JPWO2007040242A1 - 単離されたヒト細胞、その取得方法及び用途 - Google Patents

単離されたヒト細胞、その取得方法及び用途 Download PDF

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Abstract

要約
センダイウイルス(HVJ)の大量生産に適した新規なヒト細胞、その取得方法及びその用途が開示されている。ヒト細胞は、ヒト腎癌化細胞株に由来し、無血清培地中での浮遊培養において、対数増殖期における倍化時間が40時間以下であり、凍結リカバリー性を有し、浮遊培養における最高到達生細胞密度が106個/mL以上であり、細胞内においてHVJの増殖が可能である。ヒト細胞の取得方法は、ヒト腎癌化細胞株を無血清培地中で浮遊培養し、増殖する細胞をクローニングする工程と、クローン化された細胞から、無血清培地中での浮遊培養において対数増殖期における倍化時間が40時間以下であり、凍結リカバリー性を有し、浮遊培養における最高生細胞密度が106個/mL以上であり、細胞内においてHVJの増殖が可能な細胞を選択することを含む。

Description

本発明は、センダイウイルス(Hemagglutinating Virus of Japan;以下HVJ)等のウイルスや外来遺伝子産物の生産のための宿主細胞として好適な、単離されたヒト細胞、その取得方法及びその用途に関する。
HVJは、マウスの肺炎ウイルスの1種であり、ヒトへの感染力はなく、細胞膜融合ウイルス外膜に2種類の糖蛋白(FとHN)があり、この蛋白が2種類の細胞を融合させる作用(細胞融合)を持っている。近年、HVJのエンベロープをベクターとして利用する技術(HVJエンベロープベクター)が開発され、既に市販されている(特許文献1)。HVJエンベロープベクターは、HVJからゲノムRNAを除去してエンベロープをベクターとして用いるものであり、エンベロープの中に所望の外来遺伝子を封入し、培養細胞や臓器にウイルスベクターを感染させて細胞内に所望の遺伝子を導入する。HVJエンベロープベクターは、ウイルスのゲノムRNAを除去してあるので安全性が高く、エンベロープが細胞融合能を有するので細胞への導入効率が高く、大量の外来遺伝子を封入することができ、また、ウイルスの宿主域も広いため、遺伝子機能解析のツールや遺伝子治療用ベクターとして、今後ますます広く用いられていくものと期待されている。
従来、HVJの大量生産は、HVJを鶏卵に接種して増殖させることにより行なわれている(ウイルス実験プロトコール,メジカルビュー社、1995, 68-78等参照のこと)。しかしながら、この方法では、回収したHVJに、卵白アルブミン等の免疫原性の高いタンパク質や鶏卵由来の他の不純物が混入する恐れがある。このため、WHOは、医薬品製造には、鶏卵を用いずにヒト培養細胞を用いることを推奨している。また、鶏卵を宿主として用いる場合、ウイルスの接種操作や増殖後のウイルスの回収操作が煩雑で処理量に限界がある。これらの問題を解決するため、鶏卵に代えて哺乳動物の培養細胞を宿主としてHVJを増殖させることが考えられる。HVJは、哺乳動物が本来の宿主であるから、種々の哺乳動物細胞内でHVJは増殖が可能である。しかしながら、HVJの大量生産に適した哺乳動物の培養細胞は知られていなかった。
特開2001-286282号公報 ウイルス実験プロトコール,メジカルビュー社、1995, 68-78
本発明の目的は、HVJの大量生産に適した新規な単離ヒト細胞、その取得方法及びその用途を提供することである。
本願発明者らは、HVJを生産するための宿主細胞として適した条件として、無血清培地中で増殖可能であることを条件とした。無血清培地中で細胞を増殖させることができれば、回収したHVJ中に血清アルブミン等の血清由来の物質が混入する可能性を排除することができ、有利である。また、大量生産のためには、バイオリアクター中で増殖可能な細胞、すなわち、液体培地中で浮遊培養が可能な細胞を用いることが有利であると考えた。さらに、液体培地中での細胞密度を高くすることができ、高い増殖性を有することが有利であると考えた。さらに、細胞の取扱い性や、保存、輸送等のためには、一旦凍結した後に、解凍しても増殖可能であることが有利であると考えた。さらに、遺伝子治療や遺伝子機能の解析は、主としてヒトを対象として行なわれるものであるから、ヒト細胞が有利であると考えた。