JP4225487B2 - メグシン中和モノクローナル抗体 - Google Patents
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Description
本発明は、特定のセルピン(セリンプロテアーゼインヒビター)、すなわちメグシン(Megsin)の反応性ループ領域に対して選択的に結合するモノクローナル抗体とその製造法、および該モノクローナル抗体を用いるメサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療、および/または予防のための組成物の治療、および/または予防のための組成物に関する。
背景技術
腎不全は、腎疾患患者が最終的に至る病態である。その原因や経歴は一様ではなく、薬物中毒、感染症、悪性腫瘍、糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)などの本来腎臓以外の病変により、腎障害が発症し、腎不全に至る場合も数多くみられる。
腎臓の血液濾過作用や解毒作用が全く機能しない末期腎不全においては、腎移植が唯一の治療手段であるが、我が国においては、移植腎の供給体制が十分に整備されているとは言い難い。また、移植療法自体に対する社会的認知も進んでいない。我が国の腎移植例は、年間700余症例に過ぎず、この数値はここ数年増加していない。ゆえに腎代用療法としては透析療法が唯一の治療法であるのが現状である。
現在、我が国の末期腎不全透析患者は推定約21万人を数え、人口あたりの患者数では世界第一位である。一人当たりの平均的な治療費は年間約600万円を必要とし、医療保険制度を圧迫する大きな原因のひとつとされている。また、毎週2〜3日、1日4〜6時間を透析治療のために拘束されることから、患者本人の社会復帰も難しい。
さらに、近年の人口の高齢化に伴い透析患者年齢も上昇しつつある。このため、腎疾患を早期に治療し、腎不全への進展を防ぐ薬剤の必要性が認識されている。しかし、腎疾患領域は、創薬のための標的分子などの情報研究基盤に乏しく、有効な医薬品が誕生しないのが現状である。
メサンギウム細胞は腎臓以外では見られない臓器特異的な細胞で、腎糸球体の構造や機能保持に重要な役割を担っていることはよく知られている。また糸球体障害時にはメサンギウム細胞自身の増殖やメサンギサム細胞から分泌される細胞外マトリックスの増加などが認められることから、疾患の発症および進展にも深く関与する細胞であると推測されている。これらのことから糸球体障害の分子メカニズムを解明するには、まずメサンギウム細胞の生物学的特性を解明することが不可欠と考えられる。しかし、メサンギウム細胞に関する遺伝子レベルの特異性は明らかにされていなかった。
ヒトの生体内には約60兆個もの細胞が存在し、これらは同一のゲノムDNAを有しているが、個々の細胞、ひいては臓器が異なった生物学的性質を有するのは各細胞や臓器に特異的に発現する遺伝子によるものと考えられている。本発明者らは、メサンギウム細胞に発現する遺伝子群のプロファイルを明らかにすれば、メサンギウム細胞に特異的な高発現遺伝子群を検出することが可能であると考えた。そして、その中から糸球体腎炎の状態に関与する遺伝子群を決定することもでき、糸球体障害の分子メカニズムを解明する糸口も見つかり、それに基づいた新しい糸球体腎炎の治療法の開発も可能になると考えた。
そこで、本発明者らは、メサンギウム細胞の遺伝子発現パターンを明らかにし、その細胞特性を遺伝子レベルで解析することを試みた。
まず本発明者らは、メサンギウム細胞に発現する遺伝子を定量的に解析することを目的として、培養ヒトメサンギウム細胞からmRNAを抽出して、3’−directed cDNAライブラリーを作製した。そして、クローンに挿入された遺伝子断片の大規模DNA配列決定およびデータベース解析を施行した[Yasuda,Y.et al.:Kidney Int.,53:154−158,1998]。
その結果、メサンギウム細胞で特に強く発現する遺伝子として、メグシンと命名した全長2,249bpからなる遺伝子を単離した。そして、メグシンの全長cDNAクローンがコードする380個のアミノ酸からなる新規タンパク質であるメグシンタンパク質を単離、取得することに成功した。更に、SwissProtアミノ酸配列データベースを用いてFASTAプログラムによるアミノ酸ホモロジー検索を行った。そして、メグシンタンパク質のアミノ酸配列中にセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン:SERPIN)スーパーファミリー[Carrell,R.W.et al.:Trends Biochem.Sci.,10:20,1985;Carrell,R.W.et al.:Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,52:527,1987;Kruithof,E.K.O.et al.:Blood,86,4007,1995;Potempa,J.et al.:J.Biol.Chem.,269:15957,1994;Remold−O’Donnell,E.FEBS Lett.,315:105,1993]の生理活性中心部位として重要な反応性ループ領域(reactive loop site)内のコンセンサス配列(EEGTEAAAAT/配列番号:2)に類似の配列(EEGTEATAAT/配列番号:3)が存在していることを見出した。すなわち、メグシンは、セルピンの構造的特徴を有し、他のセルピンと同様に活性部位である反応性ループ領域(P17−P5’:EEGTEATAATGSNIVEKQLPQS/配列番号:1)が存在する[Miyata,T.et al.:J.Clin.Invest.,102:828−836,1998]。
これらのことより、ヒトメグシンタンパク質が、セルピンに属するタンパク質であることを明らかにした[Miyata,T.et al.:J.Clin.Invest.,120:828−836,1998]。そしてこれらの知見を特許出願した(WO 99/15652)。
セルピンには、アンチトロンビンやプラスミノーゲン活性化因子阻害物質(plasminogen activator inhibitor:PAI)、オボアルブミン等が知られている。これらのセルピン分子は互いに高い相同性を有し、三次元構造も極めてよく似ている。セルピンは、それぞれ対象とするセリンプロテアーゼと複合体を形成し、酵素活性を阻害することが知られている。プロテアーゼの活性部位に結合するのは、セルピンの柔軟な反応性ループ領域(reactive loop site)である。
複合体からセルピンが解離する際に、そのポリペプチド鎖がプロテアーゼによりループの中央で切断され、やがて分子が分解される。セルピンには活性状態と切断された状態の他に、ポリペプチド鎖は完全だが機能的には不活性で、プロテアーゼに結合しないという伏在的な状態がある。現在では、セルピンのこれら3種類の状態すべてについて、X線結晶解析により構造が決定されている[Huber,R.et al.:Biochem.,28:8951,1989;Baumann,U.et al.:J.Mol.Biol.,218:595,1991;Schulze,A.J.et al.:Biochem.,31:7560,1992;Goldsmith,E.J.et al.:Proteins Struct.Funct.Genet.,9:225,1991;Goldsmith,E.J.et al.:Nature(London),355:270,1992;Schreuder,H.et al.:J.Mol.Biol.,229:249,1993]。
セルピン型折りたたみは、部分的にαヘリックスで覆われた3つの逆平行βシートA、B、Cが作る密な構造からなる。切断されていないオボアルブミンの構造はセルピンの基準形であると考えられ、シートAが5本のストランドを含む。柔軟なループは、βシートAのストランド5の端から始まり、続いてαヘリックスが分子の外側にあり、さらにβシートCの端にあるストランド(β16)が続き、βシートに含まれるストランド(β17)の開始点に達する。ループ中央のαヘリックス領域にセルピンが分断される部位があり、ここは分子の外側にハンドルのように突き出ている。
活性型アンチトロンビンの柔軟なループ領域は、オボアルブミンと同じく一般的な位置にあるが、ループの始まりに近いいくつかの残基が、βシートAのβ5とβ15の間に6番目の短いβストランドを形成している。そのうえ、分子の主要部分から出ているループにはαヘリックスがなく、そのままトロンビンの活性部位に挿入できる。
すなわち、活性状態のセルピンでは、セリンプロテアーゼの活性部位と結合できるように、ループ領域は、セルピン分子の主要部分から突き出した形となっている(図1(a))。
α1アンチトリプシンの切断型では、ループ領域の始まりから切断部位までの半分は完全なβストランドを形成し、それがβシートAのストランドβ5とβ15の間に差し込まれている。
つまり、プロテアーゼ阻害の結果、セルピン分子は、活性部位であるループ領域の突出部で切断される。切断状態のセルピンでは、ループ領域のN末端部がβストランド5と15の間に入り込み、βシートの中央で長いβストランドを形成している(図1(b))。
ループ領域の後半部は活性型アンチトロンビンの場合とほぼ同じ位置を占めている。分断によって生じた2つの新しい末端(活性型ではつながっていた)はそれぞれ分子の両端にあって、約70Å離れている。
最後に、PAIの伏在状態では、α1アンチトリプシンの切断型と同じくβシートAにβストランドが加わっているが、柔軟なループ領域の残り部分は分子の外部でループを構成してβシートBのβストランドにつながっており、βシートCの端のストランドはない。
この最も安定で活性を持たない伏在状態では、切断された状態と同じくループ領域のN末端部分がβシート中に差し込まれたβストランドの形をとる。残りの残基は、βシートの反対側の端でループを形成する(図1(c))[Carrell,R.W.et al.:Structure,2:257−270,1994]。
すなわち、セルピンの活性部位であるループ領域は、「活性型」、「切断された状態」、および「伏在状態」の3種類の形態をとり得る。
