JPWO2006137515A1 - シノビオリンの機能阻害ポリペプチドを有効成分とする癌治療剤 - Google Patents

シノビオリンの機能阻害ポリペプチドを有効成分とする癌治療剤 Download PDF

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Abstract

シノビオリンタンパク質のp53との結合領域を同定することに成功した。また、該結合領域からなるシノビオリンの部分ポリペプチドは、p53との結合をシノビオリンと競合阻害することにより、p53を活性化させる機能を有することを見出した。さらに、シノビオリンの機能を阻害することにより、p53の細胞質滞留を阻害すること、p53が核に局在すること、シノビオリンタンパク質とp53タンパク質の結合が阻害されること、p53タンパク質のリン酸化が亢進されること、およびp53タンパク質のユビキチン化が阻害されることを見出した。該部分ポリペプチドは、p53活性化剤もしくは癌治療剤として有用である。

Description

本発明は、シノビオリンタンパク質の機能を阻害する活性を有するポリペプチド、および該ポリペプチドを有効成分とするp53タンパク質活性化剤、並びにp53タンパク質活性化剤を有効成分とする癌治療剤に関する。
シノビオリンは、リウマチ患者由来滑膜細胞で過剰発現している膜タンパク質として発見された新規タンパク質である(特許文献1参照)。そして、遺伝子改変動物を用いた研究により、シノビオリンは関節リウマチの発症に必須の分子であることが判明した。
タンパク質構造予測システムにより、シノビオリンはRING fingerモチーフを有することが示唆されている。このモチーフはタンパク質のユビキチン化に重要な役割を果たすE3ユビキチンライゲースという酵素に多く見出されているが、実際、シノビオリンがE3ユビキチンライゲースの特徴のひとつである自己ユビキチン化活性を有することが証明されている(特許文献1参照)。
ところで、p53遺伝子は、第17染色体p13に位置しており、癌細胞の発生および増殖においてきわめて重要な癌抑制遺伝子である。p53タンパク質は、DNA上の特異的塩基配列[5'-(A/T)GPyPyPy-3')]を認識し、p21、GADD45、BAX等の特定の遺伝子の転写活性化を促す。また、(i)その他の多くの遺伝子の転写を抑制すること、(ii)SV40ラージT抗原、アデノウィルスEIBタンパク質、パピローマウイルスE6などのウィルス性癌遺伝子産物、あるいはmdm2等の細胞性癌遺伝子産物と結合すること、(iii)ミスマッチを含むDNAと特異的に結合すること等の生理機能が知られている。
WO02/052007
本発明は、癌を抑制する薬剤の提供を目的とする。より具体的には、p53タンパク質の活性化剤、および該活性化剤を有効成分とする癌治療剤の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。そして、シノビオリンホモノックアウト動物を詳細に解析したところ、野生型に比し、アポトーシスを起こしている細胞が多数観察され、また、アポトーシスの誘導に深く関与しているp53タンパク質が核内に局在し、強く発現していることが判明した。そして、シノビオリンの機能を阻害することにより、p53癌抑制遺伝子またはp53癌抑制タンパク質が活性化されて癌細胞の増殖が阻止されることを見出した。
また本発明者らは、シノビオリンの機能阻害によるp53タンパク質の活性化のメカニズムを解明すべく、さらに詳細な研究を行った。
近年の研究により、シノビオリンは癌抑制遺伝子産物であるp53をユビキチン化し、分解することにより、その発現量、および転写因子としての機能を抑制していることが見出された。そこで本発明者らは、シノビオリンのp53結合ドメインを同定するために、シノビオリンタンパク質の各断片をGSTタンパク質と融合し、in vitro翻訳した全長p53タンパク質との結合活性を調べたところ、シノビオリンタンパク質の236-270番目の35アミノ酸が結合に必要十分であることが判明した。また、この35アミノ酸をコードしたペプチド(以下「53BD (p53-Binding Domain)」と記載する場合あり)は、GST-Synoviolin・ΔTMと全長p53の結合を競合阻害した。野生型、53BDを欠失したシノビオリン(Δ236-270)をp53と一緒に細胞内へ導入し、免疫沈降実験を行ったところ、53BD欠失体とp53は結合しなかった。また野生型シノビオリンはp53を細胞質中へ滞留させたが、53BD欠失体にはその活性は見られなかった。
上述の如く本発明者らは、in vitro及びin vivoにおいて、シノビオリンがp53と結合し癌抑制遺伝子産物としての機能を阻害するのに、53BDが必要な領域であることを明らかにした。即ち、p53との結合に必要な領域を含む、シノビオリンタンパク質の部分断片ペプチドは、競合阻害によりシノビオリンの機能を抑制することによって、p53を活性化する機能を有することを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、シノビオリンタンパク質の部分断片ポリペプチドを有効成分として含有するp53タンパク質の活性化剤、および該活性化剤を有効成分とする癌治療剤に関し、より詳しくは、
〔1〕 以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドであって、p53タンパク質と実質的に結合する機能を有するポリペプチドを有効成分として含有する、p53タンパク質活性化剤、
(a)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(c)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリペプチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド
(d)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるシノビオリンタンパク質の部分断片ポリペプチドであって、該シノビオリンタンパク質の236位〜270位のアミノ酸領域を含むポリペプチド
〔2〕 〔1〕の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを有効成分として含有するp53タンパク質活性化剤、
〔3〕 〔1〕または〔2〕に記載のp53タンパク質活性化剤を有効成分とする、癌治療剤、
〔4〕 配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
〔5〕 〔1〕の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質の細胞質滞留を阻害する方法、
〔6〕 〔1〕の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質を核に局在化させる方法、
〔7〕 〔1〕の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、シノビオリンタンパク質とp53タンパク質の結合を阻害する方法、
〔8〕 〔1〕の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質のリン酸化を亢進する方法、
〔9〕 〔1〕の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質のユビキチン化を阻害する方法、
〔10〕 〔5〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法によってp53タンパク質を活性化させることを特徴とする、癌の抑制方法、を提供するものである。
さらに本発明は、本発明に記載の上記ポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、上記p53タンパク質活性化剤、あるいは該p53タンパク質活性化剤を有効成分とする癌治療剤を投与する工程を含む癌の予防もしくは治療する方法を提供する。また本発明は、本発明に記載の上記ポリペプチドあるいは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターの、p53タンパク質活性化剤あるいは癌治療剤の製造における使用を提供する。
図1は、シノビオリンホモノックアウトマウス胎仔線維芽細胞(MEF)における蛍光免疫組織染色の結果を示す写真である。 図2は、syno-/-のembryoにおける抗p53抗体による免疫組織染色の結果を示す写真である。 図3は、p53に関するウェスタンブロッティングの結果を示す写真である。 図4は、syno-/-のMEF培養細胞におけるp53のリン酸化部位を同定した結果を示す写真である。 図5は、シノビオリンに対するsiRNA処理によって亢進したSer15のリン酸化がカフェイン添加によりどのように影響するかを調べたウェスタンブロッティングの写真である。 図6は、シノビオリン に対するsiRNA処理による、p53及びp21の発現が高まることを示すウェスタンブロッティングの写真である。 図7は、フローサイトメーターによる細胞周期の観察結果を示す図である。 図8は、Tissue arrayを、抗シノビオリン抗体(10Da)を用いて免疫染色した結果を示す写真である。 図9は、Tissue arrayを、抗シノビオリン抗体(10Da)を用いて免疫染色した結果を示す写真である。 図10は、GFP野生型p53を導入した細胞におけるp53の局在を観察した写真である。 図11は、GFP野生型p53及びFLAG野生型シノビオリンをSaos-2細胞に共発現させ、両導入遺伝子産物の局在を観察した写真である。 図12は、GFP野生型p53及びFLAGシノビオリンC307SをSaos-2細胞に共発現させ、両導入遺伝子産物の局在を観察した写真である。 図13は、MBP-Synoviolin ΔTM-HisによるGST-p53のin vitroユビキチン化反応を示す写真である。 図14は、シノビオリンRNAiによるRA滑膜細胞でのp53 mRNA量を示すグラフである。 図15は、シノビオリンの各ドメインをGSTに融合したものと、in vitro translationした全長p53とを用いてプルダウンアッセイを実施した結果を示す写真である。 図16は、図15で同定されたシノビオリンの領域をさらにサブクローニングしたものとin vitro translationした全長p53を用いて、プルダウンアッセイを実施した結果を示す写真である。 図17は、シノビオリンの236-270アミノ酸をN末、またはC末から削っていき、in vitro translationした全長p53とのプルダウンアッセイを実施した結果を示す写真である。 図18は、シノビオリンの236-270アミノ酸のみを欠失したGST-Synoviolin ΔTMを構築し、in vitro translationした全長p53とのプルダウンアッセイを実施した結果を示す写真である。 図19は、シノビオリンにおけるp53結合ドメインの最小領域を表した図である。 図20は、A:HEK293細胞内での抗HA抗体及び抗FLAG抗体によるsynoviolinとp53の結合の検出を示した写真である。B:HEK293細胞内での抗HA抗体及び抗FLAG抗体によるsynoviolinとp53の結合の検出を示した写真である。両図とも、共沈を丸で囲って示した。 図21は、Saos-2細胞において53BDを欠失させたシノビオリンとp53の局在を示す写真である。 図22は、53BDペプチドがシノビオリンとp53の結合を競合阻害することを示す写真である。 図23は、53BDペプチドによるp53ユビキチン化活性の阻害効果を示す写真である。
