JPH05336990A - 抗TGF−βマスキングプロテインモノクローナル抗体 - Google Patents

抗TGF−βマスキングプロテインモノクローナル抗体

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JPH05336990A
JPH05336990A JP5026890A JP2689093A JPH05336990A JP H05336990 A JPH05336990 A JP H05336990A JP 5026890 A JP5026890 A JP 5026890A JP 2689093 A JP2689093 A JP 2689093A JP H05336990 A JPH05336990 A JP H05336990A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 トランスフォーミング・グロース・ファクタ
ーβ(TGF−β)マスキングプロテインに特異的に反
応する抗TGF−βマスキングプロテインモノクローナ
ル抗体。 【効果】 本発明の抗体は、潜在型TGF−βの活性化
を抑制する活性および動脈硬化病巣を免疫染色する性質
を有するため、潜在型TGF−βに起因する疾患の診断
薬および治療薬等として有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トランスフォーミング
・グロース・ファクターβ(transforming growth fact
or−β;以下、TGF−βと略記する)マスキングプロ
テインに特異的に反応する抗TGF−βマスキングプロ
テインモノクローナル抗体を提供する。本発明の抗体
は、TGF−βに起因する疾患、例えば動脈硬化症、
癌、炎症、線維症の診断薬、治療薬および潜在型TGF
−βが活性化されることにより引き起こされる培養細胞
の増殖、機能発現、分化の制御剤等として有用である。
また、本発明の抗体を用いて、組織切片内の潜在型TG
F−β、潜在型TGF−βマスキングプロテインまたは
潜在型TGF−β・バインディング・プロテインの局在
を免疫化学的に解析することが可能である。
【0002】
【従来の技術】TGF−βは、最初、ある種の細胞の癌
化促進因子として発見された〔プロシーディングズ・オ
ブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ
・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci,USA) 80, 62
64-6268 (1983)〕が、現在では、多くの正常細胞の増殖
や分化を制御する蛋白質であることが判明している〔ジ
ャーナル・オブ・セル・バイオロジー (J. Cell Biol.)
105, 1039-1045 (1987) 〕。最近になって、糸球体腎
炎〔ネイチャー (Nature) 346, 371-374 (1990)〕や肺
線維症〔ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メデ
ィスン (J. Exp.Med.) 170, 727-737 (1989) 〕、肝線
維症〔ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲ
ーション (J. Clin. Invest.) 85, 1833-1843 (1990)〕
など、TGF−βに起因すると思われる疾患も明らかに
なりつつある。
【0003】TGF−βは、生体内では特異的結合蛋白
質であるマスキングプロテイン(masking protein ;以
下、MPと略記する)と非共有結合的に会合した不活性
な潜在型TGF−βとして産生される。MPは、TGF
−β前駆体のプロペプチド部分であるラテンシー・アソ
シエーティッド・ペプチド(latency associated pepit
de;以下ではLAPと省略)および潜在型TGF−β・
バインディング・プロテイン(latent TGF−β binding
protein;以下、LTBPと略記する)がジスルフィド
結合で架橋された構造を有する〔ジャーナル・オブ・バ
イオケミストリー (J. Biochem.) 106, 304-310 (198
9) 〕。なお、LTBPの結合していないLAPのみが
TGF−βと非共有結合的に会合した低分子量潜在型T
GF−βの存在も知られている〔モレキュラー・アンド
・セルラー・バイオロジー (Mol.Cell. Biol.) 7, 34
18-3427 (1987) 〕。潜在型TGF−βは、試験管内で
は酸処理、尿素処理、加熱処理などの化学的処理によ
り、TGF−βと結合蛋白質が解離し、活性型TGF−
βに変換されることが知られている〔バイオケミカル・
アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーシ
ョンズ (Biochem. Biophys. Res. Commun.) 133, 1026-
1034 (1985) 〕。生体内の活性化機構は必ずしも明らか
ではないが、血管細胞等のある種の培養細胞は潜在型T
GF−βを活性化することが知られている〔ジャーナル
・オブ・セル・バイオロジー (J. Cell Biol.) 109, 3
09-315 (1989) 〕。
【0004】糸球体腎炎においては、TGF−β中和抗
体が炎症を軽減することが報告されている〔ネイチャー
(Nature) 346, 371-374 (1990) 〕。動脈硬化症は、持
続的な血管壁の炎症反応に伴う平滑筋細胞の異常増殖及
び脂質や細胞外基質の沈着を示す病態である。病巣部
は、これらの形態的な変化として捉えられており、特異
的な診断薬の報告はない。動脈硬化症には複数のサイト
カインが関与すると考えられており、インターロイキン
