JPWO2003052102A1 - ブラディオン検出用特異的抗体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、大腸癌及び/又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体、並びに該抗体を用いた癌の検出方法及び該抗体を含む癌の診断薬に関する。
Description
技術分野
本発明は、ブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体、並びに癌の検出方法及び癌の診断薬に関する。
背景技術
21世紀における分子医療革命は、ポストゲノム計画として、疾病の遺伝子・物質基盤を捉えて、個人特性に合わせた制御モニターシステムを構築していくことを目指している。具体的には、“Quality of Life”の概念に基づいて、遺伝子病・癌・神経退行性疾患などの社会生活を脅かす疾患群のリスクグループの検出(診断及び遺伝子モニタリング)、さらにはリスク遺伝子の発見、ならびに治療(例えば薬剤、遺伝子治療)に対する感受性検索など、個人の遺伝タイプに合った医療対応体制を確立するというものである。ここで、癌のみならず多くの疾病は、multi−gene effectによるものであり、かつ、環境要因が大きく左右することから、何をコントロールしたら疾病にならないということは断言できない。しかしながら、疾病になってしまったものをコントロールする、いわゆる制御技術開発を通じて疾病制御対策をこうじることは可能なのである。
この概念に基づき、現在特に細胞の癌化・不死化制御技術開発が分子レベルで活発に展開されている。具体的には、細胞寿命の制御として、情報伝達系(シグナルトランスダクション)の解析が研究されることが多い。このような研究を通じて、様々な細胞増殖・分裂・癌化に関わる分子基盤が明らかにされてきた。既に、産業技術総合研究所(旧工業技術院)から、そのような細胞寿命制御因子としてブラディオンに関する発明の特許申請がなされている(特許第3141107号、特開2001−161384号公報、米国特許出願第09/440,936号)。癌細胞、中でも大腸癌細胞及び皮膚癌にのみ発現するブラディオンは、早期診断はもちろんのこと特異的阻害剤及び遺伝子治療ターゲットとして必要な諸条件を満たすことが明らかになった。
一方、前立腺癌は、60歳代より急激な患者人口の増加が認められ、70代では潜伏癌も含めて30%台にのぼる高齢者の高リスク癌の一つである。現状では、老人健診等の検診現場で診断されることはなく、前立腺肥大等の疑いで精査されて発見されるケースがほとんどである。前立腺癌の診断としては、前立腺特異抗原の血中検出法による特異的診断法があるものの、施行できる現場が少なく、血尿等一次検診で発見しやすい症状を呈さないことがほとんどであるために、見落とされることが多い。根治療法としては、原発巣の外科的切除が有効であることは他の癌と同じであるが、前立腺癌はしばしば早期段階での診断が困難であり、年齢と癌の進行度合いにより手術不能例が多く、転移(骨転移)が高率に起こって、予後不良となる例が多い。従って、前立腺癌の早期診断・治療への簡便で安価な技術開発は急務である。
発明の開示
本発明は、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体、並びに該抗体を用いた癌の検出方法及び該抗体を含む癌の診断薬を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ブラディオン遺伝子が大腸癌及び前立腺癌に関与していることを突き止め、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体を作製し、免疫組織染色の一次抗体として使用したところ、上記癌細胞を検出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体である。
また本発明は、受託番号がFERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021であるハイブリドーマにより産生される、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体である。
本発明はまた、上記モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマである。ここで、該ハイブリドーマとしては、受託番号FERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021を有するものが挙げられる。
また本発明は、上記モノクローナル抗体を用いて、サンプル中の癌細胞に由来するブラディオン蛋白質を検出することを特徴とする、癌の検出方法である。ここで、癌としては、大腸癌及び/又は前立腺癌が挙げられる。
さらに本発明は、モノクローナル抗体を含む癌の診断薬である。癌としては、大腸癌及び/又は前立腺癌が挙げられる。
以下、本発明を詳細に説明する。本願は、2001年12月14日に出願されたPCT特許出願PCT/JP01/11003号の優先権を主張するものであり、上記特許出願の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
本発明は、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体とその用途に係るものであり、上記モノクローナル抗体が、大腸癌又は前立腺癌細胞においてのみ発現するブラディオン蛋白質と特異的に反応する性質を利用するものである。本発明はこの性質に注目して完成され、サンプル中の上記ブラディオン蛋白質を免疫学的に定量することにより癌を検出するため、迅速、高感度かつ簡便に癌を検出することができる。
1.ブラディオン蛋白質
ブラディオンは、ヒト成人の脳などに特異的に存在することが知られている蛋白質であって、細胞分裂及び増殖制御に関わる物質(セプチンファミリー)と類似した構造を有するものであり、また同時に細胞寿命の決定因子(プログラム細胞死を引き起こす)の構造を有するものでもある。既に予備実験などにより、その機能解明が進んでおり、ブラディオンは、癌細胞に特異的発現を示すセプチンファミリーとよばれる細胞分裂制御因子であること、細胞分裂の最終の時点でMAPキナーゼシグナル伝達カスケード、細胞増殖装置のモーターポンプとしての役割を果たすことが示されている。ブラディオン蛋白質は、同じブラディオン遺伝子によってコードされる2種類の転写産物、すなわちα型とβ型とが知られており、またブラディオン蛋白質の組織特異的発現は、大腸癌組織及び皮膚癌組織においても認められている(Tanakaら、Biochemical and Biophysical Research Communications 286,547−553(2001))。
本発明者は、最近になって、ブラディオンが前立腺癌細胞の増殖・分裂・転移能の調節にも大きく関与することを明らかにした。そこで、本発明者は、ヒトブラディオン蛋白質に対するモノクローナル抗体を作製し、当該モノクローナル抗体を大腸癌細胞及び前立腺癌細胞の検出試験に用いたところ、実際に、ヒトブラディオン蛋白質に対するモノクローナル抗体が大腸癌細胞及び前立腺癌細胞の両方を検出することを確認した。
2.本発明のモノクローナル抗体の作製
本発明のモノクローナル抗体は、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオンと特異的に反応するという特徴を有するものである。本発明のモノクローナル抗体のグロブリンタイプは、上記特徴を有するものである限り特に限定されるものではなく、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでもよいが、IgG及びIgMが好ましい。本発明のモノクローナル抗体は、以下の手順に従って得ることができる。
(1)免疫原の調製
本発明のモノクローナル抗体を作製するにあたり、免疫原(抗原)となるための蛋白質を調製する。免疫原蛋白質としては、ヒトブラディオン蛋白質を用いる。本発明において免疫原として使用可能なヒトブラディオン蛋白質のアミノ酸配列及び該蛋白質をコードするcDNA配列は、ヒトブラディオンα及びβに関して、それぞれGenBankにおいてアクセッション番号AB002110及びAB008753として公開されている。従って、公開されているアミノ酸配列情報を利用して、当技術分野で公知の手法、例えば固相ペプチド合成法などにより、免疫原として使用するためのヒトブラディオン蛋白質を合成することができる。
また、公知の遺伝子組換え手法を利用して、ヒトブラディオン蛋白質をコードするcDNAの情報を用いてヒトブラディオン蛋白質を生産することも可能である。以下、組換え手法を用いたヒトブラディオン蛋白質の生産に関して説明する。
ブラディオン生産用組換えベクターは、上記公開されているcDNA配列を適当なベクターに連結することにより得ることができ、形質転換体は、ブラディオン生産用組換えベクターを、ブラディオン蛋白質が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。
ベクターには、宿主微生物で自律的に増殖し得るファージ又はプラスミドが使用される。プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET21a,pGEX4T,pUC118,pUC119,pUC18,pUC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110,pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13,YEp24,YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターにヒトブラディオンcDNAを挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
その他、哺乳動物細胞において用いられるブラディオン生産用組換えベクターには、プロモーター、ヒトブラディオンcDNAのほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などが連結されていてもよい。