これらの諸条件を満足するヒト細胞の取得を目指して鋭意研究した結果、ヒト腎癌化細胞株を親株として、種々の条件で細胞を選択、クローニングすることにより、上記諸条件を満足するヒト細胞を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ヒト腎癌化細胞株に由来し、無血清培地中での浮遊培養において、対数増殖期における倍化時間が40時間以下であり、凍結リカバリー性を有し、浮遊培養における最高到達生細胞密度が106個/mL以上であり、細胞内においてHVJの増殖が可能な単離されたヒト細胞を提供する。また、本発明は、ヒト腎癌化細胞株を無血清培地中で浮遊培養し、増殖する細胞をクローニングする工程と、クローン化された細胞から、無血清培地中での浮遊培養において対数増殖期における倍化時間が40時間以下であり、凍結リカバリー性を有し、浮遊培養における最高生細胞密度が106個/mL以上であり、細胞内においてHVJの増殖が可能な細胞を選択することを含む、ヒト細胞の取得方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の単離されたヒト細胞を、複数の容器に収容して成るマスターセルバンクを提供する。さらに、本発明は、上記本発明の単離されたヒト細胞に所望のウイルスを接種し、該細胞内でウイルスを増殖させ、増殖したウイルスを回収することを含む、ウイルスの生産方法を提供する。
本発明により、HVJの大量生産に適した単離ヒト細胞が初めて提供された。本発明の単離されたヒト細胞は、無血清培地中で増殖が可能であるので、これを宿主としてHVJ等のウイルスを増殖させ、回収した場合、回収したウイルス中に血清由来の物質が混入する恐れがない。また、本発明の単離されたヒト細胞は、液体培地中での浮遊培養により増殖が可能であり、その増殖速度が大きく、また、高い細胞密度で培養することが可能であるので、バイオリアクターを用いたウイルスの大量生産に特に適している。さらに、凍結リカバリー性があるので、細胞の保存や輸送に便利である。
細胞の無血清培地への馴化:増殖性の良かったT6およびHyQを用いて長期培養を続け、細胞の無血清培地への馴化を進めた際の結果を示す図である。T6の増殖性が良かった。VCは生細胞、%は生存率。 クローニング中のシングルクローンのHVJ産生試験:クローニング中のシングルクローンを96ウェルプレートに一部サンプリングし、トリプシン(終濃度2μg/mL)およびHVJ(multiplicity of infection; MOI=23)を添加、34℃、5%CO2インキュベーターで3日間培養し、上清を回収してHVJ産生量をFFU試験にて測定した結果を示す図である。横軸下段の番号は、クローンの番号を示している。 バイオリアクターによるHVJ産生:増殖性、生産性の面で性能の高かった2クローン(CloneA, CloneB)について実施した結果を示す図である。独立した実験を3回行い、その結果をそれぞれ示す。 遺伝子導入(TF)活性 :増殖性、生産性の面で性能の高かった2クローン(CloneA, CloneB)で産生させ、ハーベストマテリアルを精製して不純物を取り除いたHVJの遺伝子導入活性を比較した結果を示す図である。比較対照として、卵でHVJを増殖させて同様に精製したもの(Egg)を同時に試験した。独立した実験を3回行い、その結果を示す。 本発明の実施例において選択したクローン(GIC20)の細胞増殖性(Batch culture)を示す図である。VCは生細胞。 本発明の実施例において選択したクローン(GIC20)の細胞増殖性試験の結果である。VCは生細胞。 本発明の実施例において選択したクローン(GCI20)を、6ヶ月に渡ってそのHVJ産生能(FFU titer およびNA活性)、細胞倍化時間および細胞集団倍化時間を測定した結果である。×は集団倍化時間、▲は倍化時間、◆はFFU titerおよび■はNA活性を示す。
本発明の単離されたヒト細胞は、ヒト腎癌化細胞株に由来し、好ましくは、293細胞に由来する。293細胞(HEK 293細胞とも言う、(HEKは、human embryonic kidneyの略))は、アデノウイルスベクター、AAVベクター(アデノ随伴ベクター)、組換えタンパク質等の産生用細胞として広く利用されているものであり、ヒューマンサイエンス研究資源バンクやATCCのような公的寄託機関から入手可能であり、また、市販もされており、容易に入手可能なものである。
本発明の単離されたヒト細胞は、無血清培地中での浮遊培養により増殖可能なものである。ここで、無血清培地としては、例えば下記実施例で用いたT6培地のような、従来より各社から市販されている、又は公知の293細胞用の無血清培地を利用できる。なお、T6培地は、米国カンザス州Lenexa のJRH Biosciences社より「Excell-293」培地として市販されている培地であり、組換えタンパク質1.1mg/L、植物加水分解物、Pluronic F-68(商品名、BASF社製界面活性剤)0.1%、グルコース6.0g/L、炭酸水素ナトリウム1.8g/L、ヒポキサンチン及びチミジンを含む培地である。