活性型から伏在型への転換が起こると、ループは長いβストランドに変わりβシートの中央に挿入される。既に構成されている安定なβシートにβストランドを挿入するような大きな構造変化を起こすには、βシート中の隣り合ったストランドがまず離れなければならない。このことは、密な構造をとるために分子内部につくられた多数の疎水的な接触を組み換えるだけでなく、多数の水素結合が切れることを意味している。新たに形成される水素結合や充填のための接触は、余分なβストランドが挿入されてからつくり直さなければならない。β構造に起こるこのような大きな変化は、セルピンの構造決定以前にはまったく予想もされなかったし、これ以外の系ではまだ観察されていない[Branden,C.et al.:Introduction to Protein Structure Second Edition,1999]。
発明の開示
本発明の目的は、メサンギウム細胞に関連する疾病の治療等に有効なメグシン中和抗体を提供することである。また、本発明は、メグシンの反応性ループ領域に対して選択的に結合するモノクローナル抗体とその製造法、および該モノクローナル抗体を用いるメサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療、および/または予防のための組成物の提供を課題とする。
メグシンは、セリンプロテアーゼインヒビター(SERPIN)の構造的特徴を有し、他のセルピンと同様に活性部位である反応性ループ領域(P17−P5’:EEGTEATAATGSNIVEKQLPQS/配列番号:1)が存在する[Miyata,T.et al.:J.Clin.Invest.,102:828,1998]。
一方、メグシンのトランスジェニックマウスが進行性のメサンギウム基質の拡大、メサンギウム細胞の増殖、および免疫複合体沈着物の増加を示すことから、そのセルピン活性により腎炎が惹起されている可能性が強く示唆される[Miyata,T.et al.:J.Clin.Invest.,109,585,2002]。
メグシンがセルピンスーパーファミリーに属する糸球体高発現遺伝子であることから、この遺伝子が糸球体における機能遺伝子で、糸球体腎炎の発症/進展に関連性を有すると考えられる。そしてメグシンタンパク質がセルピンスーパーファミリーに特有のreactive loop siteを有することから、ある種のセリンプロテアーゼに対する抑制因子として働くことが考えられる。
プロテアーゼ活性はプロテアーゼとそれに対する抑制因子間の活性のバランスによって一定に保たれており、その変動は組織/細胞の機能や病態に著しく影響を及ぼすことが知られている。事実、糸球体硬化時には、細胞外マトリックス蛋白のプロテアーゼによる分解能低下がみられる。また別の例として、セルピンの一種であるPAI−1(メグシンタンパク質とのアミノ酸相同性は27.7%)の高発現マウスでは野生マウスに比し、ブレオマイシン反応性線維症が高率に誘発されるが、逆にPAI−1欠損マウスでは線維症が起こりにくいという研究結果も報告されている[Eitsman,D.T.et al.:J.Clin.Invest.,97:232,1996]。
さらに近年、セルピンはセリンプロテアーゼ活性を抑制するのみならず、血液凝固、線維素溶解、炎症反応、細胞分化/増殖、アポトーシスにも関与し、その生理機構や病態生理学的意義が多岐にわたることが報告されている[Kruithof,E.K.O.et al.:Blood,86,I:4007,1995;Bachmann,F.Thromb.Haemostasis,74:172,1995;Tsujimoto,M.et al.:J.Biol.Chem.,272:15373,1997;Bird,P.I.Results Probl.Cell.Differ.,24:63,1998;Potempa,J.et al.:J.Biol.Chem.,269:15957,1994]。
更に、様々な組織および細胞をノーザンブロットおよび逆転写ポリメラーゼ連鎖反応で分析したところ、メグシンは、ヒト繊維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、ケラチノサイトでは発現が弱く、メサンギウム細胞で特に強く発現していることが判った。即ち、メグシン遺伝子の発現はメサンギウム細胞に特異性を有する。これらの知見はさらにin situハイブリダイゼーション[Miyata,T.et al.:J.Clin.Invest.,102:828,1998;Suzuki,D.et al.:J.Am.Soc.Nephrol.,10:2606,1999]およびメグシン抗体を用いた免疫組織化学法[Inagi,R.et al.:Biochem.Biophys.Res.Commun.,286:1098,2001]により確認された。
また、IgA腎症患者や糖尿病性腎症患者と健常人とで腎臓組織中のメグシンの発現量を比較すると、IgA腎症患者や糖尿病性腎症患者においてメグシンの発現量が有意に多い[Miyata,T.et al.:J.Clin.Invest.,102:828,1998;Suzuki,D.et al.:J.Am.Soc.Nephrol.,10:2606,1999]。また、ラットを用いた実験的メサンギウム増殖性糸球体腎炎モデル(Thy−1腎炎モデル)において、同様なメグシン発現量の上昇が認められた[Nangaku,M.et al.:Kidney Int.,60:641,2001]。このことからメグシンの発現がメサンギウム細胞の機能異常に伴い変化し、疾患の発症/進展に深く関与していることが明らかになった。
メサンギウムの機能におけるメグシンの役割をさらに理解するために、我々はマウスゲノムでヒトメグシンのcDNAを過剰発現させた。2系統のメグシントランスジェニックマウスが得られ、それらは、進行性のメサンギウム基質の拡大、メサンギウム細胞の増殖、および免疫複合体沈着物の増加を示した[Miyata,T.et al.:J.Clin.Invest.,109,585,2002、WO 01/24628]。これらの知見は、メグシンが、メサンギウムの機能に生物学的に重要な影響を及ぼすことを示している。興味深いことに、メグシンの単一遺伝子操作は、実験的およびヒト糸球体腎炎に存在する初期的なメサンギウム病変を発生させることができる。このように、動物個体においても、メグシンはメサンギウム増殖性糸球体腎炎の発症に関与することが報告されている。
従って、メグシンに対し、その作用を中和し得る活性を有する物質、とりわけ特異性に優れた中和抗体(モノクローナル抗体)を見出し、特定することは、メサンギウム細胞の生物学的性質の解明、メサンギウム細胞に関連する疾患の原因の究明、ひいては、メサンギウム細胞に関連する疾病の治療、診断等に有効である。
本発明者らは、組換えメグシンを用いて、メグシンに対し中和活性を有する抗体を精査した結果、特定の領域を認識するモノクローナル抗体が、メグシンの活性を中和しうることを見出し、本発明を完成した。メグシンに対するモノクローナル抗体は知られていたが(WO 00/57189)、メグシンの反応性ループ領域(P17−P5’:EEGTEATAATGSNIVEKQLPQS/配列番号:1)内のエピトープと特異的に結合する抗体についての知見は確認されていなかった。また、メグシンの作用を中和する抗体も知られていなかった。本発明によるモノクローナル抗体は、メグシンとメグシンに対するリガンドの一つであるプラスミンとの反応を中和することができる。すなわち、本発明は以下のモノクローナル抗体、ならびにその用途に関する。
〔1〕メグシン中和活性を有するモノクローナル抗体。
〔2〕配列番号:1に記載されたアミノ酸配列を有するペプチドによって構成されるエピトープを認識するモノクローナル抗体。
〔3〕請求項1または請求項2に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系。
〔4〕FERM BP−8349として寄託されたハイブリドーマMS18a。
〔5〕FERM BP−8349として寄託されたハイブリドーマMS18aが産生するモノクローナル抗体。
〔6〕FERM BP−8349として寄託されたハイブリドーマMS18aを培養し、培養物に含まれるイムノグロブリンを回収する工程を含む、モノクローナル抗体の製造方法。
〔7〕次の(a)−(d)のいずれかに記載の成分の有効量を含有するメサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療、および/または予防のための組成物。
(a)メグシン中和活性を有するモノクローナル抗体またはその可変領域
(b)配列番号:1に記載されたアミノ酸配列を有するペプチドによって構成されるエピトープを認識するモノクローナル抗体またはその可変領域
(c)ハイブリドーマMS18a株により産生されるモノクローナル抗体またはその可変領域
(d)(a)−(c)のいずれかに記載の可変領域を構成する相補性決定領域を含む抗体またはその可変領域
〔8〕次の(a)−(d)のいずれかに記載の成分をメグシンに接触させる工程を含む、メグシンの活性中和方法。
(a)メグシン中和活性を有するモノクローナル抗体またはその可変領域
(b)配列番号:1に記載されたアミノ酸配列を有するペプチドによって構成されるエピトープを認識するモノクローナル抗体またはその可変領域
(c)ハイブリドーマMS18a株により産生されるモノクローナル抗体またはその可変領域
(d)(a)−(c)のいずれかに記載の可変領域を構成する相補性決定領域を含む抗体またはその可変領域
〔9〕次の(a)−(d)のいずれかに記載の成分を有効成分として含有する、メグメグシンの活性中和剤。
(a)メグシン中和活性を有するモノクローナル抗体またはその可変領域
(b)配列番号:1に記載されたアミノ酸配列を有するペプチドによって構成されるエピトープを認識するモノクローナル抗体またはその可変領域
(c)ハイブリドーマMS18a株により産生されるモノクローナル抗体またはその可変領域
(d)(a)−(c)のいずれかに記載の可変領域を構成する相補性決定領域を含む抗体またはその可変領域
あるいは本発明は、上記(a)−(d)のいずれかに記載の成分の有効量を投与する工程を含む、メサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療、および/または予防のための方法に関する。更に本発明は、上記(a)−(d)のいずれかに記載の成分の、メサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療、および/または予防のための組成物の製造における使用に関する。
本発明は、メグシンの作用を中和するモノクローナル抗体を提供する。本発明において、メグシンの作用の中和とは、メグシンのセルピン活性の中和作用を意味する。またセルピン活性とは、セリンプロテアーゼのプロテアーゼ活性に対する阻害作用である。本発明において、中和とは、セルピン活性の完全な抑制のみならず、部分的な抑制を含む。
