JP2006075170A - メグシンタンパク質 - Google Patents

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Abstract

【課題】メサンギウム細胞で特異的に発現される遺伝子を提供する。
【解決手段】メサンギウム細胞に特異的に発現しているDNA、該DNAのコードするタンパク質、該タンパク質に結合する抗体等を提供する。これらはメサンギウム細胞特有のものであり、メサンギウム細胞の同定、メサンギウム細胞の異常の検出などに有用である。更に、該タンパク質の機能からメサンギウム細胞の機能が明らかになり、メサンギウム細胞に関連する疾患の原因究明への展開が期待される。また、メサンギウム細胞に関連する疾病の治療、診断等への応用が期待される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、遺伝子工学の分野に属し、特に腎細胞の遺伝子の単離に関する。
体内の60兆個もの様々な細胞が、本質的に同一のゲノムDNAを有している。正常な生理学的機能のために、これらの遺伝子の発現は、細胞系統、および細胞が受容するシグナルにより厳密に制御されている。従って、個々の細胞型で特異的に発現している遺伝子を解明することは極めて重要である。
メサンギウム細胞は、腎糸球体の構造および機能の維持に中心的な役割を果たしている。そして、メサンギウム細胞(mesangium cell)は、各種腎炎において障害の標的となっている。例えば、メサンギウム細胞の増殖、および細胞外の糸球体間質マトリックスの蓄積は、慢性腎炎および糖尿病性腎症のような様々な糸球体疾患の患者に糸球体硬化症をもたらす最初の過程とされている。従って、メサンギウム細胞で特異的に発現している遺伝子を見いだしその機能を明らかにすることは、メサンギウム細胞の生物学的性質の解明、メサンギウム細胞に関連する疾患の原因の究明、ひいては、メサンギウム細胞に関連する疾病の治療、診断等に有効である。
メサンギウム細胞のマーカーとしては、ラットではThy1抗原が知られている。しかしこの遺伝子はメサンギウム細胞特異的ではないうえ、ヒトではメサンギウム細胞には発現していない(Miyata T. et al., Immunology(1989); 67: 531-533; Miyata T. et al., Immunology(1990); 69: 391-395)。また、メサンギウム細胞は活性化されるとα平滑筋アクチンを発現することが知られているが、この遺伝子もメサンギウム細胞特異的ではない。このように、メサンギウム細胞で特異的に発現される遺伝子については、従来報告がなかった。
本発明は、メサンギウム細胞で特異的に発現される遺伝子を単離することを課題とする。
本発明者らは、ヒトメサンギウム細胞のインビトロ培養物からmRNAを単離し、3'側のcDNAライブラリーを作成した。そして、該cDNAライブラリーの中からランダムに多数のクローンの配列を決定し、該塩基配列を、種々の臓器及び細胞から得られた既知の3'側のcDNAクローンの塩基配列と比較することによって、メサンギウム細胞で特異的に発現しているクローンを選択した。そのうち、メサンギウム細胞において最も出現頻度の高い1クローンを選択し、5'RACE法によって完全長cDNAを単離し(発現産物をヒトMEGSINと命名)、全塩基配列を決定し、該cDNAを大腸菌で発現させた(ヒトMEGSINcDNAの塩基配列を配列番号:1に、ヒトMEGSINの推定アミノ酸配列を配列番号:2に示す)。そして、SwissProtデータベースのアミノ酸配列とホモロジー検索を行い、MEGSINがSERPINスーパーファミリー[R. Carrell et al., Trends Biochem. Sci. 10, 20 (1985); R. Carrell et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 52, 527 (1987); E. K. O. Kruithof et al., Blood 86, 4007 (1995); J. Potempa et al., J. Biol. Chem. 269,15957(1994); E. Remold-O'Donnell. FEBS Let. 315, 105 (1993)]に属することを見いだした。更に、ノザンブロッティングにより組織分布をみたところ、MEGSINは、ヒト繊維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、ケラチノサイトでは発現が弱く、メサンギウム細胞特異的に発現していることが確認された。また、IgA腎症患者と健常人とで腎臓組織中のMEGSINの発現量を比較したところ、IgA腎症患者においてMEGSINが有意に発現量が多いことを見いだした。更に、抗MEGSINポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を作成した。加えて本発明は、マウスとラットにおけるMEGSINのホモログについても、その構造を明らかにした。マウスMEGSINとラットMEGSINについては、そのcDNAの塩基配列を配列番号:3および配列番号:5に、そして推定アミノ酸配列を配列番号:4および配列番号:6に示した。
即ち、本発明は具体的には以下のものを含む。
〔1〕 配列番号:2、配列番号:4、または配列番号:6のいずれかに記載のアミノ酸配列、またはこれらアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、これらのアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質。
〔2〕 配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む〔1〕のタンパク質。
〔3〕 〔1〕に記載のタンパク質をコードするDNA。
〔4〕 配列番号:1、配列番号:3、および配列番号:5からなる群から選択された塩基配列を含む〔3〕記載のDNA。
〔5〕 配列番号:1、配列番号:3、および配列番号:5からなる群から選択された塩基配列を持つDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、〔1〕に記載のタンパク質またはこれらタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNA。
〔6〕 〔3〕、〔4〕、および〔5〕のいずれかに記載のDNAを含むことを特徴とするベクター。
〔7〕 〔3〕、〔4〕、および〔5〕のいずれかに記載のDNAを発現可能に保持する形質転換細胞。
〔8〕 〔7に記載の形質転換細胞を培養し、〔3〕、〔4〕、および〔5〕のいずれかに記載のDNAの発現産物を回収することを特徴とする、〔1〕に記載のタンパク質の製造方法。
〔9〕 〔1〕に記載のタンパク質に結合することを特徴とする抗体。
〔10〕 配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6に記載されたアミノ酸配列から選択されたアミノ酸配列を持つタンパク質のエピトープを認識する〔9〕の抗体。
〔11〕 抗体がモノクローナル抗体である〔10〕の抗体。
〔12〕 〔10〕または〔11〕のいずれかに記載の抗体と〔2〕のタンパク質、またはその断片との免疫学的な結合に基づいて〔2〕のタンパク質またはその断片を測定する免疫学的測定方法。
〔13〕 〔10〕または〔11〕のいずれかに記載の抗体を含む〔2〕のタンパク質またはその断片の免疫学的測定用試薬。
〔14〕 生体試料中に含まれる〔2〕のタンパク質またはその断片を測定し、正常試料から得られた測定値と比較することによってメサンギウム増殖性腎症を検出する方法。
〔15〕 メグシンをコードする遺伝子の発現レベルを変化させたトランスジェニック非ヒト脊椎動物。
〔16〕 非ヒト脊椎動物がマウスである〔16〕のトランスジェニック非ヒト脊椎動物。
〔17〕 メグシンをコードする遺伝子の発現が抑制されたノックアウトマウスである〔15〕のトランスジェニック非ヒト脊椎動物。
なお、全長cDNAライブラリーでは、mRNAの部分分解または不完全な第1鎖合成のために、同じ転写産物のcDNAの5'-末端が異なる配列を有することが多い。さらに、その3'-末端のヌクレオチド配列は、poly(A)におけるプライマー伸長のずれにより、一般的なプライマーを用いたチェーンターミネーション法で決定することが困難である。ESTデータベースを構築するために用いられているランダムプライムcDNAライブラリーは、新規な遺伝子を見つけだすのに有用である。しかし、2つの部分配列が一つの遺伝子の異なる部分を形成しているのか、異なる転写産物を形成しているのかが明らかでないため、遺伝子の特徴配列を得るために用いることはできない。従って、本発明者らは、3'-方向領域cDNAライブラリーを用いた。この方法により、cDNAの大きさを反映するクローニング効率の変動を回避することができる。3'領域の配列は特有なものであり、約200〜300bpの配列データは、遺伝子の特徴を明らかにするのに充分である。
本発明のヒトMEGSINをコードするDNAは、メサンギウム細胞からmRNAを調製した後、既知の方法により二本鎖cDNAに変換することにより得ることができる。mRNAの調製はグアニジンイソチオシアネート−塩化セシウム法[Chirwin, et al. Biochemistry 18, 5294 (1979)]、デオキシリボヌクレアーゼ存在下に界面活性剤処理、フェノール処理を行なう方法[Berger&Birkenmeier, Biochemistry 18, 5143 (1979)]などを用いることができる。全RNAからのpoly(A)+RNAの調製はオリゴ(dT)を結合した担体、例えばセファロース、セルロースやラテックス粒子等を用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを用いて行なうことができる。上記のごとくして得たRNAを鋳型として、3'端にあるpoly(A)鎖に相補的なオリゴ(dT)またはランダムプライマーあるいはMEGSINのアミノ酸配列の一部に相応する合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして逆転写酵素で処理し、このようにして得られたmRNAに相補的なDNA(cDNA)からなるハイブリッドのmRNA鎖を例えばE. Coli RNase H、E. Coli DNA polymerase I、E. Coli DNA Ligaseで処理し、DNA鎖に置換することにより、二本鎖cDNAを得ることができる。
ヒトMEGSIN遺伝子塩基配列をもとに合成したプライマーを用いて、メサンギウム細胞poly(A)+RNAを鋳形にしてRT-PCR法によりクローニングすることも可能である。また、PCRによらず、ヒトMEGSIN遺伝子塩基配列をもとにプローブを合成し、直接cDNAライブラリーをスクリーニングし、目的とするcDNAを得ることもできる。本発明の遺伝子は、これらの方法により得られた遺伝子の中から、その遺伝子の塩基配列を確認することにより、選択することができる。マウスとラットのMEGSINについても、同様の手法によりcDNAの取得が可能である。
あるいは、マウス、ラットMEGSINcDNAを以下のような手法によって単離することも可能である。すなわち、前記ヒトMEGSINcDNAより他のSERPINスーパーファミリーに属するものと比較的保存度の高い領域(197-380A.A.)、保存度が低い領域(1-196A.A.)、MEGSINオープンリーディングフレーム全長cDNA(1-380A.A.)の三種類のプローブを用いて、マウス、ラットの組織、培養メサンギウム細胞からmRNAを抽出しcDNAライブラリーを作成することにより、または、市販cDNAライブラリー(フナコシ)を用いることによりコロニーハイブリダイゼーションを行うことによって取得することができる。また、同時に、前述プローブ作成と同様に比較的保存度の高い領域(197-380A.A.)、保存度が低い領域(1-196A.A.)でプライマーを作製し、マウス、ラットの組織、培養メサンギウム細胞から抽出したmRNAからRT-PCR法を用いてクローニングを行うことによりマウス、ラットMEGSINcDNAを取得することができる。また、ゲノムの取得に関しても市販ライブラリー(フナコシ)を用いてヒトの場合と同様の方法でプラークハイブリダイゼーション法を行うことにより取得することができる。
ヒトMEGSINゲノムは、ヒトBリンパ芽球からゲノムを調製し、Sau3で部分的に切断したDNAをファージベクターであるEMBL3に、もしくは、ヒトX染色体ライブラリーをファージベクターであるCharon35に組み込んだゲノミックライブラリー(Blood, vol 83, No 11, 1994: pp3126-3131、参照)を用いることにより、既に分かっているMEGSINcDNAのオープンリーディングフレーム全ての領域(1143bp)またはcDNA部分をプライマーとしてヒトゲノムDNAをPCR法を用いて増幅することにより得られた各エキソン−イントロン部分をプローブとすることによりプラークハイブリダイゼーション法(新細胞工学実験プロトコール、秀潤社、pp79-92、参照)を行い取得できる。また、同時に調節領域に関しても、ヒト培養メサンギウム細胞由来mRNA、もしくはヒト腎臓mRNA(Clontech社より購入)を鋳型として、5'RACE法(5'-Full RACE Core Set(宝酒造(株)の方法に従う))を用いて5'UT領域の配列決定を行うことができる。
