本発明は、ユーザの状態を生体情報に基づきユーザの状態を推定して居住環境を制御する環境制御装置、環境制御方法、環境制御プログラム及び環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
近年、システムの機能に関して、一方向型から双方向型へ技術開発が移行されてきている。つまりそれは、個人差を考慮した機能の実現がこれからのキーテクノロジーとなることを指しており、様々な研究団体により、人の心理状態を何らかの方法で推測し、その推測結果を用いてその後の機器制御を実行するシステムが考案されてきている。人の心理状態を推定する手段として、人の生体情報を基に推定することが一番確実な手段とされており、近年、この分野での研究が盛んに行われている。
一般的には、脳波を分析することによりユーザの快適感を推定する技術が広く知られている。しかしながら、この技術は評価実験等を目的とする場合には有効な手段と言えるが、大掛かりな装置が必要であり、人の動作に制約を設けざるを得ない等の理由から、一般家庭での展開は現実的に考えられなかった。このことからも、生体情報を採取する際に必ず考えなければならないことは、いかに簡単に、そしてユーザをいかに不快にさせずに生体情報を採取するかという点にあると言えるだろう。
この点を鑑みた場合、現在取り組まれている脳波の採取に比べ、人に不快を与える可能性が最も低いと言われている脈波の採取が一番有効な手段であると考えられる。脈波については、もともと、心臓から吐出された血流は指尖の末梢に伝達されると心拍動、血行動態、細動脈系の性状変化など生理条件の影響を多分に受けて脈波の波形に反映される等の現象が明らかとされている。従って、現在は、健康度解析の分野において、指先の末梢血管の脈波を採取し、その加速度脈波から健康状態を推定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図60は、特許文献1に記載されている加速度脈波の波形を示す図である。図60に示すように加速度脈波は、E1、E2、E3、E4、E5の5つの要素波から構成される。要素波E1の頂点Aは指尖容積脈波拡張期波の始まりと一致するので頂点Aから頂点Eまでの所要時間は心臓の収縮時間軸長さと一致するようになる。要素波E1は、基線に対して上に凸となる陽性波であり要素波E2は、基線に対して下に凸となる陰性波であり、次の要素波E3、E4、E5はそれぞれ生理状態によって陽性波になったり陰性波になったり変化する要素波であり、利用者の年齢と強い相関を有する。
利用者の脈波を測定すると利用者が緊張状態にある場合には心拍数が増加して指尖血流は減少する傾向にあるため、頂点Bにおける基線からの距離bは小さくなり、逆に頂点Dにおける基線からの距離dは大きくなるという影響が現れる。そのため、加速度脈波の波形解析では、距離aに対する距離bの比(b/a)や距離aに対する距離dの比(d/a)の変化率により健康状態が判断されていた。
また、特許文献2には、ユーザの良好な心理状態や感覚を持続させることを目的として、加熱手段の発熱量又は送風手段の送風量が時間的に不規則となるように制御して、温感を持続させ、自律神経への影響を持続させてリラックス状態を増進させる温風暖房機が提案されている。
図61は、特許文献2に記載されている温風暖房機の構成を示すブロック図である。図61に示す送風部1001は、ファンモータによって構成され、加熱部1002は灯油又はヒータ等の熱源によって構成されている。加熱部1002の近傍には温度を検知する温度センサ1003が設けられ、その検知温度情報は制御部1004に伝達される。制御部1004は、不規則信号発生部1005により発生される不規則信号を、タイマー1006のタイマー信号と温度センサ1003の検知温度信号とに応じて決まる適切なタイミングで送風部1001と加熱部1002とに出力し、送風部1001の送風量と加熱部1002の加熱量とを制御していた。
また、従来より、ユーザの居住環境を制御する際には、居住環境温度(以下、室温と記す)、居住環境湿度(以下、湿度と記す)、居住環境外温度(以下、外気温と記す)、日射量等の環境物理量を検出して環境制御機器を制御していた。また、上記のような環境物理量に基づく制御の他にも、ユーザの生体情報をカオス解析して、緊張状態、リラックス状態、又は興奮状態等のユーザの状態を推定し、その推定結果に基づいて、環境制御機器を制御する手法が提案されている。
例えば、特許文献3では、ユーザ(被験者)の指先等の皮膚温度を検出し、検出された皮膚温度をカオス解析等により評価し、ユーザの緊張感、リラックス感、興奮状態を推定してマルチメディア機器を制御するマルチメディア機器制御装置が提案されている。
また、特許文献4では、ユーザ(人)の動きの時系列データをカオス解析することにより、ユーザの心理的状態あるいは生理的状態を推定して環境条件を制御する環境制御装置が提案されている。
また、特許文献5では、パチンコ等の遊戯機のユーザ(使用者)より採取した脈波、心拍等をカオス解析して得たリアプノフ指数を利用して遊技機に対するユーザの飽きの状態や興奮状態、意識集中あるいは意識散漫状態を推定して遊技機の対応を変化させる電子装置が提案されている。
また、特許文献6では、浴室リモコンの表面に脈波検出装置を付設し、ユーザ(入浴者)が指先を当てると脈波データを検知して、通常と異なる脈波データを検知したときには休息を促したり家族への報知を行ったり湯温を下げる制御を行う風呂装置が提案されている。
また、特許文献7では、室内で仕事又は勉強している人が、その能率が上がらずイライラしている場合には、その人の自律神経、特に交感神経の活動が活性化して、自律神経系生理量である発汗量や脈拍数が上昇し、頭に血が上る等によって皮膚温度が低下する現象を利用し、それら自律神経系生理量の変化に応じて空気調和を実施し、その人の仕事や勉強などの能率を向上させる技術が提案されている。
また、特許文献8では、生体情報を採取する際に必ず考えなければならないことは、システムとしていかにシンプルに実現するか、またユーザをいかに不快にさせずに生体情報を採取するかという点にあり、人に不快を与える可能性が最も低いと判断できる人の脈波の振幅により人の心理状態、主に温感を推定する技術が提案されている。
しかしながら、特許文献1記載の構成では、脈波を用いたユーザの健康度の分析は行われているが、ユーザの快適感の推定が行われていないため、ユーザの快適感が持続されるようにユーザに出力する刺激をコントロールすることができないという課題がある。
また、特許文献2記載の構成では、機器側の制御に不規則性を持たして、ユーザに対して良好な感覚を持続させているが、ユーザの快適感の推定がなされていないため、ユーザの快適感をより確実に持続させるためには更なる改良の余地が残されている。
さらに、上記特許文献3〜5では、カオス解析によりユーザの状態が推定されているが、カオス解析によりユーザの状態を推定するためには十分な期間、例えば数分間〜約15分間の生体情報の時系列データが必要であるため、生体情報の採取を開始してから上記十分な期間が経過するまでの間、ユーザの状態を正確に推定することができず、この間、ユーザに対して適切な刺激を与えることができないという課題がある。特に、ユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器、照明機器、映像機器及び音響機器等の制御にカオス解析を適用する場合、十分な期間の時系列データが得られないケースも想定されるため、この間、いかに精度良くユーザの状態を推定できるかが課題となっている。
また、上記特許文献3〜6のように、ユーザの生体情報等をカオス解析することによりユーザの状態を推定する方法や装置が種々提案されているが、どの生体情報をカオス解析することでユーザのどういう状態が推定できるかについては未だ研究開発途上である。また、上記特許文献3では、ユーザの皮膚温度をカオス解析することにより、ユーザの緊張感、リラックス感、興奮状態が推定できるとしているが、カオス解析と温冷熱刺激に対する快適感や温冷感についての開示は何らなされていない。
また、上記特許文献4では、ユーザの動きをカオス解析することにより温冷熱に対する快適度を求めてエアコン等を制御することができるとしているが、ユーザの動き以外の生体情報のカオス解析と温冷熱に対する快適度との相関についての開示はない。
また、上記特許文献5では、ユーザの脈波や心拍等をカオス解析することにより、ユーザの飽きの状態や興奮状態、意識集中あるいは意識散漫状態を推定できるとしているが、カオス解析で得たリアプノフ指数とユーザの状態との具体的な相関についての開示はない。また、空調への対応を変化させることができるとも記載されているが、カオス解析と温冷熱刺激に対する快適感や温冷感についての開示はない。
また、上記特許文献6では、通常と異なる脈波データを検知したときには湯温を下げる制御を行うことが記載されているが、これは脈波からユーザの異常を推定して湯温を制御するものであり、ユーザの温冷熱刺激に対する快適感や温冷感を推定して湯温制御を行うものではない。
また、上記特許文献7では、ユーザの心理状態の推定に用いる生体情報として複数の自律神経系生理量を採取しているが、この場合、一度にいくつもの生理量を計測するため、システムとして複数のセンサを搭載しなければならず、実用化の面で容易ではない。また、これら複数の自律神経系生理量の計測結果を総合的に判断して人の心理状態を推定すると記載されているが、総合的に判断する具体的方法については何ら明確に開示されてはいない。
また、上記特許文献8では、1つの生体情報である脈波による人の温感を推定する技術に関し、人の温感に対する脈波の振幅特性を用いることを提案していたが、振幅の絶対値が個人ごとに全く異なることを考えると、個人差の影響を避けることが出来ず、推定の精度は悪くなってしまう。
特開2004−351184号公報(第7頁、図2) 特開2001−141306号公報(第10頁、図1) 特開平7−299040号公報 特許第2816799号公報 特開2000−354683号公報 特開2003−227654号公報 特開2003−42509号公報 特許第2833082号公報
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる環境制御装置、環境制御方法、環境制御プログラム及び環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る環境制御装置は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段とを備える。
本発明の他の局面に係る環境制御方法は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得ステップと、前記生体情報取得ステップにおいて取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップにおいて算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定ステップと、前記推定ステップによる推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御ステップとを含む。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムは、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる環境制御プログラムを記録している。
これらの構成によれば、ユーザの生体情報の時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータが算出される。そして、算出されたパラメータに基づいて刺激に対するユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。すなわち、ユーザの快適感が悪化するような推定結果が得られた場合、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えられる。
したがって、ユーザの生体情報の時系列データをカオス解析して算出されたパラメータに基づいて快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御されるので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる。
本発明の他の局面に係る環境制御装置は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段とを備える。
本発明の他の局面に係る環境制御方法は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得ステップと、前記生体情報取得ステップにおいて取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップにおいて算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定ステップと、前記推定ステップによる推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御ステップとを含む。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムは、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる環境制御プログラムを記録している。
これらの構成によれば、ユーザの生体情報の時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータが算出される。そして、算出されたパラメータに基づいて刺激に対するユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。すなわち、ユーザの快適感が悪化するような推定結果が得られた場合、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えられる。
したがって、ユーザの生体情報の時系列データの変化に基づいて算出されたパラメータに基づいて快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御されるので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる。
本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
本発明の実施の形態1における環境制御装置の構成を示したブロック図である。
本発明の実施の形態1における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
(a)は、本発明者らが被験者実験により見出した、最大リアプノフ指数とユーザの温冷感の相関を表したグラフであり、(b)は、図3(a)から見出した最大リアプノフ指数の変動と温冷感の変動との関係をまとめたテーブルである。
本発明の実施の形態2における環境制御装置の構成を示したブロック図である。
本発明の実施の形態2における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
(a)は、本発明者らが被験者実験により見出した、脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフであり、(b)は最大リアプノフ指数とユーザの温冷感との相関を表したグラフであり、(c)は、図6(a),(b)に示す脈波波高最大値と最大リアプノフ指数とに対する温冷感の関係をマトリクス状にまとめたテーブルである。
本発明の実施の形態2における状態推定部での処理の流れを示すフローチャートである。
推定データと制御データとを対応づけたテーブルを示す図である。
本発明の実施の形態3における環境制御装置の構成を示したブロック図である。
本発明の実施の形態3における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態2と同様にして導いた最大リアプノフ指数と室温とに対する温冷感をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図である。
本発明の実施の形態4における環境制御装置の構成を示したブロック図である。
本発明の実施の形態4における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
(a)は、最大リアプノフ指数及び冷房能力と温冷感との関係をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図であり、(b)は、最大リアプノフ指数及び暖房能力と温冷感との関係をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図である。
本発明の実施の形態5における環境制御装置の構成を示す概略図である。
本実施の形態における脈波カオスパラメータ算出部、脈波カオスパラメータ比較部、第1ユーザ状態推定部及び第1刺激制御部の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態における脈波波形パラメータ算出部、脈波波形パラメータ比較部、第2ユーザ状態推定部及び第2刺激制御部の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態における刺激制御切替部の動作を示すフローチャートである。
脈波波形パラメータとメンバシップ値との関係を示したグラフである。
足浴前、足浴中及び足浴後の脈波をカオス解析して得られたリアプノフ指数の変化と、快適感及び温冷感に関する主観申告の変化との一例を示す図である。
本発明の実施の形態6における環境制御システムの構成を示すブロック図である。
本発明の実施の形態6における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態6におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態7におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態8における環境制御システムの構成を示すブロック図である。
本発明の実施の形態8における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態8におけるパラメータ変動判断部の処理を示す第1のフローチャートである。
本発明の実施の形態8におけるパラメータ変動判断部の処理を示す第2のフローチャートである。
刺激内容が定常的な刺激である場合のパラメータ変動判断部の処理を示す第1のフローチャートである。
刺激内容が定常的な刺激である場合のパラメータ変動判断部の処理を示す第2のフローチャートである。
本発明の実施の形態9における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態9におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明者らが被験者実験により見出した、波形成分比とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。
本発明の実施の形態10における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態10におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。
本発明者らが被験者実験により見出した、脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。
本発明の実施の形態11における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態11におけるパラメータ変動判断部の処理を示す第1のフローチャートである。
本発明の実施の形態11におけるパラメータ変動判断部の処理を示す第2のフローチャートである。
本発明の実施の形態12における環境制御システムの構成を示す図である。
本発明の実施の形態12における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態12におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態13における環境制御装置の構成を示すブロック図である。
図44に示す環境制御装置による環境制御処理の流れを示すフローチャートである。
本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比、加速度脈波振幅又はRP−dwとユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比とユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
実施の形態13における温冷感変化推定部による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。
実施の形態13の第1の変形例における温冷感変化推定部による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。
本発明者らが被験者実験により見出した、軌道平行測度中央値とユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
実施の形態13の第2の変形例における温冷感変化推定部による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態14における環境制御装置の構成を示すブロック図である。
実施の形態14における温冷感変化決定部による温冷感変化決定処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態15における温冷感変化決定部による温冷感変化決定処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態15において、第1温冷感変化推定部及び第2温冷感変化推定部による推定結果と、温冷感変化決定部によって決定される温冷感の変化及び係数kとを関連付けたテーブルの一例を示す図である。
実施の形態15における機器制御決定部による制御内容決定処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態16における温冷感変化推定部による温冷感変化推定処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態17において、第1温冷感変化推定部及び第2温冷感変化推定部による推定結果と、温冷感変化決定部によって決定される温冷感の変化及び係数kとを関連付けたテーブルの一例を示す図である。
実施の形態17における機器制御決定部の処理の流れを示すフローチャートである。
特許文献1に記載されている加速度脈波の波形を示す図である。
特許文献2に記載されている温風暖房機の構成を示すブロック図である。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による環境制御装置について説明する。本発明者らは、温冷熱刺激(温冷熱環境の変化)に関して、ユーザにおける脈波のゆらぎ度が指数化された最大リアプノフ指数の変動と、温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。そこで、実施の形態1に係る環境制御装置では、この相関を用いてユーザの温冷感を推定する。
図1は、本発明の実施の形態1における環境制御装置の構成を示したブロック図である。図1に示す環境制御装置は、例えば、公知のコンピュータから構成され、生体情報計測部(生体情報取得手段)101、カオス解析部(パラメータ算出手段)102、状態推定部(推定手段)103、制御内容決定部(刺激制御手段)104、機器制御部105を備えている。これら、生体情報計測部101〜機器制御部105は、本発明による環境制御プログラムがインストールされたコンピュータのCPUが当該プログラムを実行することで実現される。
生体情報計測部101は、公知のトランデューサー等により検出されたユーザの指尖脈波を所定のサンプリング周期でサンプリングして、脈波データを時系列的に取得する。カオス解析部102は、脈波を評価するパラメータとして、所定時間の脈波データをカオス解析し、脈波のゆらぎ度を指数化した値である最大リアプノフ指数を算出し、対象とする脈波データの所定時間を順次ずらし、算出された最大リアプノフ指数をある所定数まとめて平均(いわゆる移動平均)し、これをその時点での予め定められた長さの時間における最大リアプノフ指数として蓄積する。
状態推定部103は、カオス解析部102により抽出された最大リアプノフ指数の変動を算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを制御内容決定部104に出力する。本実施の形態では、状態推定部103は、機器制御部105が制御を開始してから時系列的に順次算出された最大リアプノフ指数の現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数の微分値を算出し、この微分値が後述する予め定められた複数の挙動例のいずれにあてはまるかを判断することで、ユーザの温冷感を推定する。
制御内容決定部104は、状態推定部103により出力された時点でのユーザの温冷感を示す推定データを基に機器の制御データを生成し、機器制御部105に出力する。機器制御部105は、制御内容決定部104により出力された制御データに従って機器の制御を行う。
図2は、本発明の実施の形態1における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、生体情報計測部101はユーザの脈波を計測し、脈波の時系列データを取得する(ステップS1)。次いで、カオス解析部102は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに最大リアプノフ指数λを算出して蓄積する(ステップS2)。次いで、状態推定部103は、カオス解析部102により抽出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する。そして、状態推定部103は、算出した最大リアプノフ指数の微分値Δλを基にユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS3)。
次いで、制御内容決定部104は、状態推定部103から出力された推定データを受信する。制御内容決定部104は、状態推定部103から出力された推定データを基に機器の制御内容を決定し、制御内容である制御データを機器制御部105へ出力する(ステップS4)。次いで、機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データを受信する。機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データに従って機器を制御する(ステップS5)。
次に、本実施の形態における状態推定部103におけるユーザの温冷感の推定処理について説明する。
ここで、本発明者らは、最大リアプノフ指数の変動と、ユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。図3(a)は、本発明者らが被験者実験により見出した、最大リアプノフ指数とユーザの温冷感の相関を表したグラフである。図3(a)に示すように、最大リアプノフ指数と温冷感とは、温冷感が0(暑くも寒くもない中立状態)を示す付近で最大リアプノフ指数が極値となる下に凸のグラフで表される相関関係を有していることが分かる。
また、図3(b)は、図3(a)から見出した最大リアプノフ指数の変動と温冷感の変動との関係をまとめたテーブルである。状態推定部103は、このテーブルを予め保持している。このテーブルに示す‘増加’は、図3(a)に示すグラフにおいて、最大リアプノフ指数が増大したことを示している。また、‘温冷感改善(寒い→0or暑い→0)’は、図3(a)に示すグラフにおいて、温冷感が暑い状態又は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態に変化していることを示している。また、‘減少’は、図3(a)に示すグラフにおいて、最大リアプノフ指数が減少したことを示している。また、‘温冷感悪化(0→寒いor0→暑い)’は、図3(a)に示すグラフにおいて、温冷感が暑くも寒くもない中立状態から、寒い状態又は暑い状態に変化したことを示している。
すなわち、状態推定部103は、温冷熱環境を構成する機器による制御が実行された後、最大リアプノフ指数λの微分値Δλが0以上の場合、最大リアプノフ指数が増加したと判定し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向、あるいは暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する。一方、状態推定部103は、最大リアプノフ指数λの微分値Δλが0未満の場合、最大リアプノフ指数が減少したと判定し、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)、あるいは暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する。
ここで、状態推定部103は、ユーザの温冷感が改善したと推定した場合、‘温冷感改善’の推定データを出力し、ユーザの温冷感が悪化したと推定した場合、‘温冷感悪化’の推定データを出力する。
制御内容決定部104は、状態推定部103から推定データが入力されると、推定データを機器の制御データに変換する。例えば、入力された推定データが‘温冷感悪化’であるならば、制御データは、温冷感が改善されるような内容に決定される。一方、入力された推定データが‘温冷感改善’であるならば、制御データは、‘なし’という内容で決定され、制御データは出力されない。
なお、状態推定部103におけるユーザの温冷感の推定について、ここでの温冷感が寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化するとは、図3(a)における横軸の−3から0の範囲内に位置する1点から0方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化するとは、図3(a)における横軸の+3から0の範囲内に位置する1点から0方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化するとは、図3(a)における横軸の0から−3の範囲内に位置する1点から−3方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化するとは、図3(a)における横軸の0から+3の範囲内に位置する1点から+3方向に温冷感が動くことを意味する。
なお、制御内容決定部104から出力される制御データにおける制御の度合いについて、たとえば、室温設定温度2度変更などの予め定められた値を用いてもよいし、状態推定部103において、微分値Δλの大小に基づいて制御変化の度合いを決定してもよいものとする。
以上説明したように実施の形態1による環境制御装置によれば、ユーザの生体情報として脈波の時系列データをカオス解析することで得られた最大リアプノフ指数を基に、ユーザの温冷感が推定され、その推定結果からユーザの居住環境を構成する機器(特に空調機器)が制御されるので、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に導くような温冷熱刺激をユーザに与えることができる。
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2による環境制御装置について説明する。脈波の振幅絶対値とユーザの温冷感とに高い相関があるという既知の知見に対し、脈波の振幅絶対値が個人ごとに全く異なることから、ユーザの温冷感推定に脈波の振幅絶対値を用いることは個人差が大きく影響し、推定精度が低下するという問題があった。
そこで、今回、本発明者らは、脈波の振幅の変動に相当する脈波の波高最大値(脈波波高最大値)の変動と、ユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。また、本発明者らは、ユーザの脈波のゆらぎ度が指数化された最大リアプノフ指数の変動と、ユーザの温冷感の変動とに高い相関があること見出した。そして、本発明者らは、温冷熱刺激(温冷熱環境の変化)に関して、脈波波高最大値の変動と最大リアプノフ指数の変動とに基づいてユーザの温冷感を推定することで、個人差に影響されず、ユーザの温冷感推定が高精度で実現可能であることを見出した。
ここで、脈波波高最大値とは、脈波データにおけるある所定時間内に取得された何拍分かの脈波波形でのピーク値のことを指す。あるいは、脈波データにおける各脈拍1拍分の中で波形のピーク値としてもよいし、何拍かの各脈波波形のピーク値の平均値としてもよいし、脈波の振幅としてもよい。
図4は、本発明の実施の形態2における環境制御装置の構成を示したブロック図である。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一のものは説明を省略し相違するもののみ説明する。
図4に示す環境制御装置は、実施の形態1における構成に加え、波高最大値抽出部106を備えており、実施の形態1との相違点は、状態推定部103が、波高最大値抽出部106により抽出された波高最大値と、カオス解析部102によって解析された最大リアプノフ指数とを用いてユーザの温冷感を推定する点にある。
波高最大値抽出部106は、脈波を評価するパラメータとして、脈波データにおけるある所定時間内に取得された何拍分かの脈波波形のピーク値である脈波波高最大値を抽出して図略のメモリに蓄積する。
状態推定部103は、波高最大値抽出部106により抽出された脈波波高最大値の変動、およびカオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数の変動を算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを実施の形態1と同様にして制御内容決定部104に出力する。
本実施の形態においても、状態推定部103は、機器制御部105が制御を開始してから時系列的に順次抽出された脈波波高最大値および最大リアプノフ指数の現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して、脈波波高最大値の微分値および最大リアプノフ指数の微分値を算出する。状態推定部103は、これらの微分値が後述する予め定められた複数の挙動例のいずれにあてはまるかを判断することで、ユーザの温冷感を推定する。
図5は、本発明の実施の形態2における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、生体情報計測部101は、実施の形態1と同様にして脈波の時系列データを取得する(ステップS6)。次いで、波高最大値抽出部106は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに脈波波高最大値hmaxを抽出して蓄積する(ステップS7)。
また、それと並行して、カオス解析部102は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに最大リアプノフ指数λを算出して蓄積する(ステップS7)。次いで、状態推定部103は、波高最大値抽出部106により抽出された脈波波高最大値hmaxの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して脈波波高最大値hmaxの微分値Δhmaxを算出すると共に、カオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する(ステップS8)。
そして、状態推定部103は、算出した脈波波高最大値の微分値Δhmaxと最大リアプノフ指数の微分値Δλとを基にユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS8)。
以下、実施の形態1と同様にして、制御内容決定部104は、状態推定部103から出力された推定データを受信する。制御内容決定部104は、状態推定部103から出力された推定データを基に機器の制御内容を決定し、制御内容を示す制御データを機器制御部105へ出力する(ステップS9)。次に、機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データを受信する。機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データに従って機器を制御する(ステップS10)。
次に、本実施の形態における状態推定部103によるユーザの温冷感の推定処理について説明する。ここで、本発明者らは、脈波波高最大値の変動とユーザの温冷感の変動、及び最大リアプノフ指数の変動とユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。
図6(a)は、本発明者らが被験者実験により見出した、脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフであり、図6(b)は最大リアプノフ指数とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。図6(b)に示すように、最大リアプノフ指数と温冷感とは、温冷感0(暑くも寒くもどちらでもない中立状態)付近で最大リアプノフ指数が極値となる下に凸のグラフで表される相関関係を有している。又、図6(a)に示すように、脈波波高最大値と温冷感とは、温冷感が寒い(−3)側から暑い(+3)側に変動するのに伴って脈波波高最大値は単調に増加する相関関係を有している。
また、図6(c)は、図6(a),(b)に示す脈波波高最大値と最大リアプノフ指数とに対する温冷感の関係をマトリクス状にまとめたテーブルである。このテーブルは、状態推定部103により予め保持されている。
すなわち、状態推定部103は、図6(c)に示すテーブルを用いて温冷熱環境を構成する機器による制御が実行された後、脈波波高最大値が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合はユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化したと推定する。
また、状態推定部103は、脈波波高最大値が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合は、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定する。また、状態推定部103は、脈波波高最大値が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合は、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化したと推定する。また、状態推定部103は、脈波波高最大値が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合はユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定する。
図7は、本発明の実施の形態2における状態推定部103での処理の流れを示すフローチャートである。まず、状態推定部103は、波高最大値抽出部106により抽出された脈波波高最大値hmaxの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して脈波波高最大値hmaxの微分値Δhmaxを算出する(ステップS11)。
また、それと並行して、状態推定部103は、カオス解析部102により抽出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する(ステップS11)。
次に、ステップS12において、状態推定部103は、まず、脈波波高最大値の微分値Δhmaxについての判定を行う。具体的には、状態推定部103は、脈波波高最大値の微分値Δhmaxが0以上であるか否かを判断する。脈波波高最大値の微分値Δhmaxが0以上の場合(ステップS12でYES)、状態推定部103は、脈波波高最大値は増加したと判定し、処理をステップS13に進める。
ステップS13において、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0以上であるか否かを判断する。状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0以上の場合(ステップS13でYES)、最大リアプノフ指数は増加したと判定する。この場合、状態推定部103は、予め保持している図6(c)のテーブルを参照し、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化していると推定し、‘0→暑い’という推定結果を表す推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS14)。
一方、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0未満の場合(ステップS13でNO)、最大リアプノフ指数は減少したと判定する。この場合、状態推定部103は、図6(c)のテーブルを参照し、温冷感が寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化していると推定し、‘寒い→0’という推定結果を表す推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS15)。
また、状態推定部103は、脈波波高最大値の微分値Δhmaxが0未満の場合(ステップS12でNO)、脈波波高最大値が減少したと判定し、処理をステップS16に進める。
そして、ステップS16において、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0以上であるか否かを判断する。状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0以上の場合(ステップS16でYES)、最大リアプノフ指数が増加したと判定する。この場合、状態推定部103は、図6(b)に示すテーブルを参照し、温冷感が暑くも寒くもないない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化していると推定し、‘0→寒い’という推定結果を表す推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS17)。
一方、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0未満の場合(ステップS16でNO)、最大リアプノフ指数が減少したと判定する。この場合、状態推定部103は、温冷感が暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化していると推定し、‘暑い→0’という推定結果を表す推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS18)。
制御内容決定部104は、状態推定部103から推定データが入力されると、予め保持している推定データと制御データとの関係を示すテーブルを参照し、推定データを機器の制御データへ変換する。図8は、推定データと制御データとを対応づけたテーブルを示す図である。
制御内容決定部104は、図8に示すテーブルに基づいて推定データの内容を制御データへ変換する。例えば、推定データが‘0→寒い’を示す場合、制御内容決定部104は、‘暖制御’という内容の制御データに決定する。また、推定データが‘0→暑い’を示す場合、制御内容決定部104は、‘冷制御’という内容の制御データに決定する。更に、推定データが‘寒い→0’又は‘暑い→0’を示す場合、制御内容決定部104は、‘なし’という内容の制御データに決定する。この場合、制御内容決定部104は、制御データを出力しない、又は現状の機器状態を維持するような制御データを出力する。
ここで、‘暖制御’とは、例えば、空調機器における室温設定温度を上げる制御、暖房運転時の暖房能力を増加させる制御、及び冷房運転時の冷房能力を減少させる制御などのことを指す。また、‘冷制御’とは、例えば、空調機器における室温設定温度を下げる制御、暖房運転時の暖房能力を減少させる制御、及び冷房運転時の冷房能力を増加させる制御などのことを指す。
なお、状態推定部103におけるユーザの温冷感の推定について、ここでの温冷感が寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化するとは、図6(a)および図6(b)における横軸の−3から0の範囲内に位置する1点から0方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化するとは、図6(a)および図6(b)における横軸の+3から0の範囲内に位置する1点から0方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化するとは、図6(a)および図6(b)における横軸の0から−3の範囲内に位置する1点から−3方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化するとは、図6(a)および図6(b)における横軸の0から+3の範囲内に位置する1点から+3方向に温冷感が動くことを意味する。
また、制御内容決定部104から出力される制御データにおける制御の度合いについて、たとえば、室温設定温度2度変更などの予め定められた値を用いてもよいし、状態推定部103において算出された脈波波高最大値の微分値Δhmaxや最大リアプノフ指数の微分値Δλの大小に基づいて制御変化の度合いを決定してもよい。
以上説明したように、実施の形態2による環境制御装置によれば、ユーザの生体情報として脈波のみを用いてその時系列データをカオス解析して得られた最大リアプノフ指数と、脈波データにおける脈拍1拍分の中での脈波波形のピーク値である脈波波高最大値とに基づいて温冷熱刺激に対するユーザの温冷感を推定し、推定結果を基に、温冷熱刺激を生成する機器が制御されている。そのため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。その結果、ユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態にすることができる。なお、本実施の形態において、脈波波高最大値に代えて、脈波振幅を用いても良い。
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3による環境制御装置について説明する。図9は、本発明の実施の形態3における環境制御装置の構成を示したブロック図である。なお、本実施の形態において、実施の形態2と同一のものは説明を省略し相違するもののみ説明する。
図9に示す環境制御装置は、実施の形態2における波高最大値抽出部106に代えて室温計測部107を備えており、実施の形態2との相違点は、状態推定部103が、脈波波高最大値に代えて室温計測部107により計測された室温データを用い、その室温データと最大リアプノフ指数とを用いてユーザの温冷感を推定する点にある。
室温計測部107は、温度センサ等から構成され、一定時間ごとに室内の温度を計測して蓄積する。状態推定部103は、室温計測部107により計測された室温データの変動及びカオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数の変動を算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを実施の形態2と同様にして制御内容決定部104に出力する。
本実施の形態においても、状態推定部103は、機器制御部105が制御を開始してから時系列的に順次抽出された室温データ及び最大リアプノフ指数の差分をその時間差(サンプリング周期)で除して、室温データの微分値及び最大リアプノフ指数の微分値を算出する。状態推定部103は、この微分値が後述する予め定められた複数の挙動例のいずれにあてはまるかを判断することで、ユーザの温冷感を推定する。
次に、本実施の形態による環境制御装置の動作について図10のフローチャートを用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態3における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、生体情報計測部101は、実施の形態2と同様にして脈波を計測して脈波の時系列データを取得する。また、室温計測部107は、ユーザの所在する部屋の温度を測定し、室温データを取得する(ステップS20)。
次いで、カオス解析部102は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに最大リアプノフ指数を算出して蓄積する(ステップS21)。
次いで、状態推定部103は、室温データの変動と最大リアプノフ指数の変動とに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定データを制御内容決定部104に出力する(ステップS22)。具体的には、状態推定部103は、室温計測部107により取得された室温データの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して室温データの微分値Δtを算出する。そして、状態推定部103は、微分値Δtが正の場合、室温は上昇したと判定し、微分値Δtが負の場合、室温は低下したと判定する。
また、状態推定部103は、カオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する。そして、状態推定部103は、微分値Δλが正の場合、最大リアプノフ指数が増大したと判定し、微分値Δλが負の場合、最大リアプノフ指数が減少したと判定する。
そして、状態推定部103は、図11に示すテーブルを参照してユーザの温冷感を推定する。図11は、実施の形態2と同様にして導いた最大リアプノフ指数と室温とに対する温冷感をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図である。このテーブルは、状態推定部103により予め保持されている。
すなわち、状態推定部103は、温冷熱環境を構成する機器による制御が実行された後、図11に示すテーブルを参照し、室温が上昇し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化したと推定し、‘0→暑い’を示す推定データを出力する。また、状態推定部103は、室温データが上昇し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘寒い→0’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、室温データが低下し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化したと推定し、‘0→寒い’を示す推定データを出力する。また、状態推定部103は、室温データが低下し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘暑い→0’を示す推定データを出力する。その後、それぞれの推定データは制御内容決定部104へ出力される。
次いで、制御内容決定部104は、状態推定部103から推定データが入力されると、実施の形態2と同様、図8に示すテーブルを参照して、推定データを機器の制御データへ変換する(ステップS23)。次に、機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データを受信する。機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データに従って機器を制御する(ステップS24)。
以上説明したように、実施の形態3による環境制御装置によれば、最大リアプノフ指数と、空調機器で通常計測されているその時点での室温とに基づいて、ユーザの温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。その結果、ユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4による環境制御装置について説明する。図12は、本発明の実施の形態4における環境制御装置の構成を示したブロック図である。実施の形態1と同一のものは説明を省略し相違するもののみ説明する。図12に示す環境制御装置は、実施の形態1における構成とほぼ同一であるが、実施の形態1との相違点は、制御内容決定部104が、制御データを決定し、決定した制御データを状態推定部103へも出力し、状態推定部103が、制御内容決定部104から出力された制御データと最大リアプノフ指数とを用いてユーザの温冷感を推定する点にある。
状態推定部103は、カオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数の変動を算出し、算出結果と制御内容決定部104から出力された制御データとに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを実施の形態1と同様にして制御内容決定部104に出力する。ここで、制御対象の機器を冷房として機能させる場合は、制御データには、‘冷房’のデータが含まれると共に、冷房の出力強度を指定するデータが含まれる。また、制御対象の機器を暖房として機能させる場合は、制御データには‘暖房’のデータが含まれると共に、暖房の出力強度を指定するデータが含まれる。
本実施の形態においても、状態推定部103は、機器制御部105が制御を開始してから時系列的に順次抽出された最大リアプノフ指数の差分をその時間差(サンプリング周期)で除して、最大リアプノフ指数の微分値Δλを算出する。状態推定部103は、この微分値の挙動と制御内容決定部104から出力された制御データの内容とが後述する予め定められた複数例のいずれにあてはまるかを判断することで、ユーザの温冷感を推定する。
次に、本実施の形態による環境制御装置の動作について図13のフローチャートを用いて説明する。図13は、本発明の実施の形態4における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、生体情報計測部101は、実施の形態1と同様にして脈波を計測して脈波の時系列データを取得する(ステップS30)。次いで、カオス解析部102は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに最大リアプノフ指数λを算出して蓄積する(ステップS31)。
次いで、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の変動と、制御内容決定部104から出力される制御データとに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定データを制御内容決定部104に出力する(ステップS32)。
具体的には、状態推定部103は、カオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する。そして、状態推定部103は、微分値Δλが正の場合、最大リアプノフ指数は増加したと判定し、微分値Δλが負の場合、最大リアプノフ指数は減少したと判定する。
そして、状態推定部103は、制御内容決定部104から出力された制御データに含まれる出力強度の現在値とその直前の値である直前値とから冷房又は暖房として機能する機器の出力強度を示す冷房能力又は暖房能力が増加若しくは減少したかを判定する。
そして、状態推定部103は、図14(a),(b)に示すテーブルを参照してユーザの温冷感を推定する。図14は、実施の形態1と同様にして導いた最大リアプノフ指数と温冷感との関係と、制御データと温冷感との関係とをマトリクス状にまとめたテーブルを示す図であり、図14(a)は、最大リアプノフ指数及び冷房能力と温冷感との関係をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図であり、図14(b)は、最大リアプノフ指数及び暖房能力と温冷感との関係をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図である。状態推定部103はこのテーブルを予め保持している。
すなわち、状態推定部103は、受信した制御データが冷房を示し、冷房能力が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加している場合は、図14(a)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化したと推定し、‘0→寒い’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが冷房を示し、冷房能力が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加している場合は、図14(a)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化したと推定し、‘0→暑い’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが冷房を示し、冷房能力が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少している場合は、図14(a)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘暑い→0’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが冷房を示し、冷房能力が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少している場合は、図14(a)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘寒い→0’を示す推定データを出力する。
一方、状態推定部103は、受信した制御データが暖房を示し、暖房能力が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加している場合は、図14(b)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化したと推定し、‘0→暑い’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが暖房を示し、暖房能力が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加している場合は、図14(b)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化したと推定し、‘0→寒い’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが暖房を示し、暖房能力が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少している場合は、図14(b)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘寒い→0’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが暖房を示し、暖房能力が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少している場合は、図14(b)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘暑い→0’を示す推定データを出力する。
図13に戻って、制御内容決定部104は、状態推定部103から推定データが入力されると、実施の形態2と同様、図8に示すテーブルを参照して、推定データを機器の制御データへ変換する(ステップS33)。次に、機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データを受信する。機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データに従って機器を制御する(ステップS34)。
ここで、温冷熱環境を構成する機器による冷房などの制御が実行されている際における暖制御とは、冷房能力を減少させる制御のことを指す。また、冷制御とは、冷房能力を増加させる制御のことを指す。同じく、暖房などの制御が実行されている際における暖制御とは、暖房能力を増加させる制御のことを指す。また、冷制御とは、暖房能力を減少させる制御のことを指す。
以上説明したように、実施の形態4による環境制御装置によれば、最大リアプノフ指数と、その時点での温冷熱刺激に相当する制御内容とに基づいてユーザの温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除して温冷熱刺激に対するユーザの温冷感を精度よく推定することができる。その結果、ユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
(実施の形態5)
図15は、本発明の実施の形態5における環境制御装置の構成を示す概略図である。本環境制御装置は、公知のコンピュータから構成され、脈波検知部(生体情報取得手段)201、脈波カオスパラメータ算出部(第1のパラメータ算出手段)202、脈波カオスパラメータ比較部(第1の推定手段)203、第1ユーザ状態推定部(第1の推定手段)204、第1刺激制御部(第1の刺激制御手段)205、刺激生成部206、脈波波形パラメータ算出部(第2のパラメータ算出手段)207、脈波波形パラメータ比較部(第2の推定手段)208、第2ユーザ状態推定部(第2の推定手段)209、第2刺激制御部(第2の刺激制御手段)210、及び刺激制御切替部(刺激制御切替手段)211を備えている。
これら脈波検知部201〜刺激制御切替部211は、本発明による環境制御プログラムがインストールされたコンピュータのCPUが当該プログラムを実行することで実現される。
脈波検知部201は、公知のトランデューサー等により検出されたユーザの指尖脈波を所定のサンプリング周期でサンプリングして、脈波データ(生体情報の一例)を時系列的に取得する。脈波カオスパラメータ算出部202は、脈波検知部201により検知及び蓄積された脈波の時系列データの最大リアプノフ指数を算出し、算出した最大リアプノフ指数を脈波カオスパラメータとして算出する。脈波カオスパラメータ比較部203は、算出された脈波カオスパラメータの値を基準値K1と比較する。
第1ユーザ状態推定部204は、脈波カオスパラメータ比較部203による比較結果に基づいて、脈波カオスパラメータ算出部202により算出された脈波カオスパラメータの現在値N1から基準値K1を減ずる演算、又は基準値K1から現在値N1を減ずる演算を行い、演算結果を予め定められた閾値(第3規定値)A1と比較することで、例えば、リラックス感または快適感または温冷感等のユーザの状態を推定する。
ここで、基準値K1としては、刺激生成部206がユーザに刺激を与える前、或いは刺激の強度や種類を変更する前に、脈波カオスパラメータ算出部202により算出された脈波カオスパラメータの値が採用される。或いは、刺激生成部206がユーザに刺激を与える前のある所定期間において、刺激の強度や種類を変更する前に、脈波カオスパラメータ算出部202により算出されたが脈波カオスパラメータの値の推移より学習した値(例えば、平均値)が採用される。
第1刺激制御部205は、第1ユーザ状態推定部204の推定結果に基づいて、ユーザがリラックス感または快適感または温冷感等を得ることができるような強度の刺激を刺激生成部206に生成させるための刺激値(第1刺激値)I1を算出し、算出した刺激値I1を刺激制御切替部211に出力する。
脈波波形パラメータ算出部207は、脈波時系列データから、脈波の2階微分である脈波加速度波形を評価するための脈波波形パラメータを算出する。この脈波波形パラメータが時系列データの変化の一例である。
図60に示すように脈波加速度は、5つの要素波E1、E2、E3、E4、E5から構成される。要素波E1の頂点Aは指尖容積脈波拡張期波の始まりと一致するので頂点Aから頂点Eまでの所要時間は心臓の収縮時間軸長さと一致するようになる。要素波E1は、基線に対して上に凸となる陽性波であり、要素波E2は、基線に対して下に凸となる陰性波であり、次の要素波E3、E4、E5はそれぞれ生理状態によって陽性波になったり陰性波になったり変化する要素波であり、利用者の年齢と強い相関を有する。
本実施の形態では、脈波波形パラメータ算出部207は、振幅aを分母にとり振幅cを分子にとったc/aを脈波波形パラメータとして採用する。但し、c/aに代えて、b/aやd/aを脈波波形パラメータとして採用してもよい。
脈波波形パラメータ比較部208は、算出された脈波波形パラメータの値を基準値K2と比較する。第2ユーザ状態推定部209は、脈波波形パラメータ比較部208による比較結果に基づいて、脈波波形パラメータ算出部207により算出された脈波波形パラメータの現在値N2から所定の基準値K2を減ずる演算、又は基準値K2から現在値N2を減ずる演算を実行し、演算結果を所定の閾値B1と比較し、比較結果に基づいて、刺激生成部206がユーザに与えた刺激に対するユーザの認知状態を推定する。すなわち、第2ユーザ状態推定部209は、刺激生成部206がユーザに与えた刺激に対し、ユーザが強すぎると感じているか、適切と感じているか、或いは弱すぎると感じているかを推定する。
ここで、基準値K2としては、刺激生成部206がユーザに刺激を与える前、或いは刺激の強度や種類を変更する前に、脈波波形パラメータ算出部207により算出された脈波波形パラメータの値が採用される。或いは、刺激生成部206がユーザに刺激を与える前の一定期間において、脈波刺激の強度や種類を変更する前の脈波波形パラメータの値の推移より学習した値(例えば、平均値)が採用される。
