JPWO2006104286A1 - 気液二相流クロマトグラフ分析装置及び該装置を用いる分析方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来から、HPLCに対しては分析時間短縮化、分析試料微量化、高分離能化の要求が強く、装置の小型化、軽量化が図られ、これを達成するため、装置内の液送ポンプ、流路部品等の小型化、軽量化や小径分離カラム使用、カラム効率の向上等に関する提案が多数提出されている。
例えば、特開2003−107064号公報には、コンパクトでローコスト、且つ、省エネルギータイプの高速液体クロマトグラフ用液送システムの発明が、特開2005−257017号公報にはマイクロバルブの発明が、特開2004−037266号公報には分離カラムの効率化の発明がそれぞれ記載されている。
特に、最近では、高速化と小径分離カラム(ミクロカラム)適用等によるに微量液送液体クロマトグラフ装置の開発が盛んであり、LC−MS/MSといった高度で高価なシステムが利用されている例も少なくない。
微量液送液体クロマトグラフ装置において、更なる分析の高速化、分離性能向上等を達成するには分離カラムの理論段数を高め、試料注入部や流路内でのデッドボリュームを最小にして注入後から検出部到達までの試料成分の拡散を最小にすることが必要である。
このため、接続流路やバルブ類のデッドボリュームを最小にする努力やミクロカラムに対しても、更なる小径化や充填材の微粒子化等による分離効率の向上が図られている。
これを改善するために、現状では微小流路の一部を試料液で置換した形で分離カラムにその形状を保って搬送する方法がとられているが、必ずしも充分でなく、またこのために微小容積流路を備えた切替バルブと微小液送シリンジポンプ等を要し、構造と取り扱い操作において繁雑となる等の問題点も依然として存在する。
また、分離カラムの理論段数を上げるには充填材粒子の粒径を小さくするかカラム長さを長くすることが必要であるが、何れも移動相媒体(展開液)の流速をある程度に保つためには極めて高い圧力を必要とし、該高圧に耐える材質を選択し、耐圧構造体を実質上デッドボリューム無しに形成する必要がある。
しかし、これを完全に達成するには手数と高いコストを要する。
本発明の第1の目的は、従来とは全く異なるクロマトグラフィー原理、即ち、キャリアガスと液状溶媒とを移動相媒体とし、分離カラム内に気液相が断続的に交番する特定状態の気液二相流を形成させた状態で該移動相をカラム出口方向に移動させ、溶媒液膜とカラム固定相との分配を利用して分離展開を行う、という全く新規なクロマトグラフィー原理により、HPLCに比べて分離分解能が格段に高く、且つ、一般のガスクロマトグラフ装置とあまり変わらない低圧、高速で難揮発性成分含有試料の完全分析が可能な気液二相流クロマトグラフ分析装置を提供するにある。
また本発明の第2の目的は、上記気液二相流クロマトグラフ分析装置と、例えば、本発明者が既に開発、提案した水膜ガスクロマトグラフ装置(特開2004−333270号公報参照)とを組み合わせで使用し、或いは、両クロマトグラフィー分析が一台で可能な装置を使用して、易揮発性から難乃至非揮発性までの多種成分含有試料を特段の前処理操作等を要せず直接分析することのできる複合クロマトグラフィー分析法を提供するにある。
本発明によれば、キャリアガスを主たる移動相媒体とし、水と混和しない高分子物質を固定相とするクロマトグラフィー分析に用いる装置であって、キャリアガス導入部と試料注入部と内周壁に前記固定相の層が形成されたキャピラリー分離カラムとその収容部及び検出部とを少なくとも備え、前記試料注入部は前記キャリアガス導入部とキャピラリー分離カラム入口との間に設けられ、且つ、前記キャリアガスに第2の移動相媒体として液状溶媒を添加混合することのできる溶媒導入手段を有すると共に前記キャリアガス導入量、前記移動相溶媒添加量をそれぞれ制御する機構と両移動相媒体が接する各流路部の温度制御機構を備えたものにおいて、前記分析装置は、その作動状態の分離カラム内において、部分的に液膜厚がキャピラリー内径におよび、カラム内長さ方向に間隔を隔てて複数の閉塞液栓が形成され、断続的に気液相が交番する状態で移動相媒体をカラム出口方向に移動させ、移動相媒体の溶媒液膜とカラム固定相との分配を利用して分離展開を行うクロマトグラフィー分析が可能となるように、装置各部と制御機構が連携作動するよう構成されていることを特徴とする気液二相流クロマトグラフ装置が提供される。
本発明の上記クロマトグラフ装置は、キャリアガス(気相)と水等の液状溶媒(液相)の2種類の移動相媒体を使用し、その作動状態での分離カラム内において、部分的に溶媒相の液膜がキャピラリー内径におよびカラム内で長さ方向に複数の間欠的閉塞液栓がほぼ規則的に形成され、断続的に気相・液相が交番する状態で移動相媒体をカラム出口方向に移動させ、溶媒液相とカラム固定相との分配を利用して分離展開を行う点が特徴である。本明細書内で液膜と水膜、液塊と水塊など水と液を用いた表現が出てくるが、溶媒に水を用いた場合は水膜、水塊、その他の有機溶媒を用いた場合は液膜、液塊などと読み替えるものとし、技術的に意味する内容に違いはないものとする。
上記装置では、前記移動相媒体の移動が高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)のように高圧圧縮型ポンプによるのではなく、カラム内通過による圧損が極めて少なく、装置構造に高い耐圧を要しないため、ガスクロマトグラフ装置(GC)と同様にキャリアガスの静圧を使用する液送方式を採るので装置構造に高い耐圧を要しない。
また、交番する気相で隔離された溶媒液膜が極微体積のプラグ(円盤状液塊)であり、かつHPLCの場合等で高い分離能を得るための大きな妨害要因となっていた分離場での拡散混合などが実質的に回避されるため、極めて高い理論段数を得ることができる。
本発明の上記装置において、好適な気液二相流クロマトグラフィー分析を達成する、即ち試料成分を良好に分離展開させるには、前記装置の作動状態に於けるキャピラリー分離カラム内の溶媒液膜が、下記式(1)
推算液膜厚さの単位時間平均値(μm)
=カラム内径(mm)×(1−α)×103 … (1)
但し、αは大気圧におけるキャピラリーカラム内流体の
(気体体積流量/全流体体積流量)で表される比で工学的にはボイト率と称される、
で算出される推算液膜厚さの単位時間(1単位:10秒未満)平均値として、0.1μm以上の範囲にあることが好ましい。推算水膜厚さの上限は検出器である質量分析装置の真空度低下に対する許容性によるので定められない。発明者が使用した装置の真空ポンプの能力における上限は1.0μmである。
また前記第2移動相媒体としての液状溶媒と前記キャピラリー分離カラム固定相物質との濡れ接触角が77°以上であることが好ましい。
更に、前記液状溶媒が水であり、前記キャピラリー分離カラムの固定相物質が、溶解性パラメーター値18.3MPa1/2以下の高分子樹脂又は樹脂組成物であるか、或いは、溶解性パラメーター値18.3MPa1/2以下の表面物性を与えるように表面処理されたものであることが好ましい。
前記水以外の液状溶媒としては、固定相物質との濡れ接触角が77°以上の水・有機溶媒混合溶液、有機溶媒或いは有機溶媒混合溶液であることが好ましい。
本発明の装置において、前記キャリアガスに第2の移動相媒体として溶媒を添加混合する溶媒導入手段が、溶媒を0.01〜2μL/分の平均液流量で加熱蒸気化して連続導入し、その後凝縮液化させ、これにより前記推算液膜厚さの単位時間平均値が0.1〜1.0μmの範囲であるキャピラリー分離カラム内の状態を気液が断続的に交番する移動相媒体二相流とするよう構成されているか、或いは、溶媒を0.01〜2μL/分の平均液流量として液送ポンプで連続的に導入するものであって、これにより前記推算液膜厚さの単位時間平均値が0.1〜1.0μmの範囲であるキャピラリー分離カラム内の状態を気液が断続的に交番する移動相媒体二相流とするよう構成されているものであることが好ましい。
更に、前記キャピラリー分離カラム内の状態をキャリアガスと溶媒が断続的に気液交番する移動相2相流状態にする手段が、キャリアガスを一方の端から、溶媒又はその蒸気を含むキャリアガスを他方端からそれぞれ導入し、その合流路の出口側端が分離カラムに接続されている管流路であって、導入された液状溶媒又は溶媒蒸気凝縮液によって閉塞するに充分小さい内径の細管部を該管流路内に備え、且つ、該細管部に導入された溶媒による閉塞膜又は塊部を形成する段階と、次いで該閉塞部をキャリアガスで搬送して閉塞を解消する段階とを交互に繰り返すようにするための溶媒流量調節機構とキャリアガス流量調節機構とを有し、これらの協調作動により交番間隔を調節し、気液が断続的に交番する移動相媒体の2相流状態を具現させるように構成された手段であることが好ましい。
また前記装置は、キャピラリー分離カラ厶に音波振動を与える機構を更に備えることが好ましい。
更に、本発明の装置は、検出器として質量分析計が使用されること、及び/又は検出器として水素炎イオン化検知器が使用されることが好ましい。
更にまた本発明の装置においては、分離カラ厶の固定相として、スチレン樹脂およびポリイソブチレン樹脂、4メチルペンテン樹脂等の分岐メチル基を有するオレフィン樹脂ないしはこれらの3次元架橋物を使用することが好ましい。
本発明によればまた、キャリアガスを主たる移動相媒体とし、水と混和しない高分子物質を固定相とするクロマトグラフィー分析法であって、キャリアガス導入部、試料注入部、内周壁に前記固定相の層が形成されたキャピラリー分離カラム、その収容部、検出部及び前記キャリアガスに水又は水蒸気又は有機溶媒を添加できる手段を少なくとも備えたクロマトグラフ分析装置を用い、
A)キャリアガス主体のガスを前記キャピラリー分離カラムに導入して気・固ガスクロマトグラフィー態様で注入された分析試料中の揮発性成分を分離展開する工程、