本発明の単離されたヒト細胞は、無血清培地中での浮遊培養において、対数増殖期における倍化時間が40時間以下である。対数増殖期における倍化時間は、経時的に一定体積の培地中の細胞数を測定し、対数増殖期(対数的に細胞数が増殖する時期。すなわち、細胞数の常用対数を縦軸、時間を横軸にとった場合に直線になる時期)において、細胞数が2倍になるのにかかる時間を算出することにより測定可能である。なお、倍化時間は、細胞がよく増殖する条件下での倍化時間であり、例えば、上記したT6培地のような293細胞の増殖に適した培地中、36.5℃、5〜10%CO2下の浮遊培養下での倍化時間であり、好ましくは、100〜120rpmの旋回培養下での倍化時間である。対数増殖期の倍化時間は、好ましくは、36.5℃、5〜10%CO2下の浮遊培養において25時間〜30時間である。
本発明の単離されたヒト細胞は、凍結リカバリー性を有する。ここで、「凍結リカバリー性」とは、一旦凍結し、解凍した後でも増殖が可能であることを意味する。なお、解凍後に増殖させた細胞は、本発明で規定される増殖性やHJVの生産性等の各種特性を維持している。
本発明の単離されたヒト細胞は、浮遊培養における最高到達生細胞密度を106個/mL以上である。ここで、「最高到達生細胞密度」とは、適切な条件で浮遊培養した場合に、培養開始後のいずれかの時期に生細胞密度が106個/mL以上になるという意味であり、ここで、適切な条件とは、例えば、上記したT6培地のような293細胞の増殖に適した培地中、36.5℃、5〜10%CO2下の浮遊培養であり、好ましくは、100〜120rpmの旋回培養である。好ましくは、36.5℃、5〜10%CO2下の浮遊培養における最高到達生細胞密度が2 x 106個/mL〜107個/mLである。なお、培地中の生細胞密度は、血球計算盤を用いて顕微鏡下でマニュアルでカウントするか、あるいは常用されている市販の生死細胞オートアナライザーを用いて容易に測定することができる。
本発明の単離されたヒト細胞は、細胞内においてHVJの増殖が可能なものである。HVJの増殖は、好ましくは108FFU/mL以上のフォーカス形成単位(FFU)を達成でき、特には6 x 108FFU/mL〜5 x 109FFU/mLのフォーカス形成単位を達成できる。ここで、フォーカス形成単位は、公知のFFU試験((蛍光抗体法:感染細胞数をカウントすることで感染性HVJの定量を行う)(参考文献:ウイルス実験プロトコール,メジカルビュー社、1995, 68-78、The sialic acids J. Biol. Chem., 240, 3501(1965))により行なうことができ、具体的な方法は下記実施例に記載されている。また、HVJの増殖条件としては、特に限定されないが、細胞密度を106細胞/mL〜4 x 106細胞/mLとし、培地には、酪酸ナトリウム(終濃度 1〜4mM)及びFactor-Xa(終濃度 0.05〜2U/mL)又はトリプシン(終濃度 2〜8μg/mL)を添加したインフェクション用培地を30〜50%添加し、HVJウイルス液をMOI= 1〜10で添加、30〜34℃で40〜72時間培養を行うことが好ましく、例えば、酪酸ナトリウム濃度を2mMとし、32℃で42時間、または、酪酸ナトリウム濃度を0mMとし、34℃で72時間などの培養条件がより好ましい。なお、下記実施例に具体的に記載するように、HVJの増殖能が高い細胞を選択するために、先ず、操作が簡便なマイクロプレートのウェル中での培養で高い増殖能を示す細胞を一次選択し、次いで、浮遊培養下で高い増殖能を示す細胞を二次選択してもよい。
本発明の単離されたヒト細胞は、無血清培地中での浮遊培養により、上記特性を維持したまま継代培養可能なものが好ましく、特に、1年以上の長期間の継代培養が可能なものが好ましい。なお、言うまでもなく、上記した本発明の要件を満足する限り、継代培養後の細胞も本発明の範囲に含まれる。なお、本発明の単離されたヒト細胞は、ヒト腎癌化細胞株に由来するものであるから、後述する方法により得られる本発明の単離されたヒト細胞は、通常、株化細胞であり、1年以上の長期間の継代培養が可能である。
下記実施例において得られた本発明の単離ヒト細胞のうち、増殖性やHVJの増殖能が特に優れている細胞としてGIC20細胞が得られた。GIC20細胞は、2005年8月11日から独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にブダペスト条約に基づいてFERM BP-10399の受託番号で国際寄託されている。