第2刺激制御部210は、第2ユーザ状態推定部209の推定結果に基づいて、刺激に対してユーザが適切と感じるような強度の刺激を刺激生成部206に生成させるための刺激値(第2刺激値)I2を算出し、刺激制御切替部211に出力する。
刺激制御切替部211は、第1刺激制御部205から出力された刺激値I1と第2刺激制御部210から出力された刺激値I2とを基に、実際に出力する刺激の強度を指定するための刺激出力値O1を算出し、刺激生成部206に出力する。
図16は、本実施の形態における脈波カオスパラメータ算出部202、脈波カオスパラメータ比較部203、第1ユーザ状態推定部204及び第1刺激制御部205の動作を示すフローチャートである。
まず、脈波カオスパラメータ算出部202は、脈波検知部201によって検知・蓄積された脈波時系列データを受信する(ステップS40)。次に、脈波カオスパラメータ算出部202は、受信した脈波時系列データから最大リアプノフ指数(Ly)を算出し、算出した最大リアプノフ指数を脈波カオスパラメータの現在値N1とする(ステップS41)。
次に、脈波カオスパラメータ比較部203は、脈波カオスパラメータの基準値K1と現在値N1との差を閾値A1と比較する(ステップS42)。具体的には、脈波カオスパラメータ比較部203は、脈波カオスパラメータの現在値N1と基準値K1との差を算出し、算出した差が閾値A1以上であるか否かを判断する。算出した差が閾値A1以上の場合(ステップS42でYES)、第1ユーザ状態推定部204は、リラックス感または快適感または温冷感等が向上していると推定する(ステップS43)。
一方、脈波カオスパラメータの現在値N1と基準値K1との差が所定の閾値A1未満の場合(ステップS42でNO)、第1ユーザ状態推定部204は、リラックス感または快適感または温冷感等が向上していないと推定する(ステップS44)。
ステップS45において、第1刺激制御部205は、現在の刺激強度が維持されるような刺激値I1を算出し、刺激制御切替部211に出力する。ステップS46において、第1刺激制御部205は、現在の刺激強度より強化されるような刺激値I1を刺激制御切替部211に出力する。
図17は、本実施の形態における脈波波形パラメータ算出部207、脈波波形パラメータ比較部208、第2ユーザ状態推定部209及び第2刺激制御部210の動作を示すフローチャートである。
まず、脈波波形パラメータ算出部207は、脈波検知部201によって検知・蓄積された脈波時系列データを受信する(ステップS50)。次に、脈波波形パラメータ算出部207は、脈波の2階微分値である加速度脈波の波形成分比c/aを算出し、算出した波形成分比c/aを脈波波形パラメータの現在値N2とする(ステップS51)。
次に、脈波波形パラメータ比較部208は、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差を閾値B1と比較する(ステップS52)。具体的には、脈波波形パラメータ比較部208は、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差を算出し、算出した差が閾値B1以上であるか否かを判断する。算出した差が所定の閾値B1未満の場合(ステップS52でNO)、第2ユーザ状態推定部209は、現在の刺激強度ではユーザの認知が弱く、刺激強度が弱すぎると推定する(ステップS53)。
一方、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差が所定の閾値B1以上の場合(ステップS52でYES)、脈波波形パラメータ比較部208は、さらに脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差を閾値B2と比較する(ステップS54)。具体的には、脈波波形パラメータ比較部208は、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差が閾値B2以上であるか否かを判断する。なお、閾値B2は閾値B1以上である。その差が閾値B2以下の場合(ステップS54でYES)、第2ユーザ状態推定部209は、現在の刺激強度でユーザの認知が適切である、すなわち刺激が適切な範囲内にあると推定する(ステップS55)。
一方、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差が閾値B2より大きい場合(ステップS54でNO)、第2ユーザ状態推定部209は、現在の刺激強度ではユーザの認知が強すぎ、ユーザに苦痛あるいは悪影響を与えると推定する(ステップS56)。
ステップS57において、第2刺激制御部210は、現在の刺激強度を強める刺激値I2を算出して、刺激制御切替部211に出力する。ステップS58において、第2刺激制御部210は、現在の刺激強度が維持されるような刺激値I2を算出し、刺激制御切替部211に出力する。ステップS59において、第2刺激制御部210は、現在の刺激強度が弱まるような刺激値I2を算出し、刺激制御切替部211に出力する。なお、脈波波形パラメータは数秒間(例えば約5秒間〜約10秒間)の脈波波形から算出できるため、脈波カオスパラメータに対して速やかに算出される。
また、算出する脈波波形パラメータに応じて、脈波波形パラメータの基準値と現在値との差を、例えば上述の脈波波形パラメータc/aの時のように基準値−現在値とするか、例えば脈拍数の時のように現在値−基準値とするかは適宜選択すればよく、また、所定の閾値(B1及びB2、ただしB1≦B2)も適宜設定すればよい。
図18は、本実施の形態における刺激制御切替部211の動作を示すフローチャートである。まず、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aと、所定の第1閾値(下限規定値)C1とを比較する(ステップS60)。すなわち、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aが所定の第1閾値C1以下であるか否かを判断する。脈波波形パラメータc/aが第1閾値C1以下の場合(ステップS60でYES)、刺激制御切替部211は、メンバシップ値M1を0に設定する(ステップS61)。ここで、メンバシップ値M1は、脈波波形パラメータに応じて決定される重み係数である。そして、メンバシップ値M1は、脈波波形パラメータを入力とし、メンバシップ値M1を出力とする0から1の範囲で単調増加する所定のメンバシップ関数f1を用いて算出される。
一方、脈波波形パラメータc/aが第1閾値C1より大きい場合(ステップS60でNO)、刺激制御切替部211は、第1閾値C1より大きい所定の第2閾値(第1規定値)C2と、脈波波形パラメータc/aとを比較する(ステップS62)。すなわち、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aが所定の第2閾値C2以下であるか否かを判断する。脈波波形パラメータc/aが第2閾値C2以下の場合(ステップS62でYES)、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aに応じたメンバシップ値M1を、メンバシップ関数f1を用いて算出する(ステップS63)。
脈波波形パラメータc/aが第2閾値C2より大きい場合(ステップS62でNO)、刺激制御切替部211は、第2閾値C2より大きい所定の第3閾値(第2規定値)C3と、脈波波形パラメータc/aとを比較する(ステップS64)。すなわち、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aが所定の第3閾値C3以下であるか否かを判断する。脈波波形パラメータc/aが第3閾値C3以下の場合(ステップS64でYES)、刺激制御切替部211は、メンバシップ値M1を1に設定する(ステップS65)。
一方、脈波波形パラメータc/aが第3閾値C3より大きい場合(ステップS64でNO)、刺激制御切替部211は、第3閾値C3より大きい所定の第4閾値(上限規定値)C4と、脈波波形パラメータc/aとを比較する(ステップS66)。すなわち、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aが所定の第4閾値C4以下であるか否かを判断する。脈波波形パラメータc/aが第4閾値C4以下の場合(ステップS66でYES)、刺激制御切替部211は、メンバシップ関数f2を用いて、脈波波形パラメータc/aに応じたメンバシップ値M1を算出する(ステップS67)。
ここで、メンバシップ関数f2は、0から1の範囲で単調減少する関数であり、脈波波形パラメータc/aの値に応じたメンバシップ値M1を算出する。
一方、脈波波形パラメータc/aが第4閾値C4より大きい場合(ステップS66でNO)、刺激制御切替部211は、メンバシップ値M1を0に設定する(ステップS68)。
図19は、脈波波形パラメータとメンバシップ値M1との関係を示したグラフである。図19において、縦軸はメンバシップ値M1を示し、横軸は脈波波形パラメータを示している。図19に示すように脈波波形パラメータが第1閾値C1以下の場合は、メンバシップ値M1=0となる。また、脈波波形パラメータが第1閾値C1より大きく、第2閾値C2以下の場合は、メンバシップ値M1はメンバシップ関数f1に従って単調増加する。また、脈波パラメータが第2閾値C2より大きく、第3閾値C3以下の場合は、メンバシップ値M1=1となる。また、脈波波形パラメータが第3閾値C3より大きく、第4閾値C4以下の場合は、メンバシップ値M1はメンバシップ関数f2に従って単調減少する。また、脈波波形パラメータが第4閾値C4より大きい場合は、メンバシップ値M1=0となる。
図18に戻って、ステップS69において、刺激制御切替部211は、刺激値I1,I2、メンバシップ値M1を用いて式(1)の演算を行い、刺激出力値O1を算出し、刺激生成部206に出力する。
刺激出力値O1=刺激値I2×(1−メンバシップ値M1)+刺激値I1×(メンバシップ値M1)・・・(1)
刺激出力値O1を受けた刺激生成部206は、この刺激出力値O1が示す強度の刺激を生成し、ユーザに与える。
図19に示すように、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第1閾値C1以下と判断された時は、刺激強度が弱すぎてこのままの刺激強度で刺激を生成し続けてもユーザの状態(例えばリラックス感または快適感または温冷感等)を向上させることは困難であると判断され、メンバシップ値M1が0に設定される。その結果、リラックス感または快適感または温冷感等を向上させることに対して支配的な刺激値I1の重みが0となり、刺激値I2のみ用いて刺激出力値O1が算出される。
これにより、算出に時間がかかる脈波カオスパラメータを用いることなく、刺激出力値O1が算出される結果、速やかに刺激出力値O1を算出することができ、ユーザに与える刺激強度を速やかに適切な強度にすることができる。
また、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第4閾値C4よりも大きいと判断された時は、刺激強度が強すぎてユーザに苦痛あるいはユーザに悪影響を与える可能性があると判断され、上記と同様に、メンバシップ値M1が0に設定される。その結果、刺激値I2のみ用いて刺激出力値O1が算出される。
これにより、算出に時間がかかる脈波カオスパラメータを用いることなく、刺激出力値O1が算出される結果、速やかにユーザへの刺激強度が弱められ、速やかに刺激の強度を適切な強度にすることができる。
更に、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第2閾値C2より大きく、かつ第3閾値C3以下と判断された時には、脈波波形パラメータc/aは適切な範囲にあり、現在の刺激の強度は適切であり、この強度の刺激を継続してユーザに与えても、苦痛などの悪影響は与えないと判断される。
そして、刺激制御切替部211により、メンバシップ値M1が1に設定される。その結果、刺激値I2の重み係数が0となり、刺激値I1のみ用いて、刺激出力値O1が算出される。このとき、脈波カオスパラメータの現在値N1と基準値K1との差が所定の閾値A1以上であれば、現在の刺激強度が維持される。一方、脈波カオスパラメータの現在値N1と基準値K1との差が所定の閾値A1より小さければ、現在の刺激強度が強められる。
これにより、ユーザに苦痛あるいは悪影響を与えないことを確保したうえで、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等を向上させることができる。
更に、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第1閾値C1より大きく、かつ第2閾値C2以下と判断された時には、第1閾値C1以下の時ほどではないが刺激強度がやや弱いため、このままの刺激強度で刺激を生成し続けてもユーザの状態(例えばリラックス感または快適感または温冷感等)を向上させることはやや困難であると判断される。この場合、刺激値I1と刺激値I2とが混合され、刺激出力値O1が算出される。
これにより、弱すぎない適度な強度の刺激をユーザに与えることができ、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等をより確実に向上させることができる。
更に、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第3閾値C3より大きく、かつ第4閾値C4以下と判断された時には、第4閾値C4以上の時ほどではないが刺激強度がやや強いため、このままの刺激強度で刺激を生成し続けるとユーザに苦痛あるいはユーザに悪影響を与える可能性があると判断される。この場合、刺激値I1と刺激値I2とが混合され、刺激出力値O1が算出される。
これにより、ユーザに強すぎない適度な強度の刺激がユーザに与えられ、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等をより確実に向上させることができる。
以上のように、本環境制御装置によれば、ユーザに苦痛や悪影響を与えることを速やかに回避して、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等を向上させることができる。
なお、本実施の形態において、ユーザに与える刺激として、冷房や暖房等の温冷熱刺激、冷風や温風等の気流刺激、マッサージ等の物理刺激、酸素やマイナスイオン等の物質刺激、パルス音、音楽や超音波などの聴覚刺激や、光、照明や映像などの視覚刺激等が含まれる。
また、図18及び図19における説明では、刺激制御切替部211は脈波波形パラメータと閾値(C1、C2、C3、C4)とを比較するとしているが、脈波波形パラメータの基準値(K2)と現在値(N2)との差と適切に設定された閾値とを比較するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、脈波カオスパラメータを基にユーザの状態を推定する第1ユーザ状態推定部204と、脈波波形パラメータを基にユーザの状態を推定する第2ユーザ状態推定部209とを備える構成を採用したが、これに限定されず、脈波カオスパラメータのみに基づいて刺激生成部206を制御してもよい。この場合、脈波波形パラメータ算出部207〜刺激制御切替部211は不要となり、第1刺激制御部205は算出した刺激値I1により直接、刺激生成部206を制御すればよい。この構成によれば脈波カオスパラメータを用いてユーザの快適感あるいは温冷感の推定を行い、この推定結果を基に、ユーザに対して快適感あるいは温冷感を向上させるような刺激が与えられる。そのため、構成の簡略化を図りつつ、ユーザの住環境を構成する機器(特に空調機器や、給湯機器等の浴室環境機器など、温冷熱刺激をユーザに与える機器)の制御にも十分適用させることができる環境制御装置を提供することができる。
次に、本発明で用いた脈波のカオス解析による、温冷熱刺激に対するユーザの快適感あるいは温冷感の推定の原理について説明する。
本発明を生み出すにあたり、本発明者らが温冷熱刺激に対する人の快適感を生体情報により推定するべく鋭気研究を重ね、冬季に青年女子被験者を対象とした温冷熱刺激実験を実施した。実験条件としては、少し涼しい環境で被験者を椅子に座った状態で安静にさせた後、その環境下で温熱刺激の一例として湯に足をつけてしばらく足浴を施した。その後、湯から足を出した状態で安静にさせた。実験中は被験者の脈波を時系列データとして検知、蓄積した。また、快適感と温冷感の変化とを被験者に主観申告してもらった。
図20は、足浴前、足浴中及び足浴後の脈波をカオス解析して得られたリアプノフ指数の変化と、快適感及び温冷感に関する主観申告の変化との一例を示す図である。なお、図20において、四角印は、足浴前、足浴中及び足浴後の快適感に関する主観申告を表し、三角印は、足浴前、足浴中及び足浴後の温冷感に関する主観申告を表し、菱形印は、足浴前、足浴中及び足浴後のリアプノフ指数を表している。
実験終了後、本発明者らは、被験者の脈波時系列データと主観申告の快適感、温冷感との相関について種々分析を重ねた結果、図20に示すように足浴前、足浴中、足浴後の脈波をカオス解析して得られたリアプノフ指数の変化と快適感、温冷感に関する主観申告との間に高い相関があることを見出し、本発明の完成に至ったのである。すなわち、足浴前では少し涼しい環境下であるので快適感はほぼ中立か、わずかに不快側であり、温冷感は冷側に申告されている。これに対し、足浴中には快適感、温冷感ともにそれぞれ大きく快適側、温側に申告されている。また、足浴後には少し涼しい環境下に放置される事になるので再び快適感はほぼ中立か、わずかに不快側となり、温冷感は冷側に申告されている。
一方、脈波のカオス解析結果であるリアプノフ指数は、足浴前から足浴中にかけては大きく上昇し、足浴中から足浴後にかけては再び低下する傾向を示し、上述の快適感、温冷感の主観申告の変化との間に高い相関が見出されたのである。この温冷熱刺激に対する快適感、温冷感の変化と脈波のカオス解析結果との相関を応用して前記の第1ユーザ状態推定部204を構成することにより、ユーザの生体情報として脈波の時系列データをカオス解析することで得られた温冷熱刺激に対するユーザの快適感あるいは温冷感の推定結果を基に、温冷熱刺激を生成する刺激生成部206が制御される。したがって、ユーザに対して温冷熱刺激に対する快適感あるいは温冷感を向上させるような刺激を与えることができる。その結果、ユーザの居住環境を構成する機器(特に空調機器や、給湯機器等の浴室環境機器など、温冷熱刺激をユーザに与える機器)の制御にも十分適用させることができる環境制御装置を提供することができる。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6に係る環境制御装置について説明する。まず、本発明で用いた脈波を評価するためのパラメータによるユーザの快適感の推定原理と、本発明で用いた脈波を評価するためのパラメータによるユーザの温冷感の推定原理について説明する。
本発明者らは、快適感を生体情報により定量的に把握するための鋭気研究を重ねた結果、ユーザに対して快適感を促進する刺激を与えた前後で、加速度脈波の波形成分比の変化と主観申告の快適感が向上との間に高い相関があることを見出した。
また、本発明者らは、温冷感を生体情報により把握するための鋭気研究を重ねた結果、ユーザに対して温冷感に関する刺激を与えた前後で、加速度脈波の波形成分比、並びに加速度脈波の波高の最大値(加速度脈波波高最大値)若しくは脈波の波高の最大値(脈波波高最大値)の変化と主観申告の温冷感の変化との間に高い相関があることを見出した。
ここで、加速度脈波波高最大値とは、所定時間内に取得された何拍分かの加速度脈波波形の複数のピーク値のうちの最大のピーク値、若しくは複数のピーク値の平均値、並びに所定時間内に取得された何拍分かの加速度脈波波形に含まれる1拍分の加速度脈波波形のピーク値を採用することができる。
また、脈波波高最大値とは、所定時間内に取得された何拍分かの脈波波形の複数のピーク値のうち最大のピーク値、若しくは複数のピーク値の平均値、並びに所定時間内に取得された何拍分かの脈波波形に含まれる1拍分の脈波波形のピーク値を採用することができる。以下、本発明の実施の形態6について、図面を参照しながら説明する。
図21は、本発明の実施の形態6における環境制御システムの構成を示すブロック図である。図21に示す環境制御システムは、例えば、公知のコンピュータから構成され、生体情報採取部(生体情報取得手段)301、パラメータ抽出部(パラメータ算出手段)302、パラメータ変動判断部(推定手段)303、刺激制御部(刺激制御手段)304、及び刺激出力部305を備えている。これら、生体情報採取部301〜刺激出力部305は、本発明による環境制御プログラムがインストールされたコンピュータのCPUが当該プログラムを実行することで実現される。
生体情報採取部301は、公知のトランデューサー等により検出されたユーザの指尖脈波を所定のサンプリング周期でサンプリングして、脈波データを時系列的に取得する。パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比を、脈波を評価するパラメータとして抽出して蓄積する。ここで、加速度脈波波形は、図60に示すような波形となる。そこで、本実施の形態では、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。なお、c/aに代えて、b/a、d/a、e/aを波形成分比として用いてもよいが、c/aが快適感との相関が特に高い。
パラメータ変動判断部303は、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動を算出し、算出結果からユーザの快適感を推定し、推定結果から刺激内容を判定する。そして、パラメータ変動判断部303は、判定した刺激内容に応じた刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比と、刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比との差分を上記サンプリング周期で除して、波形成分比の微分値を算出し、この微分値が予め定められた特定の範囲1〜3(後述する)のいずれに含まれるかを判断することで、ユーザの快適感を推定する。
刺激制御部304は、刺激出力命令を刺激出力部305に出力し、刺激出力部305を制御する。刺激出力部305は、ユーザに対して刺激を出力すると同時に、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力する。
図22は、本発明の実施の形態6における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS70)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aを抽出して蓄積する(ステップS71)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS72)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS72でNO)、ステップS71の処理へ戻り、刺激出力信号が受信されるまでステップS71及びステップS72の処理が繰り返し実行される。
一方、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS72でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとから波形成分比の微分値Δc/aを求め、その微分値Δc/aに基づいてユーザの快適感を推定し、推定結果から刺激内容を判断し、判断した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS73)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS74)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの快適感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図23は、本発明の実施の形態6におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS80)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS80でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS80の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS80でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出する(ステップS81)。
ここで、本発明者らは、波形成分比が変化するという現象とユーザの快適感が向上するという現象とに高い相関があることを見出した。そこで、本環境制御システムでは、波形成分比の変動に基づいて、ユーザの快適感を推定している。
次いで、パラメータ変動判断部303は、波形成分比c/aがあまり変動していないことを示す特定の範囲1に微分値Δc/aが収まるか否かを判定する(ステップS82)。なお、特定の範囲1とは、例えば、−0.05<Δc/a<+0.05である。そして、微分値Δc/aが特定の範囲1に収まる場合(ステップS82でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感が変化していないと推定し、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回の刺激と同じ種類で刺激の強度を強くする又は刺激を与える時間を長くするような刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS83)。これにより、ユーザは快適感を得ることができる。
一方、微分値Δc/aの値が特定の範囲1に収まらない場合(ステップS82でNO)、パラメータ変動判断部303は、波形成分比c/aの微分値Δc/aが特定の範囲1とは異なる特定の範囲2に収まるか否かを判定する(ステップS84)。なお、特定の範囲2とは、例えば、−0.2<Δc/a≦−0.05である。
微分値Δc/aが特定の範囲2に収まる場合(ステップS84でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感が向上したと推定し、快適感を維持もしくは向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と同じ刺激で同一の強度であるような刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS85)。これにより、刺激出力部305は、ユーザが快適感を得ることができる刺激を継続してユーザに出力することができ、ユーザは快適感を持続することができる。
微分値Δc/aが特定の範囲2に収まらない場合(ステップS84でNO)、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の変動が特定の範囲2とは異なる特定の範囲3に収まるか否かを判定する(ステップS86)。なお、特定の範囲3とは、例えば、+0.05≦Δc/a<+0.2である。微分値Δc/aが特定の範囲3に収まる場合(ステップS86でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感が低下したと推定し、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と異なる種類であるような刺激出力命令を出力する(ステップS87)。一方、微分値Δc/aが特定の範囲3に収まらない場合(ステップS86でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザが予期せぬ危険な状態にあると判断し、システムを緊急停止させる(ステップS88)。
以上説明したように実施の形態6による環境制御システムによれば、ユーザの脈波から、ユーザの快適感が推定されているため、ユーザに不快感を与えることなく、ユーザの快適感を推定することができる。また、脈波から快適感を推定しているため、脳波から快適感を推定する場合に比べて高価な装置が不要となる結果、ユーザの自宅内においても、快適感を実感させ得るような環境を手軽に創出することが可能となる。
更に、ユーザに対して刺激を出力した前後の波形成分比c/aの変動から、ユーザの快適感が推定されているため、刺激に対するユーザの反応を確実に把握することができる。また、刺激に対するユーザの反応に基づいて快適感の推定を行い、推定結果に基づいて刺激内容を判断しているため、快適感を得るうえでのユーザの個人差に対応することも可能となり、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができる。更に、この一連の処理を繰り返すことでユーザ対する快適感を確実に持続させることができる。
更に、数ある脈波パラメータのうち、加速度脈波の波形成分比c/aを脈波パラメータとして採用しているため、複雑な処理が不要となり簡素な構成によりシステムを実現することができ、従来実現されていなかった脈波を用いて、より高精度に快適感を推定することができる。
更に、刺激が出力された前後におけるパラメータの変動として波形成分比c/aの微分値Δc/aを算出し、この微分値Δc/aを用いて快適感の推定を行っているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。更に、微分値Δc/aが特定の範囲1〜3のいずれに収まるかどうかを判定することで、快適感が推定されているため、ユーザの反応を詳細に把握することができ、ユーザの快適感の推定精度をより向上させることができる。
更に、刺激が出力された前後の微分値が特定の範囲3にない場合は、危険が予測されてシステムが停止されるため、ユーザにとってより安全なシステムを実現することができる。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容には、刺激の種類、刺激の強度、及び刺激を与える時間等が含まれる。また、刺激の種類には、冷房や暖房等の温冷熱刺激、冷風や温風等の気流刺激、マッサージ等の物理刺激、及び酸素やマイナスイオン等の物質刺激等が含まれる。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の変動が特定の範囲1と特定の範囲3とを合わせた範囲内に収まるか否かを判定してもよい。波形成分比の変動がこの範囲に収まる場合、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感は向上していないと推定し、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と異なる種類であるような刺激出力命令を出力する。一方、波形成分比の変動が特定の範囲1と特定の範囲3とを合わせた範囲内に収まらない場合、パラメータ変動判断部303は、さらに波形成分比の変動が特定の範囲2に収まるか否かを判定する。波形成分比の変動が特定の範囲2に収まる場合、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感は向上していると推定し、快適感を維持もしくは向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と同じ刺激で同一の強度であるような刺激出力命令を出力する。波形成分比の変動が特定の範囲2にも収まらない場合、パラメータ変動判断部303は、ユーザが予期せぬ危険な状態にあると判断し、システムを緊急停止させるようにしてもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出し、この微分値Δc/aを用いてユーザの快適感を推定したが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。この場合も、微分値Δc/aの場合と同様、パラメータ変動判断部303は、差分が予め定められた3つの範囲のうち、いずれの範囲に属するかを判定して、ユーザの快適感を推定すればよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から出力された刺激出力信号を受信する直前の波形成分比c/aと受信した直後の波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを算出したが、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値、それぞれの差分の平均値、或いは微分値を算出し、その算出値と、刺激出力信号を受信した直後の波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/a、あるいは差分を算出し、その結果に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303が、ユーザの快適感を推定してそれに基づく刺激内容を判断しているが、ユーザの快適感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比から微分値を算出するとしているが、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の波形成分比から微分値を算出しても良い。
また、所定時間における波形成分比の変化率を微分値としてもよい。ここで、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とを、パラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。
(実施の形態7)
本発明者らは、温熱刺激に関して、ユーザにおける快適感を促進する刺激の前後で、脈波のパルスレートPRが上昇するという現象と主観申告の快適感が向上するという現象とに高い相関があることも見出した。パルスレートPRとは、所謂脈拍数であり、一般的には、リラックスしているときや不快を除去したことによる具合のよい状態(消極的快適空間)においては、低下すると言われている。
ところが、今回、パルスレートPRの増加と快適感向上とに相関が見られたということは、過渡的に快適感を向上させる温熱刺激を与えた場面(積極的快適空間)においては、先述した消極的快適空間とは全く違う生体現象が起こることが明らかとなったのである。
よって、本実施の形態では、実施の形態6で加速度脈波の波形成分比c/aの変動によりユーザの快適感を推定していたところを、脈波のパルスレートPRの変動により推定することとした。以下、実施の形態7による環境制御システムについて説明する。
なお、本実施の形態における環境制御装置の構成は実施の形態6と同様であるため、図21に示すブロック図と同じブロック図を用いて説明する。また、実施の形態6と同一のものは説明を省略し相違するもののみ説明する。
パラメータ抽出部302は、脈波のパルスレートPRをパラメータとして抽出し、生体情報採取部301で採取された脈波データから一定時間、例えば、上記サンプリング周期ごとにパルスレートPRの値を抽出して蓄積する。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信した直前と直後とにおけるパルスレートPRの変動に基づいてユーザの快適感を推定し、推定結果から出力する刺激内容を判断する。
本実施の形態における、パラメータ変動判断部303におけるユーザの快適感推定処理、及び出力する刺激内容の判断処理について以下に述べる。
図24は、本発明の実施の形態7におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。なお、実施の形態6と同様の処理を行うステップに関しては、同一のステップ番号を付し、説明を省略する。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS80でYES)、パラメータ抽出部302で抽出して蓄積されているパルスレートPRのうち、刺激出力信号を受信した直前のパルスレートPRと受信した直後のパルスレートPRとを抽出し、その変化の微分値ΔPRを算出する(ステップS91)。ここで、微分値ΔPRは、上記直前のパルスレートPRと上記直後のパルスレートとの差分を上記サンプリング周期で除すことで得られる。
次いで、パラメータ変動判断部303は、微分値ΔPRが特定の範囲4に収まるか否かを判定する(ステップS92)。なお、特定の範囲4とは、例えば、−1.0<ΔPR<+1.0である。微分値ΔPRが特定の範囲4に収まる場合(ステップS92でYES)、処理をステップS83に進める。微分値ΔPRが特定の範囲4に収まらない場合(ステップS92でNO)、パラメータ変動判断部303は、微分値ΔPRが特定の範囲4とは異なる特定の範囲5に収まるか否かを判定する(ステップS93)。なお、特定の範囲5とは、例えば、+1.0≦ΔPR<+10である。
微分値ΔPRが特定の範囲5に収まる場合(ステップS93でYES)、処理をステップS85に進める。一方、微分値ΔPRが特定の範囲5に収まらない場合(ステップS93でNO)、パラメータ変動判断部303は、微分値ΔPRが特定の範囲5とは異なる特定の範囲6に収まるか否かを判定する(ステップS94)。なお、特定の範囲6とは、例えば、−10<ΔPR≦−1.0である。微分値ΔPRが特定の範囲6に収まる場合、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感が低下したと推定し、処理をステップS87に進める。一方、微分値ΔPRが特定の範囲6に収まらない場合(ステップS94でNO)、処理をステップS88に進める。
以上説明したように、実施の形態7による環境制御システムによれば、実施の形態6と同様の作用効果を奏することができる。
なお、実施の形態7において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から出力された刺激出力信号を受信する直前のパルスレートPRと直後のパルスレートPRとに基づいて微分値を算出したが、直前のパルスレートPRと直後のパルスレートPRとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
また、本実施の形態7において、パラメータ変動判断部303が、刺激出力部305から出力された刺激出力信号を受信する直前のパルスレートPRと直後のパルスレートPRとから微分値ΔPRを算出したが、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数のパルスレートPRの平均値、それぞれの差分の平均値、或いは微分値を算出し、その算出値と、刺激出力信号を受信した直後のパルスレートPRとに基づいて微分値ΔPR、あるいは差分を算出し、その結果に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、パルスレートPRの変動からユーザの快適感を推定しているが、実施の形態6で説明した波形成分比c/aと本実施の形態で説明したパルスレートPRとを組み合わせ、両者の変動に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後のパルスレートPRに基づいて微分値を算出するとしたが、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後のパルスレートPRに基づいて微分値を算出しても良い。
また、所定時間におけるパルスレートPRの変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とを、パラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。
(実施の形態8)
図25は、本発明の実施の形態8における環境制御システムの構成を示すブロック図である。なお、実施の形態8において実施の形態6と同一のものは同一の符号を付し、説明を省略する。実施の形態8における環境制御システムは、実施の形態6における環境制御システムに対して、更に、タイミング検知部307を備え、パラメータ変動判断部306の機能が相違している。タイミング検知部307は、刺激出力命令を出力するタイミングをも判断して出力する。
タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したことをトリガとしてアクティブモードになる。そして、パラメータ変動判断部306によってユーザの快適感が向上しているということが推定された場合に、タイミング検知部307は、快適感向上を示すフラグである快適フラグ(初期値0)を1に設定する。また、タイミング検知部307は、刺激出力信号を受信する度に快適フラグを0に設定する。
パラメータ変動判断部306は、タイミング検知部307で設定された快適フラグが1の場合、連続的に、ユーザの快適感が向上していないと判定した回数をカウントするカウンターを備えている。以下、このカウンターのカウント値をcount0と表す。
図26は、本発明の実施の形態8における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。実施の形態6と同様の処理を行うものは、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
まず、生体情報採取部301は、脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS70)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aの値を抽出して蓄積する(ステップS71)。次いで、パラメータ変動判断部306は、現時点でパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の変動を求め、その変動に基づいてユーザの快適感を推定する(ステップS101)。
次いで、タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS102)。タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS102でYES)、アクティブモードとなって快適フラグを0に設定する(ステップS103)。刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS102でNO)、ステップS101の処理へ戻る。
一方、ステップS101においてユーザの快適感が向上していると推定された場合に、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS102でYES)、タイミング検知部307は、快適フラグを1に設定する(ステップS103)。次いで、パラメータ変動判断部306は、刺激出力命令を刺激制御部304へ出力するか否かを判断する(ステップS104)。パラメータ変動判断部306は、ユーザの快適感の推定結果と、タイミング検知部307における快適フラグの設定値と、count0の値とに基づいて刺激出力の有無や刺激内容を判断し、刺激出力を行うと判断した場合は刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する。刺激出力命令が刺激制御部304へ出力されると(ステップS104でYES)、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部306から出力された刺激出力命令に従って、刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS105)。一方、刺激出力命令が刺激制御部304へ出力されないと判断された場合(ステップS104でNO)、ステップS101の処理へ戻る。
次に、本実施の形態における、パラメータ変動判断部306におけるユーザの快適感推定方法、及びタイミング検知部307を用いた刺激を出力するタイミングや刺激内容の判断方法について以下に述べる。
図27及び図28は、本発明の実施の形態8におけるパラメータ変動判断部306の処理を示すフローチャートである。まず、タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信して、快適フラグを0に設定する(ステップS111)。次いで、パラメータ変動判断部306は、現時点でパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを算出する(ステップS112)。
そして、実施の形態6と同様にして、パラメータ変動判断部306は、微分値Δc/aがある特定の範囲1に収まる値であるか否を判定する(ステップS113)。なお、特定の範囲1とは、例えば、−0.05<Δc/a<+0.05である。微分値Δc/aが特定の範囲1に収まる場合(ステップS113でYES)、パラメータ変動判断部306は、タイミング検知部307が設定している快適フラグを参照し、快適フラグが0であるか否かを判断する(ステップS114)。快適フラグが0である場合(ステップS114でYES)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの快適感が変化していないと推定する(ステップS115)。次に、パラメータ変動判断部306は、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と同じ種類で刺激の強度を強くする又は刺激を与える時間を長くするような刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS116)。これにより、ユーザは快適感を得ることができる。刺激出力命令が刺激制御部304へ出力された後、ステップS111の処理へ戻る。
一方、快適フラグが1である場合(ステップS114でNO)、パラメータ変動判断部306は、count0の値をインクリメントし(1加算して:ステップS117)、count0が所定の値、例えば5に達しているか否かを判定する(ステップS118)。count0が5に達している場合(ステップS118でYES)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの生体で順応がはじまると推定する(ステップS119)。次に、パラメータ変動判断部306は、後述する処理ステップS121’にて刺激出力命令の出力を中止する直前に出力していた刺激出力命令を再び刺激制御部304へ出力する(ステップS120)。刺激出力命令が刺激制御部304へ出力された後、ステップS111の処理へ戻る。
一方、count0が5に達していない場合(ステップS118でNO)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの生体で順応はまだ始まらないと推定する(ステップS121)。次に、パラメータ変動判断部306は、刺激出力命令を出力しないと判断し(ステップS121’)、ステップS112に処理を戻し、次の微分値Δc/aに対する判定処理を行う。
一方、微分値Δc/aの値が特定の範囲1に収まらない場合(ステップS113でNO)、パラメータ変動判断部306は、実施の形態6と同様にして、微分値Δc/aが特定の範囲1とは異なる特定の範囲2に収まるか否かを判定する(ステップS122)。なお、特定の範囲2とは、例えば、−0.2<Δc/a≦−0.05である。微分値Δc/aが特定の範囲2に収まる場合(ステップS122でYES)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの快適感が向上したと推定し、count0をリセットする(ステップS123)。次に、タイミング検知部307は、快適フラグを1に設定する(ステップS124)。次に、パラメータ変動判断部306は、刺激出力命令を出力しないと判断し(ステップS121’)、処理をステップS112に戻し、次の微分値Δc/aに対する判定処理を行う。
一方、微分値Δc/aが特定の範囲2に収まらない場合は(ステップS122でNO)、パラメータ変動判断部306は、実施の形態6と同様にして、微分値Δc/aが特定の範囲2とは異なる特定の範囲3に収まるか否かを判定する(ステップS125)。なお、特定の範囲3とは、例えば、+0.05≦Δc/a<+0.2である。そして、微分値Δc/aが特定の範囲3に収まる場合(ステップS125でYES)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの快適感が低下したと推定する(ステップS126)。次に、パラメータ変動判断部306は、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と異なる種類であるような刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS127)。一方、微分値Δc/aが特定の範囲3に収まらない場合(ステップS125でNO)、パラメータ変動判断部306は、ユーザは予期せぬ危険な状態にあると推定し、システムを緊急停止させる(ステップS128)。
以上説明したように実施の形態8による環境制御システムによれば、実施の形態6と同様の作用効果を奏することができる。さらに、本実施の形態では、微分値Δc/aが特定の範囲1に収まる場合であっても、快適フラグが1に設定されている場合はこの状態が一定期間継続されるまで、すなわち、count0が5に到達して刺激の順応が始まるまで刺激出力部305から刺激を出力しない。これにより、ユーザにおける快適感の余韻を利用した運転が実現でき、これにより効率的な処理を実現することができるため、省エネの効果の高いシステムを提供することができる。
本実施の形態における図27及び図28の説明では、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容が、短期的あるいは瞬間的な刺激(例えば冷風や温風などの気流刺激、酸素やマイナスイオンなどの物質刺激など)である場合を想定している。ここで、刺激内容が、定常的な刺激(例えばマッサージ刺激などの物理刺激、エアコンによる冷房や暖房などの温冷熱刺激など)である場合のパラメータ変動判断部306での処理について説明する。図29及び図30は、刺激内容が定常的な刺激である場合のパラメータ変動判断部306の処理を示すフローチャートである。
なお、図29及び図30において図27及び図28と同一の処理は同一の符号を付し、説明を省略する。図27に示すステップS120において、パラメータ変動判断部303は、ステップS121’にて刺激出力命令の出力を中止する直前に出力していた刺激出力命令を出力し、処理をステップS111に戻していたが、図29に示すステップS120aにおいては、後述するステップS121’aにて出力していた刺激内容をよりも快適感を向上させるような刺激出力命令、例えばステップS121’aにて出力していた刺激をより強めるような刺激出力命令を出力し、処理をステップS111に戻している。
また、図27に示すステップS121’において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力命令を出力していなかったが、図29に示すステップS121’aにおいては、直前に出力していた刺激出力命令を再び出力し、処理をステップS112に戻している。これにより、定常的な刺激を出力する機器を備えたシステムに適用可能となり、技術適用の幅を広げることができる。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303が、波形成分比c/aの変動からユーザの快適感を推定していたが、実施の形態7で説明したパルスレートPRと本実施の形態で説明した波形成分比c/aとを組み合わせ、両者の変動に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容には、刺激の種類、刺激の強度、及び刺激を与える時間等が含まれる。また、刺激の種類には、短期(瞬間)刺激の場合、冷風や温風等の気流刺激、酸素やマイナスイオン等の物質刺激、パルス音などの視覚刺激、及び光などの視覚刺激等が含まれ、定常刺激の場合、冷房や暖房等の温冷熱刺激、マッサージ等の物理刺激、音楽や超音波などの聴覚刺激、及び照明や映像などの視覚刺激等が含まれる。刺激の強度においては、冷風や温風等の気流刺激であれば風量を上げる制御や下げる制御、酸素やマイナスイオン等の物質刺激であれば物質量を増やす制御や減らす制御、冷房や暖房等の温冷熱刺激であれば設定温度を上げる制御や下げる制御、及びマッサージ等の物理刺激であればもむ強さを強くする制御や弱くする制御など、刺激の強弱に関するコントロールを行うものとする。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をタイミング検知部307に出力し、タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したことをトリガとしてアクティブモードになるとしているが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、パラメータ変動判断部303が、ある一定の時間の経過時、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間の経過時に、時間の経過を示す信号をタイミング検知部307に出力することで、タイミング検知部307をアクティブモードにしてもよい。
また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が、時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。
(実施の形態9)
次に、本発明の実施の形態9による環境制御システムについて説明する。なお、実施の形態9による環境制御システムは、実施の形態6による環境制御システムと同一構成であるため、図21を用いてその構成を説明する。なお、実施の形態9において実施の形態6と同一のものは説明を省略し、相違点のみ説明する。
パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比を、脈波を評価するパラメータとして抽出して図略のメモリに蓄積する。加速度脈波波形については実施の形態6と同様であり、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。
また、パラメータ変動判断部303は、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動を算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判定し、判定した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。
本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比と、刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比との差分を、指尖脈波をサンプリングしたときのサンプリング周期で除して、波形成分比の微分値を算出し、この微分値を用いてユーザの温冷感を推定する。
図31は、本発明の実施の形態9における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS131)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データに基づいて一定時間ごとに波形成分比c/aを抽出して蓄積する(ステップS132)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS133)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS133でNO)、ステップS132の処理へ戻る。
パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS133でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと、刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを求め、その微分値に基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判断し、判断した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS134)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS135)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの温冷感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図32は、本発明の実施の形態9におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS141)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS141でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS141の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS141でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出する(ステップS142)。
ここで、本発明者らは、波形成分比の変動とユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。図33は、本発明者らが被験者実験により見出した、波形成分比とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。
図33において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は波形成分比を示している。このグラフに示すように、ユーザの温冷感は下に凸の二次曲線の形状を有しており、ユーザの温冷感が0付近であるとき、波形成分比は最小の値を示している。また、ユーザの温冷感が増大する、すなわち、ユーザが暑いと感じるほど、波形成分比は増大している。
また、ユーザの温冷感が減少する、すなわち、ユーザが寒いと感じるほど、波形成分比は増大している。従って、このグラフに示すように波形成分比の変動が分かれば、ユーザの温冷感を推定することができる。そこで、本環境制御システムでは、このグラフで示すような波形成分の特性に基づいて、ユーザの温冷感を推定している。なお、ユーザの温冷感が0の場合、ユーザは暑いとも寒いとも感じていない。
図32に示すステップS143において、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する。そして、微分値Δc/aが負である場合(ステップS143でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は寒い状態または暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち、ユーザの温冷感は0に近づき、温冷感は改善したと推定する(ステップS144)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS145)。一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δc/aが負でない場合(ステップS143でNO)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態または暑い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS146)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS147)。
以上説明したように実施の形態9による環境制御システムによれば、脈波のパラメータの変動とユーザの温冷感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いてユーザの温冷感が推定されているため、ユーザの温冷感を精度良く推定することができる。そのため、脈波からユーザの温冷感を推定することが可能となり、ユーザに不快感を与えることなく、ユーザの温冷感を推定することができる。また、脈波を用いてユーザの温冷感を推定しているため、脳波を用いてユーザの温冷感を推定する場合のように専門的かつ高価な機械を用いてシステムを構成する必要がなくなる。その結果、住環境においてユーザが快適感を確実に実感できるシステムを提供することができる。
なお、本実施の形態において、ステップS143において、パラメータ変動判断部303が波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する直前に、波形成分比の微分値Δc/aが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.01から0.01)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合は、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続する、あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容には、冷房・暖房等の温冷熱刺激、冷風・温風等の気流刺激、刺激の強度、及び刺激を与える時間などが含まれる。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出し、この微分値Δc/aを用いてユーザの温冷感を推定しているが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。また、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比のうち、時系列的に前後する波形成分比の差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比とに基づいて微分値を算出するとしているが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、ある一定の時間が経過する直前と直後、又は刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の波形成分比に基づいて微分値を算出しても良い。
また、所定時間における波形成分比の変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303と独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に構成し、計時部が、時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部303に送信する構成を採用してもよい。また、本実施の形態において、ユーザの温冷感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
(実施の形態10)
次に、実施の形態10による環境制御システムについて説明する。なお、実施の形態10による環境制御システムは、実施の形態6による環境制御システムと同一構成であるため、図21を用いてその構成を説明する。なお、実施の形態10において実施の形態6と同一のものは説明を省略し、相違点のみ説明する。
パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比と加速度脈波波高最大値とを、脈波を評価するパラメータとして抽出して蓄積する。加速度脈波波形とは、実施の形態6と同様であり図60に示すような波形となる。本実施の形態においても、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。
また、パラメータ抽出部302は、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを加速度脈波波高最大値として抽出する。パラメータ変動判断部303は、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動と加速度脈波波高最大値の変動とを算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判定し、判定した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。
本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比及び加速度脈波波高最大値と、刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比及び加速度脈波波高最大値との差分を、指尖脈波をサンプリングした所定のサンプリング周期で除して算出した波形成分比の微分値及び加速度脈波波高最大値の微分値に基づいてユーザの温冷感を推定する。
図34は、本発明の実施の形態10における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS161)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aと加速度脈波波高最大値hを抽出して蓄積する(ステップS162)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS163)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS163でNO)、ステップS162の処理へ戻る。
パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS163でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと、刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを求めると共に、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された加速度脈波波高最大値hと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された加速度脈波波高最大値hとに基づいて加速度脈波波高最大値の微分値Δhを求める。そして、パラメータ変動判断部303は、それらの微分値に基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判断し、判断した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS164)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS165)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの温冷感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図35は、本発明の実施の形態10におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS171)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS171でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS171の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS171でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを算出すると共に、パラメータ抽出部302により抽出された加速度脈波波高最大値hのうち、刺激出力信号を受信した直前の加速度脈波波高最大値hと直後の加速度脈波波高最大値hとに基づいて加速度脈波波高最大値の微分値Δhを算出する(ステップS172)。
ここで、本発明者らは、波形成分比の変動及び加速度脈波波高最大値の変動とユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。図36は、本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。図36において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は加速度脈波波高最大値を示している。このグラフに示すように加速度脈波波高最大値は、ユーザの温冷感が増大するにつれて単調増加しているため、加速度脈波波高最大値が分かれば、ユーザの温冷感を推定することができる。
そこで、本実施の形態による環境制御システムでは、図33に示す波形成分比の変動と、図36に示す加速度脈波波高最大値の変動とに基づいて、ユーザの温冷感を推定している。
図35に示すステップS173において、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する。そして、微分値Δc/aが負である場合(ステップS173でYES)、パラメータ変動判断部303は、さらに加速度脈波波高最大値の微分値Δhが0以上であるかを判定する(ステップS174)。そして、微分値Δhが0以上である場合(ステップS174でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS175)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS176)。
一方、微分値Δhが0以上でない場合(ステップS174でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS177)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS176)。
また、微分値Δc/aが負でない場合(ステップS173でNO)、パラメータ変動判断部303は、加速度脈波波高最大値の微分値Δhが0以上であるかを判定する(ステップS178)。そして、微分値Δhが0以上である場合(ステップS178でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から暑い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS179)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば冷刺激を行うまたは温刺激の強度を減少させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS180)。
一方、微分値Δhが0以上でない場合(ステップS178でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS181)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば温刺激を行うまたは冷刺激の強度を減少させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS180)。
以上説明したように、実施の形態10による環境制御システムによれば、加速度脈波の波形成分比の微分値Δc/aと加速度脈波波高最大値の微分値Δhとに基づいてユーザの温冷感が推定されているため、ユーザの温冷感をより精度良く推定することができる。
なお、本実施の形態において、ステップS173において、パラメータ変動判断部303が波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する直前に、波形成分比の微分値Δc/aが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.01から0.01)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。また、ステップS174又はステップS178において、パラメータ変動判断部303が加速度脈波波高最大値の微分値Δhが0以上であるかを判定する直前に、加速度脈波波高最大値の微分値Δhが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.03から0.03)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容には、冷房・暖房等の温冷熱刺激、冷風・温風等の気流刺激、刺激の強度、及び刺激を与える時間などが含まれる。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出するとともに、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の加速度脈波波高最大値hと直前の加速度脈波波高最大値hとに基づいて微分値Δhを算出し、これら微分値(Δc/a、Δh)を用いてユーザの温冷感を推定しているが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出すると共に、直前の加速度脈波波高最大値hと直後の加速度脈波波高最大値hとの差分を算出し、これらの差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。
ここで、波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出するにあたり、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値を算出し、この平均値と、刺激出力信号を受信した直後の波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出してもよい。また、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比のうち、時系列的に前後する波形成分比の差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、加速度脈波波高最大値の微分値Δh又は差分を算出するにあたり、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の加速度脈波波高最大値hの平均値を算出し、この平均値と、刺激出力信号を受信した直後の加速度脈波波高最大値hとに基づいて加速度脈波波高最大値の微分値Δh又は差分を算出してもよい。また、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の加速度脈波波高最大値のうち、時系列的に前後する加速度脈波波高最大値の差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の加速度脈波波高最大値とに基づいて加速度脈波波高最大値の微分値Δh又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
なお、本発明者らは、脈波の振幅の変動及び脈波波高最大値の変動とユーザの温冷感の変動とに高い相関があることも見出した。図37は、本発明者らが被験者実験により見出した、脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。図37に示すように、脈波波高最大値は、ユーザの温冷感が増大するにつれて単調増加していることが分かる。従って、加速度脈波波高最大値の変わりに脈波波高最大値を用いてもユーザの温冷感を推定することができる。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比及び加速度脈波波高最大値に基づいて微分値を算出するとしているが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の加速度脈波の波形成分比及び加速度脈波波高最大値に基づいて微分値を算出しても良い。
また、所定時間における波形成分比及び加速度脈波波高最大値の変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。また、本実施の形態において、ユーザの温冷感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
(実施の形態11)
次に、本発明の実施の形態11による環境制御システムについて説明する。なお、実施の形態11による環境制御システムは、実施の形態6による環境制御システムと同一構成であるため、図21を用いてその構成を説明する。なお、実施の形態11において実施の形態6と同一のものは説明を省略し、相違点のみ説明する。
パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比を、脈波を評価するパラメータとして抽出して蓄積する。加速度脈波波形については実施の形態6と同様である。本実施の形態においても、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。
また、パラメータ変動判断部303は、判定した刺激内容を内部のメモリに保持しておくとともに、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動を算出し、算出結果と保持している刺激内容とに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判定する。このとき、パラメータ変動判断部303は、内部のメモリに保持している刺激内容を更新するとともに、判定した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。なお、パラメータ変動判断部303は、過去一定期間にユーザに与えた刺激内容を保持する。ここで、メモリに保持される刺激内容には、冷房及び暖房等の刺激の種類と、冷房及び暖房等が出力した刺激の強度とが含まれる。
本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比と刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比との差分を上記サンプリング周期で除して算出した波形成分比の微分値と、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した際に内部のメモリに保持している刺激内容とに基づいてユーザの温冷感を推定する。
図38は、本発明の実施の形態11における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS191)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aを抽出して蓄積する(ステップS192)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS193)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS193でNO)、ステップS192の処理へ戻る。
パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS193でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを求める。そして、パラメータ変動判断部303は、その微分値とメモリに保持している刺激内容とに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判断する。パラメータ変動判断部303は、内部のメモリの保持している刺激内容を更新するとともに、判断した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS194)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS195)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの温冷感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図39及び図40は、本発明の実施の形態11におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS201)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS201でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS201の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS201でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとから波形成分比の微分値Δc/aを算出すると共に、内部のメモリに保持している刺激内容を参照する(ステップS202)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する(ステップS203)。そして、微分値Δc/aが負である場合(ステップS203でYES)、パラメータ変動判断部303は、ステップS202で参照した刺激内容が冷感を向上させるような刺激であるかを判断する(ステップS204)。ここで、刺激内容が冷感を向上させるような刺激とは、例えば冷房が該当する。パラメータ変動判断部303は、過去一定期間に蓄積した刺激内容をメモリから読み出して、刺激内容が冷感を向上させるような刺激であるか否かを判定する。
刺激内容が冷感を向上させるような刺激である場合(ステップS204でYES)、パラメータ変動判断部303は、さらに刺激の強度を判定する(ステップS205)。ここで、パラメータ変動判断部303は、過去一定期間にメモリに蓄積された刺激内容が示す刺激の強度のうち、最新の刺激の強度が、それ以前の刺激の強度に対して増大しているとき、刺激の強度が増大したと判定する。そして、刺激の強度が増大していると判定された場合(ステップS205でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS206)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS207)。
一方、刺激の強度が減少していると判定された場合(ステップS205でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS208)。なお、パラメータ変動判断部303は、過去一定期間にメモリに蓄積された刺激内容が示す刺激の強度のうち、最新の刺激の強度が、それ以前の刺激の強度に対して減少しているとき、刺激の強度が減少したと判定する。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS207)。
一方、刺激内容が冷感を向上させるような刺激ではない、すなわち、温感を向上させるような刺激内容であると判定した場合(ステップS204でNO)、パラメータ変動判断部303は、さらに刺激の強度を判定する(ステップS209)。ここで、温感を向上させるような刺激内容としては、例えば暖房が該当する。
パラメータ変動判断部303は、出力する刺激内容が温感の強度を増加させるような刺激であると判定した場合(ステップS209でYES)、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS210)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS207)。
ここで、パラメータ変動判断部303は、過去一定期間にメモリに蓄積された刺激内容が示す刺激の強度のうち、例えば最新の刺激の強度が、それ以前の刺激の強度に対して増大しているとき、刺激の強度が増大したと判定する。そして、パラメータ変動判断部303は、温感の強度を減少させるような刺激である場合(ステップS209でNO)、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS211)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS207)。
一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δc/aが負でないと判定した場合(ステップS203でNO)、さらに刺激内容が冷感を向上させるような刺激であるか否かを判断する(ステップS212)。そして、パラメータ変動判断部303は、刺激内容が冷感を向上させるような刺激であると判定した場合(ステップS212でYES)、さらに刺激の強度を判定する(ステップS213)。
そして、パラメータ変動判断部303は、刺激の強度を増加させるような刺激であると判定した場合(ステップS213でYES)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS214)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば温刺激を行うまたは冷刺激の強度を減少させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS215)。
一方、刺激の強度が減少している場合(ステップS213でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から暑い状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS216)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば冷刺激の強度を増加させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS215)。
刺激内容が冷感を向上させるような刺激ではない、すなわち、刺激内容が温感を向上させるような刺激である場合(ステップS212でNO)、パラメータ変動判断部303は、さらに刺激の強度を判定する(ステップS217)。そして、パラメータ変動判断部303は、刺激の強度が増加していると判定した場合(ステップS217でYES)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から暑い状態の方向へと変化した、すなわち、温冷感は悪化したと推定する(ステップS218)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば冷刺激を行うまたは温刺激の強度を減少させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS215)。
一方、パラメータ変動判断部303は、刺激の強度が減少していると判定した場合(ステップS217でNO)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS219)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば温刺激の強度を増加させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS215)。
以上説明したように、実施の形態11による環境制御システムによれば、加速度脈波の波形成分比の微分値Δc/aと刺激内容とに基づいてユーザの温冷感が推定されているため、より精度良く温冷感を推定することができる。
なお、本実施の形態において、ステップS203において、パラメータ変動判断部303が波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する直前に、波形成分比の微分値Δc/aが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.01から0.01)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続する、あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303にて、刺激の種類と刺激の強度によりユーザの温冷感を推定しているが、刺激のない状態から温刺激への変化や冷刺激から温刺激への変化など刺激の種類のみの変化でユーザの温冷感を推定してもよいし、過去一定期間における同一刺激の出力回数や刺激出力時間などを考慮してユーザの温冷感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出し、この微分値Δc/aを用いてユーザの温冷感を推定しているが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値と受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比のうち、時系列的に前後する波形成分比の差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比から微分値を算出し、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した際に内部のメモリに保持している刺激内容を参照するとしたが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の波形成分比から微分値を算出し、刺激内容を参照するようにしても良い。また、所定時間における波形成分比の変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。また、本実施の形態において、ユーザの温冷感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
(実施の形態12)
次に、実施の形態12による環境制御システムについて説明する。図41は、本発明の実施の形態12における環境制御システムの構成を示す図である。図41において、図21と同じ構成要素については説明を省略する。本実施の形態は、さらに温度計測部(温度計測手段)503を含んで構成されている。温度計測部308は、ユーザの所在する場所の温度を計測し計測結果(温度データ)をパラメータ変動判断部303へ送信する。また、温度計測部308は、一定時間ごとに温度を計測し、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に必ず温度を計測する。
ここで、パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比を、脈波を評価するパラメータとして抽出して蓄積する。加速度脈波波形とは、実施の形態6と同様であり図60に示すような波形となる。本実施の形態においても、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。
パラメータ変動判断部303は、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動を算出し、算出結果と温度計測部308からの温度データとに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判定し、判定した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。なお、パラメータ変動判断部303は、過去に温度計測部308から受信した一定期間の温度データを保持する。
本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比と、刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比との差分を上記サンプリング周期で除して波形成分比の微分値を算出すると共に、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に温度計測部308から受信した温度データと、刺激出力信号を受信した直前に温度計測部308から受信した温度データとの差分を計測時間間隔で除して温度データの微分値の微分値を算出し、両微分値を用いてユーザの温冷感を推定する。
図42は、本発明の実施の形態12における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS221)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aを抽出して蓄積する(ステップS222)。
次いで、パラメータ抽出部302は、温度計測部308から受信した温度データtを蓄積する(ステップS223)。次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS224)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS224でNO)、ステップS222の処理へ戻る。
パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS224でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを求めると共に、刺激出力信号を受信した直後に温度計測部308から受信した温度データtと刺激出力信号を受信した直前に温度計測部308から受信した温度データtとに基づいて温度データの微分値Δtを求める。そして、パラメータ変動判断部303は、両微分値(Δc/a,Δt)に基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判断し、判断した刺激内容に応じた刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS225)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS226)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの温冷感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図43は、本発明の実施の形態12におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS231)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS231でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS231の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS231でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出すると共に、温度計測部308から受信した温度データtのうち、刺激出力信号を受信した直前の温度データtと直後の温度データtとに基づいて微分値Δtを算出する(ステップS232)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する(ステップS233)。そして、微分値Δc/aが負である場合(ステップS233でYES)、パラメータ変動判断部303は、さらに温度データの微分値Δtが正であるか否かを判定する(ステップS234)。そして、パラメータ変動判断部303は、微分値Δtが正であると判定した場合(ステップS234でYES)、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS235)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS236)。
一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δtが0以下である場合(ステップS234でNO)、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS237)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS236)。
一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δc/aが負でない場合(ステップS233でNO)、さらに温度データの微分値Δtが正であるか否かを判定する(ステップS238)。そして、パラメータ変動判断部303は、微分値(Δt)が正であると判定した場合(ステップS238でYES)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から暑い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS239)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば冷刺激を行うなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS240)。
一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δtが負である場合(ステップS238でNO)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS241)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば温刺激を行うなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS240)。
以上説明したように実施の形態12による環境制御システムによれば、加速度脈波の波形成分比の微分値Δc/aとユーザの所在する場所の温度の微分値(Δt)とからユーザの温冷感が推定されているため、ユーザの温冷感を精度良く推定することができる。
なお、本実施の形態において、ステップS233において、パラメータ変動判断部303が波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する直前に、波形成分比の微分値Δc/aが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.01から0.01)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。また、ステップS234またはステップS238において、パラメータ変動判断部303が温度データの微分値Δtが正であるかを判定する直前に、温度データの微分値Δtが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.3から0.3)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、温度データはほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容には、冷房及び暖房等の温冷熱刺激、冷風及び温風等の気流刺激、刺激の強度、及び刺激を与える時間などが含まれる。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出するとともに、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の温度データtと直前の温度データtとに基づいて微分値Δtを算出し、これら微分値(Δc/a、Δt)を用いてユーザの温冷感を推定しているが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよいし、直前の温度データtと直後の温度データtとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比のうち、時系列的に前後する波形成分比の差分の平均値を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の温度データtの平均値と刺激出力信号を受信した直後の温度データtとに基づいて温度データの微分値Δt又は差分を算出し、その結果に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の温度データのうち、時系列的に前後する温度データの差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて温度データの微分値Δt又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比の微分値及び温度データの微分値を算出するとしているが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の波形成分比の微分値及び温度データの微分値を算出するようにしても良い。
また、所定時間における波形成分比と温度データの変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。
また、本実施の形態において、温度計測部308は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後には必ず温度を計測するとしているが、これに限らず、温度計測部308は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号の受信を行わず、パラメータ変動判断部303からの要求に基づき温度を計測するような方法でも良い。
また、温度データはパラメータ変動判断部303に蓄積されるとしているが、温度計測部308が温度データを蓄積し、パラメータ変動判断部303からの要求に基づき温度データを送信するような方法でも良い。
さらに、温度計測部308で温度データを蓄積し、パラメータ変動判断部303からの要求に基づき微分値を算出し、算出結果をパラメータ変動判断部303へ送信するような方法でもかまわない。また、温度計測部308とは別の時間を計測する計時部から、ある一定時間の経過を示すメッセージを受信したときにも温度の計測や微分値の算出を行うようにしても良い。また、本実施の形態において、ユーザの温冷感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
(実施の形態13)
図44は、本発明の実施の形態13における環境制御装置の構成を示すブロック図である。図44において、環境制御装置406は、脈波計測部401、脈波パラメータ算出部402、脈波パラメータ変化算出部403、温冷感変化推定部404及び機器制御決定部405を備える。
脈波計測部401はユーザの脈波を計測する。脈波パラメータ算出部402は、脈波計測部401で計測した脈波データから脈波波形の特徴を表す脈波パラメータを算出する。脈波パラメータ変化算出部403は、脈波パラメータ算出部402で算出された脈波パラメータの値の時間変化を算出する。温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403で算出された脈波パラメータの変化に基づきユーザの温冷感の変化を推定する。機器制御決定部405は、温冷感変化推定部404で推定されたユーザの温冷感の変化の推定結果に基づき温冷熱機器407の制御内容を決定する。温冷熱機器407は、例えばエアコン、床暖房システム、電気カーペット、カーエアコン及び座席シートヒータ等であり、ユーザに対して温冷熱刺激を出力する。
本発明に係る環境制御プログラムがインストールされたコンピュータの中央演算処理装置(CPU)が当該プログラムを実行することにより、脈波計測部401、脈波パラメータ算出部402、脈波パラメータ変化算出部403、温冷感変化推定部404及び機器制御決定部405として機能する。
次に、図44に示す環境制御装置による環境制御処理について説明する。図45は、図44に示す環境制御装置による環境制御処理の流れを示すフローチャートである。
まず、脈波計測部401は、脈波を計測し、脈波の時系列データを取得する(ステップS251)。例えば、脈波計測部401は、発光素子により近赤外光をユーザの指又は耳たぶの皮膚表面に照射し、受光素子により透過光又は反射光を受光し、受光した光の変化を電気信号に変換することで血流量の変化を検出し、脈波の時系列データを取得する。
次に、脈波パラメータ算出部402は、脈波計測部401により計測された脈波の時系列データを2階微分した加速度脈波波形パラメータ、あるいはTakensの埋め込み定理に従って脈波の時系列データを遅れ時間座標系に埋め込んで得られるアトラクタの非定常性を可視化するリカレンスプロットにおける白の割合を数値化したリカレンスプロット白色描画率(以下、RP−dwとする)を算出する(ステップS252)。これら加速度脈波波形パラメータ又はRP−dwが脈波パラメータである。
次に、脈波パラメータ変化算出部403は、脈波パラメータ算出部402で算出された加速度脈波波形パラメータあるいはRP−dwの値から、予め設定された所定時間前の、加速度脈波波形パラメータあるいはRP−dwの値を減じて、所定時間における脈波パラメータの値の時間変化を算出する(ステップS253)。
次に、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403で算出された所定時間における脈波パラメータの値の時間変化に基づき、ユーザの温冷感の変化を推定する(ステップS254)。なお温冷感の変化の推定の方法については後述する。
次に、機器制御決定部405は、温冷感変化推定部404で推定されたユーザの温冷感の変化の推定結果に基づき温冷熱機器407の制御内容を決定する(ステップS255)。例えば、温冷感の変化の推定結果が‘温冷感低下’であれば、機器制御決定部405は、温冷感が上昇するように温冷熱機器407の制御内容を決定する。また、温冷感の変化の推定結果が‘温冷感上昇’であれば、機器制御決定部405は、温冷感が低下するように温冷熱機器407の制御内容を決定する。そして、機器制御決定部405は、温冷熱機器407にその制御内容を出力する(ステップS256)。
ここで、図45で示したステップS254におけるユーザの温冷感の変化の推定処理について説明する。本発明者らは、脈波パラメータとして、加速度脈波波形成分比d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwの各変動と、ユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。図46は、本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwとユーザの温冷感との相関を表すグラフである。また、図47は、本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比b/aとユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
図46において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は加速度脈波波形成分比d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwを示している。また、図47において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は加速度脈波波形成分比b/aを示している。これらのグラフに示すように、ユーザの温冷感が上昇した場合、すなわち、温冷感が寒い状態から暑くもなく寒くもない中立状態の方向あるいは温冷感が暑くもなく寒くもない中立状態から暑い状態の方向に変化した場合、加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwは増加する。また、ユーザの温冷感が低下した場合、すなわち、暑い状態から暑くもなく寒くもない中立状態の方向あるいは暑くもなく寒くもない中立状態から寒い状態の方向に変化した場合、加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwは減少する。本発明者らは、加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwと温冷感とがこのような相関関係にあることを見出したのである。
したがって、加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwの変化がわかればユーザの温冷感変化を推定することができる。温冷感変化推定部404は、上述した加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅及びRP−dwのうちのひとつの脈波パラメータ(以下、加速度脈波波形成分比d/aとする)に関して、その変化とユーザの温冷感変化との相関関係を予め保持している。
図48は、実施の形態13における温冷感変化推定部404による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。まず、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403から加速度脈波波形成分比d/aの所定時間内における時間変化量を受信する(ステップS261)。次に、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が0より小さいか否かを判断する(ステップS262)。すなわち、温冷感変化推定部404は、加速度脈波波形成分比d/aが減少しているか否かを判断する。
脈波パラメータの時間変化量が0より小さいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが減少していると判断された場合(ステップS262でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が低下したと推定する(ステップS263)。一方、時間変化量が0以上であると判断された場合(ステップS262でNO)、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が0より大きいか否かを判断する(ステップS264)。すなわち、温冷感変化推定部404は、加速度脈波波形成分比d/aが増加しているか否かを判断する。
脈波パラメータの時間変化量が0より大きいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが増加していると判断された場合(ステップS264でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が上昇したと推定する(ステップS265)。一方、脈波パラメータの時間変化量が0より大きくないと判断された場合、すなわち時間変化量が0であり、加速度脈波波形成分比d/aが変化していないと判断された場合(ステップS264でNO)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が変化していないと推定する(ステップS266)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS267)。
かかる構成によれば、温冷感変化推定部404が加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅及びRP−dwのうちのひとつのパラメータを基に、ユーザの温冷感が上昇したか、あるいはユーザの温冷感が低下したか、あるいはユーザの温冷感が変化していないかを推定することにより、個人差のある脈波パラメータの絶対値を用いることなくユーザの温冷感の変化を推定することができ、ユーザの温冷感に基づいて居住環境を構成する空調機器などの温冷熱機器407を適切に制御することができる。
ここで、本実施の形態の第1の変形例について説明する。上記実施の形態では、図48のステップS262及びステップS264において、脈波パラメータの値の時間変化量が、負、0及び正のいずれであるかによってユーザの温冷感の変化を推定している。これに対し、本実施の形態の第1の変形例では、閾値L1,L2(ただし、L1<L2)が設定され、この閾値L1,L2と時間変化量とを比較することによりユーザの温冷感の変化を推定している。
図49は、実施の形態13の第1の変形例における温冷感変化推定部404による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。なお、図49に示すステップS271,S273,S275,S276,S277の処理は、図48に示すステップS261,S263,S265,S266,S267の処理と同じであるので詳細な説明を省略し、図48とは異なるステップS272,S274の処理を主に説明する。
ステップS272において、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より小さいか否かを判断する。すなわち、温冷感変化推定部404は、加速度脈波波形成分比d/aが実質的に減少しているか否かを判断する。
脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より小さいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが実質的に減少していると判断された場合(ステップS272でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が低下したと推定する(ステップS273)。一方、時間変化量が閾値L1以上であると判断された場合(ステップS272でNO)、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より大きい閾値L2より大きいか否かを判断する(ステップS274)。すなわち、温冷感変化推定部404は、加速度脈波波形成分比d/aが実質的に増加しているか否かを判断する。
脈波パラメータの時間変化量が閾値L2より大きいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが実質的に増加していると判断された場合(ステップS274でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が上昇したと推定する(ステップS275)。一方、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1以上かつ閾値L2以下であると判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが実質的に変化していないと判断された場合(ステップS274でNO)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が変化していないと推定する(ステップS276)。
次に、本実施の形態の第2の変形例について説明する。図45で示したステップS254でのユーザの温冷感の変化の推定処理について、本発明者らは、脈波パラメータとして、カオス統計量である軌道平行測度中央値(TPMMed)の変動とユーザの温冷感の変動とにも高い相関があることを見出した。図50は、本発明者らが被験者実験により見出した、軌道平行測度中央値とユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
図50において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は軌道平行測度中央値を示している。このグラフに示すように、ユーザの温冷感が上昇した場合、すなわち、寒い状態から暑くもなく寒くもない中立状態の方向あるいは暑くもなく寒くもない中立状態から暑い状態の方向へ変化した場合、軌道平行測度中央値は減少する。また、ユーザの温冷感が低下した場合、すなわち、暑い状態から暑くもなく寒くもない中立状態の方向あるいは暑くもなく寒くもない中立状態から寒い状態の方向に変化した場合、軌道平行測度中央値は増加する。本発明者らは、軌道平行測度中央値と温冷感とがこのような相関関係にあることを見出したのである。
したがって、軌道平行測度中央値の変化がわかればユーザの温冷感変化を推定することができる。温冷感変化推定部404は、上述した軌道平行測度中央値に関して、その変化とユーザの温冷感変化との相関関係を予め保持している。
図51は、実施の形態13の第2の変形例における温冷感変化推定部404による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。まず、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403から軌道平行測度中央値の所定時間内における時間変化量を受信する(ステップS281)。次に、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より小さいか否かを判断する(ステップS282)。すなわち、温冷感変化推定部404は、軌道平行測度中央値が実質的に減少しているか否かを判断する。
時間変化量が予め設定された閾値L1より小さいと判断された場合、すなわち軌道平行測度中央値が実質的に減少していると判断された場合(ステップS282でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が上昇したと推定する(ステップS283)。一方、時間変化量が閾値L1以上であると判断された場合(ステップS282でNO)、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より大きい閾値L2より大きいか否かを判断する(ステップS284)。すなわち、温冷感変化推定部404は、軌道平行測度中央値が実質的に増加しているか否かを判断する。
時間変化量が予め設定された閾値L2より大きいと判断された場合、すなわち軌道平行測度中央値が実質的に増加していると判断された場合(ステップS284でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が低下したと推定する(ステップS285)。一方、時間変化量が閾値L1以上かつ閾値L2以下であると判断された場合、すなわち軌道平行測度中央値が実質的にほとんど変化していないと判断された場合(ステップS284でNO)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が変化していないと推定する(ステップS286)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS287)。
なお、加速度脈波波形成分比c/aについて、実施の形態9における図33は、横軸のユーザの温冷感に対して2次の相関をとったグラフであり、これを1次の相関で置き換えた場合、ユーザの温冷感が上昇した場合に加速度脈波波形成分比c/aは減少し、ユーザの温冷感が低下した場合に加速度脈波波形成分比c/aは増加するという図50に示される軌道平行測度中央値(TPMMed)の相関関係と同様の関係と見なすことができる。よって、加速度脈波波形成分比c/aの時間変化量を用いて本実施の形態の第2の変形例の処理を行ってもよい。
かかる構成によれば、温冷感変化推定部404が軌道平行測度中央値の変化を基にユーザの温冷感が上昇したか、あるいはユーザの温冷感が低下したか、あるいはユーザの温冷感が変化していないかを推定することにより、個人差のある脈波パラメータの絶対値を用いることなくユーザの温冷感の変化を推定することができ、ユーザの温冷感に基づいて居住環境を構成する空調機器などの温冷熱機器407を適切に制御することができる。
(実施の形態14)
図52は、本発明の実施の形態14における環境制御装置の構成を示すブロック図である。図52において、図44と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
図52において、実施の形態13の図44と異なる点は、環境制御装置406が、脈波パラメータ算出部421,422と脈波パラメータ変化算出部431,432と温冷感変化推定部441,442とを複数組備え、さらに温冷感変化決定部408を備えている点である。第1脈波パラメータ算出部421、第1脈波パラメータ変化算出部431及び第1温冷感変化推定部441と、第2脈波パラメータ算出部422、第2脈波パラメータ変化算出部432及び第2温冷感変化推定部442とは、実施の形態13で説明した本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比b/a、d/a、c/a、加速度脈波振幅、RP−dw及び軌道平行測度中央値のうちの互いに異なるパラメータを算出し、その時間変化量を算出し、その変化量の算出結果と、上記のパラメータとユーザの温冷感の変化との相関に基づき、ユーザの温冷感の変化を同時にそれぞれ推定する。
温冷感変化決定部408は、第1脈波パラメータ算出部421と第1脈波パラメータ変化算出部431と第1温冷感変化推定部441とで推定されたユーザの温冷感の変化の推定結果と、第2脈波パラメータ算出部422と第2脈波パラメータ変化算出部432と第2温冷感変化推定部442とで推定されたユーザの温冷感の変化の推定結果とを比較して、ユーザの温冷感の変化の推定結果を決定する。
図53は、実施の形態14における温冷感変化決定部408による温冷感変化決定処理の流れを示すフローチャートである。まず、温冷感変化決定部408は、第1温冷感変化推定部441及び第2温冷感変化推定部442から、それぞれ互いに異なるパラメータに基づき推定したユーザの温冷感の変化の推定結果を受信する(ステップS291)。次に、温冷感変化決定部408は、受信した2つの温冷感の推定結果を比較し、2つの温冷感の推定結果が一致するか否かを判断する(ステップS292)。2つの温冷感の推定結果が一致すると判断された場合(ステップS292でYES)、温冷感変化決定部408は、一致した温冷感の変化の推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS293)。一方、2つの温冷感の推定結果が一致しないと判断された場合(ステップS292でNO)、温冷感変化決定部408は、機器制御決定部405に温冷感の推定結果を出力せずに、処理を終了する。
その結果、機器制御決定部405は、温冷感の変化の推定結果を受信したとき、その受信した温冷感の推定結果に基づき温冷熱機器407の制御内容を決定する(図45のステップS255)。例えば、温冷感の変化の推定結果が‘温冷感低下’であれば、機器制御決定部405は、温冷感が上昇するように温冷熱機器407の制御内容を決定する。また、温冷感の変化の推定結果が‘温冷感上昇’であれば、機器制御決定部405は、温冷感が低下するように温冷熱機器407の制御内容を決定する。そして、機器制御決定部405は、温冷熱機器407にその制御内容を出力する(図45のステップS256)。
また、機器制御決定部405から温冷感の変化の推定結果を受信しなかった場合、すなわち温冷感変化決定部408で2つの温冷感の推定結果が一致せずに温冷感の変化の推定結果が出力されなかった場合、機器制御決定部405は、ユーザの温冷感に明確な変化がなかったと判断し、現状の温冷熱機器407の制御内容を維持する。
かかる構成によれば、複数のそれぞれ異なる脈波パラメータに基づいてユーザの温冷感の変化が同時に推定され、その複数の推定結果を比較して温冷感の変化が決定されるので、脈波が温冷熱環境の変化以外の影響を受けて変化する可能性があるが、温冷熱環境の変化によるユーザの温冷感変化を精度よく推定することができる。また、複数の温冷感の推定結果が一致した場合にその推定結果が出力され、一致しない場合出力されないので、温冷熱環境の変化以外の要因により1の脈波パラメータが変化した場合であっても、温冷熱機器407の制御内容が変更されず、ユーザに不快感を与えることを回避することができる。
なお、本実施の形態における環境制御装置は、脈波パラメータ算出部、脈波パラメータ変化算出部及び温冷感変化推定部を2組備えているが、本発明は特にこれに限定されず、3組以上備えてもよい。この場合、各脈波パラメータ算出部はそれぞれ異なる脈波パラメータを算出する。
(実施の形態15)
以下、本発明の実施の形態15について説明する。実施の形態15において、前述の実施の形態13や実施の形態14と異なる点は、図52の温冷感変化決定部408の処理である。なお、実施の形態15における環境制御装置の構成は、実施の形態14における環境制御装置の構成と同じであるので説明を省略する。
図54は、実施の形態15における温冷感変化決定部408による温冷感変化決定処理の流れを示すフローチャートである。まず、温冷感変化決定部408は、第1温冷感変化推定部441及び第2温冷感変化推定部442から、それぞれ互いに異なるパラメータに基づき推定したユーザの温冷感の変化の推定結果を受信する(ステップS301)。次に、温冷感変化決定部408は、受信した2つの温冷感の推定結果を比較し、図55に示すテーブルに従って温冷感の推定結果と係数kとを決定する(ステップS302)。
図55は、実施の形態15において、第1温冷感変化推定部及び第2温冷感変化推定部による推定結果と、温冷感変化決定部によって決定される温冷感の変化及び係数kとを関連付けたテーブルの一例を示す図である。なお、このテーブルは、温冷感変化決定部408の内部メモリに予め記憶されている。
すなわち、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感上昇の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感上昇かつ、例えば係数k=1と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感低下の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感低下かつ、例えば係数k=1と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感変化なしかつ、例えば係数k=0と決定する。
また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感上昇で他方が温冷感低下の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感変化なしかつ、例えば係数k=0と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感上昇で他方が温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感上昇かつ、例えば係数k=0.5と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感低下で他方が温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感低下かつ、例えば係数k=0.5と決定する。その後、温冷感変化決定部408は、決定した温冷感変化と係数kとを機器制御決定部405に出力する(ステップS303)。
図56は、実施の形態15における機器制御決定部405による制御内容決定処理の流れを示すフローチャートである。まず、機器制御決定部405は、温冷感変化決定部408によって決定された温冷感変化と係数kとを受信する(ステップS311)。次に、機器制御決定部405は、受信した温冷感の変化が温冷感低下であるか否かを判断する(ステップS312)。温冷感の変化が温冷感低下であると判断された場合(ステップS312でYES)、機器制御決定部405は、温冷感低下時における所定変化量に係数kを乗じた値を前回の制御内容に加え、温冷熱機器407の今回の制御内容を算出する(ステップS313)。
一方、温冷感の変化が温冷感低下でないと判断された場合(ステップS312でNO)、機器制御決定部405は、温冷感の変化が温冷感上昇であるか否かを判断する(ステップS314)。温冷感の変化が温冷感上昇であると判断された場合(ステップS314でYES)、機器制御決定部405は、温冷感上昇時における所定変化量に係数kを乗じた値を前回の制御内容に加え、温冷熱機器407の今回の制御内容を算出する(ステップS315)。
また、温冷感の変化が温冷感上昇でないと判断された場合、すなわち温冷感変化なしである場合(ステップS314でNO)、機器制御決定部405は、温冷熱機器407の今回の制御内容を前回の制御内容と同じにする(ステップS316)。その後、機器制御決定部405は、算出した制御内容を温冷熱機器407に出力する(図45のステップS256)。その結果、温冷熱機器407は、温冷感の推定結果と係数kとに基づいた制御内容で制御される。
かかる構成によれば、複数のそれぞれの脈波パラメータに基づいてユーザの温冷感の変化が同時に推定され、その複数の推定結果を比較して温冷感の変化が決定されるので、温冷熱環境の変化によるユーザの温冷感の変化を精度よく推定することができる。また、複数の温冷感の推定結果が一致した場合にその推定結果が出力され、一致しない場合出力されないので、温冷熱環境の変化以外の要因により1の脈波パラメータが変化した場合であっても、温冷熱機器407の制御内容が変更されず、ユーザに不快感を与えることを回避することができる。さらに、複数の脈波パラメータに基づく温冷感の変化の推定結果に応じて、制御内容の変化量も適切に決定されるので、ユーザに対してより快適な温冷熱環境を提供することができる。
なお、制御内容の変化量とは、例えば、エアコンの風量の変化量、設定室温の変化量、設定吹出し温度の変化量、圧縮機の周波数の変化量、膨張弁の開度の変化量、床暖房システムの設定温度の変化量、電気カーペットや座席シートヒータのヒータON時間の変化量、およびヒータ容量の変化量などである。
また、上記説明では、係数kを0、0.5、1として説明したが、本発明は特にこれに限定されず、複数の脈波パラメータ変化に基づき推定したそれぞれの温冷感の変化の推定結果のうち、一致する割合が高いほど係数kの値を大きくしてもよい。
(実施の形態16)
以下、本発明の実施の形態16について説明する。実施の形態16において、前述の実施の形態13〜実施の形態15と異なる点は、本発明者らが被験者実験により見出した、図47に示す加速度脈波波形成分比b/aとユーザの温冷感との相関に関し、特に温冷感が1以上で温冷感変化に対して加速度脈波パラメータb/aがほとんど変化しなくなることをさらに見出して応用したことにある。具体的には、図44の温冷感変化推定部404の処理が異なる。なお、実施の形態16における環境制御装置の構成は、実施の形態13における環境制御装置の構成と同じであるので説明を省略する。
図57は、実施の形態16における温冷感変化推定部404による温冷感変化推定処理の流れを示すフローチャートである。まず、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403から加速度脈波波形成分比b/aの所定時間内における時間変化量を受信する(ステップS321)。
次に、温冷感変化推定部404は、時間変化量が予め設定された閾値L1より小さいか否かを判断する(ステップS322)。時間変化量が予め設定された閾値L1未満であると判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが実質的に減少していると判断された場合(ステップS322でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が低下したと推定する(ステップS323)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS329)。