DNA断片とベクター断片とを連結させるには、公知のDNAリガーゼを用いる。そして、DNA断片とベクター断片とをアニーリングさせた後連結させ、ブラディオン生産用組換えベクターを作製する。
形質転換に使用する宿主としては、ヒトブラディオン蛋白質を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
一例として、細菌を宿主とする場合は、ブラディオン生産用組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、ヒトブラディオンDNA、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)BRLなどが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。プロモーターは、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母、動物細胞、昆虫細胞などを宿主とする場合には、同様に、当技術分野で公知の手法に従って、ヒトブラディオン蛋白質を生産することができる。
本発明において免疫原として使用するヒトブラディオン蛋白質は、上記作製した形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。上記形質転換体を培地で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で6〜24時間行う。培養期間中、pHは中性付近に保持する。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
培養後、ヒトブラディオン蛋白質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより蛋白質を抽出する。また、ヒトブラディオン蛋白質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、蛋白質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中からヒトブラディオン蛋白質を単離精製することができる。
ヒトブラディオン蛋白質が得られたか否かは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動等により確認することができる。
次に、得られた蛋白質を緩衝液に溶解して免疫原を調製する。なお、必要であれば、免疫を効果的に行うためにアジュバントを添加してもよい。アジュバントとしては、市販の完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント等が挙げられ、これらの何れのものを混合してもよい。
(2)免疫及び抗体産生細胞の採取
上記のようにして得られた免疫原を、哺乳動物、例えばラット、マウス(例えば近交系マウスのBALB/c)、ウサギなどに投与する。免疫原の1回の投与量は、免疫動物の種類、投与経路などにより適宜決定されるものであるが、動物1匹当たり約50〜200μgである。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内に免疫原を注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、初回免疫後、数日から数週間間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で、2〜6回、好ましくは3〜4回追加免疫を行う。初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)法等により繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したときは、免疫原を静脈内又は腹腔内に注射し、最終免疫とする。そして、最終免疫の日から2〜5日後、好ましくは3日後に、抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
(3)細胞融合
ハイブリドーマを得るため、上述のように免疫動物から得た抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。
抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞としては、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。また株化細胞は、免疫動物と同種系の動物に由来するものが好ましい。ミエローマ細胞の具体例としては、BALB/cマウス由来のヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT)欠損細胞株である、P3X63−Ag.8株(ATCC TIB9)、P3X63−Ag.8.U1株(癌研究リサーチソースバンク(JCRB)9085)、P3/NSI/1−Ag4−1株(JCRB 0009)、P3x63Ag8.653株(JCRB 0028)又はSp2/0−Ag14株(JCRB 0029)などが挙げられる。
次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを約1:1〜20:1の割合で混合し、細胞融合促進剤の存在下にて融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1,500〜4,000ダルトンのポリエチレングリコール等を約10〜80%の濃度で使用することができる。また場合によっては、融合効率を高めるために、ジメチルスルホキシドなどの補助剤を併用してもよい。さらに、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
(4)ハイブリドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を、例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に2×105個/ウエル程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。培養温度は、20〜40℃、好ましくは約37℃である。ミエローマ細胞がHGPRT欠損株又はチミジンキナーゼ(TK)欠損株のものである場合には、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジンを含む選択培地(HAT培地)を用いることにより、抗体産生能を有する細胞とミエローマ細胞のハイブリドーマのみを選択的に培養し、増殖させることができる。その結果、選択培地で培養開始後、約14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウエルに含まれる培養上清の一部を採取し、酵素免疫測定法(EIA;Enzyme Immuno Assay、及びELISA)、放射免疫測定法(RIA;RadioImmuno Assay)等によって行うことができる。
融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立する。本発明のハイブリドーマは、後述するように、RPMI1640、DMEM等の基本培地中での培養において安定であり、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体を産生、分泌するものである。
なお、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマMS−1C7E2H11G11、AF−6D6A3G11、AT−9A5H11A7、及びMS−1A9G1C10は、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2002年4月16日に、それぞれFERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021として寄託されている。これらのハイブリドーマはそれぞれサブクラスIgG2a(κ)、IgG1(κ)、IgG2a(κ)、及びIgG2b(κ)のモノクローナル抗体を産生するものである。しかしながら、本発明のハイブリドーマは、上述した手法に従って作製し、スクリーニングしたものであれば上記のものに限定されるものではない。
(5)モノクローナル抗体の採取
樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。
細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃,5%CO2濃度)で2〜10日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。
腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1×107個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水又は血清を採取する。
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択して、又はこれらを組み合わせることにより、精製された本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。
3.癌の検出方法
本発明の癌の検出方法は、本発明のモノクローナル抗体を用いて、サンプル中の大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質を免疫学的に検出又は測定することを特徴とする。
本発明の検出方法は、抗体を用いる測定法、すなわち免疫学的測定法であればいずれの方法においても、その測定法で使用される抗体として本発明のモノクローナル抗体を用いることができ、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、免疫比濁法、免疫比ろう法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応又はウエスタンブロット法等により本発明の検出方法は実施される。