本発明の単離されたヒト細胞は、ヒト腎癌化細胞株を無血清培地中で浮遊培養し、増殖する細胞をクローニングする工程と、クローン化された細胞から、対数増殖期における倍化時間を40時間以下とすることが可能であり、凍結リカバリー性を有し、浮遊培養における生細胞密度を106個/mL以上とすることが可能であり、細胞内においてHVJの増殖が可能な細胞を選択することを含む方法により取得することができる。
ここで、無血清培地中での浮遊培養は、上記したとおりであり、好ましくは、T6培地のような293細胞の増殖に適した培地中、36.5℃、5〜10%CO2下の浮遊培養であり、さらに好ましくは、100〜120rpmの旋回培養である。なお、親株は、通常、血清培地中でプレート培養されており、これを無血清培地中での浮遊培養に変更する方法としては、好ましくは、ダイレクトアダプテーション法を採用することができる。ここで、ダイレクトアダプテーション法とは、血清存在下で培養している細胞を無血清培地でも培養可能とするために馴化させていく方法の一つであり、徐々に血清濃度を下げていきながら細胞を馴化させるのではなく、遠心処理等により血清培地を完全に除去し、直接無血清培地へ懸濁し、培養を開始して、無血清培地へ馴化させていく方法である。この方法では、急激な培養環境の変化に対応しうる細胞のみが生き残るため、強い細胞株を得ることが期待できうる。なお、本発明で規定される要件を満足できる単離ヒト細胞を取得可能であれば、他の培養条件を採用してもよい。例えば、293細胞の培養に用いられている他の無血清培地を用いたり、培養温度を例えば32℃〜38℃程度の範囲内で変更したり、適切なCO2雰囲気下で培養したりすることも可能である。
無血清培地中での浮遊培養により増殖する細胞を採取してクローニングする。クローニングは、検鏡下において単一細胞を分離し、分離した単一細胞を、1個から分裂させて増殖させることにより行なうことができる。なお、細胞1個から増殖させる工程では、増殖を補助するため、培地に血清を添加してもよく、好ましくは20〜30重量%の血清が添加される。また、増殖を補助するため、この工程ではプレート上で静置培養することが好ましい。増殖後は、培地を無血清培地に徐々に戻し、浮遊化する。分離した単一細胞は、無血清培地中での浮遊培養が可能なものであるから、増殖後の細胞も無血清培地中での浮遊培養が可能である。なお、増殖後の細胞群は、単一細胞起源のクローンであり、他の細胞由来のものを含まない単離された細胞である。
次に、得られた各クローンのうち、本発明で規定される上記各特性を満足するクローンを選択する。各特性の測定方法については上記したとおりであり、詳しくは下記実施例に記載されている。また、HVJの増殖能については、できるだけ高い増殖能を示すものを選択することが好ましい。なお、それぞれの特性の測定において、本発明の規定を満足するクローンが多数得られた場合には、それらのうちで、その特性についてより優れた数値を示すものを選択することが有利であることは言うまでもない。すなわち、対数増殖期における倍化時間がより短く、浮遊培養における生細胞密度がより高く、HVJのFFUがより高いものを選択することが好ましい。以上のようにして、本発明で規定される特性を満足する本発明のヒト細胞を得ることができる。また、各選択は、2段階以上の工程に分けて行なってもよい。すなわち、例えば、最初に本発明の要件を満足するクローンを一次選択し、同一の条件下又はより至適化した条件下において優れた特性値を示すものを二次選択することも可能である。あるいは、一次選択では、操作が簡便な条件下において、優れた性質を示すクローン、例えば、上位10%又はそれ以下の数のクローンを選択し、次により至適化した条件下において、本発明の要件を満足するクローンを二次選択することも可能である。例えば、下記実施例では、HVJの増殖能は、96-ウェルマイクロプレート中での静置培養下で、高い増殖能を示すクローンを一次選択し、次いで、浮遊培養下での増殖能を指標に二次選択している。なお、各特性を満足するクローンの選択は、各特性について逐次的に行なうことができる。また、増殖性と最高到達生細胞密度は、浮遊培養下で経時的に生細胞数密度を測定することにより測定されるので、同一の工程で選択することが可能である。
本発明の単離されたヒト細胞は、HVJの増殖能を指標の1つとして取得されたものであるから、HVJの生産に用いることができる。特に、本発明の細胞は、無血清培地中で浮遊培養が可能であり、増殖性が高く、高密度培養が可能なものであるから、HVJの大量生産に好適に用いることができる。HVJの生産条件としては、上記したFFUの測定方法において記述した条件が好ましい。増殖したHVJは、例えば、フィルターろ過あるいは遠心処理により細胞を除去することで培養上清を回収し、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより精製することができる。
