JPWO2007142276A1 - 分泌型ヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子の測定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
次に目加田らはプロテアーゼによる切断部位に変異を挿入して分泌型に変換されなくなったHB-EGF(HBuc)と膜貫通領域を除去して分泌型として合成されるHB-EGF(HB△tm)の2種類のHB-EGF変異体を発現する組換えマウスを作製し、膜型および分泌型のHB-EGFの生理的機能を解析した(非特許文献4)。その結果、HBuc発現マウスはHB-EGFKOマウスに近似した症状を示したことから、分泌型HB-EGFが活性型蛋白質として機能していると考えられた。一方、HB△tm発現マウスではケラチノサイトの過形成が起こり、また心臓にも異常が認められた。したがって、HB-EGFの膜型から分泌型への変換はHB-EGFの生理機能発現に必須であり、正常な機能発現の為には、この変換のプロセスが体内で厳密にコントロールされることが重要である。
vitroにおいて増殖速度亢進、コロニー形成能亢進、VEGF発現亢進、CyclinD1発現亢進等が認められ、invivoにおいてもヌードマウスにおける造腫瘍性が亢進や腫瘍血管新生の亢進が認められることを報告した。このような変化は膜型HB-EGFもしくは分泌型HB-EGF遺伝子を発現させた場合にのみ認められ、プロテアーゼ抵抗性膜型HB-EGF遺伝子を強制発現させた場合には認められなかった。したがって、分泌型HB-EGFは卵巣癌や膀胱癌において腫瘍増殖に関わる重要な因子である可能性が示唆された。臨床検体におけるHB-EGFの発現に関しては、目加田らが卵巣癌患者の癌組織と腹水において、EGFファミリーのうちHB-EGFのみが発現亢進しており、さらにHB-EGF高発現の患者は低発現の患者に比べて予後が悪いことを報告した(非特許文献11)。以上のように、特に、卵巣癌では、分泌型HB-EGFがオートクラインもしくはパラクラインの機序により癌の増殖に関与している。
目加田らはヘパリン結合担体と放射標識したジフテリアトキシンを用いて、卵巣癌患者腹水中のHB-EGF濃度を定量している(非特許文献9)。
これまでに分泌型HB-EGFに反応性を有する抗HB-EGF抗体としてポリクローナル抗体(R&D社製)および1種類のモノクローナル抗体(R&D社製)が知られている。
Science,Vol.251,936,1991 Cell,Vol.69,1051,1992 PNAS,Vol.100,3221,2003 J. of Cell Biology,Vol.163,469,2004 Breast Cancer Res. Treat.,Vol.67,81,2001 Oncol. Rep.,Vol.8,903,2001 Biochem. Biophys. Res. Commun.,Vol.202,1705,1994 Cancer Research,Vol.61,6227,2001 Cancer Research,Vol.64,5720,2004 Cancer Research,Vol.64,5283,2004 Clin Cancer Res,Vol.11,4783,2005 Nat. Med.,Vol.8,35,2002 J. Clin. Invest.,95,404,1995 Nat. Med.,8,41,2002
(1) 分泌型ヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(epidermal growth factor-like growth factor、以下、分泌型HB-EGFと称す)の異なるエピトープに結合する2種類のモノクローナル抗体または抗体断片を用いることを特徴とする、分泌型HB-EGFの測定方法。
(2) 分泌型HB-EGF含有被検液を、分泌型HB-EGFに結合するモノクローナル抗体(以下、抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aと称す)またはその抗体断片を結合させた固相へ加えて、当該固相中の当該モノクローナル抗体またはその抗体断片と分泌型HB-EGFとを結合させ、当該固相に標識した抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aとは異なる分泌型HB-EGFのエピトープに結合するモノクローナル抗体(以下、抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Bと称す)またはその抗体断片を加えて免疫反応を行い、固相中の標識を測定することを特徴とする該被検液中の分泌型HB-EGFの測定方法。
(3) 2種類のモノクローナル抗体が、以下の(a)から(e)から選ばれる2つのモノクローナル抗体である、上記(1)または(2)項に記載の方法。
(a)ハイブリドーマKM3566(FERM BP−10490)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体
(b)ハイブリドーマKM3579(FERM BP−10491)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体
(c)ハイブリドーマKM3567(FERM BP−10573)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体
(d)ハイブリドーマKM3580(FERM BP−10574)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体
(e)ハイブリドーマKM3841(FERM BP−10575)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体
(4) 分泌型HB-EGFの異なるエピトープに結合する2種類のモノクローナル抗体またはその抗体断片を含む、分泌型HB-EGFの測定用キット。
(5) ハイブリドーマKM3580(FERM BP−10574)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片