本発明の遺伝子は、例えばホスホアミダイド法[Mattencci, M.D. &Caruthers, M. H. J. Am. Chem. Soc. 103, 3185(1981)]、ホスファイト・トリエステル法[Hunkapiller, M. et al. Nature 310, 105 (1984)]等の核酸の化学合成を用いる常法に従って製造することもできる。
なお、一般に、真核生物の遺伝子はヒトインターフェロン遺伝子で知られているように多形現象を示すことが多く、この多形現象によって1個あるいはそれ以上のアミノ酸が置換される場合もあるが、通常蛋白質の活性は維持される。また、一般に、1個または数個のアミノ酸配列の改変によって、蛋白質の活性が維持される場合が多いことが知られている。従って、配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6のいずれかに示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子を人工的に改変したものを用いて得られたタンパク質をコードする遺伝子は、該タンパク質が本発明の遺伝子の特徴的な機能を有する限り、すべて本発明に含まれる。また、配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6のいずれかに示されるアミノ酸配列を人工的に改変したタンパク質は、本発明のタンパク質の特徴を有する限り、すべて本発明に含まれる。
即ち、本発明のタンパク質には、配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6のいずれかに記載のアミノ酸配列、またはこれらアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、SERPINスーパーファミリーに属するタンパク質が含まれる。ここで、SERPINスーパーファミリーとは、アンチトロンビンIII、ヘパリンコファクターII、α1−アンチトリプシン、α1−アンチキモトリプシン、プロテインCインヒビター、α2−プラスミンインヒビター、C1インヒビターなど、血中の主要なセリンプロテアーゼインヒビターとアミノ酸配列が相互に少なくとも20%同一であるものをいい、必ずしもセリンプロテアーゼ阻害活性を示す必要はない。[R. Carrell et al., Trends Biochem. Sci. 10, 20 (1985); R. Carrell et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 52, 527 (1987); E. K. O. Kruithof et al., Blood 86, 4007 (1995); J. Potempa et al., J. Biol. Chem. 269,15957(1994); E. Remold-O'Donnell. FEBS Let. 315, 105 (1993)参照]
更に、本発明のタンパク質には「配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6のいずれかに記載のアミノ酸配列、またはこれらアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、ヒト繊維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、ケラチノサイトでは発現が弱く、メサンギウム細胞で発現しているタンパク質」が含まれる。あるいは、「配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6のいずれかに記載のアミノ酸配列、またはこれらアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、哺乳類メサンギウム細胞で特に強く発現しているタンパク質」が含まれる。更に、「配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6のいずれかに記載のアミノ酸配列、またはこれらアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、セリンプロテアーゼ阻害活性を有するタンパク質」などが含まれる。これらの類似体は、いずれも本発明によるMEGSINを構成する。したがって、具体的に構造を明らかにしたヒト、ラット、およびマウスのMEGSINのみならず、構造的にあるいは機能的に同等な他の種のホモログは本発明に含まれる。
また、本発明のDNAには、これらのタンパク質をコードするDNAが含まれる。これらのタンパク質をコードするDNAは、cDNAのみならずゲノムDNAや合成DNAであることもできる。
また、所望のアミノ酸に対するコドンはそれ自体公知であり、その選択も任意でよく、例えば利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して常法に従い決定できる[Grantham, R. et al. Nucleic Acids Res. 9, r43 (1981)]。従って、コドンの縮重を考慮して、DNAを適宜改変したものもまた本発明のDNAに含まれる。さらに、これら核酸配列のコドンの一部改変は、常法に従い、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用した部位特異的変位導入法(sitespecific mutagenesis)[Mark, D.F. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81,5662 (1984)]等に従うことができる。
更に、配列番号:1、配列番号:3、および配列番号:5のいずれかに記載の塩基配列を含むDNAとハイブリダイズすることができ、かつそのDNAによってコードされるタンパク質が本発明によるMEGSINに特徴的な機能を有する限り、そのDNAは本発明によるDNAに含まれる。ストリンジェントな条件下で特定配列にハイブリダイズすることができる配列は、特定配列がコードするタンパク質と類似した活性を持つものが多いと考えられる。
変異体も含め本発明によるDNAの塩基配列は、公知の技術に基づいてさまざまな用途に利用することができる。
このようにしてクローン化されたMEGSINをコードする遺伝子は適当な発現ベクターDNAに組み込むことにより、他の原核細胞または真核細胞の宿主を形質転換させることができる。さらに、これらの発現ベクターに適当なプロモーターおよび形質発現に係る配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞において遺伝子を発現することが可能である。発現ベクターとしては、例えば大腸菌の場合は、pET-3[Studier & Moffatt, J. Mol. Biol. 189, 113(1986)]等が、COS細胞の場合はpEF-BOS[Nucleic Acids Research 18,5322 (1990)]、pSV2-gpt[Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. 78, 2072 (1981)]等が、CHO細胞の場合はpVY1[国際公開第89/03874号公報]等がそれぞれ挙げられる。また、目的とする遺伝子に他のポリペプチドをコードする遺伝子を連結して融合蛋白質として発現させることにより、精製を容易にし、その後目的蛋白質を切り出すことも可能である。
本発明の発現系に用いる宿主のうち原核生物宿主細胞としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)が挙げられる。また真核生物のうち、真核微生物の宿主細胞としては、例えばサッカロミセス・セレビシェー(Saccharomyces cervisiae)等が挙げられ、哺乳動物由来の宿主細胞としては、例えばCOS細胞、CHO細胞、BHK細胞等が挙げられる。なお、本発明の形質転換体の培養は、宿主細胞に適した培養条件を適宜選択して行なえばよい。
以上のようにして目的とするMEGSINをコードする遺伝子で形質転換した形質転換体を培養し、産生されたMEGSINは、細胞内または細胞外から分離し均一なタンパク質にまで精製することができる。なお、本発明の目的蛋白質であるMEGSINの分離、精製は、通常の蛋白質で用いられる分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば各種クロマトグラフィー等を適宜選択し、組み合わせれば、MEGSINは分離、精製することができる。
なお、上述の他、本発明の遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該ベクターによる形質転換体および該遺伝子を用いたMEGSINの製造過程における遺伝子操作の処理手段は、「Molecular Cloning-A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. )に記載の常法に従って行うことができる。
この他、配列番号:1、配列番号:3、および配列番号:5のいずれかに記載の塩基配列に基づいて、MEGSIN遺伝子を検出するためのプローブを設定することができる。あるいは、これらの塩基配列を含むDNAやRNAを増幅するためのプライマーを設定することができる。与えられた配列をもとに、プローブやプライマーを設定することは当業者が日常的に行っていることである。設定された塩基配列を持つオリゴヌクレオチドは化学合成によって得ることができる。そしてそのオリゴヌクレオチドに適当な標識を付加すれば、さまざまなフォーマットのハイブリダイゼーションアッセイに利用することができる。あるいは、PCRのような核酸の合成反応に利用することができる。プローブやプライマーに利用するオリゴヌクレオチドは、少なくとも15塩基、好適には25-50塩基の長さとするのが望ましい。
更に本発明が提供するMEGSINのcDNA塩基配列に基づいて、ゲノム中に存在するMEGSIN遺伝子のプロモーター領域、エンハンサー領域を取得することができる。具体的には、特開平6-181767号公報、「The Journal of Immunology(1995)155,2477-2486, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995),92,3561-3565」等と同様の方法でこれらの制御領域の取得が可能である。なお、本明細書において、プロモーター領域とは転写開始部位の上流に存在する遺伝子の発現を制御するDNA領域を、エンハンサー領域とはイントロンまたは3'非翻訳領域に存在する遺伝子の発現を制御するDNA領域をいう。
具体的には、プロモーター領域は、例えば、以下の方法によって取得することができる。
1)MEGSINのcDNAの5’末端側をプローブとし、ヒトゲノムライブラリーよりMEGSINのプロモーター領域をクローニングする。
2)制限酵素消化してMEGSIN遺伝子の翻訳開始コドンを含むその上流部分(2〜5kbp)のプロモーター領域を含むDNAを得、塩基配列を決定する。ヒトメサンギウム細胞から調製したpoly(A)-RNAを鋳型とし、MEGSIN遺伝子の5'末端側cDNA配列より選択したプライマーDNAを用いたプライマー伸長法により、転写開始点(+1)を決定する。塩基配列から転写因子結合配列を検索し、プロモーター活性を有する可能性がある箇所を予想する。
3)2)で得たDNAからMEGSIN遺伝子のコード領域を除いたDNA断片をプラスミド上にサブクローニングし、この2〜5kbpDNA断片の下流に、レポーター遺伝子としてのクロラムフェニコールアセチル転位酵素(CAT)遺伝子、あるいは、ルシフェラーゼ遺伝子を連結したレポータープラスミドを構築する。同様に、プロモーター領域の可能性がある各箇所を含むような形で、制限酵素消化により、或いは、PCRにより、5'末端側及び3'末端側を順次削ったMEGSIN遺伝子上流部分の様々な部位に該当するDNA断片を作成し、これらの下流に、レポーター遺伝子としてのCAT遺伝子、あるいは、ルシフェラーゼ遺伝子を連結したレポータープラスミドを構築する。
4)3)で作製したレポータープラスミドで形質転換した動物細胞のCAT或いはルシフェラーゼ活性を測定することにより、MEGSIN遺伝子上流部分に存在するプロモーター領域を得る。
また、3' 非コード領域、イントロン中のエンハンサー領域は、MEGSINcDNAをプローブとし、ヒトゲノムライブラリーよりヒトMEGSINのゲノム遺伝子をクローニングし、上述のプロモーターに関する方法と同様にして、エンハンサー活性を有する領域を得ることができる。
MEGSIN遺伝子の発現を制御している転写因子は、「新細胞工学実験プロトコール(秀潤社)」、「バイオマニュアルシリーズ5転写因子研究法(羊土社)」、「DNA & Cell Biology, 13, 731-742 (1994)」に記載の方法等の公知の方法、例えば、アフィニティーカラムを用いた方法、サウスウエスタン法、フットプリンティング法、ゲルシフト法、またはone-hybrid法で得ることができる。なお、本明細書において、転写因子とはMEGSIN遺伝子の転写を調節している因子で、転写の開始反応を誘導する転写開始因子と、転写を正または負に調節する転写調節因子をさす。アフィニティーカラム法を用いる場合は、前述の方法で得た、プロモーター領域、エンハンサー領域をセファロース或いはラテックスビーズに固定化したカラムに、核抽出液をかけ、カラムを洗浄後、カラムに固定化した配列と同様の配列を有するDNAを用い、結合した転写因子を溶出することによって、MEGSIN遺伝子の発現を制御している転写因子を得ることができる。
また、サウスウエスタン法を用いる場合は、大腸菌の発現ベクター、例えばλgt11にcDNAを挿入し、β−ガラクトシダーゼとの融合蛋白質を合成させ、ニトロセルロース膜に該融合蛋白質を吸着させて、放射性同位元素で標識されたプロモーター領域、エンハンサー領域のDNA断片をプローブにし、結合活性をもつ融合蛋白質を合成するファージを選択することによって、MEGSIN遺伝子の発現を制御している転写因子を得ることができる。