B)前記キャピラリーカラムの固定相表面に、前記推算液膜厚さの単位時間平均値が0.01〜0.09μmのほぼ定常厚さの水膜を形成させるように所定量の水又は水蒸気又はその両者をキャリアガスに添加混入させ、主として極性成分物質を分離展開する工程、及び、
C)前記(A)、(B)工程で分離展開が困難な成分物質を、分離カラム内に前記推算液膜厚さの単位時間平均値が0.1μm以上の溶媒膜を形成させることのできる所定量の液状溶媒を第2移動相媒体として第1移動相媒体であるキャリアガスに添加混入して供給し、該分離カラム内において、前記溶媒膜が部分的にキャピラリーカラム内径におよび、カラム内長さ方向に間隔を隔てて複数の閉塞液栓が形成され、断続的に気液相が交番する状態で移動相媒体をカラム出口方向に移動させて分離展開を行う工程、
を組み合わせてなることを特徴とする複合クロマトグラフィー分析法が提供される。
本発明の複合クロマトグラフィー分析法は、気固ガスクロマトグラフィー分析と水膜ガスクロマトグラフィー分析と上記本発明の装置を用いた気液二相流クロマトグラフィー分析とを組み合わせた点が特徴である。
これにより、常温でガス状の揮発性物質、極性物質、溶媒と共沸系を持たない難揮発性物質及び実質的に揮発性のないオリゴマー等の高分子物質をも含有する多種成分混合試料を特段の複雑な前処理を施すことなく一度に分析できる。
尚、水膜ガスクロマトグラフィー分析に関しては、特開2004−333270号公報に詳細に説明されているが、キャピラリーカラムの固定相表面に、極薄いほぼ定常厚さの水膜を形成させて分析するもので、分離カラム内での水の凝縮又は蒸発によって試料成分の移動展開を助長し、極性成分物質の分離展開に特に有効である。
この方法に用いる分析装置は気固ガスクロマトグラフィー分析と水膜ガスクロマトグラフィー分析が一度に実施可能な水膜ガスクロマトグラフ装置と気液二相流クロマトグラフィー分析が可能な前記本発明の装置の2台を使用するのが一般的であるが、気固、水膜、気液二相流の3装置を別個に使用しても、また上記3態様のクロマトグラフィー分析が一台に組込まれたものを用いてもよい。
本発明に係る気液二相流クロマトグラフ分析装置は、上述した通り、従来とは全く異なる新規なクロマトグラフィー原理、即ち、キャリアガスと液状溶媒とを移動相媒体とし、分離カラム内に気液相が断続的に交番する特定状態の気液二相流を形成させた状態で該移動相をキャリアガス静圧でカラム出口方向に移動させ、溶媒液膜とカラム固定相との分配を利用して分離展開を行うという新規な原理によるため、分離カラム内の圧損はガスクロマトグラフ装置の圧損に近く、既存の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に比べて圧損を極めて低くできる。
従って、分離カラム長を格段に長くできるのみならず、気液相を隔離する閉塞溶媒液膜が極微体積であることから、HPLCで高分離能を得るための大きな妨害要因となっていた分離場における拡散混合が実質的に回避され、単位カラム長当たりの理論段数も著しく向上させることができる。
このため各試料成分に対する分離能が極めて高く、しかも、前記移動相媒体の移動がHPLCのように高圧圧縮型ポンプではなくガスクロマトグラフ装置(GC)と同様のガス静圧によるためカラム内通過による圧損が極めて少なく、装置構造に高い耐圧を要せず、一般のガスクロマトグラフ装置とあまり変わらない低圧、高速で難揮発性成分含有試料の完全分析が可能である。
また本発明に係る複合クロマトグラフィー分析法では、気固ガスクロマトグラフィー分析と水膜ガスクロマトグラフィー分析と上記本発明の装置を用いた気液二相流クロマトグラフィー分析とを組み合わせたことにより、常温でガス状の揮発性物質、極性物質、溶媒と共沸系を持たない難揮発性物質及び実質的に揮発性のないオリゴマー等の高分子物質をも含有する多種成分混合試料を特段の複雑な前処理を施すことなく一度に分析できる。
図2は、試料のキャピラリー分離カラムへのオンカラム注入の態様を説明するための略図であり、(a)はインジェクター態様、(b)はキャピラリー素管態様をそれぞれ示す。
図3は、本発明の分析装置の検出部の一例としてのEI−MS装置のイオン源構造を示す図である。
図4は、本発明の装置で分離カラムに形成される気液相交番二相流状態を模式的に示した図である。
図5は、本発明の装置で気液相交番二相流状態を生成させるのに用いる手段を示す図であり、(a)は液直接導入態様、(b)は蒸気凝縮態様をそれぞれ示す。
図6は、機械学会で規定されている管内気液二相流の流動パターン分類図である。
図7は、管内気液二相流の流動名称、空気分率、ボイド率(閉塞率)の関係を示す図である。
図8は、0.25mm径分離カラム内に形成される気液相交番二相流状態の量的関係を半定量的に示した模式図である。
図9は、各種溶媒の溶解性パラメーターと表面張力との関係を示す線図である。
図10は、樹脂の溶解性パラメーター(表面張力)と接触角との関係を示す線図であり、(A)は溶解性パラメーターと表面張力との関係線図、(B)は溶解性パラメーター(表面張力)と接触角との関係線図をそれぞれ示す。
図11は、溶解性パラメーター値の低い樹脂と水接触角の関係を示す図である。
図12は、実施例1における分析実験の結果を示す図である。
図13は、実施例2における分析実験の結果を示す図である。
図14は、実施例3における分析実験の結果を示す図である。
図15は、実施例4における分析実験の結果を示す図である。
図16は、実施例5における分析実験の結果を示す図である。
図17は、実施例6における分析実験の結果を示す図である。
図18は、実施例7における分析実験の結果を示す図である。
図19は、実施例8における分析実験の結果を示す図である。
図20は、実施例9における分析実験の結果を示す図である。
図21は、実施例10における分析実験の結果を示す図である。
図22は、キャピラリーカラム内をFT−IR顕微鏡二次元IRイメージング測定した結果を示す図である。
図23は、実施例12で試作したT字管を示す図である。
図24は、図23のT字管による気液二相断続流の生成状態を示す図である。
図25は、実施例10におけるMSスペクトルを標準スペクトルと対比した図である。
図1(a)は、本発明の気液二相流クロマトグラフ分析装置の一実施例を示す略図であり、1はキャピラリー分離カラム、2は該カラムの温度調節機構付き収容部(オーブンB)、3は試料注入口、4はHe、Ar、窒素等のキャリアガスの充填タンク(図示せず)、5は調圧器、6は温度加熱バブリング水槽、7は水蒸気状態を保つための温度調節器、8はキャピラリー分離カラム1の入り口部の温度調節機構付き収容部(オーブンA)、9は検出器部としての質量分析計、10は高沸点ないし不揮発成分をイオン源に導入する加熱部ないしネブライザー等の機構である。
尚、図1(b)は、図1(a)の装置において試料注入口付近の構造を部分的に拡大して示した図である。
図1の装置では、全てを図示していないが、水等の溶媒導入部やキャリアガス導入部、試料注入口部や分離カラム部等の移動相媒体が接する流路部分にはそれぞれの部分の温度を調節できる温度調節手段が設けられ、またキャリアガスや溶媒蒸気の供給流量を調節する流量或いは圧調節弁、更にそれらを連携制御する制御機構(図示せず)を備える。
尚、図1に示した装置では、第2の移動相媒体(液状溶媒)として水が用いられ、該第2移動相媒体(水)はバブリング槽から水蒸気の状態でキャリアガスの一部に混合されて送られ、更に、残部のキャリアガスと混合して試料注入口部近傍から系内に導入される(図1(b)参照)。
勿論、本発明では、上記図1のような装置態様に限定されるものではなく、前記液状溶媒が液送ポンプ等により系内に直接導入される態様の装置であってよい。
尚、液送ポンプとしては、プランジャー型、シリンジ型、ガス圧型等の各種マイクロフィーダーを用いることが出来、特に、キャピラリーHPLC用のマイクロシリンジタイプのものを好適に用いることができる。
また本発明では、対象とする分析試料が高沸点の難揮発性成分を含むものが多いことから、装置の試料注入口部は、例えば、図2(a)のようにマイクロシリンジで注入口セプタムから系内に挿入したり、また図2(b)に示したようにキャピラリー素管に試料を充填したものを用いて系内に挿入する構造のものが好ましい。試料注入のためのナノ流路インジェクターの類が市場で商品化されればより好ましい注入部となろう。
本発明の装置で用いるキャピラリー分離カラ厶は、固定相である水と混和しない高分子物質をカラム内壁に均質層状に付着させたものである。
カラム径は通常0.10〜0.6mm程度、特に好ましくは0.1〜0.25mmである。
またカラム長さは特に限定されるものではなく100m以上に及ぶものも用いることができるが、通常1〜60m程度のものが好適に用いられる。カラム材質についても特に限定されず通常のGCやHPLCで用いる材質、例えば、ガラス、石英、ステンレス等のチューブを用いて良い。
尚、固定相物質に関しては、本発明では、用いる第2移動相媒体(液状溶媒)の物性との関係からも選択され、後に詳細に述べる。
更に、検出部で用いる検出器としては、主として磁場型、四重極型等の質量分析計(MS)や水素炎イオン化型(FID)検知器等が用いられる。
HPLCに用いるMS検出器はエレクトロンスプレーイオン化(ESI)、高速イオン衝撃イオン化(FAB)、大気圧イオン化(API)、化学イオン化(CI)等が使用される。
これらのイオン化法はソフトイオン化法で物質の分子量を特定し易く、揮発性である必要がない特徴はあるが、反面化学構造解析の参考になるフラグメントイオンの生成がほとんど無いため化学情報不足は否めない。
このため、より高級な装置タンデムMS/MS形質量分析計を使用する例も多い。
これに対し、GC−MSではEI法MS分析装置が使用され、EIイオン化法の高感度とフラグメント情報の豊かさによりスペクトル情報が多い。
LCでEIイオン化法が利用できない最大の理由は溶媒の存在であり、溶媒イオンが成分分子イオン化を妨害しCIイオン化が勝ったMSスペクトルを与えるためである。
水膜クロマトグラフィーや気液二相流クロマトグラフィーにおいては水、溶媒の存在量が低いため、EIイオン化MSが使用できる利点がある。