(6) ハイブリドーマKM3841(FERM BP−10575)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(7) 上記(5)または(6)記載のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ。
分泌型HB-EGFとは、膜型HB-EGFを構成しているシグナル配列、プロ領域、ヘパリン結合ドメイン、EGF様ドメイン、ジャクスタメンブランドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメインのうち、プロテアーゼにより遊離されたEGF様ドメインを含む細胞外ドメインを有するHB-EGFをいう。HB-EGFはジフテリアトキシンまたはEGF受容体ErbB1に結合する活性を有する。
(a)配列番号1、2または3で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号1、2または3で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、EGF受容体ErbB1に結合する活性を有する蛋白質;
(c)配列番号1、2または3で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ
酸配列からなり、且つ、EGF受容体ErbB1に結合する活性を有する蛋白質;
配列番号1、2または3で表されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置
換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、EGF受容体ErbB1に結合する蛋白質とは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research), 10, 6487 (1982)、プロシーディングス・ナショナル・アカデミック・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci.) USA, 79, 6409 (1982)、ジーン(Gene),34, 315 (1985)、などに記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号1、2または3で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより取得できる蛋白質をいう。欠失、置換、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、上記部位特的変異導入法などの周知の技術により、欠失、置換、もしくは付加できる程度の数であり、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
免疫学的測定方法としては、イムノアッセイ法、イムノブロッティング法、凝集反応、補体結合反応、溶血反応、沈降反応、金コロイド法、クロマトグラフィー法、免疫染色法など抗原抗体反応を利用した方法であればいかなるものも包含されるが、好ましくはイムノアッセイ法があげられる。
酵素免疫検出法で用いる酵素標識体としては、任意の公知(石川榮次ら編、酵素免疫測定法、医学書院)の酵素を用いることができる。例えば、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ等を用いることができる。
また、アルカリフォスファターゼの作用により色素を生成する試薬として、アルカリフォスファターゼの基質であるNADPHを含有する酵素サイクリング反応試薬AmpliQ(ダコ社製)が挙げられる。
蛍光免疫検出法で用いる蛍光標識体としては、任意の公知(川生明著、蛍光抗体法、ソフトサイエンス社製)の蛍光を用いることができる。例えば、FITC、RITC等を用いることができる。
サンドイッチ法は、抗原抗体反応で結合した被検液中の目的物質と第一の抗体(抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体A)に、第二の抗体(抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体B)を同時に、または別々に反応させ、被検液中の目的物質を別々の抗体で検出または定量する方法である。多くの場合、測定操作中に被検液中の非反応のサンプル成分や測定系成分を洗浄する工程を含む。例えば、分泌型HB-EGF含有被検液を、分泌型HB-EGFに結合するモノクローナル抗体(以下、抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aと称す)またはその抗体断片を結合させた固相へ加えて、当該固相中の当該モノクローナル抗体またはその抗体断片と分泌型HB-EGFとを結合させ、当該固相に標識した抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aとは異なる分泌型HB-EGFのエピトープに結合するモノクローナル抗体(以下、抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Bと称す)またはその抗体断片を加えて免疫反応を行い、固相中の標識を測定することを特徴とする該被検液中の分泌型HB-EGFの測定方法があげられる。
サンドイッチ法に用いる、洗浄液としては、リン酸やトリス(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)、HEPESやMOPSなどのグッドバッファー類などの緩衝剤などに、ツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、ツイーン80、トリトンTMX−705などの界面活性剤、NaCl、KClや硫酸アンモニウムなどの塩、BSAやカゼインなどの蛋白質、アジ化ナトリウムなどの防腐剤、塩酸グアニジン、尿素やソディウムドデシルサルフェートなどの変性剤、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸などの安定化剤の少なくとも1種類を含む液があげられる。具体的には、0.15mol/L塩化ナトリウム、0.05%ツィーン20およびpH7.4の10mmol/Lリン酸緩衝液からなるツイーンPBS、0.15mol/L塩化ナトリウム、0.05%ツィーン20およびpH7.4の10mmol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)からなるツイーンTBSなどがあげられる。