モノクローナル抗体がメグシンの作用を中和することは、たとえば実施例2に記載の方法によって確認することができる。すなわち、セリンプロテアーゼとしてプラスミンを用い、そのプロテアーゼ活性のメグシンによる阻害における、モノクローナル抗体の抑制効果を指標として、その中和活性を確認することができる。プロテアーゼ活性は、たとえば蛍光基質の消化を観察することにより測定することができる。
本発明者らは、メグシンの反応性ループ領域を認識するモノクローナル抗体が、メグシンの中和作用を有することを見出した。すなわち本発明は、メグシンの反応性ループ領域を認識するモノクローナル抗体に関する。メグシンの反応性ループ領域とは、メグシンのアミノ酸配列中、特に配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなる領域を言う。したがって本発明のモノクローナル抗体は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドによって構成されるエピトープを認識するモノクローナル抗体である。中でもアミノ酸配列NIVEKQ(配列番号:4)を認識するモノクローナル抗体は、メグシンのセルピン活性を効果的に抑制することができる望ましいモノクローナル抗体である。
モノクローナル抗体が、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドによって構成されるエピトープを認識することは、エピトープマッピングによって確認することができる。たとえば実施例3においては、様々なアミノ酸配列からなるペプチドを用いて、モノクローナル抗体が認識するエピトープを特定している。
メグシンに対するモノクローナル抗体は、ヒトのメグシンまたはそのドメインペプチドを免疫原として、公知の方法によって得ることができる。モノクローナル抗体の取得方法は、後に具体的に述べる。得られたモノクローナル抗体を、上記のような評価方法に基づいて選択することによって、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。
本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとして、たとえばハイブリドーマMs18a細胞を示すことができる。ハイブリドーマMs18aは、メグシンの反応性ループを構成するアミノ酸配列中、NIVEKQ(配列番号:4)を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマである。ハイブリドーマMs18aが産生するモノクローナル抗体Ms18aは、メグシンの中和活性を有する。
ハイブリドーマMs18aは、2002年4月1日付け(原奇託日)で日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6に所在の独立行政法人産業技術総合研究所内特許生物寄託センターに対して、受託番号FERM BP−8349として寄託されている。
このハイブリドーマMs18a細胞株が産生するモノクローナル抗体のアイソタイプは、H鎖はIgG1、L鎖はκであった。本発明はまた、上記抗体のクラススイッチ変異体、例えば、アイソタイプIgG3、IgG1、IgG2b、IgG2aおよびその他の免疫グロブリンサブクラスに属する変異体等を包合し、その様な変異体は、Martinらの方法により作成することができる(Martin,C.et al.:J.Immunol.Methods.,145:1118,1991)。
メグシンに対するモノクローナル抗体の作製には、免疫原性抗原として使用できるメグシンが必要である。抗原としてのメグシンは、培養細胞、例えばメグシン産生細胞を用いて得ることができる。メグシン産生細胞としては、例えばヒト腎由来細胞等が挙げられる。このメグシン産生細胞は、当該分野で知られた、あるいはそれらと実質的に同様な培地や培養方法を用いて培養し、培養上清中に産生されるメグシンを例えばイオン交換クロマトグラフィーおよび/またはポリクローナル抗体を使用したアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、組換えメグシンも用いることができる。具体的には、メグシンのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子断片を含む組換えベクターにより宿主細胞を形質転換した後、この形質転換宿主を培養して、メグシンのアミノ酸配列を含むポリペプチドを製造し、該ポリペプチドを免疫原として使用するものである。メグシンのcDNAを含む組換えベクターは、通常の遺伝子組換え手法により、例えばプラスミドベクターに挿入することによって作製される。ベクターとしては、プラスミドやファージの他に、ワクシニアウィルス、バキュロウィルス等のウィルスも使用できる。
宿主としては、例えば大腸菌、枯草菌、放線菌等の原核生物、ならびに各種細胞、例えば動物細胞、CHO細胞等の市販の細胞株ならびに酵母、植物細胞、昆虫細胞等の真核生物を用いることができる。また、原核生物に使用できるプロモーターとしては、例えばトリプトファン合成酵素オペロン、ラクトースオペロン等を用いることができる。真核生物に使用できるプロモーターとしては、例えば、ウィルスプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼに対するプロモーター、解糖系酵素に対するプロモーター等がある。また、マルチクローニングサイト、プロモーター、耐性遺伝子、複製開始点、ターミネーター、リポソーム結合部位等を有する市販のベクターあるいはプラスミドも使用することができる。耐性遺伝子には、テトラサイクリン、アンピシリン、ネオマイシンに対するもの等がある。この様にして調製されたメグシンは、更に免疫原性コンジュゲートとしてもよいが、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できる。
このように、抗原は、各種原料、例えば培養細胞、培養組織、形質転換細胞等の抗原産生原料から従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法等の塩析、セファデックス等によるゲル濾過クロマトグラフィー法、イオン交換クロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外濾過法、アフィニティークロマトグラフィー法および高速液体クロマトグラフィー法等により精製して得ることができる。
さらに、メグシンは、それを断片化したもの、あるいはクローニングされ、配列決定されたcDNA配列から推定されるアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成し、得られたポリペプチド断片であってもよく、その断片を適当な縮合剤を介して種々の担体蛋白質類と結合させてハプテン−蛋白質の免疫コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列のみを認識できるモノクローナル抗体をデザインすることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基等を付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにすることができる。
本発明ではメグシンに特異的に結合する少なくとも1種のモノクローナル抗体を提供する。本発明にかかるモノクローナル抗体は、組換えメグシンを免疫原として動物を免役した後、ミエローマ細胞と抗体産生細胞との細胞融合、ハイブリドーマの選択およびモノクローン化、モノクローナル抗体の製造、必要に応じて腹水化といった工程で作製できる。
動物の免疫は、例えば次のように行う。公知の方法[Miyata,T.et al.:J.Clin.Invest.,120:828,1998]に従って精製したヒトメグシンタンパク質をラット、マウスなどの哺乳類動物に免疫する。哺乳類動物は細胞融合する際の相手の永久増殖性細胞と同系統の動物を用いるのが好ましい。動物の週令は、例えばマウスでは8〜10週令が好適である。性は雌雄何れでも構わない。
免疫動物として、イムノグロブリン遺伝子をヒトの遺伝子に組み換えたトランスジェニック動物を用いることにより、ヒトのイムノグロブリンを産生させることもできる。イムノグロブリン遺伝子をヒトの遺伝子に組み換えたトランスジェニック動物を用いて、目的とする反応性を有する抗体を得る方法は公知である。このようにして得ることができるイムノグロブリンは、動物から得られたものながら、完全にヒトのイムノグロブリン分子である。
免疫の方法は、精製したヒトメグシンタンパク質を適当なアジュバント(例えばフロイント完全アジュバントまたは水酸化アルミニウムゲル−百日咳菌ワクチンなど)と混合しエマルジョンとした後、動物の皮下、腹腔内、静脈内などに投与する。以後、この免疫操作を1〜2週間間隔で2〜5回行う。最終免疫は、0.5〜2μgのヒトメグシンタンパク質を動物の腹腔内に投与することにより行う。
このようにして免疫した動物の体液からは、ポリクローナル抗体が得られる。各免疫操作後3〜7日後に眼底静脈叢より採血し、その血清の抗体価を測定し、抗体価が充分上昇したとき、抗体または抗体産生細胞を採取する。メグシンに対する抗体価は、ELISA等の手法によって測定することができる。抗体価を測定するためのELISAは、メグシンをコートしたプレートに血清を加え、更に免疫動物のIgGに対する標識抗体を加えることにより実施することができる。
抗原と共に用いられるアジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビアジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカゲル等が挙げられる。免疫は、例えばBalb/cマウス、FIマウス等のマウスをはじめとする動物を使用することができる。
上記のようにヒトメグシンタンパク質で免疫した動物から抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞は、脾臓、リンパ節、末梢血などから得ることができるが、特に脾臓が好ましい。例えば、最終免疫の3〜4日後に脾臓を無菌的に摘出し、Minimal Essential Medium(MEM)培地(日水製薬製)中で細断し、ピンセットで解し、1,200rpm×5分間の条件で遠心分離させた後、上清を除き、トリス−塩酸緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理して赤血球を除去し、さらにMEM培地で3回洗浄して細胞融合用脾臓細胞を得る。