本発明はまた、MEGSINを認識する抗体を提供する。本発明の抗体には、例えば、配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質に対する抗体が含まれる。MEGSINまたは本発明のMEGSINの部分ペプチドに対する抗体(例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体)または抗血清は、本発明のMEGSIN、本発明のMEGSINの部分ペプチド、あるいは本発明によるHis-Tag-MEGSINやMBP-MEGSINのような融合タンパク質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、後述の方法に従って製造することができる。
本発明のMEGSIN、または本発明のMEGSINの部分ペプチドは、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体又は担体、希釈剤と共に投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常1〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えばサル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば後記の標識化MEGSINと抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することによりなされる。融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法(Nature, 256, 495 (1975))に従い実施できる。融合促進剤としてはポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウイルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては例えばX-63Ag8、NS-1、P3U1、SP2/0、AP-1などが挙げられるが、X-63Ag8が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:20〜20:1であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。抗MEGSIN抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えばMEGSIN抗原を直接又は担体と共に吸着させた固相(例えば、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した抗MEGSINモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体又はプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したMEGSINを加え、固相に結合した抗MEGSINモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
抗MEGSINモノクローナル抗体の選別およびクローニングは、自体公知またはそれに準じる方法に従って行うことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行われる。選別、クローニングおよび育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いてもよい。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI1640培地(大日本製薬(株))、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))、またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM-101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行われる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗MEGSIN抗体価の測定と同様にして測定できる。クローニングは、通常半固体アッガー法や限界希釈法などのそれ自体公知の方法で行うことができ、クローン化されたハイブリドーマは、好ましくは無血清培地中で培養され、至適量の抗体をその上清に与える。目的のモノクローナル抗体は好ましくは腹水化して得ることもできる。
本発明によるモノクローナル抗体は、MEGSINに特異的なエピトープを認識するものを選択することによって他のタンパク質と交差しないものとすることができる。一般的に、そのタンパク質を構成するアミノ酸配列の中から、連続する少なくとも7以上のアミノ酸残基、望ましくは10-20アミノ酸のアミノ酸配列によって提示されるエピトープは、そのタンパク質に固有のエピトープを示すといわれている。したがって、配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6のいずれかに記載されたアミノ酸配列から選択され、かつ連続する少なくとも7アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を持つペプチドによって構成されるエピトープを認識するモノクローナル抗体は、本発明におけるMEGSIN特異的なモノクローナル抗体といえる。配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6に記載されたアミノ酸配列の間で保存されたアミノ酸配列を選べば、MEGSINファミリーに共通のエピトープを選択することができる。あるいは各配列に特異的なアミノ酸配列を含む領域であれば、種間の識別が可能なモノクローナル抗体を選択することができる。
抗MEGSINモノクローナル抗体の分離精製は通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法に従って行われる。公知の精製法としては、例えば、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例えばDEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲル濾過法、抗原結合固相またはプロテインAまたはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法のような手法を示すことができる。
このようにして得られたMEGSINを認識する本発明によるモノクローナル抗体並びにポリクローナル抗体は、メサンギウム細胞に関連する疾病の診断や治療に利用することが可能である。これらの抗体を用いてMEGSINを測定する方法としては、不溶性担体に結合させた抗体と標識化抗体とによりMEGSINを反応させて生成したサンドイッチ錯体を検出するサンドイッチ法、また、標識ヒト尿由来MEGSINと検体中のヒト尿由来MEGSINを抗体と競合的に反応させ、抗体と反応した標識抗原量から検体中のヒト尿由来MEGSINを測定する競合法を利用して検体中のヒト尿由来MEGSINを測定することができる。
サンドイッチ法によるヒト尿由来MEGSINの測定においては、まず、固定化抗体とヒト尿由来MEGSINとを反応させた後、未反応物を洗浄によって完全に除去し、標識化抗体を添加して固定化抗体−ヒト尿由来MEGSIN標識化抗体を形成させる2ステップ法若しくは固定化抗体、標識化抗体及びヒト尿由来MEGSINを同時に混合する1ステップ法などを用いることができる。
測定に使用される不溶性担体は、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ナイロン、ポリアセタール、フッ素樹脂等の合成樹脂、セルロース、アガロース等の多糖類、ガラス、金属などが挙げられる。不溶性担体の形状としては、例えばトレイ状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、試験管等の種々の形状を用いることができる。抗体を吸着した担体は、適宜アジ化ナトリウム等の防腐剤の存在下、冷所に保存する。
抗体の固相化は、公知の化学結合法又は物理的吸着法を用いることができる。化学的結合法としては例えばグルタルアルデヒドを用いる方法、N-スクシニイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート及びN-スクシニイミジル-2-マレイミドアセテートなどを用いるマレイミド法、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸などを用いるカルボジイミド法が挙げられる。その他、マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシサクシニミドエステル法、N-サクシミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸法、ビスジアゾ化ベンジジン法、ジパルミチルリジン法が挙げられる。あるいは、先に被検出物質とエピトープの異なる2種類の抗体を反応させて形成させた複合体を、抗体に対する第3の抗体を上記の方法で固相化させておいて捕捉することも可能である。
標識物質は、免疫学的測定法に使用することができるものであれば特に限定されない。具体的には、酵素、蛍光物質、発光物質、放射性物質、金属キレート等を使用することができる。好ましい標識酵素としては、例えばペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、α-グリセロールホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、西洋わさびパーオキシダーゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼ等が挙げられる。好ましい蛍光物質としては、例えばフルオレセインイソチアネート、フィコビリプロテイン、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、およびオルトフタルアルデヒド等が挙げられる。好ましい発光物質としてはイソルミノール、ルシゲニン、ルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びその修飾エステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリン等が挙げられる。そして好ましい放射性物質としては、125I、127I、131I、14C、3H、32P、あるいは35S等が挙げられる。
前記標識物質を抗体に結合する手法は公知である。具体的には、直接標識と間接標識が利用できる。直接標識としては、架橋剤によって抗体、あるいは抗体断片と標識とを化学的に共有結合する方法が一般的である。架橋剤としては、N,N'-オルトフェニレンジマレイミド、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン酸・N-スクシンイミドエステル、6-マレイミドヘキサン酸・N-スクシンイミドエステル、4,4'-ジチオピリジン、その他公知の架橋剤を利用することができる。これらの架橋剤と酵素および抗体との反応は、それぞれの架橋剤の性質に応じて既知の方法に従って行えばよい。この他、抗体にビオチン、ジニトロフェニル、ピリドキサール又はフルオレサミンのような低分子ハプテンを結合させておき、これを認識する結合成分によって間接的に標識する方法を採用することもできる。ビオチンに対してはアビジンやストレプトアビジンが認識リガンドとして利用される。一方、ジニトロフェニル、ピリドキサール又はフルオレサミンについては、これらのハプテンを認識する抗体が標識される。抗体を標識する場合、西洋わさびペルオキシダーゼを標識化酵素として用いることができる。本酵素は多くの基質と反応することができ、過ヨウ素酸法によって容易に抗体に結合させることができるので有利である。また、抗体としては場合によっては、そのフラグメント、例えばFab'、Fab、F(ab')2を用いる。また、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体にかかわらず同様の処理により酵素標識体を得ることができる。上記架橋剤を用いて得られる酵素標識体はアフィニティークロマトグラフィー等の公知の方法にて精製すれば更に感度の高い免疫測定系が可能となる。精製した酵素標識化抗体は、防腐剤としてチメロサール(Thimerosal)等を、そして安定剤としてグリセリン等を加えて保存する。標識抗体は、凍結乾燥して冷暗所に保存することにより、より長期にわたって保存することができる。
標識化剤が酵素である場合には、その活性を測定するために基質、必要により発色剤が用いられる。酵素としてペルオキシダーゼを用いる場合には、基質溶液としてH2O2を用い、発色剤として2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸]アンモニウム塩(ABTS)、5-アミノサリチル酸、オルトフェニレンジアミン、4-アミノアンチピリン、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン等を使用することができる。酵素にアルカリフォスファターゼを用いる場合は、基質としてオルトニトロフェニルフォスフェート、パラニトロフェニルリン酸等を使用することができる。酵素にβ-D-ガラクトシダーゼを用いる場合は基質としてフルオレセイン-ジ-(β-D-ガラクトピラノシド)、4-メチルウンベリフェニル-β-D-ガラクトピラノシド等を使用することができる。本発明は、また、前述のモノクローナル抗体、あるいはポリクローナル抗体を標識して、あるいは固相化してMEGSINの免疫学的測定用試薬としたもの、更にはこの試薬に標識検出用の指示薬や対照試料等をキット化したのものをも含むものである。