まず、適当な固定担体の表面に上述の抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aを吸着固定する。抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aの固定は、例えば、当該抗体を適当な緩衝液、例えばリン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液等に希釈した後、これを固定担体の表面に接触させ、そして4〜37℃にて30分間以上反応させることなどにより行うことができる。
ブロッキング緩衝液としては、例えば1〜10%のウシ血清アルブミン、10〜30%ブロックエース(雪印乳業社製)を含有する緩衝液、例えば、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液等があげられる。
次に、抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aを被検液と接触させる。被検液は必要に応じて、例えば0.01〜1%のウシ血清アルブミンなどの蛋白質を含有する緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液等で希釈してもよい。
抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aと被検液との接触は、4〜37℃にて30分間以上反応させることにより行うことができる。
接触させた後、必要に応じてTween20等の界面活性剤を含有する緩衝液、例えばリン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液等を用いて数回洗浄する。
次に、分泌型HB-EGFが固定された前記担体を、抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aとエピトープの異なる抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体(抗分泌型HB−EGFモノクローナル抗体B)を含有する溶液と接触させる。抗分泌型HB−EGFモノクローナル抗体Bは必要に応じて、前述の標識体で予め標識しておくことができる。
上記のようにして、結合された二次抗体の量を測定し、標準物質を用いて検量線を作成し、被検液中の分泌型HB-EGFの量を測定することができる。
本発明の分泌型HB-EGFを測定する方法を用いることにより、分泌型HB-EGFが亢進する疾患の患者を検査することもできる。
分泌型HB-EGFが亢進する疾患患者を検査する方法としては、例えば、以下のようにして行うことができる。
複数の健常者の生体から採取した生体試料について、本発明の分泌型HB-EGFの測定方法用いることにより、予め健常者の生体内の分泌型HB-EGFを定量する。
健常者と被検者との被検液中の分泌型HB-EGF量を比較する。被検者の分泌型HB-EGFの存在量が健常者と比較して増加している場合には、分泌型HB-EGF関連疾患であると判定することができる。
定期的に患者の生体試料を採取し、本発明の分泌型HB-EGFの測定方法により、生体試料中の分泌型HB-EGFを測定する。分泌型HB-EGF量が前回に比較して上昇している場合には、患者の病態が悪化していると判断することができる。
定期的に各種薬剤を投与された患者の生体試料を採取し、本発明の方法により分泌型HB-EGFを測定する。分泌型HB-EGF量が前回に比較して上昇している場合には、患者に投与されている薬剤が患者へ効果を有していないと判断することができる。
試薬としては抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aあるいはその抗体断片および標識された分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Bあるいはその抗体断片を含み、また、必要に応じ、被検液の希釈液、抗体固定化固相、反応緩衝液、洗浄液、標識体の検出用試薬、分泌型HB-EGFなどの標準物質なども含まれる。
分泌型HB-EGFに結合するモノクローナル抗体Aを固定化させる固相としては、各種高分子素材を用途に合うように整形した素材に、分泌型HB-EGFに結合するモノクローナル抗体を固相化したものが用いられる。形状としてはチューブ、ビーズ、プレート、ラテックスなどの微粒子、スティック等が、素材としてはポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ゼラチン、アガロース、セルロース、ポリエチレンテレフタレート等の高分子素材、ガラス、セラミックスや金属等があげられる。分泌型HB-EGFに結合するモノクローナル抗体Aの固相化の方法としては物理的方法と化学的方法またはこれらの併用等公知の方法により調製することができる。例えば、ポリスチレン製96ウェルの免疫測定用マイクロタープレートに分泌型HB-EGFに結合するモノクローナル抗体A等を疎水固相化したものがあげられる。
洗浄液としては、リン酸やトリス(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)、HEPESやMOPSなどのグッドバッファー類などの緩衝剤などに、ツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、ツイーン80、トリトンTMX−705などの界面活性剤、NaCl、KClや硫酸アンモニウムなどの塩、BSAやカゼインなどの蛋白質、アジ化ナトリウムなどの防腐剤、塩酸グアニジン、尿素やソディウムドデシルサルフェートなどの変性剤、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸などの安定化剤の少なくとも1種類を含む液があげられる。具体的には、0.15mol/L塩化ナトリウム、0.05%ツィーン20およびpH7.4の10mmol/Lリン酸緩衝液からなるツイーンPBS、0.15mol/L塩化ナトリウム、0.05%ツィーン20およびpH7.4の10mmol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)からなるツイーンTBSなどがあげられる。