細胞融合前には、まず使用される腫瘍細胞株の調製をしておく必要がある。細胞融合前に使用される腫瘍細胞株は、たとえば免疫グロブリンを産生しない細胞株から選択することができる。融合される相手方の永久増殖性細胞には、永久増殖性を有する任意の細胞を用いることができるが、一般的には骨髄腫細胞(ミエローマ)が用いられる。永久増殖性細胞は抗体産生細胞と同種の動物由来のものを用いるのが望ましい。
例えばマウスの場合、8−アザグアニン耐性マウス(Balb/c)由来骨腫瘍細胞株として次のような細胞株が知られている。
P3−X63Ag8−U1(P3−U1)[Current.Topics in Microbiol,Immunol.,81:1,1978]
P3/NS1/1−Ag4−1(NS−1)[Eur.J.Immunol.,6:511,1976]
SP2/0−Ag14(SP−2)[Nature,276:269,1978]
P3−X63−Ag8653(653)[J.Immunol.,123:1548,1979]
P3−X63−Ag8(X63)[Nature,256:495,1975]
これらの永久増殖性細胞株は、8−アザグアニン培地(RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mM)、2−メルカプトエタノール(5×10−5M)、ゲンタマイシン(10μg/mL)およびウシ胎児血清(FCS、CLS製)(10%)を加えた正常培地に、さらに8−アザグアニン(15μg/mL)を加えた培地)で継代培養し、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合は例えば次のように行う。上記で得られた抗体産生細胞および永久増殖性細胞をMEM培地またはPBSでよく洗浄し、細胞数が5〜10:1の比になるように混合する。1,200rpm×5分間遠心分離した後、上清を除き、沈殿した細胞群をよく解した後、攪拌しながら37℃に保ちつつ、細胞融合剤としてポリエチレングリコール−1000(PEG−1000)1〜4g、MEM培地1〜4mLおよび細胞融合促進剤としてジメチルスルホキシド0.5〜1.0mLの混液0.1〜1.0mL/108個細胞を加えて細胞融合を起こさせる。
その後、10分毎にMEM培地3mLを数回添加し、MEM培地を全量が50mLになるように加えて希釈し、細胞融合を停止させる。次に、遠心分離(1,500rpm×5分間)して上清を除去し、緩やかに細胞を解した後、正常培地(RPMI−1640培地、10%FCS)100mLを加え、メスピペットによるピペッティングで緩やかに細胞を懸濁する。
この懸濁液を96ウエルの培養用プレートに100μL/wellずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で3〜5日間培養する。培養プレートに100μL/wellのHAT培地(正常培地にヒポキサンチン(10−4M)、チミジン(1.5×10−5M)およびアミノプテリン(4×10−7M)を添加した培地)を加え、さらに3日間培養する。以後3日間毎に培養上清の半容量を除去し、新たに同量のHAT培地を加え、5%CO2インキュベーター中、37℃で約2週間培養する。
融合細胞がコロニー状に生育しているのが認められるウエルについて、上清の半容量を除去し、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いたもの)を同量加え、4日間培養する。培養上清の一部を採取し、前述のELISAによりメグシンタンパク質に対する抗体価を測定する。
より具体的には、例えばメグシンタンパク質抗原を直接又は担体と共に吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体を加え、標識を測定することによって抗体価を測定することができる。固相には、マイクロプレート等が用いられる。また抗免疫グロブリン抗体としては、細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる。
その他、標識抗体に代えて、プロテインAを加え、固相に結合した抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体を検出することもできる。更に、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したメグシンタンパク質を加えることによって、抗体価を測定することもできる。
メグシンタンパク質に反応する抗体の産生が観察されたウエルにつき、限界希釈法によりクローニングを4回繰り返し、安定したメグシンタンパク質の抗体価を示すものを抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
上記のようにして得られたハイブリドーマをin vitroおよびin vivoで培養することによりモノクローナル抗体を産生させる。所望のモノクローナル抗体を、FCS含有MEM培地、RPMI−1640培地等の適当な培地中で培養し、その培養上清から得ることができる。ハイブリドーマのin vitroでの培養は、好ましくは無血清培地中で行われ、至適量の抗体をその上清に与える。
in vivoで培養する場合、任意の動物にハイブリドーマを移植する。移植のための宿主動物は、細胞融合に用いた脾臓細胞を採取した動物と同種の動物を使用するのが好ましい。例えば、プリスタン処理をした8〜10週令のBalb/c雌マウスに上記で得られた抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞の2〜4×106個/匹腹腔内投与する。プリスタン処理は、たとえば2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン−プリスタン−0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育することにより行われる。
2〜3週間でマウスの腹腔内にモノクローナル抗体を高濃度に含んだ腹水が貯留し腹部が肥大してくる。このマウスから腹水を採取し、遠心分離(3,000rpm×5分間)して固形分を除去し、IgGを精製する。
腹水や培養上清を50%硫酸アンモニウムを用いて塩析し、PBSで1〜2週間透析する。この透析画分をプロテインAセファロースカラムに通し、IgG画分を集め、精製モノクローナル抗体を得る。このモノクローナル抗体は、メグシンとメグシンに対するリガンドの一つであるプラスミンとの反応を中和することができる
抗体のアイソタイプは、市販のキット(Gibco BRL製、Mouse Antibody Isotyping Kit等)を用いるか、またはオクタロニィ(二重免疫拡散)法(免疫学実験入門,生物化学実験法15,学会出版センター刊,74頁,1981年)により決定した。タンパク質量は、フォーリン法および280nmにおける吸光度(1.4(OD280)イムノグロブリン1mg/mL)により算出する。
大量のモノクローナル抗体を得るにはハイブリドーマの腹水化を利用することができる。この場合、ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性のある動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいはヌードマウスなどに各ハイブリドーマを移植し、腹水中に産生されたモノクローナル抗体を得ることができる。
動物は、ハイブリドーマを移植する前にプリスタンなどの鉱物油を腹腔内に投与しておくことができる。腹水液はそのままあるいは常法により精製することができる。例えば、硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックス等によるゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー、電気泳動、透析、限外濾過法、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー法等により精製することができる。
上記のようにして得られたモノクローナル抗体の特性は、例えば、酵素免疫測定法(ELISA法)等により明らかにすることができる。
本発明のモノクローナル抗体は、ヒトメグシンの反応性ループ領域と特異的に結合し、メグシンとメグシンに対するリガンドの一つであるプラスミンとの反応を中和することができる。したがって本発明のモノクローナル抗体は、メグシンの活性中和方法、あるいは活性中和剤として有用である。すなわち本発明は、次の(a)−(d)のいずれかに記載の成分をメグシンに接触させる工程を含む、メグシンの活性中和方法を提供する。あるいは本発明は次の(a)−(d)のいずれかに記載の成分を有効成分として含有するメグシンの活性中和剤に関する。
(a)メグシン中和活性を有するモノクローナル抗体またはその可変領域
(b)配列番号:1に記載されたアミノ酸配列を有するペプチドによって構成されるエピトープを認識するモノクローナル抗体またはその可変領域
(c)ハイブリドーマMS18a株により産生されるモノクローナル抗体またはその可変領域
(d)(a)−(c)のいずれかに記載の可変領域を構成する相補性決定領域を含む抗体またはその可変領域
メグシンがメサンギムウム細胞の増殖を誘導する作用を有することは既に述べたとおりである。本発明のモノクローナル抗体はメグシンの活性を中和することから、メグシンによってもたらされている病態を改善する作用が期待できる。このため、本発明のモノクローナル抗体をヒト化した抗体は、メサンギウム細胞が増殖する疾患において、その治療に有効であると考えられる。このようなヒト化抗体は、通常、薬理学的に許容される1種あるいはそれ以上の担体と混合し、公知の製剤学的手法により製造された医薬組成物として提供するのが好ましい。
本発明のモノクローナル抗体をメグシンに関連する疾患の治療目的でヒトに投与する場合、ヒトに対する抗原性を最小限にする方法を採ることもできる。すなわち、本発明のモノクローナル抗体を公知の方法でキメラ抗体もしくはヒト化抗体とすることにより実施でき、本発明のモノクローナル抗体には、これらのヒトに対する抗原性を少なくした抗体も含まれる。