本発明におけるMEGSINの測定対象は、血漿、血清、血液、尿、組織液、あるいは脳脊髄液等の体液等、MEGSIN、あるいはMEGSINの前駆体や断片を含む生体試料であれば限定されない。これらの生体試料の中でも特に尿においては、メサンギウム細胞の増殖や活性化に伴って高い頻度でMEGSINが検出されるようになる。したがって、尿中MEGSINの測定は、IgA腎症などのメサンギウム増殖性腎症のマーカーとして有用である。
加えて本発明は、MEGSIN遺伝子の発現レベルを変化させたトランスジェニック非脊椎動物に関する。ここでMEGSIN遺伝子とは、MEGSINをコードするcDNA、ゲノムDNAあるいは合成DNAを含む。また、遺伝子の発現には、転写と翻訳のいずれのステップも含まれる。本発明によるトランスジェニック動物は、MEGSINの機能あるいは発現調節の研究、ヒトのメサンギウム細胞に関連する疾患のメカニズムの解明、医薬品のスクリーニング・安全性に用いる疾患モデル動物の開発に有用である。
本発明においては、MEGSIN遺伝子の発現を正常に調節しているいくつかの重要な部位(エンハンサー、プロモーター、イントロン等)の一部に欠失、置換、挿入などの変異を起こさせることにより、本来の遺伝子の発現レベルと比較して人工的に上昇または下降するように修飾することができる。このような修飾は、MEGSIN遺伝子の転写の調節である。一方、エキソンの一部を欠損させたり、翻訳領域への点突然変異の導入により終止コドンへ置換することにより、タンパク質への翻訳を修飾することもできる。この変異の導入は、公知の方法により行うことができ、トランスジェニック動物を得ることができる。
トランスジェニック動物とは狭義には遺伝子組換えにより、外来遺伝子が生殖細胞に人為的に導入された動物のことをいい、広義にはアンチセンスRNAを用いて特定の遺伝子の機能を抑えたアンチセンス・トランスジェニック動物や、胚性幹細胞(ES細胞)を用いて特定の遺伝子をノックアウトさせた動物、点突然変異DNAを導入した動物を含み、個体発生の初期に外来遺伝子が安定して染色体に導入され、その子孫に遺伝形質として伝達され得る動物のことをいう。本明細書中でいうトランスジェニック動物とはヒト以外のすべての脊椎動物を含む。
トランスジェニック動物の作製方法は、遺伝子と卵を混合させてリン酸カルシウムで処理する方法や、位相差顕微鏡下で前核期卵の核に、微小ピペットで遺伝子を直接導入する方法(マイクロインジェクション法、米国特許第4873191号)、胚性幹細胞(ES細胞)を使用する方法などがある。その他、レトロウィルスベクターに遺伝子を挿入し、卵に感染させる方法、また、精子を介して遺伝子を卵に導入する精子ベクター法等が開発されている。精子ベクター法とは、精子に外来遺伝子を付着またはエレクトロポレーション等の方法で精子細胞内に取り込ませた後に、卵子に受精させることにより、外来遺伝子を導入する遺伝子組換え法である(M. Lavitranoet らCell, 57, 717, 1989)。
あるいはバクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系やSaccharomyces cerevisiaeのFLPリコンビナーゼ系等のin vivoにおいて部位特異的遺伝子組み換えを用いることもできる。また、レトロウィルスを使用して、非ヒト動物へ目的タンパク質のトランスジーンを導入する方法も報告されている。
マイクロインジェクション法によるトランスジェニック動物作製方法は、例えば以下に示すようにして行われる。まず、発現制御に関わるプロモーター、特定のタンパク質をコードする遺伝子、ポリAシグナルから基本的に構成されるトランスジーンが必要である。プロモーター活性により特定分子の発現様式や発現量が左右され、また、導入トランスジーンのコピー数や染色体上の導入部位により作製されたトランスジェニック動物は系統間で異なるため、各系統間で発現様式・発現量を確認する。非翻訳領域やスプライシングにより発現量が変化することが判明しているため、予めポリAシグナルの前にスプライシングされるイントロン配列を導入してもよい。受精卵に導入する遺伝子はできるだけ純度の高いものを使用することが重要である。使用する動物としては、受精卵採取用マウス(5〜6週齢)、交配用雄マウス、偽妊娠雌マウス、輸精管結紮雄マウス等が用いられる。
効率よく受精卵を得るために、ゴナドトロピン等により排卵を誘発してもよい。受精卵を回収し、マイクロインジェクション法にて卵の雄性前核にインジェクションピペット中の遺伝子を注入する。
注入した卵を輸卵管に戻すための動物(偽妊娠雌マウス等)を用意し、一匹に対して約10〜15個を移植する。その後、誕生したマウスにトランスジーンが導入されているか否か、尾の先端部からゲノムDNAを抽出し、サザン法あるいはPCR法によりトランスジーンを検出するか、あるいは相同組み換えが起こったときのみに活性化するマーカー遺伝子を挿入したポジティブクローニング法により選択することができる。さらに、トランスジーンの発現を確認するため、ノザン法もしくはRT-PCR法によりトランスジーン由来転写産物を検出する。または、タンパク質に対する特異的抗体によって、ウェスタンブロッティング法による検出も可能である。
本発明のノックアウトマウスは、マウスMEGSIN遺伝子の機能が失われるように処理されたものである。 ノックアウトマウスとは相同組換え技術で任意の遺伝子を破壊し、機能を欠損させたトランスジェニックマウスをいう。胚性幹細胞を用いて相同組換えを行い、一方の対立遺伝子を改変・破壊した胚性幹細胞を選別し、ノックアウトマウスを作製することができる。例えば、受精卵の胚盤胞や8細胞期胚に遺伝子を操作した胚性幹細胞を注入して、胚性幹細胞由来の細胞と胚由来の細胞が混ざったキメラマウスを得る。このキメラマウス(キメラとは、2個以上の受精卵に基づいた体細胞で形成される単一個体をいう)と正常マウスを交配すると、一方の対立遺伝子の全てが改変・破壊されたヘテロ接合体マウスを作製することができる。さらに、ヘテロ接合体マウス同士を交配することで、ホモ接合体マウスが作製できる。本発明によるトランスジェニック動物は、これらへテロ接合体と、ホモ接合体のいずれをも含むものである。
相同組換えとは、遺伝子組換え機構で塩基配列が同じ、または非常に類似している2つの遺伝子間で起こる組換えのことをいう。相同組換えを起こした細胞の選別にはPCRを使用することができる。 挿入遺伝子の一部と挿入が期待される領域の一部をプライマーとして使ったPCR反応を行い、増幅産物ができた細胞で相同組換えを起こしていることが判明する。また、胚幹細胞で発現している遺伝子に相同組み換えを起こさせる場合には、導入遺伝子にネオマイシン耐性遺伝子を結合させておき、導入後に細胞をネオマイシン耐性にさせることにより選択することができる等、公知の方法およびそれらの変法を用いて容易に選択することができる。
以下本発明を実施例として更に具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
[実施例1]ヒトメサンギウム細胞の初代培養
58才の男性から摘出した正常なヒト腎臓から、ヒト糸球体腎臓メサンギウム細胞を単離した。腎皮質を、無菌条件下で分離し、細分化し、いくつかの篩を通過させた。用いる篩は、段階的に孔径を小さくしていった。75〜200mmの孔径の篩に捕捉された糸球体を、洗浄し、100μg/mlのコラゲナーゼ(Washington Biochemical社製)と共に37℃で20分間インキュベートした。洗浄後、糸球体を、25mM Hepes、10% Nu-serum(Collaborative Biomedical Products社, Bedford, MA)および抗生物質(10mg/mlのペニシリン、ストレプトマイシン、およびフンギゾン)を含む培地199(Gibco BRL社, Gaithersburg, MD)に再懸濁させ、5%CO2インキュベーター内でインキュベートした。3継代目に、メサンギウム細胞を、典型的な形態学的特徴、トリプシン、ピューロマイシンおよびD-バリンに対する耐性、アクチン(Zymed Laboratories社, San Francisco, CA)、抗VLA(very late antigen)-1,3,5(Immunotech)の免疫染色に対して陽性を示すこと、ならびに第VIII因子(Dako社, CA)の免疫染色に陰性を示すことなどの一連の基準により同定した。
[実施例2] ヒト培養メサンギウム細胞からのmRNAの単離
6継代目に、グアニジンイソチオシアネート(GTC)法を用いて、全RNAをヒトメサンギウム細胞から単離した。即ち、実施例1の細胞の血清を含む培養液中のメサンギウム細胞コンフルエント培養物をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、5.5mM GTC溶液中で溶解させた。DNAは18ゲージの針を通過させることにより除去した。核およびその他の細胞破片は5,000×gで90秒間遠心分離することにより沈殿させた。上清をセシウムトリフルオロアセテート(CsTFA)層に注意深く載せ、15℃、125,000×gで24時間遠心分離した。RNAペレットをTEバッファーに溶解させた。オリゴdTセルロースカラム(ファルマシア社)により、poly(A)+RNAを分離した。
[実施例3]3'方向cDNAライブラリーの構築
poly(A)+RNAを鋳型として、pUC19を基礎とするベクタープライマー[Norrander J.,et al.,Gene,26,101-106(1983)]を用いたcDNA合成を行った。このベクタープライマーDNAは、HincII末端、およびTテールをもつPstI末端を有し、MboI部位(GATC)でダム・メチル化(dam-methylated)されていた。第2鎖の合成の後、cDNA配列、およびベクターのlacZ遺伝子内の単一BamHI部位を、それぞれMboIおよびBamHIで切断し、次に、低DNA濃度で環状化およびライゲーションを行った。ライゲーション混合物のうちの一部を大腸菌に形質転換した。得られた形質転換体をランダムに選択し、簡単に加熱することにより個別に溶解させた。cDNA挿入配列を、pUC19クローニングサイトに隣接するプライマー(5'-TGTAAAACGACGGCCAGT-3'/配列番号:7および5'-ACCATGATTACGCCAAGCTTG-3'/配列番号:8)を用いたペアードPCRにより増幅させた。得られた短い二本鎖DNAを、サイクル配列決定反応に用い、自動配列決定機で解析した。
[実施例4]メサンギウム細胞で特異的に発現している遺伝子の単離
メサンギウム細胞で特異的に発現している遺伝子を同定するため、本発明者らは、大規模なDNA配列決定およびコンピュータによるデータ処理を行った。このことにより、様々な異なる細胞および臓器における転写産物を同時に比較することができた(Y. Yasuda et al., submitted; K. Matsubara et al., Gene. 135, 265 (1993); K. Okubo et al., Nat. Gen. 2, 173 (1992))。ヒト培養メサンギウム細胞の3'方向cDNAライブラリーの大規模DNA配列決定を行い、ランダムに選択した1836個のクローンの部分配列を決定した。クローンの配列相同性を、相互に比較し、さらにFASTAプログラムを用いてDNAデータバンクGenBankと比較した。様々な臓器および細胞からのmRNAをドットブロット解析することにより、メサンギウム細胞で特異的に発現しているクローンが選択された。その結果、本発明者らのメサンギウム細胞cDNAライブラリーにのみ検出されるクローンのうち、最も多く存在する一つのクローンが得られた。このクローンは、全mRNAのうちの0.3%を含んでいた。
[実施例5]5'Race法による完全鎖長のクローニング
「5'-Full RACE Core Set」(宝酒造(株)製)を用いて、下記の実験を行った。0.5mlマイクロチューブにヒト培養メサンギウム細胞から調製したpoly(A)+RNA(0.5μg/μl)4.Oμl、 10×RTバッファーl.5μl、RNaseインヒビター(40U/μl)0.5μl、 AMV Reverse Transcriptase XL(5U/μl)1μl、5'未端リン酸化RTプライマー(5'‐pTCAGAGAGGTCATTC/配列番号:9、200pmol/μl)1μlを加え、RNaseFree dH20 7μlで全量を15μlとした。この反応液を「Takara PCR Thermal Cycler」(宝酒造(株)製)にセットし、30℃10分、50℃60分、80℃2分、4℃10分インキュベーションし、第1鎖cDNAを得た。
反応液から15μlを5×ハイブリッドRNA変性バッファー15μl、H20 45μlを含む0.5mlマイクロチューブ中に加えた。RNaseH lμlを加え、30℃で1時間反応を行った。反応終了後、エタノール150μlを加え‐70℃で30分冷却後、遠心し、上清を除去し、沈殿物を集めた。
得られた沈殿物に5×RNA(ssDNA)ライゲーションバッファー8μl、40% PEG #600 20μl、H20 12μlを加え、よく混ぜ、T4リガーゼをlμl加えて16℃で15時間反応し、環化一本鎖cDNAを得た。