本発明の検出方法において被検対象となるサンプルとしては、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質が含まれる可能性のある生体サンプルであれば特に限定されるものではない。例えば、血液、血清、血漿、リンパ球培養上清、尿、髄液、唾液、汗、腹水などが挙げられ、細胞又は臓器の抽出液等も使用することができる。特に尿のようなサンプルにおいて、本発明のモノクローナル抗体を用いて得られたブラディオン蛋白質の測定値は、大腸癌又は前立腺癌の指標として有用である。
本発明の検出方法を、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法又は発光免疫測定法等の標識を用いた免疫測定法により実施する場合には、本発明のモノクローナル抗体を固相化するか、又はサンプル中の成分を固相化して、それらの免疫学的反応を行うことが好ましい。
固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるビーズ、マイクロプレート、試験管、スティック又は試験片等の形状の不溶性担体を用いることができる。固相化は、固相担体と本発明のモノクローナル抗体又はサンプル成分とを物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法に従って結合させることにより行うことができる。
本発明においては、本発明のモノクローナル抗体と、サンプル中の大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質との反応を容易に検出するために、本発明のモノクローナル抗体を標識することにより該反応を直接検出するか、又は標識二次抗体を用いることにより間接的に検出する。本発明の検出方法においては、感度の点で、後者の間接的検出(例えばサンドイッチ法など)を利用することが好ましい。
標識物質としては、酵素免疫測定法の場合には、パーオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素、アミラーゼ又はビオチン−アビジン複合体等を、蛍光免疫測定法の場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート、ジクロロトリアジンイソチオシアネート、Alexa480又はAlexaFluor488等を、そして放射免疫測定法の場合には、トリチウム、ヨウ素125又はヨウ素131等を用いることができる。また、発光免疫測定法は、NADH−FMNH2−ルシフェラーゼ系、ルミノール−過酸化水素−POD系、アクリジニウムエステル系又はジオキセタン化合物系等を用いることができる。
標識物質と抗体との結合法は、酵素免疫測定法の場合にはグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法又は過ヨウ素酸法等の公知の方法を、放射免疫測定法の場合にはクロラミンT法、ボルトンハンター法等の公知の方法を用いることができる。
測定の操作法は、公知の方法(日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年,石川榮治ら編「酵素免疫測定法」,第3版,医学書院,1987年,北川常廣ら編「蛋白質核酸酵素別冊No.31 酵素免疫測定法」,共立出版,1987年,入江實編「ラジオイムノアッセイ」,講談社サイエンティフィク,1974年,入江實編「続ラジオイムノアッセイ」,講談社サイエンティフィク,1979年)により行うことができる。
例えば、本発明のモノクローナル抗体を直接標識する場合には、サンプル中の成分を固相化し、標識した本発明のモノクローナル抗体と接触させて、ブラディオン蛋白質−本発明のモノクローナル抗体の複合体を形成させる。そして未結合の標識モノクローナル抗体を洗浄分離して、結合標識モノクローナル抗体量又は未結合標識モノクローナル抗体量よりサンプル中のブラディオン蛋白質量を測定することができる。
また例えば、標識二次抗体を用いる場合には、本発明のモノクローナル抗体とサンプルとを反応させ(1次反応)、さらに標識二次抗体を反応させる(2次反応)。1次反応と2次反応は逆の順序で行ってもよいし、同時に行ってもよいし、又は時間をずらして行ってもよい。1次反応及び2次反応により、固相化したブラディオン蛋白質−本発明のモノクローナル抗体−標識二次抗体の複合体、又は固相化した本発明のモノクローナル抗体−ブラディオン蛋白質−標識二次抗体の複合体が形成する。そして未結合の標識二次抗体を洗浄分離して、結合標識二次抗体量又は未結合標識二次抗体量よりサンプル中のブラディオン蛋白質量を測定することができる。
具体的には、酵素免疫測定法の場合は標識酵素にその至適条件下で基質を反応させ、その反応生成物の量を光学的方法等により測定する。蛍光免疫測定法の場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫測定法の場合には放射性物質標識による放射能量を測定する。発光免疫測定法の場合は発光反応系による発光量を測定する。
本発明の検出方法は、免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応又は粒子凝集反応等の免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、目視的に測る測定法により実施する場合には、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液又はグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を含ませてもよい。
以下に、本発明の検出法の好ましい実施態様の一例を示す。最初に、本発明のモノクローナル抗体を一次モノクローナル抗体として不溶性担体に固定する。そして好ましくは、抗原が吸着していない固相表面を、抗原とは無関係の蛋白質(仔ウシ血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチンなど)によりブロッキングする。続いて、固定化された一次モノクローナル抗体と被検サンプルとを接触させる。次いで、上記一次モノクローナル抗体と異なる部位で、ブラディオン蛋白質と反応する標識二次抗体とを接触させ、該標識からの信号を検出する。
ここで用いる「一次モノクローナル抗体と異なる部位で、ブラディオン蛋白質と反応する二次抗体」は、一次モノクローナル抗体とブラディオン蛋白質との結合部位以外の部位を認識する抗体であれば特に制限はなく、免疫原の種類を問わず、ポリクローナル抗体、抗血清、モノクローナル抗体のいずれでもよく、またこれらの抗体のフラグメント(Fab、F(ab’)2、Fab’等)を用いることもできる。更に、二次抗体として複数種のモノクローナル抗体を用いてもよい。
またこれとは逆に、本発明のモノクローナル抗体に標識を付して二次抗体とし、本発明のモノクローナル抗体と異なる部位で、ブラディオン蛋白質と反応する抗体を一次抗体として不溶性担体に固定し、この固定化された一次抗体と被検サンプルとを接触させ、次いで、二次抗体として標識を付した本発明のモノクローナル抗体とを接触させ、前記標識からの信号を検出してもよい。
4.癌の診断薬
また本発明のモノクローナル抗体は、上述したように、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するため、癌の診断薬として用いることができる。
本発明の診断薬は、本発明のモノクローナル抗体を含むものであり、従って、本発明の診断薬を用いて、大腸癌又は前立腺癌への罹患が疑われる個体から採取したサンプル中に含まれる大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質を検出することによって、該個体の大腸癌又は前立腺癌の罹患を診断することができる。
また本発明の診断薬は、免疫学的測定を行うための手段であればいずれの手段においても利用することができるが、当技術分野で公知の免疫クロマト用テストストリップなどの簡便な手段と組み合わせて用いることによって、さらに簡便かつ迅速に癌を診断することができる。免疫クロマト用テストストリップとは、例えば、サンプルを吸収しやすい材料からなるサンプル受容部、本発明の診断薬を含有する試薬部、サンプルと診断薬との反応物が移動する展開部、展開してきた反応物を呈色する標識部、呈色された反応物が展開してくる提示部などから構成されるものであり、妊娠診断薬と同様の形態とすることができる。まず、サンプル受容部にサンプルを与えると、サンプル受容部はサンプルを吸収してサンプルを試薬部にまで到達させる。続いて、試薬部において、サンプル中の大腸癌又は前立腺癌細胞由来のブラディオン蛋白質と本発明のモノクローナル抗体との反応が起こり、反応した複合体のみが展開部を移動して標識部に到達する。標識部においては、上記反応複合体と標識二次抗体との反応が起こって、その標識二次抗体との反応物が提示部にまで展開すると呈色が認められることになる。
上記免疫クロマト用テストストリップは、使用者に対し苦痛や試薬使用による危険性を一切与えないものであるため、家庭におけるモニターに使用することができ、その結果を各医療機関レベルで精査・治療(外科的切除等)し、転移・再発予防に結びつけることが可能となる。また現在、このテストストリップは、例えば特開平10−54830号公報に記載されるような製造方法により安価に大量生産できるものである。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕組換えブラディオン蛋白質の作製