一方、時間変化量が閾値L1以上であると判断された場合(ステップS322でNO)、温冷感変化推定部404は、時間変化量が閾値L1より大きい閾値L2より大きいか否かを判断する(ステップS324)。時間変化量が予め設定された閾値L2より大きいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが実質的に増加している場合(ステップS324でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が上昇したと推定する(ステップS325)。また、時間変化量が閾値L1以上かつ閾値L2以下であると判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが実質的にほとんど変化していない場合(ステップS324でNO)、温冷感変化推定部404は、さらに前回の時間変化量を参照し、前回の時間変化量が予め設定された閾値L2以下であるか否かを判断する(ステップS326)。
前回の時間変化量が予め設定された閾値L2以下であると判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが前回も実質的に変化していなかった、あるいは実質的に減少していた場合(ステップS326でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が変化していないと推定する(ステップS327)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS329)。
一方、前回の時間変化量が予め設定された閾値L2より大きいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが前回実質的に増加していた場合(ステップS326でNO)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が所定値以上に上昇したと推定する(ステップS328)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS329)。
かかる構成によれば、本発明者らが見出した、ユーザの温冷感が所定値(1:やや暖かい)以上で温冷感の変化に対して加速度脈波パラメータb/aがほとんど変化しなくなることを応用して、加速度脈波パラメータb/aの変化を基にユーザの温冷感が上昇した、あるいはユーザの温冷感が低下した、あるいはユーザの温冷感が変化していないと推定するだけでなく、さらにユーザの温冷感が所定値(1:やや暖かい)以上に暖まったかどうかまで推定することができる。したがって、個人差のある脈波パラメータの絶対値を用いることなくユーザの温冷感変化を推定でき、その温冷感に基づいて居住環境を構成する温冷熱機器407を適切に制御することができる。
さらに、ユーザが暖まっているかどうかまで推定できるので、ユーザが暖まりすぎの際には温冷熱機器407の加熱能力を抑制して省エネルギー化にも貢献することができ、あるいは温冷熱機器407の冷却能力を増大して速やかに暑くもなく寒くもない快適な温冷熱環境を実現することも可能となる。
(実施の形態17)
以下、本発明の実施の形態17について説明する。実施の形態17において、前述の実施の形態13〜実施の形態16と異なる点は、本発明者らが被験者実験により見出した、図47に示す加速度脈波波形成分比b/aとユーザの温冷感との相関に関し、特に温冷感が1以上で温冷感変化に対して加速度脈波パラメータb/aがほとんど変化しなくなることをさらに見出して応用したことにある。具体的には、実施の形態16で説明した温冷感変化推定結果を受信した図52の温冷感変化決定部408の処理が異なり、さらに具体的には、図54のステップS302での温冷感変化の決定方法と係数kの決定方法とが異なる。
以下、図52、図54及び図58を用いて、実施の形態17について説明する。まず、図54において、温冷感変化決定部408は、第1温冷感変化推定部441及び第2温冷感変化推定部442から、それぞれ互いに異なるパラメータに基づき推定したユーザの温冷感の変化の推定結果を受信する(ステップS301)。ここで、第1温冷感変化推定部441は、加速度脈波波形成分比b/aの時間変化量に基づきユーザの温冷感の変化を推定する。次に、温冷感変化決定部408は、受信した2つの温冷感推定結果を比較し、図58に示すテーブルに従って温冷感の推定結果と係数kとを決定する(ステップS302)。
図58は、実施の形態17において、第1温冷感変化推定部及び第2温冷感変化推定部による推定結果と、温冷感変化決定部によって決定される温冷感の変化及び係数kとを関連付けたテーブルの一例を示す図である。なお、このテーブルは、温冷感変化決定部408の内部メモリに予め記憶されている。
すなわち、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感上昇の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感上昇かつ係数k=1と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感低下の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感低下かつ係数k=1と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感変化なしかつ係数k=0と決定する。
また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感上昇で他方が温冷感低下の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感変化なしかつ係数k=0と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感低下で他方が温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感低下かつ係数k=0.5と決定する。また、加速度脈波波形成分比b/aの時間変化量に基づき推定された第1温冷感変化推定部441での推定結果が温冷感上昇、かつ、加速度脈波波形成分比b/a以外の時間変化量に基づき推定された第2温冷感変化推定部442での推定結果が変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感上昇かつ係数k=0.5と決定する。ここまでは実施の形態15と同様である。
加速度脈波波形成分比b/aの時間変化量に基づき推定された第1温冷感変化推定部441での推定結果が変化なし、かつ、加速度脈波波形成分比b/a以外の時間変化量に基づき推定された第2温冷感変化推定部442での推定結果が温冷感上昇の場合、温冷感変化決定部408は、温冷熱機器407が加熱運転の時には加熱能力が過大である、あるいは温冷熱機器407が冷却運転の時には冷却能力が不足していると推定して、温冷感が所定値以上(1:やや暖かい〜3:暑い)に上昇したと決定し、係数k=1と決定する。その後、温冷感変化決定部408は、決定した温冷感変化と係数kを機器制御決定部405に出力する(ステップS303)。
以下に、引き続き図59を用いて、実施の形態17における機器制御決定部405による制御内容決定処理について説明する。図59は、実施の形態17における機器制御決定部405の処理の流れを示すフローチャートである。まず、機器制御決定部405は、温冷感変化決定部408によって決定された温冷感変化と係数kとを受信する(ステップS331)。次に、機器制御決定部405は、受信した温冷感の変化が温冷感低下であるか否かを判断する(ステップS332)。
温冷感の変化が温冷感低下であると判断された場合(ステップS332でYES)、機器制御決定部405は、温冷感低下時における所定変化量に係数kを乗じた値を前回の制御内容に加え、温冷熱機器407の今回の制御内容を算出する(ステップS333)。一方、温冷感の変化が温冷感低下でないと判断された場合(ステップS332でNO)、機器制御決定部405は、温冷感の変化が温冷感上昇又は温冷感所定値以上であるか否かを判断する(ステップS334)。
温冷感上昇あるいは温冷感所定値以上であると判断された場合(ステップS334でYES)、機器制御決定部405は、温冷熱機器の今回制御内容を、温冷感上昇時における所定変化量に係数kを乗じた値を前回の制御内容に加え、温冷熱機器407の今回の制御内容を算出する(ステップS335)。また、温冷感の変化が温冷感上昇でない、又は温冷感所定値以上でないと判断された場合、すなわち温冷感変化なしである場合(ステップS334でNO)、機器制御決定部405は、温冷熱機器407の今回の制御内容を前回の制御内容と同じにする(ステップS336)。その後、機器制御決定部405は、算出した制御内容を温冷熱機器407に出力する(図45のステップS256)。その結果、温冷熱機器407は、温冷感推定結果と係数kとに基づいた制御内容で制御される。
かかる構成によれば、複数のそれぞれの脈波パラメータに基づいてユーザの温冷感の変化が同時に推定され、その複数の推定結果を比較して温冷感の変化が決定されるので、温冷熱環境の変化によるユーザの温冷感の変化を精度よく推定することができる。また、複数の温冷感の推定結果が一致した場合にその推定結果が出力され、一致しない場合出力されないので、温冷熱環境の変化以外の要因により1の脈波パラメータが変化した場合であっても、温冷熱機器407の制御内容が変更されず、ユーザに不快感を与えることを回避することができる。
さらに、複数の脈波パラメータに基づく温冷感の変化の推定結果に応じて、制御内容の変化量も適切に決定されるので、ユーザにより快適な温冷熱環境を提供することができる。なお、制御内容の変化量とは、例えば、エアコンの風量の変化量、設定室温の変化量、設定吹出し温度の変化量、圧縮機の周波数の変化量、膨張弁の開度の変化量、床暖房システムの設定温度の変化量、電気カーペットや座席シートヒータのヒータON時間の変化量、およびヒータ容量の変化量などである。
さらにまた、本発明者らが見出した、ユーザの温冷感が所定値(1:やや暖かい)以上で温冷感の変化に対して加速度脈波パラメータb/aがほとんど変化しなくなることを応用して、実施の形態16と同様にユーザが暖まっているかどうかまで推定することができる。したがって、ユーザが暖まりすぎの際には温冷熱機器407の加熱能力を抑制して省エネルギー化にも貢献することができ、あるいは温冷熱機器407の冷却能力を増大して速やかにユーザを暑くもなく寒くもない、すなわち寒さや暑さを取り除いた快適な温冷熱環境を実現することも可能となる。
なお、上記説明では、係数kを0、0.5、1として説明したが、本発明は特にこれに限定されず、複数の脈波パラメータ変化に基づき推定したそれぞれの温冷感の変化の推定結果のうち、一致する割合が高いほど係数kの値を大きくしてもよい。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る環境制御装置は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段とを備える。
本発明の他の局面に係る環境制御方法は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得ステップと、前記生体情報取得ステップにおいて取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップにおいて算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定ステップと、前記推定ステップによる推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御ステップとを含む。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムは、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる環境制御プログラムを記録している。
これらの構成によれば、ユーザの生体情報の時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータが算出される。そして、算出されたパラメータに基づいて刺激に対するユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。すなわち、ユーザの快適感が悪化するような推定結果が得られた場合、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えられる。
したがって、ユーザの生体情報の時系列データをカオス解析して算出されたパラメータに基づいて快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御されるので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記生体情報はユーザの脈波であり、前記刺激制御手段はユーザに与える温冷熱刺激の生成を制御し、前記推定手段は、前記温冷熱刺激に対するユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するパラメータに基づいてユーザの温冷感が推定され、推定結果を基にユーザに与える刺激の生成が制御される。そのため、生体情報の中でも容易に取得可能な脈波からユーザの温冷感が推定されるので、ユーザに不快感を与えることなく、容易にユーザの温冷感を推定することができる。また、脈波を用いてユーザの温冷感を推定しているため、脳波を用いてユーザの温冷感を推定する場合のように専門的かつ高価な機械を用いて装置を構成する必要がなくなり、簡単かつ安価な機械を用いて装置を構成することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数、リカレンスプロット白色描画率及び軌道平行測度中央値のいずれかをパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数、リカレンスプロット白色描画率及び軌道平行測度中央値のいずれかがパラメータとして算出され、算出されたパラメータに基づいてユーザの温冷感が推定される。したがって、従来のように個人差のある生体情報(脈波パラメータ)の絶対値を用いることなくユーザの温冷感を推定することができ、ユーザの温冷感に基づいて居住環境を構成する空調機器などの温冷熱機器を適切に制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数をパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数がパラメータとして算出され、最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定される。
したがって、温冷感が悪化したと推定された場合、ユーザの温冷感を向上させるような温冷熱刺激を与え、温冷感が改善したと推定された場合、現在の制御を維持するような温冷熱刺激を与えることができる。すなわち、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に維持されるようにユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することによりリカレンスプロット白色描画率をパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記リカレンスプロット白色描画率が減少した場合、暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定し、前記リカレンスプロット白色描画率が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することによりリカレンスプロット白色描画率がパラメータとして算出され、リカレンスプロット白色描画率が減少した場合、暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定され、リカレンスプロット白色描画率が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定される。
したがって、温冷感が悪化したと推定された場合、ユーザの温冷感を向上させるような温冷熱刺激を与え、温冷感が改善したと推定された場合、現在の制御を維持するような温冷熱刺激を与えることができる。すなわち、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に維持されるようにユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより軌道平行測度中央値をパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記軌道平行測度中央値が増加した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定し、前記軌道平行測度中央値が減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することにより軌道平行測度中央値がパラメータとして算出され、軌道平行測度中央値が増加した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定され、軌道平行測度中央値が減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定される。
したがって、温冷感が悪化したと推定された場合、ユーザの温冷感を向上させるような温冷熱刺激を与え、温冷感が改善したと推定された場合、現在の制御を維持するような温冷熱刺激を与えることができる。すなわち、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に維持されるようにユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータを算出する第1のパラメータ算出手段と、前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータを算出する第2のパラメータ算出手段とを含み、前記推定手段は、前記第1のパラメータ算出手段によって算出された第1のパラメータと、前記第2のパラメータ算出手段によって算出された第2のパラメータとに基づいてユーザの快適感を推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータが算出され、時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータが算出され、算出された第1のパラメータと第2のパラメータとに基づいてユーザの快適感が推定される。
したがって、2種類の異なるパラメータを用いてユーザの快適感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1のパラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数を算出し、前記第2のパラメータ算出手段は、前記時系列データから脈波振幅又は脈波波高最大値を算出し、前記推定手段は、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記脈波振幅又前記脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数が算出されるとともに、時系列データから脈波振幅又は脈波波高最大値が算出される。そして、最大リアプノフ指数が増加し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が増加し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。
したがって、最大リアプノフ指数と、脈波振幅又は脈波波高最大値との2種類のパラメータを用いて温冷感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御手段は、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激を制御するための制御データを生成し、生成した制御データを出力すると共に、前記推定手段に出力し、前記推定手段は、カオス解析して得た最大リアプノフ指数の変動と、前記刺激制御手段によって生成された制御データとを基にユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、推定手段は、刺激制御手段により生成された制御データと最大リアプノフ指数とを用いてユーザの温冷感を推定している。すなわち、最大リアプノフ指数のみならず制御データという2種類のパラメータを用いて温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記制御データは、刺激を生成する冷房装置の出力強度を示すデータを含み、前記推定手段は、前記制御データから前記冷房装置の出力強度が増加又は減少しているかを判定し、カオス解析して得た最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記冷房装置の出力強度が増加している場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記冷房装置の出力強度が増加した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記冷房装置の出力強度が減少した場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記冷房装置の出力強度が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、推定手段は、冷房装置の出力強度が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定する。また、冷房装置の出力強度が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定する。また、冷房装置の出力強度が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定する。また、冷房装置の出力強度が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定する。そして、これらの推定結果から、温冷熱刺激の生成が制御される。すなわち、最大リアプノフ指数の増加又は減少と、冷房装置の出力強度の増加又は減少との組み合わせから、ユーザの温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記制御データは、刺激を生成する暖房装置の出力強度を示すデータを含み、前記推定手段は、前記制御データから前記暖房装置の出力強度が増加又は減少しているかを判定し、前記推定手段は、カオス解析して得た最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記暖房装置の出力強度が増加している場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記冷房装置の出力強度が増加した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記暖房装置の出力強度が減少した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記暖房装置の出力強度が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、推定手段は、暖房装置の出力強度が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定する。また、暖房装置の出力強度が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定する。また、暖房装置の出力強度が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定する。また、暖房装置の出力強度が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定する。そして、これらの推定結果から、温冷熱刺激の生成が制御される。すなわち、最大リアプノフ指数の増加又は減少と、暖房装置の出力強度の増加又は減少との組み合わせから、ユーザの温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータを算出する第1のパラメータ算出手段と、前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータを算出する第2のパラメータ算出手段とを含み、前記推定手段は、前記第1のパラメータ算出手段によって算出された第1のパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する第1の推定手段と、前記第2のパラメータ算出手段によって算出された第2のパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する第2の推定手段とを含み、前記刺激制御手段は、前記第1の推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する第1の刺激制御手段と、前記第2の推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する第2の刺激制御手段とを含み、前記時系列データの変化を基に、前記第1の刺激制御手段による制御と前記第2の刺激制御手段による制御とを切り替える刺激制御切替手段をさらに備えることが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータが算出されるとともに、時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータが算出される。そして、第1のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、第1の刺激制御手段によって、ユーザに与える刺激の生成が制御される。また、第2のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、第2の刺激制御手段によって、ユーザに与える刺激の生成が制御される。そして、時系列データの変化を基に、第1の刺激制御手段による制御と第2の刺激制御手段による制御とが切り替えられる。
ここで、時系列データをカオス解析することによりユーザの状態を推定するためには十分な期間、例えば数分〜15分程度の時間が必要であるが、時系列データの変化を基にユーザの状態を推定する場合は、短時間、例えば約5秒間〜約10秒間で、ある程度精度良くユーザの状態を推定することができる。
そこで、時系列データが、ユーザへの刺激が強すぎることを明らかに示す、あるいは時系列データが、ユーザへの刺激が弱すぎることを明らかに示すような、現在ユーザに与えている刺激の強度を早急に弱める、あるいは強める必要がある場合、短時間でユーザの状態を推定し得る第2刺激制御手段により刺激の生成を制御させれば、ユーザに与える刺激をある程度適切な範囲に速やかに移行させることが可能になる。
一方、時系列データがユーザへの刺激が強すぎない、あるいは弱すぎないことを明らかに示す場合、現在ユーザに与えている刺激の強度を早急に変化させる必要がないため、第1刺激制御手段によりユーザの状態を推定し、その推定結果に基づいて、ユーザに適切な刺激を与えても、ユーザに苦痛や、悪影響を与えることはない。これにより、十分な期間の時系列データが得られない場合であっても、ユーザの状態をある程度正確に推定することができ、ユーザに苦痛や悪影響を与えることを速やかに回避して、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えることができる。その結果、ユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器、照明機器、映像機器及び音響機器等の制御にも十分適用させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1の刺激制御手段は、前記第1の推定手段による推定結果を基に、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感を向上させる強度の刺激を生成させる第1刺激値を算出し、前記第2の刺激制御手段は、前記第2の推定手段による推定結果を基に、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感を向上させる強度の刺激を前記刺激生成手段に生成させる第2刺激値を算出し、前記刺激制御切替手段は、前記第1刺激値と前記第2刺激値とを基に、刺激出力値を算出し、算出した刺激出力値が示す刺激を生成させることが好ましい。
この構成によれば、第1刺激値と第2刺激値とを基に刺激出力値が算出され、算出された刺激出力値が示す刺激が生成されているため、ユーザの状態に応じて好ましい強度の刺激をユーザに与えることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御切替手段は、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激出力値を算出し、前記時系列データの変化が、所定の下限規定値以下の場合、前記第2刺激値を前記刺激出力値とし、前記時系列データの変化が、所定の上限規定値より大きい場合、前記第2刺激値を前記刺激出力値とすることが好ましい。
この構成によれば、時系列データの変化が所定の下限規定値以下でありユーザへの刺激の強度が低すぎる場合、或いは時系列データの変化が所定の上限規定値以上でありユーザへの刺激の強度が強すぎる場合は、第2刺激値が刺激出力値とされ、第2の刺激制御手段によりユーザに与える刺激が制御されるため、ユーザを速やかにリラックス状態にすることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御切替手段は、前記時系列データの変化が、所定の第1規定値(>前記下限規定値)より大きく、所定の第2規定値(前記第1規定値<前記第2規定値<前記上限規定値)以下の場合、前記第1刺激値を前記刺激出力値とすることが好ましい。
この構成によれば、時系列データの変化が第1規定値より大きく、第2規定値以下の場合、ユーザはリラックスしていると判定され、第1刺激値が刺激出力値とされ、第1の刺激制御手段によりユーザに与える刺激が制御されるため、ユーザをより確実にリラックス状態にすることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御切替手段は、前記時系列データの変化が前記下限規定値より大きく、前記第1規定値以下の場合、前記時系列データの変化が前記第1規定値に近づくにつれて、前記第1刺激値に対する重み係数が増大し、前記第2刺激値に対する重み係数が低下するように両刺激値の重み係数を決定し、決定した重み係数に従って両刺激値を加算した値を前記刺激出力値とすることが好ましい。
この構成によれば、時系列データの変化が下限規定値より大きく、第1規定値以下の場合、時系列データの変化が第1規定値に近づくにつれて、第1刺激値に対する重み係数が増大されるため、第1の刺激制御手段による制御と第2の刺激制御手段による制御とを適切な割合で組み合わせて、ユーザに与える刺激を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御切替手段は、前記時系列データの変化が前記第2規定値より大きく、前記上限規定値以下の場合、前記時系列データの変化が前記上限規定値に近づくにつれて、前記第1刺激値に対する重み係数が低下し、前記第2刺激値に対する重み係数が増大するように両刺激値の重み係数を決定し、決定した重み係数に従って両刺激値を加算した値を前記刺激出力値とすることが好ましい。
この構成によれば、時系列データの変化が第2規定値より大きく上限規定値以下である場合、時系列データの変化が第2規定値に近づくにつれて、第2刺激値に対する重み係数が増大されるため、第1の刺激制御手段による制御と第2の刺激制御手段による制御とを適切な割合で組み合わせて、ユーザに与える刺激を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1の推定手段は、前記生体情報の最大リアプノフ指数を脈波カオスパラメータとして算出し、算出した脈波カオスパラメータが所定の第3規定値以上の場合、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感が向上していると推定し、前記脈波カオスパラメータが前記第3規定値未満の場合、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感は向上していないと推定することが好ましい。この構成によれば、最大リアプノフ指数を基にユーザの状態が推定されているため、ユーザの状態を正確に推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1の刺激制御手段は、前記第1の推定手段によりユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感が向上していると推定された場合、現在の刺激の強度が維持されるように前記第1刺激値を算出し、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感が向上していないと推定された場合、現在の刺激の強度が強化されるように前記第1刺激値を算出することが好ましい。
この構成によれば、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等が向上していると推定された場合、現在の刺激の強度が維持され、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感が向上していないと推定された場合、現在の刺激の強度が強化されるため、ユーザに対して速やかにリラックス感、快適感、又は温冷感を与えることできる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1の推定手段は、前記第1のパラメータ算出手段によって算出された第1のパラメータと、前記第2のパラメータ算出手段によって算出された第2のパラメータとに基づいてユーザの快適感を推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータが算出されるとともに、時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータが算出される。そして、第1のパラメータと第2のパラメータとに基づいてユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、第1の刺激制御手段によって、ユーザに与える刺激の生成が制御される。また、第2のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、第2の刺激制御手段によって、ユーザに与える刺激の生成が制御される。そして、時系列データの変化を基に、第1の刺激制御手段による制御と第2の刺激制御手段による制御とが切り替えられる。
したがって、第1のパラメータだけでなく、2種類の異なるパラメータを用いてユーザの快適感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、ユーザが在室する部屋の室温を計測する室温計測手段を更に備え、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数を算出し、前記推定手段は、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記室温が上昇した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記室温が上昇した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記室温が低下した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記室温が低下した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、ユーザが在室する部屋の室温が計測され、時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数が算出される。そして、最大リアプノフ指数が増加し、かつ室温が上昇した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少し、かつ室温が上昇した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が増加し、かつ室温が低下した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少し、かつ室温が低下した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。
したがって、最大リアプノフ指数だけでなく、最大リアプノフ指数と室温との2種類のパラメータを用いて温冷感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
本発明の他の局面に係る環境制御装置は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段とを備える。
本発明の他の局面に係る環境制御方法は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得ステップと、前記生体情報取得ステップにおいて取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップにおいて算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定ステップと、前記推定ステップによる推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御ステップとを含む。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムは、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる環境制御プログラムを記録している。
これらの構成によれば、ユーザの生体情報の時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータが算出される。そして、算出されたパラメータに基づいて刺激に対するユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。すなわち、ユーザの快適感が悪化するような推定結果が得られた場合、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えられる。
したがって、ユーザの生体情報の時系列データの変化に基づいて算出されたパラメータに基づいて快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御されるので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記生体情報はユーザの脈波であり、前記刺激制御手段はユーザに与える温冷熱刺激の生成を制御し、前記推定手段は、前記温冷熱刺激に対するユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するパラメータに基づいてユーザの温冷感が推定され、推定結果を基にユーザに与える刺激の生成が制御される。そのため、生体情報の中でも容易に取得可能な脈波からユーザの温冷感が推定されるので、ユーザに不快感を与えることなく、容易にユーザの温冷感を推定することができる。また、脈波を用いてユーザの温冷感を推定しているため、脳波を用いてユーザの温冷感を推定する場合のように専門的かつ高価な機械を用いて装置を構成する必要がなくなり、簡単かつ安価な機械を用いて装置を構成することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記生体情報から得られる脈波波形の脈波振幅、脈波波高最大値、前記生体情報から得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波波形の波形成分比、加速度脈波振幅及びパルスレートのうちの少なくとも1つをパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータの変動を基に、ユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、生体情報から得られる脈波波形の脈波振幅、脈波波高最大値、生体情報から得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波波形の波形成分比、加速度脈波振幅及びパルスレートのうちの少なくとも1つがパラメータとして算出され、算出されたパラメータの変動を基に、ユーザの温冷感が推定される。
したがって、従来のように個人差のある生体情報(脈波パラメータ)の絶対値を用いることなくユーザの温冷感を推定することができ、ユーザの温冷感に基づいて居住環境を構成する空調機器などの温冷熱機器を適切に制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データに基づいて前記加速度脈波波形の波形成分比c/aを算出し、前記推定手段は、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データに基づいて加速度脈波波形の波形成分比c/aが算出され、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定され、加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定される。
したがって、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加したか、減少したかを判定することにより、ユーザの温冷感が悪化したか、改善したかを推定することができ、推定結果に応じて刺激の生成を適切に制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データに基づいて前記加速度脈波波形の波形成分比c/aを算出し、前記推定手段は、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データに基づいて加速度脈波波形の波形成分比c/aが算出され、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定され、加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定される。
したがって、温冷感が悪化したと推定された場合、ユーザの温冷感を向上させるような温冷熱刺激を与え、温冷感が改善したと推定された場合、現在の制御を維持するような温冷熱刺激を与えることができる。すなわち、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に維持されるようにユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データに基づいて前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値、及び前記加速度脈波波形の波形成分比c/aを算出し、前記推定手段は、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データに基づいて脈波振幅又は脈波波高最大値、及び加速度脈波波形の波形成分比c/aが算出される。そして、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定される。また、加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。さらに、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定される。さらにまた、加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。
したがって、加速度脈波波形の波形成分比c/aと、脈波振幅又は脈波波高最大値との2種類のパラメータを用いて温冷感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データに基づいて前記加速度脈波振幅、前記加速度脈波波形の波形成分比b/a及び前記加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つを算出し、前記推定手段は、前記加速度脈波振幅、前記加速度脈波波形の波形成分比b/a及び前記加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化した、又は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波振幅、前記加速度脈波波形の波形成分比b/a及び前記加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化した、又は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データに基づいて加速度脈波振幅、加速度脈波波形の波形成分比b/a及び加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが算出される。そして、加速度脈波振幅、加速度脈波波形の波形成分比b/a及び加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化した、又は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。また、加速度脈波振幅、加速度脈波波形の波形成分比b/a及び加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化した、又は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。
したがって、加速度脈波振幅、加速度脈波波形の波形成分比b/a及び加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが増加したか、減少したかを判定することにより、ユーザの温冷感の変化を推定することができ、推定結果に応じて刺激の生成を適切に制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータを算出する第1のパラメータ算出手段と、前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータを算出する第2のパラメータ算出手段とを含み、前記推定手段は、前記第1のパラメータ算出手段によって算出された第1のパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する第1の推定手段と、前記第2のパラメータ算出手段によって算出された第2のパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する第2の推定手段とを含み、複数の前記第1のパラメータ算出手段、複数の前記第2のパラメータ算出手段、又は少なくとも1つの前記第1のパラメータ算出手段及び少なくとも1つの前記第2のパラメータ算出手段を備え、前記第1の推定手段又は前記第2の推定手段による推定結果が全て一致するか否かを判定する判定手段をさらに備え、前記刺激制御手段は、前記判定手段によって一致すると判定された推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御することが好ましい。
この構成によれば、第1のパラメータ算出手段によって、時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータが算出され、第1の推定手段によって、算出された第1のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定される。また、第2のパラメータ算出手段によって、時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータが算出され、第1の推定手段によって、算出された第2のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定される。そして、環境制御装置には、複数の第1のパラメータ算出手段、複数の第2のパラメータ算出手段、又は少なくとも1つの第1のパラメータ算出手段及び少なくとも1つの第2のパラメータ算出手段が備えられている。第1の推定手段又は第2の推定手段による推定結果が全て一致するか否かが判定され、全ての推定結果が一致すると判定された場合、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。
したがって、複数のそれぞれのパラメータに基づいてユーザの温冷感を同時に推定し、その複数の推定結果を比較して温冷感を決定するので、温冷熱環境の変化によるユーザの温冷感を精度よく推定することができる。また、温冷熱環境の変化以外の要因によりパラメータが変化した場合であっても、適切に制御内容が変更されるので、ユーザに不快感を与えることを回避することができ、常に良好な快適感をユーザに与えることができる。
また、上記の環境制御装置において、ユーザに対して刺激を出力する刺激出力手段によって刺激が出力される際、前記刺激出力手段は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号を前記推定手段に出力し、前記推定手段は、前記パラメータの変動を、前記刺激出力信号を受信する前に抽出されたパラメータと受信した後に抽出されたパラメータとから算出することが好ましい。
この構成によれば、ユーザにおける刺激を受けた前後の脈波の変動から、ユーザの快適感を推定しているため、刺激に対するユーザの反応を確実に把握することができる。また、刺激に対するユーザの反応に基づいて快適感の推定を行い、推定結果に基づいた刺激内容を判断して出力することで、個人差に対応することも可能となり、確実にユーザに快適感を実感させることができる。さらにこの一連の処理を繰り返すことでユーザおける快適な状態を確実に持続させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記パラメータの変動を、予め定められた一定時間ごとに抽出されたパラメータから算出することが好ましい。この構成によれば、刺激に対するユーザの反応の変動を把握することができる。また、刺激に対するユーザの反応に基づいて快適感の推定を行い、推定結果に基づいた刺激内容を判断して出力することで、個人差に対応することも可能となり、確実にユーザに快適感を実感させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が、ユーザの快適感が変化していないことを示す所定の第1の範囲内にある場合、ユーザの快適感は変化していないと推定して、前記刺激制御手段に対して快適感を向上させる刺激出力命令を出力することが好ましい。
この構成によれば、脈波のパラメータの変動と、ユーザの快適感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いてユーザの快適感が変化していないことを示す第1の範囲が予め定められ、パラメータの変動がこの第1の範囲に属する場合に、ユーザの快適感が変化していないと推定されているため、ユーザの快適感が変化していないことを正確に推定することができる。また、ユーザの快適感が変化していないことを示す推定結果が得られた場合、快適感を向上させる刺激を出力するため、ユーザに快適感を与えることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が、前記第1の範囲とは異なり、かつ、ユーザの快適感が向上していることを示す所定の第2の範囲内にある場合、ユーザの快適感は向上していると推定して、前記刺激制御手段に対して快適感を維持させる刺激出力命令を出力することが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するパラメータの変動とユーザの快適感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いて、ユーザの快適感が向上していることを示す第2の範囲を予め定め、パラメータの変動がこの第2の範囲に属している場合にユーザの快適感が向上している推定されているため、ユーザの快適感の向上を正確に推定することができる。また、ユーザの快適感が向上していることを示す推定結果が得られた場合、快適感を維持させる刺激を出力するため、ユーザの快適感を持続させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が、前記第2の範囲とは異なり、かつ、ユーザの快適感が低下していることを示す所定の第3の範囲内にある場合、ユーザの快適感は低下しているとして、前記刺激制御手段に対して快適感を向上させる刺激出力命令を出力し、前記パラメータの変動が前記第1〜第3の範囲のいずれにも属さない場合、ユーザが危険な状態にあると推定し、システムを緊急停止させることが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するパラメータの変動とユーザの快適感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いて、ユーザの快適感が低下していることを示す第3の範囲を予め定め、パラメータの変動がこの第3の範囲に属している場合にユーザの快適感が低下している推定されているため、ユーザの快適感の低下を正確に推定することができる。また、ユーザの快適感が低下していることを示す推定結果が得られた場合、快適感を向上させる刺激を出力するため、ユーザに快適感を与えることができる。また、パラメータの変動が第1〜第3の範囲のいずれにも属さない場合、ユーザの危険を予測して、システムが緊急停止されるため、ユーザにとって安全なシステムを実現することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が前記第1の範囲に入った場合、当該パラメータの変動が前記第2の範囲内に収まるように刺激出力命令を出力し、当該パラメータの変動が前記第2の範囲内に入った場合、刺激を中止する刺激出力命令を出力し、その後当該パラメータの変動が再び前記第1の範囲内に入り一定期間継続して前記第1の範囲に収まっている場合、刺激に対してユーザが順応したと推定して、前記刺激制御手段に対して刺激を中止する直前に出力した刺激出力命令を再び出力することが好ましい。
この構成によれば、刺激に対する順応が始まったことも検知して刺激出力を制御することができ、ユーザにおける快適な状態を確実に持続できるシステムを実現することができる。また、ユーザの脈波の変化から最適な刺激内容やタイミングを判断して出力することで、効率的な運転を実現することができ、省エネの面でも効果的なシステムを実現することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データから脈波を評価するための第1パラメータ及び前記第1パラメータとは異なる第2パラメータを算出し、前記推定手段は、前記第1パラメータの変動と前記第2のパラメータの変動とに基づいてユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するための2種類のパラメータである第1及び第2のパラメータが抽出され、第1及び第2のパラメータの変動とユーザの温冷感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いて、ユーザの温冷感が推定されているため、温冷感が暑い状態の方向へ変化したのか、寒い状態の方向へ変化したのか、中立状態の方向へ変化したのかといったユーザの温冷感を精度よく推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、ユーザに与える刺激内容と、前記パラメータの変動とを基に、ユーザの温冷感を推定することが好ましい。この構成によれば、脈波のパラメータの変動と、温刺激であるか冷刺激であるかといった刺激の種類や強度等の刺激内容とに基づいて、ユーザの温冷感が推定されているため、温冷感が暑い状態の方向へ変化したのか、寒い状態の方向へ変化したのか、中立状態の方向へ変化したのかといったユーザの温冷感を精度良く推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、ユーザの所在する場所の温度を計測する温度計測手段を更に備え、前記推定手段は、前記パラメータの変動と前記温度計測手段による温度計測結果とを基に、ユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、脈波のパラメータの変動と、ユーザの所在する場所の温度が上昇したか低下したかといった結果とに基づいて、ユーザの温冷感が推定されているため、ユーザの温冷感が暑い状態の方向へ変化したのか、寒い状態の方向へ変化したのか、中立状態の方向へ変化したのかといったユーザの温冷感を精度良く推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータは、前記時系列データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比であり、前記推定手段は、前記加速度脈波の波形成分比が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向、または暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向、または中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、数ある脈波のパラメータのうち、加速度脈波の波形成分比がパラメータとされるため、複雑な処理が不要となり簡素な構成でシステムを実現することができる。また、パラメータの変動からユーザの温冷感の変化の方向が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1のパラメータは、前記時系列データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比であり、前記第2のパラメータは、前記時系列データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波高の最大値、又は前記時系列データから得られる脈波の波高の最大値であり、前記推定手段は、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ前記加速度脈波の波高の最大値、又は前記脈波の波高の最大値が増加した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ前記加速度脈波の波高の最大値、又は前記脈波の波高の最大値が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ前記加速度脈波の波高の最大値、又は前記脈波の波高の最大値が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ前記加速度脈波の波高の最大値、又は前記脈波の波高の最大値が減少した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、数ある脈波パラメータのうち、脈波データから得られる脈波波形を2回微分した加速度脈波の波形成分比が第1のパラメータとされ、加速度脈波の波高の最大値、又は脈波の波高の最大値が第2のパラメータとされるため、複雑な処理が不要となり簡素な構成でシステムを実現することができる。また、パラメータである加速度脈波の波形成分比の変動と加速度脈波の波高の最大値、又は脈波の波高の最大値からユーザの温冷感の変化の方向が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータは、前記時系列データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比であり、前記推定手段は、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ刺激内容が冷感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が増加している場合、または、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ刺激内容が温感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が減少している場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ刺激内容が冷感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が減少している場合、または、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ刺激内容が温感を向上させる刺激の種類でありかつ刺激の強度が増加している場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ刺激内容が冷感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が増加している場合、または、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ刺激内容が温感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が減少している場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ刺激内容が冷感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が減少している場合、または、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ刺激内容が温感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が増加している場合には、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、数ある脈波のパラメータのうち、加速度脈波の波形成分比がパラメータとされるため、複雑な処理が不要となり簡素な構成でシステムを実現することができる。また、パラメータである加速度脈波の波形成分比の変動と刺激内容とに基づいてユーザの温冷感の変化の方向が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの微分値を算出し、算出した微分値を基に、ユーザの温冷感を推定することが好ましい。この構成によれば、パラメータである加速度脈波の波形成分比の微分値からユーザの温冷感が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記第1及び第2のパラメータの微分値を算出しユーザの温冷感を推定することが好ましい。この構成によれば、第1のパラメータである加速度脈波の波形成分比の微分値と、第2のパラメータである加速度脈波の波高の最大値、又は脈波の波高の最大値の微分値とに基づいて、ユーザの温冷感が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が所定の範囲内である場合、ユーザの温冷感は変化していないと判断し、刺激出力命令を出力しないことが好ましい。この構成によれば、パラメータのわずかな変動による刺激内容の頻繁な変更や推定処理を減少させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記第1のパラメータの変動が所定の第1の範囲内である場合、または前記第2のパラメータの変動が所定の第2の範囲内である場合、ユーザの温冷感は変化していないと判断し、刺激出力命令を出力しないことが好ましいこの構成によれば、第1と第2のパラメータのわずかな変動による刺激内容の頻繁な変更や推定処理を減少させることができる。
本発明にかかる環境制御装置、環境制御方法、環境制御プログラム及び環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができ、例えば、空調機器、照明機器、映像機器及び音響機器等の居住環境を構成する機器を制御する環境制御装置、環境制御方法、環境制御プログラム及び環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などに有用である。
本発明は、ユーザの生体情報に基づきユーザの状態を推定して居住環境を制御する環境制御装置、環境制御方法、環境制御プログラム及び環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
近年、システムの機能に関して、一方向型から双方向型へ技術開発が移行されてきている。つまりそれは、個人差を考慮した機能の実現がこれからのキーテクノロジーとなることを指しており、様々な研究団体により、人の心理状態を何らかの方法で推測し、その推測結果を用いてその後の機器制御を実行するシステムが考案されてきている。人の心理状態を推定する手段として、人の生体情報を基に推定することが一番確実な手段とされており、近年、この分野での研究が盛んに行われている。
一般的には、脳波を分析することによりユーザの快適感を推定する技術が広く知られている。しかしながら、この技術は評価実験等を目的とする場合には有効な手段と言えるが、大掛かりな装置が必要であり、人の動作に制約を設けざるを得ない等の理由から、一般家庭での展開は現実的に考えられなかった。このことからも、生体情報を採取する際に必ず考えなければならないことは、いかに簡単に、そしてユーザをいかに不快にさせずに生体情報を採取するかという点にあると言えるだろう。
