JPWO2006093128A1 - 抗メグシンモノクローナル抗体 - Google Patents
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Abstract
メサンギウム細胞に発現するメグシンタンパク質と反応するモノクローナル抗体およびその用途が提供された。例えば本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫組織染色などの手段によってメサンギウム細胞に局在しているメグシンタンパク質の染色強度を測定することにより、腎障害の病型診断が可能となった。
Description
本発明は、特定のセルピン(セリンプロテアーゼインヒビター)、すなわちメグシン(Megsin)の特定のエピトープに対して選択的に結合するモノクローナル抗体とその製造法、および該モノクローナル抗体を用いる糸球体障害の診断方法、および/または診断のための組成物に関する。
腎不全は、腎疾患患者が最終的に至る病態である。その原因や経歴は一様ではなく、薬物中毒、感染症、悪性腫瘍、糖尿病、ループス腎炎などの本来腎臓以外の病変により、腎障害が発症し、腎不全に至る場合も数多くみられる。
腎臓の血液濾過作用や解毒作用が全く機能しない末期腎不全においては、腎移植が唯一の治療手段である。しかし我が国においては、移植腎の供給体制が十分に整備されているとは言い難い。また、移植療法自体に対する社会的認知も進んでいない。我が国の腎移植例は、年間700余症例に過ぎず、この数値はここ数年増加していない。ゆえに腎代用療法としては透析療法が唯一の治療法であるのが現状である。
現在、我が国の末期腎不全透析患者は推定約21万人を数え、人口あたりの患者数では世界第一位である。一人あたりの平均的な治療費は年間約600万円を必要とし、医療保険制度を圧迫する大きな原因のひとつとされている。また、毎週2〜3日、1日4〜6時間を透析治療のために拘束されることから、患者本人の社会的負担も大きい。
さらに、近年の人口の高齢化に伴い透析患者年齢も上昇しつつある。このため、腎疾患を早期に診断し、治療し、腎不全への進展を防ぐ診断薬や薬剤の必要性が認識されている。しかし、腎疾患領域は、創薬のための標的分子などの情報研究基盤に乏しく、有効な診断薬や医薬品が誕生しないのが現状である。
本発明者らは、腎疾患の発症および進展等の機能に深く係わる組織として腎メサンギウム細胞に着目した。メサンギウム細胞は腎臓以外では見られない臓器特異的な細胞で、腎糸球体の構造や機能保持に重要な役割を担っていることはよく知られている。
また、糸球体障害時にはメサンギウム細胞自身の増殖やメサンギサム細胞から分泌される細胞外マトリックスの増加などが認められることから、疾患の発症および進展にも深く関与する細胞であると推測されている。これらのことから腎疾患の分子メカニズムを解明するには、まずメサンギウム細胞の生物学的特性を解明することが不可欠と考えられる。しかし、メサンギウム細胞に関する遺伝子レベルの特異性は明らかにされていなかった。
ヒトの生体内には約60兆個もの細胞が存在し、これらは同一のゲノムDNAを有しているが、個々の細胞、ひいては臓器が異なった生物学的性質を有するのは各細胞や臓器に特異的に発現する遺伝子によるものと考えられている。
本発明者らは、メサンギウム細胞に発現する遺伝子群のプロファイルを明らかにすれば、メサンギウム細胞に特異的な高発現遺伝子群を検出することが可能であると考えた。そして、その中から腎疾患の状態に関与する遺伝子群を決定することもでき、腎疾患の分子メカニズムを解明する糸口も見つかり、それに基づいた新しい腎疾患の診断法や治療法の開発も可能になると考えた。そこで、本発明者らは、メサンギウム細胞の遺伝子発現パターンを明らかにし、その細胞特性を遺伝子レベルで解析することを試みた。
まず本発明者らは、メサンギウム細胞に発現する遺伝子を定量的に解析することを目的として、培養ヒトメサンギウム細胞からmRNAを抽出して、3'-directed cDNAライブラリーを作製した。そして、クローンに挿入された遺伝子断片の大規模DNA配列決定およびデータベース解析を施行した(非特許文献1)。
その結果、メサンギウム細胞で特に強く発現する遺伝子として、メグシンと命名した全長2,249bpからなる遺伝子を単離した。そして、メグシンの全長cDNAクローンがコードする380個のアミノ酸からなるメグシンタンパク質を単離、取得することに成功した。
更に、SwissProtアミノ酸配列データベースを用いてFASTAプログラムによるアミノ酸ホモロジー検索を行った。そして、メグシンタンパク質のアミノ酸配列中にセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン:SERPIN)スーパーファミリー(非特許文献2〜6)の生理活性中心部位として重要な反応性ループ領域(reactive loop site)内のコンセンサス配列(EEGTEAAAAT/配列番号:2)に類似の配列(EEGTEATAAT/配列番号:3)が存在していることを見出した。
すなわち、メグシンは、セルピンの構造的特徴を有し、他のセルピンと同様に活性部位である反応性ループ領域(P17-P5':EEGTEATAATGSNIVEKQLPQS/配列番号:4)が存在する(非特許文献7)。これらのことより、ヒトメグシンタンパク質が、セルピンに属するタンパク質であることを明らかにした(非特許文献7)。そしてこれらの知見を特許出願した(特許文献1)。
また、IgA腎症患者や糖尿病性腎症患者と健常人とで腎臓組織中のメグシンの発現量を比較すると、IgA腎症患者や糖尿病性腎症患者においてメグシンの発現量が有意に多い(非特許文献7、8)。また、ラットを用いた実験的メサンギウム増殖性糸球体腎炎モデル(Thy-1腎炎モデル)において、同様なメグシン発現量の上昇が認められた(非特許文献9)。このことからメグシンの発現がメサンギウム細胞の機能異常に伴い変化し、疾患の発症および進展に深く関与していることが明らかになった。
メサンギウムの機能におけるメグシンの役割をさらに理解するために、本発明者らはマウスゲノムでヒトメグシンのcDNAを過剰発現させた。2系統のメグシントランスジェニックマウスが得られ、それらは、進行性のメサンギウム基質の拡大、メサンギウム細胞の増殖、および免疫複合体沈着物の増加を示した(非特許文献10、特許文献2)。
これらの知見は、メグシンが、メサンギウムの機能に生物学的に重要な影響を及ぼすことを示している。興味深いことに、メグシンの単一遺伝子操作は、実験的およびヒト糸球体腎炎に存在する初期的なメサンギウム病変を発生させることができる。このように、動物個体においても、メグシンはメサンギウム増殖性糸球体腎炎の発症に関与することが報告されている。
一方、腎障害においては、末期即ち腎不全近くになるまで顕著な自覚症状が現れないことから、その発生が見過ごされ易く、発症した時点では既に腎臓は回復不可能なダメージを受けている場合が多い。従って、自覚症状の発現をみる前に、できる限り初期の段階で腎障害を発見することが、腎不全への移行を防ぐために、また、透析治療による保険財政圧迫を避けるためにも大切である。
本発明者らは、腎疾患の確定診断および重症度を判定するためには、病態と密接に関連した特異的なタンパク質を測定する必要があると考えた。そこで、本発明者らは、前記メグシン遺伝子およびメグシンタンパク質に着目し、メグシンペプチド抗体を用いた生体試料中のメグシンタンパク質を測定することからなる腎機能評価方法を確立した(特許文献3)。
国際公開公報99/15652号公報
国際公開公報01/24628号公報
国際公開公報00/57189号公報
Yasuda, Y. et al., Kidney Int., 53: 154-158 (1998)
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以上述べたように、抗メグシンタンパク質抗体を用いた糸球体障害の診断方法は、腎障害の早期診断および病態の進展度の判定に極めて有用な手段である。本発明の目的は、抗メグシンタンパク質抗体を利用して、病態特異的な診断剤を提供することである。
本発明者らは、様々な組織および細胞をノーザンブロットおよび逆転写ポリメラーゼ連鎖反応で分析したところ、メグシンは、ヒト繊維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、ケラチノサイトでは発現が弱く、メサンギウム細胞で特に強く発現していることが判った。これらの知見はさらにin situハイブリダイゼーション(Miyata, T. et al., J. Clin. Invest., 102: 828 (1998)、Suzuki, D. et al., J. Am. Soc. Nephrol., 10: 2606 (1999))およびメグシン抗体を用いた免疫組織化学法(Inagi, R. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 286: 1098 (2001))により確認された。
従って、メグシンタンパク質に対し、特異性に優れた抗体(モノクローナル抗体)を見出し、特定することは、腎障害の生物学的性質の解明、腎疾患の原因の究明、ひいては、腎疾患の治療、診断等に有効である。
