JPWO2006109719A1 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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英毅 山下
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崇文 大熊
早田 博
博 早田
謙昌 瀧井
謙昌 瀧井
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裕一 中上
木村 忠司
忠司 木村
寺内 正治
正治 寺内
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Abstract

複数の表示電極(4)が形成されると共に、表示電極(4)を第1の誘電体層(6)及び保護膜(7)で覆った前面板(22)と、表示電極(4)と直交する方向に形成され、第2の誘電体層(下地誘電体層(9))で覆われた複数のアドレス電極(10)を有する背面板(23)とを備えるPDP(21)において、保護膜(7)は粒状の結晶が集合した構造を有し、結晶の粒径が大きく、かつ隣接する結晶間の空隙が小さく形成された構成である。

Description

本発明は、平板型表示装置(フラットパネルディスプレイともいう)として大型のテレビジョンや広告・情報等の公衆表示用への利用が拡大してきているプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)及びその製造方法に関する。特に、本発明は、低出力でしかも長時間動作をしても優れた表示品質を維持することを可能にする保護膜を有するプラズマディスプレイパネル及びその製造方法に関する。
近年、大型の平板型表示装置として希ガス放電による紫外線で蛍光体を励起発光させて画像・映像表示に利用するPDPは、対角1m以上になるような大型製品を目標に開発されてきた。PDPの開発は加速してきており、コンピューター等に代表される情報処理装置の表示機器として、あるいは大型のテレビジョン受信機や公衆表示用モニタとして、高性能化、低価格化、最適量産化等を目指して次々と新しい技術が開発されてきている。
PDPには交流駆動方式と直流駆動方式があるが、ここでは一般的な交流駆動方式のPDP(以下、交流駆動方式のPDPをAC型PDPと記す)の構造を概略的に説明する図を図9A及び図9Bに示す。AC型PDPには各種の方式があり、図9Aは面放電型と呼ばれる方式の一例として、その構造の一部を立体的に描いた斜視図で、また図9Bは図9AのAA部を拡大して断面図で示している。PDPは、ガラス製の前面ガラス基板101、背面ガラス基板108にそれぞれ行電極、列電極が直交配置され、画素(ピクセル)となる行及び列の両電極の交点及び両基板101,108間にある隔壁111により放電空間124を形成する構造となっている。
図10は、一般的なAC型PDPの製造方法を概略的に示す製造工程の流れ図である。図10において、一般的なAC型PDPの製造工程は、前面板の形成工程S110、背面板の形成工程S120、及びこれらの組立工程S130に大別される。前面板形成工程S110は、走査電極/維持電極形成工程S111と、誘電体層形成工程S112と、誘電体保護膜形成工程(以下、単に保護膜形成工程とも記す)S113とからなる。一方、背面板形成工程S120は、データ電極形成工程S121と、下地誘電体層形成工程S122と、隔壁形成工程S123と、蛍光体層形成工程S124とからなり、組立工程S130は、封着工程S131、排気工程S132、放電ガス封入工程S133、エージング工程S134と、PDPパネル完成工程S135の各工程とからなっており、これらの工程を経てPDP121が完成する。
以下、図9A及び図9Bに示した一般的な面放電型のAC型PDPの前面板122及び背面板123の構成について、図10に示した工程と対応させながら説明する。
前面板122は、前面ガラス基板101上に、放電の維持信号を入力するための維持電極103及び順次表示用の走査信号を入力するための走査電極102が、図10に示した走査電極/維持電極形成工程S111を経て、それぞれ対をなして平行に複数形成されて表示電極104となる行電極が構成されている。次いで、これらの表示電極104上に放電による壁電荷を形成するための透明な誘電体層106が誘電体層形成工程S112を経て成膜される。さらに、誘電体層106上に放電によるイオン衝撃から誘電体層106を保護するための保護膜(以下、保護膜とも記す)107が保護膜形成工程S113を経て形成されている。また、隣り合う維持電極103と走査電極102とで構成する1対の電極間に、表示面のコントラストを高めるため、遮光層となるブラックマトリクスを必要に応じて形成することもあるが、この形成工程は図10には示していない。
次に、背面板123は、背面ガラス基板108上に複数の表示データ信号を入力するための列電極となるアドレス電極(データ電極とも呼ばれる)110が、前面板122の表示電極104を構成する維持電極103及び走査電極102とそれぞれ交差する方向に、図10に示したデータ電極形成工程S121を経て複数形成されている。アドレス電極110の上にやはり放電による壁電荷を形成するための下地誘電体層109が下地誘電体層形成工程S122を経て成膜され、さらにその上にアドレス電極110と平行して隔壁111が隔壁形成工程S123により形成され、隔壁111間には赤色、緑色及び青色をそれぞれ発光する蛍光体層112R、112G、112Bが蛍光体層形成工程S124を経て設けられている。
そして、前面板122と背面板123とをその電極形成面側を対向させながら貼りあわせてフリットガラス等のシール材を用いて封着パネル化(封着工程S131)して、加熱しながら脱ガス処理(排気工程S132)を行った後、放電ガスとしてHe又はNe又はXeなどの希ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入(放電ガス封入工程S133)して、パネルの各電極に所定の電圧、波形の駆動パルスを印加して放電を行うエージングを実施(エージング工程S134)し、放電空間124が形成されたPDP121が完成する(PDPパネル完成工程S135)。
完成したPDP121には、走査電極102と維持電極103及び列電極であるアドレス電極110とに電気信号を供給するため、これらの電極の電極端子に駆動用のドライバICが搭載された回路基板が接続され、制御信号回路や電源回路と共に筐体に組み込んで表示装置として完成する。維持電極103及び走査電極102からなる表示電極104及びアドレス電極110に所定の信号の電圧パルスを印加することにより封入された希ガスが励起され、紫外線を放出し、その紫外線により隔壁111間に設けられた各色蛍光体層112R、112G、112Bが可視光を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせて、カラー画像などからなる情報を表示することができる。
特に、前面板122の形成工程S110において、前面ガラス基板101上に維持電極103、走査電極102と誘電体層106を形成し、その上に、放電によるイオン衝撃から誘電体層106を保護すると共に、2次電子放出による蛍光体の発光を促進する目的で、保護膜107が所定の条件下で電子ビーム蒸着などによって形成されているが、この保護膜107は酸化マグネシウム(MgO)が広く用いられている。このような電子ビーム蒸着で形成されたMgO膜は、結晶性が高く緻密な膜であり、耐スパッタリング性に優れ、かつ2次電子放出係数が高いという優れた特徴を有している。そして、ガス放電によるイオン衝撃から誘電体層106を保護する保護性能と、放電電圧を下げて応答性の速い放電を実現するため、保護膜107の結晶学的構造や各種物理的特性を改善する提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
特開平11−54045号公報 特開2002−75226号公報
前述したように、PDPはより高精細で低消費電力への要望が高まっており、放電ガスの高エネルギー化又は走査線数の増加等の開発が進められている。PDPの高精細化を図ろうとすると、PDPのパネル容器内の放電セルにおいて、イオン衝突エネルギーの増加に伴い誘電体保護膜のスパッタリングが加速され、保護膜の寿命が減少するおそれがあり、さらなる保護膜の耐スパッタリング性向上が課題の1つとして浮上してくる。また、高精細化に伴う走査線数の増加に伴って、アドレス電極に印加するアドレスパルスのパルス幅を狭くして高速駆動を行う必要があるが、実際に製造した高精細化PDPでは、印加パルスの立ち上がりから、かなり遅れて放電が行われるという放電遅れ現象のために、印加されたパルス幅内で放電が終了する確率が低くなり、本来、点灯すべきセルに書き込みができない、などといった現象が出現し、この現象により、PDPの放電セルの点灯不良が生じる。この放電遅れの期間を短くするには、保護膜の高い電子放出性能が要求される。しかしながら、前述したガス放電によるイオン衝撃から誘電体層106を保護する保護性能と、放電電圧を下げて応答性の速い放電を実現するため、保護膜107の結晶学的構造や各種物理的特性を改善する提案では、未だ満足のできる性能、特性が得られているとはいい難い。
本発明の目的は、前記の課題を解決するためになされたものであり、PDPの高精細化に対応可能で耐スパッタリング性に優れた密度の高い誘電体保護膜を作製することができ、高精細表示が可能で長寿命なプラズマディスプレイパネル及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、前記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、第1のガラス基板上に第1の電極と第1の誘電体層と保護膜とが形成された第1の基板と、
第2のガラス基板上に第2の電極と第2の誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された第2の基板とを備え、
前記第1の基板と前記第2の基板とが放電空間を挟んで対向配置され、
前記保護膜は、粒状の結晶が集合した構造を有し、
前記保護膜の表面において、前記保護膜の面積に対する前記結晶間の空隙の占める面積が0%より大きくかつ10%未満の範囲であるプラズマディスプレイパネルを提供する。
本発明の第2態様によれば、前記保護膜の前記粒状の結晶の最小粒径が30nm以上で100nm以下の範囲にある第1態様に記載のプラズマディスプレイパネルを提供する。
本発明の第3態様によれば、前記保護膜が、アルカリ土類金属の酸化物、フッ化物、水酸化物、及び、炭酸化物のうち、少なくとも1種類により形成されている第1又は2態様に記載のプラズマディスプレイパネルを提供する。
本発明の第4態様によれば、前記保護膜が、アルカリ土類金属の酸化物、フッ化物、水酸化物、及び、炭酸化物のうちの少なくとも2種類の材料を混合した化合物により形成されている第1又は2態様に記載のプラズマディスプレイパネルを提供する。
本発明の第5態様によれば、前記保護膜が酸化マグネシウムにより形成され、かつ前記保護膜の膜密度が3.3g/cmより大きい第1又は2態様に記載のプラズマディスプレイパネルを提供する。
これらの構成により、PDPの前面板に形成する保護膜の空隙率が0%より大きくかつ10%未満の範囲に設定すれば、エッチングレートが改善され、耐スパッタリング性が向上して密度の高い誘電体保護膜を作製することができ、長寿命化が期待でき、高精細化に対応可能なPDPを使用するPDP表示装置を実現できる。
さらに、保護膜の粒状の結晶の最小粒径が30nm以上で100nm以下の範囲に設定すれば、エッチングレートがより改善され、またこのような前面板で製造したPDPは、放電遅れ時間(アドレス期間に走査電極とアドレス電極間に電圧を印加してから放電が起こるまでの時間)を短縮化できるので、耐スパッタリング性がより向上して長寿命化が期待でき、放電特性が改善されて表示品質に優れたPDPを使用するPDP表示装置を実現できる。
また、前記目的を達成するために本発明のPDPの製造方法としては、本発明の第6態様によれば、第1のガラス基板上に第1の電極と第1の誘電体層と保護膜とが形成された第1の基板と、第2のガラス基板上に第2の電極と第2の誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された第2の基板とを放電空間を挟んで対向配置させて構成されるプラズマディスプレイパネルを製造するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記第1の誘電体層が形成された第1の基板を真空容器内に搬入し、