−1、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子などが動脈硬
化の発症、進展を引き起こしていることが知られている
〔最新医学、46, 485-490 (1991)〕。動脈硬化症におけ
るTGF−βの関与については、ラットの動脈硬化モデ
ルにおいて、病巣部でTGF−βの遺伝子発現が亢進し
ていることが知られている〔ジャーナル・オブ・クリニ
カル・インベスティゲーション (J. Clin Invest.)88,
904-910 (1991)〕。また、TGF−β欠損マウスを用い
た解析から、TGF−βは生体内では過剰の炎症反応の
抑制を担っていることが明らかにされた〔ネイチャー
(Nature) 359, 693-699 (1992) 〕が、動脈硬化部位で
のTGF−βの生理的意義は明らかではない。
【0005】動脈硬化病巣の免疫組織染色が可能な抗体
としては、細胞外基質であるビトロネクチンに対する抗
体が報告されている〔ザ・ジャーナル・オブ・バイオロ
ジカル・ケミストリー (J. Biol. Chem.) 265, 21232-2
1236 (1990) 〕。潜在型TGF−βに対する抗体として
は、LAPおよびLTBPに対するポリクローナル抗体
が取得されており、免疫染色に利用可能であることが報
告されている〔ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケ
ミストリー (J. Biol. Chem.) 263, 7646-7654(1988)
、エンボ・ジャーナル (EMBO. J.) 18, 1091-1101 (19
91) 〕。
【0006】しかしながら、これまでに潜在型TGF−
βまたはMPもしくはそのサブユニットを認識するモノ
クローナル抗体は知られていない。さらに、潜在型TG
F−βの活性化を抑制する抗体も知られていない。ま
た、動脈硬化病巣の免疫染色が可能な潜在型TGF−β
に対するモノクローナル抗体は知られておらず、サイト
カインもしくはその関連蛋白質の抗体による動脈硬化病
巣の診断および治療も知られていない。
【0007】潜在型TGF−βを特異的に認識するモノ
クローナル抗体が得られれば、動脈硬化症等のTGF−
βが関与する種々の疾患の診断および治療に用いること
ができる。さらに、潜在型TGF−βの活性化を抑制す
る抗体が得られれば、TGF−β中和抗体と同様にTG
F−βに起因する疾患に対する治療薬として臨床的に応
用可能である。また、TGF−β中和抗体は産生されて
しまったTGF−βをターゲットにしているが、潜在型
TGF−βの活性化を抑制する抗体は、まだ活性化され
ていない潜在型TGF−βをターゲットとすることか
ら、病因のより上流域で作用し得る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、TG
F−βに起因する疾患の診断及び治療薬として有用な潜
在型TGF−βマスキングプロテインモノクローナル抗
体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、TGF−βマ
スキングプロテインに特異的に反応する抗TGF−βマ
スキングプロテインモノクローナル抗体に関する。本発
明の抗TGF−βマスキングプロテインモノクローナル
抗体を製造するには、まずMPまたはそのサブユニット
とキャリヤー蛋白質との複合体を免疫した動物の抗体産
生細胞とマウスの骨髄腫細胞とを融合させてハイブリド
ーマを作製し、潜在型TGF−βまたはMPもしくはそ
のサブユニットと特異的に反応するモノクローナル抗体
を産生するハイブリドーマを選択する。次いで、該ハイ
ブリドーマを培地で培養するか、動物に投与して該動物
を腹水癌化し、該培養液または腹水よりモノクローナル
抗体を採取する。得られるモノクローナル抗体の中から
潜在型TGF−βまたはMPもしくはそのサブユニット
と反応し、キャリヤー蛋白質とは反応しないモノクロー
ナル抗体を選択する。さらに、該モノクローナル抗体か
ら、潜在型TGF−β活性化を試験管内で再現する培養
細胞を用いて、潜在型TGF−βの活性化を抑制する作
用を有するモノクローナル抗体または、免疫組織染色が
可能なモノクローナル抗体を選択する。
【0010】得られたモノクローナル抗体またはその活
性フラグメントであるF(ab')2 、Fab'もしくはFab は、
潜在型TGF−βの活性化を抑制する薬剤または免疫組
織染色を行うための薬剤として利用することができる。
本発明のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ
の具体例としては、ハイブリドーマKM-704およびKM-699
があげられる。ハイブリドーマKM-704は、平成4年3月
26日付けで、工業技術院微生物工業技術研究所にFERM B
P-3809として寄託されており、ハイブリドーマKM-699
は、平成5年2月9日付けで工業技術院生命工学工業技
術研究所にFERM BP-4181として寄託されている。ハイブ
リドーマKM-704およびハイブリドーマKM-699の生産する
モノクローナル抗体をそれぞれKM-704、KM-699と称す
る。
【0011】以下に、本発明のモノクローナル抗体の製
造法を詳細に説明する。 (1) 抗原の調製 潜在型TGF−βは、公知の方法〔ジャーナル・オブ・
バイオロジカル・ケミストリー (J. Biol. Chem.) 263,
6407-6415 (1988) 〕によりヒト血小板から精製する。
TGF−βは、Bリンパ球による抗体産生を抑制するこ
とが知られている〔ジャーナル・オブ・イムノロジィ
(J. Immunol.) 137, 3855-3860 (1986) 〕ので、精製し
た潜在型TGF−βは、そのまま抗原として動物に投与
すると生体内で活性化され、抗体産生が抑制されると考