発現プラスミドに組み込んだブラディオン遺伝子により、組換えブラディオン蛋白質を作製した。すなわち、ブラディオン遺伝子のcDNAを含むBamHI/CE5B3β(ブラディオンβ)/XhoI/pCRIIのプラスミドDNA断片をBamHI/XhoIで消化し、BamHI/XhoIで消化した発現ベクターpET21aにライゲートして発現プラスミドpET21a−bradeionを得た(配列番号1)。このpET21a−bradeionを大腸菌BRL株にトランスフォーメーションして得た大腸菌を、SOC培地(培地1L中、バクトトリプトン20g、バクトイーストエクストラクト5g、NaCl0.5g、MgCl210mM、20mMグルコース)中で対数増殖期まで増殖させた後、0.2mM IPTGを添加し、37℃にて3時間培養を続け、ブラディオン蛋白質の発現誘導を行った。遠心分離機により集菌した後、超音波破砕機を用いて溶菌し、低速遠心により、組換えブラディオン蛋白質を含む不溶性画分を分離した。この不溶性画分を8Mの尿素を含む緩衝液で可溶化し、ニッケルキレートカラムクロマトグラフィーにより、組換えブラディオン蛋白質を精製した。またさらに、以下の実施例で行う免疫のために、従法に従って組換えブラディオン蛋白質にHisタグ又はグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を付加した。こうして得た組換えブラディオン蛋白質を免疫原として以下の実施例において使用した。
〔実施例2〕マウスへの免疫とハイブリドーマの作製
上記実施例1で得られたブラディオン蛋白質免疫原液(0.5mg/ml×0.1ml)を等量のフロインド氏完全アジュバント(FCA)又はRIBIアジュバントと乳化するまで混合し、その混合液0.1mlをマウスの足蹠又は腹腔内に投与した(初回免疫)。30日経過後、該マウスに免疫原とアジュバントとの混合液0.05mlをマウス足蹠又は腹腔内に投与した(最終免疫)。最終免疫から3日経過後、脾臓を無菌的にマウスから取り出した。
無菌的に摘出した上記の脾臓をMEM培地中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(500×g,10分間)した後、上清を捨て、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理して赤血球を除去し、MEM培地で3回洗浄して融合用脾細胞とした。
上記脾細胞と予め培養しておいたマウス骨髄腫細胞を、細胞数が、脾細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離(500×g,10分間)した。その上清を取り除き、沈殿をよく解きほぐした後、37℃で40%ポリエチレングリコール4000溶液を0.5mL滴下し、チューブを1分間穏やかに回転させることで混合した。次に、1〜2分毎に37℃に加温しておいたMEM培地1〜2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量を50mLとした。遠心分離(500×g,10分間)後、上清を捨て、沈殿をよく解きほぐした後、HAT培地と加えて全量を100mLとした。この細胞懸濁液を96ウエル培養用プレートに100μl/ウエルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養した。
〔実施例3〕ハイブリドーマの確立
ハイブリドーマ培養上清中の産生抗体の有無は酵素免疫測定法(ELISA法)により測定した。96ウエルELISA用プレートの各ウエルに、実施例1で得られた組換えブラディオン蛋白質溶液(5μg/mL,PBSで希釈)を50μLずつ分注し、25℃で2時間放置した。次に、0.05%Tween20−PBSで3回洗浄した後、各ウエルに培養上清50μLを加え、25℃で1時間反応させた。
次に、0.05%Tween20−PBSで3回洗浄した後、0.05%Tween20−PBSで200倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体50μLを各ウエルに加え、25℃で1時間反応させた。反応終了後、各ウエルを0.05%Tween20−PBSで3回洗浄し、0.015%過酸化水素及び0.75mg/mLテトラメチルベンチジンを含む溶液100μLを各ウエルに加え、25℃で30分間反応させた。2M硫酸100μLを加えて酵素反応を停止させ、各ウエルの450nmにおける吸光度を測定した。
その結果、480ウエル中4ウエルに抗ブラディオンモノクローナル抗体産生が認められた。その4ウエル中の各ハイブリドーマを24ウエルプレートに移し、HT培地で4〜5日間培養した後、限界希釈法によりクローニングを2回行なった。こうして得たクローンの中から、増殖が良好で、抗体分泌能が高く、かつ安定なクローンを選択し、抗ブラディオンモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマA,B,C及びDを確立した。
得られたモノクローナル抗体(MAb)のサブクラス決定は、市販のサブクラスタイピングキット(特殊免疫研究所製)を用いて、その説明書に従って行なった。下記表1に、ハイブリドーマA〜Dの性質をまとめる:
なお、上記ハイブリドーマA、B、C及びDは、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2002年4月16日に、それぞれFERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021として寄託されている。
〔実施例4〕モノクローナル抗体の作製
プリスタン処理(Pristane 0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育)した8〜10週齢のBALB/C系マウスに、上記実施例3で得られたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ2×106細胞を腹腔内投与した。10〜21日でハイブリドーマは腹水癌化した。このマウスから腹水を採取し、遠心分離で固形物を除去後、50%硫安で塩析した。
サブクラスがIgGの抗体は、沈殿を10mMリン酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、1000倍量の10mMリン酸緩衝液に対して透析した。これを、予め10mMリン酸緩衝液で平衡化したプロテインA−セファロースカラムに充填した。モノクローナル抗体の溶出は、100mMクエン酸緩衝液(pH4.5)により行なった。溶出されたモノクローナル抗体は限外濾過法で濃縮し、PBSに対して透析して精製抗体液を得た。
〔実施例5〕免疫蛍光染色
大腸癌細胞株colo205、Sw480及びDU145、前立腺癌細胞株DU145及びPC3、乳癌細胞株MCF7、子宮頸癌細胞株HeLa、並びに正常繊維芽細胞MRC5を、それぞれ独立してウエル付きのスライドグラス上で一昼夜培養し、2%パラフォルムアルデヒドで室温にて5分間処理することにより固定した。これを0.1%のトライトンX100を含むTBSで洗浄し、10%ヤギ血清・2%BSAでブロッキングした後、一次抗体として上記実施例4で得られた精製モノクローナル抗体(10μg/ml)を30℃で1時間反応させた。これをPBSで洗浄後、二次抗体としてAlexa480標識抗マウスIgGヤギ抗体(モルキュラープローブ社製)を添加して、室温にて1時間反応させ、PBSで洗浄後、封入して蛍光顕微鏡にて観察した。その結果、本発明のモノクローナル抗体は、癌細胞を陽性に染色することができた。また該モノクローナル抗体は、乳癌細胞株MCF7、子宮頸癌細胞株HeLa及び正常繊維芽細胞MRC5に対し反応性を示さなかった(図1)。これに対し、大腸癌細胞株colo205、Sw480及びDU145並びに前立腺癌細胞株DU145及びPC3ではその細胞質に明らかな蛍光が認められた(図1)。
〔実施例6〕免疫組織染色
大腸癌組織のパラフィン包埋標本からミトクロームにて4μmの切片を作製し、これをシランコートスライドにとり、キシレンで脱パラフィン後、エタノールで親水化した。これをPBSで洗浄し、0.3%過酸化水素を含むメタノール及び10%ウサギ血清でブロッキングした後、一次抗体として上記実施例4で得られた精製モノクローナル抗体(10μl/ml)を4℃で一晩反応させた。これをPBSで洗浄後、二次抗体(ビオチン標識抗マウス抗体)をかけ、室温で90分間反応させ、次いでペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを室温で5分間反応させた。ジアミノベンチジン溶液にて発色させた後、メチルグリーンを用いて核染色し、脱水後、封入検鏡した。その結果、抗ブラディオンモノクローナル抗体は、癌細胞を陽性に染色することができた。また該モノクローナル抗体は、正常組織細胞に対しては反応性を示さなかった。
前立腺癌組織のパラフィン包埋標本を用いて、上記実施例4で得られたモノクローナル抗体を一次抗体として用いて免疫組織染色を行なった。実験は、上記の大腸癌と同様の方法で行なった。その結果、抗ブラディオンモノクローナル抗体は、大腸癌同様、癌細胞を陽性に染色し、正常組織細胞に対しては反応性を示さなかった。
本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全文を参照により本明細書にとり入れるものとする。
産業上の利用可能性
本発明により、癌の診断に有用なモノクローナル抗体が提供される。本発明のモノクローナル抗体を利用すると、簡便かつ迅速に癌を診断することが可能となり、癌の早期発見・予後診断に寄与すると考えられる。
配列表フリーテキスト
配列番号1:合成DNA
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1A〜Dは、本発明のモノクローナル抗体の、前立腺癌細胞及び大腸癌細胞に由来するブラディオン蛋白質に対する反応特異性を免疫組織染色によって確認した結果を示す写真である。写真はそれぞれ、図1A:前立腺癌細胞株DU145、図1B:前立腺癌細胞株PC3、図1C:大腸癌細胞株SW480、及び図1D:乳癌細胞株MCF7(対照)を示す。
本発明は、ブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体、並びに癌の検出方法及び癌の診断薬に関する。
背景技術