前記真空容器内にスパッタガスと共にHOガスを供給し、
前記真空容器内のHガス分圧を監視して前記HOガスの流量を制御しながら第1の基板に保護膜を形成するプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
また、本発明の第7態様によれば、前記真空容器内に供給する前記スパッタガスのガス圧を0.5Paとすると共に、前記第1の基板を250℃から350℃の範囲の所定の温度に加熱し、前記HOガスの前記真空容器内の全圧に対するHOガスの圧力比を10−4以上でかつ10−1以下に設定してスパッタリング法により保護膜を形成する第6態様に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
これらの工程を有するPDPの製造方法により、前面板に形成する保護膜のエッチングレートが改善され、またこのような前面板で製造したPDPは放電遅れ時間を短縮化できるので、耐スパッタリング性が向上して長寿命化が期待でき、放電特性が改善されて表示品質に優れたPDPを使用するPDP表示装置の実現が可能になる。
本発明によれば、前記保護膜は粒状の結晶が集合した構造を有し、前記保護膜の表面において、前記保護膜の面積に対する前記結晶間の空隙の占める面積が0%より大きくかつ10%未満の範囲にあるように構成しているため、耐スパッタリング性が優れた保護膜を得ることが可能となる。その結果、高精細で画質が優れ、長寿命のPDPを実現するといった、大きな効果を有する。
また、前記保護膜の粒状の前記結晶の最小粒径が30nm以上で100nm以下の範囲にあるように構成すれば、放電遅れ時間が減少することができ、電子放出特性が良好で、なおかつ耐スパッタリング性がより優れた保護膜を得ることが可能となる。その結果、高精細で画質がより優れ、長寿命のPDPを実現するといった、大きな効果を有する。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、図1Aは、本発明の実施形態におけるAC型PDPの一部を拡大して構造を示す分解斜視図であり、 図1Bは、図1AのAA部を拡大して示す断面図であり、 図1Cは、本発明の前記実施形態におけるAC型PDPの製造方法を概略的に説明する製造工程の流れ図であり、 図2は、本発明の前記実施形態におけるPDPの前面板の保護膜を形成する装置の概略構成図であり、 図3は、比較参照用試料と本発明の前記実施形態の実例の試料を含む合計6種類の試料のMgO膜の空隙率と放電遅れ時間の関係を示すグラフであり、 図4は、前記試料のMgO膜の最小粒径と放電遅れ時間の関係を示すグラフであり、 図5は、前記試料のMgO膜の膜密度と放電遅れ時間の関係を示すグラフであり、 図6は、前記試料のMgO膜の空隙率とエッチングレートの関係を示すグラフであり、 図7は、前記試料のMgO膜の最小粒径とエッチングレートの関係を示すグラフであり、 図8は、前記試料のMgO膜の膜密度とエッチングレートの関係を示すグラフであり、 図9Aは一般的なAC型PDPの構造を概略的に説明する図であり、 図9Bは、一般的なAC型PDPの構造を概略的に説明する図であり、 図10は、一般的なAC型PDPの製造方法を概略的に説明する製造工程の流れ図である。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、図面を参照して本発明の実施形態におけるPDP及びその製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
(実施形態)
本発明の1つの実施形態について、図1A〜図8を用いて説明する。
図1Aは、本発明の前記実施形態におけるAC型PDPの一部を拡大して構造を示す分解斜視図、図1Bは図1AのAA部を拡大して示す断面図であり、図1Cは、本発明の前記実施形態におけるAC型PDPの製造方法を概略的に説明する製造工程の流れ図である。既に、背景技術として図9A及び図9Bを用いて一般的なAC型PDPの構造を説明したが、本発明の前記実施形態におけるAC型PDPは、ガラス製の前面ガラス基板1、背面ガラス基板8にそれぞれ行電極、列電極が直交配置され、画素(ピクセル)となる行及び列の両電極の交点及び両基板1,8間にある隔壁11により放電空間24を形成する構造と類似するが、再度、図1A及び図1Bを基に説明する。
次いで、図2は、本発明の前記実施形態におけるPDPの前面板の保護膜7の形成に用いる成膜装置の概略構成図、図3は、比較参照用試料と本発明の前記実施形態の実例の試料を含む合計6種類の試料のMgO膜の空隙率と放電遅れ時間の関係を示すグラフ、図4は、前記6種類の試料のMgO膜の最小粒径と放電遅れ時間の関係を示すグラフ、図5は、前記6種類の試料のMgO膜の膜密度と放電遅れ時間の関係を示すグラフ、図6は、前記6種類の試料のMgO膜の空隙率とエッチングレートの関係を示すグラフ、図7は、前記6種類の試料のMgO膜の最小粒径とエッチングレートの関係を示すグラフ、図8は、前記6種類の試料のMgO膜の膜密度とエッチングレートの関係を示すグラフである。
図1A、図1Bにおいて、前面板22には、透明な前面ガラス基板1上に、放電ギャップをあけて平行に対向する順次表示用の走査電極2と、放電の維持信号を入力するための維持電極3とで対をなして、ストライプ状に(いわゆる、行電極に相当する)表示電極4が複数対形成されている。この走査電極2及び維持電極3は、それぞれITO(Indium−Tin Oxide)やSnO等によって構成される透明電極2a、3aと、この透明電極2a、3aに電気的に接続された、例えば、銀等の厚膜、又は、例えばアルミニウム(Al)薄膜、又は、クロム(Cr)−銅(Cu)−クロム(Cr)の積層薄膜による補助電極(バス電極ともいう)2b、3bによって構成されている。また、隣り合う維持電極3と走査電極2とで構成する1対の電極間に、表示面のコントラストを高めるため、ブラックマトリクスとなる遮光層(BS膜ともいう)5を必要に応じて形成することもある。そして、前面ガラス基板1には、複数対の表示電極4の群の上に、複数対の表示電極4の群を覆うように低融点ガラスによって構成されかつ放電による壁電荷を形成するための透明な誘電体層6が形成され、その誘電体層6上には、酸化マグネシウム(MgO)によって構成されかつ放電によるイオン衝撃から誘電体層6を保護するための保護膜7が形成され、これらの各構成要素により、前面板22が構成されている。なお、表示電極4の補助電極2b、3bは、前面ガラス基板1上に透明電極2a、3aを形成した後、コントラスト向上のため、先に、暗色導電層を形成し、次いで、所定の導体材料で導体層を形成する2層構造にしてもよい。
また、前記前面ガラス基板1に対向配置される背面ガラス基板8上には、前面ガラス基板1上の表示電極4と直交する方向に、下地誘電体層9で覆われて複数の(いわゆる、列電極に相当する)表示データ信号を入力するためのアドレス電極(データ電極とも呼ばれる)10がストライプ状に形成されている。このデータ電極10上には、放電による壁電荷を形成するための下地誘電体層9が形成され、さらに、データ電極10上の下地誘電体層9の上には、データ電極10と平行してストライプ状の複数の隔壁11が配置され、隔壁11間の側面及び下地誘電体層9の表面上にR(red:赤色)、G(green:緑色)、B(blue:青色)の3色を発光する蛍光体を塗布して蛍光体層12R、12G、12Bが形成されて、背面板23が構成されている。
そして、前記構成の前面板22と背面板23とは、走査電極2及び維持電極3によって構成される行電極に相当する表示電極4と、列電極に相当するデータ電極10とが互いに直交するように、微小な放電空間(又は、複数の微小な放電セル)24を挟んで対向配置されると共に、前面板22と背面板23とが対向配置された状態でそれらの周囲部分が封止され、例えば真空度1×10−4Pa程度の圧力で高真空排気した後、放電空間24には、放電ガスとして、He、Ne又はXeなどの希ガス成分によって構成される混合ガスが所定の圧力(例えば、400Torr〜600Torrの圧力)で封入充填されている。例えば、放電ガスとして、90体積%ネオン(Ne)−10体積%キセノン(Xe)の混合ガスを圧力66.5kPa(500Torr)で封入している。また、放電空間24は、隔壁11によって複数の細長い区画に仕切ることにより、表示電極4とデータ電極10との交点が位置する複数の放電セル24aが設けられ、各放電セル24aには、前述したように青色、緑色及び赤色の各蛍光体層12B、12G、12Rが順次配置されて、PDP21が構成される。そして、維持電極3及び走査電極2、データ電極10に所定の信号の電圧パルスを印加することにより、各放電セル24aに封入された放電ガス中の希ガス成分が励起されて波長の短い真空紫外線(147nm)を放出し、その紫外線により下地誘電体層9、及び隔壁11上に設けられた蛍光体層12B、12G、12Rが可視光を励起して青色、緑色、赤色の発光をさせて、情報(例えばカラー画像などによって構成される情報)をPDP21に表示することができる。なお、このようなPDP21を駆動する場合、任意のタイミングにおいて同じ駆動波形が全ての維持電極3に印加されるので、隣接して配置された維持電極3は前面ガラス基板1上で互いに接続されている。
次に、PDP21の製造方法の全体について簡単に説明するが、本発明の前記実施形態におけるPDP21は、図1Cに示されるように、既に背景技術において図10に示した製造工程の流れ図を用いて説明した手順に類似した手順に従って製造される。図1Cにおいて、前記実施形態におけるAC型PDP21の製造工程は、前面板の形成工程S10、背面板の形成工程S20、及びこれらの組立工程S30に大別される。前面板形成工程S10は、走査電極/維持電極形成工程S11と、誘電体層形成工程S12と、誘電体保護膜形成工程(以下、単に保護膜形成工程とも記す)S13とによって構成されている。一方、背面板形成工程S20は、データ電極形成工程S21と、下地誘電体層形成工程S22と、隔壁形成工程S23と、蛍光体層形成工程S24とによって構成されている。組立工程S30は、封着工程S31、排気工程S32、放電ガス封入工程S33、エージング工程S34と、PDPパネル完成工程S35の各工程とによって構成されており、これらの工程を経て前記PDP21が完成する。
具体的には、まず、前面ガラス基板1上に、表示電極4の走査電極2及び維持電極3をそれぞれ構成する透明電極2a、3aを形成した後(走査電極/維持電極形成工程S11)、透明電極2a、3aと共に走査電極2及び維持電極3をそれぞれ構成する補助電極2b、3bと、遮光層5を形成する。ここで、補助電極2b、3bは、透明電極2a、3a上にコントラスト向上のために暗色導電層と、その上に所定の導電体で導電層とで構成する2層構造で形成する方法も可能である。これらの形成方法については後述する。
次に、透明電極2a、3a、補助電極2b、3b、及び遮光層5を覆うように前面ガラス基板1上に、ガラスペーストを例えばスクリーン印刷法等を用いて塗布した後、所定温度で所定時間(例えば560℃で20分)焼成することによって、所定の厚み(例えば約20μm)の誘電体層6を形成する(誘電体層形成工程S12)。誘電体層6を形成するときに使用するガラスペーストとしては、例えば、PbO(70wt%)、B(15wt%)、SiO(10wt%)、及びAl(5wt%)と有機バインダ(例えば、α−ターピネオールに10%のエチルセルローズを溶解したもの)との混合物が使用される。ここで、有機バインダとは、樹脂を有機溶媒に溶解したものであり、エチルセルローズ以外に、樹脂としてアクリル樹脂、有機溶媒としてブチルカービトール等も使用することができる。さらに、こうした有機バインダに分散剤(例えば、グリセルトリオレエート)を混入させてもよい。また、ペーストを用いてスクリーン印刷する代わりに、成型されたフィルム状の誘電体前駆体をラミネートして焼成することによって、誘電体層6を形成してもよい。
次に、誘電体層6上に保護膜7を形成する(保護膜形成工程S13)。保護膜7は例えば酸化マグネシウム(MgOとも記す)によって構成され、例えば真空蒸着法等の成膜プロセスにより、保護膜7が所定の厚み(例えば約0.5μm)となるように形成する。このような方法により、前面ガラス基板1上に、構造物である走査電極2、維持電極3、遮光層5、誘電体層6、保護膜7を形成して、前面板22が作製される。なお、保護膜7の成膜形成法及び条件については、別に詳しい説明を後述する。