図3に通常のEIイオン源に流出液の乾燥スペースと粒子にイオン源ブロックと同電位の電圧を与えて粒子の壁付着欠損を低減させ、マクロなミストをイオン源外に廃棄するように設定したものを示した。
気液二相流クロマトグラフィーは媒体的にはGC分析法に近く、メークアップガスの添加で基本的に水素炎イオン化検出器(FID)を利用できることは明白である。
本発明の装置では、その稼働時において、分離カラム内に特定気液二相流状態、即ち、図3に模式的に示したように、カラムの長さ方向に対してほぼ定期間隔で水等の溶媒の隔膜が形成され、断続的気・液相交番状態でカラム出口方向に移動するカラム内二相流動状態を形成させる。
本発明の装置において、分離カラム内に上記特定気液二相流状態を安定的に具現させるには、キャリアガス流と溶媒流の合流位置の流路構造、用いる溶媒の分子凝集エネルギー(表面張力)、蒸気圧等の物性、分離カラム径、カラム内固定相物質の溶解性パラメーター等の表面物性、キャリアガスと溶媒の流量及び量比、それらに連動する移動相のカラム内移動速度、摩擦力等の各要因を勘案し、互いに関連するそれら各要因を適度に調整して達成する。
上記の内、キャリアガス流と溶媒流の合流位置の流路構造は装置設計、製作時に定められ、キャリアガス、溶媒の流量及び量比、カラム内移動速度は装置稼働時に調整され、それ以外の要因は装置稼働前に予め選択設定される。
本発明の装置において、上記規則的に断続する水塊列を形成するための手段、即ち、両移動相合流流路構造としては、微量液送ポンプから溶媒を供給する場合には、極細のT字流路に導入し、極細管を流れるキャリアガス流を閉塞させる液送量とキャリアガス流量の比率を変えて任意の断続する規則的な水塊列を形成する等の方法を用いる(図5参照)。
そして、かかる細管の出口に分析用キャピラリーカラムを接続する。
特に、気液二相流クロマトグラフィー移動相溶媒として混合溶媒を使用する場合には、蒸発を必要としない図5(a)の方式が好ましい。
また、例えば、図1の装置のように、微量液送ポンプによらない溶媒導入では、溶媒蒸気(例えば、図1ではバブリング槽からの水蒸気)をキャリアガスの一部と共に導入し、キャピラリーカラム入り口部分で凝縮させ、凝縮水塊を効率良くカラム入口付近に集合させ閉塞状態を形成させる。
閉塞水塊はキャリアガスによりキャピラリーカラムに流入し規則的に断続する水塊列となる。
水塊(プラグ)の大きさは、キャリアガスと溶媒双方の導入速度と閉塞させる部分の管径によって調整できる。
このような溶媒(水)蒸気凝縮による方式に好適に用いることのできる断続的水塊生成器の構造を図5(b)に例示した。
規則的に断続する水塊列の発生方法は、閉塞状態の形成とキャリアガスによる閉塞水塊の移動の繰り返し動作を基本としている。
器具の内壁表面は表面張力の低いポリテトラフルオロエチレン樹脂とするか、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系表面処理剤でコーティングされていることが好ましい。
シリコン系撥水処理剤は撥水表面処理や活性基ブロック剤として使用されるが、規則的に断続する水塊列発生方法の器具の内壁処理にも効果が得られる。
次に、装置構造、溶媒、分離カラム等が適正に設定された場合のキャリアガスと溶媒の各供給流量及び量比について述べる。
即ち、本発明の装置においては前記キャリアガスと溶媒の流量比を、キャピラリー分離カラム内の溶媒相液膜の平均厚さが、推算液膜厚さの単位時間(単位10秒未満)平均値(μm)を指標値として0.1〜1.0μmの範囲にあるように設定する。
ここで、推算液膜厚さの単位時間平均値(μm)とは、下記式(1)
推算液膜厚さの単位時間平均値(μm)
=カラム内径(mm)×(1−α)×103 … (1)
(但し、αは大気圧におけるキャピラリーカラム内流体の(気体体積流量/全流体体積流量)で表される比)で算出される値(ボイド率)である。
推算液膜厚さはカラム内に凝縮した状態でのカラム直径線上での水層の合計厚み平均値であり、カラム内径と液体気体媒体の供給量比で決まるゆえ、該推算厚さはカラム内の状態を表現する的確な指標値である。
工学で使用されるボイド率は空隙率とも言える数値であるが、管内径で値が変化するため流体状態の認識には向かない。
そこで、相状態をより一般的に表現する数値として推算水膜厚さの単位時間(1単位:10秒未満)の平均値を定義した。
カラム内に供給される液体体積流量/気体体積流量の比は、水(水蒸気)供給量とキャリアガス供給流量で決まり、本発明の気液二相流クロマトグラフィー分離において最も重要な制御指標値である。
尚、本発明の装置において分離カラム内の上記特定流動現象の発現は、実用的範囲において10秒以下の単位時間の行為の連続で有り、従って、例えば、閉塞率は同じでも1個/10m長さのような異常な断続水塊は本発明の範疇からは除外される。
このことは、カラム出口で検知される閉塞液栓で挟まれたガス部の長さに対応する、質量分析計で検知される2つの液パルスの間隔の継続時間が10秒以下を実用的範囲とすることを意味する。
固定相表面に形成される溶媒(水)膜の単位時間(単位:10秒以下)平均厚さは該液膜の流動状態を意図的に変えうるパラメーターであり、このパラメーターを指標として溶媒(水)供給量とキャリアガス流量の量関係を変更調節することにより、例えば、図6、図7に示す、どのような流動状態の溶媒(水)膜も形成することができる。
因みに、図6において(a)、(b)、(c)、(d)で夫々示されるキャピラリー内の水膜流動状態は、日本機械学会で規定する「気液二相流の流動現象」における環状流(a)、団塊波流(b)、フロス流(c)、スラグ流(d)に夫々相当する。
上記のように算出される推算水(液)膜厚さの単位時間平均値が0.1〜1.0μmの範囲であると、他の要因が特に適正範囲から外れていない限り、分離カラム内の移動相流動状態は本発明のクロマトグラフィー分析で企図するような特定気液二相流動状態、即ち、カラムの長さ方向に対してほぼ定期間隔で水の隔膜が形成され、断続的気・液相交番状態でカラム出口方向に移動するカラム内二相流動状態を常に具現させることができる。
より具体的には、0.25mm径カラムでは形成水層(推算水膜厚さ)は250nmとなるので、1mm長当たりに存在するカラ厶内壁上の全凝縮水体積は
3.14×0.25×1×0.00025(mm)
=196×10−6(μL)=196pL(0.2nL、0.2μg)/mm
0.2nLの水量を図1の模式図のような平板的栓状凝縮水塊の個々に割り当て、これを1mm間隔で並べた場合を図8として示した。
0.25mm内径カラムでは水塊と水塊の間隙に挟まるキャリアガスの空隙体積は、大気圧において49nLの気泡となる。
カラム断面積は0.05mm2ゆえ、プラグ水膜(水栓膜)の厚さは400×10−6mm(=0.4μm、400nm)である。
本発明の装置で供給する水等の液状溶媒は、キャリアガス供給量、その他の要件を勘案して決定され、必ずしも下記範囲に限定されるものではないが、本発明装置のカラムサイズ、液送ポンプの送量精度や蒸気による供給の場合のバブリング量精度等を考慮すると、平均液送流量として0.01〜2μL/分、より好ましくは、0.1〜1.0μL/分程度が上記のカラム内流動状態を容易に形成できる観点から好ましい。
次に、本発明の装置に用いられる第二移動相媒体としては、上記特定気液二相流状態を再現性良く容易に具現できることが必要であることから、分析試料展開媒体としてだけでなく、分離カラム内固定相物質の表面物性と該溶媒の分子凝集エネルギー(表面張力)、蒸気圧、粘性等の諸物性との関連を考慮した限られた液体物性を有するものだけが選択される。
本発明の上記特定気液二相流状態において、閉塞液膜(水栓塊)の生成及び安定性に最も関係する要因は溶媒の表面張力と蒸気圧及び固定相物質表面部の溶解性パラメーターである。
表面張力は溶媒膜とキャピラリーカラム固定相表面との接触角を維持し、接触角が90°より大きく低下すると固定相表面を濡らす方向に張力が働き膜を破壊する。
蒸気圧に関しては図4又は図8の空間と膜の間で蒸発平衡となっており、環境温度に相当する溶媒蒸気圧が存在する。
図で空間を飽和蒸気圧で満たす分だけ液膜は薄くなり破壊することもある。
図8は、比較的液膜密度が高い気液二相流状態を意図しているが、49nL空間には溶媒が水の場合、30℃で蒸気圧3000Paの水、即ち、1.16pLの水が存在する。30℃でのこの水量は0.2nLの水膜体積量からは無視できる。
しかし温度を上げたり、液膜間隔が長い場合は蒸発量が増加し無視できなくなり、膜が破壊する可能性があるので、ガス媒体への液媒体蒸気混合により液膜自体からの蒸発量を抑制することも必要になる。
本発明の気液二相流クロマトグラフィーは、前記溶媒が、例えば水の場合、水接触角が77°以上ある固定相樹脂を使用することが好ましい。
ここに主として係わる物理的因子として、表面張力(γ)、溶解性パラメーター(凝集エネルギー密度平方根;δ値)、接触角(濡れ・はじき;θ)などが挙げられる。
本発明の装置でキャピラリー分離カラムの内周壁に形成される固定相物質としては、前記第2移動相としての液状溶媒が水である場合、水との接触角が77°以上となる樹脂又は樹脂組成物であることが好ましく、このような樹脂又は樹脂組成物として、その溶解度パラメーター値(SP値又はδ値)が18.3以下MPa1/2以下のものを挙げることができる。
また前記固定相高分子物質は表面処理され、該処理された表面の溶解度パラメーター値が18.3以下MPa1/2以下のものであっても良い。
このような樹脂として、具体的には、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、フッ化ビニリデン、ジメチルシリコン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ペンタデカフルオロアクリレート等の樹脂又はこれら樹脂からなる組成物を挙げることができる。