また、本発明の細胞は、無血清培地中で浮遊培養が可能であり、増殖性が高く、高密度培養が可能なものであるから、本発明の細胞内で増殖可能な他のウイルスの生産や、遺伝子工学的手法による組換えタンパク質の生産にも好適に用いることができる。本発明の細胞内で増殖可能な他のウイルスとしては、例えば下記実施例に具体的に記載するアデノウイルスを例示することができるがこれに限定されるものではない。
本発明の細胞は、浮遊培養による増殖性が高いため、細胞を複数の容器に収容して成るマスターセルバンクを容易に調製することができる。容器としては、特に限定されないが、ガラス製のバイアル等を挙げることができる。また、各容器に収容される細胞数も特に限定されないが、通常、5×106個〜5×107個程度である。マスターセルバンクの細胞は、クローンであるので、同じ性質を有しており、遺伝子機能解析のツールや遺伝子治療用ベクターとして用いる場合に便利である。
以上のように、本発明の単離されたヒト細胞は、無血清培地中での浮遊培養が可能であり、増殖性が高く、高密度培養が可能であり、細胞内でのHVJの増殖が可能であり、凍結リカバリー性を有しているので、HVJや他のウイルス、組換えタンパク質等の大量生産に有利である。特に、下記実施例で得られたような好ましい細胞では、HVJの増殖能が高く、長期間継代培養しても特性に変化がなく、容易に培養規模をスケールアップすることが可能であり、HVJや他のウイルス、組換えタンパク質等の大量生産に特に有利である。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
1.293細胞からGIC20細胞株の取得
(1) 細胞の入手
293細胞はJCRB(現ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB))より入手した(継代数:37、倍化時間:62時間)。293細胞を起眠し、5%FBSを添加したMEM培地を用いて接着培養の状態で維持継代した。
(2) 培地の調製
293細胞の浮遊化および無血清化を行うための培地は培地・試薬メーカーより293細胞の浮遊化・無血清化用として商品化あるいは開発中のものを入手した。それぞれについてメーカー推奨のプロトコールに従い、L-グルタミンを最終濃度4〜8mMとなるように添加した。また、必要に応じてPluronic F-68を0.1〜0.2%添加した。
(3) 細胞の無血清化、浮遊化および馴化
血清培地を用い接着培養の状態で維持継代した293細胞をトリプシン処理にて剥がし、遠心処理を行い、ダイレクトアダプテーション(direct adaptation)法を用いて、血清培地から無血清培地へ培地を全交換することにより馴化を試みた。培地を交換すると同時に細胞は125mL三角フラスコに3〜5×105細胞/mLの濃度で播種して、36.5℃、5〜10%CO2濃度のインキュベーター内でロータリーシェーカーを用いて旋回培養(100rpm)を開始した。10種類以上の培地を用いて無血清化・浮遊化を試み、培地交換後、増殖を確認できた細胞について、維持培養を続けることで、徐々に細胞を無血清培地に馴化させていった。維持培養は細胞を3〜5×105細胞/mLの濃度で播種し、数日間旋回培養を行い1×106細胞/mLに達したら、新鮮培地で希釈した。特に、JRH Bioscience社製T6培地(商品名「EXCELL-293」)およびHyClone社製HyQ PF-293培地が良好な増殖性を示した。
そこで、増殖性の良かったT6およびHyQを用いて長期培養を続け(30日間以上)、細胞の無血清培地への馴化を進めた。T6とHyQとでは、T6の方が増殖性および浮遊性が良好であった。なお、T6に馴化させた細胞については、140日の馴化培養を行い、以下の項にあげるクローニングに供した。
(4) 細胞のクローニング
最も増殖状態が良かったT6培地に馴化させた細胞から、クローニングを行った。クローニングは96ウェルプレートを使用して限界希釈法を行い、検鏡にて838個のシングルクローンを確認した。シングルクローンからの増殖を補助するため、20〜30%の血清を添加した培地にて培養を開始した。37℃、10%CO2濃度のインキュベーター内で静置培養を行い、細胞の増殖に合せてスケールアップを行いながら、血清濃度を下げていき、無血清・浮遊化の状態に戻した。下記の方法により、凍結リカバリー、増殖性、HVJ生産性を指標に選択し、最終的には、45株のシングルコロニー由来細胞を得た。