21世紀における分子医療革命は、ポストゲノム計画として、疾病の遺伝子・物質基盤を捉えて、個人特性に合わせた制御モニターシステムを構築していくことを目指している。具体的には、“Quality of Life”の概念に基づいて、遺伝子病・癌・神経退行性疾患などの社会生活を脅かす疾患群のリスクグループの検出(診断及び遺伝子モニタリング)、さらにはリスク遺伝子の発見、ならびに治療(例えば薬剤、遺伝子治療)に対する感受性検索など、個人の遺伝タイプに合った医療対応体制を確立するというものである。ここで、癌のみならず多くの疾病は、multi−gene effectによるものであり、かつ、環境要因が大きく左右することから、何をコントロールしたら疾病にならないということは断言できない。しかしながら、疾病になってしまったものをコントロールする、いわゆる制御技術開発を通じて疾病制御対策をこうじることは可能なのである。
この概念に基づき、現在特に細胞の癌化・不死化制御技術開発が分子レベルで活発に展開されている。具体的には、細胞寿命の制御として、情報伝達系(シグナルトランスダクション)の解析が研究されることが多い。このような研究を通じて、様々な細胞増殖・分裂・癌化に関わる分子基盤が明らかにされてきた。既に、産業技術総合研究所(旧工業技術院)から、そのような細胞寿命制御因子としてブラディオンに関する発明の特許申請がなされている(特許第3141107号、特開2001−161384号公報、米国特許出願第09/440,936号)。癌細胞、中でも大腸癌細胞及び皮膚癌にのみ発現するブラディオンは、早期診断はもちろんのこと特異的阻害剤及び遺伝子治療ターゲットとして必要な諸条件を満たすことが明らかになった。
一方、前立腺癌は、60歳代より急激な患者人口の増加が認められ、70代では潜伏癌も含めて30%台にのぼる高齢者の高リスク癌の一つである。現状では、老人健診等の検診現場で診断されることはなく、前立腺肥大等の疑いで精査されて発見されるケースがほとんどである。前立腺癌の診断としては、前立腺特異抗原の血中検出法による特異的診断法があるものの、施行できる現場が少なく、血尿等一次検診で発見しやすい症状を呈さないことがほとんどであるために、見落とされることが多い。根治療法としては、原発巣の外科的切除が有効であることは他の癌と同じであるが、前立腺癌はしばしば早期段階での診断が困難であり、年齢と癌の進行度合いにより手術不能例が多く、転移(骨転移)が高率に起こって、予後不良となる例が多い。従って、前立腺癌の早期診断・治療への簡便で安価な技術開発は急務である。
発明の開示
本発明は、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体、並びに該抗体を用いた癌の検出方法及び該抗体を含む癌の診断薬を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ブラディオン遺伝子が大腸癌及び前立腺癌に関与していることを突き止め、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体を作製し、免疫組織染色の一次抗体として使用したところ、上記癌細胞を検出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体である。
また本発明は、受託番号がFERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021であるハイブリドーマにより産生される、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体である。
本発明はまた、上記モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマである。ここで、該ハイブリドーマとしては、受託番号FERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021を有するものが挙げられる。
また本発明は、上記モノクローナル抗体を用いて、サンプル中の癌細胞に由来するブラディオン蛋白質を検出することを特徴とする、癌の検出方法である。ここで、癌としては、大腸癌及び/又は前立腺癌が挙げられる。
さらに本発明は、モノクローナル抗体を含む癌の診断薬である。癌としては、大腸癌及び/又は前立腺癌が挙げられる。
以下、本発明を詳細に説明する。本願は、2001年12月14日に出願されたPCT特許出願PCT/JP01/11003号の優先権を主張するものであり、上記特許出願の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
本発明は、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体とその用途に係るものであり、上記モノクローナル抗体が、大腸癌又は前立腺癌細胞においてのみ発現するブラディオン蛋白質と特異的に反応する性質を利用するものである。本発明はこの性質に注目して完成され、サンプル中の上記ブラディオン蛋白質を免疫学的に定量することにより癌を検出するため、迅速、高感度かつ簡便に癌を検出することができる。
1.ブラディオン蛋白質
ブラディオンは、ヒト成人の脳などに特異的に存在することが知られている蛋白質であって、細胞分裂及び増殖制御に関わる物質(セプチンファミリー)と類似した構造を有するものであり、また同時に細胞寿命の決定因子(プログラム細胞死を引き起こす)の構造を有するものでもある。既に予備実験などにより、その機能解明が進んでおり、ブラディオンは、癌細胞に特異的発現を示すセプチンファミリーとよばれる細胞分裂制御因子であること、細胞分裂の最終の時点でMAPキナーゼシグナル伝達カスケード、細胞増殖装置のモーターポンプとしての役割を果たすことが示されている。ブラディオン蛋白質は、同じブラディオン遺伝子によってコードされる2種類の転写産物、すなわちα型とβ型とが知られており、またブラディオン蛋白質の組織特異的発現は、大腸癌組織及び皮膚癌組織においても認められている(Tanakaら、Biochemical and Biophysical Research Communications 286,547−553(2001))。
本発明者は、最近になって、ブラディオンが前立腺癌細胞の増殖・分裂・転移能の調節にも大きく関与することを明らかにした。そこで、本発明者は、ヒトブラディオン蛋白質に対するモノクローナル抗体を作製し、当該モノクローナル抗体を大腸癌細胞及び前立腺癌細胞の検出試験に用いたところ、実際に、ヒトブラディオン蛋白質に対するモノクローナル抗体が大腸癌細胞及び前立腺癌細胞の両方を検出することを確認した。
2.本発明のモノクローナル抗体の作製
本発明のモノクローナル抗体は、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオンと特異的に反応するという特徴を有するものである。本発明のモノクローナル抗体のグロブリンタイプは、上記特徴を有するものである限り特に限定されるものではなく、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでもよいが、IgG及びIgMが好ましい。本発明のモノクローナル抗体は、以下の手順に従って得ることができる。
(1)免疫原の調製
本発明のモノクローナル抗体を作製するにあたり、免疫原(抗原)となるための蛋白質を調製する。免疫原蛋白質としては、ヒトブラディオン蛋白質を用いる。本発明において免疫原として使用可能なヒトブラディオン蛋白質のアミノ酸配列及び該蛋白質をコードするcDNA配列は、ヒトブラディオンα及びβに関して、それぞれGenBankにおいてアクセッション番号AB002110及びAB008753として公開されている。従って、公開されているアミノ酸配列情報を利用して、当技術分野で公知の手法、例えば固相ペプチド合成法などにより、免疫原として使用するためのヒトブラディオン蛋白質を合成することができる。
また、公知の遺伝子組換え手法を利用して、ヒトブラディオン蛋白質をコードするcDNAの情報を用いてヒトブラディオン蛋白質を生産することも可能である。以下、組換え手法を用いたヒトブラディオン蛋白質の生産に関して説明する。
ブラディオン生産用組換えベクターは、上記公開されているcDNA配列を適当なベクターに連結することにより得ることができ、形質転換体は、ブラディオン生産用組換えベクターを、ブラディオン蛋白質が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。
ベクターには、宿主微生物で自律的に増殖し得るファージ又はプラスミドが使用される。プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET21a,pGEX4T,pUC118,pUC119,pUC18,pUC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110,pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13,YEp24,YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターにヒトブラディオンcDNAを挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
その他、哺乳動物細胞において用いられるブラディオン生産用組換えベクターには、プロモーター、ヒトブラディオンcDNAのほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などが連結されていてもよい。
DNA断片とベクター断片とを連結させるには、公知のDNAリガーゼを用いる。そして、DNA断片とベクター断片とをアニーリングさせた後連結させ、ブラディオン生産用組換えベクターを作製する。
形質転換に使用する宿主としては、ヒトブラディオン蛋白質を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
