの基準位置は、対物レンズを駆動するためのアクチュエータ(後述)に電圧が印加されていない状態の対物レンズの位置(中立位置)に対応する。基準位置の状態では光源1および対物レンズ4の光軸は一致している。光源1および対物レンズ4間に図示されない光学素子(たとえばコリメータレンズ)が存在する場合には、それらの光軸も一致している。
FFPの強度分布が不均一であるため、差信号PP1が対物レンズの位置に対してほぼ線形に変化するのに対し、差信号PP2は対物レンズの位置の正負(内周方向と外周方向)で傾きが異なっている。上述の補正係数kによれば対物レンズ位置内周側ではチルト検出信号TLTのチルト検出誤差(オフセット)がほぼキャンセルされるのに対し、対物レンズ位置外周側ではオフセットがキャンセルできていない。これは、補正係数kを固定してチルト検出信号TLTを算出しているためである。
そこで、本実施形態においては、対物レンズの位置に応じて補正係数kの値を変化させる。対物レンズの位置は差信号PP3の信号レベルに基づいて検出され得る。図4は、対物レンズの位置と差信号PP3の信号レベルとの関係を示す。図4に示すように、差信号PP3の信号レベルは対物レンズ位置によってほぼ線形に変化している。
変位検出部20は差信号PP3の信号レベルを判定し、対物レンズ4の半径方向の位置を検出する。さらに変位検出部20は、対物レンズ4が所定の範囲内にある場合に、増幅アンプ10の補正係数kを変更する。
例を挙げて説明する。図5は、対物レンズ位置に応じて補正係数kの値を変更したときの、対物レンズ位置とチルト検出誤差との関係を示す。図5に示すように、差信号PP3に基づいて対物レンズ4が−100から0μmの範囲にあることを変位検出部20が検出すると、増幅アンプ10の補正係数kをk=2.0に設定する。
一方、差信号PP3に基づいて対物レンズ4が0から+100μmの範囲にあることを検出すると、変位検出部20はその範囲においては補正係数kをk=1.6に変更する。図5には、補正係数kの値を2.0から1.6に「補正」したときのチルト検出誤差が「○」によって示されている。一方、補正係数kが2.0のままであるとき(「補正」なしのとき)のチルト検出誤差が「△」によって示されている。前者のチルト検出誤差のグラフの方が、対物レンズ位置の全体にわたってより均一化されており、チルト検出誤差が対物レンズ位置にかかわらずほぼ一定に低減されているといえる。
よって、対物レンズ位置に応じて補正係数kの値を変更することにより、対物レンズ4の可動範囲(本実施形態においては、±100μm)の全域においてチルト検出信号TLTのオフセットをキャンセルし、チルト検出誤差を低減することが可能となる。
なお変位検出部20では差信号PP3を用いることによって対物レンズ4の位置を常に検出できるため、対物レンズ4の各位置において常に最適な補正係数となるように、対物レンズ4の位置に応じて細かく補正係数を変化させることも可能である。ただし実際には、チルト検出信号TLTのチルト検出誤差の影響がシステム上無視できる程度に小さくなるような補正係数を選択できればよい。
チルト検出誤差をどの程度に抑えるかは、どの程度の性能を有する光学ヘッドを設計するかということに密接に関係する。したがって、対物レンズ4の可動範囲が±100μmである場合は、図5に示したように対物レンズ4が内周側にあるか外周側にあるかによって、2つの補正係数から選択的に決定してもよい。
または、対物レンズ4の可動範囲(対物レンズ4の変位し得る範囲)を3以上の複数の区間に区分し、変位検出部20が各区間に対応する係数kの値を保持しておく。そして変位検出部20が、差信号PP3を用いて対物レンズ4の位置を特定し、どの区間に属するかを特定することによってその区間に対応する係数kを設定してもよい。たとえば、対物レンズ4が+50μm〜+100μmの範囲に位置しているとき、対物レンズ4の中立位置(0μm)を含む+50μm〜−50μmの範囲に位置しているとき、−50μm〜−100μmの範囲に位置しているときに応じて、3つの補正係数から選択的に決定してもよい。あるいは、対物レンズ4の可動範囲を4〜9程度の範囲に分割し、それぞれの範囲に対して適切な補正係数を選択してもよい。
このように補正係数を対物レンズの位置に応じて予め設定された複数の補正係数から選択して決定する方式では、変位検出部20や増幅アンプ10の回路構成を比較的簡略化することができる。
(実施形態2)
次に、図6から図10を参照しながら、チルト検出信号のオフセットを低減する光学ヘッドの第2の実施形態を説明する。本実施形態による光学ヘッドの構成は、後述する受光部7の構成を除いて実施形態1の光学ヘッドの構成と同じであるため、共通する構成についての説明は省略する。
本実施形態においては、いわゆる振幅変調型(例えば相変化型)の光ディスクを対象として動作する光学ヘッドを説明する。そのような光ディスクでは、データが書き込まれた情報トラックの反射率と書き込まれていない情報トラックの反射率とが異なるため、その境界部分ではチルト検出信号TLTが変動し、検出誤差もその影響を受ける。そこで、その境界部分におけるチルト検出信号TLTの検出誤差を低減するために、以下のような構成を採用する。
図6は、光束12と受光部7の分割パターンとの関係を示している。
受光部7は、光ディスクにおいて反射された光ビームの光束12を、受光面の複数の受光領域17a〜17jにおいて分割して受光し、各領域で受光した光の強度に基づいて複数の受光信号を出力する。受光部7の各受光領域7a〜7jは入射した光束12の一部を受け、受けた光をその受光量に応じた出力電気信号に変換して出力する。
受光部7は、受光面の中央部に存在する回折光の0次成分(0次光)のみが入射する領域に配置された遮光部13を有している。遮光部13と各受光領域17a〜17jとは、情報トラック方向に沿った2本の分割線によって分割されている。これら2本の分割線は、光軸と交わる仮想的な基準線27に沿って平行に設けられている。ただし、図2の例と異なり、基準線27と分割線とは一致しない。なお各受光領域17a〜17jが、光ディスクの半径方向に対応した方向の複数の分割線(たとえば分割線29)に沿って分割されている点は、図2の例と同じである。
信号演算部9は差動演算を行うことによって3つの差信号PP1、PP2、PP3を得る。
実施形態1と同様、図1における差信号PP1は第1の光束を光ディスク半径方向に2分割して得られる第1のプッシュプル信号であり、各受光領域17a〜17jから得られる出力電気信号を用いて表すと、
PP1=17a−17b
によって得られる。また、差信号PP2は第2の光束を光ディスク半径方向に2分割して得られる第2のプッシュプル信号であり、同様に、
PP2=(17c+17e)−(17d+17f)
によって得られる。さらに、差信号PP3は第3の光束を光ディスク半径方向に2分割して得られる第3のプッシュプル信号であり、
PP3=(17g+17i)−(17h+17j)
によって得られる。実施形態1に関して説明したように、本実施形態においても差信号PP3は対物レンズ位置によってほぼ線形に変化するため、差信号PP3の信号レベルを変位検出部20で判定し、対物レンズ4の位置を検出することが可能である。
チルト検出信号TLTは実施形態1で挙げた式:TLT=PP1−k×PP2によって得られる。
本実施形態では、光束12を検出する受光領域の中央部に遮光部13を設け、記録境界における反射率の変化の影響を最も受ける領域を検出しないようにしたことにより、いわゆる振幅変調型(例えば相変化型)の光ディスクにおける記録境界での検出誤差を低減することが可能である。なおここでいう「領域」とは0次光の一部を意味する。各受光領域の大きさや形状を最適化することで、対物レンズの移動に伴うオフセットと、記録境界で発生するオフセットを補正係数kで同時に補正し、チルト検出誤差を低減できる。
図7は、光ディスク5の情報トラックの断面を模式的に示す。それぞれの情報トラックには、情報トラック番号1〜9を付してある。情報トラック1〜9のうち、情報トラック4〜6はデータが書き込まれている記録済みトラックであり、情報トラック1〜3および7〜9はデータが書き込まれていない未記録トラックを示している。ハッチングを施した記録済みトラック4〜6の反射率は、未記録1〜3および7〜9の反射率よりも低くなっている。
図8は、光スポットが記録済みトラックおよび未記録トラックをトレースしたときに生じる、チルト検出信号TLTの検出誤差の挙動を示す。横軸は図7の情報トラック番号に対応し、4〜6は記録済みトラック、1〜3と7〜9は未記録トラックを示す。縦軸はチルト検出信号TLTのチルト検出誤差を示している。また3本の曲線は、それぞれ対物レンズの位置−100μm、0μm、+100μmを表している(詳細は図の凡例を参照)。
検出誤差は、図6に示す受光部7を利用において、図7に示す3本の記録済みトラックと3本の未記録トラックとが周期的に繰り返して現れる場合について算出されている。なお、光ディスク5と対物レンズ4の半径方向の相対傾きは0度とする。
図8は対物レンズの位置±100μmの範囲でチルト検出信号TLTの変動を抑えるように補正係数k(例えばk=2.0)を設定することにより、記録境界でのチルト検出信号TLTの変動も同時に低減することが可能であることを示している。
いま、実施形態1と同様にFFPの強度分布が不均一であると想定する。図3のように対物レンズ位置内周側で補正係数kを設計値k=2.0に設定すると、チルト検出信号TLTのオフセットはほぼキャンセルされる。一方、対物レンズ位置外周側ではオフセットをキャンセルすることができない。
振幅変調型の光ディスクに対しては、補正係数kが設計値k=2.0の場合のみ、記録境界でのチルト検出誤差が最小になるため、図3における対物レンズ位置内周側ではチルト検出信号TLTのオフセットが記録境界を含めてほぼキャンセルされる。