(5) 細胞の凍結保存
細胞は馴化培養、クローニングの過程で凍結保存を行った。細胞をスケールアップ後、遠心処理して新鮮培地:馴化培地:DMSO(ジメチルスルフォキシド)が45:45:10になるように調製した凍結培地に懸濁し、1×107細胞/バイアルに分注した。凍結する際は、調製した細胞バイアルをクライオコンテナーにセットして-80℃冷凍庫にて凍結した。すなわちクライオコンテナーを使用することで、細胞の凍結に理想的とされる-1℃/分の条件で凍結することが可能となり、その結果、細胞が凍結操作により受けるダメージを軽減することができる。-80℃冷凍庫で凍結したバイアルは、その後、液体窒素保存容器に移し、気相部(-150℃以下)で凍結保存した。なお、ここで用いた新鮮培地とは培養に用いている未使用の培地のことであり、馴化培地とは培養に使用した培地、すなわち培養上清のことである。3日間以上の凍結保存後、解凍し、増殖性、HVJ生産性を指標とする選択に供した。
(6) 高増殖性クローンの選択
増殖性は、T6培地中、36.5℃、5〜10%CO2下で浮遊培養し、経時的に生細胞密度をベックマン・コールター社の生死細胞オートアナライザー Vi-CELL(登録商標)を用いて測定し、対数増殖期の倍化時間を測定することにより評価した。倍化時間が35時間以下のものを選択した。選択した各クローンの最高到達生細胞密度は、4×106個/mL以上であった。
(7) ウイルス高生産性株の選択
クローニングで増殖性の良かったクローンをスケールアップの過程で一部サンプリングし、ウイルス高生産性株の選択のために、HVJの生産性試験を行った。
(i) HVJ産生方法
HVJの産生は、細胞にトリプシン2〜8μg/mL(終濃度)および種ウイルスとなるHVJ(multiplicity of infection ; MOI=23)を添加し、32〜34℃、5%CO2インキュベーターで2日〜3日間培養し、遠心処理により上清を回収し、HVJ産生力価を測定した。
(ii) HVJ産生力価の測定
HVJ産生量はHA試験(赤血球凝集反応試験:HVJウイルス膜上のHAタンパクのもつ赤血球凝集能を測定することで物理的なウイルス粒子数を定量する)、NA試験(ノイラミニダーゼ活性試験:HVJウイルス膜上のHAタンパクのもつノイラミニダーゼ活性を測定することで、物理的なウイルス粒子数を定量する)もしくはFFU試験(蛍光抗体法:感染細胞数をカウントすることで感染性HVJの定量を行う)を用いて行った。(参考文献:ウイルス実験プロトコール,メジカルビュー社、1995, 68-78、The sialic acids J. Biol. Chem., 240, 3501(1965))1例として、図2にFFU試験にて産生力価を測定した結果を示す。様々な生産性を示すクローンが得られていた。これらの各試験は具体的には次のようにして行なった。
HA試験:まず鶏保存血液とPBS(-)を転倒混和し血球を懸濁させ10%鶏赤血球懸濁液を調製した。測定したいHVJ産生サンプルを解凍し、96well plateに添加、PBS(-)を用いて段階希釈を行った。ついで、10%鶏赤血球懸濁液をPBS(-)で0.5%濃度に希釈して、このplateに添加、HVJサンプルと混和し、4℃で2時間反応させた。2時間後に、plateを目視で観察し、HVJ濃度が一番低く、赤血球が凝集しているウェルを判定し、希釈率からHAUを算出した。
NA試験:測定したいHVJ産生サンプルを解凍し、96well plateに添加して、Reaction Bufferを用いて段階希釈を行った。プレートヒーターで37℃、1分間プレインキュベーションを行った後に、基質の4-MU-nanaを15μLずつ加え、37℃で15min インキュベーションした。Stop Bufferを60μLずつ加え反応を停止させ、プレートリーダーで蛍光強度を測定した(Excitation:〜350nm Emission:〜460nm)。得られた値から、4-MUのスタンダードカーブを用いて、測定サンプルの濃度を算出した。
FFU試験:試験の前日に感染用の細胞(LLC-MK2)を24well-plateに播種、CO2インキュベーター内で培養した。測定したいHVJ産生サンプルを解凍し、PBS(+) / 1%BSAを用いて102〜104倍希釈のサンプル希釈液を調製した。LLC-MK2細胞を取り出し、PBS(+)/1%BSAに培地を置換、調製したHVJ希釈溶液を添加した。プレート遠心機で3000rpm, 32℃, 30minの遠心処理を2回実施した後に、ウイルス希釈液(上清)を除去し、MEM-E/1% BSAに培地交換を行い、37℃、5%CO2雰囲気下で16〜24時間感染培養を行った。翌日、プレートを取り出しPBS (-)で各wellを洗浄し、アセトン/メタノール(容量比1:1)溶液にて細胞の固定を行った。ついで、一次抗体溶液を添加し、37℃で1〜2時間振倒しながらインキュベート、あるいは4℃で16〜24時間インキュベーションして、HVJ感染細胞を一次抗体と反応させた。洗浄後、二次抗体溶液を添加して37℃で1〜2時間振倒しながらインキュベートし、蛍光顕微鏡での検鏡により各wellの感染細胞(細胞質のみに緑色の蛍光が認められ、核の部分は黒っぽく抜けて見える)を計測し、FFU titerを算出した。