えられる。したがって、精製した潜在型TGF−βは、
酸、尿素または加熱処理などにより、TGF−βを解離
させ、結合蛋白質であるMPまたはそのサブユニットの
みを抗原として用いる必要がある。
【0012】MPは例えば以下のゲル濾過法によって調
製できる。潜在型TGF−βを8M尿素およびリン酸緩衝
液(pH7.4 )を含む生理的食塩水(phosphate buffered
saline ;以下、PBS と略記する)に透析してMPとT
GF−βを解離させた後、6M尿素を含むPBS で平衡化し
たゲル濾過カラムに通塔し、MP画分を回収する。
【0013】(2) 動物の免疫と抗体産生細胞の調製 (1) で調製したMPまたはそのサブユニットは、抗原性
を高めるためヘモシアニン・キーホール・リンペット
(hemocyanin keyhole limpet ;以下、KLHと略記す
る)等のキャリアー蛋白質との複合体を作成する。抗原
とキャリアー蛋白質の複合体は、グルタールアルデヒド
やm−マレイミド−ベンゾイル−N−ハイドロキシサク
シル(m-maleimide-benzoyl-N-hydroxysuccil) 等の適
当な架橋剤により、抗原とキャリアー蛋白質とを架橋す
ることで作製できる。
【0014】3〜20週令のマウスに上記複合体を免疫
して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細
胞を調製する。免疫の方法は、動物の皮下あるいは静脈
内あるいは腹腔内に、適当なアジュバント〔例えば、フ
ロインドの完全アジュバント(Complete Freund's Adju
vant)、または水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワク
チンなど〕と共に上記複合体を投与することにより行
う。投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに5〜10
回行う。各回の投与後3〜7日目に眼底静脈叢より採血
し、その血清が潜在型TGF−βまたはMPもしくはそ
のサブユニットと反応することを以下に示す酵素標識免
疫測定法(enzyme-linked immunosorbentassay ;以
下、ELISA と略記する)〔酵素免疫測定法:医学書院刊
1976 年〕などで調べる。免疫に用いた抗原に対し、そ
の血清が充分な抗体価を示した免疫動物の脾、リンパ節
もしくは末梢血中の抗体産生細胞を採取する。
【0015】ELISA :96ウエルの酵素免疫測定用プレー
ト〔グライナー(Greiner )社製〕に、MPまたはその
サブユニットをPBS で10μg/mlに希釈した抗原溶液を50
μl /ウエルずつ分注し、4℃で一晩放置して抗原をプ
レートにコートする。抗原溶液を除去後、1% BSAを含
むPBS 溶液(以下、BSA-PBS と略記する)を100 μl /
ウエル分注し、室温で1時間放置してプレート上に残っ
た蛋白質との結合残基をブロック(ブロッキング)す
る。その後、BSA-PBS を除去し、ウエルを0.05%ツイー
ン(Tween )-20 を含むPBS (以下、PBS-Tween と略記
する)でよく洗浄した後、一次抗体としてBSA-PBS で10
〜1000倍に希釈した検体(マウスまたはラット血清、ハ
イブリドーマ培養上清、精製モノクローナル抗体)を10
0 μl /ウエルで分注し、4℃で一晩放置する。次い
で、一次抗体を除去してPBS-Tween でよく洗浄した後、
二次抗体としてペルオキシダーゼ標識した抗ラットまた
は抗マウスイムノグロブリン抗体〔ダコ(DAKO)社製〕
を50μl /ウエル分注し、室温で2時間放置する。
【0016】以上の操作を行ったプレートは、二次抗体
を除去してPBS-Tween でよく洗浄した後、ABTS基質
液〔2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリ
ン−6−スルホン酸)二アンモニウム550mg を0.1Mクエ
ン酸緩衝液(pH4.2 )1リットルに溶かした溶液に、使
用直前に過酸化水素1 μl/mlを加えた溶液〕を用いて発
色させ、415nm における吸光度を測定する。
【0017】(3) 骨髄腫細胞の調製 骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を使
用する。例えば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c
由来)骨髄腫細胞株P3-X63Ag8-U1 (P3-U1)〔カレント・
トピックス・イン・ミクロバイオロジィ・アンド・イム
ノロジィ (Current Topics in Microbiology and Immun
ology )81, 1-7 (1987)〕、P3/NS1/1-Ag4-1 (NS-1)
〔ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イムノロジィ(Eur
opean J. Immunology) 6, 511-519(1976)〕、SP2/0-Ag
14(SP-2)〔ネイチャー (Nature) 276, 269-270 (1978)
〕、P3-X63-Ag8 653 (653)〔ジャーナル・オブ・イム
ノロジィ (J. Immunol.) 123, 1548-1550 (1979) 〕、
P3-X63-Ag8 (X63)〔ネイチャー(Nature) 256, 495-497
(1975) 〕などが用いられる。これらの細胞株は、8−
アザグアニンを含む培地〔RPMI-1640 培地にグルタミン
(1.5mM) 、2−メルカプトエタノール(5×10-5M)、ジ
ェンタマイシン(10 μl/ml) および牛胎児血清(FC
S)(CSL社製;10%)を加えた正常培地に、さらに8