また、背面ガラス基板8上に、データ電極10をストライプ状に形成する(データ電極形成工程S21)。具体的には、背面ガラス基板8上に、データ電極10の材料、例えば感光性Agペーストを用い、例えばスクリーン印刷法等により膜を形成し、その後、例えばフォトリソグラフィー法等によってパターニングし、焼成することで形成することができる。
次に、以上のようにして形成したデータ電極10を覆うように下地誘電体層9を形成する(下地誘電体層形成工程S22)。下地誘電体層9は、例えば、鉛系のガラス材料を含むガラスペーストを、例えば、スクリーン印刷で塗布した後、所定温度、所定時間(例えば560℃で20分)焼成することによって、所定の層の厚み(例えば約20μm)となるように形成する。また、ガラスペーストをスクリーン印刷する代わりに、例えば、成型されたフィルム状の下地誘電体層前駆体をラミネートして焼成することによって形成してもよい。
次に、隔壁11を、例えばストライプ状に形成する(隔壁形成工程S23)。隔壁11は、例えばAl等の骨材とフリットガラスとを主剤とする感光性ペーストを例えばスクリーン印刷法やダイコート法等により成膜し、例えばフォトリソグラフィー法によりパターニングし、焼成することで形成することができる。又は、例えば、鉛系のガラス材料を含むペーストを、例えば、スクリーン印刷法により所定のピッチで繰り返し塗布した後、焼成することによって形成してもよい。ここで、隔壁11の間隙の寸法は、例えば、32インチ〜50インチのHD−TV(High Definition−TV)の場合、130μm〜240μm程度である。
そして、隔壁11と隔壁11との間の溝(放電セル)24aには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に発光する蛍光体層12R、12G、12Bを形成する(蛍光体層形成工程S24)。この工程では、各色の蛍光体粒子と有機バインダとによって構成されるペースト状の蛍光体インキを塗布し、これを例えば400℃〜590℃の温度で焼成して有機バインダを焼失させることによって、各蛍光体粒子が結着してなる蛍光体層12R、12G、12Bとして形成する。このような方法により、背面ガラス基板8上に、構造物であるデータ電極10、下地誘電体層9、隔壁11、蛍光体層12R、12G、12Bを形成して、背面板23が作製される。
続いて、蛍光体層12R、12G、12B等の構造物を背面ガラス基板8に形成した背面板23の周辺部に、例えば低融点フリットガラスを塗布して乾燥させ、この背面板23と、保護膜7等を前面ガラス基板1に形成した前面板22とを対向配置して加熱処理を行うことにより、前面板22と背面板23とを低融点フリットガラスにより封着する(封着工程S31)。
その後、前面板22と背面板23との間の放電空間24内を高真空(例えば1.1×10−4Pa)に加熱しながら排気して脱ガス処理を行う(排気工程S32)。
次いで、放電空間24に、放電ガスとしてHe又はNe又はXeなどの希ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入して封じ切る(放電ガス封入工程S33)。
次いで、パネルの各電極に所定の電圧、波形の駆動パルスを印加して放電を行うエージングを実施する(エージング工程S34)。
この結果、放電空間24が形成されたPDP21が製造される(PDPパネル完成工程S35)。
引き続き、以下に、本発明の前記実施形態におけるPDP21の前面板22の誘電体層6上に形成される保護膜7について、その形成方法を含めて詳しく説明する。
通常、前面板22の誘電体層6上に保護膜7を成膜形成する方法は、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法が用いられる。ここでは、図2に示したスパッタリング法による成膜装置で保護膜7を成膜形成する方法について説明する。図2において、成膜装置30の真空容器31内の載置台32に、前面板22用の前面ガラス基板1を搬送して載置する。載置台32は、例えば、抵抗加熱ヒータ等の加熱装置42により、前面板22を加熱昇温させることが可能である。真空容器31には排気孔33が設けられ、排気装置35により真空容器31内を排気しながら圧力調整装置36で真空容器31内の圧力を所定の圧力に保つ。また、真空容器31にはガス導入口34が排気孔33とは別に設けられ、Ar等の希ガスを主成分とするスパッタガスを供給するガス供給装置38から、ガス導入装置37を経て、さらにガス導入孔34を通って、前記スパッタガスが真空容器31内に導入され、真空容器31内が所定の圧力に保持される。また、真空容器31には四重極質量分析計(quadrupol mass spectrometer)(Q−mass)41が取り付けられており、真空容器31内のガス種とその分圧のモニタリング観測することを可能にしている。加熱装置42により前面板22を所定の温度に加熱し、スパッタリング用のターゲット39を固定保持するターゲット保持台43に接続された高周波電源40により、所定の高周波電力をターゲット39に印加すると、真空容器31内のターゲット39の近傍でAr等の希ガスの放電が起こり、放電により生ずるプラズマイオンがMgOのターゲット39をスパッタし、ターゲット39に対向して配置された前面ガラス基板1上にMgO保護膜7を成膜形成する。ここで、前記所定の高周波電力は、例えば、量産性を考慮すると、2kW以上とするのが好ましい。なお、図2の100は成膜装置30の成膜動作を制御する制御装置であり、制御装置100により、四重極質量分析計41で真空容器31内のガス種とその分圧のモニタリング観測されたデータが入力され、加熱装置42と排気装置35と圧力調整装置36とガス供給装置38とガス導入装置37と高周波電源40とのそれぞれの動作を制御するようにしている。
実際にMgO保護膜7を成膜形成するにあたり、成膜に必要な各種条件を求める実験を行った。ここでは、前面板22,122の製造に用いる複数のソーダライムガラス製の前面ガラス基板1,101を準備し、実験に供した。また、電子ビーム蒸着法を用いるMgOの保護膜107の成膜形成法は、従来の一般的な方法であり、ここでは詳しい説明を省略する。
あらかじめ、それぞれの前面ガラス基板1,101に、表示電極4,104及び誘電体層6,106を順次形成した後、成膜装置30又は図示しない電子ビーム蒸着法用の従来の成膜装置を用いて、6種類のMgOによって構成される保護膜7,107を、スパッタリング法又は電子ビーム蒸着法で成膜形成した。6種類のMgOによって構成される保護膜7,107のうちの1種類のMgOによって構成されるの保護膜107すなわち試料T1Ref.は、比較参照用として、従来の一般的な方法である電子ビーム蒸着法により成膜形成した。これを比較参照用試料T1Ref.とする。そして、他の5種類のMgOによって構成されるの保護膜7すなわち試料T、T、T、T、Tについては、MgO膜の各種特性が成膜時の雰囲気ガス中のHOガスの影響を大きく受けることがこれまでの実験結果から知られているので、図2に示した成膜装置30のガス供給装置38でArガスとHOガスを混合させて、混合されたガスを、ガス導入装置37を経てガス導入孔34を通して真空容器31内に供給するときに、前面ガラス基板1の基板温度とHOガス流量を変化させて、異なる条件でMgO膜を成膜形成した。成膜時の条件は次の通りである。
真空容器31内のスパッタガス圧力=0.5Pa、
Arガス流量=100standard cc・m(以下、sccmと略記する)、
Oガス流量=0sccmより大きく30sccm以下、
前面ガラス基板1の基板温度:250℃〜350℃、
MgO膜の成膜厚さ:600nm〜700nm。
このうち、HOガス流量及び基板温度を順次増加させて、5種類のMgOを成膜した試料を作製した。5種類の試料をT、T、T、T、Tとする。
前記の条件のうち、HOガス流量については、成膜装置30又は図示しない電子ビーム蒸着法用の従来の成膜装置に設けた四重極質量分析計41を用いると、質量数18のHOよりもの質量数2のHのイオン電流の感度が高く、H分圧をモニタすることでHOガス流量を精度良く制御できる。従って、例えば、前記実施形態の成膜装置30では、MgOの保護膜7の成膜プロセス中に、成膜装置30の真空容器31に取り付けた四重極質量分析計41を用いて成膜中のH分圧を制御装置100により観測し、制御装置100によりガス導入装置37及びガス供給装置38をそれぞれ制御してHOガス流量を制御した。従来の成膜装置では実験者がHOガス流量を制御した。なお、HOガス流量は0sccmより大きく30sccm以下と明記しているが、HOガス流量は、成膜装置に依存しないパラメータであるため、成膜装置の真空容器31の全圧に対するHOの圧力比が10−4〜10−1であるように設定することが望ましい。
以下に示す表1に、各試料(サンプル)(T1Ref.、T、T、T、T、T)のH分圧の値を示す。
Figure 2006109719
なお、上述した本発明の前記実施形態に関連する試料T、T、T、T、Tの成膜方法には、スパッタ成膜法を用い、そして、比較参照用試料T1Ref.の成膜方法には従来多用されている電子ビーム蒸着法を用いたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、H分圧を制御することが可能な方法であれば、他の成膜方法、例えばCVD法、ゾルゲル法等で成膜してMgOの保護膜7を形成するものであってもよい。また、得られたMgOの保護膜7の特性はH分圧のみで決まるわけではなく、後述する他のパラメータにも依存しているが、代表的なパラメータとしてH分圧の値を取り上げて表1に示し、H分圧の種々の値に対するMgOの保護膜107,7の特性を分類した。
前面板122,22として形成するために準備したこれらの試料において、それぞれ成膜したMgOの保護膜107,7の密度、最小粒径、空隙率を求めた。密度は、成膜面積と、膜厚と、前面板122,22の成膜による増加重量とから、計算により得られる。成膜したMgOの保護膜107,7は、誘電体層106,6の表面上に略垂直に成長した柱状の結晶の集合体として膜状に形成されるので、最小粒径、空隙率については、成膜したMgOの保護膜107,7の表面を拡大観察することにより得られる。空隙率は、成膜した面積から、柱状の結晶の占める面積を差し引いたものを、空隙の面積とみなし、この空隙の面積を成膜面積で除して求めた。なお、本発明の前記実施形態におけるPDP21のMgO膜では、平均粒径ではなく、後述するように最小粒径を求めているところが重要である。
そして、耐スパッタリング性の尺度となるエッチングレートは、以下のようにして評価を行った。比較参照用の試料T1Ref.を含む6種類の各試料(T1Ref.、T、T、T、T、T)として形成されたこれらの前面板22を、それぞれ、MgOの保護膜7の成膜に用いた成膜装置30と同様な成膜装置30の真空容器31内の載置台32に載置し、真空容器31内で、高周波電源40によりバイアス電圧を印加して前面板22をArプラズマ中にそれぞれ曝すことにより、MgO膜のドライエッチングをそれぞれ行い、単位時間当たりのエッチング量を算出してエッチングレートをそれぞれ求めた。これらのエッチングレートは、PDP21の放電において、イオンによって削られるMgO膜の量を擬似的に評価するものであり、MgO膜の性能特性を示す重要な尺度となる。
また、比較参照用を含む6種類の各試料T1Ref.、T、T、T、T、Tの前面板122,22を加熱炉(図示せず)でそれぞれ所定の温度で加熱した後、別に試作した背面板123,23とそれぞれ組み合わせた上で封着し、前述した製造工程に沿って排気、放電ガス封入、エージングを行い、PDPを完成させた。6種類の各試料T1Ref.、T、T、T、T、Tの前面板を用いて完成させた各PDPをPDPパネル特性検査台(図示せず)に載置し、それぞれの放電遅れ時間を測定した。電子放出性能が高いMgO膜を使用した場合、PDPの放電遅れ時間が減少することから、放電遅れ時間もMgO膜の性能特性を示す重要なパラメータである。
今回作製した6種類のMgO膜の各試料について、空隙率、密度、最小粒径とエッチングレート、及び放電遅れ時間の各特性値を、以下に示す表2にまとめた。表2において、試料T、T、T、T、Tの放電遅れ時間及びエッチングレートの特性値は、従来の一般的な方法である電子ビーム蒸着法によりMgO膜を成膜形成した試料T1Ref.の値を基準(言い換えれば、試料T1Ref.の値を1.00)とした相対値で示している。