この点を鑑みた場合、現在取り組まれている脳波の採取に比べ、人に不快を与える可能性が最も低いと言われている脈波の採取が一番有効な手段であると考えられる。脈波については、もともと、心臓から吐出された血流は指尖の末梢に伝達されると心拍動、血行動態、細動脈系の性状変化など生理条件の影響を多分に受けて脈波の波形に反映される等の現象が明らかとされている。従って、現在は、健康度解析の分野において、指先の末梢血管の脈波を採取し、その加速度脈波から健康状態を推定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図60は、特許文献1に記載されている加速度脈波の波形を示す図である。図60に示すように加速度脈波は、E1、E2、E3、E4、E5の5つの要素波から構成される。要素波E1の頂点Aは指尖容積脈波拡張期波の始まりと一致するので頂点Aから頂点Eまでの所要時間は心臓の収縮時間軸長さと一致するようになる。要素波E1は、基線に対して上に凸となる陽性波であり要素波E2は、基線に対して下に凸となる陰性波であり、次の要素波E3、E4、E5はそれぞれ生理状態によって陽性波になったり陰性波になったり変化する要素波であり、利用者の年齢と強い相関を有する。
利用者の脈波を測定すると利用者が緊張状態にある場合には心拍数が増加して指尖血流は減少する傾向にあるため、頂点Bにおける基線からの距離bは小さくなり、逆に頂点Dにおける基線からの距離dは大きくなるという影響が現れる。そのため、加速度脈波の波形解析では、距離aに対する距離bの比(b/a)や距離aに対する距離dの比(d/a)の変化率により健康状態が判断されていた。
また、特許文献2には、ユーザの良好な心理状態や感覚を持続させることを目的として、加熱手段の発熱量又は送風手段の送風量が時間的に不規則となるように制御して、温感を持続させ、自律神経への影響を持続させてリラックス状態を増進させる温風暖房機が提案されている。
図61は、特許文献2に記載されている温風暖房機の構成を示すブロック図である。図61に示す送風部1001は、ファンモータによって構成され、加熱部1002は灯油又はヒータ等の熱源によって構成されている。加熱部1002の近傍には温度を検知する温度センサ1003が設けられ、その検知温度情報は制御部1004に伝達される。制御部1004は、不規則信号発生部1005により発生される不規則信号を、タイマー1006のタイマー信号と温度センサ1003の検知温度信号とに応じて決まる適切なタイミングで送風部1001と加熱部1002とに出力し、送風部1001の送風量と加熱部1002の加熱量とを制御していた。
また、従来より、ユーザの居住環境を制御する際には、居住環境温度(以下、室温と記す)、居住環境湿度(以下、湿度と記す)、居住環境外温度(以下、外気温と記す)、日射量等の環境物理量を検出して環境制御機器を制御していた。また、上記のような環境物理量に基づく制御の他にも、ユーザの生体情報をカオス解析して、緊張状態、リラックス状態、又は興奮状態等のユーザの状態を推定し、その推定結果に基づいて、環境制御機器を制御する手法が提案されている。
例えば、特許文献3では、ユーザ(被験者)の指先等の皮膚温度を検出し、検出された皮膚温度をカオス解析等により評価し、ユーザの緊張感、リラックス感、興奮状態を推定してマルチメディア機器を制御するマルチメディア機器制御装置が提案されている。
また、特許文献4では、ユーザ(人)の動きの時系列データをカオス解析することにより、ユーザの心理的状態あるいは生理的状態を推定して環境条件を制御する環境制御装置が提案されている。
また、特許文献5では、パチンコ等の遊戯機のユーザ(使用者)より採取した脈波、心拍等をカオス解析して得たリアプノフ指数を利用して遊技機に対するユーザの飽きの状態や興奮状態、意識集中あるいは意識散漫状態を推定して遊技機の対応を変化させる電子装置が提案されている。
また、特許文献6では、浴室リモコンの表面に脈波検出装置を付設し、ユーザ(入浴者)が指先を当てると脈波データを検知して、通常と異なる脈波データを検知したときには休息を促したり家族への報知を行ったり湯温を下げる制御を行う風呂装置が提案されている。
また、特許文献7では、室内で仕事又は勉強している人が、その能率が上がらずイライラしている場合には、その人の自律神経、特に交感神経の活動が活性化して、自律神経系生理量である発汗量や脈拍数が上昇し、頭に血が上る等によって皮膚温度が低下する現象を利用し、それら自律神経系生理量の変化に応じて空気調和を実施し、その人の仕事や勉強などの能率を向上させる技術が提案されている。
また、特許文献8では、生体情報を採取する際に必ず考えなければならないことは、システムとしていかにシンプルに実現するか、またユーザをいかに不快にさせずに生体情報を採取するかという点にあり、人に不快を与える可能性が最も低いと判断できる人の脈波の振幅により人の心理状態、主に温感を推定する技術が提案されている。
特開2004−351184号公報(第7頁、図2)
特開2001−141306号公報(第10頁、図1)
特開平7−299040号公報
特許第2816799号公報
特開2000−354683号公報
特開2003−227654号公報
特開2003−42509号公報
特許第2833082号公報
しかしながら、特許文献1記載の構成では、脈波を用いたユーザの健康度の分析は行われているが、ユーザの快適感の推定が行われていないため、ユーザの快適感が持続されるようにユーザに出力する刺激をコントロールすることができないという課題がある。
また、特許文献2記載の構成では、機器側の制御に不規則性を持たして、ユーザに対して良好な感覚を持続させているが、ユーザの快適感の推定がなされていないため、ユーザの快適感をより確実に持続させるためには更なる改良の余地が残されている。
さらに、上記特許文献3〜5では、カオス解析によりユーザの状態が推定されているが、カオス解析によりユーザの状態を推定するためには十分な期間、例えば数分間〜約15分間の生体情報の時系列データが必要であるため、生体情報の採取を開始してから上記十分な期間が経過するまでの間、ユーザの状態を正確に推定することができず、この間、ユーザに対して適切な刺激を与えることができないという課題がある。特に、ユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器、照明機器、映像機器及び音響機器等の制御にカオス解析を適用する場合、十分な期間の時系列データが得られないケースも想定されるため、この間、いかに精度良くユーザの状態を推定できるかが課題となっている。
また、上記特許文献3〜6のように、ユーザの生体情報等をカオス解析することによりユーザの状態を推定する方法や装置が種々提案されているが、どの生体情報をカオス解析することでユーザのどういう状態が推定できるかについては未だ研究開発途上である。また、上記特許文献3では、ユーザの皮膚温度をカオス解析することにより、ユーザの緊張感、リラックス感、興奮状態が推定できるとしているが、カオス解析と温冷熱刺激に対する快適感や温冷感についての開示は何らなされていない。
また、上記特許文献4では、ユーザの動きをカオス解析することにより温冷熱に対する快適度を求めてエアコン等を制御することができるとしているが、ユーザの動き以外の生体情報のカオス解析と温冷熱に対する快適度との相関についての開示はない。
また、上記特許文献5では、ユーザの脈波や心拍等をカオス解析することにより、ユーザの飽きの状態や興奮状態、意識集中あるいは意識散漫状態を推定できるとしているが、カオス解析で得たリアプノフ指数とユーザの状態との具体的な相関についての開示はない。また、空調への対応を変化させることができるとも記載されているが、カオス解析と温冷熱刺激に対する快適感や温冷感についての開示はない。
また、上記特許文献6では、通常と異なる脈波データを検知したときには湯温を下げる制御を行うことが記載されているが、これは脈波からユーザの異常を推定して湯温を制御するものであり、ユーザの温冷熱刺激に対する快適感や温冷感を推定して湯温制御を行うものではない。
また、上記特許文献7では、ユーザの心理状態の推定に用いる生体情報として複数の自律神経系生理量を採取しているが、この場合、一度にいくつもの生理量を計測するため、システムとして複数のセンサを搭載しなければならず、実用化の面で容易ではない。また、これら複数の自律神経系生理量の計測結果を総合的に判断して人の心理状態を推定すると記載されているが、総合的に判断する具体的方法については何ら明確に開示されてはいない。
また、上記特許文献8では、1つの生体情報である脈波による人の温感を推定する技術に関し、人の温感に対する脈波の振幅特性を用いることを提案していたが、振幅の絶対値が個人ごとに全く異なることを考えると、個人差の影響を避けることが出来ず、推定の精度は悪くなってしまう。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる環境制御装置、環境制御方法、環境制御プログラム及び環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る環境制御装置は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段とを備える。
本発明の他の局面に係る環境制御方法は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得ステップと、前記生体情報取得ステップにおいて取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップにおいて算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定ステップと、前記推定ステップによる推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御ステップとを含む。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムは、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる環境制御プログラムを記録している。
これらの構成によれば、ユーザの生体情報の時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータが算出される。そして、算出されたパラメータに基づいて刺激に対するユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。すなわち、ユーザの快適感が悪化するような推定結果が得られた場合、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えられる。
したがって、ユーザの生体情報の時系列データをカオス解析して算出されたパラメータに基づいて快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御されるので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる。
本発明の他の局面に係る環境制御装置は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段とを備える。
本発明の他の局面に係る環境制御方法は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得ステップと、前記生体情報取得ステップにおいて取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップにおいて算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定ステップと、前記推定ステップによる推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御ステップとを含む。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムは、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる環境制御プログラムを記録している。
これらの構成によれば、ユーザの生体情報の時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータが算出される。そして、算出されたパラメータに基づいて刺激に対するユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。すなわち、ユーザの快適感が悪化するような推定結果が得られた場合、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えられる。
したがって、ユーザの生体情報の時系列データの変化に基づいて算出されたパラメータに基づいて快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御されるので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる。
本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
本発明によれば、ユーザの生体情報の時系列データをカオス解析して算出されたパラメータに基づいて快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御されるので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による環境制御装置について説明する。本発明者らは、温冷熱刺激(温冷熱環境の変化)に関して、ユーザにおける脈波のゆらぎ度が指数化された最大リアプノフ指数の変動と、温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。そこで、実施の形態1に係る環境制御装置では、この相関を用いてユーザの温冷感を推定する。
図1は、本発明の実施の形態1における環境制御装置の構成を示したブロック図である。図1に示す環境制御装置は、例えば、公知のコンピュータから構成され、生体情報計測部(生体情報取得手段)101、カオス解析部(パラメータ算出手段)102、状態推定部(推定手段)103、制御内容決定部(刺激制御手段)104、機器制御部105を備えている。これら、生体情報計測部101〜機器制御部105は、本発明による環境制御プログラムがインストールされたコンピュータのCPUが当該プログラムを実行することで実現される。
生体情報計測部101は、公知のトランデューサー等により検出されたユーザの指尖脈波を所定のサンプリング周期でサンプリングして、脈波データを時系列的に取得する。カオス解析部102は、脈波を評価するパラメータとして、所定時間の脈波データをカオス解析し、脈波のゆらぎ度を指数化した値である最大リアプノフ指数を算出し、対象とする脈波データの所定時間を順次ずらし、算出された最大リアプノフ指数をある所定数まとめて平均(いわゆる移動平均)し、これをその時点での予め定められた長さの時間における最大リアプノフ指数として蓄積する。
状態推定部103は、カオス解析部102により抽出された最大リアプノフ指数の変動を算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを制御内容決定部104に出力する。本実施の形態では、状態推定部103は、機器制御部105が制御を開始してから時系列的に順次算出された最大リアプノフ指数の現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数の微分値を算出し、この微分値が後述する予め定められた複数の挙動例のいずれにあてはまるかを判断することで、ユーザの温冷感を推定する。
制御内容決定部104は、状態推定部103により出力された時点でのユーザの温冷感を示す推定データを基に機器の制御データを生成し、機器制御部105に出力する。機器制御部105は、制御内容決定部104により出力された制御データに従って機器の制御を行う。
図2は、本発明の実施の形態1における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、生体情報計測部101はユーザの脈波を計測し、脈波の時系列データを取得する(ステップS1)。次いで、カオス解析部102は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに最大リアプノフ指数λを算出して蓄積する(ステップS2)。次いで、状態推定部103は、カオス解析部102により抽出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する。そして、状態推定部103は、算出した最大リアプノフ指数の微分値Δλを基にユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS3)。
次いで、制御内容決定部104は、状態推定部103から出力された推定データを受信する。制御内容決定部104は、状態推定部103から出力された推定データを基に機器の制御内容を決定し、制御内容である制御データを機器制御部105へ出力する(ステップS4)。次いで、機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データを受信する。機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データに従って機器を制御する(ステップS5)。
次に、本実施の形態における状態推定部103におけるユーザの温冷感の推定処理について説明する。
ここで、本発明者らは、最大リアプノフ指数の変動と、ユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。図3(a)は、本発明者らが被験者実験により見出した、最大リアプノフ指数とユーザの温冷感の相関を表したグラフである。図3(a)に示すように、最大リアプノフ指数と温冷感とは、温冷感が0(暑くも寒くもない中立状態)を示す付近で最大リアプノフ指数が極値となる下に凸のグラフで表される相関関係を有していることが分かる。
また、図3(b)は、図3(a)から見出した最大リアプノフ指数の変動と温冷感の変動との関係をまとめたテーブルである。状態推定部103は、このテーブルを予め保持している。このテーブルに示す‘増加’は、図3(a)に示すグラフにおいて、最大リアプノフ指数が増大したことを示している。また、‘温冷感改善(寒い→0or暑い→0)’は、図3(a)に示すグラフにおいて、温冷感が暑い状態又は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態に変化していることを示している。また、‘減少’は、図3(a)に示すグラフにおいて、最大リアプノフ指数が減少したことを示している。また、‘温冷感悪化(0→寒いor0→暑い)’は、図3(a)に示すグラフにおいて、温冷感が暑くも寒くもない中立状態から、寒い状態又は暑い状態に変化したことを示している。
すなわち、状態推定部103は、温冷熱環境を構成する機器による制御が実行された後、最大リアプノフ指数λの微分値Δλが0以上の場合、最大リアプノフ指数が増加したと判定し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向、あるいは暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する。一方、状態推定部103は、最大リアプノフ指数λの微分値Δλが0未満の場合、最大リアプノフ指数が減少したと判定し、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)、あるいは暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する。
ここで、状態推定部103は、ユーザの温冷感が改善したと推定した場合、‘温冷感改善’の推定データを出力し、ユーザの温冷感が悪化したと推定した場合、‘温冷感悪化’の推定データを出力する。
制御内容決定部104は、状態推定部103から推定データが入力されると、推定データを機器の制御データに変換する。例えば、入力された推定データが‘温冷感悪化’であるならば、制御データは、温冷感が改善されるような内容に決定される。一方、入力された推定データが‘温冷感改善’であるならば、制御データは、‘なし’という内容で決定され、制御データは出力されない。
なお、状態推定部103におけるユーザの温冷感の推定について、ここでの温冷感が寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化するとは、図3(a)における横軸の−3から0の範囲内に位置する1点から0方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化するとは、図3(a)における横軸の+3から0の範囲内に位置する1点から0方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化するとは、図3(a)における横軸の0から−3の範囲内に位置する1点から−3方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化するとは、図3(a)における横軸の0から+3の範囲内に位置する1点から+3方向に温冷感が動くことを意味する。
なお、制御内容決定部104から出力される制御データにおける制御の度合いについて、たとえば、室温設定温度2度変更などの予め定められた値を用いてもよいし、状態推定部103において、微分値Δλの大小に基づいて制御変化の度合いを決定してもよいものとする。
以上説明したように実施の形態1による環境制御装置によれば、ユーザの生体情報として脈波の時系列データをカオス解析することで得られた最大リアプノフ指数を基に、ユーザの温冷感が推定され、その推定結果からユーザの居住環境を構成する機器(特に空調機器)が制御されるので、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に導くような温冷熱刺激をユーザに与えることができる。
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2による環境制御装置について説明する。脈波の振幅絶対値とユーザの温冷感とに高い相関があるという既知の知見に対し、脈波の振幅絶対値が個人ごとに全く異なることから、ユーザの温冷感推定に脈波の振幅絶対値を用いることは個人差が大きく影響し、推定精度が低下するという問題があった。
そこで、今回、本発明者らは、脈波の振幅の変動に相当する脈波の波高最大値(脈波波高最大値)の変動と、ユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。また、本発明者らは、ユーザの脈波のゆらぎ度が指数化された最大リアプノフ指数の変動と、ユーザの温冷感の変動とに高い相関があること見出した。そして、本発明者らは、温冷熱刺激(温冷熱環境の変化)に関して、脈波波高最大値の変動と最大リアプノフ指数の変動とに基づいてユーザの温冷感を推定することで、個人差に影響されず、ユーザの温冷感推定が高精度で実現可能であることを見出した。
ここで、脈波波高最大値とは、脈波データにおけるある所定時間内に取得された何拍分かの脈波波形でのピーク値のことを指す。あるいは、脈波データにおける各脈拍1拍分の中で波形のピーク値としてもよいし、何拍かの各脈波波形のピーク値の平均値としてもよいし、脈波の振幅としてもよい。
図4は、本発明の実施の形態2における環境制御装置の構成を示したブロック図である。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一のものは説明を省略し相違するもののみ説明する。
図4に示す環境制御装置は、実施の形態1における構成に加え、波高最大値抽出部106を備えており、実施の形態1との相違点は、状態推定部103が、波高最大値抽出部106により抽出された波高最大値と、カオス解析部102によって解析された最大リアプノフ指数とを用いてユーザの温冷感を推定する点にある。
波高最大値抽出部106は、脈波を評価するパラメータとして、脈波データにおけるある所定時間内に取得された何拍分かの脈波波形のピーク値である脈波波高最大値を抽出して図略のメモリに蓄積する。
状態推定部103は、波高最大値抽出部106により抽出された脈波波高最大値の変動、およびカオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数の変動を算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを実施の形態1と同様にして制御内容決定部104に出力する。
本実施の形態においても、状態推定部103は、機器制御部105が制御を開始してから時系列的に順次抽出された脈波波高最大値および最大リアプノフ指数の現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して、脈波波高最大値の微分値および最大リアプノフ指数の微分値を算出する。状態推定部103は、これらの微分値が後述する予め定められた複数の挙動例のいずれにあてはまるかを判断することで、ユーザの温冷感を推定する。
図5は、本発明の実施の形態2における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、生体情報計測部101は、実施の形態1と同様にして脈波の時系列データを取得する(ステップS6)。次いで、波高最大値抽出部106は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに脈波波高最大値hmaxを抽出して蓄積する(ステップS7)。
また、それと並行して、カオス解析部102は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに最大リアプノフ指数λを算出して蓄積する(ステップS7)。次いで、状態推定部103は、波高最大値抽出部106により抽出された脈波波高最大値hmaxの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して脈波波高最大値hmaxの微分値Δhmaxを算出すると共に、カオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する(ステップS8)。
そして、状態推定部103は、算出した脈波波高最大値の微分値Δhmaxと最大リアプノフ指数の微分値Δλとを基にユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS8)。
以下、実施の形態1と同様にして、制御内容決定部104は、状態推定部103から出力された推定データを受信する。制御内容決定部104は、状態推定部103から出力された推定データを基に機器の制御内容を決定し、制御内容を示す制御データを機器制御部105へ出力する(ステップS9)。次に、機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データを受信する。機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データに従って機器を制御する(ステップS10)。
次に、本実施の形態における状態推定部103によるユーザの温冷感の推定処理について説明する。ここで、本発明者らは、脈波波高最大値の変動とユーザの温冷感の変動、及び最大リアプノフ指数の変動とユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。
図6(a)は、本発明者らが被験者実験により見出した、脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフであり、図6(b)は最大リアプノフ指数とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。図6(b)に示すように、最大リアプノフ指数と温冷感とは、温冷感0(暑くも寒くもどちらでもない中立状態)付近で最大リアプノフ指数が極値となる下に凸のグラフで表される相関関係を有している。又、図6(a)に示すように、脈波波高最大値と温冷感とは、温冷感が寒い(−3)側から暑い(+3)側に変動するのに伴って脈波波高最大値は単調に増加する相関関係を有している。
また、図6(c)は、図6(a),(b)に示す脈波波高最大値と最大リアプノフ指数とに対する温冷感の関係をマトリクス状にまとめたテーブルである。このテーブルは、状態推定部103により予め保持されている。
すなわち、状態推定部103は、図6(c)に示すテーブルを用いて温冷熱環境を構成する機器による制御が実行された後、脈波波高最大値が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合はユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化したと推定する。
また、状態推定部103は、脈波波高最大値が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合は、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定する。また、状態推定部103は、脈波波高最大値が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合は、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化したと推定する。また、状態推定部103は、脈波波高最大値が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合はユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定する。
図7は、本発明の実施の形態2における状態推定部103での処理の流れを示すフローチャートである。まず、状態推定部103は、波高最大値抽出部106により抽出された脈波波高最大値hmaxの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して脈波波高最大値hmaxの微分値Δhmaxを算出する(ステップS11)。
また、それと並行して、状態推定部103は、カオス解析部102により抽出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する(ステップS11)。
次に、ステップS12において、状態推定部103は、まず、脈波波高最大値の微分値Δhmaxについての判定を行う。具体的には、状態推定部103は、脈波波高最大値の微分値Δhmaxが0以上であるか否かを判断する。脈波波高最大値の微分値Δhmaxが0以上の場合(ステップS12でYES)、状態推定部103は、脈波波高最大値は増加したと判定し、処理をステップS13に進める。
ステップS13において、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0以上であるか否かを判断する。状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0以上の場合(ステップS13でYES)、最大リアプノフ指数は増加したと判定する。この場合、状態推定部103は、予め保持している図6(c)のテーブルを参照し、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化していると推定し、‘0→暑い’という推定結果を表す推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS14)。
一方、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0未満の場合(ステップS13でNO)、最大リアプノフ指数は減少したと判定する。この場合、状態推定部103は、図6(c)のテーブルを参照し、温冷感が寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化していると推定し、‘寒い→0’という推定結果を表す推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS15)。
また、状態推定部103は、脈波波高最大値の微分値Δhmaxが0未満の場合(ステップS12でNO)、脈波波高最大値が減少したと判定し、処理をステップS16に進める。
そして、ステップS16において、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0以上であるか否かを判断する。状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0以上の場合(ステップS16でYES)、最大リアプノフ指数が増加したと判定する。この場合、状態推定部103は、図6(c)に示すテーブルを参照し、温冷感が暑くも寒くもないない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化していると推定し、‘0→寒い’という推定結果を表す推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS17)。
一方、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の微分値Δλが0未満の場合(ステップS16でNO)、最大リアプノフ指数が減少したと判定する。この場合、状態推定部103は、温冷感が暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化していると推定し、‘暑い→0’という推定結果を表す推定データを制御内容決定部104へ出力する(ステップS18)。
制御内容決定部104は、状態推定部103から推定データが入力されると、予め保持している推定データと制御データとの関係を示すテーブルを参照し、推定データを機器の制御データへ変換する。図8は、推定データと制御データとを対応づけたテーブルを示す図である。
制御内容決定部104は、図8に示すテーブルに基づいて推定データの内容を制御データへ変換する。例えば、推定データが‘0→寒い’を示す場合、制御内容決定部104は、‘暖制御’という内容の制御データに決定する。また、推定データが‘0→暑い’を示す場合、制御内容決定部104は、‘冷制御’という内容の制御データに決定する。更に、推定データが‘寒い→0’又は‘暑い→0’を示す場合、制御内容決定部104は、‘なし’という内容の制御データに決定する。この場合、制御内容決定部104は、制御データを出力しない、又は現状の機器状態を維持するような制御データを出力する。
ここで、‘暖制御’とは、例えば、空調機器における室温設定温度を上げる制御、暖房運転時の暖房能力を増加させる制御、及び冷房運転時の冷房能力を減少させる制御などのことを指す。また、‘冷制御’とは、例えば、空調機器における室温設定温度を下げる制御、暖房運転時の暖房能力を減少させる制御、及び冷房運転時の冷房能力を増加させる制御などのことを指す。
なお、状態推定部103におけるユーザの温冷感の推定について、ここでの温冷感が寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化するとは、図6(a)および図6(b)における横軸の−3から0の範囲内に位置する1点から0方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化するとは、図6(a)および図6(b)における横軸の+3から0の範囲内に位置する1点から0方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化するとは、図6(a)および図6(b)における横軸の0から−3の範囲内に位置する1点から−3方向に温冷感が動くことを意味する。また、温冷感が暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化するとは、図6(a)および図6(b)における横軸の0から+3の範囲内に位置する1点から+3方向に温冷感が動くことを意味する。
また、制御内容決定部104から出力される制御データにおける制御の度合いについて、たとえば、室温設定温度2度変更などの予め定められた値を用いてもよいし、状態推定部103において算出された脈波波高最大値の微分値Δhmaxや最大リアプノフ指数の微分値Δλの大小に基づいて制御変化の度合いを決定してもよい。
以上説明したように、実施の形態2による環境制御装置によれば、ユーザの生体情報として脈波のみを用いてその時系列データをカオス解析して得られた最大リアプノフ指数と、脈波データにおける脈拍1拍分の中での脈波波形のピーク値である脈波波高最大値とに基づいて温冷熱刺激に対するユーザの温冷感を推定し、推定結果を基に、温冷熱刺激を生成する機器が制御されている。そのため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。その結果、ユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態にすることができる。なお、本実施の形態において、脈波波高最大値に代えて、脈波振幅を用いても良い。
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3による環境制御装置について説明する。図9は、本発明の実施の形態3における環境制御装置の構成を示したブロック図である。なお、本実施の形態において、実施の形態2と同一のものは説明を省略し相違するもののみ説明する。
図9に示す環境制御装置は、実施の形態2における波高最大値抽出部106に代えて室温計測部107を備えており、実施の形態2との相違点は、状態推定部103が、脈波波高最大値に代えて室温計測部107により計測された室温データを用い、その室温データと最大リアプノフ指数とを用いてユーザの温冷感を推定する点にある。
室温計測部107は、温度センサ等から構成され、一定時間ごとに室内の温度を計測して蓄積する。状態推定部103は、室温計測部107により計測された室温データの変動及びカオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数の変動を算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを実施の形態2と同様にして制御内容決定部104に出力する。
本実施の形態においても、状態推定部103は、機器制御部105が制御を開始してから時系列的に順次抽出された室温データ及び最大リアプノフ指数の差分をその時間差(サンプリング周期)で除して、室温データの微分値及び最大リアプノフ指数の微分値を算出する。状態推定部103は、この微分値が後述する予め定められた複数の挙動例のいずれにあてはまるかを判断することで、ユーザの温冷感を推定する。
次に、本実施の形態による環境制御装置の動作について図10のフローチャートを用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態3における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、生体情報計測部101は、実施の形態2と同様にして脈波を計測して脈波の時系列データを取得する。また、室温計測部107は、ユーザの所在する部屋の温度を測定し、室温データを取得する(ステップS20)。
次いで、カオス解析部102は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに最大リアプノフ指数を算出して蓄積する(ステップS21)。
次いで、状態推定部103は、室温データの変動と最大リアプノフ指数の変動とに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定データを制御内容決定部104に出力する(ステップS22)。具体的には、状態推定部103は、室温計測部107により取得された室温データの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して室温データの微分値Δtを算出する。そして、状態推定部103は、微分値Δtが正の場合、室温は上昇したと判定し、微分値Δtが負の場合、室温は低下したと判定する。
また、状態推定部103は、カオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する。そして、状態推定部103は、微分値Δλが正の場合、最大リアプノフ指数が増大したと判定し、微分値Δλが負の場合、最大リアプノフ指数が減少したと判定する。
そして、状態推定部103は、図11に示すテーブルを参照してユーザの温冷感を推定する。図11は、実施の形態2と同様にして導いた最大リアプノフ指数と室温とに対する温冷感をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図である。このテーブルは、状態推定部103により予め保持されている。
すなわち、状態推定部103は、温冷熱環境を構成する機器による制御が実行された後、図11に示すテーブルを参照し、室温が上昇し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化したと推定し、‘0→暑い’を示す推定データを出力する。また、状態推定部103は、室温データが上昇し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘寒い→0’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、室温データが低下し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化したと推定し、‘0→寒い’を示す推定データを出力する。また、状態推定部103は、室温データが低下し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘暑い→0’を示す推定データを出力する。その後、それぞれの推定データは制御内容決定部104へ出力される。
次いで、制御内容決定部104は、状態推定部103から推定データが入力されると、実施の形態2と同様、図8に示すテーブルを参照して、推定データを機器の制御データへ変換する(ステップS23)。次に、機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データを受信する。機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データに従って機器を制御する(ステップS24)。
以上説明したように、実施の形態3による環境制御装置によれば、最大リアプノフ指数と、空調機器で通常計測されているその時点での室温とに基づいて、ユーザの温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。その結果、ユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4による環境制御装置について説明する。図12は、本発明の実施の形態4における環境制御装置の構成を示したブロック図である。実施の形態1と同一のものは説明を省略し相違するもののみ説明する。図12に示す環境制御装置は、実施の形態1における構成とほぼ同一であるが、実施の形態1との相違点は、制御内容決定部104が、制御データを決定し、決定した制御データを状態推定部103へも出力し、状態推定部103が、制御内容決定部104から出力された制御データと最大リアプノフ指数とを用いてユーザの温冷感を推定する点にある。
状態推定部103は、カオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数の変動を算出し、算出結果と制御内容決定部104から出力された制御データとに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果である推定データを実施の形態1と同様にして制御内容決定部104に出力する。ここで、制御対象の機器を冷房として機能させる場合は、制御データには、‘冷房’のデータが含まれると共に、冷房の出力強度を指定するデータが含まれる。また、制御対象の機器を暖房として機能させる場合は、制御データには‘暖房’のデータが含まれると共に、暖房の出力強度を指定するデータが含まれる。
本実施の形態においても、状態推定部103は、機器制御部105が制御を開始してから時系列的に順次抽出された最大リアプノフ指数の差分をその時間差(サンプリング周期)で除して、最大リアプノフ指数の微分値Δλを算出する。状態推定部103は、この微分値の挙動と制御内容決定部104から出力された制御データの内容とが後述する予め定められた複数例のいずれにあてはまるかを判断することで、ユーザの温冷感を推定する。
次に、本実施の形態による環境制御装置の動作について図13のフローチャートを用いて説明する。図13は、本発明の実施の形態4における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、生体情報計測部101は、実施の形態1と同様にして脈波を計測して脈波の時系列データを取得する(ステップS30)。次いで、カオス解析部102は、生体情報計測部101により計測された脈波の時系列データから一定時間ごとに最大リアプノフ指数λを算出して蓄積する(ステップS31)。
次いで、状態推定部103は、最大リアプノフ指数の変動と、制御内容決定部104から出力される制御データとに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定データを制御内容決定部104に出力する(ステップS32)。
具体的には、状態推定部103は、カオス解析部102により算出された最大リアプノフ指数λの現在値とその直前の値である直前値との差分をその時間差(サンプリング周期)で除して最大リアプノフ指数λの微分値Δλを算出する。そして、状態推定部103は、微分値Δλが正の場合、最大リアプノフ指数は増加したと判定し、微分値Δλが負の場合、最大リアプノフ指数は減少したと判定する。
そして、状態推定部103は、制御内容決定部104から出力された制御データに含まれる出力強度の現在値とその直前の値である直前値とから冷房又は暖房として機能する機器の出力強度を示す冷房能力又は暖房能力が増加若しくは減少したかを判定する。
そして、状態推定部103は、図14(a),(b)に示すテーブルを参照してユーザの温冷感を推定する。図14は、実施の形態1と同様にして導いた最大リアプノフ指数と温冷感との関係と、制御データと温冷感との関係とをマトリクス状にまとめたテーブルを示す図であり、図14(a)は、最大リアプノフ指数及び冷房能力と温冷感との関係をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図であり、図14(b)は、最大リアプノフ指数及び暖房能力と温冷感との関係をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図である。状態推定部103はこのテーブルを予め保持している。
すなわち、状態推定部103は、受信した制御データが冷房を示し、冷房能力が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加している場合は、図14(a)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化したと推定し、‘0→寒い’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが冷房を示し、冷房能力が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加している場合は、図14(a)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化したと推定し、‘0→暑い’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが冷房を示し、冷房能力が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少している場合は、図14(a)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘暑い→0’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが冷房を示し、冷房能力が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少している場合は、図14(a)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘寒い→0’を示す推定データを出力する。
一方、状態推定部103は、受信した制御データが暖房を示し、暖房能力が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加している場合は、図14(b)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から暑い状態の方向に変化したと推定し、‘0→暑い’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが暖房を示し、暖房能力が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加している場合は、図14(b)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態(0側)から寒い状態の方向に変化したと推定し、‘0→寒い’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが暖房を示し、暖房能力が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少している場合は、図14(b)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘寒い→0’を示す推定データを出力する。
また、状態推定部103は、受信した制御データが暖房を示し、暖房能力が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少している場合は、図14(b)に示すテーブルを参照し、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向(0方向)に変化したと推定し、‘暑い→0’を示す推定データを出力する。
図13に戻って、制御内容決定部104は、状態推定部103から推定データが入力されると、実施の形態2と同様、図8に示すテーブルを参照して、推定データを機器の制御データへ変換する(ステップS33)。次に、機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データを受信する。機器制御部105は、制御内容決定部104から出力された制御データに従って機器を制御する(ステップS34)。
ここで、温冷熱環境を構成する機器による冷房などの制御が実行されている際における暖制御とは、冷房能力を減少させる制御のことを指す。また、冷制御とは、冷房能力を増加させる制御のことを指す。同じく、暖房などの制御が実行されている際における暖制御とは、暖房能力を増加させる制御のことを指す。また、冷制御とは、暖房能力を減少させる制御のことを指す。
以上説明したように、実施の形態4による環境制御装置によれば、最大リアプノフ指数と、その時点での温冷熱刺激に相当する制御内容とに基づいてユーザの温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除して温冷熱刺激に対するユーザの温冷感を精度よく推定することができる。その結果、ユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
(実施の形態5)
図15は、本発明の実施の形態5における環境制御装置の構成を示す概略図である。本環境制御装置は、公知のコンピュータから構成され、脈波検知部(生体情報取得手段)201、脈波カオスパラメータ算出部(第1のパラメータ算出手段)202、脈波カオスパラメータ比較部(第1の推定手段)203、第1ユーザ状態推定部(第1の推定手段)204、第1刺激制御部(第1の刺激制御手段)205、刺激生成部206、脈波波形パラメータ算出部(第2のパラメータ算出手段)207、脈波波形パラメータ比較部(第2の推定手段)208、第2ユーザ状態推定部(第2の推定手段)209、第2刺激制御部(第2の刺激制御手段)210、及び刺激制御切替部(刺激制御切替手段)211を備えている。
これら脈波検知部201〜刺激制御切替部211は、本発明による環境制御プログラムがインストールされたコンピュータのCPUが当該プログラムを実行することで実現される。
脈波検知部201は、公知のトランデューサー等により検出されたユーザの指尖脈波を所定のサンプリング周期でサンプリングして、脈波データ(生体情報の一例)を時系列的に取得する。脈波カオスパラメータ算出部202は、脈波検知部201により検知及び蓄積された脈波の時系列データの最大リアプノフ指数を脈波カオスパラメータとして算出する。脈波カオスパラメータ比較部203は、算出された脈波カオスパラメータの値を基準値K1と比較する。
第1ユーザ状態推定部204は、脈波カオスパラメータ比較部203による比較結果に基づいて、脈波カオスパラメータ算出部202により算出された脈波カオスパラメータの現在値N1から基準値K1を減ずる演算、又は基準値K1から現在値N1を減ずる演算を行い、演算結果を予め定められた閾値(第3規定値)A1と比較することで、例えば、リラックス感または快適感または温冷感等のユーザの状態を推定する。
ここで、基準値K1としては、刺激生成部206がユーザに刺激を与える前、或いは刺激の強度や種類を変更する前に、脈波カオスパラメータ算出部202により算出された脈波カオスパラメータの値が採用される。或いは、刺激生成部206がユーザに刺激を与える前のある所定期間において、刺激の強度や種類を変更する前に、脈波カオスパラメータ算出部202により算出されたが脈波カオスパラメータの値の推移より学習した値(例えば、平均値)が採用される。
第1刺激制御部205は、第1ユーザ状態推定部204の推定結果に基づいて、ユーザがリラックス感または快適感または温冷感等を得ることができるような強度の刺激を刺激生成部206に生成させるための刺激値(第1刺激値)I1を算出し、算出した刺激値I1を刺激制御切替部211に出力する。
脈波波形パラメータ算出部207は、脈波時系列データから、脈波の2階微分である加速度脈波波形を評価するための脈波波形パラメータを算出する。この脈波波形パラメータが時系列データの変化の一例である。
図60に示すように加速度脈波は、5つの要素波E1、E2、E3、E4、E5から構成される。要素波E1の頂点Aは指尖容積脈波拡張期波の始まりと一致するので頂点Aから頂点Eまでの所要時間は心臓の収縮時間軸長さと一致するようになる。要素波E1は、基線に対して上に凸となる陽性波であり、要素波E2は、基線に対して下に凸となる陰性波であり、次の要素波E3、E4、E5はそれぞれ生理状態によって陽性波になったり陰性波になったり変化する要素波であり、利用者の年齢と強い相関を有する。
本実施の形態では、脈波波形パラメータ算出部207は、振幅aを分母にとり振幅cを分子にとったc/aを脈波波形パラメータとして採用する。但し、c/aに代えて、b/aやd/aを脈波波形パラメータとして採用してもよい。
脈波波形パラメータ比較部208は、算出された脈波波形パラメータの値を基準値K2と比較する。第2ユーザ状態推定部209は、脈波波形パラメータ比較部208による比較結果に基づいて、脈波波形パラメータ算出部207により算出された脈波波形パラメータの現在値N2から所定の基準値K2を減ずる演算、又は基準値K2から現在値N2を減ずる演算を実行し、演算結果を所定の閾値B1と比較し、比較結果に基づいて、刺激生成部206がユーザに与えた刺激に対するユーザの認知状態を推定する。すなわち、第2ユーザ状態推定部209は、刺激生成部206がユーザに与えた刺激に対し、ユーザが強すぎると感じているか、適切と感じているか、或いは弱すぎると感じているかを推定する。
ここで、基準値K2としては、刺激生成部206がユーザに刺激を与える前、或いは刺激の強度や種類を変更する前に、脈波波形パラメータ算出部207により算出された脈波波形パラメータの値が採用される。或いは、刺激生成部206がユーザに刺激を与える前の一定期間において、脈波刺激の強度や種類を変更する前の脈波波形パラメータの値の推移より学習した値(例えば、平均値)が採用される。
第2刺激制御部210は、第2ユーザ状態推定部209の推定結果に基づいて、刺激に対してユーザが適切と感じるような強度の刺激を刺激生成部206に生成させるための刺激値(第2刺激値)I2を算出し、刺激制御切替部211に出力する。
刺激制御切替部211は、第1刺激制御部205から出力された刺激値I1と第2刺激制御部210から出力された刺激値I2とを基に、実際に出力する刺激の強度を指定するための刺激出力値O1を算出し、刺激生成部206に出力する。
図16は、本実施の形態における脈波カオスパラメータ算出部202、脈波カオスパラメータ比較部203、第1ユーザ状態推定部204及び第1刺激制御部205の動作を示すフローチャートである。
まず、脈波カオスパラメータ算出部202は、脈波検知部201によって検知・蓄積された脈波時系列データを受信する(ステップS40)。次に、脈波カオスパラメータ算出部202は、受信した脈波時系列データから最大リアプノフ指数(Ly)を算出し、算出した最大リアプノフ指数を脈波カオスパラメータの現在値N1とする(ステップS41)。
次に、脈波カオスパラメータ比較部203は、脈波カオスパラメータの基準値K1と現在値N1との差を閾値A1と比較する(ステップS42)。具体的には、脈波カオスパラメータ比較部203は、脈波カオスパラメータの現在値N1と基準値K1との差を算出し、算出した差が閾値A1以上であるか否かを判断する。算出した差が閾値A1以上の場合(ステップS42でYES)、第1ユーザ状態推定部204は、リラックス感または快適感または温冷感等が向上していると推定する(ステップS43)。
一方、脈波カオスパラメータの現在値N1と基準値K1との差が所定の閾値A1未満の場合(ステップS42でNO)、第1ユーザ状態推定部204は、リラックス感または快適感または温冷感等が向上していないと推定する(ステップS44)。
ステップS45において、第1刺激制御部205は、現在の刺激強度が維持されるような刺激値I1を算出し、刺激制御切替部211に出力する。ステップS46において、第1刺激制御部205は、現在の刺激強度より強化されるような刺激値I1を刺激制御切替部211に出力する。
図17は、本実施の形態における脈波波形パラメータ算出部207、脈波波形パラメータ比較部208、第2ユーザ状態推定部209及び第2刺激制御部210の動作を示すフローチャートである。
まず、脈波波形パラメータ算出部207は、脈波検知部201によって検知・蓄積された脈波時系列データを受信する(ステップS50)。次に、脈波波形パラメータ算出部207は、脈波の2階微分値である加速度脈波の波形成分比c/aを算出し、算出した波形成分比c/aを脈波波形パラメータの現在値N2とする(ステップS51)。
次に、脈波波形パラメータ比較部208は、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差を閾値B1と比較する(ステップS52)。具体的には、脈波波形パラメータ比較部208は、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差を算出し、算出した差が閾値B1以上であるか否かを判断する。算出した差が所定の閾値B1未満の場合(ステップS52でNO)、第2ユーザ状態推定部209は、現在の刺激強度ではユーザの認知が弱く、刺激強度が弱すぎると推定する(ステップS53)。
一方、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差が所定の閾値B1以上の場合(ステップS52でYES)、脈波波形パラメータ比較部208は、さらに脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差を閾値B2と比較する(ステップS54)。具体的には、脈波波形パラメータ比較部208は、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差が閾値B2以上であるか否かを判断する。なお、閾値B2は閾値B1以上である。その差が閾値B2以下の場合(ステップS54でYES)、第2ユーザ状態推定部209は、現在の刺激強度でユーザの認知が適切である、すなわち刺激が適切な範囲内にあると推定する(ステップS55)。
一方、脈波波形パラメータc/aの基準値K2と現在値N2との差が閾値B2より大きい場合(ステップS54でNO)、第2ユーザ状態推定部209は、現在の刺激強度ではユーザの認知が強すぎ、ユーザに苦痛あるいは悪影響を与えると推定する(ステップS56)。
ステップS57において、第2刺激制御部210は、現在の刺激強度を強める刺激値I2を算出して、刺激制御切替部211に出力する。ステップS58において、第2刺激制御部210は、現在の刺激強度が維持されるような刺激値I2を算出し、刺激制御切替部211に出力する。ステップS59において、第2刺激制御部210は、現在の刺激強度が弱まるような刺激値I2を算出し、刺激制御切替部211に出力する。なお、脈波波形パラメータは数秒間(例えば約5秒間〜約10秒間)の脈波波形から算出できるため、脈波カオスパラメータに対して速やかに算出される。
また、算出する脈波波形パラメータに応じて、脈波波形パラメータの基準値と現在値との差を、例えば上述の脈波波形パラメータc/aの時のように基準値−現在値とするか、例えば脈拍数の時のように現在値−基準値とするかは適宜選択すればよく、また、所定の閾値(B1及びB2、ただしB1≦B2)も適宜設定すればよい。
図18は、本実施の形態における刺激制御切替部211の動作を示すフローチャートである。まず、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aと、所定の第1閾値(下限規定値)C1とを比較する(ステップS60)。すなわち、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aが所定の第1閾値C1以下であるか否かを判断する。脈波波形パラメータc/aが第1閾値C1以下の場合(ステップS60でYES)、刺激制御切替部211は、メンバシップ値M1を0に設定する(ステップS61)。ここで、メンバシップ値M1は、脈波波形パラメータに応じて決定される重み係数である。そして、メンバシップ値M1は、脈波波形パラメータを入力とし、メンバシップ値M1を出力とする0から1の範囲で単調増加する所定のメンバシップ関数f1を用いて算出される。
一方、脈波波形パラメータc/aが第1閾値C1より大きい場合(ステップS60でNO)、刺激制御切替部211は、第1閾値C1より大きい所定の第2閾値(第1規定値)C2と、脈波波形パラメータc/aとを比較する(ステップS62)。すなわち、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aが所定の第2閾値C2以下であるか否かを判断する。脈波波形パラメータc/aが第2閾値C2以下の場合(ステップS62でYES)、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aに応じたメンバシップ値M1を、メンバシップ関数f1を用いて算出する(ステップS63)。
脈波波形パラメータc/aが第2閾値C2より大きい場合(ステップS62でNO)、刺激制御切替部211は、第2閾値C2より大きい所定の第3閾値(第2規定値)C3と、脈波波形パラメータc/aとを比較する(ステップS64)。すなわち、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aが所定の第3閾値C3以下であるか否かを判断する。脈波波形パラメータc/aが第3閾値C3以下の場合(ステップS64でYES)、刺激制御切替部211は、メンバシップ値M1を1に設定する(ステップS65)。
一方、脈波波形パラメータc/aが第3閾値C3より大きい場合(ステップS64でNO)、刺激制御切替部211は、第3閾値C3より大きい所定の第4閾値(上限規定値)C4と、脈波波形パラメータc/aとを比較する(ステップS66)。すなわち、刺激制御切替部211は、脈波波形パラメータc/aが所定の第4閾値C4以下であるか否かを判断する。脈波波形パラメータc/aが第4閾値C4以下の場合(ステップS66でYES)、刺激制御切替部211は、メンバシップ関数f2を用いて、脈波波形パラメータc/aに応じたメンバシップ値M1を算出する(ステップS67)。
ここで、メンバシップ関数f2は、0から1の範囲で単調減少する関数であり、脈波波形パラメータc/aの値に応じたメンバシップ値M1を算出する。
一方、脈波波形パラメータc/aが第4閾値C4より大きい場合(ステップS66でNO)、刺激制御切替部211は、メンバシップ値M1を0に設定する(ステップS68)。
図19は、脈波波形パラメータとメンバシップ値M1との関係を示したグラフである。図19において、縦軸はメンバシップ値M1を示し、横軸は脈波波形パラメータを示している。図19に示すように脈波波形パラメータが第1閾値C1以下の場合は、メンバシップ値M1=0となる。また、脈波波形パラメータが第1閾値C1より大きく、第2閾値C2以下の場合は、メンバシップ値M1はメンバシップ関数f1に従って単調増加する。また、脈波波形パラメータが第2閾値C2より大きく、第3閾値C3以下の場合は、メンバシップ値M1=1となる。また、脈波波形パラメータが第3閾値C3より大きく、第4閾値C4以下の場合は、メンバシップ値M1はメンバシップ関数f2に従って単調減少する。また、脈波波形パラメータが第4閾値C4より大きい場合は、メンバシップ値M1=0となる。