−アザグアニン(15μg/ml) を加えた培地〕で培養して
8−アザグアニン耐性株とした後、細胞融合時に2×10
7 個以上の細胞を確保し、細胞融合の親株として用い
る。
【0018】(4) ハイブリドーマの調製 (2) で調製した抗体産生細胞と(3) で調製した骨髄腫細
胞とを融合してハイブリドーマを調製する。細胞の融合
は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol ;
以下、PEG と略記する)、センダイウイルスなどの融合
促進剤を用いる方法ならびに凍結融解、電気パルスなど
を用いる物理的な方法等を用いることができる。
【0019】例えば、PEG を用いる場合には、抗体産生
細胞と骨髄腫細胞の細胞数が、5〜10 対1になるよう
混合し、平均分子量1,000 〜6,000 のPEG を含む培地中
で攪拌することによりハイブリドーマを調製する。ハイ
ブリドーマと他の未融合の細胞の選別は、選択培地を用
いて行うことができる。選択培地としては、例えば、HA
T 培地〔正常培地にヒポキサンチン(10 -4M)、チミジン
(1.5×10-5M)およびアミノプテリン(4×10-7M)を加えた
培地〕が使用できる。未融合の抗体産生細胞および骨髄
腫細胞は、HAT 培地中では10日間以内に死滅し、ハイブ
リドーマのみが生育するので、HAT 培地中で2週間以上
生育する細胞をハイブリドーマとして回収する。
【0020】調製されたハイブリドーマは、MPまたは
そのサブユニットに対する抗体価を測定する。抗体価の
測定は、例えば、適当に希釈したハイブリドーマ懸濁液
を96ウエル培養用プレートに分注し、7〜14日間培養し
た後、培養上清の一部を採り、ELISA などによりMPま
たはそのサブユニットとの結合反応を示すウエルの細胞
を選択する。選択されたウエルの細胞は、再び希釈して
96ウエル培養用プレートに分注し、限界希釈法によるク
ローニングを繰り返し、安定して強い抗体価の認められ
たものを抗TGF−βマスキングプロテインモノクロー
ナル抗体産生ハイブリドーマとして選択する。
【0021】(5) モノクローナル抗体の調製 (4) で得られたハイブリドーマからモノクローナル抗体
を取得する方法としては、ハイブリドーマを培養してそ
の培養上清から回収する方法、ハイブリドーマを動物の
腹腔内に投与して得られる腹水から回収する方法などが
あげられる。ハイブリドーマを動物の腹腔内に投与して
腹水を得る方法を以下に示す。
【0022】ハイブリドーマと主要組織適合性が一致す
る動物やヌードマウスにプリスタン〔2,6,10,14-テトラ
メチルペンタデカン(Pristane)〕などの鉱物油を投与
した後、(4) で得られた抗TGF−βマスキングプロテ
インモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞を、投
与する動物がヌードマウスの場合には一匹あたり2×10
6 〜5×107 個を腹腔内に投与する。投与後、10〜21日
でハイブリドーマは腹水癌化する。
【0023】得られたハイブリドーマ培養上清または腹
水から、イオン交換樹脂、ゲル濾過樹脂等の通常用いら
れるクロマトグラフィー等により、モノクローナル抗体
を精製するが、モノクローナル抗体がIgG クラスの場合
は、IgG に親和性を持つプロテイン−Aやプロテイン−
G等を固定化した樹脂等を用いるアフィニティークロマ
トグラフィーにより精製することが好ましい。精製され
たIgG の量は、色素結合法または280nm における吸光度
より算出する。
【0024】得られたモノクローナル抗体のサブクラス
の決定は、免疫した動物のサブクラスに特異的な抗体を
用いてELISA などにより行う。
【0025】(6) 抗TGF−βマスキングプロテインモ
ノクローナル抗体の抗原特異性 (5) で得られた抗TGF−βマスキングプロテインモノ
クローナル抗体の抗原特異性は、潜在型TGF−βまた
はMPもしくはそのサブユニットに対する反応性をELIS
A やイムノ・ブロット法を用いて確認することができ
る。
【0026】例えば、ウエスタン・ブロッテイング(we
stern blotting)法〔プロシーディングズ・オブ・ナシ
ョナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ユーエ
スエー(Proc. Natl. Acad. Sci,USA) 76, 4350-4354
(1979)〕を利用したモノクローナル抗体の抗原特異性の
確認は、以下の通りに行うことができる。ドデシル硫酸
ナトリウム(sodium dodecyl sulfate;以下、SDS と略
記する)等の変性剤処理により潜在型TGF−βをMP
とTGF−βに解離させた検体、または2−メルカプト
エタノールなどの還元剤処理によりMPをLTBPとL
APに解裂させた検体をレムリー(Laemmli )法〔ネイ
チャー (Nature) 227, 680-685 (1970) 〕に従って、SD
S を含むポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(polyacry
lamide gel electrophoresis;以下、SDS-PAGEと略記す
る)に供する。また、SDS および2−メルカプトエタノ
ールで処理しない未変性の潜在型TGF−βを、SDS を
含まないポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(以下、Na
tive-PAGE と略記する)に供する。
【0027】Native-PAGE もしくはSDS-PAGEにより、ゲ
ル内に分離された潜在型TGF−βまたはMPもしくは
そのサブユニットは、上記のウエスタン・ブロッテイン
グ法に従って、ポリビニリデン・ジフルオライド(poly
vinylidene difluolide ;以下、PVDFと略記する)等の