1975年にKohlerとMilsteinが細胞融合とクローニング技術によるモノクローナル抗体の産生法(ハイブリドーマ法)を報告して以来、ハイブリドーマ細胞を培養することによって標的に対する高い特異性と親和性を持つ均一な抗体(モノクローナル抗体)が大量に得られるようになった[Kohler,G.et al.:Nature,256:495−497,1975]。1980年にはマウスモノクローナル抗体を用いたリンパ腫の治療が報告された[Nadler,L.M.et al.:Cancer Res.,40:3147−3154,1980]。
しかしながら、このような抗体はマウス由来の異種血清であったため、ヒト体内では異物として認識され、体内においてマウス由来のモノクローナル抗体に対する抗体(ヒト抗マウス抗体:Human anti−mouse antibody:HAMA)が産生される。その結果、マウス抗体のエフェクター機能(補体依存性の細胞障害活性:CDC、抗体依存性の細胞障害活性:ADCC)がヒト体内では減弱し、有効濃度の維持が困難となるという問題点があった。
また、抗体投与を繰り返すとアナフィラキシーなどのショック症状を呈する危険性があり、反復投与が困難であるという問題点も知られている[J.Clin.Oncol.,2:881,1984;Blood,65:1349,1985;J.Natl.Cancer Inst.,80:932,1988;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:1242,1985;J.Nucl.Med.,26:1011,1985;Blood,65:1349,1985;J.Natl.Cancer Inst.,80:937,1988;J.Immunol.,135:1530,1985;Cancer Res.,46:6489,1986]。
しかし、近年の遺伝子組換え技術の目覚ましい進歩に伴い、これらの問題は解決されつつある。まず、抗体の免疫原性を改良するため、マウス抗体のFc部分を含むH鎖、L鎖の定常領域をヒト抗体と置換したヒト型キメラ抗体が創製された。キメラ抗体とはマウス抗体とヒト抗体のキメラ分子をいう。
ヒト型キメラ抗体は、抗体可変領域(V領域)がヒト以外の動物抗体由来で抗体定常領域(C領域)がヒト抗体由来である抗体である[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851,1984]。ヒト抗原をマウスに免疫し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変領域(V領域)を切り出し、ヒト由来の抗体定常領域(C領域)遺伝子と結合してキメラ遺伝子を作製する。
このキメラ遺伝子を宿主細胞で発現させれば、ヒト・マウス・モノクローナル抗体が産生できる。キメラ抗体はヒトに対する抗原性が少ないため、ヒトに投与した場合、ヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体に対する抗体はほとんど惹起されず、血中半減期が6倍延長することが報告されている[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:4220,1989]。
キメラ抗体よりもさらに免疫原性を低下させるため、可変領域中の抗原結合領域(Complementary determining region:CDR、相補性決定領域)の遺伝子配列のみをヒト抗体のCDR部位に移植(CDRグラフティング)し、抗体分子のCDRを除いた全分子をヒト化したヒト化抗体が作製された[Nature,321:522,1986]。ヒト化抗体はヒト・マウス・キメラ抗体よりマウスの抗体部分が少ないため、抗原性は一層少なく安全性が高い。サルを用いた実験では、マウス抗体に比べ免疫原性が低下し、血中半減期が4〜5倍伸びることが報告されている[J.Immunol.,147:1352,1991]。
上記に示した方法等を用いることにより、本発明の抗体をヒト化することができ、ヒトに投与する場合には非常に有用である。
また本発明において、抗体の可変領域とは、抗体の抗原との結合に必要な領域と定義される。したがって、酵素的な消化によって得ることができるFabなどの抗体断片のみならず、抗原結合領域をコードするDNAを単離し、適当な宿主ベクター系で発現させることによって得ることができる抗体断片も可変領域に含まれる。更に本発明の抗体可変領域は、重鎖と軽鎖の抗原結合領域を1本のペプチド鎖に連結させたscFvを含む。
本発明の医薬組成物の投与方法として、経口投与、静脈内投与以外に、経粘膜投与、経皮投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸内投与等が適宜選択でき、その投与方法に応じて、種々の製剤として用いることができる。以下に、各製剤について記載するが、本発明において用いられる剤型はこれらに限定されるものではなく、医薬製剤分野において通常用いられる各種製剤として用いることができる。
<全身投与製剤>
メサンギウム増殖性糸球体腎炎に対する治療および/または予防のために用いる場合には、ヒト化抗体の経口投与量は、0.1μg/kg〜100μg/kgの範囲が好ましく、より好ましくは、1μg/kg〜10μg/kgである。
経口投与を行う場合の剤型として、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤およびシロップ剤等があり、適宜選択することができる。また、それら製剤について徐放化、安定化、易崩壊化、難崩壊化、腸溶性化、易吸収化等の修飾を施すことができる。また、口腔内局所投与を行う場合の剤型として、咀嚼剤、舌下剤、バッカル剤、トローチ剤、軟膏剤、貼布剤、液剤等があり、適宜選択することができる。また、それら製剤について徐放化、安定化、易崩壊化、難崩壊化、腸溶性化、易吸収化等の修飾を施すことができる。
上記の各剤型について、公知のドラッグデリバリーシステム(DDS)の技術を採用することができる。本明細書に言うDDS製剤とは、徐放化製剤、局所適用製剤(トローチ、バッカル錠、舌下錠等)、薬物放出制御製剤、腸溶性製剤および胃溶性製剤等、投与経路、バイオアベイラビリティー、副作用等を勘案した上で、最適の製剤形態にした製剤を言う。
DDSの構成要素には基本的に薬物、薬物放出モジュール、被包体および治療プログラムから成り、各々の構成要素について、特に放出を停止させた時に速やかに血中濃度が低下する半減期の短い薬物が好ましく、投与部位の生体組織と反応しない被包体が好ましく、さらに、設定された期間において最良の薬物濃度を維持する治療プログラムを有するのが好ましい。薬物放出モジュールは基本的に薬物貯蔵庫、放出制御部、エネルギー源および放出孔または放出表面を有している。これら基本的構成要素は全て揃っている必要はなく、適宜追加あるいは削除等を行い、最良の形態を選択することができる。
DDSに使用できる材料としては、高分子、シクロデキストリン誘導体、レシチン等がある。高分子には不溶性高分子(シリコン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチルセルロース、セルロースアセテート等)、水溶性高分子およびヒドロキシルゲル形成高分子(ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート架橋体、ポリアクリル架橋体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、水溶性セルロース誘導体、架橋ポロキサマー、キチン、キトサン等)、徐溶解性高分子(エチルセルロース、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体の部分エステル等)、胃溶性高分子(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、マクロゴール、ポリビニルピロリドン、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸メチルコポリマー等)、腸溶性高分子(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸フタルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、アクリル酸系ポリマー等)、生分解性高分子(熱凝固または架橋アルブミン、架橋ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリβヒドロキシ酢酸、ポリカプロラクトン等)があり、剤型によって適宜選択することができる。
特に、シリコン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体の部分エステルは薬物の放出制御に使用でき、セルロースアセテートは浸透圧ポンプの材料として使用でき、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースは徐放性製剤の膜素材として使用でき、ポリアクリル架橋体は口腔粘膜あるいは眼粘膜付着剤として使用できる。
また、製剤中にはその剤形(経口投与剤、注射剤、座剤等の公知の剤形)に応じて、溶剤、賦形剤、コーティング剤、基剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、粘稠剤、乳化剤、安定剤、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、矯味剤、芳香剤、着色剤等の添加剤を加えて製造することができる。
これら各添加剤について、それぞれ具体例を挙げて例示するが、これらに特に限定されるものではない。溶剤としては、精製水、注射用水、生理食塩液、ラッカセイ油、エタノール、グリセリン等を挙げることができる。賦形剤としては、デンプン類、乳糖、ブドウ糖、白糖、結晶セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、トレハロース、キシリトール等を挙げることができる。
コーティング剤としては、白糖、ゼラチン、酢酸フタル酸セルロースおよび上記記載した高分子等を挙げることができる。基剤としては、ワセリン、植物油、マクロゴール、水中油型乳剤性基剤、油中水型乳剤性基剤等を挙げることができる。
結合剤としては、デンプンおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、トラガント、アラビアゴム等の天然高分子化合物、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ等を挙げることができる。