得られた環化一本鎖cDNAをTEバッファーで10倍希釈したものを鋳型とし、一次PCRをおこなった。反応条件は、10×LA PCRバッファーII(Mg2+plus)5μl、dNTP混合物(2.5mM)8μl、一次PCR S1プライマー(5'-TCATTGATGGGTCCTCAA/配列番号:10、20pmol/μl)0.5μI、一次PCR A1プライマー(5'-AGATTCTTGAGCTCAGAT/配列番号:11、20pmol/μl)0.5μl、TaKaRa LA TaqTM(5U/μl)0.5μl、減菌水で全量を50μlとした。「Takara PCR Thermal Cycler」にセットし、94℃3分加熱後、94℃30秒、60℃30秒、72℃2分を25サイクル反応させた。
一次PCR反応溶液から1μlを鋳型とし、10×LA PCR TMバッファーll(Mg2+plus)5μl、dNTP混合物(2.5mM)8μl、二次PCR S2プライマー(5'-AATGGTGGCATAAACATG/配列番号:12、20pmol/μl)0.5μl、二次PCR A2プライマー(5'-ACAGACAAATTGAACTTC/配列番号:13、20pmol/μl)0.5μl、TaKaRa LA TaqTM(5U/μl)0.5μl、減菌水で全量を50μlとした。「Takara PCR Thermal Cycler」にセットし、94℃30秒、60℃30秒、72℃2分で30サイクル反応させた。
0.75%アガロースゲル電気泳動法でバンドが得られていることを確認し、反応溶液中からlμlを「0riginal TA Cloning Kit」(Invitrogen社)を用いてサブクローニングし、得られたプラスミドを「pCR-942-5.3」とした。挿入された遺伝子断片の塩基配列をジデオキシターミネーション法により決定した。
得られた塩基配列は、遺伝子産物のN末部分をコードする約600ヌクレオチドを含み5'非翻訳領域として約400ヌクレオチドを含んでいた。予想される開始コドンATGの位置が、コンセンサス配列と一致し、最長のオープンリーディングフレーム(「the first ATG rule」を満足する)を与えた。MEGSIN cDNAの塩基配列を配列番号:1に、MEGSINの推定アミノ酸配列を配列番号:2に示す。
[実施例6]蛋白質の発現
翻訳領域を含む遺伝子を得るために、ヒト培養メサンギウム組胞poly(A)+RNA(0.5μg/μl)1.Oμlを鋳型とし、翻訳領域をコードするように設計したプライマー、すなわち、開始コドンを含み5'端に制限酵素EcoRI認識配列を加えたプライマー(5'-GAATTCATGGCCTCCCTTGCTGCAGCAAA/配列番号:14)及びストップコドンとSall認識配列を加えたプライマー(5'-GTCGACTTATCAAGGGCAAGAAACTTTGCC/配列番号:15)でPCR反応をおこなった。反応条件は、10×Ex Taqバッファー5μl、dNTP混合物(2.5mM)8μl、PCRプライマー(5'-GTCGACTTATCAAGGGCAAGAAACTTTGCC、20pmo1/μl)0.5μl、一次PCR Alプライマー(5'‐GAATTCCATGGCCTCCCTTGCTGCAGCAAA、20pmol/μl)0.5μl、TaKaRa Ex TaqTM(10U/μl)0.5μl、滅菌水で全量を50μlとした。「Takara PCR Thermal Cycler」にセットし、94℃1分、60℃2分、72℃2分を30サイクル反応させた。0.75%アガロースゲル電気泳動法でバンドが得られていることを確認し、反応溶夜中からlμlを「0rginal TA Cloning Kit」(lnvitrogen社)を用いてサブクロー二ングし、得られたプラスミドをpCR-942CD-11/2とした。pCR-942CD-11/2で形質転換した大腸菌JM109を通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に国際寄託した(受託番号FERM BP-6518)。このプラスミドをEcoRIとSalIで切断し、挿入遺伝子を、EcoRIとSalIで切断したマルトース結合蛋白質融合蛋白質発現用ベクター、pMAL-c(New England Biolab社)と、T4リガーゼを用い結合し、大腸菌XL1-Blueを形質転換した。18時後、アンピシリン耐性株を3mlのLB培養液に植え、18時間培養後、ミニプレ法によリプラスミドを抽出し、制限酵素で確認し、発現ベクター、pMAL-MEGSINを得た。pMAL-MEGSINで形質転換した大腸菌XL1-Blueを通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に国際寄託した(受託番号FERM BP-6517)。
pCR-942CD-11/2で形質転換した大腸菌JM109の国際寄託:
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305-0046)
(b)寄託日(原寄託日) 平成9年9月22日
(c)受託番号 生命研条寄第6518号(FERM BP-6518)
pMAL-MEGSINで形質転換した大腸菌XL1-Blueの国際寄託:
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305-0046)
(b)寄託日(原寄託日) 平成9年9月22日
(c)受託番号 生命研条寄第6517号(FERM BP-6517)

pMAL-MEGSINで形質転換した大腸菌XL1−Blueを100μg/mlになるようにアンピシリンを加えた10mlのLB培地で37℃、18時間振とう培養し、この培養液を1lのRich増地(1l中に10gトリプトン、5g酵母抽出物、5g NaCl、2gグルコースを含みアンピシリンを100μg/mlになるように加えたもの)に加え37℃で振とう培養した。濁度計にて約0.4OD(A600)になったところで0.1M IPTG(isopropyl-β-D-thiogalactoside 1.41gを水50mlに溶解したもの)3mlを加え、続けて37℃で振とう培養した。2時間後、遠心操作(4000g×20分)により菌体を集め、50mlの溶解バッファー(10mM Na2HP04、30mM NaCl、0.25% Tween20, pH7.0)を加えた。よく懸濁し、−80℃で18時間凍結後、ソニケーション(BRANSON社:SONIFIER250)し、菌体を粉砕した。O.5MになるようにNaClを加え、遠心操作(10000g×30分)により上清を集めた。上清に200mlの0.25% Tween20/カラムバッファーを加え、あらかじめ0.25% Tween20/カラムバッファー(0.25% Tween20、10mM リン酸、0.5M NaCl, pH7.2)で平衡化したアミロース樹脂30mlを充墳したカラムにロードした。1ml/分の流速で、100mlの0.25% Tween20/カラムバッファー、次に150mlのカラムバッファーで洗った後、マルトースを10mMになるように加えたカラムバッファー、50mlでアミロース樹脂に結合した融合蛋白質を溶出した。これを限外濾過器(Amicon stirred-cell concentrator)で約1mg/mlまで濃縮した。
融合しているマルトース結合蛋白質は以下の方法で酵素により切断除去できる。蛋白質溶液を透析チューブ(分画分子量 3,500)に入れファクターXaバッファー(20mM Tris・Cl、100mM NaCl、2mM CaCl2、1mM アジ化ナトリウム)に対して透析する。透析した溶液200μl(1mg/ml)に10μlのファクターXa(200μg/ml)を加え、24時間、室温で反応することにより、マルトース結合蛋白質と目的とする蛋白質との結合部位を特異的に切断する。切断後、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィーなどで精製をおこなうことにより目的とする蛋白質が得られる。

←MBP 目的とするタンパク質→
----CTCGGGATCGAGGGAGGATTTCAGAATTCATGGCC----
----LeuGlyIleGluGlyArgIleSerGluPheMetAla----

ファクターXa認識部位
[実施例7]メサンギウム特異的遺伝子の機能解析(1)
SwissProtデータベースでFASTAプログラムによりアミノ酸ホモロジー検索を行ったところ、この遺伝子産物が、SERPIN(セリンプロテアーゼインヒビター)スーパーファミリー[R. Carrell et al., Trends Biochem. Sci. 10, 20 (1985); R. Carrell et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 52, 527 (1987); E. K. O. Kruithof et al., Blood 86, 4007 (1995); J. Potempa et al., J. Biol. Chem. 269,15957(1994); E. Remold-O'Donnell. FEBS Let. 315, 105 (1993)]に属するタンパク質と相同性が高いことが明らかになった。SERPINスーパーファミリーとは、構造的に関連しているタンパク質群であり、一般的に細胞外の不可逆的なセリンプロテアーゼインヒビターとして機能する。扁平上皮細胞癌抗原1(SCCA1)が、メサンギウム特異的遺伝子と最も高い相同性(41.2%同一)を示し、それにSERPINスーパーファミリーの他のタンパク質、SCCA2(40.6%)、白血球エステラーゼインヒビター(37.5%)、およびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター2(PAI-2)(35.2%)が続いた。したがって、本発明者らは、この遺伝子をMEGSIN(mesangial cell-specific gene with a homology to serpin)と名付けた。
MEGSINのアミノ酸配列をモチーフ検索した(図1)。まず、COOH末端にSERPINの特徴が存在することが明らかになった。また、4つの推定N-グリコシル化部位が存在した。明らかなNH2末端シグナルペプチド配列は、見出されなかったが、αヘリックスA(アミノ酸1〜16)およびαヘリックスB(アミノ酸27〜44)に、2つの疎水性領域が存在した。これらは、SERPINの転移に重要な役割を果たすと考えられる(G. von Heijne et al., J. Biol. Chem. 266, 15240 (1991); D. Belin. Thromb. Haemost. 70, 144 (1993); D. Belin et al., EMBO J. 15, 468 (1996))。いくつかのSERPINは、αヘリックスAおよびB中の非分解性内部シグナル配列により、分泌されるかまたは細胞質に存在する二次元的な分子(dualistic molecule)として存在すると考えられている(R. D. Ye et al., J. Biol. Chem. 263, 4869 (1988); A. Wohlwend et al., J. Immunol. 139, 1278 (1987); A. Wohlwend et al., J. Exp. Med. 165, 320 (1987); C. Genton et al., J. Cell Biol. 104, 705 (1987); P. Mlkus et al., Eur. J. Biochem. 218, 1071 (1993))。SERPINスーパーファミリーの他のタンパク質と比較することにより、アミノ酸334〜352が反応部位ループ(reactive site loop/RSL)(P16-P5')(P. C. Hopkins et al., Science. 265, 1893 (1994); K. Aertgeerts et al., Nature Struct. Biol. 2, 891 (1995); P. A. Patston et al., FEBS Let. 383, 87 (1996); H. T. Wright. BioEssays. 18, 453 (1996))に相当することが示唆された(図2)。いくつかのSERPINは、プロテアーゼ阻害ではなく、ホルモンの輸送または血圧制御のような機能を有するが、MEGSINがプロテアーゼ阻害を行うことを示す3つの証拠が存在する。まず一つとして、MEGSINのRSLのPeven残基は、電荷をもたず、小さく、非極性であるが、これは阻害SERPINの特徴である。第2に、阻害SERPINは、ヒンジ領域と呼ばれるRSLのNH2末端領域(P12-P9)に「Ala-Ala(Thr)-Ala-Ala」なる配列を有する。MEGSINのRSLのP12-P9は、「ATAA」である。MEGSINのRSLのP17-P8配列(EGTEATAAT)は、実際、阻害SERPINのコンセンサス配列(EGTEAAAAT)と一致する。第3として、RSLのNH2末端側の直前にはβシート領域が存在することが知られている。これは、プロテアーゼ阻害に必須であり、適当なコンフォメーションの変化を達成するためヒンジ領域のアミノ酸の大きさと電荷を制限している。MEGSINには、このβシート領域が保存されている。
RSL(P1およびP1')内の推定される切断されやすい結合に隣接する残基は、Lys-Glnであり、基質特異性を決定するために重要であると考えられる(T. E. Creighton et al., J. Mol. Biol. 194, 11 (1987); P. Gettins et al., BioEssays. 15, 461 (1993); P. E. Stein et al., Struct. Biol.2, 96 (1995))。この部位に関連した配列を有している他の阻害SERPINは知られていない。Kunitz型ウシ塩基性プロテアーゼインヒビターのようなSERPINは、P1にLysを有しており、トリプシンを強力に阻害することが知られている。MEGSINの標的セリンプロテアーゼは、したがって、リジン切断プロテアーゼであると考えられる。