また本実施形態においても実施形態1と同様に、差信号PP3を用いて対物レンズ4の半径方向の位置を検出し、対物レンズ位置外周側における適切な補正係数を選択することが可能である。しかし本実施形態においては、対物レンズの移動に伴うチルト検出誤差だけが最小になるような補正係数kの決定の仕方は適切ではない。換言すれば、所定の対物レンズ位置、例えば図3に示すように+50μmや+100μm)での記録境界におけるチルト検出誤差が最小になるような補正係数を設定することが好ましい。さらに対物レンズ位置0μmから+100μmの範囲内での記録境界におけるチルト検出誤差が最小になるような補正係数を設定することが好ましい。
このとき、実施形態1において説明したように、対物レンズ4の可動範囲を3以上の複数の区間に区分し、各区間に対応する係数kの値を保持しておいてもよい。詳細は実施形態1の説明と同じであるため、ここでの説明は省略する。
記録境界におけるチルト検出誤差は、特に、デフォーカスや球面収差が発生した場合に大きくなる。デフォーカスとは、光ディスクの情報記録層に対して光ビームの焦点位置が所定量以上ずれている状態をいう。球面収差とは対物レンズの内周部分を通過する光の焦点と外周部分を通過する光の焦点とが所定量以上ずれている状態をいう。よって、デフォーカスおよび/または球面収差がある状態でのチルト検出誤差が最小となるように補正係数を決定することが好ましい。
なお、差信号PP3を生成する受光領域17g〜17jおよび遮光部13は、図6に示したパターンに限られない。
例えば図9は、情報トラック方向の受光部7の分割パターンについての他の例を示す。遮光部13’は受光領域17g’、17h’、 17i’、17j’には設けられておらず、それらの領域に挟まれた位置で、かつ情報トラック方向に沿って設けられている。遮光部13’もまた、0次光の一部を受けないように配置されている。
また図10は、情報トラック方向の受光部7の分割パターンについてのさらに他の例を示す。遮光部13’’は受光領域17g’’と17h’’との間、および、受光領域17i’’と17j’’との間には設けられておらず、それらの領域に挟まれた位置で、かつ情報トラック方向に沿って設けられている。遮光部13’’もまた、0次光の一部を受けないように配置されている。さらに遮光部13’’は糸巻形状で構成されている。よって遮光部13’’と各受光領域17a〜17fとの分割線は曲線である。
なお、図9および図10に示す基準線27および一例として示す分割線29は、図2および図6で説明したとおり、受光領域17a〜17fおよび17g’〜17j’、受光領域17a〜17fおよび17g’’〜17j’’を分割する際に規定される。
また、実施形態1および2においては、図2、図6、図9および図10に示したように、光束12を情報トラック方向に分割して受光領域7a〜7jあるいは受光領域17a〜17j(受光領域17g’〜17j’、17g’’〜17j’’を含む。)として差信号PP1〜PP3を得た。しかし、本発明はこのような分割パターンに限らず、光束を分割して受光し、複数の差信号(プッシュプル信号)を用いてチルト検出を行う光学ヘッド全てに適用可能である。図2、図6、図9および図10では、光ディスクの半径方向に対応した方向の各分割線(たとえば分割線29)は直線であるとしたが、全部または一部が曲線であってもよい。たとえば各分割線を、基準線27に関して対称な形状で設けることができる。
さらに、対物レンズ4の位置を検出する差信号PP3は、差信号PP1、PP2に関連する受光領域7a〜7f(あるいは17a〜17f)とは異なる0次光のみの受光領域7g〜7j(あるいは17g〜17j、17g’〜17j’、17g’’〜17j’’)からの信号を用いて生成するとした。しかし、次の計算によって得られるプッシュプル信号PP4を対物レンズの位置検出信号として用いても同様の効果が得られる。すなわちプッシュプル信号PP4は、例えば受光領域7a〜7fをさらに分割し、その一部の0次光のみの領域を利用して生成される。
(実施形態3)
次に、図11を参照しながら、チルト検出信号のオフセットを低減する光学ヘッドの第3の実施形態を説明する。本実施形態による光学ヘッドの構成のうち、実施形態1および2の光学ヘッドに設けられた同一の構成要素については、同一の符号を付して、以下ではその説明を省略する。
図11は本実施形態による光学ヘッド200の構成を示す。光学ヘッド200は、変位検出部21、センサ22および対物レンズアクチュエータの可動部24とを有する。
光学ヘッド200は、実施形態1および2で説明した差信号PP3を利用することなく対物レンズ4の光ディスク半径方向の位置を特定することができる。
変位検出部21は対物レンズの変位を検出する。変位検出部21は、センサ22の出力電気信号に基づいて、対物レンズアクチュエータの可動部24の位置、より具体的には光ディスク半径方向の位置を検出する。可動部24は対物レンズ4と固定されているため、可動部24の位置が特定されると、対物レンズ4の光ディスク半径方向の位置が特定されることになる。これにより、実施形態1および2と同様に、変位検出部21は対物レンズ4が所定の範囲内にある場合に、増幅アンプ10の補正係数kを適切な値に変更することが可能である。
対物レンズアクチュエータは可動部24を備えたユニットであり、対物レンズ4を固定して保持するとともに、可動部24に印加された電圧に応じて対物レンズ4を駆動させる。対物レンズアクチュエータについては、図12および図13を参照しながら後述する。
センサ22は対物レンズアクチュエータの可動部24に対してLED等の光を照射し、その反射光を検出する。そして、対物レンズアクチュエータの可動部24の光ディスク半径方向の位置に応じた電気信号(駆動信号)を出力する。これにより、プッシュプル信号PP3に代えて対物レンズ4の光ディスク半径方向の位置を特定できる。
以上、実施形態1から3において、対物レンズの位置を検出し、対物レンズの位置に応じて適切な補正係数kを決定する手順を説明した。補正係数kを決定するタイミングは、光学ヘッドの組立調整時であってもよいし、実際の記録再生動作開始時または開始前であってもよい。
光学ヘッドの組立調整時に、所定の基準の光ディスクを用いて対物レンズ位置に応じた補正係数kを予め決定しておき、実際の記録再生動作時には、対物レンズ位置検出信号に基づいて補正係数kを切り替えることにより、回路構成が比較的シンプルになるというメリットがある。
一方、実際の記録再生動作の前(例えば起動時)に、当該光ディスクに対して対物レンズ位置に応じた補正係数kを決定し、記録再生動作時には、そこで決定された補正係数kを用いるという方法は、光ディスクの溝形状や反射率等のばらつきに対して、チルト検出誤差をより低減できるというメリットがある。
(実施形態4)
次に、図12および図13を参照しながら、本実施形態による光ディスク装置を説明する。
図12は本実施形態による光ディスク装置50の構成を示す。図示された構成要素は筐体(図示せず)に収められる。本実施形態では、再生専用の光ディスク装置を例示するが、本発明は、記録専用、あるいは、記録および再生を行う光ディスク装置に適用することができる。
光ディスク装置50は、光ディスク駆動部51、制御部52、光学ヘッド53、制御系204および再生信号処理系205を備える。
光ディスク駆動部51は、光ディスク5を載置するためのターンテーブルを有し、ターンテーブルに光ディスク5を載置して、回転駆動する。
光学ヘッド53は実施形態1から3で述べたいずれかの光学ヘッドである。実施形態1から3の光学ヘッドではチルト検出部が内蔵されているとして説明したが、図12では記載の便宜のためチルト検出部8を光学ヘッド53の外部に記載している。
なお、光学ヘッドの機能を必要最小限に抑えて低コスト化を図ってもよい。その場合には、チルト検出部8以降のチルト制御系、後述するフォーカスエラー信号生成部211以降のフォーカス制御系、トラッキングエラー信号生成部212以降のトラッキング制御系、波形等化部220以降の再生制御系をたとえば光ディスクコントローラと呼ばれるチップ回路に実装してもよい。
制御部52は光ディスク駆動部51と光学ヘッド53の駆動および制御を行う機能を有すると共に、光学ヘッド53で受光された制御信号、情報信号の信号処理を行う機能と、情報信号を筐体の外部と内部でインターフェースさせる機能を有する。
対物レンズ4には、対物レンズアクチュエータ206が接続されている。対物レンズアクチュエータ206は、対物レンズ4を情報記録層5aと垂直な方向(a)(フォーカス方向とも言う)および平行な方向(b)(トラッキング方向とも言う)へ移動させるフォーカス補正部およびトラッキング補正部として機能する。また、光ディスク5の半径方向の傾き角が変化するようチルト方向(c)へ移動させるチルト補正部として機能する。
対物レンズアクチュエータ206は、対物レンズ4を駆動する可動部と固定部を備える。図13は、対物レンズアクチュエータ206の可動部14と固定部15の構成を示す。可動部14は対物レンズ4をフォーカス方向(a)とトラッキング方向(b)に加えて、ラジアルチルト方向(c)の3軸に移動可能となっている。固定部15は光学ヘッド53に対して固定されている。
対物レンズアクチュエータ206には、光ディスク装置の対物レンズを駆動する公知の駆動機構を採用することができる。たとえば、コイルおよびマグネットを用いて、電磁力により対物レンズを駆動あるいは変位させる構造を採用してもよい。
光学ヘッド53には、トラバース駆動部207が接続されており、光学ヘッド53全体を光ディスク5の半径方向へ移動させる。
制御系204は、光ディスク5の回転の制御および光ディスク5の情報記録層5aに集光させる光の集光状態および集光位置を制御する。具体的には、光ディスク駆動部51、トラバース駆動部207および対物レンズアクチュエータ206の制御を行う。このために制御系204は、実施形態1から3のいずれかの光学ヘッド53の受光部7と、チルト検出部8と、フォーカスエラー信号生成部211と、トラッキングエラー信号生成部212と、位相補償部214〜216と、駆動信号生成部218とを備える。