Figure 2006109719
表2に示すデータに基づき、各特性のデータをグラフにプロットし(図3〜図8参照)、その相関関係に注目して、試作した各試料のMgO膜の評価を行った。
図3は、前記6種類の試料のMgO膜の空隙率(%)と放電遅れ時間(相対値)の関係を示すグラフである。図3は、試料T、T、Tに形成されたMgO膜において、従来の一般的な方法である電子ビーム蒸着法により成膜形成した試料T1Ref.のMgO膜に比べて、放電遅れ時間が大幅に減少していることを示している。このことから、空隙率が減少するにしたがって、放電遅れ時間は急激に減少していることがわかる。そして、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.より放電遅れ時間特性の改善が認められるのは、試料T1Ref.の空隙率が13%であることから、空隙率13%未満である。したがって、空隙率13%未満のMgO膜を形成することにより、高精細化に対応可能な高い電子放出性能を有するMgO膜の作製が可能になるといえる。
図4は、前記6種類の試料のMgO膜の最小粒径(nm)と放電遅れ時間(相対値)の関係を示すグラフである。図4に示すように、最小粒径の大きさが30nm以上で放電遅れ時間は急激に減少し、100nmを超えると再度上昇する。このことから、粒度分布の最小粒径が、30nm以上、100nm以下の範囲で放電遅れ時間が減少する、すなわち、MgO膜の電子放出性能が向上していることがわかる。
また、図5は、前記6種類の試料のMgO膜の膜密度(g/cm)と放電遅れ時間(相対値)の関係を示すグラフである。図5に示すように、MgO膜の膜密度が増加するにしたがって、放電遅れ時間は急激に減少しており、膜密度が3.3g/cmより大きいときに、この傾向が顕著であった。
このように、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.に比べて、高い電子放出性能を有するMgO膜(試料T、T、TのMgO膜)が得られた要因として、空隙率の減少と、MgO膜の最小粒径の大きさと、高密度化が影響していると考えられる。以下、MgO膜の空隙率、最小粒径、膜密度が放電遅れ時間に影響することについて考察を加えて説明する。
PDPの放電方式は、誘電体を介して放電するいわゆる「誘電体バリア放電」である。誘電体バリア放電は、誘電体部分の誘電率などの状況が変化すると、放電状態が変化することはよく知られている(例えば、内田龍男、内池平樹監修「フラットパネルディスプレイ大事典」512頁、工業調査会、2001年、参照)。ここに着目すると、MgO膜の空隙率、最小粒径、膜密度が放電遅れ時間に影響することについて以下のように説明できる。
すなわち、MgO膜の表面の空隙が大きい場合は、表面付近の凹凸の影響で様々な放電経路ができる。これにより、空隙率が大きくなると、放電遅れ時間が大きくなる。これに対し、MgO膜が高密度化して、表面に空隙が少ない場合は、放電の経路が比較的揃うので、放電のばらつきは小さく、放電遅れ時間が短縮される。また、最小粒径も30nm未満といった小さいものがあると、特に、MgO膜の表面付近の粒径が不均一になり、不要な放電パスが生ずるために、放電遅れ時間が大きくなる。また、100nmを超えて最小粒径が拡大すると、MgO膜の表面の隙間が増加し、空隙率が上昇するために、放電遅れ時間が大きくなる。一方、MgO膜の空隙率が増加し、膜密度が減少すると、MgO膜の比表面積が増加し、表面への水分や不純物の吸着が増すことになり、このことも放電遅れ時間が増加した要因の1つになる。
したがって、上述した説明から、前記保護膜の表面(例えば、最表面から50nmの深さまでの部分)において、MgO膜の空隙率が0%より大きく、13%未満であり、粒度分布における最小粒径(例えば、最表面から50nmの深さまでの部分の表面積相当円の直径)が30nm以上で、100nm以下の範囲にあり、膜材料がMgO膜の場合には膜密度が3.3g/cmより大きいことにより、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.のMgO膜に比べて、試料T、T、Tで示すように、放電遅れ時間特性が大きく改善したことが理解できる。なお、膜密度の上限値は、例えば、C軸配向MgO膜の場合には、3.58g/cmとすることが、実用上、好ましい。
続いて、表1に示すエッチングレートについて、放電遅れ時間と同様にデータをグラフにプロットし、その相関関係に注目して試作した各試料のMgO膜を評価する。図6は、前記6種類の試料のMgO膜の空隙率(%)とエッチングレート(相対値)の関係を示すグラフである。図6は、試料T、T、Tに形成されたMgO膜において、従来の一般的な方法である電子ビーム蒸着法により成膜形成した試料T1Ref.のMgO膜に比べて、エッチングレートが大幅に減少していることを示している。このことから、空隙率が減少するにしたがって、エッチングレートは急激に減少していることがわかる。すなわち、具体的には、空隙率10%に変曲点があることがわかる。よって、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.より、エッチングレート特性の改善が認められるのは、空隙率10%未満である。したがって、空隙率10%未満のMgOを形成することにより、耐スパッタリング性に優れた密度の高いMgO膜(誘電体保護膜)の作製が可能になるといえる。
また、図7は、前記6種類の試料のMgO膜の最小粒径(nm)とエッチングレート(相対値)の関係を示すグラフである。図7に示すように、最小粒径の大きさが30nm以上でエッチングレートは急激に減少し、100nmを超えると再度上昇する。このことから、粒度分布の最小粒径が、30nm以上、100nm以下の範囲でエッチングレートが減少する、すなわち、MgO膜の放電におけるイオン衝撃に対し、スパッタされにくくなっていることがわかる。
図8は、前記6種類の試料のMgO膜の膜密度(g/cm)とエッチングレート(相対値)の関係を示すグラフである。図8に示すように、MgO膜の膜密度が増加するにしたがって、エッチングレートは急激に減少しており、膜密度が3.3g/cmより大きいときに、この傾向が顕著であった。
これらの結果は、耐スパッタリング性に優れた密度の高いMgO膜(誘電体保護膜)を作製でき、高精細表示が可能で長寿命なPDPの実現が可能になることを示している。このように、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.に比べて、高い耐スパッタリング性を有するMgO膜が得られた要因として、空隙率の減少と、MgO膜の最小粒径の大きさ、高密度化が影響していると考えられる。以下、MgO膜の空隙率、最小粒径、膜密度がエッチングレート(すなわち、耐スパッタリング性)に影響することについて考察を加えて説明する。
通常、バルクのMgOは単結晶で最も強固な構造体となり、耐スパッタリング性が最大となるのに対し、薄膜状のMgOについては、成膜後のMgO膜が柱状構造をした細かい結晶が粒状に集合していることは、よく知られている。ここに着目すると、MgO膜の空隙率、最小粒径、膜密度がエッチングレート(耐スパッタリング性)に影響することについて以下のように説明できる。
すなわち、薄膜状に成膜したMgO膜は粒状の結晶が集合した柱状構造を有しており、粒状結晶の粒界間が隙間となり、イオンの衝突により崩れやすく、削られやすいと考えられる。そこで、粒径を大きくし、空隙を小さくし、高密度にすることで、MgO膜の表面が単結晶に近い構造になっているためにエッチングレートが減少し、耐スパッタリング性が向上すると考えられる。そして、最小粒径が大きくなり過ぎる(例えば、100nmを超える)と、このときは、MgO膜表面の隙間、すなわち空隙部の面積も増加し、削られやすくなると考えられる。また、逆に、最小粒径が小さい(例えば、30nm未満)と、粒径分布のばらつきが大きくなり、柱状構造をした粒状結晶が不均一になり、エッチングされやすく、その部分が選択的に削られて壊れやすくなっていると考えられる。いずれにしろ、MgO膜は柱状構造であることが望ましい。
したがって、上述した説明から、MgO膜の空隙率が0%より大きく、10%未満であり、粒度分布における最小粒径が30nm以上で、100nm以下の範囲にあり、膜材料がMgOの場合には膜密度が3.3g/cmより大きいことで、従来の電子ビーム蒸着法で形成したMgO膜(試料T1Ref.)に比べて、試料T、T、Tのエッチングレート(耐スパッタリング性)がより改善したことを理解できる。
以上、説明したように本発明の前記実施形態におけるPDP21は、その前面板22に形成するMgO膜(保護膜7)の空隙率、最小粒径、膜密度を適宜設定する(具体的には、空隙率が0%より大きく、耐スパッタリング性(空隙率が10%未満が好ましい)と放電遅れ時間特性(空隙率が13%未満が好ましい)の両方を向上させるためには空隙率が10%未満であり、粒度分布における最小粒径が30nm以上でかつ100nm以下の範囲にあり、膜材料がMgOの場合には膜密度が3.3g/cmより大きいように設定する)ことにより、放電遅れ時間を短縮して耐スパッタリング性をより改善できるので、放電特性のより優れた長寿命のPDPを実現できることになる。
なお、上述した本発明の前記実施形態におけるPDP21の前面板22に形成する誘電体保護膜7では、MgO(酸化マグネシウム)の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、誘電体保護膜7に、例えば、アルカリ土類金属の酸化物、フッ化物、水酸化物、炭酸化物、あるいは、これらの混合化合物等も用いることができる。
また、本発明の前記実施形態におけるPDP21の前面板22に形成する誘電体保護膜7の形成方法は、比較参照用の試料作成の電子ビーム蒸着法と共にスパッタリング法を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、蒸着法、スパッタリング法に加えて、CVD法やゾルゲル法等を利用することができるし、あるいは、これらの方法を2つ以上組み合わせて保護膜を形成する方法も適用できる。
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明に係るプラズマディスプレイパネル(PDP)及びその製造方法により製造されるPDPの前面板に形成される保護膜は、電子放出特性が良好で、なおかつ耐スパッタリング性が優れているので、この保護膜を用いることで、高精細で優れた画質を有し、長寿命のPDPの製造が可能になり、このようなPDPを利用した大型・薄型のフラットパネルディスプレイ装置は、大型テレビジョン受信機や公衆表示用モニタに適用することができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
本発明は、平板型表示装置(フラットパネルディスプレイともいう)として大型のテレビジョンや広告・情報等の公衆表示用への利用が拡大してきているプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)及びその製造方法に関する。特に、本発明は、低出力でしかも長時間動作をしても優れた表示品質を維持することを可能にする保護膜を有するプラズマディスプレイパネル及びその製造方法に関する。
近年、大型の平板型表示装置として希ガス放電による紫外線で蛍光体を励起発光させて画像・映像表示に利用するPDPは、対角1m以上になるような大型製品を目標に開発されてきた。PDPの開発は加速してきており、コンピューター等に代表される情報処理装置の表示機器として、あるいは大型のテレビジョン受信機や公衆表示用モニタとして、高性能化、低価格化、最適量産化等を目指して次々と新しい技術が開発されてきている。
PDPには交流駆動方式と直流駆動方式があるが、ここでは一般的な交流駆動方式のPDP(以下、交流駆動方式のPDPをAC型PDPと記す)の構造を概略的に説明する図を図9A及び図9Bに示す。AC型PDPには各種の方式があり、図9Aは面放電型と呼ばれる方式の一例として、その構造の一部を立体的に描いた斜視図で、また図9Bは図9AのAA部を拡大して断面図で示している。PDPは、ガラス製の前面ガラス基板101、背面ガラス基板108にそれぞれ行電極、列電極が直交配置され、画素(ピクセル)となる行及び列の両電極の交点及び両基板101,108間にある隔壁111により放電空間124を形成する構造となっている。