滑沢剤としては、ステアリン酸およびその塩類、タルク、ワックス類、小麦デンプン、マクロゴール、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。崩壊剤としては、デンプンおよびその誘導体、寒天、ゼラチン末、炭酸水素ナトリウム、セルロースおよびその誘導体、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースおよびその塩類ならびにその架橋体、低置換型ヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。
溶解補助剤としては、シクロデキストリン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。懸濁化剤としては、アラビアゴム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム、クエン酸、各種界面活性剤等を挙げることができる。粘稠剤としては、カルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、トラガント、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。
乳化剤としては、アラビアゴム、コレステロール、トラガント、メチルセルロース、各種界面活性剤、レシチン等を挙げることができる。安定剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、キレート剤、不活性ガス、還元性物質等を挙げることができる。
緩衝剤としては、リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸等を挙げることができる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等を挙げることができる。無痛化剤としては、塩酸プロカイン、リドカイン、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
保存剤としては、安息香酸およびその塩類、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、逆性石けん、ベンジルアルコール、フェノール、チロメサール等を挙げることができる。矯味剤としては、白糖、サッカリン、カンゾウエキス、ソルビトール、キシリトール、グリセリン等を挙げることができる。芳香剤としては、トウヒチンキ、ローズ油等を挙げることができる。着色剤としては、水溶性食用色素、レーキ色素等を挙げることができる。
上記したように、医薬品を徐放化製剤、腸溶性製剤または薬物放出制御製剤等のDDS製剤化することにより、薬物の有効血中濃度の持続化、バイオアベイラビリティーの向上等の効果が期待できる。しかし、ヒト化抗体は生体内で失活化または分解され、その結果、所望の効果が低下または消失する可能性がある。従って、DDSを失活化または分解する物質を阻害する物質をメサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療および/または予防のための医薬組成物と併用することにより、成分の効果をさらに持続化させ得る。これらは製剤中に配合してもよく、または別々に投与してもよい。当業者は適切に、DDSを失活化または分解する物質を同定し、これを阻害する物質を選択し、配合あるいは併用することができる。
製剤中には、上記以外の添加物として通常の組成物に使用されている成分を用いることができ、これらの成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
その他本発明のモノクローナル抗体は、免疫染色、例えば組織あるいは細胞染色、免疫沈降、イムノブロット、イムノアッセイ、例えば競合型または非競合型イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ELISA、ラテックス凝集法、蛋白精製、アフィニティーカラム等にも使用することができる。ELISA法による場合は好ましくはサンドイッチ型アッセイがよい。なお、イムノアッセイには、免疫組織学的検討、イムノブロット、免疫沈降等の免疫反応を利用した方法全てを含有する。
本発明のモノクローナル抗体は、イムノアッセイに用いるために標識抗体とすることができる。抗体を標識化するものとして、酵素、酵素基質、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、放射性物質等を用いることができる。標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応等を利用することができる。
本発明のモノクローナル抗体を使用するイムノアッセイは、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料等を検体または試料とすることができる。たとえば生体由来の試料、具体的には、血液、血漿、関節液、脳脊髄液、唾液、羊水、尿、その他体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジネート、生検試料、細胞、組織、脳組織、脳由来細胞系、神経細胞系、神経由来細胞系、乳腺由来細胞系、乳腺組織、卵巣由来細胞系、卵巣組織、癌細胞系、癌組織等が挙げられる。
従って、本発明は、この様なハイブリドーマ細胞系、イムノアッセイおよび検査キットをも提供する。さらに、本発明はメグシンを特異的に認識するモノクローナル抗体、この抗体を用いることを特徴とするメグシンの検出ならびに定量のためのイムノアッセイ、およびこのイムノアッセイを実施するための検査キットを提供する。
また、本発明により得られたモノクローナル抗体は、メグシンに対する特異性が高く、メグシンの検出ならびに定量において、非常に有用である。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
〔実施例1〕
a.免疫原の調製(組換えメグシン)
公知の方法[Inagi,R.et al.:Biochem.Biophys.Res.Commun.,286:1098−1106,2001]に準じ、ヒトのメグシンcDNAをトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養上清から組換えヒトメグシンを得た。
培養上清2Lに100mLの1M酢酸ナトリウムを加えてpH4.5に調整した後、50mM酢酸ナトリウムを加え、2倍に希釈した。希釈液をイオン交換クロマトグラフィー(HiPrep 16/10 SP XL:アマシャム・バイオサイエンス製)に供した(溶出条件:50mM酢酸ナトリウム(pH4.5)、NaCl 0〜1Mリニアグラジエント;溶出容積:20×カラムベッドボリューム)。溶出液をゲル濾過によりバッファー交換を行い(HiPrep 26/10 Desalting、20mMリン酸カリウム(pH6.8))、続いてハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー(HT−1:Bio−Rad製)に供した(溶出条件:20mMリン酸カリウム(pH6.8)、リン酸カリウム20〜400mMリニアグラジエント;溶出容積:30×カラムベッドボリューム)。溶出液を再度ゲル濾過によりバッファー交換を行い(HiPrep 26/10 Desalting、50mM MES(pH5.5)、50mM NaCl)、イオン交換クロマトグラフィー(MonoS HR5/5:アマシャム・バイオサイエンス製)に供した(溶出条件:50mM MES(pH5.5)、50mM NaCl、NaCl 50〜100mMリニアグラジエント;溶出容積:40×カラムベッドボリューム)。溶出液をCentricon 10(ミリポア製)を用いて遠心濃縮し(3,000g)、ダルベッコPBS(−)緩衝液(日水製薬製)にバッファー交換した。遠心濃縮とバッファー交換を3回繰り返し、精製組換えメグシンを得た。クロマトグラフィー装置は、AKTAexplorer 10s(アマシャム・バイオサイエンス製)を用い、操作は全て4℃で行った。
b.免疫処置
8週齢の雌性Balb/cマウス3匹に対し、免疫用抗原溶液をフロイント完全アジュバント(DIFCO製)と1:1で混和しエマルジョン化したものを、メグシンタンパク質が約50μg/匹となるよう皮下注射した。以後、ほぼ2週間毎に、免疫用抗原溶液をフロイント不完全アジュバント(DIFCO製)と1:1で混和しエマルジョン化したものをメグシンタンパク質が約50μg/匹となるよう調製し、2回皮下注射し追加免疫を行った。2回目の追加免疫の3日後に眼底静脈より採血し、血清中の抗体価をELISA法により測定した。高い抗体価を有していたマウスについて、2回目の追加免疫の2週間後免疫用抗原溶液をフロイント不完全アジュバント(DIFCO製)と1:1で混和しエマルジョン化したものをメグシンタンパク質が約50μg/匹となるよう調製、皮下注射にて追加免疫し、その3日後に免疫したマウスの脾臓細胞を細胞融合に用いた。
c.ELISA法(直接固相法)
免疫用抗原と同様の方法で調製したメグシンタンパク質のタンパク質溶液をPBSで1μg/mLに調整し、100μL/ウェルでELISAプレートに4℃、一夜吸着させた。洗浄液(0.05%tween20(和光純薬製)を含むPBS)で3回洗浄後、PBSで4倍に希釈したブロックエース(雪印乳業製)でブロッキングを行った。その後洗浄し、上記bで得られた血清を抗体希釈液(10倍希釈したブロックエースを含むPBS)で5000倍に希釈し、100μL/ウェルずつ加え、室温で2時間反応させた。
プレートを洗浄後、5000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(ケミコン製)を100μL/ウェルずつ加え、室温で2時間反応させた。O−フェニレンジアミン(ナカライテスク製)を基質反応液(0.2μL/mL過酸化水素水(和光純薬製)を含むクエン酸−リン酸緩衝液pH5.0))に0.4mg/mLの濃度になるよう溶解し、基質溶液を調製した。洗浄液で5回プレートを洗浄し、該基質溶液を100μL/ウェルとなるように加えた。該基質溶液と30分間反応させた後、100μL/ウェルの2Nの硫酸を加え反応を停止させ、490nmの吸光度を測定した。
d.細胞融合、ハイブリドーマの作製