フォーカスエラー信号生成部211は、受光部7から複数の信号を受け取り、情報記録層5aに集光された光の集光状態が所定の状態からどの程度ずれているかを示すフォーカスエラー信号を生成する。位相補償部214は、フォーカスエラー信号の位相を補償し、フォーカス制御信号として、駆動信号生成部218へ出力する。駆動信号生成部218は、フォーカス制御信号を受け取り、対物レンズアクチュエータ206へ対物レンズ4を情報記録層5aと垂直な方向231へ移動させるフォーカス駆動信号を出力する。これにより、情報記録層5aに集光された光が一定の集光状態を保つように制御される。
トラッキングエラー信号生成部212は、受光部7から複数の信号を受け取り、情報記録層5aに集光された光がトラックからどの程度ずれているかを示すトラッキングエラー信号を生成する。位相補償部215は、トラッキングエラー信号の位相を補償し、トラッキング制御信号として、駆動信号生成部218へ出力する。駆動信号生成部218は、トラッキング制御信号を受け取り、対物レンズアクチュエータ206へ対物レンズ4を情報記録層5aと平行な半径方向232へ移動させるトラッキング駆動信号を出力する。これにより、情報記録層5aに集光された光が常にトラックをトレースするように制御される。
受光部7およびチルト検出部8は、チルト検出装置241を構成している。チルト検出装置241は、受光部7から複数の受光信号を受け取り、チルト検出信号TLTを生成する。位相補償部216は、チルト検出信号TLTの位相を補償し、チルト制御信号として、駆動信号生成部218へ出力する。駆動信号生成部218は、チルト制御信号を受け取り、対物レンズアクチュエータ206へ対物レンズ4をチルト方向(c)へ移動させるチルト駆動信号を出力する。これにより、情報記録層5aに集光された光の光軸が、情報記録層5aと垂直になるように制御される。
なお、本実施形態では、対物レンズアクチュエータ206がフォーカス補正部、トラッキング補正部およびチルト補正部として機能するが、対物レンズアクチュエータにフォーカス補正部およびトラッキング補正部として機能を持たせ、チルト補正部を対物レンズアクチュエータとは別に設けてもよい。たとえば、対物レンズ4とビームスプリッタ3との間に、チルト制御信号に基づいて屈折率が変化することにより、通過する光の波面収差を補正する液晶素子を設けてもよい。
フォーカスエラー信号生成部211、トラッキングエラー信号生成部212、位相補償部214〜216および駆動信号生成部218は従来の光ディスク装置に用いられる公知の構成を備えている。また、フォーカスエラー信号の生成は、非点収差法などの公知の方法により生成することができる。トラッキングエラー信号は、位相差法、プッシュプル法、3ビーム法などにより生成することができる。なお、受光部7は、フォーカスエラー信号トラッキングエラー信号およびチルトエラー信号をそれぞれ生成するために共通に用いられる検出素子を備えていてもよいし、それぞれ別々の検出素子を備えていてもよい。
制御系204は、このほか、トラバース駆動部207を駆動するための駆動信号生成部224と、光ディスク駆動部51を駆動するための駆動信号生成部224とを含む。駆動信号生成部224は、光ディスク装置201の動作状態に基づいて、光スポットを情報記録層5aの所定のトラックの位置へジャンプさせたり、記録や再生動作にともなって光スポットが連続的にトラックをトレースするよう制御部52から指令を受ける。制御部52から指令に基づき、駆動信号生成部224は、トラバース駆動部207を駆動するための駆動信号を生成し、光学ヘッド53を移動させる。駆動信号生成部204は、制御部52から指令を受け取り、所定の回転速度で光ディスク5を回転させるよう、光ディスク駆動部51を駆動する駆動信号を生成する。
再生信号処理系205は、波形等化部220、PLL部221およびデコーダ222を含んでおり、光ディスク5の情報記録層5aに記録された情報を再生し、再生信号を生成する。波形等化部220は受光部7から情報記録層5aに記録された情報を含む信号を受け取り、その信号を所定の周波数帯域において増幅し、RF信号を出力する。PLL部221はRF信号を受け取り、RF信号に同期したクロック信号を生成する。デコーダ222は、クロック信号を用いてRF信号を復号し、情報記録層5aに記録された情報を出力する。
光学ヘッド53は、実施形態1から3で述べたいずれかの光学ヘッドであるため、検出誤差の小さいラジアルチルト検出が可能である。検出されたラジアルチルトがゼロになるように、対物レンズアクチュエータの可動部24をラジアルチルト方向(c)に傾けることにより、対物レンズ4と光ディスク5の相対的なラジアルチルトを低減でき、チルトによって生じるコマ収差を低減することが可能となる。
ここで、光ディスク装置50の動作のうちチルト検出処理を説明する。図14は、光ディスク装置50におけるチルト検出処理の手順を示す。
まずステップS11において、光学ヘッド53は装填されている光ディスク5にレーザ光を照射する。次のステップS12において、光学ヘッド53のチルト検出部8に設けられた信号演算部9は、反射光の受光信号に基づいてプッシュプル信号PP1、PP2およびPP3を生成する。
ステップS13において、チルト検出部8の変位検出部20は、プッシュプル信号PP3の信号レベルに基づいて対物レンズの半径方向の位置を検出する。そしてステップS14において、変位検出部20は検出された対物レンズの位置に応じてオフセット補正係数kを決定する。その結果、チルト検出部8は、プッシュプル信号PP1およびPP2と決定された補正係数kとに基づいて、チルト検出信号TLTを生成する。
ステップS16において、光ディスク装置50の位相補償部216はチルト検出信号TLTに基づいてチルト量を検出する。より具体的に説明すると、位相補償部216はチルト検出信号TLTの位相を補償し、補正すべきチルト量を検出する。そしてそのチルト量に対応するチルト制御信号を生成して駆動信号生成部218へ出力する。
ステップS17において、駆動信号生成部218がチルト量に対応するチルト駆動信号を出力すると、対物レンズアクチュエータ206はそのチルト駆動信号に基づいて、情報記録層5aに集光された光の光軸が情報記録層5aと垂直になるように対物レンズ4のチルトを補正する。
チルト検出信号を用いたクローズドループにより、光ディスクの面振れによって発生するラジアルチルトをリアルタイムで補正できる。また、光ディスク装置全体の小型化等にも効果がある。
なお、対物レンズアクチュエータ206は、本実施形態で述べたような可動部4を傾ける方法に限らず、例えば光学ヘッド全体を傾けるなどの他の方法を用いても同様の効果が得られる。
上述の各実施形態の説明のうち、特に光学ヘッドの変位検出部が補正係数kを選択し、その補正係数kに基づいてチルト検出信号を生成する処理は、コンピュータプログラムに基づいて実現することが可能である。チルト検出部を有する光学ヘッド、または、光ディスクコントローラのコンピュータは、メモリ(図示せず)に格納されたそのようなコンピュータプログラムを実行することによって上述した処理を実現する。コンピュータプログラムは、CD−ROM等の記録媒体に記録して市場に流通させ、または、インターネット等の電気通信回線を通じて伝送される。
本発明の光学ヘッドは、レーザ光源のFFPの強度分布が不均一である場合でも、高精度なラジアルチルト検出を行うことが可能である。また、さらに、受光部を、光ディスクにおいて反射された光ビームのうちの0次光の一部を受光しないように構成することにより、記録トラックと未記録トラックで反射率が異なる振幅変調型の光ディスクに対して情報の記録または再生を行う光学ヘッドや光ディスク装置に対しても有用である。
特に、ラジアルチルトによって発生するコマ収差を、対物レンズを傾けることによって補正する機能を有する光学ヘッドや光ディスク装置に対して有用である。
本発明は、光ディスク等の情報記録媒体に対して光学的に情報の記録および/または再生を行う光学ヘッド、および、そのような光学ヘッドを備えた光ディスク装置に関する。
近年、オーディオやビデオなどの音響・映像データが放送され、または配信されて光ディスクに記録される機会が増えている。記録すべきデータ量の増大に伴って、より高記録密度で大容量の光ディスクが要望されている。
光ディスクの記録密度を高めるためには記録および再生に用いる光スポットのサイズを小さくする必要がある。そこで、開口数(NA:Numerical Aperture)の大きい対物レンズが用いられるようになってきている。
しかし、開口数が大きくなると対物レンズと光ディスクの情報記録層との距離が短くなるため、光ディスクが反りなどにより傾いている場合に発生するコマ収差の影響が無視できなくなる。コマ収差の影響により、正しく記録再生を行うことができなくなるためである。
従来の光ディスク用光学ヘッドの中には、光ディスクと対物レンズの光軸との相対的な傾き(以下「チルト」と呼ぶ。)を検出する機能を備えたものがある。検出したチルトに基づいて光軸が光ディスクの情報記録層に対して垂直になるように補正することにより、コマ収差の発生を抑制できる。
図15は、特許文献1に記載された従来の光学ヘッドおよびチルト検出機構の構成を模式的に示したものである。図15の光学ヘッドは、光源101、ビームスプリッタ103、対物レンズ104、検出光学系106、受光部107およびチルト検出部108を備えている。チルト検出部108は、信号演算部109、増幅アンプ110および差動アンプ111を含む。
光源101から出射された光軸102を有する光はビームスプリッタ103を透過し対物レンズ104により光ディスクの情報記録層に集光される。光ディスク105において反射した光は、対物レンズ104を透過した後、ビームスプリッタ103において反射し、検出光学系106へ導かれる。検出光学系106を透過した光は、受光部107へ入射する。
