JPWO2006121047A1 - 生体試料中メグシンの測定方法 - Google Patents

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Abstract

本発明により、メグシンタンパク質と反応するモノクローナル抗体が得られた。該モノクローナル抗体を利用したELISA法により、高感度に生体試料中のメグシンを検出することが可能になった。本発明の測定方法により、濃縮等の前処理を行っていない生体試料を測定対象とすることが可能になった。本発明によって、濃縮されていない尿試料に含まれるメグシンを測定し、各種の腎疾患の診断材料とすることができる。

Description

本発明は、ハイブリドーマMs12aおよびハイブリドーマMs12aが生産するモノクローナル抗体に関する。また、本発明は該モノクローナル抗体を用いた、生体試料中に含まれるメグシンタンパク質の測定方法に関する。
腎不全は、腎疾患患者が最終的に至る病態である。その原因や経歴は一様ではなく、薬物中毒、感染症、悪性腫瘍、糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)などの本来腎臓以外の病変により、腎障害が発症し、腎不全に至る場合も数多くみられる。
腎臓の血液濾過作用や解毒作用が全く機能しない末期腎不全においては、腎移植が唯一の治療手段であるが、我が国においては、移植腎の供給体制が十分に整備されているとは言い難い。また、移植療法自体に対する社会的認知も進んでいない。我が国の腎移植例は、年間700余症例に過ぎず、この数値はここ数年増加していない。ゆえに腎代用療法としては透析療法が唯一の治療法であるのが現状である。
現在、我が国の末期腎不全透析患者は推定約21万人を数え、人口あたりの患者数では世界一位である。一人あたりの平均的な治療費は年間約600万円を必要とし、医療保険制度を圧迫する大きな原因のひとつとされている。また、毎週2〜3日、1日4〜6時間を透析治療のために拘束されることから、患者本人の社会的負担は大きい。
さらに、近年の人口の高齢化に伴い透析患者年齢も上昇しつつある。このため、腎疾患を早期に診断し、治療し、腎不全への進展を防ぐ診断薬や薬剤の必要性が認識されている。しかし、腎疾患領域は、創薬のための標的分子などの情報研究基盤に乏しく、有効な診断薬や医薬品が誕生しないのが現状である。
本発明者らは、腎疾患の発症および進展等の機能に深く係わる組織として腎メサンギウム細胞に着目した。メサンギウム細胞は腎臓以外では見られない臓器特異的な細胞で、腎糸球体の構造や機能保持に重要な役割を担っていることはよく知られている。
また、糸球体障害時にはメサンギウム細胞自身の増殖やメサンギサム細胞から分泌される細胞外マトリックスの増加などが認められることから、疾患の発症および進展にも深く関与する細胞であると推測されている。これらのことから腎疾患の分子メカニズムを解明するには、まずメサンギウム細胞の生物学的特性を解明することが不可欠と考えられる。しかし、メサンギウム細胞に関する遺伝子レベルの特異性は明らかにされていなかった。
ヒトの生体内には約60兆個もの細胞が存在し、これらは同一のゲノムDNAを有しているが、個々の細胞、ひいては臓器が異なった生物学的性質を有するのは各細胞や臓器に特異的に発現する遺伝子によるものと考えられている。
本発明者らは、メサンギウム細胞に発現する遺伝子群のプロファイルを明らかにすれば、メサンギウム細胞に特異的な高発現遺伝子群を検出することが可能であると考えた。そして、その中から腎疾患の状態に関与する遺伝子群を決定することもでき、腎疾患の分子メカニズムを解明する糸口も見つかり、それに基づいた新しい腎疾患の診断法や治療法の開発も可能になると考えた。そこで、本発明者らは、メサンギウム細胞の遺伝子発現パターンを明らかにし、その細胞特性を遺伝子レベルで解析することを試みた。
まず本発明者らは、メサンギウム細胞に発現する遺伝子を定量的に解析することを目的として、培養ヒトメサンギウム細胞からmRNAを抽出して、3'-directed cDNAライブラリーを作製した。そして、クローンに挿入された遺伝子断片の大規模DNA配列決定およびデータベース解析を施行した(非特許文献1)。
その結果、メサンギウム細胞で特に強く発現する遺伝子として、メグシンと命名した全長2,249bpからなる遺伝子を単離した。そして、メグシンの全長cDNAクローンがコードする380個のアミノ酸からなる新規タンパク質であるメグシンタンパク質を単離、取得することに成功した。
更に、SwissProtアミノ酸配列データベースを用いてFASTAプログラムによるアミノ酸ホモロジー検索を行った。そして、メグシンタンパク質のアミノ酸配列中にセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン:SERPIN)スーパーファミリー(非特許文献2〜6)の生理活性中心部位として重要な反応性ループ領域(reactive loop site)内のコンセンサス配列(EEGTEAAAAT/配列番号:2)に類似の配列(EEGTEATAAT/配列番号:3)が存在していることを見出した。
すなわち、メグシンは、セルピンの構造的特徴を有し、他のセルピンと同様に活性部位である反応性ループ領域(P17-P5':EEGTEATAATGSNIVEKQLPQS/配列番号:4)が存在する(非特許文献7)。これらのことより、ヒトメグシンタンパク質が、セルピンに属するタンパク質であることを明らかにした(非特許文献7)。そしてこれらの知見を特許出願した(特許文献1)。
また、IgA腎症患者や糖尿病性腎症患者と健常人とで腎臓組織中のメグシンの発現量を比較すると、IgA腎症患者や糖尿病性腎症患者においてメグシンの発現量が有意に多い(非特許文献7、8、11)。また、ラットを用いた実験的メサンギウム増殖性糸球体腎炎モデル(Thy-1腎炎モデル)において、同様なメグシン発現量の上昇が認められた(非特許文献9)。このことからメグシンの発現がメサンギウム細胞の機能異常に伴い変化し、疾患の発症および進展に深く関与していることが明らかになった。
メサンギウムの機能におけるメグシンの役割をさらに理解するために、本発明者らはマウスゲノムでヒトメグシンのcDNAを過剰発現させた。2系統のメグシントランスジェニックマウスが得られ、それらは、進行性のメサンギウム基質の拡大、メサンギウム細胞の増殖、および免疫複合体沈着物の増加を示した(非特許文献10、特許文献2)。
これらの知見は、メグシンが、メサンギウムの機能に生物学的に重要な影響を及ぼすことを示している。興味深いことに、メグシンの単一遺伝子操作は、実験的およびヒト糸球体腎炎に存在する初期的なメサンギウム病変を発生させることができる。このように、動物個体においても、メグシンはメサンギウム増殖性糸球体腎炎の発症に関与することが報告されている。
一方、腎障害においては、末期即ち腎不全近くになるまで顕著な自覚症状が現れないことから、その発生が見過ごされ易く、発症した時点では既に腎臓は回復不可能なダメージを受けている場合が多い。従って、自覚症状の発現をみる前に、できる限り初期の段階で腎障害を発見することが、腎不全への移行を防ぐために、また、透析治療による保険財政圧迫を避けるためにも大切である。
本発明者らは、腎疾患の確定診断および重症度を判定するためには、病態と密接に関連した特異的なタンパク質を測定する必要があると考えた。そこで、本発明者らは、前記メグシン遺伝子およびメグシンタンパク質に着目し、メグシンペプチド抗体を用いた生体試料中のメグシンタンパク質を測定することからなる腎機能評価方法を確立した(特許文献3)。
国際公開公報99/15652号公報 国際公開公報01/24628号公報 国際公開公報00/57189号公報 Yasuda, Y. et al., Kidney Int., 53: 154-158 (1998) Carrell, R.W. et al., Trends Biochem. Sci., 10: 20 (1985) Carrell, R. W. et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol., 52: 527 (1987) Kruithof, E. K. O. et al., Blood, 86: 4007 (1995) Potempa, J. et al., J. Biol. Chem., 269: 15957 (1994) Remold-O'Donnell. E., FEBS Lett., 315: 105 (1993) Miyata, T. et al., J. Clin. Invest., 102: 828-836 (1998) Suzuki, D. et al., J. Am. Soc. Nephrol., 10: 2606 (1999) Nangaku, M. et al., Kidney Int., 60: 641 (2001) Miyata, T. et al., J. Clin. Invest., 109: 585 (2002) Inagi, R. et. al., Biochem Biophys Res Commun., 286: 1098-106(2001)