更に、好適な樹脂又は樹脂組成物として、固定相樹脂として最も一般的なジメチルポリシロキサン樹脂、パーフルオロアルキル基、特にポリスチレンと分岐メチル基を高単位で含有することに由来する撥水性を持つポリイソブチレンは、そのラジカル架橋した樹脂塗膜を固定相とすることで広範な利用が期待される。フルオロアルキル基誘導形シロキサンモノマー単位を含むメチルポリシロキサン共重合体樹脂、フェニル基を含有するフェニル基含有メチルポリシロキサン共重合体樹脂、又は、複数のフェニル・メチルポリシロキサン共重合体樹脂の混合或いは一種以上のフェニル・メチルポリシロキサン共重合体樹脂とメチルポリシロキサン共重合体樹脂の混合により前記フェニル基モル%相当濃度とした樹脂組成物、シアノアルキル基を含むシロキサンモノマー単位を50モル%以下の濃度で含有するシアノアルキル・フェニル・メチルポリシロキサン共重合体樹脂、又は複数の異種シアノアルキル・フェニル・メチルポリシロキサン共重合体樹脂の混合或いは一種以上のシアノアルキル・フェニル・メチルポリシロキサン共重合体樹脂とメチルポリシロキサン共重合体樹脂の混合により前記シアノアルキル基モル%相当濃度とした樹脂組成物等を例示できる。
δの例:ポリ[ジメチルシロキサン] :δ=15.2
アルキルベンゼン :δ=18
プロピオニトリル :δ=22
パーフルオロアルキル :δ=14.5
2物質混合に限ったδ値推測法には、Smallの式*による近似計算法があるが、それぞれのδとモル分率(X)の積どうしを加算した直線内挿形の近似式である。
δm=X1δ1+X2δ2
*(P.A.Small,J.of Appl.Chem.,3,71(1953))
また前記第2移動相としての液状溶媒が水・有機溶液混合溶液、有機溶媒、有機溶媒混合物である場合、当該それぞれの溶媒との接触角が77°以上となる固定相物質(樹脂、又は樹脂組成物)であることが好ましく、このような固定相物質は、個々の溶媒毎にその溶解性パラメーター値(又は表面張力値γL)と固定相物質の表面溶解性パラメーター値(又は表面張力値γS)とから、例えば、式、 γL/γS=4φ2/[(cosθ)2+1]
等の溶媒と固定相物質の各表面張力と接触角の関係式を用いて接触角θを算出し、この数値が77°以上となる組み合わせから選択される。
たとえば、ポリテトラフルオロエチレンを固定相物質とする場合には水以外の溶媒に、DMSO(ジメチルスルフォオキシド)、有機溶媒水溶液等を使用することができる。
更に、パーフルオロアルキル基表面修飾処理した固定相物質ではDMSO、DMF(ジメチルフォルムアミド)、アセトニトリル及びこれらの水溶液が可能である。
以下に、上記溶媒と固定相物質の組合わせを選択する場合の推算例を示す。
図9は汎用溶媒の表面張力(γ)と溶解性パラメーター(δ)の関係を示した図であり、図10(A)、(B)は樹脂の表面物性と接触角との相関を記載した図であるが、これらグラフから水以外の有機溶媒は接触角維持に選択幅が小さいことを認識させる。
また汎用樹脂で最も表面張力とδ値が低いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が固定相にコーティングにできれば、極性溶媒との組み合わせで気液二相流クロマトグラフィー条件を形成することが可能であることが判る。
フッ素アルカン構造はシリコン樹脂の修飾物や表面処理剤で導入したケイ素系物質でも形成されており、固定相として有用と考えられる。
樹脂の表面張力γsと溶媒の表面張力γLはYoungの式(1805)
γs=γL・cosθ+γSL
Wa;接着仕事(変化)でのΔGであり
Dupure’の式;γSL=γs+γL−Wa
など、表面張力に関する成書に記載されている。
ここから導かれた接触角と表面張力との関係式(5)が知られている。
γs=γL[(cosθ)2+1]/4Φ2
γL=4Φ2γs/[(cosθ)2+1] …(5)
γs(PTFE)=18.5、cosθ=0.000(90度)、
Φ;溶媒の物質係数(0.6〜1.1、表7に汎用溶媒群のΦを示した)
(5)式をγL/γs比に整理すれば定数になるので接触角は固体側の物性で決まる。
γL/γs=4Φ2/[(cosθ)2+1]=4Φ2
Φ=1〜1.1の極性溶媒であればγL>74で水のみが接触角90°を実現
Φ=0.9(ほとんどの通常使用極性溶媒)ではγLは59.9
Φ=0.8ではγLは47.4 DMSOが範囲に含まれる。
Φ=0.7では36.3 DMF,ANなどが90°を達成するがΦ不一致。
Φ=0.6なら26.6 DMF,ANなどが90°を達成するが 〃。
PTFEであれば有機溶媒の水溶液系が使え、さらにγsの小さなパーフルオロアルキル基表面修飾処理ではγs=10なのでγl=4x1x10/1=40となるので、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、アセトニトリル(AN)およびこれらの水混合液体が可能となる。
気液二相流クロマトグラフのための水接触角は、接触角推定値をキャピラリーカラム固定相に対する接触角から求めて、これを下限と考えるのが適切である。接触角推定値の計算は以下のように行える。
ジメチルシリコン樹脂のγsは23.5ゆえ、γ−δ関係図10(A)からみると、δ=16の25%フェニル・ジメチルシリコンではγs=27と推定。
γlは72であるから(5)式における各項の値は
γl/γs=2.7、(γL/γS)1/2項1.64、Φ=1として
cosθ=(2Φ/(γL/γS)1/2)−1=0.22
arccos(0.22)=77°
となり、水膜クロマトグラフィーでは濡れ接触角が77°付近にあったことになる。
この25%フェニル・ジメチルシリコン樹脂固定相は良好な気液二相流クロマトグラフィーが可能な濡れ/撥水性の上限であり、水導入量の調整は敏感である。
臨界表面張力(γc)は複数のγの異なる溶媒で観測した接触角を外挿した90°での表面張力極限推算値であり、気液二相流での接触角が90°近傍を対象に論じられることから、γc≒γsとしても問題はない。
気液二相流クロマトグラフィーで使用できる好ましい溶解性パラメーター(δ)物性範囲において、上限に近いδ=15.6のRTX−20の場合は、図10(A)の樹脂δ−γc相関式から、
logδ=1.19、
logγc=1.19×2.609−1.786=1.319
∴γc=γs=20.8、γl=72ゆえ
γl/γs=3.46、(γL/γS)1/2項は1.86 、Φ=1として
cosθ=(2Φ/(γL/γS)1/2)−1=0.0753
Arccos(0.0753)=86°
と計算され、理想的な値90°にかなり近い。
気液二相流クロマトグラフィーでは、この下限接触角とγsを小さくする組み合わせで溶媒γLの選択範囲の広がりを期待する。
物性例:γs(PTFE)=18.5、cosθ=0.22、Φ=1として、
γs=γL[(cosθ)2+1]/4Φ2
γL=4Φ2γs/[(cosθ)2+1]
=4x12x18.5/1.488
=49.7(mN/m)
図9の溶媒のγ−δ関係図に見るように単一溶媒ではグリセリンとホルムアミドが50mN/m領域にあるが、多くの極性溶媒は少し下の35−40mN/m域に存在する。
この領域であれば10%エタノールやジエチレングリコール水溶液やDMF水溶液のように、極性溶媒の水溶液で作ることが可能な表面張力である。
水膜クロマトグラフィーでは蒸留現象が分離に関わるので混合溶媒は不適当だが、気液二相流クロマトグラフィーは混合溶媒を適用でき、キャピラリーカラムへの溶媒導入を蒸発/凝縮に頼らない方法で行えば混合溶媒系の液体媒体が利用できる。
表1に溶媒の物性の例を示し、表2に水相界面でのGirifalco&GoodのΦ係数(Φ:接触する2物質の表面張力と実際の濡れの自由エネルギー変化とのズレを補正する係数)を示すが、多くの化合物は0.6付近である。
図11は汎用樹脂の中で溶解性パラメーター(δ)が小さいものを水接触角と対比させて示したものである。
気液二相流クロマトグラフィーでは溶媒接触角が90°近傍であるのが好ましく、大きすぎるのも固定相との接触面積の縮小の弊害があるので好ましくはない。
しかし大きく100°を超える物質はパーフルオロアルキル系の限られた物質であること、プラグ水塊が形成できないわけではないので使用可能樹脂である。
図ではポリスチレンが濡れ範囲の上限になっているが、架橋形のポリスチレンも物性は変わらないと考えられこれを含む。
他方撥水範囲に偏るのがPTFEである。
オレフィン樹脂であるPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PIB(ポリイソブチレン、ブチルゴム)等は非結晶性タイプの樹脂であればキャピラリーカラム内に塗布し架橋剤で3次元化して使用可能と予測できる。
次に本発明の装置では、キャピラリー分離カラムに音波振動を与える機構を更に備えることが特に好ましい。
キャリアガス圧による下流への水塊の移動は、カラム全長に水が満たされた通常の管内水流動と比べれば大幅に小さいが管壁との摩擦による流動抵抗は受ける。
さらに時間が長くなれば水塊の破損も起こりうる。
摩擦抵抗の低減に超音波モーター利用の研究例を見ることができ、キャピラリーカラム内の水塊がキャリアガスの流動と共に移動するのに好ましい状況をもたらす。
閉塞部水塊の下流への移動を助成するには超音波振動加振が好適であると考えられる。
また超音波の効果は、水塊中の成分物質の混合にも寄与すると考えられる。
分析成分分子の液相媒体内の拡散速度は液中ゆえ大変遅く、水中拡散では10〜3mm/sec程度(1μm/sec)と知られている。
この拡散速度は水塊の厚み方向(カラム直径方向)への成分拡散の遅れとしてクロマトグラフィーに影響を与え、各成分は次の分離サイトへの移動までに拡散混合が終わっている必要という理想的分離状態を妨げ、分離のシャープさを損なう要因となる。
媒体液中の拡散速度と媒体の流れ方向の移動速度(20−30mm/sec)がアンバランスで、前者が遅すぎるのは分離時間と分解能に根本的な性能低下をもたらす原因となる。
1水塊内を均質濃度にする攪拌効果が超音波加振によって補われていると考えられる。