一例として、細菌を宿主とする場合は、ブラディオン生産用組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、ヒトブラディオンDNA、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)BRLなどが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。プロモーターは、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母、動物細胞、昆虫細胞などを宿主とする場合には、同様に、当技術分野で公知の手法に従って、ヒトブラディオン蛋白質を生産することができる。
本発明において免疫原として使用するヒトブラディオン蛋白質は、上記作製した形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。上記形質転換体を培地で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で6〜24時間行う。培養期間中、pHは中性付近に保持する。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
培養後、ヒトブラディオン蛋白質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより蛋白質を抽出する。また、ヒトブラディオン蛋白質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、蛋白質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中からヒトブラディオン蛋白質を単離精製することができる。
ヒトブラディオン蛋白質が得られたか否かは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動等により確認することができる。
次に、得られた蛋白質を緩衝液に溶解して免疫原を調製する。なお、必要であれば、免疫を効果的に行うためにアジュバントを添加してもよい。アジュバントとしては、市販の完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント等が挙げられ、これらの何れのものを混合してもよい。
(2)免疫及び抗体産生細胞の採取
上記のようにして得られた免疫原を、哺乳動物、例えばラット、マウス(例えば近交系マウスのBALB/c)、ウサギなどに投与する。免疫原の1回の投与量は、免疫動物の種類、投与経路などにより適宜決定されるものであるが、動物1匹当たり約50〜200μgである。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内に免疫原を注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、初回免疫後、数日から数週間間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で、2〜6回、好ましくは3〜4回追加免疫を行う。初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)法等により繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したときは、免疫原を静脈内又は腹腔内に注射し、最終免疫とする。そして、最終免疫の日から2〜5日後、好ましくは3日後に、抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
(3)細胞融合
ハイブリドーマを得るため、上述のように免疫動物から得た抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。
抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞としては、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。また株化細胞は、免疫動物と同種系の動物に由来するものが好ましい。ミエローマ細胞の具体例としては、BALB/cマウス由来のヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT)欠損細胞株である、P3X63−Ag.8株(ATCC TIB9)、P3X63−Ag.8.U1株(癌研究リサーチソースバンク(JCRB)9085)、P3/NSI/1−Ag4−1株(JCRB 0009)、P3x63Ag8.653株(JCRB 0028)又はSp2/0−Ag14株(JCRB 0029)などが挙げられる。
次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを約1:1〜20:1の割合で混合し、細胞融合促進剤の存在下にて融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1,500〜4,000ダルトンのポリエチレングリコール等を約10〜80%の濃度で使用することができる。また場合によっては、融合効率を高めるために、ジメチルスルホキシドなどの補助剤を併用してもよい。さらに、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
(4)ハイブリドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を、例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に2×105個/ウエル程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。培養温度は、20〜40℃、好ましくは約37℃である。ミエローマ細胞がHGPRT欠損株又はチミジンキナーゼ(TK)欠損株のものである場合には、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジンを含む選択培地(HAT培地)を用いることにより、抗体産生能を有する細胞とミエローマ細胞のハイブリドーマのみを選択的に培養し、増殖させることができる。その結果、選択培地で培養開始後、約14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウエルに含まれる培養上清の一部を採取し、酵素免疫測定法(EIA;Enzyme Immuno Assay、及びELISA)、放射免疫測定法(RIA;RadioImmuno Assay)等によって行うことができる。
融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立する。本発明のハイブリドーマは、後述するように、RPMI1640、DMEM等の基本培地中での培養において安定であり、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体を産生、分泌するものである。
なお、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマMS−1C7E2H11G11、AF−6D6A3G11、AT−9A5H11A7、及びMS−1A9G1C10は、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2002年4月16日に、それぞれFERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021として寄託されている。これらのハイブリドーマはそれぞれサブクラスIgG2a(κ)、IgG1(κ)、IgG2a(κ)、及びIgG2b(κ)のモノクローナル抗体を産生するものである。しかしながら、本発明のハイブリドーマは、上述した手法に従って作製し、スクリーニングしたものであれば上記のものに限定されるものではない。
(5)モノクローナル抗体の採取
樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。
細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃,5%CO2濃度)で2〜10日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。
腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1×107個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水又は血清を採取する。
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択して、又はこれらを組み合わせることにより、精製された本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。
3.癌の検出方法
本発明の癌の検出方法は、本発明のモノクローナル抗体を用いて、サンプル中の大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質を免疫学的に検出又は測定することを特徴とする。
本発明の検出方法は、抗体を用いる測定法、すなわち免疫学的測定法であればいずれの方法においても、その測定法で使用される抗体として本発明のモノクローナル抗体を用いることができ、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、免疫比濁法、免疫比ろう法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応又はウエスタンブロット法等により本発明の検出方法は実施される。
本発明の検出方法において被検対象となるサンプルとしては、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質が含まれる可能性のある生体サンプルであれば特に限定されるものではない。例えば、血液、血清、血漿、リンパ球培養上清、尿、髄液、唾液、汗、腹水などが挙げられ、細胞又は臓器の抽出液等も使用することができる。特に尿のようなサンプルにおいて、本発明のモノクローナル抗体を用いて得られたブラディオン蛋白質の測定値は、大腸癌又は前立腺癌の指標として有用である。