本発明は、腎機能障害の診断に有用な、メグシンタンパク質の測定方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、これまでにELISA法による生体試料中のメグシンタンパク質の測定方法を確立している(WO 00/57189)。しかしながら、従来の測定方法においては、メグシンタンパク質を十分な検出感度で測定するために、生体試料を濃縮するなどの前処理を行う必要があった。もし、このような前処理を必要とせず、生体試料を直接測定できる方法が提供されれば有用である。
本発明者らはメグシンタンパク質を認識するモノクローナル抗体を得た。そして、該モノクローナル抗体をELISA法に用いることにより、生体試料中のメグシンタンパク質を直接測定できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のモノクローナル抗体を標識抗体としてELISA法により尿中のメグシンタンパク質を測定したところ、各種腎疾患患者尿からメグシンが検出される確率は正常人や腎疾患以外の患者尿に比べて高率であることが判明した。さらに、糸球体障害を伴う腎炎であるIgA腎症や急性進行性糸球体腎炎などでメグシン検出陽性率が他の腎疾患に比べて高いことが明らかになった。また、糸球体メサンギウム障害を伴う糖尿病性腎症では、他の腎疾患に比べて尿中メグシンタンパク質含有量が高い患者群が認められた。
これらの結果から、本発明の測定方法により、濃縮されていない生体試料中のメグシンタンパク質を検出することが可能になった。。
すなわち、本発明は以下のハイブリドーマが生産するモノクローナル抗体および該モノクローナル抗体を用いた、生体試料中に含まれるメグシンタンパク質の測定方法に関する。
〔1〕FERM BP-10598として寄託されたハイブリドーマMs12a。
〔2〕FERM BP-10598として寄託されたハイブリドーマMs12aが生産するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片。
〔3〕FERM BP-10598として寄託されたハイブリドーマMs12aを培養し、培養物に含まれるイムノグロブリンを回収する工程を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片の製造方法。
〔4〕下記工程を含む、生体試料中に含まれるメグシンタンパク質の測定方法。
i) 固相に結合している、または固相に結合可能な抗メグシンポリクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、および生体試料を接触させる工程
ii) 前記標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体を介してメグシンタンパク質と結合している前記標識分子を検出する工程
〔5〕抗メグシンポリクローナル抗体と生体試料を接触させた後に、抗メグシンモノクローナル抗体を接触させる工程を含む、〔4〕に記載の測定方法。
〔6〕生体試料が尿である〔5〕に記載の測定方法。
〔7〕抗メグシンモノクローナル抗体がFERM BP-10598として寄託されたハイブリドーマMs12aから産生されるモノクローナル抗体である〔6〕に記載の測定方法。
〔8〕抗メグシンポリクローナル抗体がウサギ由来である〔7〕に記載の測定方法。
本発明により、生体試料中のメグシンタンパク質含有量を直接測定する方法が提供された。本発明の方法によって、濃縮されていない生体試料を用いた場合でも、メグシンタンパク質含有量を測定することが可能となった。
モノクローナル抗体Ms12aと各種serpinとの反応性を示す図である。 モノクローナル抗体Ms12aと各種メグシンとの反応性を示す図である。 モノクローナル抗体Ms12aとプラスミンとの反応性を示す図である。 モノクローナル抗体Ms12aとヒト尿との反応性を示す図である。上図は、モノクローナル抗体Ms12aを用いて検出を行った場合を示し、下図は二次抗体のみで検出を行った場合を示す。 モノクローナル抗体Ms12aとヒト血漿との反応性を示す図である。左図は、モノクローナル抗体Ms12aを用いて検出を行った場合を示し、右図は二次抗体のみで検出を行った場合を示す。 尿中メグシンをELISAによって検出した場合の検量線を示す図である。縦軸は吸光度を示し、横軸はメグシン濃度(ng/ml)を示す。 モノクローナル抗体Ms12aと尿検体を反応させた場合の、pHによる反応性の変化を調べた結果を示す。 正常人および各種腎疾患患者の尿中メグシン量をELISAにより測定した結果を示す図である。縦軸はクレアチニン1g当たりのメグシン濃度(μg/g Cr)を示し、横軸は腎疾患の種類を示す。
本発明者らは、ハイブリドーマMs12aが生産するモノクローナル抗体がメグシンタンパク質と反応することを見出した。すなわち、本発明はハイブリドーマMs12aが生産するモノクローナル抗体および該モノクローナル抗体を用いた、生体試料中に含まれるメグシンタンパク質の測定方法に関する。
メグシンに対するモノクローナル抗体は、ヒトのメグシンまたはそのドメインペプチドを免疫原として、公知の方法によって得ることができる。モノクローナル抗体の取得方法は、後に具体的に述べる。
ハイブリドーマMs12aは、2005年2月9日付けで日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6に所在の独立行政法人産業技術総合研究所内特許生物寄託センターに対して、受託番号FERM BP-10598として寄託されている。
以下に、寄託を特定する内容を記載する。
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
(b)寄託日:平成17年2月9日(2005年2月9日)
(c)受託番号:FERM BP-10598
このハイブリドーマMs12a細胞株が産生するモノクローナル抗体のH鎖のアイソタイプはIgG1であった。本発明はまた、上記抗体のクラススイッチ変異体、例えば、アイソタイプIgG3、IgG1、IgG2b、IgG2aおよびその他の免疫グロブリンサブクラスに属する変異体等を包合し、その様な変異体は、Martinらの方法により作成することができる(Martin,C. et al.:J.Immunol.Methods.,145:1118,1991)。
本発明において、「抗原結合領域を含む断片」とは、モノクローナル抗体の抗原結合領域を含む一部分からなる断片を意味する。具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv(variable fragment of antibody)、sFv、scFv、dsFv(disulphide stabilised Fv)あるいはdAb(single domain antibody)などの抗体断片が、「抗原結合領域を含む断片」に含まれる。
ここで、「F(ab')」及び「Fab'」とは、イムノグロブリン(モノクローナル抗体)を、蛋白分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体断片を意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1 領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体断片を各々Fab'という。またIgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab'がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体断片は、F(ab')2と呼ばれる。
抗原結合領域を含む断片は、当該断片をコードするDNAを発現させることによって得ることもできる。たとえば、本発明のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマのmRNAを鋳型として、抗体の抗原結合領域をコードするcDNAをPCRによって増幅することができる。抗体の抗原結合領域は、可変性の高い相補性決定領域(CDR)と、比較的保存性の高いフレーム領域(FR)によって構成されている。4つのFRが3つのCDRをはさんで配置されている。そのため、N末端のFRをコードする部分と、定常領域の可変領域に近い部分に相補的な塩基配列を有するプライマーを使って、可変領域全体をコードするcDNAを増幅することができる。