図16は受光部107の受光領域と受光領域に入射する光束とを示す。受光部107は、受光領域107a〜107fを含み、受光領域107a〜107fに光ディスク105から得られた光束112が照射される。
図16に示すように、光束112は受光領域107a〜107fによって6分割されて検出される。光束112の左右の円弧で囲まれた2つの領域は、光ディスク105の情報トラックの溝で回折された回折光の0次成分と±1次成分が重なった領域を表している。また、図中に記した矢印は光ディスク105の情報トラックの方向を表している。
受光領域107a〜107fからそれぞれ得られる信号は信号演算部109に入力される。信号演算部109は入力された各信号を利用して、以下の演算に基づいて差信号P01およびP02を生成する。ここで、受光領域107a〜107fから得られる信号はそれぞれの参照符号で表している。
P01=107a−107b
P02=(107c+107e)−(107d+107f)
チルト検出部108において、差信号P02は増幅アンプ110でk0倍された後、差動アンプ111により差信号P01から差し引かれ、チルト検出信号TL0として出力される。すなわち、チルト検出信号TL0は、
TL0=P01−k0×P02
で表される。定数k0は、対物レンズ104の光軸と光学ヘッドの光軸102の位置ずれによって生じる差信号P01のオフセットを、差信号P02に生じたオフセットで補正するように決定される。したがって、チルト検出信号TL0は対物レンズ104の位置ずれによる影響を受けにくい信号といえる。
光学ヘッドの光軸102に対し、光ディスク105が半径方向に傾くと、すなわちいわゆるラジアルチルトが発生すると、その影響は差信号P01の位相とP02の位相のずれとして現れる。これは、光ディスク105の透明基板をレーザ光が通過する際にコマ収差が発生するためである。コマ収差は、情報トラックからの回折光の0次成分と±1次成分が重なった部分の波面を主に変形させる。コマ収差の発生によって、差信号P01およびP02は情報トラックによってそれぞれ異なる変調を受け、差信号P01の位相とP02の位相がずれてしまう。
差信号P01とk0×P02の差として求められるチルト検出信号TL0もラジアルチルトによって位相のずれを生じるため、光スポットが情報トラック中心をトレースしているときのチルト検出信号TL0のレベルを検出するとラジアルチルトの検出が可能となる。
ここで、情報が記録された情報トラックと記録されていない情報トラックの反射率が異なる、いわゆる振幅変調型(例えば相変化型)の光ディスクにおいては、記録された情報トラックと記録されていない情報トラックの境界(以下「記録境界」と呼ぶ。)で、特に光ディスクヘの集光状態のずれ(以下「デフォーカス」と呼ぶ。)によって光束の中央部の光強度分布の対称性が大きく変化するため、チルト検出信号にオフセットが生じてチルト検出誤差が発生する。
そこで光ディスク用光学ヘッドとして、記録境界でのチルト検出信号のオフセットを低減する機能を備えたものが開発されている。図17は、特許文献2に記載された従来の光学ヘッドの受光部107’の受光領域と、受光領域に入射する光束とを示す。特許文献2の光学ヘッドの構成要素は、受光部107’を除いて図15に示す光学ヘッドと同一である。よって、以下では受光部107’を説明する。
図17には、受光部107’に入射する光束112’と、各々の領域に入射した光束の光量を検出するため分割された受光領域117a〜117fとが示されている。光束112’は受光領域117a〜117fによって6分割されて受光されて受光され、信号演算部109(図15)にて2つの差信号P01とP02として演算される。差信号P01とP02は、
P01=117a−117b
P02=(117c+117e)−(117d+117f)
で表され、信号TL0は、
TL0=P01−k0×P02
となる(k0は定数)。
図17において、光束112の中央部の特に光強度分布の対称性変化が大きい領域(回折光の0次成分のみの領域)には遮光部113が配置されている。これにより、差信号P01’とP02’の記録境界での対称性変化の影響を低減できる。
なお、各受光領域の大きさや形状を最適化することで、対物レンズの移動に伴うオフセットと、記録境界で発生するオフセットを補正係数k0で同時に補正し、さらに検出誤差を低減できることが知られている。
特開2003−45058号公報
特開2005−141893号公報
しかしながら、前述した従来の光ヘッドの構成では、対物レンズの移動に伴って発生する差信号P01とP02のオフセットの挙動が異なり、補正係数を一意に決定した場合に、オフセットを完全に補正することができないという問題が生じていた。このような問題は、例えば光源である半導体レーザの遠視野パターン(Far Field Pattern;FFP)の強度分布の不均一性、光学ヘッド光学系の局所的な汚れによって発生する。
図18は、FFPの強度分布が不均一である場合の差信号P01とP02の挙動の例を示す。−100から100までの目盛りが記述されている横軸は対物レンズの半径方向の位置を示す。負(−)の符号がディスク内周方向、正(+)の符号がディスク外周方向を表している。また左側の縦軸は差信号P01とP02の信号レベルを示しており、右側の縦軸はチルト検出信号TL0のチルト検出誤差を示している。
FFPの強度分布が不均一であると、例えば差信号P01が対物レンズの位置に対してほぼ線形に変化するのに対し、差信号P02が対物レンズの位置の正負(内周方向と外周方向)で異なる傾きとなる場合がある。このような場合、補正係数k0を設計値であるk0=2.0とすると、対物レンズ位置外周側でチルト検出信号TL0が大きなオフセットを持ち、チルト検出誤差が発生する。
図19は補正係数k0を、2.0、1.8、1.6と変化させた時のチルト検出信号TL0に基づくチルト検出誤差を表している。実際の光学ヘッドでは、図19を利用して対物レンズの可動範囲(例えば±100μm)におけるチルト検出信号TL0のチルト検出誤差(すなわちオフセット)が最小となるような補正係数k0が決定される。図19に示す例では、補正係数k0は1.8に決定される。
しかしながら、補正係数k0を1.8としてもチルト検出誤差は十分低減されているとはいえない。特にFFPの強度分布の不均一の程度が大きい場合には、この方法では十分にチルト検出誤差を低減することができない。またデフォーカスや球面収差などの影響によって検出誤差がさらに大きくなる可能性に鑑みると、チルト検出誤差はできるだけ小さくすることが望ましい。
さらに、振幅変調型の光ディスク用光学ヘッドのチルト検出においては、補正係数k0は記録境界のオフセットも同時に補正するように決定される。従って、前述の方法で設計値と異なる補正係数を設定してしまうと、記録境界でのオフセットも十分に低減できず、さらにチルト検出誤差を発生させる要因となる。
本発明の目的は、チルト検出誤差を低減して高精度なチルト検出を可能とすることである。
本発明による光学ヘッドは、光源と、前記光源から放射された光ビームを光ディスクに集光する対物レンズと、前記光ディスクで反射された光ビームを受光面の複数領域において分割して受光し、各領域で受光した光の強度に基づいて複数の受光信号を出力する受光部と、各受光信号に基づいて前記対物レンズと前記光ディスクとの相対的な傾きを検出するチルト検出部とを有している。前記チルト検出部は、前記複数領域のうち、前記光ディスクの半径方向に対応した、光軸と交わる仮想的な基準線に関して対称に配置された第1複数領域からの受光信号に基づいて第1プッシュプル信号PP1を生成し、前記基準線に関して対称に配置された、前記第1複数領域とは異なる第2複数領域からの受光信号に基づいて第2プッシュプル信号PP2を生成し、かつ、前記対物レンズの前記光ディスク半径方向の位置に応じて係数kを変化させ、TLT=PP1−k×PP2によってチルト検出信号TLTを生成する。
前記受光面の複数領域は、前記受光面が、前記光ディスクの半径方向に対応する第1方向および前記トラック方向に対応する第2方向に沿って分割されていてもよい。
前記チルト検出部は、所定の位置を基準とした前記対物レンズの前記光ディスクの半径方向の変位量を検出し、検出した前記変位量に応じて前記係数kを変化させる変位検出部を備えていてもよい。
前記チルト検出部は、前記第1プッシュプル信号PP1および前記第2プッシュプル信号PP2を生成する信号演算部をさらに備えていてもよく、前記信号演算部は、前記第1複数領域および前記第2複数領域とは異なる、前記基準線に関して対称に配置された第3複数領域からの受光信号に基づいて第3プッシュプル信号PP3をさらに生成し、前記変位検出部は、生成された前記第3プッシュプル信号PP3に基づいて前記変位量を検出してもよい。
前記チルト検出部は、前記第1プッシュプル信号PP1および前記第2プッシュプル信号PP2を生成する信号演算部をさらに備えていてもよく、前記第1複数領域および前記第2複数領域の少なくとも一方は、前記光ディスクにおいて反射された光ビームのうちの0次光のみを受光する、前記基準線に関して対称に配置された第3複数領域を含んでおり、前記信号演算部は、前記第3複数領域からの受光信号に基づいて第3プッシュプル信号PP3をさらに生成し、前記変位検出部は、生成された前記第3プッシュプル信号PP3に基づいて前記変位量を検出してもよい。
前記光学ヘッドは前記対物レンズを駆動するための可動部を有するアクチュエータをさらに備えていてもよく、前記変位検出部は、前記可動部の変位量に基づいて前記対物レンズの変位量を検出してもよい。
前記光ディスクは、情報が記録された記録トラックと情報が記録されていない未記録トラックとで反射率が異なっていてもよく、前記第1複数領域および前記第2複数領域は、前記光ディスクにおいて反射された光ビームのうちの0次光の一部を受光しなくてもよい。