本発明者らはこれまでに、組換えメグシンタンパク質を免疫原に用いてメグシンタンパク質を認識する抗体を得ている。例えば、本発明のモノクローナル抗体と異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体4F3である。本発明において、本発明者らは、糸球体メサンギウム細胞に局在するメグシンタンパク質と反応するモノクローナル抗体2D12を見出し、そのエピトープ(129-134:VDFTNH/配列番号:1)を決定した。
一方、モノクローナル抗体4F3は、腎糸球体上皮細胞に局在するメグシンタンパク質を認識する。また、糸球体上皮細胞に局在するメグシンタンパク質の局在パターンも病型によって異なる。よって、本発明のモノクローナル抗体2D12と4F3抗体とを組み合わせることで、病型の分類に貢献する。
メグシンペプチドに対するモノクローナル抗体(WO 00/57189)や、メグシンタンパク質の反応性ループ領域(P17-P5':EEGTEATAATGSNIVEKQLPQS/配列番号:4)内のエピトープと特異的に結合する抗体(WO 03/084998)は公知である。しかし、いずれも病型との関連性は知られていない。更に、糸球体障害時にメサンギウム細胞に局在するメグシンタンパク質に対する反応性についての知見は確認されていなかった。本発明によるモノクローナル抗体は、正常時と糸球体障害時においてメサンギウム細胞に局在するメグシンタンパク質と異なる結合性を示す。すなわち、本発明は以下のモノクローナル抗体、ならびにその用途に関する。
〔1〕FERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマ2D12。
〔2〕FERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマ2D12が産生するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片。
〔3〕FERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマ2D12を培養し、培養物に含まれるイムノグロブリンを回収する工程を含む、モノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片の製造方法。
〔4〕以下の工程を含む糸球体障害の検査方法。
(1)生体から採取された腎臓組織標本におけるメサンギウム細胞に対する〔2〕に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片の結合レベルを測定する工程、および
(2)正常腎組織と比較して、抗メグシンタンパク質抗体の結合レベルが低下している場合に、糸球体障害が検出される工程
〔5〕〔2〕に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片を含む糸球体障害の診断剤。
〔1〕FERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマ2D12。
〔2〕FERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマ2D12が産生するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片。
〔3〕FERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマ2D12を培養し、培養物に含まれるイムノグロブリンを回収する工程を含む、モノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片の製造方法。
〔4〕以下の工程を含む糸球体障害の検査方法。
(1)生体から採取された腎臓組織標本におけるメサンギウム細胞に対する〔2〕に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片の結合レベルを測定する工程、および
(2)正常腎組織と比較して、抗メグシンタンパク質抗体の結合レベルが低下している場合に、糸球体障害が検出される工程
〔5〕〔2〕に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片を含む糸球体障害の診断剤。
本発明のモノクローナル抗体2D12は、糸球体メサンギウム細胞に局在するメグシンタンパク質と反応する。よって、例えば免疫組織染色などの手段により、該抗体を用いた腎組織の染色パターンを比較することにより、腎疾患の病型診断が可能となる。
本発明者らは、メグシンタンパク質の特定の領域を認識するモノクローナル抗体2D12が、正常腎メサンギウム細胞に局在するメグシンタンパク質と結合し、糸球体障害において同じ領域に対する結合が低下することを見出した。すなわち本発明は、メグシンタンパク質の特定の領域を認識するモノクローナル抗体に関する。本発明のモノクローナル抗体が認識する領域は、メグシンタンパク質のアミノ酸配列中、特に配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなる領域をいう。従って本発明のモノクローナル抗体は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドによって構成されるエピトープを認識するモノクローナル抗体である。
モノクローナル抗体が、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドによって構成されるエピトープを認識することは、エピトープマッピングによって確認することができる。たとえば実施例3および4においては、様々なアミノ酸配列からなるペプチドを用いて、モノクローナル抗体が認識するエピトープを特定している。
メグシンに対するモノクローナル抗体は、ヒトのメグシンまたはそのドメインペプチドを免疫原として、公知の方法によって得ることができる。モノクローナル抗体の取得方法は、後に具体的に述べる。得られたモノクローナル抗体を、上記のような評価方法に基づいて選択することによって、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。
本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとして、たとえばハイブリドーマ2D12細胞を示すことができる。ハイブリドーマ2D12は、メグシンタンパク質を構成するアミノ酸配列中、129-134(VDFTNH/配列番号:1)を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマである。ハイブリドーマ2D12が産生するモノクローナル抗体2D12は、腎メサンギウム細胞に局在するメグシンタンパク質と反応する。
ハイブリドーマ2D12は、2004年12月22日付けで日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6に所在の独立行政法人産業技術総合研究所内特許生物寄託センターに対して、ブダペスト条約に基づいて受託番号FERM BP-10527として寄託されている。以下に、寄託を特定する情報を記載する。
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6(郵便番号305-8566)
(b)寄託日:平成16年12月22日
(c)受託番号:FERM BP-10527
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6(郵便番号305-8566)
(b)寄託日:平成16年12月22日
(c)受託番号:FERM BP-10527
このハイブリドーマ2D12細胞株が産生するモノクローナル抗体のアイソタイプは、H鎖はIgG2aであった。本発明はまた、上記抗体のクラススイッチ変異体、例えば、アイソタイプIgG3、IgG1、IgG2bおよびその他の免疫グロブリンサブクラスに属する変異体等を包合し、その様な変異体は、Martinらの方法により作成することができる(Martin,C. et al.:J.Immunol.Methods.,145:1118,1991)。
本発明において、「抗原結合領域を含む断片」とは、モノクローナル抗体の抗原結合領域を含む一部分からなる断片を意味する。具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv(variable fragment of antibody)、sFv、dsFv(disulphide stabilised Fv)あるいはdAb(single domain antibody)などの抗体断片が、「抗原結合領域を含む断片」に含まれる。
ここで、「F(ab')2」及び「Fab'」とは、イムノグロブリン(モノクローナル抗体)を、蛋白分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体断片を意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1 領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体断片を各々Fab'という。またIgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab'がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体断片は、F(ab')2と呼ばれる。