本発明の検出方法を、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法又は発光免疫測定法等の標識を用いた免疫測定法により実施する場合には、本発明のモノクローナル抗体を固相化するか、又はサンプル中の成分を固相化して、それらの免疫学的反応を行うことが好ましい。
固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるビーズ、マイクロプレート、試験管、スティック又は試験片等の形状の不溶性担体を用いることができる。固相化は、固相担体と本発明のモノクローナル抗体又はサンプル成分とを物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法に従って結合させることにより行うことができる。
本発明においては、本発明のモノクローナル抗体と、サンプル中の大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質との反応を容易に検出するために、本発明のモノクローナル抗体を標識することにより該反応を直接検出するか、又は標識二次抗体を用いることにより間接的に検出する。本発明の検出方法においては、感度の点で、後者の間接的検出(例えばサンドイッチ法など)を利用することが好ましい。
標識物質としては、酵素免疫測定法の場合には、パーオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素、アミラーゼ又はビオチン−アビジン複合体等を、蛍光免疫測定法の場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート、ジクロロトリアジンイソチオシアネート、Alexa480又はAlexaFluor488等を、そして放射免疫測定法の場合には、トリチウム、ヨウ素125又はヨウ素131等を用いることができる。また、発光免疫測定法は、NADH−FMNH2−ルシフェラーゼ系、ルミノール−過酸化水素−POD系、アクリジニウムエステル系又はジオキセタン化合物系等を用いることができる。
標識物質と抗体との結合法は、酵素免疫測定法の場合にはグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法又は過ヨウ素酸法等の公知の方法を、放射免疫測定法の場合にはクロラミンT法、ボルトンハンター法等の公知の方法を用いることができる。
測定の操作法は、公知の方法(日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年,石川榮治ら編「酵素免疫測定法」,第3版,医学書院,1987年,北川常廣ら編「蛋白質核酸酵素別冊No.31 酵素免疫測定法」,共立出版,1987年,入江實編「ラジオイムノアッセイ」,講談社サイエンティフィク,1974年,入江實編「続ラジオイムノアッセイ」,講談社サイエンティフィク,1979年)により行うことができる。
例えば、本発明のモノクローナル抗体を直接標識する場合には、サンプル中の成分を固相化し、標識した本発明のモノクローナル抗体と接触させて、ブラディオン蛋白質−本発明のモノクローナル抗体の複合体を形成させる。そして未結合の標識モノクローナル抗体を洗浄分離して、結合標識モノクローナル抗体量又は未結合標識モノクローナル抗体量よりサンプル中のブラディオン蛋白質量を測定することができる。
また例えば、標識二次抗体を用いる場合には、本発明のモノクローナル抗体とサンプルとを反応させ(1次反応)、さらに標識二次抗体を反応させる(2次反応)。1次反応と2次反応は逆の順序で行ってもよいし、同時に行ってもよいし、又は時間をずらして行ってもよい。1次反応及び2次反応により、固相化したブラディオン蛋白質−本発明のモノクローナル抗体−標識二次抗体の複合体、又は固相化した本発明のモノクローナル抗体−ブラディオン蛋白質−標識二次抗体の複合体が形成する。そして未結合の標識二次抗体を洗浄分離して、結合標識二次抗体量又は未結合標識二次抗体量よりサンプル中のブラディオン蛋白質量を測定することができる。
具体的には、酵素免疫測定法の場合は標識酵素にその至適条件下で基質を反応させ、その反応生成物の量を光学的方法等により測定する。蛍光免疫測定法の場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫測定法の場合には放射性物質標識による放射能量を測定する。発光免疫測定法の場合は発光反応系による発光量を測定する。
本発明の検出方法は、免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応又は粒子凝集反応等の免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、目視的に測る測定法により実施する場合には、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液又はグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を含ませてもよい。
以下に、本発明の検出法の好ましい実施態様の一例を示す。最初に、本発明のモノクローナル抗体を一次モノクローナル抗体として不溶性担体に固定する。そして好ましくは、抗原が吸着していない固相表面を、抗原とは無関係の蛋白質(仔ウシ血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチンなど)によりブロッキングする。続いて、固定化された一次モノクローナル抗体と被検サンプルとを接触させる。次いで、上記一次モノクローナル抗体と異なる部位で、ブラディオン蛋白質と反応する標識二次抗体とを接触させ、該標識からの信号を検出する。
ここで用いる「一次モノクローナル抗体と異なる部位で、ブラディオン蛋白質と反応する二次抗体」は、一次モノクローナル抗体とブラディオン蛋白質との結合部位以外の部位を認識する抗体であれば特に制限はなく、免疫原の種類を問わず、ポリクローナル抗体、抗血清、モノクローナル抗体のいずれでもよく、またこれらの抗体のフラグメント(Fab、F(ab’)2、Fab’等)を用いることもできる。更に、二次抗体として複数種のモノクローナル抗体を用いてもよい。
またこれとは逆に、本発明のモノクローナル抗体に標識を付して二次抗体とし、本発明のモノクローナル抗体と異なる部位で、ブラディオン蛋白質と反応する抗体を一次抗体として不溶性担体に固定し、この固定化された一次抗体と被検サンプルとを接触させ、次いで、二次抗体として標識を付した本発明のモノクローナル抗体とを接触させ、前記標識からの信号を検出してもよい。
4.癌の診断薬
また本発明のモノクローナル抗体は、上述したように、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するため、癌の診断薬として用いることができる。
本発明の診断薬は、本発明のモノクローナル抗体を含むものであり、従って、本発明の診断薬を用いて、大腸癌又は前立腺癌への罹患が疑われる個体から採取したサンプル中に含まれる大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質を検出することによって、該個体の大腸癌又は前立腺癌の罹患を診断することができる。
また本発明の診断薬は、免疫学的測定を行うための手段であればいずれの手段においても利用することができるが、当技術分野で公知の免疫クロマト用テストストリップなどの簡便な手段と組み合わせて用いることによって、さらに簡便かつ迅速に癌を診断することができる。免疫クロマト用テストストリップとは、例えば、サンプルを吸収しやすい材料からなるサンプル受容部、本発明の診断薬を含有する試薬部、サンプルと診断薬との反応物が移動する展開部、展開してきた反応物を呈色する標識部、呈色された反応物が展開してくる提示部などから構成されるものであり、妊娠診断薬と同様の形態とすることができる。まず、サンプル受容部にサンプルを与えると、サンプル受容部はサンプルを吸収してサンプルを試薬部にまで到達させる。続いて、試薬部において、サンプル中の大腸癌又は前立腺癌細胞由来のブラディオン蛋白質と本発明のモノクローナル抗体との反応が起こり、反応した複合体のみが展開部を移動して標識部に到達する。標識部においては、上記反応複合体と標識二次抗体との反応が起こって、その標識二次抗体との反応物が提示部にまで展開すると呈色が認められることになる。
上記免疫クロマト用テストストリップは、使用者に対し苦痛や試薬使用による危険性を一切与えないものであるため、家庭におけるモニターに使用することができ、その結果を各医療機関レベルで精査・治療(外科的切除等)し、転移・再発予防に結びつけることが可能となる。また現在、このテストストリップは、例えば特開平10−54830号公報に記載されるような製造方法により安価に大量生産できるものである。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕組換えブラディオン蛋白質の作製
発現プラスミドに組み込んだブラディオン遺伝子により、組換えブラディオン蛋白質を作製した。すなわち、ブラディオン遺伝子のcDNAを含むBamHI/CE5B3β(ブラディオンβ)/XhoI/pCRIIのプラスミドDNA断片をBamHI/XhoIで消化し、BamHI/XhoIで消化した発現ベクターpET21aにライゲートして発現プラスミドpET21a−bradeionを得た(配列番号1)。このpET21a−bradeionを大腸菌BRL株にトランスフォーメーションして得た大腸菌を、SOC培地(培地1L中、バクトトリプトン20g、バクトイーストエクストラクト5g、NaCl0.5g、MgCl210mM、20mMグルコース)中で対数増殖期まで増殖させた後、0.2mM IPTGを添加し、37℃にて3時間培養を続け、ブラディオン蛋白質の発現誘導を行った。遠心分離機により集菌した後、超音波破砕機を用いて溶菌し、低速遠心により、組換えブラディオン蛋白質を含む不溶性画分を分離した。この不溶性画分を8Mの尿素を含む緩衝液で可溶化し、ニッケルキレートカラムクロマトグラフィーにより、組換えブラディオン蛋白質を精製した。またさらに、以下の実施例で行う免疫のために、従法に従って組換えブラディオン蛋白質にHisタグ又はグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を付加した。こうして得た組換えブラディオン蛋白質を免疫原として以下の実施例において使用した。