このようにして回収されるcDNAがコードするアミノ酸配列は、先に述べた酵素的な消化によって得られる抗体断片とは異なる長さを有する可能性がある。更に、それぞれ1分子のVLとVHをリンカーを介して1本のペプチドとして発現させることによって、scFvとすることもできる。scFvの構造は天然の抗体とは異なっている。しかし、CDRとFRを含むアミノ酸配列を含んでいれば、抗原との結合能は維持される。したがって、酵素的な消化によって得られる抗体断片と異なるアミノ酸配列からなる断片、あるいは異なる構造を持つ断片であっても、抗原との結合能を維持する限り、抗体として利用することができる。つまりこのような抗体断片も、本発明の抗原結合領域を含む断片に含まれる。
更に本発明における抗原結合領域を含む抗体の断片は、抗原との結合能を維持する限り、必要に応じて、標識物質や、親和性物質と結合させたり、あるいは融合蛋白質とすることができる。これらの標識された抗体断片や融合蛋白質は、本発明のモノクローナル抗体に含まれる。
メグシンタンパク質に対するモノクローナル抗体は、メグシンタンパク質を免疫原性抗原として作成することができる。抗原としてのメグシンタンパク質は、培養細胞、例えばメグシンタンパク質産生細胞を用いて得ることができる。メグシンタンパク質産生細胞としては、例えばヒト腎由来細胞等が挙げられる。このメグシンタンパク質産生細胞は、当該分野で知られた、あるいはそれらと実質的に同様な培地や培養方法を用いて培養し、培養上清中に産生されるメグシンタンパク質を例えばイオン交換クロマトグラフィーおよび/またはポリクローナル抗体を使用したアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、組換えメグシンタンパク質も用いることができる。具体的には、メグシンタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子断片を含む組換えベクターにより宿主細胞を形質転換した後、この形質転換宿主を培養して、メグシンタンパク質のアミノ酸配列を含むポリペプチドを製造し、該ポリペプチドを免疫原として使用するものである。メグシンのcDNAを含む組換えベクターは、通常の遺伝子組換え手法により、例えばプラスミドベクターに挿入することによって作製される。ベクターとしては、プラスミドやファージの他に、ワクシニアウィルス、バキュロウィルス等のウィルスも使用できる。
宿主としては、例えば大腸菌、枯草菌、放線菌等の原核生物、ならびに各種細胞、例えば動物細胞、CHO細胞等の市販の細胞株ならびに酵母、植物細胞、昆虫細胞等の真核生物を用いることができる。また、原核生物に使用できるプロモーターとしては、例えばトリプトファン合成酵素オペロン、ラクトースオペロン等を用いることができる。真核生物に使用できるプロモーターとしては、例えば、ウィルスプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼに対するプロモーター、解糖系酵素に対するプロモーター等がある。また、マルチクローニングサイト、プロモーター、耐性遺伝子、複製開始点、ターミネーター、リポソーム結合部位等を有する市販のベクターあるいはプラスミドも使用することができる。耐性遺伝子には、テトラサイクリン、アンピシリン、ネオマイシンに対するもの等がある。この様にして調製されたメグシンタンパク質は、更に免疫原性コンジュゲートとしてもよいが、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できる。
このように、抗原は、各種原料、例えば培養細胞、培養組織、形質転換細胞等の抗原産生原料から従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法等の塩析、セファデックス等によるゲル濾過クロマトグラフィー法、イオン交換クロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外濾過法、アフィニティークロマトグラフィー法および高速液体クロマトグラフィー法等により精製して得ることができる。
さらに、メグシンタンパク質は、それを断片化したもの、あるいはメグシンタンパク質のアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成し、得られたポリペプチド断片であってもよい。ポリペプチド断片を適当な縮合剤を介して種々の担体蛋白質類と結合させてハプテン-蛋白質の免疫コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列を認識するモノクローナル抗体を得ることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基等を付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにすることができる。
本発明ではメグシンタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のモノクローナル抗体を提供する。本発明にかかるモノクローナル抗体は、組換えメグシンを免疫原として動物を免役した後、ミエローマ細胞と抗体産生細胞との細胞融合、ハイブリドーマの選択およびモノクローン化、モノクローナル抗体の製造、必要に応じて腹水化といった工程で作製できる。
動物の免疫は、例えば次のように行う。公知の方法(Miyata, T. et al., J. Clin. Invest., 120: 828 (1998))に従って精製したヒトメグシンタンパク質をラット、マウスなどの哺乳類動物に免疫する。哺乳類動物は細胞融合する際の相手の永久増殖性細胞と同系統の動物を用いるのが好ましい。動物の週令は、例えばマウスでは8〜10週令が好適である。性は雌雄何れでも構わない。
免疫動物として、イムノグロブリン遺伝子をヒトの遺伝子に組み換えたトランスジェニック動物を用いることにより、ヒトのイムノグロブリンを産生させることもできる。イムノグロブリン遺伝子をヒトの遺伝子に組み換えたトランスジェニック動物を用いて、目的とする反応性を有する抗体を得る方法は公知である。このようにして得ることができるイムノグロブリンは、動物から得られたものながら、完全にヒトのイムノグロブリン分子である。
免疫の方法は、精製したヒトメグシンタンパク質を適当なアジュバント(例えばフロイント完全アジュバントまたは水酸化アルミニウムゲル-百日咳菌ワクチンなど)と混合しエマルジョンとした後、動物の皮下、腹腔内、静脈内などに投与する。以後、この免疫操作を1〜2週間間隔で2〜5回行う。最終免疫は、0.5〜2μgのヒトメグシンタンパク質を動物の腹腔内に投与することにより行う。
このようにして免疫した動物の体液からは、ポリクローナル抗体が得られる。各免疫操作後3〜7日後に眼底静脈叢より採血し、その血清の抗体価を測定し、抗体価が充分上昇したとき、抗体または抗体産生細胞を採取する。メグシンに対する抗体価は、ELISA等の手法によって測定することができる。抗体価を測定するためのELISAは、メグシンをコートしたプレートに血清を加え、更に免疫動物のIgGに対する標識抗体を加えることにより実施することができる。
抗原と共に用いられるアジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビアジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカゲル等が挙げられる。免疫は、例えばBalb/cマウス、FIマウス等のマウスをはじめとする動物を使用することができる。
上記のようにヒトメグシンタンパク質で免疫した動物から抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞は、脾臓、リンパ節、末梢血などから得ることができるが、特に脾臓が好ましい。例えば、最終免疫の3〜4日後に脾臓を無菌的に摘出し、Minimal Essential Medium(MEM)培地(日水製薬製)中で細断し、ピンセットで解し、1,200rpm×5分間の条件で遠心分離させた後、上清を除き、トリス-塩酸緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理して赤血球を除去し、さらにMEM培地で3回洗浄して細胞融合用脾臓細胞を得る。
細胞融合前には、まず使用される腫瘍細胞株の調製をしておく必要がある。細胞融合前に使用される腫瘍細胞株は、たとえば免疫グロブリンを産生しない細胞株から選択することができる。融合される相手方の永久増殖性細胞には、永久増殖性を有する任意の細胞を用いることができるが、一般的には骨髄腫細胞(ミエローマ)が用いられる。永久増殖性細胞は抗体産生細胞と同種の動物由来のものを用いるのが望ましい。
