本発明は、無線通信システムにおける適応伝送方法および伝送装置に関し、特にマルチアンテナ無線通信システムに用いられ、処理演算量を低減することができる伝送方法および伝送装置に関する。
無線通信システムとインターネットとが次第に融合していくなかで、ユーザが無線通信サービスの種類および品質に対する要求は高まりつつある。このため無線マルチメディアおよび高速伝送の要求に応じた新世代の無線通信システムの開発が盛んに行われている。そのなか、マルチアンテナインプット・マルチアンテアウトプット(MIMO)と直交周波数多重化(OFDM)とを結合したMIMO−OFDM技術がますます人々の注目を集めている。
MIMOシステムにおいて、送信側は複数の送信アンテナを用いて信号を送信し、受信側は複数の受信アンテナを用いて信号を受信する。従来のシングルアンテナ伝送方法と比べ、MIMO技術ではチャネル容量が著しく向上され、情報伝送レートを向上することができる。なお、MIMOシステムでは、用いられる送信アンテナおよび受信アンテナの数が多いほど、情報伝送レートはより高くなる。時間領域のリソースに比べ、空間領域のアンテナリソースはほぼ無限に利用することができるため、MIMO技術は従来技術のリソース不足問題におけるボトルネックを突破し、次世代無線通信システムの核心技術の1つとなっている。
また、OFDM技術は現在、高速無線データ伝送を実現する主流技術の1つとなっている。OFDM技術の原理は、伝送しようとする高速データを複数の直交サブキャリアを用いて伝送するため、各サブキャリア上の伝送レートは相対的に低くなることにある。OFDMのサブキャリア直交多重技術は、通常の周波数多重化システムに比べ、システムの周波数利用効率をさらに向上することができる。OFDM技術を用いるシステムにおいては、信号全体の周波数帯域を複数の非常に狭いサブキャリア周波数帯域に分けるためフラットフェージングとなる。従って、シングルキャリアシステムと比べ、OFDMシステムにおいては均衡を実現することがより容易である。
また、適応伝送技術によっても減衰チャネルにおける情報伝送レートを効果的に向上することができる。適応変調及び符号化(AMC)技術は、重要な適応伝送技術の1つであって、その基本思想は、チャネル特性に基づき伝送に用いる変調パラメータ、符号化パラメータ、および送信パワーを適応的に変更することである。チャネル条件がより良い場合は情報をより多く伝送し、チャネル条件がより劣る場合は情報をより少なく伝送して、システムの性能を向上する。従って、適応伝送技術によれば、より高い情報伝送レート、より低い誤りビット率(BER)、およびより低い送信パワーを実現することができる。
そこで、上記のMIMO−OFDMとAMCという2つの技術を結合して、単純に1つの技術を用いるのに比べ、より高いシステム性能を得ることが考えられる。以下、MIMO−OFDMとAMCとの2つの技術を適用した無線通信システムをMIMO−OFDM−AMCシステムと称す。
しかしながら、MIMO−OFDMとAMCの2つの技術を結合する場合、周波数領域の複数のサブキャリアが空間領域の各送信アンテナに対応して構成するデータサブストリームの数は大幅に増加する。例えば、サブキャリアの数がNcであり、送信アンテナの数がnTである場合、データサブストリームの数はNc*nT個となる。従って、MIMO−OFDM−AMCシステムにおいては、上記Nc*nT個のデータサブストリーム毎の適応伝送パラメータ(伝送ビット及び送信パワー配分パラメータ)を決定する処理の演算量が膨大となり、実現が困難であるという問題がある。
よって本発明の目的は、MIMO−OFDM−AMCシステムにおいて低い処理演算量で、各データサブストリームに対して伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う伝送方法および伝送装置を提供することである。
本発明の伝送方法は、マルチアンテナ無線通信システムに用いられる伝送方法であって、各データサブストリームを検出し、各データサブストリーム毎の信号対干渉雑音比(SINR)ゲインを算出するSINR算出ステップと、得られたSINRゲインに基づき、周波数領域のある1つのサブキャリア上のすべてのデータサブストリームに対して空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分最適化を行って伝送ビット及び送信パワー配分パラメータを決定する空間領域上配分ステップと、前記伝送ビット及び送信パワー配分パラメータが決定された前記ある1つのサブキャリア上に配分された伝送ビット及び送信パワー配分パラメータを順次に用いて、隣接するサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分最適化を行う隣接サブキャリア上配分ステップと、を有するようにした。
本発明の伝送装置は、チャネル推定行列Hを用いて、適応伝送された各データサブストリームを検出し、各データサブストリーム毎のSINRゲインを算出するSINRゲイン算出手段と、得られたSINRゲインに基づき、周波数領域のある1つのサブキャリア上のすべてのデータサブストリームに対して空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分最適化を行い、伝送ビット及び送信パワー配分パラメータを決定する伝送ビット及び送信パワー配分最適化手段と、伝送ビット及び送信パワー配分パラメータが決定された前記ある1つのサブキャリア上に配分された伝送ビット及び送信パワー配分パラメータを順次に用いて、前記ある1つのサブキャリに隣接するサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う隣接サブキャリア伝送ビット及び送信パワー最適化手段と、を具備するマルチアンテナ無線通信システムに用いられる伝送装置である。
本発明の伝送方法および伝送装置によれば、単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワーの配分を行い、伝送ビット及び送信パワー配分に用いられる場の次元数を減少し、従来の方法に比べ処理演算量を低減することができる。なお、隣接するサブキャリア上のチャネル特性の相関性を利用して、伝送ビット及び送信パワー配分のアルゴリズムをさらに簡略化することができる。
本発明の一実施の形態に係るAMC技術を用いたMIMO−OFDMシステム(MIMO−OFDM−AMCシステム)の構成を示すブロック図
MIMO−OFDM−AMCシステムにおける適応伝送の概念を説明するための図
本発明の一実施の形態に係る適応変調符号化(AMC)パラメータ選択/送信パワー配分部の詳細な構成を示すブロック図
本発明の一実施の形態に係る伝送ビット/送信パワー配分方法の手順を示すフロー図
周波数領域および空間領域の両領域で同時に、伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行うAMCパラメータ選択/送信パワー配分部の詳細な構成を示すブロック図
Greedyアルゴリズムを用いて伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う方法の手順を示すフロー図
以下、本発明の最良の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るAMC技術を用いるMIMO−OFDM(MIMO−OFDM−AMC)システム100の構成を示すブロック図である。
図1において、MIMO−OFDM−AMCシステム100は、nT本の送信アンテナを用いて送信を行う無線送信装置150、およびnR本の受信アンテナを用いて受信を行う無線受信装置160を備えて構成される。無線送信装置150は、直/並(S/P)変換部101、適応変調符号化(AMC)部102−1〜102−nT、送信パワー制御部103−1〜103−nT、直/並(S/P)変換部104−1〜104−nT、逆高速フーリエ変換(IFFT)部105−1〜105−nT、並/直(P/S)変換部106−1〜106−nT、巡回前綴り(CP)挿入部107−1〜107−nT、および送信アンテナ108−1〜108−nTを備える。無線受信装置160は、受信アンテナ109−1〜109−nR、巡回前綴り(CP)除去部110−1〜110−nR、直/並(S/P)変換部111−1〜111−nR、高速フーリエ変換(FFT)部112−1〜112−nR、並/直(P/S)変換部113−1〜113−nR、チャネル推定部114、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115、およびMIMO検出部116を備える。同様の枝番を用いて示される複数の同様の構成要素は、以下、枝番を省略して略称する場合がある。例えば、適応変調符号化(AMC)部102−1〜102−nTを、適応変調符号化(AMC)部102と略称する場合がある。
無線送信装置150において、直/並(S/P)変換部101は、送信される周波数領域データTx DataをnT個のデータサブストリームに分割して各AMC部102に出力する。各データサブストリームは、それぞれ1つの送信アンテナ108に対応する。各適応変調符号化部102は、直/並(S/P)変換部101から入力される各データサブストリームに対し、チャネル伝送特性に基づいて適応変調符号化を行い、各送信パワー制御部103に出力する。各送信パワー制御部103は、適応変調符号化された各データサブストリームに対して送信パワーの制御を行い、各直/並(S/P)変換部104に出力する。次いで、直/並(S/P)変換部104、逆高速フーリエ変換(IFFT)部105、並/直(P/S)変換部106は、送信パワー制御部103が出力する周波数領域のデータサブストリームを時間領域信号に変換する。次いで、各巡回前綴り(CP)挿入部107は、各並/直(P/S)変換部106から入力される各時間領域信号に対して巡回前綴りを挿入する処理を行い、巡回前綴りが挿入された各時間領域信号は、それぞれ対応する送信アンテナ108により送信される。