上記ELISA法の結果によりメグシンタンパク質に対する抗体価の上昇が認められたマウス3匹から最終免疫の3日後に脾臓を摘出し、常法により脾細胞を調製した。細胞融合時の親株は、事前に20μg/mlの8−アザグアニンを含む培地で選択し、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損株であることを確認したBalb/cマウス由来ミエローマSP2細胞株を用いた。SP2細胞2×107個と脾細胞1×108個をあわせ、ポリエチレングリコール4000(PEG4000;Merck製)を細胞融合促進剤として使用し、常法に従い細胞融合を行った。
融合後の細胞は脾細胞換算で3.0×108個/mLになるようにエスクロン培地(三光純薬製)にヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを加えた培地(HAT培地)に懸濁し、96ウェルマイクロプレート(Corning製)に100μL/ウェルずつ分注した。該融合細胞をCO2インキュベーター(37℃、5%CO2)で3〜5日毎に半量ずつ培地交換を行いながら培養した。HAT培地で培養可能なハイブリドーマのみ選択培養した。
e.ハイブリドーマのスクリーニング
コロニー形成の確認されたウェルについて、培養上清中のメグシンタンパク質に対する抗体の有無を確認するために、c.で示したのと同じELISA法でスクリーニングを行い、メグシンタンパク質に対して強く反応するコロニーを選択し、クローニングに供した。
f.ハイブリドーマのクローニング
メグシンタンパク質に対して結合する抗体を産生するハイブリドーマについて限界希釈法によるクローニングを3回繰り返し行い、メグシンタンパク質に対して特異的に結合する抗体を産生し、且つ安定した増殖能を有するハイブリドーマMS18a細胞株が得られた。これらの各ハイブリドーマ細胞は、2002年4月1日付け(原寄託日)で日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号 中央第6に所在の行政独立法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに対して、受託番号FERM BP−8349(生命研条寄第8349号)として寄託された。
g.モノクローナル抗体のタイピング
上記で得られたハイブリドーマMS18a細胞株の培養上清0.5mLを用いてMouse Antibody Isotyping kit(Gibco BRL製)を用いてアイソタイプを調べた。ハイブリドーマMS18a細胞株が産生するモノクローナル抗体のアイソタイプは、H鎖はIgG1、L鎖はκであった。
h.モノクローナル抗体(MS18a)の調製と精製
8週齢の雌性Balb/cマウスに0.5ml/匹のプリスタンを腹腔内投与し、その10日後に上記dのクローニングで得られたハイブリドーマMS18a細胞株を1匹あたり約107細胞数/0.5mL/匹で腹腔内に注入した。10日後頃からマウスの腹部肥大を認めたため、開腹して腹水を採取した。採取した腹水は、1000rpm、4℃にて10分間遠心分離し、その上清を37℃、30分間放置した後、4℃で一晩静置した。12000rpm、4℃で10分間遠心分離後、得られた上清をアフィニティーカラムSepharose Protein A(アマシャム・バイオサイエンス製)を用いてモノクローナル抗体(MS18a)を精製した。この抗体溶液の260、280、320nmにおける吸光度を測定し、Werbulg−Christian法により抗体濃度を測定した。
i.ウエスタンブロッティング法によるメグシンタンパク質との反応性の確認
免疫用抗原と同様の方法で調製したメグシンタンパク質のタンパク質溶液をPBSで40ng/レーンに調整し、等量の2×loading buffer(第一化学製)と混合し、沸騰浴中で5分間加熱したものをサンプル溶液とした。該サンプル溶液をSDS電気泳動装置(第一化学製)およびトリス−グリシン緩衝液(第一化学社製)を用いて10−20%ポリアクリルアミドゲル(第一化学製)で電気泳動した。
一方、泳動中、ブロット用に3MM濾紙(Whattman製)を緩衝液A(第一化学製)に2枚、緩衝液B(第一化学製)に1枚、緩衝液C(第一化学製)に3枚浸した。またポリビニリデンジフルオライド膜(PVDF膜、Millipore製)をメタノールに浸した後、精製水に浸し水になじませた。タンパク質のPVDF膜への転写は、電気泳動後ゲルを装置から取り出し、ブロッター(ファルマシア製)に陽極側から緩衝液Aに浸した2枚の濾紙、緩衝液Bに浸した1枚の濾紙、PVDF膜、ゲル、および緩衝液Cに浸した3枚の濾紙を記載の順に置き、80mVで1.5時間で行った。転写後、PVDF膜をブロックエース(雪印乳業製)で室温で1時間振とうする事でブロッキングした。
その後、該膜をモノクローナル抗体MS18aを抗体希釈液で希釈したものと4℃で一晩反応させた。その後、アルカリフォスファターゼ標識マウスIgG抗体を加え、室温で1時間反応後、NBT−BCIP溶液で発色させた。結果を図2に示す。
レーン1はメグシンタンパク質のリガンドのひとつであるプラスミン、レーン2はメグシンタンパク質、レーン3はメグシンタンパク質とプラスミン混合物を示す。(a)は中和活性を有さないモノクローナル抗体との反応結果、(b)は本発明のモノクローナル抗体MS18aとの反応結果である。
(a)のレーン3ではプラスミン−メグシンタンパク質複合体のバンドが確認されるのに対し、モノクローナル抗体MS18aでは認められなかった。このことは、モノクローナル抗体MS18aがメグシンタンパク質単独とは反応するが、メグシンタンパク質とメグシンタンパク質のリガンドのひとつであるプラスミンとの複合体とは反応しないことを示した。
〔実施例2〕メグシンタンパク質のプラスミン酵素活性阻害作用に対する中和活性
メグシンとメグシンリガンドの一つであるプラスミンとの反応に対する中和活性を指標にして、モノクローナル抗体MS18aのメグシンタンパク質のプラスミン酵素活性阻害作用に対する中和活性を検討した。比較のためにメグシンの活性に影響を与えないことが確認されているモノクローナル抗体を用いた。
免疫用抗原と同様の方法で調製したメグシンタンパク質のタンパク質溶液を緩衝液P(0.05%tween20を含む0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8))で0.5mg/mLに調整し、96ウェルブラックマイクロプレート(NUNC製)に1μL/ウェル加え、実施例1のh.で精製したMS18a抗体1mg/mLを2:1、1:1および1:2(モル比)になるように混和し、PBSを加え、全量4μL/ウェルとした。室温、1時間反応後、bufferPで39μg/mLに調製したプラスミン(SIGMA製)溶液を1μL/ウェル加え混和し、さらに、37℃、30分間反応させた。基質溶液(0.526mM Boc−Val−Leu−Lys−MCA(ペプチド研究所製)を含むbufferP)を95μL/ウェル加え、室温、1時間反応させた後、蛍光強度(Ex 380nm、Em 460nm)を測定した。
なお、プラスミンのみ、プラスミンとメグシン、プラスミンとMS18aおよびプラスミンとメグシンとMS18aの蛍光強度から基質溶液のみ(ブランク)の蛍光強度を引いたものを、それぞれFP、FPMeg、FP18、およびFPMeg18とし、下記のようにして中和活性を求めた。図3に示すように、モノクローナル抗体MS18aはメグシンタンパク質のプラスミン酵素活性阻害作用を中和した。
IMeg=(1−FPMeg/FP)×100
I18=(1−FPMeg18/FP18)×100
中和活性(%)=(1−I18/IMeg)×100
〔実施例3〕MS18a抗体エピトープマッピング
a.ELISA法による検討
免疫用抗原と同様の方法で調製したメグシンタンパク質のタンパク質溶液をPBSで1μg/mLに調整し、100μL/ウェルでELISAプレートに4℃、一夜吸着させた。洗浄液(0.02%Tween20/PBS)で3回洗浄後、PBSで4倍に希釈したブロックエースでブロッキングを行った。別にメグシンタンパク質の反応性ループ領域(P17−P5’:EEGTEATAATGSNIVEKQLPQS/配列番号:1)の切断部位(P1−P1’)を中心にして、9〜17残基のペプチドを常法により合成した(表1)。
これらのペプチド各200μg/mLと上記h.で精製した1μg/mLのモノクローナル抗体MS18aを1:1で混合し室温、30分反応後、反応液100μL/ウェルずつ加え、室温で、2時間反応させた。プレートを洗浄後、5000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識マウスIgG抗体(ケミコン製)を100μL/ウェルずつ加え、室温で2時間反応させた。
p−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム(SIGMA 104 phosphatase substrate tablets)を基質反応液(0.5mM塩化マグネシウムを含む9.6%ジエタノールアミン緩衝液(pH9.7))に2mg/mLの濃度になるよう溶解し、基質溶液を調製した。洗浄液で5回プレートを洗浄し、該基質溶液を100μL/ウェルとなるように加えた。該基質溶液と30分間反応させた後、100μLの3NのNaOHを加え反応を停止させ、405nmの吸光度を測定した。ペプチド無添加およびエピトープに無関係のペプチドを加えたものを対照とした。高い吸光度は、抗体がペプチドと反応していないことを示している。結果を表1に示す。
b.モノクローナル抗体MS18aのメグシン阻害活性による抗体エピトープおよび中和活性の検討
表1で示したペプチドのうち、吸光度に大きな変化が認められたM107〜M112のペプチドのうち、M107、M108、M111およびM112をPBSで1mg/mLに調整し、96ウエルブラックマイクロプレート(NUNC製)に1.5μL/ウエル加え、プロテインAで精製したモノクローナル抗体MS18a(1mg/mL、1.5μL/ウエル)と混和した。室温で1時間反応後、精製メグシンタンパク質のタンパク質溶液をbuffer Pで0.5mg/mLに調整し、1μL/ウエル加えて混和した。室温で1時間反応後、bufferPで39μg/mLに調製したプラスミン(SIGMA製)溶液を1μL/ウエル加え混和し、さらに37℃で30分間反応させた。
基質溶液(0.526mMのBoc−Val−Leu−Lys−MCA(ペプチド研究所製)を含むbufferP)を95μL/ウエル加えて室温で1時間反応後、蛍光強度(Ex 380nm、Em 460nm)を測定した。なお、プラスミンのみ、プラスミン+メグシン、プラスミン+モノクローナル抗体MS18a、およびプラスミン+メグシン+モノクローナル抗体MS18aの蛍光強度から基質溶液のみ(ブランク)の蛍光強度を引いたものを、それぞれFP、FPMeg、FP18、およびFPMeg18とし、実施例2と同様にして中和活性を求めた(図4)。