以下、本発明を詳細に説明する。
正常細胞を紫外線等にさらすと、細胞内のp53が活性化して、その結果細胞増殖が阻止されることから、p53の濃度を上昇させることにより、癌細胞の増殖を止めることができる。つまり、p53が機能しない場合は、癌細胞の増殖が止められず、癌が進行することになる。事実、p53変異は正常な個体の細胞にはほとんど見られないが、癌患者由来の細胞の約半数においてはこのp53の欠損又は点変異が起こっている。また、このような変異が起こっていない場合でも、p53の制御機構に何らかの変異が生じて癌抑制機能が失われている。従って、癌の進行を抑えるにはp53を有効に機能させることが必要である。
本発明者らは、p53タンパク質の活性化を癌治療の有効な方法の一つとするため、シノビオリン(synoviolin)の機能に着目した。そして、シノビオリンホモノックアウト動物を作製し、詳細に解析したところ、野生型に比してアポトーシスを起こしている細胞が多数観察された。即ち、シノビオリンの機能を阻害すると、アポトーシスに深く関与しているp53タンパク質の活性化が促進され、シノビオリンの機能阻害が癌抑制につながることを見出した。
さらに本発明者らは、シノビオリンタンパク質の236-270番目の35アミノ酸(53BD)がp53タンパク質との結合に必須領域であることを解明した。また、野生型シノビオリンはp53タンパク質を細胞質中へ滞留させたが、53BD欠失体にはその活性は見られなかった。
即ち、p53との結合領域を有するシノビオリンの部分断片ポリペプチド(例えば、53BD)は、p53の細胞質滞留を阻害することにより、p53を活性化させる機能を有することが見出された。
本発明は、p53との結合領域を有する(p53との結合活性を有する)シノビオリンタンパク質の部分断片ポリペプチド(本明細書においては、単に「本発明のポリペプチド」と記載する場合あり)を有効成分として含有する、p53タンパク質活性化剤を提供する。
本発明のシノビオリンタンパク質は、ヒトのシノビオリンタンパク質であることが好ましいが、その由来する生物種は特に制限されず、ヒト以外の生物におけるシノビオリンと同等なタンパク質(シノビオリンのホモログ・オルソログ等)も本発明における「シノビオリンタンパク質」に含まれる。例えば、ヒトp53に相当するタンパク質を有し、かつ、ヒトのシノビオリンと同等なタンパク質を有する生物であれば、本発明を実施することは可能である。
シノビオリン、およびp53のヒト並びにその他の生物における「相当するタンパク質」の名称、mRNA、アミノ酸配列のアクセッション番号を表1に示す。
ヒトのシノビオリン遺伝子の公共遺伝子データベースGenbankにおけるアクセッション番号は、AB024690(配列番号:1)である。
ヒトにおけるシノビオリンをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:1に示す。また該塩基配列によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。上記以外のタンパク質であっても、例えば配列表に記載された配列と高い相同性(通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)を有し、かつ、シノビオリンタンパク質が有する機能(例えばp53タンパク質と結合する機能、p53リン酸化タンパク質の活性を阻害する機能、および/またはp53のユビキチン化を促進する機能等)を持つタンパク質は、本発明のシノビオリンに含まれる。上記タンパク質とは、例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が付加、欠失、置換、挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、通常変化するアミノ酸数が30アミノ酸以内、好ましくは10アミノ酸以内、より好ましくは5アミノ酸以内、最も好ましくは3アミノ酸以内である。
本発明における「シノビオリン遺伝子」には、例えば、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAに対応する他の生物における内在性の遺伝子(ヒトのシノビオリン遺伝子のホモログ等)が含まれる。
また、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAに対応する他の生物の内在性のDNAは、一般的に、配列番号:1に記載のDNAと高い相同性を有する。高い相同性とは、50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上(例えば、95%以上、さらには96%、97%、98%または99%以上)の相同性を意味する。この相同性は、mBLASTアルゴリズム(Altschul et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-7)によって決定することができる。また、該DNAは、生体内から単離した場合、配列番号:1に記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすると考えられる。ここで「ストリンジェントな条件」としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件として「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」および「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件を挙げることができる。当業者においては、他の生物におけるシノビオリン遺伝子に相当する内在性の遺伝子を、シノビオリン遺伝子の塩基配列を基に適宜取得することが可能である。なお、本明細書においては、ヒト以外の生物におけるシノビオリンタンパク質(遺伝子)に相当するタンパク質(遺伝子)、あるいは、上述のシノビオリンと機能的に同等なタンパク質(遺伝子)を、単に「シノビオリンタンパク質(遺伝子)」と記載する場合がある。
本発明の「シノビオリンタンパク質」は、天然のタンパク質のほか、遺伝子組み換え技術を利用した組換えタンパク質として調製することができる。天然のタンパク質は、例えばシノビオリンタンパク質が発現していると考えられる細胞(組織)の抽出液に対し、シノビオリンタンパク質に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いる方法により調製することが可能である。一方、組換えタンパク質は、シノビオリンタンパク質をコードするDNAで形質転換した細胞を培養することにより調製することが可能である。
本発明のシノビオリンタンパク質がヒトのシノビオリンである場合には、p53との結合のための必須領域は、ヒトシノビオリンタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:2)において、236位〜270位(番目)の領域である。当該35アミノ酸残基からなるペプチド領域の配列を配列番号:4に、該アミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号:3に記載する。
本発明において、「p53との結合領域(アミノ酸配列)を有するシノビオリンタンパク質の部分断片ポリペプチド」とは、好ましくは、配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、より好ましくは、配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
本発明のポリペプチドは、必ずしも具体的に示される上記の53BDポリペプチド(配列番号:4)のみに限定されるものではない。53BDと機能的に同等なポリペプチド(例えば、p53と実質的に結合する活性、もしくはp53を活性化する機能を有するポリペプチド)であれば、いかなる形態(構造)のポリペプチドであってもよい。例えば、配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、実質的にp53と結合する機能を有するポリペプチドは、本発明のポリペプチドに含まれる。
具体的なアミノ酸配列(例えば、配列番号:4)が開示された場合においては、当業者であれば、これらアミノ酸配列を基に、適宜アミノ酸が改変された配列からなるポリペプチドを作製し、当該ポリペプチドについて、上述の機能を有するか否かを評価し、本発明のポリペプチドを適宜選択することが可能である。
例えば、所望のポリペプチドについてp53との結合活性(相互作用活性)は、当業者においては、公知の技術、例えば、免疫沈降法及びプルダウンアッセイ等を利用して、適宜、評価(測定)することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法によって評価することができる。
また、本発明のポリペプチドは、ヒト以外の生物のシノビオリンに相当するタンパク質における、p53との結合領域を有する部分断片ペプチドであってもよい。即ち、本発明のポリペプチドには、ヒトシノビオリンタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:2)において236位〜270位の領域に相当する領域を含む、他の生物のシノビオリンに相当するタンパク質の部分断片ポリペプチドが含まれる。
また、本発明のp53活性化剤の有効成分となるポリペプチドは、配列番号:4に記載のポリペプチドの改変体であって、p53と実質的に結合する機能を有するポリペプチドであってもよい。
これらのポリペプチドは、通常、配列番号:3に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
従って、本発明の好ましい態様においては、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドであって、p53と実質的に結合する機能、もしくはp53を活性化する機能を有するポリペプチドを有効成分として含有する、p53タンパク質活性化剤に関する。
(a)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(c)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリペプチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド
(d)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるシノビオリンタンパク質の部分断片ポリペプチドであって、該シノビオリンタンパク質の236位〜270位のアミノ酸領域を含むポリペプチド
シノビオリンは、p53のユビキチン化を促進する機能を有する。ユビキチン化とは、タンパク質の分解マーカー分子であるユビキチンによるタンパク質の翻訳後の修飾反応をいう。このユビキチン化の生理的意義は、プロテオソーム系のタンパク質分解機構へ送られるためのタグ修飾として、従来認識されていた。そして、その後の研究により、現時点でのユビキチン化の意義は、タンパク質機能を制御する可逆的タンパク質修飾システムとして位置づけられている。
ユビキチン化は、具体的には、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)およびユビキチンリガーゼ(E3)などの酵素が協同したカスケード反応を繰り返すことにより、基質となるタンパク質にユビキチン分子を枝状に結合させてポリユビキチン鎖を形成する過程をいう。このポリユビキチン鎖は、ユビキチン分子内の48番目のリシン残基のε‐アミノ基を介して形成され、26Sプロテアソームへの分解シグナルとなり、標的タンパク質を分解に導く。