図10は、一般的なAC型PDPの製造方法を概略的に示す製造工程の流れ図である。図10において、一般的なAC型PDPの製造工程は、前面板の形成工程S110、背面板の形成工程S120、及びこれらの組立工程S130に大別される。前面板形成工程S110は、走査電極/維持電極形成工程S111と、誘電体層形成工程S112と、誘電体保護膜形成工程(以下、単に保護膜形成工程とも記す)S113とからなる。一方、背面板形成工程S120は、データ電極形成工程S121と、下地誘電体層形成工程S122と、隔壁形成工程S123と、蛍光体層形成工程S124とからなり、組立工程S130は、封着工程S131、排気工程S132、放電ガス封入工程S133、エージング工程S134と、PDPパネル完成工程S135の各工程とからなっており、これらの工程を経てPDP121が完成する。
以下、図9A及び図9Bに示した一般的な面放電型のAC型PDPの前面板122及び背面板123の構成について、図10に示した工程と対応させながら説明する。
前面板122は、前面ガラス基板101上に、放電の維持信号を入力するための維持電極103及び順次表示用の走査信号を入力するための走査電極102が、図10に示した走査電極/維持電極形成工程S111を経て、それぞれ対をなして平行に複数形成されて表示電極104となる行電極が構成されている。次いで、これらの表示電極104上に放電による壁電荷を形成するための透明な誘電体層106が誘電体層形成工程S112を経て成膜される。さらに、誘電体層106上に放電によるイオン衝撃から誘電体層106を保護するための保護膜(以下、保護膜とも記す)107が保護膜形成工程S113を経て形成されている。また、隣り合う維持電極103と走査電極102とで構成する1対の電極間に、表示面のコントラストを高めるため、遮光層となるブラックマトリクスを必要に応じて形成することもあるが、この形成工程は図10には示していない。
次に、背面板123は、背面ガラス基板108上に複数の表示データ信号を入力するための列電極となるアドレス電極(データ電極とも呼ばれる)110が、前面板122の表示電極104を構成する維持電極103及び走査電極102とそれぞれ交差する方向に、図10に示したデータ電極形成工程S121を経て複数形成されている。アドレス電極110の上にやはり放電による壁電荷を形成するための下地誘電体層109が下地誘電体層形成工程S122を経て成膜され、さらにその上にアドレス電極110と平行して隔壁111が隔壁形成工程S123により形成され、隔壁111間には赤色、緑色及び青色をそれぞれ発光する蛍光体層112R、112G、112Bが蛍光体層形成工程S124を経て設けられている。
そして、前面板122と背面板123とをその電極形成面側を対向させながら貼りあわせてフリットガラス等のシール材を用いて封着パネル化(封着工程S131)して、加熱しながら脱ガス処理(排気工程S132)を行った後、放電ガスとしてHe又はNe又はXeなどの希ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入(放電ガス封入工程S133)して、パネルの各電極に所定の電圧、波形の駆動パルスを印加して放電を行うエージングを実施(エージング工程S134)し、放電空間124が形成されたPDP121が完成する(PDPパネル完成工程S135)。
完成したPDP121には、走査電極102と維持電極103及び列電極であるアドレス電極110とに電気信号を供給するため、これらの電極の電極端子に駆動用のドライバICが搭載された回路基板が接続され、制御信号回路や電源回路と共に筐体に組み込んで表示装置として完成する。維持電極103及び走査電極102からなる表示電極104及びアドレス電極110に所定の信号の電圧パルスを印加することにより封入された希ガスが励起され、紫外線を放出し、その紫外線により隔壁111間に設けられた各色蛍光体層112R、112G、112Bが可視光を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせて、カラー画像などからなる情報を表示することができる。
特に、前面板122の形成工程S110において、前面ガラス基板101上に維持電極103、走査電極102と誘電体層106を形成し、その上に、放電によるイオン衝撃から誘電体層106を保護すると共に、2次電子放出による蛍光体の発光を促進する目的で、保護膜107が所定の条件下で電子ビーム蒸着などによって形成されているが、この保護膜107は酸化マグネシウム(MgO)が広く用いられている。このような電子ビーム蒸着で形成されたMgO膜は、結晶性が高く緻密な膜であり、耐スパッタリング性に優れ、かつ2次電子放出係数が高いという優れた特徴を有している。そして、ガス放電によるイオン衝撃から誘電体層106を保護する保護性能と、放電電圧を下げて応答性の速い放電を実現するため、保護膜107の結晶学的構造や各種物理的特性を改善する提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
特開平11−54045号公報 特開2002−75226号公報
前述したように、PDPはより高精細で低消費電力への要望が高まっており、放電ガスの高エネルギー化又は走査線数の増加等の開発が進められている。PDPの高精細化を図ろうとすると、PDPのパネル容器内の放電セルにおいて、イオン衝突エネルギーの増加に伴い誘電体保護膜のスパッタリングが加速され、保護膜の寿命が減少するおそれがあり、さらなる保護膜の耐スパッタリング性向上が課題の1つとして浮上してくる。また、高精細化に伴う走査線数の増加に伴って、アドレス電極に印加するアドレスパルスのパルス幅を狭くして高速駆動を行う必要があるが、実際に製造した高精細化PDPでは、印加パルスの立ち上がりから、かなり遅れて放電が行われるという放電遅れ現象のために、印加されたパルス幅内で放電が終了する確率が低くなり、本来、点灯すべきセルに書き込みができない、などといった現象が出現し、この現象により、PDPの放電セルの点灯不良が生じる。この放電遅れの期間を短くするには、保護膜の高い電子放出性能が要求される。しかしながら、前述したガス放電によるイオン衝撃から誘電体層106を保護する保護性能と、放電電圧を下げて応答性の速い放電を実現するため、保護膜107の結晶学的構造や各種物理的特性を改善する提案では、未だ満足のできる性能、特性が得られているとはいい難い。
本発明の目的は、前記の課題を解決するためになされたものであり、PDPの高精細化に対応可能で耐スパッタリング性に優れた密度の高い誘電体保護膜を作製することができ、高精細表示が可能で長寿命なプラズマディスプレイパネル及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、前記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、第1のガラス基板上に第1の電極と第1の誘電体層と保護膜とが形成された第1の基板と、
第2のガラス基板上に第2の電極と第2の誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された第2の基板とを備え、
前記第1の基板と前記第2の基板とが放電空間を挟んで対向配置され、
前記保護膜は、粒状の結晶が集合した構造を有し、
前記保護膜の表面において、前記保護膜の面積に対する前記結晶間の空隙の占める面積が0%より大きくかつ10%未満の範囲であるプラズマディスプレイパネルを提供する。
本発明の第2態様によれば、前記保護膜の前記粒状の結晶の最小粒径が30nm以上で100nm以下の範囲にある第1態様に記載のプラズマディスプレイパネルを提供する。
本発明の第3態様によれば、前記保護膜が、アルカリ土類金属の酸化物、フッ化物、水酸化物、及び、炭酸化物のうち、少なくとも1種類により形成されている第1又は2態様に記載のプラズマディスプレイパネルを提供する。
本発明の第4態様によれば、前記保護膜が、アルカリ土類金属の酸化物、フッ化物、水酸化物、及び、炭酸化物のうちの少なくとも2種類の材料を混合した化合物により形成されている第1又は2態様に記載のプラズマディスプレイパネルを提供する。
本発明の第5態様によれば、前記保護膜が酸化マグネシウムにより形成され、かつ前記保護膜の膜密度が3.3g/cmより大きい第1又は2態様に記載のプラズマディスプレイパネルを提供する。
これらの構成により、PDPの前面板に形成する保護膜の空隙率が0%より大きくかつ10%未満の範囲に設定すれば、エッチングレートが改善され、耐スパッタリング性が向上して密度の高い誘電体保護膜を作製することができ、長寿命化が期待でき、高精細化に対応可能なPDPを使用するPDP表示装置を実現できる。
さらに、保護膜の粒状の結晶の最小粒径が30nm以上で100nm以下の範囲に設定すれば、エッチングレートがより改善され、またこのような前面板で製造したPDPは、放電遅れ時間(アドレス期間に走査電極とアドレス電極間に電圧を印加してから放電が起こるまでの時間)を短縮化できるので、耐スパッタリング性がより向上して長寿命化が期待でき、放電特性が改善されて表示品質に優れたPDPを使用するPDP表示装置を実現できる。
また、前記目的を達成するために本発明のPDPの製造方法としては、本発明の第6態様によれば、第1のガラス基板上に第1の電極と第1の誘電体層と保護膜とが形成された第1の基板と、第2のガラス基板上に第2の電極と第2の誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された第2の基板とを放電空間を挟んで対向配置させて構成されるプラズマディスプレイパネルを製造するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記第1の誘電体層が形成された第1の基板を真空容器内に搬入し、
前記真空容器内にスパッタガスと共にHOガスを供給し、
前記真空容器内のHガス分圧を監視して前記HOガスの流量を制御しながら第1の基板に保護膜を形成するプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
また、本発明の第7態様によれば、前記真空容器内に供給する前記スパッタガスのガス圧を0.5Paとすると共に、前記第1の基板を250℃から350℃の範囲の所定の温度に加熱し、前記HOガスの前記真空容器内の全圧に対するHOガスの圧力比を10−4以上でかつ10−1以下に設定してスパッタリング法により保護膜を形成する第6態様に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
これらの工程を有するPDPの製造方法により、前面板に形成する保護膜のエッチングレートが改善され、またこのような前面板で製造したPDPは放電遅れ時間を短縮化できるので、耐スパッタリング性が向上して長寿命化が期待でき、放電特性が改善されて表示品質に優れたPDPを使用するPDP表示装置の実現が可能になる。
本発明によれば、前記保護膜は粒状の結晶が集合した構造を有し、前記保護膜の表面において、前記保護膜の面積に対する前記結晶間の空隙の占める面積が0%より大きくかつ10%未満の範囲にあるように構成しているため、耐スパッタリング性が優れた保護膜を得ることが可能となる。その結果、高精細で画質が優れ、長寿命のPDPを実現するといった、大きな効果を有する。
また、前記保護膜の粒状の前記結晶の最小粒径が30nm以上で100nm以下の範囲にあるように構成すれば、放電遅れ時間が減少することができ、電子放出特性が良好で、なおかつ耐スパッタリング性がより優れた保護膜を得ることが可能となる。その結果、高精細で画質がより優れ、長寿命のPDPを実現するといった、大きな効果を有する。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、図面を参照して本発明の実施形態におけるPDP及びその製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
(実施形態)
本発明の1つの実施形態について、図1A〜図8を用いて説明する。