そこで、増殖性と生産性とにおいて高かった2クローン(CloneA, CloneB)を選択し、バイオリアクターを用いてHVJの産生を実施した。バイオリアクターでの産生は1Lスケールで行い、T6培地中、撹拌速度30rpm、温調32℃、DO(溶存酸素濃度)15%、pH<7.2の条件で培養制御を行い、酪酸2mM、トリプシン 4μg/mL、HVJ MOI=10の条件で産生培養を行った。感染から42時間後にハーベストマテリアルを遠心処理にて回収し、FFU試験による力価測定を実施した結果、CloneAが若干高い生産性を示した(図3)。
(8) 得られたHVJの遺伝子導入活性(TF活性)の測定
上記2クローン(CloneA, CloneB)について、上記バイオリアクターで産生させ、ハーベストマテリアルを精製して不純物を取り除いたHVJの、遺伝子導入活性を比較した。比較対照として、卵でHVJを増殖させて同様に精製したもの(Egg)を同時に試験した。HVJとルシフェラーゼ遺伝子発現プラスミド(pGL3)とをBHK-21細胞にトランスフェクションを行った。トランスフェクションは、HVJ-Eと導入するpGL3を界面活性剤で処理し遠心処理を行い、pGL3をHVJ-Eに封入、これを導入細胞に添加し、HVJのもつ細胞膜融合能を利用して、細胞に導入するという方法で行った。遺伝子導入から12〜24時間後にルシフェラーゼアッセイ試薬を用いて相対発光ユニット(RLU)を測定した。結果、CloneBがCloneAより高い遺伝子導入活性を示しており、いずれにおいても比較対照の卵で増殖させたそれより、高い活性を得られた(図4)。
以上のように、無血清培地に馴化させ、浮遊化した細胞をクローニングすることで増殖性、ウイルス生産性の異なる多数のクローンが得られ、その中から増殖性、ウイルス生産性ともに優れ、特に遺伝子導入活性の高かったクローン(CloneB)をGIC20と命名した。なお、上記の通り、GIC20は、2005年8月11日から、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにブダペスト条約に基づいて国際寄託されており、その受託番号は、FERM BP-10399である。
2.GIC20細胞の特徴解析
(1) 増殖能
HVJ産生能から選択したクローンのバッチ培養での細胞増殖性を検討した。4×105細胞/mLで細胞を植え込み、36.5℃、5%CO2インキュベーター内でロータリーシェーカーを用いて旋回培養(100〜120rpm)を行い、サンプリングを行ってセルカウントを実施した。対数増殖期(day1〜day4)の倍加指間は28時間、培養開始5日目に最高到達密度5×106細胞/mLに達した。セルカウントはベックマン・コールター社の生死細胞オートアナライザー Vi-CELL(登録商標)を用いて行い、直径12〜20μmの細胞をカウントした。結果を図5に示す。
さらに、Fed Batch培養による増殖性についても検討した。上記と同様、4×105細胞/mLで細胞を植え込み、36.5℃、5%CO2インキュベーター内でロータリーシェーカーを用いて旋回培養(100〜120rpm)を行い、3日目および5日目に遠心処理により培地交換を行った。対数増殖期(day1〜day4)の倍加時間は28時間、培養開始7日目に最高到達密度1×107細胞/mLに達した(図6)。
(2) HVJ産生
樹立したウイルス高生産性クローンGIC20を用いてHVJウイルスの産生条件の至適化を行い、HVJ産生能を試験した。インフェクション用細胞を2×106細胞/mLまで増殖させ、酪酸ナトリウム(終濃度 1〜4mM)およびトリプシン(終濃度 2〜8μg/mL)を添加したインフェクション用培地を30〜50%添加し、HVJウイルス液をMOI= 1〜10で添加、32〜34℃で40〜44時間培養を行い、培養上清を遠心処理により回収した。回収したサンプルは小分け分注して-80℃で保存した。HVJ回収サンプルの力価測定は、上述の方法により行った。結果、FFU=3.82E+9FFU/mL、NA=289.1mU/mL、HA=1024HAU/mLの力価を得た。