蛋白質を結合する膜上に転写する。次いで、潜在型TG
F−βサブユニットを転写した膜の一部をクマシー・ブ
リリアント・ブルー(coomassie brilliant blue;以
下、CBB と略記する)-R250 等の蛋白質染色剤で染色す
る。未染色の転写膜は、(5) で選択された抗TGF−β
マスキングプロテインモノクローナル抗体(一次抗体)
と反応させた後、一次抗体に特異的であり、酵素などで
標識した二次抗体と反応させる。反応後、基質を膜上の
標識した二次抗体とを反応させることにより転写膜を発
色させる。
【0028】上述した操作において、未変性の潜在型T
GF−βをNative-PAGE に供した場合は、膜上には潜在
型TGF−βが転写され、また、変性剤処理してSDS-PA
GEに供した場合には、潜在型TGF−βはMPおよびT
GF−βに解離して転写され、また、変性剤および還元
剤処理してSDS-PAGEに供した場合には、MPはLTBP
およびLAPに解裂して転写される。したがって、免疫
染色された膜上のバンドを、蛋白質染色を行ったバンド
と比較することにより、抗TGF−βマスキングプロテ
インモノクローナル抗体が結合する蛋白質またはそのサ
ブユニットを決定することができる。
【0029】(7) 潜在型TGF−β活性化を抑制するモ
ノクローナル抗体の選択 潜在型TGF−βの活性化を抑制するモノクローナル抗
体は、公知の潜在型TGF−β活性化細胞〔蛋白質核酸
酵素、36, 1350-1356 (1991)〕を用いたバイオ・アッセ
イ等によって選択することができる。
【0030】例えば、血管内皮細胞と平滑筋細胞の共存
培養系〔ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー (J. C
ell Biol.) 109, 309-315 (1989) 〕を用いた選択法は
以下の通りである。培養ディッシュ中でコンフルエント
(confluent )にさせたウシ大動脈内皮細胞(bovine a
ortic endothelial cell;以下、BAE と略記する)をカ
ミソリの刃で傷つけ、一部のBAE が剥離した疑似創傷状
態を作る。この疑似創傷状態にしたBAE に、ウシ大動脈
平滑筋細胞(bovain aortic smooth muscle cell;以
下、SMC と略記する)を添加して共存培養する。この共
存培養系に(5) で精製した抗TGF−βマスキングプロ
テインモノクローナル抗体を添加する。
【0031】以上の共存培養系において、潜在型TGF
−βの活性化が抑制されたか否かを、以下に述べるBAE
の遊走細胞数の変化から判定する。疑似創傷状態のBAE
は、単独培養では細胞が剥離したディッシュ上へ遊走す
るが、SMC との共存培養によりBAE およびSMC が産生す
る潜在型TGF−βが活性化されてBAE の遊走が抑制さ
れる。したがって、添加した抗TGF−βマスキングプ
ロテインモノクローナル抗体が潜在型TGF−βの活性
化を抑制する活性を有すれば、BAE の遊走が回復する。
【0032】遊走したBAE 数は、以下のようにして測定
する。共存培養20時間後に培地を除去し、細胞をメタノ
ールで固定する。固定化された細胞はギムザ法〔ティシ
ュ・カルチャー・メッソズ・アンド・アプリケーション
ズ (TISSUE CULTURE Methods and Applications),アカ
デミックプレス (Academic Press) 刊 (1973) 〕により
染色し、剥離端より遊走したBAE 数を光学顕微鏡を用い
て測定する。なお、BAE は細胞全体および核の形態から
SMC とは区別できる。
【0033】以上により、モノクローナル抗体無添加の
場合または潜在型TGF−βの活性化を抑制する作用を
有しない対照のモノクローナル抗体を添加した場合より
も、遊走したBAE 数が増加しているモノクローナル抗体
を潜在型TGF−βの活性化を抑制する作用を有する抗
体として選択できる。
【0034】(8) 免疫組織染色が可能なモノクローナル
抗体の選択 動脈硬化病巣を特異的に認識するモノクローナル抗体
は、公知の免疫組織染色法〔Antibodies - A Laborator
y Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988 〕
〔アクタ・ヒストケミストリー・サイトケミストリー(A
cta Histochem. Cytochem.) 23, 647-661 (1990)〕に従
って、(5) で得られたモノクローナル抗体を組織切片に
対する第一抗体として用い、組織切片を陽性に染色する
ものを選択することにより得ることができる。
【0035】以下に本発明の実施例を示す。
【0036】
【実施例】
(1) 抗原の調製 抗原であるMPは、精製した潜在型TGF−βからTG
F−βを解離させることにより調製した。潜在型TGF
−βは、公知の方法[ザ・ジャーナル・オブ・バイオロ
ジカル・ケミストリー (J. Biol. Chem.) 263, 6407-64
15 (1988) ]に従ってヒト血小板から精製した。潜在型
TGF−βからのMPの調製は、以下に示すゲル濾過法
によって行った。
【0037】潜在型TGF−βを8M尿素を含むPBS に透
析し、6M尿素を含むPBS に平衡化したSuperose 6カラム
(ファルマシア社製)に通塔し、MP画分を回収した。
回収されたMPは、PBS に透析して次の操作に供した。
【0038】(2) 抗体産生細胞の調製 抗原であるMPとキャリヤー蛋白であるKLHとを蛋白
量比1:5 の割合で混合し、0.1M酢酸アンモニウム存在下
で、0.02M グルタールアルデヒドを用いた公知の方法
〔プロシーディング・オブ・ソサエティー・オブ・エク
スペリメンタル・バイオロジカル・メディシン (Proc.