振動破壊を超音波に求めてはいないので、周波数は一般的な範囲のものが利用できる(20KHz〜数百kHz)。
次に上記気液二相流クロマトグラフ分析装置を用いる本発明の分析方法について述べる。
本発明の分析方法は、気・固ガスクロマトグラフィー態様で試料中の揮発性成分を分離展開する工程(A)、分離カラム固定相表面に、ほぼ定常厚さの薄い水膜を形成させる水膜クロマトグラフィーで極性成分物質の分離展開を行う工程(B)及び前記(A)、(B)工程で分離展開が困難な成分物質を、上記気液二相流クロマトグラフィーで分離展開を行う工程(C)の組み合わせからなる。
このうち(A)工程の気・固ガスクロマトグラフィーは従来から気体や揮発性成分の分析に慣用されているものであるため説明は省略し、以下に(B)工程の水膜ガスクロマトグラフィーと(C)工程の気液二相流クロマトグラフィーをそれぞれを対比しながら説明する。
(B)工程の水膜クロマトグラフィーは、キャリアガスに水又は水蒸気又は両者を添加できる手段を備えたクロマトグラフ分析装置を用い、分離カラムの固定相表面に、推算液膜厚さの単位時間平均値が0.01〜0.09μmのほぼ定常厚さの水膜を形成させるように所定量の水又は水蒸気又はその両者をキャリアガスに添加混入させ、主として極性成分物質を分離展開するものである。
これに対し、(C)工程で用いる気液二相流クロマトグラフィーは、キャリアガスに液状溶媒を添加するもので、液状溶媒として有機溶媒水溶液や有機溶媒等も用いることが出来、水に限定されない。
また水膜クロマトグラフィーは、主として水の蒸発凝縮に基づく気液相分配での分離展開に基づき本質的にガスクロマトグラフィーであるのに対し、気液二相流クロマトグラフィーは液固相分配に基づきどちらかと云えばHPLCに近い。
従って、気液二相流クロマトグラフィーが30°近傍の常温に近い温度で展開することが多いのに対し、水膜クロマトグラフィーでは100℃以上の高温が屡々用いられる。
このため、水膜クロマトグラフィーで用いるカラム固定相はより高温でも比較的安定な物質を用いる。
このような固定相として、ポリメチルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン等のオルガノシロキサン類及びこれらにシアノ基やアルキル基で化学修飾したポリシロキサン類、シリコングリース、各種ポリエステル系樹脂、高分子量ポリエーテル樹脂等が挙げられる。
特に、溶解性パラメーターが15.3〜16.4MPa1/2のポリシロキサン重合体又はそれらの組成物が好適である。
分離カラム内流動状態も異なり、気液二相流クロマトグラフィーが前述した図6(a)のフロス流(c)からスラグ流(d)であるのに対し水膜クロマトグラフィーは環状流(a)であり、カラム固定相内周面に形成される水膜厚さも極薄く、通常0.01〜0.1μm程度のほぼ定厚である。
また分離カラム径もスラグ流は細いカラムで形成し易いことから気液二相流クロマトグラフィーでは通常0.10〜0.25mmのカラム内径のものが好適に用いられる。
即ち、気液二相流クロマトグラフィーでは、細いカラムは、水栓状水塊(プラグ)の維持安定性(泡の壊れにくさ)、プラグ1枚当たりの水必要量が少なくなり、枚数密度が増やせる、時間当たりの水流出量減少はMSイオン源真空度維持に好ましい、拡散域の縮小により分離能を高められる、等の多くの利点がある。
尚、水膜クロマトグラフィー及びそれに用いる分析装置に関しては特開2004−333270号公報に詳細に開示されている。
(C)工程では既に述べた装置を用いる。
上記(A)、(B)、(C)の3工程からなる本発明の方法では、各工程をそれぞれ分担する3台の装置、即ち気・固ガスクロマトグラフ装置、水膜クロマトグラフ装置、気液二相流クロマトグラフ装置を用いて分析しても良く、また逆に、例えば、上述した気液二相流クロマトグラフ装置の機能を若干補強する等によりこれら機能の全てを一台の装置で分析することもできる(複合クロマトグラフ装置)。
また水膜クロマトグラフ装置と気液二相流クロマトグラフ装置の2台を用いて分析しても良い。
上記、本発明に係る複合クロマトグラフィー分析法では、常温でガス状の揮発性物質、極性物質、溶媒と共沸系を持たない難揮発性物質及び実質的に揮発性のないオリゴマー等の高分子物質を含有する多種成分混合試料を特段の複雑な前処理を施すことなく一度に分析できる。
気体−固体間分配原理にもとづくGCモードでの揮発性物質分離展開工程(以下この工程を分離展開工程(A)と称する)と、水蒸気を混合したキャリアガスを移動相としてキャピラリーカラム内固定相表面に水蒸気の凝縮による定常膜厚の水膜を形成させ、主に気体−液体間分配原理に基づく通常水膜液体クロマトグラフィーモードでの極性物質分離展開工程(以下この工程を分離展開工程(B)と称する)とを同一装置内で実行する複合クロマトグラフ質量分析装置の基本的動作の確認実験として、GCモードで展開すべき物質を試料に加えず、極性物質として炭素数1−9の有機酸混合物を分離展開工程(B)のみで展開するクロマトグラフ測定を行った。
分離展開工程(A)は極力水分を少なくしたアセトン濃厚溶液として1%有機酸混合物を0.1μL注入し40℃定温で22分間維持し、水が無いと極性物質が移動し難いことを示した。
その後、水のみ1μLを注入口に追い打ち注入し、連続水供給0.4μL/分で120℃まで毎分5℃、さらに280℃まで毎分15℃の昇温を行い、図12で示したクロマトグラムチャートを得た。
キャピラリーカラム DB1701 (δ=15.8MPa1/2)
0.25mmφ−50M Dp1μm、
キャリアガス He 330mm/秒
水供給 22分から水0.3μL/分で水を連続供給
水供給速度 0.099mm/秒
閉塞率 0.0003
推算水膜厚さ 75nm
温度 注入口 240℃
カラム 40℃22分、50℃5分、
50−120℃/5℃毎分、120−280℃/15℃毎分
MS装置 JEOL−DX303HF(磁場形2重収束)
イオン化 El+、70Ev、300μA
測定 SCANモード、マスクロマトグラフ表示
GC装置 HP−5890形、キャリアガス He
図12において、上段(a)はアセトンと少量の水のみのクロマトグラムしか記録されず、下段(b)は7.0分から13.5分にかけてC1からC9までの直鎖脂肪酸が流出している。
C3とC4が幅広く成っているのは、成分の極性が低くなると固定相樹脂と水との2重の分配のうち固定相内の保持時間が延びることを示している。
(実施例2)
気−固ガスクロマトグラフィー法での分離展開工程(A)と、通常水膜式液体クロマトグラフィー法での分離展開工程(B)とを同一装置内で実行する複合クロマトグラフ質量分析装置の基本的動作の確認の実験として、低沸点無極性物質の例として鉱物油系溶剤のミネラルスピリットを、高沸点極性物質としてハイドロキノン(分子量110)のヘキサン溶液を分析した。
カラム固定相のδが15.8MPa1/2のDB1701(14%シアノプロピルフェニル・ジメチルシロキサン重合体)でのGCマスクロマトグラム(図13上側(a))と、揮発物のGCモード終了後50℃に冷却し、水0.4μL/分連続供給を開始し、さらに水0.5μLを追い打ちして280℃まで昇温したマスクロマトグラム(図13下側(b))を示した。
キャピラリーカラム DB1701 (δ=15.8MPa1/2)
0.25mmφ−50M Dp1μm
キャリアガス He 330mm/秒
水供給 12分から水0.4μL/分で水を連続供給
水供給速度 0.136mm/秒
閉塞率 0.0004
推算水膜厚さ 100nm
温度 注入口 280℃、カラム 50℃(3分)−200℃/10℃毎分、
冷却 50−280℃/15℃毎分
GC−MS装置 実施例1に同じ
図13上段(a)のマスクロマトグラムは炭化水素指標の57m/zイオン、芳香族の105m/zイオン主体で展開し、図13下段(b)のマスクロマトグラムは110m/zのハイドロキノンのみが17分付近に対称形のピークで流出している。
この対称性は水膜での展開を示している。
水導入当初の低温域でミネラルスピリット成分の一部が検出されるが、少量含有される極性物質に由来する。
(実施例3)
通常水膜式液体クロマトグラフィーモードでの分離展開工程(B)を先に行い、次いで気−固ガスクロマトグラフィーモードでの分離展開工程(A)を行う複合クロマトグラフィーの動作確認の実験として、極性物質の多価アルコール混合物、無極性から中極性高沸点物質としてパラフィン、フタル酸ジシクロヘキシルエステル、ペンタクロロビフェニル、スクワレン等の混合物のアセトン溶液を分析した。
カラムにAQUATIC(25%フェニル・メチルシロキサン共重合体)を用い、試料注入口から一旦取り外し、上記混合物溶液に直接カラム先端を挿入し注意深く減圧吸引法で10mm吸引し、再度注入口に結合して50℃3分アセトンを蒸発後、水0.5μL/分をカラム先端に供給し、80℃5分間後、120℃まで5℃/分で昇温して低級グリコール類を流出させた。
水供給を停止し、50℃にて水が全てカラムから出きるのをモニターしてから毎分15℃で280℃まで昇温した。
結果を図14に示す。
極性の高い、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4ブタンジオールは図14上段(a)の極性物質分離工程として展開された。
図14上段(a)のクロマトグラムは水蒸気もキャリアガスに混じるため実質的にはガス流速が高まって測定されている。
一方、下段の分離展開工程(A)ではC16,18,20,22各パラフィン系炭化水素、フタル酸エステル、ペンタクロロビフェニル、スクワレンなどの高沸点揮発性物質が流出した。
キャピラリーカラム AQUATICR
25%フェニル・メチルシロキサン系 (δ=15.8MPa1/2)
0.25mmφ−60M Dp1μm 断面積0.049mm2
キャリアガス He 330mm/秒
水供給 初めから水0.5μL/分で水を連続供給
水供給速度 0.170mm/秒
閉塞率 0.0005
推算水膜厚さ 125nm
温度 注入口 150℃
カラム 上;50℃3分/80℃5分間/120℃まで5℃で昇温、