本発明のポリペプチドは、シノビオリンのp53タンパク質のユビキチン化促進作用を阻害することにより、p53を活性化させる特徴を有する。
本明細書において用いられる「ポリペプチド」は、複数のアミノ酸からなる重合体を意味し、そのアミノ酸の長さは特に制限されない。従って、本発明のポリペプチドには、所謂「オリゴペプチド」および「タンパク質」も含まれる。ポリペプチドは、天然に存在する状態から修飾されていないもの、および修飾されているものの双方を含む。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、メチル化、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化のようなタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加、ユビキチン化等が含まれる。
本発明のポリペプチドは、そのアミノ酸配列に従って、一般的な化学合成法により製造することが可能であり、該方法には、通常の液相法および固相法によるペプチド合成法が包含される。かかるペプチド合成法は、より詳しくはアミノ酸配列の情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次合成させて鎖を延長していくステップワイズエロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法を包含し、本発明のポリペプチドの合成は、いずれの方法を用いてもよい。
このようなペプチド合成法にて用いられる縮合法も、各種方法に従って行うことができる。その具体例としては、例えばアジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、ウッドワード法等を例示できる。
これら各種方法に利用できる溶媒もまた、一般的に使用されるものを適宜利用することができる。その例としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。なお、上記ペプチド合成反応に際して、反応に関与しないアミノ酸およびペプチドにおけるカルボキシル基は、一般にはエステル化により、例えばメチルエステル、エチルエステル、第三級ブチルエステル等の低級アルキルエステル、例えばベンジルエステル、P−メトキシベンジルエステル、P−ニトロベンジルエステルアラルキルエステル等として保護することができる。また、側鎖に官能基を有するアミノ酸、例えばTyrの水酸基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、第三級ブチル基等で保護されてもよいが、必ずしもかかる保護は必須ではない。また、例えば、Argのグアニジノ基は、ニトロ基、トシル基、2−メトキシベンゼンスルホニル基、メチシレン−2−スルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等の適当な保護基により保護することができる。
上記のようにして得ることが可能な本発明のポリペプチドは、通常の方法に従って、例えばイオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、向流分配法等のペプチド化学の分野で汎用されている方法に従って、適宜、精製を行うことができる。
本発明のポリペプチドは、例えば配列番号:2もしくは4に記載のポリペプチド、または配列番号:1もしくは3に記載のDNA核酸分子を合成し、次いで適当な発現ベクターへ導入した後、宿主細胞内において発現させる遺伝子工学的手法によっても取得することができる。
一例を示せば、まず配列番号:4に記載されたアミノ酸配列をコードする配列番号:3に記載のポリヌクレオチドを合成する。該方法としては、リン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法などの化学合成手段〔J. Am.Chem. Soc., 89, 4801 (1967);同 91, 3350 (1969);Science, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett., 22, 1859 (1981);同 24, 245 (1983)〕及びそれらの組合せ方法などが例示できる。より具体的には、DNAの合成は、ホスホルアミダイト法またはトリエステル法による化学合成により行うこともでき、市販されている自動ポリヌクレオチド合成装置上で行うこともできる。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、適当な条件下で該鎖を共にアニーリングさせるか、または適当なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを用い相補鎖を付加するかによって、化学合成した一本鎖生成物から得ることもできる。
本発明のポリペプチドには、例えば、本発明者らによって決定されたp53結合領域からなるポリペプチド(53BD; 配列番号:4)と機能的に同等なポリペプチドが含まれる。ここで「機能的に同等」とは、対象となるポリペプチドが53BDポリペプチドと同様の(同等の)生物学的あるいは生化学的機能(活性)を有することを指す。このような機能としては、例えば53BDポリペプチドが有する機能、即ち、p53タンパク質と結合する機能、p53タンパク質の活性化機能等を挙げることができる。対象となるポリペプチドが、53BDポリペプチドと同等の生物学的あるいは生化学的な機能(活性)を有しているか否かは、例えばp53タンパク質との結合活性、p53の活性等を測定することにより適宜評価することが可能である。
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、例えばポリペプチド中のアミノ酸配列に変異を導入する方法が挙げられる。具体的には当業者であれば部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci USA. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを用いて、配列番号:4に記載のアミノ酸配列に適宜変異を導入することにより、該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製することができる。また、ポリペプチド中のアミノ酸の変異は自然に生じることもある。このように、人工的か自然に生じたものかを問わず、本発明者らにより同定された53BDポリペプチド(配列番号:4)のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸配列が変異したアミノ酸配列を有し、該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドは、本発明のポリペプチドに含まれる。
上記変異体における、変異するアミノ酸数は、53BDポリペプチドの有する機能が保持される限り制限はないが、通常15アミノ酸以内であり、好ましくは10アミノ酸以内であり、より好ましくは5アミノ酸以内であり、さらに好ましくは1〜4アミノ酸である。
変異するアミノ酸残基としては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字表記を表す)。
あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的機能(活性)を維持し得ることはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413)。
53BDポリペプチドのアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加されたポリペプチドには、これらポリペプチドを含む融合ポリペプチドが含まれる。融合ポリペプチドは、これらポリペプチドと他のペプチド又はポリペプチドとが融合したものである。融合ポリペプチドを作製する方法は、53BDポリペプチド(配列番号:4)をコードするポリヌクレオチド(配列番号:3)と他のペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明のポリペプチドとの融合に付される他のペプチド又はポリペプチドは、特に制限されない。
本発明のポリペプチドとの融合に付される他のペプチドとしては、例えばFLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210)、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-mycの断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag、E-tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α-tubulinの断片、B-tag、Protein Cの断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明のポリペプチドとの融合に付される他のタンパク質としては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。市販されているこれらペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと融合させ、これにより調製された融合ポリヌクレオチドを発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
またあるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製する当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者であれば、53BDポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号:1に記載の塩基配列)もしくはその一部をもとに、同種または異種生物由来のポリヌクレオチド試料から、これと相同性の高いポリヌクレオチドを単離して、該ポリヌクレオチドから53BDポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを単離することも通常行いうることである。
本発明には、53BDポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドであって、53BDポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドが含まれる。このようなポリペプチドとしては、例えばヒトあるいはマウスおよび他の哺乳動物のホモログ(例えば、ラット、ゼブラフィッシュ、線虫、キイロショウジョウバエ等の生物に由来するポリペプチド)が挙げられる。
53BDポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離するためのハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、5×SSC及び0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