Soc. Exp. Biol. Med.) 148, 784-789 (1975) 〕によ
り、MP−KLH複合体を作り、PBS で透析して免疫原
とした。ラットおよびマウス一匹当たり、それぞれ100
μg のMP−KLH複合体をアルミニウムゲル2mgおよ
び百日咳ワクチン(千葉県血清研究所製)1 ×109 個細
胞と共に投与し、2週間後から100 μg のMP−KLH
複合体を1週間に1回、計6回投与した。
【0039】以上の免疫を行ったラットおよびマウス
は、それぞれ眼底静脈叢より採血し、血清抗体価をELIS
A で調べ、充分な抗体価を示したラットおよびマウスか
ら最終免疫3日後に脾臓を摘出した。摘出した脾臓は、
イーグル最小基本培地(minimum essential medium;日
水製薬社製;以下、MEM 培地と略記する)中で細断し、
1,200rpmで5分間遠心分離した後、上清を除去し、トリ
ス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処
理して赤血球を除去した後、MEM 培地で3回洗浄して細
胞融合に供した。
【0040】(3) マウス骨髄腫細胞の調製 8−アザグアニン培地で継代したマウス骨髄腫細胞株で
あるP3-U1 を細胞融合の4日前に正常培地に継代し、細
胞融合当日2×107 個以上の細胞数を得、細胞融合の親
株として用いた。
【0041】(4) ハイブリドーマの作製 (2) で得られた脾臓細胞と(3) で得られた骨髄腫細胞を
MEM 培地でよく洗浄し、脾臓細胞数が骨髄腫細胞数と10
対1になるよう混合した。1,200rpmで5分間遠心分離し
た後、上清を除去した。沈澱した細胞群をよくほぐした
後、攪拌しながら37℃で、2gのPEG-1,000 、2ml のMEM
および0.7ml のジメチルスルホキシドの混液を108 個細
胞あたり0.2 〜1ml 加えた。この混液に1〜2分間毎に
MEM 培地1 〜2ml を数回加えた後、MEM 培地を加えて全
量を50mlとした。900rpmで5分間遠心分離した後、上清
を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットに
よる吸込み、吹出しでゆるやかに細胞をHAT 培地〔正常
培地にヒポキサンチン(10 -4M )、チミジン(1.5 ×10
-5M )およびアミノプテリン(4 ×10-7M )を加えた培
地〕100ml 中に懸濁した。
【0042】この細胞懸濁液を96ウエル培養用プレート
に100 μl /ウエルずつ分注し、5%CO2 インキュベ
ーター中、37℃で14日間培養した。培養後、培養上清の
一部を採り、ELISA を用いて、MPと結合反応を示すも
のを選択した。ついで、限界希釈法によりクローニング
を2回繰り返し〔1回目は、HT培地(HAT 培地からアミ
ノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を用い
た〕、安定して強い抗体価の認められた株を選択した。
【0043】96ウエルの酵素免疫測定用プレート〔グラ
イナー(Greiner )社製〕に、(1)で調製したMPをPBS
で10μg/mlに希釈した抗原溶液を50μl /ウエルずつ
分注し、4℃で一晩放置してMPをプレートにコートし
た。抗原溶液を除去後、BSA-PBS を100 μl /ウエルで
分注し、室温で1時間放置してプレート上に残った蛋白
質との結合残基をブロッキングした。その後、BSA-PBS
を除去し、PBS-Tweenでよく洗浄した後、一次抗体とし
て上記選択されたハイブリドーマ株の培養上清を100 μ
l /ウエルで分注し、4℃で一晩放置した。
【0044】一次抗体を除去してPBS-Tween でよく洗浄
した後、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識した抗ラ
ットまたは抗マウスイムノグロブリン抗体〔ダコ(DAK
O)社製〕を50μl /ウエルで分注し、室温で2時間放
置した。以上の操作を行ったプレートは、二次抗体を除
去してPBS-Tween でよく洗浄した後、ABTS基質液を用い
て発色させて、415nm における吸光度を測定した。その
結果、吸光度の上昇が認められる株を抗TGF−βマス
キングプテインモノクローナル抗体を産生するハイブリ
ドーマとして、ラット抗TGF−βマスキングプロテイ
ンモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマKM-69
8,KM-699,KM-700,KM-701,KM-702,KM-703,KM-704,KM-705
およびKM-706、マウス抗TGF−βマスキングプロテ
インモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマKM-7
07をそれぞれ得た。
【0045】(5) モノクローナル抗体の調製 プリスタン処理〔2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン
(Pristane) 0.5 mlを腹腔内投与し、2週間飼育す
る〕した8週令雌ヌードマウスに、(4) で得られたハイ
ブリドーマを一匹あたり2 ×106 〜5 ×107 個細胞を腹
腔内注射した。注射後、10〜21日間でハイブリドーマは
腹水癌化した。
【0046】腹水の溜ったマウスから、一匹あたり1 〜
8ml の腹水を採取した。腹水は、3,000rpmで5分間遠心
分離して固形分を除去した後、PBS に平衡化したプロテ
イン−Gセファロース(ファルマシア社製)カラムに通
塔し、IgG を特異的にカラムに吸着させた。カラムをPB
S で洗浄した後、0.1Mグリシン−塩酸緩衝液(pH2.7)で
溶出した。溶出液のIgG 画分を集め、PBS に対して透析
し、精製モノクローナル抗体とした。
【0047】ハイブリドーマKM-698, KM-699, KM-700,
KM-701, KM-702, KM-703, KM-704,KM-705, KM-706およ