また、本発明は、ハイブリドーマKM3580(FERM BP−10574)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体、ハイブリドーマKM3841(FERM BP−10575)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体およびそれらの抗体断片に関する。
以下に、本発明に用いるモノクローナル抗体およびその抗体断片の製造方法を詳細に説明する。
1.モノクローナル抗体の製造方法
(1)抗原の調製
抗原としては、分泌型HB-EGFまたはそれらの部分断片をコードするcDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等に導入することにより得られた、分泌型HB-EGFまたはそれらの部分断片などがあげられる。また、分泌型HB-EGFを多量に発現している各種ヒト腫瘍培養細胞またはヒト組織などから分泌型HB-EGFを精製することもできる。さらに、分泌型HB-EGFの部分配列を有する合成ペプチドを調製し、抗原に用いることもできる。
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞において自律複製可能又は染色体中への組込が可能で、分泌型HB-EGFまたはそれらの部分断片をコードするDNAを転写できる位置に適当なプロモーターを含有しているものが用いられる。
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)]、Gene, 17, 107 (1982)やMolecular & General Genetics, 168, 111 (1979)に記載の方法等を挙げることができる。
組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 84, 7413 (1987)]等を挙げることができる。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
分泌型HB-EGFまたはそれらの部分断片の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、及び宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞や、生産させる分泌型HB-EGFまたはそれらの部分断片の構造を変えることにより、適切な方法を選択することができる。
分泌型HB-EGFまたはそれらの部分断片は、例えば、以下のようにして単離・精製することができる。
分泌型HB-EGFまたはそれらの部分断片が細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後に細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA-75(三菱化学社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレ
ジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独又は組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
3〜20週令のマウス、ラットまたはハムスターに上記のように調製した抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。
免疫は、動物の皮下あるいは静脈内あるいは腹腔内に、適当なアジュバント〔例えば、フロインドの完全アジュバント(Complete Freund’s Adjuvant)や水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなど〕とともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)やKLH(Keyhole Limpet hemocyanin)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を使用する。たとえば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)(Current Topics in Microbiology and Immunology、18:1-7, 1978)、P3-NS1/1-Ag41(NS-1)(European J. Immunology, 6: 511−519,1976)、SP2/O −Ag14(SP−2)(Nature,276: 269−270,1978)、P3−X63−Ag8653(653) J.Immunology, 123:1548−1550,1979)、P3−X63−Ag8(X63)(Nature, 256:495−497,1975)などが用いられる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地〔RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mM)、2−メルカプトエタノール(5×10−5M)、ジェンタマイシン(10μg/ml)および牛胎児血清(FCS)を加えた培地(以下、正常培地という。)に、さらに8−アザグアニン(15μg/ml)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