また、ハイブリダイゼーションにかえて、遺伝子増幅技術(PCR)(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley&Sons Section 6.1-6.4)を用いて、本発明者の53BDポリペプチド(配列番号:4)をコードするポリヌクレオチド(配列番号:3)の一部を基にプライマーを設計し、本発明者らにより同定されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと相同性の高いポリヌクレオチド断片を単離し、該ポリヌクレオチドを基に本発明者らにより同定されたポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを取得することも可能である。
本発明のポリペプチドは「成熟」ポリペプチドの形であっても、融合ポリペプチドのような、より大きいポリペプチドの一部であってもよい。本発明のポリペプチドには、リーダー配列、プロ配列、多重ヒスチジン残基のような精製に役立つ配列、または組換え生産の際の安定性を確保する付加的配列などが含まれていてもよい。
これらハイブリダイゼーション技術や遺伝子増幅技術により単離されるポリヌクレオチドがコードする、53BDポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドは、通常、該ポリペプチド(配列番号:4)とアミノ酸配列において高い相同性を有する。本発明のポリペプチドには、53BDポリペプチドと機能的に同等であり、かつ該ポリペプチドのアミノ酸配列と高い相同性を有するポリペプチドも含まれる。高い相同性とは、アミノ酸レベルにおいて、通常、少なくとも50%以上の同一性、好ましくは75%以上の同一性、さらに好ましくは85%以上の同一性、さらに好ましくは95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の同一性を指す。ポリペプチドの相同性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムに従えばよい。
アミノ酸配列の同一性は、例えば、Karlin and Altschul によるアルゴリズムBLAST (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al. J. Mol. Biol.215: 403-410, 1990)。BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えば、score = 50、wordlength = 3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
本発明のポリペプチドは、当業者に公知の方法により、組み換えポリペプチドとして、また天然のポリペプチドとして調製することが可能である。組み換えポリペプチドであれば、例えば、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号:3に記載のポリヌクレオチド)を、適当な発現ベクターに組み込み、これを適当な宿主細胞に導入して得た形質転換体を回収し、抽出物を得た後、イオン交換、逆相、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、あるいは本発明のポリペプチドに対する抗体をカラムに固定したアフィニティークロマトグラフィーにかけることにより、または、さらにこれらのカラムを複数組み合わせることにより精製し、調製することが可能である。
また、本発明のポリペプチドをグルタチオンS-トランスフェラーゼタンパク質との融合ポリペプチドとして、あるいはヒスチジンを複数付加させた組み換えポリペプチドとして宿主細胞(例えば、動物細胞や大腸菌など)内で発現させた場合には、発現させた組み換えポリペプチドはグルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することができる。融合ポリペプチドの精製後、必要に応じて融合ポリペプチドのうち、目的のポリペプチド以外の領域を、トロンビンまたはファクターXaなどにより切断し、除去することも可能である。
天然のポリペプチドであれば、当業者に周知の方法、例えば本発明のポリペプチドを発現している組織や細胞の抽出物に対し、本発明のポリペプチドに結合する抗体が結合したアフィニティーカラムを作用させて精製することにより単離することができる。抗体はポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。
本発明のシノビオリンタンパク質の部分断片ポリペプチドは、236位〜270位のp53結合領域を含むものであれば、特にその長さは制限されないが、通常、200アミノ酸以下であり、好ましくは100アミノ酸以下であり、より好ましくは50アミノ酸以下であり、さらに好ましくは40アミノ酸以下である。これらの長さの断片ポリペプチドであれば、53BDと同様の活性を保持することが期待される。
また、本発明のポリペプチドは例えば、p53結合領域を認識する抗体の作製、および、シノビオリンとp53との結合を変化させる化合物のスクリーニング等に利用することが可能である。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードし得るものであればいかなる形態でもよい。即ち、mRNAから合成されたcDNAであるか、ゲノムDNAであるか、化学合成DNAであるかなどを問わない。また、本発明のポリペプチドをコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。
本発明のポリヌクレオチドは、当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、本発明のポリペプチドを発現している細胞よりcDNAライブラリーを作製し、本発明のポリヌクレオチド(例えば、配列番号:1に記載の塩基配列)の一部をプローブとしてハイブリダイゼーションを行うことにより調製できる。cDNAライブラリーは、例えば、文献(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))に記載の方法により調製してもよく、あるいは市販のDNAライブラリーを用いてもよい。また、本発明のポリペプチドを発現している細胞よりRNAを調製し、逆転写酵素によりcDNAを合成後、本発明のポリヌクレオチド(例えば、配列番号:1に記載の塩基配列)に基づいてオリゴDNAを合成し、これをプライマーとして用いてPCR反応を行い、本発明のポリペプチドをコードするcDNAを増幅させることにより調製することも可能である。
また、得られたcDNAの塩基配列を決定することにより、それがコードする翻訳領域を決定でき、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列を得ることができる。また、得られたcDNAをプローブとしてゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムDNAを単離することができる。
具体的には、次のようにすればよい。まず、本発明のポリペプチドを発現する細胞、組織、臓器からmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299)、AGPC法(Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159)等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うこともできる。また、本明細書に記載されたプライマー等を用いて、5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction ; PCR)を用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932) に従い、cDNAの合成および増幅を行うことができる。得られたPCR産物から目的とするDNA断片を調製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列は、公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認することができる。
また、本発明のポリヌクレオチドの作成においては、発現に使用する宿主のコドン使用頻度を考慮し、より発現効率の高い塩基配列を設計することができる(Grantham, R. et al., Nucelic Acids Research (1981) 9, r43-74)。また、本発明のポリヌクレオチドは、市販のキットや公知の方法によって改変することができる。改変としては、例えば、制限酵素による消化、合成オリゴヌクレオチドや適当なDNAフラグメントの挿入、リンカーの付加、開始コドン(ATG)及び/又は終止コドン(TAA、TGA、又はTAG)の挿入等が挙げられる。
また本発明は、上記(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを有効成分とする、p53タンパク質活性化剤を提供する。
上記ベクターとしては、通常、本発明のポリペプチドをコードするDNAを担持するプラスミドもしくはウイルスベクターが一般的である。当業者においては、所望のDNAを有するベクターを、一般的な遺伝子工学技術によって、適宜、作製することが可能である。通常、市販の種々のベクターを利用することができる。
本発明のベクターは、宿主細胞内において本発明のポリヌクレオチドを保持したり、本発明のポリペプチドを発現させるためにも有用である。
本発明におけるポリヌクレオチドは、通常、適当なベクターへ担持(挿入)され、宿主細胞へ導入される。該ベクターとしては、挿入したDNAを安定に保持するものであれば特に制限されず、例えば宿主に大腸菌を用いるのであれば、クローニング用ベクターとしてpBluescriptベクター(Stratagene社製)などが好ましいが、市販の種々のベクターを利用することができる。本発明のポリペプチドを生産する目的としてベクターを用いる場合には、特に発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、試験管内、大腸菌内、培養細胞内、生物個体内でポリペプチドを発現するベクターであれば特に制限されないが、例えば、試験管内発現であればpBESTベクター(プロメガ社製)、大腸菌であればpETベクター(Invitrogen社製)、培養細胞であればpME18S-FL3ベクター(GenBank Accession No. AB009864)、生物個体であればpME18Sベクター(Mol Cell Biol. 8:466-472(1988))などを例示することができる。ベクターへの本発明の核酸の挿入は、常法により、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる。
上記宿主細胞としては特に制限はなく、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられる。ポリペプチドを発現させるための細胞としては、例えば、細菌細胞(例:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌)、昆虫細胞(例:ドロソフィラS2、スポドプテラSF9)、動物細胞(例:CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowes メラノーマ細胞)および植物細胞を例示することができる。宿主細胞へのベクター導入は、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 9.1-9.9)、リポフェクション法(GIBCO-BRL社製)、マイクロインジェクション法などの公知の方法で行うことが可能である。