例えばマウスの場合、8-アザグアニン耐性マウス(Balb/c)由来骨腫瘍細胞株として次のような細胞株が知られている。
P3-X63Ag8-U1(P3-U1)(Current. Topics in Microbiol. Immunol., 81: 1, (1978))
P3/NS1/1-Ag4-1(NS-1)(Eur. J. Immunol., 6: 511 (1976))
SP2/0-Ag14(SP-2)(Nature, 276: 269 (1978))
P3-X63-Ag8653(653)(J. Immunol., 123: 1548 (1979))
P3-X63-Ag8(X63)(Nature, 256: 495 (1975))
これらの永久増殖性細胞株は、8-アザグアニン培地(RPMI-1640培地にグルタミン(1.5mM)、2-メルカプトエタノール(5×10-5M)、ゲンタマイシン(10μg/mL)およびウシ胎児血清(FCS、CLS製)(10%)を加えた正常培地に、さらに8-アザグアニン(15μg/mL)を加えた培地)で継代培養し、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合は例えば次のように行う。上記で得られた抗体産生細胞および永久増殖性細胞をMEM培地またはPBSでよく洗浄し、細胞数が5〜10:1の比になるように混合する。1,200rpm×5分間遠心分離した後、上清を除き、沈殿した細胞群をよく解した後、攪拌しながら37℃に保ちつつ、細胞融合剤としてポリエチレングリコール-1000(PEG-1000)1〜4g、MEM培地1〜4mLおよび細胞融合促進剤としてジメチルスルホキシド0.5〜1.0mLの混液0.1〜1.0mL/108個細胞を加えて細胞融合を起こさせる。
その後、10分毎にMEM培地3mLを数回添加し、MEM培地を全量が50mLになるように加えて希釈し、細胞融合を停止させる。次に、遠心分離(1,500rpm×5分間)して上清を除去し、緩やかに細胞を解した後、正常培地(RPMI-1640培地、10%FCS)100mLを加え、メスピペットによるピペッティングで緩やかに細胞を懸濁する。
この懸濁液を96ウエルの培養用プレートに100μL/wellずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で3〜5日間培養する。培養プレートに100μL/wellのHAT培地(正常培地にヒポキサンチン(10-4M)、チミジン(1.5×10-5M)およびアミノプテリン(4×10-7M)を添加した培地)を加え、さらに3日間培養する。以後3日間毎に培養上清の半容量を除去し、新たに同量のHAT培地を加え、5%CO2インキュベーター中、37℃で約2週間培養する。
融合細胞がコロニー状に生育しているのが認められるウエルについて、上清の半容量を除去し、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いたもの)を同量加え、4日間培養する。培養上清の一部を採取し、前述のELISAによりメグシンタンパク質に対する抗体価を測定する。
より具体的には、例えばメグシンタンパク質抗原を直接又は担体と共に吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体を加え、標識を測定することによって抗体価を測定することができる。固相には、マイクロプレート等が用いられる。また抗免疫グロブリン抗体としては、細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる。その他、標識抗体に代えて、プロテインAを加え、固相に結合した抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体を検出することもできる。更に、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したメグシンタンパク質を加えることによって、抗体価を測定することもできる。
メグシンタンパク質に反応する抗体の産生が観察されたウエルにつき、限界希釈法によりクローニングを4回繰り返し、安定したメグシンタンパク質の抗体価を示すものを抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
上記のようにして得られたハイブリドーマをin vitroおよびin vivoで培養することによりモノクローナル抗体を産生させる。所望のモノクローナル抗体を、FCS含有MEM培地、RPMI-1640培地等の適当な培地中で培養し、その培養上清から得ることができる。ハイブリドーマのin vitroでの培養は、好ましくは無血清培地中で行われ、至適量の抗体をその上清に与える。
in vivoで培養する場合、任意の動物にハイブリドーマを移植する。移植のための宿主動物は、細胞融合に用いた脾臓細胞を採取した動物と同種の動物を使用するのが好ましい。例えば、プリスタン処理をした8〜10週令のBalb/c雌マウスに上記で得られた抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞の2〜4×106個/匹腹腔内投与する。プリスタン処理は、たとえば2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン-プリスタン-0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育することにより行われる。2〜3週間でマウスの腹腔内にモノクローナル抗体を高濃度に含んだ腹水が貯留し腹部が肥大してくる。このマウスから腹水を採取し、遠心分離(3,000rpm×5分間)して固形分を除去し、IgGを精製する。
腹水や培養上清を50%硫酸アンモニウムを用いて塩析し、PBSで1〜2週間透析する。この透析画分をプロテインAセファロースカラムに通し、IgG画分を集め、精製モノクローナル抗体を得る。このモノクローナル抗体は、メグシンタンパク質と特異的に反応する。
抗体のアイソタイプは、市販のキット(Gibco BRL製、Mouse Antibody Isotyping Kit等)を用いるか、またはオクタロニィ(二重免疫拡散)法(免疫学実験入門, 生物化学実験法15, 学会出版センター刊, 74頁, 1981年)により決定した。タンパク質量は、フォーリン法および280nmにおける吸光度(1.4(OD280)イムノグロブリン1mg/mL)により算出する。
大量のモノクローナル抗体を得るにはハイブリドーマの腹水化を利用することができる。この場合、ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性のある動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいはヌードマウスなどに各ハイブリドーマを移植し、腹水中に産生されたモノクローナル抗体を得ることができる。
動物は、ハイブリドーマを移植する前にプリスタンなどの鉱物油を腹腔内に投与しておくことができる。腹水液はそのままあるいは常法により精製することができる。例えば、硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックス等によるゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー、電気泳動、透析、限外濾過法、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー法等により精製することができる。上記のようにして得られたモノクローナル抗体の特性は、例えば、酵素免疫測定法(ELISA法)等により明らかにすることができる。
本発明のモノクローナル抗体は、免疫染色、例えば組織あるいは細胞染色、免疫沈降、イムノブロット、イムノアッセイ、例えば競合型または非競合型イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ELISA、ラテックス凝集法、蛋白精製、アフィニティーカラム等に使用することができる。ELISA法による場合は好ましくはサンドイッチ型アッセイがよい。なお、イムノアッセイには、免疫組織学的検討、イムノブロット、免疫沈降等の免疫反応を利用した方法全てを含有する。
本発明は、ハイブリドーマ細胞系、イムノアッセイおよび検査キットをも提供する。さらに、本発明はメグシンタンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体、この抗体を用いることを特徴とするメグシンの検出ならびに定量のためのイムノアッセイ、およびこのイムノアッセイを実施するための検査キットを提供する。また、本発明により得られたモノクローナル抗体は、メグシンに対する特異性が高く、メグシンの検出ならびに定量において、非常に有用である。