図18に戻って、ステップS69において、刺激制御切替部211は、刺激値I1,I2、メンバシップ値M1を用いて式(1)の演算を行い、刺激出力値O1を算出し、刺激生成部206に出力する。
刺激出力値O1=刺激値I2×(1−メンバシップ値M1)+刺激値I1×(メンバシップ値M1)・・・(1)
刺激出力値O1を受けた刺激生成部206は、この刺激出力値O1が示す強度の刺激を生成し、ユーザに与える。
図19に示すように、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第1閾値C1以下と判断された時は、刺激強度が弱すぎてこのままの刺激強度で刺激を生成し続けてもユーザの状態(例えばリラックス感または快適感または温冷感等)を向上させることは困難であると判断され、メンバシップ値M1が0に設定される。その結果、リラックス感または快適感または温冷感等を向上させることに対して支配的な刺激値I1の重みが0となり、刺激値I2のみ用いて刺激出力値O1が算出される。
これにより、算出に時間がかかる脈波カオスパラメータを用いることなく、刺激出力値O1が算出される結果、速やかに刺激出力値O1を算出することができ、ユーザに与える刺激強度を速やかに適切な強度にすることができる。
また、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第4閾値C4よりも大きいと判断された時は、刺激強度が強すぎてユーザに苦痛あるいはユーザに悪影響を与える可能性があると判断され、上記と同様に、メンバシップ値M1が0に設定される。その結果、刺激値I2のみ用いて刺激出力値O1が算出される。
これにより、算出に時間がかかる脈波カオスパラメータを用いることなく、刺激出力値O1が算出される結果、速やかにユーザへの刺激強度が弱められ、速やかに刺激の強度を適切な強度にすることができる。
更に、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第2閾値C2より大きく、かつ第3閾値C3以下と判断された時には、脈波波形パラメータc/aは適切な範囲にあり、現在の刺激の強度は適切であり、この強度の刺激を継続してユーザに与えても、苦痛などの悪影響は与えないと判断される。
そして、刺激制御切替部211により、メンバシップ値M1が1に設定される。その結果、刺激値I2の重み係数が0となり、刺激値I1のみ用いて、刺激出力値O1が算出される。このとき、脈波カオスパラメータの現在値N1と基準値K1との差が所定の閾値A1以上であれば、現在の刺激強度が維持される。一方、脈波カオスパラメータの現在値N1と基準値K1との差が所定の閾値A1より小さければ、現在の刺激強度が強められる。
これにより、ユーザに苦痛あるいは悪影響を与えないことを確保したうえで、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等を向上させることができる。
更に、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第1閾値C1より大きく、かつ第2閾値C2以下と判断された時には、第1閾値C1以下の時ほどではないが刺激強度がやや弱いため、このままの刺激強度で刺激を生成し続けてもユーザの状態(例えばリラックス感または快適感または温冷感等)を向上させることはやや困難であると判断される。この場合、刺激値I1と刺激値I2とが混合され、刺激出力値O1が算出される。
これにより、弱すぎない適度な強度の刺激をユーザに与えることができ、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等をより確実に向上させることができる。
更に、脈波波形パラメータ算出部207で算出された脈波波形パラメータc/aが、刺激制御切替部211により第3閾値C3より大きく、かつ第4閾値C4以下と判断された時には、第4閾値C4以上の時ほどではないが刺激強度がやや強いため、このままの刺激強度で刺激を生成し続けるとユーザに苦痛あるいはユーザに悪影響を与える可能性があると判断される。この場合、刺激値I1と刺激値I2とが混合され、刺激出力値O1が算出される。
これにより、ユーザに強すぎない適度な強度の刺激がユーザに与えられ、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等をより確実に向上させることができる。
以上のように、本環境制御装置によれば、ユーザに苦痛や悪影響を与えることを速やかに回避して、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等を向上させることができる。
なお、本実施の形態において、ユーザに与える刺激として、冷房や暖房等の温冷熱刺激、冷風や温風等の気流刺激、マッサージ等の物理刺激、酸素やマイナスイオン等の物質刺激、パルス音、音楽や超音波などの聴覚刺激や、光、照明や映像などの視覚刺激等が含まれる。
また、図18及び図19における説明では、刺激制御切替部211は脈波波形パラメータと閾値(C1、C2、C3、C4)とを比較するとしているが、脈波波形パラメータの基準値(K2)と現在値(N2)との差と適切に設定された閾値とを比較するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、脈波カオスパラメータを基にユーザの状態を推定する第1ユーザ状態推定部204と、脈波波形パラメータを基にユーザの状態を推定する第2ユーザ状態推定部209とを備える構成を採用したが、これに限定されず、脈波カオスパラメータのみに基づいて刺激生成部206を制御してもよい。この場合、脈波波形パラメータ算出部207〜刺激制御切替部211は不要となり、第1刺激制御部205は算出した刺激値I1により直接、刺激生成部206を制御すればよい。この構成によれば脈波カオスパラメータを用いてユーザの快適感あるいは温冷感の推定を行い、この推定結果を基に、ユーザに対して快適感あるいは温冷感を向上させるような刺激が与えられる。そのため、構成の簡略化を図りつつ、ユーザの住環境を構成する機器(特に空調機器や、給湯機器等の浴室環境機器など、温冷熱刺激をユーザに与える機器)の制御にも十分適用させることができる環境制御装置を提供することができる。
次に、本発明で用いた脈波のカオス解析による、温冷熱刺激に対するユーザの快適感あるいは温冷感の推定の原理について説明する。
本発明を生み出すにあたり、本発明者らが温冷熱刺激に対する人の快適感を生体情報により推定するべく鋭気研究を重ね、冬季に青年女子被験者を対象とした温冷熱刺激実験を実施した。実験条件としては、少し涼しい環境で被験者を椅子に座った状態で安静にさせた後、その環境下で温熱刺激の一例として湯に足をつけてしばらく足浴を施した。その後、湯から足を出した状態で安静にさせた。実験中は被験者の脈波を時系列データとして検知、蓄積した。また、快適感と温冷感の変化とを被験者に主観申告してもらった。
図20は、足浴前、足浴中及び足浴後の脈波をカオス解析して得られたリアプノフ指数の変化と、快適感及び温冷感に関する主観申告の変化との一例を示す図である。なお、図20において、四角印は、足浴前、足浴中及び足浴後の快適感に関する主観申告を表し、三角印は、足浴前、足浴中及び足浴後の温冷感に関する主観申告を表し、菱形印は、足浴前、足浴中及び足浴後のリアプノフ指数を表している。
実験終了後、本発明者らは、被験者の脈波時系列データと主観申告の快適感、温冷感との相関について種々分析を重ねた結果、図20に示すように足浴前、足浴中、足浴後の脈波をカオス解析して得られたリアプノフ指数の変化と快適感、温冷感に関する主観申告との間に高い相関があることを見出し、本発明の完成に至ったのである。すなわち、足浴前では少し涼しい環境下であるので快適感はほぼ中立か、わずかに不快側であり、温冷感は冷側に申告されている。これに対し、足浴中には快適感、温冷感ともにそれぞれ大きく快適側、温側に申告されている。また、足浴後には少し涼しい環境下に放置される事になるので再び快適感はほぼ中立か、わずかに不快側となり、温冷感は冷側に申告されている。
一方、脈波のカオス解析結果であるリアプノフ指数は、足浴前から足浴中にかけては大きく上昇し、足浴中から足浴後にかけては再び低下する傾向を示し、上述の快適感、温冷感の主観申告の変化との間に高い相関が見出されたのである。この温冷熱刺激に対する快適感、温冷感の変化と脈波のカオス解析結果との相関を応用して前記の第1ユーザ状態推定部204を構成することにより、ユーザの生体情報として脈波の時系列データをカオス解析することで得られた温冷熱刺激に対するユーザの快適感あるいは温冷感の推定結果を基に、温冷熱刺激を生成する刺激生成部206が制御される。したがって、ユーザに対して温冷熱刺激に対する快適感あるいは温冷感を向上させるような刺激を与えることができる。その結果、ユーザの居住環境を構成する機器(特に空調機器や、給湯機器等の浴室環境機器など、温冷熱刺激をユーザに与える機器)の制御にも十分適用させることができる環境制御装置を提供することができる。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6に係る環境制御装置について説明する。まず、本発明で用いた脈波を評価するためのパラメータによるユーザの快適感の推定原理と、本発明で用いた脈波を評価するためのパラメータによるユーザの温冷感の推定原理について説明する。
本発明者らは、快適感を生体情報により定量的に把握するための鋭気研究を重ねた結果、ユーザに対して快適感を促進する刺激を与えた前後で、加速度脈波の波形成分比の変化と主観申告の快適感が向上との間に高い相関があることを見出した。
また、本発明者らは、温冷感を生体情報により把握するための鋭気研究を重ねた結果、ユーザに対して温冷感に関する刺激を与えた前後で、加速度脈波の波形成分比、並びに加速度脈波の波高の最大値(加速度脈波波高最大値)若しくは脈波の波高の最大値(脈波波高最大値)の変化と主観申告の温冷感の変化との間に高い相関があることを見出した。
ここで、加速度脈波波高最大値とは、所定時間内に取得された何拍分かの加速度脈波波形の複数のピーク値のうちの最大のピーク値、若しくは複数のピーク値の平均値、並びに所定時間内に取得された何拍分かの加速度脈波波形に含まれる1拍分の加速度脈波波形のピーク値を採用することができる。
また、脈波波高最大値とは、所定時間内に取得された何拍分かの脈波波形の複数のピーク値のうち最大のピーク値、若しくは複数のピーク値の平均値、並びに所定時間内に取得された何拍分かの脈波波形に含まれる1拍分の脈波波形のピーク値を採用することができる。以下、本発明の実施の形態6について、図面を参照しながら説明する。
図21は、本発明の実施の形態6における環境制御システムの構成を示すブロック図である。図21に示す環境制御システムは、例えば、公知のコンピュータから構成され、生体情報採取部(生体情報取得手段)301、パラメータ抽出部(パラメータ算出手段)302、パラメータ変動判断部(推定手段)303、刺激制御部(刺激制御手段)304、及び刺激出力部305を備えている。これら、生体情報採取部301〜刺激出力部305は、本発明による環境制御プログラムがインストールされたコンピュータのCPUが当該プログラムを実行することで実現される。
生体情報採取部301は、公知のトランデューサー等により検出されたユーザの指尖脈波を所定のサンプリング周期でサンプリングして、脈波データを時系列的に取得する。パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比を、脈波を評価するパラメータとして抽出して蓄積する。ここで、加速度脈波波形は、図60に示すような波形となる。そこで、本実施の形態では、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。なお、c/aに代えて、b/a、d/a、e/aを波形成分比として用いてもよいが、c/aが快適感との相関が特に高い。
パラメータ変動判断部303は、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動を算出し、算出結果からユーザの快適感を推定し、推定結果から刺激内容を判定する。そして、パラメータ変動判断部303は、判定した刺激内容に応じた刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比と、刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比との差分を上記サンプリング周期で除して、波形成分比の微分値を算出し、この微分値が予め定められた特定の範囲1〜3(後述する)のいずれに含まれるかを判断することで、ユーザの快適感を推定する。
刺激制御部304は、刺激出力命令を刺激出力部305に出力し、刺激出力部305を制御する。刺激出力部305は、ユーザに対して刺激を出力すると同時に、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力する。
図22は、本発明の実施の形態6における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS70)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aを抽出して蓄積する(ステップS71)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS72)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS72でNO)、ステップS71の処理へ戻り、刺激出力信号が受信されるまでステップS71及びステップS72の処理が繰り返し実行される。
一方、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS72でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとから波形成分比の微分値Δc/aを求め、その微分値Δc/aに基づいてユーザの快適感を推定し、推定結果から刺激内容を判断し、判断した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS73)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS74)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの快適感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図23は、本発明の実施の形態6におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS80)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS80でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS80の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS80でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出する(ステップS81)。
ここで、本発明者らは、波形成分比が変化するという現象とユーザの快適感が向上するという現象とに高い相関があることを見出した。そこで、本環境制御システムでは、波形成分比の変動に基づいて、ユーザの快適感を推定している。
次いで、パラメータ変動判断部303は、波形成分比c/aがあまり変動していないことを示す特定の範囲1に微分値Δc/aが収まるか否かを判定する(ステップS82)。なお、特定の範囲1とは、例えば、−0.05<Δc/a<+0.05である。そして、微分値Δc/aが特定の範囲1に収まる場合(ステップS82でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感が変化していないと推定し、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回の刺激と同じ種類で刺激の強度を強くする又は刺激を与える時間を長くするような刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS83)。これにより、ユーザは快適感を得ることができる。
一方、微分値Δc/aの値が特定の範囲1に収まらない場合(ステップS82でNO)、パラメータ変動判断部303は、波形成分比c/aの微分値Δc/aが特定の範囲1とは異なる特定の範囲2に収まるか否かを判定する(ステップS84)。なお、特定の範囲2とは、例えば、−0.2<Δc/a≦−0.05である。
微分値Δc/aが特定の範囲2に収まる場合(ステップS84でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感が向上したと推定し、快適感を維持もしくは向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と同じ刺激で同一の強度であるような刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS85)。これにより、刺激出力部305は、ユーザが快適感を得ることができる刺激を継続してユーザに出力することができ、ユーザは快適感を持続することができる。
微分値Δc/aが特定の範囲2に収まらない場合(ステップS84でNO)、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の変動が特定の範囲2とは異なる特定の範囲3に収まるか否かを判定する(ステップS86)。なお、特定の範囲3とは、例えば、+0.05≦Δc/a<+0.2である。微分値Δc/aが特定の範囲3に収まる場合(ステップS86でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感が低下したと推定し、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と異なる種類であるような刺激出力命令を出力する(ステップS87)。一方、微分値Δc/aが特定の範囲3に収まらない場合(ステップS86でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザが予期せぬ危険な状態にあると判断し、システムを緊急停止させる(ステップS88)。
以上説明したように実施の形態6による環境制御システムによれば、ユーザの脈波から、ユーザの快適感が推定されているため、ユーザに不快感を与えることなく、ユーザの快適感を推定することができる。また、脈波から快適感を推定しているため、脳波から快適感を推定する場合に比べて高価な装置が不要となる結果、ユーザの自宅内においても、快適感を実感させ得るような環境を手軽に創出することが可能となる。
更に、ユーザに対して刺激を出力した前後の波形成分比c/aの変動から、ユーザの快適感が推定されているため、刺激に対するユーザの反応を確実に把握することができる。また、刺激に対するユーザの反応に基づいて快適感の推定を行い、推定結果に基づいて刺激内容を判断しているため、快適感を得るうえでのユーザの個人差に対応することも可能となり、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができる。更に、この一連の処理を繰り返すことでユーザ対する快適感を確実に持続させることができる。
更に、数ある脈波パラメータのうち、加速度脈波の波形成分比c/aを脈波パラメータとして採用しているため、複雑な処理が不要となり簡素な構成によりシステムを実現することができ、従来実現されていなかった脈波を用いて、より高精度に快適感を推定することができる。
更に、刺激が出力された前後におけるパラメータの変動として波形成分比c/aの微分値Δc/aを算出し、この微分値Δc/aを用いて快適感の推定を行っているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。更に、微分値Δc/aが特定の範囲1〜3のいずれに収まるかどうかを判定することで、快適感が推定されているため、ユーザの反応を詳細に把握することができ、ユーザの快適感の推定精度をより向上させることができる。
更に、刺激が出力された前後の微分値が特定の範囲3にない場合は、危険が予測されてシステムが停止されるため、ユーザにとってより安全なシステムを実現することができる。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容には、刺激の種類、刺激の強度、及び刺激を与える時間等が含まれる。また、刺激の種類には、冷房や暖房等の温冷熱刺激、冷風や温風等の気流刺激、マッサージ等の物理刺激、及び酸素やマイナスイオン等の物質刺激等が含まれる。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の変動が特定の範囲1と特定の範囲3とを合わせた範囲内に収まるか否かを判定してもよい。波形成分比の変動がこの範囲に収まる場合、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感は向上していないと推定し、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と異なる種類であるような刺激出力命令を出力する。一方、波形成分比の変動が特定の範囲1と特定の範囲3とを合わせた範囲内に収まらない場合、パラメータ変動判断部303は、さらに波形成分比の変動が特定の範囲2に収まるか否かを判定する。波形成分比の変動が特定の範囲2に収まる場合、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感は向上していると推定し、快適感を維持もしくは向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と同じ刺激で同一の強度であるような刺激出力命令を出力する。波形成分比の変動が特定の範囲2にも収まらない場合、パラメータ変動判断部303は、ユーザが予期せぬ危険な状態にあると判断し、システムを緊急停止させるようにしてもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出し、この微分値Δc/aを用いてユーザの快適感を推定したが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。この場合も、微分値Δc/aの場合と同様、パラメータ変動判断部303は、差分が予め定められた3つの範囲のうち、いずれの範囲に属するかを判定して、ユーザの快適感を推定すればよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から出力された刺激出力信号を受信する直前の波形成分比c/aと受信した直後の波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを算出したが、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値、それぞれの差分の平均値、或いは微分値を算出し、その算出値と、刺激出力信号を受信した直後の波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/a、あるいは差分を算出し、その結果に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303が、ユーザの快適感を推定してそれに基づく刺激内容を判断しているが、ユーザの快適感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比から微分値を算出するとしているが、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の波形成分比から微分値を算出しても良い。
また、所定時間における波形成分比の変化率を微分値としてもよい。ここで、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とを、パラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。
(実施の形態7)
本発明者らは、温熱刺激に関して、ユーザにおける快適感を促進する刺激の前後で、脈波のパルスレートPRが上昇するという現象と主観申告の快適感が向上するという現象とに高い相関があることも見出した。パルスレートPRとは、所謂脈拍数であり、一般的には、リラックスしているときや不快を除去したことによる具合のよい状態(消極的快適空間)においては、低下すると言われている。
ところが、今回、パルスレートPRの増加と快適感向上とに相関が見られたということは、過渡的に快適感を向上させる温熱刺激を与えた場面(積極的快適空間)においては、先述した消極的快適空間とは全く違う生体現象が起こることが明らかとなったのである。
よって、本実施の形態では、実施の形態6で加速度脈波の波形成分比c/aの変動によりユーザの快適感を推定していたところを、脈波のパルスレートPRの変動により推定することとした。以下、実施の形態7による環境制御システムについて説明する。
なお、本実施の形態における環境制御装置の構成は実施の形態6と同様であるため、図21に示すブロック図と同じブロック図を用いて説明する。また、実施の形態6と同一のものは説明を省略し相違するもののみ説明する。
パラメータ抽出部302は、脈波のパルスレートPRをパラメータとして抽出し、生体情報採取部301で採取された脈波データから一定時間、例えば、上記サンプリング周期ごとにパルスレートPRの値を抽出して蓄積する。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信した直前と直後とにおけるパルスレートPRの変動に基づいてユーザの快適感を推定し、推定結果から出力する刺激内容を判断する。
本実施の形態における、パラメータ変動判断部303におけるユーザの快適感推定処理、及び出力する刺激内容の判断処理について以下に述べる。
図24は、本発明の実施の形態7におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。なお、実施の形態6と同様の処理を行うステップに関しては、同一のステップ番号を付し、説明を省略する。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS80でYES)、パラメータ抽出部302で抽出して蓄積されているパルスレートPRのうち、刺激出力信号を受信した直前のパルスレートPRと受信した直後のパルスレートPRとを抽出し、その変化の微分値ΔPRを算出する(ステップS91)。ここで、微分値ΔPRは、上記直前のパルスレートPRと上記直後のパルスレートとの差分を上記サンプリング周期で除すことで得られる。
次いで、パラメータ変動判断部303は、微分値ΔPRが特定の範囲4に収まるか否かを判定する(ステップS92)。なお、特定の範囲4とは、例えば、−1.0<ΔPR<+1.0である。微分値ΔPRが特定の範囲4に収まる場合(ステップS92でYES)、処理をステップS83に進める。微分値ΔPRが特定の範囲4に収まらない場合(ステップS92でNO)、パラメータ変動判断部303は、微分値ΔPRが特定の範囲4とは異なる特定の範囲5に収まるか否かを判定する(ステップS93)。なお、特定の範囲5とは、例えば、+1.0≦ΔPR<+10である。
微分値ΔPRが特定の範囲5に収まる場合(ステップS93でYES)、処理をステップS85に進める。一方、微分値ΔPRが特定の範囲5に収まらない場合(ステップS93でNO)、パラメータ変動判断部303は、微分値ΔPRが特定の範囲5とは異なる特定の範囲6に収まるか否かを判定する(ステップS94)。なお、特定の範囲6とは、例えば、−10<ΔPR≦−1.0である。微分値ΔPRが特定の範囲6に収まる場合、パラメータ変動判断部303は、ユーザの快適感が低下したと推定し、処理をステップS87に進める。一方、微分値ΔPRが特定の範囲6に収まらない場合(ステップS94でNO)、処理をステップS88に進める。
以上説明したように、実施の形態7による環境制御システムによれば、実施の形態6と同様の作用効果を奏することができる。
なお、実施の形態7において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から出力された刺激出力信号を受信する直前のパルスレートPRと直後のパルスレートPRとに基づいて微分値を算出したが、直前のパルスレートPRと直後のパルスレートPRとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
また、本実施の形態7において、パラメータ変動判断部303が、刺激出力部305から出力された刺激出力信号を受信する直前のパルスレートPRと直後のパルスレートPRとから微分値ΔPRを算出したが、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数のパルスレートPRの平均値、それぞれの差分の平均値、或いは微分値を算出し、その算出値と、刺激出力信号を受信した直後のパルスレートPRとに基づいて微分値ΔPR、あるいは差分を算出し、その結果に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、パルスレートPRの変動からユーザの快適感を推定しているが、実施の形態6で説明した波形成分比c/aと本実施の形態で説明したパルスレートPRとを組み合わせ、両者の変動に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後のパルスレートPRに基づいて微分値を算出するとしたが、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後のパルスレートPRに基づいて微分値を算出しても良い。
また、所定時間におけるパルスレートPRの変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とを、パラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。
(実施の形態8)
図25は、本発明の実施の形態8における環境制御システムの構成を示すブロック図である。なお、実施の形態8において実施の形態6と同一のものは同一の符号を付し、説明を省略する。実施の形態8における環境制御システムは、実施の形態6における環境制御システムに対して、更に、タイミング検知部307を備え、パラメータ変動判断部306の機能が相違している。タイミング検知部307は、刺激出力命令を出力するタイミングをも判断して出力する。
タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したことをトリガとしてアクティブモードになる。そして、パラメータ変動判断部306によってユーザの快適感が向上しているということが推定された場合に、タイミング検知部307は、快適感向上を示すフラグである快適フラグ(初期値0)を1に設定する。また、タイミング検知部307は、刺激出力信号を受信する度に快適フラグを0に設定する。
パラメータ変動判断部306は、タイミング検知部307で設定された快適フラグが1の場合、連続的に、ユーザの快適感が向上していないと判定した回数をカウントするカウンターを備えている。以下、このカウンターのカウント値をcount0と表す。
図26は、本発明の実施の形態8における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。実施の形態6と同様の処理を行うものは、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
まず、生体情報採取部301は、脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS70)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aの値を抽出して蓄積する(ステップS71)。次いで、パラメータ変動判断部306は、現時点でパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の変動を求め、その変動に基づいてユーザの快適感を推定する(ステップS101)。
次いで、タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS102)。タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS102でYES)、アクティブモードとなって快適フラグを0に設定する(ステップS103)。刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS102でNO)、ステップS101の処理へ戻る。
一方、ステップS101においてユーザの快適感が向上していると推定された場合に、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS102でYES)、タイミング検知部307は、快適フラグを1に設定する(ステップS103)。次いで、パラメータ変動判断部306は、刺激出力命令を刺激制御部304へ出力するか否かを判断する(ステップS104)。パラメータ変動判断部306は、ユーザの快適感の推定結果と、タイミング検知部307における快適フラグの設定値と、count0の値とに基づいて刺激出力の有無や刺激内容を判断し、刺激出力を行うと判断した場合は刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する。刺激出力命令が刺激制御部304へ出力されると(ステップS104でYES)、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部306から出力された刺激出力命令に従って、刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS105)。一方、刺激出力命令が刺激制御部304へ出力されないと判断された場合(ステップS104でNO)、ステップS101の処理へ戻る。
次に、本実施の形態における、パラメータ変動判断部306におけるユーザの快適感推定方法、及びタイミング検知部307を用いた刺激を出力するタイミングや刺激内容の判断方法について以下に述べる。
図27及び図28は、本発明の実施の形態8におけるパラメータ変動判断部306の処理を示すフローチャートである。まず、タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信して、快適フラグを0に設定する(ステップS111)。次いで、パラメータ変動判断部306は、現時点でパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを算出する(ステップS112)。
そして、実施の形態6と同様にして、パラメータ変動判断部306は、微分値Δc/aがある特定の範囲1に収まる値であるか否を判定する(ステップS113)。なお、特定の範囲1とは、例えば、−0.05<Δc/a<+0.05である。微分値Δc/aが特定の範囲1に収まる場合(ステップS113でYES)、パラメータ変動判断部306は、タイミング検知部307が設定している快適フラグを参照し、快適フラグが0であるか否かを判断する(ステップS114)。快適フラグが0である場合(ステップS114でYES)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの快適感が変化していないと推定する(ステップS115)。次に、パラメータ変動判断部306は、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と同じ種類で刺激の強度を強くする又は刺激を与える時間を長くするような刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS116)。これにより、ユーザは快適感を得ることができる。刺激出力命令が刺激制御部304へ出力された後、ステップS111の処理へ戻る。
一方、快適フラグが1である場合(ステップS114でNO)、パラメータ変動判断部306は、count0の値をインクリメントし(1加算して:ステップS117)、count0が所定の値、例えば5に達しているか否かを判定する(ステップS118)。count0が5に達している場合(ステップS118でYES)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの生体で順応がはじまると推定する(ステップS119)。次に、パラメータ変動判断部306は、後述する処理ステップS121’にて刺激出力命令の出力を中止する直前に出力していた刺激出力命令を再び刺激制御部304へ出力する(ステップS120)。刺激出力命令が刺激制御部304へ出力された後、ステップS111の処理へ戻る。
一方、count0が5に達していない場合(ステップS118でNO)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの生体で順応はまだ始まらないと推定する(ステップS121)。次に、パラメータ変動判断部306は、刺激出力命令を出力しないと判断し(ステップS121’)、ステップS112に処理を戻し、次の微分値Δc/aに対する判定処理を行う。
一方、微分値Δc/aの値が特定の範囲1に収まらない場合(ステップS113でNO)、パラメータ変動判断部306は、実施の形態6と同様にして、微分値Δc/aが特定の範囲1とは異なる特定の範囲2に収まるか否かを判定する(ステップS122)。なお、特定の範囲2とは、例えば、−0.2<Δc/a≦−0.05である。微分値Δc/aが特定の範囲2に収まる場合(ステップS122でYES)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの快適感が向上したと推定し、count0をリセットする(ステップS123)。次に、タイミング検知部307は、快適フラグを1に設定する(ステップS124)。次に、パラメータ変動判断部306は、刺激出力命令を出力しないと判断し(ステップS121’)、処理をステップS112に戻し、次の微分値Δc/aに対する判定処理を行う。
一方、微分値Δc/aが特定の範囲2に収まらない場合は(ステップS122でNO)、パラメータ変動判断部306は、実施の形態6と同様にして、微分値Δc/aが特定の範囲2とは異なる特定の範囲3に収まるか否かを判定する(ステップS125)。なお、特定の範囲3とは、例えば、+0.05≦Δc/a<+0.2である。そして、微分値Δc/aが特定の範囲3に収まる場合(ステップS125でYES)、パラメータ変動判断部306は、ユーザの快適感が低下したと推定する(ステップS126)。次に、パラメータ変動判断部306は、快適感を向上させる刺激が必要と判断し、例えば前回と異なる種類であるような刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS127)。一方、微分値Δc/aが特定の範囲3に収まらない場合(ステップS125でNO)、パラメータ変動判断部306は、ユーザは予期せぬ危険な状態にあると推定し、システムを緊急停止させる(ステップS128)。
以上説明したように実施の形態8による環境制御システムによれば、実施の形態6と同様の作用効果を奏することができる。さらに、本実施の形態では、微分値Δc/aが特定の範囲1に収まる場合であっても、快適フラグが1に設定されている場合はこの状態が一定期間継続されるまで、すなわち、count0が5に到達して刺激の順応が始まるまで刺激出力部305から刺激を出力しない。これにより、ユーザにおける快適感の余韻を利用した運転が実現でき、これにより効率的な処理を実現することができるため、省エネの効果の高いシステムを提供することができる。
本実施の形態における図27及び図28の説明では、パラメータ変動判断部306により判断される刺激内容が、短期的あるいは瞬間的な刺激(例えば冷風や温風などの気流刺激、酸素やマイナスイオンなどの物質刺激など)である場合を想定している。ここで、刺激内容が、定常的な刺激(例えばマッサージ刺激などの物理刺激、エアコンによる冷房や暖房などの温冷熱刺激など)である場合のパラメータ変動判断部306での処理について説明する。図29及び図30は、刺激内容が定常的な刺激である場合のパラメータ変動判断部306の処理を示すフローチャートである。
なお、図29及び図30において図27及び図28と同一の処理は同一の符号を付し、説明を省略する。図27に示すステップS120において、パラメータ変動判断部306は、ステップS121’にて刺激出力命令の出力を中止する直前に出力していた刺激出力命令を出力し、処理をステップS111に戻していたが、図29に示すステップS120aにおいては、後述するステップS121’aにて出力していた刺激内容をよりも快適感を向上させるような刺激出力命令、例えばステップS121’aにて出力していた刺激をより強めるような刺激出力命令を出力し、処理をステップS111に戻している。
また、図27に示すステップS121’において、パラメータ変動判断部306は、刺激出力命令を出力していなかったが、図29に示すステップS121’aにおいては、直前に出力していた刺激出力命令を再び出力し、処理をステップS112に戻している。これにより、定常的な刺激を出力する機器を備えたシステムに適用可能となり、技術適用の幅を広げることができる。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部306が、波形成分比c/aの変動からユーザの快適感を推定していたが、実施の形態7で説明したパルスレートPRと本実施の形態で説明した波形成分比c/aとを組み合わせ、両者の変動に基づいてユーザの快適感を推定してもよい。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部306により判断される刺激内容には、刺激の種類、刺激の強度、及び刺激を与える時間等が含まれる。また、刺激の種類には、短期(瞬間)刺激の場合、冷風や温風等の気流刺激、酸素やマイナスイオン等の物質刺激、パルス音などの聴覚刺激、及び光などの視覚刺激等が含まれ、定常刺激の場合、冷房や暖房等の温冷熱刺激、マッサージ等の物理刺激、音楽や超音波などの聴覚刺激、及び照明や映像などの視覚刺激等が含まれる。刺激の強度においては、冷風や温風等の気流刺激であれば風量を上げる制御や下げる制御、酸素やマイナスイオン等の物質刺激であれば物質量を増やす制御や減らす制御、冷房や暖房等の温冷熱刺激であれば設定温度を上げる制御や下げる制御、及びマッサージ等の物理刺激であればもむ強さを強くする制御や弱くする制御など、刺激の強弱に関するコントロールを行うものとする。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をタイミング検知部307に出力し、タイミング検知部307は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したことをトリガとしてアクティブモードになるとしているが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部306に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、パラメータ変動判断部306が、ある一定の時間の経過時、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間の経過時に、時間の経過を示す信号をタイミング検知部307に出力することで、タイミング検知部307をアクティブモードにしてもよい。
また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部306から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部306とを相互に通信可能に接続し、計時部が、時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部306に送信するようにしてもよい。
(実施の形態9)
次に、本発明の実施の形態9による環境制御システムについて説明する。なお、実施の形態9による環境制御システムは、実施の形態6による環境制御システムと同一構成であるため、図21を用いてその構成を説明する。なお、実施の形態9において実施の形態6と同一のものは説明を省略し、相違点のみ説明する。
パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比を、脈波を評価するパラメータとして抽出して図略のメモリに蓄積する。加速度脈波波形については実施の形態6と同様であり、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。
また、パラメータ変動判断部303は、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動を算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判定し、判定した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。
本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比と、刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比との差分を、指尖脈波をサンプリングしたときのサンプリング周期で除して、波形成分比の微分値を算出し、この微分値を用いてユーザの温冷感を推定する。
図31は、本発明の実施の形態9における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS131)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データに基づいて一定時間ごとに波形成分比c/aを抽出して蓄積する(ステップS132)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS133)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS133でNO)、ステップS132の処理へ戻る。
パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS133でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと、刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを求め、その微分値に基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判断し、判断した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS134)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS135)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの温冷感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図32は、本発明の実施の形態9におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS141)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS141でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS141の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS141でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出する(ステップS142)。
ここで、本発明者らは、波形成分比の変動とユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。図33は、本発明者らが被験者実験により見出した、波形成分比とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。
図33において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は波形成分比を示している。このグラフに示すように、ユーザの温冷感は下に凸の二次曲線の形状を有しており、ユーザの温冷感が0付近であるとき、波形成分比は最小の値を示している。また、ユーザの温冷感が増大する、すなわち、ユーザが暑いと感じるほど、波形成分比は増大している。
また、ユーザの温冷感が減少する、すなわち、ユーザが寒いと感じるほど、波形成分比は増大している。従って、このグラフに示すように波形成分比の変動が分かれば、ユーザの温冷感を推定することができる。そこで、本環境制御システムでは、このグラフで示すような波形成分の特性に基づいて、ユーザの温冷感を推定している。なお、ユーザの温冷感が0の場合、ユーザは暑いとも寒いとも感じていない。
図32に示すステップS143において、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する。そして、微分値Δc/aが負である場合(ステップS143でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は寒い状態または暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち、ユーザの温冷感は0に近づき、温冷感は改善したと推定する(ステップS144)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS145)。一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δc/aが負でない場合(ステップS143でNO)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態または暑い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS146)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS147)。
以上説明したように実施の形態9による環境制御システムによれば、脈波のパラメータの変動とユーザの温冷感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いてユーザの温冷感が推定されているため、ユーザの温冷感を精度良く推定することができる。そのため、脈波からユーザの温冷感を推定することが可能となり、ユーザに不快感を与えることなく、ユーザの温冷感を推定することができる。また、脈波を用いてユーザの温冷感を推定しているため、脳波を用いてユーザの温冷感を推定する場合のように専門的かつ高価な機械を用いてシステムを構成する必要がなくなる。その結果、住環境においてユーザが快適感を確実に実感できるシステムを提供することができる。
なお、本実施の形態において、ステップS143において、パラメータ変動判断部303が波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する直前に、波形成分比の微分値Δc/aが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.01から0.01)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合は、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続する、あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容には、冷房・暖房等の温冷熱刺激、冷風・温風等の気流刺激、刺激の強度、及び刺激を与える時間などが含まれる。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出し、この微分値Δc/aを用いてユーザの温冷感を推定しているが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。また、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比のうち、時系列的に前後する波形成分比の差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比とに基づいて微分値を算出するとしているが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、ある一定の時間が経過する直前と直後、又は刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の波形成分比に基づいて微分値を算出しても良い。
また、所定時間における波形成分比の変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303と独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に構成し、計時部が、時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部303に送信する構成を採用してもよい。また、本実施の形態において、ユーザの温冷感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
(実施の形態10)
次に、実施の形態10による環境制御システムについて説明する。なお、実施の形態10による環境制御システムは、実施の形態6による環境制御システムと同一構成であるため、図21を用いてその構成を説明する。なお、実施の形態10において実施の形態6と同一のものは説明を省略し、相違点のみ説明する。
パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比と加速度脈波波高最大値とを、脈波を評価するパラメータとして抽出して蓄積する。加速度脈波波形とは、実施の形態6と同様であり図60に示すような波形となる。本実施の形態においても、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。
また、パラメータ抽出部302は、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを加速度脈波波高最大値として抽出する。パラメータ変動判断部303は、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動と加速度脈波波高最大値の変動とを算出し、算出結果からユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判定し、判定した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。
本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比及び加速度脈波波高最大値と、刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比及び加速度脈波波高最大値との差分を、指尖脈波をサンプリングした所定のサンプリング周期で除して算出した波形成分比の微分値及び加速度脈波波高最大値の微分値に基づいてユーザの温冷感を推定する。
図34は、本発明の実施の形態10における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS161)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aと加速度脈波波高最大値hを抽出して蓄積する(ステップS162)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS163)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS163でNO)、ステップS162の処理へ戻る。
パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS163でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと、刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを求めると共に、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された加速度脈波波高最大値hと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された加速度脈波波高最大値hとに基づいて加速度脈波波高最大値の微分値Δhを求める。そして、パラメータ変動判断部303は、それらの微分値に基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判断し、判断した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS164)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS165)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの温冷感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図35は、本発明の実施の形態10におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS171)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS171でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS171の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS171でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを算出すると共に、パラメータ抽出部302により抽出された加速度脈波波高最大値hのうち、刺激出力信号を受信した直前の加速度脈波波高最大値hと直後の加速度脈波波高最大値hとに基づいて加速度脈波波高最大値の微分値Δhを算出する(ステップS172)。
ここで、本発明者らは、波形成分比の変動及び加速度脈波波高最大値の変動とユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。図36は、本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。図36において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は加速度脈波波高最大値を示している。このグラフに示すように加速度脈波波高最大値は、ユーザの温冷感が増大するにつれて単調増加しているため、加速度脈波波高最大値が分かれば、ユーザの温冷感を推定することができる。
そこで、本実施の形態による環境制御システムでは、図33に示す波形成分比の変動と、図36に示す加速度脈波波高最大値の変動とに基づいて、ユーザの温冷感を推定している。
図35に示すステップS173において、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する。そして、微分値Δc/aが負である場合(ステップS173でYES)、パラメータ変動判断部303は、さらに加速度脈波波高最大値の微分値Δhが0以上であるかを判定する(ステップS174)。そして、微分値Δhが0以上である場合(ステップS174でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS175)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS176)。
一方、微分値Δhが0以上でない場合(ステップS174でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS177)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS176)。
また、微分値Δc/aが負でない場合(ステップS173でNO)、パラメータ変動判断部303は、加速度脈波波高最大値の微分値Δhが0以上であるかを判定する(ステップS178)。そして、微分値Δhが0以上である場合(ステップS178でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から暑い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS179)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば冷刺激を行うまたは温刺激の強度を減少させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS180)。
一方、微分値Δhが0以上でない場合(ステップS178でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS181)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば温刺激を行うまたは冷刺激の強度を減少させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS180)。
以上説明したように、実施の形態10による環境制御システムによれば、加速度脈波の波形成分比の微分値Δc/aと加速度脈波波高最大値の微分値Δhとに基づいてユーザの温冷感が推定されているため、ユーザの温冷感をより精度良く推定することができる。
なお、本実施の形態において、ステップS173において、パラメータ変動判断部303が波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する直前に、波形成分比の微分値Δc/aが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.01から0.01)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。また、ステップS174又はステップS178において、パラメータ変動判断部303が加速度脈波波高最大値の微分値Δhが0以上であるかを判定する直前に、加速度脈波波高最大値の微分値Δhが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.03から0.03)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容には、冷房・暖房等の温冷熱刺激、冷風・温風等の気流刺激、刺激の強度、及び刺激を与える時間などが含まれる。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出するとともに、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の加速度脈波波高最大値hと直前の加速度脈波波高最大値hとに基づいて微分値Δhを算出し、これら微分値(Δc/a、Δh)を用いてユーザの温冷感を推定しているが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出すると共に、直前の加速度脈波波高最大値hと直後の加速度脈波波高最大値hとの差分を算出し、これらの差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。
ここで、波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出するにあたり、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値を算出し、この平均値と、刺激出力信号を受信した直後の波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出してもよい。また、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比のうち、時系列的に前後する波形成分比の差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、加速度脈波波高最大値の微分値Δh又は差分を算出するにあたり、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の加速度脈波波高最大値hの平均値を算出し、この平均値と、刺激出力信号を受信した直後の加速度脈波波高最大値hとに基づいて加速度脈波波高最大値の微分値Δh又は差分を算出してもよい。また、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の加速度脈波波高最大値のうち、時系列的に前後する加速度脈波波高最大値の差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の加速度脈波波高最大値とに基づいて加速度脈波波高最大値の微分値Δh又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