前述した抗体産生細胞と骨髄腫細胞をMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離(1,200rpm、5分間)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1,000(PEG−1,000)2g、MEM2mlおよびジメチルスルホキシド 0.7mlの混液 0.2〜1ml/108 抗体産生細胞を加え、1〜2分間毎にMEM培地1〜2mlを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mlになるようにする。遠心分(900rpm、5分間)後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかに細胞をHAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10−4M)、チミジン(1.5×10−5M)およびアミノプテリン(4×10−7M)を加えた培地〕100ml中に懸濁する。この懸濁液を96穴培養用プレートに100μl/穴ずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
(5)モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理〔2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mlを腹腔内投与し、2週間飼育する〕した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(4)で得られた抗HB-EGFモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞2×106〜5×107細胞/匹を腹腔内注射する。10〜21日でハイブリドーマは腹水癌化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離(3,000rpm、5分間)して固形分を除去後、40〜50%硫酸アンモニウムで塩析した後、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムあるいはゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgGあるいは、IgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
(6)バインディングアッセイ
抗原としては、(1)に記載の方法により得られる、分泌型HB-EGFや部分ペプチドを用いる。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)やKLH(Keyhole Limpet hemocyanin)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製して、これを用いる。
抗体断片は、上記1に記載の抗体をもとに遺伝子工学的手法あるいは蛋白質化学的手法により、作製することができる。
遺伝子工学的手法としては、目的の抗体断片をコードする遺伝子を構築し、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、大腸菌などの適当な宿主を用いて発現、精製を行うなどの方法があげられる。
抗体断片として、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、diabody、dsFvの製造法について以下
に具体的に説明する。
(1) Fabの作製
Fabは、蛋白質化学的にはIgGを蛋白質分解酵素パパインで処理することにより、作製することができる。パパインの処理後は、元の抗体がプロテインA結合性を有するIgGサブクラスであれば、プロテインAカラムに通すことで、IgG分子やFc断片と分離し、均一なFabとして回収することができる(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, third edition, 1995)。プロテインA結合性を持たないIgGサブクラスの抗体の場合は、イオン交換クロマトグラフィーにより、Fabは低塩濃度で溶出される画分中に回収することができる(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, third edition, 1995)。
F(ab’)2は、蛋白質化学的にはIgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理することにより、作製することができる。ペプシンの処理後は、Fabと同様の精製操作により、均一なF(ab’)2として回収することができる(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, third edition, Academic Press, 1995)。また、下記3(3)に記載のFab’をo-PDMやビスマレイミドヘキサンなどのようなマレイミドで処理し、チオエーテル結合させる方法や、DTNB[5,5’-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)]で処理し、S-S結合させる方法によっても作製することができる(Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS,1996)。
Fab’は、上記3(2)に記載のF(ab’)2をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して
得ることができる。また、Fab’は遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記1より得られたハイブリドーマより抗体のV領域をコードするDNAを、Fab’発現用ベクターにクローニングし、Fab'発現ベクターを作製することができる。Fab'発現用ベクターとしては、Fab’用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pAK19(BIO/TECHNOLOGY, 10, 163-167, 1992)などがあげられる。Fab’発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにFab’を生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるFab’とすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収させることができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、プロテインGカラムなどを用いることにより、均一なFab’を精製することができる(Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS,1996)。