また、本発明は次の工程を含むメグシンタンパク質の測定方法を提供する。
i) 固相に結合している、または固相に結合可能な抗メグシンポリクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、および生体試料を接触させる工程
ii) 前記標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体を介してメグシンタンパク質と結合している前記標識分子を検出する工程
メングシンタンパク質の免疫学的な測定方法に必要な抗体は、検出対象であるメグシンタンパク質を認識することができるものであれば、その由来や調製方法は限定されない。したがって、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、あるいはそれらの混合物等を利用することができる。本発明に用いる抗体には、例えば、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質に対する抗体が含まれる。メグシンタンパク質またはその部分アミノ酸配列に対する抗体(例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体)、あるいは抗血清は、メグシンタンパク質、その部分アミノ酸配列を含むオリゴペプチド、あるいはc-myc-(His)6-Tag-メグシンタンパク質やMBP−メグシンタンパク質のような融合タンパク質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、前述の方法に従って製造することができる。なお部分アミノ酸配列を有する合成ペプチドを免疫原とする場合には、できるだけメグシンタンパク質に特異的に存在し、かつ親水性の高い部分のアミノ酸配列を利用するのが一般に有利である。
本発明のメグシンタンパク質、または本発明のメグシンタンパク質の部分アミノ酸配列を有する合成ペプチドは、温血動物に対してそれ自体または担体、希釈剤と共に投与される。合成ペプチドは、ウシチログロブリンやキーホールリンペットヘモシアニンのような担体タンパク質と結合させたものを免疫原として使用する。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントとともに投与することができる。投与は通常1〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えばサル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられる。前記モノクローナル抗体を標識抗体とするときは、ウサギが好ましく用いられる。
メグシンタンパク質を認識するモノクローナル抗体あるいはポリクローナル抗体は、本発明のメグシンタンパク質の測定方法に用いられる。これらの抗体を用いてメグシンタンパク質を測定する方法としては、不溶性担体に結合させた抗体と、標識分子を結合した標識化抗体とによりメグシンタンパク質を反応させて生成したサンドイッチ錯体を検出するサンドイッチ法、また、標識ヒト尿由来メグシンタンパク質と検体中のヒト尿由来メグシンタンパク質を抗体と競合的に反応させ、抗体と反応した標識抗原量から検体中のヒト尿由来メグシンタンパク質を測定する競合法を利用して検体中のヒト尿由来メグシンタンパク質を測定することができる。
本発明における好ましいアッセイ系は、サンドイッチ法である。サンドイッチ法によるヒト尿由来メグシンタンパク質の測定においては、まず、固定化抗体とヒト尿由来メグシンタンパク質とを反応させた後、未反応物を洗浄によって完全に除去し、標識化抗体を添加して固定化抗体−ヒト尿由来メグシンタンパク質標識化抗体を形成させる2ステップ法、若しくは固定化抗体、標識化抗体及びヒト尿由来メグシンタンパク質を同時に混合する1ステップ法などを用いることができる。
測定に使用される不溶性担体は、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ナイロン、ポリアセタール、フッ素樹脂等の合成樹脂、セルロース、アガロース等の多糖類、ガラス、金属などが挙げられる。不溶性担体の形状としては、例えば粒子状、トレイ状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、試験管等の種々の形状を用いることができる。抗体を吸着した担体は、適宜アジ化ナトリウム等の防腐剤の存在下、冷所に保存する。
抗体の固相化には、公知の化学結合法又は物理的吸着法を用いることができる。化学的結合法としては例えばグルタルアルデヒドを用いる方法、N-スクシニイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート及びN-スクシニイミジル-2-マレイミドアセテートなどを用いるマレイミド法、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸などを用いるカルボジイミド法が挙げられる。その他、マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシサクシニミドエステル法、N-サクシミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸法、ビスジアゾ化ベンジジン法、ジパルミチルリジン法が挙げられる。あるいは、先に被検出物質とエピトープの異なる2種類の抗体を反応させて形成させた複合体を、抗体に対する第3の抗体を上記の方法で固相化させておいて捕捉することも可能である。
本発明のモノクローナル抗体は、イムノアッセイに用いるために標識抗体とすることができる。抗体を標識化するものとして、酵素、酵素基質、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、放射性物質等を用いることができる。標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応等を利用することができる。
好ましい標識酵素としては、例えばペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、α-グリセロールホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、西洋わさびパーオキシダーゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼ等が挙げられる。好ましい蛍光物質としては、例えばフルオレセインイソチアネート、フィコビリプロテイン、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、およびオルトフタルアルデヒド等が挙げられる。好ましい発光物質としてはイソルミノール、ルシゲニン、ルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びその修飾エステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリン等が挙げられる。そして好ましい放射性物質としては、125I、127I、131I、14C、3H、32P、あるいは35S等が挙げられる。
前記標識物質を抗体に結合する手法は公知である。具体的には、直接標識と間接標識が利用できる。直接標識としては、架橋剤によって抗体、あるいは抗体断片と標識とを化学的に共有結合する方法が一般的である。架橋剤としては、N,N'-オルトフェニレンジマレイミド、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン酸・N-スクシンイミドエステル、6-マレイミドヘキサン酸・N-スクシンイミドエステル、4,4'-ジチオピリジン、その他公知の架橋剤を利用することができる。これらの架橋剤と酵素および抗体との反応は、それぞれの架橋剤の性質に応じて既知の方法に従って行えばよい。この他、抗体にビオチン、ジニトロフェニル、ピリドキサール又はフルオレサミンのような低分子ハプテンを結合させておき、これを認識する結合成分によって間接的に標識する方法を採用することもできる。ビオチンに対してはアビジンやストレプトアビジンが認識リガンドとして利用される。一方、ジニトロフェニル、ピリドキサール又はフルオレサミンについては、これらのハプテンを認識する抗体が標識される。