抗原結合領域を含む断片は、当該断片をコードするDNAを発現させることによって得ることもできる。たとえば、本発明のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマのmRNAを鋳型として、抗体の抗原結合領域をコードするcDNAをPCRによって増幅することができる。抗体の抗原結合領域は、可変性の高い相補性決定領域(CDR)と、比較的保存性の高いフレーム領域(FR)によって構成されている。4つのFRが3つのCDRをはさんで配置されている。そのため、N末端のFRをコードする部分と、定常領域の可変領域に近い部分に相補的な塩基配列を有するプライマーを使って、可変領域全体をコードするcDNAを増幅することができる。
このようにして回収されるcDNAがコードするアミノ酸配列は、先に述べた酵素的な消化によって得られる抗体断片とは異なる長さを有する可能性がある。更に、それぞれ1分子のVLとVHをリンカーを介して1本のペプチドとして発現させることによって、scFvとすることもできる。scFvの構造は天然の抗体とは異なっている。しかし、CDRとFRを含むアミノ酸配列を含んでいれば、抗原との結合能は維持される。したがって、酵素的な消化によって得られる抗体断片と異なるアミノ酸配列からなる断片、あるいは異なる構造を持つ断片であっても、抗原との結合能を維持する限り、抗体として利用することができる。つまりこのような抗体断片も、本発明の抗原結合領域を含む断片に含まれる。
更に本発明における抗原結合領域を含む抗体の断片は、抗原との結合能を維持する限り、必要に応じて、標識物質や、親和性物質と結合させたり、あるいは融合蛋白質とすることができる。これらの標識された抗体断片や融合蛋白質は、本発明のモノクローナル抗体に含まれる。
更に本発明における抗原結合領域を含む抗体の断片は、抗原との結合能を維持する限り、必要に応じて、標識物質や、親和性物質と結合させたり、あるいは融合蛋白質とすることができる。これらの標識された抗体断片や融合蛋白質は、本発明のモノクローナル抗体に含まれる。
メグシンタンパク質に対するモノクローナル抗体の作製には、免疫原性抗原として使用できるメグシンタンパク質が必要である。抗原としてのメグシンタンパク質は、培養細胞、例えばメグシンタンパク質産生細胞を用いて得ることができる。メグシンタンパク質産生細胞としては、例えばヒト腎由来細胞等が挙げられる。このメグシンタンパク質産生細胞は、当該分野で知られた、あるいはそれらと実質的に同様な培地や培養方法を用いて培養し、培養上清中に産生されるメグシンタンパク質を例えばイオン交換クロマトグラフィーおよび/またはポリクローナル抗体を使用したアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、組換えメグシンタンパク質も用いることができる。具体的には、メグシンタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子断片を含む組換えベクターにより宿主細胞を形質転換した後、この形質転換宿主を培養して、メグシンタンパク質のアミノ酸配列を含むポリペプチドを製造し、該ポリペプチドを免疫原として使用するものである。メグシンのcDNAを含む組換えベクターは、通常の遺伝子組換え手法により、例えばプラスミドベクターに挿入することによって作製される。ベクターとしては、プラスミドやファージの他に、ワクシニアウィルス、バキュロウィルス等のウィルスも使用できる。
宿主としては、例えば大腸菌、枯草菌、放線菌等の原核生物、ならびに各種細胞、例えば動物細胞、CHO細胞等の市販の細胞株ならびに酵母、植物細胞、昆虫細胞等の真核生物を用いることができる。また、原核生物に使用できるプロモーターとしては、例えばトリプトファン合成酵素オペロン、ラクトースオペロン等を用いることができる。真核生物に使用できるプロモーターとしては、例えば、ウィルスプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼに対するプロモーター、解糖系酵素に対するプロモーター等がある。また、マルチクローニングサイト、プロモーター、耐性遺伝子、複製開始点、ターミネーター、リポソーム結合部位等を有する市販のベクターあるいはプラスミドも使用することができる。耐性遺伝子には、テトラサイクリン、アンピシリン、ネオマイシンに対するもの等がある。この様にして調製されたメグシンタンパク質は、更に免疫原性コンジュゲートとしてもよいが、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できる。
このように、抗原は、各種原料、例えば培養細胞、培養組織、形質転換細胞等の抗原産生原料から従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法等の塩析、セファデックス等によるゲル濾過クロマトグラフィー法、イオン交換クロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外濾過法、アフィニティークロマトグラフィー法および高速液体クロマトグラフィー法等により精製して得ることができる。
さらに、メグシンタンパク質は、それを断片化したもの、あるいはクローニングされ、配列決定されたcDNA配列から推定されるアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成し、得られたポリペプチド断片であってもよく、その断片を適当な縮合剤を介して種々の担体蛋白質類と結合させてハプテン-蛋白質の免疫コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列のみを認識できるモノクローナル抗体をデザインすることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基等を付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにすることができる。
本発明では腎メサンギウム細胞に局在するメグシンタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のモノクローナル抗体を提供する。本発明にかかるモノクローナル抗体は、組換えメグシンを免疫原として動物を免役した後、ミエローマ細胞と抗体産生細胞との細胞融合、ハイブリドーマの選択およびモノクローン化、モノクローナル抗体の製造、必要に応じて腹水化といった工程で作製できる。
動物の免疫は、例えば次のように行う。公知の方法(Miyata, T. et al., J. Clin. Invest., 120: 828 (1998))に従って精製したヒトメグシンタンパク質をラット、マウスなどの哺乳類動物に免疫する。哺乳類動物は細胞融合する際の相手の永久増殖性細胞と同系統の動物を用いるのが好ましい。動物の週令は、例えばマウスでは8〜10週令が好適である。性は雌雄何れでも構わない。
免疫動物として、イムノグロブリン遺伝子をヒトの遺伝子に組み換えたトランスジェニック動物を用いることにより、ヒトのイムノグロブリンを産生させることもできる。イムノグロブリン遺伝子をヒトの遺伝子に組み換えたトランスジェニック動物を用いて、目的とする反応性を有する抗体を得る方法は公知である。このようにして得ることができるイムノグロブリンは、動物から得られたものながら、完全にヒトのイムノグロブリン分子である。
免疫の方法は、精製したヒトメグシンタンパク質を適当なアジュバント(例えばフロイント完全アジュバントまたは水酸化アルミニウムゲル-百日咳菌ワクチンなど)と混合しエマルジョンとした後、動物の皮下、腹腔内、静脈内などに投与する。以後、この免疫操作を1〜2週間間隔で2〜5回行う。最終免疫は、0.5〜2μgのヒトメグシンタンパク質を動物の腹腔内に投与することにより行う。
このようにして免疫した動物の体液からは、ポリクローナル抗体が得られる。各免疫操作後3〜7日後に眼底静脈叢より採血し、その血清の抗体価を測定し、抗体価が充分上昇したとき、抗体または抗体産生細胞を採取する。メグシンに対する抗体価は、ELISA等の手法によって測定することができる。抗体価を測定するためのELISAは、メグシンをコートしたプレートに血清を加え、更に免疫動物のIgGに対する標識抗体を加えることにより実施することができる。
抗原と共に用いられるアジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビアジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカゲル等が挙げられる。免疫は、例えばBalb/cマウス、FIマウス等のマウスをはじめとする動物を使用することができる。
上記のようにヒトメグシンタンパク質で免疫した動物から抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞は、脾臓、リンパ節、末梢血などから得ることができるが、特に脾臓が好ましい。例えば、最終免疫の3〜4日後に脾臓を無菌的に摘出し、Minimal Essential Medium(MEM)培地(日水製薬製)中で細断し、ピンセットで解し、1,200rpm×5分間の条件で遠心分離させた後、上清を除き、トリス-塩酸緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理して赤血球を除去し、さらにMEM培地で3回洗浄して細胞融合用脾臓細胞を得る。