50℃に冷却、
水が出きってから下;50−280℃/15℃毎分
GC−MS装置 実施例1に同じ
(実施例4)
キャピラリーカラム内壁上に最大膜厚がキャピラリーカラ厶内径に達する不規則な厚さ部分を有する平滑でない凝縮水薄膜を連続発生させることを特徴とする気液二相流クロマトグラフィーモードの展開工程(以下分離展開工程(C)と称する)が水供給量の増量により通常水膜クロマトグラフィーモードの分離展開工程(A)から転換できることの確認実験を行った。
すなわち、通常水膜クロマトグラフィーによるギ酸と酢酸の分離展開工程(B)に続き、水を10倍増量して水過剰供給としたカラム内の水膜とキャリアガス流との接触によって生ずる抵抗と、厚い水膜部分において間欠的に生ずる管狭窄部分での圧力差などが媒体移動を推進させる確認実験を行った。
カラムはDB1701の内径0.1mmφを3mに切断し、カラム初頭部にガラス製キャピラリー管2方コネクターの一方をポリイミド樹脂で接着固定し、GC注入口内に他方ラッパ状開口部がセプタムに向くように設置した。
カラム出口側は加熱インターフェースを通じてMS検出器に挿入した。
試料はマイクロシリンジでセプタムを通してラッパ状開口部に挿入するオンカラムに近い方法で注入する。
結果を図15に示した。
まず0.5μLのギ酸と酢酸水溶液を注入口温度150℃で注入した。
図15最上段(a)は水0.08μL/分を連続供給した状態でGC−MS−SCAN測定し45、46,60M/Zをマスクロマトグラフとして表示している。
カラムオーブンは50℃定温で120分間ホールドした。
3mのカラム長、50℃であるにも拘わらず両酸が2分足らずでシャープに分離観察され、通常水膜モードでの分離展開工程(B)が十分に達成されている。
装置が50℃でホールドしている間にMSの測定条件をSIMモードに変更し、19,20,62,229,328M/Zを測定チャネルに設定した。
酸注入から2時間後に水供給量を0.8μL/分に増量し8分間の安定化後、先と同様のオンカラム注入方式で2,4,6トリニトロフェノール(TNP、Mw229)と2,4,6トリブロモフェノール(TBP、Mw330)の水溶液を0.5μL注入した。
図15中段(b)のSIMモードのクロマトグラムは50℃60分間に両フェノールのマス信号が229,328M/Zに観察されていないことからカラム内で未だ展開中であることを示し、一方ではカラム内に形成されている水膜状態が上段に比べ平坦なものでないことをスパイクの多い水イオン応答(19,20M/Z)が物語っている。
その後水供給を停止し、カラム内の水分が無くなるまでGC装置を定温放置し、次いで250℃まで毎分15℃で昇温した。
GC−MS間インターフェースは280℃である。
図15最下段(c)のSIMクロマトグラフは50℃60分の気液二相流クロマトグラフィーモードでの極性物質分離展開工程においてカラム内で密かに進行していた両フェノールの分離展開が、カラムの加熱により揮発流出してきたものである。
この実験から迅速な移動とは言えないものの、この条件で分離対象物がカラム内で分離度を高めながら水とともに移動していることが確認された。
もし物質がカラム内で分離展開していない場合は、拡散によりピークの広がりが時間経過とともに大きくなるためかように鋭く流出することはなく、また二成分は注入時のように1本のままである。
水供給量増大によって通常水膜クロマトグラフィーモードでの分離展開工程(B)から気液二相流クロマトグラフィーモードでの離展開工程(C)への転換もまた連続して行えることが確認された。
キャピラリーカラム DB1701 (δ=15.8MPa1/2)
0.10mmφ−3M Dp1μm
断面積0.0079mm2
キャリアガス He 340mm/秒 0.16mL/分
水供給 0−120分 水;0.08μL/分で連続供給
120−180分 水;0.80μL/分で連続供給
水供給速度 0.169mm/秒 、 後半1.69mm/秒
閉塞率 0.00050 、 後半0.0050
推算水膜厚さ 50nm 、後半500nm
注入 オンカラム注入 150℃
温度 カラム 50℃180分
50−250℃/15℃毎分昇温
GC−MS装置 実施例1に同じ
測定 SCANモード、後半SIMモード
(実施例5)
気液二相流クロマトグラフィーモードでの離展開工程(C)における気液二相流による水薄膜移動工程の促進をキャピラリーカラム外部から超音波を与えることで可能にする実験を行い、この現象を確認した。
0.25mm径−3mのDB1701キャピラリーカラムを準備し、カラムオーブンから外部の超音波バスを迂回しカラムオーブンに戻るように配管設置した。
カラムオーブンは150℃に設定、キャピラリーカラムの2mは50℃の超音波バスの温湯中に浸漬し、カラム出口側はカラムオーブンに戻してから250℃加熱したインターフェースを通してMSイオン源に挿入した。
カラムに2,4,6−トリニトロフェノール(TNP)をオンカラム注入し、Heガス0.2mL/分、水供給量0.4μL/分で媒体を流し、出力約30Wの39KHz超音波振動をキャピラリーカラムに与えた場合には、バス温度50℃でも迅速にTNPの流出が認められた。
しかし超音波無しの図16上段(a)の場合は、展開20分後にキャピラリーカラ厶をバスから出し、カラム全部分をカラムオーブンに戻して150℃加熱をして初めて流出がMSで確認された。
超音波無しではTNPがカラム出口まで移動できず加熱揮発で移動したことを示す。
図中19M/Zマスクロマトグラフはカラム内が水過剰供給状態であるものの、気液二相流機械学で言うスラグ流として安定に流動しているようすを示しており、超音波によって流動形態そのものが激しく変化するようすは見えず、かえって(b)のTIC信号は(a)より凸凹が少なく、超音波加振によりスラグ流が安定化している。
超音波加振によって、分離対象のTNPが50℃のカラム内を移動したことは両データ(図16(a)、(b))の比較で明らかである。
キャピラリーカラム DB1701 (δ=15.8MPa1/2)
0.25mmφ−3M Dp1μm
断面積0.049mm2
キャリアガス He 68mm/秒 0.2mL/分
水供給 0.4μL/分で連続供給(150℃で水蒸気化)
水供給速度 0.136mm/秒
閉塞率(γ) 0.0020
推算水膜厚さ 500nm
注入 オンカラム注入 150℃
温度 カラム 150℃ GC−OVEN−50℃定温水槽−150℃ GC−OVEN
GC−MS装置 実施例1に同じ
測定 SCANモード
超音波 100W 39KHz 水槽つき / 30%出力で使用
(実施例6)
実施例5で示したとおり、気液二相流クロマトグラフィーモードによる分離展開工程(C)における気液二相流による水薄膜移動工程の促進をキャピラリーカラム外部から超音波を与えることで可能なことが確認できたので、引き続き0.25mm径−3mのDB1701キャピラリーカラムをカラムオーブンから外部の超音波バスを迂回しカラムオーブンに戻す条件で高沸点フェノール混合物の分離状態を調べた。
カラムオーブンは150℃に設定、キャピラリーカラムの2mは30℃の超音波バスの水中に浸漬し、カラム出口側はカラムオーブンに戻してから250℃加熱したインターフェースを通してMSイオン源に挿入した。
カラムに2,4,6−トリニトロフェノール(TNP)と2,4,6−トリブロモフェノール(TBP)の混合液を0.1μLオンカラム注入し、Heガス4mL/分、水供給量0.4μL/分の媒体流量、出力約30Wの39KHz超音波振動を水槽に挿入したキャピラリーカラムの一部に与えた。
温度30℃で40分間持続した後にキャピラリーカラムをバスから出し、カラム全部分をカラムオーブンに戻して290℃まで昇温しTBP、TNPがMSで確認された。
図17中19M/Zマスクロマトグラフはカラム内で水が過剰供給状態で、環状流と団塊波流からスラグ流が混在する不安定な流動を示している。
超音波加振によって両フェノールが流出した痕跡は330,229M/Zのマスクロマトグラムになく、カラム温度上昇にともなって初めて揮発流出したことを示している。
しかしTBP、TNPのピークのシャープさは水槽に浸した実質30℃1M長さのキャピラリーカラム内での分離展開であることを考えると驚異的であり、気液二相流クロマトグラフィーによる液−固薄膜間分配分離が40分間密かに進行していたことを推察するのに十分なものである。
TBPに関するクロマトグラムでの見かけ分解能は数十万段を上回る。
キャピラリーカラム DB1701 (δ=15.8MPa1/2)
0.25mmφ−3M Dp1μm
断面積0.049mm2
キャリアガス He 1360mm/秒 4mL/分
水 0.4μL/分で連続供給(150℃で水蒸気化)
水供給速度 0.136mm/秒
閉塞率(γ) 0.00001
推算水膜厚さ 500nm
注入 オンカラム注入 室温
温度 1)カラムオーブン150℃−30℃定温水槽40分
2)カラムオーブンRT−290℃急速昇温
GC−MS装置 実施例1に同じ
測定 SCANモード
超音波 100W 39KHz 水槽つき / 30%出力で使用
(実施例7)
水質環境分析、特にトリハロメタン分析に適したキャピラリーカラム用固定相を塗布したHP624ワイドボアキャピラリーカラムを用いて通常水膜クロマトグラフィーモードの水供給量下限と上限の条件を切り替える実験を行った。
カラムは7Mに切断し、カラム終端に3方コネクターを介して0.1mmの不活性処理キャピラリー素管40cmを接続してMSイオン源に挿入、コネクターのもう一つの口に0.25mmの不活性処理キャピラリー素管40cmを接続してHeの分割を1/28とすることでMSイオン源の真空度を維持できるHeキャリアガス流量まで減じた。
水1μL/分連続供給は水蒸気リザーバーによらず150℃にした通常のガラスインサート形GCインジクションポートにセプタムを通して直接導入した。
試料注入は、インジェクター組み込み式としてオンカラム注入方法でセプタムを通して行った。
通常水膜クロマトグラフィー用試料はC1からC9までの直鎖飽和脂肪酸混合物水溶液で、0.2μLを0.53mmφHP624上にオンカラム注入した。