無線送信装置150において、各データサブストリームに対してAMC動作および送信パワー制御動作を行うのに必要な適応伝送パラメータ、例えば適応変調符号化(AMC)パラメータM、送信パワー配分パラメータPなどは、無線受信装置160で決定され、フィードバックチャネル117を通じてフィードバックされたものである。なお、無線送信装置150は無線受信装置160がフィードバックするAMCパラメータMに基づき、直/並(S/P)変換部101から出力される各データサブストリームの長さを制御する。
無線受信装置160において、まずnR本の受信アンテナ109は、空間多重信号を受信する。次いで、巡回前綴り(CP)除去部110は、各受信アンテナ109により受信された信号それぞれに対してCPを除去する処理を行う。次いで、直/並(S/P)変換部111、高速フーリエ変換(FFT)部112、および並/直(P/S)変換部113は、さらに巡回前綴り(CP)除去部110から入力される時間領域信号を周波数領域信号に変換する。次いで、チャネル推定部114は、並/直(P/S)変換部113から入力される周波数領域信号のうちのパイロット信号に基づき、または他の方法を用いてチャネル推定を行ってチャネル推定(移転関数)行列Hを得る。次いで、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115は、チャネル推定行列Hに基づき無線送信装置150の適応伝送に用いられる各データサブストリーム毎のAMCパラメータM、送信パワー配分パラメータPを決定し、フィードバックチャネル117を用いて無線送信装置150にフィードバックする。次いで、MIMO検出部116は、チャネル推定行列H、およびAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115から入力される各データサブストリーム毎の適応変調符号化パラメータM、送信パワー配分パラメータPに基づき、無線送信装置150により送信された各データサブストリームを検出し、元の送信データを得て、受信データ(Rx Data)とする。
MIMO検出部116に用いられるMIMO検出の方法は、多数あって、例えば一般的に使われるZF(Zero Forcing)方法、MMSE(Minimum Mean Square Error)、または他の方法がある。MIMO検出部116は、まず上記のような検出方法で無線送信装置150の各送信アンテナ108により送信された各信号を分離し、得られた各信号に対して復調および復号を行う。実際のMIMO検出において、各送信アンテナ108により送信された信号の分離と、復調復号との2つの動作は独立的に行われる場合が少ない。前者の出力が後者に用いられ、また前者の処理は後者の出力を必要とする場合が多い。
次に、上記構成のMIMO−OFDM−AMCシステム100における伝送ビットの配分および送信パワーの配分について説明する。そのうち、伝送ビットの配分は、即ちAMCパラメータMの選択と同等となる(伝送ビットの数とAMCパラメータとは1対1で対応され、両者は等価と見なされて良い)ため、以下、伝送ビット配分パラメータをMと記す。
図2は、本実施の形態に係るMIMO−OFDM−AMCシステム100における適応伝送の概念を説明するための図である。
図2において、各サブキャリア1〜Ncは周波数領域の概念を示し、各送信アンテナ108−1〜108−nTは、空間領域の概念を示す。この図は、全体として1つの適応伝送単位を示す。なお、図2においてsc,j(c=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nT)は、MIMO−OFDM−AMCシステム100の第c番目サブキャリア信号が第j番目送信アンテナ108−jにより送信されるデータサブストリーム(または適応伝送部)を示す。図2において、各データサブストリームに対して行われる伝送ビット及び送信パワー配分は、実際には、各データサブストリームに対するAMCパラメータの選択及び送信パワーの配分と同等である。
MIMO−OFDM−AMCシステム100において、チャネル推定(移転関数)行列Hは3次元の行列であり、複数の2次元行列のセットで表せる。具体的に、チャネル推定行列H={H1,H2,…,HNc}中のHc(c=1,2,…,Nc)はnR*nTの行列で、MIMO−OFDM−AMCシステム100の第c番目サブキャリア上のチャネル推定行列を示し、Hcの第i行,第j列の要素Hc(i,j)はMIMO−OFDM−AMCシステム100の第c番目サブキャリア信号が第j番目送信アンテナ108により送信され、第i番目受信アンテナ109により受信された際の周波数領域チャネルゲインを示す。ここでi=1,2,…,nR、j=1,2,…,nTである。
図3は、本実施の形態に係るAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115の詳細な構成を示すブロック図である。
図3において、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115は、信号対干渉雑音比(SINR)ゲイン算出部301、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502、および隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503を備える。
信号対干渉雑音比(SINR)ゲイン算出部301は、チャネル推定部114で得られたチャネル推定行列Hを用いて、MIMO−OFDM−AMC100における各データサブストリームsc,jのMIMO検出後の信号対干渉雑音比(SINR)ゲインGc,jを算出する。ここでc=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nTである。
次いで、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、周波数領域のある1つのサブキャリア上のすべてのデータサブストリームに対して、空間領域において伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う。ここで、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、従来の適応伝送に用いられる任意の伝送ビット及び送信パワー配分最適化のアルゴリズム、例えば、貪欲(Greedy)アルゴリズムを用いる。伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、周波数領域のある1つのサブキャリア上のnT個のデータサブストリームのみに対して適応伝送パラメータ(伝送ビット配分パラメータおよび送信パワー配分パラメータ)の最適化を行い、最適化の範囲は空間領域に限られる。
次いで、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502で適応伝送パラメータ(伝送ビット及び送信パワー配分パラメータ)が配分されたサブキャリア上に配分された適応伝送パラメータ情報を順次に利用して、その隣のサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分最適化を行う。MIMO−OFDM−AMCシステム100において周波数が隣接するサブキャリア上のチャネル特性は非常に近く、そこで隣接するサブキャリア上に最終的に配分される適応伝送パラメータも非常に近いはずである。すなわち、適応伝送パラメータ配分において、ある1つのサブキャリア上の伝送ビット及び送信パワー配分の最適化が行われた場合、当該サブキャリアの配分最適化結果に対して微小な調整を行うだけで、隣接するサブキャリアの適応伝送パラメータMおよびPを得ることができる。隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502で得られたある1つのサブキャリアの適応伝送パラメータに対して調整を行うだけで、周波数領域のすべてのサブキャリアの適応伝送パラメータを決定することができる。各サブキャリアに対して重複に伝送ビット及び送信パワー配分を行うのに比べ、このような方法によれば適応伝送の処理演算量を大いに低減することができる。
図4は、本実施の形態に係るMIMO−OFDM−AMCシステム100における伝送ビット及び送信パワー配分方法の手順を示すフロー図である。
まずステップS601で、チャネル推定部114は、チャネル推定を行い、チャネル推定(移転関数)行列H={H1,H2,…,HNc}を得る。ここでHcは、MIMO−OFDM−AMCシステム100において第c番目サブキャリア上のチャネル推定(移転関数)行列(c=1,2,…,Nc)である。また、ステップS601において、SINRゲイン算出部301は、既に伝送ビット及び送信パワー配分が行われたサブキャリアが構成する集合Uをクリアする。
次いでステップS602において、SINRゲイン算出部301は、チャネル推定行列H、およびMIMO検出部116に用いられるMIMO検出方法に基づき、各データサブストリームsc,jのMIMO検出後のSINRゲインGc,jを算出する。
ここで、SINRゲインGc,jの大きさはHに依存するほか、MIMO検出部116で用いられるMIMO検出方法に依存する。例えば、MIMO検出部116でZF検出方法を用いる場合、第c番目サブキャリア信号が第j番目送信アンテナ108−jにより送信されるデータサブストリームsc,jに対してMIMO検出後の信号対干渉雑音比(SINR)ゲインGc,jは、Gc,j=1/[(Hc)*Hc]jj −1となる。ここでHcはMIMO−OFDM−AMCシステム100において第c番目サブキャリア上のチャネル推定行列である。
次いでステップS603において、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、周波数領域のある1つのサブキャリア、例えばk番目のサブキャリア上のすべてのデータサブストリームに対して、空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行い、MkおよびPkを得る。ここでMkおよびPkは、k番目のサブキャリア上の各データサブストリーム上の伝送ビット及び送信パワー配分結果をそれぞれ示し、すなわち、Mk={mk,1,mk,2,…,mk,nT}、Pk={pk,1,pk,2,…,pk,nT}である。