細胞融合前には、まず使用される腫瘍細胞株の調製をしておく必要がある。細胞融合前に使用される腫瘍細胞株は、たとえば免疫グロブリンを産生しない細胞株から選択することができる。融合される相手方の永久増殖性細胞には、永久増殖性を有する任意の細胞を用いることができるが、一般的には骨髄腫細胞(ミエローマ)が用いられる。永久増殖性細胞は抗体産生細胞と同種の動物由来のものを用いるのが望ましい。
例えばマウスの場合、8-アザグアニン耐性マウス(Balb/c)由来骨腫瘍細胞株として次のような細胞株が知られている。
P3-X63Ag8-U1(P3-U1)(Current. Topics in Microbiol. Immunol., 81: 1, (1978))
P3/NS1/1-Ag4-1(NS-1)(Eur. J. Immunol., 6: 511 (1976))
SP2/0-Ag14(SP-2)(Nature, 276: 269 (1978))
P3-X63-Ag8653(653)(J. Immunol., 123: 1548 (1979))
P3-X63-Ag8(X63)(Nature, 256: 495 (1975))
P3-X63Ag8-U1(P3-U1)(Current. Topics in Microbiol. Immunol., 81: 1, (1978))
P3/NS1/1-Ag4-1(NS-1)(Eur. J. Immunol., 6: 511 (1976))
SP2/0-Ag14(SP-2)(Nature, 276: 269 (1978))
P3-X63-Ag8653(653)(J. Immunol., 123: 1548 (1979))
P3-X63-Ag8(X63)(Nature, 256: 495 (1975))
これらの永久増殖性細胞株は、8-アザグアニン培地(RPMI-1640培地にグルタミン(1.5mM)、2-メルカプトエタノール(5×10-5M)、ゲンタマイシン(10μg/mL)およびウシ胎児血清(FCS、CLS製)(10%)を加えた正常培地に、さらに8-アザグアニン(15μg/mL)を加えた培地)で継代培養し、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合は例えば次のように行う。上記で得られた抗体産生細胞および永久増殖性細胞をMEM培地またはPBSでよく洗浄し、細胞数が5〜10:1の比になるように混合する。1,200rpm×5分間遠心分離した後、上清を除き、沈殿した細胞群をよく解した後、攪拌しながら37℃に保ちつつ、細胞融合剤としてポリエチレングリコール-1000(PEG-1000)1〜4g、MEM培地1〜4mLおよび細胞融合促進剤としてジメチルスルホキシド0.5〜1.0mLの混液0.1〜1.0mL/108個細胞を加えて細胞融合を起こさせる。
その後、10分毎にMEM培地3mLを数回添加し、MEM培地を全量が50mLになるように加えて希釈し、細胞融合を停止させる。次に、遠心分離(1,500rpm×5分間)して上清を除去し、緩やかに細胞を解した後、正常培地(RPMI-1640培地、10%FCS)100mLを加え、メスピペットによるピペッティングで緩やかに細胞を懸濁する。
この懸濁液を96ウエルの培養用プレートに100μL/wellずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で3〜5日間培養する。培養プレートに100μL/wellのHAT培地(正常培地にヒポキサンチン(10-4M)、チミジン(1.5×10-5M)およびアミノプテリン(4×10-7M)を添加した培地)を加え、さらに3日間培養する。以後3日間毎に培養上清の半容量を除去し、新たに同量のHAT培地を加え、5%CO2インキュベーター中、37℃で約2週間培養する。
融合細胞がコロニー状に生育しているのが認められるウエルについて、上清の半容量を除去し、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いたもの)を同量加え、4日間培養する。培養上清の一部を採取し、前述のELISAによりメグシンタンパク質に対する抗体価を測定する。
より具体的には、例えばメグシンタンパク質抗原を直接又は担体と共に吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体を加え、標識を測定することによって抗体価を測定することができる。本発明のモノクローナル抗体を得るための抗原としては、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを用いることができる。より具体的には、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを吸着させたプレートを固相として、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。あるいは、メグシンタンパク質に結合するモノクローナル抗体の中から、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドによってその結合が阻害される抗体を選択することにより、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することも出来る。 固相には、マイクロプレート等が用いられる。また抗免疫グロブリン抗体としては、細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる。その他、標識抗体に代えて、プロテインAを加え、固相に結合した抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体を検出することもできる。更に、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したメグシンタンパク質を加えることによって、抗体価を測定することもできる。
メグシンタンパク質に反応する抗体の産生が観察されたウエルにつき、限界希釈法によりクローニングを4回繰り返し、安定したメグシンタンパク質の抗体価を示すものを抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。また、糸球体障害を有する腎組織には、特有の染色パターンが見られる。従って、さらに好ましくは、糸球体障害を有する腎組織を染色した結果、染色パターンが糸球体障害に特有なパターンを示す抗体を産生するハイブリドーマ株を選択する。
上記のようにして得られたハイブリドーマをin vitroおよびin vivoで培養することによりモノクローナル抗体を産生させる。所望のモノクローナル抗体を、FCS含有MEM培地、RPMI-1640培地等の適当な培地中で培養し、その培養上清から得ることができる。ハイブリドーマのin vitroでの培養は、好ましくは無血清培地中で行われ、至適量の抗体をその上清に与える。
in vivoで培養する場合、任意の動物にハイブリドーマを移植する。移植のための宿主動物は、細胞融合に用いた脾臓細胞を採取した動物と同種の動物を使用するのが好ましい。例えば、プリスタン処理をした8〜10週令のBalb/c雌マウスに上記で得られた抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞の2〜4×106個/匹腹腔内投与する。プリスタン処理は、たとえば2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン-プリスタン-0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育することにより行われる。2〜3週間でマウスの腹腔内にモノクローナル抗体を高濃度に含んだ腹水が貯留し腹部が肥大してくる。このマウスから腹水を採取し、遠心分離(3,000rpm×5分間)して固形分を除去し、IgGを精製する。
腹水や培養上清を50%硫酸アンモニウムを用いて塩析し、PBSで1〜2週間透析する。この透析画分をプロテインAセファロースカラムに通し、IgG画分を集め、精製モノクローナル抗体を得る。このモノクローナル抗体は、腎糸球体上皮細胞に局在するメグシンタンパク質と特異的に反応する。
抗体のアイソタイプは、市販のキット(Gibco BRL製、Mouse Antibody Isotyping Kit等)を用いるか、またはオクタロニィ(二重免疫拡散)法(免疫学実験入門, 生物化学実験法15, 学会出版センター刊, 74頁, 1981年)により決定した。タンパク質量は、フォーリン法および280nmにおける吸光度(1.4(OD280)イムノグロブリン1mg/mL)により算出する。
大量のモノクローナル抗体を得るにはハイブリドーマの腹水化を利用することができる。この場合、ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性のある動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいはヌードマウスなどに各ハイブリドーマを移植し、腹水中に産生されたモノクローナル抗体を得ることができる。