〔実施例2〕マウスへの免疫とハイブリドーマの作製
上記実施例1で得られたブラディオン蛋白質免疫原液(0.5mg/ml×0.1ml)を等量のフロインド氏完全アジュバント(FCA)又はRIBIアジュバントと乳化するまで混合し、その混合液0.1mlをマウスの足蹠又は腹腔内に投与した(初回免疫)。30日経過後、該マウスに免疫原とアジュバントとの混合液0.05mlをマウス足蹠又は腹腔内に投与した(最終免疫)。最終免疫から3日経過後、脾臓を無菌的にマウスから取り出した。
無菌的に摘出した上記の脾臓をMEM培地中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(500×g,10分間)した後、上清を捨て、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理して赤血球を除去し、MEM培地で3回洗浄して融合用脾細胞とした。
上記脾細胞と予め培養しておいたマウス骨髄腫細胞を、細胞数が、脾細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離(500×g,10分間)した。その上清を取り除き、沈殿をよく解きほぐした後、37℃で40%ポリエチレングリコール4000溶液を0.5mL滴下し、チューブを1分間穏やかに回転させることで混合した。次に、1〜2分毎に37℃に加温しておいたMEM培地1〜2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量を50mLとした。遠心分離(500×g,10分間)後、上清を捨て、沈殿をよく解きほぐした後、HAT培地と加えて全量を100mLとした。この細胞懸濁液を96ウエル培養用プレートに100μl/ウエルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養した。
〔実施例3〕ハイブリドーマの確立
ハイブリドーマ培養上清中の産生抗体の有無は酵素免疫測定法(ELISA法)により測定した。96ウエルELISA用プレートの各ウエルに、実施例1で得られた組換えブラディオン蛋白質溶液(5μg/mL,PBSで希釈)を50μLずつ分注し、25℃で2時間放置した。次に、0.05%Tween20−PBSで3回洗浄した後、各ウエルに培養上清50μLを加え、25℃で1時間反応させた。
次に、0.05%Tween20−PBSで3回洗浄した後、0.05%Tween20−PBSで200倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体50μLを各ウエルに加え、25℃で1時間反応させた。反応終了後、各ウエルを0.05%Tween20−PBSで3回洗浄し、0.015%過酸化水素及び0.75mg/mLテトラメチルベンチジンを含む溶液100μLを各ウエルに加え、25℃で30分間反応させた。2M硫酸100μLを加えて酵素反応を停止させ、各ウエルの450nmにおける吸光度を測定した。
その結果、480ウエル中4ウエルに抗ブラディオンモノクローナル抗体産生が認められた。その4ウエル中の各ハイブリドーマを24ウエルプレートに移し、HT培地で4〜5日間培養した後、限界希釈法によりクローニングを2回行なった。こうして得たクローンの中から、増殖が良好で、抗体分泌能が高く、かつ安定なクローンを選択し、抗ブラディオンモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマA,B,C及びDを確立した。
得られたモノクローナル抗体(MAb)のサブクラス決定は、市販のサブクラスタイピングキット(特殊免疫研究所製)を用いて、その説明書に従って行なった。下記表1に、ハイブリドーマA〜Dの性質をまとめる:
なお、上記ハイブリドーマA、B、C及びDは、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2002年4月16日に、それぞれFERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021として寄託されている。
〔実施例4〕モノクローナル抗体の作製
プリスタン処理(Pristane 0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育)した8〜10週齢のBALB/C系マウスに、上記実施例3で得られたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ2×106細胞を腹腔内投与した。10〜21日でハイブリドーマは腹水癌化した。このマウスから腹水を採取し、遠心分離で固形物を除去後、50%硫安で塩析した。
サブクラスがIgGの抗体は、沈殿を10mMリン酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、1000倍量の10mMリン酸緩衝液に対して透析した。これを、予め10mMリン酸緩衝液で平衡化したプロテインA−セファロースカラムに充填した。モノクローナル抗体の溶出は、100mMクエン酸緩衝液(pH4.5)により行なった。溶出されたモノクローナル抗体は限外濾過法で濃縮し、PBSに対して透析して精製抗体液を得た。
〔実施例5〕免疫蛍光染色
大腸癌細胞株colo205、Sw480及びDU145、前立腺癌細胞株DU145及びPC3、乳癌細胞株MCF7、子宮頸癌細胞株HeLa、並びに正常繊維芽細胞MRC5を、それぞれ独立してウエル付きのスライドグラス上で一昼夜培養し、2%パラフォルムアルデヒドで室温にて5分間処理することにより固定した。これを0.1%のトライトンX100を含むTBSで洗浄し、10%ヤギ血清・2%BSAでブロッキングした後、一次抗体として上記実施例4で得られた精製モノクローナル抗体(10μg/ml)を30℃で1時間反応させた。これをPBSで洗浄後、二次抗体としてAlexa480標識抗マウスIgGヤギ抗体(モルキュラープローブ社製)を添加して、室温にて1時間反応させ、PBSで洗浄後、封入して蛍光顕微鏡にて観察した。その結果、本発明のモノクローナル抗体は、癌細胞を陽性に染色することができた。また該モノクローナル抗体は、乳癌細胞株MCF7、子宮頸癌細胞株HeLa及び正常繊維芽細胞MRC5に対し反応性を示さなかった(図1)。これに対し、大腸癌細胞株colo205、Sw480及びDU145並びに前立腺癌細胞株DU145及びPC3ではその細胞質に明らかな蛍光が認められた(図1)。
〔実施例6〕免疫組織染色
大腸癌組織のパラフィン包埋標本からミトクロームにて4μmの切片を作製し、これをシランコートスライドにとり、キシレンで脱パラフィン後、エタノールで親水化した。これをPBSで洗浄し、0.3%過酸化水素を含むメタノール及び10%ウサギ血清でブロッキングした後、一次抗体として上記実施例4で得られた精製モノクローナル抗体(10μl/ml)を4℃で一晩反応させた。これをPBSで洗浄後、二次抗体(ビオチン標識抗マウス抗体)をかけ、室温で90分間反応させ、次いでペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを室温で5分間反応させた。ジアミノベンチジン溶液にて発色させた後、メチルグリーンを用いて核染色し、脱水後、封入検鏡した。その結果、抗ブラディオンモノクローナル抗体は、癌細胞を陽性に染色することができた。また該モノクローナル抗体は、正常組織細胞に対しては反応性を示さなかった。
前立腺癌組織のパラフィン包埋標本を用いて、上記実施例4で得られたモノクローナル抗体を一次抗体として用いて免疫組織染色を行なった。実験は、上記の大腸癌と同様の方法で行なった。その結果、抗ブラディオンモノクローナル抗体は、大腸癌同様、癌細胞を陽性に染色し、正常組織細胞に対しては反応性を示さなかった。
本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全文を参照により本明細書にとり入れるものとする。
産業上の利用可能性
本発明により、癌の診断に有用なモノクローナル抗体が提供される。本発明のモノクローナル抗体を利用すると、簡便かつ迅速に癌を診断することが可能となり、癌の早期発見・予後診断に寄与すると考えられる。
配列表フリーテキスト
配列番号1:合成DNA
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1A〜Dは、本発明のモノクローナル抗体の、前立腺癌細胞及び大腸癌細胞に由来するブラディオン蛋白質に対する反応特異性を免疫組織染色によって確認した結果を示す写真である。写真はそれぞれ、図1A:前立腺癌細胞株DU145、図1B:前立腺癌細胞株PC3、図1C:大腸癌細胞株SW480、及び図1D:乳癌細胞株MCF7(対照)を示す。
Claims (8)
- 大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体。
- 受託番号がFERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021であるハイブリドーマにより産生される、大腸癌又は前立腺癌細胞に由来するブラディオン蛋白質と特異的に反応するモノクローナル抗体。
- 請求項1又は2記載のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ。
- 受託番号がFERM BP−8018、FERM BP−8019、FERM BP−8020、又はFERM BP−8021である請求項3記載のハイブリドーマ。
- 請求項1又は2記載のモノクローナル抗体を用いて、サンプル中の癌細胞に由来するブラディオン蛋白質を検出することを特徴とする、癌の検出方法。
- 癌が大腸癌及び/又は前立腺癌である請求項5記載の方法。
- 請求項1又は2記載のモノクローナル抗体を含む癌の診断薬。
- 癌が大腸癌及び/又は前立腺癌である請求項7記載の診断薬。
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