ここで伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、伝送ビット及び送信パワー最適化に用いられる従来の任意のアルゴリズム、例えばGreedyアルゴリズムを用いて、周波数領域のk番目のサブキャリア上の、nT個のデータサブストリームに対して適応伝送パラメータの最適化を行い、最適化の範囲を空間領域に限定する。具体的に伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、サブキャリアk上のnT個のデータサブストリームsk,1,sk,2,…,sk,nTに対して、AMCパラメータを1レベル向上する(伝送ビットを1つ増加するのと同等である)のに必要な送信パワーの増加量p’k,1,p’k,2,…,p’k,nTを算出しこのnT個の数値p’k,1,p’k,2,…,p’k,nTを比較し、すなわち空間領域に限られた比較を行ってそのうちの最小値を得る。伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、AMCパラメータを1レベル向上するのに必要な送信パワーの増加量が最小となるデータサブストリームの伝送ビット数を1インクリメントする。すなわち、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、AMCパラメータを1レベル向上するのに必要な送信パワーの増加量が最小となるデータサブストリームのAMCパラメータを実際に1レベル向上する。伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、上記の処理を繰り返すことにより、k番目のサブキャリア上のnT個のデータサブストリームに所定数の伝送ビットをすべて配分し、Mk={mk,1,mk,2,…,mk,nT}を得る。次いで、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、pc,j=SBER(mc,j)/Gc,jに従い、Pk={pk,1,pk, 2,…,pk,nT}を求める。
次いでステップS604において、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、k番目のサブキャリアを集合Uに追加する。
次いで、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、適応伝送パラメータが配分されたk番目のサブキャリア上に配分された適応伝送パラメータ情報を順次に利用して、その隣のサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行い、k番目のサブキャリア以外のすべてのサブキャリアのすべてのデータサブストリーム上の伝送ビット及び送信パワー配分結果を得る。
具体的には、ステップS605において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、適応伝送パラメータの配分が行われたサブキャリアが構成する集合Uに中に以下のような所定条件のサブキャリアが存在するか判定する。すなわち、当該サブキャリアの隣のサブキャリアがまだ伝送ビット及び送信パワー配分を行われていないかを判定する。このようなサブキャリアが存在すると判定する場合隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、当該サブキャリアをサブキャリアlと記し、隣のサブキャリアをサブキャリアl’と記す。
ステップS605において隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、上記所定条件のサブキャリアが存在しないと判定する場合、MIMO−OFDM−AMCシステム100のすべてのNc個のサブキャリア上で伝送ビット及び送信パワー配分を完了したと判断し、当該フローを終了する。
ステップS605において隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、上記所定条件のサブキャリアが存在すると判定する場合、サブキャリアlおよびサブキャリアl’を抽出する。その目的は、既に適応伝送パラメータが配分されたサブキャリアl上に配分された適応伝送パラメータを利用して、以下でその隣のサブキャリアl’に対して適応伝送パラメータの配分を行うためである。
次いで、ステップS606において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリアl上に配分された伝送ビット配分パラメータMl={ml,1,ml,2,…,ml,nT}をサブキャリアl’上に配分する伝送ビット配分パラメータMl’の初期値とする。すなわちこのステップ(S606)においてMl’=Mlとして、ステップS606以降の処理で、当該初期値を基に調整を行う。
具体的には、ステップS607において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリアl’上のすべてのデータサブストリームに対してAMCパラメータを1レベル低下させる場合、どのデータサブストリーム上で節約できる送信パワーが最も大きいかを比較する。すなわち、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、節約できる送信パワーが最も大きいデータサブストリームnを下記の式(1)に従い求める。次いで隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、m1’,n=m1’,n−1となるように、データサブストリームnに対してAMCパラメータを1レベル低下させる。
n=argmaxj{(SBER(m1’,j)−SBER(m1’,j−1))/G1’,j}・・・(1)
次いで、ステップS608において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリヤl’上のすべてのデータサブストリームに対してAMCパラメータを1レベル向上させる場合、どのデータサブストリーム上で増加すべき送信パワーが最も小さいかを比較する。隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、増加すべき送信パワーが最も小さいデータサブストリームn’を下記の式(2)に従い求める。次いで隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、m1’,n’=m1’,n’+1となるように、データサブストリームn’に対してAMCパラメータを1レベル向上させる。
n’=argminj{(SBER(m1’,j+1)−SBER(m1’,j))/G1’,j}・・・(2)
次いで、ステップS609において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、nとn’とを比較する。
ステップS609において、nとn’が等しくないと判定する場合、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、ステップS607に戻り再びデータサブストリームnを求め、次いでステップS608でデータサブストリームn’を再び求めて、伝送ビット配分パラメータM1’に対して続けて調整を行う。なお、この場合ステップS607およびステップS608で求められるデータサブストリームnおよびデータサブストリームn’は、前回ステップS607およびステップS608で求められたデータサブストリームnおよびデータサブストリームn’と異なるものである。
ステップS609において、nとn’が等しいと判定する場合、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリアl’上の伝送ビット配分パラメータM1’を続けて調整する必要がないと判断し、ステップS610に移行する。
次いでステップS610において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリアl’上の伝送ビット配分パラメータM1’に対する調整を終了し、サブキャリアl’を集合Uに追加し、ステップS605に戻る。
MIMO−OFDM−AMCシステム100においてすべてのNc*nT個のデータサブストリーム上で伝送するビット数の配分を完了すると、Nc*nT個のmc,jが得られる。そのうち、c=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nTである。次いで、数式pc,j=SBER(mc,j)/Gc,jに従って、Nc*nT個の各データブストリームの送信パワー配分パラメータを算出する。
こうして、伝送ビット配分パラメータおよび送信パワー配分パラメータを得ることができる。
このように、本発明に係るMIMO−OFDM−AMCシステム100においては、空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分を行ってから、空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分の結果およびサブキャリア上のチャネル特性の相関性を用いて、周波数領域でサブキャリア上で伝送ビット及び送信パワー配分を行う。