動物は、ハイブリドーマを移植する前にプリスタンなどの鉱物油を腹腔内に投与しておくことができる。腹水液はそのままあるいは常法により精製することができる。例えば、硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックス等によるゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー、電気泳動、透析、限外濾過法、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー法等により精製することができる。上記のようにして得られたモノクローナル抗体の特性は、例えば、酵素免疫測定法(ELISA法)等により明らかにすることができる。
本発明のモノクローナル抗体は、腎メサンギウム細胞に局在するヒトメグシンタンパク質の129-134の部位と特異的に結合することができる。
本発明において「メグシンタンパク質が局在する」とは、メグシンタンパク質が高濃度で存在している状態にあることを表している。また、「腎メサンギウム細胞に局在する」という場合は、メサンギウム細胞から直接発現されるメグシンタンパク質のみならず、メサンギウム細胞以外の細胞で発現したメグシンタンパク質が細胞外に分泌され、メサンギウム細胞中に蓄積される場合も含む。
本発明のモノクローナル抗体は、免疫染色、例えば組織あるいは細胞染色、免疫沈降、イムノブロット、イムノアッセイ、例えば競合型または非競合型イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ELISA、ラテックス凝集法、蛋白精製、アフィニティーカラム等に使用することができる。特に本発明のモノクローナル抗体は、糸球体障害を有する腎組織において特有の染色パターンを示す。従って本発明のモノクローナル抗体は、特に免疫染色に有用である。
本発明のモノクローナル抗体は、免疫染色に用いるために標識抗体とすることができる。抗体を標識化するものとして、酵素、酵素基質、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、放射性物質等を用いることができる。標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応等を利用することができる。また、可変領域を含む抗体断片を標識して免疫染色に使用することもできる。
従って、本発明は、この様なハイブリドーマ細胞系、イムノアッセイおよび検査キットをも提供する。さらに、本発明はメサンギウム細胞に局在するメグシンタンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体、この抗体を用いることを特徴とするメグシンの検出ならびに定量のためのイムノアッセイ、およびこのイムノアッセイを実施するための検査キットを提供する。本発明のモノクローナル抗体は、糸球体障害を有する腎組織において特有の染色パターンを示すことから、糸球体障害の病型診断に非常に有用である。
生体の腎組織は、腎生検によって採取することができる。一方、組織標本のメサンギウム細胞における抗メグシンタンパク質抗体の結合レベルは、メサンギウム細胞の免疫染色によって検出することができる。本発明の検査方法において好ましい抗体は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列をエピトープとして認識する抗体である。このような抗体として、たとえばFERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を示すことができる。
本発明の検査方法に用いられる前記抗体は、糸球体障害の検査用試薬として有用である。本発明において、検査用試薬とは、糸球体障害の検出、あるいは診断を目的として生体外(in vitro)で用いられる試薬である。すなわち本発明は、前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片を含む糸球体障害の診断剤を提供する。
本発明の検査用試薬あるいは診断剤を構成する抗体は、検出を容易にするために標識しておくことができる。たとえば、蛍光分子、発光分子、酵素分子、あるいは結合性リガンド等によって抗体を標識し、検出する方法が公知である。あるいは、組織に結合する抗体を認識して結合する第2抗体を組み合わせて、抗体の結合を検出することもできる。第2抗体を組み合わせる場合には、標識されるのは第2抗体である。
本発明の検査用試薬あるいは診断剤を構成する抗体は、検出を容易にするために標識しておくことができる。たとえば、蛍光分子、発光分子、酵素分子、あるいは結合性リガンド等によって抗体を標識し、検出する方法が公知である。あるいは、組織に結合する抗体を認識して結合する第2抗体を組み合わせて、抗体の結合を検出することもできる。第2抗体を組み合わせる場合には、標識されるのは第2抗体である。
前記抗体は、標識の検出に必要な成分、組織標本のブロッキングに有用なブロッキング剤、陽性標本、あるいは陰性標本等と組み合わせて、糸球体障害の検査用キットとすることができる。本発明の好ましい態様において、次の要素を含む、糸球体障害の診断用キットが提供される。
(1)本発明のモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片、および
(2)正常腎メサンギウム細胞および糸球体腎障害を有する腎のメサンギウム細胞の、いずれか、または両方を含む対照標本
本発明のキットを構成する対照標本には、メサンギウム細胞の凍結切片や固定標本を利用することができる。対照とするメサンギウム細胞は、ヒトから採取された腎組織や、培養細胞株から得ることができる。更に、本発明のキットには、本発明の抗体によって染色された種々の腎組織の染色画像を組み合わせることもできる。具体的には、正常腎、あるいは糸球体障害を有する腎組織の染色画像が挙げられる。糸球体障害を有する腎組織には、膜性腎症や微小変化型ネフローゼ、IgA腎症、ループス腎炎、糖尿病性腎症などの患者腎組織が含まれる。疾患の進行度に応じた代表的な染色画像を予め組み合わせることにより、キットの利用者の判定を助けることができる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
(1)本発明のモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片、および
(2)正常腎メサンギウム細胞および糸球体腎障害を有する腎のメサンギウム細胞の、いずれか、または両方を含む対照標本
本発明のキットを構成する対照標本には、メサンギウム細胞の凍結切片や固定標本を利用することができる。対照とするメサンギウム細胞は、ヒトから採取された腎組織や、培養細胞株から得ることができる。更に、本発明のキットには、本発明の抗体によって染色された種々の腎組織の染色画像を組み合わせることもできる。具体的には、正常腎、あるいは糸球体障害を有する腎組織の染色画像が挙げられる。糸球体障害を有する腎組織には、膜性腎症や微小変化型ネフローゼ、IgA腎症、ループス腎炎、糖尿病性腎症などの患者腎組織が含まれる。疾患の進行度に応じた代表的な染色画像を予め組み合わせることにより、キットの利用者の判定を助けることができる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
〔実施例1〕モノクローナル抗体の作製
a.免疫原の調製と免疫方法
大腸菌発現精製ヒトリコンビナントメグシン蛋白10μg(液量50μl)をマウスの1回あたりの免疫原として用いた。1.5mlチューブで、50μlのフロイント完全アジュバント(SIGMA社:Cat.No.F-5881)と精製メグシン蛋白溶液(10μg/50μl)を1mlシリンジ(テルモ社:SS-01T)と21ゲージ注射針(テルモ社:NN-2138S)を用いて、完全にエマルジョン化するまで混合し、免疫原とした。マウス(Balb/c)に対し、腹腔に上記免疫原を26ゲージ注射針(テルモ社:NN-2613S)を使用して注射し、免疫を行った。免疫は1週間ごとに1回、合計4回行った。4回目の免疫の際、抗体力価をチェックするため、マウスの眼下静脈蒼より50-100μl採血し、ELISA法により抗体力価の確認を行った。
〔実施例1〕モノクローナル抗体の作製
a.免疫原の調製と免疫方法
大腸菌発現精製ヒトリコンビナントメグシン蛋白10μg(液量50μl)をマウスの1回あたりの免疫原として用いた。1.5mlチューブで、50μlのフロイント完全アジュバント(SIGMA社:Cat.No.F-5881)と精製メグシン蛋白溶液(10μg/50μl)を1mlシリンジ(テルモ社:SS-01T)と21ゲージ注射針(テルモ社:NN-2138S)を用いて、完全にエマルジョン化するまで混合し、免疫原とした。マウス(Balb/c)に対し、腹腔に上記免疫原を26ゲージ注射針(テルモ社:NN-2613S)を使用して注射し、免疫を行った。免疫は1週間ごとに1回、合計4回行った。4回目の免疫の際、抗体力価をチェックするため、マウスの眼下静脈蒼より50-100μl採血し、ELISA法により抗体力価の確認を行った。
b.モノクローナルハイブリドーマの作製