[実施例8]MEGSINの機能解析(2)−組織分布
MEGSINのノーザンブロット解析は、以下のようにして行った。RNAをヒトメサンギウム培養細胞から単離した。培養細胞のpoly(A)+RNA(5μg)を、2.2Mホルムアミドを含む1%アガロースゲルで分離し、ニトロセルロースフィルターへ転写した。フィルターをRapid Hyb溶液(Amersham社, Arlington Heights, IL)中でハイブリダイズさせた。ブロットは、60℃で、0.1×SSPE/0.1%SDSという最終ストリンジェンシーで洗浄した。
ヒトの複数の組織のノーザンブロット、ヒトの癌細胞系のノーザンブロットはClontech(Palo Alto, CA)から購入した。ヒトの複数の組織のノーザンブロットには、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、および膵臓の2μgのpoly(A)+RNAが含まれる。ヒトの癌細胞系のノーザンブロットには、前骨髄球白血病HL-60、HeLa細胞S3、慢性骨髄性白血病K-562、リンパ芽球白血病MOLT-4、Burkittリンパ腫Raji、大腸腺癌SW480、肺癌A549、および黒色腫G361由来の2μgのpoly(A)+RNAが含まれる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄は上記と同様にして行った。
MEGSINcDNAプローブを用いたノーザンブロット解析で、メサンギウム培養細胞に単一の転写産物が検出された。他の臓器または細胞系には検出されなかった(図3)。MEGSIN転写産物は、ヒト腎臓由来のpoly(A)+RNAには検出されなかった。その原因の一つは、腎臓には内皮細胞、上皮細胞、および他の様々な細胞が存在し、メサンギウム細胞の数が少ないためと考えられる。
実際、MEGSIN転写産物は、腎臓組織からRT-PCRにより増幅された。RT-PCRは、ヒト培養細胞から単離した全RNAを鋳型として、「T-Primed-First-Strandkit」(ファルマシアバイオテク(株))を用いて行った。PCR増幅は、「DNA Thermal Cycler」(Perkin Elmer Cetus)により、94℃1分、60℃2分、72℃2分を、25サイクル行った。センスプライマーとして「5'-ATGATCTCAGCATTGTGAATG-3'/配列番号:16」、アンチセンスプライマーとして「5'-ACTGAGGGAGTTGCTTTTCTAC-3'/配列番号:17」を用いた。増幅された断片の予想サイズは、773bpであった。異なる試料間のRNAレベルを比較することができるように、β−アクチンを内部RNAコントロールとして使用した。PCR産物は、1%アガロースゲル電気泳動により分離した。MEGSIN転写産物は、ヒト繊維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイトからは、RT-PCRにより増幅されなかった(図4)。
また、メサンギウム培養細胞は、活性化および/または増殖する時に、特徴的な新たな表現形質を獲得することが知られている(R. J. Johnson et al., J. Am. Soc. Nephrol. 2 (10 Suppl), S190 (1992); J. Floege et al., Kidney Int. 45, 360 (1994))。したがって、MEGSINの発現は、メサンギウム細胞が活性化および/または増殖した時にのみノーザンブロット解析により検出可能なレベルにまで増強されるのかもしれない。ヒト腎組織のin situハイブリダイゼーションの結果(下記)は、この仮説と一致していた。
[実施例9] MEGSINの機能解析(3)−IgA腎症患者と健常人の発現量対比
in situハイブリダイゼーションにより、18人のIgA腎症(IgA-N)患者および3人の健常人の腎臓から得られたヒト腎組織で、MEGSIN mRNA発現を評価した。in situハイブリダイゼーションは、以前に示した方法により行った(Kidney Int. 52, 111 (1997))。ヒトMEGSIN cDNAの391〜428位のヌクレオチド配列をプローブとして用いた。IgA-N患者を、メサンギウムの増殖が主要で糸球体硬化症は少ないグループ(増殖期、n=9)、糸球体の30%以上が硬化しているグループ(硬化期、n=9)の2つのグループに分けた。MEGSIN mRNAは、健常者でもIgA-Nでも、糸球体にのみ検出された(図5A)。糸球体内で、MEGSIN転写産物はメサンギウム細胞に局在化していた(図5Bおよび図5C)。シグナルの特異性を評価するため、ハイブリダイゼーションの前にRNaseで組織を前処理すると、MEGSINプローブで検出されるシグナルの大部分が除去された。また、100倍過剰の同種または無関係の未標識オリゴヌクレオチドで競合実験を行ったところ、MEGSINシグナルは、同種オリゴヌクレオチド競合剤で消失したが、非同種オリゴヌクレオチドでは消失しなかった。MEGSIN mRNA発現を定量化するため、少なくとも10個のランダムに選択された糸球体中の核全て、および周囲に陽性細胞質を有する核(脈管極の切断面)を盲検的に数え、結果を全核の陽性細胞のパーセントとして表した。Mann-Whitney U検定を統計比較に用いた。増殖期のIgA-NにおけるMEGSIN陽性細胞は、健常人の腎臓よりも有意に多かった。これらの知見は、本発明者らの、MEGSINの発現がメサンギウム細胞が活性化および/または増殖したときに増強されるという仮説を立証するものである。
[実施例10] 抗MEGSIN抗体の製造
(1)MEGSINの合成ペプチドに対するポリクローナル抗体の製造
他のセルピンファミリーとの相同性が低く、かつ親水性を有する領域を利用し、MEGSINに対するポリクローナル抗体を製造した。MEGSIN蛋白質のN末端から342〜356番目のペプチドのN未端にシステインを含有するペプチド「H2N-C-S-N-I-V-E-K-Q-L-P-Q-S-T-L-F-R-C00H/配列番号:18」を固相ペプチド法により合成し、高速液体クロマトグラフィーにより精製し、MBS(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシルスクシニミドエステル)を用いてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合させた。ウサギ1匹をフロインド完全アジュバントと混合したKLH結合ペプチド(200μg/匹)で皮内免疫した。初回免疫化後、2週間後、4週間後、6週間後にウサギにフロインド不完全アジュバントと混合したKLH結合ペプチド(200μgペプチド/匹)をブースターとして追加免疫した。44日後、59日後、64日後、採血で得た血清が合成ペプチドと反応するか確認するため、酵素免疫測定法(ELISA)により評価した。合成ペプチドを1μg/ウェルで96穴マイクロウェルプレート上に被覆し、プレートを洗浄し、そしてウシ血清アルブミンでブロックした。種々の希釈度で血清試料について抗体の反応性を二次抗体としてHRP-結合ヤギ抗ウサギIgG、基質として0-フェニレンジアミンを用いて測定した。吸光度の測定は反応を停止した後に492nmの波長で行った。その結果、44日後、59日後、64日後に、それぞれ抗体価が6,800倍、20,500倍、25,400倍に上昇していることを確認した。得られた抗体はウエスタンブロットによりMEGSIN融合蛋白質と反応することを確認し、MEGSIN蛋白質に特異的であることを証明した。ウエスタンブロットの結果は図6(anti peptide 342-356)に示した。
(2)MEGSINの合成ペプチドに対するポリクローナル抗体の製造
(1)と同様に他のセルピンファミリーとの相同性が低く、かつ親水性を有する領域を利用し、MEGSINに対するポリクローナル抗体を製造した。MEGSIN蛋白質のN末端から16〜30番目のペプチドのN末端にシステインを含有するペプチド(1)「H2N-C-F-R-E-M-D-D-N-Q-G-N-G-N-V-F-F-COOH/配列番号:19」、72〜86番目のペプチドのN末端にシステインを含有するペプチド(2)「H2N-C-S-Q-S-G-L-Q-S-Q-L-K-R-V-F-S-D-COOH/配列番号:20」、およびN末端から339〜354番目のペプチドのC末端にシステインを含有するペプチド(3)「H2N-A-T-G-S-N-I-V-E-K-Q-L-P-Q-S-T-L-C-COOH/配列番号:21」を固相ペプチド法により合成した。これらのペプチドをEMCS(N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimide、同仁化学研究所製)を用いてウシサイログロブリン(Sigma製)と結合させ、0.85%NaCl溶液で透析後、アジュバントと充分混和して乳化し、ウサギ皮下に投与した。
初回免疫(20μg/羽)の3週間後に2回目の免疫(50μg/羽)を行い、以後2週間毎に4回免疫(50、50、100、200μg/羽)した。アジュバントは初回免疫のみフロインド完全アジュバント(Difco製)を、2回目以降はフロインド不完全アジュバント(Difco製)を用いた。41日後及び55日後に、採血で得た血清の抗体価を酵素免疫測定法(ELISA)により評価した。
すなわち、抗原50ng/ウエルを固相化した96穴プレ−トに連続的に希釈した抗血清を各ウエルに100μl加えて一次反応を行い、洗浄後、二次反応としてHRP結合ヤギ抗ウサギIgG(免疫化学研究所製)を反応させた。洗浄後、基質としてオルトフェニレンジアミン(和光純薬製)を用いて発色させ、吸光度492nmで測定した(日本モレキュラーデバイス製SPECTRAmax250)。
その結果、追加免疫の55日後の抗体価は、ペプチド(A)で6400倍、ペプチド(B)で51200倍に上昇した。また、ペプチド(C)の41日後の抗体価は102400倍、55日後の抗体価204800倍に上昇していることを確認した。また、得られた各抗体は、ウェスタンブロット法によりMBP-MEGSIN融合蛋白質と反応することを確認し、MEGSIN蛋白質に特異性を有することを証明した。このときの結果を図6(peptide 2;72-86,peptide 3;339-354)に示す。MBP-MEGSIN融合タンパク質に対して特異的な反応が観察された。
(3)MBP-MEGSINに対するポリクローナル抗体の製造
実施例6で得られた濃縮融合蛋白質MBP-MEGSIN(10mM リン酸ナトリウム、0.5M NaCl、10mM マルトース)を等量のフロインド完全アジュバントと混合し、充分乳化した。この乳液0.5mlを、ニュージーランドホワイトウサギ(雌、約4000g)の皮下に投与した(20μg/匹)。1回目免疫後、フロインド不完全アジュバントと混合したMBP-MEGSINで、3週間後(50μg/匹)、5週間後(50μg/匹)、7週間後(50μg/匹)、9週間後(100μg/匹)、11週間後(200μg/匹)に追加免疫した。3回目の免疫後、1週間後に試験採血を行い、抗体価を測定した結果、204800倍に上昇していることを確認した。抗体価の測定は、抗原50ng/ウェルを固相化した96穴プレートを用いたEIAによって行った。連続的に希釈した抗血清を各ウェルに100μlづつ加えて一次反応を行い、上清除去、洗浄後、抗ウサギIgG Fab'-HRP(IBL、日本)を反応させ、洗浄後、OPD(Sigma, USA)で発色して測定した。また、得られた抗血清は、ウェスタンブロットにより、MBP-MEGSINと特異的に反応することを確認した。
(4)MBP-MEGSINに対するモノクローナル抗体の製造
実施例6で得られた濃縮融合蛋白質MBP-MEGSIN(10mM リン酸ナトリウム、0.5M NaCl、10mM マルトース)を等量のフロインド完全アジュバントと混合し、充分乳化した。この乳液を、3匹の7週齢のBalb/cマウスに27Gの注射針にて皮下、皮内注射し、その後7日毎にフロインド不完全アジュバントを用いて4回免疫を行った(1回目:20μg/匹、2〜4回:10μg/匹)。4回免疫後、尾静脈より少量採血し、抗体価を測定した。抗体価の測定は、抗原50ng/ウェルを固相化したイムノプレートを用いたEIAによって行った。次に、マウスの脾臓細胞をミエローマ細胞株X-63 Ag8とPEGを用いた常法により細胞融合した。その後、免疫原、MBP、BSAなどを固定化した96穴プレートを用いたEIAによってスクリーニングを行い、免疫原に特異的なモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを選択することができる。
[実施例11]MEGSINに対するモノクローナル抗体の製造
(1)His-Tag-MEGSINに対するモノクローナル抗体の製造
(a)His-Tag-MEGSINの発現
翻訳領域を含む遺伝子を得るために、ヒト培養メサンギウム細胞からISOGEN (Nippon Gene製)を用いてtotal RNAを採取し、逆転写酵素としてSuper Script II (GIBCO製)を用いてcDNAを作成した。このcDNAの一部を鋳型とし、翻訳領域をコードするように設計したプライマー、すなわち開始コドンを含み5'側末端に制限酵素BamHIの認識配列を加えたプライマーEX-MEG1-2 (5'-ATCGGATCCATGGCCTCCCTTGCTGCAGCAAATGCAGA-3'/配列番号:22)、並びにストップコドン及びHindIIIの認識配列を加えたプライマーEX-MEG2-2 (5'-ATAAGCTTTCATCAAGGGCAAGAAACTTTGCCACTGAATAAG-3'/配列番号:23)を調製した。これらのプライマーを用い、LA Taq(TaKaRa社)によりPCR反応を行った。