前記第1複数領域および前記第2複数領域の各々に含まれる、前記基準線に関して対称に配置された少なくとも1組の複数領域は、離間して配置されていてもよい。
前記変位検出部は、前記チルト検出信号TLTのオフセットの変動が最小になるように、前記対物レンズの前記光ディスク半径方向の所定の変位量毎に前記係数kを変化させてもよい。
前記変位検出部は、前記光ディスクの情報記録層に対して前記光ビームの焦点位置が所定量ずれている場合において前記チルト検出信号TLTの変動が最小になるように、前記係数kを変化させてもよい。
前記変位検出部は、前記光ディスクの情報記録層に対して前記光ビームに所定の球面収差が発生している場合において前記チルト検出信号TLTの変動が最小になるように、前記係数kを変化させてもよい。
前記変位検出部は、前記変位量が取り得る値に応じて予め設定された係数kの値を複数保持しており、前記変位検出部は、検出した前記変位量に対応する係数kを選択してもよい。
前記変位検出部は、前記変位量が取り得る範囲を複数の区間に区分し、各区間に対応する係数kの値を保持しており、前記変位検出部は、検出した前記変位量が属する区間を特定し、特定した前記区間に対応する係数kに変化させてもよい。
前記変位検出部は、前記変位量が取り得る範囲を、前記対物レンズの中立位置を基準として前記光ディスクの内周側の区間と外周側の区間とに区分して、各区間に対応する係数kの値を保持してもよい。
前記変位検出部は、前記変位量が取り得る範囲を、前記対物レンズの中立位置を含む第1の区間と、前記第1の区間よりも前記光ディスクの内周側の第2の区間と、前記第1の区間よりも前記光ディスクの外周側の第3の区間とに区分して、各区間に対応する係数kの値を保持してもよい。
複数の前記係数kの値は、前記光学ヘッドの組立調整時に設定されてもよい。
前記変位検出部は、前記光ビームが照射される光ディスク毎に前記係数kを設定してもよい。
前記光学ヘッドは、前記チルト検出部から出力された前記チルト検出信号TLTに応じて、前記対物レンズと前記光ディスクとが相対的に傾くことによって生じる収差を補正するチルト補正部をさらに備えていてもよい。
前記チルト補正部は、駆動信号に基づいて前記対物レンズを少なくとも前記光ディスクの半径方向に傾けることが可能であり、前記駆動信号は、前記チルト検出信号TLTに基づいて生成されてもよい。
本発明による光ディスク装置は、上述のいずれかの光学ヘッドと、光ディスクを回転駆動するためのモータと、前記光学ヘッドおよび前記モータを制御する制御部とを備えている。
本発明によれば、光ディスクのトラック方向に対応した、光軸と交わる仮想的な基準線で分割された受光領域から第1のプッシュプル信号PP1と第2のプッシュプル信号PP2を生成し、チルト検出信号TLT=PP1−k×PP2(kは係数)を求めるにあたって係数kを対物レンズの半径方向の変位に応じて可変とする。これにより、半導体レーザのFFPの強度分布が不均一な場合でも、高精度なチルト検出が可能となる。
さらに、第1複数領域および第2複数領域を光ディスクにおいて反射された光ビームのうちの0次光の一部を受光しないように構成することにより、記録状態と未記録状態で情報トラックの反射率が異なるいわゆる振幅変調型の光ディスクの記録境界においても、高精度なチルト検出が可能となる。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による光学ヘッドおよび光ディスク装置の実施形態を説明する。以下では、光学ヘッドの実施形態1から3を説明する。その後実施形態4として、実施形態1から3のいずれかの光学ヘッドを採用した光ディスク装置を説明する。
(実施形態1)
まず図1から図5を参照しながら、チルト検出信号のオフセットを低減する光学ヘッドの第1の実施形態を説明する。
図1は本実施形態による光学ヘッド100の構成を示す。光学ヘッド100は、光源1、ビームスプリッタ3、対物レンズ4、検出光学系6、受光部7およびチルト検出部8を備えている。チルト検出部8は、信号演算部9、増幅アンプ10、差動アンプ11および変位検出部20を含む。またPP1、PP2、PP3は信号演算部9で得られる3つの差信号(プッシュプル信号)であり、TLTはチルト検出部8で生成されるチルト検出信号を示す。
図1には、説明の便宜のために光ディスク5が記載されている。光ディスク5は光学ヘッド100の構成要素ではないことに留意されたい。光ディスク5は、たとえばDVDやブルーレイ・ディスク(BD)である。
光源1から出射された光軸2を有するレーザ光はビームスプリッタ3を透過し、対物レンズ4により光ディスク5の透明基板を通して情報記録層に集光される。光ディスク5で反射されたレーザ光は、再び対物レンズ4を通過し、ビームスプリッタ3で反射され、検出光学系6により受光部7に導かる。検出光学系6を透過した光は受光部7へ入射し、受光部7において複数の領域に分割されて受光される。
図2は、受光部7で分割されて受光される光束12を示している。光束12の左右の円弧で囲まれた2つの領域は、光ディスク5の情報トラックの溝で回折された回折光の0次成分と±1次成分の重なりを表している。図2中の両矢印は光ディスク5の情報トラックの方向に対応する方向を表している。
受光部7の受光面は、光ディスクの情報トラック方向に対応した方向の分割線28および光ディスクの半径方向に対応した方向の複数の分割線(たとえば分割線29)に沿って分割されている。分割線28は、光軸と交わる仮想的な基準線27に基づいて規定されており、図2の例では受光面上では基準線27と分割線28とは一致している。
受光面が分割されることにより、図2に示す受光領域7a〜7jが規定される。1組の受光領域7aおよび7bは、基準線27に関して対称に配置されている。受光領域7cおよび7d、受光領域7eおよび7f、受光領域7gおよび7h、受光領域7iおよび7jも同様である。
受光部7は、光ディスクにおいて反射された光ビームの光束12を、受光面の複数の受光領域7a〜7jにおいて分割して受光する。各受光領域7a〜7jは入射した光束12の一部を受け、受けた光をその受光量に応じた出力電気信号(受光信号)に変換して出力する。
信号演算部9は差動演算を行うことによって3つの差信号PP1、PP2、PP3を得る。差信号PP1は光束12の一部(第1の光束)を光ディスク半径方向に2分割して得られる第1のプッシュプル信号であり、各受光領域7a〜7jから得られる出力電気信号を用いて表すと、
PP1=7a−7b
によって得られる。また、差信号PP2は光束12の他の一部(第2の光束)を光ディスク半径方向に2分割して得られる第2のプッシュプル信号であり、同様に、
PP2=(7c+7e)−(7d+7f)
によって得られる。さらに、差信号PP3は光束12の一部(第3の光束)を光ディスク半径方向に2分割して得られる第3のプッシュプル信号であり、
PP3=(7g+7i)−(7h+7j)
によって得られる。
なお一般的な光学ヘッドとしては、フォーカス検出部やトラッキング検出部、読み出した情報から情報信号を検出する情報信号検出部などが必要である。しかしこれらの構成要素は本実施形態に関連しないため、ここではそれらの説明は省略し、実施形態4において説明する。
次に、図1および図2の構成によって、チルト検出部8において生成される信号TLTを説明する。
光学ヘッドの光軸2に対し、光ディスク5が半径方向に傾いた場合(ラジアルチルトが発生した場合)、光ディスク5の透明基板をレーザ光が通過する際にコマ収差が発生する。
コマ収差は、情報トラックからの回折光の0次成分と±1次成分が重なった部分の波面を主に変形させる。波面の変形の程度は、差信号P01を検出する受光領域への入射光と差信号P02を検出する受光領域への入射光との間では異なる。すなわち差信号PP1およびPP2は情報トラックによってそれぞれ異なる変調を受ける。ラジアルチルトは差信号PP1の位相とPP2の位相のずれとして現れる。
チルト検出信号TLTは、以下の式で得られる。
TLT=PP1−k×PP2
上記演算は、増幅アンプ10によって差信号PP2がk倍された信号を、差動アンプ11が差信号PP1から差し引くことによって行われる。
差信号PP1とPP2の差であるチルト検出信号TLTもラジアルチルトによって位相のずれを生じる。よって、光スポットが情報トラック中心をトレースしているときのチルト検出信号TLTのレベルを検出することによって、ラジアルチルト検出が可能となる。
差信号PP3は、回折光の0次成分のみの領域を受光するため、情報トラックによる変調を受けない。従って、差信号PP3は対物レンズ4の位置に応じて受光部7上を移動する光束12の位置に対応した信号といえる。
FFPの強度分布が不均一である場合には、従来の技術の欄において説明したように、補正係数kを一意に決定することは困難である。
本発明の特徴のひとつは、対物レンズの光ディスク半径方向の位置に応じて補正係数kを変化させて、チルト検出信号TLTのオフセットを低減することにある。上述した差信号PP3は、対物レンズの光ディスク半径方向の位置を特定するために利用される。
次に、具体的にチルト検出信号TLTのオフセットを低減する手順を説明する。
図3はFFPの強度分布が不均一である場合の、差信号PP1とPP2、チルト検出信号TLTの挙動を示す。
−100から100までの目盛りが記述されている横軸は対物レンズの半径方向の位置を示し、負(−)の符号がディスク内周方向、正(+)の符号がディスク外周方向を表している。また左側の縦軸は差信号PP1とPP2の信号レベルを示しており、右側の縦軸はチルト検出信号TLTのチルト検出誤差を示している。チルト検出信号TLTは、補正係数kを設計値であるk=2.0として算出している。