十分な抗体力価の確認後、摘出したマウス脾臓より調整したリンパ細胞をポリエチレングリコール(和光純薬:162-0915)を用い、マウスミエローマ細胞(P3U1)と細胞融合させた。ハイブリドーマの選別は、HAT (ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン:h-ypoxanthine、thymidine、SIGMA社 H-0137 aminopterin、SIGMA社 A-5159)選択で行った。ハイブリドーマの培養上清を用いたELISA法により、免疫抗原に対して反応性の高いクローンのスクリーニングを行った。1次スクリーニングで選択したクローンについては限界希釈法を用い、単一のクローンになるまでクローニング作業を行い、モノクローナルなハイブリドーマ株(2D12)を樹立した。
十分な抗体力価の確認後、摘出したマウス脾臓より調整したリンパ細胞をポリエチレングリコール(和光純薬:162-0915)を用い、マウスミエローマ細胞(P3U1)と細胞融合させた。ハイブリドーマの選別は、HAT (ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン:h-ypoxanthine、thymidine、SIGMA社 H-0137 aminopterin、SIGMA社 A-5159)選択で行った。ハイブリドーマの培養上清を用いたELISA法により、免疫抗原に対して反応性の高いクローンのスクリーニングを行った。1次スクリーニングで選択したクローンについては限界希釈法を用い、単一のクローンになるまでクローニング作業を行い、モノクローナルなハイブリドーマ株(2D12)を樹立した。
c.1次スクリーニング(ELISA実施方法)
大腸菌発現精製メグシン蛋白質を0.1M炭酸緩衝液pH9.0にて2μg/mlの濃度とし、96穴マイクロタイタープレート(Nunc社:Cat.No442404)の1穴あたり50μlづつ分注し、25℃、3時間静置した(感作)。溶液を除去後、1% BSA(Bovine Serum Albumin)溶液(0.1M炭酸緩衝液pH9.0)、200μlを分注し、25℃、1時間静置した(ブロッキング)。ブロッキング溶液を除去後、スクリーニングに供するハイブリドーマ上清、あるいはマウス血清溶液を50μlを各穴に分注し、25℃、1時間静置した(1次反応)。溶液を除去後、0.13M NaCl添加50mM リン酸緩衝液、pH7.2(以下:PBS)で洗浄した。各穴にホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase:HRP)標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(MBL社:Cat.No.330)溶液を50μlづつ分注し、25℃、1時間静置した(2次反応)。溶液を除去後、0.13M NaCl添加50mM リン酸緩衝液、pH7.2で洗浄した。0.8mM TMB(テトラメチルベンジジン:3,3`,5,5`Tetramethylbenzidine:同仁化学研究所製:Cat.No.T039)溶液を1ウェルあたり50μl添加し、30℃で5〜20分間発色させた(発色反応)。1.5N H2SO4を1ウェルあたり50μlずつ加えて発色反応を停止させ、マイクロタイタープレートリーダー(ワラック社製:ARVO-SX)を用いて、450nmにおける吸光度を測定した。
大腸菌発現精製メグシン蛋白質を0.1M炭酸緩衝液pH9.0にて2μg/mlの濃度とし、96穴マイクロタイタープレート(Nunc社:Cat.No442404)の1穴あたり50μlづつ分注し、25℃、3時間静置した(感作)。溶液を除去後、1% BSA(Bovine Serum Albumin)溶液(0.1M炭酸緩衝液pH9.0)、200μlを分注し、25℃、1時間静置した(ブロッキング)。ブロッキング溶液を除去後、スクリーニングに供するハイブリドーマ上清、あるいはマウス血清溶液を50μlを各穴に分注し、25℃、1時間静置した(1次反応)。溶液を除去後、0.13M NaCl添加50mM リン酸緩衝液、pH7.2(以下:PBS)で洗浄した。各穴にホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase:HRP)標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(MBL社:Cat.No.330)溶液を50μlづつ分注し、25℃、1時間静置した(2次反応)。溶液を除去後、0.13M NaCl添加50mM リン酸緩衝液、pH7.2で洗浄した。0.8mM TMB(テトラメチルベンジジン:3,3`,5,5`Tetramethylbenzidine:同仁化学研究所製:Cat.No.T039)溶液を1ウェルあたり50μl添加し、30℃で5〜20分間発色させた(発色反応)。1.5N H2SO4を1ウェルあたり50μlずつ加えて発色反応を停止させ、マイクロタイタープレートリーダー(ワラック社製:ARVO-SX)を用いて、450nmにおける吸光度を測定した。
d.ウエスタンブロッティング方法
メグシン蛋白質0.1μgを12.5%ゲル SDS‐PAGEで定法に従い電気泳動を行った。セミドライトランスファー装置(バイオクラフト社:Cat.No.BE-300)を用い、泳動された蛋白をImmobilon-Pトランスファーメンブレン(ミリポア社:Cat.No. IPVH 078 50)に転写した。転写後のメンブレンをブロックエース(大日本製薬:Cat.No.UK-B25)にてブロッキング(25℃、1時間)後、ハイブリドーマ培養上清と25℃、1時間反応させた。PBSでメンブレンを洗浄後、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase:HRP)標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(MBL社:Cat.No.330)とメンブレンを25℃、1時間反応させた。PBSでメンブレンを洗浄後ECL Western Blotting kit (アマシャムバイオ社:Cat.No.RPN2109)を用いて化学発光させ、それをHyperfilm ECL(アマシャムバイオ社:Cat.No.RPN2103K)に焼付け、検出を行った。
メグシン蛋白質0.1μgを12.5%ゲル SDS‐PAGEで定法に従い電気泳動を行った。セミドライトランスファー装置(バイオクラフト社:Cat.No.BE-300)を用い、泳動された蛋白をImmobilon-Pトランスファーメンブレン(ミリポア社:Cat.No. IPVH 078 50)に転写した。転写後のメンブレンをブロックエース(大日本製薬:Cat.No.UK-B25)にてブロッキング(25℃、1時間)後、ハイブリドーマ培養上清と25℃、1時間反応させた。PBSでメンブレンを洗浄後、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase:HRP)標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(MBL社:Cat.No.330)とメンブレンを25℃、1時間反応させた。PBSでメンブレンを洗浄後ECL Western Blotting kit (アマシャムバイオ社:Cat.No.RPN2109)を用いて化学発光させ、それをHyperfilm ECL(アマシャムバイオ社:Cat.No.RPN2103K)に焼付け、検出を行った。
e.免疫沈降
1.5ml エッペンチューブ中のrmp Protein A Sepharose Fast Flow (以下、ゲルと呼ぶ。アマシャムバイオ:Cat.No. 17-5138-01) 25μlに対して500μlのハイブリドーマ培養上清を添加し、室温で1時間、緩やかに撹拌した。培養上清を除去後、PBSでゲルを洗浄し、10μg/ml in PBSのメグシン溶液(PBS)を50μl/tubeに入れ、室温で1時間静置した。PBSでゲルを洗浄後、30μlのSDS-PAGE Sample Buffer(レムリ法)を入れ、3分間煮沸処理を行った。その内の20μlを上記の方法と同様にSDS-PAGEを行い、ウエスタンブロッティングを行った。蛋白の検出には1次抗体に抗メグシンウサギポリクローナル抗体を用い、2次抗体にはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase:HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)抗体(MBL社:Cat.No.458)を用いた。
1.5ml エッペンチューブ中のrmp Protein A Sepharose Fast Flow (以下、ゲルと呼ぶ。アマシャムバイオ:Cat.No. 17-5138-01) 25μlに対して500μlのハイブリドーマ培養上清を添加し、室温で1時間、緩やかに撹拌した。培養上清を除去後、PBSでゲルを洗浄し、10μg/ml in PBSのメグシン溶液(PBS)を50μl/tubeに入れ、室温で1時間静置した。PBSでゲルを洗浄後、30μlのSDS-PAGE Sample Buffer(レムリ法)を入れ、3分間煮沸処理を行った。その内の20μlを上記の方法と同様にSDS-PAGEを行い、ウエスタンブロッティングを行った。蛋白の検出には1次抗体に抗メグシンウサギポリクローナル抗体を用い、2次抗体にはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase:HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)抗体(MBL社:Cat.No.458)を用いた。