なお、本発明者らは、脈波の振幅の変動及び脈波波高最大値の変動とユーザの温冷感の変動とに高い相関があることも見出した。図37は、本発明者らが被験者実験により見出した、脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。図37に示すように、脈波波高最大値は、ユーザの温冷感が増大するにつれて単調増加していることが分かる。従って、加速度脈波波高最大値の変わりに脈波波高最大値を用いてもユーザの温冷感を推定することができる。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比及び加速度脈波波高最大値に基づいて微分値を算出するとしているが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の加速度脈波の波形成分比及び加速度脈波波高最大値に基づいて微分値を算出しても良い。
また、所定時間における波形成分比及び加速度脈波波高最大値の変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。また、本実施の形態において、ユーザの温冷感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
(実施の形態11)
次に、本発明の実施の形態11による環境制御システムについて説明する。なお、実施の形態11による環境制御システムは、実施の形態6による環境制御システムと同一構成であるため、図21を用いてその構成を説明する。なお、実施の形態11において実施の形態6と同一のものは説明を省略し、相違点のみ説明する。
パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比を、脈波を評価するパラメータとして抽出して蓄積する。加速度脈波波形については実施の形態6と同様である。本実施の形態においても、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。
また、パラメータ変動判断部303は、判定した刺激内容を内部のメモリに保持しておくとともに、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動を算出し、算出結果と保持している刺激内容とに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判定する。このとき、パラメータ変動判断部303は、内部のメモリに保持している刺激内容を更新するとともに、判定した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。なお、パラメータ変動判断部303は、過去一定期間にユーザに与えた刺激内容を保持する。ここで、メモリに保持される刺激内容には、冷房及び暖房等の刺激の種類と、冷房及び暖房等が出力した刺激の強度とが含まれる。
本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比と刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比との差分を上記サンプリング周期で除して算出した波形成分比の微分値と、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した際に内部のメモリに保持している刺激内容とに基づいてユーザの温冷感を推定する。
図38は、本発明の実施の形態11における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS191)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aを抽出して蓄積する(ステップS192)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS193)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS193でNO)、ステップS192の処理へ戻る。
パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS193でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを求める。そして、パラメータ変動判断部303は、その微分値とメモリに保持している刺激内容とに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判断する。パラメータ変動判断部303は、内部のメモリの保持している刺激内容を更新するとともに、判断した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS194)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS195)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの温冷感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図39及び図40は、本発明の実施の形態11におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS201)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS201でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS201の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS201でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとから波形成分比の微分値Δc/aを算出すると共に、内部のメモリに保持している刺激内容を参照する(ステップS202)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する(ステップS203)。そして、微分値Δc/aが負である場合(ステップS203でYES)、パラメータ変動判断部303は、ステップS202で参照した刺激内容が冷感を向上させるような刺激であるかを判断する(ステップS204)。ここで、刺激内容が冷感を向上させるような刺激とは、例えば冷房が該当する。パラメータ変動判断部303は、過去一定期間に蓄積した刺激内容をメモリから読み出して、刺激内容が冷感を向上させるような刺激であるか否かを判定する。
刺激内容が冷感を向上させるような刺激である場合(ステップS204でYES)、パラメータ変動判断部303は、さらに刺激の強度を判定する(ステップS205)。ここで、パラメータ変動判断部303は、過去一定期間にメモリに蓄積された刺激内容が示す刺激の強度のうち、最新の刺激の強度が、それ以前の刺激の強度に対して増大しているとき、刺激の強度が増大したと判定する。そして、刺激の強度が増大していると判定された場合(ステップS205でYES)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS206)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS207)。
一方、刺激の強度が減少していると判定された場合(ステップS205でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS208)。なお、パラメータ変動判断部303は、過去一定期間にメモリに蓄積された刺激内容が示す刺激の強度のうち、最新の刺激の強度が、それ以前の刺激の強度に対して減少しているとき、刺激の強度が減少したと判定する。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS207)。
一方、刺激内容が冷感を向上させるような刺激ではない、すなわち、温感を向上させるような刺激内容であると判定した場合(ステップS204でNO)、パラメータ変動判断部303は、さらに刺激の強度を判定する(ステップS209)。ここで、温感を向上させるような刺激内容としては、例えば暖房が該当する。
パラメータ変動判断部303は、出力する刺激内容が温感の強度を増加させるような刺激であると判定した場合(ステップS209でYES)、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS210)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS207)。
ここで、パラメータ変動判断部303は、過去一定期間にメモリに蓄積された刺激内容が示す刺激の強度のうち、例えば最新の刺激の強度が、それ以前の刺激の強度に対して増大しているとき、刺激の強度が増大したと判定する。そして、パラメータ変動判断部303は、温感の強度を減少させるような刺激である場合(ステップS209でNO)、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS211)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS207)。
一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δc/aが負でないと判定した場合(ステップS203でNO)、さらに刺激内容が冷感を向上させるような刺激であるか否かを判断する(ステップS212)。そして、パラメータ変動判断部303は、刺激内容が冷感を向上させるような刺激であると判定した場合(ステップS212でYES)、さらに刺激の強度を判定する(ステップS213)。
そして、パラメータ変動判断部303は、刺激の強度を増加させるような刺激であると判定した場合(ステップS213でYES)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS214)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば温刺激を行うまたは冷刺激の強度を減少させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS215)。
一方、刺激の強度が減少している場合(ステップS213でNO)、パラメータ変動判断部303は、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から暑い状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS216)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば冷刺激の強度を増加させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS215)。
刺激内容が冷感を向上させるような刺激ではない、すなわち、刺激内容が温感を向上させるような刺激である場合(ステップS212でNO)、パラメータ変動判断部303は、さらに刺激の強度を判定する(ステップS217)。そして、パラメータ変動判断部303は、刺激の強度が増加していると判定した場合(ステップS217でYES)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から暑い状態の方向へと変化した、すなわち、温冷感は悪化したと推定する(ステップS218)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば冷刺激を行うまたは温刺激の強度を減少させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS215)。
一方、パラメータ変動判断部303は、刺激の強度が減少していると判定した場合(ステップS217でNO)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS219)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば温刺激の強度を増加させるなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS215)。
以上説明したように、実施の形態11による環境制御システムによれば、加速度脈波の波形成分比の微分値Δc/aと刺激内容とに基づいてユーザの温冷感が推定されているため、より精度良く温冷感を推定することができる。
なお、本実施の形態において、ステップS203において、パラメータ変動判断部303が波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する直前に、波形成分比の微分値Δc/aが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.01から0.01)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続する、あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303にて、刺激の種類と刺激の強度によりユーザの温冷感を推定しているが、刺激のない状態から温刺激への変化や冷刺激から温刺激への変化など刺激の種類のみの変化でユーザの温冷感を推定してもよいし、過去一定期間における同一刺激の出力回数や刺激出力時間などを考慮してユーザの温冷感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出し、この微分値Δc/aを用いてユーザの温冷感を推定しているが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値と受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比のうち、時系列的に前後する波形成分比の差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比から微分値を算出し、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した際に内部のメモリに保持している刺激内容を参照するとしたが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の波形成分比から微分値を算出し、刺激内容を参照するようにしても良い。また、所定時間における波形成分比の変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。また、本実施の形態において、ユーザの温冷感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
(実施の形態12)
次に、実施の形態12による環境制御システムについて説明する。図41は、本発明の実施の形態12における環境制御システムの構成を示す図である。図41において、図21と同じ構成要素については説明を省略する。本実施の形態は、さらに温度計測部(温度計測手段)308を含んで構成されている。温度計測部308は、ユーザの所在する場所の温度を計測し計測結果(温度データ)をパラメータ変動判断部303へ送信する。また、温度計測部308は、一定時間ごとに温度を計測し、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に必ず温度を計測する。
ここで、パラメータ抽出部302は、脈波データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比を、脈波を評価するパラメータとして抽出して蓄積する。加速度脈波波形とは、実施の形態6と同様であり図60に示すような波形となる。本実施の形態においても、加速度脈波波形の基線から頂点Aまでの距離aを分母とし、基線から頂点Cまでの距離cを分子とするc/aを波形成分比として抽出する。
パラメータ変動判断部303は、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比の変動を算出し、算出結果と温度計測部308からの温度データとに基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判定し、判定した刺激内容による刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304に出力する。なお、パラメータ変動判断部303は、過去に温度計測部308から受信した一定期間の温度データを保持する。
本実施の形態では、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に抽出される波形成分比と、刺激出力信号を受信した直前に抽出された波形成分比との差分を上記サンプリング周期で除して波形成分比の微分値を算出すると共に、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後に温度計測部308から受信した温度データと、刺激出力信号を受信した直前に温度計測部308から受信した温度データとの差分を計測時間間隔で除して温度データの微分値を算出し、両微分値を用いてユーザの温冷感を推定する。
図42は、本発明の実施の形態12における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。まず、生体情報採取部301は脈波の時系列データを採取して蓄積する(ステップS221)。次いで、パラメータ抽出部302は、生体情報採取部301で採取した脈波の時系列データから一定時間ごとに波形成分比c/aを抽出して蓄積する(ステップS222)。
次いで、パラメータ抽出部302は、温度計測部308から受信した温度データtを蓄積する(ステップS223)。次いで、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS224)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS224でNO)、ステップS222の処理へ戻る。
パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したとき(ステップS224でYES)、刺激出力信号を受信した直後にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aと刺激出力信号を受信した直前にパラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aとに基づいて波形成分比の微分値Δc/aを求めると共に、刺激出力信号を受信した直後に温度計測部308から受信した温度データtと刺激出力信号を受信した直前に温度計測部308から受信した温度データtとに基づいて温度データの微分値Δtを求める。そして、パラメータ変動判断部303は、両微分値(Δc/a,Δt)に基づいてユーザの温冷感を推定し、推定結果から刺激内容を判断し、判断した刺激内容に応じた刺激が刺激出力部305から出力されるように刺激出力命令を刺激制御部304へ出力する(ステップS225)。次いで、刺激制御部304は、パラメータ変動判断部303から出力された刺激出力命令に従った刺激を刺激出力部305に出力させる(ステップS226)。
次に、パラメータ変動判断部303におけるユーザの温冷感の推定処理、及び刺激内容の判断処理について説明する。図43は、本発明の実施の形態12におけるパラメータ変動判断部303の処理を示すフローチャートである。
まず、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信したか否かを判断する(ステップS231)。ここで、刺激出力部305から刺激出力信号を受信していない場合(ステップS231でNO)、刺激出力信号が受信されるまでステップS231の処理が所定のタイミングで繰り返し実行される。パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激出力信号を受信すると(ステップS231でYES)、パラメータ抽出部302により抽出された波形成分比c/aのうち、刺激出力信号を受信した直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出すると共に、温度計測部308から受信した温度データtのうち、刺激出力信号を受信した直前の温度データtと直後の温度データtとに基づいて微分値Δtを算出する(ステップS232)。
次いで、パラメータ変動判断部303は、波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する(ステップS233)。そして、微分値Δc/aが負である場合(ステップS233でYES)、パラメータ変動判断部303は、さらに温度データの微分値Δtが正であるか否かを判定する(ステップS234)。そして、パラメータ変動判断部303は、微分値Δtが正であると判定した場合(ステップS234でYES)、ユーザの温冷感は寒い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS235)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS236)。
一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δtが0以下である場合(ステップS234でNO)、ユーザの温冷感は暑い状態から暑くも寒くもない中立状態の方向へと変化した、すなわち温冷感は改善したと推定する(ステップS237)。次に、パラメータ変動判断部303は、温冷感を維持するような刺激出力命令を出力する(ステップS236)。
一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δc/aが負でない場合(ステップS233でNO)、さらに温度データの微分値Δtが正であるか否かを判定する(ステップS238)。そして、パラメータ変動判断部303は、微分値(Δt)が正であると判定した場合(ステップS238でYES)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から暑い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS239)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば冷刺激を行うなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS240)。
一方、パラメータ変動判断部303は、微分値Δtが負である場合(ステップS238でNO)、ユーザの温冷感は暑くも寒くもない中立状態から寒い状態の方向に変化した、すなわち温冷感は悪化したと推定する(ステップS241)。次に、パラメータ変動判断部303は、例えば温刺激を行うなどの温冷感を改善するような刺激出力命令を出力する(ステップS240)。
以上説明したように実施の形態12による環境制御システムによれば、加速度脈波の波形成分比の微分値Δc/aとユーザの所在する場所の温度の微分値(Δt)とからユーザの温冷感が推定されているため、ユーザの温冷感を精度良く推定することができる。
なお、本実施の形態において、ステップS233において、パラメータ変動判断部303が波形成分比の微分値Δc/aが負であるか否かを判定する直前に、波形成分比の微分値Δc/aが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.01から0.01)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、ユーザの温冷感はほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。また、ステップS234またはステップS238において、パラメータ変動判断部303が温度データの微分値Δtが正であるかを判定する直前に、温度データの微分値Δtが予め定められたある特定の範囲(例えば−0.3から0.3)にあるか否かを判断し、特定の範囲内にある場合、温度データはほとんど変化していないと判断し、現在の刺激出力内容を継続あるいは中止するような刺激出力命令を出力するようにしてもよい。
なお、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303により判断される刺激内容には、冷房及び暖房等の温冷熱刺激、冷風及び温風等の気流刺激、刺激の強度、及び刺激を与える時間などが含まれる。
また、本実施の形態において、パラメータ変動判断部303は、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の波形成分比c/aと直前の波形成分比c/aとに基づいて微分値Δc/aを算出するとともに、刺激出力部305から刺激が出力されたときの直後の温度データtと直前の温度データtとに基づいて微分値Δtを算出し、これら微分値(Δc/a、Δt)を用いてユーザの温冷感を推定しているが、これに限定されず、直前の波形成分比c/aと直後の波形成分比c/aとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよいし、直前の温度データtと直後の温度データtとの差分を算出し、その差分に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比c/aの平均値と刺激出力信号を受信した直後の波形成分比とに基づいて波形成分比の微分値Δc/a又は差分を算出し、その結果に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の波形成分比のうち、時系列的に前後する波形成分比の差分の平均値を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において受信された複数の温度データtの平均値と刺激出力信号を受信した直後の温度データtとに基づいて温度データの微分値Δt又は差分を算出し、その結果に基づいてユーザの温冷感を推定してもよい。また、パラメータ変動判断部303は、刺激出力信号の受信時から過去一定期間において抽出された複数の温度データのうち、時系列的に前後する温度データの差分の平均値と刺激出力信号を受信した直後の温度データとに基づいて温度データの微分値Δt又は差分を算出し、その結果を用いてユーザの温冷感を推定してもよい。
また、本実施の形態において、刺激出力部305は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号をパラメータ変動判断部303に出力し、パラメータ変動判断部303は刺激出力信号の受信の直前と直後の波形成分比の微分値及び温度データの微分値を算出するとしているが、本発明は特にこれに限定されず、パラメータ変動判断部303に時間を計測する計時部を具備させ、刺激出力部305が刺激出力信号を出力せず、ある一定の時間が経過する直前と直後、または刺激内容に含まれる刺激を与える時間が経過する直前と直後の波形成分比の微分値及び温度データの微分値を算出するようにしても良い。
また、所定時間における波形成分比と温度データの変化率を微分値としてもよい。また、時間を計測する計時部をパラメータ変動判断部303から独立させ、計時部とパラメータ変動判断部303とを相互に通信可能に接続し、計時部が時間計測の開始と時間の経過とをパラメータ変動判断部303に送信するようにしてもよい。
また、本実施の形態において、温度計測部308は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号を受信した直後には必ず温度を計測するとしているが、これに限らず、温度計測部308は、刺激出力部305が刺激を出力するときに出力する刺激出力信号の受信を行わず、パラメータ変動判断部303からの要求に基づき温度を計測するような方法でも良い。
また、温度データはパラメータ変動判断部303に蓄積されるとしているが、温度計測部308が温度データを蓄積し、パラメータ変動判断部303からの要求に基づき温度データを送信するような方法でも良い。
さらに、温度計測部308で温度データを蓄積し、パラメータ変動判断部303からの要求に基づき微分値を算出し、算出結果をパラメータ変動判断部303へ送信するような方法でもかまわない。また、温度計測部308とは別の時間を計測する計時部から、ある一定時間の経過を示すメッセージを受信したときにも温度の計測や微分値の算出を行うようにしても良い。また、本実施の形態において、ユーザの温冷感の推定結果を、モニタなどの表示部に表示させてユーザに提示してもよい。
(実施の形態13)
図44は、本発明の実施の形態13における環境制御装置の構成を示すブロック図である。図44において、環境制御装置406は、脈波計測部401、脈波パラメータ算出部402、脈波パラメータ変化算出部403、温冷感変化推定部404及び機器制御決定部405を備える。
脈波計測部401はユーザの脈波を計測する。脈波パラメータ算出部402は、脈波計測部401で計測した脈波データから脈波波形の特徴を表す脈波パラメータを算出する。脈波パラメータ変化算出部403は、脈波パラメータ算出部402で算出された脈波パラメータの値の時間変化を算出する。温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403で算出された脈波パラメータの変化に基づきユーザの温冷感の変化を推定する。機器制御決定部405は、温冷感変化推定部404で推定されたユーザの温冷感の変化の推定結果に基づき温冷熱機器407の制御内容を決定する。温冷熱機器407は、例えばエアコン、床暖房システム、電気カーペット、カーエアコン及び座席シートヒータ等であり、ユーザに対して温冷熱刺激を出力する。
本発明に係る環境制御プログラムがインストールされたコンピュータの中央演算処理装置(CPU)が当該プログラムを実行することにより、脈波計測部401、脈波パラメータ算出部402、脈波パラメータ変化算出部403、温冷感変化推定部404及び機器制御決定部405として機能する。
次に、図44に示す環境制御装置による環境制御処理について説明する。図45は、図44に示す環境制御装置による環境制御処理の流れを示すフローチャートである。
まず、脈波計測部401は、脈波を計測し、脈波の時系列データを取得する(ステップS251)。例えば、脈波計測部401は、発光素子により近赤外光をユーザの指又は耳たぶの皮膚表面に照射し、受光素子により透過光又は反射光を受光し、受光した光の変化を電気信号に変換することで血流量の変化を検出し、脈波の時系列データを取得する。
次に、脈波パラメータ算出部402は、脈波計測部401により計測された脈波の時系列データを2階微分した加速度脈波波形パラメータ、あるいはTakensの埋め込み定理に従って脈波の時系列データを遅れ時間座標系に埋め込んで得られるアトラクタの非定常性を可視化するリカレンスプロットにおける白の割合を数値化したリカレンスプロット白色描画率(以下、RP−dwとする)を算出する(ステップS252)。これら加速度脈波波形パラメータ又はRP−dwが脈波パラメータである。
次に、脈波パラメータ変化算出部403は、脈波パラメータ算出部402で算出された加速度脈波波形パラメータあるいはRP−dwの値から、予め設定された所定時間前の、加速度脈波波形パラメータあるいはRP−dwの値を減じて、所定時間における脈波パラメータの値の時間変化を算出する(ステップS253)。
次に、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403で算出された所定時間における脈波パラメータの値の時間変化に基づき、ユーザの温冷感の変化を推定する(ステップS254)。なお温冷感の変化の推定の方法については後述する。
次に、機器制御決定部405は、温冷感変化推定部404で推定されたユーザの温冷感の変化の推定結果に基づき温冷熱機器407の制御内容を決定する(ステップS255)。例えば、温冷感の変化の推定結果が‘温冷感低下’であれば、機器制御決定部405は、温冷感が上昇するように温冷熱機器407の制御内容を決定する。また、温冷感の変化の推定結果が‘温冷感上昇’であれば、機器制御決定部405は、温冷感が低下するように温冷熱機器407の制御内容を決定する。そして、機器制御決定部405は、温冷熱機器407にその制御内容を出力する(ステップS256)。
ここで、図45で示したステップS254におけるユーザの温冷感の変化の推定処理について説明する。本発明者らは、脈波パラメータとして、加速度脈波波形成分比d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwの各変動と、ユーザの温冷感の変動とに高い相関があることを見出した。図46は、本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwとユーザの温冷感との相関を表すグラフである。また、図47は、本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比b/aとユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
図46において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は加速度脈波波形成分比d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwを示している。また、図47において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は加速度脈波波形成分比b/aを示している。これらのグラフに示すように、ユーザの温冷感が上昇した場合、すなわち、温冷感が寒い状態から暑くもなく寒くもない中立状態の方向あるいは温冷感が暑くもなく寒くもない中立状態から暑い状態の方向に変化した場合、加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwは増加する。また、ユーザの温冷感が低下した場合、すなわち、暑い状態から暑くもなく寒くもない中立状態の方向あるいは暑くもなく寒くもない中立状態から寒い状態の方向に変化した場合、加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwは減少する。本発明者らは、加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwと温冷感とがこのような相関関係にあることを見出したのである。
したがって、加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅又はRP−dwの変化がわかればユーザの温冷感変化を推定することができる。温冷感変化推定部404は、上述した加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅及びRP−dwのうちのひとつの脈波パラメータ(以下、加速度脈波波形成分比d/aとする)に関して、その変化とユーザの温冷感変化との相関関係を予め保持している。
図48は、実施の形態13における温冷感変化推定部404による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。まず、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403から加速度脈波波形成分比d/aの所定時間内における時間変化量を受信する(ステップS261)。次に、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が0より小さいか否かを判断する(ステップS262)。すなわち、温冷感変化推定部404は、加速度脈波波形成分比d/aが減少しているか否かを判断する。
脈波パラメータの時間変化量が0より小さいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが減少していると判断された場合(ステップS262でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が低下したと推定する(ステップS263)。一方、時間変化量が0以上であると判断された場合(ステップS262でNO)、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が0より大きいか否かを判断する(ステップS264)。すなわち、温冷感変化推定部404は、加速度脈波波形成分比d/aが増加しているか否かを判断する。
脈波パラメータの時間変化量が0より大きいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが増加していると判断された場合(ステップS264でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が上昇したと推定する(ステップS265)。一方、脈波パラメータの時間変化量が0より大きくないと判断された場合、すなわち時間変化量が0であり、加速度脈波波形成分比d/aが変化していないと判断された場合(ステップS264でNO)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が変化していないと推定する(ステップS266)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS267)。
かかる構成によれば、温冷感変化推定部404が加速度脈波波形成分比b/a,d/a、加速度脈波振幅及びRP−dwのうちのひとつのパラメータを基に、ユーザの温冷感が上昇したか、あるいはユーザの温冷感が低下したか、あるいはユーザの温冷感が変化していないかを推定することにより、個人差のある脈波パラメータの絶対値を用いることなくユーザの温冷感の変化を推定することができ、ユーザの温冷感に基づいて居住環境を構成する空調機器などの温冷熱機器407を適切に制御することができる。
ここで、本実施の形態の第1の変形例について説明する。上記実施の形態では、図48のステップS262及びステップS264において、脈波パラメータの値の時間変化量が、負、0及び正のいずれであるかによってユーザの温冷感の変化を推定している。これに対し、本実施の形態の第1の変形例では、閾値L1,L2(ただし、L1<L2)が設定され、この閾値L1,L2と時間変化量とを比較することによりユーザの温冷感の変化を推定している。
図49は、実施の形態13の第1の変形例における温冷感変化推定部404による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。なお、図49に示すステップS271,S273,S275,S276,S277の処理は、図48に示すステップS261,S263,S265,S266,S267の処理と同じであるので詳細な説明を省略し、図48とは異なるステップS272,S274の処理を主に説明する。
ステップS272において、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より小さいか否かを判断する。すなわち、温冷感変化推定部404は、加速度脈波波形成分比d/aが実質的に減少しているか否かを判断する。
脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より小さいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが実質的に減少していると判断された場合(ステップS272でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が低下したと推定する(ステップS273)。一方、時間変化量が閾値L1以上であると判断された場合(ステップS272でNO)、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より大きい閾値L2より大きいか否かを判断する(ステップS274)。すなわち、温冷感変化推定部404は、加速度脈波波形成分比d/aが実質的に増加しているか否かを判断する。
脈波パラメータの時間変化量が閾値L2より大きいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが実質的に増加していると判断された場合(ステップS274でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が上昇したと推定する(ステップS275)。一方、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1以上かつ閾値L2以下であると判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比d/aが実質的に変化していないと判断された場合(ステップS274でNO)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が変化していないと推定する(ステップS276)。
次に、本実施の形態の第2の変形例について説明する。図45で示したステップS254でのユーザの温冷感の変化の推定処理について、本発明者らは、脈波パラメータとして、カオス統計量である軌道平行測度中央値(TPMMed)の変動とユーザの温冷感の変動とにも高い相関があることを見出した。図50は、本発明者らが被験者実験により見出した、軌道平行測度中央値とユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
図50において、横軸はユーザの温冷感を示し、縦軸は軌道平行測度中央値を示している。このグラフに示すように、ユーザの温冷感が上昇した場合、すなわち、寒い状態から暑くもなく寒くもない中立状態の方向あるいは暑くもなく寒くもない中立状態から暑い状態の方向へ変化した場合、軌道平行測度中央値は減少する。また、ユーザの温冷感が低下した場合、すなわち、暑い状態から暑くもなく寒くもない中立状態の方向あるいは暑くもなく寒くもない中立状態から寒い状態の方向に変化した場合、軌道平行測度中央値は増加する。本発明者らは、軌道平行測度中央値と温冷感とがこのような相関関係にあることを見出したのである。
したがって、軌道平行測度中央値の変化がわかればユーザの温冷感変化を推定することができる。温冷感変化推定部404は、上述した軌道平行測度中央値に関して、その変化とユーザの温冷感変化との相関関係を予め保持している。
図51は、実施の形態13の第2の変形例における温冷感変化推定部404による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。まず、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403から軌道平行測度中央値の所定時間内における時間変化量を受信する(ステップS281)。次に、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より小さいか否かを判断する(ステップS282)。すなわち、温冷感変化推定部404は、軌道平行測度中央値が実質的に減少しているか否かを判断する。
時間変化量が予め設定された閾値L1より小さいと判断された場合、すなわち軌道平行測度中央値が実質的に減少していると判断された場合(ステップS282でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が上昇したと推定する(ステップS283)。一方、時間変化量が閾値L1以上であると判断された場合(ステップS282でNO)、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータの時間変化量が閾値L1より大きい閾値L2より大きいか否かを判断する(ステップS284)。すなわち、温冷感変化推定部404は、軌道平行測度中央値が実質的に増加しているか否かを判断する。
時間変化量が予め設定された閾値L2より大きいと判断された場合、すなわち軌道平行測度中央値が実質的に増加していると判断された場合(ステップS284でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が低下したと推定する(ステップS285)。一方、時間変化量が閾値L1以上かつ閾値L2以下であると判断された場合、すなわち軌道平行測度中央値が実質的にほとんど変化していないと判断された場合(ステップS284でNO)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が変化していないと推定する(ステップS286)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS287)。
なお、加速度脈波波形成分比c/aについて、実施の形態9における図33は、横軸のユーザの温冷感に対して2次の相関をとったグラフであり、これを1次の相関で置き換えた場合、ユーザの温冷感が上昇した場合に加速度脈波波形成分比c/aは減少し、ユーザの温冷感が低下した場合に加速度脈波波形成分比c/aは増加するという図50に示される軌道平行測度中央値(TPMMed)の相関関係と同様の関係と見なすことができる。よって、加速度脈波波形成分比c/aの時間変化量を用いて本実施の形態の第2の変形例の処理を行ってもよい。
かかる構成によれば、温冷感変化推定部404が軌道平行測度中央値の変化を基にユーザの温冷感が上昇したか、あるいはユーザの温冷感が低下したか、あるいはユーザの温冷感が変化していないかを推定することにより、個人差のある脈波パラメータの絶対値を用いることなくユーザの温冷感の変化を推定することができ、ユーザの温冷感に基づいて居住環境を構成する空調機器などの温冷熱機器407を適切に制御することができる。
(実施の形態14)
図52は、本発明の実施の形態14における環境制御装置の構成を示すブロック図である。図52において、図44と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
図52において、実施の形態13の図44と異なる点は、環境制御装置406が、脈波パラメータ算出部421,422と脈波パラメータ変化算出部431,432と温冷感変化推定部441,442とを複数組備え、さらに温冷感変化決定部408を備えている点である。第1脈波パラメータ算出部421、第1脈波パラメータ変化算出部431及び第1温冷感変化推定部441と、第2脈波パラメータ算出部422、第2脈波パラメータ変化算出部432及び第2温冷感変化推定部442とは、実施の形態13で説明した本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比b/a、d/a、c/a、加速度脈波振幅、RP−dw及び軌道平行測度中央値のうちの互いに異なるパラメータを算出し、その時間変化量を算出し、その変化量の算出結果と、上記のパラメータとユーザの温冷感の変化との相関に基づき、ユーザの温冷感の変化を同時にそれぞれ推定する。
温冷感変化決定部408は、第1脈波パラメータ算出部421と第1脈波パラメータ変化算出部431と第1温冷感変化推定部441とで推定されたユーザの温冷感の変化の推定結果と、第2脈波パラメータ算出部422と第2脈波パラメータ変化算出部432と第2温冷感変化推定部442とで推定されたユーザの温冷感の変化の推定結果とを比較して、ユーザの温冷感の変化の推定結果を決定する。
図53は、実施の形態14における温冷感変化決定部408による温冷感変化決定処理の流れを示すフローチャートである。まず、温冷感変化決定部408は、第1温冷感変化推定部441及び第2温冷感変化推定部442から、それぞれ互いに異なるパラメータに基づき推定したユーザの温冷感の変化の推定結果を受信する(ステップS291)。次に、温冷感変化決定部408は、受信した2つの温冷感の推定結果を比較し、2つの温冷感の推定結果が一致するか否かを判断する(ステップS292)。2つの温冷感の推定結果が一致すると判断された場合(ステップS292でYES)、温冷感変化決定部408は、一致した温冷感の変化の推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS293)。一方、2つの温冷感の推定結果が一致しないと判断された場合(ステップS292でNO)、温冷感変化決定部408は、機器制御決定部405に温冷感の推定結果を出力せずに、処理を終了する。
その結果、機器制御決定部405は、温冷感の変化の推定結果を受信したとき、その受信した温冷感の推定結果に基づき温冷熱機器407の制御内容を決定する(図45のステップS255)。例えば、温冷感の変化の推定結果が‘温冷感低下’であれば、機器制御決定部405は、温冷感が上昇するように温冷熱機器407の制御内容を決定する。また、温冷感の変化の推定結果が‘温冷感上昇’であれば、機器制御決定部405は、温冷感が低下するように温冷熱機器407の制御内容を決定する。そして、機器制御決定部405は、温冷熱機器407にその制御内容を出力する(図45のステップS256)。
また、機器制御決定部405から温冷感の変化の推定結果を受信しなかった場合、すなわち温冷感変化決定部408で2つの温冷感の推定結果が一致せずに温冷感の変化の推定結果が出力されなかった場合、機器制御決定部405は、ユーザの温冷感に明確な変化がなかったと判断し、現状の温冷熱機器407の制御内容を維持する。
かかる構成によれば、複数のそれぞれ異なる脈波パラメータに基づいてユーザの温冷感の変化が同時に推定され、その複数の推定結果を比較して温冷感の変化が決定されるので、脈波が温冷熱環境の変化以外の影響を受けて変化する可能性があるが、温冷熱環境の変化によるユーザの温冷感変化を精度よく推定することができる。また、複数の温冷感の推定結果が一致した場合にその推定結果が出力され、一致しない場合出力されないので、温冷熱環境の変化以外の要因により1の脈波パラメータが変化した場合であっても、温冷熱機器407の制御内容が変更されず、ユーザに不快感を与えることを回避することができる。
なお、本実施の形態における環境制御装置は、脈波パラメータ算出部、脈波パラメータ変化算出部及び温冷感変化推定部を2組備えているが、本発明は特にこれに限定されず、3組以上備えてもよい。この場合、各脈波パラメータ算出部はそれぞれ異なる脈波パラメータを算出する。
(実施の形態15)
以下、本発明の実施の形態15について説明する。実施の形態15において、前述の実施の形態13や実施の形態14と異なる点は、図52の温冷感変化決定部408の処理である。なお、実施の形態15における環境制御装置の構成は、実施の形態14における環境制御装置の構成と同じであるので説明を省略する。
図54は、実施の形態15における温冷感変化決定部408による温冷感変化決定処理の流れを示すフローチャートである。まず、温冷感変化決定部408は、第1温冷感変化推定部441及び第2温冷感変化推定部442から、それぞれ互いに異なるパラメータに基づき推定したユーザの温冷感の変化の推定結果を受信する(ステップS301)。次に、温冷感変化決定部408は、受信した2つの温冷感の推定結果を比較し、図55に示すテーブルに従って温冷感の推定結果と係数kとを決定する(ステップS302)。
図55は、実施の形態15において、第1温冷感変化推定部及び第2温冷感変化推定部による推定結果と、温冷感変化決定部によって決定される温冷感の変化及び係数kとを関連付けたテーブルの一例を示す図である。なお、このテーブルは、温冷感変化決定部408の内部メモリに予め記憶されている。
すなわち、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感上昇の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感上昇かつ、例えば係数k=1と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感低下の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感低下かつ、例えば係数k=1と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感変化なしかつ、例えば係数k=0と決定する。
また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感上昇で他方が温冷感低下の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感変化なしかつ、例えば係数k=0と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感上昇で他方が温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感上昇かつ、例えば係数k=0.5と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感低下で他方が温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感低下かつ、例えば係数k=0.5と決定する。その後、温冷感変化決定部408は、決定した温冷感変化と係数kとを機器制御決定部405に出力する(ステップS303)。
図56は、実施の形態15における機器制御決定部405による制御内容決定処理の流れを示すフローチャートである。まず、機器制御決定部405は、温冷感変化決定部408によって決定された温冷感変化と係数kとを受信する(ステップS311)。次に、機器制御決定部405は、受信した温冷感の変化が温冷感低下であるか否かを判断する(ステップS312)。温冷感の変化が温冷感低下であると判断された場合(ステップS312でYES)、機器制御決定部405は、温冷感低下時における所定変化量に係数kを乗じた値を前回の制御内容に加え、温冷熱機器407の今回の制御内容を算出する(ステップS313)。
一方、温冷感の変化が温冷感低下でないと判断された場合(ステップS312でNO)、機器制御決定部405は、温冷感の変化が温冷感上昇であるか否かを判断する(ステップS314)。温冷感の変化が温冷感上昇であると判断された場合(ステップS314でYES)、機器制御決定部405は、温冷感上昇時における所定変化量に係数kを乗じた値を前回の制御内容に加え、温冷熱機器407の今回の制御内容を算出する(ステップS315)。
また、温冷感の変化が温冷感上昇でないと判断された場合、すなわち温冷感変化なしである場合(ステップS314でNO)、機器制御決定部405は、温冷熱機器407の今回の制御内容を前回の制御内容と同じにする(ステップS316)。その後、機器制御決定部405は、算出した制御内容を温冷熱機器407に出力する(図45のステップS256)。その結果、温冷熱機器407は、温冷感の推定結果と係数kとに基づいた制御内容で制御される。
かかる構成によれば、複数のそれぞれの脈波パラメータに基づいてユーザの温冷感の変化が同時に推定され、その複数の推定結果を比較して温冷感の変化が決定されるので、温冷熱環境の変化によるユーザの温冷感の変化を精度よく推定することができる。また、複数の温冷感の推定結果が一致した場合にその推定結果が出力され、一致しない場合出力されないので、温冷熱環境の変化以外の要因により1の脈波パラメータが変化した場合であっても、温冷熱機器407の制御内容が変更されず、ユーザに不快感を与えることを回避することができる。さらに、複数の脈波パラメータに基づく温冷感の変化の推定結果に応じて、制御内容の変化量も適切に決定されるので、ユーザに対してより快適な温冷熱環境を提供することができる。
なお、制御内容の変化量とは、例えば、エアコンの風量の変化量、設定室温の変化量、設定吹出し温度の変化量、圧縮機の周波数の変化量、膨張弁の開度の変化量、床暖房システムの設定温度の変化量、電気カーペットや座席シートヒータのヒータON時間の変化量、およびヒータ容量の変化量などである。
また、上記説明では、係数kを0、0.5、1として説明したが、本発明は特にこれに限定されず、複数の脈波パラメータ変化に基づき推定したそれぞれの温冷感の変化の推定結果のうち、一致する割合が高いほど係数kの値を大きくしてもよい。
(実施の形態16)
以下、本発明の実施の形態16について説明する。実施の形態16において、前述の実施の形態13〜実施の形態15と異なる点は、本発明者らが被験者実験により見出した、図47に示す加速度脈波波形成分比b/aとユーザの温冷感との相関に関し、特に温冷感が1以上で温冷感変化に対して加速度脈波パラメータb/aがほとんど変化しなくなることをさらに見出して応用したことにある。具体的には、図44の温冷感変化推定部404の処理が異なる。なお、実施の形態16における環境制御装置の構成は、実施の形態13における環境制御装置の構成と同じであるので説明を省略する。
図57は、実施の形態16における温冷感変化推定部404による温冷感変化推定処理の流れを示すフローチャートである。まず、温冷感変化推定部404は、脈波パラメータ変化算出部403から加速度脈波波形成分比b/aの所定時間内における時間変化量を受信する(ステップS321)。
次に、温冷感変化推定部404は、時間変化量が予め設定された閾値L1より小さいか否かを判断する(ステップS322)。時間変化量が予め設定された閾値L1未満であると判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが実質的に減少していると判断された場合(ステップS322でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が低下したと推定する(ステップS323)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS329)。
一方、時間変化量が閾値L1以上であると判断された場合(ステップS322でNO)、温冷感変化推定部404は、時間変化量が閾値L1より大きい閾値L2より大きいか否かを判断する(ステップS324)。時間変化量が予め設定された閾値L2より大きいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが実質的に増加している場合(ステップS324でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が上昇したと推定する(ステップS325)。また、時間変化量が閾値L1以上かつ閾値L2以下であると判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが実質的にほとんど変化していない場合(ステップS324でNO)、温冷感変化推定部404は、さらに前回の時間変化量を参照し、前回の時間変化量が予め設定された閾値L2以下であるか否かを判断する(ステップS326)。
前回の時間変化量が予め設定された閾値L2以下であると判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが前回も実質的に変化していなかった、あるいは実質的に減少していた場合(ステップS326でYES)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が変化していないと推定する(ステップS327)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS329)。
一方、前回の時間変化量が予め設定された閾値L2より大きいと判断された場合、すなわち加速度脈波波形成分比b/aが前回実質的に増加していた場合(ステップS326でNO)、温冷感変化推定部404は、ユーザの温冷感が所定値以上に上昇したと推定する(ステップS328)。その後、温冷感変化推定部404は、推定結果を機器制御決定部405に出力する(ステップS329)。
かかる構成によれば、本発明者らが見出した、ユーザの温冷感が所定値(1:やや暖かい)以上で温冷感の変化に対して加速度脈波パラメータb/aがほとんど変化しなくなることを応用して、加速度脈波パラメータb/aの変化を基にユーザの温冷感が上昇した、あるいはユーザの温冷感が低下した、あるいはユーザの温冷感が変化していないと推定するだけでなく、さらにユーザの温冷感が所定値(1:やや暖かい)以上に暖まったかどうかまで推定することができる。したがって、個人差のある脈波パラメータの絶対値を用いることなくユーザの温冷感変化を推定でき、その温冷感に基づいて居住環境を構成する温冷熱機器407を適切に制御することができる。
さらに、ユーザが暖まっているかどうかまで推定できるので、ユーザが暖まりすぎの際には温冷熱機器407の加熱能力を抑制して省エネルギー化にも貢献することができ、あるいは温冷熱機器407の冷却能力を増大して速やかに暑くもなく寒くもない快適な温冷熱環境を実現することも可能となる。
(実施の形態17)
以下、本発明の実施の形態17について説明する。実施の形態17において、前述の実施の形態13〜実施の形態16と異なる点は、本発明者らが被験者実験により見出した、図47に示す加速度脈波波形成分比b/aとユーザの温冷感との相関に関し、特に温冷感が1以上で温冷感変化に対して加速度脈波パラメータb/aがほとんど変化しなくなることをさらに見出して応用したことにある。具体的には、実施の形態16で説明した温冷感変化推定結果を受信した図52の温冷感変化決定部408の処理が異なり、さらに具体的には、図54のステップS302での温冷感変化の決定方法と係数kの決定方法とが異なる。
以下、図52、図54及び図58を用いて、実施の形態17について説明する。まず、図54において、温冷感変化決定部408は、第1温冷感変化推定部441及び第2温冷感変化推定部442から、それぞれ互いに異なるパラメータに基づき推定したユーザの温冷感の変化の推定結果を受信する(ステップS301)。ここで、第1温冷感変化推定部441は、加速度脈波波形成分比b/aの時間変化量に基づきユーザの温冷感の変化を推定する。次に、温冷感変化決定部408は、受信した2つの温冷感推定結果を比較し、図58に示すテーブルに従って温冷感の推定結果と係数kとを決定する(ステップS302)。
図58は、実施の形態17において、第1温冷感変化推定部及び第2温冷感変化推定部による推定結果と、温冷感変化決定部によって決定される温冷感の変化及び係数kとを関連付けたテーブルの一例を示す図である。なお、このテーブルは、温冷感変化決定部408の内部メモリに予め記憶されている。
すなわち、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感上昇の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感上昇かつ係数k=1と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感低下の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感低下かつ係数k=1と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とが、ともに温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感変化なしかつ係数k=0と決定する。
また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感上昇で他方が温冷感低下の場合、温冷感変化決定部408は、温冷感変化なしかつ係数k=0と決定する。また、第1温冷感変化推定部441での推定結果と、第2温冷感変化推定部442での推定結果とのうち、一方が温冷感低下で他方が温冷感変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感低下かつ係数k=0.5と決定する。ここまでは実施の形態15と同様である。また、加速度脈波波形成分比b/aの時間変化量に基づき推定された第1温冷感変化推定部441での推定結果が温冷感上昇、かつ、加速度脈波波形成分比b/a以外の時間変化量に基づき推定された第2温冷感変化推定部442での推定結果が変化なしの場合、温冷感変化決定部408は、温冷感上昇かつ係数k=0.5と決定する。
加速度脈波波形成分比b/aの時間変化量に基づき推定された第1温冷感変化推定部441での推定結果が変化なし、かつ、加速度脈波波形成分比b/a以外の時間変化量に基づき推定された第2温冷感変化推定部442での推定結果が温冷感上昇の場合、温冷感変化決定部408は、温冷熱機器407が加熱運転の時には加熱能力が過大である、あるいは温冷熱機器407が冷却運転の時には冷却能力が不足していると推定して、温冷感が所定値以上(1:やや暖かい〜3:暑い)に上昇したと決定し、係数k=1と決定する。その後、温冷感変化決定部408は、決定した温冷感変化と係数kを機器制御決定部405に出力する(ステップS303)。
以下に、引き続き図59を用いて、実施の形態17における機器制御決定部405による制御内容決定処理について説明する。図59は、実施の形態17における機器制御決定部405の処理の流れを示すフローチャートである。まず、機器制御決定部405は、温冷感変化決定部408によって決定された温冷感変化と係数kとを受信する(ステップS331)。次に、機器制御決定部405は、受信した温冷感の変化が温冷感低下であるか否かを判断する(ステップS332)。
温冷感の変化が温冷感低下であると判断された場合(ステップS332でYES)、機器制御決定部405は、温冷感低下時における所定変化量に係数kを乗じた値を前回の制御内容に加え、温冷熱機器407の今回の制御内容を算出する(ステップS333)。一方、温冷感の変化が温冷感低下でないと判断された場合(ステップS332でNO)、機器制御決定部405は、温冷感の変化が温冷感上昇又は温冷感所定値以上であるか否かを判断する(ステップS334)。
温冷感上昇あるいは温冷感所定値以上であると判断された場合(ステップS334でYES)、機器制御決定部405は、温冷感上昇時における所定変化量に係数kを乗じた値を前回の制御内容に加え、温冷熱機器407の今回の制御内容を算出する(ステップS335)。また、温冷感の変化が温冷感上昇でない、又は温冷感所定値以上でないと判断された場合、すなわち温冷感変化なしである場合(ステップS334でNO)、機器制御決定部405は、温冷熱機器407の今回の制御内容を前回の制御内容と同じにする(ステップS336)。その後、機器制御決定部405は、算出した制御内容を温冷熱機器407に出力する(図45のステップS256)。その結果、温冷熱機器407は、温冷感推定結果と係数kとに基づいた制御内容で制御される。