マルチアンテナ無線通信システムのチャネル容量に対する理論研究で明らかになった1つの事実とは、適応伝送において、周波数領域及び空間領域での結合配分を行うのに比べ、単純に空間領域で適応配分を行う場合のチャネル容量上の損失は、とても少ない。換言すれば伝送ビット及び送信パワー配分に対して、周波数領域及び空間領域での結合最適化を行う方法を、単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分を行う方法に変更することによっては、システム性能において大きな損失は生じない。かつ前者に比べ、後者の処理演算量はかなり低い。MIMO−OFDM−AMCシステム100において隣接するサブキャリアのチャネル特性の相関性を利用して、伝送ビット及び送信パワー配分のアルゴリズムをさらに簡略化することができる。そこで、本発明に係る伝送方法は、単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分を行って処理演算量を低減し、空間領域での伝送ビット及び送信パワー配分結果を用いて周波数領域のすべてのサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分を行うことにしている。
本発明の伝送方法は、伝送ビット及び送信パワー配分に対して周波数領域及び空間領域での結合最適化を行わず、単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分を行うため、伝送ビット及び送信パワー配分に用いる場の次元数が低減され、処理演算量を低減することができる。なお、隣接するサブキャリア上のチャネル特性の相関性を利用して、伝送ビット及び送信パワー配分アルゴリズムをさらに簡略化することができる。
仮に伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を、単純に空間領域のみで行わない伝送方法としては、空間領域および周波数領域で同時に行う方法が考えられる。しかし、このような方法は、本発明のように単純に空間領域のみで伝送ビット及び送信パワー配分を行う伝送方法と比べ、処理演算量が膨大になる。
図5は、周波数領域および空間領域の両領域で同時に、伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行うAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aの詳細な構成を示すブロック図である。図5に示すAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aは、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502と、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー最適化部503とに代えて伝送ビット/送信パワー配分部302を備える点で、図3に示すAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115と相違する。
図5において、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aは、信号対干渉雑音比(SINR)ゲイン算出部301、および伝送ビット数/送信パワー配分部302という2つの部分を備えて構成される。
SINRゲイン算出部301は、チャネル推定部で得られたチャネル推定行列Hを用いて、MIMO−OFDM−AMCシステムにおける各データサブストリームsc,jのMIMO検出後の信号対干渉雑音比(SINR)ゲインGc,jを算出する。ここでc=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nTである。
伝送ビット/送信パワー配分部302は、各データサブストリームsc,jに配分された伝送ビット数mc,jおよび送信パワーpc,jに対して、SINRゲイン算出部301で得られたGc,jを用いて、周波数領域及び空間領域での結合最適化を行い、伝送ビット配分パラメータMおよび送信パワー配分パラメータPを出力する。ここでc=1,2,・・・,Nc、j=1,2,…,nTである。適応伝送に用いられる伝送ビット及び送信パワー配分の最適化アルゴリズムは多種あり、有名な例としては貪欲(Greedy)アルゴリズムがある。
図6は、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aにおいて、Greedyアルゴリズムを用い、伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う方法の手順を示すフロー図である。
まず、ステップS401において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、各データサブストリームsc,jに配分する伝送ビット数mc,jと送信パワーpc,jとを両方とも0に初期化する。ここで、c=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nTである。
次いでステップS402において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、Nc*nT個の各データサブストリームsc,jがAMCパラメータを1レベル向上するのに必要な送信パワーの増加量p’c,jを算出する。送信パワーの増加量p’c,jは下記の式(3)に従い算出される。
p’c,j=(SBER(mc,j+1)−SBER(mc,j))/Gc,j…(3)
ここで、SBER(n)は、所定のビット誤り率(BER)要求を満たすために、伝送する情報ビット数の平均値がnとなる場合、無線受信装置に必要とする受信パワーの閾値を表す。SBER(1),SBER(2),…の値は、システムの初期値として、シミュレーションまたは数式の演算により得られたものである。
次いでステップS403において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、すべてのp’c,jの値を比較し、最小値p’c*,j*を得る。すなわち、すべてのデータサブストリームの中で、データサブストリームsc*,j*を用いて情報ビットを1つ多く伝送する場合(ステップS402に記述した、AMCパラメータを1レベル向上することと同等である)、必要とする送信パワーの増加量が最小となる。
次いでステップS404において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、mc*,j*=mc*,j*+1となるように、データサブストリームsc*,j*に配分する伝送ビット数を1インクリメントする。データサブストリームsc*,j*を用いて情報ビットを1つより多く伝送することとは、すなわち、AMCパラメータを1レベル向上することである。
次いでステップS405において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、かかる場合、システムのスループットが所定の目標値に達したか否かを判定する。具体的には、スループットR=ΣcΣj(rc,j)と、すべてのデータサブストリームsc,jに対応するスループット総和の目標値(全体的な平均スループット値)Rbとが比較される。
ステップS405において、R<Rbであると判定される場合、伝送ビット/送信パワー配分部302は、当該伝送ビット配分によりシステムのスループット要求が満たされていないと判断し、ステップS402に戻り、続けて伝送ビット配分を行う。
ステップS405において、R≧Rbであると判定される場合、伝送ビット配分の処理は終わる。この際、得られる各mc,j値がすなわちデータサブストリームsc,j上の最終的な伝送ビット配分結果(伝送ビット配分パラメータ)となり、送信パワー配分パラメータpc,jは下記の式(4)に従い、算出される。
pc,j=SBER(mc,j)/Gc,j…(4)
図6のフローが示すように、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aにおいて、各データサブストリームsc,jに配分された伝送ビット数mc,jおよび送信パワーpc,jに対する周波数領域及び空間領域上で結合最適化は、主にステップS403で行われる。ステップS403において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、周波数領域上のすべてのサブキャリアおよび空間領域上のすべての送信アンテナに対応するすべてのデータサブストリームに対して、AMCパラメータを1レベル向上するのに必要な送信パワーの増加量を比較する。簡単に言えば、当該アルゴリズムにおいて1つのビットを配分する度に、すべてのNc*nT個のデータサブストリームの上記送信パワーの増加量(または遍歴総和)を1回比較する。
明らかに、MIMO−OFDM−AMCシステムにおいて、伝送ビット及び送信パワー配分に対して、周波数領域及び空間領域での結合最適化を行う方法は、本発明のように単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う伝送方法と比べ、処理演算量が膨大となり、システムのスループット目標値Rbが高いほど、処理演算量はより膨大になる。
なお、本発明に係るマルチアンテナ無線通信システムに用いられる伝送方法および伝送装置は、上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。
また、本発明に係る伝送装置は、MIMO−OFDM−AMC方式の移動体通信システムにおける通信端末装置および基地局装置に搭載することが可能であり、これにより上記と同様の作用効果を有する通信端末装置、基地局装置、および移動体通信システムを提供することができる。
また、ここでは、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明をソフトウェアで実現することも可能である。例えば、本発明に係る伝送ビット及び送信パワー配分方法のアルゴリズムをプログラミング言語によって記述し、このプログラムをメモリに記憶しておいて情報処理手段によって実行させることにより、本発明に係る伝送ビット及び送信パワー配分装置と同様の機能を実現することができる。