Heキャリアガス流量23mL/分で150℃まで昇温し、10分後にカラ厶を50℃まで冷却し分離展開工程を終了した。
インジクションポートを280℃として水5μL/分を連続導入し19M/Zイオンをモニターし真空度やベースラインが安定した変動状態になるまで放置した。
また通常水膜クロマトグラフィーモードでの別の試料として2,4,6−トリブロモフェノール(TBP)水溶液0.1μLをオンカラム注入した。
Heキャリアガス19mL/分、カラム温度50℃で40分保持した。
この間に330M/ZのTBPイオン応答はなく、その後250℃まで毎分15℃の昇温を行いTBPの流出を確認した。
水膜クロマトグラフィーの水供給量は図18上段(a)が推算水膜厚さ5nm(0.005μm)で、クロマトグラムに見られるピーク幅や分離能において先の実施例1の図と比較して分離状態は大きく劣っている。
ピークの対称性などで多少水膜の効果も散見されるが極性物質分離展開工程には使用できない。
図18下段(b)は推算水膜厚さが30nm(0.03μm)であり、ワイドボアカラムではこの5μLという大きな水供給量に関わらず過剰供給になっていないで、環状流から団塊波流と言えるノイズ状態の19M/Z応答曲線を現している。
これは断面積が0.25mmφにくらべ4.5倍あり、かつキャリア流量も大きいためと考えられる。
しかし高沸点分離対象物はこのカラム条件では水蒸気蒸留移動効果も与えられず、昇温揮発させて初めて流出する。
分離パターンは水膜クロマトグラフィーの特徴であるシャープなピークで得られている。
この実験は、推算水膜厚さの考え方が異径カラムの水膜クロマトグラフィーも律していることを裏付けたものと判断できる。
キャピラリーカラム HP624 (δ=15.35MPa1/2)
0.53mmφ−7M Dp1μm
断面積0.221mm2
[第1条件] キャリアガス He 7820mm/秒 23mL/分
水供給 0−10分 水;1.0μL/分で連続供給
注入口温度 150℃
水供給速度 0.0754mm/秒
閉塞率 0.00001
推算水膜厚さ 5nm
[第2条件] キャリアガス He 6460mm/秒 19mL/分
水供給 0分−60分 水;5μL/分で連続供給
注入口温度 280℃
水供給速度 0.377mm/秒
閉塞率 0.00006
推算水膜厚さ 30nm
注入 オンカラム注入 150℃ と 280℃
GC−MS装置 実施例1に同じ 測定 SCANモード
(実施例8)
気液二相流クロマトグラフィーモードによる高沸点極性物質混合物のクロマトグラフィーをカートリッジ式オンカラム注入により行った。
キャピラリーカラムは0.25mmφ−60mのAQUATICRを55℃定温で保ち、高速液体クロマトグラフィー液送ポンプの制御下限の1μL/分にて水蒸気全量を供給した。
試料溶液は低級脂肪酸とフェノール類混合物のアセトン溶液で、オンカラム注入法のカートリッジ式を使用して注入した。
具体的には0.25mmキャピラリーカラム素管30mm中に毛細管現象で1cm吸い上げ直ちにガラス製キャピラリーカラムコネクターの開口部に挿入した。
注入量は5.0μLとなる。
MS装置真空度の許容限界での水供給を34分間継続しイオン源の高電圧を切り実験を終えた。
この時の19M/Z信号は不安定ながらも同じ凸凹を繰り返す定常状態を維持し続けたことを示している。
しかしイオン源の真空保護は間欠的に作動していた。
アセトン流出の後、短時間で高沸点のフェノールまでが55℃定温のカラム温度で流出する様子が見られた。
さらにそのクロマトグラムは非常にシャープであり、単純計算でも数十万段の分解能が見積もられる。
これは分離に係わる水膜の薄さが0.1μm以下であることと、分離対象物質の水中拡散速度が遅いことによりもたらされた高分解能に相違ない。
45M/Zのマスクロマトグラフチャネルはカルボン酸類、110M/Zの方はフェノール類の展開状態を示している。
この110M/Zが如何なる修飾イオンに由来するかは不明である。
気液二相流機械学の流動パターンでは明らかにスラグ流が顕著で、スムーズに物質移動が行われた結果が図19のクロマトグラムを造ったと推察できる。
イオン源前のインターフェースは280℃で、各成分は揮発して水蒸気と共にイオン化された。
キャピラリーカラム AQUATICR
25%フェニル・メチルシロキサン系
(δ=15.8MPa1/2)
0.25mmφ−60M Dp1μm
断面積0.049mm2
キャリアガス He 210mm/秒 0.62mL/分
水供給 1μL/分で連続供給(150℃で水蒸気化)
水供給速度 0.340mm/秒
閉塞率(γ) 0.0016
推算水膜厚さ 400nm
温度 注入口 150℃
カラム 55℃ 定温
インターフェース 280℃
GC−MS装置 実施例1に同じ 測定 SCANモード
(実施例9)
ヘリウムをキャリアガスとし、第2の移動相媒体として炭酸ガスを溶解させた蒸留水を使用し、キャリガス流量を2.7mL/分から0.8mL/分に、蒸留水を0.35μL/分から0.65μL/分に段階的に変化させ、150℃注入口で蒸発し40℃のカラム内で凝縮する水の状態変化を水のEI+イオン化MSスペクトルから編集したTIC(トータルイオンモニター)クロマトグラムを図に示した。カラムはジメチルシリコン系キャピラリーカラム内径0.25mm−30m長で溶解性パラメーター(δ)は15.2MP1/2である。
図20に示すように、0.65μL/分の水量では気液二相流状態、その直前の0.5μL/分では水膜クロマトグラフィー適用可能状態が観察された。炭酸ガスは水に再溶解し0.35μL/分領域では単に発泡突沸を起こしているようすが観察されるが、気液二相流形成領域ではその発泡性が安定した断続的水塊形成に役立っている。
推算水膜厚さは以下のように計算される。
ガスクロマトグラフ用キャピラリーカラム固定相樹脂は専らシリコン樹脂系のカラムが使用される。これは樹脂本来の耐熱性と塗布物の3次元架橋技術が高性能なカラムを提供しているためであり、共重合体用モノマーにフェニル基やシアノ基を含有するシロキサン化合物を使用することで極性の異なるシリコン樹脂系カラムが得られるようになり、他の樹脂は使用されることが無くなった。しかし水膜クロマトグラフィーや気液二相流クロマトグラフィーでは分離媒体として水を使用するためシリコン樹脂の加水分解性はカラム寿命を短くし好ましくない性質である。
汎用熱可塑性樹脂であるポリイソブチレン(PIB)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの接触角を測定し、気液二相流クロマトグラフィーへの適用可否を推察した。表4に水接触角測定値(n=3平均)ならびに溶解性パラメーター(δ;MP1/2)を示した。
ポリスチレンの0.1%メチルエチルケトン溶液を0.1mm内径のジメチルポリシロキサン(Df0.1μm)キャピラリーカラム10mに減圧吸引して満たし、徐々に通気乾燥した。乾燥後80℃で0.2ml/分のHe気流で脱溶剤してGCオーブンにセットした。
カラ厶への塗布量(Df)はおよそ0.05μmと推定される。
水蒸発凝縮による気液二相流クロマトグラフィー例を図21に示す。
試料;高級脂肪酸混合物(C14−C18飽和脂肪酸)
カラム;ポリスチレンを
0.10mmΦ10Mの0.1μmポリジメチルシリコンカラム上に塗布
塗布量(Df)はおよそ0.05μmと推定
条件; 水0.8μL/分、He0.2mL/分
MS; JEOL DX303 EI/MS 70eV 300μA
超音波加振;なし
3種の高級脂肪酸が分離するまでは至っていないがキャピラリーカラムから流出しているようすは確認された。3セットとして別個に展開しているのは水塊(プラグ)3枚で分担保持していることで、不均一な凝縮水塊の形成が原因していると思われ、水蒸発凝縮法の制御が不十分なためである。
図21(B)の拡大図では水塊1枚に対応した脂肪酸が若干の保持時間差をもって観察され、断続周期が十分に早い条件であればさらに分離できる可能性を示している。
(実施例11)
シリコーン樹脂固定相キャピラリーカラムで管内での水接触角をFT−IR顕微鏡二次元IRイメージング測定によって行った。カラムは0.25mmΦに水を微量注入し観察した。水接触角は溶解性パラメーターと表面張力の関係をもとに試算することができ、
LOGδ=1.19(δ=15.6)、LOGγ=1.32
∴ 20%フェニル:80%メチルシリコーン樹脂 θ=86°
と推算される。
一方、DEGILAB社FTS7000形FT−IR付属「STINGRAY」装置での3958cm−1のイメージングを図22に示したが、キャピラリーカラム材質であるフューズドシリカと水が有する水酸基のIRスペクトル吸収は大きく、管を透過する赤外線のほとんどが遮断され、ピーク裾の一部波長でのみイメージ作図が可能であった。
図22のキャピラリーカラム内観察結果では管内面接触角θ=87°であり、これはカラム固定相用樹脂の物性から推算した86°と極めて一致する結果であった。
(実施例12)
キャピラリーカラム内の移動媒体の状態を、T字形の流路によりキャリアガスと溶媒とで気液が断続的に交番する移動相媒体である2相流形態にする方法を示した。
キャリアガスを一方の端から導入し、溶媒ないしはその蒸気を含むキャリアガスを他方の端から導入し、さらに他方の端は分離カラムに接続されている十分な小さい内径の細管流路において、導入した液体によって間欠的に閉塞する閉塞部形成と、閉塞した溶媒をキャリアガスで搬送して閉塞を解消することで気液が断続的に交番する移動相媒体である2相流形態を形成させる方法の例を示す。
T字形流路は0.4mm内径の1/16インチ径PEEK樹脂管を20mmに切断し、管中央部に0.3mm径ミクロドリル針により貫通孔をあけ、PEEK管の流路と直交させる。この管と直交する孔には0.3mmのSUS線を貫通させておく。PEEK管両端には内径0.15mmΦのジメチルシリコン樹脂コートキャピラリーカラムをSUS線の位置まで挿入する。カラム挿入前に外面側壁にはポリイミド樹脂溶液をシール剤として塗着しておき、挿入後120℃オーブンでカラムごと乾燥させる。SUS線先端をPEEK管径中央になるように注意深く引き抜き、液体導入用の微量液送ポンプに連結するポリイミド被覆フューズドシリカキャピラリーカラム素管をSUS線に触れるまで挿入しエポキシ系接着剤で固着させる。SUS線をPEEK管内径の半分に当たる0.15mm程度引き抜きエポキシ樹脂で固着する。その後120℃で2時間加熱硬化させた。