びKM-707よりそれぞれ精製モノクローナル抗体KM-698,
KM-699, KM-700, KM-701, KM-702, KM-703, KM-704, KM
-705, KM-706およびKM-707が得られた。各抗体の蛋白濃
度は、IgG の分子吸光係数〔1.0 A280(1cm) = 1.4mg/m
l〕より算出した。各モノクローナル抗体のサブクラス
は、ラット・モノクローナル抗体タイピング・キット
(ノルディック・イムノロジー社製)またはマウス・モ
ノクローナル抗体タイピング・キット(ザイメット社
製)を用いてELISA により決定した。
【0048】(6) 抗原特異性 (5) で得られた抗TGF−βマスキングプロテインモノ
クローナル抗体の抗原特異性は、以下に示したウエスタ
ン・ブロッティング法を用いて確認した。
【0049】(1) で調製した潜在型TGF−βを1%SD
S および2%2−メルカプトエタノール処理(以下、還
元処理という)、または、2−メルカプトエタノールを
含まない1%SDS 処理(以下、非還元処理という)によ
り変性させてサブユニットに解裂させた後、レムリー
(Laemmli )法に従って、ポリアクリルアミド・ゲル
(アトー社製、SPG-520L型)を用いたSDS-PAGEに供し
た。また、SDS および2−メルカプトエタノールで処理
しない未変性の潜在型TGF−βを、ポリアクリルアミ
ド・ゲル(第一化学社製、PAG プレート4/15型)を用い
たNative-PAGE に供した。なお、各PAGEにおいては、分
子量検定用蛋白質として、標準蛋白質(SDS-PAGEにおい
ては、第一化学社製・タンパク質分子量マーカー「第
一」・II、Native-PAGE においては、同社製・タンパク
質分子量マーカー「第一」・I)を同時に泳動した。
【0050】SDS-PAGEまたはNative-PAGE により、ゲル
内に分離された潜在型TGF−βサブユニットは、ウエ
スタン・ブロッティング法に従って、電気泳動的にPVDF
膜(ミリポア社製)上に転写した。潜在型TGF−βサ
ブユニットを転写したPVDF膜の一部をCBB-R250で染色
し、また、未染色のPVDF膜を1%BSA 溶液でブロッキン
グし、PBS-Tween でよく洗浄した後、一次抗体としてBS
A-PBS で10μg/mlに希釈した(5) で得られた抗TGF−
βマスキングプロテインモノクローナル抗体と室温で2
時間反応させた。次いで、PVDF膜をPBS-Tween でよく洗
浄した後に、ペルオキシダーゼで標識した抗ラットまた
は抗マウスイムノグロブリン抗血清〔ダコ(Dako)社
製〕を二次抗体として室温で2時間反応させた。以上の
反応を行ったPVDF膜は、PBS-Tween でよく洗浄した後、
コニカ・イムノ・ステイン・キット(コニカ社製)を用
いて膜上の標識二次抗体を発色させた。
【0051】以上により免疫染色されたPVDF膜上のバン
ドを、CBB-R250染色を行ったバンドと比較することによ
り、抗TGF−βマスキングプロテインモノクローナル
抗体が結合する潜在型TGF−βのサブユニットを決定
することができる。第1表に(5) で得られたモノクロー
ナル抗体の抗原特異性を示す。
【0052】
【表1】
【0053】図1に、モノクローナル抗体KM-704につい
て抗原特異性を解析した結果を示す。KM-704は、Native
-PAGE によるウエスタン・ブロッテイングから潜在型T
GF−βと反応すること、および非還元処理のSDS-PAGE
によるウエスタン・ブロッテイングからMPに反応する
こと、さらに還元処理のSDS-PAGEによるウエスタン・ブ
ロッテイングからMPサブユニットのLAPに反応する
ことが判明した。 (7) 潜在型TGF−βの活性化を抑制するモノクローナ
ル抗体の選択 0.1 %ゼラチン及び10%FCS を添加したα-MEM(日水製
薬社製)で培養し、動物細胞培養ディッシュ(直径35m
m)中でコンフルエント(confluent)になったBAE をカ
ミソリの刃で傷つけ、一部のBAE が剥離した疑似創傷状
態を作った。この疑似創傷状態にしたBAE に、直ちに1
5,000個細胞/皿のSMC を添加して共存培養した。この
共存培養系に(5) で調製した抗TGF−βマスキングプ
ロテインモノクローナル抗体KM-698,KM-699,KM-700,KM-
701,KM-702,KM-703,KM-704,KM-705,KM-706およびKM-707
をそれぞれ終濃度10μg/mlとなるように添加した。
【0054】共存培養20時間後に培地を除去し、細胞を
メタノールで固定後、細胞をギムザ法により染色し、剥
離端より遊走したBAE 数を光学顕微鏡を用いて測定し
た。その結果を図2に示す。図2に示したように、(5)
で調製したTGF−βマスキングプロテインモノクロー
ナル抗体のうち、KM-704を添加した場合に遊走したBAE
数が、SMC 無添加のBAE 単独培養をした場合に遊走した
BAE 数と同程度に回復した。したがって、KM-704は潜在
型TGF−βの活性化を抑制するモノクローナル抗体と
して選択された。また、上記の操作において、モノクロ
ーナル抗体KM-700およびKM-704の濃度をそれぞれ0.3 〜
30μg/mlに変化させて遊走するBAE 数の抗体濃度依存性
を調べた。その結果を図3に示す。図3に示したよう
に、KM-704は10μg/mlでBAE の遊走を完全に回復させた
が、モノクローナル抗体KM-700は、30μg/mlにおいても
BAE の遊走を回復させなかった。
【0055】(8) 免疫組織染色が可能なモノクローナ
ル抗体の選択 免疫組織染色が可能なモノクローナル抗体は、組織切片
としてはヒト動脈硬化病巣を用い、公知の免疫コロイド
金−銀法〔アクタ・ヒストケミストリー・サイトケミス
トリー(Acta Histochem. Cytochem.) 23, 647-661 (199
0)〕により選択した。具体的には、以下の通りに行っ
た。剖検で得られたヒト冠動脈の動脈硬化病巣部領域を
リン酸緩衝パラホルムアルデヒドで固定し、エタノール
で脱水した後、ベンゼン処理し、パラフィン中に包埋し