宿主細胞において発現したポリペプチドを小胞体の内腔に、細胞周辺腔に、または細胞外の環境に分泌させるために、適当な分泌シグナルを目的のポリペプチドに組み込むことができる。これらのシグナルは目的のポリペプチドに対して内因性であっても、異種シグナルであってもよい。
上記製造方法におけるポリペプチドの回収は、本発明のポリペプチドが培地に分泌される場合は、培地を回収する。本発明のポリペプチドが細胞内に産生される場合は、その細胞をまず溶解し、その後にポリペプチドを回収する。
組換え細胞培養物から本発明のポリペプチドを回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法を用いることができる。
また、動物の生体内で本発明のポリヌクレオチド(DNA)を発現させる方法としては、本発明のDNAを適当なベクターに組み込み、例えば、レトロウィルス法、リポソーム法、カチオニックリポソーム法、アデノウィルス法などにより生体内に導入する方法などが挙げられる。これにより、癌治療を行うことが可能である。用いられるベクターとしては、例えば、アデノウイルスベクターやレトロウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに制限されない。ベクターへの本発明のDNAの挿入などの一般的な遺伝子操作は、常法に従って行うことが可能である(Molecular Cloning ,5.61-5.63)。生体内への投与は、ex vivo法であっても、in vivo法であってもよい。
本発明のp53タンパク質活性化剤は、癌抑制タンパク質であるp53を活性化することにより癌細胞の増殖を阻止する作用を有する。従って、本発明は、本発明のp53タンパク質活性化剤を有効成分とする、癌治療剤を提供する。
シノビオリンの発現もしくは機能を阻害すると、リン酸化酵素によりp53がリン酸化されてp53が活性化し、サイクリン依存性リン酸化酵素阻害タンパク質であるp21タンパク質の発現を高め、その結果、癌細胞のG1期からS期への移行を妨げることにより、癌の発生または増殖を抑制するものと考えられる。従って、本発明のp53タンパク質活性化剤を含有する薬剤は、p21タンパク質活性化剤、あるいは、細胞周期(特にG1期からS期への移行)阻害剤となり得る。
なおp53が関与する疾患については、上述の癌の他にも、例えば神経変性疾患が知られている(実験医学、増刊号、2001、p53研究の新たな挑戦、p.122-127)。そのため本発明のp53タンパク質活性化剤は、神経変性疾患に対する治療剤ともなり得ると考えられる。
また、本発明の「癌治療剤」は、「癌細胞増殖抑制剤」、「癌細胞発生抑制剤」、「腫瘍増殖抑制剤」、「抗癌剤」、あるいは「制癌剤」と表現することも可能である。また、本発明において「治療剤」は、「医薬品」、「医薬組成物」、「治療用医薬」等と表現することもできる。
なお、本発明における「治療」には、癌の発生を予め抑制し得る予防的な効果も含まれる。また、癌細胞(組織)に対して、必ずしも、完全な治療効果を有する場合に限定されず、部分的な効果を有する場合であってもよい。
さらに本発明のポリペプチドは、抗リウマチ剤としても有用である。本発明における「リウマチ」には、いわゆるリウマチ性疾患が含まれ、具体的には、リウマチ:関節リウマチ、急性関節リウマチ、慢性関節リウマチ、悪性関節リウマチ、若年性関節リウマチなどを例示することができる。また上記リウマチ性疾患は、他の疾患と併発したものであってよい。
上記「抗リウマチ剤」は、「リウマチ滑膜細胞増殖抑制剤」、「リウマチ滑膜細胞発生抑制剤」、「リウマチ治療剤」、「リウマチ性疾患治療剤」、「抗リウマチ薬」、あるいは「抗リウマチ性疾患薬」と表現することもできる。
本発明の薬剤は、生理学的に許容される担体、賦形剤、あるいは希釈剤等と混合し、医薬組成物として経口、あるいは非経口的に投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤等の剤型とすることができる。非経口剤としては、注射剤、点滴剤、外用薬剤、あるいは座剤等の剤型を選択することができる。注射剤には、皮下注射剤、筋肉注射剤、あるいは腹腔内注射剤等を示すことができる。外用薬剤には、経鼻投与剤、あるいは軟膏剤等を示すことができる。主成分である本発明の薬剤を含むように、上記の剤型とする製剤技術は公知である。
例えば、経口投与用の錠剤は、本発明の薬剤に賦形剤、崩壊剤、結合剤、および滑沢剤等を加えて混合し、圧縮整形することにより製造することができる。賦形剤には、乳糖、デンプン、あるいはマンニトール等が一般に用いられる。崩壊剤としては、炭酸カルシウムやカルボキシメチルセルロースカルシウム等が一般に用いられる。結合剤には、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、あるいはポリビニルピロリドンが用いられる。滑沢剤としては、タルクやステアリン酸マグネシウム等が公知である。
本発明の薬剤を含む錠剤は、マスキングや、腸溶性製剤とするために、公知のコーティングを施すことができる。コーティング剤には、エチルセルロースやポリオキシエチレングリコール等を用いることができる。
また注射剤は、主成分である本発明の薬剤を適当な分散剤とともに溶解、分散媒に溶解、あるいは分散させることにより得ることができる。分散媒の選択により、水性溶剤と油性溶剤のいずれの剤型とすることもできる。水性溶剤とするには、蒸留水、生理食塩水、あるいはリンゲル液等を分散媒とする。油性溶剤では、各種植物油やプロピレングリコール等を分散媒に利用する。このとき、必要に応じてパラベン等の保存剤を添加することもできる。また注射剤中には、塩化ナトリウムやブドウ糖等の公知の等張化剤を加えることができる。更に、塩化ベンザルコニウムや塩酸プロカインのような無痛化剤を添加することができる。
また、本発明の薬剤を固形、液状、あるいは半固形状の組成物とすることにより外用剤とすることができる。固形、あるいは液状の組成物については、先に述べたものと同様の組成物とすることで外用剤とすることができる。半固形状の組成物は、適当な溶剤に必要に応じて増粘剤を加えて調製することができる。溶剤には、水、エチルアルコール、あるいはポリエチレングリコール等を用いることができる。増粘剤には、一般にベントナイト、ポリビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、あるいはポリビニルピロリドン等が用いられる。この組成物には、塩化ベンザルコニウム等の保存剤を加えることができる。また、担体としてカカオ脂のような油性基材、あるいはセルロース誘導体のような水性ゲル基材を組み合わせることにより、座剤とすることもできる。
本発明の薬剤を遺伝子治療剤として使用する場合は、本発明の薬剤を注射により直接投与する方法のほか、核酸が組込まれたベクターを投与する方法が挙げられる。上記ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられ、これらのウイルスベクターを用いることにより効率よく投与することができる。
また、本発明の薬剤をリポソームなどのリン脂質小胞体に導入し、その小胞体を投与することも可能である。例えば、本発明のポリペプチドもしくはベクターを保持させた小胞体をリポフェクション法により所定の細胞に導入する。そして、得られる細胞を例えば静脈内、動脈内等に全身投与する。癌組織等に局所的に投与することもできる。
本発明の薬剤は、安全とされている投与量の範囲内において、ヒトを含む哺乳動物に対して、必要量(有効量)が投与される。本発明の薬剤の投与量は、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状等を考慮して、最終的には医師または獣医師の判断により適宜決定することができる。一例を示せば、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なるが、例えばアデノウィルスの場合の投与量は1日1回あたり106〜1013個程度であり、1週〜8週間隔で投与される。
本発明の薬剤を使用する場合は、適用部位もしくは癌種は特に限定されず、脳腫瘍、舌癌、咽頭癌、肺癌、乳癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆道癌、胆嚢癌、十二指腸癌、大腸癌、肝癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、横紋筋肉腫、線維肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、皮膚癌、各種白血病(例えば急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、成人型T細胞白血病、悪性リンパ腫)、等を対象として適用される。上記癌は、原発巣であっても、転移したものであっても、他の疾患と併発したものであってもよい。
また後述の実施例で示すように、シノビオリンはp53の細胞質滞留に必須であることが示された。また、シノビオリンとp53の結合を阻害することにより、p53の細胞質滞留が阻害されることが見出された。従って、本発明のポリペプチドは、p53に対する結合をシノビオリンと競合阻害することにより、p53の細胞質滞留を阻害する機能を有する。
本発明は、本発明のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53の細胞質滞留を阻害する方法に関する。上記「p53の細胞質滞留の阻害」とは、より具体的には、p53の小胞体膜上への滞留を阻害することを指す。
後述の実施例で示すように、シノビオリンノックアウトマウス胎仔MEFにおいて、p53タンパク質は核内に強く局在し、この核の局在は野生型マウス胎仔MEFでは観察されなかった。また、シノビオリンとp53を共発現させると、p53は細胞質内にシノビオリンと共局在した。このことは、細胞質においてp53タンパク質はシノビオリンタンパク質と密接に関係し、シノビオリンタンパク質がp53タンパク質の細胞質(小胞体膜上)への滞留に関与していることを示している。即ち、本発明のポリペプチドの作用によって、p53の細胞質滞留を阻害することにより、p53を核に局在化させることが可能である。従って本発明は、本発明のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53を核に局在化させる(核内へ移行させる)方法に関する。
また、シノビオリンはp53のユビキチン化を促進するため、シノビオリンとp53との結合を阻害することにより、p53のユビキチン化を阻害することができ、p53のユビキチン化を阻害すれば、p53は活性化され、ひいては癌の抑制につながるといえる。従って、本発明のポリペプチドを細胞へ導入することにより、p53のユビキチン化を阻害させることも可能である。
また後述の実施例で示すように、本発明のポリペプチドを添加することにより、ポリユビキチン化されたp53の減少が観察された。従って、本発明のポリペプチドは、p53のユビキチン化を阻害する機能を有する。
本発明は、本発明のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質のユビキチン化を阻害する方法に関する。上記「p53タンパク質のユビキチン化を阻害」とは、より具体的には、p53タンパク質のユビキチン化による分解を阻害することを指す。
また本発明のポリペプチドを細胞内へ導入することによって、シノビオリンタンパク質とp53タンパク質との結合を阻害することができる。従って、本発明は、本発明のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、シノビオリンタンパク質とp53タンパク質との結合を阻害する方法を提供する。
本方法において「ポリペプチドを細胞内へ導入する」とは、該ポリペプチド直接細胞内へ導入することに加えて、例えば、該ポリペプチドを発現し得るベクターを細胞内へ導入することも含まれる。