本明細書は、2005年3月16日出願の中国特許出願第200510056304.0号に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明に係るマルチアンテナ無線通信システムに用いられる伝送方法および伝送装置は、MIMO−OFDMシステムにおける適応伝送等の用途に適用することができる。
本発明は、無線通信システムにおける適応伝送方法および伝送装置に関し、特にマルチアンテナ無線通信システムに用いられ、処理演算量を低減することができる伝送方法および伝送装置に関する。
無線通信システムとインターネットとが次第に融合していくなかで、ユーザが無線通信サービスの種類および品質に対する要求は高まりつつある。このため無線マルチメディアおよび高速伝送の要求に応じた新世代の無線通信システムの開発が盛んに行われている。そのなか、マルチアンテナインプット・マルチアンテアウトプット(MIMO)と直交周波数多重化(OFDM)とを結合したMIMO−OFDM技術がますます人々の注目を集めている。
MIMOシステムにおいて、送信側は複数の送信アンテナを用いて信号を送信し、受信側は複数の受信アンテナを用いて信号を受信する。従来のシングルアンテナ伝送方法と比べ、MIMO技術ではチャネル容量が著しく向上され、情報伝送レートを向上することができる。なお、MIMOシステムでは、用いられる送信アンテナおよび受信アンテナの数が多いほど、情報伝送レートはより高くなる。時間領域のリソースに比べ、空間領域のアンテナリソースはほぼ無限に利用することができるため、MIMO技術は従来技術のリソース不足問題におけるボトルネックを突破し、次世代無線通信システムの核心技術の1つとなっている。
また、OFDM技術は現在、高速無線データ伝送を実現する主流技術の1つとなっている。OFDM技術の原理は、伝送しようとする高速データを複数の直交サブキャリアを用いて伝送するため、各サブキャリア上の伝送レートは相対的に低くなることにある。OFDMのサブキャリア直交多重技術は、通常の周波数多重化システムに比べ、システムの周波数利用効率をさらに向上することができる。OFDM技術を用いるシステムにおいては、信号全体の周波数帯域を複数の非常に狭いサブキャリア周波数帯域に分けるためフラットフェージングとなる。従って、シングルキャリアシステムと比べ、OFDMシステムにおいては均衡を実現することがより容易である。
また、適応伝送技術によっても減衰チャネルにおける情報伝送レートを効果的に向上することができる。適応変調及び符号化(AMC)技術は、重要な適応伝送技術の1つであって、その基本思想は、チャネル特性に基づき伝送に用いる変調パラメータ、符号化パラメータ、および送信パワーを適応的に変更することである。チャネル条件がより良い場合は情報をより多く伝送し、チャネル条件がより劣る場合は情報をより少なく伝送して、システムの性能を向上する。従って、適応伝送技術によれば、より高い情報伝送レート、より低い誤りビット率(BER)、およびより低い送信パワーを実現することができる。
そこで、上記のMIMO−OFDMとAMCという2つの技術を結合して、単純に1つの技術を用いるのに比べ、より高いシステム性能を得ることが考えられる。以下、MIMO−OFDMとAMCとの2つの技術を適用した無線通信システムをMIMO−OFDM−AMCシステムと称す。
しかしながら、MIMO−OFDMとAMCの2つの技術を結合する場合、周波数領域
の複数のサブキャリアが空間領域の各送信アンテナに対応して構成するデータサブストリームの数は大幅に増加する。例えば、サブキャリアの数がNcであり、送信アンテナの数がnTである場合、データサブストリームの数はNc*nT個となる。従って、MIMO−OFDM−AMCシステムにおいては、上記Nc*nT個のデータサブストリーム毎の適応伝送パラメータ(伝送ビット及び送信パワー配分パラメータ)を決定する処理の演算量が膨大となり、実現が困難であるという問題がある。
よって本発明の目的は、MIMO−OFDM−AMCシステムにおいて低い処理演算量で、各データサブストリームに対して伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う伝送方法および伝送装置を提供することである。
本発明の伝送方法は、マルチアンテナ無線通信システムに用いられる伝送方法であって、各データサブストリームを検出し、各データサブストリーム毎の信号対干渉雑音比(SINR)ゲインを算出するSINR算出ステップと、得られたSINRゲインに基づき、周波数領域のある1つのサブキャリア上のすべてのデータサブストリームに対して空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分最適化を行って伝送ビット及び送信パワー配分パラメータを決定する空間領域上配分ステップと、前記伝送ビット及び送信パワー配分パラメータが決定された前記ある1つのサブキャリア上に配分された伝送ビット及び送信パワー配分パラメータを順次に用いて、隣接するサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分最適化を行う隣接サブキャリア上配分ステップと、を有するようにした。
本発明の伝送装置は、チャネル推定行列Hを用いて、適応伝送された各データサブストリームを検出し、各データサブストリーム毎のSINRゲインを算出するSINRゲイン算出手段と、得られたSINRゲインに基づき、周波数領域のある1つのサブキャリア上のすべてのデータサブストリームに対して空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分最適化を行い、伝送ビット及び送信パワー配分パラメータを決定する伝送ビット及び送信パワー配分最適化手段と、伝送ビット及び送信パワー配分パラメータが決定された前記ある1つのサブキャリア上に配分された伝送ビット及び送信パワー配分パラメータを順次に用いて、前記ある1つのサブキャリに隣接するサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う隣接サブキャリア伝送ビット及び送信パワー最適化手段と、を具備するマルチアンテナ無線通信システムに用いられる伝送装置である。
本発明の伝送方法および伝送装置によれば、単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワーの配分を行い、伝送ビット及び送信パワー配分に用いられる場の次元数を減少し、従来の方法に比べ処理演算量を低減することができる。なお、隣接するサブキャリア上のチャネル特性の相関性を利用して、伝送ビット及び送信パワー配分のアルゴリズムをさらに簡略化することができる。
以下、本発明の最良の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るAMC技術を用いるMIMO−OFDM(MIMO−OFDM−AMC)システム100の構成を示すブロック図である。
図1において、MIMO−OFDM−AMCシステム100は、nT本の送信アンテナを用いて送信を行う無線送信装置150、およびnR本の受信アンテナを用いて受信を行う無線受信装置160を備えて構成される。無線送信装置150は、直/並(S/P)変換部101、適応変調符号化(AMC)部102−1〜102−nT、送信パワー制御部103−1〜103−nT、直/並(S/P)変換部104−1〜104−nT、逆高速フーリエ変換(IFFT)部105−1〜105−nT、並/直(P/S)変換部106−1〜106−nT、巡回前綴り(CP)挿入部107−1〜107−nT、および送信アンテナ108−1〜108−nTを備える。無線受信装置160は、受信アンテナ109−1〜109−nR、巡回前綴り(CP)除去部110−1〜110−nR、直/並(S/P)変換部111−1〜111−nR、高速フーリエ変換(FFT)部112−1〜112−nR、並/直(P/S)変換部113−1〜113−nR、チャネル推定部114、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115、およびMIMO検出部116を備える。同様の枝番を用いて示される複数の同様の構成要素は、以下、枝番を省略して略称する場合がある。例えば、適応変調符号化(AMC)部102−1〜102−nTを、適応変調符号化(AMC)部102と略称する場合がある。
無線送信装置150において、直/並(S/P)変換部101は、送信される周波数領域データTx DataをnT個のデータサブストリームに分割して各AMC部102に出力する。各データサブストリームは、それぞれ1つの送信アンテナ108に対応する。各適応変調符号化部102は、直/並(S/P)変換部101から入力される各データサブストリームに対し、チャネル伝送特性に基づいて適応変調符号化を行い、各送信パワー制御部103に出力する。各送信パワー制御部103は、適応変調符号化された各データサブストリームに対して送信パワーの制御を行い、各直/並(S/P)変換部104に出力する。次いで、直/並(S/P)変換部104、逆高速フーリエ変換(IFFT)部105、並/直(P/S)変換部106は、送信パワー制御部103が出力する周波数領域のデータサブストリームを時間領域信号に変換する。次いで、各巡回前綴り(CP)挿入部107は、各並/直(P/S)変換部106から入力される各時間領域信号に対して巡回前綴りを挿入する処理を行い、巡回前綴りが挿入された各時間領域信号は、それぞれ対応する送信アンテナ108により送信される。
無線送信装置150において、各データサブストリームに対してAMC動作および送信パワー制御動作を行うのに必要な適応伝送パラメータ、例えば適応変調符号化(AMC)パラメータM、送信パワー配分パラメータPなどは、無線受信装置160で決定され、フィードバックチャネル117を通じてフィードバックされたものである。なお、無線送信装置150は無線受信装置160がフィードバックするAMCパラメータMに基づき、直/並(S/P)変換部101から出力される各データサブストリームの長さを制御する。
無線受信装置160において、まずnR本の受信アンテナ109は、空間多重信号を受信する。次いで、巡回前綴り(CP)除去部110は、各受信アンテナ109により受信された信号それぞれに対してCPを除去する処理を行う。次いで、直/並(S/P)変換部111、高速フーリエ変換(FFT)部112、および並/直(P/S)変換部113