(3) アデノウイルスの産生
GIC20のHVJ以外のウイルス産生能を確認した。対数増殖期にある細胞2×106細胞/mLを遠心処理により培養上清を捨てて2倍濃度に濃縮し、アデノウイルスベクター(Adeno CMV-LacZ)をMOI=2で感染させた。37℃、5%CO2インキュベーター内でロータリーシェーカーを用いて1時間の感染培養(100rpm旋回培養)行った後に、新鮮培地を等量添加し、さらに感染培養を続けた。感染から48時間後に上清を回収し、アデノウイルス力価を測定した。GIC20細胞により産生されたアデノウイルスベクターはBD Adeno-X Virus Purification Kits(BD, Cat.No.631533)を用いて精製し、BD Adeno-X Rapid Titer Kit(BD, Cat.No.631028)を用いて測定した。その結果、1.3×109ifu/mL 細胞あたりにして 185 ifu/cellの力価を得た。(オリジナルの293細胞を用いて産生させた場合の細胞当たりの産生量は高いもので120 ifu/cellであった。)
さらにまた、GIC20を6ヶ月間に渡って継代培養を行い、その間、解凍後39、102、109、130、179日目に、HVJ産生能(FFU titer およびNA活性)、細胞倍化時間および細胞集団倍化時間を測定したが、いずれも6ヶ月ストックからの解凍直後の細胞に比べて顕著な変動はなかった(図7)。したがって、該細胞は少なくとも6ヶ月以上は増殖能力およびウイルス産生能は維持されることがわかった。

Claims (17)

  1. ヒト腎癌化細胞株に由来し、無血清培地中での浮遊培養において、対数増殖期における倍化時間が40時間以下であり、凍結リカバリー性を有し、浮遊培養における最高到達生細胞密度が106個/mL以上であり、細胞内においてセンダイウイルスの増殖が可能な単離されたヒト細胞。
  2. 36.5℃、5%CO2下の浮遊培養での対数増殖期における倍化時間が25時間〜30時間である請求項1記載の単離されたヒト細胞。
  3. 36.5℃、5%CO2下の浮遊培養における最高到達生細胞密度が106個/mL以上である請求項1又は2記載の単離されたヒト細胞。
  4. 前記最高到達生細胞密度が2 x 106個/mL〜107個/mLである請求項3記載の単離されたヒト細胞。
  5. センダイウイルスの増殖が、108FFU/mL以上のフォーカス形成単位を達成し得る請求項1記載の単離されたヒト細胞。
  6. 6 x 108FFU/mL〜5 x 109FFU/mLのフォーカス形成単位を達成し得る請求項5記載の単離されたヒト細胞。
  7. 前記ヒト腎癌化細胞株がヒト腎癌化細胞株293細胞株である請求項1記載の単離されたヒト細胞。
  8. FERM BP-10399の受託番号で寄託されたGIC20細胞である請求項7記載の単離されたヒト細胞。
  9. ヒト腎癌化細胞株を無血清培地中で浮遊培養し、増殖する細胞をクローニングする工程と、クローン化された細胞から、無血清培地中での浮遊培養において対数増殖期における倍化時間が40時間以下であり、凍結リカバリー性を有し、浮遊培養における最高生細胞密度が106個/mL以上であり、細胞内においてセンダイウイルスの増殖が可能な細胞を選択する工程とを含む、ヒト細胞の取得方法。
  10. 前記細胞を選択する工程において、36.5℃、5%CO2下の浮遊培養での対数増殖期における倍化時間が25時間〜30時間である細胞を選択する請求項9記載の方法。
  11. 前記細胞を選択する工程において、36.5℃、5%CO2下の浮遊培養における生細胞密度を106個/mL以上とすることができる細胞を選択する請求項9記載の方法。
  12. 前記細胞を選択する工程において、前記生細胞密度を2 x 106個/mL〜107個/mLとすることができる細胞を選択する請求項11記載の方法。
  13. センダイウイルスの増殖が、108FFU/mL以上のフォーカス形成単位を達成し得る細胞を選択する請求項9記載の方法。
  14. 6 x 108FFU/mL〜5 x 109FFU/mLのフォーカス形成単位を達成し得る細胞を選択する請求項13記載の方法。
  15. 請求項1記載の単離されたヒト細胞を、複数の容器に収容して成るマスターセルバンク。
  16. 請求項1記載の単離されたヒト細胞に所望のウイルスを接種し、該細胞内でウイルスを増殖させ、増殖したウイルスを回収することを含む、ウイルスの生産方法。
  17. 前記ウイルスがセンダイウイルス又はアデノウイルスである請求項16記載の方法。

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