図1Aは、本発明の前記実施形態におけるAC型PDPの一部を拡大して構造を示す分解斜視図、図1Bは図1AのAA部を拡大して示す断面図であり、図1Cは、本発明の前記実施形態におけるAC型PDPの製造方法を概略的に説明する製造工程の流れ図である。既に、背景技術として図9A及び図9Bを用いて一般的なAC型PDPの構造を説明したが、本発明の前記実施形態におけるAC型PDPは、ガラス製の前面ガラス基板1、背面ガラス基板8にそれぞれ行電極、列電極が直交配置され、画素(ピクセル)となる行及び列の両電極の交点及び両基板1,8間にある隔壁11により放電空間24を形成する構造と類似するが、再度、図1A及び図1Bを基に説明する。
次いで、図2は、本発明の前記実施形態におけるPDPの前面板の保護膜7の形成に用いる成膜装置の概略構成図、図3は、比較参照用試料と本発明の前記実施形態の実例の試料を含む合計6種類の試料のMgO膜の空隙率と放電遅れ時間の関係を示すグラフ、図4は、前記6種類の試料のMgO膜の最小粒径と放電遅れ時間の関係を示すグラフ、図5は、前記6種類の試料のMgO膜の膜密度と放電遅れ時間の関係を示すグラフ、図6は、前記6種類の試料のMgO膜の空隙率とエッチングレートの関係を示すグラフ、図7は、前記6種類の試料のMgO膜の最小粒径とエッチングレートの関係を示すグラフ、図8は、前記6種類の試料のMgO膜の膜密度とエッチングレートの関係を示すグラフである。
図1A、図1Bにおいて、前面板22には、透明な前面ガラス基板1上に、放電ギャップをあけて平行に対向する順次表示用の走査電極2と、放電の維持信号を入力するための維持電極3とで対をなして、ストライプ状に(いわゆる、行電極に相当する)表示電極4が複数対形成されている。この走査電極2及び維持電極3は、それぞれITO(Indium−Tin Oxide)やSnO等によって構成される透明電極2a、3aと、この透明電極2a、3aに電気的に接続された、例えば、銀等の厚膜、又は、例えばアルミニウム(Al)薄膜、又は、クロム(Cr)−銅(Cu)−クロム(Cr)の積層薄膜による補助電極(バス電極ともいう)2b、3bによって構成されている。また、隣り合う維持電極3と走査電極2とで構成する1対の電極間に、表示面のコントラストを高めるため、ブラックマトリクスとなる遮光層(BS膜ともいう)5を必要に応じて形成することもある。そして、前面ガラス基板1には、複数対の表示電極4の群の上に、複数対の表示電極4の群を覆うように低融点ガラスによって構成されかつ放電による壁電荷を形成するための透明な誘電体層6が形成され、その誘電体層6上には、酸化マグネシウム(MgO)によって構成されかつ放電によるイオン衝撃から誘電体層6を保護するための保護膜7が形成され、これらの各構成要素により、前面板22が構成されている。なお、表示電極4の補助電極2b、3bは、前面ガラス基板1上に透明電極2a、3aを形成した後、コントラスト向上のため、先に、暗色導電層を形成し、次いで、所定の導体材料で導体層を形成する2層構造にしてもよい。
また、前記前面ガラス基板1に対向配置される背面ガラス基板8上には、前面ガラス基板1上の表示電極4と直交する方向に、下地誘電体層9で覆われて複数の(いわゆる、列電極に相当する)表示データ信号を入力するためのアドレス電極(データ電極とも呼ばれる)10がストライプ状に形成されている。このデータ電極10上には、放電による壁電荷を形成するための下地誘電体層9が形成され、さらに、データ電極10上の下地誘電体層9の上には、データ電極10と平行してストライプ状の複数の隔壁11が配置され、隔壁11間の側面及び下地誘電体層9の表面上にR(red:赤色)、G(green:緑色)、B(blue:青色)の3色を発光する蛍光体を塗布して蛍光体層12R、12G、12Bが形成されて、背面板23が構成されている。
そして、前記構成の前面板22と背面板23とは、走査電極2及び維持電極3によって構成される行電極に相当する表示電極4と、列電極に相当するデータ電極10とが互いに直交するように、微小な放電空間(又は、複数の微小な放電セル)24を挟んで対向配置されると共に、前面板22と背面板23とが対向配置された状態でそれらの周囲部分が封止され、例えば真空度1×10−4Pa程度の圧力で高真空排気した後、放電空間24には、放電ガスとして、He、Ne又はXeなどの希ガス成分によって構成される混合ガスが所定の圧力(例えば、400Torr〜600Torrの圧力)で封入充填されている。例えば、放電ガスとして、90体積%ネオン(Ne)−10体積%キセノン(Xe)の混合ガスを圧力66.5kPa(500Torr)で封入している。また、放電空間24は、隔壁11によって複数の細長い区画に仕切ることにより、表示電極4とデータ電極10との交点が位置する複数の放電セル24aが設けられ、各放電セル24aには、前述したように青色、緑色及び赤色の各蛍光体層12B、12G、12Rが順次配置されて、PDP21が構成される。そして、維持電極3及び走査電極2、データ電極10に所定の信号の電圧パルスを印加することにより、各放電セル24aに封入された放電ガス中の希ガス成分が励起されて波長の短い真空紫外線(147nm)を放出し、その紫外線により下地誘電体層9、及び隔壁11上に設けられた蛍光体層12B、12G、12Rが可視光を励起して青色、緑色、赤色の発光をさせて、情報(例えばカラー画像などによって構成される情報)をPDP21に表示することができる。なお、このようなPDP21を駆動する場合、任意のタイミングにおいて同じ駆動波形が全ての維持電極3に印加されるので、隣接して配置された維持電極3は前面ガラス基板1上で互いに接続されている。
次に、PDP21の製造方法の全体について簡単に説明するが、本発明の前記実施形態におけるPDP21は、図1Cに示されるように、既に背景技術において図10に示した製造工程の流れ図を用いて説明した手順に類似した手順に従って製造される。図1Cにおいて、前記実施形態におけるAC型PDP21の製造工程は、前面板の形成工程S10、背面板の形成工程S20、及びこれらの組立工程S30に大別される。前面板形成工程S10は、走査電極/維持電極形成工程S11と、誘電体層形成工程S12と、誘電体保護膜形成工程(以下、単に保護膜形成工程とも記す)S13とによって構成されている。一方、背面板形成工程S20は、データ電極形成工程S21と、下地誘電体層形成工程S22と、隔壁形成工程S23と、蛍光体層形成工程S24とによって構成されている。組立工程S30は、封着工程S31、排気工程S32、放電ガス封入工程S33、エージング工程S34と、PDPパネル完成工程S35の各工程とによって構成されており、これらの工程を経て前記PDP21が完成する。
具体的には、まず、前面ガラス基板1上に、表示電極4の走査電極2及び維持電極3をそれぞれ構成する透明電極2a、3aを形成した後(走査電極/維持電極形成工程S11)、透明電極2a、3aと共に走査電極2及び維持電極3をそれぞれ構成する補助電極2b、3bと、遮光層5を形成する。ここで、補助電極2b、3bは、透明電極2a、3a上にコントラスト向上のために暗色導電層と、その上に所定の導電体で導電層とで構成する2層構造で形成する方法も可能である。これらの形成方法については後述する。
次に、透明電極2a、3a、補助電極2b、3b、及び遮光層5を覆うように前面ガラス基板1上に、ガラスペーストを例えばスクリーン印刷法等を用いて塗布した後、所定温度で所定時間(例えば560℃で20分)焼成することによって、所定の厚み(例えば約20μm)の誘電体層6を形成する(誘電体層形成工程S12)。誘電体層6を形成するときに使用するガラスペーストとしては、例えば、PbO(70wt%)、B(15wt%)、SiO(10wt%)、及びAl(5wt%)と有機バインダ(例えば、α−ターピネオールに10%のエチルセルローズを溶解したもの)との混合物が使用される。ここで、有機バインダとは、樹脂を有機溶媒に溶解したものであり、エチルセルローズ以外に、樹脂としてアクリル樹脂、有機溶媒としてブチルカービトール等も使用することができる。さらに、こうした有機バインダに分散剤(例えば、グリセルトリオレエート)を混入させてもよい。また、ペーストを用いてスクリーン印刷する代わりに、成型されたフィルム状の誘電体前駆体をラミネートして焼成することによって、誘電体層6を形成してもよい。
次に、誘電体層6上に保護膜7を形成する(保護膜形成工程S13)。保護膜7は例えば酸化マグネシウム(MgOとも記す)によって構成され、例えば真空蒸着法等の成膜プロセスにより、保護膜7が所定の厚み(例えば約0.5μm)となるように形成する。このような方法により、前面ガラス基板1上に、構造物である走査電極2、維持電極3、遮光層5、誘電体層6、保護膜7を形成して、前面板22が作製される。なお、保護膜7の成膜形成法及び条件については、別に詳しい説明を後述する。
また、背面ガラス基板8上に、データ電極10をストライプ状に形成する(データ電極形成工程S21)。具体的には、背面ガラス基板8上に、データ電極10の材料、例えば感光性Agペーストを用い、例えばスクリーン印刷法等により膜を形成し、その後、例えばフォトリソグラフィー法等によってパターニングし、焼成することで形成することができる。
次に、以上のようにして形成したデータ電極10を覆うように下地誘電体層9を形成する(下地誘電体層形成工程S22)。下地誘電体層9は、例えば、鉛系のガラス材料を含むガラスペーストを、例えば、スクリーン印刷で塗布した後、所定温度、所定時間(例えば560℃で20分)焼成することによって、所定の層の厚み(例えば約20μm)となるように形成する。また、ガラスペーストをスクリーン印刷する代わりに、例えば、成型されたフィルム状の下地誘電体層前駆体をラミネートして焼成することによって形成してもよい。
次に、隔壁11を、例えばストライプ状に形成する(隔壁形成工程S23)。隔壁11は、例えばAl等の骨材とフリットガラスとを主剤とする感光性ペーストを例えばスクリーン印刷法やダイコート法等により成膜し、例えばフォトリソグラフィー法によりパターニングし、焼成することで形成することができる。又は、例えば、鉛系のガラス材料を含むペーストを、例えば、スクリーン印刷法により所定のピッチで繰り返し塗布した後、焼成することによって形成してもよい。ここで、隔壁11の間隙の寸法は、例えば、32インチ〜50インチのHD−TV(High Definition−TV)の場合、130μm〜240μm程度である。
そして、隔壁11と隔壁11との間の溝(放電セル)24aには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に発光する蛍光体層12R、12G、12Bを形成する(蛍光体層形成工程S24)。この工程では、各色の蛍光体粒子と有機バインダとによって構成されるペースト状の蛍光体インキを塗布し、これを例えば400℃〜590℃の温度で焼成して有機バインダを焼失させることによって、各蛍光体粒子が結着してなる蛍光体層12R、12G、12Bとして形成する。このような方法により、背面ガラス基板8上に、構造物であるデータ電極10、下地誘電体層9、隔壁11、蛍光体層12R、12G、12Bを形成して、背面板23が作製される。
続いて、蛍光体層12R、12G、12B等の構造物を背面ガラス基板8に形成した背面板23の周辺部に、例えば低融点フリットガラスを塗布して乾燥させ、この背面板23と、保護膜7等を前面ガラス基板1に形成した前面板22とを対向配置して加熱処理を行うことにより、前面板22と背面板23とを低融点フリットガラスにより封着する(封着工程S31)。
その後、前面板22と背面板23との間の放電空間24内を高真空(例えば1.1×10−4Pa)に加熱しながら排気して脱ガス処理を行う(排気工程S32)。
次いで、放電空間24に、放電ガスとしてHe又はNe又はXeなどの希ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入して封じ切る(放電ガス封入工程S33)。
次いで、パネルの各電極に所定の電圧、波形の駆動パルスを印加して放電を行うエージングを実施する(エージング工程S34)。
この結果、放電空間24が形成されたPDP21が製造される(PDPパネル完成工程S35)。
引き続き、以下に、本発明の前記実施形態におけるPDP21の前面板22の誘電体層6上に形成される保護膜7について、その形成方法を含めて詳しく説明する。