抗体を標識する場合、西洋わさびペルオキシダーゼを標識化酵素として用いることができる。本酵素は多くの基質と反応することができ、過ヨウ素酸法によって容易に抗体に結合させることができるので有利である。また、抗体としては場合によっては、そのフラグメント、例えばFab'、Fab、F(ab')2を用いる。また、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体にかかわらず同様の処理により酵素標識体を得ることができる。上記架橋剤を用いて得られる酵素標識体はアフィニティークロマトグラフィー等の公知の方法にて精製すれば更に感度の高い免疫測定系が可能となる。精製した酵素標識化抗体は、防腐剤としてチメロサール(Thimerosal)等を、そして安定剤としてグリセリン等を加えて保存する。標識化抗体は、凍結乾燥して冷暗所に保存することにより、より長期にわたって保存することができる。
標識化剤が酵素である場合には、その活性を測定するために基質、必要により発色剤が用いられる。酵素としてペルオキシダーゼを用いる場合には、基質溶液としてH2O2を用い、発色剤として2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸]アンモニウム塩(ABTS)、5-アミノサリチル酸、オルトフェニレンジアミン、4-アミノアンチピリン、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン等を使用することができる。酵素にアルカリフォスファターゼを用いる場合は、基質としてオルトニトロフェニルフォスフェート、パラニトロフェニルリン酸等を使用することができる。酵素にβ-D-ガラクトシダーゼを用いる場合は基質としてフルオレセイン-ジ-(β-D-ガラクトピラノシド)、4-メチルウンベリフェニル-β-D-ガラクトピラノシド等を使用することができる。本発明は、また、前述のモノクローナル抗体を標識し、ポリクローナル抗体を固相化してメグシンタンパク質の免疫学的測定用試薬としたもの、更にはこの試薬に標識検出用の指示薬や対照試料等をキット化したのものをも含むものである。
本発明のモノクローナル抗体を使用するイムノアッセイは、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料等を検体または試料とすることができる。たとえば生体由来の試料、具体的には、血液、血漿、関節液、脳脊髄液、唾液、羊水、尿、その他体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジネート、生検試料、細胞、組織、脳組織、脳由来細胞系、神経細胞系、神経由来細胞系、乳腺由来細胞系、乳腺組織、卵巣由来細胞系、卵巣組織、癌細胞系、癌組織等が挙げられる。特に好ましい試料は、尿である。
特に、本発明においては、ポリクローナル抗体を固相抗体に、そしてモノクローナル抗体を標識抗体として利用することによって、濃縮されていない尿中のメグシンの測定を可能とした。特にハイブリドーマMs12aによって産生される本発明によるモノクローナル抗体を標識抗体として利用すれば、濃縮されていない尿を試料として、メグシンを高い感度で測定することができる。
すなわち本発明は、下記工程を含む、生体試料中に含まれるメグシンタンパク質の測定方法を提供する。
i) 固相に結合している、または固相に結合可能な抗メグシンポリクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、および生体試料を接触させる工程;および
ii) 前記標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体を介してメグシンタンパク質と結合している前記標識分子を検出し、前記生体試料のメグシン濃度を決定する工程
本発明において、前記工程ii)において検出された標識分子は、予めメグシン濃度が明らかな標準試料を用いて検出される標識分子の検出量に基づいて、メグシン濃度と関連付けられる。標識分子の検出量とメグシン濃度とは、たとえば検量線(calibration curve)を利用して決定することができる。検量線は、メグシンの希釈系列を測定することによって得られた標識分子の検出量をプロットすることによって作成される。検量線は標準曲線(standard curve)とも呼ばれる。
尿を試料としてメグシンタンパク質の量を求める場合、たとえば1日分の尿をプールして尿量を測定すれば、尿における1日あたりのメグシンタンパク質の量を明らかにすることができる。あるいは、随時尿を試料とした場合であっても、クレアチニン補正によって量に類する値を推定することもできる。クレアチニン補正とは、クレアチニンの濃度に基づいて尿量の変動による測定対象成分の希釈(または濃縮)の影響を補正する手法である。1日当たりの尿へのクレアチニン排泄量が一定であることに基づいて、クレアチニンの濃度から随時尿が1日における尿の総排泄量に占める割合を算出し、同じ尿から得られた測定対象成分の濃度を1日当たりの総排泄量に換算することができる。また血液においては、体重補正などの腎機能診断の際に一般的に使用される数値補正を適用して量の推定が可能である。体重補正とは、血液を採取した個体の体重から推測される血液の体積に基づいて、血液中成分の量を算出する手法である。
この他に、ある個体に由来する生体試料のメグシンタンパク質濃度の変動を観察すれば、量への換算を行わなくても腎機能の変化を経時的に追跡することができる。あるいは、特定の種、あるいは人種などの集団における体液試料のメグシンタンパク質濃度の正常値を予め設定しておき、特定の個体のメグシンタンパク質濃度(または量)と比較することにより、腎機能の異常の有無を知ることもできる。
本発明のメグシンの測定法により、生体試料中のメグシン濃度の変動を伴う疾患を診断することができる。具体的には、IgA腎症を含む慢性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、糖尿病性腎症および慢性腎不全などの疾患において尿中メグシン濃度の有意な上昇が確認された。
すなわち本発明は、以下の工程を含む生体試料中のメグシン濃度の変動を伴う疾患の診断方法を提供する。
i) 固相に結合している、または固相に結合可能な抗メグシンポリクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、および生体試料を接触させる工程;
ii) 前記標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体を介してメグシンタンパク質と結合している前記標識分子を検出し、生体試料に含まれるメグシンの濃度と関連付ける工程;および
iii)正常人と比較して生体試料中のメグシン濃度が高い場合に、慢性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、糖尿病性腎症または慢性腎不全であると判定する工程
なお本明細書において引用されたすべての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
〔実施例1〕抗体の作製
a. 免疫原の調製(組み替えメグシン)
公知の方法[Inagi, R. et al. : Biochem. Biophys. Res.Commun.,286 : 1098-1106, 2001]に準じ、ヒトのメグシン cDNAをトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養上清から組み替えヒトメグシンを得た。
培養上清2lに100mlの1M酢酸ナトリウムを加えてpH4.5に調整した後、50mM酢酸ナトリウムを加え、2倍に希釈した。希釈液をイオン交換クロマトグラフィー(HiPrep16/10 SP XL : アマシャム・バイオサイエンス製)に供した(溶出条件:50mM酢酸ナトリウム(pH4.5)、NaCl 0〜1Mリニアグラジエント;溶出容積:20×カラムベッドボリューム)。溶出液をゲル濾過によりバッファー交換を行い(HiPrep 26/10 Desalting、20mMリン酸カリウム(pH6.8))、続いてハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー(HT-1:Bio-Rad製)に供した(溶出条件:20mMリン酸カリウム(pH6.8)、リン酸カリウム20〜400mMリニアグラジエント;溶出容積:30×カラムベッドボリューム)。溶出液を再度ゲル濾過によりバッファー交換を行い(HiPrep 26/10 Desalting、50mM MES(pH5.5)、50mM NaCl)、イオン交換クロマトグラフィー(Mono S HR 5/5:アマシャム・バイオサイエンス製)に供した(溶出条件:50mM MES(pH5.5)、50mM NaCl、NaCl 50〜100mMリニアグラジエント;溶出容積:40×カラムベッドボリューム)。溶出液をCentricon 10(ミリポア製)を用いて遠心濃縮し(3000g)、ダルベッコPBS(-)緩衝液(日水製薬製)にバッファー交換した。遠心濃縮とバッファー交換を3回繰り返し、精製組み替えメグシンを得た。クロマトグラフィー装置は、AKTA explorer 10s(アマシャム・バイオサイエンス製)を用い、操作は全て4℃で行った。