反応条件は、10x LA Taqバッファー2.5μl、dNTP混合物(2.5mM)4μl、25mM 塩化マグネシウム2.5μl、20μM のPCRプライマー EX-MEG1-2及びEX-MEG2-2 各1μl、LA Taq 2.5units、cDNA並びに滅菌水を加えて全量を25μlとした。
各試薬をGene Amp PCR System 9700(Applied Biosystems製)にセットし、96℃3分間の加熱後、96℃1分間、60℃30秒間、72℃2分間の設定で35サイクル反応させた。
反応終了後PCR産物を採取し、制限酵素BamHI(宝酒造製)及びHindIII(宝酒造製)で処理した後、Ligation kit ver.I (宝酒造製)を用いてpUC18にサブクローニングした。このプラスミドを少量培養した後、Wizard plus miniprep DNA purification system(Promega製)を用いて採取して遺伝子配列を確認し、再度BamHI及びHindIIIで制限酵素処理に付し、蛋白発現用ベクターであるptrcHisA(Invitrogen製)のマルチクローニングサイトに、Ligation kit ver.Iを用いて挿入し、ptrcHisA-MEGSINを得た。
作製したプラスミドを大腸菌JM109に形質転換し、100μg/mlのアンピシリンを添加したLB寒天培地に植菌してアンピシリン耐性株を選択し、100μg/mlのアンピシリンを添加した20mlのLB培養液に植え37℃で一晩振盪培養した後、更に100μg/mlのアンピシリンを添加した20LのLB培養液に接種して37℃で3から4時間振盪培養した。吸光度が約0.5OD(A600)になったところ(島津製作所、BIOSPEC-1600)でIPTG (isopropyl-beta-D-thiogalactoside:宝酒造製)を最終濃度が1mMになるように加え、続けて37℃で3時間振盪培養した。遠心操作により菌体を回収し、PBSで洗浄後、Ni-NTA Spin Kits(QIAGEN製)を用いて発現蛋白を回収した。詳細は以下の通りである。
まず検体をBuffer A(6M GuHCl, 0.1M Na-phosphate, 0.01M Tris-HCl, pH 8.0)50mlに懸濁し、室温にて1時間撹拌後、10000g、15分、4℃の条件で遠心して上清を採取した。この上清に、予めBuffer Aで平衡化したNi-NTA 8mlを加え、室温で1時間撹拌し、カラムに移した。カラムを80mlのBuffer Aで洗浄後、BufferB (8M Urea, 0.1M Na-phosphate, 0.01M Tris-HCl,pH 8.0)20mlで洗浄し、BufferC(8M Urea, 0.1M Na-phosphate, 0.01M Tris-HCl, pH 6.3)20mlで溶出した。以上の方法で発現蛋白を回収した後、溶出画分をSDS-PAGEで確認し、陽性画分をSDS-PAGEで分離、CBB染色後、目的のバンドを切り出した。切り出したバンドをProtein extraction bufferに浸し蛋白を溶出させた。
(b)His-Tag-MEGSINに対するモノクローナル抗体の製造
MEGSIN融合蛋白質を等量のフロイント完全アジュバントと混合し、充分に乳化した。この乳化液を3匹の7週齢のBalb/cマウスに27Gの注射針にて皮下及び皮内注射し、その後7日毎にフロインド不完全アジュバンドを用いて4回免疫を行った。抗原量は1回目:20μg/匹、2〜4回目:10μg/匹とした。4回免疫後、尾静脈より少量採血し、抗体価を測定した。抗体価は、抗原50ng/ウエルを固相化した96穴プレートを用いた酵素免疫測定法 (ELISA) により評価した。 次にマウスの脾臓細胞をミエローマ細胞株X-63 Ag8とPEGを用い、常法により細胞融合した。その後、His-Tag-MEGSIN、ヒスチジン、BSAなどを固相化した96穴プレートを用いた酵素免疫測定法 (ELISA)やウエスタンブロット法によりスクリーニングし、免疫原に特異的なモノクロ−ナル抗体産生ハイブリドーマを選択した。
[実施例12]ELISAによる尿中MEGSINの測定
IgA腎症患者から尿を採取し、遠心後、上清を遠心式限外濾過膜(ミリポア製ウルトラフリー:分画分子量5000)を用いて濃縮した。ウサギポリクローナル抗メグシン抗体(IgG画分)をコートした96穴ELISA用プレートの各ウェルに、段階希釈したMBP-MEGSIN又は濃縮した尿を50μl分注し、4℃で一夜放置した。PBS(-)で洗浄し、ブロックエース(大日本製薬)を加えてブロッキングした後、0.05%(w/v)Tween 20含有PBS(-)(Tween-PBS)で洗浄し、ビオチン標識ウサギポリクローナル抗メグシン抗体を加え、室温で1時間放置した。Tween-PBSで洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液(Amersham製)を各ウェルに100ml/wellずつ加えた。Tween-PBSで洗浄後、オルトフェニレンジアミン発色基質溶液(和光純薬製)を100ml/wellずつ加えた。室温、暗所で10〜30分間反応させた後、2M硫酸を50ml/wellずつ加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(日本モレキュラーデバイス製、SPECTRAmax250)で吸光度(492nm)を測定し、標準液の検量線から尿中のメグシン濃度を求めた。結果を図7に示した。IgA腎症の患者尿ではMEGSINが検出されている。
[実施例13]ラットMEGSIN cDNAのクローニング
(1)degenerate PCRによるcDNAのクローニング
ISOGEN(Nippon Gene製)およびoligotexを用い、14継代目のラット培養メサンギウム細胞からmRNAを抽出した。このmRNAを逆転写酵素SuperScript II(GIBCO製)を逆転写反応に付し、得られたcDNAを鋳型とした。ヒトMEGSINのcDNAを元に、degenerateプライマーFY:GTGAATGCTGTGTACTTAAAGGCAANTGN/配列番号:24(172VNAVYFKGK180に相当)、およびR21:AANAGRAANGGRTCNGC/配列番号:25(Rは、AまたはG:357ADHPFLF363に相当)を作製し、DNA Thermal Cycler(Perkin Elmer Cetus製)を用い、94℃45秒(変性)、50℃45秒間(アニーリング)、72℃2分(増幅)、35サイクルの条件でPCRを行った。
予想される大きさ(576bp)に近いPCR産物をpCRIIベクター(Clonetech製)に組み込み、DNAオートシーケンサーを用いたダイデオキシ法により塩基配列を決定した。
次にラットMEGSINの5'領域を得るために、ラットMEGSINのクローン断片から遺伝子特異的プライマーを調製し、再度degenerate PCRを行った。
まず、ヒトMEGSINをコードする配列のN-末端に対応するdegenerateプライマーRM-CtermC1:ATGGCNTCNGCNGCNGCNGCNAAYGC/配列番号:26(YはTまたはC)、並びにラットMEGSIN特異的reverseプライマーであるRM-MR-A2:CGACCTCCAGAGGCAATTCCAGAGAGATCAGCCCTGG/配列番号:27およびRM-MR-A1:GTCTTCCAAGCCTACAGATTTCAAGTGGCTCCTC/配列番号:28を作製した。RM-CtermC1およびRM-MR-A2を用いて、94℃45秒、55℃45秒、72℃1分、45サイクルの条件でPCRを行った。次に得られたPCR産物を鋳型として、RM-CtermC1およびRM-MR-A2を用いて、94℃45秒、55℃45秒、72℃1分、25サイクルの条件でnested PCRを行った。さらに増幅を促進するために、同一のプライマーを用い、94℃30秒、55℃30秒、72℃40秒、25サイクルの条件でPCRを繰り返した。
得られたPCR産物をpGEM-T-easyベクター(Promega製)に組み込んだ。DNA自動配列決定機を用いたダイデオキシ法により塩基配列を決定した。
(2)5'-RACE法および3'-RACE法によるcDNAのクローニング
MEGSINの開始コドンおよび終止コドンの部位にmutationの入っていないオープンリーディングフレームを完全に含む配列を決定し、全長の配列を確定するために、Marathon cDNA amplification kit(Clontech製)を用い、上記で得られた配列を基にデザインされたプライマーを使って、5'-RACEおよび3'-RACE法を行った。5'-RACEには、2種の遺伝子特異的アンチセンスプライマーRM-PRO1:GCTCAGGGCAGTGAAGATGCTCAGGGAAGA/配列番号:29およびRM-PRO2:CTGACGTGCACAGTCACCTCGAGCACC/配列番号:30を用いた。一方、3'-RACEには、遺伝子特異的センスプライマーRM-MR-S3:GAGGTCTCAGAAGAAGGCACTGAGGCAACTGCTGCC/配列番号:31を使用した。こうして得られた配列に基づいて、最終的に配列番号:3に示す1229bpからなるラットMEGSINのcDNA全長の塩基配列をほぼ決定した。
ラットMEGSINのオープンリーディングフレームを含むクローンを得るために、上記で得られた配列からデザインされた2種の遺伝子特異的プライマーRM-5'UTR-FS2:CTCTATAGGAGACACTTGG/配列番号:32(センスプライマー)および3'-UTR-A1:GAAACAAATCAAAGCAAAC/配列番号:33(アンチセンスプライマー)を使用した。94℃45秒(変性)、50℃で45秒(アニーリング)、72℃1分30秒(増幅)、35サイクルの条件でPCRを実施した。予想される大きさ(約1300bp)のPCR産物をpCRIIベクターに組み込んで、ラットMEGSINのオープンリーディングフレームを含むクローンを単離した。
[実施例14]マウスMEGSIN cDNAのクローニング
(1)PCRによるcDNAのクローニング
ISOGEN(Nippon Gene製)を用い、9継代目のマウス培養メサンギウム細胞から10μgのトータルRNAを抽出した。このRNAから20pmolのオリゴ(dT)プライマー(Pharmacia製)および200ユニットの逆転写酵素SuperScript II(GIBCO製)を用いて、42℃50分、70℃15分の条件で逆転写反応に付し、first strand cDNAを合成した。
ヒトおよびラットのMEGSINの塩基配列を元に、degenerateプライマーMF-1:5'-GAAATTGAAARCAARCTGASYTTYCAGAAT-3'/配列番号:34(RはAまたはG、SはCまたはG、YはCまたはT)、MF-2:5'-CTGASYTTYCAGAATCTAATGGAMTGGAC-3'/配列番号:35(SはCまたはG、YはCまたはT、MはAまたはC)、およびMR-4:5'-GGAYTSAGGRAGTWGCTTTTCWACRATRTT-3'/配列番号:36(SはCまたはG、YはCまたはT、MはAまたはC、WはAまたはT)を作成した。
MF-1およびMR-4を用いて、94℃1分(変性)、60℃1分(アニーリング)、72℃30秒(増幅)、30サイクルの条件でPCRを行った。次に得られたPCR産物を鋳型として、MF-2およびMR-4を用いて同様の条件で、nested PCRを行い、300bpのcDNA断片を得た。
(2)RACE法による3'-領域の伸長
上記(1)で得られた配列を元に、遺伝子特異的プライマーであるMMF3:5'-GAGGTCTCAGAGGAGGGCACTGAAGCCACTGCTGCC-3'/配列番号:37、およびMMF4:5'-CCAGTGCAGATCTCTCTGGAATTGCCTCTGGAGGTCGTC-3'/配列番号:38を作製した。
1.57μgのpoly(A)+mRNAを用い、Marathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH製)を使用し、RACE法による3'-領域の伸長を行い(PCR:MMF4およびAP-1、nested PCR:MMF3およびAP-2)、新たに127bpのcDNA断片を得た。
(3)5'-領域の伸長
20μgのトータルRNAおよび逆転写酵素SuperScript II(GIBCO製)を用いて、firststrand cDNAを合成した。遺伝子特異的プライマーであるMMR6:5'-GCCTGTTACTGTATAGGAAACCAAACCG-3'/配列番号:39、およびラットMEGSINの塩基配列を元にしたdegenerateプライマーDG-RMF1:5'-ATGGCYTCCCTYGCTGCWGCRAATGCAGARTTTKGC-3'/配列番号:40(YはCまたはT、WはAまたはT、RはAまたはG、KはGまたはT)を用いてPCRを行い、新たに5'-領域の720bpのcDNA断片を得、合計1147bp(配列番号:5)のcDNAの塩基配列を決定した。得られたcDNA塩基配列に基づく推定アミノ酸配列(配列番号:6)をラットのそれ(配列番号:4)と比較すると、マウスのアミノ酸配列におけるN末端部分がラットの13以降に一致している。このことから、マウスのcDNAは更に5'側に翻訳開始点を持つものと推測された。
[実施例15]トランスジェニックマウスの作製
(1)pUC-MEGSINの作製