細胞内への導入は、例えば本発明のポリペプチドを脂溶性の高い物質、例えばリポソームなどのリン脂質小胞体に導入し、その小胞体を導入することによって実施することができる。あるいは別の態様として、該ポリペプチドを細胞内へ移行する活性を有する分子(薬物)と結合(修飾)させることによっても行うことができる。該分子としては、ペプチドあるいは核酸の移行の際に利用可能な種々の公知の物質、例えば、担体、運搬体、ベクター、デリバリー分子、キャリア分子等を利用することができる。
本発明において、胎児胚におけるp53の免疫染色を行ったところ、シノビオリンホモノックアウトマウス胎児胚では全身においてp53が強く発現することが分かった。また、シノビオリンホモノックアウトマウス胎児胚から単離した胎仔線維芽細胞(MEF)も、野生型から単離したものに比して強く発現しており、しかもp53は核内に強く局在した。この核局在は野生型ではまったく観察されなかった。また、シノビオリンとp53を共発現させると、p53は細胞質内にシノビオリンと共局在した。このことは、シノビオリンの発現および/または機能を阻害することにより、p53を核内へ移行させることができることを意味する。
さらに、シノビオリンホモノックアウトマウス胎仔MEFでは、高い放射線感受性または紫外線感受性を示した。従って、本発明において、癌細胞中のシノビオリンの発現および/または機能を阻害してp53を癌細胞の核に移行させた後に、癌細胞に対して放射線照射または紫外線照射を行うと、癌細胞の増殖を効果的に抑制することができる。放射線照射手段は、特に限定されるものではないが、例えばγ線を1〜10 Gy照射することができる。また、紫外線照射は、紫外線(波長100〜400 nm、好ましくは290〜400 nm)を、適当な紫外線照射装置(フナコシ社、デルマレイ社、キーエンス社製等)を用いて照射することができる。
また後述の実施例で示すように、シノビオリンの発現を阻害することによって、リン酸化酵素によりp53がリン酸化されてp53が活性化されることを見出した。従って本発明は、本発明のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質のリン酸化を亢進する方法に関する。
さらに、核に局在化したp53を含む細胞(特に癌細胞)に、さらに抗癌剤を接触させることにより、効率良く癌を抑制することが可能である。あるいは、上記核に局在化したp53を含む癌細胞の周囲の脈管(例えば血管またはリンパ管)に塞栓を施すことで、癌を抑制することもできる。
「抗癌剤」には、アルキル化剤、代謝拮抗薬、微小管阻害薬、白金錯化合物、分子標的治療薬などが含まれる。これらの抗癌剤の具体例として以下のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
<アルキル化剤>
マスタード系:シクロホスファミド(エンドキサン)、メルファラン等
アジリジン系:チオテパ等
アルキルスルホン系:ブスルファン等
ニトロソ尿素系:ニムスチン、ロムスチン等
<代謝拮抗薬>
葉酸誘導体:メトトレキセート等
プリン誘導体:メルカプトプリン、アザチオプリン等
ピリミジン誘導体:5−フルオロウラシル、テガフール、カルモフール等
<微小管阻害薬>
ビンカアルカロイド:ビンクリスチン、ビンブラスチン等
タキサン:パクリタキセル、ドセタキセル等
<ホルモン類似薬>
タモキシフェン、エストロゲン等
<白金錯化合物>
シスプラチン、カルボプラチン等
<分子標的治療薬>
イマニチブ、リツキシマブ、ゲフィニチブ等
抗癌剤を癌細胞に接触させるための方法は、p53が核に局在化した細胞が含まれる細胞または組織(癌細胞または癌組織)に、抗癌剤を添加する方法、あるいは担癌患者または担癌動物に抗癌剤を投与する方法などが採用される。この場合の抗癌剤の処理量は、特に限定されるものではないが、添加する場合には100 pM 〜100μM、好ましくは1 nM〜10μMである。動物体内に投与するときは、例えば抗癌剤としてエンドキサンを使用するときは、0.1〜100 mg/kg/day、好ましくは2〜25 mg/kg/dayである。エンドキサン以外の抗癌剤についても、当業者は投与量または添加量を適宜設定することができる。
核に局在化したp53を含む癌細胞の周囲の脈管に塞栓を施すには、p53が核に局在化した癌細胞が含まれる細胞集団または組織の周囲の血管に血栓を形成させてもよく、血管またはリンパ管については脂肪による塞栓、空気やガスによる塞栓を形成させてもよい。
また本発明は、本発明のポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のp53タンパク質活性化剤、あるいは該p53タンパク質活性化剤を有効成分とする癌治療剤を個体(例えば、患者等)へ投与することを特徴とする、癌を予防もしくは治療する方法に関する。本発明の予防もしくは治療方法における個体とは、好ましくはヒトであるが、特に制限されず非ヒト動物であってもよい。
個体への投与は、一般的には、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射など当業者に公知の方法により行うことができる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
さらに本発明は、本発明のポリペプチドあるいは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターの、p53タンパク質活性化剤あるいは癌治療剤の製造における使用に関する。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 MEF培養細胞におけるp53の活性化の検討
シノビオリンホモノックアウトマウス(syno-/-)胎児線維芽細胞(MEF)におけるp53を免疫蛍光染色により確認した。
すなわち、免疫染色法は、MEFを常法に従いスライドガラス上に固定し、抗p53抗体(マウスモノクローナル抗体BD:Becton, Dickinson社)を用いて免疫染色を行った。3% 牛血清アルブミン(BSA)で30分ブロッキングを行った標本に、0.3%BSAで希釈した抗p53抗体(BD:10μg/mL)を室温で60分免疫反応させた。反応後の標本をPBSで洗浄後、TRITC標識抗マウスIgG抗体(Dako社)を2次抗体として免疫反応させた。抗p53抗体に免疫反応する抗原の確認は、蛍光顕微鏡で行った。
その結果、野生型に比し、syno-/-のMEF培養細胞ではp53の発現上昇、及び核内移行を起こしている細胞が多数確認された(図1、「MEF-/-」のパネル)。
〔実施例2〕 syno-/-マウスにおけるp53活性化の検討
syno-/-マウスにおけるp53活性化の検討を、embryoを用い免疫染色により行った。
すなわち、syno-/-の胎仔における免疫染色は、常法に従い組織をスライドガラス上に固定し、ベクタステインABCキット(VECTOR社)を用いて行った。ブロッキング試薬で30分ブロッキングした標本に対して、5μg/mLに希釈した抗p53抗体FL393を室温で60分間免疫反応させた。反応後の標本をPBSで洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を2次抗体として免疫反応させた。抗p53抗体に免疫反応する抗原は、HRP活性に基づく3,3'-ジアミノベンジジン四塩酸塩の発色により確認した。対比染色としてメチルグリーン染色を行った。
この結果、syno-/-のembryoにおけるp53が安定化及び発現上昇していることが確認された(図2)。
〔実施例3〕 p53に対するシノビオリンの効果
syno-/-のMEF培養細胞におけるp53をウェスタンブロッティングにより検出した。
すなわち、各種細胞を細胞破砕液(50 mM Tris-HCl(pH 8.0)、150 mM NaCl、1% NP40、1 mM PMSF、0.1% sodium dodecyl sulfate(SDS)、2μg/mL Leupeptin、2μg/mL Aprotinin、2μg/mL Pepstatin)を用いて細胞破砕画分を調製した。その後、SDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)により細胞破砕画分を分離した。SDS-PAGE後、細胞由来タンパク質は、エレクトロブロッティング法によりニトロセルロース(NC)膜に転写した。このNC膜に対し、5%スキムミルクを加えたTris buffered saline(TBS)で室温、1時間ブロッキングした後、抗p53抗体c-terminal aa;195-393またはFL393を5%スキムミルクを加えたTBSで希釈して室温、1時間免疫反応させた。反応後のNC膜を0.1% Tween20/TBSで洗浄し、horse radish peroxidase(HRP)標識抗ウサギIgG抗体を2次抗体として室温、1時間免疫反応させ、0.1% Tween20/TBSで洗浄し、HRP活性を検出することにより目的抗原を検出した。HRP活性の検出にはECLキット(Amersham社)を用いた(Clinical Chemistry. 25, p1531, 1979)。
その結果、ウェスタンブロッティングによりsyno-/-のMEF培養細胞におけるp53発現量が増加していることが確認された(図3)。
〔実施例4〕 syno-/-のMEF培養細胞におけるp53のリン酸化部位の同定
本実施例においては、抗p53抗体を用いたウェスタンブロッティングによりp53のリン酸化部位の同定を行った。
すなわち、p53(配列番号:5)の異なるセリン残基のリン酸化を認識する4種の抗リン酸化p53モノクローナル抗体(Phospho-p53(ser15)、Phospho-p53(ser20)、Phospho-p53(ser37)およびPhospho-p53(ser46);Cell Signaling社)を用いて、MEF細胞のタンパク質をSDS-PAGEで分離し、ウェスタンブロッティング法を行った。ウェスタンブロッティング法の操作は、一次抗体として抗リン酸化p53モノクローナル抗体を、そして標識抗体として抗マウスIgGヒツジ-HRPを用いる他は実施例3に記載のとおりである。
その結果、syno-/-のMEF培養細胞において、p53のアミノ酸配列(配列番号:5)中、第15番目のセリン残基のリン酸化が顕著であった(図4)。図4において、左上のパネルが、第15番目のセリン残基がリン酸化されたものである。53kDa付近のバンドが顕著に濃く表れている。
〔実施例5〕 Ser15のリン酸化亢進のメカニズムの解明
細胞株として野生型のp53を発現していることが確認されているRKO(ヒト大腸がん由来細胞株)を60 mmプレートに1.0x105細胞/プレート/2mLで細胞を播種し、Oligofectamineを用いてGFPおよびシノビオリンに対するsiRNAオリゴヌクレオチドをトランスフェクトした後、72時間後にSer15のリン酸化に重要なATM(ataxia-telangiectasia mutated)およびATR(ATM and Rad3 related)の阻害剤であるカフェイン(10 mM)を添加し、リン酸化Ser15-p53に対する抗体Phospho-p53(ser15)を用いてウェスタンブロッティングを行った。
その結果、シノビオリンに対するsiRNAによって亢進したSer15のリン酸化はカフェイン添加(添加後12時間、24時間)により、完全に阻害された(図5)。シノビオリンの発現を阻害すると、ATMおよびATRによるp53の活性を誘導することが示唆された。
〔実施例6〕 p53により誘導されるp21の発現にシノビオリンが及ぼす影響