scFvは遺伝子工学的には、ファージまたは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記1より得られたハイブリドーマより抗体のV領域をコードするDNAを、scFv発現用ベクターにクローニングし、scFv発現ベクターを作製することができる。scFv発現用ベクターとしては、scFvのDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(Pharmacia社製)、pHFA(Human Antibodies &Hybridomas, 5, 48-56, 1994)などがあげられる。scFv発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、ヘルパーファージを感染させることで、ファージ表面にscFvがファージ表面蛋白質と融合した形で発現するファージを得ることができる。また、scFv発現ベクターを導入した大腸菌の封入体あるいはペリプラズムにscFvを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるscFvとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なscFvを精製することができる(Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS, 1996)。
diabodyは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記1より得られたハイブリドーマより抗体のVHとVLをコードするDNAを取得後、リンカーがコードするアミノ酸残基が8残基以下となるように連結したDNAを作製し、diabody発現用ベクターにクローニングし、diabody発現ベクターを作製することができる。diabody発現用ベクターとしては、diabodyのDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(Pharmacia社製)、pHFA(Human Antibodies Hybridomas, 5, 48, 1994)などがあげらる。diabody発現ベクターを導入した大腸菌の封入体あるいはペリプラズムにdiabodyを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdiabodyとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なscFvを精製することができる(Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS, 1996)。
(6) dsFvの作製
dsFvは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。まず、上記1より得られたハイブリドーマより抗体のVHおよびVLをコードするDNAの適当な位置に変異を導入し、コードするアミノ酸残基がシステインに置換されたDNAを作製する。作製した各DNAをdsFv発現用ベクターにクローニングし、VHおよびVLの発現ベクターを作製することができる。dsFv発現用ベクターとしては、dsFv用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pULI9(Protein Engineering, 7, 697-704, 1994)などがあげられる。VHおよびVLの発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにdsFvを生成蓄積させることができる。封入体あるいはペリプラズムからVHおよびVLを得、混合し、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdsFvとすることができる。リフォールディング後は、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過などにより、さらに精製することができる(Protein Engineering, 7, 697-704, 1994)。
(1)免疫原の調製
R&Dシステム社製リコンビナントヒト分泌型HB-EGF(カタログ番号 259-HE/CF)凍結乾燥品をダルベッコリン酸バッファー(Phosphate buffered saline:PBS)にて溶解したもの、または免疫原性を高める目的で以下の方法でKLH(カルビオケム社)とのコンジュゲートを作製し、免疫原とした。すなわち、HB-EGFを0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(PH7.0)に溶解したものと、KLHを0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(PH7.0)に溶解して30 mg/mLに調整したものを、重量比 4:1となるよう混合し、終濃度0.05%のグルタールアルデヒドを添加し、室温で5時間、攪拌反応させた。反応後、PBSで透析したものを免疫原として用いた。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