表1および図4からM107およびM112との反応では中和活性が低下した。これは抗体がメグシンと反応せず、ペプチドと反応したことを示している。M107およびM112に共通するエピトープはNIVEKQ(配列番号:4)である。そこで、ペプチドNIVEKQ(配列番号:4)についてM107、M108、M111およびM112と同様に操作したところ、中和活性は低下した。故に本発明のモノクローナル抗体MS18aが認識するエピトープはNIVEKQ(配列番号:4)であることが判った。
〔実施例4〕モノクローナル抗体MS18aの特異性
本発明のモノクローナル抗体MS18aのメグシンタンパク質に対する特異性を確認するために、セルピンのひとつであるPAI−1とモノクローナル抗体MS18aの反応性について検討した。
0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8)で0.2mg/mLに調整したPAI−1(Molecular Innovations製)を96ウェルマイクロプレート(NUNC製)に2μL/ウェル加え、0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8)で5mg/mLに調整したPAI−1抗体(Biopool製)6μLまたは0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8)で4mg/mLに調整したモノクローナル抗体MS18a 7μLを混和した。室温、1時間反応後、0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8)で0.1mg/mLに調整したt−PA(Biopool製)溶液0.9μLを加え混和し、さらに、37℃、30分間反応させた。合成基質溶液(1.25mM H−D−イソロイシル−L−プロリル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン二塩酸塩(Chromogenix製)200μLを加え、室温で反応させ、吸光度(405nm)にてt−PA酵素活性を経時的に測定した。結果を図5に示す。
PAI−1にモノクローナル抗体MS18aを加えた試料は発色が認められなかった。即ち、PAI−1抗体はPAI−1のt−PA活性阻害能を中和するが、モノクローナル抗体MS18aはPAI−1に対して中和活性を示さず、PAI−1がt−PAと反応したことが示された。
〔実施例5〕中和活性を持たない抗メグシンモノクローナル抗体MS44b及び4F3のエピトープマッピング
(1)以下に示す大腸菌発現断片化メグシンを作製した。
断片 :アミノ酸配列 4−9 :267〜321
全 長 : 1〜380 5−10:322〜380
1−6 : 1〜100 2−10:101〜380
2−7 :101〜168 3−10:169〜380
3−8 :169〜266 4−10:267〜380
(2)ウエスタンブロティング
(1)で作製した断片化メグシンを電気泳動し、ウエスタンブロットを行い、モノクローナル抗体MS44b及び4F3に反応するバンドを確認した。結果は表2に示した。表中、○はモノクローナル抗体が反応したバンドが観察されたことを、×は観察されなかったことを示す。
(3)プレートを用いたELISA
断片化大腸菌メグシンのデータを元にペプチドを合成し、プレート(コバリンクNHモジュール、ヌンク製)に固相化し、以下のようにELISAを行った。
合成ペプチドをアミンカップリング法にてプレートに固相した。洗浄液で2回洗浄後、PBSで4倍希釈したブロックエースを加え、ブロッキングする。プレートに希釈した抗体100μL/wellを加え、室温で2時間反応させる。さらに洗浄液で4回洗浄後、TMBを100μL/well加え、室温で30分反応させ、450nmにおける吸光度を測定した。結果は表3に示した。
(4)競合法を用いたELISA
メグシンを96ウエルELISA用プレートに固相する。洗浄液で2回洗浄後、PBSで4倍希釈したブロックエースを加えブロッキングする。洗浄液で4回洗浄後、抗体(100ng/mL)とペプチド(2μg/mL)を混合し、各ウエルに100μL/well加え、室温で2時間反応させる。4回洗浄後、プレートに希釈した抗マウスIgG抗体100μL/wellを加え、室温で2時間反応させた。さらに、洗浄液で4回洗浄後、TMBを加え室温で30分反応後、2N硫酸を加え反応を停止し、450nmにおける吸光度を測定した。結果は表4に示した。
(5)biacore(商標)による測定
CM5チップにアミンカップリング法にてペプチドを固相し、biacoreによって抗体との反応性を測定した。結果は表5に示した。
上記の結果よりモノクローナル抗体4F3は245−260、モノクローナル抗体MS44bは291−305の範囲にエピトープが存在することが判った。中和活性を有する本発明のモノクローナル抗体が配列番号:4に記載のアミノ酸配列(メグシンのアミノ酸配列における343−348に相当)をエピトープとして認識するのに対して、中和活性を有しないモノクローナル抗体は、245−260あるいは291−305などの、配列番号:4以外の領域をエピトープとして認識していることが確認された。
産業上の利用の可能性
本発明により、メグシンの活性を中和するモノクローナル抗体が提供された。また本発明により、メグシンの反応性ループ領域に結合する抗体が、メグシンの活性を中和し得ることが確認された。メグシンは、糸球体において、メサンギウム基質の拡大、メサンギウム細胞の増殖、免疫複合体の沈着の原因となる分子である。これらの病変は、ヒトのメサンギウム増殖性糸球体腎炎に特徴的な病理像である。メサンギウム基質の拡大は、メサンギウム増殖性の腎炎をはじめとする多くの腎臓障害における重要な病変である。したがって、メグシンの活性を中和するモノクローナル抗体は、メサンギウム基質の拡大を伴う疾患の治療において有用である。
また本発明は、メグシンの活性を中和するモノクローナル抗体、その可変領域、あるいはその相補性決定領域を含む抗体可変領域を有効成分として含有する、メサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療および/または予防のための組成物を提供する。既に述べたように、メグシンは、メサンギウム増殖性糸球体腎炎を引き起こす。したがって、メグシンを中和する抗体は、メサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療または予防に有用である。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、セルピンの活性部位である反応性ループ領域の、3種類の状態における構造の違いを示す模式図。(a):活性型、(b):切断された状態、(c):伏在状態を表す。
図2は、本発明のモノクローナル抗体MS18aによるウエスタンブロット法の結果を示す染色像の写真。
図3は、本発明のモノクローナル抗体MS18aによる、メグシンタンパク質のプラスミン酵素活性阻害作用に対する中和活性を示す。図中、縦軸はモノクローナル抗体によって中和された酵素活性の割合(%)を、横軸はモノクローナル抗体の種類とメグシンとの混合比を示す。
図4は、メグシンの反応性ループ領域ペプチドがモノクローナル抗体MS18a中和活性に及ぼす影響を示す。図中、縦軸はモノクローナル抗体によって中和された酵素活性の割合(%)を、横軸はモノクローナル抗体の吸収に用いた合成ペプチドの種類を示す。
図5は、モノクローナル抗体MS18aとPAI−1の反応性を示す。(■)はt−PAのみ、(●)はt−PA+PAI−1+PAI−1抗体、(▲)はt−PA+PAI−1、(◆)はt−PA+PAI−1+モノクローナル抗体MS18aの吸光度の経時変化(OD)を示す。
Claims (8)
- 配列番号:4に記載されたアミノ酸配列からなるペプチドによって構成される
エピトープを認識し、メグシン中和活性を有するモノクローナル抗体。 - 請求項1に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系。
- FERM BP-8349として寄託されたハイブリドーマMS18a。
- FERM BP-8349として寄託されたハイブリドーマMS18aが産生するモノクローナル抗体。
- FERM BP-8349として寄託されたハイブリドーマMS18aを培養し、培養物に含まれるイムノグロブリンを回収する工程を含む、モノクローナル抗体の製造方法。
- 次の(a)−( c )のいずれかに記載の成分の有効量を含有するメサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療、および/または予防のための組成物。
( a )配列番号:4に記載されたアミノ酸配列からなるペプチドによって構成されるエピトープを認識し、メグシン中和活性を有するモノクローナル抗体またはその可変領域
( b )ハイブリドーマMS18a株により産生されるモノクローナル抗体またはその可変領域
( c )(a)−( b )のいずれかに記載の可変領域を構成する相補性決定領域を含む抗体またはその可変領域 - 次の(a)−( c )のいずれかに記載の成分をメグシンに接触させる(ただし、人間の体内を除く)工程を含む、メグシンの活性中和方法。
( a )配列番号:4に記載されたアミノ酸配列からなるペプチドによって構成されるエピトープを認識し、メグシン中和活性を有するモノクローナル抗体またはその可変領域
( b )ハイブリドーマMS18a株により産生されるモノクローナル抗体またはその可変領域
( c )(a)−( b )のいずれかに記載の可変領域を構成する相補性決定領域を含む抗体またはその可変領域 - 次の(a)−( c )のいずれかに記載の成分を有効成分として含有する、メグシンの活性中和剤。
( a )配列番号:4に記載されたアミノ酸配列からなるペプチドによって構成されるエピトープを認識し、メグシン中和活性を有するモノクローナル抗体またはその可変領域
( b )ハイブリドーマMS18a株により産生されるモノクローナル抗体またはその可変領域
( c )(a)−( b )のいずれかに記載の可変領域を構成する相補性決定領域を含む抗体またはその可変領域
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