なお、横軸の目盛り0に対応する対物レンズの基準位置は、対物レンズを駆動するためのアクチュエータ(後述)に電圧が印加されていない状態の対物レンズの位置(中立位置)に対応する。基準位置の状態では光源1および対物レンズ4の光軸は一致している。光源1および対物レンズ4間に図示されない光学素子(たとえばコリメータレンズ)が存在する場合には、それらの光軸も一致している。
FFPの強度分布が不均一であるため、差信号PP1が対物レンズの位置に対してほぼ線形に変化するのに対し、差信号PP2は対物レンズの位置の正負(内周方向と外周方向)で傾きが異なっている。上述の補正係数kによれば対物レンズ位置内周側ではチルト検出信号TLTのチルト検出誤差(オフセット)がほぼキャンセルされるのに対し、対物レンズ位置外周側ではオフセットがキャンセルできていない。これは、補正係数kを固定してチルト検出信号TLTを算出しているためである。
そこで、本実施形態においては、対物レンズの位置に応じて補正係数kの値を変化させる。対物レンズの位置は差信号PP3の信号レベルに基づいて検出され得る。図4は、対物レンズの位置と差信号PP3の信号レベルとの関係を示す。図4に示すように、差信号PP3の信号レベルは対物レンズ位置によってほぼ線形に変化している。
変位検出部20は差信号PP3の信号レベルを判定し、対物レンズ4の半径方向の位置を検出する。さらに変位検出部20は、対物レンズ4が所定の範囲内にある場合に、増幅アンプ10の補正係数kを変更する。
例を挙げて説明する。図5は、対物レンズ位置に応じて補正係数kの値を変更したときの、対物レンズ位置とチルト検出誤差との関係を示す。図5に示すように、差信号PP3に基づいて対物レンズ4が−100から0μmの範囲にあることを変位検出部20が検出すると、増幅アンプ10の補正係数kをk=2.0に設定する。
一方、差信号PP3に基づいて対物レンズ4が0から+100μmの範囲にあることを検出すると、変位検出部20はその範囲においては補正係数kをk=1.6に変更する。図5には、補正係数kの値を2.0から1.6に「補正」したときのチルト検出誤差が「○」によって示されている。一方、補正係数kが2.0のままであるとき(「補正」なしのとき)のチルト検出誤差が「△」によって示されている。前者のチルト検出誤差のグラフの方が、対物レンズ位置の全体にわたってより均一化されており、チルト検出誤差が対物レンズ位置にかかわらずほぼ一定に低減されているといえる。
よって、対物レンズ位置に応じて補正係数kの値を変更することにより、対物レンズ4の可動範囲(本実施形態においては、±100μm)の全域においてチルト検出信号TLTのオフセットをキャンセルし、チルト検出誤差を低減することが可能となる。
なお変位検出部20では差信号PP3を用いることによって対物レンズ4の位置を常に検出できるため、対物レンズ4の各位置において常に最適な補正係数となるように、対物レンズ4の位置に応じて細かく補正係数を変化させることも可能である。ただし実際には、チルト検出信号TLTのチルト検出誤差の影響がシステム上無視できる程度に小さくなるような補正係数を選択できればよい。
チルト検出誤差をどの程度に抑えるかは、どの程度の性能を有する光学ヘッドを設計するかということに密接に関係する。したがって、対物レンズ4の可動範囲が±100μmである場合は、図5に示したように対物レンズ4が内周側にあるか外周側にあるかによって、2つの補正係数から選択的に決定してもよい。
または、対物レンズ4の可動範囲(対物レンズ4の変位し得る範囲)を3以上の複数の区間に区分し、変位検出部20が各区間に対応する係数kの値を保持しておく。そして変位検出部20が、差信号PP3を用いて対物レンズ4の位置を特定し、どの区間に属するかを特定することによってその区間に対応する係数kを設定してもよい。たとえば、対物レンズ4が+50μm〜+100μmの範囲に位置しているとき、対物レンズ4の中立位置(0μm)を含む+50μm〜−50μmの範囲に位置しているとき、−50μm〜−100μmの範囲に位置しているときに応じて、3つの補正係数から選択的に決定してもよい。あるいは、対物レンズ4の可動範囲を4〜9程度の範囲に分割し、それぞれの範囲に対して適切な補正係数を選択してもよい。
このように補正係数を対物レンズの位置に応じて予め設定された複数の補正係数から選択して決定する方式では、変位検出部20や増幅アンプ10の回路構成を比較的簡略化することができる。
(実施形態2)
次に、図6から図10を参照しながら、チルト検出信号のオフセットを低減する光学ヘッドの第2の実施形態を説明する。本実施形態による光学ヘッドの構成は、後述する受光部7の構成を除いて実施形態1の光学ヘッドの構成と同じであるため、共通する構成についての説明は省略する。
本実施形態においては、いわゆる振幅変調型(例えば相変化型)の光ディスクを対象として動作する光学ヘッドを説明する。そのような光ディスクでは、データが書き込まれた情報トラックの反射率と書き込まれていない情報トラックの反射率とが異なるため、その境界部分ではチルト検出信号TLTが変動し、検出誤差もその影響を受ける。そこで、その境界部分におけるチルト検出信号TLTの検出誤差を低減するために、以下のような構成を採用する。
図6は、光束12と受光部7の分割パターンとの関係を示している。
受光部7は、光ディスクにおいて反射された光ビームの光束12を、受光面の複数の受光領域17a〜17jにおいて分割して受光し、各領域で受光した光の強度に基づいて複数の受光信号を出力する。受光部7の各受光領域7a〜7jは入射した光束12の一部を受け、受けた光をその受光量に応じた出力電気信号に変換して出力する。
受光部7は、受光面の中央部に存在する回折光の0次成分(0次光)のみが入射する領域に配置された遮光部13を有している。遮光部13と各受光領域17a〜17jとは、情報トラック方向に沿った2本の分割線によって分割されている。これら2本の分割線は、光軸と交わる仮想的な基準線27に沿って平行に設けられている。ただし、図2の例と異なり、基準線27と分割線とは一致しない。なお各受光領域17a〜17jが、光ディスクの半径方向に対応した方向の複数の分割線(たとえば分割線29)に沿って分割されている点は、図2の例と同じである。
信号演算部9は差動演算を行うことによって3つの差信号PP1、PP2、PP3を得る。
実施形態1と同様、図1における差信号PP1は第1の光束を光ディスク半径方向に2分割して得られる第1のプッシュプル信号であり、各受光領域17a〜17jから得られる出力電気信号を用いて表すと、
PP1=17a−17b
によって得られる。また、差信号PP2は第2の光束を光ディスク半径方向に2分割して得られる第2のプッシュプル信号であり、同様に、
PP2=(17c+17e)−(17d+17f)
によって得られる。さらに、差信号PP3は第3の光束を光ディスク半径方向に2分割して得られる第3のプッシュプル信号であり、
PP3=(17g+17i)−(17h+17j)
によって得られる。実施形態1に関して説明したように、本実施形態においても差信号PP3は対物レンズ位置によってほぼ線形に変化するため、差信号PP3の信号レベルを変位検出部20で判定し、対物レンズ4の位置を検出することが可能である。
チルト検出信号TLTは実施形態1で挙げた式:TLT=PP1−k×PP2によって得られる。
本実施形態では、光束12を検出する受光領域の中央部に遮光部13を設け、記録境界における反射率の変化の影響を最も受ける領域を検出しないようにしたことにより、いわゆる振幅変調型(例えば相変化型)の光ディスクにおける記録境界での検出誤差を低減することが可能である。なおここでいう「領域」とは0次光の一部を意味する。各受光領域の大きさや形状を最適化することで、対物レンズの移動に伴うオフセットと、記録境界で発生するオフセットを補正係数kで同時に補正し、チルト検出誤差を低減できる。
図7は、光ディスク5の情報トラックの断面を模式的に示す。それぞれの情報トラックには、情報トラック番号1〜9を付してある。情報トラック1〜9のうち、情報トラック4〜6はデータが書き込まれている記録済みトラックであり、情報トラック1〜3および7〜9はデータが書き込まれていない未記録トラックを示している。ハッチングを施した記録済みトラック4〜6の反射率は、未記録1〜3および7〜9の反射率よりも低くなっている。
図8は、光スポットが記録済みトラックおよび未記録トラックをトレースしたときに生じる、チルト検出信号TLTの検出誤差の挙動を示す。横軸は図7の情報トラック番号に対応し、4〜6は記録済みトラック、1〜3と7〜9は未記録トラックを示す。縦軸はチルト検出信号TLTのチルト検出誤差を示している。また3本の曲線は、それぞれ対物レンズの位置−100μm、0μm、+100μmを表している(詳細は図の凡例を参照)。
検出誤差は、図6に示す受光部7を利用において、図7に示す3本の記録済みトラックと3本の未記録トラックとが周期的に繰り返して現れる場合について算出されている。なお、光ディスク5と対物レンズ4の半径方向の相対傾きは0度とする。
図8は対物レンズの位置±100μmの範囲でチルト検出信号TLTの変動を抑えるように補正係数k(例えばk=2.0)を設定することにより、記録境界でのチルト検出信号TLTの変動も同時に低減することが可能であることを示している。
いま、実施形態1と同様にFFPの強度分布が不均一であると想定する。図3のように対物レンズ位置内周側で補正係数kを設計値k=2.0に設定すると、チルト検出信号TLTのオフセットはほぼキャンセルされる。一方、対物レンズ位置外周側ではオフセットをキャンセルすることができない。
振幅変調型の光ディスクに対しては、補正係数kが設計値k=2.0の場合のみ、記録境界でのチルト検出誤差が最小になるため、図3における対物レンズ位置内周側ではチルト検出信号TLTのオフセットが記録境界を含めてほぼキャンセルされる。