上記(1)で調製したHB-EGFまたはHB-EGF-KLH 25 μgを水酸化アルミニウムアジュバント〔Antibodies - A Laboratory ManuaL, CoLd Spring Harbor Laboratory, p99、1988〕2 mgおよび百日咳ワクチン(千葉県血清研究所製)1×109細胞とともにHB-EGF欠損マウス(大阪大学微生物病研究所 細胞機能分野研究室より供与、PNAS、VOL.100、NO.100、3221-3226、2003)に投与した。投与2週間後より、HB-EGFまたはHB-EGF-KLH 25 μgのみを1週間に1回、計4回投与した。該マウスの眼底静脈より部分採血し、その血清抗体価を以下に示す酵素免疫測定法で調べ、十分な抗体価を示したマウスから最終免疫3日後に脾臓を摘出した。脾臓をMEM(Minimum EssentiaL Medium)培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(1200 rpm、5分間)した。得られた沈殿画分にトリス−塩化アンモニウム緩衝液(PH7.6)を添加し、1〜2分間処理することにより赤血球を除去した。得られた沈殿画分(細胞画分)をMEM培地で3回洗浄し、細胞融合に用いた。
(3)酵素免疫測定法(バインディングELISA)
アッセイには実施例1(1)のHB-EGFを96穴のELISA用プレート(グライナー社)に0.5 μg/mL、50 μL/穴で分注し、4度で一晩放置して吸着させたものを用いた。該プレートを洗浄後、1 % 牛血清アルブミン(BSA)-PBSを50 μL/穴加え、室温で1時間放置し、残っている活性基をブロックした。放置後、1% BSA-PBSを捨て、該プレートに一次抗体として被免疫マウス抗血清、ハイブリドーマ培養上清を50 μL/穴分注し、2時間放置した。該プレートを0.05% ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート[(ICI社商標Tween 20相当品:和光純薬社製)]/PBS(以下Tween-PBSと表記)で洗浄後、2次抗体としてペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgGガンマ鎖(キルケガード アンド ペリー ラボラトリーズ社)を50 μL/穴加えて室温、1時間放置した。該プレートをTween-PBSで洗浄後、ABTS〔2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6-スルホン酸)アンモニウム〕基質液〔1mmoL/L ABTS/0.1moL/L クエン酸バッファー(PH4.2)、0.1 %H2O2〕を添加し、発色させOD415 nmの吸光度をプレートリーダー(Emax;MoLecuLar Devices社)を用いて測定した。
(4)マウス骨髄腫細胞の調製
8-アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞株P3X63Ag8U.1(P3-U1:ATCCより購入)を10%ウシ胎児血清添加RPMI1640(インビトロジェン社)で培養し、細胞融合時に2×107個以上の細胞を確保し、細胞融合に親株として供した。
(5)ハイブリドーマの作製
実施例1(2)で得られたマウス脾細胞と実施例1(4)で得られた骨髄腫細胞とを10:1
になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5分間)した。得られた沈澱画分の細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングリコール−1000(PEG-1000)1
g、MEM培地1 mL、およびジメチルスルホキシド0.35 mLの混液を108個のマウス脾細胞あたり0.5 mL加え、該懸濁液に1〜2分間毎にMEM培地1mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50 mLになるようにした。該懸濁液を遠心分離(900 rpm、5分間)し、得られた沈澱画分の細胞をゆるやかにほぐした後、該細胞を、メスピペットによる吸込み吸出しでゆるやかにHAT培地〔10 %ウシ胎児血清添加RPMI1640培地にHAT Media Supplement(インヒ゛トロシ゛ェン社製)を加えた培地〕100 mL中に懸濁した。該懸濁液を96穴培養用プレートに200μL/穴ずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で10〜14日間培養した。培養後、培養上清を実施例1(3)に記載した酵素免疫測定法で調べ、HB-EGFに反応する穴を選び、そこに含まれる細胞から限界希釈法によるクローニングを2回繰り返し、抗HB-EGFモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株KM3566、KM3567、KM3579、KM3580およびKM3841を確立した。
(6)モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理した8週令ヌード雌マウス(BALB/c)に実施例1(5)で得られたハイブ
リドーマ株を5〜20×106細胞/匹それぞれ腹腔内注射した。10〜21日後、ハイブリドーマが腹水癌化することにより腹水のたまったマウスから、腹水を採取(1〜8 mL/匹)した。該腹水を遠心分離(3000 rpm、5分間)し固形分を除去した。精製IgGモノクローナル抗体は、カプリル酸沈殿法〔Antibodies - A Laboratory ManuaL, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988〕により精製することにより取得した。モノクローナル抗体のサブクラスはサブクラスタイピングキットを用いたELISA法により決定した。その結果、モノローナル抗体KM3566、KM3567、KM3580のサブクラスはIgG1であり、KM3579、KM3841のサブクラスはIgG2bであった。
(1)バインディングELISAにおけるHB-EGFとの反応性
バインディングELISAは、実施例1(3)に示した方法に従って行なった。1次抗体にはモノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579、KM3580、KM3841、および陰性対照抗体KM511(抗GCSF誘導体モノクローナル抗体)の各精製抗体を10μg/mLから5倍希釈で段階的に希釈したものを用いた。
(2)ウエスタンブロットにおけるHB-EGFとの反応性