f.抗体のサブクラス
IsoStrip kit(Roche社:Cat. No. 1 493 027)を用いて行った。具体的には、サンプルの培養上清をPBSで150倍希釈したものをキット付属の試験管に入れ、付属のStripで試験管のサンプル希釈液を吸い上げる。サブクラスに合わせた位置にバンドが出るので判定する。結果、サブクラスはIgG2aだった(図1)。
IsoStrip kit(Roche社:Cat. No. 1 493 027)を用いて行った。具体的には、サンプルの培養上清をPBSで150倍希釈したものをキット付属の試験管に入れ、付属のStripで試験管のサンプル希釈液を吸い上げる。サブクラスに合わせた位置にバンドが出るので判定する。結果、サブクラスはIgG2aだった(図1)。
〔実施例2〕ウエスタンブロッティング法によるモノクローナル抗体の反応性の検討
ウェスタンブロット分析を行い、この抗体の抗原特異性を実証した(図2)。抗メグシン抗体2D12は大腸菌で発現させたヒトメグシンタンパク質及び、CHO細胞で発現させたヒトメグシンタンパク質と反応した。
ウェスタンブロット分析を行い、この抗体の抗原特異性を実証した(図2)。抗メグシン抗体2D12は大腸菌で発現させたヒトメグシンタンパク質及び、CHO細胞で発現させたヒトメグシンタンパク質と反応した。
同じくウェスタンブロット分析を行い、この抗体の種間交差反応性を検討した(図3)。大腸菌組み換えのラットメグシン及びマウスメグシンとは共に反応しなかった。
同じくウェスタンブロット分析を行い、この抗体の他のセルピンに対する交差反応性を検討した(図4)。α2-アンチプラスミン、α1-アンチトリプシン、アンチトロンビン、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1、大腸菌由来MBP融合プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター2とは反応しなかった。これらセルピンとの交差性は認められない。
同じくウェスタンブロット分析を行い、この抗体のセリンプロテアーゼ・セルピン複合体に対する反応性を実証した(図5)。メグシンリガンドの一つと考えられるプラスミンとの複合体を認識した。
同じくウェスタンブロット分析を行い、この抗体のメグシントランスジェニックラット腎臓組織との反応性を実証した(図6)。野生型ラットの腎臓組織破砕液とは反応しなかったが、メグシントランスジェニックラット(ホモ)の腎臓組織破砕液とは反応した。
〔実施例3〕エピトープマッピング(1)ウエスタンブロッティング法による検討
a. 大腸菌発現断片化メグシン
以下に示す大腸菌発現断片化メグシンを作製した。
全 長:1‐380
5‐10:322‐380
2‐10:101‐380
3‐10:169‐380
4‐10:267‐380
a. 大腸菌発現断片化メグシン
以下に示す大腸菌発現断片化メグシンを作製した。
全 長:1‐380
5‐10:322‐380
2‐10:101‐380
3‐10:169‐380
4‐10:267‐380
これらの大腸菌発現断片化メグシンを等量の2x loading buffer (第一化学製)と混和し、沸騰浴中で5分間加熱したものをサンプル溶液とした。該サンプル溶液をSDS電気泳動装置(第一化学製)およびトリスーグリシン緩衝液(第一化学製)を用いて15−25%ポリアクリルアミドゲル(第一化学製)で電気泳動した。泳動中、ブロット用に3MMろ紙(Whattman製)を緩衝液A(第一化学製)に2枚、緩衝液B(第一化学製)に1枚、緩衝液C(第一化学製)に3枚浸した。またポリビニリデンジフルオライド膜(PVDF膜、Millipore製)をメタノールに浸した後、精製水に浸しなじませた。タンパク質のPVDF膜への転写は、電気泳動後装置からゲルを取り出し、ブロッター(ファルマシア製)に陽極側から緩衝液Aに浸した2枚のろ紙、緩衝液Bに浸した1枚のろ紙、PVDF膜、ゲル、および、緩衝液Cに浸した3枚のろ紙を記載の順に置き、80mA/ゲルで1.5時間行った。転写後、PVDF膜の一部をCBB染色した。また、PVDF膜の一部をブロックエースと室温で1時間浸透する事でブロッキングした。
ブロッキング後、該膜を抗体希釈液で希釈したモノクローナル抗体2D12と4℃で一晩反応させた。その後、アルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG抗体を加え、室温で1時間反応後、NBT-BCIP溶液で発色させ、2D12抗体と反応するバンドを確認した。
[表1]
----------------------------------------
大腸菌発現断片化メグシン 2D12の反応
1-380 ○
101-380 ○
169-380 ×
267-380 ×
322-380 ×
----------------------------------------
以上の結果から2D12抗体と反応する部位は101-169にあることが確認できた。
----------------------------------------
大腸菌発現断片化メグシン 2D12の反応
1-380 ○
101-380 ○
169-380 ×
267-380 ×
322-380 ×
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以上の結果から2D12抗体と反応する部位は101-169にあることが確認できた。
b. トリプシン処理断片化メグシン
CHO細胞発現メグシン溶液にトリプシン溶液を加え(メグシン 0.5mg/ml、トリプシン 7800U/ml )反応させたものを用いてa.と同様にウエスタンブロッティングを行い、101-169の付近にエピトープを持つ抗メグシンモノクローナル抗体の4F3及び5C6H6との反応性を比較した結果、2D12抗体のエピトープは126-169と推定した。
CHO細胞発現メグシン溶液にトリプシン溶液を加え(メグシン 0.5mg/ml、トリプシン 7800U/ml )反応させたものを用いてa.と同様にウエスタンブロッティングを行い、101-169の付近にエピトープを持つ抗メグシンモノクローナル抗体の4F3及び5C6H6との反応性を比較した結果、2D12抗体のエピトープは126-169と推定した。
〔実施例4〕エピトープマッピング(2)コバリンクプレートを用いたELISA
断片化した大腸菌メグシン及びCHOメグシンのウエスタンブロッティングでのデータを元に10〜20残基のペプチドを常法により合成し、コバリンクプレートに固相し以下の方法でELISAを行った。
1)合成ペプチドをアミンカップリング法にてコバリンクプレートに固相する。
2)洗浄液で2回洗浄後、PBSで4倍希釈したブロックエースを加えブロッキングする。
3)プレートに希釈した抗体100μl/well加え、室温、2時間反応させる。
4)洗浄液で4回洗浄後POD標識抗マウスIgG抗体を100μl/well加え、室温、2時間反応させる。
5)洗浄液で4回洗浄後、TMBを100μl/well加え、室温、30分反応させ吸光度を測定する。
断片化した大腸菌メグシン及びCHOメグシンのウエスタンブロッティングでのデータを元に10〜20残基のペプチドを常法により合成し、コバリンクプレートに固相し以下の方法でELISAを行った。
1)合成ペプチドをアミンカップリング法にてコバリンクプレートに固相する。
2)洗浄液で2回洗浄後、PBSで4倍希釈したブロックエースを加えブロッキングする。
3)プレートに希釈した抗体100μl/well加え、室温、2時間反応させる。
4)洗浄液で4回洗浄後POD標識抗マウスIgG抗体を100μl/well加え、室温、2時間反応させる。
5)洗浄液で4回洗浄後、TMBを100μl/well加え、室温、30分反応させ吸光度を測定する。
[表2]
---------------------------
ペプチド配列 2D12の反応
126-145 ○
138-157 ×
150-169 ×
---------------------------
---------------------------
ペプチド配列 2D12の反応
126-145 ○
138-157 ×
150-169 ×
---------------------------
[表3]
---------------------------
ペプチド配列 2D12の反応
126-132 ×
126-133 ×
126-134 ○
126-135 ○
126-136 ○
126-137 ○
126-138 ○
126-139 ○
126-140 ○
126-141 ○
129-138 ○
130-138 ×
131-138 ×
---------------------------
以上の結果から2D12抗体の認識するエピトープは129-134であることが確認された。
---------------------------
ペプチド配列 2D12の反応