通常、前面板22の誘電体層6上に保護膜7を成膜形成する方法は、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法が用いられる。ここでは、図2に示したスパッタリング法による成膜装置で保護膜7を成膜形成する方法について説明する。図2において、成膜装置30の真空容器31内の載置台32に、前面板22用の前面ガラス基板1を搬送して載置する。載置台32は、例えば、抵抗加熱ヒータ等の加熱装置42により、前面板22を加熱昇温させることが可能である。真空容器31には排気孔33が設けられ、排気装置35により真空容器31内を排気しながら圧力調整装置36で真空容器31内の圧力を所定の圧力に保つ。また、真空容器31にはガス導入口34が排気孔33とは別に設けられ、Ar等の希ガスを主成分とするスパッタガスを供給するガス供給装置38から、ガス導入装置37を経て、さらにガス導入孔34を通って、前記スパッタガスが真空容器31内に導入され、真空容器31内が所定の圧力に保持される。また、真空容器31には四重極質量分析計(quadrupol mass spectrometer)(Q−mass)41が取り付けられており、真空容器31内のガス種とその分圧のモニタリング観測することを可能にしている。加熱装置42により前面板22を所定の温度に加熱し、スパッタリング用のターゲット39を固定保持するターゲット保持台43に接続された高周波電源40により、所定の高周波電力をターゲット39に印加すると、真空容器31内のターゲット39の近傍でAr等の希ガスの放電が起こり、放電により生ずるプラズマイオンがMgOのターゲット39をスパッタし、ターゲット39に対向して配置された前面ガラス基板1上にMgO保護膜7を成膜形成する。ここで、前記所定の高周波電力は、例えば、量産性を考慮すると、2kW以上とするのが好ましい。なお、図2の100は成膜装置30の成膜動作を制御する制御装置であり、制御装置100により、四重極質量分析計41で真空容器31内のガス種とその分圧のモニタリング観測されたデータが入力され、加熱装置42と排気装置35と圧力調整装置36とガス供給装置38とガス導入装置37と高周波電源40とのそれぞれの動作を制御するようにしている。
実際にMgO保護膜7を成膜形成するにあたり、成膜に必要な各種条件を求める実験を行った。ここでは、前面板22,122の製造に用いる複数のソーダライムガラス製の前面ガラス基板1,101を準備し、実験に供した。また、電子ビーム蒸着法を用いるMgOの保護膜107の成膜形成法は、従来の一般的な方法であり、ここでは詳しい説明を省略する。
あらかじめ、それぞれの前面ガラス基板1,101に、表示電極4,104及び誘電体層6,106を順次形成した後、成膜装置30又は図示しない電子ビーム蒸着法用の従来の成膜装置を用いて、6種類のMgOによって構成される保護膜7,107を、スパッタリング法又は電子ビーム蒸着法で成膜形成した。6種類のMgOによって構成される保護膜7,107のうちの1種類のMgOによって構成されるの保護膜107すなわち試料T1Ref.は、比較参照用として、従来の一般的な方法である電子ビーム蒸着法により成膜形成した。これを比較参照用試料T1Ref.とする。そして、他の5種類のMgOによって構成されるの保護膜7すなわち試料T、T、T、T、Tについては、MgO膜の各種特性が成膜時の雰囲気ガス中のHOガスの影響を大きく受けることがこれまでの実験結果から知られているので、図2に示した成膜装置30のガス供給装置38でArガスとHOガスを混合させて、混合されたガスを、ガス導入装置37を経てガス導入孔34を通して真空容器31内に供給するときに、前面ガラス基板1の基板温度とHOガス流量を変化させて、異なる条件でMgO膜を成膜形成した。成膜時の条件は次の通りである。
真空容器31内のスパッタガス圧力=0.5Pa、
Arガス流量=100standard cc・m(以下、sccmと略記する)、
Oガス流量=0sccmより大きく30sccm以下、
前面ガラス基板1の基板温度:250℃〜350℃、
MgO膜の成膜厚さ:600nm〜700nm。
このうち、HOガス流量及び基板温度を順次増加させて、5種類のMgOを成膜した試料を作製した。5種類の試料をT、T、T、T、Tとする。
前記の条件のうち、HOガス流量については、成膜装置30又は図示しない電子ビーム蒸着法用の従来の成膜装置に設けた四重極質量分析計41を用いると、質量数18のHOよりもの質量数2のHのイオン電流の感度が高く、H分圧をモニタすることでHOガス流量を精度良く制御できる。従って、例えば、前記実施形態の成膜装置30では、MgOの保護膜7の成膜プロセス中に、成膜装置30の真空容器31に取り付けた四重極質量分析計41を用いて成膜中のH分圧を制御装置100により観測し、制御装置100によりガス導入装置37及びガス供給装置38をそれぞれ制御してHOガス流量を制御した。従来の成膜装置では実験者がHOガス流量を制御した。なお、HOガス流量は0sccmより大きく30sccm以下と明記しているが、HOガス流量は、成膜装置に依存しないパラメータであるため、成膜装置の真空容器31の全圧に対するHOの圧力比が10−4〜10−1であるように設定することが望ましい。
以下に示す表1に、各試料(サンプル)(T1Ref.、T、T、T、T、T)のH分圧の値を示す。
Figure 2006109719
なお、上述した本発明の前記実施形態に関連する試料T、T、T、T、Tの成膜方法には、スパッタ成膜法を用い、そして、比較参照用試料T1Ref.の成膜方法には従来多用されている電子ビーム蒸着法を用いたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、H分圧を制御することが可能な方法であれば、他の成膜方法、例えばCVD法、ゾルゲル法等で成膜してMgOの保護膜7を形成するものであってもよい。また、得られたMgOの保護膜7の特性はH分圧のみで決まるわけではなく、後述する他のパラメータにも依存しているが、代表的なパラメータとしてH分圧の値を取り上げて表1に示し、H分圧の種々の値に対するMgOの保護膜107,7の特性を分類した。
前面板122,22として形成するために準備したこれらの試料において、それぞれ成膜したMgOの保護膜107,7の密度、最小粒径、空隙率を求めた。密度は、成膜面積と、膜厚と、前面板122,22の成膜による増加重量とから、計算により得られる。成膜したMgOの保護膜107,7は、誘電体層106,6の表面上に略垂直に成長した柱状の結晶の集合体として膜状に形成されるので、最小粒径、空隙率については、成膜したMgOの保護膜107,7の表面を拡大観察することにより得られる。空隙率は、成膜した面積から、柱状の結晶の占める面積を差し引いたものを、空隙の面積とみなし、この空隙の面積を成膜面積で除して求めた。なお、本発明の前記実施形態におけるPDP21のMgO膜では、平均粒径ではなく、後述するように最小粒径を求めているところが重要である。
そして、耐スパッタリング性の尺度となるエッチングレートは、以下のようにして評価を行った。比較参照用の試料T1Ref.を含む6種類の各試料(T1Ref.、T、T、T、T、T)として形成されたこれらの前面板22を、それぞれ、MgOの保護膜7の成膜に用いた成膜装置30と同様な成膜装置30の真空容器31内の載置台32に載置し、真空容器31内で、高周波電源40によりバイアス電圧を印加して前面板22をArプラズマ中にそれぞれ曝すことにより、MgO膜のドライエッチングをそれぞれ行い、単位時間当たりのエッチング量を算出してエッチングレートをそれぞれ求めた。これらのエッチングレートは、PDP21の放電において、イオンによって削られるMgO膜の量を擬似的に評価するものであり、MgO膜の性能特性を示す重要な尺度となる。
また、比較参照用を含む6種類の各試料T1Ref.、T、T、T、T、Tの前面板122,22を加熱炉(図示せず)でそれぞれ所定の温度で加熱した後、別に試作した背面板123,23とそれぞれ組み合わせた上で封着し、前述した製造工程に沿って排気、放電ガス封入、エージングを行い、PDPを完成させた。6種類の各試料T1Ref.、T、T、T、T、Tの前面板を用いて完成させた各PDPをPDPパネル特性検査台(図示せず)に載置し、それぞれの放電遅れ時間を測定した。電子放出性能が高いMgO膜を使用した場合、PDPの放電遅れ時間が減少することから、放電遅れ時間もMgO膜の性能特性を示す重要なパラメータである。
今回作製した6種類のMgO膜の各試料について、空隙率、密度、最小粒径とエッチングレート、及び放電遅れ時間の各特性値を、以下に示す表2にまとめた。表2において、試料T、T、T、T、Tの放電遅れ時間及びエッチングレートの特性値は、従来の一般的な方法である電子ビーム蒸着法によりMgO膜を成膜形成した試料T1Ref.の値を基準(言い換えれば、試料T1Ref.の値を1.00)とした相対値で示している。
Figure 2006109719
表2に示すデータに基づき、各特性のデータをグラフにプロットし(図3〜図8参照)、その相関関係に注目して、試作した各試料のMgO膜の評価を行った。
図3は、前記6種類の試料のMgO膜の空隙率(%)と放電遅れ時間(相対値)の関係を示すグラフである。図3は、試料T、T、Tに形成されたMgO膜において、従来の一般的な方法である電子ビーム蒸着法により成膜形成した試料T1Ref.のMgO膜に比べて、放電遅れ時間が大幅に減少していることを示している。このことから、空隙率が減少するにしたがって、放電遅れ時間は急激に減少していることがわかる。そして、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.より放電遅れ時間特性の改善が認められるのは、試料T1Ref.の空隙率が13%であることから、空隙率13%未満である。したがって、空隙率13%未満のMgO膜を形成することにより、高精細化に対応可能な高い電子放出性能を有するMgO膜の作製が可能になるといえる。
図4は、前記6種類の試料のMgO膜の最小粒径(nm)と放電遅れ時間(相対値)の関係を示すグラフである。図4に示すように、最小粒径の大きさが30nm以上で放電遅れ時間は急激に減少し、100nmを超えると再度上昇する。このことから、粒度分布の最小粒径が、30nm以上、100nm以下の範囲で放電遅れ時間が減少する、すなわち、MgO膜の電子放出性能が向上していることがわかる。
また、図5は、前記6種類の試料のMgO膜の膜密度(g/cm)と放電遅れ時間(相対値)の関係を示すグラフである。図5に示すように、MgO膜の膜密度が増加するにしたがって、放電遅れ時間は急激に減少しており、膜密度が3.3g/cmより大きいときに、この傾向が顕著であった。
このように、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.に比べて、高い電子放出性能を有するMgO膜(試料T、T、TのMgO膜)が得られた要因として、空隙率の減少と、MgO膜の最小粒径の大きさと、高密度化が影響していると考えられる。以下、MgO膜の空隙率、最小粒径、膜密度が放電遅れ時間に影響することについて考察を加えて説明する。
PDPの放電方式は、誘電体を介して放電するいわゆる「誘電体バリア放電」である。誘電体バリア放電は、誘電体部分の誘電率などの状況が変化すると、放電状態が変化することはよく知られている(例えば、内田龍男、内池平樹監修「フラットパネルディスプレイ大事典」512頁、工業調査会、2001年、参照)。ここに着目すると、MgO膜の空隙率、最小粒径、膜密度が放電遅れ時間に影響することについて以下のように説明できる。
すなわち、MgO膜の表面の空隙が大きい場合は、表面付近の凹凸の影響で様々な放電経路ができる。これにより、空隙率が大きくなると、放電遅れ時間が大きくなる。これに対し、MgO膜が高密度化して、表面に空隙が少ない場合は、放電の経路が比較的揃うので、放電のばらつきは小さく、放電遅れ時間が短縮される。また、最小粒径も30nm未満といった小さいものがあると、特に、MgO膜の表面付近の粒径が不均一になり、不要な放電パスが生ずるために、放電遅れ時間が大きくなる。また、100nmを超えて最小粒径が拡大すると、MgO膜の表面の隙間が増加し、空隙率が上昇するために、放電遅れ時間が大きくなる。一方、MgO膜の空隙率が増加し、膜密度が減少すると、MgO膜の比表面積が増加し、表面への水分や不純物の吸着が増すことになり、このことも放電遅れ時間が増加した要因の1つになる。