また本実施形態においても実施形態1と同様に、差信号PP3を用いて対物レンズ4の半径方向の位置を検出し、対物レンズ位置外周側における適切な補正係数を選択することが可能である。しかし本実施形態においては、対物レンズの移動に伴うチルト検出誤差だけが最小になるような補正係数kの決定の仕方は適切ではない。換言すれば、所定の対物レンズ位置(例えば図3に示すように+50μmや+100μm)での記録境界におけるチルト検出誤差が最小になるような補正係数を設定することが好ましい。さらに対物レンズ位置0μmから+100μmの範囲内での記録境界におけるチルト検出誤差が最小になるような補正係数を設定することが好ましい。
このとき、実施形態1において説明したように、対物レンズ4の可動範囲を3以上の複数の区間に区分し、各区間に対応する係数kの値を保持しておいてもよい。詳細は実施形態1の説明と同じであるため、ここでの説明は省略する。
記録境界におけるチルト検出誤差は、特に、デフォーカスや球面収差が発生した場合に大きくなる。デフォーカスとは、光ディスクの情報記録層に対して光ビームの焦点位置が所定量以上ずれている状態をいう。球面収差とは対物レンズの内周部分を通過する光の焦点と外周部分を通過する光の焦点とが所定量以上ずれている状態をいう。よって、デフォーカスおよび/または球面収差がある状態でのチルト検出誤差が最小となるように補正係数を決定することが好ましい。
なお、差信号PP3を生成する受光領域17g〜17jおよび遮光部13は、図6に示したパターンに限られない。
例えば図9は、情報トラック方向の受光部7の分割パターンについての他の例を示す。遮光部13’は受光領域17g’、17h’、 17i’、17j’には設けられておらず、それらの領域に挟まれた位置で、かつ情報トラック方向に沿って設けられている。遮光部13’もまた、0次光の一部を受けないように配置されている。
また図10は、情報トラック方向の受光部7の分割パターンについてのさらに他の例を示す。遮光部13’’は受光領域17g’’と17h’’との間、および、受光領域17i’’と17j’’との間には設けられておらず、それらの領域に挟まれた位置で、かつ情報トラック方向に沿って設けられている。遮光部13’’もまた、0次光の一部を受けないように配置されている。さらに遮光部13’’は糸巻形状で構成されている。よって遮光部13’’と各受光領域17a〜17fとの分割線は曲線である。
なお、図9および図10に示す基準線27および一例として示す分割線29は、図2および図6で説明したとおり、受光領域17a〜17fおよび17g’〜17j’、受光領域17a〜17fおよび17g’’〜17j’’を分割する際に規定される。
また、実施形態1および2においては、図2、図6、図9および図10に示したように、光束12を情報トラック方向に分割して受光領域7a〜7jあるいは受光領域17a〜17j(受光領域17g’〜17j’、17g’’〜17j’’を含む。)として差信号PP1〜PP3を得た。しかし、本発明はこのような分割パターンに限らず、光束を分割して受光し、複数の差信号(プッシュプル信号)を用いてチルト検出を行う光学ヘッド全てに適用可能である。図2、図6、図9および図10では、光ディスクの半径方向に対応した方向の各分割線(たとえば分割線29)は直線であるとしたが、全部または一部が曲線であってもよい。たとえば各分割線を、基準線27に関して対称な形状で設けることができる。
さらに、対物レンズ4の位置を検出する差信号PP3は、差信号PP1、PP2に関連する受光領域7a〜7f(あるいは17a〜17f)とは異なる0次光のみの受光領域7g〜7j(あるいは17g〜17j、17g’〜17j’、17g’’〜17j’’)からの信号を用いて生成するとした。しかし、次の計算によって得られるプッシュプル信号PP4を対物レンズの位置検出信号として用いても同様の効果が得られる。すなわちプッシュプル信号PP4は、例えば受光領域7a〜7fをさらに分割し、その一部の0次光のみの領域を利用して生成される。
(実施形態3)
次に、図11を参照しながら、チルト検出信号のオフセットを低減する光学ヘッドの第3の実施形態を説明する。本実施形態による光学ヘッドの構成のうち、実施形態1および2の光学ヘッドに設けられた同一の構成要素については、同一の符号を付して、以下ではその説明を省略する。
図11は本実施形態による光学ヘッド200の構成を示す。光学ヘッド200は、変位検出部21、センサ22および対物レンズアクチュエータの可動部24とを有する。
光学ヘッド200は、実施形態1および2で説明した差信号PP3を利用することなく対物レンズ4の光ディスク半径方向の位置を特定することができる。
変位検出部21は対物レンズの変位を検出する。変位検出部21は、センサ22の出力電気信号に基づいて、対物レンズアクチュエータの可動部24の位置、より具体的には光ディスク半径方向の位置を検出する。可動部24は対物レンズ4と固定されているため、可動部24の位置が特定されると、対物レンズ4の光ディスク半径方向の位置が特定されることになる。これにより、実施形態1および2と同様に、変位検出部21は対物レンズ4が所定の範囲内にある場合に、増幅アンプ10の補正係数kを適切な値に変更することが可能である。
対物レンズアクチュエータは可動部24を備えたユニットであり、対物レンズ4を固定して保持するとともに、可動部24に印加された電圧に応じて対物レンズ4を駆動させる。対物レンズアクチュエータについては、図12および図13を参照しながら後述する。
センサ22は対物レンズアクチュエータの可動部24に対してLED等の光を照射し、その反射光を検出する。そして、対物レンズアクチュエータの可動部24の光ディスク半径方向の位置に応じた電気信号(駆動信号)を出力する。これにより、プッシュプル信号PP3に代えて対物レンズ4の光ディスク半径方向の位置を特定できる。
以上、実施形態1から3において、対物レンズの位置を検出し、対物レンズの位置に応じて適切な補正係数kを決定する手順を説明した。補正係数kを決定するタイミングは、光学ヘッドの組立調整時であってもよいし、実際の記録再生動作開始時または開始前であってもよい。
光学ヘッドの組立調整時に、所定の基準の光ディスクを用いて対物レンズ位置に応じた補正係数kを予め決定しておき、実際の記録再生動作時には、対物レンズ位置検出信号に基づいて補正係数kを切り替えることにより、回路構成が比較的シンプルになるというメリットがある。
一方、実際の記録再生動作の前(例えば起動時)に、当該光ディスクに対して対物レンズ位置に応じた補正係数kを決定し、記録再生動作時には、そこで決定された補正係数kを用いるという方法は、光ディスクの溝形状や反射率等のばらつきに対して、チルト検出誤差をより低減できるというメリットがある。
(実施形態4)
次に、図12および図13を参照しながら、本実施形態による光ディスク装置を説明する。
図12は本実施形態による光ディスク装置50の構成を示す。図示された構成要素は筐体(図示せず)に収められる。本実施形態では、再生専用の光ディスク装置を例示するが、本発明は、記録専用、あるいは、記録および再生を行う光ディスク装置に適用することができる。
光ディスク装置50は、光ディスク駆動部51、制御部52、光学ヘッド53、制御系204および再生信号処理系205を備える。
光ディスク駆動部51は、光ディスク5を載置するためのターンテーブルを有し、ターンテーブルに光ディスク5を載置して、回転駆動する。
光学ヘッド53は実施形態1から3で述べたいずれかの光学ヘッドである。実施形態1から3の光学ヘッドではチルト検出部が内蔵されているとして説明したが、図12では記載の便宜のためチルト検出部8を光学ヘッド53の外部に記載している。
なお、光学ヘッドの機能を必要最小限に抑えて低コスト化を図ってもよい。その場合には、チルト検出部8以降のチルト制御系、後述するフォーカスエラー信号生成部211以降のフォーカス制御系、トラッキングエラー信号生成部212以降のトラッキング制御系、波形等化部220以降の再生制御系をたとえば光ディスクコントローラと呼ばれるチップ回路に実装してもよい。
制御部52は光ディスク駆動部51と光学ヘッド53の駆動および制御を行う機能を有すると共に、光学ヘッド53で受光された制御信号、情報信号の信号処理を行う機能と、情報信号を筐体の外部と内部でインターフェースさせる機能を有する。
対物レンズ4には、対物レンズアクチュエータ206が接続されている。対物レンズアクチュエータ206は、対物レンズ4を情報記録層5aと垂直な方向(a)(フォーカス方向とも言う)および平行な方向(b)(トラッキング方向とも言う)へ移動させるフォーカス補正部およびトラッキング補正部として機能する。また、光ディスク5の半径方向の傾き角が変化するようチルト方向(c)へ移動させるチルト補正部として機能する。
対物レンズアクチュエータ206は、対物レンズ4を駆動する可動部と固定部を備える。図13は、対物レンズアクチュエータ206の可動部14と固定部15の構成を示す。可動部14は対物レンズ4をフォーカス方向(a)とトラッキング方向(b)に加えて、ラジアルチルト方向(c)の3軸に移動可能となっている。固定部15は光学ヘッド53に対して固定されている。
対物レンズアクチュエータ206には、光ディスク装置の対物レンズを駆動する公知の駆動機構を採用することができる。たとえば、コイルおよびマグネットを用いて、電磁力により対物レンズを駆動あるいは変位させる構造を採用してもよい。
光学ヘッド53には、トラバース駆動部207が接続されており、光学ヘッド53全体を光ディスク5の半径方向へ移動させる。
制御系204は、光ディスク5の回転の制御および光ディスク5の情報記録層5aに集光させる光の集光状態および集光位置を制御する。具体的には、光ディスク駆動部51、トラバース駆動部207および対物レンズアクチュエータ206の制御を行う。このために制御系204は、実施形態1から3のいずれかの光学ヘッド53の受光部7と、チルト検出部8と、フォーカスエラー信号生成部211と、トラッキングエラー信号生成部212と、位相補償部214〜216と、駆動信号生成部218とを備える。