b. 免疫
Balb/cおよびAjclマウス(6週齢雄:日本クレア)を1週間馴化飼育後、一匹あたり精製メグシン 50 μg を250μlのPBSに溶解し、250μlフロイント完全アジュバント(Diffco製)と良く混合しエマルジョンを作製して腹空内に投与した。2週間後PBSに溶解した同濃度のメグシン と250μlフロイント不完全アジュバント(Diffco製)と良く混合しエマルジョンを作製して腹空内に投与した。これを三回繰り返した後、マウスを開腹し脾臓を取り出した。
c. 細胞融合
Clonacell-HY Hybridoma cloning Kit(ステムセルテクノロジー製)を用いハイブリドーマを作製した。
開腹し取り出した脾臓より脾臓細胞を取り出し融合培地で洗浄後1億個を50mlの遠心管に取った。一方培養したSP2細胞を融合培地で洗浄し、2千万個を取り脾臓細胞の入った遠心管に加えた。これを良く混合し、ポリエチレングリコールを用いて融合を行った。融合した細胞を75cm2培養フラスコにて1日培養した。1日培養後細胞を集め、37℃に暖めた選択培地100mlに懸濁し10cmシャーレに10mlまいた。細胞が増殖しコロニー形成が目視できるようになれば、チップを用いてコロニーを吸い取り、増殖培地の入った96wellプレートに移植した。移植後3〜4日後培養上清を取りスクリーニングに用いた。
d. ハイブリドーマのスクリーニング:ELISA法(直接法)
精製メグシンをPBSで1μg/mlに調製し、100ml / wellでELISAプレートに4℃、一夜吸着させた。洗浄液(0.05% Tween 20を含むPBS)で3回洗浄後、PBSで4倍に希釈したブロックエースでブロッキングを行った。その後洗浄し、ハイブリドーマ培養上清100μl/wellずつ加え、室温で2時間反応させた。プレートを洗浄後、抗体希釈液(PBSで10倍希釈したブロックエース)で5000倍に希釈したペロオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(ケミコン製)を100μl/wellずつ加え、室温で2時間反応させた。O-フェニレンジアミンを基質反応液(0.2μl/ml過酸化水素水を含むクエン酸-リン酸緩衝液、pH5.0)に0.4mg/mlの濃度になるよう溶解し、基質溶液を調製した。洗浄液で5回プレートを洗浄し、基質溶液を100μl/wellとなるように加えた。基質溶液を30分間反応させた後、 2N硫酸を100μl/well加え反応を停止させ、490nmの吸光度を測定した。
ELISAの結果Ms12aはOD490が0.524で、他のクローンに比べても高い値を示したため、単一クローンの細胞株を得るためクローニングを行った。
e. ハイブリドーマのクローニング
メグシンタンパク質に対して結合する抗体を産生するハイブリドーマについて限界希釈法によるクローニングを3回繰り返し行い、メグシンタンパク質に対して特異的に結合する抗体を産生し、且つ安定した増殖能を有するハイブリドーマMs12a細胞株が得られた。
f. モノクローナル抗体のタイピング
上記e.で得られた細胞株の培養上清0.5mlを用いてMouse Antibody Isotyping Kit(ロシュ製)を用いてタイピングを行った結果、isotypeはIgG1であった。
g. ウエスタンブロッティング
精製メグシンをPBSで40ng/laneに調製し、等量の2×loading bufferと混合し沸騰浴中で5分間加熱したものをサンプル溶液とした。サンプル溶液を電気泳動装置およびTris-glycine bufferを用いて10-20% polyacrylamide gelで電気泳動した。
一方、泳動中、polyvinylidene difluororide membraneをメタノールに浸した後、精製水に浸しなじませた。タンパク質のPVDF膜への転写は、電気泳動後ゲルを装置から取り出し、ブロッターに陽極側からエレクトロブロットbufferのbuffer A1に浸した2枚の濾紙、buffer A2に浸した1枚の濾紙、PVDF膜、ゲルおよびbuffer Cに浸した3枚の濾紙の順に置き、80mA / ゲルで1.5時間転写した。転写後、PVDF膜をブロックエースで室温、1時間振とうさせブロッキングした。その後、膜をハイブリドーマ培養上清と4℃で一晩反応させた。その後洗浄液で洗浄、アルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG抗体を加え、室温で2時間反応させた。洗浄液で洗浄後、NBT-BCIP溶液で発色させた。
Ms12aはSDS-PAGE 2ME+、2ME-およびnative-PAGEのいずれの条件においてもメグシンタンパク質との反応性を示した。
h. Biacoreを用いた結合性の検討
CM5チップにアミノカップリング法にて精製メグシン 50μg/mlを200μl結合させた。エタノールアミンにてフリーの活性基をブロックした。スクリーニングにより得られたMs12aモノクローナル抗体を結合させ結合量を測定した。
その結果、他法に比べ立体構造を保持しているBiacoreの場合でも、Ms12aはメグシンタンパク質との十分な結合性を示した。
i. モノクローナル抗体(Ms12a)IgGの調製と精製
Balb /cマウス(8週齢雌)に0.5ml/匹のプリスタンを腹くう内投与し、その10日後に上記e.のクローニングで得られたハイブリドーマMs12a細胞株を1匹あたり約107細胞数/0.5ml/匹で腹くう内に注入した。10日後頃からマウスの腹部肥大を認めたため、開腹して腹水を採取した。採取した腹水は、1000rpm、4℃にて10分間遠心分離し、その上清を37℃、30分間放置した後、4℃で一晩静置した。12000rpm、4℃で10分間遠心分離後、得られた上清をアフィニティーカラムProtein A Sepharose(アマシャム・バイオサイエンス製)を用いてモノクローナル抗体(Ms12a)を精製した。この抗体溶液の260、280、320nmにおける吸光度を測定し、Werbulg-Christian法により抗体濃度を測定した。得られた抗体はELISAの検出抗体として使用した。
〔実施例2〕 Ms12aの特異性
a. 各種serpinとの反応性
上記のウエスタンブロッティング法を用い、メグシンの他にいくつかのserpin(α2-抗プラスミン、α1-抗トリプシン、抗トロンビンIII、PAI-1(plasminogen activator inhibitor 1)、MBP PAI-2(maltose biding protein融合plasminogen activator inhibitor 2))との交叉反応性を検討した(図1)。MBP PAI-2に対してのみごくわずかな反応がみられた。
b. 各種メグシン(CHO発現メグシン、GST融合ヒトメグシン、GST融合ラットメグシン、GST融合マウスメグシン)との反応性とメグシン/プロテアーゼ複合体との反応性
モノクローナル抗体のスクリーニングにはCHO発現メグシンを使用したが、その他のメグシンについて同じくウエスタンブロッティング法により反応性を検討した(図2)。2種類のGST融合ヒトメグシンに対しては良く反応した。一方、種差の異なるGST融合ラットメグシンとGST融合マウスメグシンに対してはごくわずかな反応しかみられなかった。また、CHO発現メグシンとメグシンリガンドの一つと考えられるプラスミンとの複合体を認識した(図3)。
c. ヒト尿中蛋白(正常人、患者)との反応性
同じくウエスタンブロッティング法によりヒト尿中蛋白との反応性を検討した(図4)。正常人及び患者尿を蛋白量10μg/wellになるように調製し、それらにメグシンを5ng/well添加し、SDS-PAGEで電気泳動を行った。二次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(H+L)抗体(ケミコン)を10000倍希釈したものを使用した。
その結果、反応は、メグシンとのみで、ヒト尿中蛋白との非特異反応はウエスタンブロッティング法ではみられなかった。
d. ヒト血漿(正常人、患者)との反応性
同じくウエスタンブロッティング法によりヒト血漿との反応性を検討した(図5)。血漿は正常人、患者とも0.15μl/well、メグシンは5ng/wellになるように添加し、SDS-PAGEで電気泳動を行った。二次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(H+L)抗体(ケミコン)を10000倍希釈したものを使用した。