RKO細胞をシノビオリンに対するsiRNA処理し、p53の転写産物であるp21の発現の変化をウェスタンブロッティングで検討した。
すなわち、細胞株として野生型のp53を発現していることが確認されているRKO(ヒト大腸がん由来細胞株)を60 mmプレートに1.0x105細胞/プレート/2mLで細胞を播種し、Oligofectamineを用いてGFPおよびシノビオリンに対するsiRNAオリゴヌクレオチドをトランスフェクトした。72時間後に細胞を回収し調製した。調製したタンパク質をSDS-PAGEで分離し、抗p21ポリクローナル抗体(Santa Cruz社)を用いて、ウェスタンブロッティング法を行った。ウェスタンブロッティング法の操作は、一次抗体として抗p21ポリクローナル抗体を、そして標識抗体として抗マウスIgGヒツジ-HRPを用いる他は実施例3に記載のとおりである。
その結果、シノビオリンに対するsiRNA処理によって、p53の発現が高まると同時に、p21の発現も増加した。この効果は72時間で明確に示された(図6)。
〔実施例7〕 シノビオリン発現阻害による細胞周期への影響の検討
本実施例においては、リウマチ患者由来滑膜細胞におけるシノビオリンを、RNAi効果により阻害した際の細胞周期への影響の検討を行った。
RA滑膜細胞を10cmディッシュに9.0x104細胞で播種し、シノビオリンsiRNA(最終濃度25nM)をトランスフェクトした後、フローサイトメーターにより細胞周期を観察した。その結果、siRNA 25 nM(h589)では、G0/G1期における細胞周期の遅延が見られた(図7)。siRNAとしてはh589を用いた。
なお、h589とは、以下のセンス鎖およびアンチセンス鎖をアニールさせた2本鎖RNAを意味する。
センス鎖 h589:GGU GUU CUU UGG GCA ACU G TT(配列番号:6)
アンチセンス鎖 h589:CAG UUG CCC AAA GAA CAC C TT(配列番号:7)
〔実施例8〕 癌組織におけるシノビオリンの発現の検討
Tissue array (CHEMICON 社: 10 common human cancer tissue with normal human tissue)を、抗シノビオリン抗体(10 Da)を用いて免疫染色した。免疫染色に使用した抗体濃度は8μg/mLであり、使用したキットはシンプルステインMAX (M)である。
その結果、正常組織でのシノビオリンの発現は、大腸、腎、肺、卵巣、精巣、皮膚および乳腺で認められたのに対し、神経およびリンパ節では認められなかった。また、各腫瘍組織においてシノビオリンの発現が確認され、特に、発現が明らかに亢進していると判断された組織は、神経・リンパ節であった(図8および図9)。
〔実施例9〕 培養細胞中でシノビオリンおよびp53を共発現させた場合の各々の局在への影響
3種類のプラスミド、GFP-p53、FLAG-synoviolin、およびFLAG-synoviolin C307S(ユビキチン(Ub)化活性なし)をSaos-2細胞に導入した。
各プラスミドは、以下の通りである。
GFP-p53:Green fluorescence protein と野生型p53のフュージョン蛋白発現
FLAG-synoviolin:FLAGタグつき野生型シノビオリン発現
FLAG-synoviolin C307S(ユビキチン(Ub)化活性なし):FLAGタグつき失活型シノビオリン発現
FuGene6 (Roche)によるトランスフェクション処理して24時間後に10%ホルマリンで固定し、400倍希釈一次抗体α-FLAG抗体、200倍希釈二次抗体α-mouse IgG-TRITC、1μM DAPIで核を染色して、その局在を観察した。
その結果、野生型p53は共発現させると核に局在することが観察された(図10)。野生型シノビオリンは共発現すると細胞質(特に核周辺)に局在した。また、野生型p53と野生型シノビオリンを共発現させると、本来核に局在するp53が核周辺に細かいドット状に分布し、シノビオリンと共局在していることが観察された(図11)。野生型p53とシノビオリンC307S mutantを共発現させると、p53が細胞質内に大きなドットを形成し、シノビオリンと共局在していることが観察された(図12)。
以上のことから、シノビオリンとp53は一定条件下で共局在することが示された。ユビキチン化活性の有無でその局在の形態が変化することが考えられる。
〔実施例10〕 MBP-Synoviolin ΔTM-HisによるGST-p53のin vitroユビキチン化の検討
シノビオリンの細胞内における増減によりp53の細胞内タンパク質量の変動が観察されており、シノビオリンによるp53の制御が示唆されている。そこで、シノビオリンが直接p53をユビキチン化(Ub)するか否かを調べるために、GST-p53およびMBP-SynoviolinΔTM -Hisを用いてin vitroユビキチン化反応の検討を行った。
GST-p53:N末端側にGSTを融合させたp53を大腸菌内で発現させ、それを精製して得た画分。
MBP-Synoviolin ΔTM-His:N末端側にMBP, C末端側にHisタグを融合させたシノビオリンを大腸菌内で発現させ、それを精製して得た画分。
pGEX/p53を保持した大腸菌(BL21)を500 mLのLB培地で培養し、IPTGによる誘導後(1 mM、30℃、6h)、培養液より0.5% NP-40を含む緩衝液を用いて大腸菌抽出液を調製した。
大腸菌抽出液よりGST-p53をGSH-セファロース樹脂を用いて0.1% NP-40存在下で精製した。その透析後の試料を用いて、MBP-SynoviolinΔTM -Hisおよび他のin vitro ユビキチン化反応に用いる組成物(ATP、PK-His-HA-Ub、yeast E1、His-UbcH5c)を組み合わせて反応を行った(図13)。反応後、タンパク質を7.5% SDS-PAGEにより分離し、PVDF膜上に転写して抗p53抗体(FL393あるいはDO-1)により膜上のp53タンパク質を検出した。また、GST-p53の添加量を変化させて同様の反応および検出を行った。
その結果、GST-p53精製画分およびMBP-Synoviolin ΔTM-Hisを含む全ての組成物を添加した場合に、約90kDaの位置を中心としてp53由来のラダー状のシグナルが観察された(図13)。これらの結果から、シノビオリンが直接p53のユビキチン化に関与していると言える。従って、シノビオリンの発現および/または機能を阻害することにより、p53のユビキチン化を抑制できることが示された。
〔実施例11〕 RNAi下におけるシノビオリン、p53 mRNA量の検討
本実施例では、シノビオリンRNAi条件下において、シノビオリンおよび関連遺伝子について、経時的にmRNA量の変化を検討することでシノビオリンが細胞周期、アポトーシスなどへ及ぼす影響を検討した。
RA滑膜細胞を30000cells/10cmディッシュで播種し、定法に従い25 nM siRNA(No. 589)をトランスフェクションし、細胞培養4日間の間、経時的に細胞を回収し、mRNAを得た。1μgのmRNAをテンプレートとし、ランダムプライマーを用いて逆転写反応を行い、cDNAを得た。得られたcDNAについて、ABI TaqMan Gene expression assay (GEX)を用いて、定量を行った。対照遺伝子を18S rRNAとしてmRNA量を算出した。
GEX試薬ターゲットアッセイNo.(アッセイID)は、シノビオリンがHs00381211_m1、p53がHs00153340_m1である。
その結果、シノビオリンsiRNA存在下では、シノビオリンmRNA量が減少するが、p53のmRNA量は変化していないことが確認された(図14)。
〔実施例12〕 シノビオリンのp53結合ドメイン最小領域の決定
さらに、シノビオリンのp53結合ドメインをより明確に示すために、以下のような実験を行った。
シノビオリンとp53の結合ドメインを同定するためサブクローニングを行った。シノビオリンの各ドメインをGSTに融合したものとin vitro translationした全長p53を用いて下記のようにプルダウンアッセイを行った。100μLのCompetent cell(BL-21株)を1μLの各GSTタンパク質をコードしたプラスミドで形質転換した。
4 mLのLB-Amp+に接種し、37℃で一晩培養した。翌日Pre-cultureのOD600を測定し、15 mLのLB-Amp+にOD600=3.0相当を接種した(終濃度≒0.2)。25℃恒温槽で約2hr培養し、OD600=0.6〜0.8になったことを確認した後、恒温槽に氷を加えて20℃に冷却し、培養容器を10分つけて20℃まで冷却した。0.1 M IPTGを15μL(終濃度=0.1 mM、通常の1/1000)、1 mM ZnCl2を150μL(終濃度=10μM)加えて、20℃で4hr震盪培養しGSTタンパク質の発現を誘導した。誘導後、遠心して細胞を回収した(5000 rpm、5min、4℃)。1 mL PBS(-)に細胞を再懸濁し、エッペンドルフチューブに移し、細胞を回収した(14000 rpm、1min、4℃)。上清を全て吸い取った後、500μLのPBS(-) / Z (PBS(-) / 10μM ZnCl2)に再懸濁し、液体窒素で凍結、−20℃で保存した。翌日−20℃のサンプルを37℃の恒温槽に10minつけて融かし、次に氷水中につけて0℃まで冷却した。以下のプロテアーゼ阻害剤を混合し、1サンプルあたり6.5μL加えた。
100 mM PMSF (Final 1 mM) 20μL
Aprotinin (Final 0.1%) 2μL
0.5 mg/mL PepstatinA (Final 0.5μg/mL) 2μL
1 mg/mL Leupeptin (Final 1μg/mL) 2μL
各サンプルを超音波破砕した(Power Level 7、15秒、3回)。一回ごとに氷水中に30秒つけて冷却した。次に500μLの2 x GST Buffer / Z (2% TritonX-100、720 mM NaCl、1 x PBS(-)、10μM ZnCl2、10 mM β-Mercaptoethaol、2 mM PMSF、0.1% aprotinin)を加え混合後、さらに超音波破砕した(Power Level 7、15秒、1回)。破砕した液を14000 rpm 30min 4℃で遠心した。この間に1 mLの1 x PBS(-)で200μLの80%-slurry Glutathione Sepharoseビーズを3回洗い、160μLの1 x PBS(-)を加え、50%-slurryに調整した。遠心後の上清1 mLに80μLの50%-slurry Glutathione Sepharoseビーズを加え、4℃で2hr RotationしてGSTタンパク質をビーズに結合させた。1 mLの1 x GST-Buffer / Z (1% TritonX-100、360 mM NaCl、0.5 x PBS(-)、5μM ZnCl2、5 mM β-mercaptoethanol、1 mM PMSF、0.05% aprotinin)で4回ビーズを洗った。遠心は2000 rpm、1min、4℃で行った。残った上清を全てきれいに吸いとった後、60μLの1 x GST-Buffer / Zを加え、合計100μLにした。このうち10μLを等量の2 x SDS Sample Bufferと混ぜ、100℃、5min、ヒートブロックで熱し、10μLずつ10%ゲルにApplyした。同時に0.25〜4μgのBSAもApplyした。泳動(150 V 50min)、CBB染色(未使用のもので30min)、脱色(1hrを2回)、グリセロール水(30〜60min)、(ゲル乾(80℃、1hr)して、GSTタンパク質の発現、回収効率をチェックした。翌日、35S-p53のIn vitro Translationを行った。まず、以下の試薬を混合した。