したがって、上述した説明から、前記保護膜の表面(例えば、最表面から50nmの深さまでの部分)において、MgO膜の空隙率が0%より大きく、13%未満であり、粒度分布における最小粒径(例えば、最表面から50nmの深さまでの部分の表面積相当円の直径)が30nm以上で、100nm以下の範囲にあり、膜材料がMgO膜の場合には膜密度が3.3g/cmより大きいことにより、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.のMgO膜に比べて、試料T、T、Tで示すように、放電遅れ時間特性が大きく改善したことが理解できる。なお、膜密度の上限値は、例えば、C軸配向MgO膜の場合には、3.58g/cmとすることが、実用上、好ましい。
続いて、表1に示すエッチングレートについて、放電遅れ時間と同様にデータをグラフにプロットし、その相関関係に注目して試作した各試料のMgO膜を評価する。図6は、前記6種類の試料のMgO膜の空隙率(%)とエッチングレート(相対値)の関係を示すグラフである。図6は、試料T、T、Tに形成されたMgO膜において、従来の一般的な方法である電子ビーム蒸着法により成膜形成した試料T1Ref.のMgO膜に比べて、エッチングレートが大幅に減少していることを示している。このことから、空隙率が減少するにしたがって、エッチングレートは急激に減少していることがわかる。すなわち、具体的には、空隙率10%に変曲点があることがわかる。よって、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.より、エッチングレート特性の改善が認められるのは、空隙率10%未満である。したがって、空隙率10%未満のMgOを形成することにより、耐スパッタリング性に優れた密度の高いMgO膜(誘電体保護膜)の作製が可能になるといえる。
また、図7は、前記6種類の試料のMgO膜の最小粒径(nm)とエッチングレート(相対値)の関係を示すグラフである。図7に示すように、最小粒径の大きさが30nm以上でエッチングレートは急激に減少し、100nmを超えると再度上昇する。このことから、粒度分布の最小粒径が、30nm以上、100nm以下の範囲でエッチングレートが減少する、すなわち、MgO膜の放電におけるイオン衝撃に対し、スパッタされにくくなっていることがわかる。
図8は、前記6種類の試料のMgO膜の膜密度(g/cm)とエッチングレート(相対値)の関係を示すグラフである。図8に示すように、MgO膜の膜密度が増加するにしたがって、エッチングレートは急激に減少しており、膜密度が3.3g/cmより大きいときに、この傾向が顕著であった。
これらの結果は、耐スパッタリング性に優れた密度の高いMgO膜(誘電体保護膜)を作製でき、高精細表示が可能で長寿命なPDPの実現が可能になることを示している。このように、従来の電子ビーム蒸着法で形成した試料T1Ref.に比べて、高い耐スパッタリング性を有するMgO膜が得られた要因として、空隙率の減少と、MgO膜の最小粒径の大きさ、高密度化が影響していると考えられる。以下、MgO膜の空隙率、最小粒径、膜密度がエッチングレート(すなわち、耐スパッタリング性)に影響することについて考察を加えて説明する。
通常、バルクのMgOは単結晶で最も強固な構造体となり、耐スパッタリング性が最大となるのに対し、薄膜状のMgOについては、成膜後のMgO膜が柱状構造をした細かい結晶が粒状に集合していることは、よく知られている。ここに着目すると、MgO膜の空隙率、最小粒径、膜密度がエッチングレート(耐スパッタリング性)に影響することについて以下のように説明できる。
すなわち、薄膜状に成膜したMgO膜は粒状の結晶が集合した柱状構造を有しており、粒状結晶の粒界間が隙間となり、イオンの衝突により崩れやすく、削られやすいと考えられる。そこで、粒径を大きくし、空隙を小さくし、高密度にすることで、MgO膜の表面が単結晶に近い構造になっているためにエッチングレートが減少し、耐スパッタリング性が向上すると考えられる。そして、最小粒径が大きくなり過ぎる(例えば、100nmを超える)と、このときは、MgO膜表面の隙間、すなわち空隙部の面積も増加し、削られやすくなると考えられる。また、逆に、最小粒径が小さい(例えば、30nm未満)と、粒径分布のばらつきが大きくなり、柱状構造をした粒状結晶が不均一になり、エッチングされやすく、その部分が選択的に削られて壊れやすくなっていると考えられる。いずれにしろ、MgO膜は柱状構造であることが望ましい。
したがって、上述した説明から、MgO膜の空隙率が0%より大きく、10%未満であり、粒度分布における最小粒径が30nm以上で、100nm以下の範囲にあり、膜材料がMgOの場合には膜密度が3.3g/cmより大きいことで、従来の電子ビーム蒸着法で形成したMgO膜(試料T1Ref.)に比べて、試料T、T、Tのエッチングレート(耐スパッタリング性)がより改善したことを理解できる。
以上、説明したように本発明の前記実施形態におけるPDP21は、その前面板22に形成するMgO膜(保護膜7)の空隙率、最小粒径、膜密度を適宜設定する(具体的には、空隙率が0%より大きく、耐スパッタリング性(空隙率が10%未満が好ましい)と放電遅れ時間特性(空隙率が13%未満が好ましい)の両方を向上させるためには空隙率が10%未満であり、粒度分布における最小粒径が30nm以上でかつ100nm以下の範囲にあり、膜材料がMgOの場合には膜密度が3.3g/cmより大きいように設定する)ことにより、放電遅れ時間を短縮して耐スパッタリング性をより改善できるので、放電特性のより優れた長寿命のPDPを実現できることになる。
なお、上述した本発明の前記実施形態におけるPDP21の前面板22に形成する誘電体保護膜7では、MgO(酸化マグネシウム)の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、誘電体保護膜7に、例えば、アルカリ土類金属の酸化物、フッ化物、水酸化物、炭酸化物、あるいは、これらの混合化合物等も用いることができる。
また、本発明の前記実施形態におけるPDP21の前面板22に形成する誘電体保護膜7の形成方法は、比較参照用の試料作成の電子ビーム蒸着法と共にスパッタリング法を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、蒸着法、スパッタリング法に加えて、CVD法やゾルゲル法等を利用することができるし、あるいは、これらの方法を2つ以上組み合わせて保護膜を形成する方法も適用できる。
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明に係るプラズマディスプレイパネル(PDP)及びその製造方法により製造されるPDPの前面板に形成される保護膜は、電子放出特性が良好で、なおかつ耐スパッタリング性が優れているので、この保護膜を用いることで、高精細で優れた画質を有し、長寿命のPDPの製造が可能になり、このようなPDPを利用した大型・薄型のフラットパネルディスプレイ装置は、大型テレビジョン受信機や公衆表示用モニタに適用することができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。
図1Aは、本発明の実施形態におけるAC型PDPの一部を拡大して構造を示す分解斜視図である。 図1Bは、図1AのAA部を拡大して示す断面図である。 図1Cは、本発明の前記実施形態におけるAC型PDPの製造方法を概略的に説明する製造工程の流れ図である。 図2は、本発明の前記実施形態におけるPDPの前面板の保護膜を形成する装置の概略構成図である。 図3は、比較参照用試料と本発明の前記実施形態の実例の試料を含む合計6種類の試料のMgO膜の空隙率と放電遅れ時間の関係を示すグラフである。 図4は、前記試料のMgO膜の最小粒径と放電遅れ時間の関係を示すグラフである。 図5は、前記試料のMgO膜の膜密度と放電遅れ時間の関係を示すグラフである。 図6は、前記試料のMgO膜の空隙率とエッチングレートの関係を示すグラフである。 図7は、前記試料のMgO膜の最小粒径とエッチングレートの関係を示すグラフである。 図8は、前記試料のMgO膜の膜密度とエッチングレートの関係を示すグラフである。 図9Aは一般的なAC型PDPの構造を概略的に説明する図である。 図9Bは、一般的なAC型PDPの構造を概略的に説明する図である。 図10は、一般的なAC型PDPの製造方法を概略的に説明する製造工程の流れ図である。
本発明は、平板型表示装置(フラットパネルディスプレイともいう)として大型のテレビジョンや広告・情報等の公衆表示用への利用が拡大してきているプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)に関する。特に、本発明は、低出力でしかも長時間動作をしても優れた表示品質を維持することを可能にする保護膜を有するプラズマディスプレイパネルに関する。
本発明の目的は、前記の課題を解決するためになされたものであり、PDPの高精細化に対応可能で耐スパッタリング性に優れた密度の高い誘電体保護膜を作製することができ、高精細表示が可能で長寿命なプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
本発明に係るプラズマディスプレイパネル(PDP)の前面板に形成される保護膜は、電子放出特性が良好で、なおかつ耐スパッタリング性が優れているので、この保護膜を用いることで、高精細で優れた画質を有し、長寿命のPDPの製造が可能になり、このようなPDPを利用した大型・薄型のフラットパネルディスプレイ装置は、大型テレビジョン受信機や公衆表示用モニタに適用することができる。

Claims (7)

  1. 第1のガラス基板上に第1の電極と第1の誘電体層と保護膜とが形成された第1の基板と、
    第2のガラス基板上に第2の電極と第2の誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された第2の基板とを備え、
    前記第1の基板と前記第2の基板とが放電空間を挟んで対向配置され、
    前記保護膜は、粒状の結晶が集合した構造を有し、
    前記保護膜の表面において、前記保護膜の面積に対する前記結晶間の空隙の占める面積が0%より大きくかつ10%未満の範囲であるプラズマディスプレイパネル。
  2. 前記保護膜の前記粒状の結晶の最小粒径が30nm以上で100nm以下の範囲にある請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記保護膜が、アルカリ土類金属の酸化物、フッ化物、水酸化物、及び、炭酸化物のうち、少なくとも1種類により形成されている請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記保護膜が、アルカリ土類金属の酸化物、フッ化物、水酸化物、及び、炭酸化物のうちの少なくとも2種類の材料を混合した化合物により形成されている請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 前記保護膜が酸化マグネシウムにより形成され、かつ前記保護膜の膜密度が3.3g/cmより大きい請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
  6. 第1のガラス基板上に第1の電極と第1の誘電体層と保護膜とが形成された第1の基板と、第2のガラス基板上に第2の電極と第2の誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された第2の基板とを放電空間を挟んで対向配置させて構成されるプラズマディスプレイパネルを製造するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
    前記第1の誘電体層が形成された前記第1の基板を真空容器内に搬入し、
    前記真空容器内にスパッタガスと共にHOガスを供給し、
    前記真空容器内のHガス分圧を監視して前記HOガスの流量を制御しながら前記第1の基板に前記保護膜を形成するプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  7. 前記真空容器内に供給する前記スパッタガスのガス圧を0.5Paとすると共に、前記第1の基板を250℃から350℃の範囲の所定の温度に加熱し、前記HOガスの前記真空容器内の全圧に対するHOガスの圧力比を10−4以上でかつ10−1以下に設定してスパッタリング法により前記保護膜を形成する請求項6に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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