その結果、二次抗体由来の反応以外、メグシンとの反応のみで、ヒト血漿との非特異反応はウエスタンブロッティングではみられなかった。
〔実施例3〕 Ms12aを検出抗体として使用した尿中メグシン測定サンドイッチELISA法
a. 基礎検討データ
1) Biacoreを用いた検出抗体としての結合性の検討
検討の結果、Ms12aは他のモノクローナル抗体に比べて親和性が高かった。他の抗体の場合、メグシンとの結合量はMs12aと同程度だが結合後すぐに解離が始まるのに対して、Ms12aはその傾向がより低かった。このことから、ウサギポリクローナル抗メグシン抗体(個体番号:1503)を固相抗体としてMs12aと組み合わせるサンドイッチ法の検討を行った。
2) ELISA方法
ウサギポリクローナル抗メグシン抗体の抗原精製品(1μg/ml)を96穴マイクロプレート(NUNC Code442404)に固相したものを用いELISAを行った。スタンダードストック液(CHO-megsin Lot.200205-2 : 20μg/ml)をもとに0.078〜5ng/mlの段階希釈液をスタンダードとし、100μl/well添加した。スタンダードおよび尿検体の希釈にはすべて蛋白無吸着チューブ(住友ベークライト製)を使用した。尿検体はボルテックスミキサーで良く攪拌し沈さごと4倍希釈し100μl/well添加した。添加が終了したら室温で2時間反応させた。反応終了後プレート洗浄機で500μl・5回洗浄した。抗体希釈緩衝液で10000倍希釈したペルオキシダーゼ標識Ms12a(Lot.TT-861)を100μl/well添加し室温で2時間反応させた。反応終了後プレート洗浄機で500μl・5回洗浄した。TMB(MOSS)を100μl/well添加し、室温で30分反応させた。30分後2N-H2SO4100μl/well加え反応を停止した。V-MAX(Molecular Devices)にて450nm(samp)-650nm(ref)で測定した。同じ尿試料について市販のクレアチニン測定用試薬(ダイヤ試薬製、自動分析機用測定試薬「ダイヤ」−Crea)によってクレアチニン濃度を求め、メグシンタンパク質の量をクレアチニン比として補正した。
3) 検量線(感度、測定範囲、直線性)
検量線(両対数グラフ:図6)については、メグシン濃度を0.002〜5ng/mlの範囲で調べた結果、最小検出感度は0.04ng/mlであった。また、測定範囲は0.078〜5ng/mlが適当と考えられる。この場合r2 = 0.995〜1の範囲に殆ど収まっている。
尿検体の希釈直線性については、正常人尿にメグシンを添加し段階希釈したサンプルの場合、0.3〜32ng/mlの範囲内でr2 = 0.994と良好な結果が得られた。
4) Ms12a使用時の条件(buffer組成)
抗原-Ms12a抗体反応時のbufferの選択(PBSまたはTris)と至適pHについて検討を行った(図7)。Tris bufferでpHを6.0〜8.0まで0.5きざみに変えて行った結果、pH 8.0で若干低めのODを示す他はあまり変化は無かった。しかしPBSとの比較ではTBSの場合、ODで少なくとも17%の低下がみられたため、PBSのほうが感度が高くなると思われたため、PBSを採用した。
5) 再現性
メグシン濃度を終濃度0.1、0.5、2ng/mlとなるようPBS及び尿に添加したサンプルについて日差再現性(5回測定)を調べた。ODのばらつきは10%程度、測定値のばらつきは20%程度であった。
6) 添加回収試験
患者尿89検体にメグシンを添加したものをサンプルとしてメグシンを測定し、添加分のメグシン回収率を調べた。測定値が理論値の±20%に収まる検体は約7割とややばらつきはあるが、統計処理を行った結果、阻害や非特異反応によるものではないと思われる。従って検体中のメグシンはMs12aにより特異的に正確に検出、測定されていると考えられる。
7) 中和試験
患者尿8検体に添加したメグシン(終濃度1ng/ml)はMs12a添加により100%中和され、検出抗体としてメグシンの認識に有効と考えられる。
8) 共存物質の影響
共存物質の影響は、リン酸アンモニウムマグネシウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、トランスフェリン、アルブミン、尿素、IgG 、IgA、IgM、アスコルビン酸、グルコース、ビリルビン(遊離型)、ビリルビン(抱合型)、溶血ヘモグロビン、乳ビ、THPについて調べた。アスコルビン酸以外は殆ど影響はないと考えられる。アスコルビン酸は250mg/dlの濃度において強く阻害を示したが、これはこの濃度での添加によるpH低下(この場合はpH4以下になった)が原因と考えられる。アスコルビン酸添加後に低下したpHを中性に戻して測定した場合は、500mg/dlの濃度でも阻害されなかった。
また、血液添加の影響については、溶血血漿または血清を正常人尿に加えたものにメグシンを添加して回収率を求めたところ、10%添加でも殆ど影響はみられなかった。
b. 尿中メグシン測定データ
1) 正常人尿測定結果(図8)
正常人尿は早朝尿24検体、随時尿78検体の合計101検体を測定した。このうち2検体(2%)で測定限度以上の結果となった。他の検体は、全て陰性であった。
2) 患者尿測定結果(図8)
測定した患者尿全2290検体(糖尿病性腎症69%、IgA腎症6%、慢性糸球体腎炎5%、慢性腎不全3%、その他15%)のうち、陽性検体(ELISAにおける測定限度以上:0.31ng/ml)は242検体(陽性率11.2% )であった。疾患別にみた陽性検体の割合は以下の通りであった。
糖尿病性腎症132検体(12%)
IgA腎症27検体(24%)
IgA腎症以外の慢性糸球体腎炎37検体(16%)
慢性腎不全14検体(19%)
急速進行性糸球体腎炎7検体(39%)
非腎疾患25検体(3%)
この中には腎生検患者の蓄尿検体(58検体)も含まれているが、陽性は20検体(34%)で、そのうちループス腎炎をはじめActivityの高い糸球体腎炎で尿中メグシンは高い傾向にあった。
また、正常人尿中メグシン量の平均値+2SD(0.88 μg/gCr)を上回る、つまり統計学的有意に正常人尿中メグシン量より高値を示す割合は以下の通りだった。
糖尿病性腎症71検体(7%)
IgA腎症13検体(12%)
IgA腎症以外の慢性糸球体腎炎12検体(5%)
慢性腎不全8検体(11%)
急速進行性糸球体腎炎7検体(39%)
非腎疾患3検体(0.4%)
本発明の測定方法により、生体試料を濃縮せずに生体試料中のメグシンタンパク質の量を測定することが可能となった。生体試料に前処理を行わないことにより、測定方法が簡便になり、一度に大量の試料を測定できる点で本発明は有効である。たとえば尿試料中のメグシン濃度は、各種の腎疾患の診断マーカーとして有用である。したがって本発明に基づいて、濃縮されていない尿試料に含まれるメグシンを測定し、各種の腎疾患の診断材料とすることができる。

Claims (8)

  1. FERM BP-10598として寄託されたハイブリドーマMs12a。
  2. FERM BP-10598として寄託されたハイブリドーマMs12aが生産するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片。
  3. FERM BP-10598として寄託されたハイブリドーマMs12aを培養し、培養物に含まれるイムノグロブリンを回収する工程を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片の製造方法。
  4. 下記工程を含む、生体試料中に含まれるメグシンタンパク質の測定方法。
    i) 固相に結合している、または固相に結合可能な抗メグシンポリクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体またはその抗原結合領域を含む断片、および生体試料を接触させる工程
    ii) 前記標識分子を結合した抗メグシンモノクローナル抗体を介してメグシンタンパク質と結合している前記標識分子を検出する工程
  5. 抗メグシンポリクローナル抗体と生体試料を接触させた後に、抗メグシンモノクローナル抗体を接触させる工程を含む、請求項4に記載の測定方法。
  6. 生体試料が尿である請求項5に記載の測定方法。
  7. 抗メグシンモノクローナル抗体がFERM BP-10598として寄託されたハイブリドーマMs12aから産生されるモノクローナル抗体である請求項6に記載の測定方法。
  8. 抗メグシンポリクローナル抗体がウサギ由来である請求項7に記載の測定方法。
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