126-132 ×
126-133 ×
126-134 ○
126-135 ○
126-136 ○
126-137 ○
126-138 ○
126-139 ○
126-140 ○
126-141 ○
129-138 ○
130-138 ×
131-138 ×
---------------------------
以上の結果から2D12抗体の認識するエピトープは129-134であることが確認された。
〔実施例5〕酵素抗体法
腎組織をドライアイス/n-ヘキサンを用いて、OCT(マイルズ社)に包埋した。クライオミクロトーム(ライカ社)を用いて8μmに薄切した。MASコートスライドグラス(松浪社)に採取して、すぐに4%パラホルムアルデヒド/0.1Mリン酸 ナトリウム, pH7.4で30分間固定したのちに、0.1Mリジン/0.1Mリン酸 ナトリウム,pH7.4/0.15M塩化ナトリウムを用いて自由アルデヒド基を阻害した。detergentによるpermealizationを行うことなく、5%ヤギ血清含20mMリン酸 ナトリウム,pH7.4/0.15M塩化ナトリウム(PBS)で2時間ブロッキング後、マウス抗ヒトメグシン抗血清と4℃において加湿チャンバー内で一晩インキュベートした。ABC法(ベクター社)を用いて、ビオチン化ヤギ抗マウスIgGとアビジン・ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体で順に染色し、0.02%ニッケルアンモニウムと0.025%塩化コバルト(和光純薬)を含むDAB反応液:0.05%3,3'ジアミノベンジジン/0.01% H2O2/50mMトリス塩酸,pH7.2で発色した。エタノール・キシレン系列で脱水してエンテラン(メルク社)で封入した。
腎組織をドライアイス/n-ヘキサンを用いて、OCT(マイルズ社)に包埋した。クライオミクロトーム(ライカ社)を用いて8μmに薄切した。MASコートスライドグラス(松浪社)に採取して、すぐに4%パラホルムアルデヒド/0.1Mリン酸 ナトリウム, pH7.4で30分間固定したのちに、0.1Mリジン/0.1Mリン酸 ナトリウム,pH7.4/0.15M塩化ナトリウムを用いて自由アルデヒド基を阻害した。detergentによるpermealizationを行うことなく、5%ヤギ血清含20mMリン酸 ナトリウム,pH7.4/0.15M塩化ナトリウム(PBS)で2時間ブロッキング後、マウス抗ヒトメグシン抗血清と4℃において加湿チャンバー内で一晩インキュベートした。ABC法(ベクター社)を用いて、ビオチン化ヤギ抗マウスIgGとアビジン・ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体で順に染色し、0.02%ニッケルアンモニウムと0.025%塩化コバルト(和光純薬)を含むDAB反応液:0.05%3,3'ジアミノベンジジン/0.01% H2O2/50mMトリス塩酸,pH7.2で発色した。エタノール・キシレン系列で脱水してエンテラン(メルク社)で封入した。
正常腎糸球体のメサンギウム領域におけるメグシンの局在を確認した(図7)。また、2次抗体のみでは糸球体内の染色が認められないことから、2D12抗体による特異的な染色であることが示唆された(図8)。但し、尿細管は2次抗体による非特異的な染色を認めた。
[実施例6]免疫電顕法
腎組織をドライアイス/n-ヘキサンを用いて、OCT(マイルズ社)に包埋した。クライオミクロトーム(ライカ社)を用いて8μmに薄切した。MASコートスライドグラス(松浪社)に採取して、すぐに4%パラホルムアルデヒド/0.1Mリン酸 ナトリウム, pH7.4で30分間固定したのちに、0.1Mリジン/0.1Mリン酸 ナトリウム,pH7.4/0.15M塩化ナトリウムを用いて自由アルデヒド基を阻害した。detergentによるpermealizationを行うことなく、5%ヤギ血清含20mMリン酸 ナトリウム,pH7.4/0.15M塩化ナトリウム(PBS)で2時間ブロッキング後、マウス抗ヒトメグシン抗血清と4℃において加湿チャンバー内で一晩インキュベートした。ABC法(ベクター社)を用いて、ビオチン化ヤギ抗マウスIgGとアビジン・ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体で順に染色し、0.02%ニッケルアンモニウムと0.025%塩化コバルト(和光純薬)を含むDAB反応液:0.05%3,3'ジアミノベンジジン/0.01% H2O2/50mMトリス塩酸,pH7.2で発色した。2.5 %グルタルアルデヒド/0.1Mリン酸 ナトリウム, pH7.4と1 %オスミウム酸/0.1Mリン酸 ナトリウム,pH7.4(EM Science)で後固定して、0.1Mリン酸 ナトリウム, pH7.4/0.15M塩化ナトリウム で洗浄後に、エタノール/アセトン系列で脱水の後に、エポック812(応研商事)に熱重合で包埋した。1ミクロン切片を光顕観察して、位置決めをして、0.1ミクロンに 超ミクロトーム(LKB社)で超薄切して、銅グリッドメッシュに採取した。酢酸ウランとクエン酸鉛(メルク社)で電子染色を行った後に、加速電圧100kVでJEOL1010透過型電子顕微鏡で観察した。撮影はBioScanデジタルカメラ(ガタン社)によった。
腎組織をドライアイス/n-ヘキサンを用いて、OCT(マイルズ社)に包埋した。クライオミクロトーム(ライカ社)を用いて8μmに薄切した。MASコートスライドグラス(松浪社)に採取して、すぐに4%パラホルムアルデヒド/0.1Mリン酸 ナトリウム, pH7.4で30分間固定したのちに、0.1Mリジン/0.1Mリン酸 ナトリウム,pH7.4/0.15M塩化ナトリウムを用いて自由アルデヒド基を阻害した。detergentによるpermealizationを行うことなく、5%ヤギ血清含20mMリン酸 ナトリウム,pH7.4/0.15M塩化ナトリウム(PBS)で2時間ブロッキング後、マウス抗ヒトメグシン抗血清と4℃において加湿チャンバー内で一晩インキュベートした。ABC法(ベクター社)を用いて、ビオチン化ヤギ抗マウスIgGとアビジン・ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体で順に染色し、0.02%ニッケルアンモニウムと0.025%塩化コバルト(和光純薬)を含むDAB反応液:0.05%3,3'ジアミノベンジジン/0.01% H2O2/50mMトリス塩酸,pH7.2で発色した。2.5 %グルタルアルデヒド/0.1Mリン酸 ナトリウム, pH7.4と1 %オスミウム酸/0.1Mリン酸 ナトリウム,pH7.4(EM Science)で後固定して、0.1Mリン酸 ナトリウム, pH7.4/0.15M塩化ナトリウム で洗浄後に、エタノール/アセトン系列で脱水の後に、エポック812(応研商事)に熱重合で包埋した。1ミクロン切片を光顕観察して、位置決めをして、0.1ミクロンに 超ミクロトーム(LKB社)で超薄切して、銅グリッドメッシュに採取した。酢酸ウランとクエン酸鉛(メルク社)で電子染色を行った後に、加速電圧100kVでJEOL1010透過型電子顕微鏡で観察した。撮影はBioScanデジタルカメラ(ガタン社)によった。
免疫電顕法による正常腎組織の染色を結果を図10に示した。D12抗体は正常腎組織メサンギウム細胞(主に細胞質)に局在するメグシンを検出することが示された。さらに、メサンギウム細胞の細胞質、特に核から離れた部位が陽性であることが明らかにされた。
本発明によって、メグシンを認識する公知の抗体とは異なる認識エピトープを有するモノクローナル抗体が提供された。本発明のモノクローナル抗体と、これらの公知の抗体を組み合わせることによって、メグシンの発現や局在の変動をより詳細に解析することができる。その結果、各種の腎臓障害や病型の分類に貢献する。
Claims (5)
- FERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマ2D12。
- FERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマ2D12が産生するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片。
- FERM BP-10527として寄託されたハイブリドーマ2D12を培養し、培養物に含まれるイムノグロブリンを回収する工程を含む、モノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片の製造方法。
- 以下の工程を含む糸球体障害の検査方法。
(1)生体から採取された腎臓組織標本におけるメサンギウム細胞に対する請求項2に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片の結合レベルを測定する工程、および
(2)正常腎組織と比較して、抗メグシンタンパク質抗体の結合レベルが低下している場合に、糸球体障害が検出される工程 - 請求項2に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片を含む糸球体障害の診断剤。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
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