1レーンあたり、20 ngのHB-EGF(R&D社)をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動にて分画し、泳動後のゲルをPVDF膜に転写した。該膜を10 % BSA-PBSでブロッキング後、モノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579、KM3580、KM3841、および陰性対照抗体KM511の精製抗体をそれぞれ1μg/mL/1%BSA-PBSにて室温で2時間反応させた。該膜をTween-PBSでよく洗浄した後、希釈したペルオキシターゼ標識マウスイムノグロブリン(ザイメット社)を室温で1時間反応させた。該膜をTween-PBSでよく洗浄し、ECLTMウエスタンブロッテイングディテクションリージェンツ(アマシャムファルマシア社製)を用いてバンドを検出した。
(1)ビオチン標識抗体の調製
モノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579、KM3580、KM3841の精製抗体を、PBSを用いて1 mg/mL/PBSに調製し、該抗体溶液と0.5 mol/L炭酸バッファー(PH9.2)を容量比4:1で混合し、さらに炭酸バッファーと同量の1 mg/mL EZ-Link Sulfo-NHS-Biotin(ピアス社) /N,N-ジメチルホルムアミドを添加した。室温でゆっくりと1.5時間攪拌反応させた後、PBS透析により遊離のビオチンを除いた後、ビオチン標識抗体として用いた。
(2)サンドイッチELISAによる分泌型HB-EGFの定量
96穴ELISAプレートにモノクローナル抗体を5μg/mL/PBS、50μL/穴で分注し、4度で一晩放置して吸着させた。該プレートを洗浄後、1 %BSA-PBSを50μL/穴加え、室温で1時間放置し、残っている活性基をブロックした。放置後、1%BSA-PBSを捨て、該プレートに1μg/mLから5倍希釈で段階的に希釈した分泌型HB-EGFを50μL/穴分注し、2時間放置した。該プレートをTween-PBSで洗浄後、2次抗体として(1)で調製したビオチン標識抗体(2μg/mL)を50μL/穴加えて室温、1時間放置した。該プレートをTween-PBSで洗浄後、希釈したペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(ベクター社)を50μL/穴加えて室温、1時間放置した。該プレートをTween-PBSで洗浄後、ABTS基質液を添加して発色させ、OD415 nmの吸光度を、プレートリーダー(Emax)を用いて測定した。
配列表フリーテキスト
配列番号1-人工配列の説明:分泌型HB−EGFアミノ酸配列
配列番号2-人工配列の説明:EGF様ドメインアミノ酸配列
配列番号3-人工配列の説明:EGF様ドメインアミノ酸配列
Claims (7)
- 分泌型ヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(epidermal growth factor-like growth factor、以下、分泌型HB-EGFと称す)の異なるエピトープに結合する2種類のモノクローナル抗体または抗体断片を用いることを特徴とする、分泌型HB-EGFの測定方法。
- 分泌型HB-EGF含有被検液を、分泌型HB-EGFに結合するモノクローナル抗体(以下、抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aと称す)またはその抗体断片を結合させた固相へ加えて、当該固相中の当該モノクローナル抗体またはその抗体断片と分泌型HB-EGFとを結合させ、当該固相に標識した抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Aとは異なる分泌型HB-EGFのエピトープに結合するモノクローナル抗体(以下、抗分泌型HB-EGFモノクローナル抗体Bと称す)またはその抗体断片を加えて免疫反応を行い、固相中の標識を測定することを特徴とする該被検液中の分泌型HB-EGFの測定方法。
- 2種類のモノクローナル抗体が、以下の(a)から(e)から選ばれる2つのモノクローナル抗体である、請求項1または2項に記載の方法。
(a)ハイブリドーマKM3566(FERM BP−10490)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体
(b)ハイブリドーマKM3579(FERM BP−10491)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体
(c)ハイブリドーマKM3567(FERM BP−10573)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体
(d)ハイブリドーマKM3580(FERM BP−10574)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体
(e)ハイブリドーマKM3841(FERM BP−10575)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体 - 分泌型HB-EGFの異なるエピトープに結合する2種類のモノクローナル抗体またはその抗体断片を含む、分泌型HB-EGFの測定用キット。
- ハイブリドーマKM3580(FERM BP−10574)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片。
- ハイブリドーマKM3841(FERM BP−10575)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片。
- 請求項5または6記載のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ。
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JPN6013008438; 森本千恵ほか: 日本臨床 63増刊号8, 2005, 110-112 * |
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