は、さらに巡回前綴り(CP)除去部110から入力される時間領域信号を周波数領域信号に変換する。次いで、チャネル推定部114は、並/直(P/S)変換部113から入力される周波数領域信号のうちのパイロット信号に基づき、または他の方法を用いてチャネル推定を行ってチャネル推定(移転関数)行列Hを得る。次いで、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115は、チャネル推定行列Hに基づき無線送信装置150の適応伝送に用いられる各データサブストリーム毎のAMCパラメータM、送信パワー配分パラメータPを決定し、フィードバックチャネル117を用いて無線送信装置150にフィードバックする。次いで、MIMO検出部116は、チャネル推定行列H、およびAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115から入力される各データサブストリーム毎の適応変調符号化パラメータM、送信パワー配分パラメータPに基づき、無線送信装置150により送信された各データサブストリームを検出し、元の送信データを得て、受信データ(Rx Data)とする。
MIMO検出部116に用いられるMIMO検出の方法は、多数あって、例えば一般的に使われるZF(Zero Forcing)方法、MMSE(Minimum Mean Square Error)、または他の方法がある。MIMO検出部116は、まず上記のような検出方法で無線送信装置150の各送信アンテナ108により送信された各信号を分離し、得られた各信号に対して復調および復号を行う。実際のMIMO検出において、各送信アンテナ108により送信された信号の分離と、復調復号との2つの動作は独立的に行われる場合が少ない。前者の出力が後者に用いられ、また前者の処理は後者の出力を必要とする場合が多い。
次に、上記構成のMIMO−OFDM−AMCシステム100における伝送ビットの配分および送信パワーの配分について説明する。そのうち、伝送ビットの配分は、即ちAMCパラメータMの選択と同等となる(伝送ビットの数とAMCパラメータとは1対1で対応され、両者は等価と見なされて良い)ため、以下、伝送ビット配分パラメータをMと記す。
図2は、本実施の形態に係るMIMO−OFDM−AMCシステム100における適応伝送の概念を説明するための図である。
図2において、各サブキャリア1〜Ncは周波数領域の概念を示し、各送信アンテナ108−1〜108−nTは、空間領域の概念を示す。この図は、全体として1つの適応伝送単位を示す。なお、図2においてsc,j(c=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nT)は、MIMO−OFDM−AMCシステム100の第c番目サブキャリア信号が第j番目送信アンテナ108−jにより送信されるデータサブストリーム(または適応伝送部)を示す。図2において、各データサブストリームに対して行われる伝送ビット及び送信パワー配分は、実際には、各データサブストリームに対するAMCパラメータの選択及び送信パワーの配分と同等である。
MIMO−OFDM−AMCシステム100において、チャネル推定(移転関数)行列Hは3次元の行列であり、複数の2次元行列のセットで表せる。具体的に、チャネル推定行列H={H1,H2,…,HNc}中のHc(c=1,2,…,Nc)はnR*nTの行列で、MIMO−OFDM−AMCシステム100の第c番目サブキャリア上のチャネル推定行列を示し、Hcの第i行,第j列の要素Hc(i,j)はMIMO−OFDM−AMCシステム100の第c番目サブキャリア信号が第j番目送信アンテナ108により送信され、第i番目受信アンテナ109により受信された際の周波数領域チャネルゲインを示す。ここでi=1,2,…,nR、j=1,2,…,nTである。
図3は、本実施の形態に係るAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115の詳細な構成を示すブロック図である。
図3において、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115は、信号対干渉雑音比(SINR)ゲイン算出部301、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502、および隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503を備える。
信号対干渉雑音比(SINR)ゲイン算出部301は、チャネル推定部114で得られたチャネル推定行列Hを用いて、MIMO−OFDM−AMC100における各データサブストリームsc,jのMIMO検出後の信号対干渉雑音比(SINR)ゲインGc,jを算出する。ここでc=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nTである。
次いで、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、周波数領域のある1つのサブキャリア上のすべてのデータサブストリームに対して、空間領域において伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う。ここで、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、従来の適応伝送に用いられる任意の伝送ビット及び送信パワー配分最適化のアルゴリズム、例えば、貪欲(Greedy)アルゴリズムを用いる。伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、周波数領域のある1つのサブキャリア上のnT個のデータサブストリームのみに対して適応伝送パラメータ(伝送ビット配分パラメータおよび送信パワー配分パラメータ)の最適化を行い、最適化の範囲は空間領域に限られる。
次いで、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502で適応伝送パラメータ(伝送ビット及び送信パワー配分パラメータ)が配分されたサブキャリア上に配分された適応伝送パラメータ情報を順次に利用して、その隣のサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分最適化を行う。MIMO−OFDM−AMCシステム100において周波数が隣接するサブキャリア上のチャネル特性は非常に近く、そこで隣接するサブキャリア上に最終的に配分される適応伝送パラメータも非常に近いはずである。すなわち、適応伝送パラメータ配分において、ある1つのサブキャリア上の伝送ビット及び送信パワー配分の最適化が行われた場合、当該サブキャリアの配分最適化結果に対して微小な調整を行うだけで、隣接するサブキャリアの適応伝送パラメータMおよびPを得ることができる。隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502で得られたある1つのサブキャリアの適応伝送パラメータに対して調整を行うだけで、周波数領域のすべてのサブキャリアの適応伝送パラメータを決定することができる。各サブキャリアに対して重複に伝送ビット及び送信パワー配分を行うのに比べ、このような方法によれば適応伝送の処理演算量を大いに低減することができる。
図4は、本実施の形態に係るMIMO−OFDM−AMCシステム100における伝送ビット及び送信パワー配分方法の手順を示すフロー図である。
まずステップS601で、チャネル推定部114は、チャネル推定を行い、チャネル推定(移転関数)行列H={H1,H2,…,HNc}を得る。ここでHcは、MIMO−OFDM−AMCシステム100において第c番目サブキャリア上のチャネル推定(移転関数)行列(c=1,2,…,Nc)である。また、ステップS601において、SINRゲイン算出部301は、既に伝送ビット及び送信パワー配分が行われたサブキャリアが構成する集合Uをクリアする。
次いでステップS602において、SINRゲイン算出部301は、チャネル推定行列H、およびMIMO検出部116に用いられるMIMO検出方法に基づき、各データサブストリームsc,jのMIMO検出後のSINRゲインGc,jを算出する。
ここで、SINRゲインGc,jの大きさはHに依存するほか、MIMO検出部116
で用いられるMIMO検出方法に依存する。例えば、MIMO検出部116でZF検出方法を用いる場合、第c番目サブキャリア信号が第j番目送信アンテナ108−jにより送信されるデータサブストリームsc,jに対してMIMO検出後の信号対干渉雑音比(SINR)ゲインGc,jは、Gc,j=1/[(Hc)*Hc]jj ー1となる。ここでHcはMIMO−OFDM−AMCシステム100において第c番目サブキャリア上のチャネル推定行列である。
次いでステップS603において、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、周波数領域のある1つのサブキャリア、例えばk番目のサブキャリア上のすべてのデータサブストリームに対して、空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行い、MkおよびPkを得る。ここでMkおよびPkは、k番目のサブキャリア上の各データサブストリーム上の伝送ビット及び送信パワー配分結果をそれぞれ示し、すなわち、Mk={mk,1,mk,2,…,mk,nT}、Pk={pk,1,pk,2,…,pk,nT}である。