かかる構成によれば、複数のそれぞれの脈波パラメータに基づいてユーザの温冷感の変化が同時に推定され、その複数の推定結果を比較して温冷感の変化が決定されるので、温冷熱環境の変化によるユーザの温冷感の変化を精度よく推定することができる。また、複数の温冷感の推定結果が一致した場合にその推定結果が出力され、一致しない場合出力されないので、温冷熱環境の変化以外の要因により1の脈波パラメータが変化した場合であっても、温冷熱機器407の制御内容が変更されず、ユーザに不快感を与えることを回避することができる。
さらに、複数の脈波パラメータに基づく温冷感の変化の推定結果に応じて、制御内容の変化量も適切に決定されるので、ユーザにより快適な温冷熱環境を提供することができる。なお、制御内容の変化量とは、例えば、エアコンの風量の変化量、設定室温の変化量、設定吹出し温度の変化量、圧縮機の周波数の変化量、膨張弁の開度の変化量、床暖房システムの設定温度の変化量、電気カーペットや座席シートヒータのヒータON時間の変化量、およびヒータ容量の変化量などである。
さらにまた、本発明者らが見出した、ユーザの温冷感が所定値(1:やや暖かい)以上で温冷感の変化に対して加速度脈波パラメータb/aがほとんど変化しなくなることを応用して、実施の形態16と同様にユーザが暖まっているかどうかまで推定することができる。したがって、ユーザが暖まりすぎの際には温冷熱機器407の加熱能力を抑制して省エネルギー化にも貢献することができ、あるいは温冷熱機器407の冷却能力を増大して速やかにユーザを暑くもなく寒くもない、すなわち寒さや暑さを取り除いた快適な温冷熱環境を実現することも可能となる。
なお、上記説明では、係数kを0、0.5、1として説明したが、本発明は特にこれに限定されず、複数の脈波パラメータ変化に基づき推定したそれぞれの温冷感の変化の推定結果のうち、一致する割合が高いほど係数kの値を大きくしてもよい。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る環境制御装置は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段とを備える。
本発明の他の局面に係る環境制御方法は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得ステップと、前記生体情報取得ステップにおいて取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップにおいて算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定ステップと、前記推定ステップによる推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御ステップとを含む。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムは、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる環境制御プログラムを記録している。
これらの構成によれば、ユーザの生体情報の時系列データをカオス解析して生体情報に関するパラメータが算出される。そして、算出されたパラメータに基づいて刺激に対するユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。すなわち、ユーザの快適感が悪化するような推定結果が得られた場合、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えられる。
したがって、ユーザの生体情報の時系列データをカオス解析して算出されたパラメータに基づいて快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御されるので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記生体情報はユーザの脈波であり、前記刺激制御手段はユーザに与える温冷熱刺激の生成を制御し、前記推定手段は、前記温冷熱刺激に対するユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するパラメータに基づいてユーザの温冷感が推定され、推定結果を基にユーザに与える刺激の生成が制御される。そのため、生体情報の中でも容易に取得可能な脈波からユーザの温冷感が推定されるので、ユーザに不快感を与えることなく、容易にユーザの温冷感を推定することができる。また、脈波を用いてユーザの温冷感を推定しているため、脳波を用いてユーザの温冷感を推定する場合のように専門的かつ高価な機械を用いて装置を構成する必要がなくなり、簡単かつ安価な機械を用いて装置を構成することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数、リカレンスプロット白色描画率及び軌道平行測度中央値のいずれかをパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数、リカレンスプロット白色描画率及び軌道平行測度中央値のいずれかがパラメータとして算出され、算出されたパラメータに基づいてユーザの温冷感が推定される。したがって、従来のように個人差のある生体情報(脈波パラメータ)の絶対値を用いることなくユーザの温冷感を推定することができ、ユーザの温冷感に基づいて居住環境を構成する空調機器などの温冷熱機器を適切に制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数をパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数がパラメータとして算出され、最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定される。
したがって、温冷感が悪化したと推定された場合、ユーザの温冷感を向上させるような温冷熱刺激を与え、温冷感が改善したと推定された場合、現在の制御を維持するような温冷熱刺激を与えることができる。すなわち、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に維持されるようにユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することによりリカレンスプロット白色描画率をパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記リカレンスプロット白色描画率が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記リカレンスプロット白色描画率が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することによりリカレンスプロット白色描画率がパラメータとして算出され、リカレンスプロット白色描画率が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定され、リカレンスプロット白色描画率が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定される。
したがって、温冷感が悪化したと推定された場合、ユーザの温冷感を向上させるような温冷熱刺激を与え、温冷感が改善したと推定された場合、現在の制御を維持するような温冷熱刺激を与えることができる。すなわち、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に維持されるようにユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより軌道平行測度中央値をパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記軌道平行測度中央値が増加した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記軌道平行測度中央値が減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することにより軌道平行測度中央値がパラメータとして算出され、軌道平行測度中央値が増加した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定され、軌道平行測度中央値が減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定される。
したがって、温冷感が悪化したと推定された場合、ユーザの温冷感を向上させるような温冷熱刺激を与え、温冷感が改善したと推定された場合、現在の制御を維持するような温冷熱刺激を与えることができる。すなわち、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に維持されるようにユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータを算出する第1のパラメータ算出手段と、前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータを算出する第2のパラメータ算出手段とを含み、前記推定手段は、前記第1のパラメータ算出手段によって算出された第1のパラメータと、前記第2のパラメータ算出手段によって算出された第2のパラメータとに基づいてユーザの快適感を推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータが算出され、時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータが算出され、算出された第1のパラメータと第2のパラメータとに基づいてユーザの快適感が推定される。
したがって、2種類の異なるパラメータを用いてユーザの快適感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1のパラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数を算出し、前記第2のパラメータ算出手段は、前記時系列データから脈波振幅又は脈波波高最大値を算出し、前記推定手段は、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数が算出されるとともに、時系列データから脈波振幅又は脈波波高最大値が算出される。そして、最大リアプノフ指数が増加し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が増加し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。
したがって、最大リアプノフ指数と、脈波振幅又は脈波波高最大値との2種類のパラメータを用いて温冷感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御手段は、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激を制御するための制御データを生成し、生成した制御データを出力すると共に、前記推定手段に出力し、前記推定手段は、カオス解析して得た最大リアプノフ指数の変動と、前記刺激制御手段によって生成された制御データとを基にユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、推定手段は、刺激制御手段により生成された制御データと最大リアプノフ指数とを用いてユーザの温冷感を推定している。すなわち、最大リアプノフ指数のみならず制御データという2種類のパラメータを用いて温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記制御データは、刺激を生成する冷房装置の出力強度を示すデータを含み、前記推定手段は、前記制御データから前記冷房装置の出力強度が増加又は減少しているかを判定し、カオス解析して得た最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記冷房装置の出力強度が増加している場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記冷房装置の出力強度が増加した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記冷房装置の出力強度が減少した場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記冷房装置の出力強度が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、推定手段は、冷房装置の出力強度が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定する。また、冷房装置の出力強度が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定する。また、冷房装置の出力強度が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定する。また、冷房装置の出力強度が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定する。そして、これらの推定結果から、温冷熱刺激の生成が制御される。すなわち、最大リアプノフ指数の増加又は減少と、冷房装置の出力強度の増加又は減少との組み合わせから、ユーザの温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記制御データは、刺激を生成する暖房装置の出力強度を示すデータを含み、前記推定手段は、前記制御データから前記暖房装置の出力強度が増加又は減少しているかを判定し、前記推定手段は、カオス解析して得た最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記暖房装置の出力強度が増加している場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記暖房装置の出力強度が増加した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記暖房装置の出力強度が減少した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記暖房装置の出力強度が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、推定手段は、暖房装置の出力強度が増加し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定する。また、暖房装置の出力強度が増加し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定する。また、暖房装置の出力強度が減少し、かつ最大リアプノフ指数が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定する。また、暖房装置の出力強度が減少し、かつ最大リアプノフ指数が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定する。そして、これらの推定結果から、温冷熱刺激の生成が制御される。すなわち、最大リアプノフ指数の増加又は減少と、暖房装置の出力強度の増加又は減少との組み合わせから、ユーザの温冷感が推定されているため、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータを算出する第1のパラメータ算出手段と、前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータを算出する第2のパラメータ算出手段とを含み、前記推定手段は、前記第1のパラメータ算出手段によって算出された第1のパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する第1の推定手段と、前記第2のパラメータ算出手段によって算出された第2のパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する第2の推定手段とを含み、前記刺激制御手段は、前記第1の推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する第1の刺激制御手段と、前記第2の推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する第2の刺激制御手段とを含み、前記時系列データの変化を基に、前記第1の刺激制御手段による制御と前記第2の刺激制御手段による制御とを切り替える刺激制御切替手段をさらに備えることが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータが算出されるとともに、時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータが算出される。そして、第1のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、第1の刺激制御手段によって、ユーザに与える刺激の生成が制御される。また、第2のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、第2の刺激制御手段によって、ユーザに与える刺激の生成が制御される。そして、時系列データの変化を基に、第1の刺激制御手段による制御と第2の刺激制御手段による制御とが切り替えられる。
ここで、時系列データをカオス解析することによりユーザの状態を推定するためには十分な期間、例えば数分〜15分程度の時間が必要であるが、時系列データの変化を基にユーザの状態を推定する場合は、短時間、例えば約5秒間〜約10秒間で、ある程度精度良くユーザの状態を推定することができる。
そこで、時系列データが、ユーザへの刺激が強すぎることを明らかに示す、あるいは時系列データが、ユーザへの刺激が弱すぎることを明らかに示すような、現在ユーザに与えている刺激の強度を早急に弱める、あるいは強める必要がある場合、短時間でユーザの状態を推定し得る第2刺激制御手段により刺激の生成を制御させれば、ユーザに与える刺激をある程度適切な範囲に速やかに移行させることが可能になる。
一方、時系列データがユーザへの刺激が強すぎない、あるいは弱すぎないことを明らかに示す場合、現在ユーザに与えている刺激の強度を早急に変化させる必要がないため、第1刺激制御手段によりユーザの状態を推定し、その推定結果に基づいて、ユーザに適切な刺激を与えても、ユーザに苦痛や、悪影響を与えることはない。これにより、十分な期間の時系列データが得られない場合であっても、ユーザの状態をある程度正確に推定することができ、ユーザに苦痛や悪影響を与えることを速やかに回避して、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えることができる。その結果、ユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器、照明機器、映像機器及び音響機器等の制御にも十分適用させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1の刺激制御手段は、前記第1の推定手段による推定結果を基に、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感を向上させる強度の刺激を生成させる第1刺激値を算出し、前記第2の刺激制御手段は、前記第2の推定手段による推定結果を基に、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感を向上させる強度の刺激を前記刺激生成手段に生成させる第2刺激値を算出し、前記刺激制御切替手段は、前記第1刺激値と前記第2刺激値とを基に、刺激出力値を算出し、算出した刺激出力値が示す刺激を生成させることが好ましい。
この構成によれば、第1刺激値と第2刺激値とを基に刺激出力値が算出され、算出された刺激出力値が示す刺激が生成されているため、ユーザの状態に応じて好ましい強度の刺激をユーザに与えることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御切替手段は、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激出力値を算出し、前記時系列データの変化が、所定の下限規定値以下の場合、前記第2刺激値を前記刺激出力値とし、前記時系列データの変化が、所定の上限規定値より大きい場合、前記第2刺激値を前記刺激出力値とすることが好ましい。
この構成によれば、時系列データの変化が所定の下限規定値以下でありユーザへの刺激の強度が低すぎる場合、或いは時系列データの変化が所定の上限規定値以上でありユーザへの刺激の強度が強すぎる場合は、第2刺激値が刺激出力値とされ、第2の刺激制御手段によりユーザに与える刺激が制御されるため、ユーザを速やかにリラックス状態にすることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御切替手段は、前記時系列データの変化が、所定の第1規定値(>前記下限規定値)より大きく、所定の第2規定値(前記第1規定値<前記第2規定値<前記上限規定値)以下の場合、前記第1刺激値を前記刺激出力値とすることが好ましい。
この構成によれば、時系列データの変化が第1規定値より大きく、第2規定値以下の場合、ユーザはリラックスしていると判定され、第1刺激値が刺激出力値とされ、第1の刺激制御手段によりユーザに与える刺激が制御されるため、ユーザをより確実にリラックス状態にすることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御切替手段は、前記時系列データの変化が前記下限規定値より大きく、前記第1規定値以下の場合、前記時系列データの変化が前記第1規定値に近づくにつれて、前記第1刺激値に対する重み係数が増大し、前記第2刺激値に対する重み係数が低下するように両刺激値の重み係数を決定し、決定した重み係数に従って両刺激値を加算した値を前記刺激出力値とすることが好ましい。
この構成によれば、時系列データの変化が下限規定値より大きく、第1規定値以下の場合、時系列データの変化が第1規定値に近づくにつれて、第1刺激値に対する重み係数が増大されるため、第1の刺激制御手段による制御と第2の刺激制御手段による制御とを適切な割合で組み合わせて、ユーザに与える刺激を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記刺激制御切替手段は、前記時系列データの変化が前記第2規定値より大きく、前記上限規定値以下の場合、前記時系列データの変化が前記上限規定値に近づくにつれて、前記第1刺激値に対する重み係数が低下し、前記第2刺激値に対する重み係数が増大するように両刺激値の重み係数を決定し、決定した重み係数に従って両刺激値を加算した値を前記刺激出力値とすることが好ましい。
この構成によれば、時系列データの変化が第2規定値より大きく上限規定値以下である場合、時系列データの変化が第2規定値に近づくにつれて、第2刺激値に対する重み係数が増大されるため、第1の刺激制御手段による制御と第2の刺激制御手段による制御とを適切な割合で組み合わせて、ユーザに与える刺激を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1の推定手段は、前記生体情報の最大リアプノフ指数を脈波カオスパラメータとして算出し、算出した脈波カオスパラメータが所定の第3規定値以上の場合、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感が向上していると推定し、前記脈波カオスパラメータが前記第3規定値未満の場合、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感は向上していないと推定することが好ましい。この構成によれば、最大リアプノフ指数を基にユーザの状態が推定されているため、ユーザの状態を正確に推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1の刺激制御手段は、前記第1の推定手段によりユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感が向上していると推定された場合、現在の刺激の強度が維持されるように前記第1刺激値を算出し、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感が向上していないと推定された場合、現在の刺激の強度が強化されるように前記第1刺激値を算出することが好ましい。
この構成によれば、ユーザのリラックス感または快適感または温冷感等が向上していると推定された場合、現在の刺激の強度が維持され、ユーザのリラックス感、快適感、又は温冷感が向上していないと推定された場合、現在の刺激の強度が強化されるため、ユーザに対して速やかにリラックス感、快適感、又は温冷感を与えることできる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1の推定手段は、前記第1のパラメータ算出手段によって算出された第1のパラメータと、前記第2のパラメータ算出手段によって算出された第2のパラメータとに基づいてユーザの快適感を推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータが算出されるとともに、時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータが算出される。そして、第1のパラメータと第2のパラメータとに基づいてユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、第1の刺激制御手段によって、ユーザに与える刺激の生成が制御される。また、第2のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、第2の刺激制御手段によって、ユーザに与える刺激の生成が制御される。そして、時系列データの変化を基に、第1の刺激制御手段による制御と第2の刺激制御手段による制御とが切り替えられる。
したがって、第1のパラメータだけでなく、2種類の異なるパラメータを用いてユーザの快適感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、ユーザが在室する部屋の室温を計測する室温計測手段を更に備え、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数を算出し、前記推定手段は、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記室温が上昇した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記室温が上昇した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が増加し、かつ前記室温が低下した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記最大リアプノフ指数が減少し、かつ前記室温が低下した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、ユーザが在室する部屋の室温が計測され、時系列データをカオス解析することにより最大リアプノフ指数が算出される。そして、最大リアプノフ指数が増加し、かつ室温が上昇した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少し、かつ室温が上昇した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が増加し、かつ室温が低下した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定され、最大リアプノフ指数が減少し、かつ室温が低下した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。
したがって、最大リアプノフ指数だけでなく、最大リアプノフ指数と室温との2種類のパラメータを用いて温冷感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
本発明の他の局面に係る環境制御装置は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段とを備える。
本発明の他の局面に係る環境制御方法は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得ステップと、前記生体情報取得ステップにおいて取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップにおいて算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定ステップと、前記推定ステップによる推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御ステップとを含む。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムは、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる。
本発明の他の局面に係る環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザの生体情報の時系列データを取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得された前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御する刺激制御手段としてコンピュータを機能させる環境制御プログラムを記録している。
これらの構成によれば、ユーザの生体情報の時系列データの変化に基づいて生体情報に関するパラメータが算出される。そして、算出されたパラメータに基づいて刺激に対するユーザの快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。すなわち、ユーザの快適感が悪化するような推定結果が得られた場合、ユーザに対して快適感を向上させるような刺激を与えられる。
したがって、ユーザの生体情報の時系列データの変化に基づいて算出されたパラメータに基づいて快適感が推定され、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御されるので、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記生体情報はユーザの脈波であり、前記刺激制御手段はユーザに与える温冷熱刺激の生成を制御し、前記推定手段は、前記温冷熱刺激に対するユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するパラメータに基づいてユーザの温冷感が推定され、推定結果を基にユーザに与える刺激の生成が制御される。そのため、生体情報の中でも容易に取得可能な脈波からユーザの温冷感が推定されるので、ユーザに不快感を与えることなく、容易にユーザの温冷感を推定することができる。また、脈波を用いてユーザの温冷感を推定しているため、脳波を用いてユーザの温冷感を推定する場合のように専門的かつ高価な機械を用いて装置を構成する必要がなくなり、簡単かつ安価な機械を用いて装置を構成することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記生体情報から得られる脈波波形の脈波振幅、脈波波高最大値、前記生体情報から得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波波形の波形成分比、加速度脈波振幅及びパルスレートのうちの少なくとも1つをパラメータとして算出し、前記推定手段は、前記パラメータ算出手段によって算出されたパラメータの変動を基に、ユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、生体情報から得られる脈波波形の脈波振幅、脈波波高最大値、生体情報から得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波波形の波形成分比、加速度脈波振幅及びパルスレートのうちの少なくとも1つがパラメータとして算出され、算出されたパラメータの変動を基に、ユーザの温冷感が推定される。
したがって、従来のように個人差のある生体情報(脈波パラメータ)の絶対値を用いることなくユーザの温冷感を推定することができ、ユーザの温冷感に基づいて居住環境を構成する空調機器などの温冷熱機器を適切に制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データに基づいて前記加速度脈波波形の波形成分比c/aを算出し、前記推定手段は、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データに基づいて加速度脈波波形の波形成分比c/aが算出され、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定され、加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定される。
したがって、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加したか、減少したかを判定することにより、ユーザの温冷感が悪化したか、改善したかを推定することができ、推定結果に応じて刺激の生成を適切に制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データに基づいて前記加速度脈波波形の波形成分比c/aを算出し、前記推定手段は、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データに基づいて加速度脈波波形の波形成分比c/aが算出され、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向、又は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定され、加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向、又は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定される。
したがって、温冷感が悪化したと推定された場合、ユーザの温冷感を向上させるような温冷熱刺激を与え、温冷感が改善したと推定された場合、現在の制御を維持するような温冷熱刺激を与えることができる。すなわち、ユーザの温冷感が暑くもなく寒くもない適切な状態に維持されるようにユーザの居住環境を構成する機器、例えば、空調機器を制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データに基づいて前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値、及び前記加速度脈波波形の波形成分比c/aを算出し、前記推定手段は、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少し、かつ前記脈波振幅又は前記脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データに基づいて脈波振幅又は脈波波高最大値、及び加速度脈波波形の波形成分比c/aが算出される。そして、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定される。また、加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が増加した場合、ユーザの温冷感が寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。さらに、加速度脈波波形の波形成分比c/aが増加し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定される。さらにまた、加速度脈波波形の波形成分比c/aが減少し、かつ脈波振幅又は脈波波高最大値が減少した場合、ユーザの温冷感が暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。
したがって、加速度脈波波形の波形成分比c/aと、脈波振幅又は脈波波高最大値との2種類のパラメータを用いて温冷感が推定されるので、生体情報の個人差の影響を排除してユーザの温冷感を精度よく推定することができる。そして、その推定結果を基にユーザに与える刺激を生成するのでユーザの温冷感を暑くもなく寒くもない適切な状態に確実に導くことができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データに基づいて前記加速度脈波振幅、前記加速度脈波波形の波形成分比b/a及び前記加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つを算出し、前記推定手段は、前記加速度脈波振幅、前記加速度脈波波形の波形成分比b/a及び前記加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化した、又は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波振幅、前記加速度脈波波形の波形成分比b/a及び前記加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化した、又は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、時系列データに基づいて加速度脈波振幅、加速度脈波波形の波形成分比b/a及び加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが算出される。そして、加速度脈波振幅、加速度脈波波形の波形成分比b/a及び加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが増加した場合、ユーザの温冷感が中立状態から暑い状態の方向に変化した、又は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。また、加速度脈波振幅、加速度脈波波形の波形成分比b/a及び加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが減少した場合、ユーザの温冷感が中立状態から寒い状態の方向に変化した、又は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定される。
したがって、加速度脈波振幅、加速度脈波波形の波形成分比b/a及び加速度脈波波形の波形成分比d/aのうちの少なくとも一つが増加したか、減少したかを判定することにより、ユーザの温冷感の変化を推定することができ、推定結果に応じて刺激の生成を適切に制御することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータを算出する第1のパラメータ算出手段と、前記時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータを算出する第2のパラメータ算出手段とを含み、前記推定手段は、前記第1のパラメータ算出手段によって算出された第1のパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する第1の推定手段と、前記第2のパラメータ算出手段によって算出された第2のパラメータに基づいてユーザの快適感を推定する第2の推定手段とを含み、複数の前記第1のパラメータ算出手段、複数の前記第2のパラメータ算出手段、又は少なくとも1つの前記第1のパラメータ算出手段及び少なくとも1つの前記第2のパラメータ算出手段を備え、前記第1の推定手段又は前記第2の推定手段による推定結果が全て一致するか否かを判定する判定手段をさらに備え、前記刺激制御手段は、前記判定手段によって一致すると判定された推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成を制御することが好ましい。
この構成によれば、第1のパラメータ算出手段によって、時系列データをカオス解析して生体情報に関する第1のパラメータが算出され、第1の推定手段によって、算出された第1のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定される。また、第2のパラメータ算出手段によって、時系列データの変化に基づいて生体情報に関する第2のパラメータが算出され、第2の推定手段によって、算出された第2のパラメータに基づいてユーザの快適感が推定される。そして、環境制御装置には、複数の第1のパラメータ算出手段、複数の第2のパラメータ算出手段、又は少なくとも1つの第1のパラメータ算出手段及び少なくとも1つの第2のパラメータ算出手段が備えられている。第1の推定手段又は第2の推定手段による推定結果が全て一致するか否かが判定され、全ての推定結果が一致すると判定された場合、その推定結果を基に、ユーザに与える刺激の生成が制御される。
したがって、複数のそれぞれのパラメータに基づいてユーザの温冷感を同時に推定し、その複数の推定結果を比較して温冷感を決定するので、温冷熱環境の変化によるユーザの温冷感を精度よく推定することができる。また、温冷熱環境の変化以外の要因によりパラメータが変化した場合であっても、適切に制御内容が変更されるので、ユーザに不快感を与えることを回避することができ、常に良好な快適感をユーザに与えることができる。
また、上記の環境制御装置において、ユーザに対して刺激を出力する刺激出力手段によって刺激が出力される際、前記刺激出力手段は、刺激を出力したことを示す刺激出力信号を前記推定手段に出力し、前記推定手段は、前記パラメータの変動を、前記刺激出力信号を受信する前に抽出されたパラメータと受信した後に抽出されたパラメータとから算出することが好ましい。
この構成によれば、ユーザにおける刺激を受けた前後の脈波の変動から、ユーザの快適感を推定しているため、刺激に対するユーザの反応を確実に把握することができる。また、刺激に対するユーザの反応に基づいて快適感の推定を行い、推定結果に基づいた刺激内容を判断して出力することで、個人差に対応することも可能となり、確実にユーザに快適感を実感させることができる。さらにこの一連の処理を繰り返すことでユーザおける快適な状態を確実に持続させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記パラメータの変動を、予め定められた一定時間ごとに抽出されたパラメータから算出することが好ましい。この構成によれば、刺激に対するユーザの反応の変動を把握することができる。また、刺激に対するユーザの反応に基づいて快適感の推定を行い、推定結果に基づいた刺激内容を判断して出力することで、個人差に対応することも可能となり、確実にユーザに快適感を実感させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が、ユーザの快適感が変化していないことを示す所定の第1の範囲内にある場合、ユーザの快適感は変化していないと推定して、前記刺激制御手段に対して快適感を向上させる刺激出力命令を出力することが好ましい。
この構成によれば、脈波のパラメータの変動と、ユーザの快適感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いてユーザの快適感が変化していないことを示す第1の範囲が予め定められ、パラメータの変動がこの第1の範囲に属する場合に、ユーザの快適感が変化していないと推定されているため、ユーザの快適感が変化していないことを正確に推定することができる。また、ユーザの快適感が変化していないことを示す推定結果が得られた場合、快適感を向上させる刺激を出力するため、ユーザに快適感を与えることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が、前記第1の範囲とは異なり、かつ、ユーザの快適感が向上していることを示す所定の第2の範囲内にある場合、ユーザの快適感は向上していると推定して、前記刺激制御手段に対して快適感を維持させる刺激出力命令を出力することが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するパラメータの変動とユーザの快適感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いて、ユーザの快適感が向上していることを示す第2の範囲を予め定め、パラメータの変動がこの第2の範囲に属している場合にユーザの快適感が向上している推定されているため、ユーザの快適感の向上を正確に推定することができる。また、ユーザの快適感が向上していることを示す推定結果が得られた場合、快適感を維持させる刺激を出力するため、ユーザの快適感を持続させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が、前記第2の範囲とは異なり、かつ、ユーザの快適感が低下していることを示す所定の第3の範囲内にある場合、ユーザの快適感は低下しているとして、前記刺激制御手段に対して快適感を向上させる刺激出力命令を出力し、前記パラメータの変動が前記第1〜第3の範囲のいずれにも属さない場合、ユーザが危険な状態にあると推定し、システムを緊急停止させることが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するパラメータの変動とユーザの快適感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いて、ユーザの快適感が低下していることを示す第3の範囲を予め定め、パラメータの変動がこの第3の範囲に属している場合にユーザの快適感が低下している推定されているため、ユーザの快適感の低下を正確に推定することができる。また、ユーザの快適感が低下していることを示す推定結果が得られた場合、快適感を向上させる刺激を出力するため、ユーザに快適感を与えることができる。また、パラメータの変動が第1〜第3の範囲のいずれにも属さない場合、ユーザの危険を予測して、システムが緊急停止されるため、ユーザにとって安全なシステムを実現することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が前記第1の範囲に入った場合、当該パラメータの変動が前記第2の範囲内に収まるように刺激出力命令を出力し、当該パラメータの変動が前記第2の範囲内に入った場合、刺激を中止する刺激出力命令を出力し、その後当該パラメータの変動が再び前記第1の範囲内に入り一定期間継続して前記第1の範囲に収まっている場合、刺激に対してユーザが順応したと推定して、前記刺激制御手段に対して刺激を中止する直前に出力した刺激出力命令を再び出力することが好ましい。
この構成によれば、刺激に対する順応が始まったことも検知して刺激出力を制御することができ、ユーザにおける快適な状態を確実に持続できるシステムを実現することができる。また、ユーザの脈波の変化から最適な刺激内容やタイミングを判断して出力することで、効率的な運転を実現することができ、省エネの面でも効果的なシステムを実現することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータ算出手段は、前記時系列データから脈波を評価するための第1パラメータ及び前記第1パラメータとは異なる第2パラメータを算出し、前記推定手段は、前記第1パラメータの変動と前記第2のパラメータの変動とに基づいてユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、脈波を評価するための2種類のパラメータである第1及び第2のパラメータが抽出され、第1及び第2のパラメータの変動とユーザの温冷感との間に相関があるという本発明者らが見いだした原理を用いて、ユーザの温冷感が推定されているため、温冷感が暑い状態の方向へ変化したのか、寒い状態の方向へ変化したのか、中立状態の方向へ変化したのかといったユーザの温冷感を精度よく推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、ユーザに与える刺激内容と、前記パラメータの変動とを基に、ユーザの温冷感を推定することが好ましい。この構成によれば、脈波のパラメータの変動と、温刺激であるか冷刺激であるかといった刺激の種類や強度等の刺激内容とに基づいて、ユーザの温冷感が推定されているため、温冷感が暑い状態の方向へ変化したのか、寒い状態の方向へ変化したのか、中立状態の方向へ変化したのかといったユーザの温冷感を精度良く推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、ユーザの所在する場所の温度を計測する温度計測手段を更に備え、前記推定手段は、前記パラメータの変動と前記温度計測手段による温度計測結果とを基に、ユーザの温冷感を推定することが好ましい。
この構成によれば、脈波のパラメータの変動と、ユーザの所在する場所の温度が上昇したか低下したかといった結果とに基づいて、ユーザの温冷感が推定されているため、ユーザの温冷感が暑い状態の方向へ変化したのか、寒い状態の方向へ変化したのか、中立状態の方向へ変化したのかといったユーザの温冷感を精度良く推定することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータは、前記時系列データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比であり、前記推定手段は、前記加速度脈波の波形成分比が減少した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向、または暑い状態から中立状態の方向に変化して温冷感が改善したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向、または中立状態から暑い状態の方向に変化して温冷感が悪化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、数ある脈波のパラメータのうち、加速度脈波の波形成分比がパラメータとされるため、複雑な処理が不要となり簡素な構成でシステムを実現することができる。また、パラメータの変動からユーザの温冷感の変化の方向が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記第1のパラメータは、前記時系列データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比であり、前記第2のパラメータは、前記時系列データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波高の最大値、又は前記時系列データから得られる脈波の波高の最大値であり、前記推定手段は、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ前記加速度脈波の波高の最大値、又は前記脈波の波高の最大値が増加した場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ前記加速度脈波の波高の最大値、又は前記脈波の波高の最大値が減少した場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ前記加速度脈波の波高の最大値、又は前記脈波の波高の最大値が増加した場合、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ前記加速度脈波の波高の最大値、又は前記脈波の波高の最大値が減少した場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、数ある脈波パラメータのうち、脈波データから得られる脈波波形を2回微分した加速度脈波の波形成分比が第1のパラメータとされ、加速度脈波の波高の最大値、又は脈波の波高の最大値が第2のパラメータとされるため、複雑な処理が不要となり簡素な構成でシステムを実現することができる。また、パラメータである加速度脈波の波形成分比の変動と加速度脈波の波高の最大値、又は脈波の波高の最大値からユーザの温冷感の変化の方向が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記パラメータは、前記時系列データから得られる脈波波形を2階微分した加速度脈波の波形成分比であり、前記推定手段は、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ刺激内容が冷感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が増加している場合、または、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ刺激内容が温感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が減少している場合、ユーザの温冷感は暑い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ刺激内容が冷感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が減少している場合、または、前記加速度脈波の波形成分比が減少し、かつ刺激内容が温感を向上させる刺激の種類でありかつ刺激の強度が増加している場合、ユーザの温冷感は寒い状態から中立状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ刺激内容が冷感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が増加している場合、または、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ刺激内容が温感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が減少している場合、ユーザの温冷感は中立状態から寒い状態の方向に変化したと推定し、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ刺激内容が冷感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が減少している場合、または、前記加速度脈波の波形成分比が増加し、かつ刺激内容が温感を向上させる刺激の種類であり、かつ刺激の強度が増加している場合には、ユーザの温冷感は中立状態から暑い状態の方向に変化したと推定することが好ましい。
この構成によれば、数ある脈波のパラメータのうち、加速度脈波の波形成分比がパラメータとされるため、複雑な処理が不要となり簡素な構成でシステムを実現することができる。また、パラメータである加速度脈波の波形成分比の変動と刺激内容とに基づいてユーザの温冷感の変化の方向が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの微分値を算出し、算出した微分値を基に、ユーザの温冷感を推定することが好ましい。この構成によれば、パラメータである加速度脈波の波形成分比の微分値からユーザの温冷感が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記第1及び第2のパラメータの微分値を算出しユーザの温冷感を推定することが好ましい。この構成によれば、第1のパラメータである加速度脈波の波形成分比の微分値と、第2のパラメータである加速度脈波の波高の最大値、又は脈波の波高の最大値の微分値とに基づいて、ユーザの温冷感が推定されているため、刺激に対するユーザの反応をより確実に抽出することができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記パラメータの変動が所定の範囲内である場合、ユーザの温冷感は変化していないと判断し、刺激出力命令を出力しないことが好ましい。この構成によれば、パラメータのわずかな変動による刺激内容の頻繁な変更や推定処理を減少させることができる。
また、上記の環境制御装置において、前記推定手段は、前記第1のパラメータの変動が所定の第1の範囲内である場合、または前記第2のパラメータの変動が所定の第2の範囲内である場合、ユーザの温冷感は変化していないと判断し、刺激出力命令を出力しないことが好ましいこの構成によれば、第1と第2のパラメータのわずかな変動による刺激内容の頻繁な変更や推定処理を減少させることができる。
本発明にかかる環境制御装置、環境制御方法、環境制御プログラム及び環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ユーザに対して確実に快適感を実感させることができ、さらにその快適な状態を持続させることができ、例えば、空調機器、照明機器、映像機器及び音響機器等の居住環境を構成する機器を制御する環境制御装置、環境制御方法、環境制御プログラム及び環境制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などに有用である。
本発明の実施の形態1における環境制御装置の構成を示したブロック図である。
本発明の実施の形態1における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
(a)は、本発明者らが被験者実験により見出した、最大リアプノフ指数とユーザの温冷感の相関を表したグラフであり、(b)は、図3(a)から見出した最大リアプノフ指数の変動と温冷感の変動との関係をまとめたテーブルである。
本発明の実施の形態2における環境制御装置の構成を示したブロック図である。
本発明の実施の形態2における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
(a)は、本発明者らが被験者実験により見出した、脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフであり、(b)は最大リアプノフ指数とユーザの温冷感との相関を表したグラフであり、(c)は、図6(a),(b)に示す脈波波高最大値と最大リアプノフ指数とに対する温冷感の関係をマトリクス状にまとめたテーブルである。
本発明の実施の形態2における状態推定部での処理の流れを示すフローチャートである。
推定データと制御データとを対応づけたテーブルを示す図である。
本発明の実施の形態3における環境制御装置の構成を示したブロック図である。
本発明の実施の形態3における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態2と同様にして導いた最大リアプノフ指数と室温とに対する温冷感をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図である。
本発明の実施の形態4における環境制御装置の構成を示したブロック図である。
本発明の実施の形態4における環境制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
(a)は、最大リアプノフ指数及び冷房能力と温冷感との関係をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図であり、(b)は、最大リアプノフ指数及び暖房能力と温冷感との関係をマトリクス状にまとめたテーブルを示す図である。
本発明の実施の形態5における環境制御装置の構成を示す概略図である。
本実施の形態における脈波カオスパラメータ算出部、脈波カオスパラメータ比較部、第1ユーザ状態推定部及び第1刺激制御部の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態における脈波波形パラメータ算出部、脈波波形パラメータ比較部、第2ユーザ状態推定部及び第2刺激制御部の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態における刺激制御切替部の動作を示すフローチャートである。
脈波波形パラメータとメンバシップ値との関係を示したグラフである。
足浴前、足浴中及び足浴後の脈波をカオス解析して得られたリアプノフ指数の変化と、快適感及び温冷感に関する主観申告の変化との一例を示す図である。
本発明の実施の形態6における環境制御システムの構成を示すブロック図である。
本発明の実施の形態6における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態6におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態7におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態8における環境制御システムの構成を示すブロック図である。
本発明の実施の形態8における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態8におけるパラメータ変動判断部の処理を示す第1のフローチャートである。
本発明の実施の形態8におけるパラメータ変動判断部の処理を示す第2のフローチャートである。
刺激内容が定常的な刺激である場合のパラメータ変動判断部の処理を示す第1のフローチャートである。
刺激内容が定常的な刺激である場合のパラメータ変動判断部の処理を示す第2のフローチャートである。
本発明の実施の形態9における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態9におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明者らが被験者実験により見出した、波形成分比とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。
本発明の実施の形態10における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態10におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。
本発明者らが被験者実験により見出した、脈波波高最大値とユーザの温冷感との相関を表したグラフである。
本発明の実施の形態11における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態11におけるパラメータ変動判断部の処理を示す第1のフローチャートである。
本発明の実施の形態11におけるパラメータ変動判断部の処理を示す第2のフローチャートである。
本発明の実施の形態12における環境制御システムの構成を示す図である。
本発明の実施の形態12における環境制御システムの処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態12におけるパラメータ変動判断部の処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態13における環境制御装置の構成を示すブロック図である。
図44に示す環境制御装置による環境制御処理の流れを示すフローチャートである。
本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比、加速度脈波振幅又はRP−dwとユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
本発明者らが被験者実験により見出した、加速度脈波波形成分比とユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
実施の形態13における温冷感変化推定部による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。
実施の形態13の第1の変形例における温冷感変化推定部による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。
本発明者らが被験者実験により見出した、軌道平行測度中央値とユーザの温冷感との相関を表すグラフである。
実施の形態13の第2の変形例における温冷感変化推定部による温冷感の変化の推定処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態14における環境制御装置の構成を示すブロック図である。
実施の形態14における温冷感変化決定部による温冷感変化決定処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態15における温冷感変化決定部による温冷感変化決定処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態15において、第1温冷感変化推定部及び第2温冷感変化推定部による推定結果と、温冷感変化決定部によって決定される温冷感の変化及び係数kとを関連付けたテーブルの一例を示す図である。
実施の形態15における機器制御決定部による制御内容決定処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態16における温冷感変化推定部による温冷感変化推定処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態17において、第1温冷感変化推定部及び第2温冷感変化推定部による推定結果と、温冷感変化決定部によって決定される温冷感の変化及び係数kとを関連付けたテーブルの一例を示す図である。
実施の形態17における機器制御決定部の処理の流れを示すフローチャートである。
特許文献1に記載されている加速度脈波の波形を示す図である。
特許文献2に記載されている温風暖房機の構成を示すブロック図である。