このように作成した図23に示すT字管は、デッドボリュウムが20〜25nLと推察される。
試作した図23に示すT字管による気液二相断続流の生成状態を図24に示した。
キャリアガスはHeを0.2mL/分、溶媒は10%ジメチルホルムアミド(DMF)で0.5μL/分とした。カラムは無極性ジメチルシリコン樹脂コート10m長内径0.15mmである。
DMF10%水溶液の接触角はシリコンゴム(カラムと同じ素材)に対して、先の汎用樹脂での測定法と同様に行いθ=90°と測定された。シリコン樹脂のδは15.2MPMP1/2である。10%DMFに対する接触角を表5に示した。DMF10%の場合は水に比べ有機溶媒混和の影響は5〜8°低下に留まっている。
断続流の発生はMS検出器のDMF対応イオン量変化のクロマトグラムから確認され、徐々に状態が安定して16分経過時には3秒間隔に溶媒がプラグ状態で存在していることを示した。
この実験で、水と混和した有機溶媒をポンプで導入する方式でも気液二相流クロマトグラフィーが可能であることが確認された。MSのスキャン周期(0.5秒)をより短くすれば断続する山と谷が明確に観察されると思われるが、図24ではデータ採取が追いかず、山が結合した状態が頻繁に見られている。
図24ではピーク間隔が次第に圧縮されて測定されている。これはGC装置を定流量制御しているため、液相プラグ枚数が増えると抵抗が増し、交番する気相のみが圧縮されるためである。
気液交番周期の調整は気液二相流クロマトグラフィーの状態制御上極めて重要なことであり、GC装置の流量/圧制御によって気液交番間隔が変更できることが確認できた。
気液二相流クロマトグラフィーはガスクロマトグラフ装置を基本に構成することができ、検出器もGC/Ms用に用意されたEI−MSイオン源が使用できる。これはカラム内のボイド率が99%以上と極めて高いため、実質的に気体と同じであるためである。
先の実施例10のスチレンカラム実施例での高級脂肪酸分析例のMSスペクトルを標準スペクトルと対比して、図25に示したが、混在物のピークは除いて同パターンであり、NISTライブラリー検索でピックアップされている。
Claims (16)
- キャリアガスを主たる移動相媒体とし、水と混和しない高分子物質を固定相とするクロマトグラフィー分析に用いる装置であって、キャリアガス導入部と試料注入部と内周壁に前記固定相の層が形成されたキャピラリー分離カラムとその収容部及び検出部とを少なくとも備え、前記試料注入部は前記キャリアガス導入部とキャピラリー分離カラム入口との間に設けられ、且つ、前記キャリアガスに第2の移動相媒体として液状溶媒を添加混合することのできる溶媒導入手段を有すると共に前記キャリアガス導入量、前記移動相溶媒添加量をそれぞれ制御する機構と両移動相媒体が接する各流路部の温度制御機構を備えたものにおいて、
前記分析装置は、その作動状態の分離カラム内において、部分的に液膜厚がキャピラリー内径におよび、カラム内長さ方向に間隔を隔てて複数の閉塞液栓が形成され、断続的に気液相が交番する状態で移動相媒体をカラム出口方向に移動させ、移動相媒体の溶媒液膜とカラム固定相との分配を利用して分離展開を行うクロマトグラフィー分析が可能に、装置各部と制御機構が連携作動するよう構成さていることを特徴とする気液二相流クロマトグラフ装置。 - 前記装置の作動状態におけるキャピラリー分離カラム内の溶媒液膜が、下記式(1)
推算液膜厚さの単位時間(1単位:10秒以下)平均値(μm)
=カラム内径(mm)×(1−α)×103 … (1)
但し、αは大気圧でキャピラリーカラム内流体の(気体体積流量/全流体体積流量)で表される比である、
で算出される推算液膜厚さの単位時間平均値として、0.1μm以上であり、且つ、カラム出口で検知される前記閉塞液栓間隔の長さが、質量分析計で測定される液パルス間隔時間として10秒以下である請求項1記載の気液二相流クロマトグラフ装置。 - 前記第2移動相媒体としての液状溶媒と前記キャピラリー分離カラム固定相物質との濡れ接触角が77°以上である請求項1記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記キャピラリー分離カラムの液状溶媒が水であり、固定相物質が溶解性パラメーター値(SP値或いはδ値)18.3MPa1/2以下の高分子樹脂又は樹脂組成物である請求項3記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記キャピラリー分離カラムの液状溶媒が水であり、固定相物質表面が溶解性パラメーター値18.3MPa1/2以下の表面物性を与えるように表面処理されたものである請求項3記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記液状溶媒が水・有機溶媒混合溶液である請求項3記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記液状溶媒が有機溶媒である請求項3記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記液状溶媒が有機溶媒混合溶液である請求項3記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記キャリアガスに第2の移動相媒体として溶媒を添加混合する溶媒導入手段が、溶媒を0.01〜2μL/分の平均液流量で加熱蒸気化して連続導入し、その後凝縮液化させ、これにより前記推算液膜厚さの単位時間平均値が0.1μm以上であるキャピラリー分離カラ厶内の状態を気液が断続的に交番する移動相媒体二相流とするよう構成されている請求項1記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記キャリアガスに第2の移動相媒体として溶媒を添加混合する溶媒導入手段が、溶媒を0.01〜2μL/分の平均液流量として液送ポンプで連続的に導入するものであって、これにより前記推算液膜厚さの単位時間平均値が0.1μm以上であるキャピラリー分離カラム内の状態をキャリアガスと溶媒が気液が断続的に交番する移動相媒体二相流とするよう構成されている請求項1記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記キャピラリー分離カラム内の状態をキャリアガスと溶媒が断続的に気液交番する移動相2相流状態にする手段が、キャリアガスを一方の端から、溶媒又はその蒸気を含むキャリアガスを他方端からそれぞれ導入し、その合流路の出口側端が分離カラムに接続されている管流路であって、導入された液状溶媒又は溶媒蒸気凝縮液によって閉塞するに充分小さい内径の細管部を該管流路内に備え、且つ、該細管部に導入された溶媒による閉塞膜又は塊部を形成する段階と、次いで該閉塞部をキャリアガスで搬送して閉塞を解消する段階とを交互に繰り返すようにするための溶媒流量調節機構とキャリアガス流量調節機構とを有し、これらの協調作動により交番間隔を調節し、気液が断続的に交番する移動相媒体の2相流状態を具現させるように構成された手段である請求項10又は11記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記キャピラリー分離カラムに音波振動を与える機構を更に備えた請求項1に記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記検出器として質量分析計が使用される請求項1記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記検出器として水素炎イオン化検知器が使用される請求項1記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- 前記分離カラムの固定相として、スチレン樹脂およびポリイソブチレン樹脂、4メチルペンテン樹脂等の分岐メチル基を有するオレフィン樹脂ないしはこれらの3次元架橋物を使用することを特徴とする請求項1記載の気液二相流クロマトグラフ装置。
- キャリアガスを主たる移動相媒体とし、水と混和しない高分子物質を固定相とするクロマトグラフィー分析法であって、キャリアガス導入部、試料注入部、内周壁に前記固定相の層が形成されたキャピラリー分離カラム、その収容部、検出部及び前記キャリアガスに水又は水蒸気又は有機溶媒を添加できる手段を少なくとも備えたクロマトグラフ分析装置を用い、
A)キャリアガス主体のガスを前記キャピラリー分離カラムに導入して気・固ガスクロマトグラフィー態様で注入された分析試料中の揮発性成分を分離展開する工程、
B)前記キャピラリーカラ厶の固定相表面に、前記推算液膜厚さの単位時間平均値が0.01〜0.09μmのほぼ定常厚さの水膜を形成させるように所定量の水又は水蒸気又はその両者をキャリアガスに添加混入させ、主として極性成分物質を分離展開する工程、及び、
C)前記(A)、(B)工程で分離展開が困難な成分物質を、分離カラム内に前記推算液膜厚さの単位時間平均値が0.1μm以上の溶媒膜を形成させることのできる所定量の液状溶媒を第2移動相媒体として第1移動相媒体であるキャリアガスに添加混入して供給し、該分離カラム内において、前記溶媒膜が部分的にキャピラリーカラム内径におよび、カラム内長さ方向に間隔を隔てて複数の閉塞液栓が形成され、断続的に気液相が交番する状態で移動相媒体をカラム出口方向に移動させて分離展開を行う工程、
を組み合わせてなることを特徴とする複合クロマトグラフィー分析法。
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