ここで伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、伝送ビット及び送信パワー最適化に用いられる従来の任意のアルゴリズム、例えばGreedyアルゴリズムを用いて、周波数領域のk番目のサブキャリア上の、nT個のデータサブストリームに対して適応伝送パラメータの最適化を行い、最適化の範囲を空間領域に限定する。具体的に伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、サブキャリアk上のnT個のデータサブストリームsk,1,sk,2,…,sk,nTに対して、AMCパラメータを1レベル向上する(伝送ビットを1つ増加するのと同等である)のに必要な送信パワーの増加量p' k,1,p' k,2,…,p' k,nTを算出しこのnT個の数値p' k,1,p' k,2,…,p' k,nTを比較し、すなわち空間領域に限られた比較を行ってそのうちの最小値を得る。伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、AMCパラメータを1レベル向上するのに必要な送信パワーの増加量が最小となるデータサブストリームの伝送ビット数を1インクリメントする。すなわち、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、AMCパラメータを1レベル向上するのに必要な送信パワーの増加量が最小となるデータサブストリームのAMCパラメータを実際に1レベル向上する。伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、上記の処理を繰り返すことにより、k番目のサブキャリア上のnT個のデータサブストリームに所定数の伝送ビットをすべて配分し、Mk={mk,1,mk,2,…,mk,nT}を得る。次いで、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、pc,j=SBER(mc,j)/Gc,jに従い、Pk={pk,1,pk,2,…,pk,nT}を求める。
次いでステップS604において、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502は、k番目のサブキャリアを集合Uに追加する。
次いで、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、適応伝送パラメータが配分されたk番目のサブキャリア上に配分された適応伝送パラメータ情報を順次に利用して、その隣のサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行い、k番目のサブキャリア以外のすべてのサブキャリアのすべてのデータサブストリーム上の伝送ビット及び送信パワー配分結果を得る。
具体的には、ステップS605において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、適応伝送パラメータの配分が行われたサブキャリアが構成する集合Uに中に以下のような所定条件のサブキャリアが存在するか判定する。すなわち、当該サブキャリアの隣のサブキャリアがまだ伝送ビット及び送信パワー配分を行われていないかを判定する。このようなサブキャリアが存在すると判定する場合隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、当該サブキャリアをサブキャリアlと記し、隣
のサブキャリアをサブキャリアl'と記す。
ステップS605において隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、上記所定条件のサブキャリアが存在しないと判定する場合、MIMO−OFDM−AMCシステム100のすべてのNc個のサブキャリア上で伝送ビット及び送信パワー配分を完了したと判断し、当該フローを終了する。
ステップS605において隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、上記所定条件のサブキャリアが存在すると判定する場合、サブキャリアlおよびサブキャリアl'を抽出する。その目的は、既に適応伝送パラメータが配分されたサブキャリアl上に配分された適応伝送パラメータを利用して、以下でその隣のサブキャリアl'に対して適応伝送パラメータの配分を行うためである。
次いで、ステップS606において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリアl上に配分された伝送ビット配分パラメータMl={ml,1,ml,2,…,ml,nT}をサブキャリアl'上に配分する伝送ビット配分パラメータMl’の初期値とする。すなわちこのステップ(S606)においてMl’=Mlとして、ステップS606以降の処理で、当該初期値を基に調整を行う。
具体的には、ステップS607において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリアl'上のすべてのデータサブストリームに対してAMCパラメータを1レベル低下させる場合、どのデータサブストリーム上で節約できる送信パワーが最も大きいかを比較する。すなわち、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、節約できる送信パワーが最も大きいデータサブストリームnを下記の式(1)に従い求める。次いで隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、m1',n=m1',n−1となるように、データサブストリームnに対してAMCパラメータを1レベル低下させる。
n=argmaxj{(SBER(m1',j)−SBER(m1',j−1))/G1',j} …(1)
次いで、ステップS608において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリアl’上のすべてのデータサブストリームに対してAMCパラメータを1レベル向上させる場合、どのデータサブストリーム上で増加すべき送信パワーが最も小さいかを比較する。隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、増加すべき送信パワーが最も小さいデータサブストリームn’を下記の式(2)に従い求める。次いで隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、m1',n’=m1',n’+1となるように、データサブストリームn’に対してAMCパラメータを1レベル向上させる。
n'=argminj{(SBER(m1',j+1)−SBER(m1',j))/G1',j} …(2)
次いで、ステップS609において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、nとn’とを比較する。
ステップS609において、nとn’が等しくないと判定する場合、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、ステップS607に戻り再びデータサブストリームnを求め、次いでステップS608でデータサブストリームn’を再び求めて、伝送ビット配分パラメータMl’に対して続けて調整を行う。なお、この場合ステップS607およびステップS608で求められるデータサブストリームnおよびデータサブストリームn’は、前回ステップS607およびステップS608で求められたデータサ
ブストリームnおよびデータサブストリームn’と異なるものである。
ステップS609において、nとn’が等しいと判定する場合、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリアl’上の伝送ビット配分パラメータMl’を続けて調整する必要がないと判断し、ステップS610に移行する。
次いでステップS610において、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー配分最適化部503は、サブキャリアl'上の伝送ビット配分パラメータMl’に対する調整を終了し、サブキャリアl'を集合Uに追加し、ステップS605に戻る。
MIMO−OFDM−AMCシステム100においてすべてのNc*nT個のデータサブストリーム上で伝送するビット数の配分を完了すると、Nc*nT個のmc,jが得られる。そのうち、c=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nTである。次いで、数式pc,j=SBER(mc,j)/Gc,jに従って、Nc*nT個の各データブストリームの送信パワー配分パラメータを算出する。
こうして、伝送ビット配分パラメータおよび送信パワー配分パラメータを得ることができる。
このように、本発明に係るMIMO−OFDM−AMCシステム100においては、空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分を行ってから、空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分の結果およびサブキャリア上のチャネル特性の相関性を用いて、周波数領域でサブキャリア上で伝送ビット及び送信パワー配分を行う。
マルチアンテナ無線通信システムのチャネル容量に対する理論研究で明らかになった1つの事実とは、適応伝送において、周波数領域及び空間領域での結合配分を行うのに比べ、単純に空間領域で適応配分を行う場合のチャネル容量上の損失は、とても少ない。換言すれば伝送ビット及び送信パワー配分に対して、周波数領域及び空間領域での結合最適化を行う方法を、単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分を行う方法に変更することによっては、システム性能において大きな損失は生じない。かつ前者に比べ、後者の処理演算量はかなり低い。MIMO−OFDM−AMCシステム100において隣接するサブキャリアのチャネル特性の相関性を利用して、伝送ビット及び送信パワー配分のアルゴリズムをさらに簡略化することができる。そこで、本発明に係る伝送方法は、単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分を行って処理演算量を低減し、空間領域での伝送ビット及び送信パワー配分結果を用いて周波数領域のすべてのサブキャリアに対して伝送ビット及び送信パワー配分を行うことにしている。