ヒト培養メサンギウム細胞からAGPC法によりmRNAを抽出した。これを鋳型とし、センスプライマー5'Bam-MEG:5'-ATCGGATCCATGGCCTCCCTTGCT-3'/配列番号:41(BamHI切断部位を含む。)、及びアンチセンスプライマー3'Hind-MEG:5'-ATAAGCTTTCATCATCAAGGGCAAG-3'/配列番号:42(HindIII切断部位を含む。)を用いRT-PCR法を行い、MEGSINのオープンリーディングフレームの完全長を増幅した。
得られたPCR産物はをBamHI及びHindIIIで切断後、BamHI及びHindIIIにより切断処理されたpUC18(宝酒造製)とライゲーションして、MEGSINの全長オープンリーディングフレームが挿入されたpUC18(pUC-MEGSIN)を作製した。なお、pUC18に挿入されたMEGSINの塩基配列は、デオキシターミネーション法により確認した。
(2)遺伝子の構築
ヒトMEGSIN cDNAの開始コドン上流にオリゴヌクレオチド(5'-GCC GCC)を付加するため、以下の条件でPCRを行い、211bpのDNAを合成した。
すなわち、(1)で得られたpUC-MEGSINを鋳型とし、センスプライマーB44F:5'-ATGGATCCGCCGCCATGGCCTCCCTTGCTGCAGCAAATGCAGAG-3'/配列番号:43(BamHI切断部位を含む。)、及びアンチセンスプライマーH30-R:5'-TATCCTGAGGCAGTGTTAACAAGCAAC-3'/配列番号:44(HpaI切断部位を含む。)のセットを用い、TaKaRa Ex.Taq.(宝酒造製)を用いて、PCRを行った。エタノール沈殿により脱塩した後、BamHI及びHapIを用いて切断部位を作製し、191bpのDNA断片をアガロースゲル電気泳動により回収した。
pUC-MEGSINよりBamHI及びHapIを用いてpUC18を含む3.5kbの断片を得、アガロースゲル電気泳動により精製し回収した。これに上記の191bpのDNA断片とをライゲーションすることにより、オリゴヌクレオチドが付加したヒトMEGSIN cDNAを含む組換えプラスミド、すなわちpUC-New MEGSINを作製し、大腸菌JM109に形質転換しクローニングした。そして、pUC-New MEGSINよりBamHI及びHindIIIを用いて1.2kbの断片をアガロースゲル電気泳動により回収した。この断片の末端をTaKaRa Blunting Kit(宝酒造製)を用いて平滑化した。
pBsCAG-2(pCAGGSからSalI及びPstIを用いて断片を得、pBluescript II SK-のSalI及びPstI切断部位に導入したもの)をEcoRIにより切断して直鎖にした後、TaKaRaBlunting Kit(宝酒造製)を用いて末端を平滑化し、アルカリフォスファターゼ(宝酒造製)により脱リン酸化処理を行った。このプラスミドに上記の1.2kbの断片をライゲーションして組換えプラスミドを作製し、大腸菌JM109に形質転換しクローニングした。挿入されたヒトMEGSIN cDNAの方向性がchicken beta-actin promoterと同じクローンをシークエンシングにより選抜し、この組換えプラスミドをpBsCAG-2/MEGSINとした。
pBsCAG-2/MEGSINよりSalI及びNotIを用いて3.4kbのDNA断片をアガロースゲル電気泳動により回収した。
(3)トランスジェニックマウスの作製
(2)で調製したDNA(3.4kb)の2pl(2000コピー)をマウス(B6C3F1×C57/BL)の受精卵の前核にマイクロインジェクションし、以下に示すサザンハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。
QIAGEN TISSUE KITを用い、マウスの尾からゲノムDNAを調製した。 2μgのゲノムDNAをPstIにより完全消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動により分離した後、ナイロンメンブレンにトランスファーした。1100bpのDNA断片(pUC-MEGSINよりPstI及びHindIIIを用いて切り出し、アガロースゲルで回収したもの)をRandom Primer DNALabeling kit Ver.2(宝酒造製)により調製した[32P]-dCTPラベルのプローブを用いて68℃で2時間のハイブリダイゼーションを行った。
メンブレンは最終的に0.2×SSC/0.1%SDSにまで洗浄し、オートラジオグラフィーに供した。1700bpの特異的なバンドの出現により挿入DNA断片の有無、及びコピー数を判定した。複数の挿入DNA断片がタンデムに存在する場合の方向性は、2μgのゲノムDNAをEcoRVにより完全消化し、以下同様の操作を行うことにより決定した。
得られたトランスジェニックマウス(F0)は正常のマウスと交配に供された。誕生したマウスを上述の方法でスクリーニングすることにより、トランスジェニックマウス(F1)を得た。次に同じヘテロ変異を有するトランスジェニックマウス(F1)同士を交配することによりF2マウスを得、スクリーニングによりホモ変異を有するトランスジェニックマウス(F2)を得た。
本発明により、メサンギウム細胞に特異的に発現しているDNA、該DNAのコードするタンパク質、該タンパク質に結合する抗体等が提供された。これらはメサンギウム細胞特有のものであり、メサンギウム細胞の同定、メサンギウム細胞の異常の検出などに有用である。更に、該タンパク質の機能からメサンギウム細胞の機能が明らかになり、メサンギウム細胞に関連する疾患の原因究明への展開が期待される。また、メサンギウム細胞に関連する疾病の治療、診断等への応用が期待される。
図1は、メグシンのアミノ酸配列を示す図である。アンダーライン部は「SERPIN」シグニチャーを示す。四角で囲まれた部分はRSL(reactive center loop)を示し、矢印は予想される反応部位を示す。また、2つの予想される疎水性領域をそれぞれ点線で示す。 図2はMEGSINと、セルピンスーパーファミリーに属する他のタンパク質とのアミノ酸配列の比較を示す図である。(A)一致する領域は、棒により示した。棒の隙間は、アラインメントを最適化するために、データベース配列に隙間を挿入した領域を表し、棒を横切る線は、問題の配列と比較してデータベース配列に残基を挿入した領域を表す。これらの配列は、「the protein scoring matrix pam 250」に従い整列させた。スコアを棒の右に示す(最大可能スコアは1820である)。(B)は、SERPINのRSLの比較を示す図である。RSLのP17-P5'(SchecherとBergerの番号付けによる)を整列させた。非極性残基は太字で示す。「SCC1」は扁平上皮細胞癌抗原1(SCCA1)を、「ILEU」はエラスターゼインヒビターを、「PAI-2」はプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI-2)を、「ova」はオボアルブミンをそれぞれ示す。 図3はMEGSIN転写産物の検出を示すノーザンブロット写真である。各レーンは次の通り。レーン1:メサンギウム細胞、レーン2:前骨髄球白血病HL-60、レーン3:Hela細胞S3、レーン4:慢性骨髄性白血病K-562、レーン5:リンパ芽球白血病MOLT-4、レーン6:Burkittリンパ腫Raji、レーン7:大腸腺癌SW480、レーン8:肺癌A549、レーン9:黒色腫G361。実験は、以下のように行った。心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、および膵臓由来の2μgのポリ(A)+RNAを含む、ヒトマルティプルノーザンブロット(クロンテック社、米国カリフォルニア州)、前骨髄球白血病HL-60、Hela細胞S3、慢性骨髄性白血病K-562、リンパ芽球白血病MOLT-4、バーキット(Burkitt)リンパ腫Raji、結腸直腸腺癌SW480、肺癌A549、および黒色腫G361由来の2μgのポリ(A)+RNAを含むヒト癌細胞系ノーザンブロット(クロンテック社、米国カリフォルニア州)を用いた。RNAをヒトメサンギウム培養細胞から単離し、ポリ(A)+RNA(2μg)を2.2M ホルムアミド含有1%アガロースゲルにて分離し、上記ブロット用フィルターに転写した。そのフィルターを「Rapid Hyb solution(アマシャム社)」中でハイブリダイズした。フィルターを、0.1×SSPE/0.1%の最終ストリンジェンシーになるよう、60℃で洗浄した。 図4は、RT-PCR実験の結果を示す写真である。各レーンは次の通り。レーン1:メサンギウム細胞、レーン2:平滑筋細胞、レーン3:繊維芽細胞、レーン4:内皮細胞、レーン5:腎臓上皮細胞、レーン6:ケラチノサイト、レーン7:単球、レーン8:多形核白血球(上の写真)。全RNAを、ヒト培養細胞から単離し「T-Primed-First-Strand」キット(ファルマシアバイオテク(株))を用いて逆転写した。PCR増幅は、DNA サーマルサイクラー(パーキンエルマー社)を用いて、25回実施した。各サイクルは、メグシンのオリゴヌクレオチドプライマー:センス、5'-ATGATCTCAGCATTGTGAATG-3'およびアンチセンス、5'-ACTGAGGGAGTTGCTTTTCTAC-3'を用いて、94℃で1分間の変性、60℃で2分間のアニール化、および72℃で2分間の伸長を含む。予期される増幅断片サイズは773bpであった。異なる試料間のRNAレベルを比較するために、RNA内部対照としてβアクチンを用いた(下の写真)。PCR産物は、1%アガロースゲルにおける電気泳動により分離した。 図5は、健常者およびIgA腎症患者の糸球体内のメサンギウム細胞におけるMEGSINの発現を示すin situハイプリダイゼーション写真である。(A)はIgA-N患者の二つの糸球体の写真(40倍)である。細尿管及び間質領域にはMEGSINシグナルは観察されなかった。(B)は倍率80倍の写真である。IgA-N患者の糸球体間質領域にMEGSINシグナルが観察される。(C)は倍率200倍の写真である。メサンギウム細胞はMEGSIN陽性であるが、内皮細胞、ボーマン嚢細胞はMEGSIN陰性であることが示されている。 図6は、本発明によるMEGSIN特異的なポリクローナル抗体によるウエスタンブロット法の結果を示す写真である。レーン1:MBP、レーン:2MBP-MEGSIN融合タンパク質、レーン3:MBP-PAI II融合タンパク質、レーン4:PAI-I、およびレーン5:アルブミン。 図7は、尿試料中のMEGSINをELISAによって測定した結果を示すグラフである。縦軸は492nmにおける吸光度を、横軸は尿試料の希釈倍数を示す。正常人ではMEGSINが検出されないのに対して、IgA腎症患者の尿(―●―、―■―、―▲―)にはMEGSINが検出される。

Claims (17)

  1. 配列番号:2、配列番号:4、または配列番号:6のいずれかに記載のアミノ酸配列、またはこれらアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、これらのアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質。
  2. 配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む請求項1のタンパク質。
  3. 請求項1に記載のタンパク質をコードするDNA。
  4. 配列番号:1、配列番号:3、および配列番号:5からなる群から選択された塩基配列を含む請求項3記載のDNA。
  5. 配列番号:1、配列番号:3、および配列番号:5からなる群から選択された塩基配列を持つDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、請求項1に記載のタンパク質またはこれらタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNA。
  6. 請求項3、請求項4、および請求項5のいずれかに記載のDNAを含むことを特徴とするベクター。
  7. 請求項3、請求項4、および請求項5のいずれかに記載のDNAを発現可能に保持する形質転換細胞。
  8. 請求項7に記載の形質転換細胞を培養し、請求項3、請求項4、および請求項5のいずれかに記載のDNAの発現産物を回収することを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質の製造方法。
  9. 請求項1に記載のタンパク質に結合することを特徴とする抗体。
  10. 配列番号:2、配列番号:4、および配列番号:6に記載されたアミノ酸配列から選択されたアミノ酸配列を持つタンパク質のエピトープを認識する請求項9の抗体。
  11. 抗体がモノクローナル抗体である請求項10の抗体。
  12. 請求項10または請求項11のいずれかに記載の抗体と請求項2のタンパク質、またはその断片との免疫学的な結合に基づいて請求項2のタンパク質またはその断片を測定する免疫学的測定方法。
  13. 請求項10または請求項11のいずれかに記載の抗体を含む請求項2のタンパク質またはその断片の免疫学的測定用試薬。
  14. 生体試料中に含まれる請求項2のタンパク質またはその断片を測定し、正常試料から得られた測定値と比較することによってメサンギウム増殖性腎症を検出する方法。
  15. メグシンをコードする遺伝子の発現レベルを変化させたトランスジェニック非ヒト脊椎動物。
  16. 非ヒト脊椎動物がマウスである請求項15のトランスジェニック非ヒト脊椎動物。
  17. メグシンをコードする遺伝子の発現が抑制されたノックアウトマウスである請求項16のトランスジェニック非ヒト脊椎動物。
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