TNT Reticulocyte Lysate 25μL
TNT Reticulocyte Buffer 2μL
Amino Acids Mixture (-Met) 1μL
DEPC-treated Water 15μL
RNase Inhibitor 1μL
TNT polymerase 1μL
35S-Met 4μL
Plasmid (p53・HA) 1μL
Total 50μL
30℃恒温槽で1.5〜2.5hr保温し、In vitro Translationした。この間にG-25カラムのふたを緩めて軽く遠心(2500 rpm、1min、4℃)し、100μLのPull-down Buffer V(20 mM HEPES pH 7.9、150 mM NaCl、0.2% Triton X-100)を乗せてさらに遠心し、カラムを洗った。このカラムにIn vitro Translation溶液を50μL全量乗せて遠心した(2500 rpm、1min、4℃)。さらに200μLのPull-down Buffer Vを乗せて、再度遠心した(2500 rpm、1min、4℃)。これをIn vitro Translation Product(IvTL)として用いた。そのうち4μLを、16μLのMilli-Q、20μLの2 x SDS Bufferと混ぜ、On put 10%とした。30μgのGSTタンパクが結合したビーズを含んだ1mLのPull-down Buffer Vに120μLのIvTLを加え、4℃で1hr Rotationした。遠心(10000 rpm、1min、4℃)した後、上清を370μLずつGST、各GST-Synoviolinビーズを含んだ1 mLのPull-down Buffer Vに加え、4℃で1hr Rotationした。このビーズを1 mLのPull-down Buffer Vで4回洗った。この時上清は必ず100μLぐらい残し、ビーズを吸い取らないようにした。遠心は2500 rpm、1min、4℃で行った。上清を吸いとった後、40μLの1 x SDS Sample Bufferを加えて、Pull-downサンプルとした。On put 10%とPull-downサンプルを100℃で5min、熱し、-20℃で保存した。翌日サンプルを37℃の恒温槽で10min温め、10μLずつ10%ゲルにApplyした。泳動(150 V 50min)、CBB染色(30min)、脱色(1hr x 2)、グリセロール水(30〜60min)、ゲル乾(80℃、1hr)した後、IP Plateに露光させた。14時間後、露光したIP PlateをBASで読み取り、ImageGaugeで定量した。またC.B.B.染色したゲルはフィルムスキャナーで読み取った。
その結果、Pro-F領域のみ20.8%の結合効率を示した(図15)。
さらにPro-F領域をサブクローニングしたものとin vitro translationした全長p53を用いて、プルダウンアッセイを行ったところ、C末を削ったものは236-270アミノ酸からなる35アミノ酸が66.2%の高い結合効率を示したが、N末を削ったものはどれも結合しなかった(図16)。さらに、p53結合ドメインが35アミノ酸以下になるか検討するため236-270アミノ酸をN末、またはC末から削っていき、in vitro translationした全長p53とのプルダウンアッセイを行った。その結果、p53結合ドメインのdeletion seriesはどれも結合活性を著しく失っており、35アミノ酸は結合最小領域であることが明らかとなった(図17)。また、p53結合ドメインが、236-270アミノ酸以外にもあるか検討するため、236-270アミノ酸のみを欠失したGST-synoviolinΔTMを構築し、in vitro translationした全長p53とのプルダウンアッセイを行ったところ、p53結合ドメインの欠失体は結合活性をほぼ完全に失っていた(図18)。シノビオリンのp53結合ドメインは236-270の一ヶ所であると考えられた。
〔実施例13〕 シノビオリン53BD欠失体とp53の細胞内での結合の検証
発現プラスミドを以下の組み合わせでHEK293細胞にトランスフェクションし、48時間後に全細胞抽出液を調製した。抗FLAG抗体または抗HA抗体を加えて免疫沈降を行い、抗FLAG抗体および抗HA抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、両者の結合を検出した。
<組み合わせ>
pcDNA3 / pcDNA3
Synoviolin-FLAG / HA-p53
SynoviolinC307S-FLAG / HA-p53
SynoviolinΔ53BD-FLAG / HA-p53
Synoviolin-HA / FLAG-p53
SynoviolinC307S-HA / FLAG-p53
SynoviolinΔ53BD-HA / FLAG-p53
その結果、シノビオリンの免疫沈降によるp53の共沈は野生型シノビオリン及びC307S変異体で検出できたが、53BD欠損シノビオリンでは検出されなかった(図20A,B)。この結果はFLAGタグ及びHAタグ両者で認められたため、53BDを欠損しているシノビオリンはp53に対する結合能をほとんど有しないことが示された。また、野生型とC307S変異体を比較するとC307S変異体のp53への結合が若干強い傾向があり、p53との結合にシノビオリンのユビキチン化活性の関与が示唆された。
〔実施例14〕 シノビオリンとp53の細胞質滞留との関連
HA-p53をSynoviolin-FLAGまたはSynoviolinΔ53BDとともにSaos-2細胞(p53遺伝子欠損ヒト骨肉種由来細胞)に一過性発現させ、蛍光顕微鏡で観察した。Synoviolin-FLAGとHA-p53の共発現では、p53は既報告の通り細胞質内、核内両方に局在し(図21f)、シノビオリンは主として細胞質に局在していた(図21g)。一方、SynoviolinΔ53BDとHA-p53の共発現では、SynoviolinΔ53BDは細胞質に局在していたが(図21j)、HA-p53は核内のみに局在していた(図21i,k)。これらの結果から、小胞体膜上でp53はシノビオリンと密接な関係をもつことが明らかとなり、シノビオリンがp53の細胞質滞留に必須であることが示された。
〔実施例15〕 53BDペプチドによるシノビオリン−p53結合の競合阻害
シノビオリンの236-270の35アミノ酸に相当するペプチド(53BDペプチド)を合成し、シノビオリンとp53の結合への影響を調べた。In vitro Translationした35S-Met p53HAを0、10、50、100μMの53BDペプチド溶液中でインキュベーションした後、GSTならびにGST-Synoviolin ΔTMと結合させた。結合した35S-Met p53HAをBASで検出した。その結果、50μM以上の53BDペプチドにより、競合阻害が観察された(図22)。
〔実施例16〕 53BDペプチドによるシノビオリンのp53ユビキチン化活性の阻害
53BDペプチドによるシノビオリンのp53ユビキチン化活性の阻害効果を検討した。E1、E2、MBP-SynoviolinΔTM-6xHis、GST-p53、ATPを含む反応系に0、10、25、50μMの53BDペプチドを加え(図23レーン1-4)、37℃で1時間反応させた。ネガティブコントロール(陰性対照)として同反応系からSynoviolin(図23レーン5)、またはATP(図23レーン6)を除いたものを用意した。53BDペプチドの添加により、ポリユビキチン化されたp53の減少が観察された。またこの反応系でのIC50は40.2μMであった。
配列番号:6:合成オリゴヌクレオチド(DNA/RNA混合物)
配列番号:7:合成オリゴヌクレオチド(DNA/RNA混合物)
本発明により、シノビオリンタンパク質の機能を阻害する活性を有するポリペプチド(例えば、p53との結合領域を有するシノビオリンの部分断片ペプチド;53BD)、および該ポリペプチドを有効成分として含有するp53タンパク質活性化剤が提供された。本発明の薬剤は癌治療剤として有用である。
癌抑制遺伝子p53は癌細胞の発生や増殖においてきわめて重要な遺伝子であり、事実約50%の癌においてこの遺伝子の変異が見つかっている。また残りの癌においてもp53の制御機構に何らかの変異が生じ、その癌抑制能を失っていることが知られている。このため癌治療の有効な方法の一つとして、p53の遺伝子導入による癌治療が現在臨床試験で行われている。
即ち本発明のポリペプチドを細胞内へ導入し、シノビオリンの機能を抑制することによりp53を活性化させて、癌を抑制させることが可能である。p53の安定化、核内への集中的な局在を引き起こすことにより、放射線への感受性を高め治療効率を上げ、集学的治療の一環としての臨床応用も期待される。
さらに、本発明者らによって見出された種々の知見は、p53の癌抑制作用のメカニズムを解明するための学術的研究に対しても大いに貢献するものと期待される。また、本発明のp53タンパク質活性化剤は、p53に関連する癌抑制作用の解明のための研究用試薬としても有用である。

Claims (10)

  1. 以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドであって、p53タンパク質と実質的に結合する機能を有するポリペプチドを有効成分として含有する、p53タンパク質活性化剤。
    (a)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (c)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリペプチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド
    (d)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるシノビオリンタンパク質の部分断片ポリペプチドであって、該シノビオリンタンパク質の236位〜270位のアミノ酸領域を含むポリペプチド
  2. 請求項1の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを有効成分として含有するp53タンパク質活性化剤。
  3. 請求項1または2に記載のp53タンパク質活性化剤を有効成分とする、癌治療剤。
  4. 配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  5. 請求項1の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質の細胞質滞留を阻害する方法。
  6. 請求項1の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質を核に局在化させる方法。
  7. 請求項1の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、シノビオリンタンパク質とp53タンパク質の結合を阻害する方法。
  8. 請求項1の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質のリン酸化を亢進する方法。
  9. 請求項1の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞内へ導入することを特徴とする、p53タンパク質のユビキチン化を阻害する方法。
  10. 請求項5〜9のいずれかに記載の方法によってp53タンパク質を活性化させることを特徴とする、癌の抑制方法。
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