フォーカスエラー信号生成部211は、受光部7から複数の信号を受け取り、情報記録層5aに集光された光の集光状態が所定の状態からどの程度ずれているかを示すフォーカスエラー信号を生成する。位相補償部214は、フォーカスエラー信号の位相を補償し、フォーカス制御信号として、駆動信号生成部218へ出力する。駆動信号生成部218は、フォーカス制御信号を受け取り、対物レンズアクチュエータ206へ対物レンズ4を情報記録層5aと垂直な方向231へ移動させるフォーカス駆動信号を出力する。これにより、情報記録層5aに集光された光が一定の集光状態を保つように制御される。
トラッキングエラー信号生成部212は、受光部7から複数の信号を受け取り、情報記録層5aに集光された光がトラックからどの程度ずれているかを示すトラッキングエラー信号を生成する。位相補償部215は、トラッキングエラー信号の位相を補償し、トラッキング制御信号として、駆動信号生成部218へ出力する。駆動信号生成部218は、トラッキング制御信号を受け取り、対物レンズアクチュエータ206へ対物レンズ4を情報記録層5aと平行な半径方向232へ移動させるトラッキング駆動信号を出力する。これにより、情報記録層5aに集光された光が常にトラックをトレースするように制御される。
受光部7およびチルト検出部8は、チルト検出装置241を構成している。チルト検出装置241は、受光部7から複数の受光信号を受け取り、チルト検出信号TLTを生成する。位相補償部216は、チルト検出信号TLTの位相を補償し、チルト制御信号として、駆動信号生成部218へ出力する。駆動信号生成部218は、チルト制御信号を受け取り、対物レンズアクチュエータ206へ対物レンズ4をチルト方向(c)へ移動させるチルト駆動信号を出力する。これにより、情報記録層5aに集光された光の光軸が、情報記録層5aと垂直になるように制御される。
なお、本実施形態では、対物レンズアクチュエータ206がフォーカス補正部、トラッキング補正部およびチルト補正部として機能するが、対物レンズアクチュエータにフォーカス補正部およびトラッキング補正部として機能を持たせ、チルト補正部を対物レンズアクチュエータとは別に設けてもよい。たとえば、対物レンズ4とビームスプリッタ3との間に、チルト制御信号に基づいて屈折率が変化することにより、通過する光の波面収差を補正する液晶素子を設けてもよい。
フォーカスエラー信号生成部211、トラッキングエラー信号生成部212、位相補償部214〜216および駆動信号生成部218は従来の光ディスク装置に用いられる公知の構成を備えている。また、フォーカスエラー信号の生成は、非点収差法などの公知の方法により生成することができる。トラッキングエラー信号は、位相差法、プッシュプル法、3ビーム法などにより生成することができる。なお、受光部7は、フォーカスエラー信号トラッキングエラー信号およびチルトエラー信号をそれぞれ生成するために共通に用いられる検出素子を備えていてもよいし、それぞれ別々の検出素子を備えていてもよい。
制御系204は、このほか、トラバース駆動部207を駆動するための駆動信号生成部224と、光ディスク駆動部51を駆動するための駆動信号生成部224とを含む。駆動信号生成部224は、光ディスク装置201の動作状態に基づいて、光スポットを情報記録層5aの所定のトラックの位置へジャンプさせたり、記録や再生動作にともなって光スポットが連続的にトラックをトレースするよう制御部52から指令を受ける。制御部52から指令に基づき、駆動信号生成部224は、トラバース駆動部207を駆動するための駆動信号を生成し、光学ヘッド53を移動させる。駆動信号生成部204は、制御部52から指令を受け取り、所定の回転速度で光ディスク5を回転させるよう、光ディスク駆動部51を駆動する駆動信号を生成する。
再生信号処理系205は、波形等化部220、PLL部221およびデコーダ222を含んでおり、光ディスク5の情報記録層5aに記録された情報を再生し、再生信号を生成する。波形等化部220は受光部7から情報記録層5aに記録された情報を含む信号を受け取り、その信号を所定の周波数帯域において増幅し、RF信号を出力する。PLL部221はRF信号を受け取り、RF信号に同期したクロック信号を生成する。デコーダ222は、クロック信号を用いてRF信号を復号し、情報記録層5aに記録された情報を出力する。
光学ヘッド53は、実施形態1から3で述べたいずれかの光学ヘッドであるため、検出誤差の小さいラジアルチルト検出が可能である。検出されたラジアルチルトがゼロになるように、対物レンズアクチュエータの可動部24をラジアルチルト方向(c)に傾けることにより、対物レンズ4と光ディスク5の相対的なラジアルチルトを低減でき、チルトによって生じるコマ収差を低減することが可能となる。
ここで、光ディスク装置50の動作のうちチルト検出処理を説明する。図14は、光ディスク装置50におけるチルト検出処理の手順を示す。
まずステップS11において、光学ヘッド53は装填されている光ディスク5にレーザ光を照射する。次のステップS12において、光学ヘッド53のチルト検出部8に設けられた信号演算部9は、反射光の受光信号に基づいてプッシュプル信号PP1、PP2およびPP3を生成する。
ステップS13において、チルト検出部8の変位検出部20は、プッシュプル信号PP3の信号レベルに基づいて対物レンズの半径方向の位置を検出する。そしてステップS14において、変位検出部20は検出された対物レンズの位置に応じてオフセット補正係数kを決定する。その結果、チルト検出部8は、プッシュプル信号PP1およびPP2と決定された補正係数kとに基づいて、チルト検出信号TLTを生成する。
ステップS16において、光ディスク装置50の位相補償部216はチルト検出信号TLTに基づいてチルト量を検出する。より具体的に説明すると、位相補償部216はチルト検出信号TLTの位相を補償し、補正すべきチルト量を検出する。そしてそのチルト量に対応するチルト制御信号を生成して駆動信号生成部218へ出力する。
ステップS17において、駆動信号生成部218がチルト量に対応するチルト駆動信号を出力すると、対物レンズアクチュエータ206はそのチルト駆動信号に基づいて、情報記録層5aに集光された光の光軸が情報記録層5aと垂直になるように対物レンズ4のチルトを補正する。
チルト検出信号を用いたクローズドループにより、光ディスクの面振れによって発生するラジアルチルトをリアルタイムで補正できる。また、光ディスク装置全体の小型化等にも効果がある。
なお、対物レンズアクチュエータ206は、本実施形態で述べたような可動部4を傾ける方法に限らず、例えば光学ヘッド全体を傾けるなどの他の方法を用いても同様の効果が得られる。
上述の各実施形態の説明のうち、特に光学ヘッドの変位検出部が補正係数kを選択し、その補正係数kに基づいてチルト検出信号を生成する処理は、コンピュータプログラムに基づいて実現することが可能である。チルト検出部を有する光学ヘッド、または、光ディスクコントローラのコンピュータは、メモリ(図示せず)に格納されたそのようなコンピュータプログラムを実行することによって上述した処理を実現する。コンピュータプログラムは、CD−ROM等の記録媒体に記録して市場に流通させ、または、インターネット等の電気通信回線を通じて伝送される。
本発明の光学ヘッドは、レーザ光源のFFPの強度分布が不均一である場合でも、高精度なラジアルチルト検出を行うことが可能である。また、さらに、受光部を、光ディスクにおいて反射された光ビームのうちの0次光の一部を受光しないように構成することにより、記録トラックと未記録トラックで反射率が異なる振幅変調型の光ディスクに対して情報の記録または再生を行う光学ヘッドや光ディスク装置に対しても有用である。
特に、ラジアルチルトによって発生するコマ収差を、対物レンズを傾けることによって補正する機能を有する光学ヘッドや光ディスク装置に対して有用である。
実施形態1による光学ヘッド100の構成を示す図である。
受光部7で分割されて受光される光束12を示す図である。
FFPの強度分布が不均一である場合の、差信号PP1とPP2、チルト検出信号TLTの挙動を示した図である。
対物レンズの位置と差信号PP3の信号レベルとの関係を示す図である。
対物レンズ位置に応じて補正係数kの値を変更したときの、対物レンズ位置とチルト検出誤差との関係を示す図である。
光束12と受光部7の分割パターンとの関係を示す図である。
光ディスク5の情報トラックの断面を模式的に示す図である。
光スポットが記録済みトラックおよび未記録トラックをトレースしたときに生じる、チルト検出信号TLTの検出誤差の挙動を示す図である。
情報トラック方向の受光部7の分割パターンについての他の例を示す図である。
情報トラック方向の受光部7の分割パターンについての他の例を示す図である。
実施形態3による光学ヘッド200の構成を示す図である。
実施形態4による光ディスク装置50の構成を示す図である。
対物レンズアクチュエータ206の可動部14と固定部15の構成を示す図である。
光ディスク装置50におけるチルト検出処理の手順を示すフローチャートである。
特許文献1に記載された従来の光学ヘッドおよびチルト検出機構の構成を説明する模式図である。
受光部107の受光領域と受光領域に入射する光束とを示す図である。
特許文献2に記載された従来の光学ヘッドの受光部107’の受光領域と、受光領域に入射する光束とを示す。
FFPの強度分布が不均一である場合の差信号P01とP02の挙動の例を示す図である。
補正係数k0を、2.0、1.8、1.6と変化させた時のチルト検出信号TL0に基づくチルト検出誤差を示す図である。
符号の説明
1 光源
2 光軸
3 ビームスプリッタ
4 対物レンズ
5 光ディスク
6 検出光学系
7 受光部
8 チルト検出部
9 信号演算部
10 増幅アンプ
11 差動アンプ
20、21 変位検出部
22 センサ
24 可動部