本発明の伝送方法は、伝送ビット及び送信パワー配分に対して周波数領域及び空間領域での結合最適化を行わず、単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分を行うため、伝送ビット及び送信パワー配分に用いる場の次元数が低減され、処理演算量を低減することができる。なお、隣接するサブキャリア上のチャネル特性の相関性を利用して、伝送ビット及び送信パワー配分アルゴリズムをさらに簡略化することができる。
仮に伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を、単純に空間領域のみで行わない伝送方法としては、空間領域および周波数領域で同時に行う方法が考えられる。しかし、このような方法は、本発明のように単純に空間領域のみで伝送ビット及び送信パワー配分を行う伝送方法と比べ、処理演算量が膨大になる。
図5は、周波数領域および空間領域の両領域で同時に、伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行うAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aの詳細な構成を示すブ
ロック図である。図5に示すAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aは、伝送ビット/送信パワー配分最適化部502と、隣接サブキャリア伝送ビット/送信パワー最適化部503とに代えて伝送ビット/送信パワー配分部302を備える点で、図3に示すAMCパラメータ選択/送信パワー配分部115と相違する。
図5において、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aは、信号対干渉雑音比(SINR)ゲイン算出部301、および伝送ビット数/送信パワー配分部302という2つの部分を備えて構成される。
SINRゲイン算出部301は、チャネル推定部で得られたチャネル推定行列Hを用いて、MIMO−OFDM−AMCシステムにおける各データサブストリームsc,jのMIMO検出後の信号対干渉雑音比(SINR)ゲインGc,jを算出する。ここでc=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nTである。
伝送ビット/送信パワー配分部302は、各データサブストリームsc,jに配分された伝送ビット数mc,jおよび送信パワーpc,jに対して、SINRゲイン算出部301で得られたGc,jを用いて、周波数領域及び空間領域での結合最適化を行い、伝送ビット配分パラメータMおよび送信パワー配分パラメータPを出力する。ここでc=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nTである。適応伝送に用いられる伝送ビット及び送信パワー配分の最適化アルゴリズムは多種あり、有名な例としては貪欲(Greedy)アルゴリズムがある。
図6は、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aにおいて、Greedyアルゴリズムを用い、伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う方法の手順を示すフロー図である。
まず、ステップS401において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、各データサブストリームsc,jに配分する伝送ビット数mc,jと送信パワーpc,jとを両方とも0に初期化する。ここで、c=1,2,…,Nc、j=1,2,…,nTである。
次いでステップS402において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、Nc*nT個の各データサブストリームsc,jがAMCパラメータを1レベル向上するのに必要な送信パワーの増加量p’ c,jを算出する。送信パワーの増加量p’ c,jは下記の式(3)に従い算出される。
p’ c,j=(SBER(mc,j+1)−SBER(mc,j))/Gc,j …(3)
ここで、SBER(n)は、所定のビット誤り率(BER)要求を満たすために、伝送する情報ビット数の平均値がnとなる場合、無線受信装置に必要とする受信パワーの閾値を表す。SBER(1),SBER(2),…の値は、システムの初期値として、シミュレーションまたは数式の演算により得られたものである。
次いでステップS403において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、すべてのp’ c,jの値を比較し、最小値p’ c*,j*を得る。すなわち、すべてのデータサブストリームの中で、データサブストリームsc*,j*を用いて情報ビットを1つ多く伝送する場合(ステップS402に記述した、AMCパラメータを1レベル向上することと同等である)、必要とする送信パワーの増加量が最小となる。
次いでステップS404において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、mc*,j*=mc*,j*+1となるように、データサブストリームsc*,j*に配分する伝送ビット数を1インクリメントする。データサブストリームsc*,j*を用いて情報ビ
ットを1つより多く伝送することとは、すなわち、AMCパラメータを1レベル向上することである。
次いでステップS405において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、かかる場合、システムのスループットが所定の目標値に達したか否かを判定する。具体的には、スループットR=ΣcΣj(rc,j)と、すべてのデータサブストリームsc,jに対応するスループット総和の目標値(全体的な平均スループット値)Rbとが比較される。
ステップS405において、R<Rbであると判定される場合、伝送ビット/送信パワー配分部302は、当該伝送ビット配分によりシステムのスループット要求が満たされていないと判断し、ステップS402に戻り、続けて伝送ビット配分を行う。
ステップS405において、R≧Rbであると判定される場合、伝送ビット配分の処理は終わる。この際、得られる各mc,j値がすなわちデータサブストリームsc,j上の最終的な伝送ビット配分結果(伝送ビット配分パラメータ)となり、送信パワー配分パラメータpc,jは下記の式(4)に従い、算出される。
pc,j=SBER(mc,j)/Gc,j …(4)
図6のフローが示すように、AMCパラメータ選択/送信パワー配分部115aにおいて、各データサブストリームsc,jに配分された伝送ビット数mc,jおよび送信パワーpc,jに対する周波数領域及び空間領域上で結合最適化は、主にステップS403で行われる。ステップS403において、伝送ビット/送信パワー配分部302は、周波数領域上のすべてのサブキャリアおよび空間領域上のすべての送信アンテナに対応するすべてのデータサブストリームに対して、AMCパラメータを1レベル向上するのに必要な送信パワーの増加量を比較する。簡単に言えば、当該アルゴリズムにおいて1つのビットを配分する度に、すべてのNc*nT個のデータサブストリームの上記送信パワーの増加量(または遍歴総和)を1回比較する。
明らかに、MIMO−OFDM−AMCシステムにおいて、伝送ビット及び送信パワー配分に対して、周波数領域及び空間領域での結合最適化を行う方法は、本発明のように単純に空間領域で伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う伝送方法と比べ、処理演算量が膨大となり、システムのスループット目標値Rbが高いほど、処理演算量はより膨大になる。
なお、本発明に係るマルチアンテナ無線通信システムに用いられる伝送方法および伝送装置は、上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。
また、本発明に係る伝送装置は、MIMO−OFDM−AMC方式の移動体通信システムにおける通信端末装置および基地局装置に搭載することが可能であり、これにより上記と同様の作用効果を有する通信端末装置、基地局装置、および移動体通信システムを提供することができる。
また、ここでは、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明をソフトウェアで実現することも可能である。例えば、本発明に係る伝送ビット及び送信パワー配分方法のアルゴリズムをプログラミング言語によって記述し、このプログラムをメモリに記憶しておいて情報処理手段によって実行させることにより、本発明に係る伝送ビット及び送信パワー配分装置と同様の機能を実現することができる。
本明細書は、2005年3月16日出願の中国特許出願第200510056304.0号に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明に係るマルチアンテナ無線通信システムに用いられる伝送方法および伝送装置は、MIMO−OFDMシステムにおける適応伝送等の用途に適用することができる。
本発明の一実施の形態に係るAMC技術を用いたMIMO−OFDMシステム(MIMO−OFDM−AMCシステム)の構成を示すブロック図
MIMO−OFDM−AMCシステムにおける適応伝送の概念を説明するための図
本発明の一実施の形態に係る適応変調符号化(AMC)パラメータ選択/送信パワー配分部の詳細な構成を示すブロック図
本発明の一実施の形態に係る伝送ビット/送信パワー配分方法の手順を示すフロー図
周波数領域および空間領域の両領域で同時に、伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行うAMCパラメータ選択/送信パワー配分部の詳細な構成を示すブロック図
Greedyアルゴリズムを用いて伝送ビット及び送信パワー配分の最適化を行う方法の手順を示すフロー図