た。この包埋組織から、ミクロトームを用いて6μm 厚
の切片を作製し、これを卵白アルブミンコートしたスラ
イドグラス上に貼り、キシレンで脱パラフィン後、エタ
ノールにより親水化した。以上の操作で作製した組織標
本は、PBS にて洗浄し、さらに5%卵白アルブミン溶液
でブロッキング後、(5) で得られたモノクローナル抗体
(1 % BSAを含むPBS で10μg/mlに希釈したもの)を一
次抗体として室温で1時間反応させた。これをPBS で洗
浄し、5%卵白アルブミン溶液でブロッキング後、免疫
コロイド金溶液〔粒子径5μm 、ヤンセン(Janssen) 社
製、1% BSAを含むPBS で80倍に希釈したもの〕中、室
温で1時間反応させた。これをPBS で洗浄後、ブロモハ
イドロキノンを含む物理現像液〔アクタ・ヒストケミス
トリー・サイトケミストリー(Acta Histochem. Cytoche
m.) 23, 647-661(1990)に記載されたDeveloper 2を使
用〕を用いて現像した。これを流水で洗浄し、写真用定
着液(蒸留水で5倍に希釈したもの)にて定着した後、
再度、流水で洗浄した。
【0056】以上の免疫染色を行った組織切片は、次に
ケルンエヒトロート液で核染色を行い、脱水後、封入し
検鏡した。以上の操作を行った結果、(5) で得られた抗
潜在型TGF−βモノクローナル抗体(KM-699〜707 )
のなかで、KM-699およびKM-700は、動脈硬化病巣の内膜
肥厚部に、強い免疫染色陽性の染色像を示した。KM-699
およびKM-700以外のモノクローナ抗体を用いて染色した
場合には、免疫染色陽性領域は認められなかった。図4
にKM-699を用いた免疫染色の結果を示す。
【0057】
【発明の効果】本発明により、TGF−βに起因する疾
患に対する診断薬および治療薬として有用な抗TGF−
βマスキングプロテインモノクローナル抗体が提供され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、モノクローナル抗体KM-704の抗原特異性を
ウエスタン・ブロッテイング法で解析した図である。A-
1 はSDS を含まない未変性の潜在型TGF−βのNative
-PAGE 後のCBB-R250染色を、A-2 は、同PAGE後の免疫染
色を、B-1 は非還元処理した潜在型TGF−βのSDS-PA
GE後のCBB-R250染色を、B-2 は同SDS-PAGE後の免疫染色
を、C-1 は還元処理した潜在型TGF−βのSDS-PAGE後
のCBB-R250染色を、C-2 は同SDS-PAGE後の免疫染色をそ
れぞれ示す。なお、各パネルの左端のレーン(Marker)
は、標準蛋白質のCBB-R250染色を示し、数値は分子量を
示す。
【図2】は、BAE およびSMC の共存培養における遊走BA
E 数に対するモノクローナル抗体KM-698,KM-699,KM-70
0,KM-701,KM-702,KM-703,KM-704,KM-705,KM-706およびK
M-707の添加の影響を示した図である。左端はSMC を添
加しないBAE のみを単独で培養した場合の遊走BAE 数を
示す。
【図3】は、モノクローナル抗体KM-704およびKM-700の
抗体濃度をそれぞれ0.3 〜30μg/mlに変化させた場合の
遊走BAE 数を示した図である。左端はSMC を添加しない
BAE のみを単独で培養した場合の遊走BAE 数を示す。
【図4】は、モノクローナル抗体KM-699を用いる免疫コ
ロイド金−銀法により染色されたヒト動脈硬化病巣の顕
微鏡写真を示す。(A) は、検鏡下の拡大倍率4倍の写真
であり、(B) は拡大倍率200 倍の写真である。標本切片
の全体に渡って免疫コロイド金−銀染色陽性の斑点がみ
られるが、とくに動脈硬化病巣の内膜肥厚領域に強免疫
コロイド金−銀染色陽性像が認められる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G01N 33/577 B 9015−2J // C12N 15/06 (C12P 21/08 C12R 1:91)

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トランスフォーミング・グロース・ファ
    クターβ(transforming growth factor−β;以下、T
    GF−βと略記する)マスキングプロテインに特異的に
    反応する抗TGF−βマスキングプロテインモノクロー
    ナル抗体。
  2. 【請求項2】 潜在型TGF−βの活性化を抑制する作
    用を有する請求項1記載の抗TGF−βマスキングプロ
    テインモノクローナル抗体。
  3. 【請求項3】 TGF−βマスキングプロテインの中の
    ラテンシー・アソシエーティッド・ペプチドに特異的に
    反応する請求項1記載の抗TGF−βマスキングプロテ
    インモノクローナル抗体。
  4. 【請求項4】 TGF−βマスキングプロテインの中の
    潜在型TGF−β・バインディング・プロテインに特異
    的に反応する請求項1記載の抗TGF−βマスキングプ
    ロテインモノクローナル抗体。
  5. 【請求項5】 抗TGF−βマスキングプロテインモノ
    クローナル抗体KM-704。
  6. 【請求項6】 抗TGF−βマスキングプロテインモノ
    クローナル抗体KM-699。
  7. 【請求項7】 請求項1から4記載の抗TGF−βマス
    キングプロテインモノクローナル抗体を生産するハイブ
    リドーマ。
  8. 【請求項8】 ハイブリドーマ細胞株KM-704。
  9. 【請求項9】 ハイブリドーマ細胞株KM-699。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の抗TGF−βマスキン
    グプロテインモノクローナル抗体を用いる免